男「この一本桜の下に」 (16)
男「何が……あったんだっけ。思い出せない……」
男(ずっとずっと昔の記憶。朧気でほとんど思い出せないけど、何かがあったはずなんだ。ここに。この桜の木の下に」
男「…………」
タッタッタッタ
友「おう、おはよう男! 早く学校いかないと遅刻するぞ!」ハァハァ
男「! そっか。もうそんな時間か」
~学校~
男(授業暇だな……)
俺は、いつもなにかを忘れて生きている気がする。何か失ってしまったような心の中に空洞があるような。しかし、この16年間生きてきた中でそんな虚無感を背負うような出来事はなかったと記憶している。いったいこの感覚は何なのだろうか。
男(俺はこの心の穴を埋めることができるのか……?)
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この心にぽっかりと空いてしまったものを塞ぐにはどうすればいいのだろう。俺に、方法の心当たりはない。あの人に聞いてみようか。博識で知らないことが無いんじゃないかと思うほどの先輩に。
~放課後~
先輩「ん? 心の中にある虚無感?」
男「そうなんです。何か忘れて時間が過ぎていってしまっているような、そんな感覚です」
先輩「なぜそれを私に?」
男「アナタならなんでも知ってると思ったからです」
先輩「それ、本気でいってるんならお前はバカだぞ」
男「ハイ」
先輩「」
男「アノ…」
先輩「知らんがな」
男「えっ」
先輩「だってわからなくない? なんでも知ってるっていったってさすがに私は君の心の中のことまではわからないよwwww」
男「ソウデスヨネ。俺、どうかしてました」
先輩「うん」
男「……」
先輩「……」
さすがに先輩だからといってなんでもわかるわけではないようだ。なんとなくはじめからわかっていたけど、なぜか先輩ならそれが解決できると思ってしまったのだ。
先輩「…………」ハァー
男「ため息……ですか」
先輩「男君」
男「え、はい?」
先輩「君は私のこと、好き?」
男「えっ!?///」
先輩「何照れてんだよ気持ち悪い。そういうことじゃなくて」
男「どういうことですか?」キモチワルイッテ…
先輩「私のことが嫌いなら、私に興味なんてあまりわかないよね」
男「そう……ですね。それがどうしたんですか」
先輩「じゃあ、好きだと興味がわくよね?」
男「そうですね」
先輩「私は君のことは好きだよ」
男「えっ!?///」
先輩「そういうことじゃねぇ[ピーーー]」
男「」
先輩「……だから、興味もわく。君は思ってることだったり、君が好きなものだったりと、ある程度は知っておきたいと思う」
男「……?」
先輩「でも、君のことがわからないのは、きっとまだ男君に対する興味が君の望むところまで至ってないということだと思う」
男「……といいますとつまり……?」
先輩「つまり、君が望んだ質問は私じゃなくて、もっと君に興味がある人にするべきだと。もっと男君と親しくて、男君のことが好きな人に」
男「そういうことですか。その人だったら俺の気持ちを察してもらえるかもしれないと?」
先輩「そういうこと」
男「なるほど……。さすが先輩ですね、なんでもわかってらっしゃる」
先輩「はいはい」
sagaつけわすれた
先輩「じゃあ、好きだと興味がわくよね?」
男「そうですね」
先輩「私は君のことは好きだよ」
男「えっ!?///」
先輩「そういうことじゃねぇ死ね」
男「」
先輩「……だから、興味もわく。君は思ってることだったり、君が好きなものだったりと、ある程度は知っておきたいと思う」
男「……?」
先輩「でも、君のことがわからないのは、きっとまだ男君に対する興味が君の望むところまで至ってないということだと思う」
男「……といいますとつまり……?」
先輩「つまり、君が望んだ質問は私じゃなくて、もっと君に興味がある人にするべきだと。もっと男君と親しくて、男君のことが好きな人に」
男「そういうことですか。その人だったら俺の気持ちを察してもらえるかもしれないと?」
先輩「そういうこと」
男「なるほど……。さすが先輩ですね、なんでもわかってらっしゃる」
先輩「はいはい」
男「先輩より俺のことが好きで親しい人…か。だれだろ」
帰路についた俺は先輩の言葉を思い出していた。
もしあの言葉のとおりなら、その人なら俺の人生における最大級の問題を解決してしまうのかもしれない。だが、本当にそう簡単にいくのだろうか。そもそも俺のことが好きで親しい奴なんてそんな奴はいなかった気がするのだが。
頭の中をかき混ぜながら、俺は帰路の途中にあるコンビニによることにした。
男(おでんでも買っていこう)
ウィーン
店員「いらっしゃいませー」
男「あの、おでんの大根2つ――って、え?」
店員「えっ、って、えっ!?」
男「女……?」
女「え? 男君?」
男「おま、こんなところで働いてたのか!」
女「そうだよ、言ってなかったっけ?」
男「聞いてないな、全然」
女「あらま……。学校帰り?」
男「そうだけど、バイト何時まで?」
女「えっ? なんで?」
男「ちょっとお前にも聞いておきたいことがあってね」
女「私にも……?」
男「おう。まぁ終わったら連絡してくれ」
女「よくわからないけど、わかった」
男「おう」
~自宅~
男「ふぅー。疲れた」ベッドニダーイブ
ボフッ
男「…………」
俺のことについて、女はわかるだろうか。女は先輩より俺のことが好きなのだろうか。先輩と俺の関係よりも女と俺の関係のほうがより親しいのだろうか。疑問はわいて尽きないけれども、やはりここは数を打つしかないだろう。根本的な解決方法がみつからないのだから、人を頼るしかない。
女と俺が出会ったのはいつのことだったか。あまり確かには覚えていない。だが、幼い頃であったのは間違いないだろう。小学生のときだった気がする。ということは、やはり先輩との関係よりも親しい関係なのかもしれない。
男(少しだけど希望がわいてきたな……)
男「……そんなことより、ベッド気持ちいい。ヘタなオ○ニーより全然気持ちいい……」
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
男「あ!! おでん買い忘れた!!」
~学校~
友「先輩も聞かれたんすか?」
先輩「うん。きっと、一本桜のことについてなんだろうね」
友「そうですねきっと。アイツ、いっつも一本桜の近くを通るとそこで立ち止まるんです」
先輩「そっか。心の中の穴……ね」
友「…………」
先輩「友君は、どうなの?」
友「……え?」
先輩「なんであんなにサッカーが好きだったのに……」
友「……俺も、ですかね」
先輩「そっか」
友「はい……」
先輩「…………」
友「…………」
先輩「……桜、今年も綺麗だね」
友「そうですね、ちょうどここから見えますね」
先輩「私は、この季節が好きだよ」
友「…………」
先輩「もうすぐ春が終わる」
友「……はい……」
~男の家~
男「ZZZzzz」
ブーブーブーブーマナーモードブー
男「!」
ピッ
男「もしもし」
女『もしもーし。バイト終わったよ』
男「うん」
女『うん、じゃないでしょww 寝起き?』
男「うん」
女『バカw 聞きたいことって何?』
男「えっと」
女『ん?』
男「その話については、直接しないといけないような気がするんだ」
女『そう、なの?』
男「おう。だからいつもの公園きてくれ」
女『わかった』
~公園~
男「おう、わざわざ来させちゃってごめんな」
女「家から近いから別にいいよ、それにココ好きだし」
男「好きなの?」
女「うん。よく小さいころここで遊んでたからかな」
男「そんなこともあったな。もう5年以上前の話になるのか、早いな」
女「そうだねー、あの頃の男君は泣き虫だったよねー」
男「うっせぇ// そんな話はいいんだよ」
女「ごめんごめんw」
男「……まぁ、本題っていっても、大したことに聞こえないかもしれないけど、俺はお前に聞きたいことがある」
女「ん?」
男「女、お前は俺のこと好きか?」
女「えっ?!///」
男「そういう意味じゃねぇ死ね」
女「え、ひどい」
男(あれ……この流れ昼間もやったような……)
男「そうじゃなくて、なんだろ」
女「なに?」
男「俺のことお前はわかってくれてるのかなって」
女「どういうこと?」
男「お前は、俺が思ってることとか、その、なんていうか、直感とかでわかったりするのかなって」
女「え……」
男「……ごめん、なんか変なこといってるな……」
女「いや、大丈夫だよ。なんか男君ががんばって私に伝えたいことがあるのはわかるからw」
男「そっか、ありがとう」
女「たぶん男君、今悩みごとがあるんでしょ? それを私に相談したかったんでしょ?」
男「そういうこと。女は話が早くて助かる」
女「一応長い間男君と接してきてるしねw」
男「そうだなw」
女「どんな悩みなの?」
男「それが、わからないのが悩みなんだよ」
女「えっ?」
男「なんていえばいいんだろ。心に穴が開いてるような感覚があって、何か大切なものを置き去りにして生きてる気がするんだ。それが、女になら何なのかわかるかなって思ったんだ」
女「心に穴が開いてる……大切なもの……。んー……。それだけじゃ結構難しいなぁー」
男「そうだよな。無理に等しいもんな」
女「……んー……」
男「一本桜」
女「!」
男「一本桜だ」
女「一本桜がどうかしたの?」
男「あそこを通るといつも立ち止まってしまう。きっと一本桜に秘密があるのかもしれない」
女「一本桜に……。そっか。男君の心の穴って……」
男「何かわかるのか?」
女「わかるかもしれない」
男「そうなのか!? じゃあ教えてくれ!」
女「ごめん、それはちょっと無理かなぁー……」
