マリ「幸せのカタチ」(531)

マリ「わんこ君に私が今から質問します」の一応続きになります

ただ、内容は全く別物で暗いし不快な表現をオンパレードさせます

のんびり投下していくつもりなのでまたのんびりお付き合い頂ければと
思います


では、よろしくお願いします

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1359897278

ミサト「アスカ、最近学校の方はどう?」モグモグ

アスカ「普通よ。変わったこともないし」モグモグ

ミサト「そう。何事も普通が一番よ」

シンジ「・・・」カチャカチャ

ミサト「・・・シンジくんは今日もマリのとこ?」モグモグ

アスカ「・・・」ピタ

シンジ「はい」カチャカチャ

アスカ「・・私もういらないわ。部屋にもどる」バンッ

ミサト「ア、アスカ!」

アスカ「・・・」スタスタ



ガチャン




シンジ「・・・」カチャカチャ

ミサト「・・・」モグモグ



何でこうなってしまったんだろう



20××年、使徒との戦いに人類が勝利してもう四年が経つ

人々は何かに脅かされる心配もなくなり誰しもが平和を謳歌できる時代になった

当の渦中にいたパイロットの四人も変わった

良い意味でも悪い意味でも



アスカは日本に残り、高校に進学。毎日充実した日々を送っているようだ

レイは進学はせずネルフでリツコの指導の元、働きながら忙しい毎日を過ごしている

ただ


シンジ君とマリは



シンジ「ミサトさん、洗い物は流しに置いといてください」フキフキ

シンジ「僕、部屋に戻りますから」

ミサト「シンジくん」

シンジ「なんですか?」

ミサト「・・・マリは元気だった?」


シンジ「ミサトさん」

シンジ「よく僕に『マリが元気だった?』なんて聞けますね」イラッ

シンジ「・・・」スタスタ


バタン

ミサト「バカね、私」

ミサト「もう、あの頃みたくシンジくんが笑ってくれるわけないのに・・・」ポツーン





歪んでしまった



碇シンジの日常



シンジ「ーーーっと買い物はこんなもんでいいかな」ドサァ

「ねぇねぇ、ママあれ買ってよー」

「駄目よ。棚に戻してきなさい」

早朝から人が賑わうスーパーの中、大量の食材を買い込んで僕は呟く

シンジ「早く、マリの所行かないと」

シンジ「・・・」スタスタ


数分もしない内にマリの住むマンションの一角に着いた

慣れた様子であまり意味のなさそうなエントランスのロックを開け、エレベーターに乗り込む


ガタン、ガタン


あちこちガタがきているのか軋む音がよく聞こえる


チーン


エレベーターを降りてマリの部屋のインターフォンを押すとガチャガチャと慌てるようにして扉が開かれた


マリ「わんこくん!?」ガチャン!

シンジ「おはよう、マリ」

シンジ「今日は買い物してたから少し遅くなっ」

マリ「遅すぎっ!わんこくんになんかあったんじゃないかって不安になるじゃん!?」ウルウル

マリ「携帯にメールしても電話しても返してくんないしさ・・」

ポケットに入っている携帯を見てみると確かにメールや電話がマリからかかってきている


『新着メール36件』

『着信52件』

普通ならおかしいと感じる連絡の数でも僕にはもう当たり前になっていた


シンジ「ごめん、買い物中はマナーモードにしてるからさ」

マリ「わんこくんマナーモード禁止!」ブー

シンジ「えー・・・」

マリ「でもこうして私の為に来てくれるわんこくんの忠犬っぷりに免じて特別に許してあげるにゃ!」

マリ「だからほら、早く中はいろ♪」グイ

シンジ「わっ!?急に引っ張られたら袋が落ちちゃうよ」


マリが僕の腕を引っ張る。

長い髪をなびかせ、とびっきりの笑顔で



ただ、僕は気づいた。

マリの左腕に走る痛々しく血を滲ませた傷痕に



マリ「ん、どうかした?」

シンジ「マリ・・・またやったの?」

マリ「ああ、これ?」

マリ「だってわんこくん遅かったからさ」

マリ「ちょっとザクッとね♪」アハ

シンジ「・・・後で包帯巻いてあげるよ」

マリ「いやぁ、なんか癖になっちゃって」

シンジ「頼むから自分をこんな風に傷つけるのはやめよう・・」

マリ「あ、気持ち悪い?やっぱわんこくんもこんな女の子嫌?」ジッー


シンジ「嫌じゃない。僕はマリが心配なだけだよ」

マリ「・・あは、あはは♪だよねぇ!わんこくんは私が心配なんだよね!」

マリ「優しいなぁ、わんこくんは」スリスリ

マリ「傷つくって良かったにゃあ♪」

シンジ「・・・」




自傷行為


マリは自分の体をよく傷つける。


理由は簡単で僕が心配するから


>>1です

久しぶりに携帯での投下を試してみたいと思います

またシンジになってたら笑ってください(´・ω・`)

シンジ「マリ、包帯まだあったよね?」

マリ「たしかわんこくんが前に買ってくれたの残ってたかな」

シンジ「そっか」


このマリと僕の奇妙な関係が始まってもう二年になる

二年前、久しぶりに顔をあわせたマリは昔のような快活な面影はなくボロボロに変わり果てていた


身勝手な大人達の言動と行為に振り回され、エヴァに乗る幸せすら奪われ、心身共に衰弱し今にもこの世界から消えてしまうかのように儚げに


その姿を見て僕は決意した


絶対にマリを一人にはしないと
せめて、僕だけは傍にいよう


シンジ「・・・マリ」ギュウ

マリ「わんこくん!?」

マリ「きゅ、急にするのは卑怯だにゃ///!」アタフタ



それが全てを犠牲にする結果になっても・・

真希波・マリ・イラストリアスの日常




マリ「わーんこくん!ご飯まだー?」

シンジ「少し待って。直ぐ出来るからさ」

マリ「もうお腹ペコペコで力がでないにゃ」グダー

マリ「餓死しちゃうー」テアシバタバタ

シンジ「それだげ喋れるならまたまだ元気だよ」クス

マリ「にゃふー」



いいなぁ

わんこくんが私の傍にいてくれるとあったかい気持ちになる

自分が一人じゃないって思えるんだ

エヴァに乗れなくなった時の絶望は今でもよく覚えてる

あの頃はどうやって死のうか、なんてばっかり考えてたけど


今は違う


わんこくんが私にはいる

わんこくんは私の全てを認めてくれたし理解してくれた


エヴァに乗ること以外の幸せを私に与えてくれた


マリ「しっあわせはー歩いてこない♪だーから毎日いくんだねー♪」

シンジ「それよく歌うよね」

マリ「好きなんだよね!古い歌だけど幸せな時にはこれ歌いたくなるにゃ」


シンジ「じゃあマリは今、幸せ?」

マリ「幸せだよー♪」

シンジ「そっか」ニコ


私の為にわんこくんが自分の生活を犠牲にしてくれてるのは分かってる

でも、私は戻れない

マリ「・・この幸せだけは誰にも渡したりするもんか」ボソ

エヴァは諦める

他のどんな物だってあげてもいい

けどわんこくんだけは誰にも渡さない

シンジ「ご飯できたよ」

マリ「まってました!」パチパチ

私にはわんこくんしかいないんだから

式波・アスカ・ラングレーの日常



「アスカおねがーい!」

アスカ「嫌よ」

「いや、先輩がさぁマジ紹介してってうるさいんだって」

アスカ「自分から誘いに来ないような軟弱な男には興味ないわ」フン

「うわ、きっつ」

「でもアスカってあんま放課後遊んだりしないけどバイトでもしてんの?」

アスカ「私がバイトなんてするわけないでしょ」

「先輩になんて言おう・・」


アスカ「じゃ、私帰るわよ。また明日ね」ヒラヒラ





「・・・アスカってほんと男に興味ないよね」

「むしろ女の子に興味あるとか?」

「ないわー。それはないわー」


「このあとどこいく?」

「んーカラオケとかでいんじゃね?」


帰り道、高校生のカップルが腕を組んでいちゃつきながら私の横を通り過ぎていく


アスカ「・・・ブスの癖して生意気よ」


超絶美人な私を差し置いてあんなブスにすら彼氏がいる

世の中不公平だ


アスカ「あのバカ今日はもう家にいるのかしら」


碇シンジ

バカシンジと言ったほうがしっくりくる

私の同居人で同じエヴァのパイロットだったヤツ

>>1です

のんびりですみません(´・ω・`)


ありふれた光景

満たされていた時間

でも

それは長く続かなかった



バカシンジがコネメガネに会いに行った後、学校を辞めるまで
は・・・


私やミサトは当然、問い詰めたし怒った

でもアイツは


シンジ『僕とマリは同じだから・・・僕が傍にいてあげないとダメなんだ』


それだけしか言わない


バカシンジとはそれ以来、まともに会話した記憶がない

朝早くマリの所に出掛けては夜遅くに帰ってくる

酷い時は朝帰りなんて日もあった

軽蔑した

罵ってやる、何度そう考えただろう

その度に楽しかった日々の記憶がフラッシュバックし邪魔をする

罵ってしまえばバカシンジは二度と帰ってこない


そんな気がして


アスカ「・・・アイツと話したい」

自然に口からでた言葉

きっとこれが私の本心

認めたくないけど私はあのバカがーーーー


アスカ「明日休みだし玉にはいいわよ」

アスカ「このアスカ様がまさかアイツを待つなんてね」フフ

そう一人呟き、歩く

足取りがいつもより軽い気がした




マリの部屋


ハー○ヅラァァァァ!!!ナーニハノシタノバシテンダテメェー!!?

ギャーッ!!ユルシテ○ギノー!!?




マリ「あはは♪この芸人面白いにゃー」ゴロゴロ

シンジ「マリってさ、笑いの沸点意外と低くない?」

マリ「えーそっかにゃあ?」ゴロゴロ


僕の一日はマリと過ごして終わる

ご飯を食べて二人でゲームをしたりテレビを見たり

外に行くこともあるがマリは外に出るのを嫌がるので稀にだけど


何をするわけでもなく一緒にいる

マリは僕がいる間は僕の傍を離れたがらない


今だって膝の上で猫のようにじゃれてくる

一時期はトイレまで着いてきたのはビックリした

マリ「わんこくん私髪そろそろ切った方がいいかなー」マエガミイジイジ

シンジ「なんで急に?」

マリ「流石に長くなってきたかなぁって」

シンジ「似合ってるからいいと思うよ」

前よりもずっと伸びた髪。腰まで届くかもしれない

それでも不潔な印象よりも神秘的な印象の方が似合うのはその容姿のせいだろう


整った顔立ちは年月を経てより綺麗に

子供離れしてた肢体はより大人らしくへ変わって

もし、マリが学校に通ってたら間違いなく異性の注目を浴びただろう


マリ「そっかーわんこくんが似合うっていってくれるならこのままでいいかにゃ♪」スリスリ

マリは照れ臭そうに嬉しそうに体を預けてくる

そんな彼女を見ていると僕は幸せになる

マリが僕に依存しているとミサトさん達、大人は思ってるかもしれない


でも違う


依存しているのは僕だ


誰から見向きもされない自分が嫌いだった

結局はエヴァを動かす道具でしかなかった自分が嫌いだった


それでも


必要とされた事が嬉しかった

エヴァに乗れば皆が僕を大切にしてくれる

でもエヴァがなくなった世界でどうすればいい?

また、一人に戻るのが怖かった

そんな僕をマリは必要としてくれた

こんな自分でも自分が嫌いなヤツを

シンジ「マリ」ギュウ

マリ「にゃ///!?」

マリ「えと、わんこくんから抱きしめられるなんて久しぶりかも///」

シンジ「ごめん。嫌だった?」

マリ「・・・嫌なわけないじゃん」ギュッ

ありがとう、マリ。君のおかげで僕は救われた。

だから

君は僕が救うよ

マリ「ねーわんこくん」

シンジ「なに?」

マリ「今日帰るの?」

シンジ「・・・最近、ミサトさんによくマリのこと聞かれるんだ」

シンジ「マリと会うなって言われたら嫌だし帰るよ」

シンジ「また明日もく」



マリ「んー手首は飽きたから次はもっと血がでるとこにしよっかにゃ」ニコ


そう言って笑うマリの目には光がない。

本気でマリは僕が帰ったらまた自傷するつもりだろう


・・今日は帰るのが遅くなりそうだ

>>1です

更新遅くて読んで下さってる人には申し訳ないっす



深夜、葛城邸


ミサト「ただいまー」

玄関のドアを開けて部屋に入る

こんな深夜に帰宅するのは久しぶりだ

もう二人はきっと寝てしまっただろう

ワハハー

コンカイノ、ショウヒンはデスネ!ナント・・

オオーッ!


そう思っていたらテレビの音が聞こえてくる。電気は消えているので消し忘れたのだろうか

ミサト「シンジくん、アスカ起きてるの?」

呼び掛けに返事はない

テレビを消そうとリビングに行くとアスカがソファーで横になっていた

ミサト「(なんだ。いるのね)」

ミサト「アスカーあんまり夜更かししちゃダメじゃない」

アスカ「ミサト」

アスカ「あのバカ、まだ帰ってこないのよ」

アスカの顔は無表情だった。何の感情を持たない人形のように

アスカ「暇だったから久しぶりに料理とかも作ったのにさ」

アスカ「携帯にメールしても電話してもぜーんぜんつながんないの」


薄暗いからぼんやりとだが結構な数の料理の皿がテーブルに置かれている

流しには悪戦苦闘した事を予想させる洗い物の山

ミサト「アスカ、あなた・・・」

シンジくんの朝帰りは珍しくはない

それとなく注意したことはあるが意味はなかった


でも


普段、作らない料理を用意してシンジ君を待った

アスカなりにシンジ君との関係を修復しようと努力した

昔のように、笑って過ごした毎日を取り戻そう、と

どんな気持ちで待っていたんだろう

一人で待ち続けるには広すぎるこの部屋で

アスカ「あーあ、私バカみたい」

アスカ「コネメガネとシンジはヨロシクやってんのに惨めよね」

アスカ「ミサトもそう思うでしょ?」

私は馬鹿だ

アスカは大丈夫。勝手に納得して結論をだしていた

この子も傷ついていたのに

アスカ「でももうわかった」

ミサト「え?」

レス増えててビックリした(´・ω・`)


アスカ「まともな子じゃバカシンジは相手にしてくれないのよ」

無表情だったアスカが笑みを浮かべ私を見た

その顔は私がかつて見たマリととても似ている


ミサト「アスカ・・・?」

声が震えた。目の前にいるのが自分の知っているアスカには見えなくて



それは



アスカ「なら私も壊れてやる」ニヤァ



獣にしか見えなかったから




翌日


シンジ「陽が眩しい・・・」


あの後もマリは僕が帰ると言うと自傷を仄めかせ結局
朝帰りになってしまった

シンジ「気まずいなぁ」


朝帰りは初めてじゃないしもう何度もしてる


マリが一緒にいて欲しいならそれを叶えてあげたい


でも同時にミサトさんやアスカに後ろめたさも感じてしまうのだ

シンジ「・・・今更なんだけどね」

自分勝手で最低だけどもう引き返せない

それは僕が選択した結果なんだから


そう、あの時にーーーーー









回想A





シンジ「綾波仕事の方はどう?」

綾波「普通よ」モグモグ

アスカ「フツーってなによフツーって」モグモグ

綾波「エヴァのパイロットの時と大して変わらないから普通」

アスカ「なによそれ。答えになってないっつーの」

ミサト「まあまあ、二人ともレイは頑張ってるわよー」グビグビ

ミサト「もう職場の男共なんてレイにメロメロなんから!」プハァ!

