京子「だってほら、布団に」
結衣「あ……」
結衣「ち、違う!あれは……」
結衣(やばい!隠し忘れた!)
結衣「み、見るな!」バッ
京子「……違うなら隠す必要ないんじゃない?」ニヤニヤ
結衣「これは……たまたまここにあっただけで抱いて寝てるとか……ないから」
京子「ふぅ~ん……こんなボロボロのぬいぐるみがねぇ……」
結衣「るさちゃんを馬鹿にすんな!」
京子「るさちゃん?」
結衣「あ……」
京子「名前つけてんだ?」
結衣「いや……」
京子「か~わいっ」クスッ
結衣「くっ……」
京子「あはははは、いいから見せてみろよーかわいいじゃん」グニッ
結衣「いやだ、帰れ!」
京子「ん……? なんか踏んで――」
結衣「あっ!」
京子「――ってまたぬいぐるみじゃん」
結衣「私のキョッピーが!!」
京子「……キョッピー?」
結衣「――はっ!」
京子「ふーん、これキョッピーっていうんだ?」ニヤニヤ
結衣「ち、違うんだ。それは、違くてだな、その、なんというか、とにかく違うんだ」
京子「これは何に使ってるの?」
結衣「それは……そうだ! まりちゃんが忘れていったんだよ! そうだった!」
京子「へ~そうなんだ~」ニヤニヤ
結衣「そ、そうなんだよ」アハハ
京子「おりゃっ!」ブンッ
結衣「ああんっ! 私のキョッピーが!?」
京子「なーんて、投げるふりでしたー」
結衣「…………」
京子「ねぇねぇ、いま『私のキョッピー』って言ったよね?」
結衣「…………」
京子「ねぇねぇ、なんでぬいぐるみに私の名前付けてるの?」
結衣「…………」
京子「ねぇねぇ、なんでなんで?」
結衣「…………くすん」
京子「!?」
京子「なっ……ゆ、結衣?」
結衣「返して……」ボソ
京子「へ?」
結衣「返してよ!!」バッ
京子「あ……」
結衣「キョッピー……うっ……うっ……」
京子「ゆ、結衣、ごめんな?」
京子(なんだこの状況……)
結衣「ふえぇ……」ポロポロ
京子「結衣、ほんとごめん。そんな大事なものだとは思わなかったんだ」
結衣「大事に決まってるだろ! だってこれは京子の……!」
結衣「あっ……」
京子「私の、なんだって?」ニヤニヤ
結衣「な、なんでもない!」
京子「へ~なんでもないんだ」
京子「わざわざ私に似せたぬいぐるみつくって」
京子「私の名前までつけて」
京子「それなのに、なんでもないって言っちゃうんだ?」
結衣「くっ……」
京子「本当はやらしいことに使ってたんじゃないの~?」ニヤニヤ
結衣「それはっ! それは……違う……」
京子「な、なんだよ、その微妙な反応は……」
結衣「ち、違うんだ」
京子「何が違うんだよ」
結衣「京子が、京子がいけないんだ……京子が……」ウルッ
京子「な、なんでそこで私がいけないことになるんだ?」
結衣「京子が……毎日泊まっていってくれないから……」ウルウル
結衣「京子がいない日は、キョッピーで気を紛らわすしかなかったんじゃないかっ!」
結衣「うっ……うっ……」ポロポロ
京子(えぇ――……)
京子「わかった、わかったから。今日は泊まっていってあげるから、ね?」
結衣「うっ……うっ……今日は……?」ポロポロ
京子「ま……毎日は、無理、だけど……」
結衣「……いやだ」
京子「い、いやだって言われても」
結衣「毎日じゃなきゃいやだ」
京子「そ、そう言われましても……」
結衣「ふぇ……」ウルッ
京子「だ――っ!! もう分かったから!! 毎日泊まるから!!」
結衣「ほ、本当か!!」パァッ
京子「う、うん」
京子(め、めんどくせぇ――……)
/, ヽ \
,'., `、ヽ,
//-─'''''''─-、,!. ', _,,,..-‐''''",二ニ‐-、
_,,,.-''" ._ `ヽ!,,.-‐'''" ,','
|,. _ i'"::::::L,,,!::`i__,,i''''ヽ, ヽ、 ,r'
く (::::::L,,/::;'::::;':::;:::::::;':::::::::::;':L,,,,_\ ,r'
