咲「帰る場所」 (64)

ID:mq9M8q/R0の代行

咲「あれ、ここどこだろう……神社?永水神社……えっと、だから……鹿児島かあ」

霞「あら?あなた」

咲「あ、お久しぶりです。宮永咲です、清澄の」

霞「……ええ、よく覚えているわよ。久しぶりね」

咲「はい。久しぶりに長野に帰ろうと思ってたんですけど、迷っちゃって」

霞「あらあら、それは大変ね」

咲「皆さんはお変わりないですか?神代さんとか、お面の人とか」

霞「ええ、皆元気よ。そちらはどう?」

咲「皆はどうしてるか…何しろ久しぶりなので」

咲「それに私も、ちょっと乗り物酔い気味ですね…どうもあんまり速い乗り物は」

霞「それは大変ね。私も乗ったら気を付けないと」クスクス

咲「あはは…」

巴「霞さーん、休憩の時間ですよー」

霞「あら、もうこんな時間。折角だからあがっていきなさいな」

咲「いえ、私はこれで失礼します」

霞「そう?残念ね。今日中に長野に?」

咲「んー…どうせなんで色々と巡っていくことにします。姫松とか宮守とか」

霞「皆の顔見られるといいわね」

咲「そうですね。それじゃあ失礼します」

霞「ええ、またいつか」

猿だけには気をつけて

―――――
咲「大分曇ってきちゃった…大丈夫かな……あれ、寝てる人がいる」

煌「くー…………むにゃむにゃ…………」

咲「んー?…あー、と…和ちゃんと優希ちゃんの先輩だっけ……?」

煌『すばらです!』

咲「すばらさんだ。すばらさーん、起きて下さい、雨降ってきちゃいますよ?聞いてますかー?」

煌「ぐーぐー」

咲「起きないと濡れて風邪引いたりしますよー、すばらさーん?」

煌「ぐう」

咲「本当に寝てるんですか!?いけない、電車の時間が………もう…起きなさーい!」

煌「んむ………?」パチ

咲「もう、起こしましたからね!すばらさん!」

煌「んー……?」ムクリ

煌「おや…ひと雨来そうですね………なんとか起きられてすばらです…んん…と」ググッ

煌「はて、今誰かに起こされた気が……?」

―――――
咲(新幹線なんていつ以来だろ…今どこかな)

咲(広島か…そういえば、インハイでいたっけ…ちゃんちゃん焼きみたいな名前の人)

「ちゃちゃのんだー」

咲(それそれ…え?)

いちご「、」ピク

咲(うわあ、なんてタイミング……奇麗な人だなー)

「ねー」

いちご「…」テクテク

咲(声掛けたいけど、他の乗客もいるし、多分駄目だよね…色々…名前忘れてたし)

いちご「しー……ナイショ、の?」ピト

「!うん、うん」コクコク

咲(大人の対応…いいなー)