綾波「・・・葛城三佐。お酒臭いです」



綾波とアスカ、ミサトさんと僕の四人で集まるなんていつ以来だろう


ネルフで職員として忙しく働く綾波にミサトさんが企画した食事会

僕とアスカは高校生

綾波は社会人

それぞれ別々の道を歩んでいた

アスカは学校で男女問わず人気がある。性格も僕が言ったら怒るだろうけど丸くなった

綾波は昔よりも明るくなって社交的になった。以前のような取っつきにくい印象はもう感じられない


アスカも綾波も使徒と戦っている頃とは違う


綾波「碇君はどう?学校楽しい?」

シンジ「・・・僕は」

アスカ「根暗よ、根暗」

アスカ「クラスでも相変わらずウジウジしてるし昔のバカシンジとなーんも変わってないわよ」フン

綾波「・・・貴女には聞いてない」


アスカの言う通りだ

僕だけ何も変わらない

家事をして学校に行ってまた家事をしての繰り返しの日々


休日はアスカの買い物の荷物持ちをしたり、家でゴロゴロと過ごしている


エヴァに乗って使徒と戦う


それだけが消えて平和になった筈なのにぽっかりと隙間ができてしまった


アスカのように友達に囲まれて充実しているわけでもなく、綾波のように仕事をして毎日頑張っているわけじゃない



僕にはエヴァ以外何もなかった

綾波「・・・碇君?」

シンジ「あ、うん、学校楽しいよ平和だし」

アスカ「つまんないヤツよねー」

シンジ「別にいいだろ。どうせ僕は根暗でスケベで何の取り柄もないんだから」ジトー

アスカ「べ、別にそこまで言ってないじゃない!」

綾波「・・・碇司令からチェロが趣味って聞いたけどもうやらないの?」

綾波「学校のことはよくわからないけど吹奏楽とか」

シンジ「・・・」

父さん、覚えてたんだ。

でも

シンジ「いや、チェロはもう辞めたんだ・・・」

綾波「・・・そう。碇君の演奏聴きたかったわ」


シンジ「・・・」

綾波「・・・」


アスカ「ったく、なによこの空気は!?辛気臭くなるから黙りこむのやめなさい!」

シンジ「ご、ごめん」

ミサト「まあまあ、アスカ」

ミサト「シンジくんもこれから幾らでもやりたい事が見つかるわよ」

ミサト「焦らないでのんびり遊んだり勉強したりすればいいの。それが学生の本分よ」

シンジ「・・・はい」

アスカ「まあ、バカシンジは私が学校でも家でもしっかりと教育してやるから安心しなさい」フフン


ミサト「洗濯から料理まで何一つ出来ないアスカが言うと不安になるセリフねー」ププッ


アスカ「な、なによ?私は出来ないんじゃなくてしないだけっ !ミサトの方こそ三十路越えたクセに家事できないじゃない!」

ミサト「」グサ

アスカ「そんなんだから未だに貰い手が」


ミサト「アスカ。来月からアンタの銀行口座暫く使えなくするわ」

アスカ「はぁ!?」



ギャーギャー



綾波「・・・弐号機の人と葛城三佐、仲良いのね」

シンジ「・・・二人とも似てるからだよ」


アスカ

>>1です

60の続きから


アスカ&ミサト「似てないわよ!」



シンジ「・・・」ガチャガチャ

ミサト「シンジ君」

シンジ「あ、ミサトさん」

ミサト「レイは今、家まで送ってきたわ。洗い物いつもありがとね」

シンジ「いや、別に大丈夫ですよ」ガチャガチャ

シンジ「アスカは先にお風呂入ってます」

ミサト「・・・それとさっきアスカが言ったことあんまり気にしないで」

シンジ「・・・」ガチャガチャ

ミサト「アスカもレイもシンジ君が心配なだけなの。最近、元気ないでしょ?」

シンジ「僕は大丈夫ですから」ガチャガチャ

ミサト「・・・そう。ならいいわ」

シンジ「・・・」

ミサト「・・・」

沈黙が続く。
沈黙が嫌で僕は何気なくもう一人のパイロットの事を聞いてみた


シンジ「そういえば真希波はどうしてるんですかね」ガチャガチャ

ミサト「マリ?」

シンジ「ええ。あれから会ってないし、でも今も日本で暮らしてるって」

ミサト「マリは、そ、そのね」


ミサトさんが言葉を濁す。何かマズイことでもあるのだろうか

ミサト「・・・ねぇシンジ君」

シンジ「はい」

ミサト「今度マリに会いに行ってみる?」

シンジ「え?」

ミサト「マリはちょっと今病気でね」

シンジ「びょ、病気!?大丈夫なんですか?」

ミサト「病気といっても不治の病とかじゃないわよ」

ミサト「心の病気って言った方がいいかしら」

シンジ「心の病気・・・?」


どういう事だろう。心の病気?あの真希波が?


ミサト「同じパイロットだったシンジくんと会えば良い刺激になりそうだし」

シンジ「は、はぁ」

突然の話に僕はあまりついていけなくなっていた


ミサト「・・・私が会いに行っても駄目だった。同じパイロットだったシンジ君なら」ボソ

シンジ「何か言いました?」

ミサト「ううん。何でもないわ」

ミサト「これ、あの子のマンションの住所よ」スラスラ

そう言って紙に真希波の住所を書いていくミサトさん

ミサト「はい」

シンジ「・・・」

受け取った紙を見てみると意外と近くに住んでいるみたいだ

今まで会わなかったことが不思議なくらい

シンジ「本当に大丈夫なんですか?急に行ったりしても」

ミサト「だいじょーぶ、だいじょぶ!・・・多分」

シンジ「今小さい声で多分って最後言いませんでした?」

ミサト「あ、あはは」


ミサトー!アガッタワヨー


ミサト「あ!アスカお風呂あがったみたい。次入るわね 」ソソクサ


シンジ「あ、ミサトさん」

シンジ「・・・行っちゃった」ポツーン


何だか押し付けられる形になってしまったけど

心の病気。一体どんな病気なんだろうか

とりあえず、会いに行ってみよう

そうして僕はまた汚れた食器をひたすら洗う作業に戻っていった




回想B



シンジ「ここが真希波の部屋・・・」

ミサトさんから貰った紙を何度も見返し間違いがないか確認する

新しくもなく少し古びたマンション。他の部屋に誰かが住んでいる様子もない

僕は恐る恐るインターフォンを押した


ピンポーン


聞き慣れた機械音が鳴る。だが一向に誰かが出てくる様子はない


もう一度押してみよう



ピンポーン




やっぱり誰も出てこない

・・・ミサトさん間違えてるんじゃないか?

そう思っていたら返事が反ってきた


『・・・誰?』


間違いなく真希波の声


シンジ「えと、碇シンジだけど・・久しぶり」


『・・・わんこくん?』


シンジ「突然ごめん。ミサトさんから聞いたんだ」

『いきなりだね・・・何を聞いたの?』

シンジ「真希波がその、心の病気だって」

『・・・』


シンジ「あっ」

言って後悔した。なんてデリカシーのない言葉だろう

久しぶりに会いに来た奴が言う言葉じゃない

シンジ「・・・ごめん」

『・・・謝んなくていいよ』

シンジ「いや、あの』

もうなんて言ったらいいか分からない

シンジ「と、とりあえず中入ってもいい?」


僕はバカだ。何がとりあえずだよ

いきなり過ぎるだろ


『えっ』


ほら、見ろ。真希波も返事に困ってるじゃないか

シンジ「・・・もう帰るよ。急に来たりしてごめん」

シンジ「お土産じゃないけどケーキ買ってきたからドアの前置いとくね」

シンジ「・・・じゃあ」

結局こうなってしまうのか。自分に腹が立つ

逃げるように帰ろうとすると後ろからドアが開く音が聞こえた




ガチャ



マリ「・・・ひさしぶりだにゃ、わんこくん」ニコ

シンジ「ま、真希波」


二年ぶりに会った彼女は変わっていた

目の下には大きな隈

痩せ細った体

ぼさぼさに伸びた髪

余りにも痛々しいその姿にかつての面影はない

まるで亡霊のような姿

僕の知ってる真希波とはかけ離れていた

マリ「・・・中入るんでしょ?」

シンジ「あ、うん」

マリ「散らかってるけど気にしなくていいから」


そう言って真希波は部屋の中に戻っていく

シンジ「お、お邪魔します」

部屋に入り驚愕した

シンジ「(なんだよこれ・・・)」

あちこちに物が散乱している

いや、散乱というより災害でもあったんじゃないかと思う程荒れていた

ひしゃげた椅子

割れた食器

ビリビリに裂かれた衣服の山

マリ「そこガラスの破片あるよ」

シンジ「わっ!?」

足元を見るとガラスの破片が確かに散らばっている

マリ「適当に物どかして座ってにゃ」

そういって真希波はソファーらしき物体に座った

僕も少し離れた場所に腰を下ろす

マリ「あー」

シンジ「・・・」

マリ「わんこくん何しに来たんだっけ?」

シンジ「えと、久しぶりに真希波に会いに」

マリ「葛城三佐でしょ」

シンジ「え」

マリ「心の病気でとか何とか言われたんだろ?それで会いに行けってさ」

僕を見る真希波の目は冷たい。嘘は許さないかのように

シンジ「・・・うん」

マリ「やっぱそっか」

シンジ「真希波、その心の病気ってどういう」

マリ「わんこくんこの二年間楽しかった?」

唐突に真希波が聞いてくる

シンジ「それは・・・使徒がいなくなって平和になったし」

本当は楽しくない。

けど、それを言ったらこの二年間を否定してしまいそうで言えなかった

使徒と必死で戦ったあの日々さえも否定してしまいたくなかった

>>1です

更新遅くてすみません



マリ「私はね、毎日が地獄」ニコ

シンジ「地獄?」

マリ「そうだよー。家族もいないしイギリスにも帰る所なんてない。軍にだってエヴァに乗らなくなった私に居場所なんてないしクビだよ」

マリ「利用価値がなくなったんだろーね」

マリ「だから日本に残ったの・・・まだネルフ本部の近くにいればエヴァに乗れるかもって思って」

マリ「ぶっちゃけそんな機会なんてなかったんだけどね」ニャハ

マリ「葛城三佐や赤木博士にも何度も何度も何度も頼んだんだよ?乗せて欲しい、どんな実験テストでも構わないって」


真希波は捲し立てるように続ける


マリ「でね、こう言われたの


             エヴァはもう必要ない。


                               ってね」


マリ「じゃあ私はどうしたらいいの?エヴァに乗ることしか知らない私はいらないってこと?」

シンジ「そんな、いらないだなんて」

マリ「私ねエヴァに乗っている間は自分が一人じゃないって思えた」

真希波の話は止まらない。でも少しだけ感じた事がある

僕も一緒なのかもしれない

マリ「世界で唯一孤独じゃないって思える場所だった。それしか知らなくて良かった」

マリ「でもさ、知らない方が良かったよ。エヴァに乗る幸せを教えられて奪われるくらいなら」

シンジ「・・・」

マリ「でね、よくネルフのみんなにこう言われたんだー」


マリ「『マリならきっと大丈夫。これから色んな出来事があるしそれがエヴァに代わる喜びになるから』」


マリ「ーーーってさ」


マリ「そしたらもうダメ。もう目の前がさグニャアってなって落ち着かないの」

マリ「部屋で一人になると余計酷くなってね、だから物に当たったりしてこの有り様」


この有り様って。物に当たったってレベルじゃないような気がする。

・・・それだけ失意だったんだろう


マリ「葛城三佐もリョウジも最初は私を気にかけて家まで来てくれたりしてたんだけど」

マリ「これ見せたら来なくなっちゃった」グイ

真希波が左袖のシャツを捲る。


シンジ「っ!」


思わず息を飲んでしまった。左腕に醜く走る傷跡

一つや二つじゃない

何回も傷つけたような歪みがそこにあった


シンジ「それって・・・」

マリ「リストカットってやつ?痛みがね、私をグニャアから引き戻してくれるんだ」

マリ「こう、さ。血がツーって垂れて血の匂いがするとLCLに浸かってる気分になるし」

シンジ「真希波・・・」


病んでいる。

そう思わずにはいられない。なにより淡々と話す真希波を僕は怖く感じていた

マリ「・・・んー」ガサゴサ

話の途中で真希波は自分の周りで何かを探し始めた

マリ「お、あったあった」ヒョイ

目当ての物を見つけたようだ。しかし、視線の先にあったのは乾いた血がついたナイフ

シンジ「ま、真希波!?それ」

マリ「いや話してたらグニャアがね」

そう言って真希波は自然にナイフを左腕にーーーー






グサ






シンジ「痛っ・・・・!」

マリ「へ」


体が勝手に動いてた

右腕に鈍い痛みを感じる。


マリ「わんこくん何してんのかにゃ?」

シンジ「なにって・・・目の前でリストカットしようとしてるんだから止めるに決まってるじゃないか!」

マリ「ふーん」

真希波は不思議そうに僕の血がついたナイフを眺めていた

マリ「じゃあさ、こうしよう」

今度はそう言って唐突に真希波は着ていた服を脱ぎだす

シンジ「は!?」

マリ「んしょ」

下着なんて着ていない。目の前に真希波の裸体が露になる

痛々しい姿になっても劣情を掻き立てるには充分に成熟した体

シンジ「な、なにしてんだよ///!?」

見ちゃいけない。

頭ではそう思っても視線は釘付けだった


マリ「葛城三佐に感謝しなくちゃにゃー」

マリ「実は言うとさ」

その時、真希波は照れたように笑う

それは年相応で僕の知ってる真希波の笑顔だ

マリ「誰かと話すなんて久しぶりだったんだ」

マリ「わんこくんは優しいね。こんな私の為に身を挺してくれて・・・そんな君だからいいかなって思える」

マリ「私のこと好きにしていいよ」ニコ

マリ「わんこくんの望むままにめちゃくちゃにしていいから」

シンジ「意味がわかんないよっ!?」

本当に意味がわからなかった。話が二転三転して追いつけない

マリ「ちなみにまだヴァージンだにゃ」

シンジ「聞いてないよ!」

マリ「大丈夫!わんこくんが満足するまで付き合ってあげるからさー」ケラケラ

何が可笑しいんだ

だが次の瞬間、笑うのを止め僕を見据えて言った






マリ「そのかわりに私を殺して」







たった一言。

静寂が訪れるには充分過ぎる一言だった。


シンジ「・・・そんなことできるわけないだろ」

絞り出した声で言う

マリ「なんで?」

シンジ「なんでって当たり前じゃないか!」

マリ「わんこくん、私ねもう疲れちゃった」

マリ「叶わない望みにすがる日々も希望がない毎日を生きるのも・・・」

マリ「だから、もういいんだー」ニコ

シンジ「なんだよそれ・・・!死にたいなら勝手に死ねばいいだろ!?」


なんでそんな風に笑えるんだよ。

なんで僕に頼むんだよ。


マリ「んー何回か試そうとしたんだけど自分じゃ手が震えてダメだった!」

マリ「なんだかんだ私もビビりだにゃー」アハハ

シンジ「試した・・・?」

マリ「そ!」


無理だ。話なんて通じない

逃げよう。


マリ「わんこくんには分からないだろーなぁ。誰からも必要とされないって苦痛なんだよ?」

・・・今、真希波は何て言った?

