本スレはタワーディフェンスゲーム『アークナイツ』の二次創作です。
一部、本編とは相違のある部分、本編で明瞭になってない部分があるため、パラレルワールドのようなものだと思ってください。
PS:エイヤの新スキンをください。
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燃える街を抜け出し、雪の中をよろめき進む。
後ろに視線を移せば、通った道には赤い染みが存在を主張していた。
(俺の今までは、何だったんだ)
戦って、闘って、殺して、奪って。
大切なものを手にしても、何一つ護れず、また全てを喪った。
上手くいっていたから、驕っていたのだろう。
形だけの力に、溺れていたのだろう。
だから俺は、罰を受けたのだろう。
手を汚した者は、決して幸せになってはならない。
その言葉が、脳内を埋め尽くす。
「…五月蝿い」
一歩、前に進む。
「五月蝿い」
また一歩、前に進む。
「五月蝿いッ!ぐうっ…」
足は動かず、地面に倒れた。
「く…そ…!」
身体に力が入らず、視界が霞む。
それでも。
「ぐ…ッ」
俺は、生きなければならない。
死者の分まで生き続けるのが、残された者の責任だから。
戦いというものは、どんな場所でも起こり得るものだ。
クルビアの辺境、戦火の近付く小さな町では、戦力補充のために、貧困層の少年少女をクルビア政府が掻き集める。
用途は勿論、少年兵として戦場に投入するためだ。
アーツさえ使えれば、子供であろうと多少なりとも戦力になる。
「ついにここも、戦場になるんですかね?」
日用品を荷台に乗せながら、青年が疑問を呈した。
「だろうな…。孫と同じくらいの子供が駆り出されるとは、嘆かわしい…」
商人の老人は、悲しげに頷いた。
トラックのコンテナに載せられる子供たち。
その中の、一人のヴァルポの少女が目に入った時、青年の身体は動いていた。
「ちょっといいですか?」
軍刀を携えた兵士に、物怖じせず声をかける。
「ん?」
くるりと振り向いて、兵士は眼前の青年を品定めする。
服装から見るに、付近に居住する民間人のようだ。
警戒を解き、兵士は青年に対応した。
「何か用があるのか?」
「いえね、随分と大勢の子供を連れてくなぁ、と思いまして」
「あぁ。今は少しでも戦力が欲しくてな。可能な限り人を掻き集めろ、との命令だ」
「こいつらは皆、孤児(みなしご)だったり親が生きるために已む無く政府に売った奴らだ」
軍帽を深く被り、暗い表情をしていることから、彼も今回のことは不本意のようだ。
「で、そんなことを聞くために呼び止めたのか?俺はそろそろ出発したいんだが…?」
兵士が言い切る前に、宝石やアクセサリーが入った袋を渡す。
「なにこれ?」
「換金用の宝飾品です。これを全て差し上げるので、子供を一人、いただきたく思います」
「………」
ふむ、と兵士は顎に手を当て思考する。
青年と宝石を交互に十回ほど見た後、袋の中身を少し摘んで、袋を中身ごと返却した。
「…こいつらの装備を整える必要があるから、これだけは貰っておくよ。一人、だったな」
兵士はコンテナを開錠し、扉を開く。
そして、コンテナの中を指差した。
「好きな子を連れていけ。で、残った宝飾品はその子と暮らすのに利用しろ。その方が有効活用出来るだろう」
「ありがとうございます」
先程目に映った少女の手を引き、コンテナから出す。
「ここに乗ってくれ」
荷台を整理しスペースを開け、そこに入るよう促す。
少女を乗せた後に、荷車を引いて帰路に着く。
そして、自嘲の意を込め、少し笑った。
(…分かっている、リーゼ。これは、ただのエゴに過ぎない)
(…でも、もう関わってしまったから。もう、後戻りは出来ないから)
(だから)
"今回こそ"は、何があっても護り抜いてみせる。
家に戻った青年は、ランプに火を灯し、ミルクを温める。
「散らかってるが、気にしないでくれ」
「ああ」
家に入るや否や、少女は部屋の片隅に座り込んだ。
自分の人生を買い取られたことを、子供ながらに察しているのだろうか。
「………」
「………」
先程の返事から、無言が続く。
聞こえるのは、ミルクをかき混ぜるスプーンと鍋の当たる音とミルクの水音だけ。
「これくらいなら、飲めるだろ」
人肌程に温まったミルクをマグカップに移し、少女に渡す。
それを受け取っても、少女は微塵も動かない。
「私は、何をすればいい?」
「ミルクの見返りに、か?」
青年の問いに、少女は頷いた。
「…とりあえず、それを飲め。話はそれからだ」
「わかった」
少女がミルクを飲み干すまで、会話は一度もなかった。
空になったマグカップを洗っている間も、少女は部屋の片隅というポジションをキープしている。
その視線は、真っ直ぐと青年に向けられている。
洗い物が終わった青年は、折れた剣と手斧を両手に持ち、靴を履いた。
「ついて来い」
青年の指示に従い、少女はボロボロのサンダルを履き、青年の後を追う。
林に入った青年は、手斧を少女に渡し、徐に木を斬り倒した。
「俺の家には電気が通ってないから、薪が必要なんだ。お前には薪集めの手伝いをしてもらう」
「わかった」
青年は、斬り倒した木を一定間隔で切り分ける。
少女は、切り分けられた木を割り、薪を作る。
そんな作業が、数十分続いた。
青年が薪をロープで纏めている間、少女は切り株に腰掛け指示を待つ。
「お前、名前は無いのか?」
「…え?」
不意の質問に、少女は反応が遅れる。
質問の意味を理解した少女は、ゆっくりと頷いた。
「…ない」
「それは困るな。これからどう呼べばいいのか困るじゃないか」
「好きに呼べばいい」
「そう言われてもな…」
ひらりと落ちた木の葉が、少女の髪に乗る。
鬱陶しそうに、少女はそれを摘む。
刹那、手に持たれた葉は紅葉し、鮮やかなオレンジの色に変わった。
「…あ」
名前が無いのなら、付ければいい。
目の前の光景が青年に一つの名前を閃かせた。
名乗るにしても、呼ばれるにしても、少し不格好だが、無いよりはマシのはずだ。
「フロストリーフ」
「それが、お前の名前だ」
霜が降りた葉、または、寒さで紅葉した葉。
それが、彼女の名前。
「フロスト…リーフ…か…」
「…いいんじゃ、ないか?」
そう言って、フロストリーフは笑った。
「私は、お前を何と呼べばいい?」
薪を持ち帰る道中、フロストリーフが疑問を呈す。
ある意味、意趣返しとも言える。
「俺は、他人に名乗るべき名前は持たない」
「…そうだな。呼ぶとするなら、ブランク、とでも呼んでくれ」
名無しに名前を与えた人の名前が空白(名無し)とは、何と皮肉なんだろう。
そんなブランクの自嘲は、フロストリーフに気付かれなかった。
↓1 フロストリーフと何をするのか、または、ブランク単独で何をするのかを記載。
安価とは別に質問等ありましたらご自由にどうぞ。
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