照「同じだよ」菫「違うな」 (39)

菫「久しぶりだな、照」

の後付け補完SSです

照「ただいま…」

咲「おかえりなさい。あれ?帰りが早いね」

照「ん…ちょっと」

咲「久しぶりの友達に会うっ言ってたから、もっと遅くなるかと思ってた」

照「そのつもりだったんだけど…飲むペース、間違えたかな…」バサッ

咲「大丈夫?」ヒロイッ

照「……」

咲「何か、飲む?」

照「…そんなことまで、しなくていいよ」

咲「へ?」

照「あ、いや、今、服、拾ってかけてくれたでしょ?」

咲「あ…シワになっちゃうかなと思って」

照「うん。嬉しいんだけど…」

咲「けど?」

照「ごめん。ちょっと疲れてるから、先お風呂入っていい?」

咲「あ、うん」

ーお風呂場ー

照「っ…あんな言い方はなかったな…」シャー

照「普通に、ありがとうって言えばよかった」

照「…何にイラついてるんだろう?」

照「やっぱり私も、菫と同じように思ってるのかな…」

照「…ううん。あんな風に言って帰ってきちゃったんだから」

照「例え、同じ気持ちが咲から返ってこなくても」

照「私の気持ちが間違ってることにはならない」

照「…さっきも、はっきりそう言えればよかった」

照「はぁ…とりあえず咲に謝ろう」

咲「あ、お姉ちゃ…」

照「さっきはごめん」

咲「え?」

照「つっかかるような言い方して」

咲「あー…別に気にしてないよ」

照「えっと、疲れてたというか、いろいろ考えてたというか…」

咲「あ!それ!」

照「え?」

咲「そう、あの、最近お姉ちゃん、疲れてるみたいだから」

咲「一緒に、温泉でもどうかなーって」

照「温泉?」

咲「うん。いつもと違うところで、のんびりできたら、いろいろ休まると思うんだ」

咲「それに、もうこの年になると一緒にお風呂に入ったりできないでしょ?」

咲「だから、大きいお風呂で、その、姉妹水入らずと言うか…」

照「あー…」

咲「ね?」

照「…私と咲じゃ、休みが合わない。日帰りってわけにも行かないだろうし」

咲「あ、それはいいの!私がお姉ちゃんの休みに合わせるから!」

照「え、悪いよ」

咲「ううん。あの、所長さんがね『咲ちゃん全然休まないから、有給消化しちゃいなよ。最近仕事も忙しくないし』って言ってくれてて」

照「有給消化…そっか、そういうのあるんだね」

咲「うん。だから事前に言ってくれれば、数日くらい休めるの」

照「でも、咲の休みなんだから、咲のために使えばいいよ」

咲「ううん、だから私がお姉ちゃんと過ごしたいの」

照「あっ…」

咲「ダメかな…?」

照「…ううん。そう言ってくれると嬉しい」

咲「よかったぁ」

照「でも、温泉じゃなくてもよくない?家で、のんびり過ごそう」

咲「温泉はイヤ?」

照「うーん、気が、休まらないかな…」

咲「そっか…分かった」

照「ごめん。誘ってくれたのに」

咲「ううん。いいよ。お姉ちゃんの休みが続きそうな日教えてね?」

照「分かった。確認しておく」

咲「あ、そうだ!あとね…」タタタッ

照「?」

咲「ちょっと待っててね」

照「うん」

咲「…はい」コトン

照「ミルクティー?」

咲「うん。飲んでみて」

照「…おいしい」

咲「でしょ?」

照「見た目はいつものミルクティーなんだけど、まろやかというか、コクがあるというか…」

咲「あはは。さすがだね。それね、黒酢が入ってるの」

照「本当に?」

咲「そう。疲れてる時にはね、酸っぱいものがいいんだって。でも、お姉ちゃん酸っぱいの好きじゃないでしょ?」

照「うん」

咲「そういうときには、ミルクティーに入れると美味しくてあったまるんだって」

照「すごい。全然分からない」

咲「まぁ人から聞いたんだけどね」

照「そっか」

咲「少しは、元気になった?」

照「え?あぁ大丈夫、お風呂入ったらすっきりしたし…」

咲「ううん。そうじゃなくて、最近上の空っていうか」

照「そ、そう?」

咲「うん。だからね、私になにかできないかなってずっと考えてた」

咲「ねぇ?私にできることがあったらなんでも…」

照「…咲は」

咲「ん?」

照「咲は、どうしてそんなに優しいの?」

咲「え、別に普通…」

照「ううん。咲は優しいよ。麻雀のプロをやってると、それなりにちやほやされるけれど」

照「咲みたいに優しい人はいない」

咲「そ、そうかな…?」

照「うん」

咲「もし、そうだとしたら、きっとそれは…」

咲「私がお姉ちゃんのことを好きだからだよ」

照「っ!///」

咲「…どうしたの?」

照「む…むせた…」ゲホゲホッ

咲「大丈夫!?」サスリサスリ

照「ごほっ…だ、だいじょうぶ…」

咲「よかった…」

照「…ねぇ咲。贅沢だと思う?」

咲「え、急にどうしたの?」

照「充分満ちたりてるのに、それ以上欲しくなるのは、贅沢だと思う?」

咲「抽象的すぎて分からないよ…」

照「そうだよね。忘れて」

咲「う、うん」

照「…やっぱり、おいしいね、これ」ズズッ

咲「そうだね」

照「ありがとう」

咲「…うん」

照「じゃあ、そろそろ私は…」カタッ

咲「あ、うん、おやすみなさい」

照「おやすみ」

咲「ま、待って!」

照「?」

咲「えっと、さっきの答え、になるか分からないけど」

咲「私ね、子供の頃はもう二度とお姉ちゃんに会うことはないんだ、って思ってたから」

咲「今、この瞬間も奇跡みたいだなって思うの」

照「大袈裟じゃない?もう何年も一緒に暮らしてるのに」

咲「そうだね。大袈裟かもしれないね。でも、そのくらい私には嬉しいことだったんだ」

照「…そっか」

咲「でも、もしこの生活に慣れて、お姉ちゃんに…例えばもっと家事をしてほしいとか」

照「うっ…」

咲「お姉ちゃんに、もっと何かを求める日がきたら、それはきっと贅沢じゃなくて幸福なことだと私は思うよ」

照「咲…」

咲「答え…になった?」

照「…うん」

咲「よかった」

照「咲」ギュッ

咲「うわわ、何?」

照「…やっぱり、温泉行こうか」

咲「へ?なんで?」

照「気が変わった」

咲「えーなにそれー」

照「どうしようか?思い切って10日くらい泊まる?」

咲「そんなにお姉ちゃん休めないでしょ…」

照「でも、できるだけ長く休ませてもらおう」

咲「ダメだよ、あんまり迷惑かけちゃ」

照「いつも、いい子にしてるから」

咲「営業スマイル?」

照「そう」ニコッ

咲「でも、よかった、やっぱり温泉行きたかったもん」

照「ん。私も」

咲「え?」

照「ありがとう、咲」

咲「う、うん?どういたしまして」

ブブブッ

菫「ん?」


From:宮永照
Sub:さっきはごめん

急に帰ってしまってごめんなさい。私の言葉不足だった。
今なら、はっきり言える。
例え、相手から同じ気持ちが返ってこなくても、私の気持ちが間違ってることにはならない。
菫もそう。
どうか、自分を否定しないで。
私は、菫の幸せを願ってるよ。


