関裕美「奈緒さんの誕生日?」向井拓海「おう」 (36)

関連作、こちらをお先にどうぞ。

関裕美「菜々さんから誕生日に貰った兎のぬいぐるみが…」



「おめでたいね!」

明日は9月16日、奈緒さんのお誕生日だ。
私もお誕生日には皆に祝って貰えて嬉しかったな。

「だろ?」

私がお誕生日での出来事を思い出しているのを気付いたのかニコッと拓海さんは笑う。

「それでアタシたちとしては祝ってやりてぇ訳だ」

「うん!凄くいいと思う!」

…きっと素敵なお誕生日になる。

「だが一つ問題がある!」

拓海さんは私の鼻の先に人差し指を向ける。

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「…問題?」

お誕生日、奈緒さん忙しかったりするのかな?

「それは」『それはトライアドプリムスの他のメンバーのことだな』

「…おい、晶葉、アタシの台詞を取るなよな」

拓海さんの後ろから晶葉ちゃんがヒョコリと現れます。

「ナナもいますよ~♪」

菜々さんも……。

「あー…まぁ、晶葉の言った通りなんだが、アレだ…」

「凛、奈緒、加蓮は仲良しユニットってヤツだ、どうせ別口でもう一回祝うんだろうよ」

…言われてみると確かに…皆仲いいもんね。
あんな仲良しって凄く、素敵だと思う。

「せっかくだ、アタシたちで先手を取って祝ってやろうというヤツだな」

「凛ちゃんや加蓮ちゃんに負けずにお誕生日を祝っていこーってヤツですねっ♪」

「何、彼女にとってインパクトのある誕生日をプレゼントしてやろう」

わっ、三人ともやる気満々…。

「わ、私も…頑張ります…!」

ぎゅっと両拳を握って、小さくガッツポーズ。

「よっしゃ、腹は決まったな!」

ポムポムと私の頭に手を載せる拓海さん。
…ちょっとこそばゆい…。

「…ふふふ、君ならそう言うと思ってたよ」

晶葉ちゃんもとっても楽しそう。
うん、私も頑張ろう。
不思議と笑みが零れてきて、なんだか楽しい気がする。
……もっともまだ何もやってないんだけど…。

「でも先手を取って祝うって何をやるの?」

「ふむ、それなんだが、明日は奈緒の誕生日には事務所以外の場所で祝うように助手と手配した」

「プロデューサーさんと?」

「これで奈緒のヤツは明日は事務所で一人きりになるだろうな」

「準備が整ったら凛ちゃんか加蓮ちゃんに事務所まで奈緒ちゃんを呼びに行って貰いましょう♪」

「そっか!あれ…?でもインパクトのある誕生日って……?」

「あぁ、それなんだがな…」

晶葉ちゃんがニヤリと悪い笑みを浮かべたように見えた。



『や、やぁ!僕はウサミンだよ!』

『ウ、ウサミンって何だよ!?』

そして、奈緒さんの誕生日当日。
私はセット中の誕生日のパーティー会場からそう離れていないある場所に設置された巨大なモニターと睨めっこをしていた。

兎のぬいぐるみの目を通して送られてくる映像を見ながら…。

…どうしてこんなことに…。


「裕美ちゃん!声が硬いですよっ!」

「もっと楽しそうにっ♪」

『ぼ、僕は菜々様から呼ばれてウサミン星から遊びに来たんだ!』

マイクを持ち、ウサミンに声を当てていく。

ウサミンの視界の中でステッキが奈緒さんに向けられるのがちらりと見えた。

『…あのなぁ…いきなりそんなこと言われて信じる訳……』

「前回でウサミンの操作は慣れたからな、アタシに任せろ」

拓海さんの声が後ろから小さく聞こえて来たかと思うとウサミンの視界がぐるんと一回転する。

なにっ、何事っ!?

「バク宙も余裕だな!」

なんで!?なんでバク宙!?このタイミングで!?

「ふむ、ウサミンの全身の関節部を全点検して出力を上げたかいがあったな!」

「まぁそのせいでバッテリー駆動時間が減ったが…」

そこって削っちゃ駄目な部分だよねっ!?

『す、凄いんだな…ウサミン星って…』

凄いことには凄いと思うけどこれ信じてるとかそういうのじゃないよね。

『なんか魔法少女のマスコットみたいな見た目してるけど…』

『……なんだか不吉だな』

なんで魔法少女のマスコットで不吉になるの…?


「裕美ちゃん!気にしてはいけません!」

むぅ、なぜか菜々さんからストップが入りました。

『…よく分からないけど、僕は奈緒ちゃんの誕生日のお祝いに来たんだ!』

『あたしの誕生日?』

『あぁ、そういやそうだったな』

『おめでとう、奈緒ちゃん!』

ポフポフと画面の中の兎は両手を打ち合せます。

『へへ…少し照れるな…』

奈緒さんは頬に指先をあてて微笑みます。
…奈緒さんってやっぱり綺麗な人だなぁ…。

『……』

『…どうしたんだ?』

『…ううん、何でもないよ!』

『そうか?』

『あーあ、これでまたお姉さんに戻っちゃったか…』

お姉さん…?
なんのことだろう…。
なんだか少しだけ寂しそうな顔をしてる気がする…。

『お姉さんに戻るってどういうこと?』

『…凛と加蓮って言って分かるか?』

『うん』

凛さんと加蓮さん、奈緒さんも加えてトライアドプリムス…。
とっても…素敵なユニットだと思う。

『この間が加蓮の誕生日だったから、これで加蓮は17歳な訳だ』

『うん』

9月5日…加蓮さんの誕生日だ。

『それであたしは今日で18歳、つまり9月5日から昨日までは加蓮とは同い年…なんてな』

『まぁたいしたことないんだけどちょっと面白いだろ?』

『三人共誕生日が近いもんね』

『おっ、詳しいんだな?』

『あ、あはは…』

凛さんの誕生日が8月10日だから…凄く濃い一ヶ月とちょっと。

『お誕生日が近くて同じユニットのメンバーの中良しさんって凄いよね』

『…はは、まぁそんな訳であたしは少し年上のお姉さんな訳だ』

『っぽくないって言われるかもしれないけどな!』

さっきまでの少し寂しそうな表情はなりを潜めて奈緒さんは笑顔に戻る。

『まぁ、これでもそれなりに色々考えることがあるというか…』

奈緒さんは小さく頬を掻く。

『ははっ、こんなことウサミンに言ってもしょうがないな』

『まぁ、アンタの中身が誰なのかは分かんないけどな!』

あ、あはは…やっぱり信じられないよね…。

『なんのことだか僕には分からないかな?』

私はめげずにウサミンに声を吹き込んでいく。
私にだって意地がある……。

た、多分……。
あんまり自信はないけれど、ウサミンを、演じる。

私の声に合わせて兎のぬいぐるみはヒョコヒョコと、コミカルな動きを続ける。

うん、動きは拓海さんにお願いして大丈夫……。

『…僕は、奈緒ちゃんは立派なお姉さんだと思うよ』

『先導するんじゃなくて…いつの間にか隣に居て…』

『いつも手を引いてくれる、そんなお姉さん』

『な、なんて……?』

私が言うのはちょっと変かな…?

『…そんなこと言われたのはウサミンが初めてかもな』

『…ウ、ウサミン星人は嘘を吐かないんだよ?』

ごめんなさい、菜々さん、ハードル上げました。

『あたしとしては凛と加蓮に引っ張られてるような気もしてたんだけどな』

…それでも。

『…それはそれで羨ましい関係だと、僕は思うよ』

『そっか…』

『うん』

奈緒さんは机の上に立っていたウサミンを胸に抱える。

『へへっ、兎のぬいぐるみに励まされると何か変な気分になるな』

『……酷いなぁ、兎のぬいぐるみなんて…』

「ナナにも!ナナにも代わってくださいっ!」

…私は黙って頷いて、菜々さんにマイクを渡す。



『あー!あー!』

『……?』

マ、マイクテストじゃないんだから駄目だって…!?

『…こほん、奈緒ちゃん、改めてお誕生日おめでとうございます!』

『……あー、なんとなく分かったぞ、これ菜々さんだ』

『…ソ、ソンナコトナイデスヨ?』

『やっぱり菜々さんだ…』

…菜々さんまだ一言しか喋ってないのに…

『よし、しょうがないな!私が完璧なウサミン星人を演じてみせよう!』

私と菜々さんの間にひょっこりと入った晶葉ちゃんが菜々さんの手からマイクを取る。

『もー!酷いですよっ!晶葉ちゃん!』

声!声入っちゃってるって!
ボイスチェンジャーで声で分かっちゃうことはなくても名前まで言っちゃったら…。

『はは、向こう側はしっちゃかめっちゃかみたいだな』

……うぅ、その通りです…。

『…でも最初の声は誰が……』


『奈緒、居る?』

カメラの向こう側で事務所の扉が開くのが見えた。



「奈緒、居る?」

「お、凛か、遅かったな」

いつもならもうちょっと早く来るのにな。

「遅いって何のこと?」

「あれ、今日は奈緒の誕生日だから事務所集合じゃなくて別の場所でパーティーするって聞かなかった?」

「えっ、そうだったのか?」

どおりで誰も来ないはずだ…。

「あたしには連絡が来てな……」

そこまで来てふと思い至る。

「あー…そういうことか…」

あたし以外は誰も事務所に来ないから…。

「そういうことって?」

「ほら、そこに居る兎のぬいぐるみ…」

「……?なんにもないけど…」

「…居ねぇ…」

っかしぃーな、さっきまでそこに居たんだけど。

「さっき、私が事務所に入ってきた時に入れ替わりで兎のぬいぐるみが猛ダッシュで外に走ってったけどもしかしてそれ?」

「……それだな…」

に、逃げられた……。

「そういや加蓮は?」

「先に向こうで食べてる」

「速いな、オイ」

「冗談だよ」

「別に先に食べてても良かったんだけどな」

「主役を置いて先食べる訳ないよ」

「ん、そっか…」

……少し照れくさい。

あー、そういや…。

「一人称が僕なのって幸子の他に誰か居たっけ?」

「唐突だね、僕というよりボクのような気もするけど…」

「いや、それ、分かんねぇよ…」

「でも幸子って感じじゃなかったんだよな…」

もうちょっとキョドってた…?
なんていやいいんだろうな……。

「…よく分からないけど、そろそろ行かないと、皆待ってるよ?」

「……そうだな、そろそろ行くか」



あたしを出迎えたのは巨大なクラッカーを構えたみんなだった。
そして、パァンと派手な音が響いて、クラッカーの中身の紙吹雪が舞う。

「…祝う側は楽しいけど実際自分が祝われるとなんかこう…ムズムズするな」

あたしがそう言うと加蓮がこっちに歩いて来る。

「何言ってるの奈緒、一年に一度なんだから楽しまなきゃ」

「はは、そうだな」

ニコニコした加蓮があたしの頭に手を伸ばす。

「紙吹雪、頭に付いてるよ?」

「あっ、ありがとな…」

「よぅし、私が料理取ってあげようか!何食べる?」

「加蓮、テンション高いな」

「そりゃ、親友の誕生日だからね!」

……やっぱりちょっと気恥ずかしいな。

「おめでとうございます!奈緒ちゃん!」

「…菜々さんから今日祝ってもらうのって二回目ですよね…?」

「ナ、ナンノコトデショウ」

菜々さんが固まった…。

「…すいません、聞かなかったことにしてください」

「え、えへへ~、これで奈緒ちゃんも晴れてナナよりも年上になりましたね!」

「………」

「どうしました、奈緒ちゃん?」

突っ込んじゃ駄目なのかこれ…。

「お姉ちゃんって呼んであげましょうか?」

「ごめんなさい、本当に勘弁してください!」

「流石に食べきれるか、これ…?」

凛や加蓮、そして菜々さんと会話して、なぜか加蓮に山盛りにられた料理を見て嘆息する。

「奈緒さんは何、飲む?」

「悪いな、あたしはウーロン茶でいいかな」

裕美が紙コップをあたしに差し出す。

「はい、ウーロン茶、お誕生日おめでとうございます」

「ありがとうな」

「全く、皆して誕生日だからってあたしを弄りにかかるのは勘弁して欲しいな」

「あはは、勘弁して欲しいって言ってる割には楽しそうだよね」

「……まぁな…」

実際楽しいし…なんて凛や加蓮や他の皆には言えねぇけど…。

「…そういや、裕美も食べるかこれ?」

あたしは山盛りに料理の盛られた皿を指さす。

「ぼ、僕はいいかな…」

……ん…?