―――――
咲「着、新大阪!初めて…の筈」

咲「だから迷うとかの話じゃないんだ、根本的に。案内板とか地図を見るのも別に恥ずかしくないもん」

咲「それで姫松姫松………………あれ、駅の地図に載って無い?」

「やーかーらーやーなー!ここで由子入れてやなー!」

「おーまーえーはーアーホーかー!」

咲「……見つけた。見てないけど分かるよ」

洋榎「やからここで由子入れてガー荒らしてバーなったとこにお前でバンバンかましてうちでドーンや!」

セーラ「アホ言いなや!怜おらんやないか!先鋒怜で次鋒憩のスタートダッシュでお前からのオレ竜華が黄金やろ!」

洋榎「バッお前、トキィはこのごろ体調がアカンタイプのそれやないか!」

セーラ「あいつはそないヤワなやつとちゃう!割とエゲツない系や!」

セーラ「あとお前怜のことトキィ呼ぶんはなんなんや!ケンシロウ意識か!」

洋榎「はあー!?あいつもそれで返事するしエエやろ!イチャモンつけんな!」

竜華「はいはいそこまでなー」

由子「やかましいのよー」

洋榎 セーラ「「だってこいつが!」」ビッ

咲「……うん、もう充分かな」

恭子「あーまたドツき合うとる」ザッ

憩「仲のええのはええですけどー、ちょーっと」ザッ

怜「エゲツない系って何なん、セーラ」ザッ

洋榎「ウチ、セーラ、トモダチ」ガシ

セーラ「オレ、ヒロエ、ナカヨシ」ガシ

咲「関西のメンバーで新しくチームを立ち上げたんだ、へー」

咲「楽しそうで良かった。末原さんも元気そうだし」

恭子「?」

怜「どしたん?」

恭子「いや、今見知った顔が……気のせいか」

怜「まあここではよくあるやろ」

―――――
咲「ようやく東京だー……どうしようかな、先に白糸台の方に行こうかな」

咲「でも宮守からの帰りはどうせここに来るし……先に宮守に行こうっと」

―――――
咲「えっと……ここから乗り換えて……だから……う…結構涼しい…いや、ちょっと寒いかも」

―――――
咲「宮守…うん、合ってる。今回は迷わなかったよ。私も成長してるのかな」

咲「でも考えてみたらここからどうしたらいいんだろ」

咲「とりあえず役場があるし、ちょっと寒いから入ってから考えよう」


咲「はあ…ここからどうしようかな」

「あれ、君もしかしてここ初めて?引っ越し?」

咲「え?」

塞「ん?あれ、どこかで…………あ!あ…え!?なんで!?」

咲「久しぶりに帰郷するはずだったんですけど…迷っちゃって、ついでだから皆の顔をと思って」

咲「長野に帰るつもりが鹿児島ですからね」

塞「そんな大胆な迷い方するのによくここが分かったね…っていうか鹿児島って永水の人達か」

塞「あー成程。うん、分かった。皆元気だった?」

咲「永水では石戸さんとしか話してないですけど、皆元気だって」

塞「そうなんだ。他にはどこか行ってきた?姫松とか」

咲「姫松には行けなかったんですけど、新大阪駅で見つけました。話はしてないですけど」

咲「なんでも、大阪の人達でチームを組んでるみたいですよ」

塞「へえ、千里山とか?」

咲「はい、それと個人戦の荒川さんで。もしかしたら他にもいたかもしれないですけど」

塞「まあ、いたとしてもレギュラーメンバーじゃないだろうね…私達の世代の大阪ではあの二校がハイエンドだし」

咲「あとは道々色んな人がいました。寝てる人とか女優さんとか」

塞「あはは、何それ」

咲「これから北海道に行って、それから東京、長野の順で行こうかなって思ってます」

塞「ああ、準決勝の」

咲「それより、皆さんは今どうしてますか?」

塞「ん?私は見ての通りしがない役場の職員さん」

塞「まあめったに人とか来ないんだけどね。最近来た生物は猪だったかな。鹿だったかも」

咲「中々スリリングですね……」

塞「シロ…えっと、先鋒のだるそうにしてたのは今専業主婦」

咲「はい、分かります。専業主婦ですか」

塞「これが同棲してて、ほぼ結婚状態なんだ」

咲「本当ですか!おめでたいですね」

塞「相手がなんと…あのトヨネ!」

咲「ええっ!?」

塞「その驚きはよく分かるよ、うん。恋愛のれの字も分からなそうなトヨネとあのシロが、って」

咲「でも、なんとなく分かります」

塞「うん、不思議とあれでお似合いなんだよね。噛み合ってるっていうか」

咲「じゃあトヨネさんが働いてるんですか?」

塞「うん。今日は休みだけど、私と同じ職場」

咲「あのトヨネさんが…」

塞「…まあ…コネなんだけどね。なんとかやってるよ」

咲「他のお二人はどうですか?」

塞「エイちゃんはあっち…ニュージーランドに帰って数年連絡が無かったんだけど」

塞「急に日本に来たと思ったら「親善大使として岩手に赴任してきました」って」

咲「日本語で?」

塞「もうビックリ、日本語流暢だしずっとこっちにいるっていきなりだしで」

塞「おかげで意味も無く胴上げしたからね、勢いで」

