玄「お姉ちゃんを怒らせよう」(133)


阿知賀女子学院

麻雀部部室

憧「ちょっとしずー!」タタタ

穏乃「そ、そんなに怒んなくたっていいじゃん!」タタタ

ガチャ

灼「・・・・・」パタン

憧「あんたが悪いんでしょーが!」タタタ

玄「・・・・・ふ、二人とも、もうやめよう?」

灼「・・・・・何があったの?」スタスタ

玄「穏乃ちゃんが憧ちゃんのノートにいたずら書きしたんだって」

灼「・・・・・そう」ハァー

穏乃「お、灼さん!」タタ

灼「うん」スワリ


穏乃「あとは宥さんだけだね」

憧「捕まえた!」ダキシメ!

穏乃「あ!しまった!」

憧「覚悟しなさいよ~?」

穏乃「ご、ごめんなさ~い・・・」

憧「ふふふ・・・ダーメ!えい!」ギュゥゥゥ!

穏乃「痛い痛い!マジで痛いって!」

憧「うふふふ・・・まだまだ~!」ギュウゥウゥ!

穏乃「いだだだだ!!」

玄「あ、あの・・憧ちゃん・・・穏乃ちゃん痛そうだよ・・?そろそろ・・」オロオロ

憧「・・・・は~い」ハナシ

穏乃「ふう・・・助かった・・・ありがと、玄さん」スワリ


玄「うん・・・・でも穏乃ちゃんも悪いと思うよ?」

穏乃「ああ・・・そう、だね・・・・ごめん憧・・・」

憧「ん、もうしないでよ?」スワリ

穏乃「・・・・・・」

憧「・・・・しず~?」

穏乃「わ、わかってるって!」アハハ

憧「ったくもう・・・」

穏乃「憧は怒りっぽいなぁ」

憧「しずが怒らせてんの!」

穏乃「でもさ、麻雀部で憧が一番短気だよね?」

憧「そんな事ない・・・はず・・・」

穏乃「だって・・・灼さんなんて全然怒らないし」


憧「・・・灼さんは感情が死んでるから」

灼「ちょっと」

憧「あはは・・・冗談冗談。・・・確かに灼さんって怒らないよねぇ」チラッ

灼「・・・・」

憧「・・・・」ソワソワ..

灼「・・・・」

憧「・・・・・・こけし」ボソッ..

灼「・・・・」ピク

穏乃・玄「あっ・・・」

灼「・・・『あっ』て何?そっちの方が気になった」

穏乃「い、いや・・・」

玄「なんでもないよぉ・・・」


憧「・・・根暗店員」

灼「・・・・・・」

穏乃「ほ、ほら、怒らない」

玄「さすが灼ちゃんだよー・・・」

憧「・・・・・・」

灼「・・・・・・」

憧「・・・・・・・晴絵、足臭いよね」

灼「臭くない!!」ガタン!

穏乃・玄「!!」ビクン!

灼「全然臭くない!でたらめ言わないで!あれは昭和の香り!」

憧「・・・灼さん昭和知らないじゃん」

灼「おばあちゃんで嗅いだ!」

憧「・・・それ、遠回しに晴絵が加齢臭・・」

灼「もうしゃべるな!!!」ガアー!


憧「わ、わかったわかった!ごめん!」

灼「・・・・・」ハーッ..ハーッ..

穏乃・玄「・・・・」ビクビク

憧「ほらね、灼さんだって怒るんだよ?私が短気な訳じゃないんだって」

穏乃「あ、憧のせいじゃんか」

憧「でも怒ったのは事実っしょ?」

穏乃「うー・・・あ!玄さんが怒ったところも見た事ない!」

玄「え?」

憧「・・・・確かに」

玄「わ、私は怒った事あるよ!」

穏乃「本当ですか?」

憧「いつ?」

玄「子供の頃なんだけど、お姉ちゃんが男の子たちに意地悪されてた時に怒ったよ」

穏乃「わあ・・・優しい・・・玄さんっぽいなぁ」


憧「・・・・・そだね」フン

灼「・・・私は穏乃が怒ってるところ見た事ないけど、みんなはあるの?」

玄「え?穏乃ちゃんは・・・」

憧「ふふ・・・しずはね・・・」

穏乃「ん?」

憧「バーカバーカ!」

穏乃「んん?」

憧「バーカ!サール!露出狂~!」

穏乃「ムッキーー!!!」プンスカ

灼「・・・・・・・」

憧「これだけで怒るよ」

灼「・・・なるほど」

穏乃「誰が猿だ!!」キー!


