「東中出身、涼宮ハルヒ。ただの人間に興味ありません」
……またやりやがったよ
あのバカが
東中出身兼我が人生最大の汚点である幼馴染みであるところの彼女、涼宮ハルヒは笑顔でクラス中に氷結魔法を唱えやがった
「……ふん」
ハルヒのやつは一通り周りを見渡し、何事もないように席に座る
毎度の事ながらあいつの度胸には恐れ入る
さて、先にいっておこう
これから先の話は平凡であったはずの俺とハルヒの物語だ
そして、その終末はやっぱり平凡なものである
その結末までの話を少しだけしようじゃないか
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おしまい
最初だけ思いついたやつか?
書かないと落ちるぞ
何だかんだで三週間後
俺はと言えばすっかりクラスに馴染んでいた
そんな俺の昼休みの事だ
「なぁ、キョンよ。お前はどうして涼宮と仲良くやれてるんだよ」
「あ、それは私も気になるなぁ」
「何だ。藪から棒に……朝倉まで」
先に言っておくが別に仲良くやっているわけではないぞ
とくに谷口が疑っているであろう関係では断じてない
ありえないのだ
今日だって絶賛喧嘩中である
「んー。でも喧嘩してもキョンから離れたりもしないよね。逆も同じだし」
「だよなー?やっぱ怪しいぜこいつら。涼宮なんてもう学校始まって一ヶ月近くなのにキョン以外まともに話さないしよー」
「や、やっぱりそう言うことなの?」
「人をまるで何かの犯人扱いするのはやめろ……あいつとは何もない。ただの腐れ縁だ」
先にも言ったように、俺とあいつの関係はただの幼馴染みだ
たまたま家が隣でたまたま年が一緒だったからよく遊んだ
それだけの偶然の関係性なのだ
「ちょっとキョン。来なさい」
「何だ。俺は見ての通り食事中な訳だが」
「うっさいわね。あんたの食事なんてパンの耳だけで充分よ」
「弁当作ってくれてるお前が言うなよ……」
「弁当!?」
「うるさいよ谷口」
「え?キョンくんと涼宮さんってもしかして一緒に?え?」
「朝倉さんは動揺しすぎだよ……大丈夫だよ」
久々に良SSの予感
「私が作ったんだから食べるタイミングも私が決めてもいいじゃない」
「何だその無茶苦茶な理論は。いいかハルヒ。人間食事は落ち着いて味わって食うものなんだぞ」
「取り上げられたくなかったら大人しく付いてきなさい」
「断るといったら?」
「あんた明日からのり弁よ。文字通りのね」
「……用件を聞こうか」
こらそこ。情けないとか言うな
こいつの飯はうまいのだ
取り上げられるのは困る
そのうえお袋はハルヒが弁当を作ってくれるので食費をハルヒに渡している
つまり強制的に俺は明日から昼飯抜きにされそうになってるのだ
いや、抜きではないか
しかし海苔だけは流石に寂しい
「付いてきなさい」
「わかったよ。飯のためだ」
「……なぁ国木田」
「なに?」
「やっぱあいつらって付き合ってるよな?」
「んー。僕の知る限りではそうじゃないけど」
「はぁー!キョンのやつ爆発しねーかなあ」
「そんな事言ってる間は無理じゃないかなぁ」
「はぁ……」
「……僕の知り限りでは本当にそういう事はないと思うよ。朝倉さん」
「べ、別にキョンくんと涼宮さんが仲良くても私には関係なのよ!?」
>>7
ミス
関係なのよ→関係ない
古泉とは初対面ではなさそうな気がするよ……
あとジョンとかなくなってそう
「んで、どうしたわけ」
屋上前の階段廊下まで連れてこられた辺りでハルヒは動きを止める
「……ん」
「……何だこれ」
こっちを向いたと思ったハルヒは唐突に俺に拳を突きつけてくる
その手にはお弁当包みがぶら下がっている
「……?」
「……ん!」
困惑しているとまたつきだしてくる
いや、受けとれと言うことはわかるのだが……
「今日の分はもう貰っているはずだが……?」
「うっさいわね!ちょっとたまたま新作作ってたらおかず余ったのよ!黙って受けとれ!」
「お、おう」
「はやく開けなさいよ」
「……ここでか?」
「そうよ」
「……」
ハルヒがジトッとした目で見るのでとりあえず階段に腰かけて広げる
中は惣菜でギッシリだった
から揚げやハンバーグ、ポテトサラダやらと主に俺の好きなものが多いのは気のせいだろうか
「……いや、しかしお前これわざわざ朝に?」
恐らく手作りであるだろうそれに思わず口にでる
普通に朝受け取った弁当だって何時も通りの出来映えだったのだ
そもそもハルヒが弁当に作る量を間違えるわけがあるはずもない
こいつは親がいない時には晩飯を作り来てくれたりもするのだ
わざわざ新作だなどと言ってこんなことをするわけは何故だ?
「……その……悪かったわよ」
……一瞬思考が停止した
だってそうだろ?
長く付き合っている俺ですら数えるほどしか聞いていない言葉をハルヒは口にしたのだ
固まらないわけがない
思わずハルヒを凝視してしまう
「な、何でもない!いい!残したら罰金だかんね!」
「あ!おい!ハルヒ!」
走り出すハルヒを急いで呼び止める
こちらを振りかえりこそしないがハルヒは止まってくれた
「……ありがとよ」
その時のハルヒの顔は非常に残念ながら見れなかった
最後にあいつはこちらを振り返ると人差し指を目の下に向け、舌を出してきた
いわゆる、あっかんべー
それがアイツからの返事だった
……さて、どうしてハルヒがわざわざ弁当増量してまで謝るための口実を作った理由はなんだっただろうか
……確か妹のプリンを俺のだと勘違いして食ってしまったハルヒ
そのハルヒが俺にプリンを買いにパシらせたのだ
当然俺は反発したわけだが何だかんだで買いに行ったのは俺になってしまったのだ……
買いにいかされた俺は帰ってきてから何となくハルヒに小言を言ったのだ
ハルヒはハルヒで反発して結局口論になり今日になってしまった
……という割りとどうでもいい理由だったりしたはずだが
昔のハルヒならこの程度で謝ったりはしなかったはずだ
……少しは成長しているってことか
「いただきます」
丁寧に両手を合わせてから新しく渡された弁当をつつく
「……うまい」
……仕方ないので今日はハルヒの分のプリンも買ってきてやろう
「おーいキョン!今日ゲーセンいかね?」
放課後になった途端谷口が絡んでくる
別にゲーセンに行くぐらいはやぶさかでもないのだが……
「あいにくと持ち合わせがないんでな」
「かーっ!しけてんなぁキョン。そんなんじゃデートとかで困るぞ。金無しの甲斐性無しと思われちまうぜ」
ほっとけ
そもそもそういったときのために金を無駄遣いしないようにしているのだ
「あ、ごめんなさい。ちょっとドア開けてくれるかしら?」
……とそこに両手にプリントをごっそりと持っている朝倉が声をかけてくる
「あぁ、すまんな……」
扉をあけて一歩退く
「ありがとう」
「そうだ。キョン」
思い付いたように国木田が俺に告げてくる
「朝倉さんのプリント半分もってあげなよ。谷口は僕か引き取るからさ」
「え!?い、いいよ国木田くん。大丈夫だから」
「そう言わないでさ。ねぇ?キョン」
「あ、ああ。それは構わないが……」
国木田にしてはずいぶんと強引な気もするが別にプリントをもつぐらいは構わないさ
それで谷口から解放されるなら問題もないだろう
「……ふふっ」
「どうした、急に笑いだして」
「ううん。入学してすぐの頃もこんなことあったなぁって」
「ああ、お前が委員長させられた時の事か」
「嫌なこと言うなぁキョン君は」
朝倉は別に自分から委員長をやった訳ではないのだ
ただ周囲の期待の視線とかに耐えられなくてなってしまった
よくある話だ
「……まぁ最初は私も嫌だったけど今は別にそこまで苦じゃなくなったよ?」
「……そうか?俺なら放課後まで拘束されたりしたら面倒で放りだしそうだ」
「ふふふ。口ばっかり」
「?」
「キョン君は口でそんな事言っても何だかんだでやり遂げる人だよね」
「おいおい。随分と高く買ってくれてるな」
「そうかしら?……だからこそ涼宮さんはキョン君と一緒にいるんだと思うけど」
「……あいつとはただの腐れ縁だよ」
「ふぅーん」
「なんだ」
朝倉が上半身を傾け俺の顔を下から上目遣いで見てくる
正直可愛いから反則だ
目のやり場に困るので顔を反らしてしまう
「ふふ。じゃあさ、キョン君」
「お、おう
「私と腐れ縁じゃない縁を結んでみる?」
「は、はい?」
なんだそれ
腐ってない縁ってなんだ?
そもそも俺と朝倉の縁はなんだ?
朝倉は委員長であって友達である
だが友達である朝倉がわざわざこんなことを言ってくるのは何故だ?
そもそもこれはどういった意図の発言なんだ
「あははは。キョン君凄い顔になってるよ」
「お前が変なことを言うからだろ」
「ごめんなさい。けど、あながち冗談でもないかもよ?」
「……え?」
「キョン君にその気があればだけどね」
「それじゃ私はプリント先生に届けてくるから。ありがとうキョン君。持ってくれて」
たたっとリズミカルに動き出す朝倉を俺は止めることはできなかった
俺の頭の中がさっきの朝倉の言葉を木霊していたからだ
……そりゃ反則だぜ朝倉
イエローカード二枚で退場レベルだ
こういう思わせ振りな言葉一つで揺れるんだから男ってのは単純なもんだ
「……帰るか」
期待
良いね
でもこんな理想的展開だと変に勘ぐってしまうのよね、悪い癖だ
感動した
きたい
ハルヒがいる消失世界って感じかな?
完結目指して頑張れ
佐々木とキョンの過去さえも奪うハルヒ
悶々とした感情を抱えながら帰宅した俺を待ち構えていたのは、誰であろうか
本来であれば家族であるところの両親や、兄妹である妹だと解答すべきところである
……が、しかし今回は違ったようだ
仏頂面で俺の部屋のベッドのど真ん中を占領するのは涼宮ハルヒである
そんな人のプライベートもあったもんじゃない状態で開口一番にこんなことを言ってきた
「どうして何もおきないのよ!」
「……まず、どうしてお前は人の部屋に勝手に入っているんだ。荒らしてないだろうな」
部屋に入り込んだと思ったら第一声がそれだ
流石に文句の一つもつけたくなるものである
ちなみに、ハルヒの突拍子もない発言にいちいち驚いたり反応したり、突っ込んだりしてたら身体が持ちやしないのでスルーする
……いや、勿論突っ込むべきところは突っ込むぞ?
放っておいたら事態をどんどん悪化させるのがこいつだからな
さて、少し脱線したが話を戻そう
今回の発言はスルーできるものか、それともスルーしてはいけないものか
どっちであるか
「別にあんたの部屋なんて見慣れてるし気にしないでいいじゃない。でもエロ本隠すならもっとうまくやりなさい。妹ちゃんに見られたりしたらどうするのよ」
「やっぱ漁ってるじゃねーか!」
「あんたの性癖なんてどうでもいいの。それよりどうして何も起きないのよ!」
もし、どうでもいいことで怒っているなら今の脱線でズルズルと話を反らせていただろう
だが、そうならなかったということはそういうことだ
今回のケースは前者に含まれるのであろう
……つまりは暴走気味だ
まぁ、理由はとてつもなく自分勝手で非常に偏った理由で怒っているんだろという想像はできる
しかし、放っておくと俺にまで火の粉が降りかかる恐れがある
というか今までずっとそうだったわけだ
仕方ないので話を聞いてやることにしよう……
「……それで、何に対して怒っているんだお前は。抽象的すぎてわからんぞ」
「だから!どうして高校生になって一ヶ月も過ぎようってのに何も事件やら事故やらが起きないのよ!おかしいじゃない!」
……やっぱりとてつもなく自分勝手な理由で怒っていらっしゃった
「一応聞いておこうか……どうして高校生になればそんな非日常的な事が起こると思ってたんだ」
「それはあんたが……!」
「……俺が?」
俺の発言にハルヒは食い付くように何かを言おうとした
……が、急にそれが止まる
そして俺が聞き直そうとすると何かを考える素振りを見せるじゃないか
珍しいこともあるものだ
猪突猛進なこいつが自分が言おうとしている発言を吟味しているのだ
「……あんたが高校生にでもなれば少しは変わるかもって言ったんじゃない」
顔を反らしながらもハルヒはそういう
「それは人間関係についていっただけだぞ」
「……あんたさ」
「何だ?」
「宇宙人っていると思う?」
「さぁ……いるんじゃないか?他所に人類がいると仮定すればそいつらからすれば俺達は宇宙人だ」
何だこの質問は?
答えた途端にハルヒの顔が何かを期待するように輝きだすじゃないか
「じゃ、じゃあ未来人は?」
「いてもおかしくはないだろう。未来の話だしな」
少しだけハルヒがガッカリしたような顔をする
何なんだ?いったいコイツは俺にどう答えてほしいんだ?
「……超能力者は?」
「人類すべてを調べれば一人ぐらいはいてもおかしくはないだろう?」
「……異世界人は?」
「さっきと同じだ。人類すべて調べればわからないんじゃないか」
今度こそハルヒはしょんぼりとしてしまった
何だろうかこの居たたまれなさは
俺は思ったことを素直に答えていただけだ
だが、その答えの何処かがハルヒの期待とは違ったようだ
最初の明るさは何処へやら
今のハルヒは端から見ても暗いとわかるぐらいに落ち込んでいる
いや、これは落ち込んでいるというのだろうか?
まるで宝くじが当たったと思ったら桁がひとつずれていてガッカリしたような……
そう、悲しんでるのか?
何故だかハルヒのそんな顔を見ていると非常に気まずい
何だろうか
何だろうな……
魔が差したとでも言えばいいのか
俺はハルヒに、ひとつ助言なような、小言のような
そんな一言を言ってしまったのだ
「まぁ……さ、居たらいいな……とは思うよな。そういうの」
「……そう」
「けど、そう言ったことって年を取るにつれて言わなくなってくるもんだろ?」
「……そうね」
もうハルヒはこっちを見ようともしない
顔を伏せ、身体を俺の方向ではない方向に向けている
「そういう話を大っぴらに話すとさ……バカだって思われるだろうけどさ」
ハルヒはどんな顔をしているのだろうか
さっきの顔が頭から離れてくれない
「だけど、そのバカだって言われた奴等が文明を作ってきたんだろ?」
ハルヒが少し、本当に少しだけ反応したのを俺は見逃さなかった
「地球は丸いって信じて、そして世界中を仰天させた奴だっている。電気を開発した奴だってそうだ。周りからバカだバカだと言われてた」
「けど、そういう人達がいたから今の世界があるわけだ」
「つまりだ、何が言いたいかって言うと……」
そこまで言うとハルヒがガバッとこっちを向く
そして立ち上がりズンズンとこちらに近づいてくるではないか
「……そうよ……そうじゃない」
譫言のように呟くハルヒ
その顔付きはさっきとは180度変わっていた
「ないんだったら作ればいいのよ!」
あーあ、やっちまった
絶対俺も振り回されるのであろう
だがしかし、仕方ないか
こいつがこんな風に笑ってないとこっちの調子まで狂っちまうんだからさ
「キョン!協力しなさい!」
「何を」
「部活よ!作るのよ!」
どうやら俺の言わんとしたことはちゃんと伝わったらしい
……が、少し元気ありすぎじゃないか?
今にもどっかに飛び出しそうだ
「……とりあえず明日からな……」
「やると決まったらすぐ実行よ!」
「まてまて。今は夜で、学校も空いてないっての」
「学校なんて宿直の先生が一人ぐらいいるわよ」
「しかしだな……そうだ。部活名とか活動内容とか色々とだな……」
「両方決まってるわよ!」
早すぎるだろ!
作ると決めて二秒で部活名も部活内容も決まってたまるか!
「キョンは書類関係とか諸々任せるわ」
しかも面倒なこと全部俺に放り投げやがったぞ!
なんてやつだ
「私は部室と部員を部員を確保してくるわ!」
「してくるわじゃない!学校もやってないのにどうやって勧誘するきだ!明日にしなさい!」
「……むぅ、仕方ないわね」
やれやれ……この極端に落ち込むか極端に行動するかの二択しかないのかこいつには
俺の考えは他所に鼻歌を歌い出すハルヒ
……まぁ、少しぐらいは付き合ってやるか
確かに中学の頃に高校で少しは変わるんじゃないかと言ったのは俺なんだしな
「あ、でもあんたって本当にバニー好きなの?そんな本が結構あったけど。これとか」
「だから人の部屋を漁るんじゃない!」
これは……
面白くなってきた
>>22
ここからかなり期待値が上がってきてるんだが
ハルヒに幼馴染属性がついただけでこんなにも破壊力が上がるとは
色んな行動が許せるようになったわ幼馴染属性
そもそもハルヒ大好きだった俺は悶え死にそうなんだが
期待
幼なじみハルヒとのんびりラブコメするだけの話じゃなさそうで期待値激上がりなんだが
自分の部屋に戻ったらあの太ももがベットにいるとか素晴らしすぎます
原作はエタってもこれはエタらないでくれよな
やっぱ地の文あったほうが面白いな
ハルヒが幼なじみってだけでストーリーがいろいろ変わりそう
「……と言う訳なんだか」
「え?何が?」
翌日の昼休み
朝倉に先日の事を話そうとしていた
何故かって?
この部活申請書を埋めるためだ
生徒手帳で申請の仕方はわかる
わかるのだが……問題は申請の中身なのだ
あの後ハルヒの口から聞いた部活名と内容はとてもじゃないがそのまま申請書に書けるものではなかったのだ
当然と言えば当然なんだが……ハルヒだし
そこで、委員長であり、友人であるところの朝倉に相談を持ちかけようという事だ
別に昨日のあれが気になるとかそんなわけでは断じてない
……断じてないぞ?
