芳佳「リーネちゃん、見て見て」
リーネ「あれ?芳佳ちゃん、髪型変えたの?」
芳佳「うん。少し伸びたから整えようと思ったんだけどね」
ペリーヌ「わたくしが、セットして差し上げましたの」
リーネ「ペリーヌさんが?」
ペリーヌ「前々から気になってはいましたの。宮藤さんの癖毛が」
芳佳「えへへ。ありがとう、ペリーヌさん」
ペリーヌ「ふんっ」
リーネ「いいなぁ、芳佳ちゃん。サラサラになってる」
芳佳「リーネちゃんもやってもらえば――!?」ゾクッ
ペリーヌ「……宮藤さん、どうかしまして?」
芳佳「い、今、誰かに見られていたような……」
リーネ「誰かって……」
ペリーヌ「わたくしたち以外にいませんわよ?」
芳佳「で、でも……」
ペリーヌ「からかうのはよしてください」
芳佳「ごめんなさい」
ペリーヌ「いいですこと?折角、髪を整えあげたのですから無駄にしないように。毎日のケアが大事ですわよ」
芳佳「え?毎回ペリーヌさんがセットしてくれないの?」
ペリーヌ「誰がそんな面倒なことするものですか。全く。甘えるのは今回限りにしてくださいな」
芳佳「ペリーヌさんからやってあげるっていってくれたのにぃ」
ペリーヌ「おだまりなさい」
リーネ「ペリーヌさん、私も最近少し髪が伸びてきたんですけど……そのぉ……」
ペリーヌ「もう……仕方ありませんわねぇ……」
芳佳「よかったね、リーネちゃん」
芳佳「ふんふーん」
芳佳「……!?」ゾクッ
芳佳「誰!?」
芳佳「……」
美緒「宮藤。何をしている?」
芳佳「あ、坂本さん」
美緒「そろそろ訓練の時間だぞ」
芳佳「はい。今から行こうと思ってたんです」
美緒「ならばいいが」
芳佳「……」
美緒「……なんだ?」
芳佳「あの、何かいつもと違うなーって思いませんか?」
美緒「いや。何か違うのか?」
芳佳「……格納庫に向かいますっ」テテテッ
美緒「なんだ、宮藤のやつ……?」
格納庫
芳佳「坂本さん、気がついてくれなかったんだよぉ。ひどいよね」
リーネ「髪が跳ねてないから全然違うと思うんだけど」
芳佳「だよね」
リーネ「それにしても芳佳ちゃん、本当にかわいいね。印象が全然違うし」
芳佳「リーネちゃんも前髪ちょっと短くなって、いいね」
リーネ「あ、気がついてくれた?そうなんだぁ。ペリーヌさんがカットしてくれて」
芳佳「いつもよりも髪も綺麗だし。髪は結わないほうがいいかも」
リーネ「そ、そうかな?芳佳ちゃんがそういうなら今日ぐらいは……」
芳佳「ああ、うんっ。そっちも可愛いよぉ」
リーネ「ありがとう」
美緒「宮藤、リーネ。準備は出来ているか」
芳佳「はいっ!」
リーネ「出来てます!」
美緒「では、通常の飛行訓練を行う。ストライカーユニットの装着、急げ」
美緒「――そこまで!!」
芳佳「はぁ……はぁ……おわったぁ……」
リーネ「あ、ありがとうございます」
美緒「リーネ。今日は髪型が違うようだが、訓練中邪魔にならないか?」
リーネ「え?ああ、別に……」
美緒「そうか」
芳佳「……」
美緒「なんだ、宮藤?」
芳佳「なんでもないです」
美緒「おかしな奴だ」
リーネ「あ、あの、坂本少佐。芳佳ちゃんも、髪型が変わってて……」
美緒「そんなことは知っている。見れば分かるだろう」
リーネ「え……」
美緒「宮藤の髪は短いし訓練になんら影響がないからな、気にするほどでもないだろう」
リーネ「……」
芳佳「……!?」ゾクッ
リーネ「だったら、その、褒めてあげても……」
美緒「髪を少し切っただけだろ?」
リーネ「で、でも……あの……」
美緒「褒めたほうがいいのか」
芳佳「さ、坂本さん」
