【アークナイツ】フロストリーフ育成計画【安価あり】 (58)

本スレはタワーディフェンスゲーム『アークナイツ』の二次創作です。
一部、本編とは相違のある部分、本編で明瞭になってない部分があるため、パラレルワールドのようなものだと思ってください。

PS:エイヤの新スキンをください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1611065039

燃える街を抜け出し、雪の中をよろめき進む。

後ろに視線を移せば、通った道には赤い染みが存在を主張していた。

(俺の今までは、何だったんだ)

戦って、闘って、殺して、奪って。

大切なものを手にしても、何一つ護れず、また全てを喪った。

上手くいっていたから、驕っていたのだろう。

形だけの力に、溺れていたのだろう。

だから俺は、罰を受けたのだろう。

手を汚した者は、決して幸せになってはならない。

その言葉が、脳内を埋め尽くす。

「…五月蝿い」

一歩、前に進む。

「五月蝿い」

また一歩、前に進む。

「五月蝿いッ!ぐうっ…」

足は動かず、地面に倒れた。

「く…そ…!」

身体に力が入らず、視界が霞む。

それでも。

「ぐ…ッ」

俺は、生きなければならない。

死者の分まで生き続けるのが、残された者の責任だから。

戦いというものは、どんな場所でも起こり得るものだ。

クルビアの辺境、戦火の近付く小さな町では、戦力補充のために、貧困層の少年少女をクルビア政府が掻き集める。

用途は勿論、少年兵として戦場に投入するためだ。

アーツさえ使えれば、子供であろうと多少なりとも戦力になる。

「ついにここも、戦場になるんですかね?」

日用品を荷台に乗せながら、青年が疑問を呈した。

「だろうな…。孫と同じくらいの子供が駆り出されるとは、嘆かわしい…」

商人の老人は、悲しげに頷いた。

トラックのコンテナに載せられる子供たち。

その中の、一人のヴァルポの少女が目に入った時、青年の身体は動いていた。

「ちょっといいですか?」

軍刀を携えた兵士に、物怖じせず声をかける。

「ん?」

くるりと振り向いて、兵士は眼前の青年を品定めする。

服装から見るに、付近に居住する民間人のようだ。

警戒を解き、兵士は青年に対応した。

「何か用があるのか?」

「いえね、随分と大勢の子供を連れてくなぁ、と思いまして」

「あぁ。今は少しでも戦力が欲しくてな。可能な限り人を掻き集めろ、との命令だ」

「こいつらは皆、孤児(みなしご)だったり親が生きるために已む無く政府に売った奴らだ」

軍帽を深く被り、暗い表情をしていることから、彼も今回のことは不本意のようだ。

「で、そんなことを聞くために呼び止めたのか?俺はそろそろ出発したいんだが…?」

兵士が言い切る前に、宝石やアクセサリーが入った袋を渡す。

「なにこれ?」

「換金用の宝飾品です。これを全て差し上げるので、子供を一人、いただきたく思います」

「………」

ふむ、と兵士は顎に手を当て思考する。

青年と宝石を交互に十回ほど見た後、袋の中身を少し摘んで、袋を中身ごと返却した。

「…こいつらの装備を整える必要があるから、これだけは貰っておくよ。一人、だったな」

兵士はコンテナを開錠し、扉を開く。

そして、コンテナの中を指差した。

「好きな子を連れていけ。で、残った宝飾品はその子と暮らすのに利用しろ。その方が有効活用出来るだろう」

「ありがとうございます」

先程目に映った少女の手を引き、コンテナから出す。

「ここに乗ってくれ」

荷台を整理しスペースを開け、そこに入るよう促す。

少女を乗せた後に、荷車を引いて帰路に着く。

そして、自嘲の意を込め、少し笑った。

(…分かっている、リーゼ。これは、ただのエゴに過ぎない)

(…でも、もう関わってしまったから。もう、後戻りは出来ないから)

(だから)