玄「し、穏乃ちゃん、お菓子食べる?」コレ

穏乃「!?いいんですか!いただきまーす!もぐもぐ・・・うっめー!!」エヘヘ

玄「ふふふ・・・」ニッコリ

灼「・・・・宥さんは?」

憧「え?」

灼「宥さんが怒ったところ。・・・私は見た事ないけど・・・・」

憧・玄・穏乃「・・・・・・」

灼「・・・・??」

憧「しず・・・ある?」

穏乃「全然・・・・憧は?」

憧「あたしもない・・・玄?」

玄「・・・・・・・・・ない」

憧・穏乃「え?」


玄「私も・・・・・お姉ちゃんが怒ったところ・・・見た事ない・・・」

憧「ええ!?」

穏乃「い、今まで一度も!?」

灼「そんな人・・・・いるの?」

玄「だって・・・・・・ないものはないんだもん・・・」

憧「・・・・・・それ、まずくない?」

玄「え?」ドキ

憧「だってさ、人間である以上、ムカつく事は絶対あるじゃん?」

穏乃「うん」

憧「それでも怒らないって事は、ストレスをずっとため込んじゃうよね?」

玄「え・・・」ドキドキ

灼「・・・確かに・・・」

憧「そのストレスが爆発したら、とんでもない事になるかもしれないよ・・・」


玄「え?と、とんでもない事って・・?」ドキドキドキ

憧「夜中に窓ガラスを割ったり」

玄「!!」

憧「バイク盗んだり」

玄「!!!!」

憧「学校や家には帰りたくなくなったり」

玄「!!!!!!!!」

灼「ちょっと憧・・・」

憧「ふふっ・・・・なーんちゃってね!そんな訳・・」

玄「ダメだよ!!」

憧「わ!」

玄「・・・お姉ちゃんがそうなる前になんとかしないと!!」

穏乃「く、玄さん?」


玄「・・・お姉ちゃんが怒れば・・・ストレスを発散出来るんだよね?」

憧「え?・・・ああー・・・・まぁ、そだね」

玄「みんな!お願い!!お姉ちゃんを怒らせるの・・・・協力してください!!」ペコリ!

穏乃「ちょ、ちょっと憧・・・」ヒソヒソ

憧「あ、あたしのせい?」ヒソヒソ

灼「どう考えてもね」ヒソヒソ

玄「お願いします!」サゲタママ

憧「あのね、玄。今のは冗談」

玄「お願いします!!」サゲタママ!

憧「あう・・・・えーと・・・・・・・わかったよ」

玄「!!」リコペ!

憧「協力・・・するよ」

玄「あ、ありがとう!!」パァァ..

憧「う、うん・・・」


玄「っ!」チラッ

穏乃「えっ!?えーと・・・」

玄「・・・」ジー

穏乃「わ、私も手伝うよ!」

玄「ありがとう!!・・・・灼ちゃん」ジー

灼「・・・・私も協力する」

玄「あ・・・ありがとう!」

灼「うん・・・」

穏乃「ちょっと・・・どうするの?」ヒソヒソ

憧「手伝うよ・・・そういう流れだし・・・ねえ?」ヒソヒソ

灼「そうだね・・・宥さんには悪いけど・・・」ヒソヒソ

穏乃・憧・灼(とか言いつつ・・・・・正直な話、宥さんが怒るところ見てみたい)

玄「お姉ちゃんを怒らせる事は決まったけど・・・具体的にはどうすればいいのかな?」

憧「・・・うーん」


穏乃「宥さんが怒るところって想像出来ないんだよなー」

灼「確かに」

憧「怒るまでいかなくてもさ、ちょっとだけムッとしてるところとか見た事はないの?」

玄「うーん・・・ない・・・」

憧「ええー・・・宥姉・・・どんな人間なのよぉ」

灼「・・・いたずらとかは?宥さん優しいから、あんまりされなさそうだし」

穏乃「あー・・・確かに。宥さんにいたずらって、なんか凄い罪悪感だもんね」

憧「言えてる」

玄「いたずら・・・?例えばどういうの?」

灼「・・・・黒板消しをドアに挟んで、ドアを開けたら落ちてくるとか」

憧「でも引き戸じゃないと出来ないよね」

灼「あ、そうか・・・」

憧「うーん・・・あ!」

穏乃「な、なんか思いついた?」


憧「うん!小学生の時にあったいたずらなんだけど」

玄「うん」

憧「給食の時間に、牛乳飲んでる子を笑わせる、ってやつ」

穏乃「あー・・・そんなのあったなぁ」

玄「?・・それって怒る事なの?」

憧「服とかにこぼれたりするし・・・結構ムカつくかな」

玄「そうなんだ」

灼「じゃあ牛乳を用意しないと・・・・そろそろ宥さん来るかも」

憧「そうだね、早く売店に・・・・しず!」

穏乃「よし!行ってくる!」

玄「あ、これお金」ワタス

穏乃「うん!じゃあ行ってくる!」タタタタ!ガチャ バタン!

