春香「真冬の夜は暖かくて」(77)
春香「お疲れ様でした!」
(バタン)
春香「ふぅ、遅くなっちゃったなぁ……早く帰らないと」
春香「うぅっ、寒いなぁ。もうちょっと着込んでくればよかったかな……」
春香「……クリスマス、かぁ」
春香「あ、今日は星がすごく綺麗。えへへ、届かないかな……んっしょっと!」
(ググッ)
春香「んー……うー、背伸びしても届かないよ……」
(ズルッ)
春香「わきゃっ!?」
(ドテッ)
春香「いたたたぁ……」
春香「はぁ。サンタさんって、いないのかなぁ……サンタさん、春香さんはこの一年、いい子にしてましたよー」
春香「サンタさーん……クリスマスも返上でお仕事してましたよぉ……」
春香「……うぅ、何やってるんだろう私。こんなのプロデューサーさんに見られたら笑われちゃうよ……」
春香「起きなきゃ……地面冷たい……」
(スクッ)
春香「終電も近いし、急がなきゃ……」
(タッタッタッ)
『えー、間もなく、……方面行最終電車が参ります』
春香「危なかったぁ……何とか間に合った」
(プァンッ)
(ガタンゴトン)
春香「ひゃわっ! か、風が冷たいよ……いい事ないなぁ……」
春香「早く電車に乗ってあったまろっと……」
(プシュゥー)
春香「えへへ、車内はほっかほか」
春香「誰も乗ってないなぁ……クリスマスの夜は、みんなお楽しみなのかな」
春香「どうせだから、車両の端から端まで歩いてみよっと!」
(テクテクテク)
春香「……本当にほとんど人が居ない……」
春香「うぅ、ますます一人ぼっち感が凄いよ……」
春香「でも、みんな疲れてるのかな。あそこに座ってる人も、寝ちゃって……」
春香「……って、あれ? あの人…………」
P「……Zzzz」
春香「プロデューサーさーん?」
P「……Zzzz」
春香「起きてくださーい」
(ペチペチ)
P「う、うぅ……や、やめろ……伊織……そんな札束で叩かれても、馬には……」
春香「どんな夢を見てるんですか……」
春香「お客さーん、終点ですよー?」
P「へっ?! あわっ!?」
春香「わっ!?」
P「えっ、あっ、すみませっ……って、春香か」
春香「ぐっすりでしたね、プロデューサーさん」
P「あれ、お前と一緒にいたっけか……?」
春香「違いますよ。帰ろうと思って電車に乗ったら、たまたまプロデューサーさんが居たんです」
P「そうだよな、今日は伊織の付き添い行ってそのまま事務所に……って、今どこだ!?」
春香「もう事務所はとっくに過ぎちゃいましたよ」
P「やっちまったなぁ……折り返さないと……って、確かこの電車」
春香「はい。反対方面も終電終わってますよ」
P「うわぁ……」
春香「どなたかと約束でもあったんですか?」
P「いや、事務作業をやろうと思っててな」
春香「え……今からですか!?」
P「あはは、仕事くらいしかやることがね」
春香「そんな……クリスマスの夜くらい、ゆっくりすれば……」
P「独り身は退屈なのさ」
春香「そう、ですか……」
P「しかし、しくじったな……適当なとこで降りてタクシー捕まえないと」
春香「でも、プロデューサーさんの家って……の方ですよね? 結構距離が……」
P「うぐ……経費でも落ちないだろうしなぁ……。まぁ、勉強と思えば」
春香「勿体ないですよ! 万は行っちゃいますよ?」
P「だ、だよな……。うーん……こっちの方って満喫とかあるか?」
春香「少なくとも私は知らないですね」
P「Oh...」
春香(…………)
P「ファーストフードか、ファミレスかなんかで始発待ちかな……」
春香「あ、あの、プロデューサーさん」
P「ん?」
春香「でしたら、その……」
春香「朝まで、一緒にお話しでもしませんか?」
P「そんな気を遣わなくてもいいよ。親御さんも心配するし、早く帰れ」
春香「今日は両親とも帰ってこないですから……それに」
P「?」
春香「あの……私が、プロデューサーさんとお話ししたくて。最近、二人で話す機会って、ありませんでしたから……」
P「あー、そういえばこんなに話すの、久しぶりな気はするな」
