向日葵「今夜、約束の時間に」(151)
12/24
櫻子「ゲェー!? これ向日葵が持ってきたプレゼントじゃん!」
向日葵「こっちは櫻子のですわね!?」
櫻子「なんだよもー! 私あかりちゃんのが欲しかったのにー!」
向日葵「私だって、折角なら吉川さんのプレゼントが良かったですわ!」
ギャーギャー
ちなつ「クジでお互いのプレゼントが回ってくるなんて……」
あかり「やっぱりふたりとも仲良しだね~」
櫻子「良くないもん!」
向日葵「良くないですわ!」
12/25
櫻子「うおォン肉うまい! 今の私はまるで人間火力発電所だー!」
向日葵「ちょっと! それ私のチキンでしょう!?」
櫻子「向日葵のチキンは私のチキン!」
向日葵「ざけんじゃねーですわ! 返しなさいよこのバカ娘!」
櫻子「むぉおお!? ひゃめろーひまふぁりー!」
花子「櫻子うるさいし!」
楓「おねえちゃん、おぎょうぎ悪いの……」
撫子「カップル的なことなら外でやってくれる?」
櫻子「カップルじゃないもん!」
向日葵「カップルじゃないですわ!」
12/26
~大室家~
櫻子「!」
櫻子「日付変わった……26日だ」
櫻子「……」ウズウズ
櫻子「か、髪とか、おかしくないかな……」
櫻子「ぅうー……っ」
櫻子「――」
櫻子「あと、ちょっと」
~古谷家~
向日葵「!」
向日葵「26日……ついにこの日が来ましたわ」
向日葵「……」ソワソワ
向日葵「ああ、緊張しますわ……」
向日葵「っ……うーですの!」
向日葵「――」
向日葵「あと、少し」
~大室家~
チクタクチクタク...
櫻子「……」ウズウズ
~古谷家~
チクタクチクタク...
向日葵「……」ソワソワ
~大室家~
チクタクチクタク...カチッ
櫻子「!」
~古谷家~
チクタクチクタク...カチッ
向日葵「!」
櫻子「時間だ!」 / 向日葵「時間ですわ!」
櫻子「っ」ガタッ
櫻子「……」ソローリ
~大室家・廊下~
櫻子「……」チラッ
櫻子「ねーちゃんの部屋から話し声……電話中かな」
櫻子「……」チラッ
櫻子「花子の部屋は電気点いてない……朝までグッスリだよね」
櫻子「……よし」グッ
ススス...
櫻子「気付かれないように……ドキドキ……バレないように……」
ヌキアシ...サシアシ...
櫻子「……待っててね、向日葵……」
♪キライジャッ
向日葵「!」
向日葵「合図のワン切り……櫻子っ」ガタッ
~古谷家・玄関~
向日葵「……!」
向日葵「(すりガラスの向こうに、櫻子の影……)」
向日葵「……」
向日葵「(大丈夫……落ち着いて、深呼吸……)」
向日葵「すぅーっ……、……はぁーっ」
向日葵「……」
向日葵「よし」グッ
向日葵「い、今開けますわ」ガチャガチャ
ガラッ
「「!」」
向日葵「ぁ……」
櫻子「……っ」
向日葵「……」
櫻子「……」
向日葵「……え、っと」
櫻子「ぅ、うん……」
向日葵「……」
櫻子「……」
向日葵「そ、それじゃあ、櫻子」
櫻子「うん、ひ、向日葵」
向日葵「……」
櫻子「……」
「「――」」
櫻子「メリークリスマスっ、ひまちゃん!」ダキッ
向日葵「ええ。メリークリスマスですわ、さーちゃんっ」ギュッ
櫻子「んーっ、ひまちゃんひまちゃんひまちゃんだぁ~~~っ」スリスリ
向日葵「きゃっ! もう、さーちゃんったら……」ナデ...
