人喰「まだ、食べない」 (234)

人喰「……」

人喰「……」

人喰「……」

人喰「……」

人喰「……ああ」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1349445266

人喰「腹が減ったなあ……」

人喰「どうしよう」

人喰「食べ物は底をついたし」

人喰「はあ……」

人喰「そろそろ狩らなきゃ駄目か……」

人喰「はあ……面倒くさい」

食糧「あるじさまー」

人喰「はあ……」

食糧「あーるーじーさーまー!」

人喰「……何だい」

食糧「おなかへったー!!」

人喰い「奇遇だね。僕もだよ」

少女「あさからなんにもたべてないの。ぺこぺこなの」

食糧「それは僕も一緒なんだよ」

少女「きのうのよるは、シチューだったね。おいしかったね」

食糧「そうだねえ。でも、シチューはもうないんだ」

少女「おいしかったー」

食糧「また作るねー。そのためにも材料を調達しないと」

少女「おにくー」

食糧「たべる?」

人喰「うん?」

食糧「わたし」

人喰「うーん。まだ食べないかな」

食糧「まだちっちゃいから?」

人喰「そうそう。もう少し大きくなったら食べるからね」

食糧「がんばって、おっきくなるね」

人喰「うんうん」

人喰「仕方ない。行こうか」

食糧「かり?」

人喰「そう。狩り」

食糧「いってらっしゃい!」

人喰「君も来るんだよー。食糧の分際で楽しようなんて思わないでねー」

食糧「はーい」

街道──


人喰「さて、今日はこの辺でいいか。じゃあこれ被ってねー」

食糧「きゃー」

人喰「いつもと同じ。これ被って道の隅っこでじーっとしてればいいから」

食糧「うー……じっとしてるのきらい」

人喰「わがまま言ってると、今日のご飯は無しだよ?」

食糧「がまんする……」

食糧「……」

食糧「……」

食糧「……う」

食糧「ぐすっ……」

食糧「あるじさまー……」

人喰「だから呼んじゃダメだろう」

食糧「あるじさまも、いっしょにまと……?」

人喰「僕は隠れてるだけでちゃんと側にいるってば。僕は人間に姿を見られたくないの。面倒なことになるんだから」

食糧「だってだって……ううー」

人喰「ああもう泣かないでよ……って、来た来た。上手くやればこれで終わりだから、頑張るんだよ。じゃあね」

食糧「あううあるじさまぁ」

食糧「ひっく……」

人1「お、おお?」

食糧「うあああん」

人1「何でこんな所に子供が……?」

食糧「うう……う」

人1「どうしたんだい、お嬢ちゃん」

食糧「うー……」

人1「ここは危ないぞ。早く帰った方がいい」

食糧「う、うん」

人1「この辺りは日が暮れると魔物が出るって話だ。近くの町の子だろ?遊ぶならもっと安全なとこで遊べ」

食糧「まもの?」

人1「ああ、人を喰うって話だ。こええだろ。お嬢ちゃんくらいならきっと丸呑みだ」

食糧「あのね」

人1「あ?」

食糧「あたし、あそぶのすきー」

人1「は?」

食糧「でも、ごはんはもっとすき!」

人1「そ、そうかいそうかい……じゃ、飯時になる前に俺が送ってやるよ。家は町のどの辺りだ?」

食糧「えーっと」

人1「あ、そうだ。その動きにくそうなローブも取っちまえ」

食糧「?」

人1「そんなもん被ったままじゃ転んじまうぞ。俺が持っててやるから」

食糧「だめ!!」

人1「あ?」

食糧「あるじさまが、かぶってなさいっていったから、あるじさまがとっていいって、いわれてない! だからだめ! みられちゃめんどなの!」

人1「主様ぁ……?まさか嬢ちゃん奴れぎっひ、あ?」

人喰「全くもう」

食糧「あるじさま!」

人喰「あーあー抱き付かないの。血がつくだろう」

食糧「あるじさまとおそろい!」

人喰「揃って水浴びしなきゃだねー」

食糧「あるじさま、あたしうまくできた? わな、うまくできた?」

人喰「微妙」

食糧「しょんぼり……どこがだめ?」

人喰「それは自分で考えること。よいしょ……っと」

食糧「あたしもごはんもつー」

人喰「じゃ、ご飯の代わりに、そこの鞄持ってきてくれるかな」

食糧「はーい」

人喰「偉いねえ」

人喰「しかし、なんとまあマズそうな人間が掛かったなあ……」

食糧「これ、おいしくないの?」

人喰「ああマズい。見てご覧よ、この腹を」

食糧「ぶよぶよだー」

人喰「だろ? 脂肪まみれで臭そうだ」

食糧「じゃあ、今日のご飯はなしなの……?」

人喰「いや、焼けば美味しく食べれるよ」

食糧「なーんだ」

人喰「生で食べるには向かないってだけ。残念だね」

食糧「?」

食糧「あるじさま」

人喰「何だい?」

食糧「だいじょうぶ?おもくない?」

人喰「大丈夫大丈夫。君の荷物はどう?」

食糧「へいき! かるくなった!」

人喰「そうだろうねえ。中身ボロボロ落としてるもんね」

食糧「あ」

人喰「途中で気付いて良かったよ」

人喰「まあ、死体引きずってるんだし今更か」

食糧「きたみちに、ちが、ずーっとつづいてるねえ。だいじょうぶ? めんどうない?」

人喰「こんな≪いかにも≫、な跡を辿って来る物好きなんていないよ。それにもうすぐ夜になる。面倒なことは一つもないさ」

食糧「わーいかんぺき!」

人喰「完璧にするために、君は落ちたものを拾って帰って来ること。そのついでだ。血の跡に土を被せて消してくること。いいね?」

食糧「はーい! いってきまーす!」

人喰「全く使えない食糧だなあ」

お久しぶりに書きに来てみました。暇つぶしにでもなりましたら幸いです。

乙。

食糧「あるじさま、わたしをたべるっていってたよね……
   かならずたべてね」
  
  「たべないうちにどっかいっちゃ……やだよ……」

人喰「…ふん。あったりまえだよ、食べるさ。
世界中の食糧の後に、ね。
君はおいしそうな僕の『でざぁと』だよ」

食糧「……? ふふふ…それじゃ…あるじさま…
   わたしをずぅーっとたべないつもりだねぇ?」

人喰「……ふん」




ですか分かりません(><)/

乙ありがとうございます。今夜も書き溜めを切り崩しに参りました。
過去作としてSS速報さんでは魔王「病んでれ?」(http://blog.livedoor.jp/minnanohimatubushi/archives/1724201.html)を書かせて頂きました。
VIPでは魔王「今日も平和だ飯がうまい」等(http://blog.livedoor.jp/minnanohimatubushi/archives/1193105.html 作品まとめ)等々……魔王ものばっかり書いています。

>>26
最後までオチは決まっていますが、そんな展開は一切ありません。食い食われです。ご安心ください!

