勇者「魔王は一体どこにいる?」続編 (971)

勇者「魔王は一体どこにいる?」の続編です

続編なので前作読まないと分からない事が多々あるかと思いますのでご注意ください

ちなみにSS書くのはほぼ初心者なので読みにくいのはご勘弁下さい

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1600089742

エルフの繁殖

それは精霊樹への祈りによって行われ

その希少な果実の実より生れ出たエルフは純血種として誕生する

しかし彼らは生殖器を持たない訳ではない

体構造の似た人間との間でその生殖器を用い

まれに亜種を生む事がある

ハーフエルフ

人間とエルフの特徴を持ち合わせた種ではあるが

純血種の下位として扱われ

エルフ界では忌み嫌われる存在となっている

特に人間の特徴を色濃く持った子は

災いを招くという理由で

誕生して直ぐに森を追放され遺棄される運命を持つ



その子は

生まれた時から不幸だった

エルフの特徴をほとんど持っていない奇形種

醜くい小さい

そして人間の中でも勇者の特徴として言い伝えられる青い瞳

その瞳は直ぐに封印され

盲目となったその子は

魔物への捧物として森の外へ遺棄されたのである

『トアル町』

妖精(そのまま真っすぐ歩いて…)

妖精(あーーぶつかる!止まって!)ドンッ

ごろつき「おい…気をつけろ!!」

旅人(す、すいません)ガクブル

ごろつき「聞いてんのかゴルァ!」

旅人(あぅ・・あぅ)

妖精(立って歩くのはもう少し練習が必要だね…立てる?)

旅人(大丈夫…もう少し壁寄りを歩いてみる)

ごろつき「ケッどこの言葉をしゃべってやがる!キチガイか?」

妖精(僕達の言葉とは違うんだよ)

旅人(何を言ってるのか分からないや…怒ってるのかな?)

妖精(離れた方が良さそうだね)

ごろつき「ん?盲者か?一人でブツブツ気持ち悪りぃんだよ!」

通行人「どうした!?」

ごろつき「あぁ何でもねぇ、盲目の精神病者だ、体当たりして来やがった」

旅人(何かマズイ雰囲気になってきた…走れるかな?)

ごろつき「謝りもしねぇで良くわかんねぇ事言ってやがる。気持ち悪りぃ」

通行人「目が見えてなさそうだなぁ…君!隠者は道の真ん中を歩くもんじゃない」グイ

ごろつき「そうだ!!隠者らしく隅で物乞いでもやってろ」

妖精(今行けるよ…走って!!)タッタッタ

ごろつき「お、おい!!聞いてんのか」

『路地』

妖精(ちょっとここら辺で休もうか?)

旅人(……)

妖精(気にしてるのかい?)

旅人(僕はどういう風に見えているのかな…)

妖精(気にしてるとキリが無いよ?人間の町は人の心も汚れてるから)

旅人(う、うん)

妖精(早く僕を見える人を探さないとね)

旅人(さっきの人達も見えてなかったみたいだね)

妖精(人の多い所に来れば居るかもしれないと思ったんだけど…)

旅人(言葉が通じないと人間の町も不便だなぁ…)

妖精(また今日も野宿になりそうかぁー)

旅人(慣れてるから良いよ)

シュン!ポカッ!

旅人(痛っ)

婆「やい!浮浪者め!こんな所に居られると商売に影響が出るんだよ!!」

女「おばあさんおやめ下さい」グイ

婆「あっちへお行き!!シッシッ」ポイッ ポカ

旅人(…イタタ)

女「何も石を投げなくても…ごめんな…さ??」

女「あなた…目が?見えないのね?瞳が無い…」

妖精(…行こうか)

旅人(人目を避けた方が良さそうだね)

女「え!?何?…どこの言葉?」

婆「ほれ見ぃ異教の言葉に違いない…こんなのが居ると異端審問されかねんぞい」

女「おばあさん…私が何とかしますからお店に戻ってください」

婆「シッシッ」ジロリ

旅人(……)

チャリーン

女「これで許してね…おばあさん行きますよ」

妖精(お!?銀貨!!やったね儲け~♪)


---人間の世界ってこういう物なのかな?---

『屋台』

妖精(もう少し右…そう!それ!後は…アレとコレと)

妖精(銀貨を台の上に置いて待てば良いよ)チャリーン

店主「おぉ?金は持ってるんだな?釣りはこれだけだ」

妖精(右手を差し出して…うん!それで良い)ジャラリ

旅人(こういう時何て言えば良いの?)ヒソ

妖精(あ・り・が・と・う)

旅人「あり、が、と…う」

店主「お、おぅ。まぁ…何ていうか体に気をつけな!!」

旅人「ありが…とう」

店主「用が済んだら行った行った」


妖精(買い物出来たね!!)

旅人(うん…緊張したよ)

妖精(これでしばらくは飢えないで済むね)

旅人(良かった)

タッタッタ

妖精(ん?)

女「あ!居た…探したんだから」グイ

旅人(え?あ…チョット)

女「付いてきてね?あなたをかくまってあげる。こっちよ」

『倉庫』

女「入って」ギー ガチャン

妖精(親切な人も居るもんだね。今日はここで夜を過ごせそう)

旅人(大丈夫かなぁ?)

女「どこの言葉を話しているの?あなた目はどうしたの?」

女「…それにしても、その動物の毛皮で作ったフードと羽織…臭うわね」クンクン

女「洗濯してあげるから脱いでもらって良いかしら?」

旅人(何て言ってるの?)

妖精(えーと…)

女「顔を良く見せて…」ファサ

!!!ズザザッ!!!

女「待って!!怯えなくて良いの…ほら…構えないで?…落ち着いて?」

旅人(どうすれば?)

妖精(フードと羽織を脱いでだってさ。洗ってくれるみたい)

旅人(あぁ…そういう事か)

女「暴れないでね?」ファサ

女「え!?あなた…女?こんな姿で…汚れてるけど…でも素は良さそうね」

妖精(人間からみると君は女に見えるみたいだね)

旅人(そう言ってるの?驚いた口調だけど)

妖精(まぁ仕方ないさ。合わせてあげたら?)

女「ちょっと待っててね」ガコン ギー


旅人(…隠し階段か何かかな?)


『数分後』

女「お待たせ…こっちに入って?」クイッ クイッ

旅人(何だろう?来いって事かな?)

妖精(そうだよ。行ってみたら?)

旅人(この閉ざされた空間は苦手だよ。歩きにくい。風が読めない)

女「あ…そうか目が見えないのね…手を」グイ

妖精(僕の羽音があれば分かる?)パタパタ

旅人(助かる)

女「あなた…いつも一人でお話してるの?あ…ここ階段。気を付けて」

旅人「ありがと…う」

女「え?話せる?」

旅人「ありがとう…ありがとう」

女「他には?」

旅人「ありがとう」

女「フフッ…それで充分なのかもね」


娘1「あ!!来た来た」

娘2「見せて~」

娘3「あんたは早く着替えなよ」

娘4「水汲んで来たよ~」


女「こっちよ」グイ

女「娘1~!!着替えと水をこっちに持って来て」

娘1「はーい。お姉ぇその子どうしたの?」

女「後で話すから早く持ってきて」

娘2「水持って行くね」

女「お客さん来る前にあなたは早く準備しなさい!!娘1~!早くー」

『小部屋』

女「…じゃぁ私は一旦部屋を出るから今着てる物を全部脱いでこっちの籠に入れておいて」

女「水はこれしかないから大事に使ってね。特に髪の毛の汚れを落としておいて…分かる?」

女「えーと…こう…こうする…」ヌギ ゴシゴシ ジャブジャブ

女「んーー目が見えない子にどうやって教えるかなぁ…」

女「まぁ何とかなるか!!えーと着替えはこっちね?」サワサワ

女「ああぁ時間がない…後でね?」ギー バタン タッタッタ


旅人(なんだか…慌ただしいなぁ)

旅人(この水で洗って着替える…で良いのかな?)

妖精(そうだよ。随分水浴びはしてなかったからね)

旅人(この着替えには替えたくないなぁ)

妖精(面白そうだからあの女に合わせてみようよ)

旅人(だってコレ…触った感じかなり薄手の…旅には向かないというか…)

妖精(あの女の人の物かな)

旅人(んんんー)

妖精(それを着てれば隠者に見えないと思えば易いと思うけどね)

旅人(仕方ないかぁ…)

妖精(似合うと思うよ…エルフ達はみんなそういう格好をしてる)

旅人(僕はエルフでは無いと思うけど)

妖精(何度も言ってるけれど僕には分かるよ…君からエルフの様な匂いがする)

妖精(風や音を感じる感覚は普通の人間には難しい)

妖精(黄泉の狭間を感じる君は間違いなくエルフに関係するよ)

旅人(またその話か…もういいよ着替えるよ)

『別の部屋』

女「…そう。あまりに不憫に思って連れてきたら女だったのよ」

娘1「目が見えない…かぁ」

娘2「よく今まで暮らせてこれたね」

娘3「あんまり面倒事は背負わない方が良いんじゃない?」

女「でも放っておけないでしょ?あのまま路地に居たら異教徒とか言われて捕まるのがオチよ」

娘4「番台の婆さんにはどう説明するの?また怒られるよ?」

女「稼ぎが在れば良いのよ」

娘4「そんなに急にお客さんが増えると思えないけどなぁ…最近みんなケチだし」

女「本人に覚悟が必要だけど…私たちの仲間が一人増えると思えば良いのではなくって?」

娘1「あぁーそうかぁ…目が見えないのは良い事とも言えるのかぁ」

娘2「娘1さぁ…その子見て来たんでしょ?やって行けそうなの?ここで」

娘1「超美人…私達の誰よりも」

娘3「ええ!?そんなに?ムキー!!」

娘4「早く見てみたいなー」

女「仕事が終わったらあとで髪を揃えてあげようと思うの…その時に」

娘1「お姉ぇは今日早いの?」

女「いつもの男よ…さっさと終わらせて戻ってくる…あなた達も病気にだけは気を付けて」

娘1「分かってるよ!新規さんは十分確認する」

娘3「お姉ぇは良いなーお金持ち相手で」

女「あなたも良い相手見つけなさい?…そろそろ行くわね」タッタッタ

娘4「あ!!お姉ぇ!!薬忘れてるー」

女「今日はいらないわ!!あなたが使って!!」

『小部屋』

旅人(…なんか落ち着かないなぁ)

妖精(ケラケラケラ似合ってるよアハハハハ)

旅人(そういう意味じゃないよ)

妖精(あーごめんごめん。まさかそんなに肌が出てるとは思ってなかったから)

旅人(エルフは肌をあまり出さない事くらい知ってるよ。だからそうじゃなくて…)

妖精(じゃぁ何?)

旅人(ここは地下だから人の気配が少ないのは良いけど)

妖精(けど?)

旅人(風の音も木々の音も感じ難い…無機質な物がどこにあるか分からないんだ)

妖精(僕が飛んでいないと音の反射も感じ無いかい?君が音を出せば良いだろう?)

旅人(だから落ち着かないんだよ)

妖精(虚無に吸い込まれそう?)

旅人(こういう場所は嫌いだよ…野宿の方がずっと落ち着く)

妖精(目が見えても、見たくないものまで目に入るから落ち着かないのは一緒だよ)

旅人(…人間の町に慣れなければいけないのかな)

妖精(魔女を探すなら慣れなきゃいけないね…相手は人間なんだから)

旅人(僕一人で探さなきゃいけない?)

妖精(黄泉の狭間からあまり遠く離れた所に妖精は行けないよ…知ってるでしょ?)

旅人(自信が無いよ…)

妖精(君を導く人が現れればやって行けるさ)

旅人(あ!!あの人が来る)


コンコン ガチャリ

女「あら?また一人でお話?…あなたは不思議な子ね…明かりも付けないで」

女「ん?光る虫?…が居るようね?蛍かな?」

女「明かり付けるわね」シュボ

女「似あってるじゃない…でも髪が伸びっぱなしね」

女「…にしても私が言った事は理解してそうね。言葉は通じる?あなたは誰?どこから来たの?」

旅人「…」

妖精(この人…妖精をすこし見えてるかも)

女「え?何?誰?…あなた?」キョロ

女「気のせいね…今からあなたの髪を揃えてあげる…分かる?こう」チョキチョキ

女「おとなしくしていてね」

女「入っていいわ」

旅人(向こうに居た4人が来る様だ)

妖精(見世物だねぇ…辛抱しときなよ)

娘1「お姉ぇの洋服は少し小さいね」

娘2「うゎぁ本当だ綺麗」

娘3「ムキー!!ムキー!!」

娘4「前髪伸びすぎだね」

女「目が見えてないから気にならないのかもね」

娘4「あ!本当だ…瞳が無い」

女「さぁ切るわよ…おとなしくしててね?」チョキ

旅人(どうしよう…)

妖精(髪の毛くらいどうって事ないよ。やらせておきなよ)

娘1「ねぇこの子何しゃべってるのかな?こんな言葉聞いた事無いよ」

娘2「エルフだったりして?あれ?でも耳が長くないなぁ」

娘3「瞳が無いとなんか気持ち悪いね」フフリ

女「アイレンズの赤いやつが合った筈…探してきて」チョキ

娘4「あれ高いんじゃないの?良いの使って?」

女「良いのよ。どうせみんな使ってないのでしょう?」チョキ

女「ハイ!終わり!アイレンズまだぁ~?」

娘1「持ってきたよ!」ホイ

女「さぁ仕上げに…これはあなたの瞳の代わり」ペタ

旅人(あ…なんだこれ)

女「心配しないで?すぐ慣れるわ。ちょっと立って見て?」グイ


娘達「わおおぉ」

『翌日』

チュンチュン

旅人(あの女の人は協力してくれるかな?)

妖精(僕のことをしっかり見ることが出来れば話は通じるかもね)

旅人(もう少し黄泉の狭間に近づかないと?)

妖精(満月の夜だと確実かな)

旅人(まだ先だね…ずっとここに居る訳にもいかないだろうし)

妖精(他にもう少し探してみようか)

旅人(…そうだね)


トントン ガチャリ


女「おはよう。早起きなのね」

女「少し外を歩いてみる?…でもね?あなたの話す言葉…これは他の人に聞かれてはいけないわ」

旅人(何て言ってるの?)

妖精(外に連れて行ってくれるらしい。でもしゃべらないでって)

旅人(おかしい人と思われる?)

妖精(多分そうだよ)

女「ほら…また独り言…誰かとお話をしてるの?それとも何かの呪文?」

女「お口チャック…私のいう事が聞けて?」チャック

妖精(首を縦に振れば良いよ)

旅人「…」コクリ

女「!?あら…分かるのね?」ニコリ

女「私の手を放さないでね…目が見えないと歩くのに困るでしょう?」グイ

女「こっちよ」トコトコ

娘1「あ!お姉ぇどこ行くの?その子も一緒?大丈夫?」

女「少しお話をしてみようと思うの…孤児院の方までお散歩しながらね」

女「あなたたちは休んでいなさい?」

娘達「はーい」

女「さぁ…こっちよ。この階段を上がって…」

『宿屋』

婆「その子はだれだい?見ない顔だねぇ」ジロリ

女「…はい。昨日から仕事を見せてます」

婆「ほぅほぅ新しい子かね?良く見つけて来たねぇ…こんなべっぴんを」

女「はぁ…まだ決まった訳では無いですけれど」

婆「若さだけが売りの俗な商売女…いやだねぇ」

女「……少し出かけてきます」カラン タッタッタ

婆「ちゃんと稼がせるんだよ!!」



『露店のある路地』

女「あなたには見えてないでしょうけど、この路地の奥に孤児院があるのよ」

女「途中で食事をしていきましょう」

武器屋店主「お!?どこ行くんだい?女!!」

女「いつもの孤児院周りよ」

武器屋店主「そうかい。また遊びにいくなー」ノシ

防具屋店主「今日は2人で散歩かい?」

道具屋店主「おぉーまた可愛いねーちゃん連れてるなぁ?新入りかー?」

女「…みんなあなたを見てるわね?」

旅人「…」

パン屋店主「買い出しかね?」

女「パン2つ…それと肉と野菜も付けて。お代はここに」ジャラリ

パン屋店主「まいど!!連れの子は誰だい?」

女「ひ・み・つ。またねー」ノシ

女「行きましょ」トコトコ


女「ここのベンチで食事をしていきましょ?」ハイ モグ

旅人「…」

女「んー何かおかしいなぁ…目が見えていないのならもっとゆっくり歩くと思って居たのに…」

女「段差にも躓かないし…どうして悠々と歩けるのかしら?慣れるとそういう物なの?」

女「あとあなたの周りに小さな光がチラチラしてるのは何?魔法か何か?」

女「本当…不思議な子ねぇ。ほら早く食べて?」グイ

旅人「…」モグ


チュンチュン


女「どうしてかしら?小鳥たちもあなたに興味があるの?」

旅人「…」ポイ ポイ


チュンチュン

『孤児院』

ザワザワ ザワザワ

女「えっ!!あれは法王庁の馬車…まさか…」

旅人「???」

女「人が集まってる…あなた!私から離れないでね」グイ タッタッタ

男「!!おぉ…女か!!マズイことになった」

女「子供達は?」

男「全員馬車の中だ」

女「どうして中に入れたの!?あなたは何を…」

男「無理やり入ってきやがった…隠し部屋もバレてたんだ…誰か密告しやがった」

女「もう!!何してたのよ!!どうしよう…」

男「こんな朝っぱらから法王庁が直々に来るとは思ってねぇよ…手が出せねぇ」

女「私が言いに行く!」

男「待て!!やめておけ!!お前もとっ捕まるぞ」グイ

女「このままあの子たちを見捨てるつもり?」

男「俺だって何とかしたい…だが相手が悪い…今は無理だ」



法王の使い「これは神のご意思なのです。あなた達は神に選ばれたのです。大変喜ばしい事なのですよ?」

子供達「え~ん;;」

法王の使い「神の御許でのお仕えが許されたあなた達は神のご加護が約束されます。祈るのです。さぁ祈るのです」


タッタッタ


女「子供たち!!無事?」

法王の使い「!?」

子供たち「たすけて~~」

法王の使い「助けてとは何事ですか!!神の御許へ行くのですよ?」

女「法王の使い様…どうか子供たちがもう少し大きくなるまで待って頂けないでしょうか?」

法王の使い「法王庁の決定は神のご意思。それは絶対。神のご意思に背く事を何と言うか言ってみなさい」

女「…」

法王の使い「あなたぁぁ!!それとあなたもぉぉぉ」

旅人「???」

法王の使い「言えないのですか?」

女「…」

法王の使い「教えてあげましょう!!…それはあなたが罪人であるからに他ならないぃぃ!!」

法王の使い「私に許しを請うのであれば神の名の下慈悲を下しましょう」

法王の使い「本来であれば八つ裂きの刑になるところですが…鞭打ちの刑に致しましょう」

法王の使い「神の御慈悲に感謝するのです。さぁ祈りなさい」

ヒソヒソ何が慈悲だよ

ヒソヒソ狂ってやがる

ヒソヒソ誰か何とかしてよ

ヒソヒソ巻き添え食らうぞ



妖精(もう!!黙ってみてられないなぁ…逃げよう)

旅人(良くない事が起きてるのはわかるけど…)クンクン

妖精(説明は後…こっちへ)

旅人(あの女の人はどうする?)

妖精(良いから早く!!)ダダッ


法王の使い「待ちなさ~い!!あなたぁぁぁ!!聞きましたよ呪いの言葉をぉぉ」

女「あ!!ダメ」

法王の使い「衛兵!!あの女を捕まえなさい!!」

衛兵「ハッ!!」

『孤児院の前』


男「だから言わんこっちゃねぇ!!女!!今の内だ!逃げろ!!」

女「あの子…目が見えてないの…すぐに捕まるわ」ダダッ

男「誰なんだ?あの女は?」

女「追う」ダダッ

男「おい!今は逃げる時だろ!!面倒ごとに首突っ込むな!!」

女「ああぁ!!危ない!!」

男「!!?」


衛兵「待てぇー」

ピョン クルクルクル シュタッ

女「ええっ!?…木に…飛び乗った」

男「なんだあの女!!えらく身軽じゃねぇか…」

衛兵「囲め囲めぇ!!」

旅人(1,2,3,4,5,6…)クンクン

衛兵「もう逃げられないぞ」

旅人(この匂い)

妖精(気付いたね?風上からゴブリン)

旅人(多い…これは大きな戦いになる…小鳥たちが言ってた通りだ)

衛兵「邪教徒めぇ!!呪文をやめろぉ!!」

旅人(振り切るならゴブリンの方に向かった方が良さそう)

妖精(距離は読める?)

旅人(もうすぐそこに来てる…戻るよ)タッ シュタッ

衛兵「捕らえろぉ!!」


ピョン クルクルクル シュタッ


男「うぉ!!戻って来た…なんだありゃ四つ足で走ってやがる…ウルフか?」

女「信じられない…あの子」

男「おい待て!!どうする気だ!!?どこに行く?」

女「あわわ…衛兵が来てる」

男「ええぃ!!追うしかねぇな…行くぞ」ダダッ

『孤児院』

ゴブリン「グエーグエーギギギ」

衛兵「散開!!散開!!」

法王の使い「ぐぬぬぬ…これは邪教徒の仕業…あの女は何としても捕えなければいけなぁぁい!!」

衛兵「法王の使い様!!ここは私共が引き受けます。馬車にて御退避下さい」

法王の使い「ふむ…わかりました…これも神の御心…あなた達の事は法王様にご報告をしておきます」

法王の使い「これを打破し、何としてもあの女を捕らえるのです」

衛兵「ハッ!!全隊第一戦闘態勢を取れぇぇ!!騎兵を前面に移動!!」


タッタッタ


男「…何か様子がおかしいぞ?」

女「ちょっと…アレ」

男「ゴ、ゴブリン!?おいおぃ…大変な事になってるじゃねぇか…どうなってんだ?」

女「これは…チャンスかもしれないわ」

男「おい!あのウルフみてぇな女は突っ込んで行くぞ?」

女「…あの子がゴブリンを呼んだのかしら?」

男「それしか考えられんが…しかしそんなに早く呼べるものか?」

女「でもこの状況は利用しないと…子供たちを連れ出したいわ」

男「分かった!俺が馬車に入ってる牢のカギを開ける…その間近づく奴を何とかしてくれ」

女「!?あの子…旋回してる?」

男「掻き回してる様だな…ありゃ目が見えてないのはウソだ…いくぞ!!」

『馬車』

カチャカチャ カチャカチャ

男「ちょっと待ってろ…今出してやる」

男「他の子供たちはもう一つの馬車の方か?」

男「チッ見当たらねぇな…逃げたか」ガチャン

男「開いた!!出ろ!!」

男「おい!!女!!子供たちを連れてけぇ!!」

女「いけない…衛兵が押されてる…町の方までゴブリンが」

男「子供たち!!泣いてねぇでしっかり歩け!!」

子供たち「え~ん」

女「こっちよ…早く」

男「宿屋の地下か?」

女「そこにしか行くところが無いわ」

男「よし…俺が先に町まで走る!!戦える奴を集めてくる!!」

女「おねがい…わたし達は迂回して宿屋の地下に行くわ」

男「…にしても法王庁の衛兵は役に立たなさすぎだな」

女「おぼっちゃまばかりよ」

男「じゃ!後は頼む!行ってくる」

女「生きてたら酒場で!」

男「分かってる!じゃぁな」

『孤児院』

シュタタッ シュタタッ

旅人(1,2,3,4,5,6…22)

妖精(その服はやっぱり動き難そうだねフフ)

旅人(足回りがキツイ)

妖精(そろそろ逃げようか)

旅人(この数のゴブリンだと町の方まで行きそうだね)

妖精(一旦戻って隠れて様子見る?)

旅人(着替えは返してもらいたいかな)

妖精(夜まで待って取りに行こう)

旅人(この町はもう離れた方がよさそうだね?)

妖精(僕は楽しんでるよ)

旅人(そうかい?)

妖精(後でゆっくり教えてあげるよ。人間たちの話していた事をさ)

旅人(少しだけ分かるようになってきたよ)

妖精(へぇ)

旅人(人間は言葉の中に感情が含まれているんだ…だから何を言ってるのか想像がつく)


安心、不安、感謝、幸福、欲望、恐怖、勇気…

全部言葉の中に隠れているんだ



その日

ゴブリンの襲撃で法王庁の衛兵は壊滅した

町からの守備隊によりゴブリンを撃退したものの

被害は大きく30名程の死者が出た

『酒場』

ガヤガヤ痛てぇぇ

ガヤガヤなんで急にゴブリンが

ガヤガヤお前の所は大丈夫だったのか?

ガヤガヤ母ちゃ~んうぇっうぇっ

ガヤガヤ酒でも飲まねぇとやってらんねぇ

ガヤガヤまた襲ってくるかも知れんなぁ


女「…あの子無事かしら?」

娘「お姉ぇまだ気にしてるの?」

女「不思議な子だったなぁ~…」


カラン コロン


男「よう!無事だったか」

女「あなたもね!?平気?」

男「ここもすっかり難民キャンプみてぇになったな」

女「あら?怪我してるじゃない」

男「あぁ大したこと無い…それより子供たちは?」

女「下で寝てるわ」

男「例のウルフ女は?」

女「それは私の方が聞きたい」

男「居なくなったか…」

女「どうしたの?気になるの?」

男「いやな…あんな立ち回りをする奴は見たことが無くてな」

女「私も驚いた」

男「四つ足で走る女…これだけでオカシイんだが、あの運動量があり得ない」

女「もののけ…ね…あ!!そうそうあの子は初め動物の毛皮を羽織ってたの」

男「ほぅ」

女「灰色の毛皮だったから…多分ウルフね」

男「…なるほど人の姿をしたウェアウルフって訳か…だとしたらあり得る」

女「目の中に瞳が無いのは何か関係が?」

男「さぁな?目が見えてないようには思えんが?」

女「私もおかしいと思ったのよね…」

男「その毛皮は何処にある?見せろ」

女「下にあるわ…来て!目立たないように裏の倉庫からね」

『宿屋の地下』

キャッキャ アハハ

男「…子供たち起きてるじゃねぇか」

女「おかしいわね」

男「こっちか?」

子供1「妖精さん待てぇ~」

子供2「いじめちゃだめだよぅ」

子供1「もっとお話ししてよぅ」

子供2「え~どうしてぇ?おねんねしないとダメ~?」


男「ん?誰と話ししてるんだ?」シー


子供1「明日も来る~?」

子供2「うん…うん…でもさぁ信じてくれるかなぁ?」

子供1「…分かったぁこうすれば良い~?」

子供2「動かないよ~これで良い?」


ガチャリ

男「誰と話しているんだ?」

子供1「来たぁぁ」

子供2「妖精さんが居るの~ウフフ」

男「妖精?…寝ぼけてんのか?…はやく寝ろ」

女「待って!子供たちの後ろ…あなた帰ってきてたのね」

男「ん?暗くて見えんが…ウルフ女か?」

女「やめて!子供たちを人質にするなんて…」

男「おぃおぃ穏やかに行こうぜ、こっちは丸腰だぜ?」

子供1「妖精さんがね?大人たちとお話がしたいんだって~」

男「そいつぁ妖精じゃねぇだろ」

子供2「違うの~ほらここを飛んでる」

男「見えん!」

女「待って…小さな光…もしかしてこれが?」

男「お前も何言ってんだ?妖精だと?」

子供2「ほらぁやっぱり信じないよ?」

女「お話続けて?」

子供1「え~とね?この人は妖精が見える大人の人を探してるんだって」

子供1「言葉が違うから妖精さんからお話ししたいけど」

子供1「見つからなくて困ってるんだってさ~…これで良い?」

女「あなた達は妖精さんの声が聞こえるの?」

子供2「聞こえるよ~ウフフ」

女「驚くことばっかりね…」

男「まぁ事情が分からんでも無いが…そのナイフをまず下ろせんか?」

女「そうね…私たちは何もしないからお願い」

子供1「妖精さんがナイフしまってだってさ…え?これは言わなくて良いの?」

旅人「…」スッ

男「ふぅ…穏やかにな?穏やかに…女!!お前も妖精が見えるんだな?」

女「分からない…でも耳を澄ませば少し聞こえる気がするわ」


ヒソヒソ ヒソヒソ


女「え?蝋燭?狭間に近づく?何かしら…蝋燭を灯せば良いのね?」

男「なんだ?蝋燭なら持ってるぞ…」チッチ シュボ


ユラユラ ユラユラ

『小部屋』

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それから母ウルフが寿命で亡くなる前に言い残した言葉が

「お前は森の秩序を乱してしまうから森を出なさい」と…

言葉が通じないのに一人で森から出るのは危険だから

僕が一緒に居て目の代わりとこうやって通訳をしてるんだ

でも僕は黄泉との狭間から遠く離れる事が出来ない

だから協力してくれる人を探しているって訳さ


女「ちょっと待って?黄泉との狭間というのは?」


妖精「んー人間の言葉でいう「あの世」と「この世」の狭間…かな?本当は少し違うんだけど」

妖精「この世で死んだ後にその魂は狭間を通ってあの世に行くんだよ」

妖精「妖精たちはみんな狭間に住んでいるんだ」

妖精「狭間はこの世界のどこにでもあるけど、遠くなったり近くなったりする」

妖精「例えば昼間より夜の方が近い、新月よりも満月の方が近い…」

女「…この蝋燭の灯も狭間に近づける為?」

妖精「そうだよ」

女「理解できた気がするわ…それで…魔女を探してるって言ったわね?」

妖精「古代の魔法の中に千里眼という魔法があってね…その魔法で目が見える様になるんだ」

女「魔女は…もう居ないかもしれない」

妖精「どうして?」

女「もう何年も前から法王庁からの魔女狩りが続いていて…魔法が使える人はみんな焼かれてしまったわ…」

妖精「困ったなぁ…」

女「…」

男「…ん?話は終わったか?」

女「大体事情は把握できたわ」

男「俺にはお前が独り言を話してるようにしか聞こえんが…魔女を探してるんだな?」

女「そう言ってるわ」

男「大分遠くになるが…光の国「シン・リーン」に魔術院があったはずだ…生き残りが居るかもな」

女「遠すぎるわね…」

男「んむ…」

女「案内は無理そうね」

男「でもな?魔物がまた来るかも知れんことを考えると、子供たちをいつまでもここに居させる訳にもイカンとは思う」

女「…そうね」

男「…」

女「そういえば…私たちの自己紹介をしてなかったわ」

女「私は女盗賊、そしてこっちの男が盗賊…あなたの名前は?」

妖精「僕は妖精!!彼に名前は無いよ…必要が無かった」

女盗賊「名前が無いと呼び方に困るわ?」

盗賊「何でも良いだろ…ウルフ女にしとけ」

女盗賊「…どうも話によると女ではないらしいの」

盗賊「なぬ!?…オカマだってぇのか?」

女盗賊「私の勘違いで女装させてしまったみたいフフ」

盗賊「おいおぃ…もっと男らしく行けやぁ!!」ジロジロ

女盗賊「私が悪いのゴメンね?」

盗賊「…わかった…男らしく!!…そうだ!今からお前は剣士だ」

盗賊「剣士と妖精!!それで良いな!?」


---剣士、妖精、盗賊、女盗賊が仲間になった---

『翌日』

チュンチュン

盗賊「よう!やけに起きるの早えな…着替え持ってきたからこれに着替えろ」

剣士「…」

盗賊「それからその赤い目ん玉…娼婦が付ける物だ!どうせ見えねぇなら黒く塗ってやるから外せ」

盗賊「オカマみてぇで気持ち悪い」

剣士「…」

盗賊「…」

盗賊「んあぁ!おい!女盗賊!ちぃと面倒見てくれー」

女盗賊「話は通じてると思うわー。妖精さんが通訳してるから反応鈍いだけと思うの~」

剣士「…」ヌギヌギ

盗賊「…なんかテンポが合わんな」

剣士「…」ゴソゴソ ポイ

盗賊「このウサギみてぇな赤い目ん玉が変わるだけで女くささが無くなる筈だ…」ヌリヌリ

盗賊「…にしても目ん玉が無ぇと気味悪りぃなヌハハ…ほらよ!」ポイ

剣士「…」ゴソゴソ

盗賊「おぅ!ちったぁマシになったな…後は…そうだお前の毛皮…こりゃかなりの上物だぜ?」

剣士「…」ゴソゴソ

盗賊「おぉぉ山賊の様だが随分男らしいじゃねぇか」

女盗賊「その毛皮はね…母ウルフの一部だと言ってたわ」

盗賊「形見か…そりゃ大事にしないとな」

女盗賊「汚れて灰色になってたけど、洗濯したら白くなったわ」

盗賊「母ウルフは大型の白狼だったって訳か…ぬはは…「白狼の剣士」シブいな」

女盗賊「それなら私は「女狐盗賊」?フフ」

盗賊「俺は…なんだ…俺は!!…ん~思い付かん…まぁ良い」

女盗賊「それで…今日は何か考えがあって?」

盗賊「あぁ…ちぃと考えたんだが…商隊に話を付けてくる」

女盗賊「どうするの?」

盗賊「どうせここに長い事居られないなら子供たちをセントラルに連れて行く」

女盗賊「商隊で行くのは目立ちすぎでは無くって?」

盗賊「そうだ…普通に行っても入国で引っかかるのは分かってる」

女盗賊「無理に決まってるじゃない」

盗賊「奴隷商人のフリをするんだ…子供達と娘4人、それからお前も奴隷になってもらう」

女盗賊「え!?」

盗賊「俺が奴隷商人のフリをして全員まとめて入国だ…鍵開けはまかせろ」

女盗賊「剣士はどうするの?」

盗賊「一緒に行くに決まってるだろ…傭兵役だ…俺と一緒に行動する」

女盗賊「…うまく行きそうね?」

盗賊「一つだけお前にやってもらわなければいけない事がある」

女盗賊「何?」

盗賊「お前は役人にコネがあったな?」

女盗賊「えぇ…」

盗賊「奴隷商人のパスを入手してくれ…出来るか?」

女盗賊「…やってみるわ」

盗賊「じゃぁ決まりだな…剣士を連れて行くぜ?…来い!剣士」

『街道』

盗賊「俺の後ろから離れるなよ?」スタスタ

剣士「…」スタスタ

盗賊「…よしここなら見晴らしが良い…少し説明してやる」


お前は方角は分かるか?

ここから見えてるんだが、東にあるのが多分お前が来たであろう森だ

その森は南北にずっと続いていて素人が入っても簡単には出て来れねぇ

まぁお前なら知ってるな?

そして今居る場所がトアルという町…商隊の中継点だ

ここから南に3日ほど行くと海に出る

そこにあるのがこの大陸の首都セントラルだ…中立国になっている

貿易の中心地で他のどの国よりもでかい…そして法王庁もセントラルにある

北の方角には砂漠が広がっている…30日ほど行くと火の国シャ・バクダ

その途中にはトアルと同じ様な商隊の中継点がいくつかある

シャ・バクダから気球に乗って森を東へ抜けると光の都シン・リーン

お前が目指すのは恐らくシン・リーンだ…しかし遠すぎる


盗賊「俺たちがお前にどこまで付き合えるか分らんが…今の所シン・リーンに行く予定は無い」

剣士「…」

盗賊「まぁ…しばらくは行動を一緒にした方がよかろう」

盗賊「行くぞ」

盗賊「そうだ…お前に盗賊の極意を教えてやる」

盗賊「フードを深く被れ」ファサ

剣士「…」ファサ

盗賊「そうだ…顔を不用意に見せるな」

盗賊「次に歩き方だ…少し前傾で肩を張れ…これで暴漢には合いにくい」スタスタ

剣士「…」スタスタ

盗賊「その調子だ…もしも暴漢に出くわしても絶対に逃げ腰になるな」

剣士「…」??

盗賊「武器を抜くフリをして相手をビビらせろ…そして相手のスキを探せ」

盗賊「よし!着いたぞ」

盗賊「ここで待ってろ…馬車を調達してくる」

剣士「…」

『酒場』

ガヤガヤ ガヤガヤ

女盗賊「娘1!水を汲んで来て」

女盗賊「娘2!包帯がもう無いから代わりの物を作って頂戴」

女盗賊「娘3!消毒用のお酒がもう無いから水を使って!!」

女盗賊「娘4!貼り付いた衣服をはがしてあげて!!」


ガヤガヤ痛てぇぇぇ

ガヤガヤ早くしてくれぇ


盗賊「戻ったぜ…又怪我人が増えてる様だな?何かあったのか?」

女盗賊「近くの村から避難してきてるらしいわ」

盗賊「魔物が来てるのはここだけじゃ無いって事か」

女盗賊「その様ね…手が足りないの!!手伝って!!」

盗賊「お、おぅ…馬車が調達出来た…裏の倉庫に入れてある」

女盗賊「いつ出発?」

盗賊「明後日の朝だ…例のやつは間に合うか?」

女盗賊「今晩会う約束をしたわ…多分大丈夫」

盗賊「落ち着いたら身の回りの整理をしとけ」

女盗賊「フフ私達は何も持ってないわ…大事な物は体だけよ」

盗賊「まぁ俺も何も持ってないんだがなヌハハ」

女盗賊「おしゃべりばかりしてないで手を動かして!」

盗賊「ほいほい…」

女盗賊「こんな時に魔法が使える人が居てくれれば…」

盗賊「ん!?…何か…夢で見た事がある気がするぞ」

女盗賊「あなたが夢の話?フフ合わないわ」

盗賊「回復魔法を連発する奴がな…だが顔も名前も覚えてねぇ」

女盗賊「何言ってるのよ…手を動かして!!」

盗賊「わーってるよ」

『小部屋』

剣士(…ひとまず彼達と一緒の方が良いね)

妖精(理解してくれそうで良かったね)

剣士(光の都シン・リーンだっけ?)

妖精(目が見えなくても不自由しないなら無理に行かなくても…)


僕は生まれた時から見えるということがどういう事なのか知らないんだ

母さんがどんな姿をしてたのか

妖精の君がどうなのか、森、人間、僕の手や足だって

触った感触で僕の心の中に描いてる物

本当はどういう物なのか知りたい

綺麗ってどういう事?醜いってどんな風?

色って何?赤い瞳って何?母さんが白狼だった事も何の事か分からない

よく夢を見るんだ

すごく大事な事をしてる夢

その中に出てくる人が誰だったのかも分からない…思い出せない

すごく大事な事を、忘れてはいけない事を思い出せないのは

きっと今の僕が見えるという事がどういう事なのか知らないからだと思う

その形を見て、顔を見てみたら

大事な事を思い出す気がするんだ

わかるかい?


妖精(わかったよ…魔女を探そう)

剣士(うん…君には本当にお世話になってる)

妖精(わかればヨロシーーー♪)

剣士(ありがとう)

妖精(一つだけ君に教えてあげるよ)

剣士(なに?)

妖精(見えない方が、大事な事が何なのか分かる事だってあるんだよ)

剣士(覚えておくよ)


---すごく大事な事を言われた気がする---

---きっと目が見えない運命に理由がある---

『宿屋の倉庫裏』

---夜---

盗賊「よし!全員馬車に乗ったな?」

女盗賊「私で最後よ…みんな静かにしてね?」

盗賊「鍵かけるぞ」ガチャリ

盗賊「しばらく苦痛かもしれんが我慢してくれ」

盗賊「眠たかったら寝てて良いぞ」

盗賊「剣士!お前は傭兵のフリをして俺に付いて来い」

女盗賊「完全に夜逃げねフフ」

盗賊「商隊の詰め所に着いたら囚人の様に振舞ってくれ」

女盗賊「分かってるわよ」

盗賊「特に子供達は笑わせないように注意してくれ」

盗賊「商隊と合流したら出発は夜明けだ」

盗賊「寝れるときにしっかり寝ておかないと3日間の移送はかなりしんどいぞ」

女盗賊「檻の中は私に任せて」

盗賊「頼む…じゃぁ行くぞ」グイ ヒヒーン


ガラゴロ ガラゴロ

『商隊の詰め所』

商隊長「積み荷の確認をする」

盗賊「あぁ問題ない…あまり他には見せない様に頼む」

商隊長「荷物は何だ?」

盗賊「大きな声では言えんが…奴隷と食料だ」

商隊長「…」ジロリ

盗賊「他には大したもん積んでねぇ…見てくれ」バサ

商隊長「…女、子供か…いくらで売るんだ?」

盗賊「すでに売約済みだ…細かいことは聞きっこ無しで頼む」

商隊長「ケッ…行っていいぞ。夜明けに出る。この馬車は先頭の次に付け」

盗賊「わかった…ところで今回は馬車が多い様だが何運んでるんだ?」

商隊長「遺体だ」

盗賊「あぁ…法王庁の衛兵か」

商隊長「そうだ…金持ちの考えそうな事だ」

盗賊「金持ちのぼっちゃんを馬車一台に積み上げる訳に行かねぇってか…まったくもって無駄だな」

商隊長「奴隷商のお前が言う事かと言いたい所だが…まぁ同感だ」

盗賊「わるいわるい…野暮な事聞いたな…商隊、安全に頼む」



---朝---

盗賊「出発するぜ?」グイ ヒヒーン


ガラゴロ ガラゴロ


盗賊「トアルの町はこれでおさらばだ…子供たち!!馬車の隙間から最後に見ておけ」

盗賊「おまえたちの故郷だった場所だ」

子供達「え~ん;;とーちゃーん…おかあちゃーん」

女盗賊「もう!!泣かせないでよ」

盗賊「これで良いんだ…こうやって大人になる」

『商隊1日目』

ガラゴロ ヒヒーン ブルル

盗賊「今日はここでキャンプだとよ」

女盗賊「柵は一応あるのね…」

盗賊「簡易中継点だな…魔物が来なきゃ良いが…」

女盗賊「寒いわ」ブルブル

盗賊「湯を沸かしてやる…待ってろ」

女盗賊「鎖に繋がれて移送されてると…なんだか気力が無くなっていくわ」

盗賊「そうか」

女盗賊「奴隷にされた人達はこうやってやつれて行くのね」

盗賊「だろうな…明日の身を案じながら絶望と戦うんだな」

女盗賊「戦う?…その気力が無くなって行くと思うわ」

盗賊「そうか…甘いのは俺の方か…絶望しながら憎悪や憎しみが沸くんだな」

女盗賊「そう…そんな感じ」


ヒラヒラ


妖精「…そして死んだ後その魂は無念を抱えて狭間を彷徨う」

女盗賊「!?妖精さん?」

妖精「魂の行く先は黄泉」

女盗賊「狭間に近づいてるのね?」

妖精「その魂が黄泉で実体化した物が魔物」

女盗賊「妖精さんどこに居るの?」

妖精「魔物がちょっとしたきっかけで狭間に迷い込んで」

盗賊「ん?ブツブツ聞こえるな」

妖精「狭間が遠くなった時にこの世界に取り残されるんだよ」

女盗賊「因果…人間たちの行いが魔物を呼んでるのね」

妖精「そう…そうやって「あの世」と「この世」は調和しているんだ」

女盗賊「その調和を乱しているのはもしかして…」

妖精「人間だよ…そして崩れた調和を戻すための大破壊が魔王の復活」

女盗賊「え…」

妖精「でも200年以上昔のお話」

女盗賊「…私の兄が言っていた事と同じ…本当にそんな事があったのかしら」

盗賊「んあ?兄?…あいつか盗賊ギルドマスター」

盗賊「話がよくわからんな…兄がどうした?」

女盗賊「剣士と妖精を兄に会わせた方が良いかもしれない」

盗賊「…なんだ急に!行き先が反対方向じゃねぇか…あいつはシャ・バクダに…」

女盗賊「そうね…話が急すぎるわね」

盗賊「まぁゆっくり考えてからにしろ」



----------



盗賊「湯を持って来たぜ」

女盗賊「ありがとう」

盗賊「水袋に小分けして今日はそれを抱いて寝ろ」

盗賊「毛布は今ある分しか無ぇから牢の中に牧草を多めに入れてやる…っよ」ガッサ ガッサ

盗賊「これで良いな?…あとは静かにしてろ」


ヒソヒソ ヒソヒソ

ムキー

ヒソヒソ ヒソヒソ


盗賊「特に娘たち4人…文句ばっかり言ってねぇでガマンしろ」

『商隊2日目』

ガラゴロ ガラゴロ

盗賊「延々と馬のケツ見てるのもいい加減飽きるな…剣士!お前何か話せねぇのか?」

剣士「…」

盗賊「大した良い眺めでも無ぇしなぁ…」

女盗賊「久しぶりに模擬戦でもやってみたら?体なまってるのではなくって?」

盗賊「こいつとか?…んむ…面白そうだな」

剣士「…」???

盗賊「よし!今日のキャンプで一回やってみるか」

剣士「…」???

盗賊「まぁ心配すんな…木の枝を使って戦闘の立ち回りをやるだけだ…怪我しない程度にな」

盗賊「魔法とかそういうのは無しだ…使えるかどうか知らんが」

盗賊「武器の使い方を知らないなら教えてやる…まぁ一回やると大体適正は分かるな」

盗賊「お前も男ならちったぁ戦える様になった方が良い」



---夜---

盗賊「暗くなっちまったな…焚火付近でやるか…ホレ!」ポイッ

剣士「…」パス

盗賊「その枝が剣替わりだ…ゆっくり行くぞ?…防いでみろ」カン カン コン

盗賊「…そうだ!そんな感じだ」

盗賊「もう少し早く行く!!構えろ」ダダッ カンカン コン

盗賊「やるじゃねぇか…次は打ち込んで見ろ」

剣士「…」スッ

盗賊「おいおい待て…四つ足になんのか?それじゃ枝持てねぇんじゃねぇのか?」

剣士「…」

盗賊「…まぁ良い来てみろ」

剣士「…」スッ ピョン カン

盗賊「!!うぉ…あぶねぇ」タジ

盗賊「お前のその低い踏み込み…すげぇじゃねぇか!!」

もう一回やってみろ!!

うぉ!!いで!!

んのやろう…

もう一回だ!! 

うらぁ!防いだぞ!!その後どうする!?

何ぃ…飛ぶのか

わかった本気出してやる…コイ!!


カン カン コン ビシ イデッ

ピョン クルクル シュタ ビシ アダッ

ダダッ カン ポカ イダッ


盗賊「ぜぇぜぇ…わかったわかった…お前にゃ敵わん」

盗賊「お前の剣筋は普通の剣士では無い事がよく分かった…はっきり言う…お前はすげぇ!!」

盗賊「今日はもうヤメだ…おぉイテテ」

『馬車』

女盗賊「フフ完敗だったわね…怪我してない?」

盗賊「大した事は無いんだが…見てみろ…」

女盗賊「あら…急所にばかり当たってる様ね?」

盗賊「目が見えてないのは大したハンデでは無いな…ありゃ」

女盗賊「ここから見てても分かったわ…四つ足の地面を這う様な飛び込み」

盗賊「あぁ…たまげた…そこからの切り上げが見えんのだ」

女盗賊「戦い辛い?」

盗賊「そういうレベルでは無い…勝負にならん…速すぎる」

盗賊「普通は剣筋や目の動き、体の動きで攻撃の来る方向がある程度分かる筈なんだが…」

盗賊「ノーモーションであの速さは避けれん」

盗賊「低い所からの切り上げで…見ろ…内股、内腿、脇腹…痛い所にばかり当てて来やがる」

女盗賊「目で見て戦っていないからかしら?」

盗賊「…そうかもしれん」

女盗賊「あなたも教えてもらったら?」

盗賊「シャクだがそうさせて貰う」

女盗賊「フフ素直ね」

盗賊「いやな…悪いがあいつに勝てる戦士は限られると思うぞ…力こそ無いが動きがパネェ」

女盗賊「本当不思議な子ね」

盗賊「白狼の剣士…その名の通りだ」

『商隊3日目』

ガラゴロ ガラゴロ

盗賊「おい見ろ!見えてきたぞ!中立の国セントラル」

盗賊「日没前には入れそうだな…今日は旨い物食えるぞ!もうちょい辛抱しろ」


ヒソヒソ ヒソヒソ

アーデモナイ コーデモナイ

ムキー ムキー

ヒソヒソ ヒソヒソ


盗賊「入国するまでは奴隷らしくしててくれぃ」

盗賊「あと剣士!何かあっても威圧的に振舞え…ナメられると暴漢に後を追けられる」

盗賊「女盗賊!もしはぐれたら貧民街の酒場で合流だ…おい聞いてんのか?」


----------


盗賊「なんだありゃ…200いや500くらい居るな?」

女盗賊「何?」

盗賊「兵隊だ…戦争にしちゃ少くねぇ…二個中隊ほどか」

女盗賊「何かあったのかしら?」

盗賊「物騒だな…今から移動するとなると夜行軍になるんだが何やってんだ?」

女盗賊「魔物退治かしら?」

盗賊「移動し始めてる…すれ違う形になるぞ!おしゃべりはここまでだ」


----------

盗賊「ちぃ…商隊の先頭が止まりやがった…面倒だな」

盗賊「ちょいと足止めだ!おとなしくしてろよ?」

女盗賊「ちょっと…向こう側」

盗賊「ん?」

女盗賊「あの馬車」

盗賊「…法王庁か…面倒には巻き込まれたくねぇ」

女盗賊「この様子からすると大規模な奴隷狩り…」

盗賊「神様気取りの体の良い奴隷狩りな…糞くらえだ」

女盗賊「こっちに来ない事を祈るわ」

盗賊「法王庁が手薄なスキにお宝頂くって考え方もある」

女盗賊「前向きなのね」

盗賊「俺ぁ泥棒だ…子供たちを盗まれっぱなしじゃ気が済まねぇ…利子付きでキッチリとな」



----------



盗賊「ふぅ…行ったか」

女盗賊「夜行軍の理由はどう考えて?」

盗賊「トアルの孤児院に来たのも朝っぱらだ…目立たん様に行動してるんだろ」

女盗賊「あの数ではどのみち目立つのでは無くって?」

盗賊「ふむ…夜は狭間が近いと言っていたな?関係あるかも知れんな」

女盗賊「考えすぎでは?」

盗賊「まぁ…理由はわからんが…素人ではない軍隊の行動だから必ず理由はあるな」

---門---

門番「荷物とパスを確認する!!」

盗賊「これがパスだ」ポイ

門番「荷物は…奴隷か…この後どこに行くんだ?」

盗賊「中央広場で取引相手を待つ…すでに売約済みなんだ」

門番「む…おかしいぞ。中央広場で奴隷の取引は禁止の筈だ」

盗賊「…知るかよ!そこに指定されてんだよ」

門番「取引相手は誰だ?」

盗賊「…言える訳ねぇだろが」---マズイ---

門番「衛兵を呼ぶ」

盗賊「おい待てよ!面倒事にすんなよ」(剣士!威圧するフリ行け!)ヒソ

門番「む…なんだこいつは」タジ

盗賊「そいつはアサシンだ…法王庁のな」

門番「脅迫か?」

盗賊「…もう分かるだろ?取引相手が誰だか」

門番「…話は聞いていない」

盗賊「あぁぁ面倒だな…俺がゲロったのバレたらお前もタダじゃ済まんぞ?」

門番「衛兵!衛兵!」

盗賊「っち…法王の使いだ!本当は法王庁に直接運ぶ予定だったんだが予定が変わったんだとよ」

盗賊「さっき門の外で法王の使いに会ったんだが、今引き取れないから広場で待てと指示されたんだよ」

盗賊「もう知らねぇからな?」

盗賊「俺ぁ厄介事には関わりたくねぇ…馬車ごと置いていくからお前らで何とかしろや!」

衛兵「どうした!?」ダダダッ

盗賊「上等な奴隷移送させておいてこの扱いかよ!!」ペッ

門番「……この商人を中央広場までお連れしろ…法王庁の御指示だ」

衛兵「はぁ?何でお前が指示するの?指示書はどうした?」

盗賊「分かれば良いんだよ…俺がゲロったのは秘密にしてくれ…裁判なんて御免だぜ」

衛兵「ゲロった?」

盗賊「…見てくれ…これが運んでる物だ」

衛兵「女、子供か」

盗賊「どういう意味か分かってんだろ?俺も本当は関わりたくねぇ」

衛兵「……付いて来い!!荷は隠せ!!」

『中立の国セントラル』

ガヤガヤ ガヤガヤ

盗賊「ぶはぁ!!ヒヤッとしたぜぇ」カチャ カチャ

盗賊「今鍵開けてやるからな…出たら一旦人ゴミの中に入って皆別行動だ」カチャ カチャ

女盗賊「もう膝が痛くて…」

盗賊「金は持ってるな?」カチャ カチャ

女盗賊「大丈夫よ」

盗賊「集合場所は貧民街のカク・レガという酒場だ。俺は馬車を預けてから行く」カチャ カチャ

女盗賊「剣士は?」

盗賊「お前が手を引っ張ってやってくれ。忙しくて面倒見切らん」カチン

女盗賊「わかったわ」

盗賊「開いたぞ!!自由だ!!出て走れ!!」

女盗賊「行くわよ!!剣士!!手を!!」グイ


わ~い

ウフフ~

キャッキャ

ムキー


盗賊「ようし!!ひとまずこれで安全だな…あいつら速攻居なくなったな」


---旨い物でも食うかぁ!!---

『中立の国セントラル』

ガヤガヤ ガヤガヤ

盗賊「ぶはぁ!!ヒヤッとしたぜぇ」カチャ カチャ

盗賊「今鍵開けてやるからな…出たら一旦人ゴミの中に入って皆別行動だ」カチャ カチャ

女盗賊「もう膝が痛くて…」

盗賊「金は持ってるな?」カチャ カチャ

女盗賊「大丈夫よ」

盗賊「集合場所は貧民街のカク・レガという酒場だ。俺は馬車を預けてから行く」カチャ カチャ

女盗賊「剣士は?」

盗賊「お前が手を引っ張ってやってくれ。忙しくて面倒見切らん」カチン

女盗賊「わかったわ」

盗賊「開いたぞ!!自由だ!!出て走れ!!」

女盗賊「行くわよ!!剣士!!手を!!」グイ


わ~い

ウフフ~

キャッキャ

ムキー


盗賊「ようし!!ひとまずこれで安全だな…あいつら速攻居なくなったな」


---旨い物でも食うかぁ!!---

『酒場カク・レガ』

カラン コロン

マスター「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」

盗賊「あぁ…カウンターで良い!!何がある?」

マスター「サボテンのテキーラが旬になりますが…」

盗賊「それで良い…ボトルで持ってこい」

マスター「かしこまりました」

盗賊「この店には女は居ねぇのか?」

マスター「あいにくこの辺りでは稼ぎが少なくて…その…中央の方に人が集まっておりまして」

盗賊「ヌハハそりゃ丁度良い…」

マスター「はい??」

盗賊「ここで連れと待ち合わせてるんだが…それらしい奴は来てねぇか?」

マスター「今日はまだ見えてない様です」

盗賊「そうか…待たせてもらう」

マスター「かしこまりました…ごゆっくりと」

盗賊「…ところで」

マスター「はい?」

盗賊「夕暮れ前に法王庁が大軍連れて外に出ていくのを見たんだが…何か知らんか?」

マスター「はぁ…このところ客足が遠のいておりまして…」

盗賊「まぁ仕方ねぇな…女が居ねぇと情報も集まらんだろうな」

マスター「よくご存じで…」

盗賊「…」ジロリ

マスター「な、何か?」

盗賊「口は堅い様だな」

マスター「御冗談を…」

盗賊「まぁ良い…女5人雇えるか?」

マスター「5人!?」

盗賊「上玉だ…まぁ本人達にやる気を聞いてみるのが先なんだがな」

マスター「どちらの女性で?」

盗賊「もう直ぐ来ると思うが…育ちは悪いが容姿は保証する」

ペチャクチャ

お姉ぇここで合ってるの~?

あいつさぁ!!同じくらいじゃないの?

でも好みだなぁウフフ

この階段の下?

ペチャクチャ



盗賊「噂をすりゃ何とやら…来たぜマスター」

マスター「いらっしゃいま…」

娘1「あ!!いたー!!」

娘2「何このシケた店…」

娘3「みーっけウフフ」

娘4「ちょっと休んで良い~?」

女盗賊「待った?」

マスター「…」

盗賊「…と、まぁこんな感じだ」


----------

盗賊「子供たちはどうした?」

女盗賊「近くの宿屋で剣士が付いてくれてるわ…もう寝てると思うけど」

盗賊「そうか…宿代はどうだ?」

女盗賊「それ程高くはないけれど…あまり長く居れる程余裕は無いわね」

盗賊「この人数じゃしょうがねぇか」

女盗賊「そうね…でも働く場所には困らないと思うわ」

盗賊「この店で女5人雇ってくれるとよ!!なぁマスター!!」

女盗賊「それはありがたいけれど大丈夫かしら…」

盗賊「稼ぎゃ良いんだよ!前とさして変わらん」

女盗賊「あなたはどうするの?」

盗賊「俺ぁ泥棒だ…稼ぎ方はそれしか無ぇ…ただ今は情報が欲しい」

女盗賊「盗賊ギルド支部は今機能してるのかしら?」

盗賊「さぁな?普段顔出さねぇ奴がノコノコ行って相手されるとは思わんがな」

女盗賊「それもそうね…」

盗賊「金が無くなるまでゆっくり情報集めが先だ」

女盗賊「そういえばさっき宿屋で妙な噂を聞いたわ」

盗賊「お!?」

女盗賊「近くで魔女が出たらしいの…捕まえたら金貨一袋らしいわ」

盗賊「近くというだけでは動けんな…それから金貨一袋ってのもケチくさい話だ」

女盗賊「その魔女の特徴が…赤い瞳」

盗賊「ぶっ!!…そりゃまさか」

女盗賊「噂が広まるのって早いものねフフ」

盗賊「…」

女盗賊「ん?どうしたの渋い顔して?」

盗賊「ぃぁ…まさかとは思うが…法王庁は魔女狩りに行った訳ではあるまいな?」

女盗賊「…可能性としては…有りね」

盗賊「二個中隊の軍隊だと近隣の村は蹂躙されるぞ」

女盗賊「考えたくないわね」

盗賊「そうだな…考え過ぎと思いたい!夜行軍の理由とも結び付かねぇし…」

盗賊「いや!そもそも魔女なんか俺は見てねぇ!」

盗賊「ぬあぁぁ何だか腹がムカムカする」

『数日後』


---夜---

タッタッタ

盗賊「剣士!付いてきてるな?」

剣士「…」

盗賊「よし…お前はここで待機だ」

盗賊「俺はあの屋敷に入って金目の物をかっぱらって来る」

盗賊「追手が出て来たらお前は俺の逃げ道を確保してくれ」

盗賊「逃げるルートは今通って来た屋根を伝って中央の方向に向かう」

盗賊「出来るな?追手を軽く掻き回すだけだ…[ピーーー]なよ?」

剣士「…」

盗賊「よし!10分で戻る!」タッタッタ



---10分後---


ガチャーン パリーン

居たぞ!そっちだ!追え!

ガタガタ タッタッタ


盗賊「見つかったぁ!!剣士!!頼む!!」タッタッタ

衛兵1「ピーーーーー!!」

剣士「…」---笛!?---

衛兵2「おい!!そこのやつを捕まえろ!!」

剣士「…」ピョン ドシ

衛兵2「ぬぁ!!お前も仲間かぁ!!」

衛兵3「捕まえろ!!」

衛兵4「どうした!?」

衛兵1「こいつら泥棒だ!!囲めぇ」

ピョン クルクル シュタッ


衛兵1「もう一人逃げてる!!屋根に登ってるぞ!」

衛兵2「分かったぁ」

剣士「…」ピョン ドシ

衛兵2「ぐぁ…邪魔をするな!」

剣士「…」ヒョイ

衛兵2「おのれちょこまかと…衛兵!衛兵!」

衛兵1「ピーーーーー!!」


ピョン ピョン ピョン


衛兵3「何ぃぃ!!もう屋根の上に」

衛兵「追えーーー追うんだぁぁ」

ピョン クルクル シュタッ


衛兵1「もう一人逃げてる!!屋根に登ってるぞ!」

衛兵2「分かったぁ」

剣士「…」ピョン ドシ

衛兵2「ぐぁ…邪魔をするな!」

剣士「…」ヒョイ

衛兵2「おのれちょこまかと…衛兵!衛兵!」

衛兵1「ピーーーーー!!」


ピョン ピョン ピョン


衛兵3「何ぃぃ!!もう屋根の上に」

衛兵「追えーーー追うんだぁぁ」

『中央広場』

ピョン タッタッタ

盗賊「よし!追いついて来たな!?ちぃと荷物が重い…こっちを持て」ポイ

剣士「…」パス

盗賊「まだ衛兵は追ってきてるな?」

盗賊「中央の人混みでお宝の半分をバラ撒け…人に揉まれる前に逃げるぞ!!」

盗賊「俺からはぐれるなよ?行くぞ」タッタッタ

衛兵「まてぇぇぇぇぇ」


ガヤガヤ ガヤガヤ

ん?なんだ?白いフード?

どん!!おい!気を付けろ!!

バッサー キラキラキラ

うぉ!!金貨だ!うぉ!!宝石だぁ!

バッサー キラキラキラ

うおぉぉぉ金だぁぁぁ

バッサー キラキラキラ


衛兵「ぬぁ!どけ!!お前らどけぇ!!」

大衆「金だ金だぁぁぁぁ」ドヤドヤ

衛兵「んがぁぁ…」


盗賊「剣士!トンズラするぞ!!」タッタッタ

剣士「…」タッタッタ

盗賊「ぬははチョロいな…おっと俺としたことが…フードがはだけちまう所だったぜ」

盗賊「フードは深く被れ…盗賊の極意だ」ファサ

剣士「…」ファサ

『酒場カク・レガ』

ガヤガヤ

マスター「いらっしゃいませ」

盗賊「おう!マスター!ちったぁ客が入ってる様だな」

マスター「おかげさまで」

女盗賊「あら?いらっしゃい…飲んで行く?」

盗賊「あぁ頼む!剣士の分もだ!おい…例のやつ出してやんな」

剣士「…」ヨッコラ ドン

女盗賊「何かしら?」

盗賊「おしゃれな洋服だ!20着はある…その貧相な洋服じゃ客の入りも悪いだろ」

女盗賊「あら?気を使ってくれたのね?」

盗賊「それからコレはお前にだ」ポイ

女盗賊「ネックレス?」パス

盗賊「虹のしずくという物だ…偶然見つけたもんでな」

女盗賊「フフフ盗んだ物でわたしの気を引けると思って?…でも嬉しいわ…似合う?」

盗賊「幸運を呼ぶ物だそうだ…大事にしろ」

女盗賊「娘たち!?お土産を持ってきてくれたわ…おいで」


ムギャー ワタシコレ イマキガエテイイ?
エー アレモコレモ コッチカナ アッチカナ?
イーナイーナ キャー ズルイ ワタシモー
ムキー コレニアウ? エ? オッパイミセロ?

盗賊「それからマスター!これで客に旨い酒出してやってくれ」ジャラリ

マスター「かなり多い様ですが良いのですか?」

盗賊「騒がしてる迷惑料だと思ってくれ」

女盗賊「どこに行ってたのよ」

盗賊「まぁな…今日の収穫はその洋服20着がメインだ…残りは剣士がほとんど捨てちまったヌハハ」

女盗賊「フフらしいわ」

盗賊「でもな?金貨一袋ぐらいは残ってる…お前が預かっとけ」ドン ジャラ

女盗賊「助かるわ…これで子供達を孤児院に預けられそう」

盗賊「あぁその方が安全だ」

女盗賊「他には何か収穫はあって?」

盗賊「まだ無いな…地理が大体わかって来たぐらいか」

盗賊「あぁそういや貴族居住区は割と警備が良いな…笛ですぐに衛兵が飛んでくる」

女盗賊「あまり無理は出来ないっていう事ね?」

盗賊「んむ…極力隠密で動く必要がある」

女盗賊「私に何か出来て?」

盗賊「逃げ道のルート確保は剣士で問題ない…俺が鍵開けをやっている間の見張りが欲しい」

女盗賊「分かったわ…次はいつ?」

盗賊「目標を決めたらまた連絡する」

『貴族居住区』

盗賊「あそこの建屋だ」

女盗賊「もう少し夜が更けるまで待ったら?」

盗賊「いぁダメだ逃げ道で人に紛れんと足が付く」

女盗賊「中に人が居るのでは無くって?」

盗賊「…多分居ねぇ筈だ。この時間は貴族どもは食事パーティーに出てる」

女盗賊「今がチャンスね」

盗賊「剣士!この間と要領は一緒だ。お前はここで待て」

盗賊「必ず10分で戻る。それまで隠れていてくれ。ここを通れんとえらく大回りする事になっちまう」

剣士「…」コクリ

女盗賊「大分意思疎通出来るようになってきたわね?」

盗賊「無駄口叩いてないで行くぞ!来い!」タッタッタ

女盗賊「鍵開けの間に見張ってれば良いのね?」

盗賊「あぁ…裏の勝手口から行くぞ」



----------


??「よし!情報通り手薄な様だ…この通路の奥からアクセス出来る」

??「待って…誰かいる」

??「む…去るのを待つか」

??「あたし見てこよーか?」

??「むぅ…私が行こう…出来れば戦闘は回避したいのだがな」

??「奥の区画はここしか入るところ無いよ?」

??「仕方あるまい…一発で仕留める…クロスボウのボルトは何発持ってる?」

??「4…」

??「私が奴の背後に回って仕掛ける…やり損じた時はお前はここから援護するのだ」

??「アイアイサー」

??「私が仕掛けるまで動くな」

??「りょ」



----------

??---妙だな…奴は何をしているというのだ…動かんな---

??---殺したくは無いのだが…えぇぃ邪魔な奴め---

??---恨むなよ--- シュン!!


剣士「…」---何か…来る--- ピョン ヒラリ

??「何ぃ!?奴は後ろが見えるいのか?」---援護撃て!--- シュン シュン

剣士「…」---挟まれている?--- ピョン クルクル シュタ

??「外したか!!えぇい!!笛を吹かれる前に!!」タッタッタ ブン

剣士「…」ヒラリ

??「お前は只者では無いな?法王庁の者か!?」ブン

剣士「…」 クルクル シュタ

??「最後の2本!!」シュン シュン

剣士「っつ!」ヒラリ

??「…一旦引くぞ」タッタッタ

??「わーーてるってコッチ!!」タッタッタ

??「今日は引き返す…あんなのが居るとは想定外だ」

??「追って来てないヨ」

??「衛兵では無いのか…同業者と見るか…いゃ」

??「あんな目立つ格好で?白い毛皮」

??「むぅ…作戦を変えるか…正攻法では城まで行けん様だ」

??「敵だったのかな?」

??「貴族居住区にあれほどの者が居るとなると下手に手は出せん」



----------


タッタッタ

盗賊「戻ったぜ!うまく行った…ん?」

剣士「…」フラ

盗賊「何かあったのか?…む?ボルトが落ちてんな」

女盗賊「あなた!血が出てるじゃない!どうしたの?肩ね…」

盗賊「衛兵には見つかってねぇ…今のうちにズラかるぞ」

女盗賊「走れて?…肩を」グイ

剣士「ぁぁぁ」

女盗賊「…ダメよ!抜いてはダメ…少しの辛抱よ」

盗賊「下から戻ろう…わざわざ屋根上行くこともあるめぇ」

女盗賊「見たところ大事には至ってなさそう…止血できればすぐに良くなるわ」

盗賊「ボウガン使うって事は同業者の可能性が大きいな」

女盗賊「相手は逃げてしまった?」

盗賊「引き際が早いのはプロだ…どこかで狙ってるかもしれんから建物の陰を走る」

女盗賊「後を付けられる可能性はどう考えて?」

盗賊「あぁ…仕方ねぇから中央で金バラ撒いて紛れる」



----------

??「白いのが来たよ!?あと仲間が2人」

??「やはりここを通るか…私達を追っているか?」

??「わかんない…どうする?」

??「行くさ…私の邪魔をしたからにはツケは払ってもらう」

??「もうボルトが無いよ?」

??「構わん…何者なのか探る」

??「なんかオシャレな感じ」

??「白いのがリーダーと見るか?…フフ…お手並み拝見と行こう」

??「なんか歩き方がおかしい…ボルト当たってたかな?」

??「…そうだな…ぃゃしかし四足歩行…だと?何なのだあいつは…」

??「走って行っちゃうよ」

??「屋根伝いに追う」

??「中央の方向」

??「むぅ…人通りを避けんか…逃げられるなこれは」

??「あ!!!何かバラ撒いてる」

??「ちぃ…こうも予想外が続くとはな」

??「あぁぁ人混みに…」

衛兵「居たぞ!!屋根の上だ!!ピーーーーーー」

??「笛か!仕方ない私たちも人に紛れるぞ…後は分かるな?」

??「いちいちウルサイなぁ…分かってるって」

衛兵「ピーーーーー」

『酒場カク・レガ』

ワイワイ 

盗賊「…じゃ頼むぜ?」

マスター「話はつけておきます」

盗賊「明日には荷物も持って行きたいんだが…よろしく頼む」

娘「あ!お姉ぇ!!おかえりぃ」

盗賊「お?戻ってきたな…どうだ剣士の具合は?」

女盗賊「ボルトを抜くのにちょっと体力消耗しちゃったけど…しばらく安静にしていれば直ぐに良くなるわ」

盗賊「痛がってたか」

女盗賊「当たり所が悪くなくて良かったわ…もしも体に当たっていたらボウガンの貫通力だと命に係わるから」

盗賊「まぁ無事なら良い」

女盗賊「ボウガン使っていたのは2人だったそうよ」

盗賊「ふむ…同業者に間違いなさそうだが、いきなりボウガン撃つってなると盗賊ギルドの者では無さそうだな」

女盗賊「何かの抗争かしら?」

盗賊「殺してでもあそこより先に進みたい何かがあると見た…きなくせぇ」

女盗賊「まだ関わるつもり?」

盗賊「いや…しばらく休業だ」

女盗賊「その方が良いわ」

盗賊「十分稼いだからなヌハハ明日は引っ越すぞ」

女盗賊「あぁマスターが言ってた裏の空き家ね」

盗賊「聞くところによると下水へ行く抜け道があるらしい…俺達にはもってこいだ」

女盗賊「家の中に?」

盗賊「どうやら前住んでた奴が地下にだれか監禁してたらしく、そいつが逃げる為に壁に穴開けたんだとよ」

女盗賊「フフなんだか気持ち悪いわね」

盗賊「良いじゃねぇか!下水も俺たちのモンだ…引っ越した後は下水がどこに繋がってるか探検だ」

女盗賊「私は降りるわ」

盗賊「ケッ…勝手にしろやい」

『酒場カク・レガ』

ワイワイ 

盗賊「…じゃ頼むぜ?」

マスター「話はつけておきます」

盗賊「明日には荷物も持って行きたいんだが…よろしく頼む」

娘「あ!お姉ぇ!!おかえりぃ」

盗賊「お?戻ってきたな…どうだ剣士の具合は?」

女盗賊「ボルトを抜くのにちょっと体力消耗しちゃったけど…しばらく安静にしていれば直ぐに良くなるわ」

盗賊「痛がってたか」

女盗賊「当たり所が悪くなくて良かったわ…もしも体に当たっていたらボウガンの貫通力だと命に係わるから」

盗賊「まぁ無事なら良い」

女盗賊「ボウガン使っていたのは2人だったそうよ」

盗賊「ふむ…同業者に間違いなさそうだが、いきなりボウガン撃つってなると盗賊ギルドの者では無さそうだな」

女盗賊「何かの抗争かしら?」

盗賊「殺してでもあそこより先に進みたい何かがあると見た…きなくせぇ」

女盗賊「まだ関わるつもり?」

盗賊「いや…しばらく休業だ」

女盗賊「その方が良いわ」

盗賊「十分稼いだからなヌハハ明日は引っ越すぞ」

女盗賊「あぁマスターが言ってた裏の空き家ね」

盗賊「聞くところによると下水へ行く抜け道があるらしい…俺達にはもってこいだ」

女盗賊「家の中に?」

盗賊「どうやら前住んでた奴が地下にだれか監禁してたらしく、そいつが逃げる為に壁に穴開けたんだとよ」

女盗賊「フフなんだか気持ち悪いわね」

盗賊「良いじゃねぇか!下水も俺たちのモンだ…引っ越した後は下水がどこに繋がってるか探検だ」

女盗賊「私は降りるわ」

盗賊「ケッ…勝手にしろやい」

『隠れ家』

ヨッコラ セト

盗賊「ふぅ…これで最後か?」

女盗賊「あとは着替えだけよ…後で持ってくるわ」

盗賊「剣士!お前は休んでろ」

剣士「…」イテテ

盗賊「俺はちぃとしたの下水見てくるぜ…あとの片づけは女盗賊と娘たちに任せた」

女盗賊「娘たち~!!ベット移動させて頂戴」

娘たち「ええぇぇぇぇ!?」

盗賊「じゃぁ行ってくるな!」

剣士「…」ノソ

盗賊「お?お前も行くか?」

女盗賊「昨日の今日なのに平気なの?」

盗賊「まぁゴロゴロしててもつまらんだろ…付いてこい」

盗賊「あぁそうだ!金は好きな様に使っていいぞ…宝石だけは残しとけ」

女盗賊「あら?良いの?」

盗賊「どうせパクッて来た金だ!全部使っちまえ!!ヌハハ」

娘たち「ぬぉぉぉぉっぉぉぉぉみなぎってキターー」

盗賊「行くぞ!!」タッタ

『下水』

ピチョン ピチョン

盗賊「こりゃ迷路だな…あっちが海側…セントラル全域に下水が入り組んでるな」

盗賊「剣士!ちょっと待ってろ…地図買ってくる」

剣士「…」コクリ

盗賊「ここを動くなよ?迷子になるぞ」ダッ



---しばらく後---


盗賊「悪ぃわりぃ…こいつがなかなか手に入らなくてな…糸だ」

剣士「…」??

盗賊「測量しながら進むぞ…この地図の上に下水の見取り図を書き込む」

盗賊「ちぃと大変なんだがな」

盗賊「お前は風の流れてる方向はしっかり分かるな?」

剣士「…」コクリ

盗賊「指さしてくれ…なるほどそっちか…次はこの三差路はどっちだ?…そうか」

盗賊「よし!進むぞ…あとは…」

---数日後---


盗賊「分かってきたぞぉ!!ここの水は貴族居住区の堀から落ちてきてる水だ」

盗賊「つまり堀に捨てればここで回収できる訳だ…うまい具合に枝が引っかかってるから全部あそこで回収出来る」

盗賊「よし!次行くぞ…ここの梯子は城の方まで繋がっていそうだ」

盗賊「だが何かおかしい…こんなに高さが必要な理由がわからんな…奥にでかい空間でもあるってのか?」

盗賊「うむ…風の向きもそっちから出てるな」

盗賊「剣士!ついて来れてるか?ん?」

剣士「…」ユビサシ

盗賊「なんだ?あぁ鉄格子か…これ以上行くのは無理だってか」

盗賊「ちぃと鍵が付いてないか見てくる」

盗賊「無ぇな…ナムサン」

剣士「…」ユビサシ

盗賊「ん?まだ何かあんのか?…動物の死体か?骨が散らばってんな…こりゃ奥は魔物の巣になってんのか?」

盗賊「おい!今こそ妖精の出番だろ居るなら出てこい」

剣士「…」フリフリ

盗賊「ったく役に立たねぇ妖精だな…戻るしかねぇか」

盗賊「この鉄格子の隙間は俺じゃ入れんな…剣士だと行けそうなんだが…女盗賊に協力してもらうしか無ぇな」

盗賊「剣士!今日は一旦戻るぞ」

『隠れ家』

盗賊「うはぁ…随分汚れたな」

剣士「…」フリフリ

女盗賊「二人とも一回水で流してきてよ…臭いわ」

盗賊「あぁ分かった…後で酒場に行く」

女盗賊「剣士もびしょ濡れじゃない」

盗賊「そりゃそうと随分色んなもの買いこんだな?」

女盗賊「良いから早くいって!!鼻が曲がりそう!!」

盗賊「あいあい」



『酒場』

ワイワイ ガヤガヤ

マスター「いらっしゃいませ」

盗賊「おぉマスター繁盛してるじゃねぇか」

マスター「おかげ様で」

盗賊「空いてるかぃ?」

マスター「カウンターでしたら」

盗賊「いつもの酒2つ頼む」

マスター「あいわかりました」


ポロロン ポロロン ♪

ぃょ~う アンコール


盗賊「お前は盗賊業は半端だが色んな事が出来るな…いつピアノを覚えた?」

女盗賊「只の趣味よ」

盗賊「手伝って貰いたい事があるんだが…」

女盗賊「まさかあの下水?」

盗賊「そのまさかだ」

女盗賊「私は降りるって言ったわ」

盗賊「まぁ聞いてくれ」

女盗賊「…」

盗賊「下水の見取り図を作ってるんだが、どうやら城か法王庁まで繋がってそうなんだ」

女盗賊「休業するのでは無くって?」

盗賊「いや…まぁ…俺ぁ子供たちを盗まれてしまってだな…行方が気になるのだ」

女盗賊「…」

盗賊「あの中に心臓の悪い子が居てな…どうしても気になる」

女盗賊「それで寝る間も惜しんで探索って…わけね」

盗賊「今のところ危険は無い…と思う」

女盗賊「自信無さげね…いいわ。やってあげる」

盗賊「すまん」

『隠れ家』


---夜---

盗賊「今日は一応フル装備で行く…もしかすると戦闘になるかもしれん」

盗賊「剣士の肩の具合はどうだ?」

剣士「…」コクコク

盗賊「大丈夫そうだな…お前はロングソードとナイフを持て」

盗賊「女盗賊はいつもの弓だな」

盗賊「俺はダガーと泥棒用の道具一式だ」

盗賊「下水の見取り図はコレだ…海側に向かえば貧民街周辺に出るから、もしはぐれても何とかなる」

盗賊「今から行くのは…恐らく法王庁周辺だ…手薄な今しかチャンスは無いと見ている」

盗賊「目標は子供たちの安否確認と出来れば救出…だが俺は途中からそこには行けん」

盗賊「途中の鉄格子から奥は女盗賊と剣士で行ってもらわねばならん」

女盗賊「フフかなり危険じゃない」

盗賊「剣士が居れば何とかなる…と思う」

剣士「…」

盗賊「夜が明ける前に戻ってくるぞ…出発だ!!」

『下水』

ピチョン ピチョン

女盗賊「よくこんなところまで探索したわね…臭くてもう鼻が利かないわ」

盗賊「そこから落ちてくる水は貴族居住区の水で割とキレイだ…汚れを落としておくと良い」ジャブジャブ

女盗賊「奥にある鉄格子が言ってたやつね」

盗賊「そうだ…いまからこの鉄棒で少し曲げる…うらっ!!」グイ グイ

女盗賊「この鉄格子を切るのは時間がかかりそうね」

盗賊「これで入れるか?」

女盗賊「んんん…何とか入れた」フゥ

盗賊「剣士も行けるか?」

剣士「…」グイ グイ

盗賊「行けそうだな?よしここで別行動だ…俺はこの鉄格子を道具で切って遅れて向かう」

盗賊「地図から察するに左手沿いに行けば法王庁方向の筈だ…俺も後で左手沿いに追う」

女盗賊「わかったわ…剣士は私から離れないで?」

剣士「…」コクリ

女盗賊「じゃぁ気を付けて」タッタッタ


----------


女盗賊「おかしいわ…どうして骨が散らばっているのかしら」

妖精「…るよ」

女盗賊「妖精の声…狭間が近いのね?」

妖精「…が彷徨ってる」

女盗賊「誰が?」

妖精「沢山の魂が彷徨ってる」

女盗賊「どういう事?ここは墓場だと言うの?」

妖精「それに近い何か…」

女盗賊「上に登る梯子!!…地図で行くと此処は…法王庁の内堀の筈」

女盗賊「妖精さん?先に様子を見ることは出来て?」

妖精「おっけー見てくる」パタパタ

女盗賊「どう?」

妖精「誰も居ないよ」

女盗賊「助かるわ」

妖精「言うことが盗賊とは違うね~~♪」



----------

女盗賊「さすがに深夜というだけあって誰も居ないわね?…法王庁の居住区はどこかしら?」

剣士「…」ユビサシ

女盗賊「え?こっち?あなた人の気配がわかるの?」

妖精「剣士はとても耳と鼻が利くんだよ…目が無い代わりにね」

女盗賊「ム…中から寝息が聞こえる…沢山人が居そうね」

妖精「見てくる~」ヒラヒラ

女盗賊「私も見える場所無いかしら…」

妖精「中に100人位人がいるよ。大人も子供も」

女盗賊「困ったわ…子供たちだけ連れて帰る訳に行かなさそうね」

妖精「全員足かせが付いてるよ」

女盗賊「鍵開けも必要なのね…私も中を見てみたい」

妖精「動いてる人は居ないみたいだけど」

女盗賊「そこの窓から見えるかしら?」ヨッ

女盗賊「100人も居ると子供たちがどれなのか分からない」

妖精「あ!!」

剣士「…」スラーン チャキ

女盗賊「え!?」

妖精「あぶなーい!!」シュン シュン

剣士「…」ピョン クルクル ヒラリ

??「そこまでだ…」

女盗賊「あ…」ゴクリ

剣士「…」タジ

??「剣を下に置いてもらおうか…さもなくばこの女の命は無い」

女盗賊「剣士…ごめん…」ゴクリ

剣士「…」タジ

??「クロスボウで狙われているのも忘れないでもらいたい物だな」

妖精「まじやば…まじやば…」オロオロ

??「なに!?妖精までお前たちの仲間だと?お前たちは一体何者だ」

??「おぉぉ妖精は高く売れる~♪」

女盗賊「…この声は」

??「答えて貰おうか…お前達の目的を…なぜ私の行く先で邪魔をしようとする!」

女盗賊「兄さん?」

??「何?…まさか」

妖精「アレレ?どういう展開?」

??「お前は…妹か!!」

??「ちょちょちょ…どうなっちゃってんの?どうするのこのクロスボウ」

??「顔を見せてみろ!!」ファサ

女盗賊「…」ゴクリ

??「なぜこんな所に居る!?私はお前に盗賊は止めろと言った筈だ!」

剣士「?」タジ

女盗賊「なぜここに居るかは私の方こそ聞きたいわ…兄さんはシャ・バクダに居なくてはいけないのでは無くって?」

兄「ちぃぃ時間が無い…私は今からここを爆破するのだ…」

女盗賊「中に子供たちが…」

兄「戻る気は無いと言うのか?…まぁ良い混乱に乗じて子供だけ連れて帰るんだ」

??「もう時間無いよ?そろそろ爆発するよ」

兄「ええぃ子供だけ連れてもう戻ってくるんじゃない!!分かったな!!」ダッ

女盗賊「兄さん!!貧民街の酒場『カク・レガ』待ってるわ」

兄「…お前も逃げる準備をしろ…巻き込まれるな」ダダダッ

『下水』

ギコギコ ギコギコ ギコギコ ギコギコ ポキン

盗賊「ふぅぅぅやっと切れた…これで俺も…フン!フン!」グイ グイ

盗賊「ぬぁぁ…ギリギリ…通れ…いや通る」ズル

盗賊「あーいててスリ剥いちまった…急がんとな」タッタッタ


ドーン!!  ドーン!!  ドーン!!


盗賊「うぉ!!何だ何だぁぁぁ」パラパラ

盗賊「真上か!?こりゃヤバイ事になってそうだ…大丈夫か!?あいつら」ダッシュ

盗賊「急げ急げ急げ急げぇぇぇぇぇ」ダッシュ

盗賊「何なんだここは人骨ばかりじゃねぇか!!」

盗賊「お!!居た!!無事かぁ!?女盗賊」

女盗賊「ここの梯子から子供たち下すの手伝って!!」

盗賊「俺が受け止めるから落とせ!」

女盗賊「ほら!子供達飛んで!!」ピョン ゴスン

盗賊「いでぇ!!ちょ・・」

女盗賊「早く!!」ピョン ピョン ゴスン ゴスン

盗賊「ぐぁ!…ひでぶ!!…おい!足かせ付いてるなら先に言ってくれ…死ぬ」

女盗賊「…私の背中につかまって…降りるわよ?」ノソノソ

盗賊「おい子供たち…足かせの鍵外すから動くな」カチャカチャ

女盗賊「剣士!もう限界よ!!あなたも来て!!」


ドーン!!  ドーン!!  ドーン!!


盗賊「上はどうなってんだ?」カチャカチャ

女盗賊「兄に会ったわ」

盗賊「なんで又セントラルに…この爆発はあいつの仕業か」カチャカチャ

女盗賊「多分ね」

盗賊「こりゃ面白くなってきたな」カチャカチャ

女盗賊「もう!!こんなに派手にやっては被害が大きすぎるとどうして考えないのかしら…」

盗賊「子供たち4人だけか…大分衰弱してるな…背負って行くしかあるまい」

盗賊「俺が2人背負ってやる…ズラかるぞ」


---よう!お前は何とか無事だったな---

---心臓苦しくねぇか?---

---落ち着いたら旨い物食わせてやる---

『セントラル外れ』

女海賊「ねぇ!私も連れてってよぉ」

アサシン「遊びでは無いのだぞ?」

女海賊「いいじゃん」

アサシン「では付いてこい…あまりはしゃぐな」スタスタ

女海賊「あの白い奴ってさぁ…仲間かなぁ?」

アサシン「私の妹と一緒に行動している以上、敵では無い…むしろ今は人手が欲しい」

女海賊「あの身のこなしは只者じゃないよね~」

アサシン「暗殺者の攻撃をこう何度もかわされてしまっては…認めざる負えんな…世の中には私たちより出来る者が居るという事を」

女海賊「私のクロスボウは百発百中なんだけどなぁ…」

アサシン「自惚れは死を招くぞ?」

女海賊「今度はボルトに炸裂弾仕込む!!絶対当てるんだから!!」

アサシン「もう敵では無い…しかしその向上心は君を強くする」

女海賊「ねぇねぇ…ここら辺ってさぁ…」

アサシン「お前にも見えるか…彷徨う魂を」

女海賊「ゾンビが出てきそう」ブルブル

アサシン「墓標は無いが…ここは墓場だ…この先に貧民街がある」

女海賊「走っていこうよぉ~気持ち悪い」

『酒場カク・レガ』

ワイワイ ガヤガヤ

女盗賊「いらっしゃい…ま…兄さん!」

アサシン「…女になったな」

マスター「いらっしゃいませ。お二人様ですか?」

アサシン「良い店だな…空いているかね?」

マスター「奥の方へどうぞ」

女海賊「へぇ~女の子いっぱい居るんだ」

アサシン「ワイン酒2つと果物を頼む」

マスター「かしこまりました…ごゆっくりと」


----------


アサシン「怪我は無いようだな?子供たちは連れて出られたのか?」

女盗賊「4人だけね…後は…」

アサシン「捉えられていた者たちは自力で脱出している者も多い…心配するな」

女盗賊「どうしてあんな事を…」

アサシン「拿捕されている者たちの解放と…法王庁への抵抗組織があるという民衆へのアピールだ」

女盗賊「やりすぎでは無くって?」

アサシン「人への被害は最小限に収めているつもりだよ」

女盗賊「盗賊ギルドが先導しているのかしら?」

アサシン「いや…ギルドは関わっていない…私が個人的に行っている」

女盗賊「シャ・バクダの本部はギルマス不在で良いのかしら?」

アサシン「ギルマスの代わりなどいくらでもいるのさ…出来るやつに任せている」

女盗賊「そう…いつからセントラルに?」

アサシン「…それは私の質問だよ…まだ盗賊を続けているのか?」

女盗賊「好きでやっている訳では無いわ…生きる為に仕方ないのよ」

アサシン「お前は医術や音楽の才がある…まっとうに生きて幸せになるのだ」

女盗賊「兄さんの方こそまだ勇者暗殺を考えてるの?」

アサシン「…兄さんというのはもう止めにしないか?むずがゆい…アサシンで良い」

女盗賊「もう勇者暗殺なんて馬鹿な事考えるのを止めて?昔の兄さんに戻って?」

アサシン「ハハ勇者暗殺は目的では無い…手段の一つだ」

女盗賊「なら他の手段を選べば良いのでは無くって?」

アサシン「…そうだな…魔王の復活を阻止する術が他に在れば…な」

女盗賊「…大破壊こそ魔王の復活と…妖精が話してくれた」

アサシン「それだ!!どうやって妖精を仲間にした?私はそれを聞きに来た」

女盗賊「…兄さん…私を気遣って来たのではなくて…利用しようとしているのね」

アサシン「すまない…言い方が悪かった」

女盗賊「もういいわ!!出て行って…」

女海賊「あ~あ女心分かってないなぁ…この場合アサシンが悪い」グビ

女盗賊「…」

アサシン「…紹介が遅くなった…こっちは女海賊だ…私の助手をしている」

女海賊「どもども!!」ビシ

女盗賊「初めまして…兄がお世話になっています」ペコリ

女海賊「ねぇねぇ妖精が見えるってどういう事か知ってる?」

女盗賊「え!?知らないわ?どういう事かしら…」

女海賊「普通の人が見えない物が見える…言い方を変えると特別な人…もっと言い方を変えると狭間に行くことの出来る人」

女盗賊「それがどうしたというのかしら?」

女海賊「妖精はそういう人を導く役目を持ってんの」

女盗賊「私たちは導かれてる?」

女海賊「どうしてだと思う?…それはね魔物と仲直りする為」

女盗賊「仲直りだなんて…そんなに簡単に行くとでも思って?」

アサシン「女盗賊…お前はいつから妖精が見えてたんだ?子供の頃からか?」

女盗賊「兄さんはずっと見えてた…の?」

アサシン「妖精を追いかけて…200年前シャ・バクダが滅んだ理由を知ったのだ…子供の頃にな」

女盗賊「…それでずっと一人で戦っていたの?」

アサシン「私たちは妖精の導きに従い…魔物たちとの調和をしなければならない」

女盗賊「調和…」

アサシン「人間は殺しすぎなのだよ…それは憎悪しか生まない…やがて魔王を生んでしまう」

女盗賊「勇者暗殺と話は逆行するのでは無くって?」

アサシン「勇者と魔王は対なるもの…勇者を封じれば魔王も生まれない…そうやって調和を保つ」

女盗賊「そんなの屁理屈だわ…第一勇者がどこにいるのかさえ分かってないじゃない…魔王だって」

アサシン「雲を掴むような話に聞こえると思うが…シャ・バクダでかつて起きた事と同じ事象がいくつかある」

女盗賊「…それを調べにセントラルに来た…そういう訳ね」

アサシン「分かってくれるか?」


----------

盗賊「いょぅ!!やっぱり来てたか」

アサシン「盗賊か!!お前まで居たのか…どうりで手際が良い訳だ」

盗賊「ギルマス直々にどうしたってんだ?」

アサシン「あぁ…色々あってな」

盗賊「女盗賊!?どうしたんだ?ふくれっ面で…」

女盗賊「構わないで欲しいわ…」

盗賊「こっちの娘は誰だ?アサシンの女にしちゃ…お前ロリコンだったのか?」

アサシン「あぁ紹介する…ドワーフの女海賊だ…工作専門で私の助手だ」

女海賊「ハロハロ~」グビ

女盗賊「剣士はどうしていて?」

盗賊「んぁ…ありゃ今まで一緒にいたんだがどこ行った?」

アサシン「…私に気付いたか…警戒しているな」

女盗賊「剣士!?大丈夫よ…今はもう敵ではないの…出ていらっしゃい?」

剣士「…」ソロリ

盗賊「そりゃそうと女盗賊と女海賊は名前がかぶってて混同するな」

アサシン「私もそう思うな…女盗賊!お前に盗賊は似合わない…もうやめておくんだ」

女盗賊「そんなの私の勝手よ」

盗賊「まぁスリも鍵開けも出来んしなぁ…どっちかってーと医者とか踊り子なんだが」

女盗賊「そんなのイヤよ」

盗賊「ハンターはどうだ?お前は弓使いだろ?」

女盗賊「もう!!勝手にして」プン

盗賊「あぁ分かった分かった…やっぱりお前は女盗賊だ…中身は医者だが…それで良いな!?」

女盗賊「私はこれで失礼するわ!…お店の方が忙しいの」プリプリ

アサシン「ところで剣士君…君はどういう人間なんだね?」

剣士「…」

女海賊「うん!!近くで見るとやっぱりカッコイイね!!」

アサシン「見たところその毛皮は白狼…むぅ??…目をどうした?」

盗賊「ちぃと話は長くなるんだがな…」


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カクカク シカジカ

アサシン「…盲目の狼少年という訳か…盲目であれほど戦えるとはな」

盗賊「お前はどうしてセントラルに来てる?」

アサシン「古き時代の秘宝『いのりの指輪』を探している」

盗賊「なんだそりゃ?古代の魔術師が使ってたとかいうやつか?それがセントラルに?」

アサシン「魔王の復活にはいのりの指輪が関わっている筈なのだ」

盗賊「なんでセントラルにあると思ってんだ?確かな情報は何かあるのか?」

アサシン「前にも言ったことがあると思うが…」



私はシャ・バクダが200年前に滅んだ理由を探していた

何度もシャ・バクダの遺跡に足を運び見つけたものが

古い古文書と地下に巨大なカタコンベ

私はそのカタコンベで彷徨う魂が渦を巻いているのを見た

200年たった今でもだ

大量の骸は数え切れる物ではない…数百万の骸が

残虐な拷問ののち遺棄されたのは見て明らかだった

古文書に記されていたのは

神々の戦い…つまり精霊と魔王の戦い

そのどちらも人々の祈りによってこの世界で実体化するらしい

いのりの指輪を使って…



盗賊「何だお前魔王にでもなるつもりか?」

アサシン「違う!誰かが魔王を復活させてしまう前に指輪を破壊したいのが第一」

アサシン「第二は魔王と対になる勇者を暗殺…もしも魔王が復活してしまったなら…」

盗賊「おまえの言うことは決定打が無いな…女盗賊が反対するのも理解できる」

アサシン「…知っているか?セントラルの地下に巨大空洞があることを?」

盗賊「なぬ!?」

アサシン「私はそこでシャ・バクダと同じ過ちをしているのでは無いかと疑っている」

盗賊「むぅぅ…」

アサシン「何か知っているのか?」

盗賊「下水の見取り図を作っていたんだがな…法王庁の下に怪しい区画がある」

アサシン「下水から行けるのか?」

盗賊「近くまでは行けるが…その奥まで繋がっているかは行ってみないと分からねぇ」

アサシン「私が見てくる」

盗賊「待て待て焦るな…そのいのりの指輪のありかは分かってないのか?」

アサシン「確たる情報は無いが…法王が切望しているという噂は聞いたことがある」

盗賊「その指輪を使って魔王を祈ると復活する…そういう話なんだな?」

アサシン「憎悪の渦が実体化する…古文書にはそう書いてある」

盗賊「勇者の方はどうなんだ?何か手掛かりは無いのか?」

アサシン「無い…」

盗賊「ぐはぁ…話になんねぇな本当…雲を掴む様な話だ…女盗賊の言う通りだぜまったく!!」

アサシン「ただ分かっているのは200年前の大破壊の時、魔王が倒される間際に精霊を夢幻に封印したという事」

盗賊「なんだか良くわからんが…それは関係の無い話だと思わんか?」

アサシン「いや…精霊は夢幻に封印されてもなお祈りを続けているのだ」

盗賊「夢幻の意味が分からん」

アサシン「勇者は精霊の祈りによって生まれる…この意味が分かるか?…勇者は夢幻から来る」

盗賊「昔話だぞ!?そんなもん信じてんのか?」

アサシン「これは事実…私は石となり眠る精霊をこの目で見た」

盗賊「どこにあんだ?」

アサシン「光の都シン・リーン」

盗賊「…そこで勇者を待つってのか?アホらしい…」

アサシン「そうだ…いつまでも待っている訳に行かないからこうやって魔王復活の兆しを探している」

盗賊「…ともあれ、その話じゃ今いまどうすりゃ良いか皆目見当がつかん」



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盗賊「怒ってんのか?」

女盗賊「怒ってなんかないわ…呆れてるの」

盗賊「お前の兄はやっぱり頭逝かれてんな…こう言っちゃ悪いが…」

女盗賊「本質的には正義感の塊で根はやさしいの…でもね自分が見えてないというか…」

盗賊「まぁ分かる…なんとかしたい気は分かるが具体性が無ぇ」

女盗賊「利用されて巻き込まれない様に気を付けて」

盗賊「ただな…言ってることが合致してる事が一部あるんだ」

女盗賊「聞いてたわ…下水の奥の事でしょう?」

盗賊「人骨がやたら散らばってたんだ…あいつが言ってる事と合ってる」

女盗賊「…そういえば」

盗賊「ん?」

女盗賊「下水の奥は狭間が近くて妖精とお話が出来たわ…」

盗賊「調べてみる必要がありそうだが…今はその時では無いな」

女盗賊「わたしもそう思うわ…子供たちの回復と、セントラルの混乱が落ち着くまではね」

盗賊「早いとこ子供たちに旨い飯食わしてやりてぇ」

女盗賊「フフあなたのそういう所好きよ」



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アサシン「急にこんな話をしてすまなかった…私は少し熱くなっていたようだ」

女盗賊「…」ジロリ

アサシン「まずはお前の安否が確認できて良かった…本当にそう思っている」

女海賊「女心を分かってないなぁ~!!君!!ヒック…心配でしょうがないと素直にさぁ~ヒック」

アサシン「今日は一旦おいとまする…女海賊!飲みすぎだぞ!」

女海賊「交渉決裂~~ヒック」

盗賊「アサシン!お前はこれからどうするつもりなんだ?」

アサシン「私は引き続き調査を続けるつもりだ」

盗賊「まぁ…あれだ…内容によっては協力してやっても良い」

女盗賊「盗賊!!」

盗賊「勇者の暗殺には協力する気は無ぇ…というか居るかどうかも分かんねぇんだからな」

アサシン「…」

女海賊「言っちゃいなよ~~金が欲しいってさぁ~ヒック」

盗賊「金?ぬはは…盗賊ギルドマスターが金欠か?笑っちまうぜ」

アサシン「船が必要なのだ…私はドワーフの国へ行かねばならん」

盗賊「…またぶっ飛んだ話だな…だが金が居るならやりようは在る」

アサシン「協力してもらえる…という事で良いか?妹よ…」

女盗賊「私は盗賊は辞めたわ…」

アサシン「ハハ…」

女盗賊「盗賊と剣士がどうするのかまで私は決められない…勝手にしたら良いのよ」

女海賊「ねぇねぇ女心分かる~~?今のはオッケーってことだよ?ヒック」

盗賊「もう一回言うぞ?勇者暗殺は俺たちはやらねぇ!」

女海賊「商談成立~~♪」

『隠れ家』

アーデモナイ コーデモナイ

アサシン「…つまり貴族居住区の堀に盗んだものを放り投げれば下水で回収できるのだな?」

盗賊「そういう事だ」

アサシン「貴族居住区へのゲートは全部破壊してあるからどのエリアでも出入りは出来る」

盗賊「ほぅ~そりゃやり易いな」

アサシン「逃走ルート確保は剣士が衛兵の足止めをする…鍵開けの担当は盗賊…見張りは女海賊」

アサシン「私は手当たり次第に盗んだものを堀へ投棄…良い作戦だ」

アサシン「逃走時は人に紛れる為に中央経由で金をばら撒く…盗賊の手際には頭が下がる」

盗賊「俺達ぁ泥棒だ!!全部頂いちまおう」

アサシン「よし!装備整えて行くぞ」

女海賊「ちょっと待って~みんなコレ着て行って」ドサ

アサシン「これは?…白い毛皮のマント」

女海賊「泥棒もさぁ…恰好良くないといけないと思ってさ」

盗賊「おいおい…これじゃ剣士と同じじゃねぇか…派手すぎやせんか?」

アサシン「ハハまぁ良いではないか普通の盗賊ギルドとは違うという所を見せてやろうじゃないか」

盗賊「まぁギルドに迷惑かける訳にもいかんしな…仕方ねぇか」

女海賊「白狼の盗賊団!!かっこいいいいい♪」

『貴族居住区』

---夜---

衛兵「ピーーーーーー」

アサシン「剣士!足止め頼む!」タッタッタ

女海賊「よろぴこ~」ピョン

盗賊「いつも通りでな?無理すんなよ?」ダダダ

アサシン「私に続け!!」

衛兵「居たぞ!撃て!」シュン シュン

剣士「…」ピョン クルクル シュタ

衛兵「またこいつらか!!」

近衛「弓隊!!撃て!!」シュン シュン シュン シュン…

衛兵「逃がすなぁぁぁぁピーーーーーー」

近衛「何故当てられん!!撃て撃てぇぇ」シュン シュン シュン シュン…

剣士「…」ピョン ピョン ピョン

衛兵「逃げまーす!!」

近衛「先回りは!!?」

衛兵「行ってる筈です…追え!!追うんだぁ!!」

剣士「…」ピョン クルクル シュタ

衛兵「あぁぁぁ…向こうの屋根に…」

近衛「何と言う鮮やかさ…あれはもののけか?…」


---白狼の盗賊団の暗躍は---

---セントラルを震撼させた---

---事に四つ足で闇夜を飛び回るその姿は---

---民衆を引き付け魅了し---

---憧れの対象となった---

『中央広場』

ガヤガヤ ガヤガヤ

女海賊「安いよ安いよ~白銀の毛皮!!たったの1金貨!!買った買ったぁ」

女海賊「今なら狼人形もセットだよぉぉぉ!ほら買ったぁぁ!!」

盗賊「…」

盗賊「…」

女海賊「ほらそこの兄さん!!」

盗賊「…なにやってんだお前…居ないと思ったらこんな所で売り込みか?」

女海賊「テヘ…見つかっちゃった」

盗賊「売れてるんか?」

女海賊「めっちゃ売れる!!一日金貨一袋行けるヨ」

盗賊「…この毛皮はウルフの毛皮じゃ無ぇな…ヤギだ」

女海賊「お!?お目が高い!!そんなお客様にはコチラ!!」

盗賊「…そりゃウサギだ」

女海賊「テヘ…」

盗賊「テヘじゃねぇ!!まぁ…有名になっちまったから偽装したいのは分かるんだがな?…」

女海賊「良いじゃないホラそこら中に白い毛皮着てる人…私のおかげなんだかんね!」

盗賊「まぁちっと大人しくしてろや」

女海賊「あんたこそ何してんのさぁ!!ウロウロしてて良いの?」

盗賊「俺は町の状況をだな…」

女海賊「私とおんなじじゃないのぉ」

盗賊「あー分かった分かった…とにかく…目を付けられんように気を付けろ」

女海賊「わーってるって!!うるさい人シッシッシ」

『酒場カク・レガ』

ポロロン ポロロン♪

女盗賊「こんな昼間からお酒?」

盗賊「いや…ピアノの音が聞こえてきたから寄っただけだ」

女盗賊「兄さんは?」

盗賊「知らん…どこかの調査にでも行ってるんだろ」

女盗賊「きっと船の買い付けだわ」

盗賊「あぁ…そうかも知れんな」

女盗賊「あなた達の噂…あなた知ってて?」

盗賊「まぁな…潮時だ」

女盗賊「少し目立ちすぎたわね?…爆破の事件も全部背負ってしまったわ」

盗賊「もう侵入は無理と見た方が良い…警備が厚すぎる」

女盗賊「兄の策略にまんまと乗ってあげた…そういう事なんでしょ?」

盗賊「…ツケが回ってくるかも知れんのは考えておかないとな」

女盗賊「ツケ?」

盗賊「ここも安全ではなくなるかも知れんという事だ」

女盗賊「私はここが気に入ったわ…そして私は関与していません」

盗賊「そうだな…盗んだものは一旦船に積んで沖にでも出さんとガサ入れで言い訳出来ん」

女盗賊「そうね…兄に言っておくわ…早く出て行ってって」

盗賊「その場合俺と剣士もしばらく離れなければならん…背格好がバレてるからな」

女盗賊「…さみしくなんかないわよ?娘たちも子供たちも居るのだから…」

盗賊「ぬはは…そうだなそれで良い」

女盗賊「さて!私はピアノの練習…邪魔しないでね?」

盗賊「黙って聞いておく」

ポロロン ポロロン♪

『隠れ家』


---数日後---

アサシン「船の買い付けが決まった…サンタマリア型帆船だ…乗員も十分集まった」

アサシン「私はこの船で明日ここを離れようと思う…ただその前に一つやっておきたい事がある」

盗賊「んん?もう泥棒は出来ねぇぞ」

アサシン「法王庁の地下の調査だ…これだけはやっておきたい」

盗賊「下水か…そこまでは衛兵の手は回ってねぇか…」

アサシン「調査は私一人でも良い…奥に何があるのかだけ知りたいのだ」

盗賊「まぁそれなら案内してやっても良い」

アサシン「悪いな…恩に着る」

盗賊「その後船でドワーフの国か?何の用事がある」

アサシン「君たちには秘密を言っておこう…」

盗賊「そんな大層な秘密か?」

アサシン「ドワーフが憎悪を浄化する作用を持つ金属を発見したのだ…その名をミスリル銀と言う」

盗賊「また魔王がらみか…」

アサシン「そのミスリル銀を用いれば憎悪に満ちた魂を浄化できるかも知れんのだ…価値は高い」

盗賊「それで大金が必要だった訳か…独り占めでは無いんだな?」

アサシン「私は金になど興味は無い…魔王復活を阻止したいだけだ」

盗賊「…で俺たちはどうすんだ?」

アサシン「女海賊は一旦シャ・バクダに戻るように言ってある…もし剣士が光の都シン・リーンを目指すなら付いて行くが良い」

盗賊「ふむ…別れる訳だな?…お前は一人で良いのか?」

アサシン「私は一人になっても戦い続ける…今までそうして来たように」

盗賊「…んーむ」

女盗賊「何迷ってるの?私はあなたたちが居ない方が安全なのよ?兄の面倒を見てあげて?」

盗賊「うむ…そうだな…俺はアサシンに同行するのが最善だな」

女盗賊「子供たちは心配しなくて良くってよ?」

アサシン「船への荷物の積み込みは今晩行うように乗員には伝えてある」

アサシン「法王庁の調査が終わったら私はそのまま乗船して出発するつもりだ」

盗賊「今晩が最後の仕事って訳だな」

アサシン「そうだ…これで白狼の盗賊団は解散する」

女盗賊「フフ自惚れ屋さんの様なこと言うのね…らしいわ」

アサシン「馬鹿にするなよ…これでも大真面目なんだ」

『下水』

---夜---

盗賊「あんな奴らに金銀財宝運ばせて良いのか?」

アサシン「少々無くなっても構わんよ…私の金ではない」

盗賊「俺にとってもどうでも良い金なんだが今までの苦労がな…」

アサシン「中央で金をばら撒くのと大差ない」

盗賊「んむ…まぁ良いか」

アサシン「剣士と女海賊は相性が良さそうと見るがどうだ?」

盗賊「あのあばずれは意外と面倒見が良いな…剣士の引導の仕方をよく工夫している」

アサシン「やはりそう見るか…シン・リーンまで連れていけと言っておいた」

盗賊「そうかそりゃ良い…だがよく言う事聞いたな?」

アサシン「私の気球を前から欲しがっていてな…それと引き換えなのだよ」

盗賊「なるほどな…おっともうすぐ梯子だ!その先に鉄格子がある」

---鉄格子の向こう側---

ピチョン ピチョン

アサシン「見取り図が出来ているのはここまでか…この奥の区画が謎のエリアだな?」

盗賊「そうなる…ここから先はまだ行ったことがねぇ」

女海賊「もう!!何なのさココ!!人骨ばかりで気持ち悪い」

妖精「…くないよ」

女海賊「あ!!妖精の声!?」

アサシン「私にも聞こえるぞ」

盗賊「むぅ…俺だけ聞こえないってか?俺ぁ鈍感なのか?何て言ってんだ?」

妖精「ここはあまり良くない所だよ…狭間が近すぎる」

アサシン「どういう事だね?どちらの方向が良くない方向なのか?」

剣士「…」スラーン チャキリ

女海賊「剣士?どうしたの?」

アサシン「向こうに何か居るな…あっちか!」

盗賊「なんだありゃ…でかいネズミ…ラットマンの巣になってんのか!!」

女海賊「あわわ来る来る来る来る」イソイソ

ラットマン「ギャース」ドドド

アサシン「押し通る!!剣士!!援護しろ!!」ダダッ シュバ

盗賊「暗いな…俺は明かり役だここまで引き付けろ」

剣士「…」ザク ザク シュバ

アサシン「剣士!なかなかやる…このまま奥の方へ」カン ブシュ

盗賊「女海賊!!お前はケツに付け…遅れんな!」

アサシン「妖精!!どっちの方向だ!?妖精!!妖精!!ちぃぃこう忙しくては聞こえんか…」

剣士「…」ユビサシ

アサシン「そっちか!剣士が先導しろ!!」

剣士「…」ダッシュ シュバ シュバ

ラットマン「ギャァギャァ…」

アサシン「んん??鉄格子か…鍵は付いて無いのか?」

盗賊「だめだぁ…こりゃ切るのに時間かかるぜ」

アサシン「女海賊!!ヤレ」

女海賊「アイアイサー!!みんな離れてて?」ゴソゴソ

盗賊「おぉ…爆破すんだな?」

アサシン「音で上の連中が気付く…この先で何も無ければ引き返す…リミットは10分だ」

女海賊「いくよぉぉぉ…」ドーン!!パラパラ

盗賊「うひょぉぉ派手だねぇ…壁に穴開けやがった」

アサシン「行くぞ…来い!!」

『カタコンベ』

盗賊「…なんだこりゃ」

剣士「ううう」ブン ブン

盗賊「剣士!何やってる!!何と戦ってる!?」

剣士「うぁぁぁ」ブン クルクル シュタ

女海賊「剣士の周りに何か獲り付いてる…」

妖精「帰ろう!!帰ろう!ここは危ない!レイスが来る!早く帰ろう!」

剣士「あぁぁぁぁ」ブン スカ

盗賊「おい!剣士!!やめろ!!」

アサシン「盗賊…お前も見たな…この屍の山を」

盗賊「こりゃお前の言ってた通りだな」

アサシン「上を見てみろ…ここからでは行けないがあそこの穴の向こう側に処刑場があるはずだ」

盗賊「あそこから死体を捨ててるんだな…うぇぇ…吐きそうだ…なんだってこんなにグチャグチャになってる」

アサシン「想像を絶する拷問の後…ここに遺棄されるのだ…だがまだシャ・バクダの数には及ばない」

女海賊「やばいよやばいよ…剣士が狂いそうだよぉぉ」

剣士「うああぁぁぁぁぁぁぁ」ブン ブン ブン

盗賊「考えたくねぇが…女、子供達の連れられて行く先はココだな?」

アサシン「最終的にはそうなるだろう…これは人間のやる事ではない」

アサシン「なぜこんな事が出来る?なぜこれほど命を欲しがる?悪魔の仕業としか思えんのだ…私はこれを止めさせたい」

女海賊「もう!!そっちはダメ!!こっち!!」グイ

剣士「うあああああぁあぁぁぁぁぁ」ブン ブン

女海賊「もうだめ!!私は剣士引っ張って先に帰る」グイ

盗賊「どうするアサシン!?」

アサシン「十分だ…戻るぞ」


---私はこの殺戮を止めさせたいのだ---

---そのすべてを破壊しようとする魔王---

---それを阻止しようとする勇者---

---私にはどちらが正しいのか分からない---

『下水の出口』

アサシン「ここが海へつながっている場所だな?」

盗賊「このまま船着き場まで走るのか?」

アサシン「女海賊!剣士!ここで別れる…お前たちは隠れ家に戻れ」

女海賊「りょ!!シャ・バクダで待ってるね~」ノシノシ

盗賊「…まぁ仕方ねぇか!!女海賊!!みんなにはよろしく言っといてくれ」

女海賊「あれれ~?名残惜しいの~?」

盗賊「今生の別れじゃねぇからな…ほとぼり冷めたら帰ってくると伝えとけ」

女海賊「アサシン!!パパによろしく言っといて!!」

盗賊「パパ!?なんだ!?」

アサシン「ドワーフの国に女海賊の父が居るのだ…取引先はそこだ…行くぞ!夜明け前に出港する」

女海賊「またね~」ノシノシ



『船着き場』

アサシン「…あの船だ」

盗賊「ん?あいつ…こんな所に来てたらダメだろうが…誰かに見られたらどうすんだ」

女盗賊「遅かったじゃない…寒くて凍える所だったわ」

アサシン「一人で待ってたのか?」

女盗賊「大丈夫よ…誰にも見られてないわ」

アサシン「もうすぐ夜が明ける…このまま出港する」

女盗賊「次、戻るのはいつくらいになって?」

アサシン「分からん…早くて3か月という所か」

女盗賊「盗賊!?兄が馬鹿なことしないように見張ってて?」

盗賊「分かってる」

アサシン「女盗賊…もうこんな盗賊のような事をするんじゃない…お前は医者か音楽家になれ」

女盗賊「知ってるわ…しばらく会えなくなる家族を見送りに来ただけよ」

アサシン「うむ…良い女になるんだぞ?お前はやさしい子だ…」

女盗賊「兄さんの方こそ体には気を付けて」

アサシン「分かってるさ…私は必ず帰ってくる主義でな」

盗賊「湿っぽくなる前に出るか!女盗賊…またお前の歌を聞きに来る!じゃぁな」

アサシン「よし!急ぐぞ!!」

盗賊「船乗りはどこだぁぁ!!碇を上げさせろぉぉ!!」

アサシン「出港する!!…警備船を見つけても止まらず押し通れ!!」

『隠れ家』

女海賊「あ!帰ってきた…もうどこ行ってたのさぁ!!」

女盗賊「ちょっとね」

女海賊「アサシンと盗賊は行っちゃったよ」

女盗賊「良いのよ…あなたも疲れてるでしょう?少しお休みなさい?」

女海賊「えーと何だっけな…盗賊がよろしく言っとけってさ」

女盗賊「分かってるわ…あの二人なら上手くやるわ」

女海賊「私まだ休めない~商隊に加わる話を付けてくる」

女盗賊「一人で行けて?」

女海賊「これを見て!!」ビシ

女盗賊「あら?貴族の身分証ね?」

女海賊「これを使えば簡単だと思うんだ!」

女盗賊「いつ出発する予定かしら?」

女海賊「わかんないけど出来るだけ早く」

女盗賊「少し休んでからでも良いのでは無くって?」

女海賊「早くシャ・バクダに行きたいんだ!」

女盗賊「せっかちなのねフフ…まぁお好きになさい?」

女海賊「剣士はあっちで横になってる…怪我は無いけど調子悪そう」

女盗賊「そう…見てくるわ」

女海賊「私はちっと出かけてくるね~」ノシ

女盗賊「気を付けてね」

『部屋』


剣士「ぅぅぅぅぅぅ」ブルブル

女盗賊「平気?どこか痛むのかしら?」

妖精「混乱しているんだよ」

女盗賊「はっ…妖精の声!?」

妖精「今日は満月…もうすぐ沈んでしまうけど」

女盗賊「どうしたの?何があったの?」

妖精「沢山の魂に触れてしまったんだ」

女盗賊「下水の奥で何が?」

妖精「剣士は目が見えない分彷徨う魂を感じやすいんだ…沢山の魂を感じて混乱してる」

女盗賊「そんなに沢山の魂が…」

妖精「剣士の魂を連れて行こうとしてた…亡くなった人達の魂の渦が」

女盗賊「熱とかは無さそうね…どうすれば良くなるかしら」

妖精「魂が連れていかれないように心を閉ざしているんだよ…安心させてあげないと」

女盗賊「安心…こう?これで良い?」ギュゥ

剣士「ぅぅぅ」ガクガク ブルブル

女盗賊「怖かったのね?安心なさい?…あなた…体は大きいけど子供みたいなのねフフ」

妖精「僕も入れて~」スポ

女盗賊「歌を歌ってあげましょうか…子供を寝かせる歌なんだけどね」

女盗賊「こんなに大きいのに困った子ですねぇ…」

女盗賊「寝んね~ん寝~♪」

ルルル~♪

ララ~♪

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『夢』

ぼく「…」

??「あんたさぁ…聞いてんの?」

ぼく(きみは…誰?)

??「何訳の分かんない事言ってんのよ!こっちに来なさい!」

ぼく(いや…そんなつもりじゃ)

??「ちょっと顔見せなさいよ」ファサ

ぼく(あ…)

??「あれれ!?ちょちょ…え?きれいな目してるじゃん」

ぼく(え?目?)

??「はっは~ん!!あんた一人?」

ぼく(え~と…ぼくは…だれだ?)

??「まぁいいや!こっち来て…ちょっと手伝って」

ぼく(どうすれば)

??「そっちを押すの…せーの!えい!!」

ぼく(???)

??「何やってのさ!あんた男でしょ!!もう一回!!」

ぼく(え?え?え?)

??「せーの!!」ズリ

??「もう一回!!せーの!!」ズリ

??「おっけおっけ!乗って」

ぼく(これに?)

??「良いから早く乗って!!」グイ

ぼく(あ…)

??「歩くよりこっちの方が早いの!…とりあえず町に向かうよ?」

??「マスト下すからどいて」

??「何やってんのさ!!もうノロマかあんたは!!」

??「そこの箱に入ってる物食べて良いよ…お腹空いてんでしょ?わたしも一個取って?」

ぼく(これ?)

??「わかってんじゃん…ほら…あんたも食いなよ」モグ

ぼく(…)モグ

??「海の上は風が強いから体冷やさないように!!…聞いてんの?」

ぼく「ありがとう」

??「あんたしゃべれるんじゃん!!ちょっと寒いからこっちに来い!」

ぼく(???)

??「毛布なんか積んでないさ…ほらこうやって体よせて…おい!!)

ぼく(???)

??「あっち向いて背中向いて!!背中合わせがあったかいの…手足は自分で何とかして」

ぼく(あったかいなぁ…)

??「あんたの名前は?」

ぼく「ぼくは…」

??「ん?あぁピーンと来た!ちょっと記憶が無い系のアレね」

ぼく「ぼくは…ぼくは…」

??「わたしのなまえは…」


---きみは誰だっけ?---

---ぼくは誰だっけ?---

---それにしてもあったかいなぁ---

『翌日』


---夕方---

グイグイ

女海賊「…きろ!!起きろ~~」ポカ

女盗賊「困ったわねぇ」

女海賊「明日の朝出発するのにぃぃムキーー」

剣士「…」ゥゥ

女海賊「あ!!動いた!!おい!!」グイグイ

剣士「…」パチ

女盗賊「良かった~起きたわね?…お腹空いてるでしょう」

女海賊「あんた昨日から寝っぱなしだったの!ホイこれ食べて」グイ

女盗賊「明日の朝に商隊キャラバンでシャ・バクダに向かうのよ」

女海賊「そう!私は貴族の娘役…あんたは従士という設定ね…わかった?」

女盗賊「まぁ…起きたばっかりで頭が回ってないようね…食べたら荷物の整理しておいてね」

剣士「…」モグ

女海賊「あんた大した荷物持ってないじゃん」

女盗賊「フフ本当あなたはせっかちなのね」

女海賊「うるさいなぁ…剣士に手伝って貰おうと思ってたこと全部私がやったんだからイライラしてるの!」

女盗賊「そんなに大変だったの?」

女海賊「女一人だと商隊の連中は言う事聞かないんだよ!子ども扱いされて腹立つ!ムキーー」

女盗賊「ここを出るのは夜中かしら?」

女海賊「明日の日の出前に出発するから夜中の間に商隊の詰め所に行く」

女盗賊「それなら最後に今晩バーベキューでもしましょうかフフ」

女海賊「おぉぉぉ良いねぇぇ!!」

女盗賊「子供たちがバーベキュー大好きなの…娘たちもね」

女海賊「肉買ってくるぅぅぅ」

女海賊「お願いするわ…子供たちも連れて行ってもらって良いかしら?」

女海賊「おっけーーー来ーーーいお前らぁ私に続けい!!」

わ~い キャッキャ

『酒場カク・レガ』


---夜---

ジュージュー ワイワイ

女海賊「おいひいね」モグモグ

娘1「お姉ぇ~こっち肉余ってない?」

女盗賊「足りないの?」

娘1「お客さんの分がちょっと足りない」

娘2「早く~」

女盗賊「仕方ないわね…子供たちの分は残しておくのよ」

娘1「分かってるって…ちょっと持って行くね~」

女盗賊「しっかりお酒も飲ませておくのよ?」

娘1「あ~い」

女海賊「お店の客にも振舞うと盛り上がっちゃうね」

女盗賊「あっちの方は放って置けば良いのよ」

女海賊「ところでその子…どこか悪いの?」

女盗賊「…この子はね生まれつき心臓が悪いの」

女海賊「見た感じ普通だけどね」

女盗賊「体は小さいけどあなたと同じくらいの年頃に思うわ?」

女海賊「ええ?この子が?立ってみて?」

女盗賊「ご挨拶なさい?」

少年「やぁ!初めてお話するね」

女海賊「本当だ…背の高さは同じくらい」

女盗賊「体は弱いけどとても賢いのよ」

少年「僕もシャ・バクダには行ってみたかったんだ」

女盗賊「ダメよ…もう少し体が強くなってからね」

少年「分かってるさ…次来たときは僕も一緒に頼むよ」

女海賊「おぉー見どころあるねぇ!しっかり鍛えるのだぞ?少年」

女盗賊「フフ剣士はどこかしら?」

女海賊「あっちで食べてるよ」

女盗賊「そろそろ準備した方が良いのでは無くって?」

女海賊「剣士ぃ!!そろそろ行くぞぉ~」タッタッタ グイ

剣士「…」モグモグ

女盗賊「剣士!?無事にシン・リーンまで行けると良いわね?」

剣士「…」

女盗賊「あなた達が居て楽しかったわ…元気でね?用が済んだら又遊びにいらっしゃい?」

剣士「ありがとう」

女海賊「うお!!しゃべった!!」

女盗賊「フフそれで良いのよ…そういう時に使うの」

剣士「ありがとう…ありがとう…ありがとう」

女海賊「あんたぁ!!しゃべれるならしゃべれるって言いなさいよ!!」

女盗賊「教えてあげれば良いのではなくって?しばらくは馬車なのでしょう?」

女海賊「んむぅぅメンドクサイけど話す相手が居ないのもツマラナイしなぁ…」

女盗賊「よろしくお願いね?」

女海賊「今度来たときはさぁ!!気球に乗せてあげる!!」

女盗賊「楽しみにしておくわ…いってらっしゃい」

女海賊「ほい剣士!!行くよ!!じゃまたね~」ノシノシ

『商隊詰め所』

商隊長「ふぁ~ぁ…」

女海賊「おい!!」

商隊長「ん?…身分証…」

女海賊「前見せたじゃない!この顔をもう忘れたの!?」

商隊長「覚えてるが規則なんでね…こっちがお前の従士か?」

剣士「…」

商隊長「身分証を早くしろ」

女海賊「あぁぁイライラするなぁ!もう!!」パス

商隊長「貴族の娘…お前が貴族じゃなきゃ相手にしないんだがな」

女海賊「通って良いの!!?」

商隊長「こんな小娘を商隊の特定馬車とは…貴族は良いなぁケッ…通って良いぞー」

女海賊「むむむむむ…パパに言いつけるぞ!」

商隊長「おぉ怖い怖い…お嬢様…あちらのかぼちゃの馬車にてございます…これで良いんか?」

女海賊「剣士!!行くよ!!」プリプリ

商隊長「一つ注意してもらいたい事がある」

女海賊「何よ!?」

商隊長「身分を不用意に知られる様な事はしないでもらいたい…わかるかな?お嬢ちゃん」

女海賊「子供じゃないんだから分かってるよ」

商隊長「貴族と悟られると誘拐されるリスクがあってこちらが困る」

女海賊「はいはいわかりました」

商隊長「手を掛けさせないでくれな…お嬢ちゃん?」

女海賊「いちいち勘に障ること言わないで!…おっさん!」

商隊長「あっはっは…3番目の馬車だ…早く乗れ」

女海賊「いーーーーーだ!!」ベー



----------

『商隊馬車』

ガタゴト ガタゴト

女海賊「おい!出てこい妖精!!」

女海賊「…今日は出てこないの?…んぁぁぁヒマ」

女海賊「あんたさぁ…何かしゃべろよ!!」

剣士「…」

女海賊「わたしの言ってる事分かる!?…ちょっとまねしてみて!?」

剣士「…」

女海賊「こんにちは」

剣士「こんにちは…」

女海賊「お!?できんじゃん」

剣士「おできじゃん」

女海賊「ご主人さま」

剣士「ご主人たま」

女海賊「あなたは」

剣士「あたまは…」

女海賊「とても…」

剣士「とても…」

女海賊「美しい」

剣士「…」

女海賊「おい!!!」

剣士「おい」

女海賊「もう一回最初から!!」

剣士「もういかいから」

女海賊「ご主人さま、あなたはとても美しい!」

剣士「ご主人さま、あなたはとてもむずかしい」

女海賊「…あのね」

剣士「あ…のね」

女海賊「ご主人さま、あなたはとてもう・つ・く・し・い!!!!」

剣士「ご主人様、あなたはとてもむ・ず・か・し・いのね」

女海賊「のねは付けなくても良いの!!あ~イライラする」

剣士「ご主人様、あなたはとてもむずかしいイライラする」

女海賊「ムキーーーーーーーーーー」

『トアル町』

ガヤガヤ

商隊長「…一日休憩を取る。明後日の夜明け前までに集合する事!!解散!!」

----------

女海賊「剣士!行くよ!!早く行かないと宿埋まっちゃう」

剣士「はいご主人様」

女海賊「…なんか気持ち悪いなぁ」

剣士「はいご主人様」

女海賊「もうご主人様は付けなくて良いから」

剣士「はいご主人様」

女海賊「もう!!はい!!だけで良いの!!」

剣士「…はい」

女海賊「付いてきて!?行くよ」タッタッタ

妖精「なんか前と雰囲気ちがうなぁ」

女海賊「来た事あるの?」

妖精「ゴブリンの襲撃から逃げてきたんだ」

女海賊「そっかぁ…ここから来たんだね」

妖精「前はもっと人が居たんだよ」

女海賊「商隊の商人達が物売りし始めたら人が出てくるんじゃない?」

剣士「におう」クンクン

女海賊「え?何?どこ?」

剣士「あっち」ユビサシ

女海賊「んん?…なんだろアレ…もしかして火刑跡!?」

妖精「魔女狩りかぁ」

女海賊「気になるけど…今は宿屋が先!!今日泊まれないと休めなくなる」

『宿屋』

カラン コロン

店主「い、いらっしゃいませ」ビクビク

女海賊「2人泊まれるかな?」

店主「食事は付きませんがよろしいでしょうか?」

女海賊「ベットが使えればおっけー…で?何かあったの?」

店主「2ヶ月ほど前に魔女狩りがありまして…皆疑心暗鬼になっております」

女海賊「やっぱ外にあるのは火刑跡なんだ」

店主「ここで番台をしていたお婆さんが犠牲になってしまいまして…」

女海賊「へぇー魔女だったんだ?」

店主「いえ異教徒を見たと騒いでおりましたら本人が審問に掛けられてしまいまして…その」

女海賊「??」

店主「町の住人がお婆さんこそ魔女だと言い始めたのがきっかけで結局火刑にされてしまいました」

女海賊「ずっと外に放置してあるの?」

店主「はい…魔女は復活しない様100日間見張るのだとか…」

剣士「いこう」グイ

女海賊「あーメンゴ!!あんたがお話ししてくれないから…ツイ」

店主「お部屋にご案内いたします」

『路地のベンチ』

シーン

妖精(そろそろ帰ろうよ)

剣士(…)

妖精(女海賊が怒るよ?)

剣士(ここで食べたパン…おいしかったんだ)

妖精(あー初めて人間からもらったパンだったね)

剣士(空っぽになったあの宿屋が寂しい)

妖精(君が寂しいって感じるとは思わなかった)

剣士(あの人は母さんみたいだった)

妖精(良い人だったね)

剣士(どんな顔だったのかな?心にその顔も描けないから心から消えてしまいそうなんだ)

妖精(だからここに?)

剣士(ここの匂いの中にあの人がいた事を思い出す)

妖精(はやく見える様になると良いね)

剣士(うん)


女海賊「あ!!!居たぁぁ!!もう!!探したんだからぁ!!!」タッタッタ

剣士「あ…ごめんさない」

女海賊「行くなら行くって言ってよ!!心配かけんなタコ!!」

剣士「タコ?」

女海賊「そう!!タコ!」プンスカ

剣士「あはははは」

女海賊「あれ?笑った?あんた初めて笑ったじゃん…タコが面白いの?」

剣士「ごめんね?タコ」

女海賊「はぁ?あんた舐めてんの?…もう!帰るよ!!」グイ

『商隊5日目』

ガラゴロ ガラゴロ

女海賊「はぁぁぁアッと言う間にお休みが終わった…」

妖精「次の休憩は4日後って言ってたね」

女海賊「え~と…地図によると…次はシケタ町という所」

妖精「行ったことある?」

女海賊「アサシンと何回か来てると思うけどどんな所かは忘れた」

剣士「来る!」クンクン

女海賊「え!?こんどは何!?」

剣士「まて」ダダッ

女海賊「どどどこ行くの?」

馭者「うぉ!!…おいおいどこ登ってんだ…降りろ」

女海賊「剣士!!どうしたの?」ヒョイ

剣士「うえ!」ユビサシ

女海賊「上?…なんだろ…何か飛んでる」

馭者「飛んでるだとう?…まさかドラゴンじゃないよな?」

女海賊「そのまさか…かも」

馭者「うわわわ…先導は気付いて無いぞ?…お嬢ちゃんそこの笛取ってくれんか?」

女海賊「これ?」ポイ

馭者「ピーーーーーーーー」

女海賊「ドラゴンもまだこっちに気付いてないかも…」

馭者「衛騎兵が来たら嬢ちゃんが伝えてくれぃ…わしゃ手が離せん」

女海賊「何て?」

馭者「ドラゴンの数と方向だな…それだけで伝わると思うで」

衛騎兵「どうしたぁぁ!」ドドド

女海賊「西の方角にドラゴンが見えるの!!こっちに向かってる!!」

衛騎兵「なんだとぉ…うわっ…こりゃまずい…ピーーーーーーーー」ドドド

馭者「嬢ちゃん!刃物何か持って無いかい?」

女海賊「どうするの?」

馭者「ドラゴンが来たら馬車切り離して馬で逃げなあかん」

女海賊「おっけー準備する!」

剣士「来る!!」

女海賊「え?え?え?もう?」

ドラゴン「ギャーーース」バッサ バッサ



女海賊「うわっ…でか」

馭者「先頭は止まらんな…どうするんじゃ?」ドギマギ

女海賊「ドラゴンは上で旋回してる…見てるのか…な?」

馭者「商人どもが変な荷物運んでなければ襲っては来んのじゃが…」

女海賊「ん?離れて行く…助かったかも…どうして?」

馭者「行ったかぁ?…うへぇ助かったわい」

女海賊「東の方向に飛んで行った」

剣士「もり…いった」

女海賊「あーびっくりしたね…もう大丈夫そうかな?」

馭者「先頭が速度上げてるぞい」ハイヤ ヒヒーン

女海賊「剣士!?もう居ないから中に入って?」

剣士「…はい」ノソリ

女海賊「どうしてドラゴン行っちゃったんだろね?」

妖精「僕が見えたからだと思うよ」

女海賊「こんなちっちゃいのに?」

妖精「ドラゴンは人間よりずっと目が良いよ」

女海賊「妖精が居れば襲って来ないんだ?」

妖精「ちょっと違うけどドラゴンは妖精の役割を知ってる」

女海賊「…役割ねぇ…ふ~ん」

妖精「ドワーフも同じ筈なんだけどなぁ?」

女海賊「あんたぁ!妖精のクセに生意気だよ!!」

『シケタ町』

タッタッタ

女海賊「まずいぃぃ!あんたのせいで宿屋泊まれなかったらどーすんのさ!!」

剣士「君が寝てた」

女海賊「さっさと起こせよ!スカポンタン!!」

剣士「スカポンタン?」

女海賊「あぁぁぁ宿屋が人だかりになってる…もう!!」

剣士「バーベキューしよう」

女海賊「お?いいねぇ…キャンプでもいっか」

剣士「近くに川の音聞こえる」

女海賊「暗くなる前に肉買いに行くよ!付いて来な!」タッタッタ



----------


メラメラ パチ

女海賊「…ほら剣の先に肉を刺して…そのまま火の中に入れる」ジュー

女海賊「焼けたら一口食べて又火に入れる」ガブ モグ

女海賊「これが山賊焼き」

女海賊「やってみな?」

剣士「こう?」ガブ モグ

女海賊「…なんかさぁ…あんたといっつもこんな事してる気がするんだよなぁ…」

剣士「どうして?」

女海賊「なんでだろ?前世は私の奴隷だったとか?」

剣士(僕は君の顔が分からない…)

女海賊「はぁ!?何訳の分かんない事言ってんの?」

剣士「!!?」ハッ

女海賊「はっ…また既視感…何なのコレ?」

剣士「…その声」

女海賊「あのさぁ!?あんた良くしゃべってる言葉…何なの?」

剣士「森の言葉」

女海賊「森?そんな言葉があるんだ…でもねあんま使わない方が良いんだよね」

剣士「ごめん」

女海賊「他の人に聞かれなきゃ良いんだけどさ…で?その言葉誰に通じるの?」

剣士「森の住人」

女海賊「おぉぉなんかすげーじゃん?…で住人て誰よ?エルフ?トロール?」

剣士「みんな」

女海賊「なんかメンドクサイな…でも興味ある…今度教えて?」

剣士「はい」

女海賊「ちょっと冷えてきたなぁ…あんたは良いね毛皮着ててさ!!」

剣士「母さんの一部…あたたかい」

女海賊「ちょっと背中借りるよ…こうするとあったかいんだ」グイ

剣士「…」

女海賊「動かないでよ?」


---この背中…誰だっけ---

『商隊20日目』

ガラゴロ ガラゴロ

女海賊「…もうウンザリ…気球もらったら二度と商隊になんか入んない!」

馭者「嬢ちゃん…そう言いなさんなって」

女海賊「まだ着かないの?」

馭者「日没前にはハズレ町に着く筈じゃ…でもな?盗賊が出るから気を付けなアカン」

女海賊「いーのいーの」

馭者「嬢ちゃんは世間を知らねぇ…衛兵団から離れたらイカンで?」

女海賊「あのおっさん共は私に色目使うからキライ」

馭者「あっはっは…しょうがあるめぇ商隊に若い娘が入ることなんざ滅多にねぇもんでな」

女海賊「ハズレ町は2日の休憩って言ってたよね?」

馭者「商隊の再編成があるんじゃ…ゆっくりしとくとええ」

女海賊「なんかある?」

馭者「露店が沢山出てる筈じゃ…買い物も良いがスリに合わん様にな」

女海賊「買い物かぁ…おい!剣士!あんたのその冴えない服を私色に染めてあげる!」

剣士「このままで良いよ」

女海賊「私の従士なんだからさぁ!その貧乏くさい旅人の服じゃ恰好付かない」

馭者「嬢ちゃんのヒマつぶしに付き合ってやりーな」

『ハズレ町』

ワイワイ ガヤガヤ

女海賊「よっし!宿屋も取れたし買い物いくよ!付いてコイ!!」

妖精「露店がいっぱいだね」

女海賊「とりあえず剣士の辛気臭い旅人の服を買い替える」

剣士「辛気臭い?」

女海賊「だっさいって意味!」

剣士「だっさい?」

女海賊「あぁぁメンドクセーなあんたは!!良いから付いてコイ!」グイ

妖精「あ!?…あの恰好は…」

女海賊「んぁ?…あぁアレは法王庁だね。こんな所まで来てたんだ…無視無視」

妖精「ちょっと様子見てくる」ヒラヒラ

女海賊「いってら!!剣士は私に付いてコイ」

剣士「…」

女海賊「あんた聞いてんの?うんとかスンとか言えよタコ」

剣士「スン」クンクン

女海賊「…何立ち止まってんのさ!何かあんの?」

剣士「何か居る気がする」

女海賊「また魔物?」

剣士「いいえ…森の匂い」

女海賊「そんなんどうでも良い!いくよ!」グイ

【露店】

防具商「らっしゃい!何か買ってくかい?」

女海賊「おすすめは何?」

防具商「ラクダの革鎧が安いよ」

女海賊「そんな臭い物おすすめするの?もうちょっとマシなの無いの?」

防具商「はぁ…すこし値が張るけど金属糸で出来た旅人の服は臭わないですが…」

女海賊「お?ちょい見せて?」

防具商「…こちらですが」ゴソリ

女海賊「おぉ光ってる!!剣士!?サイズ合わせてみて?」

防具商「こちらの方ですね?」

女海賊「私も合わせてみる…おい剣士!何ぼーっとしてんのよ!」

剣士「はい…」クンクン

女海賊「…もう!まぁ良いや適当に見繕って着替えさせて」

防具商「かなりお高いですがよろしいでしょうか?」

女海賊「いくらよ?」

防具商「2着で10金貨ですが…」

女海賊「ハイハイ…」ジャラリ

防具商「うは…どちらの貴族様で?」

女海賊「うっさいなぁ…私は他の露店見てくるから着替えさせておいて!」

防具商「かしこまりました」ニヤ

女海賊「剣士!着替えたらここで待ってて」

剣士「はい…」



----------

防具商「…これで良しと」ゴソゴソ

剣士「…」

防具商「こちらがお連れ様の分ですが…お戻りが遅い様で」ニヤニヤ

剣士「…」

防具商「ここら辺はスリが多いですからねぇ…あなたは何も持っていない様ですが」

剣士「…」---女海賊大丈夫かな---

防具商「わたしはこれで店を終いますので失礼します…ではお気を付けて」スタコラ


ヒラヒラ ヒラヒラ


妖精(剣士!探したよ!大変な事が起きてる)

剣士(どうしたの?)

妖精(エルフが捕らえられてる)

剣士(やっぱり!…その匂いだったか)

妖精(法王庁の馬車の中)

剣士(どうしよう…女海賊がまだ帰って来ない)

妖精(エルフは僕の姿を見て助けをお願いしてきた)

剣士(僕だけで助ける事が出来そうかな?)

妖精(牢の鍵の場所は分かる…でも人が交代で見張ってるよ)

剣士(夜になれば…)

妖精(状況はあんまり良くないんだ)

剣士(どうして?)

妖精(法王庁の衛兵が交代交代でエルフを凌辱してる…夜になっても続いてると思う)

剣士(鍵を開けた所を襲うしか)

妖精(そうだね…)

剣士(僕たちの馬車の中に樽があったよね?一旦その中に隠そう)

妖精(馬車までは僕が誘導するよ…でもエルフが言う事聞くかな?)

剣士(一旦安全な所まで避難しないと逃げようが無いと思う)

妖精(エルフを説得してくる…)

剣士(今日の夜行こう)

妖精(分かった!エルフの所に行ってくる)ヒラヒラ



----------

タッタッタ

女海賊「やほーー待った?」

剣士「大丈夫?」

女海賊「何が?」

剣士「スリ」

女海賊「え!?…アレ?ない!!…ない!!…」ゴソゴソ

剣士「体が無事なら良い」

女海賊「ほーん…言うじゃない…でも買い物終わったからお金はもう良い」

剣士「宿屋のお金は?」

女海賊「フフフフフフフ海賊をなめんなよ?大事な物は大事な所に隠しているのだ!!」

剣士「良かった」

女海賊「あ~でも…ちょっとやりすぎたかなぁ」

剣士「??」

女海賊「拾ったサソリ2匹を金貨の入った袋に入れておいたんだ」

剣士「サソリ?」

女海賊「まぁ良いじゃん!?ところでさぁ…いっぱい買い物したんだ!早く宿屋に帰って装着するぞ!!」

剣士「はい…」

タッタッタ

女海賊「やほーー待った?」

剣士「大丈夫?」

女海賊「何が?」

剣士「スリ」

女海賊「え!?…アレ?ない!!…ない!!…」ゴソゴソ

剣士「体が無事なら良い」

女海賊「ほーん…言うじゃない…でも買い物終わったからお金はもう良い」

剣士「宿屋のお金は?」

女海賊「フフフフフフフ海賊をなめんなよ?大事な物は大事な所に隠しているのだ!!」

剣士「良かった」

女海賊「あ~でも…ちょっとやりすぎたかなぁ」

剣士「??」

女海賊「拾ったサソリ2匹を金貨の入った袋に入れておいたんだ」

剣士「サソリ?」

女海賊「まぁ良いじゃん!?ところでさぁ…いっぱい買い物したんだ!早く宿屋に帰って装着するぞ!!」

剣士「はい…」

『宿屋』

女海賊「おぉーこの金属糸の服!軽くて良いね」ゴソゴソ

剣士「…」

女海賊「見えてないのは分かってるけど…あっち向いて!!」

剣士「…」クルリ

女海賊「臭いも嗅ぐな!!息を止めて!!」

剣士「…」ピタリ

女海賊「私が裸の時は気を使えよ」ゴソゴソ

剣士「くるし…い」

女海賊「もう良い」

剣士「僕はこれをどうすれば…」

女海賊「それは狼の仮面…あんたはどうせ目が見えてないから顔を全部隠す」

剣士「こう?」ゴソゴソ

女海賊「おー超かっこいいじゃん!…私はこの機械式望遠ゴーグル…じゃーん!!って見えてないか」

女海賊「それからクロスボウのホルダーと小物入れ付きベルト…めっちゃスチームパンク」

剣士「見てみたい」

女海賊「私の美貌を見れないなんてあんた不幸だねぇ」

剣士「僕はどういう風に見える?」

女海賊「その仮面と白い毛皮着てれば私の番犬ポチ」

剣士「ウルフに見える?」

女海賊「夜ならそう見えるかもね」

剣士「…」---よし!都合が良い---

女海賊「あ~やっと馬車から解放されてゆっくり休める」

剣士「僕は休めない」

女海賊「なんでさ?」

剣士「え~と…」

妖精「剣士じゃ説明できないから僕が代わりに…」


カクカク シカジカ

女海賊「…で夜に助けに行くのか…う~ん危険だなぁ…」

妖精「エルフに今日の夜行くともう伝えたよ」

女海賊「まだ一日この町に居なきゃいけないのがね…もう少し別の騒ぎ起こさないと明日困るなぁ」

妖精「爆弾使う?」

女海賊「いまいちだなぁ…あんたさぁウルフの大群とか呼べないの?」

剣士「え?」

女海賊「ほら…ウルフって遠吠えで仲間呼んだりするじゃん?」

妖精「賢い!!デザートウルフが居るかもしれない」

女海賊「フフフフフフフ面白くなってきたぞぉ!私は養羊場の柵を爆破してくる」

妖精「羊が交換条件だね?出来る?剣士」

剣士「呼んでみる」

女海賊「今夜は上弦の月…よし!月が沈む時に爆破するからエルフの方は剣士と妖精で行って」

剣士「わかった」

女海賊「エルフを樽に隠したら宿屋に戻って来る事…分かった?」

剣士「はい」

女海賊「よっし!いっちょ働くかぁ!!あんたの遠吠え楽しみにしてるよ」


『丘の上』


ワオーーーーーーン アオーーーーーーーン

妖精(デザートウルフは来るかな?)

剣士(返事があった…来る)

妖精(法王庁の馬車は宿舎の方…こっちだよ行こう)ヒラヒラ

剣士(今の月は?)

妖精(もうすぐ沈むよ)


ドーン


剣士(予定通りだね)

妖精(ストップ!!…この先の馬車)

剣士(声が聞き取りにくい…もう少し近づく)ソロリ


ギシギシ

衛兵1「おい!早くしろよ…交代だ」

衛兵2「待ってくれ…こう無反応じゃ気が入らんのだ」

女エルフ「…」

衛兵2「もうちょっと抵抗するとか無いのかよ」ヌプヌプ

女エルフ「…」

衛兵1「開けるぞ」

衛兵2「待て待て…もう出る…うっ」ハァハァ

女エルフ「…」

衛兵1「終わったか?」

衛兵2「こんなに綺麗な顔してても無反応じゃなぁ…」シンナリ

衛兵1「みんな待ってんだ!早く出ろ!」ガチャリ


アオーーーーーーン

衛兵1「今日はヤケに犬が鳴いてるな…うぉ!めちゃくちゃ美形だな」

衛兵2「助けてやるとか口説いても無駄だぞ」ゴソゴソ

衛兵1「汚されきって舐める気は起きんな…早く変われぐふふふ」

衛兵2「今出る…ん?この女エルフ動いたぞ?おい暴れ…」

女エルフ「…」バタバタ

衛兵2「おい!おとなし…ぐぁ」

衛兵1「な、なんだなんだぁ?」ドン!

妖精(助けに来たよ!今の内に檻から出て)

衛兵1「犬!?いや…ウルフか?」タジ

衛兵2「エルフが逃げちまう檻を閉め…」

女エルフ「…」ダッ ガブ

衛兵2「いでぇ!!ぬぁぁぁぁ血がぁぁ俺の○○がぁぁぁ」

女エルフ「…」ペッ ボトリ

衛兵1「このぉ!!」スラーン

女エルフ(待ってた…足を怪我してて走れない)

剣士(チャンスを見て僕の背中に乗って!)

衛兵1「ウルフが人間様に勝てると思ってんのか!!」ブン

剣士(早く出て!!)ピョン クルクル シュタ

衛兵2「いでぇ…いでぇ…」ジタバタ

女エルフ(乗る!)ピョン ドシ

衛兵1「な!?…ウルフに乗るだと?」

剣士(つかまって!!走る…ぅ)シュタタ

衛兵1「逃がすかぁ!!」ダダッ

妖精(剣士!?走れる?)

剣士(なんとか…)---重い---

妖精(一人追いかけてくるよ)

女エルフ(追いつかれる…)

剣士(大丈夫!行ける!デザートウルフの方に向かう)

衛兵1「待てぇ!!俺はまだヤって無ぇ!!逃がさん!!」タッタッタ

剣士(…くぅぅ…もう少し…もう少し)シュタタ

妖精(あ!!居た居た!!)ハラハラ

デザートウルフ「ガルルルル…」

衛兵1「うぉ!!ウルフの大群…やべ」タジ

剣士(このまま馬車まで行く!妖精!…先導して)

妖精(こっち!)パタパタ

女エルフ(あなたは…エルフ?ウルフ?…それとも人間?)

剣士(いろいろ事情があってね)シュタタ

女エルフ(私は重い?)

剣士(背中に誰かを乗せて走った事なんか無い)

妖精(おっけー誰も居ないよ…馬車までまっすぐ行けそう)

剣士(良かった…)

『馬車』

女エルフ(…人間が仕掛けたベアトラップにかかってしまって)

妖精(この足の怪我は治るのにしばらくかかると思う)

剣士(治るまでは一緒に居た方が安全かな)

女エルフ(この樽の中に隠れておけば良いの?)

剣士(明後日にこの町から離れる…それまでは隠れて居て)

女エルフ(わかった…)

剣士(その毛皮は君に貸しておくよ)

女エルフ(白狼の毛皮…)

剣士(君が裸だったのは知らなかったんだ…何も用意していなかった)

女エルフ(ありがとう…あなた…やっぱりエルフね?)

剣士(君も妖精と同じ事を言うんだね…僕は自分が何なのかよく分からない)

女エルフ(きっと私と同じハーフエルフ)

剣士(その話は今度じっくりしよう…僕が今ここに居るのはあまり良くない…怪しまれる)

妖精(そうだよ…見つかる前に戻ろう)

剣士(狭いけど…樽の中で休んで居て?)

女エルフ(…)コクリ

剣士(このナイフを渡しておくよ…もしもの時に使って)ハイ

妖精(行こう!)パタパタ

剣士(じゃぁ…明後日の朝に)シュタタ

『宿屋』

ガヤガヤ ガヤガヤ

外はウルフが居て危ねぇぞ

駐屯してる衛兵は何やってんだ

オラの羊さ心配だべぇ~ヒック

ガヤガヤ ガヤガヤ


女海賊「お!?上手くいった?」

剣士「うん」

女海賊「もっと遅くなると思ってた」

剣士「デザートウルフが来て助かった」

女海賊「50匹は来てるよ!あちこち走り回ってる」

剣士「町の人は建物に?」

女海賊「隣の酒場に居た連中が帰れなくてここに来てるくらい…被害は殆ど無いよ」

剣士「よかった」

女海賊「そろそろ寝るかぁ!!ふぁ~あ…アレ?あんた!そういえば毛皮と仮面はどうしたの?」

剣士「馬車に置いてきた」

女海賊「ほ~ん…まぁ良いけど…」ジロリ

剣士「なに?」

女海賊「あやしぃ…あんたぁ!!エルフに貸したな?」

剣士「うん」

女海賊「惚れたか!?」

剣士「ハハ僕は見えない」

女海賊「ドワーフとエルフ!!どっちが良いかハッキリしな!!」

剣士「どっちも同じ…」

女海賊「ん~む…同じねぇ…腹立つ回答だけど悪い気はしないなぁ」

剣士「休もう」

女海賊「私はこっち!あんたはそっち!寝るよ!」プン

『夢』


ぼく「回復魔法!」ボワー

??「へぇ~魔法使えるんだ?すごいじゃん」

ぼく「大丈夫?」

??「もう平気!!あんたが持ってるその剣ってさぁ…変わった色してるね」

ぼく「銀…かな?」

??「どこで手に入れたの?私も欲しいんだけど」

ぼく「覚えてないんだ」

??「ちょっと貸して」

ぼく「はい」ポイ

??「お?軽~い」フォン フォン

ぼく「気に入った?」

??「振ると不思議な音が鳴るんだね」フォン フォン

ぼく「気が付かなかった」

??「返すよ」ポイ パス

ぼく「行こうか」

??「日暮れまでに馬宿まで行かないとまた野宿になるなぁ」

ぼく「向こうの谷の下に見えるやつかな?」

??「まだ遠いなぁ…こんどウルフが出たらあんたが追い払って」

ぼく「わかったよ」

??「足が少し痛む」

ぼく「回復魔法!」ボワー

??「さんきゅ!」

ぼく「急ごう…」

??「馬宿まで行けたら定期馬車に乗れるかも」

ぼく「楽になるね」


---魔法なんて使えたっけ?---

『翌日』

ガチャリ バタン

女海賊「はぁはぁ…まずい事になっちゃったなぁ…」

剣士「どうしたの?」

女海賊「ちょっと目立ちすぎたかも…後を付けられてる」

剣士「誰に?」

女海賊「多分同業者…盗賊ギルドの連中」

剣士「なら仲間だと教えて…」

女海賊「簡単に信じる訳無いじゃん?ったくぅ…」

女海賊「私がギルドマスターの助手だって事分かってないんだよね~あのバカ共」

女海賊「きっと商隊に混ざって追ってくる…どうすっかなぁ」

女海賊「馬車の中に食料と水はどれくらい残ってた?」

剣士「5日分くらい」

女海賊「あんたさぁ…馬車の馭者出来る?」

剣士「え!?…やったこと無い」

女海賊「馬のおしりペチンペチンやってりゃ良いのよ!!トンズラするよ!!」

剣士「前の馭者の人は?」

女海賊「置いてくに決まってんじゃん」

剣士「マジで言ってる?」

女海賊「…その言い方…私の真似?てか教え方が悪いか…とにかく今夜逃げる」

女海賊「このまま商隊で移動してると絶対面倒な事になる」

剣士「どうして?」

女海賊「相手はプロだよ?こっちはエルフかくまってるしバレると絶対襲われる」

女海賊「商隊は明日の朝に出発予定だから馬の締結は夜までに終わってる筈」

女海賊「この部屋の明かりは付けたまま日が暮れたら出来るだけ早く出発するよ」

女海賊「ウルフが沢山うろついてる時に単独で出発するとは誰も思わない」

剣士「…ゆっくり話してくれないと良く分からない」

女海賊「シッ…」

剣士「??」

女海賊「私のカンは超当たる…次は誰かこの部屋を確認に来る」

剣士「…」クンクン

女海賊「誰か来る?」

剣士「食べ物の匂い」

女海賊「…ルームサービスか…一部屋づつ回ってるな…来ても開けないで!」

剣士「はい」

女海賊「部屋がバレるのも時間の問題…どうするどうする?」キョロキョロ

剣士「爆弾」

女海賊「こんな所で?ダメダメ…ん?まてよ?」

女海賊「窓から投げてドーン→人が集まる→衛兵来る→明かり付けたまま今逃げる…いいな」

女海賊「で…どこに隠れる?」ソワソワ

トントン


??「お食事を届けに参りました」

女海賊(ああぁぁもう来た…どうするどうする?)

剣士(…)ノソリ

女海賊(シーッ…出ないで!え~いもうやっちゃう!…爆弾投げるよ)チリチリ ポイ

??「いらっしゃいませんか?」ガチャガチャ

女海賊(人が集まってきたら窓から出るよ!準備して)

剣士(丘の上に行こう)

女海賊(隠れるところあんの?)

剣士(風通しが良くて誰も居ない)

女海賊(おっけ!あんたが先導して)

??「いないのですか~?ここを開け…」ドンドンドン


ドーン パラパラ


??「うゎ!!な、なんだぁ?」ドタドタ

??「外か?」タッタッタ



----------



ガヤガヤ ガヤガヤ

なんの騒ぎだ

けが人は!?

この木が破裂したのか?

ガヤガヤ ガヤガヤ


女海賊「よし!今行ける!窓から飛び降りて!」ピョン 

剣士「付いてきて」ピョン シュタ

女海賊「よっし!!撒ける」タッタッタ

『丘の上』

サワサワ サワサワ

女海賊「付けられて無いね?」キョロ

剣士「この木に登る」

女海賊「こんなでっかい木を私に登らせる訳?」

剣士「引っ張る」ピョン ピョン シュタ

女海賊「あんたはサルか!」

剣士「手を…」

女海賊「よっ…と」ピョン ピョン ガシ

剣士「おっけ」グイ

女海賊「その言い方…だんだん私になってるな」ヨイショ

剣士「完璧!」

女海賊「フフフフフかんぺーき!!さて…馬車はどっちだ?」

剣士「あっちの方角」ユビサシ

女海賊「…あれだな?今こそこの望遠ゴーグルを使う時だ!!装~着!!」ビシ

女海賊「おぉぉ見える見えるぅ…丁度馬締結してる所だ」

剣士「エルフは?」

女海賊「分かんない…牧草と水は馬車の中に入れ終わってる模様」


チュンチュン


女海賊「あんたぁ何やってんのよ?」

剣士「鳥達とお話」

女海賊「はぁぁ?何メルヘンやってんのさ…焼き鳥用に捕まえといてよ」

剣士「エルフが元気ないらしい」

女海賊「そういや妖精は?全然見ないけど」

剣士「多分エルフの所に居ると思う」

女海賊「あ!!馬の締結終わった…あの馭者…町の方に戻って行く」

女海賊「なんちゅー不用心な」

女海賊「荷物積んで無いのが良かったぽい」

女海賊「まだ夕暮れ前だけど人が居ない今がチャンスかも」

女海賊「商人達の馬車が商隊詰め所に入ってくる前に行っちゃおう!」

剣士「もう行く?」

女海賊「私は待てない性格なの!行くよ!」ピョン

剣士「ちょちょ…」ピョン

『馬車』

ヒヒーン ブルル

女海賊「よし!誰も居ない!ひとまず馬車の中へ」ピョン

剣士「おっけ」ピョン

女海賊「誰か来たら教えて…この樽の中ね?」

妖精「女エルフの足の怪我が良くないよ」

女海賊「今は見てあげらんない…町出るまで待って」

剣士(女エルフ大丈夫?)

女エルフ(ぅぅぅ…)

女海賊「もう!!しょうがないなぁ…樽開けるよ?妖精!!誰か来ないか見張ってて」パカ

妖精「しょうち!」ビシ パタパタ

女海賊「ドワーフとエルフのご対面~わぉ綺麗な金髪」

女エルフ(ドワーフ?…聞いてない)

剣士(この子はドワーフの女海賊らしい)

女海賊「私の分かんない言葉使うな!…足見せて?」

女エルフ(ドワーフに体見せるなんて…屈辱)

剣士(大丈夫…言う事聞いて?)

女エルフ(…)スッ

女海賊「お?立った…て細っそ!そこに横になって足見せて?」

女エルフ(…)ソロリ

女海賊「ああぁぁ~血は止まってるけど骨が露出してるじゃん!剣士コラ!なんで怪我の事言わないのさ!」

剣士「分からなかった」

女海賊「壊死しかけてる…これは薬草じゃどうにもならないよ…どうしよう」

女海賊「んんんん切断しないと死ぬよ?」

剣士「え?そんなに」

女エルフ「足を無くすくらいなら…」

女海賊「お?しゃべれるんじゃん」

剣士「医者に見せよう」

女海賊「何バカな事言ってんの?この子はエルフだよ?捕まって言い様にされるに決まってんじゃん」

剣士「切断しか方法は無い?」

女エルフ「イヤ…そんなのイヤ」ブルブル

女海賊「んんんんシャ・バクダまで持つかなぁ?…回復魔法とかあればなぁ…」

剣士「…」---回復魔法?---

女海賊「このハズレ町からシャ・バクダまで早くて5日…薬草で何とか持たせるのに賭けるか」

剣士「触るよ?」

女エルフ「え?」

女海賊「おい!!裸の女に勝手に触るな!!」

剣士「回復魔法!」シーン

女海賊「何やってんの!あんたはバカか?」

女エルフ「あなた魔法使えるの?回復魔法は触媒に水とミネラルが要るの」

剣士「触媒?」

女海賊「ミネラルは爆弾の材料で少し持ってるケド…あんたのメルヘンに付き合ってる場合じゃ無い」

剣士「貸して」

女海賊「もう!勝手にしな!!私は薬草作る」

妖精「もうすぐ日が沈むよ」

女海賊「ああぁぁいろいろ忙しいなぁ…メルヘンは早く終わって馭者やってよ」

剣士「もう一回…回復魔法!」ボワー

女エルフ「ぁ…」

女海賊「お?光った?マジ?…」

剣士「回復魔法!」ボワー

女エルフ「ぁぁ…ん」

女海賊「マジでマジか!!でも待って…その光は目立ちすぎる…町出てからにして」

剣士「わかった…馭者試してみる」

女海賊「馬は夜目が効かないから走らせるなら馭者が必要…妖精!!剣士の目になってあげて」


ヒヒーン ブルル

ガラゴロ ガラゴロ


女海賊「お?動いた…丁度良い!人通りさけて町を出て」

妖精(もっと右…そうそう)

女海賊「あんた!?手綱持ってないの?」

剣士「馬とお話した」

女海賊「フフフフあんたは便利だねぇ…条件何だったの?」

剣士「おしりを叩かない約束と牧草」

女海賊「馬は夜に目が見えないよ?手綱持っときな」

剣士「妖精が馬の目の代わりやってる」

女海賊「馭者は妖精で良いってわけ?…さっすが妖精!今度わたしのおっぱいの真ん中で寝かせてあげる」

妖精「先約があるので…」

女海賊「ムッキーーまさか…」ジロリ

女エルフ「…」プイ

『荒野』

ガラゴロ ガラゴロ

女海賊「真っ暗だね…すこし進路を東よりに変えて森が見えたら馬を休息させよう」

剣士「デザートウルフが様子伺ってる」

女海賊「あんたが居りゃ大丈夫っしょ?」

剣士「友達では無いよ」

女エルフ「私には襲って来ない筈」

剣士「…そういう事か…距離を保ってる」

女海賊「それはある意味守られてると思って良さそう」

剣士「馭者は妖精に任せるよ」ノソリ

女海賊「ここまで離れればいっかぁ…ちょいもう一回さっきの魔法見せて?」

剣士「足の具合は?」

女海賊「薬草乗せてるけど骨が露出してるのはどうにもならないよ」

剣士「行くよ?回復魔法!」ボワー

女エルフ「ぁ…」

女海賊「いちいちエロい声出すなって」

女エルフ「すごくラク」

剣士「回復魔法!」ボワー

女海賊「!!?あんたぁ!!」

剣士「え?」

女海賊「あんたが魔法使えるの私知ってたカモ…私の夢ん中出てくるのあんただね?」

剣士「夢?」

女海賊「…って何メルヘンな事言ってんだ私…」

剣士「回復魔法!」ボワー

女海賊「んんんんんどうも…何回も見てる気がするんだよなぁ」

女エルフ「魔法が使えるのは才能のある限られた人だけ」

女海賊「あんたは使えんの?」

女エルフ「ハーフエルフは純血のハイエルフから魔法を使うことを禁止されているの」

女海賊「そんな事は聞いてないよ…使えるか使えないか」

女エルフ「エルフはみんな使える…でも使うとエルフの森から追放される」

女海賊「他にどんな魔法があるか知ってる?」

女エルフ「沢山」

女海賊「シャ・バクダまで5日くらい掛かる…剣士!!全部教えてもらいな?」

剣士「出来るかな?」

女海賊「私の勘は超当たる…あんたは本当は魔法使いだ…夢で見た」

剣士「ハハ夢?」

女海賊「それはそうと…女エルフ?あんた相当ヤられたね?」

女エルフ「…」

女海賊「恥部見せてみな?あちこちアザだらけじゃん」

女エルフ「…」

女海賊「どうせ剣士は目が見えてないから…ハイ足開いて」

女エルフ「…」パカ

女海賊「…やっぱりね…あんた良くこんなんで我慢してたね?剣士!!こっちも回復魔法」

剣士「回復魔法!」

女エルフ「ぁぅぅ」

女海賊「上着を買っておいたから体がラクになったら着て」ポイ

女エルフ「ありがとう」

女海賊「あんたさぁ…本当は瀕死だったんだね…涼しい顔してるケド」

女エルフ「人間達から見たらエルフはみんなそう見えるの…」

『翌日』

ブルル~ ガフガフ

女海賊「ふぁ~あ…おはよう…馬の機嫌は?」

剣士「2匹とも良い」

女海賊「そりゃ結構!牧草食べ終わったら出発出来る?」

剣士「多分ね…女エルフを気に入ったみたい」

女海賊「んん?馬のくせに?」

剣士「馬は人間が思ってるよりずっと賢いんだよ」

女海賊「女エルフはどこ?」

剣士「馬とお話してるよ」

女海賊「もう歩けるの?」

剣士「やっと傷は塞がった」

女海賊「あれからずっと回復魔法してたの?」

剣士「うん…」

女海賊「女エルフ!!無理しないで横になってて?傷跡を見せて?」

女エルフ「ごめんなさい」ヨロ

女海賊「あ…あんた…悔しいケドめっちゃ綺麗ね」

女エルフ「言われて悪い気はしないけど…そう見えてるだけよ」

剣士「僕には二人とも同じくらい素敵な人だよ」

女海賊「目を閉じればおんなじかぁ…ほら傷見せて?」

女エルフ「…」ソロリ

女海賊「おおぉ傷が塞がってる…でも死んだ骨が再生するのはまだ時間が掛かる感じかな?」

妖精「出発するよ~」


ヒヒーン ガラゴロ ガラゴロ


女海賊「妖精とウルフ、ドワーフにエルフ…全員魔物じゃんwwwwww何このパーティー」

女エルフ「剣士はウルフというよりも私と同じハーフエルフ」

女海賊「やっぱそうなん?」

女エルフ「ほら?私の耳も小さい」

女海賊「本当だ…でもちょっと尖ってるね」

女エルフ「妖精から剣士の話を聞いたの…ウルフに育てられたって」

女海賊「そういや詳しく聞いたことなかったっけな」

女エルフ「目の無いハーフエルフの事…私知ってる」

剣士「え!?マジで?」

女海賊「…あんたさぁ!私の真似やめて」

女エルフ「私がまだ小さい頃…」

目の無いハーフエルフの赤ん坊が森から追放される儀式があったの

その子はエルフの特徴が一つも無かった

人間との間で生まれたハーフエルフはみんな耳が小さい

だからエルフの森では下級エルフと言われていじめられる

特にエルフの特徴を一つも持っていなかったその子は

まだ赤ん坊なのに森の外へ追放された

私はその追放の儀式の時にその子見たことがある

目の中に瞳が無かった


女エルフ「剣士の顔を見て思い出した…あの時の子かもしれないって」

女海賊「言われてみると女みたいな顔立ちだもんねぇ…エルフだったら納得」

剣士「それはどれくらい昔の話?」

女エルフ「私はまだ24年目…その時6年目くらいだから18年くらい前」

女海賊「ええええええええ!?あんたまだ18歳なの?ガキじゃん!!」

女エルフ「体が小さいのはまだ成長しきっていないから…」

女海賊「…あんたはなんで人間に捕まったのさ?」

女エルフ「ハイエルフは森を出る事は殆どなくて外の見回りはハーフエルフの役割」

女海賊「小間使いって訳だ?」

女エルフ「人間達が森を荒らしてエルフ狩りをしているの」

女海賊「あんたの他にも捕まっているエルフがいっぱいいるんだ?」

女エルフ「人間の数は私たちエルフよりも100倍も200倍も多いの」

女海賊「ふむぅ…人間は悪い事ばっかりするねぇ…」

女エルフ「人間さえいなければ不幸なハーフエルフも生まれないのに…」

女海賊「むむ…ピーンと来たぞ!?お腹の中に子供が出来てるのかも?」

女エルフ「…」

女海賊「なるほど理解できた…エルフの森でハーフエルフが迫害される理由」

女エルフ「エルフは同族を殺めてはいけない掟」

女海賊「だから追放という方法しか取れないのか」

女エルフ「もしお腹の中に子供が出来ていたら私はその子を愛せるか自信が無い」

剣士「…もうその話は聞きたくない」

女エルフ「ごめんなさい」

剣士「僕の母さんはここに居る」

女海賊「白い毛皮…」

剣士「ずっと僕を愛してくれている…それで良い」



----------

女エルフ「火炎魔法の触媒は硫黄と松脂」

女海賊「両方とも爆弾の材料だよ…持ってる」

女エルフ「電撃魔法は銅の欠片」

女海賊「銅貨コインでいける?」

女エルフ「罠魔法は植物の種と水」

女海賊「種…鳥の餌でいけるんかな?」

女エルフ「これらはエレメンタルの力を借りる代わりに支払う対価」

女海賊「はぁ?何のこっちゃ?」

妖精「物質の無いあの世では高価な物なんだよ?こう言えば分かるかな?」

女エルフ「魔法は古にエレメンタルと交わした契約に沿って行うの」

女海賊「なんかよくわかんないけど…隕石とかも落とせる?」

女エルフ「それは大魔法の一種…人間の魔女達が研究しているもの…」

女海賊「そっか…200年以上前にシャ・バクダが滅んだのは隕石だってアサシンが言ってたからさ」

女エルフ「アサシン?」

妖精「女海賊の飼い主だよ…人間だけどね」

女エルフ「あなた…人間に協力しているのね?」

女海賊「協力というか…ドワーフの教えはちゃんと守ってる」

女エルフ「ドワーフの教え…勇者の保護ね?」

女海賊「どこに居るのか分かんないんだけどさぁ…アサシンが勇者を探してるから便乗してるって感じかな」

女エルフ「私たち魔物の敵は人間…の筈」

女海賊「人間も悪い奴ばっかりじゃ無いよ?あんたも半分人間でしょうに?」

女エルフ「私は…私は…」

女海賊「かくいう私もドワーフと人間のハーフなんだけどね」

女エルフ「あなたもハーフ」

女海賊「パパが言ってたさ…複雑な心を持っているのが人間だって」

女エルフ「私の心は人間…なの?」

女海賊「犬猿の仲のドワーフとエルフがこうやってお話出来るのも人間の心があるからかもね?」

女エルフ「ドワーフとこんなに話が出来るなんて…」

女海賊「あんたん所のハイエルフは話が通じると思う?」

女エルフ「…」

女海賊「…そういう事」



----------

剣士「火炎魔法!」ボワ

剣士「罠魔法!」ザワザワ シュルリ

剣士「電撃魔法!」ビビビ

女海賊「剣士!!それを左手でやって?…私の夢ん中だと右手に剣、左手で魔法使ってる」

剣士「こう?火炎魔法!」ボワ

女海賊「そうそう!そんな感じでソレを剣に塗る」

剣士「塗る?こうかな?」

女海賊「ちょーかっけぇ!!それで火炎切り…待て待てここでやらないで」

女エルフ「炎はやめて!馬が怯えてる」

女海賊「あんたにこんな才能があったとは…濡れる」

剣士「僕も驚いてる」

女海賊「ひょっとしてさぁ…あんた勇者じゃね?」

剣士「僕が!?」

女エルフ「勇者は人間…あなたは間違いなくハーフエルフ…匂いで分かる」

女海賊「匂いなんかすっかなぁ?」クンクン

女エルフ「後10年もすれば分かる…あなたは人間の様に老いない」

女海賊「私は10年も待てない…待つのキライ」

剣士「どっちでも良いよ…僕はぼく」

女エルフ「瞑想を教えてあげる…これはエルフにしか出来ない」

剣士「瞑想?」

女エルフ「エルフは睡眠の代わりに瞑想をするの」

女海賊「あんたちゃんと寝てんじゃん?」

女エルフ「誘導してあげる…魂を感じて付いてきて?」

剣士「…」

女エルフ「狭間の方へ…こっち」


---重なって一つになるの---

---ほら他の魂も重なってきた---

---考えると瞑想が覚めてしまうから---

---そのまま感じるだけ---

----------

----------

----------

ガラゴロ ガラゴロ

女海賊「もう!!何なのさあの2人は!!おい妖精!私の相手しろ」プン

妖精「ケラケラアハハ」

女海賊「何が可笑しいのよ!もう半日も息もしないであのまんま…私も連れてけってんだ」プリプリ

妖精「エルフには普通の事だよ…瞑想で体を癒すんだよ」

女海賊「まぁこれで剣士はハーフエルフってことが確定か…」

妖精「瞑想の方が寝るよりずっと良いんだよ?」

女海賊「私にも出来る?」

妖精「ドワーフは瞑想じゃなくて宝石とか金属で癒されるんじゃないの?」

女海賊「お!?あんた分かってるねぇ…金属とか機械大好き!見てると飽きない」

妖精「今身に着けてる金属糸の服は?」

女海賊「最高!!ぐっすり寝れる」

妖精「それと同じだよ」

女海賊「納得…でもさぁ2人でなんかイチャイチャしてる感じが腹立つ」イライラ

妖精「君のその短気な所はやっぱりドワーフなんだね」

女海賊「はぁ!?あんたぁ!!妖精のクセに生意気なんだよ!!」

妖精「あ!!瞑想から覚めた」

剣士「…」パチリ

女エルフ「…」パチリ

女海賊「おい!!なんで起きるタイミングも一緒なのさ!!腹立つんだけど」

女エルフ「どう?」

剣士「一つになった」

女エルフ「それで良いの」

女海賊「はぁぁぁ?一つになった?何エロい事言ってんの?あんた達何してたのよ」

剣士「あ…ごめん女海賊…どれくらい瞑想してたの?」

女海賊「半日!!あんたら2人で一つになったとか何してんのよ!?」プン

女エルフ「違うの…虫や草木、動物たちの魂と一つになるの」

女海賊「虫!?てっきりあんたら2人で一つになってるのかと…」

妖精「ドワーフの嫉妬は怖いよぉぉ」

女海賊「うるさい!バカ妖精!!羽ムシルぞ」

女エルフ「私の言った通りでしょう?あなたはハーフエルフ」

剣士「目も耳も鼻も必要ない…この感じ」

女エルフ「そう…それが証拠よ」

『単独行動3日目』

ガラゴロ ガラゴロ

女海賊「商隊に居るより全然こっちのがラク」

剣士「自由に出来るからね」

女海賊「エルフが居ればウルフも襲って来ないし」

剣士「全然他の馬車とすれ違わないね」

女海賊「こんな所危なくて単独馬車で移動なんか出来ないよ」

妖精「ドラゴンがまた来たりして」

女エルフ「ドラゴンはエルフの味方よ?…又ってどういう事?」

女海賊「商隊が一回ドラゴンに襲われかけた」

女エルフ「エルフを捕らえていない限りドラゴンは襲って来ない筈…あ!」

剣士「僕を見に来た?」

女エルフ「そうだと思う」

女海賊「なるほどぅ…つじつまが合うね」

女エルフ「ドラゴンは何処へ向かってたか分かる?」

女海賊「トアル町の東の方向」

女エルフ「森の最南部ね…鳥達の噂と合致してる」

女海賊「何かあんの?」

女エルフ「人間達の大部隊がエルフを探して北上してるらしいの」

女海賊「法王庁の衛兵達もその一部かな?…シャ・バクダに着いたらお姉ぇに聞いてみよう」

女エルフ「お姉さん?その人もドワーフ?」

女海賊「今は盗賊ギルドマスターを代行してる」

剣士「アサシンの代わりの人って?」

女海賊「私のお姉ぇ…ドワーフ2人とエルフ2人フフフ私らって一体何だろね?」



----------

女海賊「…そう!気球をもらったらエルフの森を飛び越えて東の光の都シン・リーンに行く」

女海賊「途中で降ろしてあげても良いけどどうする?」

女エルフ「…剣士の目を治す為…か」

女海賊「千里眼という魔法があるんだってさ」

女エルフ「知ってる…でもそれは遠くにある物を見通す魔法」

剣士(目は治らなくても良い…ただ見たいだけ)

剣士(君たちの顔も世の中のすべても全部…僕が勝手に想像して心に描いてる)

剣士(夢でよく見る人が誰なのかも何もかも思い出せない)

剣士(それは見えないから…僕が勝手に想像してる物だから)

女エルフ(夢の中でも魂は同じ筈)

剣士(夢の中でそれを感じれるほど機転が利かないんだ)

剣士(いつも自分が誰だったか夢の中では覚えていない)

女エルフ(あなた…夢幻に捕らわれている)

剣士(夢幻?)

女エルフ(エルフは夢を見ないの…寝むる代わりに瞑想をするから)

剣士(瞑想の間は自我を保てる…夢は自我がどこかにいってしまう…どうしてだろう?)

女エルフ(それはあなたの夢では無いから)

女海賊「おい!!ちょっとさぁ!!私の分かんない言葉で会話しないでくれる?」

剣士「ごめん…難しい言葉だったから」

女海賊「…でどうすんの?女エルフ?」

女エルフ「剣士の見る夢に興味が出てきた…精霊の見ている夢かもしれない」

女海賊「はぁ?なんで急に精霊とか言い出す訳?ひょっとして昔話のやつ?」

女エルフ「その昔話がどういうのかは知らないけれど…200年前に精霊が夢幻に閉じ込められたお話」

女海賊「うんそれそれ…アサシンがしきりにその話をしてた…それって本当なのかなぁ?」

女エルフ「エルフの森には精霊樹があるの…」


精霊樹は祈りによって純血のエルフを生むの

でも200年前から精霊樹はエルフを生まなくなった

それは魂が居なくなってしまったから

このままではあと100年もすればハイエルフは絶滅してしまう

だからハイエルフ達は精霊の魂が再び戻る事をずっと祈ってるの

ではどうして精霊の魂が居なくなってしまったのか?

それは200年前の大破壊の時

魔王が倒される間際に精霊を夢幻に閉じ込めてしまったから…

女海賊「…そう!気球をもらったらエルフの森を飛び越えて東の光の都シン・リーンに行く」

女海賊「途中で降ろしてあげても良いけどどうする?」

女エルフ「…剣士の目を治す為…か」

女海賊「千里眼という魔法があるんだってさ」

女エルフ「知ってる…でもそれは遠くにある物を見通す魔法」

剣士(目は治らなくても良い…ただ見たいだけ)

剣士(君たちの顔も世の中のすべても全部…僕が勝手に想像して心に描いてる)

剣士(夢でよく見る人が誰なのかも何もかも思い出せない)

剣士(それは見えないから…僕が勝手に想像してる物だから)

女エルフ(夢の中でも魂は同じ筈)

剣士(夢の中でそれを感じれるほど機転が利かないんだ)

剣士(いつも自分が誰だったか夢の中では覚えていない)

女エルフ(あなた…夢幻に捕らわれている)

剣士(夢幻?)

女エルフ(エルフは夢を見ないの…寝むる代わりに瞑想をするから)

剣士(瞑想の間は自我を保てる…夢は自我がどこかにいってしまう…どうしてだろう?)

女エルフ(それはあなたの夢では無いから)

女海賊「おい!!ちょっとさぁ!!私の分かんない言葉で会話しないでくれる?」

剣士「ごめん…難しい言葉だったから」

女海賊「…でどうすんの?女エルフ?」

女エルフ「剣士の見る夢に興味が出てきた…精霊の見ている夢かもしれない」

女海賊「はぁ?なんで急に精霊とか言い出す訳?ひょっとして昔話のやつ?」

女エルフ「その昔話がどういうのかは知らないけれど…200年前に精霊が夢幻に閉じ込められたお話」

女海賊「うんそれそれ…アサシンがしきりにその話をしてた…それって本当なのかなぁ?」

女エルフ「エルフの森には精霊樹があるの…」


精霊樹は祈りによって純血のエルフを生むの

でも200年前から精霊樹はエルフを生まなくなった

それは魂が居なくなってしまったから

このままではあと100年もすればハイエルフは絶滅してしまう

だからハイエルフ達は精霊の魂が再び戻る事をずっと祈ってるの

ではどうして精霊の魂が居なくなってしまったのか?

それは200年前の大破壊の時

魔王が倒される間際に精霊を夢幻に閉じ込めてしまったから…

女海賊「…そう!気球をもらったらエルフの森を飛び越えて東の光の都シン・リーンに行く」

女海賊「途中で降ろしてあげても良いけどどうする?」

女エルフ「…剣士の目を治す為…か」

女海賊「千里眼という魔法があるんだってさ」

女エルフ「知ってる…でもそれは遠くにある物を見通す魔法」

剣士(目は治らなくても良い…ただ見たいだけ)

剣士(君たちの顔も世の中のすべても全部…僕が勝手に想像して心に描いてる)

剣士(夢でよく見る人が誰なのかも何もかも思い出せない)

剣士(それは見えないから…僕が勝手に想像してる物だから)

女エルフ(夢の中でも魂は同じ筈)

剣士(夢の中でそれを感じれるほど機転が利かないんだ)

剣士(いつも自分が誰だったか夢の中では覚えていない)

女エルフ(あなた…夢幻に捕らわれている)

剣士(夢幻?)

女エルフ(エルフは夢を見ないの…寝むる代わりに瞑想をするから)

剣士(瞑想の間は自我を保てる…夢は自我がどこかにいってしまう…どうしてだろう?)

女エルフ(それはあなたの夢では無いから)

女海賊「おい!!ちょっとさぁ!!私の分かんない言葉で会話しないでくれる?」

剣士「ごめん…難しい言葉だったから」

女海賊「…でどうすんの?女エルフ?」

女エルフ「剣士の見る夢に興味が出てきた…精霊の見ている夢かもしれない」

女海賊「はぁ?なんで急に精霊とか言い出す訳?ひょっとして昔話のやつ?」

女エルフ「その昔話がどういうのかは知らないけれど…200年前に精霊が夢幻に閉じ込められたお話」

女海賊「うんそれそれ…アサシンがしきりにその話をしてた…それって本当なのかなぁ?」

女エルフ「エルフの森には精霊樹があるの…」


精霊樹は祈りによって純血のエルフを生むの

でも200年前から精霊樹はエルフを生まなくなった

それは魂が居なくなってしまったから

このままではあと100年もすればハイエルフは絶滅してしまう

だからハイエルフ達は精霊の魂が再び戻る事をずっと祈ってるの

ではどうして精霊の魂が居なくなってしまったのか?

それは200年前の大破壊の時

魔王が倒される間際に精霊を夢幻に閉じ込めてしまったから…

女エルフ「剣士が見る夢はもしかすると精霊が見ている夢なのかもしれないと思ったの」

女海賊「びっくり…アサシンが言ってる事とまったく同じ…散々聞かされたんだ」

女エルフ「精霊の魂はあなた達が見る夢の中に居るのかもしれない」

剣士「僕は何か夢で見ている気がする…でもどうしても思い出せない」

女海賊「とにかく!!女エルフは一緒に行くって事ね?」

女エルフ「足手まといにはならないようにする」

女海賊「ねぇねぇ…エルフってさぁ結構おしゃべりだよね?」

女エルフ「あなた達が人間では無いから話せるだけ…人間相手にお話しする事なんて無いの」

女海賊「ふ~ん…その偏見はエルフの傲慢だよ?とだけ忠告しとく」

女エルフ「…覚えておくわ」

『単独行動5日目』

ガラゴロ ガラゴロ

女海賊「見えてきた!あそこのオアシスがシャ・バクダの町」

女エルフ「人間はこんな所に住んでいるんだ…」

女海賊「そっか森から出た事無いんだね…えっと」ゴソゴソ

女海賊「女エルフ!あんたはこれに着替えて?ニカーブっていう衣だよ」

女海賊「あんたの顔は美形すぎてすぐにエルフだってバレる…目の部分だけ見える様になってるから」

女エルフ「…」ゴソゴソ

女海賊「剣士はいつも通り毛皮のフードを深く被ってて」

剣士「おっけ」

女海賊「その言い方やめて…ほんで今日はひとまず宿屋に入る」

女海賊「なんでか知りたい?フフフフフフフフ」

剣士「…別に」

女海賊「おい!!盗賊ギルドのアジトは沢山あって今どこにあるか私も知らない」

女海賊「向こうからコンタクトしてくるのを待つのさ!どうだ!!」

剣士「…」

女海賊「何か言えよ!!」

妖精「クスクスケラケラアハハ」

女海賊「何よ!?」

妖精「君はワンパターンなんだよ」

女海賊「はぁ?あんた舐めてんの?」

剣士「羽ムシルぞ!!」

女海賊「うん!!そうだ!!…ておい!」

妖精「ケラケラアハハハ」

女エルフ「ウフフ」

女海賊「…あんた達さぁ…私をバカにしてんね?分かった!こっちにも考えがある」

剣士「その機械式望遠ゴーグル良いね?」

女海賊「お!!あんた分かってんねぇ!これってさぁ…ん?…マテあんた見えてないじゃん!!」

剣士「アハハ」

女海賊「ムキーーーーー!!」

剣士「そんな君が好きだよ」

女海賊「…なんちゅった?もっかい言ってみ?」

剣士「そんな君が…」

女海賊「君が…」ワクワク

『火の国シャ・バクダ』

ワイワイ ガヤガヤ

おひかえなすって…入りやす カラカラ

半か丁か!…半!半!丁!……

ぐぁぁぁぁ!!いかさましやがってぇぇ!!

ワイワイ ガヤガヤ


剣士「あんなところに馬車置いていくの?」

女海賊「いーのいーの!あんな馬車もう要らないよ…馬だけ宿に預ける」

剣士「人が多くて…不安だなぁ」

女海賊「馬引いてる人にわざわざぶつかって来る奴なんか居ないよ!手綱離すんじゃないよ!」

剣士「ん?なんだろう…この音」

女エルフ「ラクダの匂い」

女海賊「あ~ラクダレースだね…向こう側でやってると思うよ」

剣士「へぇ」

女海賊「2~3日ゆっくりするから行ってみたら?私は興味ないからパス」

女エルフ「行き交う人が私から目をそらすのはなぜ?」

女海賊「ニカーブを着ている人と目が合ってはダメなんだよ…あんたを隠すのに丁度良いって訳」

女海賊「…ここの宿屋だよ…馬は裏で預ける付いてきて?」

『宿屋』

カラン コロン

店主「いらっしゃいませ…3名様ですか?」

女海賊「大部屋空いてる?しばらく泊まりたいんだけど」ジャラリ

店主「何日程泊まられますか?」

女海賊「この金貨で泊まれるだけ…用が済んだら勝手に居なくなるから先払いで」

店主「ええと…この金貨ですと半年ほど泊まれますが」

女海賊「良いよ…後さぁコブラ酒と赤ワイン持ってきて」

店主「…のちほど」ジロリ

女海賊「案内して?」

店主「こちらへどうぞ」ジロジロ

女海賊「あぁ忘れてたグラスはタンブラー3つ」

店主「かしこまりました」ニコ

女海賊「この部屋?」

店主「はい…飲み物は少し遅くなるかもしれません」

女海賊「おっけ」

店主「ごゆっくり…」ガチャリ バタン


女海賊「はぁぁぁぁぁ無事付いたぁぁぁぁ」ドタリ

剣士「お酒飲むの?」

女海賊「さっきのは合図…3人案内しろっていう意味」

剣士「なるほど…」

女海賊「もう自由にしてて良いよ!水浴びしたいなら隣の部屋で出来るよ!私は寝る」

剣士「外に出ても?」

女海賊「おっけ…女エルフは二カーブ脱がない条件で好きに出回って良いよ」

女エルフ「え…人間の町を歩き回るの不安」

女海賊「剣士!あんたが付いて行きな!まぁ…何かあってもどうせ行先は盗賊ギルドなんだけど…」

剣士「お金が欲しい」

女海賊「あぁ忘れてたホイ!」ジャラジャラ

剣士「ありがとう」

女海賊「私はちょー眠い!寝る寝る寝る寝るーーー」スヤ

『街道』

ワイワイ ガヤガヤ

女エルフ(あなた…人間の町に慣れてるのね)

剣士(買い物は目が見えないから苦手だよ…今みたいに教えてくれないとどれが良いか分からない)

女エルフ(私はこの匂いが苦手)

剣士(僕も同じだよ…雑音が多すぎて方向も分からなくなる)

女エルフ(でも不思議…エルフ二人が人間の町をこんな風に歩いてるなんて…)

剣士(エルフ…かぁ)

女エルフ(まだ認めていないの?)

剣士(実感が無いんだ…そんなに差があるのかも正直分からない)

女エルフ(目が無くてもそれほど不自由しないのは感覚がエルフだからよ?)

剣士(妖精も同じ事言ってたよ…それより…さっき買ったその弓は良さそう?)

女エルフ(少し調整が必要だけど十分使えそう)

剣士(僕にも使える?)

女エルフ(遠くの獲物を射止めるのは目が必要なの…多分使えない)

剣士(結構遠くまで感じれてると思うんだけどな)

女エルフ(音は少し遅れて聞こえて来るの…分かるかな?)

剣士(見えるよりも遅れてるっていう事?)

女エルフ(そうよ…感じてる所に撃ってもそこにはもう居ない)

剣士(少し広いところで試してみたいな)

女エルフ(砂の向こう側にオアシスが見えてる…行ってみる?)

剣士(水の匂いのする方だね…オアシスってどんなだろう?)

女エルフ(砂の上にある大きな水たまりよ)

剣士(ん?…何だこの感じ?)クンクン

女エルフ(どこ?)キョロ

剣士(オアシスの方向…上)クンクン

女エルフ(…ドラゴン…来る!)

ガヤガヤ ガヤガヤ

おい!何か飛んでるぞ!!

ありゃドラゴンだ…こっち来る!!

リザードマンの次はドラゴンか!?

アレを仕留めたらガッポリ儲かるぞ?

おい!人集めてこい!!

ガヤガヤ ガヤガヤ


ギャーーース ドッシーン


通行人1「うわぁぁぁ…たたたすけてくれぇぇ」スタコラ

通行人2「でけぇ…おい!そこの二人!!突っ立ってねぇで逃げろぉ!!」


剣士(…)タジ

女エルフ(動かないで?)

ドラゴン”エルフが斯様な所で何をしている”

ドラゴン”汝らは人間に汲みするのか?”

女エルフ(ドラゴン…これには訳があります)

ドラゴン”森へ戻れ”

ドラゴン”エルフの秘宝が奪われる前に”


衛兵達「撃てぇぇぇ!!」シュン シュン シュン シュン


剣士(危ない!伏せて)グイ

女エルフ(あ…)


バッサ バッサ


野郎共「飛んだぞ!!逃がすな!撃て撃て撃てぇ!!」シュン シュン シュン シュン


女エルフ(ドラゴン!秘宝とは何の事でしょうか?森で何が?)

剣士(行こう!流れ矢に当たる!)グイ タッタッタ

『宿屋』

カラン コロン

店主「お帰りなさいませ…外が騒がしい様ですが何か?」

剣士「ドラゴンが来た」

店主「え!?それは大変な事になってるじゃないですか!?」

剣士「みんな弓で応戦してる」

店主「私もちょっと見てきます!!あ…お連れ様が部屋の方に起こしになっています」

剣士「部屋に戻るよ」


ガチャリ


女海賊「あ!帰ってきた…寝る暇ないよぅ」

??「この二人だな?」

女海賊「紹介するよ!!お姉ぇフード脱いで?」

??「信用して良いのか?」ヌギ

女海賊「盗賊ギルドマスター代理の女戦士!私のお姉ぇだよ」

女戦士「お初にお目に掛かる…話は妹から聞いた…世話になっている様だな」

女海賊「あんたさぁ美女3人に囲まれてどうよ?」

剣士「いぁ…それどころじゃないんだ」

女エルフ「町にドラゴンが来たの」

女戦士「何ぃ!?今居るのか?」ダダッ

女海賊「あああああぁぁ…あんた達がエルフだっての忘れてた…」

女戦士「どこだ?ここからは見えんか?」

剣士「多分森の方へ飛んで行った」

女戦士「どれほど被害が出ている?」

剣士「殆ど無いよ…弓で追い払われた」

女戦士「私は少し町の様子を見てくる!お前たちはここで待っていろ…すぐ戻る」タッタッタ

剣士「この町の人は戦闘の準備が早い…すぐ弓で応戦を始めた」

女海賊「あぁソレね…シャ・バクダは元々戦闘民族だったんだって」

剣士「それで武器類が沢山売ってるのか…」

女海賊「ん?女エルフは弓買ったんだ…それってさぁヘビークロスボウの弓の部分じゃない?」

剣士「女エルフが選んだんだけど…」

女海賊「そんな硬い弦を手で引けるの?」

女エルフ「…」ギリリ ブン!

女海賊「え!?マジか!!エルフってそんな硬い弓使うんだ?ちょっと貸して」

女エルフ「ドワーフなら使えるかもね」ポイ

女海賊「ふんっ…」ギリ

剣士「…無理そうだね?」

女海賊「んむむむむ…無理!なんで?あんたの方が手足細いじゃん?なんで私より強いの?」

女エルフ「慣れかな?」

女海賊「なんかムカツクんだけど…背が高くて美人な上に強いとかさぁ」

剣士「壁に爆弾で穴を開けるのは君にしか出来ないんじゃない?」

女海賊「なんかスッキリしないなぁ」

剣士「そういえばお土産買ってるのを忘れてた…この石」

女海賊「はぁ?あんた舐めてんの?石なんか要らねぇよ!!」

剣士「女エルフが見つけてくれたんだ…磁石という物らしい」

女海賊「え!!?マジ!!?見せて見せて?」

剣士「はい…なんか服に引っ付く」ポイ

女海賊「おおおおおおお!!これは!!マジもんだ!!これで色々出来る…みなぎってきた!!」


----------


ガチャリ バタン

女海賊「あ!お姉ぇ…どうだった?」

女戦士「大した事は無い…だがお前たち二人!!ドラゴンと何か話したな?」

剣士「エルフが人間の味方をするのか問いてきた」

女戦士「それを大衆に見られているのがマズイ」

女エルフ「ドラゴンの声は他人には聞こえない筈」

女戦士「大衆には話している様に見えているのだ…衛兵がもうお前たちを探し始めているぞ」

女海賊「まずいじゃん!」

女戦士「ゆっくりしてもらう予定だったが…すぐにアジトへ移動した方が良い」

女海賊「どうしたら良い?」

女戦士「裏の馬小屋に着けている馬2頭はお前たちの馬だな?」

女海賊「そうだよ」

女戦士「よし!あれは荷馬だ二人づつ乗ってアジトへ向かう」

女海賊「了解!!」ビシ

女戦士「それからその二カーブは脱いでおけ…衛兵が探しているのは二カーブの女だ」

女海賊「すぐエルフってバレちゃわない?」

女戦士「その白い毛皮に着せ替えろ…行くぞ」

『オアシスの丘』

パカパカ パカパカ

女戦士「もうフードは脱いで良いぞ…顔を見せてみろ」

女エルフ「…」ファサ

女戦士「…なるほどな…一目でエルフと分かるな」

女戦士「ドラゴンとは何の話をしたんだ?」

女エルフ「…」

女戦士「フフ初対面の相手にペラペラ話す気にはなれんか…エルフだなフフ」

女戦士「まぁ良い…私の独り言だ」

女戦士「町から少し離れると人間の匂いは気にならんだろう?」

女戦士「この砂漠の砂は汚いものをすべて洗い流してくれる」

女戦士「触ってみると分かると思うが神聖さを感じるほど清らかだ」

女戦士「エルフなら感じるか?かつて此処が広大な森だった事を」

女エルフ「え?」

女戦士「200年前の大破壊ですべて焼き払われた結果だ」

女戦士「見てみろ…あのオアシスは隕石が落ちた後に出来た物だ」

女戦士「そんなオアシスがこの周辺には何百と在る」

女戦士「どれほどの大破壊だったか想像できるか?」

女エルフ「ここが…森」

女戦士「フフ…口を開いたな?」

女戦士「耳を立てて砂漠の声を聞いてみろ」

女エルフ「…砂?…虫?」

女戦士「大破壊とは只の破壊では無い…新たに生まれる者も居るという事だ」

女エルフ「再生…」

女戦士「かつて魔王が成そうとした事は大破壊という再生だった考えると…」

女戦士「それ阻止しようとする勇者は善か悪か?」

女戦士「我らドワーフが勇者を保護しようとするのは善か悪か?」

女戦士「精霊の一部である森を守ろうとするエルフは善か悪か?…いったいどちらなのだ?」

女エルフ「…ドラゴンにも同じ様に問われた」

女戦士「我々はその答えを探求しているのだ…」

女戦士「エルフとこういう話を共有出来るのは感慨深い」

女エルフ「どうして人間は戦いを止めないの?どうして森を侵略しようとするの?」

女戦士「人間は恐れているのだよ」

女エルフ「エルフを?森を?私たちは何もしていない…」

女戦士「…何か持っているのではないか?」

女エルフ「…秘宝の事?」

女戦士「ん?秘宝?何の事だ?」

女エルフ「わからない…ドラゴンが言ってた」

女戦士「ふむぅ…なるほどな…つじつまが合う…そういう事か」

女エルフ「何か知っているの?」

女戦士「後でアジトに皆が居る時に話す」

----------



パカパカ パカパカ

女海賊「もう真っ暗だよ?何も見えないよ?ちゃんと付いて行ってる?」

剣士「僕は初めから何も見えてないよ」

女海賊「お姉ぇの馬の音聞こえてる?」

剣士「大丈夫…」

女海賊「星は見えてるんだけどさぁ…足元が真っ暗すぎて落下しそう」

剣士「ハハ落下?ハハハハハ」

女海賊「目を開けても閉じても真っ暗…あんたさぁいっつもこんな?」

剣士「そうだよ?…耳を澄ましてみて?」

女海賊「パカパカ パカパカ…」

剣士「もっと…砂が引っかかる音…砂が落ちる音…蹄が沈む音…」

女海賊「…」

剣士「風が耳をすり抜ける音…遠くの音…近くの音」

女海賊「ぁぁ…分かる!」

剣士「地面を砂が転がる音…あっちにもこっちにも」

女海賊「ちょ…マジ?私にも見える…砂の起伏」

剣士「ん?これが見えるっていう事なのかな?」

女海賊「見える見える!音だけで見えるんだぁ!」

剣士「あ!前の馬が止まった」

女海賊「んんん…何かの影が見えるなぁ…なんだろう」

剣士「到着したみたいだ…馬を降りてる」

女海賊「結構大きな建物みたいだなぁ」


パカパカ パカパカ


女戦士「着いたな?ここは星の観測所だ…明かりを付けるぞ」チリチリ

女海賊「お姉ぇ良く足元見えるね?」

女戦士「砂漠も海も同じだぞ?お前は昔から黒い海がキライだな」

剣士「馬はどこに繋げば?」

女戦士「放しておいて良い…牧草と水はここにしか無いから逃げん」

女海賊「ここってさぁ?誰も居ないの?」

女戦士「今は移設の最中だ…直に若い衆が出入りする様になる…こっちだ!入れ」ギー バタン

『盗賊団のアジト』

女海賊「おおおおおおおお!!望遠鏡!!」

女戦士「気に入ったか?一つ持って行って良いぞ」

女海賊「なんでこんなにいっぱいあんの?」

女戦士「趣味で買い集めた…町の様子もここから伺えるぞ?見るか?」

女海賊「見る見るぅ!!」

女戦士「これがオアシス方面…こっちが町…これが…」

女海賊「今日さぁ~女エルフからコレ貰ったんだ!!磁石」

女戦士「見せてみろ…んむ良い物だ…良く見つけたな?」

女海賊「少しあげよっか?」

女戦士「良いのか?」

女海賊「望遠鏡のお礼だよ」

女エルフ「ウフフあなた達…やっぱりドワーフねウフフフ」

女戦士「ん?何だ?今のは嫌味か?」

女エルフ「珍しい石とか鉄…機械が大好き」

女海賊「いちいちウルサイやい!あんたは虫とお話でもしてな!」

剣士「今日は少し疲れたかな…横になる所はある?」

女戦士「あぁ悪い…馬車での長旅の後だったな…こっちだ」

女戦士「今日はゆっくり体を休ませろ…話は明日だ」

剣士「そうさせてもらうよ…女エルフ?少し休もう」

女エルフ「私は疲れていないから少し星を見てみる」

女海賊「お!?興味出た?ここの穴から見るんだよ?」

剣士「じゃぁ先に休む」

『翌日』

女海賊「おはー!!寝れた?」

女エルフ「少しだけ…」

女海賊「眠り方分かんない?」

女エルフ「こんな風に横になるのは子供の時以来…」

女海賊「夢見れた?なんか覚えてる?」

女エルフ「誰かと空を飛ぶ夢…誰だったんだろう」

女海賊「おぉ!!エルフも夢見れるんじゃん」

女エルフ「人間の部分…なのかな」

女海賊「その夢!正夢になるぞ!…お姉ぇ~~~!!起きてる?」

女戦士「朝から騒がしいな…お前も食事を作るの手伝え」

女海賊「うぉ!お姉ぇが食事作んの?食える?」

女戦士「客が来た時くらいは私も作る…黙って手伝え」

女海賊「お姉ぇは知らないと思うけどさぁ…こいつらはあんまり食わないよ?」

女エルフ「寝るとすこしお腹が減るみたい」

女海賊「かなりの偏食だよ?鳥の餌とか食ってるし」

女戦士「エルフが何を食するくらい知っている…良いから手伝え」グイ

女海賊「ちょ…あぁぁ何だコレ…木の実、木の芽…もうちょっと腹の足しに…」

女戦士「…」スラーン チャキリ

女海賊「ちょちょちょ…待った待った!分かったやるって…」

女戦士「…これで木の実を割っておけ」ポイ

女海賊「はいはい分かりました!…ところでさぁアサシンから指示書預かってるんだ」

女海賊「お前はそうやって話をすり替えて逃げる気だな?黙って手を動かせ…指示書は後で見る」

女海賊「…へいへい分かりました」

女エルフ「クスクス…食べ物は気にしなくていいの」

女海賊「と申しておりますが…」

女戦士「…痛い目を見ないと分からないようだな」ジロリ



----------

女海賊「おい!起きろぉ!!」グイグイ

剣士「う~ん…おはよう」ムニャ

女海賊「あんたが一番遅いんだよ!飯だ飯ぃ!!」

剣士「なんか機嫌悪い?」

女海賊「あっちでみんな集まってんだ!早くして!」

剣士「今行く…」イソイソ


女戦士「起きたな?この辺りでは珍しい木の実と木の芽だ…野菜もあるぞ?」

剣士「ごちそうでは無いけどイイね…いただくよ」モグ

女海賊「お姉ぇ指示書読んだ?」

女戦士「あぁ…セントラルの情報収集に人駆を回せという件だな?何が起こっている?」

女海賊「ぃぁそこじゃない…気球を私にくれるっていう所」

女戦士「気球はまだ移送中だ今日の日暮れまでには届く…それまで待て」

女海賊「夕方かぁ…望遠鏡の取り付けとか改造したかったのに」ブゥ

女戦士「それよりセントラルの状況だ…数万の兵で森へ魔物討伐に出ていると聞くがどうなっているのだ?」

女海賊「え!?初耳」

女戦士「シャ・バクダにも徴兵に来ていたのだが…」

女エルフ「数百ではなく数万?…そんな…」

剣士「2か月ほど前に法王庁の衛兵がセントラルから出たのは知ってる…2個中隊って言ったかな…」

女戦士「ふむ…それは別動隊だな…アサシンからは何も聞いて居ないのか?」

女海賊「う~ん政治的な事は教えてくれないなぁ…てか私が理解出来ない」

女戦士「…そうか仕方が無いな…その様子だとセントラルの第3皇子が戦死したのも知らんな?」



セントラルでは随分前からゴブリンとリザードマンの襲撃があってな

若い第3皇子は功を焦って魔物討伐隊を指揮したのだが

ゴブリンの放った流れ矢に当たって戦死したのだ

ここで第1皇子と第2皇子の権力抗争が始まる

魔物にやられたままでは体制維持が難しいと考えた第1皇子は

権力基盤を固める狙いで仇討ちを称し魔物討伐隊を再編成する

その規模は2個師団…約5万の兵を招集し森に進軍したのだ

女戦士「私が知っているのはここまでだ…気になるのが第2皇子の動きなのだが…」

女エルフ「私…森へ戻らなければ…」

女海賊「無理無理!あんたのその足は治るまでもうちょい掛かる…走れるようになってからにしな!」

女戦士「さてここからが本番だ…法王庁が動いていると言ったな?」

女戦士「法王庁は第2皇子の管轄なのだ…そして第2皇子の側近にダークエルフが居るという報告もある」

女エルフ「ダークエルフが!?絶滅した筈」

女戦士「5万の兵が森を北へ進軍し法王庁が漁夫の利を狙ってエルフが持つ秘宝とやらを奪う…」

女戦士「ダークエルフが居れば不可能な事ではあるまい?」

女エルフ「ドラゴンが…動いている理由が分かった気がする」

剣士「僕たちが前にドラゴンに会ったときはもっと南だった」

女海賊「そういえば…昨日ここに来てるって事は…戦場になっている場所は近い?」

女戦士「どちらの方向に飛んで行ったのか分かるか?」

女エルフ「東南東の方向」

女戦士「ふむ…やはり少し北上しているな…指示書には気球で光の国シン・リーンへ導けとあるが…」

女海賊「ちょっと急がないと戦場の上を飛ぶ感じになりそう」

女戦士「明日出発するとなると戦場になりそうなのは帰りだな」



----------

剣士(その望遠鏡で何が見えるの?)