「僕…?」

「僕ってまさか裕美が最初のウサミンか!?」

ビクッっと大げさに裕美が反応する。
分かりやすいな…。

「僕じゃないよっ!?」

「僕…私……あ、あれ…!?」

裕美は暫く僕とか私とかポツポツと呟いては首を捻っている。

「あ…ぅ…」

「ど、どどどうしよう奈緒さん、僕…じゃなくて私変な癖付いちゃったかも!?」

「落ち着け!」

あたしはわたわたと両手をパタパタさせる裕美の肩を押さえてを落ち着かせる。

「あー…アレだ…」

「そ、それはそれでアリかも…しれないし…」

「良くないよっ!?プロデューサーさんに怒られちゃうって!?」

「よし!次は一人称あたしにしてみるか?」

「…奈緒さんと一緒だよね、それ…」

「うー……」

ちょっと弄りすぎたか…?

「冗談だって、冗談、なんならあたしが裕美のお姉さんになってやろうか?」

「あの時だってあたしのこといいお姉さんだって言ってくれたしな…」

「だ、だから、僕……じゃなくて私じゃないよ!」

パタパタと裕美はかけ足で逃げていく。
……なんか目の前で逃げられると追いかけたくなるな…。

「悪かった、悪かったって!」

「な、なんで追いかけてくるの!?」



「で、なんであの二人は追いかけっこしてるの?」

私は人と人の間を縫うようにして走る奈緒と裕美ちゃんを見ながら呟く。

「うーん、あれかな、凛はあんまり手が掛からないから楽しくて仕方ないのかも?」

加蓮はニコニコしながら手巻き寿司をくるくる巻いている。

「どういうこと?」

「なんて言えばいいんだろう…ふふ、凛もそのうち分かるんじゃない?」

「そういうものかな?」


「そーゆーもんだろ」

「…拓海さんたち、いつの間に居たの?」

ポンと肩を叩かれて振り返ると
後ろにはいつの間にか拓海さん、菜々さん、晶葉ちゃんが居た。

「ナナ、なんとなくそれ、分かりますよ♪」

菜々さんは器用に手を動かして綺麗な手巻き寿司を作っていく。

「君はなかなか器用だな」

「ふふふ~、コツがあるんです!」

「アタシにも一個作ってくれよ」

「ナナにお任せあれっ!」

「……まぁ、いいかな…」

奈緒、楽しそうだし。

「菜々さん、私にも一個ください」

「ナナ、なんとなくそれ、分かりますよ♪」

菜々さんは器用に手を動かして綺麗な手巻き寿司を作っていく。

「君はなかなか器用だな」

「ふふふ~、コツがあるんです!」

「アタシにも一個作ってくれよ」

「ナナにお任せあれっ!」

「……まぁ、いいかな…」

奈緒、楽しそうだし。
困り顔のプロデューサーの周りをくるくると回る奈緒と裕美ちゃんをチラリと見て静観を決め込むことにしようかな。

「菜々さん、私にも一個ください」



『おい!凛、加蓮、誰でもいいから、誰かこの二人なんとかしてくれ!』

……頑張ってね、プロデューサー。


END

関裕美
http://i.imgur.com/VO9geZM.jpg

安倍菜々
http://i.imgur.com/Z6Ys4WL.jpg

向井拓海
http://i.imgur.com/s9ASUYB.jpg

池袋晶葉
http://i.imgur.com/fVQYfUy.jpg

渋谷凛
http://i.imgur.com/g6eBd4s.jpg

北条加蓮
http://i.imgur.com/xj8ZE5e.jpg

神谷奈緒
http://i.imgur.com/Y6svCoJ.jpg

終わりです。
見てくれた方に感謝。
べ、別に裕美に僕って言わせたかった訳じゃないです。
そういえば裕美はアンソロでも追いかけっこしてましたね。

奈緒お誕生日おめでとう!
奈緒のお姉さん属性について熱く語りたいけど自重します。
ありがとうございました。

>>27
ちょいと修正を…。
△奈緒、楽しそうだし。
 困り顔のプロデューサーの周りをくるくると回る奈緒と裕美ちゃんをチラリと見て静観を決め込むことにしようかな。
○奈緒、楽しそうだし。
 困り顔のプロデューサーの周りをくるくると回る奈緒と裕美ちゃんをチラリと見て静観を決め込むことにする。

改めてありがとうございました。

>>27
深刻なコピペミスを今更発見。
「ナナ、なんとなくそれ、分かりますよ♪」
の二回目は見なかったことにしてくだせぇ……。

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