淡「あけましておめでとー!」照「今年はよろしく」 (166)

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八:|:.:.|:{\:.:.l:|:.:.ハ|        /  す/仲 妹 /
──────く ̄ ヽ   /方 る/直 と /
        |  l  ∧   /法  / り  /
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   |    |  |― イ /   '
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「あなたにとって、アイツはなんなんですか?」


「お前にとっての・・・は一体なんなんだ?」







 わ た し は

 私 私は? 私って何?

 気持ちって何?

 彼女の気持ち?

 ・・・それなら、わかりきっている


「私は私 あなたはあなた ただそれだけですよ?」

 じゃあどうしてみんなは私を見ようとしないの?

「見・・・る・・・?」

 私が何を考えているのか
 
 私がどう思っているのか


「わかりません」 

 わからないの?

「私には難しい事はわからないです」
 
 そう




「でも、あなたはとても優しいっていうのは知ってます」

 優しくなんかない

 私は色々なモノを失ったから  

 私は色々なモノから逃げてるから






「私があの子の代わりでいいんですよ?」

 違う

「それともあの子の代わりでもいいんですよ?」

 違う!




「・・・あなたはどうしたいんです?」

 わからない

「わからないんです?」

 私が何を望んでいるのか

 私がどうしたいのか

 みんなにどうして欲しいのか


「じゃあ、やめましょう」

 やめる?

「そうです!難しい事を考えるのをやめましょう!」

 いいのかな・・・

「私はあなたに出会って、毎日が楽しいですよ?」

 それは何よりだけど

「あなたは」

 え?















「照さんは・・・」


全国大会団体戦終了後

菫「・・・三連覇か」

照「当然」

菫「準決勝で2位通過だったりと危うかったぞ?照からすればそうじゃないのかもしれないが」

照「虎姫に負けは無いよ?」

菫「準決勝で負けてるわけなんだが」

照「優勝出来ないのが負けだからセーフ」

菫「そういうもの・・・か?」


菫(まぁ結果論ではあるが、準決勝の2位抜けがあったのは良かったかもしれない)

菫(元々油断も慢心もしてた気はないが、本当の意味でそれが無く決勝を戦う事が出来た)

菫(あとは、姫松の愛宕洋榎、清澄の原村と照の妹、このくらいしか個人で抜きん出ている選手もいなかった)

菫(強者と勝者がイコールにならないのが勝負事ではあるが)

菫(何にせよ・・・次は4連覇を託すわけか)

菫(そういえば照の妹、大丈夫か?)


全国大会団体戦 決勝 副将戦終了

菫「いよいよ大将戦か、大星を信じないわけじゃないが、実際のところどうだ?」

1位白糸台 2位阿知賀女子 3位清澄 4位姫松

照「清澄は3位だからもう無視していい]

菫「ふむ」

照「淡行っちゃったから今言っても意味無いけど」

菫「おい」


大将戦 前半 途中


末原(わたし以外、全員1年生やし、みんなの視線の先は白糸台か)

末原(正直4位な上に、結果も残していないわたしを視界から外すのはしゃーなしか)

末原(一番厄介な宮永が3位、一番抑えるべき白糸台が1位、情報という情報がない阿知賀が2位)

末原(どう立ち回るのが正解なんやろう?)

淡「あのさ、あがらないの?」トントン


末原「は!? ロ、ロン! 16000!」

咲「ッ!?」

末原(差し込んだ?いや、今ので阿知賀が1位になってしまった。どういうことや?)

穏乃「サイコロまわしますね」

咲「・・・!」

末原(宮永が何かに驚いてる?)


前半戦終了 通路にて

末原「さっきのどういうつもりや?」

淡「何がー?」

末原「あんな見え見えの手作っておいてアレやけど、そっちの聴牌崩してまで出す牌ちゃうやろ」

淡「ディフェンディングチャンピオンの余裕ってやつ?」

末原「茶化すなや。あと、わたしは3年。先輩やで」



淡「うっそー?私よりちっちゃいのに?」※156cm

末原「二重の意味でどつくぞ」※147cm

淡「・・・ミスでも、ましてやお情けでもないですよ」ボソッ

末原「今何か言うたか?」



淡「じゃあ私に勝ったら謝罪して口調改めるよ!」

末原「おい、そういうことや無いやろ」

淡「悔しかったら優勝してみろー!」ベー

末原「わーった、わーったわ。喧嘩売ってるんやな。後半戦で飛ばしたるで」


漫「末原先輩、白糸台の大将と喧嘩してるんですか?」

洋榎「どっちかっていうとじゃれ合っている感じやな」

由子「とりあえず元気そうで安心したのよー」

絹恵「お姉ちゃん、何か入り込める雰囲気じゃないけどどうする?」

洋榎「戻ろか、変に恭子に気負わす必要無いやろ」

洋榎(元々4位でバトン渡したんやし、恭子には麻雀を楽しんでもらった方がええわ)


久「妙なのよね」

まこ「妙? 今日も嶺上開花あがっとったろうに」

久「何かカンすることを躊躇ってるように感じるのよね」

京太郎「さすがのあいつも全国の決勝だと緊張するのかなー」

優希「犬じゃあるまいし・・・ってのどちゃんは?」

久「さっきすぐに部屋を出ていったわよ」

まこ「和じゃなくても不安になるからのう」


憧「1位!ついに1位よ!」

灼「まだ半荘1回あるし、点差もわずかだから油断は禁物」

宥「大星さん不調なのかな?あんな手に振り込むなんて」

晴絵(もし、姫松があのままツモってツモ切りしてたら?)

玄「穏乃ちゃん頑張って!!」

晴絵(そして前半戦で姫松がほとんど稼げずに終わってたら?)

憧「シズー!!全国優勝!!」

晴絵(そもそも大星淡は、なんで宮永咲をあんなに無視してるの?)


和「咲さん!!」

咲「和ちゃん」

穏乃「和・・・!うおととと」

淡「高鴨穏乃、ちょっとこっち来て!」グイッ

穏乃「大星さん?引っ張らないでください!」



淡「私はあと100回倒す!!」

穏乃「どういうこと」

淡「だから、100回倒す!!」

穏乃「・・・?」

穏乃(一体どういうこと?)


後半戦


淡「立直!!」バシッ

末原(あの振込の意味は結局はぐらかされたけど、こいつが脅威なのは変わらへん・・・!)

