財前時子「2月の」クラリス「イベント」 (40)
アイドルマスター シンデレラガールズのSSです。
原案 劇場第126話【海のすれ違い】
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クラリス「失礼いたします。PaP殿はおられますでしょうか?」
財前時子「あら、クラリスじゃない。豚なら外回りよ。
まったくどこでトロトロしているのかしら」
クラリス「ではこちらの事務所で待たせていただきますね」
時子「急ぎならば電話で呼び出しなさい。私の携帯ならば、ボタン一つで繋がるのだから」
クラリス「いえ、けっこうです。季節のイベントで個人的な相談がしたかったものですから」
時子「もう2月だものね。私も楽しみだわ」
クラリス(20)
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財前時子(21)
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クラリス「まあ、財前様もですか」
時子「時子でいいわよ。部門は違っても年は似たようなものだし」
クラリス「毎年、この季節は心が豊かになりますものね。時子様」
時子「だれもが幸せになれるイベントだもの。
そうだ、クラリスは日本に来て長いのかしら? 外国とは文化が違うから何かと大変でしょう」
クラリス「恥ずかしながら、世間知らずな為戸惑う事が多くて。CuP様にも迷惑をかけてばかりです。
ですので本日はPaP殿に相談をと」
時子「それならば私が請け負うわよ」
クラリス「まあ、それは助かります」
時子「いいのよ、どうせこれも暇つぶしだし。
なによりも下僕の不始末は、飼い主である私の面目にかかわるもの」
クラリス「決して不始末などでは。私が勝手に押しかけただけですのに」
時子「必要とされる時にその場に居ない。女を待たせる。
躾けには十分すぎるほどの理由ね」
クラリス「ではお願いいたします時子様。
一つ奇妙な質問をしてもよろしいでしょうか?」
時子「私は寛大よ」
クラリス「イベントの事なのですが。時子様は受け取る側なのでしょうか?
それとも与える側なのでしょうか?」
時子「エックセレント、中々に愉快ね。答えは両方よ」
クラリス「まあ、私はてっきり与える側なのかと」
時子「あらあら時子様のおもちゃになるにはもう少し精進が必要ね、クラリス。
与え受け取る。せっかくのイベントだもの、どちらも楽しめてこそ時子様は輝くのよ」
クラリス「いわゆるそれは倍返し? を狙っているのでしょうか」
時子「倍じゃつまらないわね。私を楽しませるならば10倍返しは必要よ」
クラリス「さすがにそれは酷かと思われます。費用がかさみますので」
時子「金を気にするなんて馬鹿みたい。
退屈を潰せるのだから、私の為に誰もが喜んで応じるべきよ」
クラリス「時子様を飽きさせないとなりますと、御相手はどの様な方なのでしょうか?」
時子「そうね、外国の方へ伝えるには表現が難しいわね。
中身は兎も角、アーノルド・シュワルツネッガーなんかが見た目は近いかもしれないわね」
クラリス「申し訳ありませんが、そちらの方は存じませんもので」
時子「あら、解りやすくしたつもりだったのだけれど。そうね、ならば亜季の言葉を借りるとしましょう。
筋肉モリモリマッチョマン。ビキニパンツの変態よ」
クラリス「筋肉モリモリ」
筋肉
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時子「ステレオタイプな表現だと、金属バットや巨大なフォークみたいなものを軽々と振り回すわね」
クラリス「バット、フォーク……随分と逞しい方なのですね」
バット
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フォーク
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時子「褒める所なんて何もないわよ。
私を本気にさせるには程遠いし、何よりも弱点だらけで惨めなものよ」
クラリス「弱点がおありで」
時子「とても小さな剣士や弓に負けてしまうんだもの。図体だけの木偶の坊よ」
クラリス「小さな方には弱いと」
剣士
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弓
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時子「小さければ剣士どころか鳥にも負けるしまつよ。動物に弱いのね」
クラリス「鳥に負けるのですね。では猫はどうなのでしょうか?」
鳥
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猫
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時子「猫は駄目ね。猫は勝てないわ」
クラリス「そうでしたか。猫は駄目なのですか」
時子「ああ待ちなさい。確かそちらには長靴を履いた猫がいたわね、訂正するわ。
猫にも弱いわね。でも虎や豹は駄目よ、動物でも特に寅は駄目なのだから」
クラリス「猫に弱い。でも虎と豹は駄目、私には違いが分かりません」
猫2
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虎
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豹
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時子「こればかりは相性だもの。無理に理解しないでもいいのよ。
犬にも負けるし、変わり種だと桃にも負けるのだから。そういうものなのよ」
クラリス「犬と桃。やはりこちらも小さいですね」
犬
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桃
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時子「桃に負けるくらいだし、次は蜜柑を試してみるのも楽しそうね。
生憎と手元にないのが残念だけど」
クラリス「蜜柑も弱点。だいぶ理解が深まってまいりました」
蜜柑
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クラリス「ならば大きなトカゲでは如何でしょう? こちらのヒョウですが」
トカゲ
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時子「トカゲは……どうなのかしらね。そちらは分からないけれど」
クラリス「私の見立てではおそらく、日本酒にもめっぽう弱いのではないでしょうか?」
日本酒
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時子「クックック……貴女、目の付け所は良かったようね。ええその通りよ。
日本酒にはめっぽう弱いのよ。これは有名な話だものね」
クラリス「小さな方に弱いとは、とても心優しい方なのですね」
時子「確かに優しいとの評もあるけれど、私に言わせれば青い方はただの馬鹿ね。
独りよがりの優しさなんてただの我儘よ。おかげで赤い方は泣く事になるんだもの」
クラリス「そうは言われますが、御嫌いではないのですよね。
お話によって、時子様がイベントを楽しみになされている事が伝わってまいりました」
時子「私も木の股から生まれたわけではないもの。嗚呼、たのし♪ 早く豚が戻らないかしら」
クラリス「贈る際には何か作法がおありでしょうか?」
時子「何よりもまず大声を出す事ね。皆へ聞こえるようにはっきりと」
クラリス「それは勇気が必要となりますね。特に人前でとなりますと」
時子「こそこそ隠れてやったり、ぼそぼそ口にするのは論外よ。
恥ずかしければ私が先に手本となってあげるわ。その代わりにクラリス、私を称えなさい」
クラリス「ア~ヴェ とき~こ~」
時子「良い響きね、十分よ。流石は本職。
下僕達もこんな風に私の為の讃美歌を用意するべきね」
クラリス「手本となって下さるのでしたら、増えた分を買いに行きませんと」
時子「そんな必要はないわよ。一つしか用意しないなんてことはないもの」
クラリス「ですがそれでは数が足りないのではありませんか? いか程ご用意を」
時子「ざっと21ね。もっと多くても良いれけど、年を取れば自然と準備も増えるし今はこの位ね」
クラリス「そんなにも沢山。確かに事務所の掃除婦の方は40有っても足りないとおっしゃっておりましたが。
どうしましょう、私はまだCuP様への一つしか用意が出来ておりませんのに」
時子「一発必中ならば別に一つでも良い筈よ。
私は10倍返しを楽しみたいから、量を多くしているだけだもの」
クラリス「ではそろそろ本題に入らせていただきますと、包み紙をどうするべきかお知恵を拝借したいのです。
華やかな方が良いものか、落ち着いた色合いが良いものか、迷ってしまいますもので」
時子「包装なんていらないわよ。手掴みで十分ね」
クラリス「そのお言葉は、さすがに受け入れかねます」
時子「そうかしら?
どうせその場で食べるものだし、包むものが無ければ口に入れておけば良いじゃない」
クラリス「一度口に入れたものをお渡ししますのは……。
私、高垣様や輝子さんみたいにはとても振舞えません」
時子「手に持って相手の目の前で、自分の口に含むのよ。 味に自信が無いのかしら?
豚ならば私が涎を垂らせば、舌を伸ばして啜り上げるわよ」
クラリス「となりますと、時子様がご用意なされますのは生なのでしょうか?
今年の流行りは生だと耳に挟みましたが」
生
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時子「生? 生では食べられないもの。幾ら豚の餌であってもきちんと料理はするわよ」
クラリス「失礼いたしました。生とは生クリームと混ぜ合わせたとの意味も含むらしいのです。
腐りやすくなりますが分量は増えますし、口当たりもまろやかで美味しいのですよ」
時子「生クリームとは随分とまた甘ったるいものになりそうね。私は御免だわ」
クラリス「甘い味付けは御嫌いでしたか」
時子「ブランデーを振りかけてバーナーでほんの少しだけあぶる。仕上げに塩を一つまみ、それが最高よ」
クラリス「香り高い大人の味わいとなりますね」
――――
PaP「ただいま戻りました」
時子「貴方、ここへ座りなさい」
PaP「ようこそクラリスさん。お待たせしましたね」
クラリス「時子様にはたいそう良くして頂きました」
時子「そこじゃないわ、さりげなく私の隣に座ろうとしないの。
許可を得るまでは私の目の前で正座なさい」
PaP「クラリスさんお話しは少々お待ちを。御機嫌なご様子ですので」
時子「自分のポジションがわかってないようね。
貴方、今の季節を答えなさい」
PaP「冬ですね」
時子「もう2月なのよ。イベントには少し早いけれど、今日は貴方を幸せな気分にしてあげるわ。
這い蹲って感謝なさい」
PaP「正座はよろしいので?」
時子「ああもう煩いわね。いちいち細かい事を、誰が口を開けと許可をしたのかしら。
まずはそのまま私の隣にお坐りなさい、その方が高さが丁度良いもの」
PaP「……」
時子「いつまで黙っているつもりなの。私が貴方を迎え、隣へ座る許しを与えたのよ。
まずは感謝の言葉を述べるのが当然でしょうに」
PaP「クラリスさん、うちの時子と仲良くして下さってありがとうございます。
扱いにくい娘でしょうが、これからもどうか宜しくお願い致します」
クラリス「こちらこそ、時子様と親しくなれまして良き一時でした」
時子「悪いけれど席を外して貰えるかしら、クラリス。
誰が主人なのかをはっきりさせる為、これから躾が必要になりそうなのよ」
クラリス「ではお約束の件は、また今度となりますね」
時子「それも手間ね。いいわこの場で済ませましょう。
よく見ておきなさい、誰が主人なのか直ぐにはっきりするのだから」
PaP「本当に申し訳ありません、クラリスさん」
時子「だから貴方は立たないでいいのよ。座りなさい、そしてこちらを向いて。
そうその調子、次は心持ち顎を上に向けなさい。良いわよ、そのまま動かないで」
時子「時子様は世界で唯一、今貴方の前にいるのだから!」
PaP「~~~」
時子「~~~ふぅ」
クラリス「///」
時子「福は内よ」
おしまい
投下は以上です。
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