社長「765プロの諸君! ドッキリの仕事だ!」 (324)


P「ドッキリですか?」

伊織「どういう内容なの?」

社長「いや、それが……実に意味の解らないものでね」

千早「どういうことですか? 春香が呼ばれていないことに関係があるんですか?」

真美「はるるんにドッキリ→?」

亜美「それしかないっしょー」

社長「ああ、その通りだよ」

P「それで、一体どうするんですか?」

社長「天海君が良くクッキーを作ってきてくれているのは知っているだろう?」

律子「そうですね、疲れた時とか雪歩のお茶と合わせてすごく癒しになりますよ」

小鳥「ついつい食べ過ぎちゃったりしちゃうのよね」

貴音「して、それが一体何の関係があるのですか?」


社長「今回のドッキリは、天海君の作ってくるクッキーを不味いと罵倒するんだ」


全員「え?」

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やよい「そ、そんなの無理です!」

千早「私も絶対に嫌です」

伊織「もしもし新堂? ウチの事務所の通話記録を調べて欲しいのだけど」

雪歩「伊織ちゃん、穴掘った方が良い?」

響「自分、ワニ飼ってるから平気だぞ」

真「じゃぁ、ボクが食べやすく叩いてあげるよ」

P「お、おいおい! 落ち着けって!」

貴音「そうですよ。まずは行方を掴ませないことが重要です」

律子「いや、それもズレてるから」

社長「お、落ち着き給え。ただのドッキリで、後でちゃんと謝罪をするんだから平気だよ」

あずさ「そうですね、私達も色々と経験しているんだし春香ちゃんにドッキリも悪くないと思うわ」

P「よ、よーし。とりあえずやってみようじゃないか。な?」

千早「あまり気乗りはしないのですけれど……」


トップバッター:千早


~事務所(映像)~


春香『おはよーございまーす!』

千早『おはよう、春香』

春香『千早ちゃんだけなの? 小鳥さん達は?』

千早『小鳥さんはいたけれど、出かけてしまったのよ』

春香『そっかー……あ、クッキー食べる?』

千早『え、ええ。いただこうかしら』


~モニタールーム~

P「さ、早速来ましたか……」

小鳥「これは千早ちゃんの演技力も重要ですよ」

亜美「はるるんのクッキー美味しいもんね……」

真美「そーとー頑張らないと美味しいって言っちゃうよね」


~事務所(映像)~


春香『どうかな? 今日のは結構うまく出来たって思うんだけ』

千早『美味しくないわね』

春香『え?』

千早『……二度も言わせないで春香』

春香『で、でも、あれ……ぶ、分量間違えたのかなっ』

千早『私に聞かれても困るのだけれど』

春香『そ、そうだよね……ごめん……ごめんねっ』


~モニタールーム~

小鳥「うわぁーっ、これは厳しい!」

やよい「は、春香さんすっごく落ち込んじゃってます……」

真「普段冗談とかドッキリをしない千早だからこその重みがあるよね」

亜美「えー? 胸はないのに→」

貴音「胸ではなく、言葉の重みですよ。亜美」

律子「やばいわねこれ……全員終わるまでネタばらし無しは止めた方が良いかと」

P「いや、相手側の要求なら、それで行くしかないさ。契約着られたりしたら支障がある」

律子「そ、そうかもしれませんけど……」


~事務所(映像)~

春香『ね、ねぇ……千早ちゃん』

千早『なにかしら』

春香『えっと……』

千早『どうかしたの?』

春香『な、なんでもないよっ』

千早『そう……私はレッスンに行くから留守番任せていいかしら』

春香『う、うんっ……あ、千早ちゃんこれ持って行って』つ\125

千早『なに?』

春香『その、く、口直しに飲み物でも……買ってよ』

千早『そうね。ありがたく借りるわね』ガチャ......


タッタッタッタッ............


春香『……………自信、あったんだけどなぁ』グスッ


~モニタールーム~


律子「………………」

あずさ「……………」

やよい「……………」

伊織「……………」

小鳥「……みんな、やばいわね」

真「罪悪感が半端ないんですけどこれ」

雪歩「飲み物でも買ってって……」

響「自分……ドッキリをやる勇気ないぞ……」

美希「ミキもやりたくないの……」


ガチャッ


千早「も、もど、もど、戻り……もど」ハァッ.....ハァッ.....

P「ち、千早大丈夫か?」

千早「プロデューサー……私、自殺します」

P「早まるな! ドッキリだ! 落ち着け!」


千早「落ち着ける訳ありません!」

伊織「クッキーは?」

千早「クッキー? それはもう最高の味わいだったわ
    口の中で溶けるか解けないかの中間の
    絶妙な硬さで噛み締めるたびに細かくなっていくのだけれど
    喉が乾くようなものではなくてむしろ喉が潤うような
    しっとりとしたこう、なんて言えばいいのかしらそう、あれだわ
    蒸したエビ寿司と甘エビくらいの差なのよ
    そしてそう、肝心の味なのだけれど、春香の言う通り
    結構上手く出来ていた……なんていうレベルではなかったのよ
    むしろ出来すぎていたのよ。何謙遜してるのよなんて怒鳴りそうなくらいに
    例えるならそうね。フロッピーディスクが市販だとして春香のクッキーは
    ブルーレイディスクと言っても過言ではないほどに美味しかったのよ
    甘さ控えめなのだけれど、クッキー自体がしっとりしているおかげで
    口の中全体に広がっていくせいで味覚がその甘さに包み込まれてしまうの
    そのせいでついつい顔がほころびそうになるほどに美味しかったわ」

伊織「そ、そう……最高だったということだけは理解したわ」

P「つ、次は誰だ?」

美希「ミキなの」

小鳥「大丈夫? 美味しくないって言える?」

美希「千早さんの様子を見る限り、かなり難しそうだけど頑張るの!」ガチャッ


~事務所(映像)~


美希『おはよーなのー』ガチャッ

春香『あ、み、美希! おはよう』サッ

美希『春香』

春香『な、なに?』

美希『ミキは今見たの。春香がクッキーを隠すところを』ジッ..........

春香『あははっ、えっと、これはちょっとダメだから』

美希『ダメって?』

春香『と、とにかく美味しくないやつだからダメ』

美希『独り占め?』

春香『え?』

美希『美味しいから独り占めするつもりなの!』グイッ

春香『だ、だめ――引っ張らないでっ』


美希『たーべーるーのー!』グイィッ

春香『だ、だめだってばぁ!』

美希『……そっか』パッ

春香『み、美希?』

美希『春香はミキが嫌いなんでしょ。だからくれないんだよね?』

春香『そ、そんなこ』

美希『隙有り! いただきなの!』ヒョイッパクッ

春香『あっ』

美希『もぐもぐ…………』

春香『み、美希?』

美希『……ミキ、トイレ行ってくるの』

春香『ぁ……ぅ、うん……ごめん』


~モニタールーム~


P「うわ、これは……」

雪歩「あえて口には出さないで、行動で美味しくないって表したんですね……」

貴音「春香……また泣いてしまいましたね」

響「あんなの自分でも泣くぞ……無理やり食べられて、それであんなことされるなんて」

千早「春香……」

伊織「美希が戻っ――」

真美「早っ! 涙こらえて笑顔作るの早!」

亜美「あ、またお金渡そうとしてるよ」

やよい「あ、断って……そのまま事務所出ちゃいましたね」

真「春香、そのまま座り込んじゃったけど……」

律子「泣いてるわね」

小鳥「泣いてる春香ちゃんも可愛いわよ、きっと」

P「小鳥さんは黙っててください」

美希「ミキは今日絶対に眠れないの……」ガチャッ

雪歩「お、お疲れ様……次、私行ってきます……」


next:雪歩

~事務所(映像)~


雪歩『お、おはようございます』

春香『ぁ、ゆ、雪歩……』グスッ

雪歩『は、春香ちゃん? どうかしたの?』

春香『えへへ……転んじゃって顔から』

雪歩『た、大変だよっ! どこかまだ痛む?』

春香『ううん、大丈夫』

雪歩『な、なら良いけど……お、お茶入れてくるね?』

春香『あ、ありがと』


~モニタールーム~


小鳥「ちょっとぎこちないですね」

P「まぁ雪歩だからな……仕方ないですよ」

真「しかもあの座り込んだ状態でしたからね」

千早「顔から倒れたのに心配しないっていうのは……」

貴音「そうではないと解っているからでしょう。それよりも離れたかったのでしょうね」

あずさ「春香ちゃん涙目だものね……見ているだけでつらいもの」

律子「雪歩が戻ってきましたね」

P「春香は……クッキーは確保済みですか」

伊織「それはそうよ。美希の時みたいなミスはしないわ」

美希「春香もちゃんと学んでるの」


~事務所(映像)~


雪歩『あれ? 春香ちゃん』

春香『なに?』

雪歩『さっきクッキーの箱置いてなかった?』

春香『えっ? き、気のせいじゃないかな』

雪歩『でも、美味しそうな匂いするよ?』クンクン

春香『お茶じゃないかな?』

雪歩『ううん、このカバンの中だよ』ジーッ

雪歩『ほら、あった……って、ご、ゴメンネ春香ちゃん! 勝手に』

春香『……美味しそうな匂い? 本当に?』

雪歩『え?』

春香『……千早ちゃんも美希も、美味しくないって言ってたのに?』

雪歩『そ、そんなはずないよ! 絶対に美味しいはずだよ!』パクッ


雪歩『っ! お茶っ』ゴクゴクゴク

春香『………………』

雪歩『けほっ、けほっ……』

春香『だから言ったのに』

雪歩『ち、違うの! これは喉に詰まっただけだからっ』

春香『嘘つかないでよ!』バンッ!

雪歩『っ』ビクッ

春香『ぁ……ごめん……あははっ今ちょっと……ギリギリなんだよね……』

雪歩『わ、私もごめんね……その、れ、レッスン行くから』

春香『うん……行ってらっしゃい』

タッタッタッ......ガチャッ


タッタッタッタ............


~モニタールーム~


貴音「もう、潮時なのでは?」

真「は、春香が怒鳴ったよ?」

小鳥「どうします? プロデューサーさん」

P「………………」

真美「ま、真美はやりたくないよ」

亜美「亜美も無理。律っちゃんに怒られるよりも嫌だもん」

やよい「わ、私も……嫌です」

P「中学生組はダメか……響たちは?」

響「いや、ふつうにやりたくないぞ」

あずさ「これ以上は、ちょっと~」

千早「ダメですよ、やってください」

律子「ち、千早?」

美希「ミキ達だけやらされるなんて不公平なの!」


真「いや、ちょっと待って! 続けたら春香が辛い目にあうんだよ!?」

美希「知ってるの……でも、やらなきゃ罪は償えないの」

響「な、何言ってるのさ……やらなきゃそもそも罪は」

貴音「いえ、こうしてもにたぁを見ている時点で同罪でしょう」

ガチャッ..........

やよい「あ……」

貴音「そして、行わないことは罪を背負いながらも逃げたということになります」

律子「一理あるような、ないような……」

P「行くのか! 貴音!」

貴音「嫌です」

P「えーそこは行く流れでしょ」

貴音「ここはくじで決めた通りに行くべきでしょう」

響「た、貴音ぇ! 次は自分なんだぞ!」

雪歩「逝ってらっしゃい……響ちゃん」

響「ひっ、雪歩!?」

千早「我那覇さん、ほら、早く」

ドンッ

響「ちは」バタンッ


ドンドンドンッ!

響「帰ってきたら覚えてろぉー!」


next:響


~事務所(映像)~


響『はいさーい! 我那覇響です!』

し~ん...........

響『は、はいさー』

春香『響ちゃん、ごめんね? 静かにしてほしいな』

響『は、春香……どうかしたのか?』

春香『ううん、なんにも』

響『いや、なんにもないわけないぞ……明らかに……』

春香『なんにもないんだよ。ほんと、なんにも……』

響『春香?』

春香『唯一の取り柄だったお菓子作りも……えへへっ自信なくしちゃった』ポロッ.....

響『』


~モニタールーム~


亜美「はるるんの涙! ひびきんに効果は抜群だ!」

小鳥「こっちも何人か大ダメージ受けてるわよ」

伊織「」

千早「」

美希「」

雪歩「」

貴音「」

P「笑いながらの涙だからなぁ……これは辛い」

真美「クッキーにありつけるのかな?」

律子「そもそも、ちゃんと遂行できるのかしら」


~事務所(映像)~


響『え、えっと……ど、どういうことなんだ?』

春香『クッキー……作ってきたの』

響『ほ、本当か!? 自分、春香のクッキー大好きだぞ!』

春香『本当に?』

響『え……』

春香『本当に今までのが美味しかった? 持ってきてくれるからって嘘じゃない?』ズイッ

響『な、なんか怖いぞ?』ジリッ

春香『響ちゃん、正直な感想を言って欲しい』

響『う、うん』

春香『今までのクッキーは、美味しかった?』

響『あ、当たり前だぞ……? 自分、すごく』

春香『じゃぁ、これを食べてみて』スッ...........


