女「選抜試験に落ち続けてもう4回目……今年こそは……」(9)

女「ふっ……!ふっ……!」

大きな街の片隅にある林の側で、棒きれを持って素振りする女性がいた。
頬には汗がつたい、それがどれだけの間素振りを続けているのかを物語っていた。

女「ふぅっ……ちょっと、休憩」

両手で構えていた棒きれを片手に持ち直して下におろし、ゆっくりと深呼吸をする。

女「いよいよ明日、選抜試験か……」

木陰に入り木を背もたれにして座ると、誰に言うでもなく呟いた。

女「選抜試験に落ち続けてもう4回目……今年こそは……」

彼女の視線の先にあるのは、大きな城壁だった。

女「2度あることは3度あったけど……4度目こそは、絶対に合格をもぎとってやるからね」

ぐっと力強く握りこぶしを作り、そう口にすることで己を奮い立たせる。

女「ゴクッ……ゴクッ……」

喉を鳴らしながら、水筒の中身を流し込む。

女「ッ……ふぅー……よし、休憩おしまい!」

水筒をあらかた空にし、小さくひと息つくと、再び女性は棒きれを片手に握って立ち上がる。

女「いち……に……いち……に……」

棒きれを両手で持ち直し、ゆっくりとした動作でステップを交えながら素振りを再開する。
少しの間その動作を繰り返した後、胸の前で棒きれを構えたまま目を閉じる。

女「………っ、やぁ!!」

気合いのひと言と同時に、大きく前に踏みだしながら棒きれを振りぬいた。
鋭い風切り音が鳴り、すぐに止む。

女「…………ふっ、ふっ……」

そして、先ほどと同じような素振りを始める。

日が傾きかけてきた頃。
女性は、芝生の上に寝転んでいた。

女「ふぅー………疲れたぁ………」

空を流れて行く雲を見上げながら、そう呟いた。

女「やれることはやったし……あとは、明日頑張るだけだ……」

ひとしきり休息を取ると、ゆっくりとした動作で立ち上がる。

女「いててて……ちょっと、気張りすぎたかな……今夜はゆっくり寝て、疲れを取らなきゃなぁ……」

肩に手を当てて大きく2,3回まわしながら、家路に着く。



女「あーっ、さっぱりした!」

使い終えたバスタオルを椅子に向けて放り投げると、どさりとベッドに倒れ込む。

女「明日、明日だ!明日こそ、あたしは騎士になるんだ!」

仰向けに寝がえりをうつと、天井に向けて握りこぶしを突き出す。

女「そして、この国を守れるくらいに強くなって、お金もたくさん稼いで、それで、それで!」

ムクリと体を起こし上げ、ベッドの傍らに置いてある投影水晶を手に取ると、軽く頭を叩く。
すると、水晶に赤黒いマントを身に纏った男がこの街を後にする様子が映し出された。

女「いつか………お前をとっちめに行くから」

その人物を見て、小さくそれだけを呟いた。

思いつきにより更新不定期
お城の騎士を目指す女のお話です

期待

翌日、彼女は朝一の鍛錬を終え、城門の前に立つ。

女「よし……よし、よし、よしっ!」

小さく何度か気合いを入れると、ゆっくりと歩き始める。

女「こんにちは、門番さん!」

門番「ん、キミか。今年も来たんだね」

女「はいっ!今年こそは合格もらいます!」

門番「気合い十分だね。それじゃ、ここに名前を書いて」

女「・………よし、書きました!」

門番「それじゃ、ナンバーカード。武運を祈ってるよ」

女「ありがとうございます!それじゃ、行ってきます!」

カードを受け取ると、彼女は城門をくぐりぬける。

期待できると思いました

女「うわぁ……今年も多いなぁ」

城門を抜けた先の広場では、すでに受付を済ませた人々が待っていた。
木に背中を預けている人、準備体操をしている人、素振りをしている人。

女「例年通りなら、今年も合格者は3名だけ……うぅ、緊張してきた」

ひとまずは誰もいない芝生の辺りに立ち、静かに深呼吸。

女「すぅ……はぁ……」

彼女が一人そうして試験に向けて心身共に準備を整えていると、同じく試験待ちと思われる一人が近づいてくる。

候補生1「なんだ、キミ?もしかして、志願者?」

女「………」

言葉を発さず、無言で会釈だけ返す。

候補生1「キミみたいな子供まで志願しているなんて、この国の騎士ってのも案外大したことなさそうだねぇ、ハハハ」

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