藤原肇「ハンズ事務所?」 (52)
前作よりおよそ1か月後。18歳の肇ちゃんがPと事務所の掃除をする話
・独自設定多め
・Pと肇ちゃんの関係は前作をお読みいただければ
前作 藤原肇「はじめる新しい関係、変わらない想いと共に」
藤原肇「はじめる新しい関係、変わらない想いと共に」 - SSまとめ速報
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【事務所】
P「うん。ウチの事務所は業界ではそう呼ばれてるんだ」
肇「ハンズ、というのはあの?」
P「そう、あのハンズ」
肇「あの、何でもある?」
P「あの、何でもある」
肇「…どうしてですか?」
P「ほら、ウチってアイドル多いだろ?」
肇「はい」
P「そんでもって、みんな個性的だろ?」
肇「はい」
P「そんな個性的なみんなの趣味も勿論?」
肇「個性的、ですね」
P「それで、みんなその個性的な趣味の私物を事務所に持ち込んでいるだろ?」
肇「いつ見ても凄い物量ですね…」
P「肇も陶芸グッズ一式を持ち込んでそれに貢献してるしな」
肇「そんな…」テレッ
P「褒めてるワケでは…まあいいや。それで、ありとあらゆるグッズがウチの事務所内にあるだろ?それこそ、何でも」
肇「ええ」
P「どう見ても庶民の手には届かない高級品から、果てはキノコの原木まで。最初はドラマで不足していた小道具の代わりにアイドルの私物を貸し出したのが始まりだったとか。いつしか、番組制作サイド的には「どんな物品トラブルにでも対応出来るアイテムが揃った事務所」として業界で有名になってたんだ」
肇「ああ、だからハンズ事務所、ですか…」
P「で、さっき話したように、ハンズ事務所とまで呼ばれるほどの大量の私物たちが事務所のありとあらゆるところにあるわけだ」
肇「ええ」
P「定期的に大掃除をしなきゃどこに何があるのかわからなくなるわけだ」
肇「ええ」
P「だから、俺たちプロデューサーで話し合って「半年に一度ローテーションで片付けよう」と決めたんだ」
肇「ええ」
P「本当なら響子と彼女のプロデューサーという、ハンズ事務所きっての掃除のプロふたりと一緒にやる予定だったんだが、急遽入った仕事でロケに。しかも、ちひろさん含め他の同僚たちも今日は予定が入っているときたもんだ」
肇「…それで昨日の夜、Pさんは私に、事務所のお掃除の手伝いをして欲しいから電話をした、と」
P「…うん、まあ、そうだな」
肇「…」プクー
P「…怒ってる?」
肇「そういうわけではないですが…その、この前のバレンタインデー以来、久しぶりにふたりきりになれる日なのだから、折角ならPさんとデー…いえ、遊びに、行きたかったなと」
P「あー…ごめんな…あのさ、肇」
肇「?」
P「代わりと言ったらなんだけど、もし肇が良かったら、掃除の後ご飯を食べてからドライブでもしないか?今日はいい天気だし」
肇「!はい、是非!」
P「…あとさ」
肇「?」
P「掃除の人手が欲しかったのもあるけど…「好きな人とふたりで掃除するのって、夫婦みたいでいいなあ」って、ふと思ったんだ。だから、肇に電話した」
肇「…っ!そんな事を急に言うのは、反則、です……私、昨日、ちょっとガッカリしたんですからね?」
P「…ごめん」
肇「…だから」
P「ん?」
肇「ふ、夫婦のようにふたりで協力して、早く終わらせて、たくさんふたりで遊びましょう!そ、それでは、汚れるといけないので、作務衣に着替えてきます…!」パタパタ
P(…)
P(…可愛いなあ…可愛いなあ!!)
P(…あんな可愛い子が、俺の恋人か…)
P(…って、イカンイカン!肇が成人するまでは手を出さない、それまで俺たちはあくまでも「仲のいいプロデューサーとアイドル」なんだ!)ブンブン
P(俺が思わせぶりな態度をとるのは色々我慢させてる肇にも申し訳ないだろ!ええい、立ち去れ煩悩!ウオオオオ!!)ブンブンブンブン
【事務所ドア前】
聖來(…ど、どうして肇ちゃんのプロデューサーさんは事務所でひとりヘドバンを…?)
聖來(忘れ物を取りに寄ったけど、こ、怖くて入れない…)
聖來(…肇ちゃんが好きすぎて、おかしくなっちゃったのかな…早く付き合っちゃえばいいのに…あ、それはアタシたちもか、はは…)
聖來「……帰ろ」スゴスゴ
ーーーーーーーーーーーーーー
肇(作務衣)「着替えてきました!」
P(ジャージ)「おう、俺もだ!よっし、じゃあ始めようか」
肇「まずはどこからお掃除しましょうか?」
P「そうだなあ…とりあえず、無難にデスク周りから掃除するか。いらない資料捨てたり、机周りを綺麗にするだけでいいだろうし」
肇「皆さんのデスクの資料を勝手に捨ててしまっても大丈夫なのですか?」
P「あー、何となく捨てていいものはわかるから。みんなの許可も取ってあるし。例えばほら、この前のプロデューサー同士の交流会のチラシとか。ついつい溜まっちゃうんだよな」ペラッ
肇「そんなものがあるのですね…」
P「実質、ただの飲み会だけどな。ありすちゃんたちのプロデューサーってそういうの几帳面だから。忘年会の進行プラグラムとか社員旅行のしおりなんかも作ってるし」
肇「ああ、何となくイメージはつきます。キッチリしている方ですよね」
P「電子機器にも強いから、よく助けてもらってるよ…さて、じゃあみんなのデスクの資料の整理は俺がやっておくから、肇には落ちてるゴミの掃除と、机拭きをやってもらってもいいか?俺も終わり次第合流するから」
肇「わかりました!」
P「…」カサカサ
肇「…」サッサッ
P「…」カサカサ
肇「…」フキフキ
P「…何かいいな、こういうの」カサカサ
肇「…そうですね」サッサッ
P「…」カサカサ
肇「…♪」フキフキ
P「…よし、資料の整理はこんなもんでいいかな。手伝うよ、肇。今、誰のデスクまでやった?」
肇「ありがとうございます。このデスクは…美世さんたちのプロデューサーのですかね?」
P「正解。ペン立ての横にちょこんと置いてある赤いミニカーがヒントだな」サッサッ
肇「それぞれのデスクに担当なさっているアイドルにまつわるものが置いてあって面白いです」フキフキ
P「ぴにゃこら太のキーホルダーやら、スプーンやらクナイやらキャッツの帽子やら。みんな自分のアイドルたちにもらった小物は側に置いておきたいんだよ。元気を貰えるしな。社長には「もっと綺麗にしなさいね」なんて言われるけど」サッサッ
肇「Pさんも、ですか?」フキフキ
P「…今、肇が掃除しているデスクに何が置いてあるかを見ればわかるはずだ」サッサッ
肇「ふふ、小さいカメラの形のネックレスに、お猪口に…備前焼のマグカップが置いてありますね。これは、誰からいただいたのですか?」フキフキ
P「この事務所で、丹精こめて作ってくれたマグカップを担当プロデューサーにくれるアイドルはひとりしかいない、だろう?」サッサッ
肇「まあっ、一体、誰の事でしょうね?」フキフキ
P「…」
肇「…」
P「おーまーえーだー!」ワシャワシャ
肇「わあっ、髪が乱れてしまいますよ♪」
P「全く…大人をからかうんじゃありません!さあ、次だ次!」サッサッ
肇「ふふ、わかりました…あら?」
肇(この「思い出」って書かれたアルバム…Pさんの字じゃない?この字は…藍子ちゃん?)
肇(…どんな写真があるんだろう…)ペラッ
肇(あ…これ、私がまだ事務所に入りたての頃の…ふふ、笑顔、ぎこちないな)ペラッ
肇(これは…事務所で私の初仕事をお祝いしてくれた時の…楓さん、出会う前は神秘的なイメージの人だったから、実際の楓さんを知ってびっくりしたな。今でも大好きな、憧れの人だけど)ペラッ
肇(「ポジパの3人とPさん 撮影:早苗さん」…早苗さんお酒飲んでたのかな。写真、ブレちゃってる…私もいつか、単発じゃないユニットが組めたらいいな…)ペラッ
肇(…え!?わ、私の寝顔!?どうして事務所で居眠りしてる私の写真が!?寝言あの時みたいに言ってなかったかな…は、恥ずかしい…!!)ペラッ
肇(あ…これ、私が頬っぺた膨らませてる…よく「癖でぷくっとさせるね」って言われるけど、こんな顔してたんだ…!というか、藍子ちゃん、何でこんな写真を!?)
P「あれ、肇?何やってるんだ…」チラッ
P「…っておおい!肇!」バッ
肇「あっ!?」
P「ど、どうしてこのアルバムを見てたんだ…?」
肇「た、たまたま目に入ってしまって…いえ、そうではなくてですね!Pさん、どうして私の寝顔や恥ずかしい顔をしている写真が!?」
P「い、いや、藍子が「焼き増ししたので差し上げます」って、俺にくれたんだよ!俺が肇の恥ずかしい顔を撮ってくれって頼んだわけじゃないから!!」
肇「あ、藍子ちゃん…」
P「ま、まあ、本人だと恥ずかしいかもしれないけど、可愛いと思うぞ?うん」
肇「うぅ…と、とにかく!このアルバムはしばらく私が預かります!」バッ
P「ええ!?」
肇「私の…いえ、私だけでなく!皆さんの恥ずかしい写真を抜いた上で、改めてお返ししますから…!」
P「…どうしても?」
肇「どうしても、です!」
P「そんな顔真っ赤にしなくても…わかったよ」
P(冷静に考えればまた藍子に焼き増ししてもらえばいいんだしな)
肇「…Pさん?」ジトー
P「いや、何でも!」
ーーーーーーーーーーーーーー
P「さて、次はちょっと厄介だぞ。「武器庫」の整理だ」
肇「プロデューサーたちがおっしゃる「武器庫」って、ここの事だったんですね」
P「ここのエリアは物騒な物がまとまってるからな。ここだけ見ると、とてもアイドル事務所とは思えん。銃や刀は男子的にはテンション上がるけどな」ガチャガチャ
肇「先ほどのデスク同様、持ち主を考えながらお掃除すると楽しいですね」ガチャガチャ
P「結構一目瞭然だけどな…例えば、肇。この手裏剣は誰のだと思う?」
肇「あやめちゃん、ですね?」
P「正解。これは簡単だな。じゃあ、この木刀と槍は?」
肇「うーん…木刀が珠美ちゃん、槍が仁美さん、でしょうか?」
P「おお、正解…珠美、この木刀、修学旅行か何かで買ったのかな」
肇「ああ、クラスのひとりは買ってしまうアレですね」
P「実際、木刀を使う機会なんてそうそう無いしな。強いて言えば…不審者撃退用か?でもそれなら槍の方が…」
肇「Pさん、Pさん」
P「ん、ああ、すまない。ボッとしてた」
肇「この手錠、早苗さんのでしょうか?まるで本物みたいです」ジャラッ
P「ああ、多分そうだろうな…あれ、待てよ。確か警官って、辞める時に手帳と一緒に手錠も返さなくちゃいけないんじゃ…」
肇「え…」
P「…」
肇「……オモチャですよね、多分」
P「……ああ、きっとそうだな、うん!さあ、掃除を続けようか!」
肇「そ、そうですね!」
P(念の為、後で早苗さんに聞いておこう…)
肇「それにしても、凄いモデルガンの数ですね…あ、バズーカまで」ガチャガチャ
P「亜季の家に収まりきらないらしくてな…ちなみに、バズーカはレイナ様のな」ガチャガチャ
肇「亜季さんは銃がとても似合いますよね。アクション映画に出ている亜季さんは格好良くて惚れ惚れとしてしまいます」
P「ほとんどの出演作で銃をぶっ放してるもんな。時代劇でも火縄銃撃ってたし」
肇「私もいつか銃を使う役のお仕事が来るでしょうか?」
P「肇のイメージ的に銃より刀かもな。時代劇のゲスト出演が多いし、この前も伝説の刀匠のお孫さんの役やってたしな」
肇「明らかに私を意識して書いて下さった役でしたね」
P「脚本家の方が肇のファンらしくてな。流石に陶芸家の孫役ではなかったけど、それ以外はほとんどまんまな設定だったな」
肇「祖父役の俳優さんの見かけまでおじいちゃんに似ていて…何だか、照れくさかったです」
P「オンエアは来月だったか。肇のおじいちゃんが観たらヤキモチ妬いちゃうかもな?」
肇「ふふ、どうでしょうね?……Pさん」
P「んー?」クルッ
肇(リボルバー装備)「ばきゅーん!です。ふふっ、格好良いですか?」
P「…可愛い」
肇「え?いえ、そうではなく…」
P「いやーあまりの可愛さにハートが撃ち抜かれちゃったなー」
肇「も、もう、からかわないで下さい…!」
P「はは、ごめんごめん。銃を持ち慣れてない感じが可愛くって」
肇「…何だか今になって恥ずかしく…な、なら、Pさんが教えてください!」
P「ん、いいぞ。こう見えて俺もアクション映画よく観るしな。貸してごらん」
P「いいか、グリップはこう握って、左手はこう、添えるように。そんでもって標準を合わせて、撃つー」
?「フリーーーズ!!そこのお前、動くな!!」
P「どわぁあ!?」ダキッ
肇「きゃっ!?」
?「BANG!…であります♪」
P「…って何だ、亜季か!驚かすなよ…!」
亜季「ふふ、すみません。サバゲーに必要な銃を取りに来たら、何やら楽しそうな声がしたもので…それにしても、P殿!」
P「?」
亜季「奇襲に対しても真っ先に恋人を抱き締め庇う判断力に行動力、この大和亜季、感服致しました!」
P「そりゃあ咄嗟にあんな事されたら…いや、ちょっと待て亜季」
亜季「何でありますか?」
P「俺と肇は、恋人じゃない!」
亜季「…?あんなに普段ラブラブなのに、ですか?」
P「違うから!俺と肇はあくまでも仲のいいプロデューサーとアイドルと言うかだな!」
亜季「…ああ、成る程!では、そういう事にしておきましょう!それでは、お邪魔虫の私は退散させていただきます!」
P「おい、人の話をちゃんとー!」
亜季「肇殿!」
肇「は、はいっ!」ビクッ
亜季「ファイトッ!です!!」ビシッ
肇「…はいっ!!」ビシッ
亜季「フフッ、それでは、失礼!」バタン
P「…」
肇「…」
P「…嵐みたいなヤツだな…」ギュウ
肇「あ…ふふ、そうですね」
P「…あっ、もう抱き締める必要ないのか。力込めちゃって、苦しかったろ?ごめんな。今、離れるから」パッ
肇「あ…」
肇(…もう少し、抱き締められたかったな…)
P「…それにしても、どうして俺たちの関係がわかったんだろう…普段、そんなにわかりやすいのか…?」ブツブツ
肇(…Pさんの鈍感)プクー
ーーーーーーーーーーーーーー
P「よし、じゃあ次は志希の実験用具の整理だ」
肇「薬品の中に、明らかに色がおかしい物があるのですが…」
P「慎重に行こう。あくまでも、散らかってる瓶を整理するだけ、液体類には触れないように。何作ってるかわからないから」
肇「幼児退行する薬とかありそうですもんね…」
P「まさかそんな………作ってそうで怖い…ん?何だこの瓶。「ハンズ事務所プロデューサーの匂い」?」
肇「…凄い。全プロデューサーの分ありますね…あ、ちひろさんと、社長さんのも」
P「一時期やたら匂いを嗅がれたけど、こんなもの作ってたのか…いや、せめてアイドルの匂いを作れよ。それなら商品化も…」
肇「Pさん?」
P「…すみません…あ、俺の匂いの瓶だ…」ヒョイ
P「…」
P「…」ハスハス
P「…うん。良かった。臭くはないはずだ。自分の匂いだからよくわからないけど」
肇「…私も嗅いでみていいですか?」
P「え、まあいいけど…」
肇「それでは、失礼します」ピトッ
P「ん?」
肇「どうしました?」
P「どうして、俺の胸に顔を近づけてるんだ?」
肇「まずは本物のPさんの匂いを確かめないと、志希さんの作った匂いとの比較が出来ないではないですか」
P「あれ、そんな話だっけ?というか、俺が肇の事抱き締めた時に嗅いでないの?」
肇「普段匂いを意識しませんし…それに、抱き締められている時はそれどころではありませんので…」
P「そ、そっか…」
肇「そうです。では、改めて…」
肇「…」ハスハス
肇(!この匂い…どこか、懐かしい…?)
肇(嗅いでいると落ち着いて…そう、これはまるで…)
肇「…おじいちゃんの匂い…」
P「え、加齢臭!?」
ーーーーーーーーーーーーーー
P「さて、ここらで一息つくか」
肇「そうですね。お茶、飲みますか?」
P「ああ、いただくよ。ありがとうな」
肇「いえいえ。では、失礼しますね」パタパタ
P(…優しい子だなあ…ん?こんな所に眼鏡が落ちてる。春菜に見つかったら一大事だな…お、何か書いてあるぞ?)
P(「対象が犬になった時の反応がわかる眼鏡」…晶葉の発明か?犬になった時の反応…)
P(…ちょっと、ちょっとだけ、使ってみよう。スイッチオン)スチャ
肇「…♪」ピコピコ
P(お、おお…!肇に犬耳と尻尾が生えてる…肇わんこ…か、可愛い…!!)
P(尻尾がピコピコ動いてるって事は、喜んでるって事か?)
肇「お茶淹れましたよ…あら?どうされたんですか、その眼鏡?」ピン
P「(お、尻尾が立った。警戒とか、注目、だっけな?)いや、さっき見つけてな。伊達眼鏡だけど、どうだ、似合うか?」
肇「ええ、普段とのギャップがあって素敵です」フリフリ
P「(確か、尻尾をゆっくり振るのは、安心、リラックスかな?)ありがとう。何だか照れるな…あー、肇?」
肇「何です?」ピク
P「(あ、耳動いた)…お茶、ありがとう」ナデナデ
肇「んっ…♪ありがとう、ございます…でも、頭を撫でられるのは、ちょっと、恥ずかしいですね」ブンブン
P(めっちゃ尻尾振ってる…!ま、まずい、可愛すぎるぞ肇わんこ…!)ナデナデ
肇「あ…もう、Pさんったら…」ブンブン
P「…」ナデナデ
肇「…」ブンブン
P「…」ナデナデ
肇「…」ブンブン
………………
……………………
……………………………
P(あれから10分間も撫で続けてしまった…恐ろしいアイテムだ…!だがナイスだ晶葉!)
肇「も、もう…何だったんですか…無言で撫でられ続けて、最後の方は流石に少し怖かったです…」
P「すまないな。何というか、つい、衝動的に」
P(肇わんこの破壊力が強すぎたんだ…)
肇「もう…ああいうのは、ふたりきりの時だけにして下さいね?…その」
P「?」
肇「嬉しくて、顔がだらしなくなってしまって、恥ずかしいので…」
P(…前言撤回。わんこじゃなくても、肇のこういうところ、ヤバいな。理性を保つんだぞ、俺!)
ーーーーーーーーーーーーー
肇「花が飾ってあるとその名の通り場が華やかになりますね。水やりも欠かさないようにしないと」ジョロロロ…
P「ああ。凛と夕美に感謝だな…さて」
うえきちゃん「…」
P「これにも水ってやるべきなのか?」
肇「ど、どうなんでしょう…?」
P「いつの間にか事務所に置いてあったんだよな。うえきちゃん」
肇「そもそもこれは花なのでしょうか…?」
P「…わからん。これは流石に本家のハンズにもないだろうな…ところでさ」
肇「はい」
P「うえきちゃんの顔(?)を見ると、何故だかしるぶぷれなアイツを思い出すんだけど、俺だけかな」
肇「奇遇ですね、私もです…あ」
うえきちゃん「…」ググッ
P「まずい、花粉(?)飛ばそうとしてる!逃げるぞ!」ダッ
肇「は、はい!」ダッ
ーーーーーーーーーーーーー
肇「Pさん、このロッカーには何が?」ガチャッ
P「あ、そこには穂乃香のー」
ピニャー!