男「なんでだ!?」
女「私の心の中の蓋が外れちゃうから」
男「は? 意味がわからんぞ」
女「……ごめん、とりあえず私は話せないな。ほんとごめん」
男「……そっか。無理にとはいわないよ」
ちょい休憩
~次の日~
友「またアイツ桜の下で立ち止まってる」
男(昨日の女……なにか知ってる風だったな)
トンッ
男「!! な、なんだ!?」
友「いや、肩叩いただけだしww」
男「なんだ友か」
友「おうw そういえば、調子どうだ? 男」
男「調子って、俺の心の穴のことか?」
友「そうだ」
男「んー、調子っていわれてもなぁ。解決はできてないよ」
友「そっか。じゃあなんか進展あったか?」
男「まぁ、一応な」
友「お、そうなのか?」
男「おう。女に聞いたら一本桜のこと、何か知っているみたいだった」
友「!」
男「……友」
友「なんだ?」
男「お前にも前に聞いたよな、一本桜の下に来ると俺は心の空洞みたいなものが大きくなっている気がすると」
友「そうだな」
男「……心の空洞は、俺だけが持っているものなのだろうか」
友「……?」
男「いや、なんでもない……」
友「そっか。てか、学校。遅刻するぞこれ」
男「!」
友「やべぇぞ」
男「急ぐぞ」
~放課後~
先輩「……またここにきたの、男」
男「はい」
先輩「また君の心の中の穴について?」
男「いえ、そういうわけじゃないんですけどね……」
先輩「? 何も用がないのか?」
男「んー、なんだろ」
先輩「なんだよ」
男「暇なんです」キリッ
先輩「死ね」
男「え、ひどい」
先輩「暇だからわざわざ放課後私以外居るはずないこんなところに?」
男「そうですね。先輩に会いに来たんです」
先輩「会いに、ね。そんな奴がこの学校にはもう一人いるんだよね」
男「そうなんですか?」
先輩「うん。放課後になると決まってこの物理室に来る。きっと今日も来ると思うよ」
男「……?」
ガチャ
先輩「ほら、うわさをすれば」
男「!」
友「こんにちは先輩――って」
先輩「今日は男君もきてるよ」
友「よお、男」
男「お、おう。てか、友と先輩は知り合いだったのか!?」
友「おう、一応な」
先輩「…………」
友「ていうか、こんなところで男は何してんの?」
男「んー、何っていわれても。暇つぶし?」
友「なんだそれw」
先輩「っていっても、友君も似たようなものだと思うけどね、私は」
友「ま、まぁそうですけど」
男「お前も暇潰しでここにきてるのか?」
友「そうともいえるかな」
男「なんだその微妙な言い方」
先輩「きっと友君も男君も私のことが愛おしいんだね」
男「」
友「」
先輩「冗談だ死ね」
友「ま、まぁ冗談は置いといて、俺は今日いつもどおりダラダラとした会話をするためにきたわけじゃないんです」
先輩「? それはどういう……」
友「本題があるんです、今日は」
男「本題?」
友「ああ、たぶん男は分からないと思うけど、少しの間我慢してくれ」
男「そうか」
先輩「友君。本題って?」
友「……あっちの学校で問題が起きそうです」
先輩「あっちの学校で……?」
友「はい」
先輩「たしか、あの子達は一緒の学校だったよね?」
友「そうですね」
先輩「それと何か関係してるの?」
友「関係してます」
先輩「でも、なんでそれを私に?」
友「こっちの学校も関与してるからです」
先輩「こっちの学校が?」
友「はい。きっとこの問題は暴力沙汰になりかねません。たぶんこっちにも影響が出ると思います」
先輩「……? なんでむこうの学校の問題なのにこっちに?」
友「……あの子達を見捨てるんですか?」
先輩「!」
友「あの子達が自分達でその問題を解決できると思いますか」
先輩「確かに……それは思えないね」
友「だから、俺達が首を突っ込んでいくしかないんです」
先輩「気は進まないけど、あの子達の問題だったらしょうがないね」
友「はい。なので、進展があったらまた報告します」
先輩「そっか、わかった」
男「???」
先輩「あ、男君ごめんww 話の意味がわからなかったよねw」
男「はい、マジでさっぱりでした」
先輩「まぁ、この話をしてもしょうがないから、雑談でもしていく?」
男「んー、そうしたいところですけど、今日はやらなきゃいけないことがあるので帰ります」
先輩「そっか。気をつけてね」
男「はい」
友「じゃあな」
男「じゃあな!」
ガチャ バタン
友「…………」
先輩「……いいの?」
友「なにがですか?」
先輩「男に今の話しなくて」
友「いいと思いますよ。むしろ話すべきじゃないと思います」
先輩「そっか。ていうか、二人のときまで敬語やめてくれるかな。なんか気持ち悪い」
友「ごめん。最近癖になってきた」
先輩「アホ」
友「悪りぃ」
休憩
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