関裕美「自然なプレゼントのねだり方……」 (21)
裕美「………」
P「裕美? 俺の顔になにかついてる?」
裕美「あ……ううん、そうじゃないの」
P「じゃあ、なに? さっきから俺のこと見てるみたいだけど」
裕美「えっと……なんでもない」
P「? じゃあ、俺は会議に行ってくるから」
裕美「い、いってらっしゃい」
P「ああ」
ガチャ、バタン
裕美「………はあ」
裕美「もうすぐ私の誕生日……Pさん、なにかくれるのかな」
裕美「く、くれるよね。他の担当の子には、ちゃんとプレゼントしてるし。うん」
裕美「でも、もしくれなかったら……仮にくれるとしたら、なにをくれるんだろう……」
裕美「……はあ。これじゃ私、ただの卑しい子みたい」
裕美「別に、絶対にプレゼントがほしいわけじゃ………」
裕美「やっぱり、Pさんからのプレゼントはほしいな……」
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のあ「その感情、大事にしなさい……」
ヘレン「欲望は、うまく扱えば、己を世界レベルへ高めるための道具となるわ」
裕美「………」
裕美「ひゃあっ!? き、聞いてたんですか!? 部屋、誰もいなかったはずなのに」
ヘレン「常識を疑いなさい」
のあ「固定観念を払いのけなさい」
裕美「ぐ、具体的な内容がなにひとつ出てきていないのに説得力がある……」
ヘレン「さあ、行くわよのあ」
のあ「ええ」
裕美「え、どこか行くんですか?」
ヘレン「ザッツライト。世界レベルを磨くため、私達は向かうの」
のあ「………」コクリ
裕美「は、はあ……なんだか、すごい場所に行くみたいですね」
裕美「気を付けて、くださいね?」
ヘレン「フッ、心配は無用よ。けれど、その気遣いはありがたく受け取っておくわ」
のあ「裕美。あなたは優しい……」
裕美「い、いえ。そんなことは」
のあ「ヘレン……行きましょう」
ヘレン「そうね。私達の次なる舞台」
ヘレン「中華街・制覇へ!」
のあ「今日こそ、全品コンプリートするわ……その後ハマスタへ行きましょう」
ヘレン「オーケー。あの球場の雰囲気は好きよ。外国人がメジャー風の応援をすることもあるから、まさに世界レベルね」
ガチャ、バタン
裕美「………」
裕美「あ、アジアレベル……」
裕美「しかも野球観戦まで予定に入れてるし」
裕美「はあ……えっと、なに考えていたんだっけ」
裕美「世界レベル……じゃなくて、えっと」
裕美「そう。Pさんからの誕生日プレゼント」
裕美「ここまで気になるなら、いっそ。それとなく内容を聞いてみるのもありかな……」
柑奈「呼びました?」にゅっ
裕美「きゃあっ!? か、柑奈さん! 全然呼んでないですけど!」
柑奈「え? でも、あり(うら)か(ん)なって」
裕美「どんな耳してるんですか!」
柑奈「だいたいちょっと~、補足しただけ~♪」ラララー
裕美「ちょっとじゃないんですけど。7文字中3文字補ってますよ……」
柑奈「ラブは互いに補い合うことで強くなるんです」キリッ
裕美「いいこと言ってる気もしますけど、今はまったく関係ないです」
柑奈「なるほどなるほど。プロデューサーさんからのプレゼントの内容が気になる、と」
裕美「はい……嫌な子ですよね。私」
柑奈「そんなことないない! 大好きな人からのプレゼントなんだから、気になって当然!」
裕美「だ、だいす……!?」
レナ「ダイス勝負は得意よ」
裕美「だからみなさんどこから出てきてるんですか!」
柑奈「それで、大好きじゃないの?」
裕美「そ、それは……その。もちろん、嫌いじゃないし……好き、ではありますけど」
柑奈「ラブ? ラブ?」
レナ「ラブラブ?」
裕美「も、もうっ! レナさんまでからかわないでくださいっ!」カアァ
レナ「ふふ、ごめんなさい。この歳になると、甘酸っぱい恋愛の匂いに食いついちゃって」
裕美「ほ、本当に違うんです。恋愛とか、そういうのじゃなくて」
裕美「ただ、私の世界を変えてくれた人で……えと、えとえと」
莉嘉「えとえと前からずっと~♪」
柑奈「それからそれから~?」
裕美「好きです……あっ」
レナ「………」ニヤニヤ
柑奈「………」ニヤニヤ
莉嘉「………」ニヤニヤ
裕美「ち、違うから! 本当にラブじゃないから!!」
柑奈「かわいい」
レナ「かわいいわ……私の中学時代を思い出すわね」
莉嘉「ラブ&ピース☆」
柑奈「あ、それ私のセリフ」
柑奈「まあ、そこはひとつおいといて」
裕美「置いとかれると困るんですけど……」
柑奈「うまく気持ちを伝えられないときは、歌の力を借りましょう!」
裕美「歌?」
柑奈「そう! 歌にのせて、それとなーくプロデューサーさんにプレゼントのことを伝えるんです!」
レナ「いい案ね」
莉嘉「面白そう!」
裕美「なるほど。確かに、歌で表現するなら、直接言うよりもやりやすいかも」
裕美「でも、具体的にどうすれば」
柑奈「そこは今からお手本を見せます」ガタゴト
莉嘉「柑奈ちゃんがギターを構えた!」
レナ「戦闘態勢に入ったわね」
柑奈「今~、わたしの~♪」
裕美「これは……『翼をください』?」
レナ「なるほど。翼がほしい時にはこの歌を使えばいいのね」
裕美「翼がほしい時ってどういう時ですか」
レナ「………」
レナ「なんか、飛びたいとき」
裕美「レナさん、テキトーに答えてませんか」ジトーー
心「翼がほしい☆ ていうかよこせ☆」
裕美「また増えた!」
飛鳥「翼がなくとも、飛べる空がある」
裕美「さらに増えた!」
裕美「はあ……疲れた」
裕美「結局全員一緒にハマスタ行くって言って出て行ったし。横浜スタジアムに何があるの……?」
夕美「もう少しで花開きそうなつぼみの野球選手たちかな」にゅっ
裕美「はあ、そうなんですか」
夕美「……あれ? 私がいきなり出てきたこと、驚かないの?」
裕美「もう慣れました」
夕美「ええー?」
夕美「なるほど。Pさんがどんなプレゼントを用意してくれるのか、気になるんだ」
裕美「はい」
夕美「その気持ち、わかるなあ。大切な人からの贈り物って、すっごく気になっちゃうよね」
裕美「そうなんです。どうしてかわからないけど、なんだか……知りたくて知りたくて、しかたなくて」
夕美「どうしてかわからない、か。ふふっ」
裕美「夕美さん?」
夕美「ううん、なんでもない。こっちの話だから」
夕美「うーん……そうだ! 普段と違う自分になりきってみるのはどうかな」
裕美「普段と違う自分?」
夕美「そう。違うキャラを演じながら、プレゼントの内容を聞いてみるの」
夕美「そうしたら、『そういうキャラだから』ってことで聞きやすいし、Pさんも軽い感じに答えてくれるかもしれないし」
裕美「なるほど……ちょっと、ありかもしれませんね」
夕美「でしょ?」
裕美「違うキャラ……どんな感じにしようかな」
夕美「そこは任せて! もうなんとなく決めてるから」
裕美「え?」
ガチャリ
愛梨「エースを狙え~♪」
裕美「岡ひろみですね」
夕美「うん♪」ニコニコ
裕美「………」
裕美「あの。まさか、『ひろみ』だからですか」
夕美「うん♪」
裕美「……どんな顔をすればいいのかな」
夕美「笑顔?」
裕美「今は難しいです」
夕美「そんなことないよ。裕美ちゃん、初めて会ったころと比べてずっと笑えるようになったもん」
裕美「その言葉はとてもうれしいですけど今は関係ないです」
裕美「そもそも、岡ひろみって……」
千秋「今、日本ハムファイターズ期待の若手外野手、岡ヒロミ選手の話をしたかしら?」
裕美「してないです! ここでも野球につながるの!?」
茜「あーちーちーあーちー!!!」
裕美「それは郷ヒロミ!」
こずえ「あたっくー、あたっくー、なーんばーわーん」
裕美「こずえちゃん違い!! 絶対上戸アヤさんから飛んだよね!?」
アヤ「ん? 呼んだ?」
裕美「呼んでないです!!!」
裕美「はあ、はあ……」
裕美「疲れた……なんで私、こんなにツッコミさせられたんだろう」
裕美「そんなキャラじゃなかったと思うんだけど……」
P「キャラがどうかしたのか」
裕美「うん。それが……」
裕美「って、Pさん!?」
P「ただいま。会議が終わったから、帰ってきたんだ」
裕美「ああ、そうなんだ。おかえりなさい。あと、お疲れ様」
P「うん。ありがとう」
P「そっちも、ずいぶんお疲れみたいだな」
裕美「うん……それがね。今日はみんな、なんだか……テンション?がおかしくて」
P「テンション?」
裕美「そう。みんなでいっせいにボケてきて、私ひとりがツッコむことになったの」
P「はは、なんだそりゃ」
裕美「本当だよ? すっごく大変だったんだから」
P「もうすぐ誕生日なのに、災難だったな」
裕美「まあ……いろんな人とおしゃべりできたのは、よかったけど」
P「そうか。まあ、みんな誕生日には何か用意してくれるさ」
裕美「Pさんも?」
P「もちろん。裕美が喜びそうなものを選んだつもりだ」
裕美「今、聞いちゃダメ?」
P「ダメ」
裕美「けち」
P「ケチじゃない。雰囲気を大事にしているだけだよ」
裕美「雰囲気かあ……」
裕美「………あれ?」
裕美(今、ごくごく自然に、プレゼントのことを聞けた?)
P「裕美?」
裕美「あ、え? ああ、うん。なんでもない、なんでもない」
P「そうか……なんにせよ、いつもの裕美に戻っているみたいで安心したよ」
裕美「いつもの私?」
P「そう。俺が出かける前は、なんだか表情がこわばって、肩に力が入っているみたいだったから」
裕美「あ………」
裕美(そういえば……みんなに振り回されているうちに、肩の力がすっかり抜けちゃっていたような)
裕美(まさか、みんな……私のために、わざとボケ倒していたの?)
裕美「……Pさん」
P「ん?」
裕美「私、ちょっと出かけてくる!」
P「どこへ」
裕美「中華街! あと、ハマスタ!」ニコッ
裕美(みんなの真意。本当のところは、わからないけれど)
裕美(とにかく、お礼を言いに行こう)
裕美「ふふっ」
中華街
のあ「……はっ」
ヘレン「どうかしたの」
のあ「裕美……ここに来るわ」
レナ「あら。それはまずいわね」
夕美「せっかく裕美ちゃんに内緒でプレゼントを買いに来たのに、バレちゃったら台無しだね」
柑奈「ここはもう一度、誰かがボケ倒して足止めするしかないですね」
千秋「そうね。じゃあ、誰がその役目を」
柑奈「千秋さん」
千秋「え?」
莉嘉「千秋さん!」
愛梨「千秋さん~」
千秋「ちょ、ちょっと待ちなさい。なぜこれだけいる中で私なの」
ヘレン「一番ボケで時間を稼げそうだから」
千秋「それ、どういう意味ですか!?」
のあ「わかるわ」
柑奈「わかります」
千秋「も、もう~、みんなして……」ワタワタ
レナ(かわいい)
夕美(かわいい)
おしまい
おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
関ちゃん誕生日おめでとう
前作らしきなにか:関裕美「自然なデートの誘い方……」
その他過去作
アナスタシア「またひとつ、約束を」
的場梨沙「で、ハートさんの体重はいくつなのよ」 佐藤心「0キロ☆」
依田芳乃「趣味は石川集めでしてー」
せかい、これはせかいですわ
乙乙
乙
安定のツッコミタイプ好き
乙
中華街の中心でボケ倒す千秋か
かわいい…関ちゃんかわいい……
乙
乙です
いつもとちょっと作風違う?
こういうのも面白いね
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