リト「籾岡、付き合ってくれ」里紗「いくら払う?」 (103)
教室
リト「……」
里紗「でさぁ、その男がつまんないやつだったわけ」
未央「それで、どうしたの?」
里紗「フッたに決まってるじゃん。あたしには合わないしぃー」
未央「あはは。どんな人ならあうのー?」
里紗「それはぁー」
リト「籾岡」
里紗「お。どうかしたの?」
リト「ちょっと、いいか?」
里紗「……ふふーん。いいよー。人気のない校舎裏なんてどう?」
未央「おぉ。意外な人選っ」
リト「な、何言ってるんだよ!? 別にそういうのじゃない!! でも、ここでは、ちょっとまずいか……」
里紗「はいはい。てれちゃってぇー」
中庭
里紗「ここだといろんな人に見られちゃうけど、いいのぉ?」スリスリ
リト「は、はなれてくれ!!」
里紗「で、なに? 告白されるってわけじゃなさそうだけど」
リト「籾岡って色々知ってそうだからさ」
里紗「知ってるよ。とくに、コッチのほうとかね」
リト「……」
里紗「真面目に聞くって。相変わらずなんだからぁー」
リト「女の子ってさぁ、どういうことをしたら喜ぶんだ?」
里紗「……それは、ベッドの上?」
リト「違う!! そういうんじゃないって!!!」
里紗「だったら、デートのとき?」
リト「そ、そんな感じだ」
里紗「……なんであたしにきくかな。モモちぃとかいるじゃん」
リト「確かにモモに訊いてもよかったんだけど、なんか勘ぐられそうだったんだ。というかモモに訊くとバレそうで……」
里紗「なるほど。結城も重い腰をあげる気になったわけだ」
リト「籾岡だったら詳しいし、バレることもないだろうし」
里紗「どうしてぇ? 言っちゃうかもしれないよぉ? あたしの口ってさぁ、羽毛みたいに軽いもーん」
リト「そうかな。相手が嫌がることは絶対にしないだろ?」
里紗「なんで結城にそんなことわかるの?」
リト「いや、俺が見てる限りではだけどさ。籾岡は信頼できると思ってるよ」
里紗「……」
リト「な、何か変なこと言ったか?」
里紗「べっつにぃ」
リト「それで色々と教えて欲しいんだ。デートの極意というか、なんというか」
里紗「つまりはデートに付き合えってことでしょ」
リト「え? いや、そういうわけじゃない。ただ、どうやったら相手が喜ぶのかを……」
里紗「実践しなきゃ、わかんないこともあると思うけどなぁ……?」スリスリ
リト「や、やめろぉ!!!」
里紗「あははは。かわいいやつぅ。だけど、もっと真剣に言ってくれないとダメかなぁ。あたしって見た目ほど軽い女じゃないしぃ」
リト「真剣にって、どうやればいいんだ?」
里紗「こうあたしの目を見つめて……「好きだ!」とか」
リト「で、できるわけないだろ!!」
里紗「なら、この話はなーし。じゃね、結城。デート、がんばってぇ」
リト「あぁ……。わ、わかった!!」
里紗「へぇ……?」
リト「も、籾岡っ」
里紗「……」
リト「す……」
里紗「うん?」
リト「……っ」
里紗「す……なに?」
リト「やっぱいえねー!!!!」ダダダッ
里紗「あ、結城ー? デートいいのー?」
里紗「……ま、いっか」
放課後 教室
ララ「リトー? 一緒にかえろー?」
リト「あ、悪い。先に帰っててくれるか?」
ララ「いいけど、何かあるの?」
リト「ああ。少しな」
ララ「そっか。それじゃ、先にかえるねー」
リト「気をつけろよー」
ララ「はぁーい」
リト「……よしっ」
里紗「んー。さーて、かえるかー」
未央「おぉー!」
リト「籾岡っ」
里紗「お? 言う気になったぁ?」
未央「なにを? なにを?」
リト「考えてみたけど、やっぱり籾岡しかいないんだ。頼むよ」
未央「おぉ!? なんて大胆な……!!」
リト「え?」
里紗「……」
リト「その、あの台詞を言う練習も少しはしたんだけど……」
里紗「それはもういいよ。そこまで頼み込んでくるってことは真剣なんだろうし」
未央「真剣!? うそー!? ララちぃは!? 春菜はぁ!? ルンルンはぁ!?」
リト「声が大きい!!」
里紗「付き合ってくれ、でいいよ」
リト「そ、それぐらいだったら。――籾岡、付き合ってくれ」
未央「わぁ……」
里紗「……いくら払う?」
リト「えぇ!?」
里紗「タダで付き合えると思ってるの?」
リト「……仕方ない。でも、まけてくれると助かる」
里紗「マジ……?」
未央「ちょっとぉー。どうしたのぉー? 略奪愛なのー!? キャー!!」
里紗「ま、まぁ、あたしの魅力にかかれば結城なんてイチコロだしぃー」
リト「それで時間があるなら、今からでもいいかな?」
里紗「気が早いなぁー。がっつく男は嫌われるよぉ?」
リト「そうなのか。でも、できれば早いほうがいいんだ」
里紗「ふぅん。あたしはじっくり、時間をかけてヤッてほしいけどなぁ?」
リト「そういうわけにも……。頼んでおいて悪いんだけど」
里紗「ま、いっか。今から行く?」
リト「いいのか? 助かるよ、籾岡」
里紗「それじゃ、行こっ」ギュッ
リト「お、おい!?」
未央「ひゅーひゅー。意外とお似合いじゃーん」
リト「茶化さないでくれ!! 籾岡もいきなり腕を組むのは無しだ!!」
里紗「ちぇー。見せ付けようとおもったのにぃ」
リト「は、早く教室を出よう!!」
共同玄関
里紗「それで結城はどこに連れて行ってくれるのかなぁ?」
リト「買い物に行こうとは思ってるんだけど」
里紗「買い物だけ?」
リト「ああ。ダメか?」
里紗「つまんなぁい」
リト「えぇ? 女の子って好きだろ」
里紗「……あたしたち、終わりね。もう別れましょう」
リト「な!?」
里紗「さよなら、思い出をありがと」
リト「ま、待ってくれ!! 籾岡ぁ!!! 何がいけなかったんだ!?」
里紗「自分で考えればぁ?」
リト「教えてくれ!! 考え直すから!! 籾岡!!! 待ってくれぇ!!」
ヤミ「あれは結城リト。情けない声を出して、何をしているのでしょうか?」
唯「……知らないっ」
校門
リト「も、籾岡!!」
里紗「ふふ……」
リト「えっと、どこにいけばいいんだ? ホントによくわからなくてさ」
里紗「あははは」
リト「な、なんだよ?」
里紗「やっぱり結城はおもしろーい。あははは」
リト「何がだ? さっきはつまらないって……」
里紗「結城ぃー? あたしのことをそこまで考えてくれてるんだぁ?」
リト「言っただろ。籾岡しかいないんだ」
里紗「オッケー。とりあえず、結城の考えるデートプランでいこっか」
リト「籾岡、良いのか? 悪いのか?」
里紗「それはこれから。結城次第ってやつ」
リト「はぁ……益々、分からなくなってきたな……」
里紗「ほーら、ボサっとしない! 女の子をリードしなきゃね」グイッ
通学路
里紗「買い物っていっても、いつも行ってるところとかあるんじゃないの?」
リト「その辺も籾岡が教えてくれ。妹とよく行くところでいいのかもさっぱりでさ」
里紗「全部、あたし任せ?」
リト「教えてくれるって約束だろ?」
里紗「……」
リト「えっと……」
里紗「いいよ。とりあえず、隣町ぐらいまでは行くでしょ?」
リト「あ、ああ。まぁな」
里紗「いくよー」
リト「籾岡? 怒ってるのか?」
里紗「なんで?」
リト「悪い。なんとなくそんな気がして」
里紗「別に怒ってなーい」
リト「それならいいんだけど……」
駅 ホーム
里紗「うーん……」
リト「何してるんだ?」
里紗「情報を見てるの。最新のファッションは日替わりみたいなものだし」
リト「へぇ。そうなのか」
里紗「あれだけ女子に囲まれて、何もしらないの?」
リト「常にチェックしてるかまでは知らない。そこまで気にしてるのかな……」
里紗「気にしてるに決まってるでしょ。ララちぃでも可愛い服には目がないんだし」
リト「それもそうか」
里紗「で、これ買ってくれる?」
リト「え? これぇ!? 桁がおかしくないか?」
里紗「カイショーの見せ所でしょ」
リト「いや、でも、流石にこんなものを買ってとは言わないと思うけどな」
里紗「そんなのわかんないじゃん。急に男の優しさを物で求めたくなるときもあるんだから」
リト「マジか……。いや、買い物に行くならありえるかもな……」
電車内
里紗「よっと。ゆーきぃ。こっちぃー」
リト「ああ」
里紗「うふっ」ギュッ
リト「やめてくれって」
里紗「なんでぇ? デートだし、いいじゃん?」
リト「デートというよりは、なんていうかな、下見だろ?」
里紗「ま、そうだけど。結城は急に抱きつかれたら、どうする?」
リト「え? そうだなぁ……。驚くとは思うけど、まぁ、そのままにするかな」
里紗「ほぉー? 仲よしだね。それで正解」
リト「まぁ……あはは……」
里紗「そこまでなら、デートの終わりはホテルで決まり」
リト「は?」
里紗「一回ぐらい、してあげないと」
リト「バカいうな!!! できるわけないだろ!!」
里紗「車内ではお静かにー」
リト「うっ……。籾岡が変なこというから……」
里紗「不安ならあたしとする?」
リト「え……」
里紗「あたしは、いいよ?」スルッ
リト「あ!? ちょっと!! まてまて!! こんなところでおかしーだろ!?」
里紗「電車の中でする子もいるよ? こうやって男の上に座って……」
リト「そんな奴と一緒にするな!! あと座るなぁ!!」
里紗「堅物ぅ」
リト「常識の問題だろ!?」
里紗「ま、そうかもね」
リト「……籾岡に頼んだの、失敗だったかな」
里紗「ふふーん。大丈夫だって、あたしが結城を立派なオトコにしてあげるから」
リト「……頼むな」
里紗「まっかせて。ふふっ……」
駅前
里紗「さぁー。どっからいこっか」
リト「この辺はよく知らないな。籾岡は詳しいんだろ?」
里紗「まぁね」
リト「どこに行けばいいんだ?」
里紗「買い物って言ってたけど、具体的に何を買うのか決まってるの? 服とか、小物とか、色々あるけど。全部見るの?」
リト「ああ。欲しいものはよく分からないからな、そのつもりだ」
里紗「ふぅん。結城がくれるものならなんでも嬉しいと思うけど」
リト「俺もきっと何をあげても喜んではくれるとは思ってる」
里紗「なら、何でもいいじゃない。高級なモノほど手放しで喜んでくれるって」
リト「その通りなんだ」
里紗「え?」
リト「何をあげても喜ぶから、本当に欲しいものが最近分からなくなってきてさ」
里紗「あー。わからなくもないかなぁ。実際、何でもいいってメンドーだしね」
リト「好みは分かってるつもりだけど、やっぱり微妙なズレはあるはずだから」
里紗「それであたしを頼ったわけだ」
リト「そういうこと」
里紗「うーん。難しいなぁ。結城の傍にいれば幸せってタイプだもんね」
リト「そ、そんなことはないと思うけどな」
里紗「えー? あたしにはそう見えるけどぉ?」
リト「ほら、もう行こうぜ」
里紗「はいはい」
リト「はぁ……なんか疲れる……」
里紗「それにしても結城ってホント、真面目だよね。もう少し肩の力抜けば?」
リト「いいだろ。俺だって心から喜んでくれたら嬉しいし」
里紗「羨ましぃー」
リト「なにが?」
里紗「あたしのこともそれぐらい想ってってことぉ」スリスリ
リト「や、やめろって!!」
里紗「これぐらいで照れてたら、デートなんてできないぞー?」
学校
モモ「リトさーん。――うーん、もう帰ってしまったのでしょうか」
ヤミ「……」
モモ「あ、ヤミさーん。リトさん、知りませんか?」
ヤミ「……結城リトなら籾岡里紗と下校したようですが」
モモ「え!? なんで!?」
ヤミ「私に訊かれても困ります」
モモ「ど、どんな様子でしたか!?」
ヤミ「結城リトが籾岡里紗のことを追いかけていましたね。いつものように情けない声で」
モモ「何故、そのようなことに!?」
ヤミ「私に訊かれても困ります」
モモ「これは……これは……」
ヤミ「プリンセス・モモ?」
モモ「計画を進める好機!!! ありがとうございます、ヤミさん!! それでは!!!」
ヤミ「はい」
廊下
春菜「ふぅ……。古手川さん、委員会の資料はこれで全部だよね?」
唯「ええ」
春菜「それじゃ、部活があるから」
唯「……ちょっと、西連寺さん?」
春菜「なに?」
唯「……結城くんと籾岡さんって、付き合ってたりするの?」
春菜「……え?」
唯「あ……いや、なんでもないの。ただ、ちょっと気になっただけで……」
春菜「そんなこと聞いたこともないけど……」
唯「でも、ほら、前に喫茶店で籾岡さんがハレンチなこと言ってたでしょ?」
春菜「はっ!? テ、テクがどうのって……」
唯「あれ、嘘とか言ってたけど、本当は……。ああ!! ううん!! べ、別に私が気にすることなんてなかったわ!! 結城くんのことなんて、どうでもいいんだし!!」
春菜「あ、あの……」
唯「そ、それじゃあ!! 今日は付き合ってくれてありがとう!! 部活、がんばってね!! さよなら!!!」
ショッピングモール
リト「へぇー。こんな大きなところがあったのか。知らなかったな」
里紗「まぁ、外にも色々あるけど、ここならハズレはないからね」
リト「ありがとう、籾岡」
里紗「感謝してよねー」
リト「勿論だ」
里紗「……」
リト「あの店、見ていってもいいかな?」
里紗「気になるの?」
リト「好きそうな服が並んでるからさ」
里紗「そういうことなら、どうぞどうぞ」
リト「うーん……」
里紗「(結城って、振り回されてばかりだと思ってたけど、こういうことで悩んだりするのね)」
里紗「そりゃ、競争率も高くなるか」
リト「籾岡、こういう服って今流行りだよな? どう思う?」
里紗「ほうほう。センスあるじゃん、結城ぃ。意外と目利きいいんだ」
リト「そうか? それならきっと母親の影響だろうな」
里紗「でも、少し子どもっぽい気もするけど」
リト「これぐらいが丁度いいんだって」
里紗「あんたの好みがはいってなぁい?」
リト「そ、それは……そうかもな」
里紗「なるほどね。結城は子どもっぽいほうが好みっと」
リト「よし。当日はここにも来るか」
里紗「買っていってあげれば?」
リト「いや、一緒に買い物をするって約束だから」
里紗「あぁ、そう。でも、こっそり買っていったほうが喜ぶよぉ?」
リト「うーん。そうなんだけどさぁ」
里紗「何か買えない理由でもあるの?」
リト「いや、ここで買うと買い物に行くっていう口実がなくなるし」
里紗「あぁ。結城もデートしたいってこと」
リト「いや!! そういうわけじゃなくてさ!!! やっぱり自分の目で選んでほしいっていうのもあるだろ!!!」
里紗「はいはい、ごちそーさまぁ」
リト「信じてくれよ!!」
里紗「……やっぱり、つまんなぁい」
リト「え……?」
里紗「ねぇ、結城ぃ? デートってさぁ、女の子が行きたいところに行けばそれで良いなんて思ってなぁい?」
リト「だ、ダメなのか?」
里紗「いい? 待ち合わせからもう始まってるの。一緒に歩いて、目的地で目的のことして、食事して、ホテルいって、別れるところまでがデートなの」
リト「なにが言いたいんだ?」
里紗「つまり、常に楽しませないとダメってこと。服やバッグを買ってもらって満足する女と付き合いたいなら別だけどね」
リト「なるほどな……」
里紗「自信は?」
リト「あったら籾岡にこんなこと頼まないって」
里紗「よし。それなら入り口のほうから始めよっか。待ち合わせからスタートっ」
リト「な、なにもそんなことしなくても……」
里紗「結城は、まぁ遅刻なんてしないと思うけど。一応遅刻したって設定から始めようか」
リト「どうして?」
里紗「最悪の状態からどうやって彼女をアゲるのか見ておかなきゃ」
リト「わかった……」
里紗「10分の遅刻ね」
リト「――わ、悪い、待たせたか?」
里紗「おそーい」
リト「えっと……ごめん!! 寝坊して!!」
里紗「しんじらんなーい。かえるー」
リト「待ってくれ。ええと……俺、今日が楽しみだったんだ!!」
里紗「……」
リト「こうやって二人で買い物するの。実は楽しみだったんだよ。だから……寝坊はしないようにって思ってたんだけど……」
里紗「うーん……」
リト「やっぱり、こんな言い訳じゃダメか?」
里紗「あたしだったら許さないけど、いいと思うよ。正直に謝るのは大事だしね」
リト「……籾岡は許してくれないのか」
里紗「当たり前じゃん。遅刻なんてありえないしぃ」
リト「そうだよな。だったら、これは無意味だ」
里紗「なんで?」
リト「待たせるなんて絶対にしない。どんなことがあっても」
里紗「ふぅん……。それなら、彼女が遅れてきたら?」
リト「え? そうだな……」
里紗「やっぱ何時間待っても許す?」
リト「そんなわけないだろ。俺だって楽しみだったんだ。怒るに決まってる」
里紗「意外ぃー。それって春菜でも?」
リト「そ、それは……10分……いや、20分ぐらいなら……あぁ、でも、そうなるとむしろ心配になるか……」
里紗「だよねぇー。結城はそうでなくちゃ」
リト「あのなぁ!!」
里紗「だけど、怒るんだ。それ、けっこうイイじゃん」
リト「良いのか?」
モモ「――お姉さまから借りたレーダーによると、この辺りにリトさんがいるはずだけど」
モモ「えーと……?」キョロキョロ
モモ「いたっ。よし、邪魔だけはしないように……ふっふっふっふ……」
里紗「それだけ結城も真剣だってことでしょ?」
リト「そうなるかな。籾岡だってさ、待たせた相手が笑ってたら嫌じゃないか?」
里紗「男によるかなぁ」
リト「俺は、そういうのは違うって思う。きちんと怒るところは怒らないと」
里紗「それで大喧嘩になるときもあるんじゃない?」
リト「自分の非を認められらないってことはないと思うけど、それぐらいでもし喧嘩になるなら……」
里紗「なるなら?」
リト「買い物は中止でもいい」
里紗「……」
リト「って、やっぱりダメだよな。実際、そうなったらわから――」
里紗「あたしは、嬉しい。そこまで想って怒ってくれるなら」
リト「……そっか、ありがとう」
里紗「じゃ、次は買い物だー」
リト「さっきの店に行くのか?」
里紗「そこに行くまでの会話とかチェックするだけだって」
リト「なんか、怖いな……」
里紗「なにが?」
リト「籾岡は俺みたいな奴と話しても絶対に面白いなんて思わないだろ?」
里紗「えー? 結城を見てるのは面白いけど?」
リト「それは馬鹿にしてるだけだろ!?」
里紗「あははは。そうかもー」
リト「もういい……」
モモ「……普通にデートをしている?」
モモ「(リトさんがあそこまで自然体で籾岡さんと一緒にいるとは思いませんでしたが……)」
モモ「(そもそもどうしてリトさんが籾岡さんと……)」
モモ「(ま、籾岡さんも満更ではないご様子。ふふふ……)」
モモ「さて、尾行しないとぉ……」
結城家
ララ「あははははー」
セリーヌ「まうまうー」
美柑「あれ、リトは?」
ララ「用事があるっていってたよー」
美柑「そうなんだ。なんだろう……」
ララ「電話してみたら?」
美柑「別にそこまで……」
ララ「私がしてあげよっか?」
美柑「いいから、ララさんはそのまま遊んでて」
ララ「遠慮なんてすることないのに」
美柑「そういうことじゃないから」
ララ「でも、確かにチョット遅いよねー。モモも帰ってきたら飛び出していったしー」
美柑「モモさんが……?」
ララ「うん。そうだよー」
通学路
唯「うーん……。あれはなんだったのかしら……」
唯「(どうみても……痴情の縺れにしか……)」
唯「な、何を私はハレンチなことを……!!! 違う違う!! 結城くんなんてどうでもいいから……!!」
唯「(だけど、籾岡さんって……男性との交際を軽視しているようなところがあった気が……)」
唯「(だったら……)」
里紗『――結城、今月分の交際費は持ってきたのぉ?』
リト『こ、これです……。だから、捨てないでくれ……籾岡……』
里紗『仕方ないわね。ほぉーら、足の裏を舐めさせてあげるぅ』
リト『あぁ、ありがとう……俺は幸せだぁ……』ペロペロ
里紗『そうそう。犬のように舐めてね、結城ぃ』
唯「――違う!!! 私はクラスメイトで何を考えて……!!!」
唯「帰ろう!! 帰って課題しなきゃ!! 課題!!!」
唯「どうでもいいから、結城くんが弄ばれてても……!! どうでもいいから……!!!」
ショッピングモール
里紗「結城ぃー。これとこれどっちがいい?」
リト「そうだな。左のほうが籾岡らしくていいんじゃないか?」
里紗「えー? でも、あたしは右のワンピのほうが可愛いと思うんだけどぉ」
リト「うーん……迷って当然だな。籾岡はどっちを着ていても違和感がないし」
里紗「無難に逃げたか」
リト「は?」
里紗「こっちの話ぃー」
リト「それ、買うのか?」
里紗「かわなーい」
リト「そっか。残念だな」
里紗「どういうこと?」
リト「え? ああ、いや……」
里紗「きてほしいのぉ? どうなのぉー? 一緒に試着室はいるぅ?」
リト「そうじゃないって!! 次に来たときは買えないかもしれないから、今買えないのは残念だなって意味で……!!」
里紗「顔は正直なんだからぁー」
リト「そ、そんなことより、本当にいいのか? 気に入ったんだろ?」
里紗「いいのいいの。ショッピングは見て楽しむものだし」
リト「うちの妹も似たようなこと言ってたな」
里紗「さてと、次いこっか」
リト「分かった。――ん? 悪い、電話だ」
里紗「もしかして、おんなぁ?」
リト「妹だよ。はい、もしもし。どうした?」
里紗「……」
美柑『リト、モモさんと一緒?』
リト「え? モモは居ないけど」
美柑『……ホントに?』
リト「なんだよ」
美柑『どこにいるの?』
リト「どこって……それは……あー……」
里紗「リトぉ。まだぁ?」
リト「お、おい……!!」
美柑『誰がいるの?』
リト「ク、クラスメイトだから。ちょっと隣町まで遊びにきててさ」
美柑『……すぐに帰ってくるの?』
リト「夕飯までには帰るから」
美柑『……』
リト「な?」
美柑『はい』
リト「……はぁ」
里紗「お母さんみたいね」
リト「ある意味ではそうだよ。美柑には色々と苦労をかけてるしな」
里紗「でもぉー、悪いけど今日は返さないからね、結城ぃ?」
リト「な、なにいって……!?」
里紗「いったじゃん。食事して、ホテルいって、別れるまでがデートだって」
リト「はぁ!? お、おい!! 別にそんなことは……!!!」
里紗「合格点あげるまでは、帰れないと思っていいからね」
リト「籾岡!!」
里紗「次、いってみよー」
リト「おい!!!」
モモ「これはいい感じね……」
モモ「(このまま籾岡さんがリトさんを……それはそれでつまらないけど……)」
モモ「(まぁ、リトさんのことですから、一線を越えるようなことにはならないとは思いますが)」
モモ「何にしろ一皮剥いてくださいね、リトさんっ。ふふっ」
モモ「あら? 電話……。はい、もし――」
美柑『今、どこ?』
モモ「え?」
美柑『どこなの? 近くにリトがいるんでしょ?』
モモ「それはぁ……」
美柑『どこ?』
喫茶店
里紗「はぁー。なんか、楽しいねぇ」
リト「俺は少し疲れた」
里紗「女の子とのデートでそれいっちゃうんだ。サイテー」
リト「あ、悪い。籾岡と一緒なのは楽しいよ」
里紗「うそばっかり」
リト「慣れてないから、変に緊張して疲れたってだけで」
里紗「ふぅーん。いつも結城の傍にはララちぃ、モモちぃ、春菜だっているのに、緊張するわけ?」
リト「するに決まってるだろ」
里紗「どうしてぇ? あたしだから?」
リト「それもあると思う。そもそも女の子と二人きりでこういうところは歩きなれてないというか……」
里紗「よくあたしに声かける気になったもんだ」
リト「でも勇気を出して籾岡にお願いしたのは正しかった。こんなところがあるって連れてきてもらわないと知らないままだっただろうし」
里紗「それだけ、大事なんだぁ」
リト「ああ」
里紗「……」
リト「どうした? 何か、顔についてるか?」
里紗「結城がさぁ、ナンパ男からあたしを助けてくれたときがあったよね?」
リト「あったあった。大変だったよな」
里紗「そのあと、あたしがどれだけ傷ついたか……」
リト「え?」
里紗「あそこまで誘ったのに……女として自信がなくなっちゃう……」
リト「からかうのはやめてくれよ」
里紗「結城から見て、あたしって魅力的じゃない……?」チラッ
リト「お、おい……!」
里紗「どうなの、結城……?」
リト「も、籾岡は十分可愛いって!!!」
里紗「なら、あたしと一緒にホテルでイッちゃおうよ……ゆうき……?」
リト「それとこれとは違うだろ!!!」
里紗「どう違うの?」
リト「なんていうか……だから……体は大事にしたほうがいいというか……」
里紗「ふふっ……あははははは!!」
リト「な、なんだよ」
里紗「あー。ごめん。もうさぁ、想像通りすぎて笑っちゃったぁ。ま、経験回数0回の男はそんなもんよねぇ」
リト「籾岡、お前なぁ……」
里紗「いやぁー。やっぱり、結城って面白いね。あたしに寄ってくるような男とはぜんっぜん違うし」
リト「……ホント、疲れるな」
里紗「サイテー。もう帰ろっかなぁ」
リト「でも、まぁ、籾岡が楽しんでるならいいんだけどさ」
里紗「そうなの?」
リト「ほら、無理やり俺が誘っただろ。だから、楽しんでくれてるならなによりかなって」
里紗「そういう考え方ね」
リト「そろそろ次行くか」
里紗「休憩のあとは、どこに連れて行ってくれるのかなぁ?」
リト「そうだな……。籾岡、この中か近くにあればいいんだけど……」
モモ「――なんてイイ感じなのかしら。ちょっと籾岡さんが羨ましくなってきました……」
モモ「(あぁ、リトさんとああいうフツーなデートがしたい……)」
里紗「ペットショップなら上の階にあったと思うけど」
リト「よかった。そこに行こう」
里紗「なんか買うの?」
リト「それは流石にできないけど……」
里紗「あー。わかったぁ。好感度あげるんだぁー。小動物大好きアピールだぁー。はらぐろーい」
リト「そんなこと考えてないって!!!」
里紗「普通、そういうのは女が提案して、可愛さアピールするものなんだけど」
リト「一緒に外を歩いてるとき、ペットショップを見かけたら必ず立ち寄るんだよ」
里紗「ほーほー。動物、すきだもんねー」
リト「あれ? 知ってるのか?」
里紗「何度か見かけたことあるよ。犬とか猫を抱いてるのはね」
リト「そっか。まぁ、不思議じゃないか」
里紗「よっし。いこよ。ほらほら」
上空
ララ「この辺りでいいの?」
美柑「うんっ! あ、ララさん!! きっとあれ!! あの建物!!」
ララ「オッケー!! 急降下ぁ!!!」
美柑「ひっ!?」
ララ「――はいっ。ちゃくちぃー」
セリーヌ「まうまうー」
美柑「うぁ……」
ララ「大丈夫?」
美柑「はやく……行かないと……。またモモさんがリトに変なことをしてるに違いない……」
ララ「そうなのかなぁ」
セリーヌ「まうー?」
美柑「ララさんも一緒に!!」
ララ「うんっ。いこっ。リトはどこかなー?」
セリーヌ「まううー」
ペットショップ
リト「結構、大きなところだな」
里紗「かわいいー。みてみてー、結城ぃー。ネコネコー」
リト「ホントだな」
里紗「にゃーおー」
リト「……」
里紗「――どう? 可愛いなぁこいつって思った?」キリッ
リト「籾岡は普通にしてるほうが可愛いって」
里紗「……」
リト「犬の種類も豊富だな。ほら、籾岡」
里紗「あ、え? なに?」
リト「飼うならどれがいい?」
里紗「えー? 結城が一緒に散歩してくれるなら、買ってもいいけどぉ?」ギュッ
リト「おわぁ!! 急に抱きつかないでくれって!!」
里紗「……はいはい」
リト「あはは。ウサギも可愛いよな」
里紗「……ねえ、結城?」
リト「んー?」
里紗「ララちぃのことはさぁ……大事なのはわかるんだけどぉ……」
リト「え? なんの話だ?」
里紗「やっぱり、このあとホテルいかない?」
リト「その冗談はもういいって」
里紗「だって、デートするんでしょ? それならやっぱり女としてはぁ、誘って欲しいって」
リト「ホテルに? ありえないって」
里紗「そんなのわかんないでしょ。結城にはぁ」
リト「いや、わかるよ」
里紗「もしものことも考えて、どう?」
リト「どうって言われても困る」
里紗「固く考えなくてもいいじゃん。ヤるだけでも、あたしはいいよ?」ギュッ
リト「な……!?」
モモ「(おぉぉぉ……!! これはもしかして……もしかするかも……!!!)」
モモ「(籾岡さんが……リトさんの初めてを……!!!)」
里紗「そうなったときオロオロする男ってかっこわるいし。あたしが教えてあげるからさ」
リト「い、いらない!!」
里紗「……あっそ。じゃ、あたしは拗ねるっ」
リト「どうしてそこまで言うんだよ」
里紗「ふーんだ」
リト「おい」
里紗「なんでも真剣じゃなきゃ、ダメなんだ」
リト「籾岡はそれでいいのか?」
里紗「いいよ」
リト「それはちが――」
里紗「結城になら、何されてもいいよ」
リト「え……」
里紗「ふふん。どう? 今のはぐっとキタでしょ?」
リト「もういい加減にしてくれよ」
里紗「ちょっとはカタくなったんじゃないの? こことか」スリスリ
リト「やめろってぇ!!」
モモ「(あぁ……雰囲気が崩れた……。籾岡さん、殿方の扱いにはなれているのでは……)」
美柑「いたぁー!!!」
モモ「え!?」ビクッ
美柑「モーモーさーん……!!!」
モモ「あ、あらぁ……随分と早かったですね……」
ララ「モモー。やっほー。なにしてるのー?」
モモ「お姉さまもご一緒でしたか……」
美柑「リトになにしたの!?」
モモ「何もしてません!! ……まだ」
美柑「まだってなに!?」
リト「あれは……美柑……!?」
里紗「結城の妹さん?」
美柑「リト!!」
リト「美柑!? どうしてここに……? ララとモモまで」
セリーヌ「まううー!!」ギュッ
リト「はいはい。セリーヌもな」
里紗「ララちぃ。どしたのー?」
ララ「里紗ー。えっとね、美柑がぁ」
美柑「ほら、リト。もう晩御飯だから、帰ろう!!」
リト「ま、待てよ」
美柑「なに?」
リト「ええと、籾岡……」
里紗「家族と正妻が迎えにきたんじゃしかないか。続きはおあずけってことで」
ララ「ごめんねー、里紗ー」
里紗「いいのいいの。こっちこそ、悪かったねー。旦那と一緒に遊んじゃってさ」
ララ「あはははー。そんなのいいよー。いつでもリトとは遊んであげて」
里紗「マジ? いいの? やったー。なにしてあそんじゃおっかなぁ」
リト「なんの会話してるんだよ……」
モモ「お姉さま、流石です。心が広い……」
美柑「ララさんはよく分かってないだけじゃぁ……」
ララ「え? どうかしたの?」
里紗「さぁて、あたしは帰るねー。ばいばーい」
ララ「また明日ねー。リサー」
里紗「うん」
モモ「くっ……。まぁ、どっちにしろ失敗していたでしょうけど……」
美柑「なんの話?」
モモ「独り言ですから」
美柑「もう……。リトも帰りが遅くなるなら連絡ぐらいしてよ」
リト「ごめん。これからは気をつけるよ」
美柑「で、どうしてこんなところに遊びに来たの?」
リト「……下見を」
モモ「下見って……もしかして……」
ララ「そっかぁ。今度のお休みに美柑と買い物行く約束してたもんね」
美柑「リト……」
リト「籾岡は詳しいからさ、俺と美柑の知らない場所とかを教えてもらおうと思って」
美柑「……なんか、ゴメン」
リト「いや、俺も秘密にしようとしたのが悪かったな」
モモ「なんだ……。ならあの自然体も納得です……。初めからリトさんは籾岡さんを仮想美柑さんとして扱っていたわけですね……」
美柑「……」
リト「えっと、折角籾岡に教えてもらったし、ここで買い物するってことでいいか?」
美柑「う、うん……」
リト「ホントはびっくりさせようと思ってたけど、まぁ、いいか」
美柑「ごめんね、リト」
リト「いいって。帰ろうぜ。腹も減ったしさ」
美柑「うんっ」
ララ「飛んでかえろー!!」
リト「おい!! やめろ!! 普通に帰るぞ!! 普通に!!」
駅前
里紗「ふわぁぁ……」
「あ、ちょっと」
里紗「ん?」
「俺も一人なんだけど、食事でも一緒に――」
里紗「チャラい男はお断り」
「なっ……!?」
里紗「バイバーイ」
「ちっ。ビッチのくせに調子のんな」
里紗「はぁ……」
里紗「……」ピッ
未央『はぁいはぁーい?』
里紗「今、暇?」
未央『どっかいくー?』
里紗「よーし。さすがー」
翌日 学校
春菜「(結城くんが……籾岡さんと……結城くんが……うぅぅ……。昨日から同じことばっかり考えてて眠れなかった……)」
唯「おはよ……西連寺さん……」
春菜「おは……え!? 古手川さん!? どうしたの!? 目の下の隈がすごいけど……」
唯「ちょっと勉強を深夜までね……」
春菜「あ、そうなんだ……」
唯「そういうあなたも……なかなかね……」
春菜「えっと、寝付けなくて……」
唯「そう……」
里紗「おっはよー!! はっるなぁー!!」モミモミ
春菜「きゃぁ!!」
唯「何をしているの!!! 朝からあなたはぁ!!」
里紗「なになに、二人とも? 顔が酷いけど」
春菜「えっと……」
唯「だ、だれのせいで……こうなったと……」
リト「籾岡」
里紗「おっ。結城ぃー。おはー」
春菜「ゆ、結城くん……!?」
唯「……」
リト「昨日はありがとう。ホント助かったよ」
里紗「いいっていいって。あたしも楽しかったしぃ」
唯「……っ」
春菜「うぅ……」
リト「美柑も喜んでくれてた」
里紗「……はい?」
春菜「み、かんちゃん?」
リト「ここはいいところって言ってくれたよ。籾岡のおかげだ」
里紗「ララちぃは?」
リト「ララ? ララならあそこにいるけど」
里紗「そうじゃなくて、ララちぃとのデートのためじゃなかったの?」
リト「いや。違うよ。美柑と買い物に行こうって思って……」
里紗「……ふぅん」
春菜「あ、なんだぁ。そういうことだったんだぁ」
唯「まぁ、そんなことだろうと思っていたけどね」
リト「え? どういうことだ?」
里紗「よかったね。喜んでくれてなにより」
リト「そうだ。籾岡、最初に言ってたことだけど」
里紗「なに?」
リト「ほら、タダじゃ付き合ってくれないって言ってただろ」
里紗「なに? 払ってくれるの?」
リト「払ってほしいか?」
里紗「うーん……。いらないっ」
リト「よかった……」
里紗「そりゃ、ホテルにはいかないか……。いや、兄と妹っていうのも王道だし……もしかしたら……兄妹でホテルにいくことだって……」
唯「籾岡さん!!! 何をハレンチな想像をしているの!!!」
休日 ショッピングモール
美柑「リトー。これ、どうかな?」
リト「こっちはどうだ?」
美柑「それもいいかなぁ……」
リト「どっちも着てみろよ」
美柑「でも」
リト「ゆっくりでいいだろ。こうして買い物するのも久しぶりだしさ」
美柑「そうだね。ちょっと待ってて!!」
リト「おう」
リト「(美柑、嬉しそうだな。今日は素直にお留守番してくれたララたちに感謝しないと……)」
リト「あ。これ……」
リト「……」
美柑「じゃーん!! どう?」
リト「よし。すいまーん」
美柑「こらぁー! みろー!! なんか恥ずかしいでしょー!!」
翌日 教室
里紗「でさぁー、その男がすっごくつまんないの」
未央「あははは。どういう男が面白いのー?」
里紗「それはぁー」
リト「籾岡」
里紗「ん? 結城、どうかした?」
リト「これ」
里紗「なに、プレゼント? エッチな本とかぁ?」ゴソゴソ
未央「おぉーえろーい」
唯「な……また……!!」
春菜「(結城くん……)」
里紗「あ……これ……」
リト「悪い。両方は買えなかったから、籾岡が気に入ってたほうにした」
里紗「結城……」
リト「籾岡には何かお礼をしなきゃって思ってたんだ。これでよかったかな?」
ララ「あー!! いいなー!! その服、かわいいー」
リト「ララにも買ってやっただろ」
ララ「あれも可愛かったけど、里紗のもかわいいー」
里紗「結城さぁ」
リト「なんだ?」
里紗「言わなかった? 最新のファッションは日替わりだって」
リト「え……? もしかして違うのがよかったのか?」
里紗「とーぜん」
リト「そっか。なら、これは返して――」
里紗「……」ググッ
リト「籾岡? いらないんだろ?」
里紗「……」ググッ
未央「いるってさー」
リト「……わかった。着てくれると嬉しい」
里紗「……」コクッ
唯「ちょっと結城くん!!! 学校に関係ないものを持ってくるのは規則違反よ!!」
リト「げ……。いや、でも、ほら、お礼の品ぐらい大目に……」
唯「ダメに決まってるでしょう!?」
リト「だって、学校じゃないと籾岡に渡す機会が……」
唯「ダメったらダメー!!!」
春菜「はぁ……よかったぁ……」
ララ「何がよかったの?」
春菜「ひっ!? う、ううん……別に……!!」
未央「よかったじゃん。結城くん、かっこいー」
里紗「さっきの質問だけど」
未央「面白い男のこと?」
里紗「そう。やっぱり、普段そんなことをしなさそうなのに急にしてくる男って、面白いと思わない?」
未央「おもうおもうー」
里紗「(ありがと、結城。お礼はまた今度するからね。ふふっ)」
リト「な、なんだ? 寒気が……」
おしまい。
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