漫「あのどこに行くんですか」末原「教えてほしい?」(181)

   姫松高校麻雀部にて   放課後

洋榎「ローンや!またうちがトップや!」

絹恵「お姉ちゃんさすがやね!」

洋榎「浪速の麻雀クイーンとはうちのことやで!」ドヤッ

漫「うわあ!またうちがラスですかいな!」

由子「漫ちゃんもまだまだなのよー」

洋榎「新主将なんやししっかりせな」

漫「す、すんません……」

由子「久々に麻雀打つのは楽しいのよー」

あの夏の大会から2カ月、すでに姫松は新チームになっていた
新しい主将は上重漫には抜擢された

漫「しかし主将、大学受験のほうは大丈夫なんですか?」ジャラジャラ

洋榎「うちはもう主将やないで!それにうちはもう大学の推薦をもらっとるしな!」

絹恵「お姉ちゃんは学年トップなんやで」

漫「え!そうなんですか!ごっつ意外ですわ」

洋榎「なんやうちのことアホや思ってたんか」

漫「まぁはい……」

洋榎「能ある鷹は爪を隠すんやな」

由子「わたしも推薦でヒロエと一緒の大学に入るのよー」

漫「そうなんですか、そういえば末原先輩はどうなんですか?」

洋榎「恭子は……」

    ガラガラ

末原「失礼します」

漫「あ!末原先輩!」

末原「洋榎と由子、ここで会うのはお久しぶりですね」

洋榎「もう引退しとるしここに来る機会もグッと減ったしなー」

由子「のよー」

末原「主将、今日の調子はどうですか?」

漫「えーっとその……」

末原「……またやられっぱなしやないですか、部のトップなんですしもっとしっかりしてください」

漫「す、すんません……」

絹恵「末原先輩、受験勉強のほうはどうですか?」

末原「まぁぼちぼちと言ったところです」

漫「え!末原先輩推薦やないんですか?!」

末原「ええ、まぁ……」

洋榎「恭子はこう見えて学年じゃ中位やで」

漫「そうなんですか……ごっつ意外ですわ」

末原「すみませんねバカで」

漫「そ、そんなこと言ってないやないですか!ただそんな頭は良くないんやなぁっと」

洋榎「似たようなもんやろ!」

末原「でもそんなことより漫ちゃん特訓です、もう秋の大会はすぐなんですよ」

漫「は、はい……」

絹恵「でも勉強のほうは良いんですか先輩?」

末原「え……」

洋榎「そうやで恭子!勉強せなうちらと同じ大学には入られへんで!」

由子「そうなのよー!わたしも恭子と同じ大学に入りたいのよー」

末原「でも……」

漫「そうですって!うちのことは大丈夫ですから!勉強を頑張ってくださいよ!」

末原「……」

漫(末原先輩の指導は厳しいで……そやし頼むから受験勉強に専念してください……)

末原「べ、勉強なら大丈夫ですよ、家に帰ったあと毎日3時間は勉強してますし……」

洋榎「受験ちゅうのはそんな生半可な勉強で上手くいくもんやないで!寝る間も惜しまな!」

由子「そうなのよー!」

末原「うう……」

漫「愛宕先輩が言うとなんか違和感ありますわ……」

洋榎「ほったら通天閣女子大学に入れなくてええんか!
   このままやとあの代行の母校に通うことになるで!」

末原「嫌です!バカ田大学だけは嫌です!」

洋榎「せやろ、ほな勉強せな」

末原「でも……」

洋榎「デモもパレードもあらへんって、漫の特訓ならうちらにまかせや」

漫「え」

由子「そうなのよー!ビシバシ漫ちゃんを鍛えるのよー」

末原「……」

末原「ハァ……わかりました、帰ります……」

洋榎「それがええで、ほな勉強頑張ってな!」

由子「分からないトコがあったらいつでもアドバイスするのよー

末原「はい……」

    ガラガラ

漫「あ、先輩……」

洋榎「ほいじゃ特訓の続きするでー!」

漫「ぐへぇ……」

絹恵「……」

由子「どうしたのよー絹ちゃん?」

絹恵「あ、いえ……」

洋榎「なんやなんや!もしかして恭子のことが好きなんか~!」

絹恵「ちゃ、ちゃうよ!変なこと言わんといて!」

洋榎「冗談やって、でもどうしたんや?なんか考え込む顔しとったけど」

絹恵「末原先輩のことなんやけどな……」

洋榎「やっぱ好きなんか!」

絹恵「お姉ちゃん!」

漫「話の腰を振るのはやめてくださいよ……」

由子「振るんやなくて折るのよー……」

絹恵「末原先輩、全国大会であんな負け方したやない?」

洋榎「あー、うんそうやな……」

全国大会で姫松高校は決勝に進むも完敗に終わったのだった

絹恵「あのあと末原先輩すごい落ち込んでたやん、負けたのは私の責任ですって……」

洋榎「負けたのは恭子だけの責任やないのにな……」

由子「あの子は全部背負いこみすぎなのよー……」

絹恵「最近はそこそこ元気みたいやけどやっぱ以前と比べて暗いと思うんやな」

洋榎「たしかに教室にいてもなんか上の空やな最近の恭子は」

絹恵「あのときの試合がトラウマになってるんやないかと心配やねん……」

由子「トラウマ……」

絹恵「うん……」

漫「エンジェルスのスーパールーキーですか?」

洋榎「そんなわけあるかい!恭子はそんなやわな奴やないで!」

漫(うちのボケは無視ですか……)

洋榎「うちらは3年間も艱難辛苦をともにしてきたんやで!
   そんなことで壊れる恭子やないと断言できるで」

由子「そ、そうなのよー!」

絹恵「それならええんやけど……」

洋榎「大丈夫やって!いままでお姉ちゃんが嘘吐いたことあるか?」

絹恵「いっぱいあるで」

洋榎「と、とにかく!恭子は大丈夫や!安心してや!ハハハ!」

漫(ホンマに大丈夫やろか……)

  次の日 クラスにて

末原「……」ペラペラ

洋榎「お!恭子!おはヨーグルトや!」

末原「はいはい……」ペラペラ

洋榎「ちょ、ちょっと今日はギャグのキレが悪いみたいやな、キレが悪いのは尿だけで十分や!」

末原「うん……」ペラペラ

由子「さっきからギャグがスベリまくりなのよー」

洋榎「由子!恭子の前でスベるとか言ったらあかんやろ!いまだって勉強中やのに……!」

由子「よおく見てみるのよー、あれ参考書やないよー」

洋榎「え……」チラッ

末原「……」ペラッ

洋榎「『百合神家の一族』……なんやミステリー小説やないか……」

末原「……」ペラッ!

洋榎「恭子っ!!」ドンッ!

末原「わ!わ!わ!なんやなんや!」ガタァッ!