"今回こそ"は、何があっても護り抜いてみせる。

家に戻った青年は、ランプに火を灯し、ミルクを温める。

「散らかってるが、気にしないでくれ」

「ああ」

家に入るや否や、少女は部屋の片隅に座り込んだ。

自分の人生を買い取られたことを、子供ながらに察しているのだろうか。

「………」

「………」

先程の返事から、無言が続く。

聞こえるのは、ミルクをかき混ぜるスプーンと鍋の当たる音とミルクの水音だけ。

「これくらいなら、飲めるだろ」

人肌程に温まったミルクをマグカップに移し、少女に渡す。

それを受け取っても、少女は微塵も動かない。

「私は、何をすればいい?」

「ミルクの見返りに、か?」

青年の問いに、少女は頷いた。

「…とりあえず、それを飲め。話はそれからだ」

「わかった」

少女がミルクを飲み干すまで、会話は一度もなかった。

空になったマグカップを洗っている間も、少女は部屋の片隅というポジションをキープしている。

その視線は、真っ直ぐと青年に向けられている。

洗い物が終わった青年は、折れた剣と手斧を両手に持ち、靴を履いた。

「ついて来い」

青年の指示に従い、少女はボロボロのサンダルを履き、青年の後を追う。

林に入った青年は、手斧を少女に渡し、徐に木を斬り倒した。

「俺の家には電気が通ってないから、薪が必要なんだ。お前には薪集めの手伝いをしてもらう」

「わかった」

青年は、斬り倒した木を一定間隔で切り分ける。

少女は、切り分けられた木を割り、薪を作る。

そんな作業が、数十分続いた。

青年が薪をロープで纏めている間、少女は切り株に腰掛け指示を待つ。

「お前、名前は無いのか?」

「…え?」

不意の質問に、少女は反応が遅れる。

質問の意味を理解した少女は、ゆっくりと頷いた。

「…ない」

「それは困るな。これからどう呼べばいいのか困るじゃないか」

「好きに呼べばいい」

「そう言われてもな…」

ひらりと落ちた木の葉が、少女の髪に乗る。

鬱陶しそうに、少女はそれを摘む。

刹那、手に持たれた葉は紅葉し、鮮やかなオレンジの色に変わった。

「…あ」

名前が無いのなら、付ければいい。

目の前の光景が青年に一つの名前を閃かせた。

名乗るにしても、呼ばれるにしても、少し不格好だが、無いよりはマシのはずだ。

「フロストリーフ」

「それが、お前の名前だ」

霜が降りた葉、または、寒さで紅葉した葉。

それが、彼女の名前。

「フロスト…リーフ…か…」

「…いいんじゃ、ないか?」

そう言って、フロストリーフは笑った。

「私は、お前を何と呼べばいい?」

薪を持ち帰る道中、フロストリーフが疑問を呈す。

ある意味、意趣返しとも言える。

「俺は、他人に名乗るべき名前は持たない」

「…そうだな。呼ぶとするなら、ブランク、とでも呼んでくれ」

名無しに名前を与えた人の名前が空白(名無し)とは、何と皮肉なんだろう。

そんなブランクの自嘲は、フロストリーフに気付かれなかった。

↓1 フロストリーフと何をするのか、または、ブランク単独で何をするのかを記載。

安価とは別に質問等ありましたらご自由にどうぞ。

売られた経緯について質問

ブロック肉を細長く刻み、包丁で叩いて即席の挽き肉に生まれ変わらせる。

「手を洗ったら、俺が計量した塩を入れてひたすら捏ねてくれ」

「ああ」

挽き肉をボウルに入れ、塩を入れた小皿とセットでフロストリーフに渡す。

冷水でしっかりと手を洗ったフロストリーフは、恐る恐るといった感じで肉に触れる。

それを尻目に、ブランクは玉ねぎを微塵切りにする。

処理が終わった頃には、フロストリーフも作業を終えていた。

「あとは俺がやるから、椅子に座ってろ」

「………」

何もしなくていいのがむず痒いのか、何度かブランクに視線を移しながら、また部屋の片隅に座る。

どうやら、あそこが彼女の定位置のようだ。

「…まあ、いい」

溜め息を吐いたブランクは、作業に戻る。

卵、胡椒を入れたらタネを捏ね、卵がタネに馴染んだら水を入れてまた捏ねる。

その後は玉ねぎを入れて捏ね捏ねし、最後にパン粉を入れて捏ね回す。

両手に油を塗り、タネを整形。

二口で食べ終わりそうな小さなハンバーグを、六つほど作る。

本来の手順ならここでタネを寝かせるのだが、冷蔵庫等の機材が無い上、貧困生活を送ったであろうフロストリーフの胃腸を考慮し、割愛する。

フライパンに油を引き、薪を焼べる。

強火でハンバーグを焼くと、パチパチと聴き心地の良い音が聴こえ、肉の香りが漂ってくる。

数分焼いた後はハンバーグをひっくり返し、裏面も焼いていく。

焼き目が付いたところで水を注ぎ、蓋をする。

蒸し焼きが終わった後は、ハンバーグをそれぞれの皿に移し、フライパンに赤ワイン、ケチャップ、バター、砂糖を入れ、コトコトと煮詰める。

即席デミグラスソースが出来上がり、それをハンバーグにかけていく。

付け合わせに、採れたてのレタスを置き、町で購入したパンを皿に乗せる。

「さあ、完成だ」

「………」

フロストリーフの椅子をずらし、右手で指差す。

逡巡の後に、フロストリーフは席に座った。

ハンバーグをフォークで切り、小片にソースを絡めて口に入れる。

即席なだけあって、ソースの味はお世辞にも美味いとは言えないが、特に問題はない。

対するフロストリーフは、上手持ちのフォークをハンバーグに突き刺し、そのまま口に入れていた。

ソースは飛び散り、ただでさえ汚い服を更に汚す。

綺麗な顔立ちをしていた顔、特に口付近は、ソースに塗れてベタベタになっていた。

そんな惨状を気にすることなく、ハンバーグを平らげたフロストリーフは、パンを千切って口に詰め込む。

余程、腹が減っていたのだろう。

料理のために開けたワインを飲み干し、ブランクはフロストリーフが食事を終えるまで待った。

「美味かった」

「そりゃどうも」

フロストリーフは口を服で拭い、感謝を述べる。

皿を片付けながら返事をし、ブランクは問うた。

「お前はさ、何があってあんなことになったんだ?」

「あんなこと…ああ、あれか」

何故少年兵として買い取られたか予想は付いているが、話題がないのでとりあえず訊いてみる。

本人は気に留めていないのか、特に渋る様子もなく、あっさりと答えた。

「敵から逃げて、この町に着いた。読み書きも出来ない、仕事も出来ない私が食っていくには、ああするしかない」

「どうせ、両親は死んでるしな」

敵から逃げて、ということは、彼女は戦災孤児なのだろう。

教育を受けていない割に言葉は流暢だが、あの時トラックに積み込まれていた子供たちと共同生活をしていたなら、会話くらいは出来るか。

そう納得したブランクは、予想通り、と適当に返し、食器洗いを終わらせた。

そして、地図、部屋の荷物と睨めっこし、頭を抱えた。

翌日、不必要な物を町で売り飛ばし、手荷物だけを整えたブランクは、山から顔を出した太陽に顔を顰めていた。

その隣で、フロストリーフはしゃがみ込んでいる。

「…ここからシエスタまで、どれだけ掛かるかね」

「………」

フロストリーフはボロボロのワンピースの裾を引っ張り、解れていた糸を引き千切る。

その後は、どこかで聴いた童謡の鼻歌を、歌っている。

これが、彼女の暇つぶしなのだろうか。

(どうやってシエスタに行こうかな。都合よく移動都市が近くに来たりは…ないよなぁ)

クルビアの辺境に位置するこの町は、クルビア首都との定期便が数日に一度運行するくらいしか、交通網は無い。

他にあるものと言えば、誰が使うか分からない寂れた公道くらいか。

「トランスポーターでも雇うか…?だが、そんなことしたら貯金がヤバいしなぁ…」

最悪、自力でシエスタまで向かうのも手だが、問題が多すぎる。

まず一つ目は、そもそもシエスタまでの移動ルートを進めるかどうか、だ。

地図を頼りに進むのも、天災で荒れ果てた大地では限界がある。

地形が変わってしまえば、地図は役に立たないからだ。

二つ目は、天災への対処、だ。

万が一、天災に巻き込まれたら、生き延びる可能性は、無い。

天災に関する知識が無い我々だけでは、天災の来襲予測すら出来ないだろう。

そして三つ目は、襲撃者への対処、だ。

国境沿い等を彷徨く盗賊や傭兵、場合によっては軍隊と一戦交える可能性がある。

ブランク一人なら、切り抜けることも出来るだろうが。

ブランクとフロストリーフ、二人が生き延びるとなると、それは困難を極める難題となる。

「…平和な暮らしを手に入れるのも、大変なんだな」

ブランクは大きな溜め息を吐き、ビスケットを噛み砕いた。

↓1 フロストリーフと何をするのか、または、ブランク単独で何をするのかを記載。

服を用意してやれんか

↓1 誰が服を選ぶのか記載。フロストリーフが選ぶ場合は、ゲームの衣装(ヘッドフォンは未着用)になります。
ブランクが選ぶ場合は、どんな衣装を着せたいのかを記載。

ブランク
学生服

最終目標に頭を悩ませるのを中断し、目下の課題と向き合う。

フロストリーフの服装は、ブランクのものと比べると格段に痛ましい。

戦火に包まれた町から命からがら逃げ出し、おそらくその時に着ていたであろう白いワンピースは、泥と血に塗れて本来の色の面影を残していない。

木に引っ掛けたのかところどころ破れており、スカート部に至っては縦に裂け目が出来ており、柔肌が露出している部分もある。

履き物のサンダルも、移動による損耗で紐は千切れかけており、靴底の割れ目が目視出来るほどだ。

汚れた衣装に身を包む、人形のような少女の美しさが、アンバランスな魅力を出してはいるが、このまま放置するのはいただけない。

「………」

財布の中身を確認する。

幾つか宝石を換金したので、日常生活に+αで少し贅沢するくらいなら大丈夫な程度には、余裕がある。

「数分待ってろ。少し買い物してくる」

「私に気を遣う必要はない。好きなだけ買ってくればいいさ」

「んなことしてお前が攫われたら、俺が損するからしねぇよ」

「…そうか」

「じゃ、そういうことで」

フロストリーフに背を向けて、ブランクはプラプラと手を振り、逃げるように服屋に向かう。

悪役を演じているようなこの物言いを、あの人が聞いたら何と言うだろうか。

無理して道化にならなくていい、と慰めるのだろうか。

それとも、あなたにはお似合い、と嘲笑うのだろうか。

きっと、前者だろう。

血に染まった獣を受け入れ、自身の命より他人の命を優先した、愚かで優しい彼女なら、きっと、そうする。

何故か悲しげなブランクの背中を見つめるフロストリーフは、右腕の包帯に手を添え、目を瞑った。

「いらっしゃい」

眼鏡を掛けたフェリーンの老婆は、椅子に座って新聞を見ている。

ブランクは狭い店内を一瞥し、目的の物があることを確認して、店長と思しき老婆に声を掛ける。

「今の時期でも、制服って買えますか?」

「もちろんさね。身体が大きくなってサイズを変更する子もいれば、酷く破れたりして修繕が出来なくなる子もいるからね。いつでも買えるようになってるよ」

「でも…お前さんの体格に合う制服は無いよ。ウルサス人用の服を仕立てたことも無いしね…」

「俺用の制服じゃないですよ。初等部に入る妹用の奴です」

「妹用?随分と歳が離れてるんだね…」

「ええ、まあ…」

ブランクの返答に、老婆は訝しむような視線を向ける。

一回り以上年下の妹がいて、その子の制服を兄が買う。

これ自体は、いつ人が死ぬか分からないこのご時世なら、おかしくもない。

だが、買いに来た人はウルサス人で、成人したばかりくらいの年齢にしか見えない。

ただでさえクルビアにウルサス人は少ないのに、よりにもよってこの辺境のど田舎に、小さな妹を就学させる。

客を疑うのはご法度だと承知しているがどうしても、何か裏があるのではないか、と疑ってしまう。

その疑念も無理のないものだと、ブランクは分かっている。

分かっているから、もう取り繕うのをやめた。

「…適当にホラ吹いても通用するわけない、か。あそこの街灯に寄り添ってる女の子、見えますか?」

「老眼だから、よく見えるよ。あの綺麗だけど汚いお嬢さんが、どうしたのかね」

「…あの子は昨日、クルビア政府に連行される"はず"だったところ俺が買い取りました。どうやら、軍人さんも思うところがあったみたいで」

「…あの時かい。定休日だったから家でのんびり寝てたから、詳細は全く知らなくてねぇ」

「それで、何がどうしてあの子用の学生服を買うことになったんだい?」

「俺ぁ、シエスタに引っ越す予定でしてね。その時に着せる服が欲しいですし、あんなボロっちい服のまま居させるのもあれなんで」

「だから、私服としても共用させれば、その分金も浮くっていう俺の悲しい懐事情もあります」

「ふぅん…。そんな善人ぶったことをしても、ただの偽善でしかないよ」

「結局は、お前さんはあの子の生殺与奪の権を握ってるってことだ。善意とは到底呼べない」

「偽善だろうと、善でしょうに」

「連れて行かれた全員じゃなくあの子一人だけしか救わなかった、中途半端な覚悟で首を突っ込んだ人がよく言うよ」

「耳が痛い。でも、その中途半端な覚悟で一人の命が救われたんだ。…全員が戦場で惨たらしく死ぬよりかは、幾らかマシだと思いますがね」

源石爆弾による奇襲で、部隊の八割が肉片と化した。

サルカズの剣士数名に、反抗者は骨になるまで削ぎ落とされた。

あのような地獄を、子供が生きていけるとはとても想像出来ない。

遠い目で天井を見つめるブランクを見て思うところがあったのか、老婆ははあ、と息を吐いた。

「女の子を連れて来な。細かい部分の調整をしたいからね」

「…感謝します」

深々とお辞儀をしたブランクは、フロストリーフを呼びに店を出た。

「フロストリーフ」

「…ん、うう」

立ったまま寝ていたのか、俯いていたフロストリーフは、右目を擦りながら顔を上げる。

ガーネットのような瞳が、ブランクを映す。

「…すまない、寝ていた」

「寝不足か?」

「…ああ。頭が少し、ぼうっとする…」

「まぁ、寝床とかが変わったばかりだからな。暫くすれば治るだろ」

「それより、お前の服の用意があるから、ちょっと来てくれ」

「わかった」

ブランクの後ろを歩くフロストリーフだが、心なしか距離が縮まっている気がする。

「…間違ってはいない、よな」

ブランクは誰にも聞こえないほど小さな声で、そう呟いた。

子供とはいえ女の子の裸は見せられない、と老婆はブランクを外に締め出した。

「終わったよ。ささ、入りな」

左手を弄って待つこと数分、老婆がドアを開けたので、言葉に従い再度入店する。

「………」

普段と変わらない無表情、強いて言うなら、微妙に頬が赤いフロストリーフが、制服に身を包んで、試着室に立っていた。

ボロボロのワンピースは、ネイビーブルーのブレザーにチェック柄のスカートに代わり、壊れかけのサンダルはローファーに、露出していた脚は、黒タイツで隠されている。

ブレザーの下には白シャツを着用しており、子供ということに配慮して、ネクタイはボタン式になっていた。

もふもふしてそうな尻尾は、スカートの中に垂れ下がっている形だ。

「元が良いと、少し着替えるだけでも可愛いねぇ。あたしも張り切った甲斐があったよ」

「ほら、お前さんも気の利いた言葉を掛けてやりな」

「学校に行かせたくなくなるくらいに可愛い」

「…恥ずかしいからやめてくれ」

ブランクの褒め言葉を受け取ったフロストリーフは、ぷいっと顔を背け、カーテンに隠れる。

数秒後、顔だけを出したフロストリーフは。

「ありが…とう…」

と呟き、また隠れた。

家に戻ったブランクは、帳簿に残金と目標額を記入する。

「この数字は?」

「シエスタまでの移動費と、シエスタでの生活費のざっくりとした合計。これだけあればシエスタに行けるけど、これだけ無いと行けない」

「…で、この一桁足りない数字が今の有り金」

普段の生活には困らない額の所持金だが、遠方に移住することを考えれば、非常に頼りない金額だ。

この金では、隣国のイェラグに行くことすら叶わない。

そのため、資金を調達するために働く必要があるのだ。

「…まぁ、荒事なら幾らでもある今なら、金だけは稼ぎ放題か。死ぬかもしれんけど」

「私に出来ることがあれば言ってくれ」

「フロストリーフはお留守番くらいしか出来ねぇかな?」

「…そうか…」

ブランクの一言に、フロストリーフはかなり露骨に落ち込んだ。

↓1 フロストリーフと何をするのか、または、ブランク単独で何をするのかを記載。
仕事候補は下記限定です。


国境警備隊:国境を警備し、トランスポーターや旅行者等の護衛、盗賊や敗走兵等に対処します。

INFORMATION:謎のペッローに襲撃される事件が発生している、とのことです。
同様の事件はクルビア北部国境しており、発生箇所が東に進んでいる、との報告があります。


戦争介入:クルビア内の戦争に介入します。

INFORMATION:サルカズの傭兵がこの戦争に参加しているようです。
その内一人は、サルカズでありながら銃と源石爆弾を使用している、との報告があります。


感染者処理:鉱石病(オリパシー)の重度感染者を処理します。

INFORMATION:対象は皆一般人ですが、必死の抵抗が予想されます。
噂によると、アーツユニットと近接武器が感染者に密輸された、らしいです。

一部誤字訂正。
安価はずらします。


INFORMATION:謎のペッローに襲撃される事件が発生している、とのことです。
同様の事件はクルビア北部国境しており、発生箇所が東に進んでいる、との報告があります。


INFORMATION:謎のペッローに襲撃される事件が発生している、とのことです。
同様の事件はクルビア北部国境付近で発生しており、発生箇所が東に進んでいる、との報告があります。

ブランクのみ戦争介入

フロストリーフと学生生活を送りたいだけの人生だった……

「…また、この服を着る日が来るとはな。短い引退だったよ」

運動性を重視した構造の改造軍服に着替え、薄手のグローブを右腕に通す。

左腕は、念入りに調子を確認する。

実戦で使ったことは無いので、本番で不調が出なければいいが。

「飯はそこに置いてる金で買ってくれ。飲食店で食べるも良し、店で惣菜を買うのも良し、だ」

「文字を読めないから、値段が分からない」

「だろうな。だと思って、服屋の婆さんに話を付けてる。俺が帰って来るまで面倒を見る、とさ」

「じゃあ、私はお婆さんのところにいればいいのか?」

「ああ。一週間で任期が終わる予定だから…二週間経っても帰って来なけりゃ、俺はおっ死んだと判断していい」

「その時は晴れて自由の身だ。婆さんのところで暮らすなり、好きにすればいい」

「…また、一人になるのは、嫌だな」

両親を喪った経験があるからなのか、フロストリーフはそんな言葉を零し、強く右腕を握った。

「…俺たちはまだ会って数日だろうに」

ブランクはやれやれ、と頭を振り、折れた剣を帯刀する。

「んじゃ、また一週間後。寝不足は治しておけよ」

「ああ。…死ぬなよ」

「言われなくても」

そう言って、ブランクは家を出た。

↓1コンマ サルカズ傭兵の動向を判定します。

01~33:どうやら、敵軍側に所属しているようです。
34~66:どうやら、ブランクの担当する戦場にはいないようです。
67~00:どうやら、友軍側に所属しているようです。

Wちゃん!味方に来て!!

ぎゃあああああ!!!

ペッロー襲撃事件の発生箇所はクルビア南部国境でした。
大変失礼いたしました。

ブランクが赴いた戦場は、クルビア東部の繁華街だ。

現在ブランクの居住している町とは然程離れておらず、ここで戦火を食い止めなければ、やがては町を呑み込むだろう。

クルビア正規軍の陣地に入り、アーツユニットを確認する。

数ヶ月前にアーツを試した際は、問題なく作動した。

突然の不調さえ無ければ、信用に値するはずだが。

「あのアーツのリスクが大きい以上、こっちのアーツ中心でやってかねぇと。サルカズ共が出てくる可能性を考えれば、尚更…」

狂気に染まった笑みを浮かべるサルカズの女と、心の奥底まで見透かされているような視線の女、冷徹に剣を振るうサルカズの男を思い出す。

味方になったり、敵になったりと忙しなかったが、その恐ろしさは身に染みている。

「…あんたか。ここにいるってことは、傭兵だったんだな」

「おや、貴方は…」

声を掛けてきたのは、いつぞやのクルビア軍人だった。

その顔に生気は無く、片目が潰れているのか血の染みた包帯が巻かれており、右腕が無くなっている。

「…何かあったみたいですねぇ。追い剥ぎにでも遭いましたか?」

「大当たりだ。反乱軍に襲撃されて、子供を全員奪われた」

「そりゃ、ドンマイとしか言えませんね」

「…だから、これは返す。用意する装備が必要なくなったからな」

クルビア軍人は、先日渡した宝石をそのまま返却する。

それを手に取り、軍人のポーチに押し込んだ。

「要りませんよ。その金は治療費にでも充ててくれればいい」

「端から、金が返ってくるとは思ってないんでね」

ブランクの軽い声色に、軍人は口を噤んだ。

何を言っても聞く耳を持たない、と思ったようだ。

軍人と会った数分後、ブランクは剣を片手に、繁華街を見下ろす。

嘗てはネオンが輝いていたであろう街並みは、既に暴力と憎悪に塗り潰されて、瓦礫と化している。

今回の目的は、この繁華街の奪還。

即ち、この街に残留する敵軍の殲滅である。

ブランクの契約は一週間の間、正規軍に同行することだ。

そのため、早期で戦闘が終結すれば目的を達成するので早帰り出来るし、戦闘が長引いても任期を満了すればさっさと帰ることが出来る。

「ヘドリーたちはここにはいない、か。よかったよかった」

ブランクは双眼鏡で状況を確認し、最悪の事態になっていないことに安堵する。

タイマンでも勝ち目が薄いのに、一対三となったらまず勝てない。

逃げるだけなら不可能ではないが、重傷を負うのは必至だろう。

「…まぁ、今の俺に、スカーモールで値打ちは付けられてないはずだ。あいつらが俺に興味を持つとは思えないが」

だが、敵対していれば、まず間違いなく殺しに来る。

それが、戦場というものだ。

「さて、一仕事やりますか」

総攻撃の合図である、閃光弾が空を照らす。

ブランクはワイヤーを伸ばし、廃ビルの屋上に取り付いた。

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クルビア辺境の町には、いつも通りの平穏な空気が流れている。

その中で、ヴァルポの少女は淀んだ空を眺めていた。

「あの若造が心配かい?」

「…そう見えるか?」

「そんな石像みたいに固まったまま空を見てりゃ、嫌でも察するさね…」

「………」

老婆の言葉に、フロストリーフは視線を下げる。

閑散とした大通りを、老人や幼子が歩いている光景が目に入る。

昼だというのに人は少なく、寂れているのが一眼で分かるくらいだ。

「…自分から戦場に向かうことを選んだんだ。よっぽど腕に自信があるんだろうから、大丈夫さ」

「だが、心配だ」

「あたしらが心配したところで、結果は変わんないよ。出来るのは、大人しく待つことだけ」

安心させるために頭を撫でようと老婆は手を伸ばすが、それは払い退けられる。

苦々しい表情のフロストリーフは、絞り出すように言葉を紡ぐ。

「…怖いんだ。私に手を差し伸べてくれたのは、ブランクだけだった。彼を喪えば、私はまた一人になる…」

「…その時は、あたしが面倒を見るよ。もう関わってしまったから、後戻りは出来ないからね」

「だとしても、また私に関わってくれた人を喪ってしまえば…」

「あたしも同じように死ぬんじゃないか、って?」

「………!」

まるで心を読まれたように、次の言葉を取られたフロストリーフは、パッと老婆の顔を見る。

「あたしは年寄りだが、病気には生まれてこの方一度も罹ってないんだ。あと二十年は生きるよ」

「だからさ、そう怯えないでいいんだよ。お前さんには、ブランクっていう守ってくれる若造が、家族がいるんだろう?」

「………っ!」

「家族…か…」

自分を養うために、自ら死地に向かうブランク。

彼を何と呼べばいいのか、フロストリーフには分からなかった。

血は繋がっていないし、ブランクには金で買われている。

ただの所有物だと、何となく思っていた。

たった数日、されど数日。

短い間しか共に過ごしていないが、その優しさは肌で感じている。

だが。

「………」

「…ブランクがそう思ってなければ、意味がない」

もし、ブランクが家族だと思っていなかったら。

そのもしもを想像し、フロストリーフは冷静さを取り戻した。

フロストリーフとブランクでは、倍以上年齢が違うのだ。

この数日の感じ方も、違うはずだ。

だから、フロストリーフの思っていることと、ブランクの思っていることが一致するとは限らない。

「なら、帰ってきた時に訊けばいいさ。それが一番確実だよ」

「…それは、その時に考える」

否定されるのが怖いから、今は考えるのをやめておこう。

返事をしながら、フロストリーフは心に蓋をした。

↓1コンマ 戦況を判定します。

01~10:戦況が劣勢に。正規軍が総崩れになります。
11~30:戦況は膠着状態になりますが、芳しくないようです。
31~75:戦況は膠着状態になりますが、あともう一押しあれば優勢になりそうです。
76~00:戦況が優勢に。一気に押し切ります。


↓2コンマ サルカズ傭兵の動向を判定します。

01~20:敵軍の救援に参戦してきました。
21~80:どうやら、まだ他の戦場で戦闘を行なっているようです。
81~00:友軍の支援に参戦してくれました。

Wちゃん今度こそ!

あああああああ!!!

コンマ判定時にゾロ目が出ているので、戦争フェイズが終了した後に番外編的なのを一つ書こうと思います。
ゾロ目を出した方は、何か見たいお話があれば記載をお願いします。

ブランクは廃ビルの屋上から、付近の敵兵の位置を確認する。

前方の通路に敵兵が四名、後方には移動中の友軍が二個小隊存在している。

今目視出来る敵兵は、フロストリーフほどではないがかなり若く、緊張しているのか視線は定まっておらず、周囲をキョロキョロと見回している。

「可哀想だが、これもお仕事だからなぁ」

進軍を援助するために、片っ端から敵兵を処理する。

それが、今回の役割だ。

「アーツユニット、起動」

左手のアーツユニットを作動させ、敵兵目掛けて発射する。

バチバチと鳴り響く音が、敵兵に襲撃を察知させた。

「ぎっ!?」

蛇のようにうねる紅い雷鳴が、少年兵の喉を貫く。

二人は反応し回避出来たが、残り二人は避けられなかった。

喉を穿たれた少年兵は即死、もう一人は手首と太腿を掠める軽傷だった。

が、その軽い傷が、致命傷となる。

「いっ…だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!?!?」

軽い火傷だったはずの傷口が、どろりと溶けて骨が剥き出しになる。

仲間の絶叫に二人は驚き、急いでカバーに入る。

その時はもう、ブランクはビルにいなかった。

ブランクは屋上から跳躍して、太陽を背に降下する。

太陽光に視界を妨げられた少年兵は防御が遅れ、唐竹割りをその身で受ける。

雷鳴のアーツを纏った剣は肉を豆腐のように斬り裂き、その傷口を全て溶解させる。

唐竹割りから下段に構え、横の兵士にも一太刀。

アーツユニットの柄で防がれるが、その直後に左手の指を兵士の右目に突き入れる。

その状態で、再度アーツを放つ。

頭部に迸る雷撃は肉を全て溶かし尽くし、骨のみを残した。

「んじゃ、おやすみ」

奇襲に混乱し、激痛に呻く最後の少年兵は、首を刎ねてその命を終わらせた。

「ポイントアルファ確保。ブラボーは…よし、狼煙が上がった!」

防御が比較的薄かった拠点を奪還し、狼煙を上げて友軍に通達する。

それとほぼ同時に、他の拠点からも狼煙が上がる。

今回奪還する繁華街は、合計で五つの重要拠点がある。

繁華街の西部に位置するポイントアルファ、ベータ。

繁華街の中心に位置するポイントチャーリー。

そして、北東に位置する反乱軍の最重要拠点となるポイントデルタと、反乱軍の離脱用拠点であるポイントエコーだ。

そもそも、今回この繁華街を奪還する目的は、反乱軍の侵攻が進み最前線が西進している現状で、この街が橋頭堡となる前に奪還することで戦況を優位に運ぼう、というクルビア政府の作戦だ。

ブランクにとっても、戦火を今居住している町から離すことが出来るなら願ったりなので、この仕事に参加した。

最前線なだけあって、給料も段違いなのがその一助となっているが。

補給物資のレーションを齧りながら、奪還した拠点内の死体を剣で斬っていく。

もし死体を装い、反撃の機を伺っている輩がいたら困るからだ。

足で蹴飛ばして仰向けにし、頸動脈を切断する。

既に死んでいたならそれで良いし、生きていたなら脅威を減らせる。

それと同時に、戦死した友軍兵のドッグタグを回収する。

作戦開始からかなりスムーズに拠点を奪えたがやはり、死人が出るのは避けられない。

「これ以上無駄に犠牲は出したくねぇが、どうしたもんか…!?」

コロッと目の前に転がった爆弾。

その形、色には見覚えがあった。

というより、よく知っている、忘れたくても忘れられない、忌々しいものだった。

これがあるということは、つまり。

「ちぃっ!!!」

脳がそう結論付けると同時に、ブランクは剣のアーツユニットを起動させた。

ブツンと何かが千切れる音がして、爆弾があった半径1メートルに、まるで"元から何も存在していなかった"ような空間が出来上がっている。

ブランクは目を押さえ、最悪だ、と呟いた。

そして、その最悪の原因が、口を開く。

「あらぁ?その変なアーツ、見覚えがあるわねぇ」

「るせぇ、W…。いつの間にここに来たんだよ…」

「ついさっきよ。仕事が一つ片付いたから、追加報酬のためにわざわざここまで来たってわけ」

「でも、笑えるわねぇ。まさか死んだはずのあんたが、こんなとこにいるなんて」

「ねぇ?ディラック?」

「…誰ですかね?」

看板に腰掛け、頬杖を突いている、サルカズの女がそこにいた。

顔立ちは非常に端麗だが、その表情は悪辣としか言いようがない、歪んだ笑みを湛えている。

「惚けても分かるわよ。一緒に仕事したことあるんだから。…しかし、困ったわねぇ」

「あん?」

「あんたが死んだことになってるから、スカーモールであんたの首を金に出来ないわ。死人に賞金は賭けられないから」

「もうヒットリストには入ってないのはありがたい。このまま見逃してくれねぇか?」

「え?イヤ」

お断り、という返事を体現するが如く、無数の源石爆弾が投擲される。

色を失った視界で必死にそれを見分け、ブランクは回避行動を取った。

↓1コンマ 戦況を判定します。
また、状況が変わったので、逃走の選択肢が選べるようになりました。
逃走する際は、その旨を記載。

01~35:戦況が劣勢に。正規軍が総崩れになります。
36~70:ヘドリー小隊に正規軍全体が苦戦しているようです。
71~95:何とかヘドリー小隊を押さえ込みます。
96~00:戦況が優勢に。一気に押し切ります。


逃走時はこちらの判定に切り替わります。

01~30:逃げることは叶いませんでした。
31~70:逃走に成功しました。
71~00:逃走に成功しましたが、謎のメモが服の中に入っていました。

まあまだいけるやろ……(逃走しない)

あっWちゃん出してくれてありがとう!

ベータと記載があるところは、正しくはブラボーです。
申し訳ありません。
推敲をもう少しちゃんとしないといけませんね…。

「お前、街を壊す気かよっ!?」

左手のワイヤーを使い、空中を動くことで爆発の範囲から逃れる。

多少、瓦礫の飛来によるダメージはあるが、爆弾の直撃に比べれば数百倍マシだ。

「既に壊れてるんだから、いっそ更地にしちゃえば復興も楽でしょ?」

Wはあっけらかんとした表情で、銃を向ける。

撃ち出された榴弾は、ブランクがワイヤーで引き寄せたコンクリートで消し飛ばされる。

続けて自動小銃が乱射されるが、それは建物を盾にして難を逃れる。

Wが利用する銃は全て、ラテラーノ人の所有する守護銃を強奪したものだ。

ラテラーノ人の傭兵はあまりいないので銃対策は練り難いが、Wと交戦、共闘した経験があるのが功を奏したようだ。

「貫けぇ!」

建物越しに、ブランクは雷鳴のアーツを最大出力で放つ。

落雷を彷彿させるそれは、ビルを穿ち、Wを襲った。

しかし、歴戦の強者であるWに、そのような大振りが当たるはずがない。

ひらりと避けたWは、ナイフを構えブランクと鍔迫り合いになる。

「面識があるからといって、手加減はしねぇからな!こちとら死ねない理由があるんでなぁ!!!」

「寧ろ、そうしてもらわなきゃ困るわ。雑魚を潰すよりかは、楽しめるから」

ブランクはナイフを押し切り、回し蹴りを放つ。

Wはそれをバック転で躱し、回避と同時に爆弾を投げた。

「それ止めろよ…っ!」

ブランクはワイヤーを伸ばして後退するが、足が建物に付いた時には、榴弾で建物が爆破された。

足場を無くしたブランクは、色が戻ったのを確認して折れた剣を向ける。

「あんたこそそれ止めなさいよ。本物の一撃必殺アーツじゃない」

「リスクがあるの知ってるくせによく言うじゃねぇか!!!」

Wの周囲の空間が、赤く染まる。

だが、そこから先は何も変わらない。

榴弾を発射した時点で投げられていた爆弾が、丁度目の前に落ちたからだ。

ここでアーツを使えば、Wは殺せるかもしれない。

だが、こちらも瀕死の重傷を負うのは確実な上、ヘドリーたちが救援に来るのも確実になってしまう。

相討ちよりも、生きる方が良い。

そう判断したブランクは、目の前の爆弾を消滅させた。

「づ…うぅ…!」

また、アーツ使用の代償として色覚を失う。

乱用しない限りは、暫くすれば治癒するのがせめてもの救いだ。

「隠れた、か…」

Wの姿が消え、漂っていた殺意も無くなる。

はぁっ、と大きく息を吐いたブランクは、通信機を作動させた。

「こちらブランク。ヘドリー小隊の一人、Wと交戦した。応答願う」

作戦本部と通信を試みるが、ノイズが続く。

数十秒待つと、漸く繋がった。

『こちら作戦本部。ヘドリー小隊がポイントブラボーを襲撃。現在応戦中のため、対応求む』

「ふざけんな。こっちもWに爆破されて数十人死んでんだよ。今は姿を隠してるが、まだアルファに潜んでる可能性がある」

「奴の潜伏スキルは、ヘドリー小隊のイネスと同格だ。正直、俺でも位置はさっぱり分からん」

『…なら、そのままアルファの警戒に当たれ。ヘドリー小隊が手を引かねば、作戦の再開は厳しい』

「…りょーかい」

「チッ」

無線が切れたのを確認して、ブランクは目の前の人形を蹴飛ばした。

ポイントアルファの地下通路を、鼻歌交じりのWが歩く。

そこには、クルビア正規軍の死体が散乱していた。

「…あー、あー。聞こえる?ヘドリー副隊長とイネス隊長様~?」

『聞こえている』

『揶揄うなら通信を切るわよ。こっちは想定外の反撃で作戦が進まないのよ』

「二人がいてその体たらくなんて、腕が鈍ったのかしら?」

『その頭と胴体をさようならしてあげても良いのだけれど』

『イネス…。Wも、無駄話は止めろ』

Wはともかくとして、イネスとヘドリーは戦闘真っ最中だというのに、話をする程度には余裕があるようだ。

『ポイントアルファの強奪は終わったか?』

「いいえ」

『…爆炎がこちらでも見えたから、派手にやったのは分かるが。お前一人では厳しかったか?』

「そうね。こっちも想定外に遭遇しちゃったから」

『聴かせてくれ。丁度俺たちは補給のため後退を始めた。話を聴く余裕はある』

「了解。…ねぇ。ヒットリストから名前が消える時って、どんな時?」

『ターゲットが死んだ時か、値打ちが無くなった時しかないわよ。何知ってて当たり前のことを聞いてるの?』

「いやぁ、ね。いたのよ。例外が」

わざとらしく含みを持たせた物言いをする。

案の定、と言うべきか、イネスが食いついた。

『例外?さっさと言いなさい』

「自身の死を偽装して、刺客の手から逃れた奴」

『ほう、それは興味深いな。お前がそう言うなら、俺たちも面識がある奴だな?』

「ええ。彼の名前は…」

そしてここで、わざと合間を開ける。

苛立ったイネスが、早く名前を言うように催促した。

「ディラック」

Wが発したのは、共に戦い、殺し合った、空間のアーツを扱うウルサス傭兵の名前だった。

数年前に、イェラグで"死亡した"傭兵の名前。

↓1コンマ 戦況を判定します。
進行の兼ね合いのため、自動的に数日経過後になります。
逃走する際は、その旨を記載。

01~15:戦況が劣勢に。正規軍が総崩れになります。
16~45:ヘドリー小隊に正規軍全体が苦戦しているようです。
46~80:何とかヘドリー小隊を押さえ込みます。
81~00:戦況が優勢に。一気に押し切ります。


逃走時はこちらの判定に切り替わります。

01~15:逃げることは叶いませんでした。
16~75:逃走に成功しました。
76~00:逃走に成功しましたが、謎のメモが服の中に入っていました

せんとうけいぞく

以前ゾロ目を獲得した方の反応がなかったため、ゾロ目特典の番外編については先着一名で、記載していただいたお題を基に作成します。
また、その番外編は完全に本スレの内容ともパラレルワールドの関係になります。

ディラック時代のWとのやり取り(味方の状況)

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