食糧「ただいまー!」

人喰「お帰り」

食糧「もうばらばらしたの?」

人喰「ああ、血抜きも済んだよ。こっちの袋を埋めたら終わり」

食糧「あたま?」

人喰「そう。あんまり僕の好みじゃないからねえ」

食糧「あたしもきらいー。なかみ、ぐちゃぐちゃでたべにくいんだもん」

人喰「……そう」

食糧「?」

人喰「さーてじゃあ食べよっか。今日はハンバーグにしてみたよー。肉の臭みを取るために香辛料とハーブがたっぷりだ」

食糧「はーい。いただきます」

人喰「いっぱい食べなー」

食糧「ねえねえあるじさま」

人喰「何だい?」

食糧「どうして、あたしのごはんと、あるじさまのごはんはちがうの?」

人喰「よく気付いたね」

人喰「少しだけ部位が違うんだよ。君のは一番美味しい所。僕のは次に美味しい所」

食糧「どうして?」

人喰「美味しいものをいっぱい食べさせて、君に美味しくなってもらうためだよ」

食糧「ほー、あるじさまかしこい!」

人喰「だろ?」

人喰「しっかし、赤ん坊の君を拾った時にはほんと困ったもんだったよ」

食糧「どうして?」

人喰「小さくて食べ甲斐がなさそうだったから。今も小さいけど」

食糧「あるじさま、いっぱいたべるもんねえ」

人喰「ああ。で、小さな君を抱えて僕は名案を思い付いた。そこのソース取って」

食糧「どーぞ」

人喰「でも、君は最近美味しそうになってきたねえ」

食糧「そう?そうかなあ?」

人喰「ああ。特にこの指」

食糧「ゆびー?」

人喰「切り落として、カラッと揚げると酒のつまみによさそうだ」

食糧「にゃー」

人喰「目玉も大きくて食べ応えがありそうだし」

食糧「えへへ」

人喰「耳は柔らかいし、調理はいらないかな」

食糧「くすぐったいー」

人喰「でも一番食べてみたいのは……心臓かなあ。いきが良いから歯応えがありそうだ」

食糧「あたしもあたしのしんぞーたべる!」

人喰「いいよ、食べさせてあげる。生きてさえいればね」

人喰「まあ、まだ食べないけど」

食糧「えー」

人喰「僕はグルメなんだよ。まだまだ美味しくなるまで待つさ」

食糧「しょぼん」

食糧「あ、あのね、あたしはシチューがいいなー」

人喰「明日のご飯?」

食糧「ちがうの。あたし」

人喰「ああ、君ね。シチューか、いいねえ美味そうだ」

食糧「おいしくたべてね!」

人喰「もちろんだよ」

食糧「そうそう、あるじさまにききたいの」

人喰「何だい?」

食糧「どうして?」

人喰「何が?」

食糧「あるじさまと、あたしは、どうしてちがうの?」

人喰「違うって言うと?」

食糧「つめとかー、おめめとかー、おくちとかー」

人喰「耳も鼻も皮膚も脚も手も腕も、君と僕とは全然違うねえ」

食糧「あとしっぽー」

人喰「ああ、それもあったか」

食糧「ねえ、どうして?」

人喰「人間と魔物だからさ」

食糧「にんげん? まもの? きょうのごはんが、まものっていってた! なあに?」

人喰「数多の種族の内の二つ。と言っても、僕にとっちゃ等しく食糧だ。何の違いもない」

食糧「よくわかんない」

人喰「君は分からなくてもいいんだよ。どうせそのうち僕が食べるんだから」

食糧「そっかー」

人喰「だけどそんな食生活を好むもんだから、僕はこんな山奥で暮らさなくちゃいけない」

食糧「なんで?」

人喰「同胞にしてみれば僕は異端だからねえ。異端は常に排除される。数には勝てない」

食糧「わかんなーい!」

人喰「ごめんねえ」

食糧「わかんないけど、あるじさまはごはんがすごい!」

人喰「うんうん、そう言って貰えると嬉しいね。君は無知で愚かだが聡くはある。生きる上で」

それではまた後日。書き溜めて参ります。

人喰「君にはいつか、一番美味しい人間の食べ方を伝授してあげるからね」

食糧「ハンバーグより?」

人喰「シチューより」

食糧「どんな食べ方?」

人喰「まだ内緒。僕もあんまりやったことがないからねえ」

食糧「たのしみー」

人喰「さて食事を終えたところで」

食糧「おねむ?」

人喰「いや、今夜は寝ずの移動だ」

食糧「えー……またおひっこし?」

人喰「今日のハンバーグが言っていたろう。『人喰いの魔物が出る』って。あれは恐らく僕のことだ」

人喰「ちょっとばかし、この辺りで食べ過ぎた。厄介ごとを避けるため、住処を変える頃合いなんだよ」

食糧「うー……このおうち、けっこーよかったのになあ」

人喰「まあ、今までの穴倉暮らしからすると、破格の場所だったことは確かだね」

食糧「きのおうちで、ごはんつき! あんまりおいしくなかったけど!」

人喰「贅沢言っちゃいけないさ。こんな辺鄙な山奥で暮らす人間なんか、偏屈の老人夫婦くらいのものだ」

食糧「くさくて、しわしわで、かたいおにくだったねえ……」

人喰「ま、どのみち噂が流れなくてもそろそろ潮時だと思っていたところさ。こんな場所、いつ誰が訪ねて来ないとも限らないし」

食糧「はーい……」

人喰「ま、次もいい場所見付けるからさ。君は凄い食糧なんだし、一晩歩くくらい平気だよね?」

食糧「うん! あたしすごいごはんだからがんばる!」

人喰「えらいえらい」

人喰「で……もうすぐ日の出だけど」

食糧「すー……」

人喰「はあ……お腹いっぱいになって寝ちゃうのはいつものことだよなあ」

食糧「すぴー……」

人喰「全く、背負うのはいいけれどせめて起きていて欲しいもんだよ。飼い主の役に立とうって気概に欠けるんだよなあ。この食糧は」

食糧「くう……」

人喰「やっぱり引越しは昼間の方がよかったかな?でも、あんまり明るい内にウロウロしたくないしなあ」

食糧「……」

人喰「君はどう思う?」

食糧「……おなかへった」

人喰「そうだねえ」

人喰「近くに川があるみたいだし、魚でもとるかな?」

食糧「おにくはー?」

人喰「ないよ」

食糧「きのうののこりでもいいからー……」

人喰「残りは全部埋めただろ。あんなかさばるもの持って引越しなんかできないよ」

食糧「ぐー……」

人喰「育ち盛りの食欲旺盛は結構なことだよ。だがしかし、時と場合を選ぶべきだ」

食糧「おなかがぺこぺこで、いっぽもうごけませんー」

人喰「僕の背中で寝てるだけの君が何を言うんだか」

食糧「あるじさまのもふもふ、もふもふー」

人喰「お褒めに預かり光栄だ。だがいいかい、そもそも君には食糧としての自覚が」

食糧「あ」

人喰「……何だい」

食糧「あるじさま、あっち」

人喰「……」

食糧「おうち」

人喰「ああ、あれ……家、か。よく見えなかったよ」

食糧「ひと、すんでるかな?」

人喰「……さあ、どうだか」

食糧「どうする?」

人喰「……」

食糧「おかえりあるじさま」

人喰「ただいま。魚に果物、色々採ってきたよ。煙で気付かれちゃまずいし、魚は向こうで焼いてきた」

食糧「わーい!」

人喰「で、どうかな。あの家の様子は」

食糧「あのねー、おいしそうなおにくがふたつ、でたり、はいったりしてる」

人喰「へえ、そりゃいいね」

食糧「どうするの?」

人喰「ま、夜までこの崖から様子見ってとこかな」

食糧「夜になったら?」

人喰「いけそうなら寝静まった頃合いに、ね?」

食糧「ね!」

今日はここまでです。また後日、お付き合い頂けますように。

人喰「さて夜だ」

食糧「……いくの?」

人喰「ああ。君はいいよ、寝てな」

食糧「はーい……きょうのあるじさまはやさしい」

人喰「あの家を見付けた、君の功を労っているだけさ。ま、寝て待ってな。すぐ終わらせてくる。『爪』も研いだし」

食糧「がんばってねー……」

人喰「ああ」

人喰(さて……この辺りが寝室かな?)

人喰(灯りは消えた)

人喰(獲物は二つ)

人喰(しかしどんな人間だろう)

人喰(猟師ならちょっと面倒だなあ。銃をベッドの側に置いていないとも限らないし)

人喰(他の部屋から侵入するか……向かいの部屋の窓は、っと)

