シンジ「具現化能力?」 (36)
ギャグテイストのSS書いてみたくなったんで投稿
100レスほどで完結させます
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【ネルフ本部 ラボ】
リツコ「ええ、そうよ。今回、新薬の開発に成功したらしいの」
シンジ「えっと、なんですか? それ」
ミサト「シンちゃんはエバーのパイロットだから知ってると思うケド、ATフィールドの原理を試した薬ってこと♪」
リツコ「空間を歪め、認識能力に干渉するほど強力な磁場を発生させる。当人が妄想した思考に対し“自分は最初からそうだった”と他人に刷り込ませるのよ」
シンジ「は、はぁ。そんなのが可能なんですか」
リツコ「理論上では。治験、すなわち、人体にどんな影響が出るのか未確定」
ミサト「そ・こ・で! どぉ? 試してみない?」
シンジ「……えぇっ⁉︎ 僕がですか⁉︎」
ミサト「一般から公募を募って効果を検証するにはあまりに危険っていうか、ちょっち、ね」
シンジ「そんなっ⁉︎ だからって、なんで僕がっ⁉︎」
ミサト「シンジくんなら、素直だし。あんまり突拍子もない妄想しないんじゃないかなぁ~って」
シンジ「い、嫌ですよ! どんな副作用がでるかわからないんでしょっ⁉︎」
ミサト「まぁ、そりゃそうだけどぉ。妄想が本当になるならあんなことやこんなこともやりたい放題よん?」
シンジ「そんな話じゃ」
リツコ「これは碇司令から直接下された命令でもあるのよ。あなたをご指名でね」
シンジ「……っ! 父さんが、僕を……?」
ミサト「わざわざシンジくんを指名するってことは、碇司令が最適だとご判断されたのよ。お父さんの期待に、応えたくない?」
シンジ「……ずるいや、そんなの……」
ミサト「本当に効果がでるのかマユツバもんだしさ。深刻に考えないで、ね?」
リツコ「万が一、続行が難しいと判断された場合には即座に実験を中止すると約束するわ」
【30分後】
シンジ「あの、なにも起こらないみたいです」
ミサト「って言ってますけど?」
リツコ「シンジくん、今なにを考えてる?」
シンジ「え? その、お腹すいてきたなと……」
リツコ「ミサトに対してなにか妄想してみてくれない?」
ミサト「ぬぁっ⁉︎ ちょっと! なんであたしに対してなのよ!」
リツコ「この場には三人しかいないじゃないの。私は観測が必要だし、それに、暇でしょ」
ミサト「人を勝手に使うなって言ってんのよ!」
リツコ「シンジくん、かまわないからやってみて」
シンジ「いきなり、ミサトさんに妄想しろって言われても。なにをすればいいんですか?」
リツコ「なんでもかまわないわ。例えば語尾に『にゃ』をつけるとか」
ミサト「あたしもうすぐ三十路なんですけどぉ⁉︎ 今さらそんなのつけられたらただの痛い大人じゃないの! まったく!」
リツコ「あら、おばさんに近づいてるって自覚あったのね」
ミサト「へいへい。あんただって同い年でしょーが」
シンジ「(ミサトさんが語尾に猫みたいな言葉をつけてる姿を妄想すればいいのかな。……なんで猫なんだろう)」
リツコ「……どう?」
シンジ「今、やりはじめたところです」ジー
ミサト「おやおや。シンジくんから凝視されるのは珍しいかも」
シンジ「茶化さないでくださいよ。ただでさえイメージするの沸いてないんですから」
ミサト「悪かったわね! かわいいイメージじゃなくて!」
リツコ「集中させておあげなさいな」
シンジ「(リツコさんってもしかして、猫が好きなのかな? 猫好きなリツコさんか……)」
リツコ『どうしたにゃ?』
シンジ「ぷっ」
ミサト「シンジくん……? まさかあたしを想像してありえないとか吹いてるんじゃないでしょーね?」
シンジ「あっ、いや、その」
リツコ「ミサト、いい加減にしなさいにゃ」
シンジ「いっ⁉︎」
ミサト「はぁ、そうは言うけどさぁ。なんだか時間の無駄なような気がしてきちゃった」
リツコ「無駄な時間にゃんてにゃいのよ。試さなければ成功は生まれにゃいもの」
シンジ「り、リリツコさんっ⁉︎」
リツコ「にゃに?」
ミサト「どしたの? なんかあった?」
シンジ「み、みみみっ、ミサトさん! リツコさんがにゃって言ってますよ⁉︎」
ミサト「……? リツコは“元々こういう喋り方”じゃない」
シンジ「な、なにいって」
リツコ「やはり、まだ薬が浸透していにゃいのかしら」
シンジ「そういえば、さっき、他人の認識を歪めるって言ってた。本人だけじゃなく、まわりも……」
リツコ「シンジくん。しばらく様子を見ようと思うのにゃけど」
ミサト「薬の投与は続けるの?」
リツコ「もちろんにゃ。とりあえず、三日ほど様子を見たいにゃあ」
シンジ「ぶふっ」
ミサト「……? なにか面白いところあった?」
シンジ「(こ、これは、すごい薬なのかもしれない)」
【帰宅中 車内】
ミサト「さっきは、ごめんね」
シンジ「(いつまで効果が続くんだろう。やっぱり、妄想が他人に影響するって良くないことだよな)」
ミサト「あちゃー。もしかして、ふてくされてる?」
シンジ「……え? すいません、考え事してて」
ミサト「そう、それならいいんだけど。さっきのやりとり、謝っとこうと思って」
シンジ「なにをですか?」
ミサト「お父さんをダシに使うのは、悪いことしたかなって」
シンジ「あぁ…‥」