洋榎「なあにやってるんや!勉強はどないした!」

末原「す、すいません……読み始めたら止まらなくて……」

由子「たしかに勉強中は他のことをしちゃいがちなのよー」

洋榎「気持ちは分からんでもないがいまは集中せないかん時期やで、恭子の一生が掛かってるんやで」

末原「たしかにそうですけど……」

洋榎「勉強頑張って通天閣女子に入ろう!そして関西大学麻雀界に旋風巻き起こそうや!」

末原「そうですね」

由子「それとその小説の犯人は百合神家の長男の奥さんよー」

末原「な!!ちょっとなにネタバレしてるんですか!」

洋榎「良かったやん!犯人わかったしこれで勉強に集中できるでー!」

末原「くぅ~……」ギリッ!

洋榎「それとやな恭子、全国で負けたのは恭子のせいやないで」

末原「え……」

由子「そうなのよー、あれは対戦相手が強すぎたのよー」

洋榎「あんな連中うちやって苦戦するで!あいつらは世界クラスのバケモンや!」

末原「洋榎……」

洋榎「そやし恭子が落ち込むことないで、姫松の最高傑作の愛宕洋榎が勝てへんのやししょうがないで!」

由子「そうやし元気だして、落ち込んでる恭子を見るのは辛いねん」

末原「由子……」

洋榎「悲しいときはうちも相談に乗るで~!愛宕電話相談室の開局や!」

由子「頼もしいのよー」

末原「……」

末原(わたしが落ち込んでるのはそういう理由やないんですよ……洋榎由子……)

  廊下にて 放課後

 カツン・・・ カツン・・・

末原「……」

末原(図書室で本を読んでたらこんな時間になってしまいました)

末原(由子にネタバレされたのはショックでしたがまだ『ガチレズの証明』が残ってます
   これだけはネタバレされないように気をつけなければ……)

 カツン・・・ カツン・・・

末原(もう夕方か……)チラッ

時計を見るとすでに時刻は5時を過ぎていた

末原(昨日はああ言われましたがやはり漫ちゃんの特訓に付き合わなければ気が済みません)

末原(まだ残ってくれてればいいですが……)

  ガラガラ

末原「……」

が、しかし、漫たちはもうすでに帰宅したあとだった

末原「もう帰っちゃいましたか……」

末原「……」

末原は部室に入る

末原「もうこの部室ともお別れですね……」

姫松に入学して2年半、ここでの思い出を回想する

末原(初めてレギュラーに選ばれたときは嬉しかったな……
   まさかわたしが名門の姫松高校のレギュラーになれるだなんて夢にも思いませんでした……)

末原は近くにあった雀卓をなでる、いままで末原が流した汗と涙がそこには染みているのだ

末原「寂しくなるな……」

そのとき……!何者かが末原の肩を叩いた……!

末原「だ、誰ですか!」

感傷に浸っていた末原はその人物が教室に入ってくるのに気付かなかった
その人物とは……

赤阪「なに黄昏てるんや~すっえはらちゃ~ん!」

赤阪郁乃だった……

末原「だ、代行!いつの間に!」

赤阪「なに寂しそうにしてるん?優しい優しいいくのんが慰めてあげよか~」

末原「べ、別に寂しくなんかしてません!ほっといてください!」

赤阪「ほっとけないよ~♪末原ちゃんを早く強く抱きしめた~い♪」

末原「用が無いなら帰らせてもらいますよ、では」

赤阪「もうツンツンしすぎやって~、ツンデレキャラやったらたまにはデレなあかんで~」

末原「だ、誰がツンデレキャラですか!そんなキャラになった覚えはありません!」

赤阪「いままでの3年間を思い出してたんか~、まだ卒業までまだまだあるんやで~」

末原「別にこっちの勝手やないですか……」

赤阪「でもたしかに末原ちゃん苦労してたもんな~、いくのんもよく特訓に付き合ってあげたし~」

末原「!!練習に付き合ってくれたのはあなたやなく善野監督です!
   勝手に人の思い出を書き変えないでください!」

赤阪「冗談やって~、ちょっとしたユーモアや~ん」

末原「つまんないですよそれ」

赤阪「いくのんにユーモアはノーモアってか!イヒヒヒヒヒヒヒ!!!」

末原「……」

赤阪「まぁ冗談はここまでや、洋榎ちゃんに聞いたんやけど最近元気無いみたいや~ん」

末原「洋榎たちの勘違いですよ、わたしはいつも通りです」

赤阪「ホンマか~!勉強がキツくてげんなりしてるんちゃうの~ん」

末原「まぁたしかにげんなりはしてますが……」

赤阪「そやし勉強なんかくだらないしもうやめやで~、いくのんの母校のバカ田大学に入ろうや~」

末原「嫌です」

赤阪「うわぁ即答やなぁ、そんないくのんの後輩が嫌なん?」

末原「はい」

赤阪「正直やな~、でも末原ちゃんが元気無い本当の理由、いくのんは知ってるで~」

末原「え、どういうことですか……」

赤阪「あんた上重さんのこと好きなんやろ」

末原「!!」

赤阪「せやろせやろ~!」

末原「な、な、なぜそれを……」

赤阪「あー!やっぱそうやったんや!」

末原「あ!ハメましたね!」

赤阪「人聞きの悪いこと言うのはやめてや~、末原ちゃんが勝手に喋っただけや~ん」

末原「く……」

赤阪「な、末原ちゃんあの子のことが好きなんやろ?レズなんやろ?」

末原「……」

赤阪「黙秘権行使するんかいな、取り調べをやってるんやないんやで~」

末原「……」

赤阪「いくのんな、最初から末原ちゃんが女の子が好きやって知ってたんやで~
   末原ちゃんからそういう匂いがするんや、俗に言う百合の匂いやな」

末原「……」

赤阪「漫ちゃんをレギュラーに推したのもそれやろ?
   引退したのにいまだに麻雀部に顔を出すのはそのせいやろ?」

末原「……」

赤阪「漫ちゃんが好きで好きでたまらんのやろ~?正直に言ってや~」

末原「……」

赤阪「だんまりかいな、ほないまのこと漫ちゃんに報告してくるで~」

末原「!!やめてください!それだけはやめてください!」

赤阪「嫌やで~、漫ちゃんどんな反応するんやろかな~」フラフラフラー

末原「やめてください!」ガシィ!

赤阪「そやったら認めるんやね?漫ちゃんが好きやって」

末原「……はい」

赤阪「素直が一番やで~」

末原「……そんなわたし分かりやすかったですか」

赤阪「一発でわかるで、漫ちゃんを見る目がハツになってたで~」

末原「ハツやと焼き肉やないですか……そこはハートでしょ……」

赤阪「さすが末原ちゃんや~落ち込んでても突っ込むトコは突っ込むんやな~」

末原「漫ちゃんには黙っててください……嫌われたくありませんし……」

赤阪「正直に告白してみたらええや~ん、OK貰えるかもしれへんで~」

末原「無理ですよ……だってわたし女ですよ、気持ち悪がられますよ……」

赤阪「そんなこと無いと思うけどな~」

末原「ハァ……なんで女の子なんか好きになったんやろ……普通の恋愛させてーな……」

赤阪「末原ちゃん」

末原「はい……」

赤阪「漫ちゃんを末原ちゃんのモノにする方法ならひとつだけあるで~」

末原「え……」

末原「あ、あるんですか!漫ちゃんと恋人になれる方法が!」

赤阪「あるで~!いくのんは嘘は吐かないで~」

末原「でもなんか胡散臭いですし……」

赤阪「じゃあこの話は無かったことにしようか」

末原「ちょ、ちょっと待ってください!」

赤阪「どうするんや?イヒヒヒヒ!!」ニヤニヤ

末原「……」

赤阪「いくのんの言う通りにすれば漫ちゃんと結ばれる、断るなら漫ちゃんとは一生他人のままやで」

末原「……」

赤阪「5!4!3!2!……」

末原「お願いします!その方法とやらを教えてください!」

赤阪「OKやで~、じゃあいくのんについてきてや~」

末原「はい……」

次の日、赤阪郁乃と末原恭子がみんなの前から消えた……!

   1週間後  麻雀部部室にて

漫「ロン!!」

洋榎「あ!やってしもた!」

絹恵「お姉ちゃん調子悪いね……」

由子「これで3回連続ラスやね」

洋榎「ホンマ今日はちょーし悪いで……」バリボリ

漫「そこはうちの調子が良いってことにしてくださいよ……」

絹恵「しかし末原先輩はどこに行ったんやろうね……居なくなってもう1週間経つやん……」

由子「代行も消えたのよー」

洋榎「あのオバハンが恭子を連れ回してるんやきっと!こんな大事な時期やのにもう!」

漫「どこにいるんでしょうかねホンマ……」

洋榎「絹はオバハンがどこに行くか聞いてへんか?」

絹恵「たしかカルパチア山脈に行くみたいなこと言うとったけど……」

漫「どこですねんそこ!カルパチアなんて聞いたこと……」

洋榎「おおルーマニアか、なんでまたそんなトコ行ったんやろな」

由子「わたしもいつかブカレストとか行ってみたいのよー」

漫「やっぱお二人とも頭良いんですね……」

由子「さてと、わたしはこのあと用事があるし先に失礼するね」

洋榎「おおそうか、わかったでおつかれ!」

絹恵「お疲れ様ですー」

  ガラガラ

漫「あ!もうすぐ相棒の再放送始まるやん!すんません!お先に失礼します!」ピューン!

    ガラガラ!!

洋榎「ちょ!待たんかい漫!……行ってもうたわ」

洋榎「ふー、なんか今日は疲れたな」

絹恵「もうわたしら二人だけやね」

洋榎「そうやなー」

絹恵(お姉ちゃんと二人きり……)ドキドキ

洋榎「しかし推薦貰ってるしヒマやなぁ、放課後が長く感じるで」

絹恵「そうやね」

洋榎「そうやねって絹はまだまだ2年やん、来年はうちらの分も頑張るんやで!」

絹恵「う、うん!」

洋榎「そうや今日はこのあとオリックスの試合でも見に行こうや!今日は大阪ドームでロッテと試合やで!」

絹恵「ホンマ!行く行く!」

洋榎「ほな行こうか~」

   ガラガラ

赤阪「おまたやで~」

洋榎「あ!オバハン!」

赤阪「久しぶりだね~元気にしてたか~い♪」

絹恵「いったいいままでどこに行ってたんですか!心配したんですよ!」

赤阪「ちょいと旅に出てたんやな~、お土産のペプシやで~」

洋榎「どうせそこのコンビニで買ったやつやろ」

絹恵「そんなことより末原先輩は!末原先輩はどこですか!」

赤阪「絹ちゃんの後におるで~」

絹恵「え!」ピョン!

赤阪「って嘘ぴょ~ん!ちょいとしたユーモアやで~」

洋榎「あんたふざけるのも大概に……!」

赤阪「末原ちゃんならこっちやで~ついてきや~」トコトコ

絹恵「先輩……」

  カツン・・・ カツン・・・ カツン・・・

赤阪「フライデーミッナイブル~♪」トコトコ

絹恵「……」

洋榎「あのオバハンはイマイチ信用できひんな……」ボソボソ

絹恵「しょうがないよ、いまは代行に従おう」ボソボソ

洋榎「あのオバハンを信じるのはちとリスキーやで」ボソボソ

赤阪「なにぶつぶつ言ってるん?いくのんも混ぜてや~」

洋榎「今日の晩飯の献立を相談してたんや!いちいち人ん家のプライベートを覗かんでや!」

赤阪「もうケチやな~、いくのんはからあげが食べたいで~」

絹恵「あ!わたしも!わたしもからあげが食べたい!」

洋榎「絹……」

そうこうしてるうちに赤阪達は姫松高校の旧校舎に来ていた

赤阪「もうすぐ末原ちゃんに会えるで~」

  カツン・・・ カツン・・・ カツン・・・

洋榎「旧校舎なんて初めてくるで……」トコトコ

  カツン・・・ カツン・・・ カツン・・・

絹恵「なんか埃っぽいね……」ケホッ

洋榎「いったいこんなトコで恭子はなにやってるんや……」

赤阪「ここやで~」

  ギギィ・・・

洋榎「なんやここ……」

赤阪が扉を開ける、そこには地下へと伸びる階段があった

赤阪「もういまは使われなくなった図書室みたいやな、この先に末原ちゃんがいるで~」

洋榎「この先に恭子が……」

赤阪「ほな先に行くで~」

  カツン・・・ カツン・・・ カツン・・・

絹恵「お姉ちゃん怖い……」ギュッ

洋榎「大丈夫や!お姉ちゃんがついてる!安心し!」

そして二人は地下室に足を踏み入れたのだった……

洋榎(恭子待っててや!いま助けたるで!)

