男「やんでれ喫茶?」 (6)

俺はその日、「好きなアニメのイベントがあるから」と友人に連れられ、某オタク街を訪れていた。
しかし、慣れない人混みに惑わされ、気づけばひとり旅に。

電話をしても繋がらなかったので、とにかく人のいない方へいない方へと進む。
ようやく人寂しいところに出たと思えば、そこは先ほど俺と友人の歩いていたところよりも遥かにサブカル臭い通りに出ていた。
何となく、並ぶ店の外装を見ただけで身の回りの湿度が上昇しそうな、そんなところだった。

喉が渇いていたが、自動販売機や手軽なコンビニは見つからない。
足も疲れていたので、目に付いた喫茶店へと入ることにした。

歪んだ看板、剥がれた塗装、枯れた植木鉢。
外から中の見えない構造も合わさって営業しているかどうかは不安だったが、
とりあえず扉に鍵は掛かっていないようだ。

女「いらっしゃい、ませー……」

男(幸の薄そうな店員だな。ひとりだけなのか?)

色白で美人ではあったが、それだけに目下の隈が目立つ。
慎重が低く頼りなさげな印象があるせいか、彼女が店長だとは思えなかった。

女「おひとりさまで?」

男「ああ、はい」

女「お久しぶりですね」

男「えっ?」

女「これ、メニューです」スッ

男(ああ、そういうシュチエーションなのね……そういや、友の奴から聞いたような気がするわ)

女「ふふふっ♪」タッタッタッ


男「にしても、笑顔かわいいな……」

女「…………♪」

男(思ったより、没干渉的なんだな)

男(あれ……あの掛け時計、おかしいぞ)

小麦色に光る、小人の装飾のついたお洒落な掛け時計。
時間が、二時間ほど遅れている。

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