咲「そんなにですか…」

塞「それで今日も何かの仕事してるみたい。私と違って忙しいんだって」

塞「あ、胡桃は保育士になってるよ。普通に」

咲「普通ですね」

塞「普通だね。まあ胡桃にはあれが一番合ってるんじゃないかな、多分」

咲「そうですね。いい保育士さんになってると思います」

塞「あ、でも最近少子化で経営が危ないって言ってたから、近々ここの職員が増えるかも」

咲「そんな余裕あるんですか?仕事が無いのに」

塞「野性動物対策課みたいなのを設立するとか?結構ガラス割られてるし、増えてるし」

咲「寧ろいの一番に作るべきじゃないですかね、現実的に考えて」

塞「これでもスリム化してるけどね……統廃合の繰り返しで今殆ど庶務課だし」

塞「今一番ホットな仕事はバリケード作り。庶務課の知恵と技術が集められてるね」

咲「それもどうなんですか…?」

塞「うん、心配になってきた…クビになったらどうしようかな…県外に出ようかな」

咲「長野はいいところですよ」

塞「長野かあ…いいかも。長野ね。うん、長野だ、長野にしよう」

咲「そんな簡単に…」

塞「ここ以外だと、多分私には長野が合ってるよ」

咲「もう少し考えましょうよ」

塞「いやいや、もう長野しかないよ、これは。私の多分は外れたことが無いんだよ」

塞「もしもの時は皆で長野に行くよ」

咲「はい、お待ちしていますね」

咲「……来ないように祈ってますけど」

塞「あはは、効き目ありそうだね」

塞「ところで、あっちはどんな感じ?」

咲「あっちはですね、」


咲「そろそろお暇します」

塞「えー、もう?」

咲「いや、お仕事中ですし……それに、北海道に行かないといけないので」

塞「そっか、残念」

塞「機会があったらまたおいで」

咲「はい、またいつか。皆さんによろしくお伝えください」

塞「りょーかい。気を付けてね」

―――――
咲「ついつい話し込んじゃった。次は有珠山か、どこだろう…どこかなー」

咲「でもその前に電車か新幹線に乗らないとね」

咲「あ、船でもいいかな」

―――――
咲「船にしちゃった。はるばる来たよ函館へ」

咲「有珠山はどこかな…えっと、フェリーで室蘭から電車か…フェリーは…行っちゃった」

―――――
咲「っていう苦労話がね」

由暉子「はあ…」

咲「あれ、どうしたの?」

由暉子「いえ、何でもありません。少し眩暈がしただけで」

咲「そうなんだ。大丈夫?シスターさんだからってあんまり無茶してたら駄目だよ」

由暉子「神に祈り、迷える子羊を啓蒙し神が差し伸べる救済の手に…聞いていますか?」

咲「え、ごめん聞いてなかった。さまよえるオランダ人が何だっけ?」

由暉子「彷徨っているのはあなたです。早く帰って下さい」

咲「ごめんね、座布団無いんだ」

由暉子「うまいことを言ったつもりでなく。いつまでもここにいてはご家族も泣きますよ」

咲「…もう充分泣かせちゃったよ」

由暉子「……そうでしたね。あなたはそんな人でした。余りにも明るいので忘れていました」

咲「ねえ、皆は今どうしてる?」

由暉子「聞いたら帰りますか?」

咲「うん。東京で臨海と白糸台の人達を訪ねてからね」

由暉子「はあ…分かりやすく言うと先鋒と次鋒のお二人は私と同じような身分ですよ」

咲「えっと…鬼太郎みたいな髪の方と金髪の」

由暉子「失礼ですよ」

咲「ごめんなさい……シスターさん?」

由暉子「二人で教会を開きました。背の高い方はコーディネーターになると言って海外に行きました」

咲「由暉子ちゃんの改造制服の人だね」

由暉子「最後の方は『開拓者』を名乗って北海道を一周して九州に行く日本海航路を再開発中らしいですよ」

咲「獅子原さんだね、これは覚えてるよ。すごいことしてるね」

由暉子「……さあ、話したので帰って下さい」

咲「あ、あれ、もう少しいいでしょ?」

由暉子「駄目です」

咲「そんなー」

由暉子「ほら、早く」

咲「分かったよ……それじゃあね、由暉子ちゃん、元気でね」

由暉子「はい」

咲「私じゃ力になってあげられないけど、何かあったら周りの人を頼っていいんだよ」

由暉子「言われなくても分かっています」

咲「あれ、そう?」

由暉子「心配いりませんから。本当にあなたに会いたがっている人に会うなり帰るなりして下さい」

咲「うん。もう行くね。話せて嬉しかったよ」

由暉子「……私もです」

―――――
咲「戻って東京。東京は狭いけど広くて交通の便がいいけど人が多いのが難点…ここだ」

咲「剣道場…剣術場?辻垣内さんが師範をしているとかなんとか」

咲「明かりが点いてないけど、今日はお休みかな?」

智葉「ッ!!」ヒュパッ

咲「うわっ!」

智葉「ふっ はっ はぁっ!」ヒュッ

咲「うわ、すご…あれって真剣だよね……」


智葉「はっ!」フッ

咲(すごく集中してる……なんだか居心地も悪いし、そろそろ行こうかな)

咲「お元気で」

智葉「ふぅ……む、今何か…………まあいい」

―――――
咲「他の人は……なんだ、皆プロ雀士なんだ。まあそうだよね、麻雀で留学してきたんだから」

―――――
咲「白糸台に到着…いるかな。いてくれないとちょっと困るけど」

咲「あ、あれ副将の人じゃないかな。亦野さんだっけ。白糸台の先生になったんだ」

咲「えと、お姉ちゃんはうちにいて、淡ちゃんはプロっていうのは聞いてるから他の人は」

咲「……っと。弘世菫さん実家の会社を継ぐ…?会社を継ぐって…スケールが大きいなあ」

咲「昔近所のお兄さんが農家継いだって聞いたけどそれとは全然違うんだろうなあ」

咲「渋谷尭深さんは…何何、農園を営み成功、人手を増やし規模を拡大中」

咲「てっきりお茶を栽培してるかと思ったら果物が主流なんだ、意外…でもないかな」

咲「二人とも忙しそうだし、ちょっと遠いし……まあ見るだけならいいよね」

――――
菫「その件については他日改めて。いえ、気にしていませんから」ガチャン

菫「ふう…ついに一ヶ月のスケジュールも埋まってしまったな」

「社長、来客が」

菫「そうか。誰だ」

「それが…」

菫「…分かった。すぐに行く」

―――――
菫「待たせてしまったようで申し訳ない」カツカツ

透華「いえ、微々たるものですわ。誤差です、誤差」

透華「それより、忙しい時間に来てしまったようですわね」

咲(龍門渕さん!?)

菫「なに、顔の見えない相手と話しながら書類と睨み合っているよりマシだ。却って助かった」

菫「時に、そちらの天江がまた記録を更新したな」

透華「あのくらい、衣にとっては造作も無いこと。とはいえ鼻が高いですわね」

菫「そうだろうな」

透華「さて、本題ですわ」

菫「先日の話か」

咲(なんだろう、ワクワクしてきたよ)

ハギヨシ「申し訳ありませんが、ここからは秘密事項ですので」スゥ

咲「え?」

ハギヨシ「部外者はこちらへお願いします」グイ

咲「え?あれ?」

ハギヨシ「お久しぶりです、宮永様」

咲「あ、はい、お久しぶりです。えっと…まあいいや、ハギヨシさんだし」

咲「あの、別に知った情報をどうしようとかは無いので」

ハギヨシ「というより、そうでなくては困ります」

咲「あ、そうだ。龍門渕さんって社長さんなんですか?」

ハギヨシ「正確にはまだですが、大旦那様もいずれはそのおつもりの様です」

咲「他の人達は今どうしてるんですか?」

ハギヨシ「基本的に彼女達はお嬢様付きのメイドですから」

咲「そうでした」

ハギヨシ「昔と変わらない生活です、とだけ」

咲「そうなんですか。衣ちゃんはどうですか?背は伸びました?」

ハギヨシ「…………」

咲「……」

ハギヨシ「昔と変わらないお姿です、とだけ」

咲「ぼかせてないですよ」


咲「それじゃあそろそろ他のところに行く予定があるんで」

ハギヨシ「はい、それでは私も戻りますから」

咲「またいつか」

―――――
咲「さっきは驚いたなあ…そしてここが渋谷さんの農園。調理スペースっていうか教室みたいな建物もある」

咲「とれたての果物や新鮮な野菜をその場で料理にして食べられるという画期的なそれ」

咲「という触れ込みだけど、やっぱり大繁盛してるなあ」

尭深「…なので、梨やリンゴの保存に関しては…」

咲「あ、いたいた」

尭深「バナナは地面に置くとそこから傷んでいくので、やはりスタンドなどで立てておくべきで」

尭深「更に言うと、この様に枝に付いている時と同じ状態が一番いいと言われています」


尭深「実際に熱を加えた場合と比べてみると分かりますが、甘みや旨みも寧ろ増えています」


尭深「これで完成ですが、好みや食べる人の体調に合わせて糖分を砂糖から他の物に変えるなどの工夫を…」

咲(料理も出来るんだ、すごいなー)

咲(もしかしてこの料理教室のために練習したのかな)

尭深「次に盛り付けのお皿ですが…」

咲(……よし、もういいかな)

―――――
咲「あれじゃあただの北大路さんだよ渋谷さん……」

咲「さて、長野に帰ろうっと」

―――――
咲「無事長野に帰還だよ、っと、あんまり変わって無い…えっと、鶴賀女子の人は…」

咲「加治木さん東横さんとオランダに移住…そうだよね」

咲「蒲原さん、なんとか大学に通うも結局卒業後は実家を継ぐ、妹尾さんを雇う」

咲「今は…あれ、どっちも県外にいるんだ。何何、えーと、第二工場設営の下見」

咲「また成功してる。皆すごいなー」

咲「津山さん、風越の文堂さんとプロ麻雀せんべいの会社に就職、東京」

咲「あちゃあ、さっき確認してたら良かった……鶴賀は全滅かあ」

咲「風越風越…風越はー…福路さん、念願叶い部長と同居中、仕事を手伝いつつ家事を一手に引き受ける」

咲「お邪魔しちゃダメだよね…次」

咲「深堀さん、食堂のおばちゃんに料理の腕を見込まれ午前中だけ開店している会社員専用食堂で働く」

咲「…午後、ここも無理かな。どこにいるか分からないし」

咲「吉留さん、池田さんと同じ職場で池田さんの良きパートナーとして勤労に励む」

咲「池田さん、吉留さんと同じ職場で勤労に励む。甲斐あって妹さんは皆大学進学も可能」

咲「すごっ……会社はこの近くか、これなら大丈夫だよね」

―――――
池田「そこはそうじゃないし!あと来週のプレゼンの書類まとめとけ!」

池田「吉留!来週は東京の弘世グループのとこに視察するし!めぼしい新入り二人見繕っとけ!」

未春「はい!」

池田「あたしはこれから上にかけあってプロジェクト立ち上げてくる!あと頼んだ!」

未春「はい!お願いします!」

咲(ここはまた忙しそうな……しっかり働いてるなあ、池田さん)

咲(やっぱりお姉ちゃんだからかな……それにしてもどことなく風越のコーチの人みたい)

―――――
咲「うーん、満足満足」

咲「やっぱり皆それぞれの道を歩んでるんだね」

咲「よし。それじゃあ、そろそろお姉ちゃんにもお姉ちゃんの道を歩んでもらおうかな」

――――――――――
照「咲…貴女は私を許してくれるのかな」

照「いや……許してくれなくても、いい。ただもう一度、声が聞きたい」

照「思えばずっとそうだった……どこに行っても私についてくる咲を鬱陶しく思って突き放した」

照「……一時は本当に嫌いになった」

照「それも時間がゆっくりと溶かして、ようやく受け入れられそうになったら、あっという間にいなくなった」

照「今になって後悔しても、もう手遅れなんだ」

照「でもそれも仕方無いよね……最初に黙って離れたのは私の方……どうかしてたんだ」

照「今は私の心に咲の居場所を作ってるのに……そこだけがいつも空っぽで…」

照「あの子もこんな気持ちを味わってたって、今更だけど…よく分かった」

照「……」グビ

照「毎日毎日こんな生活……駄目なんだって分かってる……」

照「前は全国を回って咲の話を……咲を訪ねた……今はそれも無い…ただ」

照「ただ自堕落な生活を続けるだけ……!もうたくさんだ……」ググッ

照「…………いっそ死のう」

ただいま―――

照「!」バッ

照「咲……?」

お姉ちゃん―――

照「咲っ!咲っ!そこにいるの!?」

そうだよ、帰ってきたよ

照「どう…して……?」

だって、私の帰る場所だから

照「帰る場所……ここが……本当に…?」

そうだよ、お姉ちゃん

どこに行っても、最後にはここに帰ってくるんだよ。だって

照「だって……」

ここが私の居場所なんだから

照「!」

咲「ね、お姉ちゃん」

照「っ!」ハッ

照「咲……咲……咲……!」ギュゥ

咲「こうやって話すのは久しぶりだね、お姉ちゃん」

照「咲……」

咲「お姉ちゃん」ナデナデ

照「私…は……っ」

咲「うん」

照「私は……嫌いだった」

咲「うん」

照「今は好き……」

咲「うん」

照「ずっと冷たくしてた」

咲「うん」

照「それを……許してほしい」

咲「いいよ」

照「ずっと咲を追いかけてた気持ちを伝えたい」

咲「伝わったよ」

照「昔と違う、今の気持ちを伝えたい…っ」

咲「充分だよ」

照「咲…愛してる…っ!」

咲「私も愛してるよ、お姉ちゃん」

照「ありがとう…帰ってきてくれて…ありがとうっ!」

咲「帰ってくるよ。どこまで行っても、どんなに遠くても」

照「私は離れて戻らなかったのに…!」

咲「今は違うでしょ?それでいいよ」

照「ありがとう…」

咲「ごめんね、そろそろ…………」

照「え……ま、まだ話したいことがあって、それで…!」

咲「大丈夫だよ、お姉ちゃんの心の居場所にいるから」

咲「それで少しは寂しく無いよね?」

照「……っ……うん、大丈夫だよ……咲が一緒にいてくれるから…もう大丈夫」

咲「それじゃあ、前に進めるよね」

照「前に…」

咲「お姉ちゃんの道だよ、この道は」

照「道……この道、暗くて足元も見えないよ……」

咲「それは目を瞑ってるだけ。顔を上げて、目をもう一度開けて、ほら……」

照「朝日が……あんなに輝いて……」

咲「これでまた歩けるはずだよ」

照「世界が……私を許してくれた……んだ…………」

咲「私達が見てるのは未来……あんなにも明るい未来なんだよ」

照「この扉は…………そうか……分かったよ」

咲「開けたらすぐだよ」

照「うん。行ってきます」

咲「違うよ、一緒に行くの」

照「そうだね。じゃあ、行こう!」

咲「うん!」

―――――
照「!」ガバッ

菫「おわっ!急に跳ね起きるな……お化け屋敷か」

照「今のは……夢……」

照「……違う……夢にしちゃ駄目」フルフル

菫「おい、照」

照「菫……」

菫「そうだ。久しぶり、と言いたいが時間が無い。そのままでいいから来い」

照「え……どこに…?」

菫「つべこべ言わずについて来い。説明は車に乗ってからだ」

―――――
菫「着替えたか?」

照「うん、なんとか。それで、どういうこと?」

菫「急がないと朝食に間に合わないからな」

照「朝食?」

菫「龍門渕家で朝食だ。時間が合わないから仕方無かったんだ」

照「ごめん、話が読めない」

菫「私は会社を継いだことは覚えているだろう」

照「うん」

菫「龍門渕の透華も同じように継ぐ予定で、これは親睦会の一環だ」

照「それで、どうして私が」

菫「麻雀のチームをうちと龍門渕グループ協賛で新規に興す」

照「協賛で?」

菫「お前にはそのチームのメンバーになってもらう。今は何もしていないだろう?」

照「う、うん…でも、いいの?多分あの時より弱いけど」

菫「あの時より強くなってもらう。今日はそのために連れ出したんだ」

照「あの、拒否は…」

菫「するのか?」

照「しないけど…」

菫「やめたければいつでもやめていい。お前がこの先どんな人生を歩もうと自由だからな」

照「……菫は、自分で選んだの?」

菫「たった一人の子供だからな、半ば強制的に選ばされたさ。だが最終的に私が選択した」

照「そう……私も自分で選ぶ…お願い菫、そのチームに入って麻雀がしたい」

菫「ああ。期待しているぞ」

菫「……見えてきたぞ、あれが龍門渕家だ」

照「あれが……すごく、光って見える」

菫「そうか。これからもよろしく頼む」

照「こちらこそ」

――――――――――
「魔境・長野と東京が最悪のタッグを結成したァーッ!!」

「財力!人材!雀力!どれもが質も量も最上級!」

「その中でも最高峰!長野生まれ東京育ち!帰ってきた『チャンピオン』!」

「過去を乗り越えたその瞳に宿るものは何なのか!?その原動力の一端でも垣間見れるのか!?」

「宮永照の初陣!雀士としての道が今ッ!再びスタートする!!」


照「行くよ、咲…」


「先鋒戦、スタートです!」

終わり


咲さんやっぱりお亡くなり?

愛される咲ちゃん普及委員会の提供でお送りしました

支援ありがとうございました

何か質問などあれば

>>63 まあ端的に言えば

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