  カツン・・・ カツン・・・ カツン・・・

 ギギィ・・・

赤阪「開けゴマ~!」

洋榎「恭子!」

絹恵「先輩!」

二人は部屋に勢いよく駆け込む、しかし

洋榎「真っ暗やないか……」

当然地下なので明かりは無い

赤阪「ちょっと待ってや」シュボッ

赤阪が傍らに置いてあった松明に火を灯す

洋榎「洞窟やないんやから……」

絹恵「でもどこにも末原先輩いないね……」

明かりを点け部屋に末原恭子の姿は無かった

洋榎「恭子の奴どこにいるんや……」

赤阪「末原ちゃんならそこにおるで~」

  カツン・・・ カツン・・・ カツン・・・

 ギギィ・・・

赤阪「開けゴマ~!」

洋榎「恭子!」

絹恵「先輩!」

二人は部屋に勢いよく駆け込む、しかし

洋榎「真っ暗やないか……」

当然地下なので明かりは無い

赤阪「ちょっと待ってや」シュボッ

赤阪が傍らに置いてあった松明に火を灯す

洋榎「洞窟やないんやから……」

絹恵「でもどこにも末原先輩いないね……」

明かりを点けて部屋を見回すが末原恭子の姿は無かった

洋榎「恭子の奴どこにいるんや……」

赤阪「末原ちゃんならそこにおるで~」

赤阪が指差した先には大きな棺桶が置いてあった

洋榎「恭子!このオバハン!恭子になにしたんや!」

赤阪「ええからええから、開けてみーや!」

絹恵「先輩大丈夫ですか!」パカッ

すると……

洋榎「な……!」

絹恵「先輩!?」

そこで二人が見たものは……

末原「……」

黒いコートとマントを羽織り、キバが生えた末原の姿だった……!そんな末原が寝ていたのだ……!

絹恵「先輩……」

末原「!!」カッ!

そして……

末原「キシャー!!!」

急に末原が絹恵に襲いかかったのだ……!

  ガブリ!!

絹恵「いやあああああああああ!!!!!!」

末原「!!」ジュルジュル!

洋榎「絹!!」

  チュー!チュー!

絹恵「お姉ちゃあああああああああん!!!!!」ポロポロ

洋榎「なにやってるんや恭子!絹から離れんかい!」グイグイ!

末原「!!」ゴキュゴキュ!

絹恵「あ!あ!あ!あ……」ガクガク

そして……

絹恵「うう……」バタンっ

血を吸い取られた絹恵はその場に倒れ込んだのだ

末原「ごちそうさま」ペロリ

洋榎「き、絹……絹ぅ……」

絹恵「……」

洋榎「恭子!うちの絹になにしてるんや!」

末原「……」

洋榎「絶対に許さん!絶対に許さへんで!」グイッ!

末原「……」

洋榎「なんか言わんかい!」

赤阪「大丈夫やって洋榎ちゃ~ん、落ち着いてや~」

と、そのとき

絹恵「……」ムクッ!

なんと絹恵が立ちあがったのだ

洋榎「絹!大丈夫かいな!」

絹恵「末原先輩……」

洋榎「え……」

絹恵「末原せんぱーい!!」ダキィ!

末原「……」

絹恵「先輩先輩先輩先輩先輩せんぱーい!大好きやもう絶対に離しません!」ダキィ!

洋榎「き、絹ぅ……」ポカーン

絹恵「せんぱ~い!せんぱ~い!」ギュウウウ

末原「相変わらず可愛いですね絹ちゃんは」ナデナデ

赤阪「イヒヒヒヒ……!」

洋榎「ど、どういうことや!いったいこれはどういう……」

赤阪「いまの末原ちゃんに噛みつかれた人はな、末原ちゃんが大好きでたまらなくなるんやで~」

洋榎「何ですて!」

絹恵「先輩大好きです!」メロメロ

赤阪「いまの絹ちゃんは末原ちゃんしか見えないんやな、恋は盲目って言うやつやな~」

洋榎「絹……」

末原「洋榎」ジロリ!

そして

末原「キシャー!!!」

今度は洋榎に襲いかかったのだ……!

  ガブリ!!

洋榎「ギニヤアアアアアアアアアアア!!!!」

末原「!!」ジュルリ!ジュルリ!

洋榎「やめて!やめてや恭子!」

末原「やめません」ゴキュゴキュ

洋榎「ああああ……」

赤阪「イヒヒヒヒ……」

末原「ごちそうさま」ペロリ

洋榎「……」

赤阪「これで洋榎ちゃんも末原ちゃんのモノやな~」

洋榎「!!」ムクッ!

末原「おはよう洋榎」

洋榎「恭子はうちのモノや!!」ダキィ!

絹恵「ちょ!なに言ってるのよお姉ちゃん!先輩はわたしのモノや!」

洋榎「ちゃううちのや!うちのほうが恭子のこと好きやねん!大好きやねん!」

絹恵「先輩から離れてよ!」バン!

洋榎「あ!!」ドテーン!

末原「二人とも喧嘩はやめてください」

絹恵「す、すいません先輩!」

洋榎「う……う……」ヒックヒック

末原「大丈夫ですか?怪我は無いですか?」

洋榎「う、うちのほうが恭子のことが好きなのに……き、絹が……」ポロポロ

末原「泣かないでください」ギュッ

洋榎「あ……」

末原「洋榎に泣き顔は似合いませんよ」

洋榎「恭子……」

絹恵「せんぱぁい……」ヒックヒック

赤阪「イヒヒヒヒヒ!」

絹恵「先輩ごめんなさい!」ダキィ!

末原「絹ちゃん……」

絹恵「わたし自分のことしか考えてへんかった!ごめんなさい!ごめんなさい!」

洋榎「絹……」

末原「嫌いになるわけないじゃないですか」チュッ

絹恵「あ……先輩……あん……」

末原「う…………」

洋榎「恭子……」

絹恵「あうん……先輩激しい……あん……」

末原「激しくなきゃつまらないやないですか、フフフ……」

洋榎「うちにも!うちにもキスしてほしいで!」

洋榎「全部恭子に吸い尽くされたいんや……」

末原「どうしましょうかね」

洋榎「恭子ぉ……」ウルッ

末原「そんな慌てないでください、まだまだ夜は長いんですよ」

赤阪「楽しそうやな二人とも~」

末原「フフフ……」モミモミ

洋榎「あひぃ!そこはあかんて恭子……!」

末原「小さい割には感じやすいみたいですね」モミモミ

洋榎「あぅ///」

赤阪「お楽しみのところ悪いからいくのんは帰るで~」

絹恵「先輩……」トローン

洋榎「恭子……」メロメロ

赤阪「イヒヒヒヒヒ……!」  ギギィ……

・・・

・・・・・・

  次の日  姫松高校麻雀部にて

漫「え!末原先輩が帰ってきたんですか!」

由子「そうなのよー」

漫「そうですか……良かった……」ホッ

由子「でもちょっと様子がおかしいのよね……」

漫「おかしいって……末原先輩がですか?」

由子「恭子だけじゃないのよー、洋榎も絹ちゃんもなんだかおかしくなってるのよー」

漫「愛宕先輩がおかしいのはいつものことですけどたしかに末原先輩と愛宕絹恵さんがおかしいとはちょっと変ですね……」

由子「多分もうすぐ来るのよー」

  ガラガラ

末原「失礼します」

漫「な!先輩?!」

そこで漫が見たものは……

末原「心配かけてすいませんでした、でももう大丈夫です安心してください」

黒づくめのコートにマントを羽織り、大きくなシルクハットをかぶり片手にステッキを握った末原恭子の姿だった……そして……

洋榎「恭子~」ゴロニャーン 

絹恵「せんぱ~い」イチャイチャ

愛宕姉妹を侍らせていたのだった

漫「な……」

由子「ね、すごくおかしいのよー」

漫「たしかに頭おかしいですね……
  なんですかあのセンスのかけらも無いファッションは……」

末原「ハァ……」

洋榎「どうしたん恭子!ため息なんか吐いて……体の調子でも悪いんか?」

末原「低血圧でして朝が弱いんです……」

漫「なに言ってるんですかもう午後3時半ですよ……どんだけ血圧低いんですか……」

由子「そ、そんなことより久々に恭子と麻雀打ちたいのよー!」

漫「よっしゃ!やりまひょか」

末原「漫ちゃん」

漫「なんですか?」

末原「いえやっぱなんでもありません……」

漫「?」

  しばらくして・・・

漫(まさかのうちがトップや!)