櫻子「ぁ……えへへ。ひまちゃん、もっと撫でて撫でてっ」
向日葵「言われなくたって。ずっと我慢していた分、いっぱい、いーっぱい撫でてあげますわ」ナデナデ
櫻子「えへへへへへへへ」
向日葵「さーちゃんの髪、ふわふわで撫でてて気持ちがいいですわ」ナデナデ
櫻子「そう? 私はひまちゃんみたいにさらさらの髪の方が良かったなぁ」
向日葵「ストレートパーマでもかけてみます? さーちゃんならどんな髪型でも似合いそう」
櫻子「えへへ、照れるー……けど、お手入れがめんどっちそうかも」
向日葵「だったら私がさーちゃんの髪を梳いてあげますわ」
櫻子「ほんとっ!? ありがとーひまちゃん、大好きっ!」ギューッ
向日葵「私もですわ、さーちゃん」モフン
ビュゥゥゥ...
向日葵「っ」ブルッ
櫻子「ひまちゃん?」
向日葵「あ、なんでもありませんわ。ちょっと風が冷たくて……さーちゃんは大丈夫ですの?」
櫻子「全然へーき。だってひまちゃんあったかいんだもーん」スリスリ
向日葵「さーちゃん……」ポワ
ビュゥゥゥ...
櫻子「ぷくしゅい!」
ビチャッ
「「あ」」
向日葵「……さーちゃん」
櫻子「や、やっぱ寒いよね外! 中はいろっか、ね!?」
向日葵「……もう、調子いいんだから」
櫻子「てへー」
~古谷家・廊下~
トテトテ
櫻子「ところでひまちゃん、楓は?」
向日葵「もちろん部屋で寝てますわ。でも一応静かにね?」
櫻子「おっけー」
向日葵「さーちゃんのお家はどうでしたの?」
櫻子「それもおっけー。こっそり抜けてきた」
向日葵「ならいいんですけど。さぁ、リビングに行きましょう」
櫻子「はーいっ」
~古谷家・リビング~
向日葵「どうぞ、さーちゃん」
櫻子「わぁ……二次かーい!」
向日葵「もうっ、ですから静かにっ」シーッ
櫻子「ごめんなさい」ムグ
向日葵「喜んでくれたのは嬉しいですけどね」ナデリ
櫻子「えへへ……飾り、この為に新しくつけたの?」
向日葵「ええ。大体は使い回しですけど、配置を少し変えましたわ」
櫻子「ほへー。すごいなーひまちゃん、器用だよねっ」
向日葵「そんなこと……ほら、席につきましょう?」
櫻子「うんっ」
向日葵「はい、どうぞ」コトッ
櫻子「クッキーだ!」
向日葵「ココアもありますわよ」コトッ
櫻子「幸せだ!」
向日葵「大袈裟なんだから……」
櫻子「んーん、大げさなんかじゃないよ」
向日葵「え?」
櫻子「ひまちゃんのお菓子、すっごく美味しいもんっ。いっぱい食べられたら、それだけで幸せ♪」ニパッ
向日葵「ぁ……」
櫻子「」ニコニコ
向日葵「ぅ……さーちゃん、その笑顔、反則……」ゴニョゴニョ
櫻子「?」
サクサクサクサク....
櫻子「うめー!」
向日葵「そう、よかった」ニコッ
櫻子「……ひまちゃん?」
向日葵「なに? さーちゃん」
櫻子「さっきからクッキー食べてなくない?」
向日葵「ぎくり」ギクリ
櫻子「……ひまちゃん……」ジトー
向日葵「う、ぅう……」タジッ
櫻子「なんでなの? なんで一緒に食べないの? お祝いなのにっ」ムキー
向日葵「だ、だって……こんな時間にお菓子なんて食べたら……」
櫻子「食べたら?」
向日葵「………………太っちゃう………………」
櫻子「はぁ? もぉ、ひまちゃんはまたそんなこと言ってる!」
向日葵「でも……」
櫻子「でもじゃなーい! そうだ、だったらあーんしたげる!」
向日葵「あ、あーん!?」
櫻子「ふふふ、私とダイエット、どっちが大事かな? はい、あーん」スッ
向日葵「あーんっ」パクッ
櫻子「迷わず食べたー!?」
向日葵「せっかくのお祝いですものねっ、心置きなく楽しみましょう!」
櫻子「……ま、いっか! ひまちゃん大好き!」
向日葵「私もですわ、さーちゃん!」
サクサクサクサク...
櫻子「おいしいねーひまちゃん」
向日葵「おいしいですわねーさーちゃん」
櫻子「幸せだねーひまちゃん」
向日葵「幸せですわねーひまちゃん」
櫻子「……、こうしてるとさ」
向日葵「?」
櫻子「やっぱ大正解だったよね、アレ」
向日葵「アレって……」
櫻子「そ。なんだっけな……んとんとえっと、あー……いちじくうどん!?」
向日葵「一時休戦」
櫻子「そうそうそれそれ」
向日葵「確かに……もう何年前になるでしょうね」
櫻子「ね、懐かしいよね。クリスマスにまでケンカしてたら両方のお母さんに怒られてさ」
向日葵「そうそう、せめて一日だけでも仲良くしなさいって言われて」
櫻子「クリスマスの次の日、ちょっとだけ昔みたいにしてみたら」
向日葵「それが、とても楽しくて、嬉しくて」
櫻子「それからだよね、毎年クリスマスの次の日にこうして一緒にいるの」
向日葵「ええ、そうですわね。いつもと違う、本当の私とあなたの時間ですわ……」ニギ
櫻子「ぁ……ひまちゃん、手」
向日葵「いいでしょう? これくらい……」ニギュニギュ
櫻子「う、うん……でも、うひゃ、くすぐったいー……」
向日葵「さーちゃんの手、すべすべしてますわ」キュムキュム
櫻子「ひまちゃんの手はもちもちだ」
向日葵「」ズゴーン
櫻子「あれっひまちゃんどうした!?」ギョッ
向日葵「なンデもアリまセんわ……」ギギギ
櫻子「うわぁロボロボしい」
向日葵「……、さてと。クッキーも食べ終えましたし、次は……」
櫻子「プレゼント交換だっ!」
向日葵「ええ。ちゃんと持って来ました?」
櫻子「もっちろん! ……って、あ」
向日葵「?」
櫻子「玄関で抱きついた時に、包装がしわくちゃになっちゃってた……」ア゛ー
向日葵「あー……」
櫻子「うぅ、ごめんねひまちゃん……?」グスン
向日葵「き、気にしてませんから……じゃあ、まず私からプレゼントですわ」
櫻子「ぷれぜんと!」ピコン
向日葵「はい、どうぞ」スッ
櫻子「ウアオー! ひまちゃんからのぷれっ、ぷれぱ、プレジデント!!」
向日葵「一国の大統領をプレゼントする私って何者ですの?」
櫻子「私の嫁!」
向日葵「さーちゃん……」ポッ
櫻子「ね、ね、開けてもいい?」ウズウズ
向日葵「もちろん。喜んでくれるといいんだけど……」
櫻子「るんるんっ、なにが出るかな~なにが出るかな~?」ガサガサ
向日葵「……なにが出るカ~ナガワ~……」ボソリ
櫻子「!」
ガサッ
櫻子「これ……マフラー?」
向日葵「そうですわ」
櫻子「前にくれたじゃん?」
向日葵「あれは……ちくちくするって言ってましたし。こっちが改良版ですわっ」
櫻子「ほほぅ……たしかに、なんか手触りいいかも」モフモフ
向日葵「でしょう? さーちゃんのことを想って、一生懸命編みましたの」
櫻子「ひまちゃん……」ポワ
向日葵「さーちゃん、巻いてみてくれません?」
櫻子「うんっ!」
スルスル
櫻子「……おう?」マキマキ
スルスルスル
櫻子「ぉぉぅ?」マキマキ
スルスルスルスル
櫻子「なげえ!?」
向日葵「自信作ですの」キャッ
櫻子「頑張りすぎだよひまちゃん! 私ミイラになっちゃうって!」
向日葵「だ、大丈夫ですわ。その時は……」マキマキ
櫻子「お?」
向日葵「……ふ、ふたりなら、余らず使えますわ……」テレテレ
櫻子「おおーっ!」パァ
向日葵「っ……えぇと、その……あっ、色。さーちゃん、似合ってますわ、ね。よかった」
櫻子「……ひーまちゃんっ」
向日葵「な、なんですの? さーちゃ」
櫻子「えーいっ!」ムギュッ
向日葵「んきゃあ!?」
櫻子「ひまちゃーん、最初っからこうしたかったんでしょー? うりうりうりうりっ」
向日葵「あわわわわ……べべ、別にそんな……」
櫻子「ひまちゃん」
向日葵「っ」
櫻子「今日ぐらいは……ね?」
向日葵「……してみたかったですわ。……とっても」
櫻子「でしょー? えへへ」ニコニコ
向日葵「うぅ……いくら今日が特別な日でも、恥ずかしいものは恥ずかしいですわ……」カァァァ
櫻子「あ、いいこと思いついたっ!」ピコーン
向日葵「なんですの?」
櫻子「ひまちゃんひまちゃん、今から出かけない?」
向日葵「え……外に?」
櫻子「外に!」
向日葵「寒いですわよ?」
櫻子「寒くない寒くない!
向日葵「言い切りますのね……」
櫻子「そりゃね。だってマフラーがあるんだよ?」
向日葵「マフラー万能説!? いやあの、流石にマフラーでしのげる寒さにも限度が……」
櫻子「だーいじょうぶだってー。こんなこともあろうか、っと……」ゴソゴソッ
向日葵「?」
櫻子「じゃーんっ! 私からのプレゼントは手袋ー!」
向日葵「えっ」
櫻子「えっ?」
向日葵「……」
櫻子「ひまちゃん?」
向日葵「あの……さーちゃん」
櫻子「どしたの?」
向日葵「えっと、その手袋……」
櫻子「うん」
向日葵「さーちゃんが開けちゃいましたけど……それ、私へのプレゼントだったんじゃ……?」
櫻子「……」
向日葵「……」
櫻子「……」
櫻子「あっ」
櫻子「うっうっ……ごめんねひまちゃん、包みグシャグシャだけど、一回開けちゃったけど、プレゼントだから……ごべんねぇ……」エグエグ
向日葵「き、気にしてません、気にしてませんから……」ナデナデ
櫻子「うぅ~……っ」グスグス
向日葵「……手袋、つけてみても?」
櫻子「うん、いいよぉ……」グズッ
向日葵「じゃあ……」イソイソ
キュッ
向日葵「……どうかしら?」
櫻子「ぁ……ひまちゃん、かわいい」ニヘ
向日葵「っ」ドキッ
櫻子「似合ってよかったぁ……おこづかい使い果たした甲斐があったよ」
向日葵「ああ……そういえば、これ売り物ですのね」
櫻子「うん。特別な日のプレゼントだもん、慣れない手作りで失敗したらやだし」
向日葵「さーちゃん……今度、一緒に編み物してみます?」
櫻子「ひまちゃんと一緒っ」パァ
櫻子「ぅ~っ……もうガマンできない! やっぱ外いこーよ!」
向日葵「えー……」
櫻子「……いや?」コクビッ
向日葵「」ドキューーーン!
櫻子「ひまちゃーん……」
向日葵「はっ!? ぁ、で、でも……手袋も一組じゃ……」
櫻子「ふっふっふ、それなら心肺ゴム用!」
向日葵「変換おかしくなってますわよ」
櫻子「私にいい考えがある!」
向日葵「そのセリフ、とてつもなく不安を掻き立てますわぁ……」
~住宅街~
櫻子「ひゃーっ、さみーっ!」
向日葵「さーちゃん、もう夜中なんですから大声は……」
櫻子「あ、そうだったっ」ムグ
向日葵「もう、忘れっぽいんですから……」
櫻子「えへへ……さむいねーっ」ヒソヒソッ
向日葵「それは小声すぎますけど……寒いですわね」
櫻子「ねっ。……でも」
向日葵「ええ。でも……」
櫻子「二人で一つのマフラーと」
向日葵「手袋も分けて、空いた手を繋いで」
櫻子「あったかいねーっ!」ギュッ
向日葵「ええ、本当に」ギュ
テクテクテク...
櫻子「きらいじゃないもんきらいじゃないもんきらいじゃないもーん♪」ルンルン
向日葵「ご機嫌ですわね、さーちゃん」
櫻子「当然! ひまちゃんとふたりでお菓子食べて、プレゼント交換して、その上デートだよ? ご機嫌にもなるっての!」
向日葵「デート……なのかしら、これは」
櫻子「ちがうの?」
向日葵「どうでしょう……どちらかというと、徘徊……?」
櫻子「なにそれやだ」
向日葵「言って私も後悔しましたわ」
櫻子「じゃあやっぱりデートだね!」
向日葵「そういうことにしておきましょう」
櫻子「やたっ。ひっまちゃんとデートっ♪」ルンッ
向日葵「きゃっ! さーちゃん、手を繋いでるんですから急に走られると……」
櫻子「うおおひまちゃん好きだーッ!」ダッ
向日葵「ちょっ手が離れたら今度はマフラーが締まっグェエ」ビクンビクン
櫻子「あ、ひまちゃん見て見て、星きれー!」
向日葵「」
櫻子「ひまちゃん? ひまちゃーん?」
向日葵「はっ!? いま、川の向こうで赤座さんが手を振って……?」
櫻子「……今あかりちゃんの話してないよ」
向日葵「? それで、なにか言ってましたわよね?」
櫻子「ん……ほら、星」
向日葵「星――、わぁ……」
櫻子「キレーでしょ」
向日葵「本当……冬は空気が澄んでて星がよく見えますわね」
櫻子「ずっと見てたくなるよねー」
向日葵「ええ……危ないですけれど、少しだけ上を向いて歩いていましょうか」
櫻子「今すき焼きの話してない!」
向日葵「!?」
テクテクテク...
櫻子「ひまちゃんひまちゃん」
向日葵「どうしました?」
櫻子「星座ってわかる?」
向日葵「星座? どうでしょう……何を探したいんですの?」
櫻子「織姫と彦星!」
向日葵「……やっぱりさーちゃんって櫻子ですわよね」
櫻子「え、なに当たり前のこと言ってんのひまちゃん」
向日葵「なんでもありませんわ……」
櫻子「んー……?」
テクテクテク...
テクテクテク...
櫻子「あなたと365の恋をしてみた~い♪」
向日葵「うーですの!」
櫻子「1日ごとちょっとずつちがう色にしたい~♪」
向日葵「指してー!」
櫻子「……ひまちゃん、なんか違う」
向日葵「やっぱり……?」
テクテクテク...
テクテクテク...
向日葵「あっ!」
櫻子「えっ?」
向日葵「今、流れ星が……」
櫻子「流れ星!? どこどこどこ!?」
向日葵「いえ、もう見えませんけど……」
櫻子「えーっ!? もっと早く言ってよー」
向日葵「いやいやいや、どんだけ動体視力と反射神経いいんですのよ私」
櫻子「むぅ。次は絶対見つけてやるんだからっ!」ジッ
向日葵「はいはい……頑張ってくださいね、さーちゃん」
櫻子「うんっ、私に任せ……あっ!」
向日葵「えっ? ……あ、また流――」
櫻子「ひまちゃんとずっと一緒にいたいひまちゃんとずっと一緒にいたいひまちゃァアーッ見えなくなったァー!!!」グァー
向日葵「――、れ……、………………」
櫻子「ちくしょー、もーちょいだったんだけどなぁ……」ブツブツ
向日葵「……さーちゃん」
櫻子「ん? どしたのひまちゃん」
向日葵「あなたって本当に櫻子ですわね」フゥ
櫻子「んん!? なんかバカにされた気がした!!」
向日葵「バカにしたくもなりますわよ……あなた、願い事を言う相手を間違ってません?」
櫻子「……?」ドユコトー
向日葵「ッ……ですから! 星に願いを託すぐらいなら私に直談判すればいいでしょうって!!」ガーッ
櫻子「えっ」
向日葵「あっ」
櫻子「……」
向日葵「……」
