春香「律子さん、ちょっといいですか?」
律子「あら、春香じゃない、どうかしたの?」
春香「実は、ちょっと相談したいことがありまして…」
律子「相談?プロデューサーじゃなく、この私に?」
春香「えぇ、はい…」
律子「別にいいけれど、本当に私でいいの?相談ならプロデューサーにした方が…」
春香「いえ、なんていうか…その、プロデューサーさんには話しにくい内容というか…」
律子「ふむ…何やらワケありって感じね、いいわ、話してみなさい」
春香「ありがとうございます」
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律子「それで、相談っていうのは?」
春香「実は、千早ちゃんのことで……」
律子「千早?千早がどうかしたの?」
春香「千早ちゃん、私のこと嫌いなんでしょうか?」
律子「……ごめんなさい、ちょっと質問の意味がよく分からないわ」
春香「私、ひょっとしたら千早ちゃんに嫌われたのかもしれません…」
律子「何をバカなことを言っているのよ」
春香「律子さん、私はマジメに言っているんですよ!」
律子「でもそれはどう考えてもありえないと思うんだけど」
春香「私だってそう思いたいですよ、でも……」
律子「ふむ、そこまで言うからには何か根拠でもあるんでしょうね?」
春香「なんていうか、最近ちょっと千早ちゃんの態度が冷たいような気がして…」
律子「千早の態度が?春香に対して?」
春香「えぇ、はい」
律子「……傍目にはとてもそんな風には見えないけど」
春香「でも、そんな風に感じちゃうんです」
律子「私としては、絶対にありえないと思うんだけど……思い過ごしじゃないの?」
春香「そんなことありません!この間だって、こんなことがあったんですよ…」
――――――
――――
――
千早「……♪」シャカシャカ
春香「ちーはーやーちゃんっ!」
千早「……♪」シャカシャカ
春香「むぅ……」
千早「……♪」シャカシャカ
春香「ちはやちゃんってばーっ!!」
千早「わっ!?な、なんだ春香じゃない……急に驚かせないでちょうだい」
春香「なんだ、じゃないよ!さっきからずっと話しかけてたのに無視なんてヒドイよ!」
千早「ごめんなさい、音楽に集中してて全然気付かなかったわ」
千早「それで、何か用なの?」
春香「用ってほどでもないけど、暇だったから話しかけただけだよ!」
千早「そう」
春香「ねぇねぇ千早ちゃーん、暇だよー、構ってよー」
千早「えぇ、構わないわよ」
春香「ホントに?やった!」
千早「このCDの曲を全部聴き終わったらね」
春香「えっ」
千早「えっ?」
春香「……えっ?」
千早「……何か、問題でもあるのかしら?」
春香「今すぐ構ってくれないの?」
千早「今すぐというのは、ちょっと…」
春香「えぇーっ!なんでなんで?」
千早「春香、一応私も只の道楽で音楽を聴いているわけではないのよ」
春香「そうなの?」
千早「次の新曲の参考になりそうな楽曲だから、私としてもちゃんと聞いておきたいのよ」
春香「そ、そっか……」
千早「というわけでごめんなさい春香、少しだけ待っててちょうだい」
春香「うん分かった…春香さん、我慢して待ってる」
千早「……♪」シャカシャカ
春香「……」
千早「……♪」シャカシャカ
春香「……じぃー」
千早「……♪」シャカシャカ
春香「はぁ……」
千早「……」シャカシャカ
春香「寂しいなぁ…」
千早「……」
千早「……春香」
春香「ん、どうしたの千早ちゃん?」
千早「はい」
春香「えっ、何でイヤホン片方差し出してきたの?」
千早「申し訳ないけれど、私はこの曲を最後まで聞くという点については譲れないわ」
春香「う、うん…」
千早「けれどもその間、春香を放っておくのも私としては忍びないわ」
春香「うん…」
千早「だからまぁ、せめて二人で一緒に曲を聴きましょう」
春香「えっ?」
千早「それなら春香も一人で退屈せずに済むと思うんだけど」
春香「でも、いいの?千早ちゃんの邪魔にならないかな?」