末原「……」

漫(久しぶりやから末原先輩も腕が鈍ってるんやろな……しめしめ……)

由子「それポンよー」カチャ

漫「フフンフフン調子がええな~♪」

と、そこで

末原「オープンリーチ」カチャ

なんと末原がオープンリーチをかけたのだ

漫「ちょ!大胆ですね……いままでの先輩からしたら考えられないですね……」

絹恵「先輩、これでいいですか?」スタッ

末原「ロンです」

漫「っておい!」

末原「オープンリーチに振り込むの役満払いですね、これで漫ちゃんをまくってわたしがトップです」

漫「ちょっと待ってくださいよ!なんですかこれは!こんな露骨な振り込み初めてみましたよ!」

絹恵「うるさいなぁ!ええやんこれぐらい!そやったら爆発してみんなトバしたらええやんか!」

漫「んなめちゃくちゃな……」

末原「……」

由子「次いくのよー……」カラカラ

  1時間後

漫「ハァ……」

由子「お疲れ様なのよー……」

漫「なんなんすかあれは……やり方が露骨ですやん……」

洋榎「恭子!恭子!」イチャイチャ  

絹恵「先輩!先輩!」イチャイチャ

末原「……」

漫「しかしすごいイチャイチャしてますね、バカップルですか?」

由子「妬ける?」

漫「別に妬けてませんよ……ただちょっと目ざわりなだけです……」

末原「漫ちゃんちょっと良いですか?」

漫「な、なんですか先輩?」

末原「このあと予定ありますか?7時にちょっと会いたいんですけど」

漫「7時ですか?」

末原「はい」

漫「(とんねるずまでには間に合うか……)別に大丈夫ですよ、なんですか?」

末原「実は漫ちゃんにお願いがあるんです、みんなにはご内密にお願いします」

漫「は、はいわかりました、内緒ですよね」

末原「はい、では」トコトコ

洋榎「恭子!鰻となに話してたんや!」

末原「別になんでもないですよ、他愛の無い話です」

絹恵「わたしらと穴子のどっちが大事なんですか!」

末原「みんな大事ですよ!ハハハハ!」

漫(話ってなんやろうな……)

  数時間後・・・

末原「あかん!遅れてしもうた!」

  スタタタタタタタタタッ!

末原(洋榎と絹ちゃんを落ち着かせるのに時間が掛かってしまいました!)

末原(もう時間は7時半!漫ちゃんはまだ待っててくれてるでしょうか!)

末原「急がねば!」

   スタタタタタタタタッ!

末原「ハァハァハァハァ……」

末原(血が……漫ちゃんの血が欲しい……)

末原恭子の本命は上重漫である
たとえ愛宕姉妹をモノにしたところでそのココロは満たされないのであった

末原「あ!」

漫「……」

末原ノシ「(待っててくれたんですね!)漫ちゃーん!!」

漫ノシ「あ、せんぱーい」

末原「す、すいません遅れてしまいました……」ハァハァ

漫「別にかまいませんよ、ずっとラジオ聞いてましたし」ガガーピピー

末原「そうですか……(ハァハァ漫ちゃんのおデコ……)」

漫「それで話とはなんですか?」

末原「そ、そうでしたね!実はこれを漫ちゃんに渡したかったんです」ガサゴソ

漫「これは……」

末原が渡したのは薄汚れた麻雀牌だった

末原「これは代々姫松高校の主将が受け継いでいる麻雀牌です」

漫「こんなものがあったんですか……」

末原「これは姫松高校が大正8年に初めて全国を制したときの麻雀牌です
   この牌にはいままでの先輩達の思いがしみ込んでいるんですよ」

漫「う、うちがこんな大切なモンを受け継いでもええんですか?」

末原「もちろんです、なんてったってあなたは姫松高校麻雀部の主将なんですから」

漫「ありがとうございます!うちめっちゃ嬉しいです!」

末原(ホントは家の倉庫に転がってたやつを持ってきただけやけどな)

漫「でもなんで末原先輩が持ってたんですか?主将は愛宕先輩ですよね」

末原「そ、それはあれやな、洋榎はガサツやから私が預かってたんですよ!」

漫「そうですか、納得!」

末原「……」

漫「うわぁすごいで……歴史が詰まってるで……」キャッキャッ

末原(漫ちゃんのうなじ……ハァハァ……)

漫「ぜったい次の大会は優勝するんや……!清澄なんてちょいちょいのちょいや!」

末原(血が……血が……)

末原「漫ちゃーん!キシャー!!!!」

漫「ん?なんですか先輩?」

末原「う!!!!!!!」

そのとき末原に電流走るっ・・・・・・!

末原「かはっ!かはっ!」ジタバタ

漫「ど、どうしたんですか先輩!」ガシッ!

末原「うぐぅぅぅぅ!!!」

漫に近づいた瞬間、末原が苦しみだしたのだ!

末原(なんやこれは……!苦しい!苦しいぃぃ!!)

末原「かはっ!かはっ!」

漫「た、大変や!レスキュー呼びますんで待っててください!」

末原「救急車はダメや!」

漫「で、でも……」

末原(いったいどうしたんや……!)

末原「かはっ!かはっ!」

末原「ううう……」

漫「大丈夫ですか!大丈夫ですか先輩!」

末原「ううう!!!」

漫が末原に近づいたとき、末原気づく……!

末原(臭っ!なんやこれ!……は!)

漫「先輩!先輩!」

末原(ニンニクや!この臭いはニンニクや!!)

末原「漫ちゃん……ニンニク食ったんか……」

漫「えへへ、すんません、さっき近くでガーリックたこ焼き食べたんですわ」

末原「なんやガーリックたこ焼きって!かはっ!」

漫「意外と美味いですよ、末原先輩も食べます?」

末原「要らんわ!わたしは醤油味しか食べないんです!」

漫「そうですか……ハァ……」

末原「うぐぅ!!ため息吐かんといてや!」ジタバタ

漫「すんませんん臭かったですか……」

末原「いや別にええんやけどね、ハハハ……」

漫「今度からちゃんとブレスケアしますわ」

末原「(そーゆー問題やないんだけどな……)ほな私は帰りますね……」

漫「麻雀牌ありがとうございました!」ペコーン!

末原「ハァハァ……」

  スタタタタタッ!

末原(ニンニク食ってくるとは思わんかった……死ぬかと思いました……)

末原「ハァ……」

末原(結局失敗やったな……)

末原「ハァ……」トボトボ

  カツン・・・ カツン・・・ カツン・・・

末原「ハァハァ……」

末原(血が……血が欲しい……)

末原「ハァ……ハァ……」

漫の血が飲めるとばかり思っていた末原
まさかの事態によりいっそう喉の渇きを感じていた

末原「ハァハァ……」

末原(誰でも良い……若い女の血が欲しい……)

と、そこに……

由子「ふふ~ん♪」

末原(由子!由子やないか!)

由子「のよ~ん♪」

末原(よし……!)

末原は背後からそっと近づき、そして

末原「キシャー!!!」

由子に襲いかかったのだ……!

  ガブリ!!

由子「うぅん!!」

末原「!!」ジュルジュル

由子「なに!なんなのよー!やめて!やめて!!」

末原「!!」ゴキュゴキュ

由子「あああああ……」フラフラ

末原「……」チューチュー

由子「あう……」バタン

末原「ごちそうさま」ペロリ

由子「……」

末原「……」

由子「!!」ムクッ

末原「由子……」

由子「恭子……」トローン

  末原恭子の部屋にて

由子「ここが恭子の部屋なのね」

末原「そうです」

由子「意外と可愛らしいのよー、お人形なんかあるし」

末原「私だって女の子ですからね」

由子「恭子……」ギュッ

末原「ん……」

由子「あん……ん……」

末原「フフフ、意外と積極的ですね」

由子「だって恭子のことが好きやもん……」

末原「私も由子のこと好きですよ」ガブッ

由子「あ……」

末原「!!」チューチュー

由子「あう///」

末原「では電気消しますよ」

由子「ちょ、ちょっと待って!」

末原「どうしましたか?」

由子「真っ暗なのは怖いのよー……」

末原「由子は暗いのが嫌いなんですか」

由子「うん……明かりを点けて抱き合おうよー……」

末原「大丈夫ですよ……」ギュッ

由子「あ……」

末原「ずっと手を握っててあげますから……安心してください……」

由子「うん……」

末原「じゃあ消しますよ……」

由子「うん……」

  カチャ

・・・

・・・・・・

  次の日 姫松高校麻雀部にて

漫「……」

洋榎「恭子!あーんやで!」

末原「あーん」

絹恵「えい!」パクッ!

洋榎「ああうちが恭子のために作った玉子焼きが……!」

絹恵「おいしー!」モグモグ

洋榎「そんな……」シュン

由子「恭子、あーん」

末原「あーん、パクッ、うんうん、なかなかイケますね」モグモグ

由子「喜んでもらえてうれしいのよー」ウキウキ

洋榎「由子だけ恭子の膝に乗れるなんてズルい!次はうちの番やで!」プンスコ!

絹恵「違う!次はわたしやもんね!」プンスコ!

漫(なにがどうなってるんや……)

  ざわ・・・ざわ・・・ざわ・・・

部員1「最近末原先輩おかしくない?」

部員2「なんだかわからないけど女ジゴロって感じやな」

部員3「女ったらしかいな」

 ざわ・・・ ざわ・・・ ざわ・・・

漫「あの末原先輩……あんまみんなのまえでイチャイチャするのは控えたほうが……」

洋榎「なんか文句あるんか!」ギロリ!

漫「いえ別に……」

絹恵「見せつけちゃいましょうみんなに!」

由子「そうなのよー!」

末原「フフフ……」

  トイレの洗面台にて

漫「ハァ……」

漫(何なんやろうな最近の末原先輩は……愛宕先輩たちとイチャイチャ……)

漫(しかも今日は真瀬先輩まで……)

漫「いったいなにがあったんや……」バシャバシャ

   バシャーバシャー!

漫「ふぅ!顔を洗ってすっきりや!」

末原「漫ちゃん」

漫「うわぁ!末原先輩いつの間に!」

末原「驚きすぎやないですか」

漫「す、すんません……」ハァハァ

末原「ハァ……」クラッ

漫「だ、大丈夫ですか先輩!やっぱ体調が……!」

末原「いえ、ただ低血圧で朝がダメなだけです……(やっぱ夜やないと力がでーへん……)」

漫「最近なんかおかしいですよ先輩!やっぱ病院に行きましょうよ!」

末原「いえ大丈夫です、それより漫ちゃんちょっと良いですかね」

漫「な、なんでしょうか」

末原「実は今晩漫ちゃんと食事に行きたいのです」

漫「食事ですか?」

末原「はい」

漫「でもうちお金持ってへんし勝手に外食したらおとんに……」

末原「もちろん私のおごりですから安心してください」

漫「ホンマですか!!おおきに!ゴチになります!」

末原「では今夜の7時に学校の前で待っててください」

漫「でも急にどうしたんですか?なんでまた食事なんかを……」

末原「主将に抜擢されたもんやしなにかと気苦労が多いと思いましてね
   だから漫ちゃんに美味しいモノを食べてココロを癒してもらいたんです」

漫「先輩……」

末原「では7時に会いましょう」

  そして数時間後・・・・・・

末原「ふぅ……」ゴキュゴキュ

末原はトマトジュースの罐をゴミ箱に放る

末原「やっぱトマトジュースは罐に限りますね」

この日は洋榎たちを上手く説得し、余裕を持って漫のもとへと行けるのだった

末原(食事に誘ったんですからガーリックたこ焼きは食べないハズです
   これでニンニクの心配はなさそうですね)

末原「漫ちゃんの血……」ゴクリ

しばらく歩くと……

漫「……」

末原(漫ちゃんや!)

遠くのほうに漫の姿が見えた

末原(まだ私に気付いてへんね……)ソローリソローリ!

漫「……」

末原「漫ちゃーん!キシャーー!!!」

おごる気なんて毛頭ない……いきなり末原は漫に襲いかかった……!

末原「漫ちゃーん!!」サササッ!

漫「え?」

漫が振りむいた瞬間……

末原「な!!!!」

ふたたび末原に電流走るっ……!!

末原「かはっ!かはっ!かはっ!」ジタバタ

漫「ど、どうしたんですか先輩!」ガシッ!

末原「あががががが!!!」

漫に近づいた瞬間、末原が苦しみだしたのだ!

末原(またかいな……!苦しい!苦しいぃぃぃぃぃ!!)

末原「かはっ!かはっ!かはっ!」

漫「た、大変や!!レスキュー呼びますんで待っててください!!」

末原「救急車はダメやぁ!」

漫「で、でも……」

末原「かはっ!かはっ!かはっ!」

末原「うぐうぐ……」

漫「大丈夫ですか!!大丈夫ですか先輩!!」

末原「うううううう!!!!!」

漫が末原に近づいたとき、末原気づく……!

