幼馴染「私…もう、お嫁にいけない…」 (257)

俺「な、なんで?!」

幼馴染「わたっ…グスン…私…ゾンビになっちゃったの…」

俺「ゾンビだって?!」

幼馴染「……うん、こないだゾンビにかまれたから…病院いったけど間に合わなくって…」

俺「大丈夫だよ、幼馴染。俺はお前がゾンビになってもずっとそばにいるよ!」

幼馴染「俺くん……!」

俺「だから、俺と付き合ってくれ!」

幼馴染「嬉しい!ゾンビな私と一緒にいてくれるなんて!!」





俺はネクロフィリアだからむしろ願ったりかなったりだと言う事を隠して
幼馴染と付き合うことになった
幼馴染はかわいい
死んでさえいればもっといいのにと思っていたから
こんなに早くゾンビになってくれたのはもはや運命と言うほかないだろう

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幼馴染「ねえ、俺くん…私、変なにおいしてないかな?」

俺「んー…確かにちょっと防腐剤の臭いがするけどあまり気にならない程度だよ」

幼馴染「香水とかつけたほうがいいかな?」

俺「幼馴染の肌が荒れちゃったりしないかどうか確かめてからにしようよ」

幼馴染「うん、わかった♪……私の事考えてくれてるんだね…嬉しい」

俺「当然じゃないか。俺はお前の彼氏なんだから。大事な彼女の事はしっかり考えるさ」

幼馴染「え、えへ えへへっ……恥ずかしいなぁ~」



ちょっと顔を伏せながら笑う幼馴染はかわいかった
頬は染まらなかったが、むしろ青白い肌や手を握った時のひんやり感が俺の心をくすぐった
俺の恋人超可愛い、なにこれ天使じゃね?むしろ天使にお迎えされかけてるけど
こいつは一生をかけて守ろうと思えるレベルだ、ゾンビがなんだ
むしろゾンビだからいいんじゃないか……

告白を受け入れてもらったついでにいちゃいちゃしてから
テンションを維持したまま別れて互いの家に帰る。

明日、一緒に香水などのゾンビ用品を見に行こうとデートの約束をした。
俺まで天に上りそうだ


俺が「ただいま」といいながら家に入ると母が「おかえり」とテレビを見ながら言った



俺「なあ、母さん」

母「何?」

俺「俺、幼馴染と付き合うことにした」

母「……あらぁ?たしかゾンビになっちゃった人の速報に幼馴染ちゃん載ってたわよ?
  あなた、幼馴染ちゃんとホントに付き合うの?人間と死体は大変よぉ?」

俺「そうだけど、俺は結婚まで考えてる。だって幼馴染だよ?
  ずっと一緒にいたいって思ってた子だよ?
  金掛ければ人工授精とかはできるし、俺は問題ないむしろ問題ない」

母「そこまで考えているなら仕方ないわね……ウフフッ」

俺「どうしたの?」

母「いえ、血は争えないとおもってね…俺の好み、お父さん譲りみたいね」



そう言って母さんはだいぶ劣化してきた手で、口元を隠しながら笑った
父と趣味が同じという点は非常に納得がいったがそんな事よりも明日は、幼馴染とデートだ
胸が高鳴り過ぎて破裂しそうなのでとっとと寝ることにする

翌日
幼馴染と手をつないで街を歩いたが、様子がおかしい


幼馴染「……」

俺「どうしたの?体調崩れちゃった?」

幼馴染「……うん、ちょっと」

俺「どっかで休もうか?」

幼馴染「……うん」


公園に移動して、俺は缶ジュースを買ってくる
幼馴染にはゾンビ用オレンジジュース、俺にはドクペ
ベンチに並んで座っていると、幼馴染が少し悲しそうに言った


幼馴染「……ずっと一緒にいてくれるって言ったけど…悪い気がする」

俺「そんな事ないよ。俺は幼馴染の事好きだよ」

幼馴染「……でも…私、俺くんと同じ事できないんだよ…?」


幼馴染の視線は、スチール缶の「ゾンビ用」の印字に注がれていた

幼馴染「ご、ごめんね。一緒に行こうって言ったけど、やっぱり……」

俺「もうちょっと心が落ち着いてからのほうがいいかな」

幼馴染「うん……」

俺「……必要なものは、しばらくは母さんのお下がりとかで俺が用意するからさ」

幼馴染「うん」

俺「ちょっと気持ちに余裕できたらさ、幼馴染に合うものとか、そういうの探しに行こう」

幼馴染「……そう、だね……今日は、帰っても、いいかな?」

俺「そうだな、帰ろうか」


幼馴染の冷たい手を握って、家まで送る。
幾ら彼女の手が冷えてて心地よくても、悲しい顔だとやはりこちらも辛い。
しかし俺はまだ生きてる上に死体ラバーだから、
幼馴染の気持ちをわかってやれてない気がする。

昨日の事を受けて、ゾンビになりたての人の心境を考えるべくゾンビブログを巡ってみた
大抵の人は正常な人間じゃなくなった事にショックを受けるようだ
そういえば、幼馴染もお嫁にいけないとか言っていたな…
実際にはゾンビになっても戸籍を残していれば結婚できるし、人工授精の手段も確立されてる
それを知っていても世の中の大半の人はショックらしい


俺「父さん」

父「どうした?」

俺「母さんて、やっぱりゾンビになった事気にしてた?」

父「そうだな…当時はまだゾンビも一般的じゃなかったからな…」

俺「今でもびっくりするって見たけど、あの母さんがゾンビになったことにびっくりしてたのか」

父「まあな。お前はゾンビの母さんしか知らないから想像つかないかもしれないがな」

俺「……父さんはどうやってゾンビになっても好きだって伝えたの?」

父「実際にずっと一緒にいてやっと気持ちが通じたかな…」

俺「ありがとう。頑張ってみるよ」

父「……幼馴染ちゃんと付き合い始めたんだろ?しっかり支えてやれよ」

俺「もちろんだよ」

毎週水曜日は仕事の日だ
朝8時から午後8時まで、昼休み2時間、小休憩アリの10時間労働。

モンスターの卵を孵化させてオスメスを選別しケースに詰め込むという内容なんだけど
かなりの重労働なので週一しか仕事がないというか、週一しかしてないけない類の仕事だ
詰め込まれたモンスターの恨みを買うのであまり連続してやると祟られて死んでしまう
一時期、最も深刻な労働災害の一種として話題になったほどの怨念だ、俺も注意して作業する


 バリッ…バリバリバリ!!

雛「ビュギャアァァァァァーーー!!」

俺「オス」

 パコッ  ムギュッ パタン ガチャリ

 バリッ…バリバリバリ!!

雛「ビュギャアァァァァァーーー!!」

俺「メス」

 パコッ むぎゅぅぅぅっ ギュッ ガチャリ


一日中奴らの産声を聞いているだけで頭がガンガンする
明日、幼馴染に会うのを心の糧にして俺は透明なアクリルケースに雛をつめこんでいった…
仕事の時間は、苦痛だ
早く幼馴染に会いたい

今日からまた6日間休みだ
幸せなことこの上ないがまだ奴らの怨みがましい声が耳にこびりついている
幼馴染は今日の午後からゾンビ人権申請に行くはずだから、
それまでにこの耳の障りを取らないと

でないと彼女の声がきれいに聞こえない




母「ねぇ俺、お仕事大変そうね?」


母が俺を気遣いつつ朝食を用意してくれた
今朝は白飯とみそ汁と奴らの煮つけだ


俺「まぁ、日本の平和と食卓のためだから」

母「モギュラベドロンおいしいものね、工業化できればいいのに」

俺「知ってた?モギュラベドロンとししゃもって実は別の種類の牛らしいよ」

母「あら、まったくしらなかったわ」


なんでもない雑談をしているうちにちょっとづつ楽になっていく
親っていいもんだ、できるかぎり孝行しないとな

午後1時
幼馴染の家の前で待ち合わせてあったのだが、幼馴染がなかなか出てこない。
インターフォンをおしても反応がない

不安になり携帯にかけると、寝ていたと返事があった。


予定より遅くなってしまったが、幼馴染とともに市役所へと向かう。
市役所の前ではいつものように、ゾンビの人権付与反対団体がデモを行っていた。

そんなことをしても無駄なのに。



デモ参加者の誰かが俺を見て叫んだ気がしたが

そんなことはなかった
そんなことはなかった

大方、モンスターの雛どもの怨念が聞かせた幻聴だろう

ゾンビ人権申請は、結局午後の時間を丸々使ってしまった。

暴徒と化したデモ隊が市役所の中にまで押しかけてきたせいだ。
申請書類を守り抜くのに市役所のみなさんがスネーク並みの素早さとCQCを披露してくれた。
公務員が書類仕事メインと言う時代は遠い過去になったのだろう。
彼らのおかげで無事、幼馴染は法が定めるところのゾンビとして保護される立場になった。


幼馴染「市役所はすごかったね」

俺「そうだな……でももうちょっといろいろ行く気だったのに、今日はもう帰らないといけないな」

幼馴染「仕方ないよー。夜遅くまで出歩いてたら暴走ゾンビと間違われちゃうもん」

俺「そうだな、夜は家にいないとな。
  モギュラベドロンや近縁種も跋扈するし、勇者以外には危険だから」

幼馴染「人間の時はある程度夜に活動できたのにね」

俺「人間でも出歩かないほうが良いって。俺、生きてても間違われたことあるぜ?」

幼馴染「顔色わるいもんね♪」

俺「こいつぅ~♪」


ああ、癒される。幼馴染の冷たい手が最高だ。
ちょっとゆるんだ筋組織が最高だ。
まだなりたてのゾンビだからゾンビとしての魅力はこれから出るんだろうな。

俺達は、また明日遊ぼうと約束して、幼馴染の家の前でわかれた。

……デートしよう、ではないんだな幼馴染よ。まだ俺の男っぷりが足りないのだろうか。

翌朝
今日こそ、幼馴染と恋人として初プリクラやら初カラオケやら初焼肉食べ放題に行こう
そう思っていたのだが外はみぞれ交じりの豪雨だった。

携帯で幼馴染に連絡を取る。



幼馴染「おはよ……」

俺「おはよう。今日雨だけどどうする?」

幼馴染「うーん……ちょっと外は出たくないかな」

俺「じゃあ、俺が幼馴染の家に行くよ」

幼馴染「ほんと? 今日、おとうさんうちにいるけどいいかな?」

俺「大丈夫大丈夫」

幼馴染「じゃ、待ってるね。ゲーム用意しとくね」

俺「あー、わかった。ちょっとお手柔らかに頼む」

幼馴染「ほんきでいくね」

俺「……あい」


電話を切って、幼馴染の家に向かう準備をする。
流石におじさんには手土産ぐらいいるだろう。
俺は職場でもらった奴らのしぐれ煮をタッパーに詰めて持っていく事にした。
確かおじさんの好物でもあったはずだ。


俺「こんにちは」

おじさん「やあ、俺くんじゃないか。幼馴染なら部屋にいるよ」

俺「では、おじゃまさせていただきます…あ、これおみやげです」

おじさん「いいのかい?ははっ、幼馴染は良い彼氏を持って幸せだね」

俺「いえ、まだそこまで良い彼氏にはなれてないと思うんです…これから、です」


そういう俺に「またまた、謙遜しちゃって」等と言いながらおじさんはお土産を見る。
俺が「あけてみてください」とすすめると、彼は紙袋からタッパーを取り出し小躍りしだした


おじさん「い、いいのかい?!これほんとにいいのかい?!!」

俺「ええ、是非食べてください」

おじさん「マジでっ?!」

俺「マジですよ。嘘ついてどうするんですか」


あまりのよろこびっぷりに少し引いてしまった。
まぁいい。将を射らんとすれば先ずは馬からという言葉もある。
俺の場合は幼馴染ともう付き合ってるから将を射ったあげく馬も射るようなもんだが。
心証わるくされるよりはましだろう。

俺が靴を脱いで上がると同時に、幼馴染が2階から降りてきた。



幼馴染「俺くんいらっしゃい!」

俺「おじゃましてます」

幼馴染「早くおいでよ!テトリスセットしてうずうずしてたんだよ!」


ニコニコと楽しそうな幼馴染をみて、おじさんの前だというのについにやけてしまった
やっぱかわいいな俺の彼女…パズルゲーが鬼つよくても余裕で許せる
これから俺をフルボッコする気だとしても余裕で許せる


幼馴染「ほら、早く」


そういって彼女から手を握ってくる。

冷たい手が心地いい。
あと肌が微妙に荒れてきてるのもポイントが高い。やっぱゾンビに限る。

結局、俺は幼馴染には一勝もできなかった
途中で小父さんが乱入してきたのには勝てたんだが、それもマリカーだしちょっと悔しい
だが、勝てるまで粘るのも大人げないのでそこそこの時間で切り上げて帰ってきた
今度こそ勝ってやる…

家に帰ると、俺の姉が妙な節をつけつつ歌いながら嘆いていた


姉「なさけなーい♪なさけない♪彼女の招待うけとって♪キスの一つもで~きない♪」

俺「おい、みてたのかよ。ってか成仏しろよ」

姉「いやですいやですぷっぷくぷー♪」


もう何年も前に死んだこの姉は、未だに自分を殺したやつをにくんで成仏できないでいる
いい加減にしないとゴータマシッダルタの仏の顔残機を使いきるぞと言ってもしらんぷりだ
あまりゆとるなよこの女…!とかおもいながらも言えずにいるあたり俺も姉思いだと思う

姉「ねぇ愚弟♪こっちむいて♪はずかしがら~ないで♪もじもじしな~い~で♪」

俺「恥ずかしがってもないしそもそもそっち向いてるから」

姉「ねぇ愚弟♪このヘタレ♪はずかしがり~す~ぎ♪おしたおして~し~まえ♪」

俺「やめろよそういうの。そういうもつれで殺されたんじゃなかったっけ?」


姉はむっとして、歌いながら話すのをやめた


姉「あれはあっちが悪いのよ。私が別れたいって言ったら即ざっくりよ?信じらんない」

俺「へえ、それはともかく覗くなよ人んちを」

姉「それはお姉さんの思いやりです。俺を見守りたいと言う姉ごころです」


そういうと姉はそれ以上の説教を避けてかしゅるりと天井をつきぬけていった
こまった姉だ。まぁ、姉の事はいい。明日の予定でも考えながら眠ろう
まだ豪雨が続いているから多分明日も幼馴染にフルボッコされるんだろうけど
父さんと母さんはまだ仕事だ。ふたりとも夜が遅いのが心配だな






……あれ?ゾンビって夜出歩いちゃダメなんじゃなかったっけ?
まあ、いいや。

何かの気のせいだろう。

ゾンビになってから、幼馴染は暗くなったり明るくなったりと不安定だ。

昨日に引き続き降りしきる雨。
今日も幼馴染の家に行こうと思ったら、今日はだめだと携帯で先にNOをつきつけられた。


俺「なんで?」

幼馴染「ちょっと一人で、将来の事を考えたいの」

俺「俺との将来も考えてほしいし、一緒にいたいんだけどさ」

幼馴染「……そう言うのに対する心構えをしたいんだ」


幼馴染「ねえ、俺くん…」

俺「ん?」

幼馴染「俺くん、今いくつだったっけ?」

俺「今をときめく17歳」

幼馴染「……私が20なのにおかしくないかな?」

俺「23歳です」

幼馴染「ねぇ、私と結婚してくれる?」

俺「もちろんだよ。ゾンビ婚は生きてるほうは25歳からだから、あと2年も待たせちゃうけど」


幼馴染のとてもうれしそうな笑い声が聞こえた
「それまで腐らないようにしとく」とも言われた
別に腐り落ちたり虫が湧いてもかまわないんだが、乙女心は尊重しておこう

幼馴染に会えない分暇なので、同業の友人にメールを送る。
酒をのむためだけに仕事をしているような奴だから、飲みに行こうといえばすぐにのってきた


俺「よう、友人」

友人「おー、ひさしぶりじゃないですかぁ!飲みにいこうだなんて!」

俺「おま、また酔ってるだろ」

友人「家賃以外ぜーんぶ酒とつまみと決めてるオレに今更過ぎる話題!」

俺「大丈夫か、これからさらに飲みに行っても…」

友人「お前と行かなくっても一人で飲むんだから一緒一緒ー」


高校の頃からの友人だが、20を過ぎてから素面のこいつに会ったのは3回程度だ。
だが肝硬変やらの心配はオールナッシング。安心していい。こいつもゾンビだ。

俺の好きな居酒屋に行く。
昼から酒なんて!と爺さんぽいことは言わない。
むしろ、昼に酒をのむのは俺らの世代では当然だ。


友人「えーっと、とりあえず生と、スクリュードライバーと、熱燗」

俺「お前死んでからも元気だな」

友人「トーゼン。ゾンビになるために死んだようなもんだからな」

俺「えーっと、俺はウーロンハイと……つまみはヤキトリ盛り合わせでいいか?」

友人「まぁってました~!え、それオゴり?オゴってくれんの?」

俺「おう、これだけな」

友人「神 降 臨 !! ヒャハー!」

俺「店では静かにな」

友人「あい」

俺が今日こいつと飲みに来たのには一応理由がある。
実際にゾンビになったやつに、ゾンビ生活の対策を聞いておくためだ。
今のゾンビと人間の区分けなんかは、母さんがゾンビになってからできた物が殆どらしく
父さんも母さんもゾンビ用の区分にいきなりすべて変わった場合の不便さは知らない。
ゾンビブログでもよく上る話題ながら、具体的にどういうとこで躓くのかはあまり載っていない。


俺「実はさ、幼馴染がゾンビになったんだけど」

友人「あー、あの子?おまえんち行くとたまに来てたあの幼馴染ちゃん?」

俺「そう。ちょっとまだゾンビになったばかりでいろいろ戸惑ってるみたいでさ。
  お前、なんかゾンビになったばかりのやつが注意したほうが良い事とかアドバイスない?」

友人「うーん……ソーダネー……その子オレみたいに意図的になったわけじゃなさそうだし。
  おk。オレが不便だったこととか教えるわー」


俺は友人の失敗談を笑い話として聞きつつも、
その原因になった人間とゾンビ用の区分分けの引っかかりやすい場所を教えてもらった。

特に所見殺しなのがトイレの違いらしい。
ゾンビ用トイレは人間用と別の個所に設置されてる事も多いのだとか。
おそらく、感染予防のためだろう。

ほかにも、生理現象等に関わるものが多かった。
なるほど、確かにブログに乗せるには少々恥ずかしい話題だ。


友人「ていうかお前さー、その子にヤケに肩入れしてるけどほれてんの?」

俺「ゾンビになってからつきあいだした」

友人「へー。まぁ、おまえんちゾンビ婚の両親だもんな。抵抗薄いか……っかー!
  いいなぁ!オレなんてゾンビになったらフラれたぜー!!
  おいおい、ほんと大事にしてやれよー?!
  死体だから嫌ですなんて言われたらマジ傷つくんだからなー!」

俺「死体になってから告白したぐらいだしホント気にしないんだけどな」


友人ゾンビ化の前から俺含む周囲には破局寸前だったように見えてたが、言わないことにした。
何か別の理由に責任を転嫁できた方が、心は楽に過ごせるだろう。


友人「あー……肉くいてー 肉。 店員さーん!モギュラベドロン刺身くれ!」

俺「あ、俺も食いたい。2皿お願いします」

友人「仕事の時は気が滅入るけどうめーよなー」

俺「たまにくれるときあるよな」

友人「あるある 廃棄近い奴な!まー、そう言うのは流石に生じゃ無理だけど!」

夕方6時ごろになって、俺と友人は居酒屋を出た。
ゲーセンにでも行こうかどうしようかと言いながら歩いていると
友人が何か深刻な話をした気がしたが

俺には別にどうでもいいような気がして忘れてしまった


友人「他の奴には秘密にしてくれよ?」

俺「大丈夫大丈夫 もう忘れた」

友人「あはははは!だよなー!おまえそういうやつだもんなー!」

俺「で、どうする?ゲーセン行く?」

友人「いや、オレはいいやー。人多いとこはちょっとな」

俺「そうか。じゃあまた今度な」

友人「おう!  あのさ、ホント誰にも言うなよ!」

俺「だから忘れたって じゃあなー」


友人の何か大事な話を本格的に忘れた俺は
手を振って家路についた


友人「(……忘れられないと思うけどな。人間喰いたいなんて。オレ自身どーかしてると思うし
  ……でも、アレ食べたらしばらく収まるから、アレ食ってれば大丈夫なんだよな)」

ねむいので きょうは ここまで
たぶんまた あした かゆ うま

日曜日

雨は小雨だがいまだにふり続けている。
豪雨の時はみぞれ交じりだったから雪になるかと思ってたんだがな。

幼馴染に今日は会えないかとメールしたものの、いまだに返信が来ない。

仕方がないのでテレビをつける。
普段は見ないようなヒーロー物を流しながら、さりげなく興味津々な姉を観察する。


姉「がんばれ、頑張るんだ 怪獣モモイロヒザゲ そいつらぶっつぶせ……!」

俺「……応援してるの敵側かよ」

姉「この戦隊のレッドむかつくんだよね。私殺した奴に似てる」

俺「イケメンだな」

姉「デートめんどくさがるくせに他にすきなやつできたって振ったら刺してくる顔してる」


俺はいろいろ追求するのを放棄して
モモイロヒザゲのトレードマークであるふっかふかの膝毛が刈り取られるシーンを眺めた。

ヒーロータイムが終わったあたりで、幼馴染からメールが返ってきた。
ゾンビになったことで休んでいた大学での遅れを取り戻すために大学に行ってくるらしい。

幼馴染の通う大学は最寄駅から電車で15分。
確か電車に関する、友人から聞いたアドバイスもあったな。
俺は聞いたことをまとめたメモのなかから、大事そうな事をいくつか選んでメールで送る。


最初に書いたのは
・気が引けるかもしれないが必ずゾンビ用車両に乗る事

友人はゾンビ用車両があることをすっかり忘れて人間用車両に乗ったらしいが、
人のカバンが腹に突き刺さり大変なことになったそうだ。
昨日そのあともみせてもらったが、皮の代わりに布でおおってあった。

不慮の事故による体液分散で人間への感染が起こるのを食い止める車両らしいのだが、
その実はゾンビ本人の保護にだいぶ重要な車両らしい。


次に
・満員電車には無理して乗らない

当然だ、ぐしゃっと潰れてしまう。
幼馴染ぐらいだったらまだ肉に張りもあるが、それでも生きた細胞よりゾンビの細胞は脆い。
ムリしないのが一番安全だ。

こういったこまごましたアドバイスを何個か送信した。
2分後「ありがとう!ちゃんと守るね」というメールが届いてきた。

素直に聞き入れるあたり可愛い。
あと、絵文字やらが使われてるのもかわいい。
ここは死体だからとかじゃなく幼馴染が素でかわいい部分だ。
最高。俺の彼女最高。彼女になってくれてよかった。


姉「なーにケータイ見てぷるぷるしてんのさー」

俺「俺の恋人メールがかわいすぎて俺がキュン死寸前」

姉「あー、あの子ならかわいいメールしそうよねー」

俺「姉の粗野なメールと大違い」

姉「私だって狙ってる男にはかわいいメールするよ」

俺「えっ」

姉「あの子も、アンタだからそういうメールなんじゃないのー」

俺「なにそれ。より萌える」

姉とメールについて話していると両親が起きてきた。
今日は休日だからゆっくりと寝ていたようだ。

もう、しわしわになった父のうでに母が抱えられている。
ゾンビでなければ見た目が俺より若い母と、俺の祖父と間違えられることもある父を見て
彼らが夫婦だとすぐ言い当てられる人は少ない。


母「おはよう~……朝食何か食べた~?」

俺「適当にお茶漬けして食ったよ」

姉「その匂いを食べたよ」

母「あ、じゃああなた 私たちもそういう感じでいいかしら?」

父「ああ、そうだな。……そうだ、昨日の鍋の残りで雑炊もいいな」

俺「え、鍋してたの?」

母「そうよー。俺はお友達と一緒に遊んですぐ寝ちゃったから」

俺「俺も雑炊作ればよかった」

父「ははは、次からはちゃんと台所を探すんだな……母さん、私が作るよ」

母「そう?ありがとう」


父の作る雑炊の匂いを姉はちゃっかり食べていた。
幽霊は匂いで腹が膨れるからいいよな。

日曜の夕方

幼馴染と会えない以上、普段やっておくべき家事をこなすしかない。
母がゾンビで、その上姿としてはそれなりに低身長の少女なために高い所の掃除やら、
重い荷物を持つ買いだしは俺の仕事だ。
父が今より若い頃は父がやっていたのだが、
流石に今年喜寿を迎える父に家事を押し付けるわけにもいかない。

俺が一人暮らしをしたいと思ってもなかなか家を離れられない原因でもある。

買い物から帰って、食材を冷蔵庫に映していると、日曜夕方の御長寿番組のOPが聞こえてきた。
姉が見ているのだろう。
俺自身は週休6日だというのに、
なぜかこの時間帯の番組に触れると「日曜日が終わってしまう」という切なさを感じる。


俺「ねーちゃん、手伝えよ」

姉「私とおりすぎちゃうからむーりー」

俺「リモコンは持てるくせに……わかった、いいよ」


実際に姉に手伝われても迷惑なだけだからあくまで言ってみるだけだ。

姉自身も、それは良くわかっている。
俺が買い物に行った後に惰性でやってる家族のふれあいのようなものだ。

月曜日、火曜日と、何事もなく過ぎた。
本音を言えば、幼馴染の大学復帰で電車に乗せて何かあると心配だから車で送りたいんだが、
俺は個人の車を持っていない。

家に有る車は父の名義で俺や母も乗れる車であって、俺が好きに使える車じゃない。
幼馴染ともっと遊びたいけど……幼馴染が授業入れてない金曜日か日曜日しか遊べない。


今日は仕事の日だ。


朝食はゼリー食にしておく。
この仕事をしている人は大体仕事の日は固形物を食べない。
奴らの声にまいって、吐いてしまうからだ。



 バリッ…バリバリバリ!!

雛「ビュギャアァァァァァーーー!」

俺「メス」

 パコッ  キュムッ パタン ガチャリ

 バリッ…バリバリバリ!!

雛「ビュギャアァァァァァーーー!!」

俺「メス」

 パコッ ぎゅぎゅっ ギュッ ガチャリ


 バリッ…バリバリバリ!!

雛「ビュギャアーーー!ァア゛ア゛ア゛」

俺「オス」

 パカッ  むぎゅぅっ パタン ガチャリ

 バリッ…バリバリバリ!!

雛「ビュギャアァァァァァーーー!!」

俺「メス」

 パコッ ギュムッ ギュッ ガチャリ


 バリッ…バリバリバリ!!

雛「ビュギャアァァァァァーーー!!」

俺「オス」

 パコッ  ムギュッ パタン ガチャリ

 バリッ…バリバリバリ!!

雛「ビュギャアァァァァァーーー!!」

俺「メス」

 パコッ むぎゅぅぅぅっ ギュッ ガチャリ



淡々とこなしていく。
いつ発狂しても周囲を巻き込まずに済む個室で
ベルトコンベアーにのってやってくる卵を羽化させて、アクリルケースに詰め込む。

アクリルケースが少なくなってきたら停止ボタンを押して、
アクリルケースの補給用ボタンを押す。

しばらくすると、派遣のおばさんがケースをもってきてくれる。
このおばさんは耳に障るだみ声の持ち主だが、
話好きで明るく、俺らにとってそこそこの癒しでもあった。


派遣さん「はい、ケース持ってきたよ!」

俺「ありがとうございます」

派遣さん「いやいや、俺さんたちのような正社員さんの方が大変でしょ~?」

俺「ははは……その分休みもらえますから」

派遣さん「週3働くと完全にアウトなんだっけ?」

俺「そうですね。基本週1で、シフトに穴空いた時だけ週2って感じです。
  一度だけ週に2回入ったことがあるんですけど、その後しばらく体重かったですね」

派遣さん「まぁまぁ……若いんだから体は大事にするのよ?
      じゃ、おばちゃんこれで戻るからね」

俺「はい、お疲れ様です」


派遣の人は、アクリルケースを入れてある段ボール箱を台車からおろして、
戻って行った。

俺は段ボールをあけてアクリルケースを所定の位置に置いて、
音が廊下に漏れないように扉と窓をチェックしてから
ベルトコンベアの停止解除ボタンを押した。


俺「オス……メス………メス……オス」


奴らの声が響く。さっきの派遣の人のだみ声の方がだいぶ耳にやさしい。

木曜日
仕事から解放された俺は、幼馴染も大学に行っていて会えない事だし部屋でごろごろしていた。

幼馴染に

「会えない間さみしいから写真送ってくれ」

とメールしたが、返信はない。
授業中かと思って2時間ほど待ったが返信はない。

「メール届いてる?」

と、2通目を送信してから5分後にメールが返ってきた。
幼馴染の写真つきだが、気のせいかすごく照れている気がする写真だった。
真っ白な肌に、むずがゆそうな表情。
かわいい。

本文を読むと
綺麗な写真を撮るために友人と一緒に苦戦してるうちに次の授業の時間になってしまったらしい。

かわいい。

ナニコレ天使だろ俺の彼女いや天に召されかけてるだけで天使ではないけど
むしろ天使じゃなくてゾンビだからいいかわいい。
ゾンビじゃなくても十分可愛いけど写真で見る青白さや微妙に濁った眼がまた素敵だ。

幼馴染が帰ってくるであろう頃合いまで、掃除をする。
今日は玄関の掃除だ。

靴箱の上の埃をおとして水拭きして、乾拭きで水気をふき取る。

タイルの部分は水を流してデッキブラシでこする。


掃除していると、姉がちょっかいを出してきた。


姉「ねー、なんかしてあそぼーぜー?」

俺「やだよ なんで遊ばなきゃなんないんだよ」

姉「人恋しいんだよー!前すんでたアパートに今住んでる子もあいてしてくんないしー!」

俺「人様に迷惑かけるなよ」

姉「いやですいやです 暇なのも誰かに迷惑かけないというのもいやです」

俺「この性根の腐った外道幽霊め」


仕上げにもう一度水を流して、デッキブラシで水を掃き出す。
あとは姉がちょっかいをだすためにバケツの水をぴしゃぴしゃと跳ねさせたのをふき取るだけだ。

午後6時
そろそろ大丈夫だろうと判断し、明日デートしようとメールで送る。
快い返事が即座に帰ってきた。


俺[買い物とか、まだできなさそう?]

幼馴染[大学のゾンビの友達にいろいろアドバイス貰ったし、そろそろ行けると思う]

俺「じゃあ、一緒に買い物にも行こうな。親父に車借りれるか聞いてみるよ」

幼馴染「そんなにたくさんは買わないよー」


要約してはいるが、こんなかんじのやりとりをした。
明日のデートが楽しみだ。

しかし幼馴染とのメールの直後
友人からもメールが来た

友人[あのさー、またちょっとはなしたいことがあるから呑み行こうぜ?
   明日とかどーよ?]

俺[ごめん、明日彼女とデートの約束しちゃったんだ]

友人[ちょっとでいいから時間取れないか?]

俺[彼女同伴でいいなら場所による]

友人[お前らどこ行くんだよ?]

俺[ゾンビ用品おいてるデパートとか]

友人[亀屋か。そこの5階にフードコートあるだろ。あのへんじゃ無理か?
  昼飯一緒に食う感じでどーよ?]

俺[俺はいいよ。彼女に聞いてみる]


幼馴染に、友人がちょっと会いたがってるから時間を取っていいかとメールで尋ねる。
天使な幼馴染は「友達は大事にしたほうが良いわ。もちろん大丈夫よ」と返してくれた。


俺[いいって]

友人[すまねーな じゃ、明日な。]

メールを済ませてから、食事を作り、幽霊のくせにすやすやと寝る姉をほっておいて両親が帰ってくるのを待つ。

両親ともに、夜遅くまで仕事だから心配だ。
俺は両親が何の仕事をしているか実はよく知らない。
二人とも同じ職場で、父は「研究職のようなもの」と言っていた。


深夜0時30分、玄関に聞こえた車の音が深夜のちょっとエロい番組の音をかき消した。
テレビのチャンネルを切り替えてから消して、二人を出迎える。


俺「おかえり」

父「なんだ、まだ起きてたのか?」

俺「明日…ってかもう今日だけど、車かしてほしくて」

父「うーん……ちょっと難しいな。明日も車で移動するとこまで行くから」

俺「えー」

父「どこいくんだ?」

俺「幼馴染と亀屋デパート。ゾンビ用品そろえるから、荷物おおくなりそうで」

母「あら、亀屋デパートなら配送サービスがあるわよ。それ使いなさいな」

俺「そんなのあったんだ」

父「車で行ってもかさばるようなものも置いてあるからな」


車の貸出にNGを出された俺は、仕方なく自室へと戻った。
幼馴染はもう寝ているだろうけれど、車は無理だったという内容のメールを一応送った。

思っていたプランとはいろいろ違ってしまったが
それでも、朝が楽しみだ。

きょうはここまで たぶんまだ 日常回

下世話だけど、ハメれるの?

おもったよりいそがしいことになってるから きょうはつづき むりかも きのうもむりだった ごめんね

そのかわり ちょっとだけ こたえるよ



(,,゚∀゚)< >>51 ろーしょんとやさしさがだいじ


  ズルッ
( 。;"∀゚)<はげしいとこんなふうに いろいろ ずれる ひふとか にくとか ねんまくとか


。o'。"∀゚)<だすかは きめてないけど むしろ こわすのがすきなひととかも いるかもね



,,。;:' ∀゚ヽ。. <いまさらだけど ほんぺんに えろぐろ あるとおもいます おもにぐろ


,。o。,,、 かんぜんにくずれてしまったようだ

夢を見た。幼い頃の夢だと思う。まだ、小学校に上がる前だろうか。
母の膝の上でテレビを見ていた。

乳幼児向け長寿番組を見ていると、とあるコーナーが始まった。

老齢の男性が、甲高い加工された声で人形を使って解説する。

俺はそのコーナーが大好きだった。


俺「おかーさん」

母「なーに?」

俺「幼馴染ちゃんかんでー」

母「うふふ、だーめ。幼馴染ちゃんがゾンビになりたいって言った時だけよ」

俺「まだしゃべれないもん」

母「喋れないほど小さい子をゾンビにしちゃだめよ」


小さい頃から俺は幼馴染の目が濁るのを心待ちにしていた。

~~~~~~~~~~~~~~ぞんびのつくりかた~~~~~~~~~~~~~~~


どーも!ぞんびはかせだよ!
ぞんびのつくりかたをおしえるよ!

きょうは しんだひとを ぞんびにするほうほうだよ!

ほかのぞんびにてつだってもらって しんだひととまじってもらおう!
かんたんだね!



どーも!ぞんびはかせだよ!
ぞんびのつくりかたをおしえるよ!

きょうは しんだひとを ぞんびにするほうほうだよ!

ほかのぞんびがいないときは びょういんにつれていこう!
ぞんびになるくすりに みっかかんつけておけばかんせいだよ!
かんたんだね!



どーも!ぞんびはかせだよ!
ぞんびのつくりかたをおしえるよ!

きょうは いきたひとを ぞんびにするほうほうだよ!

ほかのぞんびにてつだってもらって そのひとをかんで ころしてもらおう!
かんたんだね!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


起きてから、夢で見た部分をネットで探したら動画がUPされていた。

人形二つをバラバラに引き裂いて混ぜ合わせるのも
人形を色水に浸して、変色した状態でとりだすのも
ゾンビの人形に普通の人形を襲わせているのも

今見ればそこまで面白くも、インパクトがあるものでもなかった。
というかもっとパターンがあるような気がしていたが3つしかなかったのか。
子供の記憶と言うのはあまりあてにならない。

ついでにwikiで調べると
今は、ゾンビ博士役の人が亡くなっていてもうやっていないそうだ。
ゾンビ博士なのにゾンビじゃないどころかゾンビにならなかったのか。
不思議だ。

内容自体は
ゾンビの知識の基礎部分だから、
いまは別の配役で似たようなコーナーをやっているらしい。


さて、こんなことしてる場合じゃない。デートの準備しないと。

朝食を食べて、ある程度身だしなみを整えて、
幼馴染が買っておいたほうが良いかもしれない物をチェックしておく。

ゾンビ用の保護剤に、皮膚や肉が避けた時の応急用綴じ具
正直好みとしてはあまり保護剤使わずもっと朽ちて欲しいんだけど、本人がたぶん気にする。
綴じ具は、針と糸が一般的だけどホッチキスもいいな。
それから……臭い気にしてたっけ。ゾンビの肌に合う香水も一応調べておこう。

約束してあった午前10時。
俺は幼馴染の家へと向かった。


幼馴染「おはよう、俺くん」

俺「おはよう。電車で行く?タクシーで行く?」

幼馴染「流石にそこは電車でいいよ~」

俺「そうか?じゃ、駅行こうか」


「過保護だね」と笑いながら、幼馴染ははにかんだ笑顔になる。
俺は強く握り過ぎないように、幼馴染と手を繋いだ。

冷たい手が心地良い。

……心地良いけれど、強く触れられない。
俺の握力程度でブチブチ千切れたりはしないと思うが、
大切に扱いたいという気持ちが、強い力で手をつなぐのを躊躇させた。

電車では別々の車両に乗る。
幼馴染はゾンビ車両
俺は普通の車両
移動のための連結箇所のあたりで、目的駅まで運ばれる。


幼馴染「俺くん」

俺「うん?」

幼馴染「やっぱり、私人間のまま俺くんと付き合いたかったな。
  こんなとこでもちょっと離れなきゃいけないのはさみしいよ」


このほんの少しの距離は、
俺がゾンビ車両に乗るか幼馴染が普通の車両に乗るかで解消できる。
しかし、人間がゾンビ用車両に乗るのは暴走しかかっているゾンビがいるとき危ない。
離れているのが互いの身のための一番の方法だ。


俺「……幼馴染に悲しい顔させたくないけど、これが一番安全だもんな……
  よし!俺がゾンビになるよ。そしたらお揃いだ!」

幼馴染「それはダメっ!」

俺「なんで?」

幼馴染「……俺くんがしぬの、やだもん」


ありがとう、ゾンビ用車両と人間用車両。おかげでデレいただきました。
俺の彼女かわいい。なんなの?俺キュン死するよ?本当に。
「しぬのやだ」って言ってるけど君に殺されちゃうよ?

そんな聞かせたらちょっと引かれそうな本音を出さないように
俺はにこにこと笑っていることしかできなかった。

電車を降りたら、駅構内からデパートまで直通の地下道を通る。
もちろん、手はつないでいる。


俺「えーっと、保護剤と、応急用の綴じ具を先ず買おうか。ゾンビに必須だし」

幼馴染「綴じ具って、携帯ソーイングセットじゃダメなのかしら?」

俺「家庭ゾンビ用のはちょっと針も糸も太いんだ。
  普通の細い糸で縫えるのはベテランだけらしいし、ムリせずかったほうが良いよ」

幼馴染「ふ、太いの?……い、いたくないのかな……」

俺「うーん……今日会う友達とかはむっちゃ縫ってるけど…」

幼馴染「おばさんとかあまり縫ってないよね?」

俺「母さんは父さんが保護剤自分で調合して手入れしてるからちょっと話が変わるかな
  あとなんかちぎれたら接着剤でつっくけてるけど、それも自前らしいし」

幼馴染「なかなかうまくいかないわね」

俺「そういや、友人瞬着で目玉はめ込んでえらいめにあったらしいし、
  自分の手入れ分かるまではポピュラーなので行こう?」

幼馴染「……えらいめって?」

俺「眼孔に瞬着ぬって、目玉入れたら間違って黒目内側に向けてはめ込んだらしい」

幼馴染「うわぁ……目、見えないじゃない」

俺「病院行って外してもらったって言ってた。
  先日聞いたのだけでこういうのがいくつもあるから、
  失敗談についてはいろいろ聞くいい機会かもな」

幼馴染「いいのかな、そんなこと聞いちゃって……」

俺「聞かずに、そいつレベルの大けがされても俺は悲しいよ」

幼馴染「……もう、そんなこと言われたら照れるじゃない」


幼馴染の手が、さっきよりもちょっと強く俺の手を握ってきた。
少し頬を膨らませている。


幼馴染「俺くんは、ずるいよ。弱ってる時に告白するし、そんなことばっかり言うし」


俺からすると幼馴染の一挙手一投足一言目線を動かす一瞬表情すべてがずるい。
でもそんなこと言えない程度に俺はシャイだった。

ちょっとむくれつつも
俺が心配してくれるのは嬉しいとか、
けど人前で言われるとやっぱりなんか恥ずかしいとか、
そういうデレた事を言う幼馴染の
冷たい手と綺麗な声とちょっとキューティクルはがれかかってきた髪の毛を堪能していると
目的のデパート地下入口が見えてきた。


幼馴染「あ、ついたよ。ゾンビ用品、4階だったよね」

俺「そうだな。必要なもの先に買って、友人に会って、それから他のをゆっくり見よう」

幼馴染「他のも見ていいの?」

俺「当然だろ?せっかくのデートなのに必要な物見ておしまいじゃ味気ないよ。
  幼馴染の好きな小物屋もあるし、もしよかったらそこでなんかおごるよ」

幼馴染「いいの?!やったー!じゃ、すぐいこう!はやくいこう!」
  俺くん!ねっ!    ?  俺くん、どうかしたの?」

俺「……なんでもないよ」


はしゃぐ姿もかわいすぎて俺が死ぬ。
素で俺を殺しにくる幼馴染と常に一緒だと、俺の身がもたないかもしれない。
主に鼻血によって血を失う方向で持たないかもしれない。
ここはあれだ。友人に会った時ちょっと俺が休憩する時間をもらうしかない。
さもないと、俺は濁った瞳の天使のせいであの世に召される。
ゾンビになる暇すら多分与えてもらえない。

こんかいは ここまで
じかいは また5レス分ぐらい かきためたら

(,,゚∀゚)<オシラセダヨー


( 。;"∀゚)<トリップテスト&検索を怠ったのが悪いんだけどさ


。o'。"∀゚)<このトリップけっこうつかわれてたっぽいのね


,,。;:' ∀゚ヽ。. <だからあたらしいとりっぷをつけます!これからこのトリでいきます
          途中でのトリ変更ごめんねー


,。o。,,、 かんぜんにくずれてしまったようだ

おおぅ
コメントするたびに崩れる>>1かわいい

(,,゚∀゚)< >>72 じぶんでは とけるぞんび って呼んでるよ


( 。;"∀゚)<くずれてってさいごには 細かい肉片と肉染みしかのこんないかんじー


。o'。"∀゚)<あ、それはそれとして投下開始だよ


,,。;:' ∀゚ヽ。. <序盤はかきためだからはやいけど、のこりは書きながらになるからおそめかもー


,。o。,,、 かんぜんにくずれてしまったようだ

亀屋デパートは、そこそこ歴史の長い総合デパートだ。
改修や建て増しももちろん多く、旧本店や別館と呼ばれる棟もある。
基本的に俺達が何の断りもなく『亀屋デパート』と言った時は現本館を指す。
地下入口を持つのも、この本館だ。

俺達はエレベーターを利用して、ゾンビ用品主体の4階へ向かった。


幼馴染「えーっと、保護剤と綴じ具だよね?綴じ具の方が先かな」

俺「いや、保護剤だな。綴じ具も必要だけど一番忘れちゃいけないのは保護剤だし、
  そこで妥協するといくら綴じ具持ってても腐食の速さについていけなくなる」

幼馴染「そうなの?」

俺「保護剤しっかりした上で、不慮の事故の対処の綴じ具だよ。
  絆創膏持ってても、毎日のご飯がインスタントラーメンだけだとダメみたいな感じ」

幼馴染「うーん……わかるような……わかんないような……」

俺「とりあえずゾンビにとっての基本的な物って思っとけばいいよ」


そういって俺は、保護剤売り場に向かう。
幼馴染は良くわからないと言った感じの顔のまま、俺についてきた。

保護剤に於いて一番基礎的な物は、
風呂で希釈してその風呂に頭までしずめて使うタイプの全身保護剤。
使用するためには風呂にずっと沈んでなきゃいけないけれど、
一番ゾンビの肌を痛めないし確実な効果が期待できる。

俺も幼馴染に真っ先にそれを勧めたんだが、ちょっとせっかちな幼馴染にいい顔はされなかった。


幼馴染「うーん、私が今まで使ってた布にしみこませて体拭いて使うやつのほうが良いかも」

俺「それ、母さんが旅行用にかったやつのお下がりだろ?」

幼馴染「うん。俺くんが用意するって言ってたけど結局おばさんがもってきたやつね」

俺「……俺持っていきたかったのにな。仕事の日に抜け駆けされた」

幼馴染「おばさんその時凄いいい笑顔だったよ。
    『幼馴染ちゃんのゾンビ用品プレゼント初体験は私の物ね!』って言ってた」

俺「母さん年取ったから落ち着いただけで父さんに聞く限り割といじめっ子だからなー
  だからって俺の事までいじめるなんて……じゃなくって。
  あくまでふき取り保護剤は旅行用というか、緊急用だな。
  布で擦る分、肌の劣化が激しくなる。それでいいならいいけど?」

幼馴染「うー。肌荒れるのはやだなー……虫とかも湧きやすくなるらしいし」


しばらく保護剤売り場で迷っていると、店員が声をかけてきた。

店員「何かお探しでしょうか?」

幼馴染「えっ えーっと あの」

俺「こいつの保護剤選んでる最中なんです。初心者向けのってありますかね?」

店員「あ!彼女さんゾンビになりたてなんですね!
  そういう方向けのありますよ~♪今お持ちしますね!」


彼女さん、とよばれて幼馴染が目に見えてあたふたする。
かわいい。

生きていたら耳まで真っ赤なんだろうが、そんな血の必要な表現がなくても
丸くした目と、ちょっと笑ってしまってる口元で言葉にならないことをぱくぱくと言おうとしてる様子で
あたふたしてるのも実はそんなに悪い気がしてるわけじゃないのも俺にはお見通しだ。

……いや、俺じゃなくてもこれは分かるな。
くそう、俺以外のやつにも幼馴染の可愛い所が見られてしまう。

今、通りがかった人が幼馴染の様子みて何かニヨニヨして通り過ぎてった。


俺「……幼馴染、落ち着こうか」

幼馴染「うぅー……事実なのにこんな恥ずかしいなんて……せ、せきにんとって!」

俺「いくらでもとるけど」

幼馴染「俺くんがあっさりそういうこと言うから余計はずかしくなるの!」

俺「そうか……じゃあもっとしれっとこういう事を言う練習しないとな!」

幼馴染「や、やめて!」

店員「お待たせしました、こちらですー」


初心者向け商品を取ってきた店員も、心なしかニヨニヨしていた。
だよな。幼馴染のこのテンパり方見たらそうなるよな。かわいいよな。


幼馴染「あ、ありがとうございます」

店員「フタが計量器になっていますから、お風呂の湯量にあわせて調節して使えるんですよ。
  この製品は、保護のための薬剤による刺激も、浸透のための時間も平均的なので、
  まずはこの製品を試してそれからお客様にあった保護剤を
  探していただくのを推奨しているんです」


幼馴染はからかい甲斐のあるテンパった状態から回復してしまったが、
店員の説明をふんふんと頷きながら聞く様子がまたかわいかった。

店員が、おすすめ商品と一緒に持ってきた保護剤カタログの見方を説明している間に、
俺は友人にメールを送っておいた。


俺[いま4階。応急用の綴じ具と保護剤買ったらフードコート行くよ]


友人からは即返信が帰ってきた。やつは今6階にいるらしい。
フードコートに移動しておくと書いてあった。

保護剤をきめたら、次は綴じ具だ。
こちらは特に迷うことはなかった。

ゾンビ用の綴じ具も、見た目は殆ど携帯ソーイングセットだ。
もっとも、俺が先に幼馴染に解説してあった通り、針も糸も太い。
細い糸だと縫っても、縫い目を左右に引っ張るようなことがあればすぐに裂けてしまう。
ゾンビの細胞の結合は、人間が思う以上に脆いものだ。

幼馴染は、自分の好きな色のゾンビ縫合用糸と、
ケースの可愛さでそれを縫い付けるための針のセットを選んだ。


幼馴染「よし、あとはー」

俺「最低限必要というか、今急いでそろえるのはこの2つかな。
  他にも探しといたほうが良いのはあるけど」

幼馴染「じゃあそれ見に行こう」

俺「その前に、友人と話に行くぞ。もう来てるらしいから」

幼馴染「えー」

俺「荷物いっぱい持ったままフードコート行くのもめんどいだろ?」

幼馴染「んー……うん、じゃあ、そう言うのはご飯食べてからにする」

俺「よし、行こうか」


階段を使ってフードコートのある5階へ移動した。

友人の、特徴的な継ぎはぎだらけの姿は遠くからでもすぐに分かった。


友人「おーっす。すまんな俺ー、デートだってのに。あ。幼馴染ちゃんひさしぶりー」

幼馴染「え?」

友人「あらら?忘れられちゃったー?俺の友達で、友人っていう…ほら、テトリスやったじゃん!」

幼馴染「あ、あー!あの友人さんですか!」

俺「ゾンビになってすげぇ風貌変わったから、気づかなくても仕方ないよな」

友人「あはー さすがにちょいやりすぎたかねー
  ていうかオレが高校生の時以来だから……もう5年は前か。
  いきてたとしてもティンとこないかもしんねーなー。
  ていうかオレも幼馴染ちゃん単体で会ってたら気づける自信ねーわー

  ……くっそ!お前ばっかりなんでこんなリア充なんだよー!」

俺「公共の場では静かにしようぜ?」

友人「はーい あ、たこ焼きたのんであるから喰おうぜー。オレのおごりな!
  ドリンクバーも頼んであるから、好きにとってくるといいよ!」

幼馴染「えぇっ、良いんですか?」

友人「デートの邪魔しちゃってるしー むしろこのぐらいじゃたんねーっすわー」

俺「まったくだ」

友人「わーお、もう食べ始めてるとか」

俺「食べようって言ったのお前じゃないか」

友人「そりゃそうなんですけどねー ささ、幼馴染ちゃんもドゾドゾ」

幼馴染「ありがとうございます。いただきます」


友人の買っておいてくれたたこ焼きを食べつつ、グダグダと話す。


友人「で、うまくいってるの?二人は」

俺「まだ付き合って一か月もたってないよな」

幼馴染「んー、うん。その、なんていうかまだ俺くんが彼氏っていうのに慣れてないかも」

友人「あーらら?まだ仲のいい近所の兄ちゃんぐらいの感覚?」

幼馴染「……そ、その……かたおもいのひと……なんて
  ……も、もうつきあってるのに、おかしいですよねっ!」

友人「えー?何々?割と前から好きだった系?かーわいー。
  ていうか俺クンさぁー、こんなかわいい子に片思いされてんならとっとと付き合ったげろよ!
  死ぬ前からおつきあい開始できてんじゃんこの様子なら!」

俺「え?俺、幼馴染が俺の事前から好きだったって今初めて聞いた」

幼馴染「~~~~ そうだ……かくしてたんだった……うぅー 恥ずかしい……」

俺「おっと、友人目線を幼馴染から外せ」

友人「え」

俺「照れてかわいい幼馴染見るのは俺の彼氏特権だと思うんだ。
  お前は見るな。俺だけが見る!  俺の彼女かーわいー!」

友人「なんだろうこの理不尽感」

俺「……で、話したいことって何?」

友人「……うー あー……えっとなー…

  そう!話したい事っていうか、実験したい事なんだけどさ!
  まず一個聞いとくけど……先日お前に言った内容、お前ホントに忘れてるんだよな?」

俺「あ、誰にも言うなとか言ってたやつ?うん」

友人「もっかいここでそれ話す。たぶんおまえはすぐそれ忘れるって事だけ確認しときたい」


友人がよくわからないことを言い出した。
そのまま、以前俺が聞いたと当人は言うような内容を話すが、
俺にとっては結構どうでもいいことと言うか、やはり忘れても問題ないようなことに思えた。

ただ、幼馴染にとっては興味深いというか、深刻な話らしい、緊張した面持ちで聞いている。


友人「……つーわけでさ、この顛末を話しておきたかったっつーか、
  これ話してお前がどういう反応するか確かめときたかったんだけど
  ……なんでそんな"何か関係あるんでしょうか?"みたいな顔してるんだよ」

俺「えっ、いやだって……本当に俺的にはどうでもいい話に近くて」

友人「今オレが言った内容、ちゃんと覚えてるか?」

俺「うん?えーと……すまん、友達の話だってのにあんま覚えてない。
  病院に行ったんだっけ?」

友人「確かに病院にはいったけどさ。行った症状だよ」

俺「えーと」

友人「オレは ****がたべたくてたまらなくなった から病院に駆け込んだんだぞ?」

俺「?」


やはり俺には、ご飯を食べたくなったから病院に行った
というような、良くわからない話を友人がしているようにしか思えなかった。


俺「すまんやっぱよくわからん……疲れてんのかな」

友人「はははっ かーもね? まあ、オレのしたかった話はこのぐらい。
  デートの邪魔して済まなかったな」


友人が謝る。確かにそんな話で時間割かせた分は謝ってもらう必要があるだろう。
でも正直横で不可解そうな顔している幼馴染がかわいくてなんか鼻血でそう。
これで許す。きょとんな顔してる幼馴染で友人の事は許す。

でもちょっと幼馴染分補給しすぎてる気がするから休憩しないとまずい気がする。


俺「いや、いいって……あ、俺ちょっとトイレいってくるから、
  幼馴染にお前の失敗談教えてやってくれないか?」

友人「えー、幼馴染ちゃんそれでいい?」

幼馴染「う、うん。じゃあ帰ってくるまで友人さんに話聞いとくね」

俺「そうしといてくれ。 あ、友人。幼馴染に手を出したら頭かち割る」

友人「オレ略奪趣味ないから大丈夫。膀胱破裂する前にいってらー」







彼氏「すまんやっぱよくわからん……疲れてんのかな」


彼氏くんの言葉に、私はキョトンとするしかなかった。
その後、彼氏くんはトイレに行く、と言って、私とツギハギさんを残して、席を立ってしまった。


ツギハギ「まー、あんな話の後だけどさー……なんか聞きたいタイプの失敗談とかある?」

私「……それよりも、もっと、人を食べたくなるという話を聞きたいです」

ツギハギ「てーいってもなー。ほんとに暴走ゾンビになっちまう前になんとかしないと!
  って病院に駆け込んだだけだからねー」

私「病院で、対処用の薬もらえたんですよね?」

ツギハギ「うん、長期にわたって飲み続ける奴な」

私「原因とか、なんかそういうものはないんですか?
  ゾンビにかかる病気とか、そういう……」

ツギハギ「……まあ信じたくないのは分かるよ。
  でもさ、ホントにゾンビはもとは人間を食うようにできてるらしいんだ」

ツギハギ「人間はゾンビにとっての完全栄養食で、一度食えば腹持ちもいいし、
  どういうわけか腐食も止まるそうだよで、脳が劣化してくると理性のタガが外れてきだして、
  本能的な行動として人間におそいかかるようになっちまうんだとさ。

  あー、敢えて原因あげるっていうならメンテ不足だーぁね
  いくらメンテしてても、素人考えだけでメンテしてるといずれはそうなっちまうらしいけど
  早めに病院でゾンビ治療はじめておけば脳の劣化もおさえられるらしーよ?」

私「……市役所で、ゾンビ申請したときに病院に行くのを勧められてたのって」

ツギハギ「この辺の事もあるみたいよー?
  調子いいからっていかない奴も多いっぽいけど。俺含めてな!」

私「……なんで、今日この話をしようと思ったんですか?しかも彼氏くんに」

ツギハギ「ほんとはさー こんな苦しいならとっとと人喰って楽になったほうが良いかなーって
  そう思って呼んだんだよねー。生きてる人はゾンビが人喰うって話を認識できないらしいのも
  数日前のあいつへの相談や、他の奴への話題振りで知ってたし

  死者と生者の恋はスゲー大変だしさ、
  楽にしてやるって言い訳で食い殺してゾンビにしたろかとおもってたんだよね」

私「友達を殺す気だったんですか?!」


私の目が思った以上に厳しいものだったのか、ツギハギさんは目をそらす。
そらしたまま、言葉をつづけた。


ツギハギ「あの、ほら!ゾンビになったらお揃いだし、むしろいいことじゃん!
  ……って思ってたんだけど思った以上に君らが幸せそうでさー
  殺したら絶対後味悪いしさー
  ほんとに忘れちまうんだよなーって事確認するだけにしたんだよ。
  もう殺す気ないよ?ほんとだよ?」

私「……」

ツギハギ「そー怖い顔しないでよー。ホントにもう手を出す気ないんだしさ。
  オレ自身、ゾンビの知り合いに無尽蔵に酒飲みたいって言ってたら
  喰われてゾンビになったわけで……それで酒飲み放題になったしよかったーって感じで
  そういうノリでしかかんがえてなかったんだよー」


わたわたと自己弁護するツギハギさん。
本当に、深い悪意と言うよりは彼の食欲と友達の状況を見て考えていたようだった。


私「……わかりました。一応信じます」

ツギハギ「信じてくれる?!」

私「ただ、彼氏くんになにかしたら頭かち割ります」

ツギハギ「なにもしないよー!ほんとだよ!」

ツギハギ「カップル揃って恐い事いわないでよー!」

私「……だって、もしも彼氏くんに何かあったら、私……私
  何かしたあいてをこの世から消すぐらいならできちゃうと思います」

ツギハギ「えー、何何?私ちゃんは愛が重いタイプかい?」

私「そうかもしれないです、小っちゃい頃から大きくなったら彼氏君と結婚するって思ってて」

ツギハギ「じゃーなんでそれずっと言わなかったのさ」

私「彼氏くん、なんかちょっと飄々としてて……するっと流されたらたぶん立ち直れないと思ってて」

ツギハギ「……ほほぅ」ニヨニヨ

私「な、なんでそんな楽しそうなんですか?」

ツギハギ「いやー、かわいいなーとおもってねー」

私「口説かれませんよ?!」

ツギハギ「口説いてませんヨ?」






トイレから帰ってくると、友人が幼馴染をからかって遊んでいた。


友人「口説いたら奴に頭かちわられちゃうし!」

幼馴染「じゃあなんでかわいいなんて言うんですか?!」

友人「恋愛漫画のヒロインとかのからまわりってかわいいじゃん?!それだよ!萌え!」

幼馴染「私娯楽対象なんですか?!」

友人「YES!  あ、俺だー おかえりー」

俺「ただいま。よし、頭かちわろうか」

友人「ヤメテー!」

俺「冗談だよ」

友人「うう……このカップルこーわーいー」

俺「じゃあ、幼馴染、他の買い物続きしようか」

幼馴染「うん!」

友人「おー、じゃあ続きたのしんできなー」


友人は俺達に手を振る。
幼馴染はまだ少しぷんぷんしてるが、かわいいから幼馴染を怒らせた件に関しては不問に処す。

だが、そのプンスコしていた幼馴染が、ふと表情を少し冷たいものにして、足を止めた。


俺「どうした?」

幼馴染「……ねえ 俺くん?」

俺「うん?」

幼馴染「……やっぱいいや。俺くんはこれいったらまた疲れちゃうだろうし」

俺「友人の相談関連?」

幼馴染「うん。どっちかっていうとこれは俺くんよりもおばさんにしたほうが良い話かも」

俺「なんか、話聞いてる時もそうだったけど、生きてると良くわかんないことみたいだしな」


幼馴染は、何も言わず手を繋いでくる。
少し強めに握られた手の冷たさが、いつもと同じように心地良かった。

今日はここまで
ここまでデート回 ここからもデート回

友人と別れた後再び4階に戻り、他に必要そうなゾンビ用品やゾンビ向け商品を見て回る。
汁が漏れても洗濯楽々な布団カバーや、内臓での微生物繁殖を防ぐ抗菌ドリンク等々……
ゾンビ用、と銘打たれたものをどんどん買い物かごに入れていく。


幼馴染「カツラとかもあるんだね」

俺「頭皮や髪も脆くなるからな。がっちりコーティングして保護するんでなければ、
  取っ払ってカツラで好きな髪型にするって人も多いらしいぜ」

幼馴染「ゾンビの友達がやたら髪型不安定だった時期あるけど
  ……もしかしてカツラいろいろ試してたのかもしれないわね」

俺「ゾンビが髪型弄るなら大体そうだろうな」

幼馴染「おばさんももしかしてカツラ?」

俺「いや、地毛らしい。それも父さんがメンテしてるって言ってた」

幼馴染「髪の毛のメンテって……」

俺「化学薬品でナイロン糸みたいな状態に変性させてるらしい。
  他のメンテは大体風呂場でもできるらしいけど、主にそれやる薬品が危険だからって事で
  うちは母さんのメンテ用作業場があるし、結構大変らしいよ」

幼馴染「髪の毛だけでそんなに……」

俺「人間の髪の毛自体は結構強いんだけどな。
  その土台になる部分がボロボロだから維持はきついってことらしい」

幼馴染「うーん、やっぱり死んじゃうのって色々困るよね」

俺「死んでも生きた人が支えればいいっていうのを傍で見てるから俺は抵抗ないけど」

幼馴染「私も近所に俺くんの家があったからそれは分かるんだけど、
  死んでみなきゃそれがどのぐらい大変かって現実にふれることはなかったかな。
  ……おじさんすごいよね。もう何十年もそうしてきてるって……」

俺「そうだな。俺も幼馴染にそれぐらいずっとメンテし続けたいけど、まずは知識入れないと」

幼馴染「やってくれるの?!メンテって私も不安だから、やってくれるとうれしいなー!」

俺「……一線超えてからな」


俺がそういうと、幼馴染は怪訝な顔をした。


幼馴染「えぇー……えっちなことしないとメンテしてくれないの……?
  俺くんがそんなこと言うなんて思ってなかったな」

俺「いや、そう言う意味じゃないって!寧ろニュアンスとしては真逆だと思うぞ?!
  だって……その、全身メンテするには必然的に裸見ることになるし……
  それどころか内臓までメンテする場合はほんと全部見せてもらうことになるし……
  ……そこまで行った相手でないと抵抗あるだろ?」

幼馴染「」


幼馴染が絶句する。
うん、まあ。だよな。メンテっていっているけどより具体的に言うなら
全身くまなく異常がないか見て触って確認して、保護剤塗ったりやぶけたとこくっつけたり……

ようは、その、裸の幼馴染をいじり倒すことになるわけで。
数日はオナネタがその妄想になるレベルのイベントなわけで。

幼馴染「……そ、それは その……そうだね。も、もっと深く付き合えるようになってからだね!」

俺「ああ。さすがに俺も付き合って一か月足らずでそこまでやるのはちょっと
  恥ずかしいし抑えられる自信もないし……とりあえずもうチョイ先の話だな」

幼馴染「そうだね! あ、あは あはははは」


くそう、俺も恥ずかしいっていうのにそれ以上に恥ずかしがって誤魔化す幼馴染がかわいい。
何この照れごまかしわらいキュンキュンする。
血が巡ってないからほっぺ赤くなったりしないし一見ちょっとひきつった歪な笑いなんだけど
血が巡ってないからそうなってるだけで照れちゃってるんだってわかっちゃう照れ笑いかわいい!
くそうなんだこれ!
さっき休憩挟んだばっかなのにもう成分供給過多だと…?!
けしからん このかわいさはほんとけしからん まったくもってけしからんかわいさだな


俺「まったくもってけしからんかわいさだな」

幼馴染「?!」

俺「……? どうした」

幼馴染「えっ?何今の?けしからんって?」

俺「……もしかして声に出てたか。
  幼馴染かわいすぎるって思ってたのが出ただけだから気にしないでくれ」

幼馴染「今さっきの話の後にいわれるのはなんかこう
  ちょっと……今までと違う感じにはずかしいよ!」

なんだか怪しい雰囲気の話をしてしまったせいで
幼馴染の照れ方や挙動不審さが増してしまった。
そうだよな、幼馴染はゾンビ歴短いからメンテとか手入れって言ってもそう簡単に想像できないか。


幼馴染「そう考えると……おじさんは 割と変態?」

俺「人の父親を変態にしないでくれ……」

幼馴染「だっておばさん高校に上がる前に亡くなったんだよね?
  ……今まであまり考えてなかったけどロリコンだったの?」

俺「追い越しちゃっただけで父さんの方が年下だぞ」

幼馴染「?!」

俺「想像できないのは良くわかる。俺も当時の写真見てなきゃ納得できてないと思う」

俺「そんなことより、ほら、次の物見に行こう」

幼馴染「う、うん そうする」


話しを強引に変えるために、別の物の売り場に移動する。
いくら幼馴染がかわいくても、両親のなれ初めやらの話ばかりは疲れる。

次にみることになったのが、部屋の除虫剤だった。
ゾンビは割と虫にもかじられやすい。
そのため、忌避剤や、すでに入り込んだ虫の処分も大事になってくる。


幼馴染「こういうのって、主に何を避けるの?」

俺「ゴキとハエとアリとそれらの近縁種」

幼馴染「普通に家に入ってきたら嫌な虫ばっかりね」

俺「そうだな。このあたりのは家にゾンビがいない人にも売れてるらしい」

幼馴染「ゾンビ用品にこんな便利なのがあったんだね~
  あ、超強力って書いてある。これがいいのかな?」

俺「それは一人暮らし用だな。
  生身の人間の部屋で使うにはちょっと薬剤効果高すぎるからこっちのほうがいい」

幼馴染「えぇっ……どう違うの?」

俺「主に薬剤の強さが違う。一人暮らし用はかなり強い薬だけど、人間の許容は考えてない。
  こっちは人間もいる空間向けだから人間の許容範囲内で作ってある。
  幼馴染はおじさんと住んでいるし、こっちのほうがいいよ。
  ……おれもうかうか遊びに行けなくなるし」

幼馴染「それは困るね…………あっ!
  こ、困るって言っても!すぐにさっきいったようなことは、ないからね!!」

俺「話し切り替えるために別の売り場にきたのに自ら蒸し返したあげく照れる幼馴染かわいい」

幼馴染「か、かわいいかわいいって いいすぎだとおもうの!」

俺「一度声に出してしまったからぶっちゃけるが 俺にとってはまだ言い足りないぞ?」

幼馴染「もぉー!」


通りすがりから「リア充爆発しろ」みたいな目で見られたけど仕方ないな。
こんなかわいいしかもゾンビの彼女持ちとあったら爆発せざるを得ない。
する気ないけど。


俺「えーと、とりあえずこれな? そろそろ会計に行くか?」

幼馴染「そうやってまた話そらすー!」

俺「深く話に突っ込んでいけばいくほど恥ずかしいとか照れるとかそういう感じになるのは
  幼馴染の方なんだけどそれでもいい?」

幼馴染「……あんまりよくない……」

俺「よしよしえらいぞ。ちゃんと状況把握できる冷静さはあったかー」

幼馴染「俺くんばっかり余裕でずるい……」


余裕じゃないですけど。
今も鼻血でるんじゃないかってぐらい萌えが鼻の奥にアタックかましてきてるんですけど。

会計を済ませると、荷物は俺が両手に下げて尚重いという状態に膨れ上がっていた。
母さんが渡してあったものの中で気に入った消耗品はまとめ買いすることにしたせいだろう。


幼馴染「えっと……俺くん、私も持つよ?」

俺「うーん……けどなぁ。これ幼馴染にもたせたら小物屋ゆっくり見れなくなるだろ?」

幼馴染「それはそうだけど、俺くんに重い荷物持たせっぱなしにするのもちょっと」

俺「……じゃあ、届くの明日あたりになっちゃうけど、配送サービス使おうか」

幼馴染「そんなのあるの?」

俺「荷物おおくなるだろうし車かせっていったら配送サービス使えって断られたからな」

幼馴染「へぇー……そっか、家具屋さんとかもあるもんね。ここ」


そのままサービスカウンターへ向かい、店員さんに配送サービスの手続きをしてもらう。
いくらか送料がかかってしまうけれど、俺が払えるので払って置いた。
幼馴染が「後で返す」とか言ってるけど無視する。
申し訳なく思っている幼馴染がかわいいからもうそれでいいです。
それが返す分でいいです。かわいい。

きょうは ここまで また 5れすぶんぐらい たまったら

(,,゚∀゚)< いやぁ、5れすためようとおもうと なかなかたまらないね


( 。;"∀゚)<ということで縛り解禁。だらだらかくよー


。o'。"∀゚)<てなわけで投下開始だよ


,,。;:' ∀゚ヽ。. <どこでくぎりつけるかもきめてないから とちゅうでぷつりときれるかも


,。o。,,、 かんぜんにくずれてしまったようだ

俺「それにしようか?」

幼馴染「ちょ、ちょっとまって!ほかにもみたいのあるから!」

俺「わかった」

幼馴染「帽子とかスカーフとか、そういうのもあって、
  私どっちかっていうとここではそういうのを見たくて」

俺「ツボな定規はホントに偶然出会ったものという事か」

幼馴染「うん、そうなの!だから、そう言うの見てからそれかうかきめ
  ……なんでもうカゴにいれてるの?」

俺「残りの数少ないし、そう高いモノでもないし。帽子やスカーフ見てる間に無くなるのもやだろ?」

幼馴染「それはそうだけど、いいのかな……買うって断言できないのに」

俺「後で見てやっぱいいやと思ったら戻せばいいし、とりあえずの保護ってことで」

幼馴染「うー、わかった」


幼馴染は買い物籠にいれるのは「完全に買う」と決めた時だけなタイプだからか、
俺のようにとりあえずかごに入れるのには抵抗があるらしい。

>>109はミス)

幼馴染の好きな小物屋に入る。
亀屋デパートに入っている店舗の中ではかなり古株の店らしく、
母はこのデパートのこの小物屋で父が買ってくれたという筆箱を今も大事にしている。
何年前の話しか聞いたらもう50年前だそうで。

父はもう当時成人してるはずなんだが
結婚目前の恋人へのプレゼント筆箱てどういう流れでそうなったんだろうか。

今の俺と幼馴染みたいに、
入ってみたらむっちゃキラキラした目でそれを見てるって状態だったんだろうか。


幼馴染「はぁ~~……この定規かわいい……」


幼馴染は、緑色の本体に葉っぱの模様が入った、テントウムシの飾りがついた定規に夢中だ。

くそうかわいいなぁ幼馴染。
入ってきてから真っ先に目に入った文房具に心奪われてる恋人なにこれかわいい。
ほかにもっとあるのによりによって定規って。

俺からするとあまり興味のない物体に対して
ゾンビだから目の輝きもないはずなのに「キラキラした目」と表現せざるを得ない食いつきっぷり。


俺「それにしようか?」

幼馴染「ちょ、ちょっとまって!ほかにもみたいのあるから!」

俺「わかった」

幼馴染「帽子とかスカーフとか、そういうのもあって、
  私どっちかっていうとここではそういうのを見たくて」

俺「ツボな定規はホントに偶然出会ったものという事か」

幼馴染「うん、そうなの!だから、そう言うの見てからそれかうかきめ
  ……なんでもうカゴにいれてるの?」

俺「残りの数少ないし、そう高いモノでもないし。帽子やスカーフ見てる間に無くなるのもやだろ?」

幼馴染「それはそうだけど、いいのかな……買うって断言できないのに」

俺「後で見てやっぱいいやと思ったら戻せばいいし、とりあえずの保護ってことで」

幼馴染「うー、わかった」


幼馴染は買い物籠にいれるのは「完全に買う」と決めた時だけなタイプだからか、
俺のようにとりあえずかごに入れるのには抵抗があるらしい。

俺「幼馴染はそういうところで躊躇するからなーもうかわいい」

幼馴染「だ、だから!かわいいっていいすぎだから!」

俺「いいじゃないか。まだ付き合って日も浅いし、言いやすいうちに言うぐらいはさ。
  これが結婚後とかだったらじわじわ言いにくくなるものらしいし」

幼馴染「うぅ~~~」


むくれる幼馴染がかわいい。ついつい、頭を撫でてしまう。


幼馴染と一緒に、帽子や小物入れ、それからペンダントなどを見る。
こういった小物が好きなあたりは、ゾンビとはいえ普通の女の子だ。
いや、むしろ普通の女の子がゾンビであるという点が良い。
血色のいい子がこういうのを見ててもあまりテンション上がらないけどゾンビがこういうの見てるとテンションあがる。
血色良くてもかわいかった幼馴染だとさらにテンションが上がる。
よーし、俺、彼女に何でも買っちゃうぞ~って気分になる。


幼馴染「えーっと、じゃあ、この帽子が欲しいな」

俺「わかった。じゃあカゴにいれて…」

幼馴染「私がかう分と混ざっちゃうよ?」

俺「すみませーん」

店員「はいはーい」

俺「ください」

店員「お預かりしまーっす」


慣れた手つきで店員がバーコードを読み取っていく。
そこそこの金額になった中身のうち、帽子をプレゼント用の包装にしてもらうように頼み、全額俺が支払った。


店員「ありがとうございましたー」

幼馴染「レシートちょうだい」

俺「断る」

幼馴染「返す分わからないじゃない」

俺「俺は何か奢るといったが それが1点だけとは言っていない。つまり  ぜんぶおごる!」

幼馴染「そ、それは悪いよ!」

俺「いいって、昼食も奢る気だったけどそれは友人が払ってたし。ここでいいかっこさせてくれよ」

そう言って、レシートはぐしゃぐしゃにしてシャツの胸ポケットにしまった。


俺「はい、プレゼントの帽子。こっちの荷物の方は俺がもっとくから」

幼馴染「……あ、ありがと……いつか返すからね!」

俺「そばにいてくれてる分をほんのわずかに返しただけなんだけどな」

幼馴染「わた、私だって、そばにいてくれてる分返したいのに。俺くんばっかり」

俺「……かわいいな」

幼馴染「……もう、そんなことばっかり言う。やっぱりずるい」


そう言いながら差し出してくる幼馴染の手を握る。
休憩スペースに設置してある時計を見ると午後3時ぐらいになっていた。


俺「そろそろ帰ろうか。ラッシュ時の電車は危険だから、早めに帰ったほうが良い」

幼馴染「……うん」

来た時と同様に、地下道を通り、電車を使用して帰る。
相変わらず少し離れた距離がもどかしい。


幼馴染「……ねえ、俺くん」

俺「どうした?」

幼馴染「俺くんはもしも私が            って言ったらどうする?」


幼馴染の言っていることがよくわからなかった。


幼馴染「……ん、やっぱいいや。忘れて」

俺「す、すまん よく聞こえなかった」

幼馴染「いいって。あ、今度おばさんいるときにおばさんに相談に行くから」

俺「おう、わかった」


幼馴染が、俺ではなく窓の外を見ている。機嫌を損ねてしまったかもしれない。
幼馴染の言葉までよくわからないなんて、デートに興奮してはしゃいで疲れたんだろうか?
この分はまたいつか埋め合わせしないとな。

(,,゚∀゚)<いまだねりねりちゅうだけど


( 。;"∀゚)<ちょっとめどはたったので


。o'。"∀゚)<むじゅんがかんけいないとこまでは


,,。;:' ∀゚ヽ。. <だらだらかくよー


,。o。,,、 かんぜんにくずれてしまったようだ

土曜日はいつものように家事をこなし、何事もなく過ぎた。
幼馴染から買った帽子をかぶった写真が届いたりしたが、
正直なところ帽子でかわいい幼馴染の可愛い顔が隠れてるのであまり好みじゃなかった。

そして今日、つまり日曜日。
幼馴染が我が家にやってきた。
……本当なら、幼馴染に対する埋め合わせ的なことをやりたかったんだが、
幼馴染は母さんと母さんのメンテ部屋で話し込んでいる。

自己メンテナンスに関しての指示を受けているらしい。

正直、男としては覗きに行きたい。
否、むしろ覗くのが男のロマンとしての有り様であろう。

だが、覗いた時に実の母親の裸も見ることになるのがきつい。
幾ら見た目がツン系美少女と言えども実の母の裸を直視するのは精神的にキツイ。

姉「覗かないの?どこまでわが愚弟はヘタレなの?」

俺「のぞかねーよ。母さんの裸まで見ることになるだろうが」

姉「幼馴染ちゃんだけなら覗いたのね?キャー、えっち!」

俺「鋼の精神力と男のロマンで鍔迫り合いしてロマンが勝ったら覗いたかもしれない」

姉「全くもう、男ってみんなそうなんだから。裸がみれりゃいいんでしょこのスケベ」

俺「そういうもんじゃない。好きな人の裸だから価値がある!ただしその分心苦しさもある」

姉「愚弟が立派な草食系に育ってて嬉しいわー」


姉はそう言いながら、天井近くをゆらゆらとたゆたっている。

メンテの話が終わるころには昼食の時間になっているはずだ。
幼馴染の分も含めて、何か作っておこうかな。

モギュラベドロンの切り落としとエノキをすき焼き風に味付けする。
普段なら玉ねぎを入れるメニューなんだが、幼馴染は玉ねぎが苦手だから抜いておく。


俺「あとは玉子が……あ、1個しかない。ちょっと買い物行ってくる」

姉「いってらー」


火をいったん止めて、姉に留守を任せて外出する。

昼間に外に出るのは嫌いじゃない。
それに日光に当たるのは奴らに関わる仕事をしている人に対して推奨されている。
太陽光を浴びることで合成されるセロトニンという物質が精神を保ってくれるらしい。

だが、俺の目的はゆっくり陽の光を浴びて散策する事じゃなくて、足りない玉子の補充だ。
徒歩5分の所にあるスーパーに駆け足で行き、
お買い得と言うチラシが張り付けてある奴を1パック買う。
帰りももちろん駆け足だ。


俺「ただいまー」

姉「はやっ」

姉「はやいよ、もうちょっとお外満喫してきなよ」

俺「料理作りかけで放置したままゆっくり散歩とかできない」

姉「この主夫まっしぐらめ」

俺「えーと、あとは玉子でとじて」

姉「あ、いいにおい」


いい具合に仕上がったあたりで、母さんと幼馴染がリビングに降りてきた。
幼馴染は、気のせいか顔をこわばらせている。


俺「ちょうど昼ご飯出来たよ」

母「ありがとう。幼馴染ちゃん、食べてって」

幼馴染「い、いいのかな?」

俺「幼馴染の分も作ってあるよ」

母「私はお父さん呼んでくるわね」

母さんが父さんを呼んでくるまでの間も、その後の食事の時も、
幼馴染はなんだかぎこちない感じだった。

そんなに、メンテの指導ではずかしい思いをしたんだろうか?
というかどの辺までのメンテ知識を母さんは幼馴染に授けたんだろうか?
俺が知ってる範囲でも、内臓や食堂の保護まで考えるのだったら
生きてる女性に対してなら相当マニアック且つアブノーマルなことになるような内容だ。

死人の自覚の薄い幼馴染にはショックなことも多いのかもしれない。


幼馴染「ごちそうさまでした」

母「息子の料理が上手すぎて、母親として立つ瀬がないわー」

父「母さんが料理したことなんてあったっけ?」

母「なかったです」

そう、我が家の料理は基本男の作る料理だ。
母や姉が全くキッチンに立たないわけでもないが、
そういう時はたいてい俺か父さんの料理を温めなおすときだ。


幼馴染「そ、そうなの?これ俺くんが作ったの?」

俺「うん、おいしかっただろ?」

幼馴染「……ちょっとショック。私もお料理そこそこできるつもりだったのに」

俺「次は幼馴染の手料理が食べたいな♪」

幼馴染「……えへへ、そうだね……が、がんばるよ」


やはり何か様子がおかしい。
俺は母さんに話があると言って、母さんをリビングから連れ出した。

俺「幼馴染にどんな話したんだ?なんか様子がおかしいんだけど」

母「ゾンビに必要な事と、私の長持ちの秘訣を教えてあげただけよ」

俺「長持ちの秘訣?」

母「うーんと……そうねえ、直接的に言うなら*********************
  *******************************************************
  *******************************************************
  ***************************************……私の言ったこと分かる?」

俺「いや、さっぱり」

母「そうよねー……じゃあ遠まわしにぼかしていうわね
  ゾンビは、人間に近いものを食べると長持ちするの」

俺「近いもの?」

母「そ、幸いあなたたちは恋人同士だから
  毛のついた棒を出したり入れたりして最後は白いものを出すっていうなぞなぞを
  性的な意味の答えにしたやつを実行して出したものを幼馴染ちゃんが飲むとかすれば
  割ともつようになるわよ。外部メンテじゃ限界もあるからね」

俺「えーっと……母さん?!」

母「後は内臓の自己メンテだけど、あれもきつそうだったわね。
  お尻の穴広げなきゃいけないものね」

俺「……がっつり教えたにしてもなんていうか、こう……
  本当にさっきのも幼馴染に話したのか?」

母「もちろん」

俺「……気まずそうにするわけだよ……俺と幼馴染はまだ付き合ってひと月もたってないのに」

母「私と父さんも正式に告白しあう前からやってたからいいの」

俺「よ、よくないよ!」

母「一生添い遂げる気なんだったら、早めに手を出していろいろしてあげなさいよ。
  手出しが遅れたら遅れるほど、劣化していって最終的に悲しむのは幼馴染ちゃんなんだから」

俺「……」

母「分かったなら覚悟決めなさい。
  ゾンビを嫁にするならその程度の身の投げだしっぷりじゃ務まらないわよ」

俺「……わ、わかった。幼馴染の意思が最優先だけど」


……母親からとっとと手を出せコールを受けてしまった。異様なまでに気まずい。
対して、母さんはやたらと楽しそうにリビングに戻ってしまった。
俺は、まだ少し考えたくて廊下に残る。

というか、今戻って調子崩れたカオみせたら、たぶん幼馴染が心配する。
心配したら多分幼馴染ならすぐ理由を聞いてくると思うけど、それは避けたい。

日曜の昼から、やる話題じゃない。


呼吸を整えて、敢えて別の事を考える。


そうだ、リビングに戻ったらあのやたら気に入ったっぽい定規を使ったかどうか聞いてみよう。
幼馴染と話しつつ、話題を反らしていくのに専念しよう。

気まずい気持ちだからと言って、俺の可愛い彼女の可愛い声を聞かないという選択肢は無い。

。o'。"ω・`)<これ、sageしんこうなの?

(,,゚∀゚)< >>132 えろぐろだからどうしようかなっておもってる


( 。;"∀゚)<投下開始時かとうかしゅうりょうじだけあげようかなっておもってるけどしずんでたほうがいいかな?


。o'。"∀゚)<まあ こんかいがっつりしずんでたのは


,,。;:' ∀゚ヽ。. <せっていねりねりとだんがんろんぱのせ


,。o。,,、 かんぜんにくずれてしまったようだ

気分を取り繕って、適当な話をした昼下がり。俺は幼馴染を彼女の家に送ることになった。
といっても距離なんてほとんどないんだけど。


幼馴染「……うちにきたらさ、部屋に上がってってよ」

俺「いいの?」

幼馴染「そ、その おばさんに聞いた事……ひとりじゃできないのもあって」


その言葉に、俺はどう反応していいかわからなかった。
俺の頭には母さんから聞かされたことが巡る。が、それ以外の事かもしれない。


俺「……ま、俺にできることは全部協力するよ。むしろやらせてくれ」

幼馴染「や、ヤらせてくれなんて、えっち!!」

俺「…………いや、俺が言ったのは協力できることなら何でもする的な意味であって、
  性的な意味の言葉は……まあちょっと何でもするに含まれるかもしれないけれど
  とくに性的な意味あいのない言葉だったんだけど」

幼馴染「ハッ」

俺「幼馴染はエロい事想像したの?ねえ?想像したの?」


顔を伏せて頬を膨らませる幼馴染。
天下の往来でこれ以上下ネタで幼馴染をいじるのもどうかと思ったので、
俺はそのむくれたほっぺたをみてただ楽しむことに全力を尽くすことにした。

からかった俺を、幼馴染は一応家にあげてくれた。
彼女の部屋に行くときになって、俺はふと気になったことを聞く。


俺「おじさん今日いないの?」

幼馴染「婚活に行ってる」

俺「マジで?おじさん再婚すんのか」

幼馴染「したいって言ってるけど、どうかなぁ……いいから、部屋に来てよ」


そう言って、幼馴染は俺の手を引く。
やはり冷たい手は心地良い。

幼馴染の部屋に通されてすぐに、俺は部屋のにおいに気付いた。
臭い消しのためか、アロマがたいてある。


俺「なんかふんわりした香りだな」

幼馴染「あ、気づいた?臭い消しにちょっとね」

俺「こういう気を使うのは女の子ならではって感じがするな」

幼馴染「えへへ……死んでから見られる女の子らしさじゃ、あまりうれしくないけど……」


そう言いながら、幼馴染は俺にベッドに座るように促した。
俺が座ると、幼馴染が隣に座った。

幼馴染「あ、あのさー……まだつきあってそんなにたってないけどね その
  ぞ、ゾンビが肉体を保つのに あの…… ~~~~~~っ」

俺「……俺もその話母さんから聞かされた」

幼馴染「?!」

俺「血液とか精液とかだっけ……そういうの与えるといいとか なんとか」

幼馴染「そ、そう……だけど……その それって」

俺「要約するとエロいことしろって事だよな」

幼馴染「うぅー……でも、たぶんそんなことすると、俺くんにもゾンビが感染すると思うんだよね」

俺「ああ、感染か……」

幼馴染「たしか、ゾンビの体液と人間の体液がまざるとまずいんだよね?」

俺「らしいな」

幼馴染「……まざっちゃいそうだよね」

俺「けど少なくとも父さんは無事なんだよなぁ」

幼馴染「あ、そっか、そういえばおばさんは…………ごめんね俺くん、私ちょっと想像しちゃった」

俺「わざわざ謝んなくてもいいって……言われる方が想像しちゃうもんだから」

幼馴染「?! ご、ごめんね?!!」


テンパる幼馴染がかわいい。
俺が少々メンタルにダメージ受けるぐらい、この可愛さ見られるならなんてことは無い。


俺「……とりあえずさ、俺的には身近に感染の被害のない人がいるから、その
  ……俺は問題ない。幼馴染は?」

幼馴染「……ま、まだちょっと勇気が要るけど、いやじゃないよ?
  いやじゃないけど……その、勇気が出るまでちょっと待ってほしいなって」

俺「大丈夫、俺は幼馴染のタイミングに合わせるから」

幼馴染「……うん」

俺はここでようやくベッドに置かれていた幼馴染の手が、軽く握られて震えているのに気付いた。
ゾンビとしての劣化の恐怖と
女の子としての経験の恐怖が天秤にかけられているような感じなんだろうか?

俺は幼馴染の手に自分の手を重ねた。


幼馴染「俺くん?」

俺「震えてたから、つい……あ、そうだ あと……こういう話したんなら、実際に一歩進んでみようか」

幼馴染「進むって?」

俺「……こういうかんじに」


俺は幼馴染の方に体を寄せて、顔を近づける。
幼馴染も何をしようとしているのかわかったのか、目を閉じて、少しだけ口をすぼめてきた。

初めてのキスは、冷たくて柔らかくて、少しざらついていた。


幼馴染「……えへへっ」


けれど感触以上に、彼女の幸せそうな笑顔の方が、俺の心には強く残った。

きょうはここまで
はつきす!はつきす!

初めてのチュウのあと、照れくさくなって早々においとましてしまった。
もっと、何かすべきだったんだろうか?
まだ、何もするべきじゃなかったんだろうか?

俺は自分のやったことややれなかったことに迷いを抱きつつ、家には帰らず外を散歩していた。

日中の散歩は良い。
やっぱタマゴ買いに行くために走って行って帰ってくるぐらいじゃ足りないな。
陽の温かさを感じながら、ゆっくり歩くのが良い。

幼馴染とただ散歩しても良かったかな。
今からでも呼びに行こうか……やっぱだめだな。
今俺通りすがりのおじいちゃんにすげぇ不審な目で見られたもんな。
ていうか口元にやけっぱなしだ。これはだめだ。
幼馴染呼んだら俺の顔面もっと崩壊するわ。


ひとりでの散歩を終えて帰宅する。
母さんがニヨニヨしてたが言われたようなことは起きてないというと


母「このヘタレ息子」


と、罵倒された。うん、このノリにちかい母さんに育てられたなら姉ちゃんはああなるな。

翌日、月曜日。両親を見送った後布団と洗濯物を干した。まだ午前10時ぐらいか……

幼馴染は大学。両親は仕事。姉は怨敵探して百里千里。そして友人は仕事。
つまり完全フリーというか、暇な日だ。
午前中に図書館にでも言ってゾンビ文献あさろうかなどと思っていると、ケータイが鳴った。


俺「もしもし」

上司『俺くんか?すまない、今日出られないか?』

俺「えーと……まあ、暇ですよ」

上司『おねがいしてもいいかい?ホントにすまない。穴が開いた理由は職場で伝える』

俺「わかりました」


俺は電話を受けて、厭々ながらも職場に向かった。

職場につくと、上司が待っていた。
俺は「おはようございます」と挨拶してから、彼の顔を見る。
困った顔の上司は、俺が促すより先に理由を教えてくれた


上司「すまないな。今日は新人が初めて一人で入ったんだが、
  手間取ってしまったらしくてな……」

俺「ああ、1分以上かけちゃったんですね」

上司「襲われてけがをしてしまったから病院に搬送した」

俺「その新人ってゾンビですか?生きてる人ですか?」

上司「生きてる人間だな。大事になっても何とかなりはするが
  ……ゾンビ化は当人の負担が大きいと聞く。無事に帰ってきてくれるといいんだがな」

俺「そうですね。誰かに望まれるのでもなく、自分自身も望まずゾンビ化はきついでしょうね」


上司「私も、娘が独り立ちするまでに死んでしまったならゾンビにしてくれと言う
  ゾンビ意思表示カードはもっているんだが……おっと、すまん。余計な話になってしまった。
  俺くんもう行ってもらっていいかね?あまりタマゴがたまるのもよろしくない」

俺「はい、じゃあ行ってきます」


俺は作業着に着替えて、作業場となる個室に向かった。

俺の使う個室は新人がいた個室より3つ奥にある。
いきがけに窓から中を覗いたが、壁に派手に飛び散った紫色の奴らの体液以外にも
赤黒く乾燥しかけた人間の血らしきものが見えた。


俺「意外と慣れるまで時間かかるんだよな……いろんな意味で新人殺しだよこの仕事は」


その後、処理すべきタマゴの数を消費するために少し残業もした。
耳鳴りがひどい。少し頑張り過ぎてしまったかもしれない。

幼馴染にあいたい。
こんな耳鳴りじゃ声がきれいに聞こえないけれど。
少し痺れるような感覚のある指先じゃ、触れても冷たさを心地良く思えないかもしれないけれど。

家に帰ってすぐに、部屋に戻ってベッドに倒れ込んだ。

明後日は、また仕事か。
明日は、幼馴染は大学か。


俺はあの時、もっと深く幼馴染にいろいろしているべきだったかもしれない。
慣れているとはいえ精神と命に響く仕事をしているなら……
幼馴染の姿を保つのには急がなくてはいけないのなら……

関係を進めるのに戸惑っている暇は、本当に無いのかもしれない。

まあ、これは俺が勝手に追い詰められているだけで
幼馴染の気持ちが優先なのは変わらないけどな。
先走ってかなしませることだけはしちゃだめだ。

耳鳴りが本能のままに生きろと叫んでいるようにも聞こえてきたけれど、
俺は自分の大事な人の気持ちをいちばんに、と理性に刻んだ。

(,,゚∀゚)<あけましておめでとうございます。ということで新年ネタです。


( 。;"∀゚)<作中時期以前、主人公が高校生で幼馴染が中学生ぐらいの時のお正月時期なねたをだらっと書きます。


。o'。"∀゚)<ゾンビ要素がうっすいよ!まあ、主人公の俺くんはあんていの微妙な変態だけど!


,,。;:' ∀゚ヽ。. <……いつもおそくてごめんぬ。今年もよろしくお願いいたします。


,。o。,,、 かんぜんにくずれてしまったようだ

そろそろ進路を考えるべき高校2年の冬。おせちとお雑煮とみかんとこたつで過ごす正月を俺は満喫していた。


姉「はぁー……お正月特番はなんだかんだみごたえあるねぇ」

俺「そうだね。姉ちゃんこの正月で満足して成仏したりしないの?」

姉「むりむりむー」

母「一度そうなっちゃったらなかなか難しいらしいものねえ。あなた、ゲームしましょゲーム。ウノとか大富豪とか」

父「正月と言えばすごろくだけどすごろくなんてないしな」

俺「コンビニ以外はあんまり開いてないし買いに行くのもちょっとな……ん?」


俺のケータイが鳴る。二つ折り携帯のサブ画面には『着信:友人』とあった。あいつか。めずらしいな。
俺は暖房の効いた居間から出て、廊下で電話に出た。


俺「あけおめ」

友人『あ……あけましておめでとう……なあ、初詣行かないか?ちょっと、うちに居づらくてさ……』

俺「あー、いいけど。」

友人『今からおまえんち行くからさ、チャイム鳴らしたら来いよ』

俺「おう」


通話をやめて、俺は友人と初詣に行くと両親に伝えて出かける準備を始めた。
マフラーと手袋とダウンジャケットを身に着けて待機して数分、友人がやってきた。

友人「おいす」

俺「なんだそのカッコ」


友人は白いモコモコした帽子とマフラー、ピンク色で厚手のロングコートの前をきっちり止めているという姿で現れた。
細身なのも相まって一見女子に見えるが、顔は学校に学ラン着てきて女子と飲み会したいなどとのたまう友人そのものだった。


友人「前も言ったろー?オレは私服女物以外もってねーんだって……男物買っても捨てられるしさ」

俺「聞いちゃいたけど実際見ると驚くわ。ていうかなまじ似合ってるのがハラ立つな……まあいいや」

友人「いいんだ? んじゃ、れつごー。近所の神社でいいよな?」

俺「ああ、公園の中に神社あったな。そこでいいよ」


友人とグダグダ話しながら公園に向かう。
正直、隣に歩いてるのが女装男じゃなくってかわいいゾンビっ子のほうがよかった。
あ、見た目だけかわいいゾンビっ子の母は除く。


友人「新年と言えばお神酒だろー?堂々と酒のめるってたのしみにしてたんだけどさー、親が振り袖きせようとしてくんだよ」

俺「振袖……」

友人「死んだおばさんが成人式のときにきてたもんってきいてさー、
  もう酒の事とかどうでもよくなって友達と遊ぶって言って逃げてきたわけよ!」

俺「キッついな。正月からそんな話聞きたくなかったよ」

友人「オレだってそんな目に元旦から会いたくなかったよ……っと、ついた!やっぱこっちはすいてるな」

俺「もうちょっといけば大きくて有名なとこもあるもんな」

友人と一緒に鳥居をくぐって境内に入る。
手と口を清めてから、五円玉を投げ込んで去年一年のお礼と今年の願いを述べた。


友人「何お願いしたんだ?」

俺「かわいい子(但しゾンビ)と付き合えますように。お前は?酒飲みたいとか?」

友人「いや、実家を出れますようにだな。まあ酒もお願いしたけど未成年だしそこはね?
  しかし、オレタチには除夜の鐘全然効果なかったなー!女の子に酒て!!」


友人がけらけらと笑う。俺も笑ったが、その直後に視線を感じてそちらを見ると、幼馴染が立っていた。


俺「あ、幼馴染か。あけおめ!」

幼馴染「……俺くん……あ、あけまして、おめでとうございます」

俺「?(なんか様子おかしくないかこれ)」

友人「おー、幼馴染ちゃんかおひさー!」

幼馴染「―――っ?!だ、だれですか、そっちの、あれ?声、男のひと……?」

友人「普段学生服だからわかんねーか。ちょくちょく俺のとこに遊びに来てる友人だよ。たまにはちあわせすんじゃん?」

幼馴染「じょ、女子だったんですか?」

友人「あっはっは  なあ俺、オレせつめいすんのめんどくせえ」

俺「俺になげんな。お前の行動ぐらいお前が説明しろよ」

友人「えーっとな、オレの両親とちくるっててさー、オレのこと女の子にしたいらしいんだわー
  だから、服は女物以外もってなくってさ。割とマシな方の私服で出てきた結果がこれだよ!」

幼馴染「そうなんですか……世の中いろんな家庭があるんですね……へくちっ」


よく見たら幼馴染はあまり防寒具を身につけていなかった。
手も素手だし、ジーパンにトレーナーという家で緩く過ごすための格好のままでてきてるようだった。


俺「寒いだろ?これつけとけよ」


俺は幼馴染に俺のマフラーと手袋を渡そうとしたけれど、幼馴染は「いいよ、俺くんつけててよ」と拒否しようとする。
手袋を外した手で、幼馴染の手を触ってみると、まるで氷のように冷たかった。


俺「ムリするなって、こんなにひえちゃってるじゃんか」


ただ、この状況は俺にとっては非常に美味しかった。
常々幼馴染がゾンビだったらドストライクなのにとおもっているんだけれど、
その幼馴染の手が死体のように冷たいっていうのは煩悩が燃え上がる。

頬を赤くしてうつむく幼馴染もいいけど、この赤がなかったらどんなにきれいなんだろうか。


友人「オレのほうつかうか?」

俺「いや、さすがにそれはちょっと兄ポジとしては見過ごせない」

友人「おにいさん、妹さんを僕にください」

俺「ふざけんな」

俺は幼馴染にマフラーをまいて手袋をちょっとごういんにつけさせた。


俺「幼馴染はコンビニかなんかいくのか?格好がそんな感じだけど」

幼馴染「えっと、えっとね……そ、そうだよ!
  そう思ってたのにお財布忘れてて、それで戻ってる時に俺くんたちを見つけてちょっと寄っただけなの!」

友人「それじゃあ一旦送って、オレたちもついてこうぜー。おでんくいてえ」

俺「それもいいな。おさななじみもそれでいいか?」

幼馴染「う、うん。でも、一緒に出掛けるならちょっと着替えるよ」


幼馴染を彼女の家に送り届けて、少し待って、それからまた来た道を引き返す。
幼馴染は、「自分もちょっとお参りしてくる」といってコンビニによる途中神社にいってきていた。


幼馴染「またせてごめんなさい!」

俺「いいって。どんなことお祈りしてきたんだ?」

幼馴染「えーっと、えーっと……な、ないしょ」

友人「女の子のこういうのってやっぱイロコイ系だと思うんだよねー。空気読もうぜ」

俺「そういうもんか? 悪かったな……いややっぱ聞いとこう!
  おにいちゃん幼馴染にカレシできるとかゆるしませんからね!」

幼馴染「も、もぉー!やめてよー」

友人「ノリノリじゃねーかwwwwwwま、コンビニいきつつだなー」


幼馴染をからかいながら、雪がちらつく道を歩く。
とても平穏で平凡な、俺が高校2年生だったころの正月の一コマ。

というかんじでここまで
あらためてことしもよろしく

耳鳴りに支配された火曜日。明日も仕事だと思うと憂鬱になる。
幼馴染にあいたいと思いながらも、
奴らの呪いで無駄に濃くなった性への執着で何かしでかす予感しかしないから会えない。

貰ったメールに添付されている写真を見ながら、昼をだらだらと寝て過ごした。



まだ少し頭が重い水曜日。いつも通り仕事へ向かう。
月曜に張り切ってしまった分がまだ後を引いているが仕方ない。



疲れに支配された木曜日…

幼馴染とそこそこ平穏に過ごす金曜日……



そんな風にいつもの日常を繰り返しているうちに、俺と幼馴染が付き合ってから
1ヵ月がたっていた。

当日は平日だったから特に何もできなかったが、その次の金曜……つまり今日
泊りがけでのデートに俺たちは出かけることになった。

幼馴染「ねえ、俺くん」

俺「ん?」

幼馴染「私、俺くんの運転する車乗るの初めてだからちょっと怖いな」

俺「まあ、そこそこには運転できるよ。上手ではないかもしれないけど」

幼馴染「私の従兄が車の運転凄く荒いんだけど、そういうことはないよね?」

俺「ないない。そんな荒いならさすがにレンタカーは借りらんないって。さ、乗って」

幼馴染「おじゃましまーす……」


レンタカーを2泊3日の予定で借りて、少し離れた山間の温泉街へと向かう。
幼馴染と一緒の旅行。
幼馴染も、ある程度は覚悟してくれている……と思う。だったらいいな。

大抵、ゾンビ用の宿か人間用の宿かに分かれていて、
ゾンビと人間が一緒に泊まれる宿を探すのは大変だった。
両方受け入れるということは、それだけ作るべきものの数が増えるからだろう。
感染の注意も含めて、そんなめんどくさいことするぐらいなら空間自体を分けるのが、
宿泊施設として取れるベターな選択になるのは想像に難くない。

幼馴染「ねえ、どんなとこに行くの?」

俺「男湯女湯ゾンビ男湯ゾンビ女湯すべて揃えたとこだよ。
  温泉宿っていうよりは温泉付きのホテルって言ったほうが良いかな」

幼馴染「ホテル……」

俺「その単語に反応するのは自分はエロいですって言ってるようなものだぞ?」

幼馴染「え、エロくないもん。俺くんとの旅行だから意識してるだけだもん……もぅ」

俺「(くそかわいい)……ま、意識するのは夜だけにしといてくれ。昼は普通に楽しもう」

幼馴染「う、うん!」

俺「あ、あとさ、こんなこと言っといて夜側の話に戻すけど」

幼馴染「う、うん?」

俺「感染について両親に聞いてみたんだ」

幼馴染「!」

俺「ゾンビの感染てさ、人間とゾンビを区分するのの最重要みたいに言われてるけど、
  基本的には感染しても人間のままらしい。というか、むしろ感染したほうが人間のままでいられる」

幼馴染「そうなの?」

俺「死んだときゾンビに"なれない"っていうだけ」

幼馴染「えっ?」

俺「驚いただろ?ゾンビの感染だからゾンビになるのかと思ったらさ、なれない方らしいんだ」

幼馴染「……あ、でも、だったらわけるの判るかも……」

俺「第2の生を奪わないために、生きてる人間とゾンビを分けてるらしいよ。
  あと、俺に関しては実はもう手遅れなんだけど」

幼馴染「?!」

俺「ゾンビと一緒に暮らすどころか、ゾンビが母親な時点で生まれた時から感染済みらしい。
  父さんが何ともなってないからって気づいてなかったけど、父さんもすでに感染済みだっただけ。   ……っていうことだから、少なくとも俺に対して気を使うことは全くないからな」

幼馴染「……もう、感染済みってことは、俺くんはしんだらそこで本当におしまいなんだ……」


気のせいか、幼馴染の顔はとても悲しそうに見えた。
車を運転しているせいで顔をずっと見ていることはできない。
理由は、声色で判断していくしかない。

俺「感染っていう現象は昔から知られてたけど、それがどういう状態になる物なのかは、
  いろいろあってあまり表に出てないらしいんだ。
  幼馴染に言う分にはいいよって言われたけど、あまり言いふらさないで置いてくれると助かる」

幼馴染「? なんで広めちゃいけないの?」

俺「ゾンビ反対の連中に知られるとどうなると思う?」

幼馴染「……あっ」

俺「……ゾンビと人間の区分は、どっちのために必要なのかって、ちょっとだけ考えちゃったよ」

幼馴染「うーん……まあ、いいよ。私は少なくともそれ聞いてちょっとすっきりした」

俺「そう?」

幼馴染「うん、だって、もう俺くんを******************」

俺「ゴメンちょっとよく聞こえなかった」

幼馴染「えへへ、いいよ。聞こえなくても♪もう考えない事なんだから」

幼馴染「……あ、そういえば  お姉さんがゾンビじゃなくて亡霊なのもそのせいかな?」

俺「かもな。感染が広まってゾンビが少なくなったら怨霊が増えそうだな」

幼馴染「地味に困るね」

俺「逆にゾンビになると霊にはならないらしいけど……俺、幽霊になるのはやだな。
  幼馴染とちゅーすらできなくなっちまう」

幼馴染「……私は俺くんと一緒にいられるならどっちでもいいけど、俺くんに死んでほしくないな」

俺「頑張って長生きすると言いたいとこだけど、仕事が微妙に命に係わるからな」

幼馴染「頑張って就職してお金持ちになるから、俺くんしごとやめて私のヒモになってよ」

俺「むしろ俺が頑張って稼ぐから幼馴染家にいてくれよ」

幼馴染「えぇー」

俺「昇格して玉子採取とかに移動になったら危険は増えるけど給料跳ね上がるし」

幼馴染「お金があっても俺くんがいなきゃいみないもん」

俺「俺もお金があっても幼馴染がいなきゃ意味ねーんだよな……幼馴染も同じ仕事につくか?
  んで、シフト同じ日にしてもらって休日は二人で一緒に過ごすとか」

幼馴染「うーん……私は、そっちじゃなくって今やってる方面に進みたいかなぁ」

俺「キメラ研究か」

幼馴染「うん。素体にモギュラベドロンとししゃもをつかうから、無関係ではないんだけど」


二人の将来の事を考えながら車を走らせる。
2時間ほど、音楽を聴いたり、話したりしながら、ようやくもくてきの温泉街に到着した。

窓を開けると硫黄独特の、タマゴの黄身を濃縮したような香りが鼻につく。


俺「先ずはチェックインしてからにしよう。街の中の観光施設をそれから見て回って、ご飯食べて」

幼馴染「うん! えへへへへ……なんか、いまになってわくわくしてきちゃった。はやくいこう!」


はしゃぐ幼馴染を乗せて、俺は車を宿泊施設の方へと走らせた。

チェックインして、必要な手荷物以外は部屋の中におく。
観光ホテルと言った様相の宿泊施設で、部屋は畳敷きの和室になっていた。


幼馴染「けっこうのんびりできそうだね」

俺「外見るか?湯煙っぽいのがいっぱい出てる」

幼馴染「ホントだー! えへへ、あんまり旅行したことないからワクワクしちゃうよ」

俺「俺も旅行慣れしてるわけじゃないから不備とかあるかもしんないけど」

幼馴染「えへへっ♪いーよ、気にしない♪ さ、いこっ!何があるのかなー?」


ルンルンという擬音が聞こえそうな幼馴染がかわいい。
もう観光とか無視して抱き着いてやろうかという気分になるが我慢する。


俺「サイフとか忘れるなよ」

幼馴染「だいじょーぶっ!ちゃんとこの中に……あれ?  あはは……洋服と一緒に入れてた」

俺「言ってよかった。さすがに土産代なんかは出せないからな」

部屋を出て、徒歩で温泉街の中を行く。
幼馴染は土産物屋などに心を惹かれているようだが、俺達が先に向かうのは観光スポットでもある神社だ。


俺「大きな神社があって、パワースポットとして有名なんだってさ」

幼馴染「神社かぁ、ちょっと高い所にあるんだね」

俺「神社のある山をそのまま鎮守の森にしてるらしい……さて、はりきって登ろうか」


幼馴染と一緒に、小さな山の頂上にある神社を目指す。
ステンレスの味気ない手すりが用意された石の階段を二人で登って行く。


俺「ちょっときついな……メシ食ってからの方が良かったか……?」

幼馴染「ファイトだよ俺くん!」

俺「普段何かお参りするときとか近所の公園の神社行ってるし……」

幼馴染「何年か前の初詣もそこだったよね」

幼馴染の言葉をうけて、記憶を引っ張り出そうとするがうまくいかない。


俺「何年か前どころかここ数年あそこで済ませてるからなー」

幼馴染「そうなの?……だからメジャーな方の神社に初詣行っても遭遇しなかったんだ」

俺「……あ、もしかして 友人と一緒に行って途中で幼馴染が合流したあれか」

幼馴染「それ! えへへ 覚えてもらえてた」

俺「防寒全然な格好でいたのは覚えてるぞ」

幼馴染「仕方ないじゃん。俺くんが女の人と歩いてると思って急いで追いかけたんだから」

俺「……あれ?」

幼馴染「ん?」


だいぶ前の話な上に、確かその時は友人の女装の方がインパクトに残っていたせいもあって曖昧だけど、
幼馴染が俺を見つけて追いかけてきたというのは初耳な気がする。

その時の初詣の事に突っ込めずにいると、幼馴染が大学でやっている研究について話してきた。
彼女の専門は、キメラ研究だ。

ゾンビが生まれるより少し前から地球の環境はそれまでと変わってきている。
人間が家畜化していた動物の中でも、食肉用の動物は特にその影響を強く受けたせいで
モギュラベドロンをはじめとしたモンスターと化してしまった。
モギュラベドロンはもともと牛だったらしいが、ほかにもししゃもとよばれる牛から派生したやつもいる。

元になった家畜たちもいないわけではないが、
モンスター化した動物とまじって育っているためもうどっちでもいいやというのが大半の地球人類の見解だ。
ししゃもと牛だと味もそんな変わらないし。


幼馴染「でさー、モギュラベドロンに関しては人間も襲うし謎も多いんだけどね」

俺「うん、食肉加工はできるしそのために必要な手順も判ってるけど元がなんだったとかわかってないよな」

幼馴染「牛らしいから牛から派生したししゃもと混ぜて、大人しくておいしい物ができないかって研究してて」

俺「味が普通の牛の凶悪なのができたらどうするんだろ」

幼馴染「モンスターは遺伝情報にデオキシリボ核酸以外の物を使ってるけど、
  それでも行動の領域に関しては判明してるよ。モギュラベドロンの行動遺伝子をししゃものにかえるの」


幼馴染はそれはそれは楽しそうに、モンスターの遺伝情報の話をしてくれる。
俺はと言うと話の内容よりも、内容の気持ち悪さを感じさせない幼馴染の笑顔の方が気になる。
相槌をうちながらも、結局俺が見ているのは幼馴染だけだった。

幼馴染「あ、あとちょっとだよ!俺くん!」

俺「お、ホントだ」

幼馴染「鳥居おっきいねー」


幼馴染が変なところで感心している。
観光スポットにもなっているだけあって、入り口から神聖感をビシバシ推してきている。

登りきると、少し先を行っていた幼馴染が辺りを見回している。
周囲の山の木からでる癒しっぽい匂いに、自然の偉大さを感じているんだろうか。


幼馴染「普段、研究室にいるからかこういうとこにくると自然~~~って感じになるよね」

俺「仕事が週1の俺でもそう感じるぐらいには、ここは自然豊かだよな。なんかこう、神聖感押し売りな感じ」

幼馴染「そう言われるとなんだかありがたみが薄れちゃうよ」

俺「多少薄れてもすぐ周囲に充満する程度に神聖感満載だと思うぞ。さ、境内にいこうか」

幼馴染「うん!」


大きな神社だけあってか、感染対策がしっかりしている。
鳥居をくぐってすぐにある手水の場所も人間用とゾンビ用に分かれていた。
俺は人間用の水で手と口を清める。
人間の参拝客も多いが、ゾンビ用手水を見るとゾンビの参拝客も結構多そうだ。


幼馴染「俺くーん!いこー?」

俺「おう」

参道の隅の方を歩く。
幼馴染が真ん中を歩こうとするのを、てれるがそっと手をひいて隅の方に寄せてやる。


幼馴染「えっ?俺くん?ど、どうしたの?なんか大胆だよ?!」


きょどる幼馴染かわいい……なんなのこの天使。
神社的に言うとなんなのこの……神社的に言うとどうなるんだ?天女?天女は中国だよな?


俺「参道の真ん中は神様が通る部分らしいから、参拝客は隅っこ通るもんらしい」

幼馴染「知らなかった」

俺「俺も観光用のパンフレット読んで初めて知った」

幼馴染「まだ古い風習っていっぱい残ってるものなんだねー」

俺「んなこと言ったら、こういう神社や神頼みの風習なんかがその最たるものだと思うぞ」


感心顔の幼馴染がまたかわいい。パンフレットありがとう!古い風習ありがとう!
こんなかわいい恋人が見れるんなら俺もういくらでも風習取り入れるよ!


俺「お参りの時の作法は流石に知ってるよな」

幼馴染「二礼二拍手一礼だよね!」


ドヤ顔かわいい……「そうだぞ、よくできました」とかいいながらなでてやったらすごくうれしそうでまたかわいい。
神社選んでよかった。神様ありがとう。俺の願いはもう叶ったんでお礼参りって事にさせてください。

本殿へのお参りを済ませて、俺達はおみくじを引く。
小さなお守り付きのおみくじらしく、300円程度するが幼馴染が興味津々なので仕方がない。


幼馴染「なにっがでっるかな?なにーがでーるかーな?」

俺「おみくじよりもお守りの方が気になって仕方ないみたいだな?」

幼馴染「えへへ……だってかわいいよ?ほら、招き猫とかあるみたいだし」

俺「まあ、財布の中に入れておくのにちょうど良さそうな感じのだよな」


そんな会話をしつつ、500円玉を入れておつりとおみくじを受け取る。
一番外側の包みを外すと、透明な袋に説明文とともに入ったちいさい達磨のおまもりとおみくじ本体があった。
お守りは袋ごと一旦ポケットの中に突っ込んで、おみくじを開く。


俺「吉か……恋愛はすごく良いみたいだぞ」

幼馴染「!」


驚いてるのとうれしいのが混じってる幼馴染超かわいいなんなのこのこもうほんとなんなの?
俺の言葉一つでこれって。しかもすぐに興味無さそうな振りしたけど思いっきり今の流れ見たからな?
目が真ん丸だったのに口元がちょっとわらっててうれしそうでそれに気づいて自分のおみくじに目を落とした一連の流れな?

まったく、ほんの一瞬ですぐ幼馴染成分を容量オーバー付近まで持って行かれるから危ない。
うっかり人前で人目をはばからず抱きしめるところだった。

幼馴染「末吉かぁ……」


おみくじを開いた幼馴染がしょんぼりしている。
中途半端にあまり良くない物をひいてしまったらしく、真剣に読みながらも「えー」とか「やだー」とか言っている。


俺「どんな事書いてあった?」

幼馴染「んーと、引越しとかはあまりよくなくって……恋愛は気を引き締めろって」

俺「幼馴染に気を引き締めるのはムリだな」

幼馴染「な、なんで?!」

俺「俺は幼馴染が俺大好きだってこと理解してるからな!俺が幼馴染好きすぎて気を引き締められないこと考えたら」

幼馴染「ひ、人前でそういうこと言われるのはずかしいよー!!だめー!!」


両手で俺の口をぽふっとふさいでくる幼馴染のこの行動はなんですかね?
口元が幼馴染の指でひんやりしてもうぺろぺろしたいんですがだめですかね?だめだな!ここが理性の使いどころだな!

幼馴染「俺くんてば、すぐそういうこと言うんだから!からかわないでよー」

俺「常に本気だぞ」


もうちょっと幼馴染の指を唇に感じて居たかったけど理性を最大限に使用して手をとって口元から遠ざける。
幼馴染はというと俺の本気発言に戸惑っているけれど毎回似たようなこと言っている気がするのにこれだから、
やはり俺の彼女は俺の事超好きという認識で間違っていないと思う。


俺「おみくじ結んじまおうか。きちんと福に転じますようにって願って結ぶといいらしいぞ」

幼馴染「あ、結ぶのってそういう意味だったんだね」

俺「大吉とかは持って帰って構わないらしいよ」

幼馴染「へぇ~……   よしっ!結んだ」

俺「俺も。 あ、ちょっと休もうか。そこベンチあるし」

幼馴染「うん」


石でできたベンチにすわって、観光地でもある神社の境内を眺める。
やはり神聖感の押し売りを感じる物の、そこに来てる人たちは俺達を含め何かちょっとした特別を求める普通の人のようだ。

幼馴染が俺の肩をポンポンと叩いた。


俺「ん?」

幼馴染「私のお守り、招き猫が出たんだよ」

そういって、嬉しそうに透明な袋に入った小さな金ぴかの招き猫を見せてくる。
俺もポケットを探って、自分のでた物を見せる。


俺「俺は達磨がでたな。ほら」

幼馴染「小さいのに顔が濃いね。このダルマ」

俺「結構こってるよな……あ、落とさないようにサイフに入れとこ」

幼馴染「私もお財布に入れようかな」

俺「うーん、よし、じゃあそろそろここからは離れるか。腹減ったしメシにしよう!」

幼馴染「そうだねー、俺くん、ごはんたべてからくればよかったーって階段で言ってたし」

俺「正直もう腹の虫が鳴きそう」ぐー

俺「あっ」

幼馴染「あははははっ♪よし、はやいとこ俺くんのお腹の虫を満足させないとね」


幼馴染が笑って、ベンチから立ち上がった。俺もこれ以上ぐーぐー鳴らないように、無駄に腹を刺激しないようゆっくり立つ。

上ってきたときに気になった無骨な手すりのお世話になりながら、神社を後にする。
ふと、幼馴染の手が軽く差し出されたのに気付いて、彼女の手を取った。

幼馴染は転ばないために足元を見ているフリをしていたけれど、口元が笑っていた。
俺もたぶん今、他の人から見ると腹立つぐらい笑顔なんだと思う。

現在、別の妄想のほうが捗ってるので、ちょっとそっち側の小ネタを投下

生まれてきてから19年、けしてたのしい事ばかりではなかったけれど、おおよそ気楽に過ごしてきた。

産まれてきてから19年、あとちょっとで20年になるはずで、お酒の味やたばこの味も覚えてやる気だったのに。


私「死んじゃったなあ」


私は自分の入れ物だった肉の塊を見ながら、ぼんやりとつぶやいた。

あの男の事が憎い、という感情が声を出した瞬間からあふれてきた。
私は被害者だ。いくら私が両親のいう事を聞かない悪い娘であったとしても、こんなふうに殺される謂れはない。
いくら私が、他に好きな人ができたと言ったからって、こんなふうに何度も何度も包丁で突かれて死ぬ謂れは無い。


私「わたしわるくない」

私「わたしわるくないもん」

私「わたしを縛り付けてたあいつが悪いんだ」

私「私への拘束が激しいくせに、他の女を平気で愛してたあいつが悪いんだ!!」

私「嫌いになったってしょうがないじゃん!!他の人のほうが良いって思っても仕方ないじゃん!!!」

私「私悪くないよ!!!!なんで死ななきゃいけなかったのよ!!!」


私の声に、隣人がうるさいとでもいうように薄い壁を叩く。

ああ、そうだ。まだ警察も呼んでないや。

音で急に冷静になった私はケータイに手を伸ばす。透けてしまって持てない。
仕方ないので、先ほど壁を叩いてきたほうの隣人の部屋に、壁をすり抜けて入る。


隣人「うおっ?!」

私「あ、その……すみません、私殺されちゃったんで、ケーサツよんでくれませんか?」


幽霊になってしまってる私を見て、隣人は驚きでしばらく固まっていた。
数分経ってからようやく事態を把握して警察を呼んでもらえた。


その後、私を殺したアイツは、私に対して偽名を教えていたことが調査でわかった。
同時に、手がかりも足取りも何も残ってはいなかった。




私「っていうのが、私が死んだときの話だよ」

女性「……あなたも大変だったんですね」

私「そうそう、だからこのへやにまだいていいかな?」

女性「それはだめです」

私「ケチー」


私が死んだ後も、まあ賃貸だからいろんな人がやってくる。
大抵の人は死んだときの話をすると「恨みが残ってるなら仕方ない」と言ってくれるのに今回の同居人はなかなか強い。

呪いをぶつける先が見つからず暇を持て余した私は、今回のこの子をどう攻略するかを、新しい暇つぶしにすることにした。

私「ねえねえ、キミは彼氏とかいるのかな?」

女性「いませんけど」

私「やべえ、一瞬で会話が終わった」

女性「続ける気もないですからね」



私「ねえねえ、キミの仕事ってなんだったっけ?」

女性「役所の事務ですけど」

私「きっかりしてるとおもったら」

女性「そんなわけですので仕事の話はNGです」

私「えぇー」

女性「一応お役所の事ですから、大事なことを言わないようにしているんです」

私「ちぇー」




(捗っているもののオチが無いのでとりあえずこんな派生を思いついたというだけです)

一日中遊び回って、夕方になった。
宿の部屋に戻った俺達は、先ずはそれぞれ温泉に入ることにした。


俺「夕飯は7時らしいから、それまでに部屋に戻るってことで」

幼馴染「ん、わかったー。……鍵は俺くんがもつの?」

俺「俺もゆっくりはするけど、そこまで長くは浸からないと思うし、まあ頃合いを見てあがるよ」

幼馴染「ご、ごめんね、気を遣わせてるかな?」

俺「気を使ってるとしてもこのぐらいは普通だし平気平気。それに、物足りなかったら食事のあとまた入ればいいし」

幼馴染「じゃ、じゃあ、カギの管理おまかせしちゃうね……えっと、私も遅くなり過ぎないようにするから」

俺「ん、行こうか」

俺が入浴を終えても、幼馴染はまだあがってきていないみたいだった。
待合室も兼ねていると思われる広めの空間で、フルーツ牛乳を飲みながら幼馴染を待つ。
これから食事なのだから甘いものは控えたほうがいいのかもしれないが、自販機に売ってあるのを見て我慢できなくなってしまった。

卓球スペースなどもあるようだが、この待合所では安っぽいゲーム音の方が目立つ。
俺は財布の中身をみて、お菓子をすくいあげて台にのせてから取り出し口の方に落とすやつにむかう。
中身を見るとゾンビでも人間でも食べられるタイプの駄菓子が詰まっていた。
また、湯上りで感染しやすい状態なのを考慮してか、プレイする場所自体にはゾンビ用と人間用の区別がついている。
こういう所すらも徹底しているあたり、ここを運営している人のこだわりが感じられる。

100円玉を投入して、1クレジット2回プレイという良心設定に感動を覚えながらお一つ10円そこらの駄菓子を狙う。
お菓子をつみあげていき、100円玉をもう1つ追加したあとでいくつかコロコロと取り出し口の方へと落すことができた。
いつの間にか観戦していたお子様たちから「おー」という感嘆の声が上がる。


少女「すごいねー」

幼ゾンビ「しゅごい」

俺「どーも。……えーっと……いるか?」


子供たちに麩菓子を一つづつ差し出す。喜んで受け取る子供たち。お子様普通にかわいいな。

俺「きみ達きょうだいなの?」

少女「ふたご!でもね、幼ゾンビちゃんはもうおっきくなんないんだって」

幼ゾンビ「だって」

俺「ゾンビだもんなあ。家族旅行か、楽しい?」

幼ゾンビ「たのしー」

少女「幼ゾンビちゃんがゾンビになってから旅行したことなかったけど、ここにはこれたの」

俺「一緒に旅行できるとこ少ないもんな」


子供らと話していると、遠くから視線を感じた。そちらに目を向けると、この子たちの親と思われる女性が不安そうにこっちを見ている。
やはりどんなシチュエーションであっても男性と女の子が話していると冷たい目をむけられてしまうらしい。世知辛い。


俺「あそこにいるのお母さんかな?待ってるみたいだし行ってきたら?」

少女「あ、ほんとだ! えっと、おかしありがとうございました!」

幼ゾンビ「ました!」

少女「ままー!!おかしもらったぁ~!」

幼ゾンビ「たー!」


親に貰ったものをきちんと報告したり、きちんとお礼を言ったりあの子達のご両親はきっといい人に違いない。
走り寄ってきた娘たちを受け止めて、心配そうにしていたお母さんがにっこりと笑って会釈してくれた。うん、いい人だ。多分。

俺は残っていたプレイ回数を消費するために、もう一度ゲームへと向き合う。
再びころころとお菓子が転がってきたところで、幼馴染が声をかけてきた。


幼馴染「俺くーん!待ったー?!」

俺「ちょっとだけな。はい、これ」

幼馴染「こんなのやってたの?」

俺「どうせ暇つぶしするなら景品が手に入る方がいいかなと思って」

幼馴染「ふーん……わあ、私これ好きー!ありがと、俺くん!」

俺「食事の前だけど食べるか?」

幼馴染「えっ?えーっと……えーっと……我慢する。我慢するけど温泉の後の牛乳は飲んでいい?」

俺「ああ、俺もフルーツ牛乳飲んだし」

幼馴染「じゃあ、じゃあ私もそれにする!俺くんとおそろいだね!」

俺「好きなやつ飲んでいいんだぞ?」

幼馴染「俺くんといっしょのやつがいいなあ。買ってくるね!」


断言しよう。
さっきお子様がかわいいと言ったな?先ほどのお母さんとお子様たちには申し訳ないが俺にとっては幼馴染の方が天使だ!

部屋にもどると食事の準備がすぐにやってきた。
準備をしてもらった後は、俺と幼馴染二人きりで食事をしながら今日の事を話した。
と言っても離れてるちょっとの間の事がメインになるわけだが。


俺「そんな感じで子供が近くにいたからおかしあげたんだけど、きちんとお礼の言えるいい子達だったよ」

幼馴染「えー、私その様子みたかったな」

俺「そうか?」

幼馴染「俺くんは気づいてないと思うんだけどね、近所のアツ姉ちゃんとこの子と遊んであげてる時とっても優しいカオなんだよ」

俺「ん?そうか?」

幼馴染「そうだよー。……で、でね、恥ずかしいんだけどね、わたしそういう優しい顔してる時の俺くんの事も好きだから……」


自分で言い出したくせに照れくさくなってしまったらしく目をそらす幼馴染がかわいすぎて俺の精神が召される。
そうかー、やっぱ俺の彼女は俺の事大好きすぎるなあ。そのせいでする自爆とかかわいいなあ。


幼馴染「ま、まあ、そういうとこもすきだよってだけね!」

俺「ああ、よくわかった。ありがとう」

幼馴染「温泉の話しよう、温泉の話!ゾンビ用の温泉にねー、保護剤につかる用のスペースもあったの」

俺「へえ、そんなのまであったんだ」

幼馴染「温泉の成分から作った保護剤なんだって!こう、ゾンビでもお肌ツヤツヤになるって書いてあったよ」

俺「幼馴染がうれしいなら何よりだよ」

幼馴染「えー?俺くんは私がきれいになるのは嬉しくないの?私、喜んでくれると思ったんだけどなぁ……」

俺「なんかもう幼馴染と一緒にいられるだけで最上級だし幼馴染が喜んだり楽しんだりしてる姿が一番だから
  ついつい幼馴染の行動の方に目が向くだけで、一応綺麗というか保護されるのは嬉しいよ」

幼馴染「もー……ちょっと口開けばそういう事ばっかり言う」

俺「そう言ってる割には嬉しそうだけど?」

幼馴染「……嬉しいに決まってるじゃん。俺くんに私の事みてもらえてるんだもん」ぷむぅ


膨れる幼馴染がかわいすぎて食が進まない。
もしこの世界がすでにガレキまみれの世紀末だったとしても幼馴染がいるだけで多分俺は生きていける。

卓越しに向かい合って座っていたけれど我慢できなくなって、座布団から腰を浮かし膝立ちになって幼馴染の頭に手を伸ばす。
ナイロンのようなつやつやとした髪がまだ少し水気をふくんでいるせいでぺたんと撫でつけた状態になってしまう。


俺「ほんとにかわいいなぁ……幸せすぎて召されそうだよ」

幼馴染「も、……もぉーーー!!ご飯のときは禁止! 恥ずかしくってしょうがないんだもん!」

俺「ダメかな?」

幼馴染「ご飯の味わかんなくなっちゃうもん!」


なんだこのかわいいの……仕方ないからこれ以上撫でるのは本人の言うように止しておくことにしよう。

座布団の上に腰を落ち着け直して、俺は煮魚に箸を伸ばした。
多分カレイの煮つけだとおもう。魚には詳しくない。味のしみたほくほくとした白身を頬張る。

そういえば……幼馴染はごはんの味が分からなくなると言ったけど、実際にはゾンビの味覚はどんな感じなんだろう?
母さんを見る限りではゾンビの味覚も人間とほぼ変わらないような気がするけれど、あくまで見ているとそう思うと言うだけだ。
幼馴染のこのかわいい口の中では俺と全く違う味を感じ取っているのかもしれないと思うとなんだか無性に興奮してきた。

楽しい食事の時間が過ぎてゆく。
二人の前の皿が空になり、その皿の回収が着た後、俺達はただ肩を並べて寄り添うしかできなかった。

もどかしそうに、幼馴染がもじもじとしている。


幼馴染「ね、ねえ、俺くん?あ、あのね……」


言おうとする幼馴染を手で制する。
どんなに恥ずかしくても、欲望が見えてしまいそうで怖くても俺が言わなきゃいけないのは分かっている。

勇気を出せ。男として彼女を誘ったんだから、大事なところも俺が言わないと。


俺「布団、敷こうか。  一つだけで、いいよな?」

幼馴染「……うん」


あまりにもぼかし過ぎた、勇気の足りない発言だったが幼馴染の声色には嫌悪も落胆もなかった。
知ってた。知ってたからもうちょっとマシなこと言いたかった。

微妙な後悔をする放り出していた手に、幼馴染の細い指が重なる。


幼馴染「よ、よろしく、おねがいします」

(,,゚∀゚)<おひさしぶりすぎてすまんの!安価スレとか即興に近い書き方のほうばかりすすむのでこっちもそうしたほうがいいのかもしれない


( 。;"∀゚)<まあさすがにこのスレで安価は取らないですけど。話の出だしとオチが完全に決まっているので。


。o'。"∀゚)<べつのすれをきかれましたが 上記のように安価がのびてます また、それらも基本的に不定期です


,,。;:' ∀゚ヽ。. <とりあえずURLおきますが、けいかくせいのなさがみえるのではずか死い


オリジナル
すらいむ「安価 で ねこちゃんと たわむれるの」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1384941248/)(安価)
悪魔「美しい私がお前たちに使命を与えよう」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1393017119/)(↑の関連)

ダンガンロンパ2次でやってるもの
【安価&コンマ】花村「ありとあらゆる肉体を貪りつくすよ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1391925739/)(安価エロ。1スレ目を張っています)
苗木「強くてニューハーフ……?!」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1385683223/)(非安価)


,,。;:' ∀゚ヽ。. <……何とか仕上げたいけど正直ここが一番書くのに気力が必要なので、鈍亀更新が続くと思います

,。o。,,、 かんぜんにくずれてしまったようだ

まだかかりそうなので保守



友人「ゾンビは劣化を抑えることはできるけど一度劣化したらそのまんまらしいぜ」

俺「それなのに嬉々として自分をつぎはぎだらけにするお前の事はよくわかんねーや」

友人「だってさー、オレは別にオレを保つ必要ねーんだもーん♪酒飲んで楽しく暮らせたらそれでいいや!ってな!」

俺「おまえのようなあっぱらぱーなゾンビだけなら、この世界ももうチョイ明るくなるのかね」

友人「いやー、いっちゃあなんだがオレは人間の時から人格破綻してただけだからな?普通は悲しんだり困ったりするって」

俺「その結果せっかくゾンビになったのに自殺するやつもいるらしいぞ」

友人「生きてても死んででも生き甲斐が無きゃ生きていけんのよ。普通に生きてるやつはまだそれを自覚してないだけさ」ゴクゴク

俺「当然のように懐から角ビンだして飲んでんじゃねえよ」べしっ

友人「いてっ」

電気を薄暗い常夜灯のみにして、一つの布団に二人。
幼馴染の冷たい頬に指を這わせる。生きてた頃よりもかたい感触だが、行動するのに十分な柔らかさも保っている。
そのまま両頬を俺の手でつつんで、大好きな人との人生で2度目のキスをする。

触れ合う行為に愛を感じるのは相手が生きていても死んでいても同じことだと俺は思う。
いや、むしろ俺の場合ひんやりしてる方が興奮する。俺の彼女つめたい。物理的に冷たい。だから気にいった!

……それはそれとして
俺の唾液というよりも、人の唾液を与える事も幼馴染をできるだけきれいに保ち続けるために必要な事らしい。
あまり聞きたくないという気持ちは正直あったが、ゾンビを妻にしている大先輩であるところの父に、
ゾンビにとって必要な夜の出来事は大体教えてもらった。

なにもかも、幼馴染と一緒にいる為だ。
きっとわかってくれる。きっと、受け入れてくれる。
不安に思う気持ちが無いわけではないが、ただ唇を重ね続けてるだけでは先に進まない。
俺は自分の舌を、幼馴染の唇に割って入らせた。


幼馴染「ん……ぁ  んっ  ぅ」


水音がする。冷たい舌が、俺の舌にからみついてくる。
俺の荒い息と、幼馴染の口から洩れる声と、唾液の水音が二人きりの空間に小さく響いている。

顔が近すぎてむちゃくちゃ可愛い俺の彼女の顔が見えないのが少し残念だけれど、
きっとすごくうれしそうにしているに違いない。
出なきゃこんなに俺の事を求めてはくれないだろう。ていうかもう絡む舌の感覚自体がかわいいんだけどなんだこれ。
一挙手一投足がかわいいとかそんなレベルじゃない。ぶっちゃけもうずっと一生こうしてても俺は一向に構わんといいかねないレベル。
やばいな。彼女の存在がヤバい死ぬ。ゾンビによって俺の魂が浄化されて天に召される。天使か。ゾンビなのに天使か。


幼馴染「んぅ ぁ」ピチャ ピチャッ

俺(舌は絡めてるけど、まだ飲んでくれてないな……もうちょっと、注いでやればいいのかな?)


俺が、唾液を幼馴染の口に流し込むようにし続けてると、幼馴染が俺の唾液を飲みこんでくれた。
その瞬間、本当に不思議なくらいにはっきりと、幼馴染に"柔らかさ"を感じた。
何処からくる印象なのかは俺には分からない。
でも、同じように俺の事を幼馴染にあげさえすれば、彼女はつついたら穴が開くような硬くて脆いものじゃなく、
きちんと弾力を持つ命であり続けるんだろうなということもその時なんとなくわかった。



俺「ぷはっ  ハァ  ハァ」

幼馴染「俺くん……もっと」

俺「ああ、もっと もっと深い所で、もっとすごい事をしてやるよ」

幼馴染「……うん」


童貞なのに何言ってるんだろうかということも少し頭によぎったけれど、考えないことにした。
幼馴染はたぶん俺以外を知らないままだろうし、キス以上にすごい事するのは事実だし。
かっこつけたこと言っても特に問題ない。実家とかでいたして姉がデバガメしてた場合ぐらいしか問題ない。
つまり今は何も心配することはない。

それよりもまず心配するべきは、これから行うことの方だった。
死者と生者でするこういうことは目的があまりにも違う。生きてる同士なら子供を求めてだが、死者と生者では死者を保つためだ。
そのために必要なのは大半が経口による人間の体液や細胞の投与であって、下半身同士で行う行為ではない。

……ゾンビと人とで人間が通常いう性交渉をするのは体に負担をかけるだけだ。
それでもと言ってくれるなら、愛を享受して相手にやさしくしろというのが父の言葉だ。普通に良い事言われた気がする。
まあ、その時でも出すのは口の中にしておけという言葉はできれば思い出したくないけど。想像しちゃうし。

浴衣の帯をほどき、はだけさせた幼馴染の肌に指を這わせる。
冷たいのに、人よりもかたいのに、確かに命がつなぎとめられていると感じる弾力。


少し肌を離して、常夜灯の下で幼馴染の姿を見る。


幼馴染「……ね、ぇ?私のカラダ、へん、かな?」

俺「変じゃないよ。今の幼馴染が今の俺にとって一番大事な存在なんだから」


ただ、正直に言うと幼馴染がゾンビに噛まれた痕だけは嫉妬心みたいなものがわき出てくる。
丁寧に手入れし続けていれば、怪我なんかも消えていくものらしいんだが、俺以外の誰かの痕跡があるのが悔しい。


幼馴染「嘘だよね  だって、ずっとソレみてるじゃん」

俺「……変っていうか、悔しいんだよ。俺がつけた傷ならよかったのに。俺が幼馴染をこんなふうにしてゾンビにしたんなら良かったのにって」

幼馴染「ふふっ  それだと俺くんもゾンビじゃない」

俺「ゾンビ同士で、ぐずぐずに溶け合って混ざり合っていってもよかったかもな」

幼馴染「……そうなってたら素敵かもしれないけど……それはできないもんね。それに、私は俺くんにボロボロになってほしくないよ?」

俺「そっか、幼馴染は俺のこと大好きだなぁ」ギュッ

幼馴染「えへへへへ……そうだよ。大好き」

俺「俺も、幼馴染の事が大好きだよ……なあ、そろそろ……ちょっと、我慢できなくなってきた」

幼馴染「ん」コクン

俺「触ってみてくれないか?」

幼馴染「   えっち」

俺「えっちでなきゃ、こういう事してやれないからな……それに、嫌だとは思ってないだろ?」

幼馴染「うん」


小さく、照れくさそうにつぶやく幼馴染の声が耳に心地いい。
背筋にゾクゾクと、いつもの愛情とは違う感覚が走った。





翌朝、小鳥の鳴き声で目を覚ました俺は、俺の腕をまくらにして寝ている幼馴染に視線を向ける。
カーテン越しの緩い朝日の中でも、今までに比べて幼馴染の肌が白く輝いているように見えた。
人間に近い物を与え続けるのが一番いいというのは本当なんだろう。
ちょっとこらえきれなくなってつついてみたほっぺたがぷにぷにと心地良い。

口元に少しこぼれていた俺の出したものを指でぬぐって、幼馴染の口の中にその指を突っ込む。
ほんの少しだけでも、幼馴染を保つのには役に立ってくれると思うし。


  ガリッ

俺「いっ!!!  いたたたたっ!!!」

幼馴染「ん……ぅ?」あぐあぐ

俺「噛んでる!!幼馴染!!それ俺の指っ!!!!!」

幼馴染「……あっ?!」


起きた幼馴染が、口を開けて俺の指を吐き出す。
幸い、少し怪我しているだけで出た音ほどにひどい事にはなっていない。


幼馴染「ごっ ごめん!!大丈夫?!」

俺「だ、だいじょうぶ  だけど、絆創膏……っていうか消毒液もっ」

幼馴染「まってね!確か用意してきてるから!」


幼馴染が大慌てで、応急処置用のポーチを探す。
俺はというと、指の付け根を抑えて止血しているのが精いっぱいだった。

ゾンビの顎の力は強い というよりも、人間が普段している力の制御がきかないからうっかり噛んだらそのまま噛み千切る事もありうる。
夜の時もそのことを念頭に置いて、咥えさせるよりも舐めさせる方をメインにしていたのに、朝の寝ぼけた状態で指を入れた俺が馬鹿だった。

……痛みのせいで時間の経過が遅いのかと思ったが、幼馴染が荷物の中を探す音が聞こえなくなっているのに幼馴染からの声掛けが無い。


俺「幼馴染?」


俺が幼馴染の方を見ると、彼女は手に応急処置用のポーチを持ってはいたけれど、俺に……というか、俺の指に釘付けになっていた。


俺「……どうしたんだ?」

幼馴染「あっ  ち、ちがっ  なんでもない、なんでもないの!!」


取り乱した様子の幼馴染は、急いでポーチを開けて中身を取り出す。
消毒液とガーゼをもって、俺に指を出すように言う。俺は素直に噛まれた人差し指を幼馴染に差し出した。
彼女はそれを見て、ほとんど出ない唾液を飲み下す。小さく動いたのどを、俺は見逃さなかった。
でも、幼馴染は何も言わずにガーゼに消毒液をしみこませ、血をぬぐって、傷口を手当てしてくれた。

体液っていうと、血もそうか。……欲しいなら欲しいって言ってくれたらよかったのに。
どうやら、まだ幼馴染は俺に遠慮があるらしい。
まだ遠慮がちな部分が残る初々しさをかわいいと思う気持ちと、もっと打ち解けてほしいという気持ちが折り重なって地味に悶々とする。


まあ、いいか。
こんな時期はきっと今だけなんだから。今しかない今を楽しむって事にしておこう。


俺「ごめんな、朝から慌てさせちゃって」

幼馴染「ごめ、ごめんなさい!!わざとじゃないの!俺くんを*************んじゃなくって……!!」

俺「何言ってるんだ?ほら、寝ぼけてる時に悪戯した俺が悪かったんだから気にするなって。な?」

幼馴染「俺くん……わ、わたし、気を付けるから!ほんとのほんとに、気を付けるから!」


必要以上に自分を責める幼馴染の頭を撫でてやってから、カーテンを開ける。


俺「まあ、気にするなって。ほら、今日もいい天気だからさ、一日また一緒にいろんなとこまわろう?」

幼馴染「……うん」


時計を見ると、そろそろ朝食の時間だった。少し元気のない幼馴染に、着替えるように促す。
本当に俺の事となると本気で気にしてくれる幼馴染がかわいい。
だけど、気を落としてる姿は俺としても心が痛むから俺の方が今後は気を付ける必要があるだろう。

多分、ゾンビとうまく付き合っていくっていうのはそういう事なんだと思う。


だって、ゾンビは******************……あれ?


いつだったか、母に言われたことが脳裏に浮かんだ気がしたけれど、どんな内容なのかよくわからない。
まあ、いいや。わからないってことは、気にしなくていいって事のはずなんだから。

ぶっちゃけそれ以上にきにして顔を伏せてる幼馴染がかわいいから、俺は今頭によぎったことも、それを疑問に思ったことも実際すぐに忘れてしまった。

もうこんなに経ってたのか……出したい部分まで終わってないのですが、出せるとこだけ出しておきます。

幼馴染「俺くん、本当に指大丈夫?ほら、あーんして?」

俺「平気だって、人前であーんはちょっと恥ずかしいぞ?」

幼馴染「だって、俺くんはケガしてるんだよ?しかも利き手だよ?こぼしちゃうかもしれないでしょ? ほら、あ~ん!」


ここの朝食は、バイキング形式だ。ビュッフェと言った方が通りがいいかもしれないけれど、俺にとってはこっちの方が聞き覚えがあって使いやすい。
つまり、いろんな人がいる場所ということなんだが……幼馴染は俺に怪我させたことを気に病んでいるのか俺にご飯を食べさせようとしてくる。

俺だってできれば誘惑に乗りたい。だって可愛い彼女の"あ~ん"だぞ?
二人きりの時なら一瞬びっくりしても絶対に食べてた。だが、老若男女入り混じるしかもそこそこ人が多い空間でのこれはちょっと恥ずかしい。
普通にテーブルの席だし、窓際でもなんでもない。でも幼馴染の目は本気だ。本気で俺を心配している目だ。
いちゃつくための"あ~ん"じゃない。俺の事を想ってだ……俺はその目に耐え切れなかった。


俺「ありがとう。いただきます」ぱくっ

幼馴染「うん♪」

俺「さっきまで自分で食べてたけど、幼馴染が食べさせてくれると8割ぐらい増しておいしく感じる……幼馴染のあ~んは万能調味料だな」

幼馴染「も、もー!人前で恥ずかしいって言ってるのにそういう事は平気で言うー」

俺「仕方ないだろ?俺にとっての事実なんだから」

幼馴染「そんなこと言われちゃうと私の方が恥ずかしいよぉ……平気って言ってたしじゃあもう自分で食べてください」

俺「えぇっ……そんな」

幼馴染「私は俺くんのこと心配してたのに茶化すんだもん」

俺「俺は幼馴染の事に関しては大抵の場合本気だぞ?」

幼馴染「本気でそう言うこと言うから、俺くんのことよくわかんない」

俺「良くわかんない彼氏は嫌?」

幼馴染「……すき」

俺「知ってた」

幼馴染「!  も、もぉーーー!!」プンプン


幼馴染の可愛さににやつきながら、食事を進める。
だけど、本心は隠したほうが良かったな。普通にうまい食事だけど幼馴染の手から食べるうまさを知ってしまうとかなり味気ない。

今日の予定を話しながら箸を進めていると、あいていた隣のテーブルに4人家族が座ってきた。


少女「きのうのおにいちゃんだ!おはようございます!」

幼ゾンビ「おはよございます!」

俺「昨日待合所で会った……ああ、おはようございます」


昨日知り合ったゾンビと生きてる方の双子ちゃんの一家だった。俺はご両親の方にもかるく頭を下げる。
母親の方は昨日一瞬会っただけだったけど、父親の方は温泉で俺が暇を持て余して雑談していたおじさんだった。
家族旅行だと幸せそうにしていたけれど、この子達の親だったのか。
俺もゾンビの彼女との初旅行だといっていたせいか、なんだか楽しそうに俺達の事を見ていた。


幼馴染「俺くんのいってた子供たちってこの子たちなんだ。挨拶きちんとできて偉いね~」

少女「おねえちゃんもおはようございます!」

幼ゾンビ「ましゅ!」

幼馴染「元気でいいね」

少女「ままー!ほめられた!」

お母さん「良かったわね。すみません、騒がしくして」

俺「いや、いいですよ。騒がしいのも子供の仕事のうちですから」

幼馴染「私も小っちゃい頃ものすごくさわがしいほうだったから、平気ですよ」

俺「怪我しないようにっていつも俺が面倒見てたもんな」

幼ゾンビ「ぞんびけがしちゃうと、たいへんだもんね!」

幼馴染「そうね、ゾンビだと手術が必要になっちゃうもんね。私はおっきくなるまで生きてたけど……怪我すると大変だから注意はするんだよ?」

幼ゾンビ「はーい!」

少女「ねえねえ、おにいちゃんとおねえちゃんは恋人なの?」

幼ゾンビ「なの?」

幼馴染「うん、恋人だよ」

少女&幼ゾンビ「きゃー!」


どの年代においても女の子にとって恋の話とは騒ぐべきものらしい。
お子様たちのテンションが目に見えて上がる。
質問攻めを覚悟したが、そこは彼女らのお父さんが俺たちに助け舟を出してくれた。


お父さん「こらこら、その辺にしときなさい。あまり邪魔しちゃダメだぞ。ほら、ご飯取りに行こうか」

少女「はーい」

幼ゾンビ「ままー、いっしょにいこー?」

お母さん「そうね。幼ゾンビちゃんはゾンビ用のジュースも貰って置かないとね」

物を置いて、食事をとりに行った家族連れを幼馴染は目で追っていた。


幼馴染「ねえ、俺くん?」

俺「ん?」

幼馴染「わたしね、俺くんとの子供も欲しいなぁ」

俺「……そうだな。俺も幼馴染との子供なら欲しい」

幼馴染「まだ、ゾンビになったばっかりで、私の事で手間取らせちゃってるけど」

俺「手間じゃなくなるぐらいに慣れるから気にするなよ。確かになれるまでちょっとかかるだろうけど」

 ぽむっ なでなで

俺「そんなこと気にしなくていいぐらい幸せにするから。……さ、食べないと冷めるぞー」

幼馴染「……えへ…えへへへへへへへへ」


幼馴染は、俺の撫でた頭を押さえて、幸せそうに笑った。
食事をとってきたお子様に「おにいちゃんかおあかい?」とか言われたけど事実なので「まあな」としか返せなかった。
あぶない。人前での幼馴染の一挙手一投足が危ない。俺がにやつくのや照れるのが抑えられない。

隣のテーブルのお子様たちにちょくちょく話題を振られつつ、俺たちは食事を終えた。

食事を終えて、いったん部屋に戻る。今日の予定はこのあたりにある観光名所の、古い屋敷の見学だ。
なんでも明治だかにできた建物で、かれこれ数百年前の希少な物らしい。

手荷物を準備してから、宿の前のタクシー乗り場でタクシーに乗る。
このあたりとはいっても、一つの街だからやはりそれなりに距離はある。徒歩だとさすがにきつい。
あと、レンタカーでの移動は向かう先に駐車場があまりないため今回は見送ることにした。


幼馴染「このへんって温泉街なんだよね?湯煙とかで建物傷まないのかな?」

俺「そう言えばそうだな、復元作業も何回かやってるそうだけど」

運転手「向かってる場所の話ですか?勿論復元作業もしていますし、経年による建物の傷みもやはりありますが、
  あそこはたてられた当時もその辺に配慮してますから、当時の建材や壁紙のままの部屋もありますよ」

俺「壁紙まで保全できてるんですか?もう何百年も前なんでしょ?」

運転手「ええ、だから観光名所にもなっているんですよ。守ってきた人たちのおかげですねぇ」

幼馴染「歴史って人の手で守られるんだね。昨日行った神社もちゃんと人の手がはいってるからきれいだったし」

俺「近所の神社とか掃除する人も居なくて苔とか生え放題だもんな」

運転手「ああ、小さい場所とかだとそういうかんじかもしれないですねえ。このへんも小さい社はあるんですよ。
  そこは町内会が年に1度か2度大掃除してるんですけど、それでもあまり参加者がいないって嫁がぐちぐち言うんですよ」

幼馴染「私たちの町でも、回覧板とかみたらそういう掃除の予定のってるかもね」

俺「俺は休日多いし、そう言うのあったら参加しておこうかな。 それより運転手さん、目的地の面白い話とか見どころはある?」

運転手「そうですねえ……おばけが出るらしいですよ」

幼馴染「観光名所におばけ……?」

運転手「ここ最近は、やけにはっきりした幽霊の方もちょくちょくいますからそのはしりの人だと思うんですけどね」

俺「うちの姉みたいなものか」

幼馴染「お姉さん凄くはっきりしてるもんね。あと元気。でもいつ出てくるかわかんないよね」

運転手「幽霊がはっきり確認される前は恐れられてたりしたみたいなんですけどねえ」

俺「あ、会ったらお話とかしていいタイプの人なんですかねその人は」

運転手「なんか恥ずかしがり屋みたいで、幽霊と気づかれると逃げるらしいですよ。おかげで見かけたらラッキーだとかなんとか」

幼馴染「おばけさんにとっては迷惑かもしれないですね」

運転手「まあ、もし見かけたらちょっと優しくしてやってくださいね。小っちゃい子らしいんで」

俺「子供かあ」

幼馴染「子供の幽霊はちょっと悲しい気分になるね」

運転手「っはい、つきましたよ」

俺「ありがとうございます」


支払いを済ませて、タクシーを降りる。
歩道を横切って、俺と幼馴染はレンガ造りの門をくぐった。

そのまま、屋敷の中に歩みを進めると、玄関の所に受付が用意されている。
入場料を支払って、案内図をうけとり、順路に沿って屋敷の中を進んでいく。


幼馴染「昨日見たところは、神社だし"和"だったけど、古い西洋建築もいいよね」

俺「ああ。家具もできるだけ残してるみたいだし……なんでこういう古いのってお洒落に見えるんだろうな」

幼馴染「俺くんも、そういうお洒落な雰囲気は分かるんだ」

俺「女家族が結構幅を利かせてるからなあ。あと父さんも若干アンティーク好きの気あるし」

幼馴染「おばさんのお洋服とかたまにちょっといいお人形さんっぽい時あるもんね」

俺「……俺、父さんが母さんの服選んでるのどうかと思ってたけど、今は少しわかる。
  ものすごくこの場に合う服幼馴染に着せてひたすら愛でたい。場所に合わせた俺の彼女カワイイをしたい」

幼馴染「んもー……恥ずかしいし、私は着せ替え人形じゃないですー」

俺「わかってるよ。  次の場所いこうか」

幼馴染「うん  んー……でも、せっかく古くていい場所だけど、説明文とかがあったりするから、あまりのめりこめないね」

俺「なんだかんだ言ってここは歴史資料の一部だからな」

幼馴染「なかなか触れる事無い物だから、来たい場所ではあるんだけどね」


そんな事を言いながら、ステンドグラスの飾り窓から光の入る階段を下っていると、
階段の下の方で子供がきょろきょろとあたりを見回していた。


俺「?  きみ、迷子かな?」

子供「……うん」

幼馴染「……えっと、迷子になってあの世に行けない的な意味で?」

子供「それもあるけど」

俺「幽霊か」

幼馴染「わあ、会えちゃったよ!えっと、でもなんていうか失礼かもだけど……この屋敷のたった時代の幽霊じゃなさそうだよね」

幼馴染の言うとおり、その子供の幽霊は今よりは古いけれど、アンティークというよりはぐっと現代よりな格好をしていた。
長袖のTシャツにジーンズ地のオーバーオールという、よくいるようなお子様の服装だ。


子供「えっとね、おやしきのなかでまいごになったの」ぐすっ

俺「ん?この屋敷の中で目的の場所があるのか?」

子供「おばけのこどものかくれががどこかわかんなくなっちゃった」

幼馴染「……えっ?何?ここ、子供のおばけいっぱいいるの?」

子供「うん。みんなでかくれてる」

俺「おばけが出るって噂話は本当だったんだな」

子供「……ねえ、おねえちゃんたち、ほかにこどもをみなかった?」

幼馴染「見てないよね」

俺「他のお客かもしれない人見たのも君で初めてだったからな」

子供「うー……」グスグス

幼馴染「あー、まってまって、大丈夫だよー?お屋敷の中なんでしょ?探せば見つかるって、ね?」

俺「とりあえず、先へ向かおう。この場にとどまっててもあまり何も変わらないだろうからさ」

子供「うん」


幼馴染が子供の手をひく。3人が横に並んで平気なほど通路は広くないから、俺が一人だけ先を歩く。
お、お子様め!!俺が幼馴染と手を繋いでいたかったのに!!!
という気持ちもなくはないが、既に死んでいるとはいえ子供を一人にするわけにはいかない。
むしろナチュラルに子供に手を差し伸べた幼馴染の天使っぷりに陶酔すべき所な気がしてきた。
俺の彼女かわいくて冷たくて素敵な上に優しい。もうホント天使。おばけとはいえよそ様の子がいる場所じゃなかったら口に出して言いたいぐらいだ。

お屋敷の中を見ながら、子供の幽霊の仲間がいないかも探して進む。
そろそろ出入り口に戻るというあたりで、連れていた子供よりももっと古い時代の子供らしき奴が出てきた。
質の良さそうな赤い着物を着た、女の子の幽霊だった。


子供「あっ」

着物子「さがしたよ」

子供「まいごになってました」

着物子「うん   えっと、いきてるひととしんでるひと、ありがとうございました」ぺこり

幼馴染「死んでる人……いや、うんまあ、ゾンビだけど」

着物子「子供くん、しんでるひとといっしょにいて平気だったの?」

子供「……こわいしんでるひとじゃなかったから」

着物子「そう」


着物の子供は、幼馴染と手を繋いでいたほうの子供に手招きする。
子供の幽霊の手を取った時、着物姿の方がようやくほっとした表情になった。


幼馴染「友達見つかってよかったね」

子供「うん」

着物子「ありがとうございました  おばけはわりとふあんていですので、きえるかもとひやひやしていました」

俺「……なあ、ちょっと聞いていいか?」

着物子「なんでしょう」

俺「おばけって不安定なのか?俺の姉ちゃんも幽霊になっているんだが、すごく元気だぞ?」

着物子「……うらみのあるひとほどあんていするごようすですが」

幼馴染「あー、俺くんのお姉さんはああいうかんじだもんね」

俺「なるほどなー……あ、不安定で不安って言ってるのに話させちゃってごめんな」

着物子「いえ、わたしはこのよにうらみバリバリなのでちょうあんていしているのです」

幼馴染「えっ、そうなの?!」

着物子「ええ。しかしうらむたいしょうがすでにこのよにいないため、ただのあんていしたおばけなのです」

子供「着物子ちゃんはね、おそとにでてもあんしんだから、ほかのおばけをたすけてくれてるんだよ」

俺「しかし、その根城が観光地か。いろんな人が来て安心できないんじゃないか?」

着物子「このおやしきにはいろんなひみつがあるんです。地下とか」

幼馴染「そ、そんなのパンフレットにないけど」

着物子「ごくごくまれに、えらいひとがかくにんにくるだけです。あ、お兄さん方もきかなかったことにしたほうがよいですよ」

幼馴染「……なんで秘密にする必要があるんだろ?」

俺「地下は後々増築されたとかじゃないか?資料価値がないから公開されてないとか」

着物子「……なるほど  げんだいのかたはそうおもうのですね。では、これにてドロンさせていただきます」

子供「ばいばーい」


そういって、幽霊たちはふっと姿を消してしまった。

少し古い建物には、大抵頑強な地下室がある。
今では用意されているところはほぼないし、一過性の流行りのようなものじゃないかと言われている。
今では歴史的価値がある建物とはいえ、元々は人の物。価値を損なうような増築があったとしても不思議じゃない。

その点に関しては残念だし、それを隠して観光地にしていることにもあまりいい気はしない。
だけど、空間が死んだとはいえ子供の役に立ってるなら、一応意味がある物なんだろう。


幼馴染「とりあえず、出ようか」

俺「そうだな」


受付のあった玄関に戻り、屋敷を出る。太陽は来た時からぐっと高い位置で輝いている。
こんな真昼間から幽霊に会っていたと言っても、信じてくれる人はあまりいないだろうな。
土産話にはなりそうでならない体験だった。


幼馴染「ちょっと時間かかるけど、いろいろ見ながら歩いて戻らない?」

俺「そうだな。お土産屋の揃った通りとかもあるみたいだし、明日ばたばたお土産選ぶよりも今日選んでいこうか」

幼馴染「荷物多くなっちゃわないかな?」

俺「荷物が重いなら、その時はまたタクシーを呼ぼう」

幼馴染「うん  えへへ、一緒に歩くの嬉しいなあ」


そういって、幼馴染が身体から少し腕を離して俺に近づける。
俺はその手をとって、先ほどまで子供に貸していた分、指を絡めて、ちょっとでも多く触れるように手を繋いだ。

(,,゚∀゚)<……今回も遅くなりました。


( 。;"∀゚)<あ、ゾンビの保持に人間の一部が効くっていうのは、基本的には公開されてない情報です


。o'。"∀゚)<カーチャンたちは息子とその彼女かわいさにおしえていますけど


,,。;:' ∀゚ヽ。. <他の人達にとってはぁゃιぃ民間療法レベルでしか認知されてません


,。o。,,、 かんぜんにくずれてしまったようだ

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