美緒「宮藤。その髪も似合ってはいるが、私個人としては前の癖毛のほうが好みだ。はっはっはっは」
リーネ「えぇぇ……」
芳佳「あの、誰かに見られてませんか?」
美緒「誰かだと?」
芳佳「今日、ずっと見られているような気がするんです」
美緒「ここにいるのは……」
シャーリー「ふんふふーん」
ルッキーニ「すぅ……すぅ……」
美緒「私たちのほかにはシャーリーとルッキーニ以外いないが?」
芳佳「そ、そうですか……」
美緒「シャーリー!!」
シャーリー「んぁ?なんだー?手が離せないんだけどー」
美緒「先ほどまで他に誰かいたか?」
シャーリー「えー?ああ、中佐とハルトマン、バルクホルンは通ったよ。3分前ぐらいに」
美緒「ここにどれぐらい居た?」
シャーリー「通り過ぎていっただけだよ?それがどうかしたかー?」
美緒「いや、なんでもない。気にするな。整備中にすまなかったな」
シャーリー「いえいえ」
美緒「というわけだ。気のせいだろう」
芳佳「そ、そうですか」
リーネ「整備班の人が見てたのかも。ほら、今日の芳佳ちゃんは髪型も変わっていつもより可愛いし」
芳佳「そうなのかな……」
美緒「はっはっは。宮藤はそこそこ人気があるから、ある程度は仕方ないだろう」
芳佳「……」
キッチン
芳佳「やっぱり、髪戻そうかなぁ」
リーネ「戻すの?私は、いいと思うけど」
芳佳「でも、なんだが背中が気になって――!?」ビクッ
リーネ「え?」
芳佳「だ、誰かが……見てた……」
バルクホルン「……」モグモグ
エーリカ「おいひぃー」
ペリーヌ「食事中ぐらいはお静かに。ハルトマン中尉」
エイラ「サーニャ、口のまわりが汚れてるぞ」
サーニャ「んっ……。ありがとう、エイラ」
シャーリー「おーい。おかわりー」
ルッキーニ「あたしもぉー!!」
リーネ「は、はーい。芳佳ちゃん、大丈夫?」
芳佳「う、うん」
芳佳「どうぞ」
ルッキーニ「にひぃ!!ありがとう!!」
芳佳「まだまだあるからね」
ルッキーニ「ところでさぁ、今日の芳佳は雰囲気違うよね?」
芳佳「え?」
シャーリー「ああ。あたしもずっと思ってたんだけど、なんか違うよな」
ルッキーニ「だから、じーっと見ちゃうんだけどぉ」
芳佳「あ……そっか……。見てたのってルッキーニちゃんなんだ」
ルッキーニ「え?」
芳佳「ううん。なんでもないの。髪をね、ペリーヌさんにセットしてもらったんだぁ。どうかな?」
ルッキーニ「あー。いつもの癖毛ないじゃん。だからかぁー」
シャーリー「あぁ。なるほどなぁ。うん。いいんじゃないか?似合ってるぞ、宮藤」
芳佳「あ、ありがとうございます」
芳佳(視線の正体がわかってよかったぁ……)
バルクホルン「……」モグモグ
エーリカ「トゥルーデ、クリスは元気なのか?」
バルクホルン「ぶふっ!?」
ペリーヌ「ちょっと!?バルクホルン大尉!!食べたものを噴出さないでください!!」
バルクホルン「す、すまない……」
エーリカ「うわ。きたないなぁ」
バルクホルン「何を言い出すんだ。ハルトマン?」
エーリカ「いや、元気なのかなぁってふと思っただけで」
バルクホルン「問題ない。良好だ」
エーリカ「そっか」
バルクホルン「宮藤、拭く物を頼む」
芳佳「はい、どうぞ」
バルクホルン「……」
芳佳「あ、あの……なにか……?」
バルクホルン「……」ギュッ
芳佳「バ、バルクホルンさん……あの私の手じゃなくて……布巾を握ってくれると……」
美緒「食事中にすまない。全員、聞いてくれ」
ペリーヌ「なんでしょうか?」
ミーナ「新しいシフト表よ。最近、出撃機会も減っているからこれを機に色々と新しい試みをね」
バルクホルン「試み?」ギュゥゥ
