男「……」グビグビ
友人「お前、最近よく六条麦茶飲んでるな~。そんなにうまいか?」
男「うまいのもあるけど……実は俺、恋しちゃってさ」
友人「恋? アサヒ飲料の社員にか? そうか、だから売上を伸ばそうと……」
男「ちげーよ」
男「六条麦茶のパッケージの女の人にだよ。ほら、このイラスト」
友人「え~~~~~~!? 絵じゃん!」
男「絵で何が悪い!」
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男「この落ち着いた佇まい、清楚な和服姿、穏やかな瞳……」
男「まさに俺の理想の女性そのものなんだよ」
友人「お前、こういう人が好みだったのか……」
男「六条麦茶を飲んでると、二次元の中にいるこの人に近付けた気分になるんだ」
男「ああっ、たまらん! ペットボトルごと抱きしめちゃう!」ギュッ
友人「うわ」
男「これは恋の病……久々の感覚だ!」
友人(たしかに病気かもな……ただし別の)
男「今時こんなおしとやかな女の人いないよなぁ」
友人「まぁな、そもそも和服の女の人がほとんどいないし」
男「はぁ~……理想の女性って結局二次元にしかいないんだなぁ」
友人「二次元に恋するのもいいけど、現実も見ろよ。きっといい女がいるって」
男「はぁ~……」
友人(こりゃ重症だな……)
……
友人「おーい、大ニュース!」
男「ん?」
友人「お前、こないだ六条麦茶の女の人に恋しちゃったっていってたろ?」
男「それがどうした?」
友人「あの女の人に、モデルになった人がいるのが分かったんだよ!」
男「え、マジで!?」
友人「このサイトに社員のインタビューが載っててさ……」ポチポチ
男「そんなのはどうでもいい! どこだ! どこにいるの!?」
友人「○△県で、茶屋を開いてるらしい」
男「うわ、マジで!? 俺のイメージしてた設定通りじゃん!」
友人「どうする?」
男「行くよ、行く! あの人のためなら、たとえ火の中水の中、麦茶の中だ!」
……
男「ここか……」
男「あのお邪魔します……」
和服女「いらっしゃいませ」ニコッ
男「!!!」ビビビッ
男(おお……すげえ! そっくり!)
男(マジであのパッケージの女の人じゃん! 二次元のイラストをまんま実写化したって感じだ!)
和服女「今日は少し暑いですし、冷たい麦茶はいかがですか?」
男「あ、どうも……いただきます」
男「……」ゴクゴク
男「おいしい……!」
和服女「そうですか、ありがとうございます」ニコッ
男(こちらこそいい笑顔をありがとうございます……!)
男「じゃ、じゃああの、ま、抹茶とお茶菓子をお願い致します」
和服女「かしこまりました」
男(うーん、仕草のひとつひとつが慎ましくて品がある……)
和服女「お待たせいたしました」
男「どうも」
男「……」ムシャムシャ ゴクゴク
男「いやぁ、おいしいです! 最高です!」
和服女「ありがとうございます」
男「それで、あの……お聞きしたいことがあるんですけど」
和服女「なんでしょう?」
男「あなたが六条麦茶のパッケージの女性のモデルというのは本当ですか?」
和服女「!」
和服女「ええ……本当です」
男「どういうきっかけで?」
和服女「偶然、こちらに見えられたアサヒ飲料の社員さんに」
和服女「ぜひ商品のイメージキャラクターになってくれ、と頼まれまして……」
和服女「私も断りきれなくて、つい……」
男(おお……恥じらう姿もステキだ!)
和服女「お恥ずかしい話です」
男「いえいえ、恥ずかしいだなんてそんな! あなたの雰囲気は、無添加の六条麦茶にピッタリですよ!」
男「僕はあなたほど清楚な女性を見たことありません!」
和服女「まぁ、お上手なんですから」クスッ
男「いえいえいえ本当に! お世辞なんかじゃありませんよ!」
男「あなたのおかげで六条麦茶はあんな大ヒット商品なったんだと思いますし」
男「それに、あの商品がなければ、僕がこうしてここに来ることもなかったんですから……」
和服女「私もお客様に会えて嬉しいです」
男「……っ!」
男「あ、あの……」
和服女「はい?」
男「よかったら、今度僕と――」
少年「お母ちゃーん! ただいまー!」
和服女「あら、お帰りなさい」
男「……え」
少年「あれ、この人は?」
和服女「お店のお客様よ、ちゃんと挨拶なさい」
少年「こんにちはー!」ペコッ
男(お母ちゃ、ん……?)
男「あの……この子は……あなたの……?」
和服女「はい、息子です」
和服女「六条麦茶のパッケージには、私と息子の母子二人で描かれてるものもあるんですよ」
男(え……そうなの。この人だけ描いてるやつしか見たことなかった……)
男「ってことは、ご結婚……」
和服女「はい、してます」
和服女「主人はモデルになるのを断ったので、パッケージに載ることはなかったんです」
男「そ、そうなんですか……」
男「あの、それじゃ……お会計お願いします」フラッ
和服女「もうお帰りですか。大したおもてなしもできませんで」
男「いえ……とてもおいしかったです」フラフラ…
男「じゃあ、代金を……」ジャラッ
和服女「ちょうどいただきます。ありがとうございました」
少年「ありがとうございましたー!」
男「……」フラフラ…
……
男「ちくしょーっ!」グビグビ
友人「うわっ、荒れてるなー……飲んでるのは麦茶だけど」
男「荒れもするさ、くそったれめ……チクショウ……」
友人「お前、六条麦茶の女性に会ったんだよな? 何があったんだよ?」
男「ほっといてくれ!」
友人「今飲んでるのは……ミネラル麦茶か。あれ、六条麦茶はやめたのか?」
男「ああ……やめたよ。飲む気になれなくてね」
友人「そうか! お前に何があったのか分かったぞ!」
男「ふん……分かっちまうか。そうだよ、俺は――」
友人「お前、次は鶴瓶に恋しちゃったのか!」
男「ちげーよ!!!」
おわり
鶴瓶は草
乙
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