遅筆で駄文、初SSだけど書いてみます
直したほうがいいところ、指摘してくれたら助かります
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1336571250(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
―――――この物語に魔術"オカルト"は登場しない
地球上の誰かがふと思った。
人間の数が半分になったらいくつの森が焼かれずにすむだろうか……
地球上の誰かがふと思った。
人間の数が100分の1になったらたれ流される毒も100分の1になるだろうか……
誰かがふと思った。
生物の未来を守らねば…………
―――7月26日(日) 第177支部 夕方
―――――"それ"はテニスボールほどの大きさ、数は不明
佐天「初春ー!ってあれ?」ガチャ
そこには慌てて支度をしている初春の姿が。今日も頭の上には綺麗な花が咲いてる。固法さんと白井さんの姿は見当たらない。
初春「佐天さん!?もう出歩いて大丈夫なんd ッガン 痛!!」
あ、足ぶつけた。可愛いなー初春は。
佐天「もうすっかり大丈夫! 心配させちゃってごめんね? これで明日からまた初春のスカートがめくれるよ。」
初春「スカートはめくらないでください!! そんなことよりちょうどよかった! 近くで武装無能力者集団の抗争があったみたいで、固法先輩と白井さんが向かってもう収まったみたいなんですが、違うところで喧嘩がおこって私が行かなきゃいけないので、少しの間ここで留守をみててくれませんか?」
そういうことね。
佐天「全然おっけーだよ!初春がいない間177支部はこの佐天涙子にまかせなさい!」
初春「すぐに二人は戻ってくると思いますが……よろしくお願いしますね! それじゃあ行ってきます!」ガチャ
佐天「いってらっしゃーい」バタン
いつもどおりに振る舞ってくれて、ありがとね初春。
佐天(さて、一人じゃ暇だしソファーで寝ながら音楽でも聞くかな)
私、佐天涙子は7月某日、『幻想御手』を使って昏睡状態になった。
さっき慌てて出ていった初春、その同僚白井さん、白井さんの先輩の御坂さんの3人が頑張って助けてくれたらしい。
私は能力を他人の力に頼って手に入れて……本当に情けない。頭が上がらない。
心地良い音楽にゆられ、良い感じに眠くなってきた頃、"それ"が177支部に入ってきた。
先端を尖らせ、蛇のような体を持つ"それ"は、何かを探していた。
ソファーに横になって夢心地になている佐天を見つけると、体をうねらせて近づいていく。
無防備な佐天の顔元まで来ると"それ"はどこか入るところを探している。
耳はイヤホンで塞がれて入れない。鼻を見つけるとどうにか入ろうとする。が。
佐天(なんかムズムズするなぁ。)
鼻に違和感を感じた佐天が眼を開けるとそこには見たことのない蛇のような生き物が。
佐天「キャーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
急いで手で振り払う。慌てていた佐天はソファーから落ち、尻餅をついた。
佐天「ヘビ!ヘビ!ヘビ!なんで?!どうしよ!どうしよ!」
そんな佐天はお構いなしに"それ"は狙いを定め、佐天の顔に飛びかかってきた。
佐天「うわ!」
とっさに顔を右腕で守ったが
ズブリ
"それ"が手を突き破り腕に入ってきた。うねうねと少しずつ上に向かって動いている。
佐天(入ってきた!! どうしよ!! どうしよ!!)
とっさに、おそらくPC関係とみられるケーブルを見つけると、うでに縛り付け、進行を防ごうとした。
佐天「ふんぬー! ふぎぎ!」ギュウウウ
佐天(誰か助けにきてー!)
ちょうどその時
黒子「ただいま戻りましたのー。って佐天さんなにしてるんですの!?」ガチャ
佐天「白井さん!ちょうどよかった!ヘビが!うでに!ヘビが!」
黒子「ヘビ? ヘビが腕に入るわけありませんの。」
佐天「本当なんですってば! ほらここ……ってあれ?」
佐天が腕を見ると、ヘビが腕に入った穴も、そのヘビも跡形もなく、ただコードで縛られ変色した腕があった。
黒子「いいからはやくほどくんですの。」シュルル
佐天「あれー?さっきは確かに……」
黒子「寝ぼけてたんじゃありませんの? それとももしかしたら『幻想御手』の後遺症……?」
佐天「それはないです! もう心配ないってお医者さんも言ってましたから! きっと寝ぼけてたんですよ。ごめんなさい、大騒ぎしちゃって。」
黒子「ホントですの。帰ってくるなり、腕を紫色にしながら自分の腕を縛ってる人がいるんですの、何事かと思いましたの。」
佐天「もー! 恥ずかしいから、みんなには言わないでくださいよ?」照
黒子「それは約束できませんの」フフ
―――――少女が腕の異変に気づくのは翌日のことである。
―――窓のないビル
アレイスター(ふむ、研究者にも何匹か寄生したか。しかしこいつらは何なんだ? 魔術でも能力でもないようだが、まるで寄生虫。調査が必要だな……)
アレイスター「しかし、この虫どもが『計画』にどう影響するか…… 見物だな」ククク
―――学園都市外
佐天涙子が右手に起きた異常を、勘違いですまそうとしていた時、第一の被害は普通の家庭でうまれた。
夫婦円満、幸せに暮らしていた。子供は一人、娘である。反抗期も超え、もう何年かしたらきっとこの家から巣立っていくのだろう。
今日もどこかへ遊びに行っている。
妻「どうかしました?って大丈夫ですか!?」ガチャ
大きな物音が聞こえ、夫のいる部屋の扉を開けると、夫が顔色を変え苦しんでいる。
夫「お゛……お゛…… げ…… げ……」
妻「すぐに救急車を呼びますね!」
慌てて電話をかけに行こうと翻すが、とっさに夫に腕を掴まれ振り返る。
するとさっきまで苦しんでいた夫の顔はいつも通りの何の特徴もない貧相な顔に戻っていた。
いや、それはもう別のものだったのだが……
妻「もう大丈夫で何ですか? いったい何が」
妻が夫の肩に手をかけ事の有様の一部始終を聞こうとする。が。
くぱぁ。
男の顔が裂け、開いた。
それは形容しがたい、異形の姿であった。
まるで花のように開いた"それ"はすでに長年そり寄って歩いてきたパートナーではなかった。
中にはいくつもの目がギョロギョロと蠢き、牙が無数に存在している。
バツン
その花が女の首から上を噛み切り鮮血が舞う。
この家庭の幸せはここで幕を下ろした。
被害者は全国で少しずつ増えていく。学園都市も例外ではない
―――――
―――
―
―――7月27日(月) 第7学区 佐天涙子の寮 朝
ピピピピピ。けたたましい音が佐天涙子を眠りから目覚めさせる。いつもと変わらない朝。
佐天「んー! もう朝? あまり寝た気しないなー」ノビノビー
昨日あんなことあったしな。と右腕ヘビ騒動を思い出し、一人で恥ずかしくなりながらもいつも通りテレビをつける。
佐天(初春、昨日の事件の報告書作るから忙しいって言ってたし。今日は一人でウィンドウショッピングかな)
佐天「そうと決まればちゃっちゃと朝食作って出かけますか!」
佐天(にしてもなんか右腕が痺れるような……)
昨日の出来事は夢じゃ無いのではないのか、と頭をよぎるが、すぐにそんなわけがないと否定しシャワーに向かう。
TV「―――朝のニュースです。7月26日○○市の○○ 〇〇さんから『自宅で何かが死んでいる』との通報があり、警察が駆けつけると〇〇 〇〇さんの実の母親とみられる遺体を発見した。遺体は無残にもバラバラにされ、人と判別するのも難しく、DNAで母親だと発覚した模様。娘さんが朝に見たのを最後に夫が行方不明であり、何らかの事情を知ってるとみて捜査を開始しています。」
異変は少しづつだが目に見える形で現れていた。
―
―――
―――――
―――帰り道 夕方
日も暮れ始めた頃、佐天は帰路についていた。
佐天(お洒落なカフェ見つけたし今度また御坂さんと白井さんと初春と4人で来よ、きっと気に入ってくれる♪)
おいしいケーキのある喫茶店を見つけ気分上々であった。そこで気分を変えいつもとは少し違う、遠回りの道で帰っていたのだが時間のせいか、人通りの少ない道にいつのまにか入ってしまっていた。
不良A「おい早く金だせっつってんだろうが!!!!」
少し先の角から怒鳴り声が聞こえた。恐る恐る近づいて覗いてみると、いかにもな二人組がいかにもな格好のやつをカツアゲしていたのだ。
佐天(どうしよ。とりあえず警備員か風紀委員に電話を……)
不良B「おい誰かそこにいるのか!」
佐天(見つかった! ここは一先ず荒立てないように)
佐天「いやー、すいません。ただの通りすがりなもんで。すぐに消えますんで」ヘコヘコ
不良B「おう、さっさと失せな」
佐天(これでいい…… 後は離れたところから通報すれば)
ほんとうに?
不良A「さっさと金だせっつってんだろ!この無能力者『レベル0』のクズが!」
デブ「ひいいいい」
ほんとうにそれでいいの?あの人の気持ちはどうなるの?バカにされて踏みにじられたまま?
そんなの……
佐天「ゃ……ょ…」
不良B「あ?」
佐天「やめなよって言ってんじゃん!」
不良A「何だコイツ?」
佐天「そこの人!早く逃げて!」
デブ「ひいいいいいいいい」ダダダダダ
不良A「ほお、見上げた根性じゃねえか。なんだ? お前があいつの代わりにお金を俺たちにくれるってか?」
不良B「見た感じ発達もよさそうだし…… 今日は帰れると思うなよ?」
不良A「ギャハハ! お前ロリコンかよ! キモ!w」
不良B「ブハハ! うるせえよwww」
不潔
不良B「どうした? 黙りこんで。今更怖気づいたんでちゅかー?www」
不良A「適当に痛めつけてさっさと金いただいて逃げようぜ」
こんな奴らを、野放しにできない……! 今だけ! 今だけでいいからあの時の力、もう一度わたしに!
そっと右腕を不良たちに向ける。あの時の感覚を思い出しながら必死に演算を始める。
不良A「? まさかこいつ……!能力者か!」
サアア、と音を立てながら佐天の右腕に空気が集まりだす。
不良A「この!」
能力を使われる前に殴ろうとしたが、佐天の方が少しだけ早く攻撃に転じた。
佐天の手元に集まっていた空気の塊が手元を離れ不良Aへ飛んでゆく。
不良A「があぁ!」
不良B「大丈夫か!」
不良A「あ……ああ。思ったより威力ないぜあいつ。」
せいぜい空気を集め丸く固めたやつをぶつけたところで、体がよろめく程度。ほぼダメージはない。
しかし不良たちの声は何一つ佐天の耳に入ってこない。佐天の心は感動に包まれていた。
使えた…… わたし!自分の力で能力を使ったんだ!
しかしずっとその感動に酔いしれていることはできず
ドコ!
佐天「っが……はっ」
みぞおちを殴られ、空気がすべて押し出される。初めての感覚。
不良A「なめやがって、女子供には手を出さないと思ったのか? 大間違いだぜ」
??(呼吸…… 血圧…… 敵?)
不良A「これで終いだ」
とどめに佐天の腹をもう一度殴ろうとする。しかしその拳は届くことなく、不良Aは数メートル飛び倒れた。
今何が起こったのかわかるものは誰もいない。
不良B「おまえ何しやがった! この野郎……!」
続いて不良Bも飛びかかるが、不良Aと同じように飛んでゆく。
佐天(……今右手が勝手に!)
不良たちをのしたのは佐天の右腕だった、まるでムチのようにしなやかに、普通の人間だとありえない動きをして、不良二人の顎をべゴン、バゴンという音とともに仕留めたのだ。
―――佐天涙子の寮
ガチャ
帰ってくるなりすぐに台所へ向かい、包丁を取り出し、振り構える。
佐天(なんなのよ……なんなのよこれ!本当にわたしの右手?!)