ミサト「本当は、薬なんてどうでもいいの。リツコがどうしてもっていうから建前上付き合ってるけど、息抜きの遊びになりそうだと思ったし」
シンジ「……」
ミサト「自分に対する言い訳ばっかりね。ごみん」
シンジ「気にしてないですよ」
ミサト「……助かる」
シンジ「あの、もし、仮になんですけど、この薬が本物だってわかったらどうなります?」
ミサト「本物って? 効果が確認されたらって話?」
シンジ「はい」
ミサト「さぁ……? 運用方法までは確認していないけど……妄想を他人に被せられるとしたら、用途は多岐に渡るんじゃないかしら」
シンジ「例えば?」
ミサト「ざっくり言うと、政治利用とか? 相手を選ばないのであれば取り引きに使えるんじゃない? だって、事実上相手を意のままに操れる、“支配”できる」
シンジ「(めちゃくちゃじゃないか)」
ミサト「ぷっ、真っ青な顔色しちゃってぇ。まさか、信じてるの? だぁ~いじょぶよ! そんな都合の良い薬があるわけないんだから!」
シンジ「父さんは、どうしてこれを研究してるんですかね」
ミサト「そりゃあ、今言った通り、実現できればインチキ並みのポテンシャルがあるから?」
シンジ「そ、そうか……そうですよね」
ミサト「気楽にやって。ただのビタミン剤だと思えばいいからいいから」
【ミサト宅 リビング】
アスカ「ちょっとぉ~? まだお風呂沸いてないじゃなぁ~い!」
シンジ「あ……ごめん。忘れてた」
アスカ「ご飯食べた後に入るからスイッチ入れておいてって言ったのにぃ!」
シンジ「自分で押せばいいじゃないか」
アスカ「あんたがわかったって言うから信頼してまかせたのに。なぁ~に、その言い草!」
シンジ「……わるかったよ」
アスカ「あぁ~ぁ、見たいテレビ番組があるからその前に入ろうと思ったんだけどなぁ、今から沸かしてたら間に合いそうにないわねぇ」
ミサト「録画すれば?」
アスカ「ここにある録画機、先週に壊れたって伝えたけど?」
ミサト「……そうだったっけ?」
アスカ「家主がポンコツなら家電もポンコツね!」
ミサト「そりゃ申し訳ございません」
シンジ「どうする? お風呂、今沸かす?」
アスカ「ためといて。後で追い焚きして入るから」
ミサト「シンちゃん、先にはいっちゃいなさい」
シンジ「でも、洗い物ありますから」
ミサト「……アスカ」
アスカ「……?」ゴロゴロ
ミサト「ソファーで雑誌読みだしてないで。アスカが洗い物ぐらいしてあげなさい」
アスカ「えぇ~~~~っ⁉︎ なんであたしがぁっ⁉︎」
ミサト「たまにはそれぐらいしたってバチあたんないわよ。シンジくんは家事全般を一手に担ってるんだし」
アスカ「ミサトがすればいいじゃない!」
ミサト「あたしは家賃を払ってるのよ。家主として。いうなればあんたらは居候」
アスカ「横暴だわ! あたしはパイロットとしてネルフに従事してるのよ!」
ミサト「シンジくんだって、パイロットよ?」
アスカ「それはシンジが悪いのよ! 自己主張をはっきりしないから!」
ミサト「優しいからやってくれてるのよねぇ~?」
シンジ「は、はぁ」
ミサト「それに比べて。今日ぐらいという言葉がでてこないもう一人の冷酷なこと」
アスカ「それを言う⁉︎ ヘルパーなり雇ったらいいだけの話でしょ!」
ミサト「ちょっち、お財布事情がねぇ~」
アスカ「とにかく! あたしはい・やっ!」
【ネルフ本部 執務室】
冬月「例の試験薬は息子に渡したんだべ?」
ゲンドウ「ああ」
冬月「そげな薬、実現可能だとオラには思えねぇっぺよ」
ゲンドウ「問題ない、効果は確認済みだ」
冬月「あんれまぁ~……本当に試しただか?」
ゲンドウ「冬月、少し黙れ」
冬月「なんでだぁ?」
ゲンドウ「いや、いい」
冬月「しんがしまぁ、どういう風の吹き回しなのか見当がつかねぇ」
ゲンドウ「気まぐれだ。それ以上はない」
冬月「監視はどうすんだ?」
ゲンドウ「俺個人でやる。表だった動きはするつもりがない」
冬月「おどれーた。活用しねぇのか?」
ゲンドウ「……都会はどうだ?」
冬月「……? なんでそげなこと聞く? オラはここにきてなげぇど」
ゲンドウ「そうだったな」
冬月「子供に与えるにしてはやりすぎだと思うんだげどなぁ」
ゲンドウ「まだ解明する点はある。強力な暗示の状態と酷似しているからな。どの程度までなら本人や周囲の人間が違和感を感じないか不可思議だ」
冬月「……ところで試したっていづだ?」
ゲンドウ「……」
冬月「なんで目を逸らす」
ゲンドウ「タイムスケジュールに支障はない。確認すべきはその一点だ」
【深夜 ミサト宅 リビング】
ミサト「んがーっ、んがーっ、ふごっ、ぬふふ、あんっ、だめよぉ。そんなところ……むにゃむにゃ」
シンジ「ミサトさん、ソファーで寝てちゃ風邪引きますよ」ユサユサ
ミサト「ん、うぅ~ん、もう飲めないぃ~」
シンジ「テレビもつけっぱなしで」
C.C『力があれば生きられるか?』
シンジ「……深夜アニメか。なんてやつなんだろう」パサ
ルルーシュ『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。貴様たちは……死ね!』
シンジ「コードギアス……。そういえばケンスケが面白いって言ってたような、再放送か」
クロヴィス親衛隊『くふっ、ぬっはっはっ、イエス、ユアハイネス!』パァンッ ドサ
シンジ「うわぁ、死んじゃった」
ルルーシュ『あの日から……俺はずっと嘘を付いていた。生きてるって嘘を。(中略)だけど手に入れた。力を。だから!』ニヤ
シンジ「あれ? もう終わりか。……妄想を具現化できるなら、僕にもあんなことが」
ミサト「んごーっ、んごーっ」
シンジ「碇シンジが命じる! 貴様たちは死ね!」ビシ
アスカ「……はぁ?」
シンジ「……」シーン
アスカ「なにやってんの、あんた」
シンジ「まだ起きてたのっ⁉︎」
アスカ「まぁね。喉が渇いたから麦茶飲みにきたのよ。そんであんたはテレビにリモコン向けてなにしてんの」
シンジ「あっ! これは、そのっ、ちゃ、チャンネル変えようと思って!」アタフタ
アスカ「ふぅ~ん」パカッ
シンジ「(いつも通りだ。僕の声は聞こえてなかったみたいだ)」ホッ
アスカ「これ最後の一杯分みたいだわ」コクコク
シンジ「あぁ、うん、わかった」
アスカ「……ふぅ。それじゃあたしは寝るから」
シンジ「おやすみ、僕もミサトさんを部屋に連れていったら寝るよ」
アスカ「あ、そーだ。ねぇ、シンジ」
シンジ「ん?」
アスカ「碇シンジが命じる!!」
シンジ「……っ⁉︎」ギョ
アスカ「……ホントにガキね」
シンジ「き、聞こえてたのっ⁉︎ そんな、ずるいよ! そのまま気がつかないふりしてくれれば!」パカ
アスカ「羞恥心はあるんだ? 言わなくてもよかったけど、あんまりにもマヌケな姿だったし」
シンジ「あ、う……」
アスカ「そういうのはGrundschule……こっちだと小学生だっけ? までに卒業するもんじゃないの?」
シンジ「その、普段はこんなことしないよ。さっきのはたまたまで」
アスカ「たまにでもやってるのが問題なのよ」
シンジ「(そうだ、アスカのイメージを……いや、だめだ。やっぱりそんなこと)」
アスカ「碇シンジが命じる!!」
シンジ「……二回もやらなくていいじゃないか」
アスカ「ぶっ、ふっ、改めて言うとおかしくなってきた」
シンジ「(だめだ、我慢、我慢しなくちゃ。アスカは一緒に住んでるんだから、たまたま居合せるのは当然で。やってた僕が悪いんだ)」
アスカ「明日、学校でヒカリに言ってやろーっと!」
シンジ「な、なにもそこまで! もういいじゃないか! 普段はやらないって言ってるんだから!」
アスカ「言われたくない?」
シンジ「当たり前じゃないか……恥ずかしいよ」
アスカ「どぉ~しよっかなぁ?」
シンジ「(なんで、たった一度でここまで。アスカだって、だめだ、だめだだめだ)」
【翌日 リビング】
ミサト「うぅ~、あったま痛ぁ」
アスカ「ひとりで二日酔いになるぐらい飲むって寂しくないの……」
ミサト「シンちゃん、お水、お水をちょうだい」
シンジ「テーブルの上に置いてますよ」
ミサト「ありがと。あー、昨日はさすがに飲みすぎたかなぁ。ノドが焼けてるような気が」
アスカ「シンジ、あたしトーストね」
シンジ「わかっ……あれ? 棚の中に入れてたはずなのに」
ペンペン「……」ペタペタ
シンジ「ペンペン? あの、食パン知らない?」
ペンペン「クエッ」プルプル
シンジ「そう。首をふるってことは知らないのか」
ペンペン「クエ」ピッ ガシャン
シンジ「あっ! 今部屋の中にパンが見えた!」
ペンペン「クエッ⁉︎ クエーッ!」ピッピッ
シンジ「それ僕たちの朝ごはんだよ!」
ペンペン「クアーッ!」ガシャン
シンジ「あ……扉閉めちゃった」
ミサト「変ね……。ペンペンはパンなんて食べないはずだけど。宝物感覚なのかしら」
シンジ「あの。今見た通り、パンはないから今日はコンビニで」
アスカ「朝からコンビニぃっ⁉︎ ご飯もないのぉ⁉︎」
ミサト「大きな声ださないで。頭に響くから」
アスカ「ダッシュで買ってきなさいよ!」
シンジ「そ、そんな。僕も用意があるし」
ミサト「アスカ。朝食ぐらいで騒ぎすぎよ」
アスカ「人間にとって朝食が一番重要なのよ。ミサトだって風呂は命の洗濯とか言ってるじゃない」
ミサト「事情を考慮しなさいと言ってるの」
アスカ「……ねぇ、シンジぃ?」
シンジ「なに?」
アスカ「あたしの為に買ってきてくれるわよねぇ~?」
シンジ「……夜は好物作るから」
アスカ「ふーん。あっそ。じゃあ言いふらしちゃおっと」
ミサト「……?」
シンジ「なんで、アスカはいつもそうなんだよ。自分だって完璧なわけじゃないのに……!」
アスカ「不公平だと言いたいわけ?」
シンジ「……」
アスカ「あたしが自分を棚に上げてシンジにばかりきついって?」
シンジ「そ、そうだよっ。わかってるなら、それなりに」
アスカ「理解できるところだったら理解するし、共感できるところはする。でもそれもケースバイケースよ。あんたの行動に対しては理解できない」
シンジ「う……」
アスカ「要するに、人って許容できないモノに対しては冷たいの。そんなこともわからないからあんたはガキなのよ」
シンジ「でも……」
アスカ「加えて、利用価値があるってことかしらねぇ。弱みとしていかんなく効力を発揮できるわけだし」
シンジ「僕をパシリみたいに使うのに?」
アスカ「エヴァはあたしがいればいいんだし、あんたはただのおまけみたいなもんでしょ? サポート役として理に適ってるじゃない」
ミサト「いい加減なさい!」バンッ
シンジ&アスカ「……」
ミサト「あなた達はチームです! 上も下もないわ! 成績の優劣はあるけど、実戦運用の際は各個人に重要なポジションを割り当てます!」
アスカ「二日酔いの八つ当たり」
ミサト「アスカ」ギロ
アスカ「ふん。そのセリフ、作戦らしい作戦を用意してから吐いてよね」
ミサト「……はぁ。シンジくんも。アスカに押されっぱなしじゃだめよ。男の子でしょ」
シンジ「僕は、言い返そうと」
ミサト「押しが弱いのよ。理不尽な言い分なんて世の中たくさんあるんだから。間違ってないと思うのならもっとハキハキ主張しなさい」
シンジ「……」
アスカ「……朝ごはんどーすんの?」
ミサト「まったく。あんた達が朝っぱらからしょうもないやりとりしてるからでしょ。本日は罰として朝食抜きです」
アスカ「昼までなしぃ⁉︎」
ミサト「ご飯楽しみにしてるってことは、シンジくんの手作り楽しみにしてるって話になるけど?」
アスカ「あ、あたしは別にっ! シンジの料理じゃなくても!」
ミサト「ならコンビニで済ませても問題ないわね。それで手を打つわ」
アスカ「くっ」
シンジ「あ……」
ミサト「いい? シンジくん。駆け引きにはこういうやり方もあるって、覚えておいた方が今後の為になるわよ」
【登校中】
アスカ「ミサトのあの顔見たぁ? 得意気にしちゃってさぁ!」
シンジ「いいんじゃないかな。僕が気がつけなかったから指摘してくれたんだし」
アスカ「子供のやりとりに大人がでてくるのは反則だっつーの! 理解したふりしてるけど、あんたは流されてるだけでしょどーせ」
シンジ「僕だって、ちゃんと自分で考えてるよ。ミサトさんは客観的に見てて」
アスカ「ひけらかすのは反発心を招くだけ。例えばの話、大人って見りゃわかるのに、大人ですって言ってくる人見たらあんたどう思う?」
シンジ「見ればわかると思うけど」
アスカ「そういうもん。あんなのちょっと考ればわかること。冷静に見てるんじゃなく、当たり前のことを言ってるだけ」
シンジ「……えっと、つまり?」
アスカ「客観的もないって話よ! バカシンジ!」ポカッ
シンジ「いたっ、うぅ」
アスカ「本当になんでこんな愚鈍なやつがパイロットに選ばれてんの」
シンジ「あれ? ……ローソンの前にいるのは、トウジ?」
トウジ「……お? シンジに惣流やないか。夫婦揃って仲良く登校か」
アスカ「またバカが増えた」
シンジ「トウジはどうして?」
トウジ「わしか? 昼ごパンを買いによったついでや。購買のラインナップに飽きてくるとこうしとんねん」
シンジ「そうだったんだ。知らなかったな」
アスカ「シンジ、お金ちょーだい。あたし先に買ってくるから」
シンジ「ああ、うん。千円あれば足りる?」
アスカ「ん」
トウジ「めずらしなぁ。今日はコンビニメシか」
シンジ「うん、朝、ちょっといろいろあって」
【ネルフ本部 第五通路】
マリ「しっあわせはぁ~あ~るいてこない~、だぁからあるいてゆくんだよっと」ピッ ガタン
加持「よっ。あいかわらずみたいだな」
マリ「うげっ。今ジュース買っちゃったじゃん」
加持「なんだぁ? おごらせようとしてたのか?」
マリ「大人が子供に貢ぐのは義務だよ、ぎーむっ!」
加持「よく言うぜ。中身は子供じゃないくせに」
マリ「にゃはは。それは言いっこなし」
加持「白昼昼間から大胆なこって」
マリ「木を隠すなら森の中っていうじゃん。ビクビクしてたら楽しいことが逃げちゃうよぉ~?」
加持「ペースが狂わされてばかりだな」
マリ「流れるように生きれば?」
加持「そう簡単にできれば苦労しないさ。それよりも、例の新薬の件、調査の進展具合はどうだ?」
マリ「どうだと聞かれても。サッパリ」
加持「……はぁ」
マリ「今はワンコくんが被験対象者なんだよね?」
加持「リッちゃんがそう言ってたから間違いないだろう」
マリ「そんじゃま! 接触を試みますか!」
加持「シンジくんは何も聞かされていない可能性が高いが」
マリ「用法用量を守って正しく使った結果、効能が顕れているのならワンコくんだって把握してるはずっしょ」
加持「たしかに。しかし、他人のイメージに重ねる薬、か」
マリ「なんだか面白そーじゃん? わっくわくしてくるよねぇーっ!」
【第壱中学校 屋上】
シンジ「父さんは、どうして僕を選んだんだろう」
マリ「なんでだろうねぇ~?」
シンジ「……え?」
マリ「お堅い挨拶はなしなし。自己紹介は省いちゃって問題ないよね? ネルフのワンコくん♪」
シンジ「え? あの、誰……」
マリ「へっくしょん! Ah,excuse me. ここ吹きさらしだから冷えるねー」
シンジ「はぁ」
マリ「ちょっとまっててねー、よっこいっせっと」ゴソゴソ
シンジ「……?」
マリ「これをこうしてー、おっ、あったあった。じゃじゃーん! どうこれ? 白衣!」
シンジ「制服? の上から着るの?」
マリ「あり? ミスマッチだったかにゃ? まぁ、細かい点は気にしないのー」
シンジ「(結局、誰なんだろう)」
マリ「それで、どう? 薬の効果の程は?」
シンジ「知ってるの?」
マリ「もちのろん。それを聞きに来たんだから。なにか試してみた?」
シンジ「ネルフの関係者……まだ、特になにも」
マリ「まぁじぃ? 試してないの? もったいな!」
シンジ「も、もったいないって」
マリ「えー? だってさー、それができればあんなことやこんなことが好きなようにできるかもしれないんだよー?」
シンジ「……でも」
マリ「そっか、ワンコくんてもしかして、ムッツリ?」
シンジ「な、なんでっ⁉︎」
マリ「健全な青少年らしからぬ反応だしにゃー。私が男だったら気になるあの子に使うけど」
シンジ「そんなの、悪いことだよ」
マリ「どうして?」
シンジ「だって、操ってるのと同じじゃないの」
マリ「それで手に入るんだよ~? もし、ほかの奴にさらわれちゃったら納得するの?」
シンジ「なんの話だよ。僕にはそんな子いないし」
マリ「ふーん、そうなんだ。じゃあさ、私で試してみない?」
シンジ「え、えぇっ⁉︎ 試すってなにを⁉︎」
マリ「イメージを相手に重ねる。色恋じゃなくてもいいよ、実現可能か確認したいだけ」
シンジ「父さんに、言われて来たの?」
マリ「ぷっ、ゲンドウくんに? うーん、いっか。それで。そうそう」
シンジ「それなら、話してもいいかもしれない」
マリ「うん?」
シンジ「この薬は実現してるよ」
マリ「……それ、本気で言ってる?」
シンジ「うん。意図せず、試したみたいになってしまって、リツコさんが“にゃ”を織り交ぜて話するようになった」
マリ「……? 元々そうでしょ?」
シンジ「だから、それがこの薬の効果なんだ。本人だけじゃなく周りにも影響するんだと思う」
マリ「ほっほーう。にゃーるほど」
シンジ「父さんに伝えてよ。薬ならもうやる必要がないって」
マリ「試したのは赤木リツコだけ?」
シンジ「そうだけど」
マリ「もっとサンプルがほしいと言ってたよ! ゲンドウくん!」
シンジ「ゲ、ゲンドウくんって……それに、さっきまでそんなこと一言も」
マリ「うるさいなぁー。男がぐちぐち言わないのー」
シンジ「なんなんだよ、この人」
マリ「とりあえず、変わったと認識できないかどうかの検証からスタートさせよっか♪」
シンジ「え? 本当にするの?」
マリ「しょーゆこと♪ 軽くでいいからさ。私に……そうだねぇ、敬語で話するようなイメージ重ねてみてくれない?」
シンジ「やめようよ、こんなの」
マリ「実験なのー。やってくれなきゃ暴れる。ワンコくんの金玉蹴りあげる。100回」
シンジ「……なんで僕に」
マリ「まぁまぁ。本人がいいって言ってるんだから」
シンジ「どうなっても知らないからね」
マリ「おっけーおっけー♪ さ、どーぞ」
シンジ「(敬語で喋る。この人もたまに猫言葉使うんだよな……猫、流行ってるのかな)」
マリ「もうやってる?」
シンジ「今、イメージしてる」
マリ「おっと、こりゃ邪魔しちゃ失礼」
シンジ「(敬語ねぇ……敬語。馴れ馴れしいからイメージできないな。もっと丁寧にしてくれたらいいのに……ってこれは願望か)」
マリ「……」
シンジ「(願望じゃなく、造型をイメージ。エヴァを動かす時と同じでいいんだ。歩く、最初に乗った時みたいな)」
マリ「もしもーし?」
シンジ「(丁寧な、敬語。喋ってる姿、あれ? この人誰だっけ。名前聞いてない。知らない人、初対面。うん、だったら、こうだ)」
マリ「……どう? やってみました?」
シンジ「今、終わったよ」
マリ「へぇー。変わったような気がしませんけど。変わってます?」
シンジ「言われた通り、敬語を使うようにした」
マリ「それは元々……あり? そういう実験だったんですかね?」
シンジ「かなりざっくりとだけど。知らない人だったから」
マリ「ふーん、へぇー、すっごいこれ。インチキじゃないですか!」
シンジ「うん」
マリ「元に戻すことはできます?」
シンジ「試してみる」
マリ「元に戻らないと困るような困らないような。でも、今もしっくりきてるんですよねー」
シンジ「(さっきの通りのイメージ……。あれ? この人ってどんな人? ま、まぁ、さっきの感じで……馴れ馴れしく、敬語じゃない姿、よし)」
マリ「戻った? ねねっ、戻った?」
シンジ「たぶん」
マリ「変わったと認識できるのがワンコくんだけっていうのがやっばいね。自己申告制になっちゃうじゃん」
シンジ「僕に敬語をって言ったのも忘れちゃってたの?」
マリ「言われたら、あぁ、そうだっけ? と思ったけど。全然気にならない。いつもどおりの自然体」
シンジ「そうなんだ」
マリ「ワンコくんは変わる前を知ってるから違和感ありありなんだろうけどさぁ、こっちにとってはそれが“普通”ってやっばいよ」
シンジ「そうだよ、だから」
マリ「もっと試してみよう!」
シンジ「なんでっ⁉︎」
マリ「どの程度までならいけるか天井はないのか、効果時間はどれぐらいか。気にならにゃいのー?」
シンジ「僕は、別に」
マリ「知的探究心のカケラもないなんてつまんない男だねー」
【第壱中学校 教室】
ケンスケ「いなくなってたと思ったら、他校の生徒を」
シンジ「ち、違うよっ! 勝手についてきて!」
マリ「I’m sorry to bother you, but…お食事中にごめんねー。突然ですが、キミたちにモルモットになる権利を与えるよー」
トウジ「モルモットぉ?」
マリ「良かったねー、それではワンコくん、どーぞ」
シンジ「な、なに言ってるんだよ! やれるわけないよ!」
マリ「めんどくさいのは極力省きたいんだけどさぁ」
シンジ「めちゃくちゃじゃないか! トウジ達を実験台にするなんて!」
マリ「このなんちゃって関西弁うざいなーとか思ったことない?」
トウジ「な、なんやとぉっ⁉︎」
マリ「願望だって実現できるよ! やりようによっては!」
シンジ「自分でやればいいだろ!」
マリ「あ、それはパース。セルフサービスって嫌いなんだよね」
トウジ「おい、シンジ!なんやねんこいつ!」
マリ「性格変えてみよっか♪」
シンジ「せ、性格……? そんなことしたら別人に」
マリ「さっき言ったでしょー? どこまでやれるか試してみたいのー」
シンジ「で、できないよっ! そんなの!」
マリ「あーもう、しかたない。こーなったら」キョロキョロ
シンジ「……?」
マリ「おっ、いたいたぁ! おーい! 弐号機パイロッさーん!」
アスカ「それでさぁ……ん? 誰か呼んだ?」
ヒカリ「あっちじゃない? 鈴原達の方……他校の制服?」
マリ「ひぃーめぇー! 王子さまがこっちで待ってるよー」
アスカ「王子さま?」
シンジ「な、なにを……」
マリ「ふぅん、こんなジャブじゃラチあかないか……みんなちゅうもーくっ!!」
男子「ん? 誰あれ?」
女子「さぁ……」
マリ「ほらほら! 呑気にご飯食べてる場合じゃないってば! これからおんもしろいのが観れるよーっ!」
男子「面白いのってなんだ?」ザワザワ
マリ「思春期の子達が好きなこと! それは……遊び! 楽しい! 三、四がなくて恋!」
トウジ「かぶっとるやないか」
マリ「シャアラーップッ! 女子は恋バナ好きだもんねー?」
女子「はぁ」
マリ「そ・こ・でぇ~……今から告白タイムになりまーす!」
シンジ「僕ちょっと用事思い出し――」
マリ「ここにいる碇シンジくんってばさぁ~、好きな子に告白できなくて、日和ってるチキンなんだよねぇ~。だから、みんなで後押ししてあげちゃおう!」
女子「ええ? 碇くんって恋愛に興味あったの⁉︎」
ケンスケ「おお。女子が色めきたっている」
トウジ「くだらん。野次馬根性ちゅーやつやろな」
マリ「お相手は誰かなぁ~? それは、アスカラングレー!」ビシッ
アスカ「へ?」
シンジ「や、やめてよ! そんなの」
マリ「照れちゃってかわいいねー」
シンジ「なにがしたいんだよ!」
マリ「姫をメロメロにさせるもおっけー。それともクラス全体に出来事をなかったことにさせる?」
シンジ「そんなことしなくても、誤解をとけば」
女子「あー、やっぱり惣流さんなんだー。納得」
男子「いっつも夫婦みたいだもんな」
女子「これから正式にお付き合いするのね」
男子「てことは、綾波さんはフリー⁉︎」
アスカ「……」プルプル
マリ「おーおー。姫ったら耳まで真っ赤になっちゃって」
シンジ「ま、まずい。怒ってるよ」
マリ「自分に気があるからとは思わないんだ?」
シンジ「思うわけないよ!」
マリ「あは、自信ないんだねー。ま、その見かけは当たってるけど。他人に言われ放題だから、お似合いって思われてることに腹立ってるのかにゃ?」
アスカ「……」ズンズン
マリ「おやおや。ガニ股で歩いてらっしゃいますなー。矛先はもちろん……」
シンジ「僕なにも言ってないのに!」
マリ「アタシナンニモイッテナイヨー」
シンジ「ずるいよ!」
マリ「イカリクンニイワサレター」
シンジ「ち、違うんだ! アスカっ!! 話を聞いて」
アスカ「成敗!!」ブン ゴチン
シンジ「か、かはっ」バターン
マリ「わーお。ナイスナックル」
アスカ「ふん、なにトチ狂ったこと言ってんのよこのバカ。あたしに相手されるのなんて数億光年はやいっての」
マリ「おーい、ワンコくーん。大丈夫ー?」
シンジ「」ピクピク
アスカ「で? あんた誰?」
マリ「アタシ? 私はワンコくん告白大作戦の助っ人」
アスカ「まだふざけたこという気?」
マリ「おーい、もしもーし」ツンツン
シンジ「」
トウジ「完全にのびとるな」
マリ「ありゃりゃ。それならそれでいっか」
ケンスケ「あわれなやつ」
アスカ「ちょっと! あたしが質問してるでしょーが!」
マリ「姫はどうしてふざけてると思うの?」
アスカ「はぁ?」
マリ「ワンコくん、私に相談してきた時はすんごく真剣だったよー。アスカが好きだ! アスカがほしい! アスカじゃないとだっんむ」
アスカ「こっぱずかしい台詞並べんじゃない!」
マリ「くちを、手で、おさえちゃ」
アスカ「誰なのよこいつ!」
トウジ&ケンスケ「さぁ?」
アスカ「チッ。使えない。……いい? 手離すけど余計なのはなし。いいわね?」
マリ「ふぁーい」
アスカ「それで、バカシンジとあんたの関係性は?」
マリ「んーとね、知り合い」
アスカ「だから、どういう関係かって」
マリ「好きって言われて良い気持ちしないなんてないと思うけどにゃー。あ。……相手によるか」
アスカ「人の話聞きなさいよ!」
マリ「ねぇ、姫。ワンコくんが姫を好きって言ってるのが本当の本当だったらどうする?」
アスカ「なんで姫なのよ」
マリ「ま、ま、いいからいいから」
アスカ「こいつがぁ?」
マリ「姫だって、色恋に疎いわけじゃないよね?」
アスカ「まぁ」
マリ「プライドの高い自分に釣り合うステータスを求めちゃうんだよ」
アスカ「うーん……って、なんであんたがあたしを語ってんのよ!」
マリ「完成品を求めちゃつまらなくない? 自分で育てるのも案外楽しいかもよ?」
アスカ「だからってさぁ」
マリ「理屈じゃないからにゃー。例えば、ワンコくんが落ちこんでる姿を見たら、コロッと情にほだされちゃったりするかも」
アスカ「しない!」
マリ「“今はそう言える”だけでしょ? そうなってみないと人間ってものはわからないよー」
アスカ「なんなのよあんたさっきから!」
マリ「恋のキューピッド♪」
トウジ「死神ちゃうんか」こそ
ケンスケ「僕にもそう見える」こそ
マリ「ワンコくんは本気だよ」
アスカ「はぁ……本気でもあたしになんらメリットがぁ」
マリ「(ま、ウソだけど。今の姫とワンコくんの関係じゃここらが限界か)」
シンジ「……う、うぅ」ムク
マリ「さてっとぉ~。昼休み終わりそうだし。そろそろ退散するね。ワンコくんはまた後で♪」
アスカ「なんだったのよ、一体」
【夕方 ミサト宅】
ミサト「おっかえり~」
シンジ「ミサトさん? 今日は早いんですね」
ミサト「野暮用があって一時的に帰宅したのよん。アスカは……って、どしたの? 目のまわりにアザなんか作って」
シンジ「あ、これは」
ミサト「そっかぁ~。シンジくんも男の子ちゃんとしてるかぁ~。喧嘩のひとつやふたつあるわよね、うんうん」
シンジ「あの、そうじゃなくて」
ミサト「相手の子に怪我は……シンジくんならその心配はないか。むしろ逆にいじめられてる?」
シンジ「そんなんじゃありません!」
ミサト「そ。それならいい。いい、シンジくん。暴力って言葉にしろ実力行使にしろどうしてもって時に使うものだけど、必要なものでもあるの」
シンジ「はぁ」
ミサト「あなたが決めたことなら、正しいと思えるのなら胸をはりなさい」
シンジ「……わかり、ました」
ミサト「よし。それでアスカは?」
シンジ「さぁ? 教室を出てからは見てません。どこかで寄り道してるんじゃ」
ミサト「お友達と遊んでるのかしら。あ、そうそう。ご実家……叔父さんのところから荷物届いてたわよ」
シンジ「先生の?」
ミサト「チェロって書いてあったけど。それとおっきなキャリーケースがもうひとつ。重くて大変だったんだから~」
シンジ「あぁ。それなら、思い当たります。すみません、ご迷惑をおかけして」
ミサト「いいっていいって。玄関先までって言うのをあたしじゃ無理だってゴネて配達員さんに部屋まで運んでもらったし」
シンジ「あ、あはは」
ミサト「だっはっはっ! 女の武器は使わなきゃ損よねぇ~!」
シンジ「夕飯は食べますか?」
ミサト「んーん、いらない。ちょうどでようと思ってたから、アスカと先に食べてなさい」
【シンジ 部屋】
シンジ「(懐かしいな。もう随分弾いてないや、調律しないと。こっちのキャリーケースは……あれ? これ、僕の?)」
キャリーケース「」ゴトゴト
シンジ「わ、わぁっ⁉︎」ギョ
キャリーケース「」ピタ
シンジ「う、動いた⁉︎ え、なにか入ってる?」
キャリーケース「」ゴトンゴトン
シンジ「な、なんだ?」ソォー
キャリーケース「ワンコく~ん、あけてぇ~」
シンジ「喋ってる……人っ⁉︎ 人が入ってるの⁉︎」
キャリーケース「はやくはやく~。体こっちゃった~」
シンジ「ま、待って。今、開けます」カチャン カチャン
マリ「ぷはっ!」ガバッ
シンジ「あっ! き、きみはっ!」
マリ「よっと。ふぃ~、外の空気は新鮮だぁ」コキコキ
シンジ「よ、よく窒息しなかったね」
マリ「酸素濃度は薄くなるけど死ぬほどじゃないよ。ここがワンコくんの部屋かぁ」
シンジ「なんでここの住所知ってるの」
マリ「気にしない気にしない」
シンジ「というか、玄関から、はぁ、どこから突っ込めばいいのか……」
マリ「気にするだけ無駄だって。これからお世話になるんだし」
シンジ「お世話?」
マリ「うーん、どこに寝ようかな~」ゴソゴソ
シンジ「勝手な! む、無理だよそんなの!」
マリ「ワンコくんってさぁ、薬の効果判明してるの葛城ミサトや赤木リツコに言ってないっしょ? なんで?」
シンジ「え?」
マリ「実験やめたいんなら報告すればいいじゃん。なんで言わないのー?」
シンジ「それは……」
マリ「お父さんに会える機会かもしれないから?」
シンジ「……」
マリ「私に伝えてって言ったのも、ゲンドウくんの使いだって言ったからじゃにゃい?」
シンジ「……そんなんじゃ」
マリ「あー、どっちでもいいよ。とりあえず、まだ実験は継続ね。それで私ここに住むから」
シンジ「せめて、ミサトさんに話を通そうよ」
マリ「面倒だし。一畳分ぐらいのスペースもらえればいいからさ」
シンジ「風呂とかご飯はどうするの?」
マリ「そこは勝手にやるから気にしなくていい」
シンジ「絶対にバレるに決まってるじゃないか……」
マリ「捨て猫を拾ったって感じで♪ ワンコくんからバラさなければ大丈夫」
現時点で判明している貞本版(漫画版)では碇ユイに好意をよせていた少女
京都大学の若干16歳で飛び級合格しており、エヴァ基礎研究の一人として参加します
当時に「ゲンドウくん」と呼称が成立し、碇ユイへ自身の想いを告げた際、プレゼントされたメガネをかけているのがマリ
ゲンドウ、ユイと同じく冬月の教え子です
正体はこれぐらいしか公式な設定はありません
【夜 リビング】
アスカ「今日のハンバーグも、まぁまぁね」もぐもぐ
シンジ「……」ソワソワ
アスカ「トイレなら行ってきなさいよ、食事中にエチケットないやつ」
シンジ「あ、いや」
アスカ「……もしかして、昼間のやつが言ってたのって本当だったの?」
シンジ「へ?」
アスカ「げっ、だから意識してソワソワしちゃってるってわけぇ?」
シンジ「なんでそうなるんだよ!」
アスカ「こわぁ~い。ひとつ屋根の下にこんな魅力的な美少女がいたらしかたないわよねぇ~」
シンジ「自分で言ってる。すぐ怒るくせに」ぼそ
アスカ「あ? なんか言った?」
シンジ「……」
アスカ「シンジって見た目からしてムッツリだけどさぁ、告白ぐらい人に頼らず自分でやんなさいよ」
シンジ「そもそも僕は別に」
アスカ「今さら誤魔化そうったって無理なのよ。現にソワソワしてたじゃない。トイレでもないっていうし」
シンジ「う、そ、それは」
アスカ「ほぉ~ら見なさい。あたしに気持ちがバレて気まずいんでしょ」
シンジ「違うよ! ソワソワしてた理由は言えないけど」
アスカ「下手なウソ。警告しておくけど、あたしに指一本でも触れたらその指へし折るからね」
シンジ「……はぁ、わかった、触れなきゃいいんだろ」
アスカ「うー、やだやだ。これからはシンジとの洗濯物分けて……はっ! あ、あんた! まさかあたしの下着使っていかがわしいことしてないでしょうねぇ⁉︎」ガタッ
シンジ「なんの話してるんだよ!」バンッ
アスカ「なんでムキになんのよ!」バンッ
シンジ「いきなりアスカが変なこと言いだすからじゃないか!」
アスカ「可能性の話をしてるだけよ!」
シンジ「僕はこれまで洗濯物をしてきてるんだし、あんまりだよ!」
アスカ「……」
シンジ「だったらアスカが自分で洗濯したらいいだろ!」
アスカ「そうね、冷静に考えれば、それはないか」
シンジ「……なんだよ、当たり前」ポロ
アスカ「なにか落ちた……それ、なに?」
シンジ「ん? 勢いよく立ち上がっちゃったからハンカチ……っ⁉︎」
アスカ「丸まってるけど、どー見ても生地が下着にしか見えない品物よね、ソレ」
シンジ「な、なななな、なんでっ⁉︎」
アスカ「ねぇ、シンジィ~?」ゴゴゴ
シンジ「違う! 違うんだ! 本当に知らない! 待って!」
【シンジ 部屋】
アスカ『まてっ! 病院送りにしてからミサトに言いつけてやるっ!!』ドタバタ
マリ「はじまったはじまったぁ~。ワンコくんってば災難ですなぁ」
シンジ『落ち着いてよ! 本当に違うんだって! 僕、知らない!』ドタバタ
マリ「この間に、えーと、薬のストックはぁ~っと」ゴソゴソ
アスカ『ペンペン! 変態を抑えて!』
ペンペン『クァッ⁉︎』
シンジ『応援呼ぶなんてずるいよ!』ダダダッ
マリ「うーん、ここ? ありゃ、違う。こっちでもない。おっかしいな~。定期的に飲むって聞いてたんだけど。用心の為に葛城ミサトが管理してるのかな? んー」ゴソゴソ
アスカ『はっ! ペンギンにそんな芸当できるわけないでしょ! まんまと引っかかってそっちに行ったわね!』
シンジ『ブラフ⁉︎ し、しまっ』
アスカ『おうじょうせんかいごるぁああああっ!!』
マリ「……おっ、みーっけ。ワンコくんってば布団の下に隠してたんだねぇ~」ニマ
【再び リビング】
シンジ「か、かはっ」ドサリ
アスカ「ぜぇ、ぜえっ……ふぅ、手間かけさせんじゃないっつーの」
ペンペン「クエー」ツンツン
シンジ「」ピク ピク
マリ「はーい!」ガララ
アスカ「うわぁっ⁉︎」ビクゥ
マリ「おっじゃましてまーす!」
アスカ「……? あ、あんた、昼間の? なんでシンジ部屋から」
マリ「ワンコくんって学習しないよねー。まずは私を疑うべきでしょーに」
アスカ「無断侵入ならネルフ呼ぶけど?」
マリ「まった。危害を加えるつもりはないよ、ちょっとだけ話しない?」
アスカ「い・やっ!」
マリ「つれないなぁー。手短に言うとワンコくんポケットに入ってた下着の件なら私がいれた」
アスカ「は、はぁっ⁉︎」
マリ「本当は入れる必要なかったけど、楽しそうだからつい。エヘ」
アスカ「……じゃあシンジは本当に」
マリ「ま、そーゆう運びになりますな」
アスカ「このっ……! どうすんのよ! 思い切りやっちゃったじゃない!」
マリ「無かったことにしたい?」
アスカ「できるわけ」
マリ「それがさぁ~、できちゃうんだな~。この薬を飲めば」スッ
アスカ「あんた頭のネジ擦り切れてんじゃないの?」
マリ「あは。たしかに常識とはちょっと違うかもしれないけど」
アスカ「出て行きなさいよ、今すぐ」
マリ「どーせ姫にはあげるつもりないけどね。私が飲むから」パクッ ゴクン
アスカ「……?」
マリ「ふむ。これでイメージすればいいのかにゃ? なんにせよ、レッツトライ」
アスカ「さっきからなに言って……」
マリ「どんなイメージに染めるか悩んじゃうな~」
【ネルフ本部 執務室】
ゲンドウ「例の試験薬について報告しろ」
リツコ「昨日、被験者Iに投与を開始。その際の観察記録をまとめたものにゃす」スッ
ゲンドウ「……」
リツコ「本人からの申告、およびメディカルチェックでは変化と見受けられる点が」
ゲンドウ「効果は既にでている」
リツコ「は? し、しかし、そう確証できるものがまだにゃにも」
ゲンドウ「ご苦労だった、赤木博士」
リツコ「……?」
ゲンドウ「シンジをここに呼べ。下準備は済んだ」
リツコ「……かしこまりました」
冬月「準備? おらなにも聞いてないけんど?」
リツコ「副司令もご存知にゃかったので?」
冬月「どういうことだっぺ?」
ゲンドウ「お前たちは黙って俺に従っていればいい」
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