穏乃「・・・」

末原(いや、よくよく考えたら優勝するのに誰を注意とか無いわ)


咲「・・・」

末原(要注意の宮永も、ここでプラマイゼロしたところで優勝出来るわけやないし)

淡「・・・」

末原「立直!」バシッ

咲「・・・!」ビクッ

末原(どうせ最下位で最後の半荘、勝ちにいく!!)


末原「ツモ!!3000 6000!!」

咲(これで、ラス転落・・・?)


洋榎「よっしゃ3位浮上や!!」

由子「前半戦で白糸台が落ちてきたからまだ優勝もあるのよー」

絹恵「なんか震えてきたわ」

漫「末原先輩!!」

代行「末原ちゃん、前半戦と目つき変わったなぁ」


穏乃「ロン!!6400!!」

末原(山越しのダマチートイ!?白糸台じゃなくてなんで私狙いやねん!)ギロッ

穏乃「・・・あの点棒いいですか?」

末原「あ、ごめんな」

淡「くすくす」

末原(ってよくよく考えたら阿知賀トップなんやから、とれそうなとこからとるのは普通か。あと白糸台、何笑うてるねん)

咲「・・・」


憧「そういえばシズってあの手好きよね」

玄「シズちゃんの終盤のダマ手は恐いのです」

宥「でも、あの手で準決勝進出を決めたよね」

灼「劔谷の大将が凄い顔してたのも覚えてる」



末原「ロン!! 5200!!」


淡「ロン 3900」

穏乃「ッ!」ビクッ

末原(安い出和了りもあるんかいな。いや3900も安く無いけど)

咲「・・・」


尭深「阿知賀が1位。後ろに僅差で白糸台と姫松がそれぞれ2位3位」

誠子「倍満振り込みがここに来て響いてますね」

照「あれは必要な振り込み」

尭深誠子「「へ?」」

菫「・・・」


咲「カン!ツモ!嶺上開花 500 800です」

穏乃(まだ安いけど、やっぱり宮永咲は無視出来ない!)キッ


照「阿知賀はここまでかな」ボソッ

菫「ん?」


淡「立直!」バシッ

末原「それポンや!」ガシャッ


咲(牌が重い・・・牌が見え難い・・・それに何よりも)ゴシゴシ

末原「ロン!!8000!!」

咲「っ」ビクッ

末原「次、いくで」

穏乃(あれ、確か宮永咲の振り込みって)

末原(見据えるのは優勝・・・!)

淡「~♪」

咲「・・・」


和「咲さんが振り込んだ!?」

京太郎「うぇえ!?これで姫松が1位です!」

優希「うー、嶺上開花から一気にいけると思ったのに、これでさらに厳しくなったじょ」

まこ「咲が意図せず振り込んだのは長野決勝の最初の槍槓以来かの?」

久「そうね・・・」

和(咲さんが麻雀を楽しめてない?)

久(咲が辛そう。なんだろう私も似たような感覚を味わった事があるような?)


憧「あちゃー、ここにきて姫松が1位かぁ、シズー!しっかりしなさい!!」

玄「オーラス。得意の6400でとにかくあがればうちが優勝ですのだ!」

灼「別に得意ってわけじゃないと思・・・」

宥「点差は離れてるけど、最下位の清澄がラス親・・・シズちゃん気をつけて」

晴絵(トップが姫松、すぐ後ろにうちと白糸台。大きく遅れて清澄)

灼「晴ちゃん?」

晴絵「・・・がんばんなさいシズ」



絹恵「1位!!1位!!1位!!」

洋榎「よっしゃ!!そのままいけえええ!!!恭子おおおお!!!!」

由子「がんばるのよー!!」

漫「勝ったらいくらでも落書きしてください!!」

代行(あとで末原ちゃんに教えたろ)


淡「・・・」チャッ

末原(ダブリーは無しか)

咲「・・・」

末原(ダブリーのインパクトや配牌を重くするのに目がいってたけど、そもそもこいつは打点も高いんやったわ)

穏乃(準決勝と違って、今回はそこそこの手でも和了られたら駄目・・・だったら)



穏乃「立直!」

末原(聴牌即リーかいな!)

淡(いいよぉ?叶わない夢くらい100回でも1000回でも見れば?)

穏乃(河から見て、一番出しそうなのは・・・どうする!? 宮永咲!!)チラッ

淡「高鴨穏乃」


穏乃「・・はい?」

淡「よそ見なんて余裕だね・・・立直!」

穏乃「・・・!」

末原「ポン!」

淡「へぇ」ニヤッ

末原(これで張った。絶対負けへん!)



菫「これで清澄以外は全員聴牌か、それにしても」

尭深「凄い手」

誠子「えーっと立直してるから9翻で倍満確定ですかこれ?」

尭深「高めなら12翻で三倍満」

菫「高め自摸で13翻の数え役満か、それにしてもこれは」





照「大車輪。筒子の2から8を対子で集めるローカル役満」




誠子「・・・これ多分高め狙ってますよね?」

尭深「淡ちゃんらしい」

菫「優勝には5200で足りるんだがな」

誠子「そもそもダブリー出来たのにしなかったあたり・・・」

菫「大星のダブリーは速度がないし、防御がおろそかになるからな」

尭深「おっかけ立直しちゃってますけど」

照(淡・・・)


玄「あれなあに?」

宥「シズちゃんのほうが待ちは良いけど」

憧「せめてダマっしょ!シズー勝ちは決まったわよ!!」

灼「白糸台も姫松も多面張には変わりないと思・・・」

晴絵「たはは」


洋榎「白糸台2位抜けやったと思ったら、大会最後で大車輪聴牌とか美味しすぎるやろ!!」

絹恵「お姉ちゃん、別に美味しさを競ってるわけじゃないで」

由子「でも、洋榎に同意なのよー」

漫「末原先輩・・・勝って!」

代行(立直してない末原ちゃんは臨機応変に打てるから有利っちゃ有利なんやけど・・・)


咲(何で私はここで麻雀を打ってたんだっけ?)