シンジ「・・・え?」

マリ「存在意義なんてないの!人形おんなじ!」

マリ「それに自分だけ変われないのに周りは変わっていく」

マリ「葛城三佐がよーく聞かせてくれたよ。姫やレイちゃんのコト」

マリ「辛かったにゃあ・・・あれ」

僕と同じじゃないか

真希波も僕と同じ気持ちを抱えていたんだ

マリ「・・・でするんなら早くシよ?そろそろ寒くなってきたし」

シンジ「真希波」

マリ「にゃ?」

シンジ「僕は、君に生きて欲しい」

マリ「・・・は?」

シンジ「君は」

マリ「いやいや、それないわ。わんこくん空気読んでよ」

シンジ「だから、」

マリ「なに?説教すんの?人生は楽しいとか未来を捨てるな、とか」

マリ「・・・もうでてって。白けた」


失望したと言わんばかりの目で僕を見る真希波

だけど

シンジ「同じだよ!」

シンジ「僕も真希波と一緒だよ!誰から必要とされてるかもわからないし変われない!」

マリ「」ピク

シンジ「だから、一人じゃ」


マリ「ふざけんな」

マリ「ボクと一緒?この二年間私がどんな生活してたか知らない癖に」

マリ「それなのに一緒?バカにしてる?」

一応続きなんだよね?
パラレル?

>>1です

>>93さん

遅くなりすいません!パラレルです。前作の最後から続く形になります。

マリ「大体、一人じゃないからどうしようっていうの。お互い慰めながら傷の舐め合いでもする?今更そんなの意味ないじゃん」

真希波は止まらなかった。次々と僕に怒気を含んだ言葉をぶつけてくる

だけどそれでも伝えなくちゃいけない

シンジ「僕は・・傷の舐め合いでも構わない。一人じゃないって思えるなら」

マリ「・・・」

シンジ「真希波が辛いのはわかるよ。多分、僕の想像している以上に」

シンジ「二年間一人で孤独にさ・・・」

マリ「・・・」

真希波が顔を伏せて肩を震わしている


シンジ「でも、これからは少なくとも僕がいる。一人で抱えきれない辛さも二人なら抱えられるよ」

シンジ「・・・だから、殺してなんて悲しいこと言うなよ」

マリ「・・・」

シンジ「真希波?」




バキィ!




急に視界が揺らいだ

シンジ「あっ、ぐぅ・・・」

殴られたんだ、と理解したのは真希波が手に血のついたコップを持っていたからだ

マリ「・・・」

ドカッ

今度は蹴られた

シンジ「えぐぁ!」

情けないが殴られた痛みと腹を蹴りあげられた僕は蛙の鳴き声のような悲鳴をあげ蹲り

マリ「・・・」

無言のまま真希波は僕を蹴り続ける


シンジ「うぇっ・・・!あ、ぎ」


どれぐらい続いたのだろう。

服は吐瀉物で汚れ、口の中は胃液の苦い味がする

骨も折れているかヒビが入っているかもしれない

シンジ「(結局、こうなるのか・・・)」

自責と後悔が頭の中で駆け巡る。




ポタッポタ




目の前のカーペットに丸い染みが出来ていた


顔をあげ、見てみると


マリ「ねぇ、わんこくん。私はもう壊れてるんだよ」

シンジ「・・・・」

マリ「こんな風に自分でも自分が押さえれないんだにゃ」

シンジ「ま、き・・なみ」

マリ「グニャアって全部染まっちゃう」

真希波は

マリ「・・・今のでわかったでしょ。エヴァにしかすがれなかった哀れで狂った女だって」ポタ

泣いていた

マリ「差し出してくれた手を取ることも怖くてできないんだ」ポタ、ポタ

マリ「きっともう失うことに耐えられないから」ポタ

マリ「・・・・だから、だか、らぁ!!」





マリ「わ、わたしにやさしくなんて、しないでよぉ・・・!!」ポロポロ


大粒の涙を流して真希波は泣いていた

子供が泣くように嗚咽をあげて

マリ「き、たいしちゃうよ・・また、またさぁ・・!」

シンジ「・・っぐ」

フラフラの足でなんとか真希波の前に立つ

マリ「わたじ、なん゛か・・ほっとけば!い、いじゃんか・・・!」

僕が真希波にしてあげられることはないかもしれない

でもその泣いている姿を見て確信した

違いはあるけど同じ葛藤を抱いている彼女を放っておくなんて出来ない

逃げちゃダメだって

マリ「いみ゛わかんない・・っ!なぐられてけられて!ワケわかんないこといわれて」ポロポロ

マリ「こんなめんどくさいおんな゛に・・・!なんでやさしくすんだよぉ!」ポロポロ


シンジ「・・・」ナデナデ


マリ「なっ!・・に゛、あたまなでててんのっ!?」

シンジ「・・・ごめん。こんなときどうすればいいかわかんないから」


気の利いた言葉も力強く抱き締めてあげることなんて出来ないけど


今の君にはこれで伝わるような気がするんだ


僕の言葉

僕の気持ちが


マリ「うぐっ・・あっ、ぅ」


マリ「うわ゛あああああああああああ!!!」ガバ



僕の胸の中で声を押し殺すこともせず泣く

正直、わき腹の痛みと頭の痛みでグラングランするけど僕の胸を濡らす温かい涙が不思議と心地好かった

細い肩を震わせ、シャツを握りしめる手


シンジ「(真希波・・・)」


家族に囲まれ友人と遊ぶ。

日常的でありふれた光景が真希波の目にはどう映ったんだろう

ささやかな願いすら叶わない現実はどんなに残酷だったのだろう


それなら僕はエヴァの代わりでいい。


少しでも真希波に幸せを感じてもらえるならそれで構わない。

君の隣に居るよ


例え、報われない結末でも僕を必要としてくれるなら




















シンジ「・・・落ち着いた?」

マリ「・・・うん」

マリ「シャツ・・・ぐしゃぐしゃ」

シンジ「・・・そうだね」

マリ「・・・」

あれから時間ばかりが過ぎていく。真希波は僕にしがみついたままだ

マリ「・・・ねぇ、あ、頭痛い?」オソルオソル

シンジ「・・・正直、頭より腹の方が痛いかな」

マリ「ご、ごめん」

泣きそうな顔で僕を見る真希波

シンジ「もう気にしなくていいよ」

マリ「でも」

シンジ「本当気にしないでいいから。僕の心配をしてくれたってそれだけで充分なんだ」

マリ「・・・わんこくん、優しすぎ」ポス

すっぽりと体を預けるように僕に真希波は身を委ねてくる

さっきまでとは違う穏やかな雰囲気が僕達を包む

そして、意を決したように真希波が口を開いた

マリ「・・・私ね、きっとわんこくんに依存しちゃう」

マリ「わんこくんの全部を欲しがるし束縛だってする」

マリ「後悔したりしない?」

マリ「今なら夢だったって諦められられるから・・・」

シンジ「・・しないよ」

マリ「学校は?友達は?それに姫やレイちゃん、葛城三佐に」


シンジ「真希波」

シンジ「他の全部を犠牲にしても後悔なんてしない」

シンジ「他人から責められても見捨てられても僕は構わない」

シンジ「君が僕を必要としてくれならそれでいいよ」ニコ


学校なんか辞めてもいい。もう行く理由もない


マリ「あ、う」

目を見開いて見つめる真希波。

しばらくして耳元で僕に囁く

マリ「・・・やっぱ幸せっていいね」

マリ「でもひさしぶりすぎてとけちゃいそうだにゃ・・///」

猫が甘えてくるように体を擦り付けながら

シンジ「ネコみたいだよ」クス

マリ「・・・マリ」

シンジ「え?」

マリ「マリって呼んでわんこくん」

シンジ「えと、マリ?」

マリ「もっと」

シンジ「マリ」

マリ「うん・・・」ギュッ

噛み締めるように真希波、いやマリが名前を呼ぶ度に僕の首に回した手に力をいれる

マリ「いっぱいいっぱい呼んで」ギュッ

シンジ「・・マリ」

マリ「にゃあー♪」

シンジ「マリ、あの」

喜ぶマリを見れて僕も嬉しい

・・ただ、そろそろ服を着て欲しい。

しかも僕の服は汚れたままだし


シンジ「ふ、服着て欲しいんだけど・・。僕もゲロまみれだしさ」

さっきまでは気にする暇もなかったけど今は違う

ゲロまみれの男と全裸の女が抱き合ってる

アブノーマルなAVのシチュエーションに見えなくもない

マリ「んふふー♪」グリグリ

聞いちゃいなかった。

・・・もうマリが気にならないならそれでいいや


マリ「わんこくん」

シンジ「なに?」

マリ「ぜったい離さないでね」

シンジ「・・・うん」ニコ





そうして僕とマリは再開を果たした

この先、どんな困難が待っているのかは知らない

でも確実にこれだけは言える

この二年間のどんな出来事も敵わない程、今この時間は満たされていた







ーーー回想A・B終了




あの日マリに会わなかったら違う未来が僕を待ってたんだろう

平凡な毎日を過ごしていたのかもしれない

シンジ「・・・急になに考えてんだろ」

少し感傷的になってしまった

そうしている内にマンションに着く


シンジ「二人とも起きてないといいけど」

暫くして部屋の前に着く。恐る恐るドアを開けて中にはいった


ザーザー


テレビのノイズ音だけが聴こえる

シンジ「(消し忘れたのかな)」

ソファーに誰か座っている

シンジ「(あの後ろ姿はアスカかな)」

寝ているのだろうか?


シンジ「(・・・タオルケットぐらいならかけても平気だよね)」

そうしてタオルケットを持って音をたてないようにソファーに近づいていく





アスカ「おかえり」




シンジ「っ!?」ビク



シンジ「(起きてたんだ・・)」

だけど、驚いたのは後ろも見ずにいきなり声をかけられた

そして、アスカから話かけられた事の二つ

シンジ「えっあ、いや」


アスカと話すなんて大分、久しぶりだ

最近なんてお互いの顔すらまともに見ていない


アスカ「コネメガネのとこ行ってたんでしょ?」

シンジ「・・・うん」

アスカ「ってゆーかアンタとこうやってちゃんと話すなんて久しぶりか」

シンジ「・・・僕が学校辞めるって話して、それ以来かな」


アスカ「そう」


何のつもりなんだ。何も映らないテレビなんかつけて・・・


シンジ「(まさか、僕を待ってたとか?)」

アスカ「料理って難しいわよね。天才の私が悪戦苦闘させられるんだもの」

シンジ「な、なんの話か」

アスカ「今日、料理作ってみたの」

言われてテーブルを見てみると確かに皿に盛り付けられた料理が並んでいた

シンジ「これって」

アスカ「アンタに食べて欲しくて」

シンジ「僕に?」

シンジ「(アスカが僕に料理ってなんで・・)」

アスカ「私の日常を取り戻そうって思ってさ」

シンジ「日常って、一体何の話をしているのかわかんないよ!」

アスカ「・・・幸せの青い鳥は近くにいるとわからないってコト」

アスカ「でも仕方ないわ。いなくなって気づいたんだもん」スゥ

アスカ「コネメガネのコト、ミサトから少し聞いたわ」

シンジ「聞いたって」

ミサトさんは何をアスカに話したんだ・・・!?

アスカ「だから私もそうするコトにしたの」クル






アスカ「これで同じ」ニコ







振り向いたアスカの左手には血がついた包丁が握られていた。

そして、右腕から滴り落ちる鮮血

シンジ「なっ!!?」

アスカ「バカシンジ」

アスカは優しく微笑みを浮かべ、僕を見つめている

アスカ「私をミて」

アスカ「コネメガネにシたみたいに私にもシてよ」

シンジ「シてって言われたって何をだよ!?」

アスカ「今更とぼけてんじゃないわよ。まあ、二番目ってゆーのが癪だけど」

シンジ「アスカが何言ってるのか全然わかんないよ!それよりその腕の血を止めないと」

アスカ「・・・?」

アスカ「っ!」

アスカ「あはっ♪なーんだそういうことね!」

アスカ「その様子じゃコネメガネとまだS○Xしてないんじゃない♪」ニコォ


・・・もう、アスカがわからない

でもこの感覚を僕は知っている。

まるで二年前のマリと向かい合っているようなそんな感覚


アスカ「ふふふ♪割りきってたつもりだけどこれは嬉しい誤算ってやつねー」

そうだ!

シンジ「ミ、ミサトさん」

アスカ「いないわよ」

シンジ「・・・え」

アスカ「仕事思い出したからネルフに戻るんだってさっき出ていったもの」

アスカ「今ここにいるのはアンタと私二人だけ」

ミサトさん、逃げた・・?

アスカ「それよりボケーッと突っ立てないでこっちきなさいよ」

行ける訳がない。

シンジ「お、落ち着こうアスカ!」

アスカ「・・・ったく、じれったいわね」ヤレヤレ

アスカ「来ないならこっちから行くわよ」

シンジ「う、あ」

アスカが近づいてくる。

後退りしようとするが足が動かない

そして

お互いの瞳に相手の顔が映るぐらい零距離に等しい程、縮まる

アスカ「・・・」

シンジ「・・・っ」


アスカから目が反らせない

拒絶を許さないかのように瞳は僕を捉えている


アスカ「バカシンジ」

アスカ「私はアンタがいないとダメ」

アスカ「他の誰かじゃ代用なんて出来ないぐらい私の心の中にはバカシンジがいるのよ」

シンジ「な、んだよそれ・・」

絞り出すように僕は言った

アスカ「・・・あの日常に戻りたい」

アスカ「普通で代わり映えもしない平凡な毎日だったけど」

まるで子供が夢を話すようにアスカの声は熱を帯びていた

アスカ「それが私には幸せだったから」

アスカ「わかってくれるでしょ?バカシンジなら・・・」ピト


アスカが僕に寄り添う。

なんでこうなったかなんてわからない

ただ、僕を求めるアスカに僕はなんて答えをだせばいいんだ?