灼「・・・他にはどんなのがあるかな」


憧「うーん・・・玄は宥姉が意地悪された時、怒ったんでしょ?」

玄「うん」

憧「じゃあ宥姉はその逆、とか?」

玄「・・・・私が意地悪されると怒る?」

灼「・・可能性はあるかもね」

玄「・・・・じゃあ私を叩いてみて」

憧「え?」

灼「それは・・・・」

玄「いいから・・・お願い」

灼「・・・・玄・・」

玄「お姉ちゃんの為だから!」

憧「・・・・わかった」


玄「ありがとう・・・じゃあお姉ちゃんが来たら」

憧「フン!」ミゾオチパンチ!

玄「がふっ!」ズン!

灼「あ」

玄「かっ・・・・はぁ・・・」ガクガク

憧「こんな感じかな?」

玄「い・・・いたいよぅ・・・」ナミダメ..

憧「あ・・・・ごめん、強すぎた?」

灼「それ以前に宥さん見てないし、別に急所を狙わなくても」

憧「あー・・・・ごめんね」

玄「う、うん・・・大丈夫・・・でも、やっぱりこれはやめよう?」

憧「え?玄を叩くのを?」

玄「うん・・・もう耐えられない・・・」ケホケホ

憧「そっか、残念」


灼「・・・・他にはどんな方法があるかな?」

憧「・・・・・悪口・・・とか?」

玄「なるほど・・・」ケホ

灼「普段言われないだけに、怒るかもしれない」

憧「じゃあ、牛乳の後に試してみる?」

玄「そうだね」フムン!

ガチャ

宥「遅くなってごめんね~」パタン

憧「あ」

灼「・・・・」

玄「お姉ちゃん」

宥「え?どうしたの?」

憧「な、なんでもないよ!宥姉は座って座って!」

宥「え・・うん」スワリ


ガチャ!

穏乃「お待たせ~!」バタン!

憧「おかえり」

穏乃「あ、宥さん」

宥「遅れちゃってごめんね~?」フルフル

穏乃「ううん、全然大丈夫ですよ!」スタスタ

憧「買ってきた?」ヒソヒソ

穏乃「うん、紙パックだけど」ヒソヒソ

玄「ありがとね」ヒソヒソ

灼「じゃあ、宥さんに・・・」ヒソヒソ

穏乃「うん」

宥「?」

穏乃「あ、あの、宥さん?」

宥「なあに?」


穏乃「こ、これ・・・・どうぞ!」

宥「え?・・・牛乳?」

穏乃「はい!」

宥「で、でも・・・私遅れてきちゃったし・・・貰うのは悪いよ・・」

穏乃「いえいえ!いつもお世話になってますから、感謝の気持ちです!」ドーゾ!

宥「穏乃ちゃん・・・ありがとう・・・・嬉しい・・・・」ウケトリ

穏乃「い・・・いいえ・・・(心が痛い)」

宥「・・・・・・」ヤッター

憧・灼・穏乃「・・・・・・・」

宥「・・・・・・」ウレシイナー

穏乃「あ、あの!」

宥「?」


穏乃「の、飲まないんですか?」

宥「うん、お家に帰ってから飲もうと思って」

穏乃「え!?あの!今・・・飲んで欲しいんです!」

宥「どうして?」

穏乃「あう・・・えと・・・」チラッ

灼「出来るだけ冷たいままの牛乳を飲んで欲しいんだってさ」

宥「あ・・・・・そうなんだ・・・気付かなくてごめんね?」

穏乃「あ、いえいえ!」

宥「じゃあ・・・・」ストロー サシテ..

穏乃「・・・」ホッ

憧「しず!頼むわよ」ヒソヒソ

穏乃「え?」

憧「あんたが笑わせるの!」

穏乃「な、なんで!?」


憧「灼さんと玄にやらせる気?」

穏乃「う・・・・でも・・・」

憧「ほら!もう時間ないって!」

宥「いただきます」チュー

穏乃「・・・・ど、どうしたらいいんだよぉ・・・」

憧「頑張って!」

穏乃「うう・・・・」

宥「・・・・・」チュウー

穏乃「・・・・・ば・・・・ばみょーん!!」

宥「?」チュー

憧「っ!」プッ!

灼・玄「・・・・・・・」

穏乃「はみーん!」

宥「?」チューチュー


穏乃「ば、ばびゅー!しょりょりーん!」

宥「・・・穏乃ちゃんも飲みたいの?」ハプ

穏乃「え・・・いや、あの・・・・」

憧「・・・お腹痛い」プクククク...