千早「邪魔になんかならないわ、もちろん春香さえよければ、だけど」
春香「も、もちろんオッケーだよ千早ちゃん!」
千早「言っておくけど、春香にとっては退屈な曲かもしれないわよ?」
春香「ううん、いいよ!そんなの全然気にしないから!」
千早「そう?それじゃあ、一緒に聴きましょう」
春香「うんっ!えへへ…ありがとう、千早ちゃん」
――――――
――――
――
春香「ということがあったんです」
律子「へぇー」
春香「ひどくないですか?」
律子「どこが!?」
春香「すぐに構ってくれないのかよ!」バンッ
律子「それは単にあなたのワガママでしょうが、あと机叩かない」
春香「そこは曲聴くの中断して春香さんに構うところじゃないのかよっ!」
律子「自己中心的にも程があるわね」
春香「それを何なんですか!せめて、一緒に音楽を聴きましょうって」
律子「まぁ、千早らしいと言えば、らしいわね」
春香「なんか発想がズレてる気もするけど、これはこれで優しすぎるよ!」バンッ
律子「だから机を叩かない」
春香「結局そのあと、一時間近くずっとCD聴き続けてたんですよ」
律子「結構な時間ね」
春香「さすがの私もビックリですよ、予想外ですよ」
律子「確かに…CDの内容にもよるけれど、一時間も聞かされっぱなしじゃ流石にしんどいわね」
春香「いえ、まったりして幸せな時間でしたけど」
律子「あっ、そう……」
律子「というか話を聞く限りだと、全然千早の態度、冷たくないじゃない」
春香「えぇー…そうですかぁ?」
律子「むしろあなた、かなり気を使ってもらってる方だと思うんだけど」
春香「以前の千早ちゃんだったら、すぐに構ってくれてたと思うんです…」
律子「間が悪かったのよ、状況が状況だもの、そりゃ仕方ないわよ」
春香「うぅぅ…確かにそうかもしれませんけど」
律子「やっぱりあなたの思い過ごしよ、どう考えても仲の良い二人じゃない」
春香「い、いえ!やっぱりそんなことないと思います!」
律子「あなたも疑い深いわねぇ…」
春香「だ、だって……この間なんて…」
――――――
――――
――
春香「ちーはーやーちゃんっ!」
千早「春香じゃない、どうしたの?」
春香「ねぇねぇ、よかったらお昼ご飯一緒に食べない?」
千早「お昼?」
春香「うん、ランチタイムですよっ、ランチタイム!」
千早「あぁ……もうそんな時間だったのね」
春香「ダメかな?ひょっとして先約がいたりするとか?」
千早「先約なんて無いわよ、別に構わないわ」
春香「やたっ!」
春香「わーっ!千早ちゃんお弁当だなんて珍しいね!」
千早「今日は、その…たまたまよ」
春香「わざわざ朝起きて作ってきたの?」
千早「いいえ、昨日の夕飯のおかずが余ってたから詰め合わせてきただけよ」
春香「おぉーっ!すごいじゃん!あの千早ちゃんが晩御飯を自分で作るなんて」
千早「もう…茶化さないでちょうだい、別に大したものじゃないわよ」
春香「それにしても、千早ちゃんが食事にも気を使うようになってくれて私は嬉しいよ」
千早「何おばさんみたいなこと言っているのよ」
春香「あっ、おばさんだなんてヒドイなー!」
千早「冗談よ、そんなことより早く食べましょう」
春香「……」モグモグ
千早「……」モグモグ
春香「ねぇ、千早ちゃん?」
千早「何?」
春香「その卵焼き、おいしそ」
千早「お断りよ」
春香「ちょ、まだ春香さん最後まで言ってないよ!?」
千早「どうせ一切れちょうだいとか、そんなところでしょう?」
春香「よく分かったな!その通りだ!」
千早「お断りよ」
春香「千早ちゃんひーどーいーっ!何でそんな言い方するのさー」
千早「だって、この卵焼き、とても不恰好だもの…人様に食べさせるような代物じゃないわ」
春香「そんなことないよ、私の目にはとっても美味しそうに見えるよ!」
千早「そんなお世辞言わなくてもいいのよ?」
春香「お世辞なんかじゃないってば、本当にそう思ってるんだから」
千早「そう……ありがとう」
春香「というわけで一切れちょうだい!」
千早「もう……しょうがないわね」
春香「じゃあ、あーん」
千早「えっ」