咲(最初は京ちゃんに無理矢理打たされて)

咲(和ちゃんやみんなと出会って)

咲(色々な人と打って)

咲(少しずつ楽しかった頃を思い出して・・・)

咲(強い人といっぱい打って)

咲(でも、全国大会に来てから、なんだか少しずつ)

咲(楽しいとは違う、何かを感じ始めて)


咲(今日は牌も重いし、嶺上牌も見えたり見えなかったりしてる)

咲(龍門渕さんと打った時もこんな事あったような気もする)

咲(でもその時は打ってた。楽しく打ててた)

咲(今日はなんだろう)

咲(麻雀が楽しく無くなって、プラマイゼロも出来なかった頃みたい)

咲(お母さんもお父さんも私を見てなくて)

咲(あれ、そういえば今日ってほとんど目を合わせてすらいないような・・・)

咲「あ・・・」チャッ



憧「それ高めじゃない!!って」

洋榎「ん?」

久「え?」

尭深「そんな」



宥「嘘・・・」

由子「なんでなのよ」

まこ「ありえんじゃろ!」

菫「どういう・・・つもりだ・・・?」



灼「なんで!?」

絹恵「嘘やろ嘘やって!」

和「ありえないです!!そんなのありえないです!!」

誠子「大星・・・?」



優希「ど、どういうことだじぇ?」

京太郎「お、俺に言われてもわかんねーよ!」

玄「嘘・・・なのです・・・」

漫「意味が、意味がわからないです!!」

晴絵(・・・これは、そういうことだったのね)







         大星淡 宮永咲からの出和了りをスルー








「それじゃあ、まったくもって話題を変えて」

 ん?

「今私にして欲しい事ってありますか?」

 して欲しい事・・・

「そうです!」

 それ、やめて欲しいかな

「それ?」


 なるべくでいいから、それをやめてくれたら嬉しいかも

「あの、それって言われても」

 その口調

「でも私は宮永さんより2つ年下で」

 口調。あと照。

淡「わ、わかりまし・・・わかったよ、み、じゃなくて、て、テルー!」

照「ふふっ、なんかテルーって外国人みたい」


咲(今の当たり牌のはず・・・見逃し・・・? いや、違う)

穏乃(宮永咲から威圧が無・・・涙!?)

末原(今の宮永のつぶやきは何や?ってなんでこいつ泣いとるんや?)

咲(大星さんは阿知賀と姫松としか戦ってなかった)

照(淡は見逃したわけじゃないし、高め自摸を狙ったわけじゃない)

咲(そっか最初から私を見てなかったんだ)





        咲/照(お姉ちゃん/私 が 私/咲 を いないものとして扱うように)




晴絵(カンによる嶺上開花は宮永咲の一面に過ぎない)

晴絵(驚異的なのはプラマイゼロで終わらせるその場の支配力と得点調整力)

晴絵(だが、それが団体戦で使えるのはある程度の点差があるか、準決勝までで2位通過を最低ラインにすること)

晴絵(さらに驚異的なのは、宮永咲は公式記録での意図しない振り込みは長野決勝戦での1回だけ)

晴絵(また、ほとんど出和了りもしない)

晴絵(だからこそ、宮永咲をいないものとして打つことが出来る)

晴絵(といっても、今の見逃しの感じだと、戦略というよりかは宮永咲と打つのはこう決めてたって感じね)


久「あー思い出したわ」

まこ「何をじゃ?」

久「2年前さ、麻雀部は一人きりだったでしょ?」

まこ「それ今言う必要あるんかい?」

久「あの頃は何しても駄目っていうか、相手にされなくてね」

京太郎「・・・」

久「咲は今そんな感じなのかなって」

和「・・・ッ!!」

優希「のどちゃん!?」


漫「あのじゃれ合い、そして末原先輩への意味の分からない差し込み」

絹恵「どうしたん?」

漫「白糸台は・・・大星淡は、あんな酷い事するために末原先輩を利用したんですか?」

由子「漫ちゃん」

漫「この前の末原先輩の悔しがり方を見たら、宮永咲が凄い打ち手ってのはわかってます!でも!でも!」

洋榎「・・・」ポンポン

漫「ううぅぅ」


咲「・・・」ポタポタポタポタ

末原「み、宮永!?」

淡「あーあ、今泣かれると、この後がもっと辛くなるんだけどなぁ」

穏乃「大星さん!」

淡「続けようよ、マ ダ オ ワ ッ テ ナ イ ヨ ?」

穏乃末原「「!?」」ゾクゾク

咲「切り・・・ました・・・」チャッ


団体戦終了 優勝:白糸台高校

和「一体どういうつもりですか!!」ガシッ

穏乃「和?」

淡「ぐえ、・・・今は私なんかより、お姫様のところに行ってあげたら?」

和「ッ」

淡「恐い恐い」

和「後で・・・聞きますから・・・咲さん!!」


会場ロビー


憩「どう思いましたー?」ニコニコ

智葉「あんなの勝てるのが高校生に・・・いや、人間にいるのか?」

怜(なんておっかないコンビがこんな所におんねん)

憩「あ、園城寺さーん、お晩どすー」フリフリ

怜「うげ、見つかってもうた。ってそれ京都弁やないか」

智葉「こんばんは」

怜「ど、ども」


憩「園城寺さんは大将戦どう思いましたー?」ニコニコ

怜「うち病弱やし、直視出来へんかったわー」

憩「清水谷さんに怒られますで?」ニコニコ

怜「ジョークや、冗談やって。白糸台の大将、なんかチャンピオンみたいやったな」

智葉「宮永照だけならまだ良いんだがな」

怜「それだけでも体外やで」


憩「大星さんと宮永照さんのお二人が合体したみたいな感じでしたねー」

怜「何や、そのごっついの」

智葉「私としては、大星淡はもとより、宮永照にも今度は負ける気はない」

憩「でもその二人が合わさったらって考えるとー」

怜「酷い悪夢やな」

憩「何かあるんでしょうかねー?大星淡さんと宮永照さんと」

智葉「・・・宮永咲もだな」


会場のどこか

照(淡は最後の最後で)

照(それはつまり、私もあの場にいたら多分・・・)

照(でも私は)