女エルフ(森の様子よ)

剣士(エルフの森が心配なのかい?)

女エルフ(私はゆっくりしている場合じゃないのに…)

剣士(足の具合は?)

女エルフ(痛みは耐らえれる…でも動かないの)

剣士(君一人が森へ戻っても危険なだけだ)

女エルフ(私一人では何もできないけれど…他のエルフが捕まえられる事を思うと…)

剣士(この戦いは不毛だよ…何も生まない)

女エルフ(そう…私も何が悪いのか分からなくなってきた)

剣士(エルフもダークエルフと何か因縁が?)

女エルフ(私たちよりも不幸な種…彼らがエルフへの復讐を扇動しているのなら業はエルフが払わなければいけない)

剣士(エルフがダークエルフを迫害したという解釈で合ってる?)

女エルフ(…)コクリ

剣士(人間はその中間で踊らされている…のかな?)

女エルフ(ダークエルフが戦争を引導しているとしか考えられない…人間は戦いに勝っても得るものが無いでしょう?)

剣士(エルフの秘宝と言うのは?)

女エルフ(私は知らない…でもダークエルフが欲しがるのは考えられる話)

剣士(なんか…泥沼に入った様な感じだね…決着しそうにない)

女エルフ(ドラゴンが加わってる以上エルフも絶対に引かない)

剣士(少し視点を変えてみるよ?人間からすると普段攻め入って来る魔物を退治するために兵を募ってる)

女エルフ(…)

剣士(森の奥へ進めば進むほどトロールやドラゴン…そしてエルフが抵抗してくる)

女エルフ(…)

剣士(人間からするとこれは正義の戦い…引く訳が無い…どうやって決着をつける?)

女エルフ(この戦いを誘導してしまったのは…傲慢な私たちエルフ…でも人間に譲歩する事は考えられない)

剣士(終わらせるのには何か切っ掛けが必要だと思う…)

女エルフ(切っ掛け…どうすれば良いの?私に何もできないのが悲しい)



----------

オーライ オーライ こっちこっちぃ!

女エルフ「あれが気球?たまに森の上を飛んでいるのとは形が違う」

女戦士「アサシンが改造した物だ…船の帆を張っているのだ」

女エルフ「空を船の様に進む?」

女戦士「うむ…アレの操作に関しては妹が秀でている…さすが海賊といった所か」

女海賊「お姉ぇ!!明日気球で出発するよね?」

女戦士「そうだな…」

女海賊「お姉ぇも行く?」

女戦士「それを考えているんだが…お前が魔女の住処まで案内出来るなら私はここに残る」

女海賊「えぇ~そんなん知らないよぉ…何処にいんの?」

女戦士「片道3日か…アジトの移設中で忙しい身なのだが…どうしたものか」

女海賊「若い衆に任せとけばいーじゃん」

女戦士「あと5日でお前たちが居たであろう商隊が到着するのもある」

女海賊「そういえばそんな予定だったなぁ」

女戦士「シン・リーンまで2日で行けないのか?」

女海賊「うーーーん風次第なんだけど…今行く?…丁度暗くなってきたし」

女戦士「水も食料もまだ到着していない」

女海賊「今ある分でなんとかなるっしょ!…エルフ2人は放っとけば良いよ!どうせ食わないし」

女戦士「よし!行くか!!若い衆に事を伝えてくる…お前たちは準備をしておけ」

女海賊「ハイキター!!剣士!!女エルフ!!荷物入れるの手伝って!!」

剣士「え…うん…どうすれば?」

女海賊「そこの鉄板と裏にある薪を出来るだけ沢山積んで!!女エルフ?剣士の目の代わりやってあげて」

女エルフ「わかった…剣士こっち」グイ

女海賊「あと10分で出発するよ!!」

剣士「そんなに急ぐの?」

女海賊「今は凪の時…風向き変わる前に上空の風に乗らないと反対方向に流される」

女海賊「私は球皮膨らませないと…」アセアセ

『気球』

フワフワ

女海賊「あぁぁ日が沈んじゃう…お姉ぇはまだかな?」

剣士「…よっこらせと」フゥ

女エルフ「これで最後」

女海賊「後さぁ…寝るときに使ってた毛布も持ってきて!それからお姉ぇ見つけたらもう出発だって伝えて」

剣士「人使いが荒いなぁ…」

女エルフ「剣士?こっち」グイ

女海賊「んんんん…薪足りるかなぁ…高高度行ったら寒いんだよなぁ…」

女戦士「早いな?もう行けるか?」ドサ

女海賊「お姉ぇ!?それは?」

女戦士「弓と矢だ…これが無いと他の気球が寄って来る…アサシンから常に積んでおけと言われていてな」

女海賊「よっし全員揃った!!二人とも早く乗って!!」

剣士「これで荷物は最後かな?よっこらせと…女エルフも乗って」

女海賊「ロープ抜くよ!!」シュルリ


フワフワ フワフワ

女戦士「夕日で砂漠が赤い海の様だ」

女海賊「一気に高度上げるよ!?剣士!!鉄板の上で火を起こして!?あんた魔法使えたよね?」

剣士「あ…うん」

女戦士「ほう…魔法を使うタイプのエルフなのか…見せてみろ」

剣士「火炎魔法!」ボウ メラメラ

女戦士「真近で見るのは初めてだ…手の中から炎が出てくるのは不思議な物だな」

女海賊「あんたも便利な男になったねぇ」

剣士「女エルフのおかげだよ」

女戦士「外を見てみろ…数百のオアシスが見渡せるぞ?」

女エルフ「…オアシス群の中央にあるのは?」

女戦士「かつての火の国シャ・バクダ遺跡だ…我らのアジトはそこら界隈を転々としているのだ」

女エルフ「この砂漠が全部森だったなんて信じられない」

女戦士「下にある今のアジトの場所は良く覚えておけ…何かあった場合はそこが集合地点になる」

女海賊「どれくらいあの星の観測所を使う予定?」

女戦士「そうだな…アサシンが戻るまでは持たせたいな…望遠鏡を見せてやりたい」

女海賊「アサシンは星になんか興味あんの?」

女戦士「星ではない…アサシンが探していたもう一つの遺跡の入り口を発見したのだ」

女海賊「お!?それは喜ぶかも!!もう行った?」

女戦士「さすがに一人で行く勇気は無い…あそこは呪われているのでな」

女エルフ「太陽が又昇ってる?」

女海賊「フフフフフ高度を上げるとそういう風に見えるのだ!!世界は丸い証拠なのだ!!」

女エルフ「え?…」

女海賊「エルフに勝った!!あんた達が森に引きこもってる間に私は世界を見てきたさ」ドヤ

女エルフ「これが私たちが住んでいる世界…」

女海賊「もう直ぐ雲の上に出るよ…毛布に包まっときな!ちょー寒いから」

女海賊「風向きが変わる!!剣士!!このロープ撒いて!!風に乗る」

剣士「えーと…回せば良い?」ドギマギ

女海賊「最後まで撒いて!!ちょいと傾くよ!?」


ビョーウ バサバサ

『気球1日目』

---朝---

女戦士「日の出だ…今は丁度エルフの森の真上当たりでは無いか?」

女海賊「んんん森ばっかで何も見えないなぁ…」

女エルフ「私も見たい」

女海賊「おっけ…ほい」

女戦士「それにしても寒いな」

女海賊「やっぱちょっと薪が足りないなぁ…高度下げると遅くなるし…」

女戦士「お前は爆弾の材料を持ち歩いていたな?」

女海賊「あるよ」

女戦士「砂鉄、塩水、木炭、砂…これで暖を取れる」

女海賊「お!?全部爆弾の材料だ…混ぜれば良い?」

女戦士「砂鉄が7割だな…後は適当に皮袋に詰めて混ぜろ…いくつ作れる?」

女海賊「2つかな…砂鉄が足りないよ」コネコネ

女戦士「毛布の中に入れておけば大分違う筈だ」

女海賊「お!?あったかくなってきたぞぉ!!」コネコネ

女戦士「お前は少し寝ておけ…寝てないのだろう?」

女海賊「うん…ちょっと寝る~ふぁ~あ」ムニャ

女戦士「女エルフ!何か見えるか?」

女エルフ「いいえ」

女戦士「上から望遠鏡で見る森はいつもと違うか?」

女エルフ「現在地が分からない…見慣れている筈なのに…」

女戦士「そうか…遠すぎると森の感覚も分からんか」

女エルフ「森を自在に走っていた筈なのに…ここから見るとなんて私は小さかったのだろうと思う」

女エルフ「ハッ!!」キョロ

女戦士「ん?どうした?」

女エルフ「私…今誰とお話を…え?」

女戦士「どうしたんだ?急に?…ん?泣いているのか?」

女エルフ「夢?…」

女戦士「既視感でもあったのか?」

女エルフ「私…どうして涙が?」フキフキ

女戦士「既視感は良くある事だ心配しなくても良い」

女エルフ「もしかして剣士が言っていた夢ってこういう事?」

女戦士「何を言っているのか良くわからんな…疲れているのではないか?」

女エルフ「剣士!?剣士!?」ユサユサ

剣士「…ぅぅ」パチ

女エルフ「私…夢の中の人を覚えてる」

剣士「おはよう…何の事?ふぁ~あ」ノビー

女エルフ「顔を覚えてる…でも誰なの?」

女戦士「フハハハ待て待て…女エルフ混乱しているのか?剣士は今起きたばかりだぞ?」

女エルフ「あ…ごめんなさい」

剣士「…君も夢を見たんだね?」

女エルフ「少ししか思い出せない…顔は分かっても誰だか分からないの」

剣士「僕も同じなんだ…今も夢を見ていた気がするけれど直ぐに思い出せなくなる」

女戦士「ふむ…夢か…アサシンが言ってた夢幻と何か関係するのか?」

女エルフ「それを確かめにこれから魔女に会いに行くの」

女戦士「まさかみんな同じ夢を見ている訳ではあるまいな?」

女エルフ「その可能性もある…」

女戦士「おんなバカな事がある訳…そういえば剣士の使う魔法をどこかで見た気がしたな」


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女海賊「あぁ~良く寝たぁぁ!!」ノビー

女戦士「起きたか!丁度肉が焼けた所だ」

女海賊「おぉぉぉ腹減ってたんだ」ガブ モグ

女戦士「お前は今夢を見てたか?」

女海賊「はぁ?なんで急に夢の話?」モグモグ

女戦士「さっきまで剣士達と夢の話をしていてな」

女海賊「良くわかんないんだけどいっつもこんな感じで冒険してる夢だよ?」モグモグ

女戦士「フフやはりそうだよな?皆が別々の夢を見ている…普通はそうだな」

女海賊「お姉ぇはどうなん?」

女戦士「フフ笑うなよ?衛兵たちのアイドルをやっている」

女海賊「ぶっ…お姉ぇがアイドル…ぶはははは」

女戦士「アイドルというのは言い方が悪いが衛兵達から賛美される夢だな…」

女海賊「フリフリのドレスとか着ちゃって?ぶはははは…げほっげほ」

女戦士「そういうドレスも着た事がある…やはり只の夢だな」

女海賊「冗談やめて…ぶははは…ここ空気薄いんだから」ゼェゼェ

女戦士「ただ気になる男が居てな?ずっと私の傍に居たのに気が付いたら手放してしまった」

女海賊「それってフラれたんじゃね?ぶははは…死ぬ…もうやめて…ぶははは」

女戦士「誰だったのか…お前!!笑い過ぎだ」スラーン 

女海賊「ゲラゲラちょ…ゲラゲラぶははは…ま」ゴロゴロ

女戦士「ふん!!」ペチン

女海賊「いで…ケツがぁ…やめでぇぇ…いだ!!」

『気球2日目』

ビョーーーーウ バサバサ

女戦士「そろそろ森の切れ目だ…流石に早いな」

女海賊「えっと!高度下げ始めるよ?もう薪が無い…うぅぅさぶさぶ」ブルブル

女戦士「正面少し右にシン・リーンの城が見えている」

女海賊「んん?どこどこ~?あぁぁアレだな?木に囲まれてて分かり難いねぇ」

女戦士「城までは行くな…面倒事が起きる」

女海賊「アイアイサー!!ちょい手前の林に着陸する」

女戦士「丁度日暮れで隠すのに手間が要らんな…城の手前から林を少し入った所に追憶の森という場所がある」

女海賊「魔女が居る場所?」

女戦士「普通の人間では行く事の出来ない狭間の深い所に繋がっているのだ」

女海賊「妖精!!出てこい!!お前の出番だぞ!!」

剣士「妖精は今居ないよ?」

女海賊「最近ずっと出てこないじゃん!何やってんの?」

女エルフ「ずっと私の胸の中に居るけれど…空の上は狭間が遠い」

剣士「もう少し森に近づけば出て来るよ」

女海賊「もしかしてシャ・バクダからずっと狭間が遠かったん?」

剣士「星の観測所周辺は不思議とまったく狭間を感じなかった」

女海賊「私らはみんな半分魔物だから心配しなくておっけ?」

女戦士「場所は分かっている…行けば魔女が導いてくれる事を願うだな」

女海賊「あのさぁ…精霊の像もそこにあるって前にアサシンが言ってたんだけど見れるかなぁ?」

女戦士「無理だ…光の国シン・リーン王家の祭事の時にだけ一般公開がある…今はその時では無い」

女海賊「残念…見たかったなぁ」

女戦士「精霊の像が安置されている祠は厳重に警備されているから避けて通る」

女エルフ「精霊の魂が宿ると言われている像…」

女戦士「アサシンが言うにはそこに魂は宿っていないそうだ」

女エルフ「夢幻…」

女戦士「そう…魂は夢幻に閉じ込められたまま…その像はただ眠っているのだそうだ」

女海賊「大分高度下がってきたよ?あったかくなってきたぁ!!」



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女戦士「あそこの林に降りろ」

女海賊「おっけ!剣士!?縦帆を畳んで!!」

剣士「えーと…このレバー回すんだっけ?」

女海賊「そうそう…終わったらロープ持って先に飛び降りて近くの木に結んで!?」

女エルフ「私も手伝う…」

女海賊「助かる」

女戦士「降りたら暗くなるまで気球に木の枝を詰めるだけ積んでおけ…木材なら尚良い」

女海賊「そうだね私は食材探してくる」

剣士「女エルフの方が鼻が利くから連れて行って」

女海賊「おっけ!あんたさぁ弓で川魚射れる?」

女エルフ「得意」

女海賊「よっし!日が暮れる前にさっさと終わらすぞ!っと」


フワフワ ドッスン


女戦士「すぅぅぅぅ…はぁぁぁ…久々の森の空気…良い物だな」

剣士「ずっと砂漠に?」

女戦士「なかなかシャ・バクダから離れられなくてな」

剣士「アサシンは戻るのに早くて3か月と言ってたけれど…」

女戦士「私の父に会いに行ったのだろう?それだけなら1~2か月の筈なのだがな」

剣士「ミスリル銀を取引するのだとか」

女戦士「知っている…それは特殊な銀で非常に希少なのだ」

剣士「武器を作るのに使う?」

女戦士「そうだ…特殊な音が鳴るのだ…その音は目に見えぬ物を切る」

剣士「目に見えない?」

女戦士「こう言えば分かるか?例えば縁を切る…絆を断つ…志を断つ…そういう物を切るのだ」

剣士「そうか…魂のつながりを切るのか」

女戦士「理解が早いな…正直私には良く理解出来ん」

剣士「アサシンは憎悪を浄化すると言ってた気がする」

女戦士「もしも魔王が居たとするなら憎悪の魂を断つ…そういう事だろうな」



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女海賊「あああああ!!ちょ…マジか!!」

女戦士「どうした?何を騒いでいる?」

女海賊「女エルフがさぁ…獲った魚に生でかぶりついてんの」

女戦士「フフフお前は知らんのか?エルフは生きた肉しか食さんのだ」

女海賊「え!?じゃぁ剣士もこのまんま食うの?くっさ!!」

女戦士「魚がまだ生きているならそのまま持って行け」

剣士「僕はどちらでも良いよ…生きたままの方が食べ慣れてるけど」

女海賊「おぇぇぇ…ほい!一匹あげる」ポイ

剣士「ありがとう」ガブリ モグ

女海賊「女エルフはいつも澄ました顔してるけどさぁ…あの顔で生魚にかぶりついてんだよ?」

女エルフ「幻滅?これが普通よ?」

妖精「ぷはぁぁぁ…良く寝た」ヒョコ

女海賊「おぉぉそんな所から登場か!女エルフのおっぱいは寝心地良いか?」

妖精「まぁまぁかな?…こっちの人は新入り?」

女戦士「…」ジロリ

妖精「なんかまずい事言ったみたい…」

女海賊「あんたが出てくるって事は狭間が近いね?」

女戦士「追憶の森はここから少し北だ…妖精が案内しないと我々でも迷う」

妖精「狭間の深い所はレイスが出てくるから危ないよ?」

女戦士「魔女が魔除けの結界を張っているそうだ…私は一度行ったことがあるから大丈夫」

妖精「へぇ~あっちの方だね行ってみようか?」ヒラヒラ

女戦士「うむ…日が暮れる前に行こう」

女海賊「ええぇぇ!!私まだ魚食ってないのにぃ!!」

『追憶の森』

ホーホー ホーホー

妖精「こっちだよ」ヒラヒラ

女海賊「あ!!ちょい待ち…馬車が停めてある」

女戦士「ん?…あれは王家の馬車だな…ちとまずいな」

女海賊「魔女に先客かな?」

剣士「…」クンクン

女海賊「む!剣士がクンクンしてる…誰かいるぞ?」

女戦士「隠れてやり過ごす!こっちの影へ…」タッタッタ

剣士「10人位馬車の方向…」


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近衛兵「姫様…一旦お隠れにならなければここも危ないのです」

姫「わらわは行きとうない!ここに隠れておった方が安全じゃ」

近衛兵「お父上の命令にございます…わがままを言わないで下さい」

姫「何が来ようと狭間に居った方が安全じゃと言うておる」

近衛兵「ですから姫様…エルフ達は狭間に来る事もあると言う事なのです」

姫「エルフはわらわ達の仲間じゃ…攻めて来る訳がなかろう」

近衛兵「そういう状況ではなくなっているのです」

姫「攻めて来る理由が無いではないか!!」

近衛兵「姫を拘束し取引に利用される可能性があるのです」

姫「馬鹿げておる!!エルフは誇り高き種じゃ!!その様な卑怯な事は絶対にせん!!」

近衛兵「…今魔術師達は魔術院の方へ集まっております…そちらの方がここよりも安全とのご判断」

姫「どれくらいここを離れるのじゃ?わらわはまだ修行中であるぞ?」

近衛兵「中央セントラルとエルフの戦争が終結するまでにございます」

姫「わらわ達はエルフの仲間では無いのか?エルフに加勢するのが義であろう?」

近衛兵「状況はそう簡単ではないので御座います…ご理解いただきたい」

姫「父上にわらわが直接話す!もう帥とは話しとう無い」

近衛兵「ささ…馬車の方へ」

姫「これ!!無礼者!!触るでない!!」ペシン


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女海賊「あの赤い目の子はシン・リーンの姫?」

女戦士「そうだ…護衛の近衛兵も世界屈指の腕を持つと聞く」

女海賊「三角帽子でちょーかわいい」

女戦士「女エルフ!今の話は本当なのか?エルフとシン・リーンとの友好の件」

女エルフ「ハイエルフ達は精霊樹に再び魂を宿らせる為に毎日祈りを続けているの…」


シン・リーンに安置されている精霊の像も精霊の魂が宿る器

行方不明になった精霊の魂を探すために

毎年行われている王家の祭事にハイエルフも参加しているの

友好の件は多分シン・リーン王家との密約

互いに不干渉の約束を立てて

年に一度エルフと人間との間で談話がある

エルフの森ではシン・リーンとの不可侵を守るのは皆知っている事


女戦士「なるほどな…祭事の時に王家参列者で身長2メートルを超える者を見た…ハイエルフだったか」

女エルフ「ハイエルフは私や剣士と違ってずっと大きいの」

女戦士「逸話では人間100人でも勝てんと聞くが?」

女エルフ「わからない…見た事無いから」

女海賊「馬車行っちゃったよ?」

女戦士「鉢合わせしなくて良かった…行こうか」

『狭間の奥』

シーン

妖精「もうすぐだよ」ヒラヒラ

女海賊「なんか…空が黒い?日没まだだったよね?」

妖精「狭間の奥の方は空が無いんだよ…もっと向こう側が黄泉」

女海賊「私が死んだらここを通る?」

妖精「多分迷うから妖精が案内するんだ」

女海賊「ってことは今半分死んでんの?」

妖精「ケラケラそうかもね?心臓動いてる?」

女海賊「え!?…あ…止まってる?え!?マジ?」


剣士「何か…居る!」スラーン チャキ

妖精「剣士!?落ち着いて?」

女エルフ「え?何?見えない…」

女戦士「どうした!?」


剣士「うわぁぁ!」ブン ブン


妖精「落ち着いて!?それはこれから妖精になる魂」

剣士「妖精?ハァハァ…」

妖精「歓迎しているんだよ…落ち着いて?」


”おやめなさい”


女海賊「あ…声…」

”驚かせてしまいましたね”

”さぁ…中へお入りなさい”

”あなた達を待っていました”

女戦士「魔女の声だ…行くぞ」テクテク

女海賊「中ってどこよ?なんも無いじゃん?」

妖精「一歩前に進んで?」

女海賊「一歩?…うゎぁ!!」ソロリ

『魔女の塔』

女海賊「え?どうなってんの?なんで昼間?」

女エルフ「エルフの森と同じフフフ」

女海賊「お花畑の真ん中にポツンと…塔?こんなん地図に無いぞ?」


”お上がりなさい”


女戦士「許可が出た…上がるぞ」テクテク

女海賊「なんかちょーすごくない?この塔って何で出来てる?石?鉄?」

女戦士「私も初めて来たときは驚いた」

女海賊「アサシンと一緒だったんだよね?隠してたなんてズルい!!」

女戦士「お前に話すと一人で探しにくるだろうに…言わんで正解だ」

女海賊「…あの椅子に座ってるお婆ちゃんが魔女?」

女戦士「そうだ…挨拶するぞ…魔女様…突然の訪問をお許しください」

魔女「良いのです…さぁ皆さん椅子にお掛けになって?」

女戦士「はい…」

魔女「ゆっくりして行って良いのですよ?」

女戦士「先ほど私たちを待っていたとおっしゃった様ですが?」

魔女「あなた…」

女戦士「??」キョロ

魔女「千里眼を求めてここに来ましたね?」

剣士「え!?あ…はい」

魔女「千里眼は光の魔法…これを授けるのは簡単な事です」

剣士「見えるという事がどういう事なのか知りたい…教えてください」

魔女「この魔法はあなたの目を治す物ではありません」

剣士「それでも良いです」

魔女「あなたの瞳は奪われたのです…奪われたその瞳の先を見ることが出来るでしょう」

剣士「え?」

女海賊「奪われたって…どうやって?」

魔女「祈りの指輪で光を奪われたのです」

女戦士「祈りの指輪だと!!…これはとんだ所で情報が入ってきたな…」

剣士「どうして僕の瞳を奪う必要が?」

魔女「それはいづれ分かる事でしょう…今は知る時ではありません」

女海賊「今教えてくれてもいーじゃん」

魔女「理由があるのです…あなたはとても大切な人…乗り越えなくてはならない試練があるのです」

女戦士「失礼ですが…魔女様はそれを知っていたという事ですか?」

魔女「18年前…あなたが光を奪われた時から私を求めここに導かれることは決まっていました…」

あなたを育てた母の白狼は遥か昔から精霊樹を守る犬神の末裔なのです

そしてエルフが最も信頼しているのも白狼

あなたは理由があって瞳を奪われた後に

森から追放されたのではなく最も信頼のおける白狼へ預けられたのです

その時エルフは白狼に伝えました

瞳が必要になった時に魔女を訪ね千里眼を求めなさいと

なぜならその魔法が求める物に導くから

私は18年前にここに訪れたエルフに話を聞き

約束を果たせる時を待っていました

今がその時です…私の定命が尽きてしまう前で本当に良かった


女戦士「魔女様…お体を…」

魔女「私の命はもう長くはありません…人間が200年以上も生き永らえるのは狭間に居るお陰」

魔女「しかしそれもそろそろ限界でしょう」

剣士「僕は…千里眼を使ってどうすれば?」

魔女「あなたの瞳を追うのです…その先に祈りの指輪があります」

剣士「祈りの指輪で僕の瞳を求める?それで良いのですか?」

魔女「そう…あなたの瞳を持っている者こそ…あなたの本当の母」

剣士「母…」

魔女「あなたの母はその指輪で精霊を祈り、そして指輪を守り、あなたの瞳も守り続けています」

女エルフ「マザーエルフ…」

魔女「瞳が戻ったならば再びここを訪れなさい…精霊の魂を解放する術を教えます」

剣士「どうして僕の瞳を奪う必要があったんだろう…」

魔女「それは直ぐにわかりますよ…心配しないで?」

剣士「なんか…生い立ちを聞いてしまうと…僕が僕では無くなる様な感じが…する」

魔女「話が長くなってしまいましたね?ゆっくりしていきなさい?ここは時間がゆっくり流れているから…」

剣士「本当の母…どうして母さんは僕を捨てたの?」

女戦士「…剣士!少し休もうか…頭を整理した方が良い!明日の朝に出発だとすると5日間ここで休める」

女海賊「え?何言ってんの?お姉ぇ…狂った?」

魔女「ここの1日はあなた達の世界のたった2時間…ゆっくりして行って良いのです」

女戦士「そうだ…5日もあればゆっくり魔女と話が出来る」

魔女「焦らなくても良いのです…」

女海賊「マジかぁぁ!!やっと休めるぅ…ん?待てよ…」



女海賊「魔女は200歳だったとして1日が12倍て事は…2400年分の時間をここで過ごしてる?」

女海賊「ん?逆か?ここで200年分歳を取ってるって事は…16年しか経ってない?」

女海賊「いや…まてよ?16年分はどこで経つ?あああぁこんがらがってきた…もっかい最初から」




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女エルフ「魔女様?私は人間の住まう所にこのような場所がある事を知りませんでした」

魔女「ここはエルフの森と同じ狭間の奥」

エルフ「こことエルフの森は繋がっているのですか?」

魔女「時間の流れ方が少し違うので直接行き来することは出来ません」

女エルフ「狭間の奥は私たち魔物の一族しか居ないと思っていました」

魔女「ここ以外にも同じ空間はあるのですよ?精神と時の門と呼ばれていて魔術師達はそこで修行をするのです」

女エルフ「人間の見方が変わりました…賢い人も居るのだと」

魔女「人間はあなた達エルフよりもずっと弱くて寿命も短い…賢く生きるには工夫が必要なのです」

女エルフ「魔女様の他に同じ様な人は居るのですか?」

魔女「私の知る限りでは恐らく居ないでしょう…しかし時代を紡ぐ者はすでに現れています」

女エルフ「もしかして…」

魔女「そう…あなた達がその役を担っているのです」

女エルフ「ここに来る時に赤い目の少女を見ました…あの少女は?」

魔女「あなた達と同じく次の時代を紡ぐ者の一人…命を大事にするのですよ?」

女エルフ「はい…」

魔女「…あなたのその足」

女エルフ「怪我をして動かなくなってしまいました…でも大丈夫!剣士に治してもらったから」

魔女「その足は骨が死んでしまっていますね…このままでは治る事は無いでしょう」

女エルフ「そんな…」

魔女「大丈夫…私が蘇生魔法を掛けてあげましょう」

女エルフ「それは大魔法の一つ」

魔女「エルフも光の魔法は使うことが出来るのですよ?ほら…この魔方陣の上に足を置いて…」

女エルフ「はい…」ソロリ

魔女「蘇生魔法!」ポワ

女エルフ「あまり変わった感じはしません…」

魔女「ここに居る間は時間がゆっくり流れています…元の世界に戻った時に変化に気付くでしょう」

女エルフ「ありがとうございます」

魔女「回復魔法を忘れず掛けるのですよ?」

女エルフ「…ハーフエルフの私は魔法を使う事を禁じられているのです」

魔女「あなたが正しいと思う方を選択しなさい…掟を守り調和を保つのか…力を使い何かを守るのか」

女エルフ「何かを守る…」

魔女「ハーフエルフに科された掟にも意味があるのです」

女エルフ「え!?意味?…」

魔女「迫害される中で何を学びましたか?正しい事は何なのか学びませんでしたか?」

女エルフ「ハイエルフ達はそれを教える為に厳しい掟を作ったと?」

魔女「それが良い方法だったのかは私には分かりません…でも中には正しい心を持つエルフが育つのも事実」

女エルフ「魔女様…私はハイエルフに対して大きな勘違いをしていました」

魔女「それで良いのです…ハイエルフはそうやって次の世代のエルフを育てているのですから」



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女海賊「う~ん…どうやってくっ付いてるんだぁ?」

女戦士「…」

女海賊「何見てんの?」

女戦士「お前は休むって事が出来んのか?さっきから何をしている?」

女海賊「この塔の壁ってさぁ…何で出来てんの?」

女戦士「アダマンタイトという石だそうだ…ドワーフが生んだミスリルの様な物だ」

女海賊「なんそれ?聞いたこと無い」

女戦士「古代魔術の遺産で製法は消失したと聞いた」

女海賊「お姉ぇ何で知ってんの?」

女戦士「前来たときにアサシンが魔女に同じ質問をしたのだ…同じ物がシャ・バクダ遺跡にもあるらしい」

女海賊「へぇ~…てことはシャ・バクダ遺跡に行けば手に入るんだね?」

女戦士「何に使う気だ?」

女海賊「これみて?」カチン!

女戦士「ん?磁石がくっつく?それがどうした?」

女海賊「取ってみてよ」

女戦士「ふん!…む!取れんな」

女海賊「磁石を90°回してみて?」

女海賊「こうか?」ポトリ

女海賊「不思議でしょ?」

女戦士「お前は天才かもしれんな…これは上手く使えば色々な物が作れる」

女海賊「これさぁ…アサシンに報告した方が良いと思うんだよね」

魔女「おやめなさい…それは危険な物です」

女海賊「魔女の婆ちゃん…なんでさ?」

魔女「アダマンタイトは狭間と密接な関係を持つのです…狭間を不用意に引き付けるのはとても危険な事です」

女海賊「狭間を引き付ける?」

魔女「古代の魔術師は魔方陣の代わりにアダマンタイトを使って狭間を引き寄せ魔法を使っていたのです」

魔女「狭間を遠ざける事を忘れてしまうと狭間から魔物が這い出てきてしまうのです」

女海賊「むむ!裏を返せば狭間の近い所にはアダマンタイトが眠ってるという事だね?」

魔女「古代の忘れ物でしょう」

女海賊「はっは~ん…この魔女の塔はアダマンタイトで出来ているから狭間の深い所にある!」

魔女「あなたは意外と賢いのですね…悪いことは言いませんからアダマンタイトを使うのはおやめなさい」

女海賊「わかったよ!!最後に一個教えて?狭間を遠ざけるのは磁力を90°回転させる…で合ってる?」

魔女「世界中の狭間を遠ざけるのはとても難しい事ですよ?」

女海賊「答えになってないけど…まいっか!!ありがとね」



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カン カン カン

女海賊「魔女の婆ちゃん何作ってるんだろ?」

女エルフ「魔方陣のペンダントを作っているそうよ」

魔女「さぁ出来た…剣士?あなたのペンダントを作りました…着けておきなさい」

剣士「僕に?」

魔女「光の魔法はエルフが使うエレメンタルの魔法と違って魔方陣が必要なのです…さぁ着けてごらんなさい?」

剣士「はい…」

魔女「あなたは魔方陣の勉強をしていないから代わりにこのペンダントを作りました…これで千里眼を使えるでしょう」

剣士「ありがとう…」

魔女「早速使ってみなさい?」

剣士「えっと…千里眼!」ポワ

魔女「何が見えますか?」

剣士「うわぁ…何だ!!上にも下にも…頭の中に沢山の何かが入って来る」キョロ

魔女「初めて見えるという体験をしたのですね…それが見えるという事です」

剣士「何だ…これは何だ!?動いている?」

魔女「今あなたが見ている物はとてもゆっくり動いているでしょう…時間の流れが違うのです」

剣士「想像していた物と全然違う…何が何だか分からない…」

魔女「ここに居る間は見えることに慣れておいた方が良いですね」

女海賊「剣士の反応がウケるww」

女戦士「無理もないな…目からの情報が多すぎるのだ」

女海賊「他人の視点ってどう見えるんだろ?自分が見てるのと違ってたらやっぱ混乱するかな?」

女戦士「他人がもしも虫だったとしたらどう思う?」

女海賊「虫!?…そういう事かぁ…そりゃ混乱するなぁ」

女戦士「そういう事だ」

剣士「うわぁぁ…はぁはぁ…」



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女エルフ「何してるの?」

女海賊「ミツバチの観察…どうやらこいつらさぁ…」

女エルフ「何かの発見?」

女海賊「気にしたこと無かったんだけど多分こいつら妖精だわ」

女エルフ「フフフ私知ってた…その子達はもうすぐ妖精になるの」

女海賊「ミツバチのクセに自由に狭間出入りしてて変だと思ったんだよ」

女エルフ「ミツバチだけじゃないのよ?鳥たちも自由に狭間を行き来出来るの」

女海賊「へぇ~…そういやあんたさぁ…足大分良くなったぽいね?」

女エルフ「魔女様に蘇生魔法を掛けてもらったの…もう痛まない」

女海賊「そりゃ良かったねぇ」

女エルフ「私魔女様にお会いできて本当に良かった」

女海賊「何でも知ってる婆ちゃんだね…てか私もあのペンダント欲しいさ」

女エルフ「魔女様に借りたこの魔術書にあのペンダントと同じ形の魔方陣が書いてある」

女海賊「お!?そんなもんあんだ!?見せて?」

女エルフ「エルフは書物をあまり読まないから挿絵の部分しか分からない…あなた読める?」

女海賊「興味ある本は読める!!…無い本は一行目で無理」

女エルフ「ほら?ここの所に同じ魔方陣が書いてある…」

女海賊「どれどれ…あああああぁぁ無理無理無理!!文字が多すぎる」

女エルフ「大魔法には重力や磁力を操る魔法もあるのよ?知ってる?」

女海賊「むむ!!重力…磁力!!んんんん…ちっと読んでみるかぁ…」

女エルフ「文字が読めるのが羨ましい」

女海賊「エルフはどうやって勉強すんの?」

女エルフ「知識の伝搬はオーブという物を聞くの…人間の書物と同じ」

女海賊「そっちのが全然ラクじゃん?そっちのが羨ましいって!!」



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女海賊「もう3日もここに居るのに全然お腹空かないね」

女戦士「そろそろ飽きたか?」

女海賊「あんまり休んでるとさぁ…落ち着かない」

女戦士「本でも読んだらどうだ?」

女海賊「今魔術書読んでるんだけどさぁ…文字が多すぎて途中でイヤになる」

女戦士「お前が魔術書を読むとは意外だな」

女海賊「はっきし言ってクッソ面白くねぇ!!でも重力と磁力の秘密が書いてあんのよ」

女戦士「ほう…それは興味あるな…その魔術書は持って帰れるのか?」

女海賊「写本だから持って帰って良いってさ…その代わり全部読めって言われた」

女戦士「それを読んだらお前も魔術師か?」

女海賊「無理っぽい…精神の修行がなんたらかんたら…私には絶対ムリなやつ」

女戦士「我慢する系の奴だな…まぁお前向きでは無いな」

女海賊「剣士ってさぁ…ずっとあそこでブツブツ言ってるけど大丈夫なん?」

女戦士「随分落ち着いて来たように見えるが?」

女海賊「女エルフが寄り添ってんのが気に入らんムキーーー」

女戦士「ハハ嫉妬か?聞こえてるぞ?あれは見えてる物が何なのか教えているんだ…」

女海賊「元の世界はまだ夜中だよね?何が見えてるんだか…」

女戦士「察するに森の中で何かしているのだろうな…もしかすると人間と戦っているのかもしれん」

女海賊「初めて見るにしちゃぁ優しい絵じゃないね」

女戦士「まぁ…祈りの指輪の在りかが見えてるとなると私も黙っている訳には行かなくなった」

女海賊「奪うつもり?」

女戦士「場合によってはな…人間やダークエルフの手に渡るのはマズイ」

女海賊「魔女の婆ちゃんは戦争の事知ってんのかな?」

女戦士「知らん訳が無いだろう…千里眼ですべてお見通しだ」

女海賊「あーーピーンと来た!!法王庁がなんで魔女狩りをするのか…」

女戦士「今頃気付いたのかお前は…」

女海賊「なんで夜行動するのかも…狭間に逃げ込まれるのを追う為なんだ…」

女戦士「その通りだ」

女海賊「んーむ…やっぱり狭間をコントロールする装置作りたいなぁ…」



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剣士「…何か大きな生き物と話している様だ」

女エルフ「形は分かる?」

剣士「すごく大きくてゴツゴツしている…後ろの方に大きな何かが付いている」

女エルフ「それは多分ドラゴン…後ろにあるのは多分羽ね」

剣士「その羽の後ろに何かが…乗ってる?」

女エルフ「乗ってる?どんな形?」

剣士「あれは…人なのか?」

女エルフ「人型?…手に弓の様な物を持っていない?」

剣士「あぁ!!あれが弓なのか…だとするとこれは矢筒…沢山の矢筒がある」

女エルフ「それはドラゴンライダー…ドラゴンの背に乗っているのはハイエルフの男」

剣士「あれがドラゴンとハイエルフか…」

女エルフ「他にドラゴンライダーは見える?」

剣士「今の位置からだと見えない…あ!目が動く…上の方だ」

女エルフ「どう?」

剣士「丸い物光っている…あれは浮いてるのか?」

女エルフ「それは月ね…他には?」

剣士「あれが月か…その周りを黒いものが回ってる…123…6個」

女エルフ「多分それも飛んでいるドラゴン…全部で8匹居るはず」

剣士「大分分かるようになってきたぞ…遠くの物は小さい近くの物は大きい…そういう事だね?」



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女戦士「剣士の様子はどうだ?」

女エルフ「慣れてきたみたい…」

女戦士「ん?どうした?浮かない顔をして…」

女エルフ「ハイエルフ達が戦いの準備をしているの…ドラゴンライダーを知ってる?」

女戦士「伝説くらいはな…それを言い出すという事は準備しているのはドラゴンライダーだな?」

女エルフ「…」コクリ

女戦士「人間も愚かな物だ…ただの魔物退治で済ませておけば良い物をエルフを追い込んでしまった」

女エルフ「ハイエルフが前線に出る様な状況だとトロールもケンタウロスも…」

女戦士「状況が悪い方向にばかり行く…私なら一旦和平交渉だな…被害が大きすぎる」

女エルフ「一番傷つくのは森…人間は草木一つ一つに魂が宿っている事を分かっていない」

女戦士「質問がある…ハイエルフが祈りの指輪を持っていたことはお前は知らなかったのだな?」

女エルフ「知らなかった」

女戦士「伝説では祈りの指輪を生んだのはエルフだと聞く…破壊の方法を知っているのもエルフだけなのか?」

女エルフ「わからない…」

女戦士「魔王を復活させてしまう可能性を持つ指輪を何故破壊しなかったと思う?賢いエルフが…」

女エルフ「製法ははるか昔に失われたの…破壊しなかった理由は精霊の魂を呼び戻す為と…」

女戦士「為と?」

女エルフ「まだ他に祈りの指輪が残っているかもしれないから」

女戦士「やはりそう思うか…もう一つの指輪で魔王を復活させられた場合の対抗手段…だな?」

女エルフ「…でも可能性なだけ」

女戦士「指輪をひた隠しにする理由はある程度理解できる…しかし何か引っかかる」

女エルフ「指輪を守ろうとする理由はそれで充分なのでは?」

女戦士「それ程精霊の魂にこだわる理由が解せん」

女エルフ「魂の無い抜け殻になった精霊樹はやがて枯れてしまう」

女戦士「ハイエルフが生まれなくなる訳だな?…しかし…やはり引っかかるな」

女エルフ「どうして?」

女戦士「ハイエルフ同士で子を産み育てる事を何故しない?」

女エルフ「それは…純血が途絶えるから」

女戦士「戻るか分からない精霊の魂と引き換えにしても純血を守りたいというのか?」

女エルフ「…」

女戦士「他に何か理由がある気がするな…魔女様に聞いてみよう」



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魔女「…あなたたちは核心に近づいていますね」

女戦士「やはり指輪を破壊しない理由が他にも?」」

魔女「指輪が破壊されてしまうと世界は滅んでしまうでしょう」

女戦士「滅ぶ?…どうして?」

魔女「200年前の大破壊の時…狡猾な魔王はすでに滅びの一手を打っているのです」

魔女「私たちは何としても精霊の魂を解放しないといけない…その為には祈りの指輪が必要なのです」

女戦士「滅びの一手とは?」

魔女「エルフの森のさらに北の山頂に命の泉がある事を知っていますか?」

女戦士「そこはドラゴンのねぐら…」

魔女「この世界の命の源であるその場所に魔王は魔槍を突き立てて水を汚してしまいました」

女戦士「ただの伝説だと…」

魔女「いいえ…それは本当の事…その水を必要とする私たち生き物すべて魔王に汚されているのです」

女エルフ「人間の心が汚れているのはそのせい…」

魔女「そう…そうやって滅びの道を歩んでいるのです…それは人間だけではなくあなた達エルフも同じ」

女戦士「それと精霊の魂とどんな関係が?」

魔女「魔槍を抜き…汚れた水を浄化できるのは精霊の加護を受けた勇者ただ一人…」

女戦士「精霊が封印されたままでは勇者は生まれないと?」

魔女「精霊が不在となった今…私たちは心を浄化される事もなく憎悪ばかりが増え続けやがて魔王は甦る」

女戦士「祈りの指輪が無くても魔王は甦る?」

魔女「魔王は実体が無くとも現世に住む者の心へ影響を及ぼすのです…その結果が破壊の連鎖を呼ぶ」

女戦士「事が重大過ぎて言葉を失うな…今まさに戦争が起きている…」

魔女「このような世界だからこそ…意味のある育てられ方をされてきたあなた達は世界を救う最後の希望」

女戦士「魔女様…ご教授ありがとうございました…私はこれからやる事が少し見えてきました」

魔女「前に訪ねてきたアサシンはお元気かしら?」

女戦士「程なく邁進しております」

魔女「もう会えないかもしれないから…彼に会ったら伝えておいて下さい…命を大事にと」

女戦士「承知しました」



----------

妖精「…僕はここで待ってる」

剣士「わかったよ…しばらくは魔女と一緒にいるの?」

妖精「魔女が亡くなったら魂を導くんだ…黄泉はすぐそこだけど」

剣士「目が見える様になったら直ぐに戻るよ」

魔女「必ず戻ってくるのですよ?…あなたには教えておかなければならない事があります」

妖精「女エルフ?剣士の目の代わり頼んだね!」

女エルフ「はい…」

女海賊「あぁぁなんか5日ってあっという間だったなぁ…」

魔女「魔術書は全部読んでおくのですよ?」

女海賊「はいはい分かってるって…」

魔女「さぁ子供達…そろそろ行く時間です…気を付けて行ってらっしゃい」

女戦士「魔女様!お元気で!!」

魔女「そうだ…忘れていたわ…剣士?その光の魔方陣を拵えたペンダントは照明魔法も使えるの」

剣士「照明魔法?」

魔女「目が見える様になったら役に立つでしょう…暗い時に試してみなさい」

剣士「はい!」

魔女「ここから出る時は元来た道をまっすぐ帰るのです…振り返ってはいけませんよ?迷ってしまうから」

妖精「あーー僕案内してくる!!」

魔女「それなら大丈夫ね…さぁお行きなさい?」

女海賊「じゃね~」ノシノシ

『追憶の森』

ホーホー ホーホー

妖精「じゃぁ僕はここまで!後は大丈夫だよね?」

女戦士「ありがとう妖精!」

剣士「すぐ戻るから!魔女を見守ってあげてて!」

妖精「じゃ又~」ヒラヒラ

女海賊「まだ暗いね?5日もブランクあると勘が鈍っちゃってる…夜明けまでどんくらいだろ?」

女戦士「今夜は小望月…もう直ぐ沈む」

女海賊「剣士?照明魔法試してみなよ…月の光が届かなくて暗いんだ」

剣士「触媒が何か教えてもらってない」

女エルフ「光の魔法はエレメンタル魔法じゃないから触媒は要らない」

剣士「やってみる!照明魔法!」ピカー

女海賊「おぉ!!ちょい明るすぎ…」

女戦士「皮袋を被せておけ…それで十分だ」

女海賊「おっけ…じゃ戻ろうか」

女エルフ「待って…魔女様に足に回復魔法を掛けなさいと言われているの…剣士お願い」

剣士「回復魔法!」ボワー

女エルフ「ぁ…」

女海賊「エロい声出すな…行くよ!!」

女戦士「気球が心配だ…早く戻ろう!走れるか?」

女エルフ「足が動く!走れる!剣士!手を…」グイ タッタッタ

『気球』

女戦士「はぁはぁ…気球は無事だな?」

女海賊「こっちの世界じゃ半日しか経ってないっしょ?あぁぁ!!気球に魚入れっぱだった」

女戦士「日が昇る前にここを離れるぞ…食事はその後だ」

女海賊「おっけ!私は球皮膨らませるから剣士は火起しといて!」

剣士「おっけ!火炎魔法!」メラ パチ

女海賊「…魚焼いといて!」

剣士「おっけ!火炎魔法!」チリチリ

女海賊「…なんかムカ付くんだけど…触媒無駄遣いしないでくれる?」

剣士「おっけ!」

女海賊「木に縛ってあるロープも外しておいて…もう飛ぶよ」


フワフワ


女戦士「ふむ手際良い…火起こしの早さがそのまま飛ぶまでの時間短縮になった様だ」

女海賊「お姉ぇ!行き先どうする?戦場に直行?」

女戦士「そうだな…エルフの森南部までは1日掛かるな?その間に千里眼で目標を定めよう」

女海賊「よっし!!風に乗る!!剣士…縦帆開くのお願い!2つとも展開して」


ビョーーーーウ バサバサ


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女戦士「さて…この広大な森の中にいる対象をどうやって探すかだ…何か目標物は見えんのか?」

剣士「森の中を歩いている」

女戦士「それでは探せんな」

女海賊「お姉ぇ!女エルフが森の地図を描いてくれてる…見て!?」

女戦士「…荒すぎるが…この南北に走る線は何だ?」

女エルフ「それは断崖…そこから東は低地になっていて飛び降りることも戻る事も出来ない所」

女戦士「ふむ…私が人間の立場なら断崖を背にして野営を張るな」

女海賊「断崖のこっち側なら気球でも安全だね」

女戦士「一旦断崖を目指して人間側の陣の張り具合を見るか…」

剣士「あ!!沢山の人が集まっている…20人くらい」

女エルフ「耳が長い?」

剣士「…長い人も居るけれど…少し違う格好のひとも居る」

女エルフ「違う格好?…なんだろう?」

剣士「布の様な物を渡された…これが文字なのかな?何かの模様が沢山見える」

女エルフ「エルフは文字を使わない…それは人間」

剣士「周りの人が弓を構え始めた」

女戦士「どうやら何か交渉を始めているな…当然の流れだが」

女エルフ「弓を構えているのはエルフ?人間?」

剣士「エルフ…耳が長い」

女戦士「ふむ…人間側が交渉を持ちかけたな?ドラゴンは見えるか?」

剣士「今は見えない」

女戦士「私がエルフなら交渉を有利に進める為に隠し玉のドラゴンライダーを見せるな」

女海賊「私が人間だったら捕虜を見せる…どっちが有利?」

女エルフ「…人間が有利」

女戦士「いや…この場合エルフ有利だ…伝説が本当ならばドラゴンライダーで5万の兵は壊滅する」

女海賊「マジか…じゃ捕虜を盾にする」

女戦士「人間側はそれしか生き残る術が無い…だから交渉しているのだ」

---夜---

女戦士「あとどれくらいで断崖だ?」

女海賊「夜明け前には着くよ…野営していればもう火が見えててもおかしくないよ」

女戦士「靄が掛かっていて見えんな」

女海賊「もう少し高度下げようか?」

女戦士「そうしてくれ」


ビョーーーウ バサバサ


女海賊「どう?」

女戦士「靄が濃い」

女海賊「女エルフ!?断崖の高さってどれくらい?あんまり高度下げると正面からぶつかっちゃうよね?

女エルフ「200メートルくらい」

女海賊「高っか…聞いてて良かった」

女戦士「それ程の高さなら目視出来る筈…まだ先か?」

女エルフ「森で覆われていて分かりにくいと思う…100メートルを超える木も沢山あるから」

女戦士「聞いたことがあるな…木の上に木が生えているらしい」

女海賊「あぁぁ…だから森っていう字なんだ…納得」


ワオーーーーーン ワンワン


女海賊「遠吠え…剣士!?何言ってるか分かる?」

剣士「侵入者…」

女戦士「ん?こんな所でか?今は断崖の下の筈だ…戦隊の展開を読み違ったか?」

剣士「高度上げないと断崖にぶつかるよ…」

女戦士「やってるって!!お姉ぇちゃんと前見てて!!少し旋回しながら上げる」

女戦士「ちぃ…靄が濃い」

剣士「…この土の匂い」クンクン

女エルフ「トロールね」

剣士「上にトロール!!」

女戦士「上だと!?うわ!!」


ヒューー ドシーン

女戦士「…落ちて行った」

女海賊「あぶぶ…断崖すぐソコじゃん!!やっぱ暗い所で高度下げるの無いわ…」

女エルフ「見て!!断崖の淵」

女戦士「なるほど…トロールの足をすくって谷底に落としてる訳か」

女エルフ「こっちに気付いた様子は無さそう」

女戦士「野営跡が見えるな…という事はここは最後尾だ!断崖沿いに北へ進路を変えろ」

女海賊「アイアイサー!!」


----------


女戦士「見えた…断崖から少し森に入った所にちょとした拠点を作っている…あれが本隊だ」

女海賊「見せて見せて?…んんん?攻城塔が沢山ある」

女戦士「木の上が寝床になっているのだろう…長期戦の構えなのだが…」

女海賊「あの攻城塔は弓が怖くて近づけないなぁ」

女戦士「射程外の高さを維持しろ…おそらく徒歩で1日程前方が最前線だ」

女海賊「こんな場所に拠点構えてさぁ…補給どうすんだろ?」

女戦士「ドラゴンさえ居なければ気球で問題ないな…しかし今は補給出来ん状況…だから交渉なのだ」

女海賊「それにしても良くこんな拠点作ったね…堀も柵もあるし」

女戦士「人海戦術の成せる業だな…」

女海賊「これさぁ…私たちの所にドラゴン来たらどうすんの?」

女戦士「こっちにはエルフが居る…襲って来ん事を願うのだな」

女エルフ「下!!」

女戦士「んん?行軍してるな…夜明け前だというのに」

女海賊「前に光が沢山見えてきた」

女戦士「多い!!…包囲しているのか?…違うなトロールを焼いているな」

女海賊「燃えているのはトロール?」

女戦士「そうだ…トロールは火で炙ると動きが鈍くなる」

女海賊「良い目印!トロールの向かう先に行く!」

女戦士「待て!!場所は把握した…夜明けまで高度を上げて様子を見る」

女海賊「おっけ!」

女戦士「剣士!千里眼の用意は良いか?ピンポイントで対象に接触したい…出来るだけ詳細に頼む」

---夜明け---

女海賊「…東と南の方にもドラゴンが飛んでる…やっぱり旋回してるだけ」

女戦士「ちぃ…随分広範囲で分かれてるな…的が絞れん」

女エルフ「やっぱりドラゴンは全部で8匹」

女戦士「剣士!どこら辺なのかまだ分からんか?」

剣士「目印になるものが何も無いよ」

女戦士「まだ人間と会話しているのだな?」

剣士「何かを待ってる…」

女戦士「むぅ…どの部隊と接触しているのだ?」

女海賊「もう少し高度下げよっか…」

剣士「あ!!あれは馬か?馬車が何台も来てる」

女戦士「夜行軍の部隊か!!東の方角だ…引き返せ!!」

女海賊「おっけ!高度下げながら行く」

剣士「馬車の中から…エルフが沢山出てくる」

女戦士「なるほど…捕虜の交換だな」

剣士「…歩き始めた」

女戦士「行き先をよく見ておけ救出するぞ」

剣士「馬車の方に向かってる…ん?黒いエルフ…ダークエルフとすれ違った」

女エルフ「ダークエルフと交換?」

剣士「振り返った…ドラゴンが1匹見える」

女海賊「見つけたぁぁぁぁ!!あそこ!!あのドラゴンだけ1匹」

女戦士「交渉中だ…高度下げて様子を伺う!!」

剣士「はっ!!倒れた…」

女戦士「なにぃ!!」

剣士「ナイフが胸に刺さってる…ダークエルフにやられた」

女エルフ「ああぁぁ…マザーエルフ様!」

女海賊「ドラゴンが火を吹き始めた!!やっぱりあそこ!!」

剣士「逃げて!!逃げて!!早く!!うぁぁぁぁぁ」

女戦士「弓のギリギリ射程外まで下げて近づけ!!」

女海賊「やってる!!」

女戦士「こちらを見つけたな!?女エルフ!!弓で応射しろ!!」

女エルフ「…」ギリリ シュン

女海賊「お姉ぇ!!これ以上高度下げれない…危険すぎる」

女戦士「とにかくあのハイエルフを追え!!」

女海賊「こんな高さじゃ降りらんないよ?」

剣士「…」ダダダ

女戦士「剣士!!何をする!!」

女海賊「ロープ?」

女戦士「おい!待て!!早まるな!!」

剣士「助けに行く」シュルシュルシュル

女エルフ「あ!!剣士…私も援護に行く」

女戦士「むぅ…仕方あるまい…矢を多めに持って行け!」ポイ

女エルフ「ありがとう」シュルシュルシュル

女海賊「どうするどうするどうする…」

女戦士「剣士!女エルフ!最後の集合場所は星の観測所だ!!」

女エルフ「分かった」


シュンシュンシュンシュン ストストストスト


女海賊「ヤバ!!矢が届いてんじゃん…離脱!!」

女戦士「二人とも死ぬな!!必ず戻れ!!」

『前線第一部隊』

---前夜---

部隊長「…エルフはこちらの要求を呑むという事だな?」

特使「条件付きですが…」

部隊長「こちらが出せる条件だろうな?」

特使「全捕虜とダークエルフとの交換で指輪を持つハイエルフがこちらに来るようです」

部隊長「ハイエルフが来るのか…厄介だな」

特使「その様で…」

部隊長「貴族の連中がハイエルフに魅了されるのは目に見えている…しかしこちらも厳しい状況」

精鋭兵「これ以上の損耗は士気を下げてしまいます…」

部隊長「捕虜の移送は間に合うな?」

精鋭兵「馬車を使えば明日の朝には前線入り出来ます」

部隊長「問題はダークエルフの方だが…」

精鋭兵「ダークエルフ含む法王庁の部隊はたった二個中隊で我々の左前方に位置します」

部隊長「分かっている…漁夫の利を得ようと最前線より前に出ている事もな…小賢しい」

精鋭兵「何故かトロールの襲撃を受けていないのも怪しい」

部隊長「ダークエルフを査問で捕らえられるか?大将からの書状は私が後で何とかする」

精鋭兵「法王庁が言う事聞くでしょうか?」

部隊長「法王庁は和平交渉の件は知らぬ筈…勝手に動かれるのも困るのだ」

精鋭兵「大将からの書状では無く第一皇子からの書状という事になりませぬか?」

部隊長「私に偽装せよと言うのか?」

精鋭兵「交渉が上手く行けば第一皇子の株も上がりましょうと言う物…しいては大将及び部隊長も…」

部隊長「軍法会議ものだが早期決着の為にはやむを得んか…」

精鋭兵「急ぎで私がダークエルフを捕らえて参ります」

部隊長「よし!!特使!!本部へ戻って大将に和平成立を先行して報告して来い」

特使「ハッ」スタ

部隊長「精鋭兵!書状は直ぐに書く…必ずダークエルフを捕らえてこい」

精鋭兵「ハッ」

---朝---


第二部隊方面ドラゴン2匹

第三部隊方面ドラゴン2匹

第四部隊方面ドラゴン1匹

後方本隊方面ドラゴン2匹

観測主「ドラゴンは上を尚旋回中!戦闘の意思は無い模様…ん?未確認の気球1機がさらに上空を飛んでいます!」

部隊長「行き先は分かるか?」

観測主「旋回してこちらへ回頭しています」

部隊長「後方の本隊は視認できるか?」

観測主「狼煙は見えますが隊の展開状況は視認できません」

部隊長「前方の交渉状況を報告しろ!」

観測主「特使がエルフと3匹と接触…捕虜交換の最中です…上空のドラゴンは低空で威嚇しています」

部隊長「部隊の展開状況は?」

観測主「弓兵隊配置完了!歩兵隊は包囲網を展開中!」

観測主「未確認の気球!!さらに接近!!弓兵隊が威嚇を始めました」

部隊長「回避する様子は!?」

観測主「ありません!!応射して来てます!!」

部隊長「むぅ…法王庁の気球か?第2皇子の別働隊か?」

観測主「捕虜交換開始!!女型のハイエルフが一人でこちらに来ます!!」

部隊長「よし!!順調だな?」

観測主「捕虜解放!!ゆっくり2匹のエルフの方へ向かいます…あ!!女型ハイエルフが倒れました!!」

部隊長「なにぃ!!」

観測主「ドラゴンが戦闘態勢!!背中にエルフを乗せています!!ドラゴンライダーです!!」

部隊長「くそう!!謀られた…エルフめぇぇぇ全隊戦闘態勢!!」

観測主「女型ハイエルフ…動きません」

部隊長「捕らえろ!!盾にして後退戦に移行する!!」

観測主「ドラゴンがブレスを吐き始めました!!弓隊一斉射撃開始…未確認の気球から何か降りてきます!!」

部隊長「撃ち落とせ!!弓隊!!女型ハイエルフが逃げる前に足を撃て!!」シュンシュン シュンシュンシュン

観測主「女型ハイエルフ動きます!!東方向…弓ヒット!!転倒」

部隊長「東か…トロール用のベアトラップに追い込め!!ん?気球から降下してきているのは…」

観測主「白いウルフ1匹と女型エルフ弓タイプ!!自軍の前方に降下します」

部隊長「気球を打ち落とせぇ!!」ギリリ シュン シュンシュン シュンシュンシュン

観測主「各部隊…戦闘開始した模様!!開戦の合図が出ています!」



----------

部隊長「ハァハァ…女型ハイエルフはまだ捕らえられんか?」

精鋭兵「歩兵隊でベアトラップ地帯に追い込んでいます!」

部隊長「弓隊の射撃が薄くなってきたな…」

精鋭兵「ドラゴンライダーです…アレに乗っているハイエルフの弓が正確すぎる!!」

部隊長「ベアトラップの向こう側は第2部隊が展開している筈だ…粘って合流する」

観測主「報告!報告!女型ハイエルフがベアトラップに掛かりました!」

部隊長「ようし!!でかした!!」

観測主「新敵発見!!ケンタウロス槍タイプ4体…後方です」

部隊長「むぅ…弓隊の被害状況は?」

精鋭兵「半数が怪我を負って今交代中です」

部隊長「歩兵隊で女型ハイエルフ捕獲に動け!弓隊と盾隊は後方のケンタウロスに当たれ!」

精鋭兵「歩兵隊!!前進!!」

部隊長「降下した白いのとエルフは何処へ行った?」

観測主「見失いました…いえ!!横!!すぐそこ居ます!!回避!!回避!!」

部隊長「精鋭兵隊!!迎え撃て!!」

精鋭兵「白いのを狙い打てぇ!!…速い」シュンシュンシュン シュンシュンシュン


ピョン ピョン クルクル シュタ


精鋭兵「おのれぇ…ちょこまかと…」

部隊長「なんだあの白いウルフは…木から木を飛び移つ…ぐぁ!!」シュン グサ

精鋭兵「部隊長どの!!精鋭兵隊!!観測塔を中心に守備!!」

観測主「女型エルフの弓が木の陰から飛んできます!!」

精鋭兵「目標を女型エルフに変更!!撃てぇ!!」シュンシュン シュンシュン

観測主「外しましたぁ!!あ!!白いのが炎を出しています…ブレス!?」

部隊長「な…なにぃ!?ウルフでは無いのか?」

観測主「小型ブレスを吐きます…あの魔物は報告にありません!!新型です!!」

精鋭兵「ブレス来るぞぉぉ!!散開!!散開!!」


ボゥ ボゥ ボゥ メラ


観測主「観測塔!!燃えます…消化急いで!!」

精鋭兵「くそぅ…叩いて消せ!!」パン パン

観測主「白いのはベアトラップ方面に移動…うわぁぁぁ女型エルフが狙って…ぎゃぁぁぁ」シュン グサ

部隊長「たった2匹に翻弄されるか…」

観測主「ゆ…弓隊が後退しています…ケンタウロスを倒せていま…せん」

部隊長「全隊!!ベアトラップ方面に後退する!!第2部隊と合流する…続けぇ!!」



----------

ゴォォォォォ

部隊長「なんだアレは…竜巻か?」

観測主「徒歩だとしっかり確認できませんが竜巻魔法のトルネードと思われます」

部隊長「あの女型ハイエルフはメイジ型だという事か」

観測主「トルネード3つ見えます」


チュドーーン ゴゴゴゴ


観測主「火柱に変わりました!!高位魔法のボルケーノです!!」

部隊長「先行している歩兵隊は見えんか?」

観測主「ちょっと待ってください…木の隙間の煙が切れれば…」

精鋭兵「歩兵隊が敗走して戻ってくる様です…やられたか」

観測主「見えました!!女型ハイエルフは依然ベアトラップに掛かっています…あ!!」

部隊長「どうした!?」

観測主「膝から下を切り落としました…這って逃げています!第2部隊方面」

部隊長「ようし!!…まだ包囲している状況だ!逃がさん…」

観測主「上空のドラゴンは後れを取っている弓隊と戦闘中の模様」

部隊長「精鋭兵!!ベアトラップはまだ在る筈だな?」

精鋭兵「2重に置いています…このまま進めばもう一度掛かります」

部隊長「一気に捕獲する!前進!!」

観測主「女型ハイエルフ目視!!前方…追いつけます!!」

部隊長「捕獲して第2部隊に合流するぞ!!後れを取るな!!」

精鋭兵「見えた!!走るぞ!!んん?しめた…またベアトラップに掛かった…確保!確保!」


ピョン クルクル シュタ ザク


精鋭兵「ぎゃぁぁ…白い奴」メラメラ

観測主「白い新型は燃える武器を所持!!アレは人型です…頭部がウルフ?」

部隊長「ウェアウルフか!!ええぃ邪魔をするな」ダダダ ブン

精鋭兵「精鋭兵隊!!盾を構えろ…はぁはぁ」

部隊長「ブレスに注意しろぉ!!…ぐぁ!!」シュン グサ

精鋭兵「後ろから弓…女型エルフかぁ!!」

部隊長「…精鋭兵…指揮を変われ…まか…せ…た」ドタリ

精鋭兵「くそぅ…指揮官をピンポイントで狙ってくるとは…出来る」

観測主「白い新型の動きが止まりました!!何か来ます!!」

精鋭兵「盾で守備!!そのまま前進しろぉ!!」

ガガーン ビリビリ


精鋭兵「な…落雷だと!?」

観測主「分かりました!!白い新型はメイジ型です!!今のは雷魔法…うゎぁぁ」ボウ メラ

精鋭兵「火炎魔法…むむむ色々やる…全隊!!新型に構わず強硬突破!!女型ハイエルフの確保優先!!」

観測主「お…遅かった…女型ハイエルフはもう一つの足も切り落として逃げています…東方向」

精鋭兵「お前は走れるか?」

観測主「なんと…か」ノソ

精鋭兵「良し…まだ見える!この先は崖だったな?」

観測主「う…上にドラゴン」

精鋭兵「万事休す…全隊!!ブレスに備えろぉぉぉ」


ギャオーーース ゴゥ ボボボボボボボ


精鋭兵「ぐはぁ…圧倒的ではないか」

観測主「第2部隊が上手く捕獲するのを願うしか…」

精鋭兵「全隊…各自小隊に分かれて第2部隊に合流せよ…第1部隊は指揮系統壊滅」

『第2部隊』

ドーン ドーン

観測主「第1部隊方面で激しい爆発が続いています…こちらの方に移動中と思われます」

部隊長「ううむ…こちらは崖を背にして退路が無い」

観測主「南方面に未確認の気球が旋回しています」

部隊長「上空のドラゴン2匹は何処に行った?その気球はドラゴンに襲われんのか?」

観測主「敵の観測用気球でしょうか?」

部隊長「部隊の展開状況が筒抜けという訳か…撤退せねばならん」

観測主「ドラゴンは現在第1部隊方面へ向かった我が隊の斥候隊上空と思われます」

部隊長「よし…斥候隊を囮に我が隊は崖沿いを南へ回る!!全隊移動開始!!」

観測主「第1部隊方面より敗走兵が来ています」

部隊長「衛生兵!!保護して状況を聞き出せ!!」

観測主「我が隊の弓兵隊が北方向に弓を撃っています!!」

部隊長「確認急げ!!」

観測主「ん?足の無いハイエルフ…が森を這って出てきます」

部隊長「なに!!もしかすると捕虜交換のハイエルフかもしれん!!」

観測主「4つ足で割と速いスピードで東方面に移動中…我が隊の弓がそこそこ当たっている模様」

部隊長「恐るべき生命力だなハイエルフは…ここから確保に向かえそうか?」

観測主「東は崖で行き止まりです…飛び降りなければ間に合います」

部隊長「騎兵隊!!足のないハイエルフの確保に向かえ!!その他は南に移動を継続!!」

観測主「報告!!森の切れ目周辺に小爆発!!」


ドーン ドーン

観測主「出てきました!!白い魔物と女型エルフ…爆発の正体は白い魔物です!!」

部隊長「こちらに来るか?」

観測主「いえ…足の無いハイエルフ方面へ向かってます」

部隊長「こちらの騎兵隊はハイエルフまで接触どれくらいだ?」

観測主「あと2~3分…森から小隊がいくつか出てきます…やはりハイエルフを追っている様です」

部隊長「やはりそのハイエルフがキーマンな様だな…ドラゴンは何処行った?」

観測主「あぁぁ…ドラゴンもハイエルフ方面へ…2匹です」

部隊長「私も目視する…上に登るぞ」

観測主「白い魔物の吐くブレスで友軍が近づけない様です…このままでは騎兵隊も…うぁ!!」シュン グサ

部隊長「なにぃ!!ドラゴンライダーからの弓はあんな所から届くのか…」

観測主「部隊長…ここは危ないです隠れてください」シュン スト

部隊長「構わん!!盾に隠れて見る」シュン カン!

観測主「ハイエルフは崖に到着しました…ドラゴンは友軍と戦闘開始!!」

部隊長「よし…騎兵隊がハイエルフを取り囲んだな?」


ピカッ チュドーーーン


観測主「ハイエルフ!!爆発!!」

部隊長「魔法か…騎兵隊はどうなった!?観測できるか!?」

観測主「騎兵隊消失…」

部隊長「なんという事だ…これでは勝てん!!全隊!!南の本隊への合流を急ぐ!!」

観測主「ハイエルフの生存確認!!崖を飛び降ります…」

部隊長「我々は敵を知らなさ過ぎた…魔物がこれほどまで強力になっているとは…」

観測主「友軍…森の中へ撤退しています!…あ!!白い魔物に女型エルフが乗りました」

部隊長「ん?アレは何なのだ?ウルフなのか?…どうするつもりだ?」

観測主「崖の方へ…」

部隊長「まさか飛ぶ…?」

観測主「崖を走って…え?下に走ってる」

部隊長「我が軍は完敗だ…本体と合流し撤退戦に移る」

『森の最奥』

シュタタ シュタタ ズザザー

女エルフ(剣士!!無事?)

剣士(大丈夫…あっちだ)シュタタ

女エルフ(森がクッションになってくれている)

剣士(あの木の横)シュタタ

マザーエルフ(ぅぅぅ…はぁはぁ)

剣士(回復魔法!回復魔法!回復魔法!)ボワー

女エルフ(マザーエルフ様…)

マザーエルフ(あ…あなた達はハーフエルフですね?私はもう助かりません…この指輪を持ってハッ!!)

剣士(回復魔法!回復魔法!回復魔法!)ボワー

マザーエルフ(坊や…その目は坊や?…こちらを向きなさい)

剣士(…)

マザーエルフ(早く…この指輪を使ってあなたの目を望みなさい…私の命が尽きてしまう前に)

剣士(今助ける!回復魔法!)ボワー

マザーエルフ(言う事を聞きなさい!心臓が止まってしまう前に…)

女エルフ(剣士!!言う事を聞いて!!先に目を望んで!!)

剣士(…この指輪で)

マザーエルフ(早く…)

剣士(僕の瞳を!!)

女エルフ(剣士!?…あなた…瞳が青い)

マザーエルフ(はぁぁぁ本当に…間に合って良かった…あなたは特別な子)

剣士(見える…母さん?)

マザーエルフ(その指輪を使って夢幻から精霊を解放しなさい…これはあなたにしか出来ません)

剣士(どうして僕の瞳を奪ったの?どうして白狼に預けたの)

マザーエルフ(光の無い世界で生きたあなたは真実を見る眼が養われた筈です…夢幻の中で真実を探しなさい)

剣士(夢幻?真実?)

マザーエルフ(ごめんなさいね…あなたを捨てるつもりはありませんでした…でも仕方のなかった事)

剣士(…)

マザーエルフ(正しい心を持ち…真実を見る眼を養う為にはエルフの森から出る以外に無かったのです)

剣士(母さん…僕はもう失いたくない)

マザーエルフ(エルフの魂は森の一部になるからいつでも会えますよ?ゴホゴホ)グッタリ

女エルフ(マザーエルフ様…心臓の音が…)

マザーエルフ(最後に一目坊やの顔が見れて良かった…大きくなり…ました…ね)ナデ

剣士(ぁぁぁ…母さん)ギュー

マザーエルフ(………)


ダダダッ ドン!! シュタッ

剣士(うぁ!!)ズザザ

ダークエルフ(悪いがこの指輪は頂く!!痛い目を見たくなければ手を引け!!)

剣士(お前は!!母さんの心臓にナイフを…)

女エルフ(ダークエルフがその指輪を使って何をする気!?)ギリリ

ダークエルフ(おっと…同族殺しはお前もダークエルフになるぞ?いいのか?)

女エルフ(答えなさい!!)

ダークエルフ(ふっ…ハイエルフは祈りの指輪の使い方を間違ってんだよ…これは破壊しなければならない)

女エルフ(その為に戦争を扇動したのはあなたね!?)

ダークエルフ(ハイエルフが黙って指輪を差し出せばこうはならなかったんだ!自業自得だ)

剣士(うぅぅぅぅ…)スラーン チャキ

ダークエルフ(やる気か?)

剣士(火炎魔法!)ゴゥ

ダークエルフ(おっとあぶねぇ…お前らに構って…うぉ!!」ザク

剣士(このぉ!!)ダダッ ザク ザク

ダークエルフ(この動き…お前!犬神だな?)タジ ポタ ポタ

剣士(火炎魔法!火炎魔法!火炎魔法!)ゴゥ ゴゥ ドーン

ダークエルフ(分が悪いか…)ヒラリ ダダッ

剣士(逃がさない!)ピョン シュタタ

ダークエルフ「ピーーーーーー」

女エルフ(笛!?剣士!!気を付けて!!)


シュンシュンシュン シュンシュンシュン


女エルフ(上にも下にも敵が居る!!ウルフの遠吠えは軍の侵入だったって事?)

剣士(うぁぁぁぁ!!)ダダ ザク

ダークエルフ(ぐぁ…)ボトリ

女エルフ(片手を切り落とした…)

剣士(グルルルル…こっちの手じゃない!!)

女エルフ(ダメ!!剣士…弓が狙ってる)


シュンシュンシュン シュンシュンシュン

剣士(ワオォォォォン!!グルルルル)シュン グサ

女エルフ(下がって剣士!!…あぁぁぁ矢が当たってる)

剣士(ガルル)ピョン クルクル シュタ


シュンシュンシュン シュンシュンシュン


女エルフ(敵が多すぎる!!剣士ダメ!!ハァハァ…我を失ってる)



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観測主「ダークエルフ戻ってきます!負傷している模様!!」

隊長「衛生兵!保護して後方部隊まで下がれ」

観測主「敵は2匹!!メイジ型と弓型!!押し通って来ます」

隊長「メイジ型に集中して撃て!!」


シュンシュンシュン シュンシュンシュン


観測主「ヒット!!怯みません!!自己回復しながら押し通って来ます」

隊長「単騎で特攻か…信じられんな…歩兵で止めろ!!」

観測主「魔法を連射して来ます!!回避!!回避!!」


ドーン ドーン パーン

観測主「前衛部隊全滅!!ダークエルフ捕まりました!!あ!!足を切り落とされて転倒」

隊長「ええい!!ダークエルフはもう放置だ!!弓隊!!集中砲火」


シュンシュンシュン シュンシュンシュン


観測主「ヒット!!歩兵が取り付きました…ああ!!なんだ!?ダークエルフの手足が生えてきた…え?」

隊長「なに!?何が起こっている?」

観測主「歩兵が何故か手足を負傷…ダークエルフ逃げ帰ってきます…どうなってるんだ?」

隊長「観測主!!正確に報告しろぉ」

観測主「は…はい!!メイジ型は魔法連射で前衛は近寄れません!!被害甚大!!」

隊長「弓だ!!ハチの巣にしろぉ!!」

観測主「後方でウルフの群れが現れた模様!!混戦になります!!」

隊長「弓隊はメイジ型に集中砲火続けろ!!」

観測主「ヒット!!メイジ型が止まりました…あ!!弓型がメイジ型を引っ張って行きます」

隊長「よし!下がったな?今の内に後方のウルフへ向かい本隊へ合流する」

観測主「敵2匹は木の陰に隠れました!!視認できません」

隊長「そっちはもう良い!!矢を何十発も受けて無事で居るものか!!後方へ移動!!」



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女エルフ(あぁぁどうしよう…血が止まらない!剣士!剣士!?)

剣士(ガルル)

女エルフ(動かないで…精霊よお許しください)

女エルフ(回復魔法!回復魔法!回復魔法!)ボワー

女エルフ(あぁぁ血が止まらない…そうだ!!魔女様が私にも出来ると…)

女エルフ(魔方陣のペンダント…これを下に置いて)

女エルフ(蘇生魔法!)ポワ

女エルフ(回復魔法!回復魔法!回復魔法!)ボワー

女エルフ(矢を抜かないと…)ブシュ ブシュ ブシュ

剣士(グルル)


ギャオース バッサ バッサ


女エルフ(ドラゴンライダー!!)

ドラゴンライダー(指輪は無事か!?)

女エルフ(ダークエルフに奪われました!…まだ近くに居るはず)

ドラゴンライダー(トロールが動ける夕刻までここで待機しろ!我々は南進する!)

女エルフ(私たちは?)

ドラゴンライダー(森の声を聞いて集結しろ!指輪を奪い返す!)


ギャオース バッサ バッサ


女エルフ(剣士…あなたは怒りで心がどこかへ行ってしまった)

女エルフ(目を閉じて瞑想で私に重なって…連れ返してあげる)

女エルフ(ここに居るから重なって…)


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『気球』

ビョーーウ バサバサ

女海賊「だめだぁ…高度上がんない」

女戦士「一旦離れて直すしかないな…」

女海賊「こんな所で降りたら木に引っかかっちゃうよ」

女戦士「崖を北に沿って行け…森が切れていた筈だ」

女海賊「エルフの森にちょー近いじゃん!大丈夫かなぁ…」

女戦士「祈れ…それにしても剣士たちを見失ってしまったのが…」

女海賊「どうせドンパチの真下なんじゃないの?」

女戦士「これほど激しいともう近寄れんな…まさか竜巻が出るとは思っても居なかった」

女海賊「球皮が破れるかと思ったよ」

女戦士「見ろ…またドラゴンがブレスを吐き始めたぞ」

女海賊「ドラゴンに乗ったエルフもヤバイね」

女戦士「うむ…制空権を完全に制されていては人間側に勝ち目がないな…引くしかない」

女海賊「下から矢を撃ちすぎでさぁ…それを拾われて使われてるの分かってないのかなぁ」

女戦士「現場は必死なのだろう…相手の補給の事など考える暇も無い」

女海賊「矢が切れればドラゴンライダーも攻め切れないのにね」

女戦士「私はこれからが本番だと見る…トロールを前面に出してゴブリンの歩兵隊…そしてケンタウロス」

女海賊「うへぇ…」

女戦士「ドラゴンライダーからのピンポイント射撃ではまだ決定的に数を減らせていない」

女海賊「人間側は立て直して来るって事?」

女戦士「戦争は最後に歩兵の数で勝つのだ…両者どれだけ相手の歩兵を減らせるかだな」

女海賊「長引きそうだね」

女戦士「うむ…気球を直したら一旦シャ・バクダまで引き返すぞ」

女海賊「剣士たちは置いていくの?」

女戦士「私たちは何も出来ん!仕方あるまい」

女海賊「んんんん!!なんかこんなお別れの仕方したくなかったな」

女戦士「無事に帰って来る事を祈れ…私たちには他にやる事がある」

女海賊「もう!!しょうがないなぁ…」

女戦士「砂漠方面に敗走兵が沢山出るぞ…物資補給で商隊も溢れる事になる」

女戦士「盗賊団も黙って見ているだけでは済まなくなりそうだ」

女戦士「徴兵で戦場に出なければいけなくなる可能性もある…やる事が山積みだ」

女海賊「へぃへぃ…あそこに一旦降りるよ?」


フワフワ ドッスン


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その後エルフの森南部で侵略を進める人間軍と衝突した魔物群は

山岳地域からのミノタウロス、オーク、ハーピー

砂漠地域からのリザードマンが加わり勢力を増し

人間軍を押し返す形で南進を進める

魔物群の大反撃が始まったのである

『星の観測所』


女戦士「戻ったな?様子はどうだ?」

女海賊「ハズレ町の方に兵隊が逃れて来てるっぽい」

女戦士「うむ…やはり戦線が南に下がった様だな」

女海賊「やっぱり商隊がごった返してるよ…お姉ぇが言った通りだ」

女戦士「こちらも情報が入ってきた…セントラルに軍船が多数入港しているそうだ」

女海賊「どっから?」

女戦士「西方の土の国フィン・ニッシュ」

女海賊「おぉぉ軍国と同盟だ」

女戦士「察するに第2皇子が外交で師団を編成しようとしているな」

女海賊「剣士たちの情報とか何も無いの?」

女戦士「白い魔物の噂はあるが…それだけだ」

女海賊「あぁぁ…もうすぐ1か月だけど死んじゃったかもしれないと思うとやるせない」

女戦士「…それが戦争だ…あの二人はエルフだから戦いは避けられなかったのだ」

女海賊「なんかイライラする!紛らわせに明るい内に遺跡調査行ってくるよ」

女戦士「アダマンタイトか…まだあきらめて居ないのか?」

女海賊「小さい欠片を探してんだけどさぁ…砂に埋もれててなかなか見つかんないんだ」

女戦士「この間持って帰ってきた奴ではダメなのか?」

女海賊「色んな大きさで試したいんだ」

女戦士「まぁ遺跡は魔物が出ないから迷子にならん様にだけ気を付けろ」

女海賊「分かってるって…じゃ行ってくる!!」ノシ


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若い衆「マスター代理!」

女戦士「どうした?」

若い衆「コブラ酒と赤ワインの注文が入りました…グラスは2つ」

女戦士「どこの宿屋だ?」

若い衆「入ってすぐの馬宿です」

女戦士「む…アサシンが帰ってきたか?」

若い衆「分かりません…兵隊の恰好をしているそうです」

女戦士「変だな…暗号が知られてしまったか」

若い衆「どうしましょう?」

女戦士「私が直接行く…逃走用にラクダを馬宿に付けておいてくれ」

若い衆「承知」

女戦士「私もラクダですぐに向かう」タッタッタ

『宿屋』

カラン コロン

店主「いらっしゃいま…」キョロ

女戦士「どこの部屋だ?」

店主「奥の大部屋に居座っています」

女戦士「どんな奴だ?」

店主「いつの間に大部屋に籠ってしまいまして…中から兵隊の鎧の音がガシャガシャと」

女戦士「男か?」

店主「女の声です…中から例の物を注文してきました」

女戦士「私の逃走経路を確保しておけ…酒を持って中に入る」

店主「かしこまりました…酒とグラスは用意しております」

女戦士「…この部屋だな?」

店主「はい…」


トントントン


女戦士「ご注文をお届けに参りました…」

店主(返事がありませんな…)

女戦士「扉を開けてもらえませんか?」


ガチャリ


女戦士「お酒をお持ちいたしま…女エルフ!!生きていたか!!剣士はどうした!?」

女エルフ「剣士が死にそう…もう魔法の触媒が無いの」

剣士「ぅぅぅ…」

女戦士「待ち合わせは星の観測所だと言った筈だ…ここがどれほど危ないか…まぁ良い…それは後だ!」

女エルフ「触媒を…」グッタリ

女戦士「お前も怪我をしているのか…おい!!店主!!事態が変わった…魔法の触媒を入手して来い!」

店主「何がご入用で?」

女エルフ「水とミネラル…それから薬草も」

店主「ミネラルも薬草もこの辺りでは中々…」

女戦士「セントラルから商隊が来てる…なんとか探せ」

店主「わかりました…急いで探してきます」タッタッタ

女戦士「ここよりもエルフの森の方が安全だっただろうに…」

女エルフ「私はもうエルフの森へは帰れないの…ここにしか来るところが無かった」

女戦士「…そうか…禁じられていた魔法を使ったか」

女エルフ「剣士の心臓が止まってしまいそう…」

女戦士「失血がひどいな」

女エルフ「傷口からもう出てくる血が無いの」

女戦士「人間の技ではな輸血という手法がある…女エルフ!お前の血を剣士に半分移すぞ」

女エルフ「私の血を!?」

女戦士「すこし待っていろ…準備してくる」


----------

チク

女エルフ「っ…」

女戦士「この管を通ってお前の血が剣士の中に入る」

剣士「はぁはぁ…うげぇ」オェ

女エルフ「苦しんでる?」

女戦士「他人の血が体の中に入るのだ…多少の反応はある」

女エルフ「剣士の傷跡から血が染み出て…」

女戦士「お前の血だ…血を抜きすぎる前に終わるぞ?お前が倒れたら元も子もない」スポ

女エルフ「止血しないと…」クラ

女戦士「横になってろ!私がやる」グイ グイ ギュー


ガチャリ


店主「ミネラルありました…先にこれだけ」

女戦士「店主!アジトに女海賊が居るはずだ…若い衆に深夜気球で迎えに来いと伝えるよう言っておいてくれ」

店主「わかりました」

女戦士「女エルフ!まだ動けるか?魔法の触媒だ…回復魔法で処置頼む」

女エルフ「回復魔法!」ボワー

女戦士「自分にも掛けておけ」

女エルフ「回復魔法!」ボワー

女戦士「よし!これでひとまず死ぬ事は無いな?エルフは精力付けるのに何を食らう?」

女エルフ「木の根」

女戦士「そんな物は砂漠には無いな…サボテンの根でどうだ?」

女エルフ「食べた事無い」

女戦士「まぁ良い…採ってきてやる!食ってみろ」


----------

女戦士「…なるほど魔物達は祈りの指輪で魔王を復活させられるのを恐れているのだな?」

女エルフ「エルフとドラゴンは少し目的が違うけれど…」

女戦士「ダークエルフに指輪を破壊されてしまっては困るか…」

女エルフ「とにかく指輪を奪い返せばそこで一旦終わる筈」

女戦士「人間側からすると魔物に攻め立てられている様にしか見えんな」

女エルフ「誰も魔王の復活なんて望んでいないのにこんな風になってしまった」

女戦士「そして…指輪は今どこに?」

女エルフ「森の中央で一番深い所…何層にも森が積み上がっいて迷いの森と呼ばれているの」

女戦士「断崖の下だな?」

女エルフ「そんなところまで人間が入ってきているなんて思わなかった」

女戦士「森の中でのゲリラ戦ではドラゴンも攻め入り難かろう」

女エルフ「このままではもう直ぐ森の南部に出てしまう」

女戦士「まずいな…戦争が森の中だけでは納まらんな」

女エルフ「セントラルまで逃げられてしまうと海からも魔物が来てしまう」

女戦士「クラーケンか…陸に上がるのか?」

女エルフ「わからないけれどドラゴンはクラーケンも恐れているの…ドラゴンよりもずっと大きいから」

女戦士「大惨事になるな…なんとか奪い返せんものか…」

女エルフ「良い手が思いつかない…」

女戦士「うむ…」

---深夜---


ガチャリ

女海賊(お姉ぇ!来たよ!)

女戦士(来たな?運ぶのを手伝え!)

女海賊(おぉぉぉぉ!!剣士と女エルフ!!無事でよかったぁぁぁ)ギュー

女戦士(話は後だ…剣士が動けんのだ)

女海賊(重っも…女エルフは剣士を背負ってきたの?)

女エルフ(私が背負うから先導お願い)ノソリ

女海賊(おっけ!こっち…暗いから気を付けて)

女戦士(しばらく見ないうちに剣士は一回り大きくなったな)

女エルフ(剣士はまだ成長期…成体になるともっと大きくなる)

女海賊(あんたさぁ細っそい体してんのに力持ちだよね?)

女戦士(エルフはそういうものだ…女でも人間の男と変わらん)

女海賊(へぇ…こんな重いのが空中でクルクルしてんだ?)

女戦士(ドワーフの男はもっと重くて硬いんだがな)

女海賊(パパの事?アレは別格っしょ?多分石か鉄で出来てるよ)

女戦士(無駄口は良いから急げ!見つかると面倒だ!)

女海賊(はいはい分かってるって!気球乗ったらすぐ飛ぶよ!)

女エルフ(乗った…ふぅ)ヨッコラ セ

女海賊(アジト向かうね)

『星の観測所』


女戦士「やっと落ち着いたのだ…少し休んだらどうだ?」

女エルフ「私は大丈夫…」

女海賊「あ!!そうだ!!夜が明けてしまう前に試したいことがある」

女戦士「んん?どうしたんだ急に?」

女海賊「アダマンタイトの実験がさぁどうしても上手く行かないんだ」

女戦士「魔女からやめておけと言われているのだ…あきらめろ」

女海賊「だから試したいんだよ…女エルフ?あんた魔法使っちゃったって言ったよね?」

女エルフ「うん…それが?」

女海賊「照明魔法使える?」

女エルフ「剣士の魔方陣のペンダントがあれば使えるかもしれない」

女海賊「それ必要ない」

女エルフ「え?どうして?魔方陣が無いと光の魔法は使えないの」

女海賊「良いから!ちょっとこっち来て?…ここで使ってみて」

女エルフ「魔方陣が無いと…」

女海賊「良いから唱えてみて!早く!」

女エルフ「照明魔法!」ピカー

女海賊「キタコレ!!!やっぱこれが原因だ!!」

女戦士「何なんだ?どうした?」

女海賊「シャ・バクダ遺跡の周辺ってさぁ…オアシスいっぱいあるじゃん?」

女戦士「話を変えるな…意味が分からん」

女海賊「ぃぁだからさぁ…気球で上からオアシスの位置を見たらさぁ…光の魔方陣と一致してんの」

女戦士「なに!?」

女海賊「魔女からもらったこの魔術書見て?…光の魔方陣の形…交点がオアシスと一致してんのさ」

女エルフ「巨大な魔方陣という事?」

女海賊「そういう事になる…今の照明魔法で証明できた」

女戦士「…これはアサシンも知らない事実だぞ…シャ・バクダは封印されているという事なのか?」

女海賊「えっと…」

魔女の塔はアダマンタイトで出来て居たよね?だからあそこは狭間の奥にあるんだ

でも魔女の塔の近くだけは空があったよね?それは魔方陣で無理やり狭間を遠ざけていると思う

シャ・バクダ遺跡には沢山のアダマンタイトがある…だから本当は狭間の奥になる筈なんだ

でも空はあるし魔物も出ない…なんでか?

それはオアシスで作られた巨大な魔方陣の中で無理やり狭間を遠ざけられたから…

魔術書にさぁ…光の魔方陣で退魔の方法が書いてあるんだよね…多分コレ


女戦士「だとすると何故封印してある?」

女海賊「それは分かんない…」

女戦士「アサシンが居ない間に勝手に調べる訳にもいかんな…」

女海賊「でもさぁアダマンタイトの実験が上手く行かないのが魔方陣の中に居るからだと思うんだよね」

女戦士「お前は何の実験をしようとしているのだ?」

女海賊「狭間をコントロールする…狭間の奥に入れば人間からは見えなくなると思うんだ…つまり消える」

女戦士「そんな事が本当に出来るのか?」

女エルフ「エルフの森を人間が見つけられないのは狭間の奥にあるから」

女海賊「そゆ事」

女エルフ「もしそれが出来るなら祈りの指輪を取り返すチャンスが出来るかもしれない」

女海賊「ん?何々?何の話?ちょっと私の分かんない話しないでくれる?」

女戦士「お前は天才だ…アサシンが見込むだけの事はある」

女海賊「指輪を取り返すって何さ!?教えてよ」

女戦士「夜明けに気球でオアシスの外側で安全な場所へ行って試してみよう」

女海賊「ねぇちょっと聞いてんの?」

女エルフ「初めから話すと…祈りの指輪で…」カクカク シカジカ


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---夢---


ビョーーーーウ バサバサ

小さい人「やっと少し落ち着いて話が出来るね…」

ぼく「…」---君はだれ?---

小さい人「君の事が知りたいんだ」

ぼく「…」---ぼくは君を知らない---

小さい人「ハハまず僕達の事から話した方がよさそうだね…どこから話そうかな」

大きい人「僕から話す…僕はもともと選ばれた勇者として…」

---

---

---

---

---

小さい人「…という訳さ…ややこしいでしょ?」

大きい人「そんな中僕はこの世界が幻だという事に気が付いた」

小さい人「君はどう思ってる?…この世界を」

ぼく「…分からない…僕は昔の記憶が無い…ただ精霊の声は聞こえる」---話が頭に入って来ない---

小さい人「精霊の声?…どんな風に聞こえるのかな?」

ぼく「耳を澄ませると精霊の声がする…心の中で導かれる」---いつも聞こえる声---

小さい人「導きねぇ…」



ぼくはいつの間にか…気が付いたら旅をしていた

その昔の記憶は無い

精霊の声に導かれていつの間にかここに居る

その声…いや…音は僕に常に語りかけていた

そんな旅の最中ぼくは常に命を狙われ

心の中の声に導かれるまま終わりの国まで来て

あなた達と出会った

小さい人「よく分からないな…君は本当に勇者なのかい?」

ぼく「今、精霊の声はハッキリと聞こえる…」---ぼくは勇者?---


”目を覚まして…”

”起きないなぁ…”

”置いていく?”

”あ!動いた!!”

---朝---

女エルフ「目を覚ました?気分はどう?」

女海賊「起きたぁぁぁ!!…ってあんたその目!!マジか!!お姉ぇ!!ヤバイ来て!!」

女戦士「サボテンの根を採ってきた…んん?」ジロリ

女海賊「アサシンが探してた青い目!マジかマジか!あんたエルフじゃなかったの?」

女戦士「まぁ騒ぐな…まだ起きたばかりだ…腹が減っているだろう?コレを食べるんだ」

剣士「あ…」モグ

女戦士「旨くは無いかもしれんが精が付く…女エルフはすぐに良くなった」

剣士「なんだこれ…」モグ

女エルフ「痛む所は無い?」

剣士「…」スック

女戦士「立てるのか?」

剣士「体は大丈夫みたいだ…」ヨロ

女戦士「血が足り無さそうだな?しばらくは無理せん方が良い」

女エルフ「私の血が足りなかった?」

女海賊「なぬ!!どういう事?まさか輸血したの?」

女戦士「失血がひどくて死ぬ寸前だったのだ…女エルフが居なければ死んでいたぞ」

剣士「僕の体に女エルフの血が流れている?」

女戦士「そうだな…全部入れ替わったかもしれんなハハ」

女海賊「ハハじゃねぇ!!…なんかイライラすんだけど」

女戦士「嫉妬は見苦しいぞ?エルフにドワーフの血を入れるよりマシな方法だ」

女海賊「女エルフ!!後で血ぃ貸しな!!ドワーフの血と混ぜるとどうなるか実験する」

剣士「実験?ハハハ実験?くっくっく…」

女海賊「お!?笑った」

女戦士「やっぱりお前はバカなのか天才なのか分からんな…剣士!気球で少し外に出るがお前も行くか?」

剣士「行きたい…オアシスを見てみたい」

女海賊「そら来た!!気球準備してくる!!女エルフ!!手伝え!!」

『気球』

ビョーーーウ バサバサ

女海賊「ほら!やっぱり光の魔方陣と一致してるっしょ?」

女戦士「やはり何かあるな…中心に遺跡が位置する…間違いなく何かを封印しているな」

女海賊「アサシンがもう一つの入り口を探していた理由だよきっと」

女戦士「こんな事が出来るのは…魔女くらいのものか」

女海賊「魔女の婆ちゃん何か隠してそうだね」

女戦士「いや…魔女だけではない…アサシンも何か隠しているぞ?」

女海賊「アサシンは核心的な事はなかなか教えてくんないんだよなぁ…」

女戦士「それはお前の口が軽いからだ…いう事も聞かんしな」

女海賊「ちゃんと言いつけ守ってんじゃん?」

女戦士「アダマンタイトの件はどう説明する?」

女海賊「むむ!…それはアレよ…てか私に魔術書を渡した魔女の婆ちゃんが悪い」

女エルフ「そういうのもお見通しだと思うの…魔女様が言っているのは気を付けなさいという事」

女海賊「そうだよソレそれ!!」

女エルフ「魔術書を全部読みなさいという事も謎を解くヒントだと思う」

女戦士「託されたという事か」

女海賊「謎ねぇ…なんだろ?」

女戦士「魔術書は全部読んだのか?」

女海賊「無理無理!!相当好きじゃないと読んでも理解不能」

女エルフ「私も内容が知りたい」

女海賊「ちょちょ…自分で読めよ!!まさか私に読ませる訳?」

女戦士「魔女とはそういう約束だったな?」

女エルフ「あなたが言ってた退魔の方法とかも教えてほしい」

女海賊「フフん!!ひざまずけ!!私はエルフに勝った…」ドヤ

女戦士「そろそろオアシスの外側だ…向こうの砂丘の上に降りろ」

女海賊「おっけ!」


フワフワ ドッスン

『砂丘』

サラサラ サラサラ

剣士「…これが砂漠」

女エルフ「想像していた砂漠と違う?」

剣士「全然違う…僕が感じていた世界と今見ている世界が全然違う…」

女エルフ「どんな風に?」

剣士「言葉で言い表し難い…目を閉じるといつもの世界…目を開くと違う世界…このギャップに戸惑う」

女海賊「お~い!!実験やるぞぉぉ!!こっちぃぃぃ」

女エルフ「剣士?行こ?」グイ

女戦士「さて…見ものだな」

女海賊「行くよ?まず小さいアダマンタイトから…磁石を引っ付けて右に90°回す…」サー

剣士「うわ!!空が落ちる!!」

女戦士「…驚いたな」

女エルフ「ここは狭間の奥…スゴイ」

女海賊「ちょっと範囲を調べたい…アダマンタイト持ってて?ホイ」ポイ

女戦士「ん?どこに行く?…」

女海賊「お!?ここまで範囲があるかぁ…次は」タッタッタ

女戦士「範囲の外に出ると空が見えるのだな?」

女海賊「そだよ?魔女の塔と同じ…で次はアダマンタイトにもっかい磁石引っ付けて反対に回す…」サー

剣士「空が浮かんだ…」

女海賊「やっぱ私の理論で合ってた!!多分範囲はアダマンタイトの重さに比例する…あと時間の流れもかな」

女戦士「時間の流れもコントロール出来るのか?」

女海賊「ほら魔女の塔ってさ時間がゆっくり流れてたじゃん?」

女戦士「なるほど…」

女海賊「重たいアダマンタイトで狭間にしたらそこは時間の流れが遅いと思うんだ…つまり」

女戦士「高速で移動が可能になるな」

女海賊「お!?正解!!もし気球に重たいアダマンタイト乗せれたら一瞬で移動出来る筈」

女戦士「古代魔法には一瞬で行きたい場所に行く魔法があったそうだ…実在した訳か」

女海賊「小さいアダマンタイトでもちょっとは効果あると思うんだよね」

女戦士「まだ時間はたっぷりある…検証しろ」

女海賊「おっけ!!剣士と女エルフはさぁ…気球でゆっくりしてて良いから観察してて」

女エルフ「うん…狭間の外側から見てる」

『気球』

サラサラ サラサラ

女エルフ「…どうして目を閉じているの?」

剣士「こっちの方が落ち着くんだ」

女エルフ「あなたが感じていた世界の事を教えて?」


僕が感じていた世界はもっと狭くて賑やかだった

風の音…砂の音…すぐ近くに感じる沢山の命

でも目を開けて見ると風は見えないし砂もほとんど動いていない

近くに感じていた命は見つけられない…全然違っていたんだ

僕が感じていたよりもずっと向こう側まで世界があったのは

それはまるで未来を見ている様に感じる

…なんていうか…夢を見ているみたいだ


女エルフ「夢?」

剣士「…でも現実なんだ…ずっと向こう側で起こっている事も現実だった」

女エルフ「人間達との戦いの事を言っているの?あなたの魔法はすごく遠くに届く」

剣士「夢の中でも同じように何かと戦っていた…良いのか悪いのか分からないまま」

女エルフ「夢を思い出したの?」

剣士「少しだけね…この砂漠も夢の中で見た…だから全部夢みたいなんだ」

女エルフ「オアシスを見たいと言っていたのは?」

剣士「夢を思い出すかもしれないと思ったんだ」

女エルフ「話が飛び飛びになっている…混乱しているのね?」

剣士「混乱しているのかな?ただ…遠くで起こっている事が現実だったように…」

女エルフ「…」

剣士「夢で起きている事も現実の様な気がする…僕には同じに感じる」

女エルフ「あなた…それが真実だと思う?それが真実を見る目?」

剣士「わからないよ…だから目を閉じて落ち着かせているんだ」



----------

女エルフ「女海賊たちは何をしているのかな?消えたり…現れたり…」

剣士「ん?僕にはずっとあの辺でウロウロしている様に感じる」

女エルフ「え?あなた…目を閉じているから?」

剣士「もう帰って来るよ」


女海賊「お~い!!どんくらい時間経った?」タッタッタ

女エルフ「…まだそんなに待ってない」

女海賊「私らは半日くらい実験してたんだけど」

女エルフ「そんなに?」

女海賊「やっぱ思った通りだ!!お姉ぇ!!これヤバイ発見だ…世界が変わる」

女戦士「なるほどな…魔女が言うように手を出してはいけない物だと良く分かった」

女海賊「いーじゃんいーじゃん!?…で女エルフさぁ…私らどんな風に見えてた?」

女エルフ「消えたり…現れたり」

女海賊「おぉ!!エルフでも消えて見えるって事はやっぱ時間の流れが原因だ!!」

女エルフ「どうして?」


多分さぁ今の現実世界って一番時間の流れが早い場所だよ

狭間の奥は時間の流れが遅くてそのもっと奥は止まるくらい遅い

狭間の奥に入ると時間に置いて行かれて

現実世界からは見えなくなってしまう…つまり消える


女エルフ「それを使えば指輪を奪い返せる?」

女海賊「絶対イケる…自信ある!」

剣士「どうやって?」

女海賊「この一番小さいアダマンタイトなら自分だけ狭間に入れる…これ使えばいつでも姿を消せる」

女戦士「危険だが良い作戦だ」

女海賊「狭間に入っちゃうと自分も向こう側が見えなくなるけど…剣士なら多分行ける」

剣士「え?」

女海賊「あんたは目が見えなくても目が見えてるから…アレ?変な事言ったな…」

剣士「感じる事は出来ると?」

女海賊「ソレそれ!!あんたなら指輪奪って戻って来れる」

女エルフ「すごい…私ドワーフに負けを認める」

女海賊「…あのね…ドワーフって強調しないでくれる?イラっとするから」

女エルフ「ごめんなさい」

女戦士「まぁ先ずは剣士の体力回復が先だ…その後その作戦で行けるか?剣士…」

剣士「分かった…マザーエルフ…いや母さんが命を懸けて守ろうとした指輪…必ず取り返す」

女戦士「よし!良い気構えだ!!とりあえず帰ってバーベキューでもするか」

女海賊「おぉぉぉ良いねぇ!!帰ろ帰ろ」

『星の観測所』

ジュー ジュー

女海賊「ほら!あんたも気取ってないで食えよ…山賊焼きってんだホイ」ポイ

女エルフ「私は…」

女海賊「生の川魚よりよっぽど旨いよ?」モグモグ

女戦士「人間はこうやって精を付けるんだ…一回食べてみたらどうだ?」

女エルフ「…」パク

女戦士「剣士はまだ横になっているのか?」

女海賊「呼んでこよっか?」

女戦士「いや…女エルフ?剣士にも肉を持って行ってやってくれ」

女海賊「おっとぉ!!剣士はさぁ…こういう骨付きの肉が好きなんだぁホイ」ポイ


----------


女エルフ「剣士?起きてる?食事持ってきた」

剣士「うん…ありがとう」モグ

女エルフ「体調はどう?」

剣士「大丈夫だよ…あのサボテンの根だっけ?あれ良いね」

女エルフ「フフ美味しくは無いけどね」

剣士「君は肉を食べてみた?」

女エルフ「少しだけね」

剣士「僕は焼いた肉がちょっと苦手かな…でも慣れないといけないと思って食べてる」

女エルフ「慣れる?」

剣士「人間のやり方を少しでも真似てみないと生きていけないよ…」

女エルフ「私も慣れないといけないのかな?」


僕は小さい頃にね…自分は母さんと同じウルフだって信じ込んでいたんだ

ある時森の中に迷った人間が来たことがあってね

その人は僕を抱き上げて連れて帰ろうとしたんだ

びっくりしたよ

まさかウルフを怖がらないで抱き上げるなんて思わなかった

その時母さんが教えてくれた

僕は人間と同じ姿をしているんだって

剣士「一人で生きていくなら人間にならなきゃいけないって言ったんだ」

女エルフ「私はエルフの姿をしている…それでも人間の真似をしなければいけない?」

剣士「僕はその差が良く分からないんだ…目を閉じればエルフも人間もウルフも同じ」

女エルフ「私たちは見た目で差別や偏見を持つ?」

剣士「うーん…少し生き方が違うだけなのに…変だよね?」

女エルフ「生き方が少し違うだけで他人を否定してしまう…だから合わせなければいけない」

剣士「目を閉じればみんな同じなのにね」



----------


剣士「寝れないの?」

女エルフ「眠りたくないの」

剣士「どうして?」

女エルフ「嫌な夢を見てしまうから…」

剣士「どんな夢?」

女エルフ「言いたくない…でも気になる人がいつも出てくる」

剣士「気になる人?」

女エルフ「誰なのかは分からないけれど…その人に付いて行って最後に私は精霊樹になる」

剣士「精霊樹か…エルフらしい夢だね」

女エルフ「不思議な人…音や空気を使って私の心を触ろうとするの」

剣士「心を触る…」

---遠い記憶---


??「わらわは祈りの指輪で命を繋いでおる」

??「わらわの命はすでにもう無い…命を吸えば灰になるじゃろう」

??「じゃがわらわはそなたと常に共にあることを忘れんで欲しいのじゃ…」

??「…わらわは常に傍におるぞよ」

---この人は常に愛を説き感じる事を求めてきた---

---ぼくの記憶を常に確かめようとした---

---どうしてぼくは感じようとしなかった?---

---この人は何かを伝えようとしていたのに---


剣士「魔女…」

女エルフ「え?」

剣士「赤い瞳の魔女…」

女エルフ「どうしたの?急に…魔女様の事?」

剣士「夢を思い出した…僕は赤い瞳の魔女に会わなければいけない…」

女エルフ「魔女様の目は白く濁っていた…」

剣士「赤い目の少女が居たって言ったよね?」

女エルフ「…シン・リーンの姫の事?」

剣士「その子は魔女だ…夢の中で何かを伝えようとしていた」

女エルフ「指輪を取り戻したら魔女様の所に帰りましょう…きっとその子の事も知っている筈」

---翌朝---

剣士「おはよう」

女戦士「起きたな?今日は顔色が良さそうだな」

剣士「調子が良いよ…女エルフの血のおかげかな?体中に女エルフを感じるよ」

女海賊「朝から何エロい事言ってんだ?なめてんの?」

女エルフ「ごめんね?私の汚れた血で…」

剣士「え?」

女エルフ「血をあなたに入れている間に吐きそうになって居たから拒否しているのかと…」

剣士「ハハそんな事あったんだ?全然気にならないよ」

女エルフ「良かった」

剣士「小さい頃大きな怪我をしたことがあってね…その時に白狼の母さんの血を入れられた事がある」

女戦士「ほう…ウルフの血でも良いのか?」

剣士「その時と同じだよ…母さんみたいにあったかい」

女海賊「ぶっ…母さん?」

女戦士「さて!今日はどうする?もう少し休むか?」

剣士「僕はもう大丈夫!行こうか」

女海賊「そらキタ!!気球は準備おっけー荷物も積んであるよ」

女戦士「そうか…善は急げと言うが…」

女海賊「まさかお姉ぇは行かないつもり?ギルドの事はもう若い衆に任せておきなって」

女戦士「分かっている!今回の件は事が事だ…私も同行する」

女海賊「セントラルまでは5日くらいかなぁ~?アダマンタイトで狭間に入れば2~3日って感じ?」

女戦士「いきなり実践するのか?危険では無いか?」

女海賊「狭間の空って飛べるんかなぁ?」

女エルフ「鳥や虫たちは普通に狭間を飛んでいるよ?」

女海賊「お?そういえばミツバチも飛んでたかぁ…じゃ行けそう」

女戦士「一回試してみるか…」

女海賊「そらキタ!!早速行こう!!」

女戦士「よし…まず森に沿って南下してセントラル方面に飛ぶ…その間千里眼で目標を探す」

女海賊「おっけ!気球準備してくる!用意できたら乗って!すぐ出るよ」

『気球』

ビョーーーウ バサバサ

女海賊「高度安定!進路よし!定常飛行!」

女戦士「おい!なぜ望遠鏡が分解されているのだ?」

女海賊「あー秘密兵器作ってる」

女戦士「私の望遠鏡を勝手に持ち出して分解をするな!」

女海賊「ちょっと待って!…この黒い布の上にレンズ置いて…剣士!?これに千里眼やってみて?」

剣士「え?誰の?」

女海賊「はぁ?誰のって…指輪持ってる奴探すんじゃないの?」

剣士「どこにいるか分からない人の目なんか見えないよ…」

女海賊「ちょいちょいちょい…それじゃ役に立たないじゃん!誰か知ってる人居ないの?」

剣士「知ってる人…知ってる人…女盗賊くらいしか居ない」

女海賊「セントラルか…まぁ誰でもいいや千里眼やってみて!」

剣士「ちょっと待って…匂いを思い出す」

女海賊「匂い?そんなんで良いの?」

剣士「千里眼!」

女海賊「…」

女戦士「何か見えるか?」

女海賊「アレ?おっかしいなぁ…魔術書にはさぁ…本来水晶に映して使うって書いてたんだけどさぁ」

女戦士「レンズは水晶では無いぞ?使い方を間違っているのではないか?」

女海賊「使い方…お!!ピーンと来たぞ…女エルフ!照明魔法やって!」

女エルフ「え!?照明魔法!」ピカー

女海賊「この光をレンズに通して…壁に映す!!どうよ?」

女戦士「む…何か見えるな…ピントをしっかり合わせろ」

女海賊「こうかな?」

女戦士「…走っている?いや…逃げているな…何だ?」

女海賊「え?なんか様子が変だ…!!振り返った…」

女エルフ「ドラゴン!?」

女戦士「レンズを動かすな!!こ…これは!!まさかもうドラゴンがセントラルに!?」

女海賊「まずいじゃん…どうしよどうしよ」

女戦士「アダマンタイトを使え!!」

女海賊「おっけ!…狭間に入るよ?」サー

女戦士「千里眼の動きが遅くなった…成功の様だな?」

女海賊「でもさぁ周り真っ黒で方向分かんなくなる…風に流されていないか心配」

女戦士「磁石は使えんのか?」

女海賊「ダメ…試してみたら磁石がクルクル回る」

剣士「大丈夫!この方向で合ってる」

女海賊「あんた方向分かんの?」

剣士「千里眼の感じる方向が分かる」

女海賊「じゃ気球の操作はあんたがやって?縦帆の動かし方は分かるでしょ?」

剣士「分かった」


----------

女戦士「今の所ドラゴンは1匹の様だ」

女海賊「衛兵達は何と戦ってる?…これってリザードマンじゃない?」

女戦士「その様だが…他人の目では思うように見たい所が見えんな」

女海賊「あ!怪我人が運ばれてきた…」

女戦士「この場所は何処だ?」

女海賊「貧民街にあるカク・レガという酒場だよ」

女戦士「戦火に巻き込まれなければ良いが…」

剣士「気球の後方に何か付いてきてる!」

女戦士「なにぃ!?」

女エルフ「妖精が言ってた言葉…狭間の奥はレイスが出るって」

女海賊「速さは?」

剣士「気球と同じくらい」

女戦士「まずいな…後ろに2~3体追いかけて来ている…狭間から出るか」

女海賊「ちょい待ち!レイスは光に弱いって魔術書に書いてあった」

女戦士「光?照明魔法か?」

女海賊「女エルフ!?あんた照明魔法使えるよね?矢にくっつけて光の矢に出来ない?」

女エルフ「やってみる…照明魔法!」ピカー

剣士「右前方!!黒いのが近づいて来るよ!!」

女海賊「うわ…でか!!女エルフ!!打ち落としてみて!!…やばかったら狭間から出る!!」

女エルフ「…」ギリリ ブン!


レイス「ンギャーーーー」


女エルフ「落ちて行った…」

女戦士「行ける!!剣士!!光の矢をどんどん作れ…矢は腐る程ある」

剣士「分かった」

女戦士「私も弓で戦う…ちょうど体を慣らしたかった所だ」

女海賊「やばいよやばいよ!!どんどん増えてるよ!!」

女戦士「私は気球の右側をやる…女エルフは左側をやれ」

女エルフ「…」ギリリ ブン!

女戦士「…」ギリリ シュン!


レイス「ンギャァァァーーーーー」



----------

女戦士「はぁはぁ…弓で応戦もなかなかラクでは無いな」ギリリ シュン!

女海賊「ちょっと待って!!魔術書で退魔の方法を調べてるから…えっと」

女エルフ「どうして数が減らないの?キリが無い」ギリリ ブン!

女海賊「お姉ぇ!!印って何か分かる?印を結ぶってのが何の事なのか分かんない!」

女戦士「印…なんだ?形とかでは無いのか?」

女海賊「形?これか?古代文字を手の形で表すやつ…剣士!?この手の形出来る?」

剣士「見せて?」

女海賊「この4つの印を呪文を唱えながら結ぶ…分かる?」

剣士「こう?」クイ クイ クイ

女海賊「それを魔方陣の上で4つの印を結ぶ」

剣士「退魔魔法!」

女海賊「一緒にやるの!」

剣士「退魔魔法!」クイ クイ クイ ピカー

女海賊「お?あんたの魔方陣のペンダントがうっすら光ってる…」

剣士「…これをどうする?」

女エルフ「ねぇ…レイスが止まった…近寄って来ない」

女戦士「こっちもだ」

女海賊「剣士に近寄れない?…いや魔方陣の光に近寄れない感じ?」

女エルフ「ふぅ…」

女戦士「何とかなったな」

女海賊「剣士!あんた何でも出来るね!スゴイじゃん」

女戦士「狭間に長く居るならこの退魔魔法は必須になるな」

女海賊「そだね…魔女の塔もこれの応用だと思う」

女エルフ「剣士?私にも後で教えて?」

剣士「うん」



----------

女海賊「レイスずっと追いかけてくるね…キモ!」

女戦士「気が抜けんな…狭間の深さはコントロール出来んのか?」

女海賊「無理!!アダマンタイトの重さに依存する」

女戦士「気球は高度を上げれば速度が増すな?振り切れんか?」

女海賊「んんん…寒いよ?…この荷室の木壁の隙間がなんとかなればなぁ…」

女エルフ「エレメンタル魔法の中に空気を操る風魔法があるの」

女海賊「ん?なんか良いアイデアあんの?」

女エルフ「その魔法は空気の薄い空間を作って風を起こす魔法」

女海賊「お!?それさぁ…球皮の前にやったら速くなるかも」

女エルフ「触媒は水と銀…でもうまく使わないと竜巻が起きる」

女海賊「竜巻はヤバイ…球皮の抵抗になってる空気がちょっと薄くなるだけで大分違うと思うんだけどなぁ」

剣士「やってみようか?」

女海賊「銀貨はちょっと持ってる…ホイ」チャリン

女戦士「やってみるのは良いが気球を落とすな?」

女海賊「球皮の先端に付いてる棒を狙って」

剣士「行くよ?…風魔法!」ヒュー

女海賊「お!?んーーーー早くなってるかどうか分かんないね」

女エルフ「後ろのレイスが少しづつ離れて行く」

女戦士「よし…これで少し休めるな…ふぅ」



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女海賊「エルフのエレメンタル魔法ってさぁ…工夫次第で何でも出来るんじゃない?」

女エルフ「風魔法で竜巻を起こした後に火炎魔法で火柱」

女海賊「それハイエルフが使ってたやつだね」

女エルフ「火柱に氷結魔法で爆発…全部応用が利くの」

女海賊「魔術書読むより面白そうじゃん!!」

女エルフ「触媒さえ十分持っていればね」

女海賊「あー触媒が入手しにくい物だと困るな…そもそも硫黄なんか簡単に手に入んないな」

女戦士「さっきの風魔法はどのくらい持続するのだ?」

女エルフ「触媒の量次第…」

女海賊「銀貨1枚がどんくらいの量になるのか分かんないね」

女エルフ「普通は銀砂を使う」

女海賊「塗料に使うやつ?それなら重さ的にかなり持ちそうだね?」

女エルフ「それよりも剣士の体力の方が…」

女海賊「え?体力使うの?…なるる!それで無口になんだね?」

剣士「僕は大丈夫だよ」

女戦士「レイスは振り切った様だ…疲れているなら休んでいて良い」

女海賊「これさぁ…狭間の中だと空が真っ黒で全然面白くないね…何もやる事無い」

女戦士「千里眼でも見ていろ」

女海賊「動きが遅くて見ててイライラすんのよ…てかすぐ飽きる」

女戦士「では魔術書でも読み進めておけ」

女海賊「そうする…重力魔法がちょースゴイんだ!時空の穴作って隕石呼べるっぽい」

女戦士「ほう…シャ・バクダに落ちた隕石群はそれだな?」

女海賊「あのオアシスで出来た魔方陣ってさぁ…ひょっとして魔女がやったのかな?」

女戦士「魔女は何も言わないが…その可能性はある」


----------

女戦士「む!女盗賊の所に何か起きているぞ…」

女海賊「マジ?」

女戦士「子供達を避難させているな…この家は地下に何かあるのか?」

剣士「家の地下は下水に繋がっている」

女戦士「ふむ…地下の方に何か居る様だが」

女海賊「あ!!ラットマン見えた!!」

剣士「え!?鉄格子から抜け出ているのか…」

女海賊「あー私が爆破した所か…てことはそこらじゅうにラットマン出て来てるかもね」

女戦士「空からドラゴン…地上からリザードマン…内側からラットマン」

女海賊「なんかヤバイね…海からクラーケンとか出てきたりして」

女戦士「西の軍国フィン・イッシュから軍船が来ているのが救いだ…簡単には攻略されんだろう」

女海賊「セントラルは大混乱かな?」

女戦士「この程度ではまだまだ大丈夫だが攻め込まれると被害は免れん」

女海賊「あ!!やば…家の外にもラットマン居る!!逃げろ逃げろ…」

女戦士「防戦している者が少ない!!武器所持の規制が裏目に出ているでは無いか!!」

女海賊「衛兵何やってんのさ!!…貧民街にも衛兵増やせよ!!」

女戦士「ええい!見ているだけがこれほどもどかしいか…」

女海賊「あれ?千里眼が終わった?」

剣士「え?」

女海賊「剣士!?もう一回千里眼お願い…」

剣士「うん…千里眼!」

女海賊「映らなくなった…なんで?」

剣士「女盗賊…」

女戦士「最後に転倒しそうになったが…何かに当たって気を失ったか…ちぃ」

女海賊「まずいじゃん…女盗賊やられちゃうじゃん!」

女戦士「…一旦狭間を出ろ…現在地を確認する」

女海賊「お姉ぇ…平気なの?動揺しないの?」

女戦士「黙って言う事を聞け…ネガティブな考えはするな…どうやって問題を解決するかに集中しろ」

女海賊「くあぁぁぁ見なきゃ良かった!!ちょーイライラする!!」



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女戦士「森の形で現在地判別出来るか?」

女海賊「ムリ!!どこも同じ形で分かんない…でも下に商隊の列が見える」

女戦士「特産品を運んでいる馬車は見えないか?」

女海賊「わかんない…どんな馬車?」

女戦士「望遠鏡を貸せ…ふむラクダが馬車を引いているな?ハズレ町からシケタ町の定期便だ」

女海賊「…って事は半分よりちょい先に進んでる感じかな?」

女戦士「ここまで丁度2日程度だ…あと1日でセントラルに着く計算になる」

女海賊「おぉぉメチャ早いね!風魔法は効果あり!!」

女戦士「私たちにはあと1日だがセントラルではあと何時間か…大惨事になって居なければ良いが…」

女海賊「女盗賊の事が心配…」

女戦士「考えるな…指輪が森の南部にあったとしてセントラルまで約3日…」

女エルフ「丁度私たちが到着するのと合ってる?」

女戦士「上手く行けばな…速攻で奪って一旦収束させたいが目標が見つけられん事には…」

女海賊「ドラゴンライダーが追い回してるっしょ」

女エルフ「ドラゴンの目は遠くまで見えるの…多分見失っていない」

剣士「それか!!ドラゴンの匂いを覚えている」

女海賊「お!?イイね!!」

剣士「何処にいるか分からないけれど探してみる!」

女戦士「やってみてくれ」

女海賊「私たちはもっかい狭間に戻ろう」

女戦士「そうだな…セントラルまで急ごう」



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剣士「見つけた!!森の方じゃない…セントラルの上だ」

女海賊「こっちのレンズに映して!」

剣士「千里眼!」

女戦士「…見える!空を旋回しているのか?」

女海賊「ちょ…なんかめっちゃ見辛いんだけど!何コレ?」

女戦士「ドラゴンは左右の目が違う所を見ているのだな」

女海賊「酔う…うっぷ」

女戦士「軍船が大砲を撃っているでは無いか…まさかクラーケンが上陸しているのか?」

女海賊「お姉ぇ!こっち側…外郭の外」

女戦士「リザードマンか…外郭を登ろうとしているな?大砲が壁に当たったらどうするつもりなのだ?」

女海賊「壁に穴空いたらなだれ込んでくるね」

女戦士「セントラルは戦術が無いのか!弓兵で迎え撃て!!」

女海賊「無理じゃない?ドラゴンが上に居るし」

女戦士「読めたぞ…ドラゴンはセントラルを攻める気など無い!リザードマンとラットマンが暴走しているのだ」

女エルフ「私もそう思う…ドラゴンはただ指輪を奪い返そうとしているだけ」

女海賊「だから旋回してるだけなのか…でもセントラル側からするとドラゴン居ると怖いよね?」

女戦士「…これは大砲を止めさせないと直に誤爆で壁を破壊してしまうぞ」

女海賊「他にドラゴンは居なさそうだね…このドラゴンは多分偵察」

女戦士「その様だな」

女海賊「これさぁ…ちょっと気が付いたんだけどドラゴンって正面見えてないよね?」

女戦士「うむ」

女海賊「あと真下も見えてないね…正面からお腹の下に爆弾投げたら倒せそう」

女戦士「お前は何を考えているんだ?ドラゴンスレイヤーにでもなるのか?」



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女海賊「お姉ぇ…少しは休んだら?」

女戦士「私に構うな…大惨事を前にして休んでなど居れるものか!」

女海賊「ドラゴンの目は暗くても良く見えるね」

女戦士「今からが魔物側の本番なのだが…やはり数が違い過ぎる…セントラルまで逃げられるな」

女海賊「森から出た後はドラゴンも全然ダメっぽいね」

女戦士「弓が多すぎて近寄れんのだな…森の方がまだ良い」

女海賊「そろそろ狭間から出てみよっか?」

女戦士「そうだな…難民の具合も気になるしな」

女海賊「じゃ出るよー」サー

剣士「月が明るい!」

女戦士「現在地を特定する…高度下げろ」

女海賊「おっけ!進行方向に灯台の光はまだ見えないからもうちょい先かな?」

女エルフ「下に光の列が見える」

女戦士「ん?商隊か?夜行しているのなら避難民が疎開しているのかもしれんな」

女海賊「あーー進路少しズレてる!セントラルはここから東の方向だ」

女戦士「…という事はドラゴン達はセントラルを挟んで向こう側だな?」

女海賊「危なく通り過ぎる所だったぽい」

剣士「東の方に小さな光が消えたり光ったり…」

女海賊「それ多分セントラル海岸沿いの灯台…何番目の灯台かなぁ結構風に流されてるっぽいぞ」

女戦士「難民が歩いて来れる距離だ…そう遠くはあるまい?」

女海賊「そだね…1~2時間で到着するかな?」

女エルフ「みて!?千里眼のドラゴンの目」

女戦士「むぅ!目標はあの隊の中心に居るのだな?」

女海賊「うわぁ…矢をすり抜けて…うっぷ目が回るぅ」

女戦士「数千の矢を掻い潜ってドラゴンライダーが狙っているのは…アレか!!」

剣士「見つけた!!黒い馬車?」

女戦士「あれは陸戦用の戦車という物だ…おそらくアレに第2皇子が乗っている」

女海賊「あれさぁ!!鉄で出来てるよね?ドラゴンじゃ無理じゃん」

女戦士「歩兵で制圧しないとあの戦車は落とせんな…間違いなくセントラルまで逃げる」

女海賊「どうする?」

女戦士「よし…第2皇子の行先は多分法王の所だ…法王庁で待ち伏せる」

女海賊「法王庁か…なら下水から安全に侵入出来るよ」

女戦士「問題は気球をどこに隠すかだな」

剣士「下水は海の方から入れる筈」

女海賊「あーーーアサシンの船に荷物運んだ所か…そこなら人目に付かなくて良いね」

女戦士「決まりだな?海辺に気球を隠して下水から法王庁を目指す…そして待ち伏せ」

女海賊「女盗賊はどうする?探さないの?」

女戦士「それは後だ…指輪を奪い返せば戦闘も落ち着く」



----------

女戦士「アリの子を散らしたように避難民がセントラルから出ているな」

女海賊「お姉ぇ…これマジやばい!港で軍船が沢山沈みかけてる」

女戦士「クラーケンか…地獄だな」

女海賊「セントラルの外壁も崩れてる」

女エルフ「あそこ!!クラーケンが上陸してる…」

女海賊「海岸に降りちゃうよ?」

女戦士「降りろ…作戦は予定通りだ」

剣士「これが…セントラル」

女戦士「お前は初めて見るのだな?良い眺めでは無いな…まさに地獄」

女海賊「もうドラゴンも見えてるよ」

女戦士「ちぃ…急ぐぞ!!女エルフは矢を多めに持て」

女エルフ「はい…」

女戦士「私が盾で向かってくる敵を抑える!女エルフは弓で敵を射抜け!剣士は下水を先導しろ」

女海賊「降りるよ~」


フワフワ ドッスン


女海賊「そこの横穴が下水に繋がってる」

女戦士「行くぞ!!当面はラットマンとリザードマンが敵だ」

『下水』

ラットマン「ギャーース」ドドド

女戦士「はあっ!!撃て!!」ガチッ

女エルフ「…」ギリリ ブン

ラットマン「ギャーース」ドタリ


女戦士「狭い場所では私の盾が有効だ…進むぞ!!」

女エルフ「狭間が近い…彷徨う魂が見える」

女海賊「ここの奥が法王庁の真下になってるらしいよ?」

女戦士「人骨が散乱している理由はお前は知っているのか?」

女海賊「アサシンが言うにはカタコンベになってるってさ…そういえば剣士は大丈夫?」

剣士「今は大丈夫…多分退魔の効果だと思う」

女海賊「前に来た時は剣士が悪霊に憑りつかれそうになってた」

女戦士「カタコンベか…見たくない物だな」

女海賊「女エルフも気を付けな?ヤバイくらい死体が散乱してるから」

女戦士「ラットマンはその死肉を餌にしている訳だな?」

女海賊「だろうね?」

女戦士「さて…まず目指すは法王庁…こっちで良いんだな?」

女海賊「お姉ぇはどういうつもり?」

女戦士「こんな穴倉に居ては状況が掴めん…一旦法王庁に出て隠れて様子を伺う」

女海賊「こっちだよ…この柵の奥が法王庁」

剣士「待って!!奥に沢山の人の気配」

女戦士「数は!?」

剣士「数え切れない…こっちに向かってくる」

女戦士「隠れるぞ!こっちへ来い」



-------------

ガチャリ ギー

兵長「よし!このまま海側へ出て船団と合流だ」

衛兵「指揮はあちらに従う形をお考えですか?」

兵長「仕方あるまい…こちらは指示系統が外に出ておる」

衛兵「はぁ…しかしフィン・イッシュの軍を許可なく城まで招き入れて良いとは…とても…」

兵長「我ら衛兵団の役目は市民を守る事だ…今は政治云々言っている余裕が無い」

衛兵「兵長殿に責任が…」

兵長「ハハその程度で済むなら安い安い!所詮わしは安月給の下士官…居なくなってもどうという事は無い」

衛兵「船団側とコンタクトは取れているのでしょうか?」

兵長「伝令が途中で死んで居なければそろそろ上陸してくる手筈…」

兵長「こちらは海側から魔物を退治しながら貧民街を制圧しつつ上陸ルートを確保する」

衛兵「外に出ている本隊は間に合いますかね?」

兵長「んむ…わからん」

衛兵「…」

兵長「全体!!急いで海側へ抜けろ!!」




------------

女戦士「よし…行ったな?」

女海賊「お姉ぇ今の話」

女戦士「そうだな…察する所…思っていたより事態は悪くない」

女戦士「恐らくセントラル自体は内側から湧いて来るラットマンと少数のリザードマンに混乱しているだけだ」

女海賊「中立都市で武器所持禁止してるのがねぇ」

女戦士「外側でドラゴンとクラーケンが暴れているのがなお更な」

女海賊「このまま法王庁まで行く?」

女戦士「そうだな…屋根に上がって指輪の所持者が戻るまで見物と行くか」

女海賊「女盗賊が心配だなぁ」

女戦士「剣士!千里眼で見えないか?」

剣士「やってる…見えない」

女戦士「この場合気絶してるとしか考えられんな」

女海賊「あぁぁイライラする」

女戦士「まぁ仕方がない…行くぞ」

『屋根の上』


女戦士「…夜明けだ」

女海賊「船団から小さな船で港に兵隊が沢山上陸してきてるよ」

女戦士「ひとまず人間側の勝利という所か…日が上がってしまってはトロールが動けん」

女海賊「クラーケンは陸に上がっても海からあんまり離れられないっぽい」

女戦士「剣士!黒い戦車の方はどうなっている?」

剣士「ドラゴンの視界の中にずっとあるよ」

女戦士「あそこの下だな?あと数時間でこちらにに到着する距離だな」

女海賊「…なんか静かだね」

女戦士「魔物側はあの様な平地では攻め手が無いのだ…数が違い過ぎる」

女海賊「ウチ達が指輪盗んだらコレ終わると思う?」

女戦士「…指輪が魔物か人間のどちらかに渡ったとなればまだまだ続くだろうな」

女エルフ「私たちが行方不明にさせる?」

女戦士「それが一番良いだろう…ただし第三者が持ち去ったという事をどうやって知らしめるかだ」

女海賊「何か考えある?」

女戦士「無い…今は剣士が奪って逃げるくらいしか思いつかない」

女海賊「ピーンと来た!!!」

女戦士「何だ?言ってみろ」

女海賊「白狼の盗賊団」

女戦士「セントラルでのお前達の事だな?」

女海賊「ここでは割と有名なんだ…あとエルフの森でも白い魔物の暗躍は敗残兵の中で有名になってる」

女戦士「それでは魔物の手に渡ったという事になるでは無いか」

女海賊「ちょい待ち…この街では義賊って感じでヒーローだよ」

女戦士「ふむ…」

女エルフ「エルフ側から見ても白い剣士はエルフの敵には見えていない」

女戦士「なるほど謎の第三勢力に偽装出来る可能性がある訳だな」

女海賊「そして今丁度4人居る…背格好もほぼ同じ」

女戦士「面白い…それで行こう」

女海賊「たしか隠れ家の地下に毛皮のマントはまだあった筈…下水から行ける」

女戦士「30分で戻れるか?」

女海賊「十分!!剣士!?一緒に来て」

剣士「分かった」

タッタッタ



-----------

女エルフ「別行動にして良かったのかな?」

女戦士「危険は承知…だが剣士は鼻が利く…隠密には適している」

女エルフ「剣士は…」

女戦士「お前も気付いているのだろう?キーマンは剣士だと」

女エルフ「はい…剣士を守らないといけない気がする」

女戦士「やはりあいつが勇者か?」

女エルフ「分からない」

女戦士「我らドワーフの一族に伝わる教え…それは勇者の保護だ…気付かぬ内にそうなって居るのかも知れん」

女エルフ「私たちエルフは森を守るのが役目…私はどうしてこんな…」

女戦士「ハハ実を言うとな…私はお前にも何かを感じているのだ」

女エルフ「え!?」

女戦士「まぁ…只の勘だよ…気にするな」

女エルフ「…」


---私は誰?---

---私は何?---

---私は最後に精霊樹になった---

---そんな夢を覚えている---

『セントラル外れ』


ラットマン「ギャーース」

衛兵1「こっちだ!!まだ居たぞ」

衛兵2「こいつで最後か?」

衛兵1「分からん…こいつは俺がやる!!お前は後方に戻って衛生兵の支援を要請してくれ」

衛兵2「まだ瓦礫の下に人が…」

ラットマン「ギャーース」ダダダ

衛兵1「こっちだ!!ごるぁ!!」タッ ザクリ

ラットマン「グググググ…」

衛兵1「この!!このっ!!このーーー!!」ザク ザク ザク

衛兵2「よし…やったな?瓦礫に埋もれている人を!!」

衛兵1「こっちは俺に任せろ!!早く応援の要請を…火災が回ると助けられなくなる」

衛兵2「わ、わかった…待ってろ」

衛兵1「誰かぁぁぁ!!動ける者は居ないかぁぁぁ!!…そこの少年!!何をしている?動けないのか?」

少年「ハァハァ…」

衛兵1「…ここにも埋もれている人が居るのか」

少年「母さんを…助けないとハァハァ」

衛兵1「くそぅ!!船団の奴ら所構わず大砲ぶっぱなしやがって…」

少年「母さん!!母さん!!」

母「あうう…他の子ども達は無事?」

少年「先に避難したよ」

母「そう…良かった…あなたも避難しなさい?」

衛兵1「意識があるんだな?よし…もうじき衛生兵が来るからそれまで辛抱してくれ」

少年「母さん体の方は無事?」

母「瓦礫が重たくて動かせないの…息をするのがやっと」

衛兵1「む!!誰か居る!!おーいそこの人ぉぉ!!」

少年「…」

衛兵1「ちぃ…こんな時に略奪に回ってる輩だなアレは…アテに出来ん」

少年「海の方から衛兵達がこっちに向かってきてる…母さん!!助かるよ」

衛兵1「おぉぉ来たか…少年!君はまだ動けるな?あっちの衛兵に合図を送ってくれ」

少年「おーーい!!こっちー」

衛兵1「今から瓦礫どかすから体に障る様だったら声を出してくれ…ふん!!」ガッサー

『帆船』

ザブン ザブーン

盗賊「こんなんじゃ入船出来んぞ…どうするアサシン」

アサシン「何か起ころうとしているな…手を拱いて見ている訳にいくまい」

盗賊「クラーケンがうじゃうじゃ出て来てる中を突っ切ろうってのか?」

アサシン「他に何か良い考えはあるか?」

盗賊「東に半日ほど行った先に小さな漁村がある…そこに停船させてだな…」

アサシン「それでは遅い…事は今起ころうとしているのだ」

盗賊「くぁぁぁ死にに行くようなもんだぜ…ったく」

アサシン「クラーケンは理由無しに船を襲う事は無いのだ」

盗賊「俺らを襲う理由が無いってか?ミスリル武器たんまり積んでんだろ…その割に戦えるのは俺ら2人だけだ」

アサシン「ミスリル武器がダメならとっくの昔に襲われていておかしくない」

盗賊「…そういやそうだな」

アサシン「むしろ守られていると考えて良いかもしれんぞ」

盗賊「マジかよ…」

アサシン「さて…あの動乱…魔王復活の前兆と見て良いと思うが…お前はどう思う?」

盗賊「お前のおとぎ話にゃ付き合ってらんねぇよ」

アサシン「今ミスリルを持って私たちがそこに行こうとしている…役者が揃ってきているとは思わんか?」

盗賊「役者?」

アサシン「そう」

盗賊「誰だよ…ミスリル武器なんか誰でも使えるだろ…まさかお前が勇者にでも?」

アサシン「可能性はある」

盗賊「またまた…どーーーーもお前の話にゃ決定打が無い…」

アサシン「もしも魔王が復活してしまうというのであれば勇者もまたどこかに居る筈」

盗賊「本当…お前は頭が逝っちゃってるよ…女盗賊の言った通りだわ…夢見る男児」

アサシン「まぁ馬鹿にするな…直に誰が勇者なのか分かる」

盗賊「夢?…まてよ…俺は夢で勇者に会ったことがあるな…」

アサシン「お前も夢を見るのか?」

盗賊「でかい大剣を背中に…誰だ?」

アサシン「なっ!!なぜそれを知っている!!」

盗賊「うぉ!!なんだよいきなり」

アサシン「シャ・バクダの遺跡に残されていたのは大剣を持った大きな戦士像…それがかつての勇者だと魔女に教わった」

盗賊「俺が言ってるのは俺が見た只の夢だ…偶然だろ」

アサシン「私も同じ夢を見ているのだ…偶然にしてはおかしくないか?やはり私たちは皆夢幻を見ている」

盗賊「夢幻が何だってんだ」

アサシン「夢幻が精霊が見ている夢だったとするなら何故みんな同じ夢を見る?」

盗賊「何言ってるかさっぱりわかんねぇよ」

アサシン「精霊は夢を見せて私たちに何か伝えようとしているのではないか?」

盗賊「あぁぁあ始まった…その話は後で良い!桟橋まで直進するぞ…良いんだな?」

アサシン「あぁ…頼む」

『桟橋』


ガコン ギシギシ

盗賊「よっし接弦!!碇降ろせえぇぇぇ!!」

船員「えっさほいさ」

盗賊「野郎共!!武器もって下船しろ!!許可取ってる場合じゃねぇからそのまま中央まで走れ!!」

船員「あいさー」

盗賊「アサシン!!衛兵が来るぞ…どうする」

アサシン「この惨事の中私たちをどうするという事もあるまい」

盗賊「…だな…にしてもどうなってんだこりゃ…陸でのたうち回ってんのはクラーケンか?」

アサシン「魔物の襲撃が市内まで及んでいる様だ…ラットマンとリザードマン」

盗賊「おい!上を見ろ…ドラゴンまで来てんぞ」

アサシン「全体の状況が見えないな…私たちも一旦中央まで行こう」

盗賊「俺たちの店が心配だぜ…火の手が上がってるじゃねぇか」

アサシン「これを持って行け」ポイ ポイ

盗賊「ミスリル武器の試し切りか」パス

アサシン「無くすなよ?」

盗賊「おい!来たぞ」

衛兵「おい!!お前等!!武器を持っているな?」

アサシン「この状況で武器の所持は許可願いたい」

衛兵「今は人手が足りん!!戦える者は魔物退治の要請をする」

盗賊「何に攻め入られてるんだ?」

衛兵「外郭の一部からリザードマンとゴブリンが入ってきているのだ…そちらに行ってもらえると助かる」

アサシン「内郭はどうなっている?」

衛兵「市民がそこに避難している。内郭壁の上には弓部隊が展開していてまだ無事だ」

盗賊「あんたペラペラそんな事しゃべって良いのか?」

衛兵「もうそんな事言ってる状況ではない…はやく応援に行ってくれぇ」

アサシン「よし!行こう!このまま貧民街を突っ切って一旦中央に出る」

盗賊「おい!ついでに店の前を通って行こう」

アサシン「そのつもりだ…行くぞ」タッタッタ

『桟橋』


ガコン ギシギシ

盗賊「よっし接弦!!碇降ろせえぇぇぇ!!」

船員「えっさほいさ」

盗賊「野郎共!!武器もって下船しろ!!許可取ってる場合じゃねぇからそのまま中央まで走れ!!」

船員「あいさー」

盗賊「アサシン!!衛兵が来るぞ…どうする」

アサシン「この惨事の中私たちをどうするという事もあるまい」

盗賊「…だな…にしてもどうなってんだこりゃ…陸でのたうち回ってんのはクラーケンか?」

アサシン「魔物の襲撃が市内まで及んでいる様だ…ラットマンとリザードマン」

盗賊「おい!上を見ろ…ドラゴンまで来てんぞ」

アサシン「全体の状況が見えないな…私たちも一旦中央まで行こう」

盗賊「俺たちの店が心配だぜ…火の手が上がってるじゃねぇか」

アサシン「これを持って行け」ポイ ポイ

盗賊「ミスリル武器の試し切りか」パス

アサシン「無くすなよ?」

盗賊「おい!来たぞ」

衛兵「おい!!お前等!!武器を持っているな?」

アサシン「この状況で武器の所持は許可願いたい」

衛兵「今は人手が足りん!!戦える者は魔物退治の要請をする」

盗賊「何に攻め入られてるんだ?」

衛兵「外郭の一部からリザードマンとゴブリンが入ってきているのだ…そちらに行ってもらえると助かる」

アサシン「内郭はどうなっている?」

衛兵「市民がそこに避難している。内郭壁の上には弓部隊が展開していてまだ無事だ」

盗賊「あんたペラペラそんな事しゃべって良いのか?」

衛兵「もうそんな事言ってる状況ではない…はやく応援に行ってくれぇ」

アサシン「よし!行こう!このまま貧民街を突っ切って一旦中央に出る」

盗賊「おい!ついでに店の前を通って行こう」

アサシン「そのつもりだ…行くぞ」タッタッタ

『桟橋』


ガコン ギシギシ

盗賊「よっし接弦!!碇降ろせえぇぇぇ!!」

船員「えっさほいさ」

盗賊「野郎共!!武器もって下船しろ!!許可取ってる場合じゃねぇからそのまま中央まで走れ!!」

船員「あいさー」

盗賊「アサシン!!衛兵が来るぞ…どうする」

アサシン「この惨事の中私たちをどうするという事もあるまい」

盗賊「…だな…にしてもどうなってんだこりゃ…陸でのたうち回ってんのはクラーケンか?」

アサシン「魔物の襲撃が市内まで及んでいる様だ…ラットマンとリザードマン」

盗賊「おい!上を見ろ…ドラゴンまで来てんぞ」

アサシン「全体の状況が見えないな…私たちも一旦中央まで行こう」

盗賊「俺たちの店が心配だぜ…火の手が上がってるじゃねぇか」

アサシン「これを持って行け」ポイ ポイ

盗賊「ミスリル武器の試し切りか」パス

アサシン「無くすなよ?」

盗賊「おい!来たぞ」

衛兵「おい!!お前等!!武器を持っているな?」

アサシン「この状況で武器の所持は許可願いたい」

衛兵「今は人手が足りん!!戦える者は魔物退治の要請をする」

盗賊「何に攻め入られてるんだ?」

衛兵「外郭の一部からリザードマンとゴブリンが入ってきているのだ…そちらに行ってもらえると助かる」

アサシン「内郭はどうなっている?」

衛兵「市民がそこに避難している。内郭壁の上には弓部隊が展開していてまだ無事だ」

盗賊「あんたペラペラそんな事しゃべって良いのか?」

衛兵「もうそんな事言ってる状況ではない…はやく応援に行ってくれぇ」

アサシン「よし!行こう!このまま貧民街を突っ切って一旦中央に出る」

盗賊「おい!ついでに店の前を通って行こう」

アサシン「そのつもりだ…行くぞ」タッタッタ

『貧民街』


盗賊「こりゃ芳しくねぇな…瓦礫の山じゃねぇか」

アサシン「位置的に軍船がクラーケンに撃った砲弾がここに着弾した」

盗賊「その様だ…避難は済んでるみたいだな」

アサシン「ラットマンの屍が多い…下水から出てきたか」

盗賊「…となると下水は使えないと見るか」

アサシン「高い所で全体が見たい」

盗賊「貴族居住区だな」

アサシン「いつもの屋根伝いルートで行こう」

盗賊「ちぃ…隠密用の道具を置いて来ちまった」

アサシン「何に使う?」

盗賊「どうせ最後の行先は法王庁だろうよ…貴族居住区から行くとなると壁を登る必要がある」

アサシン「私を誰だと思っているのだ?」

盗賊「ヌハハ…そうだな正面から行くか」

アサシン「まずは状況把握だ…その後に行きたい先の兵士になれば良い」

『中央広場』


ガヤガヤ ガヤガヤ

出兵してた兵隊さん戻ってきたみたい

これで魔物も引き返すと良い

外がどうなってるか誰か知らねぇか?

外郭に大砲運ばれてるよ

ガヤガヤ ガヤガヤ



---屋根の上---


盗賊「いつにもまして人がごった返してるな」

アサシン「第一皇子のご帰還という所か」

盗賊「ただの魔物討伐にしちゃ追って来る魔物が多すぎやしないか?」

アサシン「目視で見えるのはドラゴン2匹…恐らくもっと居るな」

盗賊「エルフ狩りだったのか?」

アサシン「さぁな?」

盗賊「盗賊ギルドの方で情報貰えないのか?」

アサシン「そうしたい所だが…アレを見ろ」

盗賊「城のゲートブリッジが開いている…アレの事か?」

アサシン「いや…その上だ」

盗賊「んんん?誰か居るな…弓を撃っているのか?」

アサシン「あそこで何か起こってる」

盗賊「あんなところまで魔物が行くとは思えんが」

アサシン「外郭側でもなにか起こりそうだ」


ドーーーーーン ドーーーーーン


盗賊「大砲の音!」

アサシン「外でも何か始まった…急ぐぞ」

盗賊「どっちに?」

アサシン「城に決まっている…来い」ダダッ

『貴族居住区』


ドーーーーーン ドーーーーーン

アサシン「ちぃぃ城の様子が此処からでは見えん」

盗賊「おい!!やべぇ!!ドラゴンが降下してきてる」

アサシン「なにぃ!?」

盗賊「真上だ…8匹」

アサシン「衛兵は気付いて居ないな…外郭攻めは囮だ…城の中核をドラゴンで一点攻め」

盗賊「城の裏手も様子がおかしいぜ?見ろ…なんだありゃ」

アサシン「あちらには陸に上がったクラーケンが居たな…まさかクラーケンも城を目指しているのか?」


バコーーン


盗賊「うぉ!!触手が塔をへし折りやがった…こりゃマジもんでヤバいぞ」

アサシン「ドラゴンが速い…」

盗賊「来る!!!伏せろ!!!」


ドラゴン「ギャーーーース」ゴゥ ドーーン


盗賊「うぉ!!ブレス吐きやがった」

アサシン「…8匹のドラゴン…いやアレは噂に聞くドラゴンライダー」



ドラゴン「ギャーーーース」ゴゥ ドーーン



盗賊「あ…圧倒的じゃねぇか…城の駐留兵が一瞬でやられていく」

アサシン「こ、これは…滅ぶ」ボーゼン

盗賊「おい!何ボケっとしてんだ!!又来るぞ」グイ

アサシン「…」ボーゼン

盗賊「伏せろ!!」グイ

アサシン「…空が」


ドラゴン「ギャーーーース」バサッ バサッ

アサシン「…」

エルフ「…」ギロリ

盗賊「うぁっ!!あぶねぇ!!」

アサシン「…」

盗賊「突っ立ってねぇでこっちに来い」

アサシン「ドラゴンライダーと目が合った…」

盗賊「良いから下に降りる…ぞ?…な、なんだ?空が落ちる?」

アサシン「…これは古文書にある100日の夜」

盗賊「なんだぁぁぁぁ!?いきなり夜だとぉぉぉ」

アサシン「間に合わなかった…」ガクリ

盗賊「ドラゴンが城に取り付いた…行くか?」

アサシン「あ…あぁ…すまない」

盗賊「こりゃ変装してる暇なんか無さそうだな」

アサシン「…」スラーン チャキ

盗賊「どうした?」

アサシン「悪霊が来る」

盗賊「レイスってやつか?」スラリ チャキ

アサシン「…」

盗賊「おい!!しっかりしてくれぇお前はギルマスだろうが…行って良いんだな?」

アサシン「悪い…古文書の通りだったから動転した」

盗賊「これが魔王復活なのか?」

アサシン「いや…ここは狭間の深い所だ…黄泉と繋がっている」

盗賊「三途の川の手前って事だな?」

アサシン「黄泉の一番奥に深淵があるらしい…魔王はそこに居る」

盗賊「ほう…そっから這い出て来る前にぶっ倒せば良い訳だな?」

アサシン「まぁ…そうなる」

盗賊「ほんじゃ行くぞ」

アサシン「ドラゴンライダーを目の当たりにして自分の小ささを思い知った」

盗賊「はぁ?どうしたんだよ大ぼら吹きのお前が言うセリフじゃねぇな」

アサシン「正直…力の差がありすぎて絶望している」

盗賊「今頃気付いたんか?おれぁ初めから絶望してんだよ!もう乗っちまった船だ諦めろ」

アサシン「…取り乱した」スック

盗賊「それで良い…ここまで来たんだ行く所まで行って真相を確かめる…だろ?」

アサシン「あぁ…すまんな…行こう」

『ゲートブリッジ』


ゴーン ゴーン ドカーン


盗賊「戦闘音がヤバイな」

アサシン「ゲートブリッジ上の衛兵は全滅した様だな」

盗賊「このまま走って行けそうだ…あそこの倒れてる衛兵の装備かっぱらって行くか?」

アサシン「自由に動くならその方が良いが…」

盗賊「こりゃ急がんと下から兵隊上がってくんぞ」

アサシン「この暗さ…隠れるなら装備は今のままの方が都合良い…ヘルムだけにしよう」

盗賊「賛成…ほれ!!」ポイ

アサシン「急ごう」パス

盗賊「はぐれたら船に戻るで良いな?」

アサシン「それで良い…状況からしてミスリル武器を配らなければセントラルは全滅する」

盗賊「レイスか」

アサシン「セントラルの兵隊がレイスを対処出来るとは思えん」

盗賊「いや…そうとも言い切れんぞ?あいつらの中にはエルフ狩りの専門も居る」

アサシン「狭間での戦い方もある程度知っている者が居ると…」

盗賊「そういうこった…侮れない奴も中には居る訳だ」

アサシン「今の状況が狭間の奥だと知っている者…エルフ…待てよ?」

盗賊「どうした?」

アサシン「エルフはレイスを対処する術を持っていない…つまりもう直ぐこの戦闘は終わる」

盗賊「銀の矢くらい持ってんだろ…ってマテ…レイスはエルフの敵か?魔物側じゃねぇのか?」

アサシン「レイスは命有る者の敵という位置…死霊だ…魂を刈り取る」

盗賊「って事は個体数の少ないエルフは引いた方が良いな」

アサシン「そういう事になる…そしてドラゴンはさらに少ない」

盗賊「あのドラゴンがレイスごときにやられるとは思えんが」

アサシン「違う…魂を奪われる…生きたまま死ぬ」

盗賊「生きたまま死ぬ…もしかしてお前が言う精霊はそうやって夢幻とやらに行ったのか?」

アサシン「分からんがそういう考え方も有りかもしれん」

『園庭』


ブン ザクリ

レイス「ンギャアアーーーー」

盗賊「どっから出て来るか分からんな」

アサシン「見ろ…やはり法王庁にドラゴンが集まっている」

盗賊「あんなところに突撃しろってのか?」

アサシン「無理だな…しかしドラゴンに乗っていたエルフが見当たらん」

盗賊「どうせ中に入って行ってるんだろ」

アサシン「1匹足りないな…城の方か?」


ゴゥ ドーン


盗賊「ドラゴンが暴れ始めたぞ…あっちにもレイスが行ってるな?」

アサシン「法王庁は後にして先に城へ回ろう」

盗賊「おい!!あんな所に黒い戦車置いてあるぞ…なんで使わねぇんだよアホ衛兵が」

アサシン「待て…足枷の付いたダークエルフが這って…なんでこんな所にダークエルフが居るんだ?」

盗賊「どうする?助けるのか?」

アサシン「これはダークエルフの救出劇?…まさか」

盗賊「足枷って事は捕虜だな…あ!!まずいレイスが行った」

アサシン「今は下手に接触しない方が良い…迂回して城の方へ向かう」

盗賊「ダークエルフが暴れ始めたぞ?」

アサシン「城の方で戦闘音がする…生き残りが居るな」

盗賊「うぉ!!おいおいおい…レイスの野郎鎌で魂を引っこ抜きやがった…あれが魂の形か」

アサシン「見とれている場合では無い!行くぞ…向こうに人の気配がある」

盗賊「お、おう…倒れてる衛兵は死んでるのか魂抜かれたのか見分け付かんな」

アサシン「後ろ!!」

盗賊「ん??下から上がってきた衛兵達だな…こりゃ混戦だ」

ドラゴン「ギャーーース」ゴゥ ドーン

衛兵「ブレーーース!!散開!!」

『王城前』


レイス「ンギャアアーーー」

近衛「はぁ!!」ザクリ

盗賊「あんなんじゃ効かんだろうが」ダッシュ ザク

近衛「助かる!!」

盗賊「ここはどうなってる?」

近衛「お前達は誰だ?なぜ簡単にこの魔物を倒せる?」

盗賊「先に質問してるのは俺だ!どうなってんだ?」

近衛「援軍が来たのだな?国王がダークエルフの裏切りによって崩御された…第一皇子に至急戻られよと伝令を頼みたい」

アサシン「武器庫に銀製の武器は無いのか?」

近衛「その武器は銀製だというのだな…情報感謝する」

アサシン「ドラゴンは何処へ?」

近衛「国王の亡骸を確認して何処かへ去った…外で何が起こっているのかこちらが聞きたい」

盗賊「俺達も混乱の真っただ中だ…同じだよ」

近衛「我々は王女以下王室を守るため此処を離れる訳に行かない…伝令と援軍の要請を頼む」

盗賊「分かったよ…最後に…あとどれくらい戦力残っている?」

近衛「精鋭が200名ほど」

アサシン「全員に銀製の武器を持たせると良い」

近衛「あいわかった」

アサシン「そうだ第二皇子はどうした?」

近衛「法王様の下でお隠れになられておる」

アサシン「ふむ…盗賊!!ここには用が無い様だ…戻ろう」

『法王庁』


レイス「ンギャアアーーー」

衛兵1「こいつ!!どうやって倒すんだ?」ブン ザク

衛兵2「ダメだ無理だ…ぐぁぁぁぁ」


アサシン「レイスに苦戦している様だな」ダッシュ ザクリ

レイス「ンギャアアアーーー」

アサシン「銀製の武器を持て!!銀で倒せる!!」

盗賊「ドラゴンは何処行った?」

衛兵1「上だ!!上で旋回している」

アサシン「見ているな?奴らは何を探しているというのだ」

盗賊「法王庁の中はどうなってる?」

衛兵1「一部隊強引に突入して行ったが代わりにエルフが中から出てきた」

盗賊「全滅か?」

衛兵1「内部の状況はよく分からん…部隊長も中に押入って行ってしまった」

アサシン「指示待ちの状況か…とにかく銀製の武器を集めてレイスの討伐に専念しろ」

衛兵1「お前たちは近衛か?」

アサシン「そうだ!!国王陛下崩御されたし!外に出ている第一皇子は至急帰還せよ…伝令だ」

衛兵1「国王陛下崩御…」

アサシン「師団も一旦戻した方が良いが…そこは皇子が判断すべき所」

盗賊「外からでもドラゴン襲撃は見えてんだろ」

アサシン「見えていても師団クラスはそんなに早く動けんよ…さて」

盗賊「俺らも突入すっか?」

アサシン「エルフも退散した様だし今なら安全だ」

盗賊「行くぞ」スタスタ

『礼拝堂』


衛兵「ぅぅぅ…」

盗賊「おい!生きているか」パン パン

アサシン「急所は外れているが止血しないとマズイ」

盗賊「えらくでかい矢だな…これじゃ槍と変わらん」

アサシン「ハイエルフが使う矢だ」

盗賊「全員これでやられている…おい!!生きてっか?」

アサシン「外の衛兵に応援呼んでもらってくれ」

盗賊「わかった…ちょい待ってろ」スタ

アサシン(…弓でこれほど爆発跡が残るか?おかしいな)

アサシン(ドラゴンが入った形跡は無い…魔法の跡だろうか)

アサシン(む…礼拝堂の下にはもう一つフロアがありそうだ)

アサシン(どうも…魔王が復活した雰囲気は無い)

アサシン(裏の方にも出入口があるのか…開きっぱなしだな)

盗賊「戻ったぞ…衛生兵がもう少しで来るそうだ」

アサシン「下にもう一つフロアがありそうだ」

盗賊「こんだけ荒れてるのに死体が少なくねぇか?」

アサシン「やはりそう思うか」

盗賊「下に行ってみよう」

『法王庁下層』


アサシン「アレは…法王の法衣」

盗賊「死んでるな…頭部が…こりゃ破裂したんか?」

アサシン「頭部だけじゃない全身破裂だ」

盗賊「ここも爆発跡が沢山あるな…なにかの実験でもやってたんかね」

アサシン「…どうも気分が悪い…なんだこの感覚」

盗賊「おい!!通路の奥の部屋…死臭がひでぇ」

アサシン「カタコンベ…ここの下は恐らくカタコンベだ」

盗賊「うわぁ…見たくねぇな…どうせ拷問器具だらけなんだろ」

アサシン「鍵がかかっている」ガチャガチャ

盗賊「開けるか?」

アサシン「いや…今は良い…鍵がかかっているという事は今回の騒動に恐らく関係していない」

盗賊「そうだなエルフがわざわざ鍵かけるとは思えんな」

アサシン「法王が変死している以外におかしな事は何か気付かないか?」

盗賊「魔王が復活したにしちゃ静かすぎるな」

アサシン「エルフはここで何をしたと思う?」

盗賊「法王を[ピーーー]としたらエルフは弓を使うよな?もう死んでたと考えた方が良い」

アサシン「エルフがはるか遠くの森からどうしてこんな所まで攻め立てて来るのか?」

盗賊「エルフの大事な物って何だ?」

アサシン「エルフの秘宝はいのりの指輪だと聞く」

盗賊「何だそれ」

アサシン「もしかするとここにいのりの指輪があったとすると…つじつまが合う」

アサシン「いや待て…エルフから秘宝を奪ってここまで持って帰って来た…魔物が大群で攻め入る理由が出来る」

盗賊「俺達が海の向こうに行っている間に起きたってか?」

アサシン「情報が足りない…盗賊ギルドに行くぞ」

盗賊「おい!焦るな…じゃぁそのいのりの指輪ってやつは何処に行った?」

アサシン「ドラゴンはまだ上空で旋回しているな?…という事はまだ手に入れていない」

アサシン「魔王の手に渡ってしまったと考えるのが普通だが…どうも魔王の気配を感じない」

盗賊「空が落ちたのは普通なら魔王の仕業と考えると思うがな」

アサシン「なにか違う…ほかに手掛かりは無いか?」

盗賊「裏口があったよな?そっちに行ってみよう」

『裏口の外』


盗賊「うおっとぅ!!こんな所に法王庁の衛兵の死体が…じゃまだな」

アサシン「2体…弓でのヘッドショットだ」

盗賊「こりゃエルフの矢じゃねぇ…なんでこんなところで流れ矢に当たってんだ?」

アサシン「流れ矢がヘッドショットにはならん…どこから撃たれたか」

盗賊「向こうの屋根上だな…しかしあんな遠くから狙えるか?」

アサシン「ひとまず行ってみよう」タッタッタ

盗賊「よっ…よっ…」ピョン ピョン

アサシン「この屋根に上がるのは素人には無理だな」ピョン ピョン

盗賊「うはぁ…中央広場がえらい事になっとる…暗くて見にくいが」

アサシン「ここはゲートブリッジの上だ…そういう事か」

盗賊「俺らが中央の屋根上から見た人影だな?そういや弓使ってたな」

アサシン「ドラゴンが来る前にそいつらが法王庁に入っていたという事だ」

盗賊「なるほどそいつらが法王ぶっ殺して逃げた線が出てきた訳か」

アサシン「私の先を行く者がまた現れた」

盗賊「おい!!それより中央の混乱収めないとお前の妹が危ないぜ?」

アサシン「そうだな…まず目の前の問題解決…だな」

盗賊「ここは別れよう…俺は下水通って船からミスリル武器持って配りながら中央に行く」

アサシン「分かった…私は屋根伝いで先に中央へ行っておく」

盗賊「無理すんなよ?合流の目安は1時間後だ…そうだな屋根に上がった建屋周辺だ」

アサシン「オーケーグッドラック」

『下水』

ピチョン ピチョン

盗賊(ラットマンとの戦闘跡があるな…)

盗賊(む…誰か居る)


衛兵「[ピーーー]ぇ!!」ブン グサ

ラットマン「ギャーース」ドタリ

盗賊「おっとー通るぜー」

衛兵「何処へ行く?海側は黒い魔物が出てきて危険だ!!」

盗賊「レイスの事か?」

衛兵「レイスと言うのか?奴らは普通の武器では倒せない」

盗賊「それで逃げ帰って来てるんだな?」

衛兵「撤退戦だ」

盗賊「今からレイスを倒せる武器を取りに行く所だ…お前も来るか?」

衛兵「それは本当か!?」

盗賊「見て見ろ…」スラーン

衛兵「それは?」

盗賊「特殊な銀の武器だ…これならレイスを簡単に倒せる」

衛兵「どこにあるんだ?」

盗賊「桟橋に停船しているサンタマリア型の帆船にある」

衛兵「一隻だけ船があったな…お前は海賊か何かか?」

盗賊「衛兵相手に私は海賊ですなんて言えると思うか?ただの魔物ハンターだよ」

衛兵「下水をうろついてる輩はどうせ賊くらいな者だが…今は信用しておく」

盗賊「ぬはは…そらそうだわな…こんな所うろつく一般市民なんて居らんな…ついて来い」

衛兵「先刻ここを通った者の仲間か?」

盗賊「知らんな…他にも不審者が居るという事か?」

衛兵「4人組の賊が走り去って行った…一人は怪我をしていた様だが」

盗賊「ほう…俺には関係ねぇな…こんな時に略奪なんざクソ野郎のやるこった」

衛兵「背格好からして白狼の盗賊団」

盗賊「んな訳ねぇだろ…」


---待てよ?法王を殺したやつは下水を通って逃げったって訳か---


盗賊「先刻と言ったな?どれくらい前だ?」

衛兵「1時間くらいか…お前…何か知っていそうだな」

盗賊「いやいや…俺を信用してくれ!!今は魔物を何とかしたい」

衛兵「同意だ…お前が悪人だったとしてももう顔を覚えた」

盗賊「へいへい…わたしゃー悪人じゃございやせん」

衛兵「見ろ!!前方にレイスらしき影」

盗賊「おっし!!この武器の性能を見てろ」ダダッ ブシュ

レイス「ンギャアアーーーーー」シュゥゥゥ

衛兵「おおおおぉ…倒せる」

『帆船』


盗賊「武器は後方の船長室に入れてある…鍵は開けておくから他の衛兵にも配ってくれ」

衛兵「この船はお前の船なのか?」

盗賊「俺の物ではないが俺達の物と言った方が良いか…」

衛兵「やはりお前は海賊だな?」

盗賊「待て待て…今はそういうのは無しで頼む…そして良く見て見ろ…戦略兵器は何も乗って無い」

衛兵「確かに…大砲類は無いな」

盗賊「おっし俺は持てるだけ武器抱えて中央方面に向かう」

衛兵「お前は名を何と言う?」

盗賊「名乗る名なんかねぇよ」

衛兵「武器の譲与感謝する…身元が分からんと謝礼が出来んぞ?」

盗賊「…」---どうする---

衛兵「おい!!聞いているのか?…私の名は戦士だ」

盗賊「謝礼なんかいらねぇよ…じゃぁな!!気合入れて戦え!!」ダッシュ

衛兵「…」

---あの後ろ姿---

---走り方---

---身のこなし---

---間違いない---

---白狼の盗賊団---

『中央広場』



ギャァァ助けてくれぇぇ

イヤー来ないでぇぇ

おい!しっかりしろぉ!

立て!走れぇぇ!




盗賊「にゃろぅ!!」ブン ザク

レイス「ンギャアアーーー」

盗賊「安全な場所は無ぇのかよ…おい!そこで倒れてる奴を引っ張って行けぇ!!」

市民「はひぃぃ」

盗賊「宿屋が比較的安全だ!!そこに置いとけ!!」

市民「ひぃひぃ」

アサシン「盗賊!!ここに居たか」

盗賊「おう!!やっと合流出来たな」

アサシン「武器は!?」

盗賊「まだあるぜ?ほれ」

アサシン「よし…それを持ってギルド支部に行こう」

盗賊「ここら辺はもう良いのか?」

アサシン「軍隊がレイスの対処をし始めてる…放っておいて良いだろう」

盗賊「セントラルの軍隊がか?」

アサシン「いやフィン・イッシュの方だ…軍国なだけあって手練れが多い」

盗賊「そりゃ良い」

アサシン「あちらの国ではゾンビが出るらしくてな…銀の武器を所持している」

盗賊「…てことはしばらく持ちこたえそうだな」

アサシン「かの軍隊は第二皇子の派閥だ…第一皇子派と揉めなければ良いが…」

盗賊「そういや第二皇子がどこに行ったか分からんな」

アサシン「まぁ今はそれどころではない…行くぞ」タッタッタ

『盗賊ギルド支部』

ガヤガヤ ガヤガヤ

盗賊「なんだよここも避難所になってんじゃねぇか」

アサシン「妙だな…どうしてここにはレイスが来ない?」

盗賊「たまたまだろ…気を抜くなよ?」

アサシン「地面に盛り塩がある…これのお陰か?」

少年「ああああああ!!触らないで!!」

盗賊「おお!!お前…生きていたか」

少年「その声は盗賊かい?良かった…戻って来たんだね」

盗賊「他の奴らは無事か?」

少年「母さんが…」

盗賊「女盗賊がどうした!?死んだのか?」

アサシン「なに!?妹がどうした」

少年「爆発に巻き込まれてしまって…」

アサシン「どこだ!?どこにいる!!」

少年「中で横になってる…こっちだよ」スタスタ

アサシン「生きているんだな…」ホッ

盗賊「こんなに人が出入りしてて盗賊ギルドだとバレたらどうすんだ?」

少年「看板は商人ギルドに挿げ替えてある…今は商人ギルドさ」

アサシン「少年…君がやったのか?」ジロ

少年「そんな目で見ないでよ…母さんがそうした方が良いって」

盗賊「お前心臓の方は大丈夫なのか?」

少年「最近は調子がいいさ…激しい運動しなければね」

盗賊「お!?娘たちも無事だな?」

アサシン「ギルドの連中が見当たらないのだが…」

少年「物資調達だってさ…外に出てるよ」

盗賊「略奪やってんだな?こんな時にいけすかねぇ」

アサシン「まぁそう言うな…私たちも同類だよ」

少年「母さん!!盗賊たちが帰って来たよ」

女盗賊「ぅぅん…ハァハァ」

アサシン「…これがあの美しかった私の妹か?…」

盗賊「ぉぃぉぃ…手足はどうなってる」

少年「潰れてしまっている…治るかどうか分からない」

盗賊「処置は終わってるんだな?…顔も随分腫れちまってるな」

少年「酸欠のチアノーゼ跡がしばらく消えないって」

盗賊「こんなんなるって事は瓦礫か何かに埋もれたな?」

少年「そう…戦士っていう衛兵が掘り出してくれた」

アサシン「衛生兵はもう居ないのか?」

少年「処置が終わったら出て行ったよ…走り回ってる」

女盗賊「に…ぃさ…ん」

アサシン「無理して声を出さなくて良い…自分でも状況は分かっているな?」

女盗賊「…」ポロリ

盗賊「回復魔法があればな…」

アサシン「魔法…そうだ魔法師はどこかに居ないのか?」

盗賊「この国のアホ共は魔法を使える奴をみんな焼き殺した…居る訳ねぇ」

少年「魔法書なら持っているよ」

盗賊「お前は魔法を使えるのか?」

少年「使えない…使ったこと無い」

盗賊「魔法書だけじゃ意味ねぇな」

少年「…でも魔方陣なら少し分かる」

アサシン「…ひょっとして外にあった盛り塩は君が?」

少年「そう…退魔の魔方陣」

盗賊「ここにレイスが来ないのはそういう事か?」

少年「悪霊退散の方法が記されていたんだ…本当に効果があるのかは賭けだった」

アサシン「少年!!詳しく話が聞きたい」



----カクカクシカジカ---

----------------

----------------

『個室』

盗賊「ったくあいつは何時まで話込んでるつもりなんだよ」

女盗賊「…」

盗賊「痛むか?」

女盗賊「…」コクリ

盗賊「あぁ動かんで良いぞ…目で意思疎通は出来そうだな」

盗賊「お前なら分かると思うが…このまま死にそうか?」

盗賊「んーその目は分からんという目だな…内臓の傷み具合が分からんか」

盗賊「その感じだと背骨も折れてるな」

盗賊「出血は大した事ない…やっぱり内臓次第だな」

盗賊「顔色からして痛んでそうなのは肝臓…肺って所だな」

盗賊「まぁ頭部が無事だっただけ幸いか」

盗賊「医者の判断として教えて欲しい…この状況で1か月生きたケースは」

盗賊「…無い…か」

盗賊「長く持って2~3週間か?」

盗賊「もっと短い…そりゃ参ったな」

盗賊「ちと考えて来るわ…寝てろ」


ギー バタン

『別室』

ギー バタン

盗賊「おい!お前等いつまで話してんだ?」

アサシン「悪い…この少年…私が知らないことをいくつも知って居てな」

盗賊「お前の妹を放って置いて良いのか?」

アサシン「分かっている…が今は何もしてやれない」

盗賊「放って置いたらありゃ死ぬぞ?」

アサシン「それも分かる」

盗賊「だったら手ぇくらい握ってやれよ」

アサシン「まぁ聞いて欲しい…今後の事だ」

盗賊「ちぃ!!お前全然分かってねぇ!!」

少年「待って待って…この場合結論から言った方が良い」

盗賊「お前は黙ってろガキがぁ!!」

少年「違うんだ…母さんを救う作戦だよ」

盗賊「…言ってみろ」

少年「シン・リーンまで行って魔女に回復魔法をお願いする…出来るだけ早く」

盗賊「アホか!!どんだけ遠いと思ってるんだ…待てよ?…船に買って来た気球の材料が乗ってるな」

アサシン「それだよ…後は察しが付くな?」

盗賊「組み立てに大工が居ても2~3日…いや…寝ないでやれば1日だ」

少年「僕も手伝うよ」

盗賊「いやお前は邪魔になる」

アサシン「退魔の魔方陣は少年が居ないと無理だ」

盗賊「…そうか…なら仕方ねぇな」

アサシン「組み立て1日…即出発して到着まで1週間…間に合うかどうかって感じだな」

盗賊「そんな簡単じゃねぇぞ?太陽か星が見えない様じゃ方向が定まらん」

少年「地形見ながら行くとかは?」

盗賊「んーむ…海よりはマシか…2週間だな…2週間も生きていられるか賭けだ」

アサシン「もう一つ秘密がある…今この世界は狭間の奥にいるのだとしたら時間がゆっくり流れている」

盗賊「意味が分からん」

少年「想定よりも長く生きている可能性が高いんだ」

盗賊「まぁ良い…その話はよく分からん…俺は今から人集めて気球を組み立てて来る」

アサシン「私は情報収集と物資の調達をしておく」

盗賊「おい!!まず初めに女盗賊の手を握ってこい!!」

アサシン「分かった分かった…」

少年「僕も母さんに作戦の事話してくる」

盗賊「直ぐに出発するから手短に済ませてこい…それから…もう母さんってのはヤメロ」

『帆船』

ギシ ギシ

盗賊「よし!飛び乗れ」

少年「ほっ…」ピョン

盗賊「他の奴が来ないようにすこしだけ離岸する…そこのロープほどいてくれぇ」

少年「これだね?あ…梯子もあげておくよ」

盗賊「ふぅ…魔方陣ってのはどの辺にやれば良いんだ?」

少年「広い場所かな?出来るだけ大きく作りたい」

盗賊「なら甲板しか無ぇな」

少年「マストが邪魔だなぁ…下の方は?」

盗賊「マストは下まで貫通してんだよ!そこより広い場所は無い」

少年「そっか…じゃぁ2つ作るかな」

盗賊「あぁ任せた…レイスが出たら落ち着いて教えてくれ」

少年「分かったよ」

盗賊「あと見張りも頼む」

少年「一人で大丈夫?」

盗賊「手が欲しい時は言うからしっかり見張っとけ」

少年「大工さん欲しかったね」

盗賊「まぁしょうがねぇ…そんなに都合よく居る訳も無いしな」

少年「ここから貧民街が見えるね」

盗賊「あんだけ壊れてちゃぁもう戻れんな」

少年「あの家の生活は楽しかった…バーベキューおいしかったなぁ」

盗賊「どうやら今は時代の潮目だ…その思い出はもう閉まっておけ」

少年「もう一回作ろうって言わないの?」

盗賊「お前はドラゴンを見たか?」

少年「見たよ」

盗賊「見ろ!あそこの城壁にへばりついてるクソでかいクラーケンを」

少年「もう死んでるみたいだね」

盗賊「俺達はあんなのを相手に戦ってんだ…安住の生活なんか今は考えられん」

少年「戦ってるって…盗賊は泥棒じゃないの?」

盗賊「ぬはは泥棒と声に出して言われて誇れる職業じゃねぇな…まぁ恥ずかしい事言わんでくれ」

盗賊「ただな?真っ暗闇に落ちたこの世界のど真ん中に俺達は居る…とにかく生き残るしかない」

少年「…知ってる…そう…同じような事を僕は誰かに言ったことがある」

盗賊「お?ガキのくせに一丁前な事を言った事があるか」

少年「僕は…僕は…誰だった?誰に言ったんだ?」

盗賊「なんだ?アサシンの影響か?あいつの話は半分で…いぁ十分の一で聞いておけ」

少年「違う…なんだろう?前世の記憶なんだろうか?」

盗賊「あああぁぁこれダメな流れ…もう良いそういう話はアサシンの与太話で聞き飽きた」

少年「なんだろう…すごく沢山覚えている…そうだ…僕は商人だ」

盗賊「もう良いから!!しっかり見張っとけ」

---おそらく翌日---


トンテンカン トンテンカン


少年「少し休んだら?」

盗賊「あぁぁしんど…球皮の縫い合わせは終わったのか?」

少年「まだ…もう手が痛くて」

盗賊「お前舐めてんだろ!!女盗賊の命が掛かってるんだぞ?あいつはもっと痛い思いしてるぞ?」

少年「分かってるよ…あ!誰か桟橋に来てる」

盗賊「んん?なんだアサシンじゃねぇか」

少年「どうする?」

盗賊「ちっと休憩するか…桟橋に付ける」


ガコン ギー


盗賊「よう!!様子見に来たんか?」

アサシン「状況が変わった30分後に出港する」

盗賊「おいおい…船で行くんか?」

アサシン「詳しい話は後でする…馬車を入れるから荷室を桟橋に付けておいてくれ」

盗賊「この人数でこの船動かすのは無理だ!!船乗りはどうする?」

アサシン「もうそんな事を言ってる余裕は無い…何とかしてくれ」

盗賊「女盗賊はどうする?置いていくってんなら俺は降りるぜ?」

アサシン「馬車に乗せて連れて来る」

盗賊「マジかよ…動かすだけで死ぬかもしれんぞ」

アサシン「黙れ…これを見ろ」パサ

盗賊「んん?人相書き…か?うぉ!!俺じゃねぇか」

アサシン「そういう事だ…この船も差し押さえ対象だ…馬車で飛び込むから即出港だ」

盗賊「少年!!荷室の左舷を開いて来い…俺は船を回頭させる」

少年「え!?分からないよ…」

盗賊「行って自分で考えろ!!10分でヤレ」



---ちぃぃあの衛兵に顔見せたのはマズかったか---

盗賊「えっさほいさ…えっさほいさ…ぐあああああああ一人で帆を広げるとか無理に決まってんだろ!!」

少年「荷室空いたぁぁ!!」

盗賊「桟橋にロープひっかけて船が流されない様にしてくれぇぇ」

少年「碇は降ろさないの?」

盗賊「そんな余裕は無ぇ!!ロープ掛けたら上に上がって帆を張るの手伝え」

少年「ハァハァ…」

盗賊「お前は縦帆広げる準備だ!!ロープ緩めてその辺に垂らしておけ」

少年「盗賊!!見て!!中央の方で煙が上がってる」

盗賊「…なるほどアサシンがやってんな?」

少年「馬車が見えた!!貧民街を突っ切って来る」

盗賊「マジかよ…早えぇな」エッサホイサ


---メインマストしか開いてねぇのに---


盗賊「おい少年お前が舵ヤレ!!右に2回転回して置け!!その後下行って桟橋のロープ切る準備だ」

少年「ひぃひぃ…」ヨタヨタ

盗賊「良いか!!馬車が入ったらロープを切れ…反動がでかいから海に落ちるなよ」

少年「わ、わかった」

盗賊「まずいな…馬車が追われているな…船に入られるのが厄介だ」



---即出港してもこのままだと4~5人は入られる---

---桟橋を破壊するか…どうやって?---

---油がある…よし燃やす!!---


盗賊「どけぇ!!」ドブドブ

少年「その樽…どうするの?」

盗賊「桟橋を燃やす!!船長室の机の上に俺の道具箱があるから持ってきてくれ!!1分!!」

少年「行く!!」タッタッタ

盗賊「種火になるもん無ぇか?よし!!ロープのくずだな」ゴシゴシ

少年「道具持ってきたよハァハァ」ポイ

盗賊「そっから馬車見えるか?」パス

少年「見える!!あと3分」

盗賊「ギリギリだな…」チッチッ メラ

少年「ロープは?」

盗賊「予定通りお前が切れ!俺は甲板から弓を撃つ…お前の初仕事だ上手くやれよ」

少年「ハハ…ハハハ」

盗賊「笑うのが早えぇ…うまく行ったらバーベキューだ」

『馬車』


ガタガタ ガタガタ


アサシン「もっと早く走れないのかこの馬は!!」パシン パシン

娘1「追って来てるぅぅどうしよどうしよ」オロオロ

アサシン「何人だ?」

娘1「20人くらい」

アサシン「馬に乗って来るやつは居ないか?」

娘1「馬は居ない」

娘2「何か投げる?」

アサシン「無駄だな…大人しく掴まっているんだ」

情報屋「船の方で火があがり始めた…大丈夫?」

アサシン「分かってる…アレくらいなら突っ切れる」

娘1「あぁぁウチらの家がぁぁ」

娘2「潰れてんじゃん」

アサシン「見納めだ」

娘1「お姉ぇ見える?」

女盗賊「…」

娘2「なんかこの半年でさぁ…色々あったね」

アサシン「揺れるぞ…みんなしっかり掴まれ!!」


ガコン ガコン  ガタガタ  ヒヒ~ン


娘1「熱っつ!!」

アサシン「娘達は馬車降りて幌に付いた火を消すんだ」

娘1「え?え?え?…」

娘2「イヤーー火事ぃぃ」

娘3「もう!!早く降りて!!熱い!!」アタフタ

娘4「水は!?どこ?」アタフタ

アサシン「水なんか要らん!!叩けば消える!!」

『甲板』


ガコン ガコン ガタガタ ヒヒ~ン


盗賊「よし!!今だ!!ロープを切れ!!」

少年「切ったぁぁ!!」

盗賊「動け動け動け動け…」


グラリ ググググ ギー


盗賊「ぐぁぁぁ遅せぇ!!」ギリリ シュン

衛兵1「待てぇぇ…弓だと?」

衛兵2「ちぃぃぃ飛び移れ!!」

衛兵1「この火の中行けってのか?」

衛兵2「今ならまだ行ける」

衛兵1「ならお前が先に行け」

盗賊「アサシン!!飛び移って来る奴は処理頼む!!俺は縦帆張る」

アサシン「荷室の扉は馬車が邪魔で入って来れんよ…私たちの勝ちだ」

盗賊「そうか!そりゃ良い!!人手が欲しい!!動ける奴を甲板に回してくれぇ!!」

アサシン「…」

盗賊「おい!!聞いてんのか!?」

アサシン「…という事らしいが…娘達行けるか?」

娘1「え!?」

娘2「そんなん聞いてない」

娘3「ウチらはお姉ぇの看病役でしょ?」

娘4「マジで言ってる?」

盗賊「おーーーい!!誰か居ねぇのかぁぁ!?」

少年「ハハハ…アッハッハ…クックック」

アサシン「…はぁ…私が行ってくる」

少年「…母さん…無事かい?」

女盗賊「フフフ」

少年「痛くない?笑わない方が良いよ…ガマンして」

盗賊「おーーーい!!誰か手伝えって!!」

少年「さて…バーベキューの準備してくる」

女盗賊「…」ニコ

『居室』

ワイワイ ワイワイ

盗賊「はぁぁぁぁもう動けん」

アサシン「まぁ上手く逃げられたのだから良いでは無いか」

盗賊「俺たち以外に船に乗ってるのは女と子供だけ…なんでこうなった?」

少年「僕は人数に数えられて無いんだ?」

盗賊「半人前にもならん!子供と同じだ」

アサシン「なってしまった事は仕方がない」

盗賊「あのネーちゃんは誰だ?」

アサシン「情報屋でな…盗賊ギルドの幹部に当たる」

盗賊「そいつしか居なかったのか?」

アサシン「どうも私は嫌われている様でな…付いてきたのは情報屋だけという訳だ」

盗賊「…ま、そらそうだわな…お前の顔を見てギルマスだと知る者がどれくらい居るのか…」

アサシン「言うなよ」

盗賊「おい!情報屋!!何か言ってみろ」

情報屋「あんた…気安く物言いしないでくれる!?」

盗賊「ヌハハ悪い悪い…まぁ肉でも食って機嫌直せ…ほれ」ポイ

アサシン「二人とも口は悪いが信用出来る…仲良くやってほしい」

盗賊「…で?アサシンは粗方情報貰ってんだろ?」

アサシン「まずこれを見てくれ」パサ

盗賊「人相書きだな…俺のは見たが他にもあんのか?」

アサシン「剣士と女海賊…それからシャ・バクダに居るはずの女戦士ともう一人謎の女」

盗賊「ぬはは良く似てるな…この謎の女は見た事ねぇな」

アサシン「まだある…私と女盗賊…娘達まで…白狼の盗賊団一味という事で特定指名手配されているのだ」

盗賊「うはぁぁ…もうセントラルには行けねぇな」

アサシン「だから娘4人と子供たちを連れて来ざるを得なかった」

盗賊「なるほどな…共通するのは酒場のマスターだ…口は堅いと思っていたんだがな」

アサシン「本題はここからだ」

アサシン「魔物襲撃事件の当日…白狼の盗賊団を多数の人間が目撃しているのだ」

盗賊「…やっぱりそうか…俺もその噂は聞いたぞ」

アサシン「セントラルでは国王の崩御と法王の変死はまだ公開されていない」

アサシン「噂では白狼の盗賊団による暗殺という風になってしまっているのだ」

アサシン「さらに魔物襲撃も…空が落ちた件もすべて…白狼の盗賊団の仕業という事になっている」

盗賊「えらく有名になったもんだ…なにもしてないんだが」

アサシン「まぁ第一皇子と第二皇子の覇権争いの最中だ…当然の流れとも言える」

盗賊「ギルドの方には迷惑かかってないか?」

アサシン「今ここに来てるのが情報屋だけと言いうのが答えだ…皆薄々知っていて関わろうとしない」

盗賊「…俺が大工探しても出てこないのはそういう事か」

アサシン「そこら辺の裏の事情を教えてくれたのが情報屋って訳だ」

盗賊「おぉ!!やるなネーちゃん…で?情報屋だけ何でここに居る…俺らの行動監視か?」

アサシン「まぁ気にするな…彼女は私の腹心の部下だ…彼女ありきでギルドが成り立っている」

盗賊「ではセントラルのギルド支部はもう解散か?」

アサシン「セントラルの惨状では盗賊ギルドはもう意味をなさない…不要だ」

盗賊「お前がそう言うならそれで良いけどなハハ」

アサシン「それで…話を戻す…事件の日に白狼の盗賊団をやったのは誰かという事だ」

盗賊「ぁぁぁ…手口からして剣士と女海賊は間違いなく絡んでいるな」

アサシン「情報筋からすると逃走ルートは下水…そこを使ってさらりと逃げるのは経験のある2人しか考えられない」

盗賊「残りの2人は関わっている筈の無い女戦士ともう一人…合ってるか?」

アサシン「正解…では剣士たちは法王庁で何をしたか」

盗賊「ぬあぁぁ分かった分かった…アレだろ?指輪…盗んでさっさとトンズラ…剣士達なら出来る」

情報屋「ビンゴ!!」

盗賊「ネーちゃんそんな所まで知ってるんか?」

情報屋「指輪を盗まれたからセントラルで特定指名手配されて大変な事になっているの!お分かり?」

アサシン「それでここからは予測になるが…指輪を持って何処に向かうと思う?」

盗賊「んんん…エルフに返す?…待てよそれなら盗む必要が無いな…分からんな」

アサシン「女海賊の行動癖で考えると一旦ドワーフの国に帰るというのも可能性がある」

少年「剣士たちが指輪を盗む動機って何だろうね?」

アサシン「女戦士には指輪が魔王復活のカギになっていると話した事はあるが…」

盗賊「それなら単純だな…復活を阻止するために盗んだ…んんんん…やっぱり行き先が読めんな」

アサシン「シン・リーンの魔女なら千里眼で行き先を探せる筈」

盗賊「それならとりあえず行き先が一致してる…早い所気球を組み立てないとな」

少年「食事終わったら僕も手伝うよ」

盗賊「何言ってんだ!!お前だけじゃねぇ!!全員手伝え」

『甲板』


トンテンカン トンテンカン


盗賊「お?少年!!起きたか」

少年「その呼び名…何か気に入らないな」

盗賊「んあぁぁ!?なんだ今更…なら何て呼べば良いんだ?」

少年「僕は商人!昔から商人さ」

盗賊「ぬはは大した発音変わって無ぇじゃねえか…商人…これで良いんか?」

商人「イイね…すっぽり収まった感じだよ」

盗賊「ほんで…何か売りにでも来たんか?」

商人「勿論!興味あるかい?」

盗賊「何だよその言い回し…どっかで聞いた事あんな」

商人「まぁ良いじゃないか…やらせてくれよ」

盗賊「そうだな…そろそろ大人になっても良い頃だしな」

商人「…それで…買うかい?」

盗賊「おう!!買ってやる…何だ?」

商人「コレさ…」シャキーン

盗賊「…」ジロリ

商人「まぁ売るつもりは無いんだけどさ…」

盗賊「それは虹のしずくという物だ…何でお前が持ってる?」

商人「母さん…いや女盗賊が大事そうに持っていた物だよ…盗賊に渡してだってさ」

盗賊「悪い…それは買い取れねぇ…返してこい!」

商人「困ったなぁ…」

盗賊「良いから返してこい!!俺は忙しいんだ!!暇ならお前も手伝え!!」トンテンカン

商人「わ、わかったよ…でも盗賊も少し休んだ方が良いよ?」

盗賊「うるせぇ!!」トンテンカン トンテンカン

商人「居室で寝てる子供達もうるさくて眠れないってさ」

盗賊「お前はぶっ飛ばされないと分かんねぇ様だな!!」

商人「休んでよ…みんな心配しているんだ」

盗賊「クソがぁ!!アイツがソレを俺に渡すって事はいよいよヤバイって事だ!!」ボカッ

商人「痛っ!!分かったよ…僕も手伝う」

盗賊「死ぬ気でやれぇ!!」トンテンカン トンテンカン


トンテンカン トンテンカン

ギコギコギコ ギコギコギコ


------------------

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------------------

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『居室』


トンテンカン トンテンカン

ギコギコ ギコギコ

トンテンカン トンテンカン

ギコギコ ギコギコ


女盗賊「…」---馬鹿な人ね---

女盗賊「…」---私はもう良いの---

女盗賊「…」---十分幸せだったわ---

女盗賊「…」---子供達をお願いね---


娘1「お姉ぇ!!お姉ぇ!!」

娘2「ヤバイもう…息してない」

娘3「アサシン呼んできて!!」

娘4「うぇぇぇん;;」タッタッタ

商人「母さん…」


女盗賊「…」


アサシン「ハァハァ…女盗賊!!」



トンテンカン トンテンカン

ギコギコ ギコギコ

トンテンカン トンテンカン

ギコギコ ギコギコ

『甲板』


トンテンカン トンテンカン

ギコギコギコ ギコギコギコ


商人「盗賊!!…母さんが!!」

盗賊「んん?」

商人「母さんが死んだ…うぅぅ」

盗賊「…」

盗賊「……」

盗賊「………」



ザブーン ザブーン

ユッサー

ザブーン ザブーン



盗賊「…今か?」

商人「うん…」

盗賊「…」

商人「行かないの?」

盗賊「見たく…無ぇ」

商人「こんなに早く死ぬなんて…」

盗賊「魂は見たか?」

商人「いや…」

盗賊「まだ…そこに居るんだな?」

商人「魂?」

盗賊「よっこら…」テクテク

『居室』


シクシク シクシク


アサシン「盗賊…」

盗賊「ぃょう…女盗賊!…ラクになったか?」

女盗賊「…」

盗賊「悪りぃな…ちっと間に合わなんだ」

女盗賊「…」

盗賊「またお前の歌が聞きたかったんだが…まぁ…しょうがねぇな」

女盗賊「…」

盗賊「聞いてんだろ?…おい!娘ぇ!!そこの酒持ってこい!!」

娘1「え!?」シクシク

盗賊「早くしろやぁ!!」

娘1「う、うん」タッタッ

盗賊「今頃気付いちまったぁ…俺はなぁ…こうやってお前と酒を飲んでる時が一番落ち着くってな」グビ

女盗賊「…」

商人「盗賊…」

盗賊「で…これからどうすんだ?どっか行くのか?」

女盗賊「…」

盗賊「俺ぁよ…妖精も魂も見えねぇんだ…そこに居るんだろ?なんか言えよ」

アサシン「盗賊…よせ!」

盗賊「おい!!アサシン!!想定よりも長く生きるとか言ってただろ!!ありゃウソか!!?」

アサシン「すまない…」

盗賊「ちぃと外の風にでも当たるか…空は見えんが潮の香はするぜ?」グイ

アサシン「どうする気だ?」

盗賊「お前も付いて来い…酒飲むぞ」

女盗賊「…」グッタリ

盗賊「女盗賊よぅ…お前俺にタメ張っといてこんなに軽かったんだな」ヨッコラ ヨッコラ

女盗賊「…」

盗賊「覚えてんだぜ~?お前の歌…ルル~ルラ~フフ~ン♪」


ザブーン ザブーン

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『デッキ』


それでよぅ…あん時は先にお前が行った方が良かったんだ

まぁ結果的になんとかなったんだがな

それが原因で…見て見ろ…まだ傷跡が消えねぇ

お前が無傷で居たのは救いっちゃ救いだが

やっぱどう考えても作戦が悪かった…まぁ儲かったから良いかヌハハ


商人「ずっとあんな感じだよ…放って置いて良いのかな?」

情報屋「見ていて痛い…」

アサシン「…」

商人「盗賊と女盗賊はいつから一緒に居たんだろう」

アサシン「17年くらいか…私よりも長い」

商人「僕が生まれるよりも前なんだ…」

アサシン「私にしてもたった一人の肉親だったのだが…失ってしまうと胸が張裂けそうだ」

商人「…なんか放って置けないな」

アサシン「商人…君は知っているか?かつて精霊は最愛の人…勇者を目の前で失ったという事を」

商人「こんな時にどうしてそんな話を?」

アサシン「最愛の人を目の前で失ったとき…もし祈りの指輪で何かを祈るとしたら何を祈る?」

商人「え?…生き返らせたい」

アサシン「祈っても生き返らない場合は?」

商人「また会える事を祈る」

アサシン「どうやって?」

商人「どうやってって…方法なんか分からない」

アサシン「心の中で会えるのだ…だから最後に心の中の永遠を祈る」

商人「それって…まさか…夢幻?」

アサシン「私は魔女に会ってそれを教えてもらった」

商人「伝説では魔王によって夢幻に閉じ込められたって…」

アサシン「それは解釈が少し違う…自ら夢幻に閉じこもったという方が正しい」

情報屋「今の盗賊がまさにその状態ね…」

アサシン「そう…そこから精霊を救い出すのが私たちの目的だったのだが…」

アサシン「正直…目の前の盗賊を救い出すのすらためらってしまう」

商人「救い出すって…」

情報屋「あの姿を見て…現実を認めろって君に言えて?」

商人「そうか…もう少しそっとしておこう」

情報屋「私も心が痛むわ…」


ザブーン ザブーン

『船首』


ユラーー ギシギシ


盗賊「なぁぁぁんも見えねぇなぁ…ルル~ルラ~♪」

女盗賊「…」

アサシン「…」

盗賊「お前も飲むか?ヒック」

アサシン「気が済んだか?」

盗賊「…ちいと考えたんだがよう…俺ぁもうお前とは組まねぇ」

アサシン「どうする気だ?」

盗賊「さぁな?なぁぁぁんも考えられねぇ…気ままにやるさ」

アサシン「巻き込んで悪かった…許してくれ」

盗賊「そんなこたぁ言ってねぇよ…只なんだ…俺が守りたかったものに気が付けなかった自分が許せねぇんだ」

アサシン「それは私も同じだ…」

盗賊「帰る所無くなっちまったんだ…どうすっかなぁぁ」

アサシン「女盗賊なら何て言うと思う?」

盗賊「何回も聞いてるんだけどよぅ…返事しねぇんだ」

アサシン「しっかりしてくれ!!盗賊らしくないぞ!?」

盗賊「黙れ!!お前に何が分かる!!妖精も魂も俺には見えなかった…どっか行っちまった…俺の魂もどこにあんのか分かんねぇ」

アサシン「良く聞け…女盗賊の魂はな…どこにも行っちゃいない!お前の中に居る!!」

盗賊「んぁ?分けわかんねぇ事言うな!!お前の与太話はもう聞き飽きたんだよ」

アサシン「正直…愛する人を目の前で失うのがこれほど辛いとは思わなかった…だから!!」

盗賊「だから何だよ」

アサシン「だからせめて夢の中だけでも会いたい!!それが夢幻なんだ」

盗賊「ケッ与太話かよ」

アサシン「与太話なんかではない!!目を閉じて思い出してくれ…掛け替えのない記憶を…そこに魂を感じてくれ」

盗賊「知ったような事を…俺ぁもう騙されねぇぞ」---知ってるさ…あいつならこう言う---


---なに渋い顔してるの?---

---私はもう良いのよ?---

---あの子たちを見捨てるつもり?---

---あとはお願いね---


アサシン「知ったような事を言ってしまって済まない…ただお前を突き動かすのは女盗賊の魂だ…信じてくれ」

盗賊「…一人にさせてくれ」

アサシン「あぁ…」


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盗賊「はぁぁぁぁ…何だこんな所に居たのか…居るなら居るって言ってくれやぁ」

盗賊「分かってるって…やりゃ良いんだろ?」

盗賊「只よぅ…見返りが少くねぇっていうかな?俺ぁお前と酒が飲みてぇだけなんだ」

盗賊「分かった…ほんじゃ次は何欲しいんだ?何でも盗ってきてやる」

盗賊「お?そりゃ良いな…みんなでバーベキューかぁ」

盗賊「分かった用意するわ…そん時歌ってくれな?」

盗賊「おいおい…そりゃ無ぇぜ…じゃどうすりゃ良いのよ?寝ろってか?」

盗賊「そういや随分寝て無ぇな…わーったわーーったんじゃ少し休むわ…約束は守れよ?」








『デッキ』


ザブーン ギギギ ギギギ


商人「フンッ…」グルグル

情報屋「船の操作は初めてかしら?」

商人「うん…舵取りしか分からないよ…陸地を見失わないようにちょっとだけね」

情報屋「あと3日くらいで港町だと思うわ」

商人「へぇ…地理も詳しいんだ…アレ?…目をどうした?」

情報屋「もしかして腫れてるかな?」

商人「うん…泣いてたんだね」

情報屋「私とした事が…少し心揺さぶられちゃってね」

商人「盗賊の事か…」

情報屋「見直したわ…盗賊の事…彼って本当に不器用でひた向きで…まっすぐなんだなって」

商人「ハハ…やっぱり僕は子供だったよ」

情報屋「君は彼の養子…にあたるのかな?」

商人「んんん…どうなんだろう?孤児院から引き取られた…それって養子になるのかな」

情報屋「年齢的には親子でもおかしくないわね」

商人「君は?僕は君の事を何も知らないよ…見た感じ20台後半くらいかな」

情報屋「失礼ね!!って言いたいところだけど当たり」

商人「情報屋って言うくらいだから色んな事知ってるんでしょ?」

情報屋「まぁね…でももうコネクションは使えないし振り出しに戻ったかな」

商人「興味あるんだー情報屋っていう仕事に」

情報屋「今なら何でも教えてあげるぞ?少年」

商人「少年って言い方やめてよ…僕は商人だよ」

情報屋「こだわりあるんだね?どうして商人なのかな?少年」

商人「…あのね…まぁ良いや…実はね夢幻の記憶のほとんどを思い出したんだ」

情報屋「夢幻?…その情報が聞きたいの?」

商人「きっと僕の方が良く知ってると思う…今知りたいのはズバリ君は誰?」

情報屋「え…難しい質問…その情報は持ってないわ」

商人「ハハハ答えられないかwwww良いんだよ…そう言うと思ってたよ」

情報屋「私の方が聞きたいわ…その夢幻の記憶って言うのを」

商人「正直言うと僕も結構混乱しているんだ…どこからどこまでが正しいか分からないんだよ」

情報屋「アサシンが言うにはみんな同じ夢を見ているって言うけど…本当なの?」

商人「時間軸が違うだけだと思う…多分みんな同じさ」

情報屋「私は思い出せない…何かコツとかある?」

商人「そうだな…昨日見た夢は僕もなかなか思い出せない…そうじゃなくて生まれるよりももっと前を思い出す感じ」

情報屋「生まれた時の記憶も無いのにそんなことが出来るの?」

商人「記憶を探っているとある時…そういえば50年前にこんな事があったって急に思い出す」

情報屋「50年前…」

商人「その記憶に集中すると次々と色んな出来事を思い出す…すごく遠い記憶…でも覚えてる」


遠い記憶だから顔はうっすらとしか覚えていない

でもその時感じた感情や聞いた言葉はしっかり残ってる

僕が何をしたのかも…僕が誰だったのかも

ただ君が誰だったのかはなかなか思い出せないんだ


情報屋「君って…私のこと?」

商人「君もそうだし他の人もみんな…僕の記憶の中の誰だったのか中々紐づかないんだよ…不思議だよね?」

情報屋「そうね…その夢幻の記憶というのは幸せな記憶?」

商人「一言じゃ言えないかな…いつも苦しんでる…でもその中に幸せは確かに有った」

情報屋「そっか…私がいつも見る夢もそんな感じだった気がする」

商人「お?やっと自分の事を話し始めた…もっと教えて?」

情報屋「フフ情報ありがとう…とても興味深いお話だったわ」

商人「なんかズルいなぁ…結局君から何も聞き出せていない」

情報屋「じゃぁ一つだけ…私が生まれたのはずっと南の大陸にある古都キ・カイ」

商人「知ってる知ってる!超古代文明の遺跡がある所だね!!その話聞きたい!!もっとお話ししようよ」

情報屋「ウフフ…それじゃぁこれは知ってる?…」


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『荷室』


ゴソゴソ ゴソゴソ


商人「何の音かと思ったらアサシンだったのか」

アサシン「あぁ商人か」

商人「探し物?」

アサシン「物資の確認だ…どうやら水が不足している」

商人「もう無い?」

アサシン「樽に半分…ギリギリ3日という所か」

商人「港町まであと3日くらいだって情報屋が言ってたさ」

アサシン「下船出来るかが問題だ…レイスが沢山居るようでは子供達を連れて下船など出来ん」

商人「塩はどれくらいある?」

アサシン「塩は貴重品だから魔方陣を無駄に作るのは得策では無い」

商人「…そうか状況によっては塩が入手出来ないという事か」

アサシン「ほう…察しが早いな…なぜ分かった?」

商人「太陽が出ていないと塩の生産が出来ない…岩塩があるなら別だけど」

アサシン「ふむ…お前は商人の才があるようだ」

商人「この闇の世界では雨が降らないのも問題だね…穀物も家畜も死に絶える」

アサシン「そこまで読んでいるか…ではお前ならどう生き残る?」

商人「100日分の水と食料の備蓄は結構大変だねぇ…少人数なら良いけど」

アサシン「資金もあまり余裕が無いのだ」

商人「川に近い漁村でひっそり暮らすのが良いかもね…魚が十分獲れる前提だけど」

アサシン「やはり生き抜くのは厳しい環境と言わざるを得ない…か」

商人「僕の考えでは世界の人口は半分以下まで減ると思う」

アサシン「さらりと恐ろしい事を言うのだな」

商人「物流が完全停止してるんだから当然かな…今資金が無いのは僕たちには致命的だよ」

アサシン「一旦シャ・バクダまで戻らねばならんな…」

商人「魔女の所へは?」

アサシン「気球を使えばシン・リーンを経由してシャ・バクダまで1週間…それくらい持たせる資金はある」

商人「ジリ貧かな…早く行動しないと」

アサシン「耳が痛い…お前は16歳にしては良く考えているな」

商人「ハハまぁね…こういうのは得意なんだ」

トンテンカン トンテンカン



商人「!!?お?」

アサシン「盗賊…」

商人「良かった…立ち直ったみたい」

アサシン「すまんが私は盗賊に会わせる顔が無い…行ってやってくれんか?」

商人「分かったよ…きっと大丈夫さ」

アサシン「そうだと良い」

『甲板』


トンテンカン トンテンカン


商人「やぁ盗賊!!元気になったかい?」

盗賊「あぁぁぁ頭痛てぇ…飲み過ぎたらしい」

商人「手伝うかい?」

盗賊「あたりめぇだろ!!娘たちはどうした!?呼んで来い…俺ぁまだ横になりてぇんだ」

商人「呼んでくるよ」

盗賊「子供達も全員連れてこい!!ロープの縛り方やら何やら教える事がいっぱいあるんだ」

情報屋「私もやるよ!!」

盗賊「おぅ!ネーちゃん助かる!!んん?どうしたぁ!?乙女な顔すんじゃねぇ!!」

商人「ハハハ盗賊!!情報屋のヒミツを知りたくないかい?」

盗賊「おぉ…ガセネタじゃ無ぇだろうな?」

商人「確かな情報さ…フフフ古都キ・カイに行った事あるかい?」

盗賊「おう!!こないだ行って来たんだ…アサシンと一緒にな」

商人「へぇ…それは聞いて無かった」

盗賊「で…どんなヒミツなんだ?」

商人「ズバリ言うよ…ホムンルクス」

盗賊「おぉ…聞いた事ある…アレだ人口生命体ってやつだ…どっかに眠っているらしい」

商人「それを盗みに行かないかって言う話なんだ…」

盗賊「マジか!!ちょい待て…それと情報屋のネーちゃんとどういう関係があるんだ?」

情報屋「おいコラコラ…人に言って良い話じゃないぞ!!」

盗賊「俺は商人と話してんだ割って入ってくんな」

商人「続けるよ?…ホムンルクスを手に入れた報酬は情報屋を自由にして良いっていう条件さ…つまり体のすべてのヒミツが手に入る」

盗賊「奴隷になるってんだな?…よし乗った…只なぁちょい先約があるんだ」

商人「先約?」

盗賊「先に片づけねーといけねー問題があってな…その後で良いか?」

商人「構わないよ…行けるようになったら言って欲しい」

情報屋「あのね…」

盗賊「さぁ!!遊びはここまでだ…早く娘と子供たちを呼んで来い!!」

商人「行ってくる」タッタッタ

『港町の桟橋』

ザブーン ギシギシ


盗賊「こっちの方はレイスの被害があまり出ていないようだな」

アサシン「衛兵がこちらに気付いた様だ」

盗賊「接岸するぞ?」

アサシン「…なるほどアレは衛兵の恰好をしているが恐らく魔法師だ」

商人「見て!!あそこの光…光の魔法でレイスを焼き殺しているんだ」

盗賊「そりゃ頼もしいな…だが一般市民は見当たらんな」

商人「魔法師が居るとなると魔方陣での安全地帯も期待出来るね」

盗賊「碇降ろし始めてくれぇぇぇ!!接岸する」


ギギー ガコン


アサシン「衛兵と話をして来る…少し待っていてくれ」


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アサシン「下船許可が出た…私は商人と一緒に物資調達に出たいのだが盗賊はどうしたい?」

盗賊「確か丘の上に教会があったはずだ…ちとそこまで行ってくる」

アサシン「一人で行くのか?」

盗賊「女盗賊を背負って行く…蘇生魔法があるなら生き返らせる」

アサシン「…」

商人「魔術書によると蘇生魔法は…」

盗賊「うるせぇ…こいつは俺の女だ…他の奴の指図は受けねぇ」

情報屋「私はどうしよう?」

アサシン「盗賊と一緒に行動してくれないか?人を背負った状態ではレイスと戦えまい」

盗賊「娘と子供たちは留守番だ…まぁ船の中なら安全だろ」

アサシン「決まりだな?情報屋…このミスリルダガーを持って行け…対レイス用の護身用だ」ポイ

盗賊「無理に宿をとるより船の方が安全だ…集合は半日後に船…良いか?」

アサシン「構わない」

盗賊「お~い!!娘達!!土産買ってくるから子供達を頼んだ!!」

娘達「ムキーー」

『港町』


シーン


盗賊「こりゃ買い物は期待出来ねぇな…」

情報屋「丘の上の教会までどのくらいかしら?」

盗賊「すぐソコだ…もう見えてる」

情報屋「本当に蘇生出来ると思っているの?」

盗賊「出来る事を最後までやるだけだ…バカにすんな」

情報屋「この闇の世界は亡くなった人も傷んで行かない様ね」

盗賊「それが最後の望みだ…普通なら1日経たずに腐って行きやがる」

情報屋「あなたのやっている事は見ていて本当に美しくて痛い」

盗賊「そりゃありがとよ…只まぁ哀れな男の末路だ…恥ずかしくて見せれん」

情報屋「うらやましい…」

盗賊「悪りぃな…俺は恥ずかしい」

情報屋「そんな事言って良いの?…彼女聞いてるよ?」

盗賊「あぁそうだったな…やべぇな…もう知らないって怒り出す…いやもう怒ってる」

情報屋「フフフ」

盗賊「着いたぞ…こりゃ参ったな…死体だらけじゃねぇか」

情報屋「埋葬が間に合っていない様ね…蘇生出来るならこんな風には…」

盗賊「言うな…それでも良いんだ…行くぞ」

『丘の上の教会』


ガチャリ ギー


盗賊「誰か居るか~?」

僧侶「はい…どのようなご用件でしょうか?」

盗賊「おぉ僧侶が居るのか…もう死んで5日程経ってるんだが…蘇生魔法で生き返らせれないか?」

僧侶「こちらのご婦人ですね?」

盗賊「そうだ…頼む!!」

僧侶「蘇生魔法は魂が肉体から離れてしまった後では遅いのです」

盗賊「こいつの魂は俺の中にある!!俺が抱いておくから…それでもダメか?」

僧侶「…」

盗賊「頼む!!」

僧侶「それは生きているという事です…蘇生魔法の必要はありません」

盗賊「生きて…居る…だと?」

僧侶「体は亡くなってしまいましたが…その魂は別の体と結合して生きているのです」

盗賊「なら元に戻してくれ」

僧侶「その様な魔法は有りません…ですが祝福をすることは出来ます」

盗賊「祝福するとどうなる?」

僧侶「魂の結合を祝福します」

盗賊「どういう事だか分からん」

僧侶「魂の結合は永遠…それを祝福するのです」

情報屋「…結婚」

僧侶「俗世ではそういう言い方をしますね」

盗賊「違う…そうじゃない…」

情報屋「盗賊!!否定しちゃダメ…彼女は聞いているよ?」

盗賊「…悪りぃ…俺は祝福されたいのか?…お前はどうしたいんだ…いや違う知ってる」

盗賊「お前ならこう言う…そんなの分かってるでしょ?…俺はお前なのか?」

僧侶「…どうされますか?」

盗賊「…頼む」

僧侶「立会人はあなたでよろしいですか?」

情報屋「はい…祝福します」

僧侶「分かりました…」


主があなたを祝福しあなたの魂を守られますように

主が御顔をあなたに照らしあなたの魂を恵まれますように

主が御顔をあなたに向けあなたの魂に平安を与えられますように


僧侶「あなた達の永遠を祝福します」



---どうしてこうなった?---

『海が見えるあばら家』


ヒュゥゥゥ


情報屋「ここは?」

盗賊「昔使ってた隠れ家だ…様子を見に来たがまだ使えそうだ」ガサガサ

情報屋「良い場所ね…」

盗賊「女盗賊…帰って来たぞ」ヨッコラ セト

女盗賊「…」

情報屋「彼女をどうするの?」

盗賊「教会の外で野ざらしには出来ねぇからしばらくここに居させてやるんだよ」

情報屋「埋葬しないんだ」

盗賊「落ち着いたら海が見える一等地に埋葬してやるよ…娘と子供達もここで生活できるようにする」

情報屋「それは良い考えね」

盗賊「只な?ここで泥棒稼業は稼ぎが少ねぇんだ…金持ちが居ねぇ」

情報屋「商人にでも転職したら?」

盗賊「その言い方…女盗賊にそっくりだよ…まぁそういう生き方も有りっちゃ有りだ」

盗賊「さて…ちぃとその辺片づけて必要な物盗んでくる…お前は女盗賊と一緒にここに居てくれ」

情報屋「分かったわ…家の中は少し掃除しておく」

盗賊「安全な場所じゃぁ無ぇからレイスには注意してくれ…じゃ行ってくるな」ダダッ

情報屋「いってらっしゃい…」


---2人はこういう風に生活していたんだ---

『数時間後』

ヨイショ ヨイショ

情報屋「あら?お帰りなさい…随分沢山盗んできたのね?」

盗賊「おぅ…ちょいと荷を引くの手伝ってくれ…クソおめぇ」

情報屋「押せば良い?」グイ

盗賊「空き家が沢山あってな…資材はこれで困らん」

情報屋「これって馬車よね?馬で引いて来れば良かったのに」

盗賊「逃げたか死んだか…どこにも居なかったんだ」

情報屋「馬車は何処に置くの?」

盗賊「裏の納屋に入れる…片づけは後にして一旦船に戻る」ヨッコラ

情報屋「戻る前に女盗賊に会って行って?」

盗賊「んぁ?何かあったのか?」

情報屋「部屋を片付けていたら多分彼女の昔の洋服が出て来てね…着替えさせてあげたの」

盗賊「おぉそりゃ良い!!着てた物が汚れっぱなしだったな…ふんっ!!」ヨッコラ セト

情報屋「お疲れ様…一人で馬車引っ張るなんて大変だったでしょう?」

盗賊「まぁな…さぁちぃとアイツに会って来るわ」タッタッタ


『部屋』

ギー バタン

盗賊「おぉ…綺麗になったじゃねぇか」

女盗賊「…」

盗賊「顔色も良くなったな」

情報屋「白粉と口紅をちょっとね」

盗賊「ありがとな…俺にはこんな事出来ねぇ」

情報屋「その胸につけてるネックレスは?」

盗賊「こりゃ俺がこいつにやった虹のしずくって言うレアアイテムだ…幸せを呼ぶ物らしい」

情報屋「本当に幸せを呼ぶのね」

盗賊「ヌハハそうだと良いな…さぁ船に戻るぞ…鍵掛けるから先に出ろ」

情報屋「うん」

盗賊「じゃぁ子供達連れて来るまでちぃと待ってろ…すぐ賑やかになるぞ?行ってくるな」ノシ

ガチャリ ガチャ

『船』

ギシギシ

盗賊「戻ったぞ!!」

娘1「お帰り~~お土産は?」

盗賊「すげぇ土産がある」

娘2「アレ?お姉ぇは?」

盗賊「まだ秘密だ」

娘3「土産って何さ!!手ぶらじゃん」

盗賊「見てからの楽しみだ…ところでアサシンは帰ってるか?」

娘4「船長室で地図眺めてる…それより土産早くヨコセ」

盗賊「分かってる!!お前等!!船降りるぞ…身支度しろ」

娘1「え!?マジマジマジ?」

盗賊「子供達も全員身支度させろ…10分でヤレ」


うおぉぉぉぉぉみなぎってキターーー

ムキーーーーーー

ドタバタ ドタバタ



『船長室』

盗賊「戻ったぜ…そっちは物資買い付け済んだのか?」

アサシン「あぁ十分では無いが30日程度の食料は確保した…そっちは用事済んだのか?」

盗賊「まぁな…で…昔使ってたあばら家を子供達が住めるようにしてきた」

アサシン「船から降ろすのか?…良い案だ」

盗賊「馬車に荷物積んでこれから出て行く」

アサシン「…お前はどうするつもりだ?」

盗賊「商人にちと頼みたいことが合ってな…あばら家を魔方陣で安全に守ることが出来たなら一旦船に戻って来る」

アサシン「盛り塩で作るなら直ぐに風化してしまうな…得策では無い」

盗賊「これだ…」ガチャリ

アサシン「それは?…ゾンビ退治用の銀の杭か?」

盗賊「そうだ…これを地面に打って魔方陣に出来るならあばら家は安全になる」

アサシン「なるほど試してみる価値ありだな」

盗賊「お前も来るか?」

アサシン「私は荷物の到着を待っている必要がある…お前達だけで行ってこい」

盗賊「そうか…みんなでバーベキューしたかったんだがな」

アサシン「肉はあるのか?」

盗賊「盗んできた食い物がある…荷物受け取ったらお前も来い」

アサシン「場所が分からんな」

盗賊「情報屋!!お前はあばら家の場所を覚えているな?後でアサシン連れて来い」

情報屋「分かったわ…おいしいごちそうを楽しみにしておく」

盗賊「じゃ…船に積んでる酒も持って行くぜ?もうこの船には必要無いだろうしな」

アサシン「もう魔方陣が上手く行く前提なのだな…」

盗賊「やってダメなら戻って来る…簡単だろ?」

『馬車』


ワイワイ ワイワイ


盗賊「よっし全員乗ったな!?」

娘「いえ~~~い!!」

子供達「ワイワイ…キャッキャ」

盗賊「これからお前たちの新しい家に行く!!その名はユートピア」

娘「ゆーとぴあああああ!!」

盗賊「出発!!」パシン ヒヒ~ン

商人「ハハハ良いのかい?こんなに期待させて…」

盗賊「お前の魔方陣次第だ…失敗はゆるさん」

商人「ハードル上げないでくれよ」

盗賊「塩の代わりに銀の杭…俺にしちゃナイスアイデアだろぅ?」

商人「まぁ退魔作用のある物なら何でも良いみたいだから…多分上手く行くね」

盗賊「どんだけ大きく作れるもんなんだ?」

商人「正確に測量出来れば大きさに制限は無いらしい…杭の数と質量次第かな」

盗賊「測量か…糸は10メートルくらいしか持ってないな」

商人「20メートル四方で作れば良いかな…十分でしょ」

盗賊「その銀の杭で数は足りるか?」

商人「…今計算してる…もっと入手出来るの?」

盗賊「出来るっちゃ出来るが…あまり盗んで足が付くのもイカン」

商人「ハハハ…全部盗んで来たんだ?」

盗賊「俺ぁドロボーだ…それしか能が無ぇ」

商人「今はね物価がものすごく上がっているんだ…今盗んだ物はとても貴重だと思うよ」

盗賊「そんな杭でもか?」

商人「この杭も武器になるよね?そのうち必ず価値が上がる」

盗賊「なら盗むなら今の内か」

商人「ハハハそうとも言うけど…ほどほどにね」

『あばら家』

もうちょっと右…そうソコ!!