春香「だから千早ちゃん、あーん」
千早「……えっ?」
春香「あーん」
千早「……」
春香「……食べさせて、くれないの?」
千早「あげないわよ」
春香「えっ」
千早「えっ?」
春香「…………えっ?」
千早「何か、問題でもあるのかしら……?」
春香「あるよ、大ありだよ!ここは普通は食べさせてくれる流れだよ?」
千早「あなたは一体、何を言っているの?」
春香「千早ちゃんこそ何言ってるの?空気を読もうよ!」
千早「なぜ私が怒られなきゃいけないのかしら」
春香「ここはどう考えても食べさせてくれる流れでしょ!」
千早「そんな流れ無いわよ」
春香「千早ちゃんは分かってないよ、何も分かってないよ!」バンッ
千早「分からないわよ、あとお行儀悪いから机を叩かない」
春香「いいじゃん千早ちゃん、食べさせてよー」
千早「もう、子供みたいなこと言わないの」
春香「春香さんまだ子供だもん」
千早「もう17歳でしょう」
春香「世間的には17歳はまだ子供だよ!」
千早「屁理屈言わない」
春香「屁理屈でもなんでもいいから、千早ちゃんお願いー」
千早「えぇー……」
春香「ちーはーやーちゃんってばぁー」
千早「……」
春香「ほら千早ちゃーん、あーんってばー」
千早「……」モグモグ
春香「千早ちゃーん?春香さんいつでもスタンバイできてるよー?」
千早「……」モグモグ
春香「おーい、千早ちゃんってばぁー」
千早「あっ、この煮物おいしい…我ながらよく出来た方だわ」
春香「千早ちゃん、無視はひどいんじゃないかなぁ、春香さん泣いちゃうよ?」
千早「うるさいお口ね……えいっ」
春香「あむっ!?……もぐもぐ…んぐっ」
千早「これで満足?」
春香「……って、千早ちゃん!これ卵焼きじゃないじゃん!」
千早「えぇ、それは昨日の残り物の煮物よ」
春香「春香さんは卵焼きが食べたかったのに!」
千早「だから、それは不恰好だから人様に食べさせるようなものじゃないって…それに」
春香「それに?」
千早「こっちの煮物はまだ上手に出来た方だから、どうせならこっちを食べてもらいたかったのよ」
春香「……そっか」
千早「えぇ、そうよ」
春香「えへへ……そっか、そうなんだぁ」
――――――
――――
――
春香「ということがありましてね」
律子「ふーん」
春香「ひどいですよね?」
律子「だからどこが!?」
春香「卵焼き食べさせてくれないのかよっ!」バンッ
律子「どんだけ卵焼き食べたかったのよ、あといい加減机を叩くな」
春香「散々焦らした挙句、別の物を食べさせるとかドSにもほどがあるよ!」
律子「あなた、一体どういう思考回路してるのよ」
春香「それを何ですか、こっちの方が上手に出来たから、こっちを食べてもらいたいって」
律子「まぁ、作った側からすれば当然の心理よね」
春香「なんて乙女チックな発言!千早ちゃんのくせに!」
律子「あなた今、どさくさに紛れてとんでもない台詞吐かなかった?」
春香「でもね、私としてはやっぱり卵焼きが食べたかったんです……卵焼き」
律子「あなたのその卵焼きに対する執着は何なのよ……」
春香「だって、すっごく頑張って作った感が伝わってきて、そりゃ食べたくもなりますよ!」
律子「まぁ、気持ちは分からなくもないけど……じゃあ煮物はおいしくなかったの?」
春香「めちゃくちゃおいしかったです!最高でした!」
律子「あっ、そう……よかったわね」
律子「やっぱどう考えたって仲いいじゃない、二人とも」
春香「本気で言ってるんですか、律子さん?」
律子「そもそも今の話のどこに、千早が冷たいっていう要素があるのよ」
春香「焦らしプレイのくだりとか、ですかね?」
律子「アイドルが焦らしプレイとか言わないの!」
春香「でも事実じゃないですか!あんなに焦らすなんて…ひどいよ千早ちゃん」
律子「私にはバカップルがじゃれ合っているようにしか思えないわよ」
春香「どこがですか、律子さん頭ボケてるんじゃないですか!?」
律子「なぜ私がそんな理不尽なことを言われなきゃならないの」
春香「分かりました、そういうことなら分かりました」
