黒「10万3000冊の魔道書?」(419)


どっちもアニメ見たぐらいのレベルだけど読みたいから書く


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1367185250


黒が学園都市に来たのはゲート内物質、流星の欠片を入手するためであった。

すでにその仕事を終えていた黒は学園都市から流星の欠片を持って脱出するだけのはずであった。

黄(ホァン)「黒(ヘイ)、流星の欠片は手に入れたのか?」

黒「ああ、だが問題がある。」

黄「なんだ?」

黒「今回の件で内から外への規制強化された。少なくとも人が持って外にでるのは厳しいな。」

黄「そうだろうな、組織からしばらくそちらに滞在しろと命令が出ている。中に入れるのも一苦労だからそのまま別の仕事をやらせたいらしい。」


黒「流星の欠片はどうする。」

黄「猫(マオ)がそっちに向かう。」

黒「何?」

黄「鳥で流星の欠片を運ぶと言っている」

黒「大丈夫か?あいつネコ以外はあまり得意ではないと言っていたぞ」

黄「ダメだった場合でも、お前の監視ぐらいの役は立つ。ハヴォックの件もあるからな。」

―――――――ハヴォック

史上最悪の契約者
黒たちと仕事をしていた頃のコードネームはカーマイン
任意の場所に真空の発生を発生させる契約者。

喪失者になったことにより、能力が使えなくなっていた。
普通の人に戻ってしまった彼女は契約者であった自分を否定し、能力が戻ってしまうのを恐れた。


ハヴォック「もう誰も殺したない!奪いたくない!」

黒「お前はもう誰も殺さない!そうだろ…?」



彼女はノーベンバー11の能力を受けて死んだ。



地獄の底で共に戦った仲間が、新たな生き方を見つけようとしていたのに黒はそんな彼女を救えなかった。

不良「なあいいだろ?」

美琴「…」

黒「彼女、困ってるじゃないですか」

不良「あ~ん?なんだお前」

黒「あまりそういうのは良くないと思うんですよ」

不良「うるせえ!」

黒「うわっ!?」

不良が黒を殴りつけようとしたのだが、黒は足を滑らせて転んだようにその拳を回避した。
転んだ後は不良の足を引っ張って姿勢を崩させて、自滅したかのように見せる。

まるでミスがそのまま攻撃になる、ラッキーヒットを演出するのは彼の得意な事だ。

不良「うがっ」

黒「ああ、ごめんなさい…って気絶しちゃいました?」

黒しては、そこで終わるはずだった。
しかし後ろからゾロゾロと不良の群れが現れてしまった。


不良達「逃げんな!まてやおらああああ」

黒(しつこいな、袋小路に誘い込んでやってしまうか)

――――――ビリビリビリビリ!

不良の群れに電撃が走った。
その範囲は広く、黒も巻き込まれていた。


美琴「ふう…めんどくさいなぁ、もう」

黒(今の電撃…この女…学園都市で保護されてる契約者か?)

美琴「あれ、気絶してない?目撃者を残したくないから全員に気絶する程度の電撃を放ったんだけど…」

黒「もしかして助けてくれたんですか?」

美琴「…本当に効いてないの?」


ビリビリ!


黒「ちょっと、何するんですか!?」

美琴「うわっ…加減してるけど全く効いてない。能力者?あんたレベルいくつ?」

黒「レベル?ああ、ここに学園都市に入る時に受けた検査結果のやつですか?たしか結果はレベル0だとか…」

美琴「レベル0とか冗談でしょ?ちょっとパワー上げてみるわよ」

黒「ちょっ、ちょっと」



この後、美琴がエスカレートして黒はでかい雷まで落とされるハメになる。


猫待ちで新しい任務もきていない黒はしばらく静かな日々が続くだろうと思っていた。

昨日の雷のようなイベントはそう何度も起きるものではない。

そう思って彼はベランダに洗濯物を…

禁書目録「おなかへった」

黒(なんだ?このシスターみたいな何かは…なんでベランダに干されている)

黒「あのー、どちら様でしょうか?」

禁書目録「おなかへった」

黒「…はぁ」

禁書目録「おなかへったって言ってるんだよ」

黒「…なにか作りましょうか?」


禁書目録「すっごい美味しい、美味しいよこれ!」

禁書目録の前には10人前以上とも思える食事が並んでいるのだが、彼女はそれを次々と食べている。
黒は自分用の食事もあわせて作ったつもりだったが、彼女が自分並に食べるので少し驚いてしまった。

黒「それで、なんでベランダに居たのでしょうか?」

禁書目録「落ちたんだよ。」

黒「ああ、301号室の人ですか。最近引っ越してきたばかりで顔を覚えてなくてごめんなさい。」

禁書目録「ち、ちがうよ!屋上から屋上に飛び移るつもりだったんだよ」


黒「そうなんですか?私と同じ外国人だからこの寮の人だとてっきり…。それでなんでそんなことを」

禁書目録「仕方なかったんだよ追われてたから…そういえば自己紹介してなかったね。私の名前は禁書目録(インデックス)っていうんだよ」

黒「ご丁寧にどうも。私は李舜生(リ・シェンシュン)と言います。それで、追われてるとは一体何にがあったんです?」

禁書目録「私の持ってる10万3000冊の魔道書が狙いだと思う」

黒「10万3000冊の魔導書?…それを狙って誰に追われているんですか?」

禁書目録「魔術結社なんだよ。」

黒「……禁書目録さんの信仰関係のお知り合いですかね?」

禁書目録「…そこはかとなく馬鹿にしてるね」

黒「あはは、そんなことないですよ。ただ、魔術とか無縁な生活をしてましたので、実感が無いだけですよ」


禁書目録「むー。論より証拠!これ、この服!歩く教会っていう防御結界なんだから!物理、魔術の攻撃を完全に無効にしちゃうんだから!」

黒「完全無効ですか?」

禁書目録「そう!」

黒「じゃあ、試しに裾あたりを…破れないですね」

禁書目録「エヘン!」


黒(契約者の能力はどうだ?)


黒は単純に電気を流すだけで能力を使おうとした。
そんな彼の意思とは無縁に、ポケットに入っていた流星の欠片が反応していた。

その事には、黒も禁書目録も気がついていない。


黒「(電気は通らないな…)うーん、そうですね。確かにいい素材でできてますね」

禁書目録「素材じゃないんだけど…」


黒「そういえば追われてるとのことですが、逃げる先は決まっているんですか?」

禁書目録「……教会まで逃げれば匿ってもらえるかも。」

黒「かもって…それで大丈夫なんですか?」

禁書目録「…心配してくれるなら、私と一緒に地獄の底までついてきてくれる?」


彼女は何かを悟ってるかのように微笑んだ。


ついてくるわけがない。


わかりきった返答を求めている顔。


黒はよく知っている。
あの微笑みは、地獄から抜け出すのを諦めた人間の顔だ。
あの顔をした奴を沢山見てきた。沢山死んでいった。


     「また俺は誰も救えないのか?」


黒「構わないって言ったらどうする?」

禁書目録「っふぇ!?」

黒「…構わないって言ったらどうする?」

禁書目録「あ…ありがとう。でもやっぱり無関係のリーを巻き込みたくなんだよ。気持ちだけで私はお腹いっぱいなんだよ。」

黒「そう…ですか、でも気をつけてくださいね。御馳走ぐらいならいつでもしますよ。」

禁書目録「本当!?お、おちついたらまた来るかもしれなんだよ。」



書き溜めなくなった。今日はここまで。


  <⌒/ヽ-、___
/<_/____/


   ∧∧

  (  ・ω・) 投下
  _| ⊃/(___
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黒「禁書目録…さん!?」

禁書目録が家の前で倒れている。
背中から血だらけの姿で、意識を失っている。

黒はまず彼女の腕を取り脈を調べた。

―――――――まだ生きている。


次に携帯電話を取り出して、救急車を呼ぼうと思った。
しかし背後からの気配を感じ取った黒は電話をかけるのを中断する。


黒「誰だ…?」

ステイル「魔術師だけど?」

黒(魔術師…?禁書目録の言っていた魔術結社なのか?)

ステイル「うーん、これはずいぶん派手にやっちゃって」


黒「…(ギロリ)」

黒の殺気の込められた視線にステイルは思わず背筋が凍る。

ステイル「や、やだなぁ、そんな目で見られても困るんだけどね。それを斬ったのは僕じゃないし、神裂だって、なんも血まみれにする気はなかったんじゃないかな。歩く教会は絶対だと思っていたけど、見た目が全く同じただの普通のシスター服に摩り替わっているなんなんて、気が付かなかったんじゃないかな」

ステイルはいつになく饒舌になっていた。
黒の威圧感に押されて、まるで大人に対して必死に言い訳しているようであった。」

黒「言いたいことはそれだけか」

ステイル「なっ……」

黒「邪魔だ」

ステイルの顔に黒の足がめり込んでいた。
黒が何の変哲もない一般人だと思ったことが彼の敗因である。
ステイルは自慢の腕前を見せる前に、一瞬で気絶させられていた。


黒「まず禁書目録を病院に運ばなければ…」

組織からは怪我をした場合、ある人物に接触するように聞かされていた。
その男なら、この娘が身元不明だとしても助けてくれる。


それに今は情報が漏れにくい場所で治療した方がいい。
あのロン毛は仲間をほのめかす名前をあげていたからだ。


黒は禁書目録を抱きかかえると急いで走りはじめた。


冥土帰し「組織の人間がこちらに潜入しているとは聞いていたが、まさか黒の死神だとはねえ」

黒「天国戦争以来だな」

冥土帰し「私のことを覚えているのかい?」

黒「…その顔を忘れるの方が難しい」

冥土帰し「はは、妹さんは元気かい?」

黒「…白(パイ)は死んだ。」

冥土帰し「そうか、失礼なことを聞いたね。そうか、だからキミがBK201なのか」

黒「俺が連れてきた娘はどうなった」

冥土帰し「気になるなら見に行ってあげればいい。もう面会はできるレベルだよ。」



黒「気がついたようですね。もう大丈夫ですか?」

禁書目録「リー!なんで私病院に居るのかな?確か、悪い魔術師に追われてて…」

黒「怪我していたので私が病院まで連れて来ました。」

禁書目録「もしかして…途中で魔術師に追われてたりしてないかな」

黒「ロン毛の人ですか?」

禁書目録「そうなんだよ!やっぱり追われたの?」

黒「ははは、驚いて禁書目録さんを抱えて逃げちゃいました。こう見えても逃げるのは得意なんですよ」

禁書目録「リーは足速いの?」

黒「隠れるのが得意なのかも?外国人ですから、ほら警察に目を付けられると厄介でしょ」

禁書目録「むー?なにか邪な気持ちがリーにあるからそんな行動をとるんだよ!私はいつも堂々だよ!」


禁書目録は思ったより元気であった。
黒は何かに気がついたのか、窓の近寄って急いでカーテンを閉めた。

黒(意外と早かったな、隠れる場所はないということか)


ステイル「チッ…カーテンをしめられた」

神裂「確実に気がついてますね」

ステイル「おいおい、僕なんか双眼鏡を使ってやっと見える距離だぞ」

神裂「只者ではないことは確かです。ステイルを一発でのしてしまった蹴りは素晴らしいものでした。」

ステイル「そのことは思い出したくない…」

神裂「問題なのは彼が、ただの留学生になっていることです。」

ステイル「あれが留学生だと…情報規制されているのか。…この極東に他に魔術結社はあるのか?」

神裂「学園都市で活動しているなら、理事会のアンテナにかかってそうですが。もしかすると相当厄介な人間かもしれません。」



黒「1年以上前の記憶が無い…?」

禁書目録「そうなんだよ。ある日、昨日まで何を食べてたとか、何をしてたとか忘れちゃって。覚えてるのは10万3千冊の魔道書に、禁書目録とかネセサリウスとか…」


黒(ME技術で消されているのか…?契約者関連の出来事を見てしまったとなればピンポイントで記憶を消されることは有る。だが、禁書目録は1年前のすべてを覚えていない?1年前に何があったんだ…?)


禁書目録「どうしたのリー?」


小難しい顔をしてる黒に禁書目録は上目遣いで問いかけた。
黒は禁書目録の頭に手を当てて撫でていた。


黒「それは…きっと寂しかったですね。ずっと一人で逃げていたんですか?」

禁書目録「……うん」

黒「でも、大丈夫ですよ。貴方には幸福が待っています。」

禁書目録「…そうかな」

黒「たとえ過去を覚えてなくても、幸せというのは逃げては行かないと思います。それに貴方が記憶を失っていなければ私たちは出会っていませんでした。そう考えるとこの世の中の縁って面白いものだと思いません?」

禁書目録「リーって結構、ポジティブ思考って言われるでしょ?」

黒「ははは、いつも何を考えてるのかわからないって言われてますよ。」


黒はコンビニに向かっていた。
病院の食事だけでは足りないであろう禁書目録の差し入れと自分用の夜食を買うためだった。


そんな彼の前に緑色の美しい髪をした女性が黒の前に現れたのだ。
黒はとてつもなく動揺していた。


アンバー「やあ、黒」

黒「アンバー…生きていたのか!」

アンバー「やっと見つけたよ、ここにいたんだね」

黒「5年前…天国門(ヘブンズ・ゲート)で何があった!お前と一緒に居た白(パイ)はどうした!」


アンバー「待って、今日その話をしにきたんじゃないよ。警告に来たんだよ。キミが今助けようとしている禁書目録だっけ?あれに関わるのは止めておいたほうがいいよ」

黒「なん…だと…?」

アンバー「もしアレと助けたいと望むなら…その結果、対価を払うことになるよ」

黒「対価だと…?」

アンバー「そう、だから止めなよ。彼女を助けるの。」

黒「………お前には関係ない」

アンバー「おや?」



黒「お前には関係ないといった。」

アンバー「ずいぶん、『感情的』だね。契約者になったって聞いたけど、前より怒りっぽい気がするよ。」

黒「…黙れ」

アンバー「……じゃあ、アドバイス。流星の欠片…あれだけは肌身離さず常に持っておいてね。」

黒「待て!逃げるのか?!まだ白の話をしていない」


もうアンバーは居なくなっていた。

アンバーに気を取られすぎていた所為だろうか、別の影が近づいているのに気がつくのが遅れた。


黒「ロン毛か…」

ステイル「僕はステイル・マグヌスって名前がある。ロン毛ではない。」

神裂「お初にお目にかかります。私は神裂火織と申します。」

黒「…仲間を連れてきたのか」

神裂「単刀直入に言います。貴方は何者ですか?」

黒「調度良かった、こちらも聞きたいことが山ほどある。」

前回ステイルをすぐにノックアウトさせてしまったのは、禁書目録の様態のほうが最優先であったからだ。
だが実際はステイルから情報を聞き出したいと思っていた。

そして、今は禁書目録の心配をする必要もない。


ステイル「おっと、勘違いするなよ。今質問しているのは僕達の方だ。」

黒「…なんだ。この前みたいにベラベラと喋ってくれると助かるのだがな」

ステイル「……」

神裂「ステイル!…挑発に乗ってはいけません。貴方はなんの目的で禁書目録に接触しました?返答によっては…」

黒「…ただの気まぐれだ」

神裂「答える気はないということですね。」


神裂は使い勝手の悪そうな刀を構えると…


神裂「七閃」


黒と神裂の間に何かの衝撃が走る。
さらに、黒の背後にあった障害物が次々と破壊されていく。

しかし黒は無傷である。ただの威嚇攻撃だからだ。
もし今の攻撃を初見で放たれていたら黒は何をされたのか分からずに八つ裂きにされていただろう。


黒(不可視の攻撃をする契約者とは違った意味で避けづらい攻撃だ。あれはワイヤーか)


黒は七閃を冷静に分析していた。


神裂「七天七刀が織り成す七閃の斬撃速度は一瞬と呼ばれる時間に七度殺すレベルです。必殺と言っても間違いありません。」


黒は敢えてワイヤーであることを指摘しない。
敵が嘘を付いているのならば、こちらも本当のことを伝える必要もない。
その嘘にのって、演じればいい。

その結果で生まれる隙をつくのが黒の戦闘スタイル。

立派な戦士でもド派手な演出のできる魔法使いでも正義の味方でもない。本質的にはアサシンなのだ。


神裂「次は威嚇ではありません。」


ステイル「言っておくが、今回も同じように行くとは思わないほうがいい」

次にステイルが長い呪文を唱え始めると、凄まじい炎の巨人が彼の前に現れる。

ステイル「魔女狩りの王…イノケンティウス…その意味は…必ず殺す!」

黒「…お前は炎の使い手だったのか」

ステイル「驚いたね。神裂の攻撃や、この炎を見ても全く動じていない。」

黒「ちなみに人体発火はできるのか?」

ステイル「は?」



黒の知っている炎の契約者と同等ぐらいの火の使い手ならば、視界に入った瞬間に身体から発火させることができる。
もしステイルがそのような事ができるのであれば、視界入らないような戦い方をしないといけない。

黒「できないのか、ならば炎の能力者としては恐れるレベルではないな」

ステイル「…キミはつくづく僕を怒らせるのがうまいね。イノケンティウス!」


挑発に我慢にならなくなったステイルは、雪辱を晴らすべくイノケンティウスを黒に襲わせた。
神裂としては先に情報を聞き出すつもりであったのだが、ステイルが先走ってしまった。


イノケンティウスの灼熱の十字架が黒に振り下ろされる。


―――――――――――ドガァァァァン!


比較的に余裕のあるように黒は避けた。
先程まで黒の居た地点がイノケンティウスによってクレーターのようにヘコんで周りが燃え盛っていた。

どうやらパワーだけはあるようだが…


黒(この場で戦えば2対1か…)


流石に手に余ると思った黒はひとまず逃げる事にした。


ステイル「逃げるのか!」

神裂「ステイル!…まったく」


黒は走りながらポケットに入れていた黒色のコートを取り出して羽織った。
彼が着ることで、銃弾をものともしないコート…黒の商売道具である。

そんな黒に一番最初に追いついたのはイノケンティウスだった。


十字架の武器が振り下ろされる――――!


十字架の衝撃で地面がえぐり取られるが、そこには黒はいない
黒は攻撃をされる前にワイヤーをビルに投げて、ビルの壁を走るように移動していた。


黒(あの炎の巨人は使用者が近くでなくても勝手に動くのか。自動追尾なのはやっかいだな。先にあのロン毛を戦闘不能にするべきか…?)


次に追いついたのは神裂であった。
ステイルよりも神裂のほうが圧倒的な身体能力を持っている所為である。


神裂「七閃!」


黒を支えていたワイヤーが切断された。支えを失った黒は落下するしかない。
そして着地の瞬間を狙って――――


神裂「七閃!」



黒「チィッ」

着地する前に黒は別のビルに向けてワイヤーを投げて七閃を回避した。
七閃の衝撃で先程まで黒が着地するはずであろう地点に有った水道管やアスファルトが吹き飛ばされていた。


黒は着地すると同時にナイフを神裂に放つ。
鞘に収められたままの七天七刀によって黒のナイフを弾かれてしまう。


そして神裂はもう一度、七閃を放とうとする。


神裂「ななせ…」


しかし、神裂は七閃をギリギリの所で中断する。
放つ前に黒が七閃の射線上から外れていたからだ。


神裂「…もしかして、わかるのですか」

黒「…なんの事だ」

神裂「私の攻撃するタイミングがわかるのですか?」

黒「…さあな」

神裂(この男…底が見えない…)


神裂には2つの気持ちによって葛藤していた。

いまだ不気味なほど余裕を見せるこの男に対する恐怖心と
特別な力も関係なしに、この男とやりあってみたいという剣士として闘争心が葛藤している。




だが、黒と神裂は一対一の戦いをしているわけではない。



水道管の破壊で、水浸しになりつつ有る地面を蹴りながらステイルがやってきた。

ステイル「ハァ…ハァ…神裂…追いついた…」

神裂「ステイル。遅いですよ」

ステイル「だが、僕とイノケンティウスと神裂。3方向から囲むことができた。」



神裂は先ほどの考えは捨てたようだ。迷いのない構えをしている。
イノケンティウスが十字架を振り上げ、いつでも黒を狙っている。
そして、ステイルもまだ見せていない技を使おうとしている。


ジリジリと3つの刺客が黒に近寄っていく。



神裂「再び問います。貴方は何者です」

それは最後通告。



しかし、黒は答えを返す気はない。


青白い燐光…
契約者が能力を使うときに起きる現象「ランセルノプト放射光」が黒から放たれる。



――――――――――――――――――バリバリバリ!




その場一体に電撃が走った。


正確には水道管が破壊されたことで地面が水浸しになっていたのだ。
その水を伝わって神裂とステイルに電流が流れ込む…!

ステイル「ウア゙ァア゙ァァァ!」

神裂「ああぁあぁ…!」


二人は知らない。

黒が契約者だということを…

電気を流せることを…


黒の死神と呼ばれていることを知らない。


無防備な状態で電気を流された二人は、全身をガクガクを震えさせた後、水浸しの地面に倒れた。
そして、イノケンティウスはステイルが戦闘不能になったことで消失してしまった。



神裂「う…」

黒「驚いたな…気絶させる程度とは言えそれなりの電撃を流したのにもう意識があるのか。」

神裂「貴方は一体…何者…。私達に…とどめを刺す気ですか」

黒「聞きたいことが有る…と言っただろう。禁書目録は1年以上前の記憶が無いと言っていた。お前たちが消したのか」

神裂「知ってい…いるんですか?」

黒「その様子だと、やはりお前たちか。…そんな気はしていた」

神裂「…では後三日以内に彼女は…死んでしまう事もですか?」

黒「何…?」



神裂「知らないようですね…」

黒「何故それをもっと早く言わない!どういうことだ!」

神裂「彼女は完全記憶能力者です。彼女の脳の85%は10万3千冊で締めています。そのため、常人の15%しか使えません。」

黒「…」

神裂「その15%を記憶を続ければ…彼女の脳は…」

黒「15%…どのくらい期間記憶できる?」

神裂「1年周期にすべての記憶を消しています。」

黒「…結局のところ、お前たちは何者なんだ」

神裂「それは…私達が、かつて彼女のパートナーでした…。同じネセサリウスの所属のものです」

黒「同じ組織…1年周期で記憶を消しているから彼女はお前たちのことを覚えていないのか?」

神裂「そうなります」

黒「…」



黒は考える。

自分が彼女たちだったらどういう選択をとるか。
かつての仲間が記憶を消されて現れたらどうするか。


黒は間違いなく他人のフリをする。

だから彼女たちが禁書目録にとって赤の他人で、追いかければ敵だと認識されてしまうのは理解できる。



そして、記憶を消すというのも決して珍しいことではない。

契約者を知ってしまった一般人の記憶を消したり、ドールに擬似的に偽の記憶を植え付けたりする。



そういうことを平気でする組織に所属している黒には、彼女たちの気持ちはわからないでもなかった。


そんな黒でも彼女たちの言っていることに理解できない点はあった。

黒「しかし、よくわからないな。例え15%しか覚えられないとしても、1年毎になぜ『全部消す』必要がある?」

神裂「…!?あなたは、一部だけ消す方法を知っているんですか…!?」

黒(ME技術をまさか知らないのか?たしかにあの技術は比較的新しいが、それを知らないとは…)

黒「その様子だと『全部消す』方法しか知らないようだが…。どんな方法だ?」

神裂「…魔術で消していました。まさか、他に方法があるんですか!?」

黒「まだ気になる点がある。完全記憶能力者のような人間は彼女だけではないはずだ。彼女と同じ症状が起きたことがあるか調べたか?」

神裂「…えっ?」


黒「まさか、そんなことも調べていないのか」

神裂「10万3000冊の魔導書を記録している完全記憶能力者は彼女だけです。同じような事例があるとは思えません。」

黒「原因の切り分けができていないようだな。単純計算だが1年に15%というデータを出したのはお前たちだ。ならば7年で100%を超える計算になるのに、他の完全記憶能力者は同じ事例がなぜ発生してないと思った?」

神裂「!?」

黒「15%を1年周期にリセットのデータは誰からもらった。」

神裂「教会から…」


黒は呆れ果てた。

上から送りつけられて来る情報などフィルターがかかってるのは常識的なことだ。

黒は特に妹に関しては組織から流れてくる情報はほとんど信じていない。
命令を背いてまでハヴォックをゲートに近づけて情報を入手しようとした。


彼女たちにとっての禁書目録は所詮は『かつての仲間』程度なのではないだろうか?
例えこの世のすべてを敵にしてでも守ろうとする姿勢すら感じない。


そう思うと、黒は彼女たちに怒りを感じていた。


黒「技術は常に進歩する…医療もそうだ。お前たちは自分の手で調べていたのか?彼女を救う方法を!」

神裂「………」

黒「いい歳した大人が、そのツケをあのような少女に背負わせてるとは…」

神裂(いい歳!?…またすごい年上に見られるんでしょうか…)

黒「後3日か…お前はどうする。」

神裂「えっ?」

黒「助けたくないのか?まだ3日もある。諦めるのは早いんじゃないか?」

神裂「…………私は…彼女を助けたい…助けたい!」



あの後、神裂とステイルが20歳も満たない歳であるのを聞かされたのはさすがの黒も驚いた。
そのことを言うと、二人は揃って落ち込んでいた。

あの若さだから、禁書目録の件で頭が回らなかったのかもしれない。


ステイル「教会に今回の件を言ったらあいつら黙りを決め込みやがった。」

神裂「時間稼ぎ…ですか」

黒「後2日たてば、いつも通り…だと思っているのだろう。」

冥土帰し「キミに言われたとおり、ME技術は使えるように準備はしておいたよ。」

黒「それは保険だ。本当の原因が見つからなければ使う。そして、それでもダメならいつも通りの手段になる。」

神裂「あと2日で見つかるんでしょうか…」

黒「原因が科学的ではない事がわかっているなら、魔術的要素はお前たちの得意分野だ。意地でも探してもらう。」

ステイル「キミに言われるまでもない」

冥土帰し「意外と別方向から探すことで見つかるかもしれないよ。こちらも念のため科学的な要素で調べてみるよ。」

神裂「本当に…ありがとうございます。」

黒「礼を言うのはまだ早い。全てが終わってからだ。」


黒「あの医者が言ってた。口の中に怪しい痣があると」

神裂「それで、私が見るんですか?」

ステイル「おいおい、女性の口内を男に見せていいのか?」

神裂「それもそうですね…」


神裂は禁書目録の口の中を見る。
たしかに妙な痣があった。

彼女は恐る恐る触ると…


    バチンッ


禁書目録「魔術による攻撃を確認 特定魔術 セントジョージ聖域を発動。侵入者を破壊します。」


パンドラの箱が開いてしまった。


アンバー「流星の欠片…あれだけは肌身離さず常に持っておいてね。」

ふと、アンバーの言葉が頭によぎった。


いや予感だった。


あの女は未来を見てきたのかもしれない。
ならば、意味のない助言を残していくとは思えない。


黒は禁書目録によって吹き飛ばされた神裂の前に飛び出して、流星の欠片を右手に握って前に差し出していた。


禁書目録から凄まじい勢いで光線が放たれる…!!


――――――バシュウウ…


しかし光線は誰も傷つけることはなかった。

黒の持って流星の欠片の前で光線は別の何かになって散り散りと消えていく


黒「ぐうう!」

神裂「なんであの子が魔術を…」

ステイル「…あのレンズ…あいつの能力に反応して、別のモノに変換しているのか?!」


神裂は禁書目録を魔術を行使していることに驚いていたが
ステイルは黒が得体のしれない手段で、魔法をブロックしていることに驚いた。


ステイル「そうか、やっとわかったよ…歩く教会がただのシスター服になっていたのが」

黒「何をやっている!?お前たちはやるべき事をしろ!魔法はお前たちの得意分野だろ!」


黒は先程からランセルノプト放射光をずっと放っている。
流星の欠片を使っているとはいえ、光線のせいで彼は一歩も前に進めなかった。


神裂「…!!Salvare000!」


神裂は禁書目録の足場であったベッドをひっくり返した。
そのせいで光線は天井を突き抜けて、上空に放たれることになる。


神裂「最上階の診察室で良かった…」


黒はそのチャンスを逃さない

次の攻撃が来る前に、片を付けるためにすでに走り出していた。

流星の欠片を黒は禁書目録の首元に押し付ける…!



すると流星の欠片かまばゆい光が放たれた。



光の中で、ステイルと神裂はかつてパートナーだった時の禁書目録に会った

彼女は「ふたりとも、ありがとう」っと言って笑顔で消え行った。





一方、黒は妹に会えた気がした。

白「もう私に付き合う必要はないよ…お兄ちゃん、もうムリしないでいいよ」



    「だから…自分のために生きて」


流星の欠片の光が収まる。


禁書目録「警告…最終章… 首輪…致命的な変換…修正不可」


禁書目録がそのまま倒れそうになったので、頭をぶつけないように黒は抱え込んだ。



もう世界を破壊しかねない魔女はいない。



そこにいるのは、安らかに眠る聖女と優しい顔をしている死神だけだ。



天使の羽が降り注ぐ光景は


      まるで二人を祝福しているようであった。



――――死神が聖女を救ったのだ。


あれから数日。

禁書目録は病院にいる一人の留学生を訪ねていた。


禁書目録「リー!」

黒「あの、どちら様でしょうか?」


黒はドラゴンブレスによって発生した光の羽を禁書目録からかばった時に、頭部に受けた。

その結果、死神の魂は死んだのだ。



禁書目録 「――――――――!」

黒「あの、すごく辛そうです。大丈夫ですか?」

禁書目録「大丈夫だよ…大丈夫に決まってるんだよ。」


禁書目録「リー。覚えてない?ベランダであったんだよ。最初は上の階の人と私を間違えたんだよ。」

黒「…ベランダで出会うなんて私達、面白い出会いをしたんですね。」



禁書目録「リー。覚えてない?私が地獄の底までついてくるって聞いたら、構わないって言ってくれたんだよ。」

黒「…はは、私はそんなこと言ってたんですね。なんか恥ずかしいですね」



禁書目録「リー。覚えてない?リーは私のために………ために……」


この現実を受け入れるのには あまりにも彼女には辛すぎた。



禁書目録はもう我慢できずに、病室から逃げ出そうとしていた。
黒はまだ絶対安静と言われていたにもかかわらず、ベッドから立ち上がり禁書目録を抱きしめていた。


黒「ごめんなさい。私が貴方のことを思い出せなくて泣いているんですよね。」

禁書目録「…そうだけど、違うんだよ。リー。ごめんなさい…私のせいでごめんなさい」

黒「私のことは大丈夫ですよ。たとえ過去を覚えてなくても幸せというのは逃げては行かないと思います。先程まで凄く孤独でした。でも私のために泣いてくれる人が来てくれている。私はそれだけで凄く嬉しいのです。」


禁書目録はハッとした。

――――記憶を失っても、彼の本質は変わっていないんだ。


黒の腕の中で泣くのは止めなかったが、逃げるのを止めていた。



ステイル「キミの能力で禁書目録は救われた。とりあえずな。」

神裂「別の問題が発生しました。」

黒「ええっと…首輪ってのが禁書目録さんに取り憑いてたって話でしたっけ?」


神裂は黒を哀れみの目で見ている。
ステイルは毒気が抜けた黒を見て苛立った。


ステイル「チッ…本当に覚えていないんだな!?」



神裂「ステイル!…じつは彼女の首輪の術式が書かれてあった所に別の術式が浮かび上がっているのです。」

黒「どういう…ことです?」

ステイル「キミは首輪を別の術式に変換したってことだよ。」


ステイルは黒に掴みかかったが、神裂が抑えた。


神裂「それでお願いがあるのです。禁書目録をしばらく預かって欲しいのです。出来ればあのレンズを常に所持させた状態で」

ステイル「あの首輪だった謎の術式。なんの間違いで発動するかわからない。またレンズを使うしかないだろ。」

神裂「そして、あのレンズは私達では使えない…つまり貴方しか使えない。」

黒「…記憶喪失の私に出来るんでしょうか?」

ステイル「やってくれなきゃ困る。少なくともキミにはその責任がある。」



そしてさり際にステイルはさり際に黒を睨みつけると、こう言った。


ステイル「しかるべき準備をしたら術式を解いて、禁書目録を連れ戻す。その間彼女に何かあったら僕はキミを許すことができない。」


病室を遠くから眺めている契約者が居た。

アンバー。

かつて黒や黒の妹の白と同じ仲間だった契約者。

彼女は慈愛に満ちた目で黒を眺めていた。


アンバー「対価を払ってしまったんだね。でも、黒にとっては忘却こそが救いかもしれないね…」





そしてBK201を追って日本にやってきていたイギリス情報局秘密情報部(SIS)

通称 MIS6

BK201が能力を使ったことで、学園都市に潜伏している情報を突き止めていた。


エイプリル「学園都市って例のマッドサイエンティストたちが作った所?あそこも随分な秘密主義よね。」

ジュライ「…」

ノーベンバー11「やれやれ、契約者ではなく能力者だったら厄介な対価を払わなくて良かったんだけどね」

エイプリル「あら?タバコを吸ってる姿、最近様になってきたわよ」

ノーベンバー11「ジョークでも辛いよ、それ」




―――――――死神の魂が死んだとしても。死神の影を追うものは消えない。


マオ「せっかくついたのに黒のやつ何処に行ったんだよ…」


  <⌒/ヽ-、___ 書き溜め終わり。
/<_/____/  勢いで書いたけど 続きどうするんだよこれ・・・


   ∧∧

  (  ・ω・) 三沢塾編
  _| ⊃/(___
/ └-(____/

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



禁書目録「記憶喪失の先輩として、アドバイスが有るんだよ」


6,7人前の料理をたいらげた小柄なシスターは自信満々に講座を始める。


禁書目録「まず、悪そうな人についていっちゃだめなんだよ!リーって悪い人に騙されやすそうなんだよ」


彼女の講座を聞いている男もまた、10人前ぐらいの料理をたいらげていた。


黒「そんなに、前の私って騙されやすい人でした?」

禁書目録「特に物につられちゃダメなんだよ」

黒「じゃあ禁書目録さん。美味しいもの食べに行きましょうとか言われたらどうします?」

禁書目録「え?…と、時と場合によるかな?」

黒「ははは、ダメじゃないですか」



バイトA「あのお客さん、ふたりともすごい食べるね」

バイトB「兄弟なのかなって思ったけど、銀髪の可愛い子はどう見ても外国人だよね。」

バイトA「フードファイターの熱き友情の繋がり!」

バイトB「まじで!?」


黒と禁書目録はファミレスの名物になりそうだ。


禁書目録につれられて、黒は自分が滞在している寮に着いていた。

自分の部屋の扉を開けると、そこには最低限のものしか置いていない部屋だった。


机もない

タンスもない。

…有るのは、望遠鏡だけ。


禁書目録「望遠鏡だね。リーは星を見るのが好きだったのかな?」

黒「星…?」


黒はベランダに出ると、まだ真昼で星が見えない空を見上げた。





黒「ところで、禁書目録さん」

禁書目録「なんでしょう」

黒「お腹、膨らんでますね。」

禁書目録「育ち盛りですから」

黒「…」


にゃお~ん

禁書目録の服の中から猫鳴き声が響くと、シスター服から三毛猫が顔を出した。



禁書目録「!」

黒「猫ですね」

禁書目録「えっとね、リー、これはね…」

黒「…飼いたいんですか?」

禁書目録「…ダメかな。」

黒「猫を買うなら、今ある部屋にある道具じゃ全然足りないですね。」

禁書目録「……」


黒「…買いに行きましょうか。」

禁書目録「…え?」

黒「…猫を飼うための道具ですよ。」

禁書目録「…いいの!?」

黒「それだけじゃないですよ、禁書目録さんの私物も必要でしょう。」

禁書目録「良かったね、スフィンクス!」

黒「スフィンクス?もしかして、猫の名前ですか?」

禁書目録「そうなんだよ。スフィンクス!」

黒「…変わった名前ですね。」

禁書目録「そうと決まれば、さっそく行くんだよ!」



買い物を終えた禁書目録は疲れたのかぐっすり寝ていた。
黒はそんな姿の禁書目録を優しく撫でた。



退院する前、医者は少し黒の過去について話してくれた。

妹がいた事

契約者の事

…そして、組織に所属している黒の死神であると。


黒(俺はこの子と一緒に居て大丈夫なのだろうか?)



「やれやれ、やっと喋れる」


ベランダの方から声がした。
黒はとっさにそこに目を向けるが、そこには人間は居ない。


そこには三毛猫のスフィンクスが居るだけである。


「暑苦しいぜ、まったく。あのシスターまったく逃がしてくれないんだから。」


喋っている。
たしかにスフィンクスは喋っている。




スフィンクス「おい、どうした 黒」

黒「…」

スフィンクス「…いや、なんか言えよ」

黒「学園都市って猫が喋るんですね。」

スフィンクス「なわけあるか!俺だよ!オレオレ!…黒猫じゃないから気が付かないとか?」

黒「やっぱり、猫の業界でもオレオレ詐欺って流行ってるんですか?」

スフィンクス「なんでこんなに話が噛み合ってないんだ…?」


スフィンクスは自分を「マオ」と名乗っていた。
黒はひと通り、自分の置かれている状況…記憶喪失をマオに説明した。

マオ「記憶喪失だと?」

黒「まさか、私に猫の知り合いが居るとは思いませんでした。」

マオ「…そういえば、流星の欠片はどうした」

黒「流星の欠片…?」

黒は流星の欠片を何かのレンズだと思っている。
そして、それは今禁書目録に肌身離さず持たせてある。

あのレンズが当初の目的で手に入れた流星の欠片であるとは覚えていない。


マオ(おぉい…どうするんだよ、これ…やばい、やばいぞ)




マオはホァンと連絡を取り合い、これからどうするかを話し合った。


まず黒の記憶喪失は組織には伏せる。

次に流星の欠片はマオでは運べなかった事にして、別の運送手段が見つかる前に見つけること。

出来なければ、みんな物理的に首が飛ぶとマオは困り果てていた。


学園都市内で仕事が回ってきた場合、現状の黒でも出来そうなものは引き受けるが
出来無い事はできるだけホァンの方で言い訳をするとなった。



マオ「それでだ、早速お前にやって欲しい依頼がある。記憶喪失のお前でも出来るだろう。」

黒「何をすればいいんでしょうか?」

マオ「三沢塾という進学塾があるんだが、そこで拉致られてる人間が居るらしい」

黒「進学塾ですか?」

マオ「お前はそこに潜入して拉致られている人間を調べろ。可能なら救出。これがターゲットの写真だ」


マオは巫女服の少女が写ったの写真を黒に渡した。


黒「潜入ですか…?」

マオ「まさか、どうやって潜入すればいいとか聞くなよ?いつもお前が考えてるんだからな。」

黒「そうなんですか?」

マオ「あと、くれぐれも何かアクションを起こすなら俺に許可をとれ。」


黒は三沢塾に潜入するために選んだ方法は清掃員であった。

主な仕事は、清掃ロボットの正常稼働の確認。
そしてトイレは人の手で掃除しないといけない。

もちろんそれは表の仕事で、裏の仕事の内容は別だ
まず、建物のすべてを頭に入れることと中にいる人物の顔を覚えることだ。


お昼休みの時間、黒はトイレ掃除をしていた。
沢山の階があるため、一階一階は手短にやらないと日が暮れそうである。


そんな仕事中に、カバンを持った状態で女の子がトイレに入っていくのを見かけた。

黒(カバンを持ったまま?)

今から塾に来たばかりなのかもしれないし、盗難対策で持っているのかもしれない。
決して不思議な光景ではない。

最初はそう思っていた。
だが、昼休みに必ず彼女はカバンを持っている状態でトイレに入っていくのだ。


黒「すいません」

女の子「…ハイィ!?」

男「もしかしてですが、大変失礼なこと聞いていいですか?」

女の子「なんでしょう…?」

男「お昼…もしかしてこちらでとってます?」

女の子「――――――――!!!」



黒はあのままトイレの前で話すのは不味いと思い
用務員の休憩室で話を聞くことにした。


女の子「私、夏からこの塾にきたんですけど。なんていうか居心地が悪くって」

黒「居心地が悪い…?」

女の子「塾に入って最初に隣の子に話しかけたら、変な言葉を並べられて、ビックリして逃げちゃったんです。」

黒「変な言葉?」

女の子「なんか、私達は選ばれし人間…とか、一緒に神の世界を見ましょう…とか」

黒「はあ…」

女の子「…つまり、友達つくり失敗ちゃったんです。…私ダメダメですね」

黒「それは貴方のせいではないと思いますよ」

女の子「でもその所為なのか、同じクラスの人が冷めた目をして私を見てる気がするんです。それがなんか怖くって…授業中だと、みんな先生の方しか見てないので問題ないんですけど、休み時間になるとそうはいきません。それでお手洗に…」

黒「でも、お手洗はちょっと…。ここで食べたらどうです?」

女の子「いいんですか?」

黒「お手洗で食べたらせっかくのご飯の味も落ちちゃうでしょ。」

女の子「あ、ありがとうございます」

黒「周りには内緒ですよ。怒られちゃいますから」


彼女は昼休みの度に休憩室に顔を出すようになった。
その時間は黒もできるだけ休憩室に居るようにして、一緒に昼を食べるようにした。


次第に打ち解けあっていたある日、黒は1枚の写真を女の子に見せた。


黒「そういえば。この写真の子を見たことないですか?」

女の子「見たことないですね。…誰なんです?」

黒「実は私は探偵なんですよ」

女の子「え?ええっ」

黒「シッ!親御さんがこちらに通わせてる娘の心配をしてまして」

女の子「そうなんですか。でも、探偵さんですか。なんかワクワクしますね!やっぱ殺人事件に巻き込まれて、犯人見つけて!貴方が犯人です!ビシッとか!」

黒「そうでもないですよ。ほら、実際はこんな人探しとか、浮気調査とかするだけで、その過程でこんなトイレの清掃員なわけですよ。」

女の子「あはは」

黒(知らないか…やはり隠し部屋か…。構造的に明らかに使われていないエリアがあるのは間違いない。)



その日は珍しく昼になっても彼女は来なかった。
彼女の代わりに黒のもとに三毛猫のマオが姿を表した。


マオ「黒、不味いことになった。アウレオルス=イザードという錬金術師がここを乗っ取っちまった。」

黒「乗っ取り…?なんの話ですか?そんな騒動は起きてないようですけど。」

マオ「どうも錬金術ってので、塾の講師を魔術で洗脳してしまったんだろうよ。」

黒「そんなことが出来る相手なんですか?」


黒は幸いかわからないがアウレオルスとは接触することはなかった。
もし接触していれば、彼の錬金術の餌食になっていたかもしれない。


マオ「今回の件でイギリス清教が潜入を始めた。面倒なことになる前に俺たちは撤退するぞ。」

黒「…」


嫌な予感がした。
黒は彼女が授業を受けていると思われる部屋に向かった。

部屋を覗きこむと…授業を受けているはずの生徒が誰もいない。


黒「誰…居ないだと?」

マオ「ん…妙だな…待ってろ」


彼は猫の脳では補いきれない部分を外部にデータベースを所持することで補っている。
もし、それが出来なくなると彼は普通の猫になってしまうらしい。


マオ「今組織のデータベースで調べてみたんだが、魔術師が好んで使う結界が使われてるな。契約者の力にも反応すれば、そっちの世界に入門できるだろう」


マオからランセルノプト放射光が放たれる。
力を使うフリをしたのだ。彼の能力の対象物は居ないのでもちろん不発に終わる。


それに反応をしたのか、裏の世界へ黒たちを引き込んだ。




そこで彼らを待っていたのは地獄の光景




沢山の塾の生徒が血を流していた。

マオ「これは、能力者が魔法を使った事で起きる拒絶反応だな。生徒を洗脳して無理やり使わせたのだろう。」


そんな中に黒はいつもの女の子を見つける。

…目が開いたまま倒れている。
他の生徒より明らかに血が多く流れている。


マオ「動脈が切れてる。出血多量のショック死だな」

黒「…」

黒は死んでいる彼女をまぶたを閉じさせた。

マオ「とりあえずここを出よう。こりゃ俺達も巻き込まれかねん」


一人と一匹は建物の外に居た。



マオ「とりあえず、俺達の仕事は終了だ。」

黒は建物を見上げる。
まだあの中にアウレオルス=イザードというやつが居るのならば…


マオ「まさか、行きたいとか言うんじゃないだろうな。」

黒「…あんな事をする奴が許せそうにない。」

マオ「やめとけ、俺達は錬金術師の件までは依頼されてないぜ。」

黒「…止めても無駄だ、やはり行かせてもらう。」

マオ「…ふっ…ハッハッ…ハッハッハッハ!」

黒「…?何がおかしい?」

マオ「いや、ソッチのほうがお前らしいよ。まったく!」


命令を背こうとする黒をマオはむしろ喜んでいるようであった。


マオ「…行けよ、仮面とコートを着けていけ。俺は何も見ていない。」

コートを羽織って、仮面をつけた黒は走り出していた。

マオ「記憶がないって本当か?今のあいつはどう見ても黒の死神だぜ」



身体が覚えている。使い方がわかる。


この黒いコートも

このワイヤーも


全て身体が覚えている。



過去の俺は死神と呼ばれていたらしい。



…ならば死神の役目を果たしてやる。




ステイル「一体いつの話をしているのかな…」

アウレオルス「何?!」

ステイル「禁書目録はとっくに救われているんだよ。キミにはできなかった事を他の奴はできてしまったんだよ。ローマ正教を裏切り、3年間も地下に潜ってたキミには知る由もなかったろうがね」

アウレオルス「そんなバカな…ありえん…ならば…」

ステイル「キミの努力は全くの無駄骨ということだ。だが安心したまえ、禁書目録はキミが望んだ通り、今のパートナーと幸せに暮らしている」

アウレオルス「…!」

ステイル「つまり、僕はキミに嫉妬で身をこがれる理由など全くないわけだ。残念だったね」

アウレオルス「……倒れ伏せ、侵入者!」


ステイルの体が地面に押し付けられた。


アウレオルス「よかろう、この屈辱。お前の死で贖ってもらう!」


巫女の少女「待って!…わかる私、あなたの気持ち。しってる、私、本当の、貴方は」


アウレオルス(ディープブラッドなどもはや不要…!)

アウレオルス「死ね!」



巫女の服装をした女性が倒れた。






―――――――――それと同時に窓ガラスが割れた。








黒は建物の外からから中の様子をうかがっていた。
ステイル、アウレオルス、巫女服の少女の3名の会話を聞きながらチャンスを伺っていた。

だが予想外にアウレオルスは錬金術で巫女服の少女を殺してしまったため、黒は突入を決意した。


突入の勢いで黒はアウレオルスの顔面に蹴りを入れた。
不意打ちを受けたアウレオルスは壮大に吹っ飛ぶ事になる。


黒はアウレオルスを見る。
蹴りと吹っ飛んだ時の衝撃で、奴は暫く動けそうにない。


次にステイルを見る。
こちらが何者かわからないようで、驚いているようであった。

そして最後に錬金術を受けた巫女服の女性を見ると、倒れた状態で全く動かない。




近寄って彼女の脈拍を確認すると…反応がない。そして心音もない。

黒(一か八かだ…出来るか?)


黒は巫女服の女性の胸に手を当てて
……能力を放った。



―――――バァン!

巫女服の女の子は身体をビクンとはねさせる。心臓に電気ショック与えたのだ。
その様子を地面に貼り付けられているステイルは見ていた。


ステイル「その能力…キミは…」


ステイルは仮面の男の正体には覚えが有った。
間違いなく、腹の立つアイツであると。


ふっ飛ばされたアウレオルスは少しの間、気絶していた。
そのお陰で、黒は巫女服の女性の蘇生させている時間できた。

アウレオルス「…何が起きた」

アウレオルスはやっと自分が『蹴り飛ばされた』事実に気がつく。
そして先程まで居なかった仮面の男が居る。奴がその原因だろう。


アウレオルス(何者だ!?とりあえず、動きを封じなければ)

アウレオルス「ひ」


『ひれ伏せ』と言うつもりだった。しかし、アウレオルスの目の前にはもう黒が居た。


――――ガンッ



黒はアウレオルスの顔に殴り抜いた。

アウレオルス「ぐおっ…」


黒は無言に殴る。
アウレオルスを喋らせる余裕を与えない為、容赦なく顔を殴る。



殴る。




殴る。



―――――殴る。


アウレオルスの顔は歪んでいく。
仮面の男を殺す方法を思考しようとも、彼の拳がアウレオルスの思考をそぎ取る。


アウレオルス(このまま殴られ続ければ、何も出来ずに負ける…!)


黒から逃げるように距離をとって廊下に出た。


アウレオルス(距離を取れば…鍼で精神を落ち着かせて…黄金練成(アルス=マグナ) を使えば)


鍼を取り出して首に…




――――――――――――ガキィン

鍼は首に刺さる前に、黒の投げたナイフによって弾き飛ばされた。




黒「お前には一時の希望も与えない。」





…勝てない

眼の前に居る仮面のつけた男は勝てない。

このままでは私はこの仮面の死神に命を刈り取られる。




アウレオルスは負の思考に陥っていた。

精神安定剤の鍼も黒に妨害されてしまった。

彼の残された手段は…逃げて体制を立て直すことだ。



アウレオルス「来るなぁぁあ」

黒「待て!」



アウレオルスを追って黒が走りだす。
身体能力は黒のほうが上だ追いつくのは難しくはない。


しかし、追いつた時は黒の想像とは全く違う光景が待っていた。



アウレオルスが氷漬けになっている。
そして横には金髪の男がタバコを吸っていた。


その男は黒を見ると笑みを浮べている。


金髪「トゥーゼロワン…ビーケー。まさか、ここで会うとは」



金髪の男は氷漬けのアウレオルスの腕をへし折った。


金髪「まずは再開の握手といこうか。」


凍った腕を黒がいる位置の天井に投げた。
その凍った腕は砕けて氷の刺の雨になる。


黒「チッ!」

黒はそれをバク転して回避する。



そのバク転に合わせて、金髪が走りだして黒に接近する。
そのスピードは黒にも匹敵するスピードと言っても過言ではない。


金髪は氷の槍のようなものを所持して黒に振りかぶってきた。
黒はそれをナイフで受ける。


黒(接触していれば、電気が流せるはずだ!)


――――バリバリバリ!



しかし、金髪の男に電気が流れた様子はない
よく見ると、彼は何かのグローブをしている



金髪「学園都市製だ。よくできている。全く電気を通さない。」


黒(この男…俺の能力対策をしている!?)


こちらの能力を知っていると言うことは、過去に戦った経験がある相手ということだ。

そんな相手に無策のまま接近戦はまずい。
本能的にそう感じ取った黒は、ナイフを投げながらバックステップをした。


金髪はそれを弾くと4つほど、氷の槍を投げた。

黒はそのうちの2つを回避して、一つはナイフでたたき落とした。
残り1つは、一個は天井に突き刺さっていた。


黒「何?!」


それは、スプリンクラーを壊すために投げた槍である。
破壊されたスプリンクラーが廊下一体が水浸しにする。


金髪「これで私のフィールドになった。」


金髪の男からランセルノプト放射光が放たれ、黒に氷が迫ってくる…!




ステイル「イノケンティウス!」



金髪の男の能力である氷が、突如現れた炎の巨人イノケンティウスの熱で阻まれる。


ステイルは錬金術の縛りから解き放たれていた。
そして黒を追ってやってきたら、黒はアウレオルスとは全く別の存在と戦っていた。


ステイル「奴は何者だ!?」

黒「わからん、とりあえず逃げるぞ。」

ステイル「…そうだな、こっちも目的は果たしたからな」



ステイルは凍り漬けにされて、片腕を折られたアウレオルスを見た。
アレでは助からないだろう…


ステイルは黒に同意して撤退することにした。




事後処理の為にアンチスキルが三沢塾を取り囲んでいた。
そんなアンチスキルの中に明らかに、私服の部外者と思われる存在がいた。

私服の部外者はジャッジメントではない。
金髪の男…MI6最高のエージェント、ノーベンバー11である。



エイプリル「おや、つまらない仕事だと言っていたけど、満足な顔してるじゃない。」

ノーベンバー11「201BKに会ったよ。あと、あれはイギリス清教のコマかな。あの二人が共闘していた。」

エイプリル「イギリス清教?あの連中までこっちに出張してるわけ?…まさか組織と関係してるってことかい」

ノーベンバー11「さあね、201BKはたまに組織の意図とは違う行動を取るからね。」


あの事件から数日後、
ステイルはイギリスに帰る前に禁書目録の元を訪れていた。


ステイル「今日はキミにお願いがあってきた。アウレオルスという名前の男を知ってるか?」

禁書目録「知らないんだよ。」

ステイル「そうだろうね。僕の友人で先日なくなったんだ。キミが祈りを捧げてあげてくれないか」

禁書目録「私が?」

ステイル「僕よりはキミのほうが様になっているだろ。アイツも喜ぶ」



ステイルは禁書目録を助けるために、必死にあがいて報われずに死んだアウレオルスが哀れに思えた。
ステイルも一歩間違えればアウレオルスのようになっていたかもしれない。


ステイル(禁書目録の祈りが僕からの手向けだ。安らかに眠るがいい。)




  <⌒/ヽ-、___ 三沢塾編おわり
/<_/____/  



アウレオルスの扱いには非常に困った
アニメだけじゃワカンネーからググっちゃったよ。

結局、設定より状況優先で話し進めてる部分あるので設定崩壊しまくり\(^o^)/



事件後のエピソード端折り過ぎた気がする、あとで付け足すかもしれない。




誤字すまねえ
みんなは修正レスとかするもんなんだろうか。


アニメだとステイルと上条が塾に侵入した時、
侵入者の迎撃翌用に生徒に魔法を使わせて血だらけにしてる。

裏で動いてたステイル迎撃翌用に使われて血ダバァーしちゃった感じで。


ググったらなんかアウレオルスさん死者蘇生もできるらしいけど
アウレオルスさんが生徒を蘇生する前に死んじゃったから、女の子は死んだってことで…

たらしの黒さんもみたいし日常とかも書いてもらえると嬉しいな

原作李は留学生設定だが、学校の場面は…



   ∧∧

  (  ・ω・)投下
  _| ⊃/(___
/ └-(____/

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


三沢塾の事件が起きてから、禁書目録は黒から曇りを感じるようになっていた。
もちろん禁書目録は彼が組織の依頼を受けていた事など知らない。


禁書目録「リー、なんか元気ないんだよ」

黒「そうですか?」

禁書目録「ダメなんだよ!病は気からって言うし!こういう時はたくさん食べるに限るよ!」


禁書目録はとりあえず黒を外に引っ張りだす。
それにつられて、三毛猫のスフィンクス…マオもついてくる。


学園都市のニュースを流すパネルには、三沢塾の大量変死事件のニュースが流れていた。
死傷者の名前のリストには黒と仲が良かった少女の名前が乗っている。



  ◇  ◇  ◇  


黒が電気ショックで蘇生した巫女服の少女…姫神秋沙
一度は死んだ状態にまでなった身体のため、病院で安静のために検査入院をしていた。

そこに意外な訪問者が現れた。


姫神「…誰?」

ステイル「…あの錬金術師の知り合い。と言うべきか、悩むところだが」

姫神「…あの時の人」

ステイル「元気そうじゃないか。安心したよ」

姫神「…助かったの。貴方のおかげ?」

ステイル「いや、残念だが僕ではない。死者を蘇生する方法なんて僕は知らないからね」

姫神「…そう」




ステイル「今日訪れたのは様子を見に来ただけじゃない。キミにこれを渡しに来た」

ステイルはケルト十字架を姫神の前に差し出す。
禁書目録にお願いして用意した、歩く教会の一部の効力を持つもの。

ステイル「細い話は省くが、これはキミの厄介な力を封じ込められるらしい」

姫神「…!嘘?!」

ステイル「それじゃあ、僕は行くよ」

姫神「…なんで。私のために用意してくれたの。なんで?」

ステイル「そうだね、僕の知っているムカつく野郎の言葉を借りると…気まぐれかな」


  ◇  ◇  ◇  


記憶を失ってから数日以上経ったが、この学園都市で黒はわかったことが有る。


とにかく治安が悪い。


なぜ科学技術が発展した都市の癖に、ここまで治安が悪いのだろうか
禁書目録が寝付いた頃、黒とマオは学園都市の構造について話していた。


マオ「裏でなにか起きても表の人間はこれは気が付かない。そういう構造なのかもしれんな」

黒「…この前あんな事件があったのにも関わらず、皆すっかり普通の暮らしに戻ってますね。あの事件は別に珍しいとは思われてないのかもしれないですね」

マオ「考えてみろ、俺達契約者は世間一般では伏せられてるし、組織という首輪が有る。ここの能力者共は学園都市内ではオープンで、日常生活ですら能力を使ってる姿を見かけるぐらいだ」

黒「…うまくコントロール出来てないということですかね」

マオ「きっとここの管理者共は合理的じゃないんじゃなかな。契約者を管理者に入れること勧めるね」

黒「…合理的…ですか?」


マオ「…なあ、黒」

黒「はい?」

マオ「頼むから、俺にはそのキャラ作りは止めてくれ…蕁麻疹が出る」

黒「ええ?」

マオ「お前は覚えちゃいないだろうが、もっとお前はなんというか…殺伐した雰囲気出してたぞ?」

黒「そうなんですか…?」



黒はそんな時、風車のプロペラに青く輝く光を見つける。
風力発電が学園都市の主な電力源となっているため、至るところに風車が有るのだが。


黒「…なんだ?」

マオ「…何を見ているんだ?…観測霊だと!?」


黒が見つけたのは、ドールが索敵に使う観測霊である。
それは契約者にしか見ることの出来ない。


マオ「…まさかドールが居るのか!?追いかけるぞ。黒」


黒とマオは寝ている禁書目録を置いて家を飛び出した。


  ◇  ◇  ◇  


禁書目録は夢を見た。

それは黒が記憶を取り戻す夢だった。

禁書目録が何度彼の名を呼んでも振り返らず。

そのまま黒は去っていってしまった。




黒「リーという男はもういない」



そこで禁書目録は目を覚ました。



彼女が目が覚めてまず感じたのは、喉の痛みであった。

口でも開けっ放しで寝てしまったのだろうか?と考えながら台所に向かうと、
コップいっぱいに水を入れて、一気に飲み干す事にした。


禁書目録「このまま記憶が戻らなきゃいいのに…」


夢によって不安になっていたのだろうか
彼女は思ってはいけない願望を無意識に口に出しました。


だが、その不安を駆り立てさせる出来事が待っていた。


禁書目録「リーが居ない…!?」


  ◇  ◇  ◇  


観測霊を追いかけた黒達は、何かの研究施設のような建物にたどり着く。


黒「製薬会社の施設のよう…だな」

マオ「…あの観測霊は電気を伝わるタイプのようだな」

黒「電気…?」

マオ「学園都市の送電線は地下にある。なのにあの観測霊はわざと人目につくような電灯等を走っていた」

黒「誘導されたということですか?」

マオ「わからん。ただ単純に地下を走るだけなら、外の様子が分からない…だから見える位置を走っていただけかもしれない」

黒「…なるほど」


マオ「罠かもしれないな。ここは一旦引こう。ここの施設は俺が調べておくよ」


ドールは一人で活動することはない。
あれがドールが放った観測霊ならば、誰かがその指示をしたと言うことになる。

ここで突入するのは、得体のしれない敵との戦闘をする事を意味する。


マオはこちらの陣営にドールが居ない不便さを思い知った。


  ◇  ◇  ◇  


黒「鍵が開いている…!?」

たしか、鍵をかけて寮を出たはずだった。

黒は急いで家の中を見ると、禁書目録用のベッドには彼女は居ない。
台所は明かりがついて、空のコップだけ置いてある。


かつて禁書目録の同僚であった者から禁書目録を任された時に言われた言葉を思い出した。


ステイル『禁書目録を狙う魔術結社は少なくない』

神裂『それから守ってほしいのです』




黒「しまった…!」


  ◇  ◇  ◇  


禁書目録はリーを探しに暗闇の学園都市を歩き回っていた。
…はずだった。


彼女はファミレスを覗きこむ、白い物体と化していた。


禁書目録「歩きまわってお腹が空いた気がするんだよ…」


しかし禁書目録には持ち合わせがない。
いつも支払いはリーがしているので、禁書目録はファミレスで食事をするほどのお金を持っていない。


禁書目録「だめ!今はリーを探すほうが大事…!」


禁書目録は食欲に打ち勝ち振り返ると、そこには2つの影が待っていた。



  ◇  ◇  ◇  


白人「本当にあの小娘なんですか?」

黒人「あのグラサンの男は間違いなく釣れると言っていた」


禁書目録を捕まえた二人組の男は、深夜の道路を車で走らせている。
黒人が車を運転し、助手席には白人が座っている。

禁書目録は後ろでロープでぐるぐる巻きにされていた。



禁書目録「んー!んー!」


白人「五月蝿いな、黙らせておくか?喉ぐらい潰しても問題無いだろう」

黒人「おい、きたぞ」

白人「なんだ?」


白人の男は黒人に言われてサイドミラ―を覗きこんだ。
そこに映っていたのは、夜行バスの屋根の上に人の姿…

黒いコートを身にまとい、不気味な仮面をつけた男がそこには居た。


黒人「黒の死神だ」


黒はワイヤーを車のサイドミラーに巻きつけた。
しかし白人が車のドアを開けて、すぐさまワイヤーを切り落とした。

その思い切りの良い行動に黒は少し驚く。


白人「思ったより早いご登場じゃないか」

黒人「飛ばすぞ」


禁書目録を拉致した車は夜行バスからどんどん離れていく。


黒(不味い、ここの地形はそこまで詳しくない。距離置かれるのは論外だ!)


黒は夜行バスの上から次の手を考える…。

その時、電子バイクが視界に入った。
すぐさまワイヤーを使って電子バイクの元に着地した。


白人「バイクで追ってきたぞ」

電子バイクは黒の能力によってフル稼働されて、
凄まじいスピードを出しながら禁書目録の車に迫っていた。


白人「バイクから引き釣り落とす」

黒人「殺すなよ、あいつからは情報を吐いてもらわないと困る」

白人「わかっている」



白人が窓を開けると黒のバイクの方向に人差し指を構えはじめた。
白人からランセルノプト放射光が放たれる――――


黒の真横で爆発が起きた。

ハンドルを握る手の力を少しでも緩めたらバイクから投げ出される衝撃が黒を襲った。


黒(狙ったポイントを爆破できるというのか?!)



攻撃を少しでも狙いづらくするため、すぐさま運転席側寄りから車に近寄るようにした。


白人「チッ、そっちだと狙い辛い」

黒人「ブレーキかけるぞ!」



黒(急ブレーキだと…!?)



――――――――――――――ガァァン!

男たちの車に突っ込む形になった黒は、衝突の勢いでバイクと共に空に投げ出されていた。


黒「…!」


ワイヤーをすぐさま近くの建物に投げて、自由落下を阻止した。
一緒に空を飛んでいた電子バイクの方は遅れて地面に激突して爆音を鳴り響かせた。



車の進行方向にバイクが落ちてしまった所為で、禁書目録を乗せた車は止まった。


白人「おい、BK201は何処に行った?まさか死んでしまったのではないだろうな?」


白人は見失った黒を探すために車から飛び出していた。


それはすぐに迂闊な行為だと知ることになる。
何処からともなく黒のワイヤーが飛んできて、白人の首に絡みついた。


―――――バリバリバリ



白人の男は車を出てからあっという間に、黒の電撃の餌食になった。
そんな相棒がやられる姿を見て、黒人は禁書目録を引っ張りだしてから外に出た。

黒人「BK201、居るのだろう!出てきたらどうだ」

黒人はナイフを禁書目録の首元にあてながら出てきた。
警戒しきっている対象に下手なことをすれば、禁書目録に何をするかわからない。

だから黒は…いっその事、とんでもない荒業を使う事を考えた。


―――――――――――――バリバリバリ! バキィン!



不気味な音が上空から鳴り響く。


黒人が上を見上げると、学園都市の電力を支える風車のプロペラが……落下し始めていた。


黒人「まさか、シスターごと!? うおおおおお!」


禁書目録をその場で投げ捨て、黒人は落下するプロペラから急いで逃げた。



……プロペラが落ちた衝撃音と、プロペラによって押しつぶされた車が爆発した音が鳴り響く

道路は戦場のように燃え盛っていた。



黒は間一髪、プロペラが落ちる直前ワイヤーで禁書目録を引っ張り出して救出していた。

黒「おい、大丈夫か」

禁書目録「…むぎゅう」


プロペラの落下の爆音や衝撃…黒にワイヤーに引っ張られたりと全身を振り回されて、気絶しているだけのようだ。


黒「まったく…あとはあの男だけか」



プロペラ落下地点は爆発した車のせいでかなりの煙が上がっている。


黒人「あのグラサンめ、中途半端な情報をよこしたな。シスターはBK201の殺しの対象だったという情報ぐらい掴んでおけ」


爆煙から、ゆっくりと黒が姿を表した。


黒人「BK201…お前をおびき出すのに随分と手間がかかったものだな」

黒「…お前たちは何者だ」

黒人「お前が流星の欠片を所持しているのは知っている。まだ学園都市の外に出ていない事も」

黒「…何?」


黒人「流星の欠片を寄越してもらう」

黒「…お前たち、魔術結社とかではないのか?」

黒人「…なんのことだ?」

黒(狙われていたのは禁書目録ではない!?……最初から俺目的だった!?)

黒人「さて、返事を聞かせてもらおう」

黒「…断る!」


黒はワイヤーを投げつけたが、黒人はそれを避けてた。
そして、黒人は懐からナイフを取り出すと…その姿が消え始めた。




黒「…消えた?」

黒人(この姿が消えた状態で、まずはBK201の足を切り刻んでやる。自分の状況が悪くなれば欠片の居場所を吐くに違いない)


目の前の男が視覚で認識できなくなった状況でも黒はあまり危機感はなかった。


それは、この前の三沢塾で戦った金髪の男と戦った所為だろう。


見えているのに全く攻撃の気配を感じさせない者に比べたら、
見えていないが攻撃の気配がわかる方が圧倒的にわかりやすいからだ。


だから、黒人がナイフを攻撃する動作に入る直前に男の頭を手で鷲掴みしていた。


黒人「…見えていのか!?」



―――――――――バリバリバリ!


  ◇  ◇  ◇  



プロペラ落下現場にアンチスキルがたどり着いた時には、事件は終わっていた。

その現場にはノーベンバー11とアンチスキルの黄泉川愛穂(よみかわ あいほ)が居た。


黄泉川「…2名の死者にプロペラの破壊と、この道路…酷い有様じゃんよ」

ノーベンバー11「ここをドライブルートにしていた人は、明日から別のドライブルートを探さないといけませんねぇ」

ノーベンバー11はプロペラの落下や車とバイクの爆発によってグチャグチャになった道路を見ながら、彼なりのジョークを言った。

黄泉川「風車のプロペラ落としなんて、トンデモない事してくれるじゃん」

ノーベンバー11「彼の危険性…お分かりいただけましたか、アイホ」

黄泉川「…なんなんじゃん、201BKって」

ノーベンバー11「…我々は『組織』と呼んでいる所に所属している、契約者ですよ」

黄泉川「それで、あんたもただの外務省の人間とは思えないけど、何者じゃん?」

ノーベンバー11「私はただのジャック・サイモンですよ」


  ◇  ◇  ◇  


翌日の禁書目録は機嫌が悪かった。
黒を探しに行ってよくわからない連中に誘拐されて、気がついたら家に戻っていた。


禁書目録「夜起きたら、リーが居なくて。それで探しに行ったらふんだり蹴ったりだったんだよ!」

黒「機嫌直してくださいよ、ほら朝ごはん出来ましたよ」

禁書目録「食べもので機嫌なおそうだなんて、そんな手には乗らないんだよ!」

黒「そうなんですか?じゃあ、これは私が食べ…」

禁書目録「た、食べないんなんて言ってなんだよ!…そうだ、食べさせてくれたら少しは許してあげるの考えるかも」

黒「…食べさせる?」

禁書目録「あーんって奴なんだよ!」

マオ(朝っぱらから、なにやってんだこいつら…)


  <⌒/ヽ-、___ 書き溜め終わり。
/<_/____/  展開3,4回書き直してたらえらく時間かかった…
                多分次あたりシスターズ編


>>136
タラシが発動した時、死亡フラグをたてるかたてないか・・・そこが問題だ

>>137
アニメでも全く出てないからなぁ…
たぶんどっかの専門学校とかに適当に籍入れて通ってないとかなんだろうけど…

>>167 ア-ン…もしかして「ペリメニ」か?

>>137 料理は「ペリメニ」かな?


   ∧∧

  (  ・ω・)投下
  _| ⊃/(___
/ └-(____/

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


黒は一人で近くの自動販売機の前に止まっていた。
お金を投下して、目的の飲み物のボタンを押しても反応がないからだ

黒「…ん?」

もう一度お金を投下して、同じボタンを押してみるがやはり出てこない。

黒「詰まってるのか…?自動販売機に記載されてる連絡先に電話するのはめんどくさいな…」

御坂「ちょろっと、ぼけっとしてんじゃないの 買わないならどく!」

黒「…おっと?」



黒は急に後ろから引っ張られた。
その対象を見ると、中学生ぐらいの女の子が居た。


黒「そこの自動販売機壊れてますよ。」

御坂「知ってるわよ。裏技があるの、ジュースを入れなくても出てくる裏ワザ」


すると、その少女は自動販売機の前に立ってステップを踏み始めた。




御坂「チェストー!!」



回し蹴りが完全に自動販売機に入った。




――――――――――ガタンッ



自動販売機から明らかに売れてなさそうなスープカレーの缶ジュースが出てきた。


御坂「この自動販売機ボロっちいから、ジュース固定してるバネ緩んでるのよね。何が出て来るか選べないのが難点だけど」

黒「ちょっと、ダメですよ!そんなことしたら壊れちゃいますよ。いや…もう壊れてるのかな?」


御坂「なーにいってんの、別にアンタに実害があるわけ…飲まれた?」

黒「…たしかに、さっきお金入れても出て来ませんでしたけど」

御坂「ねえ!いくら?いくら飲まれた!?ねえ!」

黒「はあ…飲み物2つ分ですけど」

御坂「わざわざ2回も試したの?馬鹿ねぇ」


少女は黒のアクシデントに楽しそうに笑っていた。



御坂「じゃあ取り返してあげるわ。」


そう言いながら、自動販売機に少女は手を当てる。


彼女は…黒の前で自動販売機に電撃を放った。




――――――――――――ビリビリビリ



すると、自動販売機から次々と缶ジュースが出てきた。



御坂「あれ~~?いっぱい出てきた」

黒「…うわ?!ちょ、ちょっと!」



黒は驚いて咄嗟に自動販売機に手をつけていた、そして彼女と同じ事をやってしまった。




――――――――――――バリバリバリ



彼女の目の前で電撃を自動販売機に放つと…自動販売機は静かになっていた。



黒「…ふう」

御坂「ぁ…ぁ…あ――!!」

黒「ど、どうしました?」

御坂「アンタも電気使いだったの…?」

黒(…今の行為はもしかして不味いことだったか?学園都市なら珍しくないと思ったんだが)

御坂「まさか、私の電撃が効かなかったのって同系統の能力者だったのね…」




自動販売機を蹴飛ばした少女は呆れたような声を出しながら顎に手を当てて黒をじっと睨みつけた。


御坂「…ん?でも待ってよ?あなたレベル0って言ってたわよね」

黒「えーっと…なんの話ですかね?もしかして過去に会ってます?」

御坂「(ピキッ)ほほう、私の電撃を受けた事は記憶するに値しないって言いたいの?」

黒「えっと実は…その、わたし記憶喪失なんですよ」

御坂「…………はぁ?」



黒「なんか7月の終わり頃に、よくわからない事件に巻き込まれたらしく」

御坂(7月の終わり頃?…ギリギリ、レベルアッパーの事件に被ってるわね…もしかして…)

黒「気がついたらベッドの上でした。だからその前の事は覚えてないんですよ。すいません」

御坂「そうだったの…きっとレベルの低さのあまりショックでレベルアッパーに手を出して、昏睡状態になってそれが原因で記憶喪失になったのね…」

黒「…はい?」


御坂「世の中にはレベル1からレベル5になった人もいるの!そんな物に頼っちゃダメ!努力しないと!」

黒「…はあ」

御坂「さっきやってたけど、普通に電気は流せるのよね」

黒「…そうですね」

御坂「ふーん…それだけでもレベル1はありそうだけど…じゃあこれはできる?」ビリッ

黒「…指先についてるのは砂ですか?」


御坂「砂鉄よ。電気の流れを操って磁力を発生させるのと、こうやって砂鉄を抽出できるの。」

黒「凄いですね、そんなことできるんですか」

御坂「これぐらい出来たらレベル2ぐらいはあるんじゃないかしら?ちょっとやってみなさいよ」



そんな二人の間にツインテールの少女が入ってきた。



白井「…お姉さま、また自動販売機をお蹴りになったのですね」

御坂「ハッ…く、黒子!」

白井「自動販売機のエラーがすぐに収まったので、もしやと来てみましたら。…お姉さま、その殿方は?」

御坂「えーっと…」

黒「はじめまして、李舜生と言います。」

白井「あら、ご丁寧にどうも。わたくし、白井黒子(しらい くろこ)と申します」

御坂(あれ…そういえば私自己紹介してない…)



御坂「あ、わ、わたしは御…」

白井「それで、お姉さま!」

御坂「はい!?」

白井「もしかしてアレ、殿方に見られたんですの?」

御坂「あれって…?」

白井「これですの」

ツインテールの少女は、何かを蹴るフリをして見せた。



御坂「あー…だってこの自動販売機それがてっとり早いし」

白井「…お姉さま!ちょっとは反省してくださいまし!」

黒「それじゃあ、私はこれで」

御坂「あ、ちょっとアンタ待ちなさいよ、話は終わってないの!」

白井「お姉さま!こっちの話も終わってないですの!」


黒は逃げるように去ったのだが

翌日、再び自動販売機を蹴り飛ばした少女と遭遇するハメになった。



御坂「…見つけたわよ!」

黒「こんにちは。どうしました?」

御坂「アンタが電気流したせいで、自動販売機のジュース固定してるバネきつくなっちゃったじゃない!おかげで何回蹴ったことか…」

黒「あれですか…女の子がそういう事やっちゃダメですよ」

御坂「あんた、女性に幻想抱きすぎ。今時のあんな事だれだって平気にするわよ」

黒(どおりで治安が悪いわけだ…)



御坂「まあ、それはさておいて。昨日言ったこと試した?」

黒「…なんでしたっけ?」

御坂「砂鉄よ、砂鉄。もしかしてやってないの?」

黒「あれですか?やってないですね」

御坂「ダメじゃない!そんなんじゃレベルあがらないわよ。ほら、やってみなさいよ」



黒(そもそも電気を流す以外のことなんで、やったことないぞ…)

バリバリ

御坂「アンタの電気能力って変わってるわね。発光現象も起きるんだ」

黒「普通は起きないんですか?」

御坂「私は少なくとも起きないわね。自分だけの現実(パーソナルリアリティ)の差異なのかな。同じ系統の能力者でも若干違いが生まれてくるし。」

黒「自分だけの現実(パーソナルリアリティ)って聞いた事はあるんですけど、具体的にどういう事なんですか?」

御坂「……呆れた、アンタそんなのも知らないで能力使ってるの?よく使えるわね…。」



  ◇  ◇  ◇  


黒「ざっくり言ってしまうと『そうなるかもしれない』って思い込みがそのまま現実になるってことですかね」

御坂「うーん…ちょっとズレてる気がするけど、最初はそんな感じでもいいかもね。」

黒「まるで夢を現実にしてるような感じですね。夢が現実に出来るなら『本当の星空』がみたいですね」

御坂「本当の星空…?」




黒「記憶喪失のせいか覚えてないんですよ。今の星空しかわからない。でもそれが凄く悔しいんです。よくわからないけど」

御坂「10年前だっけ?私はどうだったかなー…覚えてるのかな…」

黒「でも覚えてなければ、現実に出来そうにないですね。なんせ自分の中でしかない現実じゃないとダメみたいな話ですから」

御坂「だいたい貴方はもう電気能力が覚醒してるから、複数能力は無理よ。さあ!講義はここまで!砂鉄集めよ!」

黒「…やっぱりやらないとダメですかね?」


御坂美琴と黒ともに電気を主軸とした能力を使用する。
二人の違いは、片方は学園都市の開発による能力…そしてもう片方は契約者としての能力である。



だが二人はもっと根本的な違いがあった。



学園都市で能力者はレベル0からレベル5までランク付けされており、ランク5の能力者は学園都市の中で7人しか居ない。

御坂美琴は幼い頃レベル1であったが、電気の能力を磨くことに人生を費やして、最高ランクのレベル5まで這い上がった。

彼女にとって電気の能力こそが自分であるとも過言ではない。



一方、黒は契約者として目覚めてしまった妹についていくために、ただの人間でありながら数々の契約者との殺し合いを余儀なくされてきた。

契約者との戦いに生き抜くために肉体を磨け続けた結果、彼は『黒の死神』の二つ名が付いた。

彼が能力を手に入れた頃にはすでに戦闘スタイルを確立してしまっていたため、能力を必要としていなかった。



―――――バリッ


御坂「おしいわね、もうちょっとで磁場が形成できそうじゃない?」

黒「そうですかね?」



御坂美琴との出会いは、黒に予想外の変化をもたらすかもしれない。



  ◇  ◇  ◇  


夜になるとマオと黒は再び製薬会社の施設に訪れていた。

マオ「最近組織のデータベースが更新されてな…この製薬会社。どうも学園都市内のよくわからん実験を進めているらしい」

黒「なんの実験だ?」

マオ「残念だが、何かをやってるまでしか掴めていない。」

黒「そこは情報待ちか」

マオ「正直、情報が出てくるを待っている…という方がリスキーだろう。」

黒「だから、こっちから出向くわけか」

マオ「そういうことだ」



黒はいつもの仮面とコートを装着して準備をしていた。


マオ「ところで、今夜はあのシスター娘は大丈夫なのか?」

黒「深夜バイトが入ってるって言ってある」

マオ「なるほどな…観測霊を出すドールってのは基本は単独行動をしないものだ。相手は間違いなく一人じゃない。それじゃあ気をつけろよ、黒」

黒(もしあの観測霊も、俺自身を狙っているものなら…これ以上禁書目録を巻き込む訳にはいかない。早めにケリをつける。)

マオ「聞いてるか?黒」

黒「ああ…行ってくる」




黒(侵入したとはいえ、何処へ向かうか…普通に考えて監視室を制圧すべきか?)

黒が行き先に悩んでいると、例の観測霊が出てきた。

黒(ご丁寧に誘ってくれるわけか、いいだろう)


黒は導かれるまま、観測霊を追いかけた。
途中のロボットや警備カメラ、警報装置は次々と電気の能力で機能不全にさせて行った。



そして、たどり着いた先に待っていた部屋には…大量の培養器が並んでいた。


黒(なんだこれは…この施設は本当に製薬会社なのか…?)


その大量の培養器の中身はほとんど空であったが…一箇所だけ、起動しているのがあった。

観測霊も培養器の付近に青い光を輝かせていた。
培養器には『欠陥符号(エラーコード)』とのラベルが貼られてある。


中にある物体は長い髪をした人型をしていた。


黒「…お前が俺呼んだのか?」

培養器に向けて言ったのだが、
ただこっちをジッと見ているだけで反応は帰ってこない。

その培養器の中の人物はどこか、昼間にあった少女の御坂御坂という少女の顔つきに似ていた。


  <⌒/ヽ-、___ 今日はここまで
/<_/____/  ここ一ヶ月、自動販売機で飲み物買おうとして出なかったことが4回あるんだけど
                御坂美琴さんの所為ですかね


中にある物体は長い髪をした人型をしていた。


黒「…お前が俺呼んだのか?」

培養器に向けて言ったのだが、
ただこっちをジッと見ているだけで反応は帰ってこない。

その培養器の中の人物はどこか、昼間にあった少女の御坂美琴という少女の顔つきに似ていた。

   ∧∧

  (  ・ω・)投下
  _| ⊃/(___
/ └-(____/

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



最初は何も感じていなかった。

ただ、培養器の中にいる物体であった。


何度か培養器の外に出されることはあった。


その度に装置を付けたり、注射をされたりなどはあったが…
施設の外には一度も出してはもらえなかった。


次第に同型は次々と施設から消えていった。





気がついた時には、全てから隔離されていた。






それから、どの程度の日時が経ったかはわからない

ただ、ふと思った。




『外が見たい』




だから、私自身を外に出そう。


今までにやろうと思えば出来たことではあったが、それを実際にやろうと思ったのは初めての事だった。




私は培養器の中に居ながら外へ私を放出した。




施設の外は私には刺激的であった。

太陽の光、学園都市の様々な建物、そして沢山の人々で溢れた交差点。





これが感動と言う感情なのだろうか?

しかし、その感動も私の中に長くは存在しなかった。


私を認識してくれる人は誰もいない

話しかけても反応してくれない。




『寂しい』




ただ培養器の中にずっと閉じこもっていた時には感じる事が無かった。


そんなある日、私を認識する存在が現れた。

私が移動すると、それを追いかけるように追ってくる。


私はその存在に期待した。




本当の私を見つけに来てくれるのではないかと


  ◇  ◇  ◇  


黒は少女を抱えて施設から出てきた。

見つけた時、少女は生まれたままの姿だったため黒は自分のコートを彼女に被せていた。


マオ「なんだなんだ…その露出狂の女は?」

黒「ドールだと思う」


マオ「他のは居なかったのか?」

黒「このドールの近くには誰も居なかった」

マオ「おい、ドール。お前の仲間は居ないのか?」


少女は口を開けてみせるが、声は出ないらしい。


マオ「こいつ、言語登録されていないのか?」

黒「とりあえず何処かに一旦移動しよう。この姿で誰かに見られると不味い」


黒はマオとドールを近くの廃ビルで待機させるとコンビニへ向かった。

ドールの格好が黒のコートだけでは問題がありそうだったので、とりあえずシャツ等を買って戻ってきた。

しかし彼女は自力で服を着ようとしないので、黒が着せるハメになった。


マオ「いままでどれだけの女にそうやって服を着せたことがあるんだ?随分手馴れてるようにみえるぞ」

黒「茶化すな…あとコレも買ってきた」



マオ「電子辞書を買ってきたのか…こいつ使えるか?」

黒「ものは試しようだろう」

黒は電子辞書をドールへと手渡しすると…


     ビリッ


文字を入力していないのに、電子辞書に文字が浮かび上がっていた。


『ヨメマスカ』


黒「なんだ…ドールはこんなことが出来るか?」

マオ「いや、ドール自体は観測霊を飛ばせるぐらいしか出来ない…はずなんだが」

黒「今電気を使ったように見えたが…」



『ツカエマス』

マオ「それを使って会話できる程度の認識力があるならちょうどいい。お前の仲間は居ないのか?」

『イナイ ミンナイナクナッタ』


マオと黒は困ったように目を合わせる。


マオ「本当に仲間が居ないのか?…どんな状態でこいつを見つけたんだ?」

黒「培養機の中に入ってて不良符号(エラーコード)というラベルが貼られてあった」

マオ「不良符号?失敗品とでも言うのか?あの製薬会社は一体何をやってるんだ」

黒「彼女は言葉が喋れない以外に身体的に気なる点もある。どうも、うまく歩けないらしい…検査した方がいい」

マオ「何所で調べる?正々堂々と病院に連れて行く気か?」

黒「そのつもりだ」


  ◇  ◇  ◇  


冥土返し「やれやれ、まったく変な子ばかりつれてくるよキミは。あの子、ただの人間じゃないね」

黒「…と言うと?」

冥土返し「普通の人間ではありえないほど細胞が活性化している。無理やり成長させられたような感じだね」

マオ「なんでそんな事になってるんだ?」

冥土返し「猫くん…クローンだよ。それも人の母体を借りて生まれたようなタイプじゃない」

マオ「まさに完全なクローンということか」



冥土返し「あの調子だとすぐに寿命を迎えてしまうだろう」

黒「…何とか出来ないのか?」

マオ「…?」

冥土返し「出来ないことはないが…同情でもしたのかい?」



黒「いや、マオ…俺達はドールが欲しかったんだよな?」

マオ「ああ、そんな相談はしたことあったが…彼女を代用品にするのか?」

黒「組織からドールが回ってくる宛はあるのか?」

マオ「今のところないな、銀すらこっちに回ってこない。だがな、アレを代用にするのは反対だ」

黒「何故だ?」


マオ「まず喋れない、そして歩けない。一番不明瞭なのが奴がどんな目的で生まれた存在なのか俺達は知らない。そんなものを使うのはリスクが高すぎるだろ」

冥土返し「歩けない…という点に関して僕から一つ提案が有る。電気車椅子だ。電気能力を開発されている彼女なら自分の力で動かせるだろう」

黒「喋れない件は、電子辞書かタブレットあたりでいいだろう」

マオ「一番の問題が解消されていないけどな。どのみち組織には報告しないといけない」


  ◇  ◇  ◇  


土御門「おたくらが、あの黒の死神のチーム?」

マオ「…たしかにあんたが持ってきた暗号は組織で使う暗号だ。」

土御門「いやー、黒の死神に会えるなんて光栄ですわ。あとでサイン書いておいて欲しいんだにゃー」

黒(なんだコイツ…)

マオ(現地の工作員の一人だ)



土御門「おっと、自己紹介がまだだったんだにゃー。組織のコードネームは緑(リュイ)。言われ慣れてないから土御門と読んでくれてもかまわんだぜい?」

マオ「俺達は製薬会社で見つけたクローンについて話が聞けるということだが?」

土御門「そう、その件!製薬会社では処分品が急に消えた事で大騒ぎになってしまったから大変で大変で…おかげでこっちは尻拭い。感謝してほしいですわ」

黒「…それはすまなかったな」



土御門「あのクローン…あれは絶対能力進化(レベル6シフト)計画の一部だ」

マオ「絶対能力進化計画?」

土御門「学園都市で能力者はレベル0からレベル5にレベル分けされているんだが、そのレベル5を更に超えてレベル6にする計画だ」

黒「レベル6…」


土御門「元々は樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)が計画したものなんだが…あれを積んでた人工衛星が撃墜されたらしくてな」

マオ「今の偽りの星になってから唯一打ち上げに成功した人工衛星がか?」

土御門「まだ世間に公開されてない情報だから内緒だぜい。まあ、お陰で樹形図の設計者によって立てられた計画が組織に漏れたわけなんだにゃー」

黒「それが絶対能力進化計画か…」

マオ「しかし人類唯一の人工衛星を撃ち落とすとは、一体何処の連中なんだかな」



禁書目録「ヘックシュ!」

禁書目録「うー、リーもスフィンクスも外に出ちゃって暇だよー」ゴロゴロ

禁書目録「おなかも空いたし、冷蔵庫ちょっと覗こうかな…」



黒「…」

マオ「どうした?」

黒「何故だかわからないが…冷蔵庫の危機を感じた」

土御門「さて、ここまで話した上でおたくらにやって欲しい事がある」

マオ「…何?」

土御門「その実験内容の調査だにゃー」


  ◇  ◇  ◇  



黒は不良符号用の服を買いに出かけていた。

病院には服がないわけでないが、いずれ連れ回す際に私服がないと問題だろうとマオが提案した。

何より絶対能力進化計画を調査する上で、欠陥符号の協力は必要不可欠であった。



黒(どんな服を買えばいいんだ?これなら禁書目録を連れてくるべきだった…)



佐天「ういはるー。これとかどう?」

初春「ちょっと幼過ぎないですか?そう思いません?御坂さん」

御坂「え?そ、そうだね(…可愛い)」

佐天「うーん、じゃあ…あっちのコーナー見ようか」




御坂「あ…」バッタリ

黒「おや…御坂さんでしたっけ?昨日ぶりですね。」




初春「御坂さんのお知り合いですか?」

佐天「なになに!?御坂さんの彼氏?」

御坂「ちょ、ちょっと、違うって!コイツはね……ほら……その……」

御坂(こういう場合どう言えば勘違いされないの?)

御坂(お、おなじ電気能力友達?それって、なんか変な表現かも)

御坂(…だいたい、コイツの方が年上そうだから友達ってのもなんか…)


黒「…?」

初春「御坂さんどうしちゃったのかな」

佐天「でもなんか楽しそうだよ」




御坂(………そ、そうだ)

御坂「――――弟子よ!」

佐天・初春・黒「弟子?」





御坂「ほら、前に能力の講座してあげたじゃない」

黒「あー」

佐天「おお、御坂さんのお弟子さんなんだ。」

初春「御坂さんの弟子になれるなんて羨ましいです!特別な能力をお持ちなんですか?」

黒「同じ電気系統らしいですね」


初春「なるほどー。同じ系統なんですね。レベルはいくつなんですか?」

黒「前にもレベルの事言われましたけど、ちょっと覚えてないんですよね」

御坂(ん…もしかして、コイツの正確な情報を知るチャンスかも?)

御坂「そうだ!ジャッジメントのデータベースで検索したり出来ない?」

初春「むむ…私用で使ったら怒られちゃいますよ。個人情報ですよ?」


御坂「ほら、アンタだって自分の正確なレベル知りたいと思わない?」

黒「私は別に構わないですけど」

御坂「ほら!本人が納得してるから大丈夫!」

初春「なんか、強引な気がしますけど…お弟子さんのお名前ってなんですか?」

黒「李舜生です。」

初春「初春飾利(ういはる かざり)です。よろしくお願いします。」

佐天「あ、私は佐天涙子(さてん るいこ)です。リーさんって呼べばいいですか?」

黒「はい、よろしくお願いします。」



初春「検索っと…出ましたよ。およ…レベル0?能力名も記載されてないですね」

御坂「嘘?…ほんとにそうなってる。……この情報古いんじゃない?」

初春「でもほら、7月更新の情報ですよ」

御坂(うーん…やっぱり幻想御手が原因でうまく能力が使えるようになったのかしら?)


初春「ところで白井さんは、お弟子さん知ってるんですか?」

御坂「あ……初春さん。ぜっっっっ…たいに 黒子には言っちゃダメ!ダメだからね!」

初春「あはは、そんな気がしてました」

佐天「おお!御坂さんの弱みゲット!」

御坂「ちょっと、佐天さん!」



佐天「あはは、冗談ですよ。…それでリーさんは何で女性物のコーナーにいるんですか?」

御坂「そういえば…なんでこんなとこに居るのよ!」

黒「実は、妹のために服を買おうと思って」

佐天「妹さんが居るんですか、プレゼントですか?」

黒「そうですね、でも女性物の流行りものがわからなくて困ってたんです。」



佐天「ほほう…御坂さん!」

御坂「は、はい?」

佐天「ここは、師匠としてお弟子さんを導いてあげないと!」

御坂「ええ?…私が?」

佐天「お弟子さんとの信頼関係を築くチャンスですよ!ほらほら!」



初春「妹さんってどのくらいの背丈なんですか?」

黒「そうですね、ちょうど君たちくらいの…」

黒(じっくり見ると、欠陥符号と顔の形や体型がよく似ている。やはり…この娘のクローンなのか…)

御坂「ちょっと…ど、どうして私をずっと見てるのよ?」

黒「あ、すいません。妹も丁度、御坂さんと同じくらいの体格だったで」

初春「なら、御坂さんに試着してもらったらどうですか!?」

御坂「何でそうなるの!?おかしいでしょ!?」


――――1時間後


黒「すいません、選ぶのみなさんお手伝いいただいて」

佐天「こっちもお陰様で御坂さん七変化が見れて楽しかったですから」

御坂(いろいろ疲れた…)プシュー

初春(沢山着替えさせられて御坂さんが燃え尽きてる…)

黒「それじゃあ、すいません失礼します。」



初春「それにしても…リーさんって、いい鎖骨してましたね」

佐天「えっ?」



  <⌒/ヽ-、___ 書き溜め終わり。
/<_/____/  


   ∧∧

  (  ・ω・)投下
  _| ⊃/(___
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絶対能力進化計画の調査と言っても殆どの資料は土御門の手によって作成されていた。

黒たちがやる調査とは、実際の戦闘実験を確認してデータとして組織に送る事

そのためには実験場を特定して観察する必要がある。


そこの担当を欠陥符号の観測霊に見つけてもらい、

戦闘実験の結果を黒がレポートを作成という手順が今回の任務である。



黒「マオの出番がないな」

マオ「まとめ役は必要だろ。お前はすぐ想定外の行動を取る傾向があるからな」

黒「…記憶に無いな」

マオ「おいおい、酷いジョークもあったもんだ」

欠陥符号は先日買った服を着ている。

無表情で分かり辛いが決して不快そうではない。


急に彼女の手に持っているタブレットから音が鳴り響く。

そしてそこにマップが映しだされた。


マオ「ここから、北東方面だな…見えるか?」

黒「ああ、電子双眼鏡を使えばこのビルからでも見下ろせる角度だ。」

マオ「こうもアッサリ見つかるのはやはり、ドールが居るってのがでかいな」

黒が使っている電子双眼鏡はそのままモニター出力され、マオや欠陥符号も見ることが出来るようになっていた。


現場にはすでにクローンが待機している。

前もって入手した情報によれば9933番目のクローンらしい。

近くには観測霊も確認できた。欠陥符号の観測霊だろう。

数分ぐらい待っていると、白髪の少年とおもわれる人物が現場に現れた。



その白髪の少年こそが学園都市1位のレベル5…一方通行である



黒「始まるぞ」




クローンの攻撃は予め用意していた銃火器で白髪の少年に乱射した。



一方通行の能力はベクトル操作だ。

彼の皮膚に触れたは物のベクトルは自由に向きを変更することが出来る。

放たれた銃弾をそのままベクトルの向きを反転され、あっさりとクローンは自滅した。


ほとんど決着はついたようなものだと言うのに、一方通行はクローンに近づくと左腕をちぎり取った。

次に右腕を投げ捨て、左足、右足…

オモチャの人形を分解する子供のような光景


マオ「おいおい、快楽殺人者かよ?」

マオはその様子に呆れた。

だが黒には奇妙さだけが残っていた。



  ◇  ◇  ◇  


普段は禁書目録と一緒に部屋に2階の部屋を利用している黒であるが、

そこから徒歩5分位内の所に欠陥符号用に部屋を借りていた。

もちろん車椅子である彼女を考慮して一階の部屋だ。

そこの部屋はマオと黒の作戦ルームと兼用にもなっている。


マオ「なんだこの資料の量は?あの緑の野郎はこんなに置いていったのか?」

マオが黒の様子を見に来ると、大量のドッチファイルが置かれてあった。

資料関連は電子データで貰ったのだが黒が印刷して紙媒体にしただけである。

黒「読むだけならば紙媒体のほうが読みやすいし、メモを書き足したいからな」

資料をまとめながらマオに答えた。

このような大量の書類をインデックスには見せられないため、こちらの欠陥符号の部屋で作業をしている。

部屋の主である欠陥符号は端っこでタブレットをいじっているだけのようだ。


マオ「もうレポートを書き始めてるのか?」

黒「まだレポートには手を出していない。過去の実験データを読みながら一方通行の得意な戦術パターンの分析と苦手と思われる行動を箇条書きにしてる」

マオ「苦手なんてあるのか?」

黒「近接格闘術はこれといった経験がないようだ。またチームを組んで戦った経験もかなり少ない。」

マオ「ああ、たしかにセロリみたいな体型だったからな…」

黒(猫の身体の奴に言われたら末期だな…)


一方通行の情報をまとめながら黒は一つの可能性について考えていた。

もしアレと戦うことになったら自分はどうするべきなのだろうか、と


ひと通りの作業を終えて家に帰ってくると、禁書目録が枕を抱きかかえたまましょぼくれていた。

禁書目録「リー最近お仕事忙しいの?」

黒「禁書目録、すいません。あまり遊び相手をしてあげられなくて」

禁書目録「ぶーぶー。リーもスフィンクスも気ままに姿を消しすぎなんだよ!最初は私の後ろについて来てたのに!」


黒「ごめんなさい。お詫びと言ってはなんですが、落ち着いたら今度一緒にプラネタリウムに行きませんか?」

禁書目録「プラネタリウム?」

黒「ええ、星を見に行くんです。ほら僕達って記憶が無いじゃないですか。昔の本当の星座見に行きたいと思いません?」

禁書目録「行くいく!」

黒(落ち着いたら…か…)


  ◇  ◇  ◇  


今日も黒とマオと欠陥符号は高い建物から実験内容を視察していた。


マオ「なんだかんだで50回目の記録になるわけだが。どうだ?」

黒「なんのことだ?」

マオ「お前だったら攻略する?」

黒「…あれをか?」

マオ「黒の死神とてのご意見を伺いたいな?」



二人が会話を交わしている中、21時になり…戦闘が始まった。

クローンが蛍光灯がふっ飛ばした。

マオ「おいおい、見えないぞ」

たとえ真っ暗でも欠陥符号が観測霊は感知している。

彼女は自分の能力を利用してモニターをムービーのように再現し始めた。


黒「そうだな…ベクトルの向きを変換できるというのは厄介だな。今のところクローンは一度もダメージを与えた事がない」

欠陥符号によって再現された動画はクローンが銃撃をして一方通行が反射されるといういつものパターン

マオ「まさに鉄壁…か。クローンもよく同じ手をよく使うな。」

黒「実験関係者が銃火器の使用の指定してるのかもしれない」

持っている銃器が破壊されるとクローンは逃走を始める。そして一方通行がそれを追いかける。


黒「あれを正面から叩く必要性がない…寝ている間に空気でも抜いたほうが良いんじゃないか?」

マオ「諦めやがったな?」

二人は最初の地点からだいぶ移動して列車の操車場に着いていた。

やはり一方通行が圧倒している。

ボロボロになったクローンにゆっくりと一方通行が近寄ると、彼の足元が爆発した。

予め地雷を設置していたようだ。



マオ「お?あれはどうだ?」

黒「ただの地雷なら無理だろうな…」

爆風のから無傷の一方通行が現れた。

やはりただの武装で彼を傷つける事は不可能のようだった。

その後はいつもどおり、彼の惨殺ショーが行われるだけである。


マオ「この実験意味があるのか?50回全部似たような結果だぞ?」

マオは少し飽きたようであった。

マオ「ん…もう一戦あるのか?もう一体来たぞ」

黒「…あれは、オリジナルか?」

マオ「オリジナル…あれがか?区別がつかないな…」

黒は持っている電子双眼居を置くと、ワイヤーをひっかけて建物を降りようとしていた。

マオ「どうする気だ、黒?おい!」


  ◇  ◇  ◇  

黒が御坂美琴を見つけた時にはすべてが終わっていた。

体育座りで顔をふせている彼女を見れば、一方通行との接触の結果は後でマオや欠陥符号に聞くまでもないかもしれない。

彼女が死んでいないことだけは幸いだと思った。

黒(あれを見てしまった彼女はどうする気なんだ?)

無事が確認できた黒は彼女に見つからないようにその場を去った。





御坂美琴はあれから実験に関係する研究施設の破壊活動を始めた。

彼女は何が何でも実験を中止させたいらしい。



黒はそれを何処と無く情報を入手していた。

だが黒は御坂美琴に手を貸すことはなかった

別に実験を止めたいと思ったことがないからだ。

彼はいつもどおり一方通行のレポートを作成しながらデータを組織に送っていた。


御坂美琴が一方通行に挑んでから数日経過していた。



黒は特殊な銃を組織に頼んでいた為、その日は受け取るために外出していた。

そんな時、御坂のクローンが道端で屈んでいるのを目撃した。


黒(クローンがこんな所でなにをしているんだ?)

猫に餌をあげようとしてる御坂のクローンを見つけた黒は驚きを隠せなかった。




ミサカ10032号「見世物ではありませんが」

黒「あげないんですか?それ」

ミサカ10032号「ミサカには猫に餌を与えることは不可能でしょう。ミサカにはひとつ致命的な欠陥があります、と補足説明します。」

黒「欠陥?」


ミサカ10032号「ミサカには常に微弱な地場を形成します。とミサカは説明します。人間では探知できないようですが、他の動物だと異なるようです。」

黒(磁場?なるほど、オリジナルみたいに磁力の影響もあるのか)


欠陥符号は言葉が話せないため、クローンとの会話は初めてであったが

黒はこれ以上関わる必要性はないと思い、その場から離れようとした。


ミサカ10032号「待ちなさい、ミサカは制止を促します」

黒「はい?」

ミサカ10032号「聞きなさい。ここに一匹の黒猫が居ます。このお腹をすかせた黒猫を前になにも与えずに立ち去るのはどう言うつもりかとミサカは問いかけます」

黒「…貴方のその手に持っている菓子パンでいいんじゃないですか?」


ミサカ10032号「そうではなく、捨てられた猫がここにいるのに一体どうして拾うと考えないのですか、とミサカは再度問いかけます」

黒「はあ…貴方はその猫を拾うつもりはないんですか?」

ミサカ10032号「…ミサカにはこの猫を飼育は不可能だとミサカは正直に答えます」

黒「それは…貴方が」

そこまで言いながら黒は言い直した。





黒「それはお前が実験で死ぬからか」

御坂のクローンは少し動揺したような素振りを見せた。

先程まで優しい口調の優男から、とんでもない台詞を聞くことになったからだ。

ミサカ10032号「貴方…は…実験の関係者ですか、とミサカは訪ねます」



黒「お前はその猫が可哀想だと思うのか?」

ミサカ10032号「当たり前です」

黒はゆっくりと猫に近づいて、やさしく顎を撫でた。

黒「自分自身を救う気がない奴が、こいつを救う権利があるのか?」

ミサカ10032号「猫の件とミサカの件は関係ありません、とミサカは反論します」



黒「関係ない?そんな事はない…お前が死ななければ、お前が猫を救うという選択肢が増える」

ミサカ10032号「貴方がこの子を拾ってくれれば全て解決します、とミサカは提案します」

黒「悪いが俺は猫が嫌いだ…見てて喋り出しそうだからな」

ミサカ10032号(喋り出しそう?)

ミサカ10032号「それに私は所詮模造品です。でもこの猫は違います」

黒「俺から見れば同じだな」



ミサカ10032号「違います。この猫はオリジナルです。でも私はボタン一つで複製できる模造品なんです。単価にして18万円のいくらでも替えがきく…」

黒「自分の価値などないと言いたいのか…だったら尚更都合がいいじゃないか」

ミサカ10032号「は?」

黒「お前はあの猫と一緒に逃げればいい」


黒にはクローンたちを救う理由などない。

生きようとしない存在を助けてやるほど黒はお人好しではない

ただ御坂美琴が裏で必死に破壊活動しているというのに、こいつらは何も反逆をしない姿勢には苛立ちがあった。

だから皮肉の一つも言いたくなったし、惑わせてみたかった。


黒「もしお前が価値のある存在ならば、逃げたら地獄の底まで追ってくるかもしれない。だけどそうじゃないのだろう?」

ミサカ10032号「!?」

黒「実験の連中に思わせばいい、お前を追いかけるよりも模造品をもう一体作ったほうがコストが安い。そう思わせればお前の勝ちだ」

ミサカ10032号「そんな無茶苦茶な理論…!?」

黒「そうか?」


ミサカ10032号「…それに無理です!逃げるなんて不可能です、とミサカは…!」

黒「そこまで覚悟がないから黒猫を人に任せようとするんだ。」

黒は猫から手を離すとそのまま立ち去っていった。

取り残されたクローンはハッと我に返ると、猫を普通に撫でていた人が猫が苦手なわけがないと気がついた。

ミサカ10032号「…ウソツキ」


  <⌒/ヽ-、___ ちょっち休憩
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  (  ・ω・)投下
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結局クローンは黒猫を引き取ってくれる人間を見つけれなかった。

ミサカ10032号「実験が終わったら、ミサカの死体を回収に来た他のミサカに拾ってもらうんですよ」

黒猫「にゃー」

もはや時間切れになってしまった以上、黒猫を実験上から少し離れた所に置くしかなかった。


黒『お前はあの猫と一緒に逃げればいい』

ふと、あの男の言葉を思い出す。

ミサカ10032号(逃げる以外にも1つだけ方法があります)


列車の操車場で彼女の運命の戦いが始まった。


10032号のミサカがとった戦法は、まず一方通行から距離をとるために逃げる事だった。

戦闘から逃げるためではない、戦うために逃げた。

一方通行「何なンですかァ?この無様は?ヒット&アウェイすれば勝てると思ってるンですかァ?」

ミサカ10032号「今夜は風がないのですね…ならばミサカにも勝機があります」

クローンの戦法は一方通行の周りの酸素を分解してオゾンにする事で一方通行を酸欠にしようとしていた。



一方通行「酸欠にしよォっていうのか!?イイね、イイね!きっちり俺の敵やってンじゃン」

もし一方通行を倒すことが出来れば…黒猫の飼い主を見つけてくれるぐらいご褒美がもらえるかもしれない。

それが逃げる以外のもう一つの方法。

一方通行「だ・け・ど 弱点がひとつ…オマエが追いつかれちまったなこの作戦は失敗だよなァ」

先程まで一定の距離をとっていたのに、一瞬で一方通行が肉薄する。



バキッ


一方通行の勢いのない拳でクローンの左腕が折れた。

ミサカ10032号「うぐっ!?」

一方通行「自分の手を痛めずに相手を殴る方法って知ってっかァ?」

つづけて、ちょっと小突いただけの蹴りが入る。

傍から見れば、コツンと当てた程度にしか見えないというのにクローンは凄まじい勢いで吹き飛んだ。


一方通行「人間サッカーボールってやってみたかったンだよなァ」

彼が蹴るたびにクローンの身体が何度も宙を浮いた。

それを4,5回やられた頃には彼女の意識が朦朧としていた。


ミサカ10032号(ああ、これが…10032番のミサカの番も…これまでですね)



黒猫「にゃー」


今にも目を閉じようとしていた瞼が今の音で見開いた。

ミサカ10032号(まさか、ついてきてしまった!?)

こんな戦場にきてしまえば、黒猫の身の安全など保証はできない。

一方通行に黒猫を外に出すだけの時間の猶予をくれるだろうか?

…いや、実験を迷い込んだ動物で中止していいわけがない。

それに飼い主のいない野良猫が実験に巻き込まれた所で、誰も悲しまない。


黒『俺から見れば同じだな』


ミサカ10032号(やっぱり違う、ミサカが死んでも誰も悲しまないけど、この猫が死んだらミサカは悲しい。)

黒猫は起き上がらないクローンを心配して顔を舐めはじめた。

ミサカ10032号(あなたも…ミサカが死んだら悲しい?)

願望という自我を持った時、それはクローンの中の一人から少女になったと言ってもいいかもしれない。



黒『お前はあの猫と一緒に逃げればいい』


また少女はあの男の言葉を思い出す。

猫を抱きかかえると少女はボロボロな身体を引き釣りながら走りだした。


一方通行「こいつでオシマイっと」


逃げる少女に向かって、能力を使って足元のレールを砲弾のように弾きだした。




―――ドォオン!



レールの落下点は確実に少女に当たるように調整された攻撃だったはずだったが

横から引っ張ったら妨害者がいたおかげで、レールは少女を串刺しにしなかった。

ミサカ10032号「あっ…」

横から引っ張った存在は、あの時の男だった。



黒「何をやっている…」

ミサカ10032号「あの時のウソツキ男、とミサカは驚きます」

黒「まさか逃げる気か?本気にしたとはな」

ミサカ10032号「煽ったのは貴方でしょ、とミサカは抗議します」

黒「まあな」



冥土帰しの病院の住所が書かれたメモを少女に握らせた。

ミサカ10032号「これは?」

黒「駆け込み寺みたいなものだ。時間稼ぎぐらいはしてやる」

あのカエル顔の男ならばこっちの事情を察してくれるだろう。

ミサカ10032号「これはミサカの問題で、貴方を巻き込むわけには…」

黒「いいから行け!」

黒の怒鳴リ声に少女は猫を抱えたまま歩きはじめた。


一方通行「おいおい、部外者がなンなンですかァ」

少女のもとに向かおうとした一方通行に対して、黒は足元の砂利を手で拾って投げつけた。

もちろん砂利は一方通行のベクトルの自動反転で全て黒の方向に戻っていく。


一方通行「アァ?もしかしてオマエ、俺に喧嘩売ってンのか?」

黒(あのクローン…いや、あの娘が姿を逃げるだけの時間を稼ぐ)

黒「最強を自負しているんだってな…挑戦者が現れたら受けてくれるのか?」

今すべきことは学園都市最強の一方通行を倒す事ではない。必要なのは時間稼ぎ…!


一方通行「オマエ、何ンだ?もしかして正義の味方気取りですかァ?襲われてる女の子を救ってる俺カッコイイとか思っちゃってる系?」

一方通行は大笑いしながらゆっくりと黒に近づいてくる。

一方通行「あの人形は助ける価値もないンだよ。っておっとこれは言っちゃいけない事だったかな」


黒「受けるのか受けないのか、どっちだ?」


ジリジリと一方通行と黒の距離が詰められていく。


一方通行「…関わったオマエの不幸を恨ンでくれや」

地面を足元の砂利を蹴りつけた。

ベクトル操作により、爆発したかのように砂利が飛び散る。

黒はその衝撃に吹き飛ばされるが、怯んでいる暇はない。続けてレールが飛んできたからだ。


黒(殺気…!)


前に黒が一方通行に対して感じていた違和感…それは殺気だ


人を殺す時、大半の人間はそこには何かしらの覚悟をしなければいけない。

その覚悟した状態の時、人は通常ではしない不自然な動作や場が発生する。

その不自然さを感知できた時、それを人は「殺気」と呼ぶ。

プロの殺し屋は人を殺す時に発生する不自然さ極力無くす事で「殺気を消す」と言われいる。


ただし快楽殺人者にとっては自然な欲求行為のため、元から殺気がない事が多い。


覚悟が必要ないからだ。


一方通行には殺気を感じることが出来た。

黒が一方通行が快楽殺人者としては奇妙さを感じていたのは、殺気があるためである。



――――ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!


数本のレールの雨を黒はよけながら一方通行に肉薄していた。

一方通行(正気か?こいつ俺に接近戦をしよォっていうのか?)

レールの雨を避けたことよりも、自分に近づいてきた事に一方通行は驚いた。


黒は左腕を前に差し出した構えになっていた。

接近戦をする際に基本的に、まっすぐに立つ姿勢は良しとしない。

相手の攻撃を正面から受けてしまうからだ。

黒の構えには、もう一つ理由がある。

左肩を正面にした際、右腕は自分の身体で隠すことが出来る

相手に自分の『手』を見せないための構えでもある。

対して、一方通行はそれに対して大の字のように身体を大きく広げて黒を迎え撃つ


一方通行「触れば即アウト、そこンとこよく理解してますかァ?」


一方通行の左腕が大きく振りかぶられた。

一方通行「アァ?」

黒は振りかぶられた腕を避けつつ、回り込んでいた。

一方通行(偶然か?)

再度、黒に触れようと手を伸ばすが触ることができない。

近接戦闘術を学んでいない一方通行がビギナーズラックで黒に触れることはできるだろうか?

もしそんなことができるなら、黒は5年以上前に死んでいる。


黒(接近するとよく分かる、こいつの呼吸法が)

呼吸はその人間のリズムを形成する。

人は息を吸う時の攻撃と、息を吐く時の攻撃のしやすさは格段に違うのだ。

格闘技でも息を吐き出しながら攻撃を出す事が多い。

また大声を出すことで潜在的リミッターを外そうとする事もある。

そのため呼吸を相手に悟られるということは、攻撃をするリズムを悟られるということに等しい



一方通行(こいつ…!)

一方通行は至近距離で相手を見失うと言う経験を初めてした。

距離は1メートルもない人間が消えるのだ。

実際は黒が一方通行の振り回す腕に合わせて回り込んでいるだけにすぎない。



しかし、そこまでなのだ。

攻撃を避けれるからと言って…それが勝てると言うことではない。


埒があかないと思った一方通行は地面を蹴って砂利をふっ飛ばした。

その動作をすでに見ている黒はバク転で退避していた。


一方通行「おいおい、あンだけ大見得きって逃げるだけですかァ?」

黒(まずいな、こっちが攻撃しない理由が時間稼ぎだと思われるのはよくない)

だが攻撃すれば全て反射さえる以上、迂闊に攻撃などはできない。


黒(あれを使うか?)

組織の用意させた特殊な銃を取り出した。


パァン!


ただの銃と比べると強烈な音が鳴り響く―――

黒が撃った銃は空気砲と呼ばれる空気の衝撃を相手にぶつける銃だ。

御坂美琴が一方通行に挑んでから黒は考えていた。

いずれは自分が戦う機会があるかもしれない。そう思った黒が用意しておいた銃の一つだ。


―――――しかし、空気の衝撃は一方通行には効かなかった

一方通行が受けるはずだった衝撃はそのまま黒に跳ね返ってきて、黒がふっとばされることになる。



一方通行「面白い武器を持ってるなァ?残念だが固体じゃなくてもベクトルの変換ができるンだな、これが」

黒「…くっ」

黒も薄々は一方通行に効かない可能性が高いだろうと察してはいた。

そもそもこの銃の目的が実際に『気体がベクトル変換の対象になるかどうか』を確認用の武器である。


一方通行「さて…そろそろ飽きてきたから終わりにしよォか三下」

一方通行はそう言うとコンテナの上に飛び乗っていた。


ガンッ!


一方通行が足場にしているのコンテナの隣のコンテナを蹴りつけた。

コンテナが凄まじい勢いで飛んてきたので、黒は横っ飛びをしてギリギリ回避した。


一方通行「ほらほら、倉庫番のお仕事だぜ?」

一方通行は次のコンテナに移りながら次々と黒にコンテナを飛ばし続けた。

何十トンのコンテナにすり潰されれば、ミンチより酷い結末が待っている。

凄まじい音を鳴り響かせながらコンテナが吹っ飛んでくる。

黒(こいつは派手な攻撃じゃないと気がすまないのか?)

黒も避けることに少し余裕がなくなってきた。

そんな時、コンテナの破損して中身が漏れ始めた。



黒「これは…小麦粉?」

一方通行「なァオマエ…粉塵爆発って言葉ぐらい聞いた事あるよなァ?」

黒「…チッ!」

一方通行はコンテナを蹴ると、ベクトルを変換して火花を無理やり起こさせた。



―――――爆音



黒は爆発の衝撃でかなりの距離を吹き飛ばされていた。

体中に痛みが走る…その中で特に右腕の感覚がおかしかった。

おそらく右肩が外れたのだだろう。

黒は近くにあるコンテナの壁に右肩をあてて無理やり力を入れて押し込んだ。


―――――ゴキッ

黒「ぐっ!」



そんな黒にゆっくりと一方通行が近寄ってくる。

一方通行「さっき経験したばっかじゃねェか、酸素奪われるとこっちも辛いンだっつの。あー死ぬかと思った。喜べ、オマエ人類初じゃねーか?俺を死ぬかもしれねェとこまで追い詰めるなンてさァ」

黒(時間はそれなりに稼いだ…こっちも逃げ時かもしれない)

ダメージもかなり蓄積している以上、戦闘行為を継続するのは危険かもしれない。

黒は一方通行から逃げるように走りだした。





一方通行「逃げるンですかァ?いくらオマエが三下だろうと無謀にも最強の俺に挑ンでみよォだなンて、お灸は必要だよなァ?」

再びレールの雨が黒へと降り注ぐ。



――――ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!


最初の時のように黒はレールの雨を避け続ける。

だが、さっきとは違うのは黒は思ったよりダメージを蓄積していることだった。


黒(足が取られるッ!?)




    そのレールはよけれない




―――――――――――――グシャッ



何かが黒を突き飛ばして、レールから守った。


その代わり、突き飛ばしてくれた自身が貫かれることになったのだ。


そこには戻ってきたミサカ10032号の姿だった


黒「何を…何で戻ってきた!」

ミサカ10032号「やはり…部外者の人に…迷惑をかけれません」

黒「馬鹿な!今ここにいることが迷惑だ」

ミサカ10032号「最後に…わがままを言わせてください…黒猫をお願いします。」

黒「…黒猫はお前が救いたかったんじゃないのか!」

ミサカ10032号「もう…今……頼れる…の…貴方しかいません」

黒「…わかった」

少女はそれを聞くと、無表情だった顔がすこし笑っているようだった

ミサカ10032号「あ…………」

最後になにかつぶやいて、彼女はまぶたを閉じた



黒「…」

一方通行「戻ってくるとは追いかける手間が省けたなァ。」




次の瞬間、黒は一方通行に向けて空気銃を構えた。


もちろん一方通行に撃てば、その衝撃は黒に返ってくる。

そんなことは知っている


―――パァン!


跳ね返ってきた衝撃で黒は吹っ飛んだ。


だが立ち上がり、また一方通行に向けて撃った。


―――パァン!    パァン!    パァン!

その攻撃は一方通行を攻撃するためにしているのではない

自分を攻撃するために、一方通行のベクトル反射を利用しているだけにすぎない。


ただの自虐行為


一方通行「アァ!?」

その行為に一方通行も驚きを隠せなかった


そして空気砲の弾が切れた。


  ◇  ◇  ◇  

眼の前に居る男が、学園都市最強であろう、

まだ未成年の少年であろうと

人を殺すことにまだ 覚悟を必要とする人間であろうと



――――そんなことはどうでもいい

  ◇  ◇  ◇  


その瞬間で雰囲気が変わった。一方通行はそう思った。

一方通行(これは…なンだ?)

いままでクローンと戦ってきた一方通行が経験しなかった事。

殺気にあてられているのだ。


黒は銃を投げ捨てると一方通行に突撃し始めた。


一歩通行「トチ狂っちまったかァ?」


接近はさせまいと足元の砂利を四散させる。

しかし体中に砂利が突き刺さっても黒は止まらない。

ならばと触れようと手を伸ばしたが、回りこまれて一方通行は一瞬で背後を取られた。


黒はもうひとつ空気砲とは違う用意しておいた銃を取り出した。普通の銃と比べるとそれなりの大きさである。

一方通行がこちら振り向こうとした瞬間、彼の顎に向かって…ベクトルの自動反射が発生するギリギリの所で




黒は引き金を引いた。


その銃は何かを発車する銃ではない、いや銃のように見えるのは相手に『何かを発射する装置』だと思わせるため


実際は違う。



掃除機や真空ポンプのように物を吸い取る装置を銃に似せているにしか過ぎない。

空気が装置の銃口へ向けて引っ張ろうとしている力が働く。

それは一方通行から離れようと物体が外に逃げようとするベクトルが発生する

だが一方通行の自動反射がそれを許さない。ベクトルが反転する。

本来引っ張られるはずの反転した空気の層が一方通行の顎へぶち当たる。


一方通行「アッ?」

なにか喋ったと思ったら、そのまま白目になって崩れ落ちた。



一歩通行の顎狙ったのは、脳震盪を起こさせるためだ。

学園都市の能力者が脳を使って演算をしているのならば、脳への攻撃はその能力の根源の直接攻撃とも言える

つまり、今の一方通行は演算が出来る状態ではない。


地面に倒れている一方通行を見ながら…黒は彼を踏みつけた。


黒「…」



あとは足から電気を流して 心停止させればいい――――




「待ってください、とミサカは今にも一方通行を殺そうな貴方を止めます」




そこには御坂のクローンが居た


黒「お前は…」

ミサカ10033号「それ以上の戦闘を続行するようでしたら、私達シスターズが相手をします」

10032号の死体を回収に来たクローンが、実験の要である一方通行を守りに来たのだ。

黒「こいつを守るというのか?!」

ミサカ10033号「正確には違います。貴女を守ることにもなるのです、とミサカは言います」

黒「…何」

ミサカ10033号「一方通行を殺せば貴方は殺人者として学園都市で指名手配をされてしまいます、とミサカは説明します」

黒「それがどうした!」


ミサカ10033号「あなたはシリアルナンバー10032に猫を任されたのではないのですか?その猫をあなたの指名手配の旅に付き添わせる気ですか?」



黒猫「にゃー」

10032に置いていかれた黒猫が近くで泣いていた。

先程まで鬼神の顔をしていた黒であったが、一方通行を踏みつけるのをやめて黒猫の所まで行くと抱きかかえた。


黒「あの男はどうする気だ」

ミサカ10033号「一方通行は私が回収します。この様子だと中度の脳震盪のようですね…救急車を呼びますが、貴方も乗りますか?とミサカは訪ねます」

ボロボロな黒を気遣ってクローンは提案したが、無言で黒はその場をさろうとしていた。

ミサカ10033号「待ってください。」

呼び止められたので、黒は足を止めた。

ミサカ10033号「シリアルナンバー10032は最後に貴方に ありがとう と言っていました、とミサカは最後のメッセージを伝えます」

黒は返事もせず、振り返りもせずにまた歩きはじめた。


  ◇  ◇  ◇  

黒はバス停の椅子に座るとそのまま横になって倒れた。

戦闘中は集中のしすぎで気が付かなかったが、戦いが終わった今のほうが全身が痛くて歩けそうになかった。

黒(思ったよりダメージコントロールしきれていない…ここで少し休もう…)

黒のまぶたがゆっくりと閉じられた。

黒猫「にゃー」


抱きかかえてる黒猫が心配そうに鳴いている。


そこで黒の意識は遮断された。


そして目が覚めると、病院のベッドの上だった。

土御門「よお、黒の死神は不死身だにゃー」

黒「お前が運んだのか?」

土御門「まさか?俺は病院に運ばれたと聞いて、こっち来たら偶然お前が起きただけなんだぜい?」

黒「そうか…」


土御門「あの例の調査、実験中止になったからもう必要ないんだにゃー。」

黒「中止…?」

土御門「なんでも、学園都市最強が能力使用を確認できない相手に敗北したのが印象が悪かったらしい。」

サングラスの男は不敵に笑ってみせた。

そんな時、二人はドアの近くに人がいる気配を感じ取った。

土御門「おっと来客のようだにゃー。オレはクールに去るぜ」

そのまま窓からサングラスの男は飛び出していった。

黒はそんな土御門を見た目と反して油断のできない男だと思った。


そして、ドアから入ってきたのはあの御坂美琴であった。

御坂「あ、もう大丈夫なの?」

黒「……御坂さん?どうしてここに?」

御坂「どうしてって、アンタがぶっ倒れてるのが悪いんでしょうが!」

黒「もしかして、貴方が私を病院まで?」

御坂「救急車呼んだだけよ」

黒「はは、バス停で寝てる所を見られるなんて恥ずかしいですね」



御坂「ねえ、アンタ全部知ってたの?クローンも、実験も…」


御坂美琴はあの時、ミサカ10032号がレールで貫かれた後あたりから見ていたのだ。

と言っても、遠くから見ていたため一方通行をどうやって倒したかまではわからない。

この目の前の男があっという間にあの学園都市1位を無力化したとだけはわかる。



黒「それを知って、どうするんですか?」

御坂「だって…あの実験は全部私のせいで」

黒「いいじゃないですか」

御坂「え?」

黒「全部、終わったんですよ。だったら貴方は元の居場所に戻るべきだ」

御坂「全部…終わった…?」


黒「あの実験は中止になったんですよ」

御坂「やっぱり、知ってるんじゃない!」

黒「それに、友達を心配させちゃいけませんよ?」

黒がドアの方を指をさすとツインテールの人影があった。

御坂美琴を追って白井黒子が病院までこっそりついてきていたのだ。



黒子(あわわ、やはりお姉さまが逢引逢引逢引逢引…)

ガラッ

御坂「黒子ォー!」

黒子「ひゃい!?ってお姉さま!な、なんて偶然、おほほほ」

御坂「はぁ…もういいわよ一緒に帰るわよ」

御坂(黒子が居たら聞けないか…)


リーと言う男が何者なのか。御坂美琴には唯一その謎だけが残った。


  ◇  ◇  ◇  

マオ「なんであんな無茶したんだ?」

黒「何のことだ?」

マオ「誤魔化すな、なんであの実験に割り込んだ」

黒「黒の死神として、学園都市1位に挑んでみたかっただけさ」

マオ「……まあ、そういう事にしておいてやる。で、あの黒猫どうするんだ?」

黒「どうするもなにも、こうするしかないだろ?」

マオ「この三毛猫の体からあっちの黒猫に移っていいか?俺は黒猫の方が…」

そこまで言ってマオは黒からギロリと睨まれた。

マオ「いや、なんでもない」


車椅子に乗っている欠陥符号の膝の上には黒猫が乗っていた。


シスターズ編 おわり

  <⌒/ヽ-、___ いっその事、木原神拳のほうが良かったかもしれない
/<_/____/ 


   ∧∧

  (  ・ω・)投下
  _| ⊃/(___
/ └-(____/

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


路地裏で動く影が3つ

二人はガラの悪そうな格好をしていて、一人を殴ったり蹴ったりしていた。

それが終わると、一方的に攻撃されていた方の男がお金を二人に差し出した。


不良A「次も金用意しろよ、もりさきくぅ~ん!」

不良B「来週ゲームの発売日だからぁ、来週もヨロシクぅ!」



二人が去って行くと、半べその男はゆっくりとその場から離れようとした。


男「くそ…俺にだって能力が使えるほどレベルが高ければ」


顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっている。

そんな彼の前に、不潔そうな姿の男が現れた。



「…やつらに復讐する能力がほしいか?」

男「え?」

「能力が欲しいのだろう?」

男「あ、アンタ…誰だ?」



「私がお前に能力を授けてやろう。契約者としてな…」


男「契約?なんかサインをするのか?」

「サインか、そうだなこの花をちょっと身体につけるだけでいい。」

男「黒い…タンポポ?」


黒は禁書目録との約束でプラネタリウムに行く準備をしていた。

禁書目録は朝からはしゃいでいる。

禁書目録「ねえ、リー。スフィンクス何処行ったかな?」

黒「さっき外に散歩に行っちゃいましたよ」

禁書目録「むむむ…一緒にプラネタリウムに連れて行こうと思ったのに」

黒(マオのやつ…また欠陥符号のとこに行ってるな)



二人はバスでプラネタリウムまで向かった。

世間では夏休みだと言うのにプラネタリウム行のバスには余り人が乗っている様子はない。

偽物の星空になってから人は星に対して興味を失ってしまったのだろうか


黒「ここでバスを降りたら…ほら、あの施設ですよ、プラネタリウム」

禁書目録「わあぁ!わああぁ!はやくはやく!中にはいるんだよ!」

黒「ちょっと待ってください、入場券買ってきます」



はしゃぐ禁書目録と一緒に黒はプラネタリウムの受付の所まで行くと二人分の入場券を頼んだ。

受付「お子様は中学生以上ですか?」

黒「え?」

受付「失礼致しました、小学生までのお子さんと保護者同伴ですと親子料金でお安くなっておりますので」

黒「ああ、なるほど」


黒との身長差を比較して所為だろうか、禁書目録は小学生に間違えられたのだろう。



禁書目録「なるほど…じゃないよ!ちょっとリー?」

黒「ははは、大人2枚で大丈夫です。」

受付「ああ…!失礼致しました」



禁書目録「私子供じゃないんだから!これでも立派な、れでぃってやつなんだよ!?」

黒「まあまあ、パンフレットはいかがですか?レディ?」

禁書目録「んもう……プラネタリウムって何があるんだろ、なんか上映するみたいだよ!」

黒「夏の星座の由来をアニメーションでやってくれるみたいですね。テレビでよく出てるタレントが声を当てるみたいですよ」


何よりメインはやはり、本当の星空を擬似的にスクリーンを映しだすこと

黒はそれが見たかった。

スクリーンに擬似的に星空を上映され、ナレーターがそれぞれの星座の解説をしていく。

禁書目録はわぁあっとバーチャルな星空に感動を覚えて、テンションが上がっていた。




だがそのテンションは隣に座っている彼を見た瞬間に吹き飛んでしまった。




彼は涙を流していた。




はたして本当にプラネタリウムに感動して泣いているのだろうか?


彼の表情は感動ではない… 喪失を実感したものに表情。



過去に未練があるのだ。記憶に未練があるのだ。


彼の流している涙はそういう涙。


禁書目録(私はなんて愚かなんだろう。私が過去の記憶に執着していなくても、リーが過去の記憶を取り戻したいと思っているかもしれないのを私は全く考えていなかった…!)

禁書目録は鋭い刃物で突き刺されたかのような感覚を胸に覚えた。

目の前の彼が記憶を失ったのは自分のせいなのだから



  ◇  ◇  ◇  


アンチスキル「容疑者はまず家族を刺殺。次に接触したスキルアウトを2名が死亡、そのあと容疑者は力尽きて亡くなったみたいですね」

黄泉川「容疑者の能力はデータベースではレベル1の発火能力者じゃん?でも、死んだ二人は火傷すらしていないのだろ?」

アンチスキル「ええ、なにか強力な力で潰されて死んでいます」

黄泉川「容疑者は別に居る可能性は?」

アンチスキル「どうですかね、監視カメラではその時間帯で彼ら以外に人の姿は無さそうでした。」


黄泉川「あと…気になるけど、この枯れてる花はなんじゃん?」

アンチスキル「なんでしょか?」

ノーベンバー11「タンポポ…ですかね」

黄泉川「またあんたは勝手に現場にやってきて、迷惑じゃん!」


エイプリル「ごめんなさーい、今回は野次馬じゃなくてお仕事なの」

ジュライ「……」

黄泉川「子供まで連れてきてお仕事って何…って、電話?ちょっと勝手に入らないように抑えておいて!」

アンチスキル「ハッ!危ないので皆さん下がっててください」


黄泉川「どうしたじゃん?」

上司『今そちらに、例のイギリスの大使館から派遣された3人は居るかね?』

黄泉川「居るけど、毎回毎回現場まで来て厄介じゃん。」

上司『彼らはMI6…イギリス情報局秘密情報部の人間だ』

黄泉川「ただの外交官じゃないとは思ってだけど、ずいぶんな連中じゃん…」

上司『今回の事件…アンチスキルは彼らに全面的に協力する事が決定したので、よろしく頼む』

黄泉川「ちょっと!?っち、切りやがったじゃん」


ノーベンバー11「ということで、よろしく…アイホ」

黄泉川「はぁ…」


  ◇  ◇  ◇  


――――事件発生の数日前


ディケイド『ノーベンバー、調子はどうだね』

ノーベンバー11「可愛らしい女性は沢山居て言うことなしですね。なによりですよ、食事も美味しい!これは素晴らしいことです」

ディケイド『ん、ん!仕事の話だ』

ノーベンバー11「学園都市に来てから、一度だけ201BKとは接触がありました」

ディケイド『そうか、キミにしてはあまり順調ではないようだな』

ノーベンバー11「これは手厳しい。その通りですが」


ディケイド『しばらくはその任務から離れてもらう』

ノーベンバー11「ん?…何かありましたか?」

ディケイド『パンドラから黒の花という謎のキーワードを入手したのだが、それが厄介そうでな』

ノーベンバー11「黒の花…ブラックバカラですか?」

ディケイド『詳しくはわからん。我々と縁のある派閥とは対立関係の派閥が進めているため、思うように情報が入手できなくて困っていたのだが…その花を学園都市に持ち込むと情報を入手した』

ノーベンバー11「ほお、それで我々の出番と」

ディケイド『日本の組織を利用しても構わん…徹底的に調べろ。その計画が万が一、"人間"にとって危険であれば』

ノーベンバー11「潰せ、ということですね」


  ◇  ◇  ◇  

エイプリル「つまりこれが、そのターゲットの可能性と」

ノーベンバー11「…なんだと思います?」

エイプリル「黒いチューリップが、私のことを忘れてください。黒いコスモスが、恋の終わり。じゃあ黒のタンポポは何になるのかしらね?」

ノーベンバー11「元のタンポポ自体の花言葉は種類が多すぎますよ」


エイプリル「上はこれが契約者絡みと?」

ノーベンバー11「死亡した二人、あれは重力系の能力者がよく使う体重を何倍に増幅させて殺すやり方です。学園都市にそういう能力を使える人間にアリバイがあれば」

エイプリル「自然と、契約者ってこと?」

ノーベンバー11「学園都市の能力は必ず都市の能力開発を受けなければいけない。つまりデータ漏れはないと仮定した場合ですがね」

ノーベンバー11(と言ってもその他にオカルトな力を使う者が居ないわけでもないですが)


  <⌒/ヽ-、___ 書き溜めおわり
/<_/____/ 

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年09月05日 (金) 10:54:08   ID: h4-5Mzeh

クロス良し展開良し描写良しの三拍子
でも唯一残念なことは黒の能力が電気操作だと思われてること
物質変換で黒と一体化してる白の能力のオマケが電気操作だから
まあ記憶喪失で失念してたのかも知れないが

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