芳佳「はなしてくださいってばぁ」
美緒「宮藤もリーネも少しは腕を上げたからな。組み合わせの幅が広がったのだ」
リーネ「わぁ……ありがとうございますっ」
ミーナ「うふ。それじゃあ、みんなに配るわね。誰が自分のパートナーなのか確認しておいてね」
ペリーヌ「わたくしと少佐という組み合わせもぉ!!」
美緒「それはないぞ」
エーリカ「今まではペリーヌかトゥルーデばっかりだったから、たのしみぃー」
エイラ「おぉ……わたし、ペリーヌとかよぉ……」
ルッキーニ「やったぁー!!初めて芳佳とだぁー!!」
サーニャ「……かわらない」
バルクホルン「シャーリーとリーネか……」
エーリカ「よっろしくぅ」
芳佳「はい。なんだか、新鮮です。いつもは坂本さんとリーネちゃんだったから」
ルッキーニ「にひぃ!!」
シャーリー「なんで、こいつとなんだよ。戦力、偏りすぎてないかぁ?」
バルクホルン「文句があるのか?」
シャーリー「あるから言ってんだよ」
リーネ「あぅ……」
ペリーヌ「わたくしの足はひっぱらないように」
エイラ「あぁ?」
サーニャ「……かわらない」
美緒「はっはっはっは。仲良くな、お前たち」
ミーナ「宮藤さん。私と坂本少佐の食事、お願いできる?」
芳佳「はいっ。すぐに持ってきます!!」
リーネ「私も手伝うよ」
ミーナ「……あら?今日の宮藤さん、クリスさんにそっくりね」
芳佳「え?クリスさん、ですか?」
ミーナ「髪の所為かしら」
芳佳「そうなんですか?」
バルクホルン「……別に」
エーリカ「えぇー?」
バルクホルン「なんだ?」
エーリカ「別にぃ」
芳佳「似てますか?」
ミーナ「ええ。以前から雰囲気が似ているのはあったけど、今日はここにバルクホルンの妹がいるみたいね」
芳佳「はぁ……」
バルクホルン「言っておくが、クリスは宮藤より美人だ」
芳佳「そうですか……」
リーネ「芳佳ちゃん!?バ、バルクホルンさん!!その言い方はあんまりです!!」
バルクホルン「なっ……。そ、そうか。だ、だが、私はその、事実を述べただけで……」
芳佳「……」
翌日 格納庫
ルッキーニ「巡回、じゅんかーい」
エーリカ「そのあとはおやつだー」
ルッキーニ「やったぁー!!おやつだぁー!!!」
芳佳「がんばりましょうね」
エーリカ「あれ、宮藤?髪型、戻ってるけど?」
芳佳「え?ああ、はい。戻っちゃいました」
ルッキーニ「なんでー?似合ってたのにぃ」
芳佳「セットしては見たんですけど、上手くいかなくて……あはは……」
エーリカ「ふーん」
芳佳「だから――!?」ゾクッ
ルッキーニ「どったの?」
芳佳「……ハルトマンさん、ルッキーニちゃん、今、誰かいなかった?」
エーリカ「え?さぁ?ルッキーニは?」
ルッキーニ「知らない」
エーリカ「昨日から視線を感じるって?」
芳佳「はい……」
エーリカ「……」
ルッキーニ「気のせいじゃないのぉ?」
芳佳「気のせいじゃないよぉ。もう、背筋がゾクってするの……」
エーリカ「トゥルーデが昨日、宮藤を食堂で凝視してたのは知ってるけど」
芳佳「そ、そうなんですか?」
エーリカ「ほら、クリスに似てたからさぁ。昨日はあんなこと言ってたけど、小さな声で「いいなぁ……いいなぁ……宮藤……」って言ってて気持ち悪かったぐらいだ」
芳佳「昨日はルッキーニちゃんやシャーリーさんだけじゃなく、バルクホルンさんも見てたんですね……」
エーリカ「でも、今日は髪型が戻ってるしトゥルーデが宮藤を注視する理由はないはずだけど」
芳佳「……」
ルッキーニ「芳佳ぁ、気にしても仕方ないって。今はもう誰もいないんだし」
芳佳「う、うん……そうだねっ」