律子「何が分かったっていうのよ」
春香「次のエピソードを聞けば律子さんも分かってくれるはずです!千早ちゃんの冷たさが!」
律子「まだあるの?正直もういいんだけど」
春香「あれはこの間、私が風邪をひいたときの話なんですけど」
律子「私を無視して勝手に話を進めない」
春香「進めてもよろしいでしょうか?」
律子「はぁ……わかったわよ、もう勝手にしなさい、好きなだけ話しなさい」
――――――
――――
――
春香「けほ、けほっ……うぅー」
千早「春香、大丈夫?」
春香「うん、多分……けほっ」
千早「どこがよ、さっきから咳してばかりじゃない」
春香「うぅぅぅ……身体重たいよぅ」
千早「まったく、そんな状態で事務所に来るだなんて無茶をするわね」
春香「だって、休んだら迷惑かかると思って…」
千早「そんな状態で出てこられる方がよっぽど迷惑よ」
春香「あぅ……ごめんなさい」
千早「それに、私が止めなかったらその状態で仕事にまで出るつもりだったでしょう?」
春香「意外といけると思ったんだけど」
千早「全然いけてないじゃない」
春香「家を出た時はそこまでヒドくはなかったんだけどなぁ」
千早「そういう問題ではないでしょう、常識の問題よ」
春香「……ふぁい、ごめんなさい」
千早「まぁ、反省しているのなら別に構わないのだけど」
春香「ふふっ、千早ちゃん何だか私のおかあさんみたいだね」
千早「こんなに手のかかる娘なんてゴメンよ」
春香「あぁーっ!千早ちゃんそれヒドイんじゃないかなー!?」
千早「叫ばない、病人は病人らしくしていなさい」
千早「熱は……それほど高くはないわね」
春香「うん、微熱ってところかな」
千早「思いのほか元気そうね」
春香「だから大丈夫だって言ってるじゃん」
千早「少し心配しすぎだったかしら」
春香「まったくだよ、千早ちゃんは心配性だなぁ」
千早「そうね、なら私はもう仕事に行ってもいいかしら?」
春香「えっ?」
千早「えっ」
春香「………………えっ?」
千早「……何か、問題でも?」
春香「お仕事、行っちゃうの?」
千早「行くわよ、当たり前じゃない」
春香「お仕事に、行ってしまわれるのですか?」
千早「だから、そうだって言ってるじゃない」
春香「春香さん一人置いて、千早ちゃんは行ってしまうのかい?」
千早「そういう言い方どうかと思うけど……というかさっきからそのキャラは何なのよ」
春香「千早ちゃーん、寂しいよぉー、春香さんを一人にしないでぇー」
千早「もう、ワガママ言わないの」
春香「わかったよぅ…春香さんは一人寂しく事務所で寝込んでるよ」
千早「いい子ね」
春香「だって千早ちゃんお仕事だって言うし、しょうがないじゃん」
千早「……」
春香「はぁ、寂しいなぁ……病気で寝込んでいる時に一人になるのは寂しいなぁ」
千早「……ふふっ、冗談よ春香」
春香「……ふぇ?」
千早「実を言うとまだ仕事までかなり時間はあるのよ」
春香「えっ、そうなの?」
千早「えぇ、だからまぁ、もう少しだけここにいてあげるわ」
春香「いいの?」
千早「えぇ、構わないわよ」
春香「風邪、うつっちゃうかもしれないよ?」
千早「私は常日頃から体調管理に気を付けているから、平気よ」
春香「なんだか暗に、私が体調管理できてないって言われてるみたい…」
千早「まぁ、あながち間違ってはいないわね」
春香「返す言葉もございません……でもありがとう!千早ちゃん大好きだよ!」
千早「あらそう、私はそれほどでもないけどね」
春香「ひどい!?」
千早「ところで春香、お薬とかはもう飲んだのかしら?」
春香「んーん、飲んでないよ!」
千早「それ、堂々と言うような台詞じゃないでしょ」
春香「ふぁい……」
千早「だったらお薬飲んで少し横になっていなさい、少しはマシになるでしょう」
春香「うん……でも何も食べずにお薬っていうのは、よくないんじゃないかな?」
千早「そう思っておかゆを作っておいたわ」
春香「千早ちゃんって準備良すぎー!もういっそ私のお嫁さんにならない?」
千早「こんなに手のかかる夫なんてゴメンだわ」
春香「むー!千早ちゃんさっきからひーどーいっ!」
千早「おかゆを食べて、薬を飲んだら私はお仕事に行くから」
春香「うん、分かったよ」
千早「食欲はありそう?」
春香「あんまり無いけど、おかゆくらいなら食べられそうかな」
千早「それじゃあ…はい、あーん」
春香「……なぬ?」
千早「春香、あーんってば」
春香「……ほえ?」
千早「だから春香、あーんよ、口を開けなさい」
春香「いやいや……えっ、えっ?」
千早「春香、早くしてちょうだい、私もそこまで時間に余裕があるわけではないのよ」
春香「うん千早ちゃん、分かったからお椀ちょうだい?」
千早「どうして?」
春香「何でって、おかゆ食べるから」
千早「だから、食べさせてあげるって言っているじゃない」
春香「千早ちゃん、おかゆくらい自分で食べられるからね?」
千早「……春香、病人は病人らしくしていなさい」
春香「たとえ病人でも、おかゆくらい一人で食べれるってば」
千早「でも、ここは私が春香に食べさせてあげる流れだと思うのよ」
春香「そんな流れ、無いと思うんだけど」
千早「何を言っているのよ春香」
春香「千早ちゃんこそ何言ってるの?」
千早「この間のお弁当の時は、私に食べさせてもらおうとしていたくせに」
春香「それはそうだけど…」
千早「だったらいいじゃない」
春香「いや、自分で言うのと、人にやられるのとじゃ全然違うというか何というか…」
千早「何が問題なのかしら?」
春香「あの、なんというか……その、ちょっと恥ずかしいじゃん、こういうの」
千早「私は恥ずかしくないわ」
春香「えぇー……」
千早「ほら春香、せっかくのおかゆが冷めてしまうわ」
春香「うぅぅ、分かったよぅ……あーん」
千早「はい、どうぞ」
春香「もぐもぐ……んぐっ」
千早「味の方は、どうかしら?」
春香「うん、おいしいよ」
千早「そう、ならよかったわ……だったら次、いくわよ」
春香「えっ、次?もういいよ、十分だよ」
千早「何言ってるのよ、まだ一口しか食べていないじゃない」
春香「いや、そういう意味じゃなくて、あとは自分で食べるから」
千早「あぁ、熱いから自分のさじ加減で食べたかったってことね」
春香「違うよ、そういうことじゃなくて」
千早「しょうがないわね、だったら私が冷ましてあげるから」
春香「千早ちゃん何言ってるの!?」
千早「ふー…ふー……はい、どうぞ」
春香「千早ちゃん、さっきからワザとやってるよね!?」
千早「何のことかしら」
春香「いやいや、分かっててやってるよね!?私の反応見て絶対楽しんでるよね!?」
千早「ふふっ、少しイジメすぎたかしら、あとは一人で食べてちょうだい」
春香「うぅぅー……千早ちゃんイジワルだぁー」
――――――
――――
――
春香「ということがね、あったわけです」
律子「あぁ、そう」
春香「ひどいですね、うん、ひどすぎます」
律子「もうツッコまないわよ」
春香「恥ずかしがる私に無理矢理食べさせるとか、どんだけSなんだよ!」バンッ
律子「ツッコまないって言ったわよね?」
春香「しかも私の反応見て楽しむとか、これもう悪魔の所業ですよ!」
律子「どんな曲解を重ねればそんな解釈に至れるのよ」
春香「千早ちゃんの鬼!悪魔!」
律子「ひどい言われようね……千早が可哀想だわ」
春香「律子さんの鬼、悪魔!」
律子「だから言い過ぎだって……は?」
春香「律子さんの鬼軍曹!スパルタ魔人!鬼畜眼鏡!」
律子「どさくさに紛れて、自分が言いたいだけのことを言ったわね!」
春香「ひどいよ…千早ちゃんのイジワル」
律子「とかなんとか言ってるけど、本当のところは?」
春香「恥ずかしかったけど、めちゃくちゃ嬉しかったです!」
律子「さいでっか…」
春香「ほら、やっぱり私、千早ちゃんに嫌われてますよ」
律子「それだけは断じてありえないわよ」
春香「何でですか!ここまで決定的な証拠も揃っているのに!」
律子「私はいつまでこの茶番に付き合わされるのよ……」
春香「ち、茶番だなんてヒドイです!私は真剣に悩んでいるのに」
律子「どこからどう見たってイチャついてるだけの画じゃない!」
春香「本気で言ってるんですか!?」
律子「当たり前じゃない」
春香「律子さん、頭大丈夫ですか!?」
律子「むしろあなたの頭の方が心配でならないわよ」
律子「というか、そこまで言うのなら千早に直接聞けばいいじゃない」
春香「直接…ですか」
律子「自分のことが嫌いなのかどうか、ズバっと答えてもらいなさい」
春香「うぅぅ……でも、直接聞くなんて恐いですよ」
律子「そんなに気になっているのなら、もういっその事、ハッキリさせた方がいいわよ」
春香「そうですね……分かりました、春香さん腹くくります!」
律子「まぁ、答えは分かりきっているけど」
春香「そんなヒドイです律子さん、少しくらい希望を持たせてくれてもいいじゃないですか!」
律子「なんでそう、さっきから思考がマイナス寄りなのよ、あなたは!」
春香「あぁ……千早ちゃん、早く帰ってこないかなぁ」
律子「予定ではもうすぐ帰ってくるわよ」
春香「うぅ、でもやっぱり恐いなぁ…」
律子「大丈夫よ、安心なさい」
春香「で、でも……そんなこと言ったって」
ガチャ
千早「ただいま戻りました」
春香「千早ちゃん、私のこと嫌いになっちゃったの!?」
千早「……は?」
律子「そりゃそうなるわよね、千早の反応が正しいわよ」
千早「あの、春香…いきなり何を言い出すの?」
春香「ねぇ千早ちゃん、私のこと嫌いなの?」
千早「あの、だから春香……急に何を」
春香「最近私に対してちょっと冷たいよね?」
千早「そんなことないと思うけど」
春香「それって私のこと嫌いになかったから?ねぇ、嫌いになっちゃったの?」
千早「はるか」
春香「嫌いなら嫌いってハッキリ言って!私、こんなモヤモヤした気持ちのままじゃ辛いよ!」
千早「えっ…何これ?帰ってくるなりこの状況は一体何なの?律子、これは一体何?」
律子「知らんがな」
春香「ち、千早ちゃん…私のこと、嫌いなの?」
千早「……」
春香「ねぇ千早ちゃん、答えてよ……春香さんのこと、嫌いになったの?」
千早「……春香」
春香「…ふぁい」
千早「一体何があったのか知らないけど、私が春香を嫌うなんて、あるはずないじゃない」
春香「……本当に?」
千早「えぇ、本当よ、胸を張って言えるわ」
春香「張る胸なんて無いじゃん」
千早「ぶっ飛ばすわよ」
春香「じゃあ千早ちゃんは、私のこと嫌いじゃないんだね?」
千早「当たり前じゃない、嫌う理由なんてどこにも無いわよ」
春香「全部、私の勘違いだったってこと?」
千早「むしろ、どこをどう勘違いしたらこうなるのか不思議でならないわ」
春香「えへへ……そっか、よかった」
千早「まったく……勘違いにも程があるわよ」
春香「そっかそっか、千早ちゃんは春香さんのことが大好きってことなんだね」
千早「それほど好きでもないわよ」
春香「ひ、ひどい!」
千早「ふふっ、冗談よ、冗談」
春香「はぁー……よかったぁ、安心したぁ」
千早「一人で勝手に落ち込んで、勝手に安心して、本当に騒がしい子ね」
春香「だって、だってぇ……」
千早「ところで春香、事務所で何をしていたの?」
春香「あっ、ちょっと律子さんに相談したいことがあったんだけど」
千早「そうなの……お仕事終わったから、もしよかったら一緒に帰ろうと思ったのだけど」
春香「そうなんだ、いいよ!帰ろう!」
千早「あれ、でも相談は?」
春香「もう解決したから、全然オッケー!」
千早「そう、なら帰りましょう」
春香「うん、帰ろ帰ろーっ!」
律子「……」
千早「せっかくだから何か食べて帰りましょうか」
春香「そうだね、そうしよっか!」
律子「……」
千早「それじゃあ律子、お疲れ様、また明日」
春香「律子さんお疲れ様でしたー!また明日っ!」
ガチャ バタン
律子「……えっ、何これ?」
おわり
はい、というわけでちょっとした息抜きで書かせていただきました、はるちはわっほい
ありがとうございました
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