エレン「進撃の巨根」(484)

―――845年、シガンシナ区


エレン「アルミン、知ってるか。ちんこを擦ってると白いおしっこが出るんだぜ」

ある日の昼食中、友人が突然そんなことを言ってきたもんだから、アルミンは口に含んでいた牛乳を勢いよく噴出した。

エレン「お、おい! 汚ねぇな! 白いおしっこは牛乳のことじゃねぇぞ!?」

アルミン「……うん、分かってる。そんな勘違いはしてないよ」

エレン「ん? もしかして、アルミンは白いおしっこの正体を知ってるのか?」

アルミン「い、いやその」

エレン「白いおしっこなんて言ってるけど、おしっことは全然違うんだよな。なんか粘ついてるし、量も少ないし……。
     あと、出す時はな、体中に電気が走るっていうか……こう、我慢しまくった後に小便した時みたいになるんだ」

アルミン「そ、そうなんだ」

応答しながら、アルミンはこの問題をどう解決するかを思案していた。

その行為がいわゆる『射精』であることは、本の知識で得ている。
しかし、その類の言葉を口にすべきでないというのもまた、理解していた。

エレン「なんならどんなもんか見せてやろうか」

アルミン「やめて! それだけは本当にお願い!」

ズボンを脱ごうとするエレンを必死に制止する。

エレン「そうか……実際に見た方が分かりやすいかと思ったんだけどな」

アルミン「そういう問題じゃないっていうか……」

エレン「じゃあ、やり方教えてやるよ」

アルミン「え?」

今度はアルミンのズボンを脱がしにかかるエレン。

エレン「ほら、脱げって」

アルミン「や、やめて! ちょっとエレン!!」

エレン「遠慮すんなって」

アルミン「ち、違うんだよ! やめて!! それに僕はまだだから!!」

知的好奇心の高い彼が、そういった行為を知識だけに留めておくはずもなく、実際に行ってはみたものの、
未だ精通を迎えていない未熟な体が射精を許してはくれなかったというのは、エレンには知る由もないこと。

エレンは純粋な善意を持ってして、アルミンの純潔を奪いにかかった。

アルミン(ああ……僕の性器はこのまま友人に弄ばれてしまうんだ……)

アルミンはエレンのことが好きだ。敬愛すらしている。

しかし、それはあくまで友人としてであって、決してこういういった関係を望んでいたわけではないことはたしかだ。
だというのに、何故だかこの時のアルミンの下半身は、これから起きるであろう惨劇にひどく興奮を覚えていた。

エレン「なんだ、準備バッチリじゃねぇか」

アルミン「う、ううう……」

エレン「安心しろよ。初めてはたしかに刺激が強いからな。優しくしてやる」

アルミン「や、優しく……?」

エレンのことを仰ぎ見れば、優しい笑みを浮かべていた。
この時、アルミンは体中を覆っていた緊張を解き、その身を委ねた。ウォール・アルミンは完全に陥落したのだ。

エレンの手がゆっくりと、しかし着実に目標に向かって進撃する。
アルミンの皮被りの屹立した肉棒が、びくんと一回はねた。

―――しかし、接触は起きなかった。

ミカサ「……なに、してるの」

ミカサが二人の背後に立っていた。
冷たい目をしていた。この後の問答の如何によっては、ヒト一人殺すくらいなら厭わない残酷な目だ。

このミカサという少女が、エレンにえらく執着しているというのは周知の事実だった。
アルミンは慌てて飛び起きた。このままでは殺されるかもしれない。

アルミン「た、助かったよミカサ! え、エレンったら酷いんだから!」

ミカサ「……どういうこと?」

アルミン「僕が嫌だって言ってるのに、無理やり服を剥いで……な、なにかとてもよくないことを致そうとしてたんだ!」

ミカサ「……その割には、とろんとした表情をしていたように見えたけど」

アルミン「してないよ!! まぁエレンになら……なんて、これっぽっちも考えてないよ!」

ミカサの目は、依然として凍てつくような冷気を帯びていた。

もっとも、二人が一体どのような行為に及ぼうとしていたかなど、ミカサの知るところではない。
「子供はどうやったらできるのか」を親に真剣に尋ねるような子であり、その手の話題には疎い。

ただ、なんとなく、二人がいけないことをしているのだけは分かっていた。

ミカサ「エレン、何をしていたの」

エレン「なにって……なんだっていいじゃねぇか」

ミカサ「もしかして、アルミンを虐めていたの?」

エレン「俺がそんなことするはずないだろ!?」

ミカサ「じゃあ、何をしていたの」

エレン「……女のお前には関係ないことだ」

ミカサ「どういうこと?」

エレン「とにかく、お前には言えないことだ!!」

ミカサ「……」

ミカサが再びアルミンへと視線を移した。
その目はやはり思考の読みとりにくいものであったが、それはいつものことであって、冷たさは抜けていた。

ミカサ「アルミン、エレンが何をしようとしていたか知ってるの?」

アルミン「それは……」

ミカサ「正直に答えて」

アルミンは迷った。
正直に答えれば、悪いのはエレンだと理解してもらえるだろう。

しかし、それは同時にエレンが辱めを受けることを意味する。
しかも、エレンが隠し通そうとしていることを口にするのは裏切り行為だ。友人を裏切るなんてもってのほか。

決死の覚悟で口を開く。

アルミン「ぼ、僕はなにも知らな」

言い終える前に、ミカサの指が奇妙な動きを見せる。
それは、まるで、ハサミでなにかをちょんぎるような―――

アルミン「エレンは白いおしっこを僕のおちんちんから出そうとしてたんだ!」

エレン「アルミン!!」

ミカサ「白いおしっこ……?」

聞き覚えのない言葉に、ミカサは首を傾げた。

ミカサ「白いおしっこって、なに?」

エレン「……ちんこのないお前には関係ない」

ミカサ「ちんちん? ちんちんがなにか関係があるの?」

エレン「ちんこを擦ると出てくるんだよ!!」

ミカサ「ちんちんを擦ると出てくる……?」

ミカサにはなにも分からなかった。エレンの発言が全く理解できなかった。
「そうか、私には男性器がないからダメなのか……」と真剣に悩むほどだった。

アルミンは二人の問答を慌てふためきながら眺めるばかりだった。
未だ股間を丸出しなのを忘れているほどだった。

ミカサ「エレン、それは病気かもしれない。イェーガー先生に診せた方が良い」

エレン「病気じゃねぇよ! あんな良い感じの……そう、あんなに気持ちいいんだから、病気のはずないだろうが!!」

ミカサ「白いおしっこを出すのは気持ちいいの?」

エレン「あぁ、腰を抜かすような気持ちよさだ。ミカサにはちんこがないから理解不能だろうけどな!」

ミカサ「……」

ミカサはしゅんとして俯いた。
気持ちいいことを味わえないからではない。仲間外れにされているような疎外感のせいだった。

エレン「なぁアルミン。ミカサはほっといて、もう一回教えてやるから、こっちこいよ」

アルミン「……いや、遠慮しておく」

エレン「なんだよ、つまんねぇな。とんでもない発見だと思ったのに」

アルミン「まぁ、とんでもないことだけは確かだね……」

ミカサ「エレン、その発見、私もすごいと思う」

エレン「あ? なんだよ急に」

ミカサ「すごいと思うから、私にも白いおしっこを見せて」

エレン「はぁ?」

アルミン「ひええ」

アルミンは思わず縮みあがった。

ミカサ「エレンの白いおしっこ、私も見たい」

エレン「いや、それはいいけどよ……お前はちんこないんだから、見たってどうしようもないだろ?」

ミカサ「そんなことない。エレンの白いおしっこと、エレンが気持ちよくなってるところを見られれば、それでいい」

エレン「お前がいいなら、それでいいけどよ」

ミカサ「構わない」

エレン「変なやつだな……なぁ、アルミン?」

アルミン「僕に振らないで……今の話は聞かなかったことにするから……僕はなにも知らないから……」

アルミンには、なにがどうなってこのような結果になったのか分からない。
分からないが、少なくとも自分にはその責任の所在がないことを願うばかりだった。

―――その夜

「よぉーし、じゃ早速」とエレンが服を脱ごうとしたところ、涙を浮かべたアルミンが「それだけはやめて」と懇願したので、
『白いおしっこ』のお披露目は夜にまで持ち越されることになった。

エレンとミカサは二人で一つの部屋を与えられている。
白いおしっこについて秘密裏に語り合うには、うってつけの場所だった。

エレン「母さんたちはもう寝たかな?」

ミカサ「たぶん」

エレン「しかし、なんでアルミンはあんなに必死だったんだ?」

ミカサ「……もしかしたら、とてもいけない行為なのかもしれない」

エレン「だとしても、今さら俺はやめる気にはならないぞ?」

ミカサ「……」

ミカサはこくりと頷いた。

『二人だけの秘密』という言葉は、甘美な響きを擁していた。
正確にはアルミンも知っているので三人なのだが、物事というのは時に、都合のいい解釈というものが必要になることもあるのだ。

エレン「さてと」

エレンはなんのためらいもなくズボンと下着をずり下げ、局部を露わにした。
水浴びや湯浴みの際、二人は共に裸になることもあったので、抵抗は全くなかった。

エレン「まず、これをな、こうやって……」

ミカサ「うん」

人差し指と親指で局部をつまみ、ゆっくりと扱き始める。

毛の一つも生えていない皮被りの小さな性器は、子供ちんちんと呼ぶのに相応しく、性的な魅力は皆無であったのだが、
排泄行為以外に使われているのを初めて見たミカサは、興味しんしんと言った様子で鼻息を荒くしていた。

ミカサ「エレン」

エレン「なんだよ」

ミカサ「改めて見ると、ちんちんって可愛い」

エレン「へんなこと言うな。気が散るだろ」

ミカサ「ごめん。……邪魔されると、白いおしっこは出ない?」

エレン「うーん……」

エレンは内心焦っていた。普段ならすぐさま大きくなるのだが、一向にその気配がない。

なにが原因なのだろうか、などと思い悩む必要なんてなかった。
イレギュラーはすぐ目の前に存在している。

エレン「すまん。ミカサがいると無理だ」

ミカサ「どうして?」

エレン「わからん。だが、なんかおっきくならないんだ」

ミカサ「おっきく……?」

エレンに露出狂の素質でもあれば、涎を垂らしながら肉棒を屹立させているのだろうが、生憎その気は全くないようだった。
これを面白くないと思うのは当然ミカサである。

ミカサ「頑張って大きくして」

エレン「頑張ってるだろ」

エレンの右手が加速する。性知識のないミカサには、局部を痛めるのではないかと不安に思うような光景だ。
しかし、一向に膨張の兆しはない。

ミカサ「ちんちんに負けないで」

エレン「別に勝負ってわけじゃないんだが……やっぱダメだな、これは」

やがて、高速に動いていた手が制止した。
ミカサの目に絶望が宿る。

エレン「すまん、俺は無力だった」

ミカサ「……エレンは悪くない。悪いのはちんちん」

エレン「いや、俺のちんこだからな」

ミカサ「男の人の下半身は独立していると聞いたことがある。だからエレンは悪くない」

エレン「そうなのか? そう言われると、そんな気もするな」

どんな時でもエレンを肯定することは忘れないのがミカサ流だった。
その画は、さながら勃起不全に悩むカップルのそれである。

エレン「どうしようもないし、もう寝るか?」

ミカサ「……まだ手はある」

エレン「どんな手だ?」

ミカサ「私がエレンのちんちんを弄る」

エレンの脳内に二つの映像が過った。

一つはアルミンを虐めていたガキ大将を投げ飛ばすミカサの姿。
もう一つは、これは実際に目にした風景という訳でもないし、何故そのような映像を思いついたのかもよく分からないのだが、
軽々とリンゴを握りつぶす腹筋ムキムキの何者かの姿だった。

エレン「……ミカサ、聞いてくれ」

ミカサ「うん」

エレン「ちんこっていうのはな、すごくデリケートなんだ。ちょっとぶつけただけですごく痛むんだ」

ミカサ「それも聞いたことがある。だから、喧嘩する時には真っ先に狙う」

エレン「だったら、分かるだろ。お前にそんなデリケートな部分を触らせるわけにはいかないんだ」

ミカサ「大丈夫、上手くやる」

エレン「しかしだな……」

ミカサ「私を信じて」

エレン「……」

ミカサの目はまっすぐだった。
一切の曇りがなく、嘘がなく、邪念がなく……力強いその瞳には、漆黒の意思が宿っていた。

エレンは理解した。
もしも拒絶したら、ミカサは自分を縛りあげた挙句、好き放題に自分のちんこを弄るだろうということを。
純粋さが悪意以上の禍々しさもを放つ時もあるのだ。

エレン「……分かった。俺のちんこを弄るのを許す」

ミカサ「エレン……!」

エレン「ただし、条件がある! 俺の指示には絶対に従うこと。いいな?」

ミカサ「任せて。期待を裏切るような真似はしない」

エレンはベッドに腰掛けた。その前にミカサがしゃがみ込む。
無防備になる股間。間にいるエレンの息子は、雪の日のように縮みあがっていた。

エレン「よし、じゃあ……来い」

ミカサ「うん」

ミカサの一切の汚れなき指先が、エレンのモノに恐る恐るといった様子で近づき、やがて触れた。
それは本当にちょんとつつく程度の接触であったが、皮の中にいる本体の中心部に直接触れられたような衝撃があった。

エレン「あっ……」

ミカサ「なに?」

エレン「い、いや、なんでもない。その調子で触ってくれ。最大限優しくだぞ」

ミカサ「わかった」

ミカサ「ふにふにしている……これは皮、なの……?」

エレン「……」

ミカサ「おっきく、しないと……」

興奮なのか、恐怖心なのか、エレンの心臓ははち切れんばかりに鼓動していた。
ただ一つ言えるのは、他者に股間を弄られるのは、思っていたより悪くないということだった。

ミカサ「あっ」

エレン「なんだ?」

ミカサ「少し、膨らんだ気がする」

エレン「……そうか」

事実、エレンの性器には少しずつではあるが、血液が溜まり始めていた。
自分の肉体なので、エレンにはそれが分かっていたのだが、気恥かしいものがあるらしく、はっきりと口には出さなかった。

夢中で未熟な性器を扱き続けるミカサ。
その頬には僅かな赤みが差している。

屹立し始めている局部とは別に、エレンは下腹部のもっと奥の方が熱くなっていくのを感じた。
言いようのない焦燥感に駆られ、ミカサを乱暴に扱いたくなるような気持ちになった。

ミカサ「エレン、見て」

エレンの性器はとうとう勃起した。
それも過去にない硬さ、熱さを誇っていた。

ミカサ「私が大きくした。私の手の中で大きくなった」

エレン「そうだな」

ミカサ「私には才能があるかもしれない。エレンのちんちんを大きくする才能が」

エレン「ああ、良い具合だった」

ミカサ「エレンの役に立てて嬉しい」

喜びの感情を露あらわにするミカサを尻目に、エレンは行き場のない衝動を抑えきれないでいた。
俗に言う、むらむらするというやつだった。

今すぐに白いおしっこを放出したくなり、右手を性器に伸ばしたかけたところで、止めた。
もっと気持ちよくなれる手段が目の前にある。

エレン「ミカサ」

ミカサ「なに?」

エレン「服を脱いで、そこのベッドに横になってくれ」

ミカサ「いいけど、どうして? 白いおしっこは?」

エレン「ミカサが協力してくれれば、手早く出すことが出来る」

ミカサ「そうなの? なら構わないが」

ミカサが服を脱ぎ始める。普段はなんとも思わない衣擦れの音に、エレンは淫らな気持ちを覚えていた。
上着を脱ぐと、すぐさま乳房が露わになった。まだ未発達のそれを守るようなブラはそもそも存在していない。

エレン「パンツは脱がなくていいから、そのままベッドにうつぶせになってくれ」

ミカサ「分かった」

半裸になったミカサが、ベッドの上で横になった。
いつもと少しだけ様子の違うエレンに、若干困惑しながらも、それでもミカサは全てを委ねることが出来た。

ミカサ「それで? 私はこれからどうすればいい?」

エレン「いや、お前はなにもしなくていい。後は俺に任せろ」

エレンは上着も脱ぎ捨て、全裸になり、うつ伏せになっているミカサの上で更にうつ伏せになった。
肌と肌が密着する。エレンの怒張した皮棒が、パンツ一枚隔てて、ミカサの尻の間で強く自己主張していた。

ミカサ「エレン、重い」

エレン「我慢しろ。ここからが本番なんだ」

要は局部に刺激を与えればいいのだ。なにも扱くだけが白いおしっこを出す方法ではない。
エレンは、知識ではなく、本能によって更なる自慰の方法を編み出した。いわゆる床オナニーという手法だった。

ただ一つ、常識と外れているのは、床の代わりに利用されたのがミカサだということだ。

エレン「動くぞ」

ミカサ「うん」

エレンはミカサの尻に皮棒を擦りつけながら、激しく上下に腰を動かした。

ベッドのスプリングがギシギシと唸る。傍から見れば純粋な性交渉をしているように見える。
しかし、実際のところは女性を使って自慰をしているだけだ。
知識がないのでまだ言い訳のしようもあるが、やっていることはとんだ変態野郎のそれだった。

そして、同様に知識がなく、まだ年端もいかない少女であるミカサは、ただただ困惑していた。
背後には自分に覆いかぶさりながら、荒い息を立てる男。
もしも相手がエレンでなかったのなら、即座に投げ飛ばし、股間を踏みつぶしているところである。

エレン「ミカサ、これはいい! すごくいいぞ!!」

ミカサ「そう……よく分からないけど、気持ちいいの?」

エレン「あぁ! お前の尻は最高だ!」

ミカサ「……」

ミカサは頬を赤く染めた。エレンにこんなに素直に褒められるのは珍しかった。
実際にミカサの尻は素晴らしい。小ぶりながらも程良く肉付きがあり、形も一切の崩れがなく、果実のように瑞々しい。

エレン「ミカサ、ミカサ、ミカサ……!」

ミカサ「なに、エレン?」

返答はない。

感情の昂りからくるものであって、名前を連呼するその行為に意味はなかった。
ミカサが不思議に思って声をかけたところで、もはや彼の五感は、外部からの信号を受け取るような余裕を残していない。
その全神経は、皮棒を包む尻に対して注がれていた。

エレン「ミカサ……!」

ミカサ「うあ」

エレンはミカサの髪に顔を埋め、思いっきり息を吸い込んだ。
これには流石のミカサも抵抗をみせたが、それもほんの一瞬のことで、やはりされるがままだった。

エレン「ミカサ、ミカサ、ミカサ……!」

エレンの腰の動きが加速した。ラストスパートだ。

皮棒からは我慢汁が溢れだし、ミカサのパンツにじわじわと染みを作っていく。
エレンの息が荒いのはもちろんだったが、呼応するようにミカサの息も荒くなっていた。

エレン「ああ、うわっ! 出るっ!」

言うが早いか、鈴口から精液が噴出し始めた。
しかし、エレンの棒はまだ包茎状態にあるため、射精と呼ぶには心許なく、ぼたぼたと皮棒から精液がこぼれ落ちていくだけだった。

エレン「はぁっ、はぁっ……」

ミカサ「終わったの? 白いおしっこ出た?」

エレン「……ああ、凄い量だ」

言うとおり、その精液の量はエレンにとって、最多と呼べる量だった。
量だけではなく、その濃さも今までとは比類にならないくらいに濃厚で、白く濁っていた。

ミカサ「パンツに出したの?」

エレン「……すまん」

ミカサ「いい。エレンが気持ちよくなれたのなら」

エレンがどくと、ミカサは立ち上がり、パンツを脱いで手の上で広げた。
精液に汚されたパンツが、異様な臭気を放つ。

ミカサ「変なにおい。これが白いおしっこ?」

エレン「あぁ、おしっこっぽくないけどな」

ミカサは精液を指で拭い、鼻元まで持っていくと、くんくんと嗅いだ。

ミカサ「私は嫌いじゃない」

エレン「マジかよ。生臭くてたまったもんじゃねぇだろ」

ミカサ「人のパンツに出しておいて、よく言う」

エレン「それは……悪いと思ってるけど」

指先についた精液を、ぬちゃぬちゃとこねくり回すミカサ。
懐疑心はもちろんあったが、エレンが出したものだと思えば妙な愛着すらあった。

エレン「触ったりするのはばっちくねぇか?」

ミカサ「そんなことはない。これには何か特別な意味があるような気がする」

エレン「そうかぁ?」

ミカサ「エレン。これはとてつもない発見かもしれない。人類の歴史を動かすような」

エレン「……そんなにか?」

ミカサ「明日、イェーガー先生に聞いてみよう」

エレン「アルミンが怒るかもしれないぜ?」

ミカサ「それなら、アルミンに聞いてから」

エレン「そうだな。それがいい」

二人はミカサのパンツについた精液をふき取ってから眠りに就いた。
エレンはその夜、いつもより熟睡できたと後に語った。

―――次の日


前夜のことを二人が一部始終説明すると、アルミンはぼろぼろと涙をこぼし始めた。

アルミン「僕が、僕がしっかりしていないがために、二人が……」

エレン「どうしたアルミン。具合でも悪いのか?」

アルミン「エレンのせいでね!」

エレン「……どういう意味だ?」

ミカサ「分からない」

アルミン「……まぁ、イェーガー先生に言う前に僕のところに来てくれたから、それだけで今回はよしとしておくよ」

アルミンは全てを語ることにした。
これ以上この二人を放っておくと、巨人が壁を越えてくるに匹敵する悲劇が起こる気がした。

そして、それから小一時間。
アルミンによる性教育が、無知な少年少女に施された。

エレン「なるほどな。初めて聞く話ばかりでためになった」

アルミン「本来ならもっとゆっくり覚えていく知識なんだけどね」

エレン「そうか。ところで、アルミンはどこで知ったんだ?」

アルミン「え? えーっと……それは、ほら、医学書とか、そういう、うん」

エレン「へぇ」

もちろん、この手の知識を医学書だけで覚えるのは無理がある。
つまり『そういった本』をアルミンは密かに所持しているのだが、流石にそれを言う気にはならなかった。

アルミン「ともかく、もう昨日のようなことはしちゃダメだよ?」

エレン「分かった。でも一人でする分には構わないんだろ?」

アルミン「そ、それはそうだけど……でも、人に言うような話じゃないから、僕にも絶対に言わないで」

エレン「そういうもんなのか。分かった。約束する」

アルミン「ミカサも、分かった?」

ミカサ「……」

アルミン「ミカサ?」

ミカサはなにか物思いにふけっている様子だったが、すぐさま我に返り、こくりと頷いた。
一抹の不安を覚えつつも、アルミンは二人を信頼し、性講座を終えることにしたのだった。

―――数週間後の夜


ミカサ「エレン、エレン」

エレン「……んー?」

エレンが眠りについてしばらくたった頃、揺り動かすように目覚めさせたのはミカサだった。

エレン「なんだよ……トイレくらい一人でいけよな」

ミカサ「そんな気はない。それに、一人でトイレにいけないのはエレンの方」

エレン「なっ、あれはたまたま怖い話をしたからであってだな……!!」

ミカサ「そうだったっけ。まぁそれはどうでもいい。目は覚めた?」

エレン「……おかげさまで」

上体を起こし、目を擦る。
そこでようやく気付いたのだが、ミカサは全裸だった。

エレン「……なにしてんだ、お前?」

尋ねると、予想だにしない返答が飛び出した。

ミカサ「エレン、セックスをしよう」

エレン「……本気で言ってるのか?」

ミカサ「本気。本当はあの日にでもしたかった。でも、女性の体はいきなりだと気持ちよくなれないらしい。
     だから、数週間かけて気持ち良くなれるようになった。今の私は全身性感帯」

エレン「すまん、言ってる意味がよく分からない」

ミカサ「エレンの不慣れな手つきでも私は気持ちよくなれる」

エレン「……お前、俺を馬鹿にしてるのか?」

怒気の込められた言葉に、ミカサは首を大きく横に振った。

ミカサ「違う。伝え間違った。だから、その……気持ちよくなれる土台がないと女性は気持ちよくなれない。
     そして、そこから先はテクニックか、もしくは……」

ミカサはエレンの手を取り、自分の秘部へと導いた。

ミカサ「相手を思う心が必要」

ミカサの秘部は、僅かに触れただけでも愛蜜が淫らな音を立てる程に出来あがっていた。
全く乗り気でなかったエレンも、ごくりと唾を飲む。

ミカサ「私は自分が気持ち良くなりたいからそうしたわけではない。

     男性はセックスの際、女性が気持ちよくなっていないと萎えてしまうらしい。
     だから、私が気持ち良くなるのはあくまでエレンの為。エレンに快いセックスをしてもらえるために頑張った」

エレン「そんな話、聞いたことないぞ」

ミカサ「私はアルミンからえろほ……んんっ、学術書を借りて勉強した。知識は十分」

実際には借りたというより、奪ったと表現するのが正しかった。

エレン「しかしだな、アルミンがなんて言うか」

ミカサ「エレンはアルミンの許可がないとなにも出来ない臆病者なの?」

エレン「……そんな安い挑発にはひっかからねぇよ」

ミカサ「だったら、もういい。実力行使」

エレン「なに、言って」

ミカサはエレンを押し倒すと、頭をがっちりと腕でロックし、その口に舌を滑り込ませた。
エレンはどうにか抵抗しようと試みたものの、この年頃では女子の方が成長が早い上、ミカサの腕力は単純に強かったため、まったく敵わなかった。

ミカサ「ん……ん……」

エレンの口の中を蹂躙するように、ミカサの舌が暴れ回る。
しかし、ただ乱暴にしている訳ではなく、歯の一本一本まで舐めつくすかのような、大胆かつ繊細な動きだ。
エレンは形だけの抵抗を続けていたが、それは振りほどくためではなく、僅かに残されたプライドが故だった。

エレン「……んーっ!」

呼吸が苦しい、とミカサの背中を叩いたものの、一向に離れる気配はない。
仕方がなしに鼻で呼吸をすると、甘い匂いが一杯に広がった。ミカサの匂いだった。

エレンが行ったこの鼻呼吸は、生命の危機から逃れる苦肉の策であったのだが、
ミカサはこれを、エレンが呼吸よりもキスを優先したのだと受け取り、ここぞとばかりに唾液を流し込んだ。

唾液が舌を伝い、所有者を移す。
口の中に入ってくるその生温かい液体に、エレンは小さく嫌悪感を示したものの、逃れる術はなく、やがて喉を鳴らして嚥下した。

ミカサ「ぷはっ」

ミカサが離れると、二人の間を透明の糸が繋げた。
エレンはぐったりとしながらも、鋭い眼光をむき出しにする。

エレン「なにしやがる!」

ミカサ「気持ちよかった?」

エレン「はぁ!? んなわけねぇだろ!?」

ミカサ「……下半身はそうは言っていないみたいだけど」

見れば、たしかにそこには立派に設立されたテントがあった。
エレンも思わず驚いた。自覚はなかったのだ。

エレン「こ、これは……違う、違うぞ……ほら、下半身は独立してるってお前も言っただろ!?」

狼狽するその姿を、ミカサは鼻で笑った。

ミカサ「今日のエレンは可愛い」

エレン「なっ!?」

ミカサ「そんなエレンを愛でるのも良い。だが、どちらかというと私は、自分でするよりエレンにされたい」

エレン「されたいって……」

ミカサは仰向けに寝転ぶと、足を広げ、エレンに自分の全てを見せつける。

ミカサ「見て」

エレン「……なにをだよ」

ミカサ「ここ」

ミカサは両の手を使って、膣口を開けっぴろげにした。
ぬらぬらと粘液を滴らせるピンク色のその場所を見るのは、幾度もミカサの裸を見たことのあるエレンでさえ、初めてだった。

ミカサ「ここは、エレンの為だけにある場所」

エレン「俺の?」

ミカサ「そう、エレンがちんちんを入れて気持ち良くなる以外には存在価値がない場所」

エレンは改めて、じっくりとその場所を観察した。

薄桃色の肉は、なにかを待ちわびているかのように、時折ひくひくと収縮する。
とめどなくあふれ出てくる愛液は、エレンへの溢れ出る想いを体現しているかのようだ。

つー、と愛液が伝い、ベッドに一つの染みを作った。
エレンの陰茎の角度も思わず上昇した。

ミカサ「一つ言っておく」

エレン「なんだよ」

ミカサ「私のここは、一人でシコシコするのより、百倍気持ちいい」

エレン「百倍……?」

ミカサ「千倍かもしれない」

エレン「千倍か……それは、試さないのは勿体ない……かも、しれないな……」

ミカサ「人類の損失」

エレン「……それなら」

エレンは勢いよくズボンを脱ぎおろした。
最大の興奮は、最高の勃起を生み出し、脱ぐ際には反り返りによって、腹部にペニスがびったんと打ちつけられた。
天を貫くドリルのようにそびえ立つ皮棒。ミカサも御満悦だった。

エレン「ミカサ、本当に良いんだな?」

ミカサ「いい。私はエレンのちんちんを気持ちよくさせるために生まれてきたようなもの」

エレン「そうか。だったら遠慮なくいくぞ」

エレンは進撃した。
誰かのためじゃない。自分自身の性欲を満たすために。

ミカサ「んんっ」

僅かな水音を鳴らしながら、ミカサの狭く柔らかな膣の中へ、エレンの皮棒が侵入していく。
もう永久に逃がさないと言わんばかりに、膣壁はすぐさまエレンの皮棒へと絡みつき、刺激を与えた。
入って間もなく、エレンが呻きを上げる。

エレン「うあっ……」

ミカサ「エレン?」

エレン「す、すまん。出そうになっちまった」

今こうしている間も、ミカサの膣内は蠢き、皮棒から精液を絞り出さんとしている。
たった数センチ動かすだけでも、果ててしまう。それを見越しての中断だった。

ミカサ「大丈夫、ゆっくりでいい。エレンの好きなようにして」

エレン「しかし……」

ミカサ「言ったはず。この場所はエレンの為だけの場所。今の私はエレンの性玩具……エレンになら、壊されたっていい」

ミカサが、エレンのことをじっと見据えたまま、そして微笑んだ。
その瞬間、エレンの頭の中、奥の方で、なにかがぷつっと切れたような音がした。

ミカサ「っ!!」

ずん、と一気にエレンは腰を押し込んだ。
膣内の奥底にまで、一気に皮棒は攻め込み、そのまま白い散弾を発射した。

ミカサ「ひあっ……!」

乱暴な初体験に、膣内では出血がみられたのだが、ミカサは一切の痛みを感じていなかった。

十分に膣を濡らしていたからではない。
繋がれた悦び、膣奥に広がる温かさが、多量の脳内物質を生み、そこに残されたのは幸福と興奮の二つのみだったのだ。

エレン「はぁっ、はぁっ……!!」

一方で射精を終えたエレン。本来なら一呼吸置かなくてはならない状況だ。
しかし、彼の皮棒は、依然として臨戦状態であり、胸の内で膨れ上がった性欲はとどまるところをを知らなかった。

肩を震わせながら、言う。

エレン「全然収まんねぇ」

ミカサ「それでいい。エレンの気の済むまで」

エレン「だが、本当にいいのか? もしかしたら、本当にお前を……」

それでも、やはりミカサは微笑んだ。

ミカサ「私のこと、滅茶苦茶に、して」

―――数時間後


空が、白み始めていた。

年端もいかない少年少女に宛がわれたその部屋の中で、およそ不釣り合いな肉と肉との衝突音が鳴り響く。
そして、思わず鼻を覆ってしまうようなすえた匂い。少女から溢れ出る愛液、少年が何十発と放つ精液。汗や涎。
それらが混ざりあい、絡み合い、独特の匂いを部屋に充満させていた。

ミカサ「……ぅ……ぁ……」

あれから休みなく快感を与えられ続けている少女は、喋るどころか、喘ぐことすら出来なくなっていた。
体力の限界を超えたのはいったい何時だったのか。もうずっと前から指一つ動かす気力もない。
しかし、下腹部から来る快感の波は、まだまだ終わりを迎えようとはしてくれない。
普段の涼やかな顔はどこへやら、不様に涎を垂れ流しながら、四つん這いで、涙目に微かな呼吸だけを続けていた。

そして、快感を生み出している、件の少年は―――

エレン「はぁっ、はぁっ!」

数時間前から、一向にペースを衰えさせることなく、一心不乱に腰を打ちつけ続けていた。
常人では考えられない量の精液を放つも、未だその上限は見えることはなく、次の射精の為に快楽を貪っている。

気付けば、少年の性器は、以前の様相を失くしていた。
皮は剥け、赤黒く巨大なその身には、太い血管が浮き上がり、女を食らう魔物と化している。

休みなく抽挿を繰り返すその様は、まさに―――進撃の巨根。

エレン「ミカサ、出すぞ!!」

ミカサ「…………ぅぁ……?」

エレンの声に微かな反応をみせたミカサ。
それを了承と受け取り、エレンは最後の射精を行った。

この時に射精された精液は、数十発の後のものとは思えないほどに濃厚で、多量の精子を放出するものだった。
更に言うならば、エレンにはまだまだ余力があった。ここで性交を終えたのは、あくまでミカサの体を危惧したためだ。

膣内を精液で埋め尽くされる感覚に、ミカサは恍惚としながら、気絶した。

エレン「……ふぅ」

一息つくエレン。肉棒を引き抜くと、ミカサの膣からどろりと精液が零れ落ちた。

そこにいるのは以前の純粋無垢な少年ではない。
女を食らう悦びに目覚め、女を我がものにすることを第一に考える男。

そう、それは魔神が生まれた日だった。

―――エピローグ

巨人たちが、我がもの顔で闊歩していた。

エレンは船上で眺める。
生まれ育った街が崩壊していく様を。

母を食われた。それだけが問題なのではない。
いずれ自分のものになったかもしれない女性器が失われていくことに、憤慨していたのだ。


―――ふざけるな。この際、男に手を上げるのは許したっていい。

しかし、若い女に手を上げることだけは、この俺が許さない―――


エレン「駆逐してやる……!! この世から、一匹残らず……!!」


エレンは戦士になることを決めた。
歪んだ理由ではあったが、その場にいた誰よりも、熱く燃え盛る炎を宿していた。



【第一部 完】

第二部もそのまま投下するけど、途中で投下が止まったら、猿ってるか、amazonで頼んだ監獄学園の新刊が届いて読んでるせいだと思って。
あー、はやく花ちゃんのお小水を浴びたいでござるなぁ!!!