試してやる
右腕に突き刺した後どうなるかなど考える余裕などなく、その包丁を振り下ろそうとする。
すると右腕の感覚がなくなり、くいっと不自然な方向に曲がったかと思うと、人差し指と中指の間がぱかっと割れ口のように、中指と薬指の先はまるで目のように変化した。
まるで生き物のように。それは喋り出した
??「残念だ…… 俺…… 右手…… 失敗……」
茫然とする佐天。
なにこれ。え。どうゆうこと。何この生物。どうなってるの。え。え。
頭の中がごちゃごちゃになりながらも出た言葉は
佐天「わたしの右手は?」
??「く……食っちまったよ……」
頭が真っ白になった。
佐天「ふ、ふふ。あははははは。なにそれ?ははははははははは……ふん!」
ずっと持っていた包丁を振り下ろすが、それはいとも簡単に白刃取りし、不良たちをなぎ倒した時のように、包丁を折り、佐天へ投げ返す。
包丁は佐天のすぐ横を通り過ぎ天井へ突き刺さった。
??「言葉…… まだ少し…… 理解できない…… 教えて…… 佐天……」
佐天涙子の日常が崩れ始めていた。
すいませんこれで終わりです。自分でも違和感感じまくりでしたが宣言通り投下。
じぶんの文才のなさに絶望。この調子でいったらたださえひどいのにもっと大変なことになる。
……ちょっと勉強してきます。
次へ活かしたいのでアドバイス、指摘ありましたら言ってくれると助かります。
にゅるにゅるり、
くにゃくにゃと、ゴムのよう。
人間の右腕だった。
私の右腕だった。
??「残念だ…… 俺…… 右手…… 失敗……」
??「く……食っちまったよ……」
??「言葉…… まだ少し…… 理解できない…… 教えて…… サテン……」
佐天「!?」ガバッ
時刻は午前5時。普段だったら目覚まし時計もなしにこんな早起きはできない。
佐天「夢……」
額から汗が垂れる。拭う。
佐天「じゃないかぁ……」
私の右手はゴムの様に伸びていて、部屋の床に散漫し、
その先には目と口がおまけの様にくっ付いた、なんとも気味の悪いのが、本を読んでいる。
??「……もう起きたのか」
佐天「……はぁ」
この意味の分からない生物が私の右腕を乗っ取ったのは一週間前。
今のところそれといった実害も無く、いつの間にやら私は順応をしてしまっていた。
??「サテン、今日も図書室に行きたい」
佐天「えぇ~?また~!?信じられな~い!」
一週間のうちに、この気味悪いのはスポンジのように知識を吸い込んで、いつの間にやら私より頭が良くなっている。
佐天「なんなら、今日のテストはミギーが代わりにやってよ」
??「テストは知識の確認を行うための物だ」
佐天「そーゆーのじゃなくて、ほら、家賃だと思ってさぁ」
??「なるほどそれは私がサテンを住処としているという意味か……大変興味深い」
??「確かに私はサテンの血液から直接栄養を取り入れている……」
佐天「シャラッープ!この話しはもう終わり終わり!」
すっかり目が覚めてしまった。再び寝る事はもう出来ないだろう。
佐天「テストの勉強でもしとくかぁ……ほら、右手の主導権返してよ」
??「待って、これを読んでから……」
ぐいぐいと引っ張ってみたが、まったくもって動く気配が無い。
佐天「まったくもー……これじゃ勉強ができないじゃん」
??「……」
佐天「ところであなたのことなんて呼んだらいい?」
佐天「ちょっと不便なんだよね、名前無いのって」
ミギー「ミギーでいい」
佐天「ミギー?」
ミギー「右手を食って寄生したから、ミギー」
佐天「……くっ、あっはは!なにそれ、おかしいよ!うふふ!」
我ながら、すごい適応力だと思う。
結局、ミギーが本を読み終えたのは私が学校へ登校をする寸前だった。
いつものように、初春との待ち合わせ場所まで全速力で走り、
佐天「う、い、は、るー!」
スカートをめくった。
初春「きゃぁっ!?さ、佐天さん!朝からやめてください!」
佐天「初春が可愛いのがいけないんだよん」
初春「一体何言ってるんですか!」
ミギー「(サテンはこの人間の雌に求愛をしているのか?)」
佐天「!?」
ミギー「(サテンの行動を本に書いてあった通りに当てはめると、サテンはこの人間のメスと交尾をする為に、求愛をしているように見える)」
佐天「何言ってんのよ、ばかぁ!ヘンタイ!」
初春「……佐天さん?」
佐天「あ、ああ!なんでもない、なんでもないよ!」
初春「そうですか、ならいいですけど……」
佐天「ほら初春!このままじゃ遅刻しちゃうよ!ほら!ほら!」
佐天「(あっぶねー……)」
後でミギーに注意しなくちゃ、まったく。
投下終了
ざんねん・・・だ・・・
おれ・・・すれ・・・失敗
このスレは私が乗っ取りました。
だって寄生獣と禁書の組み合わせとかおいしいんでもん。
このまま落ちちゃうなんてもったいないんだもん。
学校に着くや否や、トイレの個室入って、怒鳴った。
佐天「ミギー!とにかく外では変な事言わないで!分かった?」
ミギー「私は変な事は言っていない、ただ疑問に思ったことを質問した」
佐天「それが変な事なの!」
ミギー「……わかった」
佐天「このままじゃ、私、医者に行くかもしれない」
ミギー「何のため……?」
佐天「……あんたをぶった切ってもらうのよ」
ミギー「それは困るな。私はサテンの血液から養分をもらって生きている。したがって切断されると枯れて死んでしまうのだ」
佐天「でしょ?」
ミギー「でもそうすると、サテンだって右手を失う事になるんだぜ、お互い損じゃないか」
佐天「私の右手はあんたが食べたんでしょうが!」
ミギー「……それは正確な言い方じゃない」
ミギー「私は普段、サテンが右腕を使うときは、脳に回路を繋いで、問題なく右腕を使用できるようにしている」
ミギー「私はサテンの右腕でもある」
佐天「ああ、もう中学生にそんな難しい話しないでよ!とにかく、家の中以外では大人しくしてて!」
ミギー「可能な範囲で実現をする……私は眠らせてもらう」
ミギーはそのまま眠ってしまい、トイレの個室から出る。
先生「佐天さん、誰と話してたの?」
佐天「せ、先生!?」
先生「校内では、携帯電話の電源を入れる事自体が禁止になっていますよ?」
佐天「ち、違います!携帯電話じゃないです!あれは独り言なんです!」
先生「言い訳を言うんじゃありません!」
佐天(ひゃー、なんで最近こんなに運が悪いのー?)
先生から罰として宿題が増やされ、その後のテストも散々な結果だった。
佐天(うぅっ……赤点は嫌だよぉ……)
☆
とぼとぼと歩く佐天を、背後からコソコソと誰かが後を付ける。
その人物は、じりじりと佐天との距離を縮めていく。
その人物の頭には、花畑……
(たまにはいつもの復讐をしたって、いいですよね?)
初春だ。
初春は抜き足差し足で、佐天にぎりぎりまで近づく。そして、両腕を前に突き出す。目指す場所は一つ。
初春(佐天さんのスカートを……めくってやります!)
心臓の鼓動を押さえつけながら、初春は意を決し、佐天のスカートを……
佐天「……」
初春「……!?」
それは一瞬の出来事だった。
なんと、背後から佐天のスカートをめくろうとした初春の右腕を、佐天は前を向いたまま右腕で掴んだのだ。
初春「さ、佐天さん!?いつの間に気付いていたんですか!?」
佐天「え、初春?いつの間に?」
佐天はビックリとした様子で振り向く。
どうやら佐天は、今まで初春に気付いていなかったようだ。
初春「佐天さんって、反射神経がすごかったんですねー」
佐天「いやー……ははっ」
初春「佐天さん、もしよかったら、これからお昼ご飯を食べに行きませんか?」
佐天「別に構わないよ、ファミレス?」
初春「いえ違います、今日の朝、スイーツがおいしそうなお店を見つけたんです。値段も結構安かったですし、品揃えも豊富でした」
佐天「じゃあ、そこでいいか」
☆
初春の言うとおり、スイーツがおいしそうだし、値段も割安。可愛らしい雰囲気のお店で、私と初春のほかにも、同年代の位の女子が沢山居た。
初春「うーん、このモンブランがおいしそうだけど、フルーツタルトとも捨てがたい……あぁ、でもパフェも!」
メニューと睨めっこする初春。
佐天「初春、そんな迷わなくてもまたここに来ればいいじゃん」
初春「そんなの駄目です!もしかしたら、次来る時にはこのお店が、潰れているかもしれないじゃないですか!」
佐天「ははっ、大袈裟だなぁ……」
初春「佐天さんは何にしたんですか?」
佐天「え?私?えーと……トマトサラダ、オニオンスープ、カルボナーラスパゲッティ、シーフードピザ、イチゴタルト、チーズケーキ」
初春「そんなに沢山食べるんですか!?」
佐天「いやー、最近妙にお腹空いちゃって。お陰で金欠なんだよねー……」
佐天(ミギーのせいで!)
初春「ほへー……」
佐天「ところで初春!生き物は好き?」
我ながら無理矢理すぎる話の変え方だと思う。
初春「突然ですね、生き物は普通に好きですよ?」
初春「ヘビとか、ぬるぬるした動物は駄目ですけどね」
佐天「……そっ、そう」
ヘビと聞いて、ミギーが寄生してくる前の姿を思い出す。
佐天「ねえ、初春。もし私の体の一部が……」
初春「よし、決まりました!」
思い切って切り出した話は、遮られた。
初春「では、注文しましょうか」
佐天「んっ、そうだね」
店員を呼ぶベルを押そうと右腕を出した時、違和感を感じた。
佐天「いっ、いやあああああああああああっ!!!」
なんと、私の、右腕が……!
.
お尻に……!
.
初春「どうしたんですか佐天さん!?」
佐天「な、なんでもない!なんでもないかわら!」
急いで腕をテーブルの下に引っ込めた。初春には見られていなかったようだ。
佐天(ミギーの馬鹿!一体何してんのよ!)
ミギー(佐天の行動について分析をしていた)
佐天(馬鹿!あんたなんか嫌い!馬鹿!変態!変態!最低!)
☆
初春「とってもおいしかったですねー!」
佐天「ほんと、そうだね……」
帰り道、るんるん気分で歩く初春とは対照的に、私の足元はおぼつかない。
初春「佐天さん、顔色悪いですけど、平気ですか?」
佐天「うん、げんきげんき」
初春「……」
流れる沈黙。何か言わなければと思ったけど、なにも言いたくなかった。
.
初春「あなたは佐天さんだよね?」
突然、初春が切り出す。
佐天「何言ってるの初春?当たり前でしょ!」
一瞬、どきっと、心臓が跳ねた。ほんの一瞬、言葉に詰まっていた。
初春「ふふっ」
初春は特になんとも思っていないようだ。
佐天「初春ったら、変な質問しないでよね!」
沈む気持ちを誤魔化すために、初春のスカートをめくってみようとしたけど、失敗。
初春「きゃー、ごめんなさい」
逃げる初春を、追いかけた。
佐天「許してあげなーい!」
投下終了でつ
初春は村野ポジションですか、お母さん要素も混ぜたい
>>1です
まず最初に、このあとの構成が自分の中で中々うまくまとまらず、しばらくなんの報告もなく、申し訳ありません。
100%自分の能力不足によるものです。乗っ取りに関して、私から何も言えることはありません。
ただ、自分の中で、乗っ取りさんの思い描く、佐天とミギーの物語がどのようなものか気になっているのも事実、もし良ければこの後も続けて書いていただければなと思っています。
無責任だ、自分の立てたスレだろ、と思う方もいると思いますが、投げ出したつもりはありません。
どんなに時間がかかろうと、乗っ取りさんが続きを書くなら、それが終わった後、また自分の佐天とミギーの話を書こうと思ってるんですがどうですか?
ただ、いまは受験勉強との両立が難しく、更新が激遅極小になってしまいます。完璧にスレを立てる時期を見誤りました。
本当にすいません。
>>82
私はただ欲望を発散するためだけに乗っ取りました!
あなたが続きを書いてくれるというのならば、私はすぐに書くのをやめて、普通の女の子に戻ります!
了解しました!
>>1さん、ありがとうございます!受験頑張ってください!日本のどこかで応援していますから!
初期一方通行に関しては最終的に後藤が勝ちそうな気がする
そう思うのは私だけだろうか
>>101 完全に同意です。
その後、初春は突然風紀委員の仕事が入ったので別れた。
どうやら最近、学園都市内で何か事件が多発しているらしく、風紀委員は急遽防犯パトロールを行う事になったらしい。
私は一人で寮への道を歩く。正確には一人と一匹と言うべきか。
佐天「ミギーの馬鹿!どうしてあんなことしたのよ!」
ミギー「人間の生殖行動に興味があった。サテンの場合は、雄が雌に行う求愛を雌がやっており、しかも対象が……」
佐天「やかましーい!あんたなんか大嫌いよ!いい!とにかくちょん切られたくなかったら、一切!喋らないの!」
ぶんぶんと右腕を振り回しながら歩く。
ミギー「止まれっ!!」
突然、ミギーが命令をする。
佐天「何!?突然そんな大声出して!なんなの?」
ミギー「『仲間』がいる!」
佐天「!?」
ミギー「わたしの『仲間』だ!同種だよ!!」
興奮している。私もミギーも。
辺りを見回した。辺りには誰もいない。当たり前だ。あえて人通りの少ない道を選んだのだから。
佐天「誰もいないじゃない、どうしてわかるのよ……!」
ミギー「感じる……脳波のようなものを……」
ミギーが目玉を幾つも作り出し、くねくねと体を動かしている。
ミギー「初めてだ!だがわかるぞ!仲間だ!」
佐天「行くの……?」
ミギー「あぁ、早く行こう!直線にして約200メートル!」
ミギーに案内され、私は歩き出していた。
心臓の鼓動が激しい。頭の中は恐怖で満たされている。だが私の足は動く。
今、私の精神と肉体は分離している。
元々好奇心は強い方だが、これは好奇心と言えるのだろうか。
私は恐ろしいほど、何も考えずに歩いている……
ミギー「ん……むこうも気付いたようだ」
佐天「……」
足が歩くのを止めた。
ミギー「どうした?行けよ……」
佐天「良く考えたら、仲間って言うのは……私みたいに体を乗っ取られた人間……?」
ミギー「ああ、恐らく脳を奪われた……」
佐天「脳を?」
ミギー「わたしは自分がどこからきたのか知らない。わたしのいちばん古い記憶は『脳を奪えなくて残念』という気持ちだ……」
ぎょっ、とした。
ミギーの口からさらりと恐ろしい言葉が出てくる。
佐天「まさか、あなた、次に私の脳を……!」
ミギー「どれができるならとっくにやってる……だが無理だ。脳を食わずに成熟してしまってはもう遅い……残念なことだ」
佐天「脳を奪うのに成功したら、どうなるの?」
ミギー「多分、頭が変形する人間に似た生物になっていただろうな」
佐天「それは、人間は死んじゃうってことだよね?」
ミギー「心臓は動いたままだぞ」
佐天「私、気持ち悪いよ……!行きたくない!」
その場から急いで立ち去ろうとした。が、駄目だった。
佐天「ミ、ミギー!」
ミギーが近くの電柱に体をぴったりと引っ掛けたのだ。
ミギー「どんな生物の本を読んでもわたしの事は載っていなかった」
佐天「当たり前でしょ……あんた宇宙人なんだから……」
ミギー「わたしは自分の正体を正確に知る必要がある。きみにとってもこれは重要な事であるはずだ」
ミギーの正体……確かに知らないままというのは恐ろしい。
佐天「わ……わかったよ……」
ミギー「あと20メートル……あのカドだな……」
佐天「……」
ミギー「む……食事中らしい」
佐天「えっ」
グジュ……グジュル
食事中という言葉に戸惑うのと、角を曲がりその光景を見て驚くのは、ほぼ同時だった。
佐天「イ……イヌ!?」
公園には、イヌがいる。そしてイヌを食べている。
佐天「イヌがイヌを食べている……!?」
イヌがこちらに顔を向ける。
佐天「ひっ……!」
イヌの口は花のようにぱっくり五つに開かれて、てらてらとその隙間から倒れているイヌの血肉と流している。
イヌ「グワォ……おまえ……も……失敗……か?」
佐天「しゃっ、しゃべったぁああっ!?」
足元がぐらついた。
目の前の光景が現実として受け入れられない。
ミギー「……」
ミギーは無言でイヌを見つめている。先ほどとは打って変わって落ち着いている。
イヌ「おまえ……は寄生する……場……所……おれは……宿った動物……に不満が……ある」
ミギ「逃げろ!走れ!早く!」
佐天「え?あっ、きゃぁっ!?」
ミギーがグィーンと体を伸ばし、引っ張られる。
佐天「はぁっ……!はぁっ……!何なの?行けって言ったり、逃げろって、言ったり!」
元来た道を駆け抜ける。
ミギー「殺意を感じた!“人間のまま”のおまえを異常なほど警戒している!」
通りがかった公園の遊具の中に隠れる。
体力が限界だった。心臓が張り裂けてしまいそうだ。
ミギー「向こうはやる気みたいだ。サテン、ここで戦うぞ」
佐天「うそ!?戦う!?」
ミギー「サテンが殺されたらわたしも死ぬことになるからな……! きたぞ、上を見ろ」
ミギーに言われたとおり、上を見て、絶句した。
佐天「そんな……うそでしょ……!?いくらなんでもあれはメチャクチャだよ!」
そのまま見た事を言葉にするのが難しい。
がんばって言葉にするとこうだ。
イヌの頭が変形をして翼となっており、さらにそれを広げてバサバサと宙を待っている。
もう、その姿はイヌとは言えなかった。
化物。正真正銘の化物。
コウモリのようなその翼は、悪魔のようだ。
バビュンッ
ミギーの体が良く伸びて、頭上のイヌへ向かう。
佐天「ミギー……」
ミギーの体は勢いを加速させ……
イヌ「ギャブッ!!」
イヌの体を貫いた。
その時、勢い良く空気が抜けるような音が出た。
佐天「ひえ~~~!!」
イヌはそのまま力尽きて落下をし、ミギーはギュルルルと縮まる。
佐天「ひぃっ!し……心臓!?」
なんと右手には心臓が握られていた。
ミギー「見ろ!くたばるぞ」
佐天「……あ」
イヌは地面に叩きつけられ、金切り声を上げた。
イヌ「きゅ~~……く……」
ぷるぷると目の前の化物は震えている。
ミギー「やはりイヌの内臓や消化器官を流用して生きてたんだ」
そう言うと、ミギーは心臓を握りつぶした。
佐天「ひゃぁっ!」
イヌの震えはだんだん弱くなり、止まった。
佐天「あなたに仲間がいたなんてね……」
ミギー「頭の部分だけが本体だ……神経を支配して全身を操るわけだが、本体自らが翼などに変身したため注意力が散漫になり、死角をつくった」
佐天「せっかく出会った仲間なのに……」
ミギー「イヌか……育った環境のせいもあるだろうが不勉強なヤツだ。だから私が勝った」
佐天「!」
佐天(こいつ……)
その時、私はゾッとした。情の欠片もない……なんて言うのだろうか。
佐天(まるで昆虫と話しているような……)
ミギー「サテン、もう用は済んだ。帰ろう」
佐天「ちょっと待ってよ……手、洗わせて」
なんとなく、死んだイヌを見た。
からからに乾いていて、ミイラのようだ。
佐天(このイヌは、頭を奪われる前は、普通のペットだったんだね……)
ふと、イヌの首に赤い首輪がはめられている事に気付いた。
首輪には黒色の油性ペンで『NOUKAN KIHARA』と。拙い子供の字だった。
佐天(木原さんの家が飼っていた、ノウカン君……かな)
このイヌのように、頭を奪われてしまった生物がいる。
ミギーはこれから、そんな化物たちと、こんな風に戦う気でいるのだろうか。
ミギー「サテン、つめたい」
水道の蛇口で手を洗いながら、これからの事を考えた。
*
朝。御坂美琴は登校の真っ最中だった。
そして、ある少年を見つける。
少年はトゲトゲと逆立った特徴的な髪形を除けば、いたって普通の男子高校生に見える。
美琴「ちょっとアンタ!待ちなさい!」
少年は真っ直ぐと歩き続ける。
美琴は少年を追い掛ける。
美琴「アンタよアンタッ!ねぇっ!ちょっと!」
少年は振り向かない。
美琴「いい加減に……しろー!!!!」
美琴が怒鳴る。
頭に血が昇った事により、自分の意思とは関係なく、美琴は放電をしてしまう。
美琴「あっ、危ない!」
電撃は目の前の少年に直撃……しなかった。
少年「何だお前は?」
少年の右手が、電撃を打ち消してしまったのだ。
少年は特殊な右手を持つ。彼の右手は、あらゆる異能の力を打ち消してしまうのだ。
美琴「私には御坂美琴って名前があんのよ、いい加減覚えろド馬鹿ぁ!」
少年が怪我をしなかった安心感からか、言葉の内容と声音は全然違った。
美琴の声音は意外にも柔らかなもので、母親が小さな子供を叱る、というのに近かった。
心なしか、語尾には申し訳なさから来る萎縮感も混ぜられていた。
少年「……」
怪訝そうな顔で、少年は美琴を見る。
美琴を見るのは冷たい目だった。
少年の目はあまりにも冷たく、普通の男子高校生には不釣合いだった。
美琴「まったく、なんなのよその右手は」
少年「……今は、腹は減っていない」
少年はその場から立ち去ろうとする。
美琴「えっ、あっ、ちょっとぉ!」
美琴が少年の肩に触れようとした時、少年の携帯電話が鳴る。
すぐに少年は電話に出る。
少年「……何だ」
??『今日ミーティング、午後の2時に変更みたいなの』
少年「そうか……遅刻はしないようにする」
??『気をつけるの、“上条”』
少年「あぁ」
通話を切り、携帯を閉じると、少年は再び歩き出した。
美琴はその場に立ち尽くした。
美琴「なによ……確かに私は今まで酷いこといっぱいしてきたけど……あんな態度はないじゃない……」
弱々しい声で、呟く。
投下終了!
クラスメイトに寄生獣を途中まで貸したら「広川って人間?」て聞いてきてびびった。
投下します
上条さんの中の人については物語の中でちらちらと触れたいと思っています!
白い淫獣だけはたとえ田宮良子さんに頼まれてもいじめる
*
学園都市。ある路地裏でジャージ姿の女性がふらふらと歩いていた。
「うぅっ……飲みすぎたみたいじゃん……」
路地裏の壁を伝いながら、女性はゆっくりと進む。
足元がおぼつかない。なんだか地面がつるつると滑るような気がするのだ。
最初は酔っぱらっているせいかと思ったが、すぐにそれは違うとわかった。
地面が濡れている。
ぼやけている視界でも分かった。地面の色を。
「あっはっは、地面が赤いじゃーん」
これは飲みすぎたせいだ。
地面が滑る気がするのも、地面が赤いのも。
女性はそう自己完結させようとした。が、
「んぷっ……ぐえぇーーっ!!」
女性が吐いた。
酔っぱらったからではない。
……見てしまったのだ。
ズタズタに引き裂かれ、本来の形を失った人間の死体を。
*
同じく学園都市。
「おーい、洗濯物濡れてるぞー」
メイド服姿の少女が、たまたま通りがかった学生寮一階のベランダの前で、呼びかける。
つい先ほどから、雨が降り始めているのだ。天気予報ではこれから激しくなる、とのこと。
「留守なのかー?」
少女は、ベランダに干されている洗濯物に、何か違うものが混じっている事に気付く。
「きっ、キャアアアあああああああああああああっ!!」
ズタズタに引き裂かれて、ボロ雑巾のようになっているそれは、その部屋の住人だった。
*
佐天「はぁ……はぁ……」
数日前のイヌの夢を見てしまった。
睡眠をして疲れるだなんて、初めて。
佐天「ミギー、アンタは相変わらずね」
ミギーは今日も体を部屋中に伸ばして本を読んでいる。
本の種類はマナー本や、心理学の本が多かった。最近は人間社会について勉強しているみたい。
時刻は朝の7時ちょっと前。いつも起きる時間とほぼ変わらない。
佐天「ミギー、学校行く準備するから主導権ちょうだい」
ミギー「ん……」
すぐに右腕が本来の姿を取り戻す。
顔を洗い、制服に着替える。朝ごはんは昨日の夜に作っておいた。
座布団に座り、テレビを点けてみた。
『事件があったのは学園都市第八学区で――殺されたのは教師の○山×子さん(39)長女の○子さん(14)長男の●くん(10)と見られておりますが――』
佐天「……」
『いずれの死体も損壊が激しいため、殺害方法・凶器などについては一切わかっておりません。アンチスキルの捜査隊では事件以来行方不明となっている45歳の夫が、犯行に何らかのかかわりがあるものと見て、その行方を追っております』
画面は変わり、アナウンサーとコメンデイター、専門家などが映る。
『いやー、恐ろしいですね。このような手口の事件は学園都市だけで12件目でしょう?』
『えぇ、巷ではこの事件を総称して“ひき肉(ミンチ)殺人”と呼んでいるみたいです。アンチスキルの見解では、集団の犯行である可能性が高いとのことです』
『死体から唾液を検出したんでしょ?もしかしたら狂信的な宗教集団がからんでるかもしれませんよ?』
画面の向こうで、アナウンサー達は視聴者の不安を煽る。
ひき肉殺人――そう呼ばせるほどズタズタに引き裂かれた死体が、世界各地でいくつも発見されていた。
それは特に大都市などの人口密集地に集中していた……学園都市はその良い例だ。
「敵」(人々はもはや「犯人」とは呼ばなくなっていた)の正体は依然つかめていない。
佐天「……やっぱり、ミギーの仲間たちが?」
ミギー「まちがいないな……この間のイヌを見てわかった。イヌに宿ったものはイヌだけを食う。人間に宿ったものは人間を食う……とも食い専門の新生物というわけだ」
佐天「……」
ミギー「何を考えている?」
佐天「わたし……このまま黙っているのはいけない気がする……」
意を決して、切り出してみた。
ミギー「どういうことだ?」
佐天「やつらをほうっておいちゃいけないと思う。次々と人を殺してるような奴らだよ」
ミギー「『ほうっておいちゃいけない』とは?」
きょとんとした様子のミギーへの返答に困る。
佐天「いい?私達だけが正体を知ってるの!このままじゃ犠牲者が増えるばかりだよ!だから……」
佐天「だから!あなたの事を世の中に発表して、研究してもらえば……それにここは学園都市。すぐに解明できるはずだよ」
ミギー「何を言ってる。サテンの理屈はよくわからん」
・・・・・・・
ミギー「わたしの『仲間』たちはただ、食っているだけだろう……生物なら当然の行為じゃないか。サテンにとっては同種が食われるのはそんなにイヤなことなのか?」
佐天「あたりまえでしょ!人の命は尊いのよ!」
さっきから頭で考える前に先に口が動いてしまう。
感情を優先しすぎるのはいけないとわかっていても、止まらない。
ミギー「わからん……尊いのは自分の命だけだ……私は私の命以外を大事に考えたことはない」
佐天「でしょうね!あなたはケダモノで虫ケラよ!」
ミギー「それ……けなし言葉のつもりかい?」
ミギー「サテン……もし、きみがわたしの身に害をおよぼすような行動に出るなら、私は全力でそれを阻止するぞ」
佐天「何言ってるの?宿主に逆らったら生きていけなくなるのよ、この寄生虫!」
たらりっと、額から汗が流れる。
ミギー「きみの命は守る……しかし口をきけなくすることぐらいできるんだぜ」
ミギーは体の一部を変形させる。
先ほどまでの滑らかなゴムみたいな物が、あっという間に鋭い光沢を放つ刃物に姿を変える。
佐天「!」
ミギー「他に視力や聴力を奪うという手もある……」
じりじりと、ミギーはそれを私の顔へ近づける。
佐天「ぁ……ぅ……」
どぐんどぐんと心臓の鼓動が激しくなり、呼吸がおぼつかなくなる。
ミギー「ほう……すごい恐怖心だ。まだ学校に行くまで時間がある、少し休んだ方がいいな」
刃物が私の顔から離れる。
佐天「悪魔……!」
心臓が苦しかった。
すぐにその場に寝転がり、目を閉じた。
ミギー(サテン……『悪魔』というのを本で調べたが……一番それに近い生物は、やはり人間だと思うぞ……)
耳元で、ミギーが囁く。
ミギー(人間はあらゆる種類の生物を殺し食っているが、わたしの『仲間』たちが食うのは、ほんの1~2種類だ……質素なものさ)
佐天「そんな理屈聞きたくもないよ」
起き上がって朝ごはんをかきこみ、学校へ向かった。
佐天(人が殺される……私だけがその正体を知っている……)
佐天(でも公表をしたら……大騒ぎになるだろうな)
『なっ、何だこの生物は』
『きゃ~~っ!!気持ち悪い!そばにこないで~~~!!』
悪いイメージばかりが頭に浮かぶ。
すぐにそれを頭から振り払った。
数歩先に初春が私を待っている。暗いところは見せられない。
佐天「うっいっはっるー!!」
明るい声で言いながら、いつものように後ろから初春のスカートをめくった。
初春「うっ、うわあぁんっ!!」
佐天「初春ったら、もっと警戒心を持たなくちゃ」
初春「佐天さんのばかばかばか!」
半泣きになりながら、初春がぽかぽかと私を叩く。ちっとも痛くない。
佐天「初春は今日もかわいいなー」
初春「もう、何言ってるんですか!」
私と初春の横を、カップルが通り過ぎる。
男「ゲーッ!まっじィよこのハンバーガー!」
女「捨てちゃいなよ」
男は手に持っていたハンバーガーをゴミ箱に捨てる。
佐天「……」
初春「佐天さん……?」
ハンバーガーの具材は至って普通のハンバーグ。
佐天「ミンチだ」
思わず呟く。
初春「え?」
佐天「……なんでもない、行こう」
初春は不思議そうな様子で私を見ていたが、無視をした。
どう接したら良いか、わからない。
学校に着き、教室に入ると、黒板に何やら大きく文字が書かれていた。
『一年生の能力測定の日程変更。
本日の授業を中止し、全て能力測定に変更』
佐天「うっそぉーっ!?最悪ー!」
初春「あまりにも突然すぎますね……」
教室では、殆どの人間が嘆いている。
当たり前だ。学園都市の学生の六割が、無能力者なのだから。
投下終了
ミギーってだんだん可愛く思えてくるんだよね
ストーリーは原作を再現したものになります。
イベントはカットしたり増やしたりしますので、完全再現はないです!
禁書なので、パラサイトの他にも超能力という異質なものをストーリーに混ぜ込むのが大変です。
SSを書くために寄生獣を読み返すと、やっぱり岩明先生はすげぇや!て気付きます。
上条さんは一応おいしいポジションを与えてやりたいという事からこうなりました!
>>てっきり美琴がジョーに寄生されて
「胸が大きくなった♪」みたいな話かと思ったけど、全然違った……
なにそれ超読みてぇ……
では!投下します!
大気操作系の無能力者の集合場所である空き教室に入る。
教室には私の他に20人から30人程度の人間がいたが、窓は締め切られて空調機だけが作動している。
窓際に、南方向を向いた机が5つ並び、机の上には手の平サイズほどの、能力を測るための機材が置かれてる。
佐天「むーちゃん!」
むーちゃん「あ、ルイコ!そういえばルイコも大気操作系だったよね」
むーちゃんと軽くお喋りをしていると、先生が教室に入ってきた。
先生「皆さん、これからクラスごと出席番号順に能力測定を開始します」
先生が測定方法や機材などの説明をし始めたが、別に能力測定は初めてではなかったので適当に聞き流し、むーちゃんとのお喋りを続けた。
むーちゃん「あぁ、怖いなぁ」
佐天「……うん」
あの時の事を思い出す。
佐天(不良達に囲まれた時、確かに私は、能力を使えた。使えたんだ……)
右手はあの感覚を覚えている。
佐天(でもあの日以来、何回試しても能力は発動しなかった……)
右手を見つめる。
ミギー『サテンはどんな能力を持っているんだ?』
突然、ミギーが耳元で離しかける。
佐天「!?」
耳のすぐ後ろに、チューブのような姿の小さいミギーがいる。
佐天『突然話しかけないでよっ』
回りに気付かれないよう、小声で話す。
ミギー『これから生きるうえで重要なことだ……知らなければならない』
佐天『レベル0の空力使い、これで満足?』
ミギー『なるほど……サテン、今から右手と脳の回路を少しいじらせてもらうぞ』
佐天『え?』
ミギー『能力者は“自分だけの現実”があるから能力が使えるんだろ?』
ミギー『だから、私がサテンに右腕の主導権を渡すときに脳の回路を繋ぐように、サテンの右腕と“自分だけの現実”部分の回路を繋いでみる』
佐天『そんなことできるの!?』
ミギー『わからない。だが試してみる価値はある』
佐天「ちょっと待ってよっ!!」
思わず大声で怒鳴る。
むーちゃん「ルイコ?」
教室中の人間が私に注目をする。
佐天「え……あ、あのっ」
先生「佐天さん、私の説明に何か不備でも?」
先生がじろりっ、と私を睨む。
佐天「いえいえいえ!滅相もないです!ホントに!」
先生「そうですか……ならお静かにお願いします」
投下終了です。今回短めでさーせん。
まぁ、なんだ、こまけえこたぁいいんだよ!
投下します!
学園都市第一五学区、学園都市最大の繁華街があり、他にもレジャー施設等が集中している学区である。
この学区には住人が少なく、殆どの者が娯楽を目的にやってくる学生だ。
どうやら今日は学園都市の殆どの学校で能力測定が行われていたらしく、平日とは思えないほど、街は午前中に測定を終わらせた学生でごった返している。
そこに、女性は居た。
年格好は十代後半から二十代前半程度で、背が高い。
長い髪にきつめのカールをかけて、流行の服を着ている。
スタイルが良く、顔立ちも整っているので、雑誌モデルのようだった。
女性はベンチに座り、不釣合いにも新聞を読んでいる。
道行く人間達(とくに男性)は、羨望の眼差しで女性を見つめる。
通行人「ねえ、君、待ち合わせ中?」
??「……」
新聞に読みふける女性を、派手な身なりをした男性が話し掛ける。
通行人「ねえ、無視?そんなんじゃせっかくの美人が台無しだよ。あ、もしかして何か嫌な事でもあったの?」
ペラペラと男性は喋るが、女性は意識の一万分の一も男性に向けない。
通行人「おい!無視すんじゃねえよこのクソアマ!」
??「……ねぇ、」
突然、女性が顔を男性の方へ向ける。
通行人「えっ……」
突然、先ほどまで自分を無視していた女性が、話し掛けてきたことにビックリとする。
??「牛やブタを平気でひき肉にしている人間どもが今さら何を驚いている……そう思わないか?」
通行人「は?」
女性は持っていた新聞紙を近くのゴミ箱に投げ捨てる。
新聞紙には『終わらない残虐行為、悪魔の所業』と書かれ、一面全体に『ひき肉事件』についての事が書かれていた。
女性がその場から立ち去ろうとすると、今度は別の人間が、彼女に話し掛けた。
金髪碧目の、白人の女子高生だ。怒鳴った。
フレンダ「今までどこに行ってた訳!麦野!」
女性の名前は、麦野だった。
麦野「……?」
麦野は無表情で、金髪碧目の女子高生――フレンダを一瞥する。
フレンダ「突然メールの送信もしなくなったし……みんな心配してた訳よ!」
麦野はしばらく間を置いてから、
麦野「悪かったわね……なんだか気分が悪くて」
フレンダ「……」
麦野「まだ体の調子が悪いみたいだから……」
フレンダ「……」
フレンダは麦野を凝視する。
フレンダ「……!?」
突然、フレンダの体が小さく跳ねる。
フレンダ「あんた……一体誰って訳よ!?」
麦野「!」
フレンダ「さては肉体変化能力者か!本物の麦野をどこへやった訳!?」
麦野は一旦間を置いてから、口を開いた。
麦野「顔も声もほとんど変わらないはずだが……なぜ見破れた?」
フレンダは麦野を睨みつけ、スカートの中からナイフを取り出した。
麦野の顔に、切れ込みが出来る。
くぷぅ……
螺旋状に、麦野の顔が開いた。
フレンダ「!?」
周りにいた人々は、能力者の喧嘩だと思い。急いでその場から離れる。
*
佐天「あはは……」
思わずそんな声が漏れた。
近くの壁にもたれかかり、手に持っている、くしゃくしゃになった紙をさらにくしゃくしゃにしてやった。
結果は惨敗。相変わらず私はレベル0のままだったのである。
ミギー「やはり効果はなかったみたいだな」
佐天「ちょっと期待してた私が馬鹿みたいだよ……」
ミギー「やはり物事はそう簡単にはいかないな」
佐天「まったくもってその通りですね!」
近くにあった水道で右手を洗う。
ミギー「サテン、いやがらせのつもりか、つめたい」
時刻はまだ12時前、能力の測定が終わった私はもう帰って良い事になっている。
佐天「初春の測定が終わるのはこれから何時間先かなぁ?」
できれば終わるまで待っていたいけど、初春の能力である『常温保存』は測定に長い時間がかかる。
初春が言うには、温度計が入った熱湯入りのビーカーと、冷水入りのビーカーをそれぞれ能力が止まるまで持っているという拷問のような測定みたいだ。
佐天「しょうがない、初春は諦めるか。第一五学区で新しい服でも買おっと」
ミギー「サテン、最近独り言が多いな」
佐天「うるさい。最近初春と遊べないんだもん」
投下終了
ネタバレ 麦野はかませ犬
投下します
一五学区行きの無料バスに私は乗り込んだ。
バスには私以外にも同年代の人間がいて、すし詰めになっている。
佐天(……すごいうるさい)
学生だらけなせいか、バスの中は騒がしくて耳がキンキンする。
ミギー「……ン…………い、サテン!」
ミギーが何かを言っている事に気付いた。
佐天「?」
ミギー「……いるぞ…の……が?…」
佐天「え?なに?ちっとも聞こえない!」
右手を耳に押し当てる。
ミギー「今、このバスは近づいているぞ、私の『仲間』に!」
佐天「離れた方がいい!サテンの存在が知れるとまた殺し合いになるぞ!」
バスが一五学区に着く。
とりあえずバスから降りて、きょろきょろと辺りを見回す。
街は人でごった返していて、それらしき人物は見当たらなかった。
ミギー「左側の人ごみの中にいる!人が多くてまだ見分けがつかないが、間違いない」
ミギーに言われたとおり、その場から離れる。が、
佐天「……ミギー」
ミギー「なんだ」
考えながら、話している。
ほぼ思ったことをそのまま口に出していた。
佐天「今、同じ人間が何人も殺されているけど……私達はその敵の正体もわかっているのに……何もしないで見てなきゃいけないの?」
佐天「私……!」
方向転換をして、左側の人ごみへ向かった。
足が勝手に動く。あの時と同じだ。
ミギー「おいサテン!『仲間』のところへ行く気か!?」
佐天「会ってやる!人殺しの顔を見てやるのよ」
ミギー「ばかなこと言うな!殺されるぞ!」
佐天「なら、ミギーが守って?」
わずかに、歩く速度が遅くなる。
ミギー「……この前のイヌのようにはいかないと思うがな」
思わずミギーに微笑んだ。
ミギー「人間の心はよくわからん……いまのきみは恐怖心がマヒしているようだが、なぜだ?」
佐天「……わからないよ。でも私は……もう、見ているだけが嫌なの」
ミギー「!」
佐天「戦いたい!人間のために!でも……それにはあなたの力がいる……だから、手をかして!」
なんとも酷い言い分だ。
自分で戦いたいとか言っておいて、結局はミギーに頼っている。
所詮は数ヶ月前までランドセルを背負っていた子供の言い分だ。
ミギー「…………」
佐天「ねぇ!ミギー!」
ミギー「動くなサテン!」
ミギーの体が変形をし、硬質化する。
佐天「ひゃっ!」
突然の強い風が吹き、髪の毛で視界が遮られる。
風が止み、目を開いた時、すぐ目の前には知らない女性が居た。
佐天「!」
*
麦野は近くに『仲間』がいることに気付いた。
とっとと目の前のフレンダを殺したかったが、滅多に会うことのできない『仲間』が近くにいるとなれば、話は別だった。
その隙に、フレンダは走り出した。
フレンダ(ありえないありえない……ありえないって訳よ!)
街の中を、フレンダは人目もはばからず走る。走る。
フレンダのずっと後ろには、ぱっくりと顔が開かれた麦野。追いかけてはこない。。
まだ戦闘は始まってすらいない。フレンダは後ろの女性の実力を目の当たりにしていない。
だが、フレンダは感じていた。
“こいつと戦ってはいけない”
それは直感とか、本能などのちゃちな物ではない。細胞だ。
フレンダの目・鼻・口・耳・髪・手足・胴体――彼女を構成するすべての細胞が、警報を打ち鳴らしているのだ。
元々フレンダは生きる事への執着心が人一倍強い。
それは彼女に両親がおらず、代わりに幼い妹がいることが関係しているのかは定かではないが、とにかくフレンダという少女は生きたいのだ。
麦野(……逃げた)
近くから『仲間』の気配が消える。
麦野(コイツを殺してから追いかけるか……)
すぐに麦野の頭部の右半分が大きくしなり、目にも留まらぬ速さでフレンダへ伸びる。やつあたりのように。
フレンダへ伸びる間、麦野の頭部の右半分は、触手のような姿から、鋭い刃物へ形を変える。
フレンダ(一体全体、どういう訳よ!肉体変化能力者じゃないの!?)
鋭い刃物がフレンダの頭を貫くのと、フレンダが鋭い刃物を避けるのは、ほぼ同時。
鋭い刃物は、フレンダの長い金髪を、ばっさりと切り裂いた。
フレンダ「!?」
突然頭が軽くなったことにより、フレンダは大きくバランスを崩し、転ぶ。
転んだ時の拍子に、フレンダは近くにあった風車に強く頭を打ちつけた。
ずりずりと頭を風車に擦りつけながら、フレンダの意識は薄れていく。
フレンダ(結局、私って馬鹿な訳よ……)
薄れゆく意識、霞む視界の中、フレンダは鋭い刃物を見つめる。
先ほどまであんなに恐ろしかったのに、今はなんだか、かっこ良く見えていた。
フレンダ(……あぁ、)
鋭い刃物と共に、風にたなびく長い黒髪が、フレンダの視界に広がる暗闇と交じり合う……
>>197
>佐天「離れた方がいい!
ミギーのセリフ?
*
麦野「なるほど……一回逃げたのは、そういうことか」
女性はしゅるしゅると顔を人間の姿に戻した。
麦野「人間の脳がまるまる生き残っている……こいつァたしかに危険な存在だな」
鋭い目つきだ。見られているだけで、気分が悪くなってくる。
佐天「……この、ばけものめ!」
私の後ろで倒れている金髪の少女の頭からは血が出ている。早く救急車を呼ばなければ死んでしまう。
麦野「何ィ?挑発のつもりか?」
女性はゆっくりと私に歩み寄ろうとする。
ミギー「動くな!この人間を攻撃するのなら、お前を[ピーーー]!」
ミギーが私の前に手を突き出す。
女性は少しだけきょとんとした顔をした後、
麦野「待った……なるほどな、右手さんの言いたいことはわかる」
麦野「だけど右手さん、きみはこっとに引っ越してくりゃいいのよ」
佐天「!?」
引っ越すという言葉に、私は混乱をした。それはミギーも同じようだ。
ミギー「!? 引っ越す?今さら移動は不可能なはず……」
麦野「なんだ……おまえ勉強不足ね。たしかに単純な「腕」から複雑な「脳」への移動は無理だ」
再び、女性は顔を螺旋状に開き、しゅるしゅると伸ばす。
麦野「しかし、「腕」から「腕」なら、簡単だ……」
佐天「!」
タヒュッ
ぼとりっ、と、女性の右手が地面に落ちた。あっさりとだ。
女性は、なんのためらいもなく、自分の右手を、自分で切り落としてしまったのだ。
佐天「いっ……いやああああああああああァァあああああっ!!」
麦野「アハハッ!どうだ!?指定席をつくってやったぞ!これで信じたか!?」
切られた右腕の断面からは滝のように血が溢れ出ている。
佐天(混乱してはいけない!錯乱してもダメ!)
自分に言い聞かせてみたが、聞かない。目を閉じて、現実逃避してしまいたかった。
麦野「さあ!移ってきてわたしの右腕になれ!2体が宿ればさらに強力になれるのだ!!」
だらだらと、自分の顔から変な汗が流れている。
ミギーは何も言わない。
麦野「どうした!?早くその人間を殺してこっちへ来い!血液がもったいないだろ!」
>>202 知られたからには生かしておけんな・・・
お願いします、ミギーで脳内保管しておいてください
声が出ない。体も動かない。
佐天(馬鹿馬鹿馬鹿!私の大馬鹿!怖がっちゃいけないのに!しっかりしなくちゃ!)
麦野「ふふふ……我々が管理するこの肉体なら、140年は生きられるだろう……」
佐天「ミ……ミギー……」
麦野「じれったい!だが、その人間の首をとばせば否応なしだ!」
女性の、硬質化された触手が、私へ向かう。
佐天(ちょっと、まっ……)
スバッ
斬りとられた。私のじゃないほうの首が。
麦野「!!」
ミギーはそのまま落下しようとしている女性の首を串刺しにし、地面に押さえつけた。
麦野「くっ……狂ったのか!よ……よくも!きさまァ!!」
佐天「……」
麦野「わ……わたしの肉体わたしの……」
女性の首が、ぷるぷると震えながらもがく。
麦野「わ……た……し……の」
女性の首がみるみるうちに干からびて、動かなくなった。
ミギーは女性から体を抜いて、いつもの右手に姿に戻った。
佐天「ミギー……わたしを……助けてくれたのね……」
佐天「ごめんなさい……まさかこんな……」
全部私のせいだ。私が大人しくミギーの言う通りにしていれば、こんな事にはならなかった。
ミギー「……肉体の移動に確信がもてなかっただけだ……わたしは自分の命だけを大事に考えている」
ミギー「疲れたので眠る……」
佐天「……」
女性の最後の言葉が、頭から離れなかった。
佐天「ミギー……」
右手には何の反応もない。
佐天「……」
*
初春飾利の能力測定が終了したのは、お昼を大きく過ぎた頃だった。もうおやつの時間と言っても差支えがない。
初春「はぁ……お腹空きましたぁ……」
能力の長期使用は体力を多く使う。そのため初春の空腹は限界に達していた。
ふらふらとした足取りで校舎を出ると、初春は校門に見慣れた人物がいることに気付いた。
初春「佐天さん!待っててくれたんですね!」
ぱっと花が咲いたような笑顔を浮かべながら、初春は佐天に駆け寄る。
佐天「別にずっと待ってたわけじゃないよ、さっきまで一五学区行ってたんだ」
そう言いながら、佐天は初春に白い箱を渡した。
白い箱はひんやりと冷たい。恐らく保冷剤が入っているのだろう。
箱のてっぺんには、今評判のケーキ屋のロゴが入ったシール……
初春「佐天さん!これ!わざわざ買ってきてくれたんですか!」
佐天「あははっ、初春ったら喜びすぎ。そうだなぁ……近くの公園のテーブルででも食べようか!」
初春「はい!そうしましょう!」
公園のテーブルでケーキを食べながら、二人は談笑をした。
初春「最近いろいろと物騒で、風紀委員の仕事でスケジュールがびっちりなんですよ」
佐天「ミンチ殺人とか、多発してるもんね」
初春「佐天さん、イチゴタルトを食べながら言わないで下さい……」
初春「佐天さん、最近なんだか大人しくなりましたね」
佐天は、一瞬言葉に詰まった。
佐天「……え、そうかな?」
初春「はい。いつもだったら、もっとこう……都市伝説とか、能力アップだとか、ひっきりなしに話題が出てるじゃないですか」
佐天「でも食欲はあるよ?」
佐天はすでに3つのケーキを食べていた。
初春「関係ないと思いますが……」
公園の砂場の方では、小学生達が騒いでいる。
なんとなく見てみると、初春は絶句した。
初春「ひどい……」
砂場には、体を埋められ、首だけ突き出した状態の猫がいる。
砂場から少し離れたところで、小学生が石を投げて、猫に当てようとしている。
小学生A「よっ!」
小学生B「はっずれ~」
佐天「悪ガキどもが……」
初春「と、とめなくちゃ……」
そう言いながらも、初春の体は小さく震えていた。
小学生といえども、体格はほとんど変わらないし、体力などは向こうの方が上だった。
佐天「そうだね」
そう言いながらも、佐天は砂場に向かって歩いていく。
小学生B「何だ?あいつ……」
猫「にゃー」
佐天「あんたたち、いいかげんにしなさい」
小学生C「あぁ?」
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猫「にゃっ」
佐天はしゃがみ込み、砂場から猫を助け出す。
初春「佐天さん……」
初春は僅かに顔を紅潮させる。
猫「にゃ~~」
解放された猫は、てとてとと駆け出していった。
佐天は、小学生達を見つめた。
小学生ABC「……」
佐天「生き物はおもちゃじゃない!みんな生きてるのよ!あんたたちと同じに!」
叫ぶ。
小学生達は笑い出す。
小学生A「ゲゲッ」
小学生B「クッセー」
小学生C「マジかよォ!」
佐天は手をはたき、初春の元へ戻ろうと、小学生達に背を向けた。
小学生A「おい……」
小学生達は顔を見合わせる。
手には先ほどまで、猫に当てようとしていた石が握られている。
小学生B「へへ」
小学生A「せーのっ!」
初春「あぶない!」
とっさに初春が叫ぶ。
佐天に向かって、三つの石が向かう。
しかしその石が、佐天に怪我をさせる事も、ましてや当たるということもなかった。
佐天は右手だけで、背後からの三つの石を順番にキャッチしてしまったのだ。
初春の目が輝く。
初春「佐天さん……かっこいい……」
佐天「……」
佐天はしばらく地面を見つめてから、小学生を睨んだ。
感情の感じられない、冷たい瞳でだ。
食ってやろうか……
小学生達は、胸に大きな風穴を通されたように、一瞬にして体が冷やされる。
佐天「行こっか」
佐天は、初春と共に公園を出た。
小学生A「お……おい、いま……」
小学生C「き……気のせいだよ……」
残された小学生達は、季節外れにも顔を真っ青にしていた。
佐天と初春はおしゃべりをしながら帰路を歩く。
ふざけて、二人で手を繋いでいる。
初春「……」
手を繋いですぐ、初春は怪訝そうな顔をして、佐天の右手を見つめた。
すぐに佐天は位置を変えて、自分の左手で初春と手を繋いだ。
「佐天さん」
「ん?」
「あなたは……佐天涙子さん……だよね?」
「うん……もちろん」
投下終了!
小学生は、佐天さんにハートを撃ち抜かれてしまったのさ……俺のように
むぎのんは別に台詞のそのままでも違和感ない
>>212 ありがとうございます!次の投下からやってみます!なんかピー君がいなくなるんですよね!めんどくさくて忘れてたぜ!
なかなか投下できなくてごめんね。投下します。
ある会議室。
??「どうやら、麦野がやられたみたいなの」
ホワイトボードの前で、リーダー格の少女が話す。
会議室には数十人程度の、なんの統一性もない老若男女がいた。
彼等は思い思いの場所方向に椅子を置き、ただ座っているのだ。
そして、彼等の頭は変形している。
「アイツは少々勉強不足だったからな」
「ここの事を教える前でよかった……麦野なら喋りかねない」
口々に彼等は発言をする。
上条「麦野を殺した奴は、右腕だけが寄生されているんだろ?……なかなか興味深い」
??「珍しいケースなの」
『上条当麻』の言葉にリーダー格の少女が反応をする。
??「だから、接触を図ってみる事にするの」
上条「お前なら、心配はないだろう」
??「『T・L』との事で意見を聞きたいから、上条にも接触をしてもらう事になるの」
上条「そうか……いつだ?」
??「明日の午後5時ごろ、遅刻しちゃ駄目なの」
上条「気をつける」
*
その日広場にいた人々は、いきなり出現した最初の動物にすっかり度肝を抜かれ、二番目の生き物の存在には、ほとんど気がつかなかった。
広場で、人々はいつも通りの、思い思いの行動をしていた。
ふと、気付く。
日常に、非日常が混在していると。
「うわあああああ!!」
「きゃ~~~~~っ!」
あまりにも突然すぎた。人々は叫び声を上げる。
獣だ。獣がいる。それも、百獣の王。
ライオン「グオオオオン!!」
突然のライオンの出現に、逃げ惑う人々。
通行人「え……これ本物……?」
突然の事に、状況が飲み込めていない者もいた。
ただ突っ立っているだけの通行人に、ライオンは飛び掛る。
ライオン「ガウッ!!」
通行人「はえ!?」
ズザッ、
通行人の首に、ライオンは齧りつく。通行人は最後まで状況がわからず突っ立ったまま死んだ。
このライオンは野生の心を持っていない。
ずっと人間に飼われ育った彼は、人間を少しも恐れなかった。
ライオンは人間を追い掛ける。
別に空腹というわけではない。
ただ殺したいから[ピーーー]。
通行人B「あっ、ああああっ!」
通行人C「おいこっち!早く車に乗れ!」
――そうか、おれの牙やツメはこのためにあったのだ。
ライオンは牙で人間を齧る、ツメで引き裂く。
広場に上がる血飛沫、断末魔。
――それにしても、なんてヤワで壊れやすい生き物だろう。
通行人D「警察はまだかよ!警察はァ!」
――こんなやつらにおれは支配されていたのか。
彼はやがて駆けつける警察か、あるいはハンターたちによってハチの巣にされる運命だろう。
しかし、そんなことは知るはずもない。
始めて見る世界を自分の足で歩く……
数時間前にオリを破って以来この地点まで約2キロメートル、彼は無敵であったのだ。
通行人E「ひっ」
生まれて初めての狩り。
ズシャッ、ゴトッ。
――強い……そうだおれは強い!
??「これはどういうことだ……?」
ある女性が、ライオンに近づく。
ライオン「ガルッ」
すぐにライオンは女性に気付き、唸り声を上げる。
??「ライオンがこんな場所に生息しているわけはない……人間に飼育されていたものが逃げ出したのか」
女性は眉一つも動かさず、ただ無表情で淡々と話す。
――なんだ?なぜ、こいつはおれを恐れない……
ライオンと、女性が向かい合う。
通行人C「おっおい!あの女イカれてるぜ!!」
ライオン「グッ……」
ライオンが女性を威嚇する。が、やはり女性は無表情。
ライオンが気付く。
――ちがう!……これは別の生き物だ!
――これまでの獲物と同じにおい……でも別の生き物だ。
女性から、違う『なにか』が見える。
――おれよりも強い……!?
女性が右手を上げると、ライオンは大きく体をしならせる。驚いている。
??「強い恐怖心だ……哺乳類はみんな“痛がり屋”だな」
そう言うと、女性は立ち去ろうとする。
ライオン「グルル……」
ライオンは唸る。
このライオンは生まれつきのペットだった。
せっかく自らに芽生えかけた『野生の直感』を信ずる事ができなかった。
ライオンは背中を向ける女性に向かって、走り出す。
――正体はわからんがヤツには武器がない!俺の持つ牙やツメがない!
ライオン「ガウッ!!」
ライオンは高く飛び上がる。
女性の“頭だけ”が振り返る。
顔に六つの切れ込みが入り、開かれる。
ライオンは女性の頭を噛み砕こうとする。
女性の頭は一瞬にして六つの鋭い刃物が連なった姿に変わり、
バアアアアアアアアアアアン!!
ジューサーのようにライオンの頭を粉々に砕いた。
ライオンの死体は、そのまま血が溢れ出る音を出しながら地面に倒れる。
ライオンが死ぬと、今まで隠れていた人々が出てきて、ライオンの死体にうじゃうじゃと近づく。
一体何が起きたのか、多くの目撃者がいたのにもかかわらず、真実を正確に理解したものは一人もいなかった……
通行人B「おの女の頭がたしかにこう……」
通行人C「気のせいだよ。ハハまさか……」
女性はスカートのポケットからハンカチを取り出し、顔に付いた返り血を拭き取る。
そうしながら女性は足早に去り。
その場にいた人間達は最終的にこう、判断した。
「あの女が何か爆発物をライオンに投げつけたのだろう……」と。
*
女子の体育の先生が今日は休みだったから、今日の体育は男子と合同だ。
といっても、男子の体育は野球だから、女子は自習という名の見学をしているだけだった。
佐天「はぁー……退屈」
初春「そうですねー」
ボーと男子が野球をしている姿を見ながら、初春と適当なお喋りをする。
先生「おい佐天!お前は野球できるだろ?次のバッターはお前がやれ」
佐天「えぇっ!?私ィ!?」
先生「田中が休みなんだ」
佐天「えぇ~」
初春「佐天さん頑張ってください!」
しぶしぶバットを手に取り、位置に着く。
佐天(やるっきゃないか……)
ピッチャーがボールを投げる。
佐天(いっけぇっ!!)
バットを振りかぶる。
ボールと、バットが接触をし……
カッキィンッ!!
小気味の良い音が鳴り響く。
ボールは綺麗な放物線を描いて、コートの外にまで飛んでいった。
男子「ホ、ホームラン……だと」
女子達が歓声を上げる。
アケミ「ルイコすっごいじゃん!!」
マコちん「やったー!!」
自分でもすごいと思っている。
佐天(私って、こんなに野球上手だったっけ……?)
初春「佐天さん!かっこいいです!」
初春がはしゃいだ様子で手を振る。
佐天「にひひっ」
初春にピースサインをする。
偶然でもホームランはうれしい。
男子「ちっ」
先生「佐天!お前は試合を続けていろ!」
佐天「えっ!?先生、今のはまぐれ……」
先生「やれ!!」
その後、バッターとピッチャーの両方で、私は大変良い成績を出してしまった。
初春「佐天さん!すごいですね!本当に、とにかくすごいです!」
佐天「ははっ、今日はたまたま調子が良かっただけだよ」
男子(くそっ佐天のヤツ!)
今日の体育用具の片付けは私と初春、そしてアケミ達だった。
アケミ「じゃあ、私とルイコは向こうのボールを拾い集めるから」
片付けの途中、おもむろにボールを遠くにあるボール入れに投げてみた。後ろ向き、右手だ。
ボールは先ほどのように綺麗な放物線を描き、あっさりとボール入れに入った。
佐天「どうみてもこれは、偶然じゃないよね……」
片づけを終えた後、私は校庭にある大きな木の後ろに隠れ、ミギーに話し掛けた。
佐天「ちょっとミギー!起きてんでしょ!?」
*
男子「……いっけね、忘れ物」
ある男子生徒は、教室で忘れ物に気付いた。
おそらく先ほどの体育の授業の時に忘れたのだろう。
野球部でもない女子がホームランを打ち出したのを苦々しく思いながらも、校庭に向かう。
男子「えーと、確かここらに……」
木陰の辺りを探す。
忘れ物を見つける前に、男子生徒はある女子生徒を見つける。
男子「あれは、佐天……」
紛れもなく、先ほどの野球部でもないのにホームランを打ち出した女子だ。
佐天は何かぶつぶつと話している。
佐天「……だからよけいなことしなくていいの。これは遊びなんだから……目的なんかないの!」
佐天「たしかにあんたから見たら無駄な事かもしれないけど……」
*
佐天「あーあ、こっちも疲れちゃった」
男子「おい佐天!」
背後から、いきなり話し掛けられる。
佐天「!! な、なに、居たの古谷……?」
一瞬、取り乱しそうになった。
古谷「お前さっきから、何ひとりでしゃべってんだよ。口説きのリハーサルか?」
ミギーと会話しているところを見られてしまったけど、ミギーの事は見ていないようだし、感づいてもいないようだ。
佐天「さあて、着替えて帰ろっと」
古谷を無視して教室に戻ろうとすると、腕を掴まれる。
古谷「まてよ」
古谷「初春飾利……俺があの子のこと、ずっと思ってんのは知ってんだろ……」
佐天「えっ、そうなの?」
突然の発言に、戸惑う。
ミギー『興味深い。この男は、ウイハルと交尾したいようだ』
耳元でミギーが呟く。
黙れという気持ちを込めて、ミギーを抓った。
佐天「もう、だから何よ?お前のために初春を紹介しろとでも?」
古谷は黙って、横を見ている。何かを考えているようだ。
佐天「……」
ふと、右手に違和感を感じた。
佐天(あれ、この感じは前にも……)
おそるおそる、右手を見てみると……
佐天「いっいっ……いやあああああああああああああああっ!!!」
私の右手がなんと、男性の……男性の……!
男性の、生殖器に……!
古谷「どうした!?」
古谷がこちらを見る。
右手はもう元に戻っている。
佐天「な、なんでもない!なんでもないから!」
古谷「今さら良心の呵責か!?」
佐天「だからあんたはなんなのよ!」
古谷「知ってんだぞ!お前がレズだって!」
ただでさえ、混乱している中、古谷の発言によって頭の中が真っ白になっていた。
佐天「はっ、はあぁっ!?」
人間の言葉が上手く話せない状態だ。
古谷「だからいつも……いつも!」
古谷は私の肩を掴むと、がしがしと揺らしてきた。
佐天「ちょっ、やめてよ!痛い!」
佐天(あああああぁあああ!!もう!もう!もう!かんべんしてよ!こいつ、前から変なやつとは思ってたけど、ここまでぶっキレた青春野郎だったとは……!)
むりやり古谷を引き剥がした。
佐天「いい加減にしてよ!」
大声で怒鳴る。
爆発寸前だ。目の前の古谷を引き裂いてしまうかもしれない。
が、私が怒鳴ると同時に、私の右腕が勢い良くしなり、サンドバックのように古谷の顎を殴り上げていた。
古谷が地面に倒れる。
佐天「はは、今すごい音したよね……」
頭を抱えた。
足元には古谷が転がっている。
佐天「ミギーのバカ!バカ!バカ!なんでバカみたいな行動を立て続けに……!」
ミギーに向かって怒鳴ると、
ミギー「バカ?」
ミギー「『バカ』という言葉は。自分よりバカな相手に使うべきだ」
佐天「論点はそこじゃなーい!!」
ミギーはいつも通りの様子で、淡々と話す。
ミギー「人間の生殖行動に興味があった。フルヤはウイハルと交尾したい気持ちがありながらアピールのしかたがやたら遠まわしだ。その上思考回路が鈍い。だから……」
佐天「やかましい!私たちはイヌじゃない!なによ!私がダイエット中だから機嫌悪いの!?殺していないでしょうね!」
ミギー「そんなに強くやるわけないだろ……でも一応アゴにさわってみろ。砕けてるかもしれん……」
佐天「かんべんしてよォ~!!」
古谷「う……う~ん……」
古谷が唸り声を上げる。
佐天「よかった……死んでない……」
古谷は私を見るなり取り乱す。
古谷「す、すいませんでしたぁー!!」
そう言うと、古谷は走り去ってしまった。
異常なおびえ方である。
佐天「あ!まさかあんたの目ン玉ヅラ見られちゃったんじゃない!?」
ミギー「そんなはずはない。あいつは……よっぽど痛がり屋なんだろう……」
投下終了です。
古谷、彼が始めて人間で寄生獣から本人のまま出てきました。
うぎゃぁ、すげえ文句言われちゃった。
すいません、はっきり言うと早く田宮良子の部分書きたいからめっちゃ急いで書いていました。
学園都市に警察いない事くらいは知ってるよ!
投下します。
放課後、私は図書館に寄り道をしてミギーのために本を借りる。
ミギー『佐天、あれ全部借りたい』
佐天「無理」
つい先ほどは古谷とミギーのせいで酷い目に遭った。その上初春は風紀委員。最近ついていない気がする。
職員「佐天さん、最近よく本を借りていくわね」
佐天「あはは……」
こうやって図書館に毎日のように通っていると、図書館の職員に名前を覚えられてしまっていた。
佐天(べつに私が読むわけじゃないんだけどね)
寮に帰ると、早速ミギーは先ほど借りた本を開いて勉強を始めた。
今日借りてきた本は地球環境や大気汚染に関する本だ。
私はベッドに寝転がり、漫画を読み始める。
佐天「ミギーって、ほんと勉強が好きだよね」
返事がない。集中してるみたいだ。
佐天「そうだ!その調子で受験勉強もやってよ!そうすれば高校受験もラクだよね」
ミギー「……」
ミギーは一旦間を置いてから、こちらを向く。
ミギー「受験勉強?おれは一種の暗号だろ?わたしがほしいのは生きるうえで役立つ知識だ……」
佐天「これだよォ……」
ミギー「佐天は漫画を読んでいる時間の三分の一でも、能力開発に費やすべきだ」
佐天「その話は聞きたくなーい!はー、やだやだ!今に『佐天涙子は頭より右手の方が頭いい』ってことになっちゃうよ」
佐天(そうか……ミギー達は学習しながらどんどん利口になっていくんだ……)
思えば、ミギーは始めて会ったときよりもずっと頭も良くなり、言葉も流暢になっている(常識の方はまだまだだけど)
佐天「ミギー、そろそろ夕ご飯食べに食堂行くよ」
ミギー「いつもの寮母が帰ってきたのか?」
佐天「そ、やっとおいしいご飯が食べられるよ」
ミギー「このぺージを読み終わってからにしてくれ」
ミギ――私の右手を乗っ取った寄生生物。彼の仲間は世界中にいるらしい。
その数まではわからないけど、ともかくここ最近の間にいっせいに現れだした。
少しだけ、頭の中を整理してみた。
生物の特徴は……はじめにヘビのようなやつが人の体に侵入して……脳を奪う。
次に首から上と同化して全身を操る。つまり頭がすげ替わる。
ちょっと見ると人間だけど自由に変形して、ゴムのように伸びたり、鉄のように硬くもなれる。そして大変な怪力……
寄生部分全体が『脳』であり、『眼』であり『触覚』なのだ。
ところがどっこい、こんなにすごい力を持っているけど、内臓や消化器官は人間のものを拝借しなければ生きていけない。
つまりどうあがいても“寄生”生物で、胴から切り離されるとすぐ死んでしまう。
でも……わからないのはそいつらの食べ物。
佐天(なぜ、人間を食べるのか……まるでとも食いだよ)
そいつらの犠牲になった人間の死体はいつもめちゃめちゃで、世間では正体がつかめず『ひき肉殺人』と呼ばれている。
前に一度聞いてみた……
*
ある日の昼の事だ。
学校が午前で終わり、私はファーストフード店で昼食を摂っていた。
店の中は店員と私の二人きりで、店員は厨房で皿洗いをしている。
佐天「ねえミギー、なんてあなたの仲間は共食いみたいなことをするの?」
ミギー「さあね……わたしは直接きみの血液から養分をもらっているので、食欲というものを知らん」
佐天「あっそ」
もぐもぐとハンバーガーをむさぼっていると、ミギーの視線を感じる。
ミギー「うまいのかい?それ……」
ミギーが味に関する質問をするのが、なんだかおかしかった。
*
ミギーはドジを踏んで、私の脳を奪えず右手に居座ってしまったという珍しい例だけど、それでも私の内臓に頼らざるえないため、今はなんとも妙な関係になっている。
右手に寄生しているから、名前は『ミギー』左手に寄生したらきっと『ヒダリー』だ。
時計を見ると、もう夕食が出来上がっている時間のはず。
ベッドから起き上がり部屋から出ようとするが、まだミギーは本に齧りついている。
佐天「ねえ、早くご飯食べよう。冷たいご飯は嫌だ」
ミギ「ん……」
ミギーが動き出す気配がないので、無理矢理引っ張った。
なにかが落ちる音がしたけど、知らない。
寮母「久しぶりねえ涙子ちゃん!今夜はごちそうだよ!」
佐天「やったー!今夜はトンカツだ!」
ミギーが完全に眠ると、普通に動くただの『右腕』になる。
あの時、もしミギーに脳を奪われていたら、たぶんこの寮にいる人間が最初の餌食だっただろう。
私の住んでいる学生寮は小さな所で、学生の収容数が少ない。もしかしたら全員食べられててもおかしくない。
食堂にあるニュースは『ひき肉殺人』についてを放送していた。
チャンネルを変えたけど、どの番組も同じような内容だった。
学生1「もう84人目かぁー。ここ最近、学園都市だけでだよォ。信じられないよねー」
学生2「なにを聞いても驚かなくなっちゃうよ」
寄生生物に食われた人間のズタズタ死体(食べかす)が、いま世界中をふるえ上がらせている。
発生し始めたころは猛獣説、変質者説が言われていたけど、犠牲者数の異常さや世界中に広がる発生場所、犯人が一人も捕まっていないことなどから、今では悪魔的・狂信的集団の組織犯罪説が有力になってきている。
佐天(真相を知っている人物……それはひょっとしたら、世界で私一人なのかもしれない……)
食事を終えて、お風呂に入り、ベッドに入る。
佐天「なんか……いやになっちゃうな」
寝ようとしたときに、思わず呟いた。
ミギー「何が?」
佐天「何でもないよ……」
すぐに朝がやってきた。
いつものように学校へ行く準備をして、初春との待ち合わせ場所に向かう。
初春「佐天さん、おはようございます!」
佐天「おはっよー初春!」
いつものように初春と学校へ向かう。
初春「佐天さん、最近変わりましたね」
佐天「え?私が?この前もそんなこと言ってたよね」
初春「また変わりましたよ」
佐天「初春ったら、あんまり観察されると恥ずかしいよぉ……」
初春の言葉に、心臓が一瞬だけ跳ね上がっていた。
初春の言葉はいちいちドキッとするのだ……もしかしたらのんびりしているように見えて、意外とカンが鋭いのかもしれない。
ヘタすれば右手の事まで感づいてしまいそうだ。
初春「佐天さん、また明るくなりましたよ」
佐天「そう?」
ミギー『サテン』
佐天「!?」
ミギーが突然話し掛ける。
ミギー『今から話すぞ、黙って聞け』
佐天『朝から何?』
小声でミギーに応じる。
初春「佐天さん?」
佐天「な、なんでもないよ!」
ミギー『わたしの『仲間』がいるんだ』
佐天『また……』
ミギー『だんだん近づいている』
寄生生物のもう一つの特徴、それは『同類』の存在を感じ取る能力。
半径訳300メートル以内に寄生生物がいる場合、その脳波のようなものを感じ取るのだという。
佐天『でも、この近くじゃひき肉殺人は起きてないよ……?』
ミギー『死体が見つかってないだけかもしれないさ』
ミギー『相手までの距離は約60メートル……この建物の中だ』
この建物?
目の前にある建物を見る。
私の通う学校がある。
佐天「まさか……」
学校……!?
初春「どうしたんですか?突然立ち止まって?」
佐天「あ、その……」
初春「ほら、早く行きましょうよ佐天さん!」
初春にひきずられるように、校舎の中に入る。
今日は運が良いのか悪いのか、朝会があり、体育館に生徒全員と教師が集められる。
体育館シューズに履き替えて体育館に入る。
中は人でごった返している。
佐天(どこに……?一体だれが……!?)
男か、女か……キョロキョロと辺りを見渡してみるが、それらしき物は見つからない。
佐天『ミギー!距離は?』
ミギー『約30メートル、まちがいなくこの中だ』
佐天(あぁ、もう!)
ミギー『あせるな、こうゴチャゴチャしていれば相手もこっちがわからないはずだ。それに……』
ミギー『こんな大勢いる前で戦いをしかけてくるほどバカでもないだろう』
クラスごとに整列をして、朝会が始まる。
ミギー『左斜め前約25メートルのところにいる。列から飛び出る……』
壇上を見る、まだ壇上には校長先生しかいない。
ミギー『むこうも今こっちを捜している。しかしこの人数のおかげでただ一人を特定できずにいるようだ……』
ミギー『眼をあわせるな!見つかるぞ!』
ミギーに言われ、下を向く。
校長「えー、今日からわが校に新しい生徒が入る事になりました」
体育館がざわつく。
佐天(転校生……)
思わず顔を上げる。
ミギー『ヤツだ!見るなサテン!』
壇上には小柄な少女が立っている。ショートカットで、少し子供っぽい髪形をしている。
彼女が転校生みたいだ。
一瞬の間だった。
今まで普通に前を向いて立っていた少女が、突然、眼を見開いて私の方へ視線を動かす。
一瞬の間だった。
私も、眼を見開いていた。
目が、合った……!
佐天(間違いない……あの子が……)
転校生の少女は、わずかに表情を変える。
校長「転校生の春上衿衣さんです。春上さんは1年2組に編入します」
私のクラスだった。
生徒「おい、こっちの方見てるぜ……」
生徒「やったー!同じクラスだ!」
生徒「けっこうかわいいじゃん」
佐天(見つかった……)
投下終了です。
投下します
ムカムカとした気持ちを抱えながら、私は急いで教室へ戻った。
佐天(あの子……笑っていた)
ぞくぞくと、寒気が走った。
見つめ合っていれば、嫌でもわかってしまうのだ。
春上衿衣の目は、おおよそ人間のする目ではない……と。
教室の中にはまだ誰もいない。私一人だ。
ミギー「あんなヤツがいるとは驚きだ!脳を奪っておきながらその人間固有の身分を失わず、そのまま引き継ぐとは!よくバレずにいたものだ!」
ミギーが興奮している。
佐天「あんまり大きな声出さないでよ……」
教室の外からぱたぱたと足音が聞こえてきた。すぐにミギーが人間の手の形になる。
初春「佐天さん!先に戻ってたんですね」
佐天「あー、うん。なんか人の多いところ嫌で」
初春「時々そうなりますよねー」
ルンルンと鼻歌を歌いながら、初春は自分の席に着く。
佐天「なんか良い事でもあったの?」
初春「言わせないでくださいよ!転校生ですよ佐天さん!」
佐天「あぁ、そか」
初春「なんだか反応薄いですね……」
初春が僅かに頬っぺたを膨らませる。かわいい。
初春「まあいいです!そんな佐天さんに驚きの新事実を教えちゃいます!」
佐天「新事実?」
初春が満面の笑みを浮かべる。
初春「実は転校生の春上さんは、私と同じ寮の!私と同じ部屋になるんです!」
佐天「……え」
耳を疑った。視界がぐらつく。それでも初春に気付かれないよう、表情だけは平常でいた。
初春「ずっと一人で寂しかったので、すっごくうれしいですー」
佐天「よかったじゃん……その、私、トイレ行って来るからっ!」
席から立ち上がり、トイレの個室へ駆け込んだ。
佐天「ミギー!なんとかしなくちゃ!」
ミギー「『なんとかしなくちゃ』とは?」
佐天「春上衿衣が初春と同室になるんだよ!初春が危ない!食べられちゃうかも!」
ミギー「落ち着けサテン。ヤツは人間社会に溶け込もうとしている。少なくとも社会生活に直接かかわるような人間は食料にしないだろう」
佐天「そんな証明どこにもないよ……」
ミギー「とにかく、相手が何か行動を起こすまでは様子見だ。近いうちに接触してくるんじゃないか?」
始業のチャイムが鳴った。
ミギー「サテン、教室に戻った方が良い」
佐天「……うん」
教室ではもう授業が始まっていた。
先生「どうしたんだ佐天?」
佐天「ごめんなさい、ちょっと気分が悪くて……」
先生「少し顔色が悪いな、保健室に行くか?」
佐天「いえ、いいです」
急いで席に座って、教科書とノートを鞄から取り出した。
初春「佐天さん、本当に大丈夫ですか?」
初春が小声で話し掛けてくる。
佐天「うん、全然平気」
無理矢理笑ってみせたが、ちゃんと笑えていただろうか。
黒板の字をノートにとるフリをして、こっそり最後尾の席に座る春上衿衣を見た。
教科書とノートを開き、普通に授業を受けている。
先生「えー、春上。前の学校ではこの部分は習ったか?」
春上「はいなの。授業の進行は同じくらいだったの」
先生「そうか、なら問題ないな」
その日一日は何事もなく終わり、放課後になった。
初春「佐天さん。これから私の部屋に遊びに来ませんか?」
佐天「今日は風紀委員の仕事が休みなの?」
初春「はい!春上さんに、白井さんと御坂さんを紹介したいですし」
いつの間に仲良くなったのだろうか、初春の隣りには春上衿衣が立っている。
佐天「わかった、私も行く」
初春「やったー!」
春上衿衣と見た。至って普通の少女にしか見えない。
初春「あ、二人はまだ自己紹介がまだでしたっけ。春上さん、彼女が私の親友の佐天さんです!」
佐天「……初春の親友をやらせてもらってます、佐天涙子です。よろしくね」
いつものように笑えている自信がない。
春上「春上衿衣なの、よろしくなの」
春上衿衣が右腕を差し出した。
佐天(……握手?)
困惑しながらも、私も右腕を出し、握手をする。
春上「……やはりか」
春上衿衣が私の右腕に向って言う。
佐天「!?」
思わず手を引っ込めた。
初春「二人とも、どうしたんですか?」
初春が小首をかしげる。
佐天・春上「「なんでもない(の)」」
初春「わっ、ハモった!二人とも息ぴったりですね!」
佐天(右腕のこと、気付かれた……?)
春上「初春さんのお友達に会えるの、とっても楽しみなの」
初春「二人ともとっても良い人なんですよ!それでは寮へ行きましょう!」
投下終了です。短めでサーセン。
投下します
女子中学生は国宝
寮の初春の部屋の前まで行くと、すでに御坂さんと白井さんがドアの前で待っていた。
初春「御坂さん白井さん、ごめんなさい。待たせてしまって」
白井「別にこれぐらいかまいませんの。そちらの方が春上さん?」
御坂さんと白井さんが春上衿衣を見つめる。
春上衿衣はとくに緊張した様子もなく、
春上「春上衿衣です。よろしくなの。二人の事は初春さんから聞いてるの」
白井「私が白井黒子ですの、よろしくですの」
御坂「御坂美琴よ。1年先輩だけど、別に敬語とかいらないから」
春上「……」
御坂美琴という名前を聞いた途端に、春上衿衣は御坂さんを見つめた。
佐天(何を考えているの……?)
御坂「……なに?」
御坂さんは僅かにたじろいだ様子になる。
春上「あなたは学園都市第三位の超能力者……超電磁砲なの?」
御坂「そ、そうだけど……何か?」
御坂さんがわずかに恥ずかしそうな素振りを見せる。
春上「……なんでもないの」
初春「立ち話もアレですし、中に入りましょうか!」
初春が玄関のドアを開ける。
初春「ここが春上さんの部屋ですよ!」
初春の部屋に入るのは結構久しぶりだ。
佐天(初春の匂いがする……)
初春「すぐに飲み物とお菓子を用意しますから、適当なところに座っててください」
初春は台所へ行き、私たちはテーブルの周りに座る。
佐天「御坂さんと白井さんに会うのって、久しぶりですよね」
白井「ええ、そうですわね。ここ最近は風紀委員の仕事が多忙で……」
御坂「そういえば、今日の夜に風紀委員と警備員の合同会議があるんでしょ?ちゃんと寮監に伝えたの?」
白井「わっ……忘れてましたのぉおおお!!」
頭を抱えながら、白井さんは床をゴロゴロと転がる。
佐天「あはは、白井さん何してるの?」
春上「白井さんはとても愉快な人なの」
初春「白井さん。あまりおかしな行動はしすぎないで下さいよ」
白井「なんですかそれは!まるで私がいつもおかしな行動してるみたいな言い方ですの!」
白井さんが初春のほっぺたを引っ張る。
初春「いたいいたい!いたいれふ!」
御坂「黒子、ちょっとひっぱりすぎ……」
ピンポーン。
白井「ん?誰ですの?」
突然インターフォンが鳴り、白井さんが初春のほっぺから手を離す。
初春「死ぬかと思いました……」
真っ赤になったほっぺを撫でながら、初春は玄関のドアを開ける。
業者「こんにちは!引越し業者の者です!荷物をお届けに参りました!」
玄関には青い作業着を着た引越し業者達。その隣りには積み上げられたダンボール。
業者「今回は家の前までとの注文でしたので、これで失礼します」
初春「春上さんの荷物が届きましたね白井さん!」
白井さんに満面の笑みを向ける初春。いつもなら天使に見える初春の笑顔が、悪魔に見える。
白井「まさか初春。最初からそのつもりでしたのね!」
初春「そんなことないですぉー」
白井「初春!後で覚えているんですの!」
白井さんがダンボールに手をかざすと、あっという間にそれが春上さんの部屋の中に瞬間移動をする。
もし初春の荷物なら、白井さんはやらなかったかもしれない。
初春「ありがとうございます白井さん!後でクレープ奢りますから!」
白井「今ですの!皆さん!引越しもすんだ事ですし、今からクレープを食べに行きますの!」
佐天「さんせーい!私も行く!」
御坂「そういえばあそこのクレープ屋、今期間限定の味があるみたい」
春上「クレープ?」
春上衿衣はクレープの事を知らないようだ。
佐天「お菓子の事だよ」
春上「……そうか」
春上衿衣はかなり常識をわきまえてはいるが、クレープなどの、生きるうえで必要のない知識には疎いのかもしれない。
佐天(食べ方……ちょっとぎこちない)
春上衿衣のクレープを食べる姿は少し危なっかしかった。
クレープを自分の顔に押し付けて、もぐもぐと小さい口を必死に動かして食べる姿は、何かの小動物みたいだ。クレープのクリームは偏ってしまい、下部分から今にも溢れ出しそうである。しかも手と顔はクリームでべたべただ。
初春「春上さん、食べ方がうさぎさんみたいでかわいいです……」
白井「私も少しそう思っていたんですの……」
佐天「これで顔と手を拭いて」
春上衿衣にウェットティッシュを渡した。
春上「ん、ありがとうなの」
佐天「おいしい?」
春上「……わからない」
佐天「……」
クレープを食べ終わった後、少しおしゃべりをしてから初春と白井さんは風紀委員と警備員の合同会議に行ってしまった。どうやらひき肉事件についての話しみたいだ。
佐天「御坂さんは、これから予定ありますか?」
御坂「……」
佐天「御坂さん?」
御坂さんはボーとした様子で、どこかを見つめていた。
御坂さんの見つめる方向には、なぜか清掃ロボに追いかけられているごく普通の男子高校生。あえて言うなら、ツンツンとした特徴的な髪形をしているくらいだろう。
御坂「……ごめん、ちょっと待ってて」
ベンチから立ち上がり、ゆっくりとした足取りで御坂さんは男子高校生のほうへ向う。
春上「……」
春上衿衣の目が冷たい。
御坂さんが男子高校生を追い掛ける清掃ロボに触れると、清掃ロボは動きを止め、いつも通りにそこらをすいすいと進みだした。
御坂「あの清掃ロボ、少し故障してたみたい」
パチパチッ。わずかに御坂さんの手から電流が流れ出す。
上条「恩に着る」
そのまま立ち去ろうとする男子高校生を、御坂さんは止めた。
御坂「……まだ怒ってるの?」
不安そうな声音をしている。
上条「何のことやら」
御坂「やっぱり怒ってる……」
上条「……なんなんだコイツは」
男子高校生は、感情の篭っていない目で御坂さんを見る。
佐天(まさかあの男……)
春上衿衣が携帯電話を取り出し、何か操作を始める。
同時に、男子高校生の持っている携帯電話が鳴る。
上条「なんだ?」
すぐに男子高校生が電話に出て、春上衿衣も携帯電話を耳にあてる。
春上「ボロが出る前に、早く立ち去れ」
電話越しに、二人が会話している。
上条『あぁ、わかってる』
春上「お前の右手は少々不便になる部分が多いな」
上条『俺は結構気に入っているんだがな』
佐天「……っ」
春上「まぁいい。これから一緒に喫茶店へ行こう」
春上衿衣が電話を切り、何食わぬ顔で立ち上がった。
春上「……行こう。君と詳しく話がしたい」
ミギー「あぁ」
いつの間にかミギーが起きていた。
投下終了。
夏休みなのに学校あるのまじつらい。
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