櫻子「私には超能力があるのです」(231)
櫻子「ガチで」
櫻子「でも、それはみんなには秘密です」
向日葵「櫻子ー! 何してますの、早く行きますわよ!」
櫻子「ちょっと待ってよ向日葵!」
向日葵「まったく……櫻子は世話が焼けるんですから」
櫻子「えへへ、ごめんごめん」
櫻子「向日葵の今日の朝ごはんはトーストとベーコンエッグ」
櫻子「トーストの上にベーコンエッグを乗せて食べた」
櫻子「忙しい朝は大抵これで済ます」
向日葵「何ぼんやりしてますの、遅刻しますわよ」
櫻子「うん、走るよ!」
向日葵「ちょ、ちょっと……速すぎますわよ! ま、待って……」
櫻子「急げと言ったり、待てと言ったり、向日葵は忙しないな」
向日葵「あなたのせいでしょう……」
櫻子「あかりちゃんおはよ!」
あかり「あ、櫻子ちゃんおはよぉ、今日も元気いっぱいだね」
櫻子「まあね、今日も学校まで走ってきちゃった」
あかり「そうなんだー……って向日葵ちゃんが汗だく!?」
向日葵「ぜぇ……ぜぇ……勘弁して欲しいですわ……」
櫻子「向日葵は体力ないなーもう」
向日葵「櫻子と一緒にしないで欲しいですわ……」
あかり「あはは」
櫻子「ちなつちゃんは船見先輩が好き」
櫻子「でも最近は歳納先輩の事も気になっているみたい」
ちなつ「あーん、今日も結衣先輩と会えると思うとなんて清々しい朝なんだろう!」
あかり「あかりもいるよぉ!」
ちなつ「でも、京子先輩もいるんだよね……うーん……ま、いいか」
あかり「無視しないでよぉ……」
ちなつ「あれ、あかりちゃんいたの?」
あかり「ひどいよぉ」プンプン
櫻子「あかりちゃんは……いつもみんなのことを考えてる」
櫻子「とってもいい子、でもたまになんにも見えないことがある」
あかり「櫻子ちゃんどうかしたの?」
櫻子「え? あ、あかりちゃんいつの間に!?」
あかり「櫻子ちゃんまでひどいよぉ」
櫻子「う、うん……で、なに?」
あかり「えとね、今日部活と生徒会が終わったら一緒に遊ぼうって」
向日葵「美味しい洋菓子のお店が出来たんですって」
櫻子「あぁ、ちなつちゃんが前言ってたあれ」
ちなつ「あれ? 前に櫻子ちゃんに話したかな?」
櫻子「え? あ……えーと、ちなつちゃんじゃなかったかも」
櫻子「ほら、私友達多いし!」
向日葵「嫌味ですの!?」
櫻子「私はホントの事を言っただけだもんね!」
向日葵「さ、櫻子~!」
櫻子「それで、スイーツ食べに行くんでしょ? 行く行く、ねえ向日葵!」
向日葵「そ、そうですわね」
ちなつ「それじゃあ、終わったらケータイに連絡いれるね」
向日葵「櫻子、お菓子もいいですけど、生徒会もしっかりやりますわよ」
櫻子「言われなくてもわかってるよ」
櫻子「言葉の通りね……」
向日葵「櫻子?……ほら、行きますわよ」
櫻子「ちょっと待ってよ向日葵!」
向日葵「まったく」
櫻子「あ、池田先輩」
千歳「二人共ええ所に」
向日葵「どうかしたんですか?」
千歳「今日な、生徒会お休みやねん」
櫻子「そうなんですか」
向日葵「でも、どうしてなんですか?」
千歳「あのな、歳納さんがまた書類の提出忘れてん」
櫻子「それで先輩たちはごらく部に行くんですね」
千歳「そうなんよ」
向日葵「私達だけでもしますけど?」
千歳「ええんよ、今日は特にすることもあらへんし」
櫻子「じゃあ私達もごらく部行っていいですか?」
綾乃「あわあわ……」
千歳「綾乃ちゃんおまたせ」
向日葵「中に入らないんですか杉浦先輩?」
綾乃「えと、その、そう! 千歳のことを待っていたのよ!」
千歳「うふふ、そうやね」
櫻子「いつまでも躊躇ってないで入りましょう」
綾乃「そ、そうねって私は躊躇ってなんかないないナイアガラよ!」
櫻子「おじゃましまーす」
京子「あれ、どうしたのちっぱいちゃん」
櫻子「私だけじゃないですよ」
結衣「生徒会総出でどうしたの?」
綾乃「と、歳納京子ー! プリント出しなさいよ!」
京子「プリント?」
結衣「なんだ京子、また何か出し忘れたのか?」
あかり「だめだよ京子ちゃん」
ちなつ「だめじゃないですか京子先輩」
京子「いやぁ、ごめんごめん綾乃、ちなつちゃん」
京子「えーと、これだったかな?」
千歳「ちゃうんちゃう?」
綾乃「それじゃなくて……」
櫻子「これですね」
綾乃「あ……ええ、そうよ!」
櫻子「……ごめんなさい」
向日葵「なんで謝ってますのよ……」
櫻子「ん、なんとなく」
向日葵「はぁ?」
綾乃「よ、用事も済んだことだし、私たちはもう帰るわね」
千歳「ええのん?」
櫻子「ちょっとくらい遊んで行きましょうよ」
綾乃「べ、別にもう用事もないし……ってもう遊んでる!?」
櫻子「わーいあかりちゃーん」
あかり「人がいっぱいであかり嬉しいよぉ」
ちなつ「これだけたくさんの女の子がいても私は結衣先輩しか見てませんから!」
結衣「う、うん……ありがとう」
向日葵「お茶が美味しいですわ」
京子「人が集まったことだし、みんなでこれして遊ぼう!」
向日葵「座布団?」
京子「そう、座布団」
ちなつ「座布団投げでもする気ですか?」
京子「それもいいけど、今回はこれを使ってフルーツバスケットしよう!」
ちなつ「普通椅子でやるものじゃないですか?」
京子「畳に椅子なんていけません!」
あかり「傷ついちゃうもんね」
千歳「楽しそうやね」
京子「ほら、綾乃もこっちこっち」
綾乃「あ……え、ええ」
京子「それじゃあいっくよー! フルーツバスケット!」
櫻子「よっと!」
向日葵「あら櫻子、隣に座ったんですのね」
櫻子「へへーん、向日葵には負けないもんね!」
向日葵「私だって櫻子には負けませんわ!」
千歳「まずはウチが鬼やね」
千歳「じゃあ、最初はたくあん好きな人!」
千歳「……あ、あれ誰も動かへん」
あかり「あの、池田先輩」
千歳「赤座さんいたんやね」
あかり「ひ、ひどい……でもこの前いただいたたくあん美味しかったですから」
千歳「ほんま? うれしいわあ」
あかり「えへへ、あかりすっかりたくわん好きになっちゃいました」
千歳「ありがとうな、赤座さんええ子やねえ」
あかり「えへへ」
結衣「早く座ろうよ……」
あかり「あかりが鬼だよぉ」
千歳「綾乃ちゃん、隣やね」
綾乃「そ、そうね」
ちなつ(今度こそ結衣先輩の隣に座ってみせるわ、あかりちゃんお願い!)
あかり「?」
あかり「! じゃあ、ごらく部!」
結衣「おっと」
京子「あらよっと」
ちなつ「ちょっと京子先輩、場所入れ替えただけじゃないですか!」
ちなつ「そこ変わってください」
京子「悪いねちなつちゃん、これも戦法の一つだから」
京子「というかちなつちゃんの隣に結衣は座らせたくないね」
結衣「おいこら京子」
京子「なに結衣?」
結衣「あんまり意地悪するなって」
ちなつ「結衣先輩……」
京子「ほらほらそんなことよりちなつちゃんの鬼だよ」
ちなつ「わかりましたよ」
ちなつ「じゃあ……」
ちなつ「恋をしてる人」
櫻子「私は向日葵を見ていた」
櫻子「ちなつちゃんの言うことはわかっていたから」
櫻子「向日葵はそれにどう反応するのか、知りたかった」
櫻子「私の顔を見るの? 反射的に立ち上がるの?」
櫻子「人の心を読むことが出来ても、こんな一瞬のことは初めてで」
櫻子「きっと、私の知らない向日葵が顔を出すんだ」
櫻子「それはとっても新鮮で、たぶん私にとって一番大切なもの」
櫻子「立ち上がったのは……」
櫻子「歳納先輩、だけ」
櫻子「嘘ばっかり」
櫻子「池田先輩は杉浦先輩の袖を引っ張って焚きつけたけど」
櫻子「結局立ち上がることはなかった、もちろん池田先輩も」
櫻子「ちょっぴり切ない」
櫻子「船見先輩は自分の気持ちを誤魔化してる」
櫻子「本当は歳納先輩のこと好きなのに、先に進む事は不必要だと思い込もうとしてる」
櫻子「ちょっぴり向日葵に似てる」
櫻子「向日葵……」
櫻子「私の顔を見て、目が合った瞬間に顔を逸らした」
櫻子「真っ赤な顔を私に悟られないようにうつむいて」
櫻子「だったら私もまだ……」
京子「ちなちゅー、私はもちろんちなちゅに恋してるゾっ」
ちなつ「京子先輩やめてください! あとちなちゅ言うな」
京子「ちえー」
ちなつ「でも計画通りです、これで結衣先輩のとなりに!」
結衣「う、うん」
ちなつ「結衣先輩、となりに座れて私嬉しいです」
結衣「そう、よかったね」
ちなつ「はい! もう二度と離れません」
京子「一人暮らししてる人!」
結衣「あ、私か」
京子「隣だねちなちゅ」
ちなつ「うがあああああああああああ」
ちなつ「もう、さっきからちょっとずつしか移動してないじゃないですか」
あかり「あかりたくさん動かしたけど……」
ちなつ「生徒会の皆さんもほとんど移動してないですし」
ちなつ「バランス悪すぎですよこのゲーム」
京子「うーんそうだね、ごめんね生徒会諸君、別の遊びにしよっか」
千歳「見てるだけでも楽しかったで」
綾乃「え、ええ」
向日葵「ごらく部の皆さんは仲がいいですわね」
櫻子「羨ましい?」
向日葵「な、なに言いますの!?」
京子「じゃあ普通すぎるけどトランプでもして遊ぶかー」
結衣「無難でいいんじゃないか?」
ちなつ「下手に凝ったゲームするよりいいです、肩も凝らなくて」
あかり「わぁいババ抜き、あかりババ抜き大好き」
京子「あかりババ抜き強いもんね」
櫻子「なんとなくわかる気もする」
向日葵「櫻子はババ抜き弱いですわよね」
櫻子「なんだとぉ!」
向日葵「どこにババがあるのかいつも丸わかりですわ」
京子「この人数でやると一人五六枚になっちゃうけどね」
向日葵「といいつつ配ってますわね」
京子「まあまあおっぱいちゃん気にしない」
向日葵「おぱ……」
あかり「配り終わったね」
京子「おっ、よっしゃロイヤルストレートフラッシュ!」
結衣「ババ抜きだっつってんだろ、見せるな」
櫻子「何順か巡り、今ジョーカーは歳納先輩の手元にある」
櫻子「それも最後の一枚がジョーカー」
綾乃「あっ……」
千歳(綾乃ちゃんジョーカー引いてもうたんやね)
京子「よっし、あっがりー」
結衣「京子が一番乗りか」
京子「流石わたし!」
結衣「調子にのるな」
綾乃「はい、次千歳」
千歳「うーんどれがええかな……これ」
櫻子「更に経過し、ジョーカーは池田先輩から向日葵に渡る」
櫻子「船見先輩と杉浦先輩があがり、あかりちゃんもいつの間にかカードを無くしていた」
向日葵「さあ櫻子、さっさと選びなさい」
櫻子「さては向日葵、ジョーカー持ってるな」
向日葵「なっ……さあどうでしょうね?」
櫻子「これ……」
向日葵「っ……」
櫻子「……じゃなくてこれだぁ!」
向日葵「ふふ……」
櫻子「うわぁ! ジョーカー!」
ちなつ「あ、今櫻子ちゃんがジョーカー持ってるんだ」
櫻子「あ……」
櫻子「結局私はそのまま敗北を喫した」
櫻子「すべてのカードがどこにあるかわかっているけど」
櫻子「それで勝つのはなんだか気が引ける……いつもの事だった」
京子「あー楽しかった、それじゃあまたねー」
ちなつ「また明日ですね」
向日葵「それじゃあ洋菓子店に行きましょうか」
櫻子「やったーお菓子だ」
向日葵「美味しそうなケーキがいっぱいありますわ」
あかり「どれも美味しそうだね」
向日葵「イチゴショート、タルト、ミルフィーユ……」
櫻子「レアチーズ、モンブラン、スフレ、シフォン……」
向日葵「櫻子、よだれ出てますわよ」
櫻子「向日葵だって、人のこと言えないじゃん」
向日葵「んん……」
あかり「ここのおすすめって何なのかな?」
ちなつ「えっとね、確か……あっ、櫻子ちゃんが見てる奴だったかな?」
向日葵「櫻子が?」
櫻子「ペパーミントチョコ」
あかり「へー、珍しいね」
ちなつ「アイスでしか食べたこと無いよね」
櫻子「せっかくだし、みんなでおすすめ食べようよ」
向日葵「そうですわね」
あかり「わっ、美味しい」
ちなつ「ハート型で可愛いし」
向日葵「おすすめなだけありますわね」
櫻子「甘さのバランスが絶妙だね」
ちなつ「甘くて甘くて……それでいてちょっぴり残る辛味」
ちなつ「まるで恋の味だわ!」
ちなつ「食べれば食べるほど結衣先輩のかっこいい姿が浮かんでくる!」
ちなつ「開店早々人気になるのも頷けるわね!」
向日葵「他のスイーツもきっと美味しいんでしょうね」
櫻子「また来ようね向日葵」
向日葵「そうですわね」
櫻子「はー、みんなで遊んで楽しかったね」
向日葵「ええ、また遊びたいですわね」
櫻子「二人で食べに来るのもいいな」
向日葵「そ、そうですわね……まあたまになら」
