ー寝室 真夜中ー
櫻子(冷静に考えると私って、向日葵にいつも頼ってばかりな気がする)
櫻子(当然この櫻子様が向日葵よりも優秀なのは確定的に明らか)
櫻子(だけど正直勉強では今、……その、ちょっとだけ差をつけられてる状況だし、向日葵の料理やお菓子は凄くおいしい)
櫻子(そしておっぱいがでかい)
櫻子(おっぱい魔人マジ許すまじ)
櫻子(これじゃダメだ)
櫻子(向日葵と生徒会次期副会長を争うには私の友達力だけじゃなくて、何かもっとこう、ヒトとしての魅力ってのが必要な気がする)
櫻子(そうだよ、選挙になったらあのお菓子で皆を買収、なんて汚い手を向日葵が使ってくるかも)
櫻子(向日葵より決定的に私の方が優れてますよって皆に堂々と言える事ってなんだろ?)
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櫻子(頭の良さ……、どうにかなるっしょ多分、うん)
櫻子(おっぱいは……、ねーちゃんがアレだけど、正直私は違う気がする。将来に期待)
櫻子(料理。本格的なのは向日葵に教えて貰えば……、ってそれじゃ意味ないじゃん)
櫻子(人柄の良さ。……おおっ!これはいけるっぽいぞ、私友達多いし)
櫻子(……でも、向日葵って友達少ないくせに実際は優しくて面倒見良くてお嬢様っぽいし、他のクラスだと票割れちゃうかも)
櫻子(となるとやっぱり、向日葵の苦手な運動を前面に押し出していくしかなさそうかな)
櫻子(だけど競技そのものとかだと選挙の時にその差をアピールしづらい。単純に私が勝ってますよって見せれるもの……)
櫻子(間違いない、腹筋だな)
櫻子(よし、これから向日葵をグンと突き放すために、私の長所である腹筋を鍛えよう)
櫻子「フン、フン、フン、フン!」グッ グッ グッ グッ
ー次の日 学校ー
あかり「おはよー、櫻子ちゃん、向日葵ちゃん」
ちなつ「二人ともおはよー」
向日葵「おはようございます。赤座さんに吉川さん」
櫻子「…………」グテー
あかり「あれ?櫻子ちゃんどうしたの?凄い元気なさそうだけど」
向日葵「ええっと、それがですわね、本人が言うには昨日の夜まったく眠れなかったから、ずっと腹筋してたら徹夜しちゃってしかもお腹痛い辛いって」
あかり ちなつ(なんで腹筋なんだろう……)
櫻子「…………」ポケー
ちなつ「なんか見るからに今にも寝ちゃいそうな感じだね」
向日葵「本当に困った子ですわ」ハァ
櫻子(ここで眠ったら、せっかく向日葵を突き放そうと思ってやった事が全部無駄になる。何が何でも起きてなくちゃ……)
ー放課後ー
向日葵「ほら、櫻子。とっとと生徒会室に行きますわよ」
櫻子「うん……」フラフラ
あかり「櫻子ちゃん大丈夫かな、あかりちょっと心配だよぉ」
ちなつ「たしかに。結局授業中ずっと寝なかったみたいだし。……まあ、とりあえず私達は娯楽部行こっか」
あかり「うん、そうだね」
向日葵(櫻子……)
櫻子「」ウツラウツラ
ー生徒会室ー
綾乃「古谷さんと大室さん」
向日葵「はい、なんでしょうか」
櫻子「zzzzz」グー
綾乃「……え、ええっと、大室さん」
向日葵「あ、あの先輩、申し訳ないのですけれど、櫻子のこと、今は少し休ませてあげて貰えないでしょうか」
綾乃「えっ、ええ?」
千歳「古谷さんがそんなこと言うんは珍しいなぁ」
向日葵「その、朝から櫻子今にも倒れそうなくらい体調悪そうだったから……、ちょっとだけ心配で」
向日葵「私が櫻子の分まで仕事をしますから、どうかお願いします」
綾乃「し、仕方ないわね今日だけ特別よ」
向日葵「あ、ありがとうございます」
千歳「でもそんな難しい仕事やないから、そんな気を張らなくてもええよ」
千歳「あそこにあるちっちゃい段ボールいくつかを職員室に運ぶだけやし」
綾乃「じゃあ三人でパパッと片づけちゃいましょうか」
向日葵「はい、ですわ!」
櫻子「zzzzz」グー
ー理科室ー
西垣「さあ松本、世紀の大実験だぞ。目を見開いてとくと見とけよ」
りせ「…………」
西垣「何?また理科室を使用禁止にされるだって?」
西垣「甘いぞ松本。失敗を恐れていたら成功はないんだ。爆発したらその時はその時」
りせ「…………」
西垣「今日やる実験か?、一言で表すのは大変難しいんだがざっくり言えば、高次元のエネルギーを取り出す的な超素敵実験だ。本当は違うんだけど」
りせ「…………」
西垣「ははは、流石に生徒会長なだけあって手厳しいな」
西垣「だけどこの実験の設備を家に持ち込んでやるのは厳しいし、何か異常事態が起きてもリカバーする方法はちゃんと用意してある」
西垣「私を信じてくれ、松本」キリッ
りせ「…………」ポッ
西垣「うん、任せろ。一応解決策は用意してあるがこの実験、鬼が出るか蛇が出るか、予想がつかないのが最高に面白い」
西垣「ポチっとな」ポチッ
西垣 りせ「」ワクワク
学校「」
学校「」グラグラ
西垣「うわっ!このタイミングで地震か!なんて事だ、ちょっとしたずれが座標の位置に著しい影響を与えるというのに」
学校「」ピタッ
りせ「…………!」
西垣「ああ、もちろんわかってる。ええっと、地震の規模からしてずれは……」
西垣「生徒会室だ!急ぐぞ松本!」
ー生徒会室ー
櫻子(ううっ、何か揺れた?)
櫻子「あれ?どうして先輩達も向日葵もいないの?」
櫻子「……って、テーブルの上に何か置いてあるし」
■「」チョコーン
櫻子(黒くて手のひらサイズのちっちゃな箱。……中身はチョコレートかも)
■「」ブルブルブルブル
櫻子「うおおっ!」ビクッ
櫻子(さ、最近の箱にはバイブ機能が付いてるのか、ハイテクだな)
■「」ピタッ
■「」ブルブルブル
櫻子(す、凄い気になる……)
櫻子「」キョロキョロ
櫻子「」ソッ
■「」バチバチバチバチ
櫻子「うっ、うわあああああ!」ビクンビクン
櫻子「」シーン
西垣「誰かいるか!」ガチャ
りせ「…………」
西垣「ああ、どうやら大室一人だけみたいだな。しかも運良く眠っている」
西垣「急いでアレを回収するぞ、いいか松本、絶対に素手で触れるんじゃいぞ、絶対な」
りせ「…………」
西垣「私がそうすれば大丈夫なように事前に調整しておいたからに決まっているだろう」
西垣「素手でさえ触らなければ人体に何の影響もないようにしてある」
西垣「未知のエネルギーを扱うんだからそれくらいの用心をしておかないとな」
西垣「うおっ、手袋が!」
向日葵「櫻子、櫻子!」
櫻子「う、うーん……」
向日葵「いつまで寝てるんですの!帰りますわよ!」
櫻子「なんか頭ガンガンする……」
向日葵「今日は帰ってから早く寝なさいよ。徹夜なんてするからですわ、まったく」プンスカ
櫻子「あーい……」
ー寝室ー
櫻子(なんか身体が妙に熱い……。身体の中身が溶け出しそうだ……)ガクガク
櫻子(やっぱ風邪ひいたのかなぁ……、それにしては元気いっぱいだけど)
櫻子(でも早く寝ないとこれから悪化するかも)
櫻子(それはやだ。……羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹、羊が)
櫻子「」クー クー
ー朝 居間ー
花子「櫻子ー、ごはんだしー」
?「はーい!」ドッドッドッ
花子(今日の櫻子の足音いつもより気のせいか重く聞こえるし)
SAKURAKO「おはよー」デデーン
花子 撫子「!?」
SAKURAKO「あー、もうこんな時間かー」
SAKURAKO「いそいで食べて仕度しないと、待ち合わせに遅れて向日葵に二日連続で怒られちゃう」
撫子「……さ、櫻子。その身体、どうした?」
SAKURAKO「えっ?どうしたって何が?」
花子「自分の二の腕まずは見てみろし」
SAKURAKO「……うおっ、なんだこの筋肉!?」ビクッ
撫子「二の腕だけじゃないよ。顔以外なんつうかパンパンではち切れそう。主に服が」
SAKURAKO「あっ、すげぇー!私の腹筋六つに割れてんじゃん!」キャッキャ
撫子 花子(楽しんでる場合か)
花子「そうなった原因に何か心当たりあるの?」
SAKURAKO「うーん、そうだなぁー」
櫻子「あっ、一つだけあった」
撫子 花子(……普通に戻った)
櫻子「もしかしたら一昨日の夜から昨日の朝まで、死ぬほど腹筋したからかも」
撫子 花子「そんなので絶対そこまでにはならない(し)!」
今日はここまで
初ゆるゆりSSなのでキャラの相手への呼称が間違ってないかとか不安です
間違ってたら教えていただきたい
どういうことだよ、おい
ー通学路ー
櫻子(どうやら筋肉ムキムキと普通の姿を使い分けられるみたいだ)
櫻子(お腹に一瞬グッと力を入れてから、スッと息を吐いて力を抜くのが切り替えのコツ)グッ
櫻子(本当は向日葵にこんなのが出来るようになったってすぐ自慢したいけど、この時間の向日葵ってテンション低いからなー)スッ
向日葵「…………」ドンヨリ
SAKURAKO(まっ、後で良いか)
向日葵「…………」チラッ
向日葵「……!?」
櫻子「どうしたの?」
向日葵「えっ、あっ、その、な、なんでもありませんですわ!」
向日葵(い、今一瞬だけ、櫻子が筋肉ムキムキのマッチョになっていたような……、さ、流石に幻覚よね……)
櫻子「へー、そうなんだー、ふーん」
櫻子(これ、結構使えるかも……!)
ー教室 給食ー
あかり「櫻子ちゃん、昨日と違って今日は凄い元気そうだね。あかり安心したよぉ」
櫻子「うん、心配かけてごめんね、あかりちゃん。私今日は食欲も凄いあるよ!」
向日葵(まったく……、人に心配をかけさせることにかけては天才的ですわね櫻子は)
ちなつ「今日の櫻子ちゃんって本当に調子よさそうだよね」
ちなつ「苦手な数学の時間だって、先生の質問によどみなく答えてたし」
櫻子「勉強は図画工作以外全部苦手だけどね!」エッヘン
向日葵「なんでそんなに偉そうなんですの」
向日葵(でも今日は、簡単な基礎問題とはいえ、いつもの櫻子だったら答えられないような問題も確かに答えてた)
向日葵(……本当にまぐれなのかしら?)
櫻子(あっ、そうだ!みんな揃って油断してる今こそアレを披露するチャンスじゃん!)
櫻子「ねえねえ皆、実は私、今朝に凄い一発芸出来るようになったんだよ」ウズウズ
向日葵「……またそんなこと言って、どうせしょうもない芸なんでしょう?」
櫻子「はぁっ?ちげーし!絶対に向日葵なんかが真似出来ないような凄い一発芸だし!」ドヤァ
向日葵「」イラッ
向日葵「なるほど、そこまで言うのなら、ぜひとも見せて貰おうじゃありませんの、今ここで」
あかり(二人とも仲良いなー)ニコニコ
ちなつ(給食食べてる時に一発芸披露ってどうよ)
櫻子「よーし見てろよー」グッ スッ
SAKURAKO「Hey!Chopstick!」デデーン
あかり ちなつ 向日葵「」
SAKURAKO「あれ?あんましうけないね」
あかり ちなつ 向日葵(どう反応しろと……?)
櫻子「ちぇー、つまんないのー」
あかり ちなつ 向日葵(元に戻った)
あかり「えっと、櫻子ちゃん大丈夫なの?」
櫻子「何が?」キョトン
向日葵「何が、というか今のに決まってますわ。どう見ても人間の範疇を超えてましたわよ」
櫻子「ハンチュウ。…………そうだろう、そうだろう」ドヤァ
向日葵「別に褒めるつもりで言った訳じゃありませんわ、このおバカ」
櫻子「な、何をー!」
ちなつ(間違いなく櫻子ちゃん範疇の意味わかってなかったよね)
あかり「でも病院とか行かなくて良いのかなー……」
櫻子「えぇー、病院やだー」
あかり「どうして?」
櫻子「だってめんどくさいじゃん」
ちなつ「……まあでもコレ、病院でどうにかできる問題じゃなさそうだよね」
櫻子「あっ!ねーちゃん達もそんなこと言ってたよ!」
櫻子「それでも念のためって病院連れてこうとしたから、振り切って向日葵と学校来たけど」
ちなつ「それっていくらなんでもちょっとまずくない?」
あかり「何か原因に心当たりはあったりするのかな?」
櫻子「あっ、うん、一つだけあるよ」
櫻子「死ぬほど腹筋した」
あかり「それだけじゃいくらなんでもそこまでにはならないよねぇ!?」
向日葵「……とりあえず、放課後にでも西垣先生に相談してみましょう」
櫻子「えー、でも身体の調子は最高に良くて、力もこれでもかとみなぎってるのになー」
ちなつ「いくら何でも一介の教師にこれの対処は無理じゃないの?」
向日葵「とはいっても他に相談すべき人も見当たりませんし」
向日葵「七森中学で起こる非日常的な事柄はあの先生の管轄って相場が決まってますの」
ちなつ「へー」
今日はここまで
途中まだあやふやで決めてないけど数日中には終わるんじゃないかな
荒川のステラみたいだな
そういえば撫子さんと同じ人か
ー生徒会室ー
西垣「やあ諸君、元気にしてたかな」
櫻子「あっ!西垣先生こんにちは!」
千歳「先生、うちの会長どこにおるか知らん?書類についてちょっと聞きたい事があるんやけど」
西垣「松本ならもうちょっとしたらここにやってくるはずだぞ。だからそれまで待つと良い」
綾乃「……まさか先生、また理科室使用禁止になったんですか?」
西垣「何を失礼な、使用禁止になるような事態は無事に回避したぞ」
綾乃「何かやってる、ってのは否定しないんですね」
向日葵(これはまたとない機会ですわ)
向日葵(生徒会の活動を終えてから、わざわざ先生の元まで伺わなくて済みました)
向日葵「あのー、西垣先生」
西垣「うん?」
向日葵「ちょっと相談したい事があるのですけど」
西垣「なんだ古谷、どうかしたのか?」
向日葵「その、なんて説明したらいいのか」アセアセ
向日葵「……とりあえず簡潔に言えば、櫻子が筋肉モリモリのマッチョ体質になってしまって」
綾乃「マッチョ?」
千歳「どう見てもいつもの大室さんやね」
西垣「……詳しく聞かせてくれ」
向日葵(に、西垣先生がいつになくまじめな表情に……)
向日葵「えっと、あれこれ聞くより、実際に目で見た方がわかりやすいと思いますわ」
向日葵「さあ櫻子、先生にさっきのを見せてあげて」
櫻子「えー、仕方ないなー」グッ スッ
SAKURAKO「はい」
綾乃「」
千歳「大室さん凄いなー。それ、どうしたん?」
SAKURAKO「今朝、突然出来るようになりました」
綾乃(千歳はどうしてそんな冷静なのよ……)
西垣「……ふむふむ、頭身、身長は変わらないから見た目の印象がかなりアンバランスだな」
向日葵「冷静に解説されても困ります、先生」
綾乃「えっと、大室さん大丈夫なの?」
櫻子「大丈夫です。今も元気いっぱいですよ!」エッヘン
綾乃(あっ……、普通に戻れるんだ)
りせ「…………」
千歳「あら、会長こんにちは。いきなりで申し訳ないんやけど、ちょっとこの書類達について聞きたい事が……」
向日葵「櫻子が戻れる見込みは何か、ありそうですか?」
西垣「うん、戻れるぞ」
向日葵「……えっ?そんな簡単に?」
西垣「見たところ私が昨日行った実験が原因のようだからな」
向日葵 櫻子「は?」
西垣「うーむ、それにしてもマッチョになるとは。少し予想外だった」
綾乃「……あの、先生?『昨日行った実験が原因』、とは?」
西垣「いや、それがだな、昨日放課後に地震があっただろ?」
向日葵 綾乃「?」
櫻子「言われてみれば昨日、地面が揺れてたような記憶がうっすらと……」
西垣「まあほんのちょっとした地震だったから、一日経ってしまえば忘れてしまうのも無理はない」
西垣「とにかくその時私は丁度大事な実験をしていた訳だが、その予定が地震のせいでちょっと狂ってしまった」
西垣「で、大室がその失敗の巻き添えを食らってしまったという訳だ」
櫻子「しょ、証拠は!私が腹筋しまくったからこうなった可能性もあるじゃないですか!」
向日葵「あるわけないでしょ」
西垣「昨日大室は、生徒会室の机の上にのっかっていた正方形状の小さな黒い箱に触らなかったか?」
櫻子「へ?」
櫻子「…………」
櫻子「そう言えば触ったような記憶が……」
西垣「それを触ったというのが大室がこうなってしまった直接の原因だ」
西垣「私が急いでその箱を回収した時には大室もその場にいたが、てっきりずっと寝ていたのだと思ってしまってな」
綾乃「それって下手したら本格的に先生の教師としての首がとぶような事件じゃないですか」
りせ「…………!」
西垣「はっはっは、面目ない」
千歳「次からはこういう事がないようにしてなー、西垣先生」
西垣「努力しよう」
向日葵(これでお咎めなしってどうなのかしら?)
向日葵「……まあ、言いたい事は色々ありますけど、櫻子は無事に治るんですのね?」
西垣「それはきちんと保障しよう」
西垣「流石にそういう手筈も整えずに未知の実験をするのは博打過ぎるからな」
西垣「ちゃんと解決策を用意してからそういう実験はするよう心がけている」
綾乃(やっぱりこの人全然反省してないわね)
西垣「治す方法はだな……」
櫻子「あの、先生」
西垣「うん?どうした大室」
櫻子「治すかどうか、考える時間を一日二日貰っても大丈夫ですか?」
向日葵 綾乃 千歳「え?」
りせ「…………」
西垣「私は大いに構わんぞ。それじゃあ明日、ひとまずの返事を聞く事にしようか」
櫻子「はい、よろしくお願いします」
向日葵(いったいどういうつもりですの、櫻子……)
ー通学路ー
向日葵「櫻子」
櫻子「なに?」
向日葵「どういうつもりですの」
櫻子「なにが?」
向日葵「あなたのその身体、なんで先生にちゃっちゃと治して貰わなかったかってことですわ」
櫻子「向日葵にはかんけーねーし」
向日葵「大アリですわよ、バカ櫻子」
櫻子「バ、バカとは何だこのおっぱ」
向日葵「私があなたを、心配するのはいけないことかしら?」プイッ
櫻子「………………」
櫻子「じゃあさ、逆に聞くけど、なんで元に治す必要があるの?」
向日葵「なんでってそれは」
櫻子「今朝から私の身体の調子凄くいいんだ。なにもずっとマッチョってわけでもないし、不便は特に感じない」
向日葵「でも……」
櫻子「それにあの姿なら、私にだって向日葵に負けないくらいおっぱいあるし」
向日葵(おっぱいっというか純粋に胸筋ですけどね……)
櫻子「授業もいつもと違って凄い頭に入ってくる」
櫻子「勉強に興味が出てきた訳じゃなくて、普通にボケーとしてても入ってくる感じ」
櫻子「なんでそれを自分から捨てる必要があるわけ?」
向日葵「……それでは櫻子は、筋肉モリモリマッチョな女の子でいることに、何一つ抵抗はないんですの?」
向日葵「あなたは筋肉モリモリマッチョでいたいんですの?それがあなたの意志ですの?」
櫻子「………………」
櫻子「わかんないよ、私にもそんなの」
ー寝室ー
「……わかった!」
「じゃあひまちゃんつまのところかいていいよ」
櫻子(ひまちゃん……?)
ひまちゃん「え…でも」
「だいじょうぶ」
「こうすればふたりともつま!」
ひまちゃん「さーちゃんありがとー」
さーちゃん「へへー」
櫻子(ああそっか……)
櫻子(これは昔の夢だ)
ひまちゃん「けっこんしたらまいにちおかしつくってあげるね」
さーちゃん「ほんと!?やくそくだからねー!」
ひまちゃん「うん」
櫻子(そういえば婚姻届に二人で名前とか書いたっけ)
櫻子(あれ、今どこにあんのかな?)
なでしこ「櫻子はなにしてあげるの?」
さーちゃん「んー、んーとねぇー」
さーちゃん「じゃあ、おかしまいにちたべるー」
ひまちゃん「えへへ」
櫻子(今思えば気付かなかっただけであの頃からそうだったんだ)
櫻子(向日葵に何もかもおんぶにだっこ)
櫻子(いつだったかそれを自覚するようになっって)
櫻子(それでも、向日葵とずっと一緒にいたかったから、ライバルだなんだって……)
櫻子(向日葵に甘えるのをやめること、向日葵と闘って勝つこと。全然上手くいかなかった)
櫻子(だけど、たった一つあれば良かったのかもしれない)
櫻子(向日葵に私がしてやれること。一つでもあれば、良かったのかもしれない)
櫻子(……今の私なら、この筋肉で向日葵を守ってやれるはずなんだ)
櫻子(私のやりたいこと)
櫻子(たった一つ……。たった一つ……)
今日はここまで
明日か明後日には終わるんじゃないかな
>>27
そういえばそんなキャラがいたなーと思ったら
撫子さんと同じだったんですね
へー、荒川見てたけど全く気付かなかった
ー通学路ー
向日葵「それで、治すかどうかはちゃんと決めましたの?」
櫻子「うん、決めたよ」
向日葵「答えは?」
櫻子「治さないって、決めた」
向日葵「……どうして?」
櫻子「だって、今の私ならクマもきっと倒せるし」
櫻子(何かあったら私が向日葵を守るんだ)
向日葵(なんで突然クマの話になるのよ……)
向日葵「つまり櫻子はクマを倒したかったのかしら?」
櫻子「いや、別にそういう訳じゃないけど」
向日葵「…………?」
ー教室ー
櫻子「あかりちゃん、ちなつちゃんおはよー」
向日葵「おはようございます」
あかり「あっ、おはよー」
ちなつ「おはよー」
あかり「結局あれから何かわかった?」
櫻子「えっとね、西垣先生の実験が原因だったみたい」
櫻子「だから治そうと思えば治せるんだって」
あかり「ええっ?」
櫻子「治せるってだけで治してないけどね」
向日葵「…………」
ちなつ「櫻子ちゃん、昨日帰ってから家族に何か言われた?」
櫻子「うん、特にねーちゃんに色々やかましく言われたよ」
櫻子「でも治す方法があるって言ったら引いてくれたけどね」
ちなつ「そんな簡単に?」
櫻子「西垣先生の名前出したら、ねーちゃんあっさり納得してくれた」
ちなつ(西垣先生……。いったい何者なの……)
ー生徒会室ー
西垣「治さない、というのが大室の選択なんだな」
櫻子「はい」
西垣「まぁ本人がそう言うならそうするが、もし治したくなったら私に言うと良い」
西垣「時間が経てば経つだけどうしても手間の差などは生じてしまうが、絶対にどうにかしてやろう」
櫻子「ありがとうございます」ペコリ
綾乃「なんで大室さん治そうとしないのか、古谷さん知ってる?」コソコソ
向日葵「今の私ならクマもきっと倒せるから、らしいですわ」コソコソ
綾乃「え?」
向日葵「あのう、先生?」
西垣「なんだ、古谷?」
向日葵「授業中櫻子を観察してると、どうも前よりだいぶ賢くなったように思うのですが、それも今回の事が何か関係してるんですか?」
西垣「……現在大室の身体能力はおそらく全てが、元の状態に比べて数段階底上げされている状態にある」
西垣「脳の働きが以前より活発になって、それによって勉強が容易になっているという可能性は考えられるな」
西垣「もちろん筋力の強化が主な効果だろうがな。それによるちょっとした変化でも勉強に大きな差が出ると言う事だ」
櫻子「へー、脳が全部筋肉だったらよかったのに」
向日葵(脳が筋肉になった方が賢い櫻子……)
ー数日後 教室ー
櫻子「おっぱい禁止ー!」バシン!
向日葵「痛いっ!」ドサッ
櫻子(……あ、あれ?なんで向日葵、胸を手で押さえて尻もちついて、泣きそうな顔してるの?)
向日葵「…………」
櫻子「ひ、向日葵……?」
向日葵「……そんなに、私の事が気に食わないんですの?」グスッ
櫻子「えっ……?」
向日葵「本気で殴るくらい、私の事が嫌いなのかって聞いてるんですのよ!」
櫻子「そ、そんなこと」
向日葵「ここ数日のあなた本当におかしいですわ!」
向日葵「そんなに気に食わない事があるなら口で言ってちょうだい!」
櫻子(わ、私はただいつも通りに……)
櫻子「だ、だってお、おっぱい禁止だし……」
向日葵「この期に及んでふざけるつもりですの!?」
向日葵「もういいですわ!櫻子の事なんて知りませんから!」テクテク
櫻子「あっ、まっ……」
櫻子「…………」
櫻子「ひ、ひまわりぃ……」ボソッ
ちなつ「あーあ、ついに向日葵ちゃんも我慢の限界かぁ」
櫻子「え?」
ちなつ「だって私の目から見ても、最近の櫻子ちゃんが叩いたりする力はおふざけの範囲越えてたもん」
ちなつ「多分ホントに痛かったんだと思うけど、それでも向日葵ちゃんだから今まで我慢してくれたんじゃないかな」
櫻子「そんな……、でも私は……」
あかり「さ、櫻子ちゃん、はやく向日葵ちゃんを追いかけなくちゃ!」
櫻子「……あっ!う、うん、そうするね。ありがとあかりちゃん」ダッ
ー理科室ー
西垣「最近自分が思ってるよりも力が強過ぎる?」
櫻子「はい……。そのせいで向日葵に迷惑かけちゃいました」
櫻子「わざとじゃないんだって、真剣に説明したらなんとか許してくれましたけど」
西垣「前も言ったが大室は今身体能力が底上げされてる状態にある」
西垣「それはマッチョモード?だけに、限った話ではない」
SAKURAKO「これですね」
西垣「いや、わざわざやらなくていい」
櫻子「そうですか」
西垣「……その力加減にまだ慣れていないだけで、後もう少しそのまま暮らしていれば、そういう問題も自然と無くなるはずだ」
西垣「もしかして、治したくなったのか?」
西垣「最近副会長がそれについて私にうるさくてなー。治せと言うなら喜んで手を貸すぞ」
櫻子「いえ、そうではないんですけど……」
西垣「?」
ー生徒会室ー
向日葵「で、何か身体に悪い影響が出ていた訳ではなかったんですの?」
櫻子「うん。先生が言うには慣れれば問題なくなるって」
綾乃「千歳、大室さんのアレどうにか出来ないの?」コソコソ
千歳「でも、特に問題はないんちゃうん?」コソコソ
向日葵「それじゃあ櫻子、これを一緒に二人で……」
櫻子「あっ」グッ スッ
SAKURAKO「私が一人で持ってくから、向日葵はここで他の仕事片付けておいてよ」
向日葵「そ、そうですの……、そ、それじゃあ頼みますわよ」ビクッ
千歳「大室さん前より明らかに積極的に働いてくれとるし、何よりも力仕事で頼りがいあると思うなぁ」コソコソ
SAKURAKO「それじゃあ行ってきますねー」テクテク
綾乃「あっ、は、はーい。い、行ってらっしゃーい」オドオド
綾乃「……いえ、私も千歳の言ってること、もちろん頭では分かるわよ」コソコソ
綾乃「ただ、そう言うのを抜きにして、私マッチョな人が単純に怖くて……」
千歳「……綾乃ちゃんはカワイイなぁ」ニコニコ
綾乃「カ、カワッ!カワイイなんて事ないんだから!千歳のバカ!」
向日葵(最近櫻子との距離感をどうとって良いのか悩みますわ……)
向日葵(下手に張り合うと背骨ごと叩き折られたりとかしそうで怖い……)
向日葵(大体マッチョの櫻子っていうのが、日常的に見るにはそもそも違和感あり過ぎるのよ……)
りせ「…………」
綾乃「えっ?会長なんて言いました?もう一度お願いします」スッ
りせ「私も見ててカワイイなと思った……」ボソボソ…
綾乃「……か、会長まで!からかわないでください!」アワアワ
千歳(限界まで会長の口まで耳を寄せてる綾乃ちゃんもええなぁ)タラー
向日葵(他の人たちはもうマッチョな櫻子に慣れ始めてるようだし、私も早く慣れた方がいいのかしら……)
今日はここまで
>>53 訂正五行目
千歳(限界まで会長の口に耳を寄せて、真っ赤になってる綾乃ちゃんもええなぁ)ホンワカ
ーさらに数日後 廊下ー
櫻子(向日葵の奴、身体に触れようとするだけでビクつくようになりやがって……)トボトボ
櫻子(そりゃ、一度謝ってからも何度も繰り返し力の加減間違えたのは私のせいだけどさ)トボトボ
櫻子(ちょっと触れただけで怯えた反応されたら、こっちだって傷付くっつうの)トボトボ
櫻子「うわっ!」ドンッ
?「あてっ!」
櫻子「す、すいません。ちょっとぼうっとしてて」
京子「いや、大丈夫。ちょっとびっくりしただけだから」
櫻子「あ、歳脳先輩に船見先輩」
結衣「やあ、大室さん」
京子「どうも~、皆のアイドル京子ちゃんで~す☆」キャルルーン
櫻子「こんにちは」ドヨーン
京子「……あれ、どうしたの?元気なさそうだね」
櫻子「ちょっと悩んでる事がありまして」
京子「何か悩みがある時にはぜひとも結衣に相談すると良いよ。彼女が頼りになるのは私が保証するから」
結衣「なんで自信たっぷりに他人任せなんだよ。いや、相談があるっていうならもちろん精一杯聞くけどさ」
京子「失礼な!私が頼りにならないという事は結衣が一番よく知ってるだろ!」
結衣「…………」
櫻子(どうせこのまま一人で悩みを抱えてても解決しなさそうだなー)
櫻子(歳脳先輩と私って似てるって前に向日葵やちなつちゃんが言ってたし、感性の似た先輩なら何かヒント貰えるかも)
櫻子(船見先輩は麻婆豆腐が自分で作れるくらいに人生経験が豊富。やはりそこから私に何かヒントを与えてくれそう)
櫻子「……じゃあお二人とも、私の悩みを聞いて貰えます?」
京子「おうっ!どんとこいや!……って結衣が言ってた」
結衣「大室さんの中の私への期待値を無理に上げるのは頼むからやめてくれ」
櫻子「えっと、最近ですね、私、マッチョになっちゃって凄く困ってるんです」
京子 結衣「は?」
ー娯楽部部室(旧茶道部部室)ー
京子「流石西垣ちゃんは違うなー」ケラケラ
結衣「いや、笑ってる場合か」ペシッ
京子「あてっ」
SAKURAKO「先輩方、私、これからどうしたらいいんでしょうか」
結衣「うーん、どうだろうなー」
京子「本人としてはマッチョを元に戻す気はないの?」
SAKURAKO「……前までは戻す気なかったんですけど、近頃はちょっと心の中でぶれちゃってます」
京子「じゃあさ、戻さないぞって意思がなんでぶれ始めたのかの心当たりはある?」
SAKURAKO「自分ではちょっと良くわからないです……」
京子「ふーむ」
結衣(全く、私を最初矢面に立たせるなんてややこしい真似しないで、素直にさっさと自分から前に出て相談受ければいいんだよ)
結衣(こういう真面目な話の時になんか恥ずかしがっちゃう所は、今も昔も京子は変わらないな)
京子「マッチョだとお得だと思う事って何かある?」
SAKURAKO「へっ?え、えっと、それは……」
京子「恥ずかしがる必要はないぞー。ここで話された事は全て秘密だから。結衣にも厳しく箝口令をしいておくぞ」
SAKURAKO「カンコウレイッ!なんかわからんけどカッコいい!」
京子「さあさあ、包み隠さず申してみたまえ」
櫻子「……あ、あの、その」
京子 結衣(あっ、戻った)
櫻子「……あぶ……わた……です」ボソボソ
京子「えっ?今なんて?」
櫻子「ひ、向日葵が危ない目に遭った時、私が守ってあげられるからお得です!」クワッ!
結衣(み、耳がいてぇ)キーン
京子「お、おお。おぬしの覚悟は大変によくわかった」
櫻子「あのですね、もちろん深い意味はないんです!」
櫻子「ただ向日葵は私のライバルだから、急にいなくなられたら困るっていうか!」
櫻子「本当にそれだけですから!」
京子「あっ、うん、はい」
櫻子の参考画像くれよ
京子「……と、いう事はさ、そのお得さでも中々釣り合いの取れない物がその葛藤の中にはあるわけだよ」
櫻子「はあ」
京子「話を聞いてる限り、今の自分とは別の自分に変わりたいと思ってる、それは間違いないね?」
櫻子「……はい」
京子「私が思うに、自分はどう変わるべきなのか、きっとそれが問題なんじゃないかな?」
櫻子「どう変わるべきか、ですか?」
京子「うん、自分のなりたい姿ってものがあるから、自分としては素直にそっちを目指したい」
京子「でもそれが、その姿を見て貰いたい人をこっちに振り向かせてくれる物なのかはわからない」
京子「多分、そんな所じゃないかなー、これはあくまで私の勘だけどね」
櫻子(……本当にその姿を見て貰いたい人)
向日葵『本当に櫻子はバカですのね』
櫻子(バカじゃない)
向日葵『まったく、櫻子は私がいないといつもダメダメなんですから』
櫻子(ダメダメなんかじゃない)
撫子『そんな自分勝手な事ばかりしてたらいつかひま子に愛想尽かされるよ』
櫻子(そんなの嫌だ。許さない)
櫻子(筋肉さえあれば間違いなく、私は変われる)
向日葵『あなたは筋肉モリモリマッチョでいたいんですの?それがあなたの意志ですの?』
櫻子(でも、だけど、それで向日葵はこっちを見てくれるのかな?)
櫻子「……じゃぁ、じゃぁ、いったいどうすればいいんだよ」ウルウル
京子「その見て貰いたい人に直接聞いてみればいいんじゃない?」
櫻子「へっ?」
京子「どんな自分と一緒にいたいかって聞いてみればいい」
京子「そうしたらそれに当てはまる方向性を目指していけばOKでしょ?」
京子「一度変わってしまったら、多分もう後戻りはできない」
京子「でも、変わる前だったら、勇気一つでどうとでもなる事だと思うよ」
櫻子「聞いてみる……」
京子「まあ場合場合で違うだろうから、こうやって話を大雑把に聞いただけで、一括りにこうだと言うのもちょっとどうかと思うけどね」
京子「だけど、今回のお悩みの対処法としては、おそらくそんなには間違ってないんじゃないかな?」
櫻子「……………………」ウムム
櫻子「よしっ!先輩っ!ありがとうございました!なんかふっきれた気がします!」ダダッ
京子「……あらら、あっという間に行っちゃったよ。落ち着きがないなー」ケラケラ
結衣「お前が言えた事か」
結衣「……でも意外だな、思ってたよりもずっと立派に先輩らしい助言してたじゃないか」
京子「あー、結衣も前に言ってたけど、あの子私と色々似てるっぽいからね。多少それっぽい事は言えるさ」
結衣「理由がなんであれ感心したよ。さっきの場面だけ見てればまさに頼れる先輩って感じだ」
京子「普段の結衣やあかりから見た今の私って、頼れるリーダーって感じだったりはしない?」
結衣「どっちかというと、場を散々引っ掻きまわして迷惑をかけられるって印象の方が強いかな」
結衣「まあ、退屈はしないし、正直そんなに嫌いじゃないけど。あかりもそう思ってるんじゃないかな?」
京子「もー、結衣は素直じゃないんだからー」
京子「素直に好きだって言えばいいのにー」ピトッ
結衣「だー!くっつくなうっとうしい!」
京子「…………」
京子「せめてちなつちゃんの中では、頼れる先輩的なイメージとかないかな」
結衣「どんなにお前を贔屓目に見ても、色々な条件付きの形になると思うぞ」
京子「……偉そうな事あれこれ言いはしたけど、どうにも締まらないなー」ボソッ
結衣「何か言った?」
京子「いいや、特に何も言ってないよ」ギュッ
結衣「だから私から離れろって言ってんだろ!」ペシッ
今日はここまで
昨日まったく書けなかったせいで終わらなかったよ……
>>62
ジュリアーノ・ストローくんを更に筋肉マシマシの超絶マッチョにして
櫻子の顔にすれば大体イメージ通りな感じ
(身長とかいろいろ問題あるけどまあイメージだし)
つまり人間じゃない
乙
ー向日葵宅 玄関ー
櫻子「向日葵ー!おーい、向日葵ー!」
向日葵「」ドタドタ
向日葵「ちょっと、大きな声を出さないで頂戴、近所迷惑ですわ」
向日葵「それにこういう時間、急に家に来る時はまず事前にメールしてって言ったでしょう?」
櫻子「おお、悪い悪い」ケロリ
向日葵「あなた、自分が悪いことしたって全く思ってないわね」
櫻子「いいからいいから。ちょっと私に付き合えー」
向日葵「はぁ?突然なんなんですの?」
櫻子「黙ってさっさと服着替えてついて来てよ。向日葵に一緒について来て欲しい場所があるからさ」
向日葵「どこかへ行くという事なら明日にしてくださらない?今何時だか、櫻子わかってます?」
櫻子「時間はそんなにとらせないから大丈夫だって。向日葵、お願い!この通り!」ペコリ
向日葵(あら、櫻子が頭を下げるなんて珍しい。本当に大事な用事なのかしら)
向日葵「…………やっぱり駄目ですわ」
櫻子「ええー」
向日葵「というかどこに行くつもりなのかくらいせめて言いなさいよ」
櫻子「それは秘密!」ドヤッ
向日葵「まったくあなたって子は……」ハァ
櫻子「もし向日葵が来てくれないっていうなら、私はここからてこでも動かないからね」
櫻子「時間を無駄にしたくないなら、大人しく私の指示に従った方がケンメイだと思うよ」
向日葵「……いつもの事ではありますけれど、あなた頼んでる側の立場なのに偉そうですわね」
櫻子「へへへ」テレテレ
向日葵「褒めてませんわよ、これっぽっちも」
向日葵(まったく、櫻子はずっと変わらず櫻子のままね)ヤレヤレ
向日葵「……じゃあ用意してきますからちょっとそこで待ってて」
櫻子「うん、なるべく早くお願いね」
向日葵「言われなくてもわかってますわよ」
ー外ー
向日葵「さあ、速く行きましょう?こんな時間に出かけるのがそもそも問題ですし急がないと」
櫻子「うん、そうだね」グッ スッ
向日葵「えっ、ちょ、ちょっと櫻子」
SAKURAKO「しっかり掴まっててよ」ガシッ
向日葵(こ、これってどう考えても御姫様抱っこ……!)カァ
向日葵「離して!櫻子、離して!」
SAKURAKO「あ、暴れないでよ、私が抱えていくのが一番速いんだから」
向日葵「だったら背中に乗っければ……」
SAKURAKO「念のため目の届く所で向日葵をしっかり持っていたいの」
SAKURAKO「落としたら向日葵の命にかかわるし」
向日葵「え?」
SAKURAKO「行くよ」ドンッ
向日葵(えっ?跳ねた?……というかもはや、飛んだ?)
SAKURAKO「あまり人目につかないために屋根の上とか走るけど、怖がらなくて良いからね」スタッ
向日葵「」
向日葵(……完全に櫻子、人間やめちゃってるじゃない!)タッタッタッ
ータワー頂上ー
――ヒュオォォォォォオオォォ……
SAKURAKO「ううっ、風冷たいなー」ブルブル
向日葵「ねえ櫻子」
SAKURAKO「なに?」
向日葵「これはいったい、どういう事?」
SAKURAKO「どうって、ここからの景色凄い綺麗でしょ」
SAKURAKO「今日の放課後、ここらで一番景色の綺麗な場所探してたら時間かかっちゃってさ」
SAKURAKO「でも夜の人工的な明かりで照らされた町並みってのも綺麗だし、これはこれでアリだね」
向日葵「私はあなたがこんな事をした理由を……」
向日葵「はぁ、もういいですわ」
向日葵「とりあえず御姫様抱っこが死ぬほど恥ずかしいから降ろして」
SAKURAKO「えっ、でもここ普通の人が立ち入れる場所じゃないし、足場も不安定で狭いから危ないよ?」
SAKURAKO「真下覗いてみなよ」
――ヒュオォォォォォオオォォ……
向日葵「」ゴクッ
向日葵「し、仕方ないから、も、もう少し我慢してあげますわ」
SAKURAKO「…………」
SAKURAKO「……ねえ、向日葵。普通の人間だったらこんな場所には来れないじゃん?」
向日葵「それは確かに、そうですわね」
SAKURAKO「つまりはさ、こんな綺麗な景色を迫力たっぷりに見れたのは私のおかげだよね!」
向日葵(別に私、こんなことあなたに頼んでませんわよ)
向日葵(……でも櫻子の優しさは、こっちが面食らう形で示されるのがそもそも常でしたわね)クスクス
向日葵「ええ、ありがとう、櫻子」
SAKURAKO「……向日葵はさ、私とこういう特別な景色もっと見たいと思う?」
SAKURAKO「それとも私と他に何かしたい事ってあるの?」
向日葵(櫻子と一緒に、私がしたい事、ねえ)
向日葵「そうですわね……」
向日葵「こういう特別な経験というのもたまには悪くないのかも」
向日葵「だけど、私は普通が一番好きですわ」
向日葵「あなたが私に突っかかってきて、私がそれに張り合って」
向日葵「上手く言葉に出来なくてごめんなさい」
向日葵「ただ、あなたが遠くに行ってしまったように思えるのは、はっきり言っていや」
SAKURAKO「そっか」
SAKURAKO「私はね、こういう豪華な景色を向日葵とずっと眺め続けるのもいいなあって思うんだ」
SAKURAKO「……けれどこのたくましい腕は、向日葵のおっぱいを掴むには強過ぎるのかもしれない」
向日葵(うん?)
SAKURAKO「向日葵に痛い思いをさせて傷つけるのは、私も嫌だ」
SAKURAKO「でかっぱいは優しく触れってTVのタレントかなんかも言ってた気がするし」
向日葵(私いま、櫻子にナチュラルにセクハラされてる……!?)
SAKURAKO「それじゃあ普通の私でいいのかな?何か、普通じゃない私にならなくてもいいのかな?」
SAKURAKO「だって向日葵にとっての私って、正直なところただの役立たずな重荷でしょ?」ボソッ
向日葵「…………」
向日葵「あなたって本当に信じられないくらいの大バカだったんですわね」
SAKURAKO「なっ!?バ、バカじゃねーし!バカって言った方がバカだし!」
向日葵「いいえ、あなたは大バカ者ですわ」
向日葵「よく聞きなさい、普通であろうがなかろうが櫻子は櫻子、そうでしょう?」
櫻子「……うん」
向日葵「あなたは私のライバル、生徒会次期副会長候補、違います?」
櫻子「生徒会副会長は絶対に私だけどね」
向日葵「話をいきなり脱線させないでよ」
向日葵「……あなたはどこまで行っても櫻子ですわ」
向日葵「普通の櫻子が重荷だって言うのなら、私はとっくにあなたの事なんて見捨ててますわよ」
向日葵「…………そう言う駄目な所もひっくるめて、私は櫻子の事がその、す、好きなんですから」カァ
櫻子「えっ?じゃあ私って、ダメな子でもいいの?」
向日葵(せっかく勇気を振り絞って言ったのに、その反応あっさり過ぎませんかしら!?)
櫻子が頭良かったら京子とかぶっちゃうじゃん
向日葵「何言ってるのよ、いいはずないでしょ」
向日葵「最後まで付き合ってあげるってだけですわ」
向日葵「一々言われなくても私は櫻子の傍にずっといますから」
向日葵「それこそあなたがマッチョにでもなって、私を置いてどこかに勝手に行ったりしない限りは確実に」
櫻子「…………」
櫻子「……とりあえず寒くなってきたからそろそろ帰ろっか。鍋食べたい」ブルブル
向日葵「念のため言っておきますけど、今日我が家にあなたの分の食事は有りませんわよ?」
向日葵「さっき夕食はもう食べましたし、明日まで我が家の冷蔵庫はほとんど空っぽですわ」
櫻子「えっ?マジで?」
ー生徒会室ー
櫻子「西垣先生ーまだ続けるんですかー!」シュコー シュコー
西垣「ああ、まだまだだな」
千歳「ちょっと遅れてごめんなー」ガチャ
櫻子「腹筋疲れてきた―」シュコー シュコー
西垣「おおっ!良い兆候だぞ大室」
千歳「……綾乃ちゃん、一つ聞きたいんやけど大室さん、なにしとるん、あれ」
綾乃「マッチョ体質を元に戻す処置を施してるみたい」
千歳「でも、怪しさ満点の腹筋してるだけに見えへん?」
向日葵「何でも特殊な装置にチューブを繋げた防護服を着込んで腹筋する、というのがその方法みたいなんですの」
千歳「へー、そうなんやー」
綾乃(えっ?それだけ……?私が気にし過ぎてるだけなのかしら……)
向日葵「あの防護服は、櫻子の身体の中からヤバいエネルギーが外に漏れ出さないための物みたいです」
綾乃「どう考えても生徒会室でやるべき事ではないわよね」
千歳「確かに装置が大きくて、仕事にちょっと邪魔な感じはするわー」
西垣「いやー私も本当なら理科室で行いたいんだが、現在理科室無期限使用禁止になっててなー」
西垣「ああ、大室がこうなった実験とは別の実験のせいだから安心していいぞ」
綾乃「どこに安心しろって言うんですか!?先生いったい何をしたんですか!?」
櫻子(もう1000回くらい腹筋してる気がするんだけど気のせいかな……)
ー数週間後 生徒会ー
櫻子「重いよー、向日葵ー、持ってくれー」
向日葵「バカ言ってんじゃねーですわ。二人分の箱なんて重くて持てませんわよ」
櫻子「じゃあこの櫻子様が、非力な向日葵の箱も合わせて持ってやろう」
櫻子「その代わりに次期生徒会副会長は、この私に譲ると明言したまえ」
向日葵「はいはい、つまらないこと言ってないではやく運んじゃいますわよ」
櫻子「最近肉体労働系の仕事多すぎない?」
向日葵「それにはちょっと同意ですわ。でも書類を櫻子に触らせるよりは安心できて良いですけど」
櫻子「おい、どう意味だよ向日葵、待てコラ」
櫻子(マッチョ体質をやめてはや数週間)
櫻子(騒動以前よりは力が強くなった気がする)
櫻子(だけど勉強はあのウハウハは夢だったのかと思いたくなるくらい頭に入らない)
櫻子(それに当然前みたいな人間やめました的なパワーは出せない)
櫻子(ほぼ前の私に戻ったと考えていいだろう)
櫻子(それでも何か、今回の経験で変わった事を期待して色々やってみた)
櫻子(結論から言えば、勉強、料理等々の何一つてんで上手くいかなかった)
櫻子(僅かな例外を除いて、人間そう簡単には変われないらしい)
櫻子(だから私は最近、せめて生徒会の仕事をなるべく精いっぱいやる事にしている)
櫻子(これが向日葵に現状勝てる可能性が一番高くて、私が一番気乗りする挑戦だ)
櫻子(これで向日葵に負けたら、あるいはもしも勝てたら、なんて事を考たりもする)
櫻子(でも、そんなに焦る必要もないのかもしれない)
櫻子(勝とうが負けようが、私の傍に向日葵が居続けるという事実は変わらないんだから)
櫻子「!」
櫻子「箱の上に二つでっかい物乗せてんじゃねー!いやみかそうか!おっぱい禁」
向日葵「うっさいですわ!」ゲシッ
櫻子「げふっ」
櫻子「あ、脚を狙ったキックも禁止ー!」ジンジン
向日葵「やかましい!廊下で大勢の人がいるのにセクハラするのはいい加減やめてくださらない?」
櫻子「え、じゃあ二人きりの時なら許すって事?揉んじゃうよ?」
向日葵「許すわけないでしょ。……ていうかさらっと何言ってるのあなた」
百合展開くるか…?
櫻子(以前と比べて一番変わった事といえば、あれから私は向日葵のおっぱいを叩くのを止めた事)
櫻子(その代わりにおっぱいを禁止する時は優しく触るようになった)
櫻子(叩いていた時よりも何故か向日葵からの反撃が激しい気がするけど、気のせいだと思いたい)
向日葵「というか実際あなたの触り方最近いやらし過ぎますわ。ちょっとどうにかしてよ」
櫻子「……でも、なんだかんだ言って、向日葵は私の傍にずっとにいてくれるんでしょ?」ニヤニヤ
向日葵「その顔すっごい腹立つからやめて」
櫻子「はい」
終わり
百合展開なかったけど
乙
今年入って原作は買っていたがゆるゆりSSを前ほど熱心に読んでいなかった
初めてゆるゆりSSを書くにあたってネタ被りが怖かったので一番被らなさそうなのを持ってきた
ネタは書いてる中でいくつか浮かんできてたから、しばらくはゆるゆりSSを書くんじゃないだろうか
ただ百合話というよりは基本的に普通?な感じになる事が予想される
次回(予定) 京子「あかりの髪が赤く熱く燃えてる……!?」
とりあえずこのスレHTML化依頼してきます
普通…?
まぁおつ
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