美人で頭も良くて

だけど

ワガママで横暴

プライドが誰よりも高くて負けず嫌い

僕のよく知っているアスカはそんな女の子だ

こんなアスカを僕は知らない

シンジ「・・・アスカ」

アスカ「・・・」

シンジ「僕は」

期待に満ちた目で僕を見るその瞳を例え


シンジ「アスカの気持ちに応えてあげることは出来ないよ・・」



絶望で染めてしまったとしても





とあるマンションの一室


リツコ「ちょっとは落ち着いたかしら」

ミサト「・・ええ」

私は今リツコの部屋にいる

あの時、アスカに嘘をついて逃げた

仕事を思い出した、と。

自分でも情けないと思う

だけど、一緒にいることに言い知れぬ恐怖を感じたのは間違いない


リツコ「今日が休みでお互い良かったわ」

リツコ「・・それにしてもあのアスカがね」ズスー

そう言ってコーヒーを啜るリツコ

苦々しそうにしているのはコーヒーのせいではないだろう

ミサト「アスカは・・なんであんな風に・・マリだけじゃなく平穏に暮らしていた筈のアスカがなんで・・?」

リツコ「・・・」ズスー

リツコ「・・使徒がいた方があの子達には幸せだったのかもしれないわね」

ミサト「・・・」

何も言えなかった

自分自身もそう感じてしまったから

リツコ「何にせよ対策は講じるべきよ」

ミサト「対策?」

対策なんてあるのだろうか・・

リツコ「取り返しのつかないことになってからじゃ遅いわよ」

リツコ「シンジ君を元の保護者の所に帰したら?」

サト「出来るわけないじゃない・・」

二人、いや三人が納得するわけがない

それに私だってそんなのは嫌だ

1です

ちょっと私生活が忙しくて放置してました

待ってくれていた方ありがとうです。

家族。

そう、私にとって二人は家族同然

例え血が繋がっていなくとも弟や妹のような二人を手離すなんて出来ない


思考のループ


答えの糸口すら見つからない


リツコ「いっそのことマリも一緒に暮らさせたら?」スパー

ミサト「・・笑えないわよ。リツコ」ジロ


タバコの煙をたゆらせながらリツコは言う

リツコ「一緒に暮らしてたらお互い牽制しあうんじゃないかしら?」

ミサト「そんなの私の胃が何個あっても足りないわよ」


容易に想像できた


獣のように笑う二人が相対している所が・・

リツコ「お手上げね」

ミサト「・・・はぁ」


ため息がでる。もう何もかも投げ出してしまいたい



プルル、プルルル


その時、突然リツコの携帯が鳴り出した

スレタイの「幸せのカタチ」って意味深だよな。「幸せ」ってことは誰かが幸せになるってこと?だとしたらそれは誰の?誰にとっての「幸せ」なの?
あとこれって「ヤンデレ」なの?「メンヘラ」なの?詳しい方教えろくださいおねげえします

リツコ「こんな時間に誰かしら・・はい?」ピッ


リツコ「ーーああ、マヤね、仕事お疲れ様。ええ、ええ」

リツコ「そうなの。じゃあ滞りな・・・なんですって!?」

ミサト「(何かあったのかしら・・)」

リツコの声色が変わった。何か問題でもあったのだろうか


リツコ「それは確かなの?誤作動やエラーの類じゃなくて?」


リツコ「・・・そう。詳しい話は本部で聞くわ」

リツコ「葛城三佐には私から伝えておくから」

私に伝えておく?

リツコ「ええ、はい。ーーまた後でね」ピッ

初見です(*^_^*)
ゆったりと待てばええですか?

初見です(*^_^*)
ゆったりと待てばええですか?

リツコ「・・・」

信じられないというような表情

あまり良い知らせではなさそうだ


ミサト「何かあったの?」

リツコ「・・・タイミングが良いといえばそれまでなのかしら」

ミサト「タイミング?」

リツコ「人類にとっては不幸な知らせよ・・」

忌々しそうに苦虫を噛み潰したような顔でリツコは言った

リツコ「・・・パターン青」ボソ


パターン青。



それが意味するのは



ミサト「冗談でしょ・・・?」


掠れた声でリツコに問う




リツコ「使徒よ」



皮肉にもかつて私が憎んだモノは


ミサト「・・・救いようがないわね」



希望になった








ミサトのマンションーーーーー




アスカ「・・・」

アスカはあれから一言も喋らず、僕を抱き締めた体勢のまま動かない

シンジ「・・アスカ、そろそろ離れよう」

アスカ「・・・」フルフル

首を横に振る

誰だってわかるイヤだという意思表示

シンジ「(どうすればいいんだよ・・)」

アスカ「なんで」

シンジ「え」

アスカ「アイツなの?私も同じでしょ?傷もつけたじゃない。ずっと待ってたのにようやく見つけた私の居場所なのになんで私じゃないのよ。もっともっとおかしくなきゃアンタは興奮しない?それならもっとおかしくなるからもっともっともっと狂って見せるから。胸も大きくなきゃダメ?語尾にニャーもつけなきゃダメ?眼鏡もかけなきゃダメ?全部シンジが望むならやるわ」

アスカ「だから」

アスカ「私を見て・・ねぇシンジ・・私を見てよぉ!!」


泣いて笑っていた

般若のような形相で





ミサトのマンションーーーーー




アスカ「・・・」

アスカはあれから一言も喋らず、僕を抱き締めた体勢のまま動かない

シンジ「・・アスカ、そろそろ離れよう」

アスカ「・・・」フルフル

首を横に振る

誰だってわかるイヤだという意思表示

シンジ「(どうすればいいんだよ・・)」

アスカ「なんで」

シンジ「え」

アスカ「アイツなの?私も同じでしょ?傷もつけたじゃない。ずっと待ってたのにようやく見つけた私の居場所なのになんで私じゃないのよ。もっともっとおかしくなきゃアンタは興奮しない?それならもっとおかしくなるからもっともっともっと狂って見せるから。胸も大きくなきゃダメ?語尾にニャーもつけなきゃダメ?眼鏡もかけなきゃダメ?全部シンジが望むならやるわ」

アスカ「だから」

アスカ「私を見て・・ねぇシンジ・・私を見てよぉ!!」


泣いて笑っていた

般若のような形相で

アスカ「ねぇ・・・ねぇっ!」ユサユサ

シンジ「・・・」

アスカに体を揺さぶられる。

シンジ「・・きっと」

シンジ「あの時、アスカが今みたく僕を求めてくれてたら」

最低な言い訳。

シンジ「僕はアスカだけを見てたかもしれない」

シンジ「だから・・ごめん」

アスカ「・・・」

アスカが呆然としているのも無理はない

アスカにとって身勝手な答えでしかないのだから

アスカ「・・・なら」

アスカ「コネメガネと私は遅いか早いかだけってこと・・?」

アスカ「あの時、私がコネメガネみたくなってたら」

アスカ「シンジは私を」

シンジ「多分、ね・・」

アスカ「・・そっか」

アスカはそれだけ言うと僕からスッと離れた

熱が醒めたように呆気なくすんなりと

シンジ「アスカ・・ごめん」

アスカ「もういいわよ。いきなり喚いたりして悪かったわね」

シンジ「え、いや・・」

豹変したかのようにアスカは普通だった

まるで何もなかったと言わんばかりに

アスカ「・・・」

僕に背を向けて顔色は伺えない

今一体どんな顔をしているんだろう

アスカ「・・私は諦めたりしないわよ」

アスカ「遅いか早いかだけだったなんて聞かされて納得出来るほどイイ子じゃないもの」



アスカ「・・ってゆーかアンタバカァ?」



アスカ「このアスカ様の告白をあんな風にフるなんて」アハ


笑っていた。

もう随分、懐かしく思う。


アスカの笑顔


さっきまでの面影なんて綺麗に消えて


僕のよく知ってるアスカがそこにいた

シンジ「アスカ・・」

アスカ「あーなんかすっきりしたわ!」

アスカ「あ、痛っ!そういえば自分で切ったの忘れてた」

シンジ「・・右腕見せてくれるは」

アスカ「ん」


大人しく僕に右腕を差し出す

シンジ「包帯とってくるから、待ってて」

シンジ「・・・」マキマキ

アスカ「・・・」

シンジ「はい、巻けたよ」

アスカ「アンタ包帯巻くの上手いわね」

シンジ「慣れちゃったからね」

アスカ「ふーん・・」

マジマジと巻かれた包帯をアスカは見ている。

アスカ「私もう寝るから」

シンジ「うん、おやすみ」

長い長い一日だった。色んな事があったけど・・

アスカと以前のように話せるようになったのは素直に嬉しい

アスカ「あ、そーだ」

アスカ「ん」

シンジ「!?」


チュッ


一瞬、頬に柔らかい感触を感じた。

自分が何をされたか理解するまで数秒

アスカはイタズラを成功させた子供のようにはにかんで笑っている

アスカ「ふふ」

シンジ「なっ・・//」

アスカ「やっぱりバカよアンタ、ほんっとバカ」

そう言い残してアスカは部屋に消えて言った。

微かに頬に残る感触

本当に色々ありすぎた一日だった。訳がわからない

シンジ「僕も寝よう・・」

シャワーを浴びる事すら今は億劫だ

起きたらまたいつも道理の一日が始まるんだ

マリとの日常

でも

アスカの顔が頭から離れないのは・・・何でだろう

思考の渦に飲まれながら自室のベッドに飛び込む


・・もういい。今は眠ろう

そうして僕は眠りについた

アスカ「・・・」

アスカ「・・・・」

アスカ「・・・・・」







アスカ「・・・・ふざけてんじゃないわよバカシンジ」

アスカ「これからなんだから」

アスカ「コネメガネにこのまま渡したりするもんですかだって私がアイツに必要なの私に必要なのあんな糞売女になんかシンジには相応しくないんだから糞糞糞ぶっ殺してやるぶっ殺して犬の餌にしてやる汚いほんっと汚いライミーの癖しやがってその腐ったアソコにナイフ突っ込んでやるわ」

アスカ「バカシンジはバカだから騙されてるんだもん。私が救わなきゃダメよね・・ねぇママ」

うっとりした表情で古ぼけた人形に話しかける少女


アスカ「シンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシン」


壊れた蓄音機のように少女は呟く

それを聞く者はいない

誰もいなかった

ここでアスカが料理されちゃう(二重の意味で)ってのがみたいでーす☆あはっ☆(提案)
ーーー ーーー
( 〃 ) ( 〃 )
(\\\\)  人 (\\\\)

  バン   はよ
バン (∩`・ω・) バン はよ
  / ミつ/ ̄ ̄ ̄/
  ̄ ̄\/___/


バンバンバンバンバンバンバン
バン     バンバンバン
バン (∩`・ω・)  バンバン
 _/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/
   \/___/ ̄







ーーーー
ーーー
ーー



シンジ「・・・」ムク

シンジ「・・・ふぁ」

気だるい体を起こして時計を見る

13時26分

味気ないデジダル時計から映し出される時間

携帯には着信の山ーーーがない。

マリから連絡がないなんて珍しい

大抵、起きたら大量の着信があるんだけど・・・


シンジ「まだ寝てるのかな」

とりあえず顔を洗う為に部屋を出てリビングに向かう。


マリ「やっほーシンジ」

有り得ない声が聞こえてきた

マリの幻聴が聴こえてくるなんて疲れてるんだな


マリ「むぅーまだ寝ぼけてるのかにゃ?ならば私の熱いベーゼで眠り姫なシンジに」

アスカ「寝ぼけてんのはアンタでしょコネメガネ。あんまバカなこと言ってるとぶっ殺すわよ?」

マリ「負け犬の遠吠えは悲しいねー!てかさ姫こそ私とシンジの邪魔だからどっか行って欲しいかな。むしろ逝って欲しいんだけどにゃー」

アスカ「はぁ?ここアタシとシンジの家なんだけど。むしろ部外者はアンタでしょ」


マリ「自分から呼んどいて脳味噌腐ってんじゃないの姫さー。なら私はシンジつれて家帰るからそれでいいじゃん」


アスカ「・・・ほんっとムカつくわね。糞ライミー」

マリ「むかついてんのはこっちなんだけどねー」


なんだこれ


見慣れたパジャマ姿のマリと高校の制服姿のアスカが向かい合っている


まだ夢を見ているんじゃないかと思う程、異様な光景

お互い悪態をつきながら冷笑を浮かべている二人


シンジ「なんで二人が・・・?」

アスカ「それは」


マリ「どっかのストーカー女がシンジの携帯に勝手にでたんだよー」

アスカ「・・・フン」

少しばつが悪そうに鼻を鳴らすアスカ

マリ「信じらんないよねー。普通他人の携帯に勝手にでる?常識ないんじゃにゃいかな」

アスカ「常識云々でアンタに言われるのは心外だわ。引きこもりニートの癖しやがって」

マリ「・・あぁ?」イラ

シンジ「ちょ、二人ともとりあえず落ち着いて。僕本当に訳がわかんないだけど・・」

マリからかかってきた電話をアスカが僕の携帯で・・

シンジ「アスカは何で僕の携帯にでたの?」

アスカ「折角だから起こしてあげようと思って部屋にいったら携帯鳴ってたんででてあげた」


アスカ「それだけよ」シレ


マリ「・・・なーにがそれだけ、だよ。よくもまあ、シャアシャアとそんな風にできるね」

マリ「『シンジはアンタといるとダメになる。だからもうかけてこないで』」

マリ「こんなんいきなり言われたんだよ?どう思うシンジィー」ケラケラ

マリは笑っていた。けど目は全く笑ってない

シンジ「な、なにそれ」

思わずアスカを見る。

アスカ「・・・」スタスタ

マリ「!!」

僕に近づいて

アスカ「言ったじゃないバカシンジ」ボソ

アスカ「遅いか早いか」

アスカ「それだけだって」ニヤァ

甘い声色で艶やかささえ感じるように

顔を歪ませアスカは耳元で囁く

何故だろう。まるで獲物を掠める獣のような底知れない禍々しさを感じるのは・・

アスカ「アンタはアタシが救ってあげる。救ってあげなきゃダメなのだってバカシンジは私の」

しなだれるように僕に抱きつこうとするアスカ






マリ「よいしょっと」




アスカ「・・ッ!」サッ




ガシャァン


窓ガラスが壊れる音が響く

目の前を椅子が横切って突き破った

マリ「んー」ガリガリ

マリ「さっきから好き勝手言いやがってさ」ガリガリ

マリ「シンジを救う?」ガリガリ

マリ「・・シンジは私のなのに。シンジは私だけの宝物なのになにそれふざけんな。ほんっと調子のり過ぎだろこの塵虫がシンジは優しいから勘違いしてんだろ?むしろ今更、しゃしゃり出てきて寝言ほざいてんじゃないっつーのただでさえ電話でシンジじゃなくてオマエがでてビキビキしてたのにマジなんなの空気読めよこの屑。ってかもういいやぶっ殺して私はシンジといつも通りに過ごすうん、そうしようそれが一番かにゃー」


ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ



爪を立てて腕を掻きむしるマリ

その視線は射殺さんとするばかりにアスカに注がれていた


アスカ「・・・アブナイわね」


マリを睨み返すアスカの視線も狂気に満ちている


アスカ「・・ガラス弁償しなさいよね、このキチ○イ女ァ!」


壊れた椅子がまた僕の前を通りすぎる

ガシャァン

マリ「このっ・・!」サッ




アスカ「アンタよりずっと長いんだから」ブツブツ

アスカ「なんでバカシンジをぽっと出の女に奪われなくちゃいけないのよ」ブツブツ

アスカ「・・そうよそうよねママ、バカシンジはバカだから騙されてるのこんな優しさしか取り柄のないバカだから仕方なかったのよアタシ知ってるからバカシンジの一番はアタシだって、売女は売女らしくホームレスの便器にでもなってなさいよ汚いくせに臭いのよアンタあああああもうホント死んでくんない?そっかぁ殺せばいいんだ。もうシンジはアタシのモノ殺せば殺せば」

ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ

ガリガリと腕を掻きむしるマリ

延々と早口でブツブツと呟いているアスカ



呆然と立ち尽くす僕



悪夢だ。夢なら覚めて欲しい

マリ「・・死ねっ!!」

アスカ「殺す・・!!」


でも現実は非常だ。

針詰めていた異様な雰囲気を壊すように二人が動く

そして

鈍い音が聴こえる

人を殴る音

怒声とも奇声にも似た叫び

バキッ

グシャ

ドカッ

みるみるうちに二人の顔は凄惨に変わっていく

可愛い

綺麗

他人からそう思われて当然なその顔を

醜く血を滴らせ頬や瞼を腫らす

アスカ「このっさっさっとくたば・・グガァッアアアアア!!!??」グチャ

アスカが顔を押さえながら仰け反る

マリ「あははははははははっ!ねぇ痛い?痛いの?ざまぁみろにゃあぁぁー!!」

マリの手には折れた椅子の足が握られている

折れた足の先端は尖っていてそこには血がついていた

アスカ「うっっっぐぅぅっっうぅ・・!」

呻き声が押さえた両手から洩れる

刺されたんだ


マリ「ほら泣けば?泣いたらいいじゃん。シンジにこ?んな情けない姿見られてるんだよー♪恥ずかしくないの?ねぇ今どんな気持ち?ねぇ」

アスカ「グッソ!!こ・・のぉ!!」


グシャ


マリ「ばぁーか」

激昂し突進してきたアスカの頭に容赦なく椅子の足をマリは振り落とす

崩れ落ちていくように地面に倒れる瞬間、頬の肉が抉れ顔面が真っ赤に染まった横顔が見えた

マリ「・・・」

マリは侮蔑したように嘲りを浮かべている。


だが


アスカ「・・・ゥガアアアアアアアアアアアアアアアァアア!!!!」

慟哭

アスカがマリの首に噛みついた

いや、噛みつくなんて表現は正しくない

マリ「なっっ!??ッ痛ぅぅ・・!は、はなせはなせはなせぇぇ!!!」

アスカ「グゥゥッ!!」


食い千切ろうとしている

アスカ「フゥ・・!ングゥゥッ!!!」


ミチッ


と嫌な音が聴こえマリが絶叫

マリ「イギャアアアアアアアアアァッ!!???」

アスカがマリから離れた

マリは首と肩の間から夥しい血を流しながら膝をつく

パジャマは血で染まり真っ赤になっている。


マリ「ウッ・・アアアァ・・!」

アスカ「ーーーペッ」

アスカの口元から赤い塊が吐き出された。

ビチャ、と地面にへばりついたそれは


マリの肉だ


アスカ「ん・・ぷは・・口んなか血だらけでホント最悪」

マリ「・・テメェエエエッ!!」


アスカ「なによ。あ、そういえばさっきアンタ何か言ってたわよね?どんな気持ちとか」


アスカがマリに近付く

マリ「クソがぁあアッ!!」

マリの咆哮。獣のような叫び

アスカ「ーーー最っ高の気分よ!!!」


逆に今度はマリのお腹にアスカの蹴りがめり込む

マリ「ウグゥッ!?」

サッカーボールを蹴るように何度も

マリ「ーーガアアアァッ!!」

アスカの蹴っていた足を掴み、そのまま前にマリは突っ込んだ

アスカ「くっ!?」グラァ

バランスを崩したアスカはそのまま倒れこんだ

マリ「んぐぅ・・ウォエエェ・・・はぁはぁ・・わ、わだしにはッ!」

マリ「もう゛シンジしかいないんだよっ・・!!」

マリ「エヴァしかながっだわだしには・・シンジしかもういないんだ!!!」

マリ「お前゛が今さら゛ナンデなんだよぉ・・!!ふづうに暮らしでるんならシンジじゃなくてもいいだろッ!?」

マリ「わたじにくれでもいいじゃんか!!?」

マリ「シンジ、シンジだけは・・わたしにちょうだい゛よぉ・・・!」


嗚咽と一緒に吐き出された言葉



アスカ「・・・」

アスカは冷やかにマリを見て言った

アスカ「ーーーッざけんな。アンタはやっぱりクソだわ」

アスカ「アンタ自分が言ってることわかってんの?」

マリ「いってること・・?」

アスカ「アンタにとってバカシンジはエヴァの代わりでしかないんでしょ?」

僕が望んだんだ。

エヴァの代用品でも必要とされる事を

だからマリは悪くない。マリだってそう答えれる

ーーーなのに

マリ「っ・・・そんなの」

口淀んだ

アスカ「違う?ホントに?」

アスカ「ちなみにアタシは違うわ。エヴァ以外で見つけた幸せなの。バカシンジはエヴァの代わりなんかじゃない」

アスカ「アタシにはこいつがいる毎日が」


マリ「・・・ろ」


アスカ「些細なコトでも一緒に笑って呆れて怒って泣いて」


マリ「・・・めろ」


アスカ「ありふれて普通だけどバカシンジがいる日常が」


マリ「・・・やめろ」


アスカ「アタシのエヴァ以外で見つけた」


マリ「・・・やめろってゆってんだろォォォ!!」



アスカ「居場所なんだもん」


穏やかにアスカは言い切った

マリ「ち、ちがう・・わたしだってエヴァのかわり・・?そうじゃな、うぅっ!!いやイヤイヤイヤ」


頭を抱え悲痛そうに体を震わせるマリ

マリ「うぅぅっ・・!あ」


すがるように僕に手をマリはのばして懇願する

マリ「シ、シンジィ・・!シンジならわかるよね?私だってシンジのコト大切なのわかるでしょ?いっぱいいっぱい大切なのだってシンジしかいないんだもん私にはシンジしかいないのだってあの時シンジだっていってくれた全部犠牲にしたって構わないってさもうムリだよシンジがいないなんてシンジまでいなくなったら真っ暗なんだよ?独りだと不安で怖くてダメなんだねぇいつもみたいにヤサシク抱きしめて?アタマ撫でて私に笑いかけて?お願いお願いお願いお願いお願い、シンジが望んでくれるなら何でもするからえっちなコトだってどんなハズカシイコトでもその通りにするからだから」



マリ「そんなカオでわたしをみないでよぉぉ!!!」

シンジ「え・・・?」

そんな顔

僕は今どんな顔でマリを見ているんだ?

自分で望んだんじゃないか

エヴァの代わりで構わないって

必要とされるまで傍にいるって

だから何も間違っちゃいないんだ

シンジ「・・・マリ」

差し出されたマリの手に自分の手を伸ばす

マリ「あぁ・・♪」

安心したようにマリは顔を綻ばせる


ギュッ


と握った手に力はなく、今にも崩れ落ちそうな程弱々しい


マリ「・・ああああやっぱりシンジはシンジだにゃああったかいよしんじてたよぉ」

シンジ「うん、うん・・」

そう。何も悩む事なんてないんだ

今と僕のマリの関係は変わらない。

これからだって変わらない・・

それでいいんだ

マリ「うっ、ォエェェ!・・・これでわがったかにゃあ?シンジは私のモノだってね゛!もうひめなんかお前なんかはいる余地はないだからぁ!!」ゲホッゲホ


むせ込みながらアスカに勝ち誇ったかのように捲し立てる

こんにちは

アスカとマリどっちが好き? 
僕は、アスカ!

いやいや
どう考えてもアスカでしょ!

映画のQ見ましたか?

アスカ「シンジ本当は私のことが好きなんでしょ?」

アスカ「ね・・・?こんなやつは、シンジのことをエヴァのかわりしか見てないんだよ?」

アスカ「そんな顔でみないでよ!」

シンジ「アスカ・・・」

シンジ「僕は・・・」

第一種戦闘配置 一般の方はシェルターに避難してください!

マリ・アスカ・シンジ「!!!」

プルルルルル

シンジ「はい!」

ミサト「シンジくん!たいへんよ!使途が現れたわ!今すぐジオフロントにきて!」

アスカ「どうしたの?」

シンジ「使途が現れた!」

シンジ「ジオフロントにいかなくちゃ!」

マリ・アスカ「そんな・・」

>>1です

スマフォからだとIDなんか変わってばっかです(´・ω・`)

とりあえず昼間のは本人です

今から投下します

アスカは悔しがるでもなく怒る訳でもなくただ笑っていた

グチャグチャに血に染まった顔で歪な笑みで

マリ「・・わらっでんじゃねぇぇぇぇっ!!」

気に食わなかったのだろう

マリは叫んだ

でも、アスカの笑みは消えない。むしろマリを侮蔑したかのように口の端を吊り上げている


マリ「ングガァ・・ッ!?


叫んだせいで余計負担がかかったのかマリの首元の出血が止まらない

シンジ「マリ!?」

アスカ「・・そのまま死ねば?」

シンジ「アスカ!もうやめてよ!!それに、アスカもその傷は・・!」


アスカ「んー、かなり痛いけどね。でもアンタが心配してくれたならまぁ・・いいかな」シレッ

シンジ「はぁ!?」

アスカ「フフ♪」


救急車を呼ぶべきなのか

ミサトさんに連絡するべきなのか

僕はどうしたらいい?





ピンポーン





インターフォンが鳴った

来訪者を告げる音が静けさを生む

マリ「・・・」

アスカ「・・・」

マリの顔色が悪い。

アスカだってこのままじゃ一生消えない傷を顔に遺すことになる

ピンポーン

シンジ「(救急車を呼ぼう・・!もう後のことなんてどうでもいい。今は二人を助けないと・・・)」


ピンポーン、ピンポーン

シンジ「ちょっと僕救急車呼んでくるからっ・・!二人はそのまま待ってて!!」

マリ「ぅぐぁ・・ンジ・・」

アスカ「ちょっとバカシンジ待ちな」

インターフォンの音と二人の声を無視して受話器を取る




ガチャ、バタン



玄関を開ける音が番号を押そうとした僕の指を止める


そして玄関の向こうから現れたのは




「・・・鍵が開けっ放しなんて無用心」



シンジ「あ、綾波・・・?」


綾波「久しぶりね、碇く・・」


綾波だった

随分、会ってなかったがまさかこんな形で再会するなんて・・


綾波「これは・・・何があったの?」

マリ「・・・・」

アスカ「・・・フン」

シンジ「」

血だらけのマリとアスカ

きっと情けない顔をしている僕

それを目の当たりにして絶句している綾波



奇しくもかつてのパイロットが全員揃った瞬間だった

見慣れた景色

遠巻きで見慣れた制服を着た人達が行き交う


僕達は今、ネルフにいた


シンジ「・・・」

綾波「・・・」


綾波は僕から少し離れた位置でベンチに腰かけている


綾波は聞いてこない。


あの時、何があって二人がああなったのかを

当事者の自分ですら理解してないのだから答えようがないけど


シンジ「(気を遣ってくれているのかな・・)」

それでも今の僕にはありがたい気遣いだった

結論から言えば二人は手当てを受けて安静にしている・・・らしい


綾波の行動は早かった

呆然としていたのも一瞬で携帯を取りだしネルフに連絡


対して時間も経たない内に黒服の男達数人と治療器具を持った人達が部屋に入ってきた

マリは血を流しすぎたのか項垂れたまま動かず

アスカは文句を言いつつも大人しく治療を受けていた


そして


ネルフに連れてこられるまでに到る

僕は綾波と一緒にこのフロアへ

二人は別々の居室で今は眠っているらしい


呼び出されるまで此処
で待っていて欲しい。

見知らぬ職員に言われて、時間だけが過ぎていく

綾波「・・・」

シンジ「・・・そういえば」

疑問に思った事がある

綾波「なに?」

シンジ「綾波は何で家にきたの・・?」

綾波「それは・・葛城三佐に頼まれたから」

シンジ「何を?」

綾波「・・・それは」

言いづらそうに綾波は口を淀ませた

綾波「アスカの様子がおかしいから見てきて欲しいって」

綾波「葛城三佐も赤木博士も今は忙しいから」

シンジ「そっか」

ということはミサトさんは知ってたんだ

アスカがああなった事を

綾波「・・でもそれだけじゃない」

シンジ「・・?」

綾波「・・碇君」ジッ

綾波が僕に近づく

シンジ「な、なに?」

綾波「髪伸びたのね」

シンジ「へ」

綾波「少し伸長も伸びてる」

シンジ「う、うん」

綾波「私が知らない間に碇君は変わったわ」

うぅ、、付け方が分からない(´・ω・`)

とりあえず投下します





シンジ「僕が変わった?」

綾波「ええ」

綾波「もう子供じゃないわ。チルドレンなんて呼べない」

シンジ「僕には綾波が何を言いたいのかわからないよ・・」

綾波「・・私は変わったわ。そう思うの」

綾波「それとも碇君が知ってた綾波レイのまま?」

綾波「今の碇君に私はどう見えるの?」

綾波「・・教えてほしい」

綾波が微笑む

大人の女性のような気品

柔らかい印象を与える雰囲気

それはかつての綾波には感じられない要素だった

シンジ「き、キレイだと思う・・」

それに今の綾波を見ていると

綾波「・・そう。ありがとう碇君」ニコ

微かに記憶にしか残っていない母さんと微笑む顔がダブって思えた


シンジ「・・・」

綾波「・・・」スゥ

満足したように綾波は元の位置に戻る

綾波は何が言いたかったんだろうか

いや、やめよう

僕にそんなの分かるわけがない


シンジ「(・・・これからどうなるんだろ)」


マリが心配だ。アスカも無事なんだろうか?