エーリカ「よし!それじゃあ、飛行訓練を兼ねた巡回を始めるぞ。私についてこーい。今日はエーリカ隊長とよべー」
ルッキーニ「エーリカたいちょー!!にゃははは!!」
空中
エーリカ「哨戒中、異常なし。以上」
ミーナ『了解。では、戻ってきて』
エーリカ「りょうかーい。戻るぞ、ルッキーニ、宮藤」
ルッキーニ「あい!」
芳佳「了解!」
ルッキーニ「おっやつー、おっやつー」
芳佳「あはは。ルッキーニちゃんはそればっかり――!?」ゾクッ
エーリカ「……気がついたか」
芳佳「な、なんですか?」
エーリカ「いや、今、真剣に宮藤を睨みつけてたんだよ。コロスつもりで」
芳佳「な、なんでですか?」
エーリカ「そういうのに敏感なら、さっきの話も信じていいかなって思ってさ」
芳佳「ハ、ハルトマンさん……」
エーリカ「誰が宮藤のことを見てるんだろう。気持ちわるいよねぇ、そういうのって」
食堂
ルッキーニ「いっただきまーすっ」
エーリカ「今は感じない?」
芳佳「はい。大丈夫です」
エーリカ「それにしても宮藤が気配を感じ取れる才能があるとはね。ナイトウィッチに転身できるんじゃない?」
芳佳「そうですか?」
エーリカ「サーニャは飛び跳ねて喜ぶんじゃない?」
芳佳「それ、見てみたいです」
エーリカ「ま、今は宮藤を付け狙う悪魔を見つけるほうが先だね」
ルッキーニ「でもでもぉ、芳佳のことならぁみんな見てるよね」
芳佳「どういうこと?」
ルッキーニ「キッチンにいるときとかだって、視線は芳佳やリーネにいっちゃうし」
エーリカ「座っている連中を見ているよりかは、厨房で動いてる二人を見てるほうが楽しいね」
芳佳「なら、単純にみんなから見られているのが気になっているだけ……。でも、それだったら昨日から急に感じ始めたのは……」
エーリカ「何か異質な視線があったんじゃない?哨戒中の私みたいにコロシテヤルって想いで睥睨していたとか」
芳佳「えぇぇぇ!?そ、そんな……わ、わ、私……何か恨まれるような……ことを……!?」
エーリカ「ああ。飽くまでも一例だって。そういう憎悪だけじゃなくて、いやらしいな感情でみていたとかもありえる」
芳佳「い、いやらしい?」
エーリカ「ハァ……ハァ……ミヤフジ、カワイイよぉ……。みたいな」
芳佳「そ、そんな人、この501にいるんですか?」
エーリカ「いるかもよ」
芳佳「えぇぇぇ……」
ルッキーニ「にひぃ。それじゃあ、今日の夕食で私たちが見張っててあげようか?」
芳佳「いいの?」
ルッキーニ「いいよ。その代わり、今日も芳佳が晩御飯つくってね」
芳佳「う、うんっ!!それぐらいなら任せて!!」
ルッキーニ「やったぁー!!!今日も芳佳のごはんだー!!」
芳佳「ルッキーニちゃん、そんなに嬉しいの?」
ルッキーニ「もう芳佳のごはん以外は美味しく感じないもん」
芳佳「そ、そうなんだ。が、がんばってつくるよっ」
美緒「宮藤。今日も料理を作るのか?」
芳佳「はい。そういうことになりました」
美緒「そうか。それは楽しみだな」
芳佳「さぁー!!つくるぞぉー!!」
美緒「……」
芳佳「まずは――!?」ゾクッ
美緒「……どうした?」
芳佳「坂本さん、今、私の事見てました?」
美緒「見てはいけなかったか?お前の割烹着姿を見るのが、最近の楽しみになっていたのだが」
芳佳「そ、そうなんですか?」
美緒「ああ。和むからな」
芳佳「ありがとうございます」
美緒「はっはっはっは」
芳佳「……」
芳佳(やっぱり、色んな人に見られているだけなのかなぁ……これって……)
芳佳「……」チラッ
美緒「……」
芳佳(すごい見られてる……!!)