櫻子「……ひまちゃん、ずっと一緒にいてくれるの?」
向日葵「それはっ……そんなの、私からお願いしたいくらいですわ……さーちゃん」
櫻子「……!」パァァ
向日葵「……っ」カァァ
櫻子「ひまちゃーんっ!」ガバッ
向日葵「ゎきゃあっ!?」ビクッ
櫻子「ひまちゃんひまちゃんひまちゃんひまちゃんっ!」ギュウウウ
向日葵「ちょ、さーちゃん!? いた、いたた……きつ、抱きしめすぎですってば!」
櫻子「一緒、だよね!」
向日葵「えっ?」
櫻子「ずっと一緒、なんだよね!?」
向日葵「さー、ちゃん……?」
櫻子「……たぶん、明日の私は今の私みたいにはいられないから」
向日葵「!」
櫻子「けど、それでも、ひまちゃんにいじわるしちゃう私でも、素直になれない私でも……それでも!」
向日葵「……」
櫻子「一緒にいてくれるんだよね? ひまちゃんっ……」
向日葵「……」
櫻子「……」
向日葵「――」
ギュッ
櫻子「!」
向日葵「もちろんですわ、さーちゃん」
櫻子「ぁ……」
向日葵「さーちゃん……」ギューッ
櫻子「……ひま、ちゃん」キュッ
向日葵「さーちゃん。私からも、私からこそ、お願いしますわ」
櫻子「え……?」
向日葵「明日からの私は、明日からのあなたとまたケンカをするでしょう」
櫻子「……うん」
向日葵「口論なんてしょっちゅうで、酷い時は手だって出ますわ。たぶん、絶対」
櫻子「うん……それは間違いないよね」クス
向日葵「ええ。でも、本当の私は今ここにいる私だから。それだけは、忘れないで」
櫻子「忘れないよ。私も、ほんとにほんとの私は、ひまちゃんのことが大好きな私」
向日葵「そう……なら、明日からの私のこと、よろしくお願いしますわね?」
櫻子「……うん。明日からのひまちゃ――向日葵は、明日からの私が面倒を見てやる。感謝しろっ」
向日葵「もう……ばか」コツン
櫻子「いて。……えへ」ギュッ
向日葵「ねえ、いつまで抱き合っていますの?」
櫻子「いつまでも」
向日葵「それもいいですわね」
櫻子「あれ、無理とか馬鹿とか言わないんだ?」
向日葵「私だって同じ気持ちですもの」
櫻子「えへ、そっかぁ」
向日葵「もっと、せめてもう少し、こうしていましょう」
櫻子「うん」
向日葵「大好きですわ、さーちゃん」
櫻子「私も大好きだよ、ひまちゃん」
……
…………
………………
向日葵「……」
櫻子「……」
向日葵「……さーちゃん、そろそろ」
櫻子「ん……」モゾッ
スッ...
櫻子「ぁ……」
向日葵「……っ」
キュッ
櫻子「!」
向日葵「……今日はまだ、本当の私たちですものね」
櫻子「っ……うん!」
向日葵「さぁ、もう帰りましょう」
櫻子「おーっ!」
テクテクテク...
櫻子「静かだね、ひまちゃん」
向日葵「もう真夜中ですものね」
櫻子「寒くない?」
向日葵「さーちゃんのプレゼントのお陰でへっちゃらですわ」
櫻子「そっか。よかった」
向日葵「ええ、大事に使いますわね」
櫻子「うんっ」
テクテクテク...
テクテクテク...
向日葵「あっ」
櫻子「お?」
向日葵「私はこの手袋、普段も使えますけど」
櫻子「うん」
向日葵「……さーちゃんのマフラー……」
櫻子「あっ」
向日葵「……」
櫻子「……」
向日葵「……完っ全にふたりマフラーやりたかっただけですわ、私……!」オヨヨ
櫻子「ま、まぁまぁひまちゃん……これはこれできっと便利だよ、たぶん?」
向日葵「うぅぅ……ごめんなさいさーちゃん、ごめんなさい……」シクシク
テクテクテク...
トボ...トボ トボ...
テクテクテク...
櫻子「あっ!」
向日葵「?」
櫻子「見て見てひまちゃん! 上! 空!」
向日葵「上って、また星――じゃ、ない? これって……」
櫻子「そう、雪! 雪だよひまちゃーん!」キャッキャッ
向日葵「ちょっハシャぎすぎですってばさーちゃん!」
櫻子「だってだって、雪だよ雪!?」
向日葵「富山ですもの、雪くらい珍しくないでしょう?」
櫻子「そーだけど、そーじゃなくってー。わかんないかな?」
向日葵「え……? ごめんなさい、さっぱり……」
櫻子「もぉ。ひまちゃんの鈍感!」
向日葵「???」
櫻子「いい? 私たちにとっては今日がクリスマス本番なんだよ? そんな日に雪が降るってことは――」
櫻子「――ホワイトクリスマスをふたり占め、ってこと!」
向日葵「――!」
櫻子「ねっ、テンション上がるでしょ!」
向日葵「それは……、……たしかに、とても素敵な響きですわね!」
櫻子「でしょーっ? うぅー、なんか身体動かしたくなってきた!」ムズムズ
向日葵「え、もう夜中の2時を回ってますのよ!?」
櫻子「そんなの関係ねー!」
向日葵「古ッ!」
櫻子「よっし、そんじゃー家まで競争しよっか!」グッ
向日葵「はぁ!? この雪の中を!?」
櫻子「いえす」
向日葵「あ、呆れて物も言えませんわ……ホワイトクリスマスをふたり占め、なんて洒落たことが言えて、どうしてその直後にそうムードもへったくれもないようなことが言えま」
櫻子「よいドーン!」ダッッッ
向日葵「待ちなさいバカ娘ー!」ダッッッ
櫻子「あはははは! やーいのろまっぱーい! こーこまーでおーいでー!」ケタケタ
向日葵「ぐぬぬ……! 絶対、ぜーったい追い付いてみ・せ・ま・す・わぁ~~~~~っ!!!」ダーーーッ
……
…………
………………
三学期
~教室~
ガラッ
櫻子「おっはよー!」モゴモゴ
あかり「あっ櫻子ちゃんおは……んん!?」ギョッ
櫻子「どうかした?」モゴモゴ
あかり「それはあかりのセリフだよぉ! 櫻子ちゃん、どうしてマフラーで顔中ぐるぐる巻きにしてるの!?」
櫻子「あ、気付いた?」モゴモゴ
あかり「気付かずにはいられないよぉ!」
櫻子「ふっふっふ。今日から私は、謎の美少女戦士・マフラーマスクとして学校の悪に立ち向かうのだ!」モゴモゴ
あかり「ま、マフラーマスク!?」
櫻子「私が仲間になったからにはもう安心だぞ、同志・アッカリーン!」モゴモゴ
あかり「んん!? あかりは別に学校の悪に立ち向かう先輩戦士でもなんでもないよ!?」
櫻子「あれっあかりちゃんが見えない! どこだ!?」モゴモゴ
あかり「うわーん! 目の前にいるよぉ~!」\アッカリーン/
向日葵「こら櫻子っ。赤座さんで遊ぶのはおよしなさい!」
櫻子「むむっ、その声は妖怪ヒマンボイン!」
向日葵「シャオラァ!」ズドムッ
櫻子「うゴッ!?」ガハッ
ドサッ
向日葵「またつまらぬものを蹴ってしまいましたわ……」コホォォォ...
ちなつ「あ、あはは……おつかれさま、向日葵ちゃん?」
向日葵「吉川さん。まったくですわ、朝から前の見えない櫻子の手を引いて登校させられますし……」ヤレヤレ
ちなつ「大変だねー。……あれ? 向日葵ちゃん、その手袋」
向日葵「え? ああ、これですか?」
ちなつ「うん、新しく買った? かわいいね」
向日葵「ありがとうございます。私も気に入ってますの」ニコッ
ちなつ「へ~」
向日葵「……ふふっ」
櫻子「」ピクピク
キーンコーンカーンコーン...
ちなつ「あ、予鈴だ」
向日葵「ですわね。ほら櫻子、そろそろ起きなさいな」
櫻子「ぅぐ……だ、誰のせいだと思ってんだ……」ヨロヨロ
向日葵「自業自得ではありませんこと?」
櫻子「ぐぬぬぬぬ……! 起き上がりボインアッパー!!」バイーン
向日葵「きゃああっ!?」ボヨヨン
櫻子「かーらーのー……デンプシーおっぱい!」バインバインバインバイン
向日葵「ちょっ、やめっ、あっ!?」ボヨヨヨヨヨヨヨヨヨヨヨヨヨヨヨヨヨン
櫻子「さっくのーうち! さっくのーうち!」バインバインバインバインバインバインバインバイン
向日葵「いいッ加減にしなさいよこのバカ娘ェ!!!」バキィッッッ!
櫻子「なもりッ!」バタッ
向日葵「まったく……」
櫻子「――」
向日葵「――」
櫻子『12月26日』
向日葵『私たちだけのクリスマス』
櫻子『本当の私になれる日』
向日葵『本当のあなたに逢える日』
櫻子『私が素直じゃないから』
向日葵『私に勇気がないから)』
櫻子『いつか、いつまでも一緒にいたいけど』
向日葵『今はまだ、たった一日の夢だけど』
『『だけど、きっと』』
櫻子『もう、ちょっとで』 / 向日葵『もう、少しで』
おしまい
決してクリスマスに乗り遅れたわけではない。絶対にだ
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