二宮飛鳥「楽園からの帰還」 的場梨沙「おかえりー」 (16)

飛鳥(ハワイでの仕事が終わって、日本に戻ってきた)

飛鳥「楽園からの帰還……名残惜しいけれど、この国の空気も悪くない」

飛鳥(事務所へ足を運ぶのも、久しぶりだな……みんなと会うのも)

飛鳥「男子三日会わざれば刮目して見よ、なんて言うけれど。果たして女子はどうなんだろうか」

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ガチャ


飛鳥「おはよう――」


梨沙「ふふん♪ どうよこのセクシーポーズ! やっぱりアタシがセクシー担当!」

心「青い、青いぞ若造☆ 見よ、はぁとのせくしぃポーズ☆ くねくね~~」ボイーン

梨沙「くっ……む、胸を揺らすのは反則!」

心「自分の武器を生かさない手はないの♪」

梨沙「~~~! アタシだってあと10年もしたらそのくらいぼんっきゅっぼんになってるもん!」

心「ふはは☆ 遠吠えが心地いいわぁ♪」

梨沙「審査員! 判定は! ハートさんレッドカードで退場でしょ!」キッ

ありす「知りませんよ……」

飛鳥「………」

飛鳥「あぁ、間違いない。ボクは楽園から、俗にまみれた日常へと帰還を果たした」

心「あ、飛鳥ちゃんおかえりー」

ありす「おかえりなさい」

梨沙「あ、おかえりー……ね、飛鳥も反則だと思うでしょ!?」

心「いきなりそんなこと言っても反応できるわけ」

飛鳥「ギルティ」

心「反応するんかいっ!」

梨沙「アタシは信じてたわ! 飛鳥は胸あんまり大きくないもん」

ありす「飛鳥さん……」

飛鳥「……ボクも一瞬で俗にまみれてしまった」

心「それはそれとして……飛鳥ちゃん、ちょっと焼けた?」

飛鳥「あぁ。クリームは念入りに塗ったんだけど、それでもね」

ありす「ハワイの陽射しは強かったようですね」

梨沙「それで、ここの机にさりげなく置いてるこれは? おみやげ?」

飛鳥「イグザクトリィ。キミ達に用意していたぶんだ」

梨沙「やった! ハワイのおみやげ!」

飛鳥「これはご当地のお菓子」

心「わぉ、おいしそう♪」

飛鳥「だいたい悠貴が見繕ってくれたからね。外れはないだろうさ」

梨沙「このキーホルダー、きれいな羽の形してるわね」

飛鳥「それはボクが選んだ」フッ

梨沙「なんでちょっとうれしそうなのよ」

飛鳥「ありすにはハワイの動物図鑑を買ってきた。頼子さんの勧めだ」

ありす「図鑑ですか……いいチョイスです。ありがとうございます」

飛鳥「たまには紙媒体の分厚い本を読むのもいいだろう」

心「ねえ。この細い筒みたいなの、なに?」

飛鳥「水遁の術で使う竹筒。手作りだ」

心「キミらハワイでなにやってたの?」

飛鳥「ハワイでNINJAの誤解を広めることに一役買った。主にあやめが」

梨沙「忍者なら忍びなさいよ……まあ、それはそれとして」

梨沙「モノだけじゃなくて、おみやげ話も聞かせてよね!」

飛鳥「スコールに遭遇した時は、思わずはしゃいでしまったよ。初めて、本物のバケツをひっくり返したような……この星を創り上げた原初の雨を体感したから」

ありす「スコール……映像で見たことはありますけど、実際に体験するとどんな感じなんでしょう」

飛鳥「全てを洗い流され、ボク自身のありのままがさらけ出される気分だった。あれは、よかったな」

ありす「なるほど」

梨沙「なるほど、なの?」

心「風邪ひかなくてよかったね♪」

梨沙「しっかし、ウミガメを探したり、イルカの親子を見たり、溺れかけたり。いろいろあったのね」

飛鳥「後半からの参加だったボクですらこれだ。他の3人は、それこそ数え切れないほどの想い出を作っているだろうね」

ありす「それだけ楽しい旅だったなら、最後の夜は少し寂しかったんじゃないですか?」

飛鳥「あぁ。寂寞を感じなかったと言えば嘘になる。ただ、それを覆いつくせるだけの何かが、あの夜には存在した」

梨沙「それって?」

飛鳥「さあ、うまく言葉では表せないモノさ。Pと二人きりで夜景を眺めたり、砂浜を歩いてみたり……その中で、確かな感動があった」

心「二人きりでハワイの夜景! 砂浜! やーん、スウィーティー☆ はぁともそれやりたーい☆」

梨沙「ハートさん、とりあえず二人きりならなんでもいいとか思ってない?」

心「失礼な! 梨沙ちゃんにはハワイの魅力がわからないのー?」ブーブー

ありす「行ったことあるんですか?」

心「ないけど? ほら、なんかほらロマンチック~って感じじゃん♪ スウィーティーな夜を過ごせそうな」

ありす「なんて感覚的であいまいな……」

飛鳥「でも、心さんの言う通りかもしれないな。あの島には、不思議な魅力があった」

飛鳥「ボクもいつになく舞い上がってしまってね」

梨沙「舞い上がって?」

飛鳥「光と闇のイルミネイトの中で」

心「中で?」

飛鳥「ふと、隣を歩くPにボクの鼓動を感じてほしくて」

ありす「感じてほしくて」

飛鳥「ボクの胸に、Pの手をそっと……あ」

飛鳥「いや、なんでもない」コホン

梨沙「待ちなさい。なんでもないわけないでしょ」

ありす「胸に手を……飛鳥さん、それは」

心「ギルティ☆」

梨沙「ていうか、恥ずかしくなかったの?」

飛鳥「……ええと」

飛鳥「………」


飛鳥「後から思い返すと、少し……いや、かなり恥ずかしいな……」プイ

ありす「その、かなり恥ずかしいことを実行させるほどの魅力が……」

心「ハワイすげえ」

飛鳥「まあ、あれだ」

飛鳥「あれがギルティだというのなら、楽園で原罪を犯したボクらが、あの場に永遠にとどまれなかったのも必然だったということさ」

梨沙「ただのスケジュールの都合でしょうが」

心「ギルティからつなげたのはうまかったぞ☆」

その後


心「プロデューサー♪」

P「なんです?」

心「目つむって☆」

P「いやです」

心「よーし、そのままじっと……っておい☆ 拒否したら話が先に進まないじゃん!」

P「いやですよ……なんか背後に阿修羅が見えますし」

心「黙ってはぁとの鼓動を感じろ☆ もうすっごいバクバクだぞ触らなきゃ損だぞ!」

心「もうめちゃくちゃバクンバクンしてて前代未聞の事態だから!」

P「病院に行きましょうよ」


ありす「Pさん、Pさん」

P「ありす。どうかしたのか」

ありす「少し、お願いがありまして」

P「ああ、いいぞ。なんだ」

ありす「まぶたをですね。ゆっくりでいいので、下のほうへ下ろしていってもらえると」

P「流行ってるのか、それ?」

心「よし♪ はぁとは左目をヤるからありすちゃんは右目を頼むわ☆」

心「協力プレイが勝敗をわける!」

P「俺はゲームのボスキャラかなにかですか」

ありす「ゲーム……なるほど」

P「ゲームが好きなのは知ってるけど、興味を持つのはやめてくれ」


飛鳥「………」

飛鳥「なんだか、過去を掘り返されているみたいで気恥ずかしいな……」

梨沙「うっかり口を滑らせるからよ」

飛鳥「まったくだ」

飛鳥「女子は三日会わざれど、あまり変わってはいないようだね。ハワイに行く前と同じで、騒がしくて落ち着きがない」

梨沙「ずっとハワイにいたほうがよかった?」

飛鳥「いいや。そんなことはないさ。決してね」

梨沙「なんで?」

飛鳥「楽園もいいけれど……住み慣れた故郷があってこそのモノだから」

飛鳥「甘い果実ばかりをかじっていても、味気がないだろう?」

梨沙「えっと……アンタの考えだと、ハワイが楽園で、甘い果実なのよね。じゃあ、ここは?」

飛鳥「そうだな……たとえるなら」

飛鳥「……スナック菓子?」

梨沙「コンビニの?」

飛鳥「うん。コンビニの」

梨沙「ふふっ、なにそれ。いいのか悪いのかわかんないわよ」

飛鳥「そうかな」

梨沙「……ま、アンタがコンビニ好きってことを知ってれば、ちょっとはわかるかもね!」フフッ

梨沙「あ、そうだ。飛鳥、今度水族館連れて行きなさいよ」

飛鳥「水族館?」

梨沙「アタシもウミガメとかイルカとか見たいの! アンタだけ楽しむなんてずるいし!」

梨沙「ありす、この辺でイルカのショーとかやってる水族館って知らない?」

ありす「任せてください。すでにタブレットで検索済みです」

梨沙「さすがありすね!」

心「あ、水族館ならはぁととプロデューサーも行くぞ☆」

P「え、俺も?」



飛鳥「……ふふ」

飛鳥「やれやれ、仕方がないな。日本のイルカに会うのも、また違った趣があるか」



おしまい

おまけ



飛鳥(ハワイでコナコーヒーをたくさん飲んだおかげで、少しは苦味に慣れることができた)

飛鳥「今のボクは、あの苦味さえ心地いいと感じることができる……」

飛鳥(ちょうど喉も渇いたことだし、そこの自販機でコーヒーを買おう)

飛鳥「さて、この自販機の品ぞろえは……」

飛鳥「………あっ」

飛鳥「………」


ピッ

ガガー、ガタンゴトン

飛鳥「ただいま」

心「飛鳥ちゃんおかえり♪」

心「あ、MAXコーヒー飲んでる! いいなあ、それスウィーティーでおいしいよね♪」

飛鳥「……エデンだ」

心「はぇ?」



おまけおわり

おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
アイプロ楽しかったです。ハワイ行きたい

シリーズ前作:的場梨沙「で、ハートさんの体重はいくつなのよ」 佐藤心「0キロ☆」

その他過去作
モバP「威勢がいいと異性にモテるらしい?」
モバP「なっちゃんと夏の事務所」
関裕美「自然なプレゼントのねだり方……」

などもよろしくお願いします

あんたやったか

MAXコーヒーはたまに飲みたくなるから困る
もはやコーヒーではないけど
また地方でも売ってくれないかなあ

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