男「なぁ」
友「ん?」
男「お前は黒歴史を思い出した時ってどうしてる?」
友「黒歴史って、∀ガンダムのアレ?」
男「違う、それじゃない。“思い出したくない過去”って意味の方」
友「あー、そっちね。うーん……」
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友「オレは深呼吸するかなー。スーハーって」
友「うまくいけば一回、キツイ時でも三回ぐらいやれば回復する」
男「深呼吸ね……」
男「ところでお前の黒歴史ってどんなのがあるんだよ」
友「オレ? よく思い出すのは……昔、あるエロ用語をそうとは知らずに日常で使いまくって」
友「大恥かいたことかなー」
友「こうしておちゃらけ話にもできるけど、たまーにフラッシュバックするんだこれが」
男「なるほど……」
友「お前はどうなんだ? 黒歴史を思い出したらどうすんだ?」
男「叫ぶね。あああーっ! 消えろーっ! ……って」
友「状況的に叫べない時は?」
男「心の中で叫ぶ」
友「ちなみにお前の黒歴史はどんなのなんだよ」
男「中学の頃、修学旅行でガチ迷子になって、泣いちゃったんだよね」
男「別にそれをネタにされてイジメられたわけでもないんだけど、一ヶ月に一度ぐらいは思い出す」
友「分かる分かる」
男「黒歴史思い出すのってホント辛いよなぁ~」
友「なにしろ防御不能だもんな。来る時はなんの脈絡もなく突然来るし」
男「みんなは黒歴史に対して、どう対処してるんだろうな」
友「そうだな~、完璧な対処法とかってあるのかね?」
男「よーし、だったらちょっとみんなに聞いてみないか?」
友「面白そうだな、やろうやろう!」
……
男「おーい!」
イケメン「ん? なんだい?」
友「お前は黒歴史を思い出した時ってどうしてる?」
イケメン「うーん、そうだね……」
イケメン「髪をかき上げて、フッ……ってやるかな」ファサ…
イケメン「これをやると、心が落ち着くんだよね」
男&友(こいつ……黒歴史の対処法もイケメン!)
男「お前に黒歴史なんてあまりなさそうだけど、たとえばどんなのがあるんだ?」
イケメン「昔、二人の女子から同時に告白されたことがあってね」
イケメン「ボクとしてはどっちとも付き合うつもりはなかったから」
イケメン「どうにか二人とも傷つけないように対処しようとしたら、かえって傷つけてしまって……」
男「あー……もういいもういい」
友「聞くんじゃなかったぜ」ケッ
……
男「おーい!」
不良「あん? なんだよ?」
友「お前さ、黒歴史を思い出した時の対処法ってある?」
不良「黒歴史ってなんだよ」
男「いわゆる、思い出したくない過去ってやつ」
不良「あー、そういうやつか。そういうのを思い出したら、当然……」
不良「クソがぁっ! って、近くにあるもんブン殴るぜ」ブンッ
男&友(おっかねえ……)ブルッ…
友「不良の黒歴史っていうと、たとえばどんなのがあるの?」
不良「あぁん!? それ聞くのかよ!?」
友「あ、いや……ごめん……」
不良「へっ、ウソだよ! 教えてやんよ!」
不良「昔、バイクで事故った時、骨がポッキリいっちまってよぉ~」
不良「右腕がこっちの方向にグニャリって曲がっちまって……」
男「あ~、やめてやめて!」
友「聞いてるこっちまで痛くなってきたわ」
……
男「女ちゃん!」
女「あらなぁに?」
友「君は黒歴史を思い出した時ってどうするの?」
女「う~ん、そうだなぁ……」
女「私ったらいけない子! って、頭を叩いたりする!」テヘッ
男&友(か、可愛い……)
男「だけど君みたいな子に黒歴史なんてあるの?」
女「そりゃあるよぉ~」
友「教えて教えて!」
女「えーとね、中学の時にね、ものすごく嫌いな女子がいたの!」
女「あっちも私のこと嫌いでね。だから陰口とか不幸の手紙とか、嫌がらせの大戦争してたのぉ!」
女「今はもちろん、反省してるけどねっ!」テヘッ
男&友(女ってこえー……)
……
男「あっ、おじいちゃん!」
友「こんにちは!」
祖父「おお、こんなところで会うとは……奇遇じゃな」
男「おじいちゃんはさ、なんか黒……思い出したくない過去ってある?」
祖父「そりゃあるとも」
男「そういうのを思い出した時は、どうしてる?」
祖父「すまん……の一言じゃな」
友「おお……渋いですね」
友「ところで……どんなことを思い出すんです?」
祖父「うむ……あれは戦時中……」
祖父「ワシらは軍のキャンプで眠ってたんじゃが、そこに米兵が奇襲してきてのう……」
祖父「ワシの親友は、寝ぼけていたワシの盾になって弾丸を……」
男(ううっ、これは……!)
友(オレらの黒歴史とはレベルが違いすぎる……!)
黒くないしな…
……
男「こうして聞いてみると、順調な人生歩んでそうな人も、みんなそれぞれ黒歴史を持ってて」
男「その対処法には苦労してるって感じだな」
友「やっぱり完璧な対処法なんてもんはないのかもなー」
男「おっ」
友「どうした?」
男「あんなところをお調子者が歩いてるぜ」
友「あ、ホントだ! あいついつもバカなことばかりやってるから、きっと黒歴史まみれだぞ」
男「よーし……ちょっと話を聞いてみるか。おーい!」
お調子者「ヘイヘ~イ! なになに~!?」
男「お前さ、黒歴史思い出した時ってどうしてる?」
お調子者「黒歴史ってなにぃ?」
友「なかったことにしたかったり、思い出したくない過去のことだよ」
お調子者「え? そんなもんないけど」
男&友「え!?」
男「いや……一つや二つはあるだろ?」
男「バカなことしたりミスしたり、恥ずかしい目やひどい目にあったり……って」
男「こないだだってお前、みんなの前でギャグやって滑ったじゃん!」
お調子者「そりゃあ、もちろんあるけど、別に思い出したくないってことはないなぁ」
友「なんで!?」
お調子者「だってどんな思い出だろうと、記憶喪失にでもならなきゃ消すことはできないし」
お調子者「いい過去だったらいい過去、悪い過去だったら悪い過去として、むしろ真剣に向き合うべきじゃない」
お調子者「だからぼくは、過去を思い出したくない、とは思わないかなぁ」
男&友「!!!」ガーン
男「そうだ……その通りだ」
友「たしかに……」
男「俺はあの迷子の経験があったおかげで、知らない土地行く時は下調べを入念にするようになったし」
友「オレも意味をよく知らない言葉を知ったかぶりで使うのはやめるようになった……」
男「あの恥ずかしい過去は、思い出したくもない過去なんかじゃなかった!」
友「むしろ感謝すべき過去だったんだ!」
男「そうだよ……どんなに振り返りたくない過去でも、それから逃げちゃいけないんだ!」
友「そうだ! そうして過去を積み重ねて、オレたちは成長していくんだ!」
男「過去から目を背けず、堂々と正面から向き合うこと!」
友「これこそが黒歴史に対する完璧な対処法だったんだ……!」
男「どんなに恥ずかしい目にあったってぇ~」
友「それは輝かしい過去! いわば白歴史!」
男「思い出さないようにするどころか、どんどん思い出していくべきなのさッ!」
友「そうだぁ、そうだぁ!」
男「だって……黒歴史なんてもんは存在しないんだから!」
友「そう! 存在しなぁ~い!」
男「黒歴史なんかなぁ~~~~い!」ララララン
友「ぬわぁぁ~~~~~~~~い!」ランラララ
子「ママー、あの人たち何やってんの?」
母「シッ、見ちゃいけません!」
しかし彼らは気づいていなかった……。
自分たちが今まさに新たな黒歴史を創造中だということを……。
―おわり―
ワロタ
まぁ楽しそうだからいいんじゃないかな
乙
いいねww
乙
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乙