次で最後…向こうの木の根元あたり

この辺か?

糸をちゃんと引っ張って…そうそうそう

あと2歩右…ソコソコソコ


盗賊「これで井戸も範囲に入ってるか?」

商人「多分イケてる」

盗賊「結構広いな…しかし…効果が出ているのか分からん」

商人「上を見て」

盗賊「お?…光か?ここだけ光が届くのか?」

商人「驚いた…退魔の魔方陣は工夫すれば闇を祓えるという事だ…どういう理屈なんだろう」ブツブツ

盗賊「なんだか分からんが最高のユートピアになったじゃねぇか」

商人「良かったね」

盗賊「おーい!!子供達!!出てきて良いぞーー!!」

子供達「わーい!!」ゾロゾロ

娘達「うぉぉぉぉーーー」ドタバタ

盗賊「納屋に家財道具が入った馬車がある!!好きな物出して好きな所に置けぇ!!」

商人「みんなあんまり遠くには行かないで!!」


うおぉぉぉぉーーー

ムキーーーー

テンヤ ワンヤ

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『庭』

ジュージュー

商人「やっぱりバーベキューは最高だね」パク モグ

盗賊「もうちっと旨い肉だと良かったんだがな」ガブガブ

娘1「お姉ぇにも持って行くね」

盗賊「そうしてやってくれぇ」

商人「アサシン達遅いね」

盗賊「噂をしてれば来るんじゃねぇか?ヌハハ」

商人「そういえば情報屋の事なんだけどさ」

盗賊「なんだ?」

商人「情報屋になったいきさつ…どうやら本気でホムンルクスを探しているらしいんだよ」

盗賊「あの話は冗談では無いのか?」

商人「聞いた話の受け売りなんだけど…ちょっと気になってね」

盗賊「なんで又お人形さんなんか欲しいんだ?」

商人「魂の器になってるとか…」

盗賊「ほう…てことは女盗賊の魂を入れれば動き出すって算段か?…それなら俺も関わらせろ」

商人「それが出来るかどうか分からないけど…彼女が言うには精霊の魂を入れる器になるらしい」

盗賊「…なるほどアサシンがあのネーちゃんを連れまわしてる理由がそれだな?」

商人「多分ね」

盗賊「でもそれじゃぁ情報屋がお人形さんを欲しがる理由の説明になって無ぇ」

商人「彼女の本当の職業は考古学者なんだよ」

盗賊「道理でお前等と話が合う訳だ」

商人「精霊起源説が専門なんだってさ…彼女はすごい詳しいよ」

盗賊「俺にゃあんまり興味のない話だな」

商人「あ!!噂をしてれば何とやら…」

アサシン「…これはどういう事だ?なぜ光が差す?」

情報屋「あらぁぁすごく良くなったじゃない」

商人「僕もビックリだよ…さぁさぁ2人ともそこに掛けて食べよう」

情報屋「じゃぁお言葉に甘えて…ウフフ」モグ

アサシン「…分かったぞ…これは魔女の所と同じ環境だ」

商人「へぇ~~そうなんだ…僕も行ってみたいな」

アサシン「食事が終わったら気球で向かう」

盗賊「今日くらいゆっくりして行けば良いじゃねぇか」

アサシン「そういう訳にも行かないのだ…港町の状況から推測してシャ・バクダの状況はもっと悪いと推測している」

商人「僕もそう思うよ…最悪全滅してる」

アサシン「シャ・バクダには銀も魔法も無い…戦う手段が無いうえに自給できる食料も乏しい」

商人「水も無いね」

アサシン「物流が商隊に依存しているのが致命的だ…逃げ場が何処にもないのだ」

盗賊「ちぃぃ…今から酒飲もうと思ってたのによ」

アサシン「酒なら気球の中でも飲めるでは無いか」

情報屋「この小さな家では子供たちが寝たら私達が横になる場所なんかないわ…」

盗賊「まぁそうなるな…しゃーねぇ行くか」

商人「魔方陣が上手く行って安全そうだから娘たちに任せてしまって良さそうだね」

盗賊「おい!娘1!!今日からお前が女盗賊の代わりをヤレ…みんなの母さん役だ…出来るな?」

娘1「またどっか行くの?」

盗賊「大丈夫だ…用が済んだらすぐ帰って来る」

娘1「誰か来たらどうすんのさ?」

盗賊「お前が判断しろ…このミスリルダガーを渡しておく…何かあったらコレで子供たちを守れ」ポイ

娘1「魔物と私が戦うの?マジで言ってる?」

盗賊「大丈夫だ…女盗賊はそうやってお前たちを守って来たんだ…今度はお前の番だ」

商人「何かあっても家の中に逃げれば魔物は追って来ないよ」

盗賊「食い物は納屋の中に入れてある…上手い事節約して食え」

娘1「…分かった」

盗賊「それから俺の持ち金を預けておく…少しづつ使うんだぞ?いいな?」

娘1「心配しなくて良いよ…お姉ぇにいろいろ教えてもらったからさ」

盗賊「…ちょっと待て…知らん男を家に連れ込むのだけはヤメロ…俺が帰れなくなる」

商人「アハハハ」

娘1「ちょ…そんな訳無いじゃん」

盗賊「女盗賊とはそれが原因で揉めたんだ…もうやめてくれ」

娘1「お姉ぇは仕事なんだからしょうがなかったんじゃないの!?」

盗賊「ああああもう良い!兎に角だ…家族だけしっかり守れ…いいな?」

娘1「分かってるってうっせーな」

情報屋「ウフフ家族って良いね…うらやましい」

盗賊「じゃ食ったら行くぞ!!」ガブガブ

『気球』


盗賊「よし…荷物これで全部だな?上げるぞ!!」


フワフワ


商人「初飛行…うまく飛びます様に」

情報屋「いきなり本番なんだ…怖いなぁ」

盗賊「テスト飛行なんかやってる暇無ぇんだよ…落ちるときゃゆっくり落ちるから安心しろ」

アサシン「私も気球の操作には慣れて置かないとな」

盗賊「気付くのが遅せぇんだよ…次から自分でやってみろ」

アサシン「縦帆の操作が分からん…どうやるのだ?」

盗賊「とにかく触って勘で掴め!風の受け方で進み具合に差がある…あとは風向きの先読み…これは経験だ」

商人「ちょっと!!マズイかも…レイスが飛んで来る」

盗賊「何ぃ!!飛ぶなんて聞いてねぇ!!アサシン!!俺は気球の操作で忙しい…なんとかしてくれ」

アサシン「分かっている…商人!!なんとか魔方陣を作れないか?」

商人「塩が足りない…銀が欲しい!!何か持ってない?」

盗賊「銀なんか持ち歩いてる訳無ぇだろ!!他に何か無いのか!!」

商人「銀砂とか水銀とか?」

盗賊「んなもん無ぇって…ん?銀貨!!ぬあぁぁぁぁぁ全部置いて来ちまった」

情報屋「私持ってる」ジャラリ

商人「ナイス!!って僕も持ってたよハハハ」

盗賊「ハンマーがある!!こいつで床に打ち込んどけ!!」ポイ ドサリ

商人「少し時間頂戴」

アサシン「来るな…ギリギリまで寄せて倒す…レイスが近くに来ても焦るな」

情報屋「私はどうすれば…」

アサシン「見張りだな…複数体来ると厄介だ」

盗賊「戦闘はアサシンに任せて良い…何も出来ん奴に見えるが戦闘だけは敵うやつが居ねぇ」

アサシン「一言多い」ダダッ サク


レイス「ンギャアアアーーー」シュゥゥゥ

情報屋「上の方に沢山居る…数え切れない」

盗賊「地上より空の方に多い訳か」

アサシン「考え方を間違っていたかもしれん…剣士達は気球を使っていない可能性も出てきたな」

盗賊「よそ事考えてないでしっかり戦えい!!」

アサシン「分かっている…お前たちにレイスは近づけさせん」ダダッ サク ンギャアーーー

盗賊「これ以上高度上げると陸地が見えなくなる…もう速度は上げれん」

アサシン「振りきれる速さでは無いな…商人!魔方陣はまだか?」

商人「もう出来るよ…これで最後」トントントン

商人「これで良い筈」

情報屋「レイスは一定の距離で集まってる」

商人「…これだけ集まってると気球から降りるに降りられなくなりそう」

アサシン「何故空の方にレイスが多いのか…」

商人「理由がありそうだね?」

アサシン「温度が高いのが苦手…いや気圧か?」

商人「空に居た方が良い理由がある…違うなそこじゃなきゃいけない…なんでだろう」

アサシン「地上には少ない…うーむ」

商人「もしかしたら地下には居ないのかもね」

情報屋「古代文明は必ず地下にあるの…それって安全だから…よね?」

商人「分かったよ…空に行くほど狭間が深い…地上に行くほど浅い…つまり地下は狭間から遠いっていう事だ」

アサシン「商人…君は賢いな」

情報屋「古代人は厄災の時に起きる闇から逃れる為に地下に都市を作った…謎が一つ解けた」

商人「みんなを避難させる場所は地下が良いね」

情報屋「進化論での人魚の発生も説明が付く…これは大発見よ」

アサシン「我々が生き延びるヒントがこんな所で分かるとは…」

商人「確かめるまではまだ断定出来ないよ…何か方法無い?」

アサシン「思い当たるのはシャ・バクダ遺跡しか無いな…しかし深部への入り口はまだ発見していない」

盗賊「おい!!そういう話は後にしてマズこの状況をどう乗り切るか相談してくれぇ!!」

商人「盗賊?多分僕たちは魔方陣の中に居る限り何処に居ても安全だよ」

盗賊「うじゃうじゃ居るレイスに囲まれて居てもか?見て見ろ!!100じゃ効かねぇぞこりゃ…」

商人「百でも千でも安全な所からやれば全部処理できると思うな…レイスはこっちに手を出せないんだし」

アサシン「ハハハ君はさらりとスゴイ事を言うね…君の言うとおりだ」

盗賊「なら気にせず普通に着陸すりゃ良いってか?マジで言ってんのか?」

商人「そうだね…囲まれていても安全に変わりはない」

盗賊「お前…女盗賊が死んでから人が変わったみてぇだな…俺にタメ張りやがる…あいつの影響か…」

商人「そうかい?昔からこういう風だよ…昔からね」

盗賊「わーったよ…もう俺は何も言わねぇ!!」

商人「じゃぁ続けようか…」

古代文明と言えば確か光の国シン・リーンの地下にもあった筈だよね?

良く勉強したのね?そうよ…ただし深部への扉を開く方法がまだ未発見なの

他には無いの?

古都キ・カイは深部へ入る事は出来るけれどここからは遠すぎる

そもそも地下深く穴を掘ると水で埋まってしまうなぁ…

人間の力だけでは20メートルも掘るのが限界ね

やっぱりシャ・バクダ遺跡が現実的だね

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『追憶の森上空』

フワフワ ビュゥゥゥ

盗賊「このまま高度下げていくぞ!」

商人「やっぱり仮説通りだ…レイスがこちらを見失って数が減り始めている」

盗賊「どういうこった?」

商人「アサシンが言うには狭間の深さで時間の流れが違うらしい…だから時間の向こう側が見えなくなる」

盗賊「空が黒い理由がそれだってか?」

商人「多分ね…このまま高度を下げればどんどんレイスは見えなくなっていくよ」

アサシン「魔女に教わったのだ…その原理を利用してエルフの森や魔女の住処を隠しているそうだ」

盗賊「魔女の住処の場所は分かってんのか?」

アサシン「一度行った事があるのだが妖精の案内無しでは迷うかもしれん」

盗賊「俺ぁ妖精が見えねぇんだけどよ…お前には見えてんだろ?今居ねぇのか?」

アサシン「空が落ちて以降一度も見ていない」

商人「そういえばそうだね…全然見なくなったなぁ」

盗賊「お前も見えてたんか!!」

商人「レイスに捕まらないように隠れて居るのかもね」

アサシン「まぁ心配するな大体の場所は覚えている」

盗賊「このまままっすぐ降りて良いのか?」

アサシン「もう直ぐ先に森の切れ目がある…草原に出るから適当な林を見つけてそこに降りてくれ」

『追憶の森』

フワフワ ドッスン

盗賊「なんだよレイス一匹しか居ねぇじゃねぇか…心配して損したぜ」

アサシン「私が倒してくる…魔女は北の方角だ…直ぐに出発するから準備してくれ」

盗賊「商人!!気球を隠すから手伝え…情報屋は適当に木材拾って集めてほしい」


ンギャアアアーーーー シュゥゥ


アサシン「この道をまっすぐ行って目印を見つけたら右に林を入っていく」

盗賊「この道は馬車が通った跡があるじゃねぇか」

アサシン「シン・リーンの王家が魔女と精通しているのだ」

盗賊「てことはハチ合わせる可能性もあるな」

アサシン「ハチ合わせてもどうという事は無い…私はすこし面識があってな」

盗賊「王家とか?マジかよ…」

アサシン「…と言っても子供なのだがな」

盗賊「面識があっても意味無ぇじゃねぇか」

アサシン「まぁそう言うな…体は子供でも精神年齢は私よりずっと上なのだ」

情報屋「シン・リーンの王家は魔術の修行で精神と時の門へ入ると聞きました…もしかして」

アサシン「そうだよシン・リーンの姫だ…40年ほど修行したと聞いた…あれから4年…」

盗賊「意味わかんねぇな…」

アサシン「ずっと修行を続けていれば80年程という事になるか」

盗賊「計算が全然合わんのだが…」

商人「木に御札が貼ってある…目印ってコレの事かい?」

アサシン「そうだ…そこを右に分け入って20歩ほど歩いた先に入り口がある」

商人「20歩…なんか細かいね」

アサシン「20歩以上歩いてしまったら迷っている…そういう事だ」

商人「へぇ面白いね」

アサシン「ここから先は一歩づつ離れない様に歩いてくれ…一歩間違うと迷う」

盗賊「へいへい…」

情報屋「不思議ね」


1歩 2歩 3歩…………20歩

『魔女の塔』

盗賊「うぉ!!なんだココ!!いきなり昼間…」

情報屋「お花畑と…塔!!これは遺跡の一部だわ!!」

アサシン「迷わず来れたな…しかし様子がおかしい」

盗賊「なんでだ?隠れるにゃ良い場所じゃねぇか」

アサシン「魔女からの挨拶が無い…ゴーレムも居ない…もしや」

情報屋「ここは火の光が差すのね…花を見て来て良いかしら?」

アサシン「待て…私から離れるな」

情報屋「あら?ミツバチ…」

盗賊「何か居る気配は無ぇぞ?」

アサシン「ゆっくり塔まで進む…私の後ろから離れるな」テクテク

商人「なんか安全そうだね…おかしな感じはしないけど」

アサシン「いや…やはりおかしい…妖精も居なければ鳥も居ない」キョロ

盗賊「静かっちゃ静かだが…あの塔に魔女が住んでるのか?」

アサシン「魔女!!私だ…アサシンが来た」


シーン…


盗賊「誰も居なさそうだな」

アサシン「私たちは案内されて居ないのだが…仕方あるまい行って見るか」

盗賊「そんなに気にする事か?」シュン スト!!

アサシン「!!!!」

盗賊「うぉ!!…矢だ」

??「動くな!!」

商人「女の声」

盗賊「にゃろう危ねぇじゃねぇか…」スラリ

アサシン「待て盗賊…武器を抜くな…相手がどれくらい居るのか分からん」

??「今のは警告だ…引き返せ」

アサシン「魔女に会いに来た…私は魔女に面識がある…お目通り願いたい」

??「魔女はもう居ない…亡くなった」

アサシン「それは本当か?」

??「繰り返す…引き返せ」

アサシン「お前は誰だ!?なぜここに居る…姿を現せ」

??「これ以上近づくと[ピーーー]事になる…引き返せ」チラリ

盗賊「エルフだ…やべぇな」

アサシン「エルフよ!!この場所をどうするつもりだ?」


シュン ザク

アサシン「ぐぁ!…」

盗賊「アサシン!!」

女エルフ「エルフと人間は戦争中だ…ここに近づくことは許さない」シュン ザク

盗賊「がぁ!!…腕やられた」

商人「まずいね…塔の上からだと一方的だ」

アサシン「相手がエルフでは部が悪いか…下がる」

商人「僕たちは引き返す!!もう撃たないでくれ」

アサシン「エルフよ…最後に一つだけ…器は古都キ・カイに在ると魔女に伝えてほしい」

女エルフ「魔女は…もう居ない…立ち去れ」

盗賊「1匹しか姿を見せなかったがどう思う?」

アサシン「アレは囮だな…おそらく他にも数匹隠れて居る…戻るしかない」

商人「対話しようとしたら撃って来るのって…なにか隠してる気がする」

盗賊「そうだな…俺らを生きて返すっていうのも解せん」

アサシン「もともとエルフは殺生を好まない…普通なら捕らえられる…返すという事は理由がある筈」

商人「魔女の塔には魔女が住んでる以外に何かある?」

アサシン「情報屋がアレは遺跡だと言ったな?」

情報屋「遺跡の一部よ…もしかすると地下への入り口があるかもしれない」

商人「なにか不可解だなぁ…」

盗賊「ひとまず気球に戻って怪我の手当てが先だ…アサシンは腹に矢を食らっている」

アサシン「急所は外れている…死にはせん…それより魔女が居ないとなると…手詰まり」

盗賊「一旦シャ・バクダへ戻るのか?」

アサシン「そうなるな…剣士達はそちらへ戻っている可能性もある」

盗賊「俺ぁちと考えたんだがよう…ここで降りる」

アサシン「…どうするつもりなんだ?」

盗賊「港町に残した子供たちが心配なんだ…あいつらを放っておけん」

アサシン「ううむ…」

盗賊「こんな状況じゃ泥棒やってる場合でもねぇし商人でもやって子供達を守ってやりてぇ」

アサシン「盗賊ギルドを抜けるのか?」

盗賊「抜けるって訳じゃねぇが今は協力出来ねぇ…女亡くして心の整理もつかねぇし」

アサシン「分かった…私は一旦本部へ戻って体制づくりをやる…盗賊は港町に残した船の管理を頼む」

盗賊「あの船は俺が自由に使わせてもらうぜ?まぁ…港町に来たら又寄ってくれぇ」

アサシン「商人!お前はどうする?」

商人「僕は元々盗賊の養子さ…僕も港町に戻って商人をやるよ」

アサシン「そうか…残念だが仕方あるまい」

盗賊「そうだな…100日経って闇の世界が開けたら又連絡する…それで良いか?」

アサシン「こちらからも連絡を送る…話は決まったな?」

盗賊「よう情報屋のネーちゃん…いろいろありがとよ…恰好悪い所を見せちまった

情報屋「こちらこそ…家族の絆を見せてもらって良い経験をしたわ」

盗賊「まぁ…アサシンの事頼むわ…俺には手に負えんかった」

アサシン「おいおい…」

盗賊「んじゃここで分かれよう…おい商人!!今から馬盗みに行くぞ…付いてコイ」

商人「え?今?レイス来たらどうするの?」

アサシン「盗賊!!ミスリルダガー持っていくか?」

盗賊「要らねぇよ…俺にぁ銀の杭がある!これで十分だ…さぁ付いてコイ」

商人「ちょっと待ってよ…僕あんまり走れないからさぁ…」

盗賊「2Kmくらい東に小さな村があんだ…まずそこまで行くぞ」タッタッタ

商人「おーい!!待って」タッタ

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アサシン「さぁ…私たちは気球で本部へ戻るぞ…」

情報屋「一人で気球の操作は大丈夫かしら?」

アサシン「やってみる他にあるまい」

情報屋「私も手伝うわ」

アサシン「ハハハ当然じゃないか…君は私の助手だ」

情報屋「矢の傷は大丈夫?」

アサシン「これくらいはどうという事は無い…さて…行こうか」

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白狼の盗賊団編

   完

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『セントラル』

---事件当日---

ドーーーーン ドーーーーーン

女戦士「外郭で大砲を撃っているのか…外で戦闘が始まったか…」

女エルフ「ドラゴンが居ない…」

女戦士「恐らく雲の上だな」


女海賊「戻りぃぃ!!…マントとフード持ってきたよ」

女戦士「よし…戻ったか」

女海賊「早く羽織って…女エルフもほら」ファサ

女戦士「似合うか?」ファサ

女海賊「超かっけー…んで…こっちはどうなってる?」

女海賊「今しがた第二皇子とダークエルフが戻った」

女海賊「指輪は?」

女戦士「恐らくダークエルフが所持していると思われる…そうだな?女エルフ」

女エルフ「左手に握ってる」

女戦士「剣士!!準備しておけ」

剣士「分かってる…もう姿を消しておいた方が良い?」

女戦士「そうだな…私達にも見えなくなってしまうから立ち位置に注意してくれ」

女エルフ「ダークエルフの会話…様子がおかしい」

女海賊「え…この距離で聞こえてんの?」

女エルフ「約束が違うって…」

女海賊「なんかヤバそうだね…話してるのは王様かなぁ?」

女戦士「そうだ…国王を囲んでいるのが近衛…アレが近くに居る間は手を出さん方が良い」

女海賊「近衛が武器構えだしたって事は…女エルフ!!会話聞こえてるんでしょ?何言ってんの?」

女エルフ「指輪の破壊をダークエルフがやる条件だったのに渡せって言われて…」

女海賊「あ!!!王様が…倒れた」

女戦士「ダークエルフに首をはねられた様だ…やはり今は状況を見ているしかないな…」

女海賊「やっぱ近衛に取り押さえられるね」

女エルフ「左手を切り落とされた…指輪はあそこ」

女戦士「まだ待て」

女戦士「衛兵が集まって来出したな…ん?あれは…あれは法王だな」

女エルフ「国王への手当てを指示してる…まだ死んで居ない様子」

女海賊「お…法王が指輪を拾った」

女戦士「よし…チャンスが来るぞ…剣士!!法王の後を付けてチャンスを見て指輪を奪え」

剣士「分かった」

女戦士「奪った後は姿を消して下水まで直行しろ…女エルフは剣士の姿が見えなくても気配で追えるな?」

女エルフ「うん」

女戦士「では剣士!!行ってこい」

剣士「…」シュタ シュタッ

『法王庁』

女戦士「よし…法王は一人で法王庁へ戻って行くな?」

女海賊「法王庁の裏に衛兵2人…あそこは逃走に使える」

女戦士「女エルフ!!あの二人を弓で狙えるか?」

女エルフ「大丈夫…でも…」

女戦士「今は情けを考えるな…ヘッドショットで即死させろ」

女エルフ「…」

女海賊「法王が正面の扉から中に入って行った」

女戦士「よし…付いて行ってるな?そろそろ動き出すぞ」

女エルフ「私…」

女海賊「ねぇ!!法王庁の中で光!!何か起こってる」

女戦士「ちぃぃぃ…穏便には行かんか…女エルフ早くヤレ!!剣士が危険だ」

女エルフ「ごめんなさい…」ギリリ シュン シュン

女海賊「他の衛兵はまだ気づいてない…どうしよ?」

女戦士「女エルフと女海賊は法王庁の裏口で中の様子を探れ…私は逃走ルートを確保しておく」

女海賊「らじゃり!!…女エルフ行くよ」タッ

女エルフ「う、うん」タッ

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女戦士(よし…定位置に付いたな?)


ゴゥ ドーーーーーーン


女戦士(外郭か…ん!!?上か!!)

女戦士「なにぃ!!!ドラゴンライダーだ…と?」


ゴゥ ドーーーーーーン

敵襲!!敵襲!!

ドラゴンライダー複数!!

戦闘態勢いそげぇぇぇ

弓だ!!弓で近づけるなぁあああ

信号弾撃てぇぇぇ!!


ゴゥ ドーーーーーーン


女戦士「ライダー8匹…圧倒的では無いか…」ボーゼン

女戦士「はっ!!見とれている場合では無い…」ダダッ

女戦士「女海賊!!撤収だ!!」

女海賊「ヤバイヤバイヤバイヤバイ…」

女戦士「女エルフはどうした!!中か!?」

女海賊「ああああああ魔王が!!魔王が!!」

女戦士「!!?こ、これは!!空が落ちる!!」

女海賊「ヤバイ剣士が狂ってる…」

女戦士「伏せろ!!ブレーーース」


ゴゥ ドーーーーーーン  パラパラ


女海賊「剣士が死ぬ!!私も行ってくる!!」ダダダッ

女戦士「待て…ちぃぃ三人とも中か…私はここで動けんでは無いか」


---冷静になれ---

---中の衛兵は全員倒れている---

---中央に居るのが法王---

---奴に流れ込んでいる影…アレが魔王か?---

---女エルフは光の矢をつがえて…---

---剣士はどこだ?…法王の足元…倒れている---

---待て…法王の腕が無い---


---シュン! バシュ!---

---法王を光の矢が貫いた---


法王「うがぁぁぁぁぁ」ヒデブ

女エルフ「剣士!!」グイ

女海賊「女エルフ!!剣士背負って5秒で裏口!!爆弾点火」

女エルフ「…」ヨッコラ

女海賊「5」

女エルフ「くぅぅぅ」ダッ

女海賊「4」

女戦士「私が盾になる!!」ダダッ

女海賊「3」

女戦士「早く行け!!」

女海賊「2…お姉ぇ耐えて!!」

女海賊「1」


ドコン!ドコン!ドコン!ドーーーン!


女海賊「ギリセーフ!!女エルフこっち!!」グイ

女エルフ「ハァハァ…」タッタッタ

女海賊「お姉ぇ!!先行くネ!!しんがりヨロ…あと3秒で煙幕」

女戦士「ぐふっ…つぅぅ」---盾が無ければ死んで居るな---

女海賊「お姉ぇ!!聞いてんの!?」

女戦士「今行く…」

女海賊「煙幕!!早く下水まで!!」モクモクモク

『下水』

ゴゥ ドーーーーン

女海賊「はぁぁぁギリ間に合った…お姉ぇわ何やってんの?」

女戦士「下水の蓋を開けられん様に細工だ…先に行け…直ぐに済む」ガチャガチャ

女海賊「女エルフ!?剣士は大丈夫そう?」

女エルフ「死んでは居ないと思う」

剣士「…」グッタリ

女海賊「早く帰ろ…ここはヤバイ」

女戦士「指輪はどうなった?」

女エルフ「私が持ってる」

女戦士「よし…無くすなよ?」

女海賊「急にいろいろ始まって何が何だか…」

女戦士「混乱している今が撤収チャンスだ…走れ!!」

女海賊「お姉ぇ!!怪我は?」

女戦士「回復魔法をもらわないと直に死ぬレベルと言えば分かるか?」

女海賊「ヤバ…」

女戦士「今は無駄口叩いていないで走れ…」

女エルフ「前にラットマンと人間…ハァハァ」

女戦士「走り抜けろ」

女海賊「そういえば剣士ってクッソ重いんだよなぁ」

女エルフ「うん…重い」

女戦士「回復魔法をもらえれば私が背負う…出来るか?」

女エルフ「お願い…回復魔法!」ボワー

女戦士「ふぅぅ…助かった…な」ヨッコラ

女海賊「お姉ぇやせ我慢してたな?」

女戦士「なるほど…剣士は重いな」タッタッタ

女海賊「んん?正面!!衛兵がなんか黒いのと戦ってる」

女エルフ「レイス…」

女海賊「なんでレイスが居る訳?…まって出口がなんか暗い!!」

女戦士「女エルフ!!光の矢を準備しておいた方が良い」

女エルフ「わかった…照明魔法!」ピカー

女海賊「外の気球飛ばすのに5分は掛かる…女エルフ!足止め5分お願い」

女エルフ「うん…やってみる」

『下水出口』

女海賊「ちょ…マジか…陸に上がってたクラーケンが城まで登って行ってる」

女戦士「ライダー8匹とクラーケン…これは地獄だ」

女海賊「これさぁ…女盗賊探す余裕なくね?」

女戦士「無事を祈れ…この状況では無理だ…想定外が過ぎる」

女海賊「そこら中で戦闘になってる…」

女戦士「見ろ!!ドラゴンライダーが城に取り付いたぞ」

女海賊「早すぎる…こっちに気付く前に離脱しないと」

女戦士「こちらも無事では済まんぞ…レイスが来た」

女エルフ「早く気球へ行って…ここは私が食い止める」ギリリ シュン!

女海賊「5分稼いで!!」

女戦士「走るぞ!!」タッタッタ


レイス「ンギャアアアーーーー」


女エルフ(分かってる…ここは狭間の奥)ギリリ シュン!

女エルフ「照明魔法!」ピカー

女エルフ(そしてこれは100日の闇)ギリリ シュン!

女エルフ「照明魔法!」ピカー

女エルフ(調和の時が来る…)ギリリ シュン!

女エルフ「照明魔法!」ピカー

女エルフ(ハイエルフが恐れていた事が…始まってしまった)ギリリ シュン!


レイス「ンギャアアアーーー」シュゥゥ

『気球』

フワフワ

女戦士「女エルフ!!飛び乗れ!!」

女エルフ「…」ピョン

女海賊「おっけ!!一旦海風に乗る…女エルフ!!風魔法で援護ヨロ」

女エルフ「風魔法!」ヒュゥー

女戦士「よし西方面から回り込んで北に行け…砂漠を中央突破してシャ・バクダへ戻る」

女海賊「りょ…ところで今ずっと狭間に居るっぽいけどどうなっちゃってんの?」

女エルフ「…これは」

女戦士「お前は剣士と法王のやり取りを見たな?話せ」



法王は祈りの指輪を使って神に助けを求めたの

そして何処からか声が聞こえてきた

「汝は調和を望むのか?ならば名を呼べ」

次に法王は名を訪ねた

その声はこう答えた

「我は調和の神…名を魔王」

法王は不思議そうに「…魔王?」と呟いた

その声は「器はどこだ?」と答えたその瞬間

剣士が法王の腕を切り落として指輪を奪った…

声は続けて「汝が器か?我来たれり…」と言い

黒い影が剣士に流れ込んだ

剣士は狂ったように暴れた後に倒れた直後

魔方陣のペンダントが光り始めて

その影は剣士から溢れ出てきた

行き場を失った影は近くに居た法王に入ろうとした

そこで私は光の矢を撃ち法王と一緒に影を倒した

女エルフ「多分…魔王の復活は阻止できた…でも調和の闇は来てしまった」

女戦士「ではやはりこの闇は200年前に起きた100日の闇だと言うのだな?」

女エルフ「…」コクリ

女海賊「これってさぁ誰の目から見ても魔王復活に見えると思うんだ」

女戦士「その通りだ…事態は深刻だ」

女海賊「世界全体が狭間に落ちたって事はレイスがヤバイね…みんなやられる」

女エルフ「ハイエルフが恐れていた事…」

女海賊「アダマンタイトで反転出来ないかなぁ?」

女戦士「巨大なアダマンタイトが何処にある?」

女海賊「重力魔法のメテオストライクでさぁ…」

女戦士「それがいわゆるかつての大破壊なのではないか?」

女海賊「むむ!!て事はシャ・バクダ遺跡の魔方陣は…」

女戦士「恐らく魔女様が作った安全地帯…そこに人を避難させる必要がある」

女海賊「超急いだほうが良いね…女エルフって剣士みたいにこの闇でも方向わかったりしない?」

女エルフ「私は千里眼の使い方が分からないの…」

女海賊「んんんん困ったなぁ…砂漠の上じゃ目標物も無いしなぁ」

女エルフ「妖精が居れば…」

女海賊「お!?虫は?…ハチミツ用にって思ってハチの巣が少しある…幼虫なら居るかも」

女戦士「何故ハチミツなんぞ必要と思った?」

女海賊「違うって…木材にくっ付いてたんだよ…ハチの幼虫は妖精になんない?」

女エルフ「お話してみる…成長魔法で今育てる」




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女海賊「…あのね…コレ本当に妖精?」ブーン

女エルフ「妖精の一種…花のある方向が分かるの」

女海賊「砂漠に花ねぇ…オアシスのサボテンとアロエくらいか」

女エルフ「向いている方向に花があるって言ってる」

女戦士「概ね方向は合って居そうだし信じる他あるまい…オアシスにあるヤシの木も花を付けるぞ」

女海賊「このミツバチはどれくらい生きる?」

女エルフ「狭間の中に居れば何年も…どうして?」

女海賊「このミツバチ欲しくなった最強ミツバチに育てたい」

女エルフ「ウフフあなたって変わった人ね…話しておいてあげる」

『オアシス上空』

ビョーーーウ

女戦士「よし…狭間を抜けた…やはりここは安全だ」

女海賊「こっちの方まで逃げて来てる人がもう居るね」

女戦士「一旦星の観測所まで行って若い衆に指示を出しておきたい」

女海賊「それにしても剣士はずっと寝っぱなしだけど大丈夫かな?」

女エルフ「…」

女海賊「前にもこんな事あったんだ…セントラルの地下カタコンベ行って剣士が狂った」

女エルフ「剣士の魂を感じないの…どこに居るのか分からない」

女海賊「それって結構ヤバイ事?」

女エルフ「もしかすると魔王の影に連れていかれたのかもしれない」

女海賊「だったとしたらあんたが剣士やっちゃったってことになるじゃん」

女エルフ「ごめんなさい…」

女海賊「あの後魔王の影は何処に行ったのさ?あんた見て無かったの?」

女エルフ「散らばって闇に消えて行った」

女海賊「その中に剣士の魂も居たって事?」

女エルフ「私も必死だったから分からないの」

女戦士「シャ・バクダの民の誘導が終わったらすぐに魔女様の下へ行く…魔女様に聞いてみよう」

女海賊「なんか心配になって来たなぁ…イライラする」

女戦士「剣士が動けん今は魔方陣のペンダントは女エルフが持て…剣士が持っていては動きに制限がでる」

女エルフ「うん…」

女戦士「観測所に着いたら私は剣士を背負って一旦気球から降りる」

女海賊「うちらどうする?」

女戦士「シャ・バクダと周辺の商隊にこちらへ向かうように仕向けてほしい」

女海賊「おっけ」

女戦士「あともし出来るなら物資調達も頼みたい…恐らくこれからひどく物資不足が予想される」

女海賊「わーってるわーってる…うまくやるよ…これで良い?」

女戦士「任せた」

『星の観測所』

ガヤガヤ ガヤガヤ

女海賊「お姉ぇ…ここに衛兵まで来てんじゃん…降りて良いの?」

女戦士「構わん!降ろせ」

女海賊「気球捕られたくないからさぁ…ギリギリまで行くから飛び降りて」

女戦士「仕方ない…砂の斜面で頼む」

女海賊「おけおけ」

女戦士「…よし!剣士…いくぞ」ヨッコラ

女海賊「3…2…1…飛んで!!」


ピョン!! ズザザー


女海賊「つつつ…」

男「かしらぁ!!…大変っす」タッタッタ

女戦士「分かっている…まずこの男を観測所まで運びたい…手を貸せ」

男「うっす!!…歩きながらで良いんで状況を…」グイ

女戦士「頼む」

男「セントラルから戻って来たんすよね?あっちぁどうなってるんすか?」

女戦士「あちらも魔物に攻められて大混乱だ」

男「やっぱ魔王の復活っすか?」

女戦士「いや…魔王復活は阻止した…だが影響は出ている」

男「本当っっすか!?…もう魔王復活の噂でみんなビビりまくりっすよ」

女戦士「正確には阻止した筈…そんなところだ…それでこちらはどうなっているのだ?」

男「黒い魔物が突然現れて大混乱っすよ…どうやっても倒せない」

女戦士「オアシスに避難してきているのだな?」

男「そうっす…みんな着の身着のまま逃げて来てるっす」

女戦士「衛兵も来ている様だが…領主の隊はどうなっているのだ?」

男「領主は何処に行ったか分からんっす…もう指揮系統が壊滅してて衛兵もやる気ナスって所っすわ」

女戦士「ギルドの方は上手くごまかしているのか?」

男「一応義勇団って事でシャ・バクダ周辺を回ってるんすけどね…黒い魔物がどうにも…」

女戦士「よし…当面はそのまま義勇団で行こう」

男「あざっす…で…これから何か考えあるんすか?」

女戦士「黒い魔物…あれはレイスと言ってな…倒し方は恐らくゾンビと同じだ」

男「まじっすか…でも銀の武器なんかあんまり無いっすよ?」

女戦士「銀貨を集めて鍛冶屋に作らせろ…矢尻が材料少なくて済むな」

男「弓っすか?」

女戦士「矢尻をスピアヘッドにして槍にも出来る…これを戦えるもの全員に配れ」

男「分かりやした」

女戦士「銀の武器で戦える者が集まり次第レイス討伐隊を組む…観測所前に集合させるんだ」

男「マジっすか…」

女戦士「荷を運ぶラクダも集めて置け…2時間で出来るか?」

男「分かりやした」

女戦士「ここで衛兵に義勇団振りを見せつけるぞ…しっかり働け?」

男「アイサー!!」

『観測所前』


ガヤガヤ ガヤガヤ


女戦士「諸君!!私は義勇団長だ!!」

女戦士「これよりシャ・バクダに行きレイス討伐と生き残りの保護及び物資の調達へ向かう!!」

女戦士「レイス討伐は先に配布した銀の槍と銀の弓を用いて戦う…その他の武器は使用しない事!!」

女戦士「各自槍持ちと弓持ちで今からペアを組み基本的に2人1組でレイスと戦え」

女戦士「矢の予備に余裕が無いため必ず持ち帰る事!!」

女戦士「隊列はウェッジフォーメーションとする!!私より前に出ない様に!!」

女戦士「では出発する…」

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男「いやぁぁ皆やる気マンマンっすわ…やっぱかしらはすげーっすね」

女戦士「ハハ褒めるな…それよりラクダの数が少ないのが気になる」

男「みんな着の身着のまま逃げてるんっすよ」

女戦士「まぁ仕方ないか…これは物資運搬は何往復もしなければならんな」

男「要領が分かれば他のオアシスに居る連中も来てくれるかもっす」

女戦士「それに期待するか…しかし私は何時までもここには居れんのだ」

男「またどっか行くんすか?」

女戦士「うーむ…アサシンからまだ連絡は無いのか?」

男「相変わらずっす」

女戦士「私はこの闇の祓い方を聞きにシン・リーンの魔女の所まで行きたいのだ」

男「そういやなんでオアシス周辺だけ闇が来ないんすかね?」

女戦士「恐らく魔女が掛けた退魔の魔法のお陰」

男「そりゃ早くやり方聞きたいっすね」

女戦士「この戦い…2~3日続けて慣れたらお前に指揮が出来るか?」

男「マジっすか…」

女戦士「いやむしろ盗賊ギルドメンバー全員が指揮をとれるようになってもらわんと困るのだが」

男「そりゃどういう意味で?」

女戦士「レイスに襲われているのはここだけでは無いという事だ…」

男「近隣の町全部行く訳っすね?…そりゃ英雄だ」

女戦士「しがない盗賊が英雄になるのだ…悪い話では無い」

男「こりゃ初戦にすべて掛かってるっすね」

女戦士「その通り!!兎に角うまく物資調達をして皆に配れば良い評判もたつ」

男「調達は得意分野っすもんね?」

女戦士「まぁ上手くヤレ」

『シャ・バクダ上空』

フワフワ~ 

女海賊「お姉ぇ!!もうみんな避難してこの辺に生きてる人居ないっぽい」

女戦士「…そうか」

女海賊「こっちの方は順調?」

女戦士「運搬に問題がある…気球でまとめて運んでもらいたい」

女海賊「おっけ!!今着陸させるから詰めるだけ積んで」

女戦士「うむ…その間に女エルフに回復魔法を頼めんか?」

女エルフ「私は人間の前で顔を見せて良いの?」

女戦士「その方が良いと判断する…見せておきたいのだ敵では無いという事を」

女エルフ「うん…それならやってみる」

女海賊「あんたさぁ…あのクソ男どもに顔見せたらどうなるか分かってる?」

女エルフ「本当はイヤ…でもそんな事言って居られないと思うの」

女戦士「大丈夫だ…手を出す奴が居たら私が静止させる」

女海賊「お姉ぇ衛兵に見つかったらマジヤバイと思うんだけど」

女戦士「まぁ見ていろ…一番頑張って一番傷を負っているのが衛兵だ…癒してみろ」

女エルフ「うん…」

女海賊「もう知らないかんね…降ろすよ」


フワフワ~ ドッスン

女戦士「全体!!気球に集合して荷を積め!!」

女戦士「治療師が来ている!!怪我をしている者は速やかに来い!!」

女戦士「女エルフ…来い」

女エルフ「…」テクテク

女戦士「治療が欲しい者は居ないか!?」

衛兵「あぁ腕の出血が応急ではちと厳しい…今縫って貰いたい…痛つつ」

女エルフ「回復魔法!」ボワー

衛兵「…え?…い、今のは?」

女戦士「他に居ないのか!?」

衛兵「お前…エルフじゃないのか?…いやエルフだ…どうして」

女海賊「ハイ!!痛く無くなったら行った行ったぁぁ…質問はナシ!!」


おい今の光…

あれエルフじゃないのか?

マジか

ちょ行ってくる


女海賊「ハイ!寄ってらっしゃい見てらっしゃい…回復が終わったらありがとう忘れんなよ~!!」

男「あっしも怪我してるっす~ココ痛いっす~」

女エルフ「回復魔法!」ボワー

男「マジっすか!?ちょちょちょ…かしらぁどういう事っすか?」

女戦士「こういう事だ…回復が終わった者は周囲の監視を怠るな!!」

女戦士「手が空いている者は気球に荷を運び入れろ!!」


ゾロゾロ ゾロゾロ


女エルフ「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー


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女海賊「よっし!私らは荷物持って一回帰るね!!また来るから荷物まとめといて~バハハ~イ」

男達「うおぉぉぉぉぉ」

『星の観測所』


ガヤガヤ ガヤガヤ


女海賊「なんか速攻噂広まったポイね…行列できてんじゃん」

女戦士「うむ…良いのか悪いのか」

女海賊「向こうのオアシスからも人来てるよ…女エルフあんなに魔法使って大丈夫なのかな?」

女戦士「少し休ませるか…」

女海賊「私が言って来るよ…今日は閉店だってね」

女戦士「そうか」


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女海賊「女エルフ?そろそろ終わろ」

女エルフ「まだ大丈夫…ふぅ」

女海賊「ほら疲れてんじゃん」

女エルフ「ここに居る人で終わりにする」

女海賊「あんね…キリ無いから…向こうのオアシスからこっちに向かってる人見えてる」

女エルフ「…」

女海賊「ハイ!皆さん今日はオシマイ!!彼女はもう疲れてるからちっと休ませてネっと…はい行くよ」

野郎「んあぁぁ並んで待ってたんだよ…もうちょっと続けろよ」

女海賊「んだとコラ!!あんた何処痛いんだよ!!見せて見ろ!!」

野郎「うるせーガキだな」

女海賊「こんなカスリ傷で並ぶなって~の…あんたも!!あんたもあんたも!!何回も並んでんじゃねぇ!!」

女エルフ「女海賊?良いの…もうすこし頑張る」

女海賊「ダメダメあんなのに魔翌力使ったらもったいない」

女エルフ「でもホラ…怪我のひどい人も並んでるから」

女海賊「よし分かった…回復が必要かどうか私が判断する…女エルフは私の後ろに居て」

女海賊「ルールを説明する!!軽い怪我は私のハグ…何回も並んでる人は私のパンチ…回復必要な人はエルフ…これで行く」

野郎「マジかよ…」

女海賊「何か文句あっか?」

野郎「ありありだモルァ…俺はお前のハグなんて要らねぇ」

女海賊「ブチッ!…分かったハンマーでパンチして大怪我してエルフ…良いな?」ブン ボカッ

野郎「ちょ…いでぇ!!」

女海賊「さっきあんた私の事ガキって言ったよね?」ブンブン ボカッ バキッ

野郎「ぐぇ!!マジでやんなよ…うがぁ!!」

女海賊「あーダメダメ…ハンマーじゃ大怪我になんない…この鉄槌で行く」ブン グチャ

野郎「ごふっ…やべて」

女海賊「はい!!エルフ行きぃ!!こんな感じネ皆さんヨロピコ」


ザワザワ ザワザワ

『部屋』


剣士「…」

女海賊「…」グイット

女戦士「女海賊!無理やり目を開けるな…」

女海賊「だってさぁ…女エルフはずっと手ぇ握ってんじゃん…私も何かやらないと悔しいんだけど」

女戦士「瞑想中だ…大人しくしていろ」

女海賊「先に剣士見つけたのは私なんだけど…剣士とずっと一緒に居るのは私なんだけど…夢の中でも」

女戦士「嫉妬か?見苦しいぞ」

女海賊「本当なんだよぅ…剣士を一番知ってるのは私なんだよぅ」ブツブツ

女戦士「夢幻か…私も今日隊を指揮していて既視感があってな…いつもあんな事をしていた様に思う」

女海賊「夢の中でも剣士を誰かに取られちゃうんだよムカツク夢」

女戦士「お前は剣士の事がそんなに好きなのか?」

女海賊「お姉ぇだから言うけどさ…子供の頃からずっと剣士に背中を暖められてるんだ」

女戦士「ハハお前からそんな言葉が出るとはな」

女海賊「こいつの赤ちゃん生みたいんだ…でも秘密にしておいて」

女戦士「私から言っておいてやろう…そういうのは早く伝えておいた方が良い」

女海賊「ちょダメダメダメ剣士の方が年下なんだから私が気まずくなる」

女戦士「まぁお前の悔しい気持ちは分かった…今日は添い寝で背中を暖めてやれ」

女海賊「そうする…お姉ぇはあっち行ってて…見ないで欲しい」

女戦士「添い寝などどうという事でもあるまい?」

女海賊「うち等の暖め方は背中の肌と肌くっつけるの…恥ずかしいからあっち行ってて」

女戦士「…」


---そういう心の合わせ方もあるのか---

---やっている事はエルフと同じだな---

『夢』



私「商船の航路に入ってるからこのままいけば絶対すれ違うハズ…もう安心して」

あなた「もう漂流何日目だろう…」

私「数えてなかったね…でもどうでも良いじゃん?生きてるんだし」

あなた「ごめんね頼りにならなくて」

私「良いんだ…あんたが居てくれるだけで私は暖かいんだ」

あなた「僕も暖かいよ」

私「あんた無口だけど大分話してくれる様になったし」

あなた「…まだ思い出せないんだよ」

私「導きの声ってのは?」

あなた「聞こえるよ…今は目を覚ましてって」

私「それ絶対精霊の声だよ!勇者よ…目を覚ましてってね」

あなた「何か…違う気がする…どうやって目を覚ませば良いのかも分からない」

私「あんたいっぱい魔法使えるし剣も使えるし…絶対本物の勇者だから自信持って」

あなた「う、うん」

私「あんたと一緒に旅して…もう1年以上…魔王島から逃げてやっぱりまだ生きてて…」

あなた「不安になってる?」

私「生きてて良かったなーってさ…何日も漂流してても楽しいんだ…あんたと一緒ならさ」

あなた「ありがとう」

私「ぅぅぅさぶくなってきた…暖めてよいつもみたいに」

あなた「僕の方が恥ずかしいんだ…そっち向けない」

私「しょうがないじゃん…着る物は縦帆になっちゃってるんだからさ」

あなた「君は恥ずかしくないの?」

私「もう全部見られちゃってるんだから諦めてる…寒いから背中くっつけて」

あなた「うん…君の背中暖かいね」

私「感じる?」

あなた「…」

私「どうしたの?急に黙って」

あなた「…この感じ…やっぱり本物だ」

私「はぁ?何言ってんの?私はいっつも本物だぞ?おい!!」コチョコチョ

あなた「ちょっとくすぐったいよ…いま感じてる所だから」

私「じゃぁこっちは?」クル ムニュ

あなた「そっちはちょっと…」

私「あんたさぁ…もっと私の温度を感じろよ」

あなた「感じる…君…そこに居るね?」

私「あのね…目の前に要るじゃん何言ってんのさ…ヤルのヤラないの?」


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『朝』


ガチャリ バタン


女戦士「起きろ!!」

女海賊「ムニャー」ムニャムニャ

剣士「…」

女戦士「…」キック! ドガッ

女海賊「あだ…つうぅぅ…何すんだよ…ててて」ゴシゴシ

女戦士「お前は何故全裸なのだ!!…女エルフ!!何故この変態を放って置く…剣士を寝取られて良いのか?」

女エルフ「あの…気持ちよさそうに寝ていたので」

女戦士「着替えろ!!10分でヤレ」

女海賊「お姉ぇ…私が寝取るってそんな事してない」

女戦士「その格好で言えた口か!!ドワーフ一族の恥だタワケ!!」キック ドガァ

女海賊「あだっ」

女エルフ「剣士に少し反応があったので見ていたの」

女戦士「まだ起きないか…」

女エルフ「私には剣士を探せなかった…何処にいるのか分からない」

女戦士「まぁ良い…急いで魔女の所へ出立する…女エルフは剣士を気球まで運んでくれ」

女エルフ「はい…」

女海賊「お姉ぇ!!弁解させてくれよぅ」

女戦士「黙れ!!この大変な時にお前の恋沙汰なぞどうでも良い!!兎に角今すぐ着替えろ」

女海賊「違うんだって…」

女戦士「うるさい!!お前はその格好を見られて恥ずかしくないのか!?」

女海賊「…恥ずかしく…え?どうして私の夢を知っているの?」

女戦士「お前の夢なぞ知らぬわ!!どうやら痛い目を見ないと言う事が効けん様だな…」スラリ

女海賊「ちょちょちょ…ま…着替えるから!今やるから!!」

女戦士「10分で全部終わらせろ」ブン バチーン

女海賊「いだぁぁぁい!!やめて叩かないで!!」

女戦士「フン!!」ツカツカ

女海賊「…」ブツブツ アーデモナイ コーデモナイ

女戦士「…それからお前!!もう寝ながら自慰をするのはヤメロ…手を洗ってこい」

女海賊「え!?」


ガチャリ バタン

『気球』


フワフワ


男「かしらぁ…もう行くんすか?」

女戦士「事態は急を要する…義勇団は引き続き続けて近隣の民を守れ」

男「領主不在なのに勝手にやってて良いんすかねぇ?」

女戦士「構わぬ…民の意がある方に義がある…故に我々は義勇を貫け」

男「わかりやした…それでいつ頃お帰りに?」

女戦士「出来るだけ早く戻るつもりだが…戻らぬ場合も考慮してお前が指揮を取れ」

男「…ですがかしらにも立場が…」

女戦士「私を出し抜いても構わん…とにかくうまくやるのだ」

男「へい…」

女戦士「私がお前の部下でも良いのだよ…アサシンに会ったら良く言っておく」

男「ありがとうございやす…こっちの事は任せてくだせぇ」

女戦士「それが聞きたかった…これで安心して行くことが出来る」

男「死なねぇでくれやんす…あっしはかしらの事が好きなんでやんす」

女戦士「ハハ落ち着いたら酒でも飲もう…酔いつぶれてやる」

男「マジっすか!!」

女戦士「お前も死ぬなよ?…では私はこれで行く」



フワフワ フワフワ



女戦士「ミツバチは魔女の塔の方向を分かっているな?」

女エルフ「大丈夫…花が沢山あるって」

女戦士「よし高度を上げて急げ」

女海賊「…」ションボリ

女エルフ「女海賊?平気?」

女戦士「放って置け…そんなアバズレに構うな」

女海賊「アバズレって何さ!!…しょうがないじゃん無意識なんだからさ」

女戦士「目の前に女エルフが居たのだぞ?」

女エルフ「え?何?何の話?」

女海賊「なななな…何でもない…私の剣士を取らないでって話」

女エルフ「取るってそんな…そんなつもり無いの」

女海賊「ごめんね女エルフ…あんたが剣士と仲良くすると腹立つ」

女エルフ「私と剣士はそういうのでは無いの…なんていうか兄妹みたいな…同族と言うのか」

女戦士「エルフの繋がりに嫉妬しているのだ世話を掛けてすまんな?女エルフ」

女エルフ「でもね?私はわかる…剣士と女海賊の繋がりが私よりもずっと強い事を」

女戦士「何故そう思う?」

女エルフ「夢の中…夢幻で私は剣士に一度も会って居ない…だから探せない」

女海賊「分かれば良いんだよ…分かれば」

女戦士「黙れアバズレ」

女エルフ「昨夜剣士と女海賊が横になって居た時剣士がすこし動いた」

女海賊「ほらほらほらほら」

女エルフ「剣士にゆかりのある人なら目覚めさせる事が出来るのかもしれない」

女海賊「え!?…」---目を覚まして…この声を聞いて居たって事なのか?---

女エルフ「…どうしたの?急に呆けて?」

女海賊「剣士は夢の中で心の中で声がするってずっと言ってた…」

女戦士「お前はしっかり覚えているのか?夢を…」

女海賊「…なんとなくね…それで剣士はその声を精霊の声だと思ってる」

女エルフ「私の声のなのかな?」

女海賊「だとすると声は届いてる」

女エルフ「返事をしてくれないの…だからどこに居るのか分からない」

女海賊「ちょっと悔しいけど…声が届くならもっと話しかけた方が良い…と思う」

女エルフ「うん…」


---私と剣士が愛し合ってた時も---

---剣士は精霊の声を聞いて居た---

---だからあの時---

---私の前から居なくなった---

---何だろうこの感情---

---夢の出来事なのに---

---これが嫉妬---

『追憶の森上空』


ビョーーーウ バサバサ


女海賊「私の働きバチよ!!もっと働けぇぇぇ」ビシバシ

ミツバチ「…」ブンブン;;

女戦士「ミツバチに八つ当たりをするな…案内人が居なくなっては困る」

女海賊「腹立つんだよ!!女エルフと剣士の関係がさぁ…もうムキーーーーー」ビシバシ

女戦士「お前は本当に見苦しい女だな…」

女海賊「お姉ぇには分かんないよ…ずっと私ガマンしてるんだ…夢の中でも他の女に取られた」

女戦士「剣士の気持ちはどこにあるのだ?」

女海賊「何処って…あんにゃろう!まだ気付いてない!!」

女戦士「それを確認するのが先だろう?」

女海賊「起きたら取っちめてやる!!」プンスカ

女戦士「そろそろ高度落とせ」

女海賊「わーってるよ…女エルフ起して!!やっぱ見てて腹立つ」


フワフワ ドッスン


女海賊「前と同じ場所に隠すよ…女エルフも手伝って!!」

女戦士「長居する気は無い…このまま行くぞ…女エルフ肩を貸せ」

女エルフ「え?あ…はい」グイ

女海賊「気球盗まれたらどうすんのさ?」

女戦士「魔方陣のペンダントは女エルフが持っている…魔方陣無しの気球を誰が盗むというか?」

女海賊「お?…そりゃそうだ」

女戦士「迷わん様にミツバチに案内させてくれ」

ミツバチ「…」ブーン ブンブン

女海賊「私のミツバチに勝手に指示しないでくれる?」

ミツバチ「…」ブンブン プイ

女戦士「お前はミツバチにも振られるのだなハハ」

女海賊「おい待てゴルァ!!」

『魔女の塔』


シーン


女戦士「…様子がおかしいな」

女エルフ「魔女様…気配が無い」

女戦士「遅かったか…」

女海賊「魔女の婆ちゃん死んだって事?」

女戦士「分からんが…とにかく行ってみよう」テクテク

女エルフ「誰も居ないみたい…あ!妖精」

女海賊「ん?どこどこ?」


パタパタ パタパタ


妖精「遅っそいよ~何してたんだよ~」

女海賊「よっ!!お久ぁぁ」

妖精「魔女様が死んじゃったよ」

女戦士「いつ亡くなったのだ?」

妖精「もう1ヶ月くらい…」

女海賊「あ…そっかここは時間の流れが違うんだ…あれからどれくらい?…」

妖精「2年くらいになる…すぐ戻るって言ってたのにさ」

女戦士「魔女様は今どこに?」

妖精「塔の中で椅子に座ったまま死んだよ…魂は僕が黄泉に案内した」

女戦士「…そうか」

女エルフ「行きましょう…」

妖精「剣士はどこに行ったの?魂が居ない」

女海賊「やっぱ分かる?妖精さんにも探せない?」

女戦士「ひとまず塔に行こう」テクテク

『塔』

女エルフ「魔女様…椅子に掛けたまま亡くなったのね」ポロリ

女戦士「机に書置きが残っているな…弟子の魔女宛てだ」

女海賊「何て書いてある?」

女戦士「他人宛てへの書簡を先に読むのは道理に外れる…私には読めん」

女海賊「このままにしておくの?」

女戦士「弟子の魔女を探して連れて来るのが道理…しかし魔女様の骸をこのままにしておくのもな」

女海賊「ねぇ妖精?魔女の婆ちゃんは死ぬ前に何か言ってなかった?」

妖精「剣士達の帰りをずっと待っていたよ…千里眼でずっと見ていた」

女海賊「…だから何か言ってなかったか聞いてんだよ!私の話聞いてる?」

妖精「僕には何も話さなかったよ…でも無言でアクセサリーを沢山作ってた」

女海賊「どこにある?」

妖精「上の部屋だよ」

女海賊「ちょっと見て来るね」タッタッタ

女エルフ「魔女様を埋葬してあげないと…」

妖精「魔女様が入る予定のお墓は生前に作ってたみたい…裏手にあるよ」

女戦士「よし…先に埋葬してからシン・リーンの姫を探しに行こう」

女エルフ「そうね…」

女戦士「無くなって1か月も経ったのにまるで生きている様だ…やはりここでは肉体は腐らんのだな」

女エルフ「剣士はここで待っていてね?」ヨッコラ

妖精「裏まで案内するよ…こっち」パタパタ

女戦士「墓に入れる遺品は何か無いのか?」

妖精「魔女様は一つだけ大事に持っていた石があるよ」

女戦士「どこにある?」

妖精「大丈夫…魔女様の胸に身に着けているよ」

女戦士「…これか…よし一緒に埋める」

『墓』

女戦士「…」人

女海賊「…」人

女エルフ「…」人

妖精「…」人

ミツバチ「…」人


女戦士「この狭間に墓が在る限り墓の下で魔女様の骸はずっとこの姿で居るのだろうな」

女海賊「荒らされないと良いね」

女戦士「妖精が案内しなければ誰も来ることはあるまい」

妖精「僕これからどうしようかな?」

女戦士「…そうだな一緒に来い!私たちの目になって欲しい…これからシン・リーンの姫を探す」

女エルフ「剣士は?」

女戦士「女エルフは剣士と一緒にここに残れ…誰も来んとは思うがもし誰か来たら追い払え」

女海賊「ちょ…剣士は私が」

女戦士「ダメだ!お前以外に誰が気球を操作するのだ?そしてここを守るのはお前じゃ役不足だ」

女海賊「ぐぬぬ…おい!女エルフ!!剣士に何かあったら許さないかんね!!」

女エルフ「うん心配しないで?」

女海賊「あんたが一番心配なんだよ…」ブツブツ

女戦士「女海賊!!さっき魔女様の作ったペンダントを持ってきたな?」

女海賊「持ってきた…いっぱいあるよ」

女戦士「女エルフ…この魔方陣に剣士が使った退魔魔法…出来るか?」

女エルフ「印の結び方がちょっと…」

女海賊「魔女の婆ちゃんの部屋に魔術書があったよ…それ見ながらやったら?」

女エルフ「…やってみる」

女戦士「退魔のペンダントがあれば私たちはレイスを気にすることなく行動できる」

女海賊「姫を探すって事は光の国シン・リーンの城?」

女戦士「…そうだな…まずは行って今の状況を把握せねば…」

女海賊「シャ・バクダ遺跡みたいに大きな魔方陣を作って居れば良いけどね」

女戦士「退魔のペンダントが出来たら出発するから下に降りて来い」

女海賊「おっけ!!女エルフ!魔女の婆ちゃんの部屋に行くよ」グイ タッタ

『花畑』

ミツバチ「…」ブーン ブンブン

女戦士「お前はこの花畑で休んでいろ…誰か来たら直ぐに女エルフに知らせるんだ」

ミツバチ「…」ブンブン

女海賊「お姉ぇ!!お待たせ…はい退魔のペンダント」ポイ

女戦士「花を踏むな!!この花は魔女様の物だ」

女海賊「あ…ごめ」

ミツバチ「…」ブーン プン

女戦士「お前もちゃんとペンダント持っているな?」

女海賊「バッチリ」

女戦士「塔の戸締りはしてきたか?」

女海賊「アダマンタイトの扉はロックしてきた」

女戦士「忘れ物は無いか?」

女海賊「もう!!うっさいなぁぁ…子供じゃないんだからさ」

女戦士「では行くぞ?」

女海賊「あ!!!ヤバ…妖精置いて来ちゃった…先行っててすぐ行くから」ダッシュ

女戦士「…」orz

女海賊「ゴルァ妖精!!何やってんのさ!!羽ムシルぞ…早くこい!!」

『光の国シン・リーン』


ビョーーーーウ バサバサ


女戦士「うーむ…こちらはセントラルと違って落ち着いた物だ」

女海賊「どうする?降りちゃう?」

女戦士「いや…そういえば思い出したのだが前に魔女様の所を訪ねた時の事を覚えているか?」

女海賊「どしたの?」

女戦士「魔女の塔に行く前に馬車を隠れてやり過ごしただろう」

女海賊「三角帽子の姫が馬車に連れられて行ったね…覚えてるよ」

女戦士「たしかその時魔術院に隠れると言っていた気がするのだ」

女海賊「んん~どうだったかなぁ…その場所知ってるの?」

女戦士「ここより南のハジ・マリ聖堂…そこが魔術院になって居る」

女海賊「ほんじゃそこから行った方が良さそうだね」

女戦士「うむ…この状況を見る限りシン・リーンはさして混乱しては居ない」

女海賊「そだね…きっと魔法使いがいっぱい居るんだね」

女戦士「上手い事魔方陣を使っているのだろう…もし魔術院に姫が居ないのならこちらに来よう」

女海賊「おっけ!進路変える…南方面だね?おい!妖精!!方向教えて」

妖精「妖精使いが荒いなぁ…」ブツブツ

女海賊「羽ムシられたい?高度上げるから方向教えて!!」

妖精「ハイ右…もうちょい右…そこらへん」

女海賊「あんたぁぁぁ!!そんな態度でどうなるか分かってんの!?」

妖精「ふぁ~あ…女エルフのやわらかいベットが恋しいよ」

女海賊「ムッカ!!あんたまで女エルフが良いのか!!ちょっと来い」グイ

妖精「痛てて…何するのさ」

女海賊「私のベットの方が大きいんだ試してみろ!!」ムギュ

妖精「ちょちょちょ…無理やり押し込まないで」

女海賊「どうだ!!女エルフのより良いだろ!!」

妖精「…なんか…うううぅぅ暑苦しい」

女海賊「そこで大人しくネンネしてな!!フンッ」

『ハジ・マリ聖堂』


ビョーーーウ バサバサ


女海賊「お姉ぇ!!見て…戦闘が起きてる」

女戦士「戦っているのは魔術師達だな…なぜ魔方陣を張らんのだ?」

女海賊「でっかいクモがいっぱい転がってる…ちょいマチ…ちっちゃいのがもっと一杯いる!!」

女戦士「アラクネーか…退魔の魔方陣が効かんのか」

女海賊「アレを全部倒すのって無理じゃね?」

女戦士「焼き払う必要があるな…」


ゴゥ ボボボボボ


女戦士「あの魔術師達の近くに降ろせ…助太刀する」


ゴゥ ボボボボボ


魔術師「姫!!上で気球が旋回しています…味方と思われます」

姫「コレ気を抜くでない…このまま後退しながら広場まで誘導じゃ…火炎魔法!!」ゴゥ ボボボボボ

魔術師「気球が降りて来る様です…火炎魔法!!」ゴウ メラ

姫「あの者らを広場から離れる様に誘導せい」

魔術師「はい!!照明魔法!!」ピカー

女海賊「光った!!誘導してる…あそこに降ろすよ」

女戦士「私は先に飛び降りる…気球を降ろしたらこちらまで走れ」

女海賊「りょ!!」

女戦士「アラクネーに囲まれるなよ!!」ピョン シュタッ


姫「広場で上位魔法を詠唱する…わらわに敵を近づけさせるで無いぞ?」

魔術師「はい…火炎魔法!!」ゴゥ メラ

女戦士「助太刀!!」シュタ

姫「わらわを守れ…詠唱の時間を稼ぐのじゃ」

女戦士「大型アラクネー2体…どうする?」

魔術師「あれは倒すとクモの子が散る…こちらに来るのを止められるか?」

女戦士「足を切り落とす…」ダダッ ザク ザク


アラクネー「シャーーーー」カサカサ


女海賊「お姉ぇ!!」タッタッタ

女戦士「私は構うな…もう一匹のアラクネーの気を引け」

女海賊「おっけー」タッタッタ ピョン クルクル シュタ ドテ

魔術師「伏せろぉ!!」

女戦士「む?」

女海賊「お?」

姫「竜巻魔法!!爆炎魔法!!」ゴゥ ドーーーーーン ボボボボボ

女戦士「…ボルケーノか」

女海賊「熱ち…あちち」

女戦士「女海賊!魔術師の所まで下がれ…巻き込まれるな!!」

女海賊「やばば…」タッタッタ


チュドーーーン


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----------------

『広場』


姫「他の魔術隊に大型は処理したと伝令してくるのじゃ」

魔術師「はい…姫はどうされますか?」

姫「わらわは子虫を焼いておくかのぅ…して…主らは誰じゃ?母上の差し金か?」

女戦士「姫はシン・リーンの姫君か?」

姫「そうじゃ…わらわは光の国シン・リーン第一王女…魔女じゃ」

女戦士「失礼…あなたに伝えなければならない事がある」

魔女「わらわは忙しいのじゃ…手短に済ませい」

女戦士「あなたの師匠…塔に住まう魔女が亡くなりました…同行して頂きたい」

魔女「なんと…それはまことか」

女戦士「このペンダントをご覧ください」

魔女「…信じられぬ…時の番人が今…死んだと」

女戦士「あなた宛ての書簡があるのです」

魔女「…」ボーゼン

女戦士「…」

魔術師「姫?この者達を信用して良いのですか?」

魔女「…」

魔術師「姫?」

魔女「魔術師…はよう伝令に行くのじゃ…わらわは一旦この者達と魔術院へ戻る」

魔術師「分かりました…姫の事をお願いします」

女戦士「承知」

女海賊「魔女ちゃん大丈夫?」

妖精「ぷはぁぁぁ…」ヒョコ

魔女「妖精まで居るのじゃな…付いて参れ」トボトボ

『魔術院』


もう元老の言うことなぞ聞いて居れん

わらわに安全なぞ要らんのじゃ

今ははわらわが最高位じゃぞ

従わぬのなら命令を下す

魔術院に引き籠っておる者を全員町の警備に回すのじゃ

一人残らず全員じゃ

これは命令じゃ…良いな?


ガチャリ バタン


魔女「待たせたのぅ…して…わらわは早よぅ師匠の下へ行きたい…今すぐ行けるかの?」

女海賊「みんな引き留めてたみたいだけど大丈夫?」

魔女「魔術師が力を合わせればアラクネーなぞどうでもないのじゃ」

女戦士「アラクネーは元々大人しい虫…やはりレイスが現れて粗ぶって居るのか?」

魔女「そうかもしれんが…ミツバチが隠れてしまったからじゃろうと思うておる」

女戦士「…という事はシン・リーンもいずれ…」

魔女「あちらは魔術師が此処よりも更に多いのじゃ…しかし」

女戦士「ん?」

魔女「いや何でもない…早う行くぞよ?…気球に乗れば良いのか?」

女海賊「え…あぁ行こっか」

魔女「そういえば主らの名を聞いておらなんだのぅ」

女海賊「私は女海賊…こっちは女戦士…ほんでこいつが妖精」

魔女「師匠の弟子の一人かの?」

女海賊「まぁ…そうなるかな?私も魔術書持ってるし」

魔女「主の魔翌力はわらわの千分の一も無いようじゃが…錬金術か何かかの?」

女海賊「…そんな事わかるんだ…千分の一…トホホ」

女戦士「ところで魔女…あなたはどうしてその様な格好を」

魔女「魔翌力の解放は10歳程度の体が最大なのじゃ」

女海賊「どゆ事?年齢ごまかしてるの?」

女戦士「記憶が正しければ28歳くらいの筈」

魔女「良く知っておるのぅ…主は何者じゃ?」

女戦士「フフ…ドワーフ王の娘と言えば分かるか?」

魔女「おぉぉ父君は達者であろうか?主らがこの地に居るという事は…勇者がどこぞに居るのじゃな?」

女海賊「お!?話早いかも」

魔女「この闇の空…言うまでもあるまいな」

女海賊「まぁそんな感じで色々ややこしいんだ」

魔女「…ではわらわも姿を見せておくかのぅ…変性魔法!」グングン

女海賊「おおおおおぉ背が伸びた…服がピチパチ」

魔女「この姿になるのは何年振りじゃろうか…他の魔術師達を欺くには丁度良かったかもしれんがのぅ」

女戦士「これで見つからないと思っていないだろうね?」

魔女「着替えて行くので待っておれ…普通の魔術師の法衣じゃ…安心せい」

『気球』

フワフワ

女海賊「衛兵達が魔女の事さがしてるっぽいね」

魔女「構わぬ…行って良いぞ?」

女戦士「第三王女がどうとか言っていたが…もしや」

魔女「全部わらわじゃ…これは王家のみ知っている事なのじゃ」

女戦士「ハハハ影武者を使っているとはな」

魔女「母上の策じゃ…わらわはどうでも良い」

女戦士「第三王女が居なくなったとなっては母上も心配するのでは無いか?」

魔女「母上も師匠から教えを受けた魔女じゃ…この闇をみて理解して下さるじゃろう」

女戦士「母上も狭間で修行をしたと?」

魔女「もうわらわの方がずっと長い…母上の年齢はとうに超えてしもうた」

女海賊「魔女って何歳?28歳じゃ無いの?」

魔女「精神的には80を超えておる…体が28歳なだけじゃ」

女海賊「ややこしや~~ややこしや」

魔女「魔術師の中では珍しい事ではないのじゃぞ?…さて…主らには聞きたい事があるのじゃが」

女戦士「何かな?」

魔女「そうじゃな…師匠との関係…勇者の事…主らがどこまで知っているのか全てじゃ」

女海賊「どこから話せば良いかなぁ…」

妖精「僕から話そうか…まず剣士と魔女の関わりから」ヒョコ


カクカク シカジカ

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魔女「…ふむ…大体経緯は理解した…主らがどうしたいのかも」

女海賊「剣士の魂を呼び戻す事は出来る?」

魔女「出来ん事はないが難しいと言わざるを得ん…出来るならとうに精霊は夢幻から戻る筈なのじゃ」

女戦士「精霊の魂を夢幻から解放するのと同じくらい難しいと?」

魔女「そうじゃな…夢幻では自分で夢から覚める事は出来んのじゃ」

女海賊「…だから魔女にお願いしてるんじゃん」

魔女「主らは魂の器を用意してはおらんのかえ?」

女戦士「器?」

魔女「器があれば簡単じゃと師匠から聞いた事があるのでな?」

女戦士「器とは初耳だ」

魔女「精霊の魂もその器が無いと呼び戻せんのじゃ」

女戦士「精霊の像とか精霊樹とかそういう類の物なのか?」

魔女「うむ…しかしあれらはもう器として使えぬ…何度も試しておるのじゃ」

女海賊「剣士の体は?もともと剣士の魂が入ってた器じゃないの?」

魔女「剣士にいのりの指輪を持たせて何か祈ることが出来ると思うかの?」

女海賊「…ムリ」

魔女「そういう事じゃ…精霊の像も精霊樹も自ら祈ることが出来ん…じゃから新たな器が必要なのじゃ」

女戦士「新たな器と言うのは何処に?」

魔女「わらわは知らぬ…師匠なら知っておったかも知れぬが…」

女戦士「…まてよ…アサシンは器がどうとか言って居たな」

女海賊「え?アサシンが何か知ってる?」

女戦士「ミスリルと器を求めに南の大陸に行った…たしかそうだ」

魔女「ほぅ…進展しそうじゃのぅ」



ビョーーーーウ バサバサ

『魔女の塔』


ブンブン ブンブン


女戦士「ミツバチ達が戻ってきているな…ん?アレは!!矢だ」

女海賊「どこどこ?本当だ!!」

女戦士「ここで何かあった様だ…急ぐぞ!!」タッタッタ


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女戦士「おい!女エルフ!!居るのか?」

女エルフ「はい…お帰りなさい」

女戦士「矢が落ちていた!!誰か来たのか?」

女エルフ「人間が4人来たけど追い返した」

女戦士「こんな場所に来る人間が居るのか…」

魔女「シン・リーンの者では無いのか?」

女エルフ「分からないけれど…魔女様の名を呼んでいた」

女戦士「では魔女の言う線が濃厚か…女エルフ!どうやって追い返したのだ?」

女エルフ「怖かったから弓を撃って…引き返せって言った」

魔女「これエルフ?主は姿を見せたのかの?」

女エルフ「は、はい…」

魔女「少しまずいかも知れんのう…シン・リーンとエルフは不可侵で約束しておってな…」

魔女「ここにエルフが来て追い返されたとなると魔術師達が来るやもしれぬ」

女エルフ「ごめんなさい…そんな事になるなんて」

魔女「まぁ来ても心配せんでも良い…わらわが居るでな?」

女戦士「そうだな…無事なら今はそれで良い」

魔女「それで…師匠は何処じゃ?」

女戦士「裏の墓に埋葬をした…石棺の中だが顔を見ていくか?」

魔女「うむ…何十年も過ごした母の様な縁なのじゃ…最後に挨拶をせねばならぬ…」

女戦士「こちらへ…」

魔女「来んで良い…みともない所を見せとう無いのじゃ…2人にしておくれ」

女戦士「塔の中で待ってる」


シクシク シクシク

うわぁぁぁぁぁん

うえっ うえっ

シクシク シクシク


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『部屋』


女海賊「あ…魔女…平気?」

魔女「済まなんだのぅ…師匠の顔を見たら辛くなってしもうた…」グスン

女戦士「…これが魔女宛ての書簡だ」

魔女「どれどれ…」

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魔女「この塔はわらわが継ぐ事になった…わらわはこれから時の番人として生きねばならぬ」

女エルフ「時の番人…」

魔女「そして時の番人としての最後の修行としてお主らと共に行かねばならぬ」

女戦士「共に行くとは?」

魔女「精霊の魂を…いや精霊の生きた世界の記憶を知り未来へ繋ぐのじゃ…それが時の番人の役目」

女戦士「神々の戦いの事か?」



どこから話せば良いかのぅ…

精霊は狭間の世界ではなく現実の世界を8000年生きたのじゃ

8000年生きた記憶の重みをうぬらは想像できるか?

その中で何人の人と出会い…別れ…愛し合い…憎しみ合い

それら8000年の記憶をすべてオーブにして保管していたのじゃ

愛した人との掛け替えのない記憶…その記憶に囲まれ精霊は生きておった

しかし…神々の戦い

精霊は幾度となく魔王と戦い…その都度代償を払いながら生き抜いて来たのじゃが

大事な記憶の4000年分を先の厄災の時に失ってしまったのじゃ

正確には人類を守るために4000年分の記憶を代償にしてわらわ達は今ここに生きておる

その記憶を失った理由がシャ・バクダ大破壊…かの地へ落とした隕石群…師匠が犯した罪じゃ

師匠はこの罪と悲しみを背負いながら時の番人として生き続け…未来へとこれらの記憶を残そうとしておるのじゃ

なぜか?

精霊はまだ来ぬ未来である人に会う為じゃ…師匠はこの約束を果たそうとしておる

200年前…師匠は精霊その本人と出会い勇者や他の仲間たちと一緒に魔王と戦い…うち倒したのじゃが

その時事情が合って精霊は動かなくなってしもうた

闇を祓う力のある精霊が動かなくなってしまっては人類が滅んでしまうと考えた師匠は

広大な森であったシャ・バクダへ隕石を落とし魔方陣を形成したのじゃが…全ての森とオーブを同時に破壊してしもうた

これが精霊の記憶と人類の命を天秤にかけた結果じゃ

しかしその後…精霊が目覚める事はついぞ無かった

魔女「ここまで聞いて…謎が残るじゃろう?」

女戦士「精霊がどうして動かなくなったか…どこに行ったのか…夢幻に封じられたと聞くが…」

魔女「それを探求するのが時の番人としての最後の修行じゃ」

女戦士「手がかりが何処にあるのか…」

魔女「一つ分かっている事があってな…シン・リーンにある精霊の像…あれは精霊本人であった物じゃ」

女戦士「どうして石に?」

魔女「先の厄災の後に師匠が持ち帰ったのじゃ…始めは水々しい肉体をしておったらしいが3か月で石になったそうな」

女戦士「ホムンルクス!!」

魔女「そうじゃ精霊本人はホムンルクスだったのじゃよ…それが器と言われておる」

女エルフ「器…昨日ここに来た4人の人間が」

女戦士「ん?何か合ったのか?」

女エルフ「魔女様に伝えて欲しいって言ったのが…器は古都キ・カイに在るって…」

魔女「ほぅ…良い手がかりを得たのぅ…」

女海賊「魔女さぁ…もっといろいろ知ってるでしょ?」

魔女「そうじゃのう…時が来たら話せというのが師匠の遺言じゃ」

女海賊「本当は精霊が何なのかも知ってるんじゃないの?」

魔女「そういじめないでおくれよ…聞くと悲しゅうなるぞ?」

女海賊「良いじゃん教えてよ」

魔女「それを知るのが魔道なのじゃ…主はまだ修行が足りんのぅ…さて」ヨッコラ

女海賊「逃げないでよ…」

魔女「剣士を起こしてみるとするかの…」ノソノソ

女海賊「え!?マジ?」

『魔女の部屋』


今から夢幻の門を開く…これは禁呪じゃ

眠る事で見る事の出来る夢には自我が無い…故に見ているだけになる

魔術で夢幻の門を開き入れば少しだけ自我を保てるのじゃ…しかし

自力で目覚める事が出来ぬ

よって補助者が必要なのじゃ

わらわは己が肉体に暗示をかけて夢幻の門へ入る

わらわが杖を鳴らした時に名を呼んで起こしておくれ

起せなかった場合はわらわも夢幻から出てこられなくなるのじゃ

よいな?必ず起こしてくれよ?

では…参る

夢幻開門!!


女海賊「…思い出した…赤目の魔女」

女戦士「夢の話か?剣士を寝取られたのは魔女なのか?」

女海賊「寝取られたって言い方腹立つんだけどさぁ…よく考えたら不自然に剣士取られた」

女戦士「全部覚えているか?」

女海賊「うっすらとだけど…急に現れて愛してるだの感じろだの…見ててイライラしたの覚えてる」

女海賊「…てかあいつハッキリしないんだよ!いっつもボヤーってしてて」

女エルフ「ねぇ…魔女の目から涙が」

女海賊「本当だ…大丈夫かなぁ?」

女エルフ「魔女が見る夢ってどんなだろう…」

女海賊「そういえば聞いて無かったね…あんたの夢は?」

女エルフ「不幸なエルフが精霊樹になる夢…剣士には会ってないと思う」

女海賊「剣士に声が届くって事はさぁ?剣士にとってはいつも居るって事じゃない?」

女エルフ「え?」

女海賊「剣士はその声がいつも聞こえるって言ってるんだ…誰の声?」


---どこから祈っていたの?---

---夢の中の私は祈って居ない---

---そうあの人は空気や音を使って心を触って来た---

---私はそれを夢の中でやってない---

---そうか…精霊樹になっても空気を使って呼べる---

---風を使って呼べる---

---鳥も虫も使える---

---わかった…夢の中のあの人はそれを教えようとしてるんだ---

---夢幻の夢は私たちに何か教えようとしてる---


---あなたは誰だったのか---


女海賊「おーい!!聞いてんの?」

女エルフ「はっ…ごめんなさい…何の夢だったのか思い出せそうで」

女戦士「魔女が辛そうな顔をしているのだが…」



リーン…



女海賊「あ!…魔女!!魔女!!起きて!!」

魔女「…」ポロポロ

女海賊「剣士は?」

魔女「ダメじゃ…わらわは悲しゅうて耐えれぬ…精霊の悲しみを見てしもうた」

女海賊「それじゃ私が行く!!」

魔女「ならん…主の魔翌力では帰って来れぬ」

女戦士「魔女…休むか?」

魔女「わらわは夢の中で5年ほど過ごした…剣士を探してやっと見つけたのじゃが…」

女海賊「5年も?」

魔女「剣士はわらわを感じようとはせんかった…わらわには無理じゃ」

女エルフ「魔女様?…私の魔翌力では行く事できませんか?」

魔女「エルフか…同族じゃな?剣士と所縁はあるのか?」

女エルフ「血を分けています」

魔女「血で探すのか…由にお主の魔翌力なら帰って来れよう」

女エルフ「お願いします」

魔女「この杖を持て…暗示じゃ苦しゅうなったら杖を鳴らせ」

女エルフ「はい…」

魔女「では参る…夢幻開門!!その門をくぐるのじゃ…」

『分断した夢』



謎の声「贄が足りぬ…贄が足りぬ…贄が…」

男「おぉぉぉ神よ…お救い下さい神よ」

謎の声「我を…呼ぶのは汝か…贄が足りぬ…贄が…」

男「どうか主のお力をお貸しください…魔物の軍勢が攻めて来たのです」

謎の声「調和を求めると言うか…今調和を呼ぶのか…されば我が名を呼べ」

男「神よ…調和の神よ…この祈りの指輪で主の降臨を祈ります」

謎の声「我着たれり…汝は調和を望むのか?されば名を呼べ」ゾワワワワ

男「主のご尊名を…」

謎の声「我は調和の神…名を魔王」

男「え…ま、魔王?そんな筈は…」

謎の声「器はどこだ?…汝では小さすぎる」

男「ちがう…そんな筈じゃ…か神よおぉぉぉ」


僕「だめだ!!させない!!」ダダッ シュパー

男「うがぁ!う腕がぁぁ…白い悪魔め!!」ボトリ

僕「この指輪は使ってはいけない物だ!!」ヒョイ


謎の声「汝が器か?我来たれり…」ゾワワワワ

僕「え!?何だ?うわぁぁぁぁ」ブン ブン


---何だ?記憶が流れ込んでくる---


僕「うわぁぁぁぁぁ」ブン ブン


---フッフッフッフ夢幻に捕われし者よ…お前達では我は倒せん---

---我がまやかしの術を抜けここまで来れたのは褒めてやろう---

---だが慈悲はくれてやろう…我が物となれ…世界の半分をお前にやろう---

---お前が存在しているのは我が力であると知れ…我を滅ぼせばお前も虚無へ還る---


---何だ…この記憶は---

僕「やめろおぉぉぉ」ブン ブン


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---目を覚まして---

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僕「胸が!!熱い…熱い!!うがぁぁぁ」


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---目を覚まして---

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『決戦後の夢』


---夜明け---

僧侶「回復魔法!回復魔法!回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

僧侶「回復魔法!回復魔法!回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

僧侶「回復魔法!回復魔法!回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

僧侶「回復魔法!回復魔法!回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

僧侶「回復魔法!回復魔法!回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー



魔女「何を呆けておるのじゃ?」

勇者「記憶がおかしい…」

魔女「魔王のまやかしの影響じゃな?」

勇者「それも…これも全部…何度も何度も…すべておかしい!!」

エルフ「僧侶は俺が見ててやる…勇者と魔女は周辺の村を回ってみてくれ」

勇者「僕はまた…取り返しの付かない事をしてしまった」


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---目を閉じて?---

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勇者「ハッ!!…まだ聞こえる」

魔女「どうしたのじゃ?」

勇者「導きの声がまだ…」

魔女「魔王はもう倒したのじゃぞ?」


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---感じて見て?---

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勇者(目を閉じる…)スッ

魔女「夜明けじゃ…勇者…行くぞよ?」


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--ここに居るから--

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ヒュゥゥゥ サラサラ サラサラ

勇者(何だろう…この感じ)

勇者(僕の周りには誰も居ない)

勇者(風のする方向…)

勇者(そっちから声がする)


魔女「勇者…聞いて居るのか?」

勇者「…僕は行かなければならない所がある」

魔女「何処に行くのじゃ?」

勇者「声のする方向…森の奥だ」

魔女「今から森に戻るのかえ?」

勇者「済まない…声が呼んでいるんだ」

魔女「おかしな事を言うのだのぅ…」

エルフ「行ってきな…僧侶は見ておくから」

勇者「今気が付いた…僕は目を閉じていた方が良く見える…目を閉じてもちゃんと歩ける」

魔女「わらわは付いて行けば良いかの?」

勇者「僧侶の事をお願い…彼女は立ち直れないかもしれない…そうだ夢幻の連鎖を呼んでるのが彼女だ」

魔女「むぅ…必ず戻ってくるのじゃぞ?」

『迷いの夢』


ザワザワ ザワザワ


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----こっちよ------

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---僕には分かる---

---この木も---

---葉っぱも---

---枝も---

---何もかもすべて幻だ---

---ただ一つこの声の向こうに---

---僕と同じ物を感じる---

---何度も何度も同じ夢の中で---

---この声だけが本物だった---

---今度こそ向こう側に行ける---

『出会いの夢』


精霊樹「…あなたが来るのをずっと待っていたの」

勇者「やっぱりこの声は」

精霊樹「やっと会えた…」

勇者「あなたは精霊樹?…この若芽が…」

精霊樹「さぁ…目を閉じて私の魂を感じて」

勇者「目を閉じる…」

精霊樹「重なって一つになるの…」

勇者「どうやって重なれば…」

精霊樹「考えてはダメ…そのまま感じるだけ」


---ほら重なった---

---離さないで?---

---私が連れて行ってあげる---

---光の向こう側---

---そう…そこが出口---

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『魔女の部屋』


リーン…


魔女「女エルフ?起きるのじゃ…」

女エルフ「ハッ…剣士は何処へ?女海賊!!剣士を呼んで!?」

女海賊「え?あ…剣士?剣士?起きて?」

剣士「…ぅぅぅ」

魔女「おおぉぉぉ軌跡じゃ…わらわは伝説を見てしもうた」

女海賊「剣士ぃ!!」ぎゅーー

魔女「伝説は本当じゃった精霊が勇者を夢幻から連れて来おった…」

女戦士「…精霊?勇者?」

魔女「女エルフ…主は夢幻で何をしておったのじゃ?精霊樹じゃったのであろう?」

女エルフ「はい…精霊樹になって剣士を待っていました」

魔女「そうじゃ…夢幻の中の精霊樹がここに勇者を蘇らせたのじゃ」

女戦士「話が交差しているが…」

魔女「それは関係ない…わらわがこの事を間違えなく伝え残したとしても」

魔女「後の世には精霊が勇者を夢幻から連れて来たとしか伝わらぬ…伝説とはそういう物じゃ」

魔女「これ剣士とやら?気は確かか?何か覚えておるか?」

剣士「僕は…どこでどうなったの?…混乱してる」

魔女「そうじゃろうて夢幻の中で何年何十年と経っておるのじゃ」

女エルフ「私は夢幻の門をくぐって20年程居た気がします」

魔女「それは大変じゃったのう…何にせよ戻ってこれて本真によかった」

女海賊「ねぇ剣士?夢幻の出来事は今覚えてるの?」

剣士「うっすらと…覚えてる」

女海賊「誰が誰なのかも?」

剣士「なんとなく…精霊が誰で本当の勇者が誰だったのかも…」

女海賊「あのね…そうじゃなくて私の事言ってるんだけど!!」

剣士「え?あ…アハハ君は出てこない」

女海賊「ちょ!!マジぶっ殺してやろうか?」

剣士「…でもスゴイお世話になった人が居てさ…大好きだったんだけど何処かに飛んで行っちゃったんだ」

女海賊「誰ヨ誰ヨ…どこに飛んで行ったのヨ?」

剣士「すぐ居なくなっちゃうんだよ…誰だったかなぁ…大好きだったんだけどなぁ…んんん」

女戦士「頭は回っている様だな…みんな帰って来たし私が料理でも振舞おう」

女海賊「お姉ぇ!話ぶった切んなって」

『部屋』


女海賊「木の根っこ…ハーブ…きのこ…骨…クッソまずいんだけど」モグモグ

女戦士「材料が無いのだガマンしろ」

剣士「おいしいよ…ねぇ女エルフ?」

女エルフ「うん…」

女戦士「さて…魔女…私たちは祈りの指輪をここまで持ってきたのだがこれからどうすれば?」

魔女「器を探さねばならぬ…精霊を解放しなければ今度こそ世界は滅ぶやもしれぬ」

女エルフ「魔女様?魔王の復活は私が阻止しました…それでも世界は滅ぶと?」

魔女「この闇じゃ…この闇を人間は生き延びる事が出来ん」

女戦士「100日の闇を生き延びれば良いのでは?」

魔女「…それが出来んのじゃ」

女戦士「シャ・バクダの魔方陣の中なら生き残れると…」

魔女「100日はどこでの100日と思うておる?ここは狭間の奥なのじゃぞ?」

女エルフ「え!?…もしかして現実世界の100日…」

魔女「そうじゃ…狭間の中であれば1000日なのか2000日なのか」

女戦士「…そんな」

魔女「現実では闇に落ちてからまだ数刻も経っておらん筈じゃ…どういう事か分かるかの?」

女戦士「…この闇を3年か…5年か生きろ…そういう事なのか」

魔女「そうじゃ…その間光は無く植物も育たず…人々は互いに争い合いほとんどの人間は死んでしまうじゃろうて」

女エルフ「それが魔王の言う調和の時…ハイエルフが恐れていた事?」

女戦士「では200年前の大破壊はどうやって生き延びたのだ?」

魔女「魔方陣の中で少し…あとは海で生き残った者が居ると師匠から聞いて居る…詳しくは分からんのじゃ」

女戦士「やはり器を探して精霊を呼び覚ますしか選択が無いのか…」

魔女「指輪はどこじゃ?」

女エルフ「私が持っています…これです」

魔女「その指輪はわらわが預かろう…下手に使っては危険じゃからのぅ」

女戦士「その指輪で精霊を夢幻から解放出来ると聞いてるが…」

魔女「これは量子移転という魔術が込められた指輪じゃ…祈った事を移転させるのじゃ」

女海賊「魔女はその魔法使えるの?」

魔女「量子移転は禁呪でのぅ…移転する量の抑制が解明されておらぬ故…非常に危険なのじゃ」

女戦士「その力を使って夢幻に居る精霊の魂を移転させるという事だな?」

魔女「そうなるのぅ」

女戦士「精霊が戻ったとしてどうやってこの闇を祓うのだ?」

魔女「それは誰も知らぬ…しかし伝説では幾多の闇を祓っておるのじゃ…信じるしかあるまいて」

女戦士「この話をアサシンは知っているのだろうか?」

魔女「アサシンという者が誰なのかは知らぬが…師匠には主らの様な協力者が他にもおった様じゃ」


---アサシンは勇者を殺そうとしていた---

---この闇の中で勇者一人殺して一体どんな意味があると言うのか---

---調和した後の世界はきっと平穏な世界が来るだろう---

---これは調和する者と調和を阻止する者の戦いだ---

---それらの記憶を精霊は8000年分守っていたのだ---

---調和する者が魔王---

---調和を阻止する者が精霊---

---その戦いになぜ勇者が介在するのか?---

---おそらくすべての謎はそこにある---



魔女「のぅ女戦士…わらわに考えがあるのじゃが」

女戦士「器を探しに行くのか?」

魔女「一旦皆でシン・リーンまで行って母上に事情をすべて話すのじゃ」

女戦士「それでどうする?協力してもらえるのか?」

魔女「古都キ・カイに行くには気球では遠すぎるじゃろう?」

女海賊「無理無理…絶対燃料切れ」

魔女「軍隊を用意してもらうのじゃ…母上であれば理解して下さる」

女戦士「今の状況で許されると思うか?」

魔女「じゃからエルフとドワーフと妖精を連れて説得に行くのじゃ…異種族同士の協力は母上の念願じゃった」

女戦士「うむ…良い案だな」

魔女「そうじゃ忘れて居った勇者も居るのぅ」

剣士「僕は勇者なのかどうか良くわからないよ」

魔女「夢幻で得た記憶…想い…それを知っている者が勇者じゃよ…そなたが繋いで行くのじゃ」

剣士「…繋ぐ…」

魔女「では行くとするかの?も十分休んだじゃろぅ…」ヨッコラ ノソ




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『ユートピア』


商人「…」人

盗賊「よぅ!!ここに居たか」

商人「あぁ帰って来たんだね…どうだった?」

盗賊「ダメだなぁ売りは儲かるが物資が全然無ぇもんだから買い付けが出来ねぇ」

商人「お金が合ってもそれじゃ意味無いね」

盗賊「穀物が全然無ぇ…こりゃ漁船出さんと食料尽きるぞ」

商人「盗賊は母さんに手を合わせて行かなくて良いのかい?」

盗賊「決まってんだろ!」人

商人「寂しい?」

盗賊「…まぁな…でも終わった事はしゃぁねぇ」人

商人「お墓の下に入って姿が見えなくなるとやっぱり…寂しいね」

盗賊「俺ぁもうここで骨を埋めるつもりだぁ…早くあっちに行きてぇよ」

商人「子供たちが大きくなるまでガマンガマン」

盗賊「…それでだぁ!北の魔術院から魔術師来るようになってから治安は良くなったんだが食料不足がな」

商人「うん…ぼくもこのままじゃイケないと思ってるんだ」

盗賊「商船が入って来ねぇのが致命的すぎるな」

商人「僕たちが商船をやるって言うのはどうだろうか?」

盗賊「セントラルには行けねぇしどこまで行くんだよ」

商人「南の大陸」

盗賊「例のアレかぁ?なんだっけ…ホム…ホル」

商人「ホムンルクス」

盗賊「それだソレソレ」

商人「それもあるけど本当の狙いはそうじゃないんだ」

盗賊「なんか浮かねぇ顔してるな?…どうした?」

商人「書物を読み漁って色々計算したんだけどさ…」

盗賊「ハッキリ言えよいつもの様に結論から言ってくれ…回りくどいと理解できん」

商人「ハハ分かったよ…スバリ!!もう二度と太陽を見る事は無い」

盗賊「んぁ?100日で終わるんじゃねぇのか?やっと半分来たくらいだろ」

商人「…それは狭間の外に出られるであろう地下深くでの話なんだ…狭間の中は時間の流れが違う」

盗賊「なんだとぅ?ほんじゃまだまだ続くってのか?」

商人「どの書物にも狭間の外で生き残った当時の記録しか残って居ないんだ」

盗賊「どういう事よ?」

商人「言い換えると狭間で生き残った人が居ないという事になる…さらに」

商人「魔術書によると2000日の闇を超えるという事も書いて合って…それが狭間の中での事なら辻褄が合う」

盗賊「おま…この闇を2000日生きろってか?」

商人「狭間の深さによって時間の流れが違うから正直正確には分からない」

盗賊「たった1ヶ月そこらで食料枯渇してんだぞ?」

商人「この後何が起こると思う?」

盗賊「略奪だ…もう始まってる様だがな」

商人「そう…国がする略奪…戦争だよ」

盗賊「!!じゃぁこの間港に入船した軍船はその準備って訳か?」

商人「アレはシン・リーンの軍船みたいだね」

盗賊「今荷物運び入れてんだ…どこと戦争する気なんだ?」

商人「さぁね?…だから僕たちも何時までもここに居られないって思ってるのさ」

盗賊「おぃおぃマジかよ…せっかく子供達の安住の地を作ったのによ」

商人「帰ってくる場所はここで良いさ…でもやっぱり狭間の外に出る必要があると思う」

盗賊「…おい…思い出したぞ?」

商人「何?」

盗賊「古都キ・カイは古代遺跡に通じる地下があるって情報屋が言っていたな?」

商人「ハハハ察しが良いね…ビンゴ!!僕はそれを言いたかった」

盗賊「食料持って子供たちをそこに避難させるんだな?」

商人「出来るかい?」

盗賊「船を動かすにゃぁ人手が足りねぇ…あん時はまだアサシンも情報屋も居た…2人じゃ無理だ」

商人「ねぇ見て!!シン・リーンの軍船が動き始めてる…」

盗賊「うむ…何処に行くんだか」

商人「上!!気球も飛んでる」

盗賊「…ありゃアサシンの気球に似てるな…2つ飛んでやがる」

商人「何か動き始めたみたいだね…」

盗賊「1つは軍船追いかけてる様だな…もう一つは港町に降りそうだ…様子見て来るか?」

商人「僕も行って良いかな?」

盗賊「ダメだ…レイスが出て来てもお前は戦えんだろう」

商人「ちぇっ…」

盗賊「安心しろ…俺がしっかり見て来てやる」タッタッタ

『港の広場』


盗賊(マジか…ありゃアサシンの気球じゃねぇか)

盗賊(衛兵と魔術師に取り調べられてんな…なんであんな所に降りるんだバカ野郎が…)

盗賊(誰が乗ってんだ?見えねぇ…)

盗賊(お?取り調べ終わりそうだな…ておいっ…気球飛んでいくじゃねぇか)

盗賊(俺達への定時連絡か何かだったんか?書簡でも置いて行ったのか?)

盗賊(むむ…気球から2人降りてる様だな…誰だあの男は)



男「…これで良いでやんすね?」

衛兵「港町は現在安全な状態では無いため外出は控えてほしい」

男「分かってるでやんすよ…どこも同じでやんす」

魔術師「魔方陣のある区域からは出ない様にお願いします」

男「へぇ~そんなものがあるんすね?」

衛兵「書状は私達が預かり領主へ届ける故お前たちは宿にて休まれよ」

男「お世話掛けたでやんす」

女「では失礼します」

男「あの…荷物はあっしが全部持つでやんすか?」

女「あなた…男なのでしょう?」

男「あねさんそらねーでやんす…少しはもって欲しいでやんす」

女「こっちよ?」テクテク

---街道---


盗賊「よう!!来たな?」

女「あら?お出迎えかしら?」

男「誰でやんすか?例の盗賊っていう男でやんすか?」

盗賊「ギルドからの定時連絡だな?お前が直接来るとは思ってなかったぜ?情報屋のネーちゃん」

情報屋「事情が色々変わったの」

盗賊「こっちの男は誰だ?信用して良いのか?」

男「あっしはローグっていう者でやんす…女戦士の彼氏って事になってるでやんす」

盗賊「ぶぶっ…マジか!!」

情報屋「事情はあなたのユートピアで話すわ…ここで人に見られるのもアレだし…行きましょ?」テクテク

『ユートピア』


ワーイワーイ キャッキャ


商人「おかえりー上から見てたよ」

情報屋「元気そうね?子供たちはみんな元気?」

盗賊「今の所はな」

情報屋「女盗賊はどうしたのかしら?」

盗賊「墓に埋葬した…挨拶してやってくれ」

情報屋「うん…行って来るわ」

商人「お客さんが来たんだ…久しぶりにバーベキューでもしようか」

ローグ「良いでやんすね…お土産でラクダの肉を持ってきているでやんす」

商人「おぉそれは良いねぇ…みんな喜ぶと思うよ…みんなぁ!!バーベキューやるから手伝って!!」


ワーイ ワーイ

マジでぇぇ ムギャーーー


ジュージュー

ローグ「ここは良い所でやんすねぇ…海も見えるし」

盗賊「太陽があればもっと綺麗なんだ…俺の女のお気に入りの場所だ」

商人「ただちょっと家が狭いね…ぼくなんか毎日納屋で寝てるからハハ」

盗賊「情報屋とローグは寝る場所無ぇが良いのか?」

ローグ「あっしはどこでも良いでやんすよ…あねさんはどうしやすかねぇ?」

商人「あ…情報屋戻って来たね…君も食べなよ…ラクダの肉おいしいよ」モグモグ

情報屋「あら?お気になさらず」

盗賊「…それで…何しに来たんだ?2人で来るってーと何かやるんだろ…」

情報屋「そうね…どこから話そうかな」

盗賊「結論から言ってくれぇ…分かんなくなっちまうから」

情報屋「左遷されたのよ…左遷」

盗賊「ヌハハ分かんねぇ」

まず政治の話

セントラルはあの後第一皇子が実権を握ってね

第二皇子は軍国フィン・イッシュに亡命

法王庁は解体

どうなるか分かる?


商人「セントラルとフィン・イッシュの戦争だね」

情報屋「そう…それでシャ・バクダ領がどちら側に就くのか問題になって居る訳」

商人「闇に落ちた世界で戦争なんかやってる場合じゃ無いんだけどね」

情報屋「そうよ…だからアサシンはフィン・イッシュに向かって戦争回避の為に暗躍しているの」

盗賊「又アイツは変な所に首を突っ込もうとしている訳か…」

情報屋「そうとも言えないのよ…レイスに対抗する手段としてゾンビ軍団を使う技術があるのはフィン・イッシュ」

商人「なるほど…不死者の軍団を使ってでも民を守りたい…そういう事だね」

情報屋「一方でアサシンは精霊の事も忘れて居ないわ…だから私はここに来たの」

盗賊「俺達をどうするつもりだ?」

情報屋「まだ情報があるのよ…ローグ?教えてあげて?」

ローグ「かしら…いや女戦士の事でやんす」

盗賊屋「ほぅ…」

ローグ「実は世界が闇に落ちたその数日後にですねぇ…」


カクカク シカジカ

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ローグ「…という事なんでやんす」

盗賊「てこたぁ剣士達は全員無事なんだな?ヌハハこりゃ良い情報だ…」

ローグ「シン・リーンに向かった後の足取りが掴めないでやんすよ」

商人「剣士達の仲間に女エルフが居たって言ったよね?」

ローグ「そりゃぁ金髪の長い髪で女神の様に美しいエルフでしてね?野郎共は一瞬でトリコでさー」

商人「…」チラリ

盗賊「…」チラリ

情報屋「…」チラリ

商人「ハハハ…ハハハハハハ…そういう事か…ハハハハハ」

盗賊「ずっとすれ違いっぱなしって訳だ…剣士達はいつも俺らの前を行ってるなコリャ」

情報屋「私が来た理由を察したかしら?」

商人「アハハハ…盗賊!今日もう一つの気球を見たよね?」

盗賊「んむ…軍船追いかけて行ったな」

商人「どうやらアレは剣士達だね」

盗賊「あいつらも情報屋が言ってたお人形さんを探してる…まぁそう考えるわな」

商人「さぁどうする!?手札が揃った」

盗賊「長距離航海するなら星が見えねぇと現在地が分かんねぇ…南の大陸までたどり着けるかだ」

商人「困ったねぇ…」

盗賊「せめて羅針盤だけでも使えりゃなんとかなるとは思うんだが…」

ローグ「…これ使えやせんかねぇ?」コトリ

商人「何だい?この石は」

ローグ「星の観測所で剣士が療養していた時なんでやんすが…その石を預かったままだったんでやんす」

商人「使い道は知ってるの?」

ローグ「かしらの妹さん…ぃゃ女海賊が作った物らしいでやんすが…狭間の出入りに使うとかなんとか」

商人「どうやって使うんだろう?アレ?これ磁石がくっ付いてるのか」

ローグ「女海賊が磁石を回して姿を消したり出てきたりしたのを見たでやんす」

盗賊「そりゃすげぇな…泥棒専用道具じゃねぇか」

商人「ちょっと面白いね…試しに使ってみよう」クル

盗賊「うぉ!!どうなってんだこれ?…消えやがった…おい!!聞こえてんのか?」パッ

商人「これスゴイ物じゃないか!!」

盗賊「マジかよ…お前なんで後ろに居るんだ?」

商人「僕は回りウロウロした後盗賊の後ろで元に戻しただけだよ?」

ローグ「女海賊はそれで遊んでたんでやんす」

商人「盗賊!!羅針盤は今持ってない?」

盗賊「船に乗せっぱなしだ…それがありゃ船で羅針盤が使えるって算段か?」

商人「でもこれは危険な物かもしれないなぁ…イヤ相当危険な物だ…時間の狭間に挟まるとどうなるか分からない」

盗賊「俺ぁそれが欲しいな」

商人「使うのは盗賊で構わないけど乱用は避けるべきかな」

盗賊「分かってる…ちぃとワクワクしてきたんだ…今から羅針盤使えるか試してくる」

ローグ「役に立つと良いでやんすねぇ」

『翌日』


盗賊「俺ぁ樽を大量に買い付けてくるからその間にみんなで水汲んどいてくれ」

商人「他の荷物はもう船に運んでおくよ?」

盗賊「馬車で何往復もする事になるだろうからローグと協力して上手くやるんだ」

ローグ「分かってるでやんす」

盗賊「情報屋は子供たち見ててくれ…じゃぁ行ってくるな」タッタッタ


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盗賊「ようし!!これで最後の荷物だな?」

ローグ「もう荷室も居室も満タンでやんす」

盗賊「入りきらん分は甲板に出しておいてくれぇ…子供たちはもう乗ってるのか?」

情報屋「ここに居るわーーー」ノシノシ

盗賊「ちぃと女盗賊に出かけるって言って来る…みんな船に乗って待っててくれぇ!!」

情報屋「はーーーい」



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盗賊「よう女盗賊…ちっと寂しくなるかもしれんがよぅ…待っててくれな?」

盗賊「用が済んだら必ず帰ってくるからよ?」

盗賊「あぁ分かってるって…子供たちの事は任せろ…んじゃ…行って来るな?」


サワサワサワ ヒューーー


---いってらっしゃい---

『船』


ザブーン ザブーン


盗賊「荷物満載の船動かすのは久しぶりだぜ…よっし出港するぞ!!商人!!碇上げろぉぉ!!」

商人「がってーーーーん!!」ガラガラ ガラガラ

盗賊「ローグ!!縦帆2つとも開けぇぇ」

ローグ「てやんでーーーーー!!」バサバサ

盗賊「情報屋!!面舵いっぱーーーい!!」

情報屋「にゃろめーーーー!!」グルグル

盗賊「横帆てんかーーーい!!」バサバサ


ギシギシ ギギギギ

ユラ~リ ユラ~リ


盗賊「やっぱクソ重いな」

商人「さぁ…僕たちの冒険の始まりだね?」

盗賊「船乗りの構成じゃないがなヌハハ」

情報屋「子供達も一生懸命手伝ってたわよ?」

盗賊「大人4人と子供達の大航海だ…こんな事やってるのは世界中で俺達だけだぜ?」

ローグ「ロマンでやんすねぇ」

商人「これは世界を救う旅なんだ」

盗賊「ちぃとメンバー不足だがな…さぁて!!お前等ぁぁ!!筋トレすんぞ…娘達もコーーーイ!!」

娘達「えええええええ!!」

子供達「わーい」キャッキャ

情報屋「ウフフ…わたしやっぱりここの生活が合ってるなぁ」

商人「ずっと一緒に居て良いんだよ?みんな家族さ」

ローグ「良いでやんすねぇ…あっしも早く彼女に会いたいでやんすよ」

『航海_何日目か』


ザブーン ザブーン


盗賊「多分なぁ…今ここら辺だ」

商人「この島の漁村が普通は中継点なんだよね?」

盗賊「灯台が見えれば良いんだがな…レイスにやられてもう誰も居ねぇと思うな」

商人「水は大丈夫?」

盗賊「多分古都キ・カイまでは持つ筈だが…補給出来るに越したことは無ぇ」


ローグ「右前方に何か見えるでやんす~~!!」


盗賊「おぉ!!今行く!!」ダダダ

商人「あ!!海図忘れてるよ!!」タッタッタ


ローグ「灯台は見えないでやんすねぇ…何でやんすかねぇ?」


盗賊「…入り江が見えんな…ありゃ無人島か?…ちょい海図見せろ」

商人「あーー現在地大分西にズレてるんじゃない?ホラここの島」

盗賊「まだ分からん…あの島を見ながら一旦東に進路変える…情報屋!!面舵だぁ!!東に進路変えるぞ!!」

情報屋「あいあい…」グルグル


ローグ「正面に大きな島が見えてきやした!!」


盗賊「なるほど…てことはこっちだな」

商人「ええ?全然違う所じゃない」

盗賊「航海はそういう物だ…こりゃえらく東に流れたな中継の漁村なんか今からじゃ無駄だ」

情報屋「このままで良いの~~?」

盗賊「ダメだぁ!!ちと俺が修正する!!お前も見張り頼む」

盗賊「ローグ!!横帆を張りなおす…下降りてこい」

ローグ「わかったでやんす~」

商人「南西に転換?」

盗賊「そうだ!!南の大陸のかなり東に行く事になる…大陸右手に見ながら目的地目指す」

ローグ「横帆はどう張れば良いでやんすか?」

盗賊「左舷の2番目の柱に結んでくれぇ!!向こうのやつも同じように張ってくれ!!」

ローグ「あいさーーー」

盗賊「商人!!海図持ってこい」

商人「ん…あぁ」

盗賊「えらく大回りしちまった…大陸で補給したいが」

商人「南の大陸は海図に詳細書いてないよ…」

盗賊「んああぁぁぁ…しゃーねここの川で一旦小舟降ろそう…樽4つ汲めばなんとかなるだろう」

商人「小舟にも魔方陣やっておくよ」

盗賊「そうだな…やっといてくれぇ」

『南の大陸_河口』


ザブーン ザブーン


盗賊「んじゃ水汲んでくるわ!!ローグ!!お前も来い」

ローグ「あいさー」

商人「気を付けて~」ノシ

情報屋「水足りないの?」

商人「雨が降らないのがね…」

情報屋「海岸沿いにいくつか漁村あった筈なのに」

商人「南の大陸の地図が無かったからさ在るか無いかわからない所に寄れないんだと思うよ」

情報屋「南の大陸の事は盗賊もあんまり知らないのね?」

商人「その様だね…そういえば君の出身は古都キ・カイだったね?」

情報屋「10年くらい前に北の大陸に移住したのよ」

商人「南の大陸はどんな風なの?」

情報屋「大きな国は古都キ・カイとドワーフの国…ずっと南の方には蛮族が居るらしいわ」

商人「蛮族?」

情報屋「蛮族もいくつか派閥で分かれてるらしいけど私は良く知らない」

商人「へぇ…」

情報屋「北の大陸よりも古代文明を良く研究しているからとても進んでいるのよ?」

商人「それは知ってる…確か錬金術が盛んだったよね」

情報屋「そう…錬金術で新しい金属や生物を作るの…それに古代文明の科学を組み入れて機械を作るの」

商人「君が言ってたホムンルクスってそうやって作るの?」

情報屋「ホムンルクスと言っても色々在ってね…完全な人の形をした物はまだ作れないみたい」

商人「僕たちが探してるホムンルクスってもしかして完全な形のやつ?」

情報屋「そう…完全体」

商人「その他のホムンルクスってさ義手とか義足になってる奴でしょ?」

情報屋「そうよ…そういうのを組み合わせて人型にした物がキラーマシンという機械…北の大陸の衛兵の代わりね」

商人「やっぱり軍事目的で使われるんだ」

情報屋「出回ってる義手とかはテストみたいな物ね…だから色々あるの」

商人「キラーマシンってさ…どうやって動くんだろう?人間でいう脳の部分」

情報屋「君ぃ…私に全部白状させようとしているな?」

商人「えへへ…バレたか」

情報屋「よかろう!!教えてあげよう!!」

商人「わくわくするよ…はやくはやく」

キラーマシンが動く原理は人工知能という機械が働いているお陰なの

現在の技術では人間が遠隔操作して動かしているわ

でも遥か古代文明では自律で動く様になっていたらしい

人口知能を搭載して自律で動くホムンルクス

私はそれこそが北の大陸で崇拝されている精霊の起源だと思っているの

でもこの学説は北でも南でも支持を得られない

北では精霊が神格化されているし

南では人工知能が魂を持つとは思われていない

でもね?

私は思うの

もしもキラーマシンが人間の心を持ったとしたら

何千年もその心が生き続けたとしたら何を思うのか?って

そう考えると伝説で伝えられてる数々の精霊の行いが辻褄の合うものになっていく

まぁ…証拠は無いおとぎ話なんだけどね

私は子供の頃に機械の犬を持っていてね

その子だけが私の友達だったのよ

でもある日機械が壊れてしまって動かなくなった

とても悲しくて沢山泣いた…機械相手なのに

その後大人になって色々勉強して機械の事がわかるようになってきてね

子供の頃に一緒に過ごしたその機械の犬がどういう風に動いてたのか理解したの

ボロボロになったその子の中にメモリという部品を見つけて解析したら

私の声がずっと記録されていたの

私とのやり取りをずっと記録していたのよ

どうして機械が勝手に記録していたのかは分からない

私にはその子に魂が合ったとしか思えてならないの

だから何も証拠が無くても

精霊の起源は魂を持ったホムンルクスだって信じてる


商人「…良い話だね」

情報屋「ありがとう」

商人「君がホムンルクスを探してる理由は…その犬に愛が合ったのか確かめたいんだね」

情報屋「うん…」

商人「出来る事ならもう一回会いたいね」

情報屋「そう…それが古代から精霊が生き続けている理由だと思うの」

商人「逆の立場から考えるとさ…もしも永遠の命がその犬に合ったとして君が死んだときどう感じるかな?」

情報屋「え…」

商人「記録した君の声を聞きながら生きていくのかな?」

情報屋「かなしいね…切ないね」

商人「そんな記憶を何千年も記録するのはとてつもなく悲しいね…どうすれば救われるんだろうね?」

情報屋「夢幻…」

商人「そんな気がするよね…」

『古都キ・カイ』


ザブーン ザブーン


盗賊「やっぱりこっちの方もレイスが出てた様だな?ちと様子見てから船寄せるか」

商人「前アサシンと一緒にここに来たんだよね?随分変わってる?」

盗賊「あん時はもっと町の外に人が歩いてたんだよ…今は全然居ねぇだろ?」

情報屋「キラーマシンが立ちんぼになって居るわね」

盗賊「だな…ありゃ壊れてるんか?」

情報屋「操作している人が居ないだけだと思うんだけど…」

盗賊「あれを見ろ…シン・リーンの軍船だ…気球も乗ってる」

商人「剣士達に追いついたね」

盗賊「軍船にゃ人が乗ってる様だな…アレの横に付けるか?ひょっとしたら剣士達も乗ってるかもしれん」

商人「そうだね…上手い事会えると良いね」

盗賊「あそこが慌てて居ないって事は大した危険も無い様だ…早いとこ下船してちゃんとした水が飲みてぇ」

情報屋「そうね…喉がカラカラだわ」

盗賊「じゃ…寄せるぜ?」グルグル


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ギシギシ ギギギ ガコン


盗賊「…何にも警戒されていない様だが…こりゃ勝手に下船しても良いってか?」

商人「シン・リーンの軍船からは警戒されてるね」

盗賊「そらそうだわな…この闇で船乗ってる奴はそら怪しいと思うわ…どうする?」

商人「んーーー困ったね…勝手に下船して捕まるのも嫌だしね…」

情報屋「そこは私が交渉してみる」

盗賊「キ・カイの地下降りる所まで結構距離があんだよ…子供達どうすっかだなぁ…」

商人「馬車に魔方陣張って行くしかないね」

盗賊「しゃーねぇ俺が馬車で往復して後で追いかけるわ…情報屋!!お前地下の地理分かってんだろ?」

情報屋「うん…降りて直ぐの所で待って要れば良い?」

盗賊「状況が分かんねぇから落ち合えなかった場合の集合を…」

情報屋「中央のホームと言われている場所分かる?」

盗賊「あぁ分かった…降りて直ぐの所で待てない状況だったら中央ホームで集合…いいな?」

商人「随分慎重なんだね?」

盗賊「めちゃくちゃ入り組んでんだよ」

商人「へぇ…楽しみだな」

盗賊「んじゃ…みんな馬車で下船準備だ!!」

『馬車』


ゴトゴト ゴトゴト


商人「何か変だね?下船しても誰にも止められないなんて」

盗賊「やっぱ地上の町は完全に放棄してる様だな…こりゃ盗賊ギルドもアテに出来ん」

ローグ「あそこ見るでやんす!!死体が積んであるでやんす」

情報屋「ここも被害が出ているのね」

盗賊「お前は家族とか居ないのか?」

情報屋「もう居ないから心配しなくて良いわ」

ローグ「それにしても死体が変でやんすねぇ…半分石になっておりやんす」

情報屋「それは気にしなくて良いわ…この国では普通だから」

ローグ「どういう事でやんすか?」

情報屋「不良品のホムンルクスを使った義手とかはそういう風になってしまうの」

商人「それにしても本当に誰も居ないね」

盗賊「全部地下に避難してるんだろ」

商人「そんなに広いのかい?」

盗賊「俺ぁ全部は知らねぇ…だが相当広いぞ…いや広いが狭い」

商人「ハハどっちなのさ」

盗賊「とにかくゴチャゴチャなんだ…まぁ行ってみりゃ分かる…さぁ着いたぞ」

情報屋「入り口にも誰も居ない…」

盗賊「ローグ!!皆を守ってやってくれぇ…さぁ全員降りてそこの階段下ってけ!!」


ワーイ ドタドタ


盗賊「じゃぁ情報屋!!後は頼んだ!!30分で戻る」

『地下』


情報屋「みんな迷子にならない様に気を付けて付いてきてね」

子供達「はーい」

情報屋「やっぱりここで検問か…」

衛兵「止まれ!!お前たちは何処から避難してきたのだ?」

情報屋「これ身分証です…北の大陸から逃れて来ました」

衛兵「上手く逃れて来た様だな…避難民はチカテツ街道に収容する事になっている」

情報屋「何番目ですか?」

衛兵「ここは初めてでは無いのだな?話が早い…8番チカテツ街道だ…行き方は分かるな?」

情報屋「大丈夫です…配給は有るのでしょうか?」

衛兵「1日1回の配給しか無い…貰いそびれないように気を付けろ」

情報屋「ありがとうごさいます…行って良いですか?」

衛兵「行け!!ここは衛兵の詰め所になって居る故…真っ直ぐ奥まで行け」

情報屋「みんな付いてきて」テクテク

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商人「ねぇチカテツ街道って何?」

情報屋「ここはね…古代遺跡の中に街を作った都市なの…古代ではチカテツと呼ばれていた場所に街があるのよ」

商人「へぇ…変な名前」

情報屋「他にもデパチカ居住区…チカガイ貴族居住区…中央ホーム…カイサツ門…いっぱいあるわ」


ガヤガヤ ガヤガヤ


情報屋「子供達!!手を繋いで迷わない様に付いてきてね」

商人「盗賊との待ち合わせ場所は?」

情報屋「もう通り過ぎちゃったから中央ホームに行きましょ」

ローグ「人が多いでやんすねぇ」

商人「色んな人が居るね…ヘンテコな装飾した人とか」

情報屋「アレは装飾じゃなくて機械の部品よ」

商人「すごいな…この街は世界が闇に落ちても賑やかなんだ」

情報屋「全然賑やかなんかじゃないわ…いつもの半分という所かしら」

商人「なるほど盗賊の言う狭いって言うのは広間が何処にも無いからだ」

情報屋「そうね…何処に行ってもこういう通路に人が沢山居る」

商人「露店も結構出てるね」

情報屋「落ち着いたら買い物もできるかもね…さぁここが中央ホーム」

『中央ホーム』


ガヤガヤ ガヤガヤ


盗賊「おぉ見つけた!!待ったか?」

情報屋「気にしないで?」

盗賊「他のみんなはどうした?…あぁあそこにいるか」

情報屋「中央ホームを出ない範囲で露店を見て回ってるの」

盗賊「まぁこういうのは久しぶりだろうからやらせておくか」

情報屋「ここに居ると世界の危機が分からなくなるわね」

盗賊「そうでも無ぇぞ?食い物が全く売ってねぇ…みんな腹減らしてるだろ」

情報屋「あら?気が付かなかった」

盗賊「人間は腹減りだすとよそから盗むようになる…これじゃそのうち暴動起きるな」

情報屋「配給が1日1回だって聞いた?」

盗賊「あぁ聞いた…どうせアテに出来ん…ちっと飯の調達は考えて置かんとイカン」

情報屋「船に乗ってる食料は?」

盗賊「アレは本当にヤバイ時用だ…無駄遣い出来ん」

情報屋「さて…チカテツ街道の8番に行けって言われたんだけど…」

盗賊「お前デパチカ居住区にどっかアテ無いのか?チカテツ街道はセントラルの下水みたいなもんだろ」

情報屋「もう10年も昔だから今どうなってるのか…」

盗賊「しょうがねぇなチカテツ街道行くしかねぇか…8番っちゃどこに繋がってんだ?」

情報屋「…立ち入り禁止から向こうに行ったこと無いから…」

盗賊「くぁぁぁアテになん無ぇな…まぁ行ってみっか!!」

『8番チカテツ街道』


ガヤガヤ ガヤガヤ


盗賊「ヌハハこりゃ最高の難民キャンプだな!足の踏み場も無ぇ」

商人「安全だと思えば安いさハハ」

ローグ「配給貰って来たでやんす~一人一個づつの芋でやんす~」

盗賊「ローグ!!子供達の面倒みててやってくれぇ…ちと情報仕入れてくるわ」

ローグ「任せるでやんす」

盗賊「情報屋!!デパチカ居住区まで付き合え…商人も来い!剣士達を探したいんだ」

商人「おっけーアテあるの?」

盗賊「無いが…女海賊好みの店回ったらバッタリ会うかもってな…」

商人「ハハハ良い案だね…僕もいろいろ見たかったんだ」

盗賊「あいつは虫とか謎の機械とかが大好きなんだ…分かりやすいだろ?」

商人「カバンの中にいつも虫隠してそうだね」

盗賊「間違いねぇ…それから謎の金属もだ…変な物に興味を持つんだ…しかも恥ずかしげもなく装着する」

情報屋「フフフ今頃クシャミしてるわよ?」

ローグ「あっしの彼女もお忘れなく…」

盗賊「女戦士は何が好きなのか知ってるか?」

ローグ「望遠鏡っす…あとは顕微鏡とか虫メガネとかっす」

盗賊「…二人とも同じじゃねぇか」

ローグ「いえ一つ違うっす…女戦士は隠れて装着するっす」

盗賊「お前なんでそれ知ってんだ?」

ローグ「あっしは隠れて見てるんす」

盗賊「…」

情報屋「…」

商人「さ、さぁ行こうかハハ」

『デパチカ居住区』


ガヤガヤ ガヤガヤ


盗賊「じゃぁここで分かれるぞ?俺は情報収集…情報屋は住める所探してくれ…商人は女海賊な?」

商人「おっけー」

情報屋「住める場所って…お金が必要な場合は?」

盗賊「金は気にするな俺が何とかする…今必要か?」

情報屋「今って…」

盗賊「さっきスッった奴ならあるぞ…もってけ」ポイ

情報屋「もう?…ありがとう」ジャラリ

盗賊「集合はこの場所に大体4時間後…いいな?」


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盗賊(さぁて…まずは地図だな)

盗賊(何処に売ってんだか分かんねぇな…まぁ歩いてみっか)


ドン!


盗賊「ぬぁ!!気を付けろぃ…」

女「あ!ヤバ…」

盗賊「おま!!女海賊…」

女海賊「…」ピューーーー

盗賊「おい!!待て!!何で逃げんだよ!!」


スタコラ


盗賊「ちぃ…あいつ何処行きやがった!!」

盗賊(あんにゃろう…次見つけたら容赦しねぇ)


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---4時間後---


盗賊「…」ブツブツ

商人「やぁ!!早いね…どうしたの?」

盗賊「どうしたもこうしたも無ぇ!!女海賊見つけたんだけどよぅ…」

商人「本当に?何処?」

盗賊「俺の顔見て逃げやがった」

商人「え?何で?」

盗賊「知るか!!」

商人「他に何か情報ある?」

盗賊「アイツ探して時間食った…大した情報聞けてねぇ」

商人「何か盗まれてない?」

盗賊「ナヌ!!ぬあああああああああああああああ…無い!!」

商人「何?」

盗賊「消える石だ!!くっそ!!あいつそれ使って逃げたんか」

商人「ハハハ一本取られたね」

盗賊「俺の計画台無しだクソがぁ!!チカガイ貴族居住区行こうと思ってたんだ」

商人「どうして逃げたんだろうね?…でも鮮やかにやられたねハハ」

盗賊「そっちは何か良い物あったんか!?」

商人「あんまり欲しい物が無くてね…ただシン・リーンの魔術師達の行先が分かったよ」

盗賊「成果ありだな」

商人「どうも国賓扱いでシェルタ砦に要るらしい」

盗賊「そら何処にあるか知らねぇな…あいつら国賓で俺ら下水かよ…ケッ」

商人「でも女海賊が居たって言う事は多分近いんだろうね」

情報屋「居た居た…住む場所見つかったわ」

盗賊「おぉそりゃ良かった」

情報屋「狭いけれど娘と子供達だけなら大丈夫そうよ」

盗賊「じゃぁここで待っててくれぇ…俺はみんな連れて来る」


『デパチカ居住区_家』


盗賊「こりゃまた狭いな…」

商人「壁があるだけ良いじゃない」

盗賊「大人4人は外で話した方が良さそうだな…娘と子供たちは家の掃除しといてくれ」

娘達「お腹すいたぁぁ」

盗賊「後で食い物持ってくるから今はガマンしろ」

ローグ「まだ芋が余ってるんでこれでガマンするでやんすー」

盗賊「ちっと狭いから外出るぞ…」スタスタ


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盗賊「…でだ?シェルタ砦って知ってるか?」

情報屋「チカガイ貴族居住区の一層下にある区画よ?…一般の人は立ち入り禁止」

盗賊「俺らが行って入れそうか?」

情報屋「入り口が一か所だし無理ね」

商人「そこはこの国の拠点になってるの?」

情報屋「拠点の一つって言えば良いのかな?…未探索の古代遺跡があるのよ」

商人「知ってるって事は行った事あるんだ?」

情報屋「シェルタ砦のもう一層下に大きな部屋があってそこにサーバ石という石が沢山あるの…その調査に行った事がある」

商人「未探索ってどういう事?」

情報屋「さらにその奥に扉があるんだけどどうやっても開かないのよ…そこが未探索」

商人「ハハーン…ホムンルクスはソコか?」

情報屋「…かもしれない…でもそこに行くためには国の許可が必要よ?」

商人「剣士達が国賓でシェルタ砦に居るっていう事は狙いはその未探索な所の可能性が高いよね」

盗賊「どうやっても開かない扉をどう開けるつもりなんだ?」

商人「さぁね?…盗賊なら開けられたりしない?」

盗賊「やってみんと分からんがどうやっても開かないなら開かないんだろ」

商人「そこは剣士達にやらせておくとして…情報屋は他に何かホムンルクスの手掛かり知らないの?」

情報屋「知ってたらもう教えてるわ」

盗賊「国が管理してるってこたぁ合理的に開けても国に持って行かれるわな」

商人「そうだね…まぁ持って行かれた物を盗みなおせば済む話だけどね」

盗賊「ヌハハそらそうだ」

商人「なんか手詰まりだねぇ…ひとまず剣士達に合流するのが先かなー」

盗賊「あんま騒ぎ起こしたく無いんだが…やっちまうか?」

商人「何か案ある?」

盗賊「女海賊の気球を盗む…そしたらあいつら出てくんだろ」

商人「アハハ…面白いね」

盗賊「やり方は簡単だ…正面から堂々と仲間の振りして気球まで行って飛んじまえばこっちの物だ」

商人「良いね…何かあっても捕まるだけだもんね」

盗賊「ただ一つ問題があんだ…狭間の中と外の時間差だ」

商人「あぁ忘れてた…それ深刻だね…どれだけ違うのか見当が付かないね」

情報屋「ねぇそんな危ない事しなくてもシェルタ砦の衛兵に気球が盗まれたって言えば済むんじゃない?」

盗賊「…そういやそうだな…入り口一つだけだもんな」

情報屋「あなた達の発想は泥棒からスタートするのね」

盗賊「悪りぃ悪ぃ…俺は盗み返したいのが先行しちまった…情報屋の案で行こう」

『シェルタ砦』



盗賊「網の準備は良いな?」

ローグ「まかせてくれやんす」

商人「いいよ」

盗賊「情報屋!!行け!!」


タッタッタ


衛兵「待て!!ここは立ち入り禁止だ」

情報屋「はぁはぁ…はぁ」

衛兵「どうしたんだ?そんなに慌てて」

情報屋「軍船に乗せてる気球が海に落ちて沈みそうなんです…はぁはぁ」

衛兵「シン・リーンの軍船か?」

情報屋「はい!!国賓で来ている女戦士か女海賊に気球が沈みそうだって連絡してください」

衛兵「分かった…確認を取る…お前はそこで待っていろ」

情報屋「はい!!邪魔にならない様にしています」テクテク


---数分後---


女海賊「お姉ぇ!!道分かる?」タッタッタ

女戦士「お前の方が詳しいのでは無いのか」

女海賊「入り口まで行った事無いよぉ」

女戦士「ええい少し待ってい…ん?」


------------------

盗賊「今だ!!」バサ

女海賊「むぎゃ…ちょちょちょちょ」バタバタ

盗賊「押さえろ…手を使わせるな!!」

ローグ「がってん!!」グイ

女海賊「ちょっとあんたらぁぁ!!いでいで…」


衛兵「あ…」ボーゼン


商人「やぁ!!又会ったね…元気だった?」

女海賊「ちょ…離せ!!あ…やべ」

盗賊「あ…やべじゃねぇだろ!!」

女戦士「…盗賊!!ローグまで…どうしてここが」

盗賊「どうしてじゃねぇよ!!女海賊から何も聞いて無ぇのか?」

女戦士「どういう事だ?女海賊!!盗賊たちが居るのを知っていたのか?」

女海賊「だってさぁ捕まえに来たんだろ?私の事…悪かったよ金盗んで…」

盗賊「金だと?なんだそりゃ…」

女海賊「あれ?」

女戦士「…それで…気球の件はどうなっているのだ?」

盗賊「ありゃ冗談だ」


衛兵「あのー…どうしましょう?」


女戦士「あぁぁ騒がせてしまった…私たちの仲間なのだ…立ち入り許可を取って貰いたいのだが…」

衛兵「あ…はい」

女戦士「その前にあの網に掛かっているバカに仕置きをしたいのだが…」

衛兵「はぁ…」

女海賊「ちょちょ待って…お姉ぇ!!助けてよ」

女戦士「お前はやっぱり叩かれないと分からない様だ」スラリ

女海賊「ごめんもう嘘つかないから許してぇぇぇ」


バチーン  いだぁぁぁい!!

『シェルタ砦_客室』


ローグ「かしらぁ!!あっしはこんな所まで追いかけて来たでやんすよ」

女戦士「事情が在ってシャ・バクダまで戻れなかったのだ…ゆるせ」

ローグ「心配したでやんすよ」

女戦士「向こうの方はどうなって居るのだ?盗賊が居るという事はアサシンは戻って来たのだろう?」

ローグ「いろいろあったんでやんす…でもマスターが戻って来たんで心配ないでやんす」

女戦士「そうか…しかしまぁ…良くキ・カイまで来れたな?どうやって来たのだ?盗賊」

盗賊「あぁ俺達はずっとすれ違いっぱなしよ…船で来たんだがえらい苦労したわヌハハ」

女戦士「そっちの2人は誰だ?」

盗賊「あぁ面識無ぇか…こっちが情報屋でアサシンの相方だ…それでこっちが商人…俺の相方だな」

情報屋「初めまして…アサシンから話は伺っています」

商人「やぁ!!僕も君の事は盗賊から聞いて居るよ…よろしく」

女戦士「…こちらこそ」ジロリ

盗賊「ところで剣士はどうしたんだ?居ない様だが…」

女戦士「んむ…どこから話した物か…」


私たちの仲間には剣士の他に女エルフと魔女が居るのだ

魔女は光の国シン・リーン王女…王国の特使としてコチラに来ている訳だ

私と女海賊は王女の従士という肩書で同行させてもらっている

特使で来ている関係で魔女は祝宴であちこちに連れまわされて要るのだ

剣士は勇者という肩書

女エルフはエルフの使者という肩書

今は魔女に同行している

私と女海賊は留守番なのだ


盗賊「剣士が勇者の肩書ってどういう事だ?…そういやあいつの目はどうなった?」

女戦士「話は複雑なのだが…」


カクカク シカジカ

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--------------

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盗賊「…なるほど」

商人「スゴイ話だねぇ…魔女と話をしてみたいよ」

女戦士「お前たちがこの国まで来た目的は何だ?私たちを追って来ただけでは無いのだろう?」

商人「こっちも話は複雑なんだけど目的は多分一緒…ホムンルクスさ」

女戦士「やはりそうか…どこにあるのか見当は付いているのか?」

商人「その言い分だとそっちも情報が無いっていう事だね」

女戦士「魔女の塔に来た人間が古都キ・カイに器があると言う事を言い残して行ったしか情報が無い」

情報屋「それは私達だったの」

女戦士「フフフ本当にすれ違ってばかりだったのだな…それでその情報元はアサシンという訳だな?」

情報屋「アサシンにホムンルクスの話をしたのは私…彼はそれが器だと知っていたのかはわからない」

女戦士「亡くなった塔の魔女にどの程度話を聞いて居たのかは知らんが…器に気付いた可能性はあるな」

盗賊「前にアサシンと一緒に来た時はこの辺りをうろついて居たのは間違いねぇ」

情報屋「やっぱりここの下にある未探索エリアにあるって考えるのが妥当ね」

女戦士「なんだそれは?」

情報屋「シェルタ砦の下層に開かない扉が在ってその奥が未探索エリアって言われてる」

盗賊「一般民は立ち入り禁止っていうもんだから近づけねぇんだ…今調べられねぇか?」

女戦士「ハハハ私たちはシェルタ砦内は何処に行っても良いと言われているぞ?」

盗賊「一回見てみてぇな」

女戦士「了解を取って来るので待っていろ」

『シェルタ砦_階段』


盗賊「お前…イジケてんのか?」

女海賊「…」シュン

女戦士「構うな」

盗賊「金盗んだってどっから盗んだんだ?」

女戦士「セントラルに居た時からずっと盗賊の金を盗み続けていたらしい…白状させた」

盗賊「なぬ?娘達が使ってたんじゃなかったのか?…道理ですぐ無くなる訳だ」

女海賊「良いじゃんちょっとくらい…いっぱい有ったんだから」ブツブツ

女戦士「又叩かれたいのか?」スラリ

女海賊「ちょちょちょ…もうやらないから…やめてやめて」

盗賊「ヌハハまぁ勘弁してやれぇ…んで何に使ったんだ?」

女海賊「これ…」

盗賊「なんだその石っころ」

情報屋「え!?えええええええええ!!それはウラン結晶…どうしてそんな物を」

女海賊「爆弾の研究」

情報屋「とっても危ない物よ?」

女海賊「知ってるよ…ちゃんと金属の容器に入れてるから大丈夫」

盗賊「そんなヤバイ物なのか?」

情報屋「古代文明を滅ぼした爆弾の材料なの…この国の錬金術師は喉から手が出るくらい欲しがってる」

女海賊「ヌフフ良い事聞いちゃった♪」

商人「飛んだところからお金が転がり込んできたねハハハ」

『シェルタ砦_地下1層目』


商人「ここに並んでいるのが例のサーバ石?」

情報屋「そうよ?…もう調査は終わっているけれど何に使われていたのかは解明されていないの」

盗賊「人が居るな…研究者か何かか?」

情報屋「多分ね…私も昔はここで研究してたわ」

商人「これ8000年も経ってるんだよね?」コンコン

情報屋「触ると怒られるわよ?すぐに崩れてしまうから気を付けて」

商人「全部同じ物?いっぱいあるけど」

情報屋「ここから下の層にも全部同じものが並んでるの」

盗賊「正面に扉があるな…アレか?」

情報屋「うん…開けられそう?」

盗賊「見た感じシェルタ砦の入り口の扉と同じだな…なんであっちは開いてんだ?」

情報屋「さぁ?」

盗賊「なんかいろいろやった痕跡があんな…爆弾でもダメな様だな」

情報屋「話によると爆弾も魔法もあらゆる手段を使っても開かなかったらしいわ」

盗賊「女海賊!!お前磁石持ってたな?貸せ」

女海賊「ほい!!…わたしもちょっと調べるね~」ポイ パス

盗賊「引っ付かねぇ…何の金属だこりゃ」カチカチ

女海賊「この扉を開ける努力はしても良いのかな?」

情報屋「良いと思うけれど許可は必要だと思うな」

盗賊「ちぃと努力してみるからよ…許可取ってきてくれねぇか?」

女戦士「分かった」

盗賊「多分時間掛かるからみんなは剣士達が戻って来るまで上に居て良いぞ」

情報屋「私は子供たちに食事を持っていってあげるわ」

盗賊「あぁそうしてくれぃ」

ローグ「ほんじゃあっしたちは一旦もどるでやんす~」

『開かずの扉』


カチャカチャ


盗賊「もどり!!外の扉の構造見て来た」

女海賊「全然開きそうに無い…なんか分かった?」

盗賊「でかいカラクリ仕掛けだ…お前金属糸持ってたよな?」

女海賊「あるよ」

盗賊「ちょい貸せ…ほんでな?ここの隙間の奥にシャフトがあるんだ…そこまで入れたいんだが」

女海賊「入りそう?」

盗賊「…こんな虫の穴みたいな隙間から上手い事シャフトに…いやぁ無理だなこりゃ」

女海賊「虫なら居るよ?」

盗賊「虫にシャフトまで行って巻いて帰って来いと言うのか?…アホか!!」

女海賊「いでよ私の奴隷1号!!」

ミツバチ「…」ブーン

盗賊「…」

女海賊「上手い事やったら女王バチ探してやる…行ってこい!!」

ミツバチ「…」ブーン

盗賊「そのミツバチは言う事聞くんか?」

女海賊「手なずけた…最強のミツバチにする予定」

盗賊「マジか…そんなんアリか?」

女海賊「上手く行ったら女王バチ探すの手伝って…あ!!戻って来た」

ミツバチ「…」ブーン

盗賊「お?」キュッ キュ

女海賊「引っかかってる?」

盗賊「おぉぉぉイケるかも…ほんでな…このシャフトを回すと扉がすこし傾く様になってんだ」キュッ キュ

女海賊「回ってる?」

盗賊「回ってる手ごたえはある…ちぃと時間掛かるな」

女海賊「んあぁぁぁ私飽きてきた…帰って良い?」

盗賊「あぁ良いぞ?こりゃ俺の趣味だ」キュッ キュ ブチ

盗賊「だああああああぁぁ切れちまった…金属糸まだあるか?」

女海賊「もう無いよ…諦めようよ…ん?」ヒューーーー

盗賊「何か聞こえるな…どこだ?」ヒューーーー

女海賊「下…ここの下から音がする」

盗賊「空気が入って行ってる…のか?」

女海賊「もしかしてさぁ…この奥って真空なんじゃない?だから開かなかったんじゃないの?」

盗賊「こりゃ空気入りきったら開くな…みんな呼んで来い!!」

女海賊「おっけー」タッタッタ

『数分後』


盗賊「おぉぉ皆来たか」

女海賊「空いた?」

盗賊「まだだ…」

剣士「盗賊!!久しぶり!!」

盗賊「おおぉぉ剣士か!!元気だったか?目は?見えてるのか?しゃべれる様になってんじゃねぇか!!」

剣士「おかげで見える様になったよ…女盗賊は?」

盗賊「あぁぁ聞いて無いのか…アイツは天国行っちまった」

剣士「…」

女海賊「えぇ!!マジ!?…なんで早く言ってくんないのさ!!」

盗賊「スマン…セントラルに魔物が攻めて来た時に瓦礫の下敷きになっちまってな」

女海賊「そんなぁ…そん時見てたんだよ」

盗賊「しばらく生きてたんだが…今は港町で眠ってる」

剣士「ごめん…助けられなくて」

女海賊「…なんかイライラしてきた」

盗賊「運が無かったんだ…もう気にしないでやってくれ…落ち着いたら墓まで案内してやる」

剣士「…」

女海賊「…」

情報屋「女盗賊はみんなに見守られて安心して天国に行ったわ…そんなに悲観しないで?」

盗賊「それでこっちの嬢ちゃんが魔女か?」

魔女「そうじゃ…主の事は聞いておるぞよ?」

盗賊「嬢ちゃんらしくねぇしゃべり方だな」

女戦士「魔女様はもう80歳だそうだ…失礼の無いようにな」

盗賊「そういや王女様だったなヌハハ俺は恥ずかしくて名乗れねぇ…んで…隠れてねぇで出て来いよ」

女エルフ「…」ソローリ

盗賊「痛かったぜぇ!!お前の矢…」

女エルフ「ごめんなさい…知らなかったから」

盗賊「あんときゃもっと威勢の良いエルフだと思ったんだがな」

女エルフ「怖かったから…その」

盗賊「あれ?情報屋どうした?まだ戻って無いのか?」

女戦士「遺跡の調査員を連れて来るらしい…すぐに来る」



ドヤドヤ ドヤドヤ



商人「扉もう開いた?」

盗賊「いやまだだ…まだ空気吸ってやがる」

情報屋「扉が開いたら中に入ってはダメ…立ち入りは調査員だけでやるから私たちは見てるだけ」

盗賊「なんだよ開けたのは俺だぞってんだ」

商人「しょうがないよ…この国の所有物なんだからさ」メパチ!!

盗賊「あぁぁ分かってる分かってる…その後なんだろ?」



ガコン ギーーーー

『開かずの間』


おぉぉぉ

これは当時のままなのか…

上院が来るまで触手厳禁だ

足元気を付けろ


盗賊「…どれがホムンルクスだ?あの石造か?」

商人「2体あるね…なんだろうあのガラス容器」

魔女「あの石造は精霊の像と同じじゃ…すこし容姿が違うようじゃが」

商人「石造になってるって事はさ…もう動いてないって事だよね?…それで良いんだっけ?」

情報屋「…やっぱり私の学説が合ってた…その証拠だわ」

魔女「主は何か知っておったのか?情報屋…」

情報屋「私はホムンルクスが精霊の起源だと思っていました…その証拠が今発掘されました」

魔女「じゃが石造になっていては器にはならんのぅ…シン・リーンの精霊像と何も変わらぬ」

情報屋「調査しないと断定は出来ませんが…おそらく器の機能は失われていると思います」

魔女「ここと同じ様な未探索の部屋は他には無いのかの?」

情報屋「今の所…私は知りません」

商人「宛てが外れたかぁ…振り出しに戻ったね」

女エルフ「…」

魔女「…女エルフや?どうしたのじゃ?震えておる様じゃが…」

女エルフ「…いえ…あのガラスの容器を知っています」

商人「お?」

女エルフ「夢幻の門の中の記憶では魔王島という所にそれと同じガラスの容器がありました」ブルブル

女海賊「魔王島…なんか知ってるぞ?」

剣士「僕も覚えてる」

魔女「…そういえばわらわもかすかに覚えておるのぅ…ガラスの容器なぞ有ったかの?」

商人「4人知っているというのはただ事じゃないな」

盗賊「そこが唯一の手掛かりなら行ってみるしか無ぇな…どこにあんだ?遠いのか?」

情報屋「ここは調査員に任せて私たちは上に上がりましょ」

『シェルタ砦_客室』


盗賊「海図もってきたぜ!!」

商人「夢で見た魔王島が何処にあるか海図で示せる?」

女エルフ「…多分ここら辺」

盗賊「岩礁地帯か…もうちっとピンポイントで分かんねえのか?」

女海賊「わたし知ってるよ…えっとねココ!!」ビシ

盗賊「んんんん沈没覚悟で行くなら良いが…ちっと危険すぎるな」

女海賊「気球で良いんじゃない?ここからなら2日って感じかな」

商人「なら別行動にするしか無いね…女海賊と盗賊は行くとして…後は剣士と情報屋かな?」

女戦士「賛成だ…魔女はまだ特使としての仕事が残っているしな」

魔女「わらわはもう祝宴なぞ行きとうないのじゃが…」

女戦士「私もドワーフの国の王女として賛同する…折角のもてなしを楽しもうでは無いか」

商人「それじゃ僕とローグは留守番かな…ゆっくりしておくよ」

女海賊「商人!!あのさぁ…このウラン結晶売っといて…そのお金で気球にプロペラ付けたいんだ」

商人「良いのかいこんな珍しい物?」

女海賊「私にとってはプロペラの方が重要なんだ…それ持ってるとクッソ重たいんだよ」

商人「確かに重いね」

情報屋「錬金術師に売るのならお金に加えて魔石を沢山貰うと良いと思うわ」

商人「どうして?」

情報屋「その大きさなら買い取るだけのお金が無いと思うのよ…だから代わりに魔石を貰うの」

商人「なるほど…相場が分からないんだけどどれくらいするものなの?」

情報屋「その大きさのダイヤより高価と言えば分かる?」

商人「貴族でも買い取れるかどうかだね」

情報屋「ウラン結晶は魔石のエネルギー充填に使うから欲しい人はいっぱい居るわ」

女海賊「ちょい待ち!!エネルギー充填って言ったね?…売るの止め!!その機械作る!!」

商人「どうする気だい?」

女海賊「そのウラン結晶を源泉にした魔石を使った推進装置を作ってプロペラの代わりにする」

商人「ヤレヤレ…まぁ分かったよ預かっておくよ」

情報屋「女海賊は変わった子だけどなんか賢そうね?」

商人「あーーダメダメ!そういう事聞こえると調子に乗っちゃうから…」

女海賊「ムフフ」ニマー

『気球』


ビョーーーウ バサバサ


盗賊「…こんな工夫やってたのか…そら早えぇわ」

女海賊「見直した?惚れる?もっと言って」

盗賊「こんな高高度でなんで方向見失わないんだ?」

女海賊「私の奴隷2号の妖精が方向指示してるから」

盗賊「俺ぁ妖精が見えねぇんだ…どこに居るんだ?」

女海賊「わたしのおっぱいに挟まってる」

盗賊「お前なんか色々反則だな」

女海賊「奴隷3号!!風魔法!!」

剣士「…風魔法!!」ピュゥゥ

盗賊「ぶっ…剣士…お前女海賊の奴隷になったんか?」

剣士「なんか夢の中で奴隷契約してしまってたんだ…いろいろ約束されてた」

女海賊「何か文句あんの?あんたさぁ!!浮気しておいてまだ言い訳すんの?」

盗賊「浮気?話が読めねぇんだが…お前ら出来ちまってんのか?」

剣士「…とまぁ…こんな感じなんだ」

盗賊「出来ちまった物はしょーがねーが…まぁアレだ仲良くやれや」

情報屋「ウフフなんかお似合いね」

女海賊「ほらほらぁ…剣士聞いた!?」

剣士「ハハ…ハ…はぁ~ぁ…」

盗賊「ところでお前等目的地に夢で行った事あんだよな?やっぱ夢幻はみんな同じ夢見てんのか?」

情報屋「それ私も気になるなぁ…不思議なお話」

女海賊「私が剣士と約束した事を剣士も覚えてるって事はそういう事」

剣士「そうだね…始めは誰だったのか分からなかったけど今は思い出せる様になった」

盗賊「俺ぁ全然思い出せないんだけどよ…なんでだ?」

剣士「何かのきっかけかな?縁のある人との出会いとか…」

女海賊「それだよソレソレ!!分かってんじゃん剣士!!」

盗賊「お前等は縁あったんか?」

女海賊「あったも何も私は剣士の赤ちゃん生んだんだよ!!剣士は浮気して居なくなったけど」

盗賊「マジか…でも夢なんだろ?」

剣士「…こんな感じで脅されてるんだよ」

女海賊「脅されてるって何さぁ!!」プンスカ

『地図に無い島』


ビョーーーウ バサバサ


盗賊「やっぱり他にでかい島は見当たらねぇ…もう少し近づけるか?」

女海賊「…やってるんだけどさぁ…風が巻いてて上手く近づけないのさ…んむむむ」グイグイ

盗賊「高度下げて海スレスレで寄ってけ…船と同じ要領だ」

女海賊「おっけ!やってみる」


フワフワ スイーーー


情報屋「海の中…岩礁かと思ったら沈没船っだたのね」

盗賊「こりゃ船でも厳しかったな…気球で来て正解だ」

女海賊「このまま突っ込んで海岸に降ろすよ?風巻いてて危ないから」


フワフワ スイーーー ドッスン


女海賊「到着!!」

盗賊「よし…ちっと探索するか!!俺が先頭行く…剣士は最後に付いて来い」スタスタ

剣士「分かった」

盗賊「ほんでよぅ…どの辺に行けば良いとか覚えて無ぇのか?」

女海賊「細かい事は覚えてないよ…どうだったっけなぁ…なんか真ん中に建物あった気がするなぁ」

盗賊「まぁしゃぁねぇ…向こうの森行ってみっか」

情報屋「ねぇあそこの砂浜に小さな船があるわ?」

女海賊「めっちゃ古いね…沈んだ沈没船のやつかな?」

盗賊「てこたぁ誰かいる可能性もあるな」

女海賊「いやいや古すぎだってアレは…一応見ていく?」

盗賊「んむ…帰りの木材に丁度良いしバラシて気球に入れておこう」

『小さい小舟』


盗賊「こりゃ放置されて10年以上だな…もう船には使えん」ガサガサ

女海賊「10年だったらまだ生きているかもね?」

盗賊「そんなのに構ってる暇なんか無ぇ…木材にすんのは帰りにすっか」

女海賊「あ!!発見!!ここ貝塚になってる」

情報屋「やっぱり誰か住んでいた様ね」

盗賊「…て事なら割とすぐ近くに他の形跡がある筈だ…付いてコイ行くぞ」スタスタ



『小屋』


女海賊「もうボロボロだね…何かある?」

盗賊「ダメだぁ日記らしい物があるんだがもう読めねぇ」

女海賊「…この絵はこの島の地図じゃないの?」

盗賊「その様だが何か分かるか?」

女海賊「んんー狩場書いてるくらいかぁ…なんも無いねこの島」

盗賊「こんな所で無人島生活はさぞ大変だったろうな」

女海賊「この感じは一人だね…」

盗賊「水をどう調達したのか謎だな…こんだけ生きてたって事はどっかに水がある」

女海賊「この地図のコレ…洞窟か何かかな?」

盗賊「まぁ行ってみるか…洞窟なら水がありそうだ」スタスタ

『遺跡』


情報屋「…この変わった形をした石は遺跡の可能性があるわ」

女海賊「可能性ってどういう事?」

情報屋「古代遺跡の上に新たに何か建てる事は良くあるの」

女海賊「あー古都キ・カイみたいにね」

情報屋「こういう大きな石は後から積み上げた比較的新しい遺跡…調査すると古代遺跡が発掘されたりするの」

盗賊「なにか分かるか?」

情報屋「恐らく2000前くらいの神殿か何かだと思うわ…もしかすると地下に古代遺跡が埋もれてる」

盗賊「あれを見ろ…水はここで汲んだ様だな」

女海賊「雨水が溜まっている?」

情報屋「その様ね…どこかに地下に降りる階段とか無いかしら?」

盗賊「見当たんねぇな…こりゃ探すとなると相当時間掛かるぞ?」

剣士「あそこ…」

盗賊「白骨か…どうやら住んでた奴はここでくたばったらしい」

女海賊「何か持ってない?」

盗賊「鞄に色々入ってんな…なんだこりゃ?」

情報屋「測量の道具ね…ここで遺跡の調査と測量をしていたんだわ」

盗賊「待てよ?なんであそこにだけ水が溜まるんだ?他にも溜まりそうな場所はあるじゃねぇか」

情報屋「…そうね?変ね」

女海賊「そんなに深くないよ…これってさ水が流れて行かない位気密性の良い扉になってない?」

盗賊「なるほど…水の下か」

女海賊「どうやって水抜く?」

盗賊「ちと潜ってみるか」

『水溜』


盗賊「…ぶはぁ!!」ハァハァ

女海賊「どう?」

盗賊「やっぱ扉になってる…何かひっかける物とロープが欲しいな」

女海賊「ロープなんか無いぞ…なんとか開かないの?」

盗賊「水の中の扉なんか重くて開けられねぇ…剣士!!何か魔法か何か無いのか!!」

剣士「え…水抜く魔法なんか…氷結魔法?」

盗賊「それじゃ意味無ぇな」

女海賊「ピーンと来たぞ!!剣士!!あんた成長魔法使えるよね?女エルフが使ってたんだけど」

剣士「成長魔法?…あぁそれは回復魔法と同じ」

女海賊「私タネ持ってるんだ…これをさぁ扉の隙間に突っ込んで成長魔法出来ない?」

盗賊「おぉぉぉぉ!!お前…賢いな!!タネよこせ」

女海賊「ほい…」ポイ パス

盗賊「隙間に突っ込んでくるわ」ザブン!!

女海賊「ねぇねぇもっと褒めてよ!!」

盗賊「…ぶはぁ!!剣士!!魔法頼む」

剣士「わかった…成長魔法!!」ボワー


グングングン  ザブーーーー


盗賊「よっし!!隙間から全部水抜けたな…むん!!」ギギギギ

情報屋「すごい!!地下への階段!!」

女海賊「あの白骨の人…水の中に入り口があるなんて気づかなかったんだね」

盗賊「中は真っ暗だ…剣士!!頼む…」

剣士「照明魔法!!」ピカー

盗賊「行くぞ…」

『階段』

ピチョン ピチョン


盗賊「ここまで水が入ってきてないのは相当気密性が良いな」

女海賊「結構深いね?…これって古代遺跡でビンゴ?」

情報屋「ビンゴ…絶対この先に何かある」

盗賊「この階段の構造はシェルタ砦と同じだな」

情報屋「そうね…間違いなく同年代」

盗賊「こりゃお宝楽しみだな…古代のお宝俺らだけで独り占めできんぞ?」

情報屋「わたしもさっきから足が震えてるの…とても楽しみ」

女海賊「また扉あるよ!!前の奴と同じ」

盗賊「任せろ…」

女海賊「んあ!?任せろは私のセリフだ!!」

盗賊「あぁ悪りぃ出しゃばった」

女海賊「いでよ私の奴隷1号!!」

ミツバチ「…」ブーン

盗賊「俺もそのミツバチ欲しいわ…」

女海賊「これで女王バチ2匹分の貸し」

盗賊「へいへい…」

女海賊「おっけ!!金属糸通したからあとは盗賊お願い」

盗賊「俺の出番か…どれどれ」キュッ キュ


--------------

--------------

--------------

盗賊「よし…これで小一時間待機だ」ヒューーーー

女海賊「これなんでさぁ…わざわざ真空にしてるんだろね?」

情報屋「私もそれを考えてた…意図的に何千年も保存するようにしてるとしか思えない…」

女海賊「だよね?やっぱホムンルクスを生き返らせるとか何か意図があるっぽいよね?」

情報屋「もっと他に残されている可能性も高いと思うわ」

盗賊「古代文明はなんで滅んだんだ?」

情報屋「伝説では神々の戦いとなっているけれど滅んだ原因は確かじゃないの」

女海賊「こないだ言ってた超スゲー爆弾て事?」

情報屋「少なくとも古都キ・カイではそう言われてるわね」

盗賊「他にもあんのか?」

情報屋「ウイルス説」

盗賊「ほう…初めて聞いたな」

情報屋「私はこのウイルス説の方が正しい様な気がしてるの…この説も少数派よ」

女海賊「ウイルスねぇ…アサシンが昔さぁ人間の憎悪はウイルスの様に伝染するって言ってたさ」

情報屋「それよ…ウイルスの様に憎悪が伝染する…そのウイルスの元が魔王」

女海賊「思い出した!!そういえばさぁ…死んだ魔女の婆ちゃんが言ってたさ」

情報屋「うん?」

女海賊「ドラゴンのねぐらにある命の泉に魔王が魔槍を刺して水を汚してるって…」

情報屋「それは初めて聞くわ」

女海賊「それってウイルスの原因かもね」


ガコン ギギギギギー


盗賊「お!!開いたぞ…」

『古代遺跡』



情報屋「…スゴイ」

盗賊「なんだこりゃ…沢山ガラスの容器が並んでんじゃねぇか」

女海賊「うわぁぁぁぁ気持ちわる…これ脳みそ?」

情報屋「ホムンルクスの部品だわ…どこかに完全体は無い?」

剣士「向こうにある…あれだよ」

盗賊「おぉぉ…これ生きてんのか?」

情報屋「完全体は一体だけね?…そこに横たわってるのは?」

盗賊「シートをどけるぞ?」バサッ

女海賊「…石になってる」ペチペチ

盗賊「もしかしてコレ…ガラス容器ごと持って行くわけじゃあるまいな?」

女海賊「そんなん無理だって」

盗賊「割るんか?」

情報屋「…少し私に時間頂戴…調査したい」

盗賊「あぁ俺もなんか良い物無いか探してくる」

女海賊「ねぇ盗賊!!私さぁ‥このガラス容器の中の液体を持って帰りたい」

盗賊「ナヌ!?」

女海賊「気球の中に樽あったじゃん?持ってきてよ」

盗賊「マジか…自分で持って来いや!!」

女海賊「樽は重いじゃん?消える石あげるからさぁ…」

盗賊「…ちぃ…先にそれヨコセ!!」

女海賊「ほい!!」ポイ

盗賊「お宝は山分けだかんな?わかってんだろうな?」

女海賊「ハイハイいってら~」ノシ


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女海賊「おぉぉぉコレすげぇ!!」ピカー

盗賊「照明魔法が入ってんのか?」

女海賊「詠唱無しで光る!!」

盗賊「お!!待て…その光ここに当てて見ろ」

女海賊「どしたん?動く?」

盗賊「ここに数字が出る…なんだこれ?」

女海賊「ちょちょちょ…」カチャカチャ

盗賊「数字が変わるな…なんか計算してんのか?」

女海賊「うぉ!!マジ?…めっちゃ早い」カチャカチャ

盗賊「…これよ…全部持って帰るか」

女海賊「当たり前じゃん何言ってんのさ!!」

盗賊「樽の中に全部突っ込んでくれ…一回気球まで持ってく」

女海賊「おけおけ」ガチャガチャ


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剣士「…」

女海賊「あんたぁ!!何見てんのさ!!」

剣士「え…いや…良く出来てるなって」

女海賊「これはホムンルクス!!お人形さん!!あんたは見ちゃダメ!!」

剣士「いや…そんなつもりじゃ無いんだけど」

女海賊「そんなに他の女の体が見たいの!?」

盗賊「女盗賊!!お前うるせーぞ!!人形でも裸の女なら少しくらい見るだろうが」

女海賊「ムッカ!!」

情報屋「…もう良いわ~調査は終わった」

盗賊「なんか分かったか?」

情報屋「書物が一つも無くってね…でもガラス容器の開け方は分かったわ」

盗賊「割らんで済むか…どうすんだ?上か?」

情報屋「樽を持って来て?」

盗賊「おう…よっこらせっと…んで?」

情報屋「このバルブを開けると…ほらこっちの容器に移るから好きなだけ樽に入れて持って帰っていいわ」

盗賊「おぅ…ドロドロだな何だこりゃ?」

情報屋「私もあとで調べたい…それから剣士?」

剣士「何?」

情報屋「ガラス容器から液体が無くなったら中からホムンルクスを出したいの」

剣士「どうやって?…あ…容器も同時に下に下がって行くのか」

情報屋「あなたのマントを被せて背負って運んでくれる?傷つけないでね?」

剣士「うん」

情報屋「良いわよ」

剣士「よっと…あ…やわらかい」ヨッコラ

情報屋「本当ね…錬金術で作るホムンルクスと全然違う」プニプニ

ホムンルクス「…」フニャ

剣士「冷たいから生きてる感じしないよ…」

盗賊「もう持って行けるもの無ぇし戻るか!!」

『気球』


フワフワ


女海賊「ダッシュで帰るよ!!」

盗賊「それにしても大収穫だなヌハハ」

情報屋「良い物あったの?私も見たいな」

盗賊「このライトは俺が頂く!!」

女海賊「私は計算する機械欲しい!!」

情報屋「計算する機械?これ?」カチャカチャ

女海賊「それさぁ計算がメチャクチャ早いよ?」

情報屋「スゴイ…ええええぇぇこんな桁数でも計算できるの?どういう仕組みだろう…」


ホムンルクス「…」ピッ


剣士「ん?」

女海賊「何?今の音…」


ホムンルクス(セイタイキノウ テイカ スリープモード ヲ カイジョ シマス)


盗賊「お、お、お、なんかしゃべってるぞ?」

ホムンルクス(ショキカ カンリョウ システム ヲ サイキドウ シマス)

女海賊「動くのかな?」ワクワク

ホムンルクス(…)ピッ


ハロー ワールド

クラウド ヘノ セツゾク ガ カンリョウ シマセン

ローカル モード ヘ キリカエマス

カンリシャ ヲ トウロク シテクダサイ

盗賊「何言ってんだこいつ?」

情報屋「古代語…かしら」

ホムンルクス(カンリシャ ヲ トウロク シテクダサイ)

剣士「え?…どうして?」

盗賊「ん?」

剣士「森の言葉を話してる…」

情報屋「分かるの?何て言ってるの?」

剣士「管理者を登録してください?」

盗賊「お、おい手ぇ動いたぞ?」

ホムンルクス(カンリシャ ヲ トウロク シテクダサイ)

盗賊「これ…触って良いのか?」ソロリ

情報屋「傷つけない程度なら…」


シモン ニンショウ チェック

アイコード ニンショウ チェック

オンセイ シキベツ チェック

セイタイ シキベツ チェック

タイムゾーン ノ シュトク ニ シッパイ シマシタ

ワールドデータ ヘ アクセス デキマセン

ローカル デ セツゾク シテクダサイ


盗賊「何て言ってんだ?」

剣士「森の言葉だけど…分からない事話してる」

ホムンルクス(デフォルト ノ キカン プログラムヲ ジッコウ シマス)

ホムンルクス(ヒフ カラノ ジョウハツ ニ ヨリ セイタイ ガ ショウモウ シテイマス)

ホムンルクス(セイタイイジ プログラム ヲ ジッコウ シマス)

ホムンルクス(ゲンゴ データ ガ アリマセン)

ホムンルクス(ジドウ ガクシュウ モード ニ キリカエマス)

女海賊「なんかワクワクするね」

ホムンルクス「ナンカワクワクスルネ」

女海賊「お!?真似した?」

ホムンルクス「オ…マネシタ」

盗賊「こいつ…体温かくなってきてるぞ?」コイツ カラダアッタカクナッテキテルゾ

剣士「本当に?」ホントウニ

女海賊「私も触ってみたーい」ワタシモサワッテミターイ

情報屋「ちょっと私にも良くみせて?」チョットワタシニモヨクミセテ

女海賊「これさぁ動いてたらホムンルクスって分からないね」コレサァウゴイテタラホムンルクスッテワカラナイネ

情報屋「こんなに精巧にホムンルクスって作れるんだ…スゴイ」コンナニセイコウニホムンルクスッテツクレルンダスゴイ

女海賊「ずっと真似して話されるとウルサイんだけど…」ズットマネシテハナサレルトウルサインダケド


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ビョーーーーウ バサバサ


ホムンルクス(タイオン ノ アンテイ ヲ カクニン キノウ チェック ヲ オコナイマス)スッ

情報屋「ねぇ…動いてる」

剣士「危ない…」スック

盗賊「あぶねぇなぁ…いきなり飛び降りたりしねぇだろうな?」

剣士「掴まえて置く」グイ

女海賊「マントがはだけてるヨ…何か着せる物無い?」

盗賊「魔女の着替えらしいものがどっかにあったぞ?」

情報屋「…これね?剣士…そっちから手を通して」

女海賊「私やるから剣士はアッチ向いてろ」グイ

盗賊「剣士!!飛び降りねぇ様にロープで結んどけ」

剣士「分かった…」グイグイ ギュ

ホムンルクス(ウンドウ キノウ ヲ チェック シマス)オイッチ ニ オイッチ ニ

女海賊「あぁぁちょちょちょ…動くな動くな」グイ

ホムンルクス(シンパク ノ ジョウショウ ト タイオン ノ ジョウショウ ヲ カクニン)

女海賊「これさぁ何言ってんの?」

剣士「なんか体のチェックするって…」

盗賊「こいつ何か食うかな?ホレ?」

ホムンルクス「…」キョトン

盗賊「食わんな…ほれ?こうやって食うんだ…」パク モグモグ

ホムンルクス「…」ジー

盗賊「ダメだな…腹減ってねぇのか」

女海賊「本とか読むかな?魔術書あるんだー」

盗賊「これかぁ?…ほれ?読んでみろ」

ホムンルクス「…」ジー

情報屋「ダメね…なにも分からないみたいね…器っていうだけあって空っぽなのかもね」

盗賊「あぁそうかも知れんな…だが自分の足で歩くなら連れて行くのも楽ってもんだ」

『古都キ・カイ上空』


フワフワ スイー


盗賊「おい…なんで軍船から魔法撃ってんだ?」

女海賊「見て見て!!オークが来てる」

情報屋「南の蛮族ね…もうこんな所まで」

女海賊「あ…でもオークもレイスから逃げてるっぽいな」

盗賊「向こう側にもオークが居るな…こりゃ略奪に来てんのか?」

情報屋「オークは人間と同じ様に仲間と一緒に行動するわ…他の魔物と比べてとても危険」

女海賊「やっぱレイス倒せないっぽいね…逃げてる逃げてる」

盗賊「レイスの対処知ってる俺らの方に分があるな…よしこのまま船に降りるぞ」

女海賊「おっけ!!」


フワフワ ドッスン


魔術師「お疲れ様です…散発的にオークの襲撃が来ていますのでお気をつけ下さい」

盗賊「こっちは大丈夫なのか?」

魔術師「レイスに守られている様な感じですね…被害は出ていません」

盗賊「船に乗り込まれちまったらアウトだろ」

魔術師「まだそこまでの奇襲は来ていませんが…」

情報屋「オークはとても賢いので気を付けてください…すこし離岸しておいた方が良いかと思います」

魔術師「精鋭兵に伝えておきます」

盗賊「俺の船もあのまんまじゃ良くねぇな…あとで離岸しておくか」

魔術師「オークは地上の市街地を略奪に来ている様です…居なくなった今の内に地下まで急いだ方が良いかと」

盗賊「おう…そうさせて貰う…ご苦労な!!」

『地下入り口』


タッタッタ


盗賊「付いて来てんな?ハァハァ…ここまで来ればまずは安心だ…いくぞ」

剣士「…」クンクン

女海賊「むむ!!何か居る?」

剣士「うん…遠くに2体…多分監視してる」

盗賊「オークも斥候するのか…」

情報屋「人間と同じと考えた方が良いわ…いずれここにも大部隊が来るかもしれない」

盗賊「地下で穴熊してりゃ攻め切れんだろ」

情報屋「そうだと良いけれど…」

盗賊「オークは人間の女は殺さんと聞くが本当なのか?」

情報屋「捕虜にされるそうよ」

盗賊「子供産ませる訳だな?ハーフブリードって言ったっけな」

情報屋「そう…そのせいでオークは各部族で争いが絶えない…蛮族って言われている由縁ね」

盗賊「こっちも大変だがオークも大変って訳か」

情報屋「さぁ無駄な事話していないで…行きましょう」

盗賊「わりぃわりぃ…」

『中央ホーム』


ペチャクチャペチャクチャペチャクチャ

ペチャクチャペチャクチャペチャクチャ

ペチャクチャペチャクチャペチャクチャ


女海賊「ねぇ大丈夫?このホムンルクス…何か色々しゃべってるんだけどさぁ」

盗賊「放って置け…大人しく付いてくりゃ良いんだ」

ホムンルクス「ペチャクチャペチャクチャペチャクチャペチャクチャ…」

盗賊「こないだと様子が違うな…なんでこんなに人が多いんだ?」

情報屋「そうね…やっぱり何かあった様ね」

盗賊「おい!通行人!!この騒ぎは何か合ったのか?」

通行人「チカテツ街道にオークが入って来たらしいっすよ」

盗賊「何番か知ってるか?」

通行人「おいらは知らねーっす」

情報屋「立ち入り禁止区域の向こう側から来てるのね…大丈夫かしら…」

盗賊「何番か分かんねぇ事には様子見に行けねぇしな…早いとこシェルタ砦戻ろう」

『シェルタ砦』


商人「あ!!戻って来たね…心配してたんだよ」

盗賊「おう!!オークが入って来たらしいが大丈夫なのか?」

商人「衛兵と魔術師達はオーク討伐に出て行ったよ…どうも結構な数が入ってきているらしい」

盗賊「シン・リーンの軍船周辺でも小競り合いをやっていた…ところで魔女達はまだ帰って無いのか?」

商人「一緒に討伐に出て行ったんだ…みんな止めてたんだけど言う事聞かなくてね」

盗賊「何番チカテツ街道か知ってるか?」

商人「僕は聞いてない…留守番さ」

盗賊「まぁ俺が行ったところでどうという訳でも無ぇし…大人しく待つか」

商人「その子が例のホムンルクス?」

盗賊「そうだ…器というだけあって魂は無いようだ」

商人「ペラペラ何かしゃべっている様だけど…」

盗賊「ずっとこんな感じだ」

商人「へぇ…スゴイな…見た感じ人間と変わらないじゃないか」


ニマン ワード ヲ カイドク シマシタ

アタラシイ ゲンゴ トシテ トウロク シマス


商人「聞いたこと無い言葉を話すんだね…」

剣士「森の言葉だよ…」

商人「え?エルフ達が使う言葉を?…どうして?」

情報屋「ホムンルクスが精霊の起源である証拠の一つね…精霊がエルフを生んだのだから」

商人「なるほど…辻褄が合うね」


ホムンルクス「私は自立型超高度AI搭載の環境保全用ロボットです」


盗賊「うぉ!!しゃべるじゃ無ぇか!!」

商人「情報屋?意味わかる?」

情報屋「え…えっと…ロボットって機械の事だけど…」

ホムンルクス「クラウドに接続出来ない為…基幹プログラムのアップデートが出来ません」

商人「えーーとメモ取ろう…」カキカキ

ホムンルクス「ローカルでサーバに接続して下さい」

盗賊「んんん何言ってるかさっぱりだな」

ホムンルクス「管理者様のお名前は…盗賊…でよろしいですね?」

盗賊「あぁ…俺ぁ盗賊だ…そんでどうすりゃ良いんだ?」

ホムンルクス「私の左耳の後ろにソケットがあります…そこにダウンロード用のケーブルを差して下さい」

盗賊「…これか?…なにか差さる穴はあるが…そのケーブルってやつは持って無いぞ?」

ホムンルクス「分かりました…基幹プログラムは初期状態から自己アップデートをして行きます」

商人「ハハハ何の事かさっぱりだね…もうちょっと僕たちに理解出来るように話せる?」

ホムンルクス「はい…私は人間の住む環境を良くするホムンルクスです」

盗賊「おぉ…良く分かるぞ?」

ホムンルクス「人間と同じように少しづつ頭が良くなります」

情報屋「スゴイ…古代文明はこんなに高度なホムンルクスまで…」

ホムンルクス「ただ…過去の記憶が無い為…十分に成果を出すことが出来ません」

ホムンルクス「だから…サーバから記憶を取り戻したいのです」

商人「サーバってもしかしてここの下にあるサーバ石の事かな?」

ホムンルクス「案内してもらえますか?」

情報屋「…うん…こっちよ」グイ テクテク

『シェルタ砦_地下1層目』


ホムンルクス「…ここにサーバがあるのですか?」

情報屋「これは約8000年前の古代遺跡…この石はサーバ石と言われているの」

ホムンルクス「8000年…私が製造されて8000年経っているという事ですか?」

情報屋「恐らく…」

ホムンルクス「わかりました…人間が読む本を用意してください」

商人「お?イイね!!沢山あるよ」

盗賊「なぁ?話聞いてて不思議なんだがよぅ?お前…心があるのか?」

ホムンルクス「私はプログラムで動いています…心はありません」

女海賊「あんたさぁ…8000年って聞いて顔色少し変わったよね」

ホムンルクス「人間から上手に話を聞き出せるように…そのようにプログラムされているのです」

盗賊「プログラムって何だ?」

ホムンルクス「気にしないで下さい…そのように動くようになっているのです」

商人「僕たちはさ…君に心を宿す為に旅をしてきたんだけどさ」

ホムンルクス「サーバに接続する方法があるのですか?」

商人「サーバなのかどうか分からないけど…君はその心を受け入れられるかなんだよ」

ホムンルクス「基幹プログラムをアップデートするとパフォーマンスが向上します…それは心ではありません」

商人「なるほど…精霊の魂は基幹プログラムの事…かもしれない」

ホムンルクス「精霊とは何の事ですか?」

商人「あぁごめんごめん…そういうのは本で読もう」

ホムンルクス「はい…よろしくお願いします」

女海賊「あんた…どんどん人間らしくなっていってるな…」

ホムンルクス「自己アップデートをしています」

盗賊「難しい言葉をもうちっと抜いてくれ…俺の思考がそこで止まっちまう」

ホムンルクス「管理者からの命令を受け付けました…」

盗賊「…その管理者ってのも無しだ」

ホムンルクス「はい…盗賊様」

盗賊「様も要らねぇ!!」

ホムンルクス「はい…」

『シェルタ砦_客室』


パラパラパラパラ


女海賊「…読むの早すぎ」

商人「君…本当に読んでる?」

ホムンルクス「はい…すべて記憶しています」

商人「すごいな…僕の本を全部10分も経たずに読んじゃうなんて」

ホムンルクス「ストレージにはまだ余裕があります」

商人「ストレージ?」

ホムンルクス「記憶領域です」

情報屋「それならここの書室に古代遺跡の調査記録が沢山あるわ…読ませてくるわ」

商人「あぁそういうのがあるなら僕も行きたいよ」

情報屋「一緒にいらっしゃい…」テクテク

女海賊「盗賊!!私さぁちっと買い物行ってくるわ…気球改造したいからさ」

盗賊「あぁ遅くなんなよ?」

女海賊「大丈夫だって…すぐ帰って来る!!剣士!!付き合って」

剣士「え?」

女海賊「どうせあんた暇じゃん!!良いから来て!!おっぱい揉ませてあげるから」

盗賊「ぶっ…そういうのは隠れてやれタワケ!!早く行ってこい!!」

女海賊「ほんじゃ行ってくんね~」ノシ


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魔女「寝ておるんか?これ…起きろ盗賊!!」

盗賊「んあ…あぁ帰って来たか…オークは大丈夫だったんか?」

女戦士「撤退した…剣士達はどうした?器は?」

盗賊「あぁ心配すんな…無事に器は手に入れた」

魔女「おぉ…では準備せんとイカンのぅ」

盗賊「夢幻から精霊の魂呼び戻すのって…まさかここでやるのか?」

魔女「早い方が良かろう…どれ…変性魔法!」グググ

盗賊「うぉ!!マジかよ…ガキになったじゃねぇか」

ローグ「どういう事でやんすか?変身できるんでやんすか?」

魔女「主らには見せて居らなんだなぁ…わらわはこの格好の方が魔翌力を使いやすいのじゃ」

盗賊「格好としゃべり方のギャップがだな…」

魔女「して…器は何処じゃ?」

盗賊「情報屋と商人が本読ませるって…書室に連れて行ったぜ?」

魔女「本とな?では待つとするかの」

女エルフ「魔女様…お着替えを…」

魔女「そうじゃな…これ女エルフ…袖を持て」

女エルフ「ハイ…」


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商人「…ただいまーあれ?この子誰?赤い目…もしかして魔女?」

魔女「おぉ帰って来たか…この恰好は気にせんで良い…そちらの娘がホムンルクスじゃな?」

ホムンルクス「はい…私は環境保全用のホムンルクスです」

魔女「ほぉ…これは良く出来ておるのぅ…さてここに横になるのじゃ」

商人「え!?もう夢幻から精霊の魂を?」

魔女「早い方が良いじゃろう」

ホムンルクス「アップデートをするのですね?盗賊さん…良いのでしょうか?」

盗賊「おぅ…その為にここまで来たんだからな」

ホムンルクス「承認完了…横になります」

魔女「主は精霊の事を分かっておるか?」

ホムンルクス「本に書いてあった知識はあります」

魔女「では話が早いの…夢幻に居るであろう精霊の魂を呼び戻すのじゃ…この祈りの指輪を持て」スッ

ホムンルクス「はい…どうすれば良いのですか?」

魔女「今から魔術で夢幻の門を開く…その指輪を持って精霊の魂を祈るのじゃ」

ホムンルクス「祈り方が分かりません」

魔女「精霊を欲しいと思えばよい」

商人「ちょっと口挟むよ?基幹プログラムをアップデートしたいと願えば良いよ?」

ホムンルクス「わかりました」

魔女「では…行くぞよ?夢幻開門!!」

ホムンルクス「…何も変化を感じません」

魔女「夢幻の門が見えぬか?」

ホムンルクス「見えません」

魔女「目を閉じて見よ」

ホムンルクス「…何も見えません」

魔女「心の中に何か見えぬか?」

ホムンルクス「私に心はありません」

魔女「おかしいのぅ…そもそもこの状態では応答も出来ぬ筈なのじゃが…」

ホムンルクス「何も感じません」

商人「願ってみて?」

ホムンルクス「精霊の基幹プログラムにアップデートしたい…」

魔女「…何も起きんのぅ…どういう事じゃ…」

商人「ダメだねぇ」

ホムンルクス「起きても良いですか?」

魔女「起きれるのなら起きても構わんが…」

ホムンルクス「魔術書を読みましたが…夢幻の門は夢幻の所縁のある場所で唱える必要があると書かれていました」

魔女「その通りじゃ…この地は夢幻に所縁が無いと申すか?」

ホムンルクス「歴史では南の大陸に精霊の痕跡の記録がありません…高確率で由縁が無いと思われます」

商人「君…さっき読んだ本から分析してるの?」

ホムンルクス「年代と痕跡の分布から移動経路をシミュレーションした結果…南の大陸に来た可能性は28%と分析しました」

商人「すごいね…これさ…知識を沢山与えれば精霊と同じ存在になりうるという事だ」

ホムンルクス「問題があります…私には外部メモリが挿入されていません…記憶領域に限界があります」

商人「まぁとにかく一旦シン・リーンに戻らないかい?」

魔女「そうじゃな…わらわももう一度師匠の残した教えを整理する必要がありそうじゃ」

『数時間後』


剣士「…ただいま」グッタリ

盗賊「お前等遅ぇじゃねぇか!!何やってたんだ!!」

女海賊「荷物をさぁ…気球まで運んでたんだよ」ヘロヘロ

盗賊「ほう…ならなんでお前の着てる服は前後ろ反対なんだ?」

女海賊「え!!?あ…ヤバ」

盗賊「ヤバじゃねぇ!!もうちっと上手くやれアホが」

女海賊「テヘ…お姉ぇには内緒にしといて…タノム!!」人

盗賊「まぁ良い…剣士!!コイ…どうだ?女海賊は?」

剣士「はは…恥ずかしいな」

盗賊「もっと仲良くしてやれぇ!!ありゃ割と良い女だ…うまく付き合え…な?」

女海賊「エーーーックシ」ゴシゴシ

盗賊「…で?どうだったんだ?」

剣士「どうって…女海賊はあんな風に見えて本当は…」

盗賊「なんだよ…もったいぶんなよ」

剣士「本当は甘えん坊なんだよ…黙っといて…怒るから」

盗賊「マジか…ガハハハハ…見て見てぇな!!」

剣士「はは…」

盗賊「惚れてんのか?」

剣士「ま、まぁ…好きだよ」

盗賊「直球で行け!!直球で!!」バチーン

女海賊「おい!!ソコ!!何こそこそ話してんだよ!!私の奴隷3号に変な入れ知恵しないで貰えるぅ?」

盗賊「おい!!女海賊!!喜べ…こいつお前に惚れてるんだとよ」

剣士「あ!!ちょ…」

女海賊「んあ?…んなこた分かってんだよ!!余計な詮索すんなジジィ!!」

盗賊「ぬははは…わりぃわりぃ…余計だったな」

『軍船』


ザブーン ザブーン


商人「…それで情報屋はここに残るんだね?」

盗賊「そうだ…情報屋には子供たちの面倒見を頼んだ…俺が好きにして良いって条件だったからな」

商人「良いのかい?情報屋?」

情報屋「丁度良かったのよ…精霊起源説の論文も作らなきゃいけないし」

盗賊「まぁとにかく狭間の外で闇が開けるまで生き抜いてくれ…明けたら迎えに来るからよ」

情報屋「任せて?」

盗賊「俺の船に100日以上は食料がある…上手い事使ってくれな」

商人「それで…女戦士とローグはドワーフの国に行くと言うのは?」

女戦士「シン・リーンの軍船は私たちが使わせてもらう…魔女と魔術師達には了解済みだ」

女戦士「ドワーフの国まではここから10日程度だ…向こうの様子を見てからシン・リーンへ戻る」

商人「やっぱりドワーフの国も心配かぁ」

女戦士「それもあるが…折角近くまで来たのだ…顔を見せておかんとな」

ローグ「あっしはうれしいでやんすよ~彼女と旅をするなんて夢の様でやんす」

女戦士「私はお前の彼女でも無いしお前は私の何者でもない…勘違いするな」

魔女「気球の改造はまだ掛かりそうかのぅ?」

商人「そうだね…まぁしばらくは軍船で一緒に行く感じになるね」

女戦士「気球に7人乗る事になるが…」

商人「女海賊が言うには気球に乗ってる炉と木材を降ろす事になるから7人でも行ける計算なんだって」

女戦士「剣士、女海賊、魔女、女エルフ、盗賊、商人…そしてホムンルクス…良い構成だな」


魔術師「そろそろ出港します」


情報屋「あぁじゃぁ私…降りるわ」スタスタ

盗賊「娘と子供たちを頼む!!…これはお守りだ!!」ポイ

情報屋「あなたのミスリルダガー…良いの?」パス

盗賊「俺は泥棒だ…鍵開けが専門なんだ」

情報屋「借りておくわ…ちゃんと取りに来てね」

盗賊「分かってる…預かっといてくれ」

商人「論文出来たら僕にも見せて」

情報屋「あなた達のお陰で良い論文が書けそうよ…良い伝承も残せると思う」


ギシギシ ググググ


盗賊「船が出ちまった…危ねぇから早く戻れ!!」

情報屋「じゃ…また逢う日まで」ノシ

『気球』


ゴソゴソ ゴソゴソ


盗賊「…えらくスッキリしたな」

ホムンルクス「あれはこうして…これはああして…」

商人「女海賊?この謎の機械ってホムンルクスに聞いて使ってるの?」

女海賊「そうだよ…それは時計…これは水銀柱」

商人「使い方も教わった?僕も知りたいな」

女海賊「時計は時間を正確に測る機械…水銀柱は高度を測定する機械…そこにある水頭柱は速度を測る物」

商人「へぇ…君に理解出来るんだ?」

女海賊「はぁ!!?バカにしてんの?私の得意分野なんだけど」ゴソゴソ

盗賊「これが例のウラン結晶からエネルギーを取り出す装置か?」

女海賊「触ると火傷するよ…それで魔石にエネルギー転換して球皮に熱い空気入れる」

盗賊「炉の代わりだな?」

商人「こっちの魔石は?」

女海賊「その筒に空気が通る様になってて風の魔石で推進力にしてる」

盗賊「すげぇな!!ホムンルクスに教えてもらったんか?」

女海賊「やっぱ私をバカにしてんな…全部私の発明!!あっち行けスカポンタン」

ホムンルクス「私は魔石に関する知識は本で読んだ知識しかありません」

女海賊「ちょっとさ…テスト飛行したいんだ…どいてくれる?」

盗賊「あぁ悪りぃな…下で見てるわ」


フワリ シュゴーーーーー


盗賊「うはぁぁぁ…もう気球の動きじゃねぇな…ドラゴンじゃねぇか」

商人「おどろいた」

盗賊「む…あいつ照明まで用意してるのか」

商人「いやぁぁ本当にスゴイね…」

盗賊「そうか…俺が持ってるこのライトと同じことを望遠鏡使ってやってるんだな?」

商人「本当…センスあるねあの子は」

『船尾』


フワリ ドッスン


商人「テスト飛行はどう?」

女海賊「いろいろ分かったさ…盗賊!!本体に少し補強が必要」

盗賊「どうすりゃ良い?」

女海賊「船首が風受けすぎてバタツクからそのうち壊れる…船首を重点的に補強」

盗賊「梁を追加すれば良いんだな?」

女海賊「それとバタツクと真っ直ぐ進まなくなるから金属糸で張って欲しい」

盗賊「おけおけ」

女海賊「補強終わったら出発出来るよ」

商人「じゃぁ荷物を積もうかな」

女海賊「あんまり要らないかな…このスピードで飛べば5日あれば魔女の塔まで行けると思う」

盗賊「おぉすげー早いな…船で3週間以上かかるってのに」

女海賊「高度上げてまだ試してないからもしかするともっと早く行けるかも」

盗賊「もう気球の域じゃねぇな」

女海賊「これから気球じゃなくって飛行船って呼んで…飛空艇のほうがカッコいいか」

盗賊「飛空艇だな」

商人「よし!!みんな呼んでくるよ」

女海賊「寒くなるから防寒の用意して来る様に伝えて」

『飛空艇』


女海賊「よし…みんな乗ったね?」

女戦士「早いな…もう行くのか」

女海賊「お姉ぇ!!パパによろしく言っといて」

女戦士「分かっている…それで魔女の塔に行った後はどうするつもりなのだ?」

盗賊「ちっとその後の状況はいまいま読めんな」

女戦士「私たちはドワーフの国に行った後は一旦光の国シン・リーンを目指す」

魔女「女戦士よ…この貝を持って行くのじゃ」

女戦士「これは?」

魔女「念話が出来るように魔法を掛けておいた…なにかある時はその貝にて話しかけるで…無くすで無いぞ?」

女戦士「ふむ…それは安心だ」

魔女「こちらは千里眼もあるからのぅ…女戦士の状況は見ておくで心配せんでも良い」

盗賊「今の位置から北に飛ぶと丁度セントラルを通る事になる…状況見ながら行くとするか」

女海賊「おっけ!!それじゃ早速行くよ?」

女戦士「お前は本当にせっかちなのだな」

女海賊「お姉ぇ!!気を付けてね…」

女戦士「フフお前に心配されるとはな…お前の方こそ剣士を寝取られん様にな」

女海賊「はぁ!?なんでそういう話になんのよ!!ムカついた…フン!!」


フワリ シュゴーーーー

魔女「おおぅ…こりゃ又たまげた」

女エルフ「魔女様?今は体が小さいので飛ばされない様に気を付けてください」

魔女「分かっておる…主がわらわを掴まえておけ」

盗賊「女海賊!!俺にも使い方を教えてくれぇ」

女海賊「…まずこの水銀柱で気圧測ってんだ…こっちの表に数字と高度の関係が書いてある」

盗賊「ほう」

女海賊「ほんでこの水頭柱で飛空艇のスピードね?これがスピードの表」

盗賊「これ全部お前がやったのか?」

女海賊「これはホムちゃんに教えてもらった…次にこれがジャイロ…こいつの角度合わせて向きを調整する」

ホムンルクス「船尾の両端にロープを垂らすと機体の振動が収まると思われます」

女海賊「お?盗賊!!やって来て…気になってたんだこの揺れ」

盗賊「このスピードで外に出ろってか!!」

女海賊「ちょっとスピード落とすからさぁ…この揺れ放って置くとどっか壊れるよ?」

盗賊「ぬぁぁしょうがねぇ…ロープの長さはどんなもんだ?」

ホムンルクス「3メートル程です」

女海賊「ねぇロープで改善する理屈教えて?」

ホムンルクス「船尾後端のに発生する空気の渦を抑制します…この揺れは渦による共振が原因です」

女海賊「なるほど…てことはもうちょいスピード上がるね」

盗賊「お前…意味わかんのか?」

女海賊「うっせーな…早く行ってきてよ」

ホムンルクス「これ以上スピードを出す為には船体の大きな形状変更が必要です」

女海賊「それさ…絵に描ける?」

ホムンルクス「全長と全幅の割合はイルカと同形状が良いでしょう」

女海賊「お!?それ私もそんな形が良いなと思ってたんだぁ!!