春香「そ、それにその、お金、勿体ないじゃないですか! 一万円もあればいろんなもの買えるしっ!」
P「ええと……」
春香「えと……め、迷惑、ですよね、すみません……」
P「……あはは、そんなに慌てながら視線を泳がせるなよ。三回くらいののワになってたぞ」
春香「のワの」
P「春香、明日のスケジュールは?」
春香「が、学校は冬休みですし、お仕事もオフです」
P「そっか。じゃ、お言葉に甘えるとするかな」
春香「! は、はいっ!」
(プシュゥー)
『お忘れ物の無いように……』
(ヒュウウウウウウウ)
春香「うぅ、暖房車から降りたくない……」
P「覚悟を決めろ。電車の中で一晩明かすか?」
春香「それがいいですよぉ」
P「じゃあお疲れさん。俺は降りるんで」
春香「ま、待ってください! 冗談ですから!!」
P「仕方ないなぁ。……ほら」
(ファサッ)
春香「あ……」
P「流石にコート羽織れば暖かいだろ」
春香「は、はい……えへへ、いい匂いがする……」
P「いい匂い? 香水とかは付けてないけどなぁ」
春香「えへへ……」
春香「プロデューサーさん! 地元ですよ、地元っ!」
P「へぇ、ここが春香の地元か。こうして電車で来るのは初めてだな」
春香「いい街ですよ」
P「ああ、そんな気がするよ。春香みたいな子が育つんだもんな」
春香「い、行きましょう、プロデューサーさん!」
P「よしきた。行先の目星はついてるのか?」
春香「はいっ、あっちの方にいいところが」
P「ならそこでいいか。案内頼むよ」
春香「お任せくださいっ!」
P「テンション上がりすぎて転ばないようにな」
春香「い、いくら私でもそんなこと……ひゃわわっ!?」
(ドンガラガッシャーン!)
春香「いたた……」
P「言わんこっちゃない……」
P「怪我してないか?」
春香「だ、大丈夫です」
P「うん、良かった良かった」
春香(…………)
P「春香?」
春香「あっ、いえ、なんでもないです!」
(スクッ)
春香「い、行きましょう!」
P「お、おう。やけに気合が入ってるな……」
春香「……き、気のせい、ですよ」
春香(……ちゃ、チャンスだよね、これって)
(テクテクテクテク)
P「今夜は星が綺麗だなぁ」
春香「すっごく綺麗ですよね。まるで、この前の事務所みたいです」
P「ああ、真美が貴音の金平糖を零した時か」
春香「四条さんは怒ってましたけど、内心、あんな星空見たいなぁとか思っちゃいました」
P「俺も似たようなこと考えてたよ」
春香「プロデューサーさんもですか?」
P「金平糖が集まってるとこ見ながら……この辺りが天の川かなぁとか」
春香「それであの時、プロデューサーさんぼーっとしてたんですか」
P「え? まぁぼーっとしてた気もするけど……よくそんなの覚えてたな、というか見てたな」
春香「えっ?! い、いえ、それはその……あの、えっと」
P「何を慌ててるんだお前は」
春香「な、なんでもないです!」
(テクテクテク…)
P「……」
(テクテクテク…)
P「あのぉ、天海さん」
春香「なんですか?」
(テクテクテク…)
P「気のせいかな、住宅地に入ってきてる気がするんだけど」
春香「こっちの方なんですよー」
(テクテクテク…)
P「うーん、前に送りに来た時に見た景色な気がするんだよなぁ」
春香「見たことあるかもしれませんねー」
(テクテクテク…)
春香「あ、着きました!」
P「ええと、ここは……」
春香「私の家ですよ?」
(クルッ)
P「確か来る途中にファーストフードがあったような」
(グイッ)
春香「そ、そこでいいって言ったのはプロデューサーさんじゃないですかー!」
P「ええい、お前の家だとは聞いてないぞ」
春香「だ、だって聞かれなかったんですもん……」
P「……確かに聞かなかったな」
春香「きょ、今日は両親はいませんから!」
P「そういう言い方はちょっと……まぁ兎に角流石にまずいから、俺はどこか探すよ」
(ギュッ)
春香「……かないでください」
P「春香?」
春香「行かないで、ください……」
P「そう言われても、これは……」
春香「昼間から、見かける人見かける人、クリスマスで楽しそうで」
P「俺らは仕事だったからなぁ……」
春香「……わがままだっていうのは分かってます。でも……私だって、こんな特別な日、誰かと過ごしたかったんです」
P「……」
春香「家に帰っても、誰も居ませんから。一人で、シャワー浴びたら寝るだけで」
春香「クリスマスって、楽しい日じゃないですか。みんなが楽しい中で、私だけ惨めに思えて」
P「ここまでの道中にも、楽しそうな人達がいたな」
春香「……子供みたいですけど、寂しく、なっちゃったんです」
P「……春香も、まだ華の女子高生だもんなぁ」
(ナデナデ)
春香「ぅ……」
P「確かに、こんな日くらい、楽しみたいよな」
春香「ご、ごめんなさい、いきなり、変なわがまま言って……迷惑、でしたよね。あ、ファーストフードなら少し戻って右を……」
P「春香」
春香「えっ、な、なんですか?」
P「ちょっと家に入って待っててくれ。二十分くらいで戻るよ」
春香「は、はい」
(タッタッタッタッ)
春香「プロデューサーさん、行っちゃった……」
春香「でも、戻ってくるって、言ってたよね」
春香「コートも、借りたままだし」
春香「……ええと、鍵、鍵……」
(ガチャガチャ)
春香「うぅ、手が冷たくてなかなか回らないよ……」
(ガチャッ)
春香「あ、開いた」
(ギィッ)
春香「ただいま……」
春香「プロデューサーさん、今、きっと寒いよね」
春香「少しでも暖めておかないと……」
春香「エアコンつけて……」
(ピッ)
春香「ストーブも……」
(カチッ)
春香「……って、色々と物が出しっぱなし!」
春香「あわわ、早く片付けないと!」
春香「これはこっちで」
春香「あれはそっちで」
(ゴソゴソ)
春香「……へ、部屋も片付けた方がいいのかな」
春香「……あ! プロデューサーさんの写真出しっぱなし!」
春香「あわわわわ!!!」
(ダダダッ)
(ゴソゴソ)
春香「え、ええと……これくらい片付ければ、最低限は……」
(ヴヴヴッ)
春香「あっ、着信……」
(ピッ)
春香「もしもし!」
P『家の前着いたよ。鍵、開けてもらっていいか?』
春香「は、はい! 今行きます!」
(タッタッタッガチャッ)
春香「ど、どうぞ!」
P「夜分に恐れ入ります。お邪魔しますよ、っと」
春香「はい! お邪魔されま……って、それなんですか?」
P「ん? ああ、この袋か?」
(ガサガサ)
P「開けてみてのお楽しみだ」
春香「あ、これって……」
春香「チキンに、ホールケーキ……」
P「スーパーの売れ残り品だけどな。ま、仕事でへとへとな俺らにはお似合いだろ」
春香「わぁ……!」
P「どうだ、テーブルに並べてみると、意外とパーティーっぽいだろ?」
春香「はいっ!」
P「ついでにそれっぽいお惣菜も揃えてみた。夕飯はもう食べたのか?」
春香「いえ、忙しくて、軽くしか」
P「よぉし、それはちょうど良かった」
(ドンッ)
P「ノンアルのシャンパンもどきも買ったぞ!」
春香「ぱ、パーティーですよ、プロデューサーさん!」
P「そりゃそうだ、買ってきたのは俺だ」
春香「クリスマスのパーティーだぁ……えへへ……♪」
P「どうせここまで来たんなら、とことん楽しんでやる!」
春香「そうですよプロデューサーさん! 今夜はクリスマスですよ、クリスマス!」
P「よし、どうせなら綺麗な皿とグラスはあるか」
春香「勿論です! ちょっと待っててくださいね!」
(パタパタ)
P「……嫌な予感がする」
春香「ええと、綺麗なお皿は上の方に……」
春香「椅子に乗って……」
春香「んー……届かない……背伸びして……」
(ズルッ)
春香「あわわっ!?」
(グラッ)
春香「えっ、うそっ」
春香「お、落ちっ――」
(ダキッ)
P「あ、危ない……!」
春香「ぷ、プロデューサーさん……」
P「無理して高いところの取ろうとするなよ……俺が来てなかったら下手したら大怪我してたぞ」
春香「ご、ごめんなさい……」
春香(わわわ、プロデューサーさんにお姫様抱っこされてる……!)