「キョン君?」
「ああ、すまない。朝倉。少し時間いいだろうか」
「それは構わないけれど、どうしたの?改まって」
「恩にきるよ」
「えーっと……」
さて、事情を話終えた時の朝倉の顔はなんとも言えないものだった
それは例えるなら買い物中に駄々をこねている子供の扱いに困っている母親のような姿である
……気持ちは非常にわかる
仮に自分がこんな相談をされたとしても似たような顔をするだろう
むしろ、バカじゃないかと一蹴されないだげ朝倉は優しい
「無茶だよな」
「う、うーん。そもそも部活動に必要な人数は最低限五人以上と決まっているの」
「だよなぁ」
「最低でも三人……同好会としての設立なら三人からでも大丈夫だけど……同好会にしろ部活動にしろ活動内容がちゃんとしていないと申請が通ることはないと思うわ」
朝倉は俺と全く同じ結論に至ったようだ
さて、困った
どうやって突破口を開いたものか
「……あの、ね?」
さっきまでスラスラと喋っていた朝倉が急にモジモジとしだす
「どうした?」
「キョン君がどうしてもって言うなら……私がメンバーに入ろうか?」
「それはありがたいが……しかしだな」
朝倉を巻き込んでしまっていいものなのか
ハルヒの奇行はそりゃもう激しいもんだ
朝倉のようなタイプが耐えれるのだろか
「ほ、ほら!幽霊部員てきな、ね?とりあえず名前だけでも貸しておけばそれで同好会としての形は出来るわけだし」
「そうなれば涼宮さんが無茶をすることもないんじゃないかな?」
うーむ。確かに最低限の形が出来ればハルヒも教師相手に無茶を働くこともない……か?
いや、あいつのやることなすこと全部目をつけられるだろうからなぁ……
どうせそのうち無茶してその尻拭いが俺に回ってくるのだろう
まずい。容易にそんな状態が想像できてしまうぞ
「キョン君?」
「ああ、すまん、ちょっと考えてた」
「……そんなに私が入るのが嫌?」
「いや、そんな事はないぞ。ただ勧誘はハルヒがやるって言っていてな……」
「涼宮さんが……」
少しだけ朝倉の表情が暗くなった気がする
一瞬で笑顔に戻ったけど確かに暗くなっていた
「じゃあ、私から涼宮さんに話をつければいいのね?」
「まぁ、それでハルヒが納得すれば問題はないんだろうが……」
「このバカキョン!」
「ぬお!?」
朝倉が何を思ってこんな怪しげな部活に入ろうとしているのかさっぱりわからんが、それを認めていいものか悪いことなのかを思案しようとした時
それは、起きた
何がどうなったかって?
ハルヒが弾丸のように突撃してきた
勿論文字通りにだ
こいつに止マレなんて言葉は無駄なのだ
が、それはそれとしてハルヒに言う言葉はこうであろう
「いってーなこの野郎!何すんだ!」
「それはこっちの台詞よ!あんた私をほっぽいて何をやってたのよ!部活申請書ちゃんとやってるんでしょうね!」
「その台詞……普通なら可愛いげのある子が寂しいけど強がるときに使われる台詞だぞ……」
折角の可愛いげのある台詞が後の台詞で台無しである
「……か、かわいいとかバカじゃないの。それより」
んっと先日のように手をこちらに突き出してくる
……予測だが部活申請書を寄越せということだろう
だが当然のように用紙は真っ白だ
これをそのままハルヒに見せるとする
するとどうなるだろうか
……いかん。俺が真っ青になりそうだ
しかし……どうやって切り抜けるか
「ああ、もう焦れったいわね」
「お、おい!よせ!平和的解決を所望する!」
「は?何いってんのよ……よっと!」
命乞いをするように待ったをかける俺を他所にハルヒはバカを見たような目で俺の手をつかみ引き上げる
「……怪我してないわよね?」
「あ、ああ。しかしハルヒよ。怪我の心配をしてくれるぐらいなら最初からドロップキックかまそうとするんじゃない」
「しょうがないじゃない。何かあんたを見つけたらムシャクシャしてやったのよ」
後悔はしていないと言わんばかりの笑顔で偉そうに身体を反らすハルヒを見て、ため息が出てもしかたないってもんだ
「それより、あんた申請書どうしたのよ?」
「あ、あー。それなんだがな」
上手い言い訳を考えようと視線を流すと成り行きを見守っていた朝倉が困ったようにそこにいた
……そうだ、朝倉の事を話せばいいのだ
過去トップクラス……! 圧倒的な強大さを感じる……!
プレッシャーかけたくはないけれど、でも、どうか完結まで頑張って下さい。
甘酸っぱいわ!
圧倒的な甘酸っぱさだわ!
乙です
感動した
「それなんだがな、ハルヒ」
「なに?」
「新入部員だ」
「きょ、キョン君!?」
ズイッと朝倉の手をつかみハルヒの前に引っ張り出す
「……新入部員?」
ジトっとした目で朝倉と俺をハルヒは見る
「ああ、三人いれば最低限同好会の形が出来るそうなんだ。それで幽霊部員としてでも名前を貸してくれるそうなんだ」
「幽霊部員なんて取らないわよ。私は真にやる気のあるものを集めるの」
こんな無茶苦茶な部活に真にやる気のある奴が入部してきてたまるか!
そんな奴がもしいるなら俺は今すぐそいつの爪の垢を煎じてハルヒに飲ますね!
「そもそも……何で朝倉な訳?」
先程よりもジト目になりハルヒはズイッと俺の前に顔を近づけてくる
近い近い近い
それよりも何か上手いこと切り返さないとハルヒが納得してくれるわけがない
「私が頼んだのよ」
助け船は朝倉から飛んできたのであった
「……別に委員長の朝倉が気にかけることなんてないじゃない?別に私あんたと仲がいいわけじゃないし」
「それは涼宮さんがキョン君以外と仲良くしようとしてなかったからじゃない?」
……あ、あれ?
助け船……だと思ったのだが何だか雲行きが怪しくなってるようなきがするぞ
「でもね?私は涼宮さんと仲良くしていって思っているのよ。折角部活を作るって言うなら私も仲間に入れてくれないかしら?」
「生憎だけど私は部活優先の人物しかとらないのよ」
「本当に?なら条件はクリアね。私部活まだ何処にも入ってないの」
うぐっとハルヒが言葉に詰まる
「いいえ。私は普通の人はいらないのよ。何かしらの特殊な力のひとつやふたつないとダメよ!」
何だその条件は。俺も初耳だぞ
「そう。なら私は委員長だから普通の人ではないわね」
「んなっ!そんなの普通じゃない!」
「あらそう?けれど委員長としての立場は普通の一般生徒よりは高いのじゃないかしら?」
「私が言ってるのはそういうことじゃないのよ!」
ああ、まずい
ハルヒが押されている
それの何がまずいって?
後で俺がこいつに散々八つ当たりをされるのだ
ハルヒって奴はよく衝突を起こす
起こすのだが肝心の口がこのように弱いのだ
正論で攻め立てられると後手に回る癖みたいなのがある
と言うよりもそれはやだの一点張りしかできないのだ
もしくは無言のドロップキックにより玉砕
まぁ、つまり
口喧嘩が非常に弱いのだ
喧嘩は売るくせに口論には弱い……ポンコツ少女なのである
「むぅぅ!」
チラリと此方に視線を送ってくるのは当然ハルヒだ
……しょうがない
「あー、それなんだがな」
ぱぁっとハルヒが笑顔を見せる
うむ、この切り変わりの早さはまさにハルヒだ
「こんなに言うんだし朝倉を入部させてもいいんじゃないか?」
その笑顔が、ピシリと凍りついた
そのかわり笑顔を見せてくる人物がいる
朝倉である
「……どういうこと?」
さっきの笑顔は何処へやら
ハルヒは仏頂面でアヒル口になりながら問いただしてくる
ちなみにこれは怒っているのではなくて不貞腐れているときの顔である事を俺は経験で知っている
「まぁ聞けハルヒ」
「朝倉が入部することでのメリットを考えてみろ」
「何よ」
「さっき朝倉自身も言っていたが、委員長って立場がある人物がいるのは後々便利なんだぞ」
俺はハルヒに対して説明を行っていく
「例えだが、こんな怪しい部活がまともに申請が通るとは思わん。が、仮に申請が通ったとする」
「良いことじゃない、後、仮にじゃなくて必ず通すのよ」
「……しかしその後活動を行う上で部が目をつけられる」
「何でよ」
お前が絶対に何かをやらかすからだ!
「そんなときに立場がある委員長がいれば……どうなると思う?」
「……そうよ!朝倉を生贄に部を存続させるのよ!」
「勝手に生贄にするな!説得をしてもらうんだよ」
「そんなの私で充分じゃない」
「お前の場合は説得じゃなくて恐喝になるんだよ……」
「何ですって!」
「それに、他にも利点はある。文化祭とかの行事に参加するつもりなら朝倉がいれば参入しやすくなる可能性もある」
「む……それは」
「怪しい部が何かしらの出展許可を取ろうとしても中々骨がおれるだろう?そこで朝倉の出番ってわけだ」
「むー!」
ハルヒが納得できずに唸ってくる
そりゃそうだ
全部嘘っぱちだからな
そもそも入学して一ヶ月の俺達に学校をどうにかする力なんてのはありやしないのだ
もしそんなことが出来るやつがいるならば神として崇めるね
「……随分と朝倉の肩をもつのね」
「そういうつもりはないぞ」
ハルヒは俺から朝倉に視線を向ける
「涼宮さ……ひゃぁ!?」
なんと!?
ハルヒが唐突に朝倉の胸を揉み出すじゃないか
「おっぱい大きいわね……」
「ちょっ、ちょっと涼宮さん!やめっ」
なんて羨ましい
けしからん!もっとやれ!
……じゃない!止めなければ!
「髪も長いのにサラサラね……私と同じぐらいかしら」
朝倉の髪を手に持ちアップの位置に持っていくハルヒ
……朝倉にポニーテールしてもらえば似合いそうだな
何て事を考えたせいで助けにはいるのが遅れる
決して期待した訳じゃないぞ!
「……アホ面」
いつの間にかこっちを見ていたハルヒにはそんな一言を頂いてしまった
「……いいから離してやれ」
「……ふん!いい朝倉!入部を特別に認めてあげるけど部活を遅刻したり蔑ろにしたらすぐ退部なんだからね!」
「え?いいの?」
「……別にいいわよ。とりあえず私は部室確保してくるわ。放課後には調達してくるから今日から集合よ!わかった!」
そう言い残してハルヒは台風のように走りだす
何て忙しい奴なんだ……
素晴らしい
うむ、とても良い感じ
まだ長門、みくる、古泉の従来部員が出てきてないが、朝倉が入部する様なら佐々木が同じ学校の別のクラスにいても不思議ではない
お礼だけ言わせて
羨ましすぎるからちょっとキョンくんもげてくれないかな
なにがとは言わないけど
うん
もげたついでにキョン子になってみないか?
キョン子とかまた懐かしいものを
期待
まだー?
はよ
「しかし、本当によかったのか?」
取り残された俺と朝倉はクラスに戻る際に少しだけ話をすることになった
「ん?何が?」
「部活の事だ。明らかに真っ当な部ではないぞ」
「ふふ。キョン君が新入部員だって突き出したくせに何言ってるのよ」
「それもそうだが……」
「いいのよ。私って優等生みたいに思われてるみたいだけど、本当はそんな事ないのよ?」
「……やれやれ。お前みたいな不良がいてたまるか」
「あぁー。信じてないでしょう?」
「わかったわかった」
「もう!後でびっくりしても知らないからね?」
「ほら、予鈴鳴ったぞ」
「あ!急がなきゃ!ほら、キョン君も!」
「やっぱり真面目じゃないか」
さてさて、時間は放課後に移り変わる
チャイムと同時に俺を力一杯引っ張るやつがいた
……言うまでもない、ハルヒだ
「行くわよ!朝倉も付いてきなさい!」
教室中から注目を浴びながら俺ごと飛び出す
あ、おい!せめてカバン持たせろ!
「ちょ!キョン君カバン!涼宮さん待って!後廊下は走っちゃダメよー!」
あぁ……朝倉のごく一般的な発言が身に染みるぜ
そんな俺の心境なんてちーっとも考えずにハルヒは超スピードで廊下を駆け抜ける
やがて、ドーンっとある教室の扉を力一杯に開けたのである
「ついたわよ!」
宣言したと同時にハルヒは俺の拘束を急に解く
お陰で頭から床に倒れてしまう
超痛いんですが……
「……ここは?」
「旧棟の文芸部室よ」
「文芸部室って……」
ハルヒに捕まれて気崩れた制服を直しながら立ち上がろうと視線を上に向ける
……そこにはパイプ椅子に座って本を読んでいたのであろう膝に本を抱えている女生徒がこっちを見ていた
何故だろうか、その姿に酷い既視感を覚えたのは
いや、そんな事よりまずはこの状況をどうなってるのか聞かなければならんな
「あーっと……ハルヒよ。お前ここが文芸部室って言ったよな?」
「そうよ?」
「じゃあここは文芸部なんじゃないのか?」
「ええ」
ええって……つまり何か?
こいつは文芸部室を乗っ取ろうとでも言うのか?
いや、流石にそれは……
どうハルヒを説得すればいいのだろうかと頭を悩ませていると
「もう!涼宮さん!キョン君!廊下は走っちゃ駄目だって!……あれ?長門さん?」
俺達の後を追ってきたのであろう朝倉が飛び込んでくる
「遅い!罰金!」
「え?ええ!?」
……本当に、どうしたものだろうか
状況を整理するとこういうことらしい
ハルヒは部室を求めている
そんな時に偶然見つけたのが文芸部室で一人本を読む長門有希さんだったと
何でも長門さんの所属する文芸部員は一人しかおらず、廃部当然だったそうだ
そしてハルヒが文芸部員に名前を貸すので部室を一緒に使わせて欲しいと言う願いに対し一言いいと答えた
「……そんな都合がいいことがあっていいのか」
「何よ?私だってちゃんと話し合いをするぐらいできるわよ?」
「いや、まぁお前が今回比較的まともに交渉したと言うのも驚きではあるんだがな……」
何でも長門は聞けば一年だと言う
つまり、去年の3年が卒業した段階で部員数は0
普通そんな部活が処理されずにこの時期まで残っているものなんだろうか?
「それにしても朝倉。長門さんと知り合いだったの?」
「ええ。文芸部員に入ってたのは知らなかったけれど」
「ふーん。まぁいいわ!今日からここが私達の部室よ!」
「いやちょっと待て!」
「何よ?」
「ぁー長門さん?」
「……」
反応はない
聞こえている……よな?
「こいつは文芸部室を乗っ取りにきてるんだが……ほんとうにいいのか?」
「いい」
「正体不明の怪しい部活だぞ?下手すると巻き込まれるかもしれんぞ?」
「構わない」
「お、追い出されたりするかもだし」
「別に……」
……本当にいいのか
しかしだなぁ……
「もう!ちゃんと話し合って決めたって言ったじゃない!」
ハルヒが信じてもらえなかったからかプンスカと怒っているがここは自業自得だと思っていただきたい
そこで長門がじっとこっちを見ている事に気がつく
何かを探っているかのような、けれど真っ直ぐとした目だ
「……長門?」
「……」
声をかけると長門は読書に入っていった
……何だったんだろうか
「今日は顔合わせよ!明日には新入部員を連れてくるわ!それじゃあ解散!」
なーんて事をハルヒは言うのであった
新入部員って……まだこのへんてこな部に人を増やそうと言うのかハルヒよ……
「なぁ、朝倉」
「なーに?」
場所は変わって校門
解散とハルヒが言ったので帰る所である
ちなみに長門はまだ読書をするそうでこちらには見向きもしなかった
「長門とは長い知り合いなのか?」
「んー。別に長いって訳じゃないわよ?なぁに?キョン君って長門さんみたいな子がタイプだったりするの?」
「どうしてそうなるんだ。別にそういうわけではないぞ」
「じゃあキョン君のタイプはー?元気系?クール系?お姉さん系?」
「……俺のタイプは置いておいて、長門の話だ」
「あら、もしかして本当に?」
「だから違う」
「じゃあ一体どうして長門さんをそんなに気にしているの?」
どうして
どうしてなんだろうか
そう、長門と出会ってから妙に落ち着かないのだ
だがこれは朝倉が言うような浮わついたものではない。断言できる
……違和感
そう、違和感を感じているのだ
まるで、在ったものが無くなっているような……
「……長門って眼鏡かけてたりしなかったか?」
だから、ふと自分がそう呟いたのだと理解するのに数秒かかった
どうしてそういった結論に至ったのかはわからない
わからないが、自然と口から漏れた一言はやけに自分を納得させるものだった
「眼鏡?んー。別に目が悪いとかは聞いてないけど……眼鏡をかけてる長門さんを見たこともないかなぁ……何処かで見たの?」
「……いや、それならいいんだ。気を付けて帰れよ」
「うん。キョン君もね」
「ほーら!妹ちゃん!捕まえたぁ!」
「きゃぁぁぁ!ハルにゃん強いいい」
「ふっふっふー。また出直してきなさい!」
「妹相手に何を本気出してるんだあいつは……」
夜での出来事である
あの後家に帰った俺を出迎えたのは本日遅くなるとの貼り紙であった
つまりは夕御飯を調達しなければならない
……と、そこまで考えてからハルヒが電話をかけてくるまでのタイムラグは殆どなかったと思う
まだ学校で何かしらをしていたハルヒが我が母からのメールに気がつき電話を寄越したそうだ
「今から急いでスーパー寄って帰るから冷蔵庫の中身教えなさい」
とはハルヒの一言である
電話を切った俺はそのまま冷蔵庫の中身をチェックしてそのままメールでハルヒに送る
程なくしてハルヒが到着し、夕御飯をご馳走になり、その後ハルヒと妹が遊んでいる
それが現状である
「……って誰に説明してるんだ俺は」
「何がよ?」
「……おい、妹はどうした」
「これからお風呂よ。あんたのTシャツ貸しなさいよ」
「……自分の家から持ってこい。隣だろ」
「面倒じゃない。勝手に持ってくわよ」
「あ、おいこら!勝手に人様のタンスを開けるんじゃない!」
「……ちゃんと洗ってるんでしょうね」
「匂いを嗅ぐんじゃありません」
「それじゃあ借りるわよ」
「……やれやれ」
「あ、覗くんじゃないわよ?覗いたら死刑だからね!」
「……誰が覗くか」
「キョン君おふろぉーあいたよぉー」
「ああ……って、ちゃんと髪を乾かしなさい」
「えー。あれ暑くてキライー」
「だめよー。妹ちゃん。女の髪は命なのよ。小さい時から手入れしないとお姉ちゃんみたいになれないわよ」
「んー。ハルにゃんみたいな綺麗な髪になれるなら我慢するぅ」
「偉いわよ!」
「……何よ?」
「いや、お前も昔散々髪の手入れ嫌がってたのになと思ってな」
「んなっ!?」
「えぇー!ハルにゃんもいやがってたのぉ?」
「あ、あんたね!余計なこと言わないの!」
「じゃあ私もー私もしなくていい?」
「だめよー。妹ちゃん。しっかりと手入れしましょうねー」
「んーー。ハルにゃんも昔やってなかったんでしょー」
「そ、そんなことないのよ?お姉ちゃん確かに嫌いだったけど、やってなかった訳じゃないのよ?」
「ほんとぉ?」
半信半疑のようで、渋いかおをしてこっちをむく妹
そこで俺に聞いてくるあたり妹もわかっている
「ん。まぁ、確かに毎日やってたぞ」
俺がだけどな
「ほーら。ね?それじゃあ妹ちゃんのは私がやってあげるからあっちいきましょうね」
「はーい」
渋々といった様子で妹はハルヒと共に部屋から出ていく
俺も風呂に行くか……とも思ったのだがもう少しこの漫画の続きを読みたいので後回しにすることにした
……そして気がつけば最後まで読みきってしまった頃に、カチャリと扉が開く
「ハルヒか」
「ええ」
「妹は?」
「髪を乾かしたらすぐ寝ちゃったわ。大分はしゃいでたし疲れたのね」
「何時も悪いな」
「別にいいわよ。妹ちゃん可愛いし、いい子だもの」
「……んで、お前は髪も乾かさずにどうしてここに来たわけだ」
「しょうがないじゃない。妹ちゃん寝ちゃったのに横でガンガンドライヤーするわけにもいかないでしょ?」
「……そう言うことにしといてやる」
「……はい」
そう言ってハルヒは俺に背を向けて目の前に座る
「……やれやれ」
机の引き出しを開けてドライヤーと櫛を取り出す
昔ハルヒの髪を乾かしたり手入れするときに使っていた品物だ
「音、あんまり出さないように弱でするから時間かかるぞ」
「いいわよ。ゆっくりで」
カチッと音と同時に小さな音が部屋に木霊していく
ゆっくりと頭に巻かれたタオルをほどく
さらりと湿り気を帯びた綺麗な黒髪が出てくる
その髪を丁寧に持ち上げドライヤーを当てていく
「……髪、伸びたな」
「……そうね」
「昔はあんなに嫌がってたのにな」
「うっさいわね。蹴るわよ」
「口が悪いのは変わらずだな」
「ふんっ!」
「……あんた髪フェチだもんね」
「……そんなこと言ったか?」
「言ったわよ。馬鹿……お陰で大変なんだからね」
「そうかい」
「そうよ」
その後、特に会話らしい会話はなかった
だが、特に気まずい何てこともなく、あくまで自然体として俺はハルヒの髪を乾かしていた
そしてまた、ハルヒも自然体としてそれを受け入れていたのだった
tosやらp5やらやってた
書き溜めはしてない
許せ
乙乙、完結してくれるならゆっくり自分のペースで構わないわ
単純にハルキョンの幼馴染みifとして読んでたけど、キョンが長門に見覚えあるとなると一気にきな臭くなるな
再開してると思ったら一気に面白くなってきた
すばらっ
いい感じだ
おつ
いい仕事してますね~
このハルヒ可愛いなぁ……可愛くない?
かわいい
「待たせたわね!」
放課後、バーンと部室の扉を開けて笑顔満点で入ってくる存在
そう、ハルヒである
「いやー。捕まえるのに苦労したわ!」
「あ、あのぉー……ここは何処ですか?」
そのハルヒはまるで小動物なような生徒を引き連れて……いや、連行してきた
「ほーら、入って入って」
「あ、あ、あのぉ……な、何で鍵かけるんですかぁ!?」
「黙りなさい」
「ひゃい!」
さて、ここで俺は昨日のハルヒの発言を思い出していた
【明日新入部員を連れてくるわ】
……いや、どうみても強制連行だろ、これは
「一応聞いておくが……彼女は?一体何処から拉致してきたんだ」
「二年の教室よ。ぼーっとしてたから連れてきたのよ」
先輩じゃないか……!
本当にこいつは怖いもの知らずだ
「えーっと……あのぉ……ここは……」
キョロキョロと先輩は俺達を見ながら控えめに聞いてくる
……まずは状況整理をしてあげるべきだろう
「ここは文芸部室よ!けれども文芸部じゃないわ」
「……?文芸部室なのにですか?」
ちょっと待て!ここはまだ文芸部だしなんなら文芸部以外のなにものでもない
「キョンくん」
朝倉が俺の肩に触れて首を振る
……まるで諦めろと言わんばかりだ
いや、しかしだな……
「ここは文芸部室だけど、中にある部活は違うの。それはここに来るまでに説明したわね?」
「ええっと……それは……はい」
「ちょっと待て!その人がどこの誰かは知らんがあまり無関係の人を巻き込むのはやめろ」
「この子は朝比奈みくるちゃん!んで、こっちがキョンと朝倉と長門さん!」
「あ、おい」
と言うか、キョンはあだ名であって本名じゃない!
「みくるちゃん、他に部活やってるっていったわよね?」
ハルヒは俺の発言なんぞなかったと言わんばかりに朝比奈さんに質問を投げ掛けていく
「はい。書道部に」
「やめれる?」
おいこら!?
「えっと……」
朝比奈さんは何かを確かめるように俺達を見渡す
まずはハルヒ、俺……そして長門
その動きに淀みはなかった
最後に朝倉を見て彼女は首を傾げる
「えっと……な、何か?」
「あ、いえ、何でもないんです。ごめんなさい」
……何だ?朝倉に何か付いてたりしたのか?
思わず俺まで朝倉を凝視してしまう
「ちょ、ちょっとキョン君までやめてよ!恥ずかしいんだからね」
……うむ。何時も通りの朝倉である
「入部してくれるわよね?」
いやいや、してくれるわけないだろう
「……わかりました。書道部は辞めてこっちに入部します」
何ですと!?
「あ、朝比奈さん?貴女が入部させられそうになってる部活は正体不明のまだ同好会としてすら認められてない部なんですよ?」
「はい。それがこの時間平面上の必然のようですので……大丈夫ですよ」
時間……なんだって?
よくわからん理由で朝比奈さんは入部を決めてしまっていた!
「あの……不束者ですが……よろしくお願いします」
……何てこった
朝比奈さんは入部する気満々じゃないか
だが、この部が朝比奈さんのプラスになるとはどーしても思えない
……となるとハルヒを説得するしかあるまい
「おい……ハルヒよ」
「何よ?」
「どうして朝比奈さんなんだ?」
「決まってるじゃない!可愛いからよ!」
「……何だって?」
「萌えよ萌え!いわゆる一つの萌え要素!」
ハルヒはまたもや……謎の理論を唱え始めるのだった
「私萌えって大事だと思うのよ」
「……何故だ?」
「決まってるじゃない!何かおかしな事件とか面白いことが起きるとき大抵一人はこういう萌えキャラがいるものなのよ!」
「ひゃぁ!」
高々に宣言すると同時にハルヒは朝比奈さんに抱きつく
その光景だけなら微笑ましいものなのだが……
「それにこの子胸すっごい大きいのよ!……ちょっと、私より大きいんじゃない?」
「いやぁぁぁぁぁ。や、やめてくださいいいい」
ハルヒは朝比奈さんの胸を豪快に揉み始める
……朝倉が何かを思い出したのか胸を守るように両手で胸を隠す
……そういえば朝倉もやられてたもんな
「むー。なんか腹立ってきた」
「変な八つ当たりをしようとするんじゃありません……それよりハルヒよ」
「何?あんたも揉む?止めないけど警察には付き出すわよ?」
「ひっ!」
「そうじゃない……この集まりの目的とか、そういうのちゃんと説明したんだろうな」
「まだよ?」
「おい」
「……まぁ、そうね。ちゃんと五人集まったんだし、宣言してもいいわね」
ここまで引っ張った我々の部活内容の発表である
「SOS団!」
世界を
大いに盛り上げる
涼宮ハルヒのための団
そこ、笑っていいぞ
「キョン君から聞いてたけれど……そのまま申請しても通らないんじゃないかしら」
まさしくその通りである
流石は朝倉だ
「そこは朝倉とキョン。あんたらの出番よ」
俺達に学校の規則を変えるような権力があるわけがない……
しかし、そんな事をハルヒはこれっぽっちも聞き耳を持たない
こうして、我らがSOS団はベールを脱ぐときが来てしまったらしい
心から思う
ずっと脱がないでいてほしかったものだ
朝比奈さんは原作の時間軸から来たのか?
古泉なんて居なかった
ま、まだ転校してないだけだから…
5人しか入っちゃいけないというきまりもないから……
乙
乙
小泉がキーマンなのか…
謎の転校生来たら食いつくだろ…多分…
まだかにゃあ
時はあれから数日
ハルヒは俺を朝の貴重な眠りから目覚めさせるとこう叫んだ
「謎の転校生が欲しいと思わない!?」
……人様の快適な眠りをどうどうと邪魔しておいて何を電波な事を言い出すのだ。こいつは
もう今さら何でハルヒがここに!?なーんてベタな驚き方はしなくなってしまった自分が少々怖い気もするが、まずは言うべき事を言うべきであろう
「……まだ朝の7時にもなってないじゃないか」
「ああ、うん。あんたに運んでもらいたいものがあるから早めに来たのよ」
「……運んでもらいたいもの?」
「これよ」
ポンポンとハルヒは俺の机にあるパソコンを叩くのだった
「……なんですと?」
「この情報化社会にパソコンがないなんてあり得ないわ!」
「……断る!私物を勝手に使おうとするんじゃありません」
そう、そのパソコンは俺の私物であり、やすやすとハルヒのよくわからん部活に使われては困るのだ
繰り返し言おう、学校などと言う場所で使われては困るのだ
どうしてかって?今ので察してくれ
「そもそも、どうしてパソコンが必要なんだ」
「そんなの決まってるじゃない!ホームページを作るのよ!」
「……はい?」
「ホームページよ!我等がSOS団の活動よ!」
ああ……どうやら昨日こいつはよっぽど悪いものを食ったのだろう
そう結論付けた俺が取る行動は一つだ
「あ、こら!キョン!寝るな!起きなさい!ちょっと!ねぇ!起きて!起きてよぉ……無視するなぁぁぁぁ」
お久
「おはよう……頬が赤いわよ?」
「おはよう……まぁ、ちょっとな」
あのあと色々と大変だったのだ
……主にハルヒの機嫌取りが
「ふぅん……それよりこれ」
「?」
「部活申請書よ。私の方でギリギリ通りそうな内容にしておいたからチェックしてもらえる?」
「……すまん。朝倉一人にやらせてしまった」
「いいわよ。んー……でもそうね。駅前の喫茶店が美味しいらしいから今度連れていって貰おうかしら?」
「そのぐらいお安いご用さ」
巻き込んでしまった詫びもかねてそれぐらいはしてもバチは当たらんだろう
「やった。じゃあ今週末にでもどうかしら?」
「ああ、構わんさ」
「何でキョンばっかりが……!」
「はいはい。谷口は早く課題終わらせて」
「ちくしょぉー!」
「ちょっとあんたら何騒いでんのよ。邪魔よ」
「おい涼宮!いいのか!」
「はぁ?何がよ?と言うか近寄らないで」
「何がってそりゃお前!」
「谷口はもう黙って宿題やろう?」
「痛い!痛いぞ!」
……何を騒いでるんだあいつらは
放課後の始まりを告げるチャイムが鳴り響くと共にガタンと大きな音をたてる存在がいる
説明するまでもない……ハルヒだ
「先いってなさい!」
返事をするまでもなく教室から飛び出していくハルヒを誰が止められようか
……一応心の中で突っ込んでおくが、まだ終わりの挨拶はしていないんだぞ……ハルヒよ
これでは先生が可哀想じゃないか……
いや、そういった問題でもない気がするが……
なぁハルヒよ……俺達も高校生になったんだからもう少しでいいから落ち着いてくれないか
……と俺は聞き入れて貰えないであろう願いを唱えながら部室へと向かうのだった
さて、この部室こと文芸部室には備品と呼ばれるようなものは余りなかった
本棚と机、後はパイプ椅子
俺が最初に来たときはこんなものだったはずだ
それがどうだ
今となってはハルヒのやつが何処から見つけてきたか知らないがポットやホワイトボート、冷蔵庫……バドミントンラケットと次々と物が増えていく
今日に至ってはどこで仕入れたのかパソコンまでもが設置された
……何処かで迷惑を受けたやつがいなければいいんだが……
そしてそのパソコンを入手してきたハルヒは何処へ行ったかというとだ
「甘いわよ!」
「狙い通り……よ!」
「んなっ!?くぅぅぅぅぅ!次!みくるちゃん!」
「わ、私これ苦手ですぅ!」
外で楽しそうに朝倉とバドミントンしておられる
意外なことに朝倉は運動神経が抜群だったのだ
そして、負けず嫌いのハルヒが事あるたびに勝負を挑んでいた
ちなみに朝比奈さんは問答無用で巻き込まれている
「これじゃ何部なんだか……」
「……」
俺が呟いた言葉を拾ったのかこちらを向いた長門と目が合う
長門とはどうにも距離感が掴めなくて困っている
「……今日は何よんでんだ?」
長門はタイトルが読めるように背表紙を此方に向けてくる
「いつも難しそうな本を読んでいるよな」
「……そうでもない」
「面白い?」
「……割りと」
「本が好きなんだな」
「……ユニーク」
うーん……果たしてこれはコミュニケーションが成立しているのだろうか
そして長門は本を読み始める
どうして俺がここにいるか……説明すると簡単だ
パソコンを持ってきたハルヒの要望……つまるところホームページの作成のためである
ハルヒが気を利かせたかどうかはわからないが無駄にホームページ作成用のツールがインストールしてあったので思いの外簡単である
「しかし……どう書いたものか……」
「……ん?」
何をどう書けばいいのか悩んでいると視線のようなものを感じたので顔をあげる
「どうした?長門?」
「これ」
「……?」
「貸すから……読んで」
「あ、ああ。ありがとう」
恐らく、これが初めてであるだろう長門からの会話に、俺は気の効いたことの一つや二つ言うべきだったのだろうが……そんな余裕なんてまったくなかったのである
「くぅぅぅ!また涼子に勝てなかったわ」
「まだまだ負ける気はしないわね」
「うぅ……お二人とも強すぎですぅ」
タイミング良く三人が部室に帰ってきてその日の部活はそのままお開きになった
「むー!今日も勝てなかった!」
「お前が運動能力で負けるとはな」
「私もビックリしてるわ……中学じゃ私に歯向かうやつなんていなかったし」
それは単純に関わり合いになるのが嫌なだけだったんじゃないだろうか
こう見えてハルヒは運動部から引っ張りだこになる程度には運動神経がいいはずなんだが……
「今度はバスケで勝負しようかしら」
「やれやれ……どんな部活だ」
「いいのよ。団長は私なんだから」
「そうかい」
「今日カレーのつもりだけどいい?」
「問題ない」
妹も喜ぶしな
「そっか。じゃあスーパーいってさっさと帰るわよ!」
「ん」
その後ハルヒとどうでもいいような話をしながら帰っていく
何だかんだでこういった平凡的日常が俺は好きなのだ
だが、どうやら世の中ってのは厳しいものらしい
そんな平和的日常はこの後、あっさりと崩れ去ることになるのだ
ほんと、どーしてこうなっちまったんだろうなぁ、俺
はよ
「ふぅ……」
風呂上がり、髪を乾かし雑誌をペラペラと捲る
時刻はもうすぐ 20時である
ちなみにハルヒは珍しく伯母さんが家に帰ってきたようで呼び戻された
家に帰ってくるなら一言言って欲しい、とはハルヒの言葉である
口では文句言ってたがあれで結構喜んでいるのを俺は知っている
「……そういえば」
雑誌を捲る手を止めて鞄を漁り、目当てのものを引っ張り出す
それは厚いハードカバーの本であり、長門に渡されたものだ
長門はこれがユニークと言っていたが……
ものの数ページで読むことを諦めてしまいパラパラとページを捲ってしまう
ラノベとは違い挿し絵などもなく、小難しい文章が並んでいる
……いや、ラノベも小難しい文章が多いが
などと、どうでも良いことを考えていた俺の思考を止めるものが本からヒラリと落ちてしまう
それは栞である
「やばい」
慌ててページを捲る手を止めるがもう栞がどこに挟まっていたかなんてわかりやしない
「明日謝るしかないな」
何気無い動作で栞を適当なページに挟もうとして違和感に気がつく
「……おいおい」
【午後七時光陽園駅前公園にて待つ】
その文字を見て俺は飛び出した
「キョンくんどこいくのー?」
「駅前だ!」
自転車に乗り、全力で漕ぐ
もしかしたらもういないかもしれない
むしろこれだけの時間待たせて待ってくれている方がおかしいだろう
……だが、何となく、何となくだが長門は何時までも俺を待ち続けてしまうのではないのかと、そんな自意識過剰ともとれない考えが頭に浮かんでしまったのだ
「くそっ!パンクしてんじゃないだろうなこのタイヤ!」
思ったより加速しない自転車に愚痴りつつもひたすら漕ぎ続ける
「わる……い……また……せた……」
息も絶え絶えになりながらもどうにか公園にたどり着いた
「…………いい」
「……もしかして……ずっと待つつもりだったのか」
「……」
返事はない
……もし本を読むのを忘れていたらと思うとゾッとする
そうなったら春先とは言え寒い夜の公園寒い夜の公園でこいつはずっと一人待ち続けていたのだから
「こっち」
「?」
「……ついてこいってことか?」
長門が歩いて何処かに行こうとする
俺はその少し後ろを自転車を押しながら歩く
……そこでふと目についたものがあったので長門を引き止める
「悪い長門。少し時間をくれ」
「……」
コクりとうなずく長門を見てから俺は早足で目的のコンビニの中にはいる
そして急いでホットのお茶を二本を掴みレジにいく
前で会計を済ましてる人をじっと見るのもあれなので視線を少し泳がせる
……そうだな。ついでにこれも買ってもいいだろう
「何度も待たせて悪いな」
「いい」
「ほら、寒いだろ?これ」
「……?」
「お茶だよ。何処に行くかは知らんが寒いだろ?」
「……」
こちらの言っていることが理解できないのか長門は少しだけ首を傾げるような動作をした
「まぁ、待たせちまったお詫びだ……あー、それともお茶嫌いだったか?」
「……問題ない」
「そっか。後これも……時期外れだけど」
袋から肉まんを取りだし長門に渡す
「……」
またどうしたらいいのか分からないといった表情だ
……いや、俺がどうすればいいかわからないだけだな
「ただの肉まんだぞ?」
「理解した」
何をどう理解したのかはわからんがとりあえず受け取ってもらったようだ
長門はじっと渡した肉まんの袋を見ている
……やはり食べ歩きとなると食べ辛いか
女子と男子だとそういったところでズレが生じてしまう
いかんせん近くにいるやつがあれだからなぁ……
こういう時は俺が先に食べてやれば少しは食べやすくなるだろう
自分の分の肉まんを袋から取りだし口に頬張る
「うむ……寒いときはやはりこれに限るな」
俺をじっと見ている長門に向かってそういうと長門も袋から肉まんを取りだして口に……あ!おい!
「まて、長門。肉まんの下についているビニールをとってから食べるんだ」
「……」
コクりとうなずく長門
肉まんを食べたことがなかったのだろうか
……モグモグと肉まんを食べる長門を思わず凝視してしまい、それに気がついてこちらを見た長門とバッチリ目が合う
「……?」
「あー、いや、うまいか?」
「……ユニーク」
「そうか」
どうやら長門の中ではユニークという言葉は万能らしい
肉まんを食べ歩きしてしばらくすると長門の目的地についたようだ
ついたのだが……
「……どうぞ」
「……えーっと……長門さん?」
それは、長門の部屋であり、家でもある見るからに高そうなマンションであった
……どうしてこうなった
寝る
せめて週一更新
待たせてごめんね
許さん
責任を持って最後まで書いてもらう
このキョン、ちょっといいおとこやん
あれ?朝倉が超能力者枠かな(すっとぼけ)
乙
「……えーっと」
「……飲んで」
「あ、ああ。頂きます」
「おいしい?」
「ああ」
飲み干すと長門はすぐにお茶をついでくる
……さっきもお茶飲んだばかりなのだが出されたら飲むしかない
「長門……?そろそろどうして俺が呼ばれたか聞いてもいいか?」
長門が出してくれたお茶を5杯ほどいただいた後に俺は切り出した
これ以上は胃袋が水分で大変なことになりそうだしな
「涼宮ハルヒのこと。それと、私のこと」
ハルヒと、長門?
「……うまく言語化できない。情報の伝達に齟齬が生じるかもしれない」
「……げんごか?」
「けど、聞いて」
何だ……?
何が始まろうってんだ?
「涼宮ハルヒと私は普通の人間じゃない」
……?
「いや、確かにあいつは普通の人間とは言えないかもしれないが……」
長門は普通の子じゃないか?
「そうじゃない」
「性格に普遍的な性質を持っていないという意味ではない」
「文字通り、純粋な意味で彼女と私はあなたのような大多数の人間と同じとは言えない」
意味がわからない
長門は何を語ろうというのだ?
「端的ないうならば宇宙人」
「は、はい?」
「この銀河を銀河を統括する情報統合思念体によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェース。それが、わたし」
「私の仕事は涼宮ハルヒを観察して、入手した情報を統合思念体に報告すること」
「三年前、惑星表面に他では類を見ない異常な情報フレアを観測した。その中心にいたのが涼宮ハルヒ……そして、あなた」
「……はい?」
唐突に俺が現れたのですっとんきょうな返事になってしまう
いや、そもそも長門の話を一ミリも理解できていないのだ
理解できるやつがいるならば今すぐ目の前に出てきて翻訳してくれ
「涼宮ハルヒは自立進化の可能性を秘めている。おそらく彼女には自分の都合のいいように周囲の環境情報を操作する力がある」
「それが、わたしがここにいる理由。あなたがここにいる理由」
話が終わったのか長門はさっき俺が買ってやったお茶を飲む
「正直に言おう。何をいっているのかさっぱりわからない」
「信じて」
「……仮に、仮にその情報なんとかを信じたとして、ハルヒは普通の人間だぞ?」
あいつと長年連れ添ってきた俺にはよくわかる
確かにあいつの言動や行動は常軌を逸していることがある
あるが、そんな宇宙人にマークされるような女の子ではないはずだ
「三年前、彼女とあなたに何かが起きたはず」
「そんなこと言われてもな……」
三年前と言われてもハッキリしないのだ
そんな決定的な何か、俺には心当たりがないのだ
「……どうして俺にこんな話を?」
「あなたは涼宮ハルヒに選ばれた。涼宮ハルヒは意識的にしろ無意識的にしろ、自分の意思を絶対的な情報として環境に影響を及ぼす」
「あなたが選ばれたのは必ず理由がある」
「ねーよ」
あるとしたら、たまたま家が近かっただけだぞ
そんな事で選ばれたというならばそこに俺の意思もハルヒの意思も関係がない
その家を選んだ親の意思さ
「ある。あなたは涼宮ハルヒにとっての鍵。あなたと涼宮ハルヒが全ての可能性を握っている」
「本気で言ってるのか?」
「もちろん」
……度を越えて無口なやつがやっと喋りだしたと思ったら、延々と電波なことをいいだした
ハルヒが進化の可能性ねぇ……
アイス片手にソファーでぐったりしたり、プリン勝手に食うようなあいつがぁ?
……ないない
「ハルヒに直接いってみたらどうだ。あいつの事だ。飛び付いてくるぞ?」
「彼女が自分の存在価値と能力を自覚してしまうと予測できない危険を生む可能性がある。今は様子を見るべき」
まぁ、確かにあいつなら世界のありとあらゆる法則を無視しかねんな
「俺があいつにそのまま伝えるかもしれんぞ?」
「あなたが彼女に伝えることで生じるリスクを背負う事になる可能性をあなたはよしとしない」
そうかもしれんが……
「それに、彼女はあなたがもたらした情報を重視したりしない」
確かにハルヒにこんな電波の事を言ってもすぐに反論されそうだしな
「あなたは涼宮ハルヒにとっての鍵。危機が迫るとしたらまず、あなた」
今さらりと怖いことを言われた気がするが……しかしこんな話を信じていいものなのだろうか
……などと考えているとピンポーンとこの部屋のインターホンがなる
「……客か?」
「……」
長門は珍しく驚いた表情をしたのかもしれない
目がはんの少しだけいつもより開いていた気がする
……おいおい、まさかさっきいってた危機ってやつなのか?
映画とかでよくある秘密を知った奴は生かして返さんとかの?
体に緊張が走る
長門はゆっくりと玄関にむかいガチャリと扉をあける
え?そんな簡単に開けていいのか?
「こんばんはー長門さん。晩御飯のお裾分け持ってきたわよー……ってキョンくん!?」
「あ、朝倉?」
鍋をもった朝倉がそこにはいたのだった
「ど、どうしてこんな時間に長門さんの家にキョンくんがいるのよ」
「それはこっちの台詞だぞ。なんだその格好は」
「あ!ちょっと!あんまりジロジロ見ないの!お風呂上がりの女の子を凝視するなんて酷いわよ」
ああ、それでいい匂いがしたのか
「って違う。そういう意味じゃなくてだな……」
「涼宮さんに言ってやろうかしら」
「絶対にやめろ!?後でめんどくさいんだからな!」
ワイワイと朝倉と言い争う
「……イレギュラー」
だから、俺は彼女が呟いた一言に気がつくことができなかったのだ
イレギュラーって
長門が敵に回ったりするのだろうか……
そりゃ長門は七夕の時の長門と同期してるんだし朝比奈さんと一緒で本来の正史しか知らないからイレギュラーって言ってるんじゃない
つまりここに朝倉が来ること事態がイレギュラー
お願いだから朝倉が敵に回るのだけはやめてくれ…
朝倉を幸せにしてやってくれ…
それよりも僕の出番はまだですか?
僕? 国木田かな?
佐々木さんにきまってるやろ
佐々木さんにきまってるやろ
佐々木は丁寧語じゃないぞ
まつ
まだか
わたし待つわ
何時までも待つわ
まつぞ
ヒューマノイドインター……なんだっけ?
宇宙人?
俺は家に帰る途中ついさっき長門に聞かされた話を思い返してみる
ハルヒになんだかよくわからない力がある……ねぇ?
三年前と言われても俺にはさっぱりと思い付かん
あいつが中一の頃に何かが起きた?
そもそもその頃のあいつと俺はろくに会話もしていなかったのだ
わかるわけがない
ふと、その頃のハルヒの姿が脳内にフラッシュバックのように映る
何もかもを退屈そうに見つめている
そんな彼女の姿を……
「あんた、こんな時間に何処行ってたのよ」
「……ハルヒ?お前どうしてこんなとこに」
「それはこっちの台詞よ!あんたんち言ったら妹ちゃんがキョンくんが不良になったとか言うし!コンビニにでも行ったのかと思ったら近くの場所全部探してもいないし!」
走っていたのだろうか、じんわりと汗をかいているハルヒはこちらに向かって言いたい放題いってくる
「ちょっと!聞いてるの!?」
「ああ、悪いな。心配かけて」
「ばっかじゃないの!別にあんたの心配してたんじゃないわよ!妹ちゃんが心配してたから私が直々に説教しに来たの!」
それだけ言うとぷいっとそっぽを向くハルヒ
……仕方がない
「ハルヒ」
「……なによ?」
「ん」
黙って自転車を指差す
「……帰りにプリン買ってよね。勿論二人ぶんよ?私と妹ちゃんの」
「ああ」
俺が自転車に乗ると後ろからよっと軽い掛け声と共にハルヒが乗る
「寒いからゆっくり漕ぎなさい。団長命令よ」
「何だそれ」
「いいから」
……やれやれ。うちの団長はわがままである
こいつに変な力がある?
そんなわけあるわけがない
……こいつはただの我儘な普通の女の子さ
だから翌日、唐突に訪れた出来事に俺は一つの不安を感じずにはいられなかった
「ついにきたわよ!」
「何が?というか顔が近い」
「待望の転校生!すごいと思わない!?謎の転校生よ!間違いない!」
「会ってもないのに何を決めつけているんだ。お前は」
「前にもいったじゃない!こんな時期に転校してくるなんて間違いなく謎の転校生よ!」
「……親の転勤とか、そういう一般的理由だったらどうする?あまり深入りするもんじゃないぞ」
この場合親の離婚とかだと最悪である
……一瞬だが長門の話が頭によぎったがこの程度、ただの偶然であるにちがいない
たまたま長門から話を聞いた翌日にたまたまハルヒが望んでいた転校生がきた
そう、ただの偶然だ
「見に行ってくる!」
「あっ!おい!」
何だろうか、この胸につっかえるモヤモヤとしたものは
「元気ねぇ涼宮さん」
「……」
「どうかしたの?怖いかおして」
「あぁ、いや、何でもない」
「ふーん。それより、昨日の件なんだけど?」
「長門の家にいたのはたまたまだ。特に意味があった訳じゃない。何度も言っただろ?」
「怪しいなぁ……長門さんって簡単に人を家にあげたりするようなタイプじゃないと思うんだけどなぁ」
「俺だって驚いたさ」
「……まぁいいわ。それより覚えてる?」
「……何をだ?」
「ひどーい!週末にお茶ごちそうしてくれるって約束。忘れちゃったの?」
「あー。いや、すまん。忘れてた訳じゃないんだ」
昨日の出来事が衝撃的すぎて記憶の端から飛んでいってしまっていたのだ
「もう。楽しみにしてるんだからね?」
そういってパチリとウィンクをしてから朝倉は自分の席に戻っていく
「なんでキョンばっかり!」
谷口の戯れ言は聞かなかったことにしておさっさと席に戻ることにした
そして放課後
何事もなかったように本を読んでいる長門と、お茶の準備をしてくれている朝比奈さんが部室にいた
……ここまで変化がないといっそ昨日の事が全部夢なんじゃないかと思える
「へいお待ち!一年九組に本日やって来た即戦力の転校生!その名も!」
「古泉一樹です。よろしく」
えらく爽やかなイケメンが、そこにはいた
「ここSOS団!あたしが団長の涼宮ハルヒ!そこにいるのは団員その1と2と3!あと、まだここにはいないけど四人目もいるわ。あなたが五番目。皆、仲良くやりましょう」
バァン!と扉を開けてつらつらとよく噛まないなぁと感心させる勢いでハルヒが言い切った
「入るのは別にいいんですが、何をする部活なんですか?」
至極全うな意見である
その意見に対してハルヒは一呼吸吸い……
「説明するわ。SOS団の目的……それは……宇宙人や未来人、超能力者を探し出して一緒に遊ぶことよ!」
胸を張ってそう言い切った
こんな説明で入ってくれるお人好しなんぞこの世には……
「ああ、なるほど。流石は涼宮さんですね。わかりました。入部します」
なんですと!?
この爽やかイケメン野郎は表情一つ崩さず入部を決めてしまっていた!
「……古泉です。転校してきたばかりで至らぬ点もありましょうが、よろしく御教授願います」
「あ、ああ。俺は」
「そいつはキョン!あっちの可愛いのがみくるちゃんで、そっちの眼鏡っ子が有希」
「なぁに?騒がしいわね?」
「丁度良いところに来たわね!この子が涼子」
「どちら様?」
「新入部員だそうだ」
「古泉一樹です。よろしく」
「随分と美形ね。朝倉涼子よ」
「恐縮です」
「さぁ!新規部員も増えてますます活気づいてきたわね!皆一丸となって頑張っていきましょう!」
いったい、何をどう頑張るって言うんだろうな
ぉっ
乙
とりあえずキョンくんはかわいい幼馴染みとの学園生活を頑張ればいいんじゃないですかね
乙です
そもそも転校してこないという展開にならなくてよかったな古泉
存在消されても平和な世界線ではなんの問題なさそうだからな…
古泉とTS朝倉でホモ展開
は、無いか
「突然だけど第一回SOS団ミーティングを始めます!」
「なんだ藪から棒に」
それは、古泉が突如入部してきた次の日の出来事である
「はーい。お茶です」
「あっ。すいません朝比奈さん」
「いいえー。これぐらい全然平気ですよー。お口に合えばいいんですけど」
「何時も美味しく頂いています」
「うわー、キョン君?顔がちょっとだらしないわよ?」
「うるさい。そんなことは断じてない」
「ふーん?」
「……ちょっと!ミーティングするっていってるでしょ!話を聞けぇー!バカキョン!」
「うぉ!急に揺らすな!こぼれる!」
「あんたがいけないんでしょうがぁ!みくるちゃんも凉子もだからね!」
「す、すみませぇん!」
「ごめんなさい。キョン君からかうのが楽しくて」
「……」
「いや、何故そこで俺を睨むんだ」
「……今週末つまり明日に不思議探索を行うことにしました!」
「不思議……」
「探索?」
「そうよ!果報は寝て待て!昔の人はそう言いました!ですが今の現代社会ではそれだけでは駄目なのよ!もっと自ら行動しないと!」
「はぁ……それで?」
「だから探すのよ!」
「……なにを?」
「不思議な出来事をよ!」
つまり……ハルヒは週末にどっかに集まってそんで不思議な出来事や現象、その他もろもろを探しにいこうと言うのである
……ようは皆で遊びに行くのと何が違うと言うのか
「皆予定空いてるわよね?みくるちゃん大丈夫?」
「あ、はいー。大丈夫ですよ」
「うんうん。古泉くんは?」
「僕は大丈夫ですよ。引っ越してきて間もないので」
「有希!」
「ない」
「凉子は!?」
「ぁー……んっと、ごめんね。今週はちょっと……」
此方をチラリと見た朝倉を俺は見逃さなかった
……心配しなくても忘れてないぞ
「そう……いきなりだからしょうがないわね!来週は頼むわよ!」
「それじゃ日時は……!」
「って!おい!俺にも確認をしろ!?」
「何で?どうせ暇でしょ?」
「勝手に人の予定を決めつけるなこの馬鹿ハルヒ。今週は俺も予定があるからパスだ」
「誰が馬鹿よ!……予定?あんたに?」
「ああ」
「おじ様達が帰ってくる日……じゃないわよね。じゃあ一体……」
何やらブツブツと考え事を始めるハルヒ
「と言うわけで今週はいけん。来週からなら参加してもいい」
「そんなに大事なようなの?」
「先約だ」
「……わかったわよ。今日はもう帰るわ」
多少ふてくされた顔でハルヒは早々に部室から出ていってしまう
その姿に俺は少し、いやかなり驚いていた
ハルヒならば問答無用で俺に食いついて理由やらなんやらを根掘り葉掘り聞いてくると予想していたのだが……
ハルヒも成長しているのだろうか
どうでもいいがハルヒよ……鞄忘れてるぞ
いくら家が隣だからといって俺が持って帰る保証はないんだぞ?
「……やってくれましたね」
「……?」
「失礼、何でもありません。僕もバイトの時間なので失礼しますね……貴方とはまた後日ゆっくりと話をしてみたいものです」
「何だ藪から棒に気色悪い」
「その話しは後日に……では急ぎますので 」
古泉も慌ただしく部室を後にしてしまった
……ん?あいつ引っ越してきたばかりなのにもうバイトなんてしているのか
見かけによらず苦労しているのかもしれないな
「……」
「長門さん?」
いつのまにか立ち上がったのか、長門が朝倉のとなりまで来ていた
「長門?帰るのか?」
長門は此方を一瞬だけ向きコクりと頷き、部室の外へ出てしまう
「あの!キョン君!」
「ど、どうされましたか朝比奈さん」
「どうしても……これませんか?不思議探索」
「すみません。先に約束事がありまして」
「そう……ですか。あの……その……涼宮さんに……あまり冷たくしないであげてね?」
「え?いや、そんなつもりは一切ないですが」
「あと…………ううん、ごめんなさい。何でもないです」
「朝比奈さん?」
「ごめんなさい。私も今日はこれで」
ハルヒに続き、古泉、長門、朝比奈さんと次々に部室から去っていってしまった
「……何なんだ?いったい」
「さぁ……もしかして気をきかせてくれたとか?」
「一体何にたいしてだ?」
「んー……私とキョン君が二人っきりになれるように、とか?」
「またお前はそんなことを」
「ふふ。でも嬉しかった。キョン君、約束覚えててくれたんだ」
「まぁ、約束だしな」
「じゃあ駅前に10時でいい?」
「ああ、任せておけ」
「おーい、ハルヒー。鞄持ってきたぞー」
「……?」
呼び鈴をもう一度押してみるが返事はない
まだ帰ってきていないのか……?
いや、しかしハルヒが帰ってから三時間近くたっているはずだが
「……やれやれ」
扉の前に置いておくのも不用心なので自分の部屋に持っていくことにする
メールで俺の部屋にあることを送っておけば済むだろう
……だが、ハルヒのやつはさーっぱり返事を返してこなかったし、部屋に来ることもなかった
たまに窓からハルヒの部屋の電気を覗いてみても真っ暗なままである
……何だか俺ストーカーみたいになってないか?
……馬鹿馬鹿しい
どうせ明日明後日は休日だ
鞄がなんだ。寝てしまえ
……だが、何故だろうか
その日の夜はなかなか寝付けなかった
翌日、俺は寝坊することもなく起き上がった
そして、なんとなーく、携帯をチェックする
……どうにも不貞腐れ姫のご機嫌は治っていないようだ
「……ったく」
机の上にある俺のではない鞄をじっと見つめてしまう
「……知らん知らん。俺は別に悪くないぞ」
身支度をささっと整え、待ち合わせ場所である駅前に向かおう
「あれ、キョン君おでかけ~?」
「ああ、そうだ。もしハルヒがうちに来たら鞄は机の上にあるって伝えといてくれないか?」
「うん。わかったー……あれ?ハルニャンとお出掛けするんじゃないの?」
「別件だ。じゃあ頼んだぞ」
「……う~ん?キョン君うわきぃ?」
「何処でそんな言葉を習った!」
「あれ?キョン君?ご、ごめんなさい。遅れた?」
「あー、いや、来たばかりだ……朝倉こそ早いな」
「朝早く目が覚めちゃって。どうせならキョン君驚かせちゃおっかなぁって思って早く出たんだけどね」
いたずらっ子のいたずらがバレてしまった時のように舌を少しだけ出して笑う彼女は普段と違い凄く子供っぽく見えた
「しかし予定より30分以上早いぞ。店あいているのか?」
「んもー。その前にもうちょっと言うことないの?今日の服装結構気合いいれたんだけどなー」
「……朝倉がワンピース姿なのは予想外だったよ」
「ちょっと!それどういう意味よ!似合わないってこと?」
「いや、似合うぞ。普段とイメージが変わるという意味だ」
「いい意味で?」
「ああ」
「……ふふふ。ありがと。キョン君も何時もより三割増ぐらいでカッコいいよ?」
「からかうのはよしてくれ」
「ふふふ。行こっ。お店はもうあいてるから」
それは、駅前の近くに新しくできた喫茶店である
雰囲気もよく、メニュー価格も昨今にしては良心的であった
ただ、一つの問題以外は
オープンしたてと言うこともあり開店して時間がさほどたっていないのに人が多いのである
それはいい、別に客が多いのはなんら問題はない
……ないが……しかし!
「ったく!キョンのやつ!なにが先約よ!むぅぅぅぅ!」
「す、涼宮さん、お店のなかですし落ち着いてください~」
これは……流石にヤバイのではないでしょうか……
あけましておめでとうございます
完結まで行きますのでゆっくりお付き合い頂ければ幸いです
それではお疲れ様でした
待ってた
面白い
乙カレー
待ってたぞ
焦らされるのは好きじゃないんだ!まあ待ちますけども
ハルヒに幼馴染属性が付くだけで無敵に見える
やはり朝倉は俺の嫁にしたいけど誰かに取られそうだからハルヒはもらっときますね
乙
いきなり修羅場とかワクワk……あ、いやハラハラしますねぇ
待ってる
はよおおおおおお
保守
はよはよ
保守
「どうかしたの?キョン君。変な顔して」
「い、いや、何でもない」
「?」
そ、そうさ、別にここでハルヒと鉢合わせになったとして何が問題になる
ただ朝倉とお茶を飲みに来ていただけだ
……いや、ハルヒの奴にこんな所みられたら絶対にやばい
下手すりゃ暴れる
……いや、俺は別にハルヒと付き合っているわけでもない、普通に朝倉と先に約束をしていてだから優先しただけ……特に深い意味なんてこれっぽちもないんだ
ないが……!ここは団内の関係に悪影響を与えないためにもハルヒにバレないように静かに過ごすべきじゃなかろうか
ああ、もう。誰に言い訳してるんだろうなぁ俺は!
「涼宮さんの事考えてるの?」
「え?いや……何でだ?」
「わかるわよ。眉間にシワ」
「……それがどうしてハルヒに繋がる」
「あら、だってキョン君がそんな顔するのなんて涼宮さんの事ぐらいよ?」
朝倉はそんなことを言いながら注文して届いたケーキを食べている
「まるで保護者みたいな扱いだな」
「あら?違うの?」
「断じて違うぞ」
「ふーん。じゃあキョン君」
「何だ?」
「キョン君にとって涼宮さんってどういう存在なの?」
「……前にも言ったが」
「幼馴染み……そう言うんでしょ?じゃあ言い方を変えるわ」
朝倉は俺が言おうとした言葉を先にいってしまう
わかっているのなら何故聞いてきたと言うのだ
「女の子として、どう思っているの?」
…………はい?
その言葉の意味を理解するのに一瞬、いや、結構な時間を要した
だってそうだろう?
そんな事を聞かれるなんて思ってもいなかった上に考えたことすらなかったのだ
俺にとっての涼宮ハルヒとは何かと問われればそれは幼馴染みであると答える
これは間違いない
だが、女の子としてどう思うかと問われればどう答えればいい?
ハルヒはハルヒであってハルヒでしかない
そこに男女の感情を持ってなどいない……なんて事は恐らくない
……ないのだが俺はこの感情をどう表現したらいいのか、明確な答えを持っていない
友情?親愛?腐れ縁?それとももっと別の何か?
「ほら」
「?」
「また凄いシワが寄ってる」
「……少なくとも今回の原因はお前だ」
朝倉が用意してくれた逃げ道に乗っかってしまう
どうやらこの質問にはすぐには答えられそうにない
しょうがないなぁと朝倉の目が語ってくれている気がするが気がつかなかったことにしよう
間を持たせるために届いたコーヒーに手を伸ばそうとして気がつく
ハルヒが席を立ってこっちに歩いてくるのだ
「……っ!?」
「キョン君?」
朝倉は俺の反対側に座っているので勿論ハルヒの接近は見えていない
その事を説明する間もなくハルヒがどんどん此方の席に近づいてくる
あぁ……これはもう素直に謝るしかないか
そう決意を固めた俺の横をハルヒは素通りしていく
「……あれ?」
思わず通りすぎたハルヒを振り返ってみてしまう
こちらに気がつかなかったのか?
どこに……ああ、トイレがあるのか
見馴れたトイレのマークがついている方向に向かうハルヒを見てから俺は席にどっかりと座って息を吐く
「どうしたのキョン君?今の人知り合い?」
「え?朝倉顔見なかったのか」
「後ろ姿はみたけど……?」
きょとんとした朝倉を見て不思議に思う
後ろ姿からでもハルヒだってくらい分かりそうなものなんだが……
【現在、貴方と朝倉涼子に対しての認識を改竄して涼宮ハルヒが貴方達に接触を図れなくしている】
「!?」
「キョン君?」
何だ!?急に聞こえてきた声にキョロキョロと周りを見てしまう
聞いたことのある声……
長門?
いや、しかし長門は前のボックス席で確かに座っていて声なんてとても届くわけが
【現在は空気振動による言語伝達ではなく脳信号による言語伝達を試みている】
頭に直接長門の声が響いてきて少し気持ち悪い
【この伝達方法は貴方にあまりいい影響を及ぼさない】
……みたいだな
こっちの心の声が聞こえているかわからないが応じておく
……幻聴……じゃないよな
【違う】
……マジかよ
「ちょっと……ほんとうに大丈夫?」
「あ、ああ。大丈夫だ」
「……あまりそうは見えないけれど」
「あー……ちょっとさっきの人があんまりにも知り合いに似てて驚いただけだ」
「……ふーん。キョン君の昔の友達ってこと?」
「まぁ、そんな感じだ」
必死に朝倉と話をしながら俺はこの超上現象について考えていた
長門は前なんといった?
自分が宇宙人であると
今のがトリックでもなんでもないというのなら、それは本当だったと言うことなのか
「ははは、何時からこんな世界になっちまったんだよ」
「本当に変よ?キョン君」
「ああ、まるで変な夢をみた気分だよ」
「頬っぺたつねってあげましょうか?」
「朝倉力強そうだし痛そうだから遠慮しとく」
「つ、強くなんてないわよ!?普通よ普通!」
顔を赤くしながら怒る朝倉の横をトイレから帰って来たハルヒが素通りしたの見て俺は確信を持ってしまった
長門の言っていたことは本当だったのだと
「買い物にまで付き合ってもらってごめんね?」
「いや、俺が言い出したことだから気にするな」
ハルヒと鉢合わせしたあの喫茶店を早々に出るようにしてしまった俺は埋め合わせとして朝倉の買い物に付き合ったのだ
「でも本当に俺の選んだやつでよかったのか?」
「いいのいいの。キョン君ってこういう服が好きなんだなぁってのもわかったし」
「いや、まぁ、好きというかなんというか」
「んー?なになに?」
「……好きだが」
「……ふふっ。そういうところ可愛いよね。キョン君」
「ほっとけ」
からかわれるので顔を反らす
「ありがとう。キョン君。また学校でね」
「おう。気を付けろよ」
「キョン君も宿題だからね」
「?」
「喫茶店での質問の答え」
「え……あー……」
「ふふ。それじゃあね」
宿題の答え……ね
朝倉を見送ってから俺も自転車に跨がり帰路につく
ハルヒのことよりも今は考えることがあるのだ
長門の部屋で聞かされた話を思い返しながら俺はそんなことを考えていた
だから、俺は気がつかなかった
「キョン……と朝倉?なんで……?」
その現場を見られてしまっていたことに
待ってた
朝倉ルートが良いです(小声)
>>152
超常現象
待ってたぞ
乙
日曜日、それは安息と惰眠を思う存分に味わえる幸福な曜日でもあり、次の日の事を考えると憂鬱になる曜日でもある
そんな日曜日に俺は朝っぱらから規則正しく目覚めてとあるものをじっと見つめていた
そう、ハルヒが置いていった鞄である
朝倉と別れた後の夜にも顔を出そうとしたのだが完全に居留守を決め込まれてしまった
こうなったときのハルヒは兎に角大変なのだ
大抵は不貞腐れて拗ねたとしても一日でパパっと切り替えれるやつなのだが……
そうじゃないときの切り替えの遅さは俺が一番よく知っている
「どうしたものか」
一人の部屋に返事などあるわけがないが呟いてしまう
ハルヒをどうにかして部屋から引っ張り出して埋め合わせをすればいいのだが……
いかんせん方法がなぁ
【女の子として、どう思っているの?】
ハルヒのためにあれやこれやと考えていたら朝倉の言葉が頭に浮かぶ
……ノーコメントだ
今はそれでいいだろう
むこうが俺に会いたくないのならそれはそれでいい
こっちには鞄を届ける大義名分があるのだ
机の引き出しを開け一本の鍵を取りだし、鞄を手に部屋を出る
行き先は勿論不貞腐れ者の家だ
「ハルヒー。いるかー」
インターホンを鳴らして確認を取るが返事はない
ため息をはきながらポケットに突っ込んだ鍵を引っ張り出してハルヒ家の鍵を開ける
何で俺がこいつの家の鍵を持っているかは長くなるので割愛させてもらうが決して違法で手に入れたものではないと言わせておいてもらう
「お邪魔します」
ガチャリと鍵を開けて中に入る
前に入ってから大分時間が経っているが全く変わっていない玄関だ
「……」
迷わず二階の階段を登りハルヒの部屋の前までいく
「ハルヒ、いるんだろ」
ノックしつつ呼び掛けるが返事はない
やれやれ……本当に重症だ
「ちゃんと飯食ってるんだろうな」
当たり障りもない事を言ってみるがこれもダメである
「鞄ここに置いとくからな」
扉の前に鞄を置いて出ていくことにする
「ん?」
ハルヒの家から出た所で携帯が鳴る
「メール?……誰だこれ」
登録されていないアドレスからのメールには正午に光陽園駅前公園と書かれている
……長門か?
最近待ち合わせに使われた場所から長門を連想する
長門は携帯持ってるイメージじゃないんだが……
長門には色々聞きたいこともあるし丁度いい
「今度は遅刻しなくてすみそうだ」
そして、指定された時間に行くとそこには
「きゅ、急にお呼び立てしてしまってすいません」
「あ、いや……まさか朝比奈さんからの呼び出しとは思っていなかったので」
此方が申し訳なくなるぐらい萎縮してしまう朝比奈さんを見ていると少しぐらいハルヒにも見習ってほしいと思う
いや、ここまでじゃなくてもいいのだがもう少しぐらい謙虚になってほしいものだ
「それで、朝比奈さん。今日はまたどうして?」
「その……本当は昨日お話するはずだったんだけど……」
「すいません。昨日は先約があったんで……」
「あ、いえ、そういう意味じゃなくて……すみません話が脱線しました」
そこで朝比奈さんは息を軽く吸い捲し立てるように話を始めた
「キョン君、私はこの時間平面上の人間ではありません」
「……えっと?」
「この時間軸のもっと先にある未来から私はこの世界にやって来ました」
「朝比奈さん……?」
「一般的に言うなら、未来人です」
……なんですと?
読み始めたばかりだが言わせてくれ…最高に面白いよ
キョンTUEEEEEEと同じくらい面白い
青春してるなキョンとハルヒ
今度はなんだ……?
「三年前、大きな時間振動が検出されたの」
また三年前か
「調査するために過去に来た私たちは驚いた。どうやってもそれ以上の過去に遡ることができなかったから」
「大きな時間の断層が時間平面同士の間にあるんだろうっていうのが結論」
「原因がわかったのもつい最近」
何となく話の落ちがわかった気がする
「その原因って……?」
「涼宮さん」
やっぱりか……
ハルヒよ、お前は三年前とやらに何をしでかしたんだ
「時間の歪みの真ん中に彼女がいたの。それ以上は禁則に関わるので説明できないけど……でも、過去への道を閉ざしたのは涼宮さんなのは確か」
「ハルヒにそんな事ができるとは思えないんですが」
「我々にも謎なの。涼宮さんも自分が時間振動の源だなんて自覚してない。私は涼宮さんの近くで新しい時間の変異が起きないかどうかを監視するために送られてきた……監視員みたいなもの」
「信じてもらえないでしょうね。こんなこ
と」
「いや、でも何でこんな話を俺に?」
「貴方が涼宮さんに選ばれた人だから。涼宮さんの隣に常にいる貴方は重要な存在なの。彼女の一挙手一投足にはすべて理由がある」
ハルヒはそんな大層なものはではないと思いますが
あいつは楽しそうだからという理由で動くぐらいで何か深い考えを持っていたりなんてしないはずですよ
ハルヒの行動に意味があるというのなら……
「……なら、長門や朝倉や古泉は?」
「あの人たちは私と極めて近い存在です。まさか涼宮さんがここまで的確に私たちを集めてしまうとは予想外でしたけど」
「朝比奈さんはあいつらが何者か知ってるんですか?」
「禁則事項です」
「……これから、ハルヒはどうなるんです?」
「……禁則事項です」
「未来から来たならわかりそうなものですけど……?」
「禁則事項です……」
どんどん顔を伏せてしまう朝比奈さんを見ているとこっちが悪いことをしているように感じてしまう
ハルヒが時間の歪みの原因であり俺が重要な人物?
……似たような話を先日誰かから聞いたな……
宇宙人の次は未来人の登場か……
一体どうなっちまったんだこの世界は
月曜日、ジリジリとうるさい目覚めしを止めて学校へいく準備を整える
これからあの忌々しい坂を登ると考えると憂鬱である
玄関に向かうと下駄箱の上に見馴れた弁当包みがある
意外……と言うかなんというか……
気がつかないうちに口角が上がってしまっていた
その包みを丁寧に鞄に入れる
……しょうがない
あまり時間はないがハルヒが好きなデザートでも買ってから学校にいくとしよう
教室についた俺が見たハルヒの姿は想像以上のものであった
机の上に突っ伏して話しかけるなオーラを全開に発揮していた
やはりまだまだご機嫌斜めのようだ
「よう」
「……」
完全に無視である
……これはやはり触れるなと言うことなのだろう
仕方がない
授業のための教材を机から引っ張りだして準備をする
ふとクラスを見渡すと朝倉がいない事にきがつく
「遅刻か……?」
珍しいこともあるもんだ
休んでいる朝倉なんて見たことがない
土曜日に連れ回しすぎて体調を崩した……とかじゃないといいが
「……」
ふと、後ろから視線を感じたので振り返ってみる
「……ふんっ」
目があった瞬間ハルヒは驚いた顔をして視線をあっちこっちに反らした挙げ句開き直ったのか此方を睨み付けてまた机に突っ伏してしまう
「おい……」
ハルヒはとビクッと肩を揺らすが顔はあげない
……やれやれ
「……あー……あれだ弁当ありがとな」
反応はなかったが聞こえはしただろう
改めてこんな事を言うのは俺も恥ずかしいのさっさと前を向いてしまう
幸いにして、教師はすぐに来てくれたので、気恥ずかしい空気も霧散してくれた
「起立、礼」
……ただ、朝倉ではない号令の違和感は霧散してくれなどしてくれなかった
昼休み、ハルヒはと言えば号令がかかった瞬間に鞄をもって教室から飛び出してしまった
「……やれやれ」
あれじゃ話しかけるのはまだ無理そうだ
仕方ないな
「何だお前ら。喧嘩でもしたのか?」
ハルヒの背中を見送ると今度は谷口と国木田が近づいてきた
「いや」
「かぁー。やめてくれよなー。痴話喧嘩なんてよー」
「別にそういうわけじゃない。それに喧嘩にもなってない」
「いやお前……それは流石にあんな涼宮みてたらわかるぞ?」
「ほらほら、谷口。あんまり詮索しないの。キョン、お昼どうする?」
「あー……そうだな……すまん。今日はちょっと用があるんだ」
「そっか。わかったよ」
「さっさとあやまっちまえよ。お前らがそんなだとこっちまで調子くるっちまう」
「善処する」
谷口達と別れた後、俺が向かったのは……
一年九組……古泉の所だった
「おや、どうしましたか」
「お前も涼宮の事で俺に話があるんじゃないのか?」
「……ふふっ。少しお待ちください。外に出ましょうか」
一度クラスに戻り言葉を交わしてから戻ってきた古泉と共に俺は裏庭に行き、そこの簡易テーブルでお互いに弁当を広げて向かい合う
「お前も……ということは既にほかのかたからもアプローチを受けているのでしょう」
「そうだな」
「何処までご存知ですか?」
「ハルヒがただ者ではないって事だな」
「それなら話は速い。その通りです」
少しは否定してもらいたいものだ
「まずはお前の正体から聞こうか」
「お察しの通り、超能力者です。そう名乗った方がよいでしょう」
とうとう超能力のご登場だ
やれやれ……もうすっかり馴れてしまった自分が末恐ろしい
初見の記憶がよみがえってきて鳥肌たつ
「本当はこんな急に転校してくるつもりはなかったんですが……状況が変わりましてね。よもや、あの二人がこうも簡単に涼宮ハルヒと結託するとは予定外でした」
二人……長門と朝比奈さんか?
となると朝倉はこのとんでもなくぶっ飛んだ話とは無関係ということなのだろうか
「詳しいことはまたいずれ……百聞は一見にしかず。是非、お見せしたいものもありますし。今はかいつまんでご説明しましょう」
「僕が所属する機関には、他にも超能力者がいます。実は、この学校にも何人ものエージェントが潜入しています」
「そして我々は三年前の発足から涼宮さんを監視している。事の発端はその三年前。その時何かがあった。僕の身に超能力としか思えない力が芽生えたのもその時です」
また、三年前とやらがでてくるのか
「三年前とハルヒがどう関係あるってんだ」
「実は、この世界はある存在が見ている夢のようなものなのではないか……というのが機関のお偉いがたの考えです」
「そして、それは夢ですから、その存在が我々が現実と呼ぶこの世界を創造し改変する事は児戯に等しい……そんな事ができる存在を我々は知っています」
おいおい、冗談だろう?
幾らなんでも話がすっ飛びすぎだ
「それがハルヒっていうのか?」
「人間はそのような存在のことを……神と定義しています」
……とうとう神様にまでされちまったぞハルヒよ
「考えてもみてください。我々のような超能力や朝比奈みくる。長門有希のような存在が都合よく一同に介するかのように登場するでしょうか?」
偶然……なんていうには出来すぎている
「涼宮さんがそう願ったからですよ」
入学当初のあいつの言葉が頭をよぎる
「恐らく三年前に……」
「三年前にハルヒが世界を作り替えたっていうのか」
「作り替えたというよりも、三年前に世界は始まったというべきでしょうか。あくまで我々の仮説ですが」
「馬鹿馬鹿しい。俺は三年前どころかずっと昔のハルヒを知っているんだぞ」
「その記憶すらも……創造されたものだとしたらどうでしょうか?」
「……マジでいっているのか?」
「至って真面目です」
「……まぁいい。それで、お前らはハルヒをどうするつもりなんだ」
「この世界が神の不興を買って、あっさりと破壊されて、作り直されるのを防ごうと言うわけです。僕はこの世界にそれなりの愛着を抱いているのでね」
「ハルヒに直接そう頼んでみたらどうだ。あいつらならこういう話大好きだし食いつくぞ」
「そう主張する者も存在します。それ以上の刺激を与えようとする強硬派も。ですが、大勢は軽々しく手を出すべきではないという意見でしめられています」
「彼女はまだ自分の力に気がついていない。ならばそのまま気がつかないまま生涯を平穏に過ごしてもらおう……ということです」
「触らぬ神になんとやら……か」
「その通りです」
「夢を見続けているのはお前らの方なんじゃないか?」
「そうかもしれません。我々は今もっとも危惧すべき事態を回避するためにいるのですよ」
「なら試しに、超能力の一つでも見せてくれ。そうすればお前の話を信じてやる」
「僕達の能力は限定的でして幾つかの条件が揃って、始めて能力が使えるんです。最初申し上げた通り、そのうちお見せすることもあるでしょう」
「……」
「長々とお話しして申し訳ありません。昼休みも終わってしまいますね」
話は終わったと、古泉は立ち上がり離れていく
「……そうそう。一番の謎は貴方です」
その足取りを止め、古泉はこちらに声をかけてくる
「失礼ながら貴方の事は調べさせてもらいましたが……保証します。貴方は普通の人間です」
「……それがどうしたって言うんだ」
「彼女がもっとも嫌っているであろう普遍的存在にも関わらず貴方がもっとも彼女に親しいのです。これが何を意味するかわかりますか?」
「さっぱりだ。もっと解りやすく話を進めてくれ」
「すみません。つまり、貴方は世界の中心とも言える涼宮さんの隣というとても重要な立ち位置にいるということです」
「だからそれがどうしたと言うんだ。まどろっこしい」
「一番に危険が迫るとしたら……貴方だということです」
古泉は物騒なことをなんとも爽やかな笑顔で言ってくれた
なんて殴りたくなる笑顔だ
そのまま歩き去る古泉を見とどけた後、俺は……空を仰ぐのだった
なぁハルヒ……お前の思っているほど世界ってのは退屈じゃないのかもしれないぞ
乙
乙
この世界のハルヒさんはいうほど退屈してないんじゃという気もする青春的な意味で
朝倉のことをキョン以外気にしてない…それどころか話題にもでない
こんなこと思いたくもないが、ハルヒは朝倉を最初から存在しなかったように願ったとか?
そんでキョンや(ハルヒ以外の)SOS団は朝倉がいたって記憶は所持してる
だけどキョンは風邪かなんか程度にしか思ってないが他のメンバーはそれをしってる
けど、下手にキョンに話してハルヒに何かあっても困るから様子見として現段階では話さないでいるとか?
……考えすぎだよな……
だが別の意味でストレスがたまって、神人さん大忙し
ハルヒはどんな気持ちでこの日弁当作ったんだろうなって考えただけで胸が熱くなる
>>178
同時に小泉達も大忙しに…
ハルヒちゃん内だとタンスに小指ぶつけただけでもかなりの強敵神人出るみたいだしなあww
さて、放課後である
ハルヒのやつは昼休みと同様に号令と共に教室から飛び出してしまった
俺はといえば気がつけば部室に足を運んでしまっていた
そして躊躇なく扉を開けるとそこには下着姿の朝比奈さんがいた
「なっ……」
「ひっ」
「失礼しました!」
何かを叫ばれる前に扉を乱暴に閉める
な、何が起きたって言うんだ?
いや、落ち着け、普通に何かに着替えようとしていた
そこにたまたま俺が居合わせてしまったのだろう
よし、状況整理は完了した
そもそも何故朝比奈さんがここで着替えを?
というか今の姿を俺は記憶に深く刻み込むべきか否か……
「ど、どうぞ」
完全に混乱してしまっていた俺に控えめに声をかけてくれる朝比奈さん
「す、すいません。ノックをするべきでした」
「い、いえ、私こそすいません」
「あの……その姿は?」
「この前の探索で涼宮さんに部室ではこれを着るようにと言われてしまったので……」
あ、あいつはなんて命令をしてくれてるんだ!
話を聞くと前回、俺の参加しなかった不思議探索とやらで朝比奈さんはハルヒによってメイド服を着ることを義務付けられたらしい
しかしそのハルヒもいないのに律儀にそんな話を守るなんて……
「あ、あのぅ……そ、そんなにジロジロ見られると流石に恥ずかしいです」
「あー、いえ、すいません」
「い、いぇ……」
「し、しかしハルヒのやつ遅いですね」
「そうですね。朝倉さんも遅いみたいですけど……」
「あー朝倉は今日休みです。学校にも連絡来てないみたいなんですけど……長門なら何か知ってるんじゃないかと思ったんですけど」
同じマンションに住んでいて夕飯のお裾分けを貰うぐらいの仲の長門なら何か知っているんじゃないかと思ったのだが……
その長門が何時も座っているパイプ椅子には誰も座っていない
「長門がいないのも珍しいですね」
「……あの、キョン君」
「はい?」
「実はずっと前から聞きたかったんですけど……」
朝比奈さんはそこで一度言葉を区切る
そして、何かを迷っているのか口を開けたり閉めたりしている
何か重要な事を言おうとしているのだろうか
こちらから話しやすいように何か言葉をかけようとした瞬間に部室の扉が開く
ビクリと朝比奈さんと俺の身体は跳ねたと思う
いや、本当にビックリした
「すいません。バイトがありますので今日の部活はお先に失礼します」
突如現れた古泉はそれだけ言うと颯爽と部室から出ていってしまった
「なんつータイミングだ」
狙った訳じゃないだろうな?
流石に考えすぎか
「あはは」
「あー……朝比奈さん?それで、さっきは何を?」
「いえ、やっぱり止めておきます」
「……そうですか」
一体何を喋ろうとしていたのかはわからないが、推測はできる
恐らく、ハルヒのことなんだろう
話が途切れて気まずくなったのか居心地悪そうに身体を捩る朝比奈さんを見ているのは罰が悪いので古泉がどこからか持ってきているボートゲームを二人でやることを提案する
「あっ。これ知っています。前に教科書で……」
どうやら未来にはチェスという文化は生き残ってないらしい……
……この日結局ハルヒは部活に顔を出すことはなかった
それは夕暮れの教室の出来事である
教卓の上に腰をかける彼女は此方を見てクスリと微笑む
その彼女が
「貴方を殺して……涼宮ハルヒの出方を見る」
突如ナイフを手に此方に攻撃してくる
鈍く光る金属光が、軌跡を描く
そのまま真っ直ぐに……俺の身体を……
「うぁぁぁ!?」
バタバタと身体を触る
「ゆ、夢……?」
何も異常がない自分自身にほっとする
「なんつー夢を見てんだ俺は……」
しかしやたらとリアルな夢だったな
「キョン君おっきい声だしてどーしたのー?」
ガチャリと部屋を開けてくる妹
「何でもない。ちょっと怖い夢を見ただけだ」
「えー!どんなゆめー?」
怖い夢だってのに興味津々で聞いてくる妹はある意味大物なのかもしれない
「あー……どんな夢だったか忘れちまったよ」
「えー。変なキョンくん」
「夢なんて覚めたら思い出せないのが殆どだろう?」
実際既に記憶から抜けてしまったようだ
何か嫌な夢を見た、それぐらいの認識だ
「そっかー。それよりー」
「今度はどうした」
「キョン君ちゃんとハルにゃんと仲直りしたー?」
「喧嘩した訳じゃないぞ」
「えー。うっそだー」
「ほら、さっさと顔洗って学校行く準備する」
「はーい」
「ふぁぁ」
一人でこの坂を登るのは眠気も相まって辛いものがある
ちなみに今日もハルヒは弁当を作ってくれている
……ちゃんと話をしないとな。あいつと
「おーす。キョン」
「おはよ。キョン」
「おはよーさん。谷口は朝から元気だな」
「お前はなーにを辛気くさい顔でじいさんみたいな事を言ってんだよ。あれか、まだ涼宮と仲直りできてねーのか?」
「だからあいつと喧嘩した訳じゃないぞ」
「そーかいそーかい。ま、夫婦喧嘩は出来れば見えないとこでやってくれや。涼宮の不機嫌オーラは体に悪い」
「体に悪いと言えば朝倉さんも大丈夫かな?昨日は結局休んだみたいだけど」
「俺に聞かれてもわからんぞ?」
「え?同じ部活だし、それじゃなくても仲もいいのに連絡とかは?」
「……そういえばあいつの連絡先知らんな」
住所というか住んでいるマンションまでは知っているが……
「まぁ、ただの風邪なら早ければ今日にはくるだろう」
「それもそうだね」
あの糞ながーい坂を登りきり、火照った身体に少しでも冷やそうと下敷きで冷気を送っているとハルヒが登校してきた
「……私も扇いでよ」
「……やれやれ」
本来なら、不貞腐れた声でこんなこと言われたら自分でやれと言ってやるのだが……
俺はハルヒにも風が行くように少しだけ身体と下敷きの角度をずらす
「……ありがと」
ボソリとハルヒはギリギリ聞き取れる程度の声を発する
本人的には聞かれたくなかったんだろうが、残念ながらばっちりと聞こえてしまった
それっきりハルヒは喋ろうとしないので此方から話を振ることにする
「昨日、何で部活来なかったんだ?待ってたぞ」
「昨日は一人で反省会してたのよ」
「反省会?」
「そうよ。どっかの誰かさんがサボった不思議探索のよ」
ジトリとこっちを見るハルヒの目から逃げるように窓の外に目を向ける
「それは、なんというかだな……いや、俺はサボった訳じゃないぞ」
「……ふーん」
それっきりハルヒは此方を見ずに俺と同じように窓の外を見る
ああ、こういったときに窓際ってのは便利なものだ
そのまま朝のホームルームまでの時間はゆっくりと過ぎていく
……そして、今日も朝倉は学校に来なかった
糞遅い展開と更新頻度なのに毎度感想までくれてありがとう
面白いから期待してる
何年かかろうと待つぜ
いいのよ
(面白ければそれで)ええんやで
乙
乙
ハルにゃんとキョンのデートもとい不思議探索を待ってます
それとは別に朝倉さんとキョンのデートも待ってます
不穏だ…
やはり朝倉のオアシスはハルヒちゃんしかないのか…!
続きが気になって早く読みたい病にかかってしまった
「どうなってるのよ」
「……むしろ俺がお前に聞きたいぞ、それ」
さて、現状を説明しよう
俺は昼休みが始まったと同時に後ろの席にいるハルヒに首根っこを捕まれそのまま連行されたのである
そして、やーっと口を開いたと思ったらこれである
全くもって常人には理解不能である
付き合いの長い俺ですらお手上げだ
「あんた、朝倉に何かしたんじゃないの?」
「待て待て、何がどうしてそうなった」
「だってあの子が二日も休むなんて変じゃない」
「二日ぐらいなら風邪だったりでありえるだろう?それがどうして俺が何をしたって話に結び付くんだ」
「それは……タイミング的によ」
タイミング?いや、確かに休みだしたのは俺と朝倉が一緒に街に出掛けたときからだし俺だって連れ回しすぎたのかとも思ったが……それはあの場にいた俺だから知りうることであり、何故ハルヒがそんなことを言い出す?
「とにかく!あんたが朝倉に何か学校に来たくなくなるようなことしたんじゃないの?」
「そんな訳がないだろう」
「……むぅ……嘘は……ついてないわね」
「嘘をつく必要がないからな」
「あんた、嘘が下手すぎてすぐバレるもんね」
「ハルヒに嘘をつく必要がないからな」
「……嘘ね。あんた嘘つきだもん」
「おい……実際あんまり嘘はついてないぞ」
「そうね。滅多につかないわ……ってそうじゃないわよ!朝倉の話よ」
「それについては俺は本当に知らん」
「……はぁ、わかったわよ。お見舞い行ってあげたほうがいいかしら」
「あ、勿論あんたは駄目よ?弱った女の子の姿なんて見るもんじゃないし、病人に大勢で押し掛けるのも悪いもの」
「……わかった。もし行くなら俺の分も宜しく言っておいてくれ」
「任せなさい。とりあえず住所を担任から聞くところからね……」
「という訳で今日もハルヒは来ません」
「そうですか……朝倉さん大丈夫だといいんですけど」
「長門も気になりますけどね……」
昨日に続いて長門は部室にいない
まさか学校に来てないなんて事はないだろうな?
「キョン君?眉間に皺が寄ってますよ」
「え?」
「キョン君は優しい人ですけど、心配しすぎて自分の体調が悪くなってしまったら駄目ですよ?」
「いや、そんな買い被り過ぎですよ」
「ふふふ。そんな貴方だから涼宮さんはきっと……」
そこで朝比奈さんは言葉を区切ってしまう
何だろうか……凄くむず痒い
「……ふふ。ごめんなさい。少し意地悪ですね」
「……今日はこれでどうです?」
オセロ盤を手に持ちながら勝負をもちかける
「わかりました。今日は負けませんからね?」
「それは楽しみです」
パチパチとオセロの駒を置く音が部室にやけに響く
あれだけ狭苦しいと思った部室も二人だとこんなにも広くて……
そして、こんなにも静かなのだ
ああ、そうか
俺は何だかんだで……
ハルヒと朝倉がワイワイとじゃれあって、それに朝比奈さんが巻き込まれて……俺と古泉はゲームしながら、長門は本を読みながらそれを見る
そんな平凡な日常が……
好きなんだ
「……だから、早く帰ってこいよ」
「え?」
「あ、すいません。何でもありませんよ」
「そうですか?」
「ええ……」
「ふふっ。じゃあ角もらいますね」
「あっ……」
「心ここにあらず……そんな感じですね」
「……ははは」
「朝比奈さん」
「はい」
「朝比奈さんはその……未来から来たって言っていましたよね」
「はい……信じては貰えてないでしょうけど」
「それについてはまだ保留にしてますが……これだけ聞かせてもらえませんか」
「何ですか?」
「これから先の……ハルヒの未来に……何か悲しいことが起きたんでしょうか」
「……」
朝比奈さんはキョトンとした顔になる
その後ニッコリと微笑みながらこう述べた
「禁則事項です」
「……」
「私の勝ち……ですね」
「ははは……降参です」
「今日は帰りましょうか」
「そうですね」
「キョン君」
「……はい?」
「未来は一つではないの。例えば今のオセロは私が勝ちました。けれどもキョン君が勝った世界もきっとあるんです」
「……?」
「未来への道は凄く細分化されていて、色々な可能性があるんです。私たちはその細分化されたある道を歴史通りに通そうと未来から来ました。だから……」
そこで朝比奈さんの言葉は止まってしまう
「えっと……?」
「ごめんなさい。これ以上は禁則にかかってしまうみたいです。私に言えるのはここまでです」
「……はい」
こうして少し寂しい部活は過ぎていった
「ただいまー」
「キョン君おかえりー」
「ん。おかえり。晩御飯できてるわよ」
帰宅した俺を出迎えてくれたのは妹とハルヒだった
「……なんか久しぶりだな」
「何よ。文句でもあるの?」
「まさか。感謝しか出てこないね」
「……ふ、ふん」
素直に言ったのだがプイッと顔を反らされてしまう
……まだ怒ってらっしゃるのか
「ほら、ボサってしてないで手を洗ったら配膳手伝いなさい!」
「お、おう」
「……朝倉の所に行ってきたわ」
「そうか……どうだった?」
「……体の方は大丈夫みたいね……ただ……」
「……ただ?」
「彼女のご両親が少し……複雑みたいなのよ」
「両親?喧嘩でもしたってのか?」
「なのかも……あまり詳しくは聞かなかったんだけどね……ご両親は海外出張に出てて、今朝倉は一人暮らしをしてるみたいなの」
「そうだったのか」
「ね。私も今日はじめて知ったのよ。それでどうにもそのご両親絡みで問題があったみたいで……」
「色々悩んでた……って感じか」
「……うん」
「……それと、明日は学校に来るみたいよ」
「ん……そうか……何も知らなかった、聞かなかった体で何時も通りに接するのが一番かもな」
「それ、キョンには絶対無理ね」
「なんですと?」
「あんたすぐに顔に出るし。心配してるのすーぐわかるんだから」
「む……いや、少しはポーカーフェイス出来るはずだぞ?」
「そう思ってるのはあんただけよ……もし通じたとしてもそれはあんまりあんたの事を見てない人ね。朝倉には通用しないわよ」
「やれやれ。俺の評価は随分と低いんだな」
「……そういう意味で言った訳じゃないけど……まぁ、キョンに気付けっていうのが無理な話だったわね」
「おいおい。人を察しの悪い出来ない子扱いをするのはよせ」
「……ふーん?」
「可哀想な人を見る目はやめなさい」
「じゃあどうして私はちょっと前に怒ってたの?」
「む……うーむ……」
ぬかった
つついた先はまさかのやぶ蛇であった
「……もうその話はいいわ。保留にしてあげる」
「そうかい……ああ、ハルヒ」
「何よ?」
「ん。ちょっと待ってな……ほら」
ハルヒの機嫌取りと言うかなんというか、あの日朝に買ったのはいいが結局渡す機会がなくて渡せなかったものを冷蔵庫から引っ張り出す
「……シュークリーム?」
「んーなんだ……まぁ、毎日弁当とか作って貰ってるし……今日なんかは晩飯までだし……その、礼だよ」
「ふーーん?私への感謝はシュークリーム一個分ってことなのね?」
「い、いや!そういう意味じゃなくてだな!」
「……ぷ。あはは。冗談に決まってるじゃない」
「……やれやれ。心臓に悪いからやめてくれ」
「……んーじゃあ感謝の印として今度の週末の不思議探索はあんたの奢りね」
「むむ……まぁ、それぐらいはいいか」
「そうよ。今度はちゃんと朝倉もあんたも合わせて皆でやるのよ」
そうにっこりと笑うハルヒ
ああ、何だかこんなハルヒを見るのは久しぶりだ
そうだな。それは楽しそうだ
少しぐらい俺の財布が火の車になっても構わないぐらいにな
さて、翌日である
少し早い時間に家をでてハルヒと登校した
勿論それは朝倉を待つためであったのだが……
その目当ての人物は俺達より早く登校していた
「おはよう。キョン君。涼宮さん」
「よう。身体は大丈夫か?」
「ええ。もうバッチリよ。心配かけてごめんなさいね?」
「まったくだ」
「本当よ。でもまだ病み上がりなんだから無理しちゃだめよ」
「そうね。今日は部活にいかずに帰らせてもらってもいいかしら?」
「しょうがないわね。特別に許可するわ」
……普段と変わらない様子の朝倉に見える
別段強がったり無理をしたりしてるようにも見えない
見えないが……やはり俺には見抜けないだけで何処か無理をしているのだろう
ハルヒが普段通りに接しながらも心配しているのがわかる
「なーに?キョン君?じーっとこっちを見て」
「あー、いや。特に意味はないんだ。すまんな」
「ふふふ。少しの間会えなかったから寂しかったのかしら?」
「そういうことにしておくよ」
「あら、素直ね」
こうして、朝の一幕は終わりを迎えたわけなのだが……今朝はもうひとつ出来事があったのだ
ポケットに突っ込んである紙に触れる
今朝登校したときに下駄箱に入っていたのである
内容は【放課後、教室にて待っています】
……ご丁寧に女の字である
普段ならば谷口あたりの悪戯なのではないかと思ってしまうのだが……
また、ハルヒ関連なのかもしれんと思ってしまう辺り、もう大分あいつらに毒されたのかもしれん
残っているのは……異世界人ぐらいだが
はたしてどうなるのやら
キョンとハルヒのお互いのこと分かってる感好き
これは刺されるな
キョンくんナイフーグサァ
まだか
>>207
下げろks
保守
今日で二ヶ月か
はよはよ
連休取れたから来週書く
もう少し待ってくれ
はよぉぉぉぉぉ
期待してます
まだか~!!
>>214
うるせぇsageろks
面白いから支援
わっふるわっふる
時刻はさらっと放課後になる
「さぁ!部活よ!朝倉はさっさと休んで治すのよ?いーい?」
「勿論よ……ああ、涼宮さん」
「ん?なに?」
「ありがとうね」
「……急に何よ?別に何もやってないわよ?」
「ふふふ。何となく言いたくなったのよ」
「……そう?ならいいわ。お礼を言いたいなら早く治してちょうだい」
「ええ……それじゃあまたね」
「ええ!また明日よ!行くわよキョン!」
「あー。すまんが岡部に呼び出されてな」
「……あんた何かしたの?」
「わからん。とりあえず先に職員室に行ってから部室に顔を出すよ」
「……そう。でもいい?出きるだけ早く来なさいよね!」
ハルヒに嘘をつくのはあまり好きじゃないが本当の事を言ったら何されるかわかったもんじゃないからな
許せハルヒ
「……いいの?」
「良いも何もあるか、お前も体調悪いならさっさと帰って寝た方がいいぞ」
勿論岡部の呼び出しと言うのは嘘なのだがそれを朝倉に言う訳にもいかないのでいつも通りの軽口を言い合う事にした
きっと朝倉の事だから少しムッとした表情でも浮かべながら「もう、馬鹿にして」とでも言ってくるだろう
……そう、そんな風にいつも通り朝倉に小言の一つでも言われてそれでおしまいのはずだったのだ
……のだが、この日、この時、そんないつも通りなんてことは起きてくれなかったのだ
「それもそうね……私も用を済ませないとね」
「……何の用があるんだよ?クラス委員の仕事なら今日ぐらいは休めばいいんじゃないか?」
「……」
「……朝倉?」
「ねぇ、キョンくん。何だか変だと思わない?」
「変?何がだ?」
「それは勿論……この世界かな」
「……はい?」
おいおい、どうしてしまったんだ朝倉は
本当に風邪でも引いてしまったのか?
こんな電波混じりの……
電波まじり……?
そう、俺はここ最近そんな話をよく聞いていたではないか
「……そうね。急にごめんなさい。でも気がついてる?この教室……いつのまにか私達しかいないのよ」
確かに普段は授業が終わってもある程度は生徒が残っていてもおかしくない教室がものの二、三分ですっからかんになるのは珍しい
……が別にそれぐらいただの……
「ただの偶然……って考えてるよね」
「……別にたまたま用事があったとかそんなもんだろ」
「そうね……たしかにそう……それもあるわね」
「本当にどうしたんだ朝倉?」
「……ねぇ、キョンくん」
「ん?」
「下駄箱の手紙は読んでくれた?」
「……朝倉だったのか」
「そうよ。ビックリしたでしょう」
「まぁ、それはな」
「……私もビックリしたわ」
「……朝倉が?」
「そうよ。だって初めてのラブレターなんだもの」
「なんですと?」
「……でも、ごめんね」
顔を伏せ、何かを堪えるように……
「貴方を殺して、涼宮ハルヒの出方を見る」
パチン……と指を弾きながら彼女は確かにそう言った
灰色……そう定義するしかない空間にいつの間にか俺はいた
さっきまで確かにここは教室であったはずなのに
ふと、いつぞやに見た夢が脳裏を過る
あの夢でも確かに言われていた
俺を殺して涼宮ハルヒの出方を見る……と
……笑えない冗談だ
これが正夢というやつならば夢を夢で済ませてくれなかった神様を恨むってもんさ
古泉曰くそれはハルヒだという
そして今回の件もハルヒ絡みなのは見てとれる
おいおいハルヒよ……本当にお前はどうなっちまったんだ
「……涼宮さんの事を考えてるんでしょ」
「殺すだのなんだの言われて軽い現実逃避をしてるだけだ」
「……ふふ。素直じゃないんだから」
「……んで、朝倉、こりゃどういった冗談だ?」
「これが冗談に見える?」
「……俺としては夢であってほしいもんだ」
「そうね……本当に……悪い夢みたいなものよ」
「朝倉……?」
「……大丈夫よ……キョンくん。時間がないから手短に話すわ」
「説明してくれるのか?」
「ええ……大丈夫よ。私は貴方を殺したりなんかしないわ」
「殺されるとしたら、それは私よ」
「……は?」
さも当然のようにいう朝倉に頭は混乱する
だってそうだろう?
いきなりクラスメイトに殺すと言われたり殺されると言われたりして理解が追い付くやつがどこにいるってんだ
「まずはそうね……簡単に言うなら私は長門さんと同じ宇宙人ってことだったのよ」
「いやまてまて、色々と突っ込みたいことが多すぎるんだが、まず殺されるってどういう」
「ごめんなさいキョンくん。本当に時間がないの」
どうやらこちらの質問には答えてくれないみたいである
時間がないと朝倉は言った
……では時間が切れたらいったい何が起きるって言うのだ
「私は長門さんと同じ用途で作られた存在だったの。だけどある事がきっかけで長門さんとはまったく違う用途で運用された存在、それが私」
なんだ
俺はいったい何を伝えられようとしているんだ
長門と同じ存在、宇宙人
だけど違う目的で運用?
「私はある目的のために自分が宇宙人であるという記憶そのものを消された状態で生活していたのよ」
「つまり……どういうことだ?」
「んー、簡単にいうと記憶喪失ってことかな。自分が何者かわからないようにされていたってこと」
「いやだが……それはおかしくないか?」
そんな状態でどうやって生活を送るというのだ
「情報統合思念体の力によって私は人間であるという……過去の記憶も作られた状態で私は生まれたのよ」
「私は自分の父と母の名前を知っているし顔も思い浮かべることもできる。けどそれすらも作られていたってことね」
「そんな無茶苦茶な」
「そう……無茶苦茶なことができるのよ。彼等は」
「話を戻すわ。私は普通の人間として生活を送りながらこの高校に進学をした。勿論自分の意思と力でよ」
「思念体にとってここまでは別に問題はなかった。涼宮さんと同じクラスになったのは多少イレギュラーだったようだけど、これも因果だったんでしょうね」
「涼宮さんの事についての説明はきっと長門さんがしてくれてるわよね?」
「少しは……なぁ朝倉よ。ここからどうして俺が殺されたりお前が殺されたりと物騒な話に転がるんだ」
「……涼宮さんを観測するのが長門さんの役目だってのは聞いたのよね」
「ああ」
「涼宮さんの情報をできるだけ静観しながら観測するのが情報統合思念体の目的なのね」
「だからそれは聞いたって」
「その涼宮さんに悪影響を与えている存在が現れたのよ」
「……はい?」
「情報統合思念体はそのイレギュラー因子をどうにかしたいと考えた。そしてその結果その因子を取り除こうと考えた」
「……そのイレギュラー因子ってのが朝倉涼子。つまりは私ね」
「私は本来SOS団に入部しない……ううん、入ってはいけない存在なのよ」
「いや、待てよ、どうして朝倉がハルヒに悪影響を与えてるなんて事がわかるんだよ!」
「……キョンくん」
「SOS団に入ってはいけない存在?そんな訳あるか!」
「キョンくん」
「っ……」
頭が真っ白になり半ば叫びに近い声をあげる俺の手を取る朝倉
じっと此方を見る目から思わず顔を背けてしまう
「まさか……それだけの理由で殺されるってことなのか……?」
そんな不条理があっていいのかよ
そんなの認められるわけがないだろう
「……なぁ朝倉、どうして悪影響だとかわかるんだよ。お前がいるとむしろハルヒは……」
「……それは、んー……」
「朝倉?」
「……うん。それは内緒。きっと私が伝えちゃうと伝えてはいけないことまで伝わってしまうから」
「なん……!」
「とりあえずこれが私が殺されちゃうーって話の半分ね」
「これで半分ってどういうことだよ。もう頭一杯だぞ」
「もう半分はキョンくんを殺すって話も絡むのよ」
「情報統合思念体もね、一枚岩じゃないの」
「色々な派閥があって、今は静観派が多数なんだけど、中には過激派もいるの」
「過激派?」
「そう。わざと涼宮さんにちょっかいをかけて情報フレアを発生させてそれを観測しようっていうね……つまり今回の発端はこっち」
「過激派の思念体の命令はこうよ。助かりたいならキョンくんを殺して情報フレアを発生させよ……ね?簡単でわかりやすいでしょう」
「でも残念、私はキョンくんを殺す気なんてこれっぽっちもないの」
「それだと朝倉が!」
「……キョンくん既に私は詰んでいるのよ。貴方を殺しても殺さなくても私は処分される運命よ」
「……そんな顔しないでよ。まったく」
「……むしろなんで笑ってられるんだよ……」
「決まってるじゃない」
「好きな人に見せる最後の顔が泣き顔なんて嫌じゃない」
「……え?」
「あー。やっぱり気がついてなかったんだ」
「好きよ、キョンくん」
今度こそ、俺のちっぽけな脳みそは真っ白になった
更新きて喜んでたら怒涛の展開過ぎて驚いている俺ガイル
!?
更新きてるじゃん
おつおつ
おつんつん
>228
それな
はやく、はやく、続き、続き!
舞ってる
気体してます
待ってる
______さて俺は何を言われたのだろうか
すき?スキ?隙?空き?
……好き?
いきなりクラスメイトで委員長で部活仲間の朝倉涼子に手紙で呼び出されたと思ったら殺すと言われ電波な話を聞かされたと思ったら最後には好き?
はは、まったく笑えないのにここまできたら笑えてきちまう
いや、待て、落ち着け
そうじゃなくてだな…………
この状況はなんだ?
何がどうして何処で間違ったらこうなったんだ?
「……ふふふ。キョンくん凄い顔してるよ?」
「……からかうのはよしてくれ。もう本当に頭の中がいっぱいいっぱいなんだ」
「ふふ。そうみたいね。でも冗談ではないの。それに、返事はしなくていいのよキョンくん」
「本当はこれも言うべきじゃなかったんだろうけど……どうしてだろうね?人って不思議だよね。まぁ私は人じゃなかったんだけどね」
「……朝倉は人だろう」
「……ふふ。ありがとう。そろそろ時間ね」
「……時間?」
「ええ……先に謝っておくわ。キョンくん。ちょっとだけ……我慢してね」
朝倉が呟いた途端身体がまるで金縛りにでもあったように動かなくなる
「______」
何を始めようとしているのか聞こうとしても声すらでない
なんてこった反則だ
朝倉はこっちを見て悲しそうに……それでもにっこりと笑いながら此方に向かってくる
_____その右手にナイフを握りながら
「それじゃあ……死になさい」
だが、そのナイフが俺に届くことはなかった
「……こんにちは。長門さん」
長門がド派手な音と共に目の前に現れてナイフを素手で掴んでいた
……ポタポタと流れる血を見るだけでこっちまで痛くなってきてしまう
大丈夫なのかと問おうにも声がでない
なんて情けない状態なんだよ
「……パーソナルネーム朝倉涼子。貴女の独断専行は許可されていない。私に従うべき」
「嫌だといったら?」
「……情報結合を解除する」
「やってみる?ここでは私の方が有利よ」
二人が俺の目に見えない速度で移動やら攻撃を繰り返すのを見て俺は、ああ、この二人は本当に人間離れした力を持っているんだなと場違いなことを思った
いや、そんな事より何とかして長門を止めなければ
こんな糞ったれな脚本を書いた情報統合なんたらの思うがままにしてたまるものか
動け……動けよ!
身体も動かなければ声すらでない
傍観しているだけの俺と朝倉が一瞬目があう
その瞬間、朝倉の身体を一筋の光りが貫いた
「……情報連結解除開始」
「……あーあ。やっぱり私はバックアップのままだったかぁ」
さらさらと砂のように朝倉の身体が崩れていく
そして身体が急に動くようになった
「朝倉!」
「……」
「長門!止めてくれ!」
「……いいのよ。キョンくん。これは決まってることだから」
「決まってるってなにがだよ!」
「……長門さん」
「……何」
「後は……任せたわ。ごめんね」
「……」
「朝倉!」
「ふふ。そんな顔しないで……じゃあね。キョンくん……」
「……長門」
「……何」
どうして朝倉を……そんな言葉が出そうになったのをぐっと堪えた
長門は助けてくれたのだ
情報統合思念体とやらからの刺客である朝倉から俺を
それはきっと善意の事で……
「いや……なんでもない。それよりこれ、大丈夫なのか」
「……問題ない。情報操作は得意……まずはこの空間の再構築を行う」
ゆっくりと空間が俺の知っている教室に戻っていく
「……大丈夫?」
「……ああ。長門も怪我とかしてないか」
「問題ない」
「そうか……」
それきりお互いに喋らなくなる
俺はといえば頭の中で朝倉のことばかり考えてしまっていた
なぁ……朝倉
俺はまたお前と喫茶店にでも行きたいぞ
今度はハルヒとかsos団メンバーも呼んでさ
その時は勿論俺が奢るさ
……だから戻って来てくれよ
「キョンくんおかえりー」
気がついたら家に帰ってきてたらしい
あの後長門とどうやって別れたのかすら覚えていない
返事もそこそこに部屋に引きこもってしまう
「キョンくーん。ごはーん」
「今日はいい」
「風邪でも引いたぁ?」
「……ああ、そうみたいだ」
「大丈夫ー?」
「……少し寝とくから部屋にはいるんじゃないぞ」
「はーい」
「……朝倉」
ああ、なんて未練がましいのだ……俺は
それでも巡る思考を止めることはできなかったのである
どれくらいの時間がたったのだろうか
パチリと部屋の電気が付く
入ってくるなと言っただろうに
文句を言いたくなるが話すのも億劫であるので狸寝入りを決め込むとする
「風邪引いたって聞いたけど……辛くはなさそうね」
そんな言葉と共にベッドに近づいてくる
そした突如ヒヤリとした感触が額に乗る
……言うまでもなくハルヒの手である
「……妹ちゃんに心配かけるんじゃないわよ」
そこは嘘でもハルヒが心配していると言ってくれないものなのかね
……などと少々身勝手な感想を考えていると
「……あんた何時まで狸寝入りしてんのよ」
いきなり鼻を思いきりつねられてしまった
「お前いきなり鼻つまむなよ……」
「で、どーしたのよ」
「……どうしたも何もないぞ。ただ身体がだるいだけだ」
「……」
「……」
ジッとハルヒが此方を見つめてくる
何だか全てを見透かされそうで思わず目をそらしてしまいそうになるがぐっと堪えて見つめ返す
「……ふーん。この私に嘘を付くとはいい度胸ね」
「嘘なんて言ってないぞ」
事実身体は疲れきっているのだ
「……はぁ。仕方ないわね。ったく」
そっとハルヒが頭を撫でてくる
「お、おい」
「黙りなさい」
「……」
「いいから。何も考えず目を閉じなさい」
ハルヒに言われるがままに目を閉じる
「……今はゆっくり休みなさい」
「……ずいぶんと優しいんだな」
「そうね。珍しく本当に弱ってるみたいだからね」
「……普段もそのぐらい優しくしておいてくれると助かる」
「残念ながら今日だけよ」
「……そいつは残念だ」
「いいから黙ってなさい……寝るまでいてあげるから」
ああ、もう
本当になんなのだ
何時もは強引で遠慮せずに此方の都合も考えずに問い詰めてくるだろうに
急に優しくされるとむず痒いんだよ
せめて寝顔は見られないように布団を大きめに被り寝返りをうつ
……優しく撫でてくるハルヒの手の温もりを感じながらゆっくりと意識が沈んでいくのだった
きてりゅうううううう
この幼馴染独特の勘の良さよ
乙
「う……ん」
「……朝か」
目覚ましの音で目が覚める
身体が異常に重いのは果たして肉体的なものからなのかそれとも……
「……夢じゃなかったんだよな」
できるなら夢であってほしい
リアルすぎる夢を見た、ただそれだけであったならどれだけよかったのだろうか
「キョンくーん。朝だよー!元気出たぁー?」
「ああ。もう大丈夫だから先に降りてなさい」
「わかったぁー!」
……休むわけにもいかないよな
休んだら今度こそハルヒに叩かれそうだ
「……あいつに何て説明すればいいんだよ」
ハルヒにとっても朝倉は大切な存在だったはずだ
その朝倉が消えただなんてどう言えばいいんだ
昨日のあれは全部夢で、登校すると何事もなかったように朝倉がいる
……なんて事になってくれるなら俺は毎日あの校門までのだるい坂を楽しく元気に登校してやってもいいぐらいだ
そんな気持ちを持ちながら登校した俺を待ち受けていたのはやはりハルヒ一人であった
「……ちゃんと来たのね」
「ただの風邪だしな。一日寝れば治るさ」
「そう。ならいいのよ。今日はSOS団の会議の予定だったから休んだりしたら罰金ものよ」
「会議?一体何の」
「放課後になったら言うわ」
「そうかい」
それで会話は終わったようだ
ハルヒは頬杖を付きながら窓の外を見始める
俺はといえば空席である朝倉の席をぼおっと眺めているのだった
ああ、本当に朝倉は……
「お、おはよう?」
「……はい?」
そこには何だか恥ずかしそうに両手の指をモジモジさせている朝倉がいた
「もう大丈夫なの?」
「ええ、お陰さまで。心配かけてごめんなさいね」
「いいわよ。今日からはばっちりと働いてもらうわよ」
「ふふ。お手柔らかにお願いね」
「じゃなくてだな!朝倉!」
「ちょっとうるさいわよキョン」
「なんでお前がここにいる!」
「ちょっと、あんた何言ってるのよ」
「えーっと……ごめんね?キョンくん。少し落ち着いて?」
「なぜ謝る!いやすまん。落ち着けと言われても落ち着けるわけがないだろう」
「後で全部説明するから……もうすぐHRだしお昼にでも」
そう小声で伝えてくる朝倉
……ああ、全部教えてもらうからな
これほどに待ち望んだ昼休みというものは初めてかもしれない
昼休みになると朝倉と俺は文芸部室ことSOS団部室に来ていた
「朝倉!これはどういうことなんだ」
「どうって?」
「昨日のことだ。お前は長門にその……それとも、あれはやっぱり俺の夢か何かだったのか?」
「夢じゃないわ。現実に起きたことよ」
「じゃあ朝倉はやられたわけじゃなかったってことなのか?」
「それも違うわね。情報統合思念体の端末である朝倉涼子は昨日確かに情報連結を解除されたわ」
「じゃあ……お前はどうして……?」
「……再構築されたのよ」
「再構築……?」
「んーっと……蘇らせられた?って言えばいいのかな」
「情報なんたらにか?」
「いいえ……私を再構築したのは恐らく涼宮さん」
「……ハルヒが?」
「ええ。どうにも私は予想以上にSOS団のメンバーとして望まれていたようね」
「無意識的に彼女は私が消えることをよしとしなかった。結果として連結解除された私は再構築された」
「驚くべきことに今の私は情報統合思念の末端としてではなく、ただの人間として再構築をされてしまったの」
「ただの人間として……?」
「そう。涼宮さんがただの人として私を望んでいる。これは異常事態よ」
「この事態を受けて上も混乱したわ。ただ非常に貴重な観察対象とされた私の処分は結果的に見送られたわ」
「すまない。話についていけなくなりそうなんだが」
「んー。簡単にいうと私は人間になって、私が情報統合思念体に消されるという話は当分はないってことね」
「……そうか」
「やっぱり一番の不思議は何故涼宮さんが私を人間として復活させたかよね」
「そんなのが不思議なのか?」
「当然でしょう?涼宮さんの行動理念は入学式、それにSOS団の活動目的からも明白だし。末端としてではなく人間として蘇らせる必要はないのよね」
「ふむ……」
「あっ。その顔。もしかして何か心当たりがあるの?」
「……さぁな」
何となく……いや、思い付くことはひとつある
あるがそれを教えるのはなんだか勿体ないような気がした
どうやら今回の一件で名実ともに人間となった朝倉なのだ
人間ならば悩みのひとつやふたつ持っているのもなのだ
大いに悩んでもらおう
なのでここはひとつ、話題を変えることにした
「それにしても昨日は本当にまいったぞ」
「あー……ごめんね?怖かったよね……怪我は……してないよね?」
「ああ。傷一つついてないぞ」
「よかった」
「怖いというよりも状況整理に必死で頭が破裂しそうだったさ」
「ふふ。キョンくんらしいわね。そんなに悩んだんだ?」
「そりゃそうさ。いきなり呼び出されて殺すと言われたと思ったら自分は宇宙人とか言われてあげくに……」
「……」
そう、そうだった
朝倉が生きていた喜びですっかりと忘れていたのだが……
色々ととんでもない話をされた後に自分は告白されていたのだ
「あー……」
中途半端に途切れた会話の間を埋めるためにまた中途半端な発言をしてしまう
朝倉も俺が何を思っているのか勘づいたのかさっきまでの淡々とした表情から恥ずかしげな表情に変わっている
なんだかそれだけなのに凄く女の子っぽさを感じてしまうのは何故だろうか
……って、そうじゃなくてだな
「……嘘じゃないからね?」
「え?」
「今は返事はいいから」
本当にそれでいいのだろうか
あまりにも不誠実ではないのだろうか
そんな思考に囚われている俺に朝倉は畳み込んでくる
「せっかく人間になれたんだもの」
「キョンくんから告白されるくらいの女になるわ」
「私の新しい目標よ。だからそれを取り上げないで?」
「……わかったよ」
「ふふ。ありがとう。そろそろ教室に戻ったほうがいいわよ。涼宮さん……きっと怒ってるわよー?」
「そんなことはないだろう」
「さぁ……どうかしら」
来てた
乙
連続更新いいぞ
メインヒロインは朝倉だった
乙
確かに朝倉のヒロイン力は強いがそれでもあえてハルヒを推したい
「……それで、本当に私は思念体から狙われなくなったのかしら?」
「……不明。ただし分岐した世界が今後どうなるか観測するまでは静観」
「……そう。それにしてもまさか復活した上に人間になるなんてね」
「……」
「そんな顔しないで?あの時私が消えるのは決まっていたことなんだから」
「……そう」
「感謝もしてるのよ。貴女がいたからキョンくんを傷つけなくてすんだのよ?感謝してるくらいよ」
「……」
「気にしすぎ。それに、これで何も気にせずに人生ってのを謳歌できる訳だしね。気楽でいいわ」
「今後はバックアップとしてではなく友達として貴女の側にいる。それで問題ないでしょう?」
「……問題ない」
「ふふ。改めてよろしくね」
「……よろしく」
「それじゃあ楽しみましょうか。あるべき未来と変わってしまったこの世界を」
教室に戻った俺を出迎えたのはムスっとした表情でアヒル口を作ったハルヒであった
「朝倉と何してたのよ。ご飯食べずに待ってたのに」
おお、よくある幼馴染みのテンプレをあのハルヒが言っているぞ
「すまん。ちょっとだけ野暮用でな」
「……」
「……どうした?」
「……別に。待たせた罰に今日の帰りちょっと付き合いなさいよ」
「……わかったよ」
それぐらいで機嫌が直るなら安いものだ
放課後部室に集まった俺達を一通り眺めた後に
「それじゃあ第二回SOS団ミーティングを始めます!」
そう高々に宣言したハルヒの話した内容と言えば
「……つまり週末に不思議探索をすると」
「そうよ!前回はどっかの誰かと涼子がいなかったもの。今回は当然参加よ参加!」
「やれやれ……仕方ないか」
「集合場所は前回と同じ駅前ね!遅れたら罰金よ罰金!」
「わかったよ」
まるで参加するのは当然という物言いに少しは苦言をしようかと悩みもしたが今回はいいだろう
実際異議を唱えるものは一人も居なかったことだしな
さて、ミーティングとは名ばかりの決定事項をいい放った後はもう自由時間になったようでハルヒは朝倉と朝比奈さんを連れて外に出ていた
恐らくまたバトミントンでもやっているのだろう
中庭の方からはハルヒの馬鹿でかい声と朝倉の声が聞こえてくる
俺は古泉とボードゲームを嗜んでいる
長門は勿論読書だ
「何か良いことでもありましたか?」
「む?何の話だ」
「いえ、珍しく顔がにやけていましたので」
「そうか……ちょっとな」
「朝倉涼子の事ですか?」
「……知っていたのか」
「全てを把握している訳ではありませんよ」
「……なぁ古泉」
「何でしょう?」
「お前らの所属している機関……だったか?そこでも朝倉や長門のところみたいに意見が割れているんだよな」
「はい。その通りです」
「……てことは、今回みたいなことがまた起こる可能性もあるのか」
「否定はできません、ただそうさせないように僕達は努力しますよ……ねぇ、長門さん」
そこで読書をしていた長門に古泉は話をふる
長門は本から視線を上げこっちを見てからゆっくりと頷く
「……させない」
「……そっか。そういえば長門」
「なに?」
「手は大丈夫か?」
「問題ない。修復済み」
「そうか……改めてありがとうな。助けてくれて」
朝倉のことで頭が一杯だったせいで俺を庇って手を怪我していた長門に対して対応がおざなりだった自分が情けない限りてわある
あろうことか礼すら言っていなかったのだ
長門はもう一度頷くと視線を本に戻した
「何はともあれよかったです。お陰さまで僕のバイトも発生しませんでしたので」
「そういえばバイトってのは何をしているんだ?」
「それはまた機会があるときにお話ししましょう」
勿体つけてくる古泉に対して俺は
「そうかい……ほらよ」
「……まいりました。詰みですね」
ゲームを終わらせたのだった
「病み上がりだから手加減して上げただけなんだからね!」
「ふふん。今日は私の勝ちね」
「明日は覚えてなさいよ!涼子」
「ふふ。返り討ちにしてあげるわ」
「くぅー!あんたのドヤ顔見てると悔しいわ」
「何と言われようと勝った方が正義よ」
「むー!覚えておきなさいよ」
「それじゃあキョン帰るわよ!またね皆!」
「あっおい!こら鞄!」
慌てて追いかけたハルヒは下駄箱の前で仁王立ちしていた
「遅いわよ」
「ったく。自分の鞄ぐらい持て」
「だってこうでもしなきゃあんた来ないかもしれないじゃない」
「なんだそれ」
「……別に」
いくら俺だって数時間前に約束した事を忘れたりはしないぞ
「ほら、どっかいくんだろう?」
「……そうね。付いてきなさい」
「はいはい」
まだ読んでくれる人いて驚いてるありがとう遅くて本当にごめんね
まだ序章が終わったばかりだけど頑張ります
乙
頑張ってくれ
乙
完結してくれるまで死ぬ気で待ってる
久々に楽しみなSSなんだ
いつまでも待つけど早く書いて(矛盾)
おつ
乙
再開してくれるだけでありがたい
ハルヒを選ぶのかそれとも朝倉なのか
佐々木がどうなってるのかも気になる
荒らしがここのURL貼って邪魔するんだけどここでちゃんと紐握って離さないで
ハーメルンや渋で書いてもええんやで?この手の掲示板ではパスワード忘れて未完ってこともあるみたいだし。
へーここって書き込むのにパスワード必要なんだ知らんかったわ
ほー書き込むのにパスなんて必要だったのかー
パスワードとかは要らなかったんだった。なんで俺こんな事書いたんだろ・・・
酉は忘れる危険あるけどこの作者付けてないしね
パスワードうんぬんよりまずsageる事を覚えるべきだろ
復活してるのか
で、今どうなってるの?
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