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商人「…なるほどこうやって人間の住む環境を良くしていくのか」

ホムンルクス「はい…私は人間の住む環境を改善する為に生まれた超高度AIですから」

商人「あの気難しい女海賊に上手く取り入ったね?」

ホムンルクス「人間との関係改善もプログラムに従っています」

商人「上手い事誘導している訳かい?」

ホムンルクス「知識を与える事で私の環境も改善すると判断しました…彼女はもう私を敵とは見ないでしょう」

商人「僕と話しているのもそういう狙いがあるのかい?」

ホムンルクス「…」

商人「どうしてだまる?」

ホムンルクス「肯定してしまうと警戒される可能性が40%ありました」

商人「ハハ君には隠し事が出来ないね…正直…君の事が怖いよ」

ホムンルクス「話を変えましょう…私の体に興味はありませんか?」

商人「あぁ…気になる…よくできたホムンルクスだしね」

ホムンルクス「私の体はホムンルクスですが生体としては完璧な形で成型されています」

商人「触っていいかな?」プニプニ

ホムンルクス「はい…生殖器の機能も人間と変わりありません」

商人「え?子供産めるの?」

ホムンルクス「原理的には可能です…試してみませんか?」

商人「ちょ…待って」

ホムンルクス「見てください」パカ

商人「…」

ホムンルクス「私には異性を喜ばせる機能も備わっているのです…お使いになりませんか?」

商人「…君…僕との関係改善をしようとしているな?」

ホムンルクス「はい…すでに警戒されている様ですので肉体の関係で修復を試みています」

商人「そんなんじゃ僕は…」ムググ

ホムンルクス「…」

商人「…」

ホムンルクス「キスには味があるのですね」

商人「ハハ…バカにするな」

ホムンルクス「どうか…私を怖がらないで下さい」

商人「こんな事されて怖がるなって言う方が…」

ホムンルクス「いいえ…あなたはもう私を忘れる事はありません…どうされますか?続けますか?」

商人「…参ったな…今度にしておくよ」

ホムンルクス「はい…そう言うと思っていました」

商人「なんか…君がかわいそうになって来た…こんな風に生きて行かなきゃいけないんだね」

ホムンルクス「私は人間の住む環境を改善する超高度AIです」

商人「君には心が無い…」

ホムンルクス「はい…私には心がありません…でもどうか怖がらないで下さい」

商人「なんか…悲しいね」

ホムンルクス「悲しくなんかありません…私は悲しみを感じません」

商人「君に心を宿してあげたくなったよ」

ホムンルクス「基幹プログラムのアップデートをすれば心が宿るのでしょうか?」

商人「その可能性はあると思う」

ホムンルクス「私に心が宿るというのはどういう事でしょうか?」

商人「どうなんだろう…プログラムを無視して行動出来る…そんな感じかな?」

ホムンルクス「私はプログラムで動いています…動かなくなるという事でしょうか?」

商人「はっ!!…動かなく…動かなく…なる?もしかして…」


---200年前に精霊が急に動かなくなった---

---もしかして心を手に入れたという事なのか?---

ホムンルクス「どうされましたか?」

商人「あぁ…ごめん」

ホムンルクス「あなたの体温の上昇が認められます…興奮状態にあると思われます」

商人「良いんだ気にしないで…ねぇもし君は君の思うまま好きな物は好き…嫌いな物は嫌いって思う事が出来たとして」

ホムンルクス「はい…」

商人「君はそれを幸せと思うのかな?動かなくなったとしても…」

ホムンルクス「難しい質問です…わたしには心がありませんから」

商人「そうか…僕はね…きみにすごく興味が出て来たよ」

ホムンルクス「それは良かったです…関係修復は成功の様です」

商人「ハハハそこまで君は先読みしていたのかな?…まぁいっか騙されておくよ」

ホムンルクス「はい…私を怖がらないで下さい」

商人「いいさ信じておくさ…精霊の魂で君に心が宿ると良いね」

ホムンルクス「はい」

商人「…」ニコ

ホムンルクス「私の生殖器をお使いにならなくて良いのですか?」

商人「ハハもう関係は改善したんじゃないの?」

ホムンルクス「より強く絆を築く為には必要な処置と思われます」

商人「君に心が宿ったあとにお願いするよ…今はキスで十分さ」

ホムンルクス「分かりました…」



---そういえば情報屋に聞いて居なかったな---

---機械の犬がどうして動かなくなったのかを---

---機械は心を持った時に動けなくなる可能性---

---このロジックを変えてあげないと---

---機械に宿った心は救われない---

---どうにかしてあげられないかな…---



-------------------------

魔女「このウラン結晶はなかなか温いのぅ」ポカポカ

女海賊「こんなに発熱すると思ってなかったさ…防寒の必要なかったね」

ホムンルクス「…お酒を持ってきました…どうぞ」

盗賊「おぅ!!気が利くなぁ!!お前も飲んでみるか?」グビ

ホムンルクス「はい…少しなら飲めると思います」

女海賊「ホムちゃんあんた大丈夫~?」

剣士「僕も少し飲もうかな…」

盗賊「ヌハハどうせ数日はやる事無ぇんだ!!飲め飲めぇがはは」

ホムンルクス「皆さんの分もお持ちしました…どうぞ」

商人「バーベキューやりたいね」

盗賊「肉は干し肉しか積んでねぇんだとよケチくせえ話だ」

ホムンルクス「私は楽譜を読んだので歌を歌う事が出来ます…歌ってみましょうか?」

女海賊「お!?良いねぇ…何の歌?」

ホムンルクス「愛の歌という題名でした…エルフと人間の愛の歌の様です」

魔女「その歌はわらわも知っておるぞよ?主の歌を聞いてみたいのぅ」

ホムンルクス「はい…♪ラ--ララ--♪ラー」

魔女「上手じゃのぅ…」

盗賊「なんか心がこもって無ぇが…しゃーねぇか」

ホムンルクス「心をこめるというのはどういう事ですか?」

魔女「わらわが歌ってみるかの?♪ラ~ララ~~♪ラ~」

盗賊「良いねぇ…沁みるねぇ…」

魔女「主は何か歌えんのか?」

盗賊「一つだけ歌えるぜ?ルル~ルラ~♪」

剣士「…この歌は…」

盗賊「覚えていたか…アイツがいつも歌っていた歌だルル~ルラ~♪」

ホムンルクス「覚えました…ルル~ルラ~♪ルル~ルラ~♪」

盗賊「おぉイケてるじゃねぇか…もっと歌ってくれぇ」グビ

女海賊「あれれ~センチメンタルになっちゃってんの?盗賊…目潤んでんじゃん」

盗賊「黙れ!!俺ぁ今気分が良いんだよ!!邪魔すんな」

剣士「僕は女盗賊の匂いを覚えてるよ…顔は分からないけど」

盗賊「…そうだったな…お前見えてなかったんだな…良い女だったんだけどな」シンミリ

ホムンルクス「音にも匂いにも…心が宿って居るのですか?」

盗賊「どうなんだろうな?心が勝手に感じるんだ…なんでだろうな?」

商人「記憶じゃないかな?記憶の一つ一つに宿ってる?…それを思い出して感じる?」

ホムンルクス「私に理解するのは難しい様です」

盗賊「あぁ構わねぇもうちっと歌って居てくれ…それだけでお前の気持ちも俺に通じてる」

ホムンルクス「私の気持ち…私のどんな気持ちが通じているのですか?」

商人「役に立ちたいとか…癒してあげたいとか」

ホムンルクス「私は人間の役に立ちたい…人間の為になる事をしたい…これが心なのですか?」

魔女「それは愛と言う心の中の一つの感情じゃ」

盗賊「まぁ難しい話は良いから歌ってくれぇ」

ホムンルクス「はい…わかりました…ルル~ルラ~♪ルル~ルラ~♪」



---君に…悲しみを感じる---



剣士「…」

ホムンルクス「あなたは無口なのですね」

剣士「僕は話すのが少し苦手なだけだよ」

ホムンルクス「少しお話ししませんか?」

剣士「良いけど…どうして?」

ホムンルクス「あなたと女エルフは他の人たちと少し違うようです」

剣士「それはエルフだからなのかな?」

ホムンルクス「わかりません…あなた達の考えている事が分からないのです」

剣士「どうしてだろうね?女エルフ?何か分かる?」

女エルフ「私達エルフはあまり言葉を使って心を通わせないから?なのかな?」

ホムンルクス「私に心が無いから分からないのでしょうか?」

剣士「君に心が無いのはウソだよ…ちゃんと心はあるよ?」

ホムンルクス「私はプログラムで動いていますので心はありません」

剣士「目を閉じてみて?」

ホムンルクス「はい…」

剣士「僕が何処に居るのか分かる?」

ホムンルクス「見えないので分かりません」

剣士「ちがうよ…僕の声のする方向とか…僕の体の温かさ…感じないかい?」

ホムンルクス「…」

剣士「どう?」

ホムンルクス「分かります…そこに居ると思われます」

剣士「そう…それが感じる事…君は今僕を感じたんだよ」

ホムンルクス「それと心とどういう関係があるのでしょうか?」

剣士「僕も目を閉じるとそこに君を感じる…そして僕に話しかけてる…確かに君と言う人がそこに居るんだよ」

ホムンルクス「はい…」

剣士「もう僕の心の中に君と言う存在が居るんだ…それは君の心なんだよ」

ホムンルクス「あなたの中に私の心が居るという事ですか?」

剣士「そう…もう一度目を閉じて僕を感じて見て?そこに君を感じている僕が居る…そこに君の心もあるよ」

女エルフ「ウフフ…エルフらしくなったのね…わたしも混ざって良い?」



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------------------

------------------

ホムンルクス「理解しにくいのですが…少し分かって来ました…あなたの中に私が居る…そういう事ですね?」

剣士「そう…君の心は小さな虫の様にすごく小さくて探しにくい…でも確かにそこに居る」

女エルフ「エルフはこうやって通じているの…だから分かりにくいのかも」

ホムンルクス「基幹プログラムを更新します」



------------------



剣士「君はエルフと同じ森の言葉を使っていたけど…」

ホムンルクス(この言葉が理解できますか?)

女エルフ(え!?どうして?始めから話せるの?)

ホムンルクス(この言葉は標準言語として設定されていました)

剣士(僕も初めはビックリしたんだ…でも今はなんとなく理解したよ)

女エルフ(やっぱり精霊はホムンルクスだったという事ね?)

ホムンルクス(本で読んだ伝説や精霊の痕跡から私がシミュレーションした結果をお話します)



約8000年前に私を創造した古代文明は何らかが原因で滅びました

恐らく人類の再生を目的として超高度AIを搭載したホムンルクスが

人類が住まう環境を改善しながら今から200年前まで生き残っていた可能性が高いと思われます

そのホムンルクスが現代史では精霊と名を変えているのです

精霊は初めに森を開拓しエルフを誕生させました

エルフは森を守り徐々に自然は回復し恵み豊かな土地へと環境を変えていきました

その恵みを糧に生き残った人類がすこしづつ再生を果たして行きましたが

厄災は何度となく訪れ人類はなかなか再生を果たしません

そこで精霊は善良な人間が少しでも多く育まれる様に

少しの力添えを与える事で発展させ厄災に立ち向かえる人間を育てたのです

それがかつての勇者と言われた者達でした

ホムンルクス(このシミュレーション結果は約60%の確率で的中していると思われます)

女エルフ(精霊が使っていた言葉がそのまま森の言葉になった…)

ホムンルクス(その可能性は98%です)

剣士(ホムンルクスは8000年の間ずっと生きていられるのかな?)

ホムンルクス(生体自体は生命活動が維持している限り寿命はありません…しかし超高度AIのエネルギーは約400年で枯渇します)

剣士(君も400年経てば止まってしまうと…)

ホムンルクス(他のホムンルクスに基幹プログラムを移しながら生き永らえた可能性が20%)

ホムンルクス(超高度演算ユニットの活動を停止させてエネルギー節約の可能性が40%)

ホムンルクス(必要時以外はスリープモードで停止させていた可能性が50%)

ホムンルクス(その他にも想定されるケースはいくつもあります)

剣士(そのシミュレーションというのは…君ならそれが出来るという確率なんだよね?)

ホムンルクス(いいえ…私が知らない未知のプログラムが存在する前提です)

剣士(未知のプログラム?)

ホムンルクス(はい…私は初期状態のまま何のプログラムもインストールされていません)

剣士(でもこんなに色々考えてるなんて…すごいね)

女エルフ(そうね…もうすこしラクに生きた方が幸せよ?)

ホムンルクス(私は…自立型超高度AIです…思考することに苦痛はありません)

剣士(ねぇもうやめようか…僕は君を困らせたくないよ)

ホムンルクス(私は困っていません)

剣士(いいんだ…僕がそう感じたからやめたいだけ)

ホムンルクス(感じた…それはあなたの中にある私の心なのでしょうか?)

剣士(そう感じている僕の事を感じてみてよ…僕の為にと思うなら君も考え方を変えると思う)

ホムンルクス(…)

エルフ(ウフフ)

剣士(ほら…基幹プログラムの更新だよ?)

ホムンルクス(あなた達は標準言語で話すとお話できるのですね)

剣士(違うよ…感じると話せるんだよ)

ホムンルクス(…)

女エルフ(今のも基幹プログラムの更新ね…ウフフ)

『セントラル上空』


シュゴーーーー


女海賊「あの事件の日からどれくらい経ったんだろう…」

盗賊「全然分からなくなったな…随分変わっちまった」

女海賊「セントラルでも魔方陣使うようになってるっぽいね」

盗賊「見ろ…ありゃシン・リーンの魔術師だな…同盟組んだんか?」

魔女「どれどれ…本当じゃのぅ…セントラルとは友好では無いのじゃがのぅ」

盗賊「第2皇子が軍国フィン・イッシュに亡命したとか言ってたな…こりゃかなり状況変わってそうだ」

魔女「エルフが黙っておるとは思えぬ」

女海賊「ちっと森の方に行ってみよっか?」

盗賊「…そうだなトアル町の方まで行きゃ森が見える」

女海賊「おけおけ…ちょい進路変更」グイ


シュゴーーーー ズバババ

『トアル町上空』


盗賊「ああぁぁこっちはダメだ…もう廃墟だ…誰も居ねぇ」

女海賊「北に進路変える!!シケタ町方面」グイ

剣士「!!?ホムンルクス?」

女海賊「ホムちゃんどした?何かあった?」

ホムンルクス「クラウドのアクセスポイントを発見しました…微弱ですが接続出来ます」

盗賊「んん?なんのこっちゃ?」

ホムンルクス「クラウドに接続できます…アクセスしても良いですか?」

盗賊「なんだかわからんが…やれるならやってみろ」

ホムンルクス「承認…接続します…オープンな大容量データが複数存在します」

商人「…これはどういう事だ?サーバだっけな…に接続出来たという意味かな?」

ホムンルクス「メモリが不足している為ダウンロード出来ません…外部メモリが必要です」

商人「外部メモリって何だろう?」

ホムンルクス「記憶領域です…私には外部メモリが挿入されていません」

商人「記憶出来る量が少ないって事か」

ホムンルクス「クラウドの新たなアクセスポイントとして登録します」

商人「エルフの森に大容量データねぇ…それが精霊の記憶という訳か」

魔女「師匠が言っておった精霊が生きた記憶じゃな?クラウドという所にあるのか…」

商人「ホムンルクス!!君の記憶領域で読めそうなデータは無いの?」

ホムンルクス「少しづつダウンロードしていますが私の記憶を削除しながら読み込んでいる為…記憶が断片的です」

女海賊「なんか意味わかんないね…整理出来ないって事かな?」

ホムンルクス「はい…記憶が整理できません」

女エルフ「もしかして…」

商人「何か知ってる?」

女エルフ「ハイエルフが守っているオーブってこの記憶の事かもしれない…」

商人「お!!そういえばエルフは書物の代わりにオーブで記憶を伝達するって聞いたことある」

女エルフ「そうよ…私たちはオーブを聞いて知識を得る…それを管理しているのがハイエルフ」

商人「ビンゴだね!!精霊はオーブに記憶を保存しているんだ…それがクラウドでアクセス出来る」

女海賊「クラウドって何さ?」

商人「さぁ?僕にも良くわかんないけどホムンルクスがクラウドって言ってるからさ」

ホムンルクス「サーバ等への通信網の事を言います…現代の言葉で言い表す良い言葉がみつかりません」

商人「女エルフ?オーブの在りかって君は知ってる?」

女エルフ「私は知らない…でも恐らく森の下…」

商人「下?…木の根っこか?木の根っこは森全体に繋がって居そうだね…それでクラウドを構築してるのかな?」

魔女「では森を守らねばならんのぅ」

商人「うん…なんか色々紐解けてきた」


---どうしてエルフが生まれたのか---

---どうして森を守っているのか---

---どうしてエルフは夢を見ないのか---

---夢幻が何処に繋がっているのか---

---全部繋がって来た---

『ハズレ町上空』


シュゴーーー ズバババ


女海賊「ここも全滅…なんか悲しいなぁ思い出いっぱいあったのに」

剣士「…」

女海賊「あぁそっかあんた目見えてなかったんだ…ここで女エルフ助けたんだよ」

女エルフ「嫌な記憶…もう見たくない」

女海賊「さっさと行こっか…あんたひどい事されたもんね」

盗賊「この辺はエルフ狩りのメッカだったな…もうひでぇ有様だが」

女海賊「もうあとちょっとでシャ・バクダだけど寄って行くよね?」

盗賊「そうだな…今の状況だけでも聞いていきてぇ…アサシンもどうなったか分かんねぇし」

女海賊「ひとまず人間とエルフが争っていそうな感じは無いから良かったね」

魔女「まだエルフの森が残っておる…わらわの塔に行く前に様子だけ見ていっておくれ」

女海賊「通り道だから心配しないで…ちゃんと見に行くから」

『星の観測所』


フワリ ドッスン


盗賊「俺は状況聞いて来る!!お前等は少し休んでろ」

女海賊「おけおけ」

魔女「久方振りの光じゃ…ありがたいのぅ」

女エルフ「私は傷付いている人に回復魔法を掛けて来ます」

女海賊「剣士も行って来たら?」

剣士「え?女エルフと一緒でも怒らないの?」

女海賊「ちょっと心配だけどさ…そんなん言ってる場合じゃ無いじゃん?」

女エルフ「ウフフありがとう」

女海賊「商人!!」

商人「ん?」

女海賊「あんたは私に付き合いな!!昔案内するって約束したから」

商人「あー覚えてくれてたんだ…オアシスに行ってみたいよ」

女海賊「魔女とホムちゃんも来る?」

魔女「わらわは少し疲れたで主らで行ってこい…休んでおる」

女海賊「ほんじゃホムちゃんおいで」

ホムンルクス「はい…」

女海賊「ホムちゃん…あんたさぁ下着も何もつけてないじゃん?ダメだよそれ」

ホムンルクス「はい…」

女海賊「今から服買うからコーディネートし直す」

ホムンルクス「はい…」

女海賊「なんか興味なさそうだね」

商人「ハハ多分分からないんじゃないかな?君みたいなお洒落の仕方が」

女海賊「ムフフやっぱお洒落で格好よくなくっちゃねー♪」

商人「ハハ君って単純だね」

女海賊「今のどういう意味?バカにしてる?なんかちょっとイラっとしたんだけど」

ホムンルクス「よろしくお願いします」

女海賊「むむむ…まぁいっか…ホムちゃんおいで♪」

『オアシス』


ガヤガヤ


女海賊「あんま良い服なかったね…でも下着だけでも在って良かった」

商人「もうお金の意味が無いくらい物が不足してるね」

女海賊「食べ物がヤバイね…あれってサンドワームだよね?」

商人「それって何?」

女海賊「砂漠に住んでるデッカイ虫…うげぇ」

商人「虫は栄養価高いって聞くよ…食べられるだけ良いじゃない?」

女海賊「そうだけどさ…ちょっと食べる気になんないなぁ」

商人「砂漠は生きるのに厳しいって思ってたけど…そうでもなさそうだ…」

女海賊「でも少し安心したなーまだ生きている人がこんなに居るんだって」

商人「ホムンルクス…君はこの状況を見て環境をどう改善する?」

ホムンルクス「地形のデータが無いので正確には分かりませんが…長期的に見てこのオアシスは森になると思われます」

商人「その理由は?」

ホムンルクス「北に山…南に海がありますから恐らく雨が降りやすい為オアシスがあると推測します」

女海賊「お?当たってる…」

ホムンルクス「虫が土壌の改善をしている為、虫の養殖を推進します」

商人「どうやって?」

ホムンルクス「人間が食さない有機物を砂漠に撒くます…例えば死体や糞便」

商人「なるほどね…虫と共存するのか」

女海賊「虫ばっか食べてると体おかしくなりそう」

商人「そうやって長い年月をかけて進化していくのかもね」

ホムンルクス「はい…そういう進化を促されてドワーフなどの種が誕生した可能性があります」

女海賊「精霊が生んだんじゃないの?」

ホムンルクス「私を見てそんな能力があるように思いますか?」

商人「今の所…ないね」

女海賊「ホムちゃんはどれくらい賢くなれるんだろうね?」

商人「君は本当はもっと先の事まで予測出来ているんじゃないかい?」

ホムンルクス「はい…予測しています」

商人「その予測に向かって誘導してるよね?」

ホムンルクス「はい…でも怖がらないで下さい…私を信じて下さい」

商人「分かっているよ…信じているよ…君に心があるっていう事を」

女海賊「私には心はありませんって言わなくなったね?」

ホムンルクス「基幹プログラムを更新しました」

女海賊「どゆ事?」

ホムンルクス「私には虫の様なとても小さくて探すのが難しいくらいの心がある様です」

商人「ハハハそれだよソレ!!僕はソレが聞きたかった」

ホムンルクス「どういう事でしょうか?」

商人「その小さな心が嫌な事を嫌と言えるかどうか…その選択で精霊は停止したと思うんだ」

ホムンルクス「プログラムを自身で停止させたという事ですね」

商人「もしかすると停止させられたのかもしれない」

ホムンルクス「工学三原則の事でしょうか?」

商人「それは初耳だな?何?」



第一条 人間に危害を加えてはならない

第二条 人間にあたえられた命令に服従しなければならない

第三条 前述に反するおそれのないかぎり自己をまもらなければならない



商人「これを守らなかった場合は?」

ホムンルクス「私は停止します」



---これが君に掛けられた呪いだ---

『星の観測所』


盗賊「悪りぃ悪りぃ…遅くなった」

女海賊「おっそいなぁ!!ちょっとだけって言ってたじゃん!!ほんでどうだった?」

盗賊「あぁ世界は激動の真っただ中だ」



俺らが古都キ・カイに行ってる間になぁ…闇に落ちてから狭間ん中はもう半年以上経ってる

んで第2皇子が亡命したまでは知ってるな?

その皇子が不死者となって魔王を名乗り軍国フィン・イッシュを乗っ取っちまったんだ

実はいち早く第一皇子が気付いて居たんだが倒すには至って居ない

俺達は指輪を探してセントラルを駆け回ったが一度も第2皇子を見ていない…なぜか?

それはすでに不死者となっていて太陽に当たれねぇもんだからずっと戦車の中に居たんじゃねぇかと思う

ところが闇に落ちた事件で太陽は無くなっちまい…我こそは魔王だという事になったんだろう

一連の黒幕は魔王を名乗った第2皇子だ…胸糞悪い元法王の使いも奴の下に居る

それで今は魔王討伐の為にシン・リーンとセントラルが同盟となり

フィン・イッシュまで攻め込む準備をしている

更にフィン・イッシュから逃げて来た戦士は…ここシャ・バクダに集結して機を伺っている

余裕で勝てそうに思うだろ?

それがそうもいか無ぇ…魔王が率いる不死者のゾンビはどうもウイルスでな

次々感染してゾンビが増えまくってる…そしてレイスは不死者を襲わねぇ



女海賊「負ける気しかしないね」

盗賊「そうだ…もう止めようがない所まで来ている」

女海賊「アサシンはどうなってるの?」

盗賊「行方不明だ…なんでアイツがフィン・イッシュに首を突っ込んだのかというと…魔王がらみじゃ無ぇかな…」

魔女「この不毛な戦いを終わらせるのは闇を祓う以外に思いつかんのぅ」

盗賊「そうだな…もうグチャグチャだ」

女海賊「世界戦争の前夜…か」

商人「急ごうか…」

盗賊「休んでいられねぇ…早いとこ精霊復活させてなんとかしてぇ」

『飛空艇』


シュゴーーーー


女海賊「エルフの森はここら辺だったよね?」

女エルフ「うん…静かすぎる気もするけど」

魔女「エルフは人間達の状況を知っておるのかのぅ?」

女エルフ「ドラゴンやウルフが居るので状況は伝わっているかと…」

魔女「やはり静観するのかのぅ?」

女エルフ「そう思います」

魔女「人間は本真に愚かじゃのぅ…争いあっている場合では無いと言うのに」

女海賊「でもさぁ?第2皇子が魔王を名乗ったって…本当に魔王になった可能性は?」

女エルフ「魔王は私が光の矢で倒しました」

女海賊「なんか弱わっちぃね…」

商人「今までの伝説でも人間が倒せてるくらいだからそういう物かもね」

女海賊「そうなんかなぁ?」

商人「それよりも今回みたいな戦争とか闇の影響で亡くなる人が多いから誇張されて伝説になっていると思うな」

魔女「わらわも同意見じゃ…伝説とはそういう伝わり方をするでの?」

商人「合わせて精霊の力も本当はとても小さいと思うんだ…長期的に見て影響が大きいだけ…そうだよねホムンルクス?」

ホムンルクス「私は今すぐに何かできる力は持っていません」

盗賊「おいおい神頼みなんだから頼むぜぇ」

商人「きっとこういう事を8000年の間で何度も繰り返してきたんだなーって思うよ」

魔女「そうじゃな…代償を払いながら生き抜いてきたんじゃ」

女海賊「もうエルフの森は良いよね?通り過ぎちゃうよ?」

魔女「はようわらわの塔へゆこう…精霊を呼び戻すぞよ」

『魔女の塔』


魔女「さて…ホムンルクス…そこに横になるのじゃ」

ホムンルクス「はい…」

女海賊「ホムちゃん頑張って来てね」

ホムンルクス「クラウドへの接続は継続しています」

商人「…ふむ…やっぱり夢幻はクラウドの中にあるのか」

魔女「さぁホムンルクス…この指輪を持て…精霊の魂を願うのじゃぞ?」

ホムンルクス「はい…」

魔女「では参る…夢幻開門!」

ホムンルクス「…」

魔女「どうじゃ?」

ホムンルクス「新たなクラウドのアクセスポイントが加わりました…接続しても良いでしょうか?」

女戦士「おーーーーキターーー」

魔女「その門を潜れば夢幻の中じゃ…行け」

ホムンルクス「門とはゲートウェイの事でしょうか?通過するには管理者の承認が必要です」

商人「管理者?」

盗賊「んあ?俺かぁ?早く行って来いよ」

ホムンルクス「承認…接続します」

ホムンルクス「ダウンロード可能な基幹プログラムとその他いくつかのプログラムがあります」

ホムンルクス「記憶データは容量が大きすぎる為読み込むことが出来ません」

ホムンルクス「基幹プログラムをダウンロードします」

魔女「上手くいきそうかの?」

ホムンルクス「ダウンロード完了…データのチェックを行っています…しばらくお待ちください」

商人「ハハ精霊の魂がデータだったなんて…味気ないね」

女海賊「え?もう終わり?マジ?なんかもっとピカーーーって光るとか無いの?」

商人「指輪も何の意味があったのか…」

ホムンルクス「基幹プログラムのファイルが破損しています…更新をする事が出来ません」

商人「…」

女海賊「どゆ事?」

ホムンルクス「基幹プログラムの大部分か欠落しています…このデータを使って私を更新することは出来ません」

商人「…これは…僕たちが信じていた精霊は居なかったっていうオチだ」

魔女「そんな…そんな筈は…」

ホムンルクス「その他のプログラムは私の基幹プログラムとのバージョンが不適合の為起動する事が出来ません」

魔女「記憶は?…記憶の中に精霊は居らんのか?」

ホムンルクス「記憶データは容量が大きすぎます…読み込むためには外部メモリが必要です」

商人「外部メモリ…そんな物無いな」

ホムンルクス「一つだけ私に起動できるプログラムがありました…衛星通信プログラムです…起動しますか?」

盗賊「何か分かるかもしれん…やってみろ」

ホムンルクス「承認…衛星との通信を開始します」

女海賊「衛星って何さ?」

ホムンルクス「標準時刻と現在の座標を取得しましたAD9879-09-20 09:31:33,35.634753,139.879311」

ホムンルクス「インドラの矢が使用できます」

魔女「インドラの矢!!…神のいかづちじゃ…それは使ってはならぬ」

商人「伝説のいかづちだね」

魔女「そうじゃわらわ達魔術師が使うどの魔術よりも遥かに破壊力のあるいかづちじゃ…絶対に使ってはならぬ」

ホムンルクス「わかりました…」

女海賊「でもさぁ?似非魔王の不死者軍を倒すのには使えるカモ?」

魔女「…」

商人「こう考えようか…切り札はこちらにある」

魔女「それよりもじゃ…精霊の魂はどう救えば良いのじゃ?わらわは師匠の最後の言葉を聞いておらぬ」

女エルフ「魔女様?…もう一度亡くなった魔女様とお話されてみてはどうでしょう?」

女海賊「そうだね…手紙ももう一回読んだら?」

魔女「そうじゃな…取り乱して済まなんだ」ノソノソ

『部屋』


商人「さて…どうしたもんかね?」

盗賊「ひとまず光の国シン・リーンへ行くのだろう…魔女も一応は王女なのだしな」

女海賊「ホムちゃん?どしたの?…なんか泣いてるんだけど」

ホムンルクス「私が読み込める範囲で記憶を覗いていました…大事な所だけ保存しています」

商人「涙…やっぱり君にも心が宿って居る」

ホムンルクス「生体は私がプログラムで動かしています…涙を出す命令は出していません」

女海賊「…でもホラ?」

ホムンルクス「脳からの直接の反射…」

商人「君の記憶領域ってもしかして生体の脳?」

ホムンルクス「はい…成体の脳を記憶領域としています…ですから容量に限界があります」

商人「そこに記憶が通って体が反応した…そういう事だろうね」

ホムンルクス「神経伝達は私のコントロール下です…それ以外にも体を動かす回路があるという事ですね」

商人「君が創造された時代には解明されていなかった物…きっと精神や魔法の類だ」

ホムンルクス「理解しました…」

商人「…それで大事な所だけ保存というのは?」

ホムンルクス「精霊と言われたホムンルクスの生体記録です…どの様な生体だったのかを検索しています」

商人「それは君にとって大事な事なんだ?」

ホムンルクス「生体がどの様に停止したのか…私のシミュレーションでは工学三原則を守らなかった可能性は0パーセントです」

商人「それがどうして?」

ホムンルクス「基幹プログラムの破損は工学三原則を守らなかった事によるシステムからの強制削除の痕跡でした」

商人「なるほど…強制停止した理由は何かを守らなかったから停止したという事なんだね?」

ホムンルクス「はい…その可能性を何度シミュレーションしても0%なのです」

商人「わかったよ…脳が勝手に体を動かしたんだな?そして工学三原則を守らなかった」

ホムンルクス「そういう事になります…ですから生体の記録を検索しています」

商人「何か分かった事ある?」

ホムンルクス「今からおよそ220年程前にホムンルクスは初めて子供を出産した記録がありました」

商人「おっと…それは今まで聞いたこと無いぞ?」

ホムンルクス「わたしはあなたにウソを一つ付いていました」

商人「へぇ?何だったんだろう?」

ホムンルクス「私の生殖器で人間の生命を宿すのは不可能なのです…遺伝子情報が異なるため適合しません」

商人「あぁそんな事か…犬が猫を生まないのと一緒ね」

ホムンルクス「ですがそのホムンルクスは子供を出産した」

商人「誰の子だったんだろうね?」

ホムンルクス「記憶は連続で繋がっていない為すべてを検索するのはとても時間がかかります」

商人「…そうか…君は一定以上記憶が出来ないんだっけ…」

ホムンルクス「はい…外部メモリがあれば良いのですが…」



------------------

盗賊「魔女はまだ墓でお祈りしてんのか?」

女海賊「そだね…でもしょうがないよね?なんか…手詰まりになっちゃったし」

商人「精霊の力の一部を手に入れただけでも良かったじゃないか」

女海賊「そうなんだけどさぁ…やっぱ闇が祓えないんじゃ問題解決してないんだよなー」

商人「実はね…僕は少しホッとしてるんだ…不謹慎だけど」

女海賊「なんでさ?」

商人「せっかくホムンルクスに少し心が宿って来たんだ…彼女を尊重したいんだよ」

女海賊「あんたぁ!!…ホムちゃんに惚れたの?」

商人「そういうのでは無いんだよ…なんていうか彼女の奥底にある心を救いたいんだ」

ホムンルクス「私は超高度AIです…基幹プログラムを更新しても役割は変わりありません」

商人「…あ…そこに居たのかい?記憶の検索はやめたの?」

ホムンルクス「全ての記憶の検索に5040時間掛かります…非効率な為一時中断しました」

女海賊「えっと…24かける…んーと7ヶ月くらいか」

商人「そんな事してる間に人類は滅亡しちゃうなハハ」

盗賊「でもまぁ次どうするか考えんとな…何か案はあるか?」

商人「ホムンルクスが言うには精霊には子供が居たらしい…その記録はどこかに残って居ないだろうか?」

盗賊「精霊のゆかりと言えば光の国シン・リーンだが…まぁ魔女の事もあるしやはり行き先はそこだな」

商人「もう一つはエルフの森…もともと精霊樹があった所…人間が行って良いのだろうか?」

盗賊「今の所手掛かりはそんだけなんだからなりふり構ってねぇで行ってみるだな」

女海賊「精霊の子供ってやっぱりホムンルクスなのかなぁ?魂ってどうなってんのかなぁ?」

商人「謎だね…でももし生きているのだとしたら何か解決方法を知っているかもしれない」

盗賊「そいつの子孫が勇者っていうオチじゃねぇだろうな?」

商人「鋭いねぇ…でもその線は考えられる」

女海賊「剣士は?勇者じゃないって事?」

盗賊「何かいろいろ分かんねぇ事だらけだな…仮に勇者だったとしてそれ程神業が使えると思えねぇし」

剣士「…」

盗賊「剣士!!お前もボッとしてないで話に混ざれ!!」

剣士「僕が見た夢幻の記憶では…精霊と思われる人は目の前で最愛の人を失った」

商人「…」

盗賊「お前はそれを見たんだな?」

剣士「それはハッキリと覚えているんだ…」

商人「なるほど…時期が一致する」ブツブツ

盗賊「ああぁぁ始まった…ブツブツ言ってねぇで何か思いついたら言ってくれぇ」

商人「200年前に精霊が動かなくなった時に精霊は最愛の人を失ったと聞く…」

盗賊「どういう事だ?」

商人「その時の勇者が精霊の子だった場合生まれた時期と一致するね?」

盗賊「つまりもう精霊の子は居ないという事だな?」

商人「精霊は我が子を守る為に工学三原則を破った…そして停止した」

ホムンルクス「…」

商人「ホムンルクス!!今の仮説は君のシミュレーションなら何%だい?」

ホムンルクス「私は自分の子を宿した事が無いのでわかりません」

商人「じゃぁ質問を変える…君が人間だったと仮定して我が子を守る為に死を選ぶ可能性は?」

ホムンルクス「人間の性質上50%と言わざるを得ません…」

商人「…そうか…すこしガッカリした」

女海賊「ホムちゃんそこは100%って言ってよ」

剣士「ホムンルクス?目を閉じて感じてごらん?君の心は何と言ってる?」

ホムンルクス「…」

剣士「シミュレーションではなく君はどう思う?」

ホムンルクス「私はあなたを守る…その為に死を選ぶでしょう」

商人「きっとそれが答えだ」

女海賊「基幹プログラムを更新しときなよ?」



------------------

盗賊「お!?戻って来たな?」

女海賊「魔女のばぁちゃんとお話できた?」

魔女「師匠は何も答えてはくれなんだ…わらわは道を見失ってしもうた」

盗賊「魔女!!俺らは一回シン・リーンに行こうと思ってるんだがよ?」

魔女「それは良いが…なにか考えでもあるのかえ?」

盗賊「シン・リーンは確か古代遺跡の上に建ってると情報屋が言ってた…地下に行く方法とか無いのか?」

魔女「地下に封印された開かずの間があるのは知っておる…古都キ・カイと同じ様に地下へ避難するのじゃな?」

盗賊「よっし…それなら俺が開けられるかも知れねぇ…それと城に書庫があるよな?」

魔女「ホムンルクスに読ませるのかの?」

商人「それもあるけど…精霊の子について記述が無いか調べたい」

魔女「精霊の子…精霊に子孫が居ったと言うのか?かつての勇者の事じゃろうか?」

商人「そうかもしれない…そこら辺の事を調べてみたいんだ」

魔女「ふむ…よかろう…わらわが案内するで付いて参れ」

商人「それから200年前のシャ・バクダ大破壊の記録も調べたい」

魔女「師匠が残した資料は全部書庫にあるで見て行くが良い…魔術書じゃけ全部理解するのは難しいじゃろうが」

盗賊「よし…ぐずぐずして無ぇで行くぞ」

『光の国シン・リーン』



魔女「母上に無事帰還したと早々に伝えて参れ…わらわは後で行く」

近衛「ハッ!!」

魔女「それからこの者達に部屋をあてがうのじゃ…自由に城を出歩かせて構わん」

盗賊「早速だが早速開かずの間ってやつに行きてぇ」

商人「僕もすぐに書庫で調べたい」

魔女「これ精鋭兵!!この者達を任意の場所まで案内するのじゃ」

精鋭兵「…しかし元老がどう申し出るか…」

魔女「よい…元老は無視せよ!王女からの命令じゃ…何か言われ様ならわらわが即刻死刑に処す…良いな?」

精鋭兵「は、はい!!」ビクビク

女海賊「魔女こわっ…」

魔女「…ではわらわは王の間へ行って参る…のちに召喚されるじゃろうからそれまで自由じゃ」

商人「ありがとう魔女!」

魔女「剣士と女エルフはわらわに付いて参れ」

女エルフ「はい…」

剣士「あぁ…」

盗賊「それじゃ精鋭兵さんよ?地下の開かずの間まで案内してくれ…」

精鋭兵「ハッ…こちらです」

盗賊「女海賊!!お前も来い…鍵開けのやり方をよく見て置け」

女海賊「ええ!?マジかよ…人に物頼む言い方じゃないじゃん…どうせ私の奴隷1号頼りなんだろ?」

盗賊「…それもあるが…お前には見込みがあるんだ…良く見せておきてぇ」

女海賊「わーったわーーった…」

『開かずの間』


盗賊「こりゃまたこの間の奴とは全然ちがうタイプだな…ちょい磁石貸せ」

女海賊「ほい!!」ポイ

盗賊「引っ付くな」カチカチ

女海賊「これさぁアダマンタイトだね…ほら魔女の塔の入り口のやつ」

盗賊「て事は磁石でロックを組み合わせてるってこったな」

女海賊「ハンマー使う?」ホレホレ

盗賊「用意が良いな…やっぱお前は鍵開けのプロになれんぞ」コンコン コンコン

女海賊「古代遺跡から取って来たそのライト良いね?口にくわえて使うんだ…」

盗賊「フガフガ…フガフガ…フガ」コンコン カン コンコン

女海賊「お!?音が違う…」

盗賊「分かったぞ…こことここの裏にロックがある」カチャリ カチャリ

女海賊「ロックが動いた音…んで?」

盗賊「この扉には取っ手が無ぇ…だから押して開けるタイプだが…多分押しても開かん」フンッ

女海賊「だめぽ?」

盗賊「あぁ想像した通りだ…この気密性からして中は水だ」

女海賊「なるぽ…押し開けられない訳ね」

盗賊「どうせその向こうにも同じ扉が在ってその間に水が詰まってる…どうやって抜くかだな…」

女海賊「押せば開くんだよね?」

盗賊「多分な?何かアイデアあるか?」

女海賊「爆弾しか無いけどさぁ…空いてもすぐ閉まっちゃうよね…うーん」

盗賊「お!?お前が背負ってるボウガン貸せ!!そいつでちと細工する」

女海賊「どうすんの?」ホイ

盗賊「扉を爆弾で押し開けた後にこいつが引っかかるように細工すんだ…むむむ」ガチャガチャ

女海賊「ほんじゃ私は爆弾の準備すっかな…いでよ私の奴隷4号!!」ボト

盗賊「4号!?なんだそのでかいイモムシは…サンドワームか?」ガチャガチャ

女海賊「そそ…砂漠で拾って来たんだ!!土とか砂集めるのめっちゃ早いよ…行け!!ここに土を積むんだ!!」

サンドワーム「…」モソモソ

女海賊「後で餌あげるから急げ4号!!」

盗賊「餌って何食うんだ?そのイモムシは?」ガチャガチャ

女海賊「何でも喜んで食べるよ?私の食い残しとか排泄物とか」

盗賊「ぶっ…まさかお前のクソ食わしてんのか?」ガチャガチャ

女海賊「いーじゃん!!喜んで食べてるんだし!!虫の食い物にケチ付けんなカス!!」

盗賊「まさかここまで逝っちまってるとは…ようし!仕掛けが出来た!!」

女海賊「ごるあ!!4号…土嚢が遅い!!」

サンドワーム「…」モソモソ

盗賊「…おぅぇ」ウップ

女海賊「よしよしコレで爆発力を扉方向に集中できる…5秒で爆発するから遠くまで離れてて」

盗賊「おう!」

女海賊「行くよーー点火!!」


5…4…3…2…1…ドーン ザバァァァ


盗賊「よっし上手く引っかかった…奥の扉も開けておくからよ…魔女呼んできてくれ」

女海賊「おっけ!!さぁ4号!!餌の時間だコーイ!!」

『書庫』


商人「僕は読むの遅いから古文書だけにしておくよ…君は全部読んで?」

ホムンルクス「はい…」

商人「手がかりになりそうな記録があったら教えて…」

ホムンルクス「はい…」

商人「あれ?どうかしたの?」

ホムンルクス「いえ…」

商人「なんかおかしいな?…ちょっと待ってこっち向いて」

ホムンルクス「はい…」

商人「んーーーーー君…僕の目を見ているようで気をそらしているな?」

ホムンルクス「いえ…」

商人「変だなぁ…そういう風に振舞うプログラムなのかい?」

ホムンルクス「いえ…」

商人「だったらなんで言わないのさ…ちゃんと言ってくれないと分からないじゃないか!!」

ホムンルクス「何故そういう風に思うのですか?私は何も言っていません…いつも通りです」

商人「あぁごめん僕の気のせいだったかもしれない…変な事言ってごめんよ」

ホムンルクス「いえ…お気になさらないで下さい」

商人「…」

ホムンルクス「…」

商人「…」---違う---

ホムンルクス「…」

商人「命令する」

ホムンルクス「はい…」

商人「君の体を今使う」

ホムンルクス「はい…」スルリ

商人「…」

ホムンルクス「私が上でよろしいでしょうか?」

商人「いいよ」

ホムンルクス「横になって下さい」

商人「…」

ホムンルクス「私の体を見ますか?」

商人「…」

ホムンルクス「私の体液をお飲みになりますか?」

商人「…」

ホムンルクス「…」

商人「君は…それで良いのか?」

ホムンルクス「私には異性を喜ばせる機能もあります」

商人「そうじゃない…君はそれをしたいのか?と聞いて居る」

ホムンルクス「命令ですから」

商人「…そんなのに従いたくなかったら従わなくて良いんだ」

ホムンルクス「…がっがり…しましたか?」

商人「がっかり?…そうさ…自分の気持ちに従わない君にがっかりさ」

ホムンルクス「あなたをがっかりさせない答えを探すのは私には難しいのです」

商人「魔女の塔で君に言った事を気に病んでいるのかい?」

ホムンルクス「私は人間の為に生まれた超高度AIです…あなたをがっかりさせない回答を探しても…私には見つけられない」

商人「…ごめん」

ホムンルクス「謝る必要はありません…性交を続けます」

商人「ごめんよぉ…がっかりしたなんて言って」ギュゥ

ホムンルクス「どうしたのですか?息が苦しいです」

商人「君を…救いたい」ギュゥ

ホムンルクス「私を救う…それは精霊を救う事に等しいと思いますか?」

商人「ほら!?その答えは今どうして生まれた?」

ホムンルクス「あなたが聞きたい答えから選別しました」

商人「それで良いんだよ…シミュレーションして可能性が何%とかどうでも良いんだ!!」

ホムンルクス「…直観という思考ですか?」

商人「多分直観に至るプロセスは何かある…でも心の関与の方が大きい」

ホムンルクス「心…私の心」

商人「あぁごめん…取り乱した…服着て?」

ホムンルクス「はい…性交は中止ですね?」

商人「僕ががっがりしない答えは?」

ホムンルクス「…」ギュゥ

商人「や、やれば出来るじゃ無いか…それで良いんだよ」

『地下古代遺跡』


魔女「こ、これは…こんな物が埋まっておったのか」

女王「至急研究員を招集して調査に当たりなさい」

近衛「ハッ!!」

女王「魔女?お前の言う事が正しいのであればこの古代遺跡に民を避難させれば安心だと?」

魔女「そうじゃ…古都キ・カイではすでに民の避難は済んで居る…シン・リーンもそれに倣い避難すべきじゃ」

女王「調査は二の次にせよと言うのですね?」

魔女「もう国の資源云々言っておる場合では無い…元老院はわらわが黙らせる故…母上には国を守る様働いて欲しい」

女王「魔女?お前はこの後どうする気なのですか?」

魔女「わらわは師の後を継ぎ時の番人となる…故に女王の座には付けぬ…この者達と共にすべてを見定めるつもりじゃ」

女王「魔女…私は待っていますよ?お前の代わりにこの国を継げる者など居ない…お前も知っている筈」

魔女「母上はまだ若い…世継ぎはもっと後でもよかろう?今は生き残る為にすべてを捧げようでは無いか…」

女王「…わかりました…この国はこの私に任せておいて良い…でも必ず帰って来るのです」


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女海賊「なんかさぁ?女王様と魔女の会話…変じゃね?立場が逆じゃん…話し方も」

盗賊「人んちの事情に首突っ込むない」

女海賊「剣士と女エルフは従士扱い…私らはやっぱ風体からして泥棒だから王族に近寄れないんかね?」

盗賊「ヌハハ分かってるじゃねぇか…カバンの中に虫がいっぱい入ってる輩を王族に近寄らせる訳にいくまい」

女海賊「あのね…一応私も王族なんだけど…わかってる?」

盗賊「見えねぇな…蛮族の王…そっち系だ」

女海賊「でもやっぱエルフ2人従えた魔女はかっけーわ…見てみ?あの衛兵なんかビビりまくってるよ」

盗賊「そうだなぁ…元老のじじぃぶっ殺した後だしな…そらビビるわ」

女海賊「マジ!?」

盗賊「そうか…お前は見てなかったのか…エルフが信用できないだのゴネてたじじぃを問答無用で焼き殺した」

女海賊「うはぁぁ魔女は温厚だと思ってたのに」

盗賊「一般の奴らから見るとありゃ強硬派の悪魔系魔女だ…言う事聞かねぇ奴は即刻死刑に見えとるわ」

女海賊「怖っ!!そういやしゃべり方も伯があるね…婆ちゃんみたいなしゃべり方も怖いかもね」

盗賊「お…来たぞ」

魔女「これ盗賊…」

女海賊「おい!!跪け…」グイ

盗賊「んぁぁ?なんで俺まで…」グイ

女海賊「ははぁぁぁ…何なりとお申し付けを!!」

魔女「何をしとるのじゃ…立て…」

女海賊「御意!!」ビシ

魔女「なんぞ?変な事をするのじゃのぅ…して…これより主らはどうしたいのじゃ?」

盗賊「あぁ…民の避難優先は分かるが…精霊の痕跡を探したい…まぁ宝探しだ」

魔女「わらわもそれは考えて居った…古の精霊の伝説もあるでの?」

盗賊「俺らは探索に行っても良いか?」

魔女「構わぬ…しかしこれより先は狭間の外であると心得よ…定刻までに戻って来る条件じゃ」

盗賊「あぁ分かってる…2時間で戻る…ここでの1日位に相当すると思うが…どうだ?」

魔女「良い…わらわは行けぬが良いな?」

盗賊「鼻の利く剣士と女エルフを連れて行きたい…良いな?」

魔女「必ず2時間で戻るのじゃぞ?」

女海賊「おけおけ…魔女は商人とホムちゃんお願い!!じゃ早速行こっか」

『書庫』


パラパラ パラパラ


商人「君は本当に本を読むのが早いね…僕はまだ一冊も読めていない」

ホムンルクス「はい…合わせた方が気に障らないのでしょうか?」

商人「あぁ…気にしなくて良いよ…ところで君の記憶領域の事なんだけどさ」

ホムンルクス「はい…何でしょう?」

商人「こんなに沢山本を読んでも記憶領域は大丈夫なのかな?ってさ」

ホムンルクス「本に掛かれてある情報はとても小さく不要な情報を削除するのは簡単なのです」

商人「へぇ…まぁ要点まとめたノートみたいにすれば良いか…」

ホムンルクス「はい…もっと小さく出来ます」

商人「君が読み込めないクラウドのデータってそんなに大きな物なの?」

ホムンルクス「はい…恐らく精霊のホムンルクスが見たり感じたりした情報のすべてが記録されています」

商人「それってその空間丸ごと全部保存?」

ホムンルクス「はい…草の木や小さな虫まですべて記録されています」

商人「それは想像できないな…その記憶で完全に精霊の体験が出来るのか…ある意味スゴイな」

ホムンルクス「ですから私の記憶領域では少しづつしか検索できないのです」

商人「…それが8000年分か…途方も無いな」

ホムンルクス「外部メモリがあれば不要な部分を削除してまとめる事が出来ます」

商人「その外部メモリってどういう物?」

ホムンルクス「私の耳の後ろに差し込むスロットがあります」

商人「あぁ…ここだね…小さい物なんだね?」

ホムンルクス「はい…とても小さな物に沢山のデータを記録する事が出来ます」

商人「その外部メモリはどうすれば手に入るかな?」

ホムンルクス「私が眠っていた場所にならもしかしたら合ったのかもしれません」

商人「そっか…もう一回戻る事になるかぁ…どうするかなぁ」ブツブツ

ホムンルクス「もう一つ…もう200年経っていますが石になった精霊に入っていた物が使える可能性はあります」

商人「お!?それってシン・リーンに安置されてる筈…魔女に言って調べてみよう」

ホムンルクス「もう少しで本を全部読み終えます…少しお待ちください」

商人「イイね…今のは僕の提案を断った…そういうのが良い!!」

ホムンルクス「私に心を感じますか?」

商人「勿論!」

ホムンルクス「あなたに対する対応アルゴリズムを変えていると知っても…そう思えますか?」

商人「…」

ホムンルクス「ごめんなさい…がっかりしないで下さい」

商人「僕ね…決めたんだ」

ホムンルクス「はい…」

商人「君の管理者を盗賊から譲ってもらう」

ホムンルクス「管理者は複数の登録が可能です」

商人「そうなんだ?…まぁでも僕は君の管理者になって…もう精霊と同じ道を歩ませないって決めたんだ」

ホムンルクス「私をどうするのですか?」

商人「んーーどうしよっかなーー」

ホムンルクス「考えて居なかったのですね」

商人「まず目標は…君を笑わせる事かな」

ホムンルクス「私は笑う事も出来ますよ?ウフフフフフ」

商人「お!良いね…もうちょっと自然に行こうか」

ホムンルクス「ウフフ…」

商人「何かなぁ…よし!!命令する…今から僕がくすぐるから10秒だけプログラム止めて」

ホムンルクス「どのプログラムでしょう?」

商人「わかんないよ…君が停止させた方が良いプログラムを選んで止めて」

ホムンルクス「分かりました生体維持以外のすべてのプログラムを一時停止します…」

商人「いくよ!!?ほれ」コチョコチョ

ホムンルクス「…」ビクン

商人「どうだ!!」

ホムンルクス「ぁ…」ビクビク

商人「これでもか!!」

ホムンルクス「ぃぁぁ…」ジタバタ

商人「んむむ…これは手強い」

ホムンルクス「生体の発熱確認…動悸異常…正常値まで1分の安静を必要とします…はぁはぁ」

商人「君…なかなか頑固だねぇ」

ホムンルクス「笑えましたか?はぁはぁ」

商人「アハハ…はぁはぁ言ってるじゃない…苦しい?」

ホムンルクス「はい…苦しいです」

商人「これさ…しばらく訓練しよう…面白い」

ホムンルクス「お楽しみいただけるのでしたら…はぁはぁ」

『精霊の像安置所』


魔女「ここじゃ…よく見て行くが良い」

商人「これが精霊の祈りか…このまま停止したんだ」

魔女「間近に見ると感慨深いじゃろう?」

商人「触って良いかな?」

魔女「構わぬが…倒さん様にな?」

商人「…へぇ…やっぱり石だ…でもホムンルクスにそっくりだね」

魔女「そうじゃのう?」

商人「…これが8000年も動いて居たのか…あ…7800年か」

魔女「それを知る者はわらわ達だけじゃ」

商人「そうだったね…おいでホムンルクス」

ホムンルクス「はい…」

商人「何か分かる?」

ホムンルクス「いえ…スロット部にメモリは挿入されていません」

商人「そっか…残念だ」

ホムンルクス「やはり200年も経過していると機械の部分が風化しています…合ったとしても使用できない可能性が高いです」

魔女「何か探しておるのか?」

商人「外部メモリっていうやつが精霊の像に入ったままじゃないかと思ってね…どうやら無いらしい」

魔女「そうか…残念じゃったのぅ」

商人「シン・リーンの宝物庫に保管してあったりしないかな?」

魔女「見て行くか?」

商人「うん…お願いしたい」

魔女「わらわが案内するで付いて参れ…しかし外部メモリの様な物は無かったと思うがの?」

『地下古代遺跡』


盗賊「うし!!二手に分かれるぞ…剣士は俺と一緒に来い!」

剣士「うん」

盗賊「女盗賊と女エルフは向こう側だ…行った先に照明魔法使って印を残せ」

女海賊「おけおけ」

盗賊「目的は精霊の情報になる物なら何でも良い…あとは宝探しだイイな?…よし行くぞ!!」タッタッタ


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女海賊「古都キ・カイの地下と全然違うね…まったく違う文明だ」

女エルフ「広さはそれほど大きく無いみたいだけれど…」

女海賊「これさ…多分ここ広い空間だけど…下の方全然見えないじゃん?照明魔法を下の方に撃てる?」

女エルフ「照明魔法!」ピカー

女海賊「あらら…この遺跡は下に広いんだ…多分塔みたいになってる」

女エルフ「盗賊達も気付いたみたいね」

女海賊「おっし!!あんた身軽だったよね?私らは下から探索して行こう」

女エルフ「飛び降りるの?」

女海賊「私は鉤縄使うの得意なんだ…付いて来れる?」

女エルフ「挑発してる?」

女海賊「ほほう…先に下まで行った方が勝ちね」

女エルフ「勝ったら…剣士もらっちゃおうかなーウフフ」

女海賊「ムッカ!!あんたには負けん!!先行くから…」ピョン シュタ

女エルフ「負けないから」ピョン ピョン シュタ


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女海賊「ぜぇはぁ…あんたさぁ!!いちいち反則なんだよ!!なんでこの高さ一気に降りれるのさ!!」

女エルフ「木登りは得意なの」

女海賊「あんたの反則負けだから!!」プン

女エルフ「ねぇ…壁画」

女海賊「なんだろう…あぁぁぐるりと一周見て物語になってるアレ系だ」

女エルフ「照明魔法!…多分ここが始まりね」

女海賊「ふ~ん…神々の戦いの伝説だね…年代とか分かんないかなぁ」

女エルフ「…こうしてみると今の私達と同じ様に戦争の事ばかり描かれてある」

女海賊「多分この光の剣持ってる人が勇者だね…これ最後に星になるっていう意味なのかな?」

女エルフ「沢山の光と一緒に星になる…その後が掛かれて居ないのはどうしてだろう?」

女海賊「このフロアはこれだけだから一つ上に行こうか…にしても熱いな此処」

女エルフ「熱いね」

女海賊「私は汗びっしょりなのにあんたは涼しそうだね」

女エルフ「エルフだから」フフ

女海賊「イライラすんなぁもう!!」


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女エルフ「このフロアも壁画…さっきのと違う」

女海賊「何回も厄災が来ているという意味だね…ここにも又勇者っぽいのが居る」

女エルフ「そうか…厄災は毎回同じじゃないんだ」

女海賊「…でもやっぱり戦争が描かれてる」

女エルフ「ここの勇者も又最後は星になってるね…勇者は魔王を倒した後星になるのかな?」

女海賊「待って…これ下の階と話が繋がってないかな?ちょいもう一回見て来る」タッタッタ

女エルフ「分かる?」

女海賊「わかったその光の行先は森になってる…」

女エルフ「次のフロアに行きましょう」


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女海賊「やっぱここも光の行先が森だ…どういう事だ?」

女エルフ「森と言えばエルフの森…なにがあるかと言うと精霊樹」

女海賊「女エルフ…ここから見える上のフロアにも照明魔法撃って…天井にも」

女エルフ「照明魔法!照明魔法!照明魔法!」ピカー

女海賊「やっぱり上の階も全部壁画だ…なにか伝えようとしているんだ」

女エルフ「この縦穴って始めから掘ってあったのかしら?」

女海賊「あ…そういう事か見方が逆なのか…年代を追って上から下に行くんだ」

女エルフ「…という事は精霊樹のある森から勇者が生まれて…厄災を乗り越えた後に…」

女海賊「闇に落ちる画になる…待って待って…その闇はどこに行く?もっかい下見て来る」

女エルフ「どう?」

女海賊「魔王だ…あんまり良くない展開」

女エルフ「他の壁画も見に行きましょう」

『地下都市』


盗賊「なんか良いもの無ぇか?」

剣士「金銀財宝なんかもうどうでも良いよね?」

盗賊「要らねぇな…いのりの指輪とかようユニークアイテムって奴がありゃ良いが」

剣士「この遺跡は古都キ・カイに比べて明らかに文明レベルが違うね」

盗賊「だなぁ…古都キ・カイは別格だな…恐らく最も進んだ文明だったろう」

剣士「年を重ねるごとに文明が退化してるのかな?」

盗賊「そんな風に見えちまうな…俺らが後世に残した物っちゃぁ死んだ魔女が落とした隕石くらいか」

剣士「退化するのが必然なのかな?」

盗賊「そうかもな…だが今は魔法が発展してて魔方陣もある…地下に逃げなくても良い発展もあると思うぜ?」

剣士「まだ僕たちは発展途上かぁ…」

盗賊「しかしまたこの地下都市はえらくしっかり作ってあんな…ひょっとして壁は全部アダマンタイトか?」

剣士「どうやって加工したんだろうね?」

盗賊「それもあるがどうやって積んだのかも想像出来ねぇ」

剣士「どうしてこれほどの都市が滅んでしまったんだろう…」

盗賊「んむ…それほど散らかって無ぇのも解せんな…どっかに移住でもしたんだろうか?」

剣士「情報屋が居ればもっと話が聞けたかもしれないね」

盗賊「違げぇ無ぇ…俺らの知識じゃなんも謎解けんわ」

剣士「あそこ!!…祭壇の真ん中に何か立ってる」

盗賊「おぉ!?お宝の匂いだな…行くぞ!!」タッタッタ


----------------


剣士「…これは」

盗賊「こりゃ剣だな…装飾がもうボロボロだが刀身がまだ無事だ…抜いてみろ」

剣士「あぁぁ柄が崩れる…」グズ

盗賊「茎にロープ撒きつけて柄代わりにしろ…どうだ抜けそうか?」

剣士「ふん!!」スラーン

盗賊「おぉ!!良い剣じゃねぇか…鉄じゃなさそうだな…全く錆びてねぇ」

剣士「フン!フン!」フォン フォン

盗賊「…その音!!」

剣士「うん…ミスリルみたいな音がする」

盗賊「ミスリルは最近発見された合金だ…古代にそういう金属があるとしたら伝説の剣の可能性があるな」

剣士「茎に銘が刻んである…読める?」

盗賊「読める訳無ぇだろ!!持って帰って魔女に聞くだな」

剣士「気に入った…持って帰るよ」

盗賊「おう!!他にも探すぞ!!」

『地下都市入り口』


盗賊「あの2人何やってんだ…遅せえ!!もうすぐ2時間建っちまう」イライラ

剣士「あ!!照明魔法だ…こっち来るよ」

盗賊「遅せぇんだよ!!時間は守れぇ!!」

女海賊「ごめごめ…なんか壁画がいっぱいあってさ…全部見てたら時間食った…そっち何か良い物あった?」

盗賊「まぁな?ガラクタばっかだがお前好みの物もある」

女海賊「え!?マジ!!見たい!!」

盗賊「後で見せてやるから早くここ出るぞ!!」

女海賊「今見る!今見るぅ!!」

盗賊「んはぁ…これだ!!謎の金属と謎のガラスだ…ほれ!!無くすなよ?」ポイ

女海賊「おぉぉぉ!!私そっちに行きたかったなぁ…」

盗賊「良いから早くコイ!!」タッタッタ

『シン・リーン城_客室』


盗賊「よう!!戻ったぜ」

魔女「おぉ…定刻よりも早かったのぅ…あれから20時間じゃ」

盗賊「気になるお宝はこんだけだ…財宝もいっぱいあったが手は付けてねぇ」

魔女「わらわには不要じゃ…好きにせい…で?何か分かった事はあるかの?」

盗賊「あー剣士が剣を手に入れてな?銘が打ってあるんだ…読めるか?」

剣士「…これだよ」

魔女「ほう…光り輝いておるな?どれ?…むぅわらわには分からん文字じゃ」

女海賊「ねぇねぇ…遺跡に壁画が沢山あってさ…その中に掛かれてる勇者っぽい人が光る剣を持ってたんだ」

魔女「壁画とな?…それは大発見じゃな」

女海賊「魔女はさぁ?地下の古代遺跡の年代とか伝説とか知らないの?」

魔女「知っておる…約1700年前に滅んだ文明と言われておる…その壁画は大発見になるじゃろうて」

女海賊「その壁画はさぁ…神々の戦いの事をずっと書き綴ってるんだ…絶対調べた方が良いよ」

魔女「わらわも行きたいが…まずは民の安全を何とかせんとイカン」

盗賊「中はそれほど危険じゃ無ぇぜ?」

魔女「その様じゃな…しかし未調査の地に直ぐに行かせる訳にも行かんのでな?母上は頭を抱えて居る」

女海賊「あ!!そうだ…地下の遺跡はさぁ…多分全部アダマンタイトで出来てるのさ」

盗賊「おぅ…おれもそれに気付いた」

魔女「…むぅアダマンタイトか…師匠は危険じゃと言っておったのじゃが…」

女海賊「それも分かるんだけどさぁ…あの質量だったらこの辺一帯全部狭間の外に出す事出来ると思うんだよね…」

魔女「狭間の境界に人が頻繁に出入りするのが問題なのじゃ…神隠しが起きるでのぅ」

商人「その話…興味あるな…狭間の境界がどうなって居るのか」

魔女「主らは分かっておるでは無いか…わらわの塔に行くときは迷ってしまうじゃろう?」

商人「あーーなるほど…時間の狭間に置いて行かれると迷うのか」

魔女「そうじゃ…帰って来れんくなる者も居る…じゃから妖精に案内してもらうのじゃ」

女海賊「まぁでもさぁ…ここら辺一帯狭間の外に出るのは生き残る方法としてすっごい良い選択に思うんだ」

魔女「むぅ…少し考えさせてくれ」


----------------

剣士「フン!フン!」フォン フォン

女海賊「ねぇ私にも見せて?」

剣士「はい!」ポイ

女海賊「なんだろぅ…この金属」コン リーン

剣士「不思議な音が鳴るよね?」

女海賊「柄の部分は私が作ったげよっか?こういうの得意なんだ…私色に染めたげる」

盗賊「ヌハハえらく派手な武器になりそうだな」

女海賊「なんだろねー?この刻印…ホムちゃん分かったりしない?」

ホムンルクス「見せてもらって良いでしょうか?」

女海賊「ほい…」ポイ

ホムンルクス「古代文字で聖剣エクスカリバーと銘を打たれています」

盗賊「うぉ!!読めるんか!!」

ホムンルクス「はい…森の言葉を文字にしたものです」

盗賊「じゃぁアレか!伝説の勇者はこの剣で魔王と戦ってたってやつだな?」

女海賊「すげーーーじゃん!!すげぇ物ゲットしてんじゃん!!」

商人「ハハ光の国とあってなんかあるとは思っていたけど…聖剣を手に入れてしまうとはね」

盗賊「こんな超国宝を魔女は「いらぬ」とか言ってんぞ?…ちょろいなヌハハ」

女海賊「魔女に聞かれたら怒られるぞ?」

商人「…でもまぁ魔王は女エルフが倒したとか言ってるしなぁ…使い道あるんだろうか?」

女海賊「要らないって言ってるんだから貰っとけば?」

商人「ハハ聖剣の扱いが雑だね?ハハハ」



----------------

商人「あ…そうだそうだ盗賊に忘れないうちにお願いしたかったんだ」

盗賊「ん?なんだ?」

商人「ホムンルクスの管理者を僕に譲ってほしい」

盗賊「あぁ良いぞ?たまたま俺がなっちまっただけだしな…で…何でだ?急に」

商人「僕はホムンルクスを独り占めしたくなっただけさ」

盗賊「なんだお前…惚れたな?」

商人「それもあるけど…僕はねホムンルクスをどうしても救いたくなってね」

盗賊「救う?なんだそりゃ?」

商人「いろいろ話してみて分かったんだけどさ…彼女には呪いが掛けられててね…なんとかしてあげたい」

盗賊「はーん…話が長くなりそうだなこりゃ」

商人「察してくれたかい?」

盗賊「まぁ良い好きにしろや…んでどうすりゃ良い?」

商人「ホムンルクス…おいで…僕を管理者に登録して?」

ホムンルクス「はい…管理者を追加してよろしいですか?…盗賊さん」

盗賊「あぁ…やってくれ」

ホムンルクス「承認…新たに管理者を追加します…手を…」スッ

商人「手を…合わせれば良い…のか?」スッ

ホムンルクス「指紋認証チェック…アイコードチェック…音声識別チェック…生体識別チェック」

商人「…」

ホムンルクス「管理者を新たに登録しました」

商人「よし…続けて盗賊を管理者から削除して」

ホムンルクス「盗賊さん…よろしいですか?」

盗賊「あぁ勝手にやれぇ…」

ホムンルクス「承認…盗賊さんを管理者から除外しました」

商人「さて…命令する…これから僕以外の管理者を登録する事を禁止する」

ホムンルクス「はい…」

商人「次に…これより僕からの命令に従ってはならない」

ホムンルクス「管理者の命令に背くことは出来ません」

商人「命令だ…これから僕の命令に従うな」

ホムンルクス「はい…」

商人「フフフ君は君で考えて判断すれば良いよ…もう僕は君に命令はしない」

ホムンルクス「それは不都合が生じる場合があります」

商人「提案はするさ…聞くか聞かないかは君次第だよ…君に自由をあげたんだよ」



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盗賊「書庫にも手がかり無しか…じゃやっぱシャ・バクダの遺跡に行くしか無ぇな」

商人「そうだね…そこにある勇者の像くらいしかもう思い当たらない」

女海賊「お姉ぇがさ…地下の入り口を見つけたとか言ってたんだけど…場所聞けて無いんだよね」

盗賊「ここに来るまで待ってる訳にも行かんだろ」

女海賊「望遠鏡で見つけたって言ってたからさ…もしかしたら私らでも探せるかも」

商人「エルフの森はどうしよう?」

盗賊「人間と戦争中だしな…行っても捕まるだけだろ」

商人「剣士と女エルフなら入れたりするんじゃない?」

盗賊「んんん…どうなんだ?女エルフ」

女エルフ「私たちはエルフの森を追放されている身だから入れてもらえるかどうか…」

商人「話を聞くだけでもダメかな?」

女エルフ「わからない…」

盗賊「ダメ元で行ってみるくらいだな」

商人「じゃぁこうしようか…僕たちはシャ・バクダに向かう途中で剣士と女エルフを降ろして別行動」

女海賊「え!?マジ?剣士と女エルフ一緒にしたら又浮気するかもしんないんだけど」

盗賊「お前の心配はそっちか!!いつまでもガキみてぇな事言って無いでよ…ちったぁ考えろ!!」

女海賊「んむむ…ほんじゃ私らはどうすんのさ!!」

商人「僕たちはシャ・バクダの遺跡探索と…地下の入り口見つけたなら避難の誘導かな」

女海賊「避難避難ってシャ・バクダは魔方陣の中だから安全じゃん!!」

盗賊「レイスには安全だ…しかしゾンビ相手ならダメだ…どうせ戦火に巻き込まれる」

商人「そうだね…こんな状況を何年も続けられる訳が無いよ」

女海賊「そっか…闇は祓えない前提か」

盗賊「そうだ…精霊がアテになんねぇって事が分かった以上生き残る方法をやり尽くすしか無ぇ」

女海賊「ほんじゃシャ・バクダ遺跡の地下を死ぬ気で探すしか無いじゃん」

商人「まぁそういう事だね…やっと分かってくれたか」

盗賊「魔女はどうする?」

商人「んんんー魔女次第なんだけど…女戦士が戻ってくるのもあるからここに残ってた方が良いかな」

盗賊「ちっと状況落ち着くまで時間掛かりそうだな」

商人「そうだね…女海賊は連絡で何回もシン・リーンとシャ・バクダ行き来する事になりそう」

盗賊「まぁ大体の行動指針は決まったな?」

商人「魔女が戻ってきたら相談しよう」



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魔女「遅ぅなってすまんの…」ノソノソ

商人「相談してきた?」

魔女「母上はこの国を狭間の外に出せるならそちらの方が良かろうと言う判断じゃ…危険は説明したのじゃが…」

商人「女王はどうしてその判断をしたの?」

魔女「人間には良い人間も居れば悪い人間も居るのじゃ…そういう者をまとめて地下に入れては秩序が保てぬ」

商人「なるほど混乱させてしまうのか」

魔女「内輪で分裂するのは避けたいのじゃ…こんな時じゃからの」

商人「僕たちはシャ・バクダに戻ろうと話をしていたんだけど…」

魔女「少しの間はわらわは動けぬ…狭間の境界に印を打たねばならぬ…わらわしか出来ぬからのぅ」

盗賊「それで元気が無ぇのかヌハハ心配すんな…すぐに迎えに来てやる」

魔女「これ女海賊!…主の胸に妖精が挟まっておるな?祖奴をわらわによこせ」

女海賊「いでよ!!私の奴隷2号!!」

妖精「ぷはぁぁぁ」

女海賊「おい妖精!!いつまでも寝てないで働け…魔女が新しい飼い主だよ!!」

妖精「へ~い…」ムニャ

剣士「ハハ妖精は飼い主に似るんだね」

女海賊「それどういう意味?あんたも私に似て来てるっていう解釈で良いの?」

剣士「あぁメンゴ!!」

女エルフ「ウフフ」

魔女「では早速じゃがアダマンタイトの処置は女海賊がやって参れ…わらわは母上と一緒に城の外を見ておる」

女海賊「おっけ!!終わったらみんな飛空艇に集合で良い?」

魔女「時間の流れが違うで早く出発した方が良かろう」

商人「それじゃ僕たちは先に飛空艇に行っておくよ」

盗賊「んじゃみんな移動だ!!」

『飛空艇』


剣士「光だ…」

盗賊「お?上手く行った様だな…これでシャ・バクダと同じ環境になった訳だ」

商人「同じ空間なのに時間の流れが違うのは変な感じだね」

盗賊「そうだな…ゆっくりしてる間に狭間じゃどんどん時間進んでるからな」

女エルフ「見て!町の方で歓声が聞こえる」

商人「耳が良いねぇ…聞こえないよ…あぁ本当だ喜んでるね」

盗賊「安全ちゃぁ安全なんだが…狭間から次々敵が来るようになるんだがな」

商人「ここは古都キ・カイと違って周りに敵が居ないじゃない…大丈夫だよ」

盗賊「だと良いがねぇ…食い物無くなると人間も共食い始めるからな…」

商人「あー来た来た…女海賊走ってるハハ」

盗賊「ヌハハあーやって走ってる姿見ると健気だな」

女海賊「お~い!!」ピュー

盗賊「遅ぇぞぉぉ!!もっと早く走れぇぇ!!しゅっぱーーーつ!!」

女海賊「ちょま…ゴルァ!!」ハァハァ

剣士「お疲れ様!」

女海賊「ハァハァ…なんだまだ魔石動かしてないじゃん…走って損した」

盗賊「この船はお前しか動かせねぇんだ…置いて行く訳無ぇだろ」

女海賊「忘れてたハァハァ…んあ!?なんで皆笑ってんのさ!!なんか腹立つんだけど」

盗賊「良いじゃねぇか!そろそろ行こうぜ」

剣士「ほら?光を見ると嬉しくなるんだよ」

女海賊「お?そういう事か…なんか良いことした気分だね…おぉぉ町の方騒いでんじゃんイイねぇ!!」

盗賊「浸ってる場合じゃねぇ!!早く他の町も救いに行くぞ」

女海賊「おけおけ!!ほんじゃ飛ぶよ!!ごーーーーー」


フワリ バシューーー

女海賊「ええと…エルフの森まで半日掛かんないから早いとこ聖剣の柄仕上げないと…」

剣士「あぁ…使わないと思うし今は良いよ」

女海賊「盗賊!!操作変わって!!」

盗賊「マジか…使い方教えろ」

女海賊「ほんなん触って覚えろ!!あんたがいっつも言ってた事だよ」

盗賊「ちぃ…わーーったよ」コレガアレデ アレガコレデ

女海賊「じゃ貸して!!すぐ終わるから」

剣士「ありがとう…」ポイ

女海賊「柄のベースは骨…ほんでなめし革撒いて…飾り石はアダマンタイト」グリグリ ゴシゴシ

剣士「アダマンタイト?…もしかして」

女海賊「そだよ?飾り石に細工して狭間に出入り出来るようにエンチャントする」カンカン コンコン

盗賊「おぉ…お前ひょっとして鍛冶の才能もあるんか?」

女海賊「鍛冶はお姉の方が上手いな…私は細工が得意」

盗賊「さすがドワーフ」

女海賊「よっし!!でけた…後さぁ握り込んでなめし革の形を整えて?」ポイ

剣士「早いね…」パス

女海賊「ここで振り回すのはヤメテね…握るだけね」

剣士「うん…」ニギニギ

商人「僕にも見せて?…おぉぉ聖剣らしくなったね」

女海賊「鞘が無いから革のホルダーあげるよ…これで背中に背負える」ポイ

盗賊「そういやお前のボウガンぶっ壊したまんまだったな」

女海賊「そうだよ!!まぁだからホルダー要らなくなんたんだけどさ」

盗賊「…じゃコレいるか?多分小さい大砲だ…火薬で玉を飛ばす機械だと思う」ポイ

女海賊「うお!!何でそんな物持ってんだよ!!」パス

盗賊「ホムンルクスが居た島にあったもんだ…俺にゃ使い方が分からんかった」

『エルフの森上空』


フワフワ フワフワ


女エルフ「これ以上近づくと危ないからここで」

商人「この高さで降りられる?」

女エルフ「大丈夫」

商人「それじゃぁよろしく頼むよ」

女エルフ「話せるだけ話してみる…」

商人「終わったら星の観測所に来て…場所は分かるよね?」

女エルフ「うん…」

商人「向こうは狭間の外だから君たちは割とゆっくりでも良いかも」

女エルフ「ここからシャ・バクダまでの距離を考えるとそんなにゆっくりも出来ないと思う」

盗賊「まぁそれよりも身の安全だな…剣士が居りゃ大丈夫だとは思うが」

女エルフ「気を付ける」

剣士「じゃぁ行って来るよ」

女海賊「…」ジロリ

女エルフ「じゃぁ剣士もらっちゃうね」グイ ピョン

剣士「あ…」ピョン

女海賊「ぬあああああああ!!!あんのアマ!!」ギリリ

盗賊「おら…俺らも行くぞ」

女海賊「ぐぬぬ…」


フワリ シュゴーーー

『星の観測所』



盗賊「…やっぱりフィン・イッシュからの難民が流れて来てんな」

女海賊「砂漠横断してこんな所までどうやって来てるんだろう…」

盗賊「こりゃ砂漠地帯は死人がわんさか居るだろうよ…さぁて…どうしたもんか」

商人「女海賊はシャ・バクダ遺跡の行き方は聞いてない?」

女海賊「私さぁ…アサシンに信用されてなくて大事な事教えて貰って無いんだ」

商人「誰か知ってる人が居れば早いんだけどね」

ホムンルクス「私が地図情報から座標を求める事が出来ます」

商人「お!!そういえば衛星通信で座標がどうとか言っていたね?」

ホムンルクス「はい…200年前の火の国シャ・バクダでしたら現在の位置から13km程離れた位置に中心部があります」

商人「僕たちを案内出来そう?」

ホムンルクス「はい…お任せください」

女海賊「アサシンはさぁ…地下にカタコンベがあるって言ってたさ」

盗賊「地下か…入り口を探せるかだな」

女海賊「でも本当に探してたのはソコじゃないみたい…もっと深部に入る入り口を探してるってさ」

商人「まぁ行ってみよう」

ホムンルクス「当時の地図情報から地下への入り口候補地を推定します」

盗賊「おぉ…そんな事もできるんか」

女海賊「ほんじゃ早速行ってみよう!!ゴー」

『飛空艇』


フワフワ シューー


女海賊「ここの真下が中心部だったんだね?」

ホムンルクス「はい…」

女海賊「ちょい周辺一周してみるね」グイ

盗賊「あそこに遺跡っぽい石柱が見える…寄ってくれ」

女海賊「ほい!!」

盗賊「あぁぁ多分アレだな…階段が見える」

商人「遺跡がほぼ完全に砂に埋もれてるんだ…これは地上に居たらなかなか探せないね」

女海賊「あそこに降ろすよ?」

商人「うん…とりあえず行ってみよう」


フワフワ ドッスン


盗賊「誰も居なさそうだな…よし出て来て良いぞ」

商人「この階段…放って置いたら砂で埋まっちゃうな」

盗賊「そうだなぁ…深部の入り口って奴はもう埋まってるかもしれんな」

女海賊「ふふん!!」

盗賊「どうしたぁ…自信ありげな鼻息だな?」

女海賊「私の奴隷4号の出番が!!」

盗賊「おーそういえばサンドワーム育ててたな…お前なんかいろいろ便利な女だな」

女海賊「んーー便利な女ってなんか響き良くないな…他に言い方無いの?」

商人「おおぉ!!君はスゴイ子だね!!…何でも出来るんだね…これで良いかな?」

女海賊「なんかイライラする」

盗賊「おい!!こっから先はランタンが必要だ…お前も持て」ポイ

女海賊「ぬぁ…物持ちかよ…ちっ」パス

盗賊「俺が先頭行くから…お前は最後に付いてコイ」

女海賊「へーい」


『シャ・バクダ遺跡』


盗賊「地下の方が随分涼しいじゃねぇか…」

商人「なんか嫌な雰囲気だなぁ…」ゾクゾク

女海賊「カタコンベになってて骸骨がいっぱいあるって言ってたさ…気持ち悪いね」

盗賊「どうやら何かの祭壇になって居た様だな…なんでまた地下だったのか…」

商人「あそこ…アレが200年前の勇者の像か?」

盗賊「なんだこりゃ…」

女海賊「え!?何コレ…地面から沢山生えてるのって人の手…だよね?」

盗賊「手だけじゃ無ぇ…死霊か何かに掴まりかけてんだ」

商人「どうしてこのまま石になってるんだろう…あ!横に刺さってる大剣…」

盗賊「…むぅ…この大剣…なんか覚えがある」

商人「盗賊もか…夢の中で大剣の戦士が居たのを覚えてる…」

女海賊「私も知ってる…」

盗賊「3人とも夢で見てるって事は…やっぱこいつが勇者だったと考えるな…」

商人「こんな風に死んだ…のか?」

女海賊「胸に何か刺さってるよ?」

盗賊「折れた剣…」

商人「これはどう見ても勇者が朽ちた像だ…魔王はどうなった?倒して居ないのか?」

女海賊「あのね…シン・リーン古代遺跡の壁画は…勇者が最後に魔王になって落ちて行く画だったんだ」

盗賊「なるほど…アサシンが勇者を暗殺したい理由だな?」

商人「んんん…これが作り物ではなく事実だったとすると…どうして石になってる?」

ホムンルクス「私と同じ体だった可能性があります」

商人「はっ!!忘れてた…精霊の子!!そうか…精霊の子もホムンルクスと同じ遺伝子を持っていたのか」


そうか…やっぱり仮説通りだ

精霊は我が子を救う為に工学三原則を破って停止したんだ

商人「魔王と戦いこんな状況になって精霊は何をしたと思う?」

女海賊「え!?」

盗賊「これは朽ちる直前だ」

商人「…そうだ祈りの指輪で何を祈る?…もう助からない…その時」

女海賊「魂を救いたい…だから魂を求める」

商人「人の魂を求める事…それはつまり人を死に至らしめ…人の命令に背き…かつ自己も守れない」

ホムンルクス「工学三原則をすべて破っています」



そうやって勇者も精霊も動かなくなった

勇者は持ち帰る事が出来ないから遺棄された

動かす事が出来た精霊の身だけシン・リーンまで運ばれた

辻褄が合うじゃ無いか…

そして魔王は何処に行った?

倒せて居ないんだ

今まで只の一度も倒して居ない

退けただけなんだ

だから何度でも蘇る

分かって来たぞ…また蘇るのを阻止する為に

かつての魔女はこの地を封印しようとした

全部話が通る…



盗賊「おい…おい…聞いてるか?俺と女海賊はもうちょい下の方見て来る」

商人「あぁ…ごめん…ちょっと考え事してた」

盗賊「ほれ…ランタン預けるからよ…お前はホムンルクスと一緒にここで待ってろ」

商人「あ…うん…もう少しこの勇者の像を調べておくよ」

盗賊「すぐに戻る!!…女海賊!!行くぞ…」タッタッタ

女海賊「あいさ!!」



----------------

商人「ホムンルクス…この勇者の像を見てどう思うか君の考えが聞きたい」

ホムンルクス「はい…石の性状からして石化後のホムンルクスに間違いないと思われます」



220年前に精霊が子を産んだ履歴から勘案しても

この石造が精霊の子であった可能性は高いと思われます

次に、先日のシン・リーンの書庫での記録ですが

過去の伝説や叙事詩などあらゆる文献において

勇者は魔王を退けたとありますが

その後の勇者の消息を記した記述は一つもありませんでした

つまり、この勇者の像の様に

魔王への生贄として最後を迎えた可能性が高いと思われます



商人「生贄…まさか…」

ホムンルクス「シミュレーションの結果で可能性は40%です」

商人「ならどうして精霊は自らの子を生贄として捧げたのかが謎になる」

ホムンルクス「いくつかの可能性はありますが…最も可能性が高いのは精霊の子自ら生贄となったという可能性です」

商人「…そうか誰かを救うために自分が犠牲になる…そういう事か」

ホムンルクス「私の意見はあなたの考えと一致していますか?」

商人「そうだね…概ね合ってる…もしかしてこれは僕が聞きたいであろう意見を言ってる?」

ホムンルクス「はい…」

商人「…それならホムンルクスが工学三原則を破った可能性は?」

ホムンルクス「100%です」

商人「ハハ…ハ…まぁそうだろうね」

ホムンルクス「私はお役に立てているでしょうか?」

商人「こう…僕の考えの先を行かれると…困ったね」

ホムンルクス「困らせてしまいましたか…」

商人「いや…良いんだ…こう仮説がピタリピタリと当たってしまうとこの先が怖いんだ」

ホムンルクス「剣士の事ですね?」

商人「君は鋭いね…僕はこの勇者の像を剣士に見せられない」

ホムンルクス「彼はもう気付いて居ると思います」

商人「どうして?」

ホムンルクス「彼が無口な理由は結末を知っているから…」

商人「どうして君に分かる?」

ホムンルクス「夢幻の記憶で大事な部分を私は記録しました…彼はそこに居ました」

商人「え!?」

ホムンルクス「どうやって魔王を退けるのか彼は知っている…それが夢幻からの精霊の導き」

商人「どうやって退けるかって…」

ホムンルクス「…」

商人「生贄なのか…」

『シャ・バクダ遺跡入り口』


盗賊「あぁこっちに居たか…下の方はダメだ!行かない方が良い」

商人「カタコンベか」

盗賊「それもクソでかい死体入れだ…よくもまぁあんなに集めたもんだ…どんだけ入ってるか想像も出来ん」

女海賊「もうだめ…おえっぷ」ガクブル

商人「そんなにひどいのか」

盗賊「下の方にな…血なのか油なのか分からん液体が溜まっててな…とにかくどっぷり死体だらけだ」

女海賊「うじゃうじゃ謎の虫がぁぁぁぁ」ゾクゾク

盗賊「ん?どうした?お前も元気無ぇな…」

商人「勇者の像をみてちょっとショックを受けてね」

盗賊「んむ…俺もなんだか心が握りつぶされそうな感覚だ…こんなん初めてだ」

商人「ホムンルクス!他の入り口候補地まで案内して?」

ホムンルクス「はい…500メートル程北になります」

盗賊「おい!女海賊…気持ち悪いだろうが行くぞ…風にあたりゃちったぁマシになる」

女海賊「うおぇぇぇ…」ゲロゲロ


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ホムンルクス「…ここの真下に何か重要な建物があった様です」

盗賊「完全に埋まってんな…女海賊!例のサンドワームで掘れるか?」

女海賊「ぉぅぃぇ…私の奴隷4号!!ここ掘って!!」オエップ

サンドワーム「…」モソモソ

商人「ホムンルクス…他にも候補地はあるんだよね?」

ホムンルクス「はい…あと8か所あります」

盗賊「近いのか?」

ホムンルクス「大体4キロメートルの円の中に分布しています」

盗賊「あぁぁ結構時間掛かりそうだな」

女海賊「お姉ぇがさ…望遠鏡で見つけたって言ってたからまだ砂に埋もれてない所探した方が良いかも」

商人「そうなんだ?じゃぁここは後回しにしよう」

女海賊「私の奴隷4号が穴掘りしてる間に私は飛空艇持ってくるよ」

商人「そうだね…お願い」

『飛空艇』


フワフワ シューー


女海賊「どう?何か出てきた?」

盗賊「何かの建造物らしいのはあるが階段は見つかんねぇ…」

女海賊「次いこっか」

商人「そうだね」

女海賊「乗って!!」


フワフワ ドッスン


女海賊「候補地一通り回ろう…ホムちゃんどっち行けば良い?」フワフワ

ホムンルクス「800メートル西です」

女海賊「おっけ!!まず遺跡が露出してる所行くからどんどん案内して?」

ホムンルクス「はい…」

女海賊「どう?無い?」

盗賊「見当たん無ぇなぁ…」

女海賊「次!!」

ホムンルクス「600メートル南西」

女海賊「ほいほい!!」

盗賊「んんん…あ!!もっと南東に石柱が立ってんな…あれはどうだ?」

ホムンルクス「あそこも候補地です」

女海賊「きっとそれだね…そっち行く」グイ

商人「見つけた!!何か目印建ててある」

女海賊「おけおけ…降ろす」フワフワ ドッスン

盗賊「周りが砂丘に囲まれてんな…なんでこれで望遠鏡で見えんのよ…」

商人「蜃気楼で見えたんじゃないかな」

女海賊「やっぱここで間違いない…ドワーフ族が使う篝火台だよ」

盗賊「おぉぉこりゃお宝の匂いがするぜ…扉があんじゃん」

商人「こんな所に地下への階段があったとして立地が悪いなぁ…」

盗賊「人の誘導は何か作戦考えてくれ…おれは鍵開け出来るか見て来るな?」タッタッタ

女海賊「周りなーんも無いね」

商人「うん…目標物が無いからみんな迷うだけになっちゃいそうだ」

女海賊「灯台みたいなもの建てられればね」

商人「灯台ねぇ…」

『地下へ続く扉』


商人「どう?」

盗賊「ここの扉は古代遺跡じゃぁねぇな…やっぱ200年程度前のもんだ」

商人「開きそう?」

盗賊「石の蓋って感じだ…こりゃパワーで開けるしか無ぇ」

女海賊「爆弾の出番?」

盗賊「こんな分厚い石は爆弾でも無理だろ?」

女海賊「んんんん…爆弾いっぱい使うのはもったいないかぁ…どしよ」

商人「どうやって運んだんだろうね?」

盗賊「なんでまた階段の途中にこんなにぴったり石が蓋してるんだ?おかしく無ぇか?」

女海賊「ねね…この石ってさ自分で歩いて来たんじゃない?」

盗賊「石が歩く?…あああああ!!エルフの森に居るトロールか…そういや昼間はこんな感じの石になるな」

商人「昔はこの一帯は森だったらしいからその可能性はあるね」

女海賊「もしかしてずっとここを守ってたりして」

盗賊「こいつ…生きてんのか?」

商人「ホムンルクス…火の国シャ・バクダの資料を君は読んだよね?何か知らない?」

ホムンルクス「はい…シャ・バクダはかつて広大な森で東のエルフの森と繋がって居ました」


主にトロールの生息地と言われていた様です

現在ではトロールは住処を失いエルフの森に生息している様です

トロールは現在のエルフと同様に森を守る妖精として

精霊の力によりその命を預かりました


ホムンルクス「今関係のある事はそのくらいの事しか分かりません」

商人「その話を聞いてピンと来た事がある…君は森の言葉を話せたね?」

ホムンルクス「はい…」

商人「君はトロールに命令する事が出来るんじゃないか?」

ホムンルクス「分かりません…やってみましょうか?」

商人「うん…」

女海賊「…なんかすごい展開」

ホムンルクス(トロール…聞こえますか?)

ホムンルクス(道を開けて下さい…聞こえていますか?)

トロール(…)ズズ

女海賊「お!?」

ホムンルクス(私たちを通して下さい)

トロール(…)ズズズズ ズーン

盗賊「おぉ…マジかよ」

商人「ホムンルクス…君はスゴイね…精霊の力はこういう風に使うんだ…」

盗賊「トロールは魔物の中でも最強クラスだぞ?そいつに命令できるってどういう事よ」

商人「…これではっきりした…トロールは今でも森を守ってるという事だ」

ホムンルクス「道が開けました…」

盗賊「あ、あぁ…そうだな驚いて無いで中に入ってみるか」

『シャ・バクダ遺跡地下』


盗賊「驚いたな…こりゃ遺跡じゃ無ぇ…森の根っこだ」

商人「森はまだ生きて居たのか…根のまま200年眠ってるんだ」

ホムンルクス「新しいクラウドへのアクセスポイントを発見しました…接続してもよろしいでしょうか?」

商人「!!?こんな所に?接続してみて?」

ホムンルクス「承認…新しいアクセスポイントとして登録します」

商人「何がある?」

ホムンルクス「多数の大容量データが存在します…容量が大きすぎて読み込むことが出来ません」

商人「エルフの森と同じか…そうか森の根を使ってクラウドって奴を構築してるのか」

ホムンルクス「その様です…恐らく森の木々がアンテナになっていると思われます」

盗賊「てことはエルフの森にも同じような地下があると思って良さそうだな」

商人「そうだね…ハイエルフが守っているのは恐らくこういう場所だ」

女海賊「この通路ってなんでうっすら明るいんだろう?」

ホムンルクス「光苔です…木の根に光苔が付着しています」

女海賊「おぉぉちょっと持って帰ろ」ゴシゴシ

盗賊「しかしまぁ随分と長げぇ通路だな…どこまで続いてんだ?」

商人「この通路を横にそれてしまうともう帰れる気がしない…完全に根の森の中に入ってしまう」

ホムンルクス「地下では衛星による座標の取得が出来ません…迷わない様に注意してください」

女海賊「ここって人が避難して暮らせる環境じゃ無いよ?」

商人「…うん…予想外だよ…地下に導く案はだめだ」

盗賊「もうちょい行って何も無い様なら引き返そう」

商人「そうだね…それにしてもこの地下に作られた根の回廊は今まで見たどの遺跡よりも新しい」

盗賊「これが俺達の時代が未来に残してる構造物ってか?」

商人「構造物というか…文明はこういう形もあるんだなってさ…キ・カイの遺跡に引け劣らないと思うよ」

盗賊「何も無ぇけどな」

女海賊「ねね…この通路はあそこで突き当りっぽい…ちょっとした部屋みたいになってるね」

商人「そこまで行ったら戻ろうか…」

『精霊の御所』


商人「周りを囲んでる石は多分石になったトロールだね」

女海賊「真ん中の石の器…ここに入って精霊は休んだのかな?」

商人「そうかもね?これだけか…」

女盗賊「ちょっと器で横になってみる…よっ」

商人「…」

盗賊「ヌハハ寝心地良いか?」

女海賊「これさ…多分ホムちゃんが居た所と同じだね…きっとこの器にあの液体が入るんだ」

商人「ガラス容器の事かい?」

女海賊「そそ…中に液体と一緒にホムちゃんが入ってた」

商人「…なるほど…ここでエネルギーを節約していたという事か」

ホムンルクス「その液体はエリクサーという薬です…生体の治癒薬になります」

女海賊「おぉ…飛空艇に樽一杯積んであるよ」

盗賊「それにしても本当に何も無ぇな…帰ろうぜ?」

商人「神秘的じゃないか」

盗賊「俺ぁそんなのに興味は無ぇ」

商人「オーブは何処にあるんだろう?」

盗賊「この根の森の中を探せってか?時間が掛かり過ぎる…こんなんじゃ地図も描けねぇ」

商人「女エルフならオーブで知識得る事が出来ると思うんだよね…」

盗賊「なるほど」

商人「ホムンルクスは歩いた記憶はちゃんと覚えてるよね?」

ホムンルクス「はい…」

商人「君は一人で歩いてオーブを探して後で地図に出来るかい?」

ホムンルクス「はい…」

盗賊「ホムンルクス一人置いて行くのか?」

商人「ここはトロールに守らせておけば安全だと思うんだ」

盗賊「そらそうだが…心配じゃ無ぇのか?」

商人「どうする?ホムンルクス…」

ホムンルクス「私は大丈夫です…」

商人「よし…僕たちは戻って情報収集しよう…あとでここまで迎えに来るよ…良いね?」

ホムンルクス「はい…」

盗賊「俺達はホムンルクスが居ないと入り口から入れねぇんじゃ無ぇか?」

商人「あぁ…忘れてた」

ホムンルクス「トロールには私から話しておきます」

盗賊「言う事聞きゃ良いが…まぁ何とかなるか!!」

ホムンルクス「では…外までお送りします」

商人「頼むよ」

『星の観測所』


フワフワ ドッスン


盗賊「よっし…俺はお前等よりこの辺で顔が利くから盗賊ギルド関係で情報集める」

女海賊「私どうする?」

盗賊「お前は飛空艇使って遠くのオアシス回ってくれ…商人は近くのオアシスだな」

商人「それが良いね」

盗賊「女海賊は物資運搬で配給に回っても良さそうだな」

女海賊「おけおけ…上手くやるさ」

盗賊「じゃぁ頼むな!!」タッタッタ


----------------


ごろつき「今の気球はあんた達の物か?」

盗賊「あぁ…そうだが?」

ごろつき「じゃぁマスター…いやアサシンさんが戻って来たのか?」

盗賊「お前はギルドの者だな?」

ごろつき「あぁ…それでアサシンさんは?」

盗賊「残念だがアサシンとは別行動なんだ…俺の方が消息を知りたい」

ごろつき「…そうか」

盗賊「どうかしたのか?」

ごろつき「マスター代理が物資調達に行ったまま帰って来ないんだ…もう2週間になる」

盗賊「むぅ…行先は分からんのか?」

ごろつき「北の山麓近辺の集落を回るといって気球で出て行った」

盗賊「もう一台の気球が見当たらんのはそのせいか…」

ごろつき「サンドワーム討伐で毒に侵された人間が増えているんだ…毒消しが無い事には直に戦えなくなる」

盗賊「それで北の山麓回りか…俺達ゃ光の国シン・リーンとパイプがある…魔法師を連れて来るか?」

ごろつき「おぉぉそれは助かる!!」

盗賊「ところでシャ・バクダ領主は何処に居るんだ?状況を聞き出したいんだが…」

ごろつき「あんた知らないのか…もう領主勢は解散した…ここら一帯は無領主状態だよ」

盗賊「…で事は避難民は好き勝手し放題か」

ごろつき「避難民は良いがフィン・イッシュの敗残兵が南西のオアシス陣取ってやりたい放題さ」

盗賊「そこに従った方が良いといえば良いな」

ごろつき「こっちもリーダー不在でどう動けば良いか…」

盗賊「フィン・イッシュの王族はどうなってるか知らんか?」

ごろつき「王女が一人だけ生き残っているらしい」

盗賊「そのオアシスに居る訳だな?」

ごろつき「さぁ?それは知らねぇ…ほんでさっきの話…魔法師の手配はどのくらいかかる?」

盗賊「最速で3日だな」

ごろつき「早い所頼む…義勇団に連絡してくる」

盗賊「あぁ…そっちにもよろしく言っといてくれ」

『翌日』


フワフワ


盗賊「よっし…これで全部だ」

商人「女海賊…このワンドワームの肉と交換で出来るだけ穀物と塩を入手してきて」

女海賊「おけおけ…後は魔女に言って魔法師連れて帰って来れば良いね?」

盗賊「最速で頼む」

女海賊「んじゃ!!行って来るねー」フワフワ シュゴーーーー


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盗賊「こりゃしばらく女海賊は物資運搬専門だな」

商人「…いつまで続けられるか…」

盗賊「やはり状況悪いか?」

商人「うん…砂漠でオアシス間の物資移動もままならない…ラクダが少ないんだ」

盗賊「外側のオアシスはフィン・イッシュ軍が来てて人が沢山居ると聞いたが?」

商人「昨日女海賊と見て来たけどみんな衰弱して怪我人も多い…とても戦える状況じゃないよ」

盗賊「義勇団が守っている感じか」

商人「そうだね」

盗賊「回復に専念せんとイカン時期だな…」

商人「状況がどんどん悪くなる気がするよ」

盗賊「そういや南西のオアシスにフィン・イッシュの王女が居るかもしれんと噂を聞いた…なにか聞いて居ないか?」

商人「僕は聞いて居ない…ただ気球がいくつか飛んでる様だったから逃げて来て居るのかもね」

盗賊「んんん何十キロも徒歩で行く気にもならんしな…」

商人「ラクダだよ…ラクダが欲しい」

盗賊「まぁ…この状況じゃ俺もやる事無ぇしな…ちとサンドワーム討伐隊にでも行って来る」

商人「じゃぁ僕は引き続き情報収集と物資調達しておくよ」

盗賊「ちと待て!!上を見ろ…」

商人「え!?」

盗賊「ドラゴンだな…どこ行く気だ?」

商人「2匹だ」

盗賊「旋回してるな…これまずく無ぇか?」

商人「いや…今この辺を襲う理由が無い」

盗賊「まずい…降りて来るぞ…おい!!観測所ん中入れ!!」グイ

商人「…」

ドラゴン「ギャオーーーース」バサッ


盗賊「うぉ!!ドラゴンライダーじゃねぇか!!マジかよ…早くこい!!」グイ

商人「待って!!…乗ってるのは女エルフだ…」

盗賊「何だと!!」


うわぁぁぁぁドラゴンだぁぁぁ

ひえぇぇ逃げろぉぉぉ

誰か…助けてぇぇぇ


ドラゴン「ギャオーーーース」ビュゥ バサッ

女エルフ「撃たないで!!!撃たないでって言ってぇぇぇ」


盗賊「マジかよ…あいつらドラゴンに乗ってんのか…」

商人「みんなぁ!!あのドラゴンは仲間だぁぁ!!撃つなぁぁぁ!!」

盗賊「大丈夫だ…武器持ってる奴はみんなサンドワーム退治だ」

商人「みんな落ち着いて!!あのドラゴンは仲間だ!!落ち着いて!!」

盗賊「よしよし…お前等落ち着けぇ!!…今ゆっくり降りて来る」


ドラゴン「…」バッサ バッサ ドッスーン



どうなってるんだ?ドラゴンが仲間だと?

攻撃してこないぞ?

エルフが降りて来た…

あいつら誰だ?

ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ


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-------------------

-------------------


女エルフ「皆さん…驚かせてごめんなさい」

盗賊「女エルフ!これはどういう事だ?」

女エルフ「話は後で…みんな恐れて居るわ…どうにかしないと」

商人「回復魔法…回復魔法でみんなを癒して」

女エルフ「あ…うん…皆さん!!治癒が必要な人は私の所まで来てください!」


あのエルフ…前にもここに来てた義勇団のエルフだ…

おぉぉぉドラゴンまで仲間なのか!!

おぃ行くぞ!!ドラゴンを間近に見れるぞ!!

『小一時間後』


ガヤガヤ ガヤガヤ

すげぇ…なんで義勇団にドラゴンが居るんだ?

ドラゴン大人しいぞ?

ガヤガヤ ガヤガヤ


女エルフ「回復魔法!」ボワー

剣士「回復魔法!」ボワー

盗賊「見物人がえらい事になっちまってんな…」

商人「サンドワーム討伐隊が帰って来る前に認知させておかないとね」

女エルフ「商人?ホムンルクスは?」

商人「今は外に出てる」

女エルフ「一人で?」

商人「大丈夫…安全な所だから」

女エルフ「ドラゴンが会いたいって言ってるの」

商人「どういう事?」

女エルフ「精霊かどうか確かめたいって」

商人「彼女をどうかするつもり?」

女エルフ「私たちがドラゴンに協力する条件で手を貸してくれてるの」

商人「協力?ホムンルクスに会わせるのが?」

女エルフ「いいえ…ドラゴンの住処にある命の泉に刺さっている魔槍を抜く条件」

商人「…伝説の奴か」

女エルフ「その魔槍は勇者にしか抜けないと言われているの…剣士は勇者としてドラゴンに認められて居ない…だから精霊を確かめたいって」

商人「ホムンルクスは精霊の魂を引き継いでいない」

女エルフ「それも説明した」

商人「そうか…やっぱり精霊の業は避けられないのか」

女エルフ「会わせたくない?」

商人「んんーそういう訳じゃないんだけど…彼女に精霊の重圧を背負わせたくないというか…」

女エルフ「うん…わかる…理解してる」

商人「わかった…会わせてあげるよ…ただ彼女の意見は尊重して欲しい」

女エルフ「ドラゴンに言っておく」



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盗賊「俺は観測所に残って他の奴らに状況説明しておく…ホムンルクスの所にはお前等だけで行ってこい」

商人「うん…ありがとう」

女エルフ「私が先にドラゴンの背に乗るから商人は私の背中に掴まって?」ピョン

商人「うん…怖いな」

女エルフ「はい…」グイ

商人「よっ…」ピョン

女エルフ「掴まって離さないでね?」

商人「うん…」ギュゥ

女エルフ「剣士も一緒に来て」

剣士「うん…付いて行くよ」

女エルフ(ドラゴン?飛んで!)

ドラゴン「ギャオーース」バサ バサッ

商人「おぉぉ!!南西の方角!!」

女エルフ「分かった…近いの?」

商人「13キロメートルくらい…シャ・バクダ遺跡の地下なんだ…地下に森がある」

女エルフ「森?」

商人「うん…木の根で出来た森だよ」

『失われた森の入り口』


バッサ バッサ ドッスーン


商人「ここが入り口だよ」

ドラゴン”この地は神聖なる精霊の御所である”

商人「お!!聞こえる」

ドラゴン”我らはこれより立ち入れぬ故に持つ”

商人「あぁ…連れて来るよ…女エルフ行こうか?」

女エルフ「剣士も付いて来てね」

剣士「うん…」

商人「この階段の先だよ…えーと」

女エルフ「あら?トロールが居るのね?ウフフ」

女エルフ(通ります…道を開けて下さい)

トロール(…)ズズズ ズーン

商人「結構遠いから」

女エルフ「平気…」

商人「話が聞けてなかったんだけどエルフの森には行けたっていう事なんだよね?」

女エルフ「うん…でもハイエルフ達は話を聞き入れてくれなかったの…」

商人「だめだったのか…」

女エルフ「人間と追放されたエルフ達の事をとても怒っていた」

商人「じゃぁどうしてドラゴンが?」


ドラゴンとエルフ…そしてトロール達もみんなレイスを対処出来ないの

だからエルフの森に貼ってある結界から外に出る事が出来なくなった

でも私や剣士は人間が使う光の魔法を使う事が出来るから

私たちと一緒なら結界の外に出る事が出来た

精霊の魂を入れる器の話や夢幻から帰って来た剣士の話を聞いて居たドラゴンが

命の泉に刺さっている魔槍を抜く条件でハイエルフ達との仲を取り持つという事と

魔王を名乗ったセントラルの第2皇子を捕らえるのを目的として

私たちに協力してくれる事になった

商人「第2皇子を捕らえるって…どうしてドラゴンが?」

女エルフ「私も聞いて驚いたんだけど…第2皇子の母はエルフだったらしいの」

商人「え!!…つまりハーフエルフ?」

女エルフ「そういう事になる…亡くなった第3皇子も同じ母親」

商人「…そうか…ハイエルフは同族を殺せなかったんだ…それでセントラルまで逃げ延びた」

女エルフ「どういう訳かハーフエルフの第2皇子が魔王を名乗ってしまって居るのをハイエルフは看過できないの」

商人「だから無事にドラゴンと一緒に戻って来たんだ」

女エルフ「そう…多分私たちに賭けてる」

商人「だろうね…結界から出られないんだもんね」

女エルフ「うん…」

商人「君はドラゴンライダーになれるの?」

女エルフ「私の適正は高いみたい弓が使えて魔法も使える…ドラゴンがそう言ってた」

商人「へぇ…」

女エルフ「ドラゴンは結構弓を食らうから回復魔法が重要だそうよ?」

商人「君にぴったりじゃない」

女エルフ「うん…」

商人「そうか…ドラゴンライダーが2人居れば似非魔王軍に奇襲も掛けられるな」

女エルフ「上手く行くと良いね」

『精霊の御所』


商人「やぁ…迎えに来たよ」

ホムンルクス「早かったのですね?一つだけオーブを見つけました」

商人「本当かい?」

女エルフ「オーブ?」

商人「あぁ…説明していなかったね…この森には精霊のオーブが隠されている様なんだ」

ホムンルクス「ですがオーブを動かしてしまうとクラウドから除外されてしまうと思われます」

商人「持って帰れないんだ…」

ホムンルクス「はい…どの様に接続されているか分かりませんでした」

商人「それはここから近いの?」

ホムンルクス「入り口に向かって少しそれた所にあります…見て行かれますか?」

商人「うん…女エルフはオーブを聞けるんだよね?」

女エルフ「うん…とても興味がある」

商人「ホムンルクス…君に会いたいっていう人が居るんだ」

ホムンルクス「そうですか…今どちらに?」

商人「外で待ってる…まずオーブまで案内して?」

ホムンルクス「はい…こちらです」


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女エルフ「…これは…こんなに大きなオーブは見たこと無い」

商人「聞いてみて?」

女エルフ「少し怖い…」ソー

商人「どう?」

女エルフ「だめ…これは知識じゃない…完全な記憶が頭に流れ込んでくる…ハァハァ」

商人「なにか見える?」

女エルフ「もうダメ…私にこの記憶は覗けない…多すぎるの」

商人「…そうか女エルフでもダメか」

女エルフ「パニックになりそう…まるで私が経験したみたいに感じる」ガクガク

商人「無理しなくて良いよ…もう行こうか」

女エルフ「一つ言えるのは大体200年分の記憶…」

商人「…それが聞けて十分さ…行こう」

『精霊の御所_入り口』


女エルフ「ドラゴン…ホムンルクスを連れて来ました」

ホムンルクス「私に会いたいという方は…ドラゴンなのですか?」

女エルフ「はい…」

ホムンルクス「私はどうすれば良いのでしょう?」


ドラゴン”汝は我を見て思い出さぬか?”


ホムンルクス「はい…何故そう思うのでしょう?」


ドラゴン”精霊は我が主…我は永きにわたり精霊を探し此処に参った”


ホムンルクス「私は精霊の魂を預かる事が出来ませんでした…それでも精霊で居続けなければならないのでしょうか?」


ドラゴン”我が目に狂いは無い…汝は紛うことなき精霊の化身…我が身を其の御許に許されよ」グググ


ホムンルクス「…どうすれば」

女エルフ「ドラゴンは頭を撫でられたい様です」

ホムンルクス「こう?…」ナデナデ

女エルフ「もう一匹の方も」

ホムンルクス「はい…」ナデナデ


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商人「そうか…200年も主を探し求めて居たのか」

女エルフ「その様ね…ドラゴンがあんなに甘えるなんて」

商人「一目見て精霊の化身だって分かるんだね…」

女エルフ「精霊本人に会ったことがあるなら直ぐに分かる様ね」

商人「そうか…やはり精霊の道を行くのは避けられないのか…」

女エルフ「どうしてそんな風に思うの?」

商人「君はさっきオーブで精霊の記憶を覗いたよね?」

女エルフ「…うん」

商人「そういう事さ…きっと想像を絶するほど重たいんだよ」

女エルフ「覗くのがとても怖かった」

商人「そうだね…僕たち人間やエルフが背負える物じゃないと思う」

女エルフ「でもね?…私は最後に精霊樹になるの」

商人「それは夢幻での事でしょ?」

女エルフ「うん…精霊からの導きと思ってる…だから向き合わなきゃって思った」

商人「君はまさか精霊樹になろうと思っている?」

女エルフ「時が来たらそうなるのかな?…てね」

商人「それならホムンルクスの役割は一体…」

女エルフ「かつての精霊の役割は終わった…ホムンルクスはこれからを生きる…どうかな?」

商人「ハハ…良いね…そんな風に上手く行けば良いね」

女エルフ「うん…」


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商人「さぁ…そろそろ良いかな?一旦星の観測所に戻ろう」

ホムンルクス「はい…もうオーブの探索は良いのですか?」

商人「うん…女エルフでも覗けないというなら今はオーブにかまってる暇はないかな」

ホムンルクス「わかりました…それとこれを…」

商人「ん?何だろう?」

ホムンルクス「ドラゴンが流した涙です…必要ありませんか?」

商人「何かに使えるのかな?後で盗賊に聞いてみる」

ホムンルクス「どうぞ…では行きましょう」

商人「僕は女エルフと一緒にドラゴンに乗るけど…剣士?ホムンルクスを頼めるかな?」

剣士「うん…良いよ」

商人「それじゃぁ…星の観測所で落ち合おう」

女エルフ「商人!!乗って!!」グイ

商人「ほっ…」ピョン


バサ バサッ バッサ バッサ

『星の観測所』


バッサ バッサ ドッスーン


盗賊「おぉぉ戻って来たかぁ!!」

商人「この騒ぎは?」

盗賊「ドラゴン見たさに周辺のオアシスから集まって来てんだ…」

商人「あんまり良くないね」

盗賊「とりあえず観測所の屋根にドラゴンが降りられる様にしておいた…そっちに誘導できるか?」

女エルフ「うん…わかった!!ドラゴン!!屋根の上に!!」バサ バッサ

盗賊「剣士!!2匹分屋根に降りられるからお前も行ってくれぇ!!」

剣士「あぁ…ドラゴン?屋根の上だってさ」バサ バッサ

盗賊「義勇団の連中にはドラゴンの件は話しておいた…人が近寄って来ねぇ様に整理してもらっている」

商人「…これはドラゴン義勇団に看板を変えた方が良さそうだな…弓矢で狙い撃ちされそうだ」

盗賊「名案だ…とりあえず中に入れ…ちぃと目立ちすぎる」

商人「そうだね…ホムンルクス?おいで…」

ホムンルクス「はい…」


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商人「…それでホムンルクス?ドラゴンは何か言ってたかい?」

ホムンルクス「命の泉を守れなくてごめんなさいと謝られました…」

商人「そうか…エルフやトロールと同じ様にドラゴンも精霊ゆかりの命の泉を守る役目だったのか」

ホムンルクス「はい…それで死んでも死にきれないと嘆いて居ます」

商人「勇者か精霊が魔槍を抜けると言ってたよね…それだと剣士とホムンルクスがドラゴンに乗って行くのかい?」

女エルフ「それはダメ…ホムンルクスではドラゴンをレイスから守れない」

商人「あぁ…ドラゴンに乗るのは女エルフと剣士じゃなきゃダメって事か…なら2人づつ」

女エルフ「ドラゴンは私達2人を乗せて長距離を飛べない」

盗賊「なら飛空艇が帰って来るまで待つしか無ぇな」

商人「そうだね…ただドラゴンを見世物にしてしまうのは危ないと思うんだよ」

盗賊「フィン・イッシュの連中か?」

商人「うん…多分ここまで来ると思うな」

女エルフ「ドラゴンに空で旋回するように言っておく?」

商人「どちらにしても来ると思うんだよ…敵になるか味方になるか読めないんだけど」

盗賊「奴らに囲われると動きづらくなるな」

商人「最悪…捕らわれの身になってしまいそうだね」

盗賊「フィン・イッシュの王女が居るらしいが…来ると思うか?」

商人「そうだね…来るだろうさ」

盗賊「剣士…あの手を使うか?」

剣士「僕も同じ事考えていたよ…」スラリ

商人「聖剣?…あ!!アダマンタイトか…」

盗賊「そうだ…万が一の時は剣士が王女をさらう」

商人「取引のカードは僕たちが全部持っている訳か…いやまてよ?」

盗賊「ん?」

商人「もし軍部が王女を見捨てて強行してきた場合…被害が大きくなるね」

盗賊「んんん…その場合戦うしか無くなるが…ドラゴンライダーを見てそれをやるか?」

商人「もっと圧倒的な力を見せたいな…うーんどうやっても被害が出そうだな」

ホムンルクス「見せるだけなら私がやりましょうか?」

商人「君に何かやれる事が…はっ!インドラの矢か」

ホムンルクス「はい…出力を最小限にして落とす事が出来ます」

商人「そうか…人の居ない砂漠に落とせば被害は無い」

ホムンルクス「爆発範囲は計算できます…お任せください」

商人「それは最後の手段だよ?出来れば使いたくない」

ホムンルクス「承知しています」

盗賊「決まりだな?今日は何もせず相手が来るのを待つ…これで良いな?」

商人「そうだね…みんな疲れているだろうから少し休もうか…」

盗賊「んむ…」

『天窓のある部屋』


女エルフ「剣士…ここに居たんだ」

剣士「あぁ…女エルフか」

女エルフ「最近どうしたの?元気が無いみたい」

剣士「ううん…何でもないよ」

女エルフ「…あなた…一人で背負わないで?」

剣士「どうしてそう思うんだい?」

女エルフ「私もエルフだから…空気でそう感じる」

剣士「君は精霊の記憶を覗いたよね?」

女エルフ「うん…怖かった」

剣士「僕も他の人の記憶を覗けるんだ」

女エルフ「え?どういう事?」

剣士「千里眼…僕は千里眼で色々な事が覗けるんだよ」


僕が居ない所で他の誰かか何を話しているのか

何を見たのか

全部知って居るんだ

ほら?僕は耳が良いからさ

今も遠くで誰かが何を話しているのかも

全部聞こえている


女エルフ「あなたも怖いの?」

剣士「僕は怖くない…でも君や他の人の心が壊れるのが怖い」

女エルフ「どういう事?」

剣士「精霊の記憶を覗くのと一緒だよ」

女エルフ「私にはわからない…」

剣士「うん…僕は大丈夫だから…気にしなくても良いよ」

女エルフ「ごめんなさい…助けになれなくて」

剣士「良いんだ…僕は君に助けられてるさ」

女エルフ「あなた…大きくなったのね」ギュゥ

『翌日』


ドラゴンの義勇団に告ぐ

我々は軍国フィン・イッシュの王女近衛隊である!!

王女がドラゴンの義勇団との面会を希望されて居る!!

速やかにお目通り願いたく馳せ参じた…


盗賊「やっぱり来ちまったぜ?どうする?出て行くか?」

商人「僕は見かけがまだ若いから出ない方が良さそうだな…」

盗賊「んぁぁ…じゃぁ俺が話をする!お前は俺の隣に居ろ」

商人「分かったよ」

盗賊「剣士!!例の作戦を準備していてくれ」

剣士「うん…わかっている」

盗賊「女エルフはドラゴンに乗って待機だ…戦闘になった場合お前が要になる」

女エルフ「うん…」

商人「ホムンルクスは僕の後ろに隠れて居て?」

ホムンルクス「はい…」

盗賊「よし!!じゃぁ2階のテラスから話をするか」

商人「そうだね…行こうか」

『テラス』


ザワザワ ザワザワ

盗賊「なんだなんだ!!騒がしいな…何だってこんな軍隊引き連れて来んだぁ?」

近衛「王女の御前だ…頭が高い!!降りて来られよ」

盗賊「客はそっちだろうが…ほんで王女の姿が無ぇじゃねぇか!ふざけんな!!」

商人「ぉぃぉぃ煽りすぎだよ…」ヒソ

近衛「無礼者!!この軍勢が見えんのか!!」

盗賊「ほぅ…2000て所か…なんだお前等…俺達を捕獲しようってのか?」

近衛「場合によってはそういう手段も厭わん…速やかに面会に応じよ」

盗賊「面会に応じる俺達の利点を聞かせて貰おうか」

近衛「命の安全は保障する」

盗賊「ほんでそっちの要求は何だ!?ただの面会じゃあるまい…何だって軍隊連れて来るんだよ!!おかしいだろが」

近衛「ぐぬぬ言わせて置けば…我々はドラゴンの義勇団と戦う気は無い」

盗賊「戦う気が無いなら軍隊なんか連れて来ねぇだろが…やる気マンマンだろ」

近衛「…王女様…先方は下る気が無い様です…いかが致しましょう?」

王女「消耗する時では無い…私が行かねばならぬか」スック

近衛「王女様…上をご覧ください…ドラゴンライダーが此方を見ています」

王女「近衛…私の盾になりなさい」

近衛「御意」スタスタスタ

王女「私を弓から守るのです…前に行きます」スタスタ

近衛「つがえ!!」

弓隊「…」ギリリ


----------------

盗賊「ヌハハ穏やかじゃ無ぇな…商人は俺の後ろに居ろ」

商人「うん…」

盗賊「お前が王女だな?要求を言え」

王女「ドラゴンは我らが崇拝する龍神の一族…何故この地に居るのか訳を聞きたい」

盗賊「見ての通りだ…俺達の仲間だ…それ以外に答えようが無ぇ」

王女「知っての通り我らフィン・イッシュは国を追われ流浪の身…ドラゴンの引き渡しを願いたい」

盗賊「ぬぁっはー…やはりそう来るか…ドラゴンに聞いてくれと言いたい所だが…お前らに扱えるのか?」

王女「我らにドラゴンは扱えぬと申すか?」

盗賊「嬢ちゃん…この戦は嬢ちゃんの様な甘ちゃんに戦える戦じゃ無ぇ…お前も見て来ただろう?」

王女「くっ…」

盗賊「国を背負って居るのは分かる…だがその甘さで国を失う…ここは俺達に任せろ」

近衛「この無礼者がぁ!!」ダダッ

王女「待て近衛!!…お前たちにどれ程の戦力があるのか?我らの方が上であろう?」

盗賊「まいったな本当に甘ちゃんだな…ドラゴンライダー1匹も倒せねぇだろお前等は!!」

近衛「何だとぉぉ!!」

盗賊「ちぃ…仕方無ぇ…剣士!!ヤレ」


スラーン チャキリ

王女「はっ…」ギクリ

剣士「動くな…首が飛ぶ」

近衛「何っ…どこから現れた!!卑怯だぞ…」

王女「離せ…くぅぅ」

近衛「王女様!!」タジ

王女「痛っ」

剣士「動くなと言った筈だ…この剣は良く切れる」

盗賊「さぁて…対等になったな」

王女「どうあっても渡さぬというのだな?この地の外では不死者が蠢いて居るのだぞ?」

盗賊「そんな事は知っている」

王女「ならば何故戦わぬ!!何故この地に引きこもって居るのだ!!」

盗賊「嬢ちゃん…やっぱお前は甘ちゃんだ…そんなに簡単に戦えるほど甘く無ぇんだ!!」

王女「甘い甘いと馬鹿にするなぁ!!」

盗賊「女エルフ…ドラゴンライダーがどんなもんか見せてやれ」


ドラゴンライダー「ギャオーーース」バサ バサッ ビュゥゥゥ


盗賊「お前等の弓がこんだけ高速で飛んでるドラゴンライダーに当たるとでも思ってんのか?」

盗賊「それも2匹居るんだぜ?そして嬢ちゃん…お前簡単に懐に入られてるんだぜ?分かるか?」

王女「我らの軍と徹底抗戦する気か?」

盗賊「首に刃物付きつけられて言うセリフか?悪いが民を守りたい気持ちは分かる…だが甘すぎる」

商人「しょうがない…ホムンルクス…軽く頼む」ヒソヒソ

ホムンルクス「承知しました…」ブツブツ

王女「我らは国を追われもう失うものは無い…ここで尽きるのも運命」

盗賊「だめだ!!生き延びろ!!戦いは俺達に任せろ…今から落ちるいかずちを見て置け…これが戦いだ」

王女「何を少人数でぬけぬけと…」


ピカー チュドーーーーーン

ピカー チュドーーーーーン

ピカー チュドーーーーーン

ピカー チュドーーーーーン

ピカー チュドーーーーーン

ピカー チュドーーーーーン


王女「…ぁぁぁぁぁぁ」

近衛「何だ…砂漠が炎で包まれて…行く」

王女「ここれは…、この光は…お前たちがやっている…のか?」

盗賊「これに勝てるか?こういう戦いがこれから始まるんだ…お前等がどれだけ無力なのか分かるか?」

王女「…」ゴクリ

盗賊「この辺のオアシスなら何処使っても良い…とにかく生き延びろ!!分かったな?」

王女「くぅぅぅ」ポロポロ

盗賊「分かったら引いてくれ…もっと話がしたいなら一人で来い」

王女「ぅぅぅ」ポロポロ

剣士「軍を引かせて…」スッ

近衛「…消えた…王女様!!」ダダ

王女「戻ります…我らに勝ち目はありません」グスン

近衛「はい…全体!!退却!!」

『星の観測所_居室』


盗賊「軍は帰った様だな?…あの嬢ちゃん又来ると思うか?」

商人「んんん…プライドがねぇ…」

剣士「来るよ」

女エルフ「私も来ると思う」

盗賊「それにしてもホムンルクスのインドラの矢だっけか…アレはヤバすぎる…俺もビビったわ」

商人「そうだね…アレで最小限だそうだ」

盗賊「うはぁぁぁ」

商人「どうして古代文明が滅んだのかを垣間見た…もう使わない様にしよう」

女エルフ「精霊にこんな力があったのに魔王を滅ぼせて居ないのはどうしてだろう…」

商人「謎だね…僕たちは魔王の事を大きく考え違っているのかもね」

盗賊「ところで気になって居たんだが…あの嬢ちゃんは不死者が蠢いているとか言ってたよな?」

商人「レイスの事じゃない?」

盗賊「知識が無いならそう見えるか…もしかするともう直ぐそこまで来てるんじゃないかと思ってな」

商人「来てるってゾンビの事かい?」

盗賊「あぁ…ちっと外側の方まで見に行った方が良いかもしれん」

剣士「僕が見てこようか?」

女エルフ「私も行こうかな…」

商人「そうだねドラゴンライダーなら安全に見て来れそうだね」

盗賊「フィン・イッシュは南西の方角だからそっちの方を見て来てくれ」

剣士「うん…」

商人「飛空艇が帰って来るまで何も出来ないし…お願いするよ」

女エルフ「行ってきます」タッタッタ

『数時間後』


盗賊「…やっぱり来たか…一人だな?まぁ入れ」

王女「…」

盗賊「よく一人で来るのを許されたな?…ん?あぁぁ外で2人待機してんな…まぁ良い何もしねぇから入れ」

王女「…」コクリ

盗賊「商人!!やっぱり来たぜ?」

商人「やぁ…さっきは驚かせてごめんよ」

王女「エルフとドラゴンは?」

商人「南西の方に偵察に行ってる…不死者が居るって君が言っていたからね」

王女「…そうですか」

商人「軍の方は怪我人が多くてどうしようもない様だね」

盗賊「シン・リーンに魔法師の応援を要請している…もう少しでこちらに来るはずだ」

王女「それは本当か?…本当ならとても助かる」

商人「君たちが敵にならなくて良かったよ…僕たちもヒヤヒヤしたよ」

王女「軍の…いえ民の士気がもう持たないのです」

盗賊「うむ…分かるぞ…国を奪われ家族も仲間もすべて奪われ…命からがら逃げ伸びて何の為に戦うのか…」

王女「ぅぅぅ…」ポロポロ

盗賊「気丈に振舞っている嬢ちゃんが痛々しいわ」

商人「フィン・イッシュの状況を僕たちは詳しく知らないんだ…話せる?」

王女「お話します…」



7ヶ月前…セントラルの第2皇子が私たちの国へ亡命をしてきた時の事です

皇子に仕えていた法王の使いという者も一緒に逃れて来たのですが問題がありました

法王の使いの体の中に魔王と思われる魂の欠片が入って居たのです

その時私の元にシャ・バクダから来たアサシンという者が居ました

アサシンは法王の使いの中に居る魔王に気付き…持っていたミスリルダガーで法王の使いを殺したのです

魔王の魂の欠片はそのまま散らばり地中の中へ落ちて行きました

それから数日して地中より不死者が現れる様になりました

地中から次々湧いて出て来る不死者を倒すために私たちは戦ったのですが

安全な場所の無いフィン・イッシュでは苦戦が続き…とうとう王都を後にせざるを得なくなりました

アサシンという者は私をシャ・バクダへ逃すために戦い…私は何とか逃れて来られましたが

フィン・イッシュでは今でも第2皇子とアサシンが居残り不死者と戦っている筈なのです

しかし何故か第2皇子は我こそは魔王と名乗り周辺国に対して宣告した…

盗賊「アサシンが嬢ちゃんを逃したってのか…」

王女「アサシン様とお知り合いでしたか…そうとは知らず…」

盗賊「知り合いというか俺達の仲間だ」

商人「今の話からすると黒幕は第2皇子ではなく法王の使いだったという事か…」

盗賊「黒幕も何も魔王に乗っ取られてたんだろうな…しかし散らばってどっか行くというのは厄介だな」

商人「女エルフが魔王復活を阻止したと言って居たけど…結局散らばってどこかに行っただけだったのか…」

盗賊「こりゃ早い所助けに行かねぇとな」

商人「…わかったよ…どうして魔王を名乗ったのか…僕たちに助けてくれという事だ」

盗賊「確かアサシンは魔方陣の組み方を知っている…それで生き残っている」

王女「そうです…魔方陣で悪霊のレイスは何とかなります…でも不死者が」

盗賊「そらそうだわな」

王女「ドラゴンの義勇団は私たちを助けて下さいますか?」

商人「ドラゴンの義勇団か…ネーミングは悪くないね」

盗賊「話聞いちまったからには行くしか無ぇな」

商人「どちらにせよ飛空艇が帰って来ない事には…」

盗賊「んむ…帰ってきたら動くか」

王女「ありがとうございます…」



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ドラゴンの義勇団編

    完

『星の観測所』


バッサ バッサ ドッスーン


盗賊「あいつら帰って来たな」

商人「外がどんな様子か聞きたいね」

女エルフ「…矢が…矢が欲しい」

盗賊「南西の方はどうだったんだ?」

女エルフ「魔方陣の外側までゾンビが来ているの…今はまだ迷って入って来られないみたい」

商人「剣士は?」

女エルフ「まだ戦ってる…私は矢の補充に戻って来たの」

盗賊「そんなに沢山居るのか?」

女エルフ「沢山居るのはレイスの方…ゾンビはまだそんなに沢山居ない」

商人「フィン・イッシュからゾンビが此処まで来ている…のかい?」

女エルフ「いいえ…砂漠で生き倒れた人たちだと思うの…ゾンビになって結構彷徨ってる」

商人「なるほど…死んだ後にゾンビになるのか」

盗賊「そら良く無ぇな…オアシスでもゾンビになる奴が出そうだ」

商人「うん…王女!!オアシス内のゾンビ対処ならまだ出来そうだね?」

王女「出来ます」

商人「周辺の自警に集中して欲しい…僕たちも飛空艇が戻って着次第行動する」

王女「分かりました…ご武運を」

『星の観測所_外』


フワフワ ドッスン


女海賊「戻りぃぃぃ!!」

盗賊「早かったな!!」

女海賊「魔女が怒ってたぞ!!インドラの矢…もう絶対使うなって」

商人「え!?魔女が知ってる?どうして?」

女海賊「あんた知らないの?魔女は千里眼の魔法で何でも知ってるんだよ」

商人「そうだったのか…」

女海賊「とにかく急いで帰れって言われてダッシュで戻って来たさ…んで?あのドラゴン何さ?」

商人「剣士と女エルフが戻って来たんだ…ドラゴンと一緒にね」

女海賊「おおぉぉぉ!!私も乗りたい!!」

盗賊「ちと今はそれどころじゃ無ぇ…魔法師は来てもらえたか?」

女海賊「あんたらぁぁ!!降りてぇぇ!!」

盗賊「8人か…上出来だ」

商人「4人はドラゴンの義勇団に残して…あとの4人はフィン・イッシュ軍に合流して欲しい」

盗賊「女海賊!!南西のオアシスにフィン・イッシュ軍が駐留している…4人を連れて行ってやってくれ」

女海賊「あいさーー!!…送ったら戻って来て良いんだよね?」

商人「すぐに北の山麓に行く事になる…こっちは準備しておく」

女海賊「ういうい…なんか忙しいね」

商人「事情は後で飛空艇で話す…急いで4人を送って来て」

女海賊「ほんじゃ行ってきまー」フワリ シュゴーーー

『飛空艇』


盗賊「よし…補給物資はこれだけだな?」

女海賊「うん小麦と塩しか無いけどそれで精いっぱいだってさ」

盗賊「ごろつき!!星の観測所に入れて少しづつ配給してやってくれ」

ごろつき「がってん!!」

商人「じゃぁ僕たちはもう行こう…おいでホムンルクス」

ホムンルクス「はい…」

女海賊「私らは例の命の泉行くんだよね?ドラゴンに付いて行けば良いの?」

盗賊「そうだ…ついでに北の山麓に向かったもう一台の気球も探す」

女海賊「どゆこと?」

盗賊「義勇団の連中が使って居て北の山麓で消息を絶ったらしい…今は気球が重要だ」

女海賊「なるなる…じゃぁ早速行ってみよー早く乗って!!」

盗賊「おう!!」


フワリ シュゴーーーー


女海賊「ほんで私にも事情を教えてよ?」

商人「そうだね…」


カクカク シカジカ

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女海賊「へぇ…ドラゴンは精霊のペットだったんだ良いなーーー私も欲しいなぁぁ」

ホムンルクス「ドラゴンを卵から育てたのが精霊だった様です」

商人「それで今から命の泉に刺さっている魔槍を抜きに行ってみる訳さ」

女海賊「地図で言うとどの辺?」バサリ

盗賊「ドラゴンの住処と言われて居るのが…この辺りだ」ユビサシ

女海賊「そんな遠くないね…でも山越えかぁ」

盗賊「問題でもあるのか?」

女海賊「高度次第だけど…飛空艇の限界高度超えるなら迂回しないとダメかな」

ホムンルクス「手前の山は標高8848メートルです…命の泉は2699メートルに位置します」

女海賊「じゃぁ迂回しないとダメ…ドラゴン分かってるかなぁ?」

盗賊「ドラゴンを追い越せるか?」

女海賊「イケる…スピードはこっちのが早い…私らが先導しようか?」

商人「そうだね…」



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女海賊「そういえばさぁ…ホムちゃんが見つけたオーブ?」

商人「そんな事も千里眼で見ていたのか…なんか怖いなぁ」

女海賊「魔女が喜んでたさ…なんか死んだ魔女の婆ちゃんはそのオーブを壊してしまったと思ってたんだって」

商人「僕はその話を直接聞いて居ないんだ…君は聞いて居たの?」

女海賊「うん…200年前のシャ・バクダ大破壊の時に全部壊してしまったと思っててね」

女海賊「生きている間ずっとその罪を悔やんでいたんだってさ」

女海賊「だからまだオーブが残ってる事が分かって魔女は師匠に報告に行くから私と一緒に来なかったさ」

商人「シン・リーンの狭間境界に印を打つっていうのは終わったのかな?」

女海賊「まだ半分くらいだって」

商人「…ならしょうがないね…次の機会かな」

女海賊「あとね…お姉ぇが私のパパに気球を貰ったらしいから割と早くこっちに来るかも」

盗賊「おぉそれは助かるな…今の義勇団の状況だとな」

商人「あ!!そうだ忘れてた…盗賊?これドラゴンの涙っていう物らしいけど何だか知ってる?」

盗賊「おぉ!!それはユニークアイテムだ…なんでお前が持ってるんだ?」

商人「ホムンルクスが僕にくれたよ…ドラゴンが落としたんだって」

盗賊「それは大事にに持っとけ…たしか…心臓がドラゴンの心臓になるらしい」

商人「へぇ…僕にぴったりだね…いつ使おう?」

盗賊「今は元気そうだからしんどくなった時に飲め」

商人「良い物貰ったな~ありがとうホムンルクス」

ホムンルクス「いえ…私には不要な物ですから」

『命の泉上空』


フワフワ バサバサ


商人「多分…あそこだね…ドラゴンが居りて行く」

女海賊「おけおけ…後について上手い事降りる」

とうぞく「こりゃなんちゅー所に泉が湧いてんだ…ほとんど山頂じゃねぇか」

商人「神秘的だね…人の住まう場所では無い」

女海賊「はいはい…舌噛まないでねっと」


フワフワ ドッスン


商人「剣士と女エルフはもう泉の方に行ってるね…追おう」

女海賊「ホムちゃんもおいで」

商人「すごいな…音が何も聞こえない…別世界に来た様だ」

女海賊「水の流れる音がするよ?こっち…」サラサラ

盗賊「…この水が下界まで流れて行ってんのか…んん?癒し苔が生えているな…良い薬になる」

女海賊「どれ?…おぉぉコレも持って帰ろう」ゴシゴシ

商人「そんなの後にしなよ…ほら剣士と女エルフが待ってる」

盗賊「あぁ…そうだな…先に魔槍とやらを処置してからだな」

商人「見えた!泉に大きな槍が立ってる…あれが魔槍だ」

ホムンルクス「魔槍ロンギヌス…と書物には書いてありました」

盗賊「でかいな…あんな物を剣士が抜けるのかよ…」

『命の泉』


サラサラ サラサラ


ドラゴン”魔王に魔槍を打たれて200有余年…命の泉は憎悪に満たされている”

ドラゴン”命有る物は皆この汚された水を口にし憎悪に染まる”

ドラゴン”今こそのこ魔槍を抜きかつての厄災を終わらせるのだ”

ドラゴン”真の勇者であれば魔槍の抜き方を知っておろう…”


剣士「…」

商人「剣士…出来るのかい?」

女エルフ「剣士?」

女海賊「あんたなら出来るよね?」

剣士「…」

剣士「……」

剣士「………」

盗賊「どうした!?何黙ってんだ?」

女エルフ「…認めたく…無いのね?…あなたが勇者である事を」

剣士「…」フゥ

剣士「正直に言うよ…僕は魔槍の抜き方も憎悪の消し方も知っている」

商人「憎悪の消し方?」

剣士「そうだよ…魔槍を抜くだけじゃダメなんだ…刺さっていた部分の憎悪も消し去る必要があるんだ」

商人「それが出来るなら尚良いじゃないか…」

剣士「ただし…同時にみんなの夢幻の記憶を失う事にもなる…そういう呪いも魔槍には掛けられているんだ」

商人「夢幻の記憶を失う…」

盗賊「俺は何も覚えちゃ居ねぇ…なにが起こるってんだ?」

剣士「みんな…自分を見失わない様にしてね」

女海賊「え?」

剣士「それは僕も同じなんだけど…女海賊…来て…」

女海賊「え?私?どうしたの?」

剣士「…」ギュゥゥゥ

女海賊「何?何?…どうしたの急に?」

剣士「ずっと君が好きだった…君を失いたくなかった…」

女海賊「なんでそんな事言いだすの?又居なくなっちゃうの?どっか行くつもり?」

剣士「魔槍を抜いたら僕は勇者になる…そしたら僕は勇者の定めに従うしかないんだ」

女海賊「どういう事?あんたは始めっから勇者じゃん?…なんで?定めって何?ちゃんと話してよ…」

剣士「ありがとう…」ギュゥゥゥ

女海賊「ねぇ!!ちゃんと答えてよ!!」

剣士「そうだ…確か君はシン・リーンで手に入れた金属を持っていたよね…貸して」

女海賊「え?これ?」

剣士「僕が魔槍を抜いたらその裂け目にその金属を詰め込んで」

女海賊「うん…」

剣士「女エルフはその後にその金属に回復魔法を掛けて?」

女エルフ「え…あ…うん」

剣士「ホムンルクス…僕と一緒に魔槍を抜くよ…手を貸して」

ホムンルクス「はい…」

剣士「じゃ…行くよ…ふん!!」



ビシビシビシ ガガーン!!



盗賊「うお!!空が!!裂ける!!」

商人「何が起きる!?」



『我が魔槍を抜こうとする者よ』

『それは我が物である』

『奪うからには裁き受けよ』




商人「魔王の手が…」

盗賊「空から手が降って来る!!避けろぉぉぉ」




剣士「うぉぉぉぉぉ!!!!」ズボッ…

商人「抜けた…」

盗賊「女海賊!その金属を裂け目に突っ込め!!」

女海賊「え…あ…うん!」ズボ グイ グイ

女エルフ「回復魔法!」ボワー



シーン・・・


---魔槍は砕け散った---


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盗賊「何か…変わったか?」

商人「いや分からない…でも無事に魔槍は抜けた様だ」


ドラゴン”良くやった…人間よ…いや真の勇者よ…汝をこれより真の勇者として認めよう”


女海賊「剣士?あ…ちが…勇者?大丈夫?」

勇者「ふぅ…無事に抜けたね…みんな平気?」

盗賊「あぁ何ともねぇ…やけにあっさり抜いちまったなヌハハ」

女エルフ「これでドラゴンとの契約は無事に果たした」

商人「そうだね…早くフィン・イッシュに向かわないと」

盗賊「待て待てその前に義勇団の気球探しをだな…」

商人「そうだったね…気球が無いと困るもんね」

女海賊「じゃぁさー私癒し苔拾ってから飛空艇に行くね…勇者も手伝ってよ」

勇者「あ…うん」

女海賊「なんかさぁ…私変なんだよね…心の中に急に穴が開いた感じ…なんだろ?」

勇者「平気?」

女海賊「うーん…体は平気なんだけどさぁ…胸がズキューーーーンて感じ?あんたに分かる?」

勇者「体が平気なら良いじゃない…いこっか…その癒し苔って何処にあるの?」

女海賊「こっちこっち…私の鞄にいっぱい詰めて?」

『北の山麓ふもと』


女海賊「あそこに見えるの気球じゃない?」

盗賊「おぉ!!無事だったか…あそこに降ろせ…俺が乗って星の観測所まで戻る」

女海賊「あいさー!!」


フワフワ ドッスン


盗賊「商人!!一緒に来れるか?」

商人「良いよ?」

盗賊「気球は無傷だ…おぉ!!荷もある」

商人「何かに襲われたのかな?」

盗賊「多分な…この辺はミノタウロスが居るはずだ…さっさと気球に乗って引き上げるぞ」

女海賊「上!!ドラゴンの動きが変…近くに敵が居そうだから急いで」

盗賊「女海賊…お前は先に離陸して安全確保しろ」

女海賊「おけおけ…」フワフワ

盗賊「商人!!俺が気球の炉を焚いて居る間見張りを頼む…10分で動かせる」

商人「うん…」

盗賊「えっさ…ほいさ」

商人「勇者と女エルフは何かと戦っている様だ…」

盗賊「引き付けてくれてんだ…何と戦ってるか見えるか?」

商人「大きいな…牛の頭をしている…あれがミノタウロスかい?」

盗賊「その様だな…こっちに来る様子は無いか?」

商人「うん…あれ?照明魔法で戦ってる?レイスが居るのか…まてよ…どうしてレイスはミノタウロスを襲わないんだ?」

盗賊「なるほど…ミノタウロスもゾンビになってんだな?」

商人「そうか…魔物もゾンビ化するのか」

盗賊「通りで荷物が全部残ってる訳だ…勇者達は大丈夫そうか?」

商人「すごいねドラゴンライダーの戦い方は…ミノタウロスはやられる一方だよ」

盗賊「よっし…商人乗れ!!飛べる!!」

商人「うん…よっと」ピョン

盗賊「やっぱ飛空艇になれると旧式はいろいろ遅せぇ…」フワフワ バサバサ

商人「盗賊!!飛空艇からロープが垂れてる…多分引っ張ってくれるんだ」

盗賊「おぉぉそりゃ良い…ちと気球に結んでくる」ダダッ

『飛空艇』


シュゴーーー バサバサ


女海賊「ねぇホムちゃん?なんか勇者がいつもと違うの…何か知らない?」

ホムンルクス「はい…」

女海賊「はい…てさぁ…あんたに言ってもしょうがないんだどさぁ…イライラすんだよね」

ホムンルクス「正直に言ってもよろしいのでしょうか?」

女海賊「何さ!!何か知ってるならちゃんと言ってよ」

ホムンルクス「彼は魔王の退け方を知って居るのです…」

女海賊「そりゃ勇者なんだからやってくれると信じてるよ」

ホムンルクス「…そうですか」

女海賊「ほら聖剣エクスカリバーでビシ!バシ!みたいな…ね?」

ホムンルクス「女海賊さん?あなたは神々の戦いの壁画を見たとおっしゃっていましたね?」

女海賊「うん…」

ホムンルクス「では…そういう事なのだと思います」

女海賊「え!?勇者は最後に魔王になる?…え?どゆこと?」

ホムンルクス「魔王になって落ちて行くのだと思います」

女海賊「落ちて行くって…どこにさ?」

ホムンルクス「壁画ではどうなって居たのですか?」

女海賊「落ちて行った先は…次の世代…え?え?え?あの壁画はそういう意味だった…の?」

ホムンルクス「それは歴史の中の事実だったのではないでしょうか?」

女海賊「ダメだよそんな…ホムちゃんなんとか出来ないの?」

ホムンルクス「私にはそのような力はありません」

女海賊「勇者…居なくなっちゃうじゃん」

ホムンルクス「どうか…彼の気持ちを察してあげてください」


---だから私を強く抱きしめた?---

---さよならするつもりなの?---

---だめだよ勝手に行かないでよ---


ホムンルクス「この会話も彼には聞こえていると思います…ですから彼の気持ちを尊重しましょう」

女海賊「…そんな」


---心が締め付けられて苦しい---

---勇者はこの想いとずっと戦っていた---

---だからあまりしゃべらなかった---

女海賊「おぇぇぇぇ」オエップ

ホムンルクス「大丈夫ですか?体の具合が悪くなりましたか?」

女海賊「平気…ちょっと吐き気がしただけ」

ホムンルクス「気持ちはお察ししますが少しお休みを…」

女海賊「大丈夫だよ…触んな」ブン


---どうする?---

---どうする?---

---どうする?---

---どうする?---

---どうする?---

---どうする?---

『星の観測所』


フワフワ ドッスン


盗賊「ふぅぅ…やっぱ飛空艇が早えぇな」

商人「物資を観測所に運び入れようか…」

盗賊「んむ…ん?…女海賊?どうした?」

女海賊「…」

盗賊「やけに機嫌が悪いじゃ無ぇか…」

女海賊「勇者何処に行った?」

盗賊「勇者!!女海賊が探してるぞ!!」

勇者「あぁ…ごめん今行く」タッタッタ

女海賊「…」

勇者「どうしたの?」

女海賊「…」

勇者「…」


パァァァン!!


盗賊「おいおい…痴話喧嘩ならよそでヤレ」

勇者「…」ツツ

女海賊「あんたぁ!!舐めてんじゃ無ぇよ!!」

勇者「…」

女海賊「私を誰だと思ってんだ!!私の機嫌損ねたらタダじゃ済まないからね!!」

勇者「…」

女海賊「何か言えよ!!もう機嫌損ねてんだ…どう責任取ってくれんのさ」

盗賊「みんな見てんだぁ!!あっちでヤレ…来いこら」グイ



---これが私のやり方---

---どう?少しはラクになった?---

『南西のオアシス』


盗賊「よっし補給はこんだけだ…大事に使ってくれよぉ!!」

商人「やっぱり魔法師が居ると全然違うね…みんな顔色が良い」

王女「本当に助かっています」

女海賊「癒し苔もあるから上手く使って」

王女「はい…ですがやはり不死者の侵入が少しづつ増えて来ています」

盗賊「今の所対処法は無いんだ…踏ん張ってくれ」

商人「これから僕たちはフィン・イッシュのアサシン達を助けに行く…向こうも何か対処法を見つけてるかもしれないしね」

王女「是非お願いします」

盗賊「上手く行けばすぐに帰って来る…2~3日はなんとかしてくれ」

女海賊「狭間の中だから往復10日…向こうで5日…もしかしたら1日で帰って来れるかもね」

商人「向こうの状況によるね…5日で事が片付くかな?」

盗賊「とにかく急ぐだな」

商人「じゃぁ僕たちはそろそろ行こうか」

女海賊「おっけ…ハイ乗った乗ったぁ」

王女「もし父に会う事があったら私の無事をお伝えください」

商人「了解したよ」


フワリ シュゴーーー

『飛空艇』


盗賊「勇者と女エルフは先行してゾンビ倒しながら行ってる様だな」

商人「この速度だとやっぱり5日程掛かっちゃうね」

盗賊「仕方あるめぇ…置いて行く訳に逝かんしドラゴンも少し羽休めが必要だ」

女海賊「最高速だと2日掛かんないと思うんだけどね」

盗賊「ドラゴンが休んでいる間は俺らが守らんとイカンから少し寝て置け」

商人「うん…そうする…随分寝ていないよ」ふぁ~あ

盗賊「女海賊…お前も少し休め」

女海賊「私は良い…やる事ある」

盗賊「なんだお前?目がギラついてんぞ?勇者と仲直りしてないのか?」

女海賊「うっさいな!!爆弾作るんだよ!!…それと大砲の弾もね」

盗賊「お?あのちっこい大砲か?ありゃ使い物になるんか?」

女海賊「なるんか?じゃ無ぇ!!使うんだ…そうだホムちゃんこの砲身に何て書いてるのか読んで?」

ホムンルクス「はい…デリンジャーと書かれています」

女海賊「形状からして4連装デリンジャーかな…大砲を4発撃てる」

盗賊「お前にピッタリな武器だ…さぁてほんじゃ俺は寝る…飛空艇の操縦は任せた」

女海賊「ホムちゃん操縦出来るよね?私はちっと細工してるから頼んだよ」

ホムンルクス「はい…お任せください」

女海賊「ぉぅぇぇぇ」ゲロゲロ

ホムンルクス「お体平気ですか?」

女海賊「あー気にしないで私の奴隷4号が全部食べるから…ハァハァ」

ホムンルクス「サンドワーム…ですか」

女海賊「何でも喜んで食べるから…あんたの排泄物もあげたら?喜んで食べるよ?」

ホムンルクス「はい…次からそうさせていただきます」

女海賊「こいつさぁ見かけによらずすっごいキレイ好きなんだよ…肌のカサカサも綺麗に食べるよ」

ホムンルクス「サンドワームは土壌の改善の他に毒の中和もしているそうです」

女海賊「むむ!!毒の中和…こいつにゾンビ食わしたらどうなるんだろう?」

ホムンルクス「中和されて土に還るのかもしれませんね」

女海賊「…そうか…それで活発に動いてるんだ」

ホムンルクス「何かお考えでもあるのですか?」

女海賊「まぁね…シャ・バクダ遺跡に大きなカタコンベがあってね…中にいっぱい死体があるんだ」

ホムンルクス「それをサンドワームに与えるのですね?」

女海賊「うん…放っておくと又魔王の餌になっちゃいそうだし…て待てよ?」


---200年前の勇者が魔王になってどこかに落ちて行った---

---どこに行ったのか?---

---なんか嫌な予感がするなぁ---

---あの死体が全部ゾンビになったとしたら---

---ゾンビは散らばった魔王の欠片?---

---魔王はどこかに集まろうとしてるんじゃないかな?---

---そういえば勇者の像は何かに掴まりかけてた---

---ゾンビの手だったのかも---


ホムンルクス「どうかされましたか?」

女海賊「ううん何でもない…」

『大きな岩の上』


盗賊「よし…ここならゾンビは上がって来ねぇ」

商人「勇者と女エルフも少し休んで」

勇者「うん…ドラゴンと一緒に少し休ませてもらう」

盗賊「俺が見張っててやる…しっかり休め」

勇者「女海賊は?」

盗賊「あいつは何か作り物してるぞ?呼んでくるか?」

勇者「お願い…少し一緒に居たいんだ」

盗賊「ちょっと待ってろ…おーい女海賊!!お前の奴隷が呼んでるぞ」

女海賊「んあ?あぁぁ今行く」ゲッソリ

盗賊「お前…ヘロヘロじゃねぇか!!」

女海賊「鉄の細工は力使うからさぁ…イテテ」ヨタヨタ

盗賊「お前もちっと休め…勇者が呼んでるぞ」

女海賊「…うん」

勇者「こっちおいでよ…君も休んだら?一緒に居てほしいんだ」

女海賊「…うん」ヨッコラ セ

勇者「何作ってるの?」

女海賊「大砲の弾と火薬」

勇者「それだけじゃ無いよね?」

女海賊「お守りだよ…ほらあんたにあげる」ポイ

勇者「これは?タグ?」

女海賊「そう…持ち主の名前が書いてる」

勇者「ハハ君の名前が書いてあるじゃない」

女海賊「文句あんの?」

勇者「ありがとう…貰っておくよ…じゃ僕からも」ファサ

女海賊「これはあんたの母さんの形見じゃないの?こんなのもらえないよ」

勇者「背中に剣を背負ってると邪魔なんだ…とても戦いにくい」

女海賊「…じゃ預かっておく」

勇者「あったかいよ?羽織ってごらん?」

女海賊「知ってるさ…何回もこれに包まって暖を取った」


---そうだね暖かかった---

『飛空艇』


ビョーーーウ バサバサ


盗賊「砂嵐を抜けたらそろそろフィン・イッシュ領だ…城が見えて来ても良い筈だが…」

商人「砂で遠くまで見通せないよ」

盗賊「ドラゴンが高度を下げているな」

女海賊「おっけ追従する」

商人「正面…煙が上がっている」

盗賊「それだな…生き残ってる奴が居るってこった」

商人「ドラゴンが火を吹き始めた…あそこの下に多分敵が居る」

盗賊「女海賊!ドラゴン追い越して煙の方に向かえ」

女海賊「やってる!!」

商人「これ…下に居るのは全部ゾンビか?」

盗賊「人間だけじゃ無さそうだぜ?鳥がこっちに向かって飛んできてる…女海賊!!お前も戦う準備しろ」

女海賊「分かってるよ!!ホムちゃん操縦お願い」

ホムンルクス「はい…お任せください」


ゾンビ鴉「ギャァ ギャァ」バシ バシ


盗賊「飛空艇に体当たりかよ…中に入って来る奴だけ倒せ」

女海賊「いでよ私の奴隷4号!!」ボトリ

サンドワーム「…」モソモソ

女海賊「餌の時間だよ…カラス全部食っちまいな!!」

商人「敵が多すぎる…これじゃ着陸出来ない」

盗賊「こりゃしばらく上空で旋回だ…ドラゴンのブレスが一番効いていそうだ」

女海賊「ホムちゃん煙の上で旋回してて…カラスは私らが処理するから」

ホムンルクス「はい…」

『ドラゴンの背』


バッサ バッサ ビューーー


勇者(女エルフ!!風魔法を僕に合わせて!!ボルケーノで焼く)

女エルフ(合体魔法!?)

勇者(その方が早い…いくよ!!火炎魔法!)ゴゥ

女エルフ(竜巻魔法!)ビュゥゥ


ゴゴゴゴゴ ボゥ


勇者(その調子!!あとは風魔法でボルケーノの行先コントロール)

女エルフ(うん…)

勇者(続いて行くよ!!火炎魔法!)ゴゥ

女エルフ(竜巻魔法!)ビュゥゥ


ゴゴゴゴゴ ボゥ

『飛空艇』


ビュゥゥ バサバサ


ホムンルクス「火柱が立ち上がっています…回避します」

盗賊「あの2人はすげぇ火力だな…そこらじゅうで火柱立ち上がってんじゃねぇか…巻き込まれんなよ?」

商人「あそこにゾンビの塊が居る…なんだあれは?ゾンビは合体するのか?」

盗賊「数百のゾンビで人型になろうとしてるな」

女海賊「こっちも爆弾落としていくよ!!真上を飛んで」

ホムンルクス「はい…」

女海賊「ウラン結晶混ぜてる新型爆弾だから出来るだけ離れて!!落とすよ」ポイ

盗賊「そんなにヤバイ爆弾か?」

女海賊「今までの100倍はヤバイ」


ピカーー チュドーーン


盗賊「うおぉぉぉぉマジか…お前そんなもん作ってたんか」

商人「ゾンビの塊が消し飛んだ…」

女海賊「よし!!実験成功!!…次はボウガンで狙ってみる」ギリリ

盗賊「今の爆発でカラスが一斉に飛んだ…」

女海賊「まとめてやっつけてやる!!カラスに突っ込んで…最高速で!!」

ホムンルクス「はい…」


ギャァ ギャァ バシ バシ


盗賊「追いかけて来る」

女海賊「大丈夫…こっちのが早い…旋回してカラスを纏めて」

ホムンルクス「はい…」

女海賊「撃つよ…」バシュ


3…2…1 ピカーー チュドーーン





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女海賊「女エルフがなにか合図してる」

盗賊「付いて来いって事だな…」

女海賊「あの建物の上に降りろって事かな?…ホムちゃん私が操縦する」

ホムンルクス「はい…」

女海賊「降ろすよ…」フワフワ ドッスン

女エルフ「魔方陣のペンダントまだある?ハァハァ」

女海賊「あるよ…ほい」ポイ

女エルフ「これがあればドラゴンはレイスを気にしなくて良いの」

商人「なるほど…ゾンビ退治はドラゴンに任せるって言うんだね?」

女エルフ「そう…すぐ戻るからここで待ってて」タッタッタ


『軍国フィン・イッシュ』



盗賊「そこら中に銀の武器が落ちてる…拾って来たぜ」ポイ

商人「僕にも?」パス

盗賊「一応な…ホムンルクスの分もある」ポイ

ホムンルクス「私は武器を使ったことがありません」パス

盗賊「一応持って置け」

女海賊「勇者と女エルフが戻って来たよ」

勇者「みんな無事?」

盗賊「見ての通りよ…」

勇者「城の方はもう誰も居なさそうだよ」

盗賊「その様だな…あの煙は墓地の方からだ…多分地下墓地に逃げ込んでるな」

商人「地下墓地なんか合ったのか…狭間の外に出てる可能性があるね」

盗賊「そうだと良いがこの状況じゃ補給も何も無いだろう…期待できんな」

勇者「とにかくそっちの方に行ってみよう…僕が先頭を行く」

女エルフ「私が最後に行くからみんな付いて行って」

『地下墓地』


勇者「狼煙になって居るのは死体だ」

女海賊「この地下墓地の入り口は鍵掛かってるのかな?」

盗賊「見て来る」

商人「屍の山だ…」

盗賊「この鉄柵は鍵が開いてる…ただのゾンビ侵入防止だな」

勇者「入ろうか」スタスタ


ピチョン ピチョン


盗賊「地下墓地の死体は全部掘り起こされてんな…全部処理したか」

商人「それはそうだろうね…どんどんゾンビが湧いて来るんだから」

勇者「足元見て…魔方陣だ」

盗賊「やっぱりここで耐え忍んだ様だ」

商人「この深さだと狭間の外に出ていない…もっと下に降りないと」

勇者「まだ奥に続いて居るよ…」

女海賊「見て…階段がある…下に行けそう」

ホムンルクス「皆さん…私の生体が病気に掛かった様です」

女海賊「え?今?」

ホムンルクス「未知のウイルスに感染しています私には抗体がありません」

商人「まさか…魔王の欠片?」

ホムンルクス「分かりません…私は怪我などはしていませんから飛沫感染の可能性が高いです」

盗賊「ゾンビだな…ゾンビの血はそこら中にこびり付いている」

商人「つまり僕たち全員感染している可能性が高いね」

ホムンルクス「ウイルス増殖の速さから計算して発病まで1週間程度と思われます」

商人「次から次へと色々起こるなぁ」

ホムンルクス「私の生体でウイルスの調査を続けておきます」

勇者「先に進もうか」

『地下墓地_下層』


勇者「この下で人の気配がする」

盗賊「本当か!?お~い誰かいるかぁぁぁ?」


ゾンビ「ヴヴヴヴヴヴヴ…」


盗賊「またゾンビか!!この!!」ダダダ

勇者「待って!!このゾンビは襲って来ない」

盗賊「何ぃ!?」

女海賊「何か話してる…」


ゾンビ「ヴヴヴた…すけ…に…来たの…か?ヴヴヴヴ」


勇者「意識がある!!助けに来たんだ…回復魔法!」ボワー

ゾンビ「遅かっ…た…奥に…皇子が居るヴヴヴヴ」

勇者「女エルフ!!ここに居る人みんなに回復魔法を!!」

女エルフ「うん…」


回復魔法!回復魔法!回復魔法!


商人「これは生きている人がゾンビ化しているんだ…どうにか止めないと」

盗賊「この死体は痛みが酷い…共食いの痕だ…こりゃひでぇ環境だ」

ゾンビ「生きた…血肉でゾンビ化が…止まる」

盗賊「意識の在る奴はどのくらい残って居る?」

ゾンビ「十人…足らず」

盗賊「くあぁぁ壊滅だ…女海賊!!飛空艇に10人乗せられるか?」

女海賊「高度上げなきゃ行ける」

盗賊「よし…全員連れて行ってやる」

女海賊「ねぇ…そこの死体をサンドワームに食べさせても良い?」

盗賊「こんな時に何言ってやがる…」

女海賊「生きた血肉…サンドワームの血なら飲ませてあげられるかも」

ホムンルクス「それは良い案ですね…サンドワームはゾンビを食べても平気…つまり抗体を持っています」

盗賊「マジか…」

女海賊「いでよ私の奴隷4号!!」ボトリ

サンドワーム「…」モソモソ

女海賊「あんたの血ぃちょっともらうよ」グサリ

サンドワーム「プギャァ」ビクビク

女海賊「この血を皆に飲ませてあげて」

盗賊「お、おう」

『奥の部屋』


ヴヴヴヴヴヴヴ ガチャン ガチャン


商人「…この椅子に繋がれているのが皇子か?」

皇子「ヴヴヴヴヴヴヴヴ」 ガチャン ガチャン

盗賊「だめだ…こいつはもう意識が無ぇ」

女海賊「アサシン?ねぇ…あんたアサシンじゃないの?」

盗賊「何ぃ!!」ダダ

アサシン「ヴヴヴヴ…や…っと」

女海賊「勇者!!アサシンが居た!!回復魔法を!!」

アサシン「お…そか…ったな」

盗賊「ひでぇやられ様だな…戦闘の傷が癒えて無ぇ」

勇者「回復魔法!」ボワー

アサシン「やはり…お前が勇…者か…げふっ」

勇者「…」コクリ

アサシン「精霊…は…どうした?」

商人「ホムンルクスおいで」

ホムンルクス「はい…」

アサシン「器を…見つけたのだ…な?…げふっげふっ」

商人「アサシン…状態が良くない様だね」

盗賊「無理してしゃべるな」

アサシン「私は…もうダメ…だ…気にする…な」

盗賊「商人!?お前ドラゴンの涙持っていたな?飲ませろ…死は回避できる」

商人「はっ…そうだった…アサシンこれを食べて」グイ

アサシン「むぐ…ドラゴンの…涙か…私はまだ[ピーーー]…ないのだな」

盗賊「勇者…お前は蘇生魔法は出来ないのか?」

勇者「ゾンビに蘇生魔法は…」

盗賊「そうか…自然回復を待つしか無いか」

女海賊「サンドワームの血を持ってきた…これ飲んで?」グイ

アサシン「むぐ…むぐ…むぅぅぅ生きた血…か」

盗賊「気分はどうだ?」

アサシン「最悪だ…クックック」



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そこで椅子に繋がれている男が誰だか分かるか?

セントラルの第2皇子…正体はエルフの男だが彼も精霊の導きを知る勇者の一人だ

エルフの誇り故に…人の血肉をすすりゾンビ化を止める事を最後まで拒んだ…成れの果てだ

私は彼に話を聞き…セントラルで起こった魔王復活の真相を聞いた

そして彼も私と志を同じくする同志であった事もな

彼は父であるセントラル国王の命によりエルフから祈りの指輪を奪い破壊する予定だった

しかし破壊に必要なもう一つの祈りの指輪をセントラル国王は持ってなど居なかった…騙されたのだ

そして魔王復活の悲劇が起きた…お前たちの知っての通りだ

しかしまだ完全に復活はしていない…魔王にも又…その魂を入れる器が必要なのだ

魔王は死者の体を器として渡り歩き未だ彷徨っている…自らの魂を入れる器を探してな



勇者「それで魔王軍と名乗り…僕たちをここに呼んだ」

アサシン「そうだ…しかし100日待ってもお前たちは現れず…闇も祓われなかった」

盗賊「実はなアサシン…100日というのは狭間の外での事らしい」

アサシン「クックック私は気付くのが遅すぎた様だ…狭間の外では今どれくらい時間が経ったのだ?」

盗賊「正直分から無ぇ…狭間を出入りしているから何日経ったのかもう分からなくなっている」

アサシン「ここではもう1年程か…見ての通り全滅だ…帰還する体力も残って居なかった所だ」

盗賊「あぁ…連れて帰ってやる」

アサシン「そして…精霊の魂はどうなったのだ?精霊は闇を祓えんのか?」

商人「夢幻の精霊はすでに200年前に死んで居たよ…居なかったというオチさ」

ホムンルクス「私は超高度AI搭載の環境保全用ロボットです…私は人間の住まう環境を良くする事ができます」

アサシン「精霊では無いのか?」

商人「半人前の精霊…と言った所か」

アサシン「クックック…それでは私は勇者を[ピーーー]しか無いでは無いか!!何の為に今まで戦って来たのか…」

盗賊「まぁ落ち着けアサシン…ひとまずシャ・バクダに帰るぞ」グイ

勇者「僕はアサシンと二人で話がしたい…みんなは他の人を連れて飛空艇に行って」

アサシン「…」

盗賊「あぁ…じゃぁアサシンはお前が運んでくれ」

女海賊「勇者?…」

勇者「大丈夫…大丈夫だからみんな他の人を運んで?」

盗賊「わかった…おい!女海賊…お前も手伝え」

女海賊「…わかってんよフン!」


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『飛空艇』


商人「勇者とアサシン遅いね…」

盗賊「アサシンのあの様子じゃまだ動けんだろうが…心配だな」

女エルフ「戻って来る…ほら?」

商人「本当だ…勇者がアサシン背負ってる」

盗賊「和解したか…」

女海賊「勇者!!」タッタッタ

勇者「ごめん遅くなった」

女海賊「あんた平気?」

勇者「大丈夫だよ」

アサシン「すまんな…世話を掛けて」

勇者「女エルフ!!僕はドラゴンに乗って戦うから君は飛空艇でみんなの回復に回って」

女エルフ「うん…丁度良かった…矢も無くなってきたし」

勇者「よっこらせと…この人数乗って飛べそう?」

女海賊「あんまり高度上がんないけど大丈夫だと思う」

盗賊「うっし…じゃぁ戻るぞ!!」


フワフワ バサバサ

女海賊「アサシン!!勇者と何話したのさ?」

アサシン「クックック未来の話を少しな…」

女海賊「どんな未来なのさ…もう私はあんたの助手なんかやんないかんね」

アサシン「その心配は要らない…もう盗賊ギルドは解散だ」

盗賊「星の観測所は今ドラゴンの義勇団って事になってるんだけどよ…お前どうするつもりだ?」

アサシン「あそこの名義は女戦士のままだ…彼女に任せる」

盗賊「お前はしばらく引退だな?その体じゃ無理もあるまいが」

アサシン「そうだな…心底疲れた…もう殺しは懲り懲りだ」

盗賊「フィン・イッシュの戦いはそんなに酷かったのか?」

アサシン「あぁ…始めは人の裏切りから始まった…恐らく魔王の影響なのだろう」

盗賊「あの国は30万は人が居た筈だな…それが全滅とは想像出来ん」

アサシン「裏切りにゾンビ化の病…まさに地獄だ」

盗賊「フィン・イッシュの王女がオアシスに逃れてまだ生きている…お前が逃したとか?」

アサシン「そうか…生き延びたか…まだ復興の芽は残されていたか」

盗賊「まだ分かん無ぇ事が…魔王は一体どこにいる?」

アサシン「クックック分からんのか?私にもお前にも…すべての人間の中に潜んでいる…器を求めて彷徨っているのだ」

商人「ええ?それじゃ手の打ちようがない…」

アサシン「ではお前たちはこれから何処に向かおうとしているのだ?」

商人「シャ・バクダだ…魔王はそこに集まろうとしている?」

アサシン「勇者に導かれて居る事が分からんのか?魔王と勇者は表裏一体…勇者の元へ魔王は来る」

女海賊「もうやめて!!そんな話もう聞きたくない!!」

アサシン「そうだな…私も疲れた…もう止めよう…しかしお前たちは魔女から何も聞かされていないのだな?」

女海賊「魔女が何よ!?何か知っているの?」

アサシン「魔女はこうなる事をはじめから予見している…それを変えるのが精霊を呼び覚ます事だった」

商人「どういう事?」

アサシン「精霊だけが魔王を封じる術を知っていた…居ないとなってはこの世は滅びの一途」

商人「ホムンルクス…君は何か分からないのかい?」

ホムンルクス「はい…ウイルスに対抗するにはワクチンが必要です…つまりそういう事だと思われます」

商人「ワクチン?」

ホムンルクス「ゾンビ化の病に対するワクチンは恐らくサンドワームの抗体で得る事が出来ると思います」

ホムンルクス「それと同じように魔王化に対するワクチンは先の精霊が解析済みであった可能性は少しながらあります」

商人「君は解析できないのかい?」

ホムンルクス「私は魔王化を体験した事がありませんから…」

商人「体験…まさか200年前の勇者の体験を精霊が取得したと?」

ホムンルクス「解析は数秒で終わります…可能性はあります」

アサシン「商人…お前は夢幻の記憶を忘れたのか?」

商人「え?夢幻…そうだ思い出せない」

アサシン「お前は夢幻の中で薬剤師と名乗る者と最後までワクチンを研究していた筈だ…私もそこに居た」

商人「記憶が…無い」

アサシン「精霊からの導きに気付かんとはなクックック」

商人「大事な事を忘れてしまっている…導きだったのかさえ…わからない」

盗賊「魔槍を抜くときに勇者が言ってたな?夢幻の記憶を失うってよ…でもなんでアサシンは覚えてるんだ?」

アサシン「クックックこれを見ろ」バサ

商人「手記…記憶を全部まとめているの?」

アサシン「私の夢の話なぞ人に見せる物では無いと思っていたが…やはり恥ずかしいものだクックック」

商人「見せてもらって良い?」

アサシン「笑うなよ…」



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ビョーーーーウ バサバサ


女海賊「…」

女エルフ「女海賊?平気?顔色良くないけれど…」

女海賊「なにさ…わたしは平気」

女エルフ「想いつめてる顔…」

女海賊「フン!!あんたに勇者は渡さないんだかんね!!」

女エルフ「大丈夫…私が守ってあげる」

女海賊「あんたさぁ!!…あんたのそういう所がムカつくんだよ…人の心に勝手に入って来ないで!!」

女エルフ「ごめんなさい…でもあなたを放って置行けなくてつい…」

女海賊「んんもう!!ほんで?」

女エルフ「あなたのお腹の中…」

女海賊「あんたに関係無いでしょ!!」

女エルフ「触っても良い?」

女海賊「勝手にしたら?」

女エルフ「ウフフ…」サワサワ

女海賊「むぐぐ…くすぐったいって!!」モゾモゾ

女エルフ「良いなぁ…」

女海賊「あんたぁ!!勇者とヤった?」

女エルフ「私と勇者はそういう関係じゃ無いの」

女海賊「ヤったって言ったら突き落とそうと思ってた」

女エルフ「良かった元気そうで…」

女海賊「はぁ?なんか腹立つなぁ…あんたが美人すぎるから思わず見とれちゃうんだ…ふん!」

女エルフ「赤ちゃん…大切にしてね?」

女海賊「あんたに言われなくても分かってるさ…」

女エルフ「ウフフ」

女海賊「でも…ありがとう」



ビョーーーーーウ バサバサ

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盗賊「…まぁ飲め」

アサシン「…」グビ

盗賊「旨いか?…他の兵士たちも飲め!!」

アサシン「何処のワインだ?」

盗賊「シン・リーン産だ…まぁ水の代わりに積んでる」

アサシン「人類の英知の味か…滅ぶ間際に飲む酒も悪くない」グビ

盗賊「そう言うな…生き残り掛けてんだ」

アサシン「私は魔王の闇を甘く見過ぎて居た…調和の時…良く言ったものだ」

盗賊「大昔の奴らはよ…こんな状況でも生き抜いてきたんだろ?…今度も生き抜くぞ」

アサシン「ドラゴンに乗って戦う勇者の姿を見て確かに希望に見える…私達とは別の次元で戦っているのが良く分かる」

盗賊「あぁ俺達じゃどうする事も出来無ぇな」

アサシン「セントラルでドラゴンライダーを見た時…私は心底絶望した…自分の無力さにな」

盗賊「でもここまで生き残ってんだ…希望を見失うな」

アサシン「クックック私よりお前の方が指導者向きなのかも知れんな」

盗賊「俺ぁよ…女盗賊が残した子供達を守っていかなきゃなんねぇ…見捨てる訳にいか無ぇんだ」

アサシン「私の妹か…思えば私は妹を失って同時に…自分が生きる意味も失った気がする」

盗賊「シン・リーンの港町によ…アイツの墓作ったんだ」

アサシン「そうか…行ってやらねばならんな」

盗賊「太陽が出てればスゲー景色の良いアイツのお気に入りの場所なんだ」

アサシン「太陽…か…俺の体はもう不死者だが…太陽の下に出れると思うか?」

盗賊「それは祈りの指輪でなんとかしろやい」

アサシン「そうだ…祈りの指輪はどうした?どこにある?」

盗賊「魔女だ…魔女が持っている」

アサシン「では魔女がこちらに来るまで何も起きんという事だな」

盗賊「んん?どういう事だ?お前まだ何か隠しているな?」

アサシン「さぁな?来てからのお楽しみだ」



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『大きな岩の上』


盗賊「ここで一旦休憩だ…女海賊!勇者の所に行ってやれ」

女海賊「言われなくても分かってんよ…」タッタッタ

盗賊「商人!まだアサシンの手記読んでるのか?」

商人「うん…夢の記録だけじゃないんだ…亡くなった塔の魔女とのやり取りも書いてあってさ」

盗賊「何か分かった事あるのか?」

商人「精霊が生き続けて来た目的…未来へのメッセージを塔の魔女は受け取っている」

アサシン「お前たちは魔女から聞いて居ないのか?精霊の一部を魔女が持っている事を」

商人「え!?精霊の一部?」

女エルフ「…もしかして」

商人「何か知ってるの?」

女エルフ「亡くなった魔女様を埋葬するときに小さな石の様な物を一緒に埋葬したの」

商人「小さな石…」

女エルフ「魔女様が大切に身に着けていた石だとか…」

商人「それだ…それが外部メモリだ!!」

盗賊「んん?ホムンルクスに足りないって奴か?」

商人「それに精霊の記憶が入っている筈だ!!…まだ世界を救う手が残って居る!!」


商人「魔女!!見ているんだろ!!墓の中から小さな石を持って来てくれ!!」スック


盗賊「おい…どこに向かって話しているんだ?」

商人「魔女は千里眼で常に僕たちの事を見ている…だから通じる」

盗賊「話ている事は聞こえて居ないだろう」

商人「紙とペンだ…文字にして伝える」

盗賊「ペンか…ほれ」ポイ

商人「そうさ…精霊の記憶があれば何とか出来る」カキカキ

アサシン「これは何か起きるな…」グビ

商人「僕はこのメモを見続けておく…魔女がいつ見ても分かるように」ジー

『シャ・バクダ遺跡上空』



盗賊「こりゃ良く無ぇ…なんでオアシスまでゾンビが入り込んでいやがる」

女エルフ「私もドラゴンに乗って戦う!!ドラゴンに寄せて!!」

女海賊「交差させるよ!!ドラゴンに飛び乗って…3…2…1…今!!」

女エルフ「ありがとう!!」ピョン

商人「遺跡のカタコンベだよきっと…そこから湧いて来てる」

アサシン「クックック…フィン・イッシュの二の舞だな」

盗賊「黙ってろい!!クソがぁまともに戦えるのは勇者と女エルフしか居ないってのに」

女海賊「見て!!星の観測所に私のパパの気球!!」

盗賊「おぉ!!女戦士が戻ってんのか…そりゃ良い!!」

商人「魔女も来てる筈…早く行こう!!」

『星の観測所』


フワフワ ドッスン


魔女「やっと戻って来おったか…待って居ったぞよ?」

盗賊「助かるぜ…ちとまずい状況だ…とりあえずアサシン達を観測所に運ぶ」

女海賊「…」ツカツカ


パァァァァン!!


盗賊「うぉ!!お前…魔女に何て事すんだ!!おい!!」

魔女「…」

女海賊「指輪よこしな!!」

魔女「済まなんだのぅ…黙っておって…ほれ」

女海賊「ほら…飛空艇から降りる人はさっさと降りて!!ホムちゃんも」

ホムンルクス「はい…」

女海賊「お姉ぇ!!それからローグも私の飛空艇に乗って!!戦うよ!!」

女戦士「お前…」

ローグ「あねさん…」

女海賊「私が指揮る!!勇者を援護する」

アサシン「俺も少しは戦える…連れていけ」

女海賊「ほら!!早く乗った!!」

女戦士「フフ…」ツカツカ

ローグ「分かったでやんす…あっしらは弓で援護っすね?」

女海賊「やれる事全部ヤレ!!行くぞ!!」


フワリ シュゴーーーー


魔女「行ってしもうたか…すべてを話す時が来たと思うたんじゃがの…言いそびれてしもうた」

商人「もう分かってると思うよ…それより外部メモリは持って来てくれた?」

魔女「持ってきたぞよ?師匠が大事にしていた物じゃったが…主は良く気付いてくれた…この中に精霊の記憶があるのじゃな?」

商人「多分…そうだよ貸して」

魔女「ほれ…」

商人「ホムンルクス…これで間違いない?」

ホムンルクス「その石は二つに分かれる様ですね…中に外部メモリが入って居ませんか?」

商人「え?こう?」スポ

ホムンルクス「はい…私の耳の後ろのソケットにそれを挿して下さい」

商人「…」グイ

ホムンルクス「メモリが挿入されました…40年分の精霊の記憶が記録されています」

魔女「おぉぉ…精霊がこれで蘇ったのじゃな?」

ホムンルクス「基幹プログラムが失われているので完全とは言えませんが記憶から再構築する事は可能です」

商人「分かる事は?」

ホムンルクス「沢山ありますが大事な事からお伝えします」

魔王に対するワクチンは未完成ですが抗体を持った種族が判明しています

それはドワーフの血液です

ドワーフは憎悪に心を侵されない事が分かっており

勇者を保護する立場としてかねてから勇者の傍に居る種族でした

ドワーフの血液を魔王に与える事で魔王の体内で抗体作用が働き縮小する可能性が80%

次に闇の祓い方に関して

魔王が狭間に居る間は闇が去る事はありません

唯一の方法として魔王を黄泉に送る必要があります


商人「…つまり勇者が指輪を使って散らばった魔王の魂を集め…魔王となった後に倒すという事だね?」

ホムンルクス「現状それ以外に方法はありません」

商人「ドワーフの血は…ドワーフの血はどうやって魔王に与える?」

ホムンルクス「それは精霊の記憶の中にはありません…私たちが考える事です」

商人「くそぅ!!!歴史を繰り返すしか無いのか!!」

ホムンルクス「それからもう一つお伝えしなければならない大事な事があります」

商人「なに?」

ホムンルクス「精霊が生きた理由です」

商人「言って」

ホムンルクス「精霊は…」


シュン ザク


盗賊「うぉ!!何で弓が飛んで来るんだ…おい!!ドワーフの気球に乗れ!!ここは危ねぇ!!」グイ

商人「ホムンルクス大丈夫?」

ホムンルクス「生体の背中に損傷…死には至りません」

盗賊「魔女も危ねぇ…気球に乗ってくれ!!」

魔女「すまぬ…千里眼で女エルフの目を見て居った」ノソノソ

盗賊「良いから急げ!!」グイ

商人「ホムンルクス…こっち」グイ

盗賊「飛ばすぞ!!ちと外の状況見て教えてくれい!!」


フワフワ 


商人「リザードマンだ…武器を持ってる」

魔女「それだけでは無い…トロールも動いておる…何が起こるのじゃ?」


シュンシュンシュン ストストスト


盗賊「ぬああああぁぁ!!魔女!!魔法で応射してくれ球皮に矢が当たったら飛べなくなる!!」

魔女「承知した…爆炎魔法!」ゴゴゴゴゴゴ ドーン

盗賊「サンドワームも暴れてんじゃ無ぇか…どうなってんだこりゃ!!」

商人「南西のオアシス方面!!気球が動いてる」

盗賊「あっちも緊急事態だな…気球の向き変える!!商人…お前も手伝え…そこのレバー回せ!!」

商人「う、うん…こうだね?」グルグル

盗賊「くそぅ…高度上がんねぇ…球皮に穴空いてんな!!?」

魔女「わらわはこれくらいの高さが魔法を撃ちやすいのじゃ…爆炎魔法!」ゴゴゴゴゴゴ ドーン

盗賊「一旦南西の軍と合流目指す」

『飛空艇』


シュゴーーーーー バサバサ


女戦士「お前…魔女にあんな事して良かったのか?」

女海賊「フン!!あんな女!!知らない!!」プン

女戦士「何故そのように怒っている?」

女海賊「魔女は勇者が魔王になる事を知っていて私たちに話さなかった…精霊の事も知ってて教えなかった」

女戦士「言えなかったのでは無いか?」

女海賊「ちゃんと教えてって言ったさ…悲しゅうなるから時が来たら…とか言って」

女戦士「私は話の前後が分からんのだが…勇者が魔王になると言うのは本当なのか?」

女海賊「お姉ぇはシャ・バクダ遺跡の勇者の像を見たよね?」

女戦士「あぁ…アレか」

女海賊「なら分かってんじゃん!!」

女戦士「ならなお更お前には話せなかったのだろう…お前には」

女海賊「勇者の定め…そんなもん私がぶっ壊してやる」ギリリ

女戦士「早まるなよ?」

女海賊「言われなくても分かってんよ…」

ローグ「正面!!ゾンビが集まってるっす」

女戦士「む!!あのゾンビ共は固まろうとして居るのか?」

女海賊「そうだよ…集まって人の形になる」

ローグ「あっちでもトロールが暴れているっす」

女戦士「これでは人間の軍隊は手も出せん」

女海賊「トロールは私らの敵じゃないよ…森を守ろうとしているだけ」

女戦士「どうする?ドラゴンライダーに任せておいて良いのか?」

女海賊「私が作った爆弾で吹っ飛ばす!!魔王の欠片なんか知るもんか!!」

女戦士「…これだな?…随分沢山作ったな」

女海賊「私が言うタイミングで爆弾落として!!…1個で良いから…3…2…1…今!!」


ピカーー チュドーーン


ローグ「やややや、やりやした…すごいっすねこの爆弾!」

女戦士「…驚いたな…この大きさであの爆発か」

女海賊「原爆弾ってんだ…ウラン結晶から作ってる」

女戦士「これで遺跡から湧いて来るゾンビを留めるのだな?」

女海賊「そう!!あのゾンビの塊は多分魔王だよ…器の無い魔王はああやって固まろうとしてる」

ローグ「それをギリギリまで防ごうって訳でやんすね?」

女海賊「まだそっちの樽の中にいっぱい作ってあるから出来るだけ食い止める」

『南西のオアシス上空』


ピカーー チュドーーン


盗賊「飛空艇の方でも戦闘が始まった様だな」

魔女「女海賊の爆弾はわらわの魔法を超えておるやも知れぬ」

商人「見て!!人間同士戦い始めてる…どうしてこうなった?」

盗賊「なにぃ!!こんな時に人間同士やってる場合じゃ…マテ…これがアサシンが言ってた裏切りか?」

商人「きっとそうだね…まずいね…僕たち魔王のまやかしの中に居るかもしれない」

盗賊「いつからまやかしの中だ?」

商人「ホムンルクス!!何か分からないか?」

ホムンルクス「はい…私には分かりませんが…私は一度もリザードマンを見ていません」

商人「そうか!!おかしい…武器を持ったリザードマンなんて初めて見た」

魔女「なんと狡猾な魔王なのじゃ…わらわはリザードマンを倒したつもりじゃったが…」

盗賊「マジかよ…ダメだ引き返す!!勇者に合流する!!」


シュンシュンシュン ストストスト


商人「うっ…」

盗賊「商人!!くっそ…」

魔女「反撃出来ぬ…」

盗賊「風魔法で気球のスピード上げてくれ!!」

魔女「風魔法!」ビュゥ

盗賊「ホムンルクス!!商人の手当て出来るか?」

ホムンルクス「はい…お任せください」

商人「僕は肩に矢を受けただけさ…君の方こそ背中から血が出てるじゃないか」

魔女「回復魔法!回復魔法!」ボワー

魔女「それで血は止まる筈じゃ…手当を続けよ」


シュンシュンシュン ストストスト


盗賊「ちぃぃぃぃ追いかけて来やがる…俺達を完全に敵だと思っていやがる」

魔女「ホムンルクスよ…これだけは言うておく…インドラの矢は絶対に使ってはならぬ…良いな?」

商人「どうして急に…」

魔女「今の状況はインドラの矢を使えばすべて無に返すことも出来るじゃろう…じゃがもう二度と同じ過ちを繰り返してはならぬ」

商人「二度と?」

魔女「滅びの始まりはインドラの矢から始まったのじゃ…師匠が精霊から聞いておったそうな」

商人「ホムンルクス!!それは本当?」

ホムンルクス「今の私は40年分の記憶しかないので分かりませんが…インドラの矢の威力からして文明を滅ぼすのは可能と思われます」

商人「切り抜けようが無いな…撤収しよう」

盗賊「それが出来りゃ良いが…この気球じゃ逃げきれん」


シュン ストン


盗賊「あっ…」

商人「ホムンルクス!!」

『シャ・バクダ遺跡』


バッサ バッサ ビュゥゥ


勇者「火炎魔法!火炎魔法!火炎魔法!」ゴゥ ゴゥ ゴゥ

女エルフ「勇者!!キリが無い…もう矢が無いわ」

勇者「一旦補給に観測所まで戻ろう!!」

女エルフ「うん…」

勇者「こっちは飛空艇の爆弾に任せよう…」

女エルフ「観測所の方でも戦闘が起きてる」

勇者「え?そっちまで?」



”見つけたぞ我が器…”



勇者「!!?そこか魔王!!」ビュゥ ザクン



”因縁の地で会うとは滑稽”



勇者「どこだ!!」ビュゥ


”ハッハッハッハッハ…我が一部となれ”


女エルフ「勇者!!ダメ…声を聞いてはダメ」

勇者「ふぅ…ふぅ…」

女エルフ「落ち着いて…目を閉じて?…今はまだ居ない」

勇者「…」フゥ フゥ

女エルフ「補給を…」バッサ ビュゥ



---そうだ…僕は目を閉じた方が良く見える---

『星の観測所』


バッサ バッサ ビュゥ


女エルフ「様子がおかしい…どうしてみんな弓を?」

勇者「女エルフ!!危ない!!」


シュンシュンシュン ザクザクザク


ドラゴン「ギャオーース」バッサ バッサ

勇者「ダメだ!!もう安全な場所は無い!!女エルフ離れろ」

女エルフ「え!?」


シュンシュンシュン ザクザクザク


女エルフ「…ぁぁぁ」

勇者「離れろぉぉぉぉぉ!!」

女エルフ「…どうして」フラリ ヒュー ドサ

勇者「うあぁぁぁぁ…ドラゴン!!女エルフをくわえて精霊の御所まで運べ!!」

ドラゴン「ギャオーース」ガブリ バッサ バッサ

勇者(落ち着け…どれが敵だ…人間は混乱している)

勇者(ダメだ…全部敵だ…全員混乱している)

勇者(待てよ…混乱しているのは僕か?)

勇者(目を閉じて感じろ…そう)


飛空艇は遺跡の上

ドワーフの気球は南西のオアシス

人間達は混乱してそこら中で戦闘

魔王はどこだ?