P「あの上の皿か? 俺が取るよ」
(スッ)
春香「あっ……」
P「?」
春香「い、いえ、なんでも!」
春香(もうちょっと、あのままが良かったなぁ)
P「わお、出来合いの物でも、こうして並べてみると豪勢だな」
春香「なんだか……」
P「?」
春香「今の私、とっても幸せです」
P「食べる前から幸せじゃあ世話ないな。ほら、グラスグラス」
春香「は、はいっ!」
(コポポポポショワアアアアアア)
春香「わ……綺麗……」
P「シャンパングラスは綺麗だよな」
春香「プロデューサーさんにも注いであげますよ! はい、グラス出してください!」
P「零すなよ?」
(コポポポポショワアアアアアア)
P「よしよし。それじゃあ、クリスマスの夜を祝って」
春香「かんぱいっ!」
(チンッ)
春香「プロデューサーさん」
P「ん?」
春香「この一年、色んなことがありましたね」
P「ああ……春香にとっては、激動の年だっただろうな」
春香「本当ですよ! まさか、私がアイドルだなんて……」
P「まさに、人生が変わった年だったな」
春香「そういうプロデューサーさんはどうだったんですか?」
P「んー……」
(モグモグ)
P「やっぱり、人生が変わった年だったよ。まさか、こんな人気アイドルの担当になるなんてな」
春香「に、人気だなんて!」
P「クリスマスシーズンも仕事がびっしりなんだから十分だよ」
春香「ぷ、プロデューサーさんのお陰です。えへへ……」
P「誰よりも頑張ったのは、春香自身だよ」
春香「う、うぅ……」
春香「ぷ、プロデューサーさんが来るって分かってれば、ケーキでも作っておいたのになぁ!」
P「うぉっ、いきなりどうした」
春香「ど、どうせならプロデューサーさんに、手作りのクリスマスケーキを、食べさせてあげたくて……」
P「まぁまぁ。じゃあこのケーキは、俺が作ったとでも思ってくれ」
春香「プロデューサーさんの、手作りケーキ……」
P「召し上がれ」
春香「は、はい……」
(モグッ)
P「どうだ?」
(ゴクン)
春香「……とっても、美味しい、です」
P「そりゃあ良かった」
春香(一緒に食べてるのが、プロデューサーさん、ですから……)
P「春香」
春香「ヴぁいっ!?」
P「パーティー、楽しいか?」
春香「は、はいっ!」
P「そっか……ホッとしたよ」
春香「ホッとした?」
P「俺はこういう暖かいこととは無縁だったからな……誰かがしてくれることはあっても、してやるのは初めてでな」
春香「私、とっても幸せです!」
P「出来合い品で悪いな」
春香「そんなことないです! 私は、プロデューサーさんが一緒にいてくれるだけでも……!」
P「え?」
春香「あっいえっ、えっとその……こ、今度は私がお持て成ししてあげますから!」
P「あはは、期待してるよ」
春香「き、期待しててください!」
P「ふぅ、美味しかったな?」
春香「夢みたいです……」
P「残念、夢でした」
春香「えぇっ!?」
P「嘘だ」
春香「ぷ、プロデューサーさぁん!」
P「悪い悪い、春香が可愛いもんでつい」
春香「かわっ……?!」
P「嘘じゃないぞ」
春香「もうっ、冗談はやめ……えっ!?」
P「さて、朝までまだしばらくあるなぁ」
春香「どどどどっちですか?!」
P「あ。厚かましくて申し訳ないんだけど、シャワー借りてもいいかな。タオルとかは買ってきたから」
春香「は、はい勿論! お先にどうぞ!」
春香「ぷ、プロデューサーさん……どんなつもりで言ったんだろ……」
春香「あ、あれだよね、きっと! お世辞というか社交辞令というか!」
春香「……」
春香「えへへ、どうしよ……頭ではそう思ってても、顔が弛んじゃうよ……」
春香「うあぁ……ニヤニヤが止まらないよぉ……」
(ガチャッ)
P「すまん、上がったぞ」
春香(わ、お風呂上りのプロデューサーさん……)
P「? どうした?」
春香「あっいえ! 私も入ってきますね!」
P「ああ。ここで待ってるよ」
春香「へ、部屋には勝手には入らないでくださいね! 絶対!!」
P「当たり前だろう」
春香「あと、お風呂も……あ、あんまり覗いちゃダメですよ!」
P「ちょっとならいいのか?」
春香「!?!?!? そそそそうじゃなくて!!!」
P「分かってる分かってる、冗談だよ」
春香「うぅ……」
(バタン)
春香「ぷ、プロデューサーさんのばか……」
(スルスルシュルシュル)
春香「の、覗きたいとか思うのかな、プロデューサーさんも……」
(カララッ)
春香「ぷ、プロデューサーさんになら、覗かれても……」
(シャワワワワ)
春香「じゃなくて! ななな何考えてるんだろ……」
春香「あ、上がりました」
P「さて、どうするかな」
春香「プロデューサーさんは、今日もお仕事ですよね? なら、寝た方が……」
P「そうだなぁ。春香、さっき話したいとか言ってなかったっけか?」
春香「えっと……もう、いっぱいいっぱい満たされました。えへへ」
P「そっか。じゃあ、お言葉に甘えようかな……どこを借りていいのかな」
春香「着いてきてください!」
P「はいはい」
P「……で、どうして」
春香「えへへ……」
P「春香の部屋なのかなぁ」
春香「ご、ごめんなさい、他に良さそうな部屋が無くて……」
春香「ベッドが私の部屋と両親の寝室しかなくて……」
P「いや、居間とかでいいから。端っこ貸してくれれば十分寝れるから」
春香「ダメですよ! あの部屋、冬場は本当に冷え込むんです!」
P「でも、流石に……」
春香「流石にとか言いながら、もう家まで上がっちゃってるのに今更何言ってるんですか!」
P「そ、それは……」
春香「……もしプロデューサーさんが居間で寝るって言うなら、私も居間で寝ます」
P「だ、ダメだそれは! 明後日からは年末特番の仕事が沢山あるだろ! 体調崩したらどうする!」
春香「そのお言葉、そっくりお返しします!」
P「うぐ……」
春香「……それに」
P「?」
春香「寝るまで、プロデューサーさんと一緒に、クリスマス気分を味わっていたいんです……」
P「……仕方ないなぁ」
春香「! はいっ!」
春香「せ、狭くないですか?」
P「俺はいいんだけど……」
(ギュウッ)
P「添い寝は流石に想定外すぎた」
春香「わ、わがままでごめんなさい……」
P「いつもこんなだったっけか?」
春香「一人になるのが、寂しくて……」
P「今日の春香は寂しがり屋だなぁ」
春香「あうぅ……」
P「まぁいいさ。ここまで来たら、とことん相手してやるから」
春香「えへへ……プロデューサーさん、暖かいです」
P「体温36℃はあるからな」
春香「あ、そうだ。この鍵貸しますから、行く時にかけて出ていってください。多分、私は起きれないと思いますから……」
P「分かった。借りておくよ」
春香「明後日、事務所で返してくださいね」
P「悪いな、何から何まで」
春香「いいえ。私のわがままに、いっぱい付き合ってもらいましたから!」
P「今もな」
春香「……えへへ」
P「それじゃあ寝るとしようか」
春香「はいっ!」
春香「の、前に……プロデューサーさん、ええっと……」
P「ん、どうした?」
春香「ちょ、ちょっと、真上を向いててもらっていいですか?」
P「いいけど」
(スッ)
春香「……」
(チュッ)
P「ん? 頬に……」
春香「お、おやすみなさいっ!!」
(プイッ)
春香(ややややっちゃったぁ!)
P「……」
(ナデナデ)
春香(ふわっ!?)
P「おやすみ、春香」
春香(……プロデューサーさん、ありがとうございます)
春香(でも、電車で会ったのは、偶然、だったのかな)
春香(もしかして、私がいい子にしてたから、サンタさんが)
春香(…………)
春香(えへ、今までで一番、幸せなクリスマスだったなぁ……)
春香(次の一年も頑張ってたら、また、こんなクリスマスを過ごせるかな?)
春香(来年は、ちゃんとケーキとかも作って)
春香(また、プロデューサーさんと二人で)
春香(……)
春香(えへへ、プロデューサーさん)
春香(……大好き、で……す……)
春香「……すぅ……すぅ……」
P「……春香?」
春香「すぅ……」
P「寝たかな」
春香「くぅ……くぅ……」
P「しかし、電車で会うとは思ってもなかったな……」
(ゴソゴソ)
P「……本当は、ポストにでも入れておこうと思ったんだけど」
P「……まぁ、いっか」
春香「ん~……んぅ……」
P「可愛い寝顔しやがって」
(ムニムニ)
春香「む~……あぅー……」
P「……」
(スッ)
P「……メリークリスマス。春香」
P「さて、俺も寝るか……」
春香「へぅ……」
(ギュウッ)
P「ん?」
春香「えへへ……プロデューサー、さぁん……」
P「はぁ、ずるいよな」
春香「くぅ……すぅ……」
P「どれ、さっきのお返しだ」
(チュッ)
春香「うー……」
P「これで我慢しとけ」
春香「すぅ……すぅ……」
P「……だよ、春香。おやすみ」
春香「ん……」
(ゴシゴシ)
春香「ふあぁ……今何時だろ……もうお昼過ぎかぁ」
春香「あ……プロデューサーさん、もういないかぁ……」
春香「まぁ、それはそうだよね……寂しいけど、仕方ないよね」
(ピトッ)
春香「……なんだか、おでこが暖かいな」
春香「何か、とっても幸せな事があった気がする……」
(チラッ)
春香「……あれ? なんだろ、この包み。お父さんかお母さんかな? でも、帰ってくるのは夜のはず……」
春香「ということは……!」
(ギュッ)
春香「えへへ……プロデューサーさん……大好き……」
(ポロッポロッ)
春香「絶対に……大切に、します……」
――――
―――
――
春香「おはようございますっ!」
千早「あら、おはよう、春香」
春香「あ、千早ちゃん、おはようっ!」
千早「……?」
春香「? どうしたの?」
千早「いえ、そのネックレス、初めて見るから……」
春香「あ、これ……サンタさんがくれたんだよ! ちょっとシャイだけど、とってもかっこいいサンタさん!」
千早「……へぇ」
(チラッ)
P「ん?」
千早「……くすっ、良かったわね、春香」
春香「えへへ……」
春香「でも、サンタさんって本当にいるのかもしれないなー、って思ったんだ」
千早「え? そのネックレスをくれたのは、プロ……」
春香「あ、えっと! そ、そうじゃなくて!」
千早「??」
春香「……あはは、何でもないよ」
千早「何か怪しいわね……」
春香(このネックレスをくれたのは、シャイでかっこいいサンタさんだけど)
春香(そのサンタさんに会わせてくれたのは、もしかすると……)
春香「……やっぱり、ちゃんといい子にしてると、サンタさんは見てくれるんだね」
千早「随分幸せそうね、春香」
春香「な、何もなかったよ!?」
千早「ふふふっ」
P「あ、そうだ。おーい、春香」
春香「はい?」
P「これ、返しておくよ」
(チャリッ)
春香「あ」
P「ありがとな。助かったよ」
春香「は、はい! お仕事、大丈夫でしたか?」
P「ばっちりだったよ。前日の疲れを見せないほどにな」
春香「良かったぁ……」
千早「……」
春香「千早ちゃん?」
千早「……そう。二人は、そういう……」
春香「えっ!?」
P「ん?!」
千早「いえ、小鳥さんには言わない方がいいわね」
春香「ちょっと待って千早ちゃん!? 色々勘違いしてるよ!」
P「な、なんのことだ?」
千早「私は二人の味方です。良かったわね、春香」
春香「違うんだってば千早ちゃん! 別に一昨日の夜は何も……!」
P「おい」
春香「あ」
千早「ふふっ、お幸せに」
春香「ち、違うの千早ちゃん!」
P「齟齬が生じてる、違うんだ千早」
千早「そんなに照れなくても……」
(ガサガサッ)
亜美「えっ! 兄ちゃんとはるるんデキてるの!?」
真美「これはみんなにホ→コクせねばなりませんな!」
春香「え?! ちょ、ちょっと待って!」
(ダダダダダッ)
春香「あ、あぁ……」
P「不味いな、これは……」
春香「ご、ごめんなさいプロデューサーさん! ま、まさかこんな……!」
P「いや、こんなところで渡した俺が不注意だった」
千早「まぁ、いいじゃないですか」
P「?」
春香「よ、よくないよ! わ、私はともかく、プロデューサーさんが……!」
千早「確かに私の理解には誤解があったのかもしれませんけど」
千早「二人の気持ちは、本物じゃないですか」
春香「ちちちちはやちゃんっ!?」