―――849年


エレン「出すぞっ!」

ミカサ「んっ……」

ミカサの口の中で肉棒がびくんと跳ね、すぐさま大量の精液が射出された。
口いっぱいに含んでも零れる程の、尋常ではない量だ。
その量の精液をミカサは嫌な顔一つせず―――むしろ恍惚とした表情をしながら―――喉を鳴らして飲み込んでいく。

エレン「いいぞ、ミカサ」

頭を撫でられると、ミカサは心底嬉しそうに目を細めた。
尿道内に残っている精液を吸い取り、手皿で受け止めていた精液を舐めとって、立ち上がる。

ミカサ「ごちそうさま。今日も美味しかった」

エレン「三日ぶりだと、味も濃かったりするのか?」

ミカサ「うん、濃厚」

エレン「ふーん」

ミカサ「私は、水とエレンの精液があれば生きていける」

エレンはズボンを穿き直しながら、自分がそんな女に育て上げた癖に『こいつはまともじゃないな』とミカサを憐れんでいた。

あの日から四年、ミカサとエレンの性的関係は続いていた。
純粋な異性関係ではなく、エレンの性処理をミカサが行うだけなのだが、それはそれでミカサも満足な様子なので問題はない。

そして、現在の二人は、対巨人用の教育部隊であるところの訓練兵団に所属し、日夜努力を重ねている。
今は夜。数少ない自由時間であり、二人が密会出来る唯一の機会で、そこでエレンの性処理を行っていたのである。

エレン「まだ時間はあるよな?」

ミカサ「あと三十分は大丈夫なはず。本番、する?」

ミカサがベルトに手をかけたところを、エレンが制止する。

エレン「いや、今日は話がある」

ミカサ「話?」

若干不服そうな表情を見せながら、ミカサが尋ねる。

エレン「俺たちが訓練兵になってから二年。もうそろそろ我慢の限界だ」

ミカサ「?」

エレン「おいおい、忘れたのかよ。新しい性処理係を作るって言ってただろ」

ミカサ「ああ」

性処理はミカサが行っている。しかし、ミカサだけではどうしても補えない部分があった。
というのも、自由時間は全員一律に与えられている訳ではない。水汲みなどの当番活動や、個人訓練の有無によって、左右される。

つまり、ミカサとエレンは毎日のように自由時間を共に過ごせるわけではなく、当然性処理も毎日行えないのだ。
今のところ、三日に一度行えれば上出来である。これにエレンはフラストレーションを溜めていた。

エレン「贅沢な悩みだが、ミカサの性処理が上手すぎて、俺はオナニーじゃ満足できねぇ」

ミカサ「うん。頑張った甲斐があった」

エレン「だが、出来れば毎日射精したい。出ないと、金玉が爆発しそうだ」

ミカサ「それは困る。エレンの精液がないと私は生きていけない」

エレン「だから、他にも性処理係を作って、ミカサが性処理を行えない日は、そいつにやってもらう」

ミカサ「不本意だが、エレンが望むならしょうがない」

エレン「つーわけで、誰を性処理係にするかを悩んでいた訳なんだが」

ミカサ「決まったの?」

エレン「ああ、こいつらだ」

エレンは一枚の紙をミカサに手渡した。そこには四人の名前が書かれている。

エレン「どうだ?」

ミカサ「納得できる人選もあるが……難しそうなのも一人、二人」

エレン「そう言うと思っていた。だが、大丈夫だ。少しだが、作戦がある」

ミカサ「そう?」

エレン「ああ。もっとも、それにはミカサに手伝って貰わないといけないんだが……」

ミカサ「大丈夫。私はエレンの為ならなんだってする」

エレン「そうか。それを聞いて安心した」

ミカサ「その代わり」

言って、エレンに擦り寄る。

ミカサ「……この先、他の女とするようになっても、私を一番に扱って欲しい」

エレン「なんだ、そんな心配してたのか」

ミカサ「……」

エレン「安心しろ。お前以上のテクニックを持った女なんてそうそういやしねーよ」

そういう意味で言った訳ではないのだが、意味は違えどエレンの一番であることには変わりがないため、
ミカサは肩を抱きかかえられたまま、静かに目を閉じた。

―――三日後、自由時間、夜


サシャ「えーっと……」

エレン「よぉ、サシャ。こっちだこっち」

ようやくエレンを見つけ、小走りで近づくサシャ。

エレン「悪いな、急に呼びだして」

サシャ「いえ、時間に余裕があるので大丈夫ですが」

きょろきょろと辺りを見渡すサシャ。

サシャ「こんなところに呼び出して、一体なんの話ですか?」

エレン「ん……ちょっと、これを見てくれ」

小さな小包を取りだし、広げると。

サシャ「そ、それは!?」

エレン「サンドイッチだ。ハムとチーズが挟まってる」

サシャ「え、これをくれるんですか!? くれるんですよね!? じゃないと話になりませんよね!? ね、ね!?」

涎を垂らしながら詰め寄るサシャ。
片手でその進行を妨げながら、エレンは言う。

エレン「そうだな、条件を飲むならくれてやっても良い」

サシャ「条件?」

エレン「ああ、これをお前にやる代わりに、ヤらせてくれ」

唐突な言葉に固まるサシャだったが、言葉を咀嚼し、その意味を理解したところで嘆息した。

サシャ「……エレン、見損ないました。あなたがそんな情けないことを言う人間だったなんて」

エレン「……」

サシャ「このことは他の誰にも言いません。だけど、もう二度と私に近寄らないでください」

踵を返し、宿舎に戻ろうとするサシャ。
しかし、その手をエレンが掴み、

サシャ「なんで―――すっ!?」

口の中に指を突っ込んだ。
サシャが不快に思い、その指を噛みちぎろうとするのよりも早く―――生じた、違和感。

サシャ「…………ほいひい……」

口の中いっぱいに、濃厚かつ繊細な甘みが広がった。

日夜の訓練で疲れた体に染みわたるような甘さに、サシャの脳が蕩けていく。
エレンが指を引っこ抜くと、この世の終わりを見たような表情を見せるほどだった。

サシャ「な、なんですか、今の……?」

エレン「蜂蜜だ」

サシャ「は、蜂蜜!? そんな高級品を、いったいどうやって……」

エレン「まぁ、独自のルートでな」

この蜂蜜を調達したのはミカサだったのだが、どうやって調達したのかと尋ねたところ「私はエレンの為ならなんだってする」という返事がきた。
まったく答えになっていないのだが、深く追求しない方が身のためだろう、とエレンは納得した。

エレン「なぁサシャ、いきなり変なことを言って悪かった。俺もちょっと正気じゃなかったんだ」

サシャ「……」

エレン「ほら、聞いたことがないか? 男は性欲を発散できないと、おかしくなるって」

サシャ「……たしかに聞いたことはありますが……そんなに辛いものなんですか?」

エレン「俺の性欲は、お前の食欲とほぼイコールだ」

サシャ「そ、それは大変ですね」

エレン「そんな飢えた状態で、お前のような無防備な女に周りをうろちょとされてみろ。そりゃ暴走するってもんだろ?」

サシャ「…………そういうもんなんですか?」

エレン「そういうもんなんだ」

サシャは逡巡したが、やがて頷いた。

サシャ「分かりました。先ほどの言葉は撤回します」

エレン「助かる。だが―――」

サシャ「はい?」

エレン「依然として、問題は解決していない」

ふと下を見ると、エレンのズボンの前あたりがぱんぱんに張っていた。

サシャ「えーっと……それはもしかして」

エレン「ああ、ちんこが勃起してるんだ」

サシャ「もうちょっと遠回しな表現は出来ないんですか!?」

エレン「こっちも必死なんでな」

サシャ「はぁ……」

エレン「なぁサシャ。ヤらせてくれとは言わない。だが、俺の性処理を手伝ってくれないか?」

サシャ「そ、そんなこと言われても……」

エレン「もちろん、報酬だって用意する」

そう言って、エレンは先ほどのサンドイッチを投げ渡した。
夕飯を食べたばかりだというのに、サシャの腹の虫が雄たけびを上げた。

サシャ「うっ……」

エレン「そんな無理なことは言わねぇよ。簡単なことでいいんだ」

サシャ「……例えば?」

エレン「そうだな……さしあたって、下着を見せてほしい」

サシャ「下着を?」

サシャは悩んでいた。下着を見せるかどうかではない。
手に持っているサンドイッチを食べるかどうかを、だ。

ここで提案を断ったとしても、今この手の中にあるサンドイッチは恐らく、自分の物になるだろう。
エレンも一度渡したものを奪い返そうなんて。せせこましい真似はしないはず。
このサンドイッチは、交渉のテーブルにつかせるための費用だと推測する。
だとしたら、今食べてしまったとしても何の問題もないのではないか。いやむしろ食べるべきだ。いやしかし―――

涎が地面にぽたりと落ちた頃、サシャのそんな思考を見透かし、エレンが言う。

エレン「食っていいぞ」

サシャ「!」

聞くや否や、サンドイッチにかぶりつく。
ハムのジューシーな肉感、チーズの豊潤な匂い、それらが口の中で交わり合い、至福の調和を描きだす。

味に酔いしれるサシャの気が緩む。エレンはその一瞬を見逃さなかった。

エレン「俺の性処理を手伝うなら、これから先、いくらでも美味いものを食わせてやる」

サシャ「!?」

嘲られる機会も多いが、サシャとて戦士の一人。
食い物に釣られて淫らな姿を晒すなどという、不様な真似など見せようはずもない。

はずは、ないのだが……エレンの心理を読み切った甘言は、サシャの自尊心の壁を崩すには十分だった。

サシャ「……あ、あまり卑猥なことは……出来ませんからね?」

―――数十分後

エレン「はぁっ、はぁっ……」

静謐な闇夜に、エレンの荒い息が響く。
中腰になり、一心不乱に肉棒を扱くその様は、自慰に目覚めたばかりの猿のようであった。

サシャ「……ふぅ……」

一方で、サシャ。
そんな剥きだしの性欲をまざまざと見せつけられ、そっぽを向きながら赤面している。

その格好は、ズボンを膝元まで下ろし、自らの手でシャツをまくりあげて胸元を晒すという、屈辱的なものであった。
人に見せる用途には作られていないブラとパンツを視姦され、それでも態勢を崩すことは許されない。

サシャ「……エレン、まだですか?」

エレン「そんな早漏じゃねーよ」

ちらりと下を見れば、赤黒い肉棒の先から透明の汁が滴っている。
その液が潤滑液となり、エレンが手を上下するたびに、粘着質な音を鳴らす。

そういった知識に疎いサシャでも、その液が先走り汁だということくらいは知っていた。
即ち、エレンが順調に快感を得ているというのを理解していた。

サシャ「なんか、こうしていると……」

エレン「興奮するか?」

サシャ「ソーセージが食べたくなります」

エレン「……萎えるからやめろ」

と軽口を叩きながらも、サシャはなにか下腹部がむず痒くなるような感覚を得ていた。
その感覚を誤魔化すための軽口なのかもしれない。

サシャは美人だ。内面が全てを台無しにしているだけで、見てくれは部隊一の人気を誇るクリスタとも遜色ない。
すらりと伸びた手足。整った顔立ち。着飾った状態で黙っていれば、街行く男たちが振り返るほどの外面をつくりだせる。
しかし、そんなサシャの姿を見るものはいない。洒落た格好をすることもなければ、美を意識した振る舞いをすることもないからだ。

だからこそ、エレンは視姦という手法をとった。
お前は性欲を抱くに値する存在だと目で訴えかけることによって、サシャの中にある女を目覚めさせようとしていた。

そして、その手法は見事に成果を上げている。
事実、

サシャ「……ん」

サシャが現在浮かべる表情は、今まで見せたことのないものだ。
ほのかに上気した頬には赤みが差し、もじもじと体をくねらせる姿態に、普段の奇天烈さはまるでない。

激しく上下するエレンの右手。
なんとなく、サシャは牛の乳しぼりを思い出していた。

エレン「そろそろ出そうだ」

サシャ「そうなんですか?」

エレン「ああ、だから後ろ向いて尻を突き出してくれ」

サシャ「は?」

エレン「早く」

言われるがまま、サシャは木に手をつき、尻をぐっと突き出した。

エレンは尻が好きだった。というよりも好きにさせられた。ミカサがことあるごとに、エレンを尻の下に敷いたせいだ。
主導権を握りたい訳ではなく、自分の一番魅力的なパーツとエレンの好みが合致すれば、それ以上の幸福はないと思ったので、そのように仕立て上げた。

そんなミカサの陰謀にまんまと嵌ったエレンは、今日も尻好きとしての本分を果たす。

エレン「出すぞ!」

サシャ「……えっ?」

エレンの巨根から、白濁の性欲が迸った。

相も変わらずの、常識を越えた量の精液がパンツを汚していく。
二度、三度体を震わせ、エレンが射精を終えると、サシャは悲鳴に似た声を上げた。

サシャ「な、なにしてるんですか!?」

エレン「なにって、射精だろうが」

サシャ「そんなの分かってますよ! なんで、私の……!!」

肩越しに辛うじて見える尻には、どろり濃厚特性エレン汁がなめくじのように這い、その痕には焼けるような熱さが残っていた。

エレン「直接触れてないんだから、セーフだろ?」

サシャ「馬鹿言わないでくださいよ! ああ、こんなに……」

エレン「やれやれ。しょうがねぇな、拭いてやるよ」

サシャ「触らないでください!!」

サシャはポケットから取り出した布切れで精液を拭う。エレンはやれやれと肩をすくめた。

サシャ「まったく……エレンがこんな人だったとは」

エレン「悪かったな。で、これが報酬だ」

エレンが小瓶を投げ渡す。瓶の中身は、琥珀色に輝いていた。

サシャ「お、おおおおおお……!!」

サシャは早速ふたを開け、瓶を口の真上で傾けた。
中に入っていた蜂蜜が、サシャの口へ垂れ落ちる。

エレン「しまった。精液を混ぜ込んでおくべきだった」

サシャ「げぼあっ」

およそ女性が発したとは思えない奇声を上げ、サシャはむせた。

サシャ「げほっ、げほっ……な、なんていうことを言うんですか!? せっかくの蜂蜜が台無しですよ!!」

エレン「ひでぇ言い草だな。お前、精液の味を知ってんのか?」

サシャ「……美味しいんですか?」

エレン「俺の知り合いは、精液と水さえあれば生きていけると言っていたな」

サシャはごくりと唾を飲み込んだが、はっとして、首をふるふると横に振った。

サシャ「騙されませんよ」

エレン「嘘は言っていない」

サシャ「だとしたら、その人は頭がどうかしてるんです」

「そんなことはない」と言い返すことはどうしても出来なかった。

エレン「でも、蜂蜜は残しておいた方が良いぜ」

サシャ「どうしてです?」

エレン「蜂蜜は単体で食うよりも、もっと美味しい食べ方があるからだ」

サシャ「……!」

エレン「やっぱりパンにつけて食うのが一番だろうな。牛乳に混ぜるってのも捨てがたい。
     訓練前の朝飯にでも食べてみろ。その日中は、疲労も感じないくらいに体が満ち溢れるぞ」

サシャ「……そ、そんな貴族みたいな真似を!?」

エレン「出来るんだ。その蜂蜜があればな」

サシャ「ああ、まさか、そんな、あり得ない……」

サシャは恐怖すら覚えた。

エレン「じゃ、ありがとな。中々気持ちよかったぜ」

サシャは返答しなかった。
頭の中が明日の朝食のことでいっぱいだったからだ。

だから、気付けなかった。
それが悪魔の狡猾な罠だったということに。

一人悶えるサシャを遠目に振り返りながら、エレンは勝利を確信し、にやりと口の端を吊り上げた。

―――次の日、朝

がやがやと賑わう食堂の隅で、一人ぽつんと項垂れる者がいた。
エレンが声をかける。

エレン「よう、サシャ。隣座るぜ」

サシャ「ああ、エレン。おはようございます……」

か細い声で返答するサシャ。
その顔にはまるで生気がなく、目の下には濃い隈があった。

エレン「ひでぇ面だな。今日の訓練は素手で巨人に挑むのか?」

サシャ「笑えませんよ」

エレン「そうか」

言って、エレンは懐から小瓶をとりだした。
ふたを取り外し、瓶を傾かせ、中身を配給されたパンの上へ―――かけようとしたその手を、サシャが掴んで止めた。

サシャ「え、エレン。それは……?」

エレン「ん、ああ。『貴族のような真似』を俺もしてみたくなってな」

サシャ「……まだ、あったんですね」

エレン「まぁな」

狼狽するサシャを見て、エレンは一笑し、顔を寄せて囁いた。

エレン「お前、食っただろ」

サシャ「!!」

あからさまな動揺を見せるその姿に、追い打ちをかけるように言葉を紡ぐ。

エレン「お前が蜂蜜を目の前にして、一夜を我慢できるとは到底思えなかった。
     どうやらその予想は見事に的中したようだな。しかし、俺はあえて全てを平らげないようにと提案した。何故だかわかるか?」

サシャ「分かりません。一体どうして……そのせいで、私は!」

エレン「それが答えだ」

サシャ「……え?」

エレン「手に入るはずだった至福を逃した気分はどうだ? 
     本当だったらお前は今頃、蜂蜜を塗りたくったパンを食べて、顔を綻ばせているところだった。
     だが、今のお前は、絶望に打ちひしがれるしかない……」

エレンは体勢を戻し、改めて蜂蜜をパンへと注いだ。
琥珀色―――いや、黄金色の輝きは、その絶品さを悠然と物語っていた。

エレン「涎、垂れてるぞ」

エレンの言葉に、サシャは慌てて口元を拭った。
しかし、拭っても拭っても、唾液はとめどなく溢れでる。

エレン「だがな、俺だって鬼じゃない。お前が条件を飲むならこのパンをくれてやってもいい」

サシャ「条件……」

エレン「ま、昨日よりは過激になるだろうけどな」

サシャ「……くっ」

ただぶらさがっているだけのエサなら、サシャもまんまと食いつきはしないだろう。
人としての尊厳がある。狩猟民族としての誇りがある。与えられるエサだけに満足するような家畜ではない。
自らの手で掴み取ってこそ、食には意味がある。

しかし、サシャは知ってしまっている。いや、知らしめられてしまった。
一度口に入った極上のエサを、掠め取られた。舌先では、その味の片鱗が疼いている。

もう耐えることなんて、出来なかった。
腹の虫が、小さく悲鳴を上げた。

サシャ「……分かりました。条件を飲みましょう」

エレン「話が分かるな」

サシャ「でも、昨日も言った通り、あまり卑猥なことは……」

エレン「大丈夫だ。心配するな」

舌舐めずりするエレンの姿は、まさに狩人。
捕食者の目をしていた。

―――二度あることは、三度ある。

この言葉の通り、エレンとの取引はそれを最後には終わらなかった。

二度もやってしまったのだ。もう一回くらい。
もっとも陥ってはいけないそんな思考に陥り、サシャは取引を続けていた。
段々とエレンの要求が過激になっていることにも、薄らと気が付きながら。

蜘蛛の糸というのは、一瞬で獲物を封じ込めるのではない。
逃げようともがけば、体全体に糸がまとわりつき、やがて少しの身動きも出来なくなるのだ。

サシャの現状は、限りなくそれに近い。
まだ大丈夫。いつでも自分は抜けだせる。
なんの保証もない自分自身の慰めに、その身を委ねている。

今日は下着を脱がされた。
今日は全裸で脚を開かされた。
今日は性器へ指を入れられた。

まだ大丈夫。まだ大丈夫……。今日もそんな言葉で自分を騙す。
どこからどこまでが許されて、どこからどこまでが許してはいけないのか。
その境界を見失いながらも、サシャはエレンとの取引を続ける。

消失した境界。もしかしたら、もうずっと前に―――

―――数週間後、夜、自由時間

訓練以外では立ち入ってはいけない小屋に、二つの気配がある。
どうやって入ったのかと言われれば、それはもちろん、とある男の忠実な僕と化している女の工作があった。
曰く、鍵を盗むのも、錠をこじ開けるのも、呼吸をするのよりも容易い……らしい。もっとも、それは今特筆すべき内容ではない。

小屋の中は、窓から入る僅かな月光以外には、光源がなかった。
そして、今現在、月は雲に隠れているため、完全な暗闇が訪れている。

そして、その二つの気配の内の一つは、ぼんやりと思考する。

(あれ……なんでこんなこと、してるんだっけ)

近くにあるも見えない股の間から、聞き慣れない水音が響いている。どうやら自分の膣に、幾度もモノを出し入れされているらしい。
冷静になろうと頭を働かせようとしても、快感がそれを邪魔する。脳味噌が蕩けてしまっているようだ。

(でも、気持ちいいなぁ……)

それでも、現状を把握しようと、ゆっくりと脳を働かせる。
今、性器に出し入れされているものは、恐らく男根だろう。
自分の指よりもずっと太く熱く、大きなモノだ。よくもそんなサイズのものが入るな、と場違いな感想を浮かべてしまうほどに。

では、その男根の所有者は誰なのか。
決まっている。自分がそんなこと―――性交渉を行うような相手など一人しかいない。

エレン「ああ、いいぞサシャ。お前のナカは最高だ」

雲が流れ、月が再び姿を現した。
部屋の中、エレンとサシャの姿が、克明に浮かび上がった。

サシャ「エレン……もうやめ……」

正常位で犯されているサシャは、朦朧としていた。

エレンとの性交渉の回数は、すでに二つの手の指では数え切れないほどになっていたが、それでも行為を致す度に正気を失ってしまう。
エレンがミカサ相手に鍛え続けてきた性技を受け止めるには、サシャには経験がなさすぎた。
強すぎる快感に、サシャは涙目でいやいやと首を振るが、その希望は一向に叶えられる気配がなかった。

エレン「疲れたのか? でも、自由時間はまだあるからな。それまでは目いっぱいやらさせてもらうぞ」

地獄へ突き落すかのような一言。
だが、こうして好きなように弄ばれるのだって、初めてのことではない。
こういう時どうするべきかを、サシャは知っている。

サシャ「キス…………してく……だ、さ……」

エレン「ん? ああ」

サシャのおねだりを聞いて、エレンは傍らに置いてある小瓶を拾う。
その中身を口へと入れると、そのままサシャと口づけを交わした。

サシャ「んっ……」

中身はやはり蜂蜜だった。
エレンの唾液と共に、それがサシャの口の中へと移されていく。

サシャはこれが好きだった。
強烈な甘味によって、脳が更に活動を抑え、思考が快楽の中へと溶けていくような気がした。

エレン「んじゃ、続きいくぞ」

口づけを終えると、前かがみの体制のまま、エレンは再び腰をふりだした。
再び盛り上がっていく性感。サシャは手を前に突き出した。

エレン「うおっ!?」

そして、エレンの顔を引き寄せると、だらしなく半開きにした口を擦りつける。

サシャ(いつの間にこんなことになったのか分からない……分からないけど……)

顔を唾液だらけにされては堪らない。エレンはその口の動きを、自らの口を重ねることで封じた。
今度は蜂蜜を用いない、ただの口づけになった。

それでもサシャは、エレンの口内を舐めまわし、唾液を飲もうと吸いついた。

サシャ(美味しいし、気持ちいいし……もうどうだっていいか……)

闇夜の中、二つの影が互いを貪るように蠢いた。

―――一週間後、自由時間


クリスタは、宿舎からやや離れた森林の中にいた。
くりくりとした目はせわしなく辺りを見まわし、ランタンの灯りをたよりに奥地へと進んでいく。

クリスタ「そろそろいいかな」

少し開けた場所にでたクリスタは、人気のないことを確認し、地にランタンを置いた。
そして、今にも闇が襲ってきそうな孤独の中、思い立ったように服を脱ぎ始める。

クリスタ「……ふぅ」

一枚、また一枚と、脱ぎ落された衣服が重なる度、クリスタの心臓は鼓動を早めた。
緊張感が最大限に高まった頃、とうとう身に纏っていた全てがなくなった。

クリスタ「はぁっ、はぁっ……」

クリスタの体は夜風に吹かれても熱気を失わず、興奮は高い体温を維持させていた。
灯りに照らされた白い肌の上で、絹の糸のように繊細で滑らかな金髪が躍る。

訓練兵の男たちの間でアイドル扱いされている彼女が、こんなことをしているだなんて、いったい誰が想像できようか。
きっと、誰にも出来はしない。当の本人でさえ、自分がしていることを実感しきれていないのだから。

クリスタ「……私、外で裸になってる……」

言葉に出してみても、まだ信じられない。
自分が気弱な性格だというのは分かっている。そのはずなのに、こんな大胆な真似を。

夢の中にいるような浮遊感。クリスタは衝動に耐えきれず、走りだした。

クリスタ「あはっ、あはははははは!」

そして、笑う。理由なんてない。
ただ、こみ上げてくるものをそのまま表現しているだけだ。

クリスタ「すごい! すごいぞクリスタ!! 変態だ! あははははは!! あはは―――あうっ!」

笑う。走る。笑う。走る……そのうち、調子に乗り過ぎて転んだ。

クリスタ「いーたーいー……!! いたいー!!」

前のめりに転んだ後、今度はごろごろと転がった。
男たちが唾を飲み込むような体躯が、汚れていく。美のなにもかもを台無しにするような所業だった。

クリスタ「はぁっ……」

一しきり楽しんで満足したのか、クリスタは嘆息した。
手を伸ばせば届きそうな星空が目前に広がる。木々を筒に見立てた万華鏡のようだ。

今この瞬間、自分は誰よりも自由だとクリスタは感じていた。
訓練も、人間関係も、生まれも育ちも―――まるで気にしないで済む世界がそこには確かにあった。

幸せだ、と目を瞑ろうとした時、物音がした。
驚いて飛び起き、目をやると、そこには―――

―――食堂


時はさかのぼって三日前の食堂。

ミカサ「クリスタには露出癖がある」

エレン「は?」

手っ取り早く事を進めるのは弱みを握ればいい。
そのためエレンはミカサに獲物の調査を依頼していたのだが、結果は衝撃的なものだった。

エレン「それが本当ならこれ以上ないっていうくらいの情報だが……間違いないのか?」

ミカサ「現に今、クリスタは下着をつけていない」

エレン「嘘だろ!?」

思わず、遠くのテーブルにいるクリスタを見る。
友人と何食わぬ顔で談笑しているクリスタ。その下では、性器を丸出しにしているなんて。

エレン「たまんねぇな」

エレンの目が輝いた。

ミカサ「……そっちの方が好みなら、私も日常的に下着をつけないようにするが」

エレン「馬鹿、自主的にやってるから興奮するんだろ」

ミカサ「……」

エレン「それに、俺は一日穿いた後の下着を嗅いだりするのが好きだ」

「ならいい」とミカサは追求を止めた。

ミカサ「下着をつけなかったり、浴場で体を隠さなかったり、兆しはあったのだが、つい先日決定的な事案があった」

エレン「なんだ?」

ミカサ「少し離れた場所にある森林の中で、下着姿で駆けまわっていた」

エレン「おお……」

ミカサ「しばらくした後に自慰を始め、絶頂を迎えると満足したのか、服を着直して宿舎に戻った。
     こころなしか清々しい顔をしていたような気がする」

エレン「それは筋金入りだな」

ミカサ「どうする? このことで脅せば、今すぐにでも犯せると思うが」

エレン「うーん……」

エレンは思い悩んだ。当初の思惑通り、手っ取り早く済ませるなら脅せばいいだろう。
しかし、それは確実ではない上、失敗した時はもう二度とクリスタと関わりを持つことができない。

一番怖いのは開き直りだ。裸で野を駆けまわるような変態なら、その性癖を周囲に暴露されるのをを厭わない可能性がある。
それどころか、同調した男たちによってクリスタ露出教という謎の宗教が結成されてしまうかもしれない。

脅すよりも確実かつ安全にクリスタと性交渉する方法。
しばし悩んだ末、とうとうエレンはその方法を思いついた。

エレン「そうか」

ミカサ「なに?」

エレン「俺自身が変態になればいいんだ」

「もう十分に変態では?」とミカサが言えば、
エレンは淡々と「お前に言われたくない」と返すのであった。

―――再び三日後の森林


エレン「……」

クリスタ「え、エレ―――ンッ!?」

「どうしてここに」と言葉を紡ぐことができなかった。
何故なら、エレンが自分と同じように、一切の衣服を身に纏っていなかったからだ。

クリスタ「あ! 私、服……!! で、でもエレンも裸で……!! ええ……!? なんで……?」

混乱し、右往左往するクリスタ。
手で局部や乳房を隠そうとはしているが、全然隠し切れていなかった。

エレン「落ちつけ、クリスタ。俺はお前に危害を加えたりしない」

クリスタ「え? あ、いや、えっ?」

エレン「だから、落ち着いて話をしよう。」

と言いつつも、エレンの局部はどう見ても落ち着いていなかった。
それでも、その真摯な眼差しに、クリスタはようやく正気を取り戻していく。

クリスタ「えっ、あの……これって、どういう……?」

エレン「ああ、つまりな、俺も同類なんだ」

クリスタははっとした。
危害を加えない、全裸、同類。状況やエレンの言動から一つの答えが導き出された。

クリスタ「エレン、も……?」

エレン「ああ、露出癖があるんだ」

はっきりとした物言いだった。

エレン「この前たまたま俺が露出しようと辺りを歩いている時に、クリスタを見つけてな。
     悪いとは思ったんだが……その、見せてもらった。お前の露出を」

クリスタ「そ、そんな……」

クリスタは羞恥と絶望で目の前が真っ暗になった。
同期の仲間に自分の醜態が見られていたことに、小さな心臓は張り裂けんばかりだった。

―――のだが。
よくよく思い直してみれば、その相手というのは。

クリスタ「……」

クリスタは改めてエレンを見た。

普段は凛々しく訓練に打ち込んでいるその男は、今現在、全裸で陰茎を極限にまで膨らませている。
どう見ても変態だった。こんな男相手に、そんな悲愴を感じ得なくてもいいのではないだろうか。

そう思った瞬間、急に視界が鮮明になった。
自分は変態で、相手も変態。なんだ、まるで問題ないじゃないか。クリスタは胸をなでおろした。

エレン「悪い。本当は見なかったことにするべきだと思ったんだけどな」

クリスタ「ん、いいけど……。でも、それならなんで私に話しかけてきたの?」

エレンは一瞬ばつが悪いような表情を見せた後、意を決して言った。

エレン「俺の裸を見てくれ」

もうすでに見ているじゃないか、という話ではない。
つまり、全裸を超えた先にある、自分の全てを解放する行為を見てくれとエレンは言っているのだ。

クリスタ「え、でも……」

エレン「もう一人じゃ満足できないんだ。このままじゃ、俺は誰かに無理やり見せつけるような不祥事を起こしちまう。
     そんな時に出会った仲間がお前だ、クリスタ。露出に理解のあるお前なら、俺の全てを受け止めてくれると思ってな」

クリスタ「な、仲間って」

エレン「この際、見なくたっていい。ただそこにいるだけでいいんだ。頼む、クリスタ」

クリスタ「ううう」

元々頼まれると中々ノーと言えない性分である。
その上、唯一の仲間とまで言われてしまうと、もう断るなんて出来はしない。

それに、見たかった。自分以外の人間がどうやって露出するのかを。

クリスタ「……分かった。私、エレンのこと、じっと見てるからね?」

―――数十分後

クリスタ「すごい……」

クリスタは驚嘆していた。こんな光景は見たことがない。
心臓の鼓動は生命の脈動なのだと実感するような、神秘的な眺め。

エレン「はっ! はっ!」

エレンは上体を後方に逸らせ、背中を地面につけず、首と足で体を支えていた。
いわゆる首ブリッジの体勢である。

ただのブリッジではなく、首ブリッジ……では、自由になった両の手はどこで、なにをしているのか。
決まっている。山頂に突き刺さったフラッグのようにそびえ立つ巨根を、扱いているのだ。

クリスタの目は釘付けだった。男の自慰行為を見るどころか、裸をじっくりと眺めることだって初めてだ。
そんな初心な女が、こんなアクロバティックかつ独創的な自慰を目の前にして、逸らさずにいられるだろうか。
いや、いられはしない。

クリスタ(なんだろう、この気持ち……)

クリスタは、心の奥底でふつふつと燃えあがるものを感じていた。
初めて湧きでたその感情は、畏怖や失望といった負の感情でない。
そう、その感情とは。

クリスタ(尊敬、感動、陶酔……)

そして、畏敬が故の嫉妬。

クリスタはいてもたってもいられず、立ち上がった。

クリスタ「エレン、見て!」

エレン「ん?」

クリスタは尻を突き出し、両手で広げ、肛門をむき出しにした。
本来絶対に空気が触れない場所へ、風が流れ込む。直腸が外へ出てしまっているのではないかという解放感だ。

エレン「おお、クリスタ! やるな。丸見えだ!」

クリスタ「ほんと!? どうしよう、私、エレンにお尻の穴を見られちゃってる!」

エレン「ああ、クリスタの尻の穴を俺は見てるぞ!」

クリスタ「あはははは!! すごいすごい!! 私、馬鹿みたい!!」

どう見ても馬鹿だった。

ただ、そんな異常な光景であっても、裸の男女がお互いの恥部を見せつけあってることに変わりはない。
エレンの巨根は一度目の射精を迎えようとしていたし、クリスタの膣口はてらてらと光る粘液を漏らしていた。

エレン「よし、クリスタ。今度は俺の番だ」

クリスタ「え?」

エレンはしなった木が元に戻るように、そのまま直立の体勢へと移った。
右手の動きを加速させる。巨根はさらに怒張した。

エレン「おおおおっ!!」

雄たけびに応じるように、精液は勢いよく外の世界へと飛び出した。
何億もの精子たちが、閉じ込められていた鬱憤から解放され、より遠くへ競るように飛んでいく。
砲身に残っていた精液を絞り出し、「ふぅ」と小さな溜息をつくエレンに、クリスタが声をかける。

クリスタ「い、今のって射精……だよね? 初めて見た……」

エレン「ああ。クリスタのおかげで気持ちのいい射精が出来た。ありがとな」

クリスタ「そんな、私はなにもしてないし」

エレン「んなことねぇよ。立派な菊の花だったぜ」

クリスタは赤面した。

エレン「でも、俺ばっかり楽しんじゃって悪いな」

クリスタ「ううん。そんなの、別に」

エレン「なんなら、俺がクリスタを気持ちよくさせてやろうか?」

クリスタ「えっ!?」

ぎょっとした表情を見て、エレンはあわてて言い繕う。

エレン「あ? ……あ、ああ! 別にそういうつもりで言ったわけじゃねぇよ! 今度は俺が見る側に回ろうかって!」

クリスタ「な、なんだそういう意味か。あはは、ビックリしちゃった」

"エレン"で検索

俺「おっ!進撃SSあるじゃん。」

このスレ開く

俺「とんでもないスレに迷い込んでしまったようだ....」

クリスタ「でも、そっか。そうだよね。裸で二人っきりなんて、普通なら……」

クリスタは、頭の中でエレンと性交する自分の姿を思い浮かべていた。
晒してはならない部位を他人に見せつけるだけではなく、好きなように弄られ、相手のモノによって刺し貫かれる。
その姿はひどく官能的であり、屈辱的で、自分のなにもかもを相手に支配されるような……。

エレン「クリスタ? おい、大丈夫か?」

クリスタ「わっ!」

気付けば、エレンの顔が目の前にあった。
心配になって覗き込んできたのだろう。しかし、驚いたクリスタは尻もちをついた。

エレン「なにやってんだよ、ほら」

クリスタ「……うん、ごめ―――」

差し伸べられた手を掴んだ瞬間、クリスタの足元から、なにかが急激に這いあがった。

クリスタ「……え、うそっ。 あ、あれっ……! やだ……っ!!」

エレン「クリスタ……?」

露出していた興奮。露出を見せられた興奮。妄想による興奮。
クリスタの体は、氾濫寸前の河川だったのだ。様々な要因によって、限界の一歩寸前まで昂っていた。

そして、最後の一押しはエレンによって握られた手。
それまでのような間接的なものではない、直接的な刺激。とうとう快楽の河川は溢れかえった。

クリスタ「んんんん……っ!!」

声にならない声が上がった。
オーガズムは筋肉の収縮を繰り返し、果てしない快感を生む。
電撃を受けたようにしばらく体は張り詰めていたが、やがてその波が引くと、クリスタは崩れ落ちるように項垂れた。

クリスタ「はぁっ……」

エレン「……大丈夫か?」

クリスタ「んあっ」

未だ繋がったままの手に、エレンが力を込めると、クリスタは体をくねらせた。
まだ敏感なままの体は、ちょっとした刺激にも反応を示してしまう。

クリスタ「ああ、はぁっ……」

なんて気持ちが良いんだ、とクリスタは感動すら覚えていた。
一人では決して達することのできない境地だ。今までやっていた自慰や、露出で得ていた興奮が、子供の児戯だったと感じてしまうほど。

しかも、これが上限ではなく、この先があるのだ。更なる快感。新たなる一歩。壁の向こうの世界。
クリスタの頭の中が性欲に満たされた。

朦朧としながらも、ようやく息を整え、言う。

クリスタ「エレン、私、もっと気持ち良くなりたい……見られるだけじゃ、足りないの」

そして、クリスタの手が、エレンを力いっぱい引き寄せた。

―――数十分後

全ては計画通りだった。
少年だったころとは違い、異性に性器を見せつける行為に若干の興奮を覚えるようになっていたのは確かだが、エレンのそれは、露出趣味と言える程ではなかった。

しかし、エレンは露出趣味があるように振舞った。クリスタに仲間意識を持たせるためだ。
秘事を共有することは、秘事をネタに脅す以上の結果を導き出させると判断したのだ。

その思惑の通りにことは進み、クリスタは―――陥落した。

クリスタ「ああっ、はぁっ!! エレン、すごいよ。気持ちいいっ!!」

叫ぶような声量で喘ぎ声をあげるその小躯は、エレンの手によって持ち上げられていた。
いわゆる駅弁。四十八手でいうところの櫓立ちである。

クリスタの小柄な体躯を見た時から、エレンはいつかこの体位で犯してやろうと夢見ていた。
また、クリスタも常識的でない性交を求めていた。二人の希望は合致したのである。

エレン「おい、流石に声がでけぇよ」

クリスタ「ご、ごめん。出ちゃうの……出ちゃうのっ!! それに……!」

エレン「それに?」

クリスタ「…………おっきい声だした方が、気持ちいい……から……んあっ!」

エレン「この変態野郎が!」

エレンの巨根が、クリスタの膣の奥地まで進撃する。その挿入はクリスタから言葉を引き出した。

クリスタ「そうなの! 私、変態なの……っ!!」

エレン「あぁ!?」

クリスタ「いっつもそういうことばっかり考えてるの! 
      みんなが私のこと見てるって分かってて、だけど、下着もつけないで……」

エレン「……」

クリスタ「そうやって、興奮してたんだ! もっと見てって! 私のこと、オカズにしてって!!」

純粋無垢な少女に見えたクリスタの告白。
それは、責め苦のように膣を突かれている現状と相まって、なにかに対する懺悔のようにも見える。

クリスタにとって、快楽とはそのなにかからの逃避なのだ、とエレンは推察した。
そして、決心した。この愛する性奴隷の為、自分も全力を出し、一切を考えられなくしてやろうと。

エレン「自分で声を止めることが出来ないって言うなら、俺が止めてやるよ」

クリスタ「えっ? ―――んっ!」

エレンは腰の動きはそのままに、クリスタの口を奪い、舌を侵入させる。
初めての感覚に、クリスタは一瞬だけ身を竦ませるも、すぐに力を抜いた。

エレンの舌技は熟練されており、蛇のように滑らかに動いた。
クリスタも負けじと舌を絡ませる。そのぎこちなさが、かえってエレンを興奮させた。

クリスタ「んっ……んんっ……!!」

エレンの巨根が、一層激しく膣へ抽挿される。
口を塞がれたクリスタは、声を上げることもできず、されるがままだった。

クリスタ「んん、うぐっ……んんんん……」

息が苦しかった。鼻で必死に呼吸する。
ちらりと目を開けると、そんな自分とは対照的に、エレンは余裕綽々の様子だった。

体術に長けているのは知っているが、それでも体力がそこまでずば抜けているわけではないはず。
つまり、これが男と女の差なのだろう、とクリスタは思った。
食う側と食われる側。今の私は、エレンに貪られるエサに過ぎない。

そんな自虐的な発想が、興奮を増大させた。

クリスタ「んっ、んっ、んっ、んっ」

膣の中で、エレンの肉棒が更に膨らんだ。
もうじき射精を迎えるという合図だった。

それでも、エレンは抽挿の速度を落とそうとはせず、抜くそぶりを見せることすらしない。
もっとも、クリスタはそれでよかった。いや、そうでなくてはならなかった。
最高の興奮は、膣内での爆発によって生まれるのだと、本能的に理解していた。

クリスタ「んんっ…………んっ―――んんんんっっ!!!」

そして、エレンが射精した時。
クリスタが求めていたそれは、たしかに訪れたのだった。

性交を終えてからしばらく経っていたが、二人はその場を立ち去ってはいなかった。
裸のまま、地面に並んで寝転んでいる。星空が二人を見下ろしていた。

クリスタ「きれい」

エレン「クリスタの方が綺麗だ」

クリスタ「……エレンって、そういうこと言うキャラじゃないと思ってた」

エレン「言って欲しいのかと思ってな」

ラブラブエッチなるものをミカサがやろうと提案してきた時に学んだ言葉だった。
もっとも、エレンはそのプレイでは大した興奮は得られなかったのだが。

エレン「あのだいしゅきホールドとかいうやつは中々良かったけどな……」

クリスタ「え?」

エレン「なんでもねぇよ。それより、そろそろ戻るか?」

クリスタ「んー……もうちょっとだけここにいたい」

もう少しくつろいでいたとしても、急いで戻れば十分に間に合うだろうと、エレンは了承した。

クリスタ「私、前からこんな人間じゃなかったんだよ」

エレン「あ?」

突然、クリスタは語り出す。

クリスタ「その……ぉ、オナニーはよくする方だったけど、でも常識の範疇って言うか、あんな異常なことは全くしなかった」

エレン「露出のことか?」

クリスタ「うん」

エレン「じゃあ、なんでだ?」

エレンが問う。

クリスタ「理由は言えないんだけど……ちょっと、生きるのが辛いなって思ってる時期があってね。
      毎日毎日、嫌なことばっかり考えちゃって……そうだね。死ぬ理由とか、どうやったら楽に死ねるかとかばっかり考えてた」

エレン「……」

クリスタ「でね、いつもそんな風にぼーっとしてたから、朝にね、その……」

言い辛そうに口をもごもごさせるも、言葉を紡ぐ。

クリスタ「下着をつけ忘れちゃって、気付いた時にはもう着替え直す暇もなくて、その日一日はそのまま」

エレン「へぇ」

クリスタ「それで、ようやく一日をやり過ごした時に気付いたんだけど、その日は死ぬことなんて全く考えてなくて、
     『バレたらどうしよう。バレないようにしなくちゃ!』 って、パンツのことしか頭になかったんだ」

エレン「……」

クリスタ「それで思ったの。結局、私の悩みなんて、パンツ一枚分の重さにも満たないものだったんだなって。
      馬鹿みたいな結論だけど、そうやって馬鹿になれば、生きるのなんて楽なものなんだなって」

エレン「で、露出にはまったのか」

クリスタ「最初はそうやって悩みを誤魔化す手段だったんだけどね。今は手段が目的になっちゃった」

エレン「仕方ないだろ。だって、気持ちいいことは……なんつーか、最高だからな」

クリスタ「ね。最高だ」

言って、クリスタは転がるように移動し、エレンの胸に頭を乗せた。

クリスタ「最近は自分でもやり過ぎだなって思ってて、それでも歯止めがつかなくて困ってたんだけど……」

しょげたような声にエレンが目をやると、クリスタはぱっと顔を上げた。

クリスタ「これからはエレンが気持ちよくさせてくれるし、大丈夫だよね?」

それは、天使のような小悪魔の笑顔。
男の心を一瞬で奪うものだった。

まさかこんな深い話になろうとは

―――二週間後、自由時間

エレン「で、なんだよ、ユミル。話って」

ユミル「はっ、とぼけんじゃねぇよ」

自由時間、今日は誰に相手してもらうか決めかねていたエレンを、ユミルが話があると呼び出した。
人気のない場所だった。真意を問うたところ、返ってきたのは敵意の込められた目つきだった。

エレン「怖い顔すんなよ。俺がお前になにかしたか?」

ユミル「……私に、じゃねぇ。クリスタに、だ」

エレン「クリスタがなんだってんだよ」

ユミル「だから、とぼけんじゃねぇ!!」

ユミルが叫ぶ。ただでさえ常日頃から不機嫌そうにしている面が、怒りに歪んだ。
こうも感情むき出しでこられれば、はぐらかす必要はない。エレンは開き直って言う。

エレン「ああ、分かった。そうか、お前はクリスタと俺がセックスしてるのが気にいらねぇのか」

セックスという単語に、ユミルの眉がぴくりと動いた。

ユミル「……ただ、してるだけっていうなら口を挟んだりしない」

エレン「そうなのか? じゃあ、なにが問題なんだよ」

ユミル「それも、分かってるはずだ。お前が自分のやっていることを省みれば」

エレン「分かんねぇな。大事にしてやってるつもりだぜ?」

ユミル「大事に……? どの口が言いやがる」

嘆息し、続ける。

ユミル「昨日、お前とクリスタがしてるところを見させてもらった」

エレン「おいおい、覗き見とは趣味が悪ぃな」

ユミル「……最近、あいつの様子がおかしかったからな。自由時間にこそこそどこかへ行くところも多かった。
     もっとも、普通に男が出来たくらいのもんだと思ってた。それをネタにからかってやるつもりだったが……」

ユミルがエレンをきっと睨む。

ユミル「自分がそこでなにをやってたかくらいは覚えてるな?」

エレン「さて、なんだったかな……」

ユミル「エレンッ!!」

エレン「冗談だ。そうだな……たしか、昨日はイマラチオでもさせてたんだったか」

そう、ユミルが昨夜そこで見たのは、エレンが自慢の巨根をクリスタの口へ乱暴に出し入れするところだった。
髪の毛を掴み、クリスタの頭を前後させるエレン。その度に、苦悶の表情を浮かべるクリスタの姿を、ユミルは呆然と眺めていた。

エレン「そうか、見てたのか。なら、何故その時に止めなかった?」

ユミル「……クリスタは私に何も言わなかった。ということは、言えない事情があるんだ。例えば、誰かに脅されているとか」

その視線の先には、当然エレンがいた。

エレン「なるほどな。つまり、お前は俺が脅してクリスタを弄んでいると思ったのか」

ユミル「当り前だ。でなきゃ、クリスタがあんな真似を―――」

エレン「―――イマラチオしてくれと言ってきたのは、クリスタの方だ」

ユミル「……あ?」

ユミルは耳を疑った。

エレン「残念だがお前は勘違いしている。関係を最初に持ちかけてきたのはクリスタの方だ」

ユミル「なんだと?」

エレン「クリスタの異変に気付いたのなら、もう一つ気付かなかったか?
     ここ最近のクリスタの俺への態度が、以前よりずっと好意的であることに」

ユミル「……それは」

事実だった。クリスタに男がいるかもしれない、と感づいた時、真っ先に浮かんだ相手の男はエレンだった。
他の者は全く気付かなくとも、ユミルだけはクリスタの僅かな変化に気付いていた。

エレン「同意の上だったと理解したか? じゃあ、なんであんなことをしていたのかってのはさっき言ったよな。    
     クリスタがイラマチオしてくれと頼んできたからだ。お前は信じられないかもしれないが、あいつは乱暴にされるのが好きだからな。
     正確に言えば、恥ずかしい目に遭うのが好きで、そうやって俺の好きなように弄ばれるのが最高に興奮するらしいな」

畳みかけるように言うと、ユミルは苦渋の言葉をもらす。

ユミル「……やめろ」

エレン「クリスタが苦しそうにしていた? 一見すればそうだが、あいつはそれすらも自分の糧にするような女だ。
     上目遣いに俺を見上げるクリスタの目は、それを歴然と物語ってた。第三者の視点からじゃ分からねぇだろうがな」

ユミル「……やめろ」

エレン「俺が喉奥に射精して、あいつがなんて言ったか教えてやろうか?
    『ちょっと苦しかったけど、普通に口でするより私は好き』だってよ。あいつは普通じゃ満足できねぇんだな」

ユミル「やめろって言ってんだろ!!」

ユミルは声を荒げ、詰め寄った。

胸倉を掴まれたエレンが言う。

エレン「離せよ。服が破けちゃうだろうが」

ユミル「お前、クリスタをそんな風に……!!」

エレン「仕立て上げたってか? 残念だが、あいつは元からそんなやつだった」

ユミル「違う! クリスタは、もっと、純粋な……!!」

エレン「お前が知らなかっただけだ」

ユミル「っ!!」

やけに耳に付くその言葉に、ユミルの手から力が抜ける。
そして、愕然と項垂れた。

エレン「なぁ、改めて聞くぞ。『俺がいったいお前になにをした?』 
     俺とクリスタがそういう関係にあるのは、お前にとって気に入らないことかもしれないが、そこまで執着する必要があるか?
     それともなにか? 友情なんて糞食らえだ、みたいな顔しておいて、クリスタをそんなに大事に思っているのか?」

ユミル「……黙れ、殺すぞ」

エレン「へっ、忘れたのか? 俺の対人格闘術の成績は、お前より上だぞ」

ユミル「…………ナイフよりも強い武器を持つ人間だって、いる」

エレン「は?」

ユミル「……」

それ以上の返答はなかった。

無言のまま時が流れた。
俯くばかりのユミルだったが、その表情には恐らく悲観が浮かべられていることだろう。
そして、エレンが言った。

エレン「分かった。理由は聞かねぇ。それに、そこまでお前が納得出来ねぇっていうんなら、交渉の余地くらいは与えてやる」

ユミル「……どういうことだ?」

エレン「真相は違うが、お前が最初に抱いていた俺への印象は正解だ。俺はクリスタを性処理の道具にしか思っていない」

ユミル「!」

エレン「これがどういう意味か分かるか?」

ユミル「……いや」

エレン「俺は、相手が誰だって構わないっていうことだ」

ユミル「だから、それがどういう―――」

言いかけて、気付く。その真意に。

ユミル「まさか、てめぇ……!」

エレン「そうだ。お前が体を差し出すってんなら、俺はクリスタから手を引くぞ」

ユミル「ど、どこまで腐ってやがる!!」

エレン「お前はつくづく無知だな。この世界は残酷なんだぜ」

ユミル「くっ……」

エレン「もっとも、赤の他人の為にそこまでしてやる道理はねぇと俺には思うがな」

ユミルの頭の中に、クリスタの微笑が浮かんだ。どこか儚げにも見えるその顔は、一切の穢れを感じさせず、天使のようだと賛美を与えても大げさではない。

そして、同時に昨日の映像も蘇る。エレンのモノを口いっぱいに頬張り、淫らな音を立てるクリスタ。
今となっては、その顔にはたしかに恍惚が浮かんでいたように思える。

どちらが彼女の本質なのか。その答えはエレンの言うとおり、自分の思うそれとは異なっているのかもしれない。
ただ、それでも。自分の守りたいと思うものは、きっと。

ユミル「……分かった」

エレン「ん?」

ユミル「……何だってしてやる。だから、クリスタには手を出すな」

歯を食いしばり、やっとのことで口に出すユミル。
しかし、そんな決死の覚悟を踏みにじるかのように、エレンは言う。

エレン「悪い、ちょっと勘違いさせちまったみたいだな」

ユミル「え?」

エレン「あのな、部隊でも一番人気のクリスタと、お前の体が同価値なはずがないだろ?
     俺は、お前がどうしてもって言うなら、それでも我慢してやるよって言ってるつもりだったんだ」

「つまりだな」と続け。

エレン「それ相応の頼み方ってもんがあるよな? 何でもするって言うのは、隷従するってことだぞ。
     奴隷の頭はそんなに高い位置にあるか? そんなに立派なものを着込んでいるか?」

ユミル「っ!」

エレン「早くしろよ。俺の気が変わっても知らねぇぞ」

わなわなと肩を震わせながらも、ユミルは言うとおりに従う他なかった。
服を脱ぎ、地面に正座する。体を丸めるように、頭を下げた。

ユミル「……なんでもいたします。だから、クリスタには手を出さないでください……」

エレン「『お願いします、ご主人様』くらいのアドリブがあっても良かったんだけどな。まぁ俺は心が広い。それくらいで勘弁してやるよ」

屈辱だった。生まれ変わる前の自分でさえ、ここまでの辱めを受けたことはない。

感情に身を任せ、エレンを殺す。その凶行に及ぶのも、決して間違った選択ではないはずだ。
そういう思考を巡らすほど、ユミルは憤っていた。

そんなことは露知らず、エレンは呑気にユミルに近づく。

エレン「それにしても骨ばった体だな」

ユミル「……訓練してりゃ、誰だってそうなる」

エレン「クリスタはそうじゃなかったぞ」

ユミル「……知るか、んなもん」

エレン「ま、俺は嫌いじゃないから問題ないが」

ユミル「ひっ」

背骨をなぞる様につぅと指を這わすと、小さな悲鳴を上がる。

エレン「なんだ、感度は思ったより悪くなさそうだな」

顔が急激に熱くなり、ユミルは立ち上がった。

ユミル「わけ分かんねぇこと言ってんじゃねぇ!!」

エレン「いや、大事なことだろうが」

ユミル「ひあっ」

今度は乳首をきゅっと捻ると、甘い声を上げてびくついた。

エレン「面白いな。他のスイッチはどこにあるんだ?」

ユミル「そんなもんあるわけねぇだろ!!」

エレン「つまり、ただのマゾか? クリスタと大差ねぇな」

ユミル「ち、違う! 私はだな……!!」

エレン「ふーん……。ま、なんだっていいが、気に入った。今日は味見程度に済ますつもりだったんだけどな」

ユミル「……は? お前、なに言って」

じりじりと詰め寄るエレン。その瞳には怪しい光が点っている。

エレン「明日の訓練はちょっと大変だろうが、我慢しろよ」

ユミル「うわっ! ちょっ! ま、待て―――」

そして、空中で平泳ぎしながら、ユミルに飛びかかった。

―――三週間後

それから三週間。
ユミルには、エレンによる徹底的な調教が行われた。

そもそもエレンには、ユミルのような女を隷従させたいという願望があった。
ミカサがあまりにも従順過ぎた反動でもある。だからこそ、ある程度の反感を持ちながらも決定的な反抗をしないユミルに、エレンは夢中になった。

毎日のように、二人で散歩した。
当然、ただ歩くだけではない。ユミルには首輪を付け、家畜のように振舞わせた。
怒りと羞恥で顔をこれ以上ないほどに赤くしたユミルを見て、エレンは下半身を昂らせた。

そうして大きくなった肉棒を鎮めるのは、もちろん雌犬の役目である。
主人がズボンを脱いで剥き出しにすると、ユミルはそれを自分の秘所へと導き、奥まで咥え込む。
散歩の際、ユミルには言葉を発することも、二足で立つことも許されていない。また、エレンが一切動こうとしなくとも、腹を立ててもいけない。
四つん這いのまま、エレンを昇天させるまで腰を振るしかない。その様は、ただ快楽を貪るだけの獣のようだった。

こうして、続けられた調教。
もっともエレンには調教という意識はなく、ただ自分のやりたいようにしているだけだ。

しかし、その人間の尊厳を奪うかのような行いに、ユミルは屈辱を感じる一方で、着実に身と心を開発させられていった。
具体的に言えば、散歩の下準備のため首輪を付けるだけで、女の部分を濡らしてしまうほどに。

そして、今日もまた、夜の散歩が始まる。

エレン「よぉユミル。調子はどうだ」

ユミル「……おかげ様で、最悪だ」

エレン「そうか、そいつは良かった。それとな、今日はプレゼントがあるんだ」

ユミル「プレゼント?」

エレンが懐から取り出したのは、何の変哲もない布きれだった。

ユミル「なんだそりゃ」

エレン「今日はこれで目隠しさせてやろうと思ってな」

ユミル「……なんの意味があるんだよ」

エレン「決まってる。俺が興奮する」

ユミル「はっ。まぁそんなとこだろうよ」

そう言って、ユミルは服を脱ぎ捨てる。
もうその程度の行いに、一々躊躇ったりはしない。瞬く間に全裸になった。

そして、絶対服従の証である首輪をつける。
これをもって、ユミルは一時的に雌犬となる。四つん這いになり、エレンを仰いだ。

エレン「目隠しは俺がつけてやるよ」

ユミル「もう好きにしてくれ」

布きれがユミルの頭に巻かれる。

エレン「どうだ? 視界を失った感想は」

ユミル「どうもしねぇよ。元々、夜なんだ。ちょっと暗くなったくらいでガタガタ言うか」

エレン「ふーん、そんなもんか」

ユミル「そんなもんだ」

と言いつつ、ユミルは内心、穏やかでなかった。

ただでさえ、四足歩行という異質な状態にあるのだ。
そこへ更に目隠しが加わるとなると、まるで別世界で過ごしているかのように、普段とは感覚が違っている。

エレン「今日は喋ることを許可してやるよ。もしも不安で歩けなくなったら、遠慮なく言え」

ユミル「……馬鹿にするな。この程度、なんでもねぇ」

エレン「そうか。じゃあ少し歩くか」

ユミル「……ああ、分かった」

踏みだした一歩は、恐る恐るの小さな一歩だった。

ユミル「……」

完全な闇の中、エレンの足音を頼りに並行して歩く。手を前に進めるという単純な行為に、多大な緊張感が伴った。

しかし、それをエレンに気取られては、ほんの僅かに残されている自尊心すら打ち砕かれてしまう。平然を装って歩いた。

エレン「もっとゆっくり歩いてやろうか」

ユミル「必要ない」

エレン「へぇ、流石だな。なら一つ頼みがあるんだが」

ユミル「なんだよ?」

エレン「お前のケツを見ながら歩きたい。だから、先に歩いてくれ」

ユミル「!」

並んで歩いている現状、ユミルの安全は、エレンが目となって保証してくれている。
しかし、そのエレンの願いを受け入れれば、もはやそこは本当の闇。どんな不吉が待ち受けていてもおかしくはない危険地帯。

喉元まで否定の言葉が出かかった。それをせき止めたのはやはり自尊心の壁である。
ユミルは覚悟を決めた。暗闇の荒野に進むべき道を切り開くのだ。

ユミル「好きにしろ、ど変態野郎」

エレン「おう、好きにさせてもらう」

エレンがユミルの後ろへ移動した。

エレン「いい光景だ。指でつつきたくなるな」

ユミル「やってみろ。噛みちぎってやる」

エレン「相変わらず生意気だな。下の口の方がよっぽど素直だ」

四足歩行で歩いていれば、どうしても尻は右に左に揺れるものである。
戦士としてあるまじき醜態を晒しているのは承知で、それでもユミルは立ち昇る興奮を抑えきれていなかった。

ユミル「そ、それは汗だ、汗! 今日はちょっと蒸し暑いからな!!」

エレン「裸のくせにか?」

ユミル「悪いか!?」

エレン「ああ、いや、そうか。逆に裸だから火照ってるってことか」

ユミル「ちげぇつってんだろ!」

必死で否定するユミル。
もっとも、あながち間違いでもなかった。

エレン「分かった分かった。ほら、いいから歩けよ」

ユミル「ちっ。納得いかねぇ……」

そうして、しばらくの間歩き続けた。最初こそ戸惑っていたユミルも、ついには目隠しのスリルを楽しむほどの成長を遂げた。
いつの日か否認していたが、マゾの気があるのは本当のことかもしれない。
やがて、ユミルが口を開いた。

ユミル「……なぁ、お前、こんなことしてて楽しいのか?」

エレン「楽しくなかったらやらせてない。自信持てよ、いい尻してるぜ」

ユミル「そういう意味じゃねぇ! ……そうじゃなくてだな、なんつーか」

言い辛そうにしつつ、続ける

ユミル「私の体はクリスタの体と同価値じゃないとお前は言ったよな。別にそれを間違ってるとは言わない。むしろその通りだ。
     クリスタと比べたら、私の……なんだ、女としての価値っつーのか? そんなもんはほぼ無いに等しいだろうよ」

エレン「……」

ユミル「別にそれを悲観的に感じている訳じゃない。そんなのあって欲しいとも思わない」

思わないのだが。

ユミル「果たして今、お前はこうして私を弄ぶことで、本当に利益を得ているのか?
     そこには本当に、クリスタの体と等価交換になるようなものがあるのか? とか、考えたりしてだな……」

そこまで言って、ユミルは歩を止めた。

ユミル「……なに言ってんだ、私は。今言ったことは忘れてくれ。馬鹿な考えだ……」

返事はなかった。見えなくとも、振り返る。

ユミル「黙ってんじゃねーよ。それとも笑いを堪えでもしてんのか?」

しかし、返事はなかった。
不可解に思い、更に尋ねる。

ユミル「おい、エレン。なんとか言えって」

またしても返事はない。
ここでようやく、何らかの異変が起きていることに気付く。

ユミル「おい、エレン。馬鹿な真似してんじゃねーよ」

ユミルはエレンがいるであろう場所まで歩き、手を差し伸べた。
しかし、その手は空を切った。そこには誰もいない。

ユミル「どこ行きやがった。なぁ!」

周囲をうろうろと彷徨うユミル。
しかし、エレンの声はなく、その気配すらもない。

一切の視覚が断たれている状況で、唯一の味方すら失ったユミルを孤独が襲う。
ぐるぐると歩きまわったせいで、今まで歩いてきた道すら分からない。

ユミル「エレン……?」

自分が出したとは信じられないほど、震え掠れた声だった。

もっとも、ユミルの現状は実際のところ、大した脅威ではない。
その闇を作り出しているのは、ちっぽけな布切れ一枚。外してしまえば、全ての問題が解決される。
暗中模索する必要などないのだ。幼児でも解決できるような、簡単な問題。

だが、しかし。

ユミル「エレン……」

ユミルは目隠しを外そうとはしなかった。
まだ遠くには行っていないであろうと推測し、手探りでエレンを探す。

ユミルにはプライドがあった。エレンへの反抗を孕んだ人としてのプライドではない。
それは、雌犬としてのプライドだ。主人の命令には絶対に背かないという誇り。

この目隠しはただの目隠しではない。主人から送られた贈り物であり、契約の鎖なのだ。
自分で外してはならない。それを行えば、主人の命令に背くことになる。

今この時まで自覚すらしていなかったが、ユミルはようやく思い知った。
自分の中で、半旗の心よりも、従順の心が膨らんでいたことに。

そして、その変化に応えるように、ユミルの手があるものに触れた。

エレン「よく目隠しを外さなかったな」

エレンだった。
その手が、優しくユミルの頭を撫で、そしてそのまま目隠しを取った。

夜とはいえ、完全な暗闇から解放されたばかりのユミルは、眩しそうに目を細めた。
エレンの微笑が辛うじて見えた。

ユミル「もういいのか?」

エレン「ああ、よく頑張った」

ユミル「……別にこれくらい、なんでもないが」

エレン「そうやって強がるところを俺は気にいってる。ある種、クリスタよりもな」

ユミル「!」

瞬間、ユミルの目から生温かい液体がこぼれ落ちた。
それは、不安から解放された安堵によるものだったのかもしれない。しかし、ユミルには別の理由に思えてならなかった。

これまで生きていた中で、決して満たされることのなかった心が今、満たされていた。
愛するものの腕の中で抱かれているような温かみを持つそれに、名前をつけるなら、恐らく幸福と呼ぶのであろう。
そして、とめどなく溢れ出るそれは、心中だけで留まることは出来ず、涙となって溢れでた。ユミルはそう思ったのだ。

感涙しているユミルを見て、エレンは満足げに言う。

エレン「頑張ったお前に、本当のプレゼントだ」

ユミル「……え?」

エレンの視線を追うと、そこには―――

クリスタ「ユミル。見てたよ、頑張ったね」

ユミル「く、クリスタ!? なんで……!?」

クリスタがいた。しかし、その姿に驚愕する。
何故なら、自分と同じように全裸で首輪をつけている……だけではない。
その頭には、獣の耳を模造して作られたような玩具がつけられており、一見して雌犬と分かる装いをしていたからだ。

ユミル「……っ! エレン、てめぇ!!」

ユミルは憤慨した。自分が体を捧げる代わりに、クリスタには手を出すなという約束を違ったからだ。

しかし、何食わぬ顔でエレンは言う。

エレン「おいおい、俺はお前との約束を破ってなんかいないぞ。事実、この三週間、クリスタには指一本触れてない」

ユミル「なに……?」

そして、クリスタが言った。

クリスタ「そうだよ。エレンは私に手を出してない。それに、これは私自身の意思で勝手にやっていることだもの」

ユミル「お、お前……!?」

エレン「そういうことだ。どんなに俺がつき放しても、勝手に擦り寄ってこられたら、どうしようもないだろ?」

クリスタ「その言い方はちょっと酷いと思う」

くすくすと笑うクリスタ。ユミルにはもう何がなんだかわからなかった。

クリスタ「あのね、ユミル。私がエレンに提案したんだ。
      どうにかして、ユミルをこういうエッチなことに巻き込めないかって」

ユミル「……はぁ!? いったい、どうして……」

クリスタ「それはね」

クリスタはユミルに近づくと、なんの躊躇いもなくその唇を奪った。
目を丸くするユミル。あまりの事態に、侵入してくる舌を拒むこともせず、体を硬直させていた。

クリスタ「……ぷはっ。……ふふっ、ユミルの唾液はエレンのより甘い気がする」

ユミル「クリスタ! お、お前!」

クリスタ「ごめんね、ユミル。でもね、私はこういう女なんだ。馬鹿で、変態で、どうしようもないの」

ユミル「そ、そんな」

クリスタ「ユミルにだけは打ち明けようと思ったけど、どうしても出来なかった。
      だって、普通こんなこと知られたら嫌われちゃう。私自身が自分のことを大嫌いなくらいだったんだから」

ユミル「……」

クリスタ「そんな時に、エレンに……その、色々してもらってね。私はこういう自分でも良いんだなって少しだけ思えるようになって。
      だから、ユミルに打ち明けようと思った。ありのままの自分を」

エレン「つっても、ただ打ち明けるだけじゃドン引きされるかもしれないってんで、
     どうせなら自分と同じように、性に溺れた状態にまでユミルを墜としてくれって俺は頼まれたわけだ」

ユミル「いや、その結論はおかしいだろう」

エレン「正直、それは俺もそう思う」

しかし、クリスタは言う。

クリスタ「でも、さっきのを見る限り、ユミルだって気持ちいいの好きになったんでしょ?」

ユミル「っ!」

クリスタ「もちろん、自分のことを打ち明けるためってのもあったんだけど……本当はこっちが目的だったんだ」

クリスタが再び、じりじりとユミルに身を寄せる。
多少たじろぎながらも、ユミルが拒絶することはなかった。

クリスタ「三人で気持ちいいこと、しよ? 大丈夫だよ。エレンはすっごく上手だから」

エレン「ああ、俺はすごく上手だ」

「お前は黙ってろ」と言わんばかりの鋭い目線を、ユミルはエレンに向けた。

クリスタ「ね、ユミル……」

艶めかしく体をくねらせ、ユミルに体を擦りつけるクリスタ。
女の自分でさえくらくらするような仕草だ。こんなものを男が食らったら一たまりもないだろうな、とユミルは思う。
だからこそ、こうも体を持て余しているこの女を放っておくことはできない、という結論に至った。

ユミル「……ちっ。分かったよ」

クリスタ「ユミル!」

ユミル「その前に一つ聞いておくが……あいつは必要なのか?」

指でエレンを指し示すと、クリスタは意味が分からないというように首を傾げた。

クリスタ「ユミルはおちんちんが無くても満足できるの?」

ユミル「いや、それは……」

クリスタ「三人だよ。三人じゃないとだめ。ね、エレン?」

エレン「ああ、そうだな」

そして、エレンは即座に全裸になった。
絡み合う全裸の女二人を前にして、この男が臨戦態勢に移っていないわけがない。

エレン「そろそろ混ぜろよ」

挿入せずにはいられないな、とエレンの巨根は進撃した。

―――一時間後


すぅすぅと眠るクリスタを背負いながら、エレンは言う。

エレン「あー、最高だった」

ユミル「あれだけやっておいて、よくもまぁそんな変わりなくいられるな」

あれから一時間。三人は延々とセックスし続けた。
もちろん男一人に女二人なのだから、エレンにかかる負荷は倍あった計算になる。
しかし、エレンの絶倫ズル剥け巨大チンコは、その状況をまるで意に介さず、最後の最後まで凛と勃ち続けていた。

一方で、ユミルは膝を笑わせており、クリスタは度重なる絶頂に気を失い、エレンの背中で眠りこけていた。

ユミル「はぁ……まさかこんなことになるなんて」

エレン「後悔してるのか?」

ユミル「当り前だ。お前より早く、私がクリスタの悩みに気付いていれば……」

エレン「そんなに俺が邪魔かよ」

舌打ちするエレン。その顔を、ユミルはじっと見据えていた。

エレン「なんだよ?」

ユミル「いや、別に。……まぁあれだ、後悔はしているが、不幸には思っちゃいない」

エレン「はぁ?」

ユミル「私の理想の結果とはほど遠いものなんだろうが、理想では手に入らなかったものもあったんだ。
     また、過去に戻る術もない。私はきっと、不幸ではないこの結果に落ち着いたことを感謝するべきなんだろうな」

エレン「どういう意味だ?」

ユミル「さぁな」

誤魔化すかのように、ユミルは言葉を紡ぐ。

ユミル「しかし、まさかお前がこんな人間だったとはな。巨人の尻にしか興味ねぇのかと思ってたぞ」

エレン「まぁ否定はしねぇよ。俺は巨人を駆逐することと、女をヤることにしか興味ねぇからな」

ユミル「はっ。となると、私はどっちなんだろうな」

エレン「どっち?」

ユミル「いや、なんでもねぇ。……おい、クリスタ! いつまでも寝てんじゃねぇ。そろそろ宿舎につくぞ」

幾度もはぐらかされ、頭の上に疑問符を浮かべるエレンであったが、
目を覚ましたクリスタが耳を甘噛みしてきたため、すぐにどうでもよくなるのであった。

―――一週間後、食堂


エレン「アニの攻略法が思い浮かばない」

夕食の際、エレンはミカサに弱音を吐いた。

ミカサ「……作戦があったんじゃないの?」

エレン「ああ、あいつはなんやかんやで父親から受け継いだ格闘術を大事に思っているみたいだからな。
     自由時間にそれを習いたいと申し出て、もう長いこと二人で訓練している」

ミカサ「知らなかった」

エレン「言ってなかったからな」

ミカサが勢いよくフォークを突き立てた。裂き割れる芋。激しい音を鳴らす食器。
無視して、続ける。

エレン「恐らく以前よりは関係を深めることが出来たと思う。しかし、一緒にいればいるほど……」

ミカサ「なに?」

エレン「あいつの隙の無さを実感して途方に暮れる。弱みってものを全く見せやがらねぇ」

ミカサ「無理やり襲えばいい」

エレン「金玉を蹴り潰されそうだ。そもそも、うまくいったところで一度犯して終わりだ。
     あいつは強姦されたと平気で教官に報告しそうだしな。終わりになるのは俺の方ってか」

ミカサ「つまらない」

エレン「すまん」

頭をかきむしり、エレンは嘆息した。

エレン「より脚を使いやすくすためとかで、訓練中のあいつは素足なんだが、
そんな無防備な生足を目の前にしてどうすることも出来ない。おかげで頭がおかしくなりそうだ」

ミカサ「諦めるという選択肢もある」

エレン「それはない。絶対に嫌だ。俺はアニを犯してやる……!」

エレンが歯を食いしばって言うと、ミカサの目に怪訝が宿った。
不思議に思って尋ねる。

エレン「なんだよ」

ミカサ「何故そんなに執着しているの? 私だけでなく、他の女とも常時性交出来る状態にまで至ったはず。
     ならば今さら、一人の女を堕とすのに、そんなにムキになる必要はない」

エレン「ムキになんてなってねぇよ」

ミカサ「本当に?」

エレン「……」

押し黙るエレン。口を一文字にしたまま微動だにしない。
不都合な秘密を隠している時にエレンはこういう状態に陥るのだとミカサは長年の付き合いで知っていた。

ミカサ「エレン、なにを隠しているの」

エレン「……隠してねぇよ」

ミカサ「正直に言ってくれないなら、私にも考えがある」

エレン「どういうことだよ」

ミカサ「今、この場で、エレンがやっていることを皆に向かって叫ぼう」

エレン「はぁ!?」

ミカサ「嫌ならば、話して」

エレン「……きたねぇぞ、お前」

ミカサ「これもエレンのため。そのためなら私は悪魔にでもなる」

エレン「ちっ」

不機嫌そうにそっぽを向いたエレン。
しばらくの沈黙の後、ようやく口を開いた。

エレン「ああいう女ってさ……その、良いだろ?」

ミカサ「なにが?」

エレン「なにがって言うか……なんとなく?」

ミカサ「……」

エレン「元々小柄な女の方が良いなとは思ってたんだが、それに踏まえてあいつの……あの、きつい目あるだろ。
     あれが本当に時折、ふっと緩む瞬間があってさ。それを見た時がたまんないっつーか……まぁ生意気そうな女が好きっていうのもあるし」

ミカサ「……」

エレン「だから……その、なんだ。単純にタイプだっていうことだよ。
     くそっ、こんなしょうもない話になるから、したくなかったっていうの―――にっ!?」

エレンがふとミカサに目をやると、その瞳からはぼろぼろと涙がこぼれ落ちている。
滝のように溢れ出るそれを拭おうともせず、ミカサは無表情のままだった。エレンは思わず固まってしまう。

そして。

「おい、あそこ……」

「うわっ、なんだ。エレンがミカサを泣かしてるぞ」

周囲にいた同期の仲間たちが異常事態に気付き、ざわざわと色めき立つ。
まずい。非常にまずいことになった。エレンは立ち上がり、ミカサの腕を引く。

エレン「お、お前、ちょっと来い!」

ミカサ「……」

ミカサはこくりと頷いた。
そして、そのまま二人は外へと飛び出した。

俺のエレンに対するイメージがどんどん崩れていく

エレン「な、なにいきなり泣いてるんだよ。ビックリしただろ!」

ミカサはごしごしと目を擦り、言う。

ミカサ「……私はエレンが幸せになるならそれでいい」

エレン「はぁ?」

ミカサ「だから、エレンがアニに夢中になり、蔑ろにされたとしても、なにも言わない。
     草葉の陰からひっそりと見守り、二人の未来の為に祈ろう」

エレン「……悪い、お前が何を言っているのか、さっぱりわからん」

まるで理解不能だと言わんばかりに、エレンは腕を組んだ。
その予想外の反応に、ミカサは尋ねる。

ミカサ「……エレンはアニを特別に思っているのではないの?」

エレン「ん? ああ、そうだな。すげぇ特別にヤりたいと思ってるぜ」

ミカサ「……それだけ?」

エレン「それ以外に何かあるのか?」

なにかを誤魔化している様子でもなかった。
「ああ、なるほど」ミカサは納得し、胸を撫で下ろした。

ミカサ「すまない、誤解した。というより、私はエレンを誤解していた」

エレン「なにがだ?」

ミカサ「なんでもない。エレンはずっとそのままでいて」

エレン「お、おう?」

話に全くついていけていないエレンであったが、とりあえず首を縦に振るのであった。

ミカサ「それと、もしもエレンがどうしてもアニを犯したいというのなら、私に考えがある」

エレン「本当か?」

ミカサ「しかし、それは諸刃の剣。必ずしも良い方向に導くかは分からないし、そもそも成功する確率が低い。それでもいいなら」

エレン「なんだっていいよ。アニとヤれるならな」

ミカサ「……分かった。では話そう」

ミカサは、自身の思うアニの犯し方を滔々と語った。
しかし、それはエレンには到底信じきれないものだった。

―――三日後、自由時間


エレン「ふっ!」

幾重にも布を巻いた樹木に、エレンは蹴りを打ちこんだ。
根元に与えられた衝撃が全身に伝わる。軋むような音を立てた木は、一瞬の間をおいて葉を撒き散らした。

その様子を見て、アニが言う。

アニ「上出来。こんなこと言いたかないが、やっぱりあんた筋が良いよ」

エレン「お前が世辞を言うわけないし、素直に褒め言葉だと受け取っておくぞ」

最初こそ蔑まされていたエレンも、今ではこの通り鬼教官であるアニに褒められるまでに至っていた。
それは向上心が故ではなく、源にあるのは性欲だった。

アニ「しかし、よくやるね。こんな何の得にもならないことを」

エレン「そうだな。でも、だからこそ、ありがとな。俺の我がままに付き合ってもらって」

アニ「……別に。自由時間なんて、暇なだけだ」

エレン「なんだっていいさ。おかげで、俺の格闘術の成績は鰻登りだからな」

アニはそっぽを向いた。
不愉快にさせたかとエレンは一瞬不安に思ったが、どうやらそうでもないらしい。

エレン「で、その、なんだ。次なんだが」

アニ「次?」

エレン「ダメか?」

アニ「……いいよ、別に。なにしろって?」

エレン「組み手をお願いしたい」

アニ「組み手……?」

アニの目がぎらりと輝いた。
獲物を狙う鷹のような目つきだ。

エレン「待て待て待て! 組み手つっても、そうじゃない!」

アニ「……じゃあ、なに?」

エレン「ほら、関節技とか、締め技とかさ。そういう相手に密着した時の動きがな。俺はどうも苦手みたいで」

アニ「専門じゃないけど」

エレン「いいんだ。なんだって、俺より得意なのには変わらないだろ?」

アニ「まぁ、そうだね。あんたより上なのだけは確かだ」

いちいち一言多いんだよ。と思いつつ、エレンは提案が通ったことに胸をなでおろした。
そして、構えを取る。

エレン「じゃあ、行くぞ」

アニ「いつでも」

エレンが特攻した。
本来ならローキックで脚を刈り取られているところだろうが、今は警戒する必要はない。
肉薄し、アニの胸倉を掴む。その手を更にアニが掴み、捻り上げようとした。しかし―――

アニ「!」

エレンが力任せにアニを押し倒した。

技術性を一切排除した動きである。
必然的に存在する男女の力量差を利用した、乱暴な手法。

これにアニは腹を立てた。
実際の戦場ならともかく、格闘術を学ぼうとしている者のやり様ではない。

寝技で懲らしめてやる前に、まずは一言文句を言ってやろうと、口を開く。

アニ「覚悟は出来てるんだろうね?」

返事はなかった。
エレンはアニの胸元に顔をうずめたまま、ぴくりとも動かない。

ならば首でも絞めてやろうかと手を伸ばしかけたところで、固まる。

アニ「……」

エレンの手が、アニの太ももを撫でまわしていた。
それは誤って触ってしまったというような動きではなく、力に強弱をつけ、指を卑猥に動かすというものである。

組み手を提案してきた時のエレンの調子が少しおかしかったことを省みれば、
最初からこういった行いに出るつもりだったと容易に推測できる。

しかし、当のエレンがこの時考えていたことといえば。

エレン(もしかしたら、俺はここで死ぬかもしれんな……)

などという、ひどく消極的なものだった。

そもそも、ミカサの言ったアニの犯し方とは『私を犯す時のように、アニを押し倒して』というものだった。
それ即ち、性の衝動をそのまま、なんの工夫もなくぶつけろということである。
その言葉の通りに実行してみたものの、エレンはどうしても頭上で死兆星が輝いているような気がしてならなかった。

エレン(なんて考えてる場合でもねぇか……)

エレンはそこにいる鬼の顔を予想しながら、恐る恐る見上げた。

しかし。

エレン(ん?)

アニの顔は、至って無表情だった。
怒りのあまり表情が消し飛んだという訳でもなく、ただただ無表情。
悲観的に見積もっても、不快に思っているわけではなさそうだ。

とは言え、流石のエレンも、ここで次の手に出る勇気はなかった。
どうしようかとまごついていると、アニが言う。

アニ「で、それで終わり?」

エレン「!」

それは明らかな挑発だった。
その程度のことしかできないのか? という嘲りである。

腐ってもエレンはセックスにおいて百戦錬磨だ。
安易に挑発にひっかるのはしゃくだが、こんなことを言われて黙っている謂れはない。

プライドをかなぐり捨てるかのように、這わしていた手の動きを復活させた。

アニ「……ん」

アニの内腿を激しく揉みしだく。
夢見ていたその生足は、ただ柔らかいだけではなく、野生の獣のようなしなやかな筋肉を擁しており、
あの鞭のような蹴りは、ここから生み出されるかと感嘆すらさせた。

この状況で、この男が我慢できるはずがない。

エレン「すまん。服脱いでも良いか?」

階段を数段ふっ飛ばした提案だったが、アニは平然と言う。

アニ「……好きにすれば」

了承を取るや否や、いそいそと服を脱ぎ、股間を露わにした。
既にエレンの肉棒は巨人化を済ませ、血管を浮き上がらせながら、時折びくんびくんと脈打っている。

そして、無抵抗に仰向けで寝そべるアニの両足を掴むと、その間に巨根を突っ込み、腰を振り始めた。
太ももの間で、亀の頭が出たり入ったりを繰り返す。

エレン「はぁっ……! はぁっ……!」

アニ「こういうことがしたかったわけ?」

エレン「ああ! したかった! 大体、こんな足をずっと見せられたら、そういう気分になるに決まってるだろ!」

アニ「へぇ。じゃあ、ずっとムラムラしてたんだ」

エレン「悪いか!? 俺はずっとお前に興奮してたよ!」

エレンの懺悔を、アニは相も変わらずの無表情で聞いていたが、しかしよく見ればどことなく楽しげでもあった。

アニ「ねぇ」

エレン「なんだよ!」

アニ「じゃあ、こういうのは?」

見ると、アニはシャツを捲り上げ、たわわにというほどは実っていない乳房を露わにしていた。
白い肌に、桃色の乳頭がひときわ存在感を放っている。
エレンの腰の動きが加速した。

エレン「最高だ! ああ、アニ! まさかお前が女神か!?」

アニ「……馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけど、本当に頭をどうかしてたみたいだね」

合間合間ではぺろぺろと脚を舐めまわしながら、エレンは尚も腰を進撃させていた。
アニの太ももの肉が巨根を覆うかのように変形し、刺激を与える。すでに我慢汁が染みだし、滑りも良好だ。
エレンは脳内でモモまんこと連呼していた。口に出すのを控えたのは正解である。

そして。

エレン「アニ、すまん。出そうだ!」

アニ「このまま出したら、私が汚れるんだけど」

エレン「そ、それは……」

アニ「そんな誰でも分かるようなことを考慮せずに、勝手に出そうとしてたの?」

エレン「うぐ……」

アニ「……ま、馬鹿につける薬はないってやつか」

エレン「!!」

アニは万力のように両足を締めあげた。
ちょっとでも加減を違えば、激痛がエレンを襲っていたことであろう。
しかし、その力の入れ具合は、ちょうど巨根から精液を絞りとらんとするものだった。

エレン「う、うああああっ、うあっ……」

情けない声を上げながら射精するエレン。
強制的に絞りとられているような感覚だ。ミカサが射精の時に口で吸い上げてくる時の感覚に近い。
それを太ももで行うアニに敬意を表しながらも、絶頂の快感に身を任せる。

アニ「凄い量。よく知らないけど、これってすごいんじゃないの?」

体中を精液まみれにしたアニが言った。
エレンの非常識な射精は、なんとその顔すらも汚している。
アニは唇の横についたその精液を舌を伸ばして掬い、

アニ「まずい」

と、一言ぼそっと呟いた。

―――数週間後。


それからもエレンとアニの秘密特訓は行われていたが、それがただの格闘術の訓練で終わることはなかった。
ある時はお互いの性器を舐めあい、ある時は自慰を見せつけあってお互いを昂らせた。

ただ、いくら過激な行いに発展しようとも、最後の一線を越えることは決してなかった。
もちろん、エレンはそれを望んでいた。アニの無毛の割れ目に、自分の肉棒を滑り込ませることを熱望していた。

しかし、提案しなかった。いや、出来なかった。
それを申し出ても、まず間違いなく否定されていたことだろう。
理由は分からないが、アニは意識的にそういう雰囲気にならないように振舞っていたし、無言の圧力を醸し出していた。

これにエレンは頭を悩ましていた。
そこが最も保護すべき部位であるのは百も承知だ。
だが、ここまで体を許しておいて、そこだけは許してくれなアニの考えが、全く理解できなかった。

体的には満足しつつも、精神的に満足できない。
そんな状態がしばらく続いた後。

今日も格闘術の訓練の時間がやってくる。

―――夜、自由時間


エレン「出すぞ!」

アニ「ん」

アニの手の中。
正確には、白い布きれの中で、エレンは射精した。

今日の特殊訓練は、アニの下着でエレンの肉棒を扱くというものだった。
射精を零距離で受けたクロッチ部分から、精液がぷくぷくと溢れだす。

アニ「懲りずによく出すね」

エレン「毎日生成されてるからな。出しても出してもきりがない」

アニ「ふーん」

興味なさげに相槌を打ちつつ、アニは射精まみれのその下着を穿こうとした。
エレンが慌てて声をかける。

エレン「お、おい! 待てよ! お前、それを穿くのか?」

アニ「そのつもりだけど」

エレン「いや、だって……精液が滴ってるぞ?」

アニ「だから?」

エレン「だから? って……本当にいいのか?」

アニ「いいって言ってる」

下着は再びアニの股間へと納められた。
見えなくなってしまったが、アニの秘部は、その下着と同じように精液まみれになっていることだろう。
そう思うと、エレンはえらく興奮した。射精したばかりの肉棒が、再び硬さを取り戻す。

それを知ってか知らずか、アニが言う。

アニ「じゃあ、今日はもういいでしょ」

そして踵を返したアニの手を、エレンが掴んだ。

エレン「待てよ」

アニ「……なに?」

エレン「今日は、これで終わりにしたくない」

エレンの掲げた真っ直ぐな目に、アニも真意を理解したようだった。

アニ「私と、セックスしたいってこと?」

エレン「そうだ。俺はお前とセックスしたい」

単刀直入な物言いに、アニは一息ついて返した。

アニ「そう。そんなに改めて言うってことは、私が避けているのに気付いてたんだ?」

エレン「まぁな。なんでそうしてるのかっていうのまでは、分からねぇが」

アニ「理由を聞きたい?」

エレン「ああ」

視線を外し、しばらく間を置いてからアニは語る。

アニ「……なんて言うのかな。私にとって、今までのは遊びの範疇だったんだ。
    間抜け面して感じてるあんたを見るのは気分が良かったし、単純に自分自身が気持ちいいってのもあった」

だが。

アニ「それをするっていうのは……そういう話じゃ済まないだろ?
    今さら何言ってんだって思うかもしれないけど……上手く言えないな……。つまり……本気にならないといけないってことでしょ?」

エレン「本気?」

エレンが聞き返すと、アニは嘆息した。

アニ「そして、私はあんたがこの話に対して、そういう反応を示すだろうというのも、薄々感付いていた。
    だから、拒むようにしていたんだ」

エレン「いや、分かんねぇな。俺はいつだって本気でお前としたいと考えていたぞ?」

アニ「……まぁ、そうだろうね。そうやって、衝動に身を任せるのもいいかもしれないけど、私はそこまで馬鹿になれない」

そう言い残して、アニはエレンの手を振り払い、場を後にした。
確かにそうしようとした―――のだが。

アニ「……」

エレン「な、なんだよ?」

自身の腕を掴んでいるエレンの手を、アニはじっと見ていた。
意図が掴めず、エレンは思わず力を込める。

去ろうとする人間を引きとめるのを目的とするには、大袈裟すぎるほどの力が込められたエレンの手。
アニは不平を漏らさなかった。そして、その手に自分の手を重ねる。

アニ「馬鹿には……ならないつもりだったんだけど」

エレン「……アニ?」

アニ「あんたのがうつったのかもしれない」

エレン「お前、何言って……」

そして、アニはエレンの胸に顔を埋めた。

アニ「いいよ、やらせてあげる。その代わり、手は握ったままでね。初めては、痛いらしいから」

こうして、エレンは当初の目的通り、四人の女を我がものとした。
元々自分のものだったミカサを含めれば、五人だ。全員を代わる代わる呼び出し、その巨根を咥えさせた。

有意義なセックスライフだった。
全員にはそれぞれ異なった長所がある。

例えばミカサは、エレンの全てを知りつくしているし、それを昇華させるテクニックを有している。
膣内の動きも凄まじく、ただ快楽を貪るだけならこの女の右に出る者はない。選択に迷った時はとりあえずミカサにしておいて間違いない。

サシャは口技に長けていた。美味そうに肉棒をしゃぶる様を見れば、それだけで興奮が倍増する。
感じやすい体質らしく、セックスの後半ではいつも目が蕩けていて、普段とのギャップにまたそそられる。

クリスタの性欲には舌を巻く。体力のなさがネックだが、積極的に新たな性行為のやり方を提案してくるので飽きが来ない。
他の男が夢見ているその体を好きなように貪れるという優越感もたまらない。
そのことを本人に伝えてみれば、意気揚々とその腹に『エレン専用』という文字を書き込んできた。

ユミルは従順だ。堕とした時の経験のせいもあるが、元々マゾの気が強かったのだろう。
口では生意気を言いつつも、秘部を触ればいつも濡れている。それを指摘すると、顔を赤くするのもいい。

アニは情熱的だった。性交渉の時だけは性格が変わるように乱れる。そして、エレンの無限大の性欲に付き合うだけの体力があった。
エレンと自由時間いっぱいにセックスして、無事でいられるのはアニだけだ。

素晴らしい日々だった。一切の不満をもつこともなく、幸福な時間が過ぎる。
しかし、そんな毎日も、当然終わりは訪れる。それも、唐突に。

(ヾノ・ω・`)ナイナイ

―――数ヵ月後、自由時間


ユミルに呼び出されたエレンがその場所へ向かうと、そこには五人の女がいた。
当然、エレンの性処理道具として扱われていた五人である。ユミルが詰め寄ってくる。

ユミル「よぉ、エレン。この状況を見れば、どういう理由で呼び出したのかは分かるな?」

エレン「……いや、まぁ、その、なんだ。とりあえず落ち着けよ」

ユミル「どの口がそんなことをほざきやがる!! あぁ!?」

五人の視線が突き刺さる。
それぞれに思惑があるようではあったが、少なくとも目の前にいるユミルが激昂しているのだけは間違いなかった。

エレン「一つ聞きたいんだが、どうしてこうなった」

サシャ「……実はですね、私が」

恐る恐る手を上げたのは、サシャだった。

サシャ「宿舎で集まって他愛ない話をしてたんですけどね。その中で経験があるかないかっていう話になりまして
     一人が『サシャは当然ないよね』なんて言ってきたもんですから、ムキになって反論してしまって」

となれば、相手は誰かと尋問されるわけで。
その結果、サシャは翌日のパンを余分にもらえる代わりに、エレンの名前を暴露したのであった。

クリスタ「それで、サシャがそんなことになっているのなら、ユミルと私を含めて三人になるでしょ?
      これはもしかしたらってミカサに尋ねてみたら、ミカサが肯定して」

ミカサ「……」

ユミル「四人もいるなら、他にもいるかもしれないと疑うよな?
     そうなると怪しいのは、お前と二人で格闘術の訓練をしていたとかいう目撃談のあったアニだ」

アニは少し距離を置いた場所で、事の成り行きを黙って見守っている。
そして、ユミルに投げかけられた視線に頷いた。

ユミル「ちょっと調べただけで五人だぞ? まさか、他にもいるとか言わねぇよな?」

エレン「いや、俺が厳選した五人だ。他にはいねぇよ」

ユミル「なぁーにちょっと誇らしげに言ってやがる……!?」

ユミルの迫力ある詰問に、エレンの背筋で冷や汗が垂れ落ちる。
ミカサに救いを求めて目をやるが、無視された。神はエレンを見放したのだ。

エレン「それで、お前はいったい俺をどうしたいんだ」

ユミル「刺殺か絞殺か撲殺か」

エレン「『殺』のつかない選択肢は用意されてないのか……?」

この状況をどうやって切り抜けるか。
エレンが思案していると、またしてもサシャが手を上げた。

サシャ「あ、あのー」

ユミル「なんだ」

サシャ「エレンを殺されると私、困るんですけど」

ユミル「どういう意味だよ」

サシャ「え、だって。エレンが殺されたら、誰が私にご飯をくれたり、気持ちよくさせてくれたりするんですか?」

きょとんとした顔で尋ねるサシャ。
ユミルは狼狽した。

ユミル「お、お前。現状が分かってないのか? こいつは私たち五人を弄んでいてだな!」

サシャ「はぁ……それがなにか?」

ユミル「な、なんだと……!?」

サシャ「よく分からないんですが、皆さんはもうエレンを必要としてなくて……つまり私がエレンを独り占めしていいってことですよね?」

ユミル「ああっ!?」

衝撃的なサシャの発言に、ミカサは追って口を開く。

ミカサ「私もエレンを責めるつもりはない」

ユミル「ミカサ!?」

ミカサ「そもそも私はエレンがあなたたちと関係を持っていることを知っていた。
     つまり、格が違う。私がエレンの一番の理解者」

ユミル「なっ……」

ミカサは、こういう展開に持っていく機会を窺っていた。
後はどのタイミングで口を出すかということだけだったのだが、流石にサシャがその流れを作ってくれるとは思ってもいなかった。
これにはミカサも思わずガッツボーズ。サシャには蒸かした芋を貰う権利が与えられる。

クリスタ「ユミル、私もミカサたちと同じ気持ち」

ユミル「クリスタ!? お前まで……」

クリスタ「ユミルと私を一緒に相手にしてくれる時点で、普通じゃなかったわけだし。
      というか、それを自ら頼んだ私が、他の女の子とはしないでなんて言うのは、筋違いだもの」

ユミル「そ、それは……まぁ」

クリスタ「それにきっと、エレンより私たちのことを気持ちよくさせてくれる人なんていないよ」

ユミル「う……」

ユミルは返答に詰まった。
というか、元々大した怒りは抱いていなかったのだ。

ユミルの従順度はすでにミカサと同様の最大値にまで達しており、エレンがいかなる悪逆を行おうとも、そこで反旗を翻したりはしない。
今回の件も、クリスタが傷つけられたと思い、エレンを罰しようとしただけだ。
それが思い違いと分かった今、そこにあるのは空虚な怒りのみで、風船は中身がなければ萎むのみなのである。

エレン「ユミル?」

ユミル「はぁ……なんだよ。怒ってた私が馬鹿みたいじゃねぇか」

エレン「許して、くれるのか?」

ユミル「……お前がちゃんと全員を満足させられるっていうなら、私はなにも言わねぇよ」

こうなれば、完全勝利まで残るは後一人である。
遠巻きに眺めていたアニと目があった。

エレン「アニ、お前は?」

アニ「私は、元からあんたがそういうやつだと思ってた。……いや、流石にここまではとは思ってなかったが」

エレン「つまり?」

アニ「許すさ。そもそも自分で体を許した癖に、その責任を相手だけに押しつける方が馬鹿らしい」

エレン「おお……!!」

ただし、とアニは付け加える。

アニ「私は……もう、ダメだな。あんたとする気にはなれない。
    まぁお相手はたくさんいるようだし、一人欠けたところでどうでもいいだろ?」

これにエレンは必死の抵抗をみせた。

エレン「い、いや待て、そんなわけないだろ。俺はお前と出来なくなるのは困る!」

アニ「私としたいっていうなら、他の四人と関係を断ちな。それが条件だ」

エレン「ぐっ」

心臓をナイフで突き刺されたように、エレンは衝撃を受けふらついた。
そんな条件、首を縦に振れるはずがない。

アニ「遊びは遊びのままの方がいいってことだね。良い教訓になった」

そう言い残して、アニは去って行った。
呆然と立ち尽くすエレンに、ミカサが声をかける。

ミカサ「エレン、あの女の分は私が埋める」

エレン「……そうは言ってもだな」

尚も肩を落としているエレンを励まそうとするのはクリスタだ。

クリスタ「ユミルと私もいるから大丈夫だよ」

ユミル「勝手に私の名前を出すな!!」

ユミルは声を荒げる。

サシャ「あの、結局なんのあつまりだったんですかね、これ……」

ついでにサシャもいた。

一人を失ったものの、エレンの周りは彼を慕う女たちで埋め尽くされている。
ハーレムを形成したエレンに、落ち込んでいる暇はない。

エレン「分かった。よーく、分かった。今日はお前ら全員一度に犯してやる。歩いて宿舎に帰れると思うなよ」

そして、現れる巨根は、どの穴から貪ろううかと涎を垂らすのだった。

―――エピローグ


一月、そして二月が経った。
毎日、女をとっかえひっかえするエレンの幸福な日々は脅かされることもなく続いていた。

しかし、エレンにはどうしても諦めれきれないものがあった。
一度は手にした甘い果実だ。うっかり手を滑らして落してしまった。
それをもう一度手に入れるべく意気込むエレンの心には、あの日のような炎が宿っていた。

エレン「よぉ、アニ。隣いいか?」

アニ「……わざわざ許可をとること?」

エレン「それもそうか」

夕食時、ざわつく食堂の中で、エレンはアニの隣の席に着いた。
近頃はあまりアニと二人きりになれていない。というより、避けられている気配さえある。
こういった公共の場でないと、満足な会話さえ出来なかった。

アニ「あんたもしつこいね。いい加減、諦めたら?」

エレン「なんのことだ? 俺はお前と食事がしたいだけだぞ」

エレンの企みはあっさり看破されている様子だった。
しかし、構わない。考えを改めるまで付きまとう覚悟はできていた。

アニ「何度も言うけど、私は他の四人との関係を切らない限り、あんたとする気にはならないから」

エレン「それなんだが……俺はその提案を受け入れてもいいと思ってる」

アニは目を丸くした。
そのように感情を明確に表に出すことは滅多になかった。

アニ「どういう意味? まさか、私がいればそれでいいとでも言いたいわけ?」

エレン「もちろん、そんなはずはない」

アニは肩透かしを食った。

エレン「数ヶ月かけてでも、お前を徹底的に犯し続け、俺に従順な女へ仕立て上げてやる。
     そうなれば、こっちのもんだ。後は俺とのセックスを待ちわびていた他の女を呼び戻し、万々歳……と」

アニ「……あんた、本当に筋金入りの馬鹿だったんだね」

エレン「馬鹿でないと欲しいもの全部手に入らないっていうなら、俺は一生馬鹿でいい」

大真面目にエレンはのたまった。

エレン「つーわけだ、アニ。久々にセックスしようぜ」

アニ「……一つ聞くけど、その計画、他の女は知ってるの?」

エレン「いや、まだ言ってない。だがまぁ、あいつらは俺のやることにケチつけたりしないだろ」

流石に限度があるだろう、とアニは心中で突っ込んだ。
というか、もしも本当にそんな計画を実行すれば、ミカサあたりが立体機動装置で空から襲って来るだろうと思った。

アニ「……はぁ。あんたみたいな馬鹿を見てると、色々考えてるこっちの頭がおかしいのかと不安になる」

エレン「そうか、そいつは悪かったな」

アニ「いいよ。そういうとこ、嫌いじゃないから」

更に、続けて。

アニ「分かった、セックスしてやるよ。条件なしでね」

エレン「ほんとか!?」

アニ「……いや、これは条件なしとは言わないか……まぁ、これくらいの権利は貰ってもいいだろう」

ぶつぶつとなにかを呟いた後、アニは立ち上がり、叫ぶ。

アニ「おい、面白いものを見せてやるからこっちを見な!」

そうして、衆人環視にさらされる中、アニはエレンの唇を強引に奪ったのであった。

―――そして

その日は、奇跡的に全員の自由時間の被る日だった。
こういうタイミングは、大体月に一度ほどしか訪れない。

エレン「じゃあ、今日は誰からするか」

エレンが言うと、ミカサが挙手した。

ミカサ「アニはその候補から外れるべき。あのような暴挙に打って出たアニを許すわけにはいかない」

『あのような暴挙』とはつまり、アニがエレンの口を公共の面前で奪った件である。
それ以来、エレンはアニと付き合っているという噂が流れた。

あながち間違ってもいない上、そこを否定すれば、アニがまたしてもエレンと距離を置くと脅してくるので、
もはや部隊公認のカップルとして二人は数えられている。

エレン「なぁ、本当に勘弁してくれないか。男性隊員の間で俺はいい笑い物になってるんだぞ」

アニ「嫌だね。そうやって苦労するあんたを見るためにやってるんだから」

悪態をつくアニを見て、ミカサはむっとする。

ミカサ「エレンを苦しめる女を優先させる必要はない」

すると、ユミルが追って口を開く。

ユミル「まぁ、それについては同意だ。ついでに言えば、日頃からエレンにひっついてる女も権利を放棄するべきだろう」

ミカサ「どういう意味?」

ユミル「そのままの意味だ。普段から接する機会が多いんだから、こういう時くらい、人に譲るのが筋ってもんじゃねぇのか?」

ミカサ「だけど、それは……」

口ごもるミカサを尻目に、ユミルは言う。

ユミル「つーわけだ、エレン。一番はクリスタにくれてやれ」

クリスタ「えっ、私!? ……い、一番を貰えるなら嬉しいけど」

「本当にいいの?」と上目遣いでエレンを見るクリスタ。

エレン「俺は誰だって構わないが」

クリスタ「ほんと? じゃ、遠慮なく……」

サシャ「ま、待ってください!」

喜色満面で服を脱ごうとしたクリスタを止めたのはサシャである。

クリスタ「なに、サシャ?」

サシャ「あ、あの……これ」

サシャが提示してきたのは、一口大にちぎられたパンくずだった。

クリスタ「……え? これ、え?」

サシャ「う、うう、分かりました。じゃあ、これ」

もう一つ、同じもの。

クリスタ「サシャ、ちょっと待って。少し落ち着いて」

サシャ「分かりました。もう持っていてくださいよ、この泥棒!!」

そして登場したのは、先ほどの夕食時に配給されたパンだった。

クリスタ「いや、だから……」

サシャ「ど、どうして丸々一個渡しても駄目なんですか!? 一個っていったら、その……丸々一個なんですよ!?」

クリスタ「だから、意味分かんないよ!!」

どうやらなけなしのパンをあげる代わりに順番を譲ってくれ、という話らしい。
サシャも、ようやく食欲と性欲が拮抗するくらいにまで成長していた。

一向に決まる気配のない一番手。エレンが言う。

エレン「埒が明かねぇし、自由時間だって有限なんだ。ミカサ、さっさと来いよ」

指名されたミカサは、ぱぁっと顔を輝かせた。

ミカサ「さすがエレン。ここぞという時に指名する相手を分かっている」

エレン「いや、たまたま一番近くにいたっていうだけなんだが」

ミカサ「なんだっていい。私が一番になったという事実。それだけが重要」

いそいそと服を脱ぎ捨てるミカサ。恨めしそうにそれを眺める四人の女。
エレンはぽりぽりと頭をかいた後、自身も全裸になった。

ミカサ「エレンの白いおしっこ、絞りつくしてあげる」

エレン「懐かしい単語だな」

全てが始まったあの日を振り返りつつ、エレンの巨根は進撃した。

その日、女たちは思い出した




ヤツに支配される悦びを……




男の腕の中に囚われる幸福を……





【進撃の巨根~attack of tintin~ 完】

本当は女型の巨人と巨人化エレンのダイナマイトセックスを書くつもりだった(というより>>1を書いている時点で思いついていた展開がそれだけだった)
んだけど、なんかもう長くなりすぎたし、いいよねこれで……。

このSSを読ませることで、お前らの貴重な休日を少しでも浪費させることが出来たのなら、そんなに嬉しいことはない。

乙。
冗談抜きでこの>>1凄い.....
久しぶりに良いSSに出会った

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年11月07日 (金) 17:49:32   ID: Qvf1OkS8

Great!

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