「なんとなくここにいると思ったよ」

照「・・・京ちゃん」

京太郎「久しぶり、照ちゃん」


照「すごく、おっきくなってる・・・」

京太郎「ぶっ」

照「どうしたの?」キョトン

京太郎「いや、なんでも」

照「そういえば、咲を麻雀部に誘ったのは京ちゃんだよね?」

京太郎「そうだけど?」


照「何で?」

京太郎「何でって言われても、あいつ一人だったから」

照「一人?」

京太郎「声かけられたり、話したりすることはあっても、アイツは自分から行こうとしなかったから」

照「しなかったから?」

京太郎「無理矢理連れ込んだら、最初はともかく、割りと楽しそうにやってたよ」

照「咲らしいし、京ちゃんらしい」クスッ


京太郎「とりあえず三連覇おめでとう」

照「・・・ありがとう」

京太郎「なんかクールになったな」

照「そう?」

京太郎「ああ」

照「そう・・・かも」


照「何か聞きに来たんじゃないの?」

京太郎「うーん、聞きたい事はあるっちゃあるけど」

照「あるけど?」

京太郎「照ちゃんが、何の理由もなく咲を拒絶するわけないからさ」

照「そう」

京太郎「大将戦のも、何かあるんだろうしさ」

照「・・・」

京太郎「あーでも、一つだけ」

照「・・・?」




    「あなたにとって、アイツはなんなんですか?」



照「私にとって・・・?」

京太郎「照ちゃんにとって咲って」

照「定義で言えば妹だけど、そういうことじゃないよね?」

京太郎「ああ」

照「・・・私にもわかってないんだ」


京太郎「そっか、じゃあ俺はこの辺でお暇しますよ」

照「こんな答えでいいの?」

京太郎「じゃあ違う答えがあるのか?」

照「すぐには・・・浮かばないけど・・・」

京太郎「ほら」

照「む」


京太郎「やっべ、優希からの電話無視しっぱなしだった!?」

照「片岡さん?」

京太郎「そうそう、照ちゃんも多分何も言わないで来たんだろうから、さっさと戻ったほうがいいんじゃないか?」

照「うん」

京太郎「じゃあ、また」

照「待って」クイッ

京太郎「ん?」


照「ここ・・・どこ・・・?」

京太郎「・・・」グシャグシャ

照「あう、頭わしゃわしゃしないで」

京太郎「まったく、こっちのお姫様も世話が焼ける」

照「こっちのってことは、あっちは咲?」

京太郎「ああ」


照「京ちゃんは咲のところに行かなくていいの?」

京太郎「今のあいつにとっての王子は、和がいるからな」

照「原村さん?」

京太郎「ああ」

照「王子・・・王子?」

京太郎「けしからんものついてますけど、王子ですよ」

照「けしからんもの・・・むー」ペタペタ


「お前はいつも隅で本読んでるな」

 本、好きだから

「そうか、なら今の私は邪魔か?」

 ・・・そうでもない

「なら、それっぽい表情をしてくれないか?」

 善処する・・・


個人戦終了後 優勝:宮永照


菫「結局個人戦も3連覇で引退か」

照「・・・けっこう厳しかった」

菫「む?団体戦は当然で、個人戦は厳しかったのか?」

照「そうだよ?」

菫「意外だな」

照「個人戦は私一人で勝ち抜かないといけないけど、団体戦はみんなに託す事が出来るから」


菫「実は大将だった去年までのほうが厳しかったのか?」

照「うん」

菫「ったく、厳しいって言う割には、相変わらず表情には出ないんだな」

照「何か癖になっちゃって」

菫「癖?」

照「うん」


菫「そう言えば咲ちゃんは個人戦辞退してたな」

照「代わりに出場した竹井さん、手強かった。あと恐かった」

菫「恐かった?」

照「あのピンってやって、ドーンってやるの」

菫「あのツモ動作、一体どこで覚えたのか」

照「1年生の時、部員が竹井さんだけだったらしくて、延々と練習を」

菫「・・・涙ぐましい努力の賜物だったのか」




菫「なぁ照」

照「ん?」





      「お前にとっての咲ちゃんは、一体なんなんだ?」



照「・・・」

菫「さっき露骨に話題変えたよな」

照「・・・団体戦の後に、京ちゃんにも同じ事聞かれた」

菫「京ちゃん?」

照「清澄の男子」


菫「清澄の麻雀部にも男子部員いたのか、その呼び名からすると親しいのか?」

照「昔馴染み。私より咲の方が懐いてたけど」

菫「お前らはペットか」

照「迷子の咲探しの達人」

菫「・・・京ちゃんとやらが、世話焼きの苦労人ってのはわかった」


菫「それで、その京ちゃんには何て答えたんだ?」

照「私にも、わかってないって」

菫「それはもちろん妹ってのを踏まえた上で・・・だよな?」

照「うん。血を分けたって事実は変わりようがないから」

菫「嫌ってるわけじゃないんだよな?」


照「むしろ大切な妹」

菫「・・・その割には清澄にはえげつない事をやっていたがな」

照「でも」

菫「ん?」

照「怒ってるというか、認めたくないというか、良い感情が無いのも確か」

菫「何があったんだ?お前と咲ちゃんとの間に」





        「大事な物2つのうち、どっちか1つしか選べないとしたら選べる?」




都内某所

白望「ダルい・・・」

小蒔「そう仰る割には面倒見良いじゃないですか?」

白望「そういうのもダルいかも・・・」

小蒔「ふふ」

胡桃「シロやっと見つけた!!」

エイスリン「シロ ウワキ!!」

塞「浮気とは違うと思うけど」


豊音「何してたのー?」

白望「ダルいからちょっと座ってようと思ったら、ここで神代さんが寝てた」

塞「は?」

小蒔「私が起きるまで見張っていただいたようで・・・」

胡桃「そ、そうなんだ」

エイスリン カキカキ バッ

塞「エイちゃん、夜這いなんてどこで覚えたの?」

白望(一瞬で夜這いの絵ってわかる塞も塞だと思う)


小蒔「私が起きるまで何か考えていらっしゃいましたか?」

白望「ん、どうして?」

小蒔「眼の焦点が薄くなっていたようだったので」

白望「別に何も」

小蒔「そう、ですか」シュン

豊音「何かまた二人が怪しい感じだよー」

白望(ダルい・・・)


ちょっと前

白望(ハグれた・・・ダルい・・・)

白望(ケータイも落としたか忘れたみたいだし)

白望(多分みんな探してくれるだろうから)

白望(大人しくしていよう。ダルいし)

白望(座るところ座るところ)キョロキョロ

小蒔「くーくー」

白望(なんでこんな所で寝てるんだろう)ドサッ


白望(ただ待ってるだけってのもダルい・・・)

白望(かと言って、私も寝るわけにもいかないし)

白望(起こす?)