綾波「碇君」

シンジ「なに?」

不意に綾波が僕を呼ぶ

綾波「碇君は、碇君のしたいようにすればいい」

シンジ「何の話をしてるの・・綾波?」

綾波「世界は残酷だから」

シンジ「・・?だから何の話を」



「シンジくん久しぶりね」



呼ばれて振り返るとマヤさんがいた。

伊吹マヤ二尉。

特務機関NERV本部オペレー ター

昔と全く変わってない

疲弊しきって弱々しく笑った顔以外は

シンジ「お、お久し振りです」

マヤ「・・急で悪いんだけど今から私と司令室まで一緒にきてくれる?」

シンジ「司令室・・!?」

マヤ「レイはもう知ってるけど大事な話があるの」

綾波「・・・」

綾波は知ってる?

マヤ「・・その様子だと何も聞いてないみたいね」

>>1です(´・ω・`)

これであってるのかな・・

>>341さんの以外は全部自分の書いたヤツです

とりあえず投下します

マヤ「・・とりあえず来てくれるかしら?大事な話なの」

大事な話

綾波「行きましょう碇君」

綾波が立ち上がり、僕の前に立つ

シンジ「・・・」スク

立ち上がる足取りが重い

シンジ「(大事な話って何だろう)」

思い当たるとしたらマリとアスカの事

でも綾波やマヤさんの様子からは違うモノを感じる


シンジ「考えても仕方ないか」ボソ

・・今は司令室に行こう

僕と綾波、そしてマヤさんは司令室へと足を進めた






司令室ーーーーーー


シンジ「(・・・父さん)」

綾波「・・・」

ゲンドウ「・・・久し振りだな、シンジ」

司令室に来た僕を待っていたのは大勢の大人達だった

父さんと副司令

ミサトさんやリツコさん、そしてマヤさん

加持さんまでいる

共通点は全員難しい顔をしていること

誰もが久し振りの再会を喜ぶ、なんて空気は微塵もなかった

冬月「シンジ君、早速で悪いが本題に入らせて貰うぞ」

冬月「構わんな?碇」

ゲンドウ「・・ああ」

シンジ「本題ってなんですか?」

冬月「赤木博士」

リツコ「はい。レイはもう知ってるわね」

綾波「はい」

・・何なんだ。さっきから

リツコ「シンジ君、驚くかもしれないけどしっかりと聞いて頂戴」

シンジ「・・わかりましたからさっさっと言ってもらえませんか?もう色々あって疲れてるんです」

正直苛ついていた

マリとアスカの事だけでもいっぱいいっぱいなのに

これ以上何があるっていうんだよ







リツコ「ーーー使徒が再び現れたわ」







シンジ「え・・・」




使徒

人類の敵であり謎の生命体

目的は不明。ただ人類を滅亡の危機へと陥れる脅威の存在

僕達はそれを防ぐ為に唯一の対抗手段であるエヴァで戦い、人類は勝った。




ーーーーーーの筈だったんじゃないのか?


シンジ「そ、そんな!だって僕達はあの時、最後の使徒を」

赤木「・・最後じゃないわ。現にこうして使徒は再び現れているんだもの」

きっぱりとリツコさんは言い切る

ミサト「・・・第十の使徒ゼルエル」

ミサト「強力なATフィールドと圧倒的な力で私達を苦しめた使徒」

ミサト「エヴァ四体の決死の攻撃で殲滅・・零号機、仮設五号機はロスト。初号機と弐号機も大破・・甚大な被害はでたけどね」

重く口を閉ざしていたミサトさんが話始める


ミサト「何故また使徒が現れた理由なんて誰にも分からないわ。けど・・シンジ君ここまで話したらもう分かるわよね?」


シンジ「まさか・・」


ミサト「司令」


ゲンドウ「・・・現時刻を持って初号機は凍結から解除。搭乗者は碇シンジ、初号機パイロットに再登録だ」


ゲンドウ「それとエヴァ弐号機のパイロットには綾波レイ、式波・アスカ・ラングレー、真希波マリ」

ゲンドウ「三人のシンクロテストの結果次第でメインパイロットと予備に別けて準備を進めろ」

ゲンドウ「・・話は以上だ。全員早急に作業を始めろ」





シンジ「・・・ってよ」










綾波「・・碇君?」

綾波が心配そうに僕を見る


シンジ「・・って言ってるだろ」

綾波「碇君、どうしたの・・?」

リツコ「マヤ、技術班を集めておいて。今後のプランの話し合いをするわ」

マヤ「はい、先輩!」

慌ただしく動き出す大人達

ミサト「・・・シンジ君」

そんな中、ミサトさんが僕に近づく

ミサト「シンジ君、辛いのは分かるわ・・私だって辛い。あの使徒を倒した貴方達ならまたきっと」




シンジ「・・だからっ!!待てって言ってんだろ!??」



ミサト「・・・!」

加持「・・シンジ君」

マヤ「!?」

リツコ「・・・」

冬月「・・・ふむ」

ゲンドウ「・・・」

綾波「・・・」



もう無理だ

こんなの・・こんなのっ・・・!!


僕の大声に全員が動きを止めて僕を見ていた


ミサト「シン」

シンジ「ふざけるなよ!なんだよこれっ!??エヴァを押し付けたり勝手に奪ったり・・僕らは都合のいい駒かよ!!」


シンジ「・・・マリが、マリがどんな気持ちでこの四年間過ごしたかわかってるんだろっ!?絶望してどんな風になったかをさ!」

シンジ「それを見捨ててきたくせに何もしなかったくせに・・・っ!」

シンジ「納得出来るわけないだろ!!やっと見つけた僕の居場所をまた壊すのかよっ!!」

シンジ「うあああああああああああああッ!!!」

叫ぶように僕は言った

最後の方は本当に叫んでいた

でも、まだ言い足りない。

言葉にできる程、単純じゃない

憎かった

マリと過ごした日々を簡単に壊す大人達が

悔しかった

こんな風に叫ぶ事しか出来ない自分が

シンジ「ハァハァ・・」

誰も動かなかいし喋ろうとしない

重い沈黙

だけど沈黙を破ったのは冷ややかな一言だった



ゲンドウ「言いたい事はそれだけか?」


それだけ、だと?


ゲンドウ「・・・叫んで満足したならそれでいい。お前は呼び出されるまでネルフで待機していろ」

シンジ「まっ、満足なんてするわけないだろ・・・ッ!」

シンジ「父さんは何にもわかってない!昔からわかろうとすらしないじゃないか!!」

シンジ「マリを傷つけたのは父さん達だろ!?なんでそんなに平気な顔が出来るんだよ!」


ゲンドウ「・・・シンジ。はっきり言おう」


ゲンドウ「使徒を倒す為なら私はどんな犠牲を省みるつもりはない」

ゲンドウ「お前や他のチルドレンもそのための道具としか思っていない」

シンジ「道具・・?」

何をいってるんだ

ゲンドウ「そうだ」

ゲンドウ「人類を守る。それは我等に課せられた使命」

ゲンドウ「望む望まない関係なく、パイロットとなった者のそれが宿命なのだ・・・そして力を持つ者には責任と義務が伴う」

シンジ「・・・」

ゲンドウ「使徒の力は強大だ。・・・たがエヴァだけがその力に対抗する術を持っている」

ゲンドウ「エヴァのパイロットのお前達にしか出来ない術だ。」


ゲンドウ「ーーー大人になれ、シンジ。責任を背負い義務を果たせ」



責任、義務


解っている。理解できる

頭の何処かでは父さんの言っている事が正しい、って

でも

心は違う

シンジ「・・僕達に責任も義務も押しつけてそれが父さんの言う大人なんだね」

僕は

シンジ「でもさ道具にだって意思があるんだ・・!」

子供のままでいいよ

シンジ「・・なら僕は大人になんてなりたくない!!」


ゲンドウ「・・・フッ」

父さんは僕を鼻で笑う。

ゲンドウ「ならお前はどうしたい?」

シンジ「僕は・・・」

ゲンドウ「駄々をこねて叫んで、次はなんだ?」

ゲンドウ「使徒の殲滅はネルフの、いや全人類の最優先事項だ。そこに個人はない」

個人はない、か


だったら


シンジ「なら・・僕はエヴァになんて乗りません」

リツコ「!?」

ゲンドウ「・・・自分が今何を言ったかわかってるのか?」ギロッ

わかってるよ、父さん

どうしたいかって聞いたよね?


シンジ「こんなくそったれの世界なんて滅べばいいって思ってる」

綾波「・・・」

冬月「・・馬鹿な」

シンジ「僕達に優しくない世界なんていらない」

ミサト「シンジくん・・」

シンジ「だから僕はエヴァになんてもう乗りません」

加持「・・・」

マヤ「・・・そんな」

シンジ「僕にはもう大人が何なのかわかりません」


エヴァに乗れば必要とされたかもしれない

それを望んでいたのは否定しない

でも

僕は必要とされている。

マリがいればもう、それでいい

  ∧_∧   
 ( ´∀`)< ぬるぽ

   _____      / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 /:\.____\  / 対ガッ用超高性能ぬるボックスのテスト開始!
 |: ̄\(∩( ;゚∀゚) <   重いので持ち上げたり投げ飛ばしたりするのは不可能
 |:   |: ̄ ̄ ̄∪:|  \ 耐熱耐寒仕様、太陽に突っ込んでも大丈夫
                \___________

   _____      / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 /:\.____\  / 圧力にも屈しない。外部からの衝撃で中の人間が死ぬ事もない。
 |: ̄\(∩( ;゚∀゚) <   宇宙空間でも大丈夫。酸素も食料も一生分ある。排泄物も秘密システムで処理できる。
 |:   |: ̄ ̄ ̄∪:|  \ 箱は 外 側 からしか開かない。ふはははは、完璧すぎる。ぬるぽぬるぽぬるぽ!
                \___________
    バタンッ!!
 ________

 |: ̄\      \   <ヌルポヌルポー!!
 |:   |: ̄ ̄ ̄ ̄:|

>>420 一時間たっても「ガッ」されなかったお前は、神だ!

           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

  ∧_∧    <  フー 自作自演も疲れるぜ
 (゚Д゚Λ)_Λ    \____________
 ( ̄⊃・∀・))

 | | ̄| ̄
 (__)_)
           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

  ∧_∧ゴルァ! <  な、なに見てんだゴルァ!
 ( ゚Д゚Λ_Λ    \____________
 ( ̄⊃・∀・))

 | | ̄| ̄
 (__)_)

>>420 一時間たっても「ガッ」されなかったお前は、神だ!

           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

  ∧_∧    <  フー 自作自演も疲れるぜ
 (゚Д゚Λ)_Λ    \____________
 ( ̄⊃・∀・))

 | | ̄| ̄
 (__)_)
           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

  ∧_∧ゴルァ! <  な、なに見てんだゴルァ!
 ( ゚Д゚Λ_Λ    \____________
 ( ̄⊃・∀・))

 | | ̄| ̄
 (__)_)

