和「新道寺の赤木選手ですか……」赤木「ククク……」(228)

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玄「新道寺の……赤木さん?」赤木「ククク……」
玄「新道寺の……赤木さん?」赤木「ククク……」 - SSまとめ速報
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照「新道寺の赤木……しげ子」赤木「ククク……」
照「新道寺の赤木……しげ子」赤木「ククク……」 - SSまとめ速報
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咲「新道寺の……赤木さん」赤木「……ククク」
咲「新道寺の……赤木さん」赤木「……ククク」 - SSまとめ速報
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遅くなって大変申し訳ありません。こちらの続きになります。
よろしくお願いします。
例によって携帯からは見えにくいかと。
基本的に闘牌は「アカギ」「天」「ノーマーク爆牌党」などを参考にしています。
もちろん原作である「咲 阿知賀編」の流れも踏襲しています。過去の捏造なんかもあります。
ご容赦の程を……。

支援でー

須賀京太郎「あ、はい、はい! スイマセン! そこを何とか! はい、あ、値段ですか?
えーと」

赤木しげ子「……」ドサッ

京太郎「」

京太郎「……三倍払いますから、お願いします。札束ありますんで。ええ、札束です」

京太郎「あ、オッケー? よし、分かりました。それじゃ、ええとココまでお願いします」

京太郎「はい、よろしくお願いします! すいません、ありがとうございます!」

京太郎「ふひー……」

赤木「お、どうだった?」

京太郎「スゲぇ渋られましたけど、何とかオッケー貰いましたよ……ふぐさし出前」

赤木「おー、そうかそうか」

京太郎「ひぃ、疲れた。これでもういいですよね? じゃ、後は……」

赤木「まあまあ、ええと……京太郎だっけか? 少しゆっくりしていけや」

京太郎「はあ……(同じ一年なのに、なんか凄く偉そうだ……)」

● ● ●

赤木「ふぅん。清澄ってーと……宮永咲の居るところじゃねえか」

京太郎「へー。やっぱ有名なんすね、アイツ」

赤木「長野予選で天江衣を負かしたんだからな。ちょっと目端が利く奴なら、誰だって
注目しているさ……」

京太郎「あのちんちくりんがねぇ……」

赤木「で、あの清澄ってえことはお前さんも相当打てるのかい?」

京太郎「や、全然ッス。役覚えましたけど、点数計算まではできないレベル」

赤木「へぇ。それじゃ、インターハイは――」

京太郎「既に終わってますよ、俺の夏は」ションボリ

赤木「そうかい、そりゃお疲れさん。ってことは、この本選には――」

京太郎「女子の付き添いっつーか、雑用係です」

赤木「ふうん……そりゃ肩身が狭いな」

京太郎「いやまあ、選手五人と違って気楽と言えば気楽だからいいんですけどね。
麻雀楽しいですから」

赤木「……麻雀は、楽しいかい?」

京太郎「そりゃ、楽しくなかったらやりませんよ」

赤木「そうだなぁ。楽しくなかったらやらねぇよな、普通……」

京太郎「楽しくないんですか?」

赤木「うぅむ……どうも俺には、その辺がよく分からんのよ……」ポリポリ

赤木「ただ、昔っから見えちまってたんだ……人には見えない領域の何かって奴が……。
だから、偏って偏って生きていくしかなくてな……」

京太郎「?」ナンノコッチャ

赤木「おう、悪い悪い。ちっと分かりにくかったな。下らない身の上話も何だし、
少し遊んでみるかい?」

京太郎「いいですけど、何します?」

赤木「麻雀……と言いたいところだが、お前さんが清澄なら打てないな。
それにふぐさしも来ることだし、簡単に終わる奴がいい……そうさな、」

赤木「9(ナイン)なんて、どうだい……?」

京太郎「9(ナイン)……?」



9(ナイン)とは……麻雀牌を使ったミニゲームである。
互いにそれぞれ同じ数牌を1から9まで持つ。これが手駒である。
交互に一枚ずつ出していき、出た目が多い方が勝ち……という、
単純極まりないルール。

                                     
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐
 │①│②│③│④│⑤│⑥│⑦│⑧│⑨│
 │筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘


                                     
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐
 │①│②│③│④│⑤│⑥│⑦│⑧│⑨│
 │筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘


しかし、9(ナイン)はポイント制である。
例えば、相手が「5」、自分が「7」だった場合、5+7で12ポイントということになる。

                               
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐
 │①│②│③│④│⑥│⑦│⑧│⑨│
 │筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│  0点
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘

                                 
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐
 │①│②│③│④│⑤│⑥│⑧│⑨│
 │筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│  12点
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘


このポイント制が、ゲームを深みのあるものにしている。
つまり……たとえば1以外の全てに敗北する「1」や「2」で「9」に敗北するというのは、
むしろ勝利と言える。
逆に「9」を使って「8」に勝利すれば、17点……これは大きなビハインドとなる。
どのタイミングでどの牌を使うか、単純であるが故に奥は深い。


京太郎「ふーむ、なるほどなるほど」

赤木「どうする? 何か賭けるかい?」

京太郎「へ、賭け?」

赤木「金が欲しいなら……ほれ、」ドサッ

京太郎「」

京太郎「」

京太郎「」

京太郎「札、たばを……?」

赤木「不足かい?」

京太郎「怖いから要りません! ノーレート! ノーレートで行きましょう!」
(札束は重い! 重すぎる!)

赤木「ちぇっ……まあいいか」


かくして、9(ナイン)……開始!


赤木「先行は京ちゃんからどうぞ」

京太郎「了解ー」

京太郎(さて、と……ルールを完全把握した訳じゃないけど、多分意外性を衝いた方がいいよな)

京太郎「じゃあ、まずは……これ!」

赤木「それじゃ、俺は……コイツだな」

京太郎「オープン」

京太郎
     
 ┌─┐
 │⑨│
 │筒│
 └─┘


赤木
     
 ┌─┐
 │①│
 │筒│
 └─┘

京太郎「あいた!?」
(9ピンで1ピンゲット……一番嬉しくない勝ちだ)

赤木「くくく、初っ端から最高値とはね」

次巡、先行赤木。

赤木「オープン……」

赤木
     
 ┌─┐
 │③│
 │筒│
 └─┘

京太郎

     
  .__
 │②│

 │筒│
 └─┘

京太郎「う。僅差の負け……」

赤木「じゃ、こちらはオレのものと……」

そして赤木、最初の一敗以降は全て一の差で勝利を繰り返す。
結果、77対10という大勝利……!

京太郎「( ゚д゚)ポカーン」


京太郎「( ゚д゚)」


京太郎「(゚Д゚)」

ぎゃー、80点対10点でした、すいません……。

赤木「オレの勝ちと……。もう一回やるかい?」

京太郎「や……やらせてください!」

敗北!

敗北!

敗北……!

京太郎「」

赤木「ククク……生きてるかい?」

京太郎「……」

京太郎「……うん。まあ負けるのはいいんですよ。でも、三戦やって全部80対10!?
ありえねー! 実家住まいのアラフォーが婚活するくらいありえねー!」アラサーダヨ!?

計算が苦手な京太郎とて、理解できる……必敗する9を除き全て「1差」で
終わらせるなど……ほぼ不可能。

しかも赤木は常に後攻という訳でもない。先攻後攻は交代制。
相手の顔を窺って出す牌を決めているばかりではない……!

赤木「次で最後の勝負とするか。もうそろそろふぐさしが来そうだしな。
だが、このままだと京ちゃんがまた80対10で敗けちまうだろうし……ルールを変えるか」

京太郎「へ?」

赤木「……オレは、引き分けのときのみ勝利できる。つまり、たとえ一牌でも違うものを出せば
京ちゃんの勝ちだ。……やるかい?」

京太郎「そ、それなら……!」

最後の一勝負。
赤木の勝利条件は、「京太郎と同巡で同じ牌を出し続けること」……!

さらにシビアになった勝利条件……ほぼ絶無。
だが、かつて僧我三威相手に「引き分け」となるよう牌を出し続けた赤木である。

                                                                
  .____   ____   ____   ____   ____   ____
 │⑤│⑤│ │⑨│⑨│ │⑧│⑧│ │②│②│ │⑥│⑥│ │③│③│

 │筒│筒│ │筒│筒│ │筒│筒│ │筒│筒│ │筒│筒│ │筒│筒│
 └─┴─┘ └─┴─┘ └─┴─┘ └─┴─┘ └─┴─┘ └─┴─┘

引き分け……引き分け……引き分け……引き分け……引き分け……引き分け……!
これには京太郎も絶句……唖然としたまま、残り三牌……!


京太郎「全国区の強者は、こんなんばっかりなのか……メゲる、これはメゲる」

赤木「メゲる必要はないさ。純粋に麻雀を楽しめばいい」

京太郎「いやまあ、それはそうなんですけどね……」

赤木「……オレもな、麻雀を楽しんでいない時期があった」

京太郎「へ?」

赤木「いや、多分麻雀は好きだった……だが、ちょっと偏った生き方をしたせいかな。
勝つことが全て。敗北即ち死……! そこまで自分を追い込まなきゃ、生きていられなかった……」

京太郎「……」

赤木「そうしたら、神様が罰を下したのかね。……麻雀が分からなくなっちまったのよ……」


赤木は……アルツハイマーの時期を思い出していた。

あのどこか靄が立ち篭めたような思考。自分が自分である感覚がどんどんと削れていく恐怖……!

京太郎「その、今は大丈夫なんですか? 体とか……」

京太郎、赤木の言葉を誤解……。
病弱だったのだろうと推測し、気を遣う。

赤木「まあな。で、同じ生き方をするのは止めようと思ってな……こっちの世界では、違うカタチで
麻雀を打ってみようと思っている」

赤木「二流でもいい、三流でもいい。運悪く朽ち果てても構わない。ただ……麻雀を楽しもうってな」

京太郎「……」

それがどれほどの苦難か、京太郎には理解できる。
なるほど。麻雀は楽しい、それは間違いない。

だが……勝利せねば楽しくないというのも、また事実なのだ。
どれほどの修練を積んでも届かぬ頂に立つ魔物たち……本来偶然であるはずの牌を、
まるで超能力のように引き寄せる能力者たち……それを見て、心折られぬ者がいるだろうか?

京太郎は思う。
目の前の赤木は折れないのだろうと……!
どんな理不尽な力であろうとも、抗うのだろうと……!

京太郎「でも……そこまで、そこまで強くなれない人もいるんじゃ?」

赤木「その通りだ。だけどな、だったら……視点を変えてみればいいのさ」

京太郎「視点?」

赤木「自分のために打つんじゃない。……仲間のために、打ってみろ」

京太郎「仲間の――ため?」

赤木「オレは今、そう打っている。楽しく麻雀を打つ、そして勝利は……仲間のために」

赤木「幸いにも、良い仲間に恵まれてな……一人を除いたら、もう麻雀以外は本当にどうしようもない
連中だが……そこがいいんだ……」

赤木、前世とはまるで違った生き方……!
偏り、常に自分が自分であろうとすることを念じて生きてきた彼とはまるで真逆……!

しかし、それ故に赤木はこの世界を楽しんでいる……!
自分であろうと「しない」ことで、逆に新たな強さを発揮……!

赤木「さて。そろそろ終わりか……さあ、京ちゃんの出番だぜ……?」

京太郎、長考……!
恐らく、意味などないがそれでも彼の思考を読み取ろうとする……!

京太郎(できれば、1は最初に出しておきたい……だが、まだ3枚あるのだから、
今の内にネガティブなイメージを持たれるコレは逆にない、か……?)

京太郎(いやいや。それを逆手にとって……ああくそ分かんねー)

京太郎(……いっそガチャガチャやって、適当に出してみるか……?)

京太郎(でもなんか、それは運を天に任せる感じで嫌だな。やっぱり1を出そう……)

京太郎が1筒に手をかけようとしたそのとき、食堂に来訪客……!

店員「ふぐさしお持ちしましたー!」

京太郎「おっと」フリムキ

京太郎、振り向きつつ牌を掴み立ち上がる……

赤木「おお。来ちまったか。悪いがコレが金な」

京太郎「あ、はい」

店員「毎度ありがとうございます。でも、今回っきりですからね!?」

京太郎「はい。ありがとうございます!」

赤木「どうする? もう止めてもいいが……」

京太郎「いや、せっかくだし最後までやりましょう。んじゃ、オープン」

赤木「……!?」

京太郎

     
  .__
 │④│

 │筒│
 └─┘


赤木

     
  .__
 │①│

 │筒│
 └─┘


京太郎「あれ? あ、そっか! 今、1を取ろうとして間違えて4取ったんだ!
やった、リードした!」

赤木「こいつは驚いた……な」

次巡、赤木は7を出し、京太郎は1。
そしてラスト。

京太郎

   
  .__
 │⑦│

 │筒│
 └─┘

赤木    
  .__
 │④│

 │筒│
 └─┘

赤木「11+5の16対8で京ちゃんの勝ち、と……」

京太郎「いよっしゃああああああああああ!」

赤木「ククク……理は偶然によって破壊される、か……いや、こういうコトもあるモンだな」

京太郎「あはははは! あ、でも大丈夫ですか? 大将戦前にこんなことやってて、
ツキが逃げるんじゃ……」

赤木「何。この程度で逃げるツキなら、それまでってことだ。さて、それよりふぐさしと……」

京太郎「うおおお。スゲぇ皿が豪華だ……」

赤木「では、いただきます」

赤木「もぐもぐ」ヒトクチ

赤木「ふぅ……美味かった。ごっそさん」

京太郎「美味いっすか。いいなぁ、一口俺にも……え、今何て言いました?」

赤木「ご馳走様。ああ、残りは京ちゃんが食っていいぜ」

京太郎「……一切れしか食べてないような?」

赤木「一切れ食べれば充分だろ」

京太郎「」

赤木「どうした?」

京太郎「赤木さん……ワガママって言われたことありますか?」

赤木「しょっちゅうな」

京太郎「俺も食べますから! 赤木さんも、ちゃんと食べられるだけ食べなさい!」

赤木「いや、しかし真心を食っただけでオレは充分……」

京太郎「世の中にはタコス食べないだけで弱くなる雀士だっているんです!
ふぐさし食べなかったせいで弱くなったらどうするんですか!」

赤木「……そりゃ楽しそうだ」

京太郎「その為に朝昼晩とタコスを買いに行かされる男子高校生だって
いるんですよ!?」

赤木「……何だか分からんが、すまん」

赤木、京太郎の妙な迫力に屈してふぐさし続行
京太郎もお相伴に与ることに……

京太郎「ふぐさしって淡泊っすね。全然味ねーんでやんの」モグモグ

赤木「酒があると美味いんだけどな……。さてと、じゃあオレはそろそろ行くわ。
色々と悪かったな。福岡に来ることがあったら、顔出してくれや」

京太郎「こちらも長野に来ることがあったら是非」

赤木「おう、んじゃな……」

京太郎「……赤木さん!」

赤木「ん?」

京太郎「俺が打つ訳じゃないんで、こんなコト言うのは本当アレだと思うんですが……。
決勝で会いましょう!」

赤木「ああ……決勝でな!」

赤木は……自身のツキ、雀力といったものが前世と比較して完全でないことを看破している。
だがしかし、それは赤木にとってのハンデとなるのだろうか……?

赤木「ククク……不利だからこそ、敗北するからこそ……麻雀は楽しい……!」

否……ツキや雀力が不完全であるが故に、赤木しげ子は……現在、最強である……!
そして、いよいよ副将戦……!

原田香津美「さて、それじゃちょっくら行ってきますわ。赤木の出番なんぞ作ってやらへん。
ワイで終わらせたるわ……!」

花田煌「香津美ちゃん、頑張って下さいね!」

浅井銀「あー、茶が美味ぇ。きんつば美味ぇ。煙草吸ってないせいで、甘いもんが美味ぇ……」

僧我みつみ「取るな……ワイのきんつば、取ったらアカン……!」ハラハラ

原田「すばら先輩が天使過ぎるのか、他の連中がどうしようもないのか、少し悩むな……」

廊下

原田「フン……銀次のお陰で、白糸台も射程圏に入っとる。こうなったら、徹底的に
凹ませて、誰かをハコらせて終わらせたる………………わわっ!?」ブチッ

原田「な、なんや……靴紐切れよった……ったく、ショボい靴やのぅ……」

池田華菜「ふん、ふーん、ふーん。オーキャプテン、マイキャプテン! 文堂がマカロニゆーでたーのでー
チーズを載せてオーブンへ~♪」スタスタスタ

原田「……黒髪で猫耳生やした娘っ子が、ワイの前を通り過ぎていきおった……」

不意に原田……悪寒……風邪を引いた訳でもないのに、妙な感覚……!

原田「なんや……嫌な予感がするのぅ……」

原田「い、いや! 気のせいや、気のせい。黒猫が通りすぎたくらいで……」

池田「ふぅ。まったくコーチにも困ったもんだし! 黒烏龍茶じゃないと駄目とか、
スタイル気にしすぎだし!」スタスタスタ

原田「おどれ我に何か恨みでもあるんかい!」

池田「ギャー! 飲み物を買って戻っただけなのに、どうして赤の他人に怒られるんだし!?」


● ● ●


原田「よろしゅうな……!」

原田(さっきのアレは黒猫やのうて人間や。気にせんとこ……)

新道寺は西の頭、現役最強の打ち手であった原田克己……の生まれ変わり、原田香津美……!

亦野誠子「よろしくお願いします」

白糸台、チーム虎姫からは二年生亦野誠子……!

支援でー

船久保浩子「ほな……」

千里山からは船久保浩子。
そして――。

鷺森灼「よろしくお願いします」

阿知賀からは部長、鷺森灼。
席順は以下の通り。

  浩子
誠子  灼
  原田

東一局、東家は亦野誠子 南家は原田香津美、西家は鷺森灼、北家は船久保浩子

恒子「それでは、準決勝副将戦……開始ィッ!!」

ワァッ

恒子「さて……小鍛治プロはこの戦い、どう思いますか?」

健夜「……」

恒子「すこやん?」

健夜「あ、ゴメン! えっと……うん、そうですね。新道寺の原田選手が気になります……」

恒子「ほほう、その理由や如何に?」

健夜「あー、ええと。……直感、です」

健夜(この副将戦……荒れるかも……)

彼女の言葉通り、この副将戦……これまでに類を見ない荒れ方をする……!

健夜(その中心となるのは、多分……)

原田「うっし。……飛ばすで」

原田「リーチ!」

健夜(原田……香津美!)

浩子(迅い……! まだ三巡やで……!?)

灼(それに、この捨て牌……)

               
 ┌─┬─┐      
 │⑨│④├──┐

 │筒│筒│⑥筒│
 └─┴─┴──┘

――新道寺女子高校控え室

僧我「原田の測りリーチか……」

浅井「白糸台と千里山はデータが揃っていたが、阿知賀の灼ちゃんはほとんど打ち手の
方向性が分からないからな。まずはこれで、どういう打ち手か見る積もりか……」

僧我「……どうでもいいけど、何で灼ちゃんなんや」

浅井「コケシみたいで、可愛らしいじゃないか……!
 孫にしたいと思わないのか……?」

煌「銀ちゃんより年上でしてよ、あの方……(孫……?)」

浩子(三巡リーチでピンズを三枚捨てたからって、ピンズが安全っちゅうことはない。
恐れず行って、振り込んだら交通事故や……!)タンッ

誠子(待ちは……どこだ?)タンッ

灼(……予感を活かそう。ピンズが嫌な予感がするから、ピンズは出さない)タンッ

原田(千里山はワイのリーチを無視、白糸台は迷いつつ安牌指向、そして阿知賀は――)

原田(ピンズを抑えてのソーズ出し、か……冴えとるな、直感を活かしつつの麻雀……
旧世代、つまりワシらと似た感じの打ち方や……)

原田(だが、そこまで見切るんは迅いか。どこかで崩れ落ちるかもしれん……)

原田 手牌
                                                     
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐
 │一│二│三│①│③│③│③│⑤│⑥│⑦│.1 │.2 │.3 │
 │萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│索│索│索│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘

原田(ん?)
原田 ツモ
     
 ┌─┐
 │①│
 │筒│
 └─┘

恒子「おーっと、原田選手。七巡後にツモ! しかしこれは安目!
ドラもないので、リーチツモのみ…………って、あれ!?」

健夜「これは……」

原田「……」

原田 打
     
 ┌─┐
 │①│
 │筒│
 └─┘

灼(1筒……? 筒子の下かと思っていたけど……)

浩子(それは安牌やったか……)

誠子(鳴きたいところだけど、危険牌を捨てるほどの状況じゃない。
落ち着いて対処しなきゃ……)

恒子「これは高め狙い……でしょうか?」

健夜「それもあるでしょうが、もう一つは……力量を測っているのかもしれません」

恒子「へ?」

健夜「巡目の早いリーチにどう対処するか、それで雀士の流儀が分かります。
攻めるのか、守るのか、下りるのか、無視するのか……」

健夜「半荘は二回あります。少しでも対戦相手の打ち方を把握しておきたい、
というのはよく分かるやり方です……ただ、普通高校生の考えることではないと思いますが」

恒子「すこやんみたいな大ベテランなら、そういうのも有り?」

健夜「ええ、まあ私なら……こーこちゃん、何か言い方に毒が入ってないカナ!?」

……結局それ以降、原田はツモれず。
だが、他の三人も和了るには至らなかった。

誠子「……ノーテン」

浩子「……テンパイ」

灼「……ノーテン」

原田「テンパイや」

誠子(1筒、2筒待ち……? うわ、危なかった……! 新道寺が1筒ツモを見逃さなかったら、
当てられてたの私だ!)

浩子(何や、1筒でツモっとるやんか。……このアマ、人を舐めくっとんな)

灼(……2筒ツモを待ってた……いや、違う。
私を……見ていた?)

原田(千里山の浩子ちゃん、舐めとんのかってツラやな……)

原田(舐めとりゃせんわ。それもこれも全て、勝つためや……)

原田(勝つためやったら、イカサマ以外は全部やる。本気でな)

原田(そんでもって、赤木の出番無くしたるわ……!)

阿知賀  83400(-1500)
千里山  96400(+1500)
新道寺 108800(+1500)
白糸台 111400(-1500)

――白糸台高校控え室

照「危なかった……」

菫「1筒をツモ切ってなかったら、亦野が2筒を振り込んでいたか……」

淡「5筒捨てで、スジを追って振り込むって典型的だよねぇ」

尭深「それより今の新道寺、どうして和了らなかったんでしょう」

照「……多分、私の照魔鏡と同じ」

菫「何?」

照「この一局で、新道寺は三人の雀力や打ち筋、性格を見極めようとしたんだと
思う。恐らく、1筒でツモっても裏ドラも乗ってない。2筒ツモなら三色で満貫だから、さすがに
和了っただろうけど」

菫「ということは、コイツも……」

照「うん、僧我さんや浅井さんと…………同類」

――千里山女子高校控え室

竜華「フナQが珍しくバンバン危険牌切ってったなぁ……ん? 怜、どないしたん」

怜「……いや、あの原田って一年生やけど……なんか、怖い」

竜華「怖い?」

セーラ「怖いって、顔がか?」

怜「ちゃうちゃう。顔じゃなくて、怖いのは……打ち方、や」

東二局

誠子「ポン」

               
       ┌─┬─┐
 ┌──┤.4 │.4 │

 │.4 索│索│索│
 └──┴─┴─┘

誠子「ポン」

                                
 ┌─┐    ┌─┐       ┌─┬─┐
 │⑧├──┤⑧│ ┌──┤.4 │.4 │

 │筒│⑧筒│筒│ │.4 索│索│索│
 └─┴──┴─┘ └──┴─┴─┘

誠子「……ヒット」

                                                 
 ┌─┬─┐       ┌─┐    ┌─┐       ┌─┬─┐
 │二│二├──┐ │⑧├──┤⑧│ ┌──┤.4 │.4 │

 │萬│萬│二萬│ │筒│⑧筒│筒│ │.4 索│索│索│
 └─┴─┴──┘ └─┴──┴─┘ └──┴─┴─┘

浩子(来たか……)

灼(白糸台の――)

原田(フィッシャー!)

誠子「ツモ! 2100・4100!」

恒子「来た、来た、キターーーーーーーーーーーー! 白糸台の亦野誠子選手、満貫ツモ!」

誠子(よし!)

浩子(やっぱスピードと攻撃力は半端ないな、白糸台の亦野……)

阿知賀  81300(-2100)
千里山  94300(-2100)
新道寺 104700(-4100)
白糸台 119700(+8300)

東三局 0本場 親 阿知賀 

誠子「ポン!」

浩子(せやけどな……)

誠子「ポン!」

原田「……チー」

誠子(……両面チー?)

灼(なんか、このチー嫌……)

誠子「ポン!」

原田の捨てた牌を、白糸台亦野が再び鳴く

誠子(ヒット。これで五巡以内に――)

浩子「ロン。2300」

誠子「!?」

誠子(余剰牌を狙われたか……)「はい」

阿知賀  81300(0)
千里山  96600(+2300)
新道寺 104700(0)
白糸台 117400(-2300)

灼(あのチー……わざと鳴かせた?)

浩子(和了ったはええけど……なんや、新道寺に操られた感があるな……ごっつムカつくわ)

原田(睨むなや、嬢ちゃんたち。……麻雀ってな、そーゆーもんやで。ケケケ)

東四局 0本場 親 千里山

ドラ     
 ┌─┐
 │.2 │
 │索│
 └─┘



原田(……この配牌、このツモ。丁度ええわ、俺の本質、見せてやる……!)

                                                     
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐
 │二│二│三│三│四│⑤│⑥│⑦│.3 │.4 │.5 │.2 │.2 │
 │萬│萬│萬│萬│萬│筒│筒│筒│索│索│索│索│索│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘
                       赤                  赤

原田「リーチや!」

恒子「おーっと、原田選手。タンピンドラ四、ダマッパネでリーチ!」

健夜「これは――」

恒子「どうでしょう、これならリーチせずにダマでもいいかと思うんですが」

健夜「そうですね。テンパイした、という気配は他の選手には伝わってなかった
と思います。でも……」

健夜「敢えてリーチを仕掛けたのは、彼なりのちゃんとした意味があると思います」

恒子「彼女だよ、すこやん」

健夜「こほん。彼女なりの、ちゃんとした意味があると……(雰囲気からして、どうしても
男の人っぽいんだよね、原田選手……)」

誠子「え……?」ゾクリ

浩子「……っ」ゾッ

灼「う――」ゾクゾク

原田「……一発無し、や」

     
 ┌─┐
 │一│
 │萬│
 └─┘

恒子「なっ……!?」

健夜「……」

浩子(マンズの気配やが……)

灼(……早く和了らきゃマズ……!)

誠子(スジを追う……か)

二巡後、原田

原田「ツモ、や」
                                                            ツモ
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │二│二│三│三│四│⑤│⑥│⑦│.3 │.4 │.5 │.2 │.2 │ │四│
 │萬│萬│萬│萬│萬│筒│筒│筒│索│索│索│索│索│ │萬│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
                       赤                  赤

リーチ・ツモ・タンヤオ・ピンフ・イーペー・ドラ四――

浩子(な……!? 一萬で和了っとるやないか!)

誠子(そんな馬鹿な! だって、点数は変わらない……)

灼「……」

原田「まだや。裏ドラが……一萬。要するに、ドラは二萬!」

原田「これや。よって11ハン折れて三倍満……!」

三人「!?」

阿知賀  75300(-6000)
千里山  84600(-12000)
新道寺 128700(+24000)
白糸台 111400(-6000)

白糸台高校控え室

照「凄い火力……」

菫「尭深のような能力も使わず三倍満。しかも、躊躇いなく一萬を捨てて三倍満のチャンスに懸けるとは……」

阿知賀控え室

晴絵「この打ち方は……」

憧「この打ち方、記憶があるの?」

晴絵「……女性プロでは滅多に存在しないけど。男のプロに、たまに居る」

穏乃「男のプロ……?」

千里山女子高校控え室

怜「なんや、セーラの打ち方に似てるな」

竜華「あー、似とる似とる」

セーラ「え? 俺の打ち方ってあんなに乱暴?」

泉「江口先輩より、過激というかワイルドというか……」

恒子「原田選手! 強引! 強引な打ち方で、高めをツモ和了! 白糸台、二位に転落したァァッ!」

恒子「小鍛治プロ! 今の、今の説明下さい! っていうか何なのあれ!?」

健夜「お、落ち着いてこーこちゃん。今から説明するから……コホン」

健夜「……麻雀はその打ち方によって、様々な気を纏います。華々しい打ち方、暗闇に取り込むような打ち方、
鮮やかな手品を見せられるような打ち方……」

健夜「原田選手の打ち方は、端的に言って『暴力』です」

恒子「暴力……?」

健夜「抜き身の刃をぶら下げた、極道のような雰囲気です。これは……他の三人にとっては、
辛い闘牌になるかもしれません」

恒子「何故ですか?」

健夜「恒子ちゃん。日本刀を持ったプロレスラーみたいな体格の人が、恒子ちゃんを殺気立って
睨んでいる状態で、普通にアナウンスができる?」

恒子「むりむりむり!」

健夜「それと同じだよ。原田選手の暴力的な気配は、必然的に――」

あれ。三倍満は11ハンから……ですよね? 良かった、合ってるっぽい。

南一局

灼(……駄目、切れない)

誠子(……前局のツモは忘れなきゃっ……!)

誠子(でも、でも……う、くっ……!)

健夜「阿知賀と白糸台、序盤から早くも降り気味の打ち方。先ほどの一撃で、打ち方が本来のものより
萎縮を始めてしまった」

恒子「トラウマみたいな?」

健夜「うん。……少なくとも、当分は治らないようなトラウマ」

浩子「……ッ! ポン!」


千里山控え室

怜「でも、フナQは平気やな」

竜華「完全デジタルって訳やないけど、こういう時の思考はデジタルに近いしな」

セーラ「よーし、フナQ、ゴー!」

浩子(あんなの、ただの和了や! 三倍満は三倍満、今は今!)

浩子(あの二人がモタついている内に……何が何でも二位に食らいついたるわ!)

浩子「ロン! 8000!」

誠子「!?」

恒子「ドラ三つ抱えてのインスタント満貫、白糸台に炸裂!」

健夜「原田選手の捨て牌を意識しすぎた亦野選手の牌を、上手く狙い撃ちしてきましたね」

阿知賀  75300(0)
千里山  92600(+8000)
新道寺 128700(0)
白糸台 103400(-8000)

南二局0本場 親 新道寺

ドラ     
 ┌─┐
 │五│
 │萬│
 └─┘


原田「リーチ」

恒子「原田選手、リーチ! これまたツモれば跳満確定の大物手だ!」

誠子「くっ……」タッ

浩子(今回はオリやな……)タッ

灼(千里山が動いて、私だけ大きく離されてる)

灼(……いつもなら、諦めたくなるような点差だけど)

灼(これは、準決勝。ここまで来るのに、色んな人に想いを託された)

灼(何より、ハルちゃんに託された)

灼(負ける……もんか!)

灼「リーチ!」

阿知賀 鷺森灼――手牌
                                                     
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐
 │六│七│八│⑤│⑤│⑤│⑥│⑦│⑧│⑨│.3 │.4 │.5 │
 │萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│索│索│索│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘
                       赤
原田「……へぇ」

灼「……ツモ!」

                                                            ツモ
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │六│七│八│⑤│⑤│⑤│⑥│⑦│⑧│⑨│.3 │.4 │.5 │ │④│
 │萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│索│索│索│ │筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
                       赤

リーチ・一発・ピンフ・ツモ・ドラ・ドラ(裏ドラ)……跳満

灼「3000・6000」

浩子(グリークチャーチ……! 4-6-7-9ピン待ちか)

原田(やはりボウリング、か……こっちの世界はホンマに出鱈目やな……)


阿知賀  87300(+12000)
千里山  89600(-3000)
新道寺 122700(-6000)
白糸台 100400(-3000)

浩子(阿知賀の灼は攻めは一級やけど、守りはそこそこ。白糸台もほぼ同じか、若干
亦野の方が甘い。新道寺は……リーチ仕掛けた後くらいしか隙がない)

浩子(決めた。狙いは白糸台や……)

南三局0本場 親 阿知賀

ドラ      
 ┌─┐
 │二│
 │萬│
 └─┘

千里山 船久保浩子――手牌

                                                             ツモ
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │二│二│②│③│③│⑤│⑤│.1 │.1 │.2 │.2 │.3 │.3 │ │九│
 │萬│萬│筒│筒│筒│筒│筒│索│索│索│索│索│索│ │萬│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘

浩子(……字牌なし、亦野はオリ気味。迷彩的には絶好……!)

浩子(阿知賀の鷺森、動きなし。新道寺の原田……こうしているだけでも、
何や訳分からんプレッシャーがかかっとる気がするが……)

リーチ!

浩子(そんなオカルトに負けてたまるか!)

原田(何とまあ、呆れ返るクソ度胸やな……。やっぱ極道時代と違って、
俺のツラが美少女過ぎるのが悪いんかな……辛いわー、美少女辛いわー)

新道寺女子高校控え室

煌「あら、香津美ちゃんが笑ってます」スバラ?

僧我「原田の奴、なんかアホなこと考えとるな……」

銀「神よ、私は美しい……とか考えてるツラだ、アレは」


誠子(千里山がリーチ……だけど、新道寺もまだ気になる。なら、共通安牌に近い、これか)

     
 ┌─┐
 │九│
 │萬│
 └─┘

浩子「ロン」ニヤリ

誠子「!?」

原田(へーえ)

                                                            
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │二│二│③│③│⑤│⑤│.1 │.1 │.2 │.2 │.3 │.3 │九│ │九│
 │萬│萬│筒│筒│筒│筒│索│索│索│索│索│索│萬│ │萬│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘

浩子「12000や」

誠子「……はい」(ピンフイーペーから、チートイに変化したのか……)

阿知賀  87300(0)
千里山 101600(+12000)
新道寺 122700(0)
白糸台  88400(-12000)

恒子「千里山、跳満直撃-! 遂に! 遂にあの白糸台が、三位転落!」


南四局……千里山、浩子の流れを感じ取ったのか阿知賀の鷺森灼が1300点で軽く流して終了。
これによって、微差ながら阿知賀が三位浮上。白糸台は恐らく初の四位転落……!


阿知賀  88600(+1300)
千里山 100300(-1300)
新道寺 122700(0)
白糸台  88400(0)

前半戦終了。

誠子「ふーっ……」

誠子「参った、ホント」

誠子「まるで一年生の時みたいだ……」

● ● ●

誠子(一年生)「はーっ……」

誠子(一年生)「分かってはいたことだけど、先輩たちは強い……」

誠子(一年生)「尭深はオーラスで役満和了るって必殺技があるけど」

誠子(一年生)「私には何もないもんなー」

誠子(一年生)「一体どうすれば……ん?」

チャポン

誠子(一年生)「釣りか……」

誠子(一年生)「……あのー」

???「うん?」

誠子(一年生)「ここ、何が釣れるんですか?」

???「うん?」

誠子(一年生)「ここ、何が釣れるんですか?」

???「ヘラだぁな。フナとの知恵比べってやつよ」

誠子(一年生)「へぇ……ヘラブナって難しいですよね。釣りはフナに始まりフナに終わる、
でしたっけ」

???「難しいことなんかねえよ。こっちが攻めてりゃいいんだ」

誠子(一年生)「攻め……?」

???「攻めてる俺ぁ、前向いて笑ってりゃいいが……守る方は後ろを見い見い逃げにゃ
ならんし、大変やろうね」

???「逆におっかなびっくりやっとったら、フナも怖くねぇから攻めてきて、餌を獲られるだぁな」

誠子(一年生)「……そっか。守るより攻める方が傷つかないんだ」

???「そーゆーこっちゃ……ほいっと」フィッシュ

誠子(一年生)「あの! ありがとうございました!」

誠子(一年生)「今の言葉、肝に銘じます!」

???「いやいや、こりゃどうも……御無礼」ヘラッ

● ● ●

誠子「……そうだ。忘れるところだった」

誠子「白糸台のフィッシャーは、攻めに攻めなきゃ始まらない」

誠子「後半戦……やってやる!」

尭深「……ん。平気っぽいや」コソッ

恒子「さあて、やって参りました後! 半! 戦!」

恒子「録画の準備はできたか皆の衆、行くぞーっ!」


東一局、東家は原田香津美 南家は亦野誠子、西家は鷺森灼、北家は船久保浩子

   浩子
原田   灼
   誠子

東一局0本場

開始早々、白糸台が動き出す。

誠子「ポン!」

浩子(お?)

誠子「ポン!」

恒子「二鳴き……となると、次の鳴きで」

健夜「白糸台の亦野選手得意のフィッシングですね」

原田「……リーチ!」ニヤリ

恒子「おーっと、ここで原田選手のリーチ!」

誠子「ポン!」

原田「何……?」

誠子(守らず……行け!)

恒子「亦野選手、勝負にいったーっ!」

健夜「捨て牌を見ても、かなりの危険牌ですが……勝負に出ましたね」


白糸台 控え室

照「……やっといつもの誠子に戻った」

菫「どうせ三鳴きして、防御という面では甘くなるんだから。そんなもの無視して勝負した方が、
結果的には傷つかずに済む」

尭深「これなら和了れるかな……」


誠子「……ツモ! 2000・4000!」

阿知賀  86600(-2000)
千里山  98300(-2000)
新道寺 118700(-4000)
白糸台  96400(+8000)

誠子(千里山まで後一歩……いや、新道寺も視野に入れる!)

浩子(ちっ……字牌とスジオリに走りがちな傾向ある言うても)

浩子(三鳴きからは無関係に突っかかるから、結果向こうが迅いか……)

東二局は全員ノーテンによる流局。東三局は亦野誠子が3900を千里山から直撃。
二位を奪い返す。

阿知賀  86600(0)
千里山  94400(-3900)
新道寺 118700(0)
白糸台 100300(+3900)

東四局0本場

灼「……」
鷺森灼――手牌
                                                            ツモ
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │①│①│①│⑥│⑦│⑨│⑨│.1 │.2 │.3 │.5 │.6 │.7 │ │⑦│
 │筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│索│索│索│索│索│索│ │筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘

この亦野さんはかっこいい(確信)

灼「……リーチ!」


阿知賀 控え室

晴絵「7・9ピン……シンシナティ」

晴絵「後は……」


原田

                                                            ツモ
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │二│二│二│三│三│三│四│四│四│②│③│④│⑨│ │⑤│
 │萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│ │筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
                                                            赤
原田(6ピン捨ててのリーチ。普通なら9ピンはほぼ通しやが……)

原田(あの灼っちゅうチビっ娘、ダマテンから切り替えたな……6ピン捨てで
単騎切り替えとは思えん……)

原田(むしろあり得るのは、6・7からの7ピンツモ6ピン捨てか……)

原田(普通なら有り得んが……)

原田「……」タン

原田 打
     
 ┌─┐
 │②│
 │筒│
 └─┘

恒子「セーフ! 原田選手、振り込むのを阻止! 見事読み切りましたー!」

健夜「あれほど暴力的な打ち筋の割に、こういう方面も驚くほど堅いですね……」

健夜「これはどちらかというと、大将の打ち方かもしれません」

新道寺 控え室

僧我「……まあ、確かに西の大将やっとったなぁ。トップは実質ワシやったが」

銀「原田がそれを聞いたら切れると思うぞ、オレ……」

――阿知賀女子学院控え室

晴絵「駄目か……」

晴絵「正直、副将戦に関してなら、白糸台より遙かに厄介かもしれない」

晴絵「でも、隙はある。必ず……!」

灼「……テンパイ」

原田「テンパイ」

千里山と白糸台は共にオリ。流れていよいよ、南一局……!

阿知賀  88100(+1500)
千里山  92900(-1500)
新道寺 120200(+1500)
白糸台  98800(-1500)

南一局0本場

誠子「ロン! 5200!」

浩子「くっ……」

誠子(攻めて、攻めて、攻める……!)

南二局0本場

浩子「ロン! 3900や!」

誠子「……!」

浩子(絶対に食らいつく……!)

きっと決勝の亦野さんこんな感じ

南三局

原田(俺を恐れもせず、立ち向かうか……)

原田(何ちゅう奴や、この世界の女子高生は……ホンマ、オモロいわ)

原田(だが、準決勝なんかで俺は負けん……)

原田(アカギの出番も無くすくらいに、点取ったるわ!)

原田「ツモ! 3000・6000!」

三人「……ッ!!」

恒子「ここに来ての駄目押しいいいいいいいいいいい! これは副将戦、ほぼ勝負あったと
考えていいかー!」

健夜「うーん……あれ?」

恒子「うん? どしたのすこやん」

健夜「いや……何か今……良くない風が吹いたような……」

恒子「……すこやん、文学少女?」

健夜「でもこの風、少し泣いてます……って違うよ!?」

南三局終了時点
阿知賀  82100(0)
千里山  88600(0)
新道寺 132200(0)
白糸台  97100(0)

――新道寺女子高校控え室

僧我「あつっ!? なんや、この茶。めっちゃ熱い……」

ピチャン

煌「すばらっ!? うう、水漏れ? 背中に水滴が……」

銀「うわ!? 開けた窓からカラスが!?」カァーッ!

三人「……」

銀「な、なあ。なんか……なんかさ、嫌な予感しねえか……?」

煌「……」ゾクゾク

僧我「……」ゾク

煌「き、気のせい……ですよね?」

僧我「そ、そうやそうや。気のせいや……た、たぶん、きっと……だよね?」

そして迎えた、副将戦最終戦南四局――!

浩子(配牌はそこそこええな……連荘狙いたいところやけど)タン

原田(ククク……こいつぁ良い)タン

原田(最後も三倍満で締めくくってやるぜ……)

誠子(うん。かなり良い……二つ鳴ければ、ほぼテンパイ……)タン

灼「( ゚д゚)」

灼「( ゚д゚)」

灼「(゚Д゚)」

浩子「……阿知賀の? どないした?」

灼「あ。ご、ごめん」タン

浩子(配牌見て凍り付いとったな。そんなに悪いんか……)

原田(他の連中の迷いのなさを見るからに、悪い牌が全部阿知賀に集まったか……?)

誠子(なら、阿知賀はひとまず置いておこう。注意すべきは、新道寺と千里山……!)

この時、千里山・白糸台の配牌も上々であったが、新道寺・原田の配牌はその上を行った。
そして、五巡目……!

新道寺 原田――手牌
                                                             ツモ
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │②│②│③│③│④│⑤│⑤│⑥│⑦│⑦│⑧│⑧│.9 │ │⑥│
 │筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│索│ │筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘

                        赤  赤
       
         
 ┌──┐

 │.9 索│
 └──┘

原田「リーチ!」

恒子「原田選手のリーチ! これは、勝負決まったかああああ!?」

健夜「ま、まだだよこーこちゃん! って言うか、阿知賀! 阿知賀のほう!」

恒子「え……阿知賀って、確か……」

阿知賀 鷺森灼 配牌
                                                            
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │一│二│九│.2 │.3 │.8 │①│⑨│  │  │  │  │  │ │.2 │
 │萬│萬│萬│索│索│索│筒│筒│東│南│西│北│白│ │索│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘

健夜「阿知賀の鷺森選手……そこから連続して、一九字牌をツモったの」

恒子「げ。ってことは……」

阿知賀 鷺森灼 五巡目手牌

                                                     
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐
 │一│九│①│⑨│.1 │.1 │  │.. │. .│  │  │  │  │
 │萬│萬│筒│筒│索│索│東│南│西│北│白│発│中│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘


原田「……ん?」

新道寺 原田香津美 

                                                            ツモ
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │②│②│③│③│④│⑤│⑤│⑥│⑥│⑦│⑦│⑧│⑧│ │.9 │
 │筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│ │索│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
                       赤  赤

原田(何や、9ソー待ちだったら和了っとったんかい。ま、そんな安い手で和了るなんて
アホらしいっちゃアホらしいが)タン


灼「あ」

お?

恒子「あ」

健夜「あ」

千里山女子高校控え室

怜「あ」

竜華「あ」

セーラ「あ」

泉「あ」


白糸台高校控え室

照「あ」

菫「あ」

尭深「あ」

淡「あ」

俺ら「あ」

阿知賀控え室

穏乃「あ」

玄「あ」

宥「あ」

憧「あ」

晴絵「うそ」

新道寺女子高校控え室

僧我「(  д)    ゚ ゚」

煌「(  д)    ゚ ゚」

銀「(  д)    ゚ ゚」



――ロン 32000点です



新道寺、原田……。
まさかの、役満直撃……!

※AA代理

                  . . -―――- . .
               . : ´: : : : : : : : : : : : : :`: :.
           γ ⌒ヽ -=ニ二代理二ニ=- : : :.\

              〈| ○ |〉斗≧===≦二ニニ{: : :.
            人_  _人: :l^^^^^^^^^^1: : : : : |: : : :.
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            |八乂   \ `ー~ー~'/    八从{
              )ノl\   \ー‐‐/   /}ノ
                 从l \    }   {   イ )ノ
             ‐┬‐┬‐/   /\/l    |ー┬┬ァ=ミ

浩子「」

誠子「」

原田「」

原田「……え? うそ、まじで?」

灼「はい」

ビビーッ!

恒子「えー……副将戦、終了です。その……健夜プロ……なんか、一言……」

健夜「え、えーと……麻雀には、そんな時もあります……か、かな?」

副将戦終了時点

阿知賀 114100(+32000)
千里山  88600(0)
新道寺 100200(-32000)
白糸台  97100(0)

原田「……」

浩子「えーと、お疲れ様でした……ま、まあ原田ちゃんも気ぃ落とさんでな?」

誠子「お疲れ様です。こ、こういう時もあるから頑張ろう、ね?」

灼「お疲れ様でした……ええと、ま、また打とうね?」

原田「……あいつのせいや」

三人「?」

原田「あの池田っちゅうネコ娘のせいやあああああああああああああああ!」

池田(テレビ鑑賞中)「あの一年坊、無茶苦茶理不尽な言いがかりつけてんだし!?」ガビーン


カン!

遅れてすいませんでした。
なお、誠子一年生のエピソードは「むこうぶち」11巻 役者 を参考にさせていただきました。
次で最終回になる、はず。出来るだけ早めに取り掛かります。

乙やでー
なんもかんも池田が悪い

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