少女「二度目の恋」 (56)
「……痛っ」
「ううん。大丈夫。ありがとう」
「私もよく言われるの。どんくさいって」
「あの……さ、さっきは凄かったね。あんなに大勢の前なのに背筋をピンと伸ばして堂々としてて」
「私? 私は無理だよ。新入生代表なんて……」
「確かにすっごく噛んでたけど、そんなの気にしなくても……」
「ぁ、お母さん。すぐ行くからちょっと待ってて」
「え? 二組だよ」
「うん。一緒」
「じゃあ……また明日」
「もー違うよ。」
「しつこいよ。お母さん」
ほんとに……もー。
もう恋なんてし無いよ
「ぁ、おはよう」
「うん。公園の近くなの」
「え、じゃあ……近いんだ。あ、でも」
「やっぱり、越してきたばっかりなんだ。そうだよね。小学校の時、見かけなかったもん」
「殆どの人は小学校から一緒だよ」
「そうかなあ。でもみんな良い人だから、すぐ友達になれるよ」
「あ、ほらあそこにいる子も二組の子だよ」
「おはよーっ!」
「ほら、君も恥ずかしがってないで」
なんであの時、声をかけちゃったんだろ。
「ぁ……ぉ、おっす」
「そっか。野球部なんだ」
「うん。私はバレーボール」
「バスケ部と一日交代らしいよ。明日は体育館だけど、今日は外のコートで練習」
「体育館、狭いから」
「私たちも、ボール拾いか歌の練習だよ」
「応援歌……って言うのかな」
「え? やだよ」
「…………どかんといっぱつ、やってみよーよ……みたいな」
「……うん。そっちも頑張って」
歌……上手くなりたいな。
「ばっちり出来たよ」
「ちゃんと勉強してたからね」
「野球ばっかしてるからだよ」
「ノートを見ながら復習かな。あと試験対策プリントに書いてあるところ」
「え、でも私も使うから」
「お菓子…………ハーゲンダッツとかでもいいの?」
「やったあ」
ノートの清書しないと。
「自然体験学習だって」
「あれじゃない? 林間学校みたいなやつ」
「キャンプファイヤーとかするんだってさ」
「しおり読んでないの?」
「みんなでカレー作ったり、うどん作ったり」
「夜はスタンツもやるみたい」
「私たちはダンス! 練習したでしょ!」
「ちゃんとやってよ……もー」
あんなこと言ってたのに、ダンス上手だったなあ。
こうだろ?
「エッチなのはいやだよ?」
「いいから早く足を開いて」
「恥ずかしい」
「だいじょうぶ、がんばって」
「ああいや」
「きれいだよ」
「そんな・・」
ぺろぺろしないと。
「一回戦で負けちゃった」
「応援してた。うち、人数多いから。あなたも応援?」
「代打……すごいじゃん」
「しょうがないよ。相手は三年生だもん」
「へー。じゃあ夏休みは猛練習だね」
「私も、頑張るよ。三年生がいなくなったから、ボールを使った練習も出来るようになったし」
「どっちが先にレギュラーとれるか勝負する?」
「負けた方が勝った方にアイス奢りね」
「いいの?お小遣い一ヶ月分だよ?」
「負けないから」
私、小学校の頃からバレーボールやってるのに。
「……?」
「うわー真っ黒! 」
「本当に誰か分からなかったよ」
「あ! あれみたい。えっと……フンコロガシ!」
「痛い……もう夏休みの宿題見せてあげないから」
「……確かにフンコロガシって言った私が悪かったかもしれないけど」
「私も、ごめんなさい」
「ふふ」
「図書館でやろっか」
「うち? うちは、ちょっと無理かな」
「ほら、早くー」
いきなり電話なんて掛けてくるから、ちょっと期待した。馬鹿みたい。
「リレー出るんだ?」
「7秒4……速いんだね」
「足遅いから無理だよ」
「9秒8」
「別に……。玉いれで大活躍するもん」
「得意なことで頑張ればいいじゃん。お互いにね」
「そうだよ。そもそも味方なんだし」
「ん。頑張る。そっちも頑張って」
こけなかったら、最下位じゃなくて二位だったのにね。
「新人戦どうだった?」
「また代打だったんだ」
「一打数一安打一盗塁? すごいじゃん!」
「え、私? 一試合フル出場したよ。負けたけど」
「いいよ。まだ。先輩が怪我したから代わりに出ただけだし」
「セッター」
「セッターとリベロしか知らないんでしょ?」
「私がやりたいのは、スパイカー。アタック打つ人だよ」
「来年は私はスパイカーでレギュラー取るからね。それでアイス奢って貰うんだ」
あなたのハートに強烈スパイク…………何言ってるんだろ。
「やっぱり? 私も小学校の時、中学校になったら文化祭で模擬店出すんだって思ってた」
「そうそう。教室で喫茶店とかお化け屋敷とかね」
「実際は音楽発表会だもんね。模擬店なんて一つも無いし」
「言わないよ。恥ずかしいし」
「……だんしー……ちゃんとうたってよ…………」
「ほんとに恥ずかしいんだってば」
だんしーちゃんときづいてよ。
クリスマス。
枕元にはプレゼントが置いてあった。
可愛いブレスレット。
あいつは、何か貰えたのかな?
「……明けましておめでとうございます」
「……初詣、来たんだ」
「眠いの」
「……午前二時だもん」
「焚き火は暖かいし、甘酒は美味しいし……幸せ」
「…… …………」
「……だいじょーぶ。ちゃんと起きてるよぉ」
願い事、叶うといいな。
期待してる
「……そうなんだ」
「あの子は? いつもよく話してる子」
「……残念だったね」
「そんなに欲しいんだ」
「うちに余りがあったかも……かもだけど」
「わかった。待ってて。取ってくるから」
「え? ラッピング? そのままだと可哀想だし、さっき急いでやってあげたの」
「ふふ。どういたしまして」
渡せて良かった。
「へー、平均80点かあ。頑張ったね」
「うん。私も美味しかったし」
「良いじゃん。一個あげたんだし」
「……じゃあ、私に勝ったら何でも買ってあげるよ」
「千円以内ね」
「いいよ。二年生になったらお小遣い二千円になるし。……それに負けないから」
「え? 93点だよ」
13点の差は大きいよね。
「おっす。野球部ってこんなに遅くまでやってるんだ」
「へー。それはちょこっと大変だね。鬼監督」
「でも期待されてるってことでしょ?」
「うちも春休み中ちょこちょこ練習あるよ」
「なあに?」
「ふーん」
「しょうがないなあ。それで勘弁してあげる」
本当は、部活終わった後に自主練習してるって知ってるんだよ。
あいつは……二組かあ。
私は…………二組だ!
やったあ。今年も一緒だ。
「芸能人かあ。あの人とか良くない?この前の月9に出てた人」
「土8の人もかっこいいよね」
「他? うーん。あのお笑い芸人の人とか?」
「え? 何? やっぱりって」
「に、似てないよぉ」
「ちょ、ちょっと声が大きいって」
「聞かれたら恥ずかしいじゃん!」
「……好きだよ」
「にやにやしないで!」
「何、その保護者目線な意見」
好きな人によく似た芸能人を好きになったりして。
「94点」
「8点差かあ」
「まだまだだね」
「90点の壁って結構厚いんだよ」
「楽しみに待ってる」
「……別に勝ち誇ってないよ」
6点アップかあ。頑張ってるんだなあ。
「……辛い。遠足で山、辛い」
「どうせなら動物園とかが良かったよ」
「……なんでそんなに元気なの?」
「前の人の歩くスピードに合わせるの?」
「やってみる」
「ずんずんちゃっちゃ、ずんず んちゃっちゃ」
「あはは、楽しいかも!」
「ずんずんちゃっちゃずんずんちゃっちゃ」
「ずんずんちゃっちゃずんずんちゃっちゃ」
「ずんずんちゃっちゃ…………飽きた」
ずんずんちゃっちゃ。
「ご返却ですね。はい、大丈夫です。ありがとうございました」
「ぁ、えっと担当の者をお呼びしますので少々お待ちください」
「館長さーん。あちらのお客様が聞きたいことがあるそうです」
「ふう。大人は大変だなあ」
「職場体験どうだった?」
「へー、新聞屋さん行ったんだ」
「えー良いなー楽しそう」
働くって大変。
「二回戦で負けちゃった」
「あと一回勝てたら県大会だったのになあ」
「今回もベンチだったよ 」
「そっかあ。おめでと」
「いいなあ。スタメン」
「三打数二安打二打点一盗塁? 大活躍じゃん!」
「じゃあ、買いに行こっか。約束だし」
試合、見に行きたかったなあ。
「美味しいね。分けてくれてありがと」
「ブランコに乗るの久しぶりかも」
「でも負けると思ってなかったなー。私、小学校からバレーやってたし」
「え、なんだあ。二人とも小学校からやってたのかあ」
「私だけ経験者でずるいなあとか思ってたのに」
「あなたも思ってたの? ずるい!」
「あはは。二人ともずるいね」
「あ、でもこれからは私たちがメインだからもっと頑張らないとね」
「次こそは県大会行きたいし」
「それでね、この前見たんだけど……」
ずっと二人きり、なんとなく揺れていたいんだ。
「え、何?」
「良いけど」
「誕生日プレゼントかあ。誕生日いつなの?」
「ふーん。ちょうど半年違いなんだ」
「あ、私、古いほうのグローブでいいよ」
「いくよー! ぁ!」
「ごめんね。投げ方がいまいちわからないんだよなー」
「こんな感じ?」
「あ、投げれた! すごい!」
こっそり覚えた誕生日。もう一生忘れることはないんだろうなって。
「あ、ベビーカステラ。買ってくる」
「林檎飴だー」
「かき氷あるよ!」
「いいじゃん。女の子しかいないんだし」
「本当だ。クラスの男子が……あ」
「なに? 何で笑ってるの?」
「お祭りだもん。楽しまなきゃ損じゃん」
「笑いすぎ!」
………………なんか皆で花火見ることになってるし。
「…………別に」
「……そうだね」
「……思い出し笑いしないでよ」
「……かき氷と林檎飴とベビーカステラとはし巻きとイカ焼きと焼き鳥と……」
「美味しかった!屋台ってなんであんなに美味しいのかなあ」
「笑わないでよ」
「……もー、私が食べすぎなのはわかってるから」
花火、いつもより綺麗だったなあ。
「…………」
「………………」
「……落ち込んでるの!」
「私たちの代になって初めての大会、一回戦負けだよ」
「せっかくスパイカーになれたのに、何度もミスしちゃって試合も結構ぼろぼろでさあ」
「努力が足りない、か……結構厳しいこというね」
「……そうだよね。失敗するってことは、まだ努力すべきところがあるってことだし」
「県大会出場おめでとう」
「応援行くからね……クラスの子と」
朝練、はじめました。
「……落ち込まないでよ」
「かっこよかったし」
「ダイビングキャッチしてたとことか」
「……急に元気にならないで」
「大丈夫。次は大丈夫だよ。私はあなたの努力を知ってるから」
「こっそり自主練してることとか」
「え? 秘密だよ」
好きな人って、どんなに人が多いとこでも見つけられるんだよね。
「おはよ」
「朝五時集合って早過ぎない?」
「うん」
「さっきから何か忘れ物してる気がするんだよね」
「やっぱり? 私だけじゃないんだ」
「沖縄、楽しみだね」
飛行機乗るの初めてだ。
「あ、あなたも班別行動、ダイビングだったんだ」
「雨、残念だったね」
「シーサーの色塗りに変更だなんて」
「……それじゃあシーサーじゃなくてライオンだよ」
「え? シーサーってライオンのことなの?」
「へー、知らなかった」
「じゃあ私のシーサーはピンクのライオンなんだ」
「……かわいい」
恋のライオンかあ。効果があるといいなあ。
他の子が、あいつにチョコを渡してた。
嬉しそうにしてるあいつの顔を見ると、妬けちゃって。
別にそんな関係じゃないのに。
そんな自分が嫌で渡せなかった、本命チョコ。
急な雨が降ってきて、橋の下で雨宿り。
あの子と相合傘してるあいつを見て、
私は濡れて帰ることにした。
「髪切ってくるね、お母さん」
「うん。いつものとこ」
「あ、お願い。帰りは歩いて帰るから待ってなくていいよ」
「もうすぐ新学期だし、ショート カットにしようかなって思ってるんですけど、どんな感じがいいですかね?」
「あー! それかわいいですね。そんな感じでお願いします」
髪洗うの楽だなあ。
別に失恋のせいじゃない。
私は……一組かあ。
あいつは……二組。
あいつの彼女は…………一組。
「今日から三年生だって、実感わかないね」
「そっか。先生以外恐れるものがなくなったのかあ」
「あ! 購買のパン一番乗りで買えるね!」
「明日お弁当じゃなくてパンにしよ」
「焼きそばパンとかカレーパンがやっと買えるんだ」
「幸せだなあ」
「……安い幸せとか言うな」
あいつには会ってない。
大丈夫。
「これでみんなとどこかに行くのも最後かあ」
「今年は遊園地で本当に良かったよ」
「辛かった……去年は辛かった」
「班決め、どうやるのかなあ」
「えー、くじかあ」
「一緒の班だといいねー」
あの子と同じ班なんて。
「あの子、あいつと一緒に回るんだって」
「つくればいいのに」
「私は……今はいいかな。受験もあるし」
「それよりさ、早く乗ろうよ」
「せっかくだからいっぱい乗りたいじゃん」
「あ、あれ乗ろう! あれ!」
「……気分悪いね」
「はしゃぎすぎた……」
視界の隅に入ってくるの、やめてほしいなあ。
「……なに?」
「92点だよ」
「……93点? うそ」
「……ほんとだ。じゃあこれ、はい」
「なに?」
「彼女いるんでしょ? 誤解されたくないし」
「それに彼女が、とかじゃなくて私が嫌なの」
「うん。ばいばい」
「………………ばーか」
英世さん、乱暴に扱ってごめんなさい。
「はぁ。最後の大会も負けちゃったなあ」
「でも今回楽しかったなあ」
「ミスもあったけど、みんなでフォローし合えたし」
「へ? …………なんでいるの? いつから?」
「……恥ずかしいなあ、もー」
「別に嫌いになったわけじゃないけど」
「面倒くさいもん。そういうの」
「そんな簡単じゃないんだよ」
「あ、今から家族でご飯食べに行くんだ。またね」
濡れ縁で独り言は危ない。
夏休みが明けたとき、あいつはいなかった。
親の仕事の都合で東京へ引越ししたらしい。
彼女とは別れたらしい。
私と会いたがっていたらしい。
全てらしいなのは、全部あいつの彼女から聞いた話だからだ。
そしてあいつの彼女は、私にあいつの連絡先を渡す。
あいつはひどく身勝手なやつだ。
し
冬休み。
私が、あいつに連絡をすることは無かった。
あいつの彼女……元彼女に悪い気がして、メールを 作っては消しての繰り返しだった。
周りではカップルが出来ては別れていく。
多くのカップルは、悪口を言いながら別れていて
そんな結末になるのが怖かったっていうのも連絡が取れなかった理由だと思う。
初詣。
神社でのお願いは受験が上手くいくこと……
ではなく、あいつの幸せ。
結局、私も身勝手なんだと思う。
願い事は、綺麗な思い出として保存するための行為。
そういうことなんだろう。
卒業式。
周りの女の子は、みんな泣いていたけれど
涙腺の強い私は泣けなかった。
私の進路は、地元の進学校。
あいつを追って東京へ行くなんてことは、出来なかった。
一度だけ、メールを送ったのだけど、そのメールは誰にも届かなくて
泣けない私の孤独感を一層と強めた。
おしまい
ほ
も
え
ん
ど
ホモエンドかよwwwwwwwwwwwww
まさかのホモエンド
初詣で幸せを祈った結果
想い人は同性愛者となってしまったのか
なお俺はこんなケツ末を狙ったわけではない
読んで無いけどホモエンドなのか、読むのやめるか
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