P「き、気付いてたのか、お前」
春香「……え?」
千早「……くすくす、よほどの朴念仁でもなければ」
春香「え……ええぇぇぇぇぇぇえええ?!?!」
千早「とりあえず、私はあちらのフォローに行ってきますね。あの二人を放っておいたら、どんな噂が流れるか分かりませんから」
P「悪いな、千早」
千早「いえ。どうぞ、ごゆっくり」
(タッタッタッ)
春香「あ、え……あわわわ……」
P「……ええとだな」
春香「ぷ、プロデューサーさん……」
P「んー、まぁとりあえず、だ」
春香「は、はいっ!」
P「寝顔、可愛かったぞ」
春香「…………」
(ボンッ)
P「おい、顔が真っ赤だぞ」
春香「う、うえぇっ!?」
P「……まぁ、なんだ。その……」
春香「は、はい……?」
P「今夜、一緒に夕食にでも行かないか?」
春香「わ、私は、構いません、けど……」
P「……色々と、伝えたいこともあるし、な」
春香「っ」
(ギュッ)
P「春香?」
春香「……」
P「何でそんなに顔を埋めてるんだ」
春香「い、今は、私の顔、見ないでください……」
P「やだ」
(バッ)
春香「あ゙ゔっ」
春香「やだぁ……見ないでください……」
P「涙でぐしょぐしょじゃないか」
春香「だってぇ……だってぇ……!」
P「ほら、リボンも曲がってるぞ」
春香「うぅ……ぐすっ」
P「なぁ、春香」
春香「うぅ……はい……?」
P「プレゼント、気に入ってくれたか?」
春香「……はい、とっても…………」
P「これからも、そのネックレス、付けてくれるか?」
春香「っ……!」
春香「ヴぁいっ!!」
P「おい、声が裏返ってるぞ」
春香「う、うぅぅぅぅうう……」
(コソッ)
亜美「はるるんガン泣きじゃん……」
真美「でも、はるるんすっごく嬉しそうだよ」
千早「こら、覗き見しない」
(ガシッ)
亜美真美「「うあうあ→!」」
千早「ほら、あなた達には、己の身を犠牲にして秋月大明神の怒りを鎮める仕事が残ってるわ」
(ズルズル)
亜美「うえ~!」
真美「パ→ペキ死亡フラグだってば→!」
千早「ほらほら、行ってきなさい」
千早「……ふふ、本当に良かったわね、春香」
P「な、泣きやんでくれよ、春香」
春香「うぅぅぅぅううう……!!」
P「ああもう、もうすぐ収録行く時間だろうに……」
春香「ぷ、プロデューサーさん」
P「ん?」
春香「一緒に……来てくれますか……?」
P「ああ、元々今日はお前の付き添い――」
春香「そうじゃなくて!」
P「?」
春香「これからずっと……私を寂しくさせない様に、一緒にいてくれますか……?」
P「極力、善処しよう」
春香「……ぐすっ……約束、ですからね……!」
P「よしよし、約束だ」
(ナデナデ)
春香「あうぅ……」
(ゴシゴシ)
春香「……それじゃあプロデューサーさん、収録、行きましょう!」
P「おっ、やっと元気が戻ったな?」
春香「元気が、私の取り柄ですから!」
P「おい、また空回るなよ? そういう時、大体……」
春香「早く行きましょう! プロデューサーさん! 収録ですよ、収ろ――」
(ズルッ)
春香「わきゃっ!?」
(ガシッ)
P「ほら、転ぶ」
春香「うぅ……なんでも、お見通しなんですね」
P「春香のことは一番よく分かってるよ」
春香「そんな恥ずかしいこと、よくさらっと言えますね……」
P「春香にだから言えるんだよ」
春香「……えへへ」
春香「それじゃあ今度こそ行きましょう、プロデューサーさん!」
P「はいはい。行くとするか」
春香「……あ、プロデューサーさん!」
P「?」
春香「夕食、楽しみにしてますね!」
P「ああ、収録が上手くいったら、特別いいところに連れてってやる」
春香「はいっ! それと、えっと……」
P「なんだ?」
春香(サンタさん。今年はとっても素敵なプレゼントを、ありがとうございます)
春香(次の一年も、きっといい子にしてます。だから、来年も、きっと幸せなクリスマスを、私達にください)
春香「えへへ……。プロデューサーさん……大好きですっ!」
おしまい
最近のはるるんと言えば、転ばなくさせたりへんてこなヒーローにしてみたりハイライトを最初から消してみたりと散々な扱いばっかしてたからな……
たまには、こんな幸せなはるるんがいてもいいんじゃないかなーって
朝っぱらからと思うかもしれんけどワイは今から寝るんですわ、乙カブトガニ
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