男「二つほどあるんだけどどっちの話がいいかねえ」
友「どっちどっち?」
男「町で女の子をナンパしたときの話と」
友「おっいいじゃない」
男「船で沖に出て難破したときの話」
友「それはやめとこう。色々あったから」
男「どっちもなんぱの話なんだけど」
友「色々あったからやめとこ」
男「色々あったしなやめとくか」
友「それより町のナンパの話聞きたい」
男「こないだ僕ね、女房がいるにも関わらずナンパしちゃったんですよ」
友「あらららダメじゃないですかーもう」
男「これがまた良い女でねぇ」
友「ほうほう」
男「もし花に喩えるなら」
友「おう」
男「まるでーとてもー綺麗な……花?」
友「下手糞だなおまえ」
男「そうかな」
友「ひとっつも喩えられてないじゃんそれ」
男「まずはその出会いから話そう」
友「ああ、出会い重要だな出会い」
男「その日はね、午前中まあなんだかんだあったんだけど」
友「午前中なんだかんだあったんだね」
男「まあ車に撥ねられたりだとかなんだかんだあったんだけど」
友「だいぶあったなそれ」
男「うん」
友「だいぶなことあったなそれ」
男「まあその日の午後だよ」
友「おう」
男「新宿の街をぼーって言いながら歩いてたんだよ」
友「言ってたの!?」
男「ぼーっぼーって言いながらね」
友「だいぶ怖いやつだぞそれ」
男「そしたらあれ「プ」だったかな「ペ」だったかな……」
友「え?」
男「あ、思い出した「パ」だ」
友「パ?」
男「うん、パって見たら」
友「そこ忘れる?」
男「「パ」だった。「ぺ」じゃないな」
友「そこは「パ」だろ」
男「パって見たらさ」
友「うん」
男「ものすごい美人!って書いたTシャツを着た女が歩いてきたんだよ」
友「すごい女の子だなそれ」
男「おそらくー26、7ぐらいかな?」
友「あ、ちょうどいいじゃない」
男「そう? まあ男の俺でも26.5cmだからまあ結構あるよね」
友「あぁ足のサイズね?」
男「うん足のサイズ」
友「だったらちょっと大きいなそれ」
男「でやっぱり男だからおしり見ちゃうよね」
友「ああおしり好きなんだなやっぱ」
男「でおしり見たらさ、もう歩くたんびにプリップリッて」
友「あぁいいなそれ」
男「おならしてんのよ」
友「さいてー」
男「髪の毛もなんかもさ」
友「うん」
男「サラッサラのロングヘアーをばっさり切ったようなショートヘアでさ」
友「短いんだな」
男「その子がまたふぁ~っと良い香りのする焼き鳥屋の前を歩いてたんだよ」
友「焼き鳥屋がいいんだな、その子の匂いじゃないんだな」
男「でもね、あんまり後をつけたら怪しまれるじゃない」
友「怪しまれるよそりゃ」
男「もしかしたら警察に通報されるかもしれない」
友「そりゃもう怖いからねえ」
男「そこで、よ」
友「おう」
男「俺はちゃーんと警察に捕まる覚悟を決めて着いて行ったわけよ」
友「秘策0で行ったって話ね、なんなんだよもう」
男「そしたらその時だよ、急にその子が急にパッて振り返って」
友「えっ」
男「ちょっとなんなんですかさっきから! 着いてこないでくださいって」
友「あらら」
男「言ってきたらどうしようという不安に襲われたわけよ」
友「あああ、言われたわけじゃないのね」
男「ところが以外にもよ」
友「うん」
男「駅はどっちですかーつってwwその子のほうからww」
友「おうおうwww」
男「俺に話しかけてくれたらいいのにね」
友「ああ、それも言われたわけじゃないのね」
男「それだったら話早いのよね」
友「そうだね」
男「そしたら急にその子がバーって走り出して」
友「走り出したの?」
男「俺もう骨折した左足を引き摺りながら追いかけて」
友「骨折してんのかよ、足」
男「そりゃ午前中に車に撥ねられてんだから」
友「ああだから骨折してんの? 病院行けよもう」
男「そうしたら今度はその子がタクシーに乗っちゃったのよ」
友「タクシー乗っちゃったんだ」
男「俺もうやばい見失うと思って俺も急いでタクシー乗りこんで」
友「よくいけたな」
男「心臓はバクバクですよ」
友「ドラマみたいじゃん」
男「その隣でその子もビックリしてるわけよ」
友「おんなじタクシー乗ったの!?」
男「そりゃそう追いかけてんだからよ」
男「もう車内に気まずい空気が流れたそのときだよ」
友「そりゃ気まずいよ」
男「おい男、と。おまえは芸人だろ、と。そんな空気ぐらい喋りでなんとかしろよ、と」
友「この際おまえが芸人だということは突っ込まないでおくわ」
男「運転手が急に俺に言ってきたんだよ」
友「運転手が言ってきたの!?」
男「おまえ関係ねえだろふざけんなよって感じで」
友「そうだよな」
男「大体おまえに撥ねられた所為で足を骨折してんだよってさ」
友「そいつに撥ねられたの!?」
男「そう、そのタクシーに偶然」
友「すごい話だなそれ」
男「そしたら急によ」
友「急に?」
男「その子のほうが、一緒に食事でもしませんかって」
友「ええ!?」
男「その子のほうから誘ってきたわけよ」
友「すごいな……」
男「俺もう夢じゃないかと思って」
友「まあな」
男「もう思いっきりほっぺたつねったら」
友「おう」
男「その子が痛がる痛がる」
友「あ、その子つねったんだ!? そういう時自分つねんだよ普通は」
男「で、そんな出会いをした女房がいるにも関わらずこないだナンパをしたって話なんだけど」
友「女房との出会いなの今の? ややこしいな」
男「そんな女房がいるにも関わらずナンパしたのよ」
友「それを言ってくれよ」
男「最初ね、俺渋谷をぶらぶらぶらぶら言いながら歩いてたわけよ」
友「それも言ってたんだなもう」
男「そしたらあれ「プ」だったかな「ペ」だったかな」
友「いや「パ」でしょ」
男「あ、思い出した。「ペ」だ」
友「いや「パ」だよ」
男「ペ・ヨンジュンのポスターが貼ってあったんだよ」
友「ああそれは「ペ」だわ」
男「そのポスターの前に綺麗な女の子が立ってたわけよ」
友「立ってたんだな」
男「まあ結構年はいってたんだよ。30……2、3個上?」
友「だいぶいってんなそれ」
男「その子をナンパしようとしたんだけど、そのとき俺は考えたね」
友「なにを考えたの?」
男「女房がいるのにナンパなんてしてもいいのだろうか、と」
友「まあ確かにそれはそうだな」
男「そうでしょ? 隣に女房がいるのにナンパなんてしても」
友「隣にいんのかよ! だったらダメだろ」
男「だから女房がいるのにっつってんじゃん」
友「じゃあできるわけねえだろそりゃあ」
男「だけどナンパしたんだけどぜーんぜん上手くいかなかった」
友「当たり前だろばかたれが!」
おわり
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