響『じゃ、じゃぁ……遠慮なく』ヒョイッパクッ

春香『…………………』

響『…………………』モグモグ

春香『………………』

響『…………………』モグモグ

春香『ねぇ』

響『な、なに?』

春香『美味しい?』

響『えっと……その……』ダラダラダラ...........

春香『そっか、解った。ごめんね響ちゃん。試すようなことして』

響『春――』

春香『いいよ。美味しいなんて嘘いらない』フイッ

響『あの、その、えっと……あぅあぅ……』グスッ

響『ぐりーさびたぁぁぁぁぁん』ウワァァァァァァ

バタン!

タッタッタッタッどんがらがっしゃーん............ダダダダダダダッ


~モニタールーム~


小鳥「うわぁ……」

律子「なにがうわぁ……ですか、コレどうするんですか?」

真美「自信作ってあえて言わなかったね……」

貴音「自信作といえばどうであれ褒めてしまうと思ったのでしょう」

美希「響、絶対怪我してるの」

雪歩「救急箱の準備しておきます」


ダダダダダダダダダッ

ドンドンドンッ!

響「今すぐあけるんさ! 自分、自分っうわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

ガンガンッ!

P「や、やばい……」

真「……………」

ガチャッ

響「ゆるさな」

ギュッ............

真「次はボクだね……頑張ってくる。響だって頑張ったんだからね」ナデナデ

響「ま、真……」

真「行ってきます」


時間なのでここまで


この書き方はやっぱり難しい

でもとりあえず完結はさせる


next:真

~事務所(映像)~


ガチャッ


真『おはようございまーす!』

………………

…………

……

真『あれ、誰もいないの?』

春香『あ、ごめん。ぼーっとしちゃって……おはよう真』ニコッ

真『お、おはよう……あ、あのさ』

春香『んー?』

真『ボク以外に誰か来た?』

春香『千早ちゃん、美希、雪歩、響ちゃんだけど……どうかしたの?』

真『い、いや、その、事務所の外で誰かが転んだような痛々しい形跡があったから』

春香『そっか。多分響ちゃんだと思うよ。凄い音してたし』

真『そ、そっか……』


~モニタールーム~


P「暗っ!」

小鳥「春香ちゃんとの会話であんな陰鬱な空気なんて重症じゃないですか?」

貴音「真がわずかに萎縮しているようにも感じられますね。恐らく、引け目を感じているのかと」

雪歩「真ちゃん……」

亜美「あっ、まこちんが動いた!」

小鳥「えっ真ちゃんのまこt」

律子「言わせませんからね?」

伊織「静かにして、聞こえないじゃない」

小鳥「すみませんでした」

千早「……クッキーまだ渡されていないわね」


~事務所(映像)~

真『ねぇ、春香』

春香『なに?』

真『何かあったの?』

春香『どうして?』

真『春香らしくないよ。明るさが全く感じられない』

春香『えへへっそうかな』ニコッ

真『ッ!』ゾクッ

春香『どうかした?』

真『い、いや……な、何かあるなら相談してよ』

春香『相談……かぁ』

真『?』

春香『真はさ、敗北する結果が見えきった勝負に手を出したりするの?』

真『え?』

春香『敗北することで、今までの積み上げてきたものが全部嘘になっちゃうような勝負。する勇気はある?』


真『良く解らないけど……ボクは逃げないよ』

春香『どうして?』

真『だって、逃げて何かが変わるの?』

春香『それは……』

真『負けて積み上げたものが崩れるのかもしれない』

真『でも、逃げたらまた積み上げることすらできないんじゃないかな?』

春香『…………………』

真『ボクは負けることを厭わない。それが実力だと肝に銘じて、さらに上を目指して積み上げるだけだよ』

春香『そっか、じゃぁさ。私のクッキー食べて欲しい』

真『ク、クッキー?』

春香『うん。クッキー』スッ..........

真『これが、春香の勝負なんだね?』

春香『うん。そうだよ』

真『頂きます』パクッ


春香『正直な感想をお願い』

真『……美味しくない』

春香『ありがと』

真『ごめん、美味しくないとしか言えなくて。ボクよりは全然美味しいのにさ』

春香『ううん、良いの……良いんだ。大丈夫……』ポロッ

真『春香……』

春香『あははっ……今までのも、美味しくなかったでしょ?』

真『それはっ』

春香『ううん、言わないで。言わせて?』ポロポロ.......


春香『今まで気を使わせてごめんなさい』グスッ


真『ご、ごめんっ、ごめん春香ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』


ダダダダッ.........ゴンッ! ガチャッ........ダダダダッどんがらがっしゃーん!


~モニタールーム~


小鳥「え、衛生兵! 衛生兵はどこだ!」

P「駄目だ! 衛生兵もやられた!」

雪歩「」

美希「」

千早「」

響「」

貴音「なんとっなんと……なんという……」ガクッ

真美「お、お姫ちーん!」

亜美「亜美達を庇って……」

あずさ「泣きながらも笑った上でのごめんなさい……心に来るわね」

律子「もしも実行済みだったら威力は倍、いえ、4倍でしたね」


ダダダダダダダダダッガチャッ

真「ボクは……ボクは、責任とって春香と結婚します」


やよい「えっ!?」

律子「何言ってるのよ、気持ちはわかるけど日本では同性愛は認められてないわよ?」

真「だったら海外に行く! 結婚できる国もあるって聞いたことある!」

伊織「何言ってんのよ、春香の家族は!?」

真「っ……な、なら性転換手術する!」

亜美「うぇっ!?」

真「ボクが男になれば異性になってできるはずでしょ!?」

P「か、かもしれないがな……落ち着け。な?」

真「父さんだって男になりたいって言えば受け入れてくれるはずなんだぁぁぁぁ!」

雪歩「真ちゃん、お茶飲んで?」

真「う、うん」ゴクゴクゴク.........

真「……ぁ、あれ?」ドサッ

美希「真くん!?」

雪歩「睡眠薬入れただけ。すぐに目を覚ますから大丈夫です」


響「……死にたい」

千早「ええ、死にたいわ」

美希「……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

真「責任取るっ、うあぁっごめんっ」ウーン......

美希「真くん魘されてるの……」

真美「……亜美」

亜美「……真美先輩。自分、先輩とここまで生きてこれたことに感謝してます」

真美「行くのか、亜美」

亜美「散っていった仲間の奇声、無駄にするわけにゃぁいかんでしょ!」

伊織「犠牲なんだろうけど、奇声でも間違っていないのが恐ろしいわ」

P「亜美、頑張れ」

亜美「フッ、やるのはいいが。別に、死んでしまっても良いのだろう?」ガチャッ

タッタッタッタ.......

小鳥「亜美ちゃん……死ぬ気なのね」

真美「くっ……生きて、生きて帰ってきて……」

律子「茶番なのに茶番じゃないのがもう……」


next:亜美


~事務所(映像)~


バァンッ!

亜美『おっはよー!』

春香『あ、亜美』

亜美『おっはるるん~♪』

春香『おはよう』

亜美『んー? どうちたんだい? 元気がないじゃぁないか』

春香『えへへっ色々あったんだ』

亜美『恋の病? 亜美でいいなら話聞くけど?』

春香『ううん、違うの……亜美、嘘をつかないって約束してくれる?』


亜美『ん? ガチな話? 本気と書いてガチ?』

春香『真面目と書いてガチの方かな』

亜美『お、おぉう……嘘はダメなんだね?』

春香『うん、気休めも、お世辞も、全部いらない。本当のことを言って欲しい』

亜美『……何の話か解らないけど』

亜美『はるるんにはお世話になってるから』

亜美『いいよ。亜美、はるるんのそれ受けてあげる』


~モニタールーム~

小鳥「上手いですね~」

P「自分からは嘘をつかない。と断言しない」

P「それによって、ドッキリがドッキリにならなくなることを回避してきましたね」

律子「どちらにせよ、受けた時点でダメな気がするけど」

真美「亜美……頑張れっ」


~事務所(映像)~


亜美『それで、亜美はどうすればいいの?』

春香『クッキー食べてくれればいいよ』

亜美『はるるんのクッキー!?』

春香『っ……い、嫌なら食べなくてもいいよ?』

亜美『いやいや、3度のネッシーよりはるるんのクッキーだよ!』

春香『……そっか。今までありがとね?』

亜美『んー?』ヒョイッ...パクッ

春香『飲みかけで悪いけど、お茶、あげるよ』

亜美『ッ!』

亜美『の、のどにつまったー。おちゃのまないとー』

春香『……亜美。嘘はダメって言わなかった?』


亜美『は、はる……るん?』ビクッ

春香『亜美のことだからなんとかごまかそうとするとは思った』

春香『亜美は悪戯っ子だけど優しいから』ズイッ

亜美『は、はるるん……怖い』

春香『だから敢えて、最も簡単な喉が詰まったっていう言い訳を誘った』

亜美『!』

春香『ふふっ、亜美は悪知恵が働くけど、簡単に釣られちゃうもんね? 言葉、棒になってたよ』

春香『つまり、そういう事なんでしょ?』

亜美『うあうあ……その、はるるん怒らない?』

春香『うん。怒るわけないよ』

亜美『その、えっと――』


春香『だって、悪いのは』

亜美『?』

春香『気を使わせるほどに不味いクッキーを持って来続けた。私だもん』ニコッ

亜美『ぁ……』

春香『亜美達には怒れないよ。むしろ……ありがとう。私の為に嘘をついてくれて』

亜美『かひゅーかひゅーっ』ブーブー

春香『亜美、携帯鳴ってるよ?』

亜美『め、メール……ごめ、はる、る、ん……』

春香『うん?』

亜美『おと、うさんが……呼んで、るから……』

春香『そっか、ごめんね美味しくないクッキー食べさせて』つ\500

春香『解決できるようなことじゃないけど、これでなにかおいしいお菓子でも買って真美と食べてね?』

亜美『かふっ』

春香『今までありがと、亜美。また今度ね』ニコッ

亜美『う、うん……』


スタスタスタ.......ガチャッ


ダダダダダダダダダダダダダダダダッ



~モニタールーム~


小鳥「相手に怒らないっ、自分に、自分に怒ってる……っ!」

P「かはっ……」

美希「」

雪歩「」

千早「」

響「」

真「」

貴音「騙ってきたことに礼を述べるなど普通ではありません……」

律子「でも、それが自分のためだったから。ありがとうだったのよ」

真美「……ごめん、真美の勝手で呼び戻して」

あずさ「あのまま続けていたら亜美ちゃん死んじゃってたかもしれないわ。正解よ。それで」ナデナデ


ダダダダダダダダダッガチャッバタン


亜美「……亜美、もう。もう悪戯するの止める。勉強とか、レッスンとか本気でやる。亜美、真面目な人間になりたい」

伊織「そうね。それが懸命だわ……さて、行ってくるとするわ。骨、できれば拾って頂戴」ガチャッ

やよい「伊織ちゃん……死なないで」


next:伊織

ここまでで中断します


next:伊織


~事務所(映像)~

ガチャッ


伊織『あら、春香だけ?』

春香『ぅん? 伊織かぁ……おはよう』

伊織『何よその来たら困るような言い方』

春香『ぁ、ううん、そんなつもりはないよ。ごめんね』

伊織『なんなのよ。何かあったなら話せばいいじゃない』

春香『……そっちこそ、話せば良いのに』ボソッ

伊織『はぁ?』

春香『別になんでもないよ』

バンッ!

伊織『なんでもない? なら、今アンタなんて言ったのか言いなさいよ!』


~モニタールーム~


真美「今の、いおりん聞こえてたよね?」

小鳥「一部しか聞こえなくても、大体察せたんじゃないかしら」

律子「グレ始めてない?」

貴音「確かに、普段の春香ならば言わないか、言い換えた優しい言葉で言うはずですからね」

やよい「春香さんがなんだか怖いです……」

P「ここで伊織はかなり不味いくじ運だったか」

小鳥「そうですね、伊織ちゃんはああいうの見逃せないタイプですから」


~事務所(映像)~


伊織『早く言いなさいよ』

春香『……………』

伊織『春香!』

春香『…………っ』ポロッ

伊織『っ、な、何泣いてんのよ!』

春香『―――せに』ポロポロッ..........

伊織『声が小さ』


バンッ!


伊織「ッ」ビクッ

春香『伊織ちゃん達だって何も言ってくれなかったくせに!』グスッ


伊織『は、はぁ!?』

伊織『急に何言ってんのよ』

春香『じゃぁこのクッキー食べてよ!』

ガンッ! コトッ........

伊織『っ』ビクッ

春香『嘘もお世辞もごまかしもなしで感想言って!』

伊織『ちょ、ちょっと……落ち着い』

春香『早く!』

伊織『わ、わかったわよ……』ヒョイッパクッ


…………………

…………

……

伊織『食べられたものじゃないわね』

春香『うん。そうだね。そして今までも』

春香『でもっ! みんなは美味しい美味しいって言って嘘ついてた!』


中断

春香→伊織ってちゃん付けだっけ?


>>57ただのミス
小鳥さんと混ざってしまった


>>54から訂正

~事務所(映像)~


伊織『早く言いなさいよ』

春香『……………』

伊織『春香!』

春香『…………っ』ポロッ

伊織『っ、な、何泣いてんのよ!』

春香『―――せに』ポロポロッ..........

伊織『声が小さ』


バンッ!


伊織「ッ」ビクッ

春香『伊織達だって何も言ってくれなかったくせに!』グスッ


伊織『は、はぁ!?』

伊織『急に何言ってんのよ』

春香『じゃぁこのクッキー食べてよ!』

ガンッ! コトッ........

伊織『っ』ビクッ

春香『嘘もお世辞もごまかしもなしで感想言って!』

伊織『ちょ、ちょっと……落ち着い』

春香『早く!』

伊織『わ、わかったわよ……』ヒョイッパクッ


…………………

…………

……

伊織『……率直に言って不味いわ』

春香『うん。そうだね。そして今までも』

春香『でもっ! みんなは美味しい美味しいって言って嘘ついてた!』

俺なら正直にクソマズイっていってやんよ!






嘘です…言えません…ちょっと崖にアイキャンフライしてくる


伊織『そ、それは……』

春香『ほら、言ってくれなかった!』ポロポロ.......

伊織『あ、アンタがあまりにも嬉しそうだったからよ』

春香『……やっと言ってくれたね』ニコッ

伊織『え?』

春香『私の為に伊織達は嘘ついてた。それはとっても嬉しかったしありがたいと思った……でも』

春香『亜美には言わなかったけど、それはね? 知らないからこそなんだよ』

伊織『……………』

春香『解る? 私はみんなが喜んでくれてると思ったから喜んでお菓子を作ってた』

春香『でもね? それは全然ちがくて、本当はみんな、クッキーなんて嬉しくなかったんだよ?』

伊織『それがどうしたのよ……』

春香『わからない?』

春香『それはつまり、私はみんなのことを喜んで苦しめてたってことだよ?』

春香『みんなのことを苦しめて、辛い思いさせながら、私だけは喜んでたんだよ……?』グスッ


春香『そんなのみんなを裏切ってたのと同じ』

伊織『それは……』

春香『違わない! 違わないよ!』

伊織『っ……』

春香『仲良くしようとか、みんなでとか言いながら、ずっと、ずっと裏切り続けてたんだ!』

伊織『っ、は、春香……』

春香『も、もうっ……もう仲間なんて言えないよっ! 仲良くしようなんて……言えないよっ!』

伊織『あの――』

春香『どうせならもっと、もっと早く言ってくれればよかったのにっ!』

伊織『っ、ごめんなさい……』

春香『謝らないで、謝らないでよ……私が、私が……うぅ……』

伊織『ご、ごめんなさい……ごめんなさいっ!』

タタタッ.....ガチャッ

タタタタタタタタタッ!


中断

伊織「何かを得るためには何かを失わなければならない…等価交換それが世界の真理だなんて私たちはまだしらなかった」

ドッキリか逆ドッキリか知らんが、
ドッキリとは驚かすモノ。人の心を踏みにじるのはドッキリとは言わん。
ただの悪質な嫌がらせ。

>>67
虹にそんなの持ち出しても意味ないだろ…
虹SSは作者の好きに書くもんだし惨事をいちいち持ち出してたら何もできねーよ嫌なら見なきゃいいだけの単純な話です

プロデューサーとぴよちゃんが平気なのか少し気になるな
本当にドッキリだとしてアイドルたち(春香のぞく)と見ててなぜ平気でいられるのか…律子でさえ辛そうなのに
実はこれ逆ドッキリだとしたらプロデューサーやぴよちゃんは知ってるから平気なら納得もいく


~モニタールーム~


貴音「…………………」

小鳥「…………………」

P「……………………」

律子「……春香、すごく辛そうですね」

あずさ「どっきり……って、言えるのかしら」

真美「千早お姉ちゃん達が……」

千早「」

美希「」

響「」

P「無理もないな、千早達は春香に救われてきたんだから……」

貴音「……やよい、行けますか?」

やよい「……私、こんな春香さんをさらに追い詰めるなんて、したくないです」

普通に考えたら、今迄は美味しかったけど今日だけは失敗して不味かったって考えるのが普通なのに、
なんで今迄も不味くてずっと嘘を付いてきたっていう流れなの?

何回読んでも、そう読み取るのは不可能なんだけど?
急にそう決めつけて、それを押し通してて不自然なんだけど?


律子「もう止めた方が良いんじゃないですか?」

真美「……真美は、やるよ」

やよい「え?」

真美「亜美達は頑張ったのに、真美達が逃げちゃダメだよ」

真美「それにまこちんが言ってたじゃん」

真美「負けることを厭わない。それが実力だと肝に銘じて、さらに上を目指して積み上げるだけだよって」

あずさ「それがどうかしたの?」

真美「真美達は敗北する結果の見えきった戦いの最中なんだよ」

真美「でも、戦わなきゃ。そして負けて……はるるんに謝らなきゃ。逃げたら、謝ることさえできないよ」

P「……そうか。どうする、やよい」

やよい「………………」


タッタッタッタ............ガチャッ


伊織「……帰ったわ」


雪歩「伊織ちゃん……」

伊織「……以前のまでダメだって考えちゃってるから、あれは相当やばいわ」

P「あれは予想外……いや、自信作を全否定されたならそう考えちゃうか?」

小鳥「例えるなら、恋人のイベントの中で一番大きいプロポーズを」

小鳥「こんなのじゃ全然嬉しくないって突っぱねられたようなものですよ」

P「えっ」

小鳥「じゃぁ、今までのイベントであるデートもつまらなかったんじゃないか?」

小鳥「そう思ってしまう……というより、不安になるでしょうね」

P「そ、そうか……」

伊織「やよい。悩んでる時間はないわ」

やよい「……伊織ちゃん」

伊織「行くの? いかないの?」

やよい「………………………」

やよい「……私、春香さんにちゃんとごめんなさいしたいですっ!」


ガチャッ..........タッタッタッタッ............


伊織「……やよい、やりすぎないで。春香はたとえやよいでも、容赦しないかもしれないから」


next:やよい

~事務所(映像)~


やよい『おはようございますーっ!』

春香『やよい、おはよう……って、時間でもないね』

やよい『でも、仕事先で会った時はおはようから始まるって』

春香『ぁ、うん、そうだったね』

やよい『……春香さん?』

春香『……ねぇ、やよい』

やよい『なんですかー?』

春香『嘘つくの……辛くない?』

やよい『嘘、ですか?』

春香『うん、嘘』

>>76
そりゃ今日は自信作だから皆喜んでくれるとウキウキ気分で持ってきたのに不味いと言われたら自信作で不味いなら今までのも不味いのを皆我慢して食べてたんだろうなと普通に考えたらわかるもんだろ


やよい『嘘をつくのはやっぱり辛いと思います……』

春香『だよね。じゃぁ、正直に言ってよ』

やよい『なにをですかー?』

春香『私のクッキー……美味しくない?』

やよい『え?』

春香『……いいや、ごめん。じゃぁとりあえず食べてみてくれるかな』

やよい『クッキーをですか?』

春香『うん、そうだよ。今日の朝作ってきたクッキーだよ』

やよい『えへへっ、ありがとうございますーっ!』

春香『ううん、気にしないで。何も、気にしなくていいから』

やよい『はい?』

春香『なんでもない。春香さんのクッキーだよ。どうぞ』コトッ


~モニタールーム~


律子「ちょ、ちょっと……どういうこと、なの?」

伊織「どうしたのよ律子」

小鳥「伊織ちゃんは見てて違和感を感じなかった?」

伊織「違和感?」

貴音「一度も、笑っていないのですね?」

小鳥「ええ、春香ちゃんはずっと無表情なのよ」

あずさ「これが、あの春香ちゃんなの……?」

伊織「わ、笑わないって、そんな……笑顔=春香みたいなものなのよ!?」

律子「そんなこと言わなくても解ってるわよ! でも、事実笑ってないじゃない、一度も!」

伊織「!」ビクッ

貴音「律子嬢、ここで怒鳴ってもただ悪戯にみなを怯えさせるだけですよ」

律子「っ、そうね……伊織、ごめんなさい」

伊織「ゎ、私も悪かったわ……さっきの春香の表情と言葉が頭から離れてくれなくて……ごめんなさい」

これって律子やプロデューサーにぴよちゃんも当然やるんだよな?
アイドルたちにだけやらして自分たちは安全圏にいるなんてマネはしないよね?


P「……今、モニターを見れてるのは何人です?」

小鳥「まだ実行してない人だけですよ」

真美「ほかはみんな映せないような状態だよ……」

律子「…………………」

貴音「今はただ見守りましょう。やよいを」

律子「解ってます……」

伊織「流石に手を出そうとしたら止めるわよ。いいわね?」

P「ああ」

真美「あっ、やよいっちがクッキーを手に取ったよ」


~事務所(映像)~


やよい『えへへっ』クンクンッ

春香『……なに?』

やよい『このクッキーとっても美味しそうな匂いですっ』

春香『美味しそうな匂いが美味しいとは限らないから、気をつけた方が良いよ』

やよい『……あの、春香さん』

春香『なに?』

やよい『どうしてそんな元気ないんですか?』

春香『そう見える? ないわけじゃないけど、控えとかないと家に帰るまでに死ぬかもしれないから』

やよい『は、春香さん死んじゃうんですか!?』

春香『死ぬとは言ってないよ。可能性があるってだけで』

春香『それで、食べてみた?』

やよい『ま、まだ……です』


中断

流れは元から一本
崩したら話が壊れる……

救済がないまま終わるなら許さない


春香『そっか、食べたくないんでしょ』

やよい『え?』

春香『ごめんね、無理強いはしないから』

やよい『あ、あの……』

春香『そうだよね、うん。みんなに迷惑かけちゃった』

春香『わざわざ食べてもらう必要はなかったよね』

春香『初めから食べたいか食べたくないか聞けばよかった』

春香『お腹壊してたりしたらどうしよう……美希、トイレ行ったし』

春香『もしかしたらお腹壊しちゃったのかもしれないっ』

春香『私どれだけみんなに迷惑かけてるんだろう』

春香『苦しい思いさせて、辛い思いさせて、それでもまだこんなことして』

春香『だからやよい、無理しなくていいや』

やよい『は、春香、さん……?』


春香『うん?』

やよい『え、えっと……』

春香『あ、もしかして食べたいの?』

春香『そっか、あぁ、うん。いや別に止めないよ?』

春香『でも正直、私が持ってきてくれたからとか』

春香『食べ物を粗末にするのは勿体無いからとか』

春香『そういう理由なら食べなくていいよ』

春香『だって、そんな理由で食べてもらっても別に嬉しくないし』

春香『そもそも、遠慮したりする必要ないんだよ?』

春香『美味しい時は美味しい、不味い時は不味い』

春香『それは自分がどう思ってても感じちゃうものなんだから』

春香『ね? ほら、食べるなら食べてもいいけど』

春香『不味いか美味しいかはっきりと突きつけてくれる場合のみにしてね?』

春香『それで、どうするの? 食べる? 食べない?』


やよい『えっと……美味しいか、美味しくないかを言えばいいんですよね?』

春香『違うよ。違う。全然違うよ』

春香『美味しくないじゃ優しすぎるんだよやよい』

春香『美味しいか、不味いかの2つに1つしか選べないんだよ』

春香『第一、美味しくないじゃ、おいしくはないけど。みたいな感じでしかない』

春香『それはつまり、美味しくはないけど不味くはないなんて中途半端な答えになっちゃうよ』

春香『それじゃダメ、絶対ダメ』

春香『美味しいか、不味いか断言してもらわなきゃ困るんだよね』

春香『ほら、作ってきたのは私だし』

春香『やっぱり率直な感想を聞きたいと思うわけで』

春香『でも、もしあれなら行動で示してもいいんだよ?』

春香『食べかけを床に捨てて踏みにじられたりしても』

春香『それは食べ物ですらないってことの証明になるから』

春香『むしろそれはそれで自分がどれだけ身の程知らずだったかに気付けるわけだし』

春香『さぁ、やよい。食べる? 食べない? 踏み砕く? あ、仕方ないからゴミ箱に捨てるっていう選択肢も特別に上げるよ』


やよい『は、春香さん!』

春香『なに?』

やよい『どうしちゃったんですか!?』

やよい『こんなの春香さんらしくないです!』

春香『春香さんらしくない? えっと、じゃぁ私らしいってなんなのかな』

春香『これといった才能はないし、出来る事といえば笑っていることくらい』

春香『でも、自分的にはみんなが喜んでくれていたし』

春香『自分はお菓子を作れる取り柄があるんだなぁなんて思ってたんだけど』

春香『それはただの幻想でしかなかった』

春香『はいっ、じゃぁ私には何が残ったのか?』

春香『残念ながらなんにも残ってはいませんでした』

春香『ああ、笑顔を作る? ごめん、ちょっと笑う余裕もないから』

春香『その唯一の長所っぽい何かも剥奪されちゃったんだよね』

春香『そっか、リボンがトレードマークだったんだっけ? はいじゃぁこれも取っちゃおうか』

やよい『は、春香さん……』

『さて、765プロダクションアイドルの元気と明るさが取り柄の高槻やよいちゃん。目の前にいる私はだぁれ?』

あと残ってるのは誰だ…?


やよい『うぅっ……ぅぁ……』グスッ

『あ、怖い? 良くわからない人?』

『そうだよね、ここまで来たらもう不法侵入してきた一般人って感じかな』

『それとも、妖怪とかそういうたぐいの奇怪ななにかに思えたのかな?』

『仕方ないから765プロダクションのアイドル、天海春香さんからリボンをお借りして』

春香『とりあえずリボンが唯一の私らしさとして天海春香を名乗っておこうかな』

春香『さて、やよい』

春香『さんざん余計な話しておいてアレなんだけど』

春香『最初の話に戻ろう?』

春香『私のクッキー食べてくれる?』

やよい『グスッ、うぇっひっくっ……うぅぅっ』

やよい『こんなの、こんなの春香さんじゃないよぉーっ!』


ダダダダダダダダッガチャッ.........ダダダダダダダダダダッ


ウワァァァァァァァァァァン


春香『……逃げるのはつまり、食べたくないって、ことだよね』


~モニタールーム~


小鳥「」

P「」

律子「」

貴音「」

真美「」

伊織「」

あずさ「」

小鳥「――はっ、な、なんだったのかしら今の」

貴音「見てはいけないものを見てしまった。いえ、開けてはいけないものを開けてしまったのでしょうか?」

小鳥「やよいちゃん相手に容赦ない口撃だったわね……」

律子「踏み砕いてとか、ゴミ箱に捨ててとか」

伊織「なんなのよあれ、とりあえずアイドル天海春香からリボンを借りるって!」

真美「はるるん……壊れちゃった……」


律子「残念ながらなんにも残ってはいませんでしたって言った時」

律子「私、意識が飛ぶかと思いました……春香があんなに怖いなんて」

P「俺も……ゾクッとしましたよ」

あずさ「つ、次私なのだけど……」


うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん

ガンッ!


伊織「!?」

ガチャッ

貴音「やよい、無事ですか!?」

やよい「春香さんが、春香さんがぁ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁん」

あずさ「お、落ち着いて~、ね? よしよし、よしよ~し」ナデナデ

やよい「うぇぇぇぇぇぇぇん」

>>105
あとは貴音真美律子プロデューサーぴよちゃん社長


小鳥「……取り返し、つきます?」

P「ド、ドッキリ……ですし」

小鳥「あの春香ちゃんにドッキリでしたなんて言えます?」

P「……えーと、それはまたあとで考えましょう」

やよい「ふぐっ、えぐっ……」

あずさ「貴音ちゃん、お願いできるかしら」

貴音「はい、やよい。こちらへ」

やよい「うぇっ、ぐすっ、えぐっ……」トテトテ.......ギュッ

真美「あずさお姉ちゃん、行っちゃうの?」

あずさ「ええ、真美ちゃんが少しでも楽になるように、鎮めてくるからね」

律子「あずささん……気をつけて下さい」

あずさ「こう見えても、私は律子さんよりも年上なんですよ~」


スタスタスタ.........ガチャッ


伊織「鎮められるのかしら」

貴音「やるやらないではありません。やる以外に道はないのです」


next:あずさ

~事務所(映像)~


あずさ『こんにちは~』

春香『こんにちは、あずささん』

あずさ『あら、春香ちゃん何があったの?』

春香『はい?』

あずさ『やよいちゃんが泣きながら走り去っていったのよ』

あずさ『でも、ここにいるのは春香ちゃんだけでしょ~?』

あずさ『だから、春香ちゃんが何かし』

春香『私がなにかしたってことですか?』

春香『したのかしてないのかをいえば、しましたよ』

春香『と言っても、ただただ一方的に喋っただけですけどね』

春香『安心して欲しいのは』

春香『いつものようにお世辞とかごまかしとかの言葉を貰ったわけじゃないってことかな』

春香『遠回りに言わないと、クッキーを強引に食べさせたわけじゃありませんってことです』


あずさ『し、知ってるのかな~って』

春香『あ、そっちだったんですね』

春香『はい知ってますよ』

春香『私がしゃべり続けたら怯えて逃げちゃいました』

春香『以上です』

あずさ『そ、そう……』

春香『はい』

あずさ『…………………』

春香『…………………』

あずさ『………………』

春香『………………』


~モニタールーム~


小鳥「なにこれ気不味い」

P「あずささんから話題をふらないと喋りそうもないですよ?」

貴音「初期の千早のような感じですか……」

伊織「あずさ、頑張りなさいよ……」

やよい「すぅ……すぅ……」

貴音「泣き疲れてお休みになりましたね」

真美「その方が良いよね。もっと酷いことになるかもしれないから」

伊織「…………………」

P「さて、クッキーの話題を振るか?」


~事務所(映像)~


あずさ『それで、何を話したの?』

春香『春香らしさですけど』

あずさ『春香ちゃんらしさ?』

春香『ええ、まぁ端的に言うと』

春香『天海春香という人間は、何をもってして天海春香なのか。ということですよ』

あずさ『あらあら……難しい話?』

春香『いえ、簡単ですよ』

春香『天海春香はリボンがなければただの人間でしかありませんから』

あずさ『そんなことはないと思うわ』

春香『じゃぁ、あずささんが思う春香らしさってなんですか?』


あずさ『そうねぇ』

あずさ『明るく――』

春香『じゃぁ、私は第一条件失格ですね』

あずさ『え?』

春香『あ、ごめんなさい。続けてください』

あずさ『え、ええ……明るくて、元気で、優しくて、気が利いて、お菓子を作ってきてくれる子よね』

春香『今の私にはなにか該当してますか?』

あずさ『それは……』

『はいっ、というわけであずささんから見た私はただの人間。役柄で言うならただのモブです』

春香『と……こんな感じのことを話しただけです』

あずさ『は、春香ちゃん……えっと、お菓子はまだ否定してないわ』

春香『……そうですか』

春香『じゃぁ食べます? いいですよ?』

コトッ

春香『さっき言ったとおり2択で選んでくださいね?』


あずさ『……春香ちゃんは自分で食べたの?』

春香『止めてくださいよ。まるで私が味見せずに作ったみたいな言い方』

春香『朝早くに起きて』

春香『いつも同じような味じゃ嫌だろうなぁなんて試行錯誤を重ねながら』

春香『硬いクッキーよりも柔らかいほうが……』

春香『そうだ、しっとりとしたクッキーなんていいかもしれない』

春香『そんな風に自分の考えに一喜一憂しつつ』

春香『みんなの喜ぶ笑顔を想像しながら』

春香『何度も小さく作って、甘さを調節していって』

春香『お母さんとお父さんにも味見して貰いながら』

春香『絶妙な焼き加減と甘さに整えたクッキーなんですから』

春香『と、いう余計な話はどうでもいいですよね』

春香『さて、あずささん。食べてみてください』

春香『あ、遠慮なく答えてくださいね? 嘘、誤魔化し、お世辞その他もろもろはご免です』


あずさ『い、いただき、ます……』パクッ

春香『……あ、別に飲み込まずに吐いても良いですよ?』

あずさ『……………………』モグモグ

春香『……………………』

あずさ『………』ゴクッ

春香『で、どうです?』

あずさ『その、えっと、わ、私には合わな』

春香『つまり?』

あずさ『え?』

春香『私は二択って言ったじゃないですか』

あずさ『っ……それは』

春香『言えませんか? じゃぁ代弁しますね』

春香『私には合わないので、つまり不味い。ですよね?』

ハイライトさん仕事してください(怯え)


あずさ『ち、ちが』

春香『違うとか言わないでください』

春香『良いんです。不味いなんてことは解りきってますから』

あずさ『それは』

春香『千早ちゃん、美希、雪歩、響ちゃん、亜美、伊織には不味いと言われ』

春香『やよいには逃げられちゃいましたから』

あずさ『春香ちゃん落ち着いて……お願い』ブルブル

春香『え? 落ち着いてますよ?』

春香『むしろ落ち着きがないのはあずささんじゃないんですか?』

あずさ『そ、そんな、こと』ブルブル

春香『そんなに震えちゃって』

春香『寒いんですか? それとも』

春香『やよいちゃんみたいに、私が怖いんですか?』


春香『……………』スッ.......

あずさ『!』ビクッ

春香『私、そんな怖い顔してます?』

春香『今、私笑ってないと思いますし、怒ってもないと思うんですよ』

あずさ『そ、そう……ね。無表情……よ』ブルブル

春香『あ、そういうことですか』

春香『無表情で色々語ってるせいで』

春香『何を考えているか解らない』

春香『だから、怖い』

あずさ『…………………』

春香『じゃぁ―――』


春香『 あ は っ ♪ 』


あずさ『』

あずさ『―――ぃ』

あずさ『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ』


ガタッ、ガンッタッタッタッ、ガチャッ タッタッタッタッ


~モニタールーム~


P「」

小鳥「」

真美「」

伊織「な、なによっ、なによっ、なんなのよぉっ!」

律子「いや、いやっいやっ……」ブルブルブル

貴音「臨、兵、闘、者、皆、陣、列、前、行、臨、兵、闘、者、皆、陣、列、前、行……」ブルブルブル

真美「や、やだっ、死にたくない、死にたくないっ!」

小鳥「み、見ました?」

P「み、見たわけないじゃないですか……声だけで花畑が見えたのに」

小鳥「律子さん、貴音ちゃん、真美ちゃんは見ちゃったみたいです」


ダンダンダンッ!


あずさ「開けて、開けてくださいっ! ひとりはいや、です、一人は、一人はいやぁぁぁぁ!」


ガンガンガチャッ


P「あ、あずささん!」

あずさ「いや、いやっ、助けて、助けてください、プロデューサーさんっプロデューサーさんっ!」ガチガチガチ


小鳥「…………………」

P「…………………」

小鳥「次、私行きますね」

P「小鳥さん……」

小鳥「止めなかった時点で私はもう重罪ですし」

小鳥「あわよくば、みんなが慌てたりしている姿で楽しもうともしていました」

貴音「……………………」ブツブツブツ

伊織「ありえないわ。ありえない、あれは誰? 何?」

律子「あっ、あっ……あぁっ……」ガチガチガチ

あずさ「助けてください、許してください、助けてください、許し、ゆる、ゆるし、許して……」

小鳥「その結果が、これですから」


P「……………………」

小鳥「私が戻る……じゃないですね」

小鳥「私が事務所から【消える】までに……」

小鳥「なんとか宥めてくださいね」

P「小鳥さん、待って下さい。戻ってきてくれないんですか?」

小鳥「ふふっなんで大の大人が2人で茶番劇なんかしてるんでしょうね」

P「小鳥さん」

小鳥「大丈夫ですよ。ちゃんと戻ってきますから」

小鳥「それよりも、本来の順番である律子さんをなんとかお願いしますね?」

ガチャッ

P「……………なんとかって」

律子「笑った、笑った……春香、春香が? あれが、春香……?」ブルブルブル

P「……………これも俺の責任だからな。何とかするしかない。か」


NEXT………小鳥


時間なのでここまで

ほ、ほらっ、心霊ドッキリだよ、心霊ドッキリ!

実はPに対するドッキリ
仕掛け人は残り全員

>>131
だったら面白いでしょうね(白目)

ハイライトさんが消えた状態で作り笑いでのアレは恐怖ものでしかない(震え)


next:小鳥


~事務所(映像)~


小鳥『たっだいま~!』

春香『お帰りなさい、小鳥さん』

小鳥『あ、あらっ? いたの? 春香ちゃん』

春香『え? どういうことですか?』

春香『私はずっとここにいたじゃないですか』

春香『もしかして、あまりにも何もないから』

春香『存在さえもなくなっちゃったんですか?』

小鳥『そ、そういうことじゃなくて、事務所に春香ちゃんがいるとは思ってなかったのよ』

小鳥『留守番任せたの千早ちゃんだったから』

春香『あぁ、なるほど』


春香『お茶でも淹れましょうか?』

小鳥『あら、ほんと? 助かるわ』

…………………

…………

……

春香『どうぞ』コトッ

小鳥『ありがとう』ズズッ

春香『……お茶は美味しいですか?』

小鳥『え?』

春香『私が淹れたお茶は美味しいですか?』

小鳥『え、ええ。美味しいわ』

春香『そうですか。ありがとうございます』


小鳥『…………………』ズズッ

春香『…………………』

小鳥『………どうか、したの?』

春香『いえ、別に』

小鳥『そう?』

春香『あ、小鳥さん。お願いがあるんですけど』

小鳥『お願い?』

春香『はい。別にそう難しいことじゃないんです』

小鳥『なぁに? 私にできることなら教えてあげるけど』

春香『実は退職願の書き方を教えて欲しくて』

小鳥『ぶふっ!?』ビチャッ

春香『わわっ何してるんですか……どうぞ、タオル使ってください』

小鳥『ありがと――じゃ、なくて!』バンッ

小鳥『退職願ってなに!? 辞めるつもりなの!?』


春香『退職願って辞める以外で何に使うんですか?』

小鳥『聞いてるのと違う!』

小鳥『退職願なんて書いて、辞めるつもりなのかって聞いてるの!』

春香『?』

春香『辞めるつもりだから、退職願を書くんじゃないですか』

小鳥『は、春香ちゃん……』

春香『だって、私今までみんなを苦しめてきたじゃないですか』

小鳥『え?』

春香『とぼけなくていいですよ。全部解ってますよね?』

小鳥『……クッキーのこと?』

春香『はい』

小鳥『た、たまたま今日失敗しただけかもしれないじゃない』

春香『えーっそれはないですよぉ』ニコッ

小鳥『ひっ』ゾクッ


春香『私、今日のは自信作だったんですよ』エヘヘ

春香『そりゃもう、みんなのことを思いながら』

春香『朝早くから馬鹿みたいに機嫌良く、騙されているとも知らずに作ってきたんです♪』ニコッ

小鳥『は、春香……ちゃん?』

春香『なのに、みんなったら酷いんですよ~♪』アハハ

春香『自信作は不味いやら、食べられたものじゃないやら、食べたくないと逃げ出される始末』アハハ

春香『一応お父さんやお母さんにも味見してもらったんですけど』

春香『その時は大絶賛だったんです♪』フフッ

春香『だからきっと、お父さん達も私を騙してたんですね』ニコッ

小鳥『ひっ、ひぃっ……』

春香『でも、親だったらやっぱり子供の吐き気を催す料理でも美味しいと言う義務があるじゃないですか?』エヘヘッ

春香『だからお父さんたちは良いにしても、みんなはなんで騙してたんですかね』アハハッ

春香『わざわざ自信作を不味いって言う必要なくないですか?』ニコッ


小鳥『そ、そうね……って、わからないわよ』

春香『はい?』

小鳥『今までのは良かったかもしれないじゃない』

小鳥『自信作がダメでも、今までがダメとは限らないわ』

春香『――――――ふっ』

春香『アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ』

小鳥『!』ビクッ

春香『今までで一番美味しく出来たものが』ニコッ

春香『誰ひとり賞賛することなく否定されたのに』ニコッ

春香『今までのが美味しかったなんて――』フフッ

春香『あると思うわけ、ないじゃないですか~』エヘヘッ

春香『………………………』


春香『――馬鹿なこと言ってると刺しますよ?』ギリッ


小鳥『ぇぁ……ひっ……ぁ、ぁぁ……』ガチガチガチ

春香『……まぁ、冗談ですけどね?』ニッコリ


中断します


春香『それはそうと』

春香『自信作の超不味いクッキーが今手元にあるんですけど』

春香『食べます?』エヘヘ

小鳥『ま、不味いなんて言われたのに食べれるわけないじゃない』

春香『あれぇ? おっかしぃなぁ~』アハハッ

小鳥『ッ』ビクッ

春香『この自信作よりも超不味いクッキーはみんな美味しいんですよね?』

小鳥『そ、それは、えっと』ビクビク

春香『じゃぁこのくらい食べてくださいよ』

春香『この不味いクッキーを食べて美味しいって言ってくださいよ!』

春香『今までもしてきたように!』

春香『私の気持ちを弄んでくださいよッ!』


バンッ!


小鳥『ひっ!』ビクビク

春香『早く、早くしてください。ね?』


小鳥『ご、ごめんなさい……ごめんなさい、許して』

春香『許す? 何をですか?』

春香『あっ、もしかして騙してきたことを認めてくれるんですか?』

春香『ありがとうございます』エヘヘッ

春香『でも、それは善意だったんですよね?』

春香『まさか、私が滑稽にもみんなが喜ぶと思ってクッキー作ってくる姿を』

春香『馬鹿にしていたことに対するものじゃぁないですよね?』

小鳥『そ、そんなことしてな』

春香『じゃぁなんで謝るんですか?』

春香『おかしいですよね?』

春香『バカな私が不味いクッキーを作ってくるけど』

春香『自分たちのために作ってくれてるんだから』

春香『不味いって突き返すのも可哀想だよね』

春香『だから心苦しいけど、美味しいって嘘をつこう』

春香『まさか、そういうことじゃなかったことなんですか!?』


小鳥『っ……ゃ、もう、もう……』ブルブル

春香『何がもう嫌なんですか?』

春香『どうして答えてくれないんですか?』

春香『もしかして、肯定するってことなんですか?』

春香『ねぇ小鳥さん。小鳥さんってば』

春香『答えてくださいよ~』アハハッ

春香『いつもしてる妄想みたいに』

春香『素早く答え考えて』

春香『善意の嘘でも付いたらどうなんですか?』

春香『ねぇ、ねぇっ、ねぇっ!』


バンッ!


小鳥『ごめんなさい、ごめんなさいっ……ごめんなさいっ……』

春香『あの、だから。謝って貰っても困るんですよ~』エヘヘッ

中断


春香『謝られると余計辛いです』

春香『だって、それは私を馬鹿にしてたって言うようなものじゃないですか……』

春香『善意の嘘なら謝らないでくださいよ、最後まで私のためだったって言ってください』

小鳥『春香ちゃん……』

春香『そうすれば、救われますよ』

小鳥『救われ……る?』

春香『はい』

春香『小鳥さんも、みんなも。それで救われますよ』

小鳥『春香ちゃん、私、謝らない……から……馬鹿にしてないって信じて、くれる?』

春香『謝るのをやめますか?』

小鳥『や、やめないと、春香ちゃんを馬鹿にしてたことになるなら、できないわ……』

春香『そうですか』

春香『おめでとうございます!』

春香『これで小鳥さん達の罪はなくなりました!』

小鳥『春香ちゃ』

春香『不味いけど言うのは可哀想という善意の嘘!』

春香『それは不味いお菓子を作る私が悪いことになるんですから』エヘヘ

小鳥『ち、ちが――』


春香『違いませんよ。全部、ぜーんぶ。私が悪かったんです。ごめんなさい』ニコッ


小鳥『違う、違うの! 違うの春香ちゃん!』

春香『え………?』

春香『違うん、ですか……?』

小鳥『そう、違うの! 春香ちゃんが悪いわけじゃ――』

春香『じゃぁ、嘲笑ってたんだ……』

小鳥『え?』

春香『だって違うってことは、私は悪くない』

春香『じゃぁ、誰が悪いのか』

春香『それは、わざと美味しいと言い続け』

春香『私が喜ぶ姿を滑稽だと嘲笑っていた、みんなってことですよね?』

小鳥『違う、それも、それも、これも、あれもっ!』

春香『逃げないでくださいよ』アハハッ

春香『誰も悪くない結果なんて――ありませんから』ニコッ

小鳥『ゃ、違う、春香ちゃんはっ、でも、みんなもっ……なんで、だって、謝らなければ……』

春香『謝れば、みんなが悪い。謝らなければ、私が悪い』

春香『2つに、1つなんですよ』ニコッ


小鳥『ぁ……ぅ……』フラフラ

春香『……小鳥さん?』


フラフラ......ガンッ、どんがらがっしゃーん


小鳥『悪くない、悪くないの、誰も……本当に』

春香『……いいですよ』

春香『あとからなんて言ったって』

春香『みんなが私のクッキーを美味しくないといった結果は変わらない』

小鳥『止めて、言わないで!』

春香『それはつまり、今までの関係が偽りだったということ』

春香『もう、終わりです』

小鳥『いやっ、いやぁっ! 聞きたくないっ!』ビクッ

ガタンッ! ガチャッ タッタッタッ..........

春香『全部、何もかも……終わりです。終わっちゃったんですよ』エヘヘッ

またあとで


~モニタールーム~


P「小鳥さん……」

律子「っ……ぅ……」

真「無理じゃないですか?」

P「いや、睡眠薬はちょっとしか使わなかった」

P「だから、すぐに起きてくれるはずだ」

貴音「……………」zzz......

真美「……………」zzz.......

律子「……………」zzz.......

伊織「……………」zzz.......

真「ボクが寝てから何があったんですか?」

P「ただドッキリを続けただけだ」

真「止めなかったんですか……こうなるまで」

P「止められるわけないさ……ここまで傷ついたみんな、傷つけられた春香がいる中で、自分たちだけ何もない」

P「そんなことが許せるようなヤツはここにはいないんだ」


真「でも、だからってこんなの間違ってる!」

P「わかってるさ……解ってる」

P「でも、みんながやるって決めたんだ」

P「たとえ春香に決別されるとしても」

P「ちゃんとした謝罪をしたいからって」

真「どうかしてますよ! あれが春香なんですか!?」

真「あんな作り笑い! あんな言葉! あんな様子の女の子が!」

P「…………ああ。俺たちが、春香をあんな風にしちまったんだ」

真「っ……」


タッタッタ.........ガンッズルッ.........ドサッ


ガチャッ


P「小鳥さん……」

小鳥「………………」フルフル

P「……もう休んでてください。あとは俺たちが何とかします」


P「……誰か、起きてくれ」

真美「………………」

貴音「………………」

律子「………………」

P「無理か」

真「どうするんですか?」

P「俺が行く」

真「でもっ!」

P「俺で終わらせて、全部言う。それしか――」

貴音「……お待ちください、プロデューサー」フラッ

P「貴音!」

貴音「私が、行きます……まだ、私は傍観者ですから」

P「………解った」

真「貴音……」

貴音「無理は致しませんよ。ただ、お話をするのみ」


ガチャッ.........


P「………………」


next:貴音

~事務所(映像)~


ガチャッ


貴音『おはようございます』

春香『あ、貴音さん』

貴音『おや……春香ではありませんか』

貴音『なにやら、面妖な感じがしますが……』

春香『うん、心理ではないけど、真実の扉を開けちゃったからね』

春香『今なら陣無しで錬成できるよ』

貴音『?』

春香『あぁ、伊織が声優やったアニメのやつだよ。解らないなら無視してくれていいよ』

春香『居ない者として扱ってなおよしだよっ♪』


貴音『……春香?』

春香『……ほかの人はこの辺で慌ててくれるんだけど』

春香『そうだよね、貴音さんは慌てたりするような人じゃないよね』

貴音『期待に添えず申し訳ありません』

春香『ううん、別に良いよ』

春香『もうだーれにも期待なんてしない』

春香『信頼なんて以ての外』

春香『団結(笑)、仲良し(笑)、信頼(笑)。わたし~しんじてる~』

春香『そうだね、私信じてるね。私という自分自身しか信じてないよねっていうか』

春香『信じられなくなっちゃった』

貴音『何かあったのですか?』

春香『えーっ!?』

春香『貴音さん、辛い記憶を語れなんていうんですかーっ!? さすが、他人に対しては厳しいですねーっ!』アハハッ


貴音『っ……春香。少し冷静にお話を致しましょう』

春香『冷静になって話す? 何をですか?』

貴音『そうですね、春香の好きなお菓子』

春香『嫌いだよ』

貴音『嫌いなのですか?』

春香『うん、大っ嫌い。事務所のみんなと同じくらいに大っ嫌いだよ』

春香『トップじゃないですからね? ワースト1、2ダブルって感じですよ?』

貴音『私達はそこまで貴女にとって忌み嫌われなければならない存在。と?』

春香『解ってて聞いてるんですか? それとも』

春香『ラーメンばっかり食べてるせいで味覚障害起こしちゃって』

春香『私のゴミ以下のとっても不味い到底食べられないような異物と言っても過言ではないほどの自信作なクッキーよりも』

春香『もっともーっと不味い下水で作ったような異臭さえもしそうなほどの吐き気を催すダークマターのような』

春香『今までのクッキーでさえ、本気で美味しいとか思っちゃったりしてました?』


貴音『そこまで貶されなければいけないのですか?』

春香『……あらまぁ』

春香『貴音さんはどうやらこっちサイドみたいですね』

貴音『どう言う意味でしょう?』

春香『味覚障害を持つ、嘲笑われる人間側ってことですよ』

貴音『別に、味覚障害など患ってはいませんが……』

春香『いや、私もまさか自分がそんななんだとは思ってませんでしたよ』

春香『でも、自分で味見して美味しいと思ったクッキーは』

春香『事務所の人達にとっては究極に不味いものだったらしいんですよ』

貴音『そこまでは申していなかったのでは?』

春香『おっと、これは手強い』アハハッ

春香『正解。ちょっとだけだけど誇張しましたよ』テヘペロッ


春香『とにかく、不味かったのは事実なんですよね』

春香『それが1人2人なら、趣向が合わないなぁなんて割り切れるかもしれませんけど』

春香『残念ながら、私は事務所の社長含めた14人の中から、9人に否定されたわけなんですよ』アハッ

春香『それはもう味覚障害だって認めるほかありませんし?』

春香『そんなダメダメで無個性で、無能で、バカな私が作るクッキーを』

春香『本気で美味しいと思っていたのであれば――』


春香『四条貴音さん。貴女は立派な味覚障害です』


貴音『貴音で結構です』

春香『どうしてそんなこと言うのですか? とか言わないんですね』

貴音『訊ねられたいのであれば、お訊ね致しましょう』

春香『なんですか。私は何を言われようと動じません。ってやつですか』

春香『金輪際お付き合いするつもりないから』

春香『全力で仕返ししようと思ってたんですけど、つまらないなぁ』


貴音『仕返し、ですか。貴女の目的は』

春香『そうだって言ったらどうします? 怒りますか? 怒れないですよね~』アハハッ

春香『だって、みんなが悪いんじゃないですか』

春香『私が初めてクッキーを焼いていった日』

春香『美味しくないって言ってくれれば』

春香『私はもう二度と作らなかったのに……』

貴音『だからこそ、みなが嘘をついたとは考えないのですか?』

春香『え?』

貴音『その日の朝の貴女の緊張した表情は今でも昨日のことのように鮮明です』

貴音『頑張って作ってみた。という時の』

貴音『貴女の不安に震えるぎこちない微笑みも覚えています』

春香『な、何言って……』

貴音『そんな貴女に事実を突きつければ、自信を失い二度と作らないのは明白』

貴音『ゆえに嘘をつき、いつか貴女が真に美味なるくっきぃを作ってくれることを願っていたとは、思いませんか?』


春香『ぁ………』

春香『――っ、そんなの、そんなの良いように解釈しただけだよ!』

貴音『それは、みなの口から直接聞いたことですか?』

貴音『嘘をつき続けたことを認めたかもしれません』

貴音『ですが、それが貴女を嘲笑うためだったと――誰が言ったのですか?』

春香『それは、えっと……』

貴音『春香、名を挙げられるのであればあげてください』

貴音『ただし、天海春香の名において、嘘ではないことを誓いなさい』

春香『…………誰も、言ってません』

貴音『やはり……ならば、みなを信用できないなどとは――』

春香『でもっ!』

貴音『………………』

春香『でも、私の自信作は否定されたよ? それはどう説明してくれるんですか?』


貴音『それは貴女が先ほど語ったではありませんか』

春香『え?』

貴音『趣向が合わないと納得できる。と』

貴音『自信作ならば、以前とは異なった工夫を施したのでしょう?』

春香『……し、した、けど』

貴音『何をどうしたのですか?』

春香『クッキーの硬さを、サックリからしっとりに変えた……』

貴音『ふむ。私達はみなアイドルです』

春香『そ、そんなこと解ってますよ』

貴音『しっとりしているものは口いっぱいに溶けて広がっていくもの』

貴音『ゆえに、笑顔を要する私達にとっては――御法度なのでは?』

春香『ぅ……で、でもっ美味しくないって!』

貴音『自信作と言われれば期待するでしょう』

貴音『その結果が御法度のしっとり感。大きく期待してしまったがゆえに、越えられなかった味の期待値』

貴音『ならば……思わず否定してしまうのも、無理ないではありませんか?』


春香『き、期待させちゃった私が悪いんですか!?』

貴音『自称ほど当てにならないものはありません』

春香『ぐっ……じゃ、じゃぁ!』

貴音『はい?』

春香『このクッキー食べてください!』ドンッ!

貴音『いえ、ですから。御法度だと申し上げたではありませんか』

春香『ふぇっ……』ポロッ

貴音『!』

春香『じゃぁ……捨てます……食べてもらえないなら、捨てるしかないですもんね』グスッ


貴音『お、お待ちを! よ、良いでしょう! 頂きます!』

貴音『しっかりと嗽をすればだ、大丈夫でしょう!』パクッ

春香『えへへっ、ありがとうございますっ』

貴音『いえ、礼など言われるようなものではありません』

貴音『貴女は何も悪くはありません。みなも、何も悪くありません』

貴音『何かが悪いのだと、決めなければいけないのであれば』


貴音『それはきっと、運が悪かったのでしょう』ニコッ


春香『ぁ……』

貴音『みな仕事があったが故に貴女の自信の元』

貴音『くっきぃのしっとり感を受け入れることが出来なかったのですから』

春香『オフだったら……喜んで、くれたんですか?』

貴音『ええ、もちろんです。味はどうあれ、愛があるのですから』

春香『あ、愛だなんてそんな……』

貴音『ふふっ。ではまた。私は少々口を整えなければいけませんので』

春香『ぁ、ご、ごめんなさい』

貴音『気にせずとも良いですよ。貴女のくっきぃが美味なものになることは、みなの――夢なのですから』


スタスタスタ.............ガチャッ


~モニタールーム~


P「やった!」

真「あの状態から一気に引き戻しましたよ?」

律子「うぅっ……」

真美「はる、るん……」

伊織「っ、や、いや……来ないで、来ないでぇ!」ガバッ

P「伊織!? 大丈夫か?」

伊織「はぁっ、はぁっ……」キョロキョロ

伊織「は、春香は? 春香はどこ!? さっきまで追って来てたのよ、まだ近くにいるわ!」

真「相当怖い夢だったんだね、それ」

伊織「ゆ、夢?」

真「うん、そうだよ」

伊織「そ、そう……なら、良かった……」

P「春香は貴音が何とかしてくれたよ。しかもさりげなく味を否定して」

P「ドッキリのお題もしっかりと遂行したんだ……貴音はやっぱり只者じゃないな」


ガチャッ


貴音「戻りました」

P「貴音、よくやった!」

貴音「いえ、何も良くはありません」

貴音「結局、以前から美味しくなかったという設定を作ってしまったのですから」

真「あの春香を納得させられる理由を作れただけで充分すごいよ」

真「少なくとも、ボクだったらあんなに冷静には話せなかったと思うし」

P「そうだな、俺でも無理だったよ」

貴音「しかし……真、美味でした」

真「クッキーでしょ?」

貴音「ええ。不味いともいえず、美味しいと言えず」

貴音「なんとももどかしく、味はどうであれ。と、評価から逃げてしまいました」

貴音「どっきりとしては失敗ですね……申し訳ありません」


P「気にするな、それまで頑張ってくれたんだからな」

伊織「ほらっ、いつまで寝てんのよ。起きなさい!」

律子「っ、ぅ……?」

真美「いお、りん……生きてた、の?」

伊織「勝手に殺さないでよ……」

貴音「お次は律子嬢、貴女ですよ」

律子「次……?」

真美「えーっと、確かはるるんにドッキッ!? あわわわっはるるん怖い、怖い」ガクブル

律子「ドッキリ……そういえば、そうだったわね……」

律子「私、次、ですか?」フラッ

P「大丈夫か?」

律子「ええ……逃げちゃダメ、ですからね」


フラフラ.......ガチャッ


P「睡眠薬強すぎたか?」

伊織「無理に起こしたせいかも……」


next:律子

~事務所(映像)~


律子『おふぁよーございます~』

春香『り、律子さん?』

律子『なに?』

春香『コーヒー飲みます?』

律子『ええ、ありがたく貰うわ……』

…………………

……………

……


春香『どうぞ』コトッ

律子『ありがと、悪かったわ。面倒かけちゃって』

春香『いえいえ、いつもお世話になってますから』


~モニタールーム~


真美「あ、あれ……普通だ」

真「普通だね」

伊織「どういうことよこれ……」

P「貴音が宥めてくれたんだ」

伊織「え……それでまた続けるの?」

貴音「そのようですね」

伊織「どう考えても蛇足でしょ。蛇足」

P「い、一応全員やるべきだろ」

真美「このはるるんなら、真美、平気かも」

真「そりゃ、いつもの春香だからね」


~事務所(映像)~


律子『ふぅ……春香、今日はクッキー作ってないの?』

春香『えっ、いや、その……』

律子『ん?』

春香『その、しっとりしたクッキーにしちゃって』

春香『だ、だからその……口に合わないだろうから……』

律子『別にいいわよ。それでも』

春香『そ、その、美味しくないですよ……?』

律子『え? 何言ってるのよ』

律子『そんなのいつものことじゃない』

春香『ぇ……』

律子『あっ……ち、違うのよ春香!』

春香『ぃ、良いんですっ! 解ってますから、解ってますから……』


春香『今までごめんなさい!』

春香『そして、気を使ってくれてありがとうございました』

律子『………………』

春香『でも、これからは気を使わないで』

春香『正直な感想を言って欲しいんです』

律子『どういうこと?』

春香『みんなのために、美味しいクッキーが作りたいんです』ニコッ

律子『実力向上のために、正確な批評が欲しいってことかしら?』

春香『はいっ』

春香『だって、律子さんってプロデューサーの仕事をバリバリこなしてるじゃないですか』

春香『っていうことは、料理も正確無比にそして完璧にこなせるんじゃないかなーって!』

春香『だから、律子さんに批評してもらって』

春香『どこが悪いのかをちゃんと見極めてそれを直せれば』

春香『美味しいクッキーが作れると思うんです!』


律子『そ、そう、かしら……』

春香『そうじゃ、ないんですか……?』ウルッ

春香『もしかして、律子さんでは手に負えないほど酷いんですか?』グスッ

律子『ぇっ』

春香『律子さんで手に負えなかったら』

春香『私、誰から教わればいいんですか……?』

春香『雑誌とかはもう使い古しちゃいましたし』

春香『そういう専門の人たちには教えてもらえる訳ありませんし』

春香『お料理教室なんて行く余裕もないんです……』

律子『ゎ、解った。解ったから!』

春香『本当ですか!?』

春香『じゃ、じゃぁ、事務所でも作れるようにって材料揃えてあるので、やりましょう!』

律子『えっ』

春香『はい?』

律子『…………………………』


~モニタールーム~


P「律子って料理できるのか?」

伊織「見たことはないわね」

真美「律っちゃんのことだから、コンビニとかで済ませてそうなイメージあるし……」

貴音「酷なことを言うようですが、くっきぃでは春香より確実に劣るかと」

伊織「春香で超不味いなら、律子のは……」

真「それこそ、食べられたものじゃないんじゃ……」

P「だよなぁ……律子の様子を見る限り、クッキーは初めてだろ。あれ」

真美「作り方わからないレベルは不味いっしょー」

貴音「して……どう切り抜けるのでしょうか」


~事務所(映像)~


律子『い、今?』

春香『はいっ!』

律子『……えっと、仕事が』

春香『そうですよね、仕事優先ですよね』

律子『そうなのよ。だか』

春香『私に出来ることはなんでも言って下さい! 雑用でもなんでも手伝いますから、えへへっ』

律子『ど、どうして急に』

春香『クッキーを美味しく作ってみんなを喜ばせたい』

春香『でも、そのためには自分だけじゃダメだって気づいたんです』

春香『だから律子さんに教えて欲しいってお願いしたんですよ?』

春香『つまり一人じゃ出来ないので、律子さんが少しでも早く仕事が終わるように手伝いたいんです』

春香『そうすれば少しでも教わる時間を伸ばせるかなって』


律子『え、営業行かなきゃいけな』

春香『本当ですか?』ズイッ

律子『え?』ビクッ

春香『私、今まで嘘つかれてたことに怒るのは止めましたけど』

春香『これからつく嘘については、一切我慢しませんよ?』ジッ

律子『は、春香……』

春香『正直に言って下さい』

春香『私には上手くなる見込みがないから、教えるのを避けようとしてるのか』

春香『それとも、本当に営業に行かなくちゃいけないのか。を』

律子『それは……』

バンッ!

律子『っ!?』

春香『嘘付いちゃ……ヤ、ですよ?』


律子『つ、作れないのよ』

春香『え?』

律子『だから……クッキーよ。作ったことなんて一度もないのよ』

春香『…………………』

律子『だから、悪いけ』

春香『自称ほど当てにならないものはありませんよ』

律子『な、なにが?』

春香『私、クッキー作れません(自称)じゃ、ウソかホントか判らないじゃないですか』

春香『だから、ね?』


春香『作りましょう、律子さん!』


…………………

アレデ、コレデ

……………

エット..........

……

チンッ!



春香『あ、できま……した?』チラッ


黒塊『』


律子『だから、言ったのにっ……』ウルッ

春香『真実でしたね……』

律子『どうしてくれるのよ……こんな恥を晒すなんて……私のイメージが』

春香『そういう時だってありますよ』

律子『だ、大体春――』

春香『教えて貰えるっていう希望……持っただけ無駄だったんですね……』

春香『承諾する前に作れないからって言って欲しかったです』

律子『その言い方、まるで私が悪いみたいじゃない……』

春香『違うんですか?』

律子『えっ?』

春香『解ったって、言ったじゃないですか。作れないから無理っていうこともできたのに』


春香『 嘘、ついたんですね 』


律子『う、嘘っていうか……その』

春香『言い訳ですか?』

春香『律子さんらしくもない』

春香『……とりあえず、教えてもらうのは諦めます』

春香『これじゃ、私が教えるようなものですからね』

律子『ぅ……』

春香『というわけで、クッキー食べて批評お願いします』

コトッ

律子『……怒らないの?』

春香『今回【も】私の為に言わなかったって思うことにしたので』

律子『そ、それはありがとう?』

春香『さぁ、どうぞ』

律子『……………』パクッ


律子『……率直な意見が必要なのよね?』

春香『はい』

律子『しっとりしているせいで』

律子『歯の裏とか、間にまできてちょっと不快』

律子『味は、まぁ……悪くはないわ』

春香『悪くはない?』

春香『それってつまり、0点だけど、名前が綺麗に書いてあるから点数がもらえる小学校テストみたいなものですよね』

律子『たとえが理解できない……』

春香『つまり味は悪いけれど、本人を前にした緊張で味覚が狂ったからとか』

春香『何らかの理由付けをして採点を甘くしたってことですよ』

律子『……なに、それ』

春香『中途半端な言い方なんて求めてないって言ったじゃないですか』

春香『だから、私なりの考え方で』

春香『正確な採点を導き出しただけですよ?』


今日はここまで



貴音は配置ミスだよ、うん


律子『正確な採点って……』

春香『間違ってますか?』

春香『私、一応これは事実として受け止めているので』

春香『訂正するつもりは全くないんですけど』

律子『………………』

春香『単刀直入に不味いとか、どこをどうしたらいいだとか』

春香『そういうことが聞きたかったのに』


バンッ!


春香『 ご ま か し た な ? 』ギリッ


律子『ぁっ……ぃ、いや、そんなつもりは』ビクッ

春香『そんなつもりは、ない?』

春香『じゃぁなんで』

春香『悪くはないなんて中途半端な答えをしたんですか!?』バンッ!


律子『ご、ごめんなさいっ』

春香『謝らないでくださいよ』

春香『謝罪なんて聞きたくもない!』

春香『なんで中途半端な答えだったのかを聞いてるのかを、答えてくださいよ』

律子『その……私、作れないでしょ?』

春香『はい』

律子『だから……評価なんてしてあげられないって思ったの』

律子『ごめんなさい、実力不足のくせに見栄を張った私が悪いわ』

春香『……じゃぁ、なんで私の教えて欲しいってお願いを聞いたんですか?』

律子『春香があまりにも希望に満ちていたから』

律子『その……言いづらくて。で、でも!』

律子『言ったからには一生懸命練習して、ちゃんと教えられるようになろうって思ってたのよ!』

律子『でもまさか、事務所でいきなりやることになるなんて思わなくて……あははっこれも言いわけよね』


春香『……………そうですか』

春香『無理強いした私の責任でしたね』

律子『え………』

春香『あははっ、あー良いんです。そうだろうなぁとは思ってましたから』

律子『何言ってるのよ、春香』

律子『一体どうしちゃったのよ……』

春香『どうもしてませんよ。律子さんの正直な答えから、誰が悪いのかを導いただけです』

春香『運が悪い。なんて、私達に被害のない回答はちょっと無理そうだったので』

春香『仕方なく互いの悪い点を考えた結果』

春香『元はといえば私が全て悪いんじゃないかなぁ? と』

律子『そ、そんなこと』

春香『嘘は嫌いです。ごまかしも嫌いです』

春香『正直一番!』

春香『というわけで、言っちゃって良いんですよ? 嘘や誤魔化しなんて辛いし苦しいし、良い結果なんて生みません!』

春香『ほら、春香が全部悪いって正直に! さぁ、ご一緒に♪』


春香『春香が悪い、お前が悪い、無理強いした春香が悪い。さん、はいっ!』

律子『……………………』

春香『あれ……どうしたんですか?』

春香『もしかして異論あります?』

春香『異議ありで証拠突きつけて、逆転無罪ですか!?』

春香『別にちゃんとした理由の元、春香が悪くないというなら』

春香『私は別にそれで構いませんし、律子さんが悪いとなったからといって責めるつもりはありません』

春香『ただ単に、嘘偽りなく悪いことした人にはそれが悪いって突きつけてあげるべきだって』

春香『そう思ってるだけですから』

律子『春香……貴女、おかしいわ』

春香『あはっ、かもしれないですね~嘘も方便なのに』

律子『そうじゃないわよ、精神的に壊れてるって言ってるの』

春香『………………………えへへっ』


グシャッ


律子『は、るか……?』

春香『方便だったとしても。今までが嘘偽りだったと知らされた私の気持ちを』

春香『何一つ知らないくせによくもまぁそんなことを』


春香『……いい加減、本気で怒りますよ?』ニコッ


律子『っ!?』ブルッ

春香『人は、過去があってこその人なんですよ』

春香『天海春香もそうです』

春香『色々な経験があったからこそ、今朝までの天海春香がいたわけなんです』

春香『でも、その経験の半分近くが』

春香『喜と楽が嘘偽りだったと、唐突に知らされたとしたら』

春香『天海春香が天海春香でいられると思いますか?』

律子『っ………』

春香『なのに、あははっ……オカシイ? えへへっ精神的に壊れてる?』フフッ


ガシャンッ!


春香『天海春香を壊したのは――みんなだろうに!』

律子『ご、ごめ、ごめんなさい……』ガクガク

春香『謝られたって! 壊れた天海春香はもう、壊れたままなんですよ!』


春香『でも、みんなは私のために嘘をついてた!』

春香『だから、みんなを憎みたくない、嫌いになりたくない!』

春香『だけど、嘘は憎い! 誤魔化されるのも嫌!』


ガンッガンッ!


律子『ひっ』ビクッ

春香『嘘をつくな、誤魔化すな! 嫌だ、嫌だ!』

春香『もう、もうこれ以上私を偽物にしないでよぉ!』

春香『本物の私って何!?』

春香『今までのは誰!?』

春香『天海春香の過去が偽りばかりだった!』

春香『じゃぁ、偽らなかった本物の天海春香はどこ!?』

春香『いない、いない! 過去も、天海春香も、偽りの天海春香も!』


春香『誰、誰なの!? 今ここで叫び続けてる私は――誰なんですかぁぁぁぁぁぁぁ!』


春香『あぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁ!!』


ガンッ ガンッ!


律子『は、春香……』

春香『教えて、くださいよ』

春香『……律子、さん』

春香『今その瞳に映っている女の子は、誰ですか?』

春香『髪はグシャグシャで、顔もめちゃくちゃで……』

春香『偽られた過去しかないその人は……誰ですか……?』

律子『貴女は、貴女よ……天海春』

春香『それは名前だよ! この体に与えられた名前!』

春香『私が聞きたいのはそうじゃないんですよ!』

春香『この体の中にある、秋月律子さんが壊れてると言った精神的な部分、人間としてだよ!』


律子『それは……』

春香『わかるわけ、ないですよね』

春香『だって、今初めて出会ったんですからね』

春香『……偽りを知らない天海春香でも、偽られなかった天海春香でもなく』

春香『偽りを知った天海春香です。今までの私とは違っていて』

春香『狂ってるとか、壊れてるとか思うかもしれませんが』

春香『秋月さん。どうぞ、これからよろしくお願い致します』

律子『春香、貴女は……』

春香『嘘と誤魔化しが大嫌いですけど、それさえなければ私は基本普通なので』

春香『ただ、嘘や誤魔化しをした場合は教育の対象になるので。それだけです』

律子『…………』ヴィーヴィー

春香『秋月さん、電話が鳴ってますよ』

律子『ちょっと出るわ……直行するかもしれないから、またね……』ヴィーヴィー

春香『はい、行ってらっしゃい』


ガチャッ.............


~モニタールーム~


貴音「もしや、何も解決などしていなかったのでは?」

P「……新しい人格が作られたってやつか」

真「誰、え、誰あれ……え、え?」

伊織「真、落ち着きなさい」

真「ででででも!」

伊織「嘘とか誤魔化しさえしなければ平気だって言ってたでしょ」

P「今までのが不味いっていう設定に救われたな」

貴音「ふむ……」


ガチャッ


律子「…………プロデューサー殿、助けて、くれて、助かりました」フラッ

P「すまん……もう少し早く電話を入れるべきだった」

真美「次、真美だね」

P「大丈夫か? もしあれなら俺が先に行くぞ」

真美「ううん、真美は逃げない。みんなにもそう言ったっしょー」ニコッ


真美「戦う背中を見てきた。だから、真美が見せるのも――戦う背中であるべきなんだ!」


ガチャッ..............


伊織「馬鹿ね……死ぬほど怖いくせに」


中断


next:真美

~事務所(映像)~


真美『たのもー!』

春香『あ、どうも初めまして』

真美『えっ? はるるん?』

春香『はい?』

真美『初めましてってどゆこと?』

春香『えっと、私は天海春香なんだけど、今までとは違う天海春香なんだよね』

春香『だから、初めまして。双海真美ちゃん』

真美『いや、いやいやいや! 普通に真美でいいから! 他人みたいで嫌だよ→』

春香『そっか、じゃぁ真美。これからもよろしくお願いします』

真美『は、はい。こちらこそ……』


春香『あらかじめ言っておくと』

春香『私は嘘や誤魔化しが大嫌いです。なので』

春香『くれぐれも、以前のような嘘つく悪戯とかはやらないようにしてね?』

真美『は、はい……えっと、はるるん』

春香『ん?』

真美『何かあったのか教えてくれるなら、聞きたいんだけど……』

春香『かくかくしかじか?』

真美『まるまるうまうま?』

春香『っていうことなんだよね』

真美『へーそっかぁ……って、わかんないよ!』

春香『うんうん、正直者は好きだよ』

春香『じゃぁ、さんざん説明してきて面倒くさいけど、特別に教えてあげるよ』


………………

…………

……


春香『って、いうわけで。私は変わらざるを得なかったのでした』

真美『なんていうか……その、ごめんなさい』

春香『なんで謝るの?』

真美『真美達が元から正直だったり』

真美『そのままずっと隠し通していれば』

真美『はるるんがそんな風に苦しむこともなかったはずだから』

春香『真美は正直だね。あはは大好きだよ。もうぎゅーってしたい』

真美『はるるんも……正直だね』

真美『さっきなんてさんざん説明してきて面倒くさいって言ってたし』

春香『嘘つかれて嫌な思いした人が嘘をつくことができると思う?』

春香『残念! 実は出来ちゃうんですよねー仕返しとかそういう理由で』

春香『でも、私はほら。みんなに対しては憎いとかどうとか思ってないから』

春香『みんなに対しては正直でいようかなって思ってさ』


真美『そっか……』

春香『と、いうわけで偽ることもなく』

春香『自信作(笑)と思って持ってきた激マズクッキー食べてくれない?』

真美『ぶっちゃけた!?』

春香『真美が食べないならプロデューサーさんた貴音さんに押し付けるつもりなんだけど』

真美『あれっ爆撃!?』

春香『念のため袋用意しておくからさ』

真美『激じゃないの!? おえって行く方なの!?』

春香『テンション高いなぁ』

真美『暴走相手にするのは亜美で慣れてるからねー』

真美『真美にもツッコミ力がついちゃったのさ、んっふっふ~』

春香『おめでとう。でもツッコミに回ると禿げるから止めた方が良いよ』

真美『えぇー……っそれ言っちゃうの?』


~モニタールーム~


P「なにこの良い感じに冷たい春香」

P「嘘とか付かなければこんな感じなのか……」

伊織「な、何言ってんのアンタ……」

P「……こういう春香もちょっと良いかな。と」

ゲシッ

P「っ!?」

伊織「ふざけたこと言ってんじゃないわよ!」

P「いや、だっていつもならしょうがないなぁ~とか笑ってくれる春香が」

P「何してるんですか? あんまりふざけるようなら怒りますよ?」

P「なんて冷めた目で見てくるんだぞ!?」

伊織「……聞いた私がバカだったわ」

伊織「あんたってそういう人間だったわね」


~事務所(映像)~


真美『ちなみに、激マズってどのくらい?』

春香『如月さん、星井さん、萩原さん、我那覇さん、菊地さん』

春香『双海亜美ちゃん、水瀬さん、三浦さん、音無さん、秋月さんに不味いと言われ』

春香『食べ物を大事にする高槻さんに逃げられちゃうレベルだよ?』

真美『おおう……』

春香『さて、どうする? 別に無理強いはしないよ?』

真美『正直なところ引け目を感じるんだけど』

真美『そこまで言われると好奇心が……』

春香『好奇心は人を殺すらしいよ』

真美『えっ、なに? 真美死ぬの!?』

春香『あまりの不味さに作った私を刺殺したり?』

真美『何そのクッキー怖い』


真美『とりあえず……食べてみるね?』

春香『どうぞ』

真美『……………』モグモグ

真美『美味し……けほっ。美味しくない』

春香『うんうん。正直は好きだよ』

真美『でも真美こういうの好きだし、味は大分良くなってると思うよ→』

春香『え……?』

真美『う、嘘じゃないんだかんね!? 真美、ちゃんと思ったこと言ったよ!』

春香『そっか』

春香『正直に嬉しいな。えへへっ』

真美『………………』

真美『あ、そのね。亜美が500円貰ったみたいだから返しに来たんだ』つ¥500

春香『わざわざ良いのに』


真美『ううん、良くないよ』

真美『クッキー以上に、はるるんには助けて貰ってたから』

真美『だから、はるるんにお返しをすることはあっても』

真美『はるるんからこういうものは貰えないよ』

春香『私、嘘は嫌いだよ?』ジッ.......

真美『……………………』

春香『……………………』

真美『……………………』

春香『ふぅ……疑ってごめん』

真美『ううん、良いよ。今までしてきたことを考えたら当然だから』

真美『本当に……ごめんね』

春香『…………………』

真美『ぉ、お金返しに来ただけだから! それじゃね!』ダッ

春香『まっ』


ガチャッ.......バタンッ


春香『………真美』


~モニタールーム~


貴音「春香を怒らせることなく穏やかに終わらせましたね」

伊織「そうね、よく堪えたと思うわ。最後のあの目」

千早「あら……だいぶ落ち着いたのね」

響「あのままだったら自分謝罪すらままならなかったぞ」

P「おっ、戻ってきたのか」

美希「ただ単に最初に死にかけたから戻れただけなの」

真「まぁ、まだ何人かは魘されてるからね……」


ガチャッ


真美「ふぅ……真美……もうゴールしてもいいよね?」

伊織「残念だけどダメよ。プロデューサーが殺されてからじゃないと」

P「馬鹿言うな。俺は完璧に手懐けて安全に終わらせる」

貴音「自称ほど当てにならないものはありませんよ?」

P「ほう、言ってくれるな」


P「俺はプロデューサーだぞ」

P「つまり、春香のことを1から90まで知ってるわけだ」

美希「……変態さん?」

P「そんなことはない」

伊織「いいからさっさと行きなさいよ」

伊織「みんなは私達が起こしておいてあげるから」

貴音「プロデューサー、ご武運を」

P「ああ、見てろよ」

P「765プロのプロデューサーの性能ってやつをな」


ガチャッ


伊織「ったく……」ブーブー

伊織「あら、新堂から? どうかしたの?」


next:プロデューサー

~事務所(映像)~



バンッ!

P『おっはるる~ん!』

春香『? プロデューサーさん?』

春香『まだお酒飲むような時間じゃないですよ?』

P『いやぁ、真美と途中で会って』

P『事務所で春香が寂しそうにしてると聞いたから』

春香『嘘は嫌いなので止めてください』

P『わっほい! どうした春香、冷たくて気持ち良いな』

春香『はい?』

P『どうした春香、冷たくて気持ち良いな』

春香『いえ、別に繰り返してとは言ってませんよ』

春香『ただ、触れてるわけでもなく冷たくて気持ちが良いって……』

P『そのちょっと冷たい眼差しグッドです』


春香『え……』

P『嘘が嫌いなら正直に話すしかないじゃないか』

P『だから正直に、春香の冷たい対応が気持ち良いと言ったんだ!』

P『なにか問題でもあるのか? ん?』

P『おいおい、まさか嘘ついてるとか誤魔化してるとか思ってるのか?』

P『そんなわけがないじゃないか!』

P『春香に嘘をついたって何の得も――あ、ある、あるぞ!?』

P『春香に冷たい目で見られた挙句、蔑まれるじゃぁないか!』

P『それはそれで……なぁ?』ジッ

春香『ひっ』

P『ちょいちょいちょい、そんな怯えた目はナンセンスだぞ』

P『俺が今望んでるのはいつもの春香が絶対にしない』

P『以前の千早のような超coolな冷たい目なんだぞ』

P『正直になってるんだ! さぁ、春香も正直に言うんだ! 気持ちが悪いと!』


春香『………………』フイッ

P『かはぁっ!』

P『まさかの見て見ぬふりだと!?』

P『くっ……これは痛い』

春香『…………………』

P『でも、放置プレイも美味しいです』

春香『ッ!?』ビクッ

P『そういや、嘘や誤魔化しがダメなんだよな?』

P『じゃぁ正直に言うけど』

P『いつもその胸を見てます』

春香『!』バッ

P『実はお尻も見てます』

春香『ッ!』バッ

P『そして太ももも見てます』

春香『っ……』ビクッ

P『だけど、撮影でしか見れないその程よい肉質だろう脇腹が大好きです』

春香『ひぃっ』ビクッ

P『嘘付いたらいけないので単刀直入に。抱きしめて良いかなぁぁぁぁぁぁぁ!!』ガバッ

春香『いやぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!』

スパンッ!

P『ありがとうございます!』


春香『はぁっ、はぁっ……』

P『嘘が嫌いって言うから、正直なったんじゃないか』

P『なのに引っぱたくなんて……嬉しいです』

春香『き、気持ち悪い』

P『いやっほう!』

春香『えっ』ビクッ

春香『な、何なんですか一体!』

春香『嘘は嫌いです!』

春香『でもだからってこんなセクハラはもっと嫌です!』

P『………ふぅ』

P『お前が望んでるんだろ。嘘は嫌だって』

P『だけどな。偽ってなきゃ冷静にお前らをプロデュースなんてできるわけがないんだ』

P『お前の過去が全部偽りで、そのせいで壊れちまったって言うなら』

P『今までも、これからも。偽り続けなきゃいけない俺はどうなるんだってことになるぞ』

春香『プロデューサーさん……』


P『全力で引っぱたいて、本当の意味で冷静になれたなら』

P『考える必要もなくわかるだろ』

P『美希はちょっと特別かもしれないが』

P『千早も、雪歩も、響も、真も、亜美も、伊織も、やよいも』

P『あずささんも、小鳥さんも、貴音も、律子も真美も、俺も、社長も、当然。お前も』

P『それだけじゃない、世界中の誰もが過去に偽りを持ってるんだよ』

春香『それは……』

P『けどな? みんな壊れたりなんかしない』

P『その偽りがあったからこその今の自分なんだと、受け入れ、そのままの自分で生きてるんだ』

春香『…………………』

P『騙されてたことは悲しいし、辛いかもしれない』

P『それでも、その過去があったからこその誇れる自分を作って見せろ』

P『そして、嘘や偽りだらけの自分の自慢を現実にして、みんなの呆けた顔でも拝んでやろうじゃないか!』


春香『プロデューサーさん……私……』

P『誰にだって迷う時はあるさ』

P『その中で間違ったことをしちまうことだってある。今回みたいにな』

P『だけど、それも過去だ。大事な経験だ』

P『ちゃんと受け止めて、活かせそしてそれがあったからこその誇れる自分になれ』

ギュッ.......

春香『っ……』

P『そうすりゃ、困らされたみんなだってきっと許してくれるさ』

春香『でも、でもっ……ぐすっ私……』

P『俺はお前のプロデューサーだぞ?』

春香『ぇ?』グスッ

P『必要なら俺も一緒に謝ってやる。最後まで、付き合ってやるよ』

春香『プロデューサー……さん……』

P『…………………』スッ.........


~モニタールーム~


真美「あ、兄ちゃんが看板持ってる!」

貴音「少々小さいですが、衣服の中に隠していたのですね」

伊織「……とりあえず行くわよ」

小鳥「そ、そうね」

律子「まずは春香に謝らなくちゃ」

真「そうだね、今までの否定までしちゃったし」

千早「もう、家に来てくれないかもしれない……」

亜美「だいじょぶっしょー。はるるんならきっと」

貴音「どっきりとはいえ、やりすぎた気もします。解りませんよ」

響「そうだなー……許されないかもしれないな」

美希「レッツゴーなの」


~事務所~


P「すまん春香! 実は全部ドッキリなんだ!」スッ

看板『ドッキリ大成功!』ドドンッ!

春香「え……?」


ガチャッ......


伊織「春香」

雪歩「春香ちゃん」

美希「春香」

真美「はるるん」

真「春香」

小鳥「春香ちゃん」

亜美「はるるん」

律子「春香」

あずさ「春香ちゃん」

やよい春香さん」

貴音「春香」

千早「春香」

響「春香」


全員「「「「ごめんなさい!」」」」


春香「え?」ジワッ

千早「貴女のクッキーは最高に美味しかったわ」

美希「本当に本当なの!」

亜美「ごめんねはるるん! クッキーメチャウマだった!」

真美「美味しいって正直に言いそうだったよ……」

貴音「ええ、真、美味でした」

真「ごめん、本当に……」

伊織「本当に……悪かったわ」


春香「うぇっ……ひっく」グスッ


小鳥「あっ、春香ちゃん……」

律子「ごめんなさい、どれだけ謝ったら良いか……」

響「本当にごめんな! 自分、最低だった!」

やよい「泣かないでください、春香さんっ」

あずさ「私ができることならなんでもするわ」

雪歩「ごめんなさい、ごめんなさいっ」



春香「ごめんなさい」グスッ

千早「どうして貴女があや」

春香「これ……逆ドッキリです」スッ

看板『逆ドッキリ大成功!』テーレッテレー


P「」

小鳥「」

伊織「」

真「」

雪歩「」

千早「」

美希「」

律子「」

あずさ「」

やよい「」

貴音「」

響「」

真美「」

亜美「」


全員「「「「えぇぇぇええぇぇっ!?」」」」


伊織「ど、どういうことよ!」

P「お、俺に聞くな!」

千早「ど、どうして……」

春香「どうしてもなにも」

春香「クッキーを不味いと罵倒したら私が精神的におかしくなっていくっていうドッキリだよ」

貴音「で、では……」

春香「うん、今までのは全部演技だよ。えへへっ」

美希「ミキ、人間不信に陥りそうなの」


春香「……社長から全部聞きましたよ? プロデューサーさん♪」


P「な、なんのことかな?」

春香「これ、ドッキリの撮影でもなんでもなくて、ただの悪戯ですよね」

千早「え?」

春香「プロデューサーさんと小鳥さんが考えた、春香さんの可哀想な姿が見たいっていう」

春香「最終的には私とプロデューサーさんがイチャイチャする予定のつまらない悪戯」


P「」ビクッ

小鳥「っ」ビクッ

春香「ことを大きくすれば止めてくれると思ったけど」

春香「全然止めてくれないから。つい、本気で……ごめんね? やよい」ナデナデ

やよい「春香さん……」

春香「実を言うと、社長は本当に激マズクッキーでも作ってきたらどうか」

春香「なんて言ってたんですけど、利用されたようなみんなには申し訳なくて」

春香「だから……美味しいクッキーの代わりに、利用することにしたんです」

伊織「どう考えてもどっちも申し訳ないでしょ……」

小鳥「あ、あの時の」

春香「はい?」

小鳥「あの時言った馬鹿なこと言ってると刺しますっていうのは」

春香「7割くらい本気でした」ニコッ

小鳥「ひぃっ」ビクッ


春香「大体、こんなのじゃどっきりとして成立してないんですよ」

春香「相手を疎めるのはまぁ良しとしましょう」

春香「でも、入れ替わる前にネタばらししないでそのまま続けたら」

春香「ただの悪質な嫌がらせじゃないですか!」


バンッ!


P「」ビクッ

小鳥「」ピクピク

あずさ「言われてみたら……」

律子「ごめんなさいとしか言えないわね」

亜美「亜美達は利用されてたのか」

真美「ごめんね、はるるん」


春香「一応、気付いてることを教えようとしたんだよ?」

貴音「そうなのですか?」

春香「雪歩がやった誤魔化しを亜美にやらせて簡単な言い訳って言ったり」

律子「なるほどね。雪歩は優しいから言おうとはせず態度で示す」

律子「それを誤魔化したってことが解りきってるって意味ね?」

春香「あずささんに対し、やよいにしか言ってない二択で選んでって言ってみたり」

春香「小鳥さんには、私はずっとここにいたじゃないですかって言ったし」

春香「貴音さんには、ほかの人はこの辺で慌ててくれるんだけどって言ってみたり。ね」

貴音「改めて並べられれば……確かに」

貴音「あずさの時、小鳥嬢の時は少々不自然ですね」








伊織「でも、あんな状態じゃわかるわけないわ」

春香「ですよねー」

伊織「なんにしても、解ってたなら良かったわ」

春香「ん?」

伊織「さっき新堂から電話があって、ここの事務所にドッキリの依頼をするような相手はいなかったらしいのよ」

伊織「じゃぁ、一体誰が依頼してきたのか」

美希「電話とかじゃなくて、口頭?」

伊織「そうよ。だとしたら特定するのは難しかったから」

春香「あははっわざわざそんなことしてくれたんだ」

伊織「当たり前じゃない。アンタをこんな目に遭わせろなんて馬鹿は許せないし」

春香「とか言いつつ、このドッキリをきっちりと遂行してくれたよね?」

伊織「それは……」


春香「私、悲しかったなー」

春香「みんななら断って、こんな企画無くしてくれると思ったのに」

響「ごめん……」

春香「悲しくて、泣き真似が本物になっちゃうくらいだったんだよねー」

美希「は、春香……」


春香「もう、クッキー作ってくるのやーめよっと」


全員「「「「「「!?」」」」」」

真美「そんな窃盗なぁ!」

亜美「許しておくれやす~」

律子「そ、それだけはっ」

千早「お、お願い春香! それだけは許して」

あずさ「春香ちゃん……」

春香「えへへっ、嘘ですよ嘘。ちゃんと作ってきますよ~」


P「春香……」

春香「でも、事務員と男性プロデューサーには作りません」

小鳥「!?」

P「!?」

貴音「して、春香」

春香「なんですか?」

貴音「高木殿は一体……」

春香「社長なら……今頃仄暗い闇の底にいるんじゃないかな?」

真「え?」

春香「嘘だよ。でも、どこにいるかはちょっと」

春香「逆ドッキリ提案したことバレたら大変ですよって脅しちゃったから」

春香「……どこか、遠くにいるんじゃないかなぁ?」


もう、ゴールしていいよね


社長はスレタイに旅立ちました
本当は100未満で終わる予定だったんだけどなぁ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年05月16日 (火) 09:56:32   ID: Mrf0UYU7

これがドッキリじゃなくて実はホントに美味しくなかった設定ならなお良かった

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