P「なんなんですかぁ！　俺は要らない子ですか！？」

P「所詮使い捨てですか！？　社会の歯車を廻す小さいネジにしか過ぎないんですか！？」

P「この過酷な競争社会における哀れな踏み台でしかなかったんですか！？」

P「恩を仇で返すんですか！？」

P「恩を仇で返すタイプのスタンド能力ですか！？」

社長「うむ。ちなみに近距離パワー型だ」

P「ちくしょう、勝てねぇ」

社長「まぁ冗談はこの辺りにしておいて」

P「はい」

社長「私も、君のことを評価していない訳ではない」

社長「この事務所がここまで大きくなったのも、君の御蔭と言っても過言ではないだろう」

P「……とんでもありません」

P「社長の手腕、ちひろさん達裏方のバックアップ」

P「なにより、アイドル達本人の努力の賜物です」

P「……自分は、ただ彼女達の背中を押しただけですよ」

P(……なーんちって)

P(うへへへー俺は知っている、知っているんだぞー)

P(ここでこうして言っておけば、皆が)

P(キャー、圧倒的な才能を持ちながらも決して傲慢にならないプロデューサーの謙虚な心、素敵！)

P(ってなる訳だぁ)

P(お？　そうなるだろ？　俺に抱かれたくなるだろ？)

P(皆もそうなんだろ？　ん？)

社長(そんな訳ない)

P(くっ……直接脳内に……！)

社長「まぁそう言う事でだ」

P「はい」

社長「君に問題がある訳ではないのだよ」

P「と、言いますと？」

社長「アイドルの人数だ」

社長「随分と増えてしまったね」

社長「君の負担も相当だろうし、なによりアイドル達も心配している」

社長「そこで、もう一人新しいプロデューサーを、と考えた訳だ」

P「それで、ちひろさん、ですか……？」

P(ちっひーのこと過大評価し過ぎだろ……)

P(どんだけあの人のこと信頼しているんだ。親馬鹿か)

P(ちっひーなんて、笑顔が素敵でドリンクを差し入れてくれて皆に優しいただの天使じゃん)

P(あまりに天使過ぎて、鬼や悪魔も思わず改心してゴミの分別を丁寧にやってしまうと俺の中で評判だ)

P(あと、結構おっぱいが)

社長(聞かなかったことにしてやろう)

P(あざっす)

社長「別に、考えなしのことではない」

社長「いきなり、全く知らない者を連れて来るよりは、気心の知れた人間の方がアイドル達にとってもいいだろう」

P「慣れている分、こちらも連携しやすいですしね」

P「それに、以前からちひろさんのアイデアから出た企画を通すこともありましたし」

P「アイドルからの信頼も厚いですね。よく相談を受けているようです」

P「加え、この業界にも詳しい。実力自体には、不足はないかと」

p(まぁ俺には及ばないがな！　ムハッ、ムハハハハッ！)

社長「まぁ、元々事務員と半兼任の様なものだったが……」

P「ここいらで、本格的にプロデュース業に取り掛かって貰う訳ですか」

社長「うむ。代わりの事務職は、前々から世話になっているパートの方を中心にやって貰うとして……」

社長「君にはフォローをお願いしたい。何分、アイドルのプロデュースはハードな仕事だからね」

P「……なるほど」

社長「とは言っても、それだけでは君も手持ち無沙汰だろう」

社長「君には、そのフォローに加え、今特に力を入れたいアイドルを三人、プロデュースして貰いたい」

社長「おーい、入ってくれ」

P(……ううん、誰だ？)

P(出来れば癖が強くない子がいいなぁ)

P(千佳とか、薫とか、雪美とか)

P(こう、純真で、いい子で、小学生とかだと)









みく「みくだにゃ！」

裕子「エスパーユッコです！」

ヘレン「世界のヘレンよ」

P「ジーザス」

P「癖強いのばっかりじゃないですかーもおおおおおおおおお！」

社長「……」

P「あ！　目を逸らした！　今目を逸らしましたね！」

P「押し付ける気満々！　社長は俺に押し付ける気満々マンだったんですね！」

社長「ソンナコトハナイ」

P「そんなことはあるイントネーションだこれ！」

ヘレン「落ち着きなさい」

みく「ちひろチャンは確かに皆から信頼されているけど」

裕子「いかんせん、本格的なプロデュースは初めて」

ヘレン「私達みたいな」

みく「アクが強いアイドルは」

裕子「荷が重いって訳です！」

ヘレン「ふふふふ！」

みく「にゃっはっは！」

裕子「サイキック高笑い！　えへへへへへへ！」





P「お前らのそう言うポジティブなところ」

P「俺、嫌いじゃないぜ……」

P「よしっ！」

P「やってやろうじゃねぇーか、目に物見せてやろうじゃねぇーか！」

P「気合入れてやっぞぉ！　しゃーオラぁ！　やんのかコラぁ！」

P「行くぜ、あの夕日に向かってよぉ！」

みく「今は朝だにゃ」

裕子「何を言っているんですか？」

ヘレン「先が思いやられるわね」

P「ホリーシット」

　んで、事務所。



P「で、ここのディレクターさんはやたら太ももの話題に食いつくから……」

ちひろ「……」

P「ちひろさん？」

ちひろ「あ、ご、ごめんなさい、聞いています」

P「……大丈夫ですか？」

ちひろ「……」

ちひろ「正直、不安です」

ちひろ「私みたいなただの事務員が、ちゃんと皆をプロデュース出来るのかな、って」

ちひろ「アイドル達は、ただの売り物じゃない、意思を持った人間で、想いを抱えた女の子で……」

ちひろ「私のやり方が、仕事が、そのまま彼女達の人生に関わって来る……」

ちひろ「……ちょっと、怖いです」

P「……」

P「……ここで、俺がちひろさんを励ましても、多分、聞かないでしょ？」

ちひろ「え？」

P「不安になっている時や自信がない時に、君は凄い、とか、出来る！　とか、そんなものは逆効果なんです」

P「だから、俺からは一つだけ」

P「プロデュースの極意を、一つだけ」

ちひろ「……極意？」

P「笑ってください。前を向いてください。底抜けに、どこまでも明るくいてください」

P「そうすれば、それがアイドル達にも伝わって、皆、輝いてくれます」

P「ウチに居るアイドルは、皆そうですから」

ちひろ「……」

P「それに、俺……」





P「笑っているちひろさんの方が、好きですしね」





ちひろ「んなっ、なななななな、何を言ってるんですか！」

P「あははははは！　元気、でました？」

ちひろ「あっ！　か、からかったんですね！　もう！」

ちひろ「……」

ちひろ「……ふふっ」

ちひろ「はぁー、プロデューサーには適いませんね。ふふふ」

ちひろ「……私、やります！　やってみせます！」

P「その調子です！　さ、今日は幸子の『おでんスカイダイビング・がんもどき編』の収録日です」

P「付き添ってやって、彼女達をどんどん売り込んでやってください」

ちひろ「はい！　行って来ます！」



　バタン。

P(……ヒューウ)

P(俺、カッチョいいー)

P(見た？　今の見た？)





　?今日のハイライト?

P『笑ってください。前を向いてください。底抜けに、どこまでも明るくいてください』

P『そうすれば、それがアイドル達にも伝わって、皆、輝いてくれます』

P『ウチに居るアイドルは、皆そうですから』







P(うわーこれ来ちゃったなぁ、名言来ちゃったなぁ)

P(カッコ良過ぎて全米が震撼しちゃうな)

P(ちっひーも今頃キュンキュンしてるだろうなぁ)

P(え？　どこがって？)

P(そりゃは勿論、子きゅ)





みく「カットにゃ」

　なんかどっかのファミレスみたいな。




P「まぁそうは言っても、ちひろさん、そんなに上手くはいかないだろうな」

裕子「プロデュースがですか？」

ヘレン「少なくとも皆からの信頼はあると思うけど」

みく「腕もあると思うにゃ」

P「いや、その辺は知ってるよ？　でも、なんだかんだ、他の面子もアク強いじゃん」

P「お前ら程じゃないけど」

みく「照れるにゃあ」

裕子「えへへへっ」

ヘレン「ふっ……」

P「お前らのそう言うポジティブなところ」

P「俺、嫌いじゃな以下略」

みく「でも、アクが強いって言っても、ちひろチャンも分かっていることだにゃあ」

ヘレン「今更の話よね」

P「それはあくまで事務所の中での話だろ？」

P「現場に出ているわけじゃない」

P「外と中では、アイドル達だって違う動きを見せるんだ」

P「ちひろさんは飲み込みが早いし、手馴れている。取引先への対応や、売り込み方法は問題ないと思うが」

P「アイドル達との付き合いが、果たして上手く行くかどうか」

P「凛とか幸子とか、まゆとか、あいつらは特に難しいからな」

裕子「なんでですか？」

P「そりゃあ、お前、あいつらは……」








P「俺のこと、大好きだからな！」








みく「自惚れも大概にしろにゃ」

みく「ぴにゃこら太みたいな面して、よくもまぁそんなこと言えるもんだにゃあ」

P「あ、あれは雰囲気が似ているだけだろ！？」

みく「……」

P「無言は止めろぉ！」

P「どうしたんだよみくにゃん！　前の事務所から転がり込んで来たにゃんみくを、一生懸命プロデュースしたのは誰だよ！」

P「そう、俺だ！」

みく「にゃはは、ごめんにゃあ。それは勿論感謝してるにゃ」

みく「でも、みくは恩を仇で返すタイプの斬魄刀を持っているからにゃ」

P「お前それ社長と被ってんぞ」

みく「射程が長いから問題ないにゃあ」

P「マジで？　どれくらい？」

みく「13kmにゃ」

P「なん……だと……」

前川みく（大阪）
http://i.imgur.com/DKdw95K.jpg

P(まぁなんにせよ、だ)

P(俺の仕事は彼女のフォローだ)

P(慣れない激務で、彼女の心身は荒んで行ってしまうだろう)

P(上手くいかない営業)

P(普段とは違うアイドル)

P(やたら太ももの話題に食いつくディレクター)

P(ちっひーのストレスは高まる一方で)

P(遂には限界を迎えてしまう)

P(そこで現れるのは誰だと思う？)

P(ん？　誰だと思う？)

P(誰だろうなぁー、翼の折れたエンジェルを優しく抱きとめるのは、誰だろうなぁー」

P(誰なんだろうなぁー？　分かるかなぁー？　わっかんないだろうなぁー。稚内市は寒いだろうなぁー)

P(んー？　教えてほしい？　ほしいの？)

P(しょーがねぇーなぁ！　ったくよぉー！)

P(その正体は超絶仕事が出来てぴにゃこら太とはあくまで雰囲気が似ているだけのハイパーイケメンなこの)






裕子「サイキック☆カット」

凛「あ、ちひろさん！」

ちひろ「凛ちゃん、おはよう。そう言えば、この前の宣材出来たわよ、ほら」

凛「！　す、凄い……！」

ちひろ「ふふふ、どう？ 私なりに色々考えてみたんだけど」

凛「ふ、ふーん、ま、まぁ、悪くない……かな？」

ちひろ「……と言うことは、凄く気にいってくれたのね。頑張った甲斐があったわ」

凛「なっ、な！？」

ちひろ「……駄目かしら！」

凛「だ、駄目じゃない！」

凛「駄目じゃないよ……」

凛「……うん、とても良いと思う」

凛「蒼の使い方とか、特に……」

奈緒「まったく、素直じゃないな」

凛「う、うるさいな！」

加蓮「ま、奈緒も人のことは言えないけどね」

奈緒「なにおぅ！？」

ちひろ「こらこら、喧嘩しないの」

ちひろ「さ。仕事行きましょ」

奈緒「あいよ」

加蓮「りょーかい」

ちひろ「今日も頑張りましょー！」

凛「うん……残していこうか、私たちと、ちひろさんの足跡……！」








P「……」

　別の日の事務所！




幸子「ちひろさん！」

ちひろ「どうしたの、幸子ちゃん」

幸子「こ、これ、食べてください！」

ちひろ「あら美味しそうな……おでん？」

幸子「さ、撮影で使うから、その練習で出来たものです！　た、他意はないんですよ！」

ちひろ「ふふ、じゃあ、頂こうかしら」

幸子「……」

ちひろ「……」

幸子「ど、どうですか？」

ちひろ「うん……美味しい、とっても」

幸子「わぁ……ん、んん、と、当然ですね！　カワイイボクが作ったんですから！」

ちひろ「ふふふ、そうね、カワイイ幸子ちゃんが作ったものね」ナデナデ

幸子「あ……頭……」

ちひろ「あ、ごめんなさい……嫌だった？」

幸子「い、嫌じゃない……です……」

幸子「も……もっと……」

ちひろ「ふふ、よしよし」







P「……おーい、紗奈、モンハンやろうぜー」

紗奈「ごめんプロデューサー、ちょっと今は……あ、ちひろさーん」

P「……」

　更に別の日の事務所！


まゆ「ち、ちひろさぁん……」

ちひろ「なぁに、まゆちゃん」

まゆ「あ、あの、明日の温泉の仕事、ちょっと難しくなってしまって……」

ちひろ「え……あ、もしかして……来ちゃった？」

まゆ「は、はぃ……予定より、ずれちゃって……」

ちひろ「うん、ならしょうがないわね。先方に連絡を取るわ」

ちひろ「多分、別の子が行くことになると思う」

まゆ「ご、ごめんなさぁい……」

ちひろ「まゆちゃんが気にすることはないわ。明日はゆっくり休んで、ね？」

まゆ「うう、あ、ありがとうございます……でも、温泉、行きたかったなぁ……」

ちひろ「ふふふっ、じゃあ今度行きましょ？　私が連れてってあげる」

まゆ「え……そ、そんな、悪いですよ……」

ちひろ「遠慮しないの。私とまゆちゃんの仲じゃない」

まゆ「は、はい……」

ちひろ「ふふふっ」ナデナデ

まゆ「……」ボーッ







P「うぇぁぁぇぇ、うぉぇ、うごごご、ごぇ」

ありす「……もう見てられないから言いますけど」

P「ぅぇ？」

ありす「別に佐久間さんは、プロデューサーのことを好きじゃなくなったとか、そんなんじゃないですよ」

ありす「女の子には、女の子の事情があるんです。付き合いがあるんです。分かってください」

P「そ、そうだよな、ありす！」

ありす「橘です」

P「うぇおうぅぇうおぁう」






ちひろ「ありすちゃーん、ちょっといいかしら」

ありす「あ、今行きまーす」






P「オロロロロロロロロロロ」

続くにゃ。今日はここまで

>>23
一番最初にみくにゃんの画像が貼られるなんて、凄いにゃあ！
しかも、出身地まで書いてるにゃ！
きっと、みくにゃんの大ファンだにゃあ！


ただ、ちょっとオサレ過ぎない？

　なんかファミレスみたいなところ！


P「会議だオラァ！　緊急会議だオラァ！」

ヘレン「世界レベルの五月蝿さね」

みく「なに？　みく達の売り出し方法とかにゃ？」

裕子「なるほど。なら私に考えが。先ず、みくちゃんはこの三人の中で一番多く表に出ている訳ですから、あくまで路線は崩さす、方向性を変えずに行くのがいいと思います。下手に動かさないで、ファン層を維持する訳です」

みく「まぁ妥当だにゃ」

裕子「ヘレンさんの場合は、もう少しライブを活発にやった方がいいんじゃないでしょうか。歌や踊りのポテンシャルは誰よりも高いと思いますし、アンダーグラウンドでの人気は十分です。正直、露出が足りてないのではないかと」

ヘレン「ふふ、そうね、私の世界レベルのパフォーマンスは、まだまだこんなもんじゃないわ」

裕子「最後に私の場合ですが、徐々に仕事量も増えていますし、手応えも感じています。我ながら扱いにくいジャンルのアイドルだとは思いますが、それを上手く捌く、見事なプロデュースだと思います」

裕子「ですが、もっと、もっと上を目指します！　今の勢いを加速させます！　エスパーユッコ、まだまだ頑張ります！」


裕子「プロデューサー、これからもよろしくお願いします！」

P「誰だお前」

みく「それはちょっとヒドイにゃ」

ヘレン「空気読みなさいよ」

P「いや正直ちょっと感動したし、ユッコの言うことは間違ってないと思うよ？」

P「でもさ、今明らかにキャラおかしかったよな？　いつものユッコじゃなかったよな？」

P「ビビッて乳首立ったわ！」

裕子「ああ、最近、突発的に真面目になるタイプの念能力が身に付きまして」

P「マジで？　系統は？」

裕子「特質系です」

P「えげつねぇな」

P「ってアホか！」

P「んなことはどうでもいいんだよ！　今はゴリラの話なんてしてないんだよ！」

みく「確かにゴリラの話はしてないにゃ」

ヘレン「ゴレイヌはどうやってあの能力を身に着けたのかしら」

裕子「そりゃあ四六時中考えてたんじゃないでしょうか」

ヘレン「ゴリラを？」

裕子「ゴリラを」

みく「あとは、触ったり、匂いをかいだり、舐めたり」

ヘレン「ゴリラを？」

みく「ゴリラを」

P「えげつねぇな」

P「……うん、ごめん。俺から話題を振ったのは悪かった」

P「だから、ゴレイヌの念能力の議論は後にしてくれないか？」



　※簡単な解説！

　ハンター×ハンターのゴレイヌさんはゴリラを具現化することが出来るよ！　
　でも、そう言った何かを具現化させるには、強い想い入れが必要なんだよ！　
　早い話、ゴレイヌさんはゴリラに愛着があるってことだね！

　えげつねぇな。



P「つまりな、俺が何を言いたいかと言うとだ」

裕子「ちひろさんが思った以上に皆に慕われていて」

みく「自分の立場がなくて」

ヘレン「それどころか、もしかしたら自分はアイドルにソッポを向かれたんじゃないか、と思った訳ね」

裕子「で、どうすればいいか会議をしたい、と」

P「全部分かってんじゃねーか！」

P「なんなのお前ら、なんなのさ！」

P「最初の方向性の話はまぁいいとして」

P「ゴリラとゴレイヌの件は完全にいらねーじゃねぇか！」

裕子「まぁ早い話」

みく「ゴレイヌは結構優秀な念能力者なんじゃにゃい？」

ヘレン「つまり、そういうこと」

P「どういうことだよ！」



　※今日の会議の結論
　・みくの方向性は変えず、ファン層を維持する。
　・ヘレンはライブをもっと活発に行い、表に出るようにする。
　・裕子は今、ノリに乗っているので、このままの勢いで活動する。
　・ゴレイヌはえげつない。
　・以上。　

P「終わっちゃったよ！　会議終わっちゃたよ！」

P「ゴリラの話で幕を引いちゃったよ！」

P「もうむしろゴリラの話で盛り上がった感さえあるよ！」

P「えげつねぇな！」


ヘレン「……じゃあ逆に聞くけど、あなたはどうしたい訳？」

ヘレン「いや」

ヘレン「アイドルにどう思われたい訳？」

P「む……」

みく「他のアイドル達がプロデューサーに関わらないのは、そりゃ当然にゃあ。だって、担当が違うんだから」

裕子「私たち三人以外は、ちひろさんの下で活動している。だから、ちひろさんと多く話をしている」

みく「嫌いなったり、無視している訳じゃないにゃあ」

みく「凛チャン達や幸子チャンは、今ちひろさんの指示で動いているにゃ。そりゃ、そっちに多く接するにゃ」

みく「まゆチャンだってそう。と言うか、そうでなくても、あんな話、なかなか男の人には出来ないにゃ」

みく「紗南チャンはあの時、レッスンに行く直前だったにゃあ。アレはタイミングが悪すぎたにゃ。そうじゃなくちゃ、紗南チャンがゲームの誘いを断るわけないよ」

みく「ありすチャンの場合は、まぁ軽い反抗期みたいなもんだにゃあ。ちひろチャンは皆のおねーさんみたいなもんだからにゃ。だから、ありすチャンも気を許しているにゃ」

みく「だからと言って、プロデューサーのことを信頼していないとか、そう言うんじゃなくて、なんちゅーのかにゃあ……」

ヘレン「あれくらいの年頃の女の子には、色々事情があるのよ。本人が言ってた通りね」

ヘレン「抱えている想い。抱えているコンプレックス。淡い感情」

ヘレン「それを察してやりなさい」

ヘレン「……それよりも、よ」

ヘレン「あなたは」

P「分かってるよ」

P「俺だって、分かってるんだ」

P「一部のアイドル達は、はっきり言って、俺に対してアイドルとしては良くない類の感情を抱いている」

P「嬉しいさ。ああ、嬉しいよ、あんなにカワイイ子たちが、俺のことをそんな風に思ってくれているなんて」

みく「まぁ、気づいているよにゃあ」

P「今流行の鈍感系ラノベ主人公じゃ、プロデューサーは務まらないんだよ」

P「俺のことを慕ってくれている、ともすれば、好いてさえいる。ライクの域を超えて」

P「でもさ、それって、本当にアイドルの為になるのかな」

P「いや、アイドルの為って言うか、先ず、一人の女の子として、その子の為になるのか？」

P「プロデューサーと言う、アイドルに信頼されているポジションにいて」

P「で、実際信頼されて」

P「皆は、その信頼を、変なフィルターに通しちゃってるんじゃないか？」

P「それこそ、好きだとか……愛しているだとか」

P「そのフィルター越しの想いを、俺は受けて良いのか？」

P「いや、駄目に決まっている。そもそも、アイドルなんだ」

P「ファンが愛する、アイドルなんだ」

P「でも、もし」

P「フィルター抜きで、俺のことを好きで」

P「アイドルと言う立場を捨てていいと迄、俺のことを想っているのなら」

P「俺は」

裕子「……人を好きになるのは、どうしようもありませんよ」

裕子「アイドルだって恋をする。止められないんですよ、それは」

みく「なっちゃったもんは、なっちゃった。それだけにゃあ」

みく「一つ言えるのは、好きになった理由は、プロデューサーに取り入って人気になりたいとか、そう言う訳じゃなくて」

みく「アイドルとしてでなく、女の子として恋しちゃってるのにゃ。そのフィルター云々は別として」

ヘレン「だけれども恋は盲目」

ヘレン「良い機会なんじゃない？　あなたから離れて、他の子がどう思うのか」

ヘレン「あなたの言う、『プロデューサーの信頼フィルター』がどこまで作用しているか。そして、それ抜きで、それでも愛していると言うのなら」

ヘレン「アイドルと言う立場を捨てて、一人の男を愛すると言うのなら」

ヘレン「それは、あなたとその子の問題よ。今のうちに、考えておきなさい」

ヘレン「どういう未来を向かえるのかを」

P「ははは……まいったね、こりゃ」

P「皆が皆、笑って居られる、そんな未来はないのかねぇ」

みく「にゃはは、そーなったもんは仕方ないにゃ」

裕子「惚れた者負け、なんて言いますからね」

P「ムハハハッ！　まったく、罪な男だぜぇい！」

みく「こんなぴにゃこら太の何処がいいんだが」

ヘレン「デリカシーもないしね」

P「お前らえげつねぇな！」

P「……」

P「ホント、えげつない」

　んで、翌日の朝だよ！　事務所の前だよ！


みく「でも、難しい問題にゃあ、実際」

裕子「なにが？」

みく「ウチの事務所で特にラブい感情を持っているのは、凛チャン、幸子チャン、まゆチャン」

みく「まぁ他にも居るけど、多分、プロデューサーから告白される、とかない限り、他の子は大丈夫にゃあ」

ヘレン「そして、あの男にはそんな度胸もないし、また常識もある」

ヘレン「言動抜きに、彼はずっと真面目で実直な男よ」

裕子「言動がアレ過ぎる気も……」

ヘレン「それはこの際目を瞑るとして」

みく「凛チャンと幸子チャンは、ラブっ気が強いにゃあ。あれはもう『フィルター』とか関係ないにゃあ」

みく「でも」

みく「二人はあくまで『アイドルとして活動しているウチに、そう言う想いを抱いた』にゃあ。アイドル有りきの感情だにゃあ」

裕子「だけど、まゆちゃんは」

みく「……『プロデューサーの為にアイドルになった』ようなもんだにゃあ。運命とか言ってたしにゃあ」

みく「間違いなく、まゆチャンは『一方を捨てられる人間』だにゃあ。秤の片方に、自分の全てを乗せられる」

裕子「プロデューサーは、どうするんだろう……」

ヘレン「そこまで来たら、あとは彼の想い次第よ」

ヘレン「あの男は、普段はうざったい位におちゃらけている癖に、肝心な中心点を見せない」

ヘレン「つまり、そういうこと」

裕子「プロデューサーがどういう選択をするか、分からない……」

みく「ま、流れに任せるしかないにゃあ」

ヘレン「それはそうと……」

ヘレン「二人はいいのかしら？」

ヘレン「あなた達だって、本当は」

みく「ストップにゃ」

ヘレン「……」

裕子「私はサイキック『アイドル』、エスパーユッコ！」

みく「猫『アイドル』、みくにゃんだにゃあ！」

みく「つまり！」

裕子「そういうこと！」

ヘレン「ふっ……そう、そうなの」

ヘレン「……なら、私から言うことはないわ」

みく「それにしても」

みく「こんな朝早くに事務所に呼ぶなんて、キツイにゃあ」

裕子「レッスンの都合上らしいね」

みく「加え、プロデューサーはどうやら事務所泊まったみたいにゃ。事務処理溜まってるとか言ってたし」

みく「だから、もし事務処理が終わらなかった場合も含めて、こんな早い時間にしたにゃあ」

みく「まったく、いい迷惑だにゃあ！」

ヘレン「ふふっ、文句なら、直接彼に言いましょう」

裕子「合点承知！」

　ガチャ

裕子「さいきっく☆おはようございまーす！」

ちひろ(全裸)「うにゅ……プロデューサー……しゃん……」

P(全裸)「ううう、ゴリラ……ゴレイヌ……ぐぅ」

裕子「んなっ、な、なっなななんなななっ！？」

みく「にゃあっ！？　はだ、裸、にゃ、にゃあ……」

ヘレン(……これは)

　漂う性の匂い。散らばった空き缶。ソファの上で重なり合う男女。床に落ちている血の着いたティッシュ。液体が入ったゴム。
　つまり、そういうこと


ヘレン(そう……)

ヘレン(あなたは、そう言う選択を)




ちひろ(全裸)「ううん……プロ……す……です……」

P(全裸)「うっぐぐぐぐ……えげつ……ねぇな……うごご……」




ヘレン「次のレスまで…………ダンサンブル！」