末原(なんや!あのデコに描いてるあの絵はなんや!)

漫「先輩!先輩!」

末原「漫ちゃん……そのデコの絵はなんや?」

漫「絵?ああそうやった!消し忘れてました!」

末原「な、何なんやそれ?」

漫「同級生にやられたんですわ、『漫はマイナスばかりやからプラスになり!』って」

漫のデコに描かれていたのは+マーク、つまり……!

末原(十字架や……)ケホッ

漫「先輩!先輩!」

末原「ごめん漫ちゃん……ちょっと調子が悪い……帰るわ……」

漫「先輩……」

末原「ごめんねおごれなくて……」

漫「別に全然かまいませんって!先輩の体調のほうが大事ですから!」

末原「漫ちゃん……そうやお金だけでも……」

漫「良いですって!先輩と一緒やなきゃ意味無いですから!」

末原「漫ちゃん……!」

漫「ほなうちは帰りますね!はよ帰って落書きを消さな……」

  スタタタタタッ!

末原「……」

結局この日も失敗に終わったのだった……

 トボトボトボ・・・・・・

末原「はぁ……漫ちゃん……漫ちゃん……」

末原(また失敗や……まさかデコに十字架を描いてるなんて夢にも思いませんでした……)

 トボトボトボ・・・・・・

末原「ハァ……」

末原(もしかして私は一生漫ちゃんと結ばれることが出来ない運命なんやろうか……)

末原「きっとそうや……嫌やそんなん……」ポロポロ

 トボトボトボ・・・・・・

末原「ハァ……ハァ……血が……血が欲しい……」

昨日に続き、喉の渇きで末原は狂いそうだった……!

末原「ハァ……ハァ……」

獲物を求め、末原は再び夜の街を彷徨うのであった……

  次の日  姫松高校控室にて

漫「……」

洋榎「恭子はうちのもんやもん!」ポロポロ

船久保「独り占めにするのはダメやで!恭子ちゃんはみんなのもんや!」

由子「でも一番恭子のことを愛してるのはわたしなのよー」チュッチュッ!

絹恵「あ!この泥棒猫!わたしより先に先輩にチューするなんて!」

由子「昨日いっぱいしてたからいいじゃないのよー!」

洋榎「ううう……」ヒックヒック

船久保「ああもう早く帰って愛し合おうや恭子ちゃ~ん、昨日のだけじゃ物足りひんって」

末原「はぁ……(やっぱ日が出てるうちは力が出ない……)」

漫「ますます悪くなってますやん……てか一人変なのおるし……」

  ざわ・・・ざわ・・・ざわ・・・

部員1「まーたイチャイチャしてるよ!」

部員2「ああもうイライラするよ!」

部員3「ムキー!」

 ざわ・・・ ざわ・・・ ざわ・・・

漫「あの末原先輩……やっぱみんなのまえでイチャイチャするのは控えたほうが……」

洋榎「漫ちゃんは黙ってて!」ギロリ!

漫「すんません……」

絹恵「どんどん見せつけちゃいましょうみんなに!」

由子「そうなのよー!」

船久保「恭子ちゃん最高やわ~」

末原「フフフ……」

  トイレの洗面台にて

漫「ハァ……」

漫(またイチャイチャ……何なんやろいったい……)

漫(しかも今日は千里山のオバQ……やなかったフナQまでいるやん……)

漫「いったいなにがあったんや……」バシャバシャ

   バシャーバシャー!

漫「ふぅ!顔を洗ってめっちゃすっきりや!」

部員4「あの上重さんちょっと良いかしら」

漫「うわっ!いつの間にいたんや!」

部員4「そこまでビックリするほど?」

漫「いや……うちが大げさやったな……」

部員4「実はあなたの口から末原さんに言ってほしいのよ」

漫「な、なにをや?部費をもっとあげてやー?とかかいな?ハハハ……」

部員4「ふざけないで!こっちは真剣なのよ!」

漫「す、すんません……」

部員4「最近の末原さんの態度は目にあまります!どうにかしてあの乱痴気騒ぎをやめさせてください!」

漫「乱痴気騒ぎって……」

部員4「あれのせいでみんなが集中出来ないんです!主将の口からビシっと言ってやってください!」

漫「は、はぁ……分かったで……」

部員4「ではお願いしますね」トコトコ

漫「ハァ……」

  そして放課後・・・ 部室にて

漫「……」

  ガラガラ

末原「……」

漫「あ、先輩……」

末原「なんですか用って」

漫「あの実はですね……」

末原「……」

漫「あの……」

末原「早くしてください、こっちは体が重いから早く帰りたいんです……」

漫「じゃあ単刀直入に言いますけど、あの愛宕先輩たちを侍らせるのやめてもらえませんかね……」

末原「……」

漫「苦情が出てるんですよ、あんなにイチャイチャされちゃ練習に集中出来ないって」

末原「別に誰とベタベタしようがこっちの勝手でしょう」

漫「いやいやチームの士気にかかわるんですわ、もうすぐ秋の大会も始まりますしね」

末原「たしかにそうですが……」

漫「このままやと関西大会にも出場出来ませんよ……」

末原「……」

漫「頼みますから部室でイチャイチャするのはやめてください!したいのなら余所でやってください!」

末原「そうですか……」

漫「それに……」

末原「それに?」

漫「うちやってあんなみっともない末原先輩を見たくないんですよ……」

末原「漫ちゃん……」

漫「もっと先輩は以前のようにシャキッとしててほしいんですよ……」

末原「……は!」

そのとき末原は気付いた……!

漫「うちはあのシャンとした末原先輩が好きやったんですよ」

末原「……」

部屋のカーテンはすべて締められていた、そして太陽が沈みかけで部屋はさっきより暗くなっていた

末原「ハァ……ハァ……」

漫「いまのふぬけた先輩は嫌です……まえの末原先輩に戻ってください……」

末原「血……漫ちゃんの血……」

漫「まえのかっこ良かった先輩に……」

末原「漫ちゃーん!キシャーーーー!!!!!」

    ガブリ!!

漫「え……」

末原「漫ちゃん!!漫ちゃん!!」ジュルリジュルリ

漫「そんなけったいな……急になるするんですか……」

末原「漫ちゃん!漫ちゃん!」ゴキュゴキュ!

漫「そんな先輩……なぜ……」

末原「漫ちゃん!漫ちゃん!」ポロポロ

漫の血を吸ってると自然に涙がポロポロ落ちて来た
それほどいまの末原は満たされた気分なのだった

末原「漫ちゃん!漫ちゃん!」チューチュー

漫「あああ……先輩……」

漫の意識が飛びかけた……そのとき……!!

末原「ううう!!!!!!」

三度末原に電流走るっ……!!

末原「かはっ!かはっ!かはっ!かはっ!」

末原「がががががが!!」

末原(なんやこれは!の、喉が焼ける!)

漫「ううう……」クラクラ

末原「かはっ!かはっ!かはっ!かはっ!」

漫「せ、先輩大丈夫ですか……」フラフラ

末原「苦しい!!苦しいよおおおおお!!!!」ジタバタ

漫「い、いまレスキューを呼びますね……」フラフラ

???「その必要は無いわ!」

漫「誰や!」

漫は声のしたほうを見る、そこには……

善野「久しぶりね、上重さん」

なんとそこに善野監督が立っていたのだ……!

漫「善野監督?!なんでここに!」

善野「そんなことはどうでもいいのよ」

末原「かはっ!かはっ!苦しい!」

漫「あ!あの!末原先輩が急に苦しみだしたんです!助けてください!」

善野「大丈夫よ、死にはしないから」

末原「ううう……!!」ボロボロ

漫「でもなんで急に苦しみだしたんでしょうか……」

善野「それはね上重さん、あなたの血を吸ったからよ!」

漫「何ですて!」

末原「うぐぐぐぐぐ!!」

漫「なんで血が原因なんですか!うちの血ってドロドロなんですか?!」

善野「なんでかと言うとね……」

漫「はい……」ゴクリ

善野「鰻の血には毒が入ってるからよ!」ジャジャーン!

漫「うち鰻ちゃいますって!!!」

末原「うううう……!!」ジタバタ

善野「血に毒が入ってるから鰻は刺身では食べられないの、これマメ知識よ」

漫「だからうち鰻ちゃいますって!!に・ん・げ・ん!!!」

末原「助けて……!助けて……」

漫「そんなことより善野監督!お願いします!末原先輩を助けてあげてください!」

善野「そのまえにね上重さんに言っておきたいことがるの、いまの末原さんはね、ドラキュラなの」

漫「え!末原先輩がドラキュラ?!」

末原「違う!ヴァンパイアや!」

漫「どっちでも一緒ですやん!な、なんで末原先輩がドラキュラなんかに……」

善野「それはね……」チラッ

赤坂「うううう……」ヘナヘナ

善野「この人のせいなのよ」

漫「代行……!!」ギリッ!

赤坂「堪忍な~……」

漫「いったいどうすれば……」

善野「漫ちゃん!いますぐカーテンを開けるのです!」

漫「は、はい!」シャシャシャシャー!

漫は勢いよくカーテンを開ける、すると……

末原「うわああああああああああ!!!!」

末原が苦しみだしたのだ……!

漫「そうや!ドラキュラは太陽の光が嫌いなんやったな!」

末原「ヴァンパイアやああああああああ!!!!」ジタバタ

善野「それとこれや!」バシィ!

漫「こ、これは……」

それはキラキラと輝くロザリオだった

善野「それを末原さんの胸に押しつけるんや!」

漫「先輩……」

末原「うううううう……」

漫「またまえの先輩に戻ってください!お願いします!」

 ギュウウウウウウウウウ!!!!

末原「うわああああああああ!!熱い!熱いいいいいいいい!!!」

漫「先輩……!」ポロポロ

末原「ピェエエエエエエ!!!!」シューシュー

漫「先輩!先輩!」ボロボロ

末原「ギニヤアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」シューシュー

そして部屋はケムリに包まれた

漫「先輩……」

末原「漫ちゃん……」

漫「先輩!大丈夫ですか先輩!」

末原「漫ちゃん……漫ちゃん……」

末原の口を見ると牙が無くなっていた
そう末原は人間に戻ったのだ……!

漫「先輩!」ダキィ!

末原「心配かけてすいません……」ポロポロ

漫「別に先輩は悪くありません!悪いのは全部代行です!」

赤坂「な、なにを言うてるんや……末原ちゃんがお願いしたから……」

善野「ふん!!」ドゴム!

赤坂「かはっ……めっちゃ元気やないか……」バタン

漫「なんでドラキュラになろうと思ったんですか」

末原「ヴァンパイアや……漫ちゃんに振り向いて欲しかったや……」

漫「う、うちにですか?!」

末原「そうや……私な……漫ちゃんのことが好きなんや……」

漫「え……」

末原「気持ち悪いやろ……」

漫「いえそんなことは……」

末原「無理せんでもええねん、普通変やろ、女が女を好きになるなんて」

漫「……」

末原「ごめんな漫ちゃん……」

漫「……なんで謝るんですか、うちやって末原先輩のこと大好きですよ!!」

末原「え……」

末原「いまなんて言いましたか……」

漫「末原先輩が好きです!大好きなんです!」

末原「漫ちゃん!」ダキィ!

漫「先輩……」

末原「漫ちゃん!漫ちゃん!」ポロポロ

漫「別に代行に頼らなくて良かったですやん
  うちやったら正攻法でもOKでしたで」

末原「漫ちゃん……漫ちゃん……」グジュグジュ

善野「青春やな」

赤坂「なんやねんこれ……」

こうして末原の想いは漫に届いたのだった……!

  帰り道にて

末原「ハァ……」

漫「血が欲しいですか?」

末原「なに言うてるんですか漫ちゃん!私はもう人間です!」

漫「ハハハそうですか、あとうちも鰻やなくて人間ですんで……」

末原「そうだいまからなにか食べに行きませんか?おごりますよ」

漫「ホンマでっか!おおきに!末原先輩大好きや!」

末原「フフフ、そうだ手を握りましょう」ギュッ

漫「あ、なんか恋人同士みたいですね///」

末原「こ、恋人同士やないですかもう……」テレテレ

漫「ほな行きまひょか!うち行きたい焼き鳥屋ありますねん!
  このまえ酒場放浪記で見たんですがめっちゃ美味そうな店なんですよ!」

末原「焼き鳥ですか良いですね!行きましょう!」

絹恵「末原先輩……!」

末原「あ!」

洋榎「なにやってるの恭子……」

由子「浮気は許さないのよー……!!」

船久保「ウナギ……!」ギロリ!

漫「だから鰻ちゃうわ!!」

絹恵「裏切りや……これは裏切りや……!」

末原「と、取りあえず落ち着こうや!落ち着いて話せばわかります!」

洋榎「やかましいわ!!」

由子「全部わたしを飲み干してほしいのよー!」

船久保「うちらをボロボロにしてやー!」

末原「ひぃぃぃ!!!」スタタタタタタっ!!

漫「せんぱーい!!!」スタタタタタッ!!

洋榎・絹恵「「またんかーい!!!」」由子・船久保

まだまだこれからも問題山積みな末原恭子なのであった・・・・・・

      漫「あのどこに行くんですか」末原「教えてほしい?」     カン

以上です
読んでくれた人&猿を報告してくた人&さるよけのひとサンキュー

↓一応元ネタ
http://www.youtube.com/watch?v=c-p-RooRWbw

寝るお

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom