【ガルパン】×【古畑任三郎】 家元の災難 (66)

前スレ 【ガルパン】×【古畑任三郎】生徒会長の仕事

※やっぱりSMAPやイチローの話みたいな「登場人物が本人の役を演じているドラマ」
 だと思ってください。

※また役人が殺されます。

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古畑『皆さん、戦車道の試合をご覧になったことありますか?戦車の性能だけで全てが決まると
思ってる人もいますが、やっぱり指揮官の能力によって決まると思います。指揮官同士の腹の探り
合い、先読みのし合いこそが本当の醍醐味だと思います』




熊本県某所…

古畑「今泉くん、君なにやってんの、こんな一本道で迷えるなんて日本全国で君だけだよ。同じとこ
グルグル回ってるじゃないか、あの歩道を歩いてたメガネを掛けた人を追い越すのこれで2回目だよ」

西園寺「あれ?同じ人でした?全然気がつかなかったですけど」

古畑「ほらぁ、あの大きな家の前を通るの2度目だよ。このままじゃまた山の中に入っちゃうよ、これなら
西園寺くんに運転してもらった方がよかったよ。君がどうしてもって言うから任せたんだよ?いいところを
見せたかったんだろうけど、これじゃ逆効果だよ」

今泉「ちょっと待ってください!もう少し!もう少しで!」

西住家…


辻「いやあ、こんなに大きなお屋敷に2人だけだとちょっと怖い感じですね」

しほ「人払いをしろと言ったのはあなたですよ?さっさと用を済ませてください、どうせ
またろくでもないことなんでしょうけど」

辻「ご挨拶ですな、まあお互いに忙しい身だ、手短に済ませましょう」

辻「例の大学選抜との試合において、大洗女子学園に不正な行動があったと発表して頂きたい、
どのような不正だったかはこちらで準備します」

しほ「こちらで準備するって…、仰ってる意味がよくわからないのですが、まさか虚偽の不正を
でっちあげるのに協力しろと?」

辻「ええ、その通りです。私にはどうしてもあの試合を無効にしなければならない事情がありましてね、
高校生戦車道の責任者とも言える先生のお力をお借りしたいのですが。無論ただでとは言いません、相応
のお礼はいたします。それに学園艦教育局というのは貸しを作っておいて損のある相手とは思えませんがね」

しほ「私がそんな話にのるとお思いですか?お帰りください、あの試合結果は娘たちが命がけで勝ち取ったものです」

辻「困りましたね、まあ予想はしていましたが。私の友人にマスコミ関係の者が何人かいましてね、主に
週刊誌の関係者ですが、彼らに大洗と黒森峰の生徒の中の西住流の門下生の不祥事をリークする用意があります」

しほ「…それもでっち上げなのでしょう?」

辻「ええ、その通りです」

しほ「そんなことはさせません!もしそんなことをすれば全力であなたを叩き潰します」

辻「もし全面戦争となれば私に勝ち目はないでしょうねえ、でも先生もただでは済まないでしょう。
世間は西住流の家元がその権力に物を言わせて門下生の不祥事をもみ消したと思うはずです。たとえ
その不祥事が根も葉もないでっち上げだったとしてもね、死なば諸共というやつですよ」

しほ「あなたという人は…!」

辻「そうなれば西住流どころか戦車道という武道そのものが地に落ちることになる
でしょうねえ、申し出を受け入れるしかないんですよ。それがお互いにとって一番
良い選択なんですよ」

しほ「何故そこまでして大洗の廃校に…」

辻「お恥ずかしい話ですが、ちょっとした額の借金がありましてね。で、不動産会社を
経営している友人に肩代わりしてもらっているんですよ。大洗が廃校になれば彼の会社に
莫大な利益が生じます。そうなれば借金の返済どころか我々にも莫大な取り分を約束して
もらってるんです。悪い話じゃないでしょう?」

しほ「そんなことのために…」

辻「先生のような大金持ちにしてみれば『そんなこと』でしょうが、私のような
庶民にとっては一大事なんですよ。それに、どう取り繕っても先生と私は同類なんです、
一門の体裁のために自分の娘を見捨てたあなたとはね」

しほ「!」

しほ、テーブルの上の灰皿で辻を一撃。

しほ「何がわかるっていうのよ…、あんたみたいな人間になにが…!」

しほ(殺してしまった…、菊代さんや他の使用人は夜まで帰って来ない、まほも学園艦の寮にいて
週末まで帰って来ない。この男はここに来ることを誰にも告げずに、タクシーも途中で降りて歩いて
来たと言ってた。だからここにいることは誰も知らない。借金があると言っていたから行方不明に
なっても自分から失踪したと思われるはずだわ。死体さえなんとかすれば…)

しほ(とりあえず死体はここに隠しておいて、深夜、みんなが寝静まってから始末しましょう。
シュビムワーゲンで裏山の池に捨てればいいわ。真ん中の深いところは10m近く深さがあったし、
底は藻や水草でいっぱいだから重石をつけて沈めれば二度と浮かんでこないはず…)

しほ(重石はなんにしようかしら…、そうだ!戦車の予備転輪と予備履帯があったわね、
あれを括り付けてやればいいわ。夜中に運ぶと物音がするかもしれないから、今のうちに
車に積んでおきましょう)

古畑「もう何やってんの!あの大きな家を見るの3度目だよ!この後も予定あるのに…」

今泉「わかってますって!」

西園寺「あ、そうだ。僕のスマホに道案内のアプリが…」

今泉「そんなのあるんだったらもっと早く出せよ!」

西園寺「ちょっと待ってくださいね」

今泉「いいからよこせって!」

西園寺「ああっ!運転中は危ないですって!」

ガッシャァァン!

しほ「!?」

古畑「本当に何やってんの君はぁ!」

今泉「すっ…、すみません!」

西園寺「うわぁ…、完全に溝にはまってますねえ、こりゃ我々だけでは無理ですよ」

古畑「西園寺くん、レンタカー屋に電話してロードサービス寄越してもらって」

西園寺「古畑さん、レンタカーの会社に電話したんですが立て込んでてロードサービスが来るのは
あと2~3時間かかるそうです」

古畑「まいったなあ、予定あるのに…、とりあえずこのお宅に一言断っておこう」

西園寺「そうですね、西住さんというお宅のようですが…、ええっ!『西住流戦車道宗家』って
看板が出てますよ!」

古畑「へえ、あの有名な…」

古畑「ごめんくださーい」

しほ「は…、はーい!」

今泉「庭先に戦車が停めてある…、西住流って有名なの?」

西園寺「知らないんですか?戦車道好きだって言ってたのに…」

古畑「ああ、奥さん、申し訳ありませんがお宅の前で車が脱輪しちゃいまして、ロードサービスが
来るまで車を置かせて欲しいんですが…」

しほ「ええ、いいですよ。どうせ人通りも少ないところですし」

古畑「いやあ、すみません」

しほ「あの、よろしかったら中でお待ちになりません?外は暑いですし…」

古畑「よろしいんですか?じゃあお言葉に甘えようかな、いやあ、本当にすみませんねえ」

古畑「いや、本当に助かりました、すみませんねえ、来客中でしたでしょうに」

しほ「え?」

古畑「いえね、玄関に男物の靴が揃えてあるので…」

しほ「あ…、こ、これは主人の靴で…」

古畑「ああ、ご主人のでしたか。でしたらぜひご主人にもご挨拶を…」

しほ「い、いえ、主人は仕事で海外に出ておりまして、出掛けている間に手入れをしておこうと…」

古畑「確かに手入れが必要なようですねえ、まるでさっきまで履いて歩いていたかのようなくたびれかただ」

つづく

古畑「あ、申し遅れました、私、古畑と申します。彼が西園寺でこいつが今泉と言います」

今泉「あ、どうも」

西園寺「ありがとうございます、助かります」

しほ「西住しほと申します」

古畑「西住さんというとあの戦車道の…」

しほ「ええ、家元を務めさせていただいております」

古畑「おや、これはこれは家元さんでしたか、いや、御見それしました」

しほ「皆さんは他所から来られたようですがお仕事ですか?」

古畑「ええ、まあその帰りといったところで」

今泉「僕ら刑事なんですよ」

しほ「えっ」

古畑「こらこら今泉くん、奥さんびっくりしてるじゃないか。必要ないときは
公務員って言えっていつも言ってるだろう」

しほ「あの…、警察の方といいますと、なにか事件が…」

古畑「いえ、そういうわけじゃないんです、我々、東京の警視庁の者なんですが熊本市で行われた
警察の会合に出席しましてねえ、その仕事も終わったんで休暇を取ってちょっと羽根を伸ばそうか
なあと思いましてねえ」

今泉「温泉に浸かってその後でなにか美味いものでもって…」

しほ「そうでしたか、でも、熊本から来て温泉地というとここは全然方角が違うような…」

古畑「それなんですがねえ、この男に運転を任せたら迷子になりまして、挙句、あんなことになってしまって」

今泉「レンタカー屋が悪いんですよ!カーナビ付きのは全部出払ってるなんて言って…」

古畑「人のせいにするんじゃないよ、そもそもちゃんと予約を入れとけばよかったんじゃないか」

しほ「まあまあ、掛けてお待ちください。今なにか冷たいものでもお持ちしますから」

古畑「いえ、お構いなく」

しほ(あの状況で招き入れないのは不自然だと思って家に上げたけど、失敗だったかしら…、まさか刑事だなんて…)

古畑「随分と静かですねえ、この家に奥さんお一人ですか?」

しほ「ええ、使用人は今は全員出払ってまして、夜まで帰って来ないんです」

古畑「あの奥さんと2人のお嬢さんと一緒に写真に写っている方がご主人ですか?」

しほ「ええ、さっきも言いましたが今仕事でヨーロッパに行っておりまして」

古畑「足の小さい人のようですねえ」

しほ「えっ?」

古畑「あの写真で見ると、ご主人は奥さんと対比すると180cmくらいあるように見えます。かなり大柄な人だ。
でも玄関に置いてあった靴は25cmくらいでした。背丈に比べて随分と足の小さい人だなあと思いまして…」

しほ「え…、ええ、そうなんですよ、細かい点によくお気付きなられますねえ、もしあなたが女性でしたら良い戦車指揮官に
なれたでしょうね」

古畑「いえ、それはどうでしょう、以前地下室に閉じ込められて死にかけたことがありまして、それ以来
戦車の中みたいな狭いとこや暗いとこが苦手になりましてねえ、ねえ今泉くん」

今泉「古畑さん、まだ怒ってるんですか…」

つづく

今泉「あ、そうだ!僕、戦車道の試合ってよく見てるんですよ!高校生のやつとか!」

古畑「君に戦術思想とか理解できるとは思えないけどねえ、どうせ制服の女の子見てハァハァしてるだけだろ?」

今泉「失礼だなあ、僕にも試合の展開とかわかりますって」

古畑「単純に戦車の性能だけで全てが決まると思ってそうだけどねえ」

しほ「まあ大きな要素ではありますけど、やはり古畑さんの言われるように戦術こそが
一番肝心なところでしょうね」

古畑「そうですよねえ、指揮官同士の腹の読み合いとか、先の読み合いなんかが一番の醍醐味だと
思いますねえ。圧倒的に不利だったチームがとんでもない大番狂わせをやってのけたりとか、逆に
強豪チームが王道と呼ばれるようなオーソドックスな作戦を見事に成功させるとか」

しほ「古畑さんは戦車道によく通じておられるようですね」

古畑「それほどでもありませんよ、家元の前でお恥ずかしい限りです」

今泉「戦車といえば僕あれが好きなんですよ!九州の学校がよく使ってるやつ!タイガー戦車でしたっけ?
角張ったすごく大きいの!あんなのがいっぱいあったら絶対に負けませんね!」

古畑「君、人の話を全然聞いてないだろ」

今泉「戦車はやっぱりオランダ製に限りますね!」

しほ「あれはドイツです」

今泉「…」

西園寺「…」

古畑「専門家相手に知ったかぶりすんのやめなさい、見てるこっちが恥ずかしくなるから」

今泉「試合といえばおととしの決勝戦だったかな?戦車が川に落ちて、フラッグ車の子があとを追って
川に飛び込んじゃってそのまま負けちゃって、アレは笑ったなあ。あんなの審判に任せときゃいいのに」

しほ「あの…、あれ、私の娘なんです…」

今泉「えっ」

しほ「…」

今泉「…」

西園寺「…」

古畑「今泉くん、君もう黙ってて。頼むから」

しほ「でも、今泉さんがそう仰るのも無理もないと思います、あれで連覇を逃してしまいましたし…」

古畑「あれは私も憶えてますよ、スポーツ新聞や週刊誌では賛否両論でしたねえ。というよりスポーツマンシップ
に溢れる行動だと称える論調のところの方が多かったように記憶してます」

しほ「ですが戦車道はスポーツではなく武道ですから…」

古畑「連覇の懸かった試合で、なおかつ家元の娘という立場にありながら勝負よりも仲間の安全を選ぶなんて、
なかなか出来ることじゃありませんよ。娘さんの行動は称えられて然るべきことですよ」

しほ「母親としてはほめてあげるべきことなんでしょうね…、でも、家元としてはあの子に厳しくせざるを得ませんでした」

古畑「ええ、それもわかりますよ。家元ともなればいろいろと難しいお立場だと思います」

しほ「あの時、私は筆頭師範から家元に就任することが決まった頃でした。ですが西住流の一門の中には
それを快く思わない派閥もありまして、あの子の失態はその一派の格好のネガティブキャンペーンの種に
利用されたんです。おかげで、あの子もその姉も学校でも外でもそれこそ針の筵だったと思います。子ども
たちを守るには、一門への示しをつけるという形であの子を破門して転校させるしかなかったんです」

今泉「うわぁ…、厳しいなあ…」

しほ「そうですね…、世間からは一門の体裁を守るために娘を捨てたと思われているようです…。あれ以来、
転校してからあの子はまともに口をきいてくれなくなりましたし、妹を可愛がっていた上の子ともうまくいかなく
なってしまって…」

古畑「きっといつかわかってくれる時がきますよ」

つづく

しほ「実を言いますと、私もあの子たちぐらいの頃に似たような目に遭ったんです。
ですが私の時は常夫さん…、今の主人に助けられたんです。あの人がいなければ今の
私はなかったかもしれません」

古畑「ご主人や娘さんを心から愛してらっしゃるんですねえ」

しほ「いやだわ…、こんなこと誰にも話したことなかったのに…、古畑さんって聞き上手なんですね」

古畑「刑事の仕事なんて半分以上は人の話を聞いてまわることですからねえ、自然とそうなっちゃうのかなあ」

古畑「あ、そういえば庭先の戦車は足回りが壊れてるんですか?」

しほ「いえ、あのⅣ号戦車は黒森峰の高等部で予備車輌として使ってたんですが、今度
中等部の生徒の教練用にまわすことになったので整備業者に出す前にうちで保管している
のですが…、あの、何故足回りが壊れていると?」

古畑「いえ、車体の予備転輪ラックが空になってましたし、予備履帯もなくなっているので
予備部品を全部使うようなトラブルに遭ったのかなと思いまして…」

しほ「あれは教習用の戦車ですからそういうもの最初から積んでいないんです。演習場の外には
出ませんから」

古畑「へえ、そうなんですか、でも履帯や転輪の交換に使うジャッキやシャックルはそのままでしたねえ」

しほ「その…、それは…」

作業員「ごめんください、ロードサービスから参りました」

古畑「やれやれ、ようやく来たか」

しほ(よかった…、これでやっと…)

古畑「今泉くん、君、修理に立ち会って」

今泉「ええっ!?」

古畑「何言ってんの、君の責任なんだから君が立ち会うべきだろ」

今泉「暑いのに…」

西園寺「じゃあ僕も…」

古畑「西園寺くんは一緒にいてくれない?ちょっと頼みたいことがあるんだよねえ」

西園寺「何でしょうか?」

古畑「奥さん、車が直ったら失礼します。本当に助かりました」

しほ「いえいえ、何のお構いも出来ませんで」

古畑「あ、そうだ、失礼する前に一つだけ伺いたいことがあるんですが」

しほ「はい、なんでしょう?」

古畑「眼鏡を掛けた男の死体はやっぱり戦車の中ですか?」



古畑『突然現れた闖入者によって家元の企みは崩れることとなりました。解決の鍵は…、テーブルの上にありました』


次回解決編につづく

西園寺「ちょっと古畑さん!突然なに言い出すんですか!」

しほ「あの…、死体と言いますと…」

古畑「あなたが灰皿で撲殺した男の死体ですよ」

しほ「!」

古畑「ああ、答えなくてもいいですよ、顔色でわかりましたから。西園寺くん、
ちょっと戦車の中を見てくれない?死体を担いで砲塔に登るのは難しいから
恐らく車体側の操縦席か通信手席だと思うよ」

西園寺「古畑さん、ありました。操縦席に防水布で包まれた死体らしいものが…、
あと血のついた灰皿も…」

しほ「…どうしてわかったんですか?」

古畑「奥さん、私、眼鏡をかけた男が道路を歩いていたところを見てるんですよ。
ご存じのように、あの道はこの家を通り過ぎたらもう山の中に入っていくしかない
んです。背広にネクタイという恰好でしたし、山の中に自殺でもしに行くのでなければ
この家に用があったとしか考えられないんですよ」

古畑「私たち警察官は気になる人物がいたら、人相や着衣と一緒に履いている靴も見るんです。
容疑者が服を変えて変装しても靴はそのままのことが多いですからねえ。このお宅に伺ったとき、
案の定、玄関に見覚えのある靴が揃えてありました」

古畑「ですが奥さんは来客などないしあれはご主人の靴だと仰る、あの靴を履いていたのは
写真に写っていたご主人とは似ても似つかない男だったのに」

古畑「初めは奥さんが不倫でもなさっているかと思いました。ですが、話してみると
奥さんは浮気なんかしてご家族を悲しませたりするような人ではありませんでした」

しほ「ありがとうございます…」

古畑「ではあの男は何者でどこに消えたのか?」

古畑「もしかしたらあの男は何か邪な目的を持って奥さんに近づき、逆に殺されてしまったのではないか。
そう考えるといろいろなことに辻褄が合ってくるんです。使用人の方々がみんな出払って夜まで帰って来ない
こととか、戦車の予備部品が消えていることとか」

古畑「もしあの男が既に殺されているとしたら、死体はどこにあるのか?母屋や前の倉庫では使用人の方々が
帰ってきたとき、すぐに見つかってしまいます。だからといって離れや自分の部屋に隠したら今度は死体を始末
するために持ち出した時に見つかるかもしれない。使用人の方々に見つからず、なおかつ気付かれずにすぐ持ち出せる
場所、庭先に停めてある戦車の中以外にありません」

しほ「…何故灰皿のことまでご存知なんですか?」

古畑「それなんですよ、私があの男が既に殺されてるんじゃないかと思い始めた理由はそこなんです。
テーブルの上の灰皿なんですよ」

西園寺「でも古畑さん、テーブルの上には灰皿はありませんでしたよ、現にここにあるんですから」

古畑「そうだね、確かにテーブルの上に灰皿はなかった。テーブルの上には来客用の煙草盆があって、
煙草入れと卓上ライターが置いてあったのに灰皿だけが置いてなかったんだ。なにか灰皿だけを別に
片付けなければならない事情があったということだねえ、例えば…、血まみれになったとか」

しほ「本当に細かい点によく気付かれる人ですね…」

古畑「奥さん、我々はただの通りすがりで、何かの捜査に来たわけじゃありません。事件が起きた
ことにまだ誰も気付いていません。ですから今この時点で自首すればだいぶ罪が軽くなると思います。
警察に出頭なさるのでしたら付き添いましょう」

しほ「お願いできますか…」

今泉「古畑さーん、車、直りました!さあ、これで温泉に…」

古畑「あー、今泉くん、それ全部キャンセルね。奥さんと一緒に警察行くことになったから」

今泉「ええええ!どういうことですかそれ!」

西園寺「あとで説明しますから」

しほ「今泉さん、申し訳ありません、楽しみになさってらしたでしょうに…」

古畑「いいんですよ、こいつにはいい薬です」

古畑「奥さん、それにしても災難でしたねえ。こいつが事故なんて起こさなければ
そのままバレなかったかもしれません」

しほ「それはお互いさまですわ、古畑さんこそ、私に出会わなければ今頃旅行を
楽しんでおられたでしょうに」

古畑「ええ、本当にお互い災難でしたねえ」


                 終

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