P「ー等身大ぴにゃこら太キグルミが入ってる。遅かったか…」
肇「お、重い、そして意外とフサフサしてる…!ど、どけて下さいぃ…!」
ーーーーーーーーーーーーー
P「ウチの事務所が出したCDも、大分増えてきたなあ」
肇「私のCDもこの中にある事、誇りに思います」
P「…ごめんな、肇」
肇「何がですか?」
P「中々デビューさせてやる事ができなくて。結構、悩んでた時期もあったろ?」
肇「…確かに、悩んだ時期もありますが、それは私自身の力量に関してですよ。あまり、歌が上手い方ではありませんでしたから…ですが、素敵な仲間と、あなたがいたからここまで折れずにやってこれたんです。後ろめたさなんて感じないで下さい」
P「…ありがとう。そう言って貰えると救われる。歌、本当に上手くなったな」
肇「あなたにそう言っていただけて、嬉しいです」
P「それに、肇はいい声してるよ。凛としていて、それでいて優しくて…舞台裏から聞いてて、いつも泣きそうになる」
肇「ふふ、泣きそう、ですか?」
P「…泣いてました」
肇「…今でも覚えています。何もわからずこの世界に飛び込んできた私にとっての師であり、大切なプロデューサーのあなたに心から喜んでもらえたこと。舞台裏に戻ってきた私を「最高だった!」と言って抱き締めてくれたこと。思えばあの時、私はあなたに恋をしたのかもしれませんね」
P「…そっか」
肇「…ええ、そうです」
P「……」ポリポリ
肇「……」クスッ
P「…あ、あー、さてと!掃除、終わらせないとな!あー忙しい忙しい!」スタスタ
肇「…ここまで、ありがとうございます、Pさん。そして、これからも、ずっと…」
ーーーーーーーーーーーーー
P「よーし、これで…終わった!」
肇「お疲れ様でした!」
P「いやいや、こちらこそ。本当にありがとう、肇」
肇「ふふ、大分予定より時間がかかってしまいましたね」
P「ほとんど喋りながらだったからな。もう、すっかり夕方だ……すまん」
肇「いえいえ、楽しかったですよ。こういうふたりきりの時間の過ごし方もいいものですね」
P「…ああ、そうだな……で、でも何か、肇にはお礼、しなくちゃな」
肇「そんな、お礼なんて……あ、それならPさんがよろしければ、この後、ご飯とドライブに連れて行っていただきたいです」
P「勿論、お安い御用だ。だけどその前にさ、疲れたし、甘いものでも食べたくないか?」
肇「いいですね、それなら私の行きつけの喫茶店にー」
P「実は、さ」
肇「?」
P「こんなものを作ってたりするんだけど…」カサコソ
肇「!それは…クッキーですか?これを、Pさんが、私の為に?」
P「…うん」
肇「ありがとうございます!でも、どうして…?」
P「…ホワイトデー」
肇「…あ」
P「…ホワイトデーさ、俺、泊りがけの仕事で肇に会えなかっただろ?でも、バレンタインデーのお返しは何かしらあげたくって…で、急遽かな子に電話でクッキーの作り方を聞いて、作ってみた。本当は昨日の電話も、これを渡したいって言いたかったんだけどさ、照れくさくて「掃除を手伝ってくれないか」何て言っちゃって。ふたりで掃除するのが夫婦みたいでいいなって思ったのも本当だけど。結果としては、最後の最後まで言い出せず…その、すまない」
肇「Pさん…ふふ、バレンタインデーの時もそうでしたが、あなたも私に負けず劣らず不器用な方ですね」
P「おっしゃる通りです…」
肇「…これ、いただいても?」
P「…うん。どうぞ」
肇「ありがとうございます…では」
肇「…」パクッ
肇「………これは」
P「………これは?」
肇「…粉っぽい、ですね」
P「え!?ウソだろ!?」パクッ
P「…ホントだ…どこかで配分ミスったのかなあ…」
肇「…」
P「…あ!す、すまん肇!今、水持ってくるから!そしたら、喫茶店行こう!」
肇「…ですが」
P「?」
肇「…こんなに貰って幸せなお菓子、はじめてです。ありがとうございます、Pさん」ニコッ
P「……どういたしまして。来年は、味も美味しく作るから」
肇「楽しみにしていますね?…ところで、Pさん」
P「うん?」
肇「少し、お口直しで、甘いものが欲しいですね」
P「あー…やっぱりそうだよな、じゃあ喫茶店のー」ガシッ
P「ーえ?」
肇「…」ギュウ
P「ど、どうしたんだ肇…?俺の肩掴んで…」
肇「…Pさん」
P「あ、ああ」
肇「私、お口直しで甘いものが欲しいです」
P「う、うん」
肇「…ですから、そのー」
肇「ーあなたとの、甘い、キスを」
P「………………………………………」
P「…………いやいやいや!!何言ってるんだ肇!言っただろ?手を繋ぐ以上は肇が成人するまで…!」
肇「…」ギュウウウ
P(は、肇、力強いな!?振りほどけない…!)
肇「…Pさん?」ジッ
P「…な、何だ?」
肇「…」ニコッ
肇「問答無用、ですっ♪」グイッ
P「んむっ!?」
P(……ああ、何となく、何となくだけどー)
P(ーこの子には、将来的に勝てなくなる気がするなあ…)
今回から酉付けはじめました。ばきゅーん!な肇ちゃんや肇わんこを書けてご満悦です、僕は。
続編の、20歳の肇ちゃんがPと居酒屋でイチャつく話を明日、明後日辺りに投稿予定です。
それでは今回もお付き合い下さり、ありがとうございました。
肇ちゃんSS書いてる人もうみんな神
愛してる乙
次作も楽しみにしてるよー
はよ
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