狐娘「今宵旦那様の床のお相手をさせて戴きます」(451)

小太りの男「ひっ…貴様妖怪か…!」

狐娘「はい、私は穢れた妖怪、化け物でございます」

小太りの男「気持ちが悪い!化け物め、わたしに近寄るな!」

狐娘「旦那様」

小太りの男「ひっ」

狐娘「私は貴方様に決して逆らいませぬ」

小太りの男「…」ピク

嫌いじゃないむしろ好きでもこういうパターンは先を思うとなんとも気の毒な気持ちでうわあああ

>>1
代行ありがとうございます

狐娘「どうぞお好きに犯してください、私は貴方様の狗でございます」

小太りの男「決して…とな?」

狐娘「はい」

小太りの男「…その言葉に嘘偽りはないか?」

狐娘「ええ、勿論。」

小太りの男「ほう…」

狐娘「…」ニコリ

>>2
ありがとう、がんばる

小太りの男「そうか、“決して”か」ニヤリ

ダァン!ガッ

狐娘「ぐっ…」

小太りの男「ほう、逆らわぬとは真実のようだな」ニタニタ

狐娘「…」ニコ

小太りの男「成る程、よくみれば美しい顔をしている」

スルスル ハラリ

小太りの男「気味の悪い色の目だ。」

ガブッ バシッ

狐娘「…」ニコニコ





男「親方、なんだって女郎屋なんかに?」

親方「お前だって男ばかりの工房に篭っているよりたまには女に触れたいだろう」

男「…俺は女郎はすきではありません」

親方「はあ、お前は陰間茶屋のほうが良かったか?女が嫌いだとは知らなかった。」

男「そんなわけないでしょう!俺は女が好きですよ!」

親方「ならば問題ないだろう、なあに良い女を抱かせてやる」

男「だからそういう問題では…もういいです」

親方「お前はどういう女が好みだ?」

男「…全て同じ顔に見えます」

親方「信じられんやつだ」

爺「貴様!わしを愚弄するか!」

男「!?」

さるくらった… ちょっとペースおとす



客引きの少年「旦那、落ち着いてくだせえ」

爺「黙れ!売れっ子でもないのに張り見世にもでられないような妙な女郎を誰が抱くか!」フスー

客引きの少年「いえ、決してそのようなつもりはございやせん。ただ、お金をあまりお持ちでないとのことでしたので、それならと。お勧めさせて頂いたまで。」ヘラヘラ

爺「そのような落ちぶれた女を抱くものか!!」

客引きの少年「それはそれは、大変失礼致しました。」ヘラヘラ

爺「貴様!!」

ザワザワ…

男「…おいオッサンよ、その辺にしときな」

爺「!?黙れ、何だ貴様は!」

男「女の前でみっともなく涎だらだらと垂らすもんじゃねえぞ」

爺「黙れ黙れ、若造が!儂に口出しするな!」

ダンッ

男「うるせえんだよ、老い耄れは畳の上で茶でも啜ってろ」

爺「ッ!小僧ッッ!」

親方「はい、そこまでだ。」

男「邪魔をしないでください、親方!!」

親方「黙れ」ギロリ

男「…ッ」ビク


親方「いや、すまんな爺さん。こいつは俺の弟子でな。よく躾とくよ。」

爺「餓鬼の躾もできんのか、貴様は!」

親方「ああ、ようく言っておく。」ギュ

爺「?…、…!」

爺「わかればいいんだ、わかれば。いいか、ようくだぞ、その餓鬼ようく躾けておけよ。」

親方「へいへい」

スタスタ


男「親方、何だって金なんぞ渡したんですか」

親方「童にゃわからんだろうが、大人にゃ大人のやり方ってモンがある。」

男「んな汚ねぇやり方ッ!」

親方「いいか、男。あのままこの場で暴れまわったとして、てめぇは構わんかもしれねえが、この見世はどうだ。ここまで言えば頭の悪いお前でも分かるだろう。」

男「…っ」グッ

親方「わかったなら帰るぞ。女を抱く金なんぞもう持っちゃいねえ。」

男「…はい」

客引きの少年「ちょいとお待ちを。」

時代劇好きなのか

>>15いや、にわか知識ばかりだ。申し訳ない


男・親方「?」

客引きの少年「先程はありがとうございました。あっしだけではとても対応できやせんでした」ペコ

親方「いや、気にすることはねえ。むしろ弟子が迷惑をかけてすまねぇな」

客引きの少年「とんでもございません。とても助かりました。お礼と言っては何ですが、ウチの見世へ寄っていきやせんか」

親方「あー…ありがてぇ申し出だが、何ぶん金を持っていないのでな。」

客引きの少年「いいえ、勿論お礼でございやすんで、代金はこちらで持たせて頂きやす。」

親方「とは言っても、なあ。」

男「寄っていけば良いじゃないですか。俺は先に戻っています。」


客引きの少年「勿論お弟子さんも一緒にどうぞ」

男「いや、俺は…」

親方「…それにしても、先程は如何したんですか?」

客引きの少年「ええ、ちぃとばかし"訳有り"をお勧めしたところ、あの旦那の癪に触れてしまいままして。」

男「……訳有り?」


客引きの少年「ええ。」

親方「顔が悪いのか」

客引きの少年「いえ、とても美しい姿をしていやす」

親方「我が儘なのか」

客引きの少年「いえいえ、あんな気立ての良いやつぁそうはいやせん」

親方「……とすれば、病気持ちか」

客引きの少年「まさか!至って健康でございやす」

男「…?」

親方「それなのに、訳ありか」

客引きの少年「ええ。」

親方「…ふむ」

男「…?親方、どうしたんですか?」


親方「要は、そいつは見目麗しく、気立てもよくそれでいて健康だが、それ以外に何か問題があるということだ。わかるか?」

男「問題って…」

親方「それも、金の無い客に勧めるほどだ。相当安い金で買われているのだろう、違うか?」


客引きの少年「いいえ、旦那のおっしゃる通りで。」

男「…」

親方「理解できねえって面だな。よくあることだぞ」

男「…」

親方「お前が帰ると言うなら、今日の所は戻るぞ。」

客引きの少年「左様でございやすか……」

男「いや、親方。戻らねえ。」

男「その訳有りの女郎に会わせてくれ。」





ヒタヒタ… ヒタヒタ… ヒタヒタ…


親方「それにしても、よく帰らなかったな。お前女郎は嫌いなんじゃないのか」

男「女郎のことは嫌いですよ。ただ」

親方「なんだ?」

男「自分の体を切り売りして、妥協して媚びへつらってる醜い女の面を拝んでやろうと思いまして。」

男「その根性、俺がたたきなおしてやろうかと」


親方「…」ゴッ

男「い…っ何するんですか!」

親方「まったく、お前は、図体ばかりでかくなってこっちの方はまるで童と変わらんな」

男「俺のどこが童だ!」

親方「図体以外は全てだな。もうお前も二十二だってぇのによ。……その女郎に会ってもてめぇは同じことを言えるか?」

男「は?」

親方「もし気持ちが揺るがず、自分は間違っちゃいなかったと明日になっても言えりゃ、今のは訂正してやらぁな」


男「……意味わかんね」

親方「…いいか。師匠には敬語を使え。てめぇはあくまでも俺の弟子だ。そんな簡単なこともできねぇような半端な野郎を傍らに置いておく理由なんぞねえぞ」ギロッ

男「ッ!」ビクッ

男「…わかっています、申しわけありません」

親方「おう、わかりゃいいんだよ」

ヒタヒタ…ヒタヒタ… …ピタ


客引きの少年「では、ここから旦那のことはこの御職付きの禿が案内しやす」

御職付きの禿「……よろしくお願い致します」

親方「じゃあ、後でな」

客引きの「お弟子様はこちらへ。あっしとどうぞ」

男「……随分暗い道だな」

客引きの少年「そのように怪訝な顔をしないでくだせえ、なんせ普通の女郎ではないもんで、座敷持ちとは言えどその座敷はあまり良いもんではないのですよ。ああ、でも清潔は保っているのでご安心を」

男「……はあ」

客引きの少年「この中で待っていやす。どうぞ、ごゆるりと」


シュルシュル… ギシ…

狐娘「…」ペコリ

男「(…この娘か)」

狐娘「今宵、貴方様の床のお相手をさせて頂きます、狐娘と申します」

男「(随分耳が白いな…)」


男「……顔をあげてくれ」

狐娘「はい」スッ

男「!お前、その目……」

狐娘「…」

男「妖怪か……」

狐娘「はい。私は穢れた妖にございます。今宵限り、貴方様に触れることをお許しください。」ユラリ

男「(肌も瞳もとても白い)」

男「(まるで)」

男「(桜のようだ)」

狐娘「…」

男「(よくよく見てみればまだ童じゃないか。表情は大人のようだが、目鼻立ちは子どもそのものだ。)」

男「(体も随分と小さい。きちんと飯を食っているのだろうか)」

男「…今、幾つだ?」

狐娘「はい、十五になります」

男「十五、か…」

狐娘「…旦那様、如何なさったのですか?」

男「いや…何でもない」

狐娘「作用でございますか」

男「(細めた瞳は花弁のようだな。)」

男「美しい目だな」

狐娘「え…」キョトン

男「どうした?」

狐娘「いえ、…その様なことは久々に言われました。」

男「そうなのか」

狐娘「はい、皆私の瞳を見ては気色が悪いと笑います」

男「こんなにも美しいのに。まるで桜のようだ」

狐娘「桜…でございますか?」

男「ああ、桜だ。見たことはあるか?」


狐娘「いえ…きちんと見たことは、一度も」

男「そうなのか?大門の近くにも咲いていたが」

狐娘「外に出るときは妖怪だとばれぬよう目隠しをしていますので」

男「目隠しを?…それでは不便だろう」

狐娘「いいえ、私は狐族ですので大体の位置は匂いで把握できます」

男「…そうか」ス

狐娘「…旦那、様…」


男「はは、やめてくれ旦那様なんて。まだ俺は見習いの身なんだ。“男”だ。そう呼んでくれ。」

狐娘「承知しました、男様」

男「うーん……。“様”も敬語もやめてくれないか。なんだがムズ痒くて適わねえ。」

狐娘「…」

男「どうした?」

狐娘「…申し訳ありません」ギュ

男「……いや、いい。無理を言って悪かった」

狐娘「いえ」

男「(無茶を言ったのはこっちだ、何故そんなにも悲しげな顔をする)」

この書き筋

>>1殿はどこの文学部卒でござるか?

狐娘「お屠蘇は如何です?ご希望なら三味線なども披露いたします。」

男「…そうだな、じゃあ酒を貰おう」

狐娘「はい」



男「ふうん…、妖怪なら何か力を持っているのか」

狐娘「はい、満月の夜にしか使うことはできないような微弱なものではありますが」

男「そうか…お前は妖怪の村の出か?」

狐娘「はい、最早一族の誰とも会うことは叶いませんが」

男「それは寂しいだろう」

狐娘「いいえ、こうして男様が来てくださりますもの。寂しくなんてありません」ニッコリ

男「…」グビ

>>41
いやいや、妄想が趣味のただの大学生でござる


狐娘「どうかいたしましたか?」

男「…お前は本当に美しいのに、寂しげだ」

狐娘「ありがとうございます」ニコ

男「お前を見ていると、数刻前の傲り高ぶった自分を殴り倒してやりたくなる。」

狐娘「如何してです?」

男「お前に説教をたれにきたつもりだった。説教をするなど、よくもまあ言えたものだ。」

狐娘「ふふ、説教をしていただいても結構ですよ」


男「(綺麗な目だ)」

男「(粉を塗っているのかもしれないが、襟元から覗く肌もとても白い)」

男「(…触れてみたい)」

男「(着物の中に隠れた白い肌に。)」

男「(赤い花を散らして、熱で浮かせたい。)」

男「(こいつが寂しいと言うのなら、満たしてやりたい。)」

男「(他の奴らはきっと、妖怪であるこいつを気味悪がって、触れることもなく逃げていったのだろう。こいつの美しさに気づかず、脅えていたのだろう。)」

男「(きっと、こいつは、誰かに抱かれるということを知らない。)」

男「(人の体温はとても心地いいということをこいつは知らない。)」


狐娘「男様、どうなさりました?」コテン

男「ごめん、な」

狐娘「…?」

男「抱きしめても、いいか?」

狐娘「え…?」

男「……駄目か?」

狐娘「……いいえ、私は貴方様の犬。決して逆らいませぬ」

ギュ…

男「…お前は、細いな」


狐娘「…ここに来て、こうして抱きしめられるのは初めてでございます」

男「…そうか、なあ狐娘」

狐娘「はい」

男「人の温もりを知ってくれ。」

男「愛することを知ってくれ。」

男「俺はこの先きっと女郎を抱くことは無いが、愛することを知れば、美しいお前はきっと幸せになれる。」

男「いつか大人になり、良い旦那様と出会い、愛し、抱きしめ、抱かれ、幸せになれる。」

男「寂しさを知るのにお前はまだ子どもすぎる。」

狐娘「…男様はとてもお優しいのですね」ニコ

男「(また、その顔か)」


狐娘「男様…」

男「…」チュ…

狐娘「…」

男「ん…」チュパ、チュ…

狐娘「ふ、んん…」

男「っは…狐娘…」チュ ペロ レロ…

狐娘「んぅ…、ん」

男「…、ッ……」ス…

スルスル…ハラリ

男「狐…、?……!?」

狐娘「…男様?」

男「これは、」

狐娘「…申し訳ありません、醜い体で」

男「誰にこんな酷い傷を…」

狐娘「私は化け物ですから、仕方の無いことです」

男「客か…?」

狐娘「私が化け物であるが故です。」

男「妖怪だからと非人道的に犯されていたというのか…?」


狐娘「如何なさいました?木戸様」ニコ

男「どうしたもこうしたも…」

狐娘「お好きに犯してください。お好きに使ってください。私には、狐娘にはそれしか生きる道はありませぬ」ニコニコ

男「お前は、人が温かいということを知らないのでは、なく」

男「だから愛することを知らないのではなく」

男「妖怪だから、と乱暴にされ、それを当然として受け入れていたのか…?」


狐娘「……木戸様、如何なさったのですか」

男「如何って…」

狐娘「泣きそうです」

男「(泣きそう?)」

男「(俺が?)」

男「(本当に泣きたいのは俺ではないだろう)」

男「(泣きたいのに泣くことすら許されないなんて)」

男「(もしも、こいつの身体に気づかなかったら)」

男「(俺は、他の男と同じように好き勝手にこいつを犯していたのだ。)」

男「(一人善がりで、こいつの傷を更に増やすところだったのだ。)」

男「…すまない」


狐娘「何が、です?」

男「無理矢理、抱こうとした」

狐「いいえ、それが私の存在意義です」

男「そんなことない!」

男「お前が、お前の存在意義がわからないなら、それが必要なら、俺が見つけてやる!」

狐娘「…?」キョトン

男「…、また来るぜ。だから今日は口づけまでだ」

狐娘「…?良いのですか?」

男「俺を他の野郎と一緒にするな。性に溺れちゃいねえ」

狐娘「…」

男「正直女郎屋もあまり好きじゃあない。だが、お前にはもう一度会いたい」

男「見ていろ、お前の存在意義を見つけてみせるから」

狐娘「…お待ちしております。」ニコ






男「(とは言ったものの)」

男「(職人見習いもどきの俺に女郎屋に頻繁に通う金などあるはずもない)」

男「(見世が開く前に裏に回りこんで窓からこっそりにただ話をするだけ)」

男「(…普通に考えれば最低の客だ)」

男「(それなのにあいつは、いつも笑って俺の話を聞いてくれる)」

男「…あいつの存在意義を見つけるどころか、俺があいつに会いたいと思っていては世話もないな……っと、ここか」

男「おい、狐娘。居るか」コンコン

スッ…

狐娘「いらっしゃいませ、男様」

男「おう、お前いつも居るな。外にはでないのか?」

狐娘「私の容貌では目立ちすぎますゆえ」

男「ああ、以前にも外に出るときは目隠しをしなければならないと言っていたな」

狐娘「はい」

男「でも、勿体無いな」

狐娘「何がですか?」

男「外は美しいもので溢れているのに、お前はそれを見ることが出来ない」

狐娘「しかし木戸様が来てくださりますので寂しいことなどありませぬ」

男「……嬉しいことを言うな、お前は」

男「(けれど、やはりどこか…寂しそうだ。どうすればもっと楽しげに笑ってくれるのだろう)」


男「…そうだ良いことを思いついた。今度お前にも、外の物を持ってきてやる。」

狐娘「外の物ですか?」

男「おう、町に溢れる美しい物の中から更に選び、飛びきり美しいものを見せてやろう」

狐娘「本当ですか?…嬉しい」

男「楽しみにしていろ。春は美しいものに溢れているから」

狐娘「はい。…男様、今日は何時まで居られるのですか?」

男「ああ、あまり長くは居られねえ。親方の目を盗んで抜け出してきてんだ。バレたらやばいからな」

狐娘「そんな、無理をしてまで会いに来てくれなくとも良いのですよ、十分幸せです」

男「いいんだ、俺が会いたいから来ているだけだ」

狐娘「…ありがとうございます」


男「…そういえばお前は、他の遊女とは髪型が違うのだな。遊女とは幾つものきらびやかな簪を刺しているものだろう」

狐娘「ああ…、みっともないでしょう?私には髪結いがいないのです。自分では上手く結えなくて、結局この髪型になってしまったのです」

男「そうなのか…、いやしかしせめて額だけでも出したらどうだ?」

狐娘「…」

男「(また、その顔…)」ズキ

男「…すまない」

狐娘「何も謝ることなんてございませんよ、男様は本当にお優しい方」

男「(こいつの目を見て最初に過ったのは確かに桜だった)」

男「(しかし寂しげで冷たい雰囲気は桜よりも雪に近い気もする)」

男「…冬は、すきか」

狐娘「冬…、はあまり好きではありません。」

男「そうなのか、雪がきれいなのに」

狐娘「ええ、雪は美しいと思います。…寒いのが苦手なのです。」

男「お前にはきっと白い雪がよく似合うよ」

狐娘「寒さに耐え忍ぶ切なさや、温もりのない寒空に投げ出されることが怖いのです」

男「…桜」

狐娘「?」

男「いや…、まるで桜のようだと思ってな」


狐娘「桜?私がですか?」

男「ああ、孤独に怯え暖かい春を待つだなんてまるで桜だ」

狐娘「桜は孤独なのですか?」

男「いや、俺の今暮らしている村のはずれに、大きな桜の木が立っているんだ。」

男「そこは冬になるととても雪が深くなる。村人達は誰も近寄らないんだ」

狐娘「それは、寂しいですね。」

男「その桜は、春に雪を降らす」

狐娘「……雪を?」

男「純白の花をつけるんだ」

狐「桜は淡い薄紅と聞いておりましたが…白い花弁だなんて」

男「俺達はその桜を“雪桜”と呼んでいる。冬に耐え、暖かい雪を降らす姿は強く、美しい」

狐娘「あたたかい、雪…」

男「それから、その桜にはちょっとした伝説があってだな」

狐娘「伝説?」

男「その桜の樹齢は、もう千年以上になる。」

狐娘「…」

男「雪桜は、今まで見てきた、その人“千年分の悲しみ”を呑み込む変わりにその人へ自分の持つ“千年分の幸せ”を与えるそうだ。」


狐娘「…素敵ですね」

男「まあ伝説だからな、信憑性には欠けるだろう。」

狐娘「そうでしょうか、素敵ではないですか。千年分の幸せだなんて。」クスクス

男「“千年分の幸せ”を信じるか?」

狐娘「ええ、もし本当なら素敵だと思います」

男「…なら今度持ってきてやる」

狐娘「ふふ、ありがとうございます。ですが大樹を持ってくるだなんて無理でございます。」

男「流石に俺はも其処まではできねえよ。枝を持ってくる。もうすぐ剪定のはずだ。その時に」

狐娘「……本当ですか?」

男「約束する」ニカッ

狐娘「楽しみにしています」フワッ





狐娘「(最近、少し風変わりな客が付いた。)」

狐娘「(初めて訪れた時は強引に触れられた。)」

狐娘「(いつもの様に、乱暴に抱かれるのだろうと思った。)」

狐娘「(しかし彼はあたしの身体を見た途端に動きを止め、言葉を詰まらせて目には涙を溜めた。)」

狐娘「(とても変わったひとだ)」

――男『美しい目だな』

狐娘「(あたしを褒めて優しい口付けをくれる。)」

狐娘「(まるで宝物に触れるように優しくあたしに触れてくれる。)」


狐娘「(彼は、優しくて、とても温かい。)』

狐娘「(彼の話を聞くのがとても好きだ。)」

狐娘「(話を聞きながらその目を見る事が好きだ。)」

狐娘「(真っ黒なのに奥の方は何処か青みを帯びていて、まるで夜空の様だ。)」

狐娘「(真っ直ぐで、優しい方。)」

狐娘「(けれど、時にとても虚しくなる。)」

狐娘「(彼が余りにも優しくて、綺麗で、真っ直ぐで、自分の醜さを思い知らされる様で。)」

「狐娘、居る?」

狐娘「姐さん」

姐女郎「また座敷に籠っているのかい。たまには日に当たらないとだめだよ、気も滅入ってしまうじゃないか」

狐娘「ありがとうございます、でも私が座敷から出れば他の遊女達が嫌な思いをします」

姐女郎「そんなこと言わしゃしないよ、あんたも私の大事な妹分じゃないの」

狐娘「ふふ、私は妖怪ですから…」

姐女郎「…馬鹿ね、あんたはこんなに優しいのに、他の娘たちは気づいちゃいないんだ」

狐娘「優しいのは、姐さんのほうですよ。まるで天女だ」


姐女郎「またそうやって…まあいいよ、桜餅を買ったんだ。お茶にしよう」

狐娘「え…でも」

「姐さん」

狐娘「禿。どうしたんだい?」

禿「あの、亡八が呼んでいたよ」ビクビク

姐女郎「ええ?もう、これからお茶飲もうっていうのに!」

禿「姐さん…早く…」ビクビク

狐娘「…」チラ

禿「ひっ…」ビクッ

姐女郎「……仕方ないね。狐娘、桜餅食べていいよ。」ニッ

狐娘「ありがとうございます。」

姐女郎「もう、あんたはいつまでたってもまるで客に話すみたいに私にも話すね。淋しいよ」

狐娘「…申し訳ありません」

姐女郎「……とっても美味しいんだから、味わって食べな」

スッ パタパタ…

狐娘「寂しい、なんてそんなこと言われたって」

狐娘「ここは遊廓で、あたしは股を開く化け物。」

狐娘「ただ気味悪いだけの存在じゃないか。」

狐娘「こんなことを言えば、優しい姐さんは怒るかな」

狐娘「…ごめんなさい」

コツコツ

男「俺だ、開けてくれ」

狐娘「はい、ただいま」

ス…


狐娘「いらっしゃいませ、男様」

男「今、平気か?」ニカ

狐娘「ええ、まだ見世の始まるまで時間があります」

男「よかった。はい、これ」

狐娘「……花?」

男「それが、先日言っていた雪桜だ。」

狐娘「あ…っ」

男「よく似合うよ」

狐娘「でも、この枝」

男「心配するな、今朝剪定があって、地に落ちていたものを拾ってきたんだ」

狐娘「そう…凄い、桜だなんて初めて見た」

男「よろこんでくれてよかった」

狐娘「ありがとうございます。部屋の坪に飾りますね」


男「いつか大樹でも見せてやりたいな」

狐娘「いえ、これで十分でございます、とても綺麗」

男「いや…、いつか見せてやる。楽しみにしてろ」

狐娘「ふふ…楽しみにしていますね」

男「ああ。じゃあ、またな」

狐娘「もう行ってしまうのですか?」

男「ああ。親方に掃除しとけって言われてたんだ」

狐娘「…無理して今日来てくださらなくても良かったのですよ?」

男「違う違う、早くお前に見せてやりたかったんだ。じゃあな」

ザッザッ…

…ス

「ふふ…、桜餅の色とは全然違う。」クスクス





狐娘「んぅ、ふ…」

細身の客「歯など立てたら、どうなるかわかっているな?」ハァハァ

狐娘「…ん、ん」

細身の客「うっ…」ドピュ

狐娘「んんッ!ぅ…」ゴクン…

細身の男「枝のような体だな、すぐに折れてしまいそうだ」ナデナデ

狐娘「ああ、旦那様…ッ」フルフル

細身の男「感じているのか、妖怪」ガリッ

狐娘「いたっ、ふぁっ、あぁ…やめ、」

細身の男「は…ッ、黙れ気色悪い。人間の女の様な声をあげるな」ニヤニヤ

狐娘「ん…っそれ、やあ…」


細身の男「これが良いのか?ん?」

狐娘「あッ、ああ、旦那様、旦那様ッ」

細身の男「ふっ…私が憎いか化け物」

狐娘「やッ…、そんなこと、あ、あぁッ」

細身の男「ふ、本当にお前は気持ち悪いな」ガブッ

狐娘「いた、やめ…っあぁ…」

細身の男「“やめろ”?笑わせてくれる。化け物風情が人間に逆らうな、そんなに悦がっている癖に」

狐娘「あっ」

細身の男「…本当に気味の悪い目だ。」

狐娘「あぁ、あ、ぃや、ん」

狐娘「(身体の中で暴れる細くて短い指。)」

狐娘「ああっ、やあ、ああ…、ぁあっ」

細身の男「ふっ、…淫獣め」

狐娘「あああぁっ!や、あぁあッ!」ビクン

――――男『よろこんでくれてよかった』

狐娘「…っ!」

――――男『お前は本当に美しいのに』

狐娘「(…桜)」

狐娘「(きれい…)」

狐娘「(男様…)」

狐娘「…こ、さま…」ポロポロ

狐娘「(……いたい…)」ポロポロ





男「ううん…やはり簪よりも髪紐のほうが似合いそうだが…」

男「…いまいち、これといったもんがないな」

男「…」ハア

友「どれも気に入りませんか?」

男「ああ…」

友「ならば作ってみてはいかがです?」

男「作る?」


友「ええ、その娘に似合いそうな髪紐を貴方が作ればいいではありませんか」

男「でも…」

友「縫製の手伝いくらいならしますよ。」

男「それはありがたいが…」

友「一度やってみなさい。売りに出すわけではないのですから」

男「それもそうだな…」




男「白い浴衣、白い浴衣…あ、あった」

男「…」パチン

男「…」シュルシュル

男「…」チョキチョキ

男「やはり、桜の柄にしたいな」チョキチョキ

男「書けるのか、この手で…」ハァ






男「…できたのか?」

友「ええ、どうぞ」

男「おお、流石友だな。とても綺麗に仕上がってる。…でも」

友「何です?」

男「やはり絵は酷いな…」

友「…よくやったほうでしょう。その手なら」

男「…」

友「そんな顔をするんじゃありません。きっと喜んでくれますよ」

男「だといいが…」


友「素敵ではありませんか、桜柄の髪紐だなんて」

男「…」

友「早く渡してきなさい。そろそろ時間でしょう」

男「…ああ」ギュ

友「…あれは、母子でしょうか。ほほえましいですね」

男「手なんて暫く繋いでいないな」

友「?…あの二人、何故目隠しを…?」

男「さあ…?」




男「おい、狐娘はいるか」

客引きの少年「あれま、旦那お久しぶりでございやすな。狐娘でいいんですかい?」ヘラヘラ

男「ん、案内してくれ。」

客引きの少年「はいはい、此方へどうぞ」ヘラヘラ

男「…お前の笑顔は不気味だな」

客引きの少年「ええ、そうですかい?初めていわれやしたよ。今日は親方様は一緒ではないんですねえ」ヘラヘラ

男「ああ、今日は一人だ。何か問題あるか?」

客引きの少年「いいええ、滅相もない」ヘラヘラ


ヒタヒタ…ヒタヒタ… …ヒタ

客引き「此方になります。どうぞごゆるりと…」ヘラヘラ

シュルシュル… ギシッ

狐娘「今宵、旦那様の床のお相手をさせていただきます、狐娘と申し―――」

男「狐娘」

狐娘「男様!…いらっしゃいませ」フワリ

男「こっちから会うのは久しぶりだな」

狐娘「もう座敷へは来て下さらないのかと思いましたよ」

男「金が無かったんだ。仕方ないだろう」

狐娘「ふふ」クスクス

男「…」カァ

狐娘「男様?」

男「(…いつ渡そう)」


狐娘「…如何か致しましたか?」

男「あー…お前」

狐娘「はい」

男「お前、ええと、…、お前のその目って普通に見えるのか?」

狐娘「普通に…とは?」キョトン

男「若干こう、…白みがかってたり」

狐娘「あはは、しませんよ。貴方達の目は世の中が黒ずんで見えているわけではないのと同じように」コロコロ

男「…言われてみれば確かにそうだ。」

狐娘「もしや男様、緊張しているのですか?」

男「……え」

狐娘「見ていれば解りますよ。男様はとても解り易いお方」クスクス

男「…っ」

狐娘「男様?」

男「き、狐娘」

狐娘「?はい」

男「良かったら、受けとってくれないか」

狐娘「え…?」

男「…いらなかったら、捨ててくれて構わない」

狐娘「私に、ですか?これを、私に?」

男「…ああ」

男「…ああ」

狐娘「…」

男「…」

狐娘「……嬉しい」

男「え…」

狐娘「綺麗…、とても、綺麗」

男「(そんなにも、嬉しそうに笑われたら)」

男「(そんな風に顔を赤くされたら)」

男「(触れてしまいたくなる)」

男「(恋しい。)」

狐娘「男様、ありがとう、ございま―――」

ギュゥッ


狐娘「男様?」

男「好きだ」

狐娘「え…」

男「お前のために会いにきていただなんて嘘だ。いや、最初は本当だった。しかし」

男「会うたび、想いが強くなった」

男「会いたかったのは俺の方だ」

狐娘「…」

男「…」

狐娘「…男様」

男「…」

狐娘「本当、ですか」

男「…」

狐娘「嘘、ですか」

男「…っ」

狐娘「…許さない」

男「えっ…」

狐娘「いくら、男様と言えど、言っていい、冗談と、悪い、冗談が、あるっ」ポロポロ

男「…狐娘」

狐娘「そんな、こんなに、優しくされて、こんなの、初めてなのに、ッ…そんなことを言われたら、あ、あたしははどうしたらいいんだっ」

男「狐娘」

狐娘「あたしだって、あたしだって解ってるんだっ、あたしは、化け物が、恋簿の気持ちをっ、抱いたところで、受け入れてッ貰えないなんて!」

男「狐娘!」

男「狐娘!」

狐娘「…ッ」

男「嘘じゃない」

狐娘「男さ…」

男「好きだよ」チュ…

狐娘「ん…っ」

男「好き、好きだ」

狐娘「本当?…本当?」

男「…この状況で嘘をつける程、俺は器用じゃねえ」

狐娘「ぁ…」

男「本当に、好きだよ」

狐娘「あたしも………でも、」

男「でも?」

狐娘「あたしが、…此処へ来た理由を知っても、男様は、あたしを、好きだと…言ってくれる?」

男「…理由?」

狐娘「……そう、理由。」


狐娘「私は、貧しい一族の出なのです。」

狐娘「私達の一族は、額に大きな紋様があり、茶色の髪が特徴で、女のみが淡い銀色の瞳を持っているのです。」

狐娘「女しか持ち得ないその瞳の色は、一族の誇りで、夜に光る満月のようだと一族の男は言っておりました。」

狐娘「小さな貧しい村でした。」

狐娘「しかし幸せでした。」

狐娘「私には母が居ませんでしたが、裏に住むお爺さんは優しかったし、父は私を愛してくれたのです。」


狐娘「父の、声がとても好きでした。」

狐娘「いつも、私見る度頭を撫で、瞳の色を誉めてくれました。」

狐娘「母が居ないことを憂いたこともありますが父が入れば幸せでした。」

狐娘「ですが、私が十歳の頃人間が村へ訪れたのです。」

狐娘「ご存知でしょうか、「妖狩(あやかしがり)」という言葉を。」

狐娘「所謂、歴史には隠された賤しい金持ち共の道楽の一つです。」

狐娘「妖怪は人間に仇なす危険な化け物であり、排除しなければならないという名目を掲げて突然村を訪れ、男と子どもは一人残らず殺され、女は美しい者のみ生かされ安い遊女屋へと売られていくのです。」

狐娘「人間達からしてみれば妖怪は恐怖の対象以外何物でもなく、誰も彼らを止めようとはしません。」

狐娘「勿論気性の荒い妖怪居ますが、私達は人間のような武器を持っていません。」

狐娘「妖は皆貧しく、身体能力こそ人間に勝ってはいますが学はありません。武器を持つ人間が訪れたとて勝目はほぼ皆無に等しいのです。」

狐娘「私達の村とて例外ではありません。」

狐娘「私達には確かに特殊な能力が備わっていますが、それは満月の夜にしか使うことはできません。」

狐娘「何の意味も有りませんでした。銃や刀を持つ人間には勝目などありませんでした。」

狐娘「人間が訪れた時、私達は急いで女と幼い子どもを逃がしました。」

狐娘「子どもと言っても女が抱いて走れる程度の赤子だけでしたので、六つを越えた子どもは村に残されたままでした。」

狐娘「じきに人間が訪れ、残った子どもは村の一番奥の蔵に身を潜め、人間達が去るのを待ちました。」

狐娘「しかし、結局その場所も見つかってしまい、皆蔵から引っ張り出されました。」


狐娘「外は、地獄の様でした。」

狐娘「外壁は道は赤い斑点がばらばらと散っていて、見知った一族の民がそこらじゅうに倒れているのです。」

狐娘「咄嗟に父を探しましたが、その中には父の姿は有りませんでした。」

狐娘「もしかすると父は逃げることが出来たのかもしれないと安堵したのです。」

狐娘「ですが、死体を前にしている癖に安堵などした罰があたったのかもしれません。」


狐娘「自分の隣に立っていた子どもが斬られました。」

狐娘「頭から真っ二つになりました。」

狐娘「血が吹き出す様を初めて見ました。」

狐娘「私は腰が抜けてしまい、立っていられずその場に座り込みました。」

狐娘「人間はじっと私を見て、刃物で額を切りつけました。」

狐娘「ああ、自分は死ぬのだと思った瞬間、急に髪を引かれました。」

狐娘「何かと思うと男は私を見て笑ったのです。」

狐娘「「こいつは金になる」」

狐娘「実に賤しい顔でした。」

狐娘「恐怖に支配された私は声すらも出せずその場でただ涙を溢しました。」

狐娘「「うちの見世に置こう」」

狐娘「「上手く使えば陰間茶屋に売るよりも良い金になるだろう。まるで雪か月のように暗く冷たい目をしている」」

狐娘「そう言うと私の手を掴み強く引きました。」


狐娘「最早抵抗する力など有りませんでした。」

狐娘「その時、聞き覚えのある声がしたのです。」

狐娘「大好きな、あの声でした。」

狐娘「父は震えながら私を護ろうと血濡れで人間達へ向かっていきました。」

狐娘「「俺の娘に触れるな」と叫んでいました。」

狐娘「私も思わず父を呼びました。」

狐娘「ですが、父は撃たれました。」

狐娘「たった一発で父は立てなくなりました。」

狐娘「びくん、びくんと痙攣しているところを人間にぐちゃりと踏まれ、遂に父は動かなくなりました。」

狐娘「名を呼べど、泣けど、父はもう動きません。」

狐娘「もう、私の名を呼んではくれません。」


狐娘「じたばたと暴れても意味はなく、しっかりと抱えあげられたまま私は馬に乗せられ、父を葬ることすら許されず連れていかれました。」

狐娘「残った同じ年頃の子ども達はきっと殺されたのだと思います。」

狐娘「もし仮に生きていたとてもう会うことは叶わないでしょう。」

狐娘「そうして私は此処へと引き取られ、女郎としての生活がはじまりました。」


狐娘「田舎の出だった私は最初にまず口を良く磨かれ、脇を洗われました。」

狐娘「きめの細かい肌になるようにと石榴の皮で乱暴に擦られ、三味も琴も叩き込まれました。」

狐娘「仕草も言葉遣いも美しくしろと言われ、かつての自分は押し潰されました。」

狐娘「それと同時に夜の訓練も始まりました。」

狐娘「初見世まで生娘で居るのが普通ですが、妖怪を女郎にする時は人間への恐怖心を植えつける為に初見世の前に犯されるのです」

狐娘「幾晩も幾晩も行為を繰り返され、慣らされていきました。」

狐娘「最初は本当に痛くて痛くて声も涙も枯れるほどでしたが、次第に何も感じなくなりました。

狐娘「そうして暫くしてから、私は十一歳の頃、初めて客を取りました。」

狐娘「客は私を見て涙を流して叫びました。」

狐娘「「気持ちが悪い」と泣きました。」

狐娘「私とて初めての客はとても怖かったのです。」

狐娘「ですが勇気を振り絞り、言いました。」

狐娘「「私はあなた様に決して逆らいません」と」

狐娘「その場で只大人しくしている私を見て客はおずおずと触れてきました。」


狐娘「笑う私を見て客は私を殴りました。」

狐娘「あまりの痛さに涙が出ました。」

狐娘「ですが初めて挿れられた時の痛みよりは何万倍もましでしたので、まだ笑えました。」

狐娘「気を良くした客は笑いながら私を殴りました。何度も何度も何度も何度も殴りました。」

狐娘「初めて中で出されました。」

狐娘「死んでしまいたくなりました。」

狐娘「父が美しいと言ってくれた瞳は皆に貶されました。」

狐娘「気持ちが悪いと、不気味だと、鬼のようだと。」

狐娘「勿論私とて、人間の男の皆が皆、こうなのだと思っている訳では有りません。」

狐娘「ですが私の元へ来る客は基本的に皆、見世の前で唸りながら張り見世に出る女の品定めをしている様な男ばかりです。」

狐娘「人間の女を抱くつもりが、相手が妖怪だというのですから荒々しくされるのも仕方ないというものでしょう。

狐娘「ですが、頭で解っていても辛い時があるのです。」

狐娘「自分は何をしているのだろうと、考えてしまうのです。」

狐娘「男の精に濡れ、生きていて本当に幸せなのだろうかと、考えてしまうのです。」

狐娘「私は人間ではありません。」

狐娘「この先も人間にはなり得ません。」

狐娘「美しい着物が欲しいと思った事がないかと言えば嘘になります。」

狐娘「道中とて見てみたいと、やってみたいと思ったことがなかった訳ではありません。」

狐娘「けれど、人間になりたいと思ったことはありません。」

狐娘「人間になったとて私が私であったならきっと結果は同じであったでしょう。」

狐娘「結局の所私が妖怪だからだとか、そういった事は関係なく、私が私として汚いからこそこうなってしまったのでしょう。」

狐娘「男に抱かれることに抵抗を感じなくなった時点できっと私は女郎以外何者でもなくなってしまったのです。」

狐娘「父が呼んでくれた名を捨て、男に毎晩抱かれ喘ぐ私はきっと妖怪でも人間でもなく、ただの醜い女郎の化け物です。」

狐娘「こんな私を愛してくれる人など居る訳がないと、解っているのです。」

狐娘「そんなことは、解っているのです。」

狐娘「あなたもきっと私に近づけば近づくほど気持ちが悪いと感じるでしょう。」

狐娘「ですがそれが普通なのです。」

狐娘「……男様も今は私に同情なさっているだけなのではないでしょうか」

男「…狐娘」

狐娘「……はい」

男「俺は職人見習いを名乗っているが、実際はそうじゃない」

狐娘「え…?」

男「二十の頃、手首を折って、それから右手の中指が動かなくなった。日常生活に大きな支障はないが、もう職人にはなれない」

狐娘「…」

男「でも、職人になると言って十二の頃親の反対を押し切り飛び出してしまった俺には行く所がなくてな。親方はそんな俺を雑用として傍に置いてくれているんだ。」

男「使い物にならなくなった俺を傍に置いてくれる、親方の優しさが、痛くて仕方なかった。」

男「そして、その優しさに身を委ねるしかできない自分に呆れたよ。」

男「ただの甘ったれだと自己嫌悪に落ち入りながらもぬるま湯の心地よさから逃れられない自分がとても嫌だった。」



男「昔の事を、話してくれてありがとう、辛かったろう。」

狐娘「…」

男「お前は汚くなんかないよ」

狐娘「…っ」

男「凄く綺麗だ」

男「例えその細い身体で汚い男共の精を受け止めていたとしても、変わらず美しい。」

男「綺麗なんだ、本当に、本当に。」

男「汚いなんて、言うな」

狐娘「男さ…っ」

男「おいで、狐娘」

狐娘「え…」オロオロ

男「…」

ギュ


男「お前の、何処が汚いんだよ、こんなに、良い香りがする。こんなに、きれいだろ」

狐娘「男様、」

男「"男"でいい」

狐娘「ですが」

男「俺、俺、わからねえから、お前の考えてることとかはわかんねえからさ」

男「自分以外の奴が考えてる事なんて解らないからさ」

男「だから、教えてくれ」


男「お前は、本当はどうしたい?」

狐娘「…」

男「俺に、触れてほしくないならそう言ってくれ」

狐娘「そんな…」

男「何も遠慮しなくていい、お前の望む様にしろ」

狐娘「……ッ」

男「俺は、お前に触れたい。」

男「触れていたい」

狐娘「ずるいひと……っ」

狐娘「あたしだって、あなたに、触れたい…!」

男「好きだ、お前が本当に好きだ…」

狐娘「あたしも、あたしも…すきだよ……っ」


こんなことになると、誰が予想しただろうか。

俺は、こんなにも誰かを愛しいと感じることができるのか。

俺は初めて狐娘の額を見た。

其処には妖の証である紋と、上から付けられたのであろう傷があった。

其れにゆっくりと舌を這わせる。

泣き虫な狐娘。

涙を吸うと声を出して笑った。



男「狐娘、本当の名を教えてくれ。お前が愛した父がつけた名を」

狐娘「……少女、です」

男「少女…。」

ギュゥッ…

男「少女、少女…」

狐娘「……おと、こ…」

男「好きだ…」

狐娘「男、男…!」

男「少女…ッ」チュ

狐娘「ふ、んん…」チュ…

男「ん…」チュ…

狐娘「男…」

男「うん」

狐娘「あたし、もっと触れたい……」

男「……」

狐娘「…………あなたに溶かされてひとつになりたい…っ」

バサッ

スルスル…

狐娘「ああ…っ」

男「少女…」

狐娘「男……」

男「きれいだ、かわいい。」

狐娘「ふぁ、ん……、やあ…」ピクピク





狐娘「男の目は不思議だ」

男「目?」

狐娘「うん、真っ黒なのに、何処か青みがかってるんだ」

男「そうなのか?…自分じゃ気づかなかった。」

狐娘「凄くきれい、吸い込まれそう」

男「ありがとう…」

狐娘「……、今、凄く幸せ」

男「本当か?」


狐娘「まるで、夢を見てるみたい」

男「夢?」

狐娘「愛しい人に捨てた名を呼ばれ、強く抱き締められるなんてこんな幸せ」

男「夢なんかじゃないよ」

狐娘「もし、そうなのだとしたらきっとこれはあなたがくれた桜のおかげだ」

男「桜」

狐娘「うん、あの部屋の角に佇む春の雪があたしに幸せをくれたんだ」





狐娘「(彼に少女と呼ばれるようになってから、数週間が過ぎた。)」

狐娘「(彼は今までと同じように週に二度訪れ、外の話を聞かせてくれる。)」

狐娘「(けれど今までと同じでも、やはり何処か違うような気がするのは一体何故だろう。)」

狐娘「(照れたように笑う男を見ていると満たされた気分になるのは何故だろう)」

狐娘「(口づけする度愛しさを増し、触れるたび体温は上がる)」

狐娘「(時が経てば経つほど離れるのが惜しくなる。)」



男「足りないか?」

狐娘「足りない…もっと」

男「いくらでも」

狐娘「…、すき」

男「うん、俺もだ」

狐娘「もう一度、……名前を呼んで」

男「…少女」

狐娘「このまま…夜が明けなければいいのに」


狐娘「(彼に少女と呼ばれるようになってから、数週間が過ぎた。)」

狐娘「(彼は今までと同じように週に二度訪れ、外の話を聞かせてくれる。)」

狐娘「(けれど今までと同じでも、やはり何処か違うような気がするのは一体何故だろう。)」

狐娘「(照れたように笑う男を見ていると満たされた気分になるのは何故だろう)」

狐娘「(口づけする度愛しさを増し、触れるたび体温は上がる)」

狐娘「(時が経てば経つほど離れるのが惜しくなる。)」


男「じゃ、戻るな。」

狐娘「うん、がんばって」

男「掃除ばかりだけどなー」

狐娘「でも、大事なことだよ」

男「解ってる」チュ

狐娘「ん…」

男「じゃあな」

狐娘「あ…」

ザッザッ…


狐娘「…」

姐女郎「狐娘」

狐娘「姐さん、如何したのですか?」

姐女郎「亡八が呼んでるよ、行きな」

狐娘「…亡八が私に、何の用でしょう」

姐女郎「さあね。…まあ、うちの亡八は他の見世に比べて穏やかだし、優しいひとじゃないか。気を張ることないよ」

狐娘「…」

姐女郎「もう、ほら。私も一緒に行ってあげるから、立ちな」グイ

ヒタヒタ…ヒタヒタ…

狐娘「失礼します」

亡八「姐女郎、わざわざ済まないね。有難う」

狐娘「そんなこと気にしないでよ」

亡八「狐娘、久しぶりだね。元気にしていたか?」ニコ

狐娘「ええ、お陰様で。」

亡八「…さて、今日来てもらったのは他でもない。喜べ、身請けの話がきた」

狐娘「・・・え?」

姐女郎「うそ…、よかったじゃないか!」

狐娘「姐さ」

姐女郎「やっと、やっと幸せになれるんだよ!」

亡八「姐女郎、狐娘と二人で話がしたいんだがいいだろうか」

姐女郎「あ…、そうだね。無神経だったよ!すまないね。」

パタパタ…

狐娘「…亡八殿、あの」

亡八「うん、どうしたんだい」

狐娘「その身請けの話なのですが、」

狐娘「……申し訳ありません、そのお話お断りさせていただきます」

亡八「…」

狐娘「(…ごめんなさい、姐さん)」


亡八「……どうして?」

狐娘「…私はこんな身体ですし、人間ですらありません。相手の方は私を気に入って下さったのでしょうが、きっとそれも一時の気の迷いだと思えます。」

亡八「…ふむ」

狐娘「それに、私などに身請けの話を頂けたことはとても喜ばしい事なのですが、私はまだこの見世にご恩が有りますので…」

狐娘「(…嘘だ)」

狐娘「(本当は彼以外の所有物になりたくないだけ)」

亡八「そうか、うん。君がそう決めたのなら仕方ないね」ニッコリ

狐娘「…申し訳ありません」ホッ

亡八「いやいや、良いんだよ。僕はてっきり君が間夫(まぶ)でも囲っているのかと思ったよ」

狐娘「…え?」


亡八「そう、例えば中指の不自由な職人見習いとかね」

狐娘「!?」

亡八「いやあまさかそんな話あるわけないと思っていたよ。」

狐娘「…」

亡八「そのような事をすれば懲罰房行きだしね、…相手だってただでは済まさないよ。」

亡八「いいかい、君は陰間で、しかも化け物なんだから。金を貰って股を開いていれば良いよ。」

狐娘「…」

亡八「話はそれだけだよ。身請けの話は気にしないでいいからね、僕の嘘だから。君が言うように、化け物を所有しようなんて物好きはそうそういないよ」

狐娘「はい…」


ヒタヒタ…ヒタヒタ…

狐娘「(廊下、冷たい…)」

狐娘「(長くて、暗い。)」

「あれ、狐娘じゃないか」

狐娘「あ…、不寝番の」

客引きの少年「あい、座敷から出ているなんて珍しいねえ」ニタニタ

狐娘「亡八殿に呼ばれていたのです」

客引きの少年「そうかそうか、随分窶れた顔をしているねえ」ニタニタ

狐娘「ええ、最近少し寝つきが悪くて」

客引きの少年「そうかあ、ふうん」ニタニタ

狐娘「では、」


客引きの少年「あ、そうそう。伝え忘れていたよ。」ニタニタ

狐娘「はい」

客引きの少年「壁に耳有り障子に目ありだ。滅多な事は慎んだ方が身の為ですぜ。」ニタ…

狐娘「!?」ゾッ

客引きの少年「…そろそろ見世が開く。準備したほうがいい」ニタニタ

タタタ…


狐娘「(そうだ、亡八殿は何故男の存在を知っていた?)」

狐娘「(広い見世の中で何故あたしが間夫を囲っている事に気がついた?)」

狐娘「(一人で夜に座敷を回っていた?)」

狐娘「(いや、そんな訳はない。)」

狐娘「(彼とて暇ではないし、男が客として見世に来たのは数える程だ。)」

狐娘「(何より、亡八殿があたしの座敷に訪れるあの暗い道を歩いている姿だなんて、不自然すぎる。)」

狐娘「(あたしの座敷を頻繁に訪れるのは、姐さんと、案内役の客引き兼不寝番の彼くらいだ。)」


狐娘「あ…っ」

狐娘「見張られて…?」

狐娘「ふふ…そりゃあそうだ」

狐娘「あたしは汚い化け物だ」

狐娘「幸せになどなれるわけもない」

狐娘「男がくれた、髪紐…」

狐娘「…」

狐娘「「ただではすまさない」…」

狐娘「男にはもう…会えない」





狐娘「…」ハァ

狐娘「会いたくない…」

コンコン

狐娘「!」ビク

男「おおい、少女。」

狐娘「…はい、ただいま」

スッ


狐娘「申し訳ありません、本日既に予約が入っていますので、お引き取り願います」

男「…少女、どうした?」

狐娘「…その様な者は存じあげません、申しわけありませんが失礼します」

男「どうしたんだよっ急に!なあ!」

狐娘「…私は千年分の幸せを、使いきってしまったのです」

ピシャリ

狐娘「……あ、桜……枯れてる」




男「…どうして」

親方「おお、戻ったのか。思っていたより早かったな」

男「…」

親方「ああ?どうした、しけた面しやがって」

男「…」

親方「なんでえ、最近やけに仕事が早えから懇意にしている女でもできたのかと思っていたんだが…その様子ならこっぴどくふられたか。」

男「…気づいていたんですか」

親方「ひでえ面だな、ここ暫くはそこそこいい顔をしてたってのに」

男「……はい」

親方「そんなに惚れ込んでたのか」

男「……すきでした、とても。今でもすきです」

親方「……」

男「でもっ」

男「別れを告げることもなく、遮られました。」

男「俺が、餓鬼だから……」

男「笑った顔が見たかっただけ、なのに…」

親方「……お前はやはりまだガキだなあ」

男「んなこと判って……っ」

親方「いいや、分かってねえ」


親方「いつも言っているだろう、図体ばかりでかくなってこっちの方は童のまんまだと」

男「……」

親方「いいか、ようく聞け。童がなに偉そうに悟ったようなことを言ってやがる。子どもが急に大人になれるわけねぇだろおが。大人んなるにゃ、これから何年もかけてだな、」

男「何年もかかっちゃ駄目なんだよっ」

親方「…あ?」

男「支えて、やりたい…違う。俺が支えたいんですよ!」

親方「……だからてめえは童なんだ」ハァ

男「…」

親方「なんで一人で支えようとすんだ?できもしねえのに、一人でそんな真似したって結局支えきれず共倒れが関の山だな」

男「……っ」

親方「童なら童らしく、支えあったらいいじゃねえか。何がわりい、童上等だろ。いきなり大人にゃなれんが、童には童なりのやり方がある。」


男「え……。」

親方「無理に駆け足してすっ転ぶことねえって言ってんだ。支えあいながらでかくなりゃいい」



__狐娘『そう、凄い…桜なんて初めて見た』

男「(アイツの笑った顔が見たかった。)」

__狐娘『いくら、男様と言えど、言っていい冗談と、悪い、冗談がっあるっ』

男「(泣き顔さえ愛しくて)」

__狐娘『俺だって、あなたに、触れたい…!』

男「(躊躇いがちに触れてくる手は、小さくて)」


__狐娘『凄くきれいだ、吸い込まれそう』

男「(俺の目をきれいだと言って。笑っていた。)」

__狐娘『私は、千年分の幸せを、使いきってしまったのです』

男「(それは俺と居た時間が幸せだったってことなのか、どうして使いきったと思ったのか。)」

男「(千年分では足りなかったのだろうか、それなら俺に何ができるだろうか。)」


男「…」

男「…」スクッ

男「…」スッ

男「…」パチン

男「…」シュルシュル

男「…」チョキチョキ

男「…桜」チョキチョキ



狐娘「会いたい…」

狐娘「……馬鹿だな。早く、諦めてしまいたい」

狐娘「暑い…」

狐娘「もう……夏も終わり…」

姐女郎「狐娘、入るよ」

ス…


狐娘「姐さん…」

姐女郎「…身請けの話、断ったって」

狐娘「ええ。ですが、その話は」

姐女郎「如何して」

狐娘「え…」

姐女郎「如何してだい?あんた、あんたもしかして間夫でも囲ってるんじゃ…っ」

狐娘「…!」

姐女郎「…」

狐娘「…」

姐女郎「…」ハァ

狐娘「っ!」ビクッ

姐女郎「馬鹿なことはやめときな、相手の方きっといい人だよ。まだ間に合うかもしれないしあたしからも亡八に掛け合ってやるから」

狐娘「(……やめて)」

姐女郎「女郎が金のない一客の男に惚れたとて、その道は地獄だよ、わざわざその道を歩む必要などないだろう」

狐娘「(…やめて)」

姐女郎「その間夫の男だって、もの珍しがってあんたに手をだしているだけかもしれないじゃないか」

狐娘「…ッ!」

パァン…


狐娘「彼を悪く言うのは姐さんでも許さない」

姐女郎「あたしは、あんたの為を思って」

狐娘「わからないでしょう、あなたには。人間のあなたには、生涯あたしの気持ちなどわからないだろう!!」

姐女郎「狐娘…」

狐娘「出て行ってください…」

姐女郎「…」

ギシ スッ ヒタ…ヒタ…

狐娘「…、何を偉そうにいっているんだ。あたしは」ハァ…

狐娘「あれ…窓に何か挟まって……」

狐娘「……!?」

"大門を出て、真っ直ぐに行くと小さな宿がある。そこを左へ曲がり、細い道へ入れ。桜の木下で今晩丑の刻に待つ"


狐娘「…これ」

ス…

禿「あの…狐娘姐さん」ビクビク

狐娘「申し訳ありません、今日は風邪気味なので、休むと伝えてください」

禿「は…はい」ビクビク

ス…パタパタパタ…

狐娘「…」




狐娘「満月…」

狐娘「ぐ…」

狐娘「…」フゥ

狐娘「こんな見世、全て燃やしてしまいたい」

狐娘「……よし」グッ

狐娘「よいしょ…」

狐娘「よっ…」ピョン

狐娘「…」タタタ…

狐娘「はぁ、はぁ…」タタタタ

狐娘「細い、道…」タタタタタ

狐娘「ここ、かな…」ハァハァ

狐娘「んっ…」

狐娘「まっすぐ…」タタタ

狐娘「村…?」

狐娘「ここが、あの人の…」

狐娘「今更…会ってどうするの……」

狐娘「…」

狐娘「…一目だけでも」


狐娘「村の…外れ…」テクテク

狐娘「…」キョロキョロ

狐娘「あ…」

男「…。…!」

狐娘「!」

男「少女!」

狐娘「っ」クルッ

ギュッ

男「少女…っ」

狐娘「…」

男「少女、少女…っ」ギュウウッ

狐娘「…」ジワ…

男「会いたかった…」

狐娘「あたし…」


――――亡八『彼もただでは済まさないよ』


狐娘「…男、様」

男「…」

狐娘「突然あの様なご無礼を働いてしまったことを御詫び致します」ペコリ

狐娘「ですが、今宵が本当に最期でございます。貴方様にお会いできて幸せでございました」

男「少女…」

狐娘「その様なものは、存じ上げません。」

狐娘「さようなら」クルッ

グイッ

男「待ってくれ」

狐娘「…ッ」

男「待てよ」

狐娘「…」ジワ

男「…少女、渡したいものがあるんだ」

狐娘「…」

男「見てくれ、お前に会えない間ずっとこれを描いていたんだ。」

狐娘「…」

男「……俺はお前の客なんだ。多少の我が侭くらいは聞いてくれよ…」

狐娘「…」ウル

男「ごめん、本当は、着物にしたかったんだ。でも、何度書き直しても、手が震えて……」

男「……いや、言い訳なんか男らしくねえな。」


歪な線、幾度も幾度も書き直した跡。


真っ白な布の上に踊るように散る花びら


彼が見せてくれたのは


大きな大きな桜の絵


男「お前は、千年分の幸せを使いきったと言ったな」

狐娘「…ぁ」

男「一人で背負い込むな、馬鹿」グイ

狐娘「(離れなければいけないのに)」

男「桜じゃ、足りねえなら、俺がもっと幸せをやるっ」ギュッ

狐娘「(突き放したのはあたしなのに)」

男「千年ぶんなんてケチなこというなっ一万年ぶんだって一億年ぶんだって幸せにしてやる!」

狐娘「(それなのに、貴方は。)」

狐娘「(出来るかもわからない絵空事であたしを繋ぎ止めようと。)」

男「お前をっ、連れていくっ」

狐娘「でも、っ……でも!!」

男「一緒に、居てくれっ」

狐娘「…っ馬鹿だっ貴方は馬鹿だっ」

男「大人のやり方なんてわかんねえよっ金なんてないし、どうしようもないっでも、それでも一緒に居てほしいっ」

狐娘「あたしも……っあたしも男と一緒に居たいっ」

この人となら地獄谷に堕ちたとしても構わないと思ってしまった。


あたしの決意など、もはや水面に浮かぶ泡のように消えてゆく。


逆に今、此処で感じていることはまるで激流のように溢れて止まないというのに。




狐娘「連れていって……っ」

桜が、舞う


歪な線が踊るようにはためいて


まるで、本物の花びらのように


男「冬が近くなるとこの桜の木に訪れる者は、殆どいなくなる。」

狐娘「どうして?」

男「前にも言ったろう。ここは冬になると雪が深くなるんだ。危険だからと余り近づかないようにと言われている。もちろん冬は危険だ。冬になる直前に、此処で待ち合わせよう。三月後の新月の夜、同じ時間に。
そして山奥で二人で暮らそう。楽な生活ではないだろうが、きっと暖かい光に包まれるだろう。」

狐娘「…」

男「不安か?」

狐娘「ええっと…」

男「…はは、大丈夫だ。俺が居る。暫く会うことは出来ないが、それまでに準備を整えるよ」


狐娘「うん…」

男「どうした?」

狐娘「何も、聞かないんだね。あたしがあなたから離れた理由も、何も」

男「言ってもいいと思った時、いつかお前から話してくれ。ずっと一緒なんだ、焦ることはねえ」

狐娘「…うん、ありがとう」

男「お前が心から離れたいと思うのなら…」

狐娘「…ううん、あたしも許されるのなら、男と居たいよ」

男「そうか」

狐娘「うん、すごく好きなんだ。自分でも信じられないほどに」

男「…俺もだ。厳しい冬を越えたらこの村に降りてこよう。共に桜を見にこよう。俺の絵など比にならないほどに美しい桜なんだ」

狐娘「うん、すごく楽しみ」

男「その時、親方にも紹介できたらいいな」

狐娘「うれしい…」

男「…おう」

狐娘「じゃあ、そろそろ戻るね。夜が明ける」

男「ああ、三月後を楽しみにしてる。…ずっと待ってる、だから、どんなに時間がかかっても絶対に来てくれ…!」

狐娘「うん…必ず…、必ず来るから…!」

男「ああ、少女。」

狐娘「なに?」

男「愛してる。お前と共に生き、共に逝きたい。…構わないだろうか」

狐娘「…はい、生きるも逝くも、あなたと共に」



友「…絵空事ですね。口で言うのは容易いでしょうが、あなたが考えている程楽な道ではないでしょう」

男「…ああ、もちろん楽な道を選んでいるつもりはねえ。…楽に生きていきたいなら、このままあの親方の元で雑用をするさ。」

友「想像以上に辛いと思いますよ。もし仮に上手く逃げられたとして、生活力のない女郎と手の不自由な男二人で長く生きていけると私には思えませんが」

男「…ああ、覚悟の上だ。全て上手くいくとは俺にもとても思えねえが、何もしねえのも、促されないと行動を移せねえのも、もう嫌なんだ。」

男「手が不自由だということに甘え、いつまでたっても餓鬼のままで親方や周りの優しさに身を委ね、判らないことがあれば考えることを止め、誰かに尻を叩かれないと動けない自分が嫌いだった。」

男「「図体ばかりでかくなって」と親方はいつも俺に言ったんだ。」

男「俺はその台詞がとても嫌で、そう言われるたびに頭に血を昇らせたよ。」


男「図星を突かれたことが悔しくて、情けなかった。」

男「あいつと出会い、愛しいと思う気持ちを知った。」

男「唐突に別れ、俺は理由も聞けず後ろを向いた。」

男「親方に諭され、震える手で絵を描いた。」

男「完成した絵は人に見せられるようなものではなくて、恥ずかしくてたまらなかった。」

男「それでも桜の魔力に縋るようにあいつを呼びつけた。」

男「春よりも痩せたあいつの体に触れた瞬間にもう離したくないと思ったよ。」

男「餓鬼だというのなら、餓鬼なりにでも自分の意思を持っていたい。」

男「少しでもあいつに、そして世話をしてくれている親方に誇れるように。」

男「…力を貸してくれ」

友「…」ハァ

友「全くずうずうしい…」

男「…悪い、無理にとは言わねえよ。手間をとらせてすまなかったな」スクッ

友「こら、待ちなさい。」

男「は?」

友「誰が手伝わないといいました?」

男「…え」

友「面倒ですが、面白いではないですか。私には到底真似できませんが。」

男「…いいのか」

友「ええ、何よりあなたの親方殿には私もお世話になっていますしね。」ニコリ

ギシ パタパタ…


……

パタパタ

友「土地など持っているだけでは勿体無いではないでしょう?」

男「流石はここらで一番大きな呉服屋の旦那様…」

友「私はあなたと違って要領がいいんです。知っているでしょう?」

男「ああ、いつも助けてくれてありがとう」

友「いいえ」ニッコリ

お前もしかしてBOT?




友「…大体わかりましたね?説明した通り、小屋といえるようなものではありませんから覚悟しておきなさい。冬を越えるのは至難の業です」バサッ

男「ああ、覚悟しておく。」

友「父が昔、母に隠れて妾を匿っていたときに使用していたという本当に小さな小屋ですからね。舐めてかかると痛い目にあいますよ」

男「解った」

友「目を瞑っていてもたどり着ける位に通いなさい、最初の一度は付き添ってあげましょう。」

男「助かるよ」

友「それに私の両親が死んだのももう三年も前の話です。それからずっと誰も足を踏み入れていないのですから、ある程度は荒れていることが予想できます。」

男「…本当、すまねえな」

そのレベルで金持ちなら狐娘どうせ一番安いランクなんだろうから買ってやれよ

友「…私はもう生まれた時に進むべき道が決まっていました。それを辛いとは思っていません、沢山の者の命、生活を私は預かっています。それは誇るべきことだと思っていますから。」

友「……ですが、時々、本当に本当に時々、空しくもなります。」

友「私が誰かに恋慕の念を抱いたとて、それは何の意味もなく、進展もないのだと思うとそこに私の意志は必要ないのだと思い知ってしまいます。」

男「…」

友「少しだけ、あなたが羨ましいのかもしれません。」

男「そうか」

友「まあ私だってたまには少しくらい悪戯してもいいではないですか」ニコ

男「…ありがとう。」

友「いいえ」


男「(それから俺は毎日のように仕事の後山を登った。)

男「(夕の刻に山を登り、降りる頃には朝を迎えることも少なくはなかった。)」

男「(飯を食う暇も惜しみ、山を登り、小屋を直し、山を降り、仕事をしてまた山を登った。)」

男「(小屋は少しずつ修繕した。暖をとれるようにもした。)」

男「(まだ隙間風は吹きこむが、最初よりは随分ましになった。)」

男「(何度も道を見失い遭難しかけた、でも二月が過ぎる頃には月の無い夜でもたどり着けるようになった。)」

男「(そして、約束の新月の夜が訪れた。)」


男「親方、話があります」

親方「…何だ」

男「…あの」

親方「…」

男「…貴方はいつも暖かく、わがままばかりの俺を受け入れ、使い物にならなくなった俺をずっと傍に置いてくれました」

男「貴方は厳しくも優しく、そんな貴方に俺はいつも甘えていました」

男「…何も返すことのできない恩知らずな弟子で、申し訳ありません」

親方「…」

男「お暇を、いただきたいのです」

親方「…」

男「…っ失礼します」

親方「男」

男「…っ」ビクッ

親方「…外は寒いだろう」

男「え…」

親方「持っていけ」

男「…襟巻き?」


親方「暖かくしていけ」

男「親方…」

親方「落ちついたらでいいからまた来い」

男「親方っ」

親方「俺には伴侶がいねえからよお、お前のことを息子のように思っていたんだぜ。」

男「親方っ!」

親方「申し訳ねえとか思ってんじゃねえぞ、俺は別にいやいやお前を預かってたんじゃねえ」

男「…これまでお世話になりました!」

男「ありがとうございました!」

親方「元気でな」ニッ


立ち上がり、座敷を出た。

俺はやはり餓鬼のままで、図体だけがでかくなっても頭は餓鬼のままで、上手く礼もできず感謝も伝えられなかった。

けれど不思議と気分は落ち着いていた。

次に親方と会うときは、今よりも礼を上手くできるように。今よりも上手く感謝を告げられるように。

大きく息を吸った。

月が見えない。冬が近づき、桜に近づく者はもう居なくなっていた。

息が真っ白だ。親方が呉れた襟巻きに口を埋め、丘を登る。

裸になった桜の木が堂々と、けれど何処か寂しげに立っている。

木の幹に寄りかかると空気が頬を刺すのがやけに気になった。

そろそろ雪が降るかもしれないと考えていた矢先、冷たいものが触れた。


男「……雪か、まるで桜みたいだな」

男「って、これじゃあ逆か。」フッ

男「それにしても多いな…今日出発にして良かった。」

男「そういえば、腹が減ったな…暫く飯も碌に食っていなかったからか」

男「眠い…」

男「…静かだな」

男「少女…」


狐娘「暗い…」ザッザッ

狐娘「…寒い」ザッザッ

狐娘「早く会いたい…」ザッザッ

狐娘「大門…ここを、抜けて…から」ザッ

バッ ダァンッ


狐娘「え…え?」

客引きの少年「大門、でちゃいやしたねぇ」グリグリ

狐娘「いた…っ」

客引きの少年「どうしてこんな子どものあっしが不寝番なんてやっているか考えたことなかったんですかい?」ニタニタ

狐娘「…は、なして!」

客引きの少年「僕に勝てるひとが、誰もいなかったからだよ。簡単なことでしょう?」


客引きの少年「馬鹿だね、君も。ちゃあんと忠告してあげたでしょ?“壁に耳あり障子に目あり”って。まあ頭の悪い化け物には解らなかったかなあ」グイッ

狐娘「…!」ゾッ

客引きの少年「足抜けしようなんて、いい度胸じゃないか」

バシッ ダァンッ

狐娘「うぐぅっ…」

客引きの少年「はは、化け物風情が人間の言うことに耳を背けちゃいけないよ。」グィッ

ズル…ズル…

狐娘「(あ…雪…)」

狐娘「…男…」

狐娘「(行かなきゃ…待ってるのに……)」

客引きの少年「これは根雪になるかもしれないねえ」ニタニタ

ズル…ズル…




狐娘「(どれだけの夜が過ぎただろう)」

狐娘「(男…)」

ガラッ

客引きの少年「やあ、元気ですかい?」ニタニタ

客引きの少年「いやぁいつ来ても汚いとこですねえ、懲罰房は」ニタニタ

狐娘「…」

客引きの少年「今宵は満月ですぜい、化け物。どれだけの夜をお前はここで過ごしたのかねえ。」ニタニタ

狐娘「…今宵は、満月でございますか」

客引きの少年「ええ、もう雪も随分深くなりやした」


狐娘「ああ、やけに感情が高ぶると思えば…満月ですか」

客引きの少年「なんだって?」

狐娘「…ふふ」

客引きの少年「…なんで笑うんだい?ついに気でも違ったか」

狐娘「いいええ、愚かだなあと思いまして」

客引きの少年「なに?」

狐娘「頭が悪いのはどちらでしょうね?」

狐娘「これだけ長い間私のことを縛り付けておいて、私のことを何も知らないんですもの」

客引きの少年「…」

狐娘「まあ興味もなかったのでしょうね。まさか私が火を噴くことができるなんて思いもしなかったでしょう?」

客引きの少年「なん…」

ゴッ…

メラメラ…

狐娘「燃えて、しまえ…」

狐娘「こんな廓、燃えてしまえ!」

狐娘「……」

狐娘「…行かなきゃ」

狐娘「男が…待ってる」

メラメラ…

カンカンカンカン

ワー キャー キャー

メラメラ…

狐娘「(男…!)」タタタタタ

狐娘「(男…!)」タタタタタタ

―――約束の場所

狐娘「…足跡も、ない」サク…

狐娘「当然だ…」サク…

狐娘「どれだけ、待たせたの…」サク…

狐娘「雪…枝に積もってる…」

狐娘「彼が言ったとおり、桜みたい」サク…

狐娘「深い…」サク…

狐娘「…」サク…

狐娘「…」サク…

狐娘「…」コツン

狐娘「…?」

狐娘「…」ゾクッ

狐娘「いや…まさ、か…、そんな…」




足元に転がっていた、それは、あたしが裏切ってしまった、愛しい愛しいあの人



狐娘「ああ…」

男「…」

狐娘「嘘つき…」

男「…」

狐娘「何故先に逝ったの」

男「…」

狐娘「共に生きると、共に逝くと約束したのに」

男「…」

狐娘「ねえ…桜が散っているよ」

男「…」

狐娘「あなたは桜が美しいと言ったね…」

男「…」

狐娘「…嘘つき」

男「…」

狐娘「桜など美しくもなんともない」

男「…」

狐娘「ただ醜く我らを嘲笑うばかりじゃないか!」

男「…」

狐娘「何で…何も言ってくれないの…」

男「…」

狐娘「あたしあなたを嘘つき呼ばわりしているんだよ。ねえ、あなたが綺麗と言った桜を貶してるの。腹立たしいでしょう?ねえ」

男「…」

狐娘「何か言って…」

男「…」

狐娘「どうして…」


あの夜、あたしが周囲にきちんと気を配っていれば。

いっそ約束の夜、準備をすると言った彼を押し切ってそのまま逃げていれば。

彼が悪いわけではない。

死を迎えてもなお、この場で彼はあたしを待っていてくれた。


___男『ずっと待ってる…!』

狐娘「馬鹿…!」



それでも、この溢れる思いは、彼を責める言葉ばかりを生み出して。


ただただ固く冷えた彼の体を揺さぶる。


頭に浮かぶのは、彼の照れたように笑う顔。

狐娘「好きなんだ、お願い、起きて!」


狐娘「ねえ!起きて!」


狐娘「ああ、あああ、あああああああああっ何故、何故!」


狐娘「…」


狐娘「…」


狐娘「ああ、そうだ。」


狐娘「共に逝くことができなかったのなら、後を追いかければいいんだ」


狐娘「共に生きることが出来ないのなら、骨まで混ざり合えばいい。」


狐娘「あなたの唇、冷たい」


狐娘「それなら、あたしの熱を貴方にあげる」

狐娘「…あの夜、約束を破ってごめんね」

パチパチ… メラメラ…

狐娘「けれどこれからは、ずっと一緒だから」

狐娘「もしもあの世があるのなら、空で桜を共に見たい」

狐娘「貴方と見ればきっと美しく見えるはずだ」


ゴオォォオオ…


狐娘「すきだよ、」


ゴオォオオオオオォオオ







姐女郎「(見世が燃えた冬が終わり、季節は春を迎えた。)」

姐女郎「(現在は仮宅を構え今も尚女郎たちは股を開いている。)」

姐女郎「(処以外はさして変わったこともない。)」

姐女郎「(いくつか変化したことを挙げるとするならば、客引きが変わったこと)」

姐女郎「(本来なら誰かが居るはずだった奥の暗い部屋が物置になったくらい。)」

姐女郎「(客引きが可愛らしい少年から爺に変わったことを嘆く女郎は少なくなかった。)」

姐女郎「(暗い部屋についての話題に触れようとする者は居なかった。)

ギシ…ギシ…

スッ…

姐女郎「…狐娘」

姐女郎「最後に見たのは、泣き顔だったね」

姐女郎「火をつけたのは、あんただったの?」

姐女郎「足抜けをしてまで、一緒に居たい男がいたの?」

姐女郎「私では、きっとあんたの救いにはなれなかったんだね」

姐女郎「私さ、あんたのことは好きだったけれど、目を綺麗だと思ったことはなかったよ」

姐女郎「でも、あんたのことは好きだったよ…」

姐女郎「それだけじゃ、だめだったんだろうね…」

姐女郎「ごめんね…」


しかし彼女は知らない。狐娘はすでに、この世を生きてはいないことを。

幾年も地獄に縛り付けられていた狐娘は、今幸せなのだろうか。

誰に死を知られるわけでもなく自らの業火で愛しいひとと灰となったことで開放されたのだろうか。

その真実はきっと、あの世へ消えた彼女らにも解ることではないのだろう。


狐娘「今宵旦那様の床のお相手をさせていただきます」終

終わりです。
予想のできる安い少女マンガのような展開で本当にもうしわけありません。
自分にもっと文章を作る力や想像力があればもっといい方向に持っていけたのかもしれないと思うと、それが心残りです。
にわか知識で書いたSSですがこんなにも多くの人に読んでいただけてとても嬉しいです。
レスは全て読ませていただきました。
ここまで読んでいただきありがとうございます。

初めて書いたSSだったので正直今でもgkbrしています。
みんな読んでくれて本当にありがとう…
あと>>251を見て本気でその手があった…と思いました

まちごうた>>254だ。

>>358
金で簡単に解決しちゃったら物語なんにも面白くないし
これで良かったと思う。

>>358
少女と関係のない友が男のためだけに(最低ランクとはいえ)大金を払うの?おかしくね?

>>360
そういってもらえると救われます…

>>358
そうすると友が良い奴過ぎて不気味になっちゃう

アフィカス転載禁止宣言しといた方が良いと思うの

もっと早く燃やしちゃえよとか思ったのは秘密よ

>>361そうですかね…言われてみるとそうかもしれないです。
ただやっぱりハッピーエンドにしたかった気持ちもあるので複雑です

>>368それもそうですよね…にしてももうちょっと……幸せな終わりを…orz
アフィカス?ってなんだ?



ところで、>>269のバッ ダァンッ
がなにが起きたのかよく分からなかった

ごめんみんな…
やっぱハッピーが良かったよな…でもどれだけ考えてもご都合主義なものになってしまうんだ…
こんな簡単ならさっさと逃げればよかったじゃんとしか思えないような展開しか思いつかないんだ…

バッドエンドにするにしても穴が多すぎた感じかね
描写が足りない

>>380一応自分的には髪を思い切り引かれて狐娘が転んだ音のつもり

>>387だよなあ…。ありがとう、精進します

>>388
それなら効果音はグイッ、ドサッとかのほうがイメージしやすいんじゃないかな
あとは地の分入れてみるとか

>>369早くに燃やさなかったのは一応お世話になってる姐女郎のことを思って…だったりします。
描写不足だったな…orz

簡単にハッピーにしたらご都合主義って言うけど
逆に簡単にバッドにしてもご都合がすぎる

あくまで個人的な意見だが、男があっさり死んでたのがちょっと残念だた

約束の日の前の日に友が狐娘買いーの
男といっしょになりーの
友金返せーの
二人で仕立て職人目指しーの
不器用ながらも頑張るーの

ダメーの?

>>392!!本当だ!そうだよね!次にまたこういうシーンを表現するときはもうちょっと効果音考んとな…

前にも他のSS書いてなかったか?

>>394うう…それを言われると耳が痛い…すまん…
>>395一応男は二ヶ月碌に睡眠も飯も採ってなかったんだ…自分でがんばれなかった男ががんばりすぎてしま…いやこんな言い訳よくないよな
>>396自分的には駄目じゃないと思う。でもそれをやるのなら狐娘が妖怪である必要がないんだよね…そもそもそんな展開思いつかなかったんだけど

>>398いや、普段はROM専なんだ。書き込みすら初めて

|ω・)…

|ω・)ノ■

|)ミサッ

狐娘「…ここは……」

「少女」

狐娘「え…」

男「久しぶり」

狐娘「おと、こ…」

男「ごめんな、先に逝ってしまった」


狐娘「男…!」

男「狐娘…!」

狐娘「また、会えた…」

男「ああ、何故後など追ったんだ」

狐娘「燃やしてしまったの…」

男「…知ってる。俺のせいだ」

狐娘「ちが…っ!あたしが…」

男「もういい」

狐娘「おと」

男「もう、休んでいい。お前はもうがんばっただろう」

狐娘「…ッ」

男「見ろ」

狐娘「え…」

男「これが、桜だ。」

狐娘「桜…」

男「美しいだろう」

狐娘「…うん」

男「とても、美しいだろう」

狐娘「…男、あたしは」

男「少女」

狐娘「…」

男「これからは、共に居られる。」

男「すきだよ」

狐娘「…あたしも、だ」


狐娘「今宵旦那様の床のお相手をさせていただきます」 本当に終わり


これで本当に終わりです。
最後のは蛇足なので、読んで不快になった方いたらごめんなさい。

こんな時間まで本当にありがとう。

アフィってそんなにまずいの?

なるほど…アフィブロ見たことないんだよな。
素直に従っておくことにする。

アフィブロ転載は勘弁してください

もっとはっきりと書いたほうがいいんじゃないの
アフィブログ転載禁止とか

>>433了解です。

アフィブログ転載禁止です

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年07月02日 (土) 00:06:36   ID: ZMiXM2Lo

ロミオとジュリエットが脳裏を過った

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