唯「東京スカイツリー大決戦!」(256)

★前日

●N女子大学 軽音部部室


晶「ハァ……何で休みの日まで起こさなきゃなんねーんだよ」

律「おーごくろうさん」

澪「ごめんな。今日は唯が実家に帰る日だったから」

晶「いやお前らが起こせよ」

菖「あ~そういえば唯ちゃん家族とスカイツリーに行くって言ってたね。いいなー」

律「実は私と澪も明日スカイツリー行くんだぜ!」

菖「えーいいなー!」

澪「いや初耳なんだけど……」

律「いいじゃーんムギも実家帰っちゃったし暇なんだもーん」

律「そうだ菖達も来る?」

菖「行きたいのは山々なんだけどねー」

幸「明日はスタジオの予約取ってるから」

律「あらー残念」

澪「本当に行くのか? 天望デッキの当日チケット買うのって結構並ぶらしいぞ」

菖「スカイツリー以外にも周りに色んな施設があって買い物とか出来るらしいよ」

澪「へえ、それは見てみたいかも」

律「じゃあそっちメインにするか!」

晶「行く事前提で話してるな」

澪「うん……まあいいか」

●桜校 軽音部部室


菫「明日はお昼過ぎくらいに集合でいいかな?」

直「うん」

ガチャ

純「何々なんの話?」

憂「おつかれ~」

菫「あっお疲れ様です。私達明日スカイツリーに行くんです」

純「え! いいなー」

憂「ほんとっ? 私も明日家族でスカイツリー行くんだよ~」

純「憂も!? ……なんかすごく悔しい。さわ子先生も行くって言ってたし」

憂「そうなの?」

純「なんか彼氏が出来たらしくて」

憂菫直「えっ!?」

純「そんな事よりみんなしてずるいー!」

直「そっちの話の方が気になるのですが」

菫「うん……」

ガチャ

梓「おつかれー」

純「梓!」

梓「な、なに?」

純「私明日スカイツリー行くんだよ! うらやましいでしょ?」

梓「ふーんそうなんだ」

純「……えっそれだけ?」

梓「へ? 何が?」

純「……あーーもういい! ほら早く練習しよう!」

梓「何なの……?」

●平沢家 リビング

憂「ただいま~」

唯「ういーおかえりー!」

憂「お姉ちゃん! 久しぶり~!」

唯「家に誰もいないから寂しかったよ~」

憂「あれ? お母さん達まだ帰ってないのかな」

唯「今日出張から帰ってくるんでしょ?」

憂「そのはずなんだけど……」

プルルルル

憂「あっお母さんから電話」

憂「もしもし」

憂「……うん、うん……えーーっ!?」

唯「!?」

憂「うん、はぁい。じゃあねー」ピッ

唯「どしたの?」

憂「帰るの明日の夜になっちゃったからスカイツリー行けないって」

唯「えーーっ!?」

憂「チケットは予約してあるから私達で行ってきてねだって」

唯「そっかー……」

リリリリリリン リリリリリリン

唯「今度は私の携帯だー」

唯「はいはいどちら様かな~……和ちゃんからだ!」

 


★当日


 

唯「んひぃぃぃぃぃ!おまめさんきもちいいでつぅぅぅぅぅ(^ρ^)」グチャグチャグチャプシャアアアア
和「唯!教室でおまたいじりするのやめなさいって何度いえばわかるの!」バッチーン
唯「あーう!ゆいのおまたいじりじゃまするだめー!のどたたんわるいこ!しーね!しーね!(`q´)むひょひょぉぉぉぉぉぉぉぉー(^ρ^)」グシャグシャグシャプシャー
和「生徒会長として、こんなはしたない真似を見過ごすことはできないわね…しょうがない、お豆さんを取っちゃいましょう」ムンズッ
唯「あーう!ゆいのおまめさんとる、だめー!("q")」
和「ふんす!」
ブチブチブチブチ
唯「あんぎゃああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ("q")!!!おまめさんーーーーーー!!!!」ガクガク
和「もったいないからこのお豆さんはケーキの上に乗せてっと…はい唯、この間はケーキの苺食べちゃってごめんね」
唯「んひぃ、んひぃ…ぁーう…おまめさん…ゆいのおまめさん…("q")」パクッ ブチブチ
和「食wwべwwたww」
唯「("q")」ピクピク
和「じゃあ私、生徒会いくね」

●中野家


ピンポーン

梓「ふわぁ……はい」ガチャ

純「おはよ! スカイツリーいこ!」

梓「え……は?」

純「だからスカイツリー行こうってば」

梓「…………えっと、いかない」

純「えー!」

梓「昨日はそんな事言ってなかったじゃん」

純「あれは憂もスミーレ達も今日スカイツリー行くらしくて羨ましかったから梓にも味あわせてやろうと思って」

梓「何よそれ……ってみんな行くの!?」

純「みんな一緒じゃないけど行くんだって。憂は家族で行くって言ってたから……あ、唯先輩も一緒って言ってたかも」

梓「えっ」ピクッ

純(お、効果アリ…かな?)

純「他の先輩も来るって言ってたよ」

梓「そ、そうなんだ……」

梓(学園祭が終わってからも先輩達忙しくてろくに会えてないんだよなぁ)

純「だから行こうよ。ね?」

梓「……まあ純がそこまで言うなら」

純「やったっ(ちょろい)」

梓「でも天望デッキに行くのって結構お金かかるんでしょ?」

純「私お金ないからそっちはいいや。東京ソラマチだっけ? そっち見て回ろうよ」

梓「まあいいけど。電車って何線乗ればいいの?」

純「私お金ないから自転車で行こ。私の自転車パンクしてたから梓の自転車で二人乗りね」

梓「……やっぱり行くのやめようかな」

●平沢家


ピンポーン

憂「はーい」

和「ごめんください」

憂「和ちゃん久しぶりー!」

和「元気そうね」

憂「うんっ」

和「それで唯は?」

憂「もうちょっとで準備終わるはずだから上がって待ってて」

和「ええ。でもチケット代本当に払わなくていいの?」

憂「うん。それにもうお金払っちゃってるから行かないともったいないもん」

和「でも当日の発券には決済されたクレジットカードと入場券購入確認メールもしくは購入履歴画面の印刷(携帯電話での画面確認も可能)が必要なんじゃ……」

憂「だいじょうぶ! 今回はだいじょうぶだから!」

和「ならいいんだけど」

唯「わー和ちゃんひさしぶりー!」

唯「昨日帰ってきたんでしょ? 今度みんなで集まろうね! あ、うちでパーティーしよっか!?」

和「いいから先に準備終わらせちゃいなさい」

唯「はーい」

和「まったく……ふふっ」

憂「楽しみだねースカイツリー!」

和「そうね」

●上野駅


菫「直ちゃんおはようー」

直「おはよう……あ」

直「おお……」

菫「あ、えっと、この子が奥田直ちゃん」

直「ど、どうも」

菫「そしてこちらが琴吹紬お嬢様です」

紬「あなたが直ちゃんね。よろしく!」

直「は、ははい。本日はお日柄もよく誘っていただきまして誠にありがとうございます……?」

紬「うふふっそんなにかしこまらなくていいからね。それじゃあ行きましょ」

直(この人が例のお嬢様……)

菫「どうしたの?」

直「てっきりすごい車とかで来るのかと思った」

菫「あるにはあるんだけど……」

紬「ここからスカイツリーのデザインが施されていて天井部分がガラス張りでスカイツリーを見上げる事が出来るスカイツリーシャトルと呼ばれるバスに乗れるのね!」

菫「お嬢様はこういうのが好きなの」

直「へぇ」

●東京駅


菖「予約取れてないとか……」

幸「晶がスタジオ代ケチるから……」

晶「だって金欠だし入会費も年会費もいらない店だっていうから!」

菖「逆に怪しいでしょそんなスタジオ」

晶「大学の方も埋まってたし少しでも練習しておきたかったんだよ」

菖「学園祭以来やたら張り切ってるよね」

幸「うん」

晶「なんだよ、プロになれるかもしれないんだから当然だろ?」

菖「先輩が絡んでるからじゃなくて?」

晶「……か、関係ねーし」

幸「やっぱり」

菖「聞くまでもなかったけどね」

晶「いやだから違うって!」

菖「やっぱりこのまま帰るのやだなー」

幸「だよね」

晶「聞けよ」

菖「そうだ! せっかくだからスカイツリー行こうよ! りっちゃん達に会えるかも」

晶「えーいいよめんどくさ……」

晶(いや待てよ。スカイツリーってデートスポットでもあるよな)

晶(下見したり他の人のファッションを参考にしていつか先輩と……)

菖「東京駅からだと山手線で上野に行ってから銀座線で浅草駅かな」

幸「総武線快速で錦糸町駅に行って半蔵門線から押上(スカイツリー前)駅でも行けるよ」

晶「丸ノ内線で大手町から半蔵門線に乗り換えた方が安く済むだろ」

菖幸「……」

晶「なんだよ」

菖「乗り気じゃん」

晶「い、いいだろ別に」

●N女子大学 学生寮


澪「律ーまだかー?」

律「ごーめんもう少しー」

澪「早くしないと天望デッキ当日券買えなくちゃうぞ!」

律「……私より行く気あんじゃん」

澪「昨日色々調べたんだけどさ、美味しそうなスイーツのお店があるんだ。それからライトアップの色は日によって違うらしいぞ!」

律「わかったわかったって」

澪「あとプラネタリウムもあるんだ」

律「へえー。でもプラネタリウムだったら水族館の方が楽しそうだな」

●スカイツリーへの道


梓「はあはあ……何で私がこがなきゃいけないの……」

純「梓がジャンケン負けたんじゃん。後で交替するって」

梓「はあはあ……」

純「……」ポチポチ

梓「はあ……はあ……」

純「……」ポチポチ

梓「はっ……はっ……ねえ純……何か喋ってよ」

純「……あごめん。携帯いじってた」

梓「」イラッ

純「え、えーっと、自転車こいでると携帯が鳴っても気付かないよね?」

梓「知るか!」

●東武伊勢崎線 北千住駅

唯「うーん……」

唯「やっぱりあずにゃん電話出ないや」

憂「そっかー」

唯「会いたかったなぁ……せっかくテストとかレポート終わったのに」

唯「あーもっと早く連絡しておけばよかったー!」

和「ほら電車来たわよ」

唯憂「はーい」

唯「ところでどこで降りるんだっけ?」

和「とうきょうスカイツリー駅よ」

唯「そんな駅あったっけ?」

和「元は業平橋駅だったんだけどスカイツリーの開業前に改称したの。ちなみに今乗ってる東武伊勢崎線の東武動物公園駅から浅草橋までの区間を東武スカイツリーラインと呼んでるそうよ」

唯「おおーさすが和ちゃん先生」

憂「そういえばさわ子先生もスカイツリーに行くらしいよ」

唯「さわちゃんも?」

和「先生一人で来るの?」

憂「多分付き合ってる人と来るんじゃないかなぁ」

唯和「何それ!?」

●スカイツリーシャトル(バス) 車内


紬「あっ! 今チラッと見えたわ!」

菫「見えましたねお嬢様」

紬「……かたい」

菫「へ?」

紬「せっかくのスカイツリーなんだから普段通りでいいじゃない」

菫「え、あ、うん。なんだか直ちゃんとお嬢様と一緒にいるのが不思議な感じでつい」

紬「やだやだーお姉ちゃんて呼んでくれなきゃヤダー!」

菫「わかった! わかったから静かにしてお姉ちゃん!」

直「……」

直「……あ、見えた」

紬「ところで軽音部はどう?」

菫「すごく楽しいよ。学園祭のライブは緊張したけど」

直「先輩のみなさんも優しいですし」

紬「よかったぁ。さわ子先生も元気?」

菫「元気というか……元気すぎて困るというか」

直「最近付き合い始めたらしくていつも機嫌がいいです」

紬「え!?」

●銀座線 電車内


澪「プラネタリウムいいだろ?」

律「水族館いいじゃん」

澪「すっごく綺麗なんだぞ」

律「座ってるだけなのより水族館の方が面白いって」

澪「いーやプラネタリウムの方が絶対いい」

律「水族館の方が絶対面白いっての」

澪「プラネタリウム!」

律「水族館!」

●東京ソラマチ 押上駅前広場口
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菖幸晶「おおー↑」

幸「高い……」

晶「間近で見ると首が痛くなるな」

菖「どこから見て回ろうか?」

晶「そもそもここには何があるんだ?」

菖「えー、東京スカイツリータウンは東京ソラマチ、東京スカイツリー、プラネタリウム、水族館、オフィス等から構成される複合施設です……ってパンフレットに買いてあるよ」

晶(水族館にプラネタリウム……ありだな)

晶「東京ソラマチっていうのは?」

幸「東京ソラマチは商業施設のことでスカイツリーを挟んで東西に広がっているビル……食品、雑貨、カフェなど様々な店舗があります、だって」

菖「私達の今いる所がEast Yardの押上駅前広場口でここから建物に入るとソラマチ商店街っていうのがあるんだって」

晶「全然わかんないんだけど」

幸「マップ見なよ」

晶「要は横長のデパートで同じ階の西側と東側で売ってるものが違ったりするんだろ?」

菖「もうそれでいいよ。とりあえずソラマチ商店街に行ってみよう!」


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●東京ソラマチ 1F ソラマチ広場
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さわ子「……」

さわ子「……」

さわ子「フラれた……」

 

さわ子「……」

さわ子「……ちくしょう」

さわ子「ちくしょおおーーー!!」

  「うわっ!?」
  「キャッ」

さわ子「ああん!?」

さわ子「くそ……なんでカップルだらけなのよ」

さわ子「……なんで私ここにいるのよ」

さわ子「…………だってせっかくチケットとれたんだもの」

さわ子「だって……だってぇぇぇ……」

●スカイツリーへの道
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純「ぜえはあ……あずさーこぐの交替してよー」

梓「さっき代わったばっかでしょ!」

梓「あっほら! スカイツリーが大分大きくなってきたよ。もうすぐだって」

純「ぜえ、ぜえ……もういいー帰るー」

梓「おい」

●東武鉄道伊勢崎線 とうきょうスカイツリー駅
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唯「おおーっ!」

憂「たかーい!」

和「間近で見るとすごいわね」

唯「これどのくらいの高さなの?」

和「634メートル」

唯「はぁー……」

和「夜になるとこれがライトアップするのね」

唯「ライティングには『粋』と『雅』の2種類があるんだよ!」

憂「そうなんだ~」

唯「そうなんです。『粋』は隅田川の水をモチーフにした淡いブルーで『雅』は江戸紫?をテーマにしたライティングなのです」

憂「お姉ちゃんすご~い!」

唯「ふふん、バッチリ調べましたから。この他にも七夕とかクリスマスにスペシャルライトアップがあるんだよ」

和「へえ、今日はどのライティングなの?」

唯「…………えっと」

和「……そこは調べなかったのね」

唯「そ、それは見てのお楽しみの方がいいと思って!」

和「そうなんだ。じゃあ行こうか」

唯「うぅ……」

憂「ど、どこから見て回ろっか?」

和「そうね……」

唯「あ、私お腹すいたや」

和「……食べるところでいいわ」

憂「そうだね」

●東京ソラマチ 2F West Yard フードマルシェ
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紬「こんな所にお魚屋さんが!?」

紬「あっお弁当もある! わぁ~」

菫「スカイツリーの傍にこんなところがあるんだ」

直「デパ地下みたい」

紬「デパ地下……!」

直(……喜ぶポイントがわからない)

菫「そうだ、後で軽音部に持っていくお土産買わなきゃ」

直「やっぱりお菓子かな?」

紬「そういえば梓ちゃんはたい焼きが好きなのよね」

直「そうなんですか」

菫「梓先輩の好きな物買っていったらまた抱きつかれたりして。ふふっ」

紬「!?」

直「……あるかも」

紬「そ、その話くわしく!!」

●銀座線浅草駅⇒東京スカイツリー間


律「……」

澪「……」

律「ついてくんな」

澪「はあ!? 私はスカイツリーに行くんだ! 律こそ帰ればいいだろ!」

律「なんでだよ! 私が行きたくて行くんだっての!」

澪「はぁーこんな事なら今日はやめて改めて幸達と来ればよかった」

律「だからついてくるなよ!」

澪「この道が一番近いんだからしょうがないだろ!」

律「……ふんっ!」

澪「ふんっ!」

●東京ソラマチ 1F East Yard ソラマチ商店街
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菖「おおー色んなお店があるね」

幸「カフェに雑貨にカレー屋もあるよ」

晶「うへーすげえ人ごみ」

菖「お昼過ぎちゃってるしどこかで食べない?」

晶「そうだな……あ、ケンタッキーがあるぞ」

幸「ここまで来てケンタッキー……」

菖「じゃあ晶はケンタッキーね。私達はクレープ食べるから」

晶「いやケンタッキー食べるなんて一言も……ちょ、まって」

●東京ソラマチ 1F West Yard ステーションストリート
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唯「はぁー美味しかった。ムーミンカフェにして正解だったね」

憂「内装も可愛かった~」

和「でもちょっと割高よね」

唯憂「和ちゃん……」

和「え? ……あら、あれって律じゃない?」

唯「えっどこどこ?」

和「ほらあれ」

唯「あっほんとだ! りっちゃーん!」

律「え? おおー唯!」

唯「りっちゃんも来てたんだ~」

憂「こんにちわ律さん」

和「久しぶり」

律「和も憂ちゃんも久しぶりだなー!」

唯「りっちゃん1人? 澪ちゃんは一緒じゃないの?」

律「え゛っ? いや……う、まあ1人かなー……」

唯和(……これはケンカしたな)

唯「ケンカはダメだよりっちゃん!」

和「だめよ唯、もしかしたら澪の方が悪かったって可能性もあるでしょ」

律「お前ら酷い言い草だな……」

憂「そうだよお姉ちゃん。律さんは天望デッキ行くんですか?」

律「天望デッキかー……せっかく来たんだし行っておくのも悪くないな。てか行きたくなってきた」

唯「だよね~一度は昇ってみたいよねえ」

憂「よかったら一緒にどうですか?」

律「えっいいの?」

和「ちょっと待って。ねえ律、澪もここに来てるの?」

律「え、は? し、しらねーし」

憂「そっか……私達だけで天望デッキに行ったら澪さんに会えないかもしれない」

唯「それは困ったね」

律「いや、澪が来てるなんて一言も言ってないんだけど」

唯「……」

律「だからさ、お邪魔じゃなかったら私も一緒に行きたいなーって」

和「邪魔なわけないでしょ。ただ……」

唯「あー澪ちゃん発見!!」

律「!!」ピュー

憂「えっ澪さん?」

和「どこ?」

唯「なんちゃってー……ってあれ? りっちゃんは?」

和「見当たらないわ」

唯「あちゃー、どうしよう」

憂「お姉ちゃん……」

和「やっぱり澪も来てるみたいね。スカイツリーに着いてすぐにケンカしたのかしら」

憂「どうする? とりあえずチケット発券しておく?」

唯「そだね~」

和「チケット発券したらそのままエレベーターに乗るんじゃなかった? それに時間指定も……」

憂「大丈夫だから! 今回は大丈夫だから!」

●東京ソラマチ 3F West Yard ソラマチ タベテラス(フードコート)


さわ子「……もぐもぐ」

さわ子「……」

さわ子「ビビンバおいしいぃ……」

さわ子「モグモグ」ポロポロ

さわ子「……ごちそうさま」

さわ子「多少気が紛れたような気がしなくもないわ」

さわ子「やっぱり天望デッキ行ってみようかしら……気も紛れそうだし」

●東京ソラマチ 1F ソラマチ広場


澪「何で私が回り道しないといけないんだ……バカ律」

菖「あっ澪ちゃん!」

澪「えっ?」

菖「やほー」

澪「あれ? 今日はスタジオ行くって言ってなかった?」

幸「そのはずだったんだけど晶のせいで」

晶「仕方ないだろ」

菖「ところで澪ちゃん」

澪「ん?」

菖「りっちゃんは?」
幸「りっちゃんは?」
晶「律は?」

澪「う……」

澪「り、律なんて知らない! あんな馬鹿……」

晶菖幸(……ケンカしたな)

菖「じゃありっちゃんは来てないの?」

澪「それは……」

幸「来てるんだ?」

澪「た、多分」

菖「んー、とりあえず私達と一緒に見て回る?」

澪「いいのか?」

幸「もちろん」

晶(……そういや澪って男に人気ありそうだよな。彼氏とかいたことあるんだろうか)

晶(普段はそんな事聞く機会なかったからな……参考にするか)

菖「それじゃいこっか!」

幸「人がいっぱい」

菖「さすがスカイツリーだね」

晶(こいつらの前でそういう話すると絶対いじられるからな……よし)

晶「澪、ちょっと」コソコソ

澪「なに?」

晶「ちょっとこっち」

澪「え、でも菖と幸が……」

晶「いいから」

澪「う、うん……?」

晶「……」

澪「2人とはぐれちゃうんじゃないか?」

晶「いいんだよ、後で追いつけば」

澪「何か見たいものでもあったの?」

晶「と、ところで澪はさ……」

晶「か、彼氏っていたことある?」

澪「…………へ?」

澪「な、ど、どうしていきなりそんな……////」

晶「いやちょっと……」

澪「……い、いないけど」

晶「1度もない?」

澪「な、ないけど」

晶「なんだ……はぁ」

澪「何だその溜息」

晶「よくよく考えるとお前らってそういうのとは無縁そうだもんな」

澪「……」イラッ

澪「そ、そんなことないぞ!」

晶「そうなのかぁ?」

晶「……あー言われてみればそうかもな。律とか」

澪「えっ!?」

晶「あいつ誰とでもすぐ仲良くなるし明るいからな」

澪「そ……そ……」

晶「今あいつ1人なんだろ? ナンパとかされちゃってたりしてな」

澪「ッ?!」

男1「あっスカイツリーで一番かわいい人発見!」

女「笑」

男2「どうもー」

男1「スカイツリー昇りました? どうでした?」

晶「ちょうどあそこにいる奴らみたいなのがさー」

澪「」ブルブル

晶「なーんてそんな事万に一つもありえね――」

澪「わ、私律探しに行くっ!!」ピュー

晶「えっ……えっ!?」

晶「……いっちまった」

●東京ソラマチ 2F East Yard ファッション&雑貨
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直「――というわけで学園祭前あたりから突然抱きつかれるようになって」

紬「あの梓ちゃんが……うふ、ふへへ」

菫「お、お姉ちゃん前見て歩かないと危ないよ!」

紬「可愛い後輩に抱きつくのは軽音部の伝統……その通りよ!」わきわき

菫「お姉ちゃん……?」

直「……」ササッ

菫「え、ちょ、だめだよこんな所で! 直ちゃん助け――いない!?」

紬「えーいっ!」

菫「あーっ!」

直(……本屋もあるんだ)

直(このフロアは服とか雑貨が多いなあ)

直(そういえば弟達の靴下に穴空いてたっけ)

直(でも子供用の靴下が売ってるようなお店はなさそう……)

紬「そういうのは別の階にあるかも」

直「!?」

紬「後で行こうね」

直「は、はい……あれ、菫は?」

●東京ソラマチ 1F


菖「わーあそこのカフェの中犬がいるよ!」

幸「愛犬とくつろげるドッグカフェ、だって」

菖「へぇ~。澪ちゃん見てよあそこかわいーよ……あれ、澪ちゃんは?」

幸「さっき晶がどこかに連れて行ったよ」

菖「え!? なにやってんの晶は~」

菖「……てゆーか気付いてたのに止めなかったの?」

幸「なんだか面白そうだったから」

菖「それはそうかもしれないけど……」

菖「……」

幸「ごめん」

菖「それはいいんだけどさ、うーん……」

幸「どうしたの?」

菖「最近の晶って張り切ってるよね。今日だってさ」

幸「あ、うん」

菖「振られちゃったけどまだまだ先輩のこと諦めてないし、それに……」

菖「本当にプロになるつもり……なんだよね」

幸「うん」

菖「いざプロって言われると流石に色々考えちゃうなぁ」

幸「不安?」

菖「そりゃあねー。幸はどうなのよ?」

幸「……ちょっとは」

菖「そっか」

幸「だけど不安よりも嬉しいって気持ちの方が強いかも」

菖幸「3人でバンド続けられるし!」

菖「……だよね!」

幸「うんっ」

菖「よし! こうなったらとことん晶に付き合ってやるかー!」

幸「おー」

●東京ソラマチ 2F Tower Yard フードマルシェ


晶「おい待てって澪!」

  「はい?」

晶「あ……すみません人違いでした」

  「どうしたの?」

  「ううんなんでもない。いこ」

晶「……」

晶「今の人澪にそっくりだったな……眼鏡してたけど」

晶「あれ……じゃあ澪はどこいったんだ?」

菫「こっちは食品関係のお店があるみたい」

直「フードマルシェって食品売り場のことなのかな」

紬「マルシェはフランス語で市場っていう意味だから」

晶「ん?」

紬「あら?」

晶「よう」

紬「晶ちゃん! わぁぁこんな所で会えるなんてすごいね!」

菫「!!?」

菫(この怖そうな人とお姉ちゃんが知り合い!?)

紬「こちら妹の菫とそのお友達の直ちゃん」

菫「こ、こんにちは……」
直「こんにちは」

晶「あ、ども」

晶(すげー、思いっきり外人なのに思いっきり日本語だ)

菫(お姉ちゃんのお友達……だよね。でも……)

晶「?」

菫(この怖そうな人が……? お姉ちゃん大丈夫なのかな……)

紬「晶ちゃん1人なの?」

晶「いや、菖達と来てたんだけど澪とも会ってな。色々あって澪を見失っちゃってさ」

紬「澪ちゃんも来てたんだ~。じゃありっちゃんも?」

晶「来てるらしいけどあいつらケンカしてるっぽいぞ」

紬「えっ!?」

晶「どうせつまらない事でケンカしたんだろうけどな」

晶(ムギか……綺麗だし物腰柔らかいし先輩もこういうのがいいんだろうか)

晶(あと髪も長いしな)

紬「りっちゃんと澪ちゃんがスカイツリーでケンカ……ブツブツ」

紬「ブツブツ……そんな二人が地上数百メートルの天望デッキで仲直り……ナイスボール!!!」

晶「」ビクッ
直「」ビクッ

紬「それは一大事ね! 二人が心配だわ!」

晶「思いっきりニコニコしてんじゃねーか」

 

紬「私今から澪ちゃんにチケット渡してくる! 丁度1枚余ってたから」

晶「いやそんな事システム上できな――」

紬「いいの! できるから! 二人ともゴメン、ちょっと行ってくるね!」

菫「え、あ、お姉ちゃん!? ちょっと待って! ああ……」

直(琴吹先輩って変わった人だなぁ……)

晶「……」

菫「あ、あのっ!」

晶「ん?」

菫「ええと、お嬢様はああいう所もあったりして、純粋な人だからもしかしたら(貴方の様な)人に騙されやすいかもしれなくて……だから……!(お姉ちゃんに酷い事だけは……!)」

晶「あー、ムギは(唯と比べて)すごくしっかりしてるからその辺は大丈夫だと思うぞ。楽しくやってるみたいだし心配するような事はないと思う。もしあったとしても同じサークルのよしみで助けてやるよ」

菫「あ、えっと……ありがとうございます」

菫(なんだか思ってたよりいい人だった……!)

菫「ってお姉ちゃん追わなきゃ! お姉ちゃんどっちに行ったんだろう」

直「下に行ったよ」

菫「よし行こう直ちゃん! あ、あの失礼します!」

晶「あ、うん」

晶「……」

晶「ムギのやつマジでお嬢様だったんだな……」

晶「さて、もう少しこの階で探すか」

菫「あれぇ……どこ行っちゃったんだろう」

直「電話してみたら?」

菫「そうだね」

  「Excuse me」

菫「へ?」

  「Chotto iidesuka?」

菫「わ、私ですか!?」

●東京ソラマチ 1F


澪(いくら律でも見ず知らずの男について行くなんてありえないよな……?)

ヴーーーー ヴーーーー

澪(でも万が一……なんて事になったら)

ヴーーーー ヴーーーー

澪(ナンパされて、そのまま2人で過ごして……いや、相手が1人とは限らないんじゃないか?)

――――――――――――――――――――――――

男1「あっスカイツリーで一番かわいい人発見!」

律「笑」

男2「どうもー」

男1「スカイツリー昇りました? どうでした?」

――――――――――――――――――――――――

澪(そ、そのまま○○に連れて行かれて○○されて○○なんてことに……?)

澪「うわあああぁーー!?」

  「!?」

ザワッ

澪「あ……////」

澪(お、おちつけ私……)

澪(まずは律が向かった1階のWest Yardに行ってみるか。電話は……気まずいし)

  「あ……の」

  「Where is――」

澪(あ、綺麗なブロンドの子だなぁ……可愛い。さすが東京の新名所だなー海外の人も見に来てる)

澪(どこの国の人なんだろう)

  「Ticket uriba dokodesuka?」

菫「あ、あ、あいきゃんとすぴーくいんぐりっしゅ!」

澪「」ガクー

  「OMG……」

菫「ど、どうしよう直ちゃん!」

直「えっと……」

  「OK、OK……umm……ticket uriba sagasitemasu」

菫(ええー!? 英語喋れないって伝えたはずなのに!)

菫「あいきゃんとすぴーくいんぐりっしゅ!」

  「OK……SKYTREE ni noborutameno……」

菫(ええぇぇ……あ! 英語が理解できないって言った方がいいのかな? ええと……ええと)

菫「な、直ちゃぁん……!」

直「あいきゃんとすぴーくいんぐりっしゅ」

菫「ええーーっ……えっとえっと……!!」

澪「……あの」

澪「Ticket uriba ha 4F desu」

  「Oh~ thank you so much!」

澪「い、いえ……」

菫「あ、あのっ、ありがとうございます~!」

澪「ああ、いや、たまたま聞き取れただけだから」

菫「本当に助かりました!」

澪「いえいえ。それじゃあ」

菫「……かっこいいなぁ」

直「あの人どこかで見た気が……」

菫「あれ? そういえば私も……」

菫「……はぁ、英語もっとちゃんと喋れるようになりたいなあ。せめて意味が分かる位には」

直「私さっきの質問ならわかったよ」

菫「え!? どうして言ってくれなかったの!?」

直「場所知らなかった。あと英語で伝えられない」

菫「ああ……」

菫「もっとしっかりしなきゃなぁ」

直「?」

菫「だって来年になったらきっと私か直ちゃんが部長になるんだよ?」

菫「もし外国人の後輩が出来たら……」

直「そうそうないと思うけど」

菫「それだけじゃなくて……」

直「私達が上級生……部長」

菫「うん、最近考えてるんだ。梓先輩や憂先輩みたいな先輩になれるかなって」

直「そっか……来年は私達が」

菫「うん」

直「先輩たちいなくなっちゃうからね……」

菫「うん……」

●東京ソラマチ 1F ハナミ坂
http://sakuraweb.dip.jp/uploader/src/up202422.jpg


澪「……」

澪「ふぅ」

澪「……き」

澪「緊張したぁ~……」

澪「こういう時律ならすんなり会話できるんだろうけど……」

澪「……」

澪「いやないか。まず英語が聞き取れないだろうな」

澪「……」

澪「ぷっ」

澪(……しかし)

澪(小中高大とずっと一緒なんだよな)

澪(腐れ縁ってやつか)

澪(思い返せばいつもいつも……まあ助けてもらった事もあるけど)

ヴーーーー ヴーーーー

澪(けどこの先はそうもいかない)

ヴーーーー ヴーーーー

澪(こういう風に遊ぶ機会も減っちゃうのかな。でも今はもう少しだけ……)

澪(って今はちょっとアレだけど)

澪(…………。仕方ないな)

  「澪ちゃーん!」

澪「え?」

唯「おーい」

澪「唯! 和に憂ちゃんも!」

唯「やっぱり澪ちゃんも来てたんだ」

澪「やっぱりって?」

和「さっき律に会ったのよ」

澪「律に?」

澪「律どこに向かった?」

唯「天望デッキかなぁ? りっちゃん行きたいって言ってたよ」

澪「はは……言う事コロコロ変わる奴だなぁ」

澪「……私も天望デッキ行ってみるか」

唯「おおっ?」

和「あら」

憂「ふふ」

澪「?」

和「それがいいと思うわ」

澪「ごめん、もっとゆっくり話したいんだけどな……」

和「律と仲直りしてからでもいいんじゃない?」

澪「う゛……知ってたのか」

憂「律さんが真っ直ぐ天望デッキに向かってたら今頃チケット売り場に並んでるかもしれません」

和「今から澪が並んでも追いつけないかもしれないわね」

唯「そうだ! 澪ちゃんにこれをあげよう。発券したてホヤホヤの天望デッキのチケット!」

澪「いいのか? ていうかチケットって――」

唯「細かい事はいいから仲直り頑張ってね!」

澪「う、うん、ありがとう! 行ってくる!」

唯「頑張ってね~」

和「二人とも元気そうね」

唯「みんな元気だよー」

憂「梓ちゃんもスカイツリーに誘えてればよかったなぁ」

唯「そうだねー。いやあでも余ったチケットが無駄にならずにすんだよ」

和「あんた自分のチケットなくしたりしてないわよね?」

唯「当然ですよ! えっと、この辺に……」

唯「えっと……」

和憂「……」

唯「…………あ、あったーーー!!」

唯「ふっ、いつまでも昔の私だと――」

ビュバアアァァ!

憂「きゃっ! すごい風!」

唯「あーー!? 私のチケットがーーーっ!!」ピュー

和「はあ……」

唯「待ってーーーー!!」ダッ

和「ちょっと待ちなさい唯!」

憂「おねえちゃ~~~~ん!! ……いない」

憂「どうしよう和ちゃん! おね、お姉ちゃん迷子になったりしたら……!」

和「落ち着きなさい。携帯あるでしょ? それに唯も大学生なんだし大丈夫よ」

憂「うん……そうだよね」

憂「……」

和「憂?」

●4F 東京スカイツリーチケットカウンター
http://sakuraweb.dip.jp/uploader/src/up202425.jpg


律「うへーめちゃくちゃ混んでる……」

律「やっぱり予約しとくべきなんだろうな」

律「……天望デッキ行くのやめよっかなぁ」

さわ子「あらりっちゃん!」

律「え? あれさわちゃん!?」

さわ子「久しぶりねー元気にしてる?」

律「さわちゃんも相変わらずだなー」

さわ子「もしかしてりっちゃん今から当日券買うの?」

律「そのつもりだったんだけどめちゃくちゃ混んでてさー。やっぱりやめようかなって」

さわ子「そうなの……。そういう事ならこれあげるわ」

律「ん? これって天望デッキのチケットじゃん! いいの!?」

さわ子「いいのよ……これで楽しんできなさいよねっ!」ダッ

律「えっ!? さわちゃん!?」

律「……何で泣いてたんだろう」

●東京ソラマチ 1F ハナミ坂


和「どうしたの?」

憂「うん……お姉ちゃんが心配で」

和「憂は気にし過ぎじゃない? あれでもちゃんとやってるみたいよ」

憂「うん……私もそう思う」

憂「お姉ちゃんが一人暮らし始めたから、私もお姉ちゃんを見習って頑張ってるんだけど」

憂「なんていうか……私の方がお姉ちゃん離れ出来てないのかも」

憂「ほんとはね、今でも寂しくなる時があるの」

和「あなた達いつも一緒にいたものね」

和「それじゃあ憂もN女子大学に行くつもり?」

憂「候補のひとつ……かな」

和「そうなんだ」

憂「和ちゃんはどう? 留学ってどんな感じなの?」

和「そうね……不安もあったけど何もかもが新鮮で楽しいわよ」

和「生活や人や習慣が全然違うの。勉強以外にもすごくためになってると思う」

和「留学してよかったって思ってるわ」

憂「ふうん……すごいなぁ和ちゃん」

和「別にすごくなんてないわよ」

憂「……」

和「そろそろ唯を探しに行こうか」

憂「そうだね。ついでにお手洗い寄らせて?」

●2F West Yard フードマルシェ


晶「スカイツリーで魚売ってるのか……」

晶「スーパーみたいだな」

  「わー魚売ってる! あっとんかつおいしそう!」

晶「……」

  「焼きドーナツ! シュークリーム! わーアップルパイもある!」

晶「……そろそろ行くか」

  「あれー!? 晶ちゃんだー!」

晶「げ……」

唯「やっほー」

晶「ぐああ……」

唯「晶ちゃんもスカイツリーに来てたんだねぇ」

晶「……まあな」

唯「晶ちゃん1人なの?」

晶「菖と幸も一緒だ。今は別行動してるけど。そういうお前こそ何で1人なんだ?」

唯「実は天望デッキのチケット風で飛ばされちゃって……」

晶「うわあ……てか風ってここ室内だぞ」

唯「それでチケット追いかけたんだけど見失っちゃったから戻ろうとして、その前にちょっとお腹空いたなーって」

晶「……」

唯「ねえねえここすごいよ! 美味しそうなのがいっぱい!」

晶「切り替え早いなお前……」

唯「晶ちゃんも何か食べようよ!」

晶(こいつは放課後ティータイムの中では一番恋愛とはほど遠いか)

唯「おお~ジェラートもある~!」

晶(……いや、案外こういうのがウケたりするのか?)

晶(まあ容姿は可愛い部類だし、人懐っこいし、ちょっと抜けてるところが逆に……)

晶(かと言ってこれは真似しようがないぞ)

唯「晶ちゃん?」

晶「……え? なんだよ」

唯「なんだか難しい顔してたよ?」

晶「お前には関係ねー」

唯「ええー……あっ! この前の告白の事考えてたんでしょ!」

晶「」グサッ

晶「お~ま~え~は~……!」

唯「おああっゴメンナサイッ!」

唯「あれっ? あそこにムギちゃんがいるよ! ほらほら!」

晶「誤魔化すな! あとムギは本当にスカイツリーに来てるぞ」

唯「だから本当にいるんだって! ムギちゃーん」

晶「え? あ」

紬「唯ちゃん! 晶ちゃんも!」

晶「あれ? 連れはどうした?」

紬「実はまだ澪ちゃんを見つけられなくて……電話も出なかったし」

晶「律には連絡しないのか?」

紬「うん……出来れば今回は澪ちゃんからりっちゃんにっていうのがいいかなって……」

晶(何が違うんだ……?)

唯「澪ちゃん探してるの?」

紬「そうなの。どうしてもこのチケットを渡さないと……」

唯「天望デッキのチケット? それなら私が澪ちゃんにチケットあげたよ~」

紬「そうなの!?」

唯「うん。実は二人がケンカしちゃってさ~。だからチケットをあげて仲直りさせようと――」

紬「私も仲直りしてもらいたくて探してたの。うまくいくといいんだけど――」

唯「そっか~」

紬「唯ちゃんグッジョブ~」

晶「……」

晶「そのチケット唯が貰えばいいんじゃないか?」

紬唯「へ?」

紬「どうかしたの?」

唯「実はチケットを風に飛ばされちゃいまして……」

紬「そうだったの。そういう事なら遠慮なく使って!」

唯「ムギちゃ~ん!」

紬「うふふ。……あっ! ベストシーン逃しちゃう! 私そろそろ戻らないとそれじゃあ行くわね!」ピュー

唯「よかったぁ~これで憂と和ちゃん待たせずに済むよ」

唯「本当にありがとうムギちゃ……いない」

晶「お前運だけはいいな」

唯「えっ!? そんな照れるよ~」

晶「褒めてねえよ」

晶「ところで1階に行きたいんだけどお前はどうするんだ?」

唯「じゃあ私も途中までついてくよー」

●2F West Yard


和「あの子絶対寄り道してるわね。食べ物関係の場所で」

直「琴吹先輩どこに行っちゃったんだろう……」

さわ子「私どこに行くのかしら……」

和直さわ子「あ」

和「先生お久しぶりです」

さわ子「あら直ちゃん……それに和ちゃんじゃない! 元気にしてた?」

直「……?」

さわ子「この子今年軽音部に入部した子なの」

直「どうもです」

和「ちゃんと部活続いてるんですね」

さわ子「そうなのよ~お茶が出来て嬉しい限りだわ」

和「そういえば今お付き合いしてるとか」

さわ子「……」

直「?」

和「先生?」

さわ子「……」

和「あ、あの、唯を見ませんでしたか?」

さわ子「……見てないわね」

和「そうですか……」

和直さわ子「……」

和直さわ子「……」

●2F West Yard


菫「おまたせー」

直「うん」

菫「お姉ちゃんまだ戻ってきてない……」

直「さわ子先生に会ったよ」

菫「えっ!? もしかして彼氏さんにも……?」

直「先生1人だった」

菫「あ、そうなんだ。それって……」

紬「おまたせ~!」

菫「お姉ちゃん! 遅いよー」

紬「ごめんね。それじゃあ私達も天望デッキに向かいましょうか」

菫「うん。そうそう直ちゃんがさわ子先生に会ったんだって」

紬「まあ! 私も会いたかったな~」

直「あ、でも先生フラ……」

紬「?」

直「……何でもないです。今年も部室でお茶ができてよかったと言ってました」

紬「うふふ。菫がいる間は先生もお茶できるわね」

菫「でも来年になったら梓先輩達いなくなっちゃう……」

直「……」

紬「ねえ菫、軽音部は好き?」

菫「もちろん!」

紬「直ちゃんは?」

直「大好きです」

紬「よかったぁ……私も軽音部が大好きでね」

紬「新しく来る後輩にも同じ気持ちになってほしいって思ってたの」

紬「梓ちゃんはしっかり受け継いでくれたのね」

菫「私達だってここで軽音部を終わらせるつもりはないよ!」

直「うん」

紬「あんまり無理はしないでね。それに梓ちゃん達もまだいるんだし今は今の軽音部を楽しんだ方がお得だと思うよ」

菫直(お得……)

紬「でも来年はどんな軽音部になるのかなって梓ちゃんも期待してるかもね。梓ちゃんも軽音部が大好きだから」

菫「梓先輩も……頑張ろうね直ちゃん!」

直「うん!」

●スカイツリーもうすぐそこ


梓「あーもー! 純がケチって自転車で行こうとか言うから!」

純「ほらもう少しだってば!」

梓「あっつ……はあ……はあ……」

純「風強くて寒くない? それにしてもでっかいなー」

梓「着いたら飲み物飲みたい」

純「安いとこでよろしく。……ん?」

梓「何?」

純「何か飛んでる……あ、お札!?」

梓「そんな訳ないでしょ」

純「……あー、うん、お札じゃなさそう」

純「ほっ! やったナイスキャッチ!」

梓「ゴミつかむくらいなら純が自転車こいでよ……はぁはぁ」

純「あれ……あーーーー!?」

梓「うわっ!? 純うるさい!」

純「梓これっ! これっ!」

梓「なによもー……」

純「天望デッキのチケットだよこれ!!」

梓「ええっ!?」

●東京ソラマチ 1F


さわ子「……」

  「ねえねえこれ買ってよ~♪」

さわ子「チッ……公衆の全面でイチャイチャしてんじゃあねーぞ……あら?」

晶「自分で買えばいいだろ」

唯「いけず~」

さわ子「唯ちゃん?」

唯「へ? あっさわちゃん!」

さわ子「唯ちゃんも来てたのね~すごい偶然!」

唯「先生久しぶり~!」

さわ子「あら、お友達?」

唯「この子は私の友達の晶ちゃん! 晶ちゃんもN女子大学の軽音部なんだよ~」

晶「ども」

さわ子「唯ちゃんの通っていた高校で教師をしている山中さわ子です。唯ちゃんがお世話になってるみたいねぇ」

晶「あ、いえ……」

さわ子(中々にロックな子ね)

晶(この人が唯の言ってた高校の時好きだった先生か)

唯(よそいきさわちゃんだ)

さわ子「迷惑かけてるでしょうけどこの子のことよろしくお願いね」

唯「ええ~迷惑ってなにさー」

晶(確かに若くて綺麗でしっかりしてる先生だな……私はプロになるつもりだけど、もし先生になるとしたらこんな感じになりたいかな)

晶(それに優しそうだし面倒見もいい。これはモテるだろうな……あと髪も長い)

唯「さわちゃんはギターすっごく上手いんだよ」

さわ子「そんな事ないわよぉ」

晶(おまけにギターも上手いのか……先輩もこういう人好きなのかな)

晶(……うん、やっぱり目標にするならこういう人だな!)

唯「――っていう感じで」

さわ子「へぇ~唯ちゃんと同じ学部なのね」

晶「あのっ! よかったら今度お話を聞かせてもらえませんか? 教師の事とかその他にも……」

さわ子「おほほ、私なんかでよければもちろんいいわよ」

さわ子「そういえば和ちゃんが探してたわよ?」

唯「あっ……そうでした」

さわ子「それじゃ私は行くわね」

唯「え~一緒に見て回らないの?」

さわ子「ごめんねぇ」

さわ子(唯ちゃんに傷を抉られたらやだし……)

さわ子「それじゃ。ええと、晶ちゃん? いつでも相談に乗るからね」

晶「ありがとうございます」

唯「ばいばーい」

晶「本当にいい先生ぽいな」

唯「いい先生だよ~。……あ、晶ちゃんとは気が合うかも」

晶「え、なんで?」

唯「なんとなく」

リリリリリリン リリリリリリン

唯「あっ電話」

唯「もしもーし」

晶「やべ、菖達に連絡するの忘れてた」プルルルル

唯「へ? えっとねー1階の食べ物が売ってる所だよ!」

唯「そうなの? えへへ~流石和ちゃん♪」

晶「もしもし? だー悪かったって」

晶「うん、今1階、そう、んーわかった」

唯「あっ私がそっちに行くよ! 食べたいものあるし! はーい」ピッ

晶「はいよ」ピッ

唯「2階で友達と妹が待ってるって」

晶「菖達も2階にいるらしい」

唯「おお~それじゃあ行きますか」

晶「だな……ってくっつくなよ!」

唯「ええー」

●スカイツリー到着


梓「やっと着いたぁ……」

純「どうする梓ー天望デッキのチケットだよ!」

梓「それってクレジットカードが――」

純「大丈夫だって!」

梓「てか1枚しかないじゃん」

純「……梓スカイツリー来るのあんまり乗り気じゃなかったよね」

梓「はあっ!?」

純「じょ、冗談冗談……とりあえず3階にフードコートあるらしいからそこ行かない?」

梓「まったく……」

梓「……」

梓「……え」

梓「あ……あ……!」

純「どした?」

梓「ゆ……」

梓「唯先輩がいる!!」

純「さっすが梓もう見つけたの? 人ごみで全然わかんないんだけど」

梓「ユイセンッ…なっ!?」

純「今度は何よ」

梓「ゆ……唯先輩が男と腕組んでる……? しかもちょっとガラの悪そうな人と……」

純「うそっどこ!?」

梓「そ、んな……いやそんなはずない!」ダッ

純「ねー梓どこ? ねえってばー……あれ? 梓がどこ?」

●2F West Yard フードマルシェ


唯「あ!」

和憂「あ」

晶「あ」

菖幸「あ」

唯「おまたせー」

菖「やっと見つけた! って唯ちゃんも?」

唯「おおーみんな揃ったね」

憂「おねーちゃーん! あれ、お知り合い?」

唯「そうだよ~。大学の友達でみんな軽音部なんだよ」

憂「妹の憂です。姉がいつもお世話になってます」

晶菖幸(……しっかりしてる)

菖「あ、ええと、こちらこそ」

晶「本当に妹なのか?」

和「唯がお世話になってます。迷惑かけたりしてませんか?」

菖「え、あ、いえいえ!」

幸「……意外」

晶「姉とか保護者じゃないのか?」

唯「んもー違うよ~」

憂「そうだお姉ちゃん、チケットはどうなったの?」

唯「実はムギちゃんに会ってチケット貰っちゃった♪」

和「相変わらずちゃっかりしてるわね」

唯「えへへ~」

菖「唯ちゃんあっちにジェラート屋があってすっごく美味しそうだったよ」

唯「そうだジェラート食べたかったんだ! 食べよう晶ちゃん!」

晶「だーくっつくなよ!」

和「仲良いのね」

憂「なんていうか……ロックな人? だね」

菖「晶は何故か唯ちゃんに懐かれてるんだよね」

幸「見た目はあんなだけど悪い子じゃないから」

和「唯が懐くくらいだからそうなんでしょうね」

菖「学部も一緒だから毎朝晶が唯ちゃん起こしてるの」

憂「ご、ご迷惑をおかけします……」

幸「晶はなんだかんだで唯ちゃんをほっとけないっていう感じだから」

和「ああ、わかる気がするわ」

憂「そうだねー」

菖(なるほどねえ……)

唯「それでねーあずにゃんは本当にギターが上手くてねー」

晶「はいはい」

憂「お姉ちゃん、そろそろ天望デッキのエレベーターに行かないとだよ」

唯「そっか。それじゃあ……何階にいくんだっけ?」

和「4階」

唯「そうでした。晶ちゃん達またね~」

菖幸「ばいばーい」

晶「はよいけ」

幸「私達はどうする?」

菖「上の階に行こ! ツリービレッジっていうテレビ番組のグッズ売ってるお店があるんだって!」

晶「もうどこでもいい。はぁ、ここまで来て唯のお守するはめになるとか……」

菖「こっちは唯ちゃんの話が聞けて面白かったよ」

幸「唯ちゃんと何の話してたの?」

晶「食い物の話……はどうでもよすぎるな。それ以外だとあいつの後輩の話聞いてた。放課後ティータイムのメンバーなんだとさ」

菖「へぇ~」

晶「背が小っちゃくて黒髪を二つ結びにしててかわいくてギターが上手いらしい」

晶「んであずにゃんとかいう名前らしい」

菖「あずにゃん……」

幸「あずにゃん……」

晶「あいつそのあだ名みたいなので通じると思ってるからな」

●4F 東京スカイツリーチケットカウンター


唯「おおー、手荷物検査やるんだね。ごくごく」

和「一応上にもカフェとかあるのよ?」

唯「そうなの? お~いお茶飲み過ぎちゃった……せっかくだから上でも食べたり飲んだりしたいなぁ」

憂「あのエレベーター50秒で350メートル上までいけるんだって。すごいなぁ」

和「天望デッキへのエレベーターは4基あってそれぞれ春夏秋冬の内装になっているそうよ」

憂「へぇ~」

和「それから分速600mの速さで移動するんだって」

唯「分速600mって時速何キロなの?」

和「36キロ」

唯「おお~」

●スカイツリー エレベーター(地上~天望デッキ間)
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律(おーこれは花火を模したデザインだな。てことは夏か)

律(エレベーターに窓とかついてないんだな……)

律(おお……分速と今いる高さがリアルタイムで表示されるのか)

律(Speed 600m/min)

律(つまり……時速何キロだろう)

律(……)

律(澪と来たかったなぁ……何やってんだろ私)

律(やっぱり今からでも電話するか)

律(エレベーター降りたら電話……繋がるよな?)

律(……)

律(私の成績で小中高大と一緒の学校に行けるとは)

律(運がいいのかそれとも……)

律(次は絶対別れるもんな)

律(あいつ大学入ってからは自分から行動を起こすようにしてる)

律(……澪に甘えてられんのも卒業までかぁ)

律(それでも今はもう少し……)

  『東京スカイツリー天望デッキ、フロア350に到着いたします』

●スカイツリー 天望デッキ(350m)
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http://sakuraweb.dip.jp/uploader/src/up202429.jpg


律「お……おおー!」

律「すげー! 街がめちゃくちゃ小さい!」

律「あの辺が大学かなー! なあみお……っ」

律「……」

律「……はぁ」

澪「独り言きもいぞ」

律「えっ……?」

澪「……」

律「澪!? 何で? あ、私より先に来てたのか……」

律「あ……あのな澪」

澪「律、ごめん」

律「え?」

澪「ちょっと言い過ぎた。よくよく考えるとそこまでむきになる事でもないしな……」

律「あっ……私も悪かったよ。せっかくのスカイツリーなのにな」

澪「まあ……水に流すってことで、いいよな?」

律「……だな」

澪「でも思ったより遅かったな」

律「どういう事?」

澪「唯達に会って律が天望デッキに行ったって聞いてたから」

律「そうだったのか」

澪「入れ違いになったかと思ったよ」

律「そういう澪はどうやってこんなに早くチケット買えたんだ?」

澪「えっと、実は唯から貰ったんだ」

律「ずるい! っても私もさわちゃんから譲ってもらったんだよね」

澪「なんだ律もか。ていうかさわ子先生来てたのか」

律「……まあなんにせよ、これで心置きなく楽しめるな!」

澪「ふふ、そうだなっ」

律「みおーとりあえず一周しようぜ!」

澪「おい引っ張るなよりつー!」

●スカイツリー 天望デッキ(350m)


紬「うふ……ふふふ……」

菫「声かけなくていいの?」

紬「いいのよ……今は……もう少し……」

直(やっぱり変わった人だなぁ)

●4F スカイアリーナ
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純「梓のやつどこ行ったのよ……」

ドンッ

純「あっすいません……あれ」

さわ子「純ちゃん?」

純「さわ子先生! もしかしてデートですか?」

さわ子「」グッサァァァ

さわ子「……う」

純「う?」

さわ子「うぇぇぇぇん……!」

純「え!?」

さわ子「とっくにフラれたわよぉぉ……!」

純(地雷踏んだ)

さわ子「私の何がいけないって言うのよぉぉぉぉおおおお」

純「あ、えと、先生は悪くないです……」

さわ子「そうよね!? 純ちゃんいい子! ちょっと聞いてよ! 本当に酷いんだから――」

純(梓ー早く来てくれー!)

●4F West Yard ツリービレッジ
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梓「見失った……全部の階見てきたのに」

梓「あの男は私の見間違いだったのかな? でも唯先輩は確かにいたし……」

梓(……ていうかいつの間に彼氏出来たんだろう。そんな話聞いてないし最近テストとかレポートで忙しいって言ってたのに)

梓(まさか彼氏と会ってて忙しいとか?)

梓(……そうだよね、ただの後輩よりも普通はそっちを選ぶよね)

梓(けど一言言ってくれてもいいのに。こうやって先輩達と離れていっちゃうのかな……)

梓「う……うう……」

梓(唯先輩のばかぁ……)

梓「はぁ……あれ?」

梓「これって……唯先輩のクッションだ」

梓「こっちは律先輩の人形に澪先輩のTシャツ……ムギ先輩とスカイツリーのキーホルダー……」

梓「……」

菖「わーこれ唯ちゃんのランチセットだ」

幸「かわいー」

晶「そうか?」

梓「あっ! あの後ろ姿は唯先輩の彼氏……え!?」

梓「なんで別の女の人と一緒にいるの!?」

菖「私達もいつかここに並ぶといいねー」

梓「あ、あのっ!」

晶「あ?」

梓「……あれ」

梓(この人女だった……よく見たら足元とかパンプスだし)

梓「あ、えっと……」

梓(それに雰囲気怖い……でも唯先輩の事も気になるし……)

菖「あれ? この子……黒髪を二つ結びにしてて……」

幸「かわいくて……」

晶「何だこのチビ」

梓「」イラッ

菖「こらああ!」ゲシッ

晶「ぐえあ!?」

梓「……」

菖「ごめんねこいつ口悪くて!」

梓「あ、いえ……」

幸「もしかして……あずにゃん?」

梓「えっ、どうしてその呼び名を……」

菖「やっぱり! 唯ちゃんの言ってた特徴通りだね」

幸「それにこの辺にいっぱいグッズあるから」

梓「ああ……」

菖「私達放課後ティータイムと友達なんだ」

梓「そうだったんですか」

晶「お前が放課後ティータイムでギターやってたっていう……」

梓「え、はい、そうですけど」

晶「あいつらそんな事今日まで一言も言わなかったからなあ」

梓「え」

梓「そ……そんなはずは……」

晶「学園祭のライブも割と完成されてたし忘れられちゃってるんじゃねーの? なんちゃって」

梓「……」ジワァ

梓「う……ふぇぇ……ぐすっ」

菖「ちょっと晶! あ、ご、ごめんね!」

幸「晶最低……」

晶「えっと、今のはなんちゃってで……」

梓「ばかあああああああっっ!!」ボゴォッ!!!

晶「ゴハアッ!?」

 

梓「ひっく……うぇ……」

菖「よ、よしよし……あずにゃんちゃんは忘れられてなんかないよ!」

幸「うんうん。ほら晶も」

晶「げえっ……げは……ゆ゛、ゆいがさっき可愛くてギターが上手くて放課後ティータイムの一員だって、い゛ってま゛しだ……ぉげぇ」

梓「ぐすっ……え? ゆいセンパイが……?」

晶「言ってました……ほんとに……げほっ」

梓「あ、あの、唯先輩がどこに行ったかわかりますか?」

菖「唯ちゃんならさっき天望デッキに行くって」

梓「そうですかありがとうございます!」ダッ

●4F 東京スカイツリーチケットカウンター


梓「う……今から整理券貰ったとして上に行けるのは何時間後だろ……」

梓「はぁ……」

純「あっいた!」

梓「あ、純」

純「どこ行ってたのさ梓! こっちはさわ子先生に絡まれて大変だったんだから!」

梓「うん、ごめん……」

純「……梓?」

梓「唯先輩と一緒にいたのは男じゃなかったんだけど先輩は今天望デッキにいるらしくて……」

純「でも今から当日券を買ってたんじゃ間に合わない、と」

梓「うん……」

純(降りてくるの待てばいいのに。先輩のことで頭がいっぱいって感じ)

純「……しょーがないなぁ」なでなで

梓「ちょ、なんで頭撫でるの」

純「これあげる」

梓「これって……さっき拾ったチケットじゃん。いいの?」

純「よくないけど今回は梓に譲ってあげる! 早く行ってきなよ」

梓「純……! ありがとうっ!」

純「……いいなー梓は」

純(私も何かないかなぁ……例えば澪先輩と……)

純(澪先輩どうしてここに、一緒に天望デッキに行きませんかっ、みたいな……)

純(まあ私そういうのじゃないんだけど……そういうのもいいな)

純「澪先輩こないかなー……」

純「……ってあそこにいるの澪先輩じゃん!!」

純(やった! スカイツリーからのプレゼントきた!)

純「ミオセンッ…なっ!?」

純「隣にいるのは律先輩……しかも手繋いでる!?」

純「……二人はそういう関係だったのね」

純「うんまあ、思い返してみるとそうだったかもしれないや」

純「……なんだろう、このフラれてないのにフラれた感は」

純「はあ……」

純「さわ子先生状態……」

純「……」

男1「あっスカイツリーで一番かわいい人発見!」

純「……は?」

男2「どうもー」

男1「スカイツリー登りました? どうでした?」

純(ないわ……)

純「いえ間に合ってますので」

男2「ああー残念です……お姉さん待ち合わせ?」

純「いや、本当に……」

純(クソガキめんどくせえー! さわ子先生帰ってきてー!)

  「その子嫌がってるけど」

純「!」

 

●4F スカイアリーナ


幸「その子嫌がってるけど」

純「!」

純(わあ……背高くてかっこいい人だな)

男1「え? あ……かわいい」

男2「大学生っすか? ちょっとこれから――」

幸「自分より背の低い人はちょっと」

男1「」グサッ

男2「」グサッ

幸「」グサッ

晶「自分で言ってへこむなよ」

男1(うわっ……この人こわっ)

晶「あぁ?」

男1「あ、し、失礼しました~」

男2「ました~」

菖「ぷふ、晶見て逃げていったね」

晶「何で笑ってるんだよ」

純「あ、あの! ありがとうございました!」

幸「大丈夫?」

純「はっはい!」

純(やばい……この人超素敵)

純「……あ」

幸「?」

純「もしかしてその担いでるのってベースですか?」

幸「そうだよ。よくわかったね」

純「私もベースやってるからネックの長さでわかるんです!」

幸「そうなんだ」

純(きた……スカイツリーからのプレゼントきたーーー!!)

●スカイツリー 天望デッキ(350m)


梓「ここに唯先輩が……」

憂「梓ちゃん!?」

梓「え……憂! 和先輩!」

憂「梓ちゃんも来てたんだ! すごーい!」

梓「そ、そうだ唯先輩は!?」

憂「もしかしてお姉ちゃん追ってきたの? えっと……」

和「唯なら今ト――」

憂「お姉ちゃんならこの先の天望回廊にいるよ!」

梓「天望回廊ってここより上にあるんだよね?」

憂「うん、これがそのチケットだよ。梓ちゃんにあげる」

梓「えっ、でも」

憂「いいからいいから。お姉ちゃんを見つけるまで戻ってきちゃだめだからね」

梓「……ありがと憂。行ってくるね!」

憂「うん、頑張って!」

和「……」

憂「えっと、和ちゃん」

和「わかってるわよ」

●東京スカイツリー 天望デッキ(350m) トイレ


唯「……」

唯(学園祭まで会うのずっと我慢してきたのに)

唯(学園祭が終わってからもあずにゃんに会えてないや)

唯(あぁーあずにゃん分が欲しいなぁ)

唯(それに……あずにゃんの軽音部の事、私の大学の事、それから……)

唯(直接会って話したい事がいっぱいあるよ)

唯(……よし! 明日あずにゃんに会いに行こう!)

唯(待てよ、どうせならみんなも誘ってパーティーするのもいいな)

唯(後でみんなに聞いてみようっと)

●東京スカイツリー 天望デッキ


唯「おまたせー」

和「唯、はいこれ」

唯「おー天望回廊のチケット」

和「行ってらっしゃい」

唯「え? 和ちゃん行かないの?」

憂「実は天望回廊でお姉ちゃんに会いたいっていう人が待ってるんだ」

唯「へ?」

和「そういう訳だから行ってきなさい」

唯「ええー……? わ、わかった……?」

和「……ちょっと無理矢理な気もするけど」

憂「梓ちゃんを見てたらつい」

憂「……」

憂「和ちゃん」

和「何?」

憂「私……この先どうしようか迷ってたの」

和「進路の事?」

憂「うん。でも和ちゃんやお姉ちゃんや梓ちゃんを見てたら私も自分のやりたい事を頑張ってみようって思えたよ」

和「私だって唯を見習っただけよ」

憂「そっかぁ……」

和「応援してるわ、憂」

憂「ありがとう和ちゃん!」

紬「みんなー」

和「ムギ?」

憂「紬さん! それにスミーレちゃんと直ちゃんも!」

紬「あら、唯ちゃんは?」

憂「お姉ちゃんと梓ちゃんは上の天望回廊に行きました」

直「中野先輩も来てたんだ」

紬「そうなんだ……うふ、うふふ……そうなのね」

紬「そういう事なら唯ちゃん達がここに戻ってくるまでみんなでお茶しよっか!」

和「日本で最も高いところに位置するフロア350スカイツリーカフェね」

紬「そう! そこにあるスカイツリーソフトが食べたくて」

憂「お姉ちゃんが好きそう」

菫直「食べたいです」

紬「決まりね。あ、メールしておかないと……」

●東京スカイツリー 天望回廊(450m)
http://sakuraweb.dip.jp/uploader/src/up202434.jpg


唯「おおーさっきよりも高い!」

唯「でも私に会いたい人って誰だろ?」

唯「んー……んんー……?」

梓「唯先輩!」

唯「え? あずにゃん!?」

梓「はい!」

唯「わ……え、うそ、どうしてここに?」

梓「えへへ……色々ありまして」

唯「あ……」

唯「あずにゃーーーーん!!」

梓「わあっ」

唯「会いたかったよあずにゃーん!!」ぎゅーー

梓「先輩苦しいですよ……あと恥ずかしいです」

唯「あずにゃん……あずにゃぁん……!」

梓「あのっ!」

唯「ん、なーに?」

梓「唯先輩……えっと……す……!」

梓(あれっ、私先輩に何を言おうとしてたんだっけ? ……会う事以外何も考えてなかった)

梓「あの、沢山話したい事があったんですけど、ええと……!」

唯「あはは、あずにゃん落ち着いて。とりあえず歩こ? 私もあずにゃんと話したい事がいっぱいあるからゆっくり話そうよ」

梓「あ、はい、そうですね……えへ」


http://sakuraweb.dip.jp/uploader/src/up202435.jpg

唯「すごい景色だねー」

梓「はい。今日ここに来てよかったです」

唯「本当はもっと早く会いたかったんだけど色々立て込んでおりまして……」

梓「あの……先輩って大学に入ってから、つ、付き合ってる人ができたりしました?」

唯「へっ? いないよ~」

梓「でっですよね! 私もそうだろうなって!」

唯「グサッ……あずにゃん、ひどい」

梓「いやっその、そういう意味ではなくてですね!」

唯「他にどういう意味があるの……?」

梓「えっと……あっ、下の天望デッキで憂と和先輩に会いました!」

唯「ぐす……そういえば憂と和ちゃんこないのかなぁ」

梓「今日は私の後輩もスカイツリーに来てるみたいなんです」

唯「軽音部の?」

梓「はい」

唯「そうなんだ~会いたかったなぁ……あ!」

梓「?」

唯「実は今ムギちゃんとりっちゃんと澪ちゃんも来てるんだよ!」

梓「えっ!? スカイツリーにですか?」

唯「うん! 後でみんなと会えるかな? みんなもあずにゃんに会いたいーって思ってるよ」

梓「そ、そうですか……へへ」

唯「それからね、これが一番言いたかったんだけど」

梓「なんですか?」

唯「あずにゃん部長、よく頑張ったね。けいおん部を残してくれてありがとう」

梓「……」

唯「軽音部OGとしては部活がなくなるのは寂しいからね」

唯「やっぱりあずにゃんはすごいよ! うん!」

梓「っ……あ、いえ、軽音部が続けられたのは憂と純と後輩とさわ子先生のおかげですし」

梓「私なんて全然……周りが見えなくなったりするし、先輩方の方がずっとずっと……」

梓「自分が先輩になって、改めて唯先輩達のいいところやすごいところもわかりましたし」

梓「でも……その、ありがとうございます」

唯「うんっ!」

梓(あと……私も唯先輩みたいな先輩になりたいと思いました。誰にも言いませんけどね)

唯「さてと、あんまり待たせちゃうと悪いしそろそろ憂と和ちゃんの所に戻ろっか?」

梓「そうですねっ」

●1F ソラマチひろば


菖「さっきのモシャっとしてた子さー面白い子だったよね」

幸「うん」

晶「それでムギからのメールって?」

菖「『1階で待ってて』だってさ」

晶「ふーん」

菖「ねえ晶」

晶「ん?」

菖「頑張ろうね」

晶「え? ……ああ」

晶「言われなくたって」

幸「だよね」

菖幸「プロのミュージシャンになるぞー!」
晶「先輩にもう1度告シャンになるぞー!」

菖幸「……」

晶「……な、なんだ? 頑張ろうなバンド!」

菖「……解散かなぁ?」

幸「方向性の違いだね」

晶「い、いやっ、今のはちが――あれ?」

律「今度はプラネタリウム見に来るか」

澪「水族館も悪くないな」

晶菖幸「あ」

律澪「あ」

菖「おーりっちゃん! 澪ちゃんも……お」

幸「あ……仲直りしたんだね」

晶「……」

律「ま、まあな」

澪「うん……」

晶菖幸(手繋いでる!)

紬「みんな~」

律「ん? おおームギ!」

澪「唯達も一緒か……って梓も?」

梓「お久しぶりですっ!」

律「元気そうだな」

梓「はい! ……あっ」

晶「あっ」

唯「?」

純「あっいた! 梓やっと戻ってきた……ってみなさんお揃いですね」

梓「あっ、純……ご、ごめんごめん」

純「あんた私のこと忘れてたんじゃあ……あっ!」

幸「あっ」

紬「これでみんな揃ったわね。あのね、もしよかったらなんだけど、近くのホテルとってあるからみんなも良かったらどうかなって……」

紬「みんなでお話したり遊んだりしたいのっ!」

唯「ムギちゃんが……」

律「予約した……」

澪「ホテル……」

和憂(すごそう)

梓「え、でもそんないきなり」

純「ぜひとも!」

直「私もいいの?」

菫「もちろん!」

菖「私達も行っていいの!? いくいく!」

唯「もちろん行くよ! ね?」

律「だな」

和「お願いするわ」

紬「やったぁ! うふふ、こんなに大人数でお泊り出来るなんて……!」




さわ子「……結局こんな時間までいてしまったわ」

さわ子「まだ愚痴言い足りないわね」

さわ子「紀美誘って飲みに行こうかしら……はぁ」

さわ子「どうせ私にはそれくらいしか……」

律「あっいたいた! さわちゃーん」

さわ子「あらりっちゃん……になんだかいっぱいいるわね」

紬「これからみんなでホテルに行くんですけど先生も良かったらどうですか?」

唯「高級ホテルだって! きっと食べ放題だよ!」

さわ子「えっ」

直「スイートらしいですよ」

さわ子「えっ!?」

紬「お忙しくなければですけど……」

さわ子「行きますっ!!」ブワッ

純「うわっ泣きだした!」

さわ子(そうよ……私にだっているじゃない)

さわ子(こんなに素敵な教え子がいてくれる……それだけで十分よ!)

さわ子(……しばらくは)

晶(あの人も来るのか。色々話聞きたいな)

梓「あの……」

晶「ん?」

梓「さっきは本当にすみませんでした」

晶「あー、こっちも悪かったし」

唯「あれ? あずにゃん晶ちゃんのこと知ってるの?」

菖「さっき偶然会ったんだけどね、その時に晶がこの子泣かしちゃって」

唯「………………え?」

晶「いやこっちもそいつに殴られ――ッ!?」ビクッ

唯「ねえ、あずにゃんのこと、泣かせたの?」

晶「あ、え……ゆ、唯……さん?」

唯「泣かせたのって、聞いてるんだけど」

晶「いや……はい、すみませんでした」

梓「唯せんぱーいちょっといいですか?」

唯「はーい今行くよーあずにゃーん♪」

晶「……」

梓「紹介しますね! 私の後輩です!」

菫「は、はじめまして!」
直「どうもです」

唯「ぅおっ……こ、これはっ!」

梓「かわいいでしょ~?」

唯「うんっ! かーわいー♪」ぎゅううううう

菫直「ひいい!?」

紬「いいわぁ」

憂「梓ちゃん嬉しそう」

和「唯もね」

律「梓も上手くやってるみたいだな」

澪「ああ」

律「『後輩が離れていって、寂しい……』とか思ってんじゃないの?」

澪「そういう律こそ」

律「はぁん、寂しい……今夜は2人で傷を癒そうな」

澪「はいはい」

紬「おっ!?」

律澪「冗談だからな」

純「あのっ! 今度よかったらベース教えてもらえませんかっ!」

幸「うん、いいよ」

純「やった! やっぱりスカイツリー来てよかった~!」

梓「疲れてやっぱり帰ろうとか言ってたくせに」

純「最初来るの嫌そうにしてたあんたには言われたくないんだけど。何そのニコニコ顔」

梓「う……////」

律「しっかし随分長くいた気がするなぁ」

澪「昼からいたのに今はもう真っ暗だしな」

紬「すっごく楽しかったわぁ」

唯「ありがとうスカイツリー! 楽しかったよ~」

唯「あっ!!」

梓「どうしました?」

唯「みんなスカイツリー見て!!」


http://www.ustream.tv/channel/nekote101/theater
http://www.ustream.tv/channel/asakusastation/theater

晶「何だ? へぇ……ライトアップか」

菖幸「おお~!」

澪「わぁぁ……! ほらすごいぞ律! ほら!」

律「はは、わかってるよ見てるって」

さわ子(やっぱりこれを見ながら彼氏とディナーを……)ポロポロ

和「先生? どうかし――」

憂「和ちゃんだめっ……!」

純「あはは……」

菫「何だかすっごくにぎやかになったね……」

直「うん。でも楽しい」

紬「でしょう? けいおん部ってとっても楽しいんだから♪」

唯「綺麗だねえ」

梓「はいっ」

唯「ん~なんかテンション上がって来たかもっ!!」

紬「私も私も!」

さわ子「そうよね! こんな時だからこそテンション上げないとね!」

律「どんな時かわからんけどまあいっか! 今夜は騒ぐぜー!」

唯「よーしこの後も楽しむぞー!!」

  『お~~~~!!』



END

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