小蒔「くーくー」

白望(・・・起こしたとしてもダルそうだから、いっか)

白望(何か考えることあったっけ)

白望(進路は・・・先送り・・・ダルいし)


白望(そういえば団体戦の決勝・・・)

白望(大星淡が末原恭子に差し込んだり、挑発したり)

白望(高鴨穏乃にやたら食い下がったり)

白望(それは宮永咲を孤立させるための作戦だと思った)

白望(実際に大星淡はわざとそうしようとしてたと思うけど)

白望(途中から、ちゃんと宮永咲を孤立させることが出来た)

白望(宮永咲をいないものとして麻雀を打てるようになった)


白望(ただ、オーラスの見逃しの後・・・大星淡には見えていなかったんだろうけど)

白望(きっかけは末原恭子が宮永咲に声をかけた時)

白望(大星淡は宮永咲の今を見てしまった)

白望(最初こそ、非情になろうとしてた)

白望(その後に、大星淡は一瞬何かを考えている)

白望(考えているというより迷ってたって方が正しいかな)

白望(その後の大星淡は・・・どこか哀しそうだった)


白望(宮永咲と大星淡・・・)

白望(いや、多分大星淡は直接関係ない)

白望(そうするとやっぱり宮永咲と宮永照か)

白望(大星淡は宮永照の代わり・・・?)

白望(宮永咲と宮永照には一体何があったんだろう?)

白望(・・・少なくてもダルいことには間違いないけど)


あなたの めのまえに いちおくえん が ふたたば あります

あなたは それを かたほうだけ えらぶひつようが あります

なぜかたほうだけか というと あなたのいるところは 

ほのおが もえひろがって います あなたも きけんです

ですが すぐに きめて しまえば かたほうだけ はこぶしゅだんは もってます






          咲/照「私/咲 が選んだのは あの子じゃなくて お姉ちゃん/私 だった」






後日 都内某所


和「あなたから呼んでくれるとは思いませんでした・・・大星さん」

淡「あんな勝ち方しちゃった上に、終わってすぐ走りこんできた姿を見たらね」

和「・・・その自覚はあるんですね」

淡「あはっ♪無い方が良かった?」

和「ッ!」

淡「インハイ王者の大将とインターミドル王者が、目立つ所で会うわけにもいかないしね」


淡「ていうか、こっちから呼ばなかったら、周りの目とか気にしないで乗り込んでくるつもりだったでしょ?」

和「・・・」

淡「まぁいっか。それで?聞きたい事って?」

和「大将戦での打ち方、そして咲さんの捨て牌の見逃しです」

淡「あー、そんなことー?」

和「そんなことって!!咲さん泣いていたんですよ!?」


淡「対局中に泣く事はけっこうあるんじゃないの?阿知賀の先鋒とかー」

和「今は玄さんの話じゃありません。咲さんについてです!」

淡「高鴨穏乃の時も思ったけど、阿知賀と関係あるんだねー」

和「・・・!」ガシッ

淡「ケホッ、話すから落ち着いて」

和「・・・」スッ


淡「まず、私自身は宮永咲に思うことは何もないよ」

和「何も無いって、だったら!」

淡「だから落ち着いてって、次に宮永咲は私より強い」

和「それは今は関係ないのでは?」

淡「あんたにとってはそうかもしれないけど、自分が劣ってると思うならそれを埋める対策はするよー?」

和「それが、あの打ち方ってわけですか?」


淡「といっても、私一人の力じゃないけどねー」

和「他に何かあったって言うんですか?」

淡「まず、憎っくき高鴨穏乃は、局の終盤を支配するような何かがあった」

和「そんなオカルト!」

淡「支配って言い方が気に食わないなら、威圧したでも良いけどねー」

和「・・・」


淡「次に末原恭子。どういうわけかわからないけど、宮永咲は彼女に苦手意識を持っていた」

和「・・・確かに彼女に対しては、プラマイゼロを使うくらいには勝負いこうとしてませんでしたね」

淡「最後に私。打ち方もそうだけど、私自身に相手の配牌を悪くさせる偶然がある」

和「・・・」

淡「麻雀的苦手要素が2つ、心理的苦手要素が1つ、対策が1つ、そして3位という順位」

和「咲さんに不利な要素が多数あったというわけですか」

淡「ついでに宮永咲が対面だったのも良かったけどね。おかげでまるっきり無視しても問題なくなったよ」


淡「ただ、私からしても1つ問題があった」

和「問題?」

淡「高鴨穏乃と末原恭子は1位の私よりも宮永咲を意識してた」

和「・・・」

淡「せっかく宮永咲以外に有利な状況があるというのにね」

和「それであの打回しですか」

淡「そー。まぁ私を見ないからムカついたってのもあるけどねー」


淡「まぁ、それで他の二人も意識を宮永咲から私・・・というか優勝に向いてくれれば」

和「・・・」

淡「あとは3人の実力勝負。そしてそこで私は勝った。それだけー」

和「納得出来ない点はいくつかありますが、意図はわかりました。それでは見逃しについては?」

淡「そっちはもっと簡単だよー?」

和「簡単・・・?」

淡「無視してたってのもあるけど、単純に見てなかっただけ」


和「そんな非効率的なこと!」

淡「でも私は勝った。だから勝ったからなんとでも言えるし、負けたら何にも言えないよねー?」

和「ッ!!!!」ギリッ

淡「まぁ私は色々とやったけど、テルーだったら普通に打つだけで同じ状況を作れたんだろうなー」

和「宮永照さんも・・・あんな酷い事をやったと?」

淡「あれ、宮永咲から聞いてないのー?東京に会いに行ったけど会おうともしてくれなかったって」

和「ッ! それは咲さんから聞きました。宮永照さんは今でも怒っていると」


和「だからってあんな事許されるんですか!?咲さんは!咲さんは!!」

淡「どう思おうと勝手だけどさー。これは二人の問題で、私達があれこれ言う事じゃないと思うんだよねー」

和「ッ」ギリッ

淡「これで大体の事は説明したかなー?じゃあねー」スタスタ

和「大星さんは、咲さんと宮永照さんとの間に何があったか知っていますか?」

淡「さぁー?」




     和「咲さんは、逃げ遅れて動けなくなった宮永照さんと従姉の女の子のうち、照さんだけを助けたことを」



淡「・・・それ、宮永咲から聞いたの?」

和「団体戦が終わってから調べてもらいました」

淡「他人のプライベートに勝手に入り込むなんて、随分と趣味の悪い事してるんだねー」

和「そして、咲さん一人では片方を助けるだけが限界だったことも」

淡「それがー?」

和「だったら・・・・・・咲さん、何も悪くないじゃないですか!!!!!!」

淡「・・・かもねー」


照「これが私達に起こった事」

菫「それだったら、咲ちゃんは」

照「そう、咲は別に私に対して悪い事は何もやっていない」

菫「・・・」

照「むしろ命の恩人。咲の力だけで私一人を助けられたのだって、奇跡に等しい」

菫「それなら、お前はどうして彼女を拒絶するんだ?」


照「・・・」

菫「言いたく無いなら別に言わなくていい。だけどな」

照「・・・?」

菫「私としては宮永照の親友を自認してるつもりだ。お前がどう思ってるかはわからないが」

照「・・私も、私も菫の事は親友だと思ってる」

菫「ふ。本人公認なら心強いな」


菫「素のお前は無表情だが、無感情ってわけじゃない」

照「うん」

菫「親友って言ったあたりのお前は、雰囲気が優しくなったが」

照「・・・」

菫「さっき事件を話た時は、必死に感情を殺してたよな?」

照「・・・」


照「わ、私は」

菫「今すぐじゃなくて良い」

照「っ?」

菫「親友として、いつか教えてくれればそれで良い」

照「なんで、今聞かないの?」

菫「涙流してるお前から、すぐ聞く気になれん」






        照「・・・あ・・・れ・・・」ポロポロ





和「大星さんは、知っていたんですよね?」

淡「ううん、今はじめて知ったよー」

和「嘘です!知ってたら!」

淡「嘘じゃない!!」

和「ッ!」


淡「正確に言えば、事件の事は知ってたよ。従姉妹を亡くした事も」

和「事件は・・・ですか」

淡「宮永咲が二人の内一人・・・テルーしか助けられなかったっていうのは今知った」

和「それだったら、照さんを説得しに行きませんか?」

淡「説得?どうしてー?」

和「どうしってこのままじゃ咲さんがあんまりにも!!」


淡「原村和は麻雀以外でもデジタルなんだねー」

和「どういう意味ですか?」

淡「テルーがどうして何も言わないのか、表情も感情も殺し続けているのか、わかったよ」

和「それは一体・・・?」

淡「ほとんどの人も、というかテルー自身も、今の原村和みたいに思ってはいるんだろうけど」

和「照さん自身も?」


淡「原村和はさ、自分と宮永咲で片方しか助からない場合、どっちを選ぶ?」

和「質問の意図がわかりません」

淡「答えて!」

和「・・・おそらく自分ではなく、咲さんが助かる事を望むと思います」

淡「でも助かったのは自分だった」

和「・・・!」


淡「助けてくれたのが、どうでも良い相手だったら、助かった自分を責めたり、助けてくれた人を責めることができるけど」

和「・・・」

淡「命がけで助けてくれたその人・・・宮永咲も照にとっては大事な存在で、助からなかった子も大事な存在」

和「それは」

淡「理想的なのは自分が助からない事。最悪なのは二人共助からない事」

和「咲さんは咄嗟に、必死に考えて、照さんを選んだってことですか」


淡「そもそも宮永咲の体格で一人を助けだすのだって、かなり無茶があったはず」

和「・・・咲さん華奢ですからね」

淡「無茶した宮永咲を責めることは出来るかもしれないけど、テルーを選んだ事を責めることが出来るかな?」

和「それは」

淡「テルーは出来なかったんじゃないかな。選んだ上で必死に自分を助けてくれた事を責めるなんて」

和「だからって、どうして咲さんを拒絶するんですか!?」




「あなたにとって、アイツはなんなんですか?」

「お前にとっての咲ちゃんは、一体なんなんだ?」

淡/照「テルー/私 にもわかってない」



和「わかって・・・ない・・・?」

淡「テルーだって女子高生なんだよ?」

和「それは当然です」

淡「こんなややこしいのを、自分の気持ちや行動を、しっかり説明出来る?そもそも考えがまとまる?」

和「だからって、拒絶するなんて!」

淡「そもそもテルーは拒絶してないよ?」


和「だって、会ってすらくれなかったって!」

淡「それは多分、向き合えなかったんだと思う」

和「向き合えなかった?」

淡「宮永咲は、何て言ってた?テルーに会えなかった事について」

和「まだ怒ってるんだ・・・と」

淡「つまり、宮永咲はあの子じゃなくて、テルーを助けたことを怒ってると思ってるんじゃないかな」


和「それに対して照さんは、わかってない?その行動の方がわからないです。なぜ咲さんと向き合わないんですか!?」

淡「・・・じゃあ、テルー本人にもわからない状態で宮永咲と会って、どうなるかな」

和「どう・・・って」

淡「二人してあの子を亡くした事を悲しめるならまだ良いとして」

和「もし照さんが、咲さんに当たったら」

淡「酷い選択を迫られた上でそんな事になったら宮永咲がどうなるか」


和「結局、咲さんは、照さんと仲直り・・・いえ、向き合う事がまだ出来ないってことですか」

淡「・・・そういえば、大将戦最後まで見てた?」

和「いえ、あなたが見逃しをした時に、控え室を飛び出しました」

淡「行動力があるのも考えものだねー」

和「どういう意味ですか?」

淡「言葉でどう伝えて良いかわからないから、麻雀で一番の気持ちは伝えたよ。テルーの代わりにね」

和「それって、一体・・・!」


遡ること 団体戦決勝 大将戦オーラス


どこかの個室

一「えげつない事するね、白糸台・・・というか大星淡」

智紀「でも効果的だった。出和了り見逃しは解せないけど」

純「それだけ、徹底的に宮永をいないものとして打ったんだろう」

透華「流石にあんな目立ち方はしたくありませんわね」

衣「・・・なぁ何で泣いているんだ?」


一「そりゃあ、さすがの宮永さんでも」

衣「清澄の嶺上開花使いではない、白糸台の彗星使いの方だ」

智紀(彗星?)

純「泣いてるようには、見えねーけど」

衣「涙は流していない。けど確かに泣いてる」

透華「衣・・・」


ねぇ

「何です・・・何ー?」

何も聞かないの?

「聞いて欲しいのー?」

あんまり言いたくないけど・・・

「じゃあそれでいいじゃないですかー」


「だって、テルーは言ってたじゃないですか、誰かの代わりにならなくていいって」

言ったけど

「妹に咲ちゃん、親友にスミレ先輩、後輩は亦野センパイとタカミー」

聞かないのと代わりは何か関係あるの?

「こういうのを聞くのは親友のスミレ先輩か、まだ見ぬ素敵な王子様の役割!」

良くわからないけど・・・それじゃあ淡は?

「私は・・・なんだろう?」


ふふ

「テルーが笑ってるー!? あ、いや、これはダジャレじゃないですよ!?」

でも淡は私の何なんだろう?

「むむむ・・・あ、じゃあこうしましょう!」

どうするの?

「テルーの後継者!」


まだ私引退しないんだけど・・・

「あ」

まぁ後継者で良っか

「むふー!」

丁度今年から、淡が私の後を継いで大将だし


「ただ、後継者って何するのー?」

何をするかわからないのに決めたの?

「まったくもって!」

・・・もし、機会があったら

「何?」






                    妹に・・・咲に、私の一番の気持ちを伝えて欲しい





末原(呑まれるな・・・宮永の牌に何かあるんやったら出和了りを拒否した可能性が高い)

穏乃(ここから大星さんはフリテンになる。私と末原さんに有利になっただけ・・・!)

淡「テルー、ごめん。私には最後までやり通すのは無理」

咲「っ」ビクッ

淡「咲ちゃん、特別に教えてあげる」

咲「・・・え?」


淡「これが咲ちゃんに対する。テルーからの一番の気持ち」

咲「お姉ちゃん・・・の?」

淡「ふー」ガシッ


照「そういえば決勝でも結局やらなかった」

菫「何をだ? っていうか大星のあれは照の真似か? 台を掴む手は逆みたいだが」

照「・・・淡は・・・・・・から」

菫「なんだ?」


淡「・・・!」カッ

淡「・・・」カカッ

咲(見逃した牌を自摸する)

淡「・・・」ギ ギ ギー

淡「・・・」バン

咲(お姉ちゃんが私のプラマイゼロをアシストしてくれる時によくやってくれた・・・)






淡「立直 自摸 清一色 平和 タンヤオ 二盃口 8000!!!! 16000!!!!」ジャララ





末原「ッ!?大車輪!? いや、でもそれ・・・!」

淡「裏ドラ、めくったほうがいいかな?」

穏乃「・・・いえ」

末原「おい!白糸台、それどういうつもりや!?」

淡「どういうつもりって?」

末原「その自摸、宮永・・・清澄がその前に切ってるやろ!」


咲「末原さん、良いんです!これで良いんです・・・!」

末原「は?良えことなんか無いやろ!こんなん」

咲「違う、違うんです!」ポロポロ

穏乃「だってそんな泣いて」

淡「ありがとうございました」ペコリ

末原「おい、ちょっと待てや!」


咲「大・・・星・・・さん、・・・とう」

淡「・・・」スタスタ

咲「ありがとう・・・!!」グスッ

淡「・・・」スタスタ

末原「おい、ありがとうってどういうことや? って白糸台も待てや!」

「咲さん!!!!!!!!」

穏乃「和?」


大会1か月後 都内某所の歩道橋


照(あの時から何年も経つというのに・・・)

照(結局私は、咲と向き合う事は出来なかった)

照(いや、向き合うどころか、見ることさえ・・・)

照(どうすれば良かったのか)

照(そもそも私自身がどうしたいのか)

照(正解はあるのかな)

照(いっそのこと)


「宮永照さんですよねっ?」

照「・・・はい?」

「本物だっー!」

照「本物かどうかはわかりませんが、宮永照です」

「うふふ」

照(あ、いけない。営業スマイルしてない)

「サインお願いしてもいいですか?」


照「はい!良いですよ」ニコッ

「あれ?」

照「どうかしましたか?」

「ううん、急に表情が変わったものだから、気にしないで下さい」

照(やっぱり不自然だったかな)

「これに書いてもらえるます?」

照「宛名とかあります?」


慕「平仮名で しのさんへ でお願いします」

照「わかりました」キュッキュッ

慕「格好良いサイン書くんですね」

照「ありがたい事に書く機会が増えましたので!どうぞ」

慕「ありがとうございます」

照「いえ」

慕「・・・」ジー

照「まだ、何か?」


慕「えいっ」ダキッ

照「!?」

慕「どう?」

照「どうって・・・」

慕「やっぱり営業スマイルだったんだねっ」

照「あ・・・」


慕「周りの大人は何をやっているんだか」ナデナデ

照「あの、一体何を・・・あう」

慕「歩道橋の上で物憂げに佇んでいるのも絵になってたけど、捕まえないとどっか行っちゃいそうな気がしてね?」

照「どっかって・・・別に飛び降りるとかそういうつもりじゃ」

慕「そんな事考えてたの?」

照「・・・少しだけ、、、、、あ」

慕「ふふ、だーめ♪」ギュウウウウ


慕「お姉ちゃんの胸で泣いていいよっ?」ナデナデ

照「あの今日会ったばっかりですよね?」

慕「もちろんっ♪」

照「あの、そろそろ離していただけると」

慕「ご飯ちゃんと食べてる?凄く細いけど」

照「いい加減に!」バッ


慕「あら」

照「あ、ごめんなさい」ポロ・・・

慕「・・・」ニッ

照「・・・?」

慕「今くらいは我慢しなくていいんだよっ?」ダキッ

照「あ・・・あれ・・・」ジワッ

慕「全部出しちゃいなさい」ギュッ

照「・・・ーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!!!!!」


照「どおしたら!どうしたらいいのかわからくて!」

慕「・・・」ナデナデ

照「私が私が、わた・・しも、どうし、たいのか、わがらなぐで・・・」

慕「・・・」ナデナデ

照「ざきは、咲はわるくないのに、あんなに泣いでて!!」

慕「・・・」ナデナデ

照「伝えたいごども、淡にぃまかぜちゃって!悪役まで淡におぢづけて!」


照「それなのに!、菫も京ぢゃんも、やざしくて・・・!」

慕「・・・」ヨシヨシ

照「だよっでばっかで!甘えてばっかで!だずげられでばっかで!」

慕「・・・」ヨシヨシ

照「それでも!ぞれでも!まだぁ!わたしはどうしらいいか・・・わからなくて!」

慕「・・・」ギュッ

照「・・・・・・・・ッ!!!!!!!!!!!!!!!ーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」






照「その・・・色々・・・ごめんなさい」

慕「いえいえ、私なんかの胸で良かったらいくらでも貸すからっ」

照「こんなに思いっきり泣いたの初めてで・・・」

慕「あらら、どおりで、服がこんなにシワになってるわけだ」

照「あ、ご、ごめんなさい、弁償を」

慕「こらっ」ゴツン

照「あう」

慕「年下は年上の顔を立てるっ」


慕「ちょっとは良い表情になったかなっ?」

照「多分酷い顔になってると思うんですが・・・」

慕「目が真っ赤で可愛いよ?」

照「・・・っ」

慕「道を、作ってあげればいいの」

照「道?」


慕「あ、いきなり過ぎたね」

照「それってどういう」

慕「少しは気持ちを伝えたんだよね?」

照「一応・・・」

慕「それなら、慌てなくてもいいと思うよっ?」

照「でも・・・あ」

慕「ふふ」ギュッ


慕「簡単な事、出来そうなこと、踏み込まなくてもいいこと」

照「・・・」

慕「ちょっとずつ、ちょっとずつ近づいて」

照「・・・」

慕「いつか、寄り添えたら良いんじゃないかなっ?」ニコッ

照「・・・はい」


慕「さてと、何か美味しいもの食べにいこっか?」

照「え?」

慕「もしもし、私っ、一人追加でっ!」

照「あの」

慕「早くっ。飛行機よりも早くっ!!」

照「・・・えっと」

慕「良しっ」


照「あの、今日会ったばっかりですよね?」

慕「大丈夫。宮永さんも知ってる有名人もいるからっ」

照「いえ、そういうことじゃなくて、有名人?」

慕「牌のお姉さんは知ってるよねっ?」

照「知らない人の方が少ないかと・・・」

慕「高校の同級生なのっ!一緒にインターハイも出たんだよっ?」





数カ月後 長野

咲(お姉ちゃんと仲直り自体は出来なかったけど)

咲(淡ちゃんのおかげで、少しだけお姉ちゃんと分かり合う事が出来たのかな)

咲(麻雀でってのは藁にもすがる思いだったけど)

咲(楽しさも思い出せて、お姉ちゃんの気持ちもわかって)

咲(ありがとう、京ちゃん、和ちゃん、みんな)


咲(去年は残念だったけど、今年は優勝しないと)

咲(がんばろっ)

咲(それにしても、みんなメールなんだなぁ)

咲(年賀状はっと・・・あれ?淡ちゃんから?)

淡『あけましておめでとー! 今年も100回倒すッ!!』

咲(今年は負けないよ!!・・・あれ、何かちっちゃく書いてある)

咲(・・・・・・・・・!)


      /: : : : : : : : : : :, : : : : : : : : : : : ヽ: : : : : : : : .  ヽ
      /.: : : : : : : : : :/: : : : .i: : : : : : : : : :l : : : : :i .     ヽ
     i     . : : :l: : i: : . |   l    |:  l:  l     ハ
     .l     i  l  li   l  , |    i  l  l l :i i   ハ
     | . : :| : : : :| i: : l: : |l _,,/!‐'´:/i : : 'ー/|‐ ;;l ,_ l: :l: : l: :.l: .  l
      |: : : l: : : : :l,,|-‐l''|´l / /;/ l: : / _i /i/i /!: l: : l: : |\: . |
     |: : : :l : : : : l l: :|;,=ニiiii卜  !/ ゞiiiiiiヾ,i/ i/: : :i: : :|  \l
     l i: : llヽ: : :.i 彳,i;;;;;;;C ; :::::::::::: ;i;;;;;;;C ゞ/: :/i:l : : |

      l i!: :ハ\: :l(´`)ニ=-C .::::::::::::. Cー(´`)//: :リ: : :|
      l!:l: : :l;ヽ, ゞ  :::::::::::     ,  :::::::::: !´: : :| \|
       ! 'l: |\~ヽ、               リ: : :/il   `
           l! ヽ!\ゝ      'ー=-'    /:./|/ i
              '| `丶、       〆|/';/
           /´i;l    `>ー,.イ´ー、,,_

         〆i´  ヽ、     l  l ヽ ヽ ~ーニ,,,_
       /i  |    \      |  iヽヽ    ~゙ヽ、
     /  |  |\    \ー‐、 〆|   |.\\     ヘ
    /    |  |  \   \   |   |  ヽ ヽ i   ハ

























P.S. 今年はよろしく     宮永 照


                _, -──-  .,_
               '´         `丶、
            /              \

           ,          /         \
.           /     .   /            ヽ
           ′     / /              `、
.          .' /   /,     // /|   |       `
         i     . /    」_ ′/  |   | i|  . i
.         i |   j/,    /イ`メ、   |  小 ||   ト.!
          j .|  ∨/    / |/ ヽ  |  ァT丁l   | |
         ノ i|  V    j 抖竿ミ    ノ ノ ,ノイjノ   | i
___ ____彡' , i|  i| j   八|:x:x:    /ィ竿ミ 刈    | }     「カンッ!!」
 ̄¨ え≠  / 八 i|/l   |  |        :x:x:/ ノ    | ′
 /  -‐ '    ハ  八  ト、  ヘ.__ `  厶 イ   ノ
/    __,.斗‐=≠衣  ヽ八\ 丶.__ソ  . イ(⌒ソ  イく
     jア¨¨^\   \   \ >-=≦廴_  ア /ノヘ\
  斗ァ'′     \   \   ヾ. \___ ⌒ヾく<,_ `ヽ )ノ
/圦 |       、\   ヽ   、∨tl  `ヽ . ∨ V\ i
 { `|           Vi:\  ハ  i } |    } i }  ∨,} }
≧=- |         辻_V\`i}  i } |  /} iハ}   辻ノ
   ノ          ¨〕V//リ  iノ ////V〔    ¨〕

  

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