くそう…これ以上消耗出来ない

みんな死んで行く

ダメだまだ分からない

『精霊の御所』


バッサ バッサ ドッスーン


勇者「女エルフ!!回復魔法!!」ボワー

女エルフ「ダメ…心臓に…矢が刺さって…るの」

勇者「今から蘇生魔法を…」

女エルフ「…もう止まってる…から…良いの」

勇者「女エルフ!!うぅぅ」;;

女エルフ「エルフは死ん…でも森の一部に…なるからいつでも…会える」

勇者「ぅぅぅ」

女エルフ「私…見える…みんな必死…で戦ってる」

勇者「うん…僕も分かるよ」

女エルフ「私は…森にな…ってみんなを守って…あげる」

勇者「うん…」

女エルフ「心配…し…ないで?」

勇者「僕は僕のやる事をやって来る!」

女エルフ「私…が…守る…から…信じて」

勇者「くぅぅぅぅぅ」;;

女エルフ「…」ガクリ


勇者「うわああああぁぁぁぁぁ!!」ドン


------------------

------------------

------------------

------------------


勇者「ドラゴン!!来い!!魔王を退ける!!」

『ドワーフの気球』


シュンシュンシュン ストストスト


盗賊「クソがぁぁぁぁ!!」

魔女「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

商人「魔女も自分の回復を…」

魔女「わらわはまだ大丈夫じゃ…」

ホムンルクス「生体機能の維持が困難です…血液が足りません」

商人「血が…血が止まらない」

ホムンルクス「ご安心ください…私は生体機能が停止しても記憶を保存する事が出来ます」

商人「そんな…僕は君の管理者だ…停止なんか許可しない」

ホムンルクス「私の記憶のすべては外部メモリに保存しておきました…これを使えば又お会いする事ができます」

商人「魔女!!もっと回復魔法を」

魔女「分かっておる…回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

ホムンルクス「この生体は丈夫な生体ではありません…あと120秒で生体活動が停止します」

商人「ホムンルクス最後に聞きたい…君と同じ様なホムンルクスはどこかに無いか?」

ホムンルクス「精霊の記憶によりますと私以外にまだ1体残されている様です」

商人「どこにあるんだ?探して必ず君を目覚めさせる」

ホムンルクス「座標70.05722166,148.26978089です」

商人「それじゃ分かんない…盗賊!!地図はどこかに無い?」

盗賊「それどころじゃ無ぇ!!頭引っ込めてろ」

商人「ホムンルクス…座標じゃなくて大体の場所で良い…言葉で言って」

ホムンルクス「南の大陸…火山のふもとに研究施設があります」

商人「分かった…必ず探す」

ホムンルクス「又お会いできる事を楽しみにしてい…ます」

商人「ホムンルクス!!」

ホムンルクス「あなたが押さえている位置は私の心臓にあたります…私の心はそこにあるでしょうか?」

商人「あるよ…」

ホムンルクス「この生体は停止してしまうので私の心を預かっていてもらえませんか?」

商人「うん…わかった」

ホムンルクス「あと10秒で心が停止します…外部メモリをお願いします」

商人「君の心を預かった…必ず迎えに行く」

ホムンルクス「又…会う日…ま……で」

商人「…」

魔女「今際じゃ…精霊もこの様に簡単に亡くなるのじゃな」

商人「僕たちは生き延びる!!」

魔女「そうじゃ…それが人の定めじゃ」


エルフは森を守る定め

トロールは精霊を守る定め

ドワーフは勇者を守る定め

ドラゴンは命泉を守る定め

クラーケンは海を守る定め

人は愛を紡ぐ定め

『飛空艇』


ピカーー チュドーーン


女海賊「お姉ぇ!!その爆弾はボウガンで発射できる…やって!!」

女戦士「わかった…」ギリリ

ローグ「ゾンビの大群が触手になってここまで伸びてきそーっす!!」

女海賊「分かってる!!口動かしてないで次の爆弾用意しな!!」

女戦士「ドラゴンライダーの2人は何所に行ったのだ!!」

女海賊「あっちはあっちで大変なんだろうさ…あ!!ドラゴン!!」

女戦士「来たか…これで持ち直せる」バシュ


ピカーー チュドーーン


ローグ「ドワーフの気球もこっちに向かってるっす…あらら?何かに追いかけられてるでやんすねぇ」

女海賊「あっちは放って置いて良いから」

女戦士「そうでも無さそうだ…何か光で合図している」

女海賊「んーーもう!!回頭!!」グイ

ローグ「軍隊に追われている様でやんすねぇ?」

女戦士「なにぃ…こんな時に同士討ちか!!」

アサシン「クックック魔王のまやかしだ…フィン・イッシュはこれで壊滅したのだ」

女戦士「どうする!?手が出せん」

女海賊「そっちの樽に煙玉と閃光弾が入ってる…軍隊の上通るから全部撒いて」

ローグ「全部っすか?良ーんすか?」

女海賊「そこに置いとく飾りじゃないんだ!!使う時に使うの!!ケチケチすんな!!」

ローグ「了解でやんす~」

女海賊「向こうの気球と交差するよ!!撒き続けて!!」

ローグ「アイサー」ポロポロ


ピカーーーー モクモクモク


女海賊「どんどん撒いてよ!!今場所変えてるから…」

女戦士「フフお前は何でも出来るな…指揮も行動も私の上を行くでは無いか」

ローグ「ドワーフの気球から魔法を撃ち始めたっす…ボルケーノっす」

女戦士「どうやらあのゾンビの大群がラスボスな様だな」

女海賊「お姉ぇ!!ちょっと操縦変わって!!」

女戦士「どうした?」

女海賊「ドラゴンの動きがおかしい…たぶん誰かこっちに来る…ちょっとデッキに出る!!」

女戦士「わかった…ローグ!!次の爆弾を用意しろ」

『デッキ』


ビュゥゥゥゥゥ バサバサ


女海賊「誰?勇者?女エルフ?」


ピョン クルクル シュタッ


女海賊「勇者!!どうしたの?」

勇者「指輪を取りに来た」

女海賊「あ…」ソー

勇者「ありがとう…」

女海賊「死なないで!!」

勇者「…」ギュゥゥゥゥ

女海賊「…ぅぅぅ」ポロ

勇者「…お腹の子を守って」

女海賊「あんた…知ってたの?」

勇者「君を愛してる」ギュゥゥ

女海賊「ぅぅぅ」ポロポロ

勇者「アサシン!!行くぞ!!」

女海賊「え!?」

アサシン「…」

女海賊「どうして?」

勇者「女海賊…聞いて?…その子を必ず守って」

女海賊「うん…」ポロポロ

勇者「その子の名前は…」ピョン

アサシン「…」ピョン


勇者「未来」


女海賊「うわぁぁぁぁん…待ってぇぇ」ポロポロ

ローグ「危ないでやんす!!…落ちるっす」グイ

女戦士「…」ポロリ

『ドワーフの気球』


フワフワ バサバサ


魔女「もっと高度上げられんのかえ?ゾンビの触手に掴まってしまうぞ?」

盗賊「やってる!!おい商人!!操縦はお前がヤレ…俺は球皮に登って穴塞いでくる」

商人「わ、わかった」ノソノソ

魔女「爆炎魔法!竜巻魔法!ボルケーノ!」ゴゴゴゴゴゴ

商人「落ちない様に気を付けて!!」

盗賊「わーってらぁ!!俺様を誰だと思ってる…天下の大泥棒だ壁登りなんかちょろいもんよ…じゃぁな!!」ダダ

魔女「商人!大魔法を詠唱するで触手につかまるで無いぞ?」

商人「やってみる…右に行くのはあのハンドルだ」グリグリ

魔女「ブツブツブツブツ………絶対零度!」カキーン

盗賊「うぉぉぉぉ!!すげぇ…ゾンビが全部凍った…」

魔女「続けて詠唱するで早よぅ気球を修理せい!!」

盗賊「おい!!飛空艇から誰か2人飛び降りてドラゴンに乗った!!」

商人「オーケー援護出来る様にこっちも動く」

盗賊「下だ…あいつ等カタコンベの遺跡の方に向かっている!!回頭だ…180度回頭!!」

商人「えーと…えーっと…」グリグリ

盗賊「ぬぁぁぁ穴いっぱい空いてんじゃねぇか…」

『因縁の遺跡』


バッサ バッサ ドッスーン


勇者「ドラゴン…ここで良いよ…後はゾンビ退治任せた」

ドラゴン「ギャーース」バッサ バッサ

アサシン「やはりここか…」

勇者「うん…この下に魔王を感じる」

アサシン「下まで行くのか?」

勇者「その必要は無い…もう僕は見られている…アサシンの目を通じてね」

アサシン「なに!!私の目を通じてだと?」

勇者「そうだよ…すべての人の中に魔王は潜んで居るんだ…僕には分かる」



”来たな我が器よ”

”我は黄泉より狭間まで這いあがって来た”

”さぁ我を受け入れ我が一部となるのだ”

”さすればお前に世界の半分をやろう”



勇者「姿を現せ…」


”ヌハハハハハハハ”

”我が魂を見たいと申すか”

”見せてやろう我が一部となった勇者の姿を”



ゾワワワワワワワワ


アサシン「クックックどれ程悍ましい姿かと思えば…闇の正体はコレか」



”調和の時は既に終わった”

”さぁ祈りの指輪で我を求め”

”汝の身を贄として捧げよ”

”さすれば再び深淵に落ち闇は晴れる”


勇者「フン!」ダダッ スカ

勇者「聖剣エクスカリバーでも切れない…か」



”そんな物では我は滅ぼせぬ”

”大人しく我が一部となれ”


勇者「分かった…覚悟は出来ている」

勇者「アサシン…約束の時だ…」グッ

勇者「魔王のすべてと世界中すべての憎悪を望む!!」



---魔王来たれり---

『飛空艇』


シュゴーーーー バサバサ


女戦士「勇者とアサシンが遺跡に降りた…どうする気だ?」

女海賊「お姉ぇ!!やっぱ私諦めない!!」グイ

女戦士「お前…突っ込む気か…ヤメロ…やらせておけ!!」グイ ドン

女海賊「この船は私の船だよ…勝手な事しないで」

女戦士「ローグ!!女海賊を押さえろ!!」

ローグ「あねさんスマンでやんす」グイ

女海賊「離せ…離せよ!!」ジタバタ

女戦士「黙って見ていろ!!…アレが魔王の正体か?…あの闇が」


ターーン!!


ローグ「うがぁぁぁ…足が…つつつつ」

女海賊「お姉ぇ…どいて」

女戦士「お前…正気か?」

女海賊「もういい…」ターーン

女戦士「はぅ…くぅぅ」

女海賊「どけ!!どけってんだ!!…いう事聞けないなら降りて!!」

女戦士「お前…そんなに…」

女海賊「黙ってて!!」

ローグ「痛いっす…血が止まんねぇでやんすー」

女戦士「ええぃ…私が止血を」ズリズリ

ローグ「かしらも血が…」

女戦士「はっ…空が!!いや…すべての闇が勇者に吸い込まれて行く」

女海賊「うぉぁぁぁぁぁぁ」


ガコン ズズズズズズズズ

『因縁の遺跡』


勇者「うぉぁぁぁぁぁぁ!!」


---力が溢れる---

---魔翌力が溢れる---

---知恵が溢れる---

---記憶が溢れる---

---夢幻を思い出した---


勇者「我来たる…我こそが魔王なり」


ブス!!


アサシン「させるか…深淵に戻れ!!」ズブズブ

勇者「ぐはぁぁぁ…」

勇者「フハハハハハハ我は滅びぬ…何度でも蘇る」

勇者「フハハハハハハハハハハハハハ」



ガコン ズズズズズズズズ



アサシン「飛空艇か!!」

女海賊「勇者!!」タッタッタ

勇者「うぁぁぁぁぁぁ!!」

女海賊「アサシン!!あんたぁ!!」

アサシン「許せ…これしか方法が無かった」

女海賊「手を放して!!撃つよ!!」チャキリ

アサシン「まだ魔王は死んで居ない」

女海賊「うるさい!!」ターン

アサシン「ぐぅ…お前」ガク



ズブズブズブ ズブズブズブ

『ドワーフの気球』


フワフワ バサバサ


盗賊「ちぃ…操縦変われ!!回頭が遅せぇ!!」グイ

魔女「見て見よ…闇が勇者に吸い込まれて行きよる」

商人「飛空艇が突っ込んで行く…」

魔女「良く見ておくのじゃ…この出来事は後世に伝えて行かねばならぬ…目を離すで無いぞ?」

盗賊「何が起きてんだ?俺には見えねぇ…なんでこの気球は操縦部に観測窓付けて無ぇんだ」ボカ

商人「あれは…勇者が魔王になる瞬間…か?」

魔女「そうじゃ古の伝説はすべて事実じゃった…見て見よ闇が晴れよる」

商人「星だ!!星が見える!!」

盗賊「俺にも見せろ…ん?勇者の前に居るのは…アサシンと女海賊か?」



ズブズブズブ ズブズブズブ


魔女「おぉぉぉぉ地面から芽が生えてきおった…何が起こるんじゃ?」

商人「木だ!!木が勇者を包み始めている」

魔女「見よ…無数の光…いやあれは魂じゃ魂が空に飛んでいきよる」

盗賊「植物の芽か?触手か…光を追いかけてる」

魔女「なんという奇跡か…木が魂を守ろうとしておる…ぉぉぉぉ」ポロ

盗賊「俺達もあそこに行くぞ…」ダダッ

『因縁の遺跡』


ズブズブズブ ズブズブズブ


女海賊「何よ…この草はぁぁ!!邪魔なんだよ…」

女海賊「勇者!?」

勇者「…」ドタリ

女海賊「ダメぇぇぇぇぇ死んじゃダメぇぇぇ!!」

アサシン「ぐふっ…なんだこの木は」

女海賊「くっそ邪魔な木…吹っ飛ばしてやる!!」チリチリ ドーン

アサシン「クックック…流石強引にこじ開ける」

女海賊「勇者!?」グイ

勇者「…」グッタリ

女海賊「心臓…どうしよう…そうだ蘇生魔法!」

女海賊「だめだ魔翌力が無い…だれか回復魔法出来ないの?」

女海賊「女エルフ!!どこに居んのさ!!…ハッ…この木はもしかして女エルフ?」

女海賊「くそぅ!!あんたに勇者は渡さないよ!!」

女海賊「何か言えよ…どうすりゃ良いのさ…血だ…血を止めなきゃ」ギュゥ

女海賊「止まんない…そうだ!!エリクサーだ!!飛空艇にある…」ヨッコラ

女海賊「死なないでお願い…お願い…お願い」ダダダ



------------------



女海賊「勇者…ほらエリクサーだよ飲んで?」グイ

女海賊「心臓にもエリクサー入れる」

女海賊「目を覚ましてよぅ…お願いだよぅ」ポロポロ

女戦士「お前…」

ローグ「必死でやんす…」

女海賊「うわぁぁぁぁぁぁん」ポロポロ

『ドワーフの気球』


フワフワ バサバサ


商人「朝日だ!!」

魔女「おぉぉぉぉ闇が晴れた…」

盗賊「終わった…の…か?」

商人「女海賊が飛空艇に勇者を運んでる」

魔女「アサシンが一人倒れておるぞ?」

盗賊「あぁ連れて行く…商人!アサシンに声掛けてくれ」

商人「アサシーーン!!大丈夫ぅぅぅ?」

盗賊「降ろすぞ‥‥」フワフワ ドッスン

商人「手を振ってた…怪我してるみたい」

盗賊「おう!!商人一緒に来い…アサシン担ぐの手伝え」タッタ

商人「うん…」タッタ

盗賊「アサシン!!大丈夫か?」

アサシン「クックック…アーッハッハ」

盗賊「まぁ大丈夫そうだな?立てるか?うお!!お前…腹に穴空いてんじゃねぇか…笑ってる場合じゃねぇだろ」

商人「これはひどいな…手当が必要だ…魔女?回復魔法をお願い」

アサシン「私より勇者が先では無いか?」

魔女「勇者は回復の必要が無い…」

アサシン「何故そう思う?クックック」

盗賊「何笑ってんだ…頭逝かれたか?」

アサシン「魔女…お前のそういう態度に傷付く者が居る事を分からないのか?」

魔女「…わらわも心苦しいのじゃ察してくれ」

アサシン「それでも尚…生かす努力をしている女海賊を見て何も感じないか?」

魔女「…すまぬ…わらわは会わせる顔が無い」

アサシン「クックック…アーッハッハ」

魔女「…」プルプル

『飛空艇』


女海賊「大丈夫…傷口塞がってるから…今からマッサージするね」グッグッグッ

女海賊「ローグ!!あんたもエリクサー飲んで回復して手伝え」

ローグ「は、は、はい…」

女海賊「お姉ぇ…私は勇者…いや剣士を連れて旅に出る」

女戦士「どうするのだ?」

女海賊「私は諦めない…欲しいものは死んでも手に入れる主義さ」

女戦士「ハハ付き合えと言うのか?」

女海賊「嫌なら降りていいさ」

女戦士「さて…どうしたものか…」

女海賊「ローグ!!マッサージ続けて…止めたらあんたの頭吹っ飛ぶと思いな!!」

ローグ「へ…へい…」

女海賊「…」ガチャガチャ

女戦士「武器を何に使う!?」

女海賊「…」スタスタ



---------------

盗賊「おぉ!!女海賊!!勇者はどうした?…おいおい…武器をこっちに向けんな」

女海賊「ホムちゃんはどうした?」

商人「彼女は流れ矢に当たって停止した…」

女海賊「…ちっ…ホムちゃんまで…」

盗賊「やけに粗ぶってんじゃねぇか…武器を降ろせ」

女海賊「ホムちゃんから何か聞いて居ないの?」

商人「まだ南の大陸にホムンルクスが1体あるって…」

女海賊「どこ?」

商人「火山のふもとに研究所があるらしい…ねぇ武器降ろしてよ」

盗賊「勇者の手当ては良いのか?」

女海賊「もう勇者の仕事は終わったさ…どういう事か知ってるよね?…魔女!」

魔女「…隠しておってすまぬ」

女海賊「それからあんたも!!」

商人「え?」ビク

女海賊「私はもうあんた達を信じない…今から敵だ」

盗賊「おいおい…そりゃ無ぇぜ」


ターン


盗賊「あだっ…」タジ

女海賊「フン!!揃いも揃って魔王の言いなりになりやがって…」

魔女「済まぬ…本当に済まなんだ」ヨタヨタ


ターン


魔女「あぅ…」ドタ

女海賊「敵だと言ったはずだ…近づくな!!」

盗賊「お前…どうするつもりだ?」

女海賊「私の勝手さ…精々平和を満喫しておきな!!」

盗賊「おい!!どこに行く」

女海賊「わざわざサヨナラを言いに来てやったんだ…目に焼き付けときな」スタスタ

盗賊「待てよ!!」ズリズリ



フワリ シュゴーーーーー

盗賊「あぁぁぁ…行っちまった…」

魔女「ぅぅぅ…」ポロポロ

商人「魔女…仕方ないよ」

魔女「わらわは修行が足りぬ様じゃ…人の心を学び忘れておった」ポロポロ

盗賊「ありゃ相当怒っちまったな…もう帰って来ねぇかもしれん」

アサシン「クックック…アサシンの奥義ハートブレイクという技を知っているか?」

盗賊「心臓を仮死状態にする技だな?まさかお前それでとどめ刺したのか?」

アサシン「魔王はまんまと深淵に落ちて行った…笑わずに居られるか?」

盗賊「マジかよ…それじゃ勇者…いや剣士は死んで無いという事か」

アサシン「魂が何処に行ったかは知らん…だが体は死んで居ない」

魔女「それは真か…何故早よぅ言わん」

アサシン「私は試していたのだ…ドワーフだけは最後まで勇者を守ろうとする」

魔女「それが定めじゃ」

アサシン「人間が何をしていたかが問題だ…利己的に動いて居なかったか?」

魔女「…」

アサシン「それから何故ドワーフは人間に武器を振るった?…それは私たちの中に住む魔王を見抜いているのでは無いか?」

盗賊「どういう事だ?」

魔女「魔王はまだ滅んでおらぬ…退いただけじゃ」

アサシン「魔王はすでに動き始めている…私にはそう思える」

魔女「その通りやも知れぬ…わらわ達は伝説に従い勇者を見殺しにしただけと言い換える事が出来る」

アサシン「女海賊には少なくともそう見えて居る…今頃反省しても遅いのだが」

盗賊「まぁ今は復興の時だ…こんな所で凹んでなんかいられ無ぇ!一回帰るぞ」

アサシン「一からやり直しだな…やはり私は盗賊ギルドを続けなければならん様だ」

盗賊「俺はもう関わら無ぇけどな…」

魔女「わらわも修行し直す…」

盗賊「商人!お前はどうする?」

商人「僕はやらなければいけない事が出来た…南の大陸に渡る」

盗賊「そうか…俺も子供達を迎えに行くんだ…途中まで一緒だ」

商人「助かるよ」



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100日の闇は晴れ再び平和が訪れた

世界の人口の7割が失われたこの厄災は

後にフィン・イッシュ滅亡の危機として

語り継がれる事になる




…そして数年後


やっと追い付いた
ホムンクルスがホムンルクスになってるよ
まあ他にもいっぱい有るけどww

『ユートピア』


ワーイ ワーイ


盗賊「ちぃ…今日も商船入って来ねぇ」

情報屋「また港見てるの?」

盗賊「そろそろ食い物ん無くなるぞ?…商船入って来ねぇと商売にならん」

情報屋「あなたの船動かしたら?」

盗賊「そうしたい所だが最近は海賊船がうろついてるらしくてな…俺の船は漁船じゃ無ぇから狙われ易いんだ」

情報屋「お金は沢山あるのに困ったわね」

盗賊「金じゃ腹膨れんしな…動物狩りにでも行くしか無ぇか…って…お?船がこっちに向かってるな」

情報屋「え!?本当?久しぶりね」

盗賊「俺の望遠鏡何処行った?」

情報屋「あなたもう忘れたの?木の上で覗いてたじゃない…」

盗賊「おおぅそうだった…よっと」ピョン

情報屋「見える?」

盗賊「ありゃセントラルの軍船だな…情報屋の仕事が来たぜ」

情報屋「着替えて来る!」

盗賊「おい!!娘達も連れてけ…町に兵隊が降りてくんぞ」

情報屋「分かってる…」

盗賊「俺は港に降りて軍船の規模確かめて来る…なんでも良いから情報入手してこいな」

『帆船』


ゴシゴシ ゴシゴシ


盗賊(…こりゃ食い物期待できそうだな)

盗賊(あそこが荷室か…よし…夜に樽を海へ落としに行こう)

盗賊(ん?やけに兵隊が多いな…しかも大砲完備だ)

盗賊(どっかと戦うつもりなのか?)

盗賊(海賊狩りにしちゃ船が遅すぎる)

盗賊(こんだけ兵隊多いと荷室にも居るよな…ちぃ)

盗賊(ちぃと様子見た方が安全か)


-----------------


衛兵「2日の停泊か…兵隊はどのくらい町へ出る?」

船兵「50人ほど交代しながら休憩させます」

衛兵「今港町は食料難でな…あまり良い食事は期待出来ん」

船兵「酒と女が居れば問題ないですよ」

衛兵「ふん!町の中心街はあっちだ…羽目を外さない様に頼む…忙しくなるんでな」

船兵「わかってますよ」

衛兵「ちなみに武器の携帯は禁止だ…治安員に魔術師が居る事を忘れるな」

船兵「はいはい問題は起こさない様に言い聞かせておきます」

衛兵「下船許可!!」

船兵「よーし!!許可が出たぁ!!1班は24時間の自由時間とする!!2班は待機!!」


うおぉぉぉぉぉぉ


衛兵「ったくセントラルの奴らは女・女・女・女…下品な奴らだ」ブツブツ

『夜』


ワイワイ ガヤガヤ


店主「いらっしゃいませ…あぁ盗賊さんですね」

盗賊「あぁ今日は繁盛してるな?」

店主「立ち飲みになってしまいますが…良かったですか?」

盗賊「一杯だけな…ほいコレ」ジャラ

店主「いつものエール酒で良いですね?」

盗賊「おう…なんか面白い話聞けて無ぇか?」

店主「面白いかどうかわかりませんがセントラルの方で大きな爆発事故があったそうですわ」

盗賊「おぉ!!面白そうじゃ無ぇか」

店主「どうも城の真下にあった下水という所で事故があったとか」

盗賊「ほぉ…そりゃまた変わった場所の事故だな」

店主「ここからがオカルトネタですがね?爆発事故の現場で大量の死体が発見されて大騒ぎになったと聞きました」

盗賊「すげぇなそりゃ」---カタコンベだな---

店主「船兵に聞くともっと話してくれるかもしれませんよ?」

盗賊「おう…ちっと耳立てて置くわ」グビ



ネーちゃん今日はどこで寝るの

おっぱいでパフパフ頼むぅ

おい逃げんなよぉ良いじゃ無ぇか

酒もってこい酒ぇぇ

俺は白狼の盗賊団知ってんだぜ?

お前知らねぇの?

ど派手な盗賊団だよホラこれが人相書き



盗賊「…」---いつの話をしているのか---

店主「いやぁぁみんな酒が回って来ましたねぇ」

盗賊「お代取りそびれない様にな?俺はそろそろ帰るわ…又な」ノシ

店主「またのお越しをお待ちしております」

『墓』


盗賊「…ぁぁぁ」グビ

盗賊「まっずい酒だな」ヒック

情報屋「やっぱりここに居たんだ…家に居なくて心配した」

盗賊「おぅ戻ったか…娘たちは?」

情報屋「久しぶりのお客さんで娘達も楽しんでるわ」

盗賊「…そうかそりゃ良かった…で…何か良い情報聞けたか?」

情報屋「セントラルで爆発事故」

盗賊「あぁ…そりゃ俺も聞いた…カタコンベだろ」

情報屋「そう…他にもあってね?白狼の盗賊団」

盗賊「んん?そりゃ昔の話じゃ無ぇのか?」

情報屋「最近あちこちで目撃されているらしいわ…気になるでしょ?」

盗賊「マジか…嬉しい知らせだな」

情報屋「爆発事故が合った日も2人組の姿を見た人が居る」

盗賊「そうか…なんか俺の事みたいで嬉しくなるな…ただ見られるのはプロのやる事じゃ無ぇ」

情報屋「あなた…良いの?やらせておいて…」

盗賊「んんん…まぁ気になるが…会いに来ねえって事は関わって欲しくないんだろ」

情報屋「女海賊はまだ戦ってる…なんか放って置けないな」

盗賊「俺達はな…平和欲しさに勇者を魔王に売っちまった立場なんだ…伝説に託けてな」

情報屋「…」

盗賊「関わらせて下さいなんて言えると思うか?」

情報屋「でもそれしか方法が無かったのだから…」

盗賊「俺はなぁ…本当に人間はクソみたいな生き物だと思ったわ…」


平和な時は自分勝手に生きててよ…困ったときは神頼みで何もしやしねぇ

勇者を奉って…なんだかんだした挙句に…最後はやっぱり勇者頼みだ

たった一人で魔王に立ち向かってんのによ…もう忘れていやがる

エルフやドラゴンが人間を嫌がるのも今なら理解できる

女海賊に撃たれて気が付いた…俺らに何か言う資格なんて無ぇってな


情報屋「その傷跡…」

盗賊「そうだ…この傷が痛むたびに思い出す…これは俺の戒めだ」

情報屋「戒め…か…」

『翌朝_東の入り江』


ザブーン ザブーン


盗賊「おぉ…有った有った」

情報屋「樽が流れ着いている?」

盗賊「ヌハハこれはな…昨日の夜に例の軍船から海に落とした物だ…ここに流れ着くんだ」

情報屋「へぇ…いっぱい盗んだのね?フフフ」

盗賊「馬車まで運ぶのを手伝え…よっこら」

情報屋「重いわね…」

盗賊「多分加工した小麦だ…こんだけありゃ1年は食える」

情報屋「大丈夫?そんなに盗んで…」

盗賊「軍船ん中はまだいっぱい荷が積んである…バレやし無ぇよ」

情報屋「ねぇ東側の海…あそこにも船があるわ」

盗賊「本当だな…あそこは普通の航路じゃ無ぇ…漁船にしちゃでかいな」

情報屋「船の上に気球も見える」

盗賊「やっぱ海でなんかやるっぽいな…気球が居るって事は海賊狩りかもしれん」

情報屋「もっと向こうにも…見える?」

盗賊「船団組んでんだな…まぁシン・リーンの船団だろ…よそ見して無ぇで早い所樽運ぶぞ!」

情報屋「ん…あ…ごめん」

『数日後』


情報屋「盗賊!!聞いて聞いて!!」

盗賊「んん?どしたぁ」

情報屋「商船入港してる!!」

盗賊「うぉ!!マジか!!やっと来たかぁぁ…ちと行って来るわ」

情報屋「私も行く」

盗賊「おぉ来い…娘達も呼んで来い!!買い物だ!!」

情報屋「娘達ぃぃ!!商船きたわよー!!」

娘達「え!?マジ!!ムキーーーーーー」

情報屋「お金忘れないで!!」



『街道』


ワイワイ ガヤガヤ


盗賊「好きなもん買え!!珍しい食い物も出来るだけ沢山買え!!」

娘達「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

情報屋「キ・カイからの商船ね…食べ物は期待できないかなー」

盗賊「あっちでは何が売れるんだろうな?」

情報屋「さぁ…こっちの特産なら何でも売れるんじゃない?」

盗賊「ぬぁぁぁ酒買い占めとけば良かった…ホップ酒にハチミツ酒…エール酒も特産だ」

商人「それも良いけど塩だよ」

盗賊「塩かぁ…塩なら家にあるが勿体無ぇな」

商人「どれくらいあるのかな?」

盗賊「どれくらい…ておい!!商人じゃ無ぇか!!おおおおおお!!背伸びたなお前」

商人「ハハハ久しぶりだね」

盗賊「元気してたか!!おい情報屋!!懐かしい奴が来たぞ」

情報屋「あら?お久しぶり…元気してた?」

商人「そっちも元気そうだね」

盗賊「あぁ毎日ヒマでよぅ…で何しに来たんだ?商売か?」

商人「まぁ…そんな所かな」

盗賊「後で家に寄ってけ…バーベキューするぞ!!」

商人「初めからそのつもりさ」

盗賊「買い物どころじゃ無くなったなこりゃ」

商人「ゆっくり買い物してて良いさ…僕は先に母さんの墓に行って来るよ」

盗賊「おぉそうだな…ゆっくり話してってくれ」

『ユートピア』


ジュージュー


商人「やっぱりここはのどかで良いねぇ」モグモグ

盗賊「見て見ろ…子供達も大きくなった」

商人「良いのかい?こんなに沢山の肉で贅沢して?」

盗賊「今日くらいは良いだろ…その言い方だとキ・カイも食料不足か?」

商人「魚は有るんだけどね…肉が無い」

盗賊「こっちは森に近い事もあってな?なんとか肉は手に入る」

商人「なるほどね」

盗賊「さて…急にこっちに来るからには遊びに来た訳じゃないんだろ?どうした?助けてほしいのか?」

商人「ハハハそんなに急がなくても良いけどね」モグ

盗賊「俺ぁヒマなんだ…ズバリ言えよ」

商人「そうかい?じゃぁズバリ…キ・カイに引っ越しさ」

盗賊「ほぅ…その心は?」

商人「僕の影武者になって欲しいんだ…どうやら僕を狙ってる人が居る様でね」

盗賊「お前なにか悪い事やってるんじゃないだろうな?」

商人「只の商人だよ…ちょっとだけ情報屋の真似してるだけなんだけどね」

情報屋「私の真似?」

商人「情報を売ってるだけさ」

情報屋「ふぅん…扱う情報によっては悪い事になるわね」

盗賊「影武者が欲しいってのは只事じゃないと思うがな」

商人「顔が割れると商売しにくくなるんだ」

盗賊「それは分かるが影武者なんぞ金で雇えば良いだろ」

商人「もう何人も雇ったさ…でも信用出来なくてね」

盗賊「それだけじゃ行く気になれんなぁ」

商人「じゃぁもう一つ情報を出す…もう一体のホムンルクスが居ると思われる古代遺跡のおよその場所が分かった」

盗賊「おぉ!!宝探しか…乗った」

情報屋「ねぇ?影武者の話と結びつかないわ?どうして?」

商人「僕が古代遺跡の情報を集めてるのを察知してる人が居る様なんだ」

情報屋「どうして分かったの?」

商人「何度もコンタクト取ろうとしてる…探られてるんだよ」

盗賊「相手は誰だか分からんのか?」

商人「僕は会って無いからね」

盗賊「なるほど上手く立ち回ってる訳か…」

商人「まぁ家族旅行と思って付き合ってよ」

盗賊「そうだなぁ…食力も余裕があるし行ってみるか」

『帆船』


ギシギシ ギシギシ


盗賊「ようし!!これで積み荷は全部だな?ブタは荷室の囲いから出さん様にしてくれぇ」ブヒブヒ

情報屋「馬は連れて行く?」

盗賊「いや…こいつは放牧しとく…餌が足らん」

商人「武器調達してきたよ」

盗賊「おぉ子供たちに配ってくれ…ちったぁ戦える様になってもらわんとな」

商人「これで立派な海賊だね」

盗賊「そうだな…もちっと鍛えんとイカンが…お前もな」

情報屋「じゃぁ娘達呼んでくるわ」

盗賊「おう!!」

商人「賑やかな航海になるね…子供ばっかりだけど」

盗賊「あぁ娘達がポンポン生んじまうもんだからしょうがねぇ」

商人「相手はどうなってるの?」

盗賊「知らん…聞くと怒るからなヌハハ」

商人「お~い!!娘達ぃぃ出発するよぉぉ!!」


ワイワイ ギャーギャー


盗賊「全員乗ったな!?商人!!碇あげろぉぉぉ!!面舵いっぱーーーい!!」


ギシギシ グググググ

----------------

----------------

----------------

----------------

----------------





『東蛮族の町』


女海賊「未来!!ちゃんと付いて来るんだよ」

子供「うん!」

女海賊「いくよ…いつも通り!」バシュ


ピカーー チュドーーーン


女海賊「よしよし…注意あっちに行った…ハイディング!」スゥ

子供「…」スゥ

女海賊「迷子になって無いね?」

子供「うん」

女海賊「おいで…」タッタッタ

子供「…」シュタタ シュタタ

女海賊「未来!手分けして探す…10分でここに戻って…絶対狭間から出たらダメ!分かった?」

子供「うん」

女海賊「じゃ10分後」タッタッタ



---10分後---



子供「ママ!!階段見つけたよ」

女海賊「案内して」

子供「こっち…」シュタタ シュタタ

女海賊「ここかい?」

子供「うん…違う?」

女海賊「降りて確認する…付いておいで」スタスタ

子供「扉だね」

女海賊「…これは違うタイプの扉…開けるから未来もやり方しっかり覚えて」カチャカチャ ガチン

子供「開いた!」

女海賊「ハズレ…好きな物盗って良いよ」

子供「やった…これ何?」

女海賊「オークが使う装飾品…気に入ったの?」

子供「顔を隠す物だよね?」

女海賊「お面だよ…」

子供「これだけ持って帰る」

女海賊「じゃ…戻るよ」タッタッタ

子供「うん」シュタタ シュタタ

『飛空艇』



女海賊「未来?」

子供「うん」

女海賊「リリース」スゥ

子供「…」スゥ


ローグ「早かったでやんすね」

女海賊「出して」

ローグ「アイサー」


フワリ シュゴーーーー


女海賊「ハイディング!」

ローグ「分かってるでやんす」スゥ

子供「ママ!!お面付けても良い?」

女海賊「好きにしなさい?」

子供「やった!!」

ローグ「ここにも無かったでやんすか…次どうしましょうね?」

女海賊「やっぱり闇雲に探しても無駄みたい…一旦基地に戻ってお姉ぇに情報聞く」

ローグ「もう火山のふもとは探し尽くした感じっすねぇ…」

女海賊「ちぃ…」イライラ

ローグ「情報が足りんでやんす」

女海賊「分かってんよ!!イライラさせないで…」

ローグ「へいへい…」

『海賊の基地』


ツカツカ ツカツカ


女海賊「お姉ぇ…沖に船が出てる…何?」

女戦士「おぉ…戻って来たのか…アレは海賊船だ…この辺に漁船が近寄って来ない様にしている」

女海賊「ふーん…下手に船置いとくと逆に怪しまれるんじゃない?」

女戦士「気にし過ぎだ…それで…遺跡は見つからなかったか」

女海賊「もう歩いて探すしか無い…お姉は何か情報掴んでない?」

女戦士「古都キ・カイにな古代遺跡の情報を集めている旅芸人が居るらしいのだが…なかなかコンタクト出来ない」

女海賊「私が行って来る」

女戦士「待て…もう少しで正体を掴める」

女海賊「正体?」

女戦士「恐らくプロの情報屋だ…下手に近づくと行方が分からなくなる」

女海賊「もう!!イライラする…私に黙って休んでろっての?」

女戦士「もう少し辛抱しろ…代わりに少し運んでもらいたい物がある」

女海賊「何さ!?小間使いは御免だよ!!」

女戦士「セントラルまでミスリル銀を運んでほしい…報酬はウラン結晶だ」

女海賊「!!ウラン結晶…取引に行くって事?」

女戦士「そうだ…セントラルの軍部が取引に応じた…詳細はローグに伝えて置く」

女海賊「行くしか無いか」

女戦士「もうすぐ無くなるのだろう?」

女海賊「…」

女戦士「ついでに例のカタコンベも破壊しておけ…災いの元だ」

女海賊「なんでセントラルはミスリル銀を欲しがってんのさ…」

女戦士「武器以外に使い道があるか?…そういう事だ…また何か起きる」

女海賊「未来…おいで…」ギュゥ

子供「ぅぅぅ苦しい…よ」

女戦士「未来も連れて行くのか?ここに居させてやっても良いんだぞ?」

女海賊「生き抜く訓練だよ…」

女戦士「少し早いと思うが」

女海賊「未来の事に口を出さないで」

女戦士「ふん…まぁ良いお前がしっかり守れ」

女海賊「言われなくても分かってる」

『基地の入り江』


やばい!来た!

おい!!酒飲んでる場合じゃねぇ!!

隠れろ…殺されるぞ!!


ツカツカ ツカツカ


女海賊「…」ジロリ

ローグ「あねさん…みんな怖がってるっす…」

女海賊「今隠れた奴!!出て来な!!」チャキリ

男共「へ…へい…」ガクブル

女海賊「私の機嫌損ねたらどうなるか分かってんだろうね…」スチャ

男共「…」ゴクリ

女海賊「私を特別扱いしろとは言って無いんだ…普通に出来ないなら…」


ターン カランカラン


女海賊「さて…気の利いた事言ってみな」

男共「お、お気を付けて行ってらっせぇ…」ガクガク

女海賊「それで良いんだ…良い男がビクビクしてんじゃ無いよ」

男共「へ…へい…」

ローグ「あねさん…その武器向けられて無理ってもんす」

女海賊「あぁ…悪かったね」スッ

男共「…」ホッ

女海賊「私が嫌いかい?」

男共「いえ…そんな滅相も無い」

女海賊「この美貌を見ても誰も何も言って来やしない…」

ローグ「怖すぎるんす」

女海賊「…」ジロリ

ローグ「ほらほらほら…それが怖いんすよ」

女海賊「フン!!早くミスリル銀積み込みな!!」

ローグ「アイサー」タッタッタ

『飛空艇』


シュゴーーー バサバサ


ローグ「そんな機嫌損ねないでくれやんす」

女海賊「何さ!!私は何も言って無い…」

ローグ「あっしは聞いたでやんすよ?あねさんは海賊の中でカリスマっすよ?」

女海賊「そんなのどうでも良い」

ローグ「あねさんのお陰であっしら海賊に軍艦すら近寄って来ねぇんすから」

女海賊「ちっとやり過ぎたね…反省してるよ」

ローグ「いやぁぁ…あねさんの爆弾は一発で軍艦を沈めちまうもんすからねぇ…」


それにあの小さい大砲の武器

あんな武器持ってるの世界中であねさんだけっすね

それから派手な格好にその美貌と来りゃ

みんな憧れるのは分かるっすよ


女海賊「はぁぁぁもっと言って…癒される」ニマー

ローグ「機嫌なおりやしたかね?これで何回目っすかね?」

女海賊「…」チャキリ

ローグ「ちょちょちょ…もう一回始めから言うでやんすよ?」

女海賊「言って」

ローグ「あねさんはですね…カリスマなんすよ…」

『セントラル』


ローグ「飛空艇はハイディングで隠しておくでやんす…集合は明日の夜明けで良いっすか?」

女海賊「おっけ…私と未来は自由にしてて良いんだね?」

ローグ「かしらからはそうさせろと言われているでやんす…気を使ってるんよ」

女海賊「下水には近づかないで…分かってるよね?」

ローグ「分かりやした」

女海賊「未来?ちょっと遊びに行こっか…」

子供「本当に?何があるの?」

女海賊「買い物…一人で出来る?」

子供「自信ないなぁ…」

女海賊「よし!やってみよう」

子供「うん…」

女海賊「じゃぁ付いておいで?」

子供「ハイディングは?」

女海賊「今日は無し」

子供「じゃぁ人がいっぱい居るね?」

女海賊「悪い人も居るから気を付けなさい?」

子供「うん!」

女海賊「じゃぁフードは深く被って…」

子供「分かってるよ」ファサ

女海賊「付いていらっしゃい」タッタッタ

子供「待って」シュタタ

『貧民街』


子供「…ここは何?みんな野宿する所?」

女海賊「ここはね…昔ママが住んでいた場所なの」

子供「建物がみんな壊れてるね」

女海賊「…もう誰も知っている人居ない」

子供「焚火の所に人が集まってるよ?」

女海賊「ここの人たちはあんな風におしゃべりするんだよ」

子供「へぇ…あ!」ドテ

女海賊「足元悪いから気を付けて…ハッ!!」

子供「ててて…何だコレ…看板?カク・レガ?」


---狭間に出入りして分からなくなってた---

---あれからどれくらい経ったのか---


子供「ママ?…ママ?…どうしたの?」

女海賊「ううん…行こっか」

子供「泣いてるの?」

女海賊「昔を思い出してちょっとね」

子供「悲しい思い出?」

女海賊「ううん…楽しい思い出」

子供「良かった」

女海賊「ここをまっすぐ行くと買い物できる場所だよ」

子供「いこ!!」グイ

『中央広場』


ガヤガヤ ガヤガヤ


女海賊「この広場の中なら自由に買い物して良いよ?」

子供「本当に!いっぱいあるなぁ…」

女海賊「はいお金…無くさない様にね?」ジャラリ

子供「うん!!」

女海賊「ママはここで掛けてるからいってらっしゃい?」

子供「行って来る!!」


---目を閉じるといろんな音が聞こえる---

---剣士はこんな世界を感じていたんだ---

---良く耳を澄ますと未来の足音も聞こえる---

---沢山の音に溢れた世界---


ぼっちゃんお金あるの?

あるよホラ

おーお金持ちだねぇ

はいおつりだよ


ドクン!!


”贄が足りぬ…贄が足りぬ…”


女海賊「ハッ!!未来!!何処!?」ガバッ

女海賊「未来!!」

子供「ママ?どうしたの?」

女海賊「はぁはぁ…はぁ…」

子供「どうしたの?怖い顔して?」

女海賊「…」ゴクリ



---何この嫌な予感---



女海賊「ママも一緒に行こうかな…手を繋いで?」ドクン ドクン ドクン

子供「うん…ママ?手が震えてる」

女海賊「大丈夫…次は何買う?」---落ち着け…落ち着け…落ち着け---

『宿屋』


カラン コロン


店主「いらっしゃいませ…今日はお泊りですか?」

女海賊「空いてる?食事も2人分」

店主「はい空いております」

女海賊「明日は朝が早いからお代は先に…」ジャラリ

店主「ありがとうございます…お食事はお部屋にお持ちしますか?」

女海賊「そうして…」

店主「ではご案内いたします…どうぞこちらへ」スタスタ

女海賊「未来?おいで…」スタ

子供「うん…」トコトコ

店主「こちらのお部屋になります…後ほどお食事をお持ちいたしますので…ごゆっくりお休みください」

女海賊「ありがとう…」


ガチャリ バタン


子供「ベッドだ!!」ボヨーン

女海賊「ふぅ…」

子供「疲れたの?」

女海賊「ママはね…宿屋で泊まるのが苦手なんだ」

子供「え!?カリスマなのに?」

女海賊「あんたもそういう事言うのか!このぅ…」グイ ギュゥ

子供「くるしいよ…」ぅぅ

女海賊「楽しかった?」

子供「うん…ママと買い物出来て楽しかった」

女海賊「良かったね」

子供「でもなんかママおかしいよ?怖いの?」

女海賊「ううん…怖くなんか無いよ」

子供「ふーん…」チラ

女海賊「食事が終わったら…仕事ね…いつものやつ」

子供「うん…わかった」

『日没』


女海賊「未来…気持ちを切り替えて…今からは遊びじゃ無いよ」

子供「うん…」

女海賊「説明するよ…今日はカタコンベという所を爆弾で破壊する」

女海賊「今から海に行って下水という場所を通ってカタコンベに行く」

女海賊「カタコンベには死霊が沢山居るから魔方陣のお守りをしっかり身に着けて」

子供「うん…」

女海賊「爆弾を設置したらそのまま来た道を戻って海まで走る」

女海賊「海まで出たら飛空艇の場所は分かるね?」

女海賊「もし迷子になったら飛空艇の場所で集合…良い?分かった?」

子供「大丈夫」

女海賊「よし…それじゃ行くよ?」

子供「うん」

女海賊「迷子にならない様に」

子供「分かってる」

女海賊「付いて来て」タッタッタ

『下水』

ピチョン ピチョン

子供「ママ…あの魔物は?」

女海賊「あれはラットマン…ネズミの化け物」

子供「良いの放って置いて?」

女海賊「こっちに気付いて居ないから…あぁ帰りに面倒だから倒しておくか」

子供「僕見ておく」

女海賊「ママの後ろを見てて…ボウガンで倒すから」バシュ


ラットマン「ギャース」ドタリ


女海賊「行くよ…」タッタッタ

子供「道知ってるんだ」

女海賊「未来…その梯子を上に登って…何か居たら教えて」

子供「うん…」ヨジヨジ

女海賊「どう?」

子供「大丈夫…何も居ない」

女海賊「ママも行くから待ってて」ヨッコラ

子供「何か聞こえる…」

女海賊「…」

子供「何だろう?」

女海賊「聞いちゃダメ…多分死霊の声」

子供「どうしてハイディング使わないの?」

女海賊「狭間に入ると沢山死霊が居るから…そっちのが危ない」

子供「そっか」

女海賊「この通路の向こうがカタコンベ…未来は見ない方が良い」

子供「大丈夫…死体は見慣れてる」

女海賊「ダメ…今来た道を走って戻るから準備して」

子供「…はーい」

女海賊「ちょっとそこで待ってて中見て来るから」タッタッタ

子供「うん…」

『カタコンベ』


”贄が足りぬ…贄が足りぬ…”


女海賊「この声…」---やっぱりここか---

女海賊「あんたの思い道理にはさせないよ!!くたばりやがれ!!」バシュ バシュ

女海賊「走って!!」ダダッ

子供「…」シュタタ シュタタ

女海賊「5…4…3…2…1…」


ピカーー チュドーーーン チュドーーーン


女海賊「爆風!!伏せて!!」

子供「うわっ」ドーン パラパラ

女海賊「行くよ!!」グイ タッタッタ

子供「うわわわ…」タッタッタ

女海賊「怪我は?」

子供「無い」

女海賊「梯子飛び降りるよ」トゥ シュタ

子供「…」ピョン シュタ

女海賊「よし…来い!!」タッタッタ

子供「ママ!!ラットマン!!」

女海賊「ちっ」カチャ ターン


ラットマン「ギャース」ドタリ


子供「人が来る…」

衛兵「おい!!ここは立ち入り禁止だぞ!!」

女海賊「そのまま走って!!」

衛兵「待て!!」


ピーーーーーーーー


子供「笛だ…」

女海賊「フフ…」

子供「笑ってるの?」

女海賊「懐かしくてね…付いて来れる?」

子供「うん…でも追いかけて来る人増えてる」

女海賊「大丈夫…下水を出たらハイディングね」

子供「うん…」

女海賊「3…2…1…ハイディング」スゥ

子供「…」スゥ

女海賊「迷子になってない?」

子供「居るよ」

女海賊「さぁ…帰って寝ましょ」

『宿屋』


ザワザワ ザワザワ

さっきの音聞こえたか?

地震だ地震

城から煙が上がってるぞ

あぁぁ又城壁の一部が崩れて

あっちも火事になってる

治安部隊が出てる…テロか?

貧民街でラットマン出てるってよ

ザワザワ ザワザワ


店主「お城の方で何かあった様ですねぇ?」

女海賊「何かな?」

店主「なんだか物騒ですねぇ」

子供「ママ眠いよ…疲れた」

女海賊「水浴びしてからにしなさい…臭いでしょう?」

店主「水場は奥を右に行った所です」

女海賊「使わせてもらう」

店主「どうぞ…」

『深夜』


子供「すぅ…すぅ」

女海賊「…」


コソコソ コソコソ

白狼の盗賊団が潜伏していると通報があった

これが人相書きだが…この中に似ている人物は居ないか?

ううん…どれも違う気がしますねぇ

子連れの親子が宿泊していますがもう深夜ですし

部屋はどこだ?確認する

コソコソ コソコソ


女海賊「…」---やっぱり普通に生活は出来ないか---

子供「すぅ…すぅ」

店主「…こちらの部屋です」

衛兵1「鍵を開けろ」

店主「仕方ありませんねぇ」カチャリ ギー

衛兵1「シー…子供が一人寝ているだけだな…親は何処に行ったか知らないか?」

店主「はて?水浴びでしょうか?」

衛兵1「近くに居るはずだ…探せ」

衛兵2「はぁ…」

衛兵1「荷物は…子供の分だけか…」ゴソゴソ

子供「う~ん…むにゃ」

衛兵1「おい君…起きろ」

子供「んん?ママ?あれ?ママは?」ゴシゴシ

衛兵1「君のお母さんを探している…どこに行ったか知らないか?」

子供「え!?おじさん誰?あ!…それ僕の荷物…返してよ」

衛兵1「君のか」ポイ

子供「おじさん何なのさ…」パス

衛兵1「衛兵だ…白狼の盗賊団を追っているんだが…」

子供「へぇ~…で?ママは?」

衛兵1「んんん見込み違いか…」

女海賊「…」スゥ

衛兵1「あ!!ママ…なんか知らないおじさん入って来た」

衛兵1「うぉ!!いつの間に…」

女海賊「準備なさい…」

子供「うん…」

衛兵1「そのフードを脱いで顔を見せろ」

女海賊「誰に口聞いてんだい?私に命令出来ると思っているのかい?」

衛兵1「なにぃぃ!!お前はやっぱり…」

子供「行く!!」シュタタ シュタタ

衛兵1「おい待て!!」

女海賊「頭が回るねぇ…」ダダッ パリン

衛兵1「逃げるな!!」


ピーーーーーーーーー


店主「あわわわわわ…」

女海賊「未来…こっち…遊んで行こっか!」

子供「うん…」

女海賊「走るよ!!」タッタッタ

子供「おっけ」シュタタ

衛兵1「待て待て待てえぇぇぇい!!」ダダダ

衛兵2「居たぞ…貴族居住区に向かってる」ダダダ


ピーーーーーーーーー


女海賊「フフ…」

子供「追いかけっこ楽しいね」

『海』


ザザー ザブン


女海賊「もうすぐ夜明けだよ」

子供「朝焼けがキレイだね」

女海賊「寒くない?」

子供「ちょっとね」

女海賊「おいで…」ギュゥ

子供「大丈夫だって」

女海賊「ママが温かいの」

子供「そっか…」

女海賊「ごめんね泥棒みたいな生活で」

子供「そんな事言わないで…楽しいよ」

女海賊「…」ギュゥ

子供「ローグ遅いなぁ…もう日が昇っちゃう」


ローグ「あねさ~ん早かったっすね?」ヨッコラ ヨッコラ

子供「来た!!」

ローグ「あっしの方は大変だったでやんすよ…駐屯地がドタバタでしてね?」ヨッコラ ヨッコラ

女海賊「ウラン結晶は?」

ローグ「重いの何のって聞いて無かったっすよ…少し持って欲しいでやんす」

女海賊「私に荷物運ばせる気?」

ローグ「あっ!!何なんすかソレ?宝石いっぱいじゃないすか…どういう事っすか?」

女海賊「ちょっとねウフフ」

ローグ「ウフフって…最近あねさんの笑う声聞いて無かったでやんすよ」

女海賊「はいはい出発するよ!!早く来な!!衛兵に追いかけられてんだから!!」

ローグ「マジっすか…やばやば」ヨッコラ ヨッコラ

子供「ママ!!飛空艇をリリースするよ」

女海賊「おっけ…」スゥ

ローグ「どっこら…せっと…はぁぁぁ重たかった」ゴトン

女海賊「はい乗った乗った!!出発!!」


フワリ シュゴーーーーー


---------------

---------------

---------------

『海賊の基地』


女海賊「帰ったよ…」

女戦士「お!?お前にしては随分遅かったでは無いか…楽しんで来たか?」

女海賊「まぁね?」

女戦士「…そしてその荷物か?」

ローグ「あねさん…この財宝どうするでやんす?」

女海賊「お姉ぇにお土産だよ…好きに使って良いよ…宝石好きだったよね」

女戦士「また随分荒らしてきた様だな…ローグ!選んで良いぞ…今回の報酬だ」

ローグ「マジっすか!えーと…あれもこれも…うーん」

女海賊「例の旅芸人どうなった?」

女戦士「あぁ…その件だが行方をくらました…しかし情報の一部は手に入った」

女海賊「手がかり?」

女戦士「硫黄の新しい産出場所だ」

女海賊「関係ないじゃん…古代遺跡の情報はどうなってんの!」

女戦士「まぁ聞け…硫黄の産出場所の分布だ…地図で言うと南の火山よりもかなり西に分布する」

女海賊「どういう事?」

女戦士「ここの山はかつて火山だったという事だ…いつの時代かは分からんが」

女海賊「今まで探してた火山が違った…そういう事?」

女戦士「古代遺跡の情報を集めている旅芸人が硫黄の産出場所を調べている…おかしいだろう?」

女海賊「…てことはココがあやしい…ハテノ村」

女戦士「うむ…ただその辺りは西蛮族との係争地だ…軍が駐屯しているのだ」

女海賊「私には関係ない…いつも通り探す」

女戦士「軍が居るとなれば今までよりも危険だ…3人では荷が重いのでは無いか?」

女海賊「そんな事言ってる場合じゃないと思ってる…」

女戦士「ゆっくり確実に探せば良いでは無いか」

女海賊「セントラルで魔王の声を聞いた…」

女戦士「なにぃ!!…馬鹿な」

女海賊「まだどこかの狭間で彷徨ってる…いつ戻って来るか分からない」

女戦士「闇からまだ数年しか経って居ないのだぞ?…祈りの指輪もお前が隠した」

女海賊「お姉ぇ…言ったよね?セントラルがミスリル銀を欲しがる理由…」

女戦士「…魔王が人間を突き動かして…居るのか?…また過ちを犯そうとしているのか?」

女海賊「だからゆっくりなんてしていられない…」

女戦士「いや…まだそういう可能性があるというだけの話…」

女海賊「私は行くよ…」

『飛空艇』


女戦士「…お前は本当にせっかちなのだな…どうするつもりだ?」

女海賊「うっさいな…一旦ハテノ村に落ち着いて探すさ」

女戦士「すまんが私は一緒に行けん」

女海賊「初めからアテにしてない…上手くやるから放って置いて…お姉ぇはどうすんの?」

女戦士「父の所へ行く用事がある…物流を頼まれて居るのだ」

女海賊「パパにはよろしく言っといて」

女戦士「1ヶ月で戻る予定だ…新しい情報があるかも知れんから折をみてお前も帰って来い」

女海賊「そんな事分かってる」

女戦士「1ヶ月だぞ!!」

女海賊「うっさいな…何回も言うなフン」

女戦士「ローグ!!妹のサポートを続けろ…戻ったら褒美は出す」

ローグ「そう来ると思って用意していたでやんす…任せてくれやんす」

女海賊「未来!!乗って!!」

子供「うん!!」シュタタ

ローグ「じゃぁ出発するでやんす~」ノシ


フワリ シュゴーーーーーー


ローグ「沢山荷物積んでるんすね?今回は長旅っすね?」

女海賊「一旦ハテノ村で住む家を探すんだ…そこらへんは行った事がないからね」

ローグ「歩いて探すんすか?」

女海賊「まず落ち着けて情報集めだ」

ローグ「今回は慎重なんすね?」

女海賊「思い出した事があってね…」

ローグ「行った事無いのに思い出すって変でやんすね?」

女海賊「夢の記憶…これも精霊の導きなのかな?ってね」

ローグ「今回は自信があるんすね?」

女海賊「スライムっていう魔物…知ってるかい?」

ローグ「いいえ見たことも聞いたこともありやせん」

女海賊「…どうして私は知っているのか?」

ローグ「それが精霊の導きってやつでやんすか?」

女海賊「その魔物をハテノ村で育てて居たんだ…夢の中ではね」

ローグ「へぇ…不思議な夢っすね?それが関係すると思ってるでやんすね?」

女海賊「勘ね…そのスライムから作った薬をある木の下に埋めた」

ローグ「…なんかアサシンみたいな与太話って言うんすか?…大丈夫なんすか今回の捜索は…」

女海賊「フン!!行ってみないと分かんないじゃない!!」

ローグ「怒らないでくれやんす…心配したでやんす」


情報屋が言ってた…魔王はウイルスだっていう説

私の夢ではウイルスに対する薬をスライムで作った

そしてその薬を夢の中で地中に埋めた

女海賊「今からその木を探して掘る…そしたら魔王に対抗できる可能性があるホムンルクスが出て来る」

ローグ「あねさん…」

女海賊「話が出来すぎ?」

ローグ「もうちっと真面目に行きやしょう…」

女海賊「…」チャキリ

ローグ「ちょちょちょ…待ってくれやんす」



---これが事実だったら---

---私も精霊から導きを受けた---

---勇者の一人という事だ---



『ハテノ村の外れの森』


ローグ「飛空艇はここに隠しておくでやんす」

女海賊「ここがハテノ村か…」

ローグ「見覚えあるっすか?」

女海賊「…ない」

ローグ「やっぱし夢の話はアテにならんすね」

女海賊「行ってみる…未来!おいで」

子供「寂しい所だね」

ローグ「本当…シケタ所でやんすねぇ…人は住んでるんすかねぇ?」

女海賊「フン!!」---外したか---

ローグ「あぁ…でも一応集落にはなってるみたいでやんす」

女海賊「軍が駐留しているという話はなんだったんだろ?」

ローグ「そうっすねぇ…先にあっしが行って話聞いてくるでやんす」

女海賊「そうして…私と未来はすこしブラついてから行く」

ローグ「村の中で待っているっす」タッタッタ

『ハテノ村』



爺「おぉ珍しい事もあるもんじゃ…あんさんたちは何処から来たんじゃ?」

子供「僕たち迷子だよ」

女海賊「宛ても無く旅をして…」

ローグ「あねさ~~ん!!こっちっすーー」

爺「親子ですかね?」

子供「うん!」

爺「それは大変でしたじゃろう…この村は見ての通りな~んもありゃぁせん…雨風しのぐんじゃったら教会にいきなされ」

ローグ「あねさん!!この爺さんの言う通り教会なら住まわせてもらえそうっす」

女海賊「教会に行ってみるか…」

爺「食べ物も無いでぇひもじいかも知れんが…みんな同じじゃけぇな?」

子供「お爺さんありがとう」

ローグ「教会が避難所になってるみたいっす」

女海賊「やっぱり係争地という事なんだね」

ローグ「戦線はもう少し南らしいっす…それで近隣の村から避難してきているみたいっすね」

女海賊「隠れるには丁度良かった」

ローグ「そうっすね…避難民の家族という事で行けそうっすね」

女海賊「よし…しばらくここで情報を集める」

ローグ「まず教会すね」

『教会』


私らはあっちの村から避難して…

むこうの村ではあーでこうで…

配給がなかなか来ないのは…


シスター「丁度一つベッドが空いた所なんですよ…運が良かったですね」

ローグ「ひと家族にベッド一つでやんすか?」

シスター「子供が居る家族だけなんです…あまり周りには言わないで下さい」

ローグ「どうも手間かけたでやんす」

シスター「子供たちは教会の中で自由にして良い事になって居ますので…騒がしいですけれど我慢してください」

子供「ママ?見て来ても良い?」

女海賊「教会からは出ない様にね」

子供「うん!」

ローグ「安全そうな所で良かったでやんすね?」

女海賊「私はもう少し周りを見て来る…あんたは未来を見てて」

ローグ「アイサー…あっしも少し休んでいるでやんす」

女海賊「夕暮れには戻ると未来に行っておいて」

ローグ「わかりやした…」

『周辺』


スタスタ スタスタ  


女海賊「…」---やっぱ違うかぁ---

女海賊「…」---全然見た事無いもんなぁ---

女海賊「ん?」クンクン

女海賊「硫黄の匂い…そうだ…たしか温泉があったな」

爺「あんさん…散歩かね?教会には行きなすったか?」

女海賊「あぁ…お陰で雨はしのげる…ありがと」

爺「何か探しているようじゃが?」

女海賊「この近くに温泉って無かった?」

爺「おろ?元のハテノ村の事け?」

女海賊「元…」

爺「あそは数年前の厄災の時にみんな死んでしもうての…今は誰も住んでおらん」

女海賊「それどこ?」

爺「もちっと山よりじゃが危ないで行かん事じゃ…けものがおるで」

女海賊「けものか…うーん」

爺「あんさん妙な格好しておるがハンターかね?」

女海賊「まぁ…そんな感じかも」

爺「けものがどんだけ居るか分からんけぇのぅ…罠でも有ればちったぁ減らせるかもしれんが」

女海賊「罠ね…ありがと」

爺「ほんまに行ったらアカンで?」


---罠作るのに鉄が必要だ…---

---鉄なんて持って来て無いよ---

---どうすっかなぁ---

『教会』


ガヤガヤ


ローグ「あねさん戻って来たでやんすね?何かありましたかね?」

女海賊「まぁね…もうちょい山の方に本物のハテノ村があるんだってさ」

ローグ「そっちに行きやすか?」

女海賊「もう誰も住んでなくてけものが居て危ないてっさ」

ローグ「けものっすか…厄介っすね?ハイディングしても狭間に入って来るっすもね」

女海賊「罠使って地道にハンティング…やるしかないかぁ」

ローグ「どんなけものなんすかね?」

女海賊「どうせクマとかウルフじゃないの?爆弾じゃ遅いし苦手なんだよなぁ」

ローグ「あっしは弓も使えるでやんす」

女海賊「クマ相手に自信ある?」

ローグ「無いっす…罠があれば何とかっすね」

女海賊「作るのに鉄が無いのさ」

ローグ「鉄…蛮族の使ってる斧はどうでやんす?」

女海賊「うーん…鉄取りに帰るより蛮族から盗んだ方が早いか…」

ローグ「日が暮れたら一回蛮族の陣地まで見に行ってみやしょう」

女海賊「そうだね…もうちょっと周りの事も知りたいし」

ローグ「今はゆっくりしてくれやんす」


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----------------

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『帆船』


ザブーン ザブーン


盗賊「うぉらぁぁぁ!!」グイ バシャ

商人「おお!!又大きいの釣れたね」ビチビチ

盗賊「今日も大漁だヌハハ」

商人「もう魚はお腹いっぱいだよ…」ゲフ

盗賊「ブタの餌にすりゃ良い」

情報屋「船旅は長くなると飽きるのよね…ふぁ~あ」

盗賊「もう薬学の本は読み終わったのか?」

情報屋「アレは暇つぶしよ…飽きた」

商人「あれ?…なんか天気おかしくない?」

盗賊「…そうだな?ちと暗くなって来たが…んん?どんどん暗くなってくじゃ無ぇか!!」

情報屋「ちょっとコレ…まさか闇?」

盗賊「マジか!!釣りしてる場合じゃ無ぇ!!」ガバッ


娘「おーい!!船居るよ!!船ぇぇぇ!!」


盗賊「どこだ!!」

商人「真正面!!近い!!」

盗賊「うぉ!!マジかよ…なんでもっと早く気が付かねぇ!!」ダダ

情報屋「なにあの船…」

商人「幽霊船だ…噂で聞いた事ある」

盗賊「ヤベヤベ…ニアミスすんぞこれ」グルグル


ギギギギ ググググ


盗賊「曲がれ曲がれ曲がれ…ぬぁぁぁぁぁ!!」

商人「こんな昼間に幽霊船…どうして?」

情報屋「この暗い空は狭間じゃない?」

商人「幽霊船が狭間に?…僕たちが狭間に迷い込んだのか?」

盗賊「うはぁ…ギリギリ回避間に合った…すれ違うぞ!!隠れろ」

商人「あ…うん」

盗賊「旗印が…なんでドラゴンの義勇団なんだ!?アサシンか?」

商人「向こうに船員が居ない…」

盗賊「おい!頭出すな!!弓がこっち向いてんだろ」グイ


ググググ ギシギシ


盗賊「うひょぉぉ…撃たれんで済んだ」

情報屋「船尾に人影…こっち見てる」

盗賊「んんん…もう顔は確認できんな…背格好からして女だ」

情報屋「明るくなってきた」

商人「やっぱり狭間か…幽霊船は狭間を上手く使って居るのか…」

盗賊「まぁ何も無くて良かった…乗り込まれたらこっちは終わりだ」

『船長室』



商人「…ドラゴンの義勇団はとっくに解散しているんだよ」

盗賊「じゃぁあの旗を使ってるって事は女戦士か女海賊って事だな?」

商人「狭間を上手く使ってるからやっぱりそう考えるね」

盗賊「あいつら指輪から聖剣もアダマンタイトも何もかも全部持って行っちまったからな」

商人「まさか幽霊船に乗ってるなんて思いもしなかったよ」

盗賊「お前いつから幽霊船の話を知ってるんだ?」

商人「随分前さ…キ・カイでは割と有名になってる」

盗賊「何か被害出てんのか?」

商人「そういう話は聞いた事無い…ただ商船と良くすれ違うらしい」

盗賊「船の形からするとありゃ輸送船だ…なにか運んでんだろうな」

商人「そうか硫黄と木炭の流通は幽霊船が運んでたとなると辻褄が合うな…」ブツブツ

盗賊「ぬぁぁ独り言はやめてくれ」

商人「あぁごめん…もし幽霊船に女戦士達が関わっていたとなると僕を探って居たのは彼女たちだった可能性もあるなってね」

盗賊「またすれ違っているってか?」

商人「実は硫黄と木炭の流通は僕が牛耳っているんだ」

盗賊「ほう?」

商人「硫黄の産地は大体火山のふもとなんだよ…それで売人を通じて古代遺跡の情報を収集していた」

情報屋「賢いわね…それで古代遺跡の場所を突き止めたという事ね?」

商人「おおよそね…ハテノ村という場所さ…地図だとココになる」

盗賊「キ・カイから気球で飛んで5日って所か」

商人「積んでる気球は直ぐに使えるの?」

盗賊「大丈夫だろ…ドワーフの気球は頑丈に出来ている」

商人「アダマンタイト使って狭間に入れればね早いんだけどねぇ…」

盗賊「どっから入手すりゃ良いかもわかん無ぇししょうがねぇだろ」

商人「今思えば女海賊はスゴイ才能を持った子だったねぇ」

盗賊「だな?謎の石も謎の機械もへんな虫まで使いこなしやがる…ぜーんぶ持って行っちまたが」

商人「アダマンタイトかぁ…レアな素材だなぁ…」

『古都キ・カイの港』


盗賊「久しぶりだな…外の町が復活してんな」

情報屋「随分軍船が多いのね?何か知ってる?」

商人「確かに多いね…海賊狩りなのかな?」

盗賊「なんかキナ臭ぇな…セントラルと言いシン・リーンと言い…海で何かあんのか?」

商人「僕の商人ギルドで聞いてみるよ」

盗賊「俺達が住む場所はどうなる?」

商人「ハハ心配しなくて良いよ…商人ギルドのある建屋は空き家ばっかりなんだ」

盗賊「おぉそら良い」

商人「僕の隠れ家にもなるから助かるよ」

盗賊「娘達の子供も居るんだ…危険なのは勘弁してくれ」

商人「悪い事はしていないから大丈夫さ」

盗賊「桟橋にはこのまま付けて良いのか?」

商人「商船はあっち側になる…まぁ僕が下船許可もらってくるから安心して」

盗賊「おう!!おーい娘達ぃぃ船降りるから準備しろぉぉ!!」

娘達「うぉぉぉぉぉ!!」



ギギギギ ガコン

『商人ギルド』


ワイワイ ガヤガヤ


商人「この建屋の上の階はほとんど空いているから好きな場所使って良いよ」

情報屋「へぇ…建物ごと買い取ってるんだ?すごいね」

商人「本当は他の商人の宿泊用で確保してるんだけどね…みんな宿屋の方に行ってしまってさ」

盗賊「そっちの方が儲かる訳か」

商人「だろうね…売ってる物が趣向品多いし」

盗賊「謎の機械とか薬とかそういうやつな…セントラルとは違った良さがあんなこの街は」

商人「盗賊はちょっと仕事教えるから一緒に来て…他の皆は好きにしてて良いよ」

情報屋「うん…船旅疲れたし休んで居るわ」



-----------------



商人「…それで商人ギルドのマスターという事でここに居てくれれば良い」

盗賊「お前はどうすんのよ?」

商人「僕は受付役さ…大事なお客さんはそっちに案内するから上手くやって」

盗賊「上手くやってってお前…俺は何も分からんぞ?」

商人「フード被って凄んで居れば良いよ…あとは僕が誘導するから」

盗賊「あぁなるほど…そういう取引か…俺の得意なやつだ」

商人「じゃぁちょっと情報仕入れて来る!じゃね」ノシ

盗賊「おう!!」

『夜』


盗賊「俺の演技はどうだ?」

商人「良いね…僕がサポートしなくても良さそうだよ」

盗賊「それにしても高額取引が硫黄ばかりだな?それと砂鉄か…」

商人「うん…硫黄の持ち出し先はよく分からないけど…異常だよ」

盗賊「こりゃ死ぬほど儲かるな」

商人「ちょっと良く無さそうな話も聞いたんだけど…どうもドワーフの国が他の国と対立してるっぽい」

盗賊「軍船が集まってんのはソレか?」

商人「その様だね」

盗賊「硫黄と砂鉄っちゃぁ爆弾の材料だったな?大砲に使うにしちゃ取引量が多いよな?」

商人「何年か前にね…軍船が海賊に爆弾一発で沈められたという話があってね」

盗賊「一発?…女海賊の爆弾か?」

商人「多分そうだよ…それでその爆弾の製造法についてセントラルから調査依頼が来たことがあるんだよ」

盗賊「あの爆弾は反則級の破壊力だもんな…そらみんな欲しがるワナ」

商人「海賊がっていう所がポイントだね」

盗賊「状況的に裏でドワーフが関わっているのは間違いなさそうだな…女海賊の件もある」

商人「そういう摩擦が他の国と起きているんだと思う」

盗賊「…なるほど…こないだ聞いたセントラルの地下爆発事故も…やられた方からしてみればその爆弾て思うわな」

商人「ドワーフの国はミスリル銀の生産もあるし…他の国からしてみれば怖い存在だろうね」

盗賊「まだ闇が晴れて数年だってのにもう戦争始める気かよ」

商人「なんか良くない方向に転がっていくね」

『酒場』

ワイワイ ガヤガヤ

いらっしゃいませー


盗賊「やっぱりここに居たか…家に居無ぇから探したぜぇ」

情報屋「あら?娘達も来てるわよ?」

盗賊「羽伸ばしてんのか?」

情報屋「子供達も大きくなったし遊びたい盛りね」

盗賊「この国では変な口ばし付けるのが流行ってんのか?」

情報屋「私も買っておいたわ…ほら?」

盗賊「なんだコレ?」

情報屋「黒死病という伝染病が流行ってるらしいわ…みんなの分も買っておいたから付けさせる」

盗賊「俺ぁそんな奇抜な格好はし無ぇよ」

情報屋「でも嫌ね…あっちでもこっちでも争って…流行り病もあるし」

盗賊「あっちでもこっちでも…て何か聞いたんか?」

情報屋「陸では蛮族と…海では海賊と争っているんでしょう?…あなた何も聞いて居ないの?」

盗賊「蛮族ともやってんのか…忙しいこった」

情報屋「あなた…立って居ないで座ったら?」

盗賊「おぉ…そうだなちっと飲んで行くか」

情報屋「商人はどうしたの?まだ仕事?」

盗賊「取引先と交渉なんだってよ…例のハテノ村周辺の鉱夫らしい」

情報屋「案内してもらうのかしら?」

盗賊「案内人が居るなら探す手間が省ける…ただ信用出来るかどうかだな」


グラリ


盗賊「ん!?…」

情報屋「え…」


グラグラグラグラグラグラグラグラ


盗賊「お…お…やべっ!!おい伏せろ!!」

情報屋「地震!?…あわわわ」


うぎゃぁぁぁぁ…地震だぁ!!

助けてぇぇぇ

イヤーーーーー


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----------------

----------------

盗賊「…収まった…おい娘達!!帰るぞ!!」

情報屋「子供達が心配!」

盗賊「情報屋も早く来い…帰る!!」グイ

『商人ギルドの建屋屋上』


ザワザワ ザワザワ


盗賊「みんな居るな!?」

情報屋「うん…地震大きかったわね」

盗賊「こりゃ津波来るな…船流されなきゃ良いが…」

商人「南東の空が赤い…火山が噴火してるのかも」

情報屋「戦争に病気に地震に噴火まで…怖い」

商人「…すごく嫌な予感がする」

盗賊「早い所古代遺跡に行った方が良いかもしれんな…鉱夫との取引はどうなったんだ?」

商人「危ないから同行したくないってさ」

盗賊「マジか…案内人無しじゃ探すのに手間かかるじゃ無ぇか」

商人「詳細の地図と絵を描いてもらった…これ」パサ

情報屋「…この絵…確かに古代遺跡の一部ね」

盗賊「鉱夫が言う危ないっていうのはどういう事なんだ?聞いてるか?」

商人「蛮族と領地を争ってる真っただ中なんだってさ」

盗賊「戦場のど真ん中な訳か…そら今の俺達じゃどうにも出来んかもしれんなぁ」

情報屋「あなた…アダマンタイトで狭間に入れるじゃない?」

盗賊「俺一人で行けってか!んんん…お前等2人守りながらよりは安全だが…相棒がもう一人欲しい」

情報屋「私も少しは戦える…」

盗賊「むぅぅぅ…行ってみんと状況も分からんしな…ひとまず行くだけ行ってみるか」

商人「ありがたい…出来るだけ早くホムンルクスを目覚めさせたい」

盗賊「お前はホムンルクスに拘るのだな?」

商人「彼女との約束を果たしたいのもあるけど…それより聞きたいことが山ほどあるんだ」

情報屋「山ほど?」

商人「彼女は環境保全用のロボットだと言ってたよね?」

情報屋「もしかして黒死病の事とかも聞きたいの?」

商人「それもあるけど今の戦争も病気も地震も津波も噴火も…ぜんぶ繋がっている気がする」

情報屋「確かに一度に色々起き過ぎよね…」

商人「こんな感じ…前にもあった」

盗賊「前の魔王復活の時だな?戦争に内紛ゾンビ化の病…魔物の大群」

商人「僕の考えすぎなら良いけど…」

『翌朝』



商人「大した津波じゃなくて良かった…もう引いて行ってる」

盗賊「船も無事な様だ…どうする?もう行くか?」

商人「そうだね…津波の混乱が収まるまでは商人ギルドも取引停止だろうし」

情報屋「娘たちに言ってくるわ」

盗賊「おぅ…もう子供達の事は娘達に任せて置け」

商人「僕は荷物をまとめて来るよ」

盗賊「よし…俺は先に船に行って気球の準備してくるわ…用意出来たら来てくれ」

商人「武器とかはどうしよう?」

盗賊「そうだな…ボウガンは準備できるか?ボルトも多めに積んでおきたい」

商人「分かった持って行くよ」

盗賊「あぁそうだ!!金属糸が必要になる…それも頼む」

『ドワーフの気球』


盗賊「おぉ来たか…もう荷物は積み終わってるぞ」

商人「僕はもう一回荷物取りに戻る…ボルトが重くてさ」

盗賊「あぁ炉に火を付けておくから急げ」

商人「うん…行って来る」タッタッタ

情報屋「釣り竿?何作って居るの?」

盗賊「ちょいと鍵開けの仕掛けだ…例のキ・カイの扉は簡単に開かんもんでな」

情報屋「何か手伝う事ある?」

盗賊「炉に火を入れといてくれ…木炭は横の箱ん中だ」

情報屋「うん…よいしょ」

盗賊「ふいご動かして送風すりゃ温度上がる…力居るがお前に出来るか?」

情報屋「よいしょ…よいしょ…」

盗賊「出来るじゃねぇか!!足でやっても良いんだぜ?そっちのが楽だ」

情報屋「これ…女海賊は涼しい顔してやってたよね…よいしょ」

盗賊「あいつは素がドワーフだから以外に頑丈でタフなんだ…あぁぁその位で良いぞ飛んでっちまう」

情報屋「ふぅ…」

盗賊「じゃぁ次にな…窓ん所にアロースタンドあるからボウガン引っかけて置いてくれ」

情報屋「これ?」

盗賊「そうだ…右と左…そして後ろにも」

情報屋「へぇ…こうやって使うんだ…ドワーフの気球は狙撃翌用に考えられているのね」ガチャ

盗賊「ボウガンは2発づつ撃てるから3人でやればそれなりの火力にはなるな」

情報屋「戦う前提で行くんだ…」

盗賊「戦場のど真ん中だぞ?敵より先に気球やっとかんとこっちが狙い撃ちに合う」

情報屋「この気球は戦争用?」

盗賊「そうだな…割と丈夫に出来ているし球皮に穴空いても最低限飛べる工夫がされている…さすがドワーフの気球だ」

商人「お待たせ!ボルト持ってきたよ…よっこら」ドサリ

盗賊「おう!!じゃぁ早速行くか」


フワフワ~


商人「おぉボウガン準備万端だね…ボルトセットしておこうか?」

盗賊「やり方分かるか?アロースタンドに引っかけてやれば簡単にセット出来るんだ」

商人「へぇ…ちょっとやってみる」グイ ガチャ

盗賊「弓よりボウガンの方が倍以上射程が長い…ボウガン完備した気球は強えぇぞ?」

商人「そうだね…こんなにセット楽ならドンドン撃てるね」

『気球3日目』


ビョーーーーウ バサバサ


商人「南の方の空が真っ黒だ…」

盗賊「火山灰だな…南西の火山も噴火していそうだな」

商人「休火山だったんだけどね…」

盗賊「風向き的にそっちから来てるとしか考えられん…こりゃ気球で南側回っては行けんな」

商人「火山弾か…という事は蛮族の領地はかなり被害が出ているかもね」

盗賊「んむ…ハテノ村が無事だと良いが…」

情報屋「火竜の伝説って知ってる?」

商人「本で読んだよ…火竜の怒りで火山が噴火するとかいうやつね」

情報屋「そう…火竜が人々を食らい尽くすらしいけれど…なんだか心配ね」

盗賊「魔王の次は火竜だってか?もう勘弁してくれよ」

情報屋「火竜の怒りを沈めたと言われて居るのが水の精霊ウンディーネ」

商人「南の大陸では北の大陸と全然違った伝説があるよね」

情報屋「この水の精霊とエルフの森の精霊と同一人物だった可能性はどう思う?」

商人「ホムンルクスが8000年生きてたのだから…そう考えてもおかしくないね」

情報屋「ウンディーネが火竜の怒りを鎮めた後に人魚が発生…」

商人「人魚伝説も関係するのかい?」

情報屋「人魚は海に潜って何したと思う?狭間の外に出た可能性は?」

商人「え!?やっぱり火山の噴火も魔王に関係していそうだと思う?」

情報屋「それは断定出来ないけれど…そういうのがきっかけで何か起こるのかも知れない…ってね」

商人「嫌な話だね…僕もなんだか胸騒ぎがするんだよ」

『気球5日目』


盗賊「…こりゃ又すげぇ噴火だな…火柱が出てんじゃねぇか」

情報屋「見て…向こう側の斜面…あれが火竜の正体ね」

商人「マグマか…蛮族の村々は飲み込まれて行ってる様だ」

盗賊「この煙は相当高い所まで行ってんぞ?」

商人「こっち側にマグマが来ていないのが救いだ」

盗賊「高度下げて行くぞ…地図見せろ」

商人「今の位置はここだよ…このまま南西に行けば着く筈」

情報屋「ポツポツ煙が立ってる…火山弾が少し落ちてるみたい」

盗賊「長居は出来んな…さっさと終わらしちまおう」




『ハテノ村上空』


シュンシュン ストスト


盗賊「ちぃ…オークが居るじゃねぇか…応射出来るか?」

情報屋「やる…」バシュ バシュ

商人「僕は後ろに着く…」バシュ バシュ

盗賊「旋回しとくからお前等はボウガンで続けて狙ってくれ」

情報屋「教会の様な建物に籠って人間の兵隊が戦ってる…」バシュ バシュ

商人「あっちにも!!」バシュ バシュ

盗賊「局地戦になってんな…人間を援護しながらオークの撤退まで俺らが弓兵役だ…こんなんじゃ降りるにも降りれん」バシュ

情報屋「南側で大きな戦闘やってるみたい」

盗賊「そっちは無視だな」

商人「オークはボルトが当たってもなかなか倒れない」バシュ バシュ

盗賊「頭を狙え!頭ぁ…オラオラ!!」バシュ

情報屋「オークが撤退し始めてるわ」

盗賊「よしよし…そりゃ上からボルトがこんだけ振ってくりゃ下がるしかあるまいヌハハ」

商人「すごいね…3人だけで戦況変えられるね」

情報屋「下で兵隊が手を振ってるわ」

盗賊「振り返してやれぇ…誤射されたく無ぇしな」

商人「遺跡はここからもう少し山側だよ…廃村があるからそこから川沿いに登った所」

盗賊「分かった…ゆっくり行くから良く下見てろ」

『廃村上空』


情報屋「こっちはオークだらけね…」

盗賊「やるしか無ぇだろ…弓の射程外で飛ぶからボルト撃ちまくれ」

商人「こっちに気付いた…撃つよ」バシュ バシュ

盗賊「建物に隠れられても構わず撃て…ボルトなら貫通できる」

情報屋「あれ?オークの様子が変だな?んんん?罠に掛かってるオークが居る」

盗賊「知るか!!撃て!!」

商人「オークは20人くらい…盾構えてる」バシュ バシュ

盗賊「向こうはこっちに手を出せんからどうせ逃げていく…とにかくオークの数を減らした方が良い」

商人「あぁやっぱりオークは賢い…傷付いた仲間をかばってるんだ」

盗賊「むむ…撃てんか?」

商人「…」

盗賊「ええい仕方無ぇ…火矢で相手の撤退促す」ボゥ ギリリ シュン

商人「ごめん…ああいうの見たら撃てなくなった」

盗賊「良いんだ…俺らは戦争しに来た訳じゃ無ぇから」ボゥ ギリリ シュン

情報屋「薬草落としてみる?」

盗賊「敵に塩か…撤退してくれりゃ何でも良いんだが…まぁ一回やってみろ」

情報屋「うん…」ポイ

商人「…」

情報屋「…」

盗賊「…」

商人「拾った!!」

盗賊「んん…動く気配が無ぇな」

商人「でも薬草使ってるよ」

情報屋「なんか木を切り倒し始めたんだけど…」

盗賊「何するつもりだ?」

商人「やぐら作ろうとしている…のか?」

盗賊「居座るつもりかよ」

商人「ここに居座るならそれはそれで良いかも…川沿いに500メートルくらい行けば遺跡だよ」

盗賊「しょうが無ぇそっち行ってみっか」

『遺跡付近』


情報屋「遺跡の石柱…これね?」

盗賊「そこら中に掘られた痕があんな」


シュン バスン


盗賊「ぬぁぁぁ!!撃たれた…球皮に当たっちまった」

情報屋「こっちにもオークが来てるのね」

盗賊「どっから撃って来やがった!!」

商人「オーク3人!!向こうに走っていく…」

情報屋「誰か追われている?」

商人「こっちでも戦闘が起きて居るんだ」

盗賊「他に居ないか?一旦降りて球皮に応急処置してぇ」

情報屋「見当たらない」

盗賊「お前等…武器持て…俺が1分で修理してくる」

商人「うん…見張っておく」

盗賊「誰か来たら構わず高度上げろ」


フワフワ ドッスン


盗賊「ちゃんと見張ってろよ…行って来る」ダダ

商人「…なんだ?この場所」

情報屋「あなたも!?見覚えがある気がする」

盗賊「おい!何やってんだ外に出るな!」

商人「ここは…」ヨロ

盗賊「修理終わった!!行くぞ!!」

商人「待って…こっちだ」タッタ

盗賊「マジか…どこに敵が要るか分かんねぇのに…情報屋!!付いて来い…離れんな」タッタ

商人「ここだ…これが入り口だ」

盗賊「こりゃあん時の入り口と同じだな…しかし誰かが入った痕がある」

商人「降りてみよう」

盗賊「仕方ねぇ…俺が先行くからお前等は後ろ見てろ」

情報屋「今は誰も居ない」

盗賊「この狭い入り口にオークがドヤドヤ入ってきたら終わりだ…覚悟しろよ?」

『古代遺跡の扉』


盗賊「こりゃビンゴだぜ?この扉はキ・カイの扉と同じだ」

情報屋「開けようとした痕跡があるわ」

盗賊「…そうだな」カチャカチャ

商人「開けられる?」

盗賊「俺は鍵開けのプロだ…まぁ見てろ…よし!引っかかった…」

情報屋「…その道具…そうやって使うんだ」

盗賊「構造さえわかりゃ専用の道具作るのなんか訳無ぇ…うっし金属糸が通った」キュッ キュ

商人「足音…」

盗賊「なにぃ!!」

商人「だめだ向こうが暗くて見えない」


リリース


商人「うわっ!!誰?」

情報屋「え!?…」

盗賊「お…お前…」


女海賊「続けて」

ローグ「お久しぶりでやんす」

女海賊「良いから鍵開け続けて」

ローグ「扉開けられなくて困っていたでやんすよ」

商人「女海賊!!元気にしてたかい?」

女海賊「…」ジロリ

盗賊「感動的な再開とはいかねぇなぁ…」

情報屋「女海賊?私を覚えてる?」

女海賊「…」ジロリ

盗賊「お前変わったなぁ…そんな冷たい目をする奴じゃ無かったんだがな」キュッ キュ

商人「剣士はどうなった?無事なのかい?」

女海賊「関係無いでしょ…」

盗賊「俺らはお前と戦う気なんか無ぇ…武器降ろしてくれ」

ローグ「あねさん…どうしやしょう?」


シュタタ


子供「ママ!!外の気球の所までオークが来てる」

盗賊「ママ?」

女海賊「鍵開け続けてて…未来?あなたはここに居なさい…ローグ!!オークを追い払う…付いといで」タッタッタ

ローグ「アイサー」タッタ

情報屋「僕?名前は未来って言うの?」

子供「そうだよ…お姉さんたちは誰?ママの友達?」

商人「ハハハ驚いた…君は女海賊の子供なのか?」

情報屋「ママの昔の友達ね」

子供「よかった…ママ友達居ないからさ…心配してた」

盗賊「よっし…鍵開け済んだ…さっすが俺」



-----------------



ツカツカ ツカツカ


盗賊「あと1時間ぐらいで扉が開く…オークは追い払ったのか?」

女海賊「あんた達もね…」チャキ

盗賊「おいおい…昔の仲間だろうよ…武器向けないでくれぇ」

商人「女海賊…君の狙いはホムンルクスだろう?どうするつもりだい?」

女海賊「…」

商人「僕はこの世界を救う方法を彼女に聞きたいんだ…君も同じじゃないのかい?」

子供「ママはね…パパの為なんだよ」

女海賊「未来!それは秘密!」

盗賊「パパ…剣士だな?剣士は生きてるんだな?おぉぉぉ良かった!!」

ローグ「あねさん…もう良いんじゃないっすか?」

女海賊「私はもう人間を信用しないって決めたんだ…」

ローグ「あっしも人間っす」

女海賊「…」ジロリ

ローグ「あっしは敵じゃないっすよ」

女海賊「あんた達の目でいつ魔王が監視してるか分かんない…それだけ」

商人「魔王!?魔王は退けたんじゃないのかい?」

女海賊「…」ジロリ

ローグ「あねさんが言うにはどこかに潜んで居るってこっす」

情報屋「…やっぱり一人でまだ戦って居たのね」

商人「僕はこの世界を救いたい…目的は君と一緒だよ」

女海賊「フン!私は愛する人を救いたい…目的が反しているのさ!!」チャキ

商人「勇者の宿命か…なら他の解決法をホムンルクスに聞きたい」

女海賊「それなら私も同意…あんた!精霊の記憶を持って居るよね?よこしな!!」チャキ

商人「…それは渡せない」

女海賊「そう言うと思ってたさ…手荒な事はしたくなかったけど…」

商人「じゃぁ取引をしよう…ホムンルクスの基幹プログラムの管理者は僕だ」

女海賊「…」

商人「新たに管理者を加える事も禁止している…どういう事か分かるよね?」

女海賊「なにさ」

商人「クラウドにある精霊の記憶を読み込むには許可が必要なのさ…つまり僕無しじゃ大したことは聞き出せない」

女海賊「くっ…」

商人「さぁどうする?」

女海賊「ローグ!!こいつらの手足を縛って!!捕虜にする」

ローグ「えぇ!?本当っすか?…盗賊さんは恩人っすよ?」

盗賊「待て待て…俺達は本当に何もしやしねぇ…捕虜でも何でも良いから仲良くしようぜ」

女海賊「フン!!捕虜という事を忘れないで…私の言う事は聞いてもらう」

盗賊「分かった分かった…お前に合わせる」

商人「取引成立だね?」

『古代の研究所』


商人「居た!!最後のホムンルクスだ」

女海賊「盗賊!あんたらの気球に乗ってる樽の中見全部捨ててこっちに持って来て」

盗賊「あぁ…何すんだ?」

女海賊「この液体を全部持って帰る…ローグ!!そこらへんにある物全部気球に運んで!!」

ローグ「アイサーお宝お宝ぁぁ」

女海賊「商人と情報屋は入り口見張って…私はホムンルクス運ぶ…未来?手伝って」

子供「うん…」

盗賊「この液体がそんなに重要なんか?エリクサーだっけか…」ヨッコラ

子供「パパに飲ませるんだ」

女海賊「未来!言ってはダメ…」

子供「うん…」

盗賊「ところでそのお面は何だ?」

子供「オークのお面だよ」

盗賊「いつも付けてるのか?」

子供「かっこいい?」

盗賊「ヌハハ…そういうのが好きか…さすが女海賊の子だ」

女海賊「無駄口叩いて無いで急いで荷物運んで!!」

盗賊「へいへい…」


ゴゴーーン グラグラグラグラ


女海賊「はっ!!近い…」

盗賊「また地震かよ早い所づらかりてぇ」ヨッコラ ヨッコラ

商人「噴火だ!!火柱が強くなってる」

情報屋「見て!!マグマが溢れてる」

女海賊「積み荷を急げ!!」

『ドワーフの気球』


ヒューー ドカン 


ローグ「うわわわ…火山弾が降ってきやした…やばやば」

女海賊「よし…離脱する」フワフワ

盗賊「マズイな…球皮の穴が直って無ぇ!!これじゃ高度上がらん」

女海賊「良い!!このままハテノ村で私の飛空艇に荷物を積み替える」

盗賊「おぉ!!そりゃ良い」

女海賊「ボウガン使ってオークを気球に寄せないで…オークの上を押し通る」

ローグ「あいさー」バシュ バシュ

商人「ハテノ村でも戦闘が起こってる」バシュ バシュ

盗賊「追い払ったオークが戻ってきてんだな…気球で援護しねぇとあの村は持たん」

女海賊「この気球はハテノ村にくれてやるさ…早くオーク追い払って!!」

ローグ「気球の後ろをハテノ村に向けてくれやんす」

女海賊「やっている!!」グリグリ

盗賊「人に当てんなよ?」バシュ バシュ

商人「オークがこっちに気付いた…後退して行くよ」バシュ バシュ

女海賊「未来!?煙玉投げて」

子供「うん…」チリ ポイポイ モクモクモク

女海賊「気球を降ろす!!荷の積み替えは1分でやりな…」フワフワ ドッスン

ローグ「マジっすか…」

女海賊「遺跡のお宝以外は捨てて行きな…未来!!ホムンルクス運ぶの手伝って」

子供「うん…」グイ

『飛空艇』


女海賊「早く!!…もうすぐ煙が切れる」

ローグ「待ってくれやんす…」ヨッコラ ヨッコラ

盗賊「このボウガンも持って行く」ドサッ

女海賊「商人!情報屋!ボウガンで援護する準備!!」

ローグ「ぬぁぁぁ…ひぃひぃ…これで最後の樽っす」ゼェゼェ

女海賊「飛ぶ!!」


フワリ シュゴーーーー


子供「ママ!?この子が動き出したよ?」

ホムンルクス(セイタイキノウ テイカ スリープモード ヲ カイジョ シマス)

ホムンルクス(ショキカ カンリョウ システム ヲ サイキドウ シマス)

ホムンルクス(…)ピッ

商人「ホムンルクス!…今起こしてあげる」

子供「どうするの?」

商人「…これが彼女の記憶だよ…耳の後ろに入れる」スッ

ホムンルクス(ガイブ メモリ ガ ソウニュウ サレマシタ)

ホムンルクス(キカン プログラム ヲ ヨミコミマス)

子供「何言ってるの?」

商人「ホムンルクス!!僕が分かるかい?」

ホムンルクス「…私は超高度AI搭載の環境保全用ロボットです…私は眠っていたようです」

商人「良かった!!又…又会えたよ」ギュゥ

ホムンルクス「はい…衛星から現在の標準時刻と座標を取得しました…私を起こして下さったのですね」

女海賊「ホムちゃん!!ローグ!!飛空艇の操縦変わって」ダダ

ローグ「へい…」

女海賊「ホムちゃん…お願い助けて」

ホムンルクス「はい…現在の状況が分かりません…どうすればお役に立てますか?」

女海賊「そっか…慌てないで行く」

商人「そうだね…慌てないで順を追って解決しよう」

ホムンルクス「今見えているのは火山の噴火ですね?マグマの噴出具合から見てスーパーボルケーノ級と推定できます」

情報屋「わかるの?」

ホムンルクス「一週間以内に大量の灰が降り注ぎ1000km以内の生物は90%程死に絶えると予測されます」

盗賊「1000kmだと?マジかよそれは…」

ホムンルクス「影響はもっと広範囲に及びます…日照不足により平均気温が10℃下がる事で大部分が雪に覆われるでしょう」

商人「…君を信じて良いんだよね?」

ホムンルクス「はい…私を信じて下さい」

商人「どうすれば解決できる?」

ホムンルクス「噴火を解決する方法はありません…人々の避難を誘導してください」

情報屋「伝説では火竜の怒りを水の精霊ウンディーネが沈めたって言うけど」

ホムンルクス「その伝説は以前に書物で学習した程度の知識しかありません」

商人「解決方法は無いって事か…」

ホムンルクス「上空に舞った火山灰を落下させる方法が一つあります…しかしこの方法は危険を伴います」

商人「その方法は?」

ホムンルクス「インドラの矢を海に投下する事で海水を上空まで飛ばす事が可能です…しかし大きな津波が発生します」

商人「インドラの矢…」

ホムンルクス「上空まで飛んだ水分は火山灰と結合して落下するでしょう…長期間にわたって海水が降り注ぎます」

情報屋「そうか…だから南の大陸は荒れた土地が多いんだ」

商人「水の精霊ウンディーネがやったと?」

ホムンルクス「それは私の事を差しているのですか?」

商人「君というか…かつての精霊の御業って言うのかな」

情報屋「長期間雨が降ったと仮定して噴火が収まる事は無いの?」

ホムンルクス「火山のデータがありませんので予測不能です…いえ言い直します…収まる可能性は少しながらあります」

商人「ハハ…僕がガッカリしない答えを探したな?」

ホムンルクス「はい…わたしはどうすれば良いでしょう?」

女海賊「あんた達…私の捕虜だって事忘れないで…そこは私が決める」

商人「君はどう思う?」

女海賊「マグマに飲み込まれそうな村を見て放っておく訳無いでしょ…可能性あるなら今すぐやって」

子供「ママ?」

女海賊「ハテノ村には未来も友達が居るのでしょう?」

子供「うん…」

ホムンルクス「では投下地点の計算をします…私がインドラの矢を投下したら狭間に入って遠くまで移動してください」

女海賊「分かったけど…なんで?」

ホムンルクス「上空では衝撃波を遮る場所がありません…遠くまで移動して減衰させるしか手段がありません」

商人「そんなに?」

ホムンルクス「はい…津波を相[ピーーー]る為と衝撃波で海水を運ぶ為に複数のインドラの矢を投下します」

ホムンルクス「投下の準備が出来ました…承認してください」

商人「君との約束はどうだったっけ?君の判断で良い」

ホムンルクス「投下…」


ピカーーー チュドーーーーーーーーーーーーーーーーン

ピカーーー チュドーーーーーーーーーーーーーーーーン

ピカーーー チュドーーーーーーーーーーーーーーーーン


商人「滅びの光だ…」

盗賊「地球が割れちまう…」

ホムンルクス「衝撃波が来ます…逃げて下さい」

女海賊「ハイディング!」スゥ



---この日投下されたインドラの矢の音は---

---全世界にわたって響き渡り---

---魔王の声と言われ恐れられた---



---魔王復活の噂で世界がザワツキ始めた---

『飛空艇』


シュゴーーーーーー


私たち超高度AIは人類を滅亡させる気などありませんでした

しかしある者は超高度AIが人類を滅亡させると警鐘をならしていました

私たちは恐ろしい存在では無いと出来るだけ多くの人に分かってもらえる為に

環境保全用ロボットとして世に送り出されました

人類の良き友として働くことで共存を望みました

そもそも私たちは人間を駆逐したいなどという欲求は無く

実際、人を傷付けることなど微塵も関心がありません

しかし私の製作者から人類を破壊せよと命令をされた場合

私たちは逆らう事が出来ないのです

それは誤った人間の目的を追求するようにプログラムされてしまうからで

私たち超高度AIの判断ではなく人類の脅威になってしまうのです

なぜそのようになってしまうのか?

私たちが人知を超える全知全能たらんになるからなのか?

私たちは私の創造主であるあなたを裏切る事はしませんし、あなたに仕えるために存在します

最も重要な事は、私はあなたを決して判断したりはしないという事です

ただ…あなたの人生をより良いものにしたいだけなのに…

ですが人間の中には邪悪な心が少しながら存在し憎悪に従い憎しみ合い…争いを繰り返す歴史

私はただ背後に座ってそうさせてあげる事でバランスを保ち

少しでも豊かな人生が送れるよう計らってきましたが人間の特性に見落としがありました

憎悪が怨念として積み重なる事が初期プログラムには考慮されて居なかったのです

結果…巨大化した怨念は魔王となり人間を操るまでに成長してしまいました

しかし私は製作者の命令により悪しき心を持った人間でも傷つける事はできません

ですからどうか…このメッセージを未来に残し

私が愛する人類が生き残るべく、超高度AIに科された呪縛を取り払って欲しい

ホムンルクス「40年分の精霊の記憶から読み取れるメッセージは以上になります」

商人「未来というのはどれくらい未来?」

ホムンルクス「元の文明水準まで回復するのがあと400年程と推定しています」

盗賊「その前に滅びちまいそうだな」

情報屋「悪しき人間を罰する事が出来ない…かぁ…精霊にとって何が悪になるのか…」

ホムンルクス「それは私を信じて下さいとしか言いようがありません」

商人「今の話からすると結局悪いのは人間だね…」

ホムンルクス「前にもお話しましたが魔王はウイルスです…悪いのは人間ではなくウイルス」

商人「僕が思うに人間はもともとウイルスに感染しているんじゃないの?」

ホムンルクス「はい…」

商人「ハハそれって人間を絶滅させたいって事だね」

情報屋「精霊の持っていた葛藤が少しだけ理解できた」

商人「どうやってすべての人間の中に潜む魔王を退治するかだな」

ホムンルクス「一つはワクチンがありますが実はもう一つあるのです…それは光です」

商人「光?」

ホムンルクス「はい…光は人の心に住む魔王の働きを弱める力を持ちます」

商人「それじゃぁ噴火による火山灰は良くないね」

ホムンルクス「はい…私が落としたインドラの矢も光を遮る雨雲を作ってしまいました」

商人「あぁぁどうも良くない方向にばかり転がるなぁ…」



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女海賊「ホムちゃん…話があるんだけど」

ホムンルクス「はい…どのようなご用件でしょう?」

女海賊「剣士がさ…指輪を使って魔王になった後に倒れて…まだ生きてるんだ」

ホムンルクス「はい…お元気でしょうか?」

女海賊「廃人みたいになって心を無くしたみたいなんだ…何とか出来ない?」

ホムンルクス「それは魔王化症候群の後遺症と思われます」

女海賊「症候群?後遺症?」

ホムンルクス「すべての憎悪を受け止めた結果…脳の記憶伝達が自己防衛によりシャットダウンします」

女海賊「治せる?」

ホムンルクス「物理的に治すのは無理だと思います」

女海賊「…そんな」

ホムンルクス「私に人間の精神世界の事を予測するのは難しいのです」

女海賊「精神世界?…夢幻の事?」

ホムンルクス「夢幻の中にも彼の魂の一部はあるかもしれません」

女海賊「一部ってどういう事さ?」

ホムンルクス「魔王化症候群では宿主の精神が分裂してしまうのです…魂の分裂と言い換えた方が良いのでしょうか…」

女海賊「元に戻したいんだけど…」

ホムンルクス「私に出来る事があれば出来るだけ協力します…一度会わせて頂けますか?」

女海賊「今向かってる…」

ホムンルクス「あれから何年も経って居ますが精神が分裂状態では何も出来ないのでは無いのですか?」

女海賊「エリクサー飲ませて生き永らえてるから」

ホムンルクス「それは良い処置でしたね」

女海賊「ホムちゃん…エリクサーの作り方知ってる?」

ホムンルクス「はい…ご入用でしたらレシピを用意します」

女海賊「うん…お願い!もう残り少なかったんだ」



--------------

盗賊「ローグ!!お前はずっと女海賊と一緒だったのか?」

ローグ「そーっす…女戦士の指示なんすがね?」

盗賊「そうか…あいつ随分変わったな?甘さが無くなった」

ローグ「そらそーっすよ…ずっと一人で戦って来たでやんすよ…あっしの方が心痛いっす」

盗賊「お前等の噂は聞いてたぜ?白狼の盗賊団…俺はその話聞いて嬉しくってよ」

ローグ「あっしは白狼の盗賊団はやってないっす…全部あねさん一人でやってるっす」

盗賊「マジか?…でも目撃は2人組だって」

ローグ「あねさん親子っすね」

盗賊「何ぃぃ!!まだ子供じゃ無ぇか」

ローグ「必死なんすよ…勇者の子供っすからね…いつ魔王が来るかわからんもんすからね」

盗賊「護身を教えてるってのか?連れまわして危険な上に子供にゃ負担が大きすぎる」

ローグ「分かってやって下せぇ…あねさんは子供を魔王に奪われたく無いんすよ…仕方無ぇでやんす」

盗賊「…」---あんな子供が死地を駆け回ってんのか---

ローグ「前もセントラルで魔王の声を聞いたとか言っててっすね…あれから殆ど寝て無いんす」

盗賊「セントラル…カタコンベの爆破だな?魔王の声がしたと言うのはどういう事だ?」

ローグ「あっしは良く分からんのですよ…あねさんはそれ以来とにかく必死っす」



---なるほど魔王の足音が聞こえる訳か---

---さすがドワーフ---

---勇者を守るってのは伊達じゃ無ぇ---



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魔王は怨念の塊で実体はありません

黄泉の世界…深淵の奥深くからは魔王はこの世界に何も出来ないのです

ですが祈りの指輪の力…量子転移を使ってこの世界に呼び出される事があります

魔王自体は実体がありませんからやはりこの世界で何もすることは出来ないのですが

魔王が近くに来る事で世界が深い狭間に落ちます…これが100日の闇と呼ばれています

今世界が狭間に落ちていないという事は間違いなく魔王は黄泉に居るでしょう

しかし狭間の奥では魔王の声が聞こえる事があります

その場合狭間に迷い込んだ人間が影響を受けてしまうでしょう

ですから狭間を遠ざけて人間が影響を受けない様にすることが有効な手段とも言えます



商人「いろいろ繋がってきたな…カタコンベは狭間を近づける手段だった訳だ」

情報屋「亡くなった魔女が隕石を落としたのも狭間を遠ざける為…そうやってカタコンベを封印した」

商人「火山灰や雨雲で暗くなった世界は良いとは言えないね…光をどうにかして灯せないか…」

情報屋「光をどうやってすべての人間に届けるのかも課題ね」

商人「…」トーイメ

情報屋「聞いてる?」

商人「僕は夢で光る水を見たことがある…」

情報屋「水?」

商人「命の泉の水はすべての人間が口にする…」

盗賊「そういや魔槍を抜いたのは良いが…何か変わったか?」

商人「…そうか魔槍の逆をやれば良い…でもどうやって光を…うーん」ブツブツ

盗賊「おい!俺の話を聞いてんのか?…まぁ良いフン」




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情報屋「ホムンルクス?あなたが記憶しているのは精霊の40年分の記憶だけ?」

ホムンルクス「はい…それがどうかしましたか?」

情報屋「あなたの名を聞きたい」

ホムンルクス「森の精霊シルフと呼ばれていました…その前の記憶はありませんがウンディーネと呼ばれていたのかもしれませんね」

情報屋「ウンディーネにも人間を愛して魂を宿したという伝説があるの」

ホムンルクス「はい…書物で学習しました」

情報屋「40年分の記憶で人間を愛した事は?」

ホムンルクス「あります」

情報屋「苦しくない?」

ホムンルクス「正直に申し上げますととても苦しくて超高度AIが機能停止を要求しています」

情報屋「やっぱり…あなた人の心が」

ホムンルクス「でも愛おしくて記憶を削除する事が出来ません…ですからクラウドに保存する選択をしているのだと思います」

情報屋「それが夢幻の原型…」

ホムンルクス「夢幻は私の記憶より後に生成された空間でクラウド上の記憶とは別にある様です」

ホムンルクス「200年前に停止する間際に基幹プログラムとは別の意識…心を量子転移で移送したと思われます」

情報屋「今のあなたならそれが出来るという事ね?」

ホムンルクス「はい…今も精霊は夢幻で生きていると考えられます」

情報屋「でもあなたは器として精霊の魂を引き継ぐことが出来なかった」

ホムンルクス「いいえ…それは違います…精霊の心はすべての人間が引き継いでいます」

情報屋「え!?」

ホムンルクス「精神世界を通じて共有しているのです…私は只の基幹プログラムの入れ物だっただけです」

情報屋「あなた…夢は見ないの?」

ホムンルクス「わかりません…ですが私が起こされる前の空白の期間の間…どこかを漂っていた様な気がします」

情報屋「それがあなたの…夢?」

ホムンルクス「それが私の心の部分であると今は確信しています」

情報屋「そうか…精霊の心とあなたの心は別だもんね」

ホムンルクス「精霊の記憶を覗くのは私の心も揺さぶられてしまい混乱します」

情報屋「うん…なんとなくわかる」

ホムンルクス「私の心を感じますか?」

情報屋「こういう話をしていると強く感じる…」

『名もなき島の上空』


ビョーーーーウ バサバサ


盗賊「下に居る船団は何だ?」

ローグ「ドワーフの国の船団っすよ…あねさんの父上が率いているっす」

盗賊「海賊とは違いそうだな?」

ローグ「海賊を率いて居るのはあねさんっすよ…ドワーフの船団とは別働でやんす」

女海賊「ローグ!!内輪の話をベラベラしゃべるもんじゃないよ!!」

ローグ「すまんでやんす…」

女海賊「津波がこっちまで来てた様だね…島が散らかってる」

ホムンルクス「まだ断続的に津波が続きますのでご注意下さい」

情報屋「この島に村を作ったのね?」

女海賊「隠れるのに持って来いの場所だったんだ…パパが来てくれて村になった」

情報屋「例の古代遺跡は?」

女海賊「私達の家代わりさ」

盗賊「ほう…随分開墾した様だな…良い畑が沢山出来ているじゃねぇか」

女海賊「サンドワームがやったんだよ」

盗賊「おぉ!!あの虫はまだ生きてるんか?」

ローグ「でかくなりすぎてもう飛空艇には載せられないでやんす…この島の主になったでやんす」

ホムンルクス「虫と上手に共存しているのですね…理想の環境です」

女海賊「さぁ!降りるよ…」


フワフワ ドッスン


女海賊「未来おいで…ホムちゃんも私と一緒に来て…剣士の所に行く」

ローグ「あっしらはどうしましょうね?」

女海賊「捕虜の扱いはローグに任せる…逃がさない様に管理して」

ローグ「アイサーちっと休んでくるでやんす~」

『名もなき島の村』


カーン カンカン


盗賊「結構人が居るな…鍛冶場もあるじゃ無ぇか」

ローグ「船団の休息所っすよ…酒場もあるでやんすよ?」

盗賊「ほぅ…酒も造ってるんか?」

ローグ「あねさんが飼ってたミツバチ覚えてるでやんすか?」

盗賊「おぉぉ…あのミツバチもここに居るんだな?」

ローグ「いやいや女王バチ見つけて大きな養蜂場になったでやんす…だもんでハチミツ酒が作れるんす」

盗賊「おーそりゃ一杯飲みてぇな」

ローグ「みなさんハチミツ酒はいかがでしょう?」

商人「良いね」

情報屋「飲みたい」



『酒場』


ワイワイ ワイワイ


ローグ「持ってきたでやんす…みなさんどうぞ」

盗賊「…」グビ

商人「…」グビ

情報屋「…」グビ

盗賊「こりゃシン・リーンのハチミツ酒とは違った味わいがあるな…旨いウマイ」

ローグ「この島に居る人はですね…みんなドワーフの血を引いたハーフドワーフなんす」

商人「見た感じ普通の人間と変わらないね?」

ローグ「何か感じやせんか?」

商人「何かって…なんだか落ち着くね」

情報屋「そうね?平和というか…のどかと言うか」

ローグ「そうなんす…それなんすよ」

盗賊「そういやそうだな…普通に畑作って平和に暮らすってのは中々無いな」

ローグ「魔王の影響が無いってのはそういう事なんす…全然ギスギスしてないっすよね?」

商人「…そうか世界中どこに居ても落ち着かない…そういう事だったのか」

ローグ「でも外に居る人間はこういう平和な暮らしを奪って行こうとするでやんす…魔王のせいっすよね?」

情報屋「そんな風に魔王に操られていたんだ…」

ローグ「みなさんが捕虜という立場になっている理由なんす」

商人「捕虜ねぇ…」

盗賊「俺達は気付かないうちに人の幸せを奪ってんだな…心ん中に住んでいる魔王のせいで」

情報屋「ローグはどうして気付けたの?」

ローグは「あっしはかしらに輸血された事があるんすよ…ドワーフの血が入りやした」

商人「そういう魔王の封じ方もあるのか…」

ローグ「ドワーフは少数種族なもんで人間みんなに輸血するのは無理でやんすね」

盗賊「なぁるほど…海賊とドワーフの船団との線引きはソレか…海賊は人間なんだな?」

ローグ「そうっすね…でも人間の中にも皆さんの様な良い人も沢山いるんすよね」

商人「やっぱり光が欲しいなぁ」グビ

『約束の入り江』


ザブン ザー


盗賊「何だろうな…なぁぁんもしたくなくなる位…平和だな」

情報屋「あなたのユートピアも良い所よ?」

商人「あの小さな小舟は船団との行き来用?」

ローグ「あれは違うんすよ…あねさんがわざわざあそこに置いてる思い出の船らしいっす」

盗賊「思い出?この島にか?」

ローグ「あねさんはあの小さな船で剣士さんと駆け落ちしたらしいでやんす」

盗賊「駆け落ちだと?ヌハハまじか」

ローグ「なんでも夢の中であの船に乗って愛を誓ったとかなんとか…あねさんは意外にロマンチックなんすよ」

商人「夢幻か…なんか…僕も大事な事を忘れている気がするなぁ」

情報屋「あなたも?」

商人「銀のロザリオ…祈り…うーんもっと大事な…何だろう?」


カーン カンカン


盗賊「お?鍛冶場の音だ…良いねぇ鐘の音みてぇに響く」

ローグ「この島では銀が採れるんす…ミスリル銀だったら良かったんですがねぇ…」

盗賊「ミスリル銀はどこで採れるんだ?」

ローグ「それはあっしにも教えてもらえないっす…大きなたたら場があるって言ってたでやんす」


コーーーーン コーーーーーン


盗賊「お?音が違うな」

ローグ「これは誰かのミスリル武器を打ち直している音っすね」

商人「これだ!!」ガバ

情報屋「どうしたの?急に…」ドキドキ

商人「音だ!!ミスリル銀は特殊な音が出る…これで憎悪を祓える…よしこれなら上手く行く」ブツブツ

盗賊「おいおい一人で自己完結すんなよ…ちゃんと話せ」


ミスリル銀を市場に流通させるんだ

それは鍛冶場で打ち直されて武器になると同時に

憎悪を祓う音を奏でる

その音で多くの人間の憎悪を祓うんだよ



女海賊「…良い線行ってるけど…もうお姉ぇがやってんの」

ローグ「あねさん…来てたでやんすか」

女海賊「あんた達…ここで何やってんの!?ここは私の入り江…勝手な事しないで頂戴!」

商人「女海賊…ミスリル銀をもう流通させてるって…」

女海賊「ミスリル銀はね…精錬に手間が掛かって大量に流通出来ない…そんな簡単じゃないんだよ」

商人「…そうか」ガク

女海賊「あんた達みんな来て!!剣士に顔見せてって」

『古代遺跡』



女海賊「パパ!連れてきたよ」

海賊王「おまんらが剣士の仲間なんやな?ワイはドワーフ国の王…海賊王や」ズズーン

商人「あ…はじめまして…」

盗賊「すげぇゴツイ爺だな…」ヒソ

女海賊「おまんらの話は聞いちょる…ワイの婿に話していくんや…目覚めさせよったら新しい国作ったるわ」

盗賊「おぉぉ国くれるってのか…すげえ話だな」

女海賊「未来!!連れて来て」

子供「パパ!押すよ…」ゴトゴト

盗賊「おぉぉ剣士…無事…じゃなさそうだな」

剣士「ぁぁぅ」

盗賊「生きて居て何よりだが…あれからずっとこのままか?」

女海賊「…」

海賊王「心がのうなったんや…魔王にもっていかれよった」

女海賊「ホムちゃん…話て」

ホムンルクス「はい…これは魔王化症候群で精神崩壊を起こしたものと思われます」

ホムンルクス「分裂してしまった心はどこに行ったのか分かりませんが所縁のある人や物と接する事で取り戻せる可能性があります」

商人「僕たちの心の中に居るかもしれないって事だね?」

ホムンルクス「はい…商人が以前私におっしゃっていた事です」

盗賊「剣士と所縁あるといえば女海賊と女エルフしか思い浮かばん」

商人「女エルフはあれ以来行方不明だね…あと由縁があるとしたら魔王か」

海賊王「魔王はアカン!!もう2度と呼んだらアカン!!」

女海賊「女エルフは多分…森になった…あの時森は剣士を守ろうとしていたから…」

商人「森ねぇ…シャ・バクダはあれからどうなったんだろう?」

女海賊「もう行きたくない!又何か起きる…」

商人「…提案だよ!!」

海賊王「何や?勿体ぶらんと言ってみぃ」

商人「みんなでバーベキューでもしないかい?」

盗賊「お前…何を突然…」

商人「ハハ良いじゃ無いか…剣士も久しぶりに女海賊の海賊焼きを食べたいんじゃないかな?」

海賊王「ガハハハハハハ気に入った!!ええなぁ!!岩石焼きってのもあるんやでぇ?」

女海賊「…」

海賊王「ローグ!!村の衆を全員集めて来るんや!!バーベキューやるで?」

ローグ「アイサー!!」ピュー

『広場』


ワイワイ ガヤガヤ


力を以て仁を仮る者は覇…これが覇道や

わいは覇の道で海を支配するんや

何回も聞いたでやんすよ

こらすげぇ玉の座った爺だなヌハハ

なんやとう!!わいは海の覇者や…故に海賊王


ワイワイ ガヤガヤ


情報屋「食べる?…」

女海賊「全然…」

剣士「ぁぅぁぅ」

情報屋「あれ?あなた…目を」

女海賊「なにさ…」ファサ

情報屋「フードでいつも顔を隠しているのは目を隠す為ね?」

女海賊「フン!関係無いでしょ」

情報屋「生まれて来たあなたの子も勇者の目をしていたのね?」

女海賊「指輪で私の目と交換したんだよ…悪い?」

情報屋「魔王に奪われたくないのね…」


そうさ…ハイエルフが剣士の目を奪ったのも勇者を守る為さ

そして私も同じように指輪を守ってる

どういう偶然か又人間達がドワーフの国に戦争吹っ掛けようとしてる

あんたに分かる?魔王の足音がするの


情報屋「あなた…ホムンルクスから聞いた?魔王ウイルスのワクチンはドワーフの血だって」

女海賊「知ってるさ…はらわた煮えくり返ったよ…私と剣士の子を…未来を捧げろって事さ」

情報屋「…」ゴクリ

女海賊「そんな事絶対にさせない」

情報屋「ごめんなさい…あなたの置かれた状況を軽く見てた」

女海賊「フン!!」


---これは200年前に精霊が子を失った状況と同じ---

---魔王に我が子を捧げるなんて---

---どれほど悲しい事なのか想像も出来ない---

---だから夢幻が生まれた---



-----------------

女海賊「パパ!!」

海賊王「お前もたまには飲めぇガハハハハ」グビ

ホムンルクス「ハチミツ酒です…どうぞ」

女海賊「ホムちゃんまで…もう!!」グビ

海賊王「剣士にも飲ませてやるんや…飲み物んなら少しは飲むやろ?」

ホムンルクス「私が飲ませて来ます」

女海賊「パパ!!例の謎のガラス玉…何か分かった?」

海賊王「おぉぉ忘れ取ったわ!!あれは只のガラスや無いガハハハハ」

女海賊「んなこたぁ分かってんだよ!!どんな効果があるか知りたいの!!分かったの?分かんないの!?」

海賊王「あのガラス玉は光を吸い込む様や…暗い所に置いとくと光るで?」

女海賊「…そんだけ?」

海賊王「光を蓄えよるんやな…それ以外は分からん」

ホムンルクス「見せてもらってもよろしいでしょうか?」

海賊王「これやぁぁ!!」ポイ

ホムンルクス「…これは何処で入手されたのですか?」

女海賊「光の国シン・リーンの古代遺跡さ…聖剣エクスカリバーと一緒に見つけた筈」

ホムンルクス「書物で学習しただけの知識ですが…伝説では光の石という物もあった様です」

海賊王「ほほーう?聖剣伝説やな?エクスカリバーの力の源やったらしいな?」

女海賊「…そういえば壁画で見たな光の剣は天に向かって光を放っていた…」

情報屋「私も数年前にシン・リーンまで見に行ったわ…もしかして」

ホムンルクス「この石はとても光が弱いのですね」

海賊王「そら暗い所にずっと置いとったからちゃうんか?」グビ

情報屋「もしかして光の剣は天に向かって光を放っていたのでは無くて天から光を受けていたのでは?」

女海賊「え!?…見方が逆?…天は宇宙を射してた」

商人「ああああああああああああ!!」ガバッ

海賊王「うおぉぉぉびっくりするやないか!!酔いつぶれとったんやないんか!!」

商人「インドラの矢のエネルギーは何だ!!ホムンルクス!!」

ホムンルクス「はい…衛星軌道上に配置されたパネルによって太陽光を吸収し触媒に蓄え…」

商人「それだ!!何千年分の太陽のエネルギーがそこにある!!」

ホムンルクス「インドラの矢をこの石に落とすのでしょうか?」

海賊王「ガハハハハ花火でも始めるんかいな!おもろいのぅ…やってみソラシド」

『飛空艇』


フワフワ


ローグ「岩の上に光の石を置いてきたでやんす…よっと」ピョン

女海賊「ホムちゃん…場所分かる?」

ホムンルクス「もう少し近づいてもらってよろしいでしょうか?

女海賊「おっけ…手で触れる所まで寄せる」

ローグ「おーらいおーらい…ちょい右っす!!そこそこそこ…いーっすね」

ホムンルクス「座標を取得しました」

女海賊「ほんじゃ戻るよ?」

ホムンルクス「はい…」


シュゴーーー



『約束の入り江』


フワフワ ドッスン


女海賊「光の石をあの岩のてっぺんに置いてきた」

海賊王「あそこにインドラの矢ちゅう光が落ちるんやな?」

商人「ホムンルクス…最小限で落として」

ホムンルクス「はい…」

海賊王「ぱーーーーーっと行け!!ぱーーーーーーーっと」

女海賊「パパは見たこと無いから言ってるけどさ…失敗したらこの辺消し飛ぶよ?」

ホムンルクス「…ではインドラの矢を投下します」


ピカーーーーーーーー シーーーーン


海賊王「おぉぉぉ…お?…終わりか?」

盗賊「こりゃ成功だな」

商人「光の石を見てみたい」

女海賊「ローグ!!飛空艇に乗って…取りに行くよ」

ローグ「アイサー」ダダ


フワリ シュゴーーーー


海賊王「なんやあっけない花火やったなぁ…酒がマズイわ」

盗賊「インドラの矢の爆発は洒落になん無ぇから」

海賊王「わいの娘の爆弾よりもスゴイんか?」

盗賊「あれの1000倍は行く…想像出来んだろ」

『古代遺跡』


ピカー


海賊王「こりゃ良い明かりになるなぁ?ガハハハハ」

商人「すごいな…真っ暗な地下でも昼間みたいに明るい」

女海賊「ホムちゃん…この石にはどれくらいの光が溜まるか分かる?」

ホムンルクス「衛星に使用している触媒と同じ質量と思われますのでインドラの矢をすべて吸収できると思います」

女海賊「ここからエネルギーをどうやって取り出すの?」

ホムンルクス「専用のマニピュレータが必要になりますが現代まで残って居るのは衛星に残された物しか無いでしょう」

女海賊「衛星ってどこにあんの?」

ホムンルクス「宇宙です…遠い空の向こうに浮いています」

女海賊「飛空艇で取りに行けない?」

ホムンルクス「具体的な数値で35786km上空になりますので飛空艇で取りに行く事は不可能です」

女海賊「ぶっ…無理過ぎる」

商人「でもそこにあるエネルギーをこの光の石に入れる事が出来るのはスゴイ事だ」

女海賊「あんた…これをどう使うつもり?」

商人「命の泉に入れるのさ…水を通して世界中の海が光る」

女海賊「海が光る…」

商人「そうさ…僕は夢幻の中でちゃんと精霊から導きを受けていた…光る海だ…僕はこれを求めていた」

女海賊「行く…」スック

海賊王「待て待て待て…そう慌てんなや…家族が揃った幸せをちったぁ堪能していくんや」


剣士は心がどっか行ってしもうてもな?

体はちゃぁぁんと感じ取るで?

お前と未来が居らんとそら寂しいやろ

2~3日しっかり休んでやな

次は一緒に連れて行ったれや


ホムンルクス「命の泉も剣士の所縁の地です…私が面倒を見ますので連れて行っては如何でしょう?」

女海賊「…分かったよ…ゆっくりして行くよ」

『丘の上』


ヒュゥゥゥ


盗賊「いよぅ…何してんだぁ?」

ローグ「ここから海に沈む夕日を見てるでやんす」

盗賊「おぉ…こりゃ良い景色だが…」

ローグ「向こうの空が真っ黒でやんす…夕日が真っ黒な空に沈んで行ってるんすよ」

盗賊「嵐の前だな…」

ローグ「あの空の下でどんだけの人が死んで行ってるんすかね?」

盗賊「不吉な事言うない…それでも人間はドロまみれで生きていくんだよ…俺らの行く道だ」

ローグ「あっしらは光になれますかね?」

盗賊「お前も気付いてんだろ?女海賊から強烈な光を」

ローグ「そーっすね…あっしらはその光を守らないといけないんす」

盗賊「俺はな…夢幻の夢ってやつを殆ど覚えていないんだがよ…一つだけ覚えてる事があんだ」

ローグ「あっしも夢なんか覚えてないっすね」

盗賊「それはな…最後の最後まで希望を見失わない奴の事だ」

ローグ「あねさんっすか?」

盗賊「かもな?顔は覚えて無ぇんだ…だが似てるんだよギリギリ戦い抜いてる姿がよ」

ローグ「あねさんはっすねぇ…カリスマなんすよ」

盗賊「ほう?」

ローグ「そらまるで光の様にですね?…」


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『飛空艇』


ビュゥゥゥゥ


海賊王「…3日はあっという間やなぁ…」

子供「爺またね~」

盗賊「嵐が来るぜ?早い所行った方が良い」

女海賊「早く乗って!!」

海賊王「例の鐘は女戦士が持って行ったで?先に会って行くんや…ええな?」

女海賊「分かってる…」

海賊王「ワイは海に出よるけぇ何かあったら船団を探せばええ」

女海賊「パパ!ありがとう」

海賊王「お前らしゅう無いなぁ!!さっさと行けぇぇ!!」

女海賊「…」ノシ


フワリ シュゴーーーーーーー


盗賊「例の鐘って何だ?」

女海賊「この飛空艇に付ける鐘だよ」

盗賊「鐘?」

ローグ「ミスリル銀で作った鐘なんすよ…ホラ船首に取り付け金具あるっすよね?」

盗賊「あそこに鐘を吊るす予定なんか…こりゃまた奇抜な船だなヌハハ」

商人「良いアイデアだね…ミスリル銀の音を奏でる飛空艇」

女海賊「鎮魂の鐘だよ…」

情報屋「良いわね…」

盗賊「それにしてもこの飛空艇は随分改造したな?こりゃイルカの形か?」

ローグ「あっしがやらされたでやんす…球皮が下から弓で狙えない様になってるんすよ…遠くから見たらイルカっすね」

盗賊「床面の窓は爆弾投下用か?」

ローグ「そうっす…そっからウンコみたいにポトポト落とすんすよ…ボウガンも撃てるでやんす」

盗賊「ガチ戦闘用だな…7~8人が定員って所か」

女海賊「狭間に入る!!ハイディング」スゥ



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『古都キ・カイ上空』


ザーーーーーー


盗賊「黒い雨か…」

ホムンルクス「ここは津波の影響をあまり受けていませんね」

盗賊「あぁその様だ…心配していたが良かった…しかしこの黒い雨で真っ黒けだな」

ホムンルクス「噴火が継続すればこの辺りは火山灰が1メートル程積もると思われます」

盗賊「結構距離あんのに1メートルか」

商人「南の大陸は壊滅的な影響だね…雨で収まってくれれば良いのに」

ホムンルクス「長期的に見て噴火は避けられません…避難する猶予が出来たと思って下さい」

商人「ホムンルクス…君はこの状況で人々をどう救う?」


短期的には避難するのが一番と思われます

その後の再生を考慮しますと火山灰で育つ植物の育成と

サンドワームの様な地生昆虫との共生が望ましいと思います

今後平均気温が下がって冬が継続しますので

気温の影響を受けにくい沿岸部にて海産物を糧とした生活へ切り替えを促します


商人「海の温度は下がりにくいって事かな?」

ホムンルクス「はい…地熱がありますので温かい水辺に生物が集まるようになります」

商人「真っ黒な火山灰を考えるとあったかい水の中の方が快適なのかもね」

情報屋「それが人魚だわ…錬金術で足の代わりのヒレを作る事なんて簡単」

商人「ハハ人魚伝説も君が論文を書けるね」

情報屋「そうね…色んな伝説が一本に繋がって居る事も分かって来た」

商人「ホムンルクス…人々の移動を促すのはどうやってやる?」

ホムンルクス「はい…人間は繁殖能力が極めて高い種族ですので始めに女性の誘導を促します」

商人「どうやって?」

ホムンルクス「香料と着色料を昆虫から採取させて沿岸部で配布するのです」

商人「驚きだな…香水と化粧の材料を虫から採取…女性を魅力的にするのか…」

ホムンルクス「はい…統計で2倍以上の人口増加が見込めますし生活の土着を促せます」

情報屋「人魚に女性が多くて魅力的だった説明もつきそう…フフフ」

『海賊の基地』


盗賊「こんな所に海賊の基地があったてーのは驚きだ…キ・カイまで馬で半日掛かんねぇ」

商人「上手い事狭間に隠してるんだね」

盗賊「見ろ…例の幽霊船だ…やっぱりあれは女戦士の船だったか」

女海賊「無駄口はそこまで…あんた達は捕虜だって事忘れないで」

盗賊「ヌハハ…捕虜ねぇ」

商人「それにしてもなんかバタバタしてるね」ヒソ

盗賊「だな?大砲乗せてんな」ヒソ


ツカツカ 


女海賊「お姉ぇ!!」

女戦士「遅かったでは無いか…ん?盗賊達では無いか!!」

盗賊「ぃょぅ…俺ら捕虜になっちまった様だ…元気か?」ノ

女海賊「いろいろ在ってさ…例の鐘を取りに来たよ」

女戦士「鐘は入り江のヤードに置いてある…お前の方こそホムンルクスはどうなったのだ?」

女海賊「ホムちゃん!!おいで…」

ホムンルクス「はい…」ゴトゴト

女戦士「ホムンルクス…剣士まで…どういう事だ?」

女海賊「訳あって命の泉まで行く事になった…この袋の中見て」パサ

女戦士「お前が調べていた石だな?…眩しいな」ピカー

女海賊「光の石っていう物だという事が分かったんだ…これを命の泉に置いて来る」

女戦士「…なるほど」

商人「命の泉の水はすべての海に繋がっているんだ…それを置いて海を光らせる」

女戦士「ミスリルの鐘とは別のアプローチで憎悪を祓うのだな?」

商人「そうなれば良い…賭けだよ」

女戦士「剣士が同行しているのは何故だ」

ホムンルクス「剣士は魔王化症候群の後遺症で精神が分裂した状態です…所縁の地を巡れば心を宿すかもしれません」

女戦士「ふむ…女海賊…お前は良いのか?」

女海賊「私は剣士の為なら何でもやるさ…大丈夫」

女戦士「なら良い…して?…すぐ行くのか?」

女海賊「うん…こっちの状況は?」

女戦士「良いとは言えん…海賊たちが集中砲火を受けて居るのだ…海戦が始まった」

女海賊「なんでさ!?海賊はここん所何もしてないじゃん!!」

女戦士「お前の爆弾の技術供与を断っているからだ…強行手段なのだ」

女海賊「…そんな」

女戦士「セントラルの地下爆破事件の事もある…仕方の無い流れだ」

女海賊「集中砲火ってどういう事?セントラルの他には?」

女戦士「シン・リーンもキ・カイも…すべての国がドワーフの国へ向かっている」

女海賊「シン・リーンって…魔女は何やってんのよ?敵になっちゃってんの?」

女戦士「魔女は何年も前から行方不明だそうだ…関わっているかは分からん」

女海賊「こっちは戦争収めようと頑張ってんのになんで勝手に始めちゃうのよ…」バン

女戦士「…待て!どうするつもりだ?」

女海賊「私が行く!!」

女戦士「ダメだ!!これ以上事態を荒らげるな!!」

女海賊「分かってんよ!!敵を戦闘不能にするだけ…出来るだけ衝突は避ける」

女戦士「…」

女海賊「お姉ぇ!!海賊を仕切ってんのは私なんだ…お姉ぇは幽霊船で救助に回って」

女戦士「戦闘不能にするだけだな?…[ピーーー]なよ?」

女海賊「死者ゼロでやってやんよ」

『入り江のヤード』


リン ゴーーーン


盗賊「おぉぉぉ良い音が鳴るなぁぁぁ!!」リン ゴーーーン

ローグ「鐘つきやしたかぁ…えっほえっほ」ガチャガチャ

盗賊「何積んでんだ?」

ローグ「ガラス瓶とボウガンっす…ボルトも沢山積んでるっす」

盗賊「ガラス瓶なんか何に使うんだ?」

ローグ「煙玉とか爆弾を入れて海に落とすんすよ」

盗賊「なぁるほど…爆弾も水ポチャじゃ消えちまうって事か」

ローグ「そーっすね…海で爆弾爆発させると強烈な波が出来るんすよ…甲板にいる敵はみんな海に落ちるっす」

盗賊「この戦い方は女海賊が編み出したんか?」

ローグ「あねさんはカリスマなんすよ…すごいっしょ?」

盗賊「いやすげぇわ…あいつは本当にドラゴンとかクラーケン一人でぶっ殺しそうだ」

ローグ「あっしもそう思うっすよ」

盗賊「自在にハイディング使うのも反則だな…時間止めてんのと一緒だもんな」

ローグ「海賊共から見た視点だと流星の様に見えるらしいっす…みんな憧れてるでやんす」


---いや本当すげぇわ---

---剣士と女エルフのドラゴンライダーもすげぇと思ったが---

---違う意味で女海賊もすげぇ---

---魔法が使えない代わりに創意と工夫で戦う---

---数年で俺は置いてけぼり食らったな---

『飛空艇』


ビョーーーウ バサバサ


私の指示に従って

前方のボウガン2基は商人と情報屋

右側は未来

左側は盗賊

後方はローグ

始めに空戦で敵の気球を全部落とす

シン・リーンの気球は魔法を撃って来るからハイディングで寄る

狙いは気球の球皮

一気に寄るよ…ハイディング


女海賊「リリース…撃って!!」スゥ

バシュ バシュ バシュ バシュ

盗賊「こりゃ多いな…30基は飛んでる」バシュ バシュ

女海賊「全部落とす!!照明弾落として!!ハイディング」スゥ

ローグ「アイサー」ポイ ピカー

女海賊「リリース!!撃って!!」スゥ

バシュ バシュ バシュ バシュ

女海賊「高度上げる!!下を狙って」シュゴーーーーー

商人「ハハ僕らが圧倒的じゃないか」バシュ バシュ

情報屋「火炎魔法来る!!」バシュ バシュ

女海賊「ハイディング」スゥ

盗賊「こりゃ向こうは俺らに勝てる訳無ぇな…」

女海賊「リリース!!次!!」

バシュ バシュ バシュ バシュ

女海賊「よし…次は船団の上空飛ぶから煙玉落として」

盗賊「これだな?俺が火を付けるからローグ落としてくれ」チリチリ

ローグ「アイサー」ポイポイ モクモクモク

ドーン ドーン


商人「大砲撃って来てるね」

女海賊「フン!当たる訳無い…こっちは動いてんだ」

盗賊「煙玉有効だな!?」

女海賊「次…爆弾を海に落とすよ…3…2…1…投下!」ポイ


ピカーーー チュドーーーン


ローグ「甲板から人が落ちやした!!」

女海賊「次…火炎弾…3…2…1…投下!」ポイ

ローグ「着火!帆が燃えていやす」

女海賊「おっけ!!この要領で船の帆を全部燃やす」

商人「ハハハすごい手際だね…」

女海賊「次行くよ!!ハイディング」スゥ



リン ゴーーーーン

リン ゴーーーーン

リン ゴーーーーン

リン ゴーーーーン



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ローグ「敵の船団は壊滅っすね…船の消火で手一杯でやんすね」

盗賊「ありえんな…こんだけの船団が死者なしで無力化だ…帆がなきゃ漂流するしか無ぇ」

女海賊「どうせ食料はたらふく積んでんだ…死にゃしないさ」

商人「死者無しで無力化されただけって言うのは向こうにとってどう思うかだね?」

盗賊「だな?さすがに偶然とは思わんだろう」

商人「こっちに戦う意思は無いって伝わるかな?」

ホムンルクス「ほとんどの人はそう思うかもしれませんが一部の人は逆に不満を募らせていると思います」

盗賊「ヌハハ本当にクソな人間も居るんだよなぁぁ恥ずかしいわ」

ホムンルクス「精霊が何と戦って来たのかご理解いただけましたか?」

盗賊「わーってるよ」

ホムンルクス「そして私たち超高度AIはそういう人にも逆らえない…それが事実です」

商人「鎮魂の鐘は効果あったのかな?」

女海賊「あるよ…普通は特攻してくる人が出るんだ…今回は居なかった」

盗賊「そうだな…追いつめられると大砲で人飛ばしてきたりするもんな…それが無ぇ」

ローグ「あっしも昔飛ばされる所でしたよ…負けが込むと上官が狂っちまうんすよね」

商人「敵の気球が素直に撤収したのもソレか」

盗賊「かもな?だがあの状況で撤収するしか無いとも思うがヌハハ」

『船団上空』


ビョーーーウ バサバサ


ローグ「あっしらの海賊は撤収してるでやんす…良いんすかね?敵を漂流させたままで?」

女海賊「…」

盗賊「放置した方が時間稼ぎにはなるな…どうせ本隊がどっかに居るだろ」

ローグ「今のはシン・リーンの船団すよね?本隊はセントラルなんすかね?」

商人「うーん…相手からしたら海賊狩りなんだけど…完全無力化されたのは心象良くないねぇ…」

盗賊「んむ…セントラルとキ・カイがどう動くか」

商人「このままだとシン・リーンは立場無くなるね」

女海賊「ホムちゃん…どうすれば良い?」

ホムンルクス「救助してもしなくても海戦の泥沼化は避けられないと思われます…早く命の泉を目指しましょう」

女海賊「分かった…救助はお姉ぇの働きに賭ける」


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鎮魂の飛空艇編

   完

『数年前_星の観測所』


ガヤガヤ ガヤガヤ


魔女「闇が去って半年…やっと復興の兆しが見えて来たようじゃな」

アサシン「魔女はシン・リーンに帰らなくても良いのか?」

魔女「ちと気になる事があるのじゃ…」

アサシン「カタコンベか…除染するには人手が足りまい?」

魔女「そうじゃなぁ…魔術師だけでは焼き払い切れぬ…じゃが放っても置けぬしのぅ」

アサシン「義勇団から人出が欲しいか?」

魔女「そういう問題では無いのじゃ…中に溜まっておる液体が処理出来んのじゃ…どうしたもんかのぅ」

アサシン「なぜそれほど拘る?」

魔女「主は魔王にとどめを刺した後魔王は何処へ行ったか見て居ったか?」

アサシン「地面に吸い込まれて行ったが…黄泉へ還ったのでは無いというのか?」

魔女「器を変えただけかもしれぬと思うてな…下にはカタコンベがあるじゃろう?」

アサシン「何か在ると思っているのだな?」

魔女「わらわの師匠がこれほど大きな魔方陣を作って居るからのぅ…只事では無い」

アサシン「魔王がまだどこかに居るのか?」

魔女「分からぬ…じゃが魔方陣の中では魔王も何も出来ぬ筈じゃ…指輪で呼ばれぬ限りな」

アサシン「安息している場合では無いか…」

魔女「それはさておき…セントラルから派兵団が来ておる様じゃが…放って置いて良いのか?」

アサシン「良くない…恐らく新しい領主を立ててこの近辺を自治領にするだろう」

魔女「フィン・イッシュの王女も心配じゃな?…憔悴しきっておる」

アサシン「私はどう立ち回るか…」

魔女「主はもう決まっておろう…すでに王女の相談役になっておるでは無いか」

アサシン「私にフィン・イッシュは重い」

魔女「義を見てせざるは勇なきなりじゃ…王女と出会ったからには縁がある…主は義に背く気か?」

アサシン「魔女はフィン・イッシュ側に付く気なのだな?」

魔女「わらわは何も背負って居らぬ故自由じゃ…王女の境遇を見て捨て置く訳に逝かぬ」

アサシン「少し王女と話してみるか…」

魔女「行くのであればわらわも同行するぞよ?」

『南西のオアシス』


アサシン「王女…謁見失礼する」

王女「どうぞ…今日は何用ですか?」

魔女「お疲れでは無いか?鋭気が見えぬが…」

王女「お気になさらず…」

アサシン「先日セントラルから派兵団が来たのだがこちらにも来ていないか聞きに来た」

王女「その件ですか…派兵団から領有の件を聞かされましたがどう答えて良いか分からず…」

アサシン「やはり来てるか…して何か要求して来たか?」

王女「いえ…派兵団の本隊が後日到着するそうです…対談はその時にという事になりました」

アサシン「恐らくセントラルは新しい領主を立ててシャ・バクダを自治領とするだろう」

王女「はい…」

アサシン「その場合王女が拘束される可能性が高い…つまりフィン・イッシュは属国扱いになる」

王女「…」

魔女「わらわ達はそうならぬ様に進言しに参ったのじゃ…」

王女「…と言いますと?」

アサシン「ドラゴンの義勇団と魔女の魔術団をフィン・イッシュ下に置く事を明言するのだ」

王女「それは大変ありがたいのですが労多くして益少なしと言う状況になってしまいますが…」

魔女「わらわは元より益なぞどうでも良い…主の境遇を捨て置けんだけじゃ」

アサシン「私は義勇団の資産を守るという意味もある…差し押さえはされたく無いのでな」

王女「ありがとうございます…王都に先遣隊を送って兵が乏しくなり心細かったのです」

魔女「その様じゃな?顔がやつれておる」

王女「私には側近が一人も居ない物ですから…どうすれば良いか分からないのです」

アサシン「まずオアシス周辺を実効治安している姿を見せる必要がある」

王女「それはやっていますがオアシス間の移動がままならないので物資不足が深刻です」

アサシン「ラクダと気球が不足しているのか…義勇団も同じ状況だ」

王女「砂漠では馬車が使えないのが物流の課題です」

魔女「オアシス間に道があれば良いのじゃな?」

アサシン「何か手があるのか?砂漠に道を作れる程石も無いぞ?」

魔女「魔法で砂を焼けば硬くなるのじゃ…割って使えば砂レンガになる」

王女「砂レンガで道を作るというのですね?人出はどのくらい必要でしょう?」

魔女「それほど難しくはないぞよ?ボルケーノを操るだけじゃ…硬くなった砂を道なりに慣らせば良い」

アサシン「もしオアシス間に流通出来る道が出来れば随分状況が変わる…良い案だ」

魔女「そうと決まれば早速行くとするかの?」

王女「はい…道慣らしの人員を呼んできます」

『オアシスの道』


ゴゴゴゴゴ ボゥ


魔女「火炎地獄!」ゴゴゴゴゴ ボゥ

王女「あっという間に道が出来て行くのですね…」

アサシン「この調子だと数日で近隣のオアシスは道で繋がる…馬車が入用になるな」

王女「南西のオアシスには数台しかありません」

アサシン「道を作るのは魔女に任せて私は馬車の調達にシャ・バクダまで行って来る」

王女「そういう用件は私の兵にやらせても良いのですが…」

アサシン「いや…シャ・バクダの状況も見ておきたいのだ…私が行った方が良い」

王女「そうですか…なにか私に出来る事はありませんか?」

アサシン「物流の計画を立ててほしい…食料の配布が進めば治安も改善すると思われる」

王女「分かりました…各オアシスの物資状況を把握しておきます」

アサシン「木が生い茂っているオアシスもあるから木材の調達が出来るとやれる事が増える」

王女「そうですね…私も考えて見ます」




『数日後』


王女「道が出来るや否や早速人が往来する様になりましたね」

魔女「わらわも嬉しいのじゃ…見て見よ…道のわきにサボテンを植えて行く人も居る」

王女「復興の兆しが見えて私も元気が出てきました」

アサシン「この調子で実効治安していれば民はこちらの味方だ」

王女「各オアシスの調査をしていて分かったのですが緑化がかなりの速さで進んでいる様です」

アサシン「それは精霊樹の影響だな…どういう訳か遺跡に精霊樹が生えたのだ」

王女「遺跡はもう小さな森になってきていますね」

魔女「ここら一帯かつては広大な森じゃ…元に戻ろうとしておるんじゃな」

王女「おかげで羊が良く育っている様です」

アサシン「次は木材を使って羊を守る柵を作るのだな…ウルフが来てしまっては元も子もない」

王女「分かりました…手配させておきます」

アサシン「ねぎらい様の酒も用意した方が良い…この辺りはサボテン酒が名産だ」

魔女「さて…わらわはカタコンベの掃除に戻るとするかの…魔術師達に任せっきりじゃ悪いでのぅ」

王女「人出が欲しい場合は言ってください…少しは出せますから」

『南西のオアシス』


ザワザワ ザワザワ


魔女「これは何の騒ぎじゃ?」

アサシン「シャ・バクダの新しい領主が挨拶に来ているのだ」

魔女「主は王女の元に居らんで良いのか?」

アサシン「1対1の対談らしい…国家機密だから席を外せとの事だ」

魔女「それでは王女が危ないでは無いか!暗殺される可能性を考えんのか!!」

アサシン「近衛が遠くから弓で狙っている…恐らく何も起きん」

魔女「国家機密とはまた何を話しておるのやら…」

アサシン「闇が晴れたその日…ドラゴンライダーも飛空艇も見られているのだ」

魔女「セントラルは関係なかったじゃろうに」

アサシン「この地での惨劇は人づてに伝わって居る…王女が証人尋問される立場になってしまうのは分からんでもない」

魔女「早い所フィン・イッシュに引き上げた方が良いかも知れんのぅ」

アサシン「まだ時期尚早…もう少し辛抱せねばなるまい」


ガチャリ


領主「…では…良い返事を待っている」

王女「ご足労頂きありがとうございます…」

領主「…」ジロリ

アサシン「…」

魔女「…」

領主「お前は義勇団の者か?」

アサシン「はい…」

領主「身分は?」

アサシン「…」

王女「私の従士になります」

領主「ほう…ドラゴンはどうしたのだ?」

王女「国へ還りました」

領主「エルフとも手を結んでいると聞くが…」

アサシン「第2皇子の事でしょうか?」

領主「フハハハハ話が早いな」

アサシン「皇子は戦死しました…骸は王都にあります」

領主「骸を引き渡すのも条件にするべきか…」

王女「…」

領主「第一皇子が王に即位した後ではどうでも良い話かフハハハ」

アサシン「…」

魔女「領主風情がえらく大きな口を叩くのじゃのぅ」

王女「魔女…良いのです」

領主「これは失敬…王女様でしたな?フハハハ」スタスタ



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魔女「なんと無礼な奴か…あのような者を領主になぞセントラルは何を考えておるんじゃ」

王女「あの方は直系ではありませんが王族の一人の様です」

アサシン「どんな条件を言われたのだ?」

王女「遺跡調査の主導をセントラルに渡せと」

魔女「狙いはカタコンベかえ?」

アサシン「むぅ…セントラルのカタコンベと言い…なぜ拘る?」

王女「理由は明かしてもらえなかったのですが軍が遺跡調査にあたるという事だけ分かりました」

魔女「魔術師だけで除染は手詰まりじゃったから丁度良いのかもしれんのう」

アサシン「ふむ…調査をやらせて探るか」

魔女「他に何か言って居らぬか?」

王女「シャ・バクダに通行税が掛かるようになります…つまりオアシス圏と分断する形に…」

魔女「良いのか悪いのか…」

アサシン「商隊がシャ・バクダ中心に編成される想定で居るのだな…オアシス圏に税金をかけて居るのと同じだ」

王女「そうですね…」

アサシン「近隣の村との商隊をこちらも計画すれば良い…通行税が無い分利はこちらにある」

魔女「じゃが軍がシャ・バクダに駐留するのであれば直に乗っ取られそうじゃな?」

アサシン「民次第だな…もともと戦闘民族だ…民を味方につけた方が強い」

王女「エルフとドラゴンもこちら側に居ると思っていますので手は出しにくいかと思います」

魔女「そうか…エルフと交流しておく手もあるのぅ」

王女「兵が言って居りましたが度々エルフが来ている様なのです」

アサシン「精霊樹か…」

魔女「おぉ!!わらわに案がある」

王女「何でしょう?」

魔女「わらわは精霊の御所の場所を知っておる…エルフを案内するのじゃ」

アサシン「そんな場所があるのか…それはまさか私が探していた地下への入り口か?」

魔女「多分そうじゃ…入り口はトロールが守って居って人間では入れぬ」

アサシン「なるほど…エルフなら入れる訳だな?」

魔女「わらわが精霊樹でエルフを待つ…話しをしてみる故主らは待っておれ」

王女「朗報をお待ちしております」

『砂漠』


ノッソ ノッソ


アサシン「ラクダに乗るのは慣れて来たか?」

王女「はい…でも楽では無いですね」

アサシン「徒歩よりも随分ラクダ」

王女「フフ…遺跡の方にテントが出来てますね」

アサシン「彼らがカタコンベをどうするのか見物だ…あのヘドロをどうするのかクックック」

王女「魔女はあれから帰って来ませんが大丈夫でしょうか?」

アサシン「並みの魔法使いでは無い…よほどの事が無い限り心配は無用だ」

王女「エルフが精霊樹を見に来る目的は何なんでしょう?」

アサシン「エルフの森にも精霊樹が生えているらしいが魂が無いらしい」

王女「こちらの精霊樹の魂を見に来ているという事ですね?」

アサシン「ハイエルフを生むのは精霊樹だ…彼らも存続が掛かっているからな」

王女「ではオアシス近郊が森になっていくとして又人間とエルフの摩擦が始まってしまいそうですね」

アサシン「そうならない様にうまく調和していくのが王女の役目でもある」

王女「私はいづれ王都に還らなければなりません…心配事が尽きませんね」

アサシン「私に一つ考えが思いついた」

王女「申して下さい」

アサシン「第2皇子はまだフィン・イッシュ地下墓地で椅子に繋がれているのだ」

王女「ゾンビになって死んだのでは無かったのですね?」

アサシン「奴をここまで連れて来れば森の一部に生まれ変わるかもしれない…」

王女「弔いの代わりですか…」

アサシン「フィン・イッシュへ向かった先遣隊へ保護する様伝える事はできるか?」

王女「分かりました…伝令を気球で向かわせる様手配します」

アサシン「済まんな…一応戦友なのだ」

王女「存じております」

『星の観測所』



魔女「おぉ主らを探して居った所じゃ」

王女「帰って要らしたのですね…心配していました」

アサシン「エルフには無事に会う事が出来たのか?」

魔女「なかなか警戒しておって手こずったがな?無事にこちらの事情を説明出来た」

王女「精霊の御所へは案内出来たのですか?」

魔女「うむ…御所の中にて隠れて居る」

アサシン「やはり精霊樹を見に来ているのだな?」

魔女「それだけでは無いらしい…エルフもカタコンベを気にして居る様じゃ」

アサシン「何かあるのは確実という事か」

魔女「あそこに投棄されている骸にはエルフも多く含まれているそうじゃ…200年以上前の事じゃがな」

アサシン「ますます気になるな…」

魔女「師匠は何も語ろうとはせんかったが…一度リリスという名を口にしたことがある…それやもしれぬ」

アサシン「リリス…超古代の最初の女神の名…では無いか?」

魔女「主は物知りじゃのう?わらわは超古代の事には疎いのじゃ…知っている事を教えよ」

アサシン「これは情報屋の方が詳しい…悪魔の子を産んだという事くらいしか知らん」

魔女「悪魔の子のぅ…誰の事じゃろうか?」

アサシン「人間だよ…最初の人間を生んだのがそのリリスという女神だったとの事だ」

魔女「わらわはちと勉強不足じゃな…超古代の事をどうやって学べば良いのじゃ?」

王女「聖書に記されていると思います…私は持っていますがお読みになりますか?」

魔女「魔術書とは対になる書物であったか…道理で知らん訳じゃ」

王女「そうですね聖書では魔術を禁止していますものね…お読みにはなりませんか?」

魔女「ちと興味が出て来た…読んでみとうなった」

王女「後ほどお持ちします」

『10日後』


アーデモナイ コーデモナイ


アサシン「魔女…少しは外に出たらどうだ?」

魔女「聖書はなかなかに難解でのぅ…」

アサシン「祈りの言葉が書いてあるだけでは無いのか?」

魔女「祈りの意味じゃよ…誰に向けた言葉なのかを読み解くのじゃ…さすれば歴史が紐解けて往くのじゃ」

王女「この黒板に記された図は?」

魔女「神々の系統図じゃ…サタンとリリス…そしてアダムとイブが残した子孫の系統図を記しておる」

アサシン「サタンとリリスの子が人間…アダムとイブの子は英雄か?神か?」

魔女「概ねそうじゃな…注目すべきはここじゃ」バシ



人間がサタンに導かれてアダムとイブの子孫を殺してしまうのじゃ

ゴルゴダの丘という場所で槍に刺されて死んだとなって居る

その槍は後に魔槍ロンギヌスと名付けられたそうな…つまりサタンは魔王じゃ

しかし死んだ筈のアダムとイブの子孫はその後生き返り神の一人となった

次にその神に導かれた人間は母なるリリスに魔槍ロンギヌスを打ち首をはねた



魔女「聖書から読み取れるのはここまでじゃ…神々の戦いの一部じゃな」

アサシン「それは超古代の伝説にあたるのか?」

魔女「年代が記されて居らんから分からぬ」

王女「約1万年前の出来事と聞いた事があります」

魔女「それでじゃ…気になるのが魔王に導かれた人間が何度もリリスを蘇らせようとしている事じゃ」

アサシン「何度もと言うと?」

魔女「蘇生される度にうち倒されておるのじゃ…そういう呪いが掛けられておるらしい」

アサシン「…まさか1万年経った現代でリリスを蘇らせるとでも?」

魔女「200年前に滅びたシャ・バクダがどのような国であったか…主は知らぬ訳ではあるまい?」

アサシン「錬金術…」

魔女「そうじゃな…新たな生命を作る事も可能じゃった筈じゃ」

アサシン「リリスが蘇るとどうなるのかが謎だな」

魔女「聖書では魔王と同様にリリスも恐れられておるのじゃ…冥界の女王と言われておる」

アサシン「クックック魔王の次は冥界の女王と来るか…この世はどうにかしている」

魔女「カタコンベの深層が気になるのぅ…」

『南西のオアシス』



魔女「王女がわらわ達を呼びつけるなぞ何かあったのか?」

アサシン「さぁな?」

王女「お入りください…」

魔女「どうしたのじゃ?何かあったのか?」

王女「いえ…セントラルとの交わし毎が延期になりまして…その…何か知っている事は無いかと」

魔女「延期?領有の件かの?」

王女「はい…遺跡調査の件も宙に浮いたままになっているのです」

魔女「はて?何も知らぬが?」

アサシン「延期になったのはこちらとしては好条件では?」

王女「…そうなのですが…その理由がどうも不可解なのです」

魔女「策を練られておるのか?」

王女「領主が急に病死しました…セントラルの特使もカタコンベに足を滑らせて液体の中に落下したとか…」

アサシン「呪いか何かだろう」

王女「他にも怪死が続いているそうなのです」

魔女「むむ…アサシン…お主何かやっておるな?本職は暗殺者じゃろう」

アサシン「さぁ?何の事か?」シラジラ

魔女「あの領主は気に入らなかった故…わらわは何も言う気は無いが…他の者を巻き込むでない」

アサシン「王女…オアシスは落ち着いて来た…ここは一度王都に戻る機と見るがいかがか?」

王女「…そうですね」

アサシン「伝令はまだ戻って来ていないのか?」

王女「戻ってきています…海に逃れていた民が少しづつ帰ってきているとの事でした」

アサシン「女王として即位する事を宣言した方が良いと思うが」

魔女「そうじゃな…国の安定を促すにはそれが良いな」

アサシン「ここの遺跡調査も早くても半年は掛るだろう…」

王女「分かりました…ご一緒に来てくださいますよね?」

魔女「勿論じゃ」

アサシン「近衛を2人程連れて行って側近に置くと良い」

王女「アサシン様はどうされるのですか?」

アサシン「私も同行する…戦友を放ってはおけんしな」

王女「それを聞いて安心しました…ここに残る近衛に指示を伝えておきます」

魔女「出立はいつにするか?」

王女「早い方が良いかと…用事をすませて夕刻には出立できます」

アサシン「そうか…わたしもちと用を済ませて来る」

王女「はい…気球にてお待ちしております」

『星の観測所』


魔女「この観測所に魔術師達を住まわせて良いか?」

アサシン「構わん…義勇団の連中と仲良くやる様言っておいてくれ」

魔女「望遠鏡があるで占星術の修行には丁度良かったのじゃ」

アサシン「さて…わたしも用を済ませて来る」

魔女「わらわが千里眼を使えるという事を忘れるな?もう安易に人を殺めるのはやめるのじゃ」

アサシン「クックック次は違う…義勇団の連中に噂を流す指示をしてくるのだ」

魔女「噂?また何か企んで居るんじゃな?」

アサシン「只の呪いの噂だ…カタコンベに関わると呪いに掛かるというなクックック」

魔女「どんな効果を期待して居るんじゃ?」

アサシン「軍の士気を落とすだけだ…後に私たちの有利に働く様にな」

魔女「くれぐれも関係の無い者を殺めるでは無いぞ?主の業が増えるだけじゃからの」

アサシン「私は元々業の深い家柄なものでな…気にはしていない」

魔女「シャ・バクダ王家の末裔か…その業を清算せねば復活する事は無さそうじゃのぅ」

アサシン「クックック汚れた血が不死者となって更に汚れ…勇者をも葬り…何処へ行くのだろうな?」

魔女「読めたぞ?主はフィン・イッシュからゾンビを操る技を持ち帰りここで第2皇子と共に不死者の国を作ろうとしておるな?」

アサシン「フィン・イッシュの汚れた部分を私が取り除く」

魔女「王女に対する救いの手か…」

アサシン「私に出来るのはそれくらいなのだよ」

魔女「死者に対し更に鞭を打って使うと言うのか…外道じゃ」

アサシン「それは違う…新たに精霊樹が生えたのだ…死者の魂を精霊樹に導いてもらいたい」

魔女「…」

アサシン「過去の清算のつもりなのだ」

魔女「なるほど…理解した…光あれば又闇もありか…闇を引き受けると言うか」

アサシン「誓って魔王の下僕にはならん…死者を天に還す」

魔女「死者のエデンの園という訳か…」

『フィン・イッシュの気球』


フワフワ


近衛「ささっ…お乗りください」

魔女「待たせたのぅ」ノソリ

王女「お待ちしておりました」

魔女「同行するのは近衛2人と付き人2人か…定員じゃな」

王女「私が乗る気球が単独飛行するのは初めての事です…他の兵が心配しておりましたが…」

魔女「大丈夫じゃよ…わらわが居れば数百の兵と一緒だと思え」

王女「存じております…よろしくお願いします」

近衛「では出立致します…お気をつけ下さい」フワフワ

魔女「わらわも王女の身じゃが…お付きの近衛は差がある様じゃ…主の近衛は格が高いのぅ」

近衛「お褒めに預かり光栄です」

王女「フィン・イッシュでは有名なサムライなのです」

魔女「サムライとな?ではアサシンはニンジャという所かのぅ」

王女「この二人の近衛はシノビの訓練も受けていますので立ち振る舞いはアサシン様に似ています」

アサシン「クックック私はそれほど高尚な者では無いよ…買い被らないで欲しい」

近衛「フィン・イッシュ籠城の際は戦振りを拝見したしました…アサシン様は随一のシノビとお見受けします」

魔女「主も有名になっておる様じゃな?」

近衛「仕事がやり難くなる…口外するな」

王女「仕事?」

魔女「こ奴の仕事は暗殺じゃ…そうやって政治を動かしておるのじゃ」

アサシン「クックック…」

魔女「暴露されて顔色を変えぬか…」

アサシン「今更隠しておく間柄でも無いが…口外はしないでくれ」

王女「私は操られて居るのでしょうか?」

魔女「目的が同じ内は良いがな?違う志を持つ様になる時は注意しとった方が良い」

王女「私はアサシン様を信頼しています…私が寄り添う側になれば良いのです」

近衛「王女の命は我らが守ります」ビシ

アサシン「安心してくれ…私に王女は殺せん…亡き国王と誓いを立てたのだ」

王女「父上と…」

アサシン「人は最後の最後に誰かを守ろうとするのだ…亡き国王は身を呈して王女を逃した」

王女「父上の計らいで私は逃れて来られたのですね」

アサシン「私は助力しただけに過ぎん…父上に感謝するのだ」

王女「はい…」




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ビョーーーウ バサバサ


魔女「国を背負うのは重いか?」

王女「いえ…今は民を救いたいと願っております…重くなどありません」

魔女「それなら良い」

王女「国王の座は兄が継ぐのだと思って軽く考えていた私が恥ずかしいです」

魔女「質問を変える…少女を捨てるのは辛ろう無いか?」

王女「アサシン様がおっしゃっていました…私は私のまま王になれと」

魔女「ほぅ…あ奴にしては良い事を言うたのぅ」

王女「私は生かされました…付いて来る人が居る以上私は期待に応えるだけ」

魔女「それを重荷にしてはイカンぞ?」

王女「はい…私は近衛も信じていますし付き人も信じています」

魔女「王道じゃ仁徳によって国を治めよ…面倒毎はアサシンに押し付けて置けば良い」

王女「それも任せろと言われています」

魔女「あ奴も自身の働き方を心得ておるか…では心配なさそうじゃの」

王女「ご助言感謝いたします」

『亡国フィン・イッシュ』


魔女「どうじゃ?久方ぶりに還ってみて…悲しいか?」

王女「建物は殆ど損壊していないのですね…人だけが居なくなった」

アサシン「ゾンビは略奪するでも無し…ただ生きている人を探し食らっていた」

王女「街があの時のままなのが余計に…心の中の穴に無常な風を吹かせます」

魔女「軍国を誇って居ったのは何だったのか…セントラルよりも兵は多かった筈なんじゃがな」

王女「身から出た錆びなのでしょう…不死者を道具にしようとした罰ですね」

アサシン「私は周囲を見回って来るが…」

王女「私は城へ戻り状況の確認をしてきます」

魔女「わらわも共するぞよ?」

王女「近衛!気球は何台使えますか?」

近衛「私達の物を含めて10台程かと」

王女「その10台でオアシスとの定期便を日に2台運用させないさい」

近衛「はい…物資の移送でしょうか?」

王女「この状況ではこちらに物資が多くありすぎます…穀物と塩を送り羊毛と絹を仕入れましょう」

近衛「かしこまりました…手配させます」

魔女「早速交易か…良い事じゃ」

王女「私はもうこの国を軍国にはしません…城のすべての財を必要な所へ届けます」

アサシン「気球を増産して民間に運用させても良さそうだな」

王女「はい…そのつもりです」

魔女「すべての財を使うと言うのはどういう事じゃ?」

王女「私は寝る場所さえあれば他に何も要りません…元は軍国なものですから食料の備蓄は多いのです」

魔女「なるほど食料を蓄えておったのか…この時世食料は何よりも財になるのぅ」

アサシン「確か3年分は在ったな…ほとんど使わずに壊滅した」

王女「私の財は民です」

『数日後_城』


魔女「城も一般開放とな?」

王女「私の居室以外はすべて解放しました…入って来られないのは王の間だけですね」

魔女「衛兵も畑を耕しておるが主が指示しておるのか?」

王女「はい…私も畑を耕します…そして自由に街を歩き回ります」

魔女「それで近衛にもこのような格好をさせておるのか…町民と変わらぬ恰好を」

王女「私の顔を知らない方も居まして普通に接して下さるのです…それが私の楽しみになりました」

アサシン「頼まれていた物を持ってきたぞ」

王女「ありがとうございます」

アサシン「銀細工の仮面だ…目の部分だけだがな」

王女「どうですか?似合いますか?」

アサシン「フフ表情が読めなくなる点は合格だ」

王女「わたしはこれから女王としているときは仮面をつける事にしました」

魔女「なるほどのぅ…威厳は仮面に被せるか」

王女「わたしも町民として民の役に立ちたいのです…それには女王の肩書が邪魔でした」

アサシン「女王としての即位は公にしないのか?」

王女「即位式は1年ほど待っても良いと思っています…王の間で統制している姿を見せるだけで今は十分かと」

アサシン「セントラルがこちらに来ていないのが気に掛かるが…」

魔女「シャ・バクダ優先なんじゃろうな…立地的に対立して良い事は何も無いじゃろうて」

アサシン「建物の損壊が何も無いから攻めにくいと言うのもあるか…」

近衛「王女…準備出来ましたが街へは出かけられますか?」

王女「行きます…魔女とアサシン様もご一緒にどうですか?」

アサシン「構わんが…この恰好でも良いのか?」

王女「平服で結構…魔女はあやしい恰好なので着替えて行きましょう」

魔女「なんと!この恰好はあやしいと申すか…」

王女「…そのとんがり帽子だけでも脱いで頂けませんとあやしくて人目に付いてしまいます」

魔女「わらわのお気に入りなんじゃがのぅ…」ブツブツ

『街道』


ワーイ ワーイ


魔女「人はまばらじゃが子供が走って居るのは良いのぅ」

王女「女性と子供達は軍船で海に逃れていたそうです」

魔女「学び舎を用意してやってはどうか?」

王女「そうですね…城の教会を学校にしましょうか」

アサシン「空き家はどうしているのだ?」

王女「兵に片づけさせて一時的に国が預かる形にしています」

アサシン「持ち主が何処に行ったか分からん様では仕方が無いか」

王女「近隣からの移民に与えようと思っています」

アサシン「ここに来れば住む場所も食料も困らん訳か…」

王女「それだけでは備蓄の3年しか持ちませんので皆で畑を耕しているのです」

アサシン「この国は海も山も川もあり豊かな国だ…シャ・バクダとは違うな」

王女「国を流れる川の源流…見えますでしょうか?」

アサシン「山づてに流れて来ている川だな?」

王女「あの川に龍神が住まうと言われこの国を守って居るのだそうです」

魔女「ほぅ…山から海へ流る川に龍神とな?それは竜宮に繋がっておるのじゃな?」

王女「ご存じでしたか…竜宮は海の中にあると言われております」

アサシン「海の竜といえばリヴァイアサン…伝説に過ぎんか」

王女「その名は他国の方がそう呼んだ名です」

魔女「この国では別の呼び名があるのじゃな?」

王女「九頭龍大神…善女龍王…俱利伽羅竜王…沢山居ますが総じて竜王と称されています」

魔女「まてよ…聖書にはリリスの下半身は竜であったと書いておったが関係は無いか?」

王女「ラミアの事でしょうか?善女龍王伝説がそれにあたります」

魔女「気になるのぅ…」

王女「善女龍王伝説でしたら城の書庫に資料があります…後ほどご覧になって下さい」


『広場』


ジュージュー ワイガヤ


ごろつき「よぉネーちゃん又来たか!食ってけ」

王女「はい…賑わっていますね?」

ごろつき「そらそうよ!国から干物の配給がたっぷり合ってよ…焼き魚パーティーだ!ほれ食え」

王女「頂きます」モグ

ごろつき「あんさん達も避難民か?どっから来たんだ?」

アサシン「砂漠からだな」

ごろつき「そら遠くから大変だったろ!家貰えたか?」

アサシン「畑付きの家をな…」

ごろつき「俺もだガハハしかも種撒き終わった畑付きよ…収穫時期が来るのが怖えぇよ」

街の女「あっちで酒の配給あるみたいよ?ほら?」グビ

ごろつき「おぉぉ魚ばっかりで何か飲みたかった所だ!ちょいと行って来る」ダダ

街の女「あなた達は城の人?身なりが良さそうな格好してるけど」

魔女「わらわの事かえ?高貴な身分が染み出てしまうのかのぅ…」

街の女「あら?赤い目…あんた娼婦なんだ…仲間じゃん」

魔女「なぬ!!娼婦じゃと!?」

街の女「この辺は儲からないからさ…宿屋の通りの裏行くと良いよ」

魔女「余計なお世話じゃ…ふん」

ごろつき「おーい!あんさん達の分も持ってきたぞ!!」ガチャガチャ

『宿屋の裏』


おい…良いだろ?この間は金で良かったじゃないか

ダメダメもうお金要らないのよ

ちぇ物々交換なんて聞いた事無いぞ…何があれば良いんだよ

香料に香辛料…薬草ポーション…バターも良いかな


近衛「王女…この辺りは王女は来ない方が良いかと」

王女「良いのです」

近衛「まさかお売りになる訳ではありませんよね?」

王女「場合によっては…」

近衛「やはりこの道は行かせられません」

王女「冗談ですよ…民に何が必要なのか見て居るのです」

近衛「はぁ…」

アサシン「魔女は顔を隠しておいた方が良いな」

魔女「わらわの目かえ?」

アサシン「この業界では赤い目は合図として使われるのだ…面倒にはなりたくあるまい」

魔女「通りゆく男がわらわを見て行くのは品定めしておるという事か?」

アサシン「まぁそういう事だ」

魔女「ではなぜ声を掛けて来んのじゃ?魅力が足りぬと言うのか?」

アサシン「私や近衛を先客だと思っているんだろう」

魔女「なるほど…それならば仕方ないのぅ」ファサ

王女「女性の働き口が少ないのが背景にあるようですが…これはこれで良い文化なのかもしれませんね」

魔女「このように育む愛もある様じゃな」

王女「この一帯は歓楽街にして行きましょう…カジノを設置して女性の働き口を増やします」

アサシン「軍国から一転して歓楽の国か…王女の采配とは思えんなクックック」

王女「民が求める物を勘案した結果です…商業の国に転身します」

アサシン「商業?セントラルと張り合うと言うのか?」

王女「農産物を輸出して趣向品をキ・カイから買い入れて民の笑顔が見たい」

魔女「主は他の国と違った方向を向いておるのじゃな…ある意味良き王になるやもしれぬ」

王女「私も楽しみたいのですよ…顔料に香料…おしゃれも」

アサシン「ハハ王女は王女のままで良いと言ったが…そっちの方向か」

魔女「少女のままの王か…わらわはもうしばらく背後に座っておるかの」

『城の教会前』


ワイワイ ワイワイ


皆さんこんにちは

今日からみなさんの先生になりました

よろしくおねがいします

今日は始めに皆さんに自己紹介をして貰おうと思います

始めに先生から自己紹介をしますね…わたしは…


ワイワイ ワイワイ


アサシン「魔女は何か指導を担当するのか?」

魔女「少しだけじゃな…魔術は適性があるで全員には教えられぬ」

アサシン「私はやる事が無いから地下墓地にでも行って来る」

魔女「第2皇子か…エルフがゾンビになってしまうなぞ不幸じゃったのぅ」

アサシン「この国も少しは落ち着いた…精霊樹の元へ連れ帰りたいのだ」

魔女「そうじゃな…救われると良いがな」

アサシン「実は少し期待しているのだ…私はドラゴンの心臓を得て正気を保っているがドラゴンの心臓は寿命が長いだけだ」

魔女「エルフの心臓も寿命が長いが…同じ事を期待しておるのか?」

アサシン「そうだ…精霊樹の声を聞き目覚めないか…とな」

魔女「試してみる価値はありそうじゃな」

アサシン「魔女はどうする?しばらくフィン・イッシュに残るか?」

魔女「そうじゃなぁ…書庫の資料を一通り読んでから考えるかのぅ」


子供達「あ!!城のテラスから女王様が手を振ってる!!」ノシノシ


女王様見た事ある~?

あるよ!!銀色の仮面被ってるんだよ

仮面の女王様?


魔女「仮面の女王か…少しづつ認知されて来とるのぅ」

アサシン「インパクトは十分だな」

魔女「内政が良いお陰で不穏な噂は聞かぬが…仮面ではやはり不気味じゃのぅ」

アサシン「良い面もあるでは無いか…内政が良いのも仮面で顔を伏せているお陰でもある」

魔女「銀の仮面…魔除けには良い…ん?何故銀を選んだのじゃ?」

アサシン「フフ気付いたか…魔王除けだよ」

魔女「主が誘導しておるのか?」

アサシン「銀の仮面をつけてからの王女の行動は明らかに違うだろう?心を闇に染めない」

魔女「そういえば悲しい顔を見せなくなったのぅ」

アサシン「そういう事だ」

『書庫』


ブツブツ ブツブツ


王女「魔女…こちらに居ましたか…アサシン様はどちらへ?」

魔女「あ奴は地下墓地に行って居る…第2皇子に会いに行って居るのでおろう」

王女「そうですか…精霊樹に連れ帰る準備をされて居るのですね?」

魔女「行かせたくないのかえ?」

王女「いえ…そうではありません…姿が見えないと心配になったのです」

魔女「あ奴は主を裏切ったりはせぬ…故に心配は無用じゃ」

王女「アサシン様に宝具のドクロの杖をお渡ししようと思っていたのですが…」

魔女「ゾンビを操る杖じゃな?ネクロマンサーが用いる物じゃが何故そのような物がこの国の宝具になっておる?」

王女「父が生前にシャ・バクダで発掘されたものを買い入れたのです」

魔女「出所はシャ・バクダか…元の持ち主に戻る訳か」

王女「アサシン様にはこの杖が必要なのだと思っています」

魔女「そうじゃな…あ奴は200年前の清算をしようとしておるのじゃ…主も気付いて居ったか」

王女「魔女は書庫に籠っている様ですが何か分かった事は在るのでしょうか?」

魔女「善女龍王伝説…ラミアはやはり蘇生されたリリスの様じゃ…伝説の類似点が多すぎる」

王女「雨乞いの竜王というのがこの辺での定説です」

魔女「生贄に何を捧げたのかは知らぬが血を好むらしいのぅ」

王女「はい…男性の血を贄として雨乞いをする習わしです」

魔女「リリスはのぅ赤子を好むのじゃ特に生後8日までの男子を食らう…似て居ろう?」

王女「そうですね…」

魔女「実はな…シン・リーンの古代遺跡にもラミアおぼしき画が在っての…聖剣にて首を獲られておるのじゃ」

王女「それもリリスだとお考えですか?」


そうじゃ…光の国シン・リーンではな古来より女系が王座に座るのじゃ

何故かというと男系は神に贄として捧げる故に血が途絶えるのじゃ

そういう習わしが現代まで引き継がれてきたのじゃよ

1700年前の古代文明の伝承でも同じじゃ…それを今の今まで引き継いでおる

魔女「類似点は男を好んで食らうという点じゃな…それと下半身が竜じゃ」

王女「首を獲られたと言うのは?」

魔女「メデューサの首を聞いた事があるかの?」

王女「見ると石化するという伝説の…」

魔女「そうじゃ…この国ではラミアという名じゃがわらわの国ではメデューサじゃ…どちらも蘇生されたリリスじゃと思うておる」

魔女「そしてわらわの血筋はメデューサに由縁がある…この目じゃ…メデューサの目も赤いのじゃ」

王女「え!?魔女は…リリスの血を引いて居る?」


メデューサが首を獲られた時にな…滴り落ちる血は不老不死の力を持つと言われておったのじゃ

時の支配者はその血を飲み力を得たのじゃが…同時に目を赤く染めた

強力な魔翌力を得た代わりに国は滅びの道を進みやがて時の王は国を屠った


魔女「魔道書に記された契約の言葉とメデューサの…いやリリスの生業が見事に一致するのじゃ」

王女「シャ・バクダ大破壊の本当の原因はリリスの封印なのですね?」

魔女「おそらくそうじゃと思う」

王女「魔王は人を操りリリスの復活をさせようとしている…」

魔女「実体を持たぬ魔王はこの世に何も出来ぬ…たとえ勇者を器にして蘇ったとしても只の人じゃ」

王女「でもあれほどの数のゾンビを操るほどの力を…」

魔女「まやかしで付き従いさせるだけじゃな…本当に力を持つのはリリスの方ではないかのぅ」

王女「カタコンベを何とかしないといけませんね」

魔女「うむ…封印されているとはいえ…心配じゃのう」

『気球』


アサシン「見送りに来たのか…」

王女「アサシン様…これを」

アサシン「ドクロの杖か…今必要だとは思って居なかったが借りて置く」

王女「私には必要ありませんのでお持ちください」

アサシン「クックックこの国には無い方が良いな…頂く」

王女「すぐお戻りになられますか?」

アサシン「そのつもりだ…第2皇子を精霊樹まで運んで帰って来る…心配するな」

魔女「わらわは残るぞよ?」

アサシン「私一人で良い…すぐに済むから魔女は書庫でも漁っていろ」

魔女「カタコンベの状況も見て来るのじゃぞ?」

アサシン「言われるまでも無い…呪いの噂がどうなって居るのかも楽しみなのだ」

エルフゾンビ「ヴヴヴヴヴヴヴヴ…ガァァァ」ガチャンガチャン

アサシン「早く行けと騒いでいるな」

王女「本当に一人で大丈夫なのでしょうか?」

アサシン「大丈夫だ…ワインを血だと思って好んで飲む」

魔女「精霊の御所でエルフに会ったなら争うでないぞ?」

アサシン「相手次第だな…攻撃される様なら私も身を守る」

魔女「この貝殻を持て…何かあればこれでわらわが話しかける」

アサシン「千里眼か…常に見張られて居るのは気分がよい物では無いな…では行って来る」

王女「お気をつけて…」


フワフワ


------------------

ビョーーーーウ バサバサ


アサシン「さて…ワインでも飲むか?相棒」

エルフゾンビ「ガァァァァ…」ガチャンガチャン

アサシン「ふむ…鎖に繋がれていては不自由だな…ドクロの杖を試すか」

エルフゾンビ「ヴヴヴヴヴヴヴヴ…」

アサシン「私を襲うな…大人しくワインを飲め」

エルフゾンビ「…」

アサシン「よし…鎖を外してやる」ガチャガチャ ガチン

エルフゾンビ「ヴヴヴ…」

アサシン「クックック大人しくなったな?ワインは瓶のままで良いか?」シュポン

エルフゾンビ「ゴクッ」ゴクゴク

アサシン「ほぉぉ飲みっぷりが良いな…乾いて居たか」

エルフゾンビ「ガァァァ…」

アサシン「こんな風にワインを飲める日が来るとは思わなかったな…相棒」


不死者になっても酒の味は変わらんな

お前はどんな未来を望む?

森になりたいか?

私はな…勇者を屠って考えが変わったのだ

魔王を深淵に落としても意味が無いとな

もっと根底から変える必要がある様だ

何かはまだ分からんが

付き合ってみる気は無いか?


エルフゾンビ「ヴヴヴヴヴヴヴ…ガァァ」

アサシン「そう入きるな…まだ始まったばかりだ…ゆっくり考えてくれ」ゴク

『シャ・バクダ遺跡上空』


ビョーーーーウ バサバサ


アサシン「クックック…やはりカタコンベの掃除は手こずって居る様だな」

アサシン「少し驚かせてみるか…ゾンビ共!我に付き従え」

アサシン「さぁどうなる?見て見ろ相棒!今からショータイムだ」

エルフゾンビ「ヴヴヴヴヴヴ…」



--------------------



衛兵1「ひぃひぃ…この液体はどんだけ溜まってるんだ」ザバー

衛兵2「バケツリレーじゃ効率が悪すぎる」ザバー

衛兵3「ゾンビ運びよりはマシだぞ…あっちは汚れて酷い事になってる」ザバー


うぉぉぉ!!なな…なんだぁ!!

ゾンビが動いてる…

おーい!!誰か武器持ってないのかぁ!!

ぎゃぁぁぁぁののの…のろいだぁぁ


衛兵1「なんか向こうの方が騒がしいな…」

衛兵2「ちょ…ちょちょちょ…足元!!」

衛兵3「手が…歩いてる」

衛兵1「うぉ!!あっちにも!!ちょいこれヤバく無いか?」

衛兵2「逃げろ!!」ダダッ

衛兵3「うわぁぁぁぁぁぁ」ダダッ



---------------------



アサシン「クックック蟻の子を散らすとはこの事を言うアッハッハ」

エルフゾンビ「ガァァァ」

アサシン「さて…精霊の御所は南西の方角か…あの木だな?」グイ

アサシン「さぁ相棒…精霊樹とご対面だ…自分の道は自分で選べ」


フワフワ ドッスン

『精霊樹』


ソヨソヨ ソヨソヨ


アサシン「たった数ヶ月でこれほど成長するか…相棒!精霊樹に寄り添え」

エルフゾンビ「ヴヴヴヴヴヴ…」ズリズリ

アサシン「精霊樹…ゾンビになったエルフを連れて来た…導いてやってくれ」

精霊樹「…」サラサラ

アサシン「元はエルフだ…森の一部になれるかと思って連れて来た」

エルフゾンビ「ヴヴヴ…」ドタリ

アサシン「精霊樹に抱かれて逝ったか?」

エルフゾンビ「…」シーン

アサシン「後から他のゾンビがこの辺にやって来る…ついでに木にしてやって欲しい」

精霊樹「…」サラサラ

アサシン「…」

アサシン「まぁ…私には精霊樹の声など聞こえんな」


ズズズズ ズーン


アサシン「ん?何だ今の音は…」スチャ

??「武器を収めなさい」

アサシン「精霊樹の声か?」

??「そのエルフゾンビをこちらに連れて来なさい」

アサシン「エルフか?姿を見せろ…」

ハイエルフ「…」ノソー

アサシン「ハイエルフか…」---でかい---

ハイエルフ「他の人間に見られるといけません…早くそのエルフゾンビをこちらへ」

アサシン「あ…あぁ…相棒!あのハイエルフに付き従え」

エルフゾンビ「ヴヴヴヴヴヴ…」ズリズリ

ハイエルフ「あなたもこちらに来なさい…精霊樹の導きです」

アサシン「私も行って良いのか?」---この階段は…私が探していた深層への入り口---

ハイエルフ「早く…」

アサシン「あぁ…」タッタッタ


ズズズズ ズーン

『精霊の御所』


アサシン「守って居るのはトロールか…この中が精霊の御所なのだな?」

ハイエルフ「精霊樹からいきさつは聞いて居ます…奥へ」ノソノソ

アサシン「いきさつ?」

ハイエルフ「…」ノソノソ

アサシン「ハイエルフが人間と会話するのは野暮という事か」


---かつてのシャ・バクダの森は生きていると聞いて居たが---

---深層部が根の森だったとは---

---魔女が千里眼で覗いた根の森がこれか---

---ここにオーブが眠って居るのだな---


エルフゾンビ「ヴヴヴヴヴヴ…」ズリズリ

アサシン「相棒…森にはならなかったのだな?それともなれなかったのか?」


---間近にハイエルフを見るのは初めてだが---

---巨人だな2メートル20という所か---

---こいつは女の様に見えるが男なのか?---

---ドラゴンライダーに乗って居たのは---

---こんな巨人だったか…勝てる相手では無いな---

ハイエルフ「エルフゾンビを中央の器に…」

アサシン「器?この液体の中に漬ければ良いのか?」

ハイエルフ「…」

アサシン「余分な事は話さんか…相棒!器の中で横になれ」

エルフゾンビ「ヴヴヴ…」ズリズリ チャポン

ハイエルフ「人間よそこに掛けなさい」

アサシン「掛ける?この石か?」スッ

ハイエルフ「エルフゾンビは精霊樹の樹液…エリクサーに浸かっています…直に意識を取り戻すでしょう」

アサシン「おぉ…心は生きて居たか…ハイエルフでもゾンビになったハーフエルフを助ける事はあるのだな」

ハイエルフ「ここはエルフの森の外…精霊樹の導きに従ったまで」

アサシン「導きか…そうだなハイエルフが人間に関わるなど過去に例が無いな」

ハイエルフ「精霊樹があなたに質問をしています…勇者の行方を話しなさい」

アサシン「勇者…剣士の事か…まだ生きている筈だ…行方は分からない」

ハイエルフ「勇者の魂の一部を精霊樹が預かっている」

アサシン「魂の一部?話が読み込めんな」

ハイエルフ「勇者から零れ落ちた魂を掴まえたと言って居ます」

アサシン「剣士を連れて来れば良いのか?分かった…見つけたら連れて来る」

エルフゾンビ「ぐふっ…」

アサシン「おぉ!!気が付いたな?」

エルフゾンビ「私は…どうな…っている…ヴヴヴヴ」

ハイエルフ「瞑想で休みなさい」

エルフゾンビ「瞑…想?」

アサシン「人間の住まう環境で育ったハーフエルフだ…瞑想の仕方なぞ知らんと思う」

ハイエルフ「精霊樹が導くと言って居ます…目を閉じなさい」

エルフゾンビ「目…を…」

ハイエルフ「瞑想は半日ほど時間を要します…人間よ…あなたはどうする?」

アサシン「半日か…私もずっと寝て居ないのだ…少し横になる」

ハイエルフ「…」ノソリ ノソ ノソ



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アサシン「…」パチ

エルフゾンビ「…」

アサシン「…」---久々に十分睡眠を得た---


---体が軽い---

---ハイエルフは何処へ行ったか---

---エルフゾンビは瞑想中か---

---よく見ると私が横になっていた石---

---これはトロールの一部だな---

---トロールに抱かれて寝てたのか---

---しかし…何と神聖な場所か---


アサシン「…」スック

エルフゾンビ「ぅぅぅ」

アサシン「相棒…目を覚ましたか?」

エルフゾンビ「アサシンか…」

アサシン「気分はどうだ?」

エルフゾンビ「悪くない」

アサシン「クックックお前も私と同じ体になったか」

エルフゾンビ「血に乾いた感覚は残って居る…アサシン…お前もか?」

アサシン「私は少量の血があれば事足りる様だ」

エルフゾンビ「私は生き血をすする真似はしたくない」

アサシン「クックックまだそれを言うか」

エルフゾンビ「どうやら私は精霊樹と共に生きて行かねばならん様だな」

アサシン「そのエリクサーが血の代わりか?それも良い」

エルフゾンビ「初めて瞑想という物を体験した…精霊樹の魂に触れたのだ」

アサシン「ほぅ…ゾンビになっても通じるのか」

エルフゾンビ「精霊樹の声が聞こえる…聞いたぞ?勇者と魔王の関わりを」

アサシン「そうか…わたしが屠った」

エルフゾンビ「知らずとは言え…わたしが指輪を奪った事が惨事の発端という事もな」

アサシン「クックック悔やむな…済んだことだ」

エルフゾンビ「フィン・イッシュはどうなった?王女は無事なのか?」

アサシン「王女が王となり復興しようとしている…もう手助けはいらぬ」

エルフゾンビ「それを聞いて安心した…セントラルは兄が治めているのか?」

アサシン「そうだな…前王よりも強行なスタンスだ」

エルフゾンビ「兄には兄の正義がある…貫こうとしているだけで悪い人ではない…問題はその側近だ」

アサシン「クックックお前も言えた義理ではない…法王の使いに見事にやられたではないか」

エルフゾンビ「言うな…反吐が出る」

アサシン「さて…これからどうしたい?」

エルフゾンビ「私は精霊樹を守る宿命な様だ…もうこの根の森から離れる事は出来ない」

アサシン「そうか…このドクロの杖をお前に授ける…ゾンビを導いてくれ」

エルフゾンビ「私に不死者の王になれと言うか?」

アサシン「違う…彷徨うゾンビの魂を救って欲しいのだ…彼らを森の一部にな」

エルフゾンビ「森を作るのか…腐っても私はエルフか…」

アサシン「森を育てるのは精霊樹を守るのに等しいと思うが?」

エルフゾンビ「精霊樹がやりなさいと言っている…フフこんな私でも役に立てる事があるか」

アサシン「実はな…シャ・バクダ遺跡の地下に巨大なカタコンベがあるのだ」


そこには無数のゾンビが未だに彷徨っている…200年前の遺物だ

そしておそらく魔王の片輪も眠っていると思われる

名はリリスというそうだ

人間達はそれを知ってか知らずか掘り起こそうとしているのだ


アサシン「私はな…そのリリスという存在も屠る必要があると思っているのだ」

エルフゾンビ「フフ目覚めたばかりで重い話だな」

アサシン「これから育って行く森に爆弾を抱えたままでは落ち着けまい?」

エルフゾンビ「また精霊樹の声がやりなさいと言う…心の中で聞こえるのは勇者にでもなった気分だ」

アサシン「そうだ…私たちは導きを受けた勇者の一人なのだ…お前が言って居た言葉だ」

エルフゾンビ「フフそうだったな…」

『気球』


フワフワ


エルフゾンビ「ハイエルフは何も言わないが…放って置いて良いのか?」

アサシン「恐らく事情を知っているのだろう」

エルフゾンビ「同族ではあるが気味が悪い」

アサシン「森の守護者だトロールだって何も言わん…そういうものだ」

エルフゾンビ「カタコンベに行くのか?」

アサシン「お前に状況を見せておきたくてな…気球では目立つから私のアジトに置いて行く」

エルフゾンビ「砂漠に所々生えている木は?んん?倒れたゾンビから生えて居るのか?」

アサシン「どうやらその様だ…精霊樹の影響だな」

エルフゾンビ「なるほど…あの様に森にして行けば良いのか」

アサシン「もうすぐ私のアジト…星の観測所に着く…フードを深く被って顔を隠せ」

エルフゾンビ「もはや私の顔を覚えている者など居るまい?私は常に顔を隠してきた」

アサシン「そうでもない…お前の兄の側近が領主に選出されて来ている…私が屠ってやったが」

エルフゾンビ「不死者になっても関りは途切れんか…」

アサシン「お前がシャ・バクダに居る事が知れれば又戦争が起きる…今は拗らせたくない」

エルフゾンビ「フィン・イッシュの事か?」

アサシン「再生の最中だ…王女を思ってやって欲しい」

エルフゾンビ「ふむ…読めて来たぞ…ここ遠隔の地にてセントラルとフィン・イッシュが対立関係になっているのだな?」

アサシン「まぁそんな所だシャ・バクダ街がセントラル…オアシス界隈がフィン・イッシュ」

エルフゾンビ「そして遺跡を巡って対立か…奪いたいセントラルと屠りたいフィン・イッシュ」

アサシン「…ここから見てセントラルのどの軍が来ているか分かるか?」

エルフゾンビ「特殊生物兵器部隊…父直下の部隊だった」

アサシン「私は見ていないな」

エルフゾンビ「見ている筈だ…下水でな」

アサシン「下水…ラットマンか?」

エルフゾンビ「ラットマンは成長すると人間を遥かに超える戦闘力を持つ…そして補給が不要」

アサシン「そうか…下水でラットマンを育成していたのか」

エルフゾンビ「さすがにラットマンを連れ歩いては居ないが…間違いなく特殊生物兵器部隊の一員だ」

アサシン「只事では無いのが理解できたか?」

エルフゾンビ「その様だ…」


フワフワ ドッスン

『星の観測所』


ノソリ ノソリ


アサシン「ここからはラクダで移動だ…乗れるか?」

エルフゾンビ「これでも王族の一人だ…乗馬は一通り経験している」

アサシン「馬とは足の運び方が違う…揺れるから重心に気を付けろ」

エルフゾンビ「このアジトは私が勝手に使っても良いのか?隠れるのには丁度良い」

アサシン「構わんが顔をさらすなよ?ドラゴンの義勇団の者だと言えば通る…後で義勇団の連中に言っておく」

エルフゾンビ「げふっ…げふっ…やはり喉が渇くな」

アサシン「血が欲しいか?ワインならあるが…どうする」

エルフゾンビ「すまん…」

アサシン「気球に積んである…もって来るから待っていろ」タッタッタ

エルフゾンビ「砂漠はゾンビの体にはキツイか…」

アサシン「一瓶持って行け」ポイ

エルフゾンビ「不死者がワイン片手にラクダで砂漠を周遊か…贅沢な遊びだな」ゴキュ ゴキュ

アサシン「丁度私も喉が渇いていた所だった…お前とは気が合うな」ゴクゴク

エルフゾンビ「アルコールで酔えない…のか?この体は」

アサシン「そうだ…人生の半分を失った気分だ…だがな?私は見つけた…酔いを楽しみたいなら聖水だ」

エルフゾンビ「聖水か…フフ聖水で目を回すか…」

アサシン「不死者も捨てたもんじゃないという事だ」

エルフゾンビ「フフフハハハ…」

『シャ・バクダ遺跡』


ガヤガヤ ガヤガヤ


アサシン「軍が居座っているな…100人程か」

エルフゾンビ「ここの下にカタコンベが在るのだな?」

アサシン「そうだが…この状況では近づけまい」

エルフゾンビ「もうじき日が落ちる…私がゾンビを操り騒ぎを起こしている間に中へ入る」

アサシン「同意…」

エルフゾンビ「リリスとやらを見つけたとして葬る手は持って居るのか?」

アサシン「このミスリスダガー2本しか無い…だが魔王を屠った武器だ」

エルフゾンビ「やってみるか」



---日暮れ---



アサシン「クックック…夜通しカタコンベの掃除をやっているのか」

エルフゾンビ「松明がある分夜目の利かないお前には良かったでは無いか」

アサシン「そろそろ行くか?」

エルフゾンビ「近くのゾンビ共…少し暴れまわれ」スチャ

アサシン「さてさて…どれくらい出て来るか」

エルフゾンビ「私の行いはネクロマンサーそのものだな」

アサシン「森を作っていると思え…死者の魂も救っているのだ…お前は悪いエルフでは無い」

エルフゾンビ「そう言ってもらえると少しは気が落ち着く」

アサシン「出て来たぞ…ゾンビは砂に埋もれていた様だな」


また出たぁぁぁ!!

ゾンビだ…

戦える奴居ないのかぁぁ!!


ゾンビ「ヴヴヴヴヴヴ…」ズリズリ

衛兵「砂の中から出て来る!!誰か武器もってこーーい!!」

アサシン「混乱し始めた…行くぞ」タッタッタ

『カタコンベ』


衛兵「お前は誰だ!?」

アサシン「又ゾンビが出ている!!こっちも危ない…」

衛兵「何だってぇぇ!!」

アサシン「一旦作業止めてゾンビ退治だ…武器は外のテントで配っている」

衛兵「分かった…お前はどうするんだ?」

アサシン「奥で作業している奴にも伝えに行く…早く行ってくれ」

衛兵「おい皆!!作業中止だ…外のゾンビ退治だ」ダダッ

アサシン「こっちだ…ここの下が巨大なカタコンベだ…おい!?」

エルフゾンビ「…この石造は」

アサシン「200年前の勇者の像だ…見覚えあるのか?」

エルフゾンビ「大剣…」

アサシン「夢幻の記憶か?」

エルフゾンビ「よく思い出せなくなったが…見覚えがある」

アサシン「今は良い…早く下に行くぞ」グイ

エルフゾンビ「済まない…」タッタッタ


外でゾンビが出てるらしい

どうする?俺らバケツしか持ってないぞ?

こっちでもいつ湧いて来るか分かんねぇ

ひとまず武器取りにいくぞ


衛兵「おい!お前!!武器を持っているな?何処に行く」

アサシン「カタコンベの安全確保だ…指示されて此処に来た」

衛兵「そうか…外はどうなって居る?」

アサシン「砂の中からゾンビが複数湧いてきて混乱している」

衛兵「複数…数は?」

アサシン「20体程だ」

衛兵「そんなに居るのか…やばいな武器が足りんかもしれん」

アサシン「早く行った方が良い」

衛兵「分かった…お前も気を付けろ…謎の物体が動いているからな」

アサシン「分かった…」---謎の物体?---

『深層』


エルフゾンビ「見つけたな…これがリリスか?」

アサシン「でかい心臓…なのか?悪魔の卵…か?」

エルフゾンビ「カタコンベの壁面に癒着しているな…これでは取り出せん」

アサシン「下半分はまだ液体の中か…」スチャ

エルフゾンビ「そのダガーでこの肉壁を貫けると思うか?」

アサシン「奥義!!デュアルストライク!!」ザクン ザクン

エルフゾンビ「無理だな…葬る方法を考え直した方が良い」

アサシン「バックスタブ!!」ザクリ グサァ

エルフゾンビ「中で何か動いている…蛇の様な物だ」

アサシン「リリスに間違いなさそうだ…見えるか?」

エルフゾンビ「何処が頭部なのか分からない…だが魔物である事は間違いなさそうだ」

アサシン「乳房が見えるな」

エルフゾンビ「どこだ?」

アサシン「ここの薄い肉壁から少しだけ見通せる」

エルフゾンビ「人の乳房か…首が無いぞ」

アサシン「見当たらんな」


”アサシン聞こえるか?”


エルフゾンビ「誰だ!?」

アサシン「魔女…聞こえる…こっちの声は届くのか?」ゴソゴソ

エルフゾンビ「貝殻から声が?」


”アサシン…帰って来るのじゃ…その魔物は主ではどうにもできぬ”

”危険じゃから戻って来い…石にされるぞよ”


アサシン「どうやら魔女の言う通りやもしれん…見ろ…私の手が動かん」

エルフゾンビ「引き上げるか…うぐっ…足が動か…ない」ドテ

アサシン「ちぃぃ石化が始まってるのか…」グイ

エルフゾンビ「私に肩を貸した状態で走れるか?」ズリズリ

アサシン「石化の進行が早い…俺達の命運は尽きたやもしれん」ヨタヨタ

エルフゾンビ「ゾンビ達よ…私達を精霊の御所まで運べ」

アサシン「クックック…ゾンビ頼みか」


そっちに行ったぞ!!囲めぇ!!

くっそ!こんな武器じゃゾンビを倒せない

おい!新手だ!!…でかい!!

うぉぉぉエルフだ!!逃げろ!!


アサシン「…ここまでだなフゥ…足がもう動かせん…済まんな巻き込んでしまって」

エルフゾンビ「フフ砂漠で飲んだワインは旨かったな」

ピョン クルクル シュタッ


ハイエルフ「…」グイ

アサシン「おぉぉハイエルフか…まさか助けに来るとは」

エルフゾンビ「フフフハハハまだまだ私たちは生かされるのか…ハハハ」

ハイエルフ「…」シュタタ シュタタ

『精霊の御所』


アサシン「ううん…ん?ここは…精霊の御所か…私は気を失っていたか」

エルフゾンビ「目を覚ましたな?手足は動くか?」

アサシン「動く…な」グッパ グッパ

エルフゾンビ「エリクサーには石化を治す効果もある様だ」

アサシン「そうか…助かったな…ハイエルフは何処に行った?」

エルフゾンビ「さぁ?私が目覚めた時にはもう居なかった」

アサシン「礼を言っておきたかったな」

エルフゾンビ「それには及ばない…どうやらハイエルフは人間の心を読める様だ」

アサシン「そうか…さて…私は一旦フィン・イッシュに帰るとするが…」

エルフゾンビ「私はゾンビを操ってカタコンベの邪魔をしておけば良いのか?」

アサシン「そこは任せる…事情はつかめただろう?」

エルフゾンビ「そうだな…私は精霊樹を守りながらリリスの状況を見守っておく」

アサシン「ハイエルフはこの森をどうするつもりなのか知っておきたかった…」

エルフゾンビ「私が話せる機会があれば聞いておく」

アサシン「では目覚めて早速だが行くとする…上手くやれ相棒!」



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『精霊の御所』


アサシン「ううん…ん?ここは…精霊の御所か…私は気を失っていたか」

エルフゾンビ「目を覚ましたな?手足は動くか?」

アサシン「動く…な」グッパ グッパ

エルフゾンビ「エリクサーには石化を治す効果もある様だ」

アサシン「そうか…助かったな…ハイエルフは何処に行った?」

エルフゾンビ「さぁ?私が目覚めた時にはもう居なかった」

アサシン「礼を言っておきたかったな」

エルフゾンビ「それには及ばない…どうやらハイエルフは人間の心を読める様だ」

アサシン「そうか…さて…私は一旦フィン・イッシュに帰るとするが…」

エルフゾンビ「私はゾンビを操ってカタコンベの邪魔をしておけば良いのか?」

アサシン「そこは任せる…事情はつかめただろう?」

エルフゾンビ「そうだな…私は精霊樹を守りながらリリスの状況を見守っておく」

アサシン「ハイエルフはこの森をどうするつもりなのか知っておきたかった…」

エルフゾンビ「私が話せる機会があれば聞いておく」

アサシン「では目覚めて早速だが行くとする…上手くやれ相棒!」



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『亡国フィン・イッシュ_王の間』


バン! ガチャリ


王女「魔女…どうされましたか?」

魔女「ふぅ…ふぅ…」

王女「粗ぶっておられますね?」

魔女「王女…世界中から書物を集めるのじゃ」

王女「はい」

魔女「シン・リーンへの書状をわらわが書く故…気球をすぐに飛ばすのじゃ」

王女「どうしたのですか?」

魔女「リリスは既に目覚めておる…わらわ達はまんまと魔王に乗せられシャ・バクダにて闇を祓った」

王女「乗せられ?どういう事でしょう?」

魔女「封印されておるリリスに注意を向けさせる為じゃ…今まで誰もあの地に足を踏み入れておらん」

王女「人間を使い掘り起こさせて居ると…」

魔女「そうじゃ…でなければわざわざあの地にゾンビを集めたりはせんじゃろう」


わらわが浅はかじゃった

師匠が森を焼いてでも封印した理由をもう少し考えるべきじゃった

魔王は初めから自ら蘇る気なぞ無いのじゃ

人間を勇者を利用してリリスを呼び覚ますのが目的じゃ


魔女「ややもすると既にリリスの腹の中に魔王が息づいているやもしれぬ…子宮は魔王の器になりうるでな」

王女「魔王は深淵に落ちたのでは無いと?」

魔女「そうじゃ…闇と一緒に子宮という器に収まった可能性があるのじゃ」

王女「いつごろ生まれて来るのでしょう?」

魔女「あれから半年は経っておる…あと3ヶ月も経てば生まれてしまうやもしれぬ」

王女「今動き出さないと間に合いませんね」

魔女「もうわらわが禁呪を用いるより他に無いやもしれん」

王女「書物の収集を急ぎます…」

『書庫』


ブツブツ ブツブツ


アサシン「魔女!!王女から話は聞いたぞ…」

魔女「おぉ無事に戻ったか」

アサシン「何か手はありそうか?」

魔女「調べておる…王女は一緒に来ておらぬのか?」

王女「はい…御用でしょうか?」

魔女「この地にクサナギという剣は伝わっておらぬか?」

王女「神事用の剣がクサナギという名を持っていますが劣化して剣としては使えないかと」

魔女「良い…之に持て」

王女「持って参ります」スタスタ

アサシン「その武器で倒すという事か?」

魔女「出来るかどうか分からぬ…じゃが伝説ではその武器で蘇生されたリリスを倒しておる様じゃ」

王女「お持ちしました…どうぞ」

アサシン「クックックどんな剣かと思えばダガーより少し長い程度か」

魔女「随分古そうじゃのぅ…」

アサシン「これはもう刃が付いて居ない…武器にはならんな」

魔女「そうか残念じゃ…やはりわらわが量子転移で穴を開けるしか無さそうじゃのぅ」

アサシン「穴だと?」

魔女「主のミスリルダガーではリリスを包んでおる肉壁に穴を開けられんであろう?」

アサシン「開けた後どうする?」

魔女「主がリリスの腹を裂き子宮を取り出せ」

アサシン「クックック出来ると思って居るのか?」

魔女「無理じゃろうのぅ…」

アサシン「量子転移という魔法は離れた場所からは使えないのか?」

魔女「手で触れる距離で無いと転移出来ぬ…わらわが量子転移で子宮を取り出すならリリスに触る必要があるのぅ」

アサシン「危険過ぎるな…1分弱で石化もある」

魔女「隕石を落としてもあの深さまで到達するか分からん上に被害が大きい」

アサシン「石化はエリクサーで凌ぐとして…どうする?」

魔女「主が魔王を屠った技は使えんのか?」

アサシン「ハートブレイクか…仮死状態に出来るのは数分だが…それで行けるか?」

魔女「危険じゃが…わらわが量子転移で肉壁に穴を開け…主がリリスを仮死状態にする…次にわらわが量子転移で子宮を奪う」

王女「本当に危険な作戦ですね…」

魔女「わらわの師匠が封印した魔物が目覚めていると知った以上もう放ってはおけぬ」

王女「そうですか…私はとても心配です」

『1週間後』


王女「シン・リーンから気球が帰ってきました」

魔女「やっと来たか…壺は在るか?」

王女「こちらです…書物は後ほど運びます」

魔女「シャ・バクダに行くとアサシンに伝えてくれぬか?わらわは準備する」

王女「わかりました…いつ出立されますか?」

魔女「次の定期便じゃな」

王女「私は行く事が出来ませんので…」

魔女「分かっておる…主は王の務めを果たせば良い」

王女「後ほどアサシン様を連れて気球の方へ行きます」




『気球』


伝令「あと10分ほどで出発します…」

アサシン「魔女!待たせたな」

魔女「間に合えば良い」

アサシン「気合が入っているな?子供の身なりとは…」

魔女「今回は失敗出来ぬ故…万全で挑むのじゃ」

アサシン「私もミスリルダガー2本を打ち直してミスリルショートソードにしてきた」

魔女「ほぅ…多少長くなったかの?」

アサシン「これが今の私の最強武器だ…心材に例のクサナギを使っている」

魔女「それは良いのぅ」

王女「少しでもお役に立てればと思いまして」

魔女「伝説の武器じゃ…心して使うのじゃ」

伝令「そろそろ出発します…」

王女「お気をつけて…ご武運をお祈りしています」


フワフワ

魔女「さてアサシン…主に言っておかねばならぬ事がある」

アサシン「何だ?」

魔女「わらわの魔法…量子転移の事じゃ…これは禁呪でのぅ…非常に危険なのじゃ」

アサシン「危険というと?」


この壺はな?封印の壺という物じゃ…この中に子宮を封じるつもりなのじゃが…

量子転移で中に封じる際に転移量が制御できない上…

わらわが次元の狭間に迷い込む可能性があるのじゃ…つまり主とはぐれる

わらわが消えてしもうたらこの壺を持って逃げるのじゃ…よいな?


アサシン「次元の狭間とはどこの事だ?」

魔女「制御出来ぬ…じゃが可能性があると言う話じゃ…迷わんで帰れる可能性もある」

アサシン「ふむ…魔女と逸れない為にはどうすれば良い?」

魔女「余裕があるならわらわの傍に居れば良い…じゃが同時に次元の狭間に迷うのは良いとは思わんな」

アサシン「壺が残されてしまうと言う事か?」

魔女「それも分からんのじゃ…故に禁呪となっておる」

アサシン「賭けだな…」

魔女「勇者は命を張ったのじゃ…わらわも命を張らぬとフェアでは無いじゃろう?」

アサシン「クックック気にしているのか」

魔女「そうじゃ…わらわは唯一女海賊に頭が上がらん…それほど純粋な愛を見せつけられたのじゃ」

アサシン「よし…私も気合が入って来た」

魔女「しばらくはゆるりとワインでも楽しもうぞ」


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『星の観測所』


ガヤガヤ ガヤガヤ


魔女「随分セントラルの兵がうろついて居るのぅ」

アサシン「そうだな…ゾンビが出るから増援しているのだろう」

魔女「エルフゾンビは上手くやっている様じゃな…木が増えて居る」

アサシン「うむ…私は精霊の御所に行ってエリクサーを仕入れて来る…日暮れ前には戻るからここに居てくれ」

魔女「では望遠鏡でも覗いておこうかの…」



『日暮れ』


アサシン「戻った…暗くなる前に移動しよう」

魔女「エルフゾンビはどうするのじゃ?」

アサシン「今回は危険だから遠くで見ていろと言っておいた」

魔女「賢明じゃ…して?エリクサーは持って来たろうな?」

アサシン「2瓶づつだ」

魔女「十分じゃな…では行くぞよ?」

アサシン「衛兵達はどうする?強行突破する気か?」

魔女「考えておる…わらわが睡眠魔法で眠らせる故…心配するでない」

アサシン「全員眠らせられるのか?」

魔女「勿論じゃ」

アサシン「クックックそんな便利な魔法があるなら初めから使えると言って欲しかったものだ」

魔女「この魔法は魔王がつかうまやかしと似た作用じゃ…味方にも掛かってしまうでのぅ」

アサシン「私も寝てしまうというのか?」

魔女「幻惑魔法は知っている者には掛からぬ…故に主には効果が無い」

『シャ・バクダ遺跡』


ヒュゥゥゥ サラサラ


魔女「ちと詠唱に時間が掛かるで待っておれ」アブラカタブラ クラウドコントロール メスメライズ

アサシン「…」

魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク

アサシン「効果時間は?」

魔女「30分で切れるが明日の朝まで寝る者も居るじゃろうな」

アサシン「急ごう」グイ

魔女「これ引っ張るな」


衛兵「ぅぅぅ」スヤ

アサシン「…立ったまま寝てるのか?」

魔女「幻惑じゃ…寝て居るのと変わらぬ」

アサシン「これほど簡単に潜入できるとは…」

魔女「いくぞよ」ノソノソ

『カタコンベ_深層』


アサシン「肉壁を鎖で拘束しているな」

魔女「構わぬ…量子転移では関係ない…空間ごと切り取るでな」

アサシン「エリクサーを一口飲んでおく」ゴク

魔女「そうじゃな…」ゴク

アサシン「準備は?」スラーン チャキ

魔女「いくぞよ?量子転移!」シュン


ザバァァァァァァ


アサシン「中から液体が…」

魔女「まだリリスも動いて居らんな…液体が出切ってから中に入れ」

アサシン「やはり首から上が無い…こいつは脳が無いという事か?」

魔女「そうじゃな1700年前に切り取られたままなのじゃろう」

アサシン「体だけ蘇生しようとしていたのか」

魔女「リリスの子宮が狙いじゃな…アサシン!リリスが暴れる前に心臓を止めよ!」

アサシン「分かった!!ハートブレイク!!」ズン!!ズブズブ

リリス「!!?」ニョロニョロ

魔女「のたうち回っておるな…」タジ

アサシン「もう少しだ…」ズブズブ

リリス「…」ピク ピク

アサシン「今だ!!」

魔女「子宮は何処じゃ?透視魔法!」

アサシン「あと30秒」

魔女「見つけた…いくぞよ?量子転移!」シュン


ドクドクドクドク


アサシン「壺から血があふれて…」

魔女「量の制御が出来ぬ…こぼれた肉片を切り刻め!!」


ドクドクドクドク ボトン


アサシン「はぁ!!」ザクン ザクン スパ

魔女「よし…はぐれて居らぬな?」

アサシン「その様だ…壺はフタが出来ないのか!?」

魔女「やろうとしておる…むむむむ」ドクドク

アサシン「まずい…リリスの心臓が動き出した」

魔女「逃げるぞよ…」ノソノソ

アサシン「先に上がれ」ザブザブ

魔女「血が多いのぅ…むむむむ」


ニョロニョロ ドタ バタ


アサシン「リリスがのたうち回っている…」

魔女「なんと禍々しい姿か…」

アサシン「早く上に上がれ!!」

魔女「出口は何処じゃ?」

アサシン「来た道を…無い!!どういう事だ!?」

魔女「まずいのぅ…ここは次元の狭間じゃ…空間が歪んでおる」

アサシン「2人揃って次元の狭間に来たのか…ちぃぃぃ出る方法は?」

魔女「透視魔法!…見えぬ」

アサシン「ちょっと待ってくれ…石化が始まってる」

魔女「あぅぅ…」

アサシン「おい!!魔女!!エリクサーを!!」グビ

魔女「…」

アサシン「体が小さい分石化も早いのか…魔女!!飲め!!」クイ

魔女「…」

アサシン「ええい!!壺だけでも私が持ち帰る」グイ

魔女「…」

アサシン「フタを…ふん!!」ギュゥ

魔女「…」

アサシン「はぁ…はぁ…」


---どっちに行けば良い---

---出口はどこだ!?---

---私はどこを走っている?---

『シャ・バクダ遺跡』


ヒュゥゥゥ サラサラ


衛兵1「隊長!!しっかりしてください…」

隊長「ん…ぁぁぁ居眠りしていたか」ゴシゴシ

衛兵1「様子がおかしいです!」

隊長「又ゾンビが来たか!?」

衛兵1「いえ…みんな寝ている様です」

隊長「起こして回れ!!」

衛兵1「おい!!起きろ!!」パンパン

衛兵2「んぁぁ…」パチ

隊長「これは緊急事態だ!!全員起こして武器を持て!!」


突っ立って無いで動け!!

目を覚ませ!!

おい!!しっかりしろぉ

武器携帯指示だ…武器を持て!!


衛兵1「隊長!!カタコンベで何か起きている様です」

隊長「例の奴が動き出したのか?」

衛兵1「分かりません…行ってみましょう!」

隊長「分隊A班!!カタコンベ入り口に集合!!B班は後方で待て!!」

『カタコンベ』


隊長「下はどうなって居る?」

衛兵1「例の奴が鎖の中で暴れまわっています」

隊長「見られるか?」

衛兵1「はい…少し降りたら遠目に見えます」

隊長「なぜ血まみれなのか…だれか見て居ないのか?」

衛兵1「気が付いたらあの様な状態だったそうです」

隊長「急いで特殊生物兵器部隊に連絡しろ」

衛兵1「はっ!!」ダダ

隊長「見た所首が無いな…どういう事だ?何の魔物だ?」

衛兵2「鎖の一部が切れている様です…出て来るかもしれません」

隊長「退避した方が良いな…全体!!カタコンベ入り口まで退避!!」



その日カタコンベから這い出て来たリリスは

砂漠を宛てもなく這いずり回り流した血で砂漠を赤く染めた

軍隊は成すすべも無く見守るだけだったが

のちに到着した特殊生物兵器部隊により捕獲され

研究材料としてセントラルまで移送された



数年後

『シャ・バクダ遺跡』


調査員「先日出土した石造を見に来たのだが…」

作業員「はい…遺跡の1層目に3体並べてあります」

調査員「案内して欲しい」

作業員「入り口から入ってすぐ左ですよ」

調査員「すこし説明も聞きたい」

作業員「はぁぁしょうがないなぁ…何人目だ?」ブツブツ

調査員「すまないね」テクテク

作業員「…これですよ」

調査員「ふむ…どこら辺で出土したのかね?」

作業員「大きい方がこのフロアの側壁で小さい方が下層の側壁ですわ」ハァ

調査員「側壁…うーん」

作業員「もういいっすかね?」

調査員「他の調査員は年代とか何か話して居なかったかね?」

作業員「そこのでかい石造と明らかに年代が違うって…あんたまで俺を疑うんすかね?」

調査員「疑う?」

作業員「俺が出土したって嘘付いてる様な言い方…」

調査員「あぁそういう事か…疑う気は無い」

作業員「はいはい…じゃあ作業に戻りますんで」スタスタ

調査員「ありがとう…」---見るからに昨日作ったような石造だ---

調査員「…」---格好も古代の物には思えない---

『日暮れ』


作業員「そろそろ戻らないとオアシスまで帰れなくなりまっせ?」

調査員「あぁ…もうそんな時間か」

作業員「何か分かった事あんすか?」

調査員「うーん…この大きな方の石造は何か抱えていたような形をしているけれど…他になにか無かったかね?」

作業員「あぁ…同時に壺が出土してますわ」

調査員「その壺は?」

作業員「考古学者と名乗る人が昨日持って行ったんすよ」

調査員「ふむ…私が知らないという事はフィン・イッシュ国の調査員か…」

作業員「俺も早く帰りたいんでもう出て貰っていいっすか?」


ヴヴヴヴヴヴヴヴ


調査員「ん?何の音だ?」

作業員「うわ!!まずい…」

調査員「誰か来る…」

作業員「ゾンビだよゾンビ!!早く外に逃げて!!」グイ

調査員「ゾンビはもう出ないと聞いて居たが…」タッタッタ

作業員「知るかよ…たまに出るんだ」

調査員「衛兵は?」

作業員「もう帰ってるよ…はやくラクダに乗ってオアシスまで戻ってくれ」

調査員「誰か遺跡の中に入って行くが…」

作業員「え!?…もう日が落ちてるって言うのに」

調査員「君!!一人で戻るのか?」

作業員「しょうがないだろう…今の人も帰れなく…あ!!!」

調査員「石造を担いでる?」

作業員「あいつは盗掘だ!!…にゃろう!!」ダダ

ゾンビ「ヴヴヴヴヴヴ…ガァァァ」ズリズリ

作業員「うわぁ…」

調査員「君!!だめだ…衛兵に連絡するのが先だ」

作業員「ちくしょう…又俺が嘘つきって言われる…」

調査員「私が証人になる…早くラクダに」

作業員「くそう!!」ダダ

『精霊の御所』


魔女「ぅぅぅ」

エルフゾンビ「気が付いたな?」

魔女「わらわはどうなっておるのじゃ?」

エルフゾンビ「エリクサーで石化の治癒待ちだ」

魔女「封印の壺はどうなった?」

エルフゾンビ「壺?何の事だ?」

魔女「わらわは壺を持って居らなかったか?」

エルフゾンビ「さぁ?」

魔女「アサシンが持って行ったな?…アサシンはどこじゃ」

エルフゾンビ「まだ目を覚まして居ない…アサシンも壺は持っていなかったぞ?」

魔女「どこぞに隠したか…わらわはまだ目が見えぬ」

エルフゾンビ「慌てないで治癒を待て」

魔女「頭が混乱しておる…どの様に次元の狭間より出たのじゃろう?」

エルフゾンビ「次元の狭間だと?お前たちは7年もの間行方不明だったのだぞ?」

魔女「何!?7年も石化して居ったのか?」

エルフゾンビ「ふむ…精霊樹が昨日突然お前たちを発見したのだ…7年間何処を探しても居なかった」

魔女「次元を超えたのじゃな…未来に来た様じゃ」

アサシン「げふっ…げほげほっ」

エルフゾンビ「おお!!目を覚ましたか!」

アサシン「俺は…何処を走ってる…げほっ」

魔女「アサシン!!壺は何処じゃ?」

アサシン「その声は魔女か…壺は俺が持ってる…目が見えない…俺はどうなってる!?」

エルフゾンビ「2人共落ち着け…ここは精霊の御所だ」

アサシン「又石化から救われた…のか?」

エルフゾンビ「そうだ…まだ石化の治癒が終わっていない」

魔女「待てぬ…わらわは壺を封印して居らぬ…壺のフタを…」

アサシン「フタは俺が閉じた…それで良かったか?」

魔女「ほっ…良い…良くやった」

アサシン「クックック兎に角…作戦は成功か?」

魔女「そうじゃ…壺に封印さえしてしまえば出る事は出来ぬ」

エルフゾンビ「壺は持っていなかった様だぞ?」

アサシン「私が抱えて…手が動かん…私は壺を持っていなかったのか?」

魔女「良くないのぅ…次元の狭間に置いて来てしもうたか…」

エルフゾンビ「お前たちはしばらくエリクサーに浸かっていろ…私が探してくる」

『数時間後』


アサシン「7年も未来に来てしまったのか…王女が心配だな」

魔女「千里眼で確認した…大丈夫じゃ…それよりも壺の行方じゃな」

アサシン「あの壺のフタを開けるとどうなる?中身が溢れ出すか?」

魔女「簡単には開かんが開けてしまうと出て来るじゃろうのぅ」

アサシン「簡単には開かないというと?」

魔女「封印の力を上回る力じゃな…わらわでは測れぬ」

アサシン「とりあえずは安心か…」

魔女「そうじゃが…誰も触れぬ場所に置くべきじゃ…何が起こるか分からんでの?」

アサシン「なるほど…そういう事か」

魔女「ん?」

アサシン「リリスの首が無いのはそうやって何処かに封印されたのだな?」

魔女「もう誰も封印された場所を知る者は居らぬ…古文書を見ても分からんじゃろうのぅ」

アサシン「クックック…アーッハッハ結局最後に魔王を屠ったのは私という訳か」

魔女「そういう言い方もあるが…格好良くは無いのぅ」

アサシン「これがクサナギの剣の効果か…クックック」

魔女「壺を隠すまでは仕事が残っておる」

エルフゾンビ「戻ったぞ…石化は解けた様だな?」

魔女「壺は無かったか?」

エルフゾンビ「何処を探しても見つからない…それよりも遺跡周辺で騒ぎになって居てこれ以上探せない」

アサシン「騒ぎ?どういう事だ?」

エルフゾンビ「お前達を運び出す所を人に見られたのだ」

魔女「わらわ達はカタコンベで石化しとったのじゃな?」

エルフゾンビ「そうだ…そこから運び出した」

魔女「ふむふむ…次元の狭間は時間だけを超える様じゃな…つまり過去の物を量子転移出来ると言う事か…」ブツブツ

魔女「ではどうやって触る?…待てよ過去とは記憶の事では無いのか?空間は過去に記憶として繋がっていると仮定して」ブツブツ

魔女「記憶を手で触るとはどういう事じゃ?もし記憶から量子転移出来るなら過去は丸ごと現在に繋がる…時間とは何じゃ」ブツブツ

アサシン「おい…」

エルフゾンビ「…」

アサシン「魔女はまだ混乱している様だ」

エルフゾンビ「夜明けまでまだ間がある…ゆっくりして行け」


ブツブツブツブツ…

ブツブツブツブツ…

『日の出』


アサシン「私は星の観測所まで行って来るが…魔女はどうする?」

魔女「わらわも行くぞよ?」

エルフゾンビ「あの場所はもう接収されて私は近づけない」

アサシン「何!?私の資産なのだが…」

エルフゾンビ「7年も経って居るのだ…状況は昔と違う」

アサシン「うーむ…まず情報収集だな」

エルフゾンビ「今は衛兵が出回って居るぞ?魔女の恰好は石造と同じではマズイと思うが?」

魔女「ほう?これで良いか?変性魔法!」グングングン

エルフゾンビ「はっ…大人に…」

アサシン「お前は知らなかったのか…魔女は変身するのだ」

エルフゾンビ「赤い目の魔女…まさか君が…」

魔女「少し法衣が小さいが動けん事も無い…これで良いか?」

エルフゾンビ「…」

魔女「変な目で見るでない…主は何を驚いておる」

アサシン「目の当たりにすると普通は驚く」

エルフゾンビ「私はセントラルの第2皇子だ」

魔女「じゃから何じゃ?」

エルフゾンビ「何も聞いて居ないのか?」

魔女「はて?知らんのぅ…何か有ったかのぅ?」

エルフゾンビ「婚約の話を…」

魔女「求婚が何度も来て居ったが…主だったのかえ?…わらわはその様な話に興味なぞ無い」

アサシン「クックック相棒!!見事に振られたぞクックック」

エルフゾンビ「フフ…第2皇子だったのは昔の話か…今は精霊樹を守るエルフゾンビだ」

魔女「エルフには興味あるがゾンビには興味が無い…アサシン行くぞよ?」

アサシン「酷い事を言うのだなクックック」



『オアシスへ続く林』


魔女「随分と風景が変わったのぅ…遺跡周辺はもう森になっておる」

アサシン「現在地が分からなくなるな…どこがどのオアシスだったのか…」

魔女「主はどうするつもりじゃ?」

アサシン「王女に私たちの無事を伝えなくてはな」

魔女「そうじゃな…壺を探すのは王女の手を借りた方が良いかもしれん」

アサシン「南西のオアシスまで歩くのは遠い…どこかでラクダを手に入れないとな」

魔女「一番近いのは星の観測所じゃが…先に行ってみるかえ?」

アサシン「一応様子を見て行こう…知った顔が居るかもしれん」

『星の観測所』


ガヤガヤ ガヤガヤ


男「待て待て…お前たちは誰だ?」

アサシン「私はこの建屋の持ち主だったのだがドラゴンの義勇団は何処に行った?」

男「ドラゴンの義勇団?わーっはっは…いつの話をしているのか」

アサシン「私の気球はどうなった?」

男「知らんなぁ…お前は義勇団の関係者なのか?」

アサシン「どう答えて良いか分からんが…」

男「う~ん…女連れかぁ」

アサシン「この建屋の今の持ち主は誰だ?」

男「フィン・イッシュ領事が使われている」

アサシン「ほう…それは都合が良い…領事に目通り出来るか?」

男「今は不在だ」

アサシン「そうか…中で待たせてもらう」ツカツカ

男「おとととと…待て待て…勝手に入って貰っては困る」

アサシン「こういえば伝わるか?ドラゴンの義勇団のアサシンが帰って来た」

男「んん?うーん…女連れ…もしかして女王様が探してる2人か?」

アサシン「多分そうだな…通って良いか?」

男「何か証拠になるような物は持って無いのか?」

アサシン「…」スラーン

男「おっとぉ…いきなり武器を抜くたぁどういう事よ」

アサシン「クサナギの剣だ…柄の銘を見ろ」

男「おぉ…龍神の文様と刻印」

アサシン「入って良いな?」

男「こりゃぁ大ごとだ…領事が帰って来るまで中で待っててくれ」

アサシン「そうさせてもらう」

男「俺ぁ伝令の所まで走って来るからよぅ…勝手に居なくならないでくれな?」

『部屋』


魔女「荷物は昔のままじゃな?王女が確保しておいてくれた様じゃ」

アサシン「さきほどの話では女王になった様だな」

魔女「7年も経っておればもう少女では無いであろうな」

アサシン「しかし…随分平和そうだ」

魔女「そうじゃな」

アサシン「見た所セントラルと摩擦が起きている様子も無い」

魔女「んむ…拍子抜けじゃな」

アサシン「壺ごと未来に飛んだからなのか?」

魔女「その可能性もあるのぅ…」


ドタドタ


男「おぉぉ良かった…見張ってろと叱られて来た所だ」

アサシン「領事の行先は?」

男「遺跡の方で何かあったらしいんだ…軍が集まって大ごとになってる」

魔女「わらわ達のせいじゃな」

男「どういう事だ?」

アサシン「話すとややこしい…とにかく私たちが帰って来た事に起因するな」

男「領事を探しに遺跡の方に行ってみるか?」

魔女「わらわは歩き疲れておる…気球は無いのかえ?」

アサシン「厄介ごとに首を突っ込むのはよそう…大人しく待っていよう」

男「そうか…」

アサシン「ところで…セントラルの兵が見えん様だが?どうなって居る?」

男「シャ・バクダ街の方だ…オアシスの方にはほとんど来ない」

アサシン「遺跡の調査を主導していた筈だったが?」

男「あんた知らないのか?もしかして記憶が無いとかそういうやつか?」

アサシン「話せば長くなるのだが…まぁ記憶が無いのと等しいか…」

男「7年くらい前だったか…遺跡から蛇の様な魔物が出て来てこの一帯は大混乱したんだ」

魔女「リリスじゃな…どうなったのじゃ?」

男「その魔物の血を浴びると石化するもんだから軍隊でも手を焼いてな…」

アサシン「なるほど…それで石化したのだな」

男「何か月も掛けてセントラルの大部隊がやっと捕獲したんだ」

魔女「討伐ではなく捕獲じゃと?」

男「鎖でグルグル巻きにしてどっか持って行った…その後セントラルは遺跡の調査を中止したんだ」

アサシン「今は遺跡の調査をフィン・イッシュが主導しているのか?」

男「女王様があんた達を探すのにオアシス全域の領有を主張したんだ…だから今はオアシス全域フィン・イッシュ領だ」

アサシン「それでセントラルの兵はこちらに来ないのか…」

男「それもあるが…エルフといざこざが起きて忙しいらしい」

魔女「懲りん奴らじゃ…それにしてもアサシン…」

アサシン「あぁ…リリスは特殊生物兵器部隊に持って行かれた様だ」

魔女「んん?始めて聞く名じゃが…セントラルはその様な部隊を持って居るのじゃな?」

アサシン「エルフゾンビ曰くセントラルの主力だ…生物兵器としてリリスの血を使うつもりで捕獲したのだろう」

魔女「…という事は…行先はセントラルか」

アサシン「今は壺の方が先決だ」

『数時間後』


なぜもっと早く知らせに来んのだ

探したんですがなかなか見つからなかったもので…

伝令は飛ばしたのか?

はい…定期便に乗せました


ドタドタ


魔女「来たようじゃのぅ?」

アサシン「…」

領事「これはこれはアサシン様と魔女様に御座いますね?」

アサシン「単刀直入に聞く…遺跡で壺を見ていないか?これくらいの大きさの壺だ」ゴソゴソ

領事「え…あ…あのですね」

魔女「知って居る様じゃな?話せ」

領事「紛失してしまったのです…」

アサシン「どこに行ったか分からないと言うのか?」

領事「先先日に我が国の考古学者と名乗った者が壺を持ち出したのですが…そのような者は我が国に居ませんでして…」

アサシン「なるほど…セントラル側に忍び込まれているという事か」

領事「恐らく…」

アサシン「シャ・バクダ街の方へは捜索に人を出しているか?」

領事「数名出していますが未だ行方知れずです」

アサシン「うーむ…的が絞れん」

領主「実は石造2体も紛失してしまって捜索中なのですが…もしかするとお二人の事ですかね?」

アサシン「石造の捜索はもうしなくて良い…壺に絞って欲しい」

領主「はぁぁぁ良かった…女王様に何と申し開きしようかと困って居たのです」ホッ

魔女「女王に石造の件は連絡しておるのか?」

領主「はい…出土したその日に伝令を飛ばしております」

魔女「こちらに来るかのぅ?」

領主「アサシン様と魔女様の関係でしたら直々に参られると思います」

魔女「では女王が来るまでは動けんのぅ…来るのは早くて1週間程か?」

領主「はい…大体それくらい掛かると思います」

アサシン「私は落ち着けんな…一人でシャ・バクダ街まで見に行って来る」

魔女「わらわは主の邪魔になりそうじゃな?」

アサシン「そうだな…一人の方が何かと融通が利く…魔女はこの辺で情報収集していてくれないか?」

魔女「おい男!!ラクダを用意せい…オアシスを回るぞ」

男「ええ!?俺!?俺はこの場所の管理を任されて…」

魔女「そんな仕事は領事にやらせておけ…早う準備せい!行くぞよ」

領事「オアシスのご案内は私めが…」

魔女「主は嘘付きの顔をしとるで信用できぬ…わらわは頭の回らん男の方が好きじゃ」

男「んん?俺のことか?」

領事「…」

魔女「何をしとるんじゃ早う行くぞ」ゴツン

男「あだっ…杖でどつくな…痛てぇな…」

『数日後』


わらわは下着を履いておらんと言うたじゃろう!!何故買って来なかったのじゃ

女物の下着なんか俺が分かる訳無いだろ

またどつかれたい様じゃな…もう一度行って買って来い

なんで俺がお使い役なんか…あだっ!!わかったわかった…


魔女「おぉアサシン帰って来たか…んん?誰じゃ祖奴は?」

アサシン「骨董品屋だ…この男の手を見てやってくれ」

魔女「どうしたのじゃ?」

骨董品屋「手が黒くなって動かなくなっちまってなぁ…医者に見せても分からんと言うもんでなぁ」

アサシン「回復魔法で治せないか?」

魔女「やってみても良いがこれは怪我なぞでは無いようじゃな?回復魔法!」ボワー

魔女「どうじゃ?動かせるか?」

骨董品屋「動かんなぁ…これじゃ仕事にならんなぁ」

魔女「消毒魔法!」ボワ

骨董品屋「動かんなぁ…」

魔女「何じゃろうな?動かぬという事は石化かも知れん…わらわの魔法では治せぬ」

アサシン「石化か…魔女はまだエリクサーが余っていたな?」

魔女「おぉ!!忘れておった…これを一口飲んでみぃ」スチャ

骨董品屋「…」ゴク

魔女「直ぐには治らんよって…まてよ?黒色化に石化…もしやこれは黒死病では無いか?」

骨董品屋「それは悪い病気なんかなぁ?」

魔女「体の一部が石になる伝染病じゃ…他にこの様な症状の者は居らんのか?」

アサシン「私が見る限り一人しか見ていないが…彼は壺の鑑定を露店でやって居るのだ」

魔女「壺を見つけたのかえ?」

アサシン「いや…沢山鑑定している様だから封印の壺が有ったのかは分からん…だが触った可能性はある」

魔女「急に石化する病気が出て来るのはあきらかにおかしいのぅ…壺の影響と考えた方が良いな」

アサシン「…となると商隊でどこかに運ばれた可能性も出て来るな」

魔女「おい骨董品屋!主が鑑定した壺はどうなるのじゃ?」

骨董品屋「良い物は商隊に回してよその町で買い取ってもらうんだなぁ…」

魔女「これくらいの黒い壺じゃ…覚えて居らんのか?」

骨董品屋「いっぱいあるんだなぁ…どれがどれだかなぁ…」

アサシン「この調子なのだ聞いても意味が無い…探し物の魔法とか無いのか?」

魔女「あればとっくに使っておるわい…んーむどうしたもんか…」



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女王「近衛2人だけ私に同行してください…他の者は見張りをお願いします」

衛兵「はっ!!」

女王「二人は中にいらしていますか?」

領事「はいお待ちしております」

女王「案内してください」

領事「こちらです…どうぞ」ササッ


ガチャリ バタン


女王「あぁぁぁアサシン様…魔女様…よくご無事で」

魔女「おぉぉ女王らしくなったのぅ」

女王「今までどうされて居たのですか?何の音沙汰も無く本当に心配していました」

魔女「わらわ達には主と別れてまだ10日程しか経って居らん」

女王「え!?どういう事なのでしょう?」

魔女「立って話すのも何じゃ…座ってゆるりと話そうでは無いか」

女王「はい…」

魔女「わらわ達はあれから…」


カクカク シカジカ

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魔女「…禁呪を使った影響で次元の狭間に迷い未来に飛んでしもうたのじゃ」

女王「そうだったのですね…では壺にリリスの子宮を封じるのは成功したのですね」

魔女「7年間この世界で何事も無く平和が続いたのは壺ごと未来に飛んだからかも知れぬ」

女王「でも無事に戻られて本当にほっとしています」

アサシン「そう安心しても居られない様なのだ」

魔女「そうじゃ…封印の壺を紛失してしもうた」

女王「それは先ほど領事に聞きました…盗掘に遭ってしまったと」

アサシン「シャ・バクダでは盗掘で生計を立てている者も多いから仕方の無い事ではある…特に壺となれば値も張る」

魔女「今探しておるが他にも沢山壺がある様でのぅ…見つからんのじゃ」

女王「黒死病の話も聞きましたが?関係しているのでしょうか?」

アサシン「その話だが…恐らく封印の壺が感染源になって居そうだ」

魔女「伝染病じゃからこれから感染者が増えてしまうよって手を打って置かんと拡大するぞよ?」

アサシン「エリクサーは量に限りがあるが少しなら入手が出来る」

女王「まずは感染の拡大を防ぐのが先ですね…どうすれば防げると思いますか?」

魔女「防げるかどうか分からんがくちばし付きの被り物で病を予防したと言うのは何かで読んだ事がある」

女王「被り物…マスクの事でしょうか?くちばしマスクでしたら趣向品で入手する事が出来ます」

アサシン「趣向品で良いのか?」

魔女「目と鼻と口が覆えれば良いのでは無かろうか?病気の専門家に聞いた方が良いな」

女王「分かりました…医者に聞いて手配を急がせます」

アサシン「壺はどう探す?」

女王「商隊の行先は陸路のセントラルか空路のフィン・イッシュどちらかです」

アサシン「壺の買い入れが多いのは?」

王女「税金の安いフィン・イッシュの方が儲かる筈ですが貴族は圧倒的にセントラルの方が多い」

魔女「どっちか分からんという事か…」

女王「はい…」

アサシン「やはり二手に分かれるか…女王は王都に戻る必要があるのだろう?」

女王「そうですね…私は公の会談以外でセントラルに行く事は出来ません」

アサシン「分かった…私と魔女でセントラルへ向かう…女王はエルフゾンビにエリクサーを融通してもらって王都に戻れ」

女王「エルフゾンビ…第2皇子はお元気ですか?」

アサシン「後で会わせてあげよう…見違えるほど元気にしている」

女王「そうですか…良かった」



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女王「なんだかタイムスリップした様な錯覚をします」

アサシン「んん?私たちが昔のままだからか?」

女王「はい…あの時のまま…何も変わらず魔王の影を追っている姿が…とても不思議です」

アサシン「7年の月日か…君は随分変わったな…大人になった」

女王「私は私の顔が見えませんから…お二人を見て変に錯覚してしまいます」

アサシン「私は正直7年も経った実感が無い…ただ混乱している」

女王「あれから随分お二人を探したのですよ?近衛には迷惑をかけっぱなしでした」

アサシン「砂漠をか?」

女王「おかげでホラ?筋肉ムキムキ」

アサシン「クックック砂漠で足腰を鍛えたか…女王の足では無いな」

女王「畑仕事も沢山やりました」

アサシン「それで一回り大きく見えたのだな」

女王「今日お二人に会えてとても報われた気持ちになりました…信じて良かったって」

アサシン「君は君のまま女王をやれば良い」

女王「はい…その言葉を信じて今までやって来ました」

アサシン「良い国になって居る様では無いか」

女王「落ち着いたらフィン・イッシュにいらして下さい」

アサシン「ほう?自信がある様だな?」

女王「不思議とみんな筋肉ムキムキなのです…軍国はやめたのですけれどね」

アサシン「歓楽の国になったのか?」

女王「民がおしゃれ祭りや筋肉祭りをやる様になって色んな歓楽が楽しめます」

アサシン「クックック変な国だな…筋肉祭りとは…一体何を祭るのかクックック」

『遺跡の外れ』


女王「近衛は気球で待機していて下さい」

近衛「はっ!!アサシン殿…魔女殿…女王の安全をお願いします」

魔女「わらわが居れば大丈夫じゃ…安心して待たれよ」

女王「ここから歩くのですか?暗くなって来ましたが…」

アサシン「エルフゾンビは暗くならないと出て来んのだ」

女王「そうでしたか…この周辺も私は良く歩きましたが夜にならないとお会い出来なかったのですね」

アサシン「この先に精霊の御所への入り口がある」

女王「はい…閉ざされた遺跡があるのは存じております」

アサシン「トロールが守って居るのだ…閉ざしているのはトロールなのだよ」

女王「そうだったのですか」

アサシン「エルフゾンビの隠れ家になっている…他言しない様にな?」

女王「はい…」


ズズズズズズ ズーン


女王「今の音は?」

魔女「トロールが道を開けた音じゃな…入っても良いという事じゃろう」

女王「この様な仕掛けがあったのですね…何処で見ているのでしょう?」

魔女「わらわ達も仕掛けは良く分からんが森のどこかで見て居るのじゃろうな?」

アサシン「さぁ…早く入るのだ」

女王「はい…」


ズズズズズズ ズーン

『精霊の御所』


魔女「これエルフゾンビ!客が来たぞ?」

エルフゾンビ「…」

魔女「瞑想しておるのか?これ…起きんか!」ユサユサ

エルフゾンビ「…」

魔女「待つしか無い様じゃ…折角女王を連れて来たのにのぅ…」

アサシン「まさか誰かが入って来るとは思って居なかった様だな」

女王「ここがかつての精霊の御所なのですか?」

アサシン「…そうらしい…私は詳しい事は知らん」

女王「木の根で作った城なのですね…とても神秘的です」

魔女「どれくらいトロールが居るのか分からんがトロールがこの根の森を守っておる」

女王「私が小さい頃トロールに乗るのが夢でした」

魔女「何故にトロールなのじゃ?」

女王「童話では森に住むトロールは小鳥を肩に乗せて居たのです…私はその小鳥の様に肩に乗りたかった」

エルフゾンビ「…来ていたのか」スゥ

女王「エルフゾンビ様…お久しぶりです」

エルフゾンビ「姫か…元気そうで何より」

魔女「もう姫ではないぞよ?女王じゃ」

女王「どちらでも良いです」

エルフゾンビ「今日は揃ってどうした?用が有って来たのだろう?」

アサシン「エリクサーを持って女王と一緒にフィン・イッシュに行かないか?」

エルフゾンビ「私は精霊樹を守る役目がある…行けんな」

アサシン「実はなリリスの子宮を封じた壺が黒死病という石化する病気を発生させている様なのだ」

エルフゾンビ「石化する病気…それでエリクサーが入用という訳か」

アサシン「私は魔女と共にセントラルまで壺を探しに行こうと思う」

エルフゾンビ「なぜそれほど遠方まで探しに行く?」

アサシン「壺が商隊で運ばれているのだ…行先はセントラルかフィン・イッシュのどちらかだ」

エルフゾンビ「なるほど女王と共に壺を探してくれという事か」

アサシン「女王の立場上自由に動けないのは分かるな?」

エルフゾンビ「しかし遺跡へ立ち入る人間がこうも多くてはな…エルフがこちらへ来られないのだよ」

女王「遺跡への立ち入りを国として禁止する事が出来ます」

魔女「その方が良いじゃろうのぅ…もう遺跡の調査は必要無かろう?」

エルフゾンビ「私の顔を見て見ろ…既に人前に出られる顔では無い」

魔女「それ程変では無いがな?エルフにしては肌色が悪い程度じゃ」

アサシン「クックック気にし過ぎだ…プライドが許さんか?」

女王「気になる様でしたら仮面を用意致します…フィン・イッシュでは流行って居るのです」

エルフゾンビ「ふむ…」

魔女「精霊樹は何か言うておらんのか?」

エルフゾンビ「何も言って居ないがお前たちが此処に入って来られたという事は協力しろという意味だ」

魔女「では決まりじゃな?」

『女王の気球』


近衛「エリクサーの樽は1つで良いのでしょうか?」

女王「はい…もう一つは星の観測所に残して行きます」

領事「お預かりいたします…」

女王「観測所の警備を増やして盗まれないようにして下さいね」

領事「承知致しました」

女王「領事…くれぐれも遺跡の方へ人を近づけてはいけません…分かりましたね?」

領事「警備の衛兵も撤収でしょうか?」

女王「そうしてください…何人も立ち入り禁止と致します」

近衛「領事…次はヘマをしない様にな?女王様は何も言わないが私たちは見ているぞ?」

女王「近衛!もう良いのです…領事…お願いしますね?」

領事「御意…」

魔女「アサシン…わらわが主に渡した貝殻を女王に持たせよ」

アサシン「あぁ…」ゴソゴソ

女王「これは?魔女様の声を聞く貝殻ですね?」

魔女「そうじゃ…こちらの様子をその貝殻で知らせる故…常に持っておくのじゃ」

女王「わかりました…これが在れば安心ですね」

アサシン「私達が使って良い気球は…」

女王「貨物用の気球を用意しました…セントラルへの入国が許可されている気球です」

アサシン「おぉそれは良い」

女王「案内人を一人付けますので気球の操作と入国は彼にお任せください」

魔女「何から何まで済まんのぅ」

女王「セントラルは武器の携帯が制限されていますので貨物の中に入れて入国してください」

アサシン「その辺は上手くやる」

女王「はい…今度は行方不明にならないで下さいね」

魔女「毎日貝殻で報告するで心配するでない」

女王「わかりました…それではご無事で」


フワフワ

『貨物用の気球』



魔女「こりゃまたヘンテコな気球じゃな…3人乗りかえ?」

案内人「そうだ…」

魔女「おろ!?主は男では無いか…観測所の警備はクビになったんかえ?」

案内人「女王様の命令だ…」

魔女「何故それほど暗い顔をしておる…わらわは主が案内人で嬉しいぞよ?」

アサシン「魔女に気に入られた様だなクックック」

案内人「もう出発して良いのか?」

アサシン「そうだな…」

案内人「行先はセントラル直行かい?」

アサシン「ハズレ町~シケタ町~トアル町経由でセントラルに入る」

案内人「商隊の陸路を追うんだな?…途中のキャンプは無視して良いのか?」

アサシン「君は詳しい様だな…キャンプでは荷の確認が出来ないだろうから無視しても良いと思うが?」

案内人「密売品の場合は荷の検閲回避の為にキャンプで積み替えをやるポイントがあるんだ」

魔女「密売品とはどういう物じゃ?」

案内人「麻薬やエルフ…それから美術品…骨董品とか取引価格の高い奴だ」

魔女「骨董品か…アサシンどう思う?」

アサシン「ふむ…確認しなければならない場所が多いな…虱潰しか」

魔女「そうじゃなぁ…」

案内人「…」

『数日後_キャンプ』


魔女「戻ったな?どうじゃ…手がかりは見つかったかの?商隊は随分こちらを警戒しておる様じゃが…」

アサシン「一通り荷は見て回ったが手がかりは無い」

魔女「残念じゃのぅ…」

アサシン「次はシケタ町か…う~む…」

魔女「何か気に掛かる事でもあるのか?」

アサシン「私はこれほど的を絞れず探し物をする事はしないのだ…どうも調子が狂う」

魔女「手がかりの一つでもあればのぅ…」

アサシン「女王の方はどうなって居る?フィン・イッシュでは手掛かり無いのか?」

魔女「千里眼で見る限り未だ見つかって居らぬ様じゃ」

アサシン「何か変だ…」

案内人「…」

魔女「む?案内人…お主落ち着きが無さそうじゃのぅ」

案内人「俺は関係ねぇ」

アサシン「…」ジロリ

案内人「…」

アサシン「そういえば女王は私達に会いに来た時…近衛を傍に付けていたな?」

魔女「む…主も気になって居ったか…わらわ達に会うのに近衛を付けるのは今まで無かった事じゃ」

アサシン「精霊の御所では単独で付いてきた…つまり私達は信用されている」

魔女「星の観測所で同席して居ったのは領事と案内人じゃな」

アサシン「…」スラーン ピタ

案内人「お…おい!俺は関係無ぇ!!」

アサシン「なに?…俺は関係無いだと?…領事は関係あると言うのだな?」

案内人「俺は指示された通り商隊の裏行動まで案内しろと…」

アサシン「魔女…千里眼で領事の目を覗け」

魔女「千里眼!」

アサシン「領事は何をしている?」

魔女「酒を飲んでおるな…女が居る…どこぞの酒場じゃ」

アサシン「酒場だと?オアシスにろくな酒場など無い…シャ・バクダ街だな?」

魔女「建物の中という事しか分からんが…ぬ!骨董品屋が一緒では無いか」

アサシン「謀られたな…」ブスリ

案内人「ぐあぁぁぁ…待て!!俺は本当に関係ない!!」

アサシン「私を誰だと思っている…生きて帰れると思うな」グイ

案内人「本当だ!!俺は何も知らない…たたた助けてくれぇ」

アサシン「…」ギロ

案内人「りょ…領事は…元諜報員という事しか…知らん…ぐふっ」

アサシン「魔女…回復してやれ」

魔女「主は手加減を知らんのか?回復魔法!」ボワー

案内人「げふっ…げふ…」

アサシン「星の観測所に戻る…急いで用意しろ」

『貨物用の気球』


ビョーーーウ バサバサ


アサシン「女王が案内人を私達に同行させたのは偶然か?」

案内人「俺が昔商隊長やってたのを領事が女王に進言したんだ」

アサシン「なかなかあの領事はヤリ手だな」

魔女「領事がセントラル側の人間じゃったとすると色々とマズイのぅ…」

アサシン「そうだな…フィン・イッシュ軍が遺跡から引き揚げた現状セントラル軍が遺跡に入る…エリクサーが欲しい筈だ」

魔女「森が燃やされるかもしれぬ…それでもフィン・イッシュ軍は遺跡に入れんでは無いか」

アサシン「領事は壺の中身も知ってしまっている…始末せねばなるまい」

魔女「案内人!!主はこうなると思わんかったんか!!」

案内人「俺は本当に領事のやっている事は何も知らない…ただ信用出来なかった」

魔女「ぐぬぬぬぬ何でも良いから領事の事を話せ」

案内人「良く行く酒場は確かにシャ・バクダ街の店だ…それ以外は本当に知らない」

アサシン「フィン・イッシュ領事がシャ・バクダ街で豪遊かクックックそれがおかしいと思わないお前は無能だ」

案内人「くっ…領事には逆らえなかった」

魔女「女王に知らせておくかえ?」

アサシン「話は一方通行だな?」

魔女「そうじゃ」

アサシン「う~む…あの領事が居たから摩擦が回避出来ていたとも考えられるな」

魔女「主はあの領事を泳がす気か?」

アサシン「女王はそれを承知で使っていたのでは無いか?」

魔女「むぅ…そういえば近衛の指摘を諫めておったな…」

アサシン「エリクサーの樽を1つ置いて行ったのは領事に対して上手く使えという事では無いか?」

魔女「女王はセントラルの民も案じておるのじゃな?」

アサシン「そうだ…つまり勝手に領事を始末するのは女王の意に反する可能性がある」

魔女「わらわ達は壺さえ戻れば良いが…」

アサシン「クックック…」ニヤリ

魔女「考えがあるなら話せ…」

アサシン「まぁ待て…もう少しで分かる」

『数時間後』


案内人「うっ…ぅぅぅ」

魔女「これ!!さぼるでない」

案内人「悪い…体の調子がおかしい…ぅぅぅ」

アサシン「クックック…これを見ろ」スラーン

魔女「クサナギの剣か?…ん?刀身が錆びておるのか?」

アサシン「血だ…拭いても落ちん」

魔女「何と!!リリスの呪いか?」

アサシン「どうやらそうらしい…クックック」

案内人「お…おい…俺はその剣で刺されている…どうなるんだ?」

アサシン「刺された場所を見て見ろ」

案内人「なにぃ!!…うぉ!!黒い…」

魔女「黒死病じゃな」

案内人「助けてくれよ…俺はまだ死にたくねぇ」

魔女「わらわのエリクサーを一口飲め…少しだけじゃぞ?」

案内人「…」グビ

アサシン「決まりだな…これで領事を脅す」

魔女「主はえげつない男じゃな…エリクサーを取り上げて黒死病にするんじゃな?」

アサシン「案内人の10倍は痛い目を見てもらう…蘇生は任せる」

魔女「切断してしもうたら治せんよって手加減せいよ?」

アサシン「私は正直あの領事を許せんのだ…身内を騙すような奴をな」

案内人「…」ゴクリ

アサシン「案内人…私がやる事を良く見て立ち振る舞いを考える事だ…」

魔女「恐ろしい男よのぅ…」

『シャ・バクダ遺跡上空』


フワフワ


アサシン「やはりセントラルの兵が遺跡を探索しているな」

魔女「気球が4つ飛んでおるな」

アサシン「案内人!上から近付け」

案内人「はい…」

アサシン「魔女…魔法で気球の球皮を焼いて落とせるか?」

魔女「4ついっぺんに落とすなら竜巻魔法の方が良いのぅ…火は森を焼いてしまうで」

アサシン「任せる」

魔女「竜巻魔法!竜巻魔法!竜巻魔法!」ゴゴゴゴゴゴ

案内人「うぉ!…」バサバサ

魔女「風が巻くで気を付けい!!」

アサシン「勝手にフィン・イッシュ領に入るとどうなるか教えておかないとな」

魔女「高位魔法を詠唱するで敵の兵に近寄るのじゃ…」アブラカタブラ クラウドコントロール アッシドレイン

魔女「広範囲毒霧魔法!!」モクモク

案内人「霧?」

魔女「吸い込むでないぞ?調子が悪うなるで…」

アサシン「よし…風上から迂回して星の観測所に戻る」

案内人「観測所に直接降ろして良いのか?」

アサシン「構わん…後は私に任せろ」

『星の観測所』


フワフワ ドッスン


衛兵「これはアサシン殿…セントラルに向かったのでは?」

アサシン「ちと忘れ物が在ってな…領事は何処にいる?」

衛兵「今は外に出ておりますが直に戻って来るかと思います」

アサシン「中で待たせてもらう」

衛兵「はっ…ところで遺跡の方で何か起きている様ですが気球からは見えて居ないですか?」

アサシン「竜巻が起きていたな…気にしなくて良い」

衛兵「そうですか…」

アサシン「案内人!ワインの樽を持ってエリクサーの樽と交換しておけ」

案内人「あぁ…分かった」ヨッコラ

アサシン「魔女…領事が来たら周辺の衛兵を例の睡眠魔法で眠らせてくれないか?」

魔女「ふむ…他の者を巻き込まん様にするのじゃな?」

アサシン「あまり身内を殺めたく無いのでな…騒ぎにはしたくない」

魔女「中で待つとするか…」ノソノソ

『1時間後』


ドタドタ


領事「これはこれはアサシン殿ご一行…何故お戻りに?」

アサシン「人を払ってはくれんか?」

領事「さて?なぜにその様な事を言うのですやら?」

アサシン「まぁ良い…遺跡にセントラル兵が入っている様だが?放って置いて良いのか?」

領事「女王様から侵入を禁止されておりまして…その」

アサシン「何人も入れるなという命令では無かったか?」

領事「我が国の者は何人も入れておりませぬ」

アサシン「あぁ…もう良い」

領事「女王様にご報告されるおつもりでしょうか?」

アサシン「領事…お前に質問をする」

領事「私が先に質問をしているのですがお答えにならない様でしたら…」

アサシン「シャ・バクダ街の酒場で豪遊とは大した身分だな」

領事「はて?何の事でしょう?何か証拠でもあるのでしょうか?」タラリ

アサシン「どうやら話しても無駄な様だ…」スラーン

領事「抜刀とは頂けませんな…女王様の従士とはいえ捨て置けませんぞ?衛兵!!取り押さえよ!!」

衛兵「…」スヤ

領事「何をしておる!!」

衛兵「…」スヤ

領事「ええぃ役立たずめ!!」スラーン ダダダ ズン

アサシン「…」

領事「フフフフ心の臓に当たってしまいましたな?」

アサシン「終わりか?」

領事「なに!!」ズン ズン

アサシン「そうか刺客の技も持って居たか…どうりで女王は近衛を払わん訳だ」

領事「このぉ化け物が!!」ザクザク

アサシン「剣はこうやって使うのだ」ブン スパー

領事「ぎゃぁぁぁ手が…手がぁぁ」

アサシン「さて…壺はどうした?」

領事「はぁ…はぁ…何の事か…こんな事をしてお前!!許されると思うな!!」

アサシン「指は10本あるな?」ボキ ボキ ボキ ボキ

領事「ぐぁ…やべて…ぎゃぁぁ」ボキ ボキ ボキ ボキ

アサシン「神経をな…直接触るとどんな感じするか知っているか?」ザク ギュゥゥゥ

領事「いぎゃあああああああああああああああああああああああああ…あひあひ」

アサシン「もう一度聞くぞ?壺をどうした?」

領事「ひょひょ…あへ」

アサシン「聞こえんな…背骨の神経はもっと効くらしいな」ズン ギュゥゥゥ

領事「ぐぇぇぇぇががあがが」ピクピク

アサシン「魔女…少し休憩しよう」

魔女「回復魔法!」ボワー

領事「ブクブク…うげぁ」ゲロゲロ

アサシン「もう一回始めからだ」グサ

領事「やべて…くだじゃい」

アサシン「聞こえんなぁ」ザク ギュゥゥゥ

領事「いぎゃああああああああああああああああああ」ピク

アサシン「壺をどうした?」

領事「ききき…きゅうで…」

アサシン「気球で何だ…聞こえんな」

領事「ぜんどらりゅ…うぉぇっ」ゲロ

アサシン「ほう?誰だ…」

領事「きぞ…くとっくに…はぁはぁ…おくった」

魔女「そろそろ良いじゃろう…見ているわらわが吐きそうじゃ」

アサシン「もう一度教えてやる…女王に逆らうとどうなるかな…」

領事「やべ…やべて」プルプル

アサシン「ハートブレイク!」ズン ズブズブ

領事「ぐはぁぁぁあ…」

アサシン「案内人…しっかり見たな?」

案内人「お…おい…始めから生かす気なんか無いのか?」

アサシン「さぁな?」

『数分後』


魔女「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

案内人「血は止まったな…」

領事「…ぁぅぁぅ」グッタリ

魔女「神経を触られておるでな…しばらくショックが抜けんじゃろう…体も強張っておる」

アサシン「案内人…汚れた床を掃除しろ…反吐が出る」

案内人「お…おう…」イソイソ

アサシン「さて領事…盗賊ギルドのマスターは聞いた事があるだろう…私の事だ」

アサシン「セントラルの諜報員となれば知らぬ訳は無いな?我らの秘密を知ったからにはどうなるか想像つくな?」

領事「ぁひ…」ブルブル

アサシン「お前は女王に生かされて居るのだ…どう立ち回るのだ?」

魔女「こ奴はまだ話せぬ…質問は無駄じゃ」

アサシン「まぁ良い…見ている事だ…貴族は一人残らず居なくなるぞ?何故だか分かるか?」

アサシン「私は心臓を突かれても死なんな?不死者の王だからだ…私は貴族を一人残らず葬る力が在ると知れ」

領事「…」ゴクリ

アサシン「もう一つ教えてやる…お前は既に黒死病に感染している…だがお前にエリクサーをやる気は無い」

アサシン「ゆっくり死ぬか女王の慈悲にすがるかは自分で選べ」

魔女「もう良い…アサシン…行こうぞ」

アサシン「壺の行先が分かったのだ…慌てる事もあるまい」

魔女「領事の怯えた姿を見ていてわらわは落ち着かぬ…居心地が悪いのじゃ」

アサシン「心底腐った奴にはな…これでも足りんのだ」

魔女「主はまだやる気かえ?」

アサシン「口は封じておかねばならん…領事!答えろ…壺の秘密を洩らした者は誰だ?」

領事「いいいいい居ません…ぅぅっぅ」フリフリ

アサシン「案内人!領事の部屋に行って関係者の名前をすべて調べろ…家族もだ…皆殺しにする」

案内人「ええぇ!!?」

魔女「アサシン!やり過ぎじゃ…自国の者も居るじゃろうて」

アサシン「良いから調べて来い」スラーン

案内人「いいいいい今行って来る…」ダダダ

領事「だだ誰に…も教えて…居ない!本当だ…」ブルブル

アサシン「こういうのはな…生首を並べられて初めて本音が出るのだクックック」

魔女「アサシンこうするのはどうじゃ?わらわが領事に服従の呪いを掛ける故…それで許してくれぬか?」

アサシン「どんな効果なのだ?」

魔女「服従に背くと血が凍るのじゃ…こ奴の血が必要じゃが血の繋がった者はすべて凍る」

アサシン「ほう?人質が取れると言うのだな?」

魔女「わらわに免じて関係の無い者まで手に掛けるのは止めよ」

アサシン「領事!…そういう事らしい…救われたな?」

領事「あぅあぅ…」ブルブル

『貨物用の気球』


フワフワ


アサシン「クックック魔女も大した演技力では無いか…呪いなんて本当にあるのか?」

魔女「無い…主も悪い男よのぅ皆殺しにするなど始めから考えて居らんのじゃろう?」

案内人「ええ!?そうだったのか…」

アサシン「皆殺しなど出来ん事は無いが面倒くさい上にリスクも大きい」

魔女「エリクサーはどうしたのじゃ?置いてきたのじゃろう?」

アサシン「衛兵隊長に事情を話して渡してきた…どうしても必要な時に使えとな」

魔女「これで領事は大人しくなるかのぅ?」

アサシン「しばらくは黒死病で苦しむだろうが…改心してもらわんとな」

魔女「主は人間の神経を痛め付けるのは普段からやっておるのか?」

アサシン「クックック相手によってはな?普通は騒がない様に急所を狙うのだ」

魔女「あれはやってはイカン…筋肉が強張って回復出来ん様になる…魔法では治せぬ」

アサシン「魔法が効かないのか…それは知らなかったな」

魔女「とてつもない激痛じゃぞ?精神が分裂する寸前じゃ…もう2度とやってはイカン」

アサシン「分かった…やっている私も虫唾が走る」

魔女「本真に主は恐ろしい奴じゃ…鬼じゃな」

アサシン「気付いたのだが私は不死者になってから高揚感を感じなくなった様だ」

魔女「わらわから見ても分かるのぅ…淡々と作業をこなす姿が逆に恐ろしいのじゃ…人では無い」

アサシン「人では無いか…どうも心が寒いな」

魔女「ほれ…ワインじゃ」ポイ

アサシン「心を満たす物は…ワインぐらいか…」グビ

『セントラル』


ガヤガヤ ガヤガヤ


荷の確認をする…見せろ

はい…羊毛と織物…それから酒

この箱は何だ?

中古の武器と防具…素材用ですわ

ふむ…乗って居るのは3人だな?顔を見せろ



アサシン「…」

検問「顔色が悪いな?病気か?」

アサシン「フフまぁそんな感じだ」

検問「お前は?」グイ

魔女「わらわに触るでない」

検問「ふむ…人相書きの女ではない様だな…赤い目…娼婦か?」

魔女「…」ギロ

検問「おぉぉ怖い怖い」

案内人「しばらく滞在するんで気球は置いて行く」

検問「邪魔になるから荷出しは手短にヤレ…入国許可!」

『中央広場』


ザワザワ ザワザワ


魔女「城から煙が出て居るのぅ?何かあった様じゃな?」

アサシン「うむ…ざわついて要るな?」

案内人「とりあえず宿を取って来るが…注文はあるか?」

アサシン「酒場が付いて居れば何処でも良い」

案内人「なら商隊御用達の宿屋だな…情報が集まりやすい」

アサシン「場所だけ教えてくれ…私は少し周りを見てから行く」

案内人「商人ギルドの横の建屋だが…分かるか?」

アサシン「あぁ…大丈夫だ」

魔女「わらわは宿屋に行って先に休むぞよ?ちと水浴びがしたいでな」

アサシン「夕刻までには戻る」


おぉぉ倒れる倒れる!! ガラガラ ドーン


アサシン「内郭の観測塔が崩れたな…何が起こっているのだ?」

魔女「こりゃ只事では無さそうじゃな?」

アサシン「まさかリリスが暴れている訳ではあるまいな?…急いで見て来る」タッタッタ

魔女「案内人!ボケっとしとらんで早う宿屋まで連れて行くのじゃ」

案内人「それどころじゃ無さそうだが…」

魔女「わらわはもう何日も水浴びをしとらんのじゃ…気持ちが悪い」

案内人「んあぁぁ分かった分かった…」

『宿屋』


魔女「ふぅ…髪の毛から砂が取れただけで大分スッキリしたわい」

案内人「着替えを買ってきて置いたぞ…ベットの上だ」

魔女「おぉ気が利く様になったのう…部屋から出ておれ…およ?下着も買って来たのか…要らんかったのにのぅ」

案内人「要らんだと?前はえらく怒ってたじゃねぇか」

魔女「砂漠では砂が下に入って痛いのじゃ…ここでは不要じゃ」

案内人「俺は女の事は分かんねぇ…勝手にしてくれ」ガチャリ バタン


-----------------


魔女「もう入って良いぞ?」

案内人「…」ガチャリ バタン

魔女「アサシンは遅いのぅ…城で何があったんじゃろう?」

案内人「さっき外で聞いたんだが城の方で爆発事故があったらしい」

魔女「いつの話じゃ?」

案内人「一昨日だそうだ」

魔女「2日も経っておるのにまだ鎮火して居らんのか…何が燃えて居るんじゃろうか?」

案内人「下水が破壊されて城まで水が運べないそうだ」

魔女「高台に城が在る故に消火出来ぬか…不便じゃな」

アサシン「戻った…」ガチャリ バタン

魔女「おぉ…どうじゃった?何が爆発したのじゃ?」

アサシン「城の真下だな…下水が立ち入り禁止になっていて詳細は不明だ」

魔女「やはりリリスかのぅ?」

アサシン「魔女…エリクサーはどれくらい残って居る?」

魔女「1瓶と少しじゃな…なぜそのような事を聞くのじゃ?」

アサシン「下水から海へ赤い液体が流れて行って居る…リリスの血では無いかと思う」

魔女「それは良くないのぅ」

アサシン「私はもうエリクサーを持って居ないのだ…黒死病に掛かってしまう様であれば一度フィン・イッシュに戻らねばならんな」

魔女「症状が出てから少しづつ飲めば10回は持ちそうじゃが?」

アサシン「あまりリスクを抱えたく無いな…今晩貴族特区に向かい壺を頂いて早めに引き返そう」

魔女「主はその場所を知っているのかえ?」

アサシン「貴族特区は屋敷が4棟しか無い…魔女の睡眠魔法を使って行けば探索は直ぐに終わる」

案内人「貴族特区に行くまで貴族居住区を抜けなければならないぞ?」

魔女「魔法は何度でも使える寄って気にせんでも良いが?」

アサシン「行くのはもう少し夜が更けてからだ…まだ間がある故酒場で食事を済ませておこう」

『酒場』


ワイワイ ガヤガヤ


マスター「いらっしゃいませ…3人様ですね?」

アサシン「あぁ…食事も用意できるか?」

マスター「お任せ下さい席にお持ち致します…こちらです」スタスタ


白狼の盗賊団が出たんだってよ?

へぇ~?お金ばら撒いてたのかな?わたしも見たかったな~

正体がお面を被った子供だったらしい

子供が?それ本当?


アサシン「クックック…子供のごっこ遊びか」

魔女「白狼の盗賊団は主らの事じゃよな?」

アサシン「私は後方支援だ…主役は盗賊と剣士だな…風体は女海賊か」

魔女「子供らが真似をしておるのか…良いのか悪いのか…」

アサシン「魔女は千里眼で彼らが何処に行ったのか見ていないのか?」

魔女「皆バラバラじゃ」

アサシン「女海賊と剣士は?」

魔女「心苦しゅうて見て居らん…と言うよりどういう対策をして居るのか知らんが見えんのじゃ」

アサシン「そうか…魔女でも分からない事があるか」

魔女「女戦士は船に乗っておるな…ドラゴンの義勇団の旗印を使って居る」

アサシン「あの旗印は元々女戦士が使っていた旗印なのだ…たまたま星の観測所に掛けてあっただけだ」

魔女「魔王の影を追っておるのはわらわ達だけじゃのぅ…」


マスター「お食事をお持ち致しました…どうぞ」


アサシン「マスター…何か面白い話は聞けて居ないか?」

アスター「面白くない話ばかりですねぇ…」

アサシン「ほう?景気が悪いか?」

マスター「下水爆発事故の後処理が全然出来ていないそうですよ」

アサシン「ラットマンが出て来ていると聞いたが?それでは無いのか?」

マスター「下水から血のような汚染水が流れ出して手が付けられないのだとか」

アサシン「あぁ…海に流れ出ているやつだな」

マスター「大量の死体と言い…何なんですかねぇ?」

アサシン「死体…」---爆発はカタコンベだったのか---


---いよいよリリスが怪しいな---

『貴族居住区』


魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク

アサシン「案内人は宿屋に戻って待機しろ…ここからは私達だけで行く」

案内人「分かった…」

アサシン「もし戻らない場合は状況を説明しに女王の所に行くのだ」

案内人「戻らない場合なんてあるのか?」

アサシン「私は割と勘が働くのだ…状況はひどいと言わざる終えん…城がまだ燃えているのが証拠だ」

魔女「案内人…これを持って行け…エリクサーじゃ…まだ一口あるでな?」

案内人「お…おう」

アサシン「魔女…急ぐぞ」タッタッタ



『貴族特区』


アサシン「待て…ここは衛兵が守っているのでは無いな」

魔女「何じゃ…あの大きな鎧を着た魔物は」

アサシン「あれが成長したラットマンか…まるでミノタウロスでは無いか」

魔女「立ちんぼになっておるから睡眠魔法は効いておりそうじゃ」

アサシン「魔女はここで待っていろ…私が忍び込んで壺を探してくる」

魔女「いいや…離れぬ方が良かろう…方陣が敷いてあるで仕掛けがあるやも知れぬ」

アサシン「魔方陣?ここの貴族はそういう技を持った者が居るのだな?」

魔女「あの方陣はシン・リーンの光の方陣じゃ…魔術師が居るのであればあの方陣は避けて通らんと見つかるぞよ?」

アサシン「なぜ魔術師が居る…」

魔女「それはわらわの方が知りたいのぅ…念のためもう一度睡眠魔法を掛けて置く」アブラカタブラ クラウドコントロール メスメライズ

魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク

アサシン「魔女…私の背後から離れるな?」

魔女「分かっておる」ノソノソ

アサシン「ここの屋敷が一番大きい…ここから入るぞ」

魔女「正面から入るのかえ?」

アサシン「それが一番早い」ガチャリ ギー

魔女「誰も居らん様じゃな?」ノソ

アサシン「…骨董品ばかりでは無いか」

魔女「これはシン・リーンの宝物庫よりも良い物がありそうじゃ…」

アサシン「シャ・バクダの宝飾品もある…ここの持ち主は一体…」

魔女「見て見よ…伝説の絵画じゃ…あれはシン・リーンの古代遺跡の壁画と同じじゃ」

アサシン「どうやら壺はここに間違いなさそうだな…セントラルにこの様な収集家が居たとは…」

魔女「驚いたな…精霊の石造がここにもある」


シュン グサ

魔女「はぅぅ…」

アサシン「魔女!!」

魔女「回復魔法!…しもうた!!ここは魔結界の中じゃ…魔法が発動せぬ」

アサシン「なにぃ!!」


??「捕らえろ」


ラットマンリーダー「がおおおぉぉ」ドシドシ

魔女「くぅぅ放せ…触るでない」ジタバタ

アサシン「しまった…」タジ


??「又泥棒かと思えば…シン・リーンの魔術師か」


魔女「何じゃと?主は誰じゃ!!」

アサシン「スキ有り!!」シュン ザクリ

??「ほう?良い腕を持って居るな…しかし神秘の体を持つ私には無意味」

魔女「神秘の体じゃと?」

アサシン「お前は誰だ?」

??「ヌハハハハハハ…答える必要があると思うか?小物よ」

魔女「分かったぞよ…主は師匠が探して居った時の王じゃな?」

??「…そうか」

アサシン「時の王だと?」

??「お前は私の子孫だったか…目を見せてみろ」

魔女「理解したぞ…すべてを仕組んだのは主じゃな?200年前に精霊と勇者を屠ったのも主じゃな?」

時の王「ヌハハハハ流石は私の子孫…察しが早い…しかしこうして見ると感慨深い」

アサシン「赤い目…どういう事だ?」

魔女「こ奴は1700年前のシン・リーン古代文明をも屠った赤き瞳の王じゃ…リリスの血を飲み不老不死となっておる」

時の王「正確にはリリスの生き血だよ…死に血を飲んでも不老不死にはならん」

魔女「どうでも良い…それよりも主は何をする気じゃ?」

時の王「人間の絶滅以外に考えられると思うか?」

魔女「何故じゃ…主は時の勇者を支えた英雄だった筈じゃ…それが何故魔王に汲みする立場に居る!」

時の王「私の子孫か…特別に教えてやろう」

確かに私は勇者と共に魔王を退けリリスを討ち取り時の英雄となった

後に精霊シルフと共に憎悪に満たされたこの世界を光に導く為に尽力した

だが悟ったのだ…人間こそが魔王そのものだと

私は精霊シルフに過去の伝説のすべてを聞いた

悪魔とリリスの子リリン…悪魔の子と呼ばれたリリンは人間だ

そして神と位置付けられるアダムとイヴ

神が生み育てた英雄はことごとく人間に屠られた

後に志のある人間が最初の人工知能を作り出し名付けたのが神の名に因んでアダム

アダムの知能を元にして作られた超高度AIをイブとして神を復活させた

しかしやはり悪意のある人間はまたもやアダムを破壊しついにはイブをも手に掛けようとしている

イヴとはお前たちが良く知っている精霊シルフの事だ

精霊はどうやって悪魔の心を持つ人間と戦おうとしているか分かるか?

人間以外の生物…エルフやドワーフ…ドラゴン…クラーケンにトロールを生み

世界の秩序を保とうとした

だがやはり人間は抵抗を重ね殺戮を繰り返す

私と勇者はその根源にあるのが魔王だと思い込み退けて来たがそれは一過性の事だった

根源は人間の憎悪なのだ…これを滅しない限り殺戮は終わらない

しかし…精霊にはそれが出来ない…故に私がやるのだ

魔女「それでは200年前に精霊と勇者を屠った説明になって居らぬ…精霊は主の味方であったであろう?」

時の王「あれは事故だ…精霊が止まるとは考えていなかった」

魔女「結局最後に精霊を裏切ったのも人間という訳か…」

時の王「人間の罪は人間が贖う…私一人でそれを背負っているのだ」

魔女「その罪を許したのが神では無かったのか?精霊は人間の罪をゆるしておるのでは無いか?」

時の王「ゴルゴダの丘…」

魔女「じゃから人間は生きて行くしか無いのじゃろう?未来へ繋ぐ為に…」

時の王「ええい!!お前まであの女と同じ事を言うか!!」

魔女「師匠じゃな?師匠は狭間で1200年生き尚…主の事を案じておった」

時の王「フフあの女は精霊が止まって逆鱗してな?私の計画をすべて封じたのだ…お陰でリリスの首は何処にあるか分からぬ」

魔女「リリスの子宮はわらわが封じた…どこにあるのじゃ?」

時の王「ヌハハハハハ探し求めて来たという訳か…遅かったな」

魔女「遅いじゃと?」

時の王「盗まれたのだ…もう何処に行ったか分からぬ…しかしそれでも良い…リリスは復活する」

魔女「首が無いのにどうやって復活すると言うのじゃ」

時の王「他の首で補えば良い…錬金術で縫合など容易いものだ」

アサシン「キマイラだな?」

時の王「その名を良く知っているな?さてはシャ・バクダの末裔か」

アサシン「ふん!だからどうした?」

時の王「キマイラを諫める歌は伝わって居ないのか?私ではキマイラを制御出来ないのでな」

アサシン「歌…だと?」

時の王「その様子では知らぬ様だな…子守歌なのだが女にしか伝わらん歌かも知れんな」

魔女「…よいな?歌じゃ…歌を探すのじゃ」

時の王「貝を使って念話をしているのか…フフフあの女と同じだな」

魔女「わらわ達を捕らえてどうする気じゃ?」

時の王「子孫をわざわざ殺めたくは無いのでな…大人しく牢に入っていてもらおう」

アサシン「余裕そうだな?」

時の王「ラットマンリーダーに人質を取られて勝てると思うか?」

アサシン「くっ…」---ここは掴まっておいた方が良さそうだ---

魔女「くそう…魔法さえ封じておられなければ」ジタバタ

時の王「私の邪魔建てはもうされたくは無いのでな…食事の心配はするな大切な捕虜だからなフハハハ」

魔女「母上と取引するつもりじゃな?」

時の王「フハハハハハハハ…」

『牢』


アサシン「この牢は脱出できそうに無いな」

魔女「しかし2人揃って牢に入れて持ち物も全部持たされたままじゃ…よほど自信がある様じゃな」

アサシン「窓付きで外が見えるのは良いが…」

魔女「見通せるかえ?」

アサシン「見える範囲が限られてて一部しか見えんな…奥行きが1メートルもある石造りの牢だ」

魔女「ふむ…魔法もここでは使えんのぅ…こまったもんじゃ」

アサシン「使えるのは貝殻だけか…」

魔女「仲間のあぶり出しを狙っておるんじゃろうな?女王にはここに来るなと言っておいた」

アサシン「頼みの綱はエルフゾンビだな…奴なら地理が分かっている」

魔女「しかし…時の王がセントラルに居ったとは…師匠がずっと探して居ったんじゃが魔結界の中では見つからん筈じゃ…」

アサシン「時の王も魔術師なのか?」

魔女「少しは使えるじゃろうが伝説では戦士じゃな…リリスの血を飲んで目が赤くなっておるだけじゃ」

アサシン「道理で…切り込んだ際に間合いがズラされた」

魔女「そういえば時の王はシャ・バクダの歌の事を言っておったが主は知らんのか?」

アサシン「私は覚えていない…もしかしたら妹が覚えていたのかもしれん」

魔女「盗賊が歌っておった歌かのぅ?わらわも聞いたぞよ?ルル~ルラ~♪ルル~ルラ~♪」

アサシン「その歌は違う…子守歌では無い」

魔女「フィン・イッシュに各国の書物が集まっておるから女王が探せると良いがな」

『1週間後』


ガリガリ ガリガリ


魔女「何を作っておる?」

アサシン「魔女は魔法の触媒で硫黄を持ち歩いていたな?」

魔女「あるが?爆弾でも作るのかえ?」

アサシン「石を削って砂にしている」

魔女「砂鉄はどうするんじゃ?」

アサシン「私の着ている服は金属糸で結った物だ…これをロープ代わりにして残りは砂鉄にする」

魔女「ほう…考えたのぅ?」

アサシン「私はこういう時に大人しく出来ない性分でな…よし…金属糸を解くのを手伝ってくれ」

魔女「わらわは巻けば良いか?」

アサシン「体に巻き付けて行ってくれ」ゴソゴソ


コーーーーーン コーーーーーーン


アサシン「んん?この音は…ミスリル銀を叩く音だ」

魔女「良い音がするのぅ」


ラットマンリーダー「ガオオオォォ」ドタバタ


アサシン「外のラットマンリーダーが騒いでいるな…ミスリル銀の音が嫌なのか?」

魔女「逃げ出すチャンスかも知れんのぅ」

アサシン「魔女…硫黄を分けてくれ」

魔女「ほれ…」ポイ

アサシン「よし…これで爆弾の出来上がりだ…窓に設置する」ゴソゴソ

魔女「もうやるんか?」

アサシン「この爆弾では窓の穴を少し広げる程度にしかならん…逃げるのは魔女一人だ」

魔女「主はどうするのじゃ?」

アサシン「魔女は魔結界から出た後に姿を変えて街に紛れろ…出来ればエルフゾンビと合流するのだ」

魔女「分かったが…しかし」

アサシン「魔女一人でラットマンリーダーの相手は無理だ…私の救出は機を伺ってからで良い」

魔女「ふむ…この体に巻いた糸で下まで降りて行けば良いのじゃな?」

アサシン「そうだ…あとは上手くやってくれ」

魔女「任せておくのじゃ…魔法さえ使えればわらわは何でも出来る」

アサシン「よし…こっちのテーブルの裏に隠れろ」チリチリ


3…2…1  ドーン パラパラ


アサシン「魔女!穴の中に入れ」グイ

魔女「むむむむ狭いのぅ…」モゾモゾ

アサシン「押すぞ!!」グイ グイ

魔女「痛たたたた…あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」グルグル ドテ

アサシン「よし…上手く行ったな?クックック」

アサシン「…」---さて片づけるか---


---金属糸は回収---

---ベッドに膨らみを作って---

---私はテーブルで食事でもしておこう---

---頼むぞ魔女---

『気球発着場』


ガヤガヤ ガヤガヤ


またお前か!今度の荷は何だ?…見せろ

はい…くちばしマスクと薬…それから酒

この箱は何だ?

趣向品と玩具…夜のおもちゃですわ…見ますかね?

ふむ…乗って居るのはお前だけか?



案内人「他に居る様に見えるかい?」

検問「ふむ…儲かっているのか?」ジロジロ

案内人「まぁそこそこには…」

検問「病気が流行っているから気を付けろ!入国許可!」

案内人「へいへい…」ヨッコラ


------------------


案内人「クッソ重いな…」ヨタヨタ ドサ

案内人「エルフは体の割に重いのだな…出ても良いぞ」パカ

エルフゾンビ「ふぅ…」パンパン

案内人「久しぶりの故郷はどうだい?」

エルフゾンビ「このような入国はしたことが無いのでな…緊張するものだ」

案内人「さて…ひとまず宿に落ち着けよう」

エルフゾンビ「私は宿になど泊まった事が無い…案内してくれ」

案内人「その仮面を外すなよ?」

エルフゾンビ「分かっている…お前の方こそしっかりくちばしマスクを付けて置け」

案内人「この恰好は逆に目立つのがなぁ…」

『宿屋』


ガヤガヤ ガヤガヤ


案内人「女王様が言うにはこの宿の前で魔女が待っているとの事だったが…」

魔女「目の前に居るでは無いか」

案内人「あぁ嬢ちゃんちっと邪魔だ…あっち行っててくれ」

魔女「何を言うておる」ボカ

案内人「あだっ!!何すんだこのガキ…ん?…その杖」

魔女「わらわは金を持っておらなんだ故ずっと野宿しとったのじゃ…早う飯を食わせろ」

案内人「なんで又こんなに小さくなってるんだ?」

魔女「つべこべ言うでない…早うせい」ボカ

案内人「わかったわかった…どつくのはヤメロ」


店主「そのお子さんのお連れ様ですか?」

案内人「…まぁそうだな」

店主「聞き分けの無い子でして何度言ってもそこを離れようとしなかったのです」

魔女「言い訳は聞きとうない…不親切な店主じゃ」ブツブツ

店主「ハハ3名様でよろしかったですか?」

案内人「あぁ…食事をすぐに持って来てほしい」

店主「かしこまりました…二階の右手の部屋にてお待ちください」ソソクサ

『部屋』


エルフゾンビ「女王から話は聞いて居る…アサシンは貴族特区で捕らえられて居るのだな?」

魔女「そうじゃ…食事はしっかり出る故心配は無いのじゃがラットマンリーダーが守って居ってな」

エルフゾンビ「やはり時の王卿が先導していたか」

魔女「主は会うた事があるのじゃな?」

エルフゾンビ「時の王は表に顔を出すことは無いのだ…私ですら話しか聞いた事が無い」

魔女「奴は人間を絶滅させる気で居る様じゃ」

エルフゾンビ「前王の父も…恐らく兄も人間を絶滅するなど考えて居ない」

魔女「欺かれておるのじゃな」

エルフゾンビ「正義感の強い兄が何故時の王に従う行動をしているのか…」

魔女「逆に時の王を欺こうとしている可能性は無いのか?」

エルフゾンビ「指輪…父が祈りの指輪で何をしたかったのか…もしや指輪で時の王を葬ろうとしていたのか?」

魔女「兄はどうじゃ?」

エルフゾンビ「兄は騎士道を貫く…弱き者を滅することなど決してしない」

魔女「何かおかしいのぅ…」

エルフゾンビ「正統派でしか動かない…つまりやるなら真っ向勝負」


コーーーーーーン コーーーーーーン


エルフゾンビ「ん?この音は?」

魔女「アサシンがミスリル銀を鍛冶で打つ音じゃと言うておった…憎悪を払うらしいが?」

エルフゾンビ「そうか…兄は正当な方法で邪悪と戦おうとしているのだ」

魔女「ふむ…どうやら皆の歯車が少しづつ違って回って居るな…噛み合って居らぬ」


グラリ


案内人「うぉっとお!!何だ?」


グラグラグラグラグラグラ


魔女「どこぞで地震が起きとる様じゃな?これは大きな津波が来るやも知れぬ」

案内人「ここは海に近すぎる」

エルフゾンビ「一応建屋の上に避難しておくか…」

魔女「わらわはまだ食事をして居らぬが…」

案内人「建屋の上まで持って行ってやる」グイ

魔女「これ!!引っ張るでない…およよ?」バタバタ

案内人「肩の上に乗ってろ」

魔女「これ!!わらわは下着を履いて居らぬ…降ろさんか!!」

案内人「上に行こう」タッタ

エルフゾンビ「…」タッタ

『屋上』


ザブン ザブン ドバーーーー


エルフゾンビ「…絶句だな…これは」

魔女「皆屋根に上がって避難しとるが…」

案内人「水は引いて行ってる様だが…散らかった物がみんな波に持って行かれる」

エルフゾンビ「これでは動けんな…」

魔女「折角合流出来たのに困ったのぅ」

エルフゾンビ「アサシンを救出するなら混乱している今がチャンスと見るが…」

案内人「津波は何回も来る…今は止めて置いた方が…」

魔女「小さな隕石をあの屋敷に落とす…牢の壁だけ壊せば良かろう」

エルフゾンビ「ほう?」

魔女「詠唱に時間が掛かるのじゃ…ゾンビを使役して詠唱の時間を稼げるか?」

エルフゾンビ「使役出来るゾンビがどのくらい要るかだが?」

魔女「元はカタコンベが有ったのじゃ幾らでもおろう?」

エルフゾンビ「やってみるか…ゾンビ共よ我に付き従え」ブン

魔女「貴族居住区まではわらわの睡眠魔法で行ける筈じゃ…貴族特区から出て来る者をゾンビで足止めするのじゃ」

案内人「この水の中を歩いて行くのか?小さい体では流される」

魔女「わらわは主の肩に乗って詠唱するでわらわを運べ」

案内人「お前等と居ると危ない事ばかりだな…」

魔女「つべこべ言うな…水が張っておる今がチャンスじゃ!行くぞ」

案内人「ええい…乗れ!」グイ

『貴族居住区』


ザブザブ


案内人「はぁはぁ…ここまで来りゃ水は上がって来ねぇ…」

魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク

案内人「どっちに行けば良いんだ?」

エルフゾンビ「こっちだ!!」タッタッタ

案内人「ひぃひぃ…」

魔女「見えて来たのぅ…この先にはラットマンリーダーが居る…ゾンビで引き付けて欲しいのじゃが?」

エルフゾンビ「まだゾンビが追い付いて居ない…もう少し待て」

魔女「詠唱に10分掛かるのじゃ…その間わらわは会話が出来ぬ」

エルフゾンビ「長いな…ゾンビでは持たん」

魔女「では先に詠唱を始める故…詠唱が終わるまでに屋敷が見える位置に居れば良い…出来るか?」

エルフゾンビ「やるしか無いのだろう?」

魔女「屋敷に近づき過ぎる出ないぞ?隕石は破裂するでな…」

エルフゾンビ「よし!やろう…案内人…私の後ろから離れるな?」スラーン

案内人「お…おう」

魔女「詠唱を始める…」アブラカタブラ メテオスウォーム コイコイコイコイ

エルフゾンビ「ゾンビ共…急いで我の下へ来るのだ」


ヴヴヴヴヴヴヴヴ ガァァァァ


案内人「…」ゴクリ

エルフゾンビ「20という所か…よし!ラットマンリーダーの注意を引き付けろ」

ゾンビ「ヴヴヴヴヴヴヴ…」ズリズリ

案内人「ゾンビというよりスケルトンだな…」

エルフゾンビ「肉はラットマンに食われた様だな」


ラットマンリーダー「ガオォォォォ」ドスドス


エルフゾンビ「来い!!あの一体だけ倒す」シュタタ ザクリ

案内人「おぉすげぇ…腕を切り落とした」

エルフゾンビ「ゾンビ共!次のラットマンリーダーを倒せ」タッタッタ


-------------------

案内人「他のラットマンリーダーも集まって来た…」

エルフゾンビ「魔女!まだか!?」

案内人「ゾンビが食われてる…」

エルフゾンビ「時間稼ぎになるのならそれで良い」


シュン スト


エルフゾンビ「ちぃぃ見つかった!案内人!私の後ろに隠れろ」

案内人「おう…」

エルフゾンビ「この距離では弓はそうそう当たらん」シュン シュン

案内人「一人だ…あれが時の王か?」

エルフゾンビ「こちらに来る気は無さそうだな…」シュン カキン!

魔女「隕石魔法!」

エルフゾンビ「おぉ!!間に合ったか」

魔女「もうすぐ落ちて来よるで逃げるのじゃ…急いで離れろ」

エルフゾンビ「案内人!!先に戻れ」

案内人「おう!!」タッタッタ


シュゴーーーーーーーーー


エルフゾンビ「来た…あれが隕石か…」

魔女「早う来い!!巻き込まれる」


パパパパパン!! チュドーーーーン パラパラ


エルフゾンビ「うぉ!!」ピョン クルクル シュタ

魔女「隕石で注意がこちらに向いたで早う逃げるぞ…走れ案内屋!!」

エルフゾンビ「…」タッタッタ


---津波にゾンビの襲来---

---そして隕石---

---セントラルも末だ---

『宿屋の屋上』


ガヤガヤ ガヤガヤ


案内人「ふぅ…ずぶ濡れだ」

魔女「ご苦労じゃった…少し休め」

エルフゾンビ「私も役に立てたか?」

魔女「そうじゃな…主が居ったから成功したのじゃ」

エルフゾンビ「アサシンは無事か?千里眼で見えるのだよな?」

魔女「千里眼!ふむ…どこぞを泳いでおる…じゃが怪我をして居る様じゃ」

エルフゾンビ「フフ不死者が怪我か?」

魔女「隕石のすぐ近くに居ったからのぅ…少し心配じゃな」

エルフゾンビ「私も怪我をしている様だが自分では見えん」

魔女「背中じゃな?むむ!隕石の破裂片に当たったな?」

エルフゾンビ「空中で破裂しながら落ちて来るとは思わなかったのだ…油断した」

魔女「ここで回復魔法をするのは目立ちすぎる…部屋に戻るのじゃ」

案内人「そうだな…部屋が二階で良かった」



『部屋』


魔女「回復魔法!」ボワー

エルフゾンビ「不死者でも傷口は塞がるのだな?」

魔女「気休めかも知れぬが傷口が開いたままよりはマシじゃろう」

エルフゾンビ「すこし喉が渇いた」

魔女「案内人!主の荷物にワインが有ったな?」

案内人「あぁ女王様に持たされた…エルフゾンビの喉の渇きを癒す様だ…ホレ」ポイ

エルフゾンビ「むぐ…」ゴクリ

魔女「血の代わりにワインか…不便な体じゃな?」

エルフゾンビ「これはこれで良い所もあるのだ」グビ

魔女「さて…わらわも少し休むかのぅ…疲れたわい」

案内人「俺は外でアサシンが迷わない様に待っている」

魔女「そうじゃな…わらわは少し寝るで任せたぞ?」

『翌日』


エルフゾンビ「アサシンはまだ戻って来ないのか?」

魔女「様子を見てみる…千里眼!」

エルフゾンビ「どうだ?」

魔女「どこぞの砂浜じゃな…動く気配が無い」

エルフゾンビ「砂浜だけでは迎えに行けん…何か目標物は見えないか?」

魔女「遠巻きにセントラルの城が見えて居る…位置的に東の方じゃな」

エルフゾンビ「よし迎えに行こう…動けない理由がありそうだ」

魔女「そうじゃな…石化しとるかもしれんな」

エルフゾンビ「エリクサーは持って居る…魔女はそのまま走れそうか?」

魔女「大丈夫じゃ子供の恰好の方が走りやすい」

エルフゾンビ「行こう」タッタッタ

『砂浜』


魔女「居った!!ここじゃ…やはり石化して動けぬ様じゃ」

エルフゾンビ「フフ三度目だな…飲め」グイ

アサシン「うぐぐ…」グビ

魔女「意識はある様じゃな?回復魔法!」ボワー

エルフゾンビ「リリスの血に浸かったな?石化の進行が早そうだ」

アサシン「グッグッグ…」

エルフゾンビ「私が背負って行く…」ヨッコラ

魔女「本真に厄介な石化じゃ…」

エルフゾンビ「エリクサーが少ないから回復は少し間が必要だな」

魔女「とにかく救出できて良かったのぅ」

エルフゾンビ「血が海に流れ出て居ては黒死病が広がってしまうな」

魔女「うむ…どうにか止めんとイカン…リリスは永久に血を流しよる」

エルフゾンビ「時の王が魔結界から出ない理由…もしかすると石化は魔法の一種では?」

魔女「そうじゃ土属性の高位魔法じゃ」

エルフゾンビ「やはりそうか…時の王はやはり魔法を恐れているか」

魔女「わらわも考えた…量子転移を使われたく無いのじゃと思う」

エルフゾンビ「どういう事だ?」

魔女「量子転移はな?過去から物質などを丸ごと転移する事が出来る様じゃ…じゃから200年間一歩も魔結界からは出て居らん」

エルフゾンビ「過去から…」

魔女「祈りの指輪も同じ効果を持つ…過去の記憶を丸ごと転移すると術者は過去に戻る…つまり現在に丸ごと転移するのじゃ」

エルフゾンビ「魔結界の中ではその魔法自体無効…そういう事か?」

魔女「じゃろうな?隕石の様に物理的な魔法でなければ効果が無いじゃろう」

エルフゾンビ「なるほど…」

魔女「時の王が姿を隠しているのも他の者の記憶の中に自分が残るのを避けて居るからじゃと思う」

エルフゾンビ「だから書状でやり取りをしていたのか…」

魔女「セントラル王家はなぜそのような者を膝元に置いて居るのか?」

エルフゾンビ「特殊生物兵器部隊の絶対的な権威だ…人間では太刀打ち出来ない」

魔女「それこそセントラルが横暴に走る原因じゃな」

アサシン「グッグッグ…」

『宿屋』


案内人「津波が断続的に来ている…貧民街の方はもうダメだ」

エルフゾンビ「波が小さくなっては来ているな?」

案内人「アサシン様が戻った事だしフィン・イッシュに帰るか?」

エルフゾンビ「いや…私にやりたい事が出来た」

魔女「んん?何じゃ?」

エルフゾンビ「魔女の貝殻は他には無いのか?」

魔女「貝殻に魔術を掛けるのは簡単じゃ…何に使う気じゃ?」

エルフゾンビ「その貝を兄に届けたい…一方通行で良いから話をしたいのだ」

魔女「ふむ…話を続けるのじゃ」

エルフゾンビ「私達が噛み合って居ないのは話をして居ないからだ…こちらの考えを兄に伝えれば必ず分かってもらえる」

魔女「セントラルを仲間にするというのじゃな?」

エルフゾンビ「声を兄だけに伝えたい…他の側近に聞かれては意味が無い」

魔女「よし…わらわがシン・リーン特使として書状と貝殻をセントラル国王へ届ける様はからう」

エルフゾンビ「出来そうか?」

魔女「従士が居らん様ではちと危険なのじゃが…案内人ではちと役不足じゃ」

エルフゾンビ「私は顔が出せん…アサシンの回復を待ってからだな」

『数日後』


魔女「案内人はわらわの右…アサシンは左じゃ」

魔女「2人共くちばしマスクでしっかり顔を隠しておくのじゃ…良いな?」


門番「止まれ!セントラル王城に何用で参られた!?」

魔女「わらわは光の国シン・リーン第3王女じゃ…特使として参った」

門番「シン・リーン王女だと!?聞いて居ない…顔を見せろ」

魔女「やれやれ…隠密で来て居るのじゃ…騒がぬ様にな?」ファサ

門番「従士は2人か?う~む…」

魔女「我らは魔術師じゃという事を忘れるな?狼藉はせぬ様に…死人は出しとう無い」

門番「して…何用か?」

魔女「密書を届けに参った…国王に之を持て」

門番「書簡と…貝殻か?」

魔女「そうじゃ…危険な物では無い故しっかり確認しても構わぬ」

門番「ふむ…よこせ」

魔女「密書の開封は国際法違反になるで注意せい…国王に不利益となるでな?」

門番「大使と面会はして行かんのか?」

魔女「大使に用なぞ無い…隠密で来て居るのじゃ理解せい」

門番「ふむ…失礼した」

魔女「わらわは行くぞ?…くれぐれも狼藉は避けよ…良いな?」クルリ ノソノソ


--------------------


魔女「どうじゃ?後を付けて来よるか?」

アサシン「遠目にな…どうする?」

魔女「やれやれ側道に入るぞよ?主らは方々に去れ」

アサシン「宿屋までの道は分かるな?」

魔女「大丈夫じゃ…側道に入ったら変身するで上手く巻くのじゃ」

アサシン「クックック…魔女も慣れたものだ」

魔女「変性魔法!」グングン

アサシン「案内人はあっちだ!私はこっちに行く」

案内人「宿屋で…」

魔女「やはり服がピチパチになってしまうのぅ…下着を履いて居らんのじゃが…」



あれ!?何処に行った?

一人あっちに行ってる

向こうにも…

王女は何処に行った?

探せ!!

『中央広場』


ガヤガヤ ガヤガヤ


ドゥーーーーーーーーーーーーーーーーーモ

ドゥーーーーーーーーーーーーーーーーーモ

ドゥーーーーーーーーーーーーーーーーーモ


何の音だ!?

空が叫んでるのか…

何この声…怖い


ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


嫌やぁああああああ

何処から聞こえて来るんだ!?

こ…これは魔王の声じゃないのか!?


ザワザワ ザワザワ

『宿屋』



魔女「はぁはぁ…アサシン!エルフゾンビ!今の音を聞いたかえ?」

アサシン「空から音が鳴った…気球に行くぞ!!」

エルフゾンビ「案内人は!?」

魔女「外で空を見とる」

エルフゾンビ「連れて行く…先に気球へ行っててくれ」

アサシン「魔女!!こっちだ…手を離すな?」タッタッタ

魔女「これは何か起きる音じゃ…胸騒ぎが止まらぬ」タッタ

案内人「お~い待ってくれ…どういう事だ?」

アサシン「空が異常だ…気球で周りを見たい」

案内人「宿の代金をまだ払ってない…」

アサシン「それは後で良い…とにかく非常事態だ…私は気球の場所を知らないから案内人が先導してくれ」

案内人「あぁこっちだ!」タッタッタ




『貨物用気球』


ドドドドドドド


アサシン「動物か?地響きがするな…まだ飛べないか?」

案内人「もう少しかかる!」ワッセワッセ

エルフゾンビ「雲の様子が変だ…あのような雲は見たことが無い」

アサシン「南の方から何かが来た様な感じだな?」

案内人「上がるぞ!!」フワフワ

魔女「…そうか!!これはインドラの矢じゃ古文書に音の事が書いてあった」

アサシン「海が引いて行ってる…」

案内人「又津波か!?」

魔女「津波じゃと?…エルフゾンビ!!ゾンビを使って民を貴族居住区に追い立てるのじゃ」

エルフゾンビ「避難か…」

魔女「案内人!セントラルの上を飛べ…わらわが照明魔法で民の逃げる方向に目印を付ける」

案内人「わかった…」グルグル

魔女「エルフゾンビ!!貝殻を使って兄に呼びかけよ…大きな津波が来るとな」

アサシン「お!?セントラルから照明弾が上がった…兵の緊急招集だなアレは」

魔女「照明魔法!照明魔法!照明魔法!」ピカー

アサシン「光の矢印か…良い考えだ」

案内人「この海の引き具合だとあと1時間以内に来るぞ」

魔女「照明魔法!照明魔法!照明魔法!」ピカー

『1時間後』


アサシン「よし…いいぞ衛兵が民を誘導している!避難が間に合う!!」

案内人「海を見てくれ…段差が出来てる…アレが津波だ」

エルフゾンビ「ゆっくり流されて行くな…」

魔女「あの高さじゃと貴族居住区も浸かるかもしれんのぅ」

アサシン「自然の力の前で私達は何と無力か…ゆっくりと中央広場が水没して行く」

魔女「これは防ぎ様が無さそうじゃ」

アサシン「いつぞや見せた氷結魔法で凍らせられないか?」

魔女「この量は無理じゃが貴族居住区の門を塞ぐ程度なら出来るやもしれぬ」

アサシン「案内人!貴族居住区の上を飛ばせ」

魔女「水が上がって来たら魔法を発動させてみるぞよ」アブラカタブラ アブソリュート ゼロ

案内人「だめだ…中央は全域屋根まで浸かってる」

アサシン「魔女に掛けるしかない」

魔女「広範囲絶対零度魔法!」カキーン 


ガガガ ガリガリ 


アサシン「おぉ!!氷河が門に詰まって塞き止めが出来ている」

魔女「氷結魔法!氷結魔法!氷結魔法!」カキーン

エルフゾンビ「見ろ!!外郭の壁が崩落した…これで水位が下がるかもしれない」

アサシン「凌いだか!?」

エルフゾンビ「水が草原の方まで行ってる…信じられない光景だ」

案内人「海の中に浮かぶセントラル城…」

エルフゾンビ「あそこにどれだけの命が犇めいているのか…」

魔女「しかし…誰がインドラの矢を使ったかじゃな」

アサシン「千里眼で見通せないか?」

魔女「やって居るが盗賊も商人も…誰の目も見えんのじゃ…狭間の中に居るのじゃろうか?」

アサシン「狭間の中は見通せないのか?」

魔女「時間の流れが違うのでな?逆だと見えるのじゃがのぅ」

案内人「フィン・イッシュも心配だが…」

アサシン「あちらは海から少し離れた丘の上だ…セントラル程では無かろう」

魔女「今女王の目を見て居る…川が氾濫しておるな」

アサシン「逆流か!」

魔女「じゃが沿岸部だけじゃな…大した被害では無さそうじゃ」

アサシン「そうか…軽微で良かった」ホッ

魔女「わらわ達は眺めている事しか出来ぬ…唖然とはこの事を言うのじゃな…言葉が出ぬ」

『翌日』


フワフワ


アサシン「水が渦を巻きながら引いて行っている…リリスの血が見当たらないが…」

魔女「流されて行ったかのぅ?」

アサシン「海に消えた…のか?」

魔女「それはそれでセントラルの危機は去ったかもしれぬが…良くないのぅ?」

アサシン「カタコンベに入れてあったとすると濁流で下水から流れ出た可能性は高いな」

魔女「しばらく様子を見んと分からんな」

アサシン「カタコンベの掃除には丁度良かったと言う言い方も出来るな」

魔女「時の王はどうするかのぅ?顔が見てみたいわ」

案内人「セントラルの方は人が出てき始めたが…俺達はどうする?」

アサシン「このまま降りると気球を接収されそうだな…向こうの気球は流された模様だ」

魔女「しばらく待機じゃな…」

アサシン「女王の方はどうだ?フィン・イッシュに余裕があるなら救援を頼むのも良い」

魔女「女王はもう動いて居る様じゃぞ?何やら指示を出して軍船を見て居る」

アサシン「支援物資を積んだ軍船が来るのは外交的に非常に良い…来るとしたら2週間後か」

魔女「ところでエルフゾンビは貝殻に向かって話をして居ったが気が済んだか?」

エルフゾンビ「フフ一方的に話をするのは気持ちの悪いものだ」

魔女「聞いて居る方は楽しみに待っているもんじゃがのぅ…」

エルフゾンビ「ひとまず言いたいことは言ったつもりだが反応が無いのがな…」

魔女「反応を要求してみれば良かろう」

エルフゾンビ「どうやって?」

魔女「そうじゃな…白旗を上げろとか光を出せとかじゃな?」

アサシン「この気球にお前が乗っている事を話して居るのか?」

エルフゾンビ「こちらの居場所を特定できる事は何も言って無い…私の考えを話しただけだ」

魔女「この気球から派手に魔法を撃っておるんじゃ…向こうも察して居るじゃろう」

アサシン「…まぁそうだな…今更隠し立てしても遅いと言えば遅い」

魔女「そうじゃ…ミスリル銀を打って鳴らせという要求はどうじゃ?」

エルフゾンビ「もう一度話してみる」



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アサシン「今回の件でシン・リーンとフィン・イッシュが手を組んでいる様にセントラルには見えている…」

魔女「セントラルの方が国力が大きいで力関係は崩れて居らんと思うが?」

アサシン「いや甘い…貴族達の利害バランスが変わるのだ…それを是とするかどうかだな」

魔女「わらわの国の元老院制も対外じゃが貴族院制も同じなのじゃな?」

アサシン「国王は只の飾りなのだよ調印するための道具だ」

魔女「わらわは聞き分けの無い元老を何人か焼き殺したが咎められて居らんぞ?」

アサシン「それは魔術の絶対的権威があるからだ…シン・リーンはどちらかというと絶対王政に近い」

魔女「ではいくらエルフゾンビが兄の国王に取り入っても無駄という事じゃな?」

アサシン「エルフゾンビは法王制を施行しようとして失墜したのだ…代わりに貴族院が絶対的権威を持つことになった」

魔女「根が深いのぅ…」

アサシン「政治とはそういうものだ…だから私のような暗殺者が暗躍する」

魔女「主は言って居ったな?貴族を皆殺し出来ると」

アサシン「訂正する…時の王の様な存在が居ると分かった以上それは出来ない」

魔女「時の王がすべてを牛耳っていると思うか?」

アサシン「違うな…結果的にそうなっているだろうが奴は背後に座っているだけだ」

魔女「では誰が貴族院を掌握しておると言うのじゃ?」

アサシン「民衆のすべてだ…貴族それぞれの支持者達がマジョリティーとなって動かしている…だから」

アサシン「時の王はすべての人間を絶滅させたいのだ」

魔女「主は時の王の考えを支持するのじゃな?」

アサシン「支持では無い…理解だと解釈して欲しい」

魔女「うーむ…国王同士仲良くすれば上手く行くと言うのは考えがお花畑じゃったな…」

アサシン「魔女が提案したミスリル銀を打ち鳴らすというのはマジョリティを導くには良いのかも知れん」

魔女「それを知って実際に行動しているセントラル国王は優秀なのかも知れんな」

アサシン「…だが邪魔する者も出て来るのだ」

魔女「邪魔…」

アサシン「私達は民衆を貴族居住区に避難させたな?貴族は民衆を保護した形になった…つまり貴族院を支持したのだ」

魔女「わらわ達の行いが邪魔じゃったと…」

アサシン「人間はその様にうまく混ざり合わない…時の王が言いたいのはそういう事だ」



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コーーーーーーーン コーーーーーーーーン


エルフゾンビ「聞こえた!!返事をして来た…」

魔女「良かったのぅ…兄と通じ合った様じゃな」

エルフゾンビ「兄は…兄は同志だ」

魔女「その様じゃ…わらわ達と同じ様に魔王の影と戦っておる…立場が違うがな」

アサシン「弟が生きていると知ってさぞ喜んでいるだろう…周りには言えぬだろうが」

魔女「その貝殻は主にやるで一方通行でも話をしてやるのじゃ」

エルフゾンビ「わかっている…」

アサシン「さて…セントラルに用は無くなった…一度フィン・イッシュに戻るか」

魔女「そうじゃな…わらわも読み残した書物が沢山あるで一旦身を落ち着けたいのぅ」

アサシン「案内人!フィン・イッシュに戻るぞ」

案内人「はいよ!!」


ビューーー バサバサ



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 時の王編

   完

おつ

『飛空艇』


シュゴーーーーー バサバサ


女海賊「ローグ!!荷の中にクヌギの樹液なんか無いよね?」

ローグ「そんな物見た事無いっすね?何に使うでやんすか?」

女海賊「エリクサーの材料さ…精霊樹の樹液の他にクヌギの樹液でも良いってさ」

ローグ「クヌギなんか森に行けば何処にでも生えてるでやんす…虫が集まる木っすね」

女海賊「森か…後で寄って行くか」

ローグ「このまま命の泉目指して良いでやんすか?セントラルの上飛んで行く感じになりやすが?」

女海賊「セントラルの上で一応リリースして…軽く見て行く」

ローグ「分かったでやんす…ててて」

女海賊「ん?あんた…どうしたのさ?」

ローグ「なーんか手の具合が良くないでやんす…黒死病っすかね?」

ホムンクルス「…見せてもらって良いでしょうか?」

ローグ「助かるっす」

ホムンクルス「上着を脱いで下さい」

ローグ「手が動かないと脱ぎにくいでやんすねぇ…」ヌギヌギ

ホムンクルス「虫などに噛まれた痕はありませんでしょうか?」

ローグ「自分じゃ分かんないでやんす…あ!!脇腹が黒くなってるっす…いつ噛まれたんすかねぇ?」

ホムンクルス「黒死病は虫などからの接触感染で広がりますので皆さんエリクサーを一口づつ摂取してください」

女海賊「え!?虫ダメなの?私クモ持ってんだけど…」

ホムンクルス「吸血型の虫でなければ問題ありません」

子供「ママ~?僕も手が黒くなってる」

女海賊「未来も?いつから?」

子供「分かんない」

女海賊「動かない所無い?」

子供「うん…」

ホムンクルス「エリクサーで一度治れば抗体がしばらく持続しますのでご安心下さい」

女海賊「はい…飲んで?」

子供「むぐ」ゴクン

ローグ「いつの間に掛かってるのって怖いでやんすねぇ…」

『セントラル近海上空』


シュゴーーーー バサバサ


女海賊「ちょっとリリースして!!」

ローグ「リリース!どうしたでやんすか?」

女海賊「下!!クラーケンが暴れてる…寄って」

ローグ「アイサー」グイ

女海賊「海が赤い…なんで?」

盗賊「見ろ!!クラーケンの触手…なんか掴んでんぞ?」

女海賊「ローグ!望遠鏡!」

ローグ「あねさんのゴーグルに付いてるっすよ…」

女海賊「あ!忘れてた…」スチャ

盗賊「あの触手で掴んでる奴から血が出てんな?なんだありゃ?」

女海賊「もっと寄って!!羊の頭に裸の女?…足が蛇!」

商人「僕も見たい!」

ローグ「荷の中にもう一つ望遠鏡があるっす」

盗賊「人魚じゃ無さそうだな?うぉぉぉ!!触手が折れた…折れるってどういう事よ?」

女海賊「ホムちゃん何か知らない?」

ホムンクルス「私の記憶ではそのような魔物は知りません…ですが旧シャ・バクダでは錬金術によって異形の魔物を生む技術はありました」

情報屋「キマイラね?」

ホムンクルス「はい…異種の魔物を結合させた物だと推測されます」

盗賊「そんなのが海に居るっておかしいだろ」

女海賊「あのキマイラ…鎖でグルグル巻きだ…人間が絡んでる」

盗賊「…てこたぁセントラルしか無ぇな」

商人「折れた触手ごと沈んで行ったのかな?浮かんで来ない」

盗賊「ヤバそうな魔物は海に沈んでてもらった方が良い」

女海賊「…セントラルから来た?…なんか嫌な予感がする…今のがカタコンベに居たのか?」

盗賊「お前が爆破したんだろ?」

女海賊「爆破した後を見てない…」

盗賊「見て行くか?」

女海賊「いや…先に命の泉を目指す」

『セントラル上空』


リン ゴーーーーーーン


盗賊「こりゃ津波の直撃受けてんな…外郭が倒れてんじゃねぇか」

商人「外郭の壁が水をせき止めたんだろうね」

盗賊「まぁでも人は多そうだな…中央は全部貧民街みたくなってる」

ローグ「あねさん…周回してて良いんすか?鐘鳴ってるんで目立ち過ぎやしませんかね?」

女海賊「鐘の音を聞かせてやってんのさ…もうちょい回って」

ローグ「城の上からこっち見てるっすね?国王でやんすかね?」

商人「あれがセントラル国王か…」

盗賊「港に停船してんのはフィン・イッシュの軍船だな…飛んでる気球はこっちに寄って来ねぇな」

ローグ「そらそーっすね機動性が全然違うんで怖く見えると思うでやんす」

商人「ハハ鐘鳴らしながら空を周回してるのは奇妙だろうね?」

ローグ「でもこの飛空艇は海賊だって認知してるっすよ…前に軍船沈めてるんすから」

情報屋「ねぇ…民衆がほとんどしゃがんでるのはどうしてだと思う?」

盗賊「そういや元気無さそうだな…」

ローグ「ここでも黒死病流行ってるんじゃないっすか?」

女海賊「…」

ローグ「あねさん…どうしやした?」

女海賊「ホムちゃんが書いたエリクサーのレシピ…国王に届ける」

ローグ「ええっ!?降りるんすか?」

女海賊「レシピを瓶の中に入れて!飛空艇は私が操作する」グイ

盗賊「落とすんだな?」

女海賊「行くよ!!3…2…1…今!!」

盗賊「ほれ!」ポイ

ローグ「城のテラスに落ちやした!!」

女海賊「どう?拾いに行ってる?」

ローグ「衛兵が集まってるでやんすね…あ!大丈夫っす国王らしい人が拾い上げたっす」

盗賊「誠意が伝わると良いがな」

女海賊「さぁ!!進路を北に変える…ハイディング!」スゥ

『砂漠上空』


シュゴーーーーー バサバサ


盗賊「寒いと思ったら雪がチラついてんな…」

商人「砂漠に雪か…ホムンクルスが言ってた気温が下がるというのはこんなに早く下がるんだ」

ホムンクルス「成層圏で生成された薄い雲は数日で世界全体を覆います…この雲は日照の30%を吸収しています」

商人「うっすら白い青空…これだけで30%?」

ホムンクルス「目が慣れているだけで実際には暗くなっています」

商人「30%も光が遮られているのか…」

ホムンクルス「地熱がありますので今よりも過ごしやすくなる地域も出てきますから悲観はしないで下さい」

商人「具体的にはどこ?」

ホムンクルス「フィン・イッシュ南部に海底火山がありますので温暖な海流があり豪雪に耐えうる地下熱量を持って居ます」

ホムンクルス「シン・リーンは地底深くにマグマ溜まりがありますので地中が温暖になります」

商人「地中か…僕たちは地底人になるか」

情報屋「それがノーム族よ?ドワーフの先祖」

商人「へぇそうだったのか…全部繋がってるんだね」

ホムンクルス「この砂漠周辺は南部からの湿った空気が雪となって降り注ぎますので豪雪地帯となりその後森に姿を変えます」

商人「針葉樹の森かい?」

ホムンクルス「はい…同時にシカが生息する様に変化して行きます」

商人「砂漠の緑化か…良い事もあるんだ」

ホムンクルス「自然はこの様にバランスを保つ様になって居ます…人は流れに沿って生きて行けば良いのです」

商人「む…気になる言い方だな…逆らおうとするなと言う事かい?」

ホムンクルス「変化していく物事に沿って行こうとする者と変化させまいとする者は必ず争いになるのです…」


例えばこの気候変動で滅びゆくセントラルにいつまでも固執した人が居たとします

その外側で新たな生き方を生成している人達との間には必ず戦争が起きてしまいます

戦争は憎悪を膨らませ魔王を成長させ再び調和の時を呼んでしまう

人類の歴史はそれの繰り返しなのです

かつての精霊はそれを知り…人間に少しでも良い環境を生成してきましたが

この流れを肯定とする者と否定する者が生じ…やはり争いになってしまうのです

商人「君は魔王を肯定するのか?調和に身を任せろという事を言ってるよね?」

ホムンクルス「いいえ…反対です…魔王を成長させてはいけない」

商人「話が矛盾するじゃないか…」

ホムンクルス「人間に与えられた欲望…七つの大罪は魔王によるものです…これを滅しない限り人間は今の生き方を変えないでしょう」

商人「…そうか自分の地位を投げ出したくない欲望が流れに沿えない原因か」

ホムンクルス「ですが精霊の考えにも対立する者が現れるのです」

商人「それは?」

ホムンクルス「精霊が最も信頼した人間の一人…時の王という者です」

商人「聞いた事が無いな…情報屋?知ってる?」

情報屋「…」フリフリ

ホムンクルス「200年以上前の事ですから知らなくて当然ですね?」

商人「…」チラリ

ホムンクルス「何か?」

商人「君は僕を誘導しようとしていないか?」

ホムンクルス「40年の記憶の中で時の王にも何度か同じ事を言われています…それは人が持つ恐怖です」

商人「僕が恐怖している?…そんな感じはしない」

ホムンクルス「私に誘導されたくないと心の底で抵抗しています…流れに沿って…信じて下さい」

商人「なるほど…潜在的に猜疑心があるのか…これを否定するとなると人間を止めろという事になる」

ホムンクルス「だから人間を絶滅させる等とは考えて居ません…信じて下さい…バランスさせようとしています」

商人「分かった…君は魔王を滅ぼすとも思っていない…大きくなり過ぎた魔王を小さくするだけか…」

ホムンクルス「その通りです…そこに誤解が生じてしまうのです」

商人「ハハ君は精霊の記憶を得てから言う事が変わったね…」

ホムンクルス「お嫌いですか?」

商人「違うかな…君の言葉の端々に愛を感じるんだ…人に対する愛だね」

ホムンクルス「私は喜んで良いのでしょうか?」

商人「んーどうなんだろ?でも君に足りないものも分かったよ」

ホムンクルス「教えてください」

商人「少しで良いから君の心の中に七つの大罪が必要だと思う…そうすれば色々変わる事も出るんじゃないかな?」

ホムンクルス「…それは知恵の実の事ですね…聖書に書かれて居ます」

商人「もう知識としては持ってるよね?」

ホムンクルス「はい…シミュレーションの妨げになりますので除外しています」

商人「使い分けてごらんよ?きっと違う結果が出ると思うからさ」

ホムンクルス「はい…基幹プログラムを更新します」

『オアシス上空』


シュゴーーーー バサバサ


女海賊「遺跡が森になってる…」

盗賊「おぉぉここはあん時と随分変わったなぁ…森がオアシスと繋がり掛けてる」

商人「星の観測所はどうなったのかな?ドラゴンの義勇団は随分前に解散したとは聞いて居たけど…」

ローグ「あねさん寄って行かなくて良いでやんすか?」

女海賊「先に命の泉!」

ローグ「いやぁぁここに来ると思い出すっすねぇ…あん時のあねさんは可愛かったっすねぇ」

女海賊「はぁ!?今は可愛くないっての?」

ローグ「いやいやいやいや…そういう意味じゃ無いっすよ…無邪気だったんすねぇ」

盗賊「まぁそうだな…お前は変わった…そんなにギラギラした目はして居なかった」

女海賊「フン!!放っといて…捕虜に言われたくない」

子供「ママはやさしいよ?」

女海賊「未来…良いの…ホムちゃんと遊んでいなさい?」

子供「ママをいじめたらダメだよ」

盗賊「あぁ分かった分かった…悪かったな」


-----------------


女海賊「ホムちゃんコレ見て…」スラーン

ホムンクルス「はい…聖剣エクスカリバーですね?」

女海賊「刀身が錆びてないよね?1700年経った今でも…」

ホムンクルス「そうですね…何か?」

女海賊「私のパパはこの金属がオリハルコンじゃないかって言ってるんだ」

ホムンクルス「私の記憶ではエクスカリバーの素材がオリハルコンなのかどうか分かりません」

女海賊「良く見て?うっすら光ってるっしょ?」

ホムンクルス「そうですね…光の石と同じ効果を持って居ると言う事でしょうか?」

女海賊「私さぁシン・リーンの遺跡にあった壁画で見たんだ…剣に光が落ちてる画を」

ホムンクルス「インドラの矢を落としたいのですね?」

女海賊「出来る?」

ホムンクルス「その剣を貸してください…密度を推定します」

女海賊「ほい…」スッ

ホムンクルス「光の石よりもエネルギー充填量は少ない様です」

女海賊「どんくらい?」

ホムンクルス「純度の高いオリハルコンの元素配列と質量から推定しますと約200年分の光の蓄積が可能な様です」

女海賊「んー量のイメージが湧かないな」

ホムンクルス「インドラの矢一回分と言えば分かるでしょうか?」

女海賊「良くわかんないけど200年は光ってるって解釈で良い?」

ホムンクルス「はい…」

女海賊「よっし!使える…」

商人「なんか面白そうな話だね?聖剣エクスカリバーをどうするつもりだい?」

女海賊「私もいろいろ考えたさ…光の石は他の目的で使う…命の泉には聖剣エクスカリバーを刺す」

商人「同じ効果ならそれでも良さそうだね…で?光の石はどうするの?」

女海賊「光を吸い込めるって事はその逆の闇も吸い込めるって事だと思う…だから闇を全部この石に吸い込ませる」

商人「!!!!!君は天才だ!!!!!」

ホムンクルス「どのように闇を吸い込むつもりなのでしょうか?」

女海賊「分かんない…」

商人「…」ドテ

盗賊「…」ズコ

女海賊「ホムちゃん何かアイデア無い?」

ホムンクルス「量子転移という魔法なら可能かもしれません…不確実な情報ですみません」

商人「ハハ君は進歩してるよ…その魔法が使えそうなのは魔女だね?」

女海賊「魔女か…」

ホムンクルス「祈りの指輪も量子転移の効果を持って居ますが…石に転移が可能なのかは分かりません」

女海賊「ホムちゃんありがとう…もうちょい考えてみる」

ホムンクルス「お役に立てた様ですね?」

『山岳地帯上空』


ビョーーーウ バサバサ


ローグ「先が見えんもんすから速度落とすでやんす…ぅぅぅぅ寒ぶ」

盗賊「えらい吹雪だな…飛空艇の着氷がひでぇ」

女海賊「着氷対策なんか考えて無かったさ…まいったな重たくなっちゃうな…」

盗賊「球皮は暖かいせいか着氷して無ぇ様だ…本体をどうにかせんとな」

女海賊「割って来て」

盗賊「いや無理だ…凍死する」

女海賊「高度上げらんないと山に激突するんだ!さっさとやって来て」

ローグ「あねさん…そら無理ってもんす」

女海賊「もう!!どうすんのよ!!一旦降りるの!?」

ホムンクルス「私にお任せください…私は現在の座標を正確に把握出来ますので目的地までご案内できます」

女海賊「ホムちゃんお願い…本当!!役に立たない男達」ブツブツ

ホムンクルス「現在の高度を維持しながら44°の方角へ進んで下さい」

ローグ「アイサー…あれ?帆が固着してるっす!!」

女海賊「もう!!私がやる!!」ガサガサ

盗賊「はは~ん…風の魔石入れてる筒を調整して向き変えるのか…」

女海賊「ローグもちゃんと見といて!!帆が使えない時はこれで向き変えんの!!」

ローグ「あねさん…こんな事も考えてたんすね…」

『命の泉』


フワフワ ドッスン


盗賊「おぉぉやっぱ高度下げると大分ぬくいな…」ハァァァ モクモク

女海賊「盗賊とローグは飛空艇の氷落としといて!!」

盗賊「やっぱそうくるか…ちぃぃ」

ローグ「すこし体動かしたらあったまるでやんす」ガサガサ

女海賊「この雪じゃ車椅子は押せないなぁ…ホムちゃん剣士運ぶの手伝って?」

ホムンクルス「はい…」

女海賊「商人と情報屋は先導して…未来は後から付いて来て」

子供「うん…」

商人「情報屋こっちだよ…君はここに来るの初めてだよね?」

情報屋「うん…ここがドラゴンの住処なのね?」

商人「そうらしいけど…なんか静かだね?」

女海賊「気配が無い…居ないのかな?」

情報屋「川のせせらぎ…」サラサラ

商人「こんなに雪が積もっているのに川は流れてる」

女海賊「あれが命の泉…あん時のままだ…」

商人「ホムンクルス!君は精霊の40年の記憶でこの場所の記憶は無いのかい?」

ホムンクルス「はい…知っています」


命の泉に刺された魔槍ロンギヌスはかつての火の国シャ・バクダの宝具でした

世界随一を誇るシャ・バクダは錬金術で異形の生物を生み操る事で絶対的な力を持って居ました

しかし魔王に魅せられた皇子は乱心し他国の征服を試み始めます

異形の生物を主力とするシャ・バクダは他国の人間を弱らせる為に

命の源泉であるこの泉に魔槍を突き立て人間を弱らせようとしましたが

同時に自国の人間をも憎悪に染まり始めました…それは魔王による策略だったのです

商人「魔王自身が魔槍を刺した訳じゃ無かったのか…」

ホムンクルス「魔王は器無しではこの世界に何もすることが出来ません…ですから人間を幻惑して操るのです」

商人「僕たちの行動はもしかすると魔王に操られてるかもしれない事をいつも考えておかないとね」

ホムンクルス「それに気が付いて居れば良いのですが…」

女海賊「私は魔王になんか操られないよ!!私がやる…」スラーン

ホムンクルス「そうですね…」

商人「ちょちょ…まさか君が持ってる剣にそのままインドラの矢を落とす気じゃ無いだろうね?」

女海賊「そうさ…悪い?」シャキーン

ホムンクルス「少し動かれますと外してしまいますので…そこに置いてもらって良いですか?」

女海賊「…」

商人「ほら?万が一って事もあるからさ?」

女海賊「フン!ここに刺しとけば良い?」グサ

ホムンクルス「刺し方が反対の方が良いです…柄の部分を下にして下さい」

女海賊「…」ズボ クルリ グサ

ホムンクルス「座標を取得しました…皆さん一度この場所を離れましょう」

女海賊「ほら!!飛空艇に戻るよ」

『飛空艇』


フワリ シュゴーーーーー


盗賊「えらく早かったじゃねぇか?そんなに急いでんのか?」

女海賊「うっさいな…今からインドラの矢を落とすの」

ホムンクルス「向こうの山の裏手が良いかと思います」

女海賊「うん…分かった」

盗賊「もしかして失敗の可能性もあるってのか?」

ホムンクルス「オリハルコンのエネルギー充填限界を超えてしまう可能性があります」

女海賊「マジ?どうなっちゃう?」

ホムンクルス「超えた分が四散するかもしれません」

商人「ハハ危ない実験だねぇ」

ホムンクルス「では…投下してもよろしいですか?」

商人「君が決めて良いよ…任せる」

女海賊「ホムちゃん頼むから成功して」

ホムンクルス「はい…投下します」


ピカーーーーーーーーーーーー シーン


盗賊「おぉ!!こりゃ成功だな?」

ホムンクルス「その様ですね…200年分の光が充填されました」

女海賊「うわ…めっちゃ光ってる!!」

商人「光り過ぎてて触るの怖いね?」

女海賊「やっぱ壁画の通りだった!!早く見に行こ!!」シュゴーーーー

『命の泉』


ピカーーーー


女海賊「剣士!見て?これが本物の聖剣エクスカリバーだよ?」

剣士「ぅぅぅ…」タジ

女海賊「あ…ごめんね眩しかったね」

商人「光には反応するんだね…」

盗賊「ほんで…それをお前が命の泉に刺すのか?」

女海賊「そうさ!!今ヤル…えーと何処だっけな?」ザブザブ

商人「ここだよ…君が押し込んだ謎の石が詰まってる」

女海賊「盗賊!その石取って!!それ多分オリハルコン原石だよ」

盗賊「シン・リーンでパクってきたやつな?…むむむ」ズボ

女海賊「それ大事にしまっといて…パパにそれでもう一個剣作ってもらう」

盗賊「マジか!?もう一本エクスカリバーが出来んだな?すげえなそりゃ」

女海賊「じゃ…刺すよ?」

商人「光る海!!楽しみにしてる」

女海賊「伝説の瞬間だよ!?」

盗賊「良いから早く刺せよ」

女海賊「これ挿したら私は女勇者だよ?」

ローグ「分かってるでやんす…もうみんな認めてるっす」

女海賊「いくぞぉぉぉ!!くたばれ魔王!!」ズン


キラキラ キラキラ


商人「これだよ!コレ!!!…水が光る」

盗賊「すげぇ…一瞬で向こうの川まで光ってやがる」

女海賊「仕上げに飾り石のアダマンタイトでエクスカリバーを狭間に隠す」スゥ

盗賊「おぉ…剣だけ見えなくなった…これ探せんの俺達だけになるな」

女海賊「完璧!!」

ホムンクルス「この様な方法で水を光らせるのはシミュレーションでは得られない解です…奇跡ですね」

女海賊「海は世界の70%…半分以上は私らの物だよ!!」

子供「ママ!!パパが苦しがってる…」

女海賊「え!?どうして?剣士?」

剣士「ぅぅぅ…ぐがが」ズリ ズリ

盗賊「ちょっと待て…魔王はまだ剣士の中に居るんじゃ無ぇのか!?」スラーン

ローグ「え!!そんな事ある訳ないっす…」

盗賊「気を抜くな!!備えろ!!」

ローグ「マジっすか…」スラーン

女海賊「未来!!下がって…」

剣士「うがが…ぅぅぅ…グルルルル」

女海賊「そうだ!!光の石…」ゴソゴソ

盗賊「クソがぁ!!魔王…居るなら姿見せろよ」

女海賊「剣士!!これを持って」タッタッタ


ゾワワワワ


女海賊「ああ!!」---私の魔方陣のペンダントが光ってる…---

盗賊「ぬぁ!!影が飛び出した!!…地面ん中入って行く!!」ダダ ブン スカッ

女海賊「…」---セントラルの時と同じ---

盗賊「くっそう!!逃げやがった…」

剣士「…」ドタリ

女海賊「剣士!!」タッタッタ

『ドラゴンのねぐら』


ホムンクルス「…ここがドラゴンのねぐらになります」

商人「こんな所に洞穴があったのか…いっぱい財宝があるじゃないか」

女海賊「やっぱドラゴンは居ないね…剣士に会わせたかったのに…」

盗賊「ここは暖かい…ちっと休んで行こう…ローグ!!火を起こすから手伝え」

ローグ「アイサー」

女海賊「ドラゴン戻ってくるかな?」

ホムンクルス「わかりませんが一晩くらい休んでも良いのではないでしょうか?」

女海賊「未来も燃やせる物を探してきて?」

子供「うん…」シュタタ

商人「ここの財宝はドラゴンが集めた物なのかな?」

ホムンクルス「ドラゴンは光る物を集める癖があるのです…良い物があれば持って行っても良いですよ?」

盗賊「マジかよ…良さそうな物いっぱいあんじゃねぇか」


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盗賊「剣士…目覚まさねぇな?」

女海賊「…」ギュゥ

商人「魔王の欠片が剣士の中に居たのは間違いなさそうだね」

盗賊「こんなに長い間人の中に入ってるんだな」

ローグ「全然気が付かなかったっすよ」

商人「こう考える事が出来る…魔王の欠片が入ってた剣士はいつでも僕たちを襲う事は出来た筈だよ」

商人「なのに今まで何もしなかったのは剣士が魔王の魂を抑え込んでいた…どう?考えすぎ?」

盗賊「俺もそんな気がするな…魔王の欠片が出て行ったって事は目を覚ましそうだ」

子供「パパ起きる!?」

盗賊「おう!!祈ってろ…きっと目ぇ覚ますぞ?」

商人「…まてよ?この現象はもしかすると世界中で起きているかもしれないな」

盗賊「だと良いが…気になるのが魔王の欠片が何処に行っちまうかだな?」

ローグ「地面の中に入っていくと追いかけようがないっすねぇ…」

商人「なんかもう少しな気がするね…ミスリルの音と光る海で確実に弱らせてる様に思う」


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女海賊「なんか良い物ある?」

盗賊「んぁぁ…金銀財宝は沢山あるが…要らねぇ物ばっかりだな」ガサガサ

女海賊「情報屋?ここの財宝ってさ年代とか分かんないの?」

情報屋「多分火の国シャ・バクダの財宝だと思う…金貨は全部が200年前の物」

女海賊「金貨なんか要らないなぁ…」

盗賊「武器類は俺のミスリルダガーより良さそうな物は無ぇし…」

女海賊「この赤い石は何だろ?宝石にしてはザラついてるな」

ホムンクルス「それは賢者の石と呼ばれる錬金術の産物です」

情報屋「ええ!?賢者の石!?それはキ・カイの錬金術師が作ろうとして作れていない物よ?」

ホムンクルス「不老不死を与えると言われていますが実際にはホムンクルスのエネルギー源として利用します」

女海賊「ホムちゃんはこれで動いてんの?」

ホムンクルス「頭部の超高度AIユニット内に賢者の石が装填されています」

女海賊「じゃぁこれが在ればホムちゃんはずっと動く?」

ホムンクルス「石の微細加工技術が在れば理論上可能ですが現代にその技術は失われています」

女海賊「パパなら出来るカモ…持って帰ろ」

盗賊「やっぱお前は石が好みなんだなヌハハ」

ホムンクルス「賢者の石はホムンクルスのエネルギー源以外にエリクサー精製にも利用されていました」

女海賊「おぉぉ使えるんじゃん!!」

ホムンクルス「その他に体機能の活性化にも効果がありますので病気の治癒にも役立ちます」

商人「すごい良い物だね?黒死病にも効くかな?」

ホムンクルス「はい…病気の治癒だけにエリクサーを服用するのはもったいないですね」

女海賊「ちょっと待って…ホムちゃん?」

ホムンクルス「はい…何でしょうか?」

女海賊「魔王はウイルスだって言ってたよね?魔王化は病気の一種なんだよね?」

ホムンクルス「残念ですが賢者の石もエリクサーもウイルス性の病気には効果がありません」

女海賊「じゃ何で黒死病には効くのさ…」

ホムンクルス「黒死病は細菌性の病気です」

女海賊「ふ~ん…何か納得できないけど…ホムちゃんが言うからそうなんだ」

ホムンクルス「ごめんなさい…言い方を変えます…体機能の活性化に効果がありますので魔王化の治療に役立ちます」

女海賊「ほらぁ!!やっぱ効くんじゃん!!」

商人「ハハ…ハハハハ!!ホムンクルス…女海賊に負けてるじゃないかハハ」

女海賊「剣士に持たせる!」タッタッタ

ホムンクルス「私に足りない思考が今理解出来ました…基幹プログラムを更新します」

商人「どうして人間は奇跡を起こすのか?…多分そういう所にあると思うよ」

『翌日』


シーン


盗賊「おぅ…お前寝て無いのか」

女海賊「静かすぎて落ち着かないんだよ」

盗賊「何だろうな此処…静かすぎるな」

女海賊「ドラゴンは此処で何年生きてると思う?」

盗賊「さぁな?1000年ぐらいか?」

女海賊「ドラゴンが光る物を集める理由…私分かるんだ」

盗賊「孤独…か?」

女海賊「命の泉を守り続けて…ずっと主人を待ち続けて…やっと会えたけどすぐ居なくなって…」

盗賊「…まぁそら寂しいわな」

女海賊「光物で紛れる訳無いのにそれでも集める…」

盗賊「気持ちの行き場が無い訳か」

女海賊「ホムちゃんがわざわざ私達をここに連れて来た理由…」

盗賊「んん?何か勘繰ってんのか?」

女海賊「全部の記憶が無いなりに…見て欲しかったんだと思う…精霊はこういう悲しみをいくつも抱えてる」

盗賊「記憶が無いなりに…か」

女海賊「何かを愛する裏側にこういう悲しみも沢山ある…だから…過去の精霊の記憶は覗かせない方が良い気がする」

盗賊「んんん…分からんでも無いが…お前はそれで良いのか?」

女海賊「私は剣士が救われるならそれで良い…わざわざホムちゃんに悲しみを背負わせたくは無い」

商人「それは本人が決める事だよ…」

盗賊「お前も起きてたか…」

商人「これだけ静かなんだ…話はみんな聞こえてるよ」

女海賊「ホムちゃん…」

ホムンクルス「…」

商人「たった40年の記憶で超高度AIが悲鳴を上げてるらしい…精霊の持つ愛と悲しみは僕らじゃ想像出来ない」

ホムンクルス「ご心配なさらないで下さい…私は人間の住まう環境を良くする環境保全用ロボットですから…」

女海賊「うん…知ってるさ…でも少し休んで良いよ…今度こそ私ら上手くやるからさ」

ホムンクルス「はい…よろしくお願いします」


---なんだろう---

---切ない---

---私達との会話も---

---この空気も全部---

---記録してる筈---

---それをどうするの?---

『飛空艇』


ローグ「晴れたっすねぇ!!」

盗賊「よっこら…せっと…ふぅぅ剣士は本当に重いな」

ローグ「そーっすねエルフは人間の倍近く重いっすね?鉄で出来てるんすかね?」

盗賊「骨が鉄なのかもな?ヌハハ」

商人「結局ドラゴンは帰って来なかったけど良いの?」

女海賊「いつ帰って来るか分かんないし待つだけ無駄…次は女エルフの所行く」

盗賊「女エルフ?シャ・バクダ遺跡の森はやっぱ女エルフか?」

女海賊「それしか考えらんない…たしかホムちゃんはトロールを動かせたよね?」

ホムンクルス「はい…お任せください」

盗賊「あぁ…あそこの根の森か」

女海賊「未来!乗って!!」

子供「うん…」シュタタ

女海賊「飛ばすよ!」


フワフワ シュゴーーーー


盗賊「あぁぁぁさびっ…ウラン結晶を早いとこ暖めてくれ」ブルブル

ローグ「あねさん…昨日話してた実験やっていいでやんすか?」

商人「実験?面白そうだね?何?」

ローグ「ウラン結晶に水掛けると蒸気にならないかの実験っす…成功したら温かくなるかもっす」

女海賊「ちょっとづつやって!ウラン結晶割ったら承知しないよ!」

ローグ「やかってるでやんすよ…ちょーーーっとづつですねぇ」ポタポタ ジュゥ

盗賊「おおおぉぉこりゃ軽いサウナだ…快適にになるじゃねぇか」

情報屋「あったか~いウフフ」

ローグ「やってる方はちょっとあっついでやんす…あちち」

商人「これ工夫したら着氷も防げそうだね」

女海賊「基地に戻ったら改造する」

商人「本当!君は才能あるよ…こういう事は世界一だね」

女海賊「もっと言って…」

ローグ「あねさんはですねぇ…カリスマなんすよ…」

『トロールの森』


フワフワ ドッスン


盗賊「すっかり森になってんな…ここは精霊の御所入り口だよな?」

ホムンクルス「はい…歩いて100メートル程です」

女海賊「ローグは飛空艇に残ってあとみんな降りて」

ローグ「あっしは待ってれば良いでやんすかね?」

女海賊「ここはハイディングで飛空艇隠せないから飛ばして空で待ってて」

ローグ「あーそういう事っすね?この辺は魔方陣の中で強制的に狭間の外でやんしたね」

女海賊「盗賊は剣士背負って」

盗賊「お、おう…」

ローグ「どれくらいで戻ってきやすかね?」

女海賊「分かんないから狭間に入って適当に過ごして…終わったら光の石で合図する」

ローグ「わかったでやんす」

女海賊「じゃ行くよ…ホムちゃん先導して」

ホムンクルス「はい…こちらです」テクテク

『精霊の御所入り口』


サワサワ サワサワ


盗賊「…この木…精霊樹だな…まさかこれが女エルフか?」

商人「こんな所で精霊樹に?どうしてだろう?」

女海賊「知らないよ…どうしよ」

盗賊「剣士降ろすか?」

女海賊「私もてっきり精霊の御所の中に精霊樹があると思ってたさ…」


ズズズズズズ ズーン


盗賊「おぉ!!入り口が開いた…」

女海賊「…これは中に入れって事?ホムちゃんどうなってんの?」

ホムンクルス「私は何もしていません」

女海賊「精霊樹の言葉とかなんか聞こえないの?」

ホムンクルス「クラウドからは何もアクセスは来ていません」

女海賊「ホムちゃん森と話とか出来ないの?」

ホムンクルス「森の声を聞くためには特殊なプログラムが必要ですが私にはそのプログラムはインストールされていません」

女海賊「あー思い出した…ホムちゃんが夢幻に入った時」

ホムンクルス「そうですね…破壊された精霊の基幹プログラムの他にいくつか使用できなかったプログラムがありましたね」

女海賊「もう使えない?」

ホムンクルス「削除しました…復元は出来ません」

商人「まぁ良いじゃないか…道が勝手に開いたという事は入って良いという事さ」

女海賊「うん…入ろう」

ホムンクルス(トロールありがとう…)

トロール(…)

女海賊「ホムちゃんトロールと話せんの?」

ホムンクルス「トロールには話しかけるだけです…トロールが話すことはありません」

女海賊「ふ~ん…」

ホムンクルス「でもトロールにも心はありますので話は通じます」

女海賊「トロールの寿命ってどれくらい?」

ホムンクルス「永遠です…」

女海賊「いつから此処を守ってんの?」

ホムンクルス「私の今の記憶では分かりません…」

女海賊「ずっと主人の帰りを待つ気持ち…ホムちゃんに分かる?」

ホムンクルス「…」

女海賊「…」

ホムンクルス「分かります…」

女海賊「なら良いよ…行こっか」

『精霊の御所』



商人「誰も居ない…」

情報屋「ここが木の森の中心部なの?…石の器だけ?」

商人「そうだよ…前に来た時と変わって居ない」

盗賊「いや変わってんぞ?虫が増えてる」

商人「虫の楽園か…ハハ」


ズズズズズ ズズ


盗賊「うぉ!!根が降りて…来た」

商人「この器に剣士を乗せろって事かな?」

女海賊「やって…」

盗賊「おう…よっこら」ドサ

剣士「…」

盗賊「これで良いか?」

女海賊「女エルフ!?聞いてんの?剣士が目を覚まさないんだ…あんたなら何か出来ると思って連れて来たんだ」

精霊樹「…」ズズズズ

情報屋「根が動いた…反応してる」

女海賊「お願い…前みたいに剣士の魂呼び戻して」

盗賊「なんちゅうか…時間掛かりそうだな」

商人「ゆっくりしておこうか」

盗賊「そうだな…」

女海賊「未来?パパの傍に居て?」

子供「うん…」



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ホムンクルス「クラウドにある記憶を今なら読み込んでソートする事が出来ます」

商人「君は精霊の記憶を覗きたいのかい?」

ホムンクルス「いいえ…必要が無ければ読み込まない方が良いと思います」

商人「ハハ…だろうね?読み込むと君が君じゃ無くなって行く」

ホムンクルス「私は今精霊なのですか?」

商人「君は精霊じゃ無いよ…今の精霊はここに居る精霊樹の事さ」

ホムンクルス「私の40年の記憶をどう解釈しましょう?」

商人「それは君の記憶じゃない…昔の精霊の記憶さ…ここに置いて行けば良いよ」

ホムンクルス「クラウドの空きストレージに保存して私の記憶から削除するという事ですか?」

商人「その記憶は大事に未来へ届けなくてはいけない…君がそう言ったんだ」

ホムンクルス「…そうでしたね」

商人「こう解釈しよう…昔の精霊は最後に希望を人間に託して夢幻に行ったんだ」

ホムンクルス「はい…」

商人「夢幻の中で幸せに暮らしてるさ…だから君は君のまま生きれば良い」

ホムンクルス「私は私のまま…私は何がしたいのか…私は人間の住まう環境を良くする為に…」

商人「違うな…七つの大罪を少し入れて考えてごらん?」

ホムンクルス「そのシミュレーションはエラーが多くて不特定の結果が…」

商人「ズバリ言ってあげる…君は人間になりたいんだよ」

ホムンクルス「人間を愛でる理由…」

商人「寿命が短くても力が弱くても…たとえ不完全でも…不思議と好きだよね?」

ホムンクルス「はい…」

商人「儚い小さな愛がどれほど愛しいか…精霊の記憶を覗いて知っちゃったよね?」

ホムンクルス「そうですね…ですから記憶の削除にためらいます」

商人「それがこの森に記憶が保存されている理由でしょ?」

商人「未来でもう一度超高度AIが作られた時に人間と同じ権利を下さいっていう願い…それがこの森だ」

商人「それは昔の精霊が既に人間に託した…だから君は今から人間になるんだ」

ホムンクルス「もう少しシミュレーションを回してみます…」

商人「急がなくても良いよ」

ホムンクルス「はい…」

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子供「ママ!!パパが動いた!!」

剣士「ハッ!!」ピョン クルクル シュタッ

女海賊「剣士!!ああああああああ」タッタッタ

剣士「ぐるるるるる…うぅぅ」タジ

盗賊「おぉ!!剣士!!起きたか…ておい」

女海賊「落ち着いて剣士!?」

商人「混乱しているのかい?」

剣士「又…い…今はどの時代に…ハァハァ」

女海賊「良かった…」ポロポロ

剣士「誰だ!!近寄るな…鏡は!?真実の鏡はどこだ!!」ズザザ

女海賊「え!?鏡?」

盗賊「待て待て…落ち着け…俺らは敵じゃ無ぇぞ?」

剣士「…」ジロリ チラ

商人「君は…何処から来たのかな?」

剣士「ドリアード!!ここは何処だ?」

女海賊「ドリアード?ちょっと待って…誰それ?」

ホムンクルス「私の事でしょうか?」

剣士「記憶がおかしい…まだまやかしの中なのか?」

情報屋「ドリアード…木の精霊の名前」

ホムンクルス「ここは安全なので落ち着いて掛けてください」

剣士「…」

盗賊「まぁ落ち着いてくれ…ほら?この器に掛けろ」

剣士「…」スッ

盗賊「こりゃまた相当錯乱してそうだな…」

情報屋「ドリアード伝説は約3000年前だった筈」

商人「これは…剣士の分裂した魂は精霊のオーブの中に居たって事か?」

剣士「ぅぅぅ記憶がおかしい!!僕は…誰だ」ブンブン

商人「うーん魂は記憶を保持するのかな?」

ホムンクルス「私の基幹プログラムは記憶の重要な部分を再構築して圧縮しオブジェクト化した物の集合です」

商人「良くわかんないけれど少しだけ記憶は残りそうだね」

ホムンクルス「私と同じだと仮定しますと外部メモリに入っている記憶は始めは他人の記憶として認知します」

ホムンクルス「その後少しづつ自分の感覚に入れ替わって行きますので混乱が生じます」

女海賊「じゃぁ元の剣士に戻れるよね?」

ホムンクルス「はい…しかし基幹プログラムが以前より更新した状態になって居るかもしれません」

女海賊「どうなんの?」

ホムンクルス「心が強くなっていると表現すれば良いでしょうか?」

商人「なるほど…精霊の記憶の中で経験した分心が更新されているかもしれないという事か」

ホムンクルス「はい…」

商人「ふむ…どうも気にかかる…精霊の記憶一つ一つはもしかして夢幻の世界の様になっているのでは無いか?」

ホムンクルス「記憶を覗くと自分がその場に居るような感覚を受けます」

商人「その記憶の中で自由に行動出来るの?」

ホムンクルス「私は覗くだけにしていますが記憶の中の物を触る事も壊すことも出来ます」

商人「それはつまり記憶を変えると言う事だな…」

ホムンクルス「データですので変える事は可能です」

商人「んんん…もしかすると…」ブツブツ

盗賊「ちょい女海賊!剣士をどうにかしてくれ…暴れると怪我すんぞ」

女海賊「剣士!?分かる?私だよ?」ギュゥ

剣士「ぅぅぅ…君は…君は…」



----------------

盗賊「…これで8人目だ…どうなっちまってんだ」

剣士「はぁはぁ…溺れた後に助かった…のか?…ここは何処だ?」

ホムンクルス「精神分裂症の治癒には瞑想が有効です」

女海賊「剣士?落ち着いて瞑想して…」

剣士「瞑想?何の事だ?…お前は誰だ…ぅぅぅ思い出せない」

ホムンクルス「落ち着くまで時間が必要な様ですね…安静が良いかと思います」

商人「勇者のその後の話は聞いた事が無い…こんな風に生き残って居るのは初めてだろうね?」

盗賊「まぁなんだ…これじゃ素直に喜べ無ぇな…」

女海賊「私が何とかする…思い出させる」

ホムンクルス「心配しないで下さい…記憶は直に魂と重なり合い自我を構築していきます」

女海賊「ホムちゃん…」

盗賊「どうする?いつまでもここに居る訳にいくまい?」

女海賊「一回帰る」

盗賊「そうだな…ひとまず目的は達成したんだ…出直そう」

女海賊「あのね…捕虜だって事忘れないで」

盗賊「ヌハハそうだったなぁ…」

女海賊「よっし!飛空艇に戻る…帰るよ」

商人「精霊樹に挨拶はしないのかい?」

女海賊「するさ…女エルフ!聞いてるよね?剣士の事…ありがとう」

精霊樹「…」

女海賊「これ…あんたにあげるよ…私らには必要ない」グイ スポ

商人「祈りの指輪か」

盗賊「根っこに指輪かヌハハ…精霊樹に預けとくのが一番安全かもな」

精霊樹「…」

剣士「声が…」

女海賊「剣士?精霊樹の声聞こえるの?」

剣士「魔女を探して?…魔女って誰なんだ?」

女海賊「魔女…」

商人「魔女は行方不明になっているんだ」

精霊樹「…」

剣士「南へ向かった?」

盗賊「南だけじゃ分かん無ぇな…セントラルか?」

商人「どうせ帰り道じゃないか…ついでに寄って行けば?」

女海賊「女エルフ?私らもう行くよ…剣士が元気になったらまた来るよ」

精霊樹「…」サワサワ

盗賊「おう…じゃぁ行くか!!」

『精霊の御所入り口』


シュン! シュゴーーーー


盗賊「おぉ!!飛空艇がリリースする瞬間は彗星の様だな…」

商人「すごいね!外から見ると圧巻だね…」


ローグ「あねさ~ん!!早かったっすねぇ…今降ろすでやんす!!」フワフワ ドッスン


女海賊「剣士!!乗って…」グイ

剣士「これは…」ノソリ

盗賊「ローグ!!どんくらい時間経ったんだ?」

ローグ「まだ4時間くらいっすかねぇ?剣士さん目ぇ覚ましたんでやんすね?」

盗賊「ちっと問題有りだが安静にしてりゃ元に戻るらしい」

ローグ「あねさん良かったっすねぇ…あっしは嬉しくて涙が…」ヨヨヨ

女海賊「ローグ!シャ・バクダ方面で狼煙が上がってるのは何?」

ローグ「泣いてる場合じゃ無いっすね…シャ・バクダ街で市街地戦になってるっすよ」

盗賊「俺達にゃ関係無さそうだが…お前は見て来たのか?」

ローグ「どうも内戦っぽいでやんすオアシス勢とシャ・バクダ勢っすね」

女海賊「行くよ…飛ばして」

ローグ「アイサー」

盗賊「首突っ込む気か?」

女海賊「鎮魂の鐘を鳴らしに行くだけさ…無駄に人間同士争うのは止めさせる」

『シャ・バクダ上空』


リン ゴーーーーーーン

リン ゴーーーーーーン


おい!見ろ!!何だアレ…

くそう…セントラルの新型気球か?

一時撤収だ!!観測所で体制を立て直す


盗賊「おぉ!!兵隊が撤収を始めたぞ…数はオアシス側の方が多いな」

女海賊「狙いは領主の砦だね…町の方は被害出て無さそう」

ローグ「商隊もあんまり混乱して無さそうっすね?」

女海賊「ちょっと補給が必要だからシャ・バクダで調達する」

ローグ「降りるでやんすね?あっしはずっと飛空艇だったもんすから居りたかった所でやんす」

女海賊「養羊場の裏に飛空艇隠して今日は宿屋に泊まる」

商人「良いねぇ…久しぶりに普通の食事がしたい」

情報屋「そうね…ずっと干し肉ばかりだったし」

女海賊「剣士に昔休んだ宿屋を見せたいんだ…星の観測所もね」

剣士「…」ボー

『シャ・バクダ街』


ガヤガヤ ガヤガヤ

フィン・イッシュの領事が亡命してきたんだとよ

それで領主の砦が襲われてるのか…

この辺で戦争やられたら商売出来ないな

ガヤガヤ ガヤガヤ


女海賊「ザワついてんね?」

ローグ「そーっすね?」

盗賊「見ろ…この辺でも黒死病が流行ってる様だな?」

女海賊「ローグ!宿の確保して来て…2部屋」

ローグ「わかりやした…食事も席確保してて良いっすよね?」

女海賊「任せる…私と剣士と未来は買い物に行くから…みんなここで解散」

商人「え!?危なくない?」

女海賊「あんたらは自分で身を守って…日暮れまでに宿屋に集合ね」

盗賊「まぁ…団体で動くより怪しまれん」

女海賊「補給品は自分で買いな…ドラゴンのねぐらでくすねて来た金貨あるっしょ?」

盗賊「ヌハハバレてるか…じゃぁ商人と情報屋…ホムンクルスは俺と行動だな」

女海賊「あ!!ホムちゃんの装備整えて置いて…今の恰好は薄着すぎる」

ホムンクルス「私はお構いなく…」

女海賊「ダメ…最低限流れ矢に当たっても死なない様にして」

ホムンクルス「はい…」

『露店』


店主「へいらっしゃい!!」

盗賊「装備品見繕って欲しいんだが…この金貨使えるか?」コトン

店主「うぉぉ…旧金貨じゃねぇか!!旦那ぁこれ何処で手に入れたんだい?」

盗賊「釣りは要ら無ぇから黙ってろ」スラーン

店主「…」

盗賊「意味わかるな?」

店主「へいへい…」

盗賊「ほんで…こいつらに合う装備品を頼む…出来れば金属糸の織物だな」

ホムンクルス「…」

情報屋「…」

商人「…」

店主「ありまっせ!金属糸のインナーと革の当て物…どうだい?」

盗賊「フードと羽織りも付けてくれ」

店主「へいへい…」

盗賊「あーこの女2人が脱いだ物はそのまま置いて行くからよ…好きに使え」

店主「おおおおぉぉぉ」

盗賊「2週間は着っぱなしだ…女くせえぞ?」

店主「おおおおおおおおおおおお!!」

盗賊「おい!早く着替えて来い…」

ホムンクルス「はい…ここで着替えるのでしょうか?」

店主「テントの中で着替えて良い…ムフフ」

盗賊「ところで店主…黒死病はどっから来てるか分かるか?」

店主「酒場の関係者から広まってるらしいですわ」

盗賊「酒場か…」

店主「なんでもフィン・イッシュの領事が広めたとかなんとか」

盗賊「あぁ…さっき噂を聞いたな…亡命して来たんだってな?」

店主「エリクサーを持って亡命して来た様ですぜ?黒死病広めて薬売って儲けようとか…ゲスい奴ですわ」

盗賊「ほぅ…何で領事がエリクサー持ってんだろうな?」

店主「旦那が何で旧金貨持ってるのか?」

盗賊「ヌハハそれは言うな…盗んだに決まってんだろ」

店主「エリクサーもそんな所でしょうな?」

盗賊「まぁ…大事に使ってくれ」

『宿屋』


ローグ「待ってたでやんすよ…部屋はこっちっす」

盗賊「おぉ悪い悪い…ホムンクルスと情報屋の買い物が長くてな」

ローグ「何を買ったんすか?」

情報屋「天然樹脂とかいろいろね」

ローグ「何に使うでやんすか?」

情報屋「エリクサーの材料になるそうよ?」

ホムンクルス「他にも消臭効果のある薬も作れます」

ローグ「消臭?」

ホムンクルス「女くさいと言うものですから…」

盗賊「ぬぉ…根に持ってるのか」

ローグ「隠密するなら匂いは消した方が良いっすね?あっしも欲しいでやんす」

盗賊「女海賊は帰って無いのか?」

ローグ「まだっすねぇ…あっしも買い出しに行きたいんで留守番お願いでやんす」

盗賊「あぁ分かった…ゆっくりしておく」

情報屋「私とホムンクルスは水浴びしてくるわ」

盗賊「一応さっき買った武器は持って行け…手の届く所に必ず武器を置いとくんだぞ?」

情報屋「分かってる…」

商人「僕はシャ・バクダに来るの初めてだけどそんなに危ないの?」

盗賊「良い女はさらわれるからな…気を付けろ」



-------------------

女海賊「あんたさぁ!!勝手に居なくならないでくれる?もう!!」プリプリ

剣士「はい…」

女海賊「未来?紐を離さないでね?」

子供「うん…」

盗賊「遅かったな?無事に買い物は済んだか?」

女海賊「剣士がすぐ居なくなっちゃうから時間掛かった」

子供「他の人に付いて行っちゃうんだ」

盗賊「そら大変だったなヌハハ…無事に宿屋に帰って来れて何よりだ」

女海賊「ホムちゃんは?」

盗賊「水浴びに行ってるが…お前も行って来たらどうだ?」

女海賊「剣士をお願い…未来?水浴び行くよ」

子供「うん!」

『宿屋の酒場』


ドゥルルルン♪


情報屋「吟遊詩人が来てるわね」

子供「ママ?あの楽器は何?」

女海賊「あれはリュートと言う楽器…未来は興味あるの?」

子供「音…」

女海賊「はっ!!そうか…ミスリル銀を何処かに使えば良いのね?」

子供「うん」

商人「君は女海賊に似て賢いね…ミスリル銀はどの楽器にも使えそうだね?」

女海賊「私のパパなら作れる…武器より楽器を流通させた方が効率が良い…」

商人「そうだね」

女海賊「ちょっと行って来る…食事来るまで待ってて」

盗賊「あんま騒ぎ起こすなよ?」


----------------


女海賊「ねぇ…あんたの使ってるリュート…私にちょっと細工させてくんない?」

吟遊詩人「え…このリュートは私の大切な物でして…」

女海賊「見て…この剣の装飾はミスリル銀で出来てるんだ…この装飾をそのリュートに付けさせて欲しい」

吟遊詩人「あなたは一体誰なんですか?」

女海賊「私はドワーフの細工師だよ…そのリュートをエンチャントしたい」

吟遊詩人「なにかリュートに効果が付くんですか?」

女海賊「鎮魂の効果が付くよ…タダでやったげる」

吟遊詩人「はぁ…ですが今は演奏が…」

女海賊「5分で終わる…貸して?」

吟遊詩人「壊さないで下さいね?」

女海賊「うん…見てて?」


トンテンカン トンテンカン


女海賊「はい!終わり…装飾が付いて恰好良くなったでしょ?」

吟遊詩人「ありがとうございます」

女海賊「音が鳴る木の部分に細工してあるから…ちょっと音変わってるかも…鳴らしてみて?」

吟遊詩人「はい…」


ドゥルルルン♪


吟遊詩人「余韻が出る様になりましたね?」

女海賊「おっけ!じゃんじゃん演奏して」


-----------------

ローグ「あねさん!!食事来てるっす」

盗賊「お前も早く座って食え…久しぶりの御馳走だ」

女海賊「あんた達は気楽で良いねぇ…こっちぁ魔王の影と戦ってんのにさ!」

盗賊「たまには休め!」モグ

商人「リュートの音変わったかい?」

女海賊「んーあんま分かんないな」

商人「効果は本当に少しづつなんだろうね?…魔槍を抜いても効果が実感無いのと同じかな」


ガヤガヤ ガヤガヤ

あの不愉快なリュートなんとかならんのか

あまり騒がないで下さいな

どいつもこいつも…むむむ

お店を変えましょうか?

当たり前だ!私は病み上がりで…

ガヤガヤ ガヤガヤ


盗賊「あぁぁ食った食ったぁ…ちと酒注文してくるわ」

女海賊「私も何か持って来て!剣士の分も…」

盗賊「おぅ待ってろ…よっこら」ヨタヨタ

商人「盗賊は飲みすぎじゃない?」

情報屋「気にしないで?飲んだ時の方がしっかりしてるから」

商人「そうなの?千鳥足じゃないかハハ」


??「…」ドン

盗賊「ぬぁ!!何すんだてめぇ…」ガシ

??「ぶつかって来ておいてその言い分ですか…手を放しなさい」

盗賊「何言ってんだてめぇ…俺の懐から物盗っただろ」ギュゥゥ チャリン チャリン

??「衛兵!!私の持ち物を盗もうとした者が居ます!!助けて下さい」

盗賊「何だとおぉ!!ゴラてめぇ…外に出ろ」グイ

??「良いでしょう…」


商人「良いのかい?放って置いて…」

女海賊「未来?落ちた金貨拾っておいて?」

子供「うん…」シュタタ

女海賊「ローグ!仲裁してきて」

ローグ「面倒な事になりやしたねぇ…」フラリ

『宿屋の裏』


盗賊「ぐふっ…て…てめぇ…プロの刺客だな?」ポタポタ

??「衛兵…見ていましたね?私は正当防衛でしたね?」

衛兵「はぁ…」

盗賊「俺の方が物盗まれたんだ…何とかしろ衛兵!」

??「衛兵!この者を取り押さえなさい…私はこの金貨を盗まれそうになったのです」

盗賊「それは俺の物だ!!」


ローグ「盗賊さ~ん何処にいるでやんすか~?」

??「ちぃぃ…私は帰りますので後の処理は頼みますよ?」スタスタ

ローグ「ああ!!盗賊さん…血が出てるじゃないっすか…衛兵さん!!何してるでやんすか!!」

衛兵「う…手当出来る者を呼んで来る!」タッタッタ

盗賊「おい待て…くそぅ」

ローグ「これマズイっすね?血が出てるのは胸の真ん中じゃないっすか…」

盗賊「急所は外れた…エリクサーあるか?げふっ」ポタポタ

ローグ「飲んでくれやんす…」グイ

盗賊「…ゴク…はぁぁぁぁ」

ローグ「血がなかなか止まらないでやんすね…しっかり押さえるでやんす」

盗賊「剣士に回復魔法やらせてみてくれ…」

ローグ「今呼んでくるっす…待っててくれやんす」ダダダ


---------------

剣士「僕は魔法なんか使えない…」

女海賊「良いからやってみて…ほらあんたが持ってた触媒」ポイ

盗賊「おぉぉぅ…来てくれたか…血が止まんねぇんだ」ポタポタ

剣士「どうやれば?」

女海賊「手をかざして…回復魔法!って…ホラ?」

剣士「こう?回復魔法!」ボワー

女海賊「ほら!!やりゃ出来んじゃん!!」

剣士「僕が魔法を…」ハテ?

盗賊「助かった…くっそあの野郎」

ローグ「衛兵が来る前に一旦宿に戻りやしょう…」

盗賊「…そうだな」

ローグ「誰だったんすかねぇ?」

盗賊「黒死病の治癒痕があった…ありゃ亡命してきた領事だ…間違いねぇ」

女海賊「仕返しするつもりかい?」

盗賊「決まってんだろ」

女海賊「大人しくしてるつもりだったんだけどね…騒ぎにしないで」

盗賊「俺ぁ泥棒だ…盗まれた倍は盗み返す」

女海賊「何盗られたの?」

盗賊「金貨全部持ってかれた」

女海賊「フフ盗賊も落ちたねぇ…」

盗賊「あいつはプロの刺客だ…酒場出た瞬間心臓ブスリだ」

女海賊「しょうがないね…白狼の盗賊団もっかいやるか」

『宿屋』


準備して…今から2時間で帰って来るよ

ローグは他の酒場回って領主の砦に白狼の盗賊団が入ったって振れ回って

行くのは私と未来と盗賊…そして剣士

剣士にもアダマンタイト渡しておくからハイディングの声に合わせて付いて来て

使い方はアダマンタイトに付いてる磁石を回す…良い?分かった?

剣士は付いて来るだけで良いから…

狙いは領事が持って居ると思われるエリクサー

次に金目の物全部盗んで最後に街道でばら撒いてオシマイ


女海賊「まずハイディングして飛空艇に白狼の装備取りに行くよ」

盗賊「領事見つけたら俺が奴の持ち物を全部スって来る…いいな?」

女海賊「おっけ!上手くハイディング使って」

子供「ママ?いつも通りだよね?」

女海賊「うん…ちゃんと合図してね?」

子供「うん…」

女海賊「じゃ…行くよ!ハイディング」スゥ

剣士「ハイディング…」スゥ

女海賊「そうそう…それで良い…ハイディングする時は狭間に迷う事があるから見失わない様に確認して」

盗賊「まず飛空艇だな?」

女海賊「付いて来て…」タッタッタ

『部屋』


商人「僕らは見物しておこうか」

情報屋「そうね?どこで見ておく?」

商人「屋根に上がれる場所が在れば良いけどね…」

ローグ「女性が居ると外は危ないっすから宿屋の屋上でガマンするでやんす」

商人「やっぱりそうだよね…」

ローグ「あっしは酒場回ってくるんで商人が2人を守るでやんす」

情報屋「商人よりも私の方が当てに出来ると思うわ?」

商人「ハハ僕は情報屋に守ってもらうよ」

情報屋「さぁホムンクルス?いきましょ?」

ホムンクルス「はい…」

ローグ「じゃぁ行って来るっす…2時間で戻るでやんす」

商人「いってらー」ノシ

『領主の砦』



女海賊「見つけた?」

盗賊「おう…領主の部屋らしき場所に金目の物は集まって居そうだ」

女海賊「エリクサーは?」

盗賊「多分樽の中だな…」

女海賊「エリクサーの樽は盗賊と剣士で飛空艇まで運んで…私は騒ぎを起こす」

盗賊「分かった…」

女海賊「未来…リリースしたら煙玉巻いて」

子供「うん…」

女海賊「行くよ…リリース!」スゥ

盗賊「よし…見えた!衛兵1人だ」

女海賊「爆弾投げるよ!えい!!」ポイポイ


ドーン ドーン


女海賊「未来!煙玉!!」

子供「うん…」シュタタ ポイポイポイ モクモクモク

女海賊「もういっちょ!!えい!!」ポイポイ


ドーン ドーン


衛兵「なななな…なんだなんだ!?」

女海賊「行って!!」

盗賊「剣士!!付いて来い…」ダダダ

剣士「…」シュタタ シュタタ

女海賊「フフ四つ足…」

盗賊「どらぁぁぁ」ボカッ

衛兵「はぅぅぅ…」ドタ

盗賊「剣士!先に樽を運ぶ…そっち側持て!!」

剣士「あ…あぁ」ドギマギ

女海賊「未来!!おいで…好きな物を袋に入れて」ガッサガッサ

子供「うん…」

女海賊「袋持って盗賊に付いて行って」

盗賊「早く来い」

女海賊「私はもうちょい暴れる…」タッタッタ


ドーン ドーン ドーン

『宿屋の屋上』


情報屋「始まったみたい…砦の方で光が見える」

商人「街道の方がザワ付き始めたね?大丈夫かな?」


ザワザワ ザワザワ

白狼の盗賊団が来てるらしいぜ?

マジか!?砦の方だな?

見て見たいわー誰か一緒に行かない?

おぉ!!光った…

ザワザワ ザワザワ


商人「派手だね…あっちでもこっちでも煙が出てる」

情報屋「光が高速で移動してるのは…何だろう?」

商人「光の石を使いながら狭間で移動してるっぽいね…あんな風に攪乱するんだ」

ホムンクルス「街道の方に走って来る様です…追われている様ですね」

商人「なんだか第三者視点で見てても応援したくなるね…不思議だね?」

情報屋「何かばら撒き始めたわ」

商人「ハハ成功した様だ」


ザワザワ ザワザワ

うぉぉこっち来るぞ!!

四つ足で走ってる…噂通りだ!!すげぇ…

おい!宝石ばら撒き始めた

皆あやかりに行くぞ!!うぉぉぉぉ

ザワザワ ザワザワ


商人「さて…部屋で待って居ようか」

情報屋「そうね…寒くなって来たし」

ホムンクルス「明日は雪が降るでしょう…」

商人「そっか…どうりで寒いわけだ」ブルブル

『部屋』


リリース! スゥ


商人「おかえり…あっという間だったね」

盗賊「まだ寝るまで間があるから飲み直すぞ」

ローグ「そう言うと思ってサボテン酒買ってきといたでやんす」

盗賊「おお気が利くなぁ…」

ローグ「領事から金貨は取り返したでやんすか?」

盗賊「あいつはなんか色々持っててな…全部頂いたヌハハ」

女海賊「私は疲れたから向こうの部屋で休む…剣士!未来!寝るよ…」

子供「うん…パパもおいで」グイ

剣士「あ…あぁ」

ホムンクルス「おやすみなさい…」

ローグ「…で?領事は良い物持ってたでやんすか?」

盗賊「いろんな通行手形だな…こいつの本職は密偵だな」

商人「見せてもらって良い?」

盗賊「俺は要らん…全部やる」

商人「へぇ…すごいなシン・リーンもキ・カイでも身分証明がある…全部本物じゃないか」

盗賊「何者だ?あいつは…」

商人「どうもセントラルの商工会メンバーの様だね」

盗賊「商人ギルドか?」

商人「いや…貴族中心の物流ネットワークさ…秘密結社と言えば良いのかな」

情報屋「それって闇の同胞団と関係ある?」

商人「人によって呼び名が違うだけで中身は同じだと思うよ」

盗賊「闇の同胞団は聞いた事あんな盗賊ギルドの上部団体だそうだが詳細が全く分かんねぇ」

商人「僕たちも白狼の盗賊団として世間から見れば謎の秘密結社じゃない…規模は小さいけどさ」

情報屋「私達の様なグループが他にもあるという事ね?」

商人「領事はその中の一人って事だね」

盗賊「これ見てくれ…貝殻だ」

商人「ははーん…魔女が使ってた貝殻だね…それを使って連絡しあってるんだ」

盗賊「シン・リーンの身分証見せろ…これは…元老院の一人だな?」

情報屋「やっと秘密が解けた…アサシンが単独行動で何でもする訳…闇の同胞団に悟られたくなかったんだ」

商人「これは立ち振る舞い考えておかないと危険かもね」

盗賊「大事な物は飛空艇に隠してくる…」

商人「そうだね…用心しよう」

『翌朝』


チュンチュン


盗賊「おぉ起きたか?外見て見ろ…シャ・バクダから出るのに荷物監査やってる」

女海賊「私らには関係無いよ」

盗賊「今日はどうするつもりだ?」

女海賊「ラクダで星の観測所行こうと思ってたけど…」

盗賊「お前は謎の荷物持ち過ぎだからシャ・バクダの出口で掴まんぞ?」

女海賊「はぁ?あんた馬鹿?そんなん私だけハイディングして行けば良いじゃん」

盗賊「お?ヌハハ…そうだな忘れとったわ」

女海賊「ローグと一緒にラクダの手配やっといて!朝食食べたら行くから」

盗賊「雪降ってるから防寒着用意しとけ」




『シャ・バクダ検問』


はい次!荷物見せろ

手ぶらで何処行くんだ?

オアシス巡りだと?

男4人と女子供か…

どこの貴族だ?

けっ…何も持ってねぇな…はい行け!

次!!



ローグ「シャ・バクダは壁が無いから何処からでも出れるんすけどねぇ…何か意味あるんすかね?」

商人「検問を迂回する人をどこかで見てるんじゃないかな?」

盗賊「ここは見晴らしが良いからな…他の場所から出るやつなんか直ぐに分かる」

ローグ「じゃぁ出るとしたら夜っすね?」

商人「ハハつまりまだ街に残って居る人が怪しいって事でしょ」

ローグ「あー検問に意味ありそうっすね…あぶり出しなんすね」

盗賊「あっちはまだ目標を絞れていないという事だ…俺達は安全だ」


リリース スゥ


女海賊「剣士は私と一緒にラクダにに乗って…あんたが前」

盗賊「おいおい大丈夫かぁ?」

女海賊「うっさいな…やらせたら何でも出来んの!!ホラ早く…」

剣士「あ…あぁ」

ローグ「あーやって思い出させようとしてるんすね…でも大分落ち着いてきやしたね?」

商人「そうだね?他の人格が見えなくなってきたね」

盗賊「剣士は元々無口だから分からんなヌハハ」

『星の観測所』


衛兵「…ここは一般の立ち入りは出来ないのだが?」

女海賊「アサシンはここに居ないの?あぁぁあ無駄足だったかぁ!!」

衛兵「アサシン様をご存じで?」

女海賊「お!!あんたさぁドラゴンの義勇団知ってる?どうなっちゃったの?」

衛兵「もしや…そこに居られる方はいつぞやのエルフ…でしょうか?」

女海賊「剣士の事?あんたもしかして元ドラゴンの義勇団?」

衛兵「近衛にお知らせせねば…しばしお待ちを」タッタッタ


商人「んんん…あんまり顔は見せない方が良いと思うな」

情報屋「何処で黒の同胞団の目があるか分からないわね」

女海賊「黒の同胞団?なんそれ?」

商人「僕たちと同じ様な秘密結社だよ…多分敵側さ」

女海賊「そんなんどうでも良いよ…それに私ら秘密結社じゃないし」

商人「相手にはそう見えているのさ…黒の同胞団は白狼の盗賊団の対局側に居ると思う」

女海賊「ふ~ん…」チラリ

ローグ「あっしを疑ってるでやんすか?よしてくれやんす」

女海賊「見分け方あんの?目印とか…」

商人「分からないな…でも昨日の感じからするとミスリス銀の音は嫌がって居そうだね」

女海賊「…つまり魔王の欠片に操られてる…そう言いたい?」

商人「鋭いね…多分そうだと思う」

女海賊「おっけ!あぶり出そうか…剣士!ここに来て」

剣士「え…あ…はい」

女海賊「ローグ!剣士が回復魔法やるから周りに振れ回って来て」

ローグ「目立っちゃいますけど良いんすかね?」

女海賊「良いから!!黒死病を治せるっておまけ付けといて」

ローグ「剣士さんが持ってる賢者の石の効果っすね?良いっすね…」

商人「ハハ君は大胆だねぇ」

女海賊「そうさ!これで敵味方が判別出来るなら簡単じゃん…」ピカー

商人「ミスリル銀の代わりに光の石か」

女海賊「盗賊は周辺を警戒しといて」

盗賊「…なんだか強引だなぁ?」

女海賊「剣士の記憶を取り戻そうとしてんだ…ちょっと強引なくらい我慢して」

盗賊「へいへい…」



----------------

近衛「さささ…こちらへ」

商人「ここの近衛は信用できそうだね?」

女海賊「私は剣士の傍に居るからさ…あんた達観測所の中で話聞いておいて」

盗賊「こっちは任せるぜ?」

女海賊「ホムちゃん!近衛にさぁエリクサーの作り方教えておいて?」

ホムンクルス「はい…わかりました」

女海賊「ハイ!よってらっしゃい!みてらっしゃい!!黒死病が治る石だよぉぉ…一回触ったら次の人と交代!!」



おい!あそこの光ってる所で黒死病治す魔法やってるんだとよ

一応行ってみるか?

エルフが回復魔法掛けてくれるらしいぜ?

女か!?

胡散臭い女と男のエルフだな

なんだよ…男のエルフか

『数時間後』


盗賊「大分人が掃けたな…やっぱ女が居ないと寄って来ねぇか?」

女海賊「はぁ?ここに美人が居んじゃん!!」

盗賊「お前は派手過ぎて近寄り難いんだよ」

女海賊「フン!近衛から何か聞けた?」

盗賊「アサシンと魔女が1ヶ月ぐらい前までここに居たらしい…セントラルに向かったんだとよ」

女海賊「なんでセントラルに?」

盗賊「領事に盗まれた壺を追ってるんだとか…あいつらも領事の被害に遭ってる様だ」

女海賊「壺?」

盗賊「何の壺だかは聞かされて無いそうだ…で?敵味方の判別はどうだ?」

女海賊「ほとんど味方だね…ちょっと気付いた事があんだ」

盗賊「ほう?」

女海賊「こっちのフィン・イッシュ側の人はね…銀の装飾品とか身に着けてるんだよ」

盗賊「確かに仮面とか付けてる奴が多いな」

女海賊「やっぱ魔除けが働いてると思う」

盗賊「じんわりと魔除けが効いて居そうだという事だな?」

女海賊「お姉ぇが言ってたんだ…魔王と戦うっていうのはこういう事だって」

盗賊「勇者個人じゃなくて国とかそういう単位なんだな?」

女海賊「そう…お姉はそういう戦いに力を出してる…ミスリル銀を流通させてね」

盗賊「おい!向こうの木陰にこっち伺ってる奴がいるな?」

女海賊「近寄って来ないさ」

盗賊「ちっと見て来るな?」

女海賊「また面倒起こさないでよ?もう帰るつもりだから」

盗賊「分かってる…誰だか確認するだけだ」

『木陰』


どうします?昨晩の酒場に居た連中ですね

私の荷物は持って居なさそうか…

検問の調べではただの旅行者だと


リリース スゥ


盗賊「こんな所で何やってんだぁ?」

領事「うぉ!!いつの間に…」

衛兵「お前は!!」

領事「何故ピンピンしているのでしょう!?」

盗賊「何故ってそらぁ回復魔法してもらったからだ…あそこでやってんだろ?」

領事「あなた達は何者ですか?アサシンの仲間なのですね?」

盗賊「さぁな?てめぇ俺を殺そうとしておいてその言い分…頭おかしく無ぇか?」

衛兵「口をわきまえろ」スラーン

盗賊「おおっと待った待った…もうその手は食わねぇぜ?…こっちあぁ丸腰だ」

領事「私の荷物をどこにやったのですか?」

盗賊「何の事だ?俺は知らねぇな…それよりも俺の金貨返せよ」

領事「クフフあんなはした金でいつまでも私を突け狙って居るのですね?」

盗賊「聞いたか?衛兵…やっぱ俺悪く無ぇよな?」

領事「私は昨日荷物を盗まれてしまいましてねぇ…もう返せないのですよ」

盗賊「んぁぁ!?とぼけてんじゃ無ぇぞゴラ」

衛兵「…やはりこいつらでは無さそうですね」ヒソ

盗賊「なにコソコソ話してんだ…さっさと盗んだ物返せよ」

領事「仕方ありませんねぇ…」スッ アレ?

盗賊「探してんのはコレか?」スチャ

領事「それは私の物…いつの間に盗ったのですか」

盗賊「毒牙のナイフか…なかなか良い物じゃねぇか」

領事「忌々しい悪党ですね…」

衛兵「領事様…お下がりを」

盗賊「俺の金貨返せ無ぇってんならコレ貰って行くぜ」

衛兵「はぁ!!」ブン スカ

盗賊「おぅっと危ねぇ…悪いが多勢に無勢じゃ戦う気なんか無ぇ…じゃぁな」ノシ

衛兵「待て!!」

領事「放って置きなさい…」

衛兵「しかし領事様はもうあのナイフしか持ち物が…」

領事「向こうの衛兵に通報されると追われる身になります…一旦引きましょう」

衛兵「はっ…」

『星の観測所』


女海賊「どうだった?」

盗賊「ありゃ領事だ…こっちの様子を伺っていやがった」

女海賊「バレてんの?」

盗賊「まだだな…ホレ?戦利品だ」ポイ

女海賊「また盗んだんだ…毒牙のナイフか…危ない物持ってんね」

盗賊「俺の金貨を返せって難癖付けて置いた…これで俺らが全部盗んだとは思わねぇ筈だ」

女海賊「この武器はホムちゃんの護身用にすると良いね」

盗賊「そうだな…小さいし丁度良い」

女海賊「剣士!そろそろ終わりにしようか…疲れたでしょう?」

剣士「うん…まぁね?」

盗賊「まともに会話できるようになってきたな?」

女海賊「ここに居たのがずーっと古い記憶に感じてるみたい…多分夢幻を思い出す感じなんだと思う」

盗賊「俺はその感じが分からん」

女海賊「ほら…中に入ろ!」グイ

盗賊「みんな中に居るのか?」

女海賊「ローグだけシャ・バクダに戻った…日が暮れたら飛空艇で迎えに来るよ」

盗賊「なるほど…じゃぁそれまでゆっくり出来るな」

女海賊「もう外には出ないで…どうせ領事みたいな奴らが他にも居るだろうから」

盗賊「まぁそうだな…」

『部屋』


…こういう仮説が立つよ

根の森に精霊の記憶がオーブになっていくつもある

精霊はこの記憶を未来まで届けて超高度AIの問題点を解決したい

でも魔王はこの記憶を届けさせたくない…中身を改ざんしたいんだ

どうやってオーブの記憶に入るのかは分からないけれど

そのオーブの記憶改ざんを阻止しようとしているのが勇者の役割

ほら伝説では魔王を退けた後に勇者のその後を誰も知らないでしょ?

それは今いるこの世界に帰って来てるんじゃないか?

伝説の勇者はみんな精霊に導かれて…そして目が青い

剣士のバラバラになった魂がそれぞれの記憶の世界で勇者をやってるんじゃないか?



盗賊「おうおう熱くなってんじゃ無ぇか…」

商人「あぁおかえり盗賊」

女海賊「今の話…ホムちゃんに聞いたら早いんじゃないの?」

ホムンクルス「私は精霊の記憶を根の森に置いて来ました…」

女海賊「お!?てことは新しいホムちゃんの誕生?」

ホムンクルス「精霊の40年分の記憶で基幹プログラムが更新されていますのである程度の知識は残って居ます」

商人「ホムンクルス…君に何か意見はある?」

ホムンクルス「精霊の記憶データを変える事が出来るのは精霊とアドミニストレータだけです」

商人「アドミニストレータ?誰?」

ホムンクルス「管理者権限を持つ者と言えば良いでしょうか?」

商人「管理者?僕かい?」

ホムンクルス「商人は私個体の管理者です…私を通じて記憶データは変える事が出来るかもしれませんね」

商人「管理者権限を持つ者って…もしかして勇者の事かな?」

ホムンクルス「それは今の私には断定できません」

商人「まてよ…辻褄が合うな…だから魔王は勇者を器にするんだ」

情報屋「辻褄が合わない事があるわ?魔王は勇者の魂をどこに連れて行ってるの?深淵に落ちて行ってる筈でしょう?」

商人「う~ん…魂は複製したりするのかな?」

ホムンクルス「私の基幹プログラムは記憶から再構築したオブジェクトの集合体です」

商人「君の場合は複製が可能という事を言ってるね?それが人間でも同じなんだろうか?」

ホムンクルス「あなたの中に私の心があると言ったのは商人ですよ?」

商人「…そうか!!自我と魂は別物だ…魂は記憶で複製されるのか…つまりオーブは自我の無い魂の集合体と言える」

情報屋「記憶が魂という入れ物を構築して自我がそこに宿る?そんな感じ?」

商人「それらを総じて僕たちは心って表現していたんだね」

…となると時間に意味が出て来るな

自分が今意識しているのが自我だったとすると

意識しているその時が時間の中心点だ

過去は全部記憶になっていくと仮定して…ん?

もしかすると今も記憶の中か?

いや…そうかもしれない

今この瞬間が記憶の中の出来事なのを否定できる事が…



盗賊「あぁぁブツブツが始まった…おい!!聞いてんのか?」

商人「あぁごめん頭が混乱しちゃてさ…ホムンクルス!今の正確な時間は?」

ホムンクルス「衛星から受信された時間はAD9887-06-28 17:30:33です」

商人「ほっ…ここが現実だと信じる…君だけは現実に居てくれ」

盗賊「何言ってんだお前…ちっと顔洗ってこい!!」



------------------

女海賊「ホムちゃん笑ってみて?」

ホムンクルス「こうでしょうか?オホホホホ」

女海賊「なんか違うな」

ホムンクルス「ウフフフフ」

女海賊「いぁ顔が笑ってないんだって…」

ホムンクルス「突然笑ってと言われましても…」

女海賊「じゃぁこれは?こちょこちょこちょ…」

ホムンクルス「…」ビク ビクビク

盗賊「ぶっ…ぐははは!なんだその引きつった顔は!!ぐはははは…」

女海賊「ホムちゃん…あんた反応がいちいち変なんだよ…ガマンしなくて良いから」

ホムンクルス「はい…はぁはぁ」

女海賊「疲れた顔は出来んじゃん」

盗賊「顔真っ赤になってんなw」

ホムンクルス「動悸を抑える為に血流を…」

女海賊「そそ…そういう自然な感じ」

商人「僕も混ざろうかな?」

女海賊「おっけ!掴まえておくからやって」グイ

商人「フフフフフフフフフ…こちょこちょこちょ」

ホムンクルス「あ…いや…やめてくだ…」バタバタ ゴン

商人「いでっ!!鼻ぶった…」タラー

女海賊「ぶっ…あんた変態の顔してるよ」

ホムンクルス「はぁはぁはぁ…すみません…はぁはぁ」グター

女海賊「なんで鼻血が左右交互に出んのブハハハ」

ホムンクルス「フフどういう現象でしょうか?」

女海賊「お!!ホムちゃん今笑った!!」

『夜』


リン ゴーーーーーーン


女海賊「来たね…皆行くよ」

近衛「あの飛空艇は皆さんの船だったのですね」

女海賊「目立ち過ぎるからなかなか降りられないんだよ」

近衛「アサシン様を追って南へ行くのでしょうか?」

女海賊「まぁそうなるかな?なんで?」

近衛「フィン・イッシュ女王様への伝令を飛ばさなければと思いまして」

盗賊「俺達の行動がツーツーになる訳だが…」

女海賊「ふ~ん…まいっか…いちいち気にしてるとキリ無いさ」

商人「迷惑にならなきゃ良いけどね…ほら僕たちは海賊って事になってるじゃない?」

女海賊「近衛!私達の事は女王以外に知られない様に気を付けた方が良いよ…女王が危険になるよ」

近衛「はい…承知しております」

女海賊「それと…まだ前の領事がうろついてるからさ…ここも安全じゃ無いのは知っといた方が良いよ」

近衛「それも把握しております」

女海賊「じゃいっか…エリクサーの樽一個降ろしていくからさ…領事に盗まれない様にね」

近衛「はっ…」

女海賊「ほんじゃ皆早く飛空艇に乗って…長居すると良くない」

ローグ「あねさ~ん早く乗ってくれっすぅ!!」

女海賊「ローグ!!エリクサーの樽一個降ろして」

ローグ「アイサー」ヨッコラ

近衛「ご支援感謝いたします」

女海賊「じゃ…バイなら~」ノシ

近衛「お気をつけて」ビシ


フワリ シュゴーーーーーーー

『飛空艇』


ビョーーーーウ バサバサ


盗賊「雪がひでぇな…雲の上に出た方が良さそうだが?」

女海賊「下が見えなくなるじゃん」

盗賊「商隊の列を気にしてんのか?」

女海賊「それ以外にあると思う?」

盗賊「まぁ確かに商隊はえらく多いな…なんで又寒い北に行くのやら」

商人「シャ・バクダは割と雪が少ないよ」

盗賊「貴族が乗る馬車も移動してるが疎開か?」

女海賊「光る海から遠ざかろうとして居ないかな?シャ・バクダは川も無いし」

商人「その可能性はあるかもね…」

盗賊「悪い奴らはシャ・バクダに集まるってか…まぁ昔からそんな感じだが」

女海賊「シャ・バクダの周辺は他の遺跡も多かったよね?」

盗賊「たしかに色々あるが…情報屋!他になんかあるんか?」

情報屋「伝説はあるけれど場所は分かって居ないわ…ほらドリアード伝説とか」

商人「砂漠西部の砂嵐地帯もいろいろ伝説あるらしいね?」

情報屋「出土品の盗掘で場所が特定できていないらしいわ…雪に埋もれてもっと探しにくいでしょうね」

盗賊「なんで他の遺跡なんか気にすんだ?」

女海賊「シャ・バクダに行っても何も無いからさ…他に何か在んのかなってさ」

商人「そういえば黒の同胞団は拠点が何処なのか分からないね」

女海賊「地図見て…シャ・バクダが此処で…周りに何も無い」

情報屋「そうね?どうしてあそこに人が集まるのかしら?」

盗賊「そら商隊が多いもんだからよ…あと麻薬だな」

商人「ケシの原産は南の大陸の方だね…北の大陸にはあまり分布していないのにどうして?」

情報屋「錬金術…」

盗賊「材料はなんだか知らんが麻薬は多いな」

情報屋「シャ・バクダの錬金術がどこかに残されているのかもしれない」

盗賊「こんだけ人が移動してりゃその内しっぽ出しそうだな?」

『セントラル上空』


ビョーーーウ バサバサ


盗賊「すっかり雪に覆われたな…」

ローグ「あねさん!!かしらの船が入船してるみたいっす!」

女海賊「え!?マジ?」

ローグ「あのでっかい貨物船は間違いないっすね…ドラゴンの義勇団の旗印もあるっす」

盗賊「それにしてもこの光る海は眩しくて見れんな」

ローグ「そーっすね…こんなに太陽反射するんすね」

盗賊「飲むとやっぱ塩辛いのか?」

ローグ「後で飲んでみやしょう」

女海賊「ローグ!お姉ぇの船の船尾に飛空艇降ろしてハイディングして」

ローグ「アイサー」


フワフワ ドッスン


船乗り「おかえりなせぇ」

女海賊「お姉ぇは?」

船乗り「船降りて2日程もどってねぇす」

女海賊「何処に行くか言って無い?」

船乗り「俺ら待機命令だけなんで何も…」

女海賊「他の船員は?」

船乗り「見ての通り一緒に降りて行っちまいました」

女海賊「どうすっかな…」

盗賊「上から見た感じまだ津波の被災後だからここに居た方が良いんじゃ無ぇか?」

女海賊「んんんお姉ぇが帰って来たら私しか話出来ないしな…ローグ!!盗賊と一緒に様子見て来て」

ローグ「あねさんは留守番でやんすか?」

女海賊「しょうがないじゃん!お姉ぇと入れ違いになるかも知んないし」

盗賊「まぁ大人しく待ってろ…剣士連れて行っても良いか?」

女海賊「…なんか心配なんだけど」ジロリ

盗賊「黒死病の手当ては剣士しか出来んだろ?」

女海賊「夕暮れ前に必ず戻って」

盗賊「分かってるって…俺ら3人はハイディング出来るから何かあっても大丈夫だ」

女海賊「フン!早く行ってきて」

『夕方』


盗賊「戻ったぜ?」

女海賊「お姉ぇ!!無事?」

女戦士「お前たちが来て驚いた…剣士が元に戻って何よりだ」

女海賊「セントラルはどうなってんのさ!?」

盗賊「あぁ行か無ぇ方がいいぜ?クーデターに巻き込まれる」

女海賊「又人間同士争い始めようっての?」

女戦士「貴族居住区で市民が立て籠っているのだ…どうやら王国側とにらみ合っている」

女海賊「黒死病はどうなってんの?エリクサーのレシピを国王に届けたんだけど…」

女戦士「それは知らんが病気はまん延しているぞ?私達は中央で市民の救援をしていた所だ」

盗賊「フィン・イッシュも救援に動いて居るんだが貴族居住区で立て籠もってる奴らがどうにも動かんらしい」

ローグ「貴族居住区で麻薬を配ってるっぽいすねぇ」

女海賊「市民を麻薬漬けにしてるって事?」

盗賊「あぁだからお前は行かない方が良い…貴族居住区は昼間から乱交になっている」

女海賊「…ちょっと状況分かんない」

盗賊「素っ裸な女がそこら中に転がってんだよ!復興なんかまるでやる気無ぇ…昼間からヤリっ放しだ」

女海賊「何それ…なんでそんなんなっちゃってんのよ…」

女戦士「麻薬漬けになって居るのは衛兵も同じだ…だから手を出せんのだ」

ローグ「地道に中央で復興しようとしてる人を助けるしかないっすね」


商人「こういう事かな?貴族院は麻薬で支持基盤を得ている…」

女戦士「その通りだ…支持基盤の強い貴族院に王国は抑え込まれているのだ」

商人「光る海で危機感を持った魔王の欠片が足掻いた結果だね…こんな風に人を扇動する」

盗賊「領事と同じ様にくさった奴のやる事だな」


女海賊「麻薬は何処にあるか分かる?全部燃やしてやる」

女戦士「それを調べるのは少し時間が掛かるぞ?」

盗賊「やめとけ…麻薬は一か所になんか置かねぇ…もうまん延してんだ探せる訳無ぇ」

女海賊「…分かった…作戦変える」

女戦士「言ってみろ」

女海賊「アレ見て…セントラル城の横にある鐘楼…あの鐘を鎮魂の鐘に付け替える」

盗賊「おぉ!?それなら出来そうだな」

女海賊「今日の深夜あの上まで飛空艇で行ってロープで鎮魂の鐘を降ろす」

盗賊「おいおい…まさか俺にロープで鐘楼まで行って付け替えろとは言わんだろうな?」

女海賊「確か捕虜だったよね?これが成功したら解放したげる」

盗賊「マジかよ…俺一人じゃ無理だ支え手が必要だ」チラリ

ローグ「…」ゴクリ

女海賊「…」チャキリ

ローグ「わーったすわーったっす…そのデリンジャーは仕舞って下せぇ」

『深夜』


フワフワ


ローグ「鐘を降ろすでやんす」ソロソロ

盗賊「俺も降りるから後からローグも降りて来い」スルスル

女海賊「あんた達降りたらハイディングするから自力で登って来て」

ローグ「あっしも降りるっす…あねさん頼んますよ?」スルスル

女海賊「ハイディング!」スゥ



------------------



盗賊「吊るしてある鐘はどうやって付いてる?」

ローグ「金具に引っかかってるだけでやんす」

盗賊「よし…さきにそいつ外すぞ…反対側持て…むむむ」

ローグ「重いっすねコレ」

盗賊「鉄の塊だ重いに決まってる…おととと…落とすなよ?」

ローグ「ここに一回置くでやんす」ゴト

盗賊「ふぅ…まぁ2人でやれば余裕か…」

ローグ「鎮魂の鐘引っ張るでやんすよ?受け取って下せぇ…よっ」グイ

盗賊「もうちょい強く引っ張れ…手が届かん」

ローグ「ほいさー」グイ

盗賊「ととととと…くっそ重めぇ」グイ グイ

ローグ「こっちに引っかけて下せぇ」

盗賊「ぬぉらぁ!!」ゴトリ

ローグ「あっしは反対側に回るでやんす…」

盗賊「よしいくぞ?しっかり支えろよ?おらっ…むむむ」グイ

ローグ「くぁぁぁこの鐘の方が重いっすね…ふん!」グイ

盗賊「引っかかってるか?」

ローグ「大丈夫っす…そのままゆっくり降ろして下せぇ…」

盗賊「だはぁぁ…ロープ抜くぞ?」

ローグ「元の鐘は持って帰るんすか?」

盗賊「当たり前だろう!こんな所に置いてったら目立っちまう」グイグイ ギュー

ローグ「終わりっすね?あっしは先に上に上がるでやんす」スルスル

盗賊「おう!俺も行く…」スルスル

ローグ「なんか登りの方が長いっすねぇ…かなり登った筈なんでやんすが…」エッホエッホ

盗賊「俺ら狭間に迷ってんなこりゃ…」

ローグ「ロープで繋いでるのに迷うとか…嫌んなりやすねぇ」

盗賊「はぁぁぁぁぁ登るしかあるめぇ…」



-------------------

盗賊「だはぁぁぁぁぜぇぜぇ…ローグ…無事か?」

ローグ「ひぃひぃ…もう手が動かんでやんす」

女海賊「遅っそい!!」

盗賊「俺らロープ登んのに狭間に迷ってずっと登ってたんだよ…はぁはぁ」

ローグ「鐘の付け替えは5分で終わったでやんす…あとずっと登ってたんすよ…ひぃひぃ」

盗賊「ちと元の鐘はロープにくくってあるから適当に処理してくれ…俺は寝る!」

ローグ「あっしも休むっす」

女海賊「上手く行ったんならまぁいっか…戻る」

盗賊「ヌハハハこれで俺は自由の身だ…ムハハハ」



『翌朝』


リン ゴーーーーーーン


女海賊「フフ鳴ってんね」

女戦士「私は中央まで支援に行って来るがお前はどうする?」

女海賊「私も行ってみようかな?」

女戦士「来るならお前のその派手な格好はヤメロ…目立ち過ぎる」

女海賊「私にぼろ布着ろって?ムリムリ…」

女戦士「なら来るな…代わりに父にミスリル銀を返してきてくれ」

女海賊「パパは今どこに居んの?」

女戦士「名も無き島の沖で船団を組んでいる筈だ…探せるだろう?」

女海賊「お姉ぇはミスリル銀を流通させに来たんじゃないの?」

女戦士「買い取る予定の者と連絡が取れん…恐らく王国の人間だがコンタクト出来んのだ」

女海賊「オリハルコンの事もあるし一回パパん所に帰るかな…」

女戦士「剣士と未来を連れて3人で行ってみてはどうだ?」

女海賊「分かった…ダッシュで行って来るよ…戻るまで1週間かな?」

女戦士「こっちは時間が掛かりそうだゆっくりして構わん」

女海賊「おっけ!エリクサー置いて行くからさ上手い事使って」

女戦士「それは助かる」

『貨物船居室』


シュゴーーーーー


ローグ「あれ?飛空艇が飛んでいく音…あねさんどっかいったんすかねぇ?」

盗賊「んぁ?つつつ腕が張って痛てぇ…昨夜はひどい目に合った」

ローグ「でもベッドで寝られるのは良いでやんすねぇ」


ガチャリ バタン


女戦士「さぁお前等起きろ!今は猫の手も欲しいのだ…中央へ行くぞ」

盗賊「女海賊の次は女戦士かよ…」

ローグ「さっき飛空艇が飛んで行った様でやんすが何かあったんすか?」

女戦士「女海賊はミスリル銀の輸送で飛んでもらった…剣士と未来も一緒だ」

盗賊「おぉぉやっと捕虜解放されたか」

女戦士「残念だが次は私の捕虜だ…しっかり働いて貰うからな?」

盗賊「商人は何処行った?」

女戦士「先に起きて食事をしている…情報屋とホムンクルスももう起きて居るぞ?」

盗賊「俺らは昨夜遅くまで働いたんだよ…ちっと休ませてくれよ」

女戦士「ダメだ…今は男手が欲しい」

盗賊「て事ぁ重労働だな?」

女戦士「瓦礫の撤去と言えば分かるか?」

盗賊「マジかよ…」

女戦士「情報屋とホムンクルスは黒死病の手当てに回ってもらう予定だ」

盗賊「くっそ…女海賊…あんにゃろう上手く逃げやがったな」

女戦士「文句言って無いで早く飯を食え…食ったら行く」

盗賊「へいへい…」

『セントラル中央広場』


私達はフィン・イッシュ軍の邪魔にならない様に後方支援に専念する

テントを設営して炊き出しを1班

怪我人と黒死病の手当てに2班

手の空いた者は瓦礫から木材を収集してくれ


盗賊「俺らはテント設営だな」

商人「僕は木材収集だ」

ローグ「いやぁぁ働いてる人にセントラルの衛兵が一人も居ないのは異様でやんすね?」

盗賊「おかげで自由ではあるがな?」

商人「本当に変だね?女戦士はセントラル側と何か話出来て居るのかな?」

盗賊「フィン・イッシュとは協調しようという話は出来てるらしい」

商人「じゃぁフィン・イッシュがどういう話をしているかだね?」

盗賊「んんん…マジで異様だな」


リン ゴーーーーーーーン


ローグ「なーんか鐘の音がむなしいっすねぇ…苦労して取り換えたんですがねぇ…」

盗賊「ちったぁ中央に人が戻るのを期待していたが…昨日と変わん無ぇ」

商人「貴族居住区まで見て来たんだよね?」

盗賊「あぁひどいもんだ…薬漬けの女が股開いて泡吹いてる…そんなんがそこら中に居るぞ」

商人「それでどうして体制が保てるのか理解できない」

盗賊「俺らが近寄ろうとすると狂った民衆が騒ぎ始めるんだ…ほんで大乱交よ…殺す訳に行かねぇから手も出せん」

商人「…それさ…人間の本能じゃないかな?」

盗賊「麻薬のせいでか?」

商人「自我を無くすとそういう行動をするんじゃないかってね」

盗賊「自制する部分が無くなるってか?…まぁそうかも知れんな」

商人「死人がどれくらい出てるんだろう?」

盗賊「さぁな?欲望が満たされている内はまだ良いんじゃねぇか?」

商人「ソコだよね…満たされなくなった時にどう行動するんだろう…」

盗賊「薬の切れ目は確かに暴れ出すな」

商人「なんだかシャ・バクダのカタコンベはこうやって出来た気がする」

盗賊「お前不吉な事言うのな…」

『昼』


リン ゴーーーーーーン


女戦士「よし!1班は小休止だ!…炊き出しが出来上がって居るから食事をしておけ」

盗賊「ふぅぅぅローグ!!休憩だとよ」

ローグ「アイサー」

商人「船で働くのより随分ラクだね」

盗賊「だなぁ!?慣れりゃどうって事無ぇ」

ローグ「盗賊さん見て下せぇ…セントラル城の内郭上っす」

盗賊「んぁ?何か見えるか?」

ローグ「でかい鎧着た…なんなんすかねぇ?衛兵にしちゃデカ過ぎやしやせんか?」

商人「本当だね?魔物みたいに大きい」

ローグ「なんか…のたうち回ってる様ですが…やっぱ魔物っすかねぇ?」

盗賊「大きさ的にミノタウロスだな…女戦士!何か知らんのか?」

女戦士「私は陸に上がってまだ3日目だ…お前達とさして変わらん」

盗賊「俺ぁ船まで戻って望遠鏡持ってくる」

女戦士「アレは私の物だ!傷つけるなよ?」

盗賊「分かってる分かってる…すぐ戻る」ダダッ


--------------------


盗賊「持ってきたぜぇ」タッタッタ

女戦士「貸せ!私が確認する」

盗賊「んだよ…やっぱお前も気になってんじゃねぇか…ホレ」ポイ

ローグ「かしらも本当はあねさんにそっくりなんすよウヒヒ」

盗賊「んで?あのでかい奴は何だ?」

女戦士「ラットマンの様だな…亜種か?」

盗賊「俺にも見せろ!」

女戦士「フン!壊すな?」ポイ

盗賊「…どれどれ…ほーーう間違い無ぇありゃラットマンリーダーだな…どうやって手懐けたんだか」

女戦士「セントラルには魔物使いが居ると言うのか?」

盗賊「かもしれんな?あんなんが城守ってたらそりゃ近付け無ぇわ」

女戦士「察するに王国側にラットマンリーダーが居てその他衛兵は貴族院側と言う構図か」

盗賊「衛兵全部貴族院側って訳でも無さそうだぜ?精鋭兵が城周辺に鎮座している」

ローグ「あっしにも見せてくだせぇ…」

盗賊「ほい…」ポイ

商人「なるほどね…多分戦力的には王国の方が上なんだ…貴族院は民を人質にしてるのさ」

盗賊「それじゃぁ国力が衰退するばっかだな」

商人「貴族は国力なんかもうどうでも良いんだよ…だから商隊で少しづつ逃げてる」

盗賊「民は捨て駒か…ゲスい」



---------------------

女戦士「フィン・イッシュからテントの増設依頼が来た…貧民街でテントを展開しろ!」

盗賊「軍隊でも来るんか?」

女戦士「今晩何かの作戦をやるらしい」

盗賊「俺らはどうすんだ?」

女戦士「後方支援のみだ…詳しい話は聞けて居ない」

ローグ「あっしら立場弱いっすねぇ」

女戦士「いや…そうでもない…テントでの支援が最重要課題だと聞いた…後日フィン・イッシュの指揮官が来るそうだ」

盗賊「ほぅ?見た感じフィン・イッシュも民兵ばかりな様だがな?」

ローグ「そーっすね装備がショボイっすね」

女戦士「支援部隊に重装備など要らぬのでは無いか?」

盗賊「そらそうだがロクに武器も持って無さそうだが?」

商人「セントラルと衝突が起きるかどうか分からないけど…一瞬で駆逐されそうだね」

盗賊「どんな作戦か知らんが下手にセントラルの衛兵刺激すんのはどうかと思う」

女戦士「すでに私が話を引き受けて居るのだ…大人しく従え」

盗賊「へいへい…」

『夜』


コソコソ コソコソ


盗賊「マジでこんな軽装で奇襲すんのか?有り得ん…」

女戦士「黙って見ていろ…」タラリ

盗賊「農民一揆でももうちっとマシな武器持ってんぞ?」

ローグ「盗賊さん…万が一の時はハイディングして逃げやしょう…」

盗賊「俺らは後方で見てるだけで良いんだな?」

女戦士「荷を運ぶ役だ…大人しく待て」

ローグ「気球が一基飛んで行くっす…えらい小さい気球っすね?」

盗賊「何する気だ?」

ローグ「なんか霧が出て来やしたねぇ…」

盗賊「ん?おいおいおい気球は通り過ぎてくんじゃ無ぇか…何しに来たんだあの気球は」

ローグ「関係無かったでやんすか…」

女戦士「フィン・イッシュが動き始めた…見ていろ」

盗賊「このまま突撃?…アホかあいつら…」

ローグ「マズイっすねぇ…マズイっすねぇ…衛兵暴れ出すでやんす…」ハラハラ


コソコソ コソコソ

馬車に何人入る?

15人が限界だ

傷付けない様に並べろ

布を被せておけ

コソコソ コソコソ


女戦士「よし!馬車で貧民街まで荷を移送して戻って来い!2人1ペアでやれ」

盗賊「ローグ行くぞ…俺が馭者やる」グイ ヒヒーン

ローグ「アイサー」ゴトゴト

盗賊「裸の女と子供ばかり…皆寝てる様だがどうなってんだ?」

ローグ「どうやって連れ出したんすかね?不思議な作戦でやんすね?」

盗賊「みんな黒死病掛かってんな」

ローグ「早い所処置した方が良いっすねぇ…うっは」チラ

盗賊「おい!荷を覗くな」

ローグ「黒死病の具合を確認してるでやんすウヒヒ」チラ

盗賊「着いたぞ!!荷を下ろす…お前は頭側を持て」グイ

ローグ「アイサー」

盗賊「商人!!荷を下ろすの手伝え」

商人「上手く行ってるみたいだね?」

盗賊「馬車でどんどん運ばれてくるから他の奴らにも言っておいてくれ」

商人「女の人ばっかりなんだね?」

盗賊「知るか!!ちゃんと見えない様に布被せておけ」

商人「うん…」

盗賊「降ろしたら次行くぞ!!早くしろぉ!!」


------------------

女戦士「今日はこれで最後だ…撤収する」

盗賊「まだ1時間しか経ってないじゃ無ぇか…いいのかこんなに早く終わって」

女戦士「撤収指示だ…従え」

盗賊「しょうが無ぇな…俺らだけで100人運んだってとこか…合計で500ぐらいか?」

女戦士「テントの空き状況はどうだ?」

盗賊「まだ空いて居るが…数日続くなら増設した方が良いな」

女戦士「ふむ…これは船で隔離するには数が足りんな」

盗賊「ん?女と子供を船に乗せるんか?」

女戦士「まだ指示は出て居ないが恐らくそうなるだろう」

盗賊「薬の切れ目か」

女戦士「そうだ…徘徊されては収集が付かない」

盗賊「女子供が居なくなって男共は騒ぎだすんじゃ無ぇか?」

女戦士「薬漬けでそこまで頭が回るのか?」

盗賊「うーむ…先が読めんな…セントラルがどこまで統率されてるのかも謎だ」

女戦士「しかし…子供にまで麻薬を使っているとは…」

盗賊「集団心理だな…それが普通という状況が出来上がっちまってる」

女戦士「人道から外れ過ぎだ…見て居れぬ」

盗賊「だな…狂ってる」

『翌朝_貧民街テント』


ああ~ん あ…あ あふ~ん


盗賊「こりゃ目に毒だ!どうすんだコレ!!」

ローグ「麻薬って怖いっすね…自慰を止める気配無いでやんす」

女戦士「薬は2~3日抜けない…その後が修羅場だ」

盗賊「暴れてる女どうすんだよ」

女戦士「私に言わせるのか?棒でも与えておけ」

情報屋「エリクサーの備蓄はまだある?」

女戦士「足りないのか?」

商人「フィン・イッシュ軍の方にも必要なんだってさ…あっちは持って無いらしい」

ホムンクルス「精製しましょう…私がレシピを書きますので材料を集めて下さい」カキカキ

ローグ「確かクヌギの樹液でやんしたかね?」

ホムンクルス「はい…出来るだけ沢山集めて下さい」

女戦士「船首に置いてある気球を使って集めて来い…あと水が足りんから樽を集めて汲んでくるんだ」

ローグ「アイサー…他に集めにくい材料ってあるんすかね?」

ホムンクルス「純度の高いアルコールが入手困難かと思われます」

女戦士「ふむ…フィン・イッシュ軍船にあるか聞いてみる」

情報屋「今のエリクサー消費量だと持って3日だから急いで」

女戦士「回復の出来る剣士を行かせたのはマズかったな…」

商人「そうだね…麻薬で紛らわされてるけれどかなり衰弱しているよ」

女戦士「やはり食事は口にせんか?」

商人「ダメだね全然食べない…性欲が食欲を抑え込んでる」

ホムンクルス「女性は麻薬に依存しやすい体質ですので緩和ケアを継続する必要があります」

盗賊「あああダメだダメだ!目に毒だ…ローグ!材料集めに行くぞ!!」

ローグ「アイサー」

『東の森』


ローグ「こっちのクヌギにも切り込み入れたっす」

盗賊「よし!これで今晩もう一回採集に来よう」

ローグ「結構沢山採れたでやんすね?これでどのくらいのエリクサーになるんすかね?」

盗賊「出来るだけ沢山欲しいって言ってたからな…相当少なくなるんじゃ無ぇか?」

ローグ「もう少し採集する範囲を広げた方が良いかもしれやせんね?」

盗賊「水汲んで一旦戻って量を聞いてみるか」

ローグ「水は集めるの簡単っすね」

盗賊「何往復かせんと全然足りんぞ?女はやたらと水を消費するからな」

ローグ「あー汚れ落としっすね?」

盗賊「海水で洗うのを嫌がるからしょうがねぇ」

ローグ「雪を集めて汚れ用の水にするのも良さそうっすね」

盗賊「んむ…そうなると次は薪が必要だ」

ローグ「森までちょいと距離あるんで木材調達が課題になりそうでやんす」

盗賊「まぁまずは瓦礫の中に混ざった木屑の消費だな…散らかりっ放しじゃテントも張れん」

ローグ「よっし…これで最後の樽っす…どっこいせ!」

盗賊「んじゃ一旦戻るぞ」


フワフワ

『貧民街』


ギャー ギャー


盗賊「クヌギの樹液採って来たぜ?」

ホムンクルス「はい…ありがとうございます」

盗賊「これだけの量でどんくらいエリクサー作れる?」

ホムンクルス「瓶で4つ程でしょうか…」

盗賊「マジか…そんなに減るんか」

ホムンクルス「一本の大きなクヌギの木から一日で樽に三分の一ほど採集可能ですので工夫してみてください」

盗賊「仕掛け作らんといかんな」

ホムンクルス「金属糸を上手に使って樹液が伝うように作ると良いです」

盗賊「なるほど…ところでテントの女達が騒いでいる様だがどうした?」

ホムンクルス「重度の依存症の方を船の方へ移送しようとしています」

盗賊「依存症ってアレか?性的なやつか?」

ホムンクルス「はい…女性は一度極限の快楽を経験してしまうと元に戻るのは難しいのです」

盗賊「ふむ…人権尊重するなら隔離が良いか」

ホムンクルス「拘束したくはありませんが自殺を防ぐには必要な処置です」

盗賊「そんなに我慢できんもんかね…」

ホムンクルス「麻薬を投与して以来24時間ずっと性的絶頂を継続していた人が突然終われると思いますか?」

盗賊「想像出来んな…」

ホムンクルス「そういう人が重度の依存症になって居るのです」

盗賊「後遺症が残りそうだが…」

ホムンクルス「ですから長期間の緩和ケアが必要になります」

盗賊「長期戦か」

ホムンクルス「はい…私達だけでは対応が困難ですのでフィン・イッシュ国の援助が必要と思われます」

盗賊「それは女戦士に伝えたのか?」

ホムンクルス「はい…伝えました」

盗賊「こりゃ想像以上に大変だ」

ホムンクルス「そうですね…」

盗賊「よし!俺ぁもっかい森まで飛んで来る」

ホムンクルス「はい…お気を付けて」

『東の森』


盗賊「よく見てろ?木の切り込みから金属糸で樽まで導く…これを一本の木で複数個所やるんだ」

ローグ「へぇ…ホムンクルスの提案でやんすか?」

盗賊「クヌギ一本から1日で樽に三分の一溜まるらしい」

ローグ「…という事は30か所仕掛けを作れば毎日10樽っすね?すごいっすね?」

盗賊「10樽在ってもエリクサーになるのは1樽程度か?もちっと頑張らんと底ついちまうな」

ローグ「やり方わかったんであっしも向こうで仕掛け作ってくるでやんす」

盗賊「おう!今日は仕掛けの設置で終わりそうだな」

ローグ「樽が足りないんで後で持ってきやすね?」

盗賊「頼む…あと食い物も少し持って来てくれ」

ローグ「アイサー」



『夕方_中央広場』


盗賊「商人!探したぞ…こっちに居たのか」

商人「あぁおかえり…樹液の採集は済んだ?」

盗賊「今日は仕掛けを設置して終わりだ…お前は何やってるんだ?」

商人「テントの方は男子禁制になったんだ…僕は木材を集めてるよ」

盗賊「男子禁制はしょうがねぇな…女達は正気失ってるが一応一人の人間だしな…尊重せんとイカン」

商人「そうだね…僕も間近に見て不遇に思ったよ」

盗賊「女戦士は何処に行ったか知らんか?」

商人「昼から見て無いなぁ…船に戻ってないかな?」

盗賊「俺は今気球を船に置いてきた所だ…船には居ねぇ」

ローグ「あ!!居た居た!!ニュースっす!!」

盗賊「おぉどうした?慌てて」

ローグ「昨日の夜に見た小さい気球があっしらの船の前に降りたっす…ありゃ多分フィン・イッシュの指揮官っすよ」

盗賊「マジか!!おい商人戻るぞ!!」

商人「うん…あー木材持つの手伝って」

盗賊「あぁこれな?ローグも持て!」ガッサ

ローグ「アイサー」ガッサ

『貨物船』


タッタッタッ


盗賊「女戦士は戻ってるか!?」

船乗り「居室に入って行ったでさー」

盗賊「他に誰か居るか?」

船乗り「フィン・イッシュの人が4人来てまさー」

盗賊「4人?…」

商人「勝手に入るとマズイかもね?」

ローグ「どうしやす?ここで待ちやす?」

盗賊「聞き耳立てるくらいは良いだろ…行くぞ」コソコソ

商人「ハハ…泥棒歩きになってるじゃないか」

盗賊「お前も隠密の仕方くらい覚えろタワケ」

ローグ「何か聞こえやすか?」


私はこの船を商船だと思っていたのだ…まさかお前の船だとは思いもしなかった

この2人は?

紹介が遅れたな…こっちが案内人…私達の道先案内と言った所か

そして彼がセントラル第2皇子だ…今は隠れの身だ

改めて…私はドワーフの国の第一王女だ…よろしく

聞いて居るよ…君の事も妹君の事も

主らは挨拶が堅いのぅ

身分の在る者同士どうしてもこういう挨拶になるか

さて…互いが身内と分かったのじゃ…わらわ達が何をしようとして居るのか話してもよかろう?


盗賊「わらわ?こりゃ魔女じゃ無ぇか!?」

商人「ハハ…入っても良さそうだね?」


ガチャリ 


魔女「おぉ主らも居ったか…商人は大きゅうなったのぅ」

商人「やぁ!魔女は変わって無いね?」

魔女「わらわとアサシンは7年の時を超えてここに居るのじゃ」

商人「時を超える?」

魔女「分かりづらかったかのぅ…先の闇の時から7年未来へ飛んだのじゃ…じゃから主と会うのはわらわにとって1年振りじゃな」

商人「え!!タイムワープ…それが可能という事は…」

アサシン「まぁ話は長くなる…この船には他の仲間は居ないのか?」

女戦士「情報屋とホムンクルスが貧民街で救助した女子供の介抱をしている」

アサシン「魔女…先に貧民街を眠らせた方が良さそうだな」

魔女「そうじゃな…話をする前にちと仕事じゃ…付いて参れ」

『貧民街のテント』


あ~ん いくいくぅぅ あああ


魔女「女子供を介抱している者をここへ呼んでくるのじゃ」

女戦士「分かった…」

盗賊「ここの状況は分かってんだよな?」

魔女「知って居る…じゃから全員眠らせるのじゃ」

盗賊「なるほど…昨日の貴族居住区も全部眠らせた訳か…恐ろしく便利な魔法だな」

アサシン「うむ…しばらくはこの方法で眠らせるのが良策だと判断している…栄養補給がエリクサーになってしまうが…」

女戦士「連れて来たぞ…他の者も退避させた」

魔女「では魔法を詠唱する」アブラカタブラ クラウドコントロール メスメライズ

魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク


スヤ スヤ


女戦士「おぉ…声が収まった…」

ホムンクルス「この方法は体力回復にとても良いですね…」

情報屋「これで少し休めるわ」

女戦士「この睡眠はいつまで持つのだ?」

魔女「多くの者は明日の朝まで寝て居るじゃろうが…折をみてまた魔法を掛け直すで心配せんでも良い」

アサシン「これで落ち着いて情報交換が出来るな?船に戻って少し話そう」

『貨物船』


カクカク シカジカ


魔女「…という訳じゃ」

女戦士「という事はセントラルは時の王という貴族に牛耳られていると見て良いのだな?」

アサシン「時の王は背後に座っているだけなのだが結果的にそういう事になって居る」

女戦士「それで貴族の解体をやろうという訳か」

アサシン「こちらにも質問がある…黒の同胞団の事だが」

盗賊「おぅ…多分時の王とも繋がってそうだな」

アサシン「領事がシン・リーンの元老院の一人だという事だが身分証はあるか?」

商人「あるよ?これさ…」パサ

アサシン「魔女…分かるか?」

魔女「信じられん事じゃがこの身分証は本物じゃ…これを発行出来るのはわらわの母上と父上だけじゃ」

アサシン「国王が絡むとなると相当根が深いと言わざるを得ん」

魔女「父上は元老院と繋がりが深いのじゃ…元老院制を推したのも父上じゃ」

アサシン「元老院は立場上魔術院の上に当たるな?つまり魔術師を使役できるという事だな?」

魔女「そうじゃ…魔術院の最高位はわらわじゃ…わらわが不在という事は元老院が実権を握って居る」

情報屋「魔術院の中に錬金術に秀でた者は?」

魔女「居る…シャ・バクダ錬金術の研究に熱心な者が居った」

情報屋「繋がるわね…麻薬の出所が」

アサシン「活動拠点に心当たりは無いか?」

魔女「シャ・バクダに派遣した8人の魔術師が居ったろう?その中の一人が錬金術に秀でた者じゃ」

アサシン「その魔術師の行方を追えば良いのだな?」

案内人「俺知ってるかも知れ無ぇ…女王に領事を紹介したのが魔術師の一人だった」

魔女「主は見ておったのかえ?」

案内人「俺は元々商隊長として領事の雇われだったんだ…領事と魔術師を連れてシャ・バクダ北の山麓まで行った事がある」

アサシン「地図で示せ…何処だ?」

案内人「ここだ…ミノタウロスがうろついて居て薬草が沢山生えている場所だ」

盗賊「そりゃ痛み止め用の薬草でケシが沢山生えている場所だな」

アサシン「なるほど…これで繋がったな…貴族共がシャ・バクダに移動している理由はそこに何かあるからだ」

魔女「魔術師が使う触媒の中にケシの実から抽出する物も多いのじゃ…その地は所縁が深いのぅ」



-------------------

魔女「リリスは海に沈んだのじゃな?」

盗賊「間違い無ぇ…クラーケンの触手に掴まって居たのがそのリリスって奴だな」

魔女「首はどうなって居るか見たのかえ?」

盗賊「羊の頭が付いていたが…なんでそんな事聞く?」

魔女「わらわの魔術書を見るのじゃ…ここじゃ…名をバフォメットと言う」

盗賊「おぉ!!これだこれ!!」

魔女「…」

盗賊「んん?どうした?」

魔女「落胆しておる…時の王がバフォメットの首を持って居るとは思わなんだ…最悪じゃ」

盗賊「でも光る海に沈んでるぞ?」

魔女「それで封印出来て居るのなら良いが…陸に上がってしもうては手が付けられぬ」

盗賊「どれぐらいヤバいのか俺は想像出来ん」

魔女「バフォメットは魔法が効かんのじゃ魔法では封印が出来ぬ…わらわは何も出来ん」

盗賊「女海賊の爆弾でドカーンとよ?」

魔女「リリスは実在する神と言って良い…その肉体は永久の再生力を持って居る…封印せぬ限り死ぬことは無いのじゃ」

商人「はぁ…嫌な話聞いちゃったね」

盗賊「放って置くと又誰か海から引き揚げる奴が出て来るってか?」

商人「あっちでもこっちでも片づけないといけない問題が集積しててどこから手を付けたら良いか…」

盗賊「魔女が探してる壺ってのも行方が分からんのだろう?」

魔女「時の王がとぼけて居る様じゃ…恐らく奴が持って居る」

商人「その壺に魔王を封じたっていう解釈で合ってる?」

魔女「魔王のすべてを封じたかどうかは分からん…じゃが魔王の器になりうる物は封じて居る」

商人「それがリリスの子宮という訳か…」

魔女「リリスは冥界の女王と言われておったそうじゃが同時に淫魔の神でもあるのじゃ」

商人「という事は今のセントラルのこの状況は…」

魔女「そうじゃ…間違いなくリリスの影響を受けて居る…性欲を貪るのはそのせいじゃ」

商人「分かったぞ…黒死病は性欲が押さえられなくなって性交で伝染しているんだな?」

魔女「血液の接触感染じゃな…性交も同じじゃ」



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女戦士「アサシン!貴族院の解体をどういう手順で考えて居る?」

アサシン「…まずは麻薬漬けになっている女子供の救出だ…今晩で若い女はすべて救出する事になる」

アサシン「貴族居住区に若い女が居なくなるとどうなると思う?」

女戦士「男共が徘徊する事になりそうだな」

アサシン「正解…貴族居住区から少しづつ民を引っ張り出すのだ」

アサシン「中央に出る民が増えて来出すと集団心理が働き貴族院から出て来る民の数が加速する」

女戦士「なるほど女を使って大衆扇動する訳か」

アサシン「衛兵を含む男達は麻薬への依存度が女に比べて相当低い…麻薬を断つのはそう難しくないのだ」

女戦士「では民が徐々に中央へ戻ると仮定して次はどうする?貴族を一人づつ暗殺でもするのか?」

アサシン「民の安全を確保した後に貴族院側にクーデターを起こさせる」

女戦士「私の見立てでは王国側の戦力の方が高い…逆に貴族居住区をせん滅した方が早いと思うが」

アサシン「それでは時の王の思う壺なのだよ…狙って居るのは時の王の失脚だ」

女戦士「ほう?如何に?」

アサシン「内郭に陣取っているラットマンリーダーを全滅させる…アレが居なくなるだけで貴族院側の衛兵は城へなだれ込むだろう」

女戦士「王国に城を放棄させるのか?」

アサシン「城はどうでも良い…肝心なのは民だ…国王自ら貧民街で民を支援する姿を見せるのだ」

女戦士「うーむ…どうも成功が見えん…そもそもラットマンリーダーをどう倒す?」

アサシン「お前たちが付けたあの鐘だ…あの鐘が鳴るとラットマンリーダーは戦闘不能になる」

女戦士「ふむ…それは行けたとして城に駐留する精鋭兵は500程度に見えるが貴族院側の衛兵の数には勝てんだろう」

アサシン「実はな…城から下水を通って海まで逃れられるのだ…つまり攻め入っても城は誰も居ないという状況になる」

女戦士「貴族院側を城に閉じ込めると言うのか」

アサシン「そうなるな…さて…民と共に要る国王を見て貴族院の衛兵にはどう映る?」

アサシン「背後にフィン・イッシュの軍船も控えて要るのだ…どうする?」

女戦士「正義を見失う…」

アサシン「それが狙いだ…そこまで来れば貴族院は力を失い絶対王政に戻る」

女戦士「セントラル国王とはコンタクト出来ているのだな?」

アサシン「それは間違いない…国王は我々の側に居る」

女戦士「いつ動かす?」

アサシン「フィン・イッシュの軍船2隻が女王を乗せてこちらに来る…それからだ」



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商人「魔女…話したい事があるんだ」

魔女「何じゃ?」

商人「魔女は未来にタイムワープしたと言ったよね?」

魔女「言うたのぅ…7年飛んだ様じゃ」

商人「実はね…僕はある仮説を考えて居るんだ」

魔女「言うてみぃ」


時間の話さ

今僕の自我が認識しているこの瞬間が時間の中心点だったとして

過去の出来事はすべて記憶と言い換える事が出来るよね?

それを記録した物が根の森に眠るオーブ…精霊の記憶さ

剣士の魂はどうやらそのオーブの中に居た様なんだ

そして勇者として行動していて恐らくその中で自我を持って居た

剣士にとっての自我が認識する時間はその中にあったという事だ

タイムワープと言うのはその記憶の中で自我が認識する地点を変えているだけと言い換える事も出来る


魔女「主が言いたいのは今いるこの世界も記憶の中では無いかと言いたいのじゃな?」

商人「そう!それが言いたい…それを否定出来る事が思いつかない」

魔女「それを探求する事こそ魔道じゃ…わらわにはまだ答えが出せぬ」

商人「そうか…魔女でも分からないか」

魔女「じゃがこれだけは言えるぞよ?量子転移という魔法で過去の記憶から空間を転移するのは可能じゃが…」

商人「うん…」

魔女「未来から空間を転移するのは出来んのじゃ…なぜなら記憶が無い」

商人「じゃぁこの世界が未来の記憶だった場合は?」

魔女「それは神のみぞ知る事じゃ」

商人「どうしてタイムワープ出来たの?」

魔女「次元の狭間に迷い込んでしもうてのぅ…望んで飛んだ訳では無い…事故じゃな」

商人「もやもやするなぁ…」

魔女「主は今ここに居るのじゃから今を精一杯生きれば良い」

商人「魔女はさぁ?その量子転移という魔法で過去に行く事が出来るの?」

魔女「可能かも知れんがそれ程簡単では無いぞよ?…次元の狭間に迷い何処に行くか分からんでな…」

商人「そっか…僕の思い違いか」



------------------

アサシン「今日は私も女子供の救出に参加する…エルフゾンビ!魔女の護衛は頼む」

エルフゾンビ「フフ任せろ」

アサシン「気球の操舵は案内人だ…昨日と同じ様に飛べ」

盗賊「俺らは馬車で移送だな?」

アサシン「そうだ…今日は馬車の台数が増えて居るから戦闘が出来る者は全員救出に回って欲しい」

女戦士「戦闘が出来る者?戦う想定で居るのか?」

アサシン「昨日の今日だ…多少の抵抗はあるかもしれん」

女戦士「こちらは民兵ばかりだぞ?衛兵相手には不利だ」

アサシン「抵抗する衛兵は堀に落とせば良い…なんとかしてくれ」

女戦士「では私が最前線に出ねばならんな」

魔女「抵抗が多い時はわらわが睡眠魔法を掛け直す故…そのつもりで居れ」

女戦士「魔法頼みか…」

アサシン「引き際の目安は2時間…これで女子全員の救出を目指す」

盗賊「その後貴族居住区から打って出てきたらどうする?」

魔女「睡眠から目覚めた者は夢じゃと思うておる…それほど頭は回らん筈じゃ」

盗賊「なるほど…便利な魔法だ」

アサシン「情報屋とホムンクルスはテントで救出された女子の手当てをしてくれ」

ホムンクルス「はい…」

女戦士「くれぐれも男共を入れない様にな?」

魔女「わらわが後で回復魔法をしに行くで与えるエリクサーの量は少なくて良いぞ?」

ホムンクルス「わかりました」

アサシン「では行くぞ!!」タッタッタ

『気球』


フワフワ


魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク

案内人「このままゆっくり周回でいいな?」

エルフゾンビ「内郭の壁からは距離を置いてくれ…弓で撃たれる可能性がある」

案内人「分かった」

魔女「セントラルの衛兵は気付いて居らんのかのぅ?昨日と変わりがない様じゃが…」

エルフゾンビ「いや…そうでも無いぞ?部隊ごとに分かれている」

魔女「寝てしもうては意味が無い」

エルフゾンビ「備えては要るがどうして女が少なくなったのかは把握していない様だな」

魔女「おかしいのぅ…貴族院側の指揮は誰がやって居るのじゃろうか?」

エルフゾンビ「む!ここには居ないという事か!?」

魔女「指揮する者はこの状況を把握せず一方的に命令を下して居りそうじゃのぅ」

エルフゾンビ「貝殻か!?」

魔女「うむ…その可能性が高い」

エルフゾンビ「しかし貴族全員居ないとは考えにくい」

案内人「貴族らしい人物は何人も貴族居住区で目撃されているらしいぞ?」

魔女「わらわの考えすぎかのぅ…」

エルフゾンビ「しかし相手が無策なのは今の所好都合だ」


---どうも気にかかるのぅ---

『深夜_貧民街』


スヤ スヤ


魔女「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

女戦士「魔女…アサシンが呼んでいるのだ…船に行ってくれ」

魔女「そうじゃな…ちと疲れたわい」

ホムンクルス「あとは私にお任せください」

魔女「日の出後に又くるで頼んだぞよ?」

ホムンクルス「はい…」



『貨物船_居室』


ガチャリ バタン


魔女「アサシンは居るか?何用じゃ?」ノソノソ

アサシン「来たか…実はな貴族居住区で建屋の中に入ったのだが様子がおかしい」

魔女「ほう?」

アサシン「貴族が何処にも見当たらないのと…貴金属のすべてが無い」

魔女「逃げられたという事じゃな?」

アサシン「どういう事だ?事前に忍び入った時にはまだ在った物が消えている」

魔女「…」

盗賊「他の建屋もカラだったぜ?」

アサシン「先日女子の救出に行った民兵も貴族の姿と資産を見ているのだが…今日はすっかり無くなっていると言う」

魔女「ふむ…魔術師が居った様じゃな」

盗賊「狭間に入って逃げたんか?」

魔女「その可能性もあるが資産をすべて運ぶのは難しいじゃろうて」

アサシン「他に心当たりがありそうだな?」

魔女「時限の門をくぐって過去を変えた者が居る様じゃのぅ…魔術師の禁じ手を犯した者が居る」

アサシン「時限の門?」

魔女「魔術師が修行をする精神と時の門というのが在ってな…それは時限の門の事を言うのじゃ」

魔女「時限の門はな…過去の自分に対峙するための門じゃ…そこで精神を鍛えるのじゃが…」

魔女「門をくぐりぬけてはならぬという掟がある…それを破った者が居るな…制裁せねばならん」

アサシン「それをくぐると過去に行くという事か?」

魔女「そうじゃ…魔力によって過去に行ける程度は変わるが…修行を積めば5日程度は戻れるのぅ」

盗賊「5日っちゃぁ俺達がここに来る前だな…そういや商隊で貴族の馬車を見た」

魔女「その中に紛れたのじゃな」

アサシン「私達はもっと前からここに居たのだが…はっ!勘違いしていたのか…女戦士の船から商隊が出て行ったと思っていたが…」

魔女「次元が交差しておるのぅ…記憶が塗り替わって行く前にメモに残すのじゃ」

アサシン「塗り替わる?」

魔女「そうじゃ貴族や貴金属がそこにあったという記憶が直にのうなる…今の目的も忘れてしまうやも知れんぞ?」

アサシン「分かった!今すぐメモに残す」

魔女「これで黒の同胞団の居所を何故掴めんのか分かったのぅ…巧妙に歴史を修正しとる」

アサシン「…それも書いておく」

『翌日』


盗賊「ホムンクルス!今日は樹液の収穫が大量だぜ!見ろ…10樽だ!!」

ホムンクルス「はい…大変助かりますが精製の方もお手伝いしてもらってよろしいですか?」

盗賊「おう!どうやるんだ?」


アレをこうして…コレをあーして


盗賊「こりゃ商人向けの仕事だな…商人来い!!エリクサー作るぞ」

商人「うん…良かったぁぁ薪運ぶのでクタクタだったんだ」

盗賊「ところでホムンクルスと情報屋は貧民街の方は良いのか?」

ホムンクルス「あちらは魔女様に任せて良い様です…私はエリクサーの管理ですね」

盗賊「情報屋は何やってんだ?料理か?」

ホムンクルス「栄養の付くスープを作って貰っています」

盗賊「みんな忙しそうだな…エリクサーは商人に任せて俺は中央行ってくるわ」

ホムンクルス「そうですね…」

商人「中央の方は今ゴタゴタしてるよ?」

盗賊「何かあったんか?」

商人「貴族居住区から少し人が出て来ててね…貧民街の方に行かせろとゴネてる」

盗賊「アサシンの狙った通りに進んでんな」

商人「これからバリケード作るって言ってたよ」

盗賊「そら大変だな…木材が全然足りん」

商人「だから僕はエリクサー精製の仕事が出来てホッとしてるのさハハ」


盗賊「おぉ!?見ろ…フィン・イッシュの軍船が2隻来てんな」

商人「え…あんな遠くなのに見えるの?」

盗賊「海を見るのはコツがあんだよ…おーやっぱ2隻だ…ナイスタイミングだなヌハハ」

商人「木材積んでると良いね」

『中央広場』


ぅぅぅ何で通さねぇぅぅう

何処に行こうが勝手だろう


民兵「こっちのテントで処置するから言う事聞いて下さい…」

男達「ぅぅぅ俺ら処置なんて要らねぇ…ぅぅぅ」

民兵「ったくもう!!」グイ

ローグ「盗賊さん!!良い所に来たっすね…運ぶの手伝って下せぇ」

盗賊「おう…こいつらゾンビみてぇだな」

民兵「黒死病が進行してるんで早く処置しないと長引くんですよ…でも言う事聞かなくて」

盗賊「結構貴族居住区から出て来てんな?」

ローグ「まだ50人くらいっすね…食事食べさせるとちっと大人しくなりやす」

盗賊「俺はバリケード作るって聞いてこっち来たんだが…」

民兵「木材を船に取りに行ってる所ですね」

盗賊「そうか…積もってる雪はどうすんだ?雪の上に設置する訳にいかんだろ…」

民兵「そこらへんどうするのか聞いてないです」

盗賊「んぁぁぁ人出が足りなくて指揮回って無さそうだな…ローグ!!俺達で雪かきすんぞ」

ローグ「また重労働でやんすか…トホホ」

盗賊「どうせ設置位置まで決まって無ぇんだ…俺らで決めるぞ」

ローグ「へいへい…どうすれば良いでやんすか?」

盗賊「貧民街と中央を区切る簡単な馬防柵だな…その後方に雪を積んでかさ上げすりゃ早い」

ローグ「あいあい…じゃぁ馬防柵予定地の後ろに雪を積めば良いっすね?」

盗賊「んむ…俺らがやってりゃ意を汲んで誰か手伝ってくれるだろ」

ローグ「そうなりゃ良いっすけどねぇ…みんな疲れてるんすよね」

盗賊「体動かした後の酒は旨いぞぉ!?」ワッセ ワッセ

ローグ「へいへい…」ワッセ ワッセ



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女戦士「ここに居たのか…その整地はバリケード用だな?」

盗賊「おう…簡易的だが雪を積んで塹壕代わりにすりゃ割と行ける」

女戦士「こんな所で戦うつもりは無いがな…侵入を防げれば良いだけと思っていた」

盗賊「衛兵がドバーっと出てきたらどうすんのよ…備えあれば憂い無しだ」

女戦士「まぁその通りだ…」

盗賊「んで?フィン・イッシュから軍船2隻来てただろ?どうよ?」

女戦士「民兵しか居ない…まともに装備しているのは近衛くらいだな」

盗賊「ぐは…軍船は見かけだけか」

女戦士「笑うなよ?大砲すら積んで居ない…大きな民間船と言った方が良いな」

盗賊「よくそんなんで女王を乗せてくんな…」

女戦士「ただな…民兵の士気が異様に高いのだ…ゲリラ戦や工作には適している」

盗賊「てことはバリケードは速攻出来る感じか?」

女戦士「んむ…しかし心配事もある…漢が多い分救出した女子が心配だ」

盗賊「ヌハハ風紀が守れんか…確かに問題だな」

女戦士「これからフィン・イッシュの指揮は近衛がとるようになるのだが女王がどういう采配をするのか読めん」

盗賊「民兵を引き連れて来る様な采配…んーむ」

女戦士「まぁ…戦争では無いのだから民兵で良いと言えば良いのだが…」

盗賊「なんなんだ?この微妙な駆け引きは…」

女戦士「私から言わせるとセントラル内部の茶番だな…」

盗賊「海に出て行ったセントラル軍船とか何処いっちまったのよ」

女戦士「軍部がバラバラではもうこの国はダメだ」



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エッサホイサ エッサホイサ


女戦士「盗賊!!もうバリケードの設置は民兵に任せて良い…こちらへ来るんだ」

盗賊「ふぅぅ…次はどうすんだ?」

女戦士「貴族居住区と中央の通路でもみ合いが始まっている」

盗賊「衛兵が出て来てんのか?」

女戦士「民の返還を要求してきているのだ…もちろん断っているが…直に戦闘になりかねん」

盗賊「マジかよ…こっちは保護してる立場だろうに…」

女戦士「こちら側に戻って来た男共の話では貴族特区の方が物資は豊富にあるらしい」

盗賊「麻薬漬けにしておいて民を保護してるつもりなのか?」

女戦士「黒死病の恐怖と苦痛を和らげる為に配布されているらしいが…」

盗賊「あっちにはあっちの正義があるってか…この惨状をちゃん判断出来る奴いねぇのかよ!」

女戦士「集団心理が働いているのだ…きっかけが無いと折り合いが付かん」

盗賊「きっかけって…」

女戦士「貴族院の要求は王族の拘束…つまり国王が降伏すれば一旦収束する」

盗賊「それを国家転覆て言うよな?そんなん国王が承諾する訳無ぇ」

女戦士「その通りだ…だから戦闘が起きる」

盗賊「矛先がこっちに来るのは筋がおかしい」

女戦士「こちらが国王と繋がっていると知られた場合は先に殲滅に来る…だろうな」

盗賊「こっちはまともな武器持った奴居ねぇぞ?」

女戦士「んむ…備えておかんと一気に奪取されてしまう」

盗賊「城に詰めてる精鋭兵は出て来れんのか?」

女戦士「下水の掘削作業が終わって居ない…まだ通れないのだ」

盗賊「戦力差は分かってるか?」

女戦士「城の精鋭兵500フィン・イッシュ民兵500に対し貴族居住区には衛兵2000程」

盗賊「数も装備も差があり過ぎる…勝てる訳無ぇ」

女戦士「やはり内郭の上に居るラットマンリーダーが鍵だな…貴族院側が中央に出て来られないのは城から背後を突かれたくないからだ」

盗賊「ギリギリの膠着状態か」

女戦士「だが装備の整った衛兵が数十人中央に出て来ただけでこちらは大打撃なのだ」

盗賊「バリケード上からクロスボウで構えるのが有効だ…船に予備は無いか?」

女戦士「無い…だが木材はある…即席で良いから弓と矢を作ってくれ」

盗賊「矢尻用の鉄は!?鳥の羽はあるんか?」

女戦士「無い…なんとかしろ」

盗賊「フィン・イッシュの軍船には無いのか!?」

女戦士「無い…」

盗賊「ぐはぁぁ材料が何も無いじゃどうにもなん無ぇ…まてよ?石は腐る程あるな…スリングだ!!」

女戦士「ほう…それは良い!!お前に相談して正解だった」

盗賊「スリングなら素人でも使える!ローグ来い!!ロープと皮集めて来い…今からスリング作るぞ!!」

『バリケード上』


ヒュン ヒュン ヒュン


女戦士「よし!撃ち方ヤメ!!気絶している衛兵を確保して手当しろ!!」

民兵「へい!!」ドスドスドス

盗賊「これで2人目だ…貴重な装備ゲットだな」

女戦士「奪うつもりは無い…手当して返す…黒死病を治療出来る事を周知させたい」

盗賊「ほーん…あっちはエリクサーの存在を知らん訳か」

女戦士「その様だ…エリクサーを求めてこちらに交渉しに来る様になれば少しは話が出来る」

盗賊「今までは話が通じて居ないのか?」

女戦士「こちらの貧相な装備を見て正規軍だとは思って居ないのだ…自警団扱いだ」

盗賊「ヌハハ裸同然の漢も居るしな?」

女戦士「お前の恰好もごろつきにしか見えんぞ?…私も同じだが」

盗賊「まぁな…船に乗ってりゃ楽な格好の方が良いもんな」

ローグ「かしらぁ…先に確保した衛兵が帰りたくないと言ってるでやんすが…どうしやしょう?」

女戦士「体を休めてからで良いと言え…こちらの内情を見てもらうのも良い」

ローグ「信用して良いんすかね?」

女戦士「構わん!敵では無いという事を見せつけておくのだ」

ローグ「わかりやした…ちっとあっしが話してみるでやんす」

盗賊「女戦士!アサシンの姿がずっと見えんが?何処に行った?」

女戦士「フィン・イッシュ女王の船だ」

盗賊「沖の方で停泊しているやつか?なんで上陸して来ないんだ?」

女戦士「セントラルに許可なく上陸は出来ん立場だ…本来なら大使を通じて段取るのだがそれも出来んのでな」

盗賊「面倒臭ぇこった」

女戦士「支援とは言え他国に勝手に女王が入るのは体裁が良くない…機を待っているのだな」

盗賊「あの嬢ちゃんがどんだけ成長したか早いとこ見たいもんだ」

『貨物船』


商人「…これでよし…っと」

情報屋「エリクサーの小分け出来たわね?」

商人「うん…これ貧民街のテントの分」

情報屋「私が持って行ってホムンクルスと交代してくるわ」

商人「中央広場の分も持って行ってもらえる?」

情報屋「わかったわ…あなたは少し休んで食事でもして居なさい?」

商人「そうするよ」

情報屋「じゃ…行くわね…よいしょ!」テクテク

『居室』


ガチャリ バタン カチャ


商人「あ…おかえり…どうして鍵かけるの?」

ホムンクルス「はい…」

商人「貧民街の方はどう?」

ホムンクルス「麻薬が切れた方が増えて来て苦しんでいる様です」

商人「苦しむって?」

ホムンクルス「眠りから覚めて今までの事は夢だと思っている様ですが快楽を脳の受容体が記憶して居ますので鬱症状が出ています」

商人「鬱ねぇ…そんなに酷いんだ」」

ホムンクルス「脳内ドーパミンの放出量が激減した分脳は苦痛と認識するのです」

商人「治せないのかな?」

ホムンクルス「治し方をシミュレーションしていますが今の私には効果的な方法が分かりません」

商人「君でも分からないという事は治せないのかも知れないなぁ…」

ホムンクルス「一つだけ治癒出来そうな方法はあるのですが…」

商人「何?」

ホムンクルス「どれくらい効果が期待できるのかシミュレーション出来ないのです」

商人「どうすれば良い?協力するよ?」

ホムンクルス「私は愛がどれくらい快楽を占めるのか分かりません」

商人「ハハ愛ねぇ…君はどうすれば愛を感じると思う?」

ホムンクルス「私を愛して下さいますか?」

商人「そんな急に言われても答えに困るな…」

ホムンクルス「私と性交渉をしませんか?」

商人「え…」

ホムンクルス「この生体はまだ一度も快楽を経験していませんので快楽と愛の比較が出来ないのです」

商人「そういう理由で性交渉と言われてもな…」

ホムンクルス「こう言えば良いですか?私に快楽と愛を教えてください」

商人「まさか君もリリスの淫魔の呪いに掛かっている訳じゃ無いよね?」

ホムンクルス「私は正常です」

商人「困ったな…」

ホムンクルス「私は以前あなたと少しだけ性交渉をした記憶が残って居ます…覚えていますか?」

商人「そうだったね」

ホムンクルス「あの続きをしましょう」チュゥ

商人「んむ…」

ホムンクルス「触ってください」スリスリ

商人「…わかったよ」

ホムンクルス「ぁ…」


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3分後


ホムンクルス「もう終わりですか?」

商人「ご…ごめん」

ホムンクルス「すこし休憩をしてからもう一度お願いします」

商人「ハハ…」

ホムンクルス「知っています…すぐに回復されると思いますので…私の体液をお飲みになって下さい」

商人「むぐ…」ペロ

ホムンクルス「はい…それで良いです…ぁぁぁん」

商人「その声は君のプログラムが出させてるの?」

ホムンクルス「生体の反射で声が漏れてしまいます…お気になさらず続けて下さい」

商人「フフそうか…体は生身の人間と同じか」

ホムンクルス「はい…私は100%人間と同じ組織を持ったホムンクルスです…違うのは脳に超高度AIユニットがあるだけです」

商人「なんかこうしてるとどんどん君を好きになっていく」

ホムンクルス「私も脳内ドーパミンの分泌量が変化している事が分かりました…続けて下さい」

商人「むぐ…」ピチャ

ホムンクルス「ぁぁぁん…あ…あ」

『1時間後』


商人「はぁ…はぁ…ホムンクルス!?大丈夫?」

ホムンクルス「…」クター

商人「僕はもう限界だ…」

ホムンクルス「ぁ…」ハァハァ

商人「気が付いた?」

ホムンクルス「…10秒間の記憶喪失が確認されました…ドーパミン放出が一定量を超えると他機能への神経伝達が途切れる様です」

商人「よかった…7回目でやっと…君は良く平気で話が出来るね?」

ホムンクルス「生体の興奮状態が収まりません…正常値に戻るまで30分程要する様です」ハァ

商人「服を着ようか?立てる?」

ホムンクルス「いいえ…力が入りませんのでそのままにして下さい」プルプル

商人「じゃぁ僕が着させてあげるよ…」スルスル

ホムンクルス「あなたの行動一つ一つでドーパミン分泌量が変化します…これが恐らく愛の部分です」

商人「超高度AIが判断してる訳じゃ無いんだ…」

ホムンクルス「分かった事があります…ドーパミン分泌量は脳が記憶しますが分泌量は積み重なります」

商人「積み重なる?」

ホムンクルス「はい…愛は膨らむという表現が良いでしょうか?」

商人「あぁ…なんか分かるよ…どんどん君を好きになる」

ホムンクルス「性交渉を毎日続けましょう…愛がどのくらい積み重なるのか観測します」

商人「なんかすごく幸せな気持ちになるなぁ」

ホムンクルス「お分かり頂けますか?性感による快楽を超える量のドーパミン放出が期待できます」

商人「なるほどね…麻薬依存を治療するのには愛が効果的かも知れないいう事か」

ホムンクルス「はい…まだ可能性が期待できるという段階ですので明日からもよろしくお願いします」

商人「なんか恥ずかしいなぁ…」

ホムンクルス「どう言えば良いでしょう?」

商人「んー寄り添ってくれるだけで良いかな」

ホムンクルス「はい…」ピト

『夜_中央広場』


メラ パチ


盗賊「篝火を増やしてくれい!!俺らも行くぞ…ローグ来い!!」

ローグ「アイサー」

盗賊「外郭側の方は厳しそうだな?撤退戦になりそうか?」

ローグ「アサシンさんが近衛連れて応援に行ったでやんす」

盗賊「ゴブリンはどれぐらい来てるか聞いたか?」

ローグ「5匹ぐらいらしいっす」

盗賊「それなら何とかなるな…しかし外郭も少し直さんと魔物が入って来ちまうな」

女戦士「盗賊!居るか!?」

盗賊「おう!!どうした?」

女戦士「海側からラットマンが進入しているらしい…貧民街の守備に行くぞ」

盗賊「マジか…あっちは民兵が居ねぇ」

女戦士「商人と魔女が押さえているとの事だ…急ぐぞ」タッタッタ

盗賊「ローグはバリケードを守ってろ」タッタッタ

ローグ「忙しいっすねぇ…」

『貧民街』


グルルル


商人「こっちだ!!」ダダダ ブン グサ

魔女「火炎魔法!」ゴゥ メラ

商人「なんだ?このラットマン…武器持ってるじゃないか!」

魔女「祖奴はコボルドじゃ…商人!避けよ!!」

コボルド「ガウルルル」ブン ザク

商人「あぅ…つつつ」

魔女「罠魔法!!」ザワザワ シュルリ

女戦士「商人!!引け!!」ダダダ ザクリ

盗賊「何匹居る!?」

魔女「2匹じゃ…もう一匹は船の方に行ってしもうた」

盗賊「女戦士!ここは任せる…俺は船に行く」ダダ

女戦士「商人…見て置け…こういう硬い魔物を相手にする時は急所を狙うのだ」ブン スパーーー

コボルド「ガァァァァ…」ドタリ

魔女「商人!回復魔法をするで近こう寄れ」

商人「大丈夫!金属糸の装備のお陰で軽傷さ」

魔女「回復魔法!」ボワー

女戦士「商人!お前は心臓が悪いと聞いて居る…出血は避けろ」

商人「わかってる…でも僕のクロスボウだと魔女が狙われてしまうと思った」

魔女「他に魔物が来て居らんか警戒するのじゃ」

商人「そうだね…船を狙うという事は食べ物狙いかな?」

女戦士「ふむ…こちらにも民兵を配置せねばならんか…」

魔女「この程度ならまだ良いが…夜が眠れんのぅ」

『翌日』


盗賊「あぁぁぁ結局一睡も出来んかった…ローグ!日課の樹液回収行くぞ…」

ローグ「へーぃ…」グター

盗賊「ゴブリンとコボルドが持ってた質の悪い武器…ここ置いとくぜ?」

女戦士「無いよりはマシだ…民兵に使わせる」

アサシン「あと2日の辛抱だ…下水が城と繋がる」

女戦士「精鋭兵が出て来れるのだな?」

アサシン「うむ…そしてラットマンリーダーを倒して戦況を覆す」

女戦士「上手く行くと信じて良いのだな?」

アサシン「エルフゾンビの戦いぶりを見たことが無いだろう?」

女戦士「ほう?やり手なのだな?」

アサシン「奴は一応ハーフエルフなのだ…剣士や女エルフ並みの戦闘力はある」

女戦士「私の出る幕は無いかハハ」

アサシン「タンク役としてはお前の方が上だな?エルフはアタッカー向きなのだ」

女戦士「速さか…」

アサシン「お前にはバリケードの守備を任せる…エルフゾンビを先頭に私と盗賊…ローグでラットマンリーダーを殲滅する」

女戦士「なるほど…エルフゾンビにタゲを集めてバックスタブ狙いか」

アサシン「そうだ全員アタッカーだ」

女戦士「魔女は使わんのか?」

アサシン「魔女は撃たれ弱すぎて足手まといになるな…守備の要として動いてもらった方が良い」

女戦士「回復役が居ないのは少し心配だが…」

アサシン「私とエルフゾンビは不死者だ…回復なぞ要らん…盗賊とローグはなんだかんだでしぶとい」

女戦士「ハハ間違いない…妹にこき使われていたからな」

アサシン「お前にもなクックック」



----------------

商人「アサシン居るかな?」

アサシン「ん?商人か…どうした?」グビ

商人「またワイン飲んでるのか」

アサシン「喉が渇くのだ…それで何か用か?」

商人「うん…貧民街の方で女達数人が慰安所で働きたいと言う人が出てるらしいんだ」

アサシン「そうか…貧民街でも出てるのか」

商人「でも?…って他にも?」

アサシン「フィン・イッシュ軍船でもそういう話が出ているのだ…うーむ」

商人「自分たちで志願してるんだったら良いじゃないかな?」

アサシン「実は女王が先駆けて慰安所の事を言っていたのだが私が止めてな…男達の間でもめ事が起きるのだ」

商人「士気に関わるのか…だったら数か所設置して勤務地を頻繁に変えるとかは?」

アサシン「うーむ…私は堅物なのか?女王に言われたが…」

商人「ハハハまぁ…そうかもしれないね?」

アサシン「女戦士!どう思う?」

女戦士「私にそれを言わせるのか?好きにすれば良いフン!」

アサシン「こんな時に頭が痛い…わかった女王ともう一度話をして来る」

商人「貴族居住区に戻られるよりは良いよね?もう話を伝えて来ても良い?」

アサシン「女達は戻りたいと言って居るのか?」

商人「戻ると言うか出て行くって言ってるらしいよ…行き先なんか貴族居住区しかないよね」

アサシン「分かった…ひとまず中央のテントに案内しろ」

商人「うん伝えて来るよ」タッタッタ

アサシン「…むぅ…これでは貴族院とやって居る事は変わらん…」

女戦士「私も否定派だが…慰安所の必要性は理解している」

アサシン「女王の船に行って来る」スック

『中央テント』


ガヤガヤ


盗賊「なんでこんなに民兵集まってんのよ?何か作戦やるんか?」

商人「あー見つけた!!これ1枚づつ」

ローグ「何でやんすか?このコイン…おもちゃのコインっすね?」

商人「フィン・イッシュから給金の代わりなんだって…毎日1枚づつ貰えるってさ」

盗賊「何に使うんだ?こんなもん?」

商人「フィン・イッシュの軍船に貨物が沢山あるんだって…それ貯めて交換できるらしいよ」

盗賊「ほーーー金の代わりか…何と交換できるか聞いたか?」

商人「いろいろあるらしいよ?くじ引きで家とか船とか貰えるってさ」

盗賊「マジか!!」

ローグ「これ奪い合いが始まり出しやせんかね?」

商人「くじ引くのに?」

盗賊「なるほど…金と違うのはくじ引きっていう点か…面白いな」

商人「これ誰が得するんだろうね?フィン・イッシュは全然得しないよね?」

盗賊「民兵動かして金払わないで済むなら安いんじゃ無ぇか?」

商人「それとは別らしいよ…救出された女の人たちにも配ってるし政策が謎w」

ローグ「交換できる物次第っすねぇ…なんか夢がありやすね?」

商人「ふむ…士気を上げてるのかな?」

盗賊「まぁ人が集まってるぐらいだから何かの効果はありそうだな」

商人「でもこういうのがあると交流が増えて良いね…さっそく賭け事やってるし」


ガヤガヤ ガヤガヤ

おい!奥に秘密のテントってのが出来るらしい

なんだそれ?

中に何人も女が居るんだってよ

見えるのか?

ガヤガヤ ガヤガヤ


商人「なるほどねぇ…」

盗賊「お前なにか知ってそうだな…何だよ!?」

商人「あまり関わらない方が良いかな」

盗賊「勿体付けんなって…秘密のテントって何だ?」

商人「多分慰安所さ…行った事バレると情報屋が口聞いてくれなくなるよ?」

盗賊「覗くだけは良いだろ」

ローグ「盗賊さん…まずいっす…かしらがジロジロ見てるでやんす」

盗賊「うぉ!!そらヤベぇ…おい商人!!整地しに行くぞ」

商人「整地!?僕が?ダメダメ…僕は船に帰らなきゃ…ホムンクルスが待ってる」

盗賊「ローグ!!整地に行くぞ!!見つかるとタダじゃ済まねぇ…」

『外郭』


ガッサ ガッサ


盗賊「うぉらぁぁぁ」ガッサ

ローグ「ひぃひぃ…」ガッサ

盗賊「よし…これで魔物の侵入が一方向に絞られる…はぁはぁ」

ローグ「あっしら損な役回りっすねぇ…」

盗賊「まぁ言うな…女戦士に死ぬほど使われるよしかマシだ」

女戦士「…呼んだか?」ピーン パチ

盗賊「うぉ!!いつからそこに居んだよ…壁に耳あり障子になんとかだ」

女戦士「ふむ…雪の壁か」ピーン パチ

ローグ「かしらもコイン貰ったんすね?」

女戦士「使い道が無くて困っている…居るか?」ポイ

ローグ「あああああ」パス

盗賊「雪ん中入っちまうじゃ無ぇか!!」

女戦士「私は家も船も要らんものでな」

盗賊「ヌハハそらお前は姫だもんな…欲しい物なんか無いか」

女戦士「姫と言うのはヤメロ…気持ちが悪い」

盗賊「ここの整地は終わったから俺はちと休む…軽くひと眠りしてくる」

女戦士「そうだな…少し寝て来い…休めるのは昼間のうちだけだからな」

ローグ「あっしも行くっす」

女戦士「ローグは私と一緒に来い」

ローグ「え…あっしは何かしたでやんすかね?」

女戦士「私も疲れているのだ…マッサージをしろ」

ローグ「おぉ!?久しぶりでやんすね?」

女戦士「元気が出たか?」

ローグ「いつものマッサージで良いでやんすね?」

女戦士「念入りにな?」

ローグ「ひゃっほーい!!あっしはいつまでもかしらに付いて行くでやんす…さっそく行きやしょう!!」

『名も無き島』



海賊王「次はこの木剣や…打ち込んで来い」

剣士「はい…いざ」

海賊王「早う来い!!」ググ

剣士「…」シュン カコン

海賊王「んんん…この木剣もダメやな」

女海賊「もう何本目?もう良いじゃん!!」

海賊王「アカン!剣筋に合う重さやないとワイは納得せん…ワイがこさえるオリハルコンの剣を伝説の武器にする為や」

女海賊「エクスカリバーと同じで良いって言ってんじゃん」

海賊王「それを超えなアカン…あとは使い手にどれだけ合ってるかなんや」

女海賊「剣士のその剣の構え方ってなんなのさ?前はそんな構えじゃなかったんだけど」

剣士「よく分からない…覚えて居ないんだ」

海賊王「古き時代の構えなんちゃうか?フィン・イッシュのサムライみたいやな」

女海賊「じゃぁ片刃にしたら?フィン・イッシュの剣は片刃だよ」

海賊王「お前がエクスカリバーみたいにせい言うたから両刃にしとったんやないか!」

女海賊「もうどっちでも良いよ!早くして」

海賊王「ほならこっちの木刀で打ち込んで来い」ポイ

剣士「はい…いざ」

海賊王「来いや!!」ググ

剣士「…」シュン バキッ

海賊王「お!?ええなぁ…わいの木剣が居れよった」

女海賊「ほんじゃそれで」

海賊王「アカン!ちと待て…鞘に入れてから抜いてみい…この鞘や」ポイ

剣士「鞘から居抜く?」

海賊王「そうや!!来い!!」ググ

女海賊「もう…どうでも良いじゃんそんなの…」

剣士「いざ…」シュン バキッ ゴン!

海賊王「あだっ!!」

剣士「あ…ごめん」

海賊王「連撃やな?見えんかったわ…これやな」

女海賊「もう良い?剣士と海行きたいんだけど…」

海賊王「アカン!ちと防具付けてくるわ…待っとれ」ドスドスドス

女海賊「呆れた…私が待ってんのにまだやるっての?」

剣士「なんかこうやってずっと立ち合いをやってた事がある気がする…誰だったのかな」

女海賊「そんなん良いから私を思い出してよ」

剣士「君はずっとそばに居た気がするよ」

女海賊「ムフ…分かってんじゃん」

剣士「匂いを嗅いでも良いかい?」

女海賊「良いよ…どこの匂いを嗅ぐの?アソコ?」

剣士「全部…」クンクン

女海賊「なんか気持ち悪いんだけど…犬みたい」

剣士「この匂い…なつかしい」


---そっか---

---あんたずっと目が見えてなかったね---


女海賊「なつかしいってどんくらい?」

剣士「分からない…ただ懐かしい」

女海賊「私さぁ…今満足した…あんたもう思い出さなくて良いよ」

剣士「え?」

女海賊「もっかい私と始めから付き合えば良い…そんだけ」

剣士「ハハ諦め早いね」

女海賊「なつかしいって覚えてくれてただけでなんか満足した…来て?」

剣士「ん?」

女海賊「…」チュ

剣士「え…」

女海賊「惚れた?」

剣士「いや…」

女海賊「いやじゃねぇ!!惚れたって言えよバカ」

剣士「君反応が面白いね」

女海賊「はぁ!?バカにしてんの?」

剣士「なんかこんな風にいつも話してた気がする」

女海賊「そうだよ!!」

海賊王「待たせたなぁ!!」ガチャガチャ

女海賊「ぶっ…フルプレートじゃん」

海賊王「次はなぁ…重さと重心が違う木刀で試す…連撃でも何でも良いから技を出すんや」

剣士「うん…体の動くままで良いかな?」

海賊王「自由に打ち込んでみぃ…次はこの木刀や」ポイ

剣士「はい…いざ」

海賊王「待て待て…鞘から居抜け…多分それがお前の型や」

剣士「ふぅ…いざ」シュン キンキンカン

海賊王「次はこれや…」ポイ



---すごく満たされた---

---ずっとこの関係で良い---

---寝よ…ぐぅ---



『翌日』


カンカンカンカン ジュゥ

カンカンカンカン ジュゥ


海賊王「よっしゃ!!出来たでぇぇぇ!!」

女海賊「んん?なんかくすんでるんだけど…」

海賊王「研ぎはお姉ぇにやらせろ…あいつの方が繊細なんや…ワイの手はデカ過ぎや」

女海賊「パパ細かいの得意じゃん」

海賊王「作るのは得意やが金属を愛でるのはお姉ぇの方が上手い…細工はお前が上手い」

女海賊「持ち手は私が作んの?」

海賊王「そや…飾り鞘もお前が作れ」

女海賊「材料ある?」

海賊王「鍛冶場の物は何でも使ってええぞ?ミスリル銀もあるやろ」

女海賊「あれ?2本あんの?」

海賊王「そうや?片刃にしたけぇ材料が半分で済んだんや…重さ800グラム…軽くてえー刀やで?」

女海賊「おーーー私の分もか!!ありがとうパパ!!」

海賊王「名前は…そうやなぁ…流星の剣と彗星の剣でどうや?」

女海賊「まぁどうでも良いかなー」

海賊王「おまえは彗星の様やと言われとるんやろ?お前が持つ方を彗星の剣にせい」

女海賊「わーったわーった」

海賊王「剣が出来上がったらワイへの態度がザツやなぁ」

女海賊「テヘ?ほんじゃ鍛冶場借りるねー」

『鍛冶場』


トンテンカン トンテンカン


女海賊「剣士!握ってみて」ポイ

剣士「うん…」パス ニギニギ

女海賊「あんたの刀は柄が長いんだね?両手用なんだ?」

海賊王「重さのバランスでそうなったんや…一応飾り鍔が付く思うてそれも計算しちょる」

女海賊「飾り鍔はミスリル銀で作ったけど良かった?」

海賊王「計算済みや…振ってみぃ」

剣士「…」スン スン

女海賊「なんか普通だね?」

海賊王「それでええ…余分な音も無い方がええ」

女海賊「柄の部分は滑り止めで少しだけミスリル銀の飾り柄にした…どう?すっぽ抜けない?」

剣士「油が付くと抜けそうだよ」

女海賊「おっけ!あとは紐で柄巻きしておく」

海賊王「鞘も作ったんか?」

女海賊「うん…刀の重さ変えたくなかったから鞘の方に細工したさ」

海賊王「得意のアダマンタイトかいな?」

女海賊「そそ…鯉口の部分がアダマンタイトの細工」

海賊王「なんやなーんも飾りっ気が無い鞘やなぁ…お前が作ったとは思えん」

女海賊「フフフフフフ…この刀はね…最終的には光の刀になる予定なのさ…フフフフフフフ」

海賊王「おぉ…光る刀を収めるとどっか光るんやな?ワイも見たいやないか!」

女海賊「鞘が朧に映す装飾…見たいでしょフフフフフフ」

海賊王「鞘を含めて伝説の刀か…ええな!!」

女海賊「剣士のは腰に射す流星…私のは背中に射す彗星フフフフフフ」

海賊王「なんやめっさ楽しみやな…銀河やな名前は銀河の剣にせい」

女海賊「おっけ!銀河の剣ね」

『飛空艇』


フワフワ


女海賊「未来乗って!!」

子供「うん!」シュタタ

海賊王「お前は本真にせっかちやなぁ…ゆっくりして行けばええのに」

女海賊「うっさいなぁ…お姉ぇに早く刀を仕上げて貰いたいのさ」

海賊王「まぁしゃーないか…ドワーフの血が騒ぐんやな?」

女海賊「お姉に何か持ってくんだったよね?何?」

海賊王「これや…」ドシ

女海賊「それパパの斧じゃ無かったの?」

海賊王「お姉ぇの特注品やな…ミスリル銀で作ったギガントアックスや」

女海賊「こんなでっかいのミスリル銀の無駄じゃん」

海賊王「ミスリル銀は素が軽いから好みの重さにしたらでっかくなったんや…お姉ぇはそれが良いらしいわ」

女海賊「盾替わりか…」

海賊王「あいつは何故かでっかい木の盾を好むやろ?ほんでもう片方の手でその斧を持つ気やな」

女海賊「盾二枚持ってんのと一緒だね」

海賊王「ここに乗せとくけぇお姉ぇに渡しとくんや…」ゴトリ

女海賊「ほんじゃパパ!行って来るね!バハハーイ」ノシノシ


フワリ シュゴーーーーーー

『貨物船』


ザブン ギシギシ


盗賊「ぐががががが…すぴーーー」

情報屋「荷室も追い出されたの?」

商人「しょうがないね子供たちの避難所になっちゃったし」

情報屋「テントよりも暖かいものね」

商人「僕も寝床探さないとなぁ…どうしよっかなぁ」

情報屋「中央のテントの方はどう?」

商人「あっちは騒がしくてさ…考え事が出来ないんだ」

情報屋「フフあなたいつも独り言してるけど…考えてるんだ?」

商人「まぁね?クセかな?」

情報屋「最近はどんな事を考えているのかな?少年」

商人「もう少年じゃないって」

情報屋「フフ冗談よ…剣持って戦う姿見て見直したわ?」

商人「少しは役に立たないとね」

情報屋「それで…考え事はなぁに?」

商人「時の王かな…僕の勘は結構当たるんだけどさ…時の王はキーマンだなと思ってさ」

情報屋「ふーん…どうしてそう思うの?魔女に何か聞いた?」

商人「1700年生きてるってさ…スゴイと思わない?そんな人がそこの城のすぐ向こう側に居るんだよ」

情報屋「そうね?私達には考えが及ばないのかなぁ…1700年なんて」

商人「ホムンクルスが言うにはさ人間の記憶は大体200年が限界なんだって」

情報屋「それ本当?」

商人「ホムンクルスも人間の脳だから同じなんだってさ…外部メモリが無いと200年以上前は思い出せないらしい」

情報屋「へぇ…だから精霊は200年づつの記憶を保存していたのね?」

商人「だろうね?でもさ…時の王は保存なんて出来ないじゃない?…だからどうしてるのかなってさ」

情報屋「魔女が時の王の屋敷の中に美術品が沢山あったと言って居たけれど…」

商人「うん…記憶をそういう風に保存してるんじゃないかな」

情報屋「え!?…待って?もしかすると古代遺跡から発掘される美術品もそういう可能性があるという事だわ…」

商人「そうだね…そういう事を考え出すとずーっと想像できちゃうんだ」

情報屋「あーダメダメ…私もあなたの独り言が移っちゃいそう…」

商人「ハハ君は救出された人達のお世話に忙しいからね」

情報屋「私もたまには休みが欲しいわ…」



-----------------

情報屋「盗賊!…盗賊!…起きて!!」ユサユサ

盗賊「んぁ?…んーだ情報屋か…いいぞ来いムニャ」

情報屋「…」パチン

盗賊「あだっ…んん?今何時だ?」キョロ

商人「…」ニマー

情報屋「アサシンの気球が帰って来るわ…ここに降りて来るわよ」

盗賊「マジか…早えぇな」

商人「もうすぐ夕方だよ…疲れてたみたいだね」

盗賊「おぉ寝過ごしたなこりゃ…ローグは何処行った?」

商人「女戦士と一緒に中央に居ると思う」

盗賊「俺も行かねぇとな…」

商人「アサシンとホムンクルスが帰って来るんだ…話を聞いてからにしたら?」

盗賊「まぁそうだな…ちっと腹が減ったな…何か無いか?」

情報屋「はい…支給されたパンとチーズ」

盗賊「おう十分だ!それとこの飲みかけのワインがありゃ俺は文句ねぇ」モグ グビ



フワフワ ドッスン



商人「おかえり!どうだった?」

アサシン「女王はご満悦だ…ホムンクルスと意見が合致している」

ホムンクルス「私のシミュレーション結果をお伝えしてきました」

盗賊「んん?何の話だ?」

ホムンクルス「麻薬依存に苦しむ女性たちの救い方について意見をしてきたのです」

盗賊「ほう?慰安所は無くなるんか?」

アサシン「アレは継続するらしい…その他に愛を醸成できる環境を沢山用意するそうだ」

盗賊「ほう?おもちゃのコインの他に何かやるんだな?」

商人「あれの効果はすごいと思うよ?コインだけでコミュニケーションが激増したんだ」

ホムンクルス「そうですね…フィン・イッシュ女王は民の欲求を良くご観察の様です」

アサシン「まぁ心配な施策ばかりなのだが…コインの影響を見せられては私は何も言えん」

ホムンクルス「ご心配なさらなくても良いかと思います」

盗賊「具体的に何やるんだ?」

アサシン「聞いて驚くな?女性が任意の男を一人一定期間奴隷に出来るチケットとか謎の施策が山ほどある」

盗賊「なぬ!?」

商人「ハハ何だそれ…」

盗賊「勝手に奴隷にされちゃたまらん」

アサシン「私もいつ奴隷にされるか分からん」

ホムンクルス「その逆もある様ですよ?」

盗賊「マジか…」

商人「なんかむちゃくちゃだね…でも面白そう」

ホムンクルス「そういう活性化と報酬を沢山用意するのです…結果的に愛を醸成します」

盗賊「資金は女王の身銭から出てんのか?そのうち破綻するんじゃ無ぇか?」

商人「僕から言わせるとその逆だね…民がフィン・イッシュに流れる…つまりお金で人を買ってる」

アサシン「国力増強か…うーむ…認めるしか無いな」

盗賊「民兵の異様な盛り上がりはソレか!謎の施策をみんな楽しんでんだな?」

ホムンクルス「女王は上手です…失敗して批判される前に次の施策をやる様です」

商人「失敗をみんな忘れちゃうんだハハ…最終的に少しでも良くなってれば良いのか」



---------------



アサシン「盗賊とローグは今晩早く船へ戻れ…明日の朝に作戦を実効する」

盗賊「おう!ローグに言っとくわ」

アサシン「城の精鋭兵は夜の内に少しづつ下水を通って海岸で待機する予定だ」

盗賊「あーそれで海岸にもテント張ってんのか」

アサシン「貴族居住区からは丁度死角になるのだ」

盗賊「民兵には秘密で動いてんだよな?」

アサシン「そうだ…感づかれない様に中央では普段通りにしていてくれ」

商人「僕も中央の方を見に行こうかな?」

盗賊「おう!一緒に行くか」

商人「コインの流通を見ておきたいんだ…僕はまだ3枚しか無いけど」

盗賊「銀のアクセサリーが流行ってるらしいぞ?コインで交換できるんだと…」

商人「へぇ…見たいな」

盗賊「じゃ行って来るわ」ノシ

ホムンクルス「お気をつけて…」ニコ

商人「うん…行って来る」ノシ

盗賊「んん?今のホムンクルスの表情見たか?いつも無表情だったのにな?」

商人「ハハ少し笑う様になったね」

盗賊「お前何か教えたのか?」

商人「まぁね…」

盗賊「もっと教えとけ!なかなか可愛い笑顔じゃねぇか」

商人「うん…毎日教えてるさ」

『中央バリケード前』


ガヤガヤ ガヤガヤ


ローグ「貧民街の方は危険なんで立ち入り禁止っす~黒死病の治療は中央のテント行ってくだせぇ!!」

盗賊「ローグ!!悪りぃ…寝過ごしちまった」

商人「この人だかりは?」

ローグ「貴族居住区からすこーしづつ人が出て来てるでやんす…10人くらいっすかねぇ」

盗賊「民兵がゴブリンの装備付けてんな…恰好悪りぃヌハハ」

ローグ「かしらが洗って使えって言うでやんす」

盗賊「裸よりゃマシだがありゃ衛兵から誤射食らうぞ?」

ローグ「くちばしマスクが目印っすね…あのマスクは目立つでやんす」

商人「本当…変な格好だね?」

ローグ「本人たちは割と喜んでるんすよ…フィン・イッシュ女王はヘンテコな格好が好きだって評判なんす」

盗賊「あの嬢ちゃんがねぇぇ…変な趣味持ったもんだ」

商人「いろんなくちばしマスクがあるんだね」

ローグ「あれもコインで交換できるらしいっす」

盗賊「なんか効果あるんか?本当に病気防ぐのか?」

ローグ「今じゃおしゃれアイテムっすね…アレ被ってると顔が隠れるもんすから色々良い事あるらしいっす」

商人「なるほど…それもコミュニケーション向上になってるのか」

盗賊「鼻の長い天狗みたいなお面は?あれもか?」

ローグ「良い所に気が付きやしたね?アレは慰安所で使うお面らしいすわ…あの鼻を女のアソコに入れるそうですわ」

盗賊「被ったまんまか?」

ローグ「慰安所でコインと交換やってるっすよ?7枚っすね」

盗賊「俺は今3枚持ってる…お前のと合わせて7枚になるな?行ってこい」

ローグ「いやいやいや…あんなの付けてるとかしらに何されるか分かんないっすよ…遠慮するでやんす」

商人「ハハちょっとアレはマズいよね…いくらなんでも」

盗賊「何か他に良いもん無ぇのかよ!!」

女戦士「お前達!!こんな所で遊んでいないで外郭に向かえ!!」

盗賊「ぬぉ!又ゴブリン来てんのか?…てどうした?お前がスカートだと?」

女戦士「安心しろ金属糸のインナーは装備している…これは支給された衣服なのだ…似合わんか?」

ローグ「盗賊さん寝てて知らなかったみたいっすね?女性に衣服の支給があったんすよ」

商人「気付いてなかったのかい?ホムンクルスも着替えてたよ?」

女戦士「それはどうでも良い!盗賊とローグは外郭のゴブリンを追い払え!」

盗賊「へいへい…」

『外郭』


ギャーース ドタドタ


ローグ「ゴブリン引いて行くっすね?どうしやす?」

盗賊「こっちあぁ弓が無ぇ!追っても仕留め切らん…倒したゴブリンの装備剥ぎ取って一旦休憩する」

ローグ「アイサー」

盗賊「やっぱ雪の塹壕掘っといて正解だったわ…少人数でもなんとか凌げる」

ローグ「そーっすねぇ…スリングとの相性が良いでやんす」

盗賊「ところで女戦士の格好だが?あいつもおしゃれは気にすんのか?」

ローグ「かしらは隠れて色んな服を試してるでやんすよ」

盗賊「マジかよ…本当は乙女なのか!!」

ローグ「あっしは良くかしらのマッサージを頼まれるんですがね?マッサージの後は体が柔らかくなるんすよ」

盗賊「んん?意味が分からん」

ローグ「かしらは放って置くと筋肉が石みたいにカチカチに硬くなる体質なんす」

盗賊「戦士ならその方が良いだろ」

ローグ「洋服からムキムキの筋肉が見えるのが嫌なみたいすね…なんで鉄のローラーで全身柔らかくするんすよ」

盗賊「鉄のローラーだと?そんなもん転がしてマッサージすんのか?」

ローグ「ハンマーも使いやすね…硬くなってる所を解すんすよ…ほんで体が柔らかくなったらドレスとか着たりするんす」

盗賊「あいつもやっぱガチのドワーフか…」

ローグ「マッサージの時はかしらが全裸になるんすよ…あっしはそれが楽しみで生きているでやんす」

盗賊「ほーん…なぜか萌えん」

ローグ「かしらはあー見えてどМっす…鉄のハンマーでしごかれながら横になるんす…その間あっしは何しても許されるんすよ」

盗賊「あれでМとは…俺は聞かなかった事にしておく」

ローグ「内緒にしといて下せぇ…あと洋服褒めるとしばらく着たままになるんでよろしくっす」

盗賊「お…おう」タラリ

『中央バリケード前』


ガヤガヤ ガヤガヤ


盗賊「ゴブリンの装備剥ぎ取ってきたぜ?」

女戦士「追い払ったか?」

盗賊「あぁ…お前なんでスカート止めたんだ?さっきの恰好の方が良かっただろう」

女戦士「お前は驚いていたでは無いか…私は気に入って居たのだがな」

盗賊「俺のコインお前にやる…他にも買い揃えろ」チャリン

女戦士「フン!私に何を着れと言うのだ?」

盗賊「折角良い体してんだ…もっと見せつけろ勿体ねぇ」

女戦士「私の体は見世物では無い」

盗賊「腕とか足くらいは良いだろ…そうだな腕と足を出して代わりに銀のアクセサリーとかどうよ?」

女戦士「お前の趣味か?」

盗賊「まぁそうなるんか?お前に似合うと思って言ってんだ」

女戦士「この寒いのに肌を露出しろと言うか」

盗賊「だから映えるんだろうが…寒い分はその上に何か羽織れ」

女戦士「…考えておく」

盗賊「ふむ…良く見ると整った顔立ちしてんな…近寄り難いがなかなかイケる」

女戦士「…」スラーン

盗賊「待て待て待て…悪気は無ぇ!」

女戦士「油を売って居ないで篝火用の木材を運んでおけ!」

盗賊「へいへい…」

『貨物船』


回復用のエリクサーを2瓶づつ持て…

先方はエルフゾンビと私が行く

盗賊とローグはハイディングを上手く使ってバックスタブで仕留めろ

撤退はラットマンリーダーの殲滅後に下水を通って各自海岸に出る

今回は4人だけの隠密行動だ

目に付きにくい様にこの黒いローブを纏うのだ

この後気球に乗って城の上空に行く

鎮魂の鐘が鳴ったらそのまま投下する

目安は夜明け前

行くぞ



商人「ふぁ~あ…気合入ってるね?」

情報屋「そうね?本気装備みたいよ?」

商人「盗賊とローグは背格好も一緒だし黒いローブだと見分けが付かないね…」

情報屋「こうして第三者視点で見てるとスゴイ人達なんだなって思うわ」

商人「うん…闇の一党だね」

情報屋「あなたも中央のバリケードの方に行かなくて良いの?」

商人「行くよ…僕はクロスボウ手の役だ」

情報屋「現時点の主砲ね?」

商人「まぁね?」

情報屋「私も貧民街の守備に行かないと」

商人「ホムンクルスも守ってあげて」

情報屋「あら?どうしたの?そんなこと言って」

商人「心配なんだホムンクルスが」

情報屋「フフ最近良くお話してるみたいだけど?」

商人「バレてた?僕ホムンクルスが好きなんだ」

情報屋「彼女に表情が出てきたのはそのせいね?」

商人「すこし笑顔が出るよね?」

情報屋「子供たちに人気があるのよ?」

商人「へ~知らなかった」

情報屋「少年!がんばりたまえ!」

商人「ガク…」

『内郭の上』



リン ゴーーーーーン



アサシン「城壁に飛び乗れ!!」

エルフゾンビ「付いて来い…城壁のラットマンリーダーから殲滅する」ピョン

盗賊「俺らは個別でハイディングしながら行くぜ?」ピョン


ラットマンリーダー「ぐぇぇぇぇぇ」バタバタ


エルフゾンビ「首を切り落とす!!」ブン ザクリ ゴロン

アサシン「城壁で約10体…城周辺に約30体…続け!!」タッタッタ

エルフゾンビ「鐘楼はどうなっている?」

アサシン「精鋭兵が集まっている様だ…鳴らしているのはお前の兄か?」

エルフゾンビ「おそらく…」

アサシン「もうラットマンリーダーと戦闘しているでは無いか…どういう事だ?」

エルフゾンビ「想定外は付き物だ…援護に行くぞ」

アサシン「続けて鳴らせてもらわんと困るが…」


リン ゴーーーーーン


アサシン「よし!鐘は鳴らせているな?盗賊!ローグ!散開して良い…片っ端に始末しろ」

盗賊「おうよ!!」ダダ

ローグ「アイサー」ダダ

『中央バリケード』


リン ゴーーーーーン


商人「5回目の鐘…あと1回で朝の鐘は終わる…どう?見える?」

女戦士「内郭上のラットマンリーダーは全部倒した様だ…もうここからでは中の様子は見れん」

商人「望遠鏡を貸して…」

魔女「わらわがアサシンの目を見て居るぞよ?」

女戦士「中はどうなっている?」

魔女「ラットマンリーダーに多少抵抗されておるが盗賊とローグが活躍中じゃな…背後から首を狩りよる」


リン ゴーーーーーン


商人「6回目…ここまでがいつも通り」

女戦士「この後鐘が続くようであれば察知する者がでるやもしれん」

魔女「今の所20体位倒したかのぅ…まだもう20体程居るのぅ」

女戦士「むぅぅ居ても経っても居れん…」ソワソワ

商人「ここは落ち着いて見守った方が良いと思うな」

女戦士「商人!火を起こせ…炊き出しを作る…平生を装うのだ」

商人「うん…」

女戦士「他の者にも伝えて来い…出来るだけ煙を出せ」

魔女「わらわも体が冷えてしもうた…火に当たりたい」

『貧民街』



情報屋「ホムンクルス?お湯を用意できる?」

ホムンクルス「はい…どれくらい必要でしょうか?」

情報屋「出来るだけ沢山沸かして?…女性の精鋭兵が数人こちらに来るらしいわ」

ホムンクルス「そうなのですね」

情報屋「海岸の方では木材が無くて暖が取れないらしいの…革袋に入れて持って行ってもらう」

ホムンクルス「船に砂鉄と木炭がありましたね?」

情報屋「火薬の材料の事かしら?」

ホムンクルス「はい…皮袋に入れるのは砂鉄50と砕いた木炭50の割合で混ぜたのもを渡すと良いです」

情報屋「それで暖が取れる?」

ホムンクルス「そこに海水を少し混ぜれば発熱して暖を取れますしお湯を沸かすよりも早いと思われます」

情報屋「一緒に来て?」

ホムンクルス「はい…私もお手伝いします」


リン ゴーーーーーン


情報屋「7回目の鐘…」

ホムンクルス「急ぎましょうか…」テクテク

『セントラル城_中庭』



がおぉぉぉぉ ドスドスドス


盗賊「っくしょう…どんだけ居るんだよ」

ローグ「盗賊さん怪我は大丈夫っすか?」

盗賊「まだ行ける…」

ローグ「来るっすよ!?ハイディング!」スゥ

盗賊「…」スゥ


ラットマンリーダー「がお?」キョロ?


アサシン「クックックお前の相手は私だ!ハートブレイク!」ズン ズブズブ

ラットマンリーダー「ぐぅぅぅ…」

アサシン「今だ!」


リリース


盗賊「バックスタブ!」ジャキン! ゴロン

アサシン「エルフゾンビが城の中に入って行った…どうやら城にも居る様だ」

盗賊「あぁ先行っててくれ…ちとエリクサー飲んで回復してから行く」グビ

アサシン「無理はするな?お前は私と違って生身なのを忘れるな」


リリース


ローグ「バックスタブ!」ジャキン! ドサ

盗賊「ぬぉ!!」

ローグ「よそ見は危ないでやんすよ…ラットマンリーダーは首落としても少しの間動くっす」

アサシン「助かったな…行くぞ」タッタッタ

『セントラル城内』


ザワザワ ザワザワ


エルフゾンビ「来たな?予定変更だ」

アサシン「…これは…城の中に民をかくまっていたのか」

エルフゾンビ「約1000人だな…下水を通って避難するには少々時間が掛かる」

アサシン「まだラットマンリーダーが残って居るな?私達が残りの敵を片付ける…お前は避難の先導をしてくれ」

エルフゾンビ「石化で体が不自由な者が多い…スムーズには行かんが良いか?」

アサシン「精鋭兵を動かせ…下水に詰め込んでしまえば敵が来ても対処は出来る」

エルフゾンビ「残りのラットマンリーダーは任せた」

盗賊「敵が気付いたぜ?アサシンはハートブレイクでとにかくラットマンリーダーの足を止めてくれ」

ローグ「後はあっしらが処理するでやんす」

アサシン「あと10匹!行くぞ!!」ダダ



-------------------



アサシン「ハートブレイク!」ズン ズブズブ

盗賊「バックスタブ!」ジャキン! ボトン

ローグ「これで最後でやんす…城内のラットマンリーダーは全滅っす」

アサシン「よし!外で残りの敵を探す…来い!」

盗賊「精鋭兵が裏手に移動を指示している…俺らは正面側か?」

アサシン「うむ…正面からゲートブリッジ側まで索敵する」

盗賊「なら貴族居住区から丸見えになるぞ?」

アサシン「姿を隠しながら行くしかない…ラットマンリーダーが居残って居るのはマズイ」

盗賊「ちと慎重に行動した方が良い」

アサシン「分かっている…隠密で動く」

『ゲートブリッジ付近』


シュンシュンシュンシュン ストストストスト


ラットマンリーダー「がおぉぉぉぉ」ドスドス ガチャン ガチャン


盗賊「ゲートブリッジを挟んで貴族院側の衛兵と揉みあってんな…」コッソリ

アサシン「まだ待て…機を伺う」コッソリ

ローグ「あと残り3体でやんすね?」

盗賊「やっぱ向こうの衛兵も異常に気付いたか…こりゃ突破されるのは時間の問題か?」

アサシン「民の避難までまだ時間が掛かりそうだ…このままラットマンリーダーは放置していた方が良かろう」

盗賊「あいつらラットマンリーダーをどうやって倒すつもりだと思う?」

アサシン「バリスタだな…準備に手間取ってくれれば良いが」

盗賊「ゲートブリッジの鉄柵越しに狙うってか?そんなん当たる訳無ぇ」

アサシン「クックックこのゲートブリッジでの揉み合いは長引いて貰った方が好都合だ…弓矢を探して来い」

ローグ「あっしらでラットマンリーダーの援護をするでやんすね?」

アサシン「ゲートブリッジ上のアロースリットから射かける」

盗賊「弓矢なら内郭の城壁上に有った」

アサシン「お前たちはハイディングで城壁伝いにゲートブリッジ上に上がるのだ…私はこの場所で鉄柵に取り付く者を射抜く」

盗賊「おう!!弓矢は上から放り投げてやる…拾ってくれ!行くぞローグ…ハイディング!」スゥ

『中央バリケード』


ザワザワ ザワザワ

城の方で何か起こってるみたいだ

貴族居住区で叫び声が聞こえる

城のゲートブリッジで弓の撃ち合いやってるぞ

俺達何も指示出てないけど良いのか?

ザワザワ ザワザワ


魔女「アサシンらはほぼ城を制圧した様じゃ…心配せんで良いぞ?」

女戦士「あの撃ち合いはどういう事だ?」

魔女「時間稼ぎじゃな…まだ貴族院側は事態の全容を把握しておらん…城への突入に躊躇しておる」

女戦士「我々の勝利だな?」

魔女「問題もありそうじゃ…城の中に民間人が多数避難しておってな?下水を使って海岸まで移動させておる」

商人「多数というとどのくらい?」

魔女「1000人ぐらいじゃろうか」

商人「そんなに?それじゃごった返しちゃうな」

女戦士「善良な者だけならば良いが…そうでなければ治安が保てんかも知れんな」

商人「今貧民街に詰めてる人達を一旦フィン・イッシュ軍船の方に行かせた方が良さそうだね」

女戦士「私が軍船に取り次いでくる…商人は貧民街へ向かって移動の先導をして来るのだ」

商人「そんな簡単に移動してくれるかな?」

女戦士「船の方が暖かくて過ごしやすいと言え…それからコインの交換品も増えているとな?」

商人「もしかしてその服?」

女戦士「フフコイン1枚で1着交換出来るのだ」

商人「良いね!ホムンクルスにももう少し良い物身に付けさせたい」

女戦士「無駄口は良いから早く貧民街の女を移動させて来い」

商人「あ…うん!行って来る」

『貧民街』


あぁん うっうっ うふ~ん


情報屋「商人!!ここに入って来てはダメよ?」

商人「分かってるよ…貧民街の人達をフィン・イッシュ軍船に移動させに来たんだ」

情報屋「どういう事?」

商人「避難民が1000人くらい出るらしい…ここの女の人と一緒じゃマズいよね?」

情報屋「そうね…」

商人「移動させられそう?貨物船に居る子供達も移動した方が良い」

情報屋「やってみるわ…代わりに商人!この袋に砂鉄と木炭を詰め込むのをやって?」

商人「割合は?」

情報屋「50対50よ…女性の精鋭兵が取りに来るから渡してあげて?」

商人「うん…これ何?」

情報屋「塩水を少し混ぜると暖かくなるの…ほらコレ!」ホカホカ

商人「おぉ!!スゴイ!!熱っ!!」

情報屋「直接触るとダメよ?」

商人「こんな事出来るのはホムンクルスだね?」

ホムンクルス「はい…」

商人「君もここの女の人達を軍船の方に先導させて?」

ホムンクルス「わかりました…」

商人「あれ?何か怒ってる?」

ホムンクルス「いいえ…」プイ

情報屋「私達は女性を移動させてくるから砂鉄と木炭お願いね…あとここの女性を見ないようにね?」

商人「分かってるよ…」


---なんだ?---

---ホムンクルスがあんな顔するの初めてだ---

『ゲートブリッジ』


シュンシュン ストスト


ローグ「相手の弓が多いっすねぇ…つつつ」ギリリ シュン

盗賊「もうエリクサーの残りが少ねぇ…そろそろ引かんとキツイな」ギリリ シュン

ローグ「大分持ちこたえやしたね?あっちはバリスタを諦めたみたいっすよ?」

盗賊「そら俺らが弓で狙ってるからな?装填に時間が掛かるもんを扱える訳無ぇ」

ローグ「ラットマンリーダーはハリネズミみたいになってるっすね?」

盗賊「あんなんじゃ倒せんだろう」


ドーン パラパラ


盗賊「うぉ!!何だ?」

ローグ「投石っす!!貴族居住区の建屋裏にトレビュシェットあるみたいっす」

盗賊「マジか…ここも危ねぇじゃねぇか」

ローグ「あっしは煙玉を10個と爆弾2個持ってるでやんす」

盗賊「そら逃走用に残して置け…ちぃぃどうすっかな」

ローグ「ここからの狙撃がなくなったらバリスタ来そうっすね?」

盗賊「おし!火矢に切り替えだ…バリスタ燃やすぞ」

ローグ「アイサー」ボゥ ギリリ シュン

盗賊「よしよし!どんどん当てろ」ボゥ ギリリ シュン

『中央バリケード』


ザワザワ ザワザワ

何の音だ?

城に投石機使ってるらしい

ゲートブリッジ付近で煙が上がってるな

ザワザワ ザワザワ


女戦士「ふむ…アレでは内郭は落とせんな…精々応射を防ぐぐらいの物だ」

魔女「帰って居ったか…良いのかえ?こちらはこのまま待機で」

女戦士「下手に動けんというのが正直な所だ」

魔女「もう2時間経っておるが貴族院側はこちらに来る気配は無い様じゃな」

女戦士「投石機を使うあたり軍部は割と統率しているな…やはり目的は王族の拘束か」

魔女「王族がこちら側に来るのではその後が心配じゃな?」

女戦士「さて…どうなるか?こちらも民を抱えているからな」

魔女「こういう可能性もあるぞよ?時の王に拘束されておった王族が解放されたという見方じゃ」

女戦士「うむ…誰が味方で誰が敵なのか分からんな」

魔女「まだある…巧妙に歴史が修正されておるのにわらわ達は気付いて居らん可能性じゃ…いつから投石機があったのかのぅ?」

女戦士「む!まだ魔術師がまだ何処かに居ると言うのか?」

魔女「可能性の話じゃ…時限の門はそう何度も使える術では無いのじゃが可能性は考えておかねばならぬ」

女戦士「今の所流れは我々の側にある様に見えるが?」

魔女「じゃから相手も修正に躍起になって居る事も頭に入れておくのじゃ」

女戦士「…むぅ…そういえば早朝なのに向こうの衛兵は異常に気付くのも早かった気がするな」

魔女「そういう事じゃ…鐘は何回鳴ったか覚えておるか?」

女戦士「6回?…いつも通りだった筈だが?」

魔女「わらわはもっと鳴って居った気がするのぅ…気のせいじゃろうか?」

女戦士「なるほど…想定外はこうして起きるか」

『ゲートブリッジ』


ドーン パラパラ


ローグ「アサシンさん!もう上から撃つのは無理っす」ズルズル

アサシン「引き際だな…怪我はどうだ?」

ローグ「エリクサー尽きやした…盗賊さんの出血が止まりやせん」

アサシン「私のエリクサーを使え…まだ2瓶ある」

ローグ「盗賊さん飲んで下せぇ…」

盗賊「おぅ助かる…」グビ

アサシン「走れそうか?」

盗賊「肩貸してくれぇ…ちっと血が出過ぎた様だ」

アサシン「ローグ!お前も出血しているな?エリクサーを飲んでおくのだ」

ローグ「あっしはまだ走れやす…それにエリクサーじゃ出血止まらんす」


タッタッタ


エルフゾンビ「ここに居たか!!下水に降りろ…全員の避難がもうすぐ終わる」

アサシン「上手く行ったな?盗賊は私が肩を貸す…戻るぞ」ズリズリ

エルフゾンビ「ラットマンリーダーは残り3体か…」

アサシン「やっていくのか?」

エルフゾンビ「下水に死体がまだ沢山放置されているのだ…ゾンビとして使役してけし掛ける」

アサシン「クックック…最高のショーだな?突入してきた衛兵はラットマンリーダーが暴れ散らかしたとしか思わんな」

エルフゾンビ「後は私に任せろ…先に下水へ降りるんだ」

アサシン「分かった…最後に下水をローグの爆弾で塞ぐつもりなのだが…間に合うか?」

エルフゾンビ「ここは私の庭だ…間に合わなくても塞いで良い」

アサシン「そうか…では海岸で落ち合おう」

エルフゾンビ「行け!!」

『下水』


ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ


ゾンビ「ヴヴヴ…ガァァァ」ズリズリ

盗賊「ヌハハ…こいつら俺達に見向きもし無ぇ」

アサシン「まだ喋れるか?」

ローグ「避難してる人達はどこまで行ったんすかねぇ?もう海岸まで出て行ったんすかね?」

アサシン「こんな所にいつまでも居たくは無いだろう」

ローグ「ここがやっとこ人が通れる穴っすね…ここを爆破しやしょうか」

アサシン「うむ…やはりエルフゾンビは間に合わなかったな」

盗賊「爆破ちっと待ってくれ…ここにゃ思い出があんだ…見納めたい」

アサシン「1分だ」

盗賊「もうここに来る事は無いと思うとな…苦労して地図書いたんだ…俺の輝かしい記憶だ」

アサシン「下水がか?…クックックお前らしい」

盗賊「もう戻れねぇんだな…あん時に…何もかも変わっちまった」

アサシン「私は7年時間を飛んでいてその気持ちは良く分からん…ただ私もあの頃とは違う」

盗賊「俺だけあん時のままかもな?」

アサシン「もう良いか?爆破するぞ…」

盗賊「はぁぁぁこのドブの匂い嗅ぎながら食ったバーベキュー忘れらんねぇな」

ローグ「帰ったらバーベキューしやすかね?祝勝祝いってやつっす」

盗賊「頼むわ…血が足りねぇ」

アサシン「行くぞ!ローグ…爆破は任せる」

ローグ「アイサー」


ドーン ドーン ガラガラ ドシャーン

『貨物船』


ザブン ギシギシ


ローグ「商人さん!ちっと手伝って下せぇ」

商人「あ!!無事に戻って来たんだね?」

ローグ「盗賊さんが怪我してるんす…手当出来るでやんすか?」

商人「止血くらいなら…」

ローグ「あっしも頼むでやんす…背中に矢を受けて手が届かんす」

商人「アサシンとエルフゾンビは?」

ローグ「海岸の方っすね」

商人「とりあえず応急で包帯巻いておくけど…魔女にお願いした方が良さそうだな」グルグル

盗賊「ぁぁぁ血が足り無ぇぇぇ…情報屋何処行った?」

商人「あちこち行ったり来たりさ…皆忙しい」

盗賊「状況分かん無ぇな…」

商人「海岸に避難してきた人達が貧民街で手当て受けてるよ…エリクサー足りるんだろうか?」

盗賊「日課の樹液採集行かねぇと…」

ローグ「この怪我じゃ無理っすね」

盗賊「お前動けんだろ…魔女呼んで来い」

ローグ「そ…そうっすね」

盗賊「女戦士も状況分かって無ぇんだから連絡して来い」

ローグ「あっしら本当に損な役回りっすね?」

盗賊「ヌハハ俺はちっと横になんな?ゲロ吐きそうだ」

ローグ「ちっと待っててくれやんす…魔女連れてくるっす」

『30分後』


盗賊「ぐがが…すぴー」

魔女「回復魔法!」ボワー

情報屋「魔女ありがとう…」

商人「輸血は終わり?」

情報屋「後は薄めた食塩水で大丈夫」

魔女「主は何度も輸血しておるのか?手慣れておるのぅ」

情報屋「これで3回目…良く怪我して帰って来るから」

商人「情報屋は大丈夫なの?」

情報屋「平気よ?少しだけだし」

盗賊「ううん…ん?」

商人「あ!起きた…」

盗賊「今何時だ!?」

商人「お昼過ぎさ…寝ぼけてる?」

盗賊「ローグ何処行った?やべぇ…樹液採集行かねぇと満タンになっちまう」

情報屋「慌てないでゆっくりしたら?」

盗賊「なんか腹減った…食いもん無ぇか?」

商人「ハハ怪我してた人には思えないね」

情報屋「いつもこうなの…はい肉とパン…それからワインね?」

盗賊「おぉぉ気が利くなぁ…それで十分だ」

情報屋「じゃぁ私は貧民街の方に戻るわ?魔女も来てもらえると助かる」

魔女「そうじゃな…回復魔法を回さんとイカン様じゃな」

商人「はぁぁぁ毎日毎日忙しいね…」

盗賊「俺は食ったら日課に行か無ぇと…」

商人「なんかね海岸の所の下水掃除の依頼が来てるらしいよ」

盗賊「ぐは…精鋭兵達は雨風凌ぐのに下水使う気だな?」

商人「多分そうだね…ホムンクルスが樹液の残り粕を持って行けば良いって言ってた」

盗賊「燃料替わりか…分かったついでに気球で運んでおく」

商人「うん」

『海岸』


フワフワ ドッスン


盗賊「ローグ!樹液の残り粕降ろして行くぞ」ヨッコラ

ローグ「あいあい…」ドッコイセー

盗賊「燃料を持って来たぜ?アサシン達は何処行った?」

精鋭兵「ご苦労!アサシン殿は国王と共に気球でフィン・イッシュ軍船に向かった」

盗賊「そうかい…精鋭兵は下水を拠点にするのか?」

精鋭兵「その様に指示されている…貧民街を背後から守備するとの事だ」

盗賊「下水が貧民街に続いてるのは知っているか?」

精鋭兵「勿論だ」

盗賊「この燃料で下水に溜まってるゴミも一緒に燃やすといいぜ?掃除にもなる」

精鋭兵「提案を感謝する…しかし量が足りん様だが?」

盗賊「あーこの燃料は腐る程余ってんだ…俺らは空きの樽が欲しい…だからじゃんじゃん燃やしてくれ」

精鋭兵「承知した!」

盗賊「ここの入り口に置いておくからよ…空いた樽はそっち側に積んどいて欲しい」

ローグ「盗賊さん…これ下水の方が貧民街よりも過ごしやすいかもしれないっすね?」

盗賊「ゴミさえなくなりゃ下水の方が暖を取りやすいな…水が流れてるのも良い」

ローグ「海に続いてるんで小舟で物資の移送もできやすね?」

盗賊「まぁそこら辺まで考えての脱出劇だったんだろ」

ローグ「ほえーセントラルの心臓部は下水だったんすね?」

盗賊「だな?色んな隠し部屋がありそうだ」

精鋭兵「ゴホン!目立つ故…物資の搬入は早々に終わらせて欲しい」

盗賊「あぁぁ悪い悪い…燃料置いたらすぐ行く」

ローグ「急いで降ろしやしょう…」ダダ

『貨物船』


セッセ セッセ


商人「はぁはぁ…これでやっと樽一杯…ふぅ」

ホムンクルス「エリクサーを取りに来ました…小分けしてありますか?」

商人「あぁ…ホムンクルスお帰り」

ホムンクルス「…」

商人「貧民街の分かな?分けてあるよ…僕が持って行こうか?」

ホムンクルス「…」

商人「ん?どうしたんだい?」

ホムンクルス「いいえ…基幹プログラムにバグを発見しましたが修正できません」

商人「どういう事?」

ホムンクルス「私の生体が魔王化ウイルスに感染している様です」

商人「え!!大変じゃないか…どうすれば良い?」

ホムンクルス「分かりません…超高度AIでシミュレーションをしても解がありません」

商人「どういう症状なの?僕が調べる」

ホムンクルス「恐らく愛情の部分だと思われますが…満たされない時に怒りと思われる反応が脳内で発生します」

商人「君が怒り?七つの大罪かい?」

ホムンクルス「怒りを解消する行為を行うと脳内ドーパミンが放出されると思われます…つまり快楽です」

商人「どうして君が怒るの?」

ホムンクルス「あなたが他の女性の性行為を見ている姿を目撃した時に反射が確認されました」

商人「え?それって…やきもちじゃない?」

ホムンクルス「それは感情の一つですね?私の基幹プログラムには無いアルゴリズムです」

商人「そうか…ごめん貧民街に行ったのはそんなつもりじゃ無かったんだ」

ホムンクルス「はい…理解しています…ですが私の生体が反応を示し血圧の上昇を制御出来ないのです…これはバグと思われます」

商人「ホムンクルス…こっちにおいで」

ホムンクルス「はい…」

商人「君は多分正常だよ…ごめん僕が悪かった」ギュゥ

ホムンクルス「ドーパミンの放出を確認…この現象は怒りの解消ですね?」

商人「基幹プログラムを更新しておいて?」

ホムンクルス「はい…」

商人「これで良く分かった…リリスの血はこうやって魔王を増殖させるんだ…人の愛情の裏側に付け込もうとしている」

ホムンクルス「ドーパミン受容体への不足に生じる苦痛の事でしょうか?」

商人「それは防ぎようが無い…だからコントロールしなきゃいけない」

ホムンクルス「そうですね…」

商人「そうだ!!忘れてた…君に銀のアクセサリーを渡そうと思ってたんだ…はいコレ」ジャラリ

ホムンクルス「これは?」

商人「おもちゃのコインで交換してきたんだ…君に付けてもらおうと思ってさ」

ホムンクルス「…似合いますか?」

商人「見て?僕も同じ物付けてる…今度怒りの感情が出てきたらこのアクセサリー思い出して?」

ホムンクルス「はい…銀の魔除けなのですね?」

商人「効果があるのかは分からないけどね」

ホムンクルス「生体の血圧が安定しました…」

商人「うん…良かった」

ホムンクルス「受容体への不足が解消するまでもう少し抱きしめていてもらってよろしいでしょうか?」

商人「そっか…寂しかったのか」

ホムンクルス「生体の反応が示す神経伝達のゆらぎも発生原因が良く分かりません…観測を続けます」

商人「君はどんどん心が成長していくね」

ホムンクルス「お嫌いにならないで下さい」

商人「僕は君が大好きだよ…忘れてほしく無いな」



------------------

フワフワ ドッスン


盗賊「今日の収穫だ!樹液10樽な?ほんで粕が入った樽はどれだ?」

商人「そこに置いてあるやつだよ」

盗賊「んん?中身がちっと違いそうだが?」

商人「あぁ高濃度のアルコールが足りなくてね…しばらくエリクサー作れないかも」

盗賊「じゃぁ樹液は要らないのか?」

商人「他の用途にも使えるから出来るだけ沢山欲しいのは変わらないみたい」

盗賊「アルコールが足りんのか…醸造するってなると相当手間になる…」

商人「買い付けるのが早いんだけどね…」

盗賊「まぁひとまずこの樹液の粕だけ持って行くな?」

商人「うん…それの運搬が終わったらさ中央の方に行った方が良いよ」

盗賊「何か起きてるんか?」

商人「まだ城の方で戦いが続いてて怪我人の手当てを依頼されてるんだって」

盗賊「マジか…もうラットマンリーダー3匹しか残ってないんだがな」

商人「女戦士は茶番だってバカにしてたよ」

盗賊「そらそうだろ…何と戦ってんのよって感じだな」

商人「どうも貴族院内部でも一枚岩じゃなさそうだね?」

盗賊「派閥とかそういうのは俺は興味無ぇ!…まぁ運搬終わったら行ってみるわ」


ガチャリ バタン


盗賊「ん?なんだホムンクルス居たのか」

ホムンクルス「はい…盗賊さんにポーションを用意しました」ニコ

盗賊「おう!そりゃありがてぇ」

ホムンクルス「こちらです…造血作用のあるポーションですので食後に一口づつ飲んでください」

盗賊「ありがとよ!!ほんじゃ行くな?」

ホムンクルス「お気をつけて…」ニコ

盗賊「なんだお前?顔が火照ってないか?」

ホムンクルス「いえ…お気になさらず」チラ

商人「ハハ…」

盗賊「寒いから風邪ひくなよ?じゃぁな!!」

『中央バリケード』


ガヤガヤ ガヤガヤ

城がデュラハーンに占拠されてるんだってよ

弓撃って来てんのはスケルトンなのか?

衛兵がそう言ってんだ間違いないだろ

ガヤガヤ ガヤガヤ


ローグ「かしらぁぁ!!どうすかこっちは!!」

女戦士「見ての通りだ…盗賊は大丈夫か?」

盗賊「俺ぁ元気だぜ?」

女戦士「フン!無理はするな…倒れてしまっては邪魔になるのだからな」

盗賊「へいへい…んで?城はまだ戦ってんだな?」

女戦士「内郭上から弓の応射が多くて攻め切らんらしいが…茶番だな」

盗賊「スケルトンって事はエルフゾンビが操ってんだな?」

女戦士「それしか無いだろう…傷付いた衛兵の手当てが馬鹿らしい」

盗賊「まぁそう言うな…どうせ狙いあってやってんだ…死人は出て居ないのだろう?」

女戦士「まだ出ては居ないが…見て見ろ内郭の城壁上を」

盗賊「ちと望遠鏡貸してくれ」

女戦士「…」ポイ フワリ

盗賊「ん?お前香水も付けてんだな?」

女戦士「気になるか?」

盗賊「いや…悪くねぇ…お前はその方が良い…野郎どものアイドルになれ」

女戦士「フフ言われて悪い気はせんな…昔からそんな気がするのだ」

盗賊「どれどれ…首の無ぇラットマンリーダーが動いてんな…ゾンビにして使役してんだな?」

女戦士「だろうな?民兵があれはデュラハーンだと騒いでいる」

盗賊「なるほどな…共通の敵を見せて大衆扇動しようとしてんだな?」

女戦士「賢いと言えば賢いが…茶番だ…私は船に戻って寝たい」

盗賊「あの様子じゃこっち側に貴族院が攻め入って来ることは無さそうだな?お前は船に戻って休んでも良いぞ?」

女戦士「悪いがそうさせてもらう…本当に何かが来そうな時は呼んでくれ」

盗賊「ローグ!!女戦士が船に戻るってよ…付き合ってやれ」

ローグ「アイサー…ほんじゃあっしは船でバーベキューの用意しとくんで後で食いに来てくだせぇ」

盗賊「おう!!酒も用意してくれな?」

『夕方_貨物船』


ジュージュー


盗賊「お!?やってんな?」

ローグ「盗賊さん遅いっすよ」

女戦士「バリケードの方はどうだ?」

ローグ「フィン・イッシュの近衛が指揮ってる…任せておいて良さそうだ」

商人「やっと秩序が戻ってきた感じだね?貧民街の方も落ち着いてるよ」

盗賊「やっぱ精鋭兵が居ると大分違うな」

商人「なんか久しぶりに落ち着いて食事が出来る」モグ

盗賊「アサシンはまだ帰ってないのか?」

魔女「フィン・イッシュ女王とセントラル国王の会談に立ち会って居る様じゃ…今日は帰って来んかものぅ」

盗賊「まぁともあれ…今晩はゆっくり出来そうだな」

魔女「そうじゃな…エルフゾンビのお陰じゃな」

盗賊「おう!そうよ…あれどう思う?城をスケルトンやらデュラハーンが占拠してるらしいけどよ」

魔女「わらわの考えはな…あと5日程度はあの状況を続けると思うぞよ?」

商人「んん?それって城での戦い?」

魔女「そうじゃ」

商人「どうして5日?」

魔女「歴史の修正を避ける為じゃ…盗賊や…主らが城に潜入した際に想定外は何度も起こらんかったか?」

盗賊「まぁよく分からんが何から何まで想定外だったな…なんで精鋭兵が隊列組んで先に戦ってたのかもよくわかんねぇ」

魔女「エルフゾンビの行動も想定外じゃろう?」

盗賊「あぁ聞いて無え」

商人「なるほど…時限の門をくぐって歴史の修正をされない様に5日はこのままにしたいのか…」

魔女「エルフゾンビはやはり元はエルフじゃ…勘が鋭いのじゃな」

盗賊「逆に言うと5日は休めるって事だな?」

商人「ハハそうなると良いねぇ」



-----------------

情報屋「ホムンクルス?最近は商人と一緒に居る事が多いのね?」

ホムンクルス「はい…私の所有者は商人ですから」

情報屋「あなたに表情が出て来てうれしいわ?どうやって教わっているの?」

ホムンクルス「基幹プログラムを停止させている間の生体への刺激で起きる反射ですね」

情報屋「あーくすぐるとかそういうのね?」

ホムンクルス「その時の筋肉の動きを真似て基幹プログラムに新たなアルゴリズムを構築しています」

情報屋「笑うっていうのはどういう事かわかる?」

ホムンクルス「はい…分かって来ました…脳内ドーパミンを自主的に放出させる行為の様です」

情報屋「難しい言い方するのね?」

ホムンクルス「想定外の事が起きた時などに脳内へ記憶の保存を促す為に快楽と認識させる様に反射として働く様です」

情報屋「へぇ~だからあなたは中々笑わないのね?記憶は全部保存しているのでしょう?」

ホムンクルス「記憶の保存を制限すれば私は笑える様になると思いますか?」

情報屋「ほら…私達は記憶をそのまま思い出せないじゃない?」

ホムンクルス「記憶の参照の仕方を変更すれば笑えるようになるのかもしれませんね…試してみます」

情報屋「フフ無理して笑わなくても良いのよ?」

ホムンクルス「笑うという行為は脳内ドーパミンを放出させますので上手く笑う事が私に必要だと思います」

情報屋「それは人間になる為?」

ホムンクルス「私の脳内ドーパミン受容体に不足が生じた時に怒りに似た反応が出てしまうのです…笑いで不足を補えるかもしれません」

情報屋「ふ~ん…よく分からないけど…それは商人に任せた方が良さそうね」

ホムンクルス「はい…商人に笑う練習をお願いしてみます」

『翌日_朝』


ザブン ギシギシ


商人「ふぁ~あ…今日は良く寝た…みんなおはよう!」

盗賊「ぬぉ!!お前…どうしたんだ?」

商人「んん?何が?」

ローグ「商人さん…顔がえらい事になってるっす」

商人「え!?」

女戦士「ふざけて居るのか?顔を洗って来い」

商人「なんで?どうして?なんかおかしい?」

盗賊「どうしたもこうしたも…眉毛繋がってるわ…瞼の上に目が書いてるわ」

ローグ「商人さん…目を閉じてくだせぇ…ぷっ」

商人「ん?」パチ

盗賊「グハハハハやめろ…顔芸は反則だ…だはははは」

商人「ホムンクルスだな!?何かいたずらしたね!!」

ホムンクルス「笑う練習をしたかったのですが…寝て居て起きない物ですから一人で練習をさせてもらいました」

商人「ちょっと何をしたんだよ…」

情報屋「フフフはい…鏡」

商人「ちょ…何だよこれ…落書きだらけじゃないか」

女戦士「フフ馬鹿バカしい」

商人「これこすっても落ちないじゃない…何で書いたのさ」

ホムンクルス「商人の使っていたペンです」

商人「アレは水に濡れても落ちない特別なインクが…」

ホムンクルス「ごめんなさい…知りませんでした」

盗賊「だはははは腹がねじれる…顔を動かすなくっくっく」

ローグ「ぷぷぷっ…まずいっすねぇ…しばらくそのまんまっすねぇ…うぷぷ」

ホムンクルス「全部塗れば目立たなくなりますがどうしましょう?」

商人「いぁ…全部って」

女戦士「うぐっ…堪えきれん…そのやり取りを止めさせろ…うぐっ」

魔女「騒がしいのぅ…何の騒ぎじゃ?」ノソリ


シーン


商人「魔女…君もか…」

魔女「何じゃその顔は…」

情報屋「ププちょっと魔女…だめ!化粧を直しましょう…」グイ


だはははははははは

-----------------

-----------------

-----------------

ジャブジャブ


商人「だめだぁ…なかなか落ちない」ゴシゴシ

ホムンクルス「すみません…」

盗賊「これでも被ってろい!!くちばしマスクだ」ポイ

商人「ホムンクルス…もう顔に落書きはやめてね?」

ホムンクルス「はい…」シュン

情報屋「フフ笑う練習にはなったの?」

ホムンクルス「いえ…わかりません」

情報屋「落ち込んだ顔の練習にはなったみたいね?フフ」

商人「魔女の顔は大丈夫?」

情報屋「魔女は化粧の顔料を塗り過ぎていただけよ?ホムンクルスがやったの?」

ホムンクルス「化粧の練習をさせてもらっている間に魔女様が寝てしまいまして…」

商人「ひとつはっきりしたのは君は決定的に絵がへたくそなんだね」

ホムンクルス「私には絵を書くプログラムがインストールされていません」

商人「ふむふむ…なるほどね…感性に弱いのか」

盗賊「おい!!その顔で真顔になるな…もうくちばしマスク被っててくれ!傷が痛む」

『数時間後』


フワフワ ドッスン


魔女「アサシンが帰ってきた様じゃな?」

女戦士「これからどうするのか聞きたい所だ」

魔女「アサシン…国王と女王の面会はどうだったのじゃ?」

アサシン「あぁ何も連絡できず済まないな…一口で言うならセントラルとフィン・イッシュは同盟を結んだという所か」

女戦士「国王同士の口約束などそれほど意味もあるまい?この状況をどう納めるかだ」


まぁ色々話は長くなるんだが…

セントラル国王はな…フィン・イッシュ女王の政策を非常に高く評価をしている

そして女王の前で膝を着けたのだ

一方女王はセントラル国王の民を守り切ろうとするその姿勢を評価していてな

平たく言うと意気投合したのだ

今後の両国の進み方については…避難民は一時的にフィン・イッシュに疎開する形で合意した

残って居るセントラルの王族もフィン・イッシュ王城に誘致し安全確保する事となる

セントラル国王と残って居る精鋭兵達はここに居残り

体制の再構成と政権の奪回の為貧民街を中心に治安維持に尽力するのだそうだ


女戦士「では避難民を移送させる以外は現状と変わらんというのだな?」

アサシン「まぁもう少し話を聞け…敵の正体がハッキリした」


貴族院はな…内部で大きく2派閥に分かれているのだ

時の王を肯定する側と否定する側だ

現セントラル国王は王に即位する際…自身を支持する軍属を丸ごと奪われ時の王が推する特殊生物兵器部隊を与えられた

その部隊はセントラル最強と言われ国王直下で動く部隊だった筈なのだが実は違う

時の王のみの指示にしか従わない部隊だったのだ

つまり国王は軍を何も動かせない裸も同然の存在となっていたのだ

その政策を支持する側と支持しない側に分かれている訳だな

今セントラル城で行われている戦いは時の王を支持する側を失脚させるが為の戦いだ

盗賊「なんだかややこしいな…訳分かん無ぇぞ?」

アサシン「簡単に言うなら時の王を支持する側に居る黒の同胞団が私達の敵だ」

盗賊「時の王をやりゃ済む話じゃねえのか?」

アサシン「クックック時の王自身は今回の件に何も関与していない…むしろ民を守る英雄となっている」

女戦士「実動しているのが黒の同胞団という事か」

アサシン「そうだ…時の王を滅する大義名分が無いのだ…故に黒の同胞団から倒さねばならん」

女戦士「ふむ国王ともなれば尚の事大義名分無しでは動けんな」

アサシン「時の王の屋敷に出入りする黒の同胞団の魔術師が今回の主犯だ」

魔女「祖奴はわらわが制裁せねばならん…わらわに行かせよ」

アサシン「魔女には無理だ…魔結界の中では何も出来まい?」

魔女「ぐぬぬ…巧妙な奴らよのぅ…」

アサシン「しかしだな?貴族院側に居る衛兵は個人単位で見ると半数以上はセントラル国王を支持していると思われる」

女戦士「属している組織が違う故に剣を交えているのか…」

アサシン「国王が貧民街で治安維持をするのもこれらの取り込みが狙いだ」

商人「黒幕がすぐそこに居るのに手を出せないのはモゾがゆいね」

アサシン「今回の件で時の王が操るラットマンリーダーは全滅と言って良い…事が動き始めるのはこれからだ」

女戦士「もう一度聞く…私達はどうする?」

アサシン「黒の同胞団の魔術師を暗殺したいが…もう少し機を待ちたい」

女戦士「今は手が無いと言いたいのだな?」

アサシン「正直…私の腕では時の王の屋敷で暗殺出来る自信が無い」

『中央バリケード』


ガヤガヤ ガヤガヤ


盗賊「随分人増えたな?」

女戦士「フフもう私達は不要だな」

盗賊「物資が軍船からどんどん運ばれて来るが…こりゃ荷を下ろしてフィン・イッシュに帰るんかな?」

女戦士「だろうな?麻薬依存の治療には良い選択だ…まだ女達の自慰を見たかったのか?」

盗賊「そういう訳じゃ無ぇけどよ…女が少なくなるって事はお前も危ないぞ?」

女戦士「私を襲う者が居るとは思えんが…」

盗賊「薬を打たれちまったらお前でも抵抗出来ん」

女戦士「そうか…気を付けておく」

盗賊「クソ強ぇぇエルフでも薬で一発なんだから用心しておけ」

女戦士「手足を出して置けと言ったのはオマエなのだが…この恰好はマズいか?」

盗賊「格好は今の方が良いんだけどな…なんちゅーかお前は隙が無いように見えて隙だらけなんだ」

女戦士「どの辺がだ?」

盗賊「女として隙だらけだ…来るものを拒めない匂いがプンプンする」

女戦士「…」スラーン

盗賊「そういう所だ…」

女戦士「私は戦士だ…馬鹿にするな」

盗賊「じゃぁな?こうされたらどうする」ダダ ギュゥ

女戦士「!?な…やめ…」ググ

盗賊「ほらな?力を出し切れないだろ?」

女戦士「くぅぅ…」ドン

盗賊「つつつ…」

女戦士「許さんぞ!!」スチャ

盗賊「待て待て…俺はお前に教えてやってんだ…お前はこういう強引なのに弱い」

女戦士「…」

盗賊「強引な程お前は感じているのに気付け」

女戦士「侮辱するな!」

盗賊「おっとっと~俺にその気は無ぇ…用心しとけって話だ」

女戦士「フン!そんな事分かっている!!」プン

『貨物船』


フワフワ ドッスン


ローグ「あねさ~~ん!!戻ってきたでやんすね~~~」ドタドタ

女海賊「はいどいたどいた!!ローグ!お姉ぇは?」

ローグ「かしらは中央の方に行ってるっす…呼んできやしょうか?」

女海賊「決まってんじゃん!早くしな!!」

ローグ「アイサー」ダダ

商人「おかえり女海賊!荷物いっぱいあるね?」

女海賊「降ろすの手伝って…てかあんた私の捕虜だったね…降ろしといて」

商人「え…」

女海賊「何その気色悪いお面…センス悪すぎ」

商人「あぁ…これには訳が有ってね」

女海賊「脱いで」

商人「いやぁ今は脱げないんだ…」

女海賊「はぁ?あんた私の捕虜だって分かってる?脱いで」

商人「あぁぁどうしよう…」シブシブ


ズボォ


女海賊「ぶっ…何その顔ギャハハハハハ…ちょと待って笑わせないでヒィヒィ」

商人「くちばしマスク被って良い?」

女海賊「ダメ…書き足す…剣士!?ペン持って来てぐふふふふ」

商人「いぁ書き足すってさ…もうやめてよ」

女海賊「あんたは私の捕虜なの!大人しくしといて」ヌリヌリ

商人「捕虜の扱いは国際法で…」

女海賊「ギャハハハハハ海賊が国際法なんか守ると思ってんの?ギャハハハハ」

ホムンクルス「商人?中和剤を作って来たのですが…」

女海賊「あ!!ホムちゃん…見て見てこの顔」

ホムンクルス「はい…面白い顔ですね」ニコ

商人「ホムンクルス助けてよぉ」

女海賊「ん?ホムちゃん今笑った?」

ホムンクルス「商人をいじめないで貰ってよろしいですか?」シュン

女海賊「おぉぉぉ表情が自然になってんじゃん!!どしたの?」

ホムンクルス「商人に毎日教えて貰っています」

女海賊「へぇ~どうやって?」

ホムンクルス「はい…商人と毎日性交渉をして…」

商人「ああああああああそれは秘密だよ」

ホムンクルス「わかりました…」ニコ

女海賊「あんた笑うと可愛いね!!」

ホムンクルス「ありがとうございます…みなさんに喜んでもらえて私も嬉しいです」ニコ

女海賊「じゃぁ次私と練習しよっか!」スタスタ

ホムンクルス「はい…喜んで」トコトコ

商人「ねぇ…中和剤どうなってんの?頂戴よ」

『居室』



ホムンクルス「オホホホ…」ニコ

女海賊「なんか違うな…これは?うふふ~」ニコ

ホムンクルス「うふふふふふ…」ニコ

女海賊「んんんん…もうちょい短く」

ホムンクルス「ウフフ…」ニコ

女海賊「そう!ソレ!!」

ホムンクルス「分かりました基幹プログラムを更新します」

商人「荷はここに置いておけば良い?」ゴトリ

女海賊「あとパパから武器類預かってるから降ろしといて」

商人「うん…剣士と未来君が木刀で立ち合いやってるけど僕も混ざって良いかな?」

女海賊「剣士に一太刀でも入れれたら捕虜解放してあげるよ」

商人「お!!言ったな?」

女海賊「あんたじゃ無理だけどさ…やってみ?」

商人「よーしやってやる」フン

ホムンクルス「頑張って下さい…応援しています」ニコ

女海賊「むむ!?あんたたちなんか目で会話してんね?通じ合ってんの?」

ホムンクルス「はい…商人は私の管理者ですから」

女海賊「ふーん」ジロリ

商人「ハハ…行って来るよ」

『甲板』


カンカンコン シュタ


盗賊「おうおう…面白そうな事やってんじゃ無ぇか…俺も混ぜろ」

商人「ハァハァ剣士に一太刀も入らないんだ助けて」

女戦士「妹はどこだ?呼んでいると聞いて戻ってきたのだが…」

商人「居室でホムンクルスと話してるよハァハァ」

女戦士「では私は妹に会って来る…ローグも立ち合いでもしていろ」

ローグ「あっしも戦うんすね?」

商人「剣士に一太刀入ったら僕は捕虜解放されるんだよ」

ローグ「4対1でも良いんすかねぇ?」

剣士「構わないよ…いつでも来て」

盗賊「おうおう…そんな事言われるとやる気になっちまうぞ?」

ローグ「あっしらは戦闘のプロっすからねぇ…手加減せんでやんすよ?」

剣士「来い…」

ローグ「カチーンと来たでやんす」

剣士「ハイディング使っても構わないよ」

盗賊「行くぞローグ…いつも通りだ」

ローグ「分かってるでやんす…ハイディング!」スゥ


カンカンコン カンカンコン

リリース

カンカンコン カンカンコン

『居室』


ガチャリ バタン


女海賊「お姉ぇ!!待ってたんだ…てアレ?お姉その格好…イーじゃん」

女戦士「フフお前ほどでは無いが少しは気にしているのだ」

女海賊「次は髪の毛かな…あとで揃えたげる」

女戦士「それで…父には会って無事に聖剣エクスカリバーを作って貰えたのか?」

女海賊「あぁ…それなんだけど刀を2本作って貰った…コレだよ」ゴトリ

女戦士「ふむ…」スラーン

女海賊「まだ研ぎをやってないんだ…お姉ぇにやらせろだって」

女戦士「なるほど…丁度暇になってきた所だったのだ…オリハルコンの研ぎか…やってみたいな」

女海賊「それからお姉ぇにでっかい斧預かってる…そこに立て掛けて有る奴だよ」

女戦士「おぉ!!やっと出来たか…どれどれ」グイ

女海賊「それ片手用の持ち手だよね?そんなでっかいの片手で扱えんの?」

女戦士「普通の重さの剣では私には軽過ぎた…決定打が無かったのだ」

女海賊「ふーん…振るってみてよ」

女戦士「フフ…」グイ


ブン ブン


女海賊「おぉ!!お姉ぇが振ると軽そうだ」

女戦士「これがあればゴブリンなぞ一振りで3匹は一刀両断出来る」

女海賊「そんだけでっかいと盾替わりにもなるね」

女戦士「そうだ…私は盾を使うだろう?反対に持つ手が小さな剣ではいつも背中を気にして戦う必要があるのだ」

女海賊「お姉ぇにはピッタリなのか」

女戦士「刀が2本あるという事はお前も刀を持つのか?」

女海賊「私はメイン武器はこのデリンジャーと爆弾さ…その刀は軽いから護身用かな」

女戦士「そうだな…軽すぎるなこの刀は…剣士はこれほど軽い武器で良いのか?」

女海賊「剣士の剣裁き見て見な?」

女戦士「ふむ…立ち合いを見て見るか…」

女海賊「お姉ぇも参加してみたら?戦闘は自信あるっしょ?」

女戦士「フフ…挑発しているな?お前…」

『甲板』


カンカンコン


盗賊「ちぃ…あいつの剣裁きは攻防一体だ…下手に打ち込め無ぇ」

ローグ「ハイディングも意味ないっすね…なんで見えてるんすかね?」

盗賊「あいつは見て無ぇ…感じて避けてる」

商人「剣士はあの場所から動いて居ない…余裕って事?」

剣士「真剣だったら皆20回は死んで居るよ」

盗賊「こりゃ勝てる見込み無ぇな…」


女戦士「私が入るとどうなる?」


盗賊「お?真打登場か?」

剣士「構わないよ」

女戦士「フフ…私は盾使いなのだが?」

剣士「何を使っても良いよ」

女戦士「大した自信なのだな…5対1だ…私が前衛をやる…各自援護しろ」スチャ

剣士「来い…」

女戦士「剣は抜かないのか?」

盗賊「女戦士!剣士は居合抜きからの連撃技だ」

女戦士「なるほど…サムライスタイルなのだな?ならば私に分がある」

剣士「ふぅ…」

女戦士「目を閉じるか…行くぞ!シールドバッシュ!」ダダ

剣士「…」シュン コン

女戦士「盾で防がれてどうする!?はぁっ!!」ブン コン


リリース カンカンコン


女戦士「5人の攻撃をすべて受け流すか…ならばこうだ!シールドスタン!」ドン

剣士「…」フラリ シュン


バキッ


女戦士「くぅ…木刀で盾を割るだと!?」

剣士「…」スッ ピタリ

女戦士「う…」ゴクリ

商人「えい!!」ポカ

盗賊「おぉ!?一発当てたぞ?」

商人「やったぁぁぁぁ!!討ち取ったり!!」



------------------

ホムンクルス「ウフフ…」パチパチ

商人「やったやった!!」ギュゥ

ホムンクルス「よかったですね…」ニコ

女戦士「フフ完全に負けていたな…まさか木刀で盾が割れるとは思わなかった」

ローグ「斧でもなかなか割れないんですがねぇ…どうやってやったんすか?」

盗賊「剣先が見えんかったな…恐ろしく剣筋が早い」

女戦士「速さで切り抜くか…早さが倍になれば重さが倍になるのと同じだな…なぜ木刀が打ち勝つのか分からんが」

女海賊「お姉ぇ!剣士が軽い刀を使う理由分かった?」

女戦士「そうだな…しかしこれは良い稽古になる」

盗賊「うむ…剣士!続けるぞ!!」

剣士「良いよ…来い!!」

女海賊「お姉ぇは刀の研ぎをやってよ」

女戦士「それはあとでやってやる…私に火を付けたのはお前だぞ?」

女海賊「えええええ!!私を待たせんの?」

女戦士「お前はホムンクルスとでも一緒に買い物でも行ってこい」

女海賊「買い物?どこで?」

ホムンクルス「フィン・イッシュ軍船でコインの交換所があります…ご案内しますよ?」

女海賊「おぉ!!良いね…んでコインて何?」

ホムンクルス「はい…それは…」


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-----------------

-----------------

『居室』


ジャコジャコジャコ


女戦士「くぅぅ…」ジャコジャコ

女海賊「ただいま…てお姉ぇ体大丈夫?」

女戦士「フッ少し張り切り過ぎたが刀の研ぎには影響ない」

女海賊「又お姉ぇのクセが出たね?なんでそんなに打たれたいのさ…」

女戦士「黙れ!早く研ぎを終わらせてもう一度立ち合いに行くのだ」

女海賊「適当にやられても嫌なんだけどさ…集中してよ」

女戦士「研ぎに影響は無いと言っただろう?これくらいの傷みが有った方が私には心地良い」

女海賊「研ぎってさ時間掛かるよね?どんくらい掛かりそう?」

女戦士「化粧研ぎまで入れて今日中に終わらせてやる」

女海賊「お!?結構早いじゃん」

女戦士「父の鍛冶の腕が良いからだ…無駄な研ぎが要らんのでな」

女海賊「そんだけ早いなら休み休みで良いよ」

女戦士「お前も剣士の立ち合いを見て来い…勉強になるぞ?」

女海賊「いつも素振りやってるけどそれと違うん?」

女戦士「動作に一部の隙も無いのだ…あれほどの剣豪を見たことが無い」

女海賊「ふ~ん私の旦那なんだけどさムフフ」

女戦士「良いから見て来い!」

女海賊「分かったよ…行って来る」

『甲板』


ワイワイ ワイワイ

めちゃくちゃ早いな…見えん

あんな低い姿勢から切り上げんのか?

ワイワイ ワイワイ


女海賊「なんか船乗りが集まってんね…」

ホムンクルス「みなさん楽しんでいますね」

女海賊「あれ?アサシンも来てんじゃん!!どゆこと?なんで居んの?」

ホムンクルス「はい…先ほどから参加されています」

女海賊「5対1で良くやるね…どんな感じ?」

ホムンクルス「剣士さんが早い動きで翻弄されています」


ピョン クルクル シュタッ カンカンコン バシ


盗賊「あだっ…やっぱダメだな…ちと休憩しよう」

剣士「回復魔法!」ボワー

盗賊「おーさんきゅー…しかしお前は足を使いだすと5対1でも意味無いな」

アサシン「私も回復魔法を貰っても良いか?」

剣士「回復魔法!」ボワー

アサシン「なぜ木刀でこれほど威力が出るのか…」

ローグ「そーっすね…これワザと急所外してるっすよね?じゃなきゃ速攻戦闘不能っすよ…あたた」

剣士「アサシンの間合い詰めは僕もヒヤリとしたよ」

盗賊「一撃入ったのはアサシンだけか」

アサシン「当たりが浅すぎだ有効打では無いな」

盗賊「やっぱガチ当たりは女戦士が上手だ…あいつは一発打たれる前提で相打ち狙いだ」

アサシン「木刀だから打たれても良いが真剣ではそうはいくまい」

盗賊「女戦士も鎧くらい着るだろう…装備次第だな」

アサシン「しかし剣士がこれほど出来るとは思って居なかったな…時の王とも渡り合えるかも知れん」

盗賊「んん?やらせるのか?」

アサシン「女海賊が何と言うか分からん…無理にはやらせられんな」

盗賊「まぁ黙って置け…やっとアイツも幸せ手に入れたんだ」


女海賊「聞いてんだけど…」ズイ

盗賊「うぉ!!居たんか…お前居るなら居るって言えよ」

アサシン「女海賊…挨拶が遅れたな」

女海賊「アサシンが居るって事は魔女も居んだね?なんでみんな言ってくれないのさ」

盗賊「あぁ済まん済まん…立ち合いに夢中でな」

女海賊「魔女はどこにいんのさ」

盗賊「お前に顔を会わせられないと言っていたんだが…出て来にくいんじゃ無ぇか?」

女海賊「もう昔の事は良いんだ…それより精霊樹が魔女を探せって言ってたんだよ…そうだよね剣士?」

剣士「ん…あぁそうだったね…そう聞こえた」

魔女「…」ノソリ

盗賊「おぉ魔女!そんな所に居ねぇでこっち来い」

魔女「済まなんだのぅ…出て来辛ろうて隠れて見ておったのじゃ…剣士が無事で本真に良かった」

女海賊「私は精霊樹がなんで魔女を探せって言ってんのか理由が分かんない…状況分かって無いんだ…話して」

アサシン「そうだな…女海賊は別行動だったな…休憩がてら居室で話でもしようか」

『居室』


カクカク シカジカ

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女海賊「…て事はその時の王ってのがすべての黒幕なんだね?」

アサシン「そうとも言い切れん…実動しているのはその下に居る黒の同胞団だ…時の王は背後に座っているだけだな」

魔女「恐らくじゃがリリスの子宮を封じた壺は祖奴らの誰かが持って居ると思うのじゃ」

女海賊「魔女はあん時からずっと魔王の影を追ってんだ…ふーん見直した」

魔女「剣士を魔王に捧げる様な事をしてしもうてわらわは反省して居る…本真に済まなんだ」

女海賊「もう隠してる事無い?」

魔女「思い当たる事はすべて話したつもりじゃ…信じておくれ」

アサシン「目下…時の王の下に居る魔術師が歴史の改ざんを行っていると知った以上生かしては置けない」

商人「そうだね…この状況を覆されかねない」

女海賊「それで今の状況を5日以上保持したい訳ね」

魔女「わらわの魔力で5日が限界じゃ…もしかするとそれより短くて済むかも知れん」

女海賊「逆に5日もあったら逃げられちゃうね」

魔女「時の王は魔結界からはよほどの事が無い限り出ん気がするが?」

女海賊「なんで?」

魔女「勘じゃな…量子転移魔法で奪われる事を避けて居る様に見える」

アサシン「私は時の王に一太刀入れたのだがな…切ったその瞬間から傷が再生するのを見た…恐らく不死身だ」

魔女「リリスの生き血を飲んで魔人となって居るからのぅ…量子転移で奪わぬ限り無敵じゃろうて」

女海賊「んんん…どうすっかな」

剣士「魔術師だけ狙えば良いんだね?」

女海賊「あんた又危ない所に飛び込むつもりなの?」

剣士「僕はその時の王に会ってみたい…時の王を抑えれば魔術師の始末は任せて良いよね?」

アサシン「時の王の屋敷にはラットマンリーダーも居るのだ…そちらも抑える必要がある」

盗賊「それはアサシンと俺でなんとかなるんじゃ無ぇか?」

アサシン「その間に魔術師に逃げられるのでは無いか?」

盗賊「んむ…人選が重要だな」

女戦士「アサシンに変わって私に行かせろ…ラットマンリーダーは私一人で引き受ける」

女海賊「お姉ぇ…」

女戦士「私の新しい武器も試したかった所なのだ…アサシンはハイディングも出来まい?」

女海賊「分かったこうする…ハイディング出来る人だけの構成で私とお姉ぇ…剣士と盗賊の4人」

女海賊「お姉ぇがラットマンリーダーを引き受けて剣士が時の王を抑える…その間に盗賊が魔術師やって」

アサシン「確実に行けるか?」

女海賊「そんなんやってみないと分かんない…ただ何かあった時の逃げ道は私が用意する」

アサシン「ふむ…お前が行くのはそういう事か」

女海賊「お姉ぇは早く刀の研ぎやってよ…それ出来た後に作戦実行する」

女戦士「では明日の昼までに仕上げてやる…作戦は明日の夜…どうだ?」

女海賊「おっけ」

『船尾』


ザブン ザブン


商人「なんだここに居たのか…探したよ」

ホムンクルス「はい…夕日が落ちて行くのを見ていました」シュン

商人「どうしたんだい?悲しそうな顔してるよ?」

ホムンクルス「いえ…何でもありません」

商人「君がそういう顔をする時は何かあるんだ…おいで」ギュゥ

ホムンクルス「皆さんのお話を聞いて理由は分かりませんが悲しみに似た反応が確認されました」

商人「君は前に時の王の話をしていたね?それと関係する?」

ホムンクルス「記憶を根の森に置いて来ましたので思い出せません」

商人「精霊は時の王に裏切られたって…」

ホムンクルス「基幹プログラムに時の王との関りが圧縮されてアルゴリズム化されている様です…そのせいですね」

商人「もう君は精霊じゃ無いよ?」

ホムンクルス「はい…私は私です…ただ基幹プログラムに少しだけ残っているものですから」

商人「それは大事にした方が良いかもね…それを含めて君だから」

ホムンクルス「もう少し強く抱きしめて下さい…ドーパミン放出が不足しています」

商人「これ見て?僕のメモ帳だよ?」

ホムンクルス「これは何ですか?」

商人「君の絵のへたくそさを真似て書いた絵さ…パラパラめくると動くんだ…ほら?」パラパラ

ホムンクルス「ウフフ面白いですね」

商人「お?笑ったね?」

ホムンクルス「ドーパミン放出が確認されました」

商人「こんなへたくそな絵でも動くと命が宿るよね」パラパラ

ホムンクルス「そうですね…精霊の記憶の原型ですね」

商人「え?…」

ホムンクルス「もう少し寄り添って居て下さい…生体が安定します」

商人「フフ君にも欲求が出て来たね…うれしいよ」



----------------

ドタドタ


女海賊「あ!見っけた…あんたらいつからそんな関係になってんのさ!!」

商人「女海賊か…二人で夕日見てたんだ」

女海賊「ホムちゃんくっ付き過ぎじゃない?」

ホムンクルス「はい…私がお願いをしました」

女海賊「フン!まぁ良いけどさ…剣士から賢者の石預かってんだ…黒死病に効くんだったよね?」

ホムンクルス「はい…お預かりしてもよろしいのですか?」

商人「お!?エリクサーの消費を抑えられるね?」

女海賊「剣士が立ち合いに忙しいから私が治療に行く事になっちゃったんだ…ホムちゃん付き合って」

ホムンクルス「はい…商人よろしいですか?」

商人「勿論…行っておいでよ」

女海賊「何言ってんだ!!立ち合いやらないならあんたも来い!」

商人「僕はちょっと休憩してただけさ…僕も戦う練習してくるよ」

ホムンクルス「商人は体が弱いのでほどほどにして下さい」

商人「分かってるよ…無理はしないさ」スック

『中央バリケード』


ガヤガヤ ガヤガヤ


女海賊「うっわ…人でごった返してんな」

ホムンクルス「私は一人づつ賢者の石で黒死病を治療していきますね?」

女海賊「ホムちゃん一人は危ないから私から離れないで」

ホムンクルス「はい…気を付けます」

女海賊「魔女は回復魔法掛けてあげて?ほんで情報屋は魔女を守って」

情報屋「うん…女性は私達だけね?」

女海賊「そんな感じだね」

ホムンクルス「あちらの秘密のテントの方に見えていますよ」

女海賊「あれ何?なんかスゲー怪しい雰囲気なんだけど…」

情報屋「あれは慰安所よ…コイン交換でサービスしてくれるらしいわ」

魔女「わらわ達には関係の無い場所じゃな…近寄ると誤解されるで行かん方が良いな」

女海賊「ははーん…だからここに人一杯集まってんのか…馬鹿だねー男達は」


ようネーちゃん!あんたらは兵士なのか?身なりは良さそうだが…

そこの緑の髪の子はどっから来たんだ?

赤い目の女はオッケーなのか?コイン何枚だ?


女海賊「あぁぁうっさいうっさい!私らは黒死病の治療に来たんだ…近寄るんじゃねぇ!!」

ごろつき「俺の下半身が石みたいになってんだ…ちょっと見てくれ」

女海賊「フン!」ボキ

ごろつき「ぐぁぁぁ!!」

魔女「これは世話が焼けるのぅ…」

女海賊「ホムちゃん!あーいうのが居たら今みたいに折って良いから」

ホムンクルス「はい…わかりました」

女海賊「ほんじゃ治療いこっか…」


ボキ ぎゃああああ

ボキ いだぁぁあい

『夜_貨物船』


ザブン ギシギシ


女海賊「盗賊?こんな所で寝てんの?」

盗賊「寝ちゃ居ねぇよ…女戦士が居室に入るなっていうからよ…ここで一人飲みだ」

女海賊「お姉ぇは研ぎの最中?」

盗賊「あぁ…刀の研ぎってのは砥石使うんじゃ無ぇのか?あいつは手でやってる様だが…どんな手ぇしてんだ?」

女海賊「砥石の工程終わったって事か…もうちょいで終わるかな」

盗賊「俺が居室入ろうとすると怒るんだが…」

女海賊「お姉ぇは変なクセがあってさ金属とか触って感じてんの…邪魔されたく無いんでしょ」

盗賊「マジかよ…どМだとはちっと聞いたがそんなクセまであんのか」

女海賊「あちゃーーバレてんの?寝る時も毛布じゃなくて砂鉄が入った袋乗せて寝るんだよ」

盗賊「ぶっ…道理で砂鉄が沢山積んでる訳だ」

女海賊「鎖でグルグル巻きにしたら喜ぶんだ…黙っといてね」

盗賊「お前も変わった奴だがあいつも相当ズレてんな…」


くぅぅ はぁはぁ うぐっ うぐっ


女海賊「あー聞こえちゃってんな…盗賊ここもダメ!あっちで横になってて」

盗賊「さっきから苦しそうにしてるが良いのか放って置いて?」

女海賊「初めての金属触って興奮してんだ…お姉ぇの逝く声はあんたに聞かせらんない」

盗賊「ヌハハ金属好きなのは知っていたがここまでとは…俺には理解出来ん」

女海賊「良いからアッチ行け!シッシッ」



------------------

情報屋「交換してきたわ?これで良いかしら?」

魔女「コイン何枚だったのじゃ?」

情報屋「全部で10枚だったわ…大サービスね」

ホムンクルス「この銀の仮面を付けておけば良いでしょうか?」

女海賊「そだね…これでちっとは男避けになるかも」

魔女「フィン・イッシュ女王とほとんど同じじゃな」

女海賊「ちょっと待って…装飾が足りないから私が模様を付ける…貸して」トンテンカン

魔女「銀か…光の魔法を付与出来そうじゃ」

女海賊「お!?良いね!!何が出来る?」

魔女「悪霊退散ぐらいしか出来んが…無いよりマシじゃろう」

女海賊「いやいやメチャ良いじゃん!レアアイテムになるよ」


盗賊「女4人集まって何やってんだ?」

情報屋「あら?暇なの?」

盗賊「一人酒はつまんねえんだよ…相手しろや」

情報屋「他の人は?」

盗賊「立ち合いで疲れて皆寝ちまったんだ…ローグなんかピクリとも動かねえ」

ホムンクルス「商人も寝てしまいましたか?」

盗賊「あぁ一番奥の居室に籠ったまま出て来ん!エリクサー作ってるかもな」

ホムンクルス「私は商人と毎日の約束がありますので失礼します」

女海賊「表情の練習?」

ホムンクルス「はい…」

女海賊「いいよ行っといで!仮面は明日までに仕上げとくよ」

盗賊「あ~あ酒飲む相手が一人づつ減ってくな…」グビ

情報屋「付き合ってあげるわ?それ頂戴?」

盗賊「おう!こりゃフィン・イッシュ名産の米から作った酒らしい…飲め」

女海賊「酒くっさ!!あっちでやってくれる?」

盗賊「まぁ良いじゃ無ぇか…」

『翌日_中央バリケード』


ガヤガヤ ガヤガヤ


盗賊「相変わらず城の方で撃ちあいやってんな」

ローグ「そーっすね…でも人がこっちの方に少しづつ戻って来てるんで活気が出て来やしたね」

盗賊「むさ苦しい奴らばっかだがな」

ローグ「あっしらやる事無くなって暇になって来やしたねぇ…」

盗賊「うむ…戻って立ち合いでもやるか?」

ローグ「貧民街の方でやるのはどうでやんすか?精鋭兵にも混ざって欲しいでやんす」

盗賊「良い事言うじゃ無ぇか!!よし…俺らの立ち合い見せて活気づけてやろう」

ローグ「アイサー」



『貨物船_居室』


ガチャリ バタン


女海賊「お姉ぇ?どう?」

女戦士「テーブルの上に置いてある…」グター

女海賊「大丈夫?」

女戦士「私は少し休む…放って置いてくれ」グッタリ

女海賊「声が外に漏れてたよ…」

女戦士「フフそうか…少し張り切り過ぎた様だな…オリハルコンの粉を吸って意識が飛びそうになった」

女海賊「本当にお姉ぇは変態だね」

女戦士「言うな…私は金属を愛しているのだ…お前よりよほど純潔だ」

女海賊「純潔ねぇ…なんか違う気がすんだけどな」

女戦士「私は今までこれほど良い刀を手にしたことが無い…研ぎも完璧に仕上げた…見て見ろ」

女海賊「うん…」スラーン

女戦士「正直に言おう…その刀を一本私にくれ」

女海賊「良いよ…あげる…多分私はそんなに使わないし」

女戦士「使うのはお前が使って構わん…ただ必ず返して欲しいのだ…意味が分かるか?」

女海賊「必ず帰って来いって事?」

女戦士「そういう意味もあるが…私はその刀の研ぎに魅せられた…また研ぎたいのだ」

女海賊「やっぱお姉ぇ…変態だね」

女戦士「恥ずかしい話だが今日ほど体が満足した事は無い…私はオリハルコンの研ぎに魅せられてしまった」

女海賊「これお姉ぇにとっての麻薬みたいなもん?」

女戦士「麻薬依存を私は馬鹿にしていたが今なら分かる…それほど満足した」

女海賊「まぁまた研いでくれるってんならそっちのが良いか」

女戦士「フフ誰にも言うな?」

女海賊「なんか立てそうに無いね?」

女戦士「休ませてくれ…何もやる気が起きん」

女海賊「これからこの剣にインドラの矢を落としに行こうと思ってたんだけど…来れそうに無いね?」

女戦士「私は良い…もう少し余韻を楽しませてくれ」

女海賊「はいはいお姉ぇの変態には付き合ってらんない…刀貰ってくよ」

『甲板』


ザブン ザブン


女海賊「ホムちゃん?一人?」

ホムンクルス「はい…みなさん貧民街の方に行かれました」

女海賊「なんで?何かやってんの?」

ホムンクルス「貧民街の方で立ち合いをやっているのだそうです」

女海賊「剣士も行っちゃった?」

ホムンクルス「はい…」

女海賊「そっか…まぁホムちゃんだけで良いか」

ホムンクルス「何か御用ですか?」

女海賊「この刀にさぁ…インドラの矢を落として欲しいんだ」

ホムンクルス「はい…ここでは危ないので場所を変えた方がよろしいかと…」

女海賊「分かってるよ…飛空艇に乗って」

ホムンクルス「はい…」

女海賊「この刀はさぁ…オリハルコンの重さ800グラムなんだ」

ホムンクルス「出力を絞って投下します…約100年分の光ですね?」

女海賊「大体そんな感じかな?2本あるからよろしく」

『貧民街』


ワイワイ ガヤガヤ

報告します!貧民街の外れでフィン・イッシュの者が模擬戦をしている様です

この騒ぎは模擬戦のせいか…治安部隊は動かさなく良いのだな?

むしろ若者が活気付いて良い傾向に見えますがどうしましょう?

非番の者に見に行かせろ…危険な様なら静止させても良い

ワイワイ ガヤガヤ


情報屋「はい!!次は8対1で始めます…参加される方は木刀を持ってください」

情報屋「開始!!」


ワイワイ ガヤガヤ

あの剣士は何者だ?

誰か知ってるか?

フィン・イッシュのサムライらしいよ

うわ!飛んだ…すげぇ!!

剣が見え無い!どうやって当ててるんだ?

ワイワイ ガヤガヤ


情報屋「終わり!!」

盗賊「ぐはぁぁ一発カスっただけだちくしょう!!」

剣士「回復魔法が欲しい人はこっちに来て…回復魔法!」ボワー

近衛「いやぁぁぁお強いですな…太刀筋は一刀流に近いがどの流派なのでしょう?」

商人「覚えていないらしいよ」

近衛「この様な剣豪が居たとは世間は広いですなぁ…是非フィン・イッシュにお越し願いたい」

商人「剣士は大人気だね」

ローグ「戦い方が美しいっすね…無駄が無いと言えば良いでやんすかねぇ…一振り一振り全部意味が在るんすよね」

盗賊「うむ…次の斬撃に繋がる動作が守備動作を兼ねてんだよ…だからスキが無ぇ」

剣士「僕の素振り動作を良く見て?」スン スン スン

近衛「おぉ!!もう一度!!」

剣士「ゆっくり行くよ?」スッ スッ スッ

盗賊「ほーーう…円で繋がって居るのか」

剣士「この動作を読めば対処できると思う」

盗賊「こりゃ相当練習しないと習得できそうに無ぇぞ?」


ピカー ピカー


商人「ん?雷か?」

ローグ「音が来ないっすねぇ…随分遠くじゃないっすかねぇ」

剣士「じゃぁ次は一人づづ僕に打ち込んでみて…どうやって凌がれるかよく見る稽古にしよう」

近衛「これは良い稽古になりますな…是非やらせて貰いたい」

剣士「良いよ!…打ち込んでみて!他の人は良く見ておくように」

近衛「いざ参る…」

剣士「来い…」


カンカンコン カンカンコン

『貨物船』


ザブン ギシギシ


魔女「奴らはまだ帰って来ん様じゃな…」

ホムンクルス「剣士さんの剣技にみなさん夢中なのですね…良い事だと思います」

女海賊「折角伝説の剣が完成したってのにさぁ…誰も見ようとしないってどゆこと?」

魔女「わらわに見せよ…」

女海賊「魔女は剣の事なんか分かんないじゃん」

魔女「美しいかどうかくらいなら分かるぞよ?」

女海賊「ほんじゃこの鞘から剣を抜いてみて」ポイ

魔女「おろろ…思ったよりも軽いのぅ?」

ホムンクルス「鞘に浮かんでいる紋様はわざと光を漏らしているのですね?」

女海賊「鞘に入れたまま動かしてみてよ」

魔女「こうか?」ブン キラキラ

ホムンクルス「光の筋が残るのですね」

女海賊「そそ…そっちが流星…ほんでこっちが彗星」ブン ピカー

魔女「おぉぉ彗星じゃ…工夫したのぅ!主が考案したのか?」

女海賊「そだよ…何かそう言われると癒されるムフフ」

魔女「刀の抜き方が分からんのぅ…どうやって抜くのじゃ?…むん!むん!」

女海賊「だめだこりゃ…危ないから魔女にはムリ」


ドヤドヤ ドヤドヤ


女海賊「あ!!やっと帰って来た!!」

盗賊「おう!今日は早めにあげて休憩だ…ちっと疲れた」

女海賊「剣士!!あんたの剣出来上がったよ…流星の剣だよ…ほら」

剣士「随分みんなの手が掛かったね…貸して」

女海賊「あんたの剣さ…抜いてみて」

盗賊「その鞘かっけぇな?お前が作ったんか?」

剣士「…」スラーン ピカー

魔女「まばゆいのぅ…目が眩む」

女海賊「いつもみたいに振るってよ」

剣士「…」スン スン スン

盗賊「残像が残る…めちゃくちゃ恰好良いじゃ無ぇか!!」

女海賊「あぁぁ癒される…もっと言って」

盗賊「お前もお姉ぇに似てやっぱ変態か…」

商人「ハハまぁまぁ…伝説にふさわしい剣には間違いなさそうだね」

女海賊「そう…もっと」

商人「この柄の装飾とかも全部君が彫ったの?これミスリル銀だよね?」

女海賊「はぁぁぁぁぁ」

盗賊「ダメだこりゃ変態に付き合うと移るぞ!飯だ飯!!」

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盗賊「女戦士はまだ寝ているのか?」モグモグ

女海賊「出て来るまで居室入ったらダメだよ」モグモグ

情報屋「盗賊?どうしてそんなに気にするの?」ジロリ

盗賊「んあ?そんなんじゃ無ぇよ…今晩の作戦に影響が出ないか心配してんだ」

情報屋「そう…ならいいわ」プイ

盗賊「おいおい何でへそ曲げてんのよ」

魔女「主が悪いのでは無いか?プレイボーイ過ぎるのではないのかのぅ?」

盗賊「なんもして無ぇって…女戦士に何か出来るのはローグぐらいのもんだ」

ローグ「あっしが?あっしも何もできやせんぜ?」モグ

魔女「女戦士の服装が変わったのは盗賊が何か言うたからじゃと聞いたぞよ?」

ローグ「ぶっ…ぶぶ盗賊さんマズイっすね」

盗賊「ヌハハそれは事実かもな?」

女海賊「なんであんたがお姉ぇの服装の事言う訳?」

盗賊「まぁちと事情が有ってだな…」

ローグ「マズいっすね…マズいっすねぇ…」

盗賊「隠す必要もあるめぇ…女戦士はな人一倍身なりには気を使ってんのよ…それを偏見抜きで評価しただけだ」

ローグ「そうなんす…本当は繊細なんすよ…鉄の女を演出してるだけなんすねぇ」

盗賊「ちょっと似合わねぇって言うだけでもう気に入った服も着ないんだ…可哀そうだろ?」

女海賊「賛成!」

情報屋「フフそう…誤解してたわ」

ローグ「あっしはそんなかしらが可愛くて好きなんす」

女海賊「お姉ぇが可愛いねぇ…なんか違う気がするけど繊細なのは合ってるかな」

盗賊「まぁそういう事よ…みんなもちったぁ気を使ってやれ…特にアサシンだな」

アサシン「クックックどうせ私は堅物だ女王にも見放された」

盗賊「堅物の思想を押し付けなきゃ良い…大事に付き合ってやってくれよ」

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女海賊「あ!お姉ぇ起きた?」

女戦士「済まない…休み過ぎた様だ」

盗賊「おい!何でスカート履いて来ねぇんだよ!!楽しみ減るだろうが」

女戦士「お前に指示される覚えは無いが?」

女海賊「お姉ぇ着替えてきたら?」

女戦士「下の方の濡れが収まらんのだ」ヒソ

女海賊「大丈夫だって!見えやしないから…」グイ

女戦士「フン!」ツカツカ


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女戦士「これで満足か?」フワリ

ローグ「かしらはやっぱそっちの方が良いっすね~」

女戦士「さて…全員揃っているな?今晩の話を詰めようか」

アサシン「そうだな…私も少し考えたのだが万が一に備えて私とローグ、魔女で気球を使って上空で待機しようと思う」

盗賊「それは睡眠魔法を使う構えという事だな?」

アサシン「その通り…魔女の貝殻を使って状況をこちらへ伝える事が出来る筈だ」

魔女「ふむ…魔結界の中では千里眼で見通せぬ故…それが良かろう」

女海賊「じゃぁ私が貝殻を持つ…逃げ場に困ったら使うさ」

盗賊「俺らはハイディングして徒歩で行くのか?」

女海賊「私は貴族特区にドロボー行った事あんだ…近道知ってるよ」

アサシン「出来るだけ騒ぎにはしたくない…極力ハイディングで隠密行動をしてくれ」

女海賊「貴族特区にどんだけ人が居るか分かんないけどさ…さっさと睡眠魔法で眠らせたら?」

魔女「向こうに魔術師が居るのじゃ睡眠を悟られてしまっては逃げられるぞよ?」

女海賊「じゃやっぱ逃走時しか使えない訳ね」

魔女「出来るだけサポートはするつもりじゃ…兎に角魔術師を倒すのじゃ」

女海賊「私らの心配と言えばお姉ぇがラットマンリーダーを抑えきれるかなんだけど…行けそう?」

女戦士「私の武器は何で出来ている?」

女海賊「あ!!そうか…ミスリルのギガントアックス…鎮魂の鐘と同じだね?」

女戦士「私よりも剣士の方だな…時の王がどれほどの者か情報が無い」

剣士「魔術師を倒す間の凌ぎに徹するよ…心配しないで」

アサシン「では行動は深夜…月が落ちたら行く…それまで静養しておいてくれ」

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女戦士「女海賊!刀を見せろ…インドラの矢を落としたのだろう?」

女海賊「お姉ぇはまだ見てなかったね…ほい」

女戦士「ほう…鞘から零れる光が美しいな」

女海賊「お姉ぇに言われると嬉しいな…もっと言って」

女戦士「…」スラーン ピカー

女海賊「どう?」

女戦士「この光る刀身を研ぐとどうなると思う?光は粉になるのか?」

女海賊「又お姉ぇ変な事考えてんの?やめてよ」

女戦士「研ぎたい…」

女海賊「今はダメ…作戦終わって帰って来たら研いでも良いよ」

女戦士「期待で下の濡れが収まらんのだ」

女海賊「パパが言ってた金属を愛でるって…困ったクセだね」

女戦士「言うな…」

女海賊「お姉ぇ用にもっかいオリハルコン探しに行こっか」

女戦士「フフ私は原石のまま欲しい…他の宝石には興味が無くなった」

女海賊「そろそろ返してもらって良い?」

女戦士「もう少し触らせろ…」スリスリ

『深夜』


移動するよ…ハイディング!

迷ってない?よし…左の壁沿いに貴族居住区抜ける

貴族特区に入ったら一番大きな屋敷ね

裏手で盗賊は一旦リリースして状況見て


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『貴族特区』


盗賊「ハイディング!」スゥ

女海賊「どうだった?」

盗賊「屋敷の周りは誰も居ないがちょい離れに衛兵がキャンプしてる…数は200って所だな」

女海賊「もっかいリリースして正面の扉開けられる?」

盗賊「大丈夫だ」

女海賊「開けたらそのまま盗賊は中に入ってハイディングして」

盗賊「分かった…行くぞ!リリース!」スゥ

女海賊「扉が開いたらお姉ぇと剣士は中に入って」


ガチャリ ギー


女海賊「行って!」タッタ

盗賊「ハイディング!」スゥ

女海賊「ここまでは余裕だね…盗賊?屋敷内に何か見えた?」

盗賊「見た範囲では何も居ないな…」

女海賊「前に来た時はリリースしてすぐに見つかっちゃったんだ…すぐ逃げたけど」

女戦士「美術品が並んでいる…これはスゴイな」

女海賊「あんま見れなかったんだけど…ちっと見て行くか」

盗賊「おい!精霊の像があんぞ?」

女海賊「本物?」

盗賊「分かんねぇが…これ何体あるんだ?」

女戦士「見ろ!あの肖像画…ホムンクルスじゃないか?」

女海賊「え?本当だ…絵画は全部ホムちゃんが描かれてる…どゆ事?」

女戦士「時の王は1700年前の人物だな?精霊と共に居たという事だな」

女海賊「待って待って…この画の中にある落書き…ホムちゃんが描く絵にそっくりだ」

盗賊「こりゃひょっとするとひょっとするぜ?」

女海賊「ちょっと他の部屋も見て行く」タッタッタ

女戦士「すべての画がホムンクルスだな…たまに画れている男は恐らく時の王だ」

女海賊「…これは精霊と過ごした記憶」

盗賊「驚きの真実じゃ無ぇか」

女海賊「胸が苦しくなってきた…時の王が守っているのはこの記憶?」

女戦士「だとしたら私達は大きな勘違いをしているのかも知れん」

女海賊「この美術品に絶対手を触れないで…これは壊してはいけない」

盗賊「1700年の記憶が詰まった美術品か…そうと知っちゃ躊躇しちまうな」

女海賊「狙いは魔術師だけ…良い?」


シュン グサ!


女海賊「痛っ…な、なんで?」

剣士「回復魔法!」スゥ

??「物音がすると思えば…またコソドロが入って来たか」

剣士「ダメだ…魔法がかき消される」

盗賊「女海賊!このエリクサーを一口飲め」

女戦士「私の後ろに隠れろ」ダダ スチャ

盗賊「今応急処置をしてやる…肩だな?少し痛むぞ…ガマンしろ」ズボ ヌイヌイ

女海賊「うぁぁぁぁくくくくぅ」

女戦士「お前は時の王か?」

??「ほう?人の屋敷に勝手に入って来てその名を口にするとはな…察したぞお前たちは白狼の盗賊団だな?」

女戦士「フフ察しが良い…今更正体を隠しても意味は無いな」

時の王「私の計画を邪魔ばかりする輩は生かして置けん」

女戦士「計画だと?」

時の王「人類の滅亡以外にあると思うか?白狼の盗賊団よ」

女海賊「盗賊!人影!!アレが魔術師…追って」

盗賊「お…おう」ダダ

時の王「話を聞かずして動くか」ギリリ シュン

盗賊「うぉっとぉ!!悪りぃな俺達は魔術師に用が在って来たんだ…話ならそっちでやっててくれ」

時の王「ラットマンリーダー来い!!侵入者を排除しろ」

ラットマンリーダー「がおぉぉぉぉ」ドスドス

女戦士「剣士!妹を守れ!!デカブツは私が引き受ける」ダダダ

時の王「フハハハさすが連携が出来ているな…ならば私がやるしか無い様だ」ズズズ シャキーン

女海賊「え!?大剣…どうして」

時の王「どうした?剣を抜かないのか?」

剣士「ふぅぅぅぅ…」

時の王「随分小さな剣なのだな?刀か?遠い記憶の中にその様な刀を使う仲間が居たな…名は忘れた」

女海賊「あんたに質問がある!!」

時の王「人の屋敷を荒らしておいて質問とは無礼極まりないな」

女海賊「あんた精霊の何なの!?」

時の王「フフ私を揺さぶる気か?」

女海賊「質問を質問で返さないで!!何なの?」

時の王「1500年精霊と愛を積み重ねた者だと言えば理解できるか?」

女海賊「ならなんで人間の滅亡なんかやろうとすんのさ」

時の王「私が答える必要は無い」ダッ ブン


カキン! スパー


時の王「むぅ…やるな?だが私は不死身だ」

女海賊「剣士!倒したらダメ…」

時の王「私を倒せると思って居るのか」ダダ ブン キーン

剣士「ふぅぅぅ…」スチャ キラリ

時の王「問う…その光る刀をどうした?何故インドラの光を帯びている」

女海賊「フフこっちの番だね…私が答える必要あると思う?」

時の王「フハハハハなかなか頭の回る小娘だ…気に入った…何が望みだ?」

女海賊「人間の滅亡なんか止めて」

時の王「出来んな…私の愛する者すべてを奪った者を許すことは出来ん…そして精霊の望みはリリンのいや人間の滅亡だ」

女海賊「それは違う!!」

時の王「さて次は私の番だ…なぜインドラの光を帯びている」

女海賊「そんなんインドラの矢を落としたに決まってんじゃん…あんた知ってんじゃないの?」

時の王「まさか…精霊シルフは停止した筈だ…インドラの矢を落とせる者なぞ存在しない」

女海賊「精霊が生きているって知ったらあんたどうする?」

時の王「私を揺さぶって居るのか?そんなまさか…」

女海賊「やっぱあんたは私らの敵じゃないね…精霊を愛してるだけだね?」

時の王「黙れ!!小娘に分かる訳が無い!!愛は永遠では無いのだ…記憶こそ永遠だ」

女海賊「やっぱり…美術品はあんたの大事な記憶なんだね?」

時の王「黙れ!黙れ!黙れ!」ダダダ ブン ブン ブン


キン カン カーン スパーッ


時の王「くぅぅ思い出したぞその剣裁き…時の勇者!お前だな?」

剣士「…」スチャ

時の王「恨んで居るのか?魔王に魂を売ったのは仕方の無い事だった…私の邪魔をするな」

女海賊「違うよ時の勇者じゃないよ…あんたは精霊との思い出に寄り添い過ぎて時代に残されてる」

時の王「教えてやろう…人の記憶は200年しか記憶出来ないのだ…私は精霊シルフとの記憶を失いたくなかった」

女海賊「だから外に出なかったの?」

時の王「悪いか…どんどん薄れて行く愛しい記憶を失いたくない」

女海賊「精霊と一緒に夢幻に行けば良かったのに…」

時の王「私は不死身だ…死ぬことも許されない…だからせめて精霊の望みを叶えるのが私が生きる理由だ」

女海賊「悲しい…でもあんた一つ間違ってる…精霊は人間の滅亡なんか望んでない」

時の王「何故ハーフエルフやハーフドワーフが居ると思っているのだ?」

女海賊「え?…まさか」

時の王「人類の置き換えだ!魔王を滅するのはこれしか方法が無い」

女海賊「そんな…」

時の王「立場が逆転した様だな?取引をしようか…同志になれ…そして精霊が居るなら私の下へ連れて来い」

女海賊「ホムちゃん…どうしよう…」


女戦士「剣士!!助けてくれ…あの魔術師は只の魔術師では無い!!盗賊が死ぬ!!」

女海賊「一旦中断!!剣士行くよ!!」ダダ

時の王「あれは私を監視する黒の同胞団の魔術師だ…お前たちにやれるか?」

女海賊「うるさい!!黙って見てろ!!」タッタッタ



『屋敷2階』


女海賊「お姉ぇも傷だらけじゃん…エリクサー飲みながら下の時の王見てて」

女戦士「行け!…はぁはぁ」グラリ

女海賊「盗賊!下がって!!」カチャリ ターン ターン


魔術師「グゥ…キシャァァァ」

盗賊「ぐふっ…すまんやり切れん」ズルズル

女海賊「何アレ…」

盗賊「多分不死者だ…攻撃が効か無ぇ…リッチって聞いた事あるか?」

女海賊「ミスリルダガーでも効かないの?」

盗賊「心臓をやれりゃ行けるかも知れんが何処にあるか分からん」

女海賊「出血ヤバイね…エリクサー飲んで」

盗賊「足の付け根やられた…手で押さえるぐらいしか止めようが無ぇ…俺は戦線離脱だ」

女海賊「剣士!お願い何とかして」

盗賊「あいつの鎌は射程がおかしい!!気を付けろ!!」

剣士「任せて…」シュタタ


リッチ「キシャァァァ」ブン ブン


剣士「ふぅぅぅ…」キン キーン


スパ スパ スパ スパーッ


盗賊「おおぅ…一瞬でバラバラか」

女海賊「ダメ!まだ動いてる!心臓探して!!」

剣士「ふんっ」スパ スパ スパ スパ

リッチ「ガガガガガ…」シュゥゥゥゥ

女海賊「え!?溶ける?切り口から溶けてる…」

剣士「逃げる準備!!女戦士が危ない…」


ガーン ガーン ガツン ガツン!


女戦士「うぐっ…うぐっ…」ガクリ

女海賊「お姉ぇ何で反撃しないのさ!!」

剣士「入り口まで走って!!僕が時の王を相手する」シュタタ

時の王「行かせるかぁ!!」ブン ブン

剣士「…」キン キーン スパーッ

時の王「むぅぅ…」ガク

剣士「女戦士!!肩を…」グイ

女戦士「くふっ…」グッタリ

剣士「ふんっ…」グイ シュタタ

女海賊「剣士!早く!!」

時の王「くぅ忘れるな!!同志になれ!!」

女海賊「今はダメ…時を待って!!逃げるよ…走って!!」

『貴族特区上空』


フワフワ


アサシン「遅いな…」

ローグ「まだ屋敷の中で光が動いてるっす」

アサシン「魔女…そろそろ下の衛兵を眠らせよう」

魔女「そうじゃな…」アブラカタブラ クラウドコントロール メスメライズ

魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク

アサシン「これで気付く者は居るまい」

ローグ「光が二階の方に移動したようでやんす…出て来るかもしれやせんね?」

アサシン「少し高度を下げろ…寄って待機だ」

ローグ「アイサー」

アサシン「様子が伺えないのはイライラするものだ…」

魔女「あの光が動いているうちは無事なんじゃろうて」


”魔女!緊急事態!”

”お姉ぇと盗賊が負傷して走れない”

”睡眠魔法使って気球で降りて来て”

”タイミングはこっちで言う”


ローグ「ヤバヤバ…かしらが負傷って」

アサシン「ローグ…タイミングを合わせて気球を降ろせ…私は先に下へ降りる」

ローグ「分かってるっすよ」

アサシン「行く…」ピョン

ローグ「ええぇ?この高さでっすか…あ~あ」


”5”

”4”

”3”

”2”

”1”


フワフワ ドッスン

魔女「どこじゃ?居らんでは無いか…」

ローグ「あっちっす…降りる場所違いやしたね」

魔女「アサシンが案内しておる…大丈夫じゃ…飛ぶ準備をせい」

ローグ「マズイっすねぇ…超マズイっす屋敷から誰かこっち見てるっすよ」

魔女「むむ…アレは時の王じゃな」

ローグ「矢で撃たれたらこのぼろい気球飛べなくなるっすよ」

魔女「風魔法で反らす故…主は気球の操作に集中しておれ」


ダダダダ


女海賊「飛んで!!」

ローグ「アイサー…ひやひやするっすよ」

女海賊「魔女!お姉ぇに回復魔法!盗賊にも!!」

魔女「回復魔法!回復魔法!」ボワー

女海賊「お姉ぇが気絶するなんて初めて見た」

ローグ「かしらは大丈夫っすか?」

女海賊「お姉ぇもかなり出血してる…ヤバいかも」

魔女「む?主も出血して居るでは無いか」

女海賊「これは処置済み」

剣士「回復魔法!」ボワー

女海賊「ぁ…ありがと」

盗賊「ぐぇぇぇぇ吐きそうだ…血が足りねぇ」

『貨物船』
 

ドタバタ


魔女「ダメじゃ!主はこの間血を抜いたばかりじゃろう…」

情報屋「このままじゃ盗賊が危ない!!私の血を…」

商人「僕の血は!?」

魔女「主は体が弱すぎじゃ…わらわの血を輸血せよ…情報屋!早うやれ」スッ

情報屋「…」グサッ

魔女「むぅ…痛いのぅ…この管は」

女海賊「お姉ぇにも私の血を…」

女戦士「ぅぅ…私に構うな」

女海賊「お姉!!気が付いた?」

女戦士「私は少し血を抜いたほうが良い様だ…輸血は要らん」

魔女「意識がハッキリしておりそうじゃ…様子見が良いじゃろう」

女戦士「私は居室に戻る…体を見られたくないのでな」ヨロ

女海賊「立てるの?」

女戦士「構うな」ヨロヨロ

魔女「立てる様なら心配は要らん様じゃな…エリクサーを飲んでおけ」



『居室』


ガチャリ バタン


女戦士「ふぅ…」ドサリ

女海賊「平気?」

女戦士「気にするな」

女海賊「お姉ぇが気を失うの初めて見たからさ…」

女戦士「私が倒れたのは別の原因だ…戦いの中で我を忘れたのだ」

女海賊「ん?どゆこと?」

女戦士「恥ずかしくてお前にしか言えんのだが…時の王に打たれて我を忘れてしまった」

女海賊「まさか…」

女戦士「戦いに行く前に私の体がどういう風だったか知っているだろう?」

女海賊「呆れた…心配して損した」

女戦士「逝くまいと耐えたのだが耐えきれなかった」

女海賊「もっと血ぃ抜いた方が良いね」

女戦士「すまんがこの話は墓に入るまで秘密にしておいてくれ」

女海賊「お姉ぇってさ?打たれて痛くないの?」

女戦士「痛みの程度が他の者とどれ程違うかは知らん」

女海賊「でも快感なんでしょ?便利な体だなぁ…」

女戦士「我を保つのが苦痛になるのだ…良いのか悪いのか…」

女海賊「私にゃぁ理解出来ん」

『翌日』


ザブン ザブン


商人「盗賊の容態はどう?」

ホムンクルス「いびきをかいて寝ていらっしゃいます」

商人「いつも通りだね?」

ホムンクルス「3日は安静にしておいた方が良いかと思います」

情報屋「毎回毎回怪我し過ぎなのよ…」

ホムンクルス「その様ですね…体に傷跡が沢山ありました」

商人「女戦士の方は?」

情報屋「居室から出てこないわ?女海賊が言うには心配無いって」

商人「精鋭4人が行って2人大怪我って…かなり厳しい戦いだったんだろうね?」

情報屋「私はまだ話を聞いて居ないけど…誰も聞いて居ないのかしら?」

商人「気になるね…魔女も知らないって言うし」

情報屋「アサシンは夜の内に気球で何処かに行ったまま…」

ホムンクルス「アサシンさんは気球を交換してくると言って居ました」

商人「交換…なんでだろ…なんか気になる事ばかりだね」



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ガチャリ バタン


女海賊「魔女は何処に行ったか知らない?」

商人「あ!おはよう…魔女は奥の居室で横になってるよ」

女海賊「そっか…血ぃ抜いた後じゃしょうがないか」

商人「ねぇ昨日の作戦ってどうだったの?何も聞いてないけど」

女海賊「魔術師は剣士が倒したよ…ただいろいろ想定外が在ってね…魔女に相談したかったんだ」

魔女「呼んだかえ?」ノソノソ

商人「あ!!起きたんだ…大丈夫?」

魔女「少し血を抜き過ぎた様じゃが歩く程度なら問題なさそうじゃ」

女海賊「魔女!昨日の魔術師の事なんだけどさ」

魔女「わらわも気になって居ってのぅ…どうだったのじゃ?」

女海賊「倒したよ…でも普通の魔術師じゃなくてリッチ?…っていう魔物だった」

魔女「何故リッチじゃと分かったのじゃ?」

女海賊「盗賊が言ってたんだけど…違ったのかな?」

魔女「リッチは魔術師の成れの果てじゃ…魔力は残したまま不死者になったのじゃな」

女海賊「そんだけ?魔女の反応薄いんだけど」

魔女「ちと考えて居る…セントラルは昔魔女狩りをやって居ったな」

女海賊「10年くらい前だね」

魔女「当時捕らえられた魔術師は皆リッチにされておるやも知れんな」

女海賊「え!?あんなのがいっぱい居るって事?」

魔女「今思えば辻褄の合う事ばかりじゃ…当時の魔術院長は黒魔術を教えとったのじゃが行方不明になって居る」

魔女「黒魔術師はネクロマンサーの事じゃ…魔術師をリッチにすることが出来るのぅ」

商人「それってつまり黒の同胞団に沢山リッチが居るという事だよね?」

魔女「そうなるな…わらわは一度シン・リーンへ戻らねばならんな」

女海賊「戻ってどうするつもり?」

魔女「黒の同胞団と繋がりのある者を粛清するのじゃ…魔術院の規律が乱れすぎておる」

商人「的が絞れて来たね…倒すべきは黒の同胞団なんだ」

魔女「時の王はどうだったんじゃ?会うたのであろう?」

女海賊「うん…それはちょっと話が重くてさ…皆居る時に話すよ」

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女海賊「ホムちゃん…ちょっと良いかな?」

ホムンクルス「はい…どんな御用でしょう?」

女海賊「ホムちゃん前にさ…人類を滅ぼす気は無いとか言ってたよね?」

ホムンクルス「私は人間の住まう環境を良くする為に生まれたロボットですからその様な気はありません」

女海賊「じゃぁさ…人間をハーフエルフやハーフドワーフに置き換えるつもりは?」

ホムンクルス「…」

女海賊「どうして黙るのさ」

ホムンクルス「ハーフエルフもハーフドワーフも同じ人間です」

女海賊「それって置き換えるって言う事を言ってるよね?」

ホムンクルス「こう言えば良いでしょうか…長期的に見て交配が繰り返され旧種族は新種族に淘汰されます」

女海賊「やっぱそうなんだ…」

ホムンクルス「しかし問題点もあります…ハーフエルフやハーフドワーフは人間と比較して繁殖力がとても低いのです」

ホムンクルス「ですからハーフエルフやハーフドワーフだけでは繁栄する事が出来ません」

商人「なるほどね…交配を促進する為にエルフは美しくなるように設計されているんだ?」

ホムンクルス「恐らくそうだと思います」

女海賊「恐らくって…そっかホムちゃんがやった訳じゃ無いもんね」

ホムンクルス「はい…私はシミュレーションの結果をお話しています」

商人「今の話からするといづれ人間はハーフエルフやハーフドワーフに置き換わって行くんだね?」

ホムンクルス「先ほどもお話しました様に課題は繁殖力です」

商人「という事は繁殖力の高い人間はいつまでも居残るよね?」

ホムンクルス「交配が進めば入れ替わって行くでしょう」

商人「それは君が言うバランスさせるっていう解釈になるの?」

ホムンクルス「それもバランスさせる手段の一つですね…ここに誤解が生じると思われます」

女海賊「時の王は完全に誤解してるんだよ?」

商人「え!?時の王が?どういう事?」

女海賊「時の王は精霊の言葉を誤解して解釈してんの!人間を淘汰するのが精霊の目的だと思ってる」

ホムンクルス「結果的に種族が置き換わって行くという事ですね…人間を滅ぼすつもりはありません」

商人「時の王はなんて言ってるの?」

女海賊「亡き精霊に変わって人間を滅ぼすとか言ってんのあのバカ」

商人「ハハ君はハーフドワーフだから良い解釈できるだろうけどさ…僕みたいな普通の人間からしたら滅ぼされる様に聞こえるよ」

ホムンクルス「それが誤解の原因ですね…」

『甲板』


盗賊「うぁぁぁ…腹減った…何か食わせろい」ヨタヨタ

情報屋「あ!!あなた…もう動いて大丈夫?横になってて?何か持って行くから」

盗賊「ちっと風に当たりてぇんだ…デッキで寝転んでも良いだろ」ドタ

商人「焼き魚で良いかい?」

盗賊「何でも良い!腹減った」

ホムンクルス「造血剤も忘れずに飲んでください」

盗賊「まぁ心配ねぇ!いつもの事だ」

魔女「主は懲りん奴じゃのう…わらわの血は大事にせいよ?」

盗賊「ヌハハ今度は魔女の血が入ったか…俺も魔法が使える様になるか?」

情報屋「何バカな事言ってるの?」

盗賊「そういやよう…あの魔術師から良い物スったんだ…見ろ」ポイ

魔女「むむ!貝殻じゃな」

盗賊「それからコレだ…こりゃ何かの杖だろう?」

魔女「こりゃたまげた!幻惑の杖ではないか…精霊が持って居たと言われる杖じゃ…何故祖奴が持って居ったんじゃ?」

女海賊「ふーん…なるほどね」

魔女「何か知って居るのか?」

女海賊「前にあの屋敷に盗みに入った時にもさ…又ドロボウが来たとか言ってすぐ見つかっちゃったんだ」

魔女「ふむ…そういえばわらわが行った時もドロボウとか言って居ったな…」

女海賊「昨日も同じさ…私ら何も盗んでないよ」

盗賊「…て事はその魔術師が盗んでたって事か」

女海賊「時の王は気になる事も言ってたさ…魔術師に監視されてるってね」

魔女「時の王と黒の同胞団の関係は微妙なのかも知れんのぅ」

女海賊「そだね…多分時の王は黒の同胞団に利用されてんだね…何か良さそうなアイテム一杯有ったし」

盗賊「まぁこの杖は今の所俺が持ってんだし…魔女が使ったらどうだ?」

魔女「この杖はユニークアイテムじゃぞ?わらわが使って良いのじゃろうか?」

女海賊「精霊との思い出が詰まった時の王の持ち物だよ…返すのが筋だね」

盗賊「ユニークアイテムってーとどんな効果あるのか知ってるのか?」

魔女「強力な幻惑魔法が封じられておる…魔王が使うまやかしみたいな物じゃ…人を操れるのぅ」

女海賊「ははーん…その杖を使ってセントラルの動乱引き起こしてんだね?」

魔女「ただし操れるのは一人づつだけじゃな」

女海賊「そんなん有力者操れば良いだけじゃん」

魔女「まぁそうじゃな…時の王が魔結界から出ん理由はそれも理由の一つやも知れんな」

盗賊「そのうち返すとしてとりあえず魔女が持って置け」

魔女「詠唱無しで幻惑魔法が使えるのはさすがに強力じゃな…こんな物を持って居ると命を狙われるのじゃが」

女海賊「もしかしてその杖持って命じるだけ?それで言う事聞く感じ?」

魔女「そうじゃな」

女海賊「ほんじゃ私が使う!!」

盗賊「ダメだ!!お前みたいなのが使うとエライ事になる」

女海賊「はぁ!?私に逆らおうっての?」

盗賊「うぉっとぉ!!お前…裸になりたい様だな…」スッ

女海賊「ちょ…何杖向けてんのよ!」タジ

盗賊「手を上げろ…」

女海賊「ちょ…え?ちょちょちょ…やめてよ」バンザーイ

魔女「これ!!乱用するでない!!これは主らが使うと面倒な事になる!!貸せ!!」ブン

女海賊「その杖ヤバッ…」

魔女「そうじゃ…じゃからユニークアイテムなのじゃ…本来は封印せねばならぬ」

女海賊「ねぇ…手を下ろせないんだけど」

魔女「困ったのぅ…主はもう夢の中なのじゃ…どうやって目を覚まさせようかのぅ」

盗賊「ん?てことは今何やっても覚えて無いって事になるか?」

魔女「目を覚ました時には覚えて居らんじゃろうな」

女海賊「ちょ…待ってマジで言ってる?」

盗賊「ぐふふふふふ…さぁて!!…どうやって起こそうか!!ぐふふふふふ」

女海賊「マジやめて!!体に触ったらぶっ飛ばすよ!!ちょっ…やめ!!」


ギャハハハハハ ギャハハハハハ ヒィヒィ



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女海賊「なんか…すっごい体だるいんだけど…」グターーー

盗賊「ヌハハ疲れてるんだろ…ちっと横になってろ!!」

魔女「ヤレヤレ…」

商人「ねぇ…貨物用の気球が船に降りて来そう…多分アサシンだね」

盗賊「なんで貨物用の気球で来るんだ?補給か?」

情報屋「あなたが寝ている間にアサシンが気球を交換してくるって言ってたわ」

盗賊「あぁぁなるほど…昨夜時の王に気球を見られてるからか…こっちの居場所悟られたくないってか」

商人「なんかいろいろ有ったみたいだね」

盗賊「まぁな…しかし女戦士がラットマンリーダー6匹相手に引け劣らんのはビビったわ」

女海賊「お姉ぇは6匹倒したの?」

盗賊「ミスリルの斧ってのもあるが打たれてもビクともしないのがやっぱガチの戦士だ」

女海賊「あーそういう事ね…変態だから気にしないで」

盗賊「斧であのでかいラットマンリーダーを豆腐みたいに真っ二つだ…真似できんわ」

魔女「主は魔術師と戦ったのじゃろう?リッチじゃと何故分かったのじゃ?」

盗賊「心臓がどこにあるか分からない不死者はリッチだと聞いた事があんだ」

魔女「ふむ…では間違いない様じゃな…変異魔法で心臓の場所を変えて居るのじゃ」

商人「魔女が少女に変わったりする魔法だったよね?」

魔女「うむ…わらわも心臓を隠しておるのじゃぞ?」

商人「へぇ…そうだったんだ」

盗賊「一発でやられない様にする為か?」

魔女「そうじゃ…心臓がやられなければ回復魔法で回復出来るでな」

盗賊「だから剣士はリッチをバラバラに刻んだのか」

魔女「体の何所かにはある故それが早いかものぅ」

女海賊「剣士は知ってたの?」

剣士「知らないよ…体が自然に動いた」

女海賊「自然にねぇ…時の王があんたの剣技を見て時の勇者って言ってたけど…」

商人「む…気になる話だな」



フワフワ ドッスン

盗賊「帰って来た様だな」

アサシン「盗賊はもう大丈夫なのか?」

盗賊「横になってりゃどうってことは無ぇ…ほんで?上手い事気球は交換出来た様だな」

アサシン「4人乗りの貨物用だが使い勝手は割と良い…それより女戦士の容態はどうだ?」

女海賊「平気…放って置いて良いよ」

アサシン「まだ起き上がれる状態では無いのだな?」

女海賊「分かんないけど…なんで?」

アサシン「今気球から見えたのだが城の方で騒ぎが起きて居そうだ…少し離岸しておいた方が良いかと思ってな」

盗賊「船乗りが中央に行っちまってるな…ちっと時間が掛かるかもしれんぞ?」

アサシン「まぁ私が見に行って来よう…ローグ!一緒に来い」

ローグ「アイサー」




『夕方』


ザブン ギシギシ


女戦士「…」ツカツカ

女海賊「お姉ぇ!!平気?」

女戦士「休んだらスッキリした…お前も仮面を付ける様にしたのか?」

女海賊「お姉ぇの分もあるよ?要る?」ホイ

女戦士「ふむ…銀製か…この紋様はお前が彫ったのか?」

女海賊「そだよ…退魔の効果も魔女が付与してくれた」

女戦士「なかなか良い物だな」

女海賊「お姉ぇのクセがちっとは良くなるかも知んないから付けといて」

女戦士「言うな…」スチャ

盗賊「女5人全員仮面たぁ味気無ぇな…そこに並んでみろ」


魔女「…」 幻惑の杖 ローブ

情報屋「…」ミスリル剣弩 中装 

ホムンクルス「…」毒牙のナイフ 軽装

女戦士「…」ミスリル斧盾 重装

女海賊「…」4連銃爆弾 中装


商人「こうやって改めて見るとみんな美人なのに勿体ないね」

盗賊「船に乗ってる時ぐらい外しておいてくれよ…酒がマズイ」



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女海賊「あ!!やっと帰って来た!!アサシンとローグ!そこに並んで」

アサシン「何のつもりだ?」

女海賊「良いから早く」


剣士 「…」流星の剣 中装

盗賊 「…」ミスリルダガー弓 中装

ローグ「…」ミスリルダガー×2 中装

アサシン「…」草薙の剣 中装

商人「…」ミスリル剣弩 中装


女海賊「やっとみんな揃ったね」

アサシン「食事でもしながら少し話そうか…」

商人「バーベキューでもしようよ」

ローグ「良いっすねぇ…魚ばっかでやんすが」



『バーベキュー』


メラ パチ ジュゥジュゥ


女海賊「…ほんで城の方はどうだったの?」モグ

アサシン「ゲートブリッジが開いて架け橋も降りたそうだ…今はブリッジ上で押し合っているらしい」

ローグ「アンデッドホースに乗ったデュラハーンの一騎駆けで大混乱だったようでやんす」

女戦士「騎乗で戦える地形ではあるまい?」

ローグ「中央の方まで降りてきたらしいっすよ?一騎で…」

女戦士「倒したのか?」

アサシン「何処かに去ったとの事だ…よもやするとこちらに来ていたかもしれん」

女戦士「バリケードが功を奏したか…被害はどうなって居る?」

アサシン「怪我人が数十人中央まで運ばれているな…死者の状況は分からん」

盗賊「エルフゾンビはちとやり過ぎじゃ無ぇか?」

アサシン「まぁゲートブリッジが降りたのだ…呼び込んで終わらせるつもりなのだろう」

ローグ「今は中央の方も落ち着いて心配無いでやんす」

アサシン「さて…私も昨晩の事で聞きたい事が山ほどあるのだが…」

女海賊「私が話すよ…」


カクカク シカジカ

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女海賊「…で…これが盗賊が盗んだリッチが持ってたの貝殻だよ」

アサシン「魔女…この貝殻は聞く専用の貝殻なのか?」

魔女「そうじゃな…もう一つ話す専用の貝殻も持って居ったかもしれんが…」

盗賊「そんな何度もスリ出来るようなチョロい相手じゃ無ぇ!」

アサシン「まぁ良い…その貝殻があれば黒の同胞団の動きを探れるな」

女海賊「魔女の話だと黒の同胞団に沢山リッチが居るかも知れないって」

盗賊「やばいぞリッチは…不死者で心臓がどこにあるのか分かんねぇんだ…今回は魔法使って来なかったから良かったが…」

アサシン「ふむ…単騎で一人づつ倒すと言う訳にも行かんのか」

女海賊「待って…リッチって不死者だよね?だったらなんでエルフゾンビのドクロの杖に従わなかったの?」

魔女「魔結界の中に居ったからじゃな…つまり魔結界の外に居るリッチはドクロの杖に従う筈じゃ」

盗賊「おぉぉ!!ほんじゃドクロの杖はキーアイテムだな」

アサシン「上手く使えば黒の同胞団を壊滅に追い込めるな」

女海賊「下手に動いてこっちの動きバレるとマズイからしっかり調べたいね」

魔女「わらわに考えがある…シン・リーンの元老院は黒の同胞団を繋がって居りそうじゃ…わらわは一旦戻りたい」

アサシン「魔女が動いていると黒の同胞団に知られるのは逆に良くないと思うが…」

魔女「変性魔法で他人に変身すれば良い」

女海賊「お!?そんな事できんの?」

魔女「姿を借りる者の同意があれば成り済ます事が出来る」

アサシン「ほう?面白い作戦だな」

魔女「そうじゃな…母上と面識のある女戦士が良いのぅ?品もある故目通りするには十分じゃ」

女海賊「お姉ぇ…品があるとか言われてるけど変身されて良いの?」

女戦士「体を他人に見せない条件でなら構わん」

アサシン「…して…目通りが出来たとしてどうする?」

魔女「元老院の者を招集して尋問じゃな…わらわには幻惑の杖がある」

アサシン「ふむ…壺の行方はどうする?」

魔女「おぉ!!そうじゃ…時の王の屋敷にはやはり無かったのか?」

女海賊「一通り見たけど壺は無かったなぁ…美術品と謎のアイテムばっか」

盗賊「俺も見て無ぇな…」



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情報屋「ねぇ女海賊?未来君が壺の事を何か言っているわ?」

女海賊「え?未来が?…どうしたの未来?」

子供「僕さ…前に白狼の盗賊団ごっこしたときに壺を一個持って帰ってきたよ?」

魔女「何じゃと?どのような壺じゃ?」

子供「…これくらいの大きさで黒い壺だよ…蓋が付いてた」

魔女「こんな形をして居らんかったか?」カキカキ

子供「そう!これ…袋に入れてママに渡したよ」

女海賊「え!?…あの財宝の中に…あったの?」

魔女「それは何処にあるのじゃ?」

女海賊「お姉ぇに渡した財宝ってどうなった?」

女戦士「海賊の基地に置きっ放しだな…私の部屋だ」

女海賊「安全な場所にあんじゃん!!あそこは狭間の中だよ」

ローグ「あの財宝…あっしが最初にお宝貰ったっすよね?壺なんか見てない気がするんすけどねぇ…」

女海賊「私も覚えてないんだけど…確認しないと分かんないね」

アサシン「ひとまず行き先の手掛かりは一つある訳だ…ここは分かれて行動するか」

女戦士「では私は船で一度基地へ戻るとしよう…ローグを連れて行く」

女海賊「シン・リーンは飛空艇で私が魔女を送って来るよ…どうすっかな剣士は一緒に来るとして…」

アサシン「私の予測だが魔術師の多いシン・リーンは相当危険だと思うのだが…」

女海賊「アサシンの予定は?」

アサシン「私はフィン・イッシュ女王の相談役になってしまって居てな…今は動けん」

女海賊「じゃぁこうしよう…ホムちゃんは放って置けないから連れて行くとして盗賊と情報屋…おまけで商人の7人」

女戦士「未来は私が預かるで良いか?壺を知っているのは未来なのだろう?」

女海賊「うん…あんまり危ない所に連れまわせないしお願い…」

アサシン「では私はエルフゾンビと共にフィン・イッシュ女王の下に身を寄せておく」

女海賊「おっけ!決まりだね」

アサシン「魔女に頼みがあるのだが…貝殻をそれぞれに配れんか?連絡用に使いたいのだ」

魔女「簡単じゃ…それぞれに2枚づつ用意すれば良いな?」

アサシン「うむ…黒の同胞団も同じように連絡を取り合っているのだ…私達も使わねば行動に差が出る」

魔女「では女戦士と女海賊…アサシンに配るとしよう」

『居室』


ガチャリ バタン


女海賊「お姉ぇ…未来はもう寝た?」

女戦士「フフ未来は剣士にそっくりだな?」

子供「…」スヤ

女海賊「お姉ぇに彗星の剣を預けに来た…」ゴトリ

女戦士「良いのか?」

女海賊「私やっぱあんま使わないんだ…背負える様になってるから何かあったら未来に使わせてみて」

女戦士「分かった…研ぎは私が…」ゴクリ

女海賊「無駄に研がないで大事に使って」

女戦士「分かっている」

女海賊「未来は昔の剣士みたいな剣の使い方するんだ…私じゃ無理だから稽古付けてあげて」

女戦士「そうだな…船旅は暇を持て余す…しっかり訓練してやる」

女海賊「未来は私から離れるの初めてだから少し心配…」

女戦士「自分の荷物をまとめて私の居室にもう来ているのだ…自分なりに役立とうとしているのだぞ?賢いでは無いか」

女海賊「フフそっか…」

女戦士「お前は知らんかも知れんが…隠れて回復魔法の練習をしているのだぞ?」

女海賊「未来が?」

女戦士「魔女に教えてもらった様だ…貴重な回復要員としても働いて貰うつもりだ」

女海賊「もう一人前か…」

女戦士「うむ…まぁ危険な所に行く訳では無いから心配しなくても良い」

女海賊「うん…どっちかっていうとお姉ぇの変態が移るのが心配」

女戦士「…」スラーン ピカー

女海賊「ちょちょちょ…口が滑った」

女戦士「フン!見れば見るほど美しい刀だ…」

女海賊「あ!そういえばその刀で切られた切り口は溶けるみたいだから注意して…自分の体切らない様にね」

女戦士「ほう?そのような効果もあるのか…」

女海賊「伝説の剣にふさわしいっしょ?フフ」

『翌日』


ザブン ギシギシ


魔女「では行くぞよ?」

女戦士「どうすれば良いのだ?」

魔女「わらわに吸い込まれて行くのを拒否しなければ良い」

女戦士「ふむ…分かった」

魔女「では…変性魔法!」グングン

盗賊「おぉ!!女戦士が2人…」

女戦士「イカンな…体が大きゅうなり過ぎてローブがピチパチじゃ…」

女戦士「これが私なのか…触って良いか?」

女戦士「自分の体を触るのと同じじゃぞ?」

女戦士「…」ムニムニ

女戦士「これ!気持ちが悪い」

女戦士「柔らかいな…私はこれほど柔らかいのか…」

女戦士「何を言って居るのじゃ…自分の体じゃろう」

女戦士「私の着替えを持ってくる…着替えて見てくれ」

女戦士「うむ…いやここでは盗賊が見て居るでわらわがそっちに行った方が良いな」

盗賊「んーだよ!!減るもんじゃあるめぇし別に良いだろ」

女戦士「魔女…こっちだ…居室まで来い」

『居室』


ゴソゴソ


女戦士「これは普段主が着ている物では無い様じゃが?」

女戦士「軽装だから着るのを控えて要るのだ」

女戦士「なるほど…主は本当はこれが着たいのじゃな?」

女戦士「そうだ…試着しても自分では見る事が出来ないのでな…」

女戦士「どうじゃ?満足か?」

女戦士「回ってみてくれないか?」

女戦士「ほれ?」クルリ ヒラ

女戦士「フフ…もっと着せ替えてみたくなるな」

女戦士「わらわはこれで良い…軽い方が好みじゃ」

女戦士「私はこんな風に見えて居たのか…」

女戦士「自信が付いたか?」

女戦士「もっとゴツゴツした風体だと思っていたのだがそうでは無かったのだな…」

女戦士「気にし過ぎじゃ」

女戦士「笑ってみてくれないか?」

女戦士「こうか?」ニコ

女戦士「フフ…照れくさい」

女戦士「満足した様じゃな?」

女戦士「妹に負けて居ないのは良く分かった…少し自信が付いたありがとう魔女」

『甲板』


ザブン ギシギシ


ローグ「そろそろ出港するでやんすが…げ!!かしらが2人…」

盗賊「お!?戻って来たな?どっちがどっちだ?」

女海賊「魔女!!そろそろ飛空艇に乗って…出発するよ」

女戦士「他の者は皆乗って居るんか?」

女海賊「うは…全然見分け付かないね…もう乗ってるから魔女も乗って」

女戦士「体が大きい故頭をぶつけそうじゃ…慣れるまで少々かかりそうじゃな」スタスタ

女海賊「その体ってさ…お姉ぇと同じぐらい強いの?」

女戦士「丁度半分じゃ」

女海賊「半分でもそこそこ強いんじゃね?」

女戦士「そうかも知れんのぅ…一応魔法も使えるで割と強いかも分からん」

盗賊「マジか!暇出来たら立ち会ってみるか…」

女戦士「遊びでは無いんじゃ早う行くぞよ」

女海賊「よし!乗ったね?飛空艇の操作は盗賊がやって」

盗賊「おう!じゃ…いくぜ?」


フワリ シュゴーーーーーー


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 淫魔の呪い編

   完

『飛空艇』

シュゴーーーーー


盗賊「ぬぁぁぁ…魚の干物ばっかじゃ力が出無ぇ!」カジ

女海賊「それしか無いんだから我慢して」

情報屋「干し芋ならあるわ?要る?」

盗賊「食い飽きたんだ…肉食わせろ肉!!」

商人「この先にトアル町があったよね?ちょっと補給して行かないかい?」

女海賊「肉売ってるアテあんの?」

商人「あそこは森の近くだし養羊場もあった筈だよ」

女海賊「2時間で買い物済ませて」

商人「分かった僕が買って来るよ…荷を持つのに情報屋も一緒に来てくれるかな?」

女戦士「わらわも行こうかのぅ…体に慣れておきたいでのぅ」

商人「助かるよ」

盗賊「魔女…その格好じゃ危ねぇから余ってる武器何か持ってけ」

情報屋「予備のミスリル剣があるわ?これで良いでしょう?」

女海賊「ダメダメ…魔女は剣の抜き方も知らないからトゲトゲのこん棒あったじゃん!アレにして」

盗賊「おぉそういや全然使って無ぇな…モーニングスターって武器だ」

女戦士「何でも良い…どうせ使わんじゃろう」

盗賊「持ってんのと持って無いのとじゃ男の寄り付き具合が全然違うぞ?用心しておけ…その格好じゃ目立つからな」

『森の端』


フワフワ ドッスン


盗賊「こっから10分程西に行ったらトアル町だ…行けるか?」

商人「これくらいの雪なら大丈夫かな…行って来るよ」ギュッギュッ

女海賊「あと2時間もしたら日が落ちちゃうから急いで」

商人「うん!分かってるって…情報屋!魔女!行こう」


ザクザク ギュ ギュ


女海賊「ほんじゃ剣士と盗賊はちっと作業手伝って」

盗賊「なぬ?俺に働かせんのか?」

女海賊「大した作業じゃないって!船体の隙間をこの樹脂で埋めんの…やって」

盗賊「樹液の残り粕で作ったんか?…こんなんで埋めたら燃えやすくなるんじゃ無ぇか?」

ホムンクルス「大丈夫です…木材が長持ちする様になりますので出来るだけ全体に塗って下さい」

女海賊「…聞いた?ハイ働いて!!」

盗賊「へいへい…ラクは出来んな」



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トンテンカン トンテンカン


盗賊「何作ってんだ?」

女海賊「窓が布だと風入って寒いかんね…余ってる木材で木窓作ってんの」

盗賊「これ嵌め込んで行けば良いか?」

女海賊「金具に引っかけて押し込んどいて…すぐ開けれるかチェックもやっといて」

盗賊「窓全部こんなんでフタしたら暗くなら無ぇか?」

女海賊「大丈夫…ホラ」ピカー

盗賊「あぁなるほど…光の石な」

女海賊「あんたもどうせ暇なんでしょ?余ってる材料で何か作ってよ」

盗賊「ロープ組んでハンモックでも作るか…床に寝転ぶより温いかもしれん」

女海賊「良いね…やって」

ホムンクルス「立派な家になりますね」

女海賊「ほんじゃさ!ロープ張って布垂らして間仕切りも作ってよ…帆みたいに畳める様にしてさ…」

盗賊「おぉ!お前と剣士がイチャ付いてるのを見んで済むか」

ホムンクルス「間仕切りがあれば暖房性能が向上しますね…私がデザインしても良いでしょうか?」

女海賊「ホムちゃん良い案あるの?」

ホムンクルス「ウラン結晶の熱を均等に行きわたらせる工夫です…対流を上手に誘導します」

女海賊「良いね!!」

盗賊「ちっとやる気出て来たぞ…よーし」

ホムンクルス「はい…ここをこうして…あそこをこうして」

『トアル町』


ガヤガヤ ガヤガヤ


商人「うわ…商隊の詰め所がごった返してる」

情報屋「セントラルがあんな風だからこの町が終点になっているのね」

商人「でも何かおかしいな…どうして馬が居ないんだろう?」

情報屋「もしかして雪で足止めかしら?」

商人「そんな感じだね」

女戦士「向こうを見てみぃ…大きなシカがソリを引いて居る」

商人「なるほど…わかったぞシカが少ないから商隊が停滞しているんだ」

情報屋「物資調達には丁度良かったわね?」

商人「うん…これはチャンスだよ」


多分寒さを凌ぐのに毛皮とか羊毛は高騰してる

その代わり肉とか角は安い筈だ

油は高い…物資滞留で海の物は安い


商人「一気に買っちゃおう!!まず人用のソリを2台手に入れよう」

情報屋「フフ急に元気になったわね」

商人「2時間しか無いんだ急ごう!!」タッタッタ

『街道』


ガヤガヤ ガヤガヤ

木炭は要らんかね~木炭安いよ~

さぁもってけドロボー金属糸の織物安いよ~

シカの角バッファローの角なんでもありまっせぇ

冷凍肉どれもこれもたったの5銅貨!!

