男「一発の弾」 (6)
2時59分
夜が明け始める境目の時間。
車が疎らに通り過ぎる裏の路地で、私は拳銃を握り身をひそめる。
全身から溢れる血汗は衣類に吸われず不快感をもたらすのみ。
生ごみ、酒瓶、虫。
異様な臭いが辺りを満たしてるが、ここからずらかる事は出来ない。
私は追われてる。そう、人間よりも、警察よりも、
はたまた軍やジョンマクレーンよりも恐ろしい、そいつと。
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3時5分
ついに私の付近まで近づいてきたか。
背筋が凍るような気配が自らの死に対し警鐘を鳴らす。
全身全霊で応戦するしかない。
私は腰のホルスターから、一発実弾を取り出し装填する。
重厚感のある拳銃を辺りに向けながら索敵する。
路地から路地へ逃げ込みながら、ぐっと気配が消える事を心底願うが。
タララ〜♪タララ〜♪
呑気な楽曲が私の気を緩ませる。
背中に圧をかけられる。
拳銃は既に無様な姿で分解されており、
地に顔をつける事となる。
状況を打破しようと這い蹲りながらもがくが
顔面に蹴りを入れられる。
血塗れになりながら、私は鳴り続く電話を取ろうとするが、
刹那、携帯を貫通するように私の心臓に穴を空けられる。
拍動は停止し、体温が降下する。
筋肉は硬化し始め、視細胞からの映像が寸断される。
口から行き場を失った血液を噴き出し、
脳への循環は途切れた。
音声が遠く、遠くなる。
皮膚からの感覚が途絶えた。
指が…足が…
7時56分
「いやあああああああああああ」
朝。一人の女性の叫び声と共に事件は露見する。
凄惨な現場には目撃者と思われる女性と警察官が多数いる。
女性は嘔吐を繰り返し、その場に跪く状態。
警察官の多くも光景に混乱した様子だった。
本日朝投下分終わり。
夜また同じ分量投下します
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