【ガルパン】×【古畑任三郎】 すべて雪の仕業 (64)

キャプテンスカーレットって知らない人多いだろ
せめてゴールドエクスペリエンス・レクイエムを食らったディアボロにしておけ

今回はその二人か
そしてまた役人かww

古畑『…雪、雪はかつてロシアを2度も国難から救ったと言われています。1度目はナポレオンのロシア遠征、
2度目はナチスドイツのモスクワ攻略から。降り積もる雪は全てを覆い隠してしまうと思われています。
でも、雪に覆われることによって逆に浮かび上がってくるものもあります。雪と言えば…』




『…この突然の大雪によって、日本海側を中心とした青森県全域に大雪警報が発令されました。鉄道や空の便も
 欠航が相次ぎ、高速道路も一部区間で閉鎖されています。青森県知事は自衛隊に災害派遣を要請…』

花田「えー皆さん!この先、道路が大雪のため封鎖されてまして、これ以上先に進めません。そこで、わが社と
提携しておりますドライブインがありますので、除雪作業が終了してまた進めるまで、休憩を兼ねてそこで待機
ということに…」

古畑「もう、旅行になんて来るんじゃなかったよ、西園寺くんはともかく、今泉くんと出掛けると必ずなんか
災難に出会うんだよねえ。君、何か呪われてるんじゃないの?明日までに戻れそうにないって電話したら、蟹丸
警部、ものすごくイヤそうにしてたしさあ」

今泉「雪が降るのまで僕のせいにしないでくださいよ!」

西園寺「あの…、古畑さん、旅行に出掛けたときからずっと気になってたんですが、あの添乗員さん、以前ファミレス
の店員やってませんでした?」

古畑「んー、そうだっけ?憶えてないなあ」

今泉「また転職したのかな」

古畑「到着したみたいだねえ、ドライブインって言うより複合施設って感じだね、ちょっと寂れてるけど」

西園寺「ボコクマ・インですか…、聞いたことないチェーンですね」

今泉「あれ?知らないの?ボコられグマのボコだよ、ほら、子どもに人気の」

古畑「知らないよそんなの。君、変なことばっかり知ってるねえ」

西園寺「先客がいるみたいですね」

花田「皆さん、いつ除雪作業が終了するのか未定ですのでそれまでここで待機となります。施設内の設備は
ご自由に使用なさって構いません。加えてツアーのお客様のお食事代は当社で負担させて頂きますので、
食堂をご利用なさった際には忘れずに領収書をもらってください。なお、大雪のため危険ですので、施設の
外にお出にならないようお願いします。大変ご迷惑とご不便をお掛けしております」

今泉「古畑さん!女子高生ですよ女子高生!大勢いますよ!」

古畑「んー、あれ、戦車道のユニフォームだねえ。プラウダ高校かあ」

西園寺「それって去年の優勝校じゃありませんでしたっけ」

カチューシャ「もう!これじゃ今日中に学園艦に帰れないじゃない!」

ノンナ「こればかりは仕方ありませんね」

ニーナ「んだんだ、焦ってもしょうがないべ」

アリーナ「そだなあ」

クラーラ「観光バスが入ってきましたよ」

つづく

待っていた、次はどんな風に仕留められるか期待

古畑「すみません、隣、よろしいですか?」

カチューシャ「ええ、いいわよ」

ノンナ「ご旅行ですか?」

古畑「はい、そうだったんですが、この大雪で足止めを食らってしまって」

ノンナ「我々も同じですよ、戦車隊の研修に行ってたんですがこの雪で学園艦に戻れなくなってしまって…」

カチューシャ「まあニーナたちも言ってたけど、焦ってもしょうがないわ。私は隊長のカチューシャ!で、
こっちが副長のノンナ!よろしくね!」

~~~~~~~~~~~~


カチューシャ「へえ、古畑さんたちって刑事なんだ。全然それらしく見えないんだけど」

古畑「んー、それ、よく言われますねえ」

ノンナ「何事も外見だけでは判断できないということですね」

古畑「SMAPを逮捕したのも私です」

クラーラ「SMAP?」

古畑「あれ?ご存知ありません?」

ノンナ「彼女、ノボシビルスクから来た交換留学生で、ロシア人だから日本の芸能人とか疎いものですから」

古畑「そうなんですか、イチローを逮捕したのも私なんですが」

クラーラ「イチロー?」

ノンナ「彼女、ノボシビルスクから来た交換留学生で、ロシア人だから日本のスポーツ選手とか疎いものですから」

クラーラ「イチロー…、中谷一郎?」

古畑「んー、それは風車の弥七の人ですねえ」

今泉「SMAPも知らないのに…」

西園寺「あなた本当にロシア人ですか?」

辻「どういうことなんだこれは!こんな所で足止めされるなんて!これは君の責任だぞ!」

部下「申し訳ありません、ですが…」

辻「もういい!だからこんな所来たくなかったんだ!」


カチューシャ「ちょっとノンナ、あの人…」

ノンナ「あっ…、気付かれると面倒ですね」

古畑「お知り合いですか?」

ノンナ「まあ、直接会ったことはないんですが…」

ノンナ「辻と言って学園艦教育局の局長だった人物です。大洗女子学園の騒動はご存知ですか?」

古畑「ええ、よく知ってます。みなさんも高校生連合チームの一員として活躍されてましたねえ」

ノンナ「彼はその大洗廃校を画策した中心人物でした。廃校に失敗してから省内で立場が悪くなって、
その後左遷されたと聞きましたが、まさか青森に来てたなんて…」

つづく

辻「あっ!あいつら!」

部下「ちょっと!落ち着いてください!」

辻「これが落ち着いていられるか!あいつらのせいで私はこんな僻地に!」

カチューシャ「ちょっと!僻地ってどういうことよ!青森をバカにしないでよ!」

ノンナ「同志カチューシャ、気持ちはわかりますが落ち着いてください。こんな所でケンカしたら
古畑さんたちや他のお客さんの迷惑になりますよ。青森を悪く言われて腹立たしいのは我々も同じです」

ニーナ「そうだよ、あんなの相手にしないほうがいいだよ」

クラーラ「私もノンナさんやニーナと同意見です。あんなの放っておきましょう」

カチューシャ「そうね、まだしばらくの間はここから動けないみたいだし、楽しんだほうがよさそうね」

辻「くっ…!」

~~~~~~~~~~~~~


カチューシャ「…でね、その男は赤い星と鎌とハンマーのインシグニアの付いた洗面器を頭に乗せてきたの、
『同志スターリンのために!同志スターリンのために!』って言いながら一杯に水を入れた状態でね」

古畑「はい、それで?」

カチューシャ「それで、気になったからそいつに聞いてみたの、『なんでそんなことしてるの?』って。
そうしたらその男は…、ふわぁぁぁ、眠い…」

ノンナ「そういえばそろそろお昼寝の時間ですね」

カチューシャ「ここは騒がしいわね…、どっか静かなとこ見つけてそこで休むわ…」

ノンナ「風邪ひかないように暖かくしてくださいね」

カチューシャ「じゃあ古畑さん、続きはまた後でね…」

古畑「はい、楽しみにしてますから」

今泉「腕相撲?僕、これでも警察官だよ?君みたいな女の子に負けるわけないって」

ニーナ「お?言ったな?じゃあ何か賭けるべか?」

今泉「よーし、じゃあそっちが勝ったらなんでも好きなもの奢ってやるよ」

ニーナ「みんな聞いたな?じゃあいくべ」

アリーナ「じゃあ用意はいいか?位置について、用意、ドン!」

ばたーん


今泉「ぐわぁぁぁ!いたたた!」

ニーナ「ごめんごめん、手加減はしたんだども」

ノンナ「ニーナにカモにされましたね?彼女、KV-Ⅱの装填手で、50kg近くある装薬筒や弾頭を軽々と
扱ってますからね、プロレスラーでもない限り、普通の人では絶対に敵いませんよ」

今泉「ずるいぞ!」

古畑「もう何やってるの、だらしないなあ」

ニーナ「でも、一番強いのはカチューシャ様だよ」

アリーナ「んだなあ、隊長が一番だなあ」

古畑「それは意外ですねえ」

ノンナ「あの体格と子供のような言動から侮られやすいのですが、彼女の身体能力は我々の中では
最も高いですね。私はシステマをやってますし、クラーラはコマンドサンボをやってますが、
格闘技では同志カチューシャに敵いません。天性の素質もありますが、それ以上に厳しい修練を
彼女は自らに課していますから」

古畑「試合なんかを見てると天才肌の人に見えますが本当は苦労人なんですねえ」

ノンナ「ええ、彼女は常に自身を最高の指揮官足らしめんとしています。私は彼女ほどの指揮官を
他に知りません」

古畑「本当にカチューシャさんに心酔してらっしゃるんですねえ」

ノンナ「彼女はそれに価する人物ですから」

カチューシャ(こっちの建物はゲストハウスみたいね、ここなら静かに眠れそうだわ)

カチューシャ(なによこれ、掃除はしてあるけどストーブに灯油が入ってないじゃない。よっぽどお客が
来ないのね、ボコがモチーフの施設みたいだけどアレのどこがいいのかしら?以前そう言ったらミホーシャ
に殺されそうな目で見られたけど)

カチューシャ(このポリタンクは灯油ね、醤油チュルチュルはっと。醤油チュルチュルってドクター中松の最大の発明ね。
第2次大戦中、ドイツの戦車兵だった人が戦後に日本に来たときこれを見て「この発明が戦時下のドイツにあれば、バルジ
大作戦は我が軍が勝利していただろう」って発言したのもうなづけるわ)

カチューシャ(さて、ストーブも満タンになったし、ソファに毛布もあるし、ひと眠りするか)

部下「あの…、それ以上お酒を過ごされますとお体に…」

辻「うるさい!放っておいてくれ!」

古畑「んー、あの人、だいぶ煮詰まってるみたいだねえ、飲むピッチも上がってるし」

西園寺「トラブルを起こさなければいいんですけど…」

辻「これ以上あんな奴らと一緒にいられるか!私はどこか別の所に行く!」

今泉「あ、こりゃ死亡フラグかな」

西園寺「ちょっと、今泉さん」

古畑「今泉くん、君なに言ってるの?」

今泉「あれ?知りません?マンガとか2時間ドラマではああいうこと言い出す人は大抵殺されるんですよ。
密室のことが多いですね」

古畑「君ねえ…」

おでこペチっ

西園寺「不謹慎ですよ、縁起でもない」

カチューシャ(ん…、まだ20分しか経ってないわね、やっぱりノンナの膝でないとよく眠れないわ。
また雪が降ったのね、入ったときの足跡が消えちゃったわ。ん?誰か入って…)

辻「ここで何をしてるんだ!」

カチューシャ「何って、お昼寝を…」

辻「どこまで私の邪魔をすれば…!」

カチューシャ「ちょっと!何すんのよ!やめて!」

カチューシャ、もみ合いになって辻を素手で撲殺。

カチューシャ「しまった…、弾みでとんでもないことを…」

ヴーッ、ヴーッ

ノンナ「失礼します、電話が…、ちょっと失礼しますね」

ノンナ「カチューシャ、どうしました?」

カチューシャ「ノンナ、ちょっとまずいことになっちゃって…」

ノンナ「今どこです?はい、わかりました。安心してください、あなたは必ず私が守ります」

つづく

カチューシャっょぃ

素手で撲殺


素手で撲殺

グランドマスターかなにか?(白目)

部下「だっ…、誰か来てください!」

古畑「どうしました?」

部下「しっ…死んでるんです!」

古畑「今泉くん、西園寺くん、一緒に来て」

古畑「あ、ちょっと待って」

西園寺「古畑さん、どうしました?」

古畑「雪の上の足跡なんだけど、あの呼んできた人が往復したのと、中で死んでいるって人のだけだね」

西園寺「ということは、犯人がいるとしたらまだ中に…」

今泉「用心しないと…」

古畑「今泉くん、君、先に立って」

今泉「ええっ!?」

古畑「西園寺くん、通報よろしく」

今泉「うわぁ…これは…」

西園寺「古畑さん、この建物には誰もいません」

古畑「ということは事故かなあ」

西園寺「首の骨が折れてますね。この人だいぶ酔ってましたからねえ、滑ったような跡も
ありますし、酔って一人で暴れた挙句に転んだ事故死でしょうか」

古畑「この人、いつ頃この部屋に来たのかな?」

今泉「10分くらい前だったと思いますよ」

西園寺「ええ、僕も憶えてますよ。確かそのくらいだったと思います」

古畑「窓、開いてるねえ。ストーブの燃料は?」

今泉「ほぼ満タンに入ってます」

古畑「そっちのポリ容器は?」

西園寺「七分くらい残ってます」

古畑「そこの灯油ポンプ取ってくれない?」

今泉「古畑さん、これ、醤油チュルチュルって言うんですよ。醤油チュルチュルが正式な名称です」

古畑「そんなのなんだっていいだろう、君、本当に変なことばっかり知ってるねえ」

古畑「この灯油ポンプ、使ったばっかりだねえ」

今泉「醤油チュルチュルですってば」

西園寺「被害者が使ったんじゃないですか?ここに来て、灯油が入ってないのに気付いて
自分でストーブに給油したんじゃ…」

古畑「んー、向こうでのこの人の態度見てたけど、自分でストーブに灯油を入れるタイプじゃないよ。
ここに来てストーブに灯油が入ってないって気づいたら、なんで灯油が入ってないんだってあの部下
の人や従業員に怒鳴りちらしてたと思うよ」

古畑「そこの壁に温度計かかってるでしょ?今何度?」

西園寺「12℃です」

古畑「うーん…」

今回も首を長くして待っておりました。
何気に、白兵戦闘力の高いカチューシャって貴重なんじゃないだろうか?

醬油チュルチュル。
自分もこの前同僚の人から聞いて初めて知ったなぁ。

このカチューシャの前世はサラリーマンなんだろうさ

古畑「これ、それらしく見せてあるけど事故じゃないねえ、被害者がここに来る前に誰かいたんだよ」

今泉「どういうことですか?」

古畑「まず、ストーブに灯油が入ってて、一度点けた後に消してあるんだ。事故だったとすると、被害者は
ストーブに灯油を入れて、点火したからすぐに消して、その後で転んで死んだことになるよ。不自然じゃないか」

西園寺「言われてみればその通りですね」

古畑「それに室温が12℃ってのもおかしいよ。被害者がストーブを点けてすぐ消したなら、室温はもっと
低いはずだよ、窓も開いてるし。西園寺くん、ちょっとその窓から外に出てみて」

西園寺「よっと、外に出ました」

古畑「そこから窓を閉められるかい?」

西園寺「ここからでは僕では無理です、建物の内側と外側の段差が大きくて、相当背の高いじゃないと届きません」

古畑「ん-、思った通りだねえ、犯人はそこから出ていったんだよ」

西園寺「でも、ここから出ていったとして、どこに行ったんですか?雪の上に足跡はありませんでしたよ」

今泉「『雪の密室』ってやつですね、いつぞやの鬼切村の事件みたいに竹馬を使ったとか」

古畑「それはないだろうねえ、被害者がここに来たのも、犯人がここにいたのも、恐らく偶然だったろうし、
そんな竹馬なんて用意してたとは思えないよ。初めからここにあったとも考えにくいし」

古畑「西園寺くん、青森県警はあとどのくらいで来るの?」

西園寺「この雪ですからねえ、2時間近くかかるようなことを言ってましたよ」

古畑「そうか、じゃあ今泉くん、県警が来るまで現場の保存よろしくね」

今泉「ええっ!?」

古畑「あ、そうだ、ストーブも灯油も証拠物件だから使っちゃダメだよ」

今泉「そんなぁ!凍死しちゃうじゃないですか!」

古畑「ほんの2~3時間じゃないか、足踏みでも腕立て伏せでもして体を温めてなさいよ。
鍛え直すいいチャンスじゃない。じゃあ頼んだよ」

今泉「鬼!」

つづく

改めて乙です。

古畑「足跡も証拠物件だからね、来たときと同じように大きく迂回して戻ろう」

西園寺「ええ、複数の足跡が混ざるといけませんからね」

古畑「西園寺くん、君、今なんて言った?」

西園寺「いや、複数の足跡が混ざると…」

古畑「お手柄だよ、足跡の謎が解けた。それに、犯人の目星も付いたよ」

西園寺「本当ですか!?」

古畑「とにかく戻ろう、確認したいこともあるし、話はそれからだよ」

西園寺「というわけで、県警が来るまで向こうの建物に人が入らないように
みなさんに知らせて欲しいんですが。ここの従業員の人たちもです」

花田「ってことはアレでしょ?あのおっさんと揉めてたチビっこ隊長の仕業でしょ?それで、
あの背の高い副隊長がそれを隠蔽しようとしてるんだよ。きっとそうだね、間違いない」

古畑「んー、どうでしょう、調べてみないとなんとも…」

カチューシャ「ちょっと、なんの騒ぎ?」

古畑「おや、カチューシャさん、どこにいらしてたんですか?ちょっと事件が起こりまして」

カチューシャ「私だったらずっと2階にいたわ。そこでお昼寝してたの」

ノンナ「彼女はずっと2階にいました。私が保証します」

古畑「ちょっとその部屋見せてもらえますか?」

古畑「この部屋ですか、ずいぶん寒いですねえ、ストーブ点けなかったんですか?」

カチューシャ「疲れてたのね、ソファと毛布を見つけたらそのままバタンキューだったわ。
そこまで気がまわらなかったみたい。おかげでちょっと風邪ひいたみたいよ」

古畑「それはいけませんねえ、スカイ○ー飲んで早く良くなれ」

カチューシャ「なにそれ」

古畑「んー、ストーブに灯油が入ってませんねえ、燃料タンクが空だ」

カチューシャ「だから言ったでしょ、疲れててそこまで気がまわらなかったって」

ノンナ「古畑さん、まさか同志カチューシャが何かやったと思ってらっしゃるんですか?」

古畑「はい、正直に言えばその通りです」

ノンナ「重ねて言いますが彼女はずっとこの部屋にいました。私が証人です」

古畑「申し訳ありませんがこういう場合、身内の証言は鵜呑みにできません」

ノンナ「では何か証拠はありますか?」

古畑「それなんですが…」

古畑『皆さん、彼女は崇拝する隊長を守るため、雪の密室を作り上げました。ですがそれは、
逆に彼女たちをそこに閉じ込めることになってしまったんです。古畑任三郎でした』


次回解決編につづく。

更新乙です。

素手で撲殺は流石に・・・

ノンナ「古畑さん、やはりあれは事故なのでは?あの男とその部下以外の
足跡はなかったはずです」

古畑「何故知ってるんですか?カチューシャさんからそう聞いたから?

ノンナ「…」

カチューシャ「みんな知ってるわよ!あいつの部下やあんたのツアーの添乗員が大騒ぎしてたし!」

古畑「実は被害者とその部下の方以外の足跡があったんですよ、ちょっと見えにくいだけで。
そしてそれがカチューシャさんがあそこにいたという証明になるんです」

古畑「カチューシャさんは被害者を殺害してから、玄関先に足跡を残さないように窓から外に出た。
そして雪の積もっていない軒先を通って玄関の前に来た。そして彼女は雪の上につけられた被害者の
足跡を踏んで戻ってきたんです」

古畑「なにしろあの中は結構な騒ぎでしたからねえ、カーテンも閉められていましたから誰も気付かなかった
んだでしょうねえ、現に私もカチューシャさんに声を掛けられるまで戻ってきたことに気付きませんでしたから」

ノンナ「古畑さん、そんなことが可能だったとして、どうしてそれが同志カチューシャの仕業になるんですか?」

古畑「考えてみてください、もし普通の人間が誰か他の人の足跡を逆に踏んだら、すぐにバレてしまいます。
小柄で足の小さい西園寺くんでも無理です。それに、被害者は相当に酔っていました。泥酔状態だったと言ってもいい。
千鳥足で足跡はかなり不規則になってました。これを間違いなく踏み外さずに、なおかつ他の人に見つからないよう
可能な限り素早く移動できる高い身体能力の持ち主、その上普通に人間より二回り以上も足の小さい人物、この条件に
当てはまるのは、カチューシャさんしかいません」

ノンナ「…状況証拠です。だからといってカチューシャがやった証拠になるとは思えません」

古畑「これはノンナさん、全てあなたの入れ知恵ですね?カチューシャさんが足跡を偽装してから
戻ってきた後、二人で口裏を合わせて、姿を消していた間2階にいたことにした。カチューシャさん、
ちょっとお手を拝借」

カチューシャ「ちょっと!なにすんのよ!」

古畑「んー、灯油の匂いがしますねえ、2階のストーブには灯油が入ってませんでしたが、あなた、
どこのストーブに灯油を入れたんですか?」

カチューシャ「そんなはずないわ!こっちに戻ってからちゃんと手を洗っ…あっ…!」

ノンナ「カチューシャ!」

カチューシャ「古畑さん…、ずるいわよ…」

古畑「すみませんねえ、こういうことをするから警察の評判が悪くなるってわかってるんですが」

カチューシャ「最初から正直に話せばよかったわ、私が頼りないばっかりに、ノンナにまで迷惑かけて…。
隊長失格だわ…」

ノンナ「そんな…、同志カチューシャ…」

古畑「んー、いい時間だ、青森県警が到着したようです」

西園寺「今泉さん、凍えてないといいんですが…」

ノンナ「古畑さん…、今からでも私がやったことにできませんか?」

古畑「申し訳ありません、それは絶対にできません」

カチューシャ「ノンナ!なに言ってるの!前にも言ったでしょ!逃げるなんて隊長じゃないって!」

ノンナ「雪さえ降らなければ…、雪さえ降らなければ、私はあんなことを思いつかなかったでしょうし、
そもそもあの男にも、古畑さん、あなたにも会わずにすんだのに…」

古畑「そうですねえ、雪さえ降らなければ…。皮肉なものです、カチューシャさんから疑いをそらすため
に作った雪の密室が、逆に彼女以外の犯行があり得ないという状況を作り上げてしまった」

カチューシャ「ねえ古畑さん、私は仕方ないけど、ノンナはどうなるの?」

古畑「そうですねえ、犯人隠避か、偽証による捜査妨害か…、まあちゃんとした捜査が始まる前ですし、
電話で指示しただけでしょうから、たいした罪にはならないと思いますよ。もしかしたら起訴もされない
かもしれません」

カチューシャ「そう…、それ聞いてちょっと安心したわ」

ニーナ「カチューシャ様!」

アリーナ「カチューシャ様!」

クラーラ「カチューシャ様、これは一体…」

カチューシャ「みんな、よく聞いて。私とノンナはこれから警察に行くから、あとよろしくね。
たぶんノンナはすぐに戻ってくると思うから、それまでプラウダを頼むわよ」

ノンナ「カチューシャ…」

カチューシャ「言ったでしょ、私はもう逃げないって」

古畑「んー、ノンナさんの仰ってた通りだ、あなたは最高の指揮官です。犯罪者としては今ひとつでしたが」

カチューシャ「一言多いわよ!」

古畑「そうだ、最後に一つだけ聞きたいんですが」

カチューシャ「何?」

古畑「男はどうして赤い洗面器を頭に乗せてたんですか?」

カチューシャ「…また今度ね」



                        終

~後日談~


古畑「いやあ、カチューシャさん、一審では殺人や傷害致死じゃなくて過剰防衛になったそうで。
これなら有罪になっても執行猶予がつきますよ」

カチューシャ「私はそれよりもノンナが不起訴になってすぐに釈放されたことの方がうれしいわ。それよりも
今日はどうしたの?わざわざ拘置所まで来て。なんかあったの?」

古畑「いやあ、どうしてもお尋ねしたいことがありましてねえ。その男はどうして赤い洗面器を頭に乗せてたんですか?」

カチューシャ「そのためだけに青森まで来たの!?あきれたわねえ…、捜査一課ってよっぽどヒマなのね」

古畑「別にヒマってわけでもないんですが、気になって仕事が手につかないもので。
で、休暇を取って聞きにきたんですが。蟹丸さん、あ、これ私の上司なんですが、
ものすごくイヤそうな顔してましたねえ」

カチューシャ「そりゃそうよ、ジョークのオチを聞きに仕事を休んで青森まで来る人なんて普通いないわよ」

古畑「で、どうなんです?まさか墓場まで持っていくなんて言わないでくださいよ」

カチューシャ「ここまで来てくれて悪いけど、『なーんだ』って拍子抜けするようなオチよ?それでもいいの?」

古畑「いいんです、教えてください」

カチューシャ「あのね、その男は水が波々と入った洗面器を頭に乗せてやってきたの。で、
『なんでそんなことしてるの?』って尋ねたんだけどそれには答えずにただ、『この水は絶対に
落ちない』って繰り返すだけなの。『この水は絶対に落ちない、絶対に落ちない、絶対に落ちない、
絶対にオチない』ってねつまりこれはオチがないってことこそがオチだったって小噺だったわけ。
わかった?」  ※ (『赤い洗面器の男』のオチには諸説ありますがとりあえず自分が知ってるものを挙げてみました。)

古畑「そ…、そうだったんですか…」

カチューシャ「ちょっと、大丈夫?ものすごく打ちのめされてるけど…、あいつを殺した時より気が咎めるわ…」


                         今度こそ終

次回はVSケイを予定しています。

乙乙でした!

素手で撲殺は流石に草

突き飛ばしたら頭打って死亡とかでええやん

乙でした。
今度はケイとの対決か。

カチューシャ撲殺天使説

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom