【ガルパン】不惜身命の装填手 -秋山 優花里- (54)

*一部独自解釈、設定有

*この作品はフィクションです
戦車の動作、性能等、実際のものと異なる場合があります


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SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1490530764






~第64回戦車道全国大会:1回戦~




『…黒森峰女学園、フラッグ車走行不能!』

『よって…大洗女子学園の勝利!』


沙織「…や、やったぁ!勝ったよ、みぽりん!」

華「やりましたね、みほさん」

優花里「西住殿ぉ!」

みほ「…うん!みんな、ありがとう!」


ザッ

エリカ「…ハァ。まさか、またあんたたちに負けるなんてね」

みほ「エリカさん」

エリカ「去年、隊長がアンタたちと一騎打ちで負けてから、ずーっとこの大会を待ってたのよ?」

麻子「まさか、1回戦で当たるとは思わなかったがな…」



エリカ「…本当は、ずっと納得してなかった。去年、あんたたちが隊長に勝ったなんて…」

エリカ「でも、もうこれで認めるわ。本当に強かったのね」

みほ「…うん。みんながいてくれたから、私は…」

エリカ「…」

エリカ「…勝ちなさいよ、みほ」

エリカ「初戦で私たちに勝っておいて、優勝以外ありえないんだから」

みほ「…うん!ありがとう、エリカさん!」



~~~



沙織「ねぇねぇ!1回戦突破記念に、何か食べに行かない?」

華「それでしたら、また沙織さんの手料理が食べたいです」

沙織「えー?またー?もー、華ったらぁー」

麻子「それにしても嬉しそうだな」

みほ「ふふ、じゃあ、また私の部屋でいいかな?」


沙織「うん!とりあえず買い出しね!」

優花里「はい!参りましょう!」スッ


ズキッ


優花里「んっ」

みほ「? 優花里さん、どうしたの?」

優花里「あ、いえ。何でもありません」


優花里「(今、左腕に何か違和感が…)」

ブンブン

優花里「(うん、気のせいかな?)」


沙織「ゆかりーん!行くよー!」

優花里「あ、はーい!」



…大洗女子学園の戦車道復活から1年後、第64回戦車道全国大会

西住隊長と澤副隊長の指揮により1回戦を突破し、まずは一歩、二連覇に向けて前進しました

…ですが、1回戦終了後に、私の左腕から感じた違和感…

思えば、これが私の体からの、最初のシグナルだったのかもしれません




Girls und Panzer
 不惜身命の装填手 -秋山 優花里-


優花里「…おはようございます、西住殿っ!」

みほ「あ、優花里さん。おはよう」

優花里「いやぁ、先日はお見事でした!」

優花里「逸見殿の作戦のスキをついて、フラッグ車を挟撃する作戦…惚れ惚れしますぅ!」

みほ「あはは、ありがとう」

優花里「それで、今日の練習は…あれ?」

みほ「?」

優花里「前を歩いてるの、冷泉殿ですかね?」

麻子「」フラフラ

みほ「相変わらずつらそうだね…」

優花里「あ、私が支えますよ。冷泉殿ー!」

麻子「ん…西住さん、秋山さん…おはよう…」

優花里「おはようございますっ」

みほ「おはよう、麻子さん」

優花里「つらそうですねぇ…」

麻子「つらい…眠たい…」



優花里「肩かしますよ、冷泉殿。さぁ」

麻子「ありがたい…」スッ


ズキッ

優花里「んっ…!」


ズルッ
ドテッ

麻子「ふぎゅっ!」ベチャッ

優花里「ああぁ!申し訳ありません!冷泉殿ぉ!」

麻子「いたた…」

麻子「…あー…日陰の地べたが冷たい…気持ち良い…」

みほ「ま、麻子さーん、起きてくださーい」

優花里「(また、妙な痛みが…何だったんでしょうか…)」




~~~~~~~~~~




沙織「それでは、全国大会2回戦突破を記念して…カンパーイ!」

カンパーイ

華「ごめんなさいね、みほさん。また押しかけてしまって…」

みほ「ううん、ありがとう」

麻子「…というか、1回戦の後もやったろ。毎回やるつもりなのか?」

沙織「だって、麻子は嬉しくないの?」

麻子「そりゃあ、私だって嬉しくないわけじゃないが…」

優花里「まぁまぁ。2回戦も勝てたおかげで、こうして皆さんと戦車道が続けられるわけですから」

沙織「…うん、そうだよ。私たち、もう3年生だもんね」

沙織「これが、みんなで戦車に乗れる、最後の大会かもしれないから…」

みほ「…うん」

華「そうですね…」

優花里「武部殿…」

沙織「…あー、ゴメンゴメン!今日はそういうのナシにしよ!ほら、みんな食べて!」

華「沙織さん、お代わりいただけますか?」

沙織「速っ!」




・・・・・・


みほ「みんな、今日はホントにありがとう。凄く楽しかった」

沙織「こっちこそ、毎回みぽりん家にお邪魔しちゃってごめんね」

みほ「ううん。ありがとう、沙織さん」

華「私たちも楽しかったです」

優花里「それでは、私たちはそろそろ帰りましょうか」

華「そうですね」

沙織「それじゃ、みぽりん、またね」

麻子「…」

みほ「…?麻子さん?」

麻子「…秋山さん」

優花里「…?」

麻子「ちょっといいか?」

優花里「はい?」


沙織「え?何々?なんの話?」

麻子「すまん、沙織。ちょっと秋山さんと二人で話したい」

優花里「はぁ…私は、構いませんが…」

麻子「みんなは先に帰っててくれ。大した話じゃない」

みほ「うん。じゃあまた明日」

華「では、私たちは帰りましょうか」

沙織「またね、麻子。ゆかりん」

優花里「あ、はい」


スタスタ


優花里「……え、ええと、冷泉殿?なんのお話しでしょうか?」

麻子「もう、何となく感づいてるとは思うんだが…」

優花里「はい?」

麻子「ちょっと失礼」


ギュッ


優花里「いだだだだだ」

麻子「あ、す、すまん」


優花里「な、なんですかいきなり!」

麻子「いや、ちょっとやりすぎたのは悪かったが…」

優花里「え?」

麻子「…秋山さん、何か隠しているんじゃないか?」

優花里「か、隠す…?一体何のこと…」

麻子「じゃあ直接言うが、その左腕のことだ」

優花里「う…」

麻子「以前、私に肩を貸してくれた時から、様子がおかしい気がしていた」

麻子「装填手で力のある秋山さんが、あの程度でヘタれるわけがないとは思ってな」

麻子「それから、試合中、お昼の時にも、しきりに左腕を気にしているように見えた」

優花里「むむ…」

麻子「故障か」

優花里「…冷泉殿は、ごまかしきれませんでしたか…」

優花里「ええ、1回戦が終わったくらいから、ずっと左肩に痛みがあるんです」

麻子「1回戦…黒森峰の時か」


優花里「2回戦の時も、装填の時に少しだけ痛みはありました」

優花里「今は、何ともないんですが…」

麻子「…このことは、西住さんは?」

優花里「いえ、冷泉殿しか知らないハズです」

麻子「病院には?」

優花里「これで大事になれば、今後の大会に出れなくなってしまうかもしれませんし…」

優花里「それに、痛みと言ってもそこまで深刻ではありませんから」

麻子「…」

優花里「?」

麻子「…隠し通すつもり、なんだな」

優花里「…はい」

麻子「確かにこのことを西住さんが知れば、もう試合に出してくれなくなるだろう」

麻子「しかし、それだと秋山さんの体が…」

優花里「…冷泉殿」

優花里「私も、冷泉殿も、西住殿も、みなさんも、これが最後の戦車道大会なんです」

優花里「…最後まで、私はみんなと一緒にいたい」

優花里「そのためなら、このくらいの痛み、何でもありませんから」

麻子「…」

優花里「…ですから、今日のことは、冷泉殿だけの胸にとどめておいてくれませんか」

麻子「……わかった」




~~~後日:戦車道全国大会準決勝~~~



みほ「…作戦は今説明した通りです」

みほ「いよいよ準決勝ですが、みなさん、楽しんで行きましょう」

みほ「相手は強豪、プラウダ高校ですが、昨年も同じように準決勝で勝利しています」

みほ「数では不利ですが、落ち着いて戦いましょう」

みほ「それではみなさん、各車両を準備してください」


優花里「…ん…」ブンブン

麻子「…秋山さん、大丈夫か?」

優花里「はい、今のところはなんともありません」

麻子「…なら、良いんだが…」

優花里「本当に無理そうなら、ギブアップしますから」

麻子「…」

沙織「? 麻子、ゆかりん?どうしたの?」

麻子「…いや、なんでもない」

優花里「(やっぱり、動かすと少し痛みが…)」

優花里「(あと2試合…あと2試合だけ、持ってください…)」

みほ「…みなさん、用意は良いですか?」

みほ「それでは、作戦開始します。パンツァー・フォー!」


~~~~~~~~~


~~~~~~~~~



みほ「前方に敵フラッグ車!麻子さん!」

麻子「了解。このまま壁際に追い詰める」

みほ「…優花里さん!華さん!」

優花里「…ハイッ!」ガコッ

ズキン

優花里「(くっ…!)」

みほ「今です!」

華「ハイッ!」



ドォーン!

「きゃああ!」


『…プラウダ高校フラッグ車、走行不能!』

『よって、大洗女子学園の勝利!』


沙織「…や、やった!みぽりん!」

華「みほさん!」

みほ「…うん!みんな、ありがとう!」



優花里「やりましたね、西住殿っ!」

優花里「(良かった、今日のところは、何も…)」



ズキッ

優花里「…んっ…!?」



ズキンズキン

優花里「あっ…!!」

みほ「? 優花里さん?」



ぶつっ



優花里「あ、ああああ!!うあああっ!!」ガクッ

華「ゆ、優花里さん!?」


優花里「(ああ、ついに爆発してしまいましたか…!)」

優花里「だ、だいじょ…です…!痛っ…!」ズキズキ

沙織「だ、大丈夫なわけないじゃん!どうしたの!?」

優花里「はぁ、はぁ…」

みほ「…!麻子さん!」

麻子「分かってる!このまま病院まで飛ばすぞ!」

みほ「華さん、優花里さんを支えてあげてください!」

華「は、はい!」

ゴオオッ

梓「隊長!やりまし…あれ?」

典子「隊長?どこに行くんです?」

カエサル「あの慌てよう、只事ではなさそうだが…」



~~~大洗病院~~~




医師「…どうですか、まだ痛みますか?」

優花里「いえ、今は…」

医師「ただの応急処置ですので、まだ動かさないでくださいね」

優花里「はい…」

優花里「…あのぅ、私の腕に、一体何が…」

医師「…肩腱板の断裂、ですね」

優花里「はぁ…肩腱板…ですか…?」

医師「はい。この状態でムリに腕を動かしたりすると、痛みが激しくなるんです」

優花里「…」

医師「戦車で来院のようですが、戦車道を?」

優花里「あ、はい。装填手を…」

医師「高校戦車道の装填手は、特にこうなるケースが多いんです」

医師「短時間のうちに、重たい砲弾を何度も装填することになりますからね」

医師「しかも、それが動き回る戦車の内部です。腕への負担は相当に大きくなります」

優花里「はぁ…」


医師「断裂とは言いますが、今の秋山さんの状態はそれほど深刻ではありません」

医師「ですが、これ以上ムリをすれば、本当に取り返しのつかない事態も考えられます」

優花里「…そ、それで…」

優花里「それで、いつ頃治るんですか…?」

医師「手術なりですぐに治るということはありません」

医師「まずは肩を安静にして、それから必要に応じて手術、リハビリを行うので…」

医師「…そうですね、この状態だと、完治まではおそらく3か月以上は…」

優花里「さ、3か月!?」

医師「それほど時間を置かずに痛みは回復しますが、リハビリ等はそれくらいの期間をかけないと…」

優花里「ちょ、ちょっと待ってください!来週は戦車道大会決勝が…」

医師「しかし…」

優花里「な、なんとかならないんですか…?」

医師「…残念ですが、この症状に特効薬はありません」

医師「ここで無理をすれば、今後の選手生命に影響が考えられます」

優花里「…そんな…」

医師「…ひとまず今日は、こちらの三角巾を使ってください」

医師「手術が必要かどうかは、しばらく後に判断します」

医師「ただ、この様子だと、手術することになるかと思いますが…」

優花里「……」


~~~~~~




沙織「…あ、ゆかりん!」

優花里「みなさん…」

みほ「優花里さん!大丈夫!?」

優花里「あ、はい…」

優花里「すみません、ご迷惑おかけして…」

華「いえ、無事なら良いのですよ」

みほ「ごめんね、私、全然気づかなくて、それで」グスッ

優花里「わぁわぁ!泣かないでください!西住殿!」

優花里「私が隠していたのが悪いんですから」

優花里「こちらこそ、心配をかけてしまって…」

みほ「ううん、いいの。ごめんね…」

華「優花里さん、その三角巾は…」

優花里「いえ、骨折とかではないので」


沙織「それで、どうだって?」

優花里「…」

みほ「…優花里さん?」

優花里「(…ここで、ただ一時的なものだと言えば、決勝でも西住殿と戦えます)」

優花里「(私の体はどうなっても構いません)」

優花里「(ですが西住殿に嘘をつくというのは…いや、でも…)」

麻子「…わかった」

優花里「冷泉殿?」

麻子「医者にどういわれたのかはわからないが、来週までの短期間で治るとも思えない」

麻子「それに、いつまた状態が悪くなるかもわからない」

麻子「そんな爆弾を抱えた人間を、メンバーとして入れるわけにもいかない」

華「麻子さん…?」

麻子「…足手まといになる。決勝は私たち4人で十分だ」

優花里「っ…!」

みほ「ま、麻子さん…」

優花里「…そう、ですよね…わかりました…」


スタスタ


沙織「…麻子ぉ、もうちょっとやり方ないの?」

麻子「むぅ…」

みほ「麻子さん、もしかして前からわかってて…」

麻子「…すまない、西住さん。本当は前から分かっていたんだ」

麻子「だが、秋山さんに口止めされていた」

麻子「秋山さんの状態が知られれば、西住さんはもう試合に出してくれないと思っていたんだろう」

みほ「…確かに、そうだけど…」

麻子「…だが、私もこれ以上看過することはできない」

麻子「乱暴な言い方になってしまったのは、決勝が終わったら謝っておく」

沙織「その時は私も一緒に行くからね、麻子」

麻子「ん…」

華「…しかし、どうしましょう?決勝で装填手不在、というのは…」

みほ「私が車長と兼任するしかないかな…」

華「優花里さん、悔しいでしょうね」

沙織「うん…」

みほ「…勝とう、決勝」

みほ「せめて、優勝旗を優花里さんに見せてあげよう」

沙織「…うん、そうだね。そうだよ!そうでなきゃ!」

麻子「秋山さんの分まで、頑張らないとな」

華「ええ、そのつもりです」

~~~~~~~~



スタスタ

優花里「(冷泉殿が、私のためを思って言ってくれてることはわかります)」

優花里「(西住殿や皆さんに、これ以上心配も迷惑もかけられません)」

優花里「(だから、ああやって突き放すような言い方をしてくれたんですよね)」

優花里「(でも…)」

優花里「…グスッ…」

優花里「(次が、最期の試合なのに…)」

優花里「(次が、西住殿やみんなと戦える、最期の試合になるかもしれないのに…)」

優花里「なんで、なんでこんな時に…」

優花里「うぅっ…!うえぇ…!」ボロボロ

前編として本日はここまでです
後編あと1割ほどかけてないので、完成次第投下します

乙です。


やっぱり超人揃いのガルパンキャラも女の子なんだよなぁ・・・

体力的に超人な分、それだけ代償もでかいという事か

乙です
このシリーズ好き
続き楽しみ

乙!

余談になりますが、さおりん編は前のスレから何も思いついてません
ただ、どういうわけかペパロニ編ができそうです。何をどう間違ったらこうなるんでしょうか
まだ構想段階なのでいつになるかはわかりませんが、できれば書きたいなぁ

本題ですが、結末までイメージできたので、本日か明日中には投下できそうです

期待!

ようやく完成しました。次レスから投下します




~~~全国大会決勝~~~




・・・


『一同、礼!』

「よろしくお願いします!」


みほ「…ふぅ…」


ザッ

アリサ「…久しぶりね、大洗女子」

みほ「…アリサさん…」

アリサ「大学選抜戦以来ね、西住さん」

みほ「やっぱり、アリサさんが隊長になったんですね」

アリサ「まぁね。去年のリベンジ、させてもらうわよ」

みほ「私たちも、負けるつもりはありませんから」

アリサ「…言うようになったわね、あんたも」

アリサ「…オッドボールのことは聞いたわ」

みほ「え?」

アリサ「残念だけど、こっちも手を抜く気はないわよ」

アリサ「無線傍受なんてケチなことはしないけど、やるからには本気にならせてもらうわ」

みほ「…はい、受けて立ちます」



~~~観客席~~~


優花里「ふぅ…」

優花里「(決勝戦、大洗vsサンダース…)」

優花里「(大洗の2連覇をかけた決勝なのに、こうして見ていることしかできないなんて)」

優花里「(本来なら、私があそこに…)」


「…隣、いいかい?」

優花里「あ、はい、どうぞ…え?」


ナオミ「久しぶりね、オッドボール」

ケイ「ハーイ!」

優花里「ケイ殿、ナオミ殿…どうして?」

ケイ「どうしてって、そりゃあもちろん、可愛い後輩の活躍を見るためよ?」

ナオミ「悪いね、今年こそ優勝させてもらうよ」

優花里「はは…」


~~~~~~


みほ「…では、カバさんはこちらに…」

沙織「…!みぽりん!左!」

ブォォン

アリサ「貰ったぁ!」

みほ「えぁ!?」

華「みほさん!装填を!」

みほ「あ、はい…!」

麻子「…!ダメだ、間に合わない。いったん離れるぞ」


ゴォォッ

ドォォン


みほ「きゃあ!」

アリサ「ち、やっぱり早いわね…!」

典子「隊長!すみません!バックアタックされてます!指示をください!」

みほ「え、えっと…!」



ナオミ「…ずいぶんモタついてるな」

ケイ「まーねー。装填手兼任って、思ったより難しいのよ」

ナオミ「ケイ、装填兼任なんてしたことあったか?」

ケイ「1回だけね。付け焼刃だと頭か腕のどっちかが回らないもんよ」

ケイ「ミホは隊長だし、他の車両の動きも把握してないといけないしね」

優花里「…」

優花里「(やっぱり、私が抜けてるせいで、西住殿…!)」


梓「ごめんなさい!ウサギチームやられました!」

みほ「わ、わかりました!」


優花里「う…!」


アリサ「そっちいいわね!1両こっちに回って!フラッグのあんこうを狙うわ!」


優花里「っ…!」

優花里「(も、もう我慢の限界です…!)」

ガタタッ


ケイ「…待ちなさい、ユカリ」

優花里「…ケイ殿…」

ナオミ「どこに行くつもり?こんないい試合を最後まで見ないの?」

優花里「え…と、お、お花を摘みに…」

ケイ「タンクジャケットを持って?」

優花里「そ、それは…」

ケイ「…ハァ、ユカリ、いい?」

ケイ「私がここに来たのは、後輩の応援もあるけど、ミホに頼まれたのよ」

優花里「西住殿が?」

ケイ「ユカリが暴走しないように見張ってるようにね」

優花里「…」


ケイ「…ユカリ。ミホはあなたのことを思って…」

優花里「…わかってますよ。それは…」

優花里「これは、私のワガママなんです」

ナオミ「大洗の忠犬と聞いていたけど、ずいぶん聞き分けが悪いのね」

ケイ「…あなたのその腕、これ以上ムチャをすれば、それこそ二度と戦車道ができなくなるのよ?」

ケイ「一生、今日のことを後悔することになっても…」

優花里「…私の腕は、千切れても構いません」

優花里「…でも、西住殿が負けるのを、苦しんでいるのを眺めているだけなんてできないんです」

優花里「それこそ、一生後悔することになります」

優花里「ケイ殿。私に、後悔をさせないでください」

ケイ「…」

ナオミ「…」

ケイ「…ハァ…大洗の子は、どうしてこう頑固なのかしらね」

優花里「…」

ケイ「…わかったわ」

ケイ「近くまでバイクで送ってあげる。着替えてらっしゃい」

優花里「…っ…!ありがとうございます、ケイ殿!」

タッタッタッ…



ナオミ「…いいの?これで何かあったら、ミホに一生恨まれるぞ?」

ケイ「ここで止めたら、ユカリに恨まれるだけよ」

ナオミ「それもそうだな」

ケイ「…こうなったらもう、無事を祈るしかないわね」

ケイ「ナオミ、アレの準備しておいて」

ナオミ「イエス、マム」

ケイ「…フフ、そう言われるのもなんだか懐かしいわ」




~~~~~~


~~~~~~


キキッ

麻子「とりあえず、一度距離を離したが…」

華「囲まれていますね…しかし、幸いにも気づかれてはいないようです」

みほ「正面に1両、後ろに1両…どちらも背中を向けてて、こっちには気づいてないけど…」

沙織「また絶妙なところに落ち着いたね…」

麻子「どうする?」

みほ「…」

みほ「(正面を落として、そのまま旋回。1発目の発砲音でバレるから、即座に振り返ってすぐ撃てれば…)」

みほ「(華さんと麻子さんの技術があれば、たぶん問題ない。けど、私の装填がうまくいくか…)」


ザッザッザッ…

麻子「…ん…?」

沙織「麻子?」

麻子「…あれ、秋山さんじゃないか…?」

華「えっ?」


ザッ…

優花里「ハァ、ハァ…に、西住殿…!」

みほ「優花里さん…!」


沙織「ゆ、ゆかりん!?こんなところにいたら危ないよ!早く戻っ…」

優花里「西住殿」

優花里「…お願いします。Ⅳ号の装填、私に任せてくれませんか」

みほ「…!」

沙織「な…」

沙織「な、何言ってんの!ゆかりん、自分の腕のことわかってるの!?」

優花里「もちろん、承知しています」

優花里「西住殿のために、この腕を、この命を燃やす覚悟はできています」

優花里「お願いします。西住殿」

みほ「…」

沙織「みぽりん…?」

みほ「優花里さん…気持ちは嬉しいけど、どうしてそこまで…」

沙織「そ、そうだよ!確かに優勝したいけど、それより…」

優花里「…これが、西住殿と戦える、最期の試合かもしれませんから」

優花里「最後の瞬間まで、西住殿の右腕でいさせてください」

みほ「…っ…!」

華「み、みほさん…」


みほ「優花里さん」

みほ「…お願い、できますか?」

優花里「…!は、はいっ!」

沙織「み、みぽりん!なんでっ…!」

優花里「武部殿、いいんですよ」

優花里「ありがとうございます、西住殿」

みほ「…ごめんね、優花里さん…」

優花里「(西住殿は、優しい人です)」

優花里「(誰よりも友達思いで、だから、友達が傷つくのを見ることは耐えられないハズなんです)」

優花里「(そんな西住殿が、私のワガママを聞いて、私の痛みに目を瞑ってくれました)」

優花里「(私に帰れと命令するより、自分のために尽くせと命令することが、どれだけ西住殿にとって辛いことか)」

優花里「…謝るのは私の方ですよ。西住殿」


麻子「(何故…いや、やはりと言うべきか)」

麻子「(…すまない、秋山さん)」


優花里「行きますっ」

ガコッ

ズキン

優花里「…ぐっ…!」

みほ「優花里さ…!」

みほ「…っ…!」

みほ「…で、では、作戦通りに行きます。麻子さん、華さん」

優花里「(西住殿が今何を言いかけたか、私にもわかります)」

優花里「(ここまで来たら、絶対に泣き言は言えません)」

華「…行きます。麻子さん、いいですか?」

麻子「いつでもいけるぞ」

華「では…!」


ドォォン!!

<きゃああ!

シュポッ


沙織「やった!」


『な、なんだ!?』
『後ろだ!Ⅳ号がいるぞ!』


麻子「旋回する」ゴォォッ

優花里「次弾、いきますっ!」ガコッ

ズキン

優花里「(痛くない、痛くないっ…!)」

みほ「華さん!今!」

華「はいっ!!」

ドォォン
シュポッ


『Damn!!』


沙織「やった!」

みほ「…!まだです!正面!フラッグ車!」

沙織「え?」


アリサ「こんなところにいたのね…!今回は勝たせてもらうわよ!」

麻子「…どうする?離れるか?」

みほ「ここは…」チラッ

優花里「…」コクリ

みほ「いえ、ここで決着をつけます!」


優花里「はいっ!」ガコッ

優花里「(大丈夫…大丈夫…!)」


みほ「撃て!」
アリサ「Fire!!」


ドドオン!!


みほ「…っ、躱された…!」

アリサ「やるわね、Ⅳ号…!こうなったらここで決着付けるわよ!」

優花里「次いきます!」ガコッ


ドドォン!!


優花里「(…不思議な感覚です…)」

優花里「(先ほどから、あまり痛みを感じません)」


ガコッ
ドォォン!!


アリサ「さっきからちょこまかと…!」

みほ「相手も速い…華さん、次は停止して狙います!」

華「わかりました!」


優花里「(ああ、このまま時間が止まってくれればいいのに…)」



ガコンッ

ぶづんっ


優花里「(――あっ)」


みほ「今!撃てーっ!!」

華「ハイッ!!」

ドォォン!!

アリサ「きゃあああ!!」


シュポッ


『…サンダース大付属、フラッグ車走行不能!』

『よって、大洗女子学園の勝利!!』



麻子「やった…のか…?」

華「みたい、ですね…」


みほ「…!優花里さんっ!」

優花里「…あっ…!うっ、ぐっ…!!…あ…!!」

みほ「優花里さん!!優花里さんっ!!」ポロポロ

沙織「ゆかりんっ!!」

華「優花里さん!」

麻子「秋山さん!」

優花里「(…あぁ、西住殿を泣かせてしまいました)」

優花里「(さっきから、肩のあたりから激しい痛みを感じます)」

優花里「(本当に千切れているのではないでしょうか)」

みほ「ごめんなさいっ…!私、私が…!」ポロポロ

優花里「(…泣かないでください、西住殿)」

優花里「(これは、私が望んだことなんですから)」


沙織「麻子っ!」

麻子「…ダメだ、ここからだと病院は相当遠い。救急車を…!」



ババババババ…!



みほ「え…?」

沙織「ヘリコプター…?」

バッ

ケイ「ユカリ!!乗って!!」

みほ「ケイさん…!」

ナオミ「全く、世話の焼けるスパイガールね」

華「あ…優花里さん、動けますか?」

沙織「ゆかりん、もうひと頑張りだから!」

麻子「秋山さん!捕まれ!」

優花里「(…私なんかのために、こんなに…)」

優花里「(ああ…私は、なんて幸せ者なんでしょうか)」




~~~~~~


・・・・・・


・・・


優花里「…ん…」

優花里「……!」ガバッ

優花里「あっ、いてて…」

優花里「あれ、ここは…?病院…?」

優花里「…」

優花里「(…そうか、試合が終わってすぐ、病院に運ばれて…)」

優花里「(…この左手の包帯は…ああ、夢じゃなかったんですね…)」


ガララッ


優花里「…ん?」

沙織「…ゆかりん、起き…!みんな!ゆかりん起きてるよ!ほら!」

ドタドタッ

みほ「優花里さんっ!!」

麻子「秋山さん!」

華「優花里さん!」


優花里「わあぁ!」

バッ

みほ「ごめんね、優花里さん。ごめんね。ごめんね…」グスッ

優花里「…私の方こそ、申し訳ありません。西住殿」

麻子「…いや…私こそ、秋山さんに酷いことを言って…」

沙織「…もー、私ら蚊帳の外じゃん!」

華「ふふ、良いじゃないですか」

優花里「…あ…そ、それで、検査の方は…」

みほ「…うん」

麻子「秋山さん…」

優花里「覚悟はできてますから」

沙織「…ゆかりん…」

華「みほさん」

みほ「ふぇ!?わ、私!?」

華「ええ。ここは隊長さんから」

優花里「西住殿…?」


みほ「え、えーと、私たちはもう先生から聞いてるんだけど…」

優花里「…」

みほ「…全治3カ月が、6カ月になったって…」

優花里「そ、それじゃあ…!」

麻子「どうやら、最悪の事態にはならなかったようだ。しっかりリハビリすれば、また戦車道に復帰できると聞いた」

優花里「…っ!」

沙織「良かったじゃん、ゆかりん!私たち、待ってるからね!」

華「ふふ、先生は怒っていましたけどね」

麻子「これだけ無茶をすれば、当然ではあるけどな」

優花里「よかったぁ…」

麻子「秋山さん…」

優花里「…西住殿…本当に、ありがとうございます。私のワガママを聞いてもらって…」

みほ「ううん。私こそ、無理させちゃったよね…」

優花里「いいんですよ。西住殿」

華「…優花里さんも休みたいでしょうし、そろそろお暇しましょうか」

沙織「ん、そうだね。ゆかりん、ゆっくり休んでね」

麻子「またな、秋山さん」

優花里「ええ、また」

みほ「…うん。それじゃあね、優花里さん」


バタン…


優花里「(…これで、私たちの最後の戦車道大会は終わってしまいました)」

優花里「(最後の大会、最後まで皆さんと一緒に戦えて、後悔はありません)」

優花里「(…でも…それでも、できることなら、また皆さんと一緒に…)」

優花里「…いつか、また…」

優花里「…」



・・・


・・











~~~8年後~~~






『…ただいまより、プロ戦車道セントラルリーグ、大洗ファイターズ対、川崎イーグルスの試合を開始します』




「…みなさん、おはようございます」

「今日の相手は川崎イーグルスさんです」

「昨シーズンは少し苦手な相手でしたが、今年は勝ち越せています」

「今日勝てばプレーオフ、日本一がさらに近づきます」

「勝つことも大事ですが、みなさん落ち着いて、楽しく、ケガのないように戦いましょう」

「それでは、作戦開始します。パンツァー・フォー!」




「…行こう、優花里さん」

「…ハイ!西住殿っ!」



 - 完 - 

以上です。ありがとうございました

スレ途中でも書いた通り、さおりん編が何一つ思いつかないのに、
どういうわけかペパロニ編とか梓編とかが何となく思いついてるので、そのうち書くかもしれません

それでは、HTML依頼出してきます


車長と装填手の兼任・・・そう考えると磯部キャプテンはやっぱり凄かった
梓編は是非期待

黒森峰もヘリは保有してるが、決勝のエピソードはサンダースが対戦相手だからこそしっくり来る話だね。
乙でした。また新作書いて欲しい。

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