`y'`'"/::::/::;':::::;'::/::::::;':::::::::::;'::::::::::::;} .`、 /
/:::::;:'::::::;!-;'─-/|::;':;':::::::::;:'::::::::::::く,,,_ Y
.,r':::::;:'::r-!::'ーr、;;;;/ .|::;':::;'::::::::::::::::/::::::r` ``ゝ
,r'::::::;:':::::i .,!::::::|_,,,,_ ``'''-、;::::::メ/::::;'::::'ーi 「
,..--─--、;::`i:::::;::! `ヽ ,.-==,く`ソ:::::;':::i`''"
`|:::::;::| !;;oソノ ./\:::/リ
|::::::;::| !ー、_,' `''" /:';:::::`! 非常に興味深いスレですね
|:::::::;::|. 'ー ./:;;:-''"`\
.|::::::;;:::|ヽ、,,,,...... -‐''i:::;r'" `'''`ヽ,ヽ
,.-┴''"ヽ``,`'、 !.,' '/ /`ニ=_,ノ!
.,r' ヽ、`i !ノ ',' i' _,フ'-:'":、
/ '" `i i .ノノ-' ', ! i 「 ';::::::::::::`、
京子(まぁ、今日一日なだめれば、結衣も落ち着くだろ)
結衣「さぁキョッピー、こっちだ!」
京子「キョ、キョッピー?」
結衣「まずは、いつも通りお着替えをしよう」
京子「お、お着替えって」
結衣「はい、ばんざーい」
京子「いや、自分で着替えられるから、大丈夫だって」
結衣「京子にはキョッピーの気持ちをわかってほしいんだよ」
京子「はぁ……」
結衣「そうすれば、キョッピーにあんなひどいことしなくなるんじゃないかって。そう思うんだ」
京子「いや、もうあんなことはしないから。頼むから落ち着いてくれ」
結衣「はい、ばんざーい」
京子(くっ……今日一日の辛抱だ……)
京子「ば、ばんざーい」
結衣「えらいえらい」ナデナデ
京子「ゆ、結衣、くすぐったいって」
結衣「じゃあ、脱がすぞ」
京子「う、うん」
京子(なんか緊張するな……)
結衣「今日はこれにしよう」
京子「結衣、寒いから早めに頼む――ってなんだそれ!?」
結衣「かわいいだろ。フリフリでお姫様みたいだろ」
京子「なんでそんなの持ってるんだよ! そもそも、そんなの私に似合わないって!」
結衣「いいからいいから」
京子「ちょっ……」
結衣「ほら、動かないで」
京子「…………」
結衣「…………」
京子「……んっ、ちょっ、ちょっと、変なところ触るなよ!」
結衣「動かないで」
京子「…………」
結衣「ほら、できた。かわいいかわいい」
京子「あのなぁ……///」
結衣「写真を撮ろう」
京子「ちょっ……」
結衣「動かないで」
京子「…………」
結衣「…………」
京子「……なぁ、結衣っていつもこういうことしてたのか?」
結衣「動いちゃだめ」
京子「…………」
カシャッ
結衣「次はゲームをしよう」
京子「よかった、普通で……」ホッ
結衣「ボスまでにあと5レベルはあげとかないと」
京子「えー? この前も上げてたじゃん。もうボス行っちゃおうぜ」
結衣「だめだ。それだと負けるかも知れないだろ」
京子「えぇ――あ、そだ。ラムレーズンある?」
結衣「あるよ」ピコピコ
京子「よっしゃー! いっただっきまーす♪」
京子(今日の結衣、絶対おかしいよな……)パクパク
京子(……頭でもうったのか?)パクパク
京子(いや、でもたんこぶもないしな……)パクパク
京子(じゃあ元からこうだったとか……?)パク
京子(…………)ピタ
京子(違う、違うんだ。こんなの結衣じゃない)
京子(こんなの違う。私の憧れたかっこよくてクールな結衣じゃない)
京子(私が好きだった結衣はこんなんじゃない!)
