小関麗奈&早坂美玲「アイツのキーホルダー」 (17)


デレマスSSです。
オリジナルユニットとPの話です。

基本的に脚本式ですが、途中で地の文も使います。
念のために注意ということで、お願いします。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1471749268


(事務所)

麗奈「ねぇ、美玲」

美玲「……」

麗奈「美玲!」

美玲「な、なんだよ! うるさいぞッ」

麗奈「このレイナサマを無視すんじゃないわよ!」

美玲「どうせくだらないことだろー」ジトー

麗奈「そんな訳ないでしょ! このレイナサマの発見よッ!」

美玲「……ハァ……で、発見って?」

麗奈「この!……いいわ、聞いて驚きなさい! アイツの鍵を盗んだわ!」

美玲「Pの鍵?」

麗奈「不用心に机に何か置いちゃってたのよね~」

美玲「ワシャワシャの刑をくらう前に戻しとけば?」

麗奈「ウッ……あ、アタシがあんなのに負ける訳ないでしょ!」

美玲「まぁいいけど……って、そのキーホルダーかなり古いな」

麗奈「キーホルダー?」

美玲「革製なのにベロベロだし、リングの場所とか千切れ……」

麗奈「ハッ! 考えすぎよ! こんなくらいで切れる訳ないでしょ!? ほらほら!」

ブン! ブン! ……ブチッ!……カランカランッ……


美玲「…………」

麗奈「…………」

美玲「麗奈。ちゃんとPに言えよ?」

麗奈「い、言える訳ないでしょ!?」

美玲「麗奈」

麗奈「こ、こうやって机の上にまたくっついているように並べて……」

美玲「姑息だぞ?」

麗奈「う、うっさいわね! こっちは死活問題なのよッ!」

美玲「素直に謝ればいいだけだろッ」

麗奈「……か、考えておくわ……」ソーッ

美玲「あ、逃げr」

ガチャッ

麗奈「なッ!」

モバP「入るぞ~っと……なぁ、このへんで鍵を見なかったか?」

美玲「それなr」

麗奈「つ、机に忘れてたわよ! 抜けてるわね下僕ッ!」

モバP「机? あぁ、そうか……あのとき置いていったんだった」

美玲「……」ジトー

麗奈「……」シッシッ

モバP「さて、これで車が……え? うそ……だろ……」

麗奈「ど、どうしたのよげぼく」

モバP「い、いや……何でもない……何でも……今日は出先から戻れないから、遅くならないうちに寮に帰れよ……」

麗奈「分かってるわよ」

美玲「……」

モバP「じゃあ、いってくる……」

カチャッ……


美玲「おい、Pのヤツ、本気で凹んでたぞ?」

麗奈「そ、そ、そうかしら?」

美玲「オマエ、流石にアレはダメだろ」

麗奈「わ、分かってるわよ……」

美玲「まったく……」

コンコン……ガチャッ

ちひろ「失礼しまーす」

美玲「あ、ちひろ……さん」

麗奈「ちひろが来るなんて珍しいわね」

ちひろ「美玲ちゃん、麗奈ちゃん、こんにちは」

美玲「Pなら居ないぞ?」

ちひろ「そのPさんのことなんですけど……さっき何かありました?」

麗奈「!」

美玲「あったと言えばあったな」ジトー

ちひろ「そうですか……実は先ほど、目を真っ赤にしたPさんを見たもので……」

麗奈「!?」

美玲「それだけ大事なものだったんだな……」

ちひろ「え? え?」

美玲「麗奈、ちゃんと説明するぞ?」

麗奈「……す、好きにすれば!」

美玲「そう」

カクカクシカジカ……


ちひろ「あぁ、それで……確かにそれは本当にダメだったかもしれませんね」

麗奈「み、みんなしてなによ! アタシも悪いって認めてあげてるでしょ!?」

美玲「ちひろ、何か知ってるのか?」

ちひろ「えぇ、以前、キーホルダーが年季入っていますねってお話したことがあるんです」

麗奈「……」

ちひろ「実は15年前に人生ではじめて行ったライブの物販品で、大切な思い出の品なんだそうです」

美玲「15年ッ!? う、ウチらより年上だ……」

ちひろ「その感動を忘れないようにって、ずっと肌身離さず持っていて、壊れそうなことはずっと心配していたんです」

美玲「そのライブって、どんなのだったんだ?」

ちひろ「今も活躍している声優さん二人のライブだったそうです。小さいライブハウスで見たって言っていました」

美玲「小さめのライブハウスで……二人……」

麗奈「アタシ達が定期的にやってるわね……」

ちひろ「そのライブのお仕事は、Pさんが自主的に計画しているんですよ。きっと二人が想像した意味を含めてね」

二人「……」

ちひろ「その声優さん二人は、Pさんにとって目標であり、神様に近いのかもしれませんね」

美玲「神様……」

麗奈「……」

ちひろ「そういえば、もうすぐ美玲ちゃんと麗奈ちゃんの恒例ライブですね」

美玲「そろそろリストとか作るんだよな?」

ちひろ「そうですね。普段はPさんが作っていますが……」

麗奈「アタシがやる!」

美玲「はぁ?」

ちひろ「え、え~っと、麗奈ちゃん?」

麗奈「ちゃんと謝るわ! でも、それだけじゃ、レイナサマが許さないのよッ」

美玲「……なら、ウチもやる!」

麗奈「美玲はすっこんでなさい!」

美玲「あのなぁ、同じユニットだぞ? ウチだって決めたいことくらいある!」

ちひろ「……ふふふ……分かりました。では、Pさんには私から伝えておきますね」

美玲「でも、トレーナーさんやリハーサルは……」

ちひろ「おふたりは、誰を味方に付けていると思っているんでしょうか?」ニコリ

二人「……」

ちひろ「ですから、大船に乗った気持ちでライブを準備を進めてください! ね♪」

二人「」コクコク

ちひろ「では、今日は秘密会議も終了して、帰りましょうね」


(数日後)

美玲「曲順か……どうせ最初はおねシンだろ」

麗奈「はぁ?」

美玲「仕方ないだろ。これだけは決まりだし、ちひろにも言われたんだから」

麗奈「そうだったわね……」

美玲「で、ウチらがいつも歌ってるのが……」

麗奈「いつもの順ならここまでは確定ね……って全部じゃない」

美玲「これだとウチらで考える意味がない」

麗奈「ライブの時間とトークの時間……」

美玲「ここ、調整すれば5分くらい作れるな」

麗奈「5分……1曲ギリギリ入るレベルね」

美玲「1曲」

麗奈「アイツ、最近どんなの聴いてるか知ってる?」

美玲「は?」

麗奈「だから、アイツが通勤のときに聴いてる音楽!」

美玲「アイドルの曲じゃないぞ」

麗奈「アタシ達のユニット名なら、アイドルの歌かどうかなんて関係ないでしょ?」

美玲「それもそうか、たまには麗奈も役に立つなッ!」

麗奈「たまにはって何よ! たまにはって! レイナサマは常に最強よ! アーーーハッハッハッゲホゴホッ!!」

美玲「あーもう、またむせる」ナデナデ

麗奈「だから、気安く背中を撫でるんじゃないわよ!」

美玲「だったら、本番以外でも高笑い成功させよろッ!」


麗奈「……まぁ、いいわ。じゃあ、まずPの音楽プレイヤーの覗き見ね」

美玲「仕方ない……またアイツからお勧めの音楽をもらってくるか」

麗奈「は?」

美玲「ウチ、Pのお勧め音楽を定期的にもらってるから」

麗奈「そういうことは先に言いなさいよ!」

美玲「言える流れじゃなかっただろ!?」

麗奈「まぁいいわ。で、他に情報は隠してないわよね?」

美玲「う~ん……あ、Pが最近楽しんでるアルバムがあった」

麗奈「楽しんでる?」

美玲「そうそう。確か……」ポチポチ……

麗奈「何やってるのよ」

美玲「歌手の名前を探してるんだ。あ、この人だ! この名前で調べて……」

麗奈「サイト黒ッ!」

美玲「今回はこんな感じなのか……」

麗奈「アンタ、コイツ知ってんの?」

美玲「まぁ、Pはハマってるし」

麗奈「えぇ……」

美玲「この人、プロじゃないけど、すごく上手いんだ。あ、サンプル動画……」

麗奈「何この音」

美玲「そういうジャンルなんだ! へぇ、今回もすごいな……」

麗奈「なんで聴き入ってんのよ! ……って、ちょっとストップ」

美玲「なんだよッ!」

麗奈「今の! 今の曲よ!!」

美玲「はぁ?」

麗奈「これ! これよッ! なんとかできないの!?」

美玲「……流石になぁ……」

ガチャ


ちひろ「こんにちは、調子はどうですか?」

麗奈「いいとこに来たわね! ちひろ!」

美玲「え? 本当にやるのか?」

ちひろ「え~と……どうかしましたか?」

麗奈「この曲をライブで歌うようにできない?」

ちひろ「どれどれ」

美玲「プロじゃなくて、個人で作ってる曲なんだ」

ちひろ「あ、Pさんが好きな歌手さんですね」

麗奈「だから、なんで美玲もちひろも知ってるのよッ!」

美玲「麗奈がひとりでイタズラを考えてる時間にPと話したりしているからなぁ」

麗奈「ウッ……」

美玲「麗奈もイタズラだけじゃなくて、Pと話せばいいのに……」

麗奈「うっさいわね! レイナサマは世界征服の計画で忙しいのよ!」

ちひろ「……何とかしてみましょう!」

美玲「本当か!?」

ちひろ「はい! では、何か進展したら連絡しますね」

麗奈「任せたわッ」


(レッスン後の車内)

モバP「で、レッスンの情況はどうなんだ?」

麗奈「美玲がしごかれてる」

モバP「え?」

美玲「麗奈もだろッ!」

モバP「ふたりともしごかれてるのか……」

麗奈「ちひろのやつがマスタートレーナーの地獄コースを準備してるなんてね……」

モバP「ハァ!?」

美玲「麗奈!」

麗奈「ぁ……な、なんでもないわよ! 忘れない下僕!!」

美玲「でも、本気で準備はしてるぞ! ってことは知ってろよ!」

モバP「分かった」

麗奈「それにしても……ふわぁ……眠い……」

美玲「ウチも……」

モバP「疲れてるんだろ? 寮に着いたら起こすから寝てていいぞ」

二人「zzz……」

モバP「相変わらず電池が切れると静かだな」

モバP「それにしても全て内緒でヘルトレコースか……ライブ楽しみだな」


(ライブ当日:地の文)

 俺は小さいライブ会場の2階席に居る。

ここは俺しか入らないスペースで、舞台を正面から眺められる絶景ポイントだ。

地獄の特訓を耐え抜いて、数日前より姿勢も空気も凛としたふたりが今朝は頼もしく見えた。

ライブ開始までもう少し……

そういえば、ついさっき、麗奈にキーホルダーを壊したことを謝罪された。

彼女らしい呟くような「ごめんなさい」だった。

でも、それが麗奈だし、俺はいつかは壊れるものだと覚悟をしていたから許した。

ポケットに手を入れてみる。

鍵を触ってもいつもなら指に引っかかる皮生地の感触が無くて……正直、少し寂しい。

俺は鍵とは反対のポケットに入れておいた壊れたキーホルダーを取り出して眺める。


ボロボロになった革製のキーホルダー


刻まれているのは、二人の名前とライブの名前


ライブというイベントの興奮、盛り上がりをはじめて経験した記憶がよみがえる。

そんなライブを音楽が出来ない自分が準備するには、この職業が最適だと思った。

そして、美玲と麗奈を見たときに、きっと二人なこの記憶を超えてくれると何かが告げた。

今日は、彼女たちが自分で作りたいと言ってきたライブ

そのとき、会場の明かりが消える。

さあ、もうすぐ開演の時間だ。


 ライブの最初は事務所の規定で『おねシン』と略される曲が必ず歌われる。

正統派なユニットは、その曲に合わせて時計のアクセサリーが付けられた白いドレスを用意する。

それはデビューした子全員が必ず袖を通す衣装だからだ。

 でも、美玲と麗奈は違う。

二人とも小悪魔のような黒を基調としたカッコイイデザインの衣装を身に纏っている。

マイクですら、麗奈は拡声器型の特注品、美玲も髑髏のモチーフがある杖のようなマイクを使っている。

これが俺たちのスタイル。

最初はユニット名が決まらなくて、二人の名前を合わせて『みれいな』なんて呼んでいた。

けど、彼女たちの臆病だけど果敢で、脆いけれど尖っているスタイルを貫いて

王道のアイドルなんでものを蹴っ飛ばすくらい強いユニットの形が出来たとき、


『ille girl』(イリーガール)


という名前に行きついた。

名前の通り、何にも縛られない無法(illegal)な少女(girl)のユニットだ。

そんな気持ちで名づけたのだった。

 二人はどんどんライブを盛り上げていく。

麗奈が煽り、美玲が客席にマイクを向けて叫ばせる。

たまにマイクを交換して歌ったり、ソロで歌ったり、トークで盛り上げている。

以前よりも洗練されたダンスと歌に、このライブに向けて行った特訓の成果が見えている。

俺は、成長を肌身で感じて自然と笑みがこぼれてしまった。


 ふと、気になって時計を見る。

いつものタイムスケジュールよりも進行が早めだ。

そんなことを思った瞬間、いつもと違う静寂が訪れる。

二人が並んで、いつもの特注ではなく、インカムマイクを付けている。

更に、今まで演奏していたバンドマンが全員舞台から降りている。

そのスタイルにファンたちも反応出来ていないのか、見守るように言葉を待っている。


「ここで、今日だけのスペシャルな曲を披露してやるッ!」

「レイナサマの素晴らしさに跪くがいいわ! アーーーハッハッハッ!!!」


『ウオオオオオオオオ!!!!』

サプライズの1曲の登場に会場内の熱気が一気にヒートアップする。

「いくぞー!」

「これが二人の……」


「「Apocalypse」」


静かに、でも力強い曲が鳴り、二人が踊りだす。

これは……ハードコアテクノ系の曲だ。

しかも、この曲は最近、俺の好きな人が出した曲……

本来はひとりの歌手さんが歌っているが、二人で交互に歌詞を歌いパフォーマンスを重ねる。

『アナタなら』

その瞬間、二人が俺を指差すポーズをして、叫ぶように歌った。

いや、訴えた。


『神さえも殺せるだろう』


その目には、強い意志が宿っていた。

『神さえも殺せる』

その言葉の意味は、考えなくてもすぐに分かった。

凄いと思った相手を神格化じゃないが、憧れを強く抱くことが多い、

そんな俺へ向けた彼女たちなりのプレゼントだ。


 俺はそんな貫くような強い言葉に魅入られ、二人に魅了される。

あぁ、俺はなんて果報者で、素晴らしいアイドルのプロデューサーなのだろう。

このライブの後、今度は俺が彼女たちのために更なるステップへ行く仕事を取ってくる番だ。

ライブの熱だけではない、確かなメッセージに導かれて、

まだ使っていないエンジンが駆動するような衝動が自分に目覚めようとしていた。


(ライブの後:地の文)

 ライブの後、俺は二人を本気で褒めて、全て伝わったと伝えた。

照れくさそうにしたり、赤面して引っ掻こうとしてきたり、

本当にこの子たちは素直じゃなくて可愛い。

 そんな雑談をしていたとき、二人が俺に小さい袋を渡してきた。

その中身は……


MIREI HAYASAKA

ILLE GIRL

REINA KOSEKI


と刻まれた革製のキーホルダーだ。

「そ、それ、大切にしろよなッ!」

「アタシが壊したのより使ってる時間が短かったらお仕置きだから!」

二人が、赤面しながらも笑顔で伝えてくる。

俺は、分かったと出来る限りの笑顔で伝えたけれど、

どうやら不器用な笑顔になっていたみたいで笑われてしまった。

 数日後、緑の悪魔から法外なレッスン代を請求されようが、

この二人をもっともっと輝かせて、なんならオマケでもつけて払ってやる。


そんな気持ちになった最高の夜だった。


(終わり)


以上です。

先日、リアルに15年くらい使い続けていたキーホルダーが壊れてしまい、

自分なりの供養の気持ちを込めて書きました。

そんなあとがきで今回は締めます。


あ、おまけの曲の情報ですが、

https://www.youtube.com/watch?v=nM2oFKTuMwk

こちらの5トラック目の曲を使っています。

同じ歌手さんの曲をSSの演出に使った過去作がいくつかあるのでタイトルだけ……


早坂美玲「teleportation」

(デレマスSS)モバP「きっと二人で明日、奏で」 


もし、興味がありましたら、

こちらもよろしくお願いいたします。

乙おつ

良かった

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