櫻子「向日葵のおごりでね!」
向日葵「なんでよ!」
櫻子「冗談冗談、大好きなことはいくらあってもいいもんね」
向日葵「何が言いたいんですの?」
櫻子「なんでもないもーん」
櫻子「好きな人とはどれだけ一緒にいてもいいよね」
櫻子「好きな人がして欲しいこと、してあげたいよね」
櫻子「好きな人には心から幸せでいて欲しいよね」
櫻子「憎まれ口をたたく私達だけど、向日葵の気持ちを私は知っている」
櫻子「私も好きだよ、向日葵」
櫻子「でも、私からそれを伝えられない」
櫻子「私は知ってしまっているから」
櫻子「後ろめたくて、告白なんて出来ない」
櫻子「向日葵、学校行こう」
向日葵「待たせましたわね」
櫻子「じゃ、行こっか」
向日葵「ええ……それはいいんですけど」
櫻子「ん、どうしたの向日葵?」
向日葵「なんで傘なんか持ってますの?」
櫻子「雨が降るんじゃない?」
向日葵「いやいや、こっちが聞いてるんですのよ」
向日葵「天気予報でも降水確率0%でしたわよ」
櫻子「だめだな向日葵は」
向日葵「なんですって!」
櫻子「降水確率っていうのは統計でなりたってるんだよ」
向日葵「それぐらい知ってますけど」
向日葵「櫻子がそんな頭のよさそうなこと言うなんて……熱でもあるんですの!?」
櫻子「うるさい! あとで吠え面かいてもしらないからね」
向日葵「はいはい、よかったですわね」
向日葵「なんてことですの……」
櫻子「……」
向日葵「まさか放課後になって本当に雨が降るだなんて……」
櫻子「さあ吠え面かいてもらおうか!」
向日葵「ぐぬぬ……」
櫻子「ホントは私が雨を降らしたんだけどね」
櫻子「ん……」
向日葵「え?」
櫻子「ほら、入って」
向日葵「櫻子……」
全部「」だと全部しゃべってるように見える
()とか『』の方がいいんじゃね
全部しゃべってるならそれでいいけど
櫻子「……」
向日葵「……」
櫻子「ちょっと、肩濡れちゃうんだけど」
向日葵「私だって濡れてますわよ」
櫻子「……」
向日葵「……」
櫻子「……」
向日葵「もっと……くっつきます……?」
櫻子「……うん」
櫻子「えへへ」
向日葵「なんですのよ?」
櫻子「なんでもないもーん」
向日葵「ふふ……まったく」
櫻子「おっと水たまり……」
向日葵「ちょっ……なんでわざわざ踏んでいきますの、濡れるでしょう!」
櫻子「いいじゃん、私もびしゃびしゃになったし」
向日葵「なにがしたいんですのよ……」
櫻子「えへへ、一緒だね」
向日葵「あら、ちょっと止んで来ましたわね」
櫻子「疲れたからね……」
向日葵「なんであなたが疲れたら、通り雨になりますのよ」
櫻子「私の腕が疲れたから、天気も空気読んだんだよ」
向日葵「……はい」
櫻子「ありがと……」
向日葵「! また、土砂降りになりましたわ!」
櫻子「イカン、ちょっとテンション上がってしまった」
櫻子「力の制御が効かないなんてことは久しぶりで」
櫻子「少し、目覚めた時のことを思い出した」
櫻子「私には超能力があるのです」
櫻子「気づいたのは子供の頃、向日葵……ひまちゃんと遊んでいた時」
櫻子「あの日、私はひまちゃんと御飯事をしていた」
ひまわり「おままごとしよ」
さくらこ「わーい、ひまちゃんとおままごとだー」
ひまわり「えへへ、お皿とスプーンとフォーク持ってきたよ」
さくらこ「わたしはコップとバケツ持ってきたよ」
ひまわり「わーい」
さくらこ「ねーねーひまちゃん、ごはんとおふろどっちがいい?」
ひまわり「わたしもおくさんやりたい……」
ひまわり「じゃーね……ごはんがいーな」
さくらこ「?」
しえん
さくらこ「ひまちゃんおくさんやりたいならやっていいよ」
ひまわり「えっ、いいの?」
さくらこ「?」
さくらこ「うん、やりたいんでしょ?」
ひまわり「さーちゃん、ありがとー」
さくらこ「うん?」
ひまわり「ごはんがいい? おふろがいい?」
さくらこ「ひまちゃんとあそぶー」
ひまわり「わー」
さくらこ「そろそろごはんにしよっ」
ひまわり「うん、おだんご作るね」
さくらこ「わたしも一緒につくるー」
ひまわり「えへへ、ありがとーさーちゃん」
さくらこ「えへへ、たのしいね」
ひまわり「よいしょ、よいしょ……できたー」
さくらこ「わーいおっきなおだんご、おいしそう!」
ひまわり「めしあがれ」
さくらこ「もぐもぐおいしー、ひまちゃんのごはんおいしいね!」
ひまわり「えへへ」
さくらこ「ずーっとひまちゃんのごはんたべたいな」
ひまわり「うれしいな、私さーちゃんに本当のごはんたべてほしいからいっぱい練習しよ!」
さくらこ「ひまちゃん、ありがとっ!」
ひまわり「いっぱいいっぱい喜んでほしいな、さーちゃんには秘密だけど」
さくらこ「……?」
ひまわり「私たちふーふだもん、まいにちつくるね」
さくらこ「ふーふ……えへへ!」
ひまわり「さーちゃん?」
さくらこ「ひまちゃんとふーふでうれしー」
ひまわり「さーちゃん……私も! うれしいー」
さくらこ「つぎはおふろだねー」
ひまわり「おせなかながすね」
さくらこ「うん、ありがとー」
ひまわり「えへへー、ごしごしごし……どこかおかゆいところはありませんかー?」
さくらこ「あはは、それじゃびよういんだよ、大丈夫きもちいーよひまちゃん」
ひまわり「ほんとー? わーい」
さくらこ「変わるねひまちゃん」
ひまわり「うん」
さくらこ「ごしご……うわぁ! ひまちゃんの背中に……む、虫……!」
ひまわり「えっ!? 虫っ……いやぁ! さーちゃっ取って……取ってぇ!」
さくらこ「えええ!? で、でも……」
ひまわり「ふえぇぇぇ……むしやだー!」
さくらこ「ひまちゃん! どどどどうしよう……」
さくらこ「うー! どっか行ってよ! 虫めー!」
さくらこ「!?」
ひまわり「うえええ……さーちゃん? どうしたの?」
さくらこ「え!? な、何でもないよ! ほら、虫どこか行ったからもう大丈夫!」
ひまわり「? う、うん……ありがと、さーちゃん」
櫻子「その後、私は大慌てで向日葵を家に帰し着替えるように促した」
櫻子「虫がどこかへ行ったなんて嘘」
櫻子「本当のことなんて向日葵に言えなかった」
櫻子「私が力を込めた瞬間潰れた虫」
櫻子「服にこびり付いた緑色の血痕」
櫻子「私は自身の力を自覚し脅威を知った」
櫻子「いつか、この力が向日葵を傷つけるのではないか」
櫻子「それだけが私の心に渦巻いてやまなかった」
向日葵「櫻子、傘返しますわね」
櫻子「ん、もう降らないしね」
向日葵「陽も差して来ましたわ」
櫻子「うん」
向日葵「まあ、たまにはこういうのもいいですわね」
櫻子「えへへ、そうだね」
向日葵「ええ……あら、見て櫻子、虹」
櫻子「ほんとだ、綺麗……だね」
櫻子「向日葵ー! 朝、朝だよー、朝ご飯食べて学校行くよー」
楓「櫻子お姉ちゃん、おはようなの」
櫻子「おはよう、楓は今日も現実を見据えてるな」
楓「?」
櫻子「それより、向日葵だ」
楓「お姉ちゃんまだ寝てるの、起こしてくるね」
櫻子「んん、ああいいよ、今起きたから」
楓「そうなの? 櫻子お姉ちゃんはお姉ちゃんのことをよく知ってるの」
櫻子「まあね」
向日葵「ふぁ……あら、櫻子」
櫻子「もうあまり時間ないよ?」
向日葵「ええ!?」
櫻子「ほら」
向日葵「あわわ……」
櫻子「早くご飯食べてきなよ」
向日葵「作ってる暇がないですわ……」
向日葵「トースト焼いて……ベーコンと目玉焼きを」
櫻子「わー、美味しそう!」
向日葵「一人分も二人分も同じなんて言いますけど、今はそんな暇もありませんわ」
櫻子「わかってるよ」
楓「楓はもう食べてるから大丈夫だよお姉ちゃん」
櫻子「私に言ったんだけどね、楓は自分で朝ごはん用意できてエライな」
楓「えへへぇ」
櫻子「向日葵、はやくはやくぅ」
向日葵「そんなに急かさないでよ!」
櫻子「咥えながら行けばいいじゃん」
向日葵「そんな行儀の悪いことできませんわ」
櫻子「新たな出会いが巻き起こるかもよ?」
向日葵「……いりませんわよ、そんなの」
櫻子「だよね」
櫻子「じゃあ行こう!」
向日葵「ちょ、ちょっと待って」
櫻子「行くよ!」ギュ
向日葵「も、もう……///」
櫻子「櫻子と手をつないでしまいましたわ……」
櫻子「なんて思ってる向日葵が可愛くて、もっと強く握った」
櫻子「離さないように、離れてしまわないように」
ちなつ「私ね、告白しようと思うの」
向日葵「何事ですの!?」
櫻子「思い切ったねちなつちゃん」
ちなつ「うん、あのペパーミントチョコを食べてから結衣先輩のことが頭から離れなくて」
ちなつ「結衣先輩のことを考えてるのはいつもの事なんだけどね、居ても立ってもいられなくて」
向日葵「船見先輩ですの!?」
櫻子「向日葵、驚きすぎだよ」
向日葵「そ、そんな事言われても告白なんて……」
ちなつ「そんなにおかしいことかな……?」
あかり「ねえ櫻子ちゃん、ちょっといいかな?」
櫻子「うわぁ! あかりちゃんいつから!?」
あかり「ずっといたよ、ちょっとこっち来てもらっていいかなぁ」
櫻子「う、うん……いいけど」
あかり「あのね、聞きたいことがあるんだけど」
櫻子「何、あかりちゃん?」
あかり「ちなつちゃんが告白しようとしてるでしょ?」
櫻子「うん」
あかり「それでね、止めたほうがいいのかな、どうなのかなって」
ちなつ「そんなにおかしいことかな……?」
向日葵「おかしいって……だって女の子同士ですし……」
ちなつ「女の子同士がおかしいってどうして言えるの?」
向日葵「え……それは……」
ちなつ「大切なのは自分の気持ちだよ、好きなら好きでいいじゃない」
ちなつ「何もおかしいことなんてない! 否定なんてさせない!」
ちなつ「愛さえあればなんでも乗り越えられるのよ!」
向日葵「吉川さん……」
ちなつ「向日葵ちゃんだって、そういう経験あるんじゃないの?」
向日葵「私は……」
ちなつ「人を好きになるって、もっと自由なことだと思うの」
向日葵「そう……ですわね、私は――」
櫻子「……なんで私に聞くの?」
あかり「櫻子ちゃんに聞いたらわかるかなって思って」
櫻子「……」
櫻子「ごめん、わかんないや」
あかり「そっかー櫻子ちゃんでもわからないんだぁ」
櫻子「力になれなくてごめんね」
あかり「うーん……そうだねぇ」
あかり「櫻子ちゃんの超能力なら未来の事もわかると思ったんだけどなぁ」
櫻子「…………え?」
櫻子「な、なんのことか……なぁ?」
あかり「えー、あかり知ってるよぉ」
櫻子「……」
あかり「あかり櫻子ちゃんが超能力使ってるとこ見たことあるもん」
櫻子「そんな……誰にも見られてないはずなのに」
あかり「目の前にいたのに気付かなかったの?」
櫻子「うわっ……あかりちゃんの影、薄すぎ……」
櫻子「私の超能力でも気付かないなんて、あかりちゃんの影の薄さも一種の超能力かもしれないね」
あかり「もぉ、ひどいよぉ」プンプン
櫻子「……」
あかり「それでね、ここからは友達として相談なんだけど」
櫻子「……うん」
あかり「ちなつちゃんが告白してもいいのかなって」
櫻子「さっきと同じだよ?」
あかり「ううん、結果が知りたいわけじゃないんだ、ただ……」
櫻子「ただ?」
あかり「ごらく部の関係が壊れちゃうんじゃないかなって不安で」
櫻子「……どうして私に聞くの?」
あかり「どうしてって……櫻子ちゃんも同じでしょ?」
櫻子「え?」
あかり「櫻子ちゃんはあんなに向日葵ちゃんのことが好きなのに」
あかり「向日葵ちゃんはあんなに櫻子ちゃんのことが好きなのに」
あかり「二人共、変わろうとしないよね」
櫻子「……て」
あかり「それってやっぱり今の――」
櫻子「やめて!」
あかり「櫻子ちゃん……」
櫻子「とにかく! 私にはよくわからないから!」
あかり「……」
櫻子「戻ろう……それから、超能力のことは誰にも言わないで……」
あかり「うん」
ちなつ「あっ、あかりちゃん櫻子ちゃんお帰り」
向日葵「どこ行ってたんですの?」
櫻子「……なんでも、ないよ」
あかり「えへへ、ちなつちゃんと向日葵ちゃんのお話が盛り上がってたから二人でお話ししてたんだぁ」
向日葵「赤座さんとお話し……ちょっぴりヤキモチを焼いてしまいますわ」
櫻子「は、はぁ/// なに言ってんだよ!」
向日葵「? 何も言ってないですけど?」
櫻子「あ……ごめん、なんでもない」
向日葵「?」
櫻子「落ち着かなきゃ……」
ちなつ「結衣先輩大好き結衣先輩大好き結衣先輩大好き」
あかり「アリさん可愛いよぉ」
櫻子「……」
ちなつ「結衣先輩とキスしたい結衣先輩とキスしたい結衣先輩とキスしたい」
あかり「あかりにも超能力使えないかなぁ、えいっえいっ、なんちゃって……無理だもんねぇ」
櫻子「さっきから人の思考が入り込んでくる……なかなか聞こえないあかりちゃんまで……」
向日葵「櫻子が好き……」
櫻子「!?」
向日葵「だなんて、吉川さんの言うように簡単には言えませんわ」
櫻子「……」
向日葵「告白なんてやっぱり……」
櫻子「告白ぅ!?」
向日葵「!?」
ちなつ「ど、どうしたの櫻子ちゃん?」
櫻子「え!? あー……いや、さっきのちなつちゃんのことを思い返してみたらさ!」
櫻子「なんだかとんでもないことだなって思ってさ!」
ちなつ「ええ!? 今更!?」
向日葵「そ、そう……」
櫻子「いやー、女の子同士でそんなこともあるもんだね!」
ちなつ「向日葵ちゃんにも言ったけど……」
櫻子「ああ! 皆まで言わなくても大丈夫!」
ちなつ「そ、そう」
向日葵「あ、焦りましたわ……心の声でも漏れてしまったのかと……」
櫻子「私にだって理解はあるよ」
ちなつ「へー、そうなんだ」
あかり「ちなつちゃんがニヤニヤしてるよぉ」
ちなつ「ふふ……」
向日葵「……」
櫻子「いやその……」
向日葵「櫻子……」
櫻子「な、なに……?」
向日葵「今日少しいいかしら……話したいことがありますの」
櫻子「ええ!?」
櫻子「私に告白するんだ……でも、今の私全然冷静じゃない……」
櫻子「ごめん……ちょっと用事があって……」
向日葵「そ、そうなんですの! なら、しかたないですわねっ!」
櫻子「ど、どうしよう……」
櫻子「向日葵が告白してくれるっていうのに……」
櫻子「今の私じゃ、きっと受け止めてあげられない」
櫻子「向日葵……ごめんね」
向日葵「いえ、いいですわよ、私もちょっと焦り過ぎましたわ」
櫻子「う、うん……そうだよ、ほんと焦った」
向日葵「え、ええ……?」
櫻子「はぁ……」
あかり「あっかり~ん」
櫻子「はぁ……」
あかり「櫻子ちゃん今日は超能力使わないの?」
櫻子「なんだあかりちゃんか……」
あかり「なんだ、ってひどいよぉ櫻子ちゃん」
櫻子「だって、超能力はずっと使いっぱなしなんだもん」
櫻子「頭も痛いほど」
あかり「もしかしてあかりのせいかなぁ……」
櫻子「気にしないであかりちゃん」
あかり「櫻子ちゃん……」
あかり「櫻子ちゃん!」
櫻子「あかりちゃん……」
あかり「あかり、櫻子ちゃんを傷つけたままにしたくないよ」
あかり「だからね……」
櫻子「できないよ……そんなこと……」
あかり「櫻子ちゃん……いいよ」
櫻子「できないよ!」
あかり「あかりのことは気にしないで」
櫻子「違うって、私そんな事までできないよ」
あかり「そ、そうなんだぁ」
櫻子「うん、ほら……こうやっても全然――」
あかり「……あれ、あかりこんなところで何やってるんだろう、ねえ櫻子ちゃん?」
櫻子「え?」
櫻子「私……」
櫻子「あかりちゃんの事傷つけちゃった……」
櫻子「あかりちゃんの記憶を消して、このままじゃ」
櫻子「いつかきっと向日葵のことも傷つけちゃう……」
ちなつ「うわああああああ、告白してくる!」
あかり「えええ!?」
ちなつ「もう誰も私のリビドーを止めることは出来ないわ!」
向日葵「ほ、本当に行くんですのね……」
櫻子「……」
ちなつ「……ふられた」
櫻子「血の気が引いた」
櫻子「女の子同士の恋愛での失恋が私に衝撃を与えた」
櫻子「私の沸騰した頭がサッと冷えて冷静さを取り戻す」
櫻子「でも、それだけじゃないかもしれない」
櫻子「きっかけはあかりちゃんのちなつちゃん絡みの相談」
櫻子「その荷が降りたのかもしれない」
櫻子「ちなつちゃんの心の声も小さくて聞こえなくなっていた」
ちなつ「でも、いいの……」
あかり「ちなつちゃん……」
ちなつ「私の本気は結衣先輩に伝わったし……」
ちなつ「それにまったくの脈なしってわけでもなかったし!」
あかり「そうなんだぁ、じゃあこれからもみんなで仲良く出来るのかなぁ」
ちなつ「もちろん、私の勝負はこれからよ!」
櫻子「そうなんだ……」
向日葵「……」
向日葵「……櫻子」
櫻子「な、なに?」
向日葵「いつなら予定があいてます?」
櫻子「よ、予定!?」
櫻子「そ、そっか……やっぱり告白、するんだ」
向日葵「今日はダメ、なんですのよね」
櫻子「う、うん……あ、明日っ明日なら!」
向日葵「明日……わかりましたわ、明日また」
櫻子「向日葵が、向日葵が私に告白してくれる!」
櫻子「もう何年待ったかな……」
櫻子「本当に、本当に……うれしい」
櫻子「向日葵……大好きだよ、向日葵が私を好きだったのと同じ時間だけ、私も好き」
櫻子「子供の頃、向日葵の心の声を聞いたあの時からずっと」
向日葵「櫻子……」
櫻子「それで、話ってなに?」
向日葵「えと……そう、ですわね……」
櫻子「……」
向日葵「きょ、今日は天気がいいですわねー……」
櫻子「そうだね、雲一つ無い快晴だね」
向日葵「え、ええ……」
櫻子「うん……」
向日葵「それで、その……」
櫻子「なぁに?」
向日葵「櫻子っ!」
櫻子「うん……」
向日葵「す……」
向日葵「す、すいか……食べます?」
櫻子「スイカ!? 食べる食べる!」
櫻子「って違ーう!」
櫻子「向日葵、言いたいことあるんでしょ……」
向日葵「あっ……」
櫻子「勇気出して、向日葵」
向日葵「櫻子……私……」
櫻子「うん……」
向日葵「す、好き……私、櫻子のことが……好き、ですの」
櫻子「向日葵……」
向日葵「だ、だから……その、私とつ、つ……ぅ」
櫻子「向日葵」
向日葵「は、はひっ!」
櫻子「私も好きだよ、向日葵のこと大好き」
向日葵「あ……」
櫻子「ありがとう」ギュ
向日葵「さく……さくらこぉ……ひくっ、ひっく……」
櫻子「よしよし……頑張ったね、向日葵」
向日葵「うんっ……うん……」
櫻子「というわけで、私たちは晴れて恋人同士になりました」
向日葵「はい……」
ちなつ「はやいっ!?」
あかり「昨日の今日だよぉ」
ちなつ「いいなぁ二人共……羨ましい」
櫻子「えへへ///」
向日葵「うーですの///」
あかり「おめでとぉ!」
櫻子「ありがとう」
向日葵「長年の想いが実って、私幸せですわ」
ちなつ「わぁ……」
櫻子「ねえ向日葵、何して欲しい?」
向日葵「何って?」
櫻子「恋人である私にして欲しいこと、ない?」
向日葵「こ、恋人……そうですわね、で、デート……とか」
櫻子「いいね、いつも一緒に遊んでるけど」
櫻子「デートって形で遊ぶのは、これが初めてになるのかな」
向日葵「デート……櫻子と、デート///」
櫻子「えへへ」
向日葵「ふふ……」
向日葵「デート……楽しいですわね」
櫻子「見て見て向日葵」
向日葵「あら、可愛い服」
櫻子「似合うかな?」
向日葵「櫻子にはちょっと地味すぎるんじゃないかしら?」
櫻子「向日葵が着るんだよ?」
向日葵「私?」
櫻子「うん、向日葵に着て欲しい、この可愛い服」
櫻子「もっと可愛い向日葵が見たいな」
向日葵「櫻子……だったら櫻子はこれなんかどうかしら?」
向日葵「二人でお互いをコーディネートですわ」
櫻子「うん!」
櫻子「可愛い……」
向日葵「も、もう///」
櫻子「さっすが私の自慢の彼女だ!」
櫻子「誰に見せても恥ずかしくない!」
向日葵「櫻子ったら……あなただって見せびらかしたいくらい素敵な彼女ですわ」
櫻子「えへへ///」
向日葵「ふふ……///」
向日葵「でも、やってることはいつもとあまり変わりませんわね」
櫻子「実感湧かない?」
向日葵「ええ……」
櫻子「私のためでも向日葵のためでもない、お互いのためのショッピング」
櫻子「それって立派に恋人のデートだと思うよ」
向日葵「櫻子……」
櫻子「向日葵は今、幸せでしょ?」
向日葵「ええ!」
櫻子「だったら、それでいいんじゃないかな?」
向日葵「そう、ですわね……櫻子」
櫻子「お金なくなっちゃったね」
向日葵「可愛い櫻子を見る対価と考えたら安いもんですわ」
櫻子「おお、言ってくれるね///」
向日葵「この恥ずかしさ、言ってから気付きましたわ……///」
櫻子「もう……///」
向日葵「お金なんかなくても大丈夫、一緒にいられるだけでも」
櫻子「幸せだね」
向日葵「ええ」
櫻子「お金もないし、公園でのんびりだね」
向日葵「ぽかぽかしてて気持ちいいですわー」
櫻子「あったかいね、ちょっと眠くなっちゃう」
向日葵「まったく櫻子は子供なんですから」
櫻子「ふぁ……んん……」
向日葵「ほんとに寝るんですの?」
櫻子「んん……いぃ? 向日葵……?」
向日葵「しょうがないですわね」ポン
櫻子「ぅーん」
向日葵「……」ナデナデ
櫻子「んぅ……ひまー……」
向日葵「かわいい……」
櫻子「むにゃ……」
向日葵「ふふ……」
櫻子「……すきすきー…………」
向日葵「はぁ……しあわせ」
櫻子「あした……は……」
向日葵「? 寝言、ですの?」
櫻子「あめ……にしよー……むにゃ……」
向日葵「雨……に、する? どういう夢を見てますの?」
櫻子「えへへ…………」
向日葵「かわいい……」
櫻子「ん……寝てた?」
向日葵「それはもう」
櫻子「起こしてくれたらよかったのに、折角のデート……」
向日葵「いいですわよ、櫻子の可愛い寝顔をずっと見ていたんですもの」
櫻子「うぁ///」
向日葵「役得でしたわ」
櫻子「そんなこと心から言われたら恥ずかしいじゃん、バカ///」
向日葵「……かわいすぎる」
櫻子「あー、向日葵とのデート、楽しかったな」
櫻子「向日葵が服を選んでくれて……えへへ」ギュ
櫻子「いつもと同じだけど、いつもと違う……」
櫻子「恋人って……こんなに幸せなんだ……!」
櫻子「えへへ」
櫻子「……そだ、明日はまた相合傘で帰ろっ!」
櫻子「向日葵、大好き……」
向日葵「おはよう櫻子」
櫻子「おはよう、私の向日葵」
向日葵「……///」
櫻子「えへへ///」
向日葵「も、もう……って櫻子その傘どうしましたの?」
櫻子「なんだか今日は降りそうな気がする」
向日葵「…………」
櫻子「恋人ができると第六感が冴え渡るのかもしれない」
向日葵「何言ってますのよ」
櫻子「えへへ」
向日葵「降った……ほんとに降りましたわ……」
櫻子「よしっ」
向日葵「……昨日の寝言」
向日葵「いえ……そんなことありえませんわね」
櫻子「向日葵……?」
向日葵「櫻子、いれてくれますわよね」
櫻子「うん、思いっきりひっついていいよ」
櫻子「私昨日、そんな寝言を? 危ないな……」
向日葵「櫻子」
櫻子「向日葵」
櫻子「呼んでみただけ、だよね」
向日葵「名前を呼ぶだけでも嬉しくなりますわね」
櫻子「えへへ」
向日葵「櫻子」
櫻子「なに?」
向日葵「ちょっと目を閉じてくださいます?」
櫻子「う、うん……」ドキドキ
向日葵「……」
櫻子「……」
向日葵「櫻子ったら瞼にゴミが付いてますわ、ふふ、目を閉じた櫻子も可愛い」
向日葵「っと、考えてないで取ってあげないと」
櫻子「キスするんじゃないのか!? 瞼にゴミって!」
向日葵「ひぇ!? な、なに?」
櫻子「あ……」
向日葵「なん……ですの? 今……櫻、子?」
櫻子「あ……ぁ……」
向日葵「今、私の考えてること……」
櫻子「えと……えと、ね?」
櫻子「どうしよう……ばれた? 誤魔化す?」
櫻子「……嫌っ、そんなわだかまりを残したままなんて」
櫻子「向日葵には嘘、つけないよ」
櫻子「私、ね……昔から人の心が読めるの、他にもいろいろできる」
向日葵「なに、言ってますの?」
櫻子「私には超能力があるの」
向日葵「そんなことあるはずないじゃない」
櫻子「ほんとだよ」
向日葵「だったらなんですの? 今だって……」
「「私の心を読んだ上で行動しているって言うんですの!?」」
向日葵「!?」
向日葵「嘘……本当に?」
櫻子「……」
向日葵「…………」
向日葵「私が告白しようとしたとき……あなた」
櫻子「一日引き伸ばした、ね」
向日葵「私の気持ちも知っていたのに、それは……」
櫻子「それは違うよっ!」
向日葵「だったらどうして!」
櫻子「それは……私、冷静になれなかったから……」
向日葵「冷静? 私の気持ちを覗いていたのに? 知っていたのに?」
ニア 違う……違うよっ!
そうだよ
櫻子「違う……違うよっ!」
向日葵「何が違うって言うんですの! 私の心を弄んで……っ」
櫻子「私は、ただ……ずっと、ずっと向日葵の望む私になろうと――」
向日葵「いりませんわよ……っ! そんな欺瞞に満ちた愛情なんて!」
櫻子「……っ」
向日葵「ずっと……ずっと、ってあれも、あれも……あれもあれもあれもあれもあれも!」
向日葵「全部、全部、全部偽物だったんですわ……!」
櫻子「ま、待って向日葵……!」
向日葵「こないで!」
櫻子「……ぁ」
櫻子「ひま……わり……」
櫻子「こんな、ことに……なるなんて……」
櫻子「私……」
櫻子「ひまわりぃ……」
あかり「あれ、櫻子ちゃんどうしたのぉ?」
櫻子「あかりちゃん……」
あかり「櫻子ちゃん……泣いてるの?」
櫻子「私、バレちゃった……向日葵に超能力のこと、バレちゃった……」
あかり「超能力?」
櫻子「そっか、忘れちゃってるんだよね……」
あかり「何のこと?」
櫻子「ううん、なんでもない……忘れて」
あかり「向日葵ちゃんと、喧嘩しちゃったの?」
櫻子「大丈夫だよ……」
あかり「喧嘩はよくないよぉ、仲直りしたほうが……」
櫻子「うん、そうだよね……悪いのは全部私なんだから」
あかり「あかりには何も出来ないかもしれないけど、相談に乗るくらいなら出来るから」
櫻子「ありがと、あかりちゃん……」
櫻子「向日葵になんて言って顔合わせたらいいんだろ」
櫻子「ただいま……の前に、向日葵」
櫻子「…………」
櫻子「だめ……やっぱチャイム押せないよ……」
櫻子「向日葵……」
櫻子「……ただいま」
撫子「お帰り……どうしたの、何かあった?」
櫻子「ねーちゃん……」
櫻子「……」
撫子「ひま子と喧嘩でもしたの?」
櫻子「うん……」
撫子「珍しく落ち込んでるね、仲直りしときなよ」
櫻子「……うん」
撫子「どうせ櫻子がろくでもないことしたんでしょ?」
櫻子「う……」
撫子「早いとこ謝りなよ」
櫻子「わかってるよ!」ダッ
花子「? 櫻子どうしたし?」
撫子「さあ?」
櫻子「謝りに行きたいのに……わかんないんだよ」
櫻子「あんな向日葵、私は知らない」
櫻子「あんな向日葵、見たことない」
櫻子「どうすればいいんだろう……」
櫻子「えーい、考えても仕方ない! 向日葵のとこ行こう!」
櫻子「……」
櫻子「……ひま……向日葵!」
向日葵「…………」
向日葵「何しに来ましたの……」
櫻子「ごめん……私……」
向日葵「わかってるんでしょう?」
櫻子「……」
向日葵「帰って……」
櫻子「ひま……」
向日葵「顔も見たくない!」
櫻子「……っ」
櫻子「そんな……ひどい……」
向日葵「ひどいのはどっちですの……あなたが今まで何をしてきたか……」
櫻子「ごめん!」
向日葵「謝罪なんて必要ないこともあなたにはわかっているんでしょう?」
櫻子「……」
向日葵「帰って」
向日葵「はぁ……」
向日葵「櫻子……」
向日葵「なんで、こんなことに……」
向日葵「信じてたのに、櫻子は……確かに私と通じ合ってるって……」
向日葵「それなのに、櫻子は……」
向日葵「私のすべてを知っていた、から……」
向日葵「さく……ら……こ……」
楓「お姉ちゃん?」
櫻子「ひまわりー……」
櫻子「なにやってんだろ私……つい癖で、向日葵を迎えに来ちゃった……」
櫻子「……向日葵?」
楓「櫻子お姉ちゃん?」
櫻子「……え?」
櫻子「楓、どうしたのその頬……」
楓「あ……えと、これは……なんでもないの」
櫻子「何でもないって……何でもないわけないじゃん!」
櫻子「ほら、手当してあげるから」
楓「ありがとう、櫻子お姉ちゃん」
櫻子「何があったの?」
楓「それは……」
櫻子「楓?」
楓「櫻子お姉ちゃん、お姉ちゃんを助けて」
櫻子「向日葵を助けてって……」
櫻子「……嘘、なんで向日葵がこんなこと!?」
楓「お姉ちゃんを責めないであげて、きっと疲れてるだけなの」
楓「悪いのは現代の教育が社会にもたらした歪だよ」
櫻子「楓……そんなこと言ってる場合じゃなくて……」
向日葵「……」
楓「あ……」
櫻子「楓、あっち行ってて」
楓「うん……」
向日葵「櫻子……」
櫻子「向日葵、楓のことなんで叩いたの」
向日葵「わかってるくせに……」
櫻子「……」
向日葵「私……もう、誰も信じられませんわ……」
向日葵「いっそ、全てを忘れて消えてしまいたい……っ!」
櫻子「わかった……向日葵が壊れてしまう前に……」
向日葵「……え?」
櫻子「ごめんね、向日葵……」
向日葵「さーちゃん、あそぼー」
櫻子「うん、いいよ、遊ぼう向日葵」
向日葵「さーちゃんまた向日葵って呼んだー、ひまちゃんだよ?」
櫻子「ごめんごめん、ひまちゃん」
櫻子「向日葵の心の声を聞いたあの時に戻っちゃった……ね」
ひまわり「私、さーちゃんが好きだな……」
さくらこ「私も、好きだよひまちゃん!」
ひまわり「ほんと!? えへへ、実は私もさーちゃんのことすきー」
櫻子「私はいつから間違ってしまったんだろう」
向日葵「えへへ、さーちゃんすきー」
櫻子「ああ、でも……これで、ずっと……イッショダネ」
完
違う……違うよっ!
ニア そうだよ
櫻子「そうだよ」
櫻子「覗いていたから、知っていたから……冷静でなんかいられなかった」
向日葵「認めましたわね……」
櫻子「……」
向日葵「最低……最低ですわ、櫻子……」
向日葵「私のことを、ずっと騙してましたのね……」
櫻子「向日葵っ、私は……私だよ」
櫻子「ここにいる私が、向日葵の恋人になって小さな子供みたいに浮かれてる私がありのままの私……」
向日葵「……っ」
向日葵「なによ、それ……わけわかりませんわ……」
櫻子「矛盾してるかもしれない……でも――」
向日葵「聞きたくない!」
櫻子「向日葵……」
向日葵「私……もう帰りますわ……」
櫻子「ま、待って……」
向日葵「……っ」
櫻子「……向日葵」
櫻子「…………雨、止まないな……」
あかり「あれ、櫻子ちゃんどうしたのぉ?」
櫻子「あかりちゃん……」
あかり「さっき向日葵ちゃんが走って行ったけど?」
櫻子「私、向日葵のこと傷つけちゃった……」
あかり「櫻子ちゃん?」
櫻子「あかりちゃんと同じに……向日葵も……」
あかり「どういうこと……?」
櫻子「あかりちゃん……聞いてくれる?」
あかり「う、うん……」
櫻子「私ね……超能力があるの」
あかり「超能力? わぁすごいね櫻子ちゃん!」
櫻子「すぐ信じるんだね……」
あかり「うん? だって、超能力があるんでしょ?」
櫻子「う、うん……そうだけど」
あかり「だったら超能力はあるんだよぉ」
櫻子「あかりちゃん……いい子だね」
あかり「えへへ」
櫻子「私ね、そのことずっと誰にも、向日葵にも秘密だった」
あかり「うん」
櫻子「でもね、バレちゃったんだ……」
櫻子「そしたら向日葵、私のこと最低だって……あははっ、当たり前だよね」
櫻子「心の中を覗いて、自分の好きなようにしてたんだから」
あかり「櫻子ちゃん……それって本当?」
櫻子「本当だよ、あかりちゃんの心だってたまに――」
あかり「違うよ、本当に櫻子ちゃんの好きなようにしてたの?」
櫻子「……」
あかり「本当は、向日葵ちゃんのためにしてたんじゃないの?」
櫻子「あかりちゃん……」
あかり「あかりね、櫻子ちゃんと向日葵ちゃん……二人共お互いのために頑張って」
あかり「いろいろしてあげてるんだと思ってたんだけどなぁ」
櫻子「……」
あかり「あかり、間違ってるかなぁ?」
櫻子「……そう、だよね」
櫻子「私が何かするときは、絶対向日葵のためだった」
櫻子「向日葵が何かしてくれる時は、絶対私のためだった」
あかり「そうだよぉ」
櫻子「私は向日葵が好き……」
櫻子「向日葵だって私のことが……好き」
櫻子「だから、絶対離れたくない……!」
あかり「その調子だよぉ!」
櫻子「ありがとうあかりちゃん! 私、頑張れる気がする、私行くね!」
あかり「……がんばれっ、櫻子ちゃん、向日葵ちゃん」
向日葵「どうしてここがわかったんですの……」
櫻子「……」
向日葵「そう、でしたわね……わかりますわよね」
櫻子「うん」
向日葵「何しに来ましたの……?」
櫻子「ちょっと、話したいことがあって……」
向日葵「…………そう」
櫻子「この場所、覚えてる?」
向日葵「デートした時の公園、ですわ……」
向日葵「流石に忘れませんわよ、バカにしてますの?」
櫻子「ごめん……そうじゃなくて」
櫻子「それだけじゃ、ないんだ……」
向日葵「それだけじゃ、ない?」
櫻子「小さい頃さ、よくここで遊んだの覚えてない?」
向日葵「そんなこと……あったような、気もしますわね」
櫻子「うん、御飯事とかしてさ」
向日葵「御飯事……」
櫻子「一緒にブランコに乗ったり」
向日葵「ブランコ……」
櫻子「一緒に駆けまわったり」
向日葵「かけまわる……」
櫻子「子供の頃の思い出がいっぱい詰まった公園なんだ」
向日葵「思い出……」
向日葵「今更……そんな思い出が何になりますの……」
向日葵「全部、あなたが作ったものじゃない!」
櫻子「違う!」
向日葵「っ!」
櫻子「私たち……二人で作った思い出だよ……」
向日葵「ぅ……」
櫻子「今でも覚えてる……目に焼き付いてる……」
櫻子「あの日、向日葵に好きって言った時に見せてくれた笑顔」
向日葵「櫻子が……私に?」
櫻子「向日葵も、私のこと好きって……言ってくれたよね」
向日葵「……あっ、思い出しましたわ!」
向日葵「あの時は確か……」
櫻子「私も、好きだよひまちゃん」
向日葵「……私、も?」
櫻子「うん……」
櫻子「その時、向日葵が私のこと好きだって、思ってくれてたから」
向日葵「……」
櫻子「だから……ね、私も……向日葵のこと好きだって気付けた」
櫻子「もし、超能力がなかったら一生、自分の気持ちに気付けなかったかもしれない」
櫻子「今の、向日葵を好きって言える私は、超能力があったからいるんだよ」
向日葵「櫻子……」
櫻子「間違ったことをしちゃっても、それだけは変わらない」
櫻子「だから私には、今までの私を否定するなんて出来ない!」
櫻子「私は私のまま、向日葵を好きになったらいけないの?」
櫻子「向日葵だって――」
向日葵「私だって……そうしたいですわよ!」
櫻子「だったら!」
向日葵「でも、裏切られた……そう感じてしまう自分も嫌で……嫌でっ!」
向日葵「正面からあなたを見ることが出来ない……!」
櫻子「向日葵……私のこと、好き?」
向日葵「それは……好き、ですわ……好きに決まってるじゃない!」
櫻子「ありがと……向日葵」
向日葵「好きなのに……好きだから、こんなに辛い……っ!」
櫻子「愛さえあればなんでも乗り越えられる……」
向日葵「え……?」
櫻子「……だから、きっと大丈夫!」
櫻子「胸を張って言えるようになる! 向日葵が好きになった私は全部含めた私なんだって!」
櫻子「だから……だから、そばにいてよ向日葵……」
向日葵「あなたを拒絶した私が、あなたを好きでいてもいいんですの……?」
櫻子「いいんだよ、向日葵……好きだよ! 大好き!」
櫻子「この気持ちは何があっても変わらない、私も、向日葵も!」
櫻子「だって、人を好きになるってとっても自由な事なんだもん」
向日葵「櫻子……ありがとう……ごめん、なさい」
櫻子「ううん、私こそごめん、ずっと秘密にしてて……」
向日葵「もう、いいですわよ全部話してくれるんでしょう?」
櫻子「うん、もちろん……長くなるよ?」
向日葵「いいですわよ、どれだけ長くなっても……ね」
櫻子「向日葵……」
向日葵「それにしても櫻子ばっかり知ってるのはズルイですわ」
向日葵「これからは人の心を覗くなんて禁止ですわよ、だって――」
向日葵「相手の気持ちがわかっている恋なんて面白く無いでしょう?」
最後に聞いた向日葵の心の声は、この空よりも澄み渡っていた
おしまい
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