穏乃「あ、憧ぉぉ!!!!」

憧「ぷっ・・・ばみょーんだって・・・あははは!高校生にもなってばみょーんて!」

穏乃「憧がやらせたくせにー!!」プンスカ

灼「穏乃が怒ってどうするの・・・」

宥「?」

憧「ふう・・・あー、おかしかった。しず、お疲れー」

穏乃「くぅう///」

灼「えと・・・次はどうする?」ヒソヒソ

玄「なんだっけ?」ヒソヒソ

憧「悪口を言う」ヒソヒソ


穏乃「宥さんに悪口かぁ・・・・なんか辛いなー」ヒソヒソ

憧「仕方ないでしょ?じゃあ始めるよ!」ヒソヒソ

宥「??」ミンナー?

玄「くっつくと暑い!」

宥「?」

穏乃「えと、寒がり屋!」

灼「・・・頼りない!」

憧「こたつバカ!」

宥「どうしたの?みんな・・・?」

玄「うーんと・・・ちょっと頼りない!」

穏乃「それ灼さんが言ったよ?」

玄「え?他にあるかな・・・・?」ウーン..


憧「鈍くさい!」

宥「え・・・?私・・・?」フルフル

憧「キャラ立ちがうざい!」

宥「うう・・・」フルフル

憧「大学落ちろ!」

宥「ううう・・・・・・ぐすっ・・・・」ウルウル..

玄・灼・穏乃「あ・・・」

宥「ご、ごめんね?私が・・・悪いんだよね?」グスッ..

憧「え・・・あ・・・」ヤベー

宥「みんなも・・・・そう思ってたの・・・?」

穏乃「お、思ってません!!」


玄「そうだよ!そんな事、全然思ってないよ!」

宥「でも・・・」グス..

灼「今のは全部冗談ですから」

憧「そ、そうそう!」

宥「ほ、本当?」ウルル

玄「みんな、お姉ちゃんが大好きだもん!」

穏乃「そうですよ!」

灼「もちろん」

憧「・・・・まぁ」

宥「あ、ありがと~」ニコー


灼「・・・こんなにも胸が痛くなるなんて・・・」

穏乃「ですね」

ガチャ

晴絵「ごめんごめん、遅くなった。全員揃ってるわね、じゃあ部活を始めるよ!」

穏乃「あ、はい!」

憧「・・・続きはどうすんの?」

玄「え?えっと・・・また今度で」

憧「りょうか~い!」


松実旅館

玄の部屋

玄「・・・・・・ふう」ベッド ニ ネル

玄(お姉ちゃんを怒らせる・・・かぁ・・・難しそうだなぁ・・・)

玄(でも・・・ストレスをため込んだら、大変な事になっちゃうみたいだし・・・)

玄(一体どうしたらいいんだろう・・・・・)ハァ

女将「玄ちゃーん!」

玄「?はーい!」

女将「ちょっとおいで!お友達が来てるわよ!」

玄「お友達?(穏乃ちゃん達かな?)」スタスタ

女将「わざわざ長野から来てくれたんだって!」

玄「長野?・・・・・あ!!」

ゆみ・桃子・智美・佳織・睦月「・・・・」フフ


玄「つ、鶴賀の皆さん!」

ゆみ「ふふっ」

玄「?」

ゆみ「すまない・・・驚かせてしまったかな?」

玄「は、はい!!どうしてうちに?」

ゆみ「いやな、松実さんの実家が旅館だと聞いてから、みんなで泊まりに行く計画を立てていたんだ」

玄「ありがとうございます」ワァ

ゆみ「事前に連絡を、とも思ったが、ちょっと悪戯心が湧いてな。サプライズというやつだな」

玄「ビックリしました・・・でも、嬉しいです!」ニコー!

ゆみ「そう言ってもらえるとありがたい」フフ

智美「ワハハ」

玄「あ!お姉ちゃんにも教えてあげないと!」


ゆみ「大丈夫だ。ついさっき話したところだからな」

玄「え?そうなんですか」

ゆみ「ああ・・・さすが姉妹というべきか、君と全く同じリアクションだったよ」フフ

玄「あ・・・なんか恥ずかしいです・・///」テレ

ゆみ「ふふ・・・・ところで、夕食の後、何か予定はあるかい?」

玄「え?予定はないですけど」

ゆみ「もしよかったら、私たちの部屋に来ないか?何をするという訳でもないのだが」

玄「あ!行きたいです!是非!」

ゆみ「そうか、決まりだな」ニコ

智美「トランプ、王様ゲーム用の割りばし、ツイスターゲーム・・・・色々あるぞー」

桃子「いいっすね」

睦月「やけに荷物が多いと思ったら・・・ツイスターゲームですか・・・」

ゆみ「私としては、ただ話すだけでも満足なんだがな」


玄「あ・・・・」

ゆみ「お姉さんも誘っ」

玄「あのっ!」

ゆみ・桃子・智美・佳織・睦月「?」

玄「お姉ちゃんの事で、相談があるんですけど・・・・・その・・・・・・・・・」

玄(・・・せっかく遊びに来てくれたのに、悩みを相談するなんて・・・・悪いかな?)

ゆみ「そうか、わかった」

玄「え?・・・あの・・・いいんですか?」

ゆみ「もちろんだ。」

玄「あ、ありがとうございます!」

ゆみ「ふふ、気にするな」


夕食後

玄「・・・という訳なんです」

ゆみ「ふむ・・・確かに温厚そうに見えるが・・一度も怒った事がないとは・・・」

佳織「す、凄いですよね」

睦月「信じられないくらい」

玄「そ、そうですか?蒲原さんだって温厚そうですけど」

智美「ワハハ。そうかー?」

ゆみ「確かにあまり怒らないが・・・ごにょごにょ」ミミウチ

智美「・・・・・ムカカ」

玄「あっ!お、怒った・・・」

ゆみ「君のお姉さんに比べれば大した事ないさ」

玄「そうですか・・・(何を耳打ちしたのか気になるよぉ)」


桃子「あの、思ったんすけど、別に怒らせる必要ないんじゃ?」

ゆみ「ん?」

玄「それってどういう?」

桃子「んと、新子さんの言い分は大げさっすから、無理に怒らせなくてもいいと思うんすよね。今までなんの問題も無いんすから、そのままでもいいのでは?」

玄「そう・・・ですか?」

ゆみ「いや、それは違うと思う」

桃子「え?」

玄「?」

ゆみ「あまり怒らない人、と怒った事が無い人、は別物だ。一度も怒らないというのは不自然すぎる」

玄「た、確かに」

ゆみ「こんな事を言うのは気が引けるが・・・お姉さんが君に心を許していない可能性は?」

玄「え・・・・っ」アオザメ

桃子「せ、先輩!」

ゆみ「すまない・・・しかし、お姉さんが君の前では姉らしくあろうと努めているとしたら、無理矢理怒りを押し殺しているのかもしれない」


玄「そんな・・・」

ゆみ「これは・・言い換えたら、一人でいる時以外は気が休まらない状態・・と言える」

玄「お姉ちゃん・・」ウル..

ゆみ「お姉さんが優しく、いい人であるが故の弊害・・・・誰を責める事も出来ない」

智美「考えすぎじゃないかー?」

ゆみ「かもしれないが、否定しきれるものでもない」

玄「・・・・・どうすればいいんでしょうか・・・?」

ゆみ「・・・・・君の言う通り、一度怒らせてみるのも手かもしれない」

佳織「そ、それじゃあ?」

ゆみ「みんなでお姉さんを怒らせる方法を考えるとしよう」

智美「・・・そうだなー」

桃子「一番手っ取り早いかもっす」

玄「あ、ありがとうございます!」

ゆみ「気にするな。・・よし、では思いついた事をどんどん言ってくれ!」


ゆみ「―――うん、いくつかいい案が出たな。次は・・・・ん?」

玄「・・・・」ウトウトー

ゆみ「眠いか?」

玄「ふぇっ!?あ、す、すいません!私の為に考えてくれてるのに!」

智美「気にするなー。私も眠くなってきたしな」

ゆみ「では、今日はここまでにするか」

桃子「そうっすね」

ゆみ「私たちは明日の朝食後に出掛け、もう戻ってこない。それまでにもう少し案をまとめておくよ」

玄「すいません・・・せっかく皆さんで遊びに来てくれたのに・・・・邪魔しちゃって・・・」

睦月「そんな事誰も思ってないよ?」

佳織「そうです!」

桃子「気にしすぎっすよ?」

智美「ワハハ」

玄「あ、ありがとうございます!(みんな優しいよー)」


翌日

朝食後

ゆみ「この用紙に、お姉さんを怒らせる案をまとめておいた。突拍子もないものが含まれているが、実行するかどうかは君に任せる」ペラ

玄「本当にありがとうございます」ウケトリ

ゆみ「私たちのメールアドレスも書いてあるから、あとで結果を教えてくれ」

玄「はい!」

ゆみ「お姉さんによろしく」

佳織「また来ますねー!」

睦月「さよならー!」

桃子「頑張ってくださいっす~!」

玄「はーい!」バイバイ

玄「・・・・・・・」

玄「・・・・・よし!鶴賀の皆さんの協力を無駄には出来ないよ!頑張ろう!」ウン!

玄「まずはお買い物をして・・・・と」スタスタ


昼食

玄・宥「いただきます」

玄(よし・・・・早速試すぞー)フムン!

宥「ぱくぱく」

玄(今日のお昼ご飯は、から揚げ弁当・・・確か鶴賀の皆さんに貰ったメモに食事の時に怒らせる方法が・・・)チラ

鶴賀メモ(食事の時、一番のおかずを勝手に奪って食べる)

玄(これはいけるかも・・・よぉし)

玄「っ」サッ!パク

宥「あ・・・私のから揚げ・・・」

玄「もぐもぐ」

宥「玄ちゃん?」


玄「もぐもぐ」

宥「美味しい?」

玄「うん!」

宥「よかった・・・もう一つあるけど食べる?」

玄「え?いいの?」

宥「うん、玄ちゃんから揚げ大好きだもんね」

玄「う、うん」

宥「はい、あーん」

玄「あーん。もぐもぐ」

宥「うふふ」

玄(ダメだ~!怒る気配がないよぉ・・・から揚げ美味しいよおぉ)モグモグ


昼食後

玄(えっと、他には・・・)ペラ

鶴賀メモ(意味もなく、出会い頭にスネを蹴る。何度も蹴る)

玄(これは怒るよ~・・・よおし!あ、ちょうどお姉ちゃんが来た!)

宥「~♪」スタスタ

玄「・・・」スタスタ

宥「あ、玄ちゃ」

玄「っ!」シュ

ビシ!

宥「痛っ!」

玄「・・・」

宥「え?玄ちゃん?」

玄「・・・」シュ!ビシィ!

宥「痛い!痛いよ玄ちゃん・・・・」スワリ


玄「・・・」シュ!ビシッ!

宥「痛ぁい!・・・うぅ・・・玄ちゃん?・・・どうして・・・」グス

玄「あ・・・・」

玄(怒るどころか、泣かせちゃった・・・)オロオロ

宥「玄ちゃぁあん・・・」エーン

玄「ご、ごめんねお姉ちゃん!」タタタ

宥「うぅ・・ぐす・・・・玄ちゃんはお姉ちゃんの事が嫌いなの?」スン...グス

玄「ううん!大好き!大好きだよお姉ちゃん!」

宥「よかったぁ・・・よかったよぉ・・」エーン

玄「ごめんね!お姉ちゃぁん」ダキツキー!


夕食後

玄「・・・・・・」

玄(あれから色々と試してみたけど、全部ダメだった・・・・)

玄(お姉ちゃんのお友達の悪口を言う。・・・優しく注意されただけ)

玄(お姉ちゃんの教科書に落書き・・・優しく注意されただけ)

玄(お姉ちゃんのアルバムの写真をシャッフルして、コメントと写真をちぐはぐにする・・・優しく注意されただけ)

玄(着てるお洋服を無理矢理脱がす・・・・泣かせてしまった)

玄(他のも全部ダメだったし・・・残りは一個だけだよぉ・・・)

玄(でもこれならきっと怒るよね・・・よし!頑張ろう!)

玄「ちょうどお姉ちゃんはお風呂に入ったばかり・・・」ソローリ


脱衣所

玄「あった・・・マフラー」

玄(最後の鶴賀メモ・・・お姉ちゃんの大のお気に入りのマフラーを、天ぷらにする!)

玄(私じゃ絶対に思いつかない事だよぉ・・・鶴賀の皆さん凄いなぁ・・・)

玄(よおし、お姉ちゃんがお風呂に入ってる今がチャンス!)

玄(だけど、本物のマフラーを使うのはお姉ちゃんに悪いから、さっき買ってきたそっくりなマフラーとすり替えよう)ササッ

玄(よし!このマフラーを天ぷらにするぞー)

玄(そうすればお姉ちゃんは怒って、私に心を許してるって証明出来るよ!)ヨーシ!スタスタ

玄(マフラーに小麦粉と卵を付けて、油に・・・・投入!)ポシャン!

玄「おおー・・・・ジュワーっていってる・・・いい調子♪」


数分後

玄「できたー!マフラーの天ぷら!これを脱衣所に置いて・・・と」ヨイショ

玄「・・・・よし!これで後はお姉ちゃんがお風呂から出るのを待つだけだね」フフン

玄「・・・隠れて様子を見ようっと」ササッ

玄「・・・・・・・・・・」

ガチャ

宥「ああ~、あったかかった」ホワー

玄(わわ・・・相変わらずのおもち・・・・お肌もツヤツヤでキレイだなー)ポワーン

宥「よいしょ」キガエ

玄(さぁ、いよいよマフラーだよぉ)

宥「よい・・・しょ?」アレ?

玄(さぁ!怒るか?)


宥「マフラー・・・・どういう事・・・・?」ボーゼン

玄(よし!ここだ!)サッ!

玄「じゃじゃーん!ごめんねお姉ちゃん!お姉ちゃんのマフラーを天ぷらにしちゃった!」ババーン

宥「え・・・・玄ちゃん・・・?」

玄「うん!」

宥「・・・・毎年、冬には玄ちゃんと二人で一緒に巻いてた・・・玄ちゃんとの思い出のマフラー・・・・」グス

玄「あ・・・・」

宥「わぁぁぁあん!」スワリ

玄「お、お姉ちゃん?」オロオロ

宥「玄ちゃんとの思い出がぁ~」ウワァーン!

玄「あ、あうう」

宥「ぐす・・・ひぐっ・・・すんっ・・」エグエグ

玄(お姉ちゃん・・・・最大級に悲しんでる・・・・)ズキッ

玄「ご、ごめんなさい!そのマフラーはニセモノなの!」ホラ


宥「え?」グス

玄「こっちにあるのが本物のマフラーだよ!」

宥「じゃ、じゃあ・・・・・・本物は天ぷらになってない?」

玄「うん!」

宥「ううっ・・・よかったぁ・・・」グス

玄「お、お姉ちゃん・・・・」ウル

宥「あのマフラーは・・・私の宝物だから・・・」

玄「お姉ちゃん・・・・」グス

玄(私との思い出を・・・そんなに大切にしてくれてたなんて・・・)

玄「おねえちゃぁああん!ごめんなさぁぁあい!!」ダキッ

宥「玄ちゃん?」

玄「わたし!おねえちゃんにひどいことしちゃったよぉ~!!」エーン!

宥「玄ちゃん・・・大丈夫だから・・・泣き止んで?」ナデナデ

玄「ううぅ・・・おねえちゃー!!!」エグッ...グスッ


玄「・・っていう事だったの」

宥「そう・・・・そうだったんだ・・・」

玄「うん・・・・」グス

宥「ごめんね?玄ちゃんの気持ちをわかってあげられなくて」

玄「ううん、私が最初からお姉ちゃんとお話ししてればよかったんだよ・・・本当にごめんなさい」

宥「ふふ・・・私は気にしてないよ?」ナデナデ

玄「ありがとー・・・」

宥「私だって怒る事はあるよ?」

玄「ほ、本当?」

宥「うん。でもね、私は玄ちゃんが大好きだから、玄ちゃんの前で怒った顔を見せたくなかったの」

玄「そうだったんだ・・・」

宥「そうだよ?でもそれが玄ちゃんを不安にさせてたんだったら、お姉ちゃんが間違ってたね。ごめんなさい」

玄「そ、そんな事・・・・」


宥「でもわかって欲しいの。私は、玄ちゃんが世界で一番大好き。玄ちゃんと一緒にいるだけで嬉しい」

玄「お姉ちゃん・・・」

宥「玄ちゃんと一緒にいると幸せだから、怒る事も無いの」

玄「私もお姉ちゃんといると幸せ!」

宥「うふふ・・・本当?嬉しいな」

玄「本当だよ!」

宥「ありがとう」ニコー

玄「でも・・・よかった・・・お姉ちゃんが私に心を許してないとかじゃなくて」

宥「ふふ・・・そんな訳ないよぉ」

玄「本当に・・・よかった・・・・ぁふ・・・」

宥「あ・・・玄ちゃん・・そろそろおねむかな?」

玄「うん・・・・安心したら眠くなってきた・・かも」

宥「じゃあそろそろお部屋に戻ろ?」

玄「うん・・・」


玄の部屋

玄「おやすみなさい」

宥「うん、おやすみなさ~い」

玄「・・・・・・・」

宥「・・・・・」ナデナデ

玄「・・・・・すー・・すー」

宥「可愛い寝顔・・・・」ナデナデ

玄「・・・・むにゃむにゃ・・・お姉ちゃー・・・・」ニャムニャム

宥「・・・・・」キュン

玄「お姉ちゃん・・・・だいすき・・・」ニャムー

宥「・・・・・私も大好きだよ」ホッペ ニ チュ

玄「えへへへ・・・・・」

宥「ふふふ・・・・・・・・さてと」スタスタ


新子家

憧「初瀬ぇ・・・もうそろそろ帰ったら?」

初瀬「ごめん!もうちょっと!今いいところだから!」

憧「ていうかさぁ・・・いくらテレビが見たいからって、毎日来られるのもきついって」

初瀬「わかってるけど、家にテレビがないんだもん」

憧「それは同情するけど、なんでうちなの?」

初瀬「インハイの時に勢い任せで来てみたら、普通にテレビ見せてくれたからさ」

憧「それで味を占めた訳ね・・・」ピンポーン

初瀬「あ、お客さん?」

憧「かもね。お姉ちゃんが出るから無視。つーか、もう帰りなって」

初瀬「でも!CMの後、まだまだ続くって」

憧「ただの引っ張りだって。もう終わるよ、時間的にさ」

望「憧ー?宥ちゃん来てるわよ~!」

憧「宥姉?なんだろ?ちょっと行ってくる」タタ

初瀬「テレビって面白いなぁ・・・・一台でいいから欲しい・・・」


新子家前

宥「こんばんは~」

憧「どうしたの急に?」

宥「ちょっとね・・・あの・・・歩きながら話そう?」

憧「?いいけど・・・」テクテク

宥「だんだん寒くなってきたねー」フルフル

憧「そだね。ま、宥姉にとっては九月から寒いんだろうけど」アハハ

宥「うん」ウフフ

憧「それで?何か用があるの?いきなり家まで来るなんて珍しいよね?」

宥「うん・・・・あのね」

憧「?」

宥「玄ちゃんに聞いたんだけど、私を怒らせようとしてたって・・・」

憧「あ、ああ・・・・そ、そんな事あったね」


宥「でもみんな、私を心配してくれてたって聞いてね」

憧「あ、あったり前じゃーん!仲間だしさぁ!」

宥「うん、凄く嬉しい」

憧「そう?それならよかった」アッハハ

宥「でもね?ちょっと気になる事があって・・・」

憧「気になる事?」

宥「憧ちゃんが、玄ちゃんのみぞおちを叩いたって」

憧「あ・・・・・」

宥「玄ちゃん痛かったって言ってた」

憧「で、でもそれは!玄の提案で・・・」

宥「・・・・・ふふふ」

憧「・・・・・ゆ、宥姉・・怒ってる?」

宥「・・・・・・・・怒ってないよ?」ゴゴゴゴ

憧「ひっ」


宥「でも、ちょっとお仕置きが必要かなって思って、来ちゃった♪」

憧「あ・・・ああ・・・」ブルブル

宥「ふっ!」シュル!

憧「もごっ!?な、何これ!?」マキツキ!

宥「ふふ・・・マフラーの天ぷらだよ♪」

憧「な、なんなのそれ!?意味わかんない!!」

宥「私もー♪」ギュー!ゲシゲシ!

憧「いやぁ!ベタベタするー!!スネも痛い~!!」

宥「・・・・大学合格するように頑張るよぉー」ヌガシッ!

憧「ひっ・・・ちょっと!脱がさないで~!!」


宥「えい」スポン!

憧(全裸+天ぷらマフラー)「え・・・あわわ・・・・」

宥「ごめんね憧ちゃん・・・私、鈍くさいから、憧ちゃんのお洋服持って帰っちゃうね」

憧「う、嘘・・・・マジ・・・・?」

宥「さぁて、お家に帰ってこたつに入ろ~・・・だってこたつバカだもんね」スタスタ

憧「・・・・・・・・・・おーい・・・本当に帰っちゃった・・・・」

憧(ど、どうしよう・・・こんなところ誰かに見られたら・・・・)

初瀬「憧・・・・?」

憧「!!」

初瀬「・・・・・・」


憧「え・・・・あの・・・これは・・・・」

憧(最悪の展開!・・・でも、上着だけでも借りればなんとか・・・・)

初瀬「ふう・・・・親友の憧がそういう趣味なら仕方ないよね・・・私も脱ぐよ!」スポン

憧「はあ?」

初瀬(全裸)「私の服も捨てちゃおう!」ポイ

憧「な、何してるのよ!!」

初瀬「え?憧が裸で外を歩くのが好きで、親友と一緒に歩きたいらしいって聞いたから」

憧「誰に!?」

初瀬「松実さんのお姉さんに。ついさっき電話で聞いたよ」

憧「ゆ、宥姉・・・・」


初瀬「社会的地位なんていらないんだって?大胆だよね~?さすが憧!」

憧「あ・・・・ああ・・・・あ・・・」

初瀬「正直言うと恥ずかしいけどさ・・・・・憧となら私は大丈夫・・・・うん///」

憧「こ、こんな事が・・・・」ガクガク

初瀬「さあ!一緒に行こう!!」ガシッ

憧「いやぁーーー!!」ズルズル

松実旅館

宥「これで憧ちゃんも反省したかなー?」ヌクー

宥「激情をぶつけるのはいけないよね。冷静にやらないと」

宥「温厚が一番。あったか~い」

【終わり】

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