京子(…………)パク
京子(ラムレーズンはうめぇなぁ……)パクパク
結衣「…………」ピコピコ
京子「…………」パクパク
京子(……ん? なんか今、あのぬいぐるみ動かなかったか?)
京子「ねぇ、結衣。あのぬいぐるみって結衣が作ったの?」
結衣「キョッピーのこと?」
京子「キョッピーのこと」
結衣「いや、違うよ。西垣先生に貰ったんだ。一人暮らしは『寂しかろう』って言って」
京子「あいつか!!」ガバッ
京子「くっそ、また西垣ちゃんかよ!!」
京子「やつとは一度話をつけなきゃいけないようだな……」メラメラ
京子「すまんが結衣、ちょっと出かけてくる!」
結衣「嫌だ、一人にしないでくれ!」ガシッ
京子「ぐっ……離せ……」ググッ
結衣「い……や……だぁ……」ギュウウウ
京子「結衣、これはとても大切な事なんだ」
結衣「でも、もうひとりは嫌なんだ……」ウルウル
京子「結衣……」
結衣「……それに、そんな格好で外に出るのか?」
京子(とりあえず、結衣を正常に戻してから、西垣ちゃんを倒そう)
京子(しかし、どうすれば……)
京子(むやみにぬいぐるみを壊しでもしたら、爆発するかもしれないし)
京子(うーん、やっぱ本人に聞くのが一番か)
京子「結衣、西垣ちゃんの電話番号知ってる?」
結衣「いや、知らないな」
京子「そっか……。じゃあ、綾乃にでも聞くか」ピポパポ
トゥルルルルルルル
京子「あ、もしもし。綾乃?」
京子「あのさ、西垣ちゃんの電話番号しらない?」
京子「うん……そうそう……うん……ちょっと待って」
京子「ふむふむ……」カキカキ
京子「うん……ありがと! じゃあね!」ガチャ
京子「ふー……」
西垣『はい、西垣です』
京子「あ、もしもし。歳納です」
西垣『お、なんだ、歳納か。どうした、いきなり』
京子「あの、先生が結衣にプレゼントした、私の人形のことなんですけど……」
西垣『あーあれか! あれがどうかしたか?』
京子「あれって一体何なんですか?」
西垣『あれはだな……クックック……ただのぬいぐるみに見えるだろう?』
京子「はい」
西垣『しかしてその正体は、甘やかしキョーコちゃん二〇四号だ!』ドヤァ
京子「…………」
京子「……それは一体どういうシロモノですか?」
西垣『女の子とは得てして、自分だけのぬいぐるみを欲していると私は思うのだが……』
西垣『船見のことだ。ぬいぐるみに甘えたくても、プライドが邪魔をして甘えられないだろう』
西垣『まったく、誰も見ていないというのにな』
西垣『なので、特殊な薬物を発生させる装置が組み込まれている』
京子「や、薬物って……」
西垣『危険なもんじゃない。それは素直になれる薬だ』
西垣『そして、その薬は、歳納の体毛からできている』
京子「いつの間に私の毛を!!」
西垣『まぁ聞け。持続性はないから、装置が壊れればすぐに正常に戻るだろう』
京子「じゃあ、私はそれを壊せばいいんですね!?」
西垣『待て。慌てるな。下手に壊そうとすると、当然、爆発する』
京子「当然ってなんですか!! 殺す気ですか!?」
西垣『違うんだ……』
京子「……先生?」
西垣『私はただ、爆友が、友達が欲しかっただけなんだ……』
西垣『あの日以来、私は爆発を受けた人物としか友達になれない心の病を抱えているのだ……』
京子「そう……だったんですか……」
西垣『まぁ、嘘だが』
京子「こんな大変な時にふざけないでください!」
西垣『ちょっとしたジョークだ』
京子「まったく……」
西垣『さて、船見がどうすれば元に戻るか、だったな』
京子「はい、それです。私はジョークじゃなくて、それが聞きたかったんです」
西垣『そのキョーコちゃんの右足にな――』
京子「あ、ちょっと待ってください。結衣、キョッピー貸して」
結衣「いいけど、さっきみたいに、投げようとしたりするなよ?」ピコピコ
京子「わかってるって」
京子「――はい、準備オッケーです」
西垣『右足のかかとあたりに、何かあるだろう?』
京子「あ、なんか糸のほつれみたいなのがありますね」
西垣『それを引っ張ると――』
京子「えいっ――はい、ひっぱりました」
西垣『――爆発するから気をつけろ』
ダッ
ガラッ
京子「うおりゃぁああああああ!!」
結衣「キョッピィイイイイイイイイ!!」
ヒュー…… BOM!!
京子「っはぁ……はぁ……はぁ……」
結衣「おい、なんてことするんだ! 投げたりしないって……」
京子「はぁ……はぁ……ちょっと、西垣先生! 先生!?」
ツーツー…
京子「切れてるし……」
京子「はっ、結衣は!?」
結衣「……あれ、どうしたんだ京子。そんな変な格好して」
京子「良かった、元に戻った……」
結衣「あれ、私何やってたんだっけ」
京子「はぁ……」
結衣「あぁ、レベル上げか」ピコピコ
京子(まったく、西垣ちゃんは……)
京子(でも、素直になれる薬って)
京子(もしかして)ドキッ
京子(結衣は、本当は私に甘えたがってるってことか!?)
プルルルル
京子「あ、電話だ――もしもし?」
西垣『けほっけほっ、すまんな。道を歩いてたら、流れ爆弾に当たってしまった』
京子「……これで私たちも爆友ってことですかね?」
西垣『ん? 何の話だ?』
京子「いや、こっちの話です」
ごめんお風呂入らせて
京子「もう、こんな危ないことやめてください。フリじゃないですからね? 約束して下さい」
西垣『あぁ、約束しよう』
京子「じゃあ、失礼します」
ピッ
京子「ふぅ……」
結衣「何の電話してたの?」ピコピコ
京子「…………」ジィ
結衣「な、なんだよ」
京子「ねぇ、結衣。膝枕してあげよっか?」
結衣「はぁ……?」
京子「急に膝枕してあげたくなった」
結衣「なんで私が」
京子「いいからいいから」
ごめん、ごはん食べさせて
結衣「…………」ピコピコ
京子「……ねぇ、耳かきしてあげようか?」
結衣「いや、耳かきはいいや」ピコピコ
京子「…………」
結衣「…………」ピコピコ
京子「…………」
結衣「……京子、何を企んでるんだ?」ピコピコ
京子「結衣ちゃんの心のドアをノックするとだね、さみしいよーっていう声が聞こえてくるのだよ」
結衣(何言ってんだこいつ……)
京子「そんな『何言ってんだこいつ』っていう顔しないでさ、素直になりなよ」ニッシッシ
京子「…………」ナデナデ
結衣(落ち着かない……)ソワソワ
京子「…………」ナデナデ
結衣「…………」ガバッ
京子「うわっ!」
結衣「…………」ジィ
京子「い、嫌だった?」
結衣「ほら、こっち来なさい」ポンポン
京子「え――でも、今は私が膝枕したいんだって」
結衣「いいからいいから」グイッ
京子「あっ」パタリ
京子「…………///」
結衣「やっぱこっちだろ」ピコピコ
京子「ふふっ……結衣の甘えん坊さん」
結衣「それは京子だろ?」ピコピコ
京子「本当にそうかなー?」
結衣「はぁ……?」
京子「そうだよ」
結衣「――あ、そうだ。どうせ今日も泊まっていくんだろ? 今日の晩御飯どうしよっか」
京子「ふふっ……結衣のさみしがりやさん」
結衣「どうしてそうなるんだよ」
京子「心のドアに聞いてみなよ」
結衣「…………?」
おわり
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません