さやか「仁美と恭介、愛のメロディ」 (113)

※叛逆ネタ

―学校―

和子「……人の一生とは、つまるところプレゼントの応酬です」

和子「考えてもごらんなさい。私達は常に誰かから何かを貰い、誰かに何かをあげて生きています」

和子「おうちの方が作ってくれるご飯。先生方から教わる授業。
   家族や友達への親愛。ペットに与える缶詰とボール……」

さやか「……?」

和子「親と子供、主人と使用人、勤め人とお客さん、役者と観客……」

和子「空中で回るコインのように、次々と向きを変えながら……私達は、貰って贈る一生を廻り続けているのです」

杏子「…………」ムニャムニャ

和子「……しかし! しかしですね、皆さん!」バンッ

まどか「!?」ビクッ

和子「だからと言って、人の心の、人の一生の価値は!
   何を貰ったとか何を贈ったとか、そういうことには一切左右されません!」バンッ

和子「ましてや、これはゴヂバじゃないから本気じゃねーとか、手作りってちょっと重くね? とか!
   今年は14個も貰っちゃったぜーとか、俺なんかたったの10個だよとか!
   先生ー、ほら、こんなに貰っちゃったんで、食うの手伝ってくれません? とか!」

和子「たかがプレゼントでその人の価値を決めようなど! おこがましいにもほどがある! でしょう!?」

ほむら「…………」

仁美「…………」

さやか「……は、はぁ……」
 
和子「……というわけで。あの忌々――いえ、ワクワクなバレンタインデーまで、あと一週間を切りました。
   当日は休日ですけども、一応……校則上、学校への菓子類持ち込みは禁止されています」

和子「ですので、『そういう』応酬は、どうぞ私の視界に入らな――いえ、目の届かない所で……」

 キーンコーン、カーンコーン…

和子「……あら、もう終わり?」

和子「……えー、それでは、帰りのホームルームを終わります。はい、号令ー」

中沢「きりーつ、礼ー」

 ガタンガタンガタン

全員「さよーならー」

和子「はい、さようなら」

 ガヤガヤガヤ…

恭介「…………」ガタッ

中沢「お、上条。直帰か?」

恭介「うん。もうすぐコンクールだしね。……それじゃ」

中沢「おう、じゃーな」

仁美「…………」

さやか「飛ばしてたなぁ、もう……」

まどか「え? ……あ、さっきの先生?」

杏子「今までの鬱憤とかあんだろ、色々」

まどか「そうなの? 早乙女先生、やさしくてモテそうなのに……」

さやか「それがそうでもないんですなぁ。優しいだけじゃ駄目ってことよ」

杏子「バレンタインか……なぁ、アメリカでもやっぱりチョコとか送ってたのか?」

まどか「ううん、ほとんどカードだったよ。あと、ほんとうに安いお菓子とか……
    あ、あと、基本的には男の子の方からプレゼントするの」

杏子「へぇーっ、いいなぁ、やっぱ貰う方が嬉しいもんな。あたしもアメリカに生まれたかった」

さやか「……何だろ、ニューヨークの下町に不良のボスとして君臨してそう」

まどか「あぁー……分かるかも」

さやか「右足だけで立って踊ったり、自動車チキンレースにのめり込んだりね」

杏子「どっちも死ぬ奴じゃねーかコラ」

まどか「てぃひひ……あ、でも杏子ちゃん、意外と似合うかも。愛に殉じちゃう不良系」

杏子「んだよそれー、適当なこと言うなよな」ハハハ

まどか「ほんとだよー、あの時だって、魔女になったさやかちゃんと――
    …………あれ?」

さやか「ん?」

杏子「……へ?」

まどか「……あれ……? 魔女、って……そう言えば……あれ……?」

  ゴゴゴゴゴゴゴ…

さやか「!?」

杏子「な――」

まどか「……そうだ……わたし、やらなきゃいけな――」

円環『呼ばれて飛び出てドッギャァーン! それじゃあ早速覚醒と――』ニョキッ

ほむら「せいっ!」ドガッ

円環『あぐぅっ』シュゥゥン

まどか「……あれっ?」ピタッ

ほむら「はぁ……はぁ……危なかった……」

杏子「ほ……ほむら?」

ほむら「――まどかっ!」ガシッ

まどか「ひぇっ!?」

ほむら「いい? あなたは見滝原生まれのアメリカ育ち、だいたい半年前に見滝原に帰ってきたプリティ帰国子女!
    忘れてないわね? 忘れないでね!? ドゥーユゥーリメンバー!? アンダスタァン!?」ユサユサ

まどか「わっ、分かった、分かったから! 揺らさないでほむらちゃん!」

ほむら「それと、さっきの羽生やしたピンク髪、邪神以外の何物でもないわ。
    ほっとくと体内に取り込まれて、京都に降り立って亀と殺し合う破目になるわよ! 何言っても耳を貸さないこと!」

まどか「は、はぁ……」

ほむら「……忘れないで。あなたは、ありのままのあなたでいればいいの。そんなまどかが一番好きよ」

まどか「えっ、あ、うん」

さやか「さらっととんでもないこと言ったよコイツ」

ほむら「それと、チョコはミルクとビターとホワイト、どれが一番好きかしら」

まどか「へ? え、えーっと……ホワイトかなぁ、どっちかって言うと……」

ほむら「了解したわ、期待しててちょうだい。……それじゃあ、また明日」タタタタ

杏子「……相変わらず忙しいな、アイツ」

さやか「ホント、今度は何企んでんだか……」

まどか「…………」

さやか「……あ、そうだ。チョコって言えばさ、まどかは誰かにあげたりするの?」

まどか「うん。パパとママと、あと友達みんなにあげようかな、って……」

さやか「ほほー……それじゃ、気になる男の子はナシ、と」

まどか「ええっ!? え、えと……まあ、うん」

杏子「さやかだって似たよーなもんだろ? 毎年毎年、知り合いにバラまくだけバラまいてさぁ」

さやか「人を節操無しみたいに言うな! ちゃーんと手作りしてるんだからね。
    人のおこぼれをムシャムシャやるだけの、どっかの誰かさんとは違うんですよーだ」

まどか「へぇー……でも、すごいよ。手作りなんて」

さやか「なーに、超カンタンだよ、あんなの。……あ、そうだ! まどか、今度の土曜にさ……」


仁美「…………」

―夜、志筑家―

仁美「…………」ピッピッ


  To:上条恭介
  Sub:よろしければ
  ―――――――――――――
  上条君、お元気ですか?
  最近、上条君とゆっくりお話ができていなくて、
  さびしいです。
  もしお時間があれば、明日の放課後、どこかで
  お食事でもしませんか?


仁美「…………」

仁美「……えいっ」ピッ

―上条家―

 ヴァァ―― プツッ …ファァ――ン…

恭介「……っとと……またここか」

恭介(……参ったな、そんなに難しい所でもないのに)

恭介「…………」

 ヒョロロロロロ……ピョロッ

恭介(ここも……もう少し、丁寧にやらなきゃ……)

携帯『チャーン チャンラーンチャーラー♪』

恭介「……ん?」ピッ

恭介「…………」

恭介「…………」ピッ、ピッ

  To:志筑さん
  Sub:Re:よろしければ
  ―――――――――――――
  ごめん、明日はバイオリンの先生の所で
  レッスンする予定が入ってるんだ。
  コンクールの本選が今度の14日にあるから、
  それが終わったらデート、っていうのはどうかな?


恭介(……ごめん、志筑さん……)

恭介「…………」ポチッ

恭介(……急がなくちゃ……もう、あまり日数も……)

―翌日、通学路―

さやか「へぇーっ、恭介、そんなに切羽詰まってるんだ」

仁美「はい……やっぱり、お邪魔だったかしら……メールなんて」

さやか「ったくもう、あいつもワガママだよねぇ。こーんなに美人の彼女がいるのにさ」

仁美「そんな……それに、私の方こそワガママばっかり……」

まどか「学校でも、なんだか忙しそうだもんね……上条君」

さやか「昔っからそうなんだよねー、ナチュラル・ボーン・ヴァイオリンバカ、っていうか。
    一度熱中しちゃうと、そのことしか手につかなくなっちゃう感じ」

仁美「…………」

さやか「それに、マトモに女の子と付き合ったの、たぶん仁美とが初めてだしさ。
    女の子のキビとかキモチとか、いまいち分かってないんじゃないかな?」

杏子「だろうな。さやかはほとんど男友達だったらしいし」

さやか「うっしゃ、オモテ出ろ」

杏子「既にオモテ歩いてんじゃねーか」

仁美「……でも、羨ましいですわ」

さやか「え?」

仁美「さやかさんと話している時の上条君、すっごくリラックスしてる気がします」

さやか「……どうかなー、気が抜けてる、って言うんじゃない? アレ。
    男子ってさ、好きな女の子の前じゃ、もう少しカッコつけると思うよ」

仁美「…………」

杏子「けどさ、外で会えないのは分かるけど……じゃあ何で、学校の中で話したりしないんだ?
   メシでも誘えばいーじゃんか」

仁美「え? ……まあ、その、それは……そうなんですけど……
   最近、ときどき凄く険しいお顔をなさってますし……無理に誘うのも、なんだか……」

さやか「ちっちっち、いけやせんぜお嬢様。あいつ、見た目通りの草食朴念仁だしさ。
    もっとグイグイ、押していかなきゃ!」

仁美「そう……ですか……いえ、でも……」

さやか「……! そうだ仁美、今日の昼休みにさ……」

―昼休み、教室―

キーンコーン、カーンコーン…

恭介(さてと……)ガタッ

中沢「まーた1人飯かよー、上条」

恭介「仕方ないだろ、パパっと食べて音楽室に……」

中沢「お前さぁ……志筑さんはいいのかっての」

恭介「! あ、ああ……」

中沢「最近、全然一緒にメシ食ってねーじゃん」

恭介「……大丈夫だよ。コンクールが終われば、また……」

中沢「はいはい……ったく、なんでこんな奴ばっかり……」ブツブツ

さやか「恭介ー」

恭介「ん? ああ、さやか」

さやか「お昼さ、よかったらあたしらと一緒に食べない?」

中沢「!?」

恭介「え? あたしら、って……」

さやか「えっと、あたし、まどか、杏子と……あと、仁美も」

中沢(ハーレムじゃねえかこん畜生!)

恭介「! い、いや……悪いけど、すぐにでも練習したいんだ。だから……」

さやか「いやいや、忙しいのは分かるけどさー、あんまり根詰めるのもよくないんじゃない?
    息抜きも大事でしょ? ね?」

恭介「……でも……女の子ばっかりなのに、邪魔するのも……」

中沢「なにボンクラこいてんだこのED野郎」ボソッ

さやか「ん? あ、じゃあ中沢も来る?」

中沢「!!?」

恭介「え?」

さやか「まあ確かに、ウブな恭介クンなら照れまくっちゃうかもしんないしねー?
    友達と一緒の方が気楽でしょ。こっちも賑やかな方がいいし……」

恭介「……誰がウブだよ、もう……悪いけどさ、今はそんな冗談に――」

中沢「よし、行こう上条」ガタッ

恭介「えっ……」

さやか「さっすが中沢! 話が分かるぅ!」

中沢「いやいや、俺らもちょうど暇してたしさ! たまには大勢でってのもイイよな、なー!」

恭介「いや、なーって……」

中沢「じゃーかしい! お前なぁ、クラスの美人ヒエラルキーの頂点に立つ5人のうち4人と
   一緒にランチに洒落こめるんだぞ! しかもそのうち1人はお前の彼女! ここまで来てなんで拒むかなお前は!」ヒソヒソ

恭介「いやだから、ホントに練習しなきゃマズい――」

中沢「シャァーラップ! んなもん家帰ってからで十分だろうが! 
   どうせ家じゃあ毎日バイオリン弾いて、バイオリンと風呂入ってバイオリンと寝て、
   深夜にビブラート効かせながら弦をチュパチュパやってんだろ!」

恭介「風呂までは入ってないよ流石に」

さやか「ま、いいじゃんいいじゃん! ほら、仁美も楽しみにしてるし! ね?」

恭介「! ……志筑さんが?」

さやか「うんうん!」

恭介「……分かったよ。そこまで言うなら……」

中沢「いよっしゃぁ!」

さやか「そうこなくっちゃ! ほら、屋上だから早く行こ!」グイグイ

中沢「ホラ急げ上条! 昼休みあと30分だぞ!」グイグイ

恭介「分かった、分かったから! 引っ張んないでよ!」

恭介(……何か、いつにも増して強引だなぁ……さやか)

―屋上―

 ガチャッ…

杏子「お、来た来た」

さやか「やっほー、お待たせ」

仁美「……!」

恭介「! あ……」

さやか「ほらほら恭介、あんたの席はあそこ!」グイグイ

恭介「はいはい……」ストッ

仁美「…………」

恭介「……あ……」

仁美「……か、上条君」

恭介「う、うん……」

さやか「……よし、フェイズ1・『隣に座らせる』まではクリア、と」ヒソヒソ

まどか「……何だかぎこちないよ……緊張してるのかな」ヒソヒソ

さやか「2人とも遠慮しすぎだよ。付き合って何日目のカップルかっての……
    ……よーし、ここからはごく自然に、場を盛り上げるのに徹さなきゃ」ヒソヒソ

まどか「フェイズ2、だね」ヒソヒソ

杏子「何でもいいからさー、とっとと食おうぜ」

中沢「あの、俺はどの辺に……」

杏子「あ? ……テキトーに座れば?」

中沢「は、はい……」ストッ

―――――――――
――――――
―――


まどか「へぇー、中沢君、お弁当自分で作ってるんだ」

中沢「いや、作ってるってわけじゃないんだけどさ。母さんに任せとくと、全部ゆうべの残り物だから……」

杏子「いいじゃんか別に、食えるんだろ」

中沢「どうせなら唐揚げとかも食べたいんだよ。だからほら、冷凍の奴をこうやって……」

さやか「あぁー、だからおでんと唐揚げが共存してるんだ」

中沢「そうそう! だからさ、実際は残り物と冷凍の――」

さやか(……よしよし、こうやって中沢をこっちの3人で引きつけておけば、
    恭介と仁美はごく自然に2人の世界!)

さやか(恭介も仁美も、無言の食事に耐えられるほど図太くはないはず……
    あとはごく自然な流れで会話が続いてくれれば……!)

さやか(さて、2人の様子は、っと……)チラッ

恭介「…………」モグモグモグモグ

仁美「……あ、あの、上条君?」

恭介「んぐ……」ゴクン

恭介「どうしたの、志筑さん」

仁美「いえ……その、あまり急いでお食べになると、危ないのでは……」

恭介「え? あ、うん……ゴメンね、最近ずっとこんな調子だったから……」

仁美「あ、い、いえ、こちらこそ……」

恭介「…………」モグモグ

仁美「…………」パクパク

さやか(――あっ、バカだあいつ)

さやか「……ど、どーしたの2人ともー。お通夜会場じゃないんだぞー、ここ」

さやか(……邪魔しちゃ悪いとは思ったけど……さすがにあの調子じゃあ、ね……)

恭介「……? どうした、って……別に?」モグモグ

さやか「いや、『別に』じゃなくってさ。ほら、せっかく久々に話せるんだし……ね?」

仁美「い、いいんですよさやかさん……」

さやか「んもぅ、仁美までそんな事……ダメだぞー2人とも。
    このさやかちゃんの認めたお似合いカップルである以上、イチャラブトーク以外は認めないのだー!」

恭介「…………」ムッ

恭介「……何だよもう、見世物にするために呼んだのかい?」

さやか「え――あ、いやいやいや! ほら、2人とも最近ピリピリしてるっぽかったし?
    だからその、少しは仲直りできたらいいなー、っていうか……」

恭介「……喧嘩してるわけじゃないよ。……ホント、さやかは昔っからおせっかいだよね」

さやか「……あんたこそ、なーんか一言多いよ、もう。
    もっとさ、心にゆとりを持たなきゃ。そんなんじゃ演奏、失敗しちゃうぞー」

恭介「――!!」

  ガタッ!

さやか「っ……!?」

恭介「…………」ワナワナ


  『――そんなに難しい所でもないのに』

  『ここも……もう少し、丁寧にやらなきゃ――』

  『急がなくちゃ……もう、あまり日数も――』


恭介「……僕だって……」

恭介「僕だって……しくじりたくてやってるんじゃない……!」

杏子(……あーあ……)

さやか「……え、あの、えっと……」

恭介「何なんだよ……人が焦ってるの知ってて、バカにしてるのか……!?
   晒しものにしたくて呼びつけたのか!?」

さやか「ち、違うんだってば、その――」

中沢(……見ないフリ食べるフリ聞こえないフリ……)

恭介「……おまけに、志筑さんまで巻き込んで……話そうが話すまいが、僕達の勝手だろ!?
   何でさやかに指図されなきゃいけないんだよ! 人の付き合い引っかき回すの、そんなに楽しいのかい!?」

さやか「――! い、いやその、さっきのはさ……!」

まどか「……ぁ……」オロオロ

恭介「――さやかはさ、昔っからそうだよね。いっつもいっつも、自分がどうしたいかって、そればっかり……」

仁美「か、上条君、もう――!」

恭介「僕が怪我してた時だってそうだ! 弾けもしない曲を毎日毎日……!
   どんなに歯がゆかったか知りもしない癖に!」

さやか「っ――!」

まどか「……え?」

恭介「人の気持ちなんて考えないで、自分の理想だけ押し付けて……!
   何で……何で分かってくれないんだよ……!」

さやか「…………」

仁美「上条君っ!」

恭介「!」

仁美「違うんです……さやかさんは、さやかさんはただ、私達を心配して――!」

恭介「だからって、あんな言い方……!」

仁美「私がうじうじ悩んでたから、さやかさんは……だから、さやかさんを悪く言わないでください!」

恭介「いいんだよ志筑さん、そんなに庇わなくたって! さやかが無神経なのは、前からずっと……」

さやか「ちょ、ちょっと、2人とも……!」

仁美「ま、またそんな……! 上条君! さやかさんは、私達のためを思ってですね……!」

恭介「だから、そのやり方に問題があるって言ってるんだ!」

仁美「――上条君の方こそ、自分のことばっかりじゃないですか! 
   さやかさんの思いやりを無視して、しかもさやかさんに当たるなんて!」

恭介「なっ……! し、志筑さんまで……!」

仁美「上条君の分からず屋! さやかさんの気持ちも知らないで!」

まどか「ひ、仁美ちゃ……」

恭介「そっちこそ、さやかを買い被りすぎだよ! 
   小1の頃、僕が先生の事『お母さん』って言った時だって、さやかは――!」

仁美「何ですかそんなの! この前なんか、さやかさんは歩道橋でおばあさんを――!」

恭介「それが何だ! 小3の時なんて、僕のお尻を風呂場で――!」

仁美「そんなに昔から一緒にいるのに、ちっともさやかさんの事分かってないじゃないですか!」

恭介「そっちこそ、上辺だけ見て分かったみたいに……!」

さやか「……いや、あの……」

杏子「もう何のケンカだよコレ」

仁美「もういいですっ! さやかさんが嫌いな上条君なんて……!」

恭介「こっ、こっちだって、さやかが嫌いな僕を嫌いな志筑さんなんか……!」

中沢「お、おい……!」

仁美「っ――! ばかばかばかっ! 上条君のばかっ! ばか大臣!」ダッ

まどか「あっ、ちょ、仁美ちゃん!? お弁当!」

さやか「恭介! あんた―― !」

恭介「…………」ムスーッ

中沢「……あ、あの……上条?」

恭介「…………」ガツガツモグモグ

恭介「…………」ゴキュッゴキュッ

恭介「……ごちそうさま」

中沢「いや、ごちそうさまじゃなくって……」

恭介「…………それじゃあ。練習あるから……」

さやか「! ちょ、ちょっと、恭介!」

恭介「…………」スタスタ

 キィ… バダン!

まどか「…………」

中沢「……えーっと……」

杏子「……ハァ……」

さやか「…………」


さやか「……っ……」

―放課後、校門前―

まどか「…………」

杏子「…………」モグモグ

さやか「…………」テクテク

まどか「! あ、さやかちゃん……」

さやか「まどか……あれ? 仁美は?」

まどか「あ、えっと……今日は、1人で帰るって」

さやか「……そっか」

まどか「……うん……」

さやか「…………」

杏子「……んじゃ、帰るか」

さやか「ん……」

―通学路―

 ガシャコーン…
   ガシャコーン…

まどか「……ねぇ、さやかちゃん」

さやか「ん?」

まどか「……その、上条君って……怪我、してたの……?」

杏子「…………」

さやか「……そっか、まどかにはまだ言ってなかったよね」

さやか「……もう、結構前の話なんだけど……恭介ね、交通事故に遭ったんだ。
    たまたま歩いてた所に、スリップした車が突っ込んできて……」

まどか「…………」

さやか「命に関わるわけじゃなかったらしいけど……両足と左腕を大怪我してさ。
    特に、左手なんて神経がほとんど千切れて……。
    みんな言ってたよ。もうバイオリンは無理だろう、って」

まどか「……え? でも、今は……」

杏子「……ま、聞いとけって」

さやか「……恭介、そのときすっごく滅入ってて……あたし、もう見てられなかった。
    ――ちょうど、そのぐらいだったかな……キュゥべえから、魔法少女の事を聞いたの」

まどか「! じゃ、じゃあ……」

さやか「……魔獣と戦うのも、人として死ねなくなるのも……全部、詳しく聞かされたよ。
     それから、その『見返り』……願いのことも。……主に、杏子からね」

杏子「……当たり前だろ。子供の遊びじゃないんだからさ」

さやか「あの頃の杏子、尖ってたよねぇー。
    『魔法ってのは、徹頭徹尾自分の為に使うもんなんだよ』」キリッ

杏子「うわ、やめろって! ……っあー、くそっ……」カーッ

さやか「……でも、あたしにはさ……どうしても、できなかった。
    あいつが苦しんでるのを見ながら『人として生きる』なんて……だから……」

まどか「…………」

  ガシャコーン…  
   ガシャコーン…

杏子「……うるさいなもう、さっきから……どっかで工事でもしてんのか?」

さやか「いや、工事ってよりは……うーんと……」

まどか「あ、あの建物からじゃない?」

さやか「ん? ……あれ? あそこ廃墟じゃなかったっけ」

杏子「工場……か何かか? 悪趣味だな、しかし……えーと、看板は……」

  【ホムラ製菓 見滝原第一工場】

まどか「…………」

さやか「…………」

杏子「…………」

  ビ――――ッ

『休憩時間よ。各員、整備作業を一旦中断し、休息を取りなさい』

  ゾロゾロゾロ…

偽街の子供達「フィー、カタコッター」

ほむ兵隊「ホムー」

ほむら「……ふぅ、作業ラインには問題なし、と……あとは原料の到着を……あら、まどか」

まどか「え、あ、うん」

ほむら「奇遇ね。今帰り?」

まどか「う、うん、はい」

ほむら「そう。寄り道せずにまっすぐ帰るのよ」

さやか「……いやあの、おい……ほむら」

ほむら「……何?」

さやか「……ここ、何?」

ほむら「何って……夢のチョコレート工場に決まってるじゃないの」

杏子「どういうことだおい……」

ほむら「1年に1度のバレンタインだもの。最高級の素材、最高級の設備、そして最高級の人員を備えた、
    究極至高のマニュファクチュアで手作りしなければ意味が無いわ」

さやか「いや、工場で手作りって……」

ほむら「設備も人員も問題なし。あとはカリブ海のクリオロが届きさえすれば……」

  ソットーヒラーイータ ドアノームコーウーニー♪

ほむら「……失礼するわ。はい、私よ」ピッ

ほむら「どう、買付けの方は……え? 現地の武装勢力が……!?」

ほむら「ちゃんとお金は置いたんでしょう!? え? ヘロイン……ちょっと、それ完全に向こうの勘違――」

まどか「……え、えっと……じゃあ、そろそろ行こっか」

杏子「お、おぅ」

さやか「ホント、何やってんのよコイツ……」

まどか「じゃ、じゃあねー、ほむらちゃん。また明日」

ほむら「あ! またねまどか! ――とにかく、積み荷だけは死守しなさい! ヘリは!? 
    ……え? 眼帯の手練れと二足歩行戦車? 何を馬鹿な……」

ほむら「分かったわ! 私がハインドで出る、だからそれまで何とか時間を――」

まどか(……ほむらちゃん、携帯持ってたんだ……)

―深夜、上条家―

  バラバラバラバラ…

恭介(……うるさいな、もう。こんな夜中に)

恭介「…………」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

講師「どうしたんだね上条君……音が尖りすぎじゃないか」

恭介「す、すみません……」

講師「……疲れが溜まってるのかも知れないな。今日はもう、ゆっくり休みなさい」

恭介「い、いえ! 大丈夫ですから……」

講師「そうは言ってもなぁ……焦っても、あまり良い事は……」

恭介「お願いします……!」

講師「……それじゃあ、あと1回だけね……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


恭介「…………」

 

   『あんまり根詰めるのもよくないんじゃない?』

   『もっとさ、心にゆとりを持たなきゃ』

   『さやかさんはただ、私達を心配して――!』


恭介「…………」


   『人の気持ちなんて考えないで、自分の理想だけ押し付けて……!』

   『僕を嫌いな志筑さんなんか……!』


恭介「……っぁあ……」

恭介(何で……何であんな事っ……!)

  バラバラバラバラ…

恭介「……っああぁぁ――! もうッ!」ガチャッ

恭介「うるさいんだよッ! こんなとこ飛ぶ――な……」

ほむら「こひゅー……こひゅー……」ピクピク

偽街A「マスター! マスタァー!」

偽街B「メディーック! メディーック!」

ほむ兵A「ホムゥ――!」オロオロ

ほむら「ふふふ……守った……カカオは……ふふふ……」

  バラバラバラバラ…

恭介「……」

恭介「…………」

恭介「…………寝よ」

―翌日、放課後―

 キーンコーン、カーンコーン…

杏子「ふぃー、終わったーっと」

まどか「さやかちゃん、今日は掃除当番だっけ」

さやか「うん。悪いね、先に帰っちゃっててよ」

杏子「あいよ。……お、そーだまどか、タイ焼き食ってこうよ。
   最近チョコ味なんてのが出ててさ、これがまた中々……」

まどか「へーえ、それじゃ……」

仁美「……さやかさん」

さやか「ん? ……! あ、ひ、仁美……」

仁美「今日、お時間ありますか」

さやか「え? あ、うん。あと10分ぐらいしたら……どうかしたの?」

仁美「その……少し、お話したいことが……」

さやか「……?」

―ファーストフード店―

仁美「――その、昨日はごめんなさい。色々とご迷惑を……」

さやか「え、あ、いやいや! 仁美は悪くないって! ……むしろ、あたしが……」

仁美「い、いえ! そんな……」

さやか「……ううん。やっぱり、あたしも出しゃばりすぎちゃってた。
    ……本当にごめん。あたしのせいで、ケンカなんか……」

仁美「…………」

さやか「……恭介とは、どう? あれから……」

仁美「…………」フルフル

さやか「……そっか」

仁美「……さやかさん」

さやか「ん?」

仁美「……さやかさんは、ご存知ですか? 私が何で上条君を好きになったか……」

さやか「え――い、いや……」

仁美「……私ね、打ち込めること、というか……熱中できることが無いんです。昔から。
   お茶も踊りも、それからピアノも、全部、親から言われて続けてただけで……熱意とか本気とか、全然無くって」

さやか「…………」

仁美「習い事だけじゃありません。運動だって、勉強だって……
   そこそこ高い位置をキープできてれば、それでいい、って。
   上達してどうしようとか、知識を増やしてどうしようとか……目的なんてないまま、ただ漠然とやってるだけでした」

さやか「……仁美だけじゃないよ。中学生なんて、みんなそんなもんじゃない?」

さやか(……あたしの場合は、中の下キープすんのがやっとだけど)

仁美「――でもね、上条君は違ったんです」

さやか「……!」

仁美「1年生の時でした。『教養』の一環だ、なんて言われて、市の音楽コンサートを見に行ったんです。
   その時初めて、上条君の演奏を聴いて……」

仁美「……私ね、泣いちゃったんです。人って、こんなに真剣になれるんだ、って。
   しかも、お顔はすごく真剣なのに、演奏はどこまでも朗らかで、楽しそうで……」

仁美「……私と同い年の子でも……こんなに、情熱を持てるんだって思ったら……
   ぐすっ……わっ、私……じぶんがっ、急に…………ううっ……」

さやか「わっ! ちょ……な、ナプキン! ほら!」

仁美「あ、ありが……ひっく……」ズビーッ

仁美「……そ、それで……その日は、家に帰ってもずーっと、上条君が頭から離れなくて……
   聞いたら、見滝原中の生徒だって言うじゃないですか。……だから、その時からずっと……」

さやか「……そっか……」

仁美「……2年に上がって、同じクラスになれた時……本当に嬉しかったんですよ?
   さやかさん達とも、お友達になれましたし」

さやか「あっはは、泣かせるねーもう」

仁美「…………」

さやか「……?」

仁美「……本当はね。さやかさんが羨ましかったんです」

さやか「へ……?」

仁美「私の知らない上条君を、たくさん知ってるさやかさんが。
   あの事故の後なんて、毎日のようにお見舞いに行って……
   ――普通に闘ったって、勝ち目はありませんもの」

さやか「こらこら、その話はもう終わったでしょー?
    前も言ったじゃん、恭介はただの……」

仁美「…………」

さやか「……で、でもさ。よかったじゃん。結局告白して、両想いになれたわけでしょ」

仁美「……はい」

さやか「デートもたくさん行ったんだよね? 喫茶店とか、映画とかさ」

仁美「……はい。そのたびに、上条君が身近になってきて…………
   …………でも……」

さやか「……?」

仁美「……私が憧れて、好きになったのは……大好きなヴァイオリンにひたむきに打ち込む、あの上条君です。
   ……もし、もしですよ? 今の私が、上条君の重荷になってるなら……」

さやか「! ちょ、ちょっと……!」

仁美「……私に気を使って、上条君がヴァイオリンに集中できないなら……いっそ……」

さやか「まっ……だ、駄目だよ! わっ、別れるなんて、そんな……!」

仁美「え……あ、いえ! その……何も、そう決めたわけでは……!」

さやか「ほ、本当?」

仁美「……今は、まだ。……ただ、不安なんです。
   上条君にとって、私は何なのか……それを、確かめておきたいんです」

さやか「……って、言うと」

仁美「……今度の日曜、14日に、上条君にお会いして……きちんと謝って、もう一度お話をしてみます。
   丁度、バレンタインのプレゼントもありますし」

さやか「……あれ? 14日って、確か……」

仁美「……もちろん、コンクールが終わった後にお会いするつもりですわ。
   コンクールの閉会は3時。……高速バスが見滝原に付くのは5時ごろですから」

さやか「ああ、東京の方であるんだっけ……大変だよねぇ、恭介も。
    それ、恭介には?」

仁美「いえ、これからメールでお伝えしようと……だから、さやかさんに相談したかったんです」

さやか「……そっか。……うん、大丈夫大丈夫!
    あいつさ、根っこは良い奴だから。彼女が会いたいって言ってるんだもん、ムゲに断るわけないよ」

仁美「……そう、でしょうか」

さやか「そうだって! ていうか、もし断ったら直々にシバく!
    仁美に手ぇついて謝らせるからさ、安心しなさい!」

仁美「まぁ……ふふっ」

さやか「…………」

さやか「……恭介もさ」

仁美「?」

さやか「……昨日は、色々私が言っちゃったから、あんな風になっちゃっただけで……
    仁美が嫌いになったとか、重荷だとか……そんなの、絶対に思ってないよ」

仁美「…………」

さやか「もう一度、ちゃんと話し合えば……絶対に仲直りできるって」

仁美「……ふふっ」

さやか「……?」

仁美「不思議ですね。……さやかさんに言われると……本当に、そんな気がしてしまいます」

さやか「……そう? ……よかった」

仁美「……ありがとう。さやかさん」

さやか「うん。……上手くいくよ、きっと」

仁美「……ええ。きっと」


さやか(……そっか。そうだったんだ)

さやか(……だから、仁美は恭介を……)

さやか「…………」

ちょっと夕飯食ってくる

―2月14日・早朝、上条家―

TV『――ので、関東全域に渡り、夜から明日の朝にかけ、激しい降雪と強風が予想され――』

上条父「恭介、準備できてるのか?」

恭介「大丈夫だよ、ほら」

上条父「時刻表は持ったな? 財布は? 傘は? カイロも忘れるんじゃないぞ」

恭介「分かってる、分かってるって。……あのバスも、初めてじゃないんだしさ。
   それに、雪も夜からみたいだし……
   きちんと行って帰ってこれるよ。……父さんこそ、仕事頑張ってね」

上条父「スマンなぁ、急に入るもんだから……」

恭介「いいよ。母さんが見に来てくれるんでしょ?」

上条父「ああ、仕事場から直接行くってさ。 
     連絡あるかも知れんから、携帯忘れるなよ」

恭介「はいはい、持ってるって、ほら」

恭介(あ、電池残り1つか……いいや、帰ったら充電しよう)

恭介(……ん? メール来てる……)ピッ

恭介「! …………」

上条父「どうした?」

恭介「ううん、何でも……それじゃ、行ってきます」

上条父「車に気を付けるんだぞ」

恭介「はは、何百回目かな? それ」

上条父「冗談抜きでだ」

恭介「……うん、分かってる。じゃ、行ってきます」

上条父「……頑張れよ」

恭介「……うん」

―高速バス発着場―

恭介「…………」ピッ

恭介「……今日の6時、か」

恭介「…………」ピッピッ


  To:志筑さん
  Sub:Re:
  ―――――――――――――
  メールありがとう。
  こちらこそ、この前はゴメン。
  6時に噴水広場だね。分かったよ。
  僕もちゃんと謝りたい。
  寒くないようにして待っててね。


恭介「…………」ピッ

―午後、鹿目家―

  ピンポーン…

まどか『はーい』

さやか「あ、まどか? あたしだけど」

まどか『あ、さやかちゃん。上がって上がって! チョコ、ちゃんと冷えてたよ』

さやか「お、そう? よかったよかった、教えた甲斐があるってもんよ。
    それじゃ、おじゃましまーす」ガチャッ

―リビング―

知久「いらっしゃい、さやかちゃん。あの生チョコ、冷蔵庫で良かったよね?」

さやか「こんにちは、パパさん! いやぁ、昨日はありがとうございました。わざわざ手伝ってもらっちゃって」

知久「ははは、何だか僕も久々にさ……」

さやか「やっぱり、ママさんにプレゼントですか?」

知久「ん~? ……んふふふふ……」

まどか「ほら、さやかちゃん。これこれ」トサッ

さやか「おーし、じゃ、こっからは角切りとトリュフだ!」

まどか「おーっ!」

―1時間後―

さやか「ふぃーっ、できたできた」

まどか「ココアパウダーって凄いね。かけるだけで一気にそれっぽく……」

さやか「ホントホント。……じゃあ、約束通りこれは山分け、と……」

まどか「うん。ありがとう、さやかちゃん。すっごくおいしそうだよ」

さやか「なーに、親友の女子力アップも女の子の務めだからね」

まどか「あはは」

 ヒュオォォォ…

まどか「風、結構出てきたね」

さやか「うん。雪はまだ降ってないみたいだけど」

まどか「夜から大雪だっけ」

さやか「らしいね、予報では」

まどか「……一応、見とこうかな。天気」ピッ

TV『ビュォォォォォォォ!!』

2人「……!?」

TV『――以上、宇都宮支局でした。 変わりまして、茨城県水戸市の映像です。現場の悠木さん?』

TV『はい、ここ水戸でも、ご覧の通り、先程から強い吹雪が――』ビュォォォォ

まどか「うわー……予報よりだいぶ早いよ、これ」

さやか「……なんか変じゃない? こっちはまだ全然……」

TV『――続いて、東京・新宿区の映像です。斎藤さん?』

TV『はい、えー、東京の新宿です。数分前から雪が降り始め、現在は風速9メートル毎秒にまで強まっています』

TV『また、降雪による各種交通機関の運転見合わせ、渋滞も――』

さやか「――!」

さやか「まさか……」ピッピッピッ

  プルルルルッ プルルルルッ…

―東京、高速バス車内―

恭介「…………」

運転手『えー、お客様にお知らせいたします。このバスは現在、積雪と人身事故の影響により――』

恭介(……3位、か)

恭介(……結構、頑張ったと思ったんだけどな)

恭介「…………」

  ブーン、ブーン、ブーン…

恭介「? ……さやかか」ピッ

恭介「……もしもし、さやか? 悪いけど、今バスの中だからさ……」

さやか『バス!? 恭介、今どのあたり!?』

恭介「え? っと……もうすぐ練馬のICだけど。
   雪のせいで、何か事故があったみたいでさ。なかなか進まなくて……」

さやか『っ……』

恭介「……コンクールが終わったと思ったら、急に降り始めるんだもん。
   ……参ったよ、本当に。せっかく今日……」

さやか『恭介っ!』

恭介「っ! な、何?」

さやか『いい!? 早まんないで、誰にもメール送らないで!
    今日は行けそうにない、なんて仁美に言ってみなさい! ゼッタイに承知しないからね!』

恭介「なっ……!? な、何でさやかが――」

さやか『そのまま待ってて! いい!? 絶対に会わせてあげるから!』

恭介「――!? え……」

 プツッ! ツー ツー ツー…

―鹿目家―

さやか「…………」

  『……ただ、不安なんです。
   上条君にとって、私は何なのか……』

さやか(……そうだよ……)

さやか(これがダメなら……もう、後が……)

まどか「……さ、さやかちゃん……?」

さやか「……ねえ、まどか」

まどか「え?」

さやか「この家ってさ、噴水公園まで、そんなにかからないよね」

まどか「えっと、うん……歩いて10分もしない、と思うけど」

さやか「……こういうこと言っちゃうの、どうかと思うんだけどさ」

さやか「チョコ作りのお礼ってことで……ひとつ、頼まれてくれないかな」

まどか「……?」

―繁華街―

 チャーラララーチャララーチャララー♪

仁美「あら……さやかさん?」ピッ

仁美「もしもし……え? 今ですか?」

仁美「ええ、時間までちょっと買い物でも、と……雪もまだ少ないですし」

仁美「……え? ええと……」

仁美「はい、私はその、嬉しいんですけど……でも、まどかさんにご迷惑では……」

仁美「――あ、まどかさ……いえ、しかし……いいんですの? ほんとうに……」

仁美「いえ、私としては、そうしていただけるなら……ええ、すみません……ありがとうございます」

仁美「はい、それでは今から……いえ、ありがとうございます、本当……」

 ピッ…

仁美「……さやかさんったら。秘密のつもりでしたのに」フフッ

―鹿目家―

まどか「――うん、待ってるね。ばいばーい」ピッ

さやか「……ゴメンね、まどか。何か……利用するみたいになっちゃって」

まどか「何言ってるの、仁美ちゃんと上条君のためなんでしょ?
    わたしだって友達だもん」

さやか「……ほんっといい子だねぇーまどかは! よしよしよーし」ワシャワシャ

まどか「やん、もうっ……それで、えっと……6時ちょっと前になったら、仁美ちゃんを連れて公園だよね?」

さやか「うん。いつ雪が酷くなるか分からないのに、仁美を外で待たせられないし……お願い」

まどか「……ねぇ、上条君のこと、やっぱり言った方が……」

さやか「……大丈夫。絶対に時間には間に合わせるから」

まどか「でも、どうやって……今、東京で止まっちゃってるんでしょ?」

さやか「…………」キュィィン

まどか(! ソウルジェム……?)

さやか「……マミさん、いっつも言ってるでしょ? 奇跡を起こすのが、魔法少女なんだって」

まどか「――! で、でも……」

>>1だけど猿食らったので速報に移行する
すまぬ

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