南条「ヒーローなんていない!!」剣崎「いるよ…ヒーローは、いるよ」 (26)

雨が、降っている。

ざー、ざー、と……幾つもの水滴が空気を切っていく音がする。


P『光……いるか?』

南条「……」

P『あんなことがあって辛いのは分かる…それに立ち向かえだなんて俺は言わない……でも、せめて皆の所に来ないか?』

P『2週間も家に引きこもりっぱなしで、皆心配してるんだ』

P『辛かったら…皆に頼ってもいいんだぞ。 俺にも、ちひろさんにも…皆にも』

P『麗奈がさ、どうせロクなもん食ってないだろうって光に弁当作ってきたんだ。 アイドルなのに…手に絆創膏貼りまくってさ…』

P『ここに…置いてくよ」

P『じゃあ…行くよ。 何時でもいい、俺たちに頼ってくれ』

P『……じゃあな』

プロデューサーが帰っていく。
途端に、家が静かになった。

アタシは何も思ってないのにな、プロデューサーも皆も心配しすぎだ。
アタシは何も思わない。 辛いとも、悲しいとも、苦しいとも。



2週間前、アタシの父さんと母

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雨が、降っている。

ざー、ざー、と……幾つもの水滴が空気を切っていく音がする。


P『光……いるか?』

南条「……」

P『あんなことがあって辛いのは分かる…それに立ち向かえだなんて俺は言わない……でも、せめて皆の所に来ないか?』

P『2週間も家に引きこもりっぱなしで、皆心配してるんだ』

P『辛かったら…皆に頼ってもいいんだぞ。 俺にも、ちひろさんにも…皆にも』

P『麗奈がさ、どうせロクなもん食ってないだろうって光に弁当作ってきたんだ。 アイドルなのに…手に絆創膏貼りまくってさ…』

P『ここに…置いてくよ」

P『じゃあ…行くよ。 何時でもいい、俺たちに頼ってくれ』

P『……じゃあな』

プロデューサーが帰っていく。
途端に、家が静かになった。

アタシは何も思ってないのにな、プロデューサーも皆も心配しすぎだ。
アタシは何も思わない。 辛いとも、悲しいとも、苦しいとも。



2週間前、アタシの父さんと母さんが死んだ

本当は…買い物だけで終わるはずだった。

アタシのワガママで、デパートの屋上でやってたヒーローショーを父さんと母さんと一緒に観た。

ヒーローショーが終わったらもう帰り道は真っ暗で、夕飯時なんかとっくのとうに過ぎていたけど、父さんと母さんはアタシのヒーローショーの感想をニコニコしながら聞いていた。

でも、青信号の交差点を右折した時に居眠り運転のトラックが突っ込んできて、突っ込んできて、突っ込んでき、て、突っ込んで……きて……。

気づいたら、アタシだけ車から放り出されて、父さんと母さんは取り残されたままだった。

南条『父さん!! 母さんっ!!!』

足が挟まれたのか、アタシがいくら力を込めても父さんと母さんを引っぱり出せない、

助けれ、ない。

南条父『光…早くにげるんだっ。 火がガソリンに引火するっ』

南条母『私たちの事はいいから早く逃げてひかるぅっ!!』

トラックからごうごうと吹き出す火が、父さんと母さんの車に燃え移っていく。

南条『嫌だ嫌だいやだ!! 置いていけないっ…父さんと母さんを置いてなんていけない!!』

南条父『光っっ!!!!』

南条『あっ』

ばんっ、って、父さんの腕がアタシを突き飛ばして、その直後に車は一気に炎に包まれた。

南条『ーーーー!!』

なんで、アタシの力じゃ父さんと母さんを助けれないんだ?
なんで、助けに来ずに遠くから眺めてるだけの人がいるんだ?

なんで

なんで

なんで、ヒーローは来ないんだ?

南条「……」

結局、父さんと母さんは死んで、アタシとトラックの運転手が生き残った。

そこから先の事は良く覚えてない。

色んな大人が来て、プロデューサーやちひろさんが忙しそうに色んな所に連絡してて、葬式に事務所の殆どのアイドルが来てたことぐらいしか……。


南条「プロデューサー…ごめんな」


プロデューサーや事務所の皆はアタシが落ち込んでるんだろうと思ってるんだろうけど、それは違うんだ。

父さんと母さんが死んだっていうのに、何も、なにも、かんじないんだ。

かなしみもくるしみも、なみださえ、まるでどこかに行ってしまったかのようーーー。

どうやらアタシの心は、いつの間にかがらんどうになったみたいだ。

南条「……」

あぁ、でもーーーアタシの大好きな特撮が目に入った時、何故か無性に腹が立って……ムカムカして、ついTVの画面にリモコンを思い切り投げつけたんだっけ。

毎週欠かさず見てたのにな、何でだろう。


南条「……暇だなぁ」


TVを壊しちゃったせいで全く番組を見れなくなったのは失敗だった。
ずっとこの静かな家に1人だけっていうのは凄まじく暇だ。 暇で暇で胸が苦しくなる。

外に出るのも近所のコンビニに食べ物を買いに行く時ぐらい。 麗奈が言ってたように最近はカップラーメンとかコンビニ弁当しか食べてない。

南条「弁当と言えば麗奈がアタシに作ってくれたんだっけ、麗奈がお弁当を作るなんて今日は大雪だね」

南条「そうだ。 せっかくなら麗奈のお弁当外で食べよう」

南条「早く、取らないと」

いつまでも、外に置いてる訳にはいかないだろう。

南条「……」

あぁ、でもーーーアタシの大好きな特撮が目に入った時、何故か無性に腹が立って……ムカムカして、ついTVの画面にリモコンを思い切り投げつけたんだっけ。

毎週欠かさず見てたのにな、何でだろう。


南条「……暇だなぁ」


TVを壊しちゃったせいで全く番組を見れなくなったのは失敗だった。
ずっとこの静かな家に1人だけっていうのは凄まじく暇だ。 暇で暇で胸が苦しくなる。

外に出るのも近所のコンビニに食べ物を買いに行く時ぐらい。 麗奈が言ってたように最近はカップラーメンとかコンビニ弁当しか食べてない。

南条「弁当と言えば麗奈がアタシに作ってくれたんだっけ、麗奈がお弁当を作るなんて今日は大雪だね」

南条「早く、取らないと」

いつまでも、外に置いてる訳にはいかないだろう。

南条「これは……」

弁当箱の蓋を開けると、アタシが好きだった特撮のキャラクターの顔が有った。

海苔やヒジキ、卵、人参…etc。

色んな食材で顔を表現している。

南条「キャラ弁、ってやつかな?」

まぁ、アタシじゃないと判別出来ないぐらい顔がへんてこになってるから人によってはキャラ弁じゃなく変な配置をしてある弁当と思うかもしれない。

でも、そんな物より一番目を引いたのは、


『ハヤクゲンキダシナサイヨナンジョウ!! ミンナマッテルワヨ』

と、ごはんの上にケチャップで書かれた文字だった。

ここまで。

前回は落としてしまってすいませんでした。

今回は前回の手直しをしながら投下していきたいと思います。

南条「ははっ……ご飯の上にケチャップって、他に無かったのか麗奈」

南条「でも……うれしいよ」

手を合わせてーー

南条「いただきます」

麗奈が作った弁当は、食材の切り方は無茶苦茶で、味付けもどこかおかしかったけど、久しぶりにーー美味しいと、かんじた。

南条「外に……出てみようかな」

麗奈のお弁当のお陰で、少し元気が出た。

まだ、事務所には戻れないけど、気分転換に久しぶりに外に出よう。


南条「ちょうど、雨も上がった所だし」


いつのまにか雨は止んで、雲の切れ間から日光が差し込んでいる。

南条「……」

父さんと母さんと、アタシが映った写真を、ポーチに入れる。

南条「いってきます」


いってらっしゃい。 なんて言葉は、当然かえってこなかった。

南条「どこに行こうかな……」

外に出たはいいものの、行き先を考えてなかってことに気がついた。

南条「この辺って何か……あっ」

まだアタシがアイドルになる前、一度だけ父さんと母さんと一緒にお弁当を食べに行った公園。

南条「久しぶりに、行ってみようかな」


公園の近くでちょっとした人だかりが出来ていた。
何だろう? 有名なアイドルでも見つかったのかな?

「ねぇあの人じゃない?」
「あっ本当にいたんだ」
「おい行っちまうぞ」

アタシは全然有名じゃないから街中で騒がれたことはないけど実際に遭遇したら嬉しい反面ちょっと困るな。
アタシも気になるけどついていくのはやめーー


「あれだろ? 今ネットで話題になってる『ヒーロー』だろ?」


……ヒーロー。

そういえば、この前プロデューサーが言ってたっけ、

人間を襲う怪物を倒す戦士がいるって。

確か名前はーー

「おい行っちまうぞっ。 早く追おうぜ」

人だかりが移動していく。



南条「……アタシも、行こうかな」


「……チッ」

どうやら皆が付いて行ってるのは、あの赤いシャツの男の人みたいだ。
でも…何だか感じが悪いな……。

「何だよお前ら」

苛立ったような口調で問いただしながら、赤いシャツの人は振り返る。

「君凄いね! 話題だぜ」
「早く名乗り出なよ。 お礼が出るって」

「……」

何のことだ? あの赤いシャツの人を褒めてるみたいだ。

……けど、赤いシャツの人、何のことか分かってないみたいだぞ?

「そうよ早くしなさいよ。 連絡先はねーー」

女の人が赤いシャツの人に携帯を見せて、動画を流し出した。

南条「…」

アタシは、後ろからそれを覗き見た。

『悪い人に襲われた私を助けてくれた、男の子を探しています』

若い女の人が、赤いシャツの人そっくりの似顔絵を掲げて、動画の向こうの人に語りかける。

『会ってお礼がしたいんです。 見つけてくれた人にもお礼をします。
お願い。 私のヒーローを見つけて下さい!』

?「……っ」

この人がヒーロー?

南条「……なんで」

南条「ヒーローなんてーーー」

ヒーローなんて……ヒーローなんてっ。

「やっほー。私のヒーロー」

南条「えっ?」

?「!」

今の動画の女の人と、動画にはいなかった長身の男の人が、赤いシャツの人の前に出てきた。

「あなたのやり方、真似させてもらったわけ」

「全くしつこいなっ。 そんなにジョーカーを助けたいのか?」

「……」

南条「?」

何だか、険悪な雰囲気だ。

南条「ん?」

長身の男の人が、手に持ったバックルを腰に当てる。

「……」

そして、バックルに、カードを入れると、男の人の腰にカードの群れのようなものが巻きついてーーー。


南条「あれは……ベルト?」

「イイの? みんな見てるよ」

赤いシャツの人が、挑発するように言う。

「俺は、仮面ライダーだ!」

赤シャツの人の言葉を意に介さず、長身の男の人は、宣言するように…言った。


ーーー
ーー


麗奈『ヒーローなんているわけないじゃない』

南条『いるよ! きっとどこかにヒーローはいる。 アタシはそう信じてる!』

麗奈『人々のピンチに颯爽と現れて助けてくれる?
そんな都合の良い神様みたいな存在が本当にいると思ってんの南条?
本当にいるのならとっくのとうにこの世から犯罪も戦争も無くなってるわよ』

南条『うっ…』

麗奈『そーれーにー。 このアタシ、レイナ様がいる限りこの世に正義は栄えないのよ!!
ハーッハッハッハッ…ゲホッげほっ』

南条『何おー!!』

P『こらこら。 またやってんのかお前らは』

麗奈『げっ』

南条『プロデューサー!』

麗奈『別に悪いことなんてしてないわよ。 私は親切に南条に現実という物を教えていただけよ』

P『ヒーローはいないってか? いや、そうとも言い切れないぞ』

南条・麗奈『『えっ?』』

P『知ってるか光? 人々を襲う怪物から人間を守る戦士』

P『バイクにまたがり、日夜戦い続ける男ーーーその名は』

ーーー
ーー







南条「仮面…ライダー」



今日はここまで

仮面ライダー……それは都市伝説の筈だ。 現実にはそんな存在はいない。

人々を守るヒーローなんて……―――。

―――、はずなのに。


「変身っ!」

「フンッ!」


「うわぁあああああ!」
「キャアアああああ!」

目の前には、変身し剣を構え鎧で身を包む戦士と、変容し剣を携える金色の怪人。 そして、逃げ回る人々。

アタシが見てきた特撮のような有り様が、現実に起こっていた。

南条「あ……ぁっ」

「ハァッ!」

「ウェエイッ!」

青い戦士と金色の怪人が鎬を削りあい、火花を散らせる。

さっきまでの日常は、何の脈絡もなく非日常へと落下していた。

南条「本当に……いたんだ」

人間を襲う怪人(あく)と、人間を守る戦士(せいぎ)が。

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