リト「俺の10年後の姿?」美柑「そんな、これって……」(50)


休日 夕食後の結城家

ナナ「あ、この人、前に観たドラマに出てたな」

美柑「ああー、あの役カッコ良かったよね」

ナナ「え? そうか? 美柑とは趣味が合わないな」

美柑「ええー、残念。ララさんは? 一緒に観てたよね?」

ララ「うーん。役は確かにカッコ良かったけど、俳優がね」

ナナ「そうなんだよ」


美柑「へえー。私はあの俳優けっこう好きだけどなあ。渋くて」

ナナ「いやー、私はゴメンだよ。あんなオヤジくさいの」

美柑「中年だから仕方ないと思うけど……」

ナナ「なんだ、美柑はオヤジ好きか?」

美柑「そういうわけじゃないよ! じゃあナナさんは、あの俳優のどこがそんなに嫌なの」

ナナ「だからオヤジくさいんだって。でもそうだな、もっと言えば……」

美柑「……」ゴクリ

ナナ「あの頭だな」


美柑「頭? ちょっと薄いってこと?」

ナナ「薄いんじゃないよ。ハゲって言うんだよ」

美柑「まあ、確かにちょっとハゲてるけど……。でもそこがまた役に味を持たせてたりするし」

ナナ「俳優としては一流なのかも知れないな。でもハゲって時点で、とてもとても」

美柑「……」

ナナ「カッコイイとは思えないな。なあ、姉上?」

ララ「そうだねー」

美柑「ララさんも!?」

ララ「美柑はハゲ、平気なの?」

美柑「平気っていうか……、それはそれで渋みとか出るっていうか……」

ララ「そっか。美柑はハゲちゃびんが好きなんだね」


美柑「別に特別ハゲが好きなわけじゃ……!」

ララ「いいと思うよ? 好みは人それぞれだからね」

美柑(そういう渋さもあるってことが言いたいのに、なんでここまで否定するんだ……!)

ララ「でも、なんでハゲるんだろうね」

美柑「え、それは……。リトなら男だし知ってるかも。リトー?」テクテク

死んでるのかと思った

>>5
5さんレスありがとうございます。うれしいです。


リト「おー、美柑。どうした?」

美柑「あ、モモさんも。ねえ、二人はどうして頭がハゲるか知ってる?」

モモ「ハゲって、毛が抜けて頭皮が見えちゃう、あれですよね?」

美柑「そうそう」

リト「えーっと、俺は遺伝とか、男性ホルモンのせいだって聞いたけど」

モモ「私が聞いたのも似たような感じですね」

美柑「遺伝とホルモンか……。でも男の人全員がハゲてるわけじゃないよね?」

リト「そうだな」


美柑「じゃあ、男性ホルモンって、どうするといっぱい出てくるの?」

モモ「それはもちろん、オナn……」ムグッ

リト「ホルモンの量にも、個人差があるんだよきっと。遺伝っていうのも、そこに関係してるのかもなー」ハハハ

美柑「ふーん、要は遺伝か……」

リト「納得いったか?」

美柑「うん! ありがとー」テクテク


リト「モモ! 美柑に変なこと教えるなよ!」

モモ「アハハ、ごめんなさい」

リト「でもなんで急にハゲなんかについて聞いてきたんだ?」

モモ「あれじゃないですか?」

美柑「だから、私はそういう渋さもあるって言ってるだけで」

ナナ「いやいや、ハゲはハゲ。渋いとかじゃないんだよ」

ララ「まあまあ、ナナもそこまで言わなくても」

リト「なるほど」


モモ「正直、私もハゲてる殿方はちょっと……」

リト「そうなんだ?」

モモ「というか、ハゲてる殿方って、デビルークではけっこう嫌われるんですよ」

リト「へえー」

モモ「地球にはハゲてる殿方が多くて、ビックリしました」

リト「それは知らなかった」

モモ「ハゲてる殿方は、デビルークの男性からも女性からも嫌われます」

リト「男からもか」

モモ「だからハゲてる殿方は……。あの、面倒なので、略して『ハゲ殿』でもいいですか?」

リト「本当にいそうだからやめて」


ナナ「いやいやいや!!! だからありえないって美柑」

美柑「もー、頑なだなあー」

リト「まだ話してるな」

モモ「そうですね」

リト「分かり合えないことってあるんだなー」アハハ

モモ「そうみたいですね」フフフ


リト「でも、普段から思ってたけど、やっぱり美柑って大人びてるよなあ」

モモ「そうですね。容姿こそ年相応ですけど、中身が小学生とは思えません」

リト「落ち着いてるし、聞いてると好みも渋いみたいだし、大人になったら、どんなになるんだろう」

モモ「美柑さんですもの。それはもう、落ち着きと品のある美人になること請け合いですっ」

リト「やっぱりそうかな」ヘヘヘ

モモ「あるいは、人格だけでなく、実は容姿もすでに完成形で、大人になってもあのままという可能性も……」

リト「ないよ!」

ナナ「美柑の中年好き~」ベロベロバァ

美柑「だから違うってばー!!!」

モモ「でも、こうやってたまに見せる子供っぽいところが、やっぱりかわいいですね」

リト「そうだな」


モモ「ところでリトさん。先ほどのお話ですが……」

リト「ん? なんだっけ?」

モモ「美柑さんの大人になった姿、見てみたいですか?」

リト「え? ……見られるの?」

続きは夜貼ります。
今日中に終わる予定です。

再開します。


モモ「お姉様、昨日お姉様が作っていらしたもの、使ってみませんか?」

ララ「いいよー。持ってくるねー」

リト「またララの発明品か……」

モモ「今度は大丈夫ですよぉ」

リト「どうだかな……」

ララ「持ってきたよ~」ゴトッ

美柑「なにこれ? なんでパソコンみたいな画面に、カメラが繋がってるの?」

ララ「へへー。名付けて、パシャパシャビジョンくん 3D!」

美柑「どういうものなの?」

ララ「じゃあ実演するね! モモ、誰のが見たいの?」

モモ「リトさんが、美柑さんのを見たいと」ニコッ


美柑「え……?」ゾワッ

ナナ「ケダモノ!また変なこと企んでるな!?」

リト「ええっ!? ちょっとモモ!」

モモ「まあまあ」

ララ「じゃあ美柑、そこに立ってくれる?」

美柑「怪しいなあ……。ここでいい?」


ララ「おっけー。そのままでいてね。まず、このカメラを使います」

美柑「撮るの?」

ララ「カメラのダイヤルを『全身』に合わせて、美柑の全身を撮ります」パシャ

美柑「今撮ったの?」

ララ「次はダイヤルを『顔』に合わせて、美柑の顔をアップで撮ります」パシャ

美柑「顔アップやめて!」

ララ「もう撮っちゃった」


美柑「もー」

ララ「もう座って大丈夫だよ。そしたら、今度は画面を見ててね」

美柑「なにも映らないよ?」

ララ「すぐ映るよ」

ピカッ

美柑「ぎゃあ! 誰これ気持ちわる!」


モモ「おおー」

リト「ほほーん」

ナナ「なあ、なんだこれ!? 美柑にしか見えないのに、なんか大人っぽいぞ!?」

ララ「すごいでしょ! これはね、カメラで撮影した人の10年後の姿が見られる道具なの!」

ナナ「うそ! これが美柑の10年後なのか!?」

ララ「綺麗だねー♪」


美柑「そんな。やめてよ……。恥ずかしいよ」

モモ「どうですか? リトさん」

リト「どうって……」

美柑「……」チラッ

リト「うん、モモの言った通り、落ち着きのある、上品な感じだな」

美柑「~~!///」

リト「それにすごく……」

美柑「……」ドキドキ

リト「その……なんだ。美人、だな」ヘヘヘ

美柑(あああああああ!)カァァ

リト「ヘヘヘ」


美柑(なにこれ! 今『美人』って! 私のこと美人って!)

モモ「リトさん褒め上手ぅー」

美柑(『かわいい』とかじゃなく『美人』って! なんか新鮮で……恥ずかしいっ!)

リト「おい、美柑?」

美柑(落ち着きがあるから美人なのかな。詳しくリトに聞きたい! けど変に思われるかも!)

リト「顔が真っ赤だぞ?」

美柑(大丈夫! さり気なく、落ち着いて聞けばいい! 聞いちゃえ!)

美柑「リっ、リトは、そのっ、10年後のっ、私の、どこがっ、落ち着、おちつっ」ヒューヒュー

リト「落ち着け美柑!」

モモ「過呼吸ですか?」

ナナ「紙袋あるぞー」


美柑「スーハースーハー」

リト「大丈夫か?」

美柑「うん、もう大丈夫」

リト「はぁー、よかった」

美柑「今の私、全然落ち着いてなかったね……」エヘヘ

リト「別にいいじゃん。かわらしい子どもっぽさも必要だって」

美柑(『かわいい』かぁ……。やっぱり今の私にはこっちの方が分相応かも)

リト「どうした?」

美柑「ううん! さて、次は誰の番!? 私の未来だけ見るなんてズルいからね!」


ララ「私はリトのが見たーい!」

モモ「それがいいです! きっと逞しい素敵な殿方に……」ゾクゾク

ナナ「はぁー? こいつのことだから、どーせ妖怪エロガッパみたいになってるよ」

リト「よし! じゃあ美柑、撮ってくれ」

モモ「お、リトさん乗り気ですねー」

リト「だって、自分の10年後なんて、気になるじゃないか」

美柑「じゃあいくよー」パシャ

リト「次は顔だな!」

美柑「撮るよー」パシャ

リト「サンキュー、美柑」

モモ「早く、早く」ジュルル


ピカッ

モモ「きた!大人リトさん!!!」ガシッ

ナナ「ちょっとモモ、見えないって!」

モモ「あら? 妖怪エロガッパが見たいなんて、変わった趣味ね、ナナ」

ナナ「う、うっさい! 早く見せろ!」グイッ

モモ「あ、ちょっと……!」

ララ「うわあ! 大人になったリトだあ!」

ナナ「こ、これが……」カァァ

美柑(か、かっこいい……)

リト「やっぱ恥ずかしいな……」

モモ「はあああああ/// とても魅力的ですリトさん」ゾクゾク

リト「そ、そうかな」テレテレ


ララ「ねえみんな! この道具の名前覚えてる?」

リト「えっと、『パシャパシャビジョンくん 3D』だっけ?」

ララ「そう! さっきは美柑が過呼吸になっちゃって言い忘れたんだけど、未来像を見る角度は色々変えられるの!」

リト「だから3Dなのか!」

ララ「うん! そこのスティックを動かしてみて!」

モモ「私がやりますっ!」ジュルルル

クルリ

モモ「あああ/// 横顔も素敵ですリトさん///」

リト「本当だ、動いた。すごいな」

モモ「次は後ろ姿を・・・!」クルリ

リト「ッ……!!!」


モモ「っ……!?!?!?」

リト「あっ……カハッ……!? ハッ……ハッ!?」

モモ「ハッ……ハゲてる……」

リト「えっ……、あえっ……」

モモ「そんな……」

リト(み、みんなの反応は……!?)チッ...チラッ

ララ「……」ガクガクガク

リト「――っ!?!」

リト(ララのやつ、ガチで引いてる!)


リト(うそだろ……。20代のうちに、俺の頭の後ろが丸くハゲるなんて!)

リト(ナ、ナナは!?)チラッ

ナナ「……だ」

リト「えっ……?」

ナナ「やっぱ妖怪エロガッパだあああ!!!」ブンブン

リト「うわっ、ちょっと危ない! ナナ!」

ナナ「カッパみたいに丸くハゲやがって。わああああああああ」エーンエーン

リト「ちょっとナナ! なにも泣くことないだろ!? なあララ」

ララ「……」ポロポロ

リト「え……? ちょっとお前ら……それはさすがに」

モモ「……リトさん」


リト「あ、モモ、コイツらひどいん……」

モモ「ごめんなさい……。私のせいで……!」シクシク

リト「ちょっとモモ!? お前までどうした!?」

モモ「泣くに決まっているじゃありませんか。私が10年後を見ようなんて言わなければ……」

モモ「私が3Dスティックを回さなければこんなことにはならなかったんです!!」ワァァァン

リト「そんな……。そんなにいけないことなのか……!?」

美柑「リト……」

リト「教えてくれ美柑! 若ハゲって、男としてそんなにダメか!?」

リト「俺だって嫌だけど、でもっ、それは、遺伝とっ グスッ ホルモンのせいでっ……!」グスン

美柑「泣かないでリト……」


リト「だって、俺悪いことしてないのに……。俺だってショックなのに……」

美柑「そうだよね。一番つらいのはリトだよね」

リト「くそっ! なんでだ! オヤジだってまだハゲてないのに! ハゲの遺伝子は持ってないはずなのに!」

美柑「そうだね。リトがハゲ遺伝子を持ってるとは考えにくい。だとしたら考えられる原因は……」

リト「!」ピクッ

美柑「そう。リトが言ったハゲの原因はふたつあった。遺伝子と、……ホルモン」

美柑「遺伝子が原因じゃないなら、残されるのはホルモンだよ、リト」

リト「……」


美柑「私が、どういう時に男性ホルモンが出るのか聞いた時、何か言おうとしたモモさんの口を塞いだよね?」

美柑「リト、教えて。あの時モモさんは何て言おうとしたの?」

リト「それが……。それが俺のハゲの原因だって言いたいわけだな」

美柑「リトがなんでモモさんを止めたのかは知らない! でもリトのためなの! 原因が分かれば、結果だって避けられるよ!」

リト「知りたいか?」

美柑「」コクリ

リト「じゃあ教えてやる!」

リト「それはな!」

リト「オナニーだよ! オナニーーー!!!」


美柑「……へ?」

リト「オナニーすると頭皮の汗と一緒に漢ホルモンが湧き出るんだよ! 知ってたさ! でももう止められねえ!」

リト「だってもう、俺は嫌われたんだ……。あの三人の目は、関係を回復できない目をしてた……」

美柑「リト……」

リト「だから、そんな惨めな俺は、自分で自分を慰めるしかないんだ。こうやって……」チャック ジー

美柑「やめて!!!」ガシッ

リト「はなせ」

美柑「やだ!」

リト「はなせ!」


美柑「じゃあこの手を降ろして!」

リト「……」

美柑「チャックから指を離して、腕を降ろして!」

リト「……」パッ

美柑「ありがとう、リト」ギュッ

リト「……美柑」


美柑「こうしてると、気持ちが安らぐでしょ?」

リト「……うん」

美柑「大丈夫だよ。リトはリトだもん。なんにも心配ないよ」

リト「美柑……ありがとう」

美柑「ふふっ。リト、頭を見せて」

リト「え? どうして……」

美柑「安心して。私を信じて」

リト「わかった……」

美柑(リトの頭……)クンクン


美柑(リト、さっき泣いたからかな? ちょっと汗臭いや)

リト「ちょっと美柑?」

美柑「」チュッ

その時! 結城美柑がキスをしたのは、結城リトのつむじである!
すると! 結城リトの頭からサンランと輝く煙がゴウゴウと湧き出し! 瞬く間に天井を覆ったかと思うと! けたたましい笑い声と共に夜の闇へと消えて行った!
兄妹はただそれを呆然と眺めているだけだった!
しかし! 輝く煙が去った後! たった今目の前で起きた思いもよらぬ恐ろしい出来事を忘れてしまえるほどの大きな安堵感を二人は得たのであった!

美柑「な、なんだったの今の……。ねえリト!」

リト「アレは……、きっと俺の煩悩だ」

美柑「リトの煩悩……?」


リト「うん。人の煩悩は全部で108あるって言われてるけど、その一部、きっとほんの数個が、今俺から出て行ったんだ」

美柑「あんなにたくさんあったのに!? 部屋一杯になっていたよ!?」

リト「人の煩悩は、それだけあるってことなんだろ」

リト「だってさっきの煙が出る前と、ほとんど何も変わらないけど、気持ちの一部分だけはすごくスッキリしてるんだ」

美柑「それが、さっき出ていった、数個の煩悩のせいってこと?」

リト「そうだと思う。それにほら」

美柑「パシャパシャビジョンくん?」

リト「画面を見てみて」

美柑「あ! リトのハゲが治ってる!」


リト「煩悩が消えたから、ホルモンが抑えられたんだ。全部、美柑のおかげだ」

美柑「リト!」

リト「ありがとう美柑!」

美柑「よかったぁ! 放心状態のララさんたちも起こさなきゃ!」

リト「ああ」


ララ「よかったぁぁぁ! リトぉぉぉ!」ギュウッ

リト「ララ! む、胸が! 胸があたって……? るけどなんとも感じない」

モモ「リトさん!」ギュウッ

モモ「ハゲが治ったんですね! よかった!」

ナナ「フ、フンッ。お前なんて、あのままハゲればよかったんだ」

モモ「でもどうやってハゲを治したんですか? 見当もつきません」

リト「美柑のおかげだよ」


モモ「美柑さんが?」

美柑「そうなるの……かな?」

モモ「もう美柑さんには頭が上がりませんね」

リト「みんな、これからは俺より美柑を大事にするんだぞ? 俺がみんなにできることは、所詮一つだけって分かったからな」

美柑「それって消えた煩悩と関係あるの?」

リト「もちろん! 俺に唯一出来ること、それは!」

リト「ハゲないためのオナ禁だけさ!」

醜劇

完結です。
書き込んでくださった方、どのくらいるのか分からないけど読んでくださった方、ありがとうございました。
とらぶるssが好きなので、もっと増えたらいいなと思っています。
ありがとうございました。

感想ありがとうございます。
困った感がありましたか。
ナンセンスな話にしようと思ったのですが、難しいですね。

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