人喰「あ」

人4「……すう」

人喰「へえ、子供がいたのか」

人喰「暴れられると面倒だし、今の内に始末……いや」

人喰「口を塞いで、手足の腱を切って、縛り上げておこう」

人喰「うん」

人喰「思った以上にうまくいった」

人喰「寝首を掻くってのは楽な仕事でいいや。銃はあったが使う暇も与えなかった。流石は僕だ。鮮やかな手腕恐れ入る」

人喰「しっかしこいつらは何を生業にしていたんだろう。護身用にしちゃ武器が多かったし、やたらと薄汚い麻袋がいくつも転がっているし」

人喰「ま、察しはつくけど。明るくなってから調べるか」

人喰「それより回収にいかなきゃ」

人喰「おーい終わったよ」

食糧「……あるじさま」

人喰「ほら行くよ、家に入ったら寝ていいから」

食糧「だいじょぶ! ねむくない!」

人喰「あらま。目が覚めちゃったようだね」

食糧「うん! おてつだいするのー!」

人喰「うんうん。じゃあ丁度いいや」

食糧「?」

人4「うぅ……う!?」

食糧「わー」

人喰「どう?」

食糧「ちっちゃい」

人喰「いや、君も十分に小さいんだけどね」

人4「…………!?」

人喰「さてと、猿轡くらいは取ってあげようかな」

人4「お……おば、け!?」

人喰「お化けだって。失礼しちゃうね」

食糧「ねー」

人4「ひ……や、こ、来ないで!」

人喰「よーく見てよ。お化けじゃなくて魔物」

食糧「まものだもんねー」

人4「パパママ!  助けて!!」

人喰「残念だけど君のご両親は僕に殺された。だから助けは来ない。こんな山奥で暮らしていた君たちが悪いんだからね」

人4「い、いや……殺さないで」

人喰「うん。殺さないよ、その代わり」

人4「ひ」

人喰「ちょっと、この子と遊んであげて欲しいんだ。僕はやる事があるからね」

食糧「う?」

食糧「えへへー」

人4「……」

食糧「あそぼーあそぼー」

人4「……」

食糧「うー……げんきないの?」

人4「……」

食糧「あ。げんきがないなら、おにくをたべればいいんだよ!」

人4「……」

食糧「いま、あるじさまがあっちのへやで、おにくばらばらにしてるからね。いっしょにたべさせてもらおうね」

人4「うっ……うう……こ、こんなことが……ぁあ、る、はず」

食糧「あれー?」

人4「……けて……神様、助けて……」

食糧「かみさま?」

食糧「かみさまってなーに?」

人4「……」

食糧「なーに!?」

人4「……え……ひっく……」

食糧「もー……」

人4「……」

人喰「どうかなー?」

人4「ひ、ぃぃいいい!!」

食糧「あるじさま、どろどろー」

人喰「ああ、余計血塗れになっちゃったからねえ。怖いよなあ多分。どうでもいいけど」

食糧「あのね、このおにくあそんでくれないのー」

人喰「えー、そいつは酷いねえ」

人4「あ、あ」

人4「あ、遊び、ます、だから……たす、た」

人喰「ん? 僕に言われても困るなあ。君の命運を決めるのはこの子。で、どうする? 食べてしまうかい?」

食糧「うーん……まだおいとく」

人喰「あれ、意外だ。どうしてだい? お腹が空いてるんだろ?」

食糧「だって、ほかにおにくがあるもんねー」

人喰「なるほどねー」

人4「……」

人喰「さー君はどんな料理が食べたい?」

食糧「シチュー!」

人喰「はい残念ー牛乳とか必要なものが一切ないからややこしい料理は無理でーす」

食糧「ぶーぶー。じゃあなんできいたのー?」

人喰「気落ちした君の顔が見たかった以外、理由なんかあるわけないだろ?」

食糧「あるじさまはいつもいじわる」

人喰「ま、今夜はここにある食料で間に合わせるしかないよ」

食糧「えーあたらしいおにくは?」

人喰「まだ食べらんないよ。首を切って吊るしてきたところだからね。血抜きが終わるまで待ってもらわないと」

食糧「うー……まったら、おいしくなる?」

人喰「なるなる」

食糧「じゃあ待つ!」

人喰「偉い偉い」

何度か食糧を少女と間違えている箇所がありましたね。確認は大事です……。
それでは書き溜めが尽きたのでまた次回。よろしくお願いします。

次の日


人喰「さてと、よく眠れたかい?」

食糧「うん!やねがあるとぐっすりなの!あるじさまはどこでねたのー?」

人喰「そこのキッチンで雑魚寝だったよー君とそこの小さい肉に荒れてない子供部屋を当てがったせいでねー」

食糧「いわれてもこまるしーおなかへったー」

人喰「はいはいあるもので朝ご飯作らせてもらうからねー」

食糧「ところであるじさまー」

人喰「何だい」

食糧「そこのちいさなおにく、ずっとげんきがないの。どうしたのかな?びょーき?だいじょうぶかなあ?」

人喰「あー、うん。慈悲の心は褒めそやしたい気分だが、無理じゃないのかなー。腕は動かないし昨日の今日だし」

人4「……………………」

食糧「でもねげんきがないからね、あたしがね、おにくたべる?ってきいてもね、なくばっかりなの。どうしてかなあ?」

人喰「君は知らない、いや、理解できないかもしれないけどね。同族喰いは人間にとって最大級のタブーなんだ」

食糧「たぶー?」

人喰「【やっちゃいけないこと】だよ。人間は同族を殺すのだって躊躇するくらいだ。それがまして食べるなんて、尚のこと忌避すべきことかもしれないねえ」

食糧「よくわかんないなあ。おいしいから、たべるってだめなのことなの?」

人喰「君はそうした人の倫理を学ぶ機会なんてなかったからね。首を捻るのも当然と言えば当然だ」

人喰「しかし稀にとはいえ人は人を殺すし、人は人を喰う。どこかの国じゃあ、死体を焼いた骨をその身内で食いつくすらしいよ」

食糧「ええー。あんなのたべるの? かたいだけなのに。おいしいの?」

人喰「美味い不味いは別として、死後も共に在るって誓いだか祈りだか気安めだか、そんなものらしいよ」

食糧「ううー……わからないことばっかり。かみさまもわかんないし」