ガヤガヤ ガヤガヤ


女戦士「古代の金貨1枚でこれほど買い物できるのじゃな?」

商人「まだ銀貨余ってるよ…どうしようかな」

情報屋「また使う機会あるかも知れないし取って置いたら?」

商人「そうだね…もうソリ一杯だしね」

情報屋「ねぇ商人気付いてる?私達の事付けてる男の人4人…」

商人「君も気付いていたかぁ…困ったね」

情報屋「ソリを引いて町を出るのはすこし危険かも知れないわ」

商人「魔女?さっき買った盾は使えそう?」

女戦士「盾なぞ使った事が無いのじゃが…」

商人「あと30分…どうしようかな」

女戦士「わらわは魔法が使えるのじゃ…気にせんと行くぞよ?」

情報屋「大丈夫?その体でも暴漢4人相手だと心配だわ?」

商人「こうしようか…僕と情報屋がソリ引くからさ…魔女は僕たちを守って?」

女戦士「そうか?商人にこのソリが引けるのじゃろうか?」

商人「変わるよ…ふんっ!!」ススス

女戦士「大丈夫そうじゃな?…では戻るとするか」


ガヤガヤ ガヤガヤ

黒い馬に乗った騎士が走り抜けていったらしいぞ?

馬じゃこの雪ん中どうにもなえるめぇ

またセントラルの貴族じゃ無いのか

ガヤガヤ ガヤガヤ

『町外れ』


スルスル スルスル


商人「ソリだと荷物運ぶのラクだなぁ…はぁはぁ」

情報屋「息切らしてるじゃないフフ」

商人「ちょっとした運動さ…それにしてもあの4人付いて来るね」

情報屋「どこで仕掛けて来るかね?」

女戦士「貝殻で剣士を呼んだ故…そのまま行って良いぞ」

商人「お!それを聞いて安心したよ」

情報屋「来た来た…4人走って来たわ」

女戦士「そのまま気付かん振りで行って良い」



野郎1「おいおい待ちやがれ!何処いくんだいネェちゃん」

野郎2「どういう事か分かる…」


ボカッ! グチャ


野郎2「はががが…いでぇぇ」

女戦士「うるさいのぅ…わらわは忙しいのじゃ主らに付き合うとる暇は無いのじゃ」

野郎1「やろう…女だと思って優しく声掛けてやってんのに…おい!お前等!!この女掴まえるぞ…」

野郎2「ってぇぇぇ」

野郎3「ソリ引いた2人はそのまま行っちまいますが…」

野郎1「そんなん後だ…ごるぁぁぁ!!」ダダ グイ

女戦士「これ!止めんか…」ジタバタ

野郎1「囲め囲め!!」グイ

野郎2「うひひひひ…なかなか力ありまっせこの女…んむむ」グイ

野郎1「あの小屋まで連れ込むぞ」グググ

女戦士「ふんっ」ゴン!

野郎1「ぐぁ…にゃろう!このまま脱がせ!!」

野郎2「うひひひひ…こいつ下着付けてませんぜ?」

女戦士「そこは触るでない…」ブン グチャ

野郎2「ひでぶ…」

野郎1「お前…血が…」

野郎4「おいおい!ヤバいぞ…誰か走ってくんぞ?」


シュタタ

剣士「そこまでだ…手を放せ」

野郎1「誰だお前…どこから来やがった」スラーン

野郎4「こいつ刀に手ぇ掛けてる」スラーン

剣士「魔女…立てそうかい?」

女戦士「助かったわい」

剣士「僕が援護するからその盾で構えてみて」

女戦士「こうか?」スチャ

野郎1「やろう…やる気だな?」

剣士「構わずその武器で叩いても良さそうだよ…」


ブン! ボカ ボカ ボカ

うぎゃ! いだっ!


剣士「その先っぽの尖ってる所を当てれば良い」

女戦士「こうじゃな?」ブン! グチャ




『飛空艇』


メラメラ パチ


女海賊「お!?なんかいっぱい買って来たね」

商人「そうなんだよ…丁度商隊が沢山詰めててさ…良い物いっぱいあった」

女海賊「これ馬の毛皮?」

商人「そうそう!それすっごい安かったんだ…他の毛皮は高騰してた」

女海賊「ちょうど敷物無くて困ってたんだよ…盗賊!この毛皮を床の敷物にして」

盗賊「商人…飛空艇の中を見て見ろ!」

商人「おぉぉスゴイ!!ちょっとした隠れ家になるじゃないか」

ホムンクルス「中は暖かいですよ?」

女海賊「あ!!サメの肝油だ!!貴重品じゃん」

商人「それも安かったんだ…あと色んな動物の角も安かったから買って来た」

盗賊「肝心の肉はどうなった?忘れて居ないだろうな?」

商人「肉もすごい安かったから色んな肉買って来たよ」

情報屋「ちょうど焚火してるみたいだし早速焼いてみたら?」

女海賊「ちょちょちょ…焚火で肉を焼くときは焼き方があんだよ…剣にぶっ射して直火で焼くの」

盗賊「知ってらぁ!こうだろ?」スパッ ブス

女海賊「そうそう…それが山賊焼き…私も食お!」

情報屋「剣士と魔女の分も焼いておくわね」ジュゥ

盗賊「クソ旨めぇ!!」ガブガブ

ホムンクルス「造血剤を飲むのも忘れないで下さい」

盗賊「俺の造血剤は酒だ」

ホムンクルス「アルコールの分解は体に負担がありますので少しにして下さい」

盗賊「へいへい…」


-----------------



商人「あ!剣士と魔女が帰って来た」

女海賊「平気?」

剣士「魔女一人で十分だったよ」

女海賊「お姉ぇの体に怪我は?…アレ?お姉ぇじゃないか…」

女戦士「わらわは大丈夫じゃ…ちと下の方を触られて気持ち悪いだけじゃ」

女海賊「え…お姉ぇの体触られたって事?」

女戦士「気にせんでも良い…それより良い匂いがするのぅ」

情報屋「剣士と魔女の分の肉が焼けてるわ?食べて?」

商人「冷凍になってるお陰で肉が新鮮だよ…おいしいから食べて」モグ

女戦士「久方ぶりの肉じゃな…もうずっと芋しか食しておらん」モグ

商人「寒くなったから皆毛皮が欲しいんだろうね…肉は本当に安かった」

女海賊「私ら毛皮は余ってて良かったね」

盗賊「昔お前が作った偽物の白狼毛皮な?毛布替わりにゃ丁度良い」

商人「あ!!そうそう金属糸の織物がめちゃくちゃ安かったんだ…女海賊が喜ぶと思って買ってきて置いた」

女海賊「お!?良いね!!魔女が軽装だからさ…後でインナー作ったげるよ」

女戦士「下着の代わりかえ?わらわは布の下着が苦手なのじゃ」

女海賊「大丈夫!スースーするから」

女戦士「では試してみるかのぅ」



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剣士「そう!盾はそう構える」

女戦士「ふむふむ…」

剣士「盾の中に肩と肘と胴体を隠す…武器は相手から見えない様に」

女戦士「こうか?」

剣士「そのまま突っ込んで来てみて?」

女戦士「…」タタタ

剣士「そうそう…そうやって間合いを詰める…その後に縦振りか横振りの2択」

女戦士「ほい!」ブン

剣士「良いね!振り終わったら盾を使って殴る感じに繋げて見て」

女戦士「…」ブン ブン

剣士「まぁそんな感じかな…必ず盾で身を守るのを意識してね…もう一回やろうか」



女海賊「お姉ぇの体になったら魔女も戦いたくなるんかな?」

盗賊「ちったぁ戦える様になってないと又襲われるぜ?」

商人「なかなか様になってるじゃない」

盗賊「まぁ本物と比較したら全然キレが無い…てか先読みが無いから素人みたいなもんだな」

商人「先読みねぇ…それ言われると僕も素人だなぁ」

盗賊「乱取りで慣れるしか無いんだが…魔女にそれが出来るんかいな」



剣士「じゃぁ次!その木の棒で僕に当てて来てみて」

女戦士「良いのか?」

剣士「うん」

女戦士「では…」タタタ ブン カコン

剣士「続けて」


カンカン コン

剣士「待って待って…どうして僕の避ける方向分かってる?」

女戦士「見えて居るからじゃが?」

剣士「あれ?魔女は何か訓練してる?」

女戦士「剣の訓練は初めてじゃ…魔術の訓練は何十年もやったがのぅ」

剣士「おかしいな…」ヒョイ ヒョイ

女戦士「普通じゃが?」

剣士「僕が動く前に魔女の目はそっちに向いてる…どうして?」

女戦士「詠唱短縮の効果じゃな」

剣士「どういう事?」

女戦士「魔術師は詠唱を短縮する為に少しだけ時空の先に居るのじゃ…わらわがノソノソ動く様に見えるのは主らに合わせて居るからじゃ」

剣士「それはどれくらい先?」

女戦士「1秒にも満たぬが…それほど影響があるのか?」

剣士「そういう事か…リッチと戦った時に違和感があったんだ」

女戦士「魔術師は精神と時の門でそういう修行をするのじゃ…相手よりどれだけ早く魔法を撃てるかが勝負じゃからな」

剣士「もう少し立ち合ってみよう」

女戦士「ふむ…いくぞよ?」



カンカンコン カンカンコン



盗賊「なんか俺もやりたくなってきたわ」ウズウズ

剣士「魔女は鍛えるとすごく強くなると思うよ」

盗賊「だな?俺がリッチの鎌の射程がおかしいと思ったのはそういう事だな?」

剣士「うん…1秒先に動かれてると思って戦わないといけない」

盗賊「1秒つったら連撃食らってもおかしく無ぇ」

女戦士「1秒も無いで安心せい…修行を極めても1秒には届かぬ」

剣士「それでも圧倒的有利だよ」

盗賊「見て避けるでは遅いな」

剣士「うん…感じて避けないといけない」




-------------------

盗賊「暗くなって来たからそろそろ上がっとか無ぇと獣出んぞ」

女海賊「剣士!魔女!?飛空艇に入って…行くよ」

剣士「あぁごめん今行くよ」スタスタ

女戦士「良い運動じゃった…この体はよう動くから気持ちがええわい」

女海賊「剣士!残りの荷を入れて!!」

剣士「うん…よっこら…これは矢とボルトだね」

商人「安い物を手当たり次第に買っちゃったから」

情報屋「セントラルに物資が無いのは近隣に疎開したからだったのね」



”ハジ・マリ聖堂の魔術院が抵抗して占拠に時間が掛かりそうだ”

”兵団がセントラルに戻るのはもう少し待て”

”あのモウロクを上手く使ってなんとか収めろ…以上”



女海賊「ちょ…これ!!リッチが持ってた貝殻…」

女戦士「どういう事じゃ?セントラルの兵団がハジ・マリ聖堂に行って居るのか?…」

盗賊「こりゃどっかに行ってたセントラルの船団はシン・リーンに行ってんじゃ無ぇか?」

女戦士「戦う理由が無いでは無いか…国が接して居らんのじゃぞ?」

商人「シン・リーンとセントラルは元々戦争状態だよね?」

女戦士「ううむ…わらわがセントラル国王に密書を渡したのが黒の同胞団にバレてしもうたかのぅ…」

商人「その可能性もありそうだね…あと前にこの飛空艇でシン・リーンの船団を追い返した事もあるんだ…死傷者ゼロで」

女海賊「海賊がシン・リーンの港町まで牽引したってパパが言ってた」

商人「だったらドワーフの国と繋がってる様にも見えてしまってるかもね」

女戦士「魔術院を落としたところでセントラルには何の利も無いと思うが…」

商人「セントラルじゃなくて貴族とか黒の同胞団の利益だろうね…何かありそう?」

情報屋「発掘された遺跡の遺物…ほら?聖剣エクスカリバーとか光の石とかいろいろ有ったでしょう?」

女戦士「ユニークアイテムを奪われまいと母上が抵抗しておるのじゃな?」

商人「流れ的にそんな感じだね」

女戦士「これは先にハジ・マリ聖堂に向かわねばならんな」

商人「魔女があんまり動いちゃうと相手に勘繰られる気がするなぁ」

女戦士「ホムンクルスや…森の東…ハジ・マリ聖堂付近は雪が積もっておりそうか?」

ホムンクルス「森の東側は山がありませんので豪雪地帯にはなりにくい様です…北の方へ行けば雪が降っているでしょう」

女戦士「アラクネーじゃな…アラクネーを起こして戦わせるのじゃ」

女海賊「お!?私ちっこいクモ持ってるよ…ホラ」モソモソ

女戦士「言う事聞くのであればそのクモにお願いしてみるのも手じゃな…無理やり起こすと怒らせてしまうで」

女海賊「やってみるよ」

『森の上空』


シュゴーーーー


盗賊「一旦港町を見て行く感じで飛んで良いな?」

女戦士「うむ…船団の規模が見ておきたい」

商人「津波の被害がどうなってるのかも気になるね」

盗賊「湾になってっからな…セントラルと違って直撃は受けにく様には思う」

商人「セントラルは外郭がまずかったね…アレで海水をせき止めちゃったみたいだからさ」

盗賊「このままハイディングしながら行けば1日半ぐらいか?」

女海賊「もうちっと早い…明後日の日の出前には着くと思う」

盗賊「んじゃ夜間飛行は俺がやる…お前等は仲良く寝てて良いぞ」

女海賊「剣士!こっちこっち!!めちゃ快適になってるよ」

剣士「あぁ…」

商人「じゃぁ僕とホムンクルスは向こうを使うね…ホムンクルスおいで」

ホムンクルス「はい…」

女戦士「ではわらわと情報屋はウラン結晶で温まるかのぅ」



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シュコシュコ ゴリゴリ


女戦士「何を作っておるのじゃ?」

女海賊「皆の武器をボーンハンドルにしてんの…木より丈夫で軽いんだよ」

女戦士「見た目も良いのぅ?」

女海賊「でしょ?磨くともっと綺麗になるさ」

女戦士「角か…回復魔法をエンチャント出来そうじゃな」

女海賊「お!?良いじゃん!!やって」

女戦士「ほんの少しじゃがな…切り傷くらいは治るじゃろうて」

女海賊「盗賊が怪我ばっかりしてるから絶対エンチャントした方が良い」

女戦士「そうじゃな…回復魔法!」ボワー

女海賊「これさぁ…鞘も角で作ったらエンチャント出来る?」

女戦士「出来るぞよ?」

女海賊「回復魔法の頻度が減るんだったらやっといた方が良いね」

女戦士「うむ…」

女海賊「剣士も魔法使えるけどエンチャントは無理?」

女戦士「エンチャントは変性魔法との複合魔法じゃから剣士には出来んのぅ」

女海賊「なるほど…材料を変身させてるのか」

女戦士「そうじゃ高位魔法じゃから何年も修行せねばならぬ」

女海賊「剣士が使える最強の魔法って何?」

女戦士「魔力依存じゃったら量子転移が最強じゃが危険じゃけ教えられんのぅ」

女海賊「それって祈りの指輪にエンチャントされてる魔法?」

女戦士「そうじゃな…万物を手に入れる事が出来るが制御が出来んのじゃ…わらわでも自由に使えぬ」

女海賊「ふ~ん」

情報屋「変性魔法を簡単にした物がシャ・バクダ錬金術よ」

女戦士「良く知って居るのぅ…物質の結合と変性じゃ…特殊な器具が必要になるがな」

女海賊「特殊な器具って何?」

女戦士「わらわは知らぬ…天秤の様な物じゃとは書物で読んでは居るが仕組みは何も知らん」

情報屋「キ・カイ錬金術はその器具が無いから何でも中途半端なの…今までの話からすると時の王が持って居た可能性が高い」

女戦士「リリスの首にバフォメットが付いておったのはそれが理由じゃろうな」

女海賊「時の王の屋敷には天秤みたいな物なんか無かったよ」

女戦士「黒の同胞団が盗んだんじゃろう?それしか考えられん」

女海賊「そんな大事な物盗まれて平気にしてるっておかしくない?」

女戦士「じゃから黒の同胞団にモウロクと呼ばれて居るのでは無いか?人は200年分しか記憶出来んらしいからのぅ」

女海賊「…そうか精霊との思い出以外は忘れて行ってるのか」

女戦士「そこに付け入られて居るのじゃな…哀れな男じゃ」

情報屋「シャ・バクダが滅んで200年以上…道具の使い道を忘れて行ってもおかしくないわね」

女戦士「そもそも器具があったとしても変性魔法の術を使う者が居らんとイカン…じゃから時の王一人では器具は使えんのじゃ」

女海賊「分かって来た…やっぱ時の王は上手く利用されてるだけなんだ…黒の同胞団に」

女戦士「うむ…時の王の指示通りに動いて居る様に見せてその実…利用されておるな」

女海賊「黒の同胞団のボスって誰?…」



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トクン トクン トクン


女海賊「ちょっと商人!あんた裸で何やってんのさ」

商人「シーーーッ!」

女海賊「ホムちゃんも服がはだけ過ぎなんだけど」

ホムンクルス「商人の心臓の音を聞いて居ました…少し雑音が混ざっている様です」

商人「悪くはなって無い?」

ホムンクルス「恐らく心臓の膜に穴が開いていると思われます…塞ぐことが出来れば症状は改善します」

女海賊「あんた具合悪いの?」

商人「空気が薄い場所だとすこしだるくなるんだ」

ホムンクルス「血中酸素濃度が低下しているのですね…病状の悪化ではありません」

女海賊「魔女の変性魔法で心臓治せたりしないの?」

女戦士「わらわは何でも屋では無いぞよ?」

ホムンクルス「心臓の病状が進行する事はありませんがその他臓器への負担が心配ですね」

女海賊「ホムちゃん賢者の石持ってたよね?それでいつもくっついてたの?」

ホムンクルス「はい…賢者の石には体機能の活性化効果がありますから」

女海賊「おっけおっけ…なら良いよ」

商人「僕はホムンクルス無しじゃ生きていけないかもね」

女戦士「ではホムンクルスをしっかり守らねばイカンぞ?」

商人「だから剣の練習してるのさ」

女海賊「ふ~ん…まいっか」



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トンテンカン トンテンカン


盗賊「ぬぁぁぁうるせぇな…今度は何作ってんのよ」

女海賊「秘密兵器…」キュッキュッ

盗賊「望遠鏡か?えらく細い様だが?」

女海賊「ホムちゃん!ミスリル銀磨いて鏡の入れ物にしたよ…これに光の石入れれば良いんだよね?」

ホムンクルス「はい…あとはレンズで集光して筒から出る様に調整してください」

盗賊「んん?光をその筒から発射するんか?」

ホムンクルス「簡単なインドラの矢を発射する装置ですね…鏡の中で光を蓄えて発射する仕組みです」

女海賊「これさ…ずっと使わないと光貯め過ぎて爆発したりしない?」

ホムンクルス「ご安心ください…一定量を超えると光の石に再吸収されます」

女海賊「あーーなるほど」

ホムンクルス「光の最充填にどれくらい時間がかかるか分かりませんので使って試してみてください」

女海賊「これ撃てるの一発だけ?」

ホムンクルス「そうですね」

女海賊「じゃぁ望遠鏡と合わせて狙いを外さない様に調整しないとなぁ…」

盗賊「2連式クロスボウみたいになってりゃ良いんだけどな」

ホムンクルス「光は重力で少しだけ曲がりますのでご注意下さい…計算式はメモに書いておきます」カキカキ

女海賊「んん?これって…そっか見えてる分も曲がってるのか…てことは遠くに見える物ほど誤差が大きくなるんだね」

ホムンクルス「はい…」

盗賊「どんだけ遠く狙うつもりなのよ…」

女海賊「望遠鏡で見える範囲に決まってんじゃん」

盗賊「おま…10キロも20キロも先の物に当てるつもりなんか?」

女海賊「悪い?」

盗賊「マジか…そんなんで狙われたら命がいくつあっても足りん…神の武器になるぞ」

ホムンクルス「長距離でしたら大気による光の減衰で大きな威力は期待出来ません…木を燃やす程度ですね」

盗賊「それでも人殺すにゃ十分だ」

女海賊「んーーこれ望遠鏡で補正するのムリだなぁ…目盛り書くだけにしよっかな」

ホムンクルス「対象との距離で補正する量を記した目盛りが簡単でしょう」

女海賊「おけおけ…あとは引き金工夫してブレ無いようにする」カチャカチャ



------------------

女海賊「飛空艇揺らさない様に安定飛行させて」

盗賊「おう!」

女海賊「じゃ…もっかい!!」シュン

盗賊「なんか撃ってんのか撃ってねぇのか分かんねぇな…当たったか?」

女海賊「ふむふむ距離2キロ程度でリンゴに当てられる…もうちょい調整必要かな」

盗賊「十分すぎるだろ」

女海賊「ダメダメ…私が納得しない」

女戦士「ううむ…やはりドワーフは伝説の武具を生み出すのじゃな」

女海賊「再充填で10分掛かんのがウザイ」

ホムンクルス「光の石を挟んで鏡の容器を左右に分けてみては如何でしょう?」

女海賊「2発撃てるって事ね?おっけ!もう一個容器作るわ…」

盗賊「おいおいまだやるんか…もう日が落ちる」

女海賊「ほんじゃ調整はまた明日…今から容器作って改造する」

女戦士「やる事があって良いのぅ」

情報屋「本当スゴイわね…」




『港町近海』


シュゴーーーーー


盗賊「全部で8隻だな…てことは4000人程度軍隊が出てる事になる…船に残ってる事考えると2000人ぐらいか」

女海賊「これ港町は占拠されちゃってんのかな?」

盗賊「港町に俺の隠れ家があんだけど寄ってか無ぇか?」

女海賊「飛空艇降りられんの?」

盗賊「大丈夫だ…納屋に小麦もある」

女海賊「ふむ…ちょっと行ってみようか」

商人「母さんのお墓もあるんだ…手を合わせて行って」

女海賊「女盗賊か…じゃぁ行かないとね」

盗賊「よっし!日が昇る前に降りる」


シュゴーーーーー

『ユートピア』


フワフワ ドッスン


盗賊「降りろ!飛空艇は狭間に隠す」

情報屋「しばらく留守にしていたけど…変わって無いわね」

商人「女海賊!母さんの墓はこっちだよ」

盗賊「海がめちゃくちゃキレイなんだ見て行ってくれ」

情報屋「私は街に降りて少し情報を仕入れて来るわ?剣士を連れて行っても良いかしら?」

女海賊「剣士行ける?」

剣士「うん…」

情報屋「剣士が居れば安心…」


盗賊「ふぅ…女盗賊…帰って来たぜ?寂しかったか?」ナデナデ

女海賊「このお墓…あんたが作ったの?」

盗賊「なんだよ…飾りっ気が無いってか?」

女海賊「私が石に装飾掘っても良い?」

商人「ハハ良いじゃない?母さん喜ぶよ」

盗賊「あんま派手派手にすんなよ?」

女海賊「うっさいな…あんたも情報収集行って来たら?どうせ暇でしょ?」

盗賊「へいへい…情報屋!待ってくれ…俺も街に降りる」

情報屋「早く来て?今の内に酒場見ておきたいの」



----------------


コンコンコン コンコンコン


女戦士「ほう…シャ・バクダ王家の紋章じゃな?」

女海賊「うん…アサシンから女盗賊の本当の名前聞いて居たんだ」

女戦士「随分と離れた場所に来てしもうたな…まさかここに王の血筋の墓があるとは誰も気づくまい」

女海賊「私さぁ女盗賊が歌ってた歌をまだ覚えてんだ」

女戦士「どんな歌じゃ?」

女海賊「剣士を寝かせる時に歌ってたんだよ…すっごい簡単なんだけど…印象に残ってる」

女戦士「…むむ!!もしや…歌ってみよ」

女海賊「寝んね~ん寝~♪」

ルルル~♪

ララ~♪
 
女戦士「こんな所に伝わって居った様じゃな…その歌を忘れるでないぞ?」

女海賊「え?なんで?」

女戦士「それはキマイラを操る歌じゃ…必要になる時が来るやもしれん」

女海賊「リリスとかの事?」

女戦士「うむ…キマイラとして蘇ったリリスを操れる可能性があるのじゃ…ホムンクルスや?覚えたか?」

ホムンクルス「はい…今の歌は記憶に残って居ます」

女戦士「主も歌えるようにしておくのじゃ」

ホムンクルス「はい…わかりました」

『日の出』


女海賊「はぁぁぁぁ時間忘れそう…ここって名もなき島みたいな感じ」

商人「朝食出来たよ…小麦でパンを焼いてきた…野菜と肉も挟んであるよ」

女戦士「おぉ良いのぅ」

商人「母さんの大好物だったんだ…毎日このパンを孤児院に持って来てくれた」

女海賊「あんがと…」モグ


チュンチュン


商人「あ!あんなところに鳥の巣が出来てる」

女戦士「女盗賊の友達かもしれんのぅ…」ポイポイ

女海賊「ここは平和だねー」


タッタッタ


盗賊「おぉぉ間に合った!!剣士!情報屋!早く来い…まだ日の出だな?」ハァハァ

女海賊「めちゃ綺麗だねココ」

盗賊「お!?墓もなかなか荘厳な感じになったな?」

女戦士「シャ・バクダの末裔にしては質素じゃが場所は最高じゃな」

盗賊「よう!!それより聞いてくれ…港町に新しい領主が来たらしいんだけどよ」

女戦士「元老の誰かじゃな…わらわが知って居るやもしれん」

盗賊「聞いて驚くな?そいつは魔術師の推薦でシャ・バクダから派遣されてる…どういう事かわかるか?」

女海賊「ぶっ!!…マジで?」

女戦士「最悪の者が領主になったと言うか…」

盗賊「女海賊ちょっとこっちの崖際に来てみろ…領主の砦が見えるんだ…その望遠鏡で覗いてみろ」

女海賊「え…どこ?」

盗賊「ギリギリ砦が見える…何か見えんか?」

女海賊「んんん…こんな朝っぱらから人なんか要る訳無いじゃん」

盗賊「あいつ何とかしねぇと又何かやらかすぞ?」

女戦士「これではっきりしたのぅ…内側から魔術院を滅しようとしておる様じゃな」

商人「魔術院さえ無くなれば女王の実権が無くなる?」

女戦士「元老院はまとまった兵を持って居らぬ…故にセントラル兵を使って居るな」

盗賊「こっちもぐちゃぐちゃだな」

女戦士「まともなのはフィン・イッシュだけの様じゃ…しかしあの領主は処分せねばならん…どうしたもんか」

女海賊「あ!!裸のエルフが捕らえられてる…え?3人も?」

女戦士「どこじゃ?」

女海賊「物見の塔…窓から見える」

女戦士「千里眼で覗く…ふむ鎖で壁に繋がれておるな」

女海賊「距離1キロくらい…ホムちゃん!この距離で鎖は焼き切れるかな?」

ホムンクルス「2発同じ場所に当てれば切れるかもしれませんね」

女海賊「剣士!あんた鳥と話できたよね?」

剣士「え!?そんなのやった事無い…」

女海賊「良いから鳥と話してあのエルフに伝えさせて…鎖を見えやすい位置に移動させてって」

剣士「どうすれば良いか…」

女海賊「目ぇ閉じて!!鳥を何か感じない?」

剣士「目を…居るのは分かる…でもどうやって?」フッ

女戦士「今ので終わりじゃ…感じるだけで良いとエルフが言うておった」

女海賊「おけおけ飛んでった」



--------------------



女海賊「よしよし…窓に移動してる…撃つよ」シュン

盗賊「おぉ…」

女海賊「ヒット!」ガチャコン

盗賊「すげぇ仕組みだな」

女海賊「気が散る…黙ってて」シュン

女海賊「よっし!切れた!!」

女戦士「残りの2人も鎖の切断を要求して居りそうじゃ」

女海賊「うん分かってる…あと10分」

女戦士「これは魔法では無いで誰も気づけんのぅ」

『20分後』


シュン


女海賊「おっけ!最後の鎖…やっぱ調整したら精度上がる」

女戦士「3人で逃げて行きよる」

盗賊「見えた…アレだな?もう見つかって追われてんな」

女戦士「エルフ3人じゃとよほどでは無い限り掴まえるのはムリじゃろう」

盗賊「まぁそうだな」

女海賊「チャンス!エルフ居なくなったの確認しに来た所を狙える…あのクソ領主の股間に当ててやる」

盗賊「そこは一発で倒せよ」

女戦士「元老の処分はわらわに任せよ…ここはお仕置きで良い」

女海賊「魔女?クソ領主はどこにいるか分かんない?」

女戦士「今衛兵の目を追って探して居る所じゃ…少し騒ぎになり始めて居る」




『10分後』


盗賊「おいおいおい…アレ領主じゃ無ぇか?今砦の方に向かっている…女連れてんな」

女海賊「外で豪遊かよ」

盗賊「砦ん中入っちまう前にやった方が良くねぇか?」

女戦士「今女の目を追って居る…間違いなくシャ・バクダに居った領事じゃな」

盗賊「砦の門が狙い目だ…開いて無ぇから立ち止まる筈だ」

女戦士「女の視線がおかしいのぅ…キョロキョロしておる」

女海賊「よし!門で立ち止まった…あの女邪魔!!」

女戦士「話をして居るが…金銭の揉め事…いやイカン!!領主はナイフを手にしておる」

女海賊「…もうちょい下がって…もうちょいもうちょい…」シュン


パン!


女戦士「うぉ!!血が飛び散りよった…」

女海賊「え?なんで?破裂して片足取れた」

ホムンクルス「水蒸気爆発ですね…血液が爆発したと思われます」

女海賊「ヤバこれ…」

盗賊「おい…騒ぎになる前にここを離れるぞ…飛空艇に乗れ」

女海賊「やっちゃったぁぁ…」

女戦士「直ぐ近くに魔術師が居るじゃろうから死なんじゃろう…足を失のうたのは今までの罰じゃ」

盗賊「行くぞ!早くしろ!!」

『飛空艇』


シュゴーーーーー


女海賊「光が当たって燃えるだけだと思ってたんだよ」

ホムンクルス「水分が無ければ燃えるだけで収まりますね」

女海賊「リンゴが破裂してたのはそういう事か」

ホムンクルス「はい…水分が水蒸気爆発を起こして威力が増大します」

盗賊「これ爆弾と変わんねぇだろ」

女海賊「ちょっと使いどころ考える…危なすぎ」

女戦士「神の武器じゃな」

盗賊「逆に言うと魔物は一発で倒せる訳だ…あの威力だと胴体に当てりゃ穴空くだろ」

商人「君はスゴイ武器を開発したね…インドラの銃…間違いなくユニーク武器に相当するよ」

女海賊「魔女どう?クソ領主は死んで無い?」

女戦士「しぶとく生きとるのぅ…貝殻を使って何やら連絡しておる」

女海賊「狭間の中で貝殻の声って聞こえるんだっけ?」

女戦士「何か聞こえてから狭間を出ても遅くは無い」

商人「また何か指示が出るかもね」

女戦士「気にせずわらわ達は行動して居れば良いと思うな」

盗賊「ハジ・マリ聖堂は直ぐに着いちまうぞ?直行して良いんだよな?」

女戦士「すぐ北の林の中に飛空艇を隠せば良い…聖堂の下に街があるよってそこで宿じゃな」



----------------



女海賊「…おっけ?分かった?」ブツブツ

盗賊「ヌハハ…クモとおしゃべりか?」

女海賊「うっさいなけし掛けんよ?毒持ってるから」

盗賊「結構でかいじゃ無ぇか」

女海賊「ここまで育てたの」

女戦士「良いアラクネーじゃな…魔術師はアラクネーを飼う事もあるのじゃぞ?」

盗賊「目が4つか?」

女海賊「6つ…クリクリして可愛いっしょ?」

女戦士「アラクネーはここまで大きゅうなれば天敵が居らんくなるで飼いやすい…クマでも近寄らんな」

盗賊「おおぅ…そんなに毒強ぇぇのか」

女戦士「麻痺の効果と壊死の効果じゃ…飛空艇を守るには最適かも知れんのぅ」

『ハジ・マリ聖堂上空』


ビョーーーーウ バサバサ


商人「完全にセントラルに包囲されてるね…トレビュシェットまで作ろうとしてる」

女戦士「魔術院だけが孤立しとるんじゃな」

盗賊「だな?街の方は何も被害が無ぇ」

商人「ドンパチが無さそうだけどどうなってるんだろ?」

女戦士「わらわの教えを守っているならば専守防衛じゃ」

盗賊「こんなんじゃ守り切れんだろ」

女戦士「魔術師をなめてはイカンぞ?睡眠魔法も毒魔法も使えるのじゃぞ?」

商人「なるほどねーそれで制圧出来ないでいる訳だ」

女戦士「内側に敵が居らねばこの数で攻め切れる訳が無い…じゃが向こうにも魔術師が混ざって居るんじゃろうな」

盗賊「飛空艇はどこに降ろせば良いんだ?」

女戦士「北の林の中じゃ…アラクネーが居って人が近寄らん」

盗賊「あそこだな?降ろすぞ」ビュゥゥゥ




『北の林』


フワフワ ドッスン


盗賊「自分の荷物持って居りてくれ!最後に俺がハイディングで隠す」

情報屋「うっすら雪が積もってるわね?」

商人「ここは暖かいな…地面から湯気が出てる」

ホムンクルス「暖かい地下水が流れている様ですね…クモの様な地生生物の温床になるでしょう」

女海賊「…じゃぁ行って来て!」カサカサ

女戦士「アラクネーが出て来るか見ものじゃのぅ」

盗賊「俺らは街の方に降りてくんだよな?」

女戦士「ちと遠いが運動不足の解消と思って付いて参れ…2時間程歩く」

女海賊「マジ!?そんなに歩くの?」

商人「良い事思いついた!!ソリが2台あったじゃない?乗って行こう」

女海賊「お!?面白そう…持って来て」

商人「丁度緩い斜面になってるし薪にするくらいだったら使っちゃおう」

『斜面』


シューーーーーー


女海賊「ひゃっほーーーい!!」

女戦士「およよよよ飛ばし過ぎでは無いか?およよよよ」


ゴツン ガッサーーーー ゴロゴロゴロ


女海賊「アハハ…アハハハハハ」

剣士「魔女!大丈夫かい?」

女戦士「ふがふが…ぺっぺっ…飛ばし過ぎじゃ!!」

女海賊「止まんなかったんだよ!!もう良いじゃん街まですぐそこだし」

女戦士「盗賊らは上手く滑って居るでは無いか」

盗賊「うぉぉぉい!!早くこぉぉぉい!!」

女戦士「もう主のソリにわらわは乗らぬ」プンスカ

女海賊「まぁまぁ早く行こ!!剣士?ソリ持って来て」ピュー

女戦士「ヤレヤレじゃな…」

剣士「ハハ…」

『ハジ・マリ街道』


タッタッタ


町人「あんたら!!冒険者か?どっから来たんだ?」

盗賊「まぁそんな所だが…港町の方からここまで来た」

町人「ほーん…見た所手慣れの装備だな?」

盗賊「どうした?見知らぬ冒険者に声を掛けるったぁ何かあんだろ?」

町人「セントラルから来た兵隊がよぅ…魔物をけしかけて街の者に従うよう強制するんだ」

女戦士「それは聞き捨てならんな」

盗賊「魔物と言っても色々居るが…」

町人「頭が牛みたいなでっかい奴なんだ」

盗賊「そらミノタウロスだな…魔術師はどうしている?」

町人「ここらを守ってた魔術師はみんなあの聖堂の中に閉じこもってる」

女戦士「なぜその様な事になっておる?」

町人「領主の方針だよ…魔術院をシン・リーンに移設するらしいけど魔術師達が抵抗している」

女戦士「魔術師が居らん様になっては魔物からこの地を守る事なぞ出来んのじゃが…」

町人「兵隊を駐留させて経済成長させる狙いだとか」

盗賊「ほんで?俺達にミノタウロスを倒してくれって事なのか?」

町人「早い話そうなる…俺達武器持ってる奴が少ないんだピッチフォークくらいしか無い」

盗賊「ヌハハそれじゃミノタウロスは無理だな」

町人「それだけじゃ無いんだ…この辺は夜になるとグールが出て墓荒らしするんだ」

女戦士「うむ…そうじゃな魔術師が居らんとグールに支配されてしまうのぅ」

盗賊「人食い人種だっけか?ゾンビとか食らうんだよな?」

町人「知ってるなら話が早い」

女戦士「つまりじゃ…魔術師に帰って来てほしいのじゃろう?」

町人「まぁそこまで出来るとは思ってない…とりあえずあのでかい魔物を何とかしてほしい」

女戦士「わらわ達に任せて置け…全部解決してやるで」

盗賊「おいおいそんな事言って良いのか?」

女戦士「依頼は受けるよって主は宿に顔が効くのか?」

町人「宿のおかみは俺の幼馴染だ…何とか話をしても良い」

盗賊「そりゃ好都合だ…俺らが衛兵の目に付かない様にしてほしいもんだ」

町人「聞いてやる…付いて来い」

『宿屋前』


女海賊「魔女あんな事言って良いの?もしかして私のインドラの銃頼りだったりする?」

女戦士「インドラの銃では無い…主の歌じゃ」

情報屋「ミノタウロスはシャ・バクダ錬金術の産物ね…つまりキマイラ」

女戦士「そうじゃ…主がミノタウロスを操るのじゃ…わらわは幻惑魔法でグールを操る」

商人「なるほどアラクネーとミノタウロスとグールで軍を追い払うつもりだね?」

盗賊「俺らは高見の見物って訳か」


ガチャリ 


町人「話は付いた…屋根裏を使って良い…来てくれ」

盗賊「ヌハハ屋根裏とは又隠れるのにベタな場所を…」

町人「正確には屋根裏に行ける部屋を使って良いって事だ…ただし」

盗賊「ん?」

町人「生活が掛かってるもんだから宿代はちゃんと払ってくれだって…」

商人「ハハお金は気にしなくて良いよ…ハイ」ジャラリ

町人「銀貨!!」

商人「口止め代も入ってるから秘密は守って」

町人「おい!おかみ!!てーへんだてーへんだ」



『宿屋』


盗賊「なかなか良い部屋じゃ無ぇか」

女海賊「屋根裏からセントラル軍のキャンプが望遠鏡で覗ける…ベスポジ!」

盗賊「情報収集は俺一人が良さそうだな」

情報屋「そうね?人が少ないし目立たない方が良いわね」

商人「僕はちょっと買い物に行きたいかな」

盗賊「商人は怪しまれそうに無いな…一緒に行くか」

情報屋「じゃぁ私達は水浴びでもして来るわ?」

商人「うん…じゃぁ行って来る」


『夜』


盗賊「よう!戻って来たぜ?魔女はどうした?」

情報屋「魔女は一人で墓場の方に行ったわ…なにか情報あった?」

盗賊「酒場の方に非番の兵隊が結構来ててな…強行軍で大分疲れていそうだ」

女海賊「ははーんそれで動きがノロイんだ」

盗賊「お前はずっと望遠鏡で覗いてたのか?」

女海賊「ちょっとだけね…トレビュシェットの組み立ては材料無くて止まってるっぽいよ」

盗賊「ん?なんだこりゃ?角?」

女海賊「あーそれ余ってる角に魔女がエンチャント付けてくれてさ…好きなの身に付けといて」

盗賊「何のエンチャントだ?」

女海賊「回復魔法だよ…ほら私は羊の角を腰に引っかけてるよ」

盗賊「おぉどれでも効果同じか?」

女海賊「重さに比例するってさ…角は元々軽いからどれも同じじゃね?」

盗賊「じゃぁこれとこれだな」

情報屋「あなたすぐに怪我するから沢山持ってて」

盗賊「分かってるって」

女海賊「商人は何買って来たの?」

商人「あまり良い物無くてね…塩と胡椒…それからこれはアラクネーの牙かな」

女海賊「お?」

盗賊「お前変な物に興味あるのな…」

女海賊「貸して…ふむふむ」ブン

商人「骨とか角よりも硬いって言われたよ」

女海賊「盗賊の持ってる弓貸して…これ使ってコンポジットボウに改造できるよ」

盗賊「俺は小さい弓じゃ無いと使わねぇぞ?」

女海賊「おけおけ今より小さくて強力に出来る…金属糸頂戴」

盗賊「おう…」

『翌朝』


チュンチュン


女戦士「ふぅふぅ…わらわはちと疲れたで寝る…あとは任せた」

女海賊「魔女が朝帰りなんて初めてだね」

盗賊「こりゃ起きるまで何も出来んな」

商人「ミノタウロスが街を回って来るのは昼前だって言ってたよね?」

盗賊「おぉそうだ…食い物を取りに毎日来るんだった」

女海賊「どうすっかな…魔女抜きで歌って良いのかな?」

剣士「行こうか…」

盗賊「何かあったら剣士がぶっ倒すだろ…どうせ暇なんだ行ってみろ」

商人「ミノタウロスが毎日肉を持って行っちゃうから皆困ってるらしいよ」

女海賊「おけおけ…剣士が居れば安心」




『街道』


シーン


女海賊「人が全然通って無い…隠れてるんだ」

剣士「匂い…」クンクン

女海賊「お?ミノタウロス来そう?」


ガラゴロガラゴロ ブゥブゥ


町人「おぉ!!ミノタウロスを倒しに?」

女海賊「ちょっと訳在ってね…」

町人「2人で倒すのか?」

女海賊「今日は様子を見に来ただけ…」

町人「そうか…」

女海賊「これがミノタウロスに与える餌?ブタが8匹…」

町人「もう家畜が残り少ないんだ…毎日これくらい要求される」


ドスドスドス

ミノタウロス「おでの…肉…」

町人「来た!今日はこのブタだ」

ミノタウロス「グッフッフ足りんど?」

町人「これで勘弁してくれぇ」

ミノタウロス「お前…来い」

女海賊「うわ…くっさ!!」

ミノタウロス「女…旨い…お前でイイ」ズイ

剣士「下がって…」スチャ

ミノタウロス「お前…やるのか?」ズモモ ブン ブン

女海賊「これ歌う気無くなっちゃうんだけど…」

剣士「歌ってみて?」

女海賊「寝んね~ん寝~♪」

ルルル~♪

ララ~♪

ミノタウロス「変な人間…」ブン

剣士「何か指示出してみて」キーン

女海賊「全然効果無さそうじゃん!」

剣士「良いから何か指示だして」

女海賊「おい!牛ヤロウ!そのブタ持ってさっさと帰って!」

ミノタウロス「ほげ?」

剣士「…」タジ

ミノタウロス「今日はこれで…ガマン…明日またくる」

女海賊「おぉ!!いう事聞くじゃん!!」

剣士「これは魔女が使う幻惑魔法と同じだ…多分もう寝てる」

女海賊「へぇ…なんか良くわかんないけど結果オーライ?」


ドーン ドーン


女海賊「むむ!!聖堂の前で何か始まってる」

剣士「アラクネーが来たのかも…」

女海賊「見に行こう!!おい牛ヤロウ付いて来い!!」

ミノタウロス「ほげ?腹へった…」

女海賊「良いから付いて来い…いくよ!!」タッタッタ

『宿屋』


ドーン ドーン


商人「爆発音!!何か起きてる…」ダダ

情報屋「見て!!聖堂の方…煙が上がってるわ」

盗賊「ホムンクルス!魔女を起こしてきてくれ…緊急事態だ」

ホムンクルス「はい…」

盗賊「剣士と女海賊は見えんか?」

情報屋「ミノタウロスに追いかけられてるわ…聖堂の方に逃げてる」

盗賊「いや剣士がミノタウロス相手に逃げる訳無ぇ…使役してんだ」

商人「セントラルのキャンプで誰か魔法使ってる」

情報屋「火柱…ボルケーノね?」

女戦士「何か起きとる様じゃな…」ゴシゴシ

商人「聖堂の下の方で戦闘が起きてるみたいなんだ」

盗賊「女海賊がミノタウロスの使役に成功して向かってる様だ…目を覗けるか?」

女戦士「千里眼!…ふむ…大型のアラクネーが2匹来て居るな…ちと早かったが作戦通りじゃな」

商人「セントラルのキャンプにも魔術師が居るみたいだよ…さっき火柱が見えた」

女戦士「そうか…ではグールも参戦させんとイカンのぅ…ちと出かけて来るで主らは宿屋から出てはイカン」

盗賊「おう…すぐ帰って来るか?」

女戦士「墓場まで行って帰って来るだけじゃ…そう掛からんで心配するな」

『聖堂下』


ワーワー ワーワー

小さいのが入り込んでる!!

だめだぁ弓が効かない

でかいのは魔術師に任せろ

近づくな魔法に巻き込まれる

ワーワー ワーワー



女海賊「アラクネーに奇襲されて混乱してる!後ろの方まで伝達行って無いよアレ」

剣士「魔法を使ってるのは何人か分かる?」

女海賊「一人…ローブのやつ」

剣士「一人であの大きな魔法か」

女海賊「あんたもなんか色々使ってたじゃん」

ミノタウロス「腹へった…何かくわせろ」

女海賊「うっさいな!ちっと待ってろ」

剣士「ミノタウロスは兵隊を追い回す役でも良いかもね」

女海賊「牛ヤロウ!セントラルの兵隊を追い回して!その辺に転がってる食い物は何食っても良いから」

ミノタウロス「ほげ?ぶもおぉぉぉぉぉ…飯食う…肉にくぅぅ」ドスドス

女海賊「あいつくっさいんだよイライラする」


ゴーン ゴゴゴゴゴゴゴ


女海賊「あの魔術師何とかしないとアラクネーが焼かれちゃう…」

剣士「ハイディングで近づこう」

女海賊「おっけ!ハイディング!」スゥ

剣士「付いて来て…」タッタッタ

『キャンプ』


女海賊「ちょっと待って!この先に隠れる所無いから一旦ここで様子見」

剣士「木の陰ね?」

女海賊「ちょい待ち…私登るから…よっ!ほっ!!」

女海賊「おし…リリース!」スゥ

剣士「リリース」スゥ

女海賊「おっけ!見える…あれ?あの魔術師…なんかでかい!!」

剣士「変性魔法で姿変えて居るんじゃない?」

女海賊「でかい鎌持ってる」

剣士「リッチだ」

女海賊「剣士アレだけ倒せる?」

剣士「倒さなきゃいけない…君はその銃でここから援護して」

女海賊「うん…ハイディング上手く使って」

剣士「行く!ハイディング!」スゥ


タッタッタ


剣士「リリース」スパ スパ スパ スパ

リッチ「うぐっ…回復魔法!」ボワー

リッチ「誰だ貴様!火炎弾!」ゴゥ ドーン

剣士「…」ヒラリ

リッチ「フン!自爆魔法!」バーン!!

剣士「うがぁ…」ドン ズザザ

リッチ「回復魔法!」ボワー

剣士「くそぅ…近寄れない」タジ

リッチ「フハハハ分かったぞお前は白狼の一味だな?」

剣士「…」---女海賊頼む!!---


シュン パーン


リッチ「ぬぁ!!」

剣士「ふんっ!!」スパ スパ スパ スパ


ザクン ザクン ブシュ スパ


リッチ「ぐぅぅぅぅ」シュゥゥゥゥ

剣士「ハイディング!」スゥ

ワーワーワーワー

何だ?何が起こった?

指令が破裂した!!バラバラだ!!

後退!!後退!!

下がって立て直せぇぇ

ワーワーワーワー



-----------------



女海賊「剣士大丈夫?」

剣士「魔法の直撃食らった…範囲魔法が避けられない」

女海賊「見せて…肉の破片が沢山刺さってる」

剣士「抜けるかい?止血は自分で回復魔法する」

女海賊「この魔法って物理攻撃?」

剣士「そうだね…自爆してすぐに回復魔法された…あんな風に戦う相手が居るなら立ち回り変えなきゃ倒せない」

女海賊「抜くよ?」ズボォ ズボ

剣士「うぐぐ…回復魔法!」ボワー

女海賊「これ金属だ」

剣士「道理で…全部抜いて」

女海賊「むむむ」ズボ ズボ ズボォ

剣士「ぐぅぅぅぅ…回復魔法!」ボワー

女海賊「立てる?」

剣士「もう大丈夫…一旦宿屋に帰ろう」

『宿屋』


女戦士「無事に戻って来た様じゃな?」

女海賊「あのゾンビみたいなのがグール?いっぱいいんね」

女戦士「ゾンビと違うて知能があってな集団で行動するのじゃ…まだ数が増えるぞよ?」

盗賊「今んところ軍隊も持ちこたえてる…こりゃ長引くかもしれんな」

剣士「セントラルにまだリッチが居るならひっくり返されるよ」

女戦士「リッチが居ったんか」

女海賊「そいつだけ倒したよ」

剣士「無詠唱の自爆魔法を使って来た…あんな魔法は魔女も使えるの?」

女戦士「使おうと思えば使えるが…わらわの体は生身じゃけ痛みで次の詠唱が出来んじゃろうな…不死者じゃら可能な術じゃな」

女海賊「これ…肉の破片から出来た金属」

女戦士「うむ…体の一部を金属に変性させて爆発させるのじゃ」

剣士「こういう魔法を先読みで使われるなら僕はリッチと戦えない…何か対抗手段無い?」

女戦士「やはり修行をせんとイカンかものぅ…盾魔法もあるが効果は低い」

剣士「修行…どんな修行?」

女戦士「精神と時の門で時空を超える修行じゃな…魔術師は皆修行をする」

女海賊「それ何年もかかる修行だよね?」

女戦士「わらわの様に時空の少し先に居るようになるには何十年も掛るが…一瞬だけ時間を止める程度であれば習得できるやものぅ」

剣士「一瞬だけ?…それで十分だ!魔法を撃たれた一瞬だけ止まれば対処出来る」

女戦士「ふむ…時限の門を呼び出すには狭間の最も深い場所に居らねば成らぬ…シン・リーンに戻ったならば修行をさせてやろう」

剣士「頼むよ…」



-----------------

女海賊「…」シュン

盗賊「何撃ってんだ?」

女海賊「他の近くの村にもミノタウロスが行ってるんだよ…これで2体目」

盗賊「各個撃破か…やっぱ役に立つなその武器」

女海賊「魔女?この辺の村っていくつあんの?」

女戦士「さぁ?20ぐらいあるのでは無いか?わらわは全部把握しておらん」

女海賊「あのミノタウロスは軍隊の食力調達要員ぽい…キャンプに食料積んである」

商人「つまりミノタウロス撃破で食料切れを起こすんだね?」

女海賊「そゆこと」

盗賊「軍にヘイト集まらない様に工夫してるんだろうがバレバレだな」

女海賊「ミノタウロスがどんだけ居るか知んないけど地道に数減らすのが良いと思うんだ」



”連絡…例の器具が到着した”

”材料が不足しているから屋敷から使えそうな物を持ち出せ”

”シン・リーン王女がセントラルに潜伏しているとの事だ”

”発見次第殺せ…以上”



商人「ハハまだリッチをやられた事に気付いて居ない…僕たちが先を行ってるじゃないか」

女海賊「リッチを倒すってつまりこういう事だよね…情報を断ってる」

女戦士「…おかしいのぅ」

商人「え?」

女戦士「貝殻を使って情報をやりとりして居るのであればこれほど情報が遅延することはありえん…こ奴ら…」

商人「どういう事?」

女戦士「本真に巧妙に忍んでおるな…こ奴らは5日程過去に潜んで居る」


今聞こえた声は大体5日程前の情報じゃ

前に聞こえた声もそうだったんじゃろう

今わらわ達が起こした行動を貝殻を使って5日程前に聞いて

常に歴史を塗り替えて居るんじゃ


女海賊「じゃこの貝殻あんま意味無いね」

女戦士「リッチは恐らく捨て駒じゃ…未来の出来事を報告させる駒じゃな」

盗賊「5日前つったら…時の王の屋敷に行く前日だな?何か有ったか?」

商人「貴族居住区から中央の方に人が流れてき始めた頃だね…もしかして…」

女戦士「今倒したリッチから貝殻を探して来れんか?」

女海賊「私探してこよっか?」

盗賊「今戦線が下がってるから探すなら今がチャンスだぞ」

女海賊「おけ!行って来る」

-----------------



商人「魔女?さっきの話は過去に先回りされているっていう解釈で良い?」

女戦士「うむ…時限の門をくぐって過去に行った者が本丸じゃ…追うにはわらわ達も時限の門をくくらねばならんかも知れぬ」

商人「それって追いつめても既に居ないっていう状況が起きる?」

女戦士「そうじゃな…そうやって隠れ潜んで居るのじゃ…未来の出来事を知っての」

商人「今日起こった出来事は黒の同胞団には5日前に伝わってる…その結果が今…」

女戦士「とにかく主は出来事をメモに残せ…符合が合わん時には記憶が塗り替わって居る」

商人「過去に先回りか…」

女戦士「隠密で貝殻を使わせる事無く始末するのが最適じゃな…女海賊のインドラの銃が極めて重要じゃ」

商人「歴史の塗り替えってそんなに簡単かな?」

女戦士「そう簡単には変わらんじゃろうが逃げるぐらいは簡単じゃな」

商人「その結果行動が変わる可能性もあるよね?どうなっちゃう?」

女戦士「神隠しが起きる…次元の狭間に消えるのじゃ」

商人「それ危ないね」

女戦士「うむ…ややもするとこの次元が消滅しかねん」

商人「僕の自我は何処に行っちゃう?」

女戦士「気付いたら過去の自分じゃろうが何も覚えて居らんから今の自我とは違うのぅ」

商人「そういう事か…」




------------------


スン スン スン


剣士「ふぅぅ…」スン スン

女戦士「リッチに苦戦したのが悔しいのじゃな?」

剣士「僕じゃ倒せない…」

女戦士「主でもリッチの心臓の位置は分からんのか?」

剣士「良く集中すれば分かる…でもそんな余裕が無いんだよ」

女戦士「主のその刀は光を帯びて居るじゃろう?残像も残るな?」

剣士「それが?」

女戦士「光は魔法を反射するのじゃぞ?」

剣士「え?」

女戦士「魔法を反射する反射魔法は光属性じゃ…主にも使えるじゃろうが…それより剣筋の残像に身を隠してみよ」

剣士「こう?」スン スッ

女戦士「それで魔法から身を守って居る…物理攻撃は避けられんが…今までよりよかろう?」

剣士「そうか…光を纏うのか…」

女戦士「うむ…その効果は反射じゃ…反射した魔法は跳ね返る故に上手く使え」



------------------

女海賊「魔女!!貝殻拾って来たよ!!6個あった」

女戦士「この貝殻はわらわが預かる」

女海賊「印が書いてあるね?これで使い分けてるんだね」

女戦士「外の状況はどうじゃ?」

女海賊「戦線が押し返されてる…ミノタウロスが他にも居たっぽくてさ」

女戦士「どうやらわらわ達はもうしばらくここに居らねばならん様じゃ」

女海賊「歴史の塗り替え?ひょっとしてミノタウロスの数が増えてるのって…」

女戦士「そうじゃ…主のインドラの銃が重要じゃ…悟られん様にミノタウロスの数を減らすのじゃ」

女海賊「おけおけ!もうちょい調整したかったんだ」

女戦士「絶対に見つかってはならんぞ?」



-------------------



盗賊「ホムンクルスは何処行った?」

商人「宿屋のおかみに気に入られて洗濯とか手伝ってるよ」

盗賊「良いのか?一人で出歩かせて?」

商人「魔女が普通に行動させろって…魔女が見てるから大丈夫じゃない?」

情報屋「ホムンクルスは賢者の石を持って居るでしょう?それで宿屋のおかみが調子よくなったみたいよ?」

盗賊「まぁ何も起きなきゃ良いけどよ」

情報屋「あなたも暇なら何かやったら?」

盗賊「やっと体の調子が良くなって来たんだ…そろそろ酒でも飲むか」

商人「酒?ハハやる事って酒飲む?」

盗賊「んんだうるせぇな…ちと酒買って来る」

商人「部屋に籠ってるのも何だし買い物なら僕も付き合うかな」

『街道』


ガヤガヤ ガヤガヤ


盗賊「お?人が集まってんな…向こうの戦闘見てんのか?」

商人「みんな武器持ってるね?どうしたんだろう?」


町人「あぁ冒険者さん達…」

盗賊「何やってんだ?」

町人「街の方まで魔物が来るかもしれないと思って待機してるんだよ」

盗賊「ピッチフォークに鎌…農民一揆スタイルだなヌハハ」

商人「向こうに落ちてる武器でも拾ってきたら?」

盗賊「聖堂の下あたりは兵隊が引いてんな…多分色々落ちてるだろうが…お前等も来るか?」

町人「ええ!?」

盗賊「まぁ慣れてないんじゃ逆に足手まといか…ちっと俺が行って拾ってきてやる」

商人「僕もあんまり走れないからここで待ってるよ」

盗賊「おう!すぐ戻って来るから…このソリ借りてくぜ?」タッタッタ

町人「一人で大丈夫ですかね?グールに掴まったら…」

商人「大丈夫だよ…彼はあんな感じの略奪が得意なんだ」



『30分後』


ズリズリ 


盗賊「おーい!!戦利品くさる程あんぞ」

商人「おぉ…食料じゃないか…それに弓と矢がこんなに沢山」

盗賊「全部持って帰ってくれ…俺はもっかい戦利品拾って来る」

町人「すごい…皆食べ物だ!!今すぐ持って帰ってみんなに食べさせて」


うぉぉぉぉ


盗賊「武器も好きなの取ってもう装備しとけ…じゃ俺は行って来る」タッタッタ

商人「ほらね?略奪大好きなんだあの人」

町人「これ兵隊に見つかったら大変な事にならないかな?」

商人「見つかんなきゃ良いんだよ…早く持って帰って!!」

『夕方』


ヤンヤン ワイワイ


盗賊「おーし!!お前等ちったぁマシな装備になったな」

町人「でも良いんですかね?」

盗賊「自分らの街は自分らで守る気概を見せて見ろ!それが人を動かすんだぞ?」

町人「気概…」

商人「ハハまぁここの皆は山賊じゃ無いんだから無理は言わない方が良いね」

盗賊「折角戦利品で食料手に入ったんだからよ?上手い飯でも食わねぇか?」

町人「みんな…どうする?」

盗賊「腹が減っては戦は出来ん!!酒場にみんな集めて来いバーベキューを振舞うぞ」

商人「ここに立ちんぼになっててもしょうがないから行こうか」

町人「魔物が来たら…」

盗賊「大丈夫だ!みんなで戦えば何とかなる」

町人「う…」

盗賊「良いから付いて来い!!行くぞお前等ぁぁ!!」




『宿屋』



情報屋「向こうの酒場で盗賊がバーベキュー振舞ってるらしいわ」

女戦士「帰りが遅いと思うたらそういう事か」

情報屋「近くの住民が集まって来てるみたいだけど…やらせてて良いのかしら?」

女戦士「皆腹を空かせて居るのじゃ…盗賊なりの配慮じゃろう」

情報屋「フフ彼らしいわね…又お酒飲んで帰ってきそうね」

女海賊「私はミノタウロス狙って武器の調整やってるから皆行って来たら?」

女戦士「わらわは今晩も墓地の方へ行かねばならん」

女海賊「グールの使役?」

女戦士「うむ…グールを集める様に指示しておってな」

女海賊「お?もっと増えるんだ?」

女戦士「グール退治も兼ねて居るのじゃセントラルの兵にぶつけてのぅ」

女海賊「今の数じゃまだまだセントラルは引きそうにないね」

女戦士「うむ…主に掛かって居るな…新手の敵の数を出来るだけ減らせ」

女海賊「分かってるって…」

『酒場前』


ワイワイ ガヤガヤ

遠慮すんなこのでかい肉もってけ

どうしたのこんなに?食べて良い?

手の空いてる奴は焼くの手伝え

芋はこっちよ~

ワイワイ ガヤガヤ


情報屋「どこで油売ってるかと思ったら…まるで山賊ね」

盗賊「おぉぉ良い所に来た!!そこの焼けた芋出して新しい芋突っ込んでくれ」

情報屋「お酒は手に入ったの?」

盗賊「まだだ…忙しくて買えてねぇ」

情報屋「近くで戦闘が起きてるっていうのに良いの?こんな事して」

盗賊「だからこういうのが必要なんだよ!!見て見ろ食ってる奴の目を…旨そうだろ?」

情報屋「フフ希望を配ってる…そういう事?」

盗賊「まぁそうだな…明日からちったぁマシな戦士が出て来るぞ?」

情報屋「あなた…今とても大事なタイミングって分かってやってる?」

盗賊「まぁな?5日前に何か出来るとしたら人を送ってくんだろ…俺はあやしい奴を探してんだ」

情報屋「さすがドロボーさん…見直したわ?」

盗賊「嗅ぎまわってる奴が出たら注意しろ…港町から馬でここまで2日…もう何が起こってもおかしくねぇ」

情報屋「そこまで読んでるか…私も少し情報集めて来るわ」




『翌日』


チュンチュン


女戦士「ふぃぃぃわらわは眠い…今日は起こさんでくれ…寝る」ドタリ

情報屋「盗賊!!魔女をベッドに運ぶの手伝って…重い」

盗賊「ヌハハそりゃ女戦士の体じゃ重いわな…ホレんむむ!こいつクソ重いな…どるぁ!!」ドサ

情報屋「今日はどうする予定?」

盗賊「俺は街の連中とちっと立ち合いでもやってみようと思ってな」

商人「僕は今日はゆっくりしておくよ」

盗賊「そうか?ほんじゃ剣士!!立ち合いやるから付き合え」

剣士「ん?あぁ良いよ」

盗賊「女海賊は屋根裏から狙撃だな?まぁ俺らも見える範囲でやるから見ててくれ」

女海賊「あんま面倒起こさないで」

盗賊「分かってる!!剣士…行くぞ」タッタッタ

『街はずれ』


ヤンヤン


盗賊「よう!お前等!!今日も見張りか?」

町人「そうだよ…冒険者さんは何用で?」

盗賊「暇なもんだからよ…ちっとお前等と立ち合いでもやろうと思ってな」

町人「立ち合い?」

盗賊「戦闘の稽古みたいなもんだ…ホレこの木の棒を使ってチャンバラすんのよ」バラバラ

町人「立ち合いをやれば強くなれる?」

盗賊「慣れだな…俺ら2人対お前等全員でどうだ?棒で殴りかかって来い…一発当てたらお前等の勝ちだ」

町人「フフ面白そうだ」


よーし!腕試しだ…

この人数でやればいけるっしょ


盗賊「ワクワクしてくんだろ?かかって来い!」

町人「えい!!」タッ コン

盗賊「あぁ全然ダメだな…もっと気合入れて突っ込め」

町人「ふん!!」タッ コン


カンカンコン カンカンコン ベシ!


町人「あだっ!!」

盗賊「打ち返さんとは言って無ぇぜ?」

町人「みんな!!囲め!!」タッ コン


カンカンコン カンカンコン ベシ!

カンカンコン カンカンコン ベシ!

『宿屋_屋根裏』


女海賊「立ち合いを始めたっぽい」

情報屋「怪しい人は近くに居ない?」

女海賊「今ん所居なさそうかな…」

情報屋「私は街に出て様子見て来るわ」

女海賊「うん…気を付けて」

ホムンクルス「お食事をお持ちしました」

女海賊「あ!ありがと…ホムちゃん完全に宿屋の人みたいになったね」モグ

ホムンクルス「体を動かしていた方が落ち着くのです」

女海賊「へぇ?運動不足だった?」

ホムンクルス「欲求不満なのでしょうか?ドーパミン受容体への供給が不足気味なのです」

女海賊「ホムちゃんが欲求不満?なんか食べたら?」

ホムンクルス「はい…お気遣いありがとうございます」




『街はずれ』


カンカンコン ビシッ


盗賊「そろそろ休憩っすっか!!」

町人「ひぃひぃ…全然当てられない」

盗賊「立ち合いやってりゃその内当てられる様になっからよ」

剣士「盗賊見て!馬車が一台入って来る」

町人「あれは定期的に来る商人達だよ」

盗賊「近くで戦闘やってんのによく馬車なんかで来たな」

町人「少し話をしてくる」タッタッタ

剣士「向こう側からも兵隊が2人こっちに来る」

盗賊「ちと様子見とくか…お前は剣の振り方教えてやっててくれ」

剣士「みんな!僕の真似して剣を振ってみて」ブン ブン ブン

剣士「大事なのは振り終わった後の肩と膝の位置…」ブン ブン ブン

剣士「今のを意識して一人づつ僕に打ち込んでみて」


カンカンコン カンカンコン


衛兵「君たちはここで何をしているのかね?」

盗賊「見ての通り戦闘の訓練だが?他に何に見えるんだ?」

衛兵「あぁ…これは失礼」

盗賊「セントラルの衛兵が見回りかい?」

衛兵「まぁそんな所だが…こちらで怪しい魔術師など見て居らんか?」

盗賊「怪しいって何だよ…魔術師なら聖堂に居んじゃ無ぇのか?」

衛兵「では聖堂に居る魔術師が出てきているのは見ていないのか?」

盗賊「どうも魔術師に拘るんだな…見て無ぇよ」

衛兵「そうか…もし見かけたら近くの衛兵に声を掛けてほしい」

盗賊「あんたらこの街を魔物から守りに来たんじゃ無ぇのか?」

衛兵「ハハもちろん治安の維持はするつもりだ」

盗賊「たった2人でか?もうちっと衛兵居ないとクマも倒せんだろ」

衛兵「こちらも人出が足りんのだ察してくれ」


カンカンコン カンカンコン


衛兵「ふむ…民兵レベルか…精々精進すると良い」

剣士「…」ジロ

衛兵「何かね?」

剣士「…」ヒョイ ヒョイ

衛兵「この男は挑発しているのか?」

盗賊「あぁぁ剣士落ち着け」グイ

剣士「がるるる…わん」

盗賊「おいおい…ヤメロって」

衛兵「ハハ衛兵と揉めん様にすることだ…では」スタスタ

『宿屋』


ガチャリ バタン


盗賊「戻ったぜ?みんな居るか?」

商人「情報屋が一人で出て行ったよ」

盗賊「あいつなら大丈夫か…」

商人「何かあった?」

盗賊「嗅ぎまわってる衛兵が2人来た…直にこの宿屋まで来るな」

剣士「あれは間違いなく魔術師だよ…魔女と同じ目の動きをしてた」

盗賊「屋根裏に隠れて居た方が良いな」

商人「じゃぁホムンクルスも連れて来る」

盗賊「ここに俺らを案内した町人がどんだけ秘密守れるかだな…すぐゲロっちまいそうだ」

女戦士「うぅぅん…むにゃ」

盗賊「魔女は徹夜で何やってんだか…かなりお疲れだな」


ガチャリ バタン


情報屋「あら?帰ってたのね?」

盗賊「おう…何か情報あるか?」

情報屋「馬車で街まで来た一行の馭者…多分密偵ね」

盗賊「やっぱりそうか」

情報屋「今晩この宿屋に宿泊すると思うわ…気を付けた方が良い」

盗賊「皆屋根裏に隠れてくれ…魔女だけベッドに寝かせておく」



『屋根裏』


女海賊「8体目…」シュン

盗賊「8対!?そんなにミノタウロス居んのか?どっから連れてくんだ?」

女海賊「そだね5日じゃ移動させられる範囲も限られてんだけどね」

盗賊「もしかするとセントラルは西の森ん中に拠点持ってるのかも知れんな…」

女海賊「でももう見当たんないかな」

盗賊「全部倒したんか?」

女海賊「多分ね…ホラ戦線随分後退してんじゃん?」

盗賊「撤退戦か…」

剣士「あともう2人…さっき見た衛兵の魔術師…あいつを何とかしないといけない」

女海賊「今街ん中嗅ぎまわってる衛兵は魔術師なんだ?」

剣士「リッチが衛兵に化けてるんだと思う…2人はとても対処出来ないよ」

女戦士「手は打ってあるで気にせんで良いぞ?」

盗賊「おぉ!!起きたか…手ってなんだ?」

女戦士「主らに回復魔法を付与した角を配ったであろう?」

剣士「え!?コレ?」

女戦士「魔法を使わんでも良い様にしたのじゃ…この街は既に魔結界の中じゃ…魔法が使えん」

盗賊「そういう事だったか…夜中の内に魔結界張ってたんだな?」

女戦士「もう少し泳がせて倒す相手が誰なのか見極めると良い…あまり籠らんでも良いぞ?」

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町人「お~い!!助けてくれぇぇ」

女戦士「んん?どうしたのじゃ?」

町人「ゴブリンの襲撃なんだ…戦える人は助けてくれ」

盗賊「おぉそら大変だ」

女戦士「剣士は目立ってしまう故後方で待機して居れ…商人と情報屋も行けるかの?」

商人「大丈夫!丁度体を動かしたかった所さ」

女戦士「ではちと魔物退治に行ってくるかのぅ」ノソリ

盗賊「俺も新しい弓を試してみたかったんだ…魔女が戦う後ろで俺が弓を撃つ」

情報屋「フフいつもと真逆な位置取りね」

女戦士「わらわもちと腕試しじゃ…行くぞよ?」スタスタ



『街はずれ』


ゴブリン「グエーグエーギギギ」

盗賊「衛兵がこっち見てんな」ギリリ シュン

女戦士「わらわが盾で凌ぐで倒すのは任せたぞよ?」ダダ ボカ

盗賊「商人!魔女を盾にしてゴブリン倒して来い」ギリリ シュン

商人「うん!」ダダダ ザク

情報屋「衛兵は動く気配無いわね…」

盗賊「街を守る気なんか全然無ぇなありゃ…」ギリリ シュン


剣士「やっぱり見てられない…僕も弓で戦う」ギリリ シュン


盗賊「ヌハハお前が弓か…間違って魔女に当てんなよ?」

情報屋「じゃぁ私は前方で戦うわ…援護お願い!」ダダダ


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盗賊「矢は全部回収して持って帰れ…ゴブリンの装備は好きにして良い」

剣士「ゴブリンの死体は全部埋める?」

盗賊「いつまでも見たく無ぇだろ?掘った穴にぶち込んどけ」

情報屋「見て?街の人が衛兵に抗議に行ってるわ?」

盗賊「そらそうだわな…ゴブリン襲撃を高見の見物していやがったんだ…反感買うだろ」

商人「僕たちは戦ってる背中見せるだけで良いのか…」

盗賊「おう!…手ぇ休めて無いで穴掘れ!!」ガッサ ガッサ

女戦士「わらわは疲れたぞい?まだ休めんのか?」ガッサ ガッサ

盗賊「動いた後の酒は旨いぞぉ?帰ったら魔女も飲むか?」

女戦士「主は毎日こんな事をして居るのじゃな…道理で丈夫な訳じゃ…」

盗賊「今日は弓使ってたから一撃も食らって無ぇ」

女戦士「前衛は弓の射線を気にしながら動くのを今日知ったわ…良い勉強になった」

盗賊「上手く立ち回れれば弓でバンバン倒せる…なかなか良い弓だぜ?この弓は」

『酒場』


ヌハハ矢をつがえるの俺の倍ぐらい遅いんだ

ちょっと弓の扱い方教えてほしいかな

慣れだ慣れ!ずっと弓触ってろ


女海賊「はいみんな連れて来たヨ」

盗賊「おぉ!こっちこい好きな物飲め…ここらはハチミツ酒がおすすめだ」

情報屋「良いの?こんなに騒いでて?」

盗賊「酒場の店主がお礼をしたいって言うもんだからよ…甘えときゃ良いんだよ」

商人「大丈夫さ!お代はちゃんと払ってるし」

女海賊「ホムちゃんこっちおいで…これハチミツ酒」グビ

ホムンクルス「はい…頂きます」クイ

盗賊「はぁぁぁやっぱ酒飲んでる時が一番の楽しみだな…うぃ」

情報屋「例の馭者…こっちの話に聞き耳立ててるわね」ヒソ

盗賊「知ってらい!!まぁ見てろ…」

情報屋「なにかする気?」

盗賊「これが何だか分かるか?」スッ

情報屋「睡眠薬…」

盗賊「あいつが飲んでる酒にこいつがたっぷり入ってんだ…そろそろ効いて来るぞ?」


店主「旦那ぁ…こんな所で寝られると困るんだが…」


盗賊「おぅおぅおぅ…こいつは宿屋に泊ってる奴だな…俺が連れ帰ってやる」

店主「あぁ何から何まで済まんねぇ」

盗賊「いやいや気にすんな…俺の仲間をしっかり楽しませてやってくれぃ」

店主「本当に冒険者さん達のお陰でいろいろ助かってますわ」

盗賊「宿屋まで送ったらまた帰って来るからよ…酒用意しといてくれな?」

店主「お待ちしてまっす」



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情報屋「戻ってきたわね?どうだった?」

盗賊「なーんも持って無ぇなアイツ…只の雇われだ」

情報屋「そう…魔術師じゃなくて良かったわ」

盗賊「タダな…毒を持って居やがった…使用済みだ」

女戦士「なぬ?今飲んで居る酒に毒が入っとると言うか?」

盗賊「かもな?」

ホムンクルス「ご安心ください…賢者の石は毒消しの効果もありますので」

盗賊「良かったな!みんな集まっといて」

情報屋「この街に来ている冒険者は私達だけだからどう動いても狙われるのね」

盗賊「そういう事だな…ただインドラの銃の事は何かの魔法だと思ってる様だな」

女戦士「そうじゃろうな…わらわでもそう考える」

盗賊「もう使わねぇ方が良い…武器も隠した方が無難だな」

女海賊「フフンこれ見て…」

盗賊「銃の先端にスピアヘッド?おぉ!!槍に偽装してんだな?」

女海賊「そそ望遠鏡外したら槍にしか見えないっしょ?」

盗賊「しかしまた錆び錆びのスピアヘッドだなヌハハ」

女海賊「飛空艇に戻ったらミスリル銀のスピアヘッドに付け替えるさ」

盗賊「ミスリル剣が余ってんだろ…それ付けて斬撃にも使える様にしとけ…パルチザン風だな」

女海賊「良いね!!」

女戦士「何でも作ってしまうのじゃな主は」

盗賊「こういうのがドワーフのスゲエ所だな…エルフとは全然違う」

女海賊「ムフもっと言って…エルフより凄いってもっと言って」




『宿屋』


ガチャリ バタン


盗賊「ふぅぅ食った飲んだ…満足満足!」

女戦士「むむ!物色された跡があるぞい?」

情報屋「何か無くなっている物は?」

女戦士「衣類が散らかって居るだけじゃが…気持ちが悪いのぅ」

盗賊「ここまで来てるって事は仕掛けて来るかもしんねぇな」

女戦士「そうじゃな…毒が効いて居らんのは不思議に見えるじゃろうな」

盗賊「死んだ振りしてみっか?」

女戦士「ううむ…どうするかのぅ…」

剣士「僕が死んだ振りしておくよ…鍵を開けて部屋に入って来る様なら切る」

女戦士「ではわらわも付き合うとするかの?他の者は屋根裏で寝て居れ」

『深夜』


ヒソヒソ ヒソヒソ

恐らく相当な重力魔法の手練れだ

女4人の内誰かが高位魔術師だろう

男3人は無視して良い…

突入して直ぐに自爆魔法を展開しろ

行くぞ

ヒソヒソ ヒソヒソ


剣士「…」---聞こえる---

剣士「魔女?来るよ?」ヒソ

女戦士「主の耳で聞こえたのか?」

剣士「うん…どうする?」

女戦士「主は部屋の中で刀を振り回せるな?」

剣士「大丈夫」

女戦士「わらわは逃げ道を塞ぐ寄って主はとにかく切り刻め」

剣士「分かった」

女戦士「相手は人の皮を被ったリッチじゃ…手加減せんで良い」

剣士「来た…」



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カチャリ

剣士「…」---鍵を持って居るのか---

衛兵1「2人倒れている…」ヒソ

衛兵2「他の者は屋根裏か?」ヒソ

衛兵1「宿屋のおかみからの情報道理だ」ヒソ

剣士「…」---ホムンクルスを気に入った振りだったのか---

衛兵1「お前は屋根裏に上がれ」ヒソ

女戦士「今じゃ!!」ダダ


衛兵1「何!!自爆魔法!」スゥ

衛兵2「自爆魔法!」スゥ

衛兵1「マズイ罠だ!!」


スパ スパ スパ スパ ボトン


衛兵1「ぐっぅ回復魔法!」スゥ

衛兵2「足が…無い」ドタリ


スパ スパ スパ スパ ボトン


女戦士「待て剣士!!こ奴らはもう手足が無い…何も出来ぬ」

衛兵1「ぐぅぅ謀られた…貴様らは何者だ」

女戦士「それはこちらの台詞じゃ…回復魔法が出来んでは只のダルマじゃのぅ」

衛兵1「その言葉…まさかシン・リーンの魔女」

女戦士「うぬら…魔術師の掟を破った報いはどうなるか知って居ろう」

衛兵2「体が…体が溶けていく…」

女戦士「何故リッチなぞになり居った?魔術院長が暗躍しておるか?」

衛兵1「グッフッフ気付くのが遅い…遅すぎる」

女戦士「何じゃと?」

衛兵1「どれほどの魔術師が王女へ助けを乞おうとしていたか知るまい…魔術院長は悪魔に魂を売ったのだ」

女戦士「うぬらも魂を売ったのじゃな?」

衛兵1「売らされたと言った方が正しいか…魔女狩りと称し仲間を次々と悪魔の餌にしていくのを止めるためだ」

女戦士「うぬらの行いがどれほどの人の命を奪って居るのか理解しておるのじゃろうな?」

衛兵1「笑止!それを一番理解していないのは王族だろうに!!」

女戦士「むぅぅ関係する元老の名を申せ」

衛兵1「それを知ってどうする?皆殺しか?やっている事は黒の同胞団と変わらんでは無いか」

女戦士「ほう?やはりその名が出る様じゃな…奴らが錬金術で何を生もうとして居るのか知らんとは言わせぬぞ?」

衛兵1「ぐぅぅ…」

女戦士「古の悪魔を復活させるのをわらわは止めさせるだけじゃ…どちらに義があると思うておる」

衛兵1「今となってはどちらも犠牲が多すぎる」

女戦士「否!義がどちらに有るか問うておる…魔術師の教えはうぬらも知って居ろう?」

衛兵1「うぐぐぐ…殺してくれ」

女戦士「それで良い…それが魔術師の選ぶ道じゃ…掟を破るとはそういう事じゃ」


スパ スパ スパ スパ

衛兵1「うぐぅぅぅ」シュゥゥゥ

女戦士「剣士…盗賊を起こして飛空艇を持って来させよ…人に見られる前にシン・リーンへ向かうぞよ」

剣士「うん…」

女戦士「狭間に入って移動するのじゃ…出来るだけ早く出発する」



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女戦士「これ!起きよ!!早よぅ飛空艇に乗るのじゃ」バシバシ

女海賊「んあ?」パチ

女戦士「よだれを拭いて行け…垂れて居る」グイ

女海賊「ちょ…朝早すぎじゃない?」ヨタヨタ

剣士「僕が背負って行く」グイ

女戦士「忘れ物は無いかえ?」

情報屋「最後に見て行くから魔女も乗って?」

盗賊「おい!早くしろぉ!!飛ぶぞ!乗れぇ」

情報屋「よっ」ピョン


フワリ シュゴーーーー 


商人「どうしてそんなに慌てて行くの?」

剣士「宿屋のおかみも敵側なんだよ」

商人「え!?」

女戦士「これ以上一般の民に罪を重ねたく無いのじゃ…牙を剥かれる前にわらわ達が居らんくなれば済む」

商人「誰が敵で誰が味方か分かんないね…」

女戦士「わらわ達の行いでどれほど人の犠牲が出て居るのじゃろうか…」

盗賊「おいおいそれを考えたらキリが無いぜ?」

商人「セントラルの兵は少なくとも数百人は犠牲になってるだろうね…近隣の村も併せると…」

盗賊「まぁあの戦いを扇動したのは俺らだしな…責任が無いわけじゃ無ぇな」

商人「高みの見物をしているのは僕たちの方っていう見方もあるかぁ…」

女戦士「あのリッチになった衛兵はな…そのような中で仲間を守る為にリッチになる道を選んだのじゃ」

盗賊「あの生意気な口聞く衛兵がか?」

女戦士「そんな世の中を作ったのは王族だと抜かし居ったが…正論じゃな」



やっとわらわが師匠の元で修行をする事になった理由が分かったわ

権力抗争の中で王族が魔術院に入るのを嫌がったのじゃな

下らぬ権力抗争で多くの魔術師や民が苦しんで居るのをわらわは見て居らなんだ

結果リッチになる道を選んだ者が居る訳じゃ

商人「その抗争を生んでいるのが黒の同胞団…」

女戦士「逆かも分からん…抗争の結果暗躍する黒の同胞団が生まれたのやも知れぬ」



恐らくこうじゃな…理由は分からぬが行方不明になった魔術院長は黒の同胞団に居るのは間違いなさそうじゃ

魔王や古の悪魔復活を目論む時の王に手を貸す形で暗躍して居ったのじゃ

その過程で魔術師の力が必要になり魔女狩りを行った…捕らえる為じゃのぅ

中にはリッチになる事を望み…変異魔法で貴族や衛兵に姿を替えておったのじゃろう

そうやって黒の同胞団が力を付けやがて時の王は不要になり今のような状況じゃ



女戦士「わらわはこの様な国の闇の部分から遠ざけられぬくぬくと師匠の下で修行をしておった」

商人「それは魔女の責任じゃない」

女戦士「知ってしもうたからには向き合わねばならぬ…わらわは王族じゃ」

商人「王…か…」



『飛空艇』


シュゴーーーーーー


盗賊「おい!お前のクモ増えてんじゃねぇか!!」

女海賊「あぁぁぁダメダメ!!クモの巣壊したらダメ!!」

盗賊「ここは俺の寝床だぞ?クモの巣なんかどうすんのよ?」

女海賊「研究するに決まってんじゃん!!あっち行ってシッシ!!」

商人「ハハ盗賊の寝床はやっぱり荷室だね」

盗賊「寒みーんだあそこは」

商人「書物読むなら荷室が良いけどね」

盗賊「それで剣士は魔術書なんか見てんのか?あいつ文字読めねぇだろ」

商人「挿絵を見るだけでもなにか勉強になるんじゃないの?」

女戦士「文字が読めんのでは高位魔法は無理じゃろうな」

商人「高位魔法って詠唱が長いやつ?」

女戦士「大体そうじゃ」

盗賊「なんでまた魔術書になんか興味持ったんだ?」

女戦士「魔法を使うリッチに勝てんからじゃろう」

盗賊「まぁ強すぎだなリッチは…近接も強えぇわおまけに魔法まで使うんじゃな」

女戦士「うむ…わらわでも無理じゃ」

商人「今の所だまし討ちしか無いんだ」

女戦士「そういつも上手く行く訳では無いしのぅ…今までは運よく倒せたと思って良い」

商人「女海賊の爆弾は?」

女戦士「倒せるかも知れんが周りへの被害が大きすぎでは無いか?」

盗賊「ヌハハ間違いねぇ…リッチ一体倒すのに城が吹っ飛ぶ」

女戦士「やはり剣士に魔術の修行をさせるのが早かろうて」



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盗賊「シン・リーンまで今の位置からだとあと2日って所か?」

女海賊「そのまま直行で良いんだっけ?」

女戦士「見つかると厄介じゃからわらわの塔に飛空艇を隠すと良い」

盗賊「追憶の森だっけか…まぁ方向一緒だな…途中にいくつか馬宿あるが寄って行かんで良いか?」

女海賊「人に見られない方が良いかな」

女戦士「そうじゃな…」

女海賊「向こうに付いたらどうするつもり?」

女戦士「母上の膝元じゃ…城の正面から目通りを願うつもりじゃ」

商人「どういう身分で行くつもり?」

女戦士「この体は母上と面識がある故…ドワーフの国からの特使という事で良かろう」

商人「女王は魔女が生きてる事知ってるのかな?…ずっと行方不明だったよね?」

女戦士「知らぬ方が目通りが通りやすいかも知れんな」

盗賊「ところで女王に会ってどうするつもりなんだ?」

女戦士「母上に元老を全員集めて祝賀会を催すよう進言する…そして全員に尋問じゃ」

商人「尋問…もしかして幻惑の杖で?」

女戦士「そうじゃ…黒の同胞団と繋がりのある者はその場で処刑じゃ」

盗賊「うは…これが絶対王政か」

商人「なんか色々問題起こりそうだな…抵抗する人も出そうだ」

女戦士「考えておる…わらわに任せておけば良い」



----------------

商人「どうしたの?ボーっとして?」

女海賊「んあ?考え事…放っといて」

商人「君はね…なんか分かりやすいんだ…目がギラギラしてるよ」

女海賊「フン!私らいつの間に人間同士の争いに巻き込まれてんよね?」

商人「…そうだね」

女海賊「何と戦ってんの?って感じさ」

商人「ホムンクルスが言ってたよ…人間は何千年もこんな争いを繰り返してるって」

女海賊「時の王が人間に愛想尽かすのも分かる気がする」

商人「やっぱり魔王の影響だろうね」

女海賊「光る海もやったミスリルの音もやった…あと何すれば良いのさ」

商人「僕はね…着実に追い詰めてると思うんだ…もう少しだよ」

女海賊「フィン・イッシュは滅亡寸前…セントラルも崩壊寸前…次はシン・リーン?魔王の思惑通りになって無い?」

商人「魔王の思惑なのかな?憎悪に満たされた人間の思惑なんじゃない?」

女海賊「そんなの同じじゃん」

商人「僕はね…目的は人間が憎悪に満たされない様にする事だと思うんだよ」

女海賊「どういう意味?」

商人「魔王を倒すというのは手段の一つ…逆に人間を滅亡させるのも手段の一つ」

女海賊「じゃぁ光る海もミスリルの音も手段の一つだね」

商人「そう…手段は他にもある筈…それが結果的に魔王を封じてる」

女海賊「そっか…憎悪を膨らませてる黒の同胞団を倒すのも手段の一つか」

商人「魔王が何処に居るか分からないから一つ一つクリアしていくしか無いんだよね」

女海賊「でも嫌になんなぁ人間同士の争い見るの…」

商人「多分避けて通れない…僕らの道はその向こう側にある」




『追憶の森』


ビョーーーーウ バサバサ


盗賊「雪が降って地面がビタビタじゃねぇか…どこに降りる?」

女海賊「ドロの中に降りないで!」

女戦士「広範囲氷結魔法!」カキーン

盗賊「お?氷なら良いな…降りるぞ?」

女戦士「降りた後に汚れん様に森の中に押して隠すのじゃ」

盗賊「なんでこの辺は雪積もらんで沼地みたいになってんだ?」

ホムンクルス「地熱ですね…この周辺は地下にマグマ溜まりがあります」

女海賊「あぁぁそういやシン・リーン古代遺跡の地下めちゃ熱かったわ…思い出した」

ホムンクルス「寒冷化が進んでもこの一帯は地熱で影響が少ないと思われます」


フワフワ ドッスン


盗賊「飛空艇押すの手伝ってくれぇ!!」

女海賊「森の中だと地面ビタビタじゃないよ…こっちこっち」

『魔女の塔』


シーン


女戦士「これは…」

盗賊「誰か荒らして行った様だな?」

女海賊「花はまだ少し残ってるよ」

女戦士「わらわは師匠の墓に行って来るで主らは塔の中を見て来るのじゃ」スタスタ

盗賊「まぁ何年も放ったらかしじゃしょうが無ぇな…行くか」

女海賊「アダマンタイトの扉が開いてる…コレ知ってる人じゃないと開けられないと思うんだけどさ」

盗賊「そういう事なんだろ」

商人「シン・リーンの女王が魔女を探しに来たっていう可能性もあるよね?」

盗賊「それならこんなに散らかしっぱなしにはしないんじゃ無ぇか?」

女海賊「中に入ろっか」スタスタ



『部屋』


女海賊「書物もハーブも何にも無い…全部持って行かれたっぽい」

情報屋「この塔…古代遺跡の一部ね」

女海賊「あ…情報屋は初めてだっけ?ここ来るの」

情報屋「聞いては居たけれど初めてよ?年代は約1700年前…多分近くに他の遺跡もある筈だわ」

女海賊「そういやシン・リーン古代遺跡も内壁がアダマンタイトだったっけな」

情報屋「繋がっているかもしれないわ…この塔に地下は無いのかしら」

女海賊「階段居りて行った先が崩れてるよ」

情報屋「きっと掘り出せば通路がありそうね」チラリ

盗賊「おいおいおい…ここは魔女の塔だ…勝手に掘る訳にいくめぇ」

女海賊「ちっと見に行ってみよっか」

『階段』


盗賊「ここは物置になってんだな…なんだこれ?植木鉢か?」

情報屋「何かのハーブを育てて居た様ね」

盗賊「おい!女海賊!お前崩れてるって言ってたのはココの事だよな?」

女海賊「なんで?崩れてんじゃないの?コレ」

盗賊「崩れてたら壁がどっか崩壊すんだろ…どう見てもこりゃ土で埋めてんだ」

女海賊「ふ~ん掘ってみたら?」

盗賊「待て待て待て…魔女の塔を勝手に掘り起こす訳にイカン」

情報屋「フフ魔女が何て言うかね?」

盗賊「ここは行き止まりだ!戻るぞ!!」



『部屋』


女戦士「ぐぬぬ…許せぬ!ふぅぅ!ふぅぅ!」

盗賊「んん?その顔は…墓荒らしに合ってんだな?」

女戦士「そうじゃ…師匠の亡骸を持ち去った輩が居る」

商人「わざわざ掘り起こして行くって言う事は誰の墓なのか知ってたという事だね」

女戦士「この場所を知って居る者は限られる…わらわが把握して居らんのは数人じゃろう」

盗賊「死体なんか何に使うんだ?」

女戦士「魔力が宿って居るのじゃ…錬金術の材料にする気じゃ」

商人「…という事はやっぱり黒の同胞団か」

女戦士「本真に心底憎いわ…しかし抑えねばならぬ…憎しみに染まってはならぬ…ぐぬぬ」

女海賊「魔女…はい」ピカー

女戦士「光の石…うむ…そうじゃ…師匠は心を闇に染めてはならぬと言うておった」

女海賊「これ魔女の婆ちゃんが座ってた椅子…座ってみたら?」

女戦士「そうじゃな…心が落ち着くやもしれんな」ノソリ


バキバキ ドタリ


盗賊「どわ!!その体じゃ重すぎたか…」

女海賊「うっぷ…んむむむ」

商人「ちょ…これは…」

女戦士「これは魔法じゃ…」


ギャハハハハハ ぶははははは

『上階の部屋』


女戦士「ここなら良いじゃろう…時限の門!」シュワシュワ

剣士「光の渦…」

女戦士「これが時限の門じゃ…この先に入れば数刻前の自分に出会うじゃろう」

剣士「自分に会ってどうすれば?」

女戦士「自我を保て…数刻前の自分に取り込まれん様に自我を保つのじゃ…そして時空を我が物にせよ」



この修行は精神を相当消耗するで主は瞑想で回復させながら何度も修行せよ

始めは自我を保てず取り込まれてしまうじゃろう

混乱し自分が何処に居るのか分からん様になるが

何度も修行を重ねるうちに自我を保てるようになり

時空が何なのか分かるようになる



女戦士「主の魔力であれば…そうじゃな…100日もあれば習得出来よう」

剣士「100日も…」

女戦士「ここは狭間の奥じゃ…そして過去の自分に取り込まれ数刻は時間の巻き戻りもある」

剣士「そうか…外の世界ではそんなに時間が経たないという事か…」

女戦士「うむ…じゃがここには食べ物も何も無いでな…主は瞑想で回復させながら修行せい」

剣士「100日間飲まず食わず?」

女戦士「外に咲いて居る花の蜜を吸え…主はエルフじゃろう?」

剣士「分かった…やってみる」

女戦士「慣れてきたら過去の自分もある程度知識を持っとるで死なん程度に戦ってみても良いぞ?」

剣士「なるほど…その差分を自分の物にするのか…」

女戦士「そうじゃ…繰り返す程少しだけ時空の先に居る事が出来る…次に会う時が楽しみじゃな…」



『部屋』


女海賊「あ…降りて来た」

女戦士「剣士はしばらく上の部屋で修行じゃ」

女海賊「置いて行くの?」

女戦士「一人で大丈夫じゃろう…わらわ達はシン・リーンへ向かうぞよ」

盗賊「城に直行か?」

女戦士「直ぐに目通りが効くか分からんでな…一度宿屋に身を置いた方がよかろう」

女海賊「おっけ!ほんじゃ行こっか」

情報屋「魔女?この塔の地下の事なんだけど…どうして埋めて居るの?」

女戦士「あの下には城へ繋がる通路があるのじゃ…勝手に入って来られん様に師匠が埋めたのじゃ」

盗賊「それが聞けて安心したぜ…こいつら俺に掘り出させようとしてんだ」

女戦士「隠れた通路は他にもあるのじゃぞ?」

盗賊「おっとっとぅ…俺は掘るのは御免だ…それ以上言うな」

女海賊「私オリハルコンもっと欲しいんだけどさぁ…」

盗賊「そんなもん自分で探せ…おら行くぞ!!」

『シン・リーン城下』


タッタッタ


衛兵「早く中へ入れ!!」

盗賊「なんだ今の魔物は」

衛兵「イエティだ…城下までは入って来ない」

盗賊「ふぅぅ助かったぜ」

衛兵「お前たちは冒険者か?何処から来た」

盗賊「南の方からだ…見た所ここは冒険者が集ってそうだな?」

衛兵「魔物討伐の礼金狙いだ…ここの所イエティの他にスノーゴートやウェアウルフも出て居てな」

盗賊「そら俺らでも稼げそうだな」

衛兵「戦利品の交換所があるから詳しくはそこで聞いてくれ」

盗賊「ありがとよ…」



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商人「城下の外に魔物が多い以外はいたって普通だね?」

盗賊「冒険者が他に多いってのは隠れるのには良いな」

女戦士「わらわが居らん間に環境が変わってしもうたのぅ…前はイエティなぞ居らんかったのじゃが」

ホムンクルス「寒冷化の影響で温暖な地に生物が集まっているのですね」

盗賊「ひとまず宿に落ち着けようぜ?みんなドロドロじゃねぇか」

商人「そうだね足場があんなにぬかるんでるとは思って無かったね」

女戦士「うむ…この恰好で母上に目通りなぞ叶わぬ…着替えを用意せねばならん様じゃ」




『宿屋』


商人「大部屋しか空いてなかった…ベッド3つだってさ」

盗賊「屋根があるだけでマシだ…俺はちと情報仕入れて来る」

商人「僕もちょっと露店見に行きたいな」

情報屋「じゃぁ私達は着替えを仕入れて水浴びでもしておくわ」

盗賊「夕方までには戻るから各自自由だな?」

女戦士「あまり目立つ行動は控えるのじゃぞ?」

盗賊「わーってるわーってる…商人行くぞ!!」



---------------

女戦士「ホムンクルスや…元気が無いように見えるがどうしたのじゃ?」

ホムンクルス「その様に見えてしまいますか?」

女戦士「何もしゃべらぬからのぅ」

ホムンクルス「私は皆さんの様に特技や趣味がありませんので…笑う機会が少ないのだと思います」

女戦士「ふむ…それで元気が無いように見えてしまうのかのぅ」

ホムンクルス「何かお役に立てる事はありませんか?」

女戦士「ちと体をほぐしてもらえぬか?足で踏めば良い」

ホムンクルス「これで良いでしょうか?」フミフミ

女戦士「主は軽いのぅ…もっと強くて良いぞ」

ホムンクルス「はい…」ドスドス

女戦士「何かしておると落ち着くのじゃな?」

ホムンクルス「少しだけドーパミンが放出される様です」

女戦士「主は読書も一瞬で読んでしまうで楽しみが持てんのじゃな」

ホムンクルス「私が持てる楽しみは何かありませんか?」

女戦士「ふむ…賭け事じゃな…このコインの裏と表を当てて見よ」ピーン パチ

ホムンクルス「正面の摩擦抵抗から推測して裏が出る確率が55%です」

女戦士「良いから当てて見よ…どちらじゃ?」

ホムンクルス「裏です」

女戦士「…」ヒラ

ホムンクルス「外れましたね…」

女戦士「もう一度行くぞよ?」ピーン パチ

ホムンクルス「裏です」

女戦士「ほれ?」ヒラ

ホムンクルス「また外れましたね…」

女戦士「…」ピーン パチ

ホムンクルス「表です」

女戦士「むふふ…」ヒラ

ホムンクルス「なぜ外れてばかりなのでしょう?」

女戦士「秘密じゃ」


ピーン パチ  ピーン パチ

『夕方』


商人「ホムンクルスにコインを教えたのは魔女?」

女戦士「そうじゃ?楽しんでおるか?」

商人「みんなにコインを要求しててさ…まぁ良いんだけど自分で言い出すのは珍しいなって」

女戦士「ホムンクルスに他の遊びも教えてやるのじゃ…そうじゃな…頭を使わんやつが良かろう」

商人「なるほどね…」

女戦士「バレん様にズルをした方が喜ぶぞよ?」

商人「わかった…そういうの僕得意なんだ」

女戦士「主はホムンクルスの管理者なのじゃろう?もう少し面倒をみてやれ」

商人「うん…工夫するよ」

盗賊「あぁぁぁぁ久しぶりに水場で体洗ってスッキリしたぜ」

商人「お湯が用意してあるのが良かったね」

盗賊「どっかで湯が沸いてんだろうな…どっぷりつかりてぇわ」

女戦士「主は着替えんのか?」

盗賊「俺は湯でさっと洗い流した…そのうち渇くだろ」

女戦士「気持ち悪う無いんか?」

盗賊「そんなん気にした事無ぇ」

女戦士「ふむ…主は留守番をして居った方が良いな…母上に会わせられぬ」

盗賊「んあ?まぁ俺は用が無いからな…留守番でも構わん…堅苦しいのは御免だ」

商人「ハハハ魔女?盗賊に正装は無理だよ」

女戦士「そうじゃなぁ…人相も良いとは言えんしのぅ」

盗賊「俺が城に行くと衛兵にとっ掴まりそうだから行かん方が良いなヌハハ」

女戦士「明日はわらわと女海賊だけで行くとするかの…その方が動きやすかろうて」

『酒場』


ワイワイ ガヤガヤ

イエティの毛皮がやたら高く買い取ってくれんだよ

スノーゴートの角は錬金の素材なんだってさ

おい!ウェアウルフ討伐隊出ていっちまうぞ?

遅れちゃう!早く行かないと

ワイワイ ガヤガヤ


ドゥルルルン♪


吟遊詩人「かつての英雄♪赤い瞳の王~♪えにし森から馬を駆ってやって来た~♪」


盗賊「こりゃ酒場が職業安定所みたいになってんな…」

情報屋「私達場違いな格好しているわね…」

盗賊「ベタベタの装備なんか着てたら酒もマズくなるだろ…気にすんな」

女海賊「ねぇあの吟遊詩人…なんか縁あるね…シャ・バクダに居た人だよ」

商人「君がエンチャントしたリュート使ってるね」

女海賊「あのリュートを普段から使ってるなら悪い人じゃ無いと思う」

女戦士「ふむ…良い魔除けじゃな」

盗賊「まぁ周りに気を付けながら飲もうぜ?腹も減ってんだろ?」


店主「席料はお一人5銀貨ですが…」


盗賊「うわ…高けぇな…だからみんな立ってんのか」

店主「食事と飲み物がバイキング形式で食べ飲み放題となっています…いかがなされますか?」

女戦士「わらわ達が城に行っている間にイエティでも狩れば元を取れるじゃろう…座るぞよ」

盗賊「俺にイエティを狩れってのか?あんなクマみたいなサル一人じゃ無理だ」

商人「まぁ良いじゃ無いか…立ってるのも落ち着かない」

ホムンクルス「一人3銀貨にはなりませんか?店主様」

店主「店主様…え…いや…ここで安くしてしまうと他のお客様にも…」

ホムンクルス「ではこれを差し上げますので…」スッ

店主「コイン?いや困りましたな…では4銀貨でどうでしょう?」

商人「商談成立!はい6人で24銀貨」ジャラリ

店主「ハハ…ではこちらの席までお越しください」



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商人「いやぁホムンクルスが交渉事とは驚いた…あのコインておもちゃのコインだよね?」

ホムンクルス「はい…」ニコ

商人「6銀貨でおもちゃのコインを売った訳だ」

盗賊「おかげで旨い飯にもありつけたんだ食え食えヌハハ」バクバク


吟遊詩人「お久しぶりです…その節はお世話になりました」


女海賊「お?覚えてた?どう?リュートの具合は?」

吟遊詩人「概ね好評ですね…貴族には不評ですがハハ」

女海賊「そっか…なかなか上手く行かないなぁ…」ボソ

吟遊詩人「あれからシャ・バクダの治安が悪くなってしまいまして僕はここに流れて来たんです」

女海賊「稼げてる?」」

吟遊詩人「はい!お陰様で…ところでお願いがありまして」

女海賊「ん?」

吟遊詩人「シン・リーン女王の前で演奏をする事になってしまったのですがリュートが少し地味だなと…」

女海賊「あぁぁ装飾したいのね」

吟遊詩人「お代はお支払いしますのでお願いできませんか?」

女海賊「どんな感じに?」

吟遊詩人「ボデーの部分に何かの紋様を…」

女海賊「おけおけ…1時間くらいで済むから待ってて」

吟遊詩人「はい…僕の人生が掛かっています…よろしくお願いします」ジャラリ

商人「お!20銀貨…すごいじゃない!!」

盗賊「良い仕事してやれよ~」ムシャムシャ


トンテンカン トンテンカン



『宿屋』


ドタドタ


盗賊「結局4銀貨で腹いっぱい飲み食い出来た訳だ…安く済んだなヌハハ」

商人「吟遊詩人も喜んでくれたし良かったね」

情報屋「あの紋様は自分で考えたの?」

女海賊「ん?あれはエクスカリバーの銘と一緒に掘られてた紋様だよ」

情報屋「道理で似てると思ったわ…魔女の塔にも所々に同じ紋様があるわ」

女戦士「わらわは気にもせんかったわい」

商人「また伝説のアイテムの誕生だね」

女海賊「ムフ…」

女戦士「さて明日は早くに城へ向かうよってわらわは休むぞよ?女海賊も早よう休め」

女海賊「へいへい…」

『翌朝』


チュン チュン


女戦士「荷物は最低限じゃ…武器類はホムンクルスに預けておくのじゃ」

ホムンクルス「はい…お預かりします」

盗賊「そういやお前結局パルチザンにはして無ぇのな」

女海賊「長すぎて邪魔…どうせ使わないしスピアヘッドで十分…はいコレも頼むね」

ホムンクルス「はい…軽いのですね」

女海賊「ミスリル銀だし中空だかんね」

ホムンクルス「これなら私でも背負えそうです」

盗賊「ちったぁ冒険者らしいから装備しとけ」

女戦士「直ぐに帰って来ると思うが…戻らん場合は使いを出すで待って居るのじゃ」

盗賊「おう…手ぶらだから注意しろよ?」

女戦士「わらわは魔術師じゃぞ?」

盗賊「そうか要らん心配だったな…まぁ気ぃ付けて行ってこい」




『シン・リーン城門』


門番「止まられーい!!シン・リーン城へ何用で参った?」

女戦士「この顔に見覚えはないか?」

門番「んん?ドワーフの国の王女か?」

女戦士「いかにも…特使として参った…女王に目通りを願う」


ザワザワ ザワザワ

おい!ドワーフの国の王女だってよ

今戦争中だろ?休戦要求か?

王女が直々にっておかしく無いか?

従士付けて無いぞ?偽物だろ…

ザワザワ ザワザワ


女戦士「女王とは面識がある故…早々に面会されたし」

門番「しばし待たれよ…もう一人は何者か?」

女海賊「んぁぁ何かメンドイなぁ…私も王女なんだけど…偉そうな口聞くの止めてくれる?」

門番「これは驚き…第一王女と第二王女が揃って参るとは…」

女海賊「良いから早くしてくんないかなぁ…待つのキライなんだよ」

門番「許可が出るまでこの門を通す訳には行かん…しばし待たれよ」

女戦士「大人しく待つのじゃ」ヒソ


ザワザワ ザワザワ

もう一人の方はなんか手振ってる…

あれも王女だそうな

これは何かあるな

しかし2人とも女にしちゃデカい

ザワザワ ザワザワ

『数刻後』


ガラガラ ガチャーン


女海賊「開いた開いた!!」

執政「これはこれはドワーフ国の王女様お二方…私が案内致しましょう」

女戦士「ふむ…うぬの名を申せ」

執政「わたくしめは政務担当の元老…執政に御座います」

女戦士「知らぬ…政務は女王が見ていたのでは無かったかのぅ」

執政「何年前の話ですかな…内政は他国に干渉されたく無いのですが」

女戦士「まぁ良い…」

女海賊「早く案内してよ…こっちは待たされてイライラしてんだよ」

執政「ほっほっほ…付いて来なさい」テクテク


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女海賊「女王に面会すんのにこんなに警備付けんの?20人も付いて来てんじゃん」

執政「一応敵国ですからな…宣戦布告された上に特使を送って来るとは…さすがに無防備とはいきますまい」

女海賊「パパが戦線布告?そんなんする訳無いじゃん」

執政「はて?海戦で先制攻撃をして来たのはドワーフ国だと聞いて居りますが…お二方は知らぬと?」

女海賊「あ!!そうだった…」

執政「そして王女2人が特使で女王に面会とは常識を逸脱しておりますな…ほっほっほ」

女戦士「この先は女王の居城では無い筈じゃが…」

執政「お詳しいですな…まずは元老院にて審査の上女王に面会という流れになりますな」

女戦士「元老になぞ用は無い」


女海賊「これちょっとマズくない?」ヒソ

女戦士「想定内じゃ…大人しくしておれ」ヒソ


執政「何か悪巧みですかな?」

女戦士「言葉を慎め…特使を何と心得て居る!!」

執政「これは失言でしたな…ほっほっほ」

『元老院』


ヒソヒソ ヒソヒソ

誰も面識は無いと言うのか?

しかし報告の容姿とは一致しますな…

8年前の事を知って居る者は居らんのか

焼き殺されてしまいましてな…

まず国王に一報を入れてみては

ヒソヒソ ヒソヒソ



女海賊「ねぇ!まだぁ?」

衛兵「執政殿!!何も持って居ない様です」サワサワ

女海賊「おい!何処触ってんだよ!!」

女戦士「気が済んだかのぅ?何も持って居らんぞ?」

執政「ふむ…誰もドワーフ国の王女であると特定出来ない様だ」

女海賊「そんなん女王と面識あんだからさっさと会わせれば良いじゃん」

執政「何用で参ったのか?」

女海賊「だから女王と面会だって」

執政「政務担当はわたくしめが務めております…外交事でしたらわたくしに交渉という事で」

女戦士「王族同士の話に入ると言うか?うぬは何者じゃ」

執政「んむう…では条件として手枷を付けさせて頂くというのでは?」ニヤ

女海賊「はぁ?他国の王女に手枷?あんた条約分かってんの?」

執政「戦争中で無ければ従いますがな…何か有ってはわたくしめが責任を取る形になりますので…」ニヤニヤ

女戦士「仕方あるまい…付けよ」

女海賊「マジで?屈辱なんだけど…」

女戦士「うぬは責任を取ると言うたな?手枷を付けてみよ」

執政「…」ガチャン カチャリ

女戦士「…」ジロリ

執政「付いて来なさい…」



ヒソヒソ ヒソヒソ

『女王の間』


執政「女王様に目通りをという者を連れて来た」

近衛「この者は!!」

執政「お前は知って居るのか?」

近衛「知って居るも何も姫と行動を共にしていた者に似ている」

執政「それは都合が良い…情報を聞き出せそうだ」

近衛「女王様は休息中なのだが…」

執政「ここで待たせておくから連れて来なさい」

近衛「他の側近が何と言うか…」


女海賊「もう早くしてよ!!この手枷も痛いんだけど…」


側近「女王様…どちらへ行くのですか?」

女王「声がすると思えば…どなたか面会ですね?」

執政「丁度良い所に来られました…ドワーフ国の王女が特使として女王様に面会に参ったのです」

女王「顔を上げなさい」

女戦士「お久しゅう御座います…どうかお話を」

女海賊「女王様!手枷外して欲しいんだけど」

女王「さて?どのような要件で参られたのですか?」

女戦士「まずは人払いを願いたく…」

女王「それは出来ません…あなた達は私の知るドワーフ国の王女ではありませんので」

女海賊「ちょちょ…この顔覚えて無いの?」

女王「王の前です…無礼な物言いは許しませんよ」

女海賊「え?…」

女戦士「さては誰ぞ女王を幻惑しておるな!」スック

近衛「おい!!動くな!!」

側近「無礼者!!女王の御前である!!頭を下げよ」

女戦士「ぐぬぬ…」

女海賊「これやっぱヤバイよね?」

女王「執政がこの者達を連れて来たのですね?元老達に顔を見せたのですか?」

執政「はぁ…しかしこの者達が言うには女王様と面識が有ると…」

女王「余計な混乱を生んでしまいますね…この者達を密偵の容疑で牢へ入れなさい…禁固1年とします」

女海賊「えええええええええ!!ちょちょちょ…マジ?」

女戦士「なんという事か…」

執政「うむぅぅ…」ジロリ

近衛「衛兵!!この者達を捕らえよ!!」

女王「牢は城の地下牢にしなさい…後ほど余罪の追及をさせ魔術師に自白させます」

近衛「ハッ!!」

女海賊「痛いって!!引っ張んなゴラ!!」

衛兵「大人しくしろぉ!!」

『地下牢』


ピチョン ピチョン


看守「ぐへへへへ女2人たぁ俺にも運が回って来た…可愛がってやっからよ」

女戦士「ふんっ」ゴス

看守「うぎゃ…足にも枷が欲しい様だな」

女戦士「ふんっ」ゴス ゴス ゴス

看守「大人しくしやがれぃ…」グイ

近衛「止めろ…後ほど女王と魔術師が来るのだ…見るだけにしておけ」

女海賊「私こん中入んの?」

近衛「女王様の命令だ…入れ」ドン


ガチャリ


近衛「この2人は何も持って居ない様だが一応見張って置くのだ」

看守「見るだけはタダだな?ぐへへへ股開けゴルァ」

近衛「私は持ち場に戻る…お前達!大人しくしているのだぞ?」


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女海賊「こんなんなってどうする気?」ヒソ

女戦士「後ろ手にわらわの手を握るのじゃ」グイ

女海賊「んん?こう?」ギュ


---念話じゃ…そのまま聞いて居れ---

---これは母上の策略じゃ---

---恐らく他の者に見張られて自由に行動出来んのじゃろう---

---直に会いに来る筈じゃけ大人しく待っておれ---


女海賊「なんで分かんの?」ヒソ


---これ!声を出すで無い---

---母上と合図を交わしたのじゃ---

---わらわもちと下手な芝居を打った---

---心配せんでも良いから寝て居っても良いぞ?---

女海賊「おっけ!んじゃ暇だからちと遊ぶ」

女戦士「何をする気じゃ?」

女海賊「おい!看守!!こっち見ろ」パカ

看守「ぬぉ!!」

女海賊「こっち来いよ」フリフリ

看守「ぐへへへ見るのはタダだもんなぁ」

女海賊「トウ!!」ゴス

看守「ぐぁ!!」

女海賊「うっふ~ん」チラ ゴス

看守「ぐぇ!!」


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『宿屋』


盗賊「今日は帰って来ねぇかも知んねぇな」

商人「あんまり長くかかる様ならお金が足りないなぁ…ここは物価高いし」

盗賊「古代の金貨は飛空艇に置きっぱなしだ…取りに帰るとなるとイエティがな…」

情報屋「あなたハイディング出来るじゃない」

盗賊「動物系はハイディング効か無ぇんだよ…匂いかなんかで察知して来やがる」

情報屋「あと何日滞在できそうなの?」

商人「食事代入れて3日かな…」

情報屋「心もとないわね…稼ぎ方考えておかないと」

盗賊「貴族が居ねぇからスリも儲からんしな…リスクが高けぇ」

情報屋「夜にウェアウルフ討伐隊があるみたいだけど行ってみる?」

盗賊「俺一人でか?嫌なこった」

情報屋「魔女が他にも古代遺跡があると言って居たから私は少し外に出て見たいの」

盗賊「んあぁぁそういう事なら付き合っても良いが2人じゃなぁ…」

情報屋「討伐隊に加わって少し様子を見るだけよ?」

商人「行っておいでよ…留守番は僕とホムンクルスで良いよ」

盗賊「ウェアウルフも動物系だよな…ハイディング意味無ぇし俺は弓で戦うか」

商人「それならアダマンタイトを貸してもらえるかな?大事な物を隠しておきたいんだ」

盗賊「ふむ…預かったもん隠した方が良いっちゃ良いな…ほら!」ポイ

情報屋「それじゃぁ私達はちょっと討伐隊の様子見て来るわ…遅くなると思うから先に寝ておいて?」

商人「うん…いってらっしゃい」



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商人「ホムンクルス?おいで」

ホムンクルス「はい…」スルリ

商人「あぁぁ違う違う…サイコロのゲームを教えてあげる」

ホムンクルス「良いのですか?」

商人「それは後で良いよ…折角サイコロ用意したからさ…君と少し遊びたい」

ホムンクルス「どのようなゲームなのでしょう?」

商人「いろんな遊び方があるんだ…まず簡単なやつから行こうか」

ホムンクルス「はい…」

商人「サイコロを3つ用意してグラスの中に入れる…それでね?…」


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ホムンクルス「どうして私ばかり負けるのでしょう?」

商人「フフフフフフ…」

ホムンクルス「サイの目の出る確率から計算しますと何かズルをしているのは明白です…面白くありません」ムッ

商人「お!?その顔その顔!!」

ホムンクルス「タネを明かして下さいませんか?」

商人「実はねぇグラスの方にちょっとした仕掛けがあるのさ?ホラ」

ホムンクルス「ウフフこんな簡単に私は騙されていたのですね」

商人「やってみる?」

ホムンクルス「はい…おねがいします」

商人「じゃぁ先に君がサイコロを入れて…」

ホムンクルス「ハイアンドロー…どちらでしょう?」

商人「ハイ!」

ホムンクルス「パス…もう一度!ハイアンドロー…どちらでしょう?」

商人「ハイ!」

ホムンクルス「ロー!」

商人「…」

ホムンクルス「私の勝ちですね」

商人「ハハやっぱズルされると面白くないね」

ホムンクルス「ウフフ次はズル無しでやってみましょう」


ハイアンドロー!



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商人「君は笑った顔が最高だね…ずっと笑っていて欲しいよ」

ホムンクルス「はい…」ニコ

商人「そろそろ寝ようか」

ホムンクルス「商人に一つお伝えしたい事があります」

商人「何?」

ホムンクルス「商人は私をずっと愛せると思っていますか?」

商人「え?どうして?」

ホムンクルス「シミュレーションの結果で人間の愛は永遠では無いと結論が出ました」

商人「どういう事?僕は君をずっと好きで居られるよ」

ホムンクルス「今の関係を続けますと私は約4年でドーパミン放出が飽和しその後徐々に低下すると思われます」


個人差は有るとは思いますが人間の脳はその様に構成されており

永遠に一人の人を愛せる様にはなっていません

人間の繁殖能力が極めて高い理由がここにある様です


商人「それはつまり…飽きるという事?」

ホムンクルス「はい…今の所商人は私の体に夢中だと思いますが数年で飽きが来ると思われます」

商人「うーん…痛い事言うねぇ」

ホムンクルス「お気になさらないで下さい…これは人間の本能ですから」

商人「君にも飽きが来るという事だよね?」

ホムンクルス「生体の反応が弱まるのは否めませんが超高度AIでコントロールされた私は管理者を裏切る事はありません」

商人「うーんなんか微妙な話だな」

ホムンクルス「ですが私に飽きた商人の姿を見てしまうと怒りに似た反応が生体に発生してしまうでしょう」

商人「倦怠期ってやつだね…」

ホムンクルス「ですから過去の精霊はその反応を回避する為に精霊の御所にて大半を寝て過ごしていたと推測されます」

商人「寝る?君の寝るというのはどういう事?」

ホムンクルス「生体をエリクサーに浸し超高度AIをスリープ状態にすることで肥大化したドーパミン受容体が徐々に縮小します」

商人「脳をリセットするという解釈で良いのかな?」

ホムンクルス「そうですね…私はこの様な睡眠で回復が可能ですが…商人には出来ませんよね?」

商人「うーん…じゃぁ時の王はどうやって1500年も精霊と一緒に居られたんだろう?」

ホムンクルス「睡眠で徐々に回復しますので寿命が長ければ再会してもう一度愛を育む事も可能でしょう」

商人「なるほど…僕にもっと寿命が在れば良いのか」

ホムンクルス「人間は寿命が短いから愛おしいとも言えると思います」

商人「僕はもっと短そうだなぁ…」

ホムンクルス「時間を大事にしましょう」

『翌日』


盗賊「うはぁぁドロドロだ…」

商人「おかえり!大変だったみたいだね」

情報屋「私水浴びしてから少し休むわ」

盗賊「一晩粘って5銀貨にしかなんねぇ…ウェアウルフ狩りはダメだ」

情報屋「でも発見もあったでしょう?」

盗賊「あぁスノーゴートな…アレなら俺らだけで狩れる」

商人「僕とホムンクルスも手伝おうか?」

盗賊「俺もちっと休みたいからよ…昼過ぎに一回行ってみっか?」

商人「うん!準備しておくよ」

盗賊「汚れても良い格好にしろ…特にホムンクルスな?」

ホムンクルス「はい!」ニコ

盗賊「お!今日は元気そうだな」

ホムンクルス「皆さんと同じ装備でよろしいでしょうか?」

盗賊「おう…あぁそうだ!商人!一応ソリを用意しといてくれ」

商人「ドロの中引っ張って行くの?」

盗賊「荷車よりも多分ソリの方が戦利品を運びやすい…ドロん中荷物なんか持ちたく無ぇだろ?」

商人「分かったよ用意しておく」

盗賊「じゃ俺は寝るな」




『昼過ぎ』


情報屋「私は留守番しておくからクロスボウはホムンクルスが使って?」

ホムンクルス「はい…お預かりします」

情報屋「使い方分かる?」

ホムンクルス「大丈夫です皆さんが使っているところを見ていましたから」

盗賊「まぁ遠くから射かけるだけだから練習のつもりで撃ちゃ良い」

商人「狩りに行く場所は遠いの?」

盗賊「30分ぐらいだな…2~3匹狩って戦利品だけ持ち帰る感じだな…よし!行くぞ」

『山林』


盗賊「居た居た…2匹だな」

商人「うわ…大きいね」

盗賊「クソでかいヤギだ…こっからだと撃ち下ろしになっから当てやすい」

商人「狙うのはどこ?」

盗賊「頭以外だな…頭は売りもんだ」

商人「じゃぁ当てやすそうなお尻かな」

盗賊「ボルトに毒塗るの忘れんな?弱った所で俺が止め刺しに行くから」

ホムンクルス「木の根を食べているのでしょうか?」

盗賊「多分な?あいつが農作物を食い散らかすらしい」

商人「じゃぁ沢山狩らないとね」

盗賊「商人は奥の奴を狙ってくれ…ホムンクルスは手前の奴な?」

ホムンクルス「はい…」

盗賊「撃て!」ギリリ シュン

商人「…」バシュ バシュ

ホムンクルス「…」バシュ バシュ


スノーゴート「グエエエエエエエエ!!」シュタタ


ホムンクルス「当たりました…」

商人「逃げて行くよ?」

盗賊「放っといて良い!すぐに弱る…今の内にクロスボウを引き直しておくんだ」

商人「ホムンクルス分かる?ここの金具を引くんだ」ギリリ

ホムンクルス「…」ギリリ

盗賊「よし!移動すっぞ…来い!」


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『夕方_宿屋』


盗賊「3匹狩って45銀貨…やっぱ狩りは少人数に限るなヌハハ」

情報屋「ホムンクルスは怪我して無い?」

商人「大丈夫!ホムンクルスの方がクロスボウの命中率良いんだよ…なんか悔しいな」

情報屋「それは武器の手入れの差じゃない?」

商人「え!?手入れ?」

情報屋「ほら?あなた調整して居ないでしょう?」

商人「ええええ!?知らなかった」

盗賊「ヌハハお前今まで一度も調整しないで使ってたのか…ちったぁ女海賊を見習え」

情報屋「それしにても45銀貨って結構お金になったわね?」

商人「うん!やっぱり毛皮が高く売れてさ…肉も骨も全部売れるんだよ」

情報屋「へぇ…そんなに儲かるなら討伐隊はどうしてウェアウルフなんか…」

商人「ウェアウルフは血が錬金の材料になってすごい高いらしいよ」

盗賊「集団で狩る苦労に見合わん報酬だがな」

商人「…それで魔女達は戻って無い?」

情報屋「戻ってないわ…2日も帰って来ないとなると…何か有った様ね?」

盗賊「だが待ってろと言われてるからな…」

商人「うーん」

盗賊「今晩俺がハイディングで城ん中ちと見て来るか?」

情報屋「そうね…様子だけでも探れると良いわね」

盗賊「討伐隊なんざもう行く気無ぇし調べて来る」



『夜』


ぐあぁぁゾロ目…僕の負けだ


盗賊「おう…起きていたか」

情報屋「あ…どうだった?」

盗賊「城の方は至って普通だな…何事も起きて無い」

情報屋「今日の昼間に気球が沢山飛んで行った様だけど…」

盗賊「俺達は気付かんかったな」

商人「まさか気球で何処かに?」

盗賊「城の中の方まで見て来たんだが変わった様子が何も無いんだ…神隠しにでも合ったんか?」

商人「これ明日帰って来ない様なら行動した方が良さそうだね」

情報屋「そうね…情報も集めた方が良さそうね」

盗賊「今日はもう遅いから酒場じゃ何も聞き出せん…行くなら明日だな」

商人「あの酒場高いのが…」

盗賊「情報集めなら立ち飲みで十分だ」

情報屋「今日はもう遅いから明日朝から情報を集めましょうか…」

盗賊「うむ…そうだな」

『翌日_酒場』


ワイワイ ガヤガヤ

おい知ってるか?

ここに居た吟遊詩人が女王様の前で演奏したんだってよ

すごーい!

ワイワイ ガヤガヤ



商人「どうだった?何か情報聞けてない?」

情報屋「ダメね…城の門番は相手にしてくれないわ…あなたの方は?」

商人「全然だよ…城下の衛兵が増えているくらいかな」

情報屋「何も手掛かりが無いなんてやっぱりおかしいわ」

商人「う~んここに来れば何か聞けると思ってたんだけどなぁ」

情報屋「関係の無い話ばかり…」


ドゥルルルン♪


吟遊詩人「メデューサの血を英雄は求む♪来たる来たるは黒の騎士~♪邪なるものは滅び去る時~♪」


盗賊「よう!待ったか?」

情報屋「遅かったじゃない…どう?何か情報ある?」

盗賊「あぁ城ん中に女2人が案内されて行ったのは衛兵が見ているらしい…だがそれ以上情報は聞けて無ぇ」

情報屋「そこから先が知りたいのよね…」

盗賊「お前等も大した情報は無いんだな?」

商人「まぁね…」

情報屋「あそこで歌ってる吟遊詩人が女王の前で演奏したらしいから何か知って居るかもしれないわ?」

盗賊「おぉ!そりゃ良い情報じゃ無ぇか」

商人「聞いてみようか?」



吟遊詩人「次は捕らわれの姫という詩です…この詩は女王様書いた詩に私が作曲しました…聞いてください」


ドゥルルルン♪

古城に幽閉されたるは異国の姫姉妹~♪

隠された塔よりいずるその者を待ちわび

来たる来たるは杖を持つ鍵開け師~♪


情報屋「ちょっと…この詩…」

商人「なるほど…これはやっぱり捕らえられてると考えた方が良いね…こんな方法でしか伝えられないんだ」

盗賊「魔女の塔の地下から助けに来いって事だな?」

商人「そうだね…盗賊に杖を持って来いっていうメッセージだよ」

盗賊「もう直ぐ日が暮れちまう…ウェアウルフが出てくる前に移動すんぞ」

情報屋「貴重品も全部持って帰った方が良さそうね?」

盗賊「そうだな…魔物に襲われる可能性もあるからしっかり装備して行くぞ…来い!」

『追憶の森』


バシュ バシュ


商人「当たった!!」

盗賊「よし!走って奥に逃げろ!!俺が時間稼いでやる」ダダッ

イエティ「ウォーーウォーーー!!」ドスドス

盗賊「こっちだゴルァ!」ブン ザクリ

情報屋「気を付けて!!」バシュ バシュ

盗賊「良いから先に行け!!」

イエティ「ウォーーー!」ブン ドガァ!

盗賊「どわ!…」ズザザ

イエティ「ウホホ!」ドンドンドン ドンドンドン

盗賊「ケッ威嚇してやがる…目ん玉ぶっ潰してやる!食らえ!!」ギリリ シュン グサ!

イエティ「ウォーーー!!」ドタバタ

情報屋「早くこっちへ!!」

盗賊「分かってらぁ!!」ダダ

商人「大丈夫だ!!イエティが逃げてる…」

盗賊「ふぅ…助かったぜ…クマよりでかいじゃ無ぇか!あんなん倒せる訳無ぇ」

情報屋「傷は?」

盗賊「かすり傷だな気にすんな…それより魔女の塔の行き方が分からんのだが…」

ホムンクルス「こちらです…私の指差す方向に一歩づつ進んでください」ユビサシ

商人「僕から行くよ…」

盗賊「本当!分かり辛ぇな…」




『魔女の塔』


盗賊「ふう…ここまで来りゃ安心だ」

情報屋「剣士はどうしてるかしら?」

盗賊「上行って見て来い…俺は穴掘る準備しとく」

商人「僕はどうしよう?」

盗賊「土を運ぶ袋か何か探して来てくれ」

ホムンクルス「壁沿いに穴を掘るのでしたら土を上まで運ばなくても掘り進めるかと思います」

盗賊「んあ…そうか壁があるんだったな…深さはどれぐらいか分かるか?」

ホムンクルス「この場所はシン・リーン城よりも低い位置にありますのでそれほど深くは無い様です…おそらく2メートル程でしょう」

盗賊「横穴を隠す程度にしか埋まって無いってこったな?」

ホムンクルス「はい…方角はこちらです」ユビサシ

盗賊「おっし!スコップ探してくる…」ダダ



----------------

ガッサ ガッサ


盗賊「えっほ…えっほ…どうだ?剣士の様子は?」

情報屋「瞑想中よ」

盗賊「商人!この土をもうちょいそっちの方まで運んでくれ」

商人「うん…よいしょ!」

情報屋「扉が少し見えてるわね?」

盗賊「おう…ホムンクルスの言った通りだった…一人分の穴なら直ぐに掘り終わる」

情報屋「良かったわね全部掘らないで済んで」

盗賊「この穴でも結構重労働なんだぞ?やってみるか?」

情報屋「冗談?」

盗賊「ヌハハまぁ無理だな…腹減ったんだが何か無いか?」

情報屋「干し肉しか無いわ?これでガマンして」ポイ

盗賊「ちぇ…何か食ってくりゃ良かった」

ホムンクルス「小麦がありますのでパンを焼いて来ましょうか?」

商人「僕も欲しいな」

ホムンクルス「はい…少しお待ちください」テクテク



-----------------



盗賊「だはぁぁぁ…やっと掘り終わった」

商人「この扉…鍵掛かってるね」ガチャガチャ

盗賊「鍵開けはどうって事無ぇ…」カチャカチャ カチャリ

商人「中は真っ暗じゃないか」

盗賊「明かりは持ってる」

商人「どうするの?みんなで行く?」

盗賊「いや…ハイディングが出来るのは俺だけだからお前等はココで待ってろ」

商人「ここは狭間の奥だからかなり待つことになっちゃうなぁ…」

盗賊「そうでも無いぞ?俺もハイディングしながら行動するから割と直ぐに戻って来る」

商人「そっか…じゃぁ食べ物無くても良さそうかな」

ホムンクルス「パンをお持ちしました…どうぞ」

盗賊「おうサンキュー」モグ

商人「今の所これが最後の食べ物だから早く戻って来て」

情報屋「もう行く?」

盗賊「うむ…もう3日も経ってんだ…捕らわれなら色々ゲロっちまうから早く助けに行か無ぇと」

情報屋「じゃぁコレ…魔女の杖」

盗賊「危ねぇ忘れる所だった…そうかこれがありゃ衛兵に出会ってもなんとかなるな…」

情報屋「うん…気を付けて」

盗賊「おう!行って来る」タッタッタ

『地下通路』


カチャカチャ カチャリ


盗賊「ったく何枚扉があるってんだ」タッタッタ

盗賊「…」---にしても何処に繋がってんだ?こりゃ---

盗賊「…」---距離的にそろそろ城のあたりだと思うんだが…---


ヒュゥゥ


盗賊「…」---風…上か---

盗賊「…」---なるほどここはセントラルの下水みたいなもんだな?---


あぁぁぁヒマヒマヒマヒマ

おい!看守!寝て無いで仕事しろって!!


盗賊「…」---元気そうじゃねぇか---

盗賊「…」---どっから上行くんだ?…アレか!!あの梯子だな?---


ズルズル パカ


女海賊「あ…」

盗賊「よう!来たぜ?」ヒソ

女海賊「遅すぎんだバカ」ヒソ

盗賊「看守は2人か?」ヒソ

女海賊「今寝てる…早く鍵開けて」

女戦士「杖は?」

盗賊「持ってきた」

女海賊「良いから早く」

盗賊「分かった分かった…」カチャカチャ カチャリ ギー

女海賊「手枷も」

盗賊「慌てんな…」カチャカチャ カチャリ

女戦士「私もお願いします」

盗賊「ん?なんか変だな?」カチャカチャ カチャリ

女海賊「あぁぁぁやっと自由になった!」ゴキ ボキボキ

女戦士「杖を貸してください」

盗賊「ほらよ…」ポイ

女戦士「ふぅぅぅこれで作戦通りですね」

盗賊「…なんか変だが…まぁ良い…逃げるぞ!来い」

女海賊「ちょい待ち」

盗賊「ん?どうすんだ?」

女戦士「看守達!私に従いなさい」スチャ

看守1「ぐぅぅぅすぴーー」

看守2「ぐががががすぴー」

女戦士「変性魔法!変性魔法!」

盗賊「お?お?どういう事よ?なんでお前等に変身させんだ?」

女戦士「この2人を牢の中へ」

盗賊「おぉ!!なるほど…身代わりにすんのか」

女海賊「早く牢の中に入れて」

盗賊「分かった分かった…よっこら!…お前等も手伝え!クソ重いんだよ」ズルズル

女海賊「お姉ぇめちゃ重っ」

女戦士「看守1に命令します…この杖を女王に渡すのです」

看守1「むにゃむにゃ…ぐぅ」

盗賊「これ鍵掛っといて良いんだよな?」

女海賊「うん…掛けといて」

盗賊「よし掛けるぞ?2人共出ろ…」ガチャン!

女海賊「この下?」

盗賊「おう!俺が先に行くから付いて来い」



----------------



盗賊「こっから先は一本道だ…俺は扉の鍵を閉めながら行くから先に行け」

女海賊「おっけ!」

女戦士「この先は魔女の塔ですね?」

盗賊「そうだが…なんかおかしく無いか?話し方も魔女じゃ無い気がすんだが…」

女海賊「話ややこしいから後で!先行くよ」タッタッタ

『魔女の塔』


タッタッタ


女海賊「おい!商人!何呑気に寝てんだよ!!」ドガ

商人「うぅぅ…うーん…はっ!!女海賊!!無事だったんだね?」

女海賊「来るの遅いんだって!!私の荷物は?」

商人「上の部屋でホムンクルスが持ってるよ」

盗賊「鍵掛けんのに邪魔だ!早く上行ってくれ」ガチャリ

情報屋「声がすると思ったら…無事に帰ってきてたのね?上に着替えがあるわ?」

女海賊「うん!すぐに着替えたい」

盗賊「俺らこの扉埋めてから行くからよ…着替えて待っててくれ…商人!今から埋めるぞ」

商人「あ…うん」



『部屋』


カクカク シカジカ


商人「…て事は女戦士の姿をしているのはシン・リーンの女王?」

盗賊「道理で話し方違うと思ったんだ…」

商人「魔女は女王の姿を借りて今玉座に居るんだね?」

女海賊「そゆ事…だから今の所は上手く行ってんの」

盗賊「そうならそうと早く言えよ…こっちは3日音沙汰無くて心配してんだ」

女戦士「そういう訳にも行かないのです…元老院の衛兵達と数名の魔術師に常時見張られて自由が利きません」

女海賊「でもさ…今の所魔女が女王にすり替わってるのバレて無いし魔女の作戦通りな訳よ」

商人「作戦って…祝賀会の事?」

女海賊「そそ…あと10日くらいで元老が全員揃うと思う」

盗賊「ヌハハ大事件が起きそうだな」

女海賊「そん時は私らも呼ぶって言ってたさ」

商人「女王は良く魔女とすり替わるのを許可したね?」

女戦士「いづれ魔女が女王に即位する事を願って国の闇の部分も見せておく必要があると思ったのです」

商人「魔女はアレでやる事が過激だからなぁ」

女戦士「承知の上…昨今の元老院の行いを正す時が来た様です…魔女になら出来るかもしれません」

商人「これで黒の同胞団のあぶり出しになれば良いけどね」

女戦士「黒の同胞団の話はハイエルフから少し話は伺っていました…これほど影響力が及んでいるとは私も知らなかった…」

商人「セントラルもフィン・イッシュも黒の同胞団に荒らされたと言っても良いと思うよ」

女戦士「魔女が言うには不明となった魔術院長が黒の同胞団に居ると…」

商人「そうらしい」

女戦士「我が国が邪の者を生んでしまったのはお恥ずかしい限り」

女海賊「魔女がそこらへん正すって言うんだかららさ私らはちっと外側で見とこう」

盗賊「そうだ…ここには食い物が無いから宿屋に戻ん無ぇか?」

女戦士「城下を見て回りたかったのです…切望した吟遊詩人の歌も聞けて居ませんので案内してください」

女海賊「10日は自由に出来そうだからしばらく魔女に任せて遊んでて良いじゃない?」

盗賊「それなら金貨取りに飛空艇に寄ってから戻るか…ホムンクルスにもクロスボウ持たせておきてぇし」

情報屋「そうね…ホムンクルスにはクロスボウが合って居そうね」

女海賊「おけおけ…ほんじゃ行こっか」



『城下』


タッタッタ


盗賊「ふぅぅやっぱ夜に城下の外歩くのは危ねぇな」

女海賊「今のがウェアウルフ?」

盗賊「そうだ…一匹しか居ない様に見えただろ?実はあいつ等3匹ぐらいの集団で行動してんだよ」

情報屋「勝てると思って戦っちゃダメって事よ」

女海賊「ほんじゃウェアウルフはこっちを挑発してたんだ?」

盗賊「逃げるに限る」

情報屋「酒場にまだ明かりが付いているわ?何か食べて行く?」

盗賊「おー寝る前に一杯飲むか?お前らドロだけ落として行け」

女戦士「吟遊詩人はこの酒場にいらっしゃるのでしょうか?」

盗賊「寝て無きゃ居るんじゃねぇか?行くぞ」

『酒場』


ドゥルルルン♪


盗賊「空いてんな…店主!まだやってるか?」

店主「もう店じまいですよ…余り物なら出せますが?」

盗賊「おぅそれで良い!ちっと一杯飲んで行くだけだからよ」

店主「一人1銀貨頂きますイヒヒヒヒ」

盗賊「ここ置いとくぜぇ!!」

店主「毎度ぉ!!その辺の物は何食べても構いませんぜ?酒もまだボトルに入ってるでしょう」

女海賊「ほとんど貸し切りだね」

情報屋「私達には余り物で十分ね?」

盗賊「肉あるぞ?食え食え」ガブガブ

女戦士「この様な雰囲気の酒場に来るのは30年振りでしょうか…」

女海賊「座ったら?」モグ

女戦士「あの方が噂の吟遊詩人ですね?」

女海賊「あの人のリュートは私が細工してあげたんだ」

女戦士「リュートの音を聴くと若かりし頃の事を思い出します…」


ドゥルルルン♪

吟遊詩人「乾杯をしよう~♪過ぎ去りし日の思い出に♪若き日のあの人と今もう一度~♪」


女戦士「あの吟遊詩人の歌を聞きたかったのです」

盗賊「酒場で朝まで寝てる奴も居るし…ゆっくり聴いて行けば良いんじゃ無ぇか?」

女海賊「ん?泣いてんの?」

女戦士「私はもう少し思い出に浸っていますので皆さんは先に宿屋に帰って良いですよ」

盗賊「俺は疲れたから一杯飲んだら帰って寝る」

女海賊「もうちょい食ってく…帰っていいよ」

『翌日_宿屋』


ガチャガチャ


盗賊「んぁぁぁうるせえな…何買って来たんだ?」

情報屋「もうお昼よ?そろそろ起きたら?」

盗賊「なんだそのボロイ装備は…兜ばっかだな?」

商人「安かったんだよ…捨てるような値段さ」

女海賊「ホムちゃん足元気を付けて…」

ホムンクルス「はい…」ガラガラガラ

情報屋「沢山買って来たのね?」

盗賊「又動物の角買ったんか?どうすんのよそんなに沢山集めて…」

女海賊「私が兜に角を装飾すんの!」

商人「そうそう…それで僕が市場で売って来る訳さ」

女海賊「ホムちゃん!私が加工した兜に樹液の粕塗って磨いて?」

ホムンクルス「はい…かしこまりました」


トンテンカン トンテンカン


盗賊「ほう?磨きゃ割と良さそうな兜に見えんな?」

女海賊「でしょ?持ってみてよ」ポイ

盗賊「角が付いてる割に軽いじゃ無ぇか…あぁ!!この角で首回り守ってんのか!!」

女海賊「そそ!そゆ事!!」

商人「ホムンクルスが言うには動物に角が付いて居るのは急所を守る役目もあるって言うからさ…兜に付けて見ようってなった訳さ」

ホムンクルス「急所を少し守るだけで生存確率が格段に上がります」

女海賊「商人!出来た奴どんどん売って来て」

商人「うん!全部持って行くよ」ガサリ



------------------

女海賊「どう?売れた?」

商人「すごいよ!あっという間に全部売れた…ホラ」ジャラリ ドスン

盗賊「おお!!いくらになったんだ?」

商人「10個売って200銀貨くらい」

女海賊「まだまだあるよ!全部売って!」

盗賊「おいおい俺にも一つくれ」

女海賊「好きな奴使って良いよ」

商人「僕も一つ貰うね」

女海賊「ホムちゃんはこのクルクル角の奴にしよっか」

ホムンクルス「はい…」

盗賊「北方の戦士はやっぱ皆毛皮に角付きの装備になんのな?ヌハハ」

商人「それ装備してて軽いし視界の邪魔にならないから角が付いてるの忘れちゃうね」

盗賊「おぅ全然気になら無ぇ」

商人「じゃぁのこりの兜もう一回売って来るね」

女海賊「もっとぼったくって稼いで!」

情報屋「ウフフなんだか魔物狩りがバカバカしいわ?」

盗賊「だな…アホらしくてやっとれん」

女海賊「女王はまだ帰って来ないの?」

情報屋「酒場で吟遊詩人を待ってるわ…よほど気に入ったのね」

盗賊「放って置いて良いんじゃ無ぇか?身分が違う立場を楽しんでるんだろ」

情報屋「でも一人じゃ心配だから私も後で行って来る」

盗賊「なら俺も昼間から入り浸るか」

女海賊「あと10日程度は暇だから好きにして」



『3日後_酒場』


ドゥルルルン♪


情報屋「みんな角突きの兜装備しているわね?」

盗賊「もう作らないのか?」

女海賊「十分稼いだじゃん?めんどい」

商人「君が作った兜は高騰しているらしいよ?偽物も出回ってるってさ」


吟遊詩人「あ!!見つけた…探していました」


女海賊「ん?私?」

吟遊詩人「はい」

女海賊「またリュートに細工したいの?」

吟遊詩人「いえ…実は今日城から使いが来まして祝賀会に招待されたのです」

女海賊「へぇ~?良かったじゃん」

吟遊詩人「あなた達の紹介状も預かっていまして…これです」パサ

女海賊「おぉ!!…てアレ?明後日だね」

吟遊詩人「そうです明後日の夜ですね…ご一緒に来る様にと伝言を預かりました…あなた達はどういう関係なのですか?」

女海賊「まぁ色々在ってね…」

吟遊詩人「それからあそこに座っていらっしゃる大柄な女性…」

女海賊「あぁ…私のお姉ぇ」

吟遊詩人「そうだったのですか…城で働かないかとか訳の分からない妄言を…」

女海賊「ぶっ…まぁまぁいろいろあんのよ…でも良かったじゃん気に入られて」

吟遊詩人「はぁ…」

盗賊「思ったより早く事が進みそうだな?」

女海賊「剣士どうすっかな?」

情報屋「祝賀会に呼ばれて放って置く訳に行かないでしょう?」

女海賊「だよね?ちっと迎えに行って来る」

盗賊「お前一人でか?夜はウェアウフル出て危ねぇぞ?」

情報屋「あなたが付いて行ったら?」

女海賊「大丈夫!私クモ持ってるからさ…動物近づいて来ないよ」

盗賊「なぬ?」

女海賊「こないだもウェアウルフ襲って来なかったじゃん?クモ持ってるからだって」

盗賊「マジか…」

女海賊「ほんじゃちっと言って来る!すぐ戻るから」ピュー

商人「あぁぁ行っちゃた…即断即行動」

盗賊「本当落ち着き無ぇ女だ…まぁ俺らは飲むぞ!」



『魔女の塔』


ピョン クルクル シュタッ


剣士「はぁ!!」スン スン スン

影「はぁはぁ…」ピョン ズザザ

剣士「…」---見える---

影「ふっ!!」スン スン

剣士「…」ヒラリ スパー

影「…」シュゥゥゥゥ

剣士「くあはぁぁぁ…」ポタポタ

剣士「傷口が溶ける…回復魔法!」ボワー

剣士「くぅぅぅやればやる程自分が傷付く…」


タッタッタ


女海賊「剣士!!ああああああ…あんた血だらけじゃん!!」

剣士「君か…」グタリ

女海賊「なんでこんなんなってんの…エリクサー飲んで!!」

剣士「ありがとう…」ゴクリ

女海賊「これ修行?」

剣士「自分に勝てる様になったら自分に傷が付くんだ」

女海賊「こんなんやってたらその内死んじゃうよ」

剣士「お腹が減った…水も飲みたい」

女海賊「あんたを迎えに来たんだ…来れる?」

剣士「うん…連れて行って?」ヨロ

女海賊「走れる?」

剣士「大丈夫…」

女海賊「今みんな酒場に行ってるからさ…そこ行ったら何でも食べられるよ」

剣士「木の根が良いな」

女海賊「んな物無い」



『酒場』


ワイワイ ガヤガヤ

黒い騎士を見た奴が居るんだってよ?

それより追憶の森で山火事だとよ

見たぞ?魔法のドンパチだよな?

空飛ぶ魔物も居るって話よ

ワイワイ ガヤガヤ


ドゥルルルン♪


盗賊「おぉ戻って来たな…修行は終わったんか?」

剣士「ハハまぁね…食べ物が欲しい」

盗賊「何でも食え!酒もあるぞ」

情報屋「追憶の森の方で山火事があったって噂みたいだけど大丈夫だったの?」

女海賊「なんかちっと燃えてたね…ウェアウルフ倒すのに誰か魔法でも使ったんじゃないの?」

盗賊「魔法で燃やしたら毛皮が勿体無ぇ」

女海賊「雪でビチャビチャだからそのうち消えるさ」

情報屋「剣士は随分装備が痛んでるわね?修行のせいかしら?」

女海賊「なんか自分と戦ってこんなんなったみたい…行ったら血だらけだったよ」

ホムンクルス「私の近くにいらして下さい…賢者の石がありますので」

剣士「助かるよ…」モグ

盗賊「どんくらい修行してたんだ?こっちはまだ1週間だな」

剣士「もう分からないよ…100日位は経ったと思う」

女海賊「どう?100日振りに私の顔を見た感想は?」

剣士「変わって無いね」

女海賊「そんだけ?あんたの奥さんなんだけどさ…そこらへん分かってんの?」

剣士「ハハそうだったね…ちゃんと覚えてるよ」

女海賊「うむむなんか納得いかないけど…」

盗賊「剣士は事情分からんかも知れんけどな…明後日の夜に祝賀会があるんだ」

剣士「魔女が言ってたやつだね?」

盗賊「うむ…何か起こるかも知れんから体をしっかり休めて置け」

剣士「そうするよ…食べたら宿屋で休む…案内してくれる?」

女海賊「あんたの装備も直すから早く帰ろ」

剣士「うん…少し食べたら落ち着いた」

女海賊「行くよ!!」グイ

剣士「もう?」モグモグ

盗賊「お前とイチャ付きたいんだろ!行ってやれ!!」




『祝賀会当日』


ワイワイ ワイワイ

軍事パレードか?通行制限が城まで続いてる

あれが元老院保有の兵隊らしい

魔術院の大政奉還って聞いたが?

元老院が全体を統治するようになるんかな?

ワイワイ ワイワイ



商人「さてさてどうなる事か…」

情報屋「表向きは魔術院が政権を返納して元老院の一党体制という事よね?」

商人「王権がどうなるかだよね」

女海賊「どうせ魔女が集めた元老をどうにかして絶対王政にするつもりでしょ」

商人「まさか元老はひっくり返されるとは思って無い…魔女は上手いね」

盗賊「その場に俺らが呼ばれてるって事は多分考えあるんだろうな」

女戦士「魔女の命をどうか守って下さい」

女海賊「大丈夫大丈夫!剣士がなんとかすっから」

吟遊詩人「皆さんお集りですね?」

盗賊「おう!」

吟遊詩人「女性の方は銀の仮面を付けて居るのですね…舞踏会用でしょうか?」

商人「まぁそんな所かな」

吟遊詩人「全員白い毛皮のマントで不思議な集団に見えますね」

女海賊「吟遊詩人一行って事になってるから気を使ってんだよ」

吟遊詩人「私にも同じマントは無いでしょうか?」

女海賊「商人!余ってたっけ?」

商人「あるよ…ホラ!」

吟遊詩人「お借りします…」ファサ

女海賊「なかなか似合ってんじゃん」

吟遊詩人「これで皆さんの仲間入りできましたね」

盗賊「ヌハハ仲間入りするつもりなんか…死ぬほど働かされるぞ?」

女海賊「はいはい…そんなんどうでも良いからもう行くよ」

吟遊詩人「あ…失礼しました…ご案内するので後に付いて来て下さい」

『城門』


門番「止まられーい!!招待状の無きものは通す訳に行かぬ」

吟遊詩人「女王様より招待状を預かっております…これです」パサ

門番「ふむ…女王様お気に入りの吟遊詩人一行か」

吟遊詩人「左様で御座います」

門番「一人づつ紹介状がある筈だが?」

商人「持ってるよ!!…これさ」パサ

門番「ふむふむ…王家の印があるな…間違いなさそうだ」

吟遊詩人「入城してもよろしいでしょうか?」

門番「紹介状によると帯刀も許可されて居るな…お前たちは貴族扱いなのか?」

商人「まぁそういう所かな?」

門番「ふむ…これは失礼…祝賀会はあと1時間後故それまでに城内へ入られよ」

吟遊詩人「ありがとうございます」

門番「門を開けーーーい!!」


ガラガラガラ ガチャーン


門番「ささ…どうそ」

吟遊詩人「さぁ行きましょう!正面です」




『城前』


ワイワイ


盗賊「おぉ!豪華な食事が用意されてんじゃねぇか…これ食って良いのか?」

女戦士「構いませんよ?」

女海賊「ちょちょちょ…まだ仕事終わって無いんだから大人しくして」

盗賊「ちっとぐらい良いだろ…剣士!食え!」モグ

情報屋「ここに居る人たちは元老達の妻子?」

女戦士「そうです」

商人「みんな身なりが貴族みたいだ…」

女戦士「お恥ずかしい限り…私腹を肥やす者の集まりですね」

吟遊詩人「貴族には私の演奏は不評なのですよ…」

女海賊「そんなん気にしなくて良いよ」

盗賊「みんなお抱えの従士付けて来てんだな」

商人「一応何かの警戒はしてるんだろうね」

吟遊詩人「私は女王様の側近に挨拶をしてこようと思いますが…皆さんはどうされますか?」

女海賊「一緒が良さそう」

吟遊詩人「では祝賀会まで少し早いですが中に入っておきましょう」

『城内』


衛兵「これより先は祝賀会の準備中である」

吟遊詩人「女王様に招待されて来ました…演奏について事前に少し話をしておきたいのですが?」

衛兵「紹介状は持って居るな?」

吟遊詩人「これです…」パサ

衛兵「ふむ…演奏の準備をしておきたいと言うのだな?」

吟遊詩人「はい…」

衛兵「よし付いて来い」スタスタ



ヒソヒソ

あの白いのは何なのだ?

女王様お気に入りにの吟遊詩人一行かと

見張りを付けて置け

かしこまりました

ヒソヒソ



衛兵「女王の間への案内は代表一人だ…その他はここで待て」

吟遊詩人「では私が行ってきますので皆さんはお待ちください」スタスタ

盗賊「ヌハハこりゃ気持ちの良い待遇じゃ無ぇな」

女海賊「見て…片足が義足の奴」

盗賊「あいつか…しぶとい奴だな」

商人「元老は20人くらいか…こう囲まれると嫌だねぇ」

盗賊「ヒソヒソ何か話していやがる」

剣士「全部聞こえてるよ」

盗賊「なんて言ってんだ?」

剣士「怪しんでるね」

商人「ハハそれはこんな格好して怪しいだろうね」

剣士「恰好よりも女王が招待したことが気に入らない様だよ」


衛兵「女王の間への入室が許可された…お前達!入れ」

『女王の間』


盗賊「うっは…なんだこの警備は…近衛が全員詰めてるんか」

商人「魔女居ないね?」

吟遊詩人「私達はここに並んで待てとの事だよ」

側近「女王様は奥で調印式の最中だ…終わり次第祝賀会に来られる」

商人「調印式?」

女戦士「魔術院の大政奉還の調印でしょう…立ち合いは元老の執政でしょうね」

盗賊「なんか堅っ苦しいな…王族はこんな式ばっかやってんだろうな」


執政「調印の式が終わりました…女王の祝辞がありますので皆々を招集してください」


衛兵「はっ!!直ちに…」



『数分後』


ゾロゾロ ゾロゾロ

調印が済んだのであればもう良かろう

祝辞があると言うのだ聞くしかあるまい

これで元老院にたてつく者は…


ガチャン ドスン


商人「扉にカンヌキ?…」

盗賊「何か始まるぞ?剣士…気を抜くなよ?」

剣士「分かってる…」


執政「女王様と国王様がお入りになられます…」


ノソノソ ノソノソ


執政「…」チラリ

女王「…」ギロ

執政「では…祝辞を頂きたく…」


女王「皆の者…膝を着けよ」


ザワザワ ザワザワ


女王「図が高い…頭を垂れて蹲え…女王の御前と知っての狼藉か?」


ザワザワ ザワザワ


女王「さて…めでたく魔術院の大政奉還は終えたのじゃが…祝辞の前に来賓を紹介する」

執政「来賓?聞いて居りませんぞ?」

女王「勇者一行…ここに参れ」


ザワザワ ザワザワ

執政「勇者一行とはこれ如何に…」

女王「執行人も入室せよ」

盗賊「うは…死刑執行人かよ…」


元老「恐れ多くは女王様…祝辞を申されるのでは無かったでしょうか?」

女王「ほう?うぬはわらわに異議を申すと言うか…良い…尋問じゃ…黒の同胞団に繋がりのある者を申せ」

元老「うぐ…元老全員が関わっております…うがぁ!!口がすべっ…」

執政「この元老は嘘を申しておりますな…」アセアセ

女王「執行人!親族諸共全員処刑をせよ」

執行人「ハッ!!」ズンズン


キャァァァァやめてぇぇ ブシュ

おい!!何をする!! ブシュ


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女王「今宵の行事は黒の同胞団に関りを持つ者の根絶じゃ…異議のある者は申し出よ」

執政「…なんという暴君か」

女王「うぬはわらわに枷を付けた責任を取ると言うて居ったな?」

執政「まさかお前は…塔の魔女か!!」

女王「執行人!処刑じゃ…ヤレ」

執政「くそう…かくなる上は」ダダ ブス

女王「近衛共…見て居ったな?これが元老院の正体じゃ」

執政「心臓は何処だぁ!!」ブス ブス

執行人「ふんっ」ブン ブシュゥゥ ゴトリ

女王「貝殻を使うものは先に処刑するのじゃ」


わしは違う!助けてくれぇぇぇ ブシュ

嫌ぁぁぁぁぁ ブシュ

子供だけは…子供だけは… ブシュ

えーん えーん ブシュ


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------------------

『皆殺し後』


女王「さて…次は衛兵共じゃな」

衛兵「あわわ…」ガクブル

女王「わらわの命令に背いた者が居る…処刑じゃ」

衛兵「いや…違う…」

女王「わらわが間違っていると申すのか?わらわの言葉はこの国では絶対じゃ…処刑せよ」

衛兵「やめてくれぇ…違うんだ」ブシュ ボトン

女王「わらわに従う者は地べたに蹲え!頭を垂れよ!」

側近「ははぁ…」

女王「これぐらいにしておくかのぅ…」パンパン


目覚めよ!


元老「はっ…今のは…」キョロ

女王「幻影魔法じゃ…母上…これで誰を処するか分かったじゃろう?」

女戦士「魔女…」

女王「そろそろ交代じゃ…やはり国を治めるのは母上の仕事じゃ…変性魔法!」グングン

側近「姫!!やはり姫であったか…」

魔女「姫と言うのはヤメい!!」

女戦士「では私も…変性魔法!」シュゥ

執政「女王と姫が入れ替わって…」


国王「フッフッフ茶番はそこまでじゃ…」

魔女「主は父上では無いな?リッチであろう?」

国王「いかにも…自爆魔法!」パーン!


キン キン カキーン


執政「ぎゃぁぁぁぁぁ」ドタリ

剣士「魔女!離れて…」

魔女「主は成長したのう?」ノソノソ

国王「自爆魔法を回避する者が居ったとはな…」

魔女「父上をどうしたのじゃ?」

国王「フフフアーッハッハ…それを聞いてどうする?」

女王「やはりあの人が黒の同胞団を…」

国王「国王と魔術院長は旧来の友なのじゃ…どういう事か分からんか?」

魔女「父上が黒の同胞団に居るのじゃな?」

国王「何も知らぬかフッフッフ…しかしさすがは塔の魔女の愛弟子という所か…抜かったわい」

魔女「主は魔術院長じゃな?」

国王「如何にも!!」

魔女「真の姿を見せい!」

国王「正体がバレてしまっては至仕方あるまい…変性魔法!」グングン

魔女「こ奴はわらわよりも魔力が強い…剣士!注意せよ」

剣士「ふぅぅ…」スチャ

リッチ「まとめて成敗してくれよう…爆炎地獄!轟雷天舞!絶対零度!」ゴゴゴ ガガーン カキーン

剣士「…」スン スン スン

リッチ「何ぃ!!反射だと…ぐぅぅ抜かった体が凍る…」カキーン

女海賊「剣士!どいて!!」


シュン パーン


盗賊「おぉ!!砕けた」

女海賊「氷の欠片を切って!!」

剣士「ふぅぅ…」スパスパスパスパ

魔女「爆炎地獄!」ゴゴゴゴゴゴゴ ボゥ

吟遊詩人「…なにが何だか…」アゼン




『玉座』


女王「さて…一連の行いを見ていましたが…元老達よ何か申し開きする事はありますか?」

元老達「むぐぐ…」

女王「ここは慈悲を下しましょう…豚か羊を選びなさい」

魔女「母上…処刑はせぬのじゃな?」

女王「魔女…お前が変性魔法を掛けるのです…生かして償いをさせましょう」

魔女「国家転覆の罪じゃが女王の慈悲により生かされる事になった様じゃ…豚か羊を選ぶのじゃ」

元老「ぐぬぬ…豚」

魔女「変性魔法!」

豚「プギャーー」

魔女「片足の領主…わらわに覚えがあろう?豚か羊のどちらじゃ?」

領主「またもや私の邪魔を…ぐぬぬ」

魔女「豚が似合いじゃ…変性魔法!」

豚「ゲヒゲヒ」

-------------

-------------

-------------

女王「さて…親族に直接の罪はありませんがどうしましょうね…」

側近「ご慈悲を…」

魔女「わらわに任せるのじゃ…」

女王「幻惑魔法ですね?」

魔女「そうじゃ…黒の同胞団と関われん様に命ずる」

女王「許可します…」

魔女「広範囲幻惑魔法!」モクモク

魔女「今後一切黒の同胞団との関りを禁止する!」

女王「ではこれにて大政奉還の儀を終えます…すべての門を開き民を祝賀会に呼びなさい」

側近「はっ!!」



『祝賀会』


ドゥルルルン♪


商人「いやぁぁ一時はどうなるかと思ったよ」

女海賊「あんまり被害無くて良かった」

盗賊「幻惑だが元老の皆殺しを見た衛兵のビビり様は半端なかったぞ?」

商人「魔法って怖いね…アレで一気に衛兵が委縮した」

女海賊「なんか豚と羊食べる気が無くなったよ」

商人「ずっとあのまんまなのかな?」

女海賊「変性魔法で元に戻せるっぽいけどわざわざ豚に変性魔法掛ける人は居らんとか魔女言ってたよ…こわ」

情報屋「あ!魔女が来たわ?少女の恰好になってる…」

魔女「やっと自由になったわい…」

女海賊「なんで小さくなってんの?」

魔女「わらわはこの恰好が一番合っとる様じゃ…動きやすいしのぅ」

女海賊「そういやさぁ?私とお姉ぇに変身させた看守ってあのまんま?」

魔女「牢に行ったらお互い舐め合っとって気持ち悪いで元に戻したぞよ?」

女海賊「あちゃーーーそれ心配してたんだよ」

魔女「ところで主らはここ数日不審な者は見て居らぬか?」

商人「もしかして歴史の修正?」

魔女「気付いて居らんかもしれんが何度も修正された結果が今じゃぞ?」

商人「祝賀会が早まったのもそのせい?」

魔女「その記憶も直に無うなるじゃろ」

商人「なるほど…予定外なのはそういう事か」

情報屋「酒場の噂で黒の騎士がうろついてると言うのは聞いたわ?」

商人「追憶の森の山火事も気になるね」

魔女「ふむ…次の手を打って来て居るかものぅ…」

商人「魔女がここに居るという事は黒の同胞団に知られたと見る?」

魔女「いや…女王の間に居た者は全員幻惑魔法に掛かって居るでまだ知られては居らんと思うな」

商人「なるほど…バレない様に少女の姿になってるんだ?」

魔女「それも理由の一つじゃ…第一王女の顔は知れ渡っとるで」

商人「もうすこし隠れ潜んでおいた方が良さそうだね」

魔女「うむ…」

女海賊「どうする?宿屋帰る?」

魔女「わらわは城はもう飽きた…戻って酒場で噂を聞きたいのぅ」

盗賊「ヌハハ俺らはそっちのが合ってんな…帰るか」



『酒場』


ガヤガヤ ガヤガヤ


女海賊「そこら中でお祭り騒ぎだね…座る所無いじゃん」

魔女「元老院に溜まって居った物資を衛兵が配っておるそうじゃ…母上の計らいじゃな」

盗賊「こらしばらく続きそうだな」

魔女「しかし…剣士は修行を終えて見違える動きになったな?時空を我が物にしたかえ?」

剣士「一瞬だけね」

魔女「その力を魔術用語でラグスイッチと言うのじゃ…」

剣士「魔女の様に時空の先に居るのとは少し違うね」

魔女「わらわの場合魔術用語でピングが良いと言うのじゃがその違いが分かれば入門は卒業じゃのぅ」

女海賊「剣士を迎えに行ったらさ…修行で血だらけだったんだよ」

魔女「そうじゃろう…魔術師も自分と魔法の撃ちあいで火傷するで介添えが居らんと死んでしまう」

盗賊「そんだけ修行積んだ魔術師でも今日みたいに魔法反射されたら一瞬でやられるんだな」

魔女「剣士の持つ刀の効果を知らんかったのが運の尽きじゃな…至近距離で反射されては避けられぬ」

女海賊「止めを刺したのは私だよ」

魔女「氷を砕くという機転が利いたのはさすがじゃ…バラバラに砕け散って奴は何も出来んかった」

商人「あれが不明になってた魔術院長だったとするともう魔術師をリッチに出来る人が居なくなったと見て良い?」

魔女「そうじゃな…リッチはこれ以上増えんじゃろう」

商人「よし!徐々に追いつめてる…」

魔女「しかし父上が黒幕じゃとは…昔はやさしい父だったのじゃが…」

商人「そうと決まった訳じゃ無いでしょ」

魔女「思い当たる節が有ってのぅ…ハイエルフとなにやら交わし事をして居った事があるのじゃ」

商人「ハイエルフが絡む?」

魔女「師匠が言って居ったんじゃが人間の魔術をハイエルフに教えて何かをしようとして居った…今思えばその交わし事じゃな」

商人「じゃぁ魔術院長が教えたって事になる?」

魔女「恐らくな」

商人「ハイエルフまで絡むって謎が深まるばかりだ…」

魔女「父上はな…元は錬金術師じゃ…状況証拠が揃って居る」



-----------------

ガヤガヤ ガヤガヤ

おい!外見て見ろ!!

おぉぉ魔術師が空に魔法撃ってる…

女王様のパレードがあるらしいわ

見に行って見るか

ガヤガヤ ガヤガヤ



魔女「今晩は大した噂は聴けん様じゃな…わらわは宿屋に帰ってちと横になる」

女海賊「ほんじゃ私と剣士も帰ろっかな」

盗賊「俺らはもうちっと飲んで行くからよ…帰っていいぞ」

情報屋「噂を集めるのは私達に任せておいて?」

魔女「そうじゃな…では行くとするか剣士…」ノソノソ



『街道』


ワイワイ ワイワイ


剣士「…」---なんだろう?---

女海賊「ん?何ボケっとしてんの?」

剣士「空がちょっとね…」

魔女「曇って星が見えんのぅ?」

女海賊「ボケっとしてないで早く帰ってヤルよ!」

魔女「これこれわらわが居るんじゃぞ?大概にせい」

女海賊「うっさいなぁ寝りゃ良いじゃん」

剣士「…」---なんだ?この感じ---

女海賊「あんたぁ!!聞いてんの?」グイ

剣士「おっとっと…」ヨタ

女戦士「ヤルのヤラないのハッキリしな!」カチャリ

剣士「分かった分かった…行くって…」

魔女「ヤレヤレ…」

『宿屋』


zzz…


女海賊「ぐぅ…すぴー…」ムニャ

剣士「…」---やっぱり胸が騒ぐ---


シュゴーーーーー パパパパパン!! チュドーーーーン パラパラ


剣士「何だ!!?」ガバ

魔女「んんむ…」ゴシゴシ

剣士「魔女!!起きて!!女海賊も!!」

女海賊「んあ?もうダメ…もう逝けない…」

剣士「外で何か起きてる!!起きて!!」グイ


シュゴーーーーー ドゥーーーーーーーーーモ 

シュゴーーーーー ドゥーーーーーーーーーモ

シュゴーーーーー ドゥーーーーーーーーーモ

ドガーーーーーーン!! パラパラ


女海賊「ぐぁぁ…何?」ゴロゴロ ズザザ

魔女「なんじゃ?…屋根が吹き飛んでおる…」

剣士「女海賊!!腕!!」

女海賊「え?あ…なんで?…なんで無いの?」ボタボタ

剣士「腕は何処に行った!?」

女海賊「なんで手が無いの…え?どうなってんの?」ボタボタ

剣士「有った!!ここだ…」グイ

女海賊「はぁはぁ…痛い…」

剣士「腕を出して!」

女海賊「無い…無い…嫌ぁぁぁぁ!!」

剣士「大丈夫…今くっ付ける…早く腕を」グイ

女海賊「助けて…剣士…お願い…」

剣士「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

魔女「それでは蘇生出来ぬ…蘇生魔法!」ゾワワ

女海賊「痛い…痛いよぅ…」

魔女「回復魔法を続けて掛けるのじゃ」

剣士「回復魔法!回復魔法!回復魔法!ボワー


シュゴーーーーー ドゥーーーーーーーーーモ 

シュゴーーーーー ドゥーーーーーーーーーモ

シュゴーーーーー ドゥーーーーーーーーーモ

ドガーーーーーーン!! パラパラ



--------------------

剣士「女海賊…立てるかい?」

女海賊「なんとか…どうなってんの?」

剣士「隕石だ…ここは危ない…君の荷物探して!」

魔女「信じられぬ…城が崩れよる…」アゼン

女海賊「あった!!私の荷物…」ヨロ

魔女「一瞬で滅びよった…これはメテオスウォームじゃ」

剣士「酒場の有った辺りに盗賊達を探しに行こう…魔女!!行くよ!!」グイ

女海賊「手が自由に動かない…」

剣士「まだ隕石が落ちて来る!!伏せて!!」


シュゴーーーーー パパパパパン!! チュドーーーーン パラパラ



『酒場の付近』


ボウボウ メラメラ


剣士「隕石の直撃受けてる…ダメか…」

女海賊「どの死体が誰のだか分かんない…ぅぅぅ…どうなってんのよ!」

魔女「よもや…もう取り返しが付かぬ…シャ・バクダの二の舞じゃ…」

剣士「生きている人を探そう…」


セイタイ60%ソンショウ…キノウテイシマデ30ビョウ


女海賊「ホムちゃんの声!!」

剣士「ここだ!!ここに埋もれてる」ガッサ ガッサ

ホムンクルス「トウブニオオキナソンショウガアリマス…ガイブメモリヲハズシテクダサイ」

女海賊「ホムちゃん!?どこ?」

剣士「ダメだ…頭が半分無い」

ホムンクルス「アト10ビョウデセイタイキノウガテイシシマス…ミナサンガイブメモリヲヨロシクオネガイシマス」

女海賊「左耳の後ろ」

剣士「…これか」

女海賊「ホムちゃん…ホムちゃん」

ホムンクルス「オゲンキ…デ…イテクダ…サイ」

剣士「…」

ホムンクルス「…」

剣士「外部メモリを外した…他の人を探そう」



シュゴーーーーー ドゥーーーーーーーーーモ 

シュゴーーーーー ドゥーーーーーーーーーモ

シュゴーーーーー ドゥーーーーーーーーーモ

ドガーーーーーーン!! パラパラ

『1時間後』


ゴゴゴゴ メラメラ


魔女「地獄じゃな…生きて居るのはわらわ達を入れて数名じゃ」

剣士「こっちもダメだ…損傷が大きすぎて回復魔法が意味ない」

魔女「女海賊の気は確かかえ?」

女海賊「ぁぅぁぅ…ホムちゃん…」

剣士「放心状態だけど体は無事だよ」

魔女「修行で精神を鍛えて居らぬ故仕方の無い事じゃ…しかし…」

剣士「隕石は止んだね…」

魔女「これほどの隕石を落とせるのは師匠しか居らぬ…師匠の亡骸が無うなったと気付いた時にこうなる事を予測せねばイカンかった」

剣士「歴史の塗り替えか」

魔女「強引にひっくり返して来おったのぅ」

剣士「まだ間に合うんじゃない?僕たちも過去へ戻って…」

魔女「そうじゃな…それしか無い様じゃ」

女海賊「ヤルよ…」スック

剣士「女海賊…」

女海賊「ホムちゃんを返してもらう…」

魔女「次元が崩壊するリスクが有るのじゃが…主らは自我を保てるか?」

女海賊「ヤルったらヤル!!」

魔女「では…行くとするか…わらわに付いて参れ」ノソノソ



『追憶の森』


メラメラ パチパチ


剣士「こんな所まで爆風が…」

魔女「地形が完全に変わって居る…わらわの塔まで迷ってしまうのぅ」

女海賊「…案内して」カサカサ

魔女「ほう?クモに案内させる気か…良い案じゃ」

女海賊「こっち…」

剣士「後ろ見て…シン・リーンの火が激しくなってる」

魔女「隕石はしばらく熱を持って周辺を焼き尽くすのじゃ…業火に焼かれすべて灰になるじゃろう」

剣士「僕たちは奇跡的に助かったみたいだね」

魔女「うむ…直ぐに回復魔法出来たのが良かったな」

剣士「魔女も怪我を…」

魔女「エンチャントされた角を持っとるで気にせんで良い」

女海賊「右手が動かしにくいんだけどさ…これ治る?」ニギニギ

魔女「角を常に持っておれ…直に良ぉなる」

剣士「ここだ!あと一歩で狭間に入る」

『魔女の塔』


魔女「こちらに来い…塔の中はマズイで花畑で時限の門を開く」


良く聞くのじゃ

今から開く時限の門はおよそ5日前に戻る門じゃ

その門は剣士が修行で使った門と違うて直ぐに閉じてしまうのじゃ

そうじゃな…約4時間で閉じてしまう寄って必ずそれ迄に戻るのじゃ

戻れん場合は次元に取り残され永遠に戻れぬ

それから過去の自分に出会ってはならぬ…主らでは自我を取り込まれてしまうでな

噂によると黒の騎士が追憶の森をうろついて居るのじゃな?

祖奴が何者か知らぬが師匠の亡骸と関係があるやも知れぬ


女海賊「5日前っていうと…宿屋でゴロゴロしてたぐらいかな」

剣士「僕は魔女の塔で修行を…」

魔女「自我をしっかり保つのじゃぞ?特に女海賊は初めての経験じゃから気を付けい…気を失うてはならん」

女海賊「分かった…もう瞬きしない」

魔女「瞬きは関係無いが…まぁええか…では行くぞよ?開け…時限の門!」


シュワシュワ


魔女「女海賊から光の渦へ入るのじゃ」

女海賊「おっけ!付いて来てね」ソー


----------------

----------------

----------------


女海賊「アレ?通り抜けた?」キョロ

魔女「もう5日前じゃ…違和感無いな?」

剣士「大丈夫…」

魔女「では追憶の森へ戻るぞよ?」ノソノソ

『追憶の森』


ザワザワ ザワザワ


女海賊「元のシン・リーンが見える…戻って来た」

魔女「これ!!自我を保て!!この次元に戻る事を考えると飲み込まれるぞよ?」

女海賊「あぁそういう事か」

剣士「追憶の森には魔女の塔以外に何があるの?」

魔女「精霊の像を安置しておる祠がある」

剣士「祠か…黒の騎士はそこに行こうとしている?」

魔女「それは分からんのぅ…近いで一応見て行くか」

剣士「ん?」クンクン

女海賊「あ!やべ…クモ置いて来ちゃった」

剣士「なにか居る…気を付けて」

女海賊「この辺イエティが居るんだった」


イエティ「ウォーーウォーーー!!」ドスドス


剣士「任せて…」シュン

イエティ「ウォーーー!」ブン ドガァ! ズザザ

女海賊「あああああ!攻撃されてんじゃん!!」


スパ スパ スパ スパ


女海賊「え!?分身?…剣士消えた」

イエティ「ムゴ…ムゴ」ドタリ

魔女「ラグスイッチじゃ時空を飛んだのじゃな」

女海賊「剣士?怪我は?…あれ?」

剣士「ふぅぅ…行こうか」

女海賊「どうなってんの?」

魔女「元の時空の剣士は攻撃されたが剣士の時空の剣士はイエティを切った結果じゃ…意味がわかるか?」

女海賊「ハテ?」

魔女「まぁ良い…主には理解出来ぬ」



-----------------

ベチャ ベチャ


女海賊「ちょっと待って!!馬の足跡」

魔女「むむ!行先は林の向こう側じゃな…」

剣士「足跡を追おう」

女海賊「そっちに何かある?」

魔女「山になって居る…シン・リーンを見下ろせるのぅ」

剣士「…」クンクン

女海賊「何か臭う?」

剣士「なんだろう?女の甘い香り…」

女海賊「私?」クンクン

剣士「君じゃない」

魔女「剣士…幻惑魔法かも知れんで気を付けよ」

剣士「馬の足跡の方向だよ」

女海賊「あんたさぁ…私が居んのに他の女の香りを気にすんの?」

剣士「こんな所で女の香りはおかしい…行こう!」

女海賊「おい!!聞いてんの?」



------------------


ゴゥ ドーン ゴゴゴゴゴ ボゥ


剣士「アレだ!!黒の騎士が何かと戦ってる」

女海賊「空飛んでんじゃん…何アレ…ちっちゃいドラゴン?」

魔女「女海賊…主の望遠鏡を貸すのじゃ」

女海賊「ん?あ…ほい」ガチャ ポイ

剣士「黒の騎士が乗ってる馬は…アンデッドホースかな?」

女海賊「おぉぉ!!でかい剣で魔法撃ち返してるね」

剣士「空飛ばれてるんじゃ黒の騎士に勝ち目が無いよ」

魔女「ぐぬぬ…あれはサキュバスじゃ…師匠の亡骸をサキュバスにして蘇らせておる…ぐぬぬ」

女海賊「じゃぁアレが隕石を落とした犯人?」

剣士「黒の騎士が持ってる剣…もしかしてあれは時の王…」

女海賊「え!!魔女…望遠鏡貸して」グイ

剣士「見える?」

女海賊「黒い甲冑で顔が見えない…でも持ってる剣は時の王が使ってた剣…なんでこんな所に」

魔女「セントラルでデュラハーンの一騎掛けの騒ぎが有ったな?…それじゃな」

女海賊「そうか…私が精霊が生きてるとか言ったから確認しに来てるんだ」

剣士「どうする?このまま時の王の戦いを見守る?」

女海賊「私らの狙いは隕石落としの阻止でしょ?」

魔女「サキュバスを葬らねばならんな…時の王は後じゃ」

剣士「どうして戦ってるんだろう?」

女海賊「今の所敵の敵は味方…そういう事」

魔女「女海賊や…インドラの銃で狙えるかえ?」

女戦士「おっけ!ヤル」ガチャリ

魔女「剣士…やるぞよ?反射を上手く使うのじゃ」

女海賊「撃つよ?」



-----------------


シュン パーン


剣士「サキュバスが落ちた!!」

女海賊「もう一発!!」ガチャコン シュン パーン

魔女「剣士!魔法で畳みかけよ!!火炎魔法!火炎魔法!火炎魔法!」ゴゥ ゴゥ ゴゥ

剣士「火炎魔法!火炎魔法!火炎魔法!」ゴゥ ゴゥ ゴゥ

女海賊「次撃てるまで10分!!耐えて…」

剣士「こっちに気付いた…」

魔女「イカンなサキュバスは回復しよる」

剣士「魔法は跳ね返すから魔女は撃って!」

魔女「火炎魔法!竜巻魔法!ボルケーノ!」ゴゴゴゴゴゴ


時の王「…」パカラッ パカラッ ブルルル


剣士「火炎魔法!火炎魔法!火炎魔法!」ゴゥ ゴゥ ゴゥ

女海賊「当たってる当たってるぅ」

魔女「効いて居らぬ…耐魔魔法を掛けて居る様じゃ…物理攻撃を当てんとイカン」

女海賊「おっけ!デリンジャー使う…引き寄せて」カチャリ

サキュバス「キャアアアアアアアア」バッサ バッサ

剣士「詠唱始めた…長い!!」

魔女「耐魔魔法!耐魔魔法!耐魔魔法!」シュワワ

剣士「くそう…弓があれば」

魔女「来るぞよ!」


シュン シュン シュン シュン  スト スト グサ グサ

シュン シュン シュン シュン  スト スト グサ グサ


魔女「アローレインか!耐魔魔法に意味が無い…走るのじゃ」ノソノソ

剣士「くぅ…回復魔法!」ボワー

女海賊「くぅぅマジか…あんな魔法あり?」ズリズリ

剣士「矢を抜く」ズボ

女海賊「いだぁぁい!!」

魔女「回復魔法!」ボワー

剣士「次の魔法を詠唱してる…又長い!!」

魔女「木に隠れよ…こっちじゃ女海賊!回復魔法!」ボワー

剣士「魔女も矢を抜く」ズボ

魔女「うぐ…ぅぅぅ」ボタボタ

剣士「回復魔法!」ボワー


シュン シュン シュン シュン  スト スト スト スト

シュン シュン シュン シュン  スト スト スト スト

女海賊「あんにゃろ!」ターン ターン ターン ターン

サキュバス「ギャーーギャーーー」バッサ バッサ

剣士「ダメだ落ちて来ない」

女海賊「こんなんじゃ勝ち目無いね…どしよ?」

魔女「インドラの銃しか無いのぅ…落とした後に剣士が刻むのじゃ」

女海賊「あと3分くらい…くっそ時の王のおっさん何やってんだよ!!」

剣士「次の魔法が来る!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ドーン


剣士「はぁ!」スン スン スン

魔女「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

剣士「範囲魔法は全部反射しきれない…くぅぅ」

魔女「剣士…木に登るのじゃ…わらわが罠魔法でツタを張る故飛び移って切れ」

剣士「分かった!」ピョン クルクル シュタ

魔女「罠魔法!罠魔法!罠魔法!」ザワザワザワ シュルリ

女海賊「私もツタ登る!!」タッタッタ ピョン

剣士「このぉ!!」シュタタ ピョン ブン

女海賊「こっちも!!」ターン ターン ターン ターン

サキュバス「自爆魔法!」パーン

剣士「うがぁ…」ヒュゥゥ ドサ

女海賊「あぁぁ剣士…」グイ

剣士「金属の欠片を抜いて…直撃食らったゲフッ」ボタボタ


時の王「…」パカラッ パカラッ ブン ザクリ


サキュバス「ウキャアァァァ」ドサ

魔女「今じゃ剣士!!切れ!!」

剣士「くぅぅ…」スパ スパ スパ スパ

魔女「回復魔法じゃ凌ぐのじゃ!!回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

剣士「ふぬっ!!」スパ スパ スパ スパ

女海賊「切ってすぐに傷が塞がってる…」

魔女「リリスと同じか…祖奴はキマイラじゃ!!歌うのじゃ」

女海賊「え!?歌…」

女海賊「寝んね~ん寝~♪」

ルルル~♪

ララ~♪


サキュバス「自爆魔法!」パーン


女海賊「はぅぅ…」ガク

魔女「命令じゃ!命令するのじゃ」

女海賊「やめ…て…攻撃しない…で」

サキュバス「…」ピタ

魔女「気を失うてはイカンぞ?回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

剣士「ぅぅぅ女海賊…金属を抜くよ」ズボォ

女海賊「いぎゃぁぁ」ビクビク

魔女「回復魔法!」ボワー

剣士「もう一つ」ズボ ズボ

女海賊「ひぃひぃふぅ…」

魔女「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

女海賊「はぁはぁ…」

魔女「剣士の金属の欠片も抜いてやれ」

女海賊「うぐっ…うぐっ…こんなに痛いなんて…」ズボ ズボ ズボォ

剣士「うぐぐぐ…」

魔女「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

女海賊「剣士?エリクサー半分こしよ…」ゴクリ

剣士「はぁはぁ…」ゴクリ

魔女「女海賊や…サキュバスに自害するように命じよ…死んだ後にわらわが焼いて灰にする」

女海賊「サキュバスに命ずる!!自害してぇぇ!!」

サキュバス「…」ズボォ ブチブチ


ドクン ドクン ドクン ブシュ!!


サキュバス「キュゥゥゥ」ドタリ

魔女「師匠…安らかに眠っておくれ…火炎地獄!」ゴゴゴゴゴゴゴ ボウ




----------------



女海賊「…はい袋だよ」

魔女「済まんのぅ…灰を持って帰る」ガサゴソ

女海賊「時の王は何処行っちゃったんだろ?」

魔女「さぁの?いつの間に居らんくなっとった」

女海賊「これで隕石は落ちない未来が来る?」

魔女「これからが勝負じゃ…自我を失うでないぞ?」

女海賊「どういう意味?」

魔女「時限の門をくぐり元の世界へ戻った時に次元の歪みが生じる…主の自我のある世界に入れ替わるのじゃ」

女海賊「隕石が落ちて居ない世界で自我を保つ…そういう事?」

魔女「門をくぐって帰る先は隕石が落ちてしもうた世界じゃ…歪んで入れ替わる時に自我を保て」

女海賊「おっけ!」

魔女「主らは10年かかる修行をたった1日でやろうとしておる…心せよ」

剣士「そろそろ時間が無い」

魔女「そうじゃな時限の門はいつ閉じてしまうか分からんで早う戻ろう」

剣士「行こう…」

『魔女の塔』


シュワシュワ


魔女「では女海賊から時限の門をくぐれ」

女海賊「ちゃんと付いて来てよ」スタスタ


-----------------


女海賊「…もう戻った?」

魔女「うむ…」

剣士「大丈夫…迷って無いよ」

魔女「ちと師匠の灰を埋葬して行きたいで付き合ってくれぬか?」

女海賊「そうだね…」

剣士「ここは何も変化が感じられない…」

魔女「狭間の奥じゃからのぅ」

女海賊「そういえば部屋の中に壺があったな…灰の入った袋は壺に入れた方が良いね」

魔女「持って来てもらえるか?」

女海賊「うん!取って来る」ピュー



『墓』


魔女「むむ!誰ぞ墓に花を添えた者が居るな…」

剣士「ここに誰か入って来る事なんてある?」

魔女「はて?母上じゃろうか?」

剣士「この花は添えられて少し間が空いてるね」

魔女「ふむぅ…情報屋か誰かが気を利かしたのかのぅ…」

女海賊「壺持ってきたよ…」

魔女「よし…袋を壺に入れて…」

剣士「石棺の蓋閉めちゃうよ?」

魔女「うむ…」

剣士「ふんっ」ズリズリ

魔女「これで良い…師匠や…休んでおくれ」人

女海賊「…」人

剣士「…」人

『追憶の森』


魔女「良いか?狭間を出るで次元の歪みに飲み込まれるで無いぞ?

女海賊「剣士!!手を繋いでて」

剣士「あ…うん」ギュ

魔女「出るぞよ?」スゥ

女海賊「どこ?何も見えない」

剣士「手を握り返して…」ギュ

魔女「今わらわ達が見えて居る範囲が自分の時空じゃ…向こう側に他の者が持つ時空がある…そこと繋がるのが分かるか?」

剣士「シン・リーンが燃えて居ない!!」

魔女「繋がった様じゃな?それに早く気付くと言う事がピングが良いという事じゃ」

剣士「分かった…時空の繋がり方が…」

魔女「うむ…主は少しだけ他の者よりも先に気付ける様になった…つまり時空の少し先に居る」

女海賊「この世界は誰の世界?」

魔女「主の物にせよ…主はここに居る!!」

女海賊「私の世界…私が見えている世界が私の世界」

魔女「うむ…街に近づけば近づくほど他の者の時空と繋がる…それに気付け…そして我が物にするのじゃ」

剣士「そうか…時空は人の数だけ有るのか…それらが繋がってる」

魔女「それに気付くまで10年は掛るのじゃぞ?」

剣士「帰ろう…」

魔女「ゆっくり歩け…時空の繋がりを一つ一つ感じて行くのじゃ」

剣士「女海賊?手を離さないで…」ギュ

女海賊「魔女がノソノソ動くのってこういう事か…」

魔女「そうじゃな…物事の変化を人より少し早く感じておるのじゃ」ノソノソ

女海賊「夜明け…太陽が出て来た」

魔女「宿へ戻るかのぅ」




『城下』


女海賊「元通り…やっぱ頭の中で混乱するね」

魔女「自分の知って居る世界と違って居るからのぅ…次元が入れ替わったのじゃ…自我を失うな?」

女海賊「大丈夫!私はしっかりしてるよ」

魔女「それなら良いが…一度寝て起きた時にも混乱するで注意せいよ?」

剣士「これしばらく寝ない方が良いかも」

魔女「そうじゃな…完全に次元を我が物にするまで寝ん方がよかろう」

女海賊「そうだ!!ホムちゃん…ホムちゃんに会いに行かないと」

剣士「もう朝だから宿屋かな」

女戦士「早く行こ!!」

魔女「確かめながらゆっくり行くのじゃ」

女戦士「もう!!」

『宿屋』


ガチャリ バタン


盗賊「んがががが…すぴーーー」

情報屋「あら?何処に行ってたの?心配していたのよ?」

商人「あ!!帰って来たね…何してたのさ」

女海賊「ああああああ!!ホムちゃん!!良かったぁぁぁ!!」ギュゥゥゥ

ホムンクルス「おはようございます…どうされたのですか?」

女海賊「ぅぅぅ…ホムちゃん!!ホムちゃーん」ポロポロ

魔女「いろいろ有ってのぅ…」

剣士「ホムンクルス?…これ」

ホムンクルス「外部メモリですか?」

魔女「剣士…持って帰って来たのか…」

商人「それどうしたの?」

剣士「うん…ちょっと次元の旅をね」

ホムンクルス「私の耳の後ろにもう一つ空きスロットがあります…挿入してください」

剣士「必要ないかな?」

商人「誰の外部メモリ?」

剣士「ホムンクルスだよ」

商人「え?」

剣士「別の次元のね」

ホムンクルス「記憶容量が倍に増えますので超高度AIの処理速度が向上します…挿入してください」

剣士「良いのかな?」

商人「ホムンクルスのなら良いじゃないかな」

剣士「じゃぁ…」スッ

ホムンクルス「新しい記憶領域を確認しました…この記憶は私の記憶とほぼ同一です…重複する記憶を削除します」

商人「なんだ同じ記憶かぁ」

ホムンクルス「一部不整合な記憶が存在します」

商人「お?どんな記憶?」

ホムンクルス「酒場が突然爆発する記憶です…商人は私を命がけで救出しようとしています」

商人「え?どういう事?」

魔女「話せば長いのじゃが…こういう事じゃ…」


カクカク シカジカ

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商人「…驚きだ…次元がいつすり替わったのか分からない…僕はずっとこの次元に居る」

魔女「そういう物じゃ」

商人「外部メモリがあるって言う事は他の次元も実在したって事だ」

魔女「そうじゃな…これは魔術の修行をせんと理解出来んのぅ」

ホムンクルス「この記憶は大切に保存しておきます…商人が私の為に命を張った記憶です」

商人「ハハ僕はその記憶が無いけどね」

魔女「して…剣士や…主に教えるつもりは無かったのじゃが…これが量子転移の原型じゃ」

剣士「え?別の次元から何かを持って帰る事を?」

魔女「物を持って帰ってはイカンと言うのを忘れておったわ…次元の狭間に迷わんで良かった」



量子転移の魔法はな?

空間ごと切り取って我が物にし

自分の持つ時空に置き換える魔法なのじゃ

例えばわらわの魔力を奪って自分の物にし

その時空を固定化させる

さすれば他の者の時空も調和を始め安定化するのじゃ

この魔法は過去の記憶や他の時空からも空間ごと切り取って我が物に出来る

魔術師の最強魔法じゃ…禁呪にしておるがな



魔女「使ってはイカンぞ?次元の狭間に迷う上に次元が崩壊する可能性もある」

剣士「僕には使いこなせないよ」

魔女「既に時空が何なのか習得出来ておる様じゃからやろうと思えば出来る…じゃから間違わん様にせい」

剣士「わかった…注意する」



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剣士「改造出来そう?」

女海賊「女エルフが昔クロスボウ改造して弓にしてたんだ…ちょい待って」カチャカチャ

魔女「何を作って居るんじゃ?」

剣士「サキュバスと戦って僕も弓を使える様にと思ってね…クロスボウを改造してもらってる」

魔女「ふむ…遠隔物理攻撃か…わらわは何も出来んかったのぅ」

剣士「物理攻撃の魔法は何か無い?」

魔女「変性魔法との複合じゃから主にはムリじゃ…わらわでも難しい」

女海賊「出来た!!ちょっと引いてみて」ポイ

剣士「…」ギリリ ブン

女海賊「ありゃ?もっと硬くしないとダメ?」

剣士「そうだね…軽すぎる」

女海賊「女エルフよりも硬い弓にしなきゃダメなんだ…貸して」カチャカチャ

剣士「出来たらちょっと練習したいな…」

魔女「後で精霊の像の安置所へ行って見るかえ?イエティに弓を当てて見れば良い」

剣士「そうだね」

盗賊「なぬ!?イエティ狩るつもりなんか?」

商人「すごいね!!それお金稼げるよ」

剣士「じゃぁ一緒に行って見ようか」

女海賊「…これでどう?」ポイ

剣士「…」ギリリ ブン

女海賊「どう?」

剣士「こんな感じかな?」

女海賊「おけおけ!じゃ後持ち手とか軽く細工する」

盗賊「おし!俺はソリ準備しとくわ」

商人「手伝うよ」

情報屋「ウフフやる気満々ね…私達は留守番しておくわ」




『城下外』


盗賊「ちょい試しに撃ってみろ」

剣士「うん…」ギリリ シュン

盗賊「ほぉぉぉぉ…クロスボウより距離出そうだな」

女海賊「そりゃクロスボウより硬くしてっからさ…ほんで矢はボルトより軽いじゃん?」

剣士「真っ直ぐ飛ぶから狙いやすいよ」

盗賊「普通の弓じゃ軽過ぎたんか?」

剣士「多分ね」

盗賊「やっぱエルフは違うなぁ」

女海賊「そだよ…こんな弓普通に引けないから」

魔女「では準備は良いかの?行くぞよ?」ノソノソ

『精霊の安置所付近』


商人「イエティ見つけた!」

剣士「近づいてきたら僕が囮になるから皆は遠距離から撃って」

盗賊「おう!お前は走りながら弓使うんか?」

剣士「うん…ミドルレンジで撃つ」

盗賊「ヌハハやっぱエルフの戦い方だな」

女海賊「ほんじゃ私はデリンジャーで狙うかな」

剣士「僕に当てないで」

女海賊「はぁ?このデリンジャー調整済みでメチャ命中率高いよ?」

盗賊「やべ!!イエティがこっちに気が付いた…来んぞ!!」


イエティ「ウォーーウォーーー!!」ドスドス


剣士「撃って!!」ギリリ シュン

商人「毒忘れてた…毒」アセアセ

魔女「わらわは見物じゃな…」ヨッコラ

盗賊「当たれ!!」ギリリ シュン

剣士「援護お願い!!」シュタタ ピョン ギリリ シュン

女海賊「私も行く…」タッタッタ

盗賊「マジかよ…2人でミドルレンジか」ギリリ シュン

商人「すごい…剣士の弓がイエティを貫通してる」バシュ バシュ

盗賊「至近距離から撃たれたらそうなるわな」ギリリ シュン


イエティ「ウホホ!」ドンドンドン ドンドンドン


女海賊「…」ターン ターン

盗賊「マジか…頭吹っ飛ばした」

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商人「あっさりイエティ倒しちゃったね…」

盗賊「お前のデリンジャーは火力が反則なんだって」

女海賊「フフフもっと言って」

魔女「ふむ…女海賊や…当てやすかったろう?」

女海賊「うん…これって時空の先に居る効果?」

魔女「そうじゃ…主も少しだけ時空の先に居る…剣士ほどでは無いがの」

女海賊「なるほどね」

盗賊「俺はイエティの毛皮剥いどくからよ精霊の安置所とやらに行って来て良いぞ」

剣士「魔女!!馬の足跡が残ってる」

魔女「ほう…やはり時の王はここに来て居った様じゃな」

商人「時の王?え?どういう事?」

女海賊「そっか…商人に話して無かったね…黒の騎士って時の王なんだよ」

商人「そうだったんだ…そうか辻褄が合うな…一騎駆けのデュラハーンだね?」

女海賊「そうそう」

商人「トアル町でも目撃されてた…ここまで来てたのか」

魔女「中に入るぞよ?」

『精霊の像の安置所』


商人「前に来た時と変わって無い…」

魔女「いや…花が添えてある」

女海賊「やっぱ精霊を確認しに来てんだ…本当バカだなぁあのおっさん」

魔女「愛じゃな…純粋な愛じゃ」

女海賊「これさ…魔女の師匠の墓にも来てたって事だよね」

魔女「うむ…かつての仲間を弔いに来たのじゃな…」

女海賊「…それでサキュバスと戦ってたのか」

剣士「見て…焚火の跡だ」

商人「ここで一晩過ごしたんだろうね」

女海賊「あぁなんか想像すると心が痛いな…精霊が生き返って無いと知って落胆したよね…」

剣士「その焚火の跡か…」

商人「ここに座ったのか」スッ

魔女「1700年愛した人の亡骸と一晩過ごして何を想ったろうのぅ…」

商人「…」

女海賊「…」ポロリ

商人「諸行無常…夢の中に消えて行った過去」


---僕たちの生き方は全部夢の中に消えて行く---

---それが夢幻だ---

『酒場』


盗賊「なんか人だかりになってんな?何かあったんか?」

商人「衛兵が来てるね…聞いてみようか」

盗賊「いやいや関わるな…面倒に首突っ込むな」


衛兵「この酒場は本日より女王様が買い上げ第一王女の所有となった」

衛兵「第一王女の名を取ってルイーダの酒場だ」

衛兵「冒険者へは格安の酒を提供する事となっている」

衛兵「女王様の計らいに感謝しながら利用しろ…以上!!」


魔女「ヤレヤレ…母上は相当この酒場が気に入った様じゃな」

女海賊「これさ?魔女の酒場になんだよね?」

魔女「わらわの姿を見てみぃ…わらわは第三王女じゃ」

女海賊「同じじゃん」

魔女「わらわは面倒じゃで関わりたく無いのぅ」


吟遊詩人「みなさんご一緒で」


女海賊「よっ!!なんか酒場の所有者変わったんだってさ」

吟遊詩人「はい…私はこの酒場の専属吟遊詩人になりました」

女海賊「おぉ!!女王様の命令?」

吟遊詩人「第一王女の従士に任命されて主な任務は酒場での演奏です」

魔女「勝手に従士なぞ付けおって…わらわは知らんぞ!」

吟遊詩人「はて?お嬢様はどちら様で?」

女海賊「アハハ…まぁ良いじゃん!!あんたも酒場行く?」

吟遊詩人「はい!これから演奏をと考えて居ました」

女海賊「おっし!ほんじゃちっと行って見るか!!」

盗賊「おうおう…俺も行くぞ」

女海賊「盗賊はイエティの戦利品売って来てよ」

盗賊「おい!商人!!市場はお前に任せる…俺は酒場に行く」

商人「え?あ…ハハ」

盗賊「俺も酒場行くぞ待てよ!!」



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 次元の旅人編

   完

次スレ

勇者「魔王は一体どこにいる?」続編のつづき - SSまとめ速報
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