美緒「嫁をもらうとするなら、宮藤が一番だな……」
芳佳「……」
美緒「やはり扶桑の撫子を絵にしたような振る舞いでなければ……」
芳佳「あ、あの!!」
美緒「どうした?」
芳佳「独り言がきこえてますよ……」
美緒「おお。そうか。すまん。はっはっはっは」
芳佳「……」
美緒「宮藤の髪はやはり、いつも通りがいいな」
美緒「だが、昨日のも悪くはなかった」
美緒「ただ宮藤らしさが損なわれていたのが評価を下げることに――」
芳佳「坂本さん、きこえてますってばぁ!!」
エーリカ「あれ、少佐だ」
美緒「ハルトマンか。食事はもう少しあとになるぞ」
エーリカ「ミーナが愚痴ってたぞ。書類が終わらないって」
美緒「あいつも大変だな」
エーリカ「何を他人事みたいに」
美緒「お前は何かしていたのか?」
エーリカ「ん?まぁ、色々」
美緒「宮藤が感じている視線の件か?」
エーリカ「……するどいなぁ」
美緒「私も昨日、本人から話を聞いたからな。気にはしている。宮藤で何かよからぬことを考えているものがいるかも知れないからな」
エーリカ「ルッキーニと一緒にちょっと調べてみたんだ。昨日宮藤が視線を感じた場所は自室前の通路、格納庫、食堂って言ったから」
美緒「なに?」
エーリカ「格納庫はともかく、他の場所は私たち以外基本的には居ないはずだろ。どういうことだと思う?」
美緒「整備班や警備兵等ではなく、我々の中にいるのか?宮藤に熱視線を送っている者が」
エーリカ「そうしかないよねぇ。まぁ、トゥルーデが大本命なんだけどさぁ。トゥルーデは昨日、自室前の通路で宮藤を見ることはなかったね。私と一緒に居たし」
美緒「……」
芳佳「……!?」バッ
美緒「過敏になりすぎているな。このままではストレスが溜まって、そのうち作戦行動にも支障が出るもしれん」
エーリカ「全員、ここに集めようか?」
美緒「そのために宮藤を台所に立たせたのだろう?」
エーリカ「ま、そうだけど」
美緒「しかし、昨日もそのような怪しい視線を送っている者はいたのか?」
エーリカ「私はトゥルーデしか見てなかったし。でも、食堂では他にシャーリーやルッキーニも宮藤のこと見てたってさ」
美緒「場所によってみている者が違うという可能性もあるな」
エーリカ「みんなして宮藤のこと見てるのか?」
美緒「ついつい目で追いたくはなるのは分からなくもないがな。はっはっは」
エーリカ「ついね……」
芳佳「……!?」バッ
エーリカ「あ、ごめん。続けていいから」
芳佳「はい……」
芳佳「……」チラッ
美緒「新しいシフトはどうだ?」
ペリーヌ「どうもこうも……。できれば即時交代をお願いしたいところなのですが」
エイラ「なんだと、こらぁ。私だってお前なんか願い下げだかんな」
サーニャ「……私、かわってません。一人です」
美緒「はっはっはっは。仲良くしているようで何よりだ」
ペリーヌ「そんなぁ……」
ミーナ「成功みたいね。今回の変更は」
バルクホルン「食事の時間には早いようだが、何故全員を集めた?」
エーリカ「いいじゃない。たまにはワイワイ騒いでも」
バルクホルン「おかしいな。この部隊はいつも騒がしいような気がするが」
リーネ「芳佳ちゃん、手伝うね」
芳佳「あ、うん」
シャーリー「ルッキーニはどうだ?宮藤とハルトマンとはうまくやってるか?」
ルッキーニ「うんっ!!だいじょーぶっ!!」
リーネ「今日も視線を感じたってきいたけど」
芳佳「そうなんだ。髪は戻したのに、変だよね」
リーネ「芳佳ちゃんのこと好きな人がいるんじゃ……」
芳佳「えー?でも、ここでも――!?」ゾクッ
ペリーヌ「……!」プイッ
エイラ「サーニャ、また一緒に夜間哨戒しような」
サーニャ「うん……」
芳佳「……あれ、今」
リーネ「な、なに?」
芳佳「ううん。なんでもない」
バルクホルン「……」
ミーナ「トゥルーデ?今日は朝から元気がないようだけど?」
バルクホルン「そんなことはない」
ミーナ「そうなの?」
芳佳(ペリーヌさんが見ていたような……)
エーリカ「……ルッキーニ」
ルッキーニ「あい」
シャーリー「おい。なんだよ?面白いことなら混ぜてくれ」
エーリカ「よし。シャーリーは右から、ルッキーニは後ろから、私は左からいくから」
美緒「私は正面からペリーヌを見張っていてやろう」
エーリカ「――ゴーッ!」
ルッキーニ「うにゃぁー!!!」
シャーリー「おりゃー!!!」
ペリーヌ「え!?え!?ちょっと!!?なんですの!?」
エーリカ「いま、宮藤のことを殺すつもりで見てただろぉ?」ギュゥゥ
ペリーヌ「は、はぁ!?なにを言ってますの!?」
ルッキーニ「じゃぁ、やらしい目でみてたぁー?」
ペリーヌ「そ、そんなわけありませんでしょ!?」
美緒「宮藤を見ていたことは否定しないのか、ペリーヌ?」
シャーリー「で、ペリーヌを取り押さえてどうかしたのか?」
ミーナ「ど、どうしたの!?」
バルクホルン「おい!!何の騒ぎだ!!」
エイラ「そういうことは部屋でやれよー」
サーニャ「……」
エーリカ「どうして宮藤を見てたんだよぉ?」
ペリーヌ「べ、別に見ていたわけでは……」
芳佳「あ、あの……」
リーネ「どうかしたんですか?」
美緒「先ほど、ペリーヌが何かを目で訴えるかのように宮藤を見ていたからな」
芳佳「やっぱり、ペリーヌさんが……?」
ペリーヌ「なんでもありません!!」
ルッキーニ「うっそだぁー」
シャーリー「わかったぁ。宮藤のことが好きなのか?」
ペリーヌ「何を言っていますの!!!わたくしは少佐一筋ですわ!!!」
美緒「ほう?」
ペリーヌ「あ……いぇ……その……」
美緒「ならば、ペリーヌ」
ペリーヌ「は、はい……!」
美緒「何故、宮藤を見ていたのか教えてくれないか?」
ペリーヌ「そ、それは……その……」
美緒「私の目を見るんだ」クイッ
ペリーヌ「しょ、しょうさぁ……」
美緒「答えろ」
ペリーヌ「……宮藤さんの髪が元に戻ってしまっているのが、朝から気になっていました」
芳佳「え?」
ペリーヌ「どうせ、やぼったい宮藤さんのことですから?セットが上手くできなかったのでしょう」
芳佳「そうです」
ペリーヌ「おほほ。やっぱり思った通りですわね」
リーネ「……ペリーヌさん、もしかして芳佳ちゃんの髪をセットしてあげたくて、見てたとか?」
ペリーヌ「……い、いえ、そういうのではなくて……ただ、目が合えば、向こうから懇願してくれるのではないとか、少しばかり考えていただけで……」
芳佳「えぇー!?でも、ペリーヌさんは目をそらしたじゃないですかぁ」
ペリーヌ「知りません!!」
エーリカ「なーんだ。そういうことか」
ルッキーニ「芳佳ぁ、どうする?」
芳佳「うーん……。あのぉ、ペリーヌさん?」
ペリーヌ「なんでしょうか?」
芳佳「明日、セットのお願いできる?」
バルクホルン「それがいい」
シャーリー「似合ってたもんなぁ」
エーリカ「いいんじゃない?」
芳佳「ですよねっ。だから、ペリーヌさん。もう一度セットの仕方を教え欲しいな」
ペリーヌ「……仕方ありませんわね。一回の講習料は高くつきましてよ?」
芳佳「えぇー!?友達割引はないの!?」
ペリーヌ「だ、誰が友達ですか!!気安くと、とも、友達なんていわないでくださいな!!」
芳佳「ひどーい!!」
ペリーヌ「まぁ、同僚割引なら、して差し上げてもよろしくてよ」
芳佳「それは10パーセントオフぐらいにはなりますか?」
ペリーヌ「そうですわね。宮藤さんの提案通り、10割引で手を打ちましょう」
芳佳「やったぁー」
リーネ「ペリーヌさん、私もお願いします」
ペリーヌ「リーネさんは自分でできるでしょう?」
リーネ「ペリーヌさんにしてもらったほうが、髪に艶がでるんです」
ペリーヌ「もう。面倒ですわね」
リーネ「ありがとうございます」
ペリーヌ「誰もするとは言ってませんでしょう?」
エーリカ「……」
美緒「視線の原因はペリーヌだったな」
エーリカ「今日のはね」
ミーナ「美緒?一体、どうしたの?」
美緒「実はな――」
翌日
ペリーヌ「ここをこうして……」
芳佳「えへへ」
ペリーヌ「なんですの。急に笑い出して」
芳佳「ペリーヌさんにこうして貰えるのが嬉しくて」
ペリーヌ「ふんっ。ほら、できましたわよ」
芳佳「わーい!リーネちゃん!!どう!?」
リーネ「うんっ。かわいいよっ。私はそっちのほうが好きかな」
ペリーヌ「宮藤さん。これぐらいのケアはしておかないと、髪はすぐに痛んでしまいますわよ」
芳佳「ペリーヌさん、ありがとー」
ペリーヌ「人の話をお聞きなさい」
芳佳「私の癖毛って強情だから、中々こんなに綺麗に落ちついてくれないから本当にすごいよぉ」
ペリーヌ「まるで毛の一本一本が宮藤さんみたいですわね」
リーネ「ペリーヌさん。私もお願いします」
ペリーヌ「はいはい。こちらへいらっしゃい」
滑走路
芳佳「でやー!」ダダダダッ
芳佳「見て!!走っても髪が乱れないっ!!」
リーネ「ペリーヌさんはやっぱりすごいね」
芳佳「うんっ」
エーリカ「みやふじぃー。訓練の時間だよー。はやくこーい」
芳佳「あ、はーい。それじゃ、リーネちゃん。またね」
リーネ「うんっ」
芳佳「ハルトマンさーん」テテテッ
リーネ「……」
芳佳「――!?」ゾクッ
エーリカ「どうした、宮藤?」
芳佳「あ、いえ……」
エーリカ「飛ぶぞ。準備しろ」
芳佳「わかりました」
空中
エーリカ「おぉ。宮藤の髪、本当に乱れないなぁー」
芳佳「ペリーヌさんって上手なんですね」
ルッキーニ「いいなぁ。あたしもやってもらおうかなぁ」
芳佳「ペリーヌさんならきっとやってくれるよ」
ルッキーニ「でも、料金取られるんでしょう?」
芳佳「10割引きだから平気だよ」
ルッキーニ「10割もひいてくれるの!?すごぉー!!」
芳佳「ペリーヌさんは今だけって!!って言ってたから早く申し込んだほうがいいよ!!」
ルッキーニ「にひぃ!!もうしこむぅ!!」
芳佳「ルッキーニちゃんはいつも髪を結ってるし、たまには下ろしてみるのもいいと思うよ?」
ルッキーニ「ほんとー?」
芳佳「大人っぽくなるよ、絶対」
エーリカ「いえてるね」
ルッキーニ「そっかぁ!なら、そうしてみよーっと」
格納庫
ルッキーニ「申し込みにいってくりゅー」テテテッ
エーリカ「ふわぁぁ。それじゃ、夕食まで待機ね」
芳佳「はい」
エーリカ「……で、宮藤。視線は感じた?」
芳佳「あ……えっと……」
エーリカ「感じなくなったっていうならいいんだけどさ」
芳佳「その――!?」ゾクッ
エーリカ「む!?そこだぁぁぁ!!!」チャカ
シャーリー「お、おい。銃はやめろ……」
芳佳「シャーリーさん?」
エーリカ「あれ?トゥルーデじゃない……」
シャーリー「なんであたしがバルクホルンと間違えられなきゃいけないんだ」
芳佳「なんですか?」
シャーリー「なんでもない。ただ宮藤の髪が気になってさ。ちょっと見てただけだよ」
エーリカ「髪?」
シャーリー「ほら、あたしもさ、髪の癖が強いから。宮藤を見てたら、そういうのもアリかなぁって」
芳佳「それならペリーヌさんに頼んでみればいいんじゃ」
シャーリー「そこまでは考えてないって。ペリーヌも宮藤とリーネで大変だろうしさ」
エーリカ「ふぅん。ただ、見てただけかぁ?」
シャーリー「妄想はしてた。これ以上、綺麗になってしまう自分の恐ろしさとか。なんてね」
芳佳「シャーリーさんも似合いますよぉ」
シャーリー「そう?なら、やってみるかぁ」
エーリカ「にしたって、堂々と見ればいいじゃん。そんなこそこそしてさぁ」
シャーリー「ここで整備してたんだ。仕方ないだろ」
芳佳「ハルトマンさん、いいですから」
エーリカ「それじゃ、私は部屋に戻るね」
芳佳「はい」
シャーリー「あぁ、サラサラはいいなぁ」ナデナデ
芳佳「ペリーヌさん、今だけ10割引らしいですよ?頼むだけでもどうですか?」
通路
シャーリー「10割引は魅力だな」
芳佳「はい!!」
ペリーヌ「ちょっと!!待ちなさい!!」
ルッキーニ「ペリーニュゥ!!あたしもサラサラにしてぇー!!」モミモミ
ペリーヌ「あぁ!!どこをさわっていますのぉ!!!」
シャーリー「こーら。ルッキーニ。ペリーヌのは揉んでも大きくならないぞ」
ルッキーニ「うじゅ……ごめんね……ペリーヌ……」
ペリーヌ「そんなことで謝らないでくださいな!!!」
芳佳「ペリーヌさん、あの、私が悪いんです。ペリーヌさんに頼んでみたらって言っちゃって」
ペリーヌ「全く!!わたくしは美容師ではありませんのよ!!」
ルッキーニ「えぇー!?だめなのぉー!?」
ペリーヌ「ダメとは言ってませんわ」
シャーリー「どっちだ」
芳佳「あははは――!?」ゾクッ
サーニャ「……」
芳佳「え……!?」
シャーリー「どうした?」
芳佳「あ、いえ、今、サーニャちゃんが……」
ルッキーニ「サーニャ?」
ペリーヌ「いませんけど?」
芳佳「い、いや、今、いたんですよぉ。確かに。そこの角からこっちを見てて」
シャーリー「まぁ、サーニャが見てたってだけだろ?」
ペリーヌ「大声を出していましたから、気になったのでしょう」
芳佳「でも……」
ルッキーニ「芳佳ぁ?もしかして、見られたの?」
芳佳「多分、私を見てたと思う。ルッキーニちゃんは何も感じなかったよね?」
ルッキーニ「うん」
芳佳「ちょっとサーニャちゃんと話してくる」
シャーリー「あ、おい。宮藤」
芳佳「サーニャちゃん!!!」
エイラ「おわ!!」
芳佳「あ、エイラさん」
エイラ「なんだよ、宮藤。急に出てくるなよ。危ないなぁ」
芳佳「い、今、サーニャちゃんがいましたよね?」
エイラ「ああ。サウナのほうに向かったけど」
芳佳「ありがとうございます」
エイラ「まて」グイッ
芳佳「な、なんですか?」
エイラ「サーニャに何用だ?」
芳佳「あ、えと……」
エイラ「あぁ?いくら宮藤でも、事と次第によっては……」
芳佳「サ、サーニャちゃんが私を見てたんですよぉ。何か言いたかったんじゃないかって……思って……」
エイラ「……私も行く。早くこい」
芳佳「あぁ!!待ってください!!」
サウナ
サーニャ「……」
エイラ「サーニャ!!」ガチャ
サーニャ「エイラ」
芳佳「サーニャちゃん!!」
サーニャ「芳佳ちゃん。どうしたの、二人とも。一緒にサウナなんて仲がいいね」
エイラ「サーニャ、宮藤に何か言いたいことでもあるのか?」
サーニャ「え?」
芳佳「あの、さっき私のこと見てなかった?」
サーニャ「……うん。見てたわ」
芳佳「それはどうして?」
サーニャ「私も芳佳ちゃんの髪を真似してみようかなって……」
エイラ「え……。うーん……あー……よしっ!似合う!!やろう、サーニャ!!」
サーニャ「いいわ。似合わないことは自分がよくわかってるもの」
芳佳「サーニャちゃん、それ本当のこと?」
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