宥「玄ちゃんが赤ちゃんになっちゃった」 (73)

菫「えっ!?」

このお話は

玄「私を使って練習してもいいのですよ?」

というSSの少し前の事を書いたお話になります
恐らくは、前作を読まなくても大丈夫かと思われますが
読んで頂くと、もう少しだけ分かり易くなるのではないかと思われます
それでは宜しくお願い申し上げます

東京。

とあるマンションの菫さんの部屋。

通話中。


宥『ど、どうしたの菫ちゃん?』

菫「い…いや……宥の言っている事が、『への突っ張りはいらんですよ』ばりに意味が判らなかったのだが……」

宥『だ…だから玄ちゃんが赤ちゃんに――――』

菫「だからその時点で、訳が判らないのだが……」

宥『…………じゃ…じゃあとにかく、今すぐ私の部屋に来て菫ちゃん』

菫「ああ…分かった。すぐに行くから――――」
 

菫さんと同じマンションの宥さんの部屋。


玄「ばぶばぶ」きゃっきゃ

菫「――――――――――」

宥「菫ちゃんいらっしゃい」にこ


菫「……こ…これは…そのまんまの意味だったのか……」

 

宥「そうなの。昨日、玄ちゃんと一緒に寝たんだけど…朝起きたらこうなっていて……」

玄「ばぶばぶ」ぎゅー

宥「こうやって私に抱き付いて、中々離してくれないの」

玄「ばぶばぶぅ」

宥「おーよしよし。それに、話してもばぶばぶとしか言わないし…本当に赤ちゃんみたいなの……」

菫「………………」
 

菫<昨夜。三人で食事をしていた時に、どこか五月病気味な妹さんを心配した宥が、妹さんを自分の部屋に泊めた事迄は知っていたのだが……>

菫「…………」じっ

玄「ばぶばぶ」きゃっきゃっ

宥「もうっ玄ちゃんたら……」ふふ

菫<……まさかこんな事になっていたとは……>


菫<しかも…これでは私の指定席である、宥のベッドの半分を妹さんに譲った甲斐が無いではないか……>ぐぬぬ…

 

宥「玄ちゃん四月に上京したばっかりだから、まだ東京(こっち)の生活に慣れないのかな……」

菫「そうだな……私も前に吉野に連れていってもらった時に、やっぱり東京とは環境がかなり違うと思ったから、妹さんがこっちに慣れないのも無理は無いな」

宥「玄ちゃんと私達は大学も違うから、中々一緒に居られないし……」

菫「大学が一緒だからって、そんなに一緒に入られる訳じゃないよ」はは

宥「でも…私には菫ちゃんがいたから、そんなに寂しさを感じた事は無いけど……」

宥「やっぱり…………私じゃ駄目なのかな……」
 

菫「そんな事は無い。宥の場合はたまたま慣れるのが早かっただけ。それに宥はいつも妹さんの事を気に掛けていたし、宥が気に病む様な事ないよ」

宥「菫ちゃん……」

菫<それにしても……>じっ…

玄「ばぶばぶ」

玄「?」きょと

玄「だぁ!」にこ

菫「!?」どきっ

菫<くっ…只でさえ天使の様な妹さんが、更に天使度を増すだなんて……>どきどき

玄「ばぶばぶ」じー

菫<!?そっそんな純真な瞳で見詰められたら――――>

菫<可愛過ぎてニヤケてしまうではないか―――――>にへらにへら

宥「…………………」
 

玄「ばぶ!!」はっ

すっ

宥「あっ玄ちゃん!?」

玄「だぁだぁ」すっすっ

よちよち…

宥<玄ちゃんが四つん這いになって……菫ちゃんの方に向かって……>

だきっ

玄「きゃっきゃっ」ぎゅー

菫「!?」

宥「菫ちゃんに抱きついた!?」
 

玄「ばぶばぶ」きゃっきゃっ

菫「い…妹……さん?」

玄「きゃっ?」じ…

玄「えへへ……ばぶぅ////」にぱぁ

菫「!!?」ガンッ!!

菫「―――――――//////」

くらぁ…

菫「はっ!?」

菫<あ…あまりに天使すぎる衝撃に一瞬…掛け値なしに卒倒しそうになった……>ふーふー
 

玄「きゃっきゃっきゃっきゃっ」

ふりふり

ぐにぐに

菫「い…妹さん動き過ぎ――――」

玄「ふにゃ~?」じ…にこにこ

菫「うっ!?」

菫<こ…こんな表情(かお)みたら何も言えなくなってしまうな……>

菫<それに……妹さんの肢体とおもち……すごく柔らかい……でもそれだけじゃなくて……>

ちら
 

宥「……………」

菫<宥と同様。柔らかさの中に優しさと温かさを感じる……この優しい柔らかさはこの姉妹特有のものなのかもしれないな……>しみじみ

菫<妹さん……>

ぎゅっ

玄「!?」

玄「きゃっきゃっ」ぱぁ

宥「………………」じー

菫<……だが…今の宥の表情(かお)はあったかくないな……>
 

宥「………………」

宥<玄ちゃん…私に抱っこされている時よりも、菫ちゃんに抱っこされている時の方が嬉しそうにしてる様な気がする……>

菫「ふふ…」なでなで

玄「きゅ~~~~~…………」ぎゅう


玄「…………………………」はっ


玄「―――――――!!」はっ!!

 

………。

玄「ばぶ」すっ

菫「あっ妹さん……」

すっすっ

玄「…………」

菫「今度はまた宥の方に……」


宥「ふふ…赤ちゃん玄ちゃん。こっちよ」にこ


菫<……赤ちゃん玄ちゃん…………>


菫<…………ややこしいな>ふむ
 

すっすっ

玄「きゃあ」だき

宥「いらっしゃい玄ちゃん」なでなで

玄「マンマ…マンマ……」

宥「ふふ…ママだって…菫ちゃん私、玄ちゃんのママになっちゃったぁ」にへへ

玄「マンマ」

もみ

宥「!?」びくっ

玄「……………」

もみもみ
 

宥「あっ…くろちゃ……//////」びくんっ

菫「ん?どうした宥?」

宥「な…なんでも……」

宥<玄ちゃん私の…おっぱい揉んでる……>

玄「おもち…おもち……」だぁだぁ

菫<!?おもち……?って今妹さん言わなかったか?>

宥「…………//////」

玄「おもちゅうおもちゅう」ちゅうちゅう

宥「!!」はっ

宥「そうか玄ちゃん……」
 

宥「私のおっぱいが飲みたいのね?」

玄「!!きゃああ!!」ぱぁぁ

玄「おもちゅうおもちゅう」こくこく

菫「!?」


宥「―――――――ん」ばっ

たくし上げ。

ぶるん。

玄「!!」ぱぁ!!

菫「!!?」ぎょっ!

菫「ゆ…宥……いくら妹さんとは言え……こんな処で生のおもちを見せるのは、いかがなものか……?それに…その…私も居るし……//////」

宥「ふふ…もう菫ちゃん今更何言ってるの?いつも私のおもちを、じっくりねっとり舐める様に見てる癖に/////」ぽっ

菫「うっ!?そ…それは……/////」

菫<それに…宥のおもちは私の専有物なのに……>

玄「………………」
 

玄「おもちゅ~」

ぱくっ

宥「あっ//////」

菫<ああっ……>

ちゅうちゅう

宥「あ…やだ…玄ちゃんくすぐったいよぅ……//////」

菫「宥…本当に吸われて……そこまでしなくても………」

宥「菫ちゃんだって、いつも吸ってる癖に……」

菫「!!////////」

菫<うう…だが…宥のおもちをちゅうちゅう出来るのも、私だけの筈なのに……>くく…
 

宥「また≪あとで≫菫ちゃんにも吸わせてあげるから…ね?///////」にこ

菫「ほ…ホントか……?/////」

宥「うん/////」こく

菫「!!そうか~そうか~」にへらにへら

玄「―――――――――」キッ

カリ

宥「!!?痛っ!!」

菫「!?」

宥「もうっ玄ちゃん…そこは敏感で大事なところだから噛んじゃ駄目だよ」めっ

玄「ごめんばぶ」ふい

すっ
 

宥「あっ玄ちゃん……」

玄「…………」

すいすい

宥「また…菫ちゃんのところに……」


玄「だぁ!!」ばっ

だき

菫「い…妹さん……」

玄「ぱぁぱ……」にこ

菫「!?」

菫「パパ!?私が?女の私がどうして…どうやったら父親になるんだ……」がびーん
 

玄「ぱぁぱ…チュウ……」ちゅ~

菫「!?ちゅう?い…妹さん…も…もしかして私のおもちも吸いたいのか?」どぎまぎ

宥「……………」

菫「だが…私は宥程…おもちは大きくn――――」

玄「だあ!!」ぶんぶん

菫「違うのか?」

玄「きゃい」こく

菫「じゃ…じゃあ……」

玄「ねむねむちゅ~」ちゅ~

菫「!!もしかして…おやすみのちゅうとか……?」
 

玄「きゃい!!」こくこく

菫「……しかし…それは……」


玄「ぱぁぱ…だいしゅき……//////」にこっ

ちゅ~


菫「!!!?」どきーん!!

菫「そ…そうか……おやすみのちゅうは必要だよな……うん」

宥「……………パパもお前の事がその…大好きだよ/////」かぁ

玄「!!!」ぱぁっ!!

菫「そ…それじゃあ……」どきどき

玄「…………」すっ

菫「おやすみ妹さん……」ちゅう~
 

玄「…………」す…

菫「…………」す…


…………。


宥「菫ちゃん」


菫「!?」びくっ!


宥「玄ちゃんも」


玄「!!」どきっ!!
 

宥「≪そこまで≫はしなくてもいいんじゃないかな?」にこにこ

菫「は…はひっ」こくこく

菫<宥…顔は笑っているけど目は全く笑っていない……>ゾッ…

玄「ご…ごめんばぶ……」びくびく


菫<……自分は私の目の前で、桃色お豆を吸わせてたくせに……>もやっ

宥「ん?菫ちゃん…ナニか言いたい事があるのかな?」

菫「い…いえ何でもありましぇんっ!!」ぴしっ

宥「それならいいけど……玄ちゃんも――――」はっ


玄「……………」すぅすぅ…

 

宥「玄ちゃん…寝ちゃったね……」

菫「ああ…やっぱりここのところあんまり寝られなかったんだろうな……」

宥「やっぱり私には判らない…想像以上の不安や寂しさがあったのかな……?」

菫「ああ……そしてそれが原因で一時的にせよ、現実からの逃避とも言える幼児退行をしてしまった……」

宥「うん……」

菫「だが…今はこうして、すやすやと眠ってくれているのだから。私達と一緒にいて、少しは寂しさを紛わせてくれたのだと思う」

宥「そうね…そうだといいけど……」

菫「宥がおもちまで吸わせてあげたんだから、ある意味そうならないとおかしい」どや

宥「――――もうっ////菫ちゃんたらっ//////」かぁ

菫「ふふ…」ふふん

宥「もうっ知らないっ」ぷい
 

………。

宥「………菫ちゃんあのね……」

菫「ん?どうした」

宥「私、小さい頃から寒がりで…気弱な小動物みたいだったから、近所の男の子に服を脱がされそうになった事があるの……」

菫「それはけしからんな」

宥「ふふ…それでね、その時に玄ちゃんが、男の子たちの前に立ちはだかって、『おねーちゃんに手を出さないよーに』って助けてくれた事があるの」

菫「はは…妹さんらしいな」

宥「だから…もし玄ちゃんが困っている様な事があれば、今度は私が支えてあげたいって思ってたけど……難しいね……」
  

菫「そうかな?私は…宥は充分、妹さんの支えになっていると思うが……」

宥「そう…かな……?」

菫「ああ」こく

宥「ありがとう菫ちゃん……それにね。玄ちゃんの事は勿論だけど、私は菫ちゃんの事も守りたいし、支えになりたいと思っているの」

菫「宥……」
 

宥「だから私は…菫ちゃんに手を出したり、纏わり付く様な悪い虫は絶対に許さない」

宥「たとえそれが≪誰≫であろうと――――」

菫<―――――っ!!>ゾクッ

宥「だから…安心してね菫ちゃん」にこ

菫「あ…ああ……」

菫<あ…圧倒された……宥ってこんなに迫力を出せたのだな……>ごくり

菫<だとすると…さっき自分の事を気弱な小動物と例えたのは何だったのか……>

宥「ん?どうしたの菫ちゃん?」

菫「……い…いや…なんでもないよ……」

宥「変な菫ちゃん」ふふ
 

………………。

玄「すーすー」すやすや

宥「玄ちゃん…すやすやしてる……」

菫「ああ…そうだな……」

宥「ふふ玄ちゃん……無邪気な顔で、ほんとに赤ちゃんみたい」くす

菫「ああ…そうだな」

菫<妹さんは元々、少々子どもっぽい処があったからな……>

菫<だからこうして安心した様な寝顔を見ると、本当に天使なんじゃないかと思えて来るな……>

菫<でも…そんな無邪気さにそぐわぬ、むちむちの肢体とおもちがまた――――>わきわき

宥「………………」じ…

 

菫「ん?どうした宥?」

宥「菫ちゃん…気のせいか今凄く疚しい貌をしてた気がしたのだけど……」

菫「!!?そっそんな事はないっ」ぎくり

宥「ふふ…冗談……よ?」にこ

菫「ははは…まったく可笑しな事を言う」どきどき

菫<ふぅ…あぶないあぶない……これはなかなか気を抜けないな……>

宥「菫ちゃん。玄ちゃんをベッドに運ぶ?そのままじゃ菫ちゃんが大変じゃないかな?」

菫「いや…もし動かして起こしてしまったら可哀想だし、宥の妹さんの為なら私の膝枕位幾らでも貸せるさ」
 

宥「ありがとう菫ちゃん」

菫「ああ」

宥「でもこうしていると…本当に私達に子どもができたみたい」

菫「宥は……子どもが好きなのか?」

宥「うん。好きだし、育ててみたい気持ちはあるけど……その辺りは心得ているから大丈夫だよ?」

菫「そうか……」

菫<子どもか……宥との将来を考えれば……これは一度真剣に考える必要があるな……>
 

………………………。

玄「……ん…むにゃ…私……えっ?」どきっ

玄「真上に程良い大きさのおもち?……その上に…弘世さんの顔が……――――!!」はっ!

がばっ

菫「妹さん。起きたみたいだな」

本「ぱたん」

玄「ひ…弘世さん……私…今まで寝て……」

菫「ああ…よっぽど疲れていたのだろう?突然。寝てしまったからな……」

玄「それで…もしかしてずっと膝枕をしてもらって……」

菫「ああ。そうだが」

玄「ごめんなさいっ。いきなり寝ちゃった挙句に、ずっと膝枕までして貰ってたなんて……」ふかぶかとおじぎ
 

菫「いや。構わないよ。その間は本を読んでたし。それにそんなに長い時間でもなかったな」

玄「それで、お姉ちゃんは?」

菫「ああ。宥ならちょっと用事があって出掛けたよ。もう少ししたら帰って来ると思う」

玄「そうですか……」

玄「あの弘世さん……」

菫「まだ何か?」

玄「あの…その……私…お二人に…御迷惑を……」

菫「妹さんが赤子の様になってしまった事か?」

玄「………は…はい……」
 

菫「やっぱり覚えていたのか……」

玄「はい……無意識とはいえ……あんな事を……」

菫「ふふ。無意識…と言うか本当は途中から元に戻っていたんじゃないか?」

玄「えっ!?」どきっ

菫「その様子だと図星みたいだな」

玄「……はい…でも何時から気付いて……」

菫「妹さんが、『おもちばぶ』なんて言い出した位からかな。赤子がそんな言葉を使う事なんて無いし。それに多分宥も気付いていただろうしな」

玄「……本当にごめんなさい…私…その弘世さんとお姉ちゃんに、あんなに構って貰えて、それが凄く嬉しくて…それで……調子に乗ってしまって……」
 

菫「そうか……」

玄「……その…怒ってますよね…あんな勝手な事をしてしまって…その……お姉ちゃんも、弘世さんも……」

菫「そんな事は無い。宥は当然だし、私もな。宥なんかは逆に妹さんが、ああなったのは自分が至らなかったかなんて反省していた位だから」

玄「お姉ちゃん……」

菫「宥は本当に妹思いで、優しい人だよ。宥は。私なんかと違ってな」にこ

玄「弘世さん……」

玄<……ううん…弘世さんだって充分過ぎる程に優しい……なのにこんな事言うから……私は……私は――――>
 

菫「ん?どうした妹さん?」

ぎゅっ

菫「!?」

玄「もう少し…こうしててもいいですか?」

菫「ああ。私は構わないよ」にこ

玄「うれしい――――」

ぎゅう

菫「い…妹さん……ちょっと強い―――」

玄「えへへ…いいって言ったのは、弘世さんなんですからね」ぎゅう

菫「もう。しょうがないな……」ふぅ
 

玄<私がああなったのは…寂しかった……ううん…弘世さんと一緒に居られるお姉ちゃんが羨ましかったから…だと思う……>

玄<私もお姉ちゃんみたいに、この人に甘えたかった。抱き締められたかった……>

玄<私は…初めてお姉ちゃんから弘世さんを紹介されて、きれいな人だけどちょっと怖いかな。なんて思ったけど……>

玄<それが間違いだって、優しい人だってすぐに分かって……あのお姉ちゃんが好きになる位だもん…そんな事は当たり前なんだけどね……>

玄<でも…それ以来…私は…私は……どんどん貴女の事を―――――>ぎゅう…

菫「……妹さん?」

すっ
 

菫「!?」どきっ

菫<な…なんて切なげな…思い詰めた貌で私を見るんだ……>

玄「弘世さん…私……」どきどき

菫「…………」ごくり

玄「私…弘世さんのこt――――――――」


がちゃ…

玄「!!?」びくっ

ばっ

宥「ただいまー菫ちゃん」

菫「宥。おかえり」
 

宥「うん。ただいま菫ちゃん」にこ

玄「お姉ちゃん。おかえりなさい」

宥「うん。ただいま玄ちゃん。もう起きてたんだ」にこ

玄「うん……」


宥「でも玄ちゃん。元に戻ったみたいで良かった」ほっ

玄「お陰さまで……」
 

宥「ふふ。それじゃあ玄ちゃんも起きた事だし、今日は皆でご飯を食べに行きましょうか?今日は私と菫ちゃんが、奢ってあげるからね」にこ

菫「私『も』か……まぁ妹さんになら吝かではないが……」

玄「お姉ちゃん…弘世さん……」

宥「それじゃあ、早速行きましょ」

菫「ああ。そうだな…それじゃあ行こうか妹さん」

玄「はい……」

玄<弘世さんはお姉ちゃんの大事な人……それでも私は…私は―――――>

菫「ん?どうした妹さん?」

玄「ううん…なんでもないのです……今日は折角お二人が御馳走してくれるのだからしっかり食べちゃいますよ?」

菫「ああ。寧ろたくさん食べてくれると私も嬉しいよ」

宥「うん」にこ
 

…………。

宥「菫ちゃん。玄ちゃん。準備できた?」

菫「ああ」

玄「はい」


宥「うん。じゃあ行きましょうか?」

菫「ああ」

玄「はい」
 

玄「………………」こくん

ぎゅっ

菫「!?」

菫<妹さん…私の手を握って!?>

玄「今日くらいは……」ぼそ

菫「?」

玄「いいですよね?」ぼそ

にこ

菫「ああ」こく

にこ


宥・菫・玄「「「いってきますっ」」」


おしまい。

 

取り敢えずおしまいです
有り難う御座いました

おまけ。


玄「7月7日、晴れ」


玄「この時期にこんなに晴れるなんて珍しいな……それに東京の夜空なのに…星もいつもよりもよく見えてる……」

玄「星の数もどんどん増えてるみたい……」

玄「思い切って七夕セットを買って良かったかな?」えへへ

玄「でも、買わないと笹が手に入らないなんて、吉野に居た頃は考えられなかったなぁ……星もここよりずっとはっきり、きれいに見えてたし……」
 

玄「でも一人で七夕なんて…私……何やってるのかな……」はは…

玄「弘世さんも、お姉ちゃんも二人で七夕デートに行っちゃったし……」

玄「こんな事なら、華菜ちゃんや大学の麻雀部のみんなと一緒に、七夕女子会にでも行ってれば良かったのかな……?」

玄「でも…私は七夕の夜を一人で…ううんあの人と迎えたかったから……」

玄「そうなる事を願いたかったと想ったから……」

玄「だから今…一人でいるのかな……」
 

玄「私は…あの人の事が……やっぱり…好き……なんだろうなぁ」ふぅ

玄「でもあの人にはお姉ちゃんがいる……」

玄「幾ら望んでも手の届かない処は、織姫と彦星にちょっとだけ似ているのかな?」えへへ

玄「私はあの人といつでも会う事が出来る……でも私は――――」

玄「あの人と……会いたいんじゃなくて…あの人と逢いたいんだ―――――」

玄「…………」はっ

玄「えへへ…自分でも何言ってるのかよく分んないや……」

玄「そんな事言ってないで、そろそろ短冊にお願いごと書いて吊るしちゃおう」

かきかき

きゅっ…


玄「うん…これでよしっ」
 

玄「結局…やっぱり、これしか思い付かなかったなぁ……」

玄<叶わないって判っていても――――>

玄<星に…短冊にありったけの願いを込めて―――――>


玄<私はあの人に…私の彦星に――――――>



逢いたくて

逢いたくて

逢いたくて―――――


本当におしまい。
 

これで本当に全部おしまいです
ここまで読んで頂き
有り難う御座いました

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