人喰「神様?」

食糧「きのうね、ちいさいおにくがいってたの。『かみさまたすてけ』って」

人喰「神様助けて、だと思うよ」

食糧「かみさまってなあに?」

人喰「うーん、そうだねえ。全知全能で万能で、とりあえずの時に縋るものかな」

食糧「! だったら!!」

人喰「うん?」

食糧「かみさまはあるじさまなの!?」

人喰「…………ふっ」

人喰「【神様】かあ」

食糧「いーっぱいかしこくて、なんでもできて、たすけてくれる!」

人喰「そうだね、君の神様は僕かもしれないね」

食糧「あ、じゃあちいさいおにくは、あるじさまに『たすけて』したの?」

人喰「いいや、きっと違うよ。人によって、隷属する神は別だからね」

食糧「あたしのかみさまはあるじさま!」

人喰「そうかいそうかい」

今回はここまで。ちょっとずつでも来れるように頑張ります。

人喰「さて、そんなわけで今日最初の食事といこうか」

食糧「わーいわーい。おにく?」

人喰「ああ、肉ならあるよー」

食糧「!」

人喰「ま、豚の干し肉だけど」

食糧「……いし?」

人喰「石じゃなくて一応肉。あの人間たちはまだ下処理が必要でねえ」

食糧「まずそー……うえー……」

人喰「まあそう言わないでおくれよ。まあ食べられる味のはずだから。ほら試しに一切れ」

食糧「あーん」

人喰「どうだろう」

食糧「むー……あんまりおくちにあいません。いしみたいでかたいです。だからもういっこ!」

人喰「現金なやつだなあ。ほら、こっちのパンも食え」

食糧「ぱさぱさやだー!そっちのいしのおにくがいいー!」

人喰「好き嫌いする不味い食糧は食べてあげないよ?」

食糧「ぐぬぬ」

人喰「さてと餌付けも済んだし、僕も頂こうかな」

食糧「?」

人喰「どうかした?」

食糧「あるじさまはいしのおにく、たべないの?」

人喰「あー。さっき試しに食べてみたんだけどね」

食糧「うん」

人喰「到底食えたもんじゃなかったね」

食糧「うん?」

食糧「たべられるあじじゃないの?」

人喰「まあ、普通の《人》にとってはいける味だろうってこと。僕は偏食に偏食を極めてしまったようだ。口にした瞬間吐いちゃったよ」

食糧「すききらいしたら、おいしくなれないっていってたのにー!」

人喰「僕は誰にも食べられるつもりはない。だからいいんだよ」

食糧「ずるい! きがする!」

ご無沙汰しております。忘れたわけじゃないですよー……という足掻きです。
落ちないよう、じわじわ続けていきたいです。

人喰「第一、生き物を食べるというのはどういうことか分かるかい?」

食糧「おなかがへるかだよ?」

人喰「ああそうだ。腹が減るから喰う。そうとも。正解だ。だが違う」

食糧「ちがうの?」

人喰「表裏一体とも言えて、全く異なるとも言える。腹を満たすのは手段だ。目的は単純。《死の転嫁》に他ならない」

食糧「し、の、てんか?」

人喰「僕らは生きるごとに死に近付く。死が膨らむ。鬱積する」

食糧「?」

人喰「毎日毎日小さな死が積もり積もる。それが一杯になった時、まさにその時だ。死が得意げな顔をして首を」

食糧「ぐっ」

人喰「こう、引き千切……おっと」

食糧「げ、げぇっご、あっぐごぼぼぼ」

人喰「ごめんごめん。加減を間違えた」

人喰「あーあー折角食べたのに全部吐いちゃってもー」

食糧「げっぼがほ……あ、あるじさまがわるい!」

人喰「ごめんってば。お詫びに昼にはシチューを作ってあげようね。石じゃない肉で」

食糧「あるじさまやさしい!」

人喰「首に跡残っちゃったけど優しいかーそうかそうか」

人喰「まあ、後片付けでもしつつ話を元に戻そうか」

食糧「はーい。てんかってなあに?」

人喰「僕らは毎日毎日小さな死を押し付けられる。それが一定量溜まれば本物の死が襲う。そうならないように、小さな死を他の命になすりつける必要がある」

食糧「あ、わかった!   かわりに、ほかのいきものにしんでもらうの?」

人喰「その通り!  やっぱり君は小さいくせに聡くて素晴らしいなあ!」

食糧「わーいなでなでわーい」

人喰「そういうわけだ。僕らは他の命を喰うことで、死からしばしの暇(いとま)を頂いているんだよ」

食糧「うーんうーん。わかったような、わからないような」

人喰「君ならすぐに理解できるさ。今は僕の話を聞いてくれるだけで合格だ」

食糧「わーい。あるじさまはいっぱいしっててすごいねえ」

人喰「知ってる、って言うよりも僕はこうして同胞たちからはみ出て生きざるを得なくなってから、この真理に辿り着いた。同胞たちからすれば、きっと僕のこの真理は何とも後ろ暗い、受け入れ難いものだと思うよ」

食糧「むー。あるじさまのどーほーってひどいんだね」

人喰「いいさ。今更だ。もうあちら側に戻る気なんか更々ないし」

皆さんお言葉ありがとうございます。
Bさんは他のところでよくコメント下さっている方でしょうか?違っていたらすみません。
こんなテンションで続けていきます。楽しんで頂けていれば本当に嬉しいです。

食糧「じゃあなんでいしのおにくはたべないの?」

人喰「死を肩代わりさせるのにどんな命でもいいってものじゃないんだ」

食糧「そうなの?  し、ってわがままー」

人喰「甚だ偏食の激しい大食漢、といったところかな」

食糧「よくわかんないけど、ふーん」

人喰「死が好むのはもっとこう、純粋に、生きるために生きて足掻き苦しみ抜いた命なんだ。僕はそう信じている。喰われるために存在した命なんて、死からすれば邪道もいいところだろう。そんなもの食い物なんて認めない。ゴミだ。猛毒だ。世界が生み出した吐瀉物だ……!」

食糧「……あるじさま?」

人喰「あいつらときたら!  僕がいくら人間を勧めてやっても!  いくら腹を空かせていようとも!  そんなゲテモノは食せないと頑としてかぶりつこうとはしなかったんだ!!」

食糧「あるじさ」

人喰「僕は親切で言ってやったというのに迫り来る死から彼らを救おうと必死で足掻き苦しみ抜いたというのにだ!!」

食糧「あ、う、うん」

人喰「だから僕はあいつらの、信じられない物を見るかのような驚愕に染まり切った濁った対の瞳を!  僕を嘲り射抜く眼球を! 生きたまま引き摺り出して握り潰し……いや」

食糧「あるじさま?」

人喰「潰さなかった」

食糧「へ、へー」

人喰「どうやって食べたんだっけか」

食糧「……さあ?」

人喰「確か……丸呑み……いや、酒に漬け込んで……素揚げした……?」

食糧「あるじさまだいじょうぶー?  なんだかへんだよ?」

人喰「ああ、ごめんごめん。嫌なことを思い出しそうで、思い出せなかった」

食糧「おにくたべて、げんきだしてね」

人喰「ありがとう。君みたいに優しい生き物を食べることができるなんて、僕はなんて幸せ者なんだろうか」

人喰「さあさあ腹拵えを仕切り直して、それから忙しいよ」

食糧「?」

人喰「僕は肉の後処理。そして君は」

食糧「ちっちゃいおにくとあそぶ!」

人喰「うーん、それでもいいけど。それだとシチューはなしだよ?」

食糧「なあに!?  なあに!?  なんでもするよ!?」

人喰「僕が仕込んだこととはいえ、この純然なる食い意地は生きる上でどうかと思うね」

人喰「重大任務。それは……」

食糧「ごくり」

人喰「牛乳やバター、その他諸々を調達してくることだ」

食糧「……それって」

人喰「ああ、一人で人間の街まで出てもらう。お使いだ」

食糧「…………きゅぅ」

人喰「え、過呼吸起こして倒れるレベル?」

今日はここまで。
Bさんその他の方々にとって、ささやかな暇潰しとなりますように。

人喰「そんなに嫌だった?」

食糧「や、やだ……」

人喰「なんで?」

食糧「こ……わい」

人喰「またまたあ」

食糧「こわいもん!  にんげんいっぱいこわいのー!」

人喰「たまに君がわからなくなるよ。楽しいけどさあ」

人喰「いつも君が食べているのは何だい?」

食糧「にんげんだよ?」

人喰「怖いかい?」

食糧「おいしい!」

人喰「じゃあほら人間の街に」

食糧「やだー!  おにくじゃないにんげんが、いーっぱーいるんでしょ!?  きもちわるくてこわいー!!」

人喰「うーん、そうか。今まで大勢の人間を見る機会なんてなかったもんなあ。盗む時は大体僕だけで行ってたし」

人喰「なら尚更行ってもらう必要があるね」

食糧「あるじさまのおにー!」

人喰「残念ながら僕はしがない人喰いだ。そう暴れないでおくれよ。君のためでもあるんだから」

食糧「あたしのためぇ……?」

人喰「ああ。君の食事のため、ひいてはゆくゆくの、あるかもしれない未来のためだ」

食糧「?」

食糧「みらいって?」

人喰「僕が君を食べることができなかった、その時の話さ」

食糧「!?」

人喰「そう驚いた顔をしないでおくれ。僕だって色々考えての末なんだから」

食糧「あ、あるじさま、なんで……あたしをたべてくれないの?」

人喰「いいや、食べたい。今すぐにでも」

食糧「じゃあ!!」

人喰「だからこその保険だ」

人喰「いいかい、君を食べるのはこの僕だ。そのためにとびっきり美味しくなったその時を見計らって、じっくりゆっくり大切に育てている。他のどんな生き物にも君を食べる権利だけは譲れない」

食糧「う、うん」

人喰「だから万が一、僕が君を食べないままにこの命を終えてしまうようなことがあったとしても……君を食べる者が現れないように取り図る必要があるんだ。餌を奪われるのは、僕がこの世で一番憎むことだ。君だって僕以外に喰われるのは本望じゃないだろう?」

食糧「うん!  あるじさまにたべてもらうのが、あたしのおねがいごと!」

人喰「そうだろう、そうだろうとも。そうなるように教育したんだから。じっくりと、蝕むように」

人喰「だから、これは君が誰かに食べられてしまわないようにする、準備の一つだと思っておくれ」

食糧「うう……これをがんばったら、あるじさまだけにたべてもらえるの?」

人喰「ああ、もちろんだ。僕が君に嘘を言ったことが……うん、数多あるけどそこはほら、置いておこう。とりあえず保証してあげるから。頑張って行って来れるかい?」

食糧「うん!  がんばってくる!」

人喰「偉いなあ。流石は僕の家畜」

今日はここまで。ジャンルはこれ一体何なんでしょうかね。

人喰「さあ、準備はいいかな?」

食糧「はーい!」

人喰「じゃあ確認だ。盗ってくるものは?」

食糧「みるくと、ばたーと、てきとーにおやさい」

人喰「よく覚えたねー。ローブもこうやってしっかり被っておくんだよ?」

食糧「うー。あたしこれきらーい」

人喰「我儘言わない。顔を見られたらおしまいなんだから」

食糧「ぶー」

食糧「あるじさまの《もふもふ》ならいいのに……」

人喰「えー。無茶言うなよ」

食糧「《もふもふ》かして?」

人喰「無理」

食糧「ぶーぶーぶー」

人喰「こればっかりはどうしようもないからねー。君には大きいし」

食糧「じゃ、あたしがおっきくなったらかしてくれる?」

人喰「僕が寒くなるから勘弁だな」

食糧「ぶーぶー!」

人喰「はいはいぶーたれてないで。道は教えた通り。手順は任せる。きちんと仕事を完遂させること」

食糧「はぁい。つかまんないようにがんばるね」

人喰「ああ、君だとその可能性もあるよねえ。その時は……」

食糧「にゃ?」

人喰「いいかい、これが僕の《爪》。これが君の《爪》だ」

食糧「…………」

人喰「僕が何を言いたいか、君が何をするべきか、分かるよね?」

食糧「……うん!」

人喰「そう、その意気だ」

食糧「じゃあいってきます!」

人喰「はーい、きをつけていってらっしゃい」

食糧「がんばるー!」

人喰「頑張れー」

食糧「あるじさまもおにく、がんばってね!」

人喰「頑張るよー」

食糧「どきどきするー!」

人喰「そうだねー」

食糧「あのね、あのね、あのくもね!」

人喰「あの雲が?」

食糧「ぐっちゃぐちゃの、ないぞーみたい!」

人喰「そうかもねー」

食糧「あ、あっちのくもはのーみ」

人喰「早く行け」

食糧「あう」

人喰「さーて行ったな。全く乗り気にさせるのも厄介なものだよ」

人喰「だがこれも全ては最高の食事のため。労力は惜しまないさ」

人喰「何があっても、何が阻もうと」

人喰「あれを喰うのはこの僕だ」

人喰「…………」

人喰「喰えるといいんだけどなあ」

今日はここまで。乙などお言葉ありがとうございます。励みになっております。
多分これで半分くらいじゃないかなーと思います。お付き合いくだされば光栄です。

人喰「それじゃあ」

人4「っ……」

人喰「ごめんねえ放置してて。一応君にも餌をあげようと思うわけなんだけど」

人4「い、いらな」

人喰「拒否できると思うの?」

人4「……」

人喰「さあお食べー」

人4「う……これ」

人喰「うん?  何か不服でも?」

人4「…………」

人喰「やだなあ、そんな目で見ないでくれよ。喰わずに捨てたくなるからさ」

人喰「あの子の嘔吐した干し肉を再利用。拾い集めてそのまま皿に盛り付けてみましたー」

人喰「胃液の酸味がいい風味付になってるんじゃないかな?」

人喰「ま、屑肉のお前に餌を与えてやるだけ僕の慈悲ってことでさあ」

人喰「ほら喰えー」

人喰「喰えって」

人喰「喰えよ」

人喰「喰え」

人喰「喰え」

人喰「喰え」

人喰「……あーあー」

人喰「何で君まで戻すかなあ」

人喰「まあ別に僕が食べるもんじゃないからいいんだけど」

人喰「肉ならまだあるしねー新鮮なのが」

人4「げ……か、っは……あ、なたは」

人喰「うん?」

人4「どうして……人、なんか……食べるの……!?」

人喰「ああ?」

人4「どうして……!  どうしてパパと、ママを……!!」

人喰「僕は単に他の生き物より偏食なだけだっての。喚くなよ煩わしいなあ」

人4「それに、どうして、まものが、ひとと」

人喰「あの子?  あれは僕の未来のご馳走。それだけだけど?」

人4「おかしい……おかしい……こんなの、気持ちわるい……こわい……!」

人喰「いや、言われてもねえ」

人喰「お前は僕を認められないみたいだけどさあ、お前のパパやママも普通の人間からすれば糾弾されて然るべき生き物だったんだよ?」

人4「……」

人喰「あれだろ、野盗紛いのことをしてたんだろう。家の中には盗品らしきものがゴロゴロ。死体はこの先の崖にでも捨てたかい?」

人4「……った」

人喰「ああ?」

人4「パパとママは、ひとを殺してもたべるなんて!! そんな恐ろしいことはしなかったわ!! あんたなんかといっしょにじ」

人喰「あーごめんごめん。思わず蹴っちゃった。踏み躙っちゃってる。五月蝿いのが悪いんだからね」

今日はここまで。たくさんの乙をありがとうございます。数にびっくりしております。
しばらく毎日投下に来ていましたが、東京コミティア参加のため今週末の投下は難しいと思います。ご容赦ください。

人喰「君のその下らない倫理観が壊れるのが先か、餌になるのが先か。僕はどちらでもいいし、どちらにせよ楽しませてもらうつもりだ」

人4「…………」

人喰「そんな目で見られても。僕は人を喰うし、あの子も人を喰う。それはもう、どうしようもないことなんだよ?」

人4「…………」

人喰「魔物が人を喰い、人が人を喰う。人が魔物を喰うことはあるのかな? あってもいいと僕は思うんだけど。どうなんだろう」

人4「…………」

人喰「ああ、つまらない。やっぱり話し相手はあの子が一番適している」

人喰「ま、あの子が帰ってきたら……人が人を喰う光景をじっくり見せてあげるからね」

人4「……っ」

人喰「楽しみにしているといいよ。僕の機嫌が良ければ御裾分けだってしてあげよう」

人4「…………」

人喰「さてさて、僕の可愛い食糧はお使いくらいできるのかな」

人4「…………」

人喰「楽しみで、待ち遠しくて、腹が減るなあ」

人4「…………」

人喰「ふふ」

街──


食糧「ふわあ……」

食糧「に、にんげんが……いっぱいだ……」

食糧「ぶるり」

食糧「みつかったら……こわいことされるって、あるじさまいってた」

食糧「こそこそ……」

食糧「おうちとおうちのあいだのくらいところ」

食糧「ここはにんげんがいないの」

食糧「ちょっときゅーけい」

食糧「まったりー」

食糧「あるじさまにもらったこれをたべます」

食糧「かたいおにくもおいしいね」

食糧「…………ひとりだと、おいしさちょっとだけ」

お久しぶりですがちょっとだけ。
コミティアのような場所に出ると色々書きたくなってしまいます。次は魔王ものが書きたい。
まったりご静聴頂けますと幸いです。

食糧「!」

食糧「おと……」

食糧「だれか、いるの?」

食糧「……」

食糧「……ほっ」

食糧「なあんだ」

食糧「ちっちゃいおにくだ」

食糧「こんにちは」

食糧「?」

食糧「『にゃー』?」

食糧「へんなこというんだね」

食糧「しゃべれない?」

食糧「しゃべらないほうのおにくかー」

食糧「おにくもふもふー」

食糧「あるじさまといっしょだねえ」

食糧「あるじさまのがもふもふだけど」

食糧「えへへーぐりぐりもふもぃ!?」

食糧「ったあ…………」

食糧「ち…………」

食糧「…………あ」

食糧「にげられた……」

食糧「あーあ」

食糧「どうしよ」

食糧「おつかいをがんばるか」

食糧「おっかけて……か」

食糧「……」

食糧「うん」

食糧「あるじさまならこんなとき」

食糧「ぜったいにおっかける」

食糧「おっかけて、おいついて、つきさして、うごかなくして」

食糧「する」

食糧「よーしまてまてー!あるじさまへのおみやげー!」

半月ほどぶりになります。お待ちいただいていた方がいらっしゃいましたら申し訳ございません。
完結させるつもりではありますので、どうかひらにご容赦ください。
ところで私事ではありますが、近頃京極夏彦にハマりミステリー熱が高まっております。
ミステリー小説で何かオススメがございましたらよろしくお願いします。ではまた。

あけましておめでとう
最近読んだ中じゃハサミ男が面白かったな
殺戮に至る病とか叙述トリック系大好きなもので

食糧「あ」

人7「あ?」

食糧「なあに?」

人7「こっちのセリフなんだけどなあ……何だおまえ、新入りか?」

食糧「うんー?」

人7「どっから来たんだよ」

食糧「あっち」

人7「あっちじゃわかんねえよ」

食糧「んっとねー、あのおやま」

人7「山ぁ?」

食糧「うん」

人7「山から……どこかからにげて来たのか?」

食糧「ううん?」

人7「じゃあなんなんだよ。何をしてんだよ」

食糧「えっと、あのね、ちっさいのをおっかけてたの!」

人7「ちっさいの?  さっきのネコか?」

食糧「ねこ?」

人7「毛むくじゃらで、耳と尻尾が生えてるやつ」

食糧「あ!」

人7「あ?」

食糧「それしってる!」

人7「おお、そうか」

食糧「おいしい?」

人7「まだ喰ったことねえから知らねえよ」

食糧「にげられたからおっかけてたら、にげられちゃったの」

人7「ふぅん」

食糧「あるじさまへのおみやげだったのに」

人7「……お前、ドレイなの?」

食糧「どれい?」

人7「お前いくつ?」

食糧「なにが?」

人7「年」

食糧「うーんと、えーっと、わかんない」

人7「おれとあんまりかわんねーみたいだし、七つくらいかと思うんだけど」

食糧「じゃあそれでいい」

人7「いいっておまえ」

人7「で?」

食糧「?」

人7「にげて来た、ってわけでもなさそうだし。なにやってんだ?」

食糧「ねこおっかけてたの」

人7「その前は?」

食糧「おつかいー」

人7「ああ、そんで道に迷ったと」

食糧「まよったの!」

人7「運がよかったなあ」

人7「こんな路地裏の奥っかわ、わるい大人に見つかってみろよ。一発でおわりだ」

食糧「そうなの?」

人7「ああ。ここは昼間でも暗いからな、悪だくみには最適らしいぞ」

食糧「そんなにくらいかなー?」

人7「おまえ目ぇいいんだなあ」

人7「ま、悪いことはいわねえよ。はやくおつかいすませて帰んな」

食糧「うん。あ、あのね、どこでミルクとれるかな?」

人7「……買うんじゃねえの?」

食糧「かう?  あるじさまは、とってきてって」

人7「……よくわかんねーご主人さまだな」

食糧「えへへーあるじさまはすごいの」

人7「ふうん」

来ちゃった……/////
そんな感じです。まったり続けますまったり。

>>159
叙述もの!オススメ色々ありますがオススメした時点でネタバレという諸刃の剣!
しかし敢えてここはロートレック荘を推しますね。あれは本当に素晴らしい文章でした。
ハサミ男を読まれたのでしたら筆者の黒い仏などいかがでしょう。笑い飛ばすか投げ捨てるかの二択です。

食糧「ミルクどこでとれる?」

人7「そうだなあ。そのへんの食堂にでもしのびこんでくりゃいいんじゃね?」

食糧「しょくどう?しょくりょう?」

人7「食堂。なんだよおまえ、なんも知らないのか」

食糧「しってるもん」

人7「へえ。どんなことだ?」

食糧「どんなごはんがおいしいか」

人7「聞くんじゃなかった」

食糧「ほかはいっぱいおべんきょちゅうなの」

人7「しかたねえなあ。まってろ」

食糧「?」

人7「ほら」

食糧「わあ!」

人7「ミルクにバターに野菜に……あとはてきとうにおれの飯だ」

食糧「すごい!すごいねえ!」

人7「へっ、これくらいどうってことねえよ」

食糧「おにくすごい!」

人7「は?肉?肉は今回ひとつも」

食糧「えへへー」

人7「ま、いっか」

食糧「どうもありがとう!」

人7「いんや。おまえトロそうだし、ついでだついで」

食糧「えへへー。これであるじさまのとこにかえれるー」

人7「帰るのか?」

食糧「うん」

人7「わるいことは言わねえからさ」

食糧「うん?」

人7「帰らねえほうがいいとおもうぜ」

食糧「ううん?」

食糧「あたしねー、おっきくなったらあるじさまにたべてもらうの」

人7「は……はあ?」

食糧「だからあるじさま、あたしがいないとこまっちゃうの」

人7「…………ああ、そういう意味かよ」

食糧「うん? だからかえるねー」

人7「……こまったらここにこい」

食糧「うん! ありがとーばいばーい!」

人7「…………」

微量ながらこんばんは。また連休一気に書けたらいいなと思います。
アウターゾーン新刊が手に入らない呪いはどこの教会で解けますか。私事です。

食糧「ただいまー!」

人喰「おかえりー」

食糧「もうまっくらでつかれたの」

人喰「お疲れさま。で? お使いは?」

食糧「これ!」

人喰「おお」

人喰「ミルクにバターに蕪、人参、芋……へえ」

食糧「すごい?」

人喰「すごく偉い。まさか本当に完遂してくるとは思ってもみなかったからねえ」

食糧「むー。あたしはすごいしょくりょうだもん!」

人喰「いやあ確かに見直した。ん?」

食糧「?」

人喰「へえ。こんなものまで取って来たんだ」

食糧「?」

人喰「何か分からず取って来たのかい?」

人喰「まあいい。あとで食べてみようか」

食糧「たべもの?わくわく」

人喰「まずは夕飯だ」

食糧「シチュー!」

人喰「はいはい、今から作るんで待っててくれるかな?」

食糧「わーいわーい!」

人喰「じゃ、その間に仕事を任せよう」

食糧「うんー?」

食糧「あれー?」

人4「ひっぃ……!」

食糧「きたなくなった? ぼろぼろだ」

人4「い、……あ……」

食糧「うー。おいしくなさそう」

人4「…………」

食糧「あのね、はい」

人4「え……う」

食糧「あるじさまがね、ごはんあげてきてって」

人4「たべたくない……」

食糧「だよね!」

人4「う」

食糧「パンよりおにくのほうが、ぜったいおいしいもんね!」

人4「…………」

食糧「あ、あれ?」

食糧「ちがった?」

人4「う……ぅう……」

食糧「だいじょぶ?  いたいの?」

人4「……え」

食糧「よしよし」

人4「……」

食糧「あるじさまがねー、たまによしよししてくれるの」

人4「……」

食糧「そしたらげんきでて、えへへーってなるんだけど」

人4「……」

食糧「なった?」

人4「……へんなの」

今日はここまで。タイムマシンを探す旅に出ます。探さないでください。

食糧「げんきになったらね、パンたべる?」

人4「……」

食糧「?」

人4「て……」

食糧「て?」

人4「て、動かない……」

食糧「あー。あるじさまに、きられたんだよね」

人4「……うん」

食糧「あるじさまはたまにらんぼーなの」

人4「うん」

食糧「よしよし。あたしがたべさせてあげるの」

人4「う……」

食糧「はい、あーん」

人4「……」

食糧「たべないのお?」

人4「……ん」

食糧「いいこいいこー」

人4「へんなの……」

食糧「へん、かなあ?」

人4「うん。すっごく変」

食糧「へんかあ」

人4「でも」

食糧「うん?」

人4「あのお化けよりこわくない」

食糧「あるじさま?」

人4「うん」

食糧「あるじさま、だいたいいっつもこわいからねえ」

人4「うん」

食糧「あ、いまね、あるじさまがシチューつくってくれてるの」

人4「……」

食糧「たべ」

人4「食べない!!」

食糧「ほあ」

人4「うっ……う……パパ……ママぁ……」

食糧「?」

食糧「パパとママってなあに?」

人4「……知らないの?」

食糧「うん」

人4「今よりちいさいとき、誰といっしょだった?」

食糧「あるじさまだよ!  ずーっと、あるじさまといっしょ!」

人4「そう……」

人4「パパはね、お父さんなの。ママはお母さん」

食糧「あ、それしってる」

人4「わからないかと思ったのに」

食糧「こどもは、おかあさんのおちちでおっきくなるんでしょ?」

人4「うん」

食糧「おいしいの?」

人4「……覚えてない」

食糧「じゃあ、なんでシチューはいやなの?うしのおちちがはいってるんだよ?」

人4「ミルクは別にいいの……」

食糧「じゃあなんで?」

人4「あなた、そのシチューになにが入れられるのか……しっているんでしょう?」

食糧「うん。おにくだよ」

人4「……それ」

食糧「うん」

人4「あたしの……ママなんだって……」

食糧「へえー」

人4「あたしのママを……たべ、食べるって……」

食糧「そっかー」

今日はここまで。依然としてタイムマシンも漫画も見つかりません。隣で寝ていらっしゃる方を恨みます。
お待ちいただきありがとうございます。これはあともう少し続くと思われます。
終わったら魔王勇者のハートフルもの書くんだ……。

食糧「でもさ」

人4「……?」

食糧「ママのおちちはのむのに、おにくはだめなの?」

人4「だ、ダメにきまってるじゃない! ママなのよ!?」

食糧「うしとなにがちがうの?」

人4「いっしょにしないで! ママはママなの!!」

食糧「わかんないなー」

食糧「あるじさまいってたよ?  おにくはみんなびょーどーだって」

人4「人と牛は全然違うんだよ……」

食糧「おいしいよ?」

人4「……こわれてる」

食糧「?」

人4「……」

人喰「おーいご飯できたよー」

食糧「ごはん!」

人4「……」

食糧「たべる?」

人4「……」

食糧「いっしょにたべるとおいしいのに」

食糧「ちっちゃいおにくね、ごはんいらないって」

人喰「あ、勧めたの。すごいなあ」

食糧「なにが?」

人喰「いや、人間はね空気ってものを読むんだよ」

食糧「じ、よめないからむり!」

人喰「そういやそうだった」

人喰「さあてシチューが煮えたよ」

食糧「おにくいっぱい?」

人喰「もちろん、人間雌の太腿と尻臀を全部煮込んでみたよー」

食糧「おなべいっぱいー!!」

人喰「喜んでもらってよかったよかった」

人喰「でも僕としてはねえ」

食糧「シチューきらい?」

人喰「嫌いっていうより、口に合わないんだよねえ」

食糧「かたいおにくもだめなんだったね」

人喰「そうなんだ。この偏食はやはりどうにかするべきか否か」

食糧「どんなごはんが好きなの?」

人喰「そうだねえ。単純に焼いただけのものとか、あとは」

食糧「あとは?」

人喰「また今度教えてあげよう」

食糧「このまえもそういってたー」

十日ぶりですが今晩は。私事ですが今まさにAmazonでアウターゾーンを買うことができました。
またまったり続けていきます。ざくざく書きます。

食糧「ごちそうさまでした!」

人喰「いえいえ」

食糧「あるじさまはちょっとだけだねえ」

人喰「やっぱりねえ、こういう無駄な加工したものはどうもねえ」

食糧「ハンバーグはおいしいのに?」

人喰「うん?」

食糧「このまえ、ハンバーグはたべてたのに」

人喰「あれはそうだね」

人喰「実はあれ、僕と君のとではちょっとだけ調理法を変えていたんだ」

食糧「つくりかた?」

人喰「そう」

食糧「おいしいつくりかた?」

人喰「それも君にまた教えてあげようね。さて」

食糧「?」

人喰「これ、食べてみる?」

食糧「なあに?」

人喰「君が取ってきたんだろ」

人喰「人間の食べ物で、マフィンって呼ばれてるものだよ」

食糧「まふぃん?」

人喰「お菓子」

食糧「おかしいの?」

人喰「僕にとっては奇怪な食べ物かなあ」

人喰「まあお一つどうぞ」

食糧「がさがさー。パンみたいー」

喰「パンより好きな人間もいるみたいだよ?」

食糧「ほんと?じゃあいただきまーす」

人喰「ああ、是非感想を聞か」

食糧「ぅげぇえええ」

人喰「早いなあ」

食糧「なにごれええええ」

人喰「それが『甘い』って味覚だよ」

食糧「う、べおろぉおおぉお」

人喰「君にそういう甘いもの、与えたことなかったからさ。反応見たかったのはあるけど」

食糧「う、う、うぅう……あああああん」

人喰「泣くほど口に合わないとは」

食糧「きもちわるいよぉおお」

人喰「自分で取ってきたくせに」

お待ちいただきまことにありがとうございます。思った以上に無駄に長くなっています。大変申し訳ございません。
私事ですが、今週末にまた東京コミティアに参加します。新刊はありませんが、お立ち寄りの際はお気軽にどうぞ。

食糧「あのね、おくちのなかがね、どろーっとして、べたーっとして、それできもちわるいの!」

人喰「なるほど」

食糧「パンのほうがまし!」

人喰「はいどうぞ、口直し」

食糧「もぐもぐ」

人喰「あれだもんねえ。君にはデザート、って言っても果実くらいしか与えたことがないし」

人喰「でも一般的に人間の子供はこういう味が好きなんだとさ」

食糧「うえー」

人喰「君は……まあ、一般的な子供の尺からは外れていると言えなくもないか」

食糧「こどもってへん!」

人喰「君も一応子供なんだけどねえ」

食糧「あのちっちゃいおにくも、こんなのがすきなのかなあ……」

人喰「は?」

食糧「あのねー、まちでね、ちっちゃいおにくがね、とってきてくれたの」

人喰「は?」

食糧「おす、だったのー」

人喰「人に、見られた?」

食糧「うん」

人喰「《爪》は」

食糧「つかってないよ?」

人喰「ははは」

人喰「あー」

食糧「?」

人喰「ま、別にいいか」

食糧「あれ?」

人喰「?」

食糧「なぐったり、けったりしないの?」

人喰「おいおい、僕をなんだと思っているんだ」

人喰「腕の一本斬り落として、この場で食ってやろうかと思った程度だ」

食糧「あるじさまおなかへってるの?パンいる?」

人喰「いらない。後で別の物を食べるから。まあとにかく、不問に処すよ」

食糧「よくわかんないけど、おてていっぽんもうけたの」

人喰「全く、姿を見られたとなると……また引っ越しかなあ」

食糧「あ、でもくらくてよくわかんない、っていってたよ」

人喰「本当かい?」

食糧「うん」

人喰「うーん……ま、いっか」

今日はここまで。
サークルスペース目欄に入れるつもりが忘れてました。こ22aでMicro+です。
人喰を見た!でオマケするかもしれません。適当です。

人喰「まあそんなわけだ。もう寝るといい」

食糧「はーい」

人喰「どこに行くんだい?」

食糧「ちっちゃいおにくのとこでねるのー。あったかいからぎゅってしてねんねするの」

人喰「……まあいいけど。くれぐれも」

食糧「はーい。あるじさまがいいっていうまで、たべません!」

人喰「よろしい」

食糧「あるじさまも」

人喰「うん?」

食糧「ひとりでぜんぶ、たべちゃわないでね?」

人喰「……ああ」

食糧「それじゃ、おやすみなさい!」

人喰「お休み。僕の餌」

食糧「ふわー」

人4「……どうしてここに来たの」

食糧「ねんねするならあったかいほうがいいの」

人4「……そう」

食糧「ほら、毛布かけたげるね」

人4「……」

食糧「さむくない?」

人4「お礼は……」

食糧「?」

人4「ぜったい、言わないから」

食糧「えへへーいいよいいよー」

お久しぶりです。エタ回避で復活です。ぼちぼち書いていきます。こっからどうしようかなー。

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