菫「なんだこれ…」

菫「違うんだよ、照」

菫「私は、お前みたいに素直でもないし、一途でもない」

菫「もっと、打算的で、そのくせ臆病な…」

プルルッ

菫「うわっ!また照…じゃないな、電話か」

菫『もしも…』

泉『せんぱ~い!!!』

菫『うるさっ…泉か』

泉『せんぱ~い、聞いてくださいよ~私また…』

菫『分かった分かった、聞いてやるから電話で大声で喋るな!』

泉『うっ…ぐすっ…すびばせん』

菫『なんだよ、泣いてるのか…』

泉『もぉ~一人酒ですよぉ…』

菫『どこで飲んでるんだ?今、そっちに行くから』

泉『駅前の個室居酒屋小鍛冶です…』

菫『ちっ…またあそこか…』

泉『へ?』

菫『すぐ着くから。大人しくしてろよ』ピッ

ー居酒屋ー

店員「いらっしゃいませー…あ」

菫「…待ち合わせなんですけど、二条って客…」

店員「あ、はい、ええっと、こちらです。ご案内します」

菫「まさか同じ店に二度くるはめになるとは…」

店員「こちらです」ガラッ

泉「あっ…せんぱい」

菫「とりあえず、生で」

店員「はい!よろこんで!ごゆっくり~」

泉「せんぱーい、聞いてくださいよ、私また…」

菫「振られたんだろ?」

泉「どうして分かるんですかぁ…」

菫「お前が、私を呼び出す理由なんてそれしかないじゃないか」

泉「さすが先輩ですわ…やっぱ白糸台のシャープシューターは健在ですね」

菫「おだてても、おごらんぞ」

泉「ええっ」

菫「それで、今回の相手は、誰だ?」

泉「ぐすっ…ぶ、部長…」

菫「はぁ!?おまっ…」

店員「生おまち~!」ガラッ

菫「!?ど、どうも」

店員「ごゆっくりどうぞー!」

菫「…部長って妻子いるだろ?」ヒソヒソ

泉「知ってますよ。そんなこと…」

菫「部長の奥さんに会ったことがあるが、美人で家庭的で優しくて、そのうえ巨乳だった」

菫「お前に勝ち目ないだろ…」

泉「うぇええん!もっと優しい言葉かけてくださいよ!」

菫「あ、すまん」

泉「分かってるんです。そんなこと…」

泉「でも、私には負けが分かってても戦わなきゃあかんときがあるんです」

菫「お前は、何時代の人間だよ…」

泉「でもでも!好きになったら止められないやないですか!」

菫「っ!」

泉「…どうかしましたか?」

菫「なんでもない。続けろ」

泉「え!なんでもない顔やないですよ。絶対なにかありますって!」

菫「うるさいな。私はお前の愚痴を聞いてやるためにわざわざ来たんだ。思う存分愚痴れよ」

泉「はっ!そういえば、先輩の愚痴聞いたことないです!聞かせてください!」

菫「私に愚痴などない。不満があったらそれは全部私の責任だ」

泉「嘘や!嘘嘘。絶対さっき嫌なこと思い出したみたいな顔しましたもん」

菫「なんでそんなに鋭いんだよ…」

泉「いいやないですか。奢って、愚痴だけ聞かされて、先輩損しっぱなしですよ。愚痴くらい言っちゃいましょ」

菫「だから、奢るとは言ってないだろ!」

泉「だって、私お財布持って来てないですもん」

菫「は?」

泉「すみませーん」

店員「はい!ご注文ですかー?」

泉「生おかわりください、あと手羽先と揚げ出し豆腐とキムチと…」

菫「おい!?」

泉「あ、なんか釜飯も美味しいらしいですよ。二人前ください」

店員「はい。よろこんで~!」

菫「何、頼みまくってるんだよ!」

泉「ほら、先輩こんなに払うんやから、なにか吐き出さな損ですよ」

菫「おい…大阪人はみんなこんななのか…」

泉「さぁ?私は、わりと礼儀正しいって言われますけどね」

菫「嘘だろ…」

泉「ささっ、ぱぁっと吐いちゃいましょ」

菫「はぁ…分かったよ。ちょっと失恋したんだ」

泉「え!仲間やないですか!」

菫「いや…失恋ってわけじゃないかな」

菫「勝手に好きな気がして、相手に恋人がいないことをいいことに、勝手に盛り上がって、勝手に諦めただけだ」

泉「なんだかパッとしないですね…」

菫「うるさいな。いろいろ複雑なんだよ」

泉「複雑もなにも言っちゃえばいいやないですか。それだけですよ」

菫「そんな簡単じゃないんだ」

泉「そうですかねぇ…」

菫「あー何も知らないくせに、好き勝手言うな!教えてやる。その相手は同性なんだよ」

泉「へ?」

菫「相手は、女性だよ」

泉「えっと…それは、先輩はそういう人ってことですか?」

菫「あぁ、そうだよ。分かるか?今までどれだけ悩んできたか」

菫「否定しない人に出会えた思ったら、そいつは別の誰かが好きで、心底私は一生一人だと思ったさ」

菫「泉の、報われない恋愛体質に同情もするが、それでも私はお前が…」

泉「じゃあ、私でいいんやないですか?」

菫「…は?///」

泉「そうしましょう!先輩!私は絶対先輩のこと否定したりしませんし」

菫「ちょっ…だってお前は部長が…」

泉「それは、さっき終わりました」

菫「……」

泉「いいやないですか。先輩、かっこいいし、仕事できるし、優しいしもろ私の好みですよ」

泉「そういうのは、大体既婚者なんやけど…盲点でしたわ」

菫「え…もうこれ決まりなのか?」

泉「決まりですよ。よろしくお願いしますね。先輩」ギュッ

菫「うわっ…酒くさ」

泉「~♪」

菫「…なんだかなぁ」

菫「やっぱり、私はお前が羨ましいよ」

泉「ふふふ…私みたいに、何も考えんと押し切るタイプがいれば、先輩みたいにうじうじ考えて押し切られるタイプがいるんですよ」

泉「きっと、私たち上手くいきます」

菫「まったく…その自信はどこからくるんだ?」

泉「大阪人だからやないですか?」

菫「おい大阪人に失礼だろ…まぁ、でもこういうのもいいかもな」

ブブブッ

照「ん?」

From弘世菫
sub:メールありがとな

やっぱり、私とお前は違うよ。
私はお前みたいに素直でもなければ一途でもないんだ。
でも、自分を否定しちゃいけないのはお前の言うとおりだった。
ありがとう。
こんなメールを送ってくるってことは、なにかいいことがあったんじゃないか?
私も、照の幸せを心から願ってる


照「一途?素直?そうかな…?」

照「でも、きっと菫にもいいことがあったんだね」

咲「お姉ちゃん…まぶしい…」

照「あ、ごめん」

咲「ううん、おやすみなさい」

照「ん。おやすみ」


カン

規制にひっかかってしまい、無駄に遅くなってすみませんでした。
後付けですがハッピーエンドっぽくしてみました。

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