間違い、すまん

ゲンドウ「ーーーそうか」

父さんは静かに言う

ゲンドウ「なら二度と私の前に姿を見せるな」

その顔に怒りを浮かべて

ゲンドウ「・・・お前には心底失望した」

シンジ「・・・僕も同じだよ」

ゲンドウ「・・・碇シンジのネルフに居た在籍記録は総て破棄しろ。パイロットから登録抹消。初号機にはレイをメインにバックアップでダミープログラムを回せ」

冬月「碇、本気か?」

ゲンドウ「ああ」

ゲンドウ「もうお前がここにいる理由はない。何処にでも消えろ」

シンジ「わかってるよ。・・言われなくても消えてやるさ」

司令室から出ようとすると綾波が僕の前に来た

綾波「碇君、今ならまだ間に合うわ。だから・・消えるなんて言わないで」

シンジ「もう会うこともないかもしれないから・・今までありがとう。さよなら綾波」

綾波「さよなら、なんて哀しいこと言わないで・・お願い」

シンジ「綾波、ごめん。・・もう無理なんだ」


そう言って綾波の横を通り過ぎようとする僕を


ゲンドウ「シンジ」


父さんが呼び止めた


シンジ「・・・なんですか?」


ゲンドウ「・・・正しい選択などこの世界にはない。選択を正すのはお前自身だ」


シンジ「・・・?」


ゲンドウ「・・もう行け。これが最後だ」


シンジ「・・・失礼します」


プシュー、ガチャン


正しい選択。


これでいい


これでいいんだ。もうエヴァに乗る事もないけど


僕が手にいれた幸せなんだ


『にゃー♪』


ふとマリが笑ってる姿が脳裏によぎる


シンジ「マリに、会いたいな」


穏やかに

静かに

呟いた一言は誰に聞かれることもなく

シンジ「(そういえば・・もしかしたらもうミサトさんの家に居れないかもしれない)」

シンジ「(そうなったら僕も、部屋を借りて一人暮らしだし、そこにマリを呼んで)」

シンジ「(二人で一緒に住んで・・)」クス

想像に笑みを漏らし歩く少年の後ろ姿は


幸せそうだった。








冬月「・・碇、本当にいいんだな?」

ゲンドウ「ああ」

リツコ「・・ダミープログラムは第十の使徒殲滅以降、碇司令ご自身で計画を白紙にされたのでは?」

ゲンドウ「問題ない。全てにバックアップを用意していた」

リツコ「・・・何時、使徒が来るかもわからないのにシンジ君を切り捨ててまで選ぶほどそのダミープログラムには戦術的な価値があるという認識でいいんですね?」


ゲンドウ「・・・ああ」


リツコ「ーーー了解致しました。私は直ぐに起動実験の準備を始めます。マヤ行くわよ」カツカツ

マヤ「はい!失礼します」ペコッ


ミサト「・・私もこれにて失礼させて頂きます」ペコッ

加持「では、自分も」


プシュー、ガチャン





冬月「レイのバックアップ無しでのダミープログラムに初号機の覚醒も成されていない」

ゲンドウ「・・・」

冬月「・・人類補完計画に背いてきたツケがまさかこんな形で払わされるとはな」

冬月「あの時、何故お前がユイ君との再会を諦めゼーレに反逆したのか今でも私の疑問だよ」


ゲンドウ「・・・理由を知りたいなら話そう」


冬月「ーーーいや、いい」


ゲンドウ「そうか」


冬月「さて、私も下に行き、指揮をとってくるとしよう」ツカツカ


ゲンドウ「・・・冬月」


冬月「なんだ」


ゲンドウ「・・私を恨んでいないのか?」

冬月「・・・」


冬月「ユイ君の事を言っているなら・・残念じゃないと言えば嘘になる」

冬月「だがな」

ゲンドウ「・・・」

冬月「・・ユイ君に任されたお前を見捨てる訳にはいかないからな」フッ


ゲンドウ「・・・」


プシュー、ガチャン



ゲンドウ「・・・有り難うございます、先生」


ゲンドウ「・・・」ガチャ


ゲンドウ「・・・」




『ユイとシンジの写真』


ゲンドウ「・・・お前がいない世界は酷く色褪せてる」


『あら、生きて行こうと思えばどこだって天国になるわよ』

『だって生きているんですもの。幸せになるチャンスはどこにでもあるわ』


『この子には明るい未来を見せておきたいの』


ゲンドウ「・・・俺は間違えたのかもしれない」


ゲンドウ「ユイ・・それでも俺は賭けてみたくなった」


ゲンドウ「お前の信じたこの世界にな」



そう言ってゲンドウは写真をデスクにしまい司令室を後にした




ーーーーネルフ正面ゲート前




シンジ「・・・」


ネルフの正面ゲートの前に僕は立っている


ここをくぐれば二度とここに来ることはないだろう

シンジ「・・・色々あったなぁ」

物思いに耽っていると後ろから声をかけられた


加持「ーーーよっ、シンジ君」

シンジ「あ、加持さん・・」

加持「今から帰るんだろ?送っていくよ」

シンジ「いや、いいです。加持さんも忙しいだろうから・・・」

加持「まあまあ。そんなツれないこと言わないでくれよ」

加持「・・・色々と伝言も頼まれてるしな」

シンジ「伝言?」

加持「ああ」

加持「じゃあ車とってくるからちょっと待っててくれ」

加持「おじさんとデートだ」


加持さんはウィンクを僕にして車をとりにゲートを抜けていく。


何故だろう。少し寒気がした

ブロロロロォ・・・


シンジ「・・・」

加持「・・・」


車内に流れる空気が重い

当然なのだろうけど


それにしても随分、走っている気がする。

ネルフからミサトさんの家までここまで距離はなかったような・・・


シンジ「これって今どこ走ってるんですか?」


加持「ん?まあ着いてからのお楽しみだな」

シンジ「もう僕帰りたいんですけど・・・」

加持「シンジ君、人生には寄り道も必要なのさ」

加持「君よりは長生きしてる俺が言うんだ。信じて損はないぞ」


ニヤリ、と笑う加持さん

一つ一つの仕草が様になっていた。映画の主人公みたいに

シンジ「・・・そうですか」

加持「そうだ」


シンジ「・・・」

シンジ「聞いてもいいですか?」

加持「お、なんだい」

シンジ「マリはどうしてますか?」

加持「・・マリか」

加持「ネルフの病室にいるのは間違いない。今頃、葛城から今回の使徒の件について聞いてるんじゃないかな」

シンジ「・・・」

加持「心配かい?」

シンジ「・・・はい。汚い大人達に囲まれているかと思うと心配です」

加持「ははは。汚い大人かー」


加持さんは怒る訳でもなく軽く笑う

シンジ「怒らないんですか?」


加持「・・君からそう言われても仕方ないって俺自身理解してるからね」

シンジ「・・・」

また沈黙

だけど数分もしない内に目的地が見えてきた

加持「ーーーっとそろそろか」

シンジ「ここって・・」


加持「さあ、到着だ」


ブロロロロォ・・


加持さんが路肩に車を停めて降りる

加持「シンジ君、降りないのかい?」

シンジ「・・・」

促されるように降りる

そこには

街全体を見渡せる高台

夕日が地平線に沈み、街の至るところからビルが伸びてくる光

「第3進東京市」

かつてミサトさんに連れてこられた場所

昔と変わらない光景だった

加持「良い景色だな」

シンジ「・・・ミサトさんに聞いたんですね」

加持「ん、まぁな」カチッ、シュボ

煙草に火をつけ紫煙をたゆらかせながら加持さんは答える

シンジ「説得する、為ですか?」

加持「・・いや、違う。今さら俺が何か言って揺らぎはしないだろ?」

その通りだ。じゃあ何故

加持「謝罪さ」

シンジ「何をですか?」

加持「マリを君に背負わせ俺達は逃げた」

シンジ「・・・逃げたって自覚はあるんですね」


吐き捨てるように皮肉を言う




加持「あの時、俺とミサトは傷ついたマリを見て耐えられなくなった」

加持「罪悪感ってやつさ」

加持「・・・逃げた俺が言うのも君には癪だろうけど」

加持「ありがとう、シンジ君。マリを支えてくれて」


罪悪感

もしかしたら

加持さんやミサトさんも何とかしようと奔走したのかもしれない

シンジ「もういいですよ」

でも、感謝なんてして欲しくなかった

僕は大人達の為にマリと一緒に居た訳じゃない


加持「・・・」

加持「ーーんじゃ、ま!そろそろ伝言を伝えるとしようかな」

シンジ「伝言・・誰からですか?」

加持「ああ。最初はレイと葛城に頼まれたんだが、リッちゃんやマヤちゃん、青葉君に日向君もお願いしますってさ」

加持「誰から聞きたい?」

シンジ「えと、別に誰からでも・・」

加持「なら青葉君と日向君からいくか」

青葉『シンジくん、話は聞いたぜ。

俺は無力だ。

使徒を倒す力もないしエヴァにも乗れない。

だからチルドレンの君達に託すしかなかった。

苦しめてたなんて知らなかったよ

でも、君にしか出来ないんだ。他の誰でもない君にしか・・

これが終わったら一回みんなでバカ騒ぎしよう!

くだらないことで笑おう!

・・・だからもう一度エヴァ乗ってくれ!』

日向『僕が君にとやかく言える立場じゃない

けど言わせて貰う

シンジ君は意識した事はないかもしれないけど

君達が守ってきたモノを君は見捨てるの?

僕達に君の苦悩は分からないしマリを壊したのは僕達大人かもしれない

それなら僕達の為じゃなくても良いから

マリと生きていく世界を守る為に使徒と戦ってくれないか?』


シンジ「・・・」

マヤ『ごめんなさい。

謝ることしか出来ないけど
・・今までエヴァに乗ってくれてありがとう

幸せになってね・・』


リツコ『貴方が嫌いな事だげが総てじゃないわ

・・・優しくない世界なんていらないって言っていたわね

世界を変えたいなら貴方自身が変わりなさい』


シンジ「・・・・」


ミサト『シンジくんは私の大切な家族よ

家から出ていくなんて言わないでね

あの家はアナタの帰る場所なんだから

今までもそしてこれからも・・・

・・・・臆病になってマリやアスカから逃げた私を許してなんて言わない


でも


また皆で笑い会える日が来るのを私は信じてる

その為なら今度こそなんだってするわ

だからシンジくん

アナタはアナタのしたいようにしていいの』


綾波『碇君がいない数年間心がズキズキしたの

碇君がいた毎日は心がポカポカしたの

嬉しさも楽しさも私に教えてくれた碇君が

藁人形みたいにぽっかり空いた隙間を埋めてくれた碇君が

私はきっと・・・

碇君、もう一度碇君に会いたい

だからこれでさよならなんてしたくない・・・』




シンジ「・・・」

加持「っとこれで全部かな」

シンジ「・・・よく、全部覚えましたね」

加持「自分でもそう思うよ」

シンジ「・・こんなの聞かされても僕は」

加持「皆、君が好きなんだよ」

シンジ「好き・・?」

加持「何も恋愛感情だけが好意ってわけじゃない」

加持「友人、異性、仲間、家族としてって意味さ」

加持「だから皆、伝えたかった。シンジくんに自分達の気持ちを、さ」

シンジ「・・・」

加持「・・・これだけは覚えていて欲しい」

加持「エヴァに乗ることだけが君の存在意義なんかじゃないぞ」

加持「碇シンジという一人の人間に皆惹かれたんだ」

シンジ「でもっ!なら父さんは・・!」

加持「あの人は素直じゃないんだよ。難しい立場にいるしな」

シンジ「違う!父さんは、あいつは僕やマリを道具だって・・!」

加持「・・なんでマリやアスカがイギリスに送還されなかったと思う?」

シンジ「それは・・エヴァに乗れなきゃ必要ないって」


加持「世界で数人しかいないエヴァの適合者。何処の軍だって軍事目的、研究目的で手に入れようとする」


シンジ「なら、なんで!?」


加持「・・碇司令はマリやアスカの為にイギリスとドイツの機関に掛け合ったんだ。君達には内緒でね」


シンジ「・・・え?」


加持「その交渉でかなり無茶をしたんだろうな。今やイギリスとドイツからは親の敵同然に思われてる」

加持「今回みたいな緊急事態の為にって言えばそれだけかもしれない。でも俺は違うと思う」

加持「シンジくんは知ってるだろ?マリに家族がいないのは」

シンジ「・・はい」

加持「マリの身元保証人は俺、アスカは葛城、レイはリッちゃん。どれも司令が手配したものさ」

知らなかった

加持「適当に書類に書くなら誰だって構わない。一度その書類に目を通したけど全部司令の手書きでしっかりと記入されてた」

こんなの知らない

シンジ「なんだよ、それ・・」

加持「・・・シンジくんは理解しようとしたのかい?」

シンジ「・・・」

加持「碇司令の事を、お父さんの事を分かろうとはしなかっただろ?冷たい父親だって決めつけてなかったか?」

加持「司令とわかりあえなくても歩み寄る事は出来たんじゃないか?」

シンジ「・・・」

加持「説教臭くなっちゃったな。悪い」

フーッと吐き出された煙草の煙は空へと消える

シンジ「・・何も変わりません」

シンジ「あの時、叫んだ言葉は僕の本心だから」

シンジ「でも」

『シンジくんここはあなたの家なのよ。家に帰る時は、ただいま、でしょ』

ミサトさん

シンジ「・・・」

『よくやったな、シンジ』

父さん

シンジ「・・・」

『最近シンクロ率上がってるわね。この調子で頑張りなさい』

リツコさん

『辛かったらいつでも相談してね。無理しちゃだめよ』

マヤさん

『お、シンジ君。チェロやってたんだってね、今度はギターしてみない?』

『バカ。チェロとギターになんのつながりがあるんだ。シンジ君こいつ無視していいよ』

青葉さんに日向さん

そして



『碇君』ニコ




綾波

シンジ「・・・あの時、自分が何でエヴァに乗ってたか分かった気がします」

必要とされただけじゃなく

守りたいって思ってたんだ。この人達を

僕が

何の取り柄もない僕が

必要とされた事が嬉しかった

褒められた事が嬉しかった

けど、それだけじゃなかった

誰かに強制されたからって逃げていたのは僕

自分自身が望んだのに、それを歪めてたのは僕自身なんだ

加持「・・それで、シンジくんは今何をしたいんだい?」

マリが頭に浮かぶ

アスカでも綾波でもミサトさんでも父さんでも

他の誰でもない。マリが笑う

シンジ「・・・マリに、マリに会いたい」

加持「ーーマリ、か。聞いてもいいかな」

加持「マリに必要とされたから君はここまでマリに全てを捧げる程尽くせるのか?」

加持「何の見返りも称賛もされない。自分を犠牲にしてまで世界を天秤にかけてもマリを助けたいって思うのはどうしてだい?」




シンジ「それはーーー」

マリが僕と同じ孤独な立場だったから

マリの泣いた顔が傷ついた姿が余りにも悲しかったから

マリが僕を頼ってくれる事に心が弾んだから

束縛されてもそれが苦痛じゃなくて

マリが嬉しいなら僕も嬉しくて

マリが辛い時は僕も辛くて

一緒にいればいるほどマリの事が僕は





ーーーーーーああ。


ーーーーーーそうか。


何でこんな簡単な事に今まで気付かなかったんだろう


僕はマリがーーー

加持「その様子だと気付いたんだな。自分の気持ちに」

加持「・・シンジくん、実は言うと俺は」

煙の向こうの加持さんが微笑みながら話す

加持「君を引き戻す為に伝言役を買って出た」

シンジ「・・だと思ってました」

加持「情けない話だが俺達大人はチルドレンにすがるしかないのが現実だ」

加持「でもね」

加持「今の君を見てると思う」

加持「世界を犠牲にしてしまう程、誰かを想うなんて簡単に出来る事じゃないーーってね」

シンジ「加持さん・・」

加持「一度は君達に救ってもらった世界だ。・・今回もきっとなんとかなるさ」クス


加持「だからシンジくん、俺はもう止めはしない」

シンジ「・・・ありがとうございます、加持さん」

加持「礼なんていらないさ」

おどけながら加持さんは言う

加持「シンジくんははこれからどうするんだい?」

シンジ「・・マリに会って自分の気持ちを伝えます。それからの事はまだ分からないけど・・二人で一緒に暮らしたり出来ればいいなって」

加持「なんだか急に葛城に会いたくなったよ。今度俺も誘ってみるかな」

シンジ「・・もうミサトさんもいい歳ですしね」クス

加持「葛城に聞かれたら殺されるぞシンジくん」


シンジ「・・あはは」

加持「フッ・・」



プルルルルル、プルルルルル



和やかな空気の中、機械音が鳴り響く


加持「っと、悪いなシンジくんちょっとでるぞ」

加持さんは僕から離れ携帯にでた

何を話しているのかは遠すぎて聴こえない

・・ネルフからだとは思うけど









加持「ーーもしもし」

『シンジ君の方はどう?』

加持「・・駄目だったよ」

『そう、ダメか・・』

加持「きっと誰が何を言っても無駄さ」

『・・・状況は悪くなるばかりね。でもシンジくんにはこれで良かったのかもしれない』

加持「どういう意味だ?」

『さっきマリ、アスカ、レイの三人のシンクロテストが終わったわ』

加持「もう終わったのか?随分急いだんだな」

『時間がないから仕方ないのよ』

加持「・・・で結果は?」

『・・暫定的な形だけど結果はーーーーー』







加持さんは電話が終わったようで僕の方に戻ってくる


加持「シンジくん」

シンジ「はい?」

加持「今、マリ達のシンクロテストが終わったみたいだ」

加持「それで、だな・・」

歯切れが悪そうに加持さんが言い淀む

シンジ「なんですか?エヴァには乗りませんよ」

加持「違う。シンジくん・・マリが君に会いたいそうなんだ」

シンジ「マリに会えるんですか!?」

正直に言えば当分、会えないと思っていた

加持「・・・」

シンジ「行きます!」

僕も会いたい

マリに会って自分の気持ちを伝えたい

依存だけじゃない

必要とされたからだけじゃない

純粋な気持ちを

加持「マリは今、作戦本部の所にいる。アスカやレイも一緒にね」

加持「ネルフには戻り辛いだろうが・・それでも構わないんだね?」

シンジ「はい!」

加持「そうか・・それじゃ、また車に乗ってくれ。ネルフに戻ろう」

シンジ「ありがとうございます!加持さん!」

僕は浮かれていた

だから、この時は気付きもしなかったんだ

加持さんの表情に

憐れむように僕を見ている事に

マリに会える。

それだけしか考えてなかったから



加持「・・・」



『アスカのシンクロ率0.13%』

『レイのシンクロ率0.24%』


『そしてーーー』


『マリのシンクロ率42.3%』

『シンジくんを除いたら今エヴァに乗れるのは・・マリだけよ』



加持「・・・まさか、こうなるなんてな」

ポツリと呟き、加持は思う

世界は優しくない

今までもこれからも

変わろうとする努力すら嘲るように

碇シンジという少年に何処までも世界は残酷だった



ネルフ作戦本部ーーーーー

マリ「・・あ、シンジじゃん!どこいたの!?心配してたのにさー♪」

高台から急いで戻ってきた僕を待っていたのは

笑顔で歩み寄るマリと

アスカ「ふん」

顔に包帯を巻いて不機嫌そうなアスカ

レイ「・・・碇君」

まるで昔のように無表情や綾波

ミサト「・・・」

リツコ「・・・」

険しい顔をしたミサトさんとリツコさん

他の職員も皆、苦い顔をしている

仕方ないって思う

エヴァに乗らない奴がまたのこのこ来たんだから

マリ「シンジどうしたの?お腹痛いの?さっきからなんか暗いじゃん」

シンジ「いや、大丈夫だよ。それよりさマリは大丈夫・・?」

首元に見える処置の跡

マリ「あはは♪ぜーんぜんだいじょぶ!ほら!」

僕の前で大袈裟にくるくる回ってみせるマリ

あんな怪我をしたばかりなのにマリのテンションは高かった

シンジ「(・・僕に会えて嬉しいのかな)」クス

自惚れかもしれないけどそう考えたら笑みが零れる

ミサト「・・・マリ。シンジくんに話があるんでしょ」

マリ「あぁ!そうだったにゃー」

シンジ「ぼ、僕も」

シンジ「・・・マリに僕も話すっていうか・・伝えたい事、があるんだ」

いよいよだ

大勢の人がいるけどもう構わない

まさか、ネルフで言うなんて思ってもなかったけど

マリ「そっかぁー。シンジもあるんだ!・・えへへ、多分お互いびっくりする話だよね」

にこにこしながら話すマリ

シンジ「そ、その・・さ、なんてゆーか・・・」

マリ「うんうん♪」

シンジ「僕は、マ、マリが・・!」

マリ「にゃー?」

・・なんなんだよ!クソ!

早く言わなきゃ!緊張してる場合じゃないだろ!

マリ「私がどうかしたの?」ニコニコ

マリ「・・んーシンジが言いづらいなら先にいおっか?」

シンジ「え!?いや!ちょっ」

言え!

シンジ「ぼ、僕はっ!!」

言えっ!!

シンジ「マリが!すーー」

マリ「シンジ!私、またエヴァに乗れるんだ!!」










シンジ「ーーーな、んだ・・?」

手を握り締め

叫ぶように

伝えたい言葉が

消えていく

マリの遮るような一言が僕の鼓動を熱を言葉を奪っていった

マリ「びっくりした!?もうシンジに早く言いたくて我慢できなくてさー」

満面の笑みでマリは言う

マリ「またエヴァに乗れるんだよー!・・姫やレイちゃんは乗れないのに!」

シンジ「アスカと、綾波がの、れない・・・?」

マリ「理由はわっかんないんだって。でもこれでエヴァに乗れるのは私とシンジだけ♪」

マリ「やっぱりさ、私とシンジはエヴァに必要とされてるんじゃにゃいかなー♪」


捲し立てるようにマリは話す

マリと過ごした数年間でマリがこんなに喜んでいる姿は見たことがなかった

甘えることはあっても

『いやにゃー!!絶対かえさないもん!』ズルズル

『ちょ、マリ!?服伸びちゃうよ!』

笑って過ごしても

『あはは♪シンジねー』

『マリ、よんだー?』

『・・んー♪やっぱなんでもなーい』


僕が望んでいたマリの笑顔も幸せも

エヴァが全て叶えてしまう


エヴァ の代用品であること

僕がそう望んだのに

自分が代用品になることを決めたのに・・・!

マリが幸せそうに笑う姿が

こんなに苦しくて悔しい

きっと僕はエヴァに嫉妬している

僕のしてきた事がマリの中で全部、色褪せて消えていくんだろうか、そう思ってしまった



仕方ないと言えばそれまでだけど

必要とされるまで傍にいれれば良かった

だから

こんな気持ちを抱かなければ、知らなければ良かった

そうすれば素直にマリと喜べたんだ

マリをーーーー




マリ「・・シンジ?」

シンジ「あっ・・」

マリ「さっきからなんか様子おかしくない?」

シンジ「そ、そうかな」

マリ「あ!わかった!」

マリ「シンジちょっと不安なんだろー?エヴァとシンクロ出来ないんじゃないかってさ!」


違うよ


マリ「だーいじょぶだって♪シンジと私は同じだったんだから」


違うんだ・・


マリ「どーしても不安なら私も一緒にいてあげっから!お姉さんにまっかせなさい」


・・君は気づいてないんだね。

昔のように笑ってる

昔のように話している自分に・・・




僕はもう、エヴァに乗れないんだ



マリと一緒にいれれば良かったんだ



シンジ「・・・おめでとう、マリ」



だから僕はここにいちゃいけない


勝手にマリが僕と過ごす毎日を想像してたんだ

君の幸せがエヴァに、ここにあるなら


シンジ「きっとマリなら大丈夫だから・・!もう僕がいなくても、マリは必要とされてるから」

マリ「・・にゃ?なんの話して」

シンジ「僕は、エヴァに乗らない・・」

マリの笑顔が歪んでいく

マリ「・・・は?なにいってんのシンジ」

マリ「エヴァは私達の居場所じゃん!?ここまでどんな毎日だったか忘れたの!?」

信じられないって表情でマリは取り乱した

マリ「絶望ばっかだったけどシンジが変えてくれた・・シンジも私と同じ痛みをわかってくれた・・でも」

マリ「・・私が、私たちがっ!!戻りたかった場所に戻れるんだよ!」

マリ「シンジは違うの!?私と同じってあの時言ったじゃんか!!」





誰も喋らない




マリ「はぁ・・はぁ・・!」


リツコ「・・そんなに叫んだら怪我に響くわよ」

マリ「うっさいッ・・!!今シンジと話してんだから邪魔すんナァ!!」ギロ


リツコさんの仲裁など無意味だった

君が望む幸せを僕は・・壊したくない


シンジ「きっとマリの幸せは・・ここにあったんだよ」

シンジ「前にさ、幸せのカタチって話したの・・覚えてる?」

マリ「し、あわせのカタチ・・?」

シンジ「これがマリのカタチなんだよ。だってあんな風に喜んでる君を見たのは・・初めてだから」

シンジ「だから、マリ」

シンジ「い、今までありがと・・っ!」


そして


シンジ「さよなら・・!」

マリ「ーーーえ」







気づいたら僕は走っていた

マリの声やミサトさん、周りの人の声が遠ざかる


どれくらい走ったのだろう


いつの間にかネルフの外にいた


ポツポツと



雨が頬を伝っていた

この雨は何時、止むのかな

雨は勢いを増すばかり

なら

今だけは泣いても誰にも聴かれない、よね


シンジ「うぅッ・・」

シンジ「アアアアアアァ・・!」

シンジ「・・ウアアアアアアァッッ!!!」





シンジ「こ・・んっ!・・ック・・に辛いなら好きに、なら゛きゃ・・よかった・・・ッッ!」

崩れ落ちてしまいそうな少年を支えるモノはない

もう

何もなかった















マリ「・・・」


青葉「さっきからずっと項垂れたままだぞ・・」

日向「仕方ないだろ・・シンジ君が今までどれほどマリの支えになってたか考えれば」

マヤ「マ、マリ・・」ソー

リツコ「やめときなさい」

マヤ「先輩!?で、でもあれじゃあんまりです!」

マヤ「マリが可哀想ですよ!」

リツコ「私達が何か言える程、あの二人の関係は浅くなかった筈よ」

リツコ「二人が選んだ結末なの。今は・・一人にしてあげましょう」

マヤ「・・・」

リツコ「これからはマリには人類の為に総てを戦って貰わなくちゃいけなくなる」

リツコ「もうマリに託すしかないんだもの・・」

リツコ「今だけは、せめて悲しみに浸らせてあげなさい」スタスタ

マヤ「・・・はい」

日向「俺達も行こう」

青葉「あ、ああ」チラ

マリ「・・・」

ミサト「・・・」

ミサト「(・・マリ、ごめんなさい)」

ミサト「(シンジくんを会わせたのは私・・私はシンジくんに押し付けて貴女と向き合う事から逃げたの)」

ミサト「(言い訳はしないわ。マリを犠牲にして私は自分の幸せを取り戻そうとしている・・)」

ミサト「(身勝手な私を・・私を許して)」




『さよなら』

頭に反復する

シンジがエヴァに乗らない

理解出来なかった

私と一緒のハズのシンジが

同じ孤独を抱えて

同じ痛みを味わった

それなのになんでシンジは違うの・・?

あの二人とは違ってシンジもきっとエヴァにシンクロ出来るのに

それが私たちの幸せのカタチ、だと思ってた

マリ「・・・なんでなんだよ」ボソッ

マリ「わからない・・わからないっつーの」ボソボソ




アスカ「ーーったく、ボソボソ気持ち悪いわねさっきから」

マリ「・・・あぁ?」



顔をあげると周りには二人しかいない

あれほど居たネルフの職員は誰もいなかった

姫と綾波レイ

アスカ「良かったじゃない。またエヴァに乗れて」

マリ「ふん。エヴァに乗れない味?・・シンクロ率何%だっけーーあぁ、そうだ!1%以下なんだったね姫!」

アスカ「・・・」クス

マリ「・・1%以下とか恥ずかしくないわけ?カマドウマとか虫の方がもっとシンクロできるんじゃないかにゃー」

アスカ「・・・」ニヤニヤ

なんだよそのニヤついた顔

マリ「ほんっっと憐れすぎだっつーの。ドイツの天才パイロット様が今やただの一般人じゃん」


アスカ「・・・で?」ニヤニヤ

マリ「っ・・・。だから」

この余裕の顔が

見下すような眼差しが

私を苛つかせる

マリ「・・・だから、そのニヤついた顔がムカつくんだよッ!!」

マリ「エヴァとシンクロ出来ない癖に!価値も居場所もない癖に!」

マリ「私は違うっ!価値があるし居場所もある!大勢の人から!みんなから必要とされてるっ!」


アスカ「シンジからは?」


マリ「ーーーーは?」

アスカ「さよならって言われたアンタはシンジから必要とされてるわけ?」

アスカ「あれだけシンジに頼ってたのに裏切って手に入れた居場所は居心地がいい?」

アスカ「アンタがいる価値も居場所にもシンジはいない」

マリ「そんな、の」

アスカ「アンタがエヴァに乗る幸せを手に入れたのはシンジといる幸せを手離したのと同じ」

マリ「・・・なにそれ、意味わか」

アスカ「アンタさシンジのこと好き?」




シンジのことが好き?

なら私は?


大切

宝物

居場所

シンジは私にとってかけがえのない存在だった




ーーーーだった?




じゃあ、今のシンジは私の何?


マリ「わた、しはシンジの・・」

アスカ「私は好きよ。アイツが大好き」

アスカ「まぁ、認めるのに時間はかかったけどねー」

アスカ「もうエヴァに未練はないわ。だってシンジがいるもの」

アスカ「アイツが私の居場所で私の価値。他の誰からも必要にされなくてもバカシンジが必要としてくれるなら」


アスカ「私は幸せ」


アスカ「アイツが笑うだけで嬉しいし世界があったかくなんのよ」

アスカ「エヴァの代わりぐらいにしか考 えてなかったアンタにはきっとわからない」

アスカ「アイツの優しさも気持ちもわかってないアンタには、絶対に」




シンジのことは私が一番わかってる!




そう叫びたい。


マリ「っ・・・」

でも言えなかった

姫のように真っ直ぐに言える自信がなかった

あんなに近かったシンジが今は遠くに感じてしまう

アスカ「・・最後に、良いこと教えてあげる」

マリ「・・・」

アスカ「シンジにとって私とアンタの違いは遅いか早いかってだけよ」

マリ「!?」

アスカ「ふふ」

マリ「そ、そんなのちがうもん・・」

情けない

こんな弱々しい否定しか出来ない

アスカ「・・ん、まあアンタがエヴァに乗ってくれるのには感謝しないとね」


姫は私に近づき耳元で告げる


アスカ「ありがと、マリ」ボソ

アスカ「私とシンジが一緒にいる未来をアンタの大好きなエヴァで一生懸命守って頂戴」ボソ

マリ「・・・ッ」

何も言い返せなかった

姫は優々と私の横を通りすぎていく



レイ「・・・」

アスカ「・・・」ピタ

アスカ「・・・譲らないわよ」

レイ「・・・」

マリ「・・・」


姫が出ていく


残ったのは私と綾波レイの二人だけ

レイ「・・私は最初」

マリ「・・え?」

レイ「碇君が幸せならそれで良いと思ってた」

レイ「私じゃない人でも構わないって」

レイ「・・でも」

レイ「間違ってたわ。やっぱり私が碇君を幸せにする」

レイ「・・・使徒との戦い頑張って」


それだけ言うと作戦本部から出ていった





今、私は一人になった

『幸せってどんなカタチしてるのかな』

『へ?』

『ふわふわしてるのかな?それとも意外と堅かったりするのかにゃー』

『急にまた哲学的な質問だね』クス

『ねぇーどーおもう?』

『そうだなぁ・・・ありきたりかも知れないけど人によって違うと思うよ』

『んー・・私の幸せってどんなカタチしてるんだろ』

『きっと、猫のマークみたいなカタチじゃない?』

『なにそれー!』







エヴァが私の居場所

大勢の人から必要とされ、期待されてる

もうあの頃みたいな惨めな思いも

辛くて息苦しい日々も送ることない


それなのに


それなのに


この虚無感もイライラも治まりそうにはない


マリ「幸せのカタチ、か」


マリ「これが・・私の望んでた幸せ?」


一人呟く声は


マリ「あはは、誰もいないや」


空しく

乾いた笑い声